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最高裁判所長官代理者(
寺田治郎君) まあ
病気のことでございますから、これは何といっても
病気をまずなおすということが大事であるということは、これはもう異論のないことでございますし、先般来からも御説明申し上げましたように、
速記官等につきましては、
定期検診のほかに、特別の
健康診断というようなものも行ないまして、早期に
病気を発見するようにいたしておりますし、また、
病人につきましては、それ
相当の休養も与え、また
共済組合等で
治療についても十分な
配慮をいたしておるということは、御
承知のとおりでございます。で、これは従来ともいたしてまいっておりますが、今後ともさらに一そう
職員の
健康管理については
配慮してまいらなければならないと、かように考えておるわけでございます。ただ問題は、
公務災害として
認定するかどうかということになろうかと思います。実は私もきわめて常識的に、手なり腕なりの
病気で重いのが
書痙で、それよりやや軽いのが
頸肩腕症候群ということかというふうにも前に考えておったこともあるわけでございますが、これはいろいろまあ
研究と申しますか、勉強してまいりますと、必ずしもそういう、何と申しますか、量的な差、
程度の差ということではなくって
——そういう面もないでもないようでございますが、若干質的な違いがあるというようなことのようでございます。で、先ほど申しましたように、
書痙は、これはかなり、いわゆる
職業的神経症といわれておりますように、そういういろいろなものを書くという
職業に非常に結びついた
病態のようでございますが、それに対しまして
頸肩腕症候群は、現在の医学の
研究の
程度では必ずしもそうもとられておらない。でまあ、具体的に詳細には存じませんけれ
ども、場合によりますと、たとえば主婦のような者がこういう
病態になる場合もあるようでございます。これは
職業なりあるいは字を書くということとは直接結びつかない
原因に出発しておるようでございますが、そういう例もないではないというようなことのようでございます。で、そういうことが、先般来も
亀田委員からもときどき御
指摘のございました、
人事院規則で
書痙のほうはそれ
自体が
職業病として掲げられており、
頸肩腕症候群のほうはそれ
自体としては
職業病として掲げられてはおらないで、さらにそこに
職業との間の
相当因果関係というものを必要とする。そういうものがあって初めて
職業病と
認定するという
現行法制になっております。その区別であるようでございます。でまあ、そういうことでございます
関係から、従来
裁判所で、
書痙についてはかなり
公務災害に
認定しておりますのに対しまして、
頸肩腕症候群につきましては、先ほど申し上げましたように、
職業病と
認定した
事例がないということになっておるわけでございます。
そこで、
人事院の
お話がございましたので、時間を取って恐縮でございますが、ちょっとその点について説明さしていただきたいと思うわけでございますが、
人事院で
頸肩腕症候群について
公務災害に
認定した
事例があるようでございます。これはいずれもいわゆる
パンチャーの
事例のようでございます。
パンチャーは、御
承知のとおり、これはいわばその
キーをたたくということが徹頭徹尾
職業でございます。つまり、いわば四六時中と申しますか、
執務時間中ずっといわばたたき続けておるわけでございます。そういたしまして、かりに一日五時間なら五時間やるとしますれば、一週で二十数時間になりますか、その時間もっぱら
キーをたたくということがその
仕事になるわけでございます。それに対しまして、いま問題になっております
裁判所の
速記官の場合には、これは御
承知のとおり、
速記官がいわゆる速
タイプを操作しますのは一週間大体三時間前後
——二時間ないし三時間、こういうふうにきめられておりますし、また実際にもそうなっておるわけでございます。したがいまして、それ以外の時間はもっぱらその
反訳をしておるわけでございます。
反訳というのは、これは普通に字を書くわけでございますから、
書記官とか
事務官の
職務内容と少しも変わらないわけでございます。また、その
パンチャーの場合の
キーの
スピードなり、それからそれの重さといいますか、そういうものと、速
タイプの場合の
スピードなり重さというものとも、
かなり差があるわけでございます。そういう点で、
人事院が
パンチャーについて御
認定になりましたことが、直ちにもって
速記官に適用されるというわけにまいらないように思うわけでございます。しかしながら、同時にまた一面から申しますと、
速記官について、先般来いろいろ御
指摘のありましたような
病人が
——公務災害かどうかはともかくといたしまして、ともかく
病人が出ておる。そして一方
手書きの
速記者のほうに必ずしもそう多い
病人がないといたしますれば、あるいは速
タイプの
構造その他に問題があるということも考えられないわけではないわけでございます。そういう点で、どこに
原因があるのか。これが
パンチャーでございますとか
タイピストのように、いわばもっぱらその
キーをたたくということを
職業とする場合には、そこに
原因があると考えるのが当然でございましょうが、
速記官のように、速
タイプを操作する時間は一週の中のきわめて限られた時間であり、その以外の時間はもっぱら
書記官や
事務官と同じように文字を書くという
職業であるといたしました場合に、しかも
速記官にのみそういう
病気が多発するということにつきましては、あるいは速
タイプの
構造に問題があるのかもしれませんし、あるいは、これまた先般来問題になっています一回の
執務時間と申しますか、
速記時間と申しますか、そういう
継続性に問題があるということも考えられるわけでございますし、そういう点にわたりまして、私
どもとしても、いわば今後の
速記制度の基本にも触れる大きな問題でございますので、
健康管理の問題を含めまして、根本的にいま検討いたしておりますし、また
病気につきましては
労災病院等で精密な検査をしていただいておるような
状況でございまして、そういうところからすみやかに結論を得て、
健康管理を含めまして全般にわたり対処してまいりたいと、かように考えておるような
状況でございます。