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参考人(前田義徳君) きわめて純理論的には私も全く同感でございます。しかし、事業の性格と、その時点における、必要な時点における社会経済の
情勢とはやはりかなり流動的な解釈も必要になってくるかと思います。御
承知だと思いますが、第二次六カ年計画を設定した当時の、これは一種の当時は神武景気という傾向が非常に台頭したときでありまして、したがいまして、第二次六カ年計画の初年度においては平均一八%、実質、人によっては二一%というような賃上げの時代でもございました。かような時代の中で、
NHKだけでは何ともなりませんけれども、いわゆる単に物価という問題だけでなしに、実在する環境の中から値上がりを防いでいく、いわゆるインフレ傾向をわれわれの範囲内で阻止していくという方法は、物価騰貴を押えるという結論的な、純理論との
関係は、結果的には同じことになると思いますけれども、その
過程の措置として、お説のとおり建設費は外部資金に頼ることが原則でございましたが、この年に限って、この時代から実はそういう
意味で、その年の聴視料からもこれをまかなっていく。ただし、これは六カ年限りという実は一応の
考え方を持ったわけでございます。で、その後、社会
情勢、経済
情勢は非常により何と申しますか深みを加えながら、必ずしも楽観すべき
情勢でない。個人経済から見ると
——国の経済全体から見ると非常に発展しておりますが、国の中の個人という点から見ると、御指摘のような問題が明らかに出てきているということは事実でございます。こういうときにあたって、私どもは皆さんの御
理解をいただきながら、いわゆる前年度から一種の
料金の改定を行なったわけでございます。これは第二次六カ年計画の結果をとらまえて、新しい状態に即応する
料金の改定という
方向に踏み切ったわけであります。そういう
意味では、御指摘の点については、われわれの聴視料制度、あるいはまた、これと関連する事業計画、予算の編成にはきわめて敏感にその責任を感じております。ただ、値上げという点になりますと、これは日銀の統計におきましても、それからまた、
料金改定の際きわめて顕著な、たとえば経済企画庁の御意見等、当時は値上げではないかという御印象が深かったと思いますが、今日、日録及び経済企画庁が発表している結果によりますと、この数年間で
値下げを行なったのは
NHKだけという数字が統計上出ております。私どもとしては、皆さんの御意見を承り、またわれわれの良心の上に立脚した、私どもとして経営責任を痛感しながら、実はそういう
過程をたどってきておるのでございます。今日おそらく問題になるのは、こういう傾向の中で、
カラー料金の契約が急激に増加するであろう。その際に、再び
料金の問題はどうかというお気持ちとも関連しての御
質問かと、まことにかってがましいのですが、拝察するわけでございますが、第二次六カ年計画後、われわれは第三次五カ年構想というものを立てております。これによって
NHKは、聴視者のために、また非常に口幅ったい表現でございますが、社会のために尽くす責任の所在と
方向は何かということを検討したわけでございます。難視聴の解消も、もちろんその一番大きな柱の
一つでございますが、それと技術の発展と開発、それが
国内的ばかりでなく、放送事業者という基盤の上に立って広く海外との
関係を考えるときにも、われわれのなすべき
方向は、おのずからその中で決定されてまいります。こういう環境の中で、しかしお説のように
料金は安いほどいいのでございますから、これらをどう勘案しながら、聴視者に対する責任を果たしていくかという点で、私どもは今年度二年目になるわけでありますが、新しい
料金体制をとり、その体制のもとにおいては、かなり激しい経済
情勢の変化があっても五年間は持ちこたえ得るという確信のもとに、実は今年度予算も御
審議をいただいたわけでございます。そういう
意味で考えますと、非常に素朴なプラス・マイナスを考えますときに、五カ年計画の最終年度、
昭和四十七年三月末までの私どもの第二次六カ年計画の聴視料体系と、現在の聴視料体系を比較いたしますと、従来の聴視料体系に比べて、少なくともこの五カ年間に実質二百億
程度の事実上の
値下げをしたことになると思います。ただし、新しい技術の開発、あるいは文化度の向上によって、
カラー契約は当然ふえてまいりますが、その最終年度における差額は、私どもの素朴な計算では、現在のところまだ二年度目でございますが、
昭和四十七年度末において、総額実質三十億の増収になるであろう、こういうことを実はひそかに考えております。ただし、一般社会
情勢も、技術の世界も、聴視者の心理も、そのときに応じて変化するのは当然でございますので、私どもとしては、さらに明年度予算編成にあたってはもっと合理的で、そして聴視者のためになる方策を考えたい。そういう
意味では、現行第二年度目になりますが、長期構想、五カ年計画も一部修正をするかもしれないというような気持ちで私どもは経営をいたしております。