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1969-04-04 第61回国会 参議院 物価等対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月四日(金曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本  杉君     理 事                 林田悠紀夫君                 阿部 憲一君                 中沢伊登子君     委 員                 上原 正吉君                 櫻井 志郎君                 鈴木 省吾君                 高田 浩運君                 塚田十一郎君                 鈴木  強君                 竹田 四郎君    国務大臣        国 務 大 臣  菅野和太郎君    政府委員        公正取引委員会        事務局長     柿沼幸一郎君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        経済企画庁調査        局長       矢野 智雄君        厚生政務次官   粟山  秀君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        農林省畜産局長  太田 康二君        運輸省自動車局        長        黒住 忠行君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        経済企画庁長官        官房調査官    佐々木孝男君        厚生省環境衛生        局食品衛生課長  野津  聖君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  小高 愛親君        農林省農林経済        局企業流通部長 大河原太一郎君        食糧庁次長    馬場 二葉君    参考人        日本銀行総裁  佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○当面の物価等対策樹立に関する調査  (物価問題に関する件)     —————————————
  2. 山本杉

    委員長山本杉君) ただいまから物価等対策特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  当面の物価等対策樹立に関する調査のため、日本銀行総裁佐々木直君から意見の聴取をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本杉

    委員長山本杉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 山本杉

    委員長山本杉君) 当面の物価等対策樹立に関する調査を議題といたします。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。鈴木君。
  5. 鈴木強

    鈴木強君 最初に、薬事行政にからむ汚職事件について私はお尋ねいたしたいと思います。  先般、新聞紙上で拝見しますと、厚生省薬事行政関係をする汚職事件は、ついに鈴木課長自殺というところに発展をしてまいっております。大体、日本汚職事件を見ておりますと、非常に組織的、計画的、しかもたいへんな根の深い汚職であろうと推察される事件は、捜査の段階で必ずだれか重要なポイントに立たされるような方々が自殺をしておる、これは事実であります。私はそういう観点から、この厚生省薬事汚職にまつわる鈴木課長自殺ということは非常に重大視をしなければならぬと思います。非常に根が深く広いものだと私は思います。したがって、いまこの事件司直の手に移っておりますので、私は、きょうここでこの事件の具体的な問題については、あえて触れることを避けます。しかし、よって来たるその原因は明らかにする必要があると思いますから、そういう意味で厚生省意見を承りたいと思います。ですから、きょうは大臣が、残念ながら衆議院の公害の関係でおいでいただけませんので、政務次官においでいただいておりますから、まず最初に、この事件概要について御説明願いたいと思います。
  6. 粟山秀

    政府委員粟山秀君) 局長から説明をいたさせたいと思います。お許しいただきます。
  7. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 今回の薬務局汚職のことについてのお尋ねでございますが、本年の二月でありますか、薬務局の中の製薬許可を担当している職員が収賄の容疑で逮捕されたわけでございます。これは、四十年から四十一年前後にわたりまして医薬品製造承認を担当をしていた職員でございます。この者が特定のメーカーとの間に金銭の授受等があったというような嫌疑で逮捕並びに起訴されたわけでございます。現在、その終局のことは、ただいま御指摘のように、司直の手によって依然として調べられておりますので、その事件真実をまだわれわれ承知しておりませんが、新聞紙上でも出ておりますように、医薬品製造承認を担当している職員がその職務に関連した事件である、こういうことに相なっているわけでございます。いま申しましたように、依然としてまだ取り調べ当局において調査中でございますので、真実のほどは詳細承知していない、こういう事情に相なっております。
  8. 鈴木強

    鈴木強君 政務次官は、局長答弁をいたさせますということでおすわりになりましたけれども、きょう私は国民を代表して、きわめて最近官庁の中に次々と出ております汚職事件、とりわけ厚生省にあらわれました薬事行政をめぐるこの汚職については、事が人間の命と健康を守る薬のことです。だから非常に一面憤りを持ちながら、いま取り調べの進行を見守っていると思うのであります。しかるに、一言も、遺憾であるとも申しわけないとも国民に対しておわびするという姿勢がない。これは薬務局長にしてもしかりである。役人はそういう根性があるからそれはわかる。しかし、政府立場に立って、いま政務次官としておられる政務次官から、そういう国民に対するすまなかったというような気持ちの表明がなかったことは非常に残念です。ほんとうにそう思っておるんですか。そんなものは問題でないと、そういうことで言わなかったのか、つい気がつかなかったのかですね。
  9. 粟山秀

    政府委員粟山秀君) たいへん失礼申し上げました。事の事務的なことを局長から説明いたさせようと思って、最初におわびを申し上げるのがおくれましてたいへん失礼申し上げましたが、こういう事件が起きたということについては、大臣はじめ私ども一同まことに申しわけないことであると、そのように思っております。たいへん最初に申し上げるのがおくれまして失礼いたしました。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 薬務局長、いま事件概要についての説明はわかりました。しかし、一体そういうことが起きてくる原因というのはどういうところにあるのか、薬務行政のどういうところにあるのか、それからそれを指導監督する課長なりあるいは係長なり、そういった責任体制というのは一体薬務行政の中でどうなっているのか、欠けてる点はないと思っているのか、この点はどうですか。
  11. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 政務次官から御答弁いただきましたように、今回の事件について、このようなことは、非常に各方面に御迷惑をおかけしたと同時に、また、医薬品製造承認という本来厳正なものであるべきことについての事件であるだけに、国民全般に対して非常に不信の感を与えたということはまことに申しわけないと思うのであります。  そこで、いまお尋ねのこのような事件が起きてきた原因というものはどこにあるのかという点でございますが、従来からこのような点については、大臣以下直接私自身十分気を配りながら指導し、また、配意してまいったわけでございますが、端的に申し上げますならば、やはり現在の製造承認体制というものが実情に合っていないという面があることを、今回の事件契機にして率直に痛感をいたしたわけでございます。と申しますのは、やや事務的な答弁になるかもしれませんが、現在私どものほうに参っております製造承認申請件数というのが非常に膨大なものになっております。年間八千件から九千件というような件数になっておりますが、それに対応する役所側審査体制というものがどうも十分でないという面があったことがわかってまいりまして、したがいまして、承認申請件数というものと、それから私どものほうの審査体制、この点をいかにマッチさせるかというのが今後の大きな課題だということで、いま大臣からの強い御指示もございまして、その点についての根本的なメスを入れようということで、現在具体的な対策を考えて、その一部を逐次実行に移しているということであるわけでございます。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 第一点、承認申請件数が非常た多過ぎる、それに対する審査専門官というものが非常に少ない。したがって、その体制が不十分であったことは認めたわけですね。  それではお尋ねしますが、医薬品製造承認等に関する基本方針というものが昭和四十二年九月十三日につくられましたね。そうしてこれが薬務局長通達として各知事示達されておる。さらに昭和四十二年十月二十一日に、医薬品製造承認等に関する基本方針の取り扱いについて、同様に薬務局長から各都道府県の知事あて通達がなされておる。昭和四十二年というと、二年前であります。もしこのときにもう少し厳格に示達をすると同時に、その体制、いわゆる調査官——専門官ですか、この承認に当たる専門官の数を後ほどまたずっと伺いますけれどね、少なかったとするならば、なぜ増員要求をし、その体制確立ができなかったのか。確立もしないでおいて、従来の通達のやり方を少し変えるようなものを出して、それで事足れりとした責任は一体だれが負うか。二年前にこの示達を出して、これによって少なくとも公正な、しかも迅速な承認を与えていこうと……、従来のように申請してから、一年も二年もたなざらしにされるようなそういうこととか、あるいは中央薬事審議会等も一年に何回開いているか、あとで聞きますが、そういうもの等もできるだけ多く開くような体制をなぜつくらなかったか。いまごろ汚職が起きてきて、どうもそういう体制がありませんでした、それがこういうことを生んだ第一の事由と思いますということは、これは通用しませんよ。子供に言うならいざ知らず、この国会の中でそういうことを言っても、だれもなるほどと言いませんよ。おかしいじゃないかということになるわけで、この辺はどういうふうになるのですか。
  13. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 審査体制が不十分であったということにつきましては、もちろんいま御指摘のように、審査官等の要員が若干手不足であったということもございますが、それ以外にまだいろいろな問題があることが、われわれ今回反省をいたす一つの大きな理由になっているわけでございます。と申しますのは、審査官増員ないし強化ということも、これはもちろん一つの大きなポイントでございますが、それ以外にたとえば審査を具体的にやる場合におきます審査の具体的な基準というものが、必ずしも時世にマッチするほど現在整備されていないという面がございます。一部の面については、そういう具体的な承認基準というものができておりますが、全部の医薬品についてまだまだそこまで十分な体制ができていないということが片一方においてあるわけであります。と同時に、またいま先生お触れになりましたように、中央薬事審議会というものとこの審査との関係が必ずしも十分にいっていなかったという面もございます。そこで中央薬事審議会において、今後十分に審査に対してのいろいろな面からチェックしていただくように、また、お願いをしようということで、いま現在計画をつくっておるわけでございます。そういうようなことから申し上げまして、それからまたもう一つには、役所の機構としまして、審査官という立場の者が責任を持って審査するということは、これは当然でございますが、やはり一人の者だけでものごとが片づくというような仕組みに若干なっていた面もございます。そこで今後は、私も審査官合議制、一人だけで事が運ばないように、いままでもそういう面は十分気を配ってまいったわけでございますが、今回さらにまた合議制というものをもう少し体系的に整備をしていきたい、こういうようなことも、今回の事件を反省した一つ対策としてわれわれは考えてまいりたいと思います。  で、一昨年の医薬品等製造承認基本方針の当時にも、若干そういうような体制整備したわけでございますが、まだまだ現在の時点において考えますと、若干不十分であったというふうにわれわれは受け取っているわけでございます。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 幾つかの点が局長から指摘をされました。で、そういうふうな点についての厚生省の取り組む姿勢というものが、端的に言ってぐずぐずしておって、もっと前向きの姿勢でそれをつくらなかった、そういうところにも大きな原因があるように思います。ですから、私は、これからいろいろ問題点をさらにお聞きをしますけれども、やはりこういうルーズな姿勢というものが、その中にあって働く多くの人たちは、これは純真で善良な公務員だと思いますけれども、たまたま悪徳の者がおりますと、不心得の者がおりますとそういう事件を起こすのです。ですから、私は、あらゆる官庁汚職事件犯罪事件等を見てみますと、やはりそこには内部牽制的な組織の樹立が非常におくれている。いまおっしゃるように、一人の審査官承認、不承認の権限を持っているということ、そういうところにやっぱり問題があるのですよ。ですから、必ず合議制といいますか、二人、三人がチェックするようなシステムを確立しておかなければいけないと思うのです。そういう点が、この認可に際してまだやられておらないなどということは、非常にこの民主化された日本において、まことに遺憾ですよ。だから、日本の中で非常に民主化されていない封建的な役所はどこだというと、厚生省が一番先にあげられる。私もかつて社労委員長として皆さんいろいろ話をしたこともあります。しかし、そういう風評を私は当時から聞いておりました。特に薬務立場に立つ人たちが、非常になんといいますか、高圧的で権力的だということも私は聞いておりました。一方、そういう態度をとりながら、大事なこういう行政の中における大きな欠陥があったということは、まことに許しがたいことだと思う。何十年たっているのです。まあしかし、いま過去のことを言ってもどうにもならないわけですから、おそまきながらこの事件契機にして、さらに新しい薬事行政への体制確立しようということは、私は、おそまきながらよかったと思うのです。ですから、そういう体制整備は直ちにこれを実行に移していただけるような方法をとっていただかなければいけないと思います。そういうことを強く私は期待いたしますけれども、この点はひとつ政務次官からも、私の言っていることが無理でなかったら、そういう方向にぜひひとつ進めてもらいたい。御答弁願いたいと思います。
  15. 粟山秀

    政府委員粟山秀君) 鈴木委員のおことばのとおりと思います。お話の趣をよく大臣にも申し上げまして、いままでのいろいろな問題は根の深いものもあると思いますが、厳格に、それからできるだけ早急に、こういうことを繰り返さないような処置をとりますようにいたしたい。そのことを、よくお話の趣を大臣に申し上げさせていただきます。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 それから、厚生省のお役人さんで、みずから薬事行政に携わっておる人、あるいは監督をし指導をする立場にある厚生省の官僚が製薬会社天下りをして行っておる。私は、参考までに資料を調べてみました。これは毎年人事院からその年度の高級公務員天下り関連会社への就職については承認を得ることになっておりますので、資料国会に出ております。で、厚生省の場合、課長以上の方で退職されて製薬企業のほうへ就職された方は、三十四年の四月一日から四十四年三月三十一日まで大体十年間調べてみたのですけれども、そうしますと、数は非常に少なくて五人ですね。製薬課長一人、監視課長一人、製薬課長一人、麻薬第二課長二人、こうなっております。しかし、この資料が私はまだ不十分だと思うのです。おそらく人事院承認を得ていない方、それから人事院承認を得なくても行ける期間がありますから、その期間を経過して行っている方があるかどうかですね。なお、高級公務員以外にもたとえば薬事局関係の中で、何年かつとめて会社のほうに行っておられるというような方も相当あると思いますね。これはこの五人というのは、人事院承認を得て行った方ですか。そのほかに人事院承認を得ないで、行ける時期を待って行った方はありますか。それを一つ。  もう一つは、課長以下の職員で、何年か奉職して製薬会社のほうに就職がえをした人がありますか、それをひとつ明らかにしてください。
  17. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) いまお尋ねの件で、課長以上で製薬会社等に再就職した者につきましては、大体国家公務員法によります人事院承認をとることになっておりますので、先生に御提出いたしました五名という者はそういうたぐいの者でございます。これ以外に、課長以上で製薬会社等就職した者については、いま私手元資料持っておりませんが、ほとんどないように伺っております。  それから第二の点の、課長以下の段階職員製薬会社等就職するという事例は、これはたてまえとしまして、大臣承認を受ける必要があるわけでございますが、こういう者については若干あるようでございます。ただ、私いま手元に正確な資料を持っておりませんので、正確にはお答えできないわけでございますが、たとえば課長補佐等で、製薬会社等就職するにあたって、大臣承認を得て行ったという者も若干あるようでございます。その正確な数字は、後ほどお答えさしていただきたいと思います。
  18. 鈴木強

    鈴木強君 それではひとつあとでお知らせをいただきたいと思います。  問題は、こういう関連企業へ再就職することについてはどういうものでしょうか。これあまりいいことじゃないんじゃないですか。結局自分が在職中に、ある会社に行こうと思えば、ついその会社にこびを売る、できるだけ便宜を与えてやろう、そういうことが自分一つのポジションを持っている間に頭の中にいつも出てきていると思うのですよ、だからきびしい薬事行政ができないんじゃないですか。だから私はまあ職業選択の自由、就職の自由ということは憲法に保障された原則ですけれども、あえて人事院規則が、現役から直ちに関連企業に行く場合、これを承認にしているということもそこにあると思うのですよ。ですから原則的にはそういうことはやめなきゃいかぬです。これはただ単に厚生省だけではございません。他の官庁にもありますからね、一般的に論じなければならぬ問題ですが、特にそういう承認の任に当たってきたような皆さん、これは薬の品質その他について、絶えず指導助言をし、目を光らせていなければならない立場にある人たちがそういうポストに行くということは、これはどうも好ましくない、いいことはないですよ。だからそういったところにいろいろなやみ取引が行なわれ、厳正な医療行政というものが汚されていく大きな原因があると思うのです。こういう点について全部やめさせるか、そういうことはなくすか、いずれにしても、そういう方針について、絶えずものを考えておかなければならぬと思うのですが、いかがですか。これは大臣でもないので、なかなか答弁できないことだと思うけれども局長だって、わしに言わせればなるほどそうだ、人間というのはそうですよ、自分会社に行きたくて、金をたくさんもらっているということになれば、おれがいるうちにああそうか、よしよし何かやってやろう、そういうことをしてやらなければ会社のほうはとりませんよ、あいつをとっておけば厚生省に出入りするのは都合がいいから、金はかかってもとっておこうじゃないか、こういうことになる。そういうところに汚職原因があるのじゃないか。それを断たなければだめです。
  19. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) いわゆる天下りというようなことについて、その是非を私自身局長という立場において論ずるのはいかがかと思いますが、やはり高度な立場でものごとを考えなければいかぬと思うわけでございますが、事、薬務行政製薬企業とのつながりだけに限定して申し上げたいと思いますが、世上、いろいろ先生も御存じのように、製薬企業薬務局職員とのことについて、疑惑なり何なりがあるわけでございますので、そういうような疑惑なり何なりをこの際はっきり断ち切るように、われわれ公務員は、身辺のあり方というものをきちんとしなければならぬことは、これはもう当然であるわけでございますので、今回このような事故が起きたこと、さらにまた反省いたしまして、製薬企業薬務行政とのこの関係というものを、国民一般から疑惑を受けないような方向にいろいろ持っていくということは、このことも当然でございますので、そういう面で、いまいろいろな面でこの関係を私どもきちっとさせるように案をつくっている段階でございます。  天下り問題全般については、私からお答えするのはどうかと思いますので、やはり高度の立場において、全般の問題として、事の是非を論ずることのほうがいいんじゃないか、かように思っております。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 どうも歯切れが悪い答弁でなお聞きたくなってしまったのだがね、これは一局長ですから、政策に関するようなことですから、ちょっと無理だと思うのだが、政務次官答弁しないからあなたがまた立って答弁することになる。やはり私はそういう点をきちっとしておかなければ、りっぱな、国民が納得する薬務行政はできませんよ。これは常識なんだ、その常識というものがやられないところに問題を起こすので、マージャンに誘われたり、旅行へ行って旅館代を払ってもらったり、そういうようなことを、日常やられるとするならば、これはたいへんなことだと思うのです。だからそういう点をぴしっと姿勢を正すことは、内閣総理大臣の大きな政治姿勢の問題だと思うのだけれども、特にこういう事件が起きたことを契機に、やはり一つ方向厚生省として全体で固い誓いをして、できる限り、おれももう、そんな会社に行かぬ、課長として就任中は課長としての道を遠慮会釈なく、間違った業界に対してはどんどんと言っていく、承認事項だって、もう八千件も何千件もあるそうですけれども、これは次に聞きますが、一体そういうものがどこから出てくるのか、日本製薬業界の実態というものは一体どうなのか、そんなにたくさんの業界があり、何千件の新しい薬の申請というものが、毎年毎年次から次へと押し寄せてくるような、そういう問題に、根本的な再検討を加える必要があるのかどうか、こういうこともあわせ考えなければだめですよ。あなた方は弱くて言えぬでしょう、ぼくは国民の名において言っているのだから、こういう建設的ないい意見は、率直に取り入れて、あしたからでもやらなければだめですよ、これはどうですか。これは政務次官、あなた遠慮なく、大臣に報告するとかなんとかということじゃなくて、あなたもりっぱな政務次官ですから、自信持って答えてくださいよ。
  21. 粟山秀

    政府委員粟山秀君) このたびの事件綱紀粛正ということについては、大臣からさっそく厳重に出ておりますのですけれども、なお、いまの鈴木委員お話し、これはもうごもっともなことでございますから、さっそくにもそういう問題についても大臣としてお触れになるべきだと思いますから、大臣にこの旨よく申し上げておきます。
  22. 鈴木強

    鈴木強君 まあこれはひとつ、たまたま通産大臣もおられるので、菅野さん、(笑声)あなた直接役目には関係ないけれども、これは日本人事院規則で示しておる問題のことですから、あなた国務大臣でもあるのだから、いま私の言っているようなことはやっぱりさっそく閣議の中で取り上げて、まあ佐藤総理もかなり強い姿勢姿勢を正すように示達しておるようですけれども、なおひとつやってみてください。その手始めにひとつ厚生行政の中にこれ生かしてみてくれませんか。どうですかね。これは私は重大な問題である。こういう機会に正さなければまた機会を失しますよ。官僚どもにまかしておったらだめですよ。これはやっぱり大臣が全権を持ってやるところはやらなければだめです。役人局長どもに振り回されておったらだめだ。そんな腰抜けな国務大臣じゃだめだよ。あなたに言っているわけじゃないけれども、(笑声)そういうことはもっともだとあなた思うでしょう。そうでしょう。ひとつ閣議で発言してください。全体の問題、その手始めにひとつ厚生省の、厚生大臣と相談して、こういう意見政務次官から行くと思いますが、どうですか、もっと歯切れのいい答弁してもらわなければ困る、実際やってもらわなければ。
  23. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 先般総理から、官吏の綱紀粛正の問題についてきびしく閣議で発表がありました。私思い出すのですが、先ほど通産大臣と言われたんで思い出すことですが、私が通産大臣時代にやはりこの問題がありまして、それでいろいろ世間から疑惑を招くようなことを官吏は一切しない。その具体的な例として、マージャンなど一緒に行ったり……、そのとき私はゴルフも一緒に行っちゃいかぬということで総理に申し上げておる。総理がつけ加えて、自分の費用で行くのだったらいいけれども会社の費用なんかで行くということになると、いろいろ世間から疑惑の目で見られるから、そういうことは一切しないようにと言って、私が通産大臣時代には、総理からそういうことを閣議で言われたのであります。で、今度厚生省にもこういう問題があれば、これを機会にまたきびしくそういうことをやはり具体的に総理から言ってもらったほうがいいと、こう私考えております。
  24. 粟山秀

    政府委員粟山秀君) よく大臣お話し申し上げておきます。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 ひとつ具体的な点で私たちは見ていましょう。  じゃその次、専門担当官ですね、審査をする。何人おりますか。
  26. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 医薬品製造承認審査しているいわゆる審査官というものは、現在五名ほどおります。もちろんこれは大体いわゆる役所の機構でいいますと、係長級であります。その上に課長補佐というものが三名おるわけでございます。そういうような人員で現在審査をやっておるわけであります。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 一年間に六千件から八千件もあるものを四人や五人の方がやるということは、これはたいへんですよね。だからそういう面での処理の遅延も出てくるでしょうし、また、審査の粗漏も出てくると思います。さっきちょっと触れましたけれども、だからこれの増員措置というものを一面認めると同時に、もう一つは認可申請されるその新しい薬の大部分というものが医療用ではなくて、ビタミン剤とかかぜ薬とかいうような大衆向けの薬だと思うのですよ。しかも、いままで販売されている薬を、何か中身を少し変えて、そうして新しい薬だと言って認可を得て売り出すような、そういうケースがかなりあるようにわれわれは聞いているのです。だから、そういうものについて、日本ではいま、年間六千八百億もこの医薬品の生産額が上がっておるということでありまして、世界第二位——非常に日本人は薬を飲む国だということがよく言われておるわけなんですけれども、しかし、われわれもビタミン、まあアリナミンというのを私いまここに持っておりますけれども、二粒くらい一回飲んでおります。何か、きくと思うから飲んでいるのですけれども、しかし、一説によると、このアリナミンというものは何かあまりきき目はないのだというようなことも最近言われているわけですよ。だから、何か国民がそういう確かに——疲れた、さあ薬を飲む、頭が痛い、さあ薬だというようなことで、肩が張った、すぐサロンパスとか、トクホンとか、そういうふうにすぐ頭が動いてしまうものですから、そういう国民の側における医薬に対する考え方も、確かに問題があると思うのですよ。と同時に、この薬務行政をあずかる厚生省として、一体、こういうような新しい薬の認可申請というものに対して、整理統合というか、ある程度指導の面でやっぱりそれの交通整理をしてやらないと、もうどうにもならなくなってしまうのじゃないですか、毎年毎年たくさんのこういう新薬申請が出てくるというとですね。  それから、製薬会社もたしか二千幾らかあるように伺っておりますが、そういう製薬会社の体質等の問題についても、われわれはよくわかりませんけれども、はたして皆さんが認可した薬をそのとおりにつくって、そうして医薬品として売り出しておるのかどうなのか。その辺の監視体制というものもまた不十分だと思うのですよ。だから、認可を取ってしまったあとの管理と監視ということに対する、その陥没点をねらって、またいろいろなからくりというものが行なわれてくるような気がするのです。そこらに対して薬務局長はどういうような考え方を持っておりますか。そうして整理をするものは整理をして、なおかつ、これだけは必要だということになれば、人員をどれだけふやしたら審理がうまくいくか。さっきの中央薬事審議会の開催にしても、うまくいくか。どうしても、これは出てくるものを全部認めなければならぬということにここでなるならば、いま言った、どれだけの人をふやさなければならないか。要員の面からも、やはり体制をもう一回、再検討する必要があるのじゃないですか。五人の方々がたいへん御苦労をされていまやっていられるのだが、一面ではさっき言ったような問題が起こっている中でさらにやるわけですから、そういう点はもっとさらにきちんとしてやらなければいけないと思うのですが、どうですか。
  28. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) わが国の製薬業の現状は、いま先生もお述べになりましたように、非常に数多いメーカーが数多い製品をつくりまして、そうして過当競争というような形で、製品の品質競争なり、価格競争をやっているわけでございます。やはり、こういうところにも一つ原因があることは、先生指摘のとおりでございます。  そこで、先ほどもお触れになりましたように、一昨年のいわゆる基本方針では、主として医療機関のほうで使いまする薬については、いわゆるモデルチェンジといわれているような部類のもの、模倣品といわれているようなもの、まあわれわれのことばで言いますと、配合剤と言っておりますが、配合剤なり複合剤みたいなものは、一昨年の基本方針である程度体制を整えたわけでございます。したがいまして、その結果、非常に申請件数も激減してまいっております。ただ、いま先生お述べのように、一般国民向けの医薬品につきましては、確かにまだそういうような傾向が多分に見られるわけでございます。そこで、この問題は非常に大きな基本的な問題を含んでいるだけに、この点をどうするかについていろいろな問題点があるわけでございますが、片一方特許制度、現在の特許制度というものも、この問題を解決する際一つの考えなければならぬ点にもなっておりますので、そういうようなことを含めまして、厚生大臣としましては今後こういうようなことについてどうすればいいか、早急に検討していくという態度を国会等でも表明をされているわけでございますので、現在、私どもどういう方向でこの模倣品なりモデルチェンジみたいなものが非常に多数出て、過当競争に陥っているという点を是正していくかということについて、いま検討に入っているわけでございます。ただ、この問題、いろいろなむずかしい問題、特許制度等の問題も含んでおりますので、なかなか根が深い問題だけに解決が早急に困難かと思いますが、いずれにいたしましても、こういう機会を契機としまして、そういう問題に前向きに取っ組んでいきたい、こういう姿勢でいま検討を進めているわけでございます。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 まあそれはいま、にわかにここをこうするという具体的なお答えはいただけないと思います。   〔委員長退席、理事林田悠紀夫君着席〕 だから、いま局長もおっしゃいましたが、ひとつ早急にこれらの点について抜本的な検討を加えて、そうして改めるべきものは改めて、この認可行政というものについても筋道を立ててやりやすくして、しかも、そういった疑惑の起こらないような牽制組織の中で、ガラス張りの中でこの認可がやれますようにひとつ体制をつくっていただくことを強く希望しておきます。  それから次に、現在、日本には何千件、何万件ぐらいの薬があるのですか。医薬品としてあなたのほうで認可し、売り出されているものですね。
  30. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 現在までのところ、厚生大臣から承認をもらっている医薬品というのは非常に数が多うございますので、おそらく、はっきりした台帳の整理が出ておりませんが、よくいわれておりますように、八万件から十万件程度のものを承認いたしているようでございます。しかし、そのうち現在いわゆる流通をしている、市販されているというものは非常に数が少ないようでございます。これもはっきりした調査をしたことがございませんので、まあおよその程度でございますが、大体二万件から三万件ぐらいのものが現在市販され、流通をいたしているのじゃなかろうかと、こういうような客観的な見通しでございます。
  31. 鈴木強

    鈴木強君 大体日本には薬屋さん、製薬業者ですね、製造業者ですね、そういうものは何軒ぐらいあるのですか。
  32. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 製造所ごとに実は許可を与えておりますので、製造所ごとに申し上げますと、大体二千二、三百軒ございます。しかし、一つ会社で二、三カ所なり何なり工場を持っている場合もございますので、大体のおよその見当をつけますと、メーカー数としましてはまあ二千軒程度じゃなかろうか、その前後だろうと、かように思っております。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 それでいわゆる大手メーカーといわれる製薬会社、まあ便宜上従業員五百名くらいおる会社というのはどのくらいあるのですか、そのうちで、まあ約二千軒のうちで。
  34. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) いわゆる世間でいいます大手メーカーというものは、製薬会社の場合においては、いまの二千軒のうちの一割足らず、つまり残りの九割、九〇何%というのは非常に零細中小メーカーか、あるいは零細企業でやっている、こういうふうにいわれると思います。
  35. 鈴木強

    鈴木強君 だんなさんが社長で奥さんが専務で息子が何か役員でやっている、数名の名前だけ登記してもらって会社組織にしているようなところもあると聞くんですけれども、そういうところはありますか。
  36. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) この点について実態を確実につかんでおりませんが、私ども承知している範囲では、いわゆる同族経営というものは若干あるようでございます。
  37. 鈴木強

    鈴木強君 政務次官、あなたいま答弁を聞いてどういうふうに感じましたか。私が、日本には何万軒のメーカーがありますかと聞きましたね。的確な資料がない、よく調べてない、大体二万、三万でございましょう、こういう答弁。従業員五百人以上の会社は幾つありますか——大体これは一割くらい、それ以下、そういうものはよくわからない。そんなことで一体よくも医療行政がやれるものですね。これはいま資料がおそらく手元にないのでそういう御答弁だと思いますので、もしそうであるとすれば、私はいまの発言は取り消しますけれども、もしあったなら、実態調査をしているなら、いま私が質問したものについて明確な資料あとで文書でいいですから出していただくようにお願いしておきます。調べたのがあるはずですね、その点はっきりしてください。
  38. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 先生お尋ねの的確な数字についての資料をいま手元に持っておりませんので、非常に抽象的なお答えをいたしたわけでございますが、そういうような従業員数とか資本金とか生産額とかいうような各段階ごとのメーカー数の調べはとっておりますので、後ほど資料で差し上げたいと、かように思います。
  39. 鈴木強

    鈴木強君 この認可の場合、新しく開発された薬とか医療用の専門薬、それから抗生物質、こういうものが中央薬事審議会に厚生大臣が諮問をして、その答申を待って認可するわけですね。そのほかのものについては、いわゆる厚生大臣が事務的に書類審査をして認可する、こういうことになっているわけですか、薬事法上。
  40. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 年間八千件なり九千件程度の申請厚生省のほうにまいりますが、それにつきましての大体の審査基準というものを従来からつくっているわけでございます。そこで、いまお尋ねのような点についてどのような形で審査が行なわれているかということについて申し上げたいと思います。いわゆる医療品のうらで全くの新医薬品とか、あるいはガンとか結核とかいうような重要医薬品、それから従来の既知の医薬品ではあるけれども、そのものの効能を変えたとかというようなもの、そういうようなものにつきましては、いまお述べになりましたように、薬事審議会というものに諮問をいたしまして、その答申を待って処置しております。ところが、第二のグループとしましては、既承認のものでありましても、療法なり容量を変えるとか、あるいは効能を変更するとか、あるいはまた、先ほど私申し上げましたように、医療機関向けのいわゆる配合剤、こういうようなものにつきましては基準ができております。その基準に基づきまして、中央薬事審議会に正式には諮問はいたしませんが、中央薬事審議会の中に、いろいろな部会なり、調査会がつくられておりますので、その部会なり、調査会のしかるべきところに御相談をして、そうして数回の会議を経て、このたぐいものは処置をしているということでございます。  それから第三のグループは、すでに承認を受けている医薬品と全く同一のもの、こういうものはこれは厚生省のほうで事務処理をという形で処置をいたしておるわけでございます。  それから具体的に承認基準というのがきまっておるものがございます。たとえば世間で言っておりますかぜ薬みたいなものは、具体的な承認基準審査基準というものがきまっております。こういうものは同様に事務処理をしている。大体この三つのグループに分けられて審査が行なわれているわけでございます。
  41. 鈴木強

    鈴木強君 その三つのグループの大体パーセンテージですね。八千件ある中で大体どんなふうになりますかね。
  42. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 四十三年の実績から申し上げますと、新医薬品なり重要医薬品というものは、いま開発のテンポがおくれております、国際的に。ひとりわが国だけではございません。したがいまして、こういうようなグループつまり正式に薬事審議会なるものに諮問をしてその答申によって処置しているグループ、第一のグループは全体の四・二%ぐらいでございます。  それから薬事審議会等で具体的な基準をきめたものがあります。そういう具体的な基準をきめたものは、正式に諮問はいたしておりませんので、薬事審議会のいろいろな部会なり調査会等にはかってそうして承認を与えているものが約五四%、残りの四二%くらいのものが事務当局の審査で事を運んでいる、こういうような大体の分類になっております。
  43. 鈴木強

    鈴木強君 日本の場合、日本でこれだけつくっておりながら、なおかつ外国から輸入をしておりますね。そういう輸入されている——おもに新薬だと思うのですが、どのくらいの件数になるのですか。
  44. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 外国といろいろ技術提携等をやっておる医薬品というものがあるわけでございます。これは技術導入等による医薬品の生産高というものは、大体総生産高の一割程度を占めております。しかし、それ以外に、外国からバルク等を輸入してそうして国内で製造をしておるというようなものも非常に多いわけでございますので、そういうものを入れますと、この一割というのがさらに相当ふえるということで、そのしさいな資料をいま手元に持っておりませんが、大体おおよその見当でございますが、四〇%から五〇%、そういうバルク輸入等を含めますと非常にふえておる、こういうふうに感じております。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 これもひとつ念のために、昭和三十二年以降日本でつくられた新薬の件数、それから輸入されておる新薬の、これはずばり——一部材料じゃなくて完全に外国でつくって持ち込まれたものは何ぼあるか、これを資料としてあとで出してもらいたい。  この輸入の医薬品を販売する販売店というものは、小売りの薬屋さんですね、こういうのは法律で認可されておるのですか、販売については。
  46. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 冒頭の資料の点については、調べまして御提出いたしたいと思います。  次の外国からの輸入を受けて国内に販売する場合の販売業としての許可は薬事法によりまして、輸入販売業の許可というものは厚生大臣がやっている、こういうことでございます。
  47. 鈴木強

    鈴木強君 いま何件許可を得ていますか。
  48. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 正確な数字を持っておりませんが、いわゆる販売業というものは非常に数が多うございます。これは大体薬局等の場合だけでも二万件ぐらい。ただ、いま先生がおっしゃった輸入販売業というものはそう数は多くないかと思いますが、正確な数字を持っておりませんので、後ほどお答えいたします。
  49. 鈴木強

    鈴木強君 それじゃ正確な数字を後ほどお願いいたします。  そこでもう一つ伺っておきたいのですが、抗生物質の複合剤について、最近新聞等にも出ておりますように、アメリカではFDAという米国食品医薬品局というのが、いろいろいままで抗生物質について、その効果についての検討も加え、できるだけこれを使わないようにという指導をしておったようですけれども、今度は回収するという指示を出しているんですね。これは法的にいろいろ問題がありまして、これに対して不服な人は訴訟を起こせというようなことにはなっておるようですけれども、原則として効果の点が複合剤は認められないということで、回収の指示をしておるようです。日本でもこの抗生物質の複合剤については、いろいろいままで御研究をなさっていると思うのですけれども、いままで厚生省で検討をした結果からすると、現時点においてこの抗生物質複合剤というものはこれ以上認めないというのか、あるいは将来縮小していこうというのか、基本的にどういうふうにしようとするのか、その態度をきめてあったらひとつお聞かせいただきたいと思うのですが。
  50. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 抗生物質の複合剤につきましては、すでに二年前から先ほどお述べになりました基本方針というものによりまして、厳重な規制をわが国においてはやっております。と申しますのは、やはり複合剤というような安易な考え方によって、数種の抗生物質等をまぜ合わすということでは、やはりいろいろな意味において問題があるわけでございますので、やはり複合つまり配合する配合の積極的理由あるいは根拠というものがなければ、今後は安易に承認を与えないという方針で、二年前から切りかえております。したがいまして、二年以前からそれに該当するものはわずかに二件だけ認めておりますが、今回のアメリカのFDAの回収、規制という問題につきましては、いまその詳細を照会中でございますが、いずれにいたしましても、わが国においては、すでにもう二年前から特別な積極的配合理由、つまり相乗効果等の積極的なデータというものが提出されなければ承認を与えない、こういう基本的な態度で進んできているわけでございます。
  51. 鈴木強

    鈴木強君 いま、日本に現在ある複合剤は何品目ありますか。
  52. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 現在まである複合剤、抗生物質の複合剤、いろいろなとり方が実はあるわけでございます。抗生物質と抗生物質でないものとかあるいは抗生物質同士の複合剤とか、いろいろありますが、いずれにしましても、そういうものをとらえた場合の大体の品目数というのは約二百品目ぐらいだと、こういうふうになっております。
  53. 鈴木強

    鈴木強君 これは内服、注射、外用と、大別してどうなりますか、この二百の品目のうち。
  54. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 実はそこまで、きょう、データを持ってきておりませんので、これも後ほどお答えをさせていただきたいと思います。
  55. 鈴木強

    鈴木強君 それは時間がおそらくないと思いますからね。先ほどから答えるというやつは、おそらくわかったら最後に答えてもらってもいいんですけれども、もし答えられなかったら、資料でこの二百品目の全部、名前をひとつ、承認月日もですね、これをひとつ知らしてもらいたいと思います。しかし、この中には外国の輸入のものもありますね。
  56. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 実は具体的な中身を持っておりませんので、はっきりしたお答えができないわけでございます。かりにあったとしても、非常に少ないのじゃないか、こういう感じで、私自身おります。
  57. 鈴木強

    鈴木強君 それでは具体的に、アメリカにレダリー社というのがありますね。そこのアクロマイシンですね。それからカプセル・ファイザー社のテトラスタチンですね。それからブリストル社のテトレックス・シロップ、それからペニシリンとストレプトマイシンとの、これは複合剤といいますか、さっき局長の言われた一部の点ですね。こういうものは日本では売られてないんですか、これは入っていますか。
  58. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) こまかく承知しておりませんが、大体あるはずだ、かように存じます。日本でつまり売られている、こういうふうに存じております。
  59. 鈴木強

    鈴木強君 これはひとつまた、さっきの二百品目に近いものの中に入るとすれば、外国製のものと、国産製のものとに分けて、名前と製造会社、輸入月日というものをひとつ資料でもらいたい。いいですか。
  60. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 資料で提出いたしたいと思います。
  61. 鈴木強

    鈴木強君 それからもう一つ、宣伝のことでちょっと私は伺いたいのですけれども、薬の宣伝というのも、薬九層倍と言って昔から坊主まるもうけのように、坊主まるもうけ以上にもうけるということになっているわけなんだが、最近のコマーシャルなんか見ましても、何が何だかさっぱりわからぬですよ。「ファイトで行こうリポビタンD」といってみたって、何だかわれわれにはよくわからぬし、ちょっとここへ書いてみたのだけれども、いろいろありますよ。子供がよく覚えるやつ、「くしゃみ三回ルル三錠」、「かゆい、かゆい、かゆいときには強力皮膚チャージ」、こういうようなことをやっている。それから大塚製薬の類似品で国会で問題になりましたオロナミンCドリンク、これなんか全く薬と同じようなびんに入れて、何か能書きを書いて、しろうとじゃ薬だと思って飲んだけれども、実際見たらこんなものは清涼飲料水で、薬じゃない。われわれは国会意見を出して、今度医薬品ということでちゃんと入れてもらいましたから、区別がついた。ところが、そういういろんないいかげんな、金があるからやるのだろうと思うけれども、こういうのは誇大広告ととりやすいものもあると思うのですね。もう少し消費者のほうによくわかりやすいような、親切な宣伝を薬に関する限りやってもらわぬとよくわからぬのですね、こういう点はどうですかね。厚生省局長も見ているでしょう。政務次官も見ておられると思うのだが、こういう点ももう少し業界皆さんとよくお話しをして、もう少し時間をかけていいじゃないですか。金があるのだから、瞬間的な何秒かのところでぱっと言わないで、一分でも二分でもかけて、ちゃんとしたコマーシャルを流すようにしたらどうなんですかね。まあスポンサーがいるのですから、なかなかむずかしいから、結局誇大広告であるかどうかということに引っかけて、皆さんのほうでは取り締まりをしなければならぬと思うのだけれども、取り締まるとか取り締まらぬとかいうことじゃなくて、もう少しメーカーの皆さんとも宣伝の方法について、何かうまい知恵をしぼって、国民によくわかるような宣伝をしてもらえないものでしょうかね。どうでしょう。
  62. 粟山秀

    政府委員粟山秀君) お話のとおり考えるべきだと思います。
  63. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 薬と医薬品の広告のあり方、これは前々から国会等でも御指摘を受けているわけです。数年前まで非常に薬の広告について、誇大広告という面からだけ見ましてもいろいろ問題があったわけでございます。そこで私どももいろいろな基準役所自身でもつくりますし、また、業界のほうでも自粛要項というようなものをつくりまして、業界自身でもいろいろな国民のそういう批判にこたえる意味においても自粛していこうという機運なりムードがここ一、二年急速に高まってきておりますので、全般的に申しますと、五、六年ないし四、五年前までと比べますと、非常に自粛をされているというふうに受け取っているわけでございますが、しかし、個々のテレビあるいは新聞等の広告のあり方等につきまして、しさいにやはり見ると、まだまだ問題があるということで、私どももテレビ等の監視、広告の監視というものも、予算を計上して実は昨年あたりからやっているわけでございます。しかし、まあ十分まだ監視の目が届かない点もございますので、いろいろな面においてまだまだ自粛をしていただかなければならぬ点があろうかと思いますので、よく業界でもひんぱんに最近は会合をしまして、いわゆる誇大広告になるかならぬか、その限界線というのは非常にむずかしいわけでございますけれども、いずれにしましても、最近のそういうような国民の要望なり批判にこたえるような広告のあり方に持っていこうと、こういうムードが業界全般にも出てまいっております。また媒体等においてもいろいろな倫理要綱等をつくっておられますので、そういう面からもこの問題を規制していくというような動きが最近出てきておりますので、まだまだ現状においてはほど遠いかもしれませんが、逐次改善のきざしも見えておりますので、われわれもこういう問題については、さらに積極的に関係業界等と話し合いを進めて、国民の期待する方向に広告問題を進めてまいりたい、かように思っておるわけであります。
  64. 鈴木強

    鈴木強君 約一時間にわたって私は薬務行政について承りました。しかし、まだまだ尽きるところがないほど問題点がございます。しかし、きょうは時間も制約をされておりますので、私は一応ここで打ち切りますが、いずれ汚職事件の推移等を見ましてもう一度ひとつ御意見を承りたいと思います。できるならば、それまでに、きょう私が提起をいたしました幾つかの問題点につきましては、たいへん御苦労ですけれども、急速にひとつ結論を出して、その機会にわれわれに納得のできるような厚生省の態度をお示しいただきますことを強く期待しまして、次に移ります。  厚生大臣がいらっしゃいますので、もう一つだけ厚生省関係の問題でお尋ねしますが、最近私は、朝日新聞を拝見しまして「うどん論争」という記事を見たわけなんです。この内容を読んでみますと、いま防腐剤あるいは漂白剤として使っております過酸化水素、これの使用量の問題についていろいろと論議があります。と同時に、この漂白剤あるいは防腐剤等をどの食品に使うのがいいのか、原則的にはこれは使わなければ一番いいわけだと思いますけれども、いろいろ業界からの御意見もあるでしょうからお使いになっておると思うのですが、たまたまうどんを漂白するかしないかということで、過酸化水素の使用についての論争が起きているようですが、農林省もおいでいただいていると思いますが、厚生省ではできるだけ品目を追加したくないということから、うどんはずばりうどんなんだ、こう言っておられるのですね。ところが、農林省のほうでは、うどんというのは、そうではなくて、ひやむぎとかスパゲッティだとか、きしめんだとか、そういうものも入るのだという業界側の意見に立っておるように私たちは聞くわけであります。すでに厚生省は、二月にその使用基準というものをちゃんときめているわけですけれども、それに対して業界から異議が出て、どうも農林省は肩を持っているのじゃないかというように見られているわけです。厚生省と、そういう意味においては二つ意見が食い違っておるように思うのですね。一つは、申し上げましたように、その範囲、品目をどうするかということ、それからもう一つは、できれば原則的に使わしたくない、こういうことに対して、幅を広げようとする、そういう考え方ですね。ですから、うどんずばりそのものからいうとそういうことになると思いますけれども、ここらは一体どういうふうになっておるのでございましょうか。このことは、この記事にもありますように、最近東京で中学生が中毒症状を起こした。調べてみると、大体五百PPMも過酸化水素が入っていた給食のうどんを食べたということでそういう結果を招来した。それからかまぼこなんかも防腐、漂白剤を使っているようでありますが、何と三千PPM以上のものが入っておったということが消費者グループのテストの結果出てきた、こういう点が述べられております。いま私が申し上げましたうどん論争について、まず厚生省及び農林省から御見解を承ってみたいと思うのです。
  65. 粟山秀

    政府委員粟山秀君) 詳しくはあと課長から御説明申し上げさせますけれども、うどんの漂白剤につきまして、御承知の二月一日に厚生省で告示いたしまして、残存量を一〇〇PPM以下に限定されること、かまぼこもそうでございますが、そういうことでございます。これは八月一日から実施されることになっております。  それから厚生省といたしましては、いまの国民の健康を守るという点からいたしますと、いまいろいろな食中毒や何かが起こっておりますから、できるだけ心配のあるものは広げたくない、そういう考えでもっていまの過酸化水素につきましては、うどん、かまぼこにとどめたい、このような考えでございます。
  66. 小高愛親

    説明員(小高愛親君) いま政務次官からお話がありましたように、私どものほうでは、二月一日に過酸化水素の使用基準をきめるにあたりまして、これはもちろん農林省のほうにもお話を申し上げ、御相談も申し上げておりますけれども、こういったものは本来は使用しないにこしたことはない、必要やむを得ざる場合に限ってこれの使用を認めるということでございますので、この際にはうどんと、かまぼこ、はんぺん、ちくわ、なるとのたぐい、これだけに限定いたしまして一〇〇PPM以下、その他のものは三〇PPM以下、こういう使用基準を設定いたしました。そしてこの場合にわざわざめん類とせずに、うどんといたしましたのは、やはりこのものはめん類の中でもうどんに限ってこれが現在必要とされておる、こういう私ども調査でもそういうことがわかっておりましたので、うどんについてはやむを得ないということで、使用基準にうどんという名前をわざわざあげております。したがいまして、その他のめん類については、過酸化水素の一〇〇PPMの残存というものは私ども考えておらないわけでありまして、この点につきましては、農林省のほうにも十分御説明いたしておりまして、御了承を願っておるものと考えております。
  67. 鈴木強

    鈴木強君 それではひとつ農林省のほうから。
  68. 馬場二葉

    説明員(馬場二葉君) 自来うどん類には過酸化水素の使用が特に平常認められておりまして、別段基準がなかったわけでありますけれども、先ほど厚生省お話がございましたように、昨年来、厚生省で使用基準を検討されまして、本年二月一日に告示され、八月一日から実施、こういうことに相なった。この際、うどんの解釈なり、範囲につきまして食糧庁として、これは事務レベルでございますが、厚生省のほうに若干の意見を付して、範囲をただしたということであります。そのことが新聞紙上意見の対立がある、相違があるかのごとく報道されたわけでございます。その後、十分厚生省の所見も聞きまして私とも了承いたしましたので、厚生省の解釈に従いまして今後業界指導し、食品衛生上万全を期していきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  69. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。ただし、念のためにもう一回伺っておきますが、そうしますと、厚生省が二月に策定をした、告示をした使用基準ですね、その中に示されている残存量は、うどんと、かまぼこと、はんぺん、なると、ちくわ、これは一〇〇PPM以下、さっき課長のおっしゃったとおりですね。その他の食品については三〇PPM以下、こうなっているわけですね。そうすると、これからうどんは即うどんで、めん類というのをうどんとしたということは、何と言うんですか、ここにありますようなスパゲッティとか、ひやむぎとか、きしめんとか、こういうものは入らぬという解釈ですから、そこのところを農林省としてもきちっと確認をして、同じ歩調でおやりくださる、こういうふうに理解していいわけですか。  それからもう一つですね、たとえば、そばもめん類で、うどんと同じじゃないかというような話も出たということですが、そういうことはなかったですか。
  70. 馬場二葉

    説明員(馬場二葉君) 食糧庁で疑問を持ちましたのは、ゆでうどんが今度の一〇〇PPMの適用になるということでございましたので、それと生産なり流通なり消費の形態がほぼ同じでありますひらめん——きしめんでございますね。それからソフトスパゲッティ、これは当然その中に入るのではないかという意見を出しながら厚生省の意向をただした、こういうことでございまして、決してそうめんとか、そばということは食糧庁は考えてもいませんでしたし、申し上げてもいないわけでございます。その点のけじめをはっきりいたしましたので、今後間違いのないような指導をいたしたい、そういうことでございます。
  71. 鈴木強

    鈴木強君 なぜ特別に、うどんというものはうどんなんだからね。そういうものが入るか入らないかという、厚生省に解釈の説明を求めたということは、だれがそれは言ってきてそうしたんですか。
  72. 馬場二葉

    説明員(馬場二葉君) これは先ほど申し上げましたように、ほんとの担当官同士の話でございまして、担当官としては、今回の告示がされ、八月実施に移されるにあたりましては、業界説明をし、指導する必要上、こういう疑問があったので厚生省にただした、こういうことでございます。
  73. 林田悠紀夫

    ○理事(林田悠紀夫君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  74. 林田悠紀夫

    ○理事(林田悠紀夫君) 速記を起こして。
  75. 鈴木強

    鈴木強君 そう言ってもやはり——そうすると、あれですか、めん類業者の方々と会う前に、そういう話を問い合わしたわけですか。めん類業者と会って説明をしている間で、解釈についてあなた方が説明できなくなったから、そこで聞いたのか。そこはどうですか。簡単でいいですよ。
  76. 馬場二葉

    説明員(馬場二葉君) 私どもの担当官自身も疑問を持ちましたし、また、業界も一体どこまでの範囲であろうかと疑問を持ったようでございます。
  77. 鈴木強

    鈴木強君 まあ少なくも一つ日本の一流の新聞がこれを取り上げるというのには、日常活動の中でいろいろと農林省のこれらの問題に対する姿勢についても、私は観察をされてきていると思うんです。だから、ただ単に記事として扱う、あなたが言うようにですね、そういうふうに書かれたと、そういうことではないと思うんです。そこにはみずから反省をしなければならない問題が私は含まれているように思うんですよ。だから、あまり形式的な機械的な答弁だけでは納得できないんで、もっとこれは突っ込んで伺わなきゃならぬ問題と思いますけれども、そういうことはやはり多少なり反省をしてみる必要があるんじゃないですか。どうですか。
  78. 馬場二葉

    説明員(馬場二葉君) やはり私どもも新聞記事を見まして、非常に食糧庁が業界の代弁、あるいはそれに立ってるような記事の内容になっていたかと思いますが、決してそういうことではなくて、これは指導いたしますには、はっきりうどんの範囲を明確にすることがあると同時に、やはり産業の主務官にとっては、所管産業の健全な発達ということも考えながらただしたことでございまして、決して他意があったわけではございません。
  79. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。それではひとつ今後そういうふうな見方をとられるようなことのないように、それはあなた反省すべき点は反省をして、あまり業者のほうばかり向いているのではないかという印象を与えないようにしていただきたい。私たちも率直に言ってそういう気持ちを持っております。いろいろのいままでの長い経験の中でそういうふうに感じているのです。そういうことがこの記事と私はぴったり合ったと思いましたから、あえてこれを取り上げてお伺いしたのです。時間がないから、もう少し私、資料がありますけれども、機会をあらためて具体的な問題を聞きます。それでは厚生省関係は、たいへんすみません。これで終わります。  次に、これからの景気の見通しについてお尋ねするわけでございます。きょうはたいへんお忙しい中を日銀からおいでいただきました。できますならば総裁にと思いましたが、委員会がありまして御出席ができず、副総裁においでいただきましてたいへんお忙しいところありがとうございました。  御承知のように、昭和四十四年度の国家予算も国会で成立をしましていよいよ実施の段階に入ってまいるわけでありますが、この機会に、いま日本の当面しております経済の見通し等について、いま各方面でいろんな意見が述べられておるようでございます。これから逐次問題点お尋ねをいたすわけでございますが、まず、最近一部の業界での在庫増大、生産出荷の増勢鈍化、さらに鉄鋼とか繊維等の主要商品市況の軟調という、いわゆる景気のかげり現象というのが出てきておるようでございます。したがって、いままでの需要超過型の経済基調から、供給超過型の経済に移りつつあるのではないか、ここまでの判断についていろいろとまた意見があるようでございます。かげり現象というものが大なり小なり出てきておるということは全体の意見が一致しているようですが、とにかく具体的にこれを金融の面においてどうやっていくか、ことしは一四・四%の経済成長を見込んでいる、物価は約五%。こういう中で一体当面する日本の経済というものはどういう方向をたどっていくのか、これを私は最初に承りたい。
  80. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 最近における経済情勢並びに今後の経済動向についてのお尋ねだと思いますが、きょうちょうど月例経済報告が経済閣僚会議で発表されたのであります。それには日銀総裁も出席をしておりましたし、総理以下関係閣僚もみな出席しておったのです。通産大臣ももちろん出席しておった。そこで、ここで月例経済報告で見出しだけ申し上げますと、「国際収支はひきつづき好調」「国内需要はなお堅調」「鉱工業生産の増勢鈍化」これはいま鈴木先生が言われた問題、それから「卸売物価はやや反発」「企業金融は引締り傾向」というような見出しで、いろいろ最近の情勢を述べておりまして、最後の結論といたしまして「以上のように、国内経済は全体として拡大基調をつづけている。最近、一部には鈍化のきざしが見られないでもないが、これが経済活動全般の落着きにつながるかどうか、なお事態の推移を見守る必要がある。このさき息の長い安定的な成長をつづけていくためには、現状のような慎重な政策態度を維持することが望ましい。」こういう結論でありまして、これを報告した後に、総理は日銀総裁に、これに対しての御意見を承りたいということを尋ねましたが、日銀総裁は、総論、各論ともに全く同じ意見ですという返事があったのです。それで、閣僚会議ではこの報告を了解したわけであります。それだけちょっと私から御報告しておきます。
  81. 鈴木強

    鈴木強君 じゃ日銀から。
  82. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま企画庁長官からお話がございましたように、最近の情勢についての判断はきょう発表されました経済企画庁の月例報告の大筋につきまして全くわれわれの考え方も変わっておりません。かげり現象というものがここにあることもこれは確かでございまして、たとえばトラックなどにつきましてはストックがふえてまいりまして、生産制限をしなければならないという事態が起こっております。また、暖冬によりまして、冬用の家庭電気製品が売れなくてストックになっているということもございます。しかしながら、こういうのはまだ部分的、一部の問題でございまして、これが全体の経済基調に影響するというところまでは、いっておらないように考えております。ただいま鈴木先生がおあげになりました鉄鍋などにつきましても、確かに去年の暮れまでは非常に市況が悪うございまして、価格も低落しておりましたが、ことしに入りましてからは欧州向けの輸出が予想外によくなりましたために、最近目立って市況がよくなりまして、価格も上昇し続けております。そういうようなことで、かげりの一つと見られておりました鉄鋼業界も変化が起こっておるというようなこともございまして、繰り返して申しますが、総体としての経済基調には、やはりいままでの根強い拡大傾向が続いておる、こういうふうに判断しております。
  83. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、いままでたとえば新聞、マスコミ等で一般的に報道されておりましたかげり現象に対する見解も、たとえば大蔵省と日銀側、それに対して通産大臣の記者会見等を拝見しますと、そこにはやっぱり金融の面まで及んだ積極策が出ているように思います。ですから、そういう意見があるでしょうし、また、日本銀行や勧業銀行や三菱銀行や、いろいろの銀行がそれぞれ本年度の経済見通しについていろいろ述べております。片や佐藤内閣の安定成長政策というものは、池田内閣の高度経済成長政策を批判した上に立って出てきていると思うのですね。そういうときにこの経済社会発展計画というものがわずか一年を出ずして実際の日本の経済の現状にそぐわなくなってきてしまった、これを手直しをしなければならない、そういう時期にきていると思います。それで、予算委員会を通じていろいろ野党の質問もありました。で、佐藤総理大臣をはじめ、経済社会発展計画の成長率八・二%というものは、やはり修正して実質一〇%へ持っていってもいいじゃないだろうか、そういうことまで委員会で触れられておるわけですね。そうしますと、あとから私がお尋ねする経済社会発展計画との関連もありますから、それはそれとして、私はあとでまた伺いますけれども、いまの、きょうの経済閣僚懇談会で御決定になった見解はわかりました。いろいろいままであったそれらの意見は調整されて、内閣の態度としてはこれ一本になった、こういうふうに当然理解をすべきだと思うのですが、特に日銀総裁に発言を求められたということは、どういう意図であったのでしょうか。
  84. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いつでも月例経済報告には日銀総裁が出席しておるのでありまして、そうして経済企画庁からこの報告をいたしますと、あとで、日銀総裁に、いまの報告についての日銀総裁の御意見はいかがですかということをいつでも尋ねておるのです。だからして、きょうも恒例によって、総理が日銀総裁に尋ねられて、それで先ほど申し上げましたとおり、この月例経済報告の総論、各論ともに全く同じ意見です、こういう御返事であったわけです。
  85. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、これは月例報告ですからね、実際にいままで歩んできた状況について、さらにそれがどう変化していくか、そういう問題だと思いますけれども、日銀総裁が経済閣僚懇談会に出席していることは私も知っております。私がなぜ特に日銀総裁の発言を求め意見がなかったかということについて、あなたはないと、こういうわけですから、日銀総裁が総理の問いに対して、全くそのとおりですと答えたというからいいようなものだけれども、ただ私はやはりこういう点もはっきりしておかなければなりませんので——。たとえば二日の定例記者会見で、宇佐美日銀総裁が述べておりますが、その中で、わが国経済の成長問題にも触れておるわけですね。そうして佐藤さんのお述べになりました物価上昇分を差し引いた実成長率が今後五カ年一〇%程度の伸びが続くというふうに簡単には言えない、こういう見解を正式に発表しておるわけであります。特にこの中で、実際に四十二年度を見ると、十三・六%ですか、経済の伸びは。四十三年度は実績見込みで一三・三%でしたか、そういうように政府の八・二%よりも伸びているわけでありますから、ただいま日銀総裁が言っているような、五カ年間で一〇%の経済成長を見込んでもいいんだというような、そういう佐藤さんの発言に対して、意見があったというように述べているわけですが、これは事実だと思うのですよ。そうしてみると、外国経済がこれからどう展開していくか、その点について宇佐美さんは重大要素に入れているわけですね。ですから佐藤さんの一〇%ということについても、確かにどんどん実際伸びている、現在の計画より伸びている経済成長ということから見ると、それを少しでも圧縮していこう、安定経済成長政策のほうに持っていこうということならばわかるけれども、佐藤さんのおっしゃっている国会の、全体がよくわからないからと。そういうただし書きをつけているのだけれども、そういう趣旨の説明をしているわけですよ、この記者会見のときにですね。そうして一番大きな要素は、やはり外国経済が一体どうなっていくか、外貨準備高の問題もありましょうし、国際収支の問題もありますでしょう。そういうものがなかなかつかめない。そういう要素を考えてみると、なかなか一〇%というものは簡単に認められない。こういう見解を正式に発表しているわけでありますから、だからそういう見解は通産大臣としても非公式、公式を問わず、おそらく宇佐美さんの意見も聞いておられると思うのですよ。きょうの記者会見は日銀総裁ずばりですから、副総裁に伺っても記者会見の記事の内容についてはよくわからないと思うのだけれども、そういうなかなか日銀としての一つの見解というものを総裁が代弁して、記者会見で出しているだけに、ただかげりの問題について、それは確かにありそうだけれども、全体として見たらだいじょうぶだと、そういう考え方になったということに対して私は理解ができないものだから、聞いてみたんです。総裁がおれば一番いいわけですけれども、その点はどういうようなことなんでしょうかね。   〔理事林田悠紀夫君退席、委員長着席〕
  86. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) きょうの閣僚協議会では、成長の問題は一言も出ておりません。一〇%何とかという、そういう話は全然出ておりません。もちろん日銀総裁からもその話は出ておりません。われわれのほうでもその話は全然出ておりません。
  87. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると結論として、全体としては拡大成長の方向に進んでいる。したがって、いま私が指摘したような現象について、あることはやはり認めているわけですね。だけれども、財政金融上において特別の措置をするような必要はない、こういうことでしょうか。
  88. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) そのとおりであります。
  89. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、鉱工業生産の面において多少鈍化しているというのですが、それは具体的にはどういうように認識しているのですか。
  90. 矢野智雄

    政府委員(矢野智雄君) 鉱工業生産、現在二月まではわかっております。二月はまだ速報の数字の段階であります。で、最近の状況、特に年末年初の動きを見ますと、従来に比べまして若干鈍化していることは確かであります。ただこの一、二カ月の鈍化をもってこの数字がこの先これが基調として鈍化していくものであるかどうか。この点を判断するにあたりまして、若干検討すべき問題があります。その一つは、ここ二、三年来鉱工業生産は、特に一般機械とか電気機械とか、かなりウエートの大きい若干の品目の動きにおきまして、年末年初にかなり大幅に落ち込み、その後、急増に転ずるという、どうもそういう傾向がこのところ出てきているようであります。その点もありますので、ここで年末年初の鈍化を直ちにこれがこのまま鈍化していくものであるのか、あるいは落ちついた動きにこのままつながっていくものであるか、あるいはまた、一、二カ月たちますと急増するのか、その辺が非常に判断のむずかしいところであるということが第一点。もう一点は、やはり最近のかげりに関連いたしまして製品在庫が非常に増加しているということがありますが、これも確かにかなり昨年の秋以降増加しております。しかし、この場合、一部の品目の影響が非常にこの数字上大きく響いております。その一部の品目といいますのは、特に暖冬の影響を受けましたような、たとえば石油ストーブあるいは灯油、こういうもの、まあそのほかたとえばエアコンディショナーのような、これはこの先の普及拡大を目ざして大幅にいま増産しているものでありますが、こうしたたとえば三つの品目を除くだけでもかなり製品在庫の現状の数字が落ちてしまいます。で、その状態というのは平常のペースに比べてそれほど大きくない。こういう判断がありますので、もう少し鉱工業生産に見られるこの増勢鈍化というのが、これが基調的なものか、それがこのまま落ちついた動きにつながっていくのか、ちょっといまのところ、もう少し様子を見るほうが無難である。その上で何とか考える。つまりもうちょっとここは情勢の推移を見る。いま直ちにこの動きをもって何か動きが変わって、何かここで政策を変えなければならない、そう判断するのはちょっと早いという、こういう考えでございます。
  91. 鈴木強

    鈴木強君 それから、要するに、需要の面が従来から見てかなり鈍化してきている。需要の面が。そういう点はどうなんですか。いままでと同じように需要が伸びていくというように判断してもいいでしょうか。多少鈍化していくというふうに見ていくほうがいいでしょうか、この点は。
  92. 矢野智雄

    政府委員(矢野智雄君) 需要全体といたしましては、現在これまでの拡大基調にそう目立った変化は起こっていないというように思います。それも先ほど生産の指数がここ二、三カ月ちょっと鈍化したからといって、すぐこれを基調的な判断につなげにくいという一つの背景でもあります。需要にも幾つかの項目がありますが、一番項目のウエートの大きいものは、個人消費でありますが、個人消費は家計調査あるいは百貨店の売り上げ等を見ましてもこれまでの増勢にそう変わった動きは見られないのであります。もちろん百貨店の動きの中には、衣料品とか、この暖冬の影響を受けましたものが若干動揺しておりますが、そういうものを除きますと、全体としては、従来の拡大景気が続いているように思います。また設備投資、民間の設備投資もまだ全貌は現在の時点において判明しておりませんが、かなりウエートの大きい企業、産業を含めました若干の調査によりますと、少なくともこの一−三月期までのところに関する限り、従来の拡大基調がそう変わっていないという各種の調査が出ております。それから在庫投資は、むしろ昨年の前半少し減っておりましたのが、その後むしろ増加に転じてきております。それから財政支出は昨年の年度の初め、暫定予算等の関係で若干出おくれていたものがむしろ進捗してきております。ただ輸出が引き続き好調でありますが、従来の、特に昨年の前半の異常な伸びから見ますと、多少にぶっているということもありますが、全体として見ますと、まあ輸出も好調であり、国内需要も相変わらず拡大基調が続いているというように見ざるを得ないと思います。もちろん細部の点で、あるいは産業により、商品によりましてはまちまちな動きがあることは言うまでもありません。たとえば先ほど御指摘になりましたように、自動車は、特に小型トラックを中心にしまして従来の増勢がちょっといまのところ変わってきておりますが、大勢としましては、若干の動きは別といたしまして、そう目立った変化が起こっておるという姿の証拠はまだはっきりつかめない段階であります。
  93. 鈴木強

    鈴木強君 輸入はどうですか。
  94. 矢野智雄

    政府委員(矢野智雄君) 輸入は昨年の前半は横ばいといいますか、ややむしろ減りぎみの状況でございますが、その後増加へ転じてきております。ただ、ここ二、三カ月はふえぎみでありますが、思ったほど増加しない。比較的落ちついた増加というところでございます。
  95. 鈴木強

    鈴木強君 それから卸売り物価ですね。鉄鋼を中心にした卸売り物価というのは上がりぎみにあるように思うのですけれども、その傾向というものはどうか。それとの関係で消費者物価はどういうふうになっておるのですか。
  96. 矢野智雄

    政府委員(矢野智雄君) 卸売り物価は、昨年の秋以降持ち合い状態を続けておりましたが、この二月から若干上がりぎみでございまして、二月は〇・一%上昇し、さらに、三月はまだ月間のものは出ておりませんが、上旬、中旬〇・一%上昇しております。それに一時弱かった鉄鋼が反発してきております。これは先ほど日銀副総裁から御説明がありましたように、非常にここのところ輸出が好調であり、また、内需も堅調でありますので、鉄鋼はフル操業をしておりますが、需給はタイトのようであります。このまま上昇を続けていきますかどうかは、今後の需給の動向にかかってまいりますが、ただ、いまのところ、需要は堅調でありますが、生産能力のほうもかなりふえてきておりますので、全体としては需給がゆるんでいるとは言えませんが、均衡がとれておるような状況で、個々の商品によってはそれぞれ動きがあると思いますが、大勢としては比較的落ちついた、いまのところ強含みながら比較的落ちついた動きをたどっておるということだと思います。  消費者物価は御承知のようにここ、昨年の末以来から落ちついております。ことしの二月、全国の指数はいま二月までしかわかっておりませんが、前月比持ち合いとなり、前年同月比で三%のアップ率にとどまっております。それから三月は、いま東京都のだけしか出ておりませんが、東京都は大雪の影響がありましたので、一%ほど上がっておりますが、まあここのところ、前年同月比で三%台、あるいは四%になるかならぬかという状況であります。もっともこの中には、若干暖冬の影響で野菜が比較的安値であったということもありますので、すぐこれが基調的にどうかということを基本的に判断しにくい面もありますが、現状は概して落ちついた動きをしております。国際的に比較をいたしましても、比較的日本の消費者物価の上昇は、いまのところ上がり方が少ないとは言えませんが、相対的にはあまり大きくないという状況であります。
  97. 鈴木強

    鈴木強君 それから企業の金融の面で、各企業からの借り入れの要求というものはかなり強く出ておると思うのですけれども、先ほどの御報告の中にも、金融の面では引き締まり傾向だという御報告がありました。これとの関連でひとつ伺いたいのですけれども、企業が非常に旺盛な融資を希望しておる、借り入れを希望している。それに対して金融の引き締めをしようということですね。これどういう結果に発展していくものでしょうか。
  98. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 去年の秋ぐらいから企業の資金需要が相当ふえてきております。去年の夏の終わりまで実は日本銀行が窓口規制というものをやっておりまして、各金融機関の、主として都市銀行を中心としてでありますが、金融機関の貸し出しの増加額を具体的に規制してまいったのでありますが、秋口からそれを解除いたしまして、いわゆる資金ポジション指導といいます、自分のほうで集め得た金の範囲内で貸し出しあるいは有価証券投資をやるようにというような指導をしてまいっております。しかし、貸し出しの増加額を具体的に規制いたしましたときと違いまして、やはり銀行の貸し出しが相当急速に増加してきております。その増加率は、前年同期に比べましてわりあい高い数字でございます。しかし、それでもなお、企業の側から申しますと、自分たちの借り入れ希望額が満たされないというような不満があることは、これまた事実でございます。都市銀行の貸し出しの急増にもかかわらず、借り入れ側の需要額が非常に大きいものでございますから、なかなかそれが充足されないということでございます。どうして都市銀行にそういう借り入れ希望が多くなっているかということの一つ原因は、実は去年、おととし引き締めをやっておりますときに、生命保険とか信託銀行あたりの金融機関が、その前にいろいろ集めました金を運用難でだいぶ手元に余裕を持っておりまして、それで、そういう余裕がありましたものですから、引き締めで都市銀行が貸し出しを押えましたときに、そういう信託あるいは生保というような金融機関が貸し進めまして、そしてまあ資金需要の穴を埋めていったという事実がございます。ところが、その余裕金が、だんだん今度は、金融が緩和するときにはなくなってまいりまして、ここ最近の時期では、信託あるいは生命保険会社というのは、それぞれの時期における集まった資金の範囲内でしか貸せない。前のように余裕金がその上に乗っかって貸せるというような事態ではなくなっております。そういうことで、いままで信託、生命保険会社に行っておりました都市銀行の資金需要の部分が、これが都市銀行のほうに振りかわっていくというような現象がございます。そういうようなことで都市銀行に対する借り入れ需要が非常に強い、こういうように考えております。こういう状態は、しかしまだしばらくは続くと思います。したがって、まだ数字ははっきりいたしませんが、三月の都市銀行の貸し出しも相当大幅にふえておるようでございます。それから四−六月の計画をとりましても、都市銀行の貸し出しは相当増加する計画になっております。そういうことで、ある程度企業側の資金需要は満たされてくるとは思いますけれども、何ぶん、いま申したような事情もあって、借り入れ側の資金需要額が大きいものでございますから、やはり全体として見れば、資金の需給はやや窮屈ぎみという状態で推移するのではないかと、こう考えております。
  99. 鈴木強

    鈴木強君 この点については、日銀がやはり月例報告をお出しになりましたね、一日の日だったですか。そこでお述べになっておる考え方と、きょうの、経済企画庁長官、おたくのほうでの月例報告ですね、これとは大体同じ趣旨で述べられているわけですか。いま副総裁の述べられたような、そういう御趣旨でいいですか。
  100. 矢野智雄

    政府委員(矢野智雄君) 同じ趣旨でございます。現在貸し出し額の増加はかなり大きくなっておりますが、これは先ほども申しましたように、資金需要が背後で強い、またその背景では拡大基調が持続している、しかも、いま日銀の副総裁が申されましたように、生保、信託等からの借り入れの余地が少なくなってきている、そういうこともありまして、企業の借り入れ需要は、銀行、特に市中銀行に集中してきている状態だと、一方、銀行の融資態度はポジション面の制約などから都銀を中心に引き続き抑制的になってくると、そのほか、起債がむずかしいとか、あるいは外資の取り入れの環境も悪くなっているという関係もありまして、企業の資金繰りは大企業を中心に漸次逼迫度を強めており、借り入れ態度にも一段と真剣みが加わってきているといったような、大体いま日銀副総裁が申されましたと同様の趣旨をこの月例報告で申しております。
  101. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、生保とかそういう長期の資金というものの調達が非常にむずかしくなってきておる、信託を含めましてね。それはどういうわけなんでしょうか。結局都市銀行のほうの肩に余分にかかってきたわけですね。それはどういうふうに理解していいですか。
  102. 佐々木直

    参考人佐々木直君) いま私が申し上げました、信託、生保が一時相当金が、長期資金が貸せたといいますことは、先ほど御説明したように、その前の時代において貸し出しをしたくてもあまり借り手が借りてくれなかったものですから、その余裕があった。その余裕金を金融引き締めのときまで持ち越していましたから、都市銀行が貸さなくなったときに、かわって貸したということでございます。したがいまして、その引き締めのときにそういう信託、生保がわりあいにたっぷり貸したのは、これは一時的な現象でございまして、大体この両者は、信託は貸付信託の集まった額、それから生命保険会社は生命保険料の入ってきたものの一部というふうなことで、入ってくる量にはおのずから制限がございまして、都市銀行のように日本銀行から信用を受けるということも全然ない金融機関でございますので、そういう点から、やはりコンスタントに、集まったものは貸せておるわけでございます。ただ、一時のようにプラスアルファが貸せなくなったので、プラスアルファが貸せた時代に比べると、都市銀行に対して借り手がたくさん行くと、こういう事態になったのでございます。
  103. 鈴木強

    鈴木強君 大体の傾向はわかりましたけれども、なかなかこれはむずかしいわけですから、見通しというものは。なかなか、われわれから見ると、お話を聞いておったら、この点はこうしたらいいとか、こういうふうに措置したらいいとかいうことをしろうとなりに考えますけれども、結論的に言って、拡大基調というものは、日銀もおっしゃっていますけれども、きょうも閣議でこの基調は認めたということで、何かそこにちぐはぐなものを感じます。しかし、むずかしい経済の問題ですから、神ざまでも的確な見通しというものは立たないようなものでありますから、一応きょうは時間の関係もありまして、きょうの政府がきめました月例報告の内容について、わかりました。  そこで、関連して伺いますけれども、これは佐々木さんね、大蔵省が、二十年後に日本の一人当たり国民所得が世界一になると試算したですね。それに対して宇佐美さんが「大胆不敵賞ものだ」とひどく批判をしているわけですが、これはあなたも同感ですか。それから、経済企画庁長官はどうなんですか。大蔵省が試算をしていることに対して、どういう見解を持っておりますか。
  104. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 大蔵省のその試算は、ほかの条件が変わらなければという条件がついていますから、それで、こういういままでのような調子で経済が成長すればこうなるということでありますからして、それは全く試算です。それは根拠のあるものじゃない。いまのままで世の中がずっといけばということでありますからして、そのとおりになるということはわれわれ考えておりません。
  105. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私、二日の総裁の記者会見、同席しておりませんでしたから、大胆不敵ということを言われたかどうか私も存じませんが、いま企画庁長官がお話しになりましたように、いまのトレンドをそのまま延ばすとそういうことになるということにすぎないのではないかと思っておりまして、特に、別にこれに日本銀行立場からとやかく申すべき問題じゃないように考えております。
  106. 鈴木強

    鈴木強君 まあ総裁は財政経済通として、大胆不敵賞だということを言ったわけで、だから、いま聞いてみると、これは絵にかいたもちだなあ。まだ中身は何にもない。しかし、こういうことはどうなんですか。本来、経済企画庁が、十年後、二十年後はどうなるくらいのことは、先手を打って、先にやるべきことじゃないかね。先を越されたじゃないか。菅野さん、これはどうだ。
  107. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) そのいまの発表は、大蔵省として発表したものでもない。大蔵省の一部の人が試算をやってみてこういうことになったということを発表したにすぎないのであって、大体五年先を目当てに、いま私のほうで経済社会発展計画、現在進行中の経済社会発展計画を、これは見通しと実勢とが違っておりますので、これをいま補正しようとしていろいろいま準備をしておりますが、これはおそらく四十五年から五十年までの間ということで計画を立てたいと考えておりますが、その計画を立てれば、その際日本の経済はどうなるという、成長はどうなるということは、その際に発表ができるというつもりをしておる次第であります。
  108. 鈴木強

    鈴木強君 経済企画庁が、二十年後の食生活はイタリア並みというので、牛肉を四倍とか、米が減るとか、なかなか珍しい経済企画庁にしては長期の見通しを立てておる。これは当てはまらぬかもしれませんけれども、これは非常に国民は関心を持って見ておる。大体日本役所というのは五年先もわからないというので、二年か三年先のことを考えている。資料をもらえば三年くらい前のものを出している。何かいま地球から月に人間が着くという時代にほど遠いようなことをやっていらっしゃる。そのときにこういうものを出すということは、一つのむずかしい意味を持っているわけです。と同時に、あなたはこんなものは大蔵省がかってにやったと言うけれども、これは世間に宣伝されれば一つの非常に関心を持つことですから、そんなに簡単にあなた片づけられない問題ですよ。これをやるなら、当然所得は幾らになるというくらいのことはわからなければ、牛肉が四倍食えるかどうかわからないじゃないですか。そういう意味で私は聞いておるわけです。もう少し長期展望に立った、経済の見通しになるとむずかしいから、それに関連してむずかしいけれども一つの目安、われわれの目ざす方向というものを国民に示した意味では、私はあなたのほうの出したやつを高く評価しているのです、中身はどうとしても。一応だからそれに向かって努力してくれるわけです。私はそういう意味では非常にいいことだと思う、長期計画を持つということは。私はそういう意味にとったわけです。  時間がだいぶなくなってしまってあれですから、経済社会発展計画については作業中だと思います。佐藤さんや福田さんの意見も飛び出してきまして一体どうなのですか、作業の進行についてあなたの思っているようなところにきているわけですか。あんなこと言われてちょっと困ったなあというふうに思っているわけですか。どっちですか。
  109. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 実はその問題、この間予算委員会で問題になりまして、もともとは大蔵大臣が言ったことばでありますが、大蔵大臣は大蔵委員会かなんかでそういうことを軽く一二%続くというわけではあるまい、そうかといって、七、八%でもない、いままでの経済の伸び方からいうたら七、八%、間をとって一〇%くらいかなというふうに軽く大蔵大臣は言ったのであります。それが今度予算委員会でまた、だれでありましたか、山本委員であったかどうだか知らないけれども、大蔵大臣はこう言っているが総理は同じ考えかということで、総理も一〇%くらいがちょうどいいなという気持ちを、自分の希望を言われた。そこでまた最後に私に質問がありまして、私はこう答えたのです。現在の、いままでのような情勢からいけば一応一〇%ということは考えられるが、しかし私は、いま一〇%になるという確言はよういたしません、いま私のほうで経済社会発展計画を準備中でありますから、それらの資料に基づいてこれははっきり言わなければいかぬことであるから、私は確言をよういたしません、こう私は返事をしておいた次第でございます。
  110. 鈴木強

    鈴木強君 そこのところが出ないのだ、新聞に。だから議事録読まなければわからない。しかし、議事録は間に合わないから、わしらそこにおらなかったから聞いてみた。そうしますと、大体修正作業というのはいつごろをめどに完了するのですか。
  111. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 作業のしかたについては、局長がおれば局長からお答えしますが、とにかくこれでいろいろモデルケースをつくりましてやるので、大体ことしじゅうはかかるという見通しをいたしております。
  112. 鈴木強

    鈴木強君 これだけ長官から伺っておきますがね、高度経済成長政策から何といいますか、佐藤さん、福田さんは安定成長政策……、何か安定成長でしたかな、それはどっちにしても……。
  113. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 安定経済成長。
  114. 鈴木強

    鈴木強君 安定経済成長政策か、だから、池田さんの高度経済成長政策というのは、やっぱりいまの段階では否定しているわけだな。それで、安定経済政策とか景気について警戒中立型といってみたり、少し変わってきた、ニュアンスがね。だけれども、そういう点は安定経済政策というものを基本として手直しすると理解していいですか、その点だけ聞いておきたい。
  115. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 池田内閣のときには高度成長政策をとっておったのですが、高度成長政策をとりますと、そこに非常なひずみが起こってきたことは事実です。そこで佐藤内閣になってから、また福田大蔵大臣も、安定経済成長ということを言ったのであって、あまりにも成長し過ぎちゃいかぬ。適当な成長を遂げるようにしなければいかぬということで、まあ佐藤内閣はそういう意味で、いま進行中の経済社会発展計画も経済の効率化ということを基本として、一方では物価の安定、一方では社会開発ということで、ひずみのない経済発展を、均衡のとれた経済発展を遂げるように経済計画をしたいということでやってきたわけで、その点が違っておるわけであります。
  116. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっとわかりませんがね、そうすると、いままでやってきた八・二%という一応成長率を見てきたわけです。ところが、今度佐藤さんが、かりそめにもどう言おうと、国会で総理大臣が言ったんですからね、総理大臣が。そうすると、これはもうそうだと思いますよ、国民は。だれが何と言おうと、やっぱり総理が言われたことですから、一つの既成事実として、国会で正式に議事録をつけて言ったことですから、これから五年間の長期を見通した場合に一〇%ぐらいということを言っておるのですから、そうすると、池田さんのところまではいかないけれども、いままでの皆さんの情勢分析は誤っておった、これは申しわけないと反省をして、陳謝をして、それから一〇%ぐらいのところに少し持っていこう、上に上げていこう、こういう考え方は間違いないでしょう。そういう上に立った手直しをするのでしょう。
  117. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) それは佐藤総理の希望でありますが、私は単なる希望だけのことは発表できない。先ほど申し上げましたとおり、確言はできないということを予算委員会で申し上げたわけであります。もう少し基礎のある材料に基づいて一〇%上がるなら上がるということを申し上げたいのであって、私としては、責任ある私としましては一〇%になりますということは言えない。総理としては一〇%上げたらいいという希望を述べられた、こう思うのであります。
  118. 鈴木強

    鈴木強君 まあ担当の経済企画庁長官と何も相談なしでぽっと言ったらしいのですね。ですから、あなたには少し気に食わないかもしれない。したがって、わかりました。あなたの強い不満を込めた総理に対する発言というものを私はここで伺いましたから、あとに出てくるものを拝見しましょう。しかし、現実には底上げというか、やっぱり上げ底じゃないけれども、底を上げなければならぬ、そういうことだと思います。  それはそれとして結果を待ちますが、早く結論を出せないものですか。これは長い間懸案になってきて国民が迷惑している。
  119. 佐々木孝男

    説明員佐々木孝男君) ただいま補正作業につきましては事務当局で作業を始めておりますが、大体今月の末に、経済審議会で正式に作業の体制を整え、御承知のように、これまで経済の実態と計画が非常に乖離しておる。この際は根本的にその問題を考え直してみたい。御承知のように、現在は計画を作成いたしますのにいわゆる計量モデルというものをつくっておりまして、この計量モデルの改定をいたしまして、それが大体八月ごろにそのモデルを十分に使える状態になるのじゃないか、そういうものを待ちまして慎重に今年一ぱいをめどにいたして作業をいたしたいと思っております。
  120. 鈴木強

    鈴木強君 では、農林省からわざわざ来ていただいて、きょう実は、農林省の診断による今月の食品とか野菜とか魚の値段の状況、あるいは産地からこっちへ、消費者まで来る流通の問題、いろいろ伺いたかったのですけれども、時間がありませんから一つだけ農林省に伺いますが、昨年の夏に例の消費者米価を、生産者米価をきめるときに、何といいますか、おまけがつきまして、おそ出し奨励金という制度がつくられました。そして、たしか六十億のワクが設定されたと思うのですよ。そこで、時間がないからこれは私、まとめて伺いたいのですが、現在まで政府に売り渡されたお米の量は幾らでございましょうか。現在まで政府が買い入れたお米の量ですね。四十三年産米です。おそ出し奨励金を出して買い入れた量がそのうち幾らになっているでしょうか。それからまだ農家の手元に残っているお米の量というのは幾らでございましょうか。そして、そのうち政府に売り渡されると予想される量は幾らになっておりましょうか。それから実際にいまおそ出し奨励金としてお払いになった金額は幾らになっているでしょうか。実情とちょっと違っているように私たちは聞いておりまして、政治奨励金だといわれましたね。このおそ出し奨励金というものが実際には、六十億円のワクをつくってみたけれども、どうもとんでもない結果になりそうだというので、農林省としても頭を痛められているように伺いますけれども、これは非常に大事なことですから、いまお尋ねした点についてお答えをいただきたい。
  121. 馬場二葉

    説明員(馬場二葉君) お答えいたします。最初に、現在の四十三年産米の買い入れ実績は、二月末日現在で九百九十七万三千四百九十八トンに達しております。まだ農家の売り渡し余力は若干あると思いますので、おおむねやはり一千万トン近くの買い入れに、年度内になるのではないか。これはまだ集計ができておりませんけれども、そういうふうに考えております。  それから例のおそ出し奨励金でございますが、これは先生指摘のように、六十億の予算で百二十万トンのものを予定したわけですけれども、これは主として大量の買い入れのために政府手持ちが非常に増大いたしまして、買い入れ倉庫の調達に困難を来たすのではないかという配慮もあっての予算措置であったわけですが、幸い倉庫のほうは新設の、あるいは増設の建設も進みましたし、あるいは従来比較的余裕のある使い方をしておりました倉庫を若干高度利用をしまして、一千万トン近い買い入れをしましても倉庫はどうやら調達できた、こういうことでございまして、おそ出し奨励のための出荷調整がどれだけ——実はこれは計画と比べますと、きわめて低い、少ない数字になっているわけです。ただいま正確な地区別——産地区別に適用の日にちが違いますので、正確な資料をただいま持ち合わせておりませんので恐縮でございますが、計画に比べますと、相当少ない出荷調整措置で済んでいる。ということは、倉庫調達が比較的順調に進んだわけでございますので、そういう結果になっております。
  122. 鈴木強

    鈴木強君 じゃ、もっと正確な資料を出してくれませんか。それからおそ出し奨励金制度というのはことし初めてできたものですけれども、どうもかんばしくないですね。したがって、これは再検討する余地はあるわけですので、それで来年どうするかということは、その態度はもうきまっていますか。来年というか、ことしですね。夏にはやらなければならぬでしょう。
  123. 馬場二葉

    説明員(馬場二葉君) 四十三年産米の出荷調整対象にどれだけなったか、あと資料を提出いたしたいと思います。むしろ私のほうは、率直に申し上げまして、四十四年産米——現在政府の手持ちは非常に増大いたしまして、本米穀年度の終わり、十月までに五百七十万トン程度の手持ちが予想されておるわけです。これはちょうど前年度末に比べますと三百万トンふえるわけでございますから、かりに四十四年産米が平年作あるいはそれ以上であれば、これは相当買い入れ倉庫の調達には困難を来たすと思うのでございまして、むしろ四十四年産米については出荷調整措置がより必要ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  124. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。
  125. 山本杉

    委員長山本杉君) 関連ございましたら……。塚田君。
  126. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 経企庁長官にお尋ねをしたい。月例報告をお聞かせ願ったのでありますけれども、その月例報告が示しておる現在の状態、これは一体それに対する評価はどうなのか。と申しますのは、これは政府が一月の二十七日におきめになった閣議決定で、四十四年度の経済見通しというものを立てておられる。その見通しに対して、予定どおりいっておるのか、いかぬのか、こういう見方、評価。さらに、もしそれが予定どおりであろうがなかろうが、この状態は非常にけっこうな状態なんだというふうな評価をなさっておられるのか、いや、そうじゃないけれども、やむを得ないのだということなのか。私がなぜそういう考え方をいたしましたかと申しますと、この四十四年度の経済見通しというものは、依然として物価上昇は、消費者物価で五%、卸売り物価で一%というものを前提に置いておられる。私はこういうような物価の上昇の予定、見通し自体に相当、今日の物価情勢から考えて問題があると思うのです。そうすると、非常にけっこうだというのならば、これでいけばおそらく去年と同じような経済情勢が出てきて、またそのうちに生産者米価も上げなければならぬ、消費者米価も上げなければならぬ、運賃も上げなければならぬという、もろもろの過去の事態の繰り返しが出てくるのじゃないか。ということは、結論として物価を頭に置いて、もう少し何らか手の打ち方があっていいのじゃないかということを自分が考えますものですから。これは非常にけっこうなことなのか、しようがないのか、そういう見通し、これはいかがですか。
  127. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) けっこうなという意味が私ははっきりわかりませんが、そこで、物価の問題の四十四年度の見通しと現在とは違っております。違ってきたことは、たとえば消費者物価でも違っております。あのときは五・四%、四十三年度の消費物価は五・四%上昇するということの見通しを述べたのでありますが、現在ではもう五%を下がっております。ですからその点は違っておるのであります。そこで問題は、やはり先生も御心配なのは物価の問題だと思います。物価は、たびたび総理の施政方針でも、また大蔵大臣の財政見通し、私の経済見通しでも述べておりますとおり、あくまで物価対策ということを重要施策の一つとしてやるのだということで、まあ物価をどうして押えるかということについてあらゆる考慮を払って、たとえば公共料金については鉄道料金以外の公共料金は上げない、こういうふうなこと、米価についても据え置くというようなこと、そういうようなことで、問題は、四十四年度も物価を五%で押えるということについていろいろ政府としては対策を講じ、また、それに対する予算も計上してやってきておる次第であります。
  128. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 それでは今度一つ一つお尋ねしますが、大体四十四年度は、消費者物価の上昇は五%程度におさめたいというねらいを持ってかかっておられるんですが、三月末までの情勢はそれに大体いける見通しの趨勢をたどっておるのですか、どうですか、その点。
  129. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 大体見通しは五・四%できたのでありまして、その五・四%に対していかにして五%に四十四年度はするかということについて、われわれは非常に苦心をしていろいろな対策を講じてきたのでありますが、ところが、いま申し上げましたとおり、五・四%にならずに、四十三年度が五%以内におさまりそうだということになっておりますからして、その点は、われわれといたしましては物価が上がらなくてよかった。五・四%にならず五%以内だったということは、この物価上昇の気分を、ムードを多少軽減したということになったということで喜んでおる次第であります。
  130. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 これはことし五%程度は消費者物価が上がるということを前提に置いておられるわけですね。見通しでいけば五・四%ぐらいは上がるはずなのが、五%という見通しで努力をしてきたから五%、大体それくらいの方向で進んでおる、こういうことなんですか。いま五・四%というのはこのあれで見ますと、四十三年度はそうであった。四十三年度はこうであったが、四十四年度は五%程度でおさまるようにしたいという努力目標を考えておられる。そこで、その努力目標自体に私は異論があるのですが、一応この五%で押えるという目標に、一月から三月までの傾向は予定どおりいっておるかどうか、こういうことをお尋ねしておる。
  131. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 四十四年度の問題は四月一日から始まることでありますからして、三月末までは四十三年度。だからその点は、四十四年度の見通しをつくってから今日までどうかということは、四十三年度については議論をするわけでございます。
  132. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 それで、もう一つお伺いしたいのは、政府が物価を非常に、総理の発言を聞きましても重要視していられることはよくわかるんですが、去年五・四%からことしはこれは五・〇%くらいというように、見通し自体がこう当然上がることを前提にしてものを考えていられるのはどういうわけなんですか。少なくとも、私は物価政策の見通しとして、物価を上げないほうがいいんだという考え方からすれば上がる率というものは、政府の腹づもり、努力目標では二、三%ぐらいに押えられてしかるべきだ。私は、このように五%という上がりを努力目標に置いておられる。また、結果において去年とちっとも変わらないような事態が出てきておる。それなら何もしておらなかった。口でだけ言ったんで、実際には物価を押えるということは何もしていなかったという結果になりはしませんか。その点はどうでしょうか。
  133. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 四十三年度の上半期には五・七%上がっています。その情勢をもってすれば、おそらく四十三年度は六%近くになるんじゃないかということをわれわれ心配したのです。そこで、何とかして物価を押えなきゃならぬということで、昨年の十二月に策定したのが五・四%です。ところが、五・四%ということに見通しをつけたのでありますが、また、天候の関係で野菜類やくだものが非常にたくさんできたということで、それが影響しまして一月、二月は消費者物価が三%下がったんです。その関係で四十三年度は五%以下、四・八か九になりそうだということを申し上げておるのであります。  そこで、昨年四十四年度の経済見通しをつくる場合に、現在私どものほうでは、四十三年度は五・四%だが、四十四年度では五%でいこう、この努力目標を五%に置こうということで目標を置きまして、そこでまず第一に、政府としてやれることは公共料金の引き下げ、抑制することだというので、公共料金の引き下げ、抑制ということで新政策をとって、その他いろいろの政策をとってきたわけであります。
  134. 塚田十一郎

    塚田十一郎君 また、次の機会にそれじゃ引き続きまして……。
  135. 山本杉

    委員長山本杉君) それではちょっと佐々木日銀副総裁にお礼を申し上げます。参考人としてきょうお出ましいただきましてありがとうございました。  阿部君。
  136. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 菅野企画庁長官にお尋ねいたします。  わが国の経済は、三十九年、四十年の不況から立ち直りまして、再び三十年代後半に見られたような高い成長率を示しております。したがって、わが国経済の適正成長率についての見方、それを達成するための政策の組み合わせも当然将来にわたって、長期的な見通しに立って見直す必要が生じていると思われます。  そこで、今後の成長政策の組み直しにあたっては、成長の促進と物価の安定をどのように両立させるかという古くて新しい課題に再び取り組まなければならないわけでございます。といって物価安定を最優先の目的として、西欧諸国においてとられたような価格、賃金の凍結、それからまた、過激な引き締め政策というのは、結局失業の増加、生活水準の停滞といった別の社会問題を引き起こして、資源配分のゆがみを固定化するので、わが国としてはとり得ないところであります。しかし、労働力の絶対的不足、急テンポで進む国際化などの新しい条件への対応を含めて、均衡のとれた持続的成長の、はずれない、しかも大幅な物価の上昇を招かない経済のフレームワークを政府はどのように描いていこうとしているのか、これを御説明願いたいと思います。  また、新しい経済社会の進展に即応して、既存の経済政策で律し得ない面も出てきているのではないかとも思われますが、この点いかがでしょうか、お伺いいたします。
  137. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いま阿部委員の言われたことは私も同じ考えです。いままでのような考え方で今後の五年なり十年先を考えてはいけないということです。第一、科学技術の発展によって新しい産業というものが生まれてくるということは考えられます。それから国際化というものはだんだんいままでよりも強化してきます。ですからして、日本だけの経済でものを考えてはいけない。国際化の日本、国際的な立場日本というものを考えて、日本の産業発展を考えていかなければならぬというようなこと、あるいはまた、いわゆる今日のはやりことばである情報化社会というようなことになってきますと、これまた産業が変わってまいります。ですからしてそういうこともあわせ考えて、今後の発展計画というものを考えていかなければならぬと思っておるのでありまして、そういうことを考慮してやるためには、もうにわかに結論が出ないわけであって、先ほど申し上げましたとおり、今年中はかかるということを申し上げたのであって、単なる作文であれば二、三日でも作文はできますけれども、もう少し基礎のある計画を立てたいということで、今年中ひとつかかってやりたいと、こう考えておる次第でございます。
  138. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 時間もあまりありませんので、いろいろとお尋ねしたいのですが、ごく簡潔にお伺いします。先ほどもいろいろ御質問もあり、また御答弁もあったようでございますけれども、この最も基本になるのは適正成長率というような見方であります。これについては、この前の経済成長発展計画におきましても、これの見方を多少誤ったというふうにも考えられます。そのための全体の手直しをしなければならぬという事態を招いたと思います。したがって、そのような何といいますか、すぐ二、三年たったら直さなければならぬ発展計画というものはそれ自体お粗末だと思いますが、今後、今年中かかると伺いましたが、これは早く立てなければならぬと同時に、正確な、適正なものを立てるべきだと思いますが、それについて菅野長官が適正成長率を幾らにするか、いままでの八・二%あるいは総理の言われるような一〇%というふうなお考えをひとつもう一回はっきりしたところをお聞かせ願いたいと思います。
  139. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) これは先ほど申し上げましたとおり、総理は一〇%ぐらいという希望を述べられたのですが、私としてはそう軽々しく何%にするということはいまのところ発表できない。先ほど申し上げましたとおり、いま作業中でありますからして、その作業ができてから大体日本の経済は何%成長するのが適正であるかという判定を下すわけでありまして、したがいまして、私としては軽々しく一〇%成長するというようなことは言えないと思いますが、しかし、日本の経済がよその国に比べて成長率が高いということは考えられると思います。あるいはアメリカや西独やフランスと比べて日本の経済の成長率はいわゆる先進国に比べて高い。また、それであればこそ、国民総生産が御承知のとおり、世界でソ連を入れて三番というように成長したのですからして、この成長率というものが相当高い成長率であればこそ外国を追い越してきたのでありますからして、したがって、先進国に比べて成長率が高いということは言えると思いますが、それが今後どれだけ高いか、いままでのような調子でいくかどうかということは、私自身まだ何とも申し上げる自信がありません。
  140. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 もう一点お伺いしますが、成長率のほうがはっきりしないということになると、なかなか結論が出ないかと思いますが、この前の計画では、最終年度には消費者物価を三・八に押えるという結論だと思います。今後のものにつきましては私はゼロにすべきだと思いますけれども、先ほど御発言がありましたように、私は、本来ならばこれ以上消費者物価の値上がりというものを押える、それがほんとうの正しい目標じゃないかと思いますが、その辺はどのようにお考えでございますか。
  141. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) それは理想からいえば消費者物価ゼロにするのが一番理想だと思いますが、日本でも終戦後三十年でしたか、一・の消費者物価がある。でありますからして、消費者物価はゼロにするということは理想でありますけれども、世界的に見ていま一番低いのが西ドイツであります。たしか一、二%そこそこだと思いますが、できれば、現在の経済社会発展計画では四十六年度においては三%ということにしておりますが、理想としては、お話のとおりゼロにしたほうがほんとうに国民生活を安定せしむるゆえんになるということでありますが、この点については、今日御承知のとおり、世界各国ともに消費者物価が上がっておるので世界各国苦心しておりまして、西ドイツも三月二十日には、また物価安定の政策を発表いたしましたし、アメリカも三月二十六日に発表いたしまして、またきょうも金利の引き上げをやったりなどして、金融財政面から物価を押えようという、私から言うとなかなか思い切ったやり方だと思うのですが、そういう政策をとっておりますので、われわれといたしましても、できるだけ消費者物価は上げないような方策でいきたいという考えをしております。
  142. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 来年度の予算規模の伸び率と関連いたしまして、予算が物価を押し上げる、こういうふうに私は考えられます。四十四年度の場合、実質成長率と物価の上昇率の関係はどうなっているか、これをお尋ねしたい。  それからもう一つは、国民総生産に対する政府財貨サービスの割合は一定でありますので、このことからすぐには予算と物価との関係というものはあらわれてきませんが、具体的に予算の中にどのような施策が盛り込まれているかということによって物価へのはね返りが出てくると思います。そこで、今度の予算の中における物価安定対策、それからいま申し上げましたように、逆に予算が物価を押し上げるこのような施策について御説明願いたい。時間もございませんからあまり詳しくはお願いしませんが、一応……。
  143. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私から基本的なことだけ申し上げて、なお詳しいことは局長が見えておりますから、局長から説明させますが、そこで消費者物価を五%ということにきめまして四十四年度の予算を編成する場合に、この五%を基準にして予算を編成してほしいということを大蔵大臣に申し出たのであります。そこで五%にするためには、まず公共料金を押えなくちゃならぬということで、まず第一に考えられるのが生産者米価と消費者米価を押えるということでございます。これが来年度では押えるということで予算が編成されておると思います。それからそのほか国鉄の料金の問題でもそうですが、料金だけで赤字を埋めようとしますると、もっとたくさんな値上げをしなきゃならぬ。そこで政府は、この際は財政的援助をすべきだということで、利子の支払いを四百八十億円ですか立てかえをやるとかというようなことを講じておるのでありまして、そういうことでいろいろ手を通じて物価を押えるようには計画をしておるわけでありまして、決して物価を上げるような予算は初めから組まない方針で大蔵大臣もやっておると私は思っております。なお、具体的なことがあれば政府委員からお答えさせます。
  144. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 ちょっといまの大臣のお答え、政府委員からもお答えお願いしますけれども、私の質問では逆に物価を押し上げる施策ですね、これについてお答え願いたい。
  145. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 物価を押し上げる施策はないですが、しいて言えば国鉄の料金を上げたことは物価を押し上げることになりやせぬかということは一応考えられると思います。これは物価上昇の寄与率から見ると〇・二%、国鉄の料金の引き上げによって消費者物価がそれだけ上がるということになっておりますから、それを言われたら私ども非常につらいんですが、それで物価を押し上げるということになったじゃないかと言われるとそれは言えると思うが、そのほかの点では、私は物価を押し上げるような政策は政府としてはとっていない、こう思うのであります。
  146. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いや、私はいま逆に押し上げると申し上げましたが、一つは全体として非常に予算は膨大だ。政府の景気刺激型の予算にならぬように、景気刺激型というのは即常識的考え方をすれば物価を押し上げる要素があるということに通ずるわけです。そういうような全体の量からもそのような物価を押し上げる予算じゃないかと思う。それを具体的に申し上げますと、内容的についてはいろいろあると思います。長官はさっそく鉄道料金の問題に触れましたが、それだけ御心配なさっているということは私も敬意を表しますけれども、しかし、そのほかにも防衛費だとかというような、それらも結局はそういったような予算の中に含んでいる、たとえば自衛官の増員だとか、そういうようなものも物価を上げる要素になると、こういうふうに思いますので、その辺、長官いかがでございましょうか、御答弁を願いたいと思います。
  147. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 財政が物価に対してどういう影響があるかという問題につきましては、当然御指摘にありましたように、いわゆる需要という面でいわば物価を引っぱる要素になるわけであります。その点につきましては、たとえば、ただいまお話しになりましたようないろいろな政府の財貨なりサービスなりを購入いたします割合、これは今年度の場合はたとえば経済成長率は御承知のように、一四・四%と四十三年度から四十四年度の伸び率を推定いたしておるわけでございます。それに対しましては政府財貨サービスの購入の比率の四十三年から四十四年の伸び率は一二%台ということで、経済全体の規模の中では政府のそういう支出の伸び率は少ない割合を占めております。そういう意味において、決して財政が景気刺激型になっておるというふうには必ずしも言えないのじゃないかということが第一点でございます。  一方、そういうことで、いずれにいたしましても政府が財政の面で需要をつくるということは別に、何も活動しなければその分だけ減るわけでございますが、やはり反面、物価対策ということもございまして、やはりいろいろな予算支出ということを出していかなければなりません。機能としては、場合によってはもろ刃のやいばであるかもわかりませんが、そういう点につきましては、今度は逆にかなりな程度に物価対策の関連予算というものは別な意味においてやはり支出して、物価に対するよい影響を与えるという努力をいたしておるつもりでございます。  なお、申し落としましたが、国債依存度等につきましても、これも国債依存度を減らすことが物価に対してどういう影響があるか。多少の議論があるところでございますけれども、やはり従来に比べまして格段に依存度を減らしておるというようなこともプラスの面ではないかというふうに考えられるのであります。
  148. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 物価安定対策について、予算の中でこれをちょっと列挙していただきたいと思います。
  149. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) これは、先般当委員会へ私どものほうから資料としてお出しをいたしましたが、その概要をその際ごくあらましに申し上げましたので、再びくどくど説明することは省略いたしたいと存じます。  従来の物価対策に対する私どもの考え方、もちろん総需要という面で財政金融政策は重要でございますが、一面、日本の消費者物価対策というのは、いわゆる長官の言われます低生産性部門が大きなウエートを占めておるというようなことに着目した対策、あるいはまた、労働力の流動化、これはやはり現在の大きな一つの消費者物価を押し上げる要因が労働力の十分円滑な移動なり供給なりがうまくいっていないというような点にあるのじゃないかというような観点からでございます。そういう対策あるいは特に、最近目立ちますのは、生産地から消費者の手元に渡るまでの間の流通の問題がやはりある種の日本的な特徴を持っている。そういう点についての諸般の対策ということ等でございまして、以前に一度資料としてお出しいたしたことがございますけれども、また、必要があれば再び詳しく御説明いたしたいと思います。
  150. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 実はその辺のところを詳しくお伺いしようと思いましたのですが、もう時間の関係もありますので、また、機会がありましたらお願いいたすことにいたしましょう。  ただいまの国鉄運賃の値上げでございますけれども、これは先ほど来長官も言われたように、これだけでも〇・二%物価にはね返る。これは〇・二%というのは非常に大きな数字でございます。国鉄運賃の値上げというものはいかに大きな問題であるか、物価についても私たち痛切に感ずるわけでございますが、この国鉄運賃の政府の引き上げということは、受益に見合って負担させるという受益者負担原則の上に国鉄再建を進めるというねらいと、それからまた、物価の影響をどの程度配慮するかという点から、残念ながら前者に重点が置かれたものと思われます。しかし、とにかく国鉄の旅客運賃が一五%引き上げということは、それだけでもって消費者物価全体を約〇・二%引き上げることは、これはもうまぎれもない事実でありますが、この〇・二%値上げになるということについては、長官、そのとおりでございますか、お伺いいたします。
  151. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) それは私も、たびたび各委員会で申し上げております。
  152. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そうすると、われわれは、この国鉄料金だけは間もなく一割五分上がると、それはそれだけとしまして、ほかに影響もなければこの〇・二%だけの問題——まあ、物価に対してははね返ると思いますが、現実には御承知のような事態になって、私鉄の運賃あるいはバスというものの値上げの申請も来ております。これがしかも、長官は私鉄運賃は上げないと先ほど来おっしゃっていますのですが、この運賃のほうの担当省である運輸省におきましては、新聞報道ですが、何となく上げると、やむを得ないと、このような空気があるように拝せられます。ことに六月ごろは上げなければならないのだという月まで出しておりますが、この辺について、ひとつ大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  153. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 国鉄の運賃の値上げが物価に影響することはもちろんでありますが、私たちでもう一つ心配したのは、国鉄の運賃の値上げに便乗して、私鉄やその他の交通関係の公共料金の値上げを要請してこないかということを心配したのです。というのは、そういう国鉄以外の交通関係の公共料金の値上げを、国鉄の料金の値上げに比例して値上げしますと、〇・一%上がるという予想をしておるのです。それに、上げますと、これはやはり便乗になるものなんです。いままで国鉄の料金上がると、私鉄の料金も上がるという便乗値上げをやってきておりますからして、そうすると私鉄も値上げする。そうしてほかの物価も同じようにやはり便乗して値上げするということを私たち心配いたしまして、そこで国鉄の料金の値上げを認めたときの条件として、交通関係の公共料金は極力抑制するということを約束してもらったのであります。でありますからして、まあ、極力という意味は、一切なら一番いいのですが、一切ということは言えないのは、地方の鉄道やバスになりますと、上げなければもう廃線する、廃車するというようなところがありますからして、そういうところは、それらがもし廃線すれば、経済的な打撃を与えることは非常に大きいものでありますからして、そこらはひとつ料金の値上げを認めてあげようというようなことを考えて、極力ということばを使ったのであります。でありますからして、大体値上げしないということが本体であります。で、交通関係の公共料金は、やむを得ざるものについては値上げするということで、いま実例を申し上げた。現に私が大臣になってからも値上げを認めております。  そこで、運輸大臣もそういう意味のことは十分了解しておりますから、経済企画庁の方針に準じて私もやりますということを、運輸大臣もしばしば言明しておるのでありまして、が、しかし、運輸省としては、こういうものの値上げやなんかを受理する場所でありますから、一応申請があれば受理しまして、受理してまたその審査はもちろんしなければならぬ。審査はしておるのであります。そこで、審査してこの地方鉄道だけは上げてやらなければやっていけぬというような場合には、もちろん私どもにも相談があって、こういうわけで値上げせざるを得ないというので、それではその地方の経済開発というようなことを考慮してそれは値上げしましょうというようなことで、値上げを認めておるわけでありまして、でありますからして、運輸省としては、一応申請を受理しますからして、そこで皆さん方、受理したら値上げするようにお考えになるかもしれませんが、決してそうではないと思います。どうせ私どもにまた御相談があると思いますからして、経済企画庁としては、物価に影響を及ぼすようなことで、私鉄大手についてはこの際は抑制するという決意であるということを、私はこの委員会で発表いたしております。運輸大臣もそばにおって聞いております。したがって、運輸大臣も、経済企画庁の長官の方針のとおり私も準じてやりますということを言明しておりますからして、物価に影響を及ぼすような交通関係の公共料金は抑制するという方針でいきたい、こう考えております。
  154. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 長官のいまの御説明承ったのですけれども、とにかく私どもにすれば、このような、要するに、運賃関係が物価を引き上げるという要素になる、もとはといえば国鉄料金を上げるということが原因だと思います。それだけに経企庁としては、相当それに対しては、物価を上げないという立場から、運賃値上げには反対されたことと思います。しかしながら、現実には、まさに国鉄料金は上がろうとする情勢にあるのを非常に私は遺憾に思っておりますが、それにつけても、よけい派生した問題が出てくる、便乗値上げと申しましょうか、出てくることについても、大体長官の御説明でわかりましたけれども、長官のいま言われましたように、私たちは物価に影響を及ぼすということは、大手八社と申しましょうか、東京と大阪の大都市近郊会社は非常に利用者も多いし、それだけにまた物価に大きな影響を及ぼすわけであります。そのために波及を非常に心配しておるわけでありますが、ひとつこれは絶対に値上げは認めないという強い態度でぜひやっていただきたいと思います。  それから私のもう一つの、これは運輸省のほうの問題でございましょうけれども、国鉄料金がかりに上がるといたしますと、私鉄料金は非常にアンバランスになります。東京の中でも、いろいろ例をあげればきりがありませんが、地方によっては非常に何割か違う。利用者はほとんどそろばんの上からは私鉄で行ってしまうというようなことさえも起こる可能性がある。それだけに運輸省当局としては上げる合理性といいましょうか、そういうものがあるのだと思います。ただ、ではなぜ運輸当局は私鉄に対しては——えらいかわいがるような傾向がありますので、なぜ彼らにとっては、私鉄にとっては不合理なこれを是正しようというような一つの名目を、あるいは合理性を根拠に、値上げについて非常に激しく、何といいますか、当局に迫ると思いますが、このことについては、ただいま長官のおっしゃったことをもっと強く堅持して、絶対に私鉄の料金値上げを阻止していただきたいということをお願いする次第であります。なお、もう一問お伺いをしたいと思いますが、先ほどもちょっと触れましたけれども、結局消費者物価上昇の大きな要因になっている、いままで過去数年来の傾向としましては、いわゆる消費者米価の値上げの問題です。これは国鉄料金の値上げのときにも、消費者米価、いやむしろ生産者米価も含めて据え置くのだ。政府では再三総理もあるいは担当大臣の方も言明されております。私もそれは信じておるわけでございますけれども、ただどうしてもこのような物価が、だいぶ最近はおさまったような傾向がありますけれども、少なくとも昨年からは五%以上の物価の上昇、消費者物価の上昇はあったわけです。これは結局お米の生産者の方にもはね返るわけでございますから、言うならば、生産者米価というものはある程度いじらなければならぬような状況になりはしないかと思います。そうすると、結局昨年も実現しましたように、総合予算主義とかなんとかというような非常なもっともらしい名目をつけて、いやおうなしに消費者米価を八%上げてしまう。そこで、だぶついたお米の中で高いお米を食わされている国民こそいい迷惑であります。そんなことから私はまた去年と同じことが繰り返されはしないか、それを非常に心配しております。ですから、これもぜひそのようにならぬことを強く希望するわけでございますが、どうしてもお米の値段を上げる、いままで四年間も続いて消費者米価を上げてきたわけですから、その惰性で上がる可能性、上がるようなそういう雰囲気の出ることを非常に憂えているわけであります。それだけに、ひとつぜひそのようなことにならぬように長官にがんばっていただきたいと思いますが、その辺について長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  155. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 実は国鉄の料金の値上げは、これはもう国鉄そのものを生かしたいというわれわれ考え方で、料金の値上げは犠牲に供したわけですが、そこで〇・二%の値上げの率はもっともですからして、それを何かでカバーしなければならぬ。カバーするについては、最も私たちが強く主張したのは米価です。消費者米価が上がるたびに一般の物価は上がっております。昨年、一昨年の例を見ても、やはり十月ごろから上がっているのです。去年の上半期には五・七%上がったというのは、やはり一昨年の消費者米価の値上げがずっと影響している。でありますからして、この生産者米価と消費者米価はこれはあくまでも抑制するということをかたく堅持しなければならぬということで、この点は総理もはっきり言うておりますし、大蔵大臣もはっきり言うておりますし、農林大臣もはっきりそれは言うておるのでありますからして、これは私はこれを押えることができると思っている。これを押えさえすれば一般の物価は下がる、上がらない。上がらなければ、われわれも一般の物価を押えることができるのでありますからして、どこかでストップしなければならぬ。それは生産者米価、消費者米価を、広くいえば公共料金を押えるという意味から、ストップのかぎだと思うのでありまするからして、そういう意味で御心配の米価については私ども極力——極力というと少し意味が弱いかもしれませんが、もう上げないということについては総理もかたい決意をしておりますからして、間違いないということは確信を持っている次第であります。
  156. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 総理も何といいますか、確言されているようですし、長官もそれに対して相当の決意をしておられるようでございますから、長官を信頼しまして、ひとつそういうことに反することのないようにお願いします。  以上をもちまして終わります。
  157. 山本杉

    委員長山本杉君) 中沢君。
  158. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 時間がだいぶ過ぎてまいりましたけれども、まずJAS問題について一言お伺いをしたいと思います。  農林物資規格法の一部改正について、農林省の非常な努力と苦労は多といたしますけれども、この問題について農林省と公正取引委員会と多少いざこざがあったように私どもは聞いております。その点はどの点とどの点でございますか。
  159. 大河原太一郎

    説明員大河原太一郎君) 法案作成の過程におきまして、政府部内でいろいろ論議が出て調整につとめてまいりまして、最終的には案が固まりまして近く御審議を願うことになっているわけでございますが、公正取引委員会の当局と農林省との議論は、一つは消費者保護基本法の附帯決議にも、統一食品制度というものがなされまして、政府はこれを受けて順守をいたしたいということがあることは、先生御案内のとおりでございます。農林省の食品表示制度への一つの何と申しますか、われわれは前進と考えておりますが、その案が統一食品制度というものについて、かえってマイナスになるのではないかという御懸念が当初あったふうに承知しております。また、公正取引委員会のほうにおかれましても、従来不当景品類及び不当表示防止についてはいろいろ御努力を願った実績がございますから、それについて本来のその機能というものが農林省の今回の案が出ることによりまして、何と申しますか、チェックと申しますか、多少そこへマイナスに働くのではないかというような御懸念があったわけでございますが、これらの点につきましては、消費者保護行政の総括調整に当たります経済企画庁に調整していただきまして、十分に議論を尽くしまして、今回御審議していただくような法案に落ちついたわけでございます。
  160. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私どもは、その食品の表示の義務づけという、これの制度化は、公正取引委員会の従来のあり方からどうも公正取引委員会のほうが運用に非常に困るのではないか、このように考えるわけですね。そこで公正取引委員会による景表法の運用が農林物資のこれの問題については事実上らち外に置かれるのではないか、このようなことを私どもは非常に心配をするわけです。それで公正取引委員会としては非常に仕事がやりにくくなるのではないか、このように思いますので、公正取引委員会のほうからひとつ御答弁をいただきたいのですけれども、きょうは、ほんとうは公正取引委員会だけ来ていただくと遠慮なく言えるかと、このように思いましたけれども、そう時間もいろいろいただけませんので皆さんに一緒にいていただきますが、どうか公正取引委員会は、消費者は非常に公正取引委員会に期待をかけております。その点でどうか遠慮なくその点を答弁をしていただきたいと思います。
  161. 柿沼幸一郎

    政府委員柿沼幸一郎君) 農林物資規格法の改正問題につきましては、食品全体の表示の問題についての政府としての統一的な政策調整という面から見まして、私ども所管いたしております不当景品類及び不当表示防止法は主として消費者保護という観点から運用が行なわれております法律でございますので、十分私どもの運用と調整ができたところで法案を決定していただきたいという要望を持っておったわけでございますが、経済企画庁御当局に中に入っていただきまして、私どもの意のあるところも十分法案に盛り込んでいただきましたかっこうで政府案を決定するということになった次第でございます。
  162. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 厚生省のほうの食品の表示の義務づけ、この問題は厚生省所管の食品衛生法との関連がどうなるのか、あるいは厚生省の食品衛生法の領域を今度のこのJAS法の改正が侵すのではないか、このように思いますけれども、その点いかがですか。
  163. 大河原太一郎

    説明員大河原太一郎君) 冒頭にも先生から御懸念があったように、われわれ法律制度をつくります場合に、将来は統一的な食品制度に逐次前進していくのだという態度で、われわれの職責と権限にあります食品表示制度を充実する、それがいやしくも将来のそういう前進にとって、他制度の整備促進にとって、何と申しますか、阻害するようなたてまえであってはならぬという点については慎重に配慮したつもりでございます。この点についてはまた法案御審議の際にこまかく申し上げさしていただきたいと思いますが、法律制度上も食品衛生法上の権限を侵すものではないと明記いたしましたし、また、運用におきましても、表示の施行につきましては、経済企画庁の調整に基づきまして厚生省とは具体的に協議をいたすというような、運用面でも十二分の配慮をいたしまして、先生御懸念のいやしくも起こらないような措置を講じてまいる手当てはできておる状況でございます。
  164. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 たいへんくどいようですけれども、やっぱりわれわれが、いままでの感覚から言って、厚生省の食品衛生法、それから公正取引委員会のいままでの景表法、そういう点をいろいろ考えて今度の問題を見てまいりますと、何だか行政が二重、三重の行政になっているような感じで、必ずこれが消費者保護になるかどうか、こういうことでどうも何だか疑わしいような感じがするわけです。国民生活審議会の消費者保護部会がこういうものを出しておりますね。意見書というものを出しておりますが、その中で、JAS改正にあたっては、「表示義務制の措置は、表示の統一化への配慮を含めて再検討すべきであろう。」と述べていますが、これはやっぱり再検討をなさる御意思がありますか。
  165. 大河原太一郎

    説明員大河原太一郎君) 先生おっしゃいましたように、国民生活審議会の消費者保護部会におきましても食品表示制度万般について御検討がございまして、その際、当省で用意しておりました法案について御議論を願いまして、ただいま先生のおっしゃいましたような御答申をいただいたわけでございますけれども、これにつきましては、むしろ御議論の過程を参酌いたしまして、当初の農林省原案についてのいろいろな御意見で、各省と調整する以前の案について御議論を願ったのであります。この御議論の推移を十二分にわれわれ拝聴いたしまして、これも御審議の際にいろいろ検討していただきますが、農林物資規格制度、現在のJAS制度、われわれに与えられておりますこの制度の普及とその拡充という形で加工食品の一般についても表示義務を導入したいというふうに、御議論の過程を十分再検討いたしまして、政府部内において最終調整いたしましたのが今回御審議をしていただく案でございます。
  166. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 この間の参議院の予算委員会で私もこの問題にちょっと触れてみたのですが、農林大臣あるいは厚生大臣からの御答弁が非常に簡単な御答弁しか伺えなかったものですから、きょうはここで一つ二つ質問してと思って立ち上がったのでありますが、公正取引委員会にお伺いをいたします。  農林省のJASマークの中で住宅用木材にJAS規格ができていたのに、これを二十年間もほったらかしていたために、非常に品質の悪い木材が出回って苦情が絶えないと聞いておりますが、公正取引委員会はなぜこれを取り締まらずにほったらかしておいたのか伺いたいのですが、これは公取としてはチェックできないのですか、どうですか。
  167. 柿沼幸一郎

    政府委員柿沼幸一郎君) 農林物資規格のある商品についての不当景品類及び不当表示防止法の適用の問題でございますが、もし実際に不当表示になるような事実がございますれば、私どもといたしましては適用ができるわけであります。ただその場合に、その商品についてJASが制定されておりますという場合には、やはり景表法の運用につきましてそこに何がしかの遠慮はしなくちゃならぬという問題はあろうかと思うわけでございます。今回の法律改正案は、JASの制度につきまして一歩前進するということで、いろいろな点で改善されるような法案になるように私どもは存じているわけであります。  それから具体的な問題といたしまして、建築用の木材について若干行政的に私ども問題にした事件はあるわけでございますけれども、特にJASの規定と関連いたしまして私どもの景表法の運用に支障を来たしたという案件は私がいま記憶している限りではなかったように考えております。
  168. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうすると、食用油ですね。これもJASの規格が制定されて今日まで十九年になりますが、やはりJASマークをつけた食用油というものはほとんどなかったように記憶いたしますが、その理由はなぜですか。
  169. 大河原太一郎

    説明員大河原太一郎君) 先生指摘のように、食用油脂につきましてのJASマークは相当早期にJAS規格の制定があったわけでありますが、当初はJAS制度に対する認識も非常に薄く、何といいますか、自己のブランドで売ったほうがむしろ有利であるというような意識が強うございまして、ほとんどJASの受検率というものがネグリジブルだったというのは御承知のとおりであります。しかしながら、最近は加工食品に対する品質規格の向上及び表示の適正化という問題の消費者のみなさま方の声の高まりに応じまして、特に非常に不幸な事態でありましたが、昨年の米油事件、あれを契機にいたしまして、業界で急速に全品目についてJAS規格を設定したい、しかも古いJAS規格は水準が低過ぎるということで、実は本年三月、植物油脂につきましては大改定をいたしまして、業界も今度は自主的にJASを受検して消費者の皆さんの選択に資する、あるいは御心配を晴らしたいというような体制になっております。
  170. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうすると、今度レベルアップをしますと、いわゆる中小零細の油屋さんというものが相当倒産をするんではないんですか。その辺を私どもはまた一面では心配しながら、農林省のJAS規格が少し低いのではないか、それは消費者にとって非常に不利益だ、このように思いますが。
  171. 大河原太一郎

    説明員大河原太一郎君) 食物油脂の精度の規格等につきましては、いわゆる大企業の製品と中小企業の製品がそのものとしては格段格差があるというふうにはわれわれ承知しておりません。したがいまして、われわれといたしましては、今度制定いたしました食物油脂のJAS規格につきましては最近の情勢を勘案いたしまして、相当高い程度に規格を設定いたしておるというふうに心得ております。
  172. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは油だけでなしに、かん詰めなんかについても同じようなことが言えるんではないか。自分のブランドをつけておりますと、やっぱりJAS規格が少し低くなり過ぎやしないか。JAS規格を適用させようとすると、いわゆる中小あるいは零細のかん詰め業者ですね、そういうものも引き上げていくためには規格が私は下がるような感じがするんですが、そういう点におきまして、私はこのJASマークの改正法案を出す以前に、まだ農林省としてはやるべき仕事がたくさんあるんではないか。それで、いまの木材の問題にしても食用油の問題にしてもあるいはかん詰めの問題にしても、いろんな点でまだまだやるべき問題があったんではないか。あるいはまた、輸入品についてもJASマークを適用するように、こういうことも参議院の消費者保護基本法の附帯決議でそれもうたっております。その辺はどうなっておりますか。
  173. 大河原太一郎

    説明員大河原太一郎君) だんだんの御質問でございますが、事柄を分けて申し上げますと、いまの木材の点につきましては、実はJASが昭和二十五年に発足したわけでございますが、当時は戦時中の林産物検査制度の規格をそのまま用いたという経緯が実は恥しながらあるわけでございます。そういう点で、先生いま御指摘のような問題があったというふうに私どもは実は承知しているわけでございます。一昨年、木材につきましてはJAS規格の改正をいたしたという経緯になっておりまして、私どもといたしましては、一昨年制定された規格であればその品質の保証はかなえられるというふうに承知しておるわけでございます。  それからいまブランドの問題とか、あるいは中小企業の問題とか、いろいろございましたが、JAS制度の改正の今度の問題は、単にこれは法律だけではございませんが、JASの規格の一般的なレベルアップはもちろんでございますが、規格を多様化いたしまして、そうしてはっきりグレードをつける。そうして消費者の方に見ていただいて、選択していただくというような規格の多様化ということが一番大事ではないかと思うわけです。ややもすればわれわれ従来画一的に、この点について多様化についての努力を怠っておったというふうに思いますのであります。  最後に、輸入品につきましては、今回法律改正によりまして、はっきり対象にいたすということで、本委員会の御決議にもこたえるという姿勢でおります。
  174. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 厚生省の方おられると思いますが、最近のいろいろな食品に相当有毒食品とか、それからどんどんふえてきたいんちき食品がありますね、こういうような問題やカネミの油の問題にしても、ずいぶんいろいろな食品添加物の中から人体に非常な害を及ぼすような事件が次々起こっております。こういう中で昭和二十二年——二十二年というといまからもう二十二年前ですが、そんなときにつくった食品衛生法そのままでこういうような食品の取り締まりをして、私それで十分満足だというわけにはいかないと思う。そこで、何とかいろいろな問題を含めて食品法というものをつくるべきではないか、こういうようなことを私どもも盛んに希望しているわけですね。それはいろいろな消費者団体からも希望されていると承っております。ところが、厚生省ではその原案ができたように私ども承っておりますが、それを出すとか出さないとかということで厚生省の中にずいぶんいろいろな意見があった。で、ついに厚生省はこれをやっぱり出さないようにしたと。ただ厚生省は衛生的な面からだけ取り締まればいいんだというふうな観点で、もうこの食品法を今度は出すことをやめようと、こういうふうなことをいわれたということを私どもは新聞の報道で伺っておるわけです。この間その点も斎藤厚生大臣に御質問申し上げましたところが、いや、これはまだ出さないとはきまっておりません、早急に検討して出そうと考えております。こういうふうに答弁をされておられるんですが、その真相をひとつ伺わしていただきたいと思います。
  175. 野津聖

    説明員(野津聖君) 昨年来、消費者保護基本法が成立いたしました際のいろいろな御審議の中で、食品衛生法の実効——いま御指摘いただきましたように、現在の社会情勢の変化によりまして当然この食品衛生法についての改正の問題について、さらに実効あるものという御決議もいただきましたわけでございまして、その面からいわゆる食品に関します消費者保護行政をいかに進めていくかという面からずっと検討を続けてまいったわけでございます。また、すでに御承知と思いますけれども厚生省の仕事といたしまして、国民保健ということが厚生省の仕事になっておりますものですから、国民保健の見地からいわゆる食品につきまして表示制度を充実していくという面を重点といたしまして、食品衛生法の改正につきましていろいろ検討を続けてまいったわけでございます。しかし、いろいろな面を規制を加えてまいります際に、実際にその規制を法律で加えましても、これが実際に具体的に規制として成り立たない、あるいは実行をしにくいというふうな問題があったのでは、これはせっかく法律をつくりましてもこれが実効のある問題とはならないというふうな問題がございます。たとえば技術的に実際にそういうふうな表示をさせた場合に、これがほんとうの表示であるか虚偽の表示であるかということが、まあある原材料などをまぜた場合に、これを現在具体的に分析することができるかどうかというふうな問題もあるわけでございますが、さらにはいろいろな規制を加えました際に、これに対します監視体制というふうなものを十分整備しておりませんと、空文になりまして、せっかく私ども実効を期したいという面が実行できない面があるんではないか、そういうふうな面がございましたもんですから、いろいろ検討を続けてまいりました。さらにほかの、先ほどお話もございましたように、景表法の問題あるいは農林物資規格の問題、あるいはほかの制度等の問題もございます。したがいまして、この点を十分詰めていくということ、あるいは具体的にこういう問題があるからこれについては当然規制をしなければいけないと、しかもこれは法律の改正まで持っていかなければ規制できないんだと、こういうふうな問題などについていろいろ検討を続けてきたわけでございますけれども、多少その辺もいわゆる実行ができる法の施行体制というふうなものを、技術的なりあるいは体制的なりの問題というものをできるだけ整備してからいきたい、こういう面がございまして、時間的な問題がございまして、今度の国会に提出するということは非常に困難な状態になってきました。しかしながら、現在の食品衛生法、御承知のように、衛生上の危害の発生を防止するという中でも、やはり私ども従来までやってまいりました中で多少不備もございまして、国民の方の御要望に沿えない点もあったというふうに感じておりますものですから、その面につきまして現行法の範囲内でも、その現行法の目的を精一ぱい拡大いたしまして、その中で規制できますものにつきまして、これは政令なりあるいは省令なりの改正をとりあえず実施するということで現在鋭意検討いたしております。これはできるだけ早い機会に政、省令の改正へもっていきたい。さらに、これで食品衛生法の改正についてあきらめたわけでございませんで、やはり前向きの姿勢でこの食品衛生法の改正の問題につきましては引き続き検討を続けておりまして、できるだけ国民の保健というものを担当しております厚生省立場という面から前向きに検討していきたい、こういうことでございます。ただ、一般に言われております食品法の場合、はたして総括的に私ども国民保健という立場からの規制の問題、あるいは実際に消費者の側から見ました場合に、経済的な損失を防ぐというふうな問題とあるわけでございまして、この経済的な損失を防ぐという面までも含めました形でその食品法というものを制定する場合でございますと、どうも私どものいわゆる食品衛生という立場からではうまくいかない問題がございます。したがいまして、これを担当し、関係しております各省庁とも十分御相談申し上げながら、あるいはむしろ経済企画庁のほうに音頭をとっていただきまして、国民立場に立った形での経済的な損失までも防止するという形での大きな意味の食品法というものは十分詰めながら検討していかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  176. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ずいぶん詳しく御答弁をいただいて感謝いたします。そういうふうに非常に何かいままだむずかしい段階にあるようですが、そういう中で私は農林省のJAS規格の改正だけが一点飛び出してしまって、まだ私どもとしては消費者側に立てば、やっぱり公取のほうで何とか景表法ですか、それの改正をやってもらいたいと、このように消費者側では考えておるわけですね。そういうような投書や要望が相当行かれると思いますけれども、そういう中でいまの厚生省の食品法、あるいは農林物資規格法の改正、あるいは公取のほうでいわゆる景表法ですね、そういうものの改正とあわせて、三者が一体となって私は今度の改正をすべきだと、こういうふうな私ども意見を持っているわけです。  それで最後に、先ほど申し上げました国民生活審議会のほうからの意見として、監視体制の強化が非常に必要である。しかしながら、この監視体制のことが今度のこの改正案の中には盛られていない、こういうふうに言われておりますけれども、その辺はいかがでございますか。これはまた経済企画庁長官が監督をすべき問題だと思いますが、その経企庁長官は監視体制の強化充実が必要であり、業界自体による相互の監視、あるいは地方公共団体の機能の活用、あるいは消費者教育の推進、食品分析等に関する専門機関の協力等によって政府は積極的に配慮すべきであると、こういう意見が出されているのですが、この点について経企庁の長官のお考えもあわせて伺いたいと思います。
  177. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 法律をつくりまして、その法律が所期する目的が十分に守られているかどうかということが抜けておりますと、これはいわばきわめて空虚なものになるわけでございます。そういう意味におきまして、この国民生活審議会の消費者保護部会の昭和四十四年三月七日の意見は、その点も強調されておるものだというふうに考えております。特に、ここでそういう意見が出ました一つの大きな理由は、食品はきわめて多種多様でございますし、しかも消費者はきわめて何回かの接触すると申しますか、購入したり、消費したりする機会があるわけでございますから、これをすべて役人がそばで見張っているということになりますと、これは非常にむずかしい問題がある。そこで、もちろん役所はそれなりの立場でしっかりと体制を整えるということは必要でありますが、さらに業界自体による相互監視であるとか、あるいは消費者のほうからの十分な知識を持った目での監視であるとか、いろいろな観点で総合的によく見張っていかなければいけない。それについても政府自分のところは自分のことだけやっておればいいのだということではなくて、消費者教育については大いに推進をするとか、いろいろの点について配慮すべきであるという御趣旨であるわけでありますが、全く私どもも同感であります。もう少し食品衛生法を所管しておられる厚生省あるいは農林省それぞれの関係各省が十分この点について配慮されておると思いますが、まだ正直に申し上げまして不十分でございます。多少の予算的措置等もあるようでございますが、まだ不十分でございますので、今後とも関係各省全部歩調をそろえまして、その点について積極的に取り組んでまいりたいと思います。
  178. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 最後に、それじゃもう一つだけお伺いいたしますと、どうしても先ほどから流通部長ですか、お伺いしておりますと、私がいろいろ申し上げますと、ときどきあまりおもしろくない顔をなさるもんですから、とてもやっぱり気になるわけですね。やっぱり農林省のほうは生産者サイドでいろいろものを考えておられるのではないかと、そういうふうに私は非常に心配をするわけです。それでしばしば変な顔をなさっているので気にかかるのですが、その点で私はやっぱり農林省だけが飛び出してこの問題を早く法案を出してきたというところに非常に私どもは疑心暗鬼と、こういうような感じがするわけです。それですから、これはまた法案が出てきた時点においていろいろ慎重に質問させていただきますけれども、とかく審議会においても、業界代表が出てきても消費者代表は入れてもらっていない、これは間違っておりますか。あるいは消費者代表の数のほうが少ない、生産者代表のほうが数が多い、こういうようなことになります。消費者というものがやはりもう一つ十分意見を反映させていただけないか、こういうところに私どもは案じられるわけです。それで先ほどから申し上げておりますが、これは三つが一緒になった時点で出していただくほうがほんとうの筋ではないか、このように思うわけです。くどいようですが、もう一ぺん御答弁いただきます。
  179. 大河原太一郎

    説明員大河原太一郎君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、まあ消費者保護の緊急の課題に農林省の与えられました職責と責任をその面で果たすという姿勢で今回の法律案を用意したわけでございます。そういう意味で、統一食品制度の確立、その他、一つの理想がございますが、それへの一里塚というような考え方でわれわれ責任を果たさせていただきたいと思うわけでありますが、今回の法案の作成その他の過程でいろいろ消費者の皆さんからその点についての御懸念が多々あったことも十分承知しております。これはわれわれ産業官庁の消費者保護行政は、やはり事業者に傾斜するというような可能性を持っておりますし、現に率直に申し上げますと、われわれの行政の過去のあれにおいてもそのようなそしりを受けるような点があったことは深く反省しておるところでございます。まあ、それはそれといたしまして、一歩でも前進いたしたいというところから思いを新たにいたしまして、各般の施策を整備いたしたいという気持ちでおることを率直に申し上げます。  なお、ついででございますが、消費者代表を農林物資の規格とか表示について意見を十分反映させるように配慮するという点につきましては、現在の農林物資規格調査会の加工食品部会におきましても、婦人団体、消費者団体の皆さんの御参加を求めておりますが、この点については、法案を今後委員にお願いする場合とか、あるいは委員会の運営等につきましては、ただいまの御注意を十二分に体して、いやしくも事業者に傾斜したというような姿勢のそしりを今後受けないようにいたしたいというように考えております。
  180. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは時間がありませんから、もう一つだけお尋ねしておきます。  タクシーの問題についてお伺いいたします。経済企画庁長官、もうタクシーの値上げの申請が大阪で出ておるように承っておりますが、国鉄運賃値上げの問題がいま相当国会の中でたいへんな問題になっております。こういうときに、国鉄の運賃を上げると、先ほど阿部委員から御質問がありましたように、連鎖値上げになる、そういう中で最も連鎖値上げになるだろうと心配されているのが、私鉄とバスとタクシーでございます。しかも、もうタクシーは値上げの申請がなされている、このように言われておりますが、長官はこれをどのように受けとめられますか。
  181. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 陸運局から運輸省へは申請が出ておるらしいのでありますが、先ほど申し上げましたとおり、運輸省としては一応受理して、そして経理内容からいろいろ審査して、その上で、運輸省でこれはだめだというのならだめで、書類を下げるとか、あるいは、これならば何とか値上げを認むべきではないかというようなときには、また私のほうにも御相談があります。まだ私のほうには来ておりません。が、しかし、先ほどから阿部先生に申し上げましたとおり、もう便乗値上げは押えるという方針でおりますので、その点ひとつ私の意のあるところを大いにくんでいただきたいと思います。
  182. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうしますと、これは新聞報道ですけれども、私の見た新聞によりますと、大阪で申請をしている百七十八社のうち、六四・六%が赤字会社だ、こういうふうにその新聞は報道しているわけです。そうすると、受理して、審査をしてみて、六四・六%も赤字だったら、値上げせざるを得ないような状態になるのじゃないかと思いますね。  それからもう一つは、いま私どもがタクシーに乗りますと、客席の前のところに、もう何か黄色い字で書いたものを一ぱい張ってございます。値上げをしてサービスをよくするとか、値上げをして安全運転をするとか、いろいろ書いてあります。そうすると、もう当然値上げをしてもらわなければ困る、こういう前宣伝だと思うのです。それも、しかも、まあ企画庁長官はタクシーにお乗りになることはめったにおありにならないと思いますけれども、われわれはしょっちゅうタクシーに乗るわけです。一昨日の晩でも、新大阪を八時の汽車で参りますと、東京駅に着くのが十一時十分。必ず、そのころにあそこに着きますと、まず二十分から三十分は、がたがたふるえながらでも、待たないと、タクシーは来ない。それはタクシーは絶対来ないわけじゃない。やはり東京駅にお客さんを運んで来る車はだいぶあるのです。ところが、そのお客さんをおろしても、しゃあっと向こうへ行ってしまうわけです。われわれ長蛇の列をなしておる者を横目でにらんでさっと行ってしまって、こっちに来てくれない。たまにいい運転手が来てくれて、やっと一人か二人ずつ片づいていく。こういうことでは、八時の新幹線に乗ってくるのは、これはつらいわけですけれども、われわれはあちらやこちら用事があるわけですから、どうしても八時の新幹線を使うわけです。そうしていろいろ聞いてみますと、それはタクシーの運転手さんの給料が何年か押えられて、あのタクシー汚職以来値上げを見送ってしまったものですから、運転手の給料が改善されていない。改善されないから、いい運転手さんが来ない。乗車拒否が起こる。こういうような悪循環が繰り返されるということで、非常にタクシー会社もいい運転手が雇えない、こういうことで困っておる。こういうふうに言われておりますけれども、ここまでいろいろ問題が出てまいりますと、それでも長官の初めに就任をされたときの熱意、今度は公共料金を上げません、上げたくない、そのためには国鉄運賃を私は上げませんと、こう言っておられたのですが、いろいろあちらやこちらからの話があって、とうとう国鉄を一五%上げるようなことにいまなっておるようでございますけれども、こうなってまでも、なおタクシーの値上げについては上げないように努力されますか、いかがですか。
  183. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私たちは、先ほど申し上げましたように、公共料金を極力押えるということで、もう値上げをしなければ実際やれないというところは、これは許しております、地方の。そこで、大都市のタクシーは、はたしてそれがほんとうの赤字かどうかということは、私自身まだ疑問を持っております。まだ内容を調べておりませんが、もう少し経営を合理化すれば、私はほんとうの赤字は出ないのじゃないかということ、そこまでは、運輸省がどういう審査をするか知りませんが、私のほうも審査します。そこを厳格にその点は審査して、そうしてほかの合理化によって、また私は合理化を、この際さすべきだと思うのです。料金を値上げするよりも何よりも、まず自分のところを合理化するということをまずやらすべきだと思をのでありまして、それで合理化して、上げなくてもいいものであれば、一応私は上げなくていいと考えております。  なお、サービスの悪いことは、私どものところにも投書がどんどん入りまして、タクシーのサービスは悪い。それで料金を値上げしてもらっては困るということで、私から言えば、タクシーの運転手はサービスをよくしておいて、世間の同情を得て値上げ申請をすればいいので、自分のほうはかってなことをしておいて値上げを申請しても世間が許さぬと思うのです。中沢先生もそういう意味でお話しだと思うのですが、でありますからして、みずからがやはりサービスをよくして、そこでほんとうにやり切れないということであれば、そこで世間も同情して、値上げをしてあげなければならないのじゃないかというような空気が起これば、それほど私は一般物価への影響というものは、大きな影響はないと思いますので、皆さんがやはりあんなもの上げちゃいかぬという気持ちを持っておったら、これは非常な悪影響を及ぼすと思うので、そういう意味で、運転手さんの賃金の問題は経営者との関係ですからして、経営者との関係をもっと考慮すべきじゃないか。  それからなお、私どものところへは反対の陳情があるのです。トラック業者のほうは、とかくタクシーのほうが給料がいいために運転手をみなタクシーのほうにとられてしまいますといって、トラック業者はそう言うのです。タクシー業者のほうはまた逆に、トラック業者のほうが待遇がいいから運転手がみなそちらのほうへ行ってしまいますと言うので、私はどっちがどっちか、私自身わからないのでありますが、そういう点から見ると、タクシー業者のほうの賃金も悪いのじゃないというような気がいたしますから、まあ運輸省がどういうように査定しますか、その上で私どもの腹をきめたい、こう考えております。
  184. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう時間がだんだん迫ってまいりましたけれども、いまの長官のお話と私も全く同じ感じです。サービスをよくしておいてそうして値上げをする、これなら話はわかりますけれども、私も昨年十二カ国を回らしていただきましたが、向こうを見てまいりますと、日本のタクシーの料金は確かに安い、こう思います。そうしてその中でまた、タクシーの運転手といろいろ話をしましたが、確かにタクシーの運転手の給料は安過ぎるようです。子供二人かかえてアパートに一万一千円払って、ぼくの給料五万円ですよというような、タクシーの運転手が相当ございます。そうすると、やはり神風運転もしたくなるでしょうが、そういう中で、いま企画庁長官のお話もいろいろ伺った中で、運輸省としてはどのように考えていらっしゃいますか。
  185. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) ハイ・タクの運賃につきましては、先ほどから長官もお話がございましたように、申請は、地方とそれから都市のほうに出てまいっております。都市につきましては七大都市、それから地方におきましては県庁所在地、あるいはそれ以外の地方もございまして、全国で九十七地区につきまして、現在申請が、各陸運局に提出されております。この申請の理由は、人件費、その他諸経費の高騰ということを理由にしてまいっております。  われわれといたしましては、現在物価問題の非常に重要なときでございますから、申請のありましたものにつきましては、きわめて慎重に審議をいたしておりまして、原価の各構成要素につきまして検討するとともに、収入面の推移等につきましても、慎重に審査をいたしております。これは地方の陸運局長権限の仕事ではございますけれども、物価問題との関係が非常にありますので、本省に地方から禀伺をしてまいりまして、さらに本省におきましても慎重に審議をいたし、そうして経済企画庁にも御相談申し上げて、必要なものについては改定をしている次第でございます。今後におきましても、これを、申請がありました場合におきましては、慎重に審議をいたしまして、その可否を決定するということでございます。  なお、大都市のタクシーにつきましては、御指摘のように、特に乗車拒否の問題があとを断たないわけでございまして、これの解決につきましては、常に腐心をいたしておるところでございますけれども役所側が政策的に総合的なものを考えると同時に、業界におきましても十分自覚をいたしまして、現在のように国民の足になっておりますタクシー、ハイヤーでございますから、そういう公共性を十分認識いたしまして、事業の改善、そしてまた運転手の待遇の改善ということをはかり、愛されるタクシーになるように指導していかなければならぬと思っておる次第でございまして、そういう関係ともにらみ合わせつつ今後の運賃改定につきましては慎重に対応していきたいと思っております。
  186. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 最後にもう一点だけ。  先ほど企画庁長官が、この際に会社を合理化すべきチャンスだと思うと、こうおっしゃっておられましたが、もしも値上げをしないならば、値上げをしない中で会社と運転手との関係において何とか合理化をしながら運転手の待遇を上げていくような、そういうような指導監督を運輸省でやってもらわなければ、タクシーの運転手さんというのは浮かび上がれないわけですね。その辺の指導監督を私は運輸省のほうで十分やるべきである、こう考えております。  それと同時に、先ほど東京駅の話をいたしましたが、新大阪の駅では、われわれが夜中の十一時十分に着こうが十一時半に着こうが、いつでもあそこへ二人の人が立っていて、笛を吹きながら、必ず新幹線で運んだお客さんの最後まで、車が来るまであそこで見届けてくれるわけです。もし雨が降ったりあるいは月末だったり月初めだったりして、非常に車が少ないと、わざわざそこに立って車の世話をしてくれる人が——新大阪というのは非常に高いところにありますが、橋まで走っていって、通っているタクシーを、こう手を上げて合い図をして呼び上げる。あるいは最後ぐらいに来たタクシーの運転手さんに、まだお客さんがこれだけ残っているから、どっかで道で車に会ったら、新大阪の駅に来るように言ってくれと、こういうふうに新大阪ではちゃんとお客さんのサービスをさしているわけです。ところが、東京駅では、もう十一時十分に着いても、完全にそういう人はおりません。国鉄料金の値上げをしようと言っているいま、新幹線でお客さんを運んで、そしてあとはお客さんがどうなろうとこうなろうと、車があろうとなかろうと、そんなことは知らないと、こういうことではやっぱり私は国鉄の運賃を上げることには絶対反対と言わなければいけない、こうなってくるんですね。それは運輸省の管轄かどこの管轄か知りませんけれども、せっかく鉄道でお客さんを運んできたら、そのお客さんが散るまでは、国鉄で帰る人はいいですけれども、車を利用する人が乗車拒否にあって、あそこでひょっとしたら車に乗ることができない人があるかもしれない、そういうところまで私は指導監督に心をいたすべきだ、このように思いますが、その点はどうですか。
  187. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 構内タクシーにつきましては、そのサービスという点につきまして不十分な点は御指摘のようなことがあるかと思いますが、われわれといたしましては、自動車の関係の協会に整理員あるいは指導員の配置を命じておりまして、東京、大阪におきましても、主要駅にはその整理員を配置しておるところでございます。新大阪駅と東京駅と比べましてそのサービスが違うという御指摘でございますが、東京駅につきましては、大体毎日十一人の延べ人員で朝の八時から国電の終電まで整理員を配置いたしております。しかし、東京駅の場合におきましては、丸の内側よりも現在八重洲側に重点を置きまして整理をしておるようでございます。といいますのは、八重洲側のほうにお客が多いというふうな関係もあるかと思います。しかし、これは八重洲側だけサービスをして丸の内側をおろそかにしていいというものでは決してございませんので、それらの点につきましては今後改善をさすように指導をしていきたいと思っております。
  188. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 まだ答弁が漏れているんですが、もしも値上げをしないときに、タクシー運転手の待遇改善をどうするか。
  189. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 運賃の改定というものを待つまでもなく、会社は経営合理化をやっていく、健全化をするということは当然でございまして、従来からおおむね一〇%ないし一一、二%運転手の給与は上がってまいっております。今後におきましてもその待遇の改善につきましては、万々の努力をさす予定でございます。そしてまた、労働省の通達が出ておりまして、これらを守らすというふうな指導もやっております。われわれといたしましては、会社は何ぶん中小企業が大部分でございますので、中小企業であるところのハイ・タク会社はこれを協業化する、協力をして力をつけていくというふうな点が重要であると思いますので、協業化につきましていろいろ指導をいたしております。なお、中小企業であると同時に、また運転手が直接お客と接して仕事をやるわけでございますから、健全な運転手を養成をしていかなければならぬということで、運転手の養成のための現在施設もありますけれども、これをさらに拡大いたしまして、運転手の登録センターのようなものを将来設置いたしまして、そこにおいて運転手の登録をいたしますと同時に、福利厚生施設等もそこで整備をいたしまして、健全な運転手を育成すると同時に、それらに対して会社が協力をして福利厚生施設等、待遇の改善もできるというふうな体制も必要であると思いますので、今後その方向に努力をしていきたいと思っております。
  190. 山本杉

    委員長山本杉君) 本件に関する質疑は、この程度にとどめたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時八分散会      —————・—————