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小林武君 私は、
文化財はいろいろ
種類がございますからね。たとえば絵画とか、それから彫刻といっても木彫りのようなそういう
種類のもの、石だとか、そういうものがあるかもわかりませんけれ
どもね。これは無限に残せるということは不可能だと思うのです。それについてもさまざまな手だてはみんな講じて、そしてできるだけ長く残そうと
保存をしたり補修をしよう、そういう
特殊技術もまだだんだん
開発される、私はそういう努力というものは必要だと思うのですね。ただ
埋蔵文化財の場合でございますと、これはやはり現代の
建築とか土木とかいうもの、あるいは
国土開発というものと従来のそれとはちょっと違ってきたということですね。
武道館を例にとると、昔ですとその上に
武道館が建ったところでたいしたことはないですよ。まだ
木造建築で、土台を少々深く掘ったといったところで、あまり破壊することもなくて終わったかもしれぬ。しかし、いまや
建築のあれが全く近代的になりまして、破壊すれば徹底的に破壊するということになるわけです。二度と再現することすらできないわけでありますから、そういうことからいって、私は
保存というものについては、
考え方として何でも
保存するということは不可能だと思うのです。やはりそれは選別しなければいかぬと思うのです。それにはとにかく
記録にとどめてがまんしなければならんもの、それからどうしてもこれは
重要度からいって残さなければならんというものは、これは
埋蔵物文化財の場合は私は例はたくさんあると思うのですよ。
原状をとにかく
保存したいという
考え方だと思うのですけれ
どもね。そういう点では
保存の
方法というのはおのずからきまっておるように思うのですね。もう、
一つの
方向は出ておると思うのですよ。これは
記念碑を建てるとかということであるならば、これは簡単に
記録にとどめて、そして
保存するという
程度のことでないですか、私はそう思うのです。その後はどうなろうと、ここにあったと、そういうとどめ方。しかし
原状がこわれないように
保存するということであるとこれはたいへんなことだと思うのです。これはその
意味では
あとから何かしようとする人が非常に不便であるということは、たとえば
難波京の場合、これなんかそうでしょうし、それから
奈良京の場合だって同じことです。そういういろんな事例があるわけですからね。私はその点でいまになってから、もうどうしたらいいかわからぬというようなことも言われなかったが、大体それに近いようなことをおっしゃることは、なかなか
納得がいかぬという
気持ちがあるのです。しかしここで、それをきめる
基準は何かといったら、他のいろいろな人の
意見ではなくて、その道の
専門家の皆さんが
発掘という、そういう過程を通してこのものの
重要度、いわゆる
学問的な
重要度というもの、あるいは
史跡としての価値の
重要度というものを
決定してきめるべきだと思うんです。何が何でも
保存するという
考え方は、いまはだれにもないんじゃないかと思うんです、だれにも。何でも残せばいいんだということになれば、いまの
国土の
総合開発をどんどん広めていかなきゃならぬというのは、これはだれが見ても肯定しなきゃならぬことです。その場合に、何が何でもみな残さなきゃならぬといったら、これは
文化財のために
総合開発ができないなんということになったら、
国土の
開発が不可能だということはこれはおかしい。しかしながら、そういうことをやはり忍んで残さなきゃならぬものというのは何できめるかといったら、
重要度の問題だと思う。だから、私はその
意味で、それぞれの
専門の
方々が
結論を出す前に、われわれがはたからいろいろな異論を述べたり何かすることは差し控えましょうという
意味のことを冒頭に申し上げたわけです。そういうことは
抜きにして、ひとつ
決定が出たら、その
決定に従って
文化庁としてはひとつ迷わずこの問題について
結論を出していただきたい。そうでないというと、
先ほどもちょっと述べましたけれ
ども、
古都保存法はあっても、
古都保存というのはいまやたいへんな
事態に当面しているということも聞いておりますからね。あるいはまた、その点でいろいろな問題も起こるやにも聞いておりますから、私の
文化庁長官に対する希望は、
結論が出たら、これに対してどんな障害があってもき然としておやりになる御
決意がありますかどうですかということ、それから、これは
文部大臣もその点については
責任のある方でありますから、
文部大臣も、その点についてはいま申し上げたようなことをお守りいただきたいということを私は申し上げるわけであります。なお、そういうことを申し上げるのは、私は
知事の
立場も同情しているんです。初めは知らずにやって、とにかく意外なものが出てきた。金は相当かけた。そういう
立場としては、地方の自治体の長として、金かけてしまった
あとどうするかという苦労は、私は理解しないわけじゃない。しかしそれも、大局的な見地に立ってやはりお譲りいただきたい。特に
知事とか、あるいは
市町村長というのは、いわば
文化財を保護する
立場にある行政の
責任者でもあるのだから、その
人たちが
文化財の破壊というようなものを手軽に
考えるようなことをやられてはこれは重大だ。私は、
奈良、
天理の場合には、市長が先頭に立っておやりになっているということを聞いて、その場合にはちょっと疑問をまた感じているものですから、このごろそういう問題が頻発しておりますから申し上げたわけです。