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政府委員(
池田俊也君) これは法律の上で必ずしもはっきり明示しているわけではございませんが、国会におきます提案
理由の説明等で明らかにいたしておるわけでございますが、
一つは自由の原則であるということで、組合の設立あるいは地区をどうするかとか、あるいは組合員の加入あるいは脱退というようなものがすべて自由である、いわゆる自由主義的な
協同組合というふうなことが
農協法の
一つのポイントである、こういうふうにいっているわけでございます。
それから第二は、農民の主体性の確立をはかる。農民の職能的な
協同組合でございますが、要するに従来でございますと、いろいろ農民といいますか、自作農、小作農そのほかに地主というようなものがあったわけでございますけれ
ども、農地改革によりましてそういうものが原則的にはなくなるということで、要するに今後は自作農による農業であるということで、農民の主体性を確立するということがこの法律のねらいであるということを言っておるわけでございます。
それから第三は、やはり今後
農協というものを
運営していく場合に、従来はやや経済
事業といいますか、信用
事業といいますか、そういう面にウエートがかかっていたけれ
ども、そうではなくて、生産面に相当ウエートをかけていく、そういうことを意図しておるということを申しておるわけでございます。これは実際は必ずしも
制度面でははっきりはいたしておらない点が多いわけでございますが、気持ちとしてはそういうことでやったわけでございます。
それから第四には、自由の原則とのうらはらの
関係でございますが、要するに従来は行政庁の指導というものが非常に強かった。まあ組合の設立
——農業会は別といたしましても、組合の設立というようなものについても役所が相当自由裁量の権限を持っていたというようなこともございますが、そういうことを極力制限をして、要するに農民が
中心になって自由に組合の設立をし、
運営をしていくということを大原則として、最小限度必要な限りにおいて監督権を認める、こういうようなことになっておるわけでございまして、こういうような大体四つに分かれると思いますが、というようなことが国会の提案
理由等で述べられておるわけでございます。
で、その後それがどういうふうに変遷をたどったかというような感じの御質問でございますが、私は当時そういうことでいろいろやっておりまして、その後
農協から直接離れまして、またむしろ最近になって帰ってきたというようなことで、ある
意味では、いままさに先生のおっしゃいましたような感じで若干ものを見ておる面があるわけでございますけれ
ども、一口に申し上げるならば、私はやはりこういうような原則で
農協制度を発足したものが、その後現実の中でどういうふうにそれが対応してきたか当てはめてみると、理屈どおりにはなかなかうまくはまいらない。基本的な
考え方は変わっていないと思うのでございますけれ
ども、なかなか現実にはまいらないで大部分については修正を加える
——率直なところを言うと、その後の
歴史というものは修正の
歴史であるというような実は感じもするのでございます。
まあ先ほど来いろいろ御
議論になっております総代会の問題にいたしましてもそうでございますし、その他いろいろ同じような種類の問題があるわけでございます。それからたとえば生産
事業というようなことも理想と現実とは必ずしも一致しませんで、大部分では
農協もかなり営農指導等やっておりますけれ
ども、当初考えていたほどは必ずしもいっていないというようなことで、たとえば農地信託の
制度でございますとか、今回御提案申し上げております
農協の経営受託の
制度化でございますとかいうようなことがいろいろ考えられたということで、要するに基本は変わらないけれ
ども、それを現実に当てはめた場合に必ずしもそのとおりいっておらないので、それに対して現実に対応するために若干の修正を加えるとか、あるいはまた十分でない点についてさらにそれをもう少し知恵を出してうまくいくようなことを考えてきたのがその後の私は
農協法の改正なりその他のいろいろな
農協行政の動きではないかという感じがいたすのでございます。