○竹田四郎君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま提案されました
地方交付税法の一部
改正案、地方税法等の一部
改正案及び
昭和四十四
年度地方財政計画について質問をしようとするものであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
質問の第一点は、地方財政好転論並びに自治、大蔵両大臣間に取りかわされました覚え書きをめぐる諸点についてであります。
予算案編成をめぐって大蔵省筋から、地方財政は好転したと称し、地方
交付税率の引き下げ、高率補助の切り下げなどを強要し、これに対し地方自治体側の強い抵抗を呼び起こし、その結果、国は六百九十億円を借り、
昭和四十五
年度に返還をする、四十三、四十四
年度に行なわれたかかる
特例措置は今後避けることとし、別途
年度間
調整措置を再検討するなどの自治、大蔵両大臣の覚え書きとなりました。しかし、この覚え書きには、この出発点となりました地方財政好転論についての両大臣の基本的な認識については、少しも触れていないのであります。確かに地方財政計画の数字の面だけを見ますれば、好転したとの印象を与えるかもしれませんが、実態は全くこれと異なるものであります。地方自治体の過去は、長い間、まさに破産の状態でありまして、やるべき事業もやれないで、住民に対する行政水準はきわめて低劣のまま放置をされてまいりました。
昭和四十二
年度末においての国道の改良率は七〇・六%、舗装率は六七・六%に対しまして、市町村道はそれぞれ一二・一%、四・五%、自動車の交通不能率は三七%にも達しているのであります。要望の強い下水道の普及率は二四%、し尿処理施設の
整備は市街地において六五%で、非衛生的な処理が依然として高いのであります。ごみ処理でも、焼却などの衛生的処理は四割でありまして、その他はすべて埋め立て等によるところの非衛生的な処理になっているのであります。大都市では、公園も一人当たり一平米でありまして、
基準の六平米よりははるかに低い状態にあるのであります。幼稚園、保育所、これも公私立合わせて四五%しか収容能力がありません。最近問題になっております老人問題についての養護老人ホームに至っては、実に必要の二七%にしか及んでいない状態であります。地域住民はかかる低劣な行政サービスにもかかわらず、最もひどいといわれております大衆重課の地方税の負担にたえてきたのであります。その上、三分の一にものぼる地方自治体の住民は、超過
課税という重い税金負担を続けてきているのであります。今回、超過
課税解消三カ年計画というものがつくられたことは、一歩前進とは
考えますが、先ほど
大蔵大臣が述べられましたように、世界の優等生といわれておるような、そうした繁栄した
日本経済の中で、
国民は強く地方
税負担の
軽減、行政サービスの向上を求めているのであります。また一方、市町村の超過負担も大きく、地方財政はこのために大きな圧迫を受けておる実情でありまして、地域住民をかかる
状況に追い込んでおかざるを得ない実体にあります地方財政は、まさに数字の上だけの「まぼろしの好転」であって、この好転論をもって地方財政の削減を求める態度は、まさに過酷な
措置と言わざるを得ませんが、
総理大臣及び自治、大蔵両大臣は、この地方財政の
現実をどのように御認識されておられるのか、御所見を承りたいと存じます。覚え書きからいたしますと、
昭和四十五
年度の
交付税額は、四十三
年度の返済分百五十億円、四十四
年度の六百九十億円 これは四十六、七
年度へ延びるかもしれませんが、それに主税の自然増による伸びがおそらく二千億ないし三千億出てくるでありましょう。また、本
年度だけの
措置といわれる
土地開発基金の六百億円の需要の落ちを合わせますと、四ないし五千億円ぐらい増加することになります。これは大蔵省筋の願ってもない攻撃目標になることは必至でありましょう。両大臣の覚え書きにもかかわらず、大きな問題となることでありましょう。住民はこの点に不安を覚えておるのであります。
われわれは、自治体
運営の基礎である自主財源たる地方
交付税を、かってにいろいろな口実を設けて突きくずそうとする自治体攻撃や、中央
政府の地方自治体支配をあくまでも排除すべきであると
考えます。また、
交付税は、国の一般会計を通すことなく、直接特別会計に入れ、
年度間
調整は、地方自治体独自の立場において
措置すべきであろうと
考えます。
昭和四十五
年度予算編成において、
交付税については、どのように今後
措置されるつもりでおられるのか。また自治、大蔵両大臣は、覚え書きにうたわれておりますところの
年度間
調整措置を今後どのように再検討し、
措置されるおつもりであるのか、あわせて
お答えをいただきたいと存じます。
質問の第二点は、自主財源の強化と
交付税制度の
あり方についてであります。今日の地方財政は、ある学者によりますと、「黒字の中の危機」とさえ言われております。地方行財政の基本的な機能は、住民の生活に密着した環境
整備や福祉の向上にあります。しかるに過去において、
産業基盤の
整備強化を主とする国の政策によって地方財政は従属させられ、ゆがめられてまいりました。
昭和三十六年から四十年の間に、中央と地方自治体全部によって行なわれた公共投資総額のうち、
産業基盤
関係の
整備に四八%配分され、生活基盤
関係整備には一〇%しか配分されていないのであります。いまもこの傾向は、一向に変わっておらないのであります。地域格差は拡大し、過密、過疎という大きなひずみを生み落とし、地方財政は
企業化の色合いを深め、施設の利用者に重い負担を要求し、大資本のために積極的に投資を行なってきました。住民の生活基盤
整備はあと回しにされただけでなく、公害とか交通事故など、住民の命と健康をさえ脅かすに至りました。重税、税外負担、公共料金の値上げ、高
物価などによりまして、生活水準の向上をはばみ、地方自治本来の
あり方を破壊してまいりました。過去のこうした政策への厳正な反省も批判もなしに、国はまた新全国総合開発計画をつくり、全国土を大資本の大規模な、かつ広域的な開発のために提供し、集中管理機能を強化し、独占資本の過酷な収奪と搾取の法則にゆだねようとしています。府県合併、広域市町村圏化も、その一環に組み込まれておるのであります。
このことは、地方財政計画の中で投資的経費の大幅な増加、すなわち四千五百二十四億円になっておることが、その特質を示しております。また、その策定方針においても、新全国総合開発計画の一環となっております町づくり、地域づくり事業を計画的に実施し、一般財源も重点的に充当することにしております。また従来の普通単独事業費を、一般事業費と特別事業費とに分割し、投資に積極的な姿勢を示しております。また、
交付税の
基準財政需要の算定においても、経常的経費と投資的経費とに区分し、事業費補正方式の拡充、
土地開発基金の設置など、地方財政をして
産業基盤優先の方向に誘導してきております。かかる
方法は、地域格差をますます拡大するおそれすらあります。同時に、
交付税制度の持ついわゆる財源
調整機能により、行政水準の平準化をはかろうとするこの
制度の本質をゆがめ、貧弱地域への傾斜配分ではなしに、富裕地域への配分割合を増加するという矛盾を拡大しております。大都市及びその周辺都市は
企業活動の基盤になっております。
法人の担税能力はきわめて大きいものがあります。しかるに、現在この地域では国が税金を取り過ぎております。財政需要は無限大でありますのに、税源配分は国七、地方三でありまして、
法人所得関係の税金におきましては、一そう市町村への配分は少なくなっております。大都市とその周辺にあっては、
法人所得が地方自治体の大きな税源となってしかるべきであると
考えます。大都市に税源を与えよというのは、何回にもわたりまして両院の
地方行政委員会の附帯決議になっております。この点すみやかに大都市及びその周辺都市に財源を与え、自主財源の強化を行ないまして、この
措置と相まって
交付税制度の本来の財源
調整機能を取り戻し、貧弱後進市町村への
交付税の傾斜配分を行なう
措置をとるべきであると存じますけれども、御意思のほどを伺いたいと存じます。
第三のお尋ねは、地方税
関係であります。
個人住民税の
課税最低限は六十二万数千円に引き上げることになっていますが、
所得税のそれとの差は約三十万円の開きがあり、明らかに最低
生活費に食い込む低さであります。
所得税を納めなくてもよいのに住民税の
所得割りを納めなくてはならない人が七百八十万人にも達しているのであります。住民は重い税金をかけられてまいりました。
物価高騰の今日、すみやかに
個人の住民税の
課税最低限を
所得税の
課税最低限と同一にするようにいたすべきであろうと思います。三カ年計画等をおつくりになって、計画的にこの差額を解消する御意思があるかどうか。
また、国税におけるところの
租税特別措置によって受ける地方税
減税分と、地方における非
課税措置による
減税分との合計総額は、二千二百二十一億円にもなるといわれております。これらの
特別措置についても整理すべきものが決して少なくないのであります。特に大
企業優遇のものは廃止し、自主財源を強化して住民税の
軽減に充てるべきであると
考えますが、いかがでございましょうか、お尋ねをいたします。
次に、電気ガス税についてであります。免
税額の引き上げによるところの本税の
減税分は約十億円、まことに微々たるものであります。
企業に対する非
課税措置による
減税分は、本
年度三十四億円の増となりまして、合計三百十八億になる予定であります。これに対しまして徴収見込み額は八百十億円でありまして、まさに大衆負担の悪税と言うべきであります。佐藤
総理、あなたは一昨年の五月十二日の参議院の
予算委員会におきまして、「悪税である、いつまでも存続させておくべきではない」旨を御
発言になっております。また、なくなられた池田首相は、三カ年計画によりましてその
税率を三%引き下げられました。高級飲食に対する料飲
税率を引き下げるなど、こうしたことはやめて、あなたもこの辺で電気ガス税の廃止に踏み切るべできありまして、これによります市町村税の減収については別途国において財源を与えるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
第四点は、
土地開発基金の設置についてであります。公共用地取得の
促進のために基金をつくり、特別会計を設定させるために六百億円を
交付税で財源
措置をするという件でございますが、
交付税法第三条においては、その使途について制限をつけたり、条件をつけてはならない旨きびしく
規定しております。今回の
措置及びその要綱は税法違反となると思いますが、お尋ねをいたします。
また、この
措置は本
年度限りのものであるというふうに記されておりますが、これだけの
措置によって用地取得難が解消するというふうには思われません。今後いかなる財政
措置をあわせて継続ていく御方針であるか、御明示を願いたいと思います。同時に、この
措置は、
交付税全体の配分を一そう過密地域に片寄らせ、過疎地域を軽視することになると思いますが、その
関係についてどのように
理解をしてよろしいか、お尋ねをいたします。
なお、基金の
運営についてでありますが、その適正さを欠きますと、地方ボスなどの暗躍の余地を残し、地価の高騰などを招き、黒い霧の発生も懸念されるのであります。どのように対処されるか、承りたいと存じます。
最後に、公営
企業関係であります。
地方財政計画によりますと、繰り出し金の大幅な増加を行なっておりますが、こうした、びほう的な手段によって公営
企業会計が健全化するということは
考えられません。公営
企業の危機は、国の無計画な測度
成長政策の帰結であり、
物価政策の大きなひずみに由来しているものであります。国は早急に抜本塞源的に大幅に国費を投入すべきであると
考えますが、とりあえず本
年度において、地下鉄
関係にはその建設費の三分の二負担、上水道については簡易水道並みの助成を実現すべきであると
考えますが、その御意思ありやなしや、お尋ねをいたします。
また、公営
企業金融公庫の機能の強化のために、公営ギャンブルの売り上げ金から毎年その一%にあたる九十億円を十年間にわたって公庫に納付し、その運用を通じて五厘の金利の引き下げをはかろうということでありますが、公営ギャンブルは勤労者を収奪するものであり、家庭の平和を破壊し、しばしば社会の混乱を引き起こし、善良な市民に不安を与えておりまして、
国民の大多数はその早期廃止を願っているところであります。今回の
措置は、
国民の期待に背を向け、公営ギャンブルを十年間の長期間にわたって固定化しようとするものであります。こうした手段よりも、国による出資の増額、補給金の支出などを行なうことによって、
企業債のワクを拡大し、利子の引き下げをはかり、償還期限を延長するなどの
改善をし、水道、交通などの
企業の再建をはかるべきであると
考えますけれども、御所見をいただきたいと思います。
以上をもちまして私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕