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鈴木強君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
放送法第三十七条第二項の
規定に基づき、
承認を求めるの件につき、次の
附帯決議を付して
承認を与えることに賛成の意を表するものであります。
放送法第三十七条第二項の
規定に基づき、
承認を求めるの件の内容は、
NHKが
事業経営の
長期的
構想に基づく諸施策を積極的に推進して国民の要望にこたえようとするものであります。特に長年の懸案でありましたFM放送の本実施、広域圏内におけるFM県域放送局の建設、難視聴地域解消のための積極策をはじめ
UHF及びFM放送
受信機の普及促進に関する新施策等が盛り込まれており、
放送法に基づく
NHKの使命にかんがみ、この収支
予算、
事業計画、資金計画は、ほぼ妥当なものと認めます。したがってわが党は、
NHKがこの
予算財源が
受信者のとうとい
受信料によってまかなわれていることに思いをいたし、本
予算が厳正かつ適切に執行をされることを期待して賛成するものであります。
今日わが国放送界は、
放送法制の整備が臨調答申以来五カ年を経過しておるにもかかわらず、いまだ国会提出はおろか、政府原案の作成すらできない遺憾な
状態に置かれております。この間にあって音声放送の再編成、
テレビのU移行等
電波放送の大変革が逐次行なわれているのでありますが、一歩その
方向を誤りますると、わが国放送界に重大な禍根と百年の悔いを残すこととなりますので、私はこの際、政府と
NHKに対し若干の希望を申し上げ善処をお願いいたしたいと思います。
その第一は、言論報道の自由の保障と
NHKの中立性の堅持についてであります。
放送法第一条はその目的として「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。」を
規定しており、また第四十四条には、
NHKの
国内放送番組の編集については「政治的に公平であること。」「報道は事実をまげないですること。」「
意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」を定めておるのであります。今日
テレビ、ラジオ等のマスコミが国民に与える影響ははかり知れないものがあります。したがって、マスコミの動向については、各方面から深い関心の持たれることは当然のことと言えましょう。しかしながら、何人といえ
ども放送法に立脚した放送番組に対し不当に介入することは絶対に許されないのであります。ここ数年来の動きを見ても、政府が放送番組に対し不当な介入をしたのではないかという
意見が、本
委員会においても幾たびか取り上げられたことは御
承知のとおりであります。特に、小林前郵政
大臣は、
NHK会長の任命制、
受信料の政府認可制への切りかえ、
NHK経営委員手当の政府支給制等を取り上げ、
NHKに対する政府の影響力を強めようとしたのでありますが、これは明らかに政府の
NHK支配への一里塚であると各方面から猛烈な反撃を受けたのであります。このような一連の動きからして、七〇年安保改定を控えて国家権力のマスコミに対する不当介入をおそれる世論のあることは、当然と言わねばなりません。
私は、この機会にあらためて
NHKと政府に申し上げたいのであります。
NHKは、今後とも
放送法の精神にのっとり、厳正中立の立場を堅持して公正な放送を行なうよう一そうの
努力をお願いいたしたいのであります。また、政府におかれても、いやしくも放送に対する不当介入云々というような世論の疑惑や批判を受けることが絶対に起こらぬよう、慎重な配慮をお願いいたしたいのであります。
第二は、教育・教養番組の刷新と充実についてであります。
NHKが今日まで教育放送の面においてかなりの
努力を尽くされてきたことは率直に認めますが、今日科学技術は急速に進歩し、社会経済は著しく発展しておるのでありまして、国民各層はこれまで以上に自己の研さんにつとめ、教養を高めようとしています。したがって、これらの課題にこたえるためには、まず
NHKがみずからの手によって教育・教養番組の放送を刷新、充実するよう
努力されたいのであります。また、わが国においては、
民間放送による教育放送が十分に期待できない実情をも考慮して、
NHKがわが国放送
事業全般の教育・教養番組の質的向上のため積極的に協力していただきたいのであります。また、政府におかれても、今後の教育放送の拡充強化策について万全を期せられたいのであります。
第三は、放送のU移行についてであります。政府は、わが国の
テレビ放送を十年計画でVからUに移行させるという大方針をきめられて、その計画に基づいて着々実行に移しつつあるのでありますが、切りかえの時期、切りかえのための所要経費、
受像機の普及対策等について各方面より
意見が出されておるのであります。また、
NHKのみに東京、大阪両キー局の開設を許可したことについても種々論議があるようでありますから、U移行後のVの使用計画をできる限り早期に天下に明らかにされ、また、放送
事業者と
受信者の負担の軽減等を十分配慮して、妙味のある具体的な施策を樹立され、各界が一体となって政府の大方針に協力できるような体制をつくられるよう最大の
努力を要望いたします。
最後に、難視聴地域の解消についてであります。
NHKの不断の
努力にもかかわらず、いまなお難視聴地域が存在し、百万をこす世帯が放送文化の恩恵からシャットアウトされていることはまことに残念でなりません。特に大都市においてはビルの高層化に伴い、いわゆるビル陰障害が年を追って多くなっております現状にかんがみ、政府と
NHKは相協力して都市と地方の難視地区解消のためあらゆる
努力を尽くされたいのであります。
なお、
附帯決議案の内容につきましては、先般来の本
委員会における審査の経過を参酌して起草したものでありますので、あらためての
説明は省略させていただきますが、
附帯決議につきましては、何とぞ各位がこぞって御賛同くださいますようお願いして、私の賛成討論を終わります。