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国務大臣(
大平正芳君) 日中貿易は、先ほど申しましたように、一九六五年以来、日本が中国にとって最大の貿易国になっております。それまではソ連でございましたけれ
ども、断然群を抜いて、日本が王座を占めております。それで一昨年から去年にかけて、ややスローダウンしておりましたけれ
ども、去年の下半期からはまたぐいぐいとふえてきております。これはヨーロッパ諸国とか、あるいはカナダ、そういったところがその間ふえた、日本の輸出がスローダウンしたときにふえておるかというと、そうでないので、全体としてやはり大勢として減っておるのですね。でございますから、これは中国内部のいろいろな事情、文化革命、その他のいろいろな事情があったのではなかろうかと推察しておるのでございますが、いずれにいたしましても、日本がいま圧倒的な第一位の貿易国であるという
状況でございます。
それから第二点の輸銀の問題でございますが、輸銀というのは、私が先ほど申しました輸出入銀行というのは
政府機関で、もし日本の市中の金融機関に、非常に資金の蓄積が豊かにございまして、長期にわたるプラントの輸出金融までも市中金融機関がファイナンスをするということであれば、国府のほうは私は何とも言わぬと思う。だけれ
ども、
政府機関が関与をするということは、非常に事が重大だと考えておるのが国府側の考えでございます。これに対しまして、私
どもは、それは日本が戦後、敗戦の結果、資本の蓄積がなくなってしまって、長期にわたるプラント金融なんていうものは、どうしても
政府が強制蓄積をいたしました、税金で取り上げた金でファイナンスするよりほかに、いまの金融機構ではできないので、過渡的にこうなっておるんだから、貿易金融には変わりないのだからというわけで、当時私が外務
大臣をしておったのでございますけれ
ども、再三再四説得をしたんですけれ
ども、なかなかどうも
政府機関というのが問題になりまして、御承知のように、吉田さんをわずらわして国府のほうへ行っていただくとか、そのあと私が参るとかいうようないきさつがありましたことは、御案内のとおりでございます。これは要するに、したがって
政府は、国会その他に対しまして申し上げておりますことは、輸銀使用の問題は、これはやっぱり諸般の事情を考えてケース・バイ・ケースで
処理するのでございますという、たいへん回りくどい答弁をいたしておるわけでございまして、それで、まあそれより以外の適切な表現が実はないのでございます。つまり、諸般の事情というものはいろいろあるわけです。その諸般の事情の中に、いまそのように申し上げた事情も含まっておる。そういう事情の中で、もし申請があれば、それは審査はいたしますよという態度を
政府はとっておるわけでございます。つまり、これはいいか悪いかというようなことは別問題といたしまして、現実がそうなんでございまして、それですからそういう回りくどい御答弁を申し上げて申しわけないのでございますが、それより以外に、何か答えようがあるかと思って、私もいろいろ考えてみたんだけれ
ども、どうもほかに適切な日本語が見つからないのでございます。
それから吉田書簡の問題でございますが、仰せのように、吉田書簡というのは、あの時期に吉田さんがポケットに入れて持っていった手紙でございまして、当分の間輸銀の金融は
政府は考えていないようだというようなことを書かれた書簡であると、考えていないように聞いておるというようなことを伝えられたと私は思います。したがって、そういう時期は過ぎてしまったんだし、それからまた、これは吉田さんの個人の手紙でございますから、
政府と
関連はないわけでございます。ただ、いまなお吉田書簡なんていうことが問題になるということは、なぜ問題になるかというと、もう、吉田書簡を発出するような
事態になったそういう
事態がまだ続いておるという
意味で、しょっちゅう国会でも問題になるんじゃなかろうかと思うんです。吉田書簡そのものよりは、吉田さんが、それじゃあひとつおれが行ってくるかというようなことで行かれた、そういう情勢がまだ、何年もたちましても、依然として続いておるという
意味で、依然として国会でも問題になっているということです。まあ第二次世界大戦後、世の中がたいへん複雑になりまして、対北鮮の問題にいたしましても、北越の問題にしても、東独の問題にいたしましても、こういうような国際法上で律しられないような問題ばかりが出てくるわけでございまして、たいへんすっきりしないわけでございますけれ
ども、先ほどから申し上げているように、すっきりしないのは、私の答弁というよりも、
事態がすっきりしないのでございます。その点御了承を願いたいと思います。