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説明員(
西田亀久夫君) 最初に、今回の中間
報告の性格を簡単に申し上げたいのでございますが、
昭和四十二年の七月に
文部大臣から諮問されましたものは、今後における
学校教育の総合的な学習整備のための基本的施策というきわめて包括的な諮問でございます。幼稚園から
大学を含めた日本の
学校制度の今後のあり方を考えるという非常に大きな問題でございます。この諮問の場合の特色は、他の場合のように、ただいまお尋ねのように、
文部省側のほうであらかじめ
検討課題を示して、これを答えてくださいという諮問の行き方をいたしておりません。むしろ、
検討する場合に、三つの観点から総合的にお願いをしたい。第一の観点は、
学校制度が日本の
社会に対してどのようにうまく適合してきたかどうか、第二の観点は、いまの
学校制度を内側から見た場合に、
教育制度としてどこにいろいろな欠陥があり、能率の上がらぬところがあるかという制度の問題、第三の観点は、この
教育をささえております
財政という観点から、
教育費の効果的な配分とその
負担区分、こういう問題であります。
そういう観点から諮問を受けまして、中教審は二年間、まず将来のことを考える足がかりとして、明治以来の
教育の発展の経過をできるだけ客観的な資料に基づいてこれを反省いたしまして、そうして日本の
教育の歩みから、いまわれわれが抱えている問題は何かということを、審議会自体で、ここで
検討すべき課題を出す、こういうやり方をしてまいりました。昨日の中間
報告、
大臣に提出されましたものは、そのような過去の
実績の分析評価と
現状の問題点ということでございまして、したがって、これを土台として、来月から——将来の
学校制度としてそのいろいろな問題を解決するためにどんな
方策をとるべきかという施策については、今後の
検討課題になっております。したがいまして、お尋ねの就学前
教育について特にこういう点を
検討してもらいたいという諮問は、諮問の段階でいたしておりません。
審議会では、ただいま申し上げましたような観点から、二つの点で幼稚園
教育を取り上げております。
第一の点は、就学前
教育が国民の
教育を受けたいという要望に対して、どこまでそれが満たされているかという観点であります。その観点から申しますと、
一つの点は先ほど来
お話が出ておりますように、幼稚園と保育所の地域別の普及
状態というものには非常に大きな格差がある。そうして、大部分が幼稚園の府県もあれば、大部分が保育所のところもある。そうしてそれは何も、どちらがより多いかということには一定の法則はない。したがって、幼稚園と保育所とは現実的に相互補完的な
役割りを果たしているのだ。この観点から、先ほど
文部大臣が申しましたように、両者の機能を十分調整して、それぞれの
役割りを果たすように改善をすべきだという問題をあげているわけであります。それからもう
一つの点は、その地域格差というものが、やはり人口規模の小さく
財政力の弱い町村ほど著しい。そのことに対しては当然国と公共団体がその普及について新しい
役割りを持つべきではないかという点が出てまいっております。
それから
教育効果の問題はたいへんむずかしゅうございまして、現在、審議会が専門家並びにいろいろな研究データを土台にいたしましたことから出ましたものを要約しております点では、現在の幼稚園
教育そのものが
教育条件において満足すべき
状態ではない。そのために、いまの
状態で起こっている効果を、直ちに効果ありなしの条件として判定するのには、非常にむずかしい点があるということを前提といたしております。しかしその
程度でも、
国立研究所の資料等から一応言えますことは、小
学校に入りましてからの学業成績あるいは本人の生活行動等から見ました場合に、児童
教育の初期の段階において幼稚園
教育を受けた人とそうでない人とにはかなりの差があるということを認められますが、これは学年が進むとだんだん消えていく。しかし、それが特に知的な面においては効果が認められますが、その
社会性とか、情緒の発達についてはどこまでこの就学前
教育の効果という点があるか、しかも永続性があるかについてはどうもまだはっきりした結論がないというような点を言っております。
それから、一年保育よりも二年保育のほうが、同じような比較の段階では大体二年のほうがいいという材料が、そういうことが言われております。
そのほかいろいろございますが、特に中教審は、現在の都市化の進行とマスメディアの発達が幼児に与える刺激なり危険というものを考えて、純粋に
教育的な
立場以外、幼児の保護なり、望ましい生活環境を考えるという
立場において、今後の
社会において就学前
教育の要求というものはきわめて重大になるであろう、そういった観点を強調しております。そういった観点から、これらを踏まえまして
学校体系全体の
検討の中で就学前
教育にどの
程度のウエートを置き、全体の
教育計画の中でどのような整備計画を立てるかというのは後期の総合的な
検討で行なわれると思っております。