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足鹿覺君 第一班の報告を私から申し上げます。
第一班は
任田委員長ほか和田、武内、河田
委員と私を加え計五名で、石岡地区の現地
調査と現地の意見を聞いてまいりました。一行は上野発の急行で九時五十分石岡着、この日の会合の会場である市民会館で小憩の後、マイクロバスで市周辺の都市計画施設と農業振興施設を見てまいりました。恋瀬川を経て三村に至り、この地区の構造改善事業による基盤整備地区を視察いたしました。長さ一・八キロにわたる細長い谷津田で約二十ヘクタールの水田を一区画二十アールに基盤整備したもので、両側にコンクリートの給水溝をつくり用排水施設、クリ畑七・三ヘクタールの造成、肉豚の導入等を行なっている地区であります。
次いで十五農協の広域
経済圏の共同施設として設けられた種豚センターを視察、ランドレースの一代雑種の子豚育成、共同肥育場を見てまいりました。
さらに北へ引き返し、昭和三十七年八月に完成したという市水道の取水道を訪れ、また茨城県の都市では数少ない都市下水道を見学、さらに首都圏市街地開発区域に指定され、住宅公団の事業として県が委託を受けて造成中の柏原工業団地の現場を視察しました。
この団地は本年中に完成する予定で、九割近く用地の買収を終えているようであり、完成後は鹿島臨海工業地帯から第一次原料を移入、電気、機械、金属工業等約三十社の工場が操業、就労人員およそ九千人、工業生産高は五百億円に達するものとされております。このため台地の広大な山林が開発され、後に意見を承ることになっている青柳氏の山林も、この団地造成のため収用の
対象となっているとのことでありました。
また、このような市の都市計画地をめぐる周辺の一市三町四村の八千ヘクタールの台地には、いわゆる石岡台地の大規模なかんがい排水工事が計画されており、クリ、ナシ、カキ等の樹園地、蔬菜畑、水田を含めて農業開発計画が進められておるのであります。
このような現地の実情の中で、農業振興地域の整備に関する
法律案について午後一時半から地元の関係者から意見を聞くことにしたのであります。午後から小雨となりましたが、会場である市民会館には、報道関係者や地元の傍聴者も集まり、
任田班長のあいさつの後、六人の意見陳述人から、それぞれ意見を述べてもらいました。
まず市内の森林所有者で、さきの柏原団地造成のため収用の
対象となっている青柳新兵衛氏は、新都市計画により市街化区域に指定されると、税金も宅地並みに課せられ、土地の買いかえ税も認められず、地価公示制で安く買い上げられることになる危険性があり、農地を手放さずにはおれなくなる。市街化し、農業を許さぬというのは人権無視で、本法の場合も、このような
現実を認識していただき、真に
農民が農業に安心して従事でき、農業を振興し得るようにしてほしいと述べました。
次いで福岡堰土地改良区の豊島理事長は、農業地域の振興のため土地改良の事業は根幹をなすと思うが、従来
予算の配分が少なく、計画より完成が著しくおくれ、したがって、近代化もおくれがちであったので、本法による振興地域内の土地改良については、土地改良法も改正し、高率の補助を考えていただきたい。都市計画法との関係では、都市は農村の中に伸びることになるから、国の投資と
農民の負担で行なった土地改良地区が都市化するのはむだな投資になる。このようなむだが起こらないようにするとともに、いま米を百五十俵供出する
農家でも米収入だけでは食えない実情にあり、農業振興をうたうなら、一家農業だけで働いて食える農業にしてもらいたい。また、私の質問に答えて、筑波学園都市の計画については、地元の
農民が東京へ出稼ぎに行かなくても通勤で農外収入が得られるようになればプラスになるが、都市化によって既成の農業関係補助を打ち切らないようにしてほしいと述べました。
次に市内三村農協の大山組合長は、二十三年間農協組合長をやっている経験から、最近
農民が農林省や
政府の施策を信用しない、不信感を持っている。その原因は
米価の
据え置きや農業
基本法に対する不信である。わが村には四百六十戸の
農家があるが、農業だけで食えるのはわずか二十戸にすぎない。農業振興といっても、事業そのものに貸すわけではなく、事業を
運営する人に貸すわけであるから、人間を
対象として、金を貸し、返せるような長期低利の融資をすることが必要である。したがって、自作農創設資金等のワクを広げ、耕地の拡大や集約農業が行なえるようにしてほしい。都市計画や農振法による線引きも半径何キロといった地域に限定しないで、川、丘陵等実情に合った弾力的な運用をやってほしいし、振興のため思い切った資本を投入してもらいたいとの希望が述べられました。
また勝田市農業
委員会の大山福男会長は、勝田市は石岡と同様、工業都市化が予定され、農地転用も進んでいるが、農業振興のためには専業
農家の育成と、都市計画の後手に回らないような資金投下が必要である。資金の裏打ちのない計画は、ペーパープランに終わりやすい。農振法による振興計画も、すぐくずれないよう、公共投資を集中してほしいと述べました。
次に石岡市の川又市議会議員は、都市計画法の附帯決議の
趣旨はけっこうで、
制度の中にこの魂を入れてほしい。石岡市は首都圏整備法による市街地開発区域に指定され、用地指定を終わっており、また別に石岡台地の土地改良計画が農業振興に役立つよう念願しているが、地方行政の
立場から見ると、計画実施に時間がかかり過ぎ、最初の計画も時代おくれになる危険がある。この
法律も
趣旨はけっこうであるから、実施にあたっては国、県、市町村の連絡を強化し、能率的に計画を進めるようにしてほしい。都市計画の協議事項も、公害等問題の起こるものについては、市議会の議決を経てきめたい等について意見を述べたのであります。
最後に阿見町農業
委員会の宮本会長は、都市近郊の
農家は、後継者がなく、資金を要し、農業にあまり熱心でないものは鉄でもつより金でもつという
趣旨から、地価が値上がりするため市街化区域に入ることを希望するものが多い。都市のスプロールは防止したいが、都市農村は地方では異質のものでないし、土地についても国土というより私有財産という感じを持つものが多い。都市化と都市化調整及び農業振興地域の線引きよりも、その谷間に
農政上の盲点ができ、専業
農家はもちろん兼業
農家も混乱することをおそれる。都市と農業の領土宣言では、都市の方に魅力が多く力もあるので、本法も領土宣言だけに終わらず、補助、投融資等大型投入が必要である。この
意味では、地方都市の市街化区域はできるだけしぼり、コンパクトなものにすべきであると述べました。
その後県、市当局との質疑を行ないましたが、県側では市街化区域との線引きは五年先を考え、できるだけしぼり、優良農地を残し、むしろ県全体としては農土両全をはかりたいとの意見が述べられ、また石岡市長は、農村の一部が市街化区域に入ることはあっても、新法施行により用途地域を変更できぬという点、また本法の施行のためには都市だけでなく、農村の環境整備が必要であること、振興地域の指定も、きめのこまかい規定は必要であるが、法の運用は弾力的に、実情に合うよう希望する等の意見があったことを申し添え、報告を終わります。