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政府委員(
海江田鶴造君) トルコぶろにつきましては、まず最初に現在トルコぶろがどのくらいあるかということから申し上げ、さらにその
取り締まりについての状況あるいは
取り締まりの困難性等について御報告をいたしたいと思います。
ことしの五月の末に私のほうで全国的にトルコぶろの営業がどれくらいあるかということを
調査いたしてみましたところ、七百四十八軒全国でございます。これを昨年に比べますと、三十五軒増加いたしております。ただ、御承知のように、三十八年、三十九年、四十年と急速に増加したのが、四十一年の風俗営業
法改正によりましてトルコぶろの規制が行なわれましたので、その後はほとんどふえておりません。その内訳で、御承知のように、トルコぶろにつきましては、禁止地域と、これをやっていい地域とございますが、禁止地域では三十三軒減少いたしております。反対に禁止地域外では六十八件増加しておりまして、したがって現在の総数が七百四十八軒になるわけでございます。
このトルコぶろの
取り締まりでございますけれ
ども、風俗営業法でトルコぶろの規制がきめられました四十一年から本年の四月までにこれを風俗営業法あるいは
売春防止法等の法律違反として
検挙した数が百五十四件になります。これは業者総数の約二割になるわけであります。昨年は一年間で十七件を
検挙いたしております。また、
売春防止法等の違反がありましたトルコぶろにつきましては、公衆浴場法による許可を得ておるわけでございますが、これに対して警察のほうで営業停止ができるようになっておりまして、そういう法律違反があって
取り締まりをした結果営業の停止をした数が六十六件に及んでおります。約一割でございます。この処分は、大体一ヵ月以上六ヵ月ぐらいまでの営業停止をしておるわけでございます。昨年一年間では十六件の行政処分をいたしております。なお、このほかに、先般来からいろいろ御指摘がございます全国の警察で
売春関係事犯として内偵捜査をしておる数が全国で約百六十四件でございます。ただ、
あとで申し上げますように、こういう捜査はきわめてむずかしいので、なかなか実を結ばないのが実情でございます。
売春防止法違反等の捜査をやる場合の、現実にそういう
仕事をやっておりまして苦労しておる点等を御要望がございましたので申し上げますと、まず第一に、トルコぶろの中でトルコ嬢が
売春をしておるということをまず最初に立証しなければならないわけであります。これがきわめてむずかしいのであります。お客として中にいる者の人権もございますので、ただ任意捜査の過程で踏み込むわけにはまいりません。したがって、トルコぶろの中で特定のトルコ嬢が
売春をしておるということを立証することは、これはきわめてむずかしいのであります。また、たとえ
売春をしておったとしても、それがトルコぶろ営業者の指示したものであるもの
——いわゆる
管理売春であるのか、あるいは少なくともトルコぶろの営業者が情を知って場所を提供しておったのかどうか、いわゆる
売春法違反の立証というのは、これはまたきわめてむずかしいのであります。御承知のように、トルコ嬢の中にはほとんどが被害者意識がない。したがって、現在働いておるトルコ嬢が警察の調べに対して「私は
売春をやっておりました」と言う者はほとんどいないわけであります。もし万が一
売春をやっておる証拠を警察が握ったといたしましても、それは平生から業者から教育を受けておりまして、私はただ
自分の好きかってにやりました、業者から指示を受けてやったわけじゃありませんというふうに言うわけであります。そうすると、これは犯罪として成り立たないということになります。したがって、現実には、
東京の例で申し上げますと、現在まで警視庁が相当な労力を要しまして三件しか
検挙いたしておりません。しかし、そのためにはいろいろな苦労しているわけでございまして、まず第一に、いろいろ付近の風評あるいは情報等から、このトルコぶろがきわめて悪質であって、相当な
売春をやっておって、不当なもうけを得ておるというような情報が入りますと、まず第一に浴客
——そこの張り込みをいたしまして、お客を見つけ出して、そのお客からいろいろ
売春をやっておるということの資料を得るための努力をするわけであります。ところが、浴客は、
自分がそういうところに入っていっておるということが恥しい、あるいは
自分の
立場上困るということで、ほとんどが警察の調べに対して協力しないわけであります。
一つの例を申し上げますと、本年二月に吉原地区並びに御徒町地区で二軒のトルコぶろを経営しておる者がありましたが、これを捜査するために、一月の十日ごろから一月末まで約十五日間、毎晩午後八時ごろから翌日の午前一時ごろまで、この御徒町のトルコ本店
周辺に張り込みを行なって、浴客を確認し、住所氏名を
質問し、あるいは自動車の登録ナン
バーを記録して、浴客に
売春の有無を聞いたわけでありますが、十五日間でこれはと思う
対象者五十人に当たったわけでありますけれ
ども、住所氏名を偽ったり、協力してくれなかったりで、結局相当苦労をして事情聴取に応じた者は一割の五人であったわけであります。また同じように、吉原地区にあるアヅマトルコ支店についても、四人の刑事を投入して、一月二十日から三十日まで約十日間、午後八時ごろから午前三時ごろまで張り込みをして、十五人の適当な浴客を確認したわけであります。このときは比較的うまくいきまして、五人
——三分の一の協力を得ることができたわけであります。こういうふうに、まず
売春が行なわれているかいないかということについての聴取はきわめてむづかしいわけであります。それからまた、
売春が行なわれているようなことについては、供述だけではなくて、やはり若干の物的証拠が必要でありますので、結局
売春に使われると思われる衛生器具等を収集する必要があるわけでございまして、これにつきましては、当
委員会で御報告するにはあまりに問題が不適当かと思いますので、詳細
説明は避けますが、きわめて言うに言われぬ苦労をしてそういう証拠の収集に当たっておるわけであります。なお、そういう衛生器具につきましては、最近業者は全部これを知っておりまして、ごみ箱には捨てない、一ヵ所にまとめてできるだけ早くこれを焼却するという
方法をとっておりますので、この証拠資料の収集も今後は容易でないと私
どもは考えております。また、業者を
売春防止法で
検挙するためには、トルコ嬢に
売春をさせておることを証明しなければならないわけでありますが、さっき申し上げましたように、現在働いておるトルコ嬢は全然これを言わないわけでありますので、どういうふうにしてトルコ嬢が業者から指示を受けて
売春をしておったかということを立証するために警察がとっておりますのは、もと働いておった、いまその店にいないトルコ嬢をさがし求める。これは
東京でございますと、場合によりますと、群馬県、神奈川県、静岡県へ足を伸ばさなくてはならないわけですが、トルコ嬢の移動は激しいので、もと働いておったトルコ嬢を発見することはきわめて困難であります。また、発見しても、なかなかこれを言わない場合が多いわけであります。そういうふうに、浴客から事情聴取をして、それから証拠を集め、さらにもと働いておったトルコ嬢を発見して、これの協力を得て、それの資料に基づいて初めて捜索令状あるいは場合によっては逮捕令状の請求ができるわけであります。そうして、その令状によって捜索あるいは逮捕いたしまして、さらにいろいろな証拠を得、また被疑者としての取り調べから
売春防止法違反の確証を握っていくわけであります。この取り調べにあたりましても、業者はほとんどと言っていいくらい
売春の場所提供あるいは痴情性については否認をいたします。ほとんどが否認のまま
検察庁に送致をするというのが実情でございます。
なお、警察の内偵あるいは
取り締まりが行なわれますのに対抗しまして、業者側でも非常に警戒をいたしまして、取り締りに備えまして、マネージャーからトルコ嬢に対して、こういう場合にはこうしなさいという教育がほとんど連日のようになされております。また、
施設におきましても、
先ほど申し上げました手入れしたトルコ本店はもちろんでありますが、全国のトルコぶろの約三二%が、警察の
取り締まりに備えて、何らかの警戒の設備を備えておりまして、たとえば各個室に赤電灯をつけて、それを警察が入ってきた場合にはすぐ点滅させて警察の手入れを知らせる。その間にトルコ嬢はあらゆる
売春をやめる、また証拠を隠滅するということが行なわれるわけでありますし、また各個室にチャイムを備えつけておりまして、警察が入っていきますと、玄関のところでチャイムを鳴らす、それによって証拠隠滅をはかる、こういうことのようであります。
なお、トルコぶろの現場の中で、私
どもが
売春取り締まりから得ましたところでは、
売春以外にも、いろいろなわいせつな行為が行なわれているわけでありますが、悪質な業者になれば、できるだけ
売春料を安くする、トルコ嬢に対しても、安くすればお客が来るから、うんと安くするということで、強制して安くさせるような例があります。したがって、安いところでは三千円、普通でありますと、五千円くらいが普通の
売春の料金であるように私
ども見ております。
なお、現在のトルコぶろの経営におきまして問題かと思われますのは、私
どもが手入れをいたしましたトルコぶろに関しましては、ほとんど固定給が全然ないのが実情のようであります。これは手入れをした限りにおいてわかったことでありますが、固定給はゼロ、しかも、お客をとりますと、一人お客に要するタオル代その他の名目で、少ないところで百円、多いところで三百円ぐらい女から徴収するわけであります。そのほかに、一日平均四、五人、五、六人
扱いますが、一日大体千円また別個に、これはぶっ込み代ということで徴収しているようであります。したがって、こういうところで働いておるトルコ嬢は、一日お客を四、五人、五、六人とりますと、大体少なくとも千五百円から二千円ぐらいを業者に払うわけであります。したがって、これはどうしてもある程度、
売春とまではいかなくても、それ以外のサービスをしてなければならない。まともに働いていれば、御承知のように、入場料のほかに、お客はトルコ嬢にサービス代というのを払います。これは別にきめられたものじゃありませんが、サービス代として三百円ないし五百円払います。結局これが
収入になるわけでありますが、それから払わされますと、何にもしないであたりまえのトルコ嬢としての入浴しておる客の背中を流すという程度ではほとんど
収入にならないというのが実情のようであります。この点、私
どもも、
関係官庁と協力いたしまして、できるだけそういう給与体系についても側面的に協力いたしまして是正する方向に持っていくことが
売春を予防する上で必要ではないか、こういうふうに考えております。
先ほど申し上げましたが、現在七百四十八軒のトルコぶろがございますけれ
ども、トルコぶろのない県が全国で八県ございます。
〔
委員長退席、理事
山田徹一君着席〕
前は山形県がございませんでしたので九県でございますが、昨年山形県もつくりましたので八県でございます。トルコ嬢の数は、先般
調査したところでは約一万三千名ぐらいと思っております。
以上でございます。