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1969-07-08 第61回国会 参議院 地方行政委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月八日(火曜日)    午前十時五十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         内藤誉三郎君     理 事                 熊谷太三郎君                 吉武 恵市君                 山本伊三郎君                 原田  立君     委 員                 小林 国司君                 小林 武治君                 鈴木 省吾君                 船田  譲君                 増田  盛君                 安田 隆明君                 柳田桃太郎君                 山崎 竜男君                 若林 正武君                 竹田 四郎君                 千葉千代世君                 松澤 兼人君                 和田 静夫君                 阿部 憲一君                 山田  勇君    国務大臣        自 治 大 臣  野田 武夫君    政府委員        内閣法制局第三        部長       荒井  勇君        自治省行政局長  長野 士郎君        消防庁長官    松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        建設省都市局技        術参事官     葛生 新一君        自治省行政局公        務員部長     鎌田 要人君        消防庁予防課長  高田  勇君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○都道府県合併特例法案内閣提出) ○地方公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  都道府県合併特例法案議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 自治大臣にひとつ質問したいんですが、いよいよこの法律案最終段階になってまいりました。まあ、衆議院のことは別といたしましても、参議院では一応これは通過するという段階になってきたんですが、私からひとつ大臣に、おもな点だけ、確認するということもありますが、政府見解をひとつはっきりしておいていただきたいと思います。  この質問に入る前に、昭和三十九年から四十年まで私も地方制度調査会メンバーで、この問題の討議に参加いたしました。地方制度調査会、これは総理大臣諮問機関ですが、調査会自体のあり方に私、疑問を持っているんです。大臣どう思っておられるか知りませんけれども、この都道府県合併の問題が地方制度調査会へ出たことにも私非常に疑問を持っておったのです。というのは、吉武さん、ここにおられます——当時の自治大臣だったんですけれども、さっきもちょっといろいろ雑談しておったんですが、九次の地方制度調査会では、事務の再配分の問題が議題となりまして、それが残っちゃった。十次に引き続いてそれをやるという前提であったところが、突然、自治大臣のあいさつの中から都道府県合併の問題が出てきたわけなんです。それがいつの間にかだんだんとコンクリートされて、第十次の答申ということになってきたんですね。そのときはすでに大臣はかわっておられました。私はこの地方制度調査会、もちろん諮問機関ですから、政府諮問は応じて調査するのですが、どうもその過程を見ると、疑問が出てくる。で、その事務配分の問題はたな上げになってしまって、何年かこれは現実に出てこない。まあ若干の事務の再配分の問題は出てきて、毎年法律に若干出てきますけれども、根本的な問題は一つも解決しない。こういうことで、私は地方制度調査会自体があれでいいのかどうか。で、小委員会では若干論議をされますけれども総会では、私たちいつも言うんですが、だんな衆がいつも多うございまして、言う人はほんの二、三の人が論議するということ。私もこの問題については、いま衆議院奥野誠亮氏と、それからあの当時は阪神高速道路公団の理事をしておった栗本順三——この間大阪の公聴会にも出てきましたが、まあお二人と論争して、お二人は賛成で、私は反対であったのです。そういういきさつでありますから、そういう当時から思い起こしますと、この都道府県合併法というものが昨年の国会でも廃案になって、また引き続いて出されておるのですが、どうも私は政府自信がないんじゃないかと、あの調査会論争の中ではもう少し強い法律案が出るというような傾向があったんですが、出てみれば、数回の質疑応答で言われるように、まあどちらでもいいんだ、自主的にやればいいので、政府は干渉しないのだ、こういうお話なんですが、地方制度調査会ではそういう論議じゃなかったんですね。政府がやはり指導権をとって、やはり都道府県は必要であると、こういう論議が相当私は出たと思うのですが、ところが法律案が出て、数度の審議の中からは、自治大臣もどうもこの問題については自信のあるような答弁がないと思うのです。まあそれはそれとして、地方制度調査会自体について、一体どういう考えを自治大臣は持っておられるか。私は無用なものとは言わないのですが、あれでは、政府、いわゆる具体的には自治省ですよ、自治省意向を具体化するという一つの隠れみののような状態としか私は受け取っておらない。したがって、この法律を出すときには、地方制度調査会答申に基づいたということばかり言われる。答申の以前に、すでに政府の意図がそこに入っておるという、それを正当化するために地方制度調査会を通してくる。これは単に地方制度調査会だけではございません。約二百ほどの審議会があります。各省の、総理大臣諮問機関大臣諮問機関ありますけれども、ほとんどがそういうことになっていると思うんですが、こういうことについて、自治大臣というよりもむしろ政府閣僚として、地方制度調査会に対する考え方についてちょっと最初に聞いておきたいのです。
  4. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) ただいまの山本さんの御意見は、ひとり地方制度調査会だけじゃなくて、全体のいまの審議会制度についてもお触れになったように思いますが、これはもう私が申すまでもなく御承知のとおり、できるだけ民主的な行政を行なうというたてまえから、やはり政府独断見解でもって行政を進めていくという前に、一般方々国民の御意見を拝聴し、これを尊重して行政面にあらわしたらいいということは、たてまえとしては私は当然のことだと思っております。その一つの形として、各審議会制度が設けられております。その審議会には、おのおの学識経験者その他のりっぱな方々の御参加を願ってやっております。しかし、いま何百とあるそういう審議会、またこれに類するもの、こういうものについては、ただいまも実は行政改革関係閣僚会議を開いておりましたもので実は遅刻いたして申しわけないのでありますが、その際にもやはりそういう、いま山本さんの御指摘になるような意味とは違った意味の、まあいろんなそういう審議会制度があるが、必要じゃないものもあるのじゃないか、検討すると、こういう意見が出ておりまして、これがどの審議会と名ざしたのじゃございませんで、実際そういう傾向にあるものがあるとすればこれはひとつ手をつけていいんじゃないか、こういうことでございまして、そこでその意味におきましては、私は山本さんの御指摘になりますように、いまとにかくそれが活用されていないというような審議会その他の類似のものについては、これは検討する必要があるというのは同感でございます。  地方制度調査会についての御意見でございますが、私ども地方自治を扱っておる役所といたしましては、これはまたなかなか——どの役所も大事な機能を持っておりますが、特に地方公共団体という、いわゆる民主政治基本であるこの地方自治をわれわれがお世話するという立場からいたしますると、それこそもう独断的に役人の気持ちでもって行政を進めるということは、これはやはり私はまっとうではないと。やはり地方地域住民意思、また地方自治体の考え方、これに関するやはり学識経験者方々の御意見、こういうものをやっぱり総合的にわれわれは意見を尊重して自治行政に当たるのが至当だと、私はこの基本的な考え方だけは間違ってないと思っております。したがって、地方制度調査会は、他にいろんな審議会その他がございますが、私はやはり他の——まあ一番大事だということは言えませんが——役所ですから——他に劣らない重要性を持っている、こういう考え方を持っております。ただ、この地方制度調査会運営につきまして、ことに御経験者委員として御発言がありましたのですが、運営についての御批判は、これは私自身経験を、審議会委員になっておりませんからわかりませんので、これは私はいいとか悪いとかということは、これはまた言うべき筋でもない上に、私自身経験がありませんからわかりませんが、地方制度調査会自体について、私はやはりこういう審議会機関があってほしいと、ことに自治省としてはこういうものがやっぱりなくちゃならぬ、こう考えております。したがって、この調査会をしからばどうするかということにつきましては、これは政府意向で動くわけじゃございませんが、そういう気持ちをできるだけ各委員に、ひとつりっぱな調査会にしてくださいと言うようなことは、これは何も悪いことじゃございませんから、これは私どもが希望を申し述べることは何ですが、これに対してわれわれは何にも干渉がましいようなことをするようなことは一切してはいけませんし、またする意思はございません。十分いまの御意思は私はわかっておりますから、この程度でお答えを御了解願いたいと、こう思っております。
  5. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣としてはそういう答弁しかできないと思いますが、私は通算四年——現在もやっておりますけれども、四年間やっておるのですが、これは不要だとは思わないのです。いま言われた運用について問題があるということですね。したがって、これは必要がないのだというふうに私は断定しておるのじゃない。大臣としては、いま言われるようにやっぱり必要であろう。ただその運用について、いま申しましたとおり問題があるということ。私は、諮問機関ですから、政府から考え方を出してそれを中心に審議をされるということもわかるのです。それなら突然そういうものを出さずに、こういう政府考え方があるんだ、これについて一体どうするんだと。今度の広域市町村圏の問題も審議されておるのですね、地方制度調査会で。あの当初、私も総会に行ったときに、突然、地方制度調査会の庶務を扱っておるほうから内容説明があるわけなんですね。しかも具体的にずっと出てくるわけです。私はこう見て、一体こんなものだれがどうしたんだと、こういうことで非常に私は不満を持って、だいぶ反論いたしましたけれども、こんなもの、第十三次ですか、十三次答申するのかどうか——いやそれまでいっておりません、参考までに出しましたと、こういうことです。参考までに出したと。それがずっと何回かやっているうちに答申のほうに持っていっちゃう。だから、私はそういう点でもう少し考えてもらわぬと、非常に私は不満を持っております。それとメンバーですがね、現職の知事、市長会代表議長会代表、それから財界と申しますか、そういう方々構成しておるのですが、もっと庶民的な代表を出せないかと思っているんですよ、実際問題ね。東京都政の何か審議会できておりますね、ああいうような構成に私はしてもらえぬかと思うのです。あのメンバーでは、言われることはいいことを言われる人はあるんですから、私はあのメンバー自体は資格がどうこうということは言っていない。しかし、並んでいるのをずっと見ると、まあ反対するのはわれわれはっきり言えば社会党に属するような人、学者が一人二人反対する程度で、問題によってはいろいろ反対意見もありますけれども、そういうことですから、率直に言えばもう少し労働者代表とかそういうものも入れる必要があるんじゃないか。行政改革監理委員会ですか、これにもメンバーで入っている人もありますから、そういうものも入れて、広く国民意見を聞くという常駐の委員会といいますか調査会ということで、そういう構成でやるのが私はいいのじゃないかといつも思っているのですが、なかなかそういう機会がないので、ひとつ大臣から、あれは総理諮問機関ですから、総理に対して一ぺん進言してもらいたい。したがって、やはり国民各層からメンバーを選ぶということが私は民主的の原則ではなかろうか、いまのメンバーでは、学者の中にはそういう思想の人があるかもしれないけれども、階層からいうとそういうメンバーが入っておらない、そういう点もひとつ考えてもらいたいのですが、その点について、弁解要りませんから、ひとつそういう方向で努力するなら努力するという答弁でけっこうです。
  6. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いまの御指摘委員メンバーのことですが、これは私も先ほど申しましたとおり、やはり地方自治原則として各方面の御意見を聞きたいということは当然でございます。できるだけ各界各層からそういう委員を選ばれますように、また総理に対してもお話いたします。私も同感でございます。
  7. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃいよいよ本論に入りますが、約一カ月ほど、数回にわたって、地方公聴会も開き、参考人も呼び、また各党の方々質問政府答弁等々によってだいぶ煮詰まってきておる。ただ私残念に思うのは、まあ自民党の方々にも意見あると思うのです、これは当然あると思うのですが、政党政治と申しますか、与党立場質問されておらないので、与党方々意見を聞いておらないのは非常に残念でありますけれども、大体意見も出ておると思いますが、私は最後にきょうお尋ねしたいのは、もう少し地方自治基本的な問題についてはっきり政府見解を聞いておきたい。いろいろ審議を聞いておりますと、地方開発問題等々非常に参考になる御意見があり、また政府見解も聞いたのですが、私は今度のこの都道府県合併地方制度調査会論議を通して考えておるのは、いわゆる広域行政は特に開発行政につながるものと思うのですが、それと地方自治基本とはどう調整、理解されるかということが問題の根本であると思う。区域を広げることによって地方自治の本質というものが弱まるのじゃないか、一方では、いまの行政区域では地方開発なりその他の地方行政と申しますか、行政の執行には不便である、こういうことの二つの並列した問題がどこでこれが交差されるのかという問題に集約されると思うのです。したがって、まずこの地方自治というものは一体どういうものであるか、私はもう一ぺん考え直すときであると思う。もうすでに欧米各国では、今世紀初めからリージョナリズムと申しますか、相当論争が尽くされておる、アメリカでも、イギリスでも、西独でも——西独は戦後西独になったのですが、まあドイツ——あったと思うのです。日本の場合は、戦前までは一切この点には何といいますか口を閉ざして言うことができなかった、そういうことで、戦後急にこういう問題が出てきたので、一般では目をみはって、いまさらこんな新しいものが出てきたということで、私は国民の前に幻惑するような光を放っておるのじゃないか。私はそうじゃないと思う。したがって、まずその地方自治というものを——これは新憲法ができたときに地方自治ができたのですが、冒頭にひとつ——これは大臣答弁されてもいいですが、法制局来ておられますか——憲法がつくられたときに初めて第八章地方自治の条章がつくられたのですが、その文言の中に——これは私が読む必要がなく、九十二条に出ております。「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治本旨に基いて、法律でこれを定める。」これは憲法だけではありません。地方自治法の第一条にもあります。地方公務員法の第一条にも地方自治本旨が出ております。地方交付税法の第一条でもあるわけです。したがって重要な地方自治立法にはすべて、この地方自治本旨というものを基本運営さるべきであるという原則がきめられておる。しからば地方自治本旨とはどういうことか、憲法制定のときには相当論議をされておるはずであります。当時はまだ帝国議会であったわけですが、相当論議をされておるのです。これは金森さんが担当しておられます。内務大臣大村清一でございましたけれども——答弁等々ありますけれども、佐条惣一さんも相当これに対して意見を述べておられます。こういう点について法制局のほうは、地方自治本旨について、有権解釈といいますか、どういう解釈に立っておるかということを聞いておきたい。
  8. 荒井勇

    政府委員荒井勇君) この憲法九十二条に書いてあります地方自治本旨につきましては、いろいろ学者も説を述べておりますけれども、この地方自治本旨というのは、地方的行政のために国から独立した地方公共団体の存在を認める、そうしてその団体が自主的にその公共事務と申しますか、その地方的な行政を行なうべきことというものを原理として打ち立てておるのだというふうに考えます。そうして、その団体が自主的にその地方的な行政を行なうにあたっては、住民自治ということがその中の非常に中心的な命題としてあるのだというふうに一般的に考えられておるわけでございます。その住民自治というのは、一定の地域、その地方公共団体の基礎となっている地域におけるそういう公共的な事務というものがその地域住民意思に基づいてなされるべきであるということで、これを通常、前者を団体自治と言い、後者を住民自治というふうに理解しやすく考えるということで、この二つ意味における近代的な地方自治原則をここで打ち立てたものであるというふうに理解をいたしております。
  9. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 明快ではないですね。失礼な言い方ですが、自治大臣はそこまで勉強されておらないなら、長野さんでもいいですがね、失礼な言い方をして相済まぬですが、長野士郎さんの「逐条地方自治法」といいますか、あなたの論文だと思うのですけれども地方自治本旨について言われておりますね。これは有権解釈ですか。それをまず伺いたい。
  10. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 私どもが共同でいろいろ議論をいたしまして、結論といいますか、理解いたしました範囲の事柄でまとめたものでございまして、政府の公式の解釈というわけではございません。
  11. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 しかし、これは私、そう意地悪いことは言いませんけれども、やはり発行された序文なんかを見ると、願わくばこの本によって運用されたい、そういうように受け取っている地方の人が多い。なかなかこれはよくできています。だから、有権解釈でないとしても、やはりこれを基本に、地方自治団体関係者は、ここにこういうものがあるからこれは正しいのだと、地方に行ってもそういうことを言うのですよ。したがって私は、これは自治省だけじゃございませんから、各省から、こういう法律ができれば逐条解釈を出されるのですが、私は大臣にちょっとこれは政治家として聞いておきますが、法文解釈立法府がすべきだと思うのです、そうでしょう。法律としてつくられたものは、できてしまったらよそに行っちゃって、それで行政府が、これは解釈はこうだということでみんな通達をするのですね。私は、政府側としてそれがいいかどうかということ、これは内閣委員会でも言いましたけれども大臣はそうだと言うけれども、実際はそうなっておらない。法律ができると行政府——行政府でも大臣がやるのではない。おそらく野田自治大臣はそんなことはやっていないでしょう。みんな局長以下が相談して、これはこうだ——私はそれを出すのが悪いとは言わない。大体法律そのものが全部を規定してないですから、運用については疑義がありますよ。だから、それは当然です。そのときに、少なくとも立法府に両院の法制局というものがあり、内閣にも法制局というものが置いてあるから、したがって、そういうものが一応総合的にやはり相談といいますか、をやって、その法文解釈を出すべきだ、こう私は思うのですが、これは間違いでしょうか。いまの三権分立の制度において有権解釈というのはそうあるべきであると思うが、戦後それはやっておらない。そこから私は行政上の一つの不信というものが持たれてくると思うのです。したがって、その点について大臣はどう思いますか、政治家としてどう思われますか。
  12. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は、法文解釈ということと法律制定した責任といいますか、これは私はあくまで立法府にあると考えておりまして、そのできました法律によって行政府の者が行政運営する。これはわかり切ったことのようでございますが、その原則をわれわれはあくまでも基本だと考えております。  そこで、いまの逐条解釈その他について役所がやっているということですが、私はその点を別にことさら役所を弁護するわけではございませんが、少なくとも立法府責任でもって制定した法律でございますから、その解釈ももちろん立法府解釈をいたすのが正しい。しかし、法律制定にあたりましては、いま御審議を願っておる法案でもそうでありますが、相当慎重の審議をする。これがたてまえであります。そこで、その間に、法律立法の精神、また法の解釈、これらについては相当論議が尽くされて、これが成立した場合にこれを行政面であらわす、こうなってまいりますから、行政に当たる者といたしましては、その国会における、立法過程における論議というものを体得して、そうしてその本旨に沿うで行政に移すわけでございますから、行政に移すにおきましては、やはり一々法の解釈を、いわゆる法の内容を理解しなければ行政運営が間違ってくる。こういうことで、各役所、まあいまお示しの自治省あたりでも、逐条解釈その他についての意見を出していると思っております。しかしながら、その役所解釈がいわゆる立法の趣旨または立法府解釈と間違った場合どうだということになりますと、私は、やはり立法府責任でやったことでございますし、また立法府がいわゆる基本的な解釈を持つのが当然でございますから、当然それに従うべきだ、こう考えております。まあそれが、そういう解釈とかその他のものを出すということが少し間違っていやしないかという御意見もございますが、間違っているとまでは言い切れないで、それは行政を遂行する上において一生懸命努力する。それには、基本的には法に基づいてやることでございますから、法の勉強をして自分の意見を発表するということも私は間違いとは言えない。しかし、その最後のいわゆる責任とまたその解釈というものは立法府にあるという感じがいたしております。
  13. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあどういうことを言われたか、結局いいのか悪いのかわからない、あいまいですね。私が言っているのは、内容についてはいろいろまあ問題があるでしょう。しかし、たとえば憲法第九条の問題、これは国会で相当論議された、立法府でね。私はこれはいいと思うのですよ。これは政府が間違っておるのか、あるいは間違っておらないかは別として、他の法律では、一ぺん制定してしまうと、再び国会論議をされたということはもうほとんどありませんね。すべて行政府まかせですね。それがたまたま福祉立法なんかで問題があって、訴訟問題まで起こるのですね。私は、訴訟問題が起こる前に立法府がなぜそれを取り上げて論議されないか。立法府の権威がなくなりますよ。裁判所がそういうことに判決を出して、政府がそれに対してまた控訴をしてやっている状態ですね。しかし、裁判所は権限ですからいいのです、裁判所が悪いと言っているのではないのだが、その前に立法府としてもっと論議をすべきだと思うのですが、そういうことをやらない。これが私は、このせっかく三権分立——民主主義的な国会というものがありながら、国民国会に不信を持つ一つの要素がそこにあると思うのです、いろいろありますけれども。それは政治家がやっぱり気づかなければいかぬと思うのですね。私もそれは責任は果たしてないと思いますけれども、やはり立法を、つくったらつくったまでが責任であって、つくったあとは知らないのだということでは政治じゃないと思うのですね。これがいわゆる官僚政治、いまは官僚政治があるかどうか知りませんが、官僚政治になってしまう。ここを私は言っておるわけなんです。これは単に大臣だけじゃないですよ、われわれも考えなければならない問題を追及しているのですが、これに対する御見解だけひとつ。
  14. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は山本さんの最初の御質問の真意がちょっとわかりかねたのでお答えしたのですが、私は全く同感です。と言いますのは、私は簡単に申すのではありませんで、今日のこの政治不信ということが、いろいろな要素はありますが、一つこれだということはきめ手はございませんが、各要素の総合的な結果が政治不信に高まっているという現実のことは、そのとおりであります。ことに、立法してあとは行政府にまかしているというようなこと、これは全くこの、つくって、生んだ子がどんなふうに育っていっているのか、どんなふうに動いているのかわからぬというふうなことは、これはもう御指摘のとおり非常な、まあある意味において、怠慢ということばは当たらないかもしれませんが、まあ責任を全うしていない、これは全く同感です。これらのこと、今日の政治不信というものに対しては、これは山本さんもお話しのように、これは政府ももちろん反省をする、それから立法府としても非常に大きなやっぱり反省をする必要があるのじゃないか。だれが悪いかれが悪いよりも、総合的にひとつ考えて、お互いに日本の政治に関与いたします立場からして、やはり虚心たんかいに考えてこういう問題を検討する必要がある。私も同感でございます。
  15. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それで法制局に。いま言われましたがね、まあいろいろ言われましたが、団体自治住民自治、それはいろいろ本にも書いておりますが、いま言われたのはいわゆる国家承認説、統治権の必要があるから一応そういう地方団体地方公共団体を認めて行政の一部を委任してそこでやらせるのだ、固有なそういう地方自治権というものはこの憲法では認められておらない、これはもう金森さんもそういう答弁をしておりますね、憲法国会で。しかし、地方自治自体も、内容、やっていること自体を見ると、やっぱり固有権に発生したものがあると私は思うのです、地方自治団体の歴史的な問題を見ましても。成文憲法でそれを認めておる。やはり事実の問題としてそういうものを否定できない問題があると思うのです。これは明治憲法にはないのですが、しかし市制、市町村制あるいは府県制というものによって地方自治は一応認めておりますからね、あの憲法自体も全然私は地方自治を否定しておらないと思うわけです、旧憲法においても。しかしこの旧憲法でも新憲法でも、憲法ができたかち地方自治が、自治権ができたとは私は思わない。そういうものが在来的にあるというのを一応憲法で成文法によって承認されておるその以前に、やはり固有の地方自治権が私は地方住民にあると思う。そうでなければ、憲法ができるまで何にもなかったのだ、そうは私は言い切れないと思うのですね。これは学者の説とかそういうものを離れてですよ、実態的にそうあるべきだ。あらゆる法律私はそうだと思うのですが、特に地方自治については、これは単に日本だけではありませんよ。各国の例を見ましても、そういう住民の要求から地方自治というものが出てきたと思う。それを、憲法解釈だけで、そういう固有の権利としての地方自治というものを全部否定しておるのかどうか。また政府は否定しようとしておるのかどうか。これの法制局見解を聞いておきたい。
  16. 荒井勇

    政府委員荒井勇君) 地方自治というものが日本国憲法ができて初めて与えられたのだというふうには、必ずしもそのように理解はいたしておりませんで、それは多年の沿革的な事実というものを基礎にいたしております。その点、たとえば日本国憲法に書いておりますような基本的人権というようなものにつきましても、憲法十一条でありますとか十二条で書いておりますけれども、それは日本国憲法を待つことなしに、それ以前からやはりそのような人権というものを尊重しなければいけないのだという世界的な主張の上に立っておりますし、わが国民の総意としてもそういうものを認めるべきだというものが背景にあって、その上に基本的人権というものが認められている。それと同じように、地方自治というものも、明治以来、あるいはそれは徳川時代というような時代のもとにおいても、変わった形態ではありますけれども、そういう自主的な沿革というものがあり、これがだんだんと馴致され精緻なものになって、そしてこの日本国憲法制定というものを迎えたということであると思います。
  17. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それなら、第九十二条のこの「地方自治本旨」というのは、いわゆるこの憲法だけではないと、固有の在来的な住民の権利としてあるものを憲法でそれを認めたという解釈でいいのですね。固有のそういう権利を持っておるのだという、それを憲法制定して、たまたまそれを承認したと、保障したと、こういう解釈でいいのですね。
  18. 荒井勇

    政府委員荒井勇君) 先ほど申し上げましたように、そういういろいろな沿革的な事実というものを基礎にして認められている権利であるというふうに考えております。
  19. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 自治省はどう思いますか。
  20. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) これは法制局のお考えと大体同じように考えておるつもりであります。
  21. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、基本的な固有の権利は持っておるのだということが承認されたと思いますがね、それを前提にこれから私は質問を展開していきたいと思います。  そこで次に、具体的の問題で一、二聞いておきたい。今度の府県合併というものに際していろいろの問題があると思う。そこで、市町村はずっと合併が進められておるが、府県の合併というものに手をつけようとしたのは初めてであります。まあしかし、地方自治法第六条ではその道を開いておることは事実であります。そこで、都道府県と市町村との地方公共団体としての相違ですね。これは自治省も、この前のだれかの質問に対して、二重構造を認めておる、こういう答弁があったのですが、都道府県と市町村の性格の相違は、沿革的にまた法律的にどう違うのか。これを、大臣でもいいのですが、自治省に聞いておきたい。
  22. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 一口に申しますと、府県は、むしろどちらかといいますと、新憲法によって府県という自治体が完全自治体と認められたという沿革になっておるように思います。そうでございますが、やはり府県制という戦前からの自治体としての県という要素なり性格なんというものは、戦前もあったわけでございます。それをさらに徹底して、完全自治体というほうに持っていきたいということであろうと思うのであります。まあ県と市町村との自治体としての性格と申しますか、先ほどお話のありました自治体としての値打ちと申しますか、自治権と申しますか、いわゆるそういう言い方の中での地方自治団体としての位置は、これは値打ちとしては同じだろうと思います。同じだろうと思いますが、その意味では大きな市の自治権も小さな町村の自治権も同じだというような、同じ論を主として踏まえてのお話でございますが、値打ちとしては同じでございますが、その働きはやはり違っておりまして、府県というものは、やはり国と市町村との問といいますか、言い方は変でございますが、地方自治法にも規定しておりますように、市町村を包括する団体である、こういうことになっております。それから市町村は基礎的な地方自治体だということになっておりまして、どちらかといえば自治体としての性格づけの中で、府県のほうが基礎的でないといいますか、そういう意味で府県の機能のほうがやや、住民とのつながりという点から考えますと、市町村よりはやや——市町村に一段階置いておりますがゆえに、市町村よりはやや距離がある。そこで府県の主たる任務は、市町村の区域を越えるような広域的な行政でありますとか、統一的な行政でありますとか、あるいは市町村と国との間の連絡、あるいは市町村の足らざるところを補うという意味の補完というような中間的な任務といいますか、そういう任務にふさわしいものとしての性格づけが行なわれておるというふうに考えております。
  23. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いまの市町村、府県の働きと申しますか、機能の問題は、そのとおりだと思います。しかし、私は地方自治という立場から見たものとして、都道府県と市町村、この発生の歴史も違うと思いますね。したがって、いま言われた働く機能については、現実には現在そうやっておりますが、地方自治という立場から言うと、いまあなたの説明では、直接住民に関係のある、薄いか濃いかという表現があったと思いますが、薄い濃いというのはどういうことなんですか。市町村の場合は自治というものについては濃いのだ、府県においては自治においてはちょっと遠いのだ、薄いのだ、こういうことはどういう機能からいってそう言われるのですか。本質的な自治という立場からいってどういう解釈ですか。あなたの本にちゃんと書いてありますよ。
  24. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方自治という意味での基本的な姿といいますか、形、内容というものは、これはやはり市町村というものが地方自治一つの原形に最も近い形だということは言えるだろうと思います。それからまた同時に地方自治という意味での値打ちに違いはないというのは、一種の観念論的なものでございますが、しかし地方自治の両者に差異はないという言われ方を一般にしておりますけれども、同時に地方自治体というものの値打ち、と言っては語弊がございますが、働きというものと不可分な関係に立ってくるということになるわけでありまして、そういう意味では、地方自治の機能というものと、自治体の性格なりそういうものとは不可分である、こう考えられるわけであります。そこで、それはまた同時に府県というもの、自治体のあり方の問題というものと関連をいたします。あり方がそういうあり方だから、機能もしたがってそういう機能以上に出ていないといいますか、そういう機能を持つことが特色づけられるという場合もございますけれども、両者は相互に関連すると思います。で、府県の場合は、国と市町村との中間に位するという一つのあり方を持っておりますし、同時に市町村を包括するというあり方であることも間違いない。そういうあり方と——府県のそういうあり方から関連をいたしまして、同時に府県の機能というものが広域的であり、また統一的であり、補完的であるという考え方も出てくるわけでございます。そういう意味では、やはりどういたしましても、自治体の機能として考えます場合でも、市町村という基礎的な自治体の上、と言っちゃ語弊がありますけれども、上におって、一応自治機能というものは直接県というものが行なう面もありますが、やはり市町村というものを一つの基礎にしておるという面もあるわけでありまして、その点では、やはり市町村ほど直接的でないというニュアンスといいますか、性格の差といいますか、機能も、位置づけからもそういうものが出てくる、これは言わざるを得ないのじゃなかろうかと思います。
  25. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 国会ですから、あなたの率直な意見はなかなか言いにくいと思うのです。  じゃ、具体的にこれを聞きますが、そういう抽象的なことでは聞いておる人にもわからない。あなたとぼくとでわかっても論議にはなりませんから。旧憲法下においてはこの条章はございませんでしたが、しかし市制、町村制が明治二十一年にできて以来、あの当時の地方自治——あのときは、地方自治ということを学者は言っておりますけれども、今日とだいぶ内容は違うと思うのですが、あれは大体ドイツの、ドイツ法を基礎にしてやられたということになっておるのですね。モッセですか、一応、山県有朋の依頼を受けてモッセが地方自治の成文をつくったようでありますが、戦後日本憲法ができた当時は、これはアメリカの大体思想がこの地方自治については多いと思うのですね。そこで具体的に聞きますが、イギリスでは、県はアドミニストレーション・カウンティ、これとカウンティ・パロー、特別市、これは県と同じような権限を持っておりますね。それから市と町、きざになりますから英語はやめますけれども、市町村があるのですね。それからアメリカのステーツ、これは地方自治体であるかどうかは論争ありますが、これは一応地方自治体ではない、一つの国である。県はカウンティといっていますね。市はミュニシパリティといっていますね。町はタウン、こういう区別があるのですが、フランスも同じような形もあるのですが、こういう外国から取り入れた、大体日本の法律は外国から取り入れたやつが多いのでございますけれども、イギリスなりあるいはアメリカなりフランス——ドイツは連邦ですからちょっと違いますけれども、アメリカの県と日本の県、府県ですね、都道府県、これの相違といいますか、どういう考え方でおられますか。いまの行政局長が言われたものを聞くと、どちらも完全自治体である、県も市町村も完全自治体だと、その機能が違うんだと、上とは言わぬけれども、重複したものをやっているけれども、完全自治体であると、そういう関係はどういう、それで説明してもらったら一番よくわかる。イギリス、アメリカ、フランスあたりの、西独はちょっと通いますからね。そういう点でどう考えておられますか。あなた非常に博学な人ですから。
  26. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 正確なことはなかなかお答えができないように思います。  イギリスの地方制度におきますところのカウンテイというようなものがわが国の府県と同じだとも必ずしも言い切れないんじゃないかというところがあるように思います。それからたとえばアメリカにおきましても、おっしゃいましたカウンティというものが、アメリカの場合にも県、市町村というようなわが国のような形での整然とした自治体の構造になっておりませんで、むしろ何もないところにカウンティになっておりましたり、そういう意味ではある面、昔の郡的な要素もあるようでございますし、必ずしも英米の形のものとわが国のもの、つまりわが国のものは戦後につくりかえたと、こう言いますけれども、やはり府県におけるところの基盤といいますか、ものの考え方は戦前の府県制度というものに非常に強く影響されておりますから、その府県というもののあり方をそのまま完全自治体にするという形をしておりますので、必ずしも英米の形のカウンティその他のものと府県とは同一ではない、むしろそういう意味じゃ、わが国独得の二重のシステムができ上がっていると、こういうふうな考え方をとるのがいいのじゃないだろうかと思っております。
  27. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 だいぶ白状したというのは失礼ですが、大体認めざるを得ないところになってきたと思いますがね。都道府県のいまのわが国の実情を見ると、知事公選であるとか議会はほかでも持っているところがありますけれども、大体ほかの欧米諸国の実態は、戦前の日本の府県によく似た、いわゆる国の行政機関の代行機関というのがほとんどですね。まあ完全自治体という知事の公選というものは少ないと思います。大体中央の任命が多いと思います、実態が。それが日本の場合には、県を完全自治体としたところに大きい私は意義があるということでわれわれは憲法制定の当時歓迎したわけなんです。ところが事務内容を見ると、そうはいかない。あの府県の事務の実態を見ると、政府からの機関委任事務を相当多く持っていますね。そういうものをどう理解されておるか、こういうものを明らかにして府県合併のいわゆる是非について、私は最後に詰めたいと思います。言われましたように、完全自治体という形を整えることは事実でしょう、知事の公選その他いろいろまあ完全自治体としての要素も備えているということは事実ですが、運用内容については相当私は問題があると思うんですがね、それについての認識はどう自治省持っておられるか。
  28. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 基本的には、機関委任事務がいまのように量質ともに非常に多くて、自治体としての運営というよりむしろ機関委任事務の執行ということが非常に重い責任になっておるというような形というものは、これは是正されなければならないというふうに考えております。機関委任事務自身を執行しているという立場におきましては、やはり国の機関という考え方でございますから、その点は現在十分に、必要やむを得ないものに限定をされておるかということになりますと、その点は確かに御指摘のような問題あると思います。今後ともその改革には努力はしなければならぬと思いますが、同時にまた事務を、これは具体的なひとつのテクニックのようなことになりますけれども、国の事務地方におろす、おろさせるというようなときに、第一段階として機関委任事務という形態をとるというようなことは、まあ実際の便宜といいますか、各省との関係におきましては、そのほうが事務を委譲する場合に円滑であるというひとつの、まあそういう意味合いというものもございまして、事務の委譲ということを第一段階とし、その次に事務の自治体事務化ということを考えていくという考え方もございます。基本的にはしかしそういうことでありまして、まことに機関委任事務で頭が重過ぎるという形の現状というものは、これは改めていくべきものだと考えております。
  29. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはほんとうですか。たとえばなにでしょう、社会保険事務なんかは、逆に政府は国の事務としてやるべきだという思想が多いですね。私はその点の政府考え方というものについてはもう少し、冒頭に申しましたけれども地方自治というものの本質というものを十分見きわめるべきである、あなたのいまのことばをかりても、その事務をおろすと、おろしてそれからまたいわゆる運営自体を地方の本来の事務にするのたと、こういう話です。なかなかそれは実行でき得ない。したがって、国の行政の都合によって、極言すれば国の行政の都合によって地方自治体を運用しようという方向に向いておるのじゃないですか。すべてを見ましても、あなたのほうから出された通牒なんかいろいろ見ましても、これはひとつの規範というものを示すということは私はいいかもしれませんけれども、相当干渉が多いと思いますね。住民意思によってやる地方自治に対して、相当政府行政権の介入が多くなっておる。私はそこを解明しておきたい。私、それを全部否定しておるのじゃないのですよ。非常にむつかしい国の統治権というものがあって、地方分権というものがあって、統一国家であるから、地方自治体が独立国でやれないということはよくわかります。アメリカの州でも、だんだんと連邦政府に対しての権限を委譲していますからね、あるものは逆にそういう傾向がある。あるけれども住民に非常に重要なものであるのにかかわらず、国の干渉が非常に強くなりつつある。これが、私が都道府県合併に対する一つ反対の別な意味の根拠なんですね。したがって、都道府県二つ三つ一緒にするのだということでなくして、広くする、人口を包含すること、多くなるということによって、自治能力を抹殺する、麻痺さす、この機会に乗じて中央集権的なものが入る余地がある。これは理論じゃなくて実際に入ってくる。これは欧米各国の実態もそのとおりです。これはリージョナリズムといいますか、これは非常に学者なんかが論議されておる。これを私は明らかにしておけば、府県合併という表面上の問題は私は少なくとも問題ないと思います。住民が必要であれば、これは隣の県と合併しても私はいいと思うのですよ。そういうものを明らかにしない限り、私はこれは許せない。それじゃ市町村も一緒じゃないかという論議がこの間されましたけれども、市町村は府県と違う。その点についてどう考えられますか。
  30. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 非常にむずかしいお話だと思います。ただ考え方として、地方自治という側面で考える場合には、自治の充実、能力の強化ということはこれは当然に考えなければいけないということは、私どももそういう立場事務配分等につきましての考え方基本としておるつもりでございますが、と同時に、一面社会経済の進展に伴いまして、やはり人や物の流動性というようなものは、ますます広域に流動してまいるということが多くなってきておるということも、これは率直に認めなければならないところと思います。そういう意味で考えますと、やはり広域的な行政というものが地方団体区域を越えていくという側面のあること、また、その越えていく量が、場所によりましてはだんだん多くなるということも率直に認めなければならない。そういう場合に、そういう広域的な活動というものに対する必要な行政なり施策なりというものを一体どこが受け持つのが妥当であるかという問題も一面やはり考えなければいけない、こういうことに私はなってくると思います。そこで、問題によりましては、だんだんと変化に伴いまして、地方的な事務と考えられておりましたものも、これを公平に考えた場合に、むしろ国家的な事務にまで高められるといいますか、変化していくという場合もありましょうし、また同時に、そのかわり国家的な事務として国が取り上げ過ぎておりましたものが、そういう変化に伴って、当然に地方事務として地方のものにしていくということのほうがなお妥当だという場合もあると思います。これは大きな時代の流れにおいて、国と地方事務の振り合いといいますか、分け持ち方というものは、時代の変化とともに内容が変わっていくということは考えざるを得ないのでありまして、ただ、全般として考えました場合にはそういう一つの大きな流れというものがありますが、やはり自治体としてそれをよく受けとめ得る体制といいますか、そういうものを考えていくということも、やはり自治体の機能をそこなわない範囲においてはこれは現在の変化に対応するための必要な体制ではないかということが私はやはり十分言い得るのではないか、そういう意味で、合併という問題もその点では確かに一つの問題として出てくる、こうなるのではなかろうかと思います。
  31. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで一つ混乱が起こってくるんです。私はその点を明らかにしておきたいのがきょうの趣旨なんです。  そういう社会経済の変動といいますか、これが成長といいますか、進歩というかは別として、そういうものが出てくると、行政の面から考えればそうあり得るということはわかりますよ、行政の面からですね。しかし、地方自治という、先ほど冒頭に言った憲法の趣旨の地方自治というものから考えて一体どうなるかということです。地方自治法の第二条の第九項では、「普通地方公共団体は、次に掲げるような国の事務を処理することができない。」という原則をここに掲げております。刑罰に関すること、国の運輸に関すること、これには私は問題があると思うんです。地方自治法制定した当時、国の事務と言われておったものについては一応ここに列記しておる。郵便に関する事項、全国的に統一しなければならない、そういうものについては一応これは地方公共団体だけでは処理できない、こういう原則をつくっておるわけですね。私は地方住民に関係のある問題については、とにかく、全部とは言えないですけれども、能力に合致したように地方におろすべきであるというのが私の年来の主張なんです。それが地方自治である。で、あなたいま言われました社会経済の進歩によって行政内容が変わって、それで国に引き上げなくてはならぬというものは一体どういうものですか。地方開発の問題、あるいは河川、水資源の問題等々、だいぶ論議されましたけれども、そういうことだけではない。それはあとで論議しますが、どういうものが出てまいりますか。そういう地方公共団体から国に上げなくてはならぬような、社会的な変動と申しますか、そういうものによってというのはどういうものですか。
  32. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 私どもももちろんいまお話がございましたような、地域住民に関係の深い事務というものの処理は、原則として地方公共団体が行なうのが最も適切であるという考え方を持っておるわけでございますが、この数年来いろいろな議論の中で、やはり広域行政ということを中心にしてでありますけれども、変化がございまして、この点で私ども意見が結論的には異なっておるわけでございますが、たとえば、河川の管理の問題でありますとか、あるいは河川の水利権の問題でありますとか、あるいは国道の管理の問題でありますとかということになってまいりますと、これは府県の行政を中心にしてでございますけれども、最近数年間におきまして、府県の段階に、機関委任事務ではございますが、とどめられておったものも、逆に国のほうに、広域行政というか、広域的な観念というものの理由によりまして引き上げられていっておるというような事例もあるわけです。こういうものは認識のしかたによっていろいろ言えると思います。言えると思いますが、現実に一級河川なりあるいは国道の建設なり管理なりというものが引き上げられていっておるということ、結局引き上げられておる現状でございますが、そういうことになった基礎あるいは説明というものは、少なくとも広域行政——府県の区域を越えていくような行政については、やはり府県に管理さすべきでない、全国的な統一をはかり、それから府県間の利害の調節を行なうという能力は府県にはないという考え方が全体としては多数を占めて、ああいう改革が行なわれた、こう考えられるわけでありまして、これは適切な例かどうかわかりませんが、一つの例としてあげることができるだろうと思います。
  33. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そのほかに、これは水資源とかそういうもの自体もこの間からだいぶ論議されておりますが、これ以外は、——それだけですか。
  34. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 私もたくさんのことはあまり知りませんけれども、たとえば最近でありますというと、これもいろいろ意見はあると思いますが、貿易埠頭公団というようなものをつくっていく、そういうようなものも、これはやはり港湾管理者という自治体の管理だけでは、これからの海外貿易の技術的な変化に伴う、いわゆるコンテナ埠頭の大量建設などというものはできないんだというような考え方が、ああいう貿易埠頭公団というようなものの出現を見させるための有力な私はてこになっただろうという気がいたします。まあその他いろいろそういう事例というものはなおほかにもあげることができると思いますが、いまそれ以上のものをちょっと思いつきませんので、この程度にさせていただきたいと思います。
  35. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われた問題は、いままで論議の対象になっておったものですね。港湾、河川、そういうものはなっておったんですが、私はあとでその点については触れたいと思いますが、さっき何べんも言いますように、行政という面だけで考えると、私はそういうこともあり得るということは十分認めておるんです。それが地方自治とどう結びつくかという問題、たとえば港湾の問題を言いましょうか。港湾はいま言われたように、国でやらなくてはならない。外国貿易についても、なかなかそこまで地方自治団体には能力ないんだと。だから国が直轄でやるんだと。まあ河川についてもそう言われますがね。それによって住民がどれほど迷惑をし、どれほど利益をするかということは、やはり住民が一番基礎になると思うんですよ。国家的見地から見る立場における行政もよくわかるんですが、そういうものがどこに調整されるか、地方自治というものはだんだん否定されるんじゃないか、そこに問題があると思うんですよ。行政の面から見るとなるほどそういうことも言い得ますよ。しかし地方自治の面からいったら、全然地方住民はおっぽりぱなしで、国のほうの行政だけ先行して、ここに港湾つくるんだ、ここらの住民はどうなろうとどうでもいいというような考え方じゃいけないというんですよ、ぼくの主張は。行政の面から見るとなるほどそういうものは必要であろうという考えは起こりますけれども地方住民から見るとそういかない場合がある。これは日常的に起こっておる問題ですね。それをどう考えられておるかというのが私の質問の重点なんです。だから、行政上から見るとあなたの言うとおり、地方自治団体でできないやつは国でやるんだ、地方自治団体ができるやつは国の行政をここへおろしてやる、というような単純な問題ではいかない。地方住民意思というものをどこでそれを吸い上げるか、この基本的な問題を忘れてはいけない、というのが私の質問の要点なんですね。自治大臣どうですか。
  36. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 非常に重要な問題でして、まあ法律上の解釈その他については、いままで法制局または行政局長がお答えいたしました。いわゆる地方自治権と国の関係、これは国の行政面からすれば、たとえばいまお話のありました一つの例でございますが、地域開発という問題を取り上げた場合に、地方自治体にまかしてはその開発が有効適切にいけないんだと、国がやはり統一的な計画のもとにやる、それに従って行政が行なわれていく。そういう場合には、しかし、地域住民意思に沿うた場合はいいが、沿わない場合は地方自治権を侵すじゃないか、こういう問題、これはいわば一つの大きな行政の問題であると同時に、政治の問題にも関連してくると思っております。そこでいま一つ、実態、実情というものがやはりこれに、基礎的なこの問題の検討にあたって必要じゃないか。法律論からいいますと、私はまあしろうとでございますから、法制局あるいは行政局長からお答えすることでありますから、法律上私言うのではございませんから、その点ひとつ御理解願っておきたいと思います。したがって、ただその大きな意味の政治論となるし、行政論ともなります。しかし根拠は法律論でございますから、法律に従うか従わぬかということになってまいりますから、非常に私のお答えもむずかしいと思っておりますが、まあ端的に私の感じと申しますか、私が考えますことは、この地方開発というものがいま局長がお答えいたしますとおりに、だんだん広域行政という面と関連を加えてくる。その一県、都道府県一つ行政区画ではどうしても大きな開発ができない、まあ地域外の問題に触れてくる。その場合には国がみずから進んでその行政の衝に当たる。そこで、つまり地域開発というものをしからばその意味において、地方の自治と国の施策というものがマッチしない場合、これが一致しない場合にどうするか。そうすると、その国の施策というものはどういうことを目標とするかというと、まあ国全体の産業経済の発展という目標はわかっておりますが、同時にその地域のやはり繁栄とか発展、それがしたがって地域住民の生活の向上になる、こういういろんな回り回った私は一つ基本的な要素があると思っております。  そこで、しかしそう言っても、地域住民に、いま御指摘になりました港をつくると、しかしその港はその地域住民がここでひとつ、そういう大きな港の開発は困ると言うた場合と、国全体から見てその地域の開発はその港を大きくしないといかぬと、こういう場合の矛盾が出てくると。私はそういう場合あちこちあると思っております。そこで、それはどちらを尊重してやるかということに帰すると。法律解釈は私は先にお断わりしました。私が別に法律解釈をしてもこれはもう何と申しますか権威上そういうのは避けたいと思うのです。その場合には、自治省考え方を申しますと、あくまでも地域住民意思というものを尊重してやるというたてまえです。これはもう原則です。いろんな場合が起こりましても、自治省考え方地域住民意思を尊重すると。したがって自治省考え方どうかという御質問でございますれば、いろんな関連のいろんな理由は別として、やっぱりあくまでも地域住民意思を尊重したいというのがまた役所のたてまえでございまして、その場合、しかし自治省がそういうたてまえをとりましても、御承知のとおり、国の行政にしからばまっこうから何でもかんでも反対していくのがいいか、何といってもこれは一連の国の行政を進めていきます場合のやはり一翼として、われわれ自治省もこれもいわゆる連関をしなければならぬこともわかっていますが、地域社会、地域住民意思というものは、その場合に、矛盾してきた場合に、自治省としてどう取り扱うかということになってきています。ここに——私は法律解釈はよしますから。私が言ったってあなたが別に、あなたも非常な権威者であるのですし、それを私がかれこれ言うことはないですから。——そういう場合に実は矛盾を来たします。これをどうするか。しかし基本的には、やはり自治省立場としては、地域住民意思というものをまずもって私は尊重し、これをそんたくし、その場合、これはいまの開発の問題起こっていますから申し上げますが、これは府県が、府県全体からいうと非常に利益になることだと、しかしその進んでいる地域、まあ市町村といいますか、そういう場合には非常にその地域住民は迷惑を受ける、こういう場合もあり得る。したがって、その地域住民がいわゆる一種の犠牲になられる場合がある、その場合にはどうするかという、こういう二段、三段、いろいろな、私がいま実情に照らさぬと一般的な抽象論ではいけないと言うのはそこでありまして、私ども行政を進めるゆえんはそこにあると思う。そこで、その場合におきましてはそれがいわゆる国のためにもなる。これがもとで、国がやることでございますが、それがまた関連してその府県のためになる。しかしながら、一部の地域の市町村なら市町村というものの住民は非常にこれは迷惑である、こういうケースが出てくる。その場合にはどうかというと、これはどうしてもまあ府県の意思をまず聞くことが第一。第二は、その地域住民方々意見を聞き、これを尊重すると同時に、もしそれがどうしても府県のためになる、国のためになるが同時に府県のためになるということが明らかになりますれば、しかしそのことについて地域住民の理解を得るということはもちろん必要である。その理解を得ればどうするかというと、これに対する犠牲に対する補償という問題が起こってくる。しかし、理解を得ない場合どうかという問題が実は出てまいります。いろいろな場合がありますから、その場合に自治省の態度というものは非常に困難になりますが、まずそういう国のため、府県のためだ、しかし一部のと言いますか、町村なり市の地域においては、非常に住民意思がこれに沿わない、むしろ反対だという場合におきまして、どういう施策をするかという場合は、これはやはり、それは府県とまずほんとうに話し合いをし、同時に当該市町村と話し合いをして、それが全体的に広域行政と申しますか、そういう意味においての理解を得られるかどうかという点にかかって問題の解決方法がある。これを強制し、全然無視してやるという、こうなりますと、自治省としてはまっこうから反対せざるを得ない。全然理解もしない、またこの地域住民があくまでも反対であるという場合があります。そういう場合は、自治省としては、これは理解を得るまでの経過をたどるとか、いろいろな実態に沿うたことでございますから、どうかという御質問でございますが、私は端的にこうあるべきだとお答えのできないのは、私のいままでの答弁でおわかりできたかどうか知りませんが、私の真意はそういうところにあります。
  37. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 精一ぱい努力されて答弁されたのですが、実はこれは政府だけに言っておることではない。地方制度調査会でもずいぶん私は論議しましたけれども、あそこはだんな衆が多いですから、あまり深めた話ができなかったので言わなかったのですが、これは世界的な現象でございます。先ほど申しましたように、もうすでに今世紀初めから、リージョナリズムということで、地方広域行政と申しますか、そういう問題で非常に論議をされております。日本はおくれております。確かにおくれておりまして、アメリカではすでに州を一緒にしてしまってはどうかという論議も、これは一部の論議で、あります。したがって、国の開発と申しますか、国の行政というものと地方行政とはどこかでかみ合わなければならぬ。逆に衝突する場合があることはもう今日の現象です。それがいま日本で論議されております。学者も非常に論議されております。それが都道府県合併一つのあらわれの現象と私は見ております。道州制、地方制と言いますか、道州制を出された。昭和三十何年ですかに出された。これも一つのあらわれだと思います。イギリスでも、日本の道州制が答申されたとき、学者の間では日本の道州制を論議しておりますよ。そういうことから見ると、私はここではっきりしておかなければ問題を起こすと思うのですよ。私はいまの政府を信頼しておりませんから、はっきり言っておきますけれども、公害の問題一つ取り上げても、あなた言われましたけれども住民意思を全然そんたくしてやっておりませんよ。いまの産業行政にいたしましてもしていないのですが、たまたまそれが世論の力で問題になったから、公害基本法もできて手をつけられましたけれども、もし大臣が言われるように、住民意思が大事だと言われるなら、国の行政自体もっと考えておるべきであるというのが私の主張なんです。したがって、これからますます国の行政が優先してくる段階になってくると思うのです。これは日本だけではありません。しかし、外国の場合には、比較的地方自治と申しますか、民主主義と申しますか、徹底しておりますから、わりあいに調和をして前進をしておると私は見ております。私はそう深く外国を歩いておりませんからわかりませんけれども、わりあいにイギリスでも、都市政策にしても、相当住民意思を取り入れた行政というものが、国の行政が行なわれておりますね。私そういう段階にきておると思うのですよ、いまの段階は。政府がもっとしっかり考えてもらわぬと、問題が起こってからどろなわ式にいろいろやられるから、問題がますます複雑になってくるのですね、都道府県の合併の問題でも。これは和田委員質問されたと思うのですけれども、そういう基本的な問題が論議されて出されておらないのですよ、率直に言って。地方制度調査会答申したから実は出したのだという程度にすぎないと思うのですよ。論議されていない。各省の間でおのおの衝突する省がありますよ。たとえば通産省であろうと、あるいはまた建設省——そういうふうに総合的に国が考えて出しておらないと見ておりますね。それであるから、建設大臣答弁自治大臣答弁とは非常に感覚が相違していますね。建設大臣は、国の立場で建設行政をどうしようかということの一本ですよ。そこで、私はきょう建設大臣を呼びたかったのですが、呼んでおりませんから、いずれまた言いますけれども、やはり建設大臣考え方について私は非常に不満を持っていますよ。あの考え方自体、建設行政だけがそれが政治の基本だと思っているのは大間違いですよ。政治というものは国民住民のための政治でしょう。これはもう例を言えば幾らでもありますが、道路を建設するために住民がどれほど泣いているかという問題——国の行政からいったら高速道路も必要でしょう。日本の経済成長に合致するには必要でありますけれども住民から見れば非常に迷惑で、反対のところがありますけれども、それは押えつけられております。その場合に、自治省一つもそれに対して関与しておらない。国の行政優先ですよ。そういう問題がありますから、私は特に時間をもらって、与党の理事の方々も、山本、もうおいてくれぬかという気持で一ぱいだと思いますけれども、私は引き延ばすためにやっているのではない。こういう問題を十分国は考えてもらわぬと、単に地方自治体がどうこうといって自治省が何ぼやってもそれはだめです。できません。長い間私はこの地方自治に関係してまいりましたけれども、やらぬですよ。大体自治省政府一つ機関でしょう。大臣もまた行政局長も、ここで地方自治のためにやると言う。うそですよ。やっているというのはうそですよ。いかに国に忠実になるように都道府県なり市町村、地方公共団体に自分の言うことを聞かそうかということだけが皆さんの役目でしょう、実際見たって。いまさら言うわけではないが、あとでまた問題になりますが、定年制の問題もそうですよ。地方自治というものに対して、国のほうがそういう定年制をしいて、地方自治というものを一体どう考えておるか。これは私は次の問題のときに言おうと思いますけれども、ずっと並べればたくさんありますよ。建設行政でも産業行政でも全部そうですよ。地方自治体というものを無視しておりますよ。しかし、それは国の行政立場から見ると全面的に否定できない問題があることは私よく知っておるのです。それをどう調和するかということに対してはどれだけ努力されておりますか。そういう点を私は実は言いたかったのですね。  そこで私は次に進みますが、だから、私がいま言ったのは、政治と行政という問題をもう少し明らかにしておかなくちゃならない。行政の面から言うとこれはもう問題が相当あるけれども、やはり政治というものが基本でなければならぬ。これは、最初に私が憲法を出したのは何か。いまごろ憲法を出したのはどうかと思っておる人があるかもしれませんが、憲法であの大原則を定めたということは、地方自治を忘れてはいけませんよ、こういうことで、今後ますます行政が発達すると、地方住民意思を無視することが出てくることは必至ですよ、諸外国の例を見ても。日本の住民は比較的従順性があるから、比較的政府の言うことをよく聞きますけれども、権力に弱いですから、昔からずっとしきたりで。しかし、住民がもっと力が出てきたならば、それは相当問題が起こるということですから、一体政治と行政、冒頭に言いましたけれども、政治、行政の両面からこの地方公共団体地方自治というものを考えてもらいたい。したがって、ここの委員会地方行政委員会ですね。地方自治委員会と言っておらない。地方行政委員会地方行政をどうするかということだけが論議される。しかし、内容はそうではないのです。失礼なことを言いましたけれども委員の方は御賢明ですから、地方自治を踏まえて論議されておりますけれども地方行政をどうするかというその前に、地方自治をどう守るかということを基本的に考えてもらいたい。だから、そういう点について、政府地方自治行政をどうマッチさせるか、言いかえれば国の行政地方自治をどういうぐあいに調整していくかということの基本的な問題について政府は考えてもらいたいと思うのですが、この点についてはあまり長い答弁は要りませんが、私の言うことがいいか悪いか、それだけでいいです。
  38. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いろいろと地方行政に対する御忠告をいただきまして、私は山本さんのお考え非常にすなおに理解ができます。自治省はやはり政府一つ機関として動くということは、これはやはり国家機関一つでございます。やはり国の仕事というものに協力することは御理解願えると思いますが、しかしその所管の事務地方自治の問題、地方行政の問題であります。その地方行政基本地方自治だ、これはもう当然だと思っております。余談でちょっとお許し願いますが、きょうも実は行政改革の閣僚懇談会がありましたときに、国と地方行政改革という一つの書き流しの文句がありますから、私は発言いたしました。国と地方行政改革ということは、国の行政が相当に地方に委任されて、非常に大きな仕事をかかえているんだ、だから地方行政というものは国の行政改革を前提としなきゃほんとうの地方行政はできないんだ、こういう一連に書かれることは私としては不本意だ、国の行政を根本として考えなさい、地方自治より、という発言を実はしてきたわけですが、私の真意は、全くいまやっているのは自治省はそうじゃないじゃないかとおしかりを受ければこれは別でございます。私が自治省に入りまして非常に痛感しておりますことは、率直に言いますと、ここに局長が来ておりますけれども、やはりいままでがいいとか悪いじゃありません。やっぱり役所の者の心の持ち方が私はやはりさらにひとつ前進して、地方自治とか、山本さんは地方自治というが、私は地方地域住民ということばをよく使っておりますが、地方地域住民意思というものをまず頭に置かぬといかぬぞという考えを深くしております。これはいままでの行政が間違っているとか、だれがいけぬとか、そういうことじゃありませんが、御指摘されたようなことがたまにどこかにあることを私は感じていることがあります。いま、しかしすぐそれをどこまでやるかということは、私が一人がんばりますと言ってもそうはいきませんが、いまの御指摘にありました地方自治の問題、これは地方住民の問題、ここから出ていかなきゃ地方行政というものは先にいけないといういまの御忠告、また御指摘は私も全く深く理解いたします。同感に思っております。
  39. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣がこの前からの質問に答えて言われることはよく私は理解しておるんですが、しかしあなたのその意思というものは佐藤内閣を支配できないんですね。えらい失礼なことを言って相済まぬことですが、これは私は失礼と思っていない。実態がそうだと思っている。というのは、佐藤内閣ができないということは、佐藤さんに力がないということを言っておるんじゃない。いまの日本の社会構造自体がやっぱりそうなっておるんですよ。それが私は問題だと思う。これからまた深く言うとイデオロギーの問題になるから、私はそんなことは言いません。そういうものをはっきりつかんでやらなければ、私は実際もっとやれやれと言って反対買うようなやつをおだててやらしておいたら、もっと早く社会の変わり方が強く出てくると思う。私はそれはいけないと思う。やはり国民のためにあまり騒動起こさないようにやったらいいじゃないかというのが私の従来の、一応社会主義者ですから革命というものは一つ持っていますけれども、そうかといって、方法について、法という問題が一つある。しかし私は何ぼ言っても、これは十年間予算委員会通じていろいろ発言した。佐藤さんが大蔵大臣のときから言っている。そのときも、山本さんのと結果的には考えは同感であります。しかしなかなか簡単に政治はゆきませんというのが答弁のすべてです。これは池田さんのときから、岸さんのときから、ずっと一貫している。できない。それでは私は立法としての責任を果たしていないと思う。これはいまの政党制民主主義の日本で、たとえばあなたと論議しているだけで、自民党の方々言えないでしょう。立法府、同じ立法府の一員であるけれども論議をしないんですよ。そして自民党の内部で論議したやつが法律案に出てくるんでしょう。それだけでは私は世の中というのは、いまはいいですよ、将来は、私はこの問題は相当表に出てくると思うんですがね。そういうこと言っていると時間たちますから、そういう点は十分考えてもらいたい。できるだけそういう努力をしてもらって、地方自治だけでもひとつ守って、守るということより前進さすということで努力してもらいたい。自治省の、官僚ということばは使いませんが、自治省の役人も常にそれを持っていてもらいたいと思う。人間というのは、仕事していると、自分の仕事だけ大事になって道を忘れる者が多い。ぼくらでもそういう場合がある。そういうものを持って自治省方々もやっぱり仕事をしてもらわぬと、いつのまにか、中央集権じゃないけれども都道府県、市町村を支持するような法律では、全然そういうものではない。ないけれどもそういう形が出ておりますよ、現実に出ている。例をあげれば幾らでもあります。そういう点をひとつ注意をしてもらいたいということを言っておきます。
  40. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  41. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記をつけてください。暫時休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時五十二分開会
  42. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) それではただいまから地方行政委員会を再開いたします。  都道府県合併特例法案議題といたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  43. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 午前中、基本的な問題に触れて政府見解をただしたのですが、全体的にいってまだ了解できない点が多いのですが、自治大臣の熱心な答弁にめでて一応了解するようなふりをしておったのです。  そこで具体的に煮詰めておきたいと思うのです。もうこれは最後ですからね。それで、いよいよ都道府県合併特例法が出てまいりましたのですが、最初に言われる理解できない、まあ理解できるのですが、抽象的な文言ですが、特に第二条の「自然的、社会的及び経済的に一体性のある区域」、大阪の公聴会では木下教授がこれをとらまえて、望ましき地域という表現をしておるのですね、公聴会で。したがって、「自然的、社会的及び経済的」ということは、よく出てくることばですが、この特例法における「自然的」とは一体どういう考え方か、「社会的」というのはどういう考え方か、それから「経済的」というのはどういう考え方か。そして「一体性」というのは三つ一体性のものであるか、おのおのの一体性を指すのか、この点、行政局長でいいですから、答弁してください。
  44. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) まあ見方でございますから、いろいろな見方ができるわけでございますが、客観的に言いまして、自然的にも経済的にも社会的にも、それが合併をするという点について、それらの観点からいってすでに現実が一体としてとらまえることが可能である、こういう地域ということになると思います。そこで、その中でいずれのものがより強いものか、あるいは同じくらいな強さであるかというお話でございますが、やはり法律として書いておりますところは、いずれの面から見てもそういう一体として経営され、あるいはとらまえていくことが十分できるということだと私どもは考えております。
  45. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは現実の問題が照合されなければならぬと思うのですがね。従来の都道府県、これは必ずしも自然的に合致しているとは言えないと思う。人為的な面も私はあったと思うのです。廃藩置県の際には現在より数は多かったと思いますが、それが自然に統合されていまの四十六都道府県になったと思うのですね。自然的な一体性といいますか、そういうものをどこで基準を求めるかということ、国の行政区画としていまの都道府県を認めておるのか、それともいま局長が言われた自然的な一体性というものを認めてつくられたのか、どうでございますか。
  46. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 従来の府県、従来と申しますか、現在の府県の区域は、御指摘のように沿革から申しますと、藩の組織で、藩の区域でありますとか、あるいは昔の国と申しますか、国の区域でありますとかいうものが基礎になっておるということは、これはおおえない事実だと思います。そういうことで、むしろ人為的な要素、むしろあるいは戦国のいろいろな勢力関係における安定というようなものの要素も入っておりますが、しかし、同時に実力時代と申しますか、そういう諸国を国々に分けましたその大きなくくりとしては、大体国というものを基準としておりますから、その点では、その当時の考え方における自然的な境界、たとえば河川でございますとか、あるいは山脈でございますとかいうようなものが一応大きなくくりとしては標準になっているところが多いように思います。しかし現実には必ずしも、ことにいまの藩の区域などというものは一致いたしませんから、そういうところでは多少の食い違いというものももちろんあるわけでございます。そういう意味では、自然的な一つの領域というものをある程度は守っておるその当時の考え方を受け継いできておるともいえますが、また人為的な要素ではありましたけれども、それがやはり一つ行政の慣習といいますか、一つのそういうところの区域によって長い間社会生活あるいは経済生活、政治生活が営まれてきました結果、ある程度それに対応する、住民の側で対応するといいますか、そういう気持ちが出てきておるわけでございます。現在の府県の区域というものも、その意味では現状においては非常に安定していると申しますか、大かたの人たちが自然に、まあ相当時間もたちましたから、受け入れた結果にいまやなっておるところの体制だと思います。廃藩置県の際にはやはりいろいろと議論があり、紛擾がありまして、たしか明治十八年でございましたか、二十年近くまで府県の現在の区域はところによりますと動いていったということがございますから、その時代には非常な抵抗感があったに違いございませんが、現在では、そういう意味で、人為的な結果や自然的な結果が集約された結果でありますけれども、現在の府県の区域としては一応安定している、そういうことであったろうと思います。そこで今度は合併ということになりますというと、さらにその府県の区域の上と申しますか、府県を統合した上での一体性というものをどこに求めるか、府県を拡大した上でのさらに広い領域というものをどこに求めるか、こういうことに相なりますが、やはり行政区域というものについては、いろんな意味で大きな変化が伴いますから、全部の住民が、ことに国民全部といいますかがそれを自然に受け入れていくというのには、やはり相当な年月がかかる。しかしそれにしても、相当多数の人たちが自然的にも社会的にも経済的にも一体性を持っていると確信し得るような、そういう現実においても、現在においても確信し得るような認識、共通の理解に立つという見込みがやはり必要だということは言えると思います。そういう意味では、現実の行政の変化あるいは将来の発展の方向、その点では人為的かもしれませんが、たとえば全国総合開発計画などの示しますところの大規模プロジェクトの配置でありますとかいろんなものも、一つの社会的あるいは経済的な要素として取り入れながら、一体性というものの成立し得るという見込みをつける。現在全部一体だというふうに感ずるわけにはまいらぬと思いますが、そういう見込みが十分つき得るということでなければならない。その動機の中には、そういう意味で単に自然的だけではない人為的な要素ということも、これは依然として認識の要素には加わっていくのではないだろうか、こう考えております。
  47. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 自然的要素、一体性という問題、私はいまの都道府県——まあ都はその当時は東京府であるから府県と考えているのですが、一応九十年——一世紀近く国民がなれてきたものですね。当時廃藩置県のときにはやはり政府の国家統治——維新と申しますか、あの維新のその後の国の統治上、やはり廃藩置県ということで、また人為的に考える要素もあったと思います。しかし、それは人為的じゃなくて、いま言われたように、やはり自然的な要素というものを勘案してやっておる。あの当時は、数はおそらく六、七十あったと思いますからそういうこともやられたと思います。しかし、これをいま合併するということになれば、全然それを無視してはやれないと私は思っておる。ここに自然的、社会的、経済的に一体性ということは、自然的にも社会的にも経済的にも一体性というのか、自然的、社会的、経済的の三つを総合したものを一体性というのかちょっとそこで変わってくると思う。この法案審議過程で明らかにされておるのは、自然的要素というより、ほとんど経済的、社会的変動によりいまの府県では行政上非常に支障がある。この支障を排除するために府県合併というものは出てきたと思うのですが、自然的要素だけとって考えるならば、府県合併は何ら必要がない、こういう私は主張。しかし、社会的、経済的変動に従って、いわゆる地方開発とか総合計画等々から見るというと、いまの府県の状況ではいかぬのじゃないかという論議が出てくると思う。したがって、自然的な要素だけ見まして、はたしてそれが変えるべきであるかということ、これは必ずしもないとは言いませんよ、あり得ますが、私は地方制度調査会でも言ったのですが、現在の府県を一括して、まるのみにして府県の合併だということには無理があるのじゃないか。かりにいま申しましたような経済的、社会的変動に沿うようにするならば、いまの都道府県というもの一切無視して——無視ということはちょっときつうございますが、それは一つ別にしておいて、そして新たに自然的要素を加味して経済的、あるいは社会的なものを考えていくというならば合理性あるものを、この法律案では現在の都道府県——いわゆる関係都道府県という表現をしておりますが、関係都道府県一つとして合併しようという思想なんですね。そこに私はいま説明されたものに無理がある、したがって、そういう点の理解というのをどうされておるかということです。したがって、いまの府県をばらばらにして、新たに行政区域といいますか、自然的な要素を考えながらそれをつくるというならば筋は通るのですが、いまある府県をそのまま二つ三つを合併しようというところに私は無理がある、そこにやり方に無理がある、私が言ったようなことではとうていできないので、便宜的にいまの府県を前提として合併しようという思想になったと思うのですが、この点どうですか。
  48. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 確かにお話のようなところはございます。合併につきまして、全くいまの県の境界というものを頭に入れないでもう一度いわゆる府県の再編成と申しますか、合併といったような立場でなくて再編成というような立場で地図を書き直すということでございますと、現在の府県の全部が、合併の区域として、府県の区域を単位にするということと結果は必ずしも一致しないといいますか、むしろほど遠い部分がたくさん出てくるというふうに思います。しかしこの問題は、そういう県の広域的な再編成ということじゃなくて、むしろいわゆる府県の住民の自発的な意思による自発的な合併を進めていくという場合でございますから、その場合でも府県の区域が南北に分かれる、そしてそれぞれに合併されるというケースを考えられないことはございません、ございませんが、実際問題としてそれはきわめて困難なことである。つまり従来とも自然的には必ずしも南北で利害が一致しないような府県もございますけれども、しかしやはり長い間府県として一体として経営され、意識され、そういう地域社会として発展してきたということの沿革なり重さというものは、やはりこれは否定することのできない歴史的な事実でありますから、そういうものをただ単に合理的な再編成というようなかっこうで自主的な合併というものが進め得るかということになりますと、これはいたずらに混乱を繰り返すと申しますか、そういうことになるだけであって、やはり基本としては、県を単位にして府県の意思というものを明確にしながら合併をしていくということのほうが実際的でもあるし、その上で、さらにそういう話し合いの中で分割をしなければならぬというケースが出てきた場合には、それはまたそれに応じてそのときに問題を考えるということにして、府県合併というものは、やはり府県をそれぞれ単位にしながら府県の意思をまとめて自主的な進め方をしていくということのほうが適当じゃないか、こういうことだけに私どもはすぎないと思います。したがって、純理的に行政という面だけから考えての再編成でございましたならば、全く御指摘のように違った形のものになる部分が多いだろう、こういうことが言えるだろうと思います。
  49. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 答弁の中で半分そういう実態を認めた——半分というとおかしいですが、そういう点を認められておる答弁ですが、私はいま言われたことを裏返しますと、非常に自然的に不合理が出てくることは必至だと思うんですね。現在の府県でも、たとえば和歌山県のずうっと熊野の端なんかに行くと、むしろ三重県のほうに経済圏がいってますね。和歌山の県庁よりか大阪に近接したところがあるんですからね。非常にいまの県自体でも不合理があることはわれわれも認めるんです。それを今度、これは何も阪奈和ということに限定されてない——法律はそうじゃないということを大臣はたびたび言われておりますが、これは一つの例としてね、問題になってますから。私は府県のどこに県庁を置くか問題になると思うんですがね。そうすると、非常に自然的には不自然な——自然的に不自然ということばはどうかと思いますが、不合理な点が出てくると思う。これが地方自治として——行政は別ですよ、地方自治として正しいかどうかということについて私はきわめて疑問を持っておるんです。これは私の一貫した考え方です。したがって、行政の面だけで府県合併を考えるというなら別であるけれども地方自治という住民意思によってすべてを決するという民主的な考え方からいくと、私は非常に無理が出てくると思うんですね。だから、そういう点を私はどう政府は考えておるかという問題。しかし、こう言うと、あなたのほうの答弁は、これは府県の住民意思によってきめるんだからかってにやってもらったらいいんだと、こう言われると思うんですが、これは私は無責任答弁だと思って聞いてるんですよ、ずうっと。それならこんな法律出す必要ないですよ。もし住民意思——そういう意思で決定するというなら、いまの法律でも、たとえば大阪の住民、あるいは和歌山の住民、奈良の住民がこぞってこれは合併すべきであるという意欲が高まってくれば、政府もこれを認めざるを得なくなるでしょう、いまの地方自治法においても。したがって、私は、そういうことを考えると、どうも政府考え方というのはあいまいであるということをずうっと審議において痛感しておるんですよ。そういう点をぼくは政府がどう考えておるんだということは非常に疑問です。だから、あるわれわれの仲間では、政府はこういうものに対して熱意がないんだ、ただ一つパーンと花火を上げて、住民のひとつ気持ちを聞くだけだというような法律であるということになりますが、私はそれは反対なんです。そういうことは政治の上から反対です。地方自治といえども、冒頭に言われましたように、国の統治の一つ機関——機関ということばはちょっと強うございますけれども、方法としてあるんですから、大阪府の住民は日本国民である、和歌山県の県民もこれは日本の国民なんですからね。だから、国がどういうぐあいに考えておるかという考え方をまず出すべきだと思うんですよ、そういう点については。この法律は、いま申しました自然的、社会的及び経済的一体性のあるということだけが目的で——目的は第一条にありますよ、第一条のやつはきわめてこれは抽象的です。そういうものが示されておるだけであって、具体的に指導性が何もない。これで住民がどうしてきめられるんですか。そういう点が私は非常に不満です。それと、そんなもの出したら、政府都道府県合併をイニシアチブとってやるんかと言って逆に責められるから、そういうことはやめる、そんなひきょうな政治はありませんよ。だからそういう点について、私はいま申しましたように、自然的な状態の一体性ということを考えるならば、これはもう少し検討を要する。私は必要ないとは言わない。ある程度広域行政というものの必要性は現在出てきていることは事実ですよ。だが、地方自治というものを度外視した広域行政に私は絶対納得できない。こういう意味からも、この点についていま行政局長説明されましたけれども、私としては説明になってない。ただ便宜上、都道府県意思を聞くために、再編成ができないから、これを出す。その方法論としてはわかりますが、実際の地方自治の上に立った広域行政を推進しようという意味においては私は納得できない、まあこう思うのです。あまり長い説明は要りません、ひとつ私の言うことに対する反論があれば聞かしていただきたい。
  50. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 非常にむずかしい御議論でございますが、私が先ほど申しましたのは、これは二つの見方、立場があると思います。つまり、現在の府県というものが、先ほど来のお話がありましたように、自然的と申しますか、自治の上において一体性を欠いているような、ともすれば利害が対立するようなものも一つの領域にしている、あるいはまた合併に際してはその矛盾というものが強く出てくるような地域がある。これは住民意思にかかわりなく、ある程度そういう意味ででき上がった府県の区域が現在の府県の区域になったときに、自治というものと多少かかわりのない沿革の上から起こった問題ではないか。そうすると、こういう合併の際に、そういうものを手直しと言っちゃ語弊がありますけれども、そういう観点から考えていくべきじゃないか、これはまあ一つの御議論だと思います。しかしまた同時に、その点につきましては、行政上の立場からやはり不合理性というものもあるという面もあるだろうと思います。が何せ、そういうものを今度きめていきます場合に、やはり、いままでそういう矛盾を内部にはらむような形ではあったにしたところで、府県という自治体としても府県制というもの以来長い歴史をやっぱり積み重ねてきているということになっているのが現実でございますから、大体その点で、どの辺をどういうふうな再編成をする——合併という場合に、そういう再編成といいますか、そういうものを考えながらやっていくかということになりますと、ここにしさいな明確な線を引くことがはたしてどの程度できるかということになりますと、非常にむずかしい、これはたいへんむずかしい問題でございます。したがいまして、その点の必要というものは自治の上から当然考えられるという御指摘もありますけれども、私ども行政上からもそれは考えられる。しかしながら、行政上から考えられても、自治の上からはそういう一体性を破壊するようなかっこうにすべきではないという考え方がむしろ場合によっては強いわけではないだろうか。南紀州というお話がございます。これは和歌山県を例にとるというわけではもちろんないというお話でございますが、私どもそのつもりで伺っておりましたが、南紀州というものにつきましても、和歌山県の話が出てまいりますときに、私も二、三そういう関係の方の御意見もかって伺ったことがございます。その場合でも、南紀というものはどうかという点の御意見も伺いましたけれども、絶対にそういうものは切り離すべきだという御意見はかつて聞いたことはございません。その意味では、やはり自治という考え方の中には、そういう自治的に対立しているという面ももちろんございますが、自治的にはむしろ不合理であっても、それを一つのものとして、一つの新しい府県の合併というような場合には、一つのものとしてそれは統合されていくべきであるという考え方も非常に強い。それも根底は何からきているかといえば、やはり自治というか、一体性というか、連帯感という、いままでの長い歴史の積み重ねから発している考え方、こういうものがあるわけでございます。それがそういう面での分割なり修正なりが必要だということでありますならば、私どもやはりそういう段階において措置が必要になってくるということは当然でございますが、ただ、どこにそれじゃそういうものを予定しておまえのところは指導していくべきじゃないか、こういうことになってまいりますというと、現在なかなかこの線を引くということは、具体の問題が出ていろんな論議の中でそういった線が引けるか引けないかというようなことが見きわめられるような事態を迎えてまいりませんと、一方的に政府としてそういう何か基準めいたものでそういうところは直していくのがよろしいのだということも、見方によってはやはり自治的な扱いじゃないという場合が多いであろうと思うのであります。これは具体の問題が出た上でお互いにくふうをこらしていく問題として処理をするよりほかはないのじゃないかというように考えております。
  51. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は南紀の例を出した、これは一つの、いま現在の府県においてもなおかつそういう問題があるということを言ったのです。やはりいまの住民は府県単位の認識というものが強く、一世紀近くなれておるのですから、三代続いてその県の住民ということになれておるのですから、それはそういう県民意識というものは私はあると思う。東京でも何々県人会というのがたくさんあるというようなことを聞く。これはやゆ的に言うわけじゃないのですが、府県合併したら、今度どういう県人会をつくるか。阪奈和県人会なるものができるとしたら、相当県民の意識というものは変わってくると思うのですがね。それは別として、これはやゆ的なことですから。ただ、私が言っているのは、そういう住民の意識と言われますが、私は残念ながら、まだ日本の一般国民には自治意識というものが、自分の市町村を通じてのみ考えるだけであって、府県の行政については、何か便宜を、道路をつくってもらうとか、そういう大きいものに対する期待であって、自治意識というものは、実際のところまだそこまで行っていないと思う。したがって、私は阪奈和ばかり例を出しますが、これは一つの例ですから——阪奈和合併で実際そういう自治意識が広く出るかどうかということについては、私非常に疑問を持っている。現在の地域でもなかなか徹底しないんですね。ただ県会議員を選ぶということについてはある程度具体的な意識を持っているか知りませんが、それが自治とどうつながっているかというと、まだまだそこまで行っていない。そういう点から、いま行政面だけを考えて合併ということを進推するには非常に無理がある。それよりも、私はむしろ、これは結論めいたことになりますけれども、基礎的地方公共団体である市町村に対してもっと権限を委譲して、ほんとうの自治意識というものをそこから養っていくべきでないか、こう私は主張しておるのですがね。したがって、現在の市町村というものに対する政府考え方は、基礎的地方公共団体だと、これは自治の基本である、こう言っておられますけれども、現在の実態はそうなっていないですね。その点についてどういう考え方をしておられるか。基礎的地方公共団体たる市町村に対する権限の委譲、財政的な委譲と申しますか、そういう点についてどういう考えを持っていますか。
  52. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 市町村につきましては、お話のように、基礎的な地方団体といたしまして、今後ともその行財政両面における権限の充実に当然につとめていくようにしむけていくべきだというふうに考えておるわけでございます。その点につきましても、やはり大都市等、いろいろな都市化の現状にかんがみまして、大都市問題、あるいは市町村の行政区域と日常社会生活圏の範囲の拡大の問題というようなものを現在取り上げまして、地方制度調査会でも御検討をお願いしておる段階でありますが、考え方としては、市町村の自治能力というものをますます充実させる。観念的な地方自治というだけでは意味をなしませんから、やはりそれに住民の要求に応ずる自治の権能というものを十分付与すべきだという考えでございます。
  53. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 考えはいいんですが、地方制度調査会でも相当前々から論議されてきましたが、なかなか一向にそうはいかない。で、政府答弁を聞いておりますと、いわゆる市町村にはそういう行政能力はないのだと、頭から押しつけるような形になっておりますですね。一体市町村のそういう行政能力——大都市は別といたしまして、そういう行政能力がないというようにしているのは、一体その市町村自体に責任があるのか、政府責任があるのか、この点非常に抽象的な質問ですが、そういう行政能力に対してどういう見方をされておりますか。
  54. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この点はいろいろな人のお考えもあろうかと思いますが、結局そういう意味では行政能力がないから権限を移せないという議論も確かに一つありますけれども、権限を与えないで高い行政の処理というものを期待するということも、どだい話がおかしいという議論も起こるわけでございまして、この点では、むしろそういう意味では、行政事務を委譲いたしまして、市町村の責任ある自治の経営をゆるがせにすることができないという考え方に議会なり住民なり当局者なりというものがなっていくということのためには、やはりそういう意味での行政能力の充実を期する、行政事務の再配分なら再配分というものを実現していくということが先であるというように思っております。
  55. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それともう一つ、第二条で——これは気にかかるのですがね。いまのやつは私は満足しない。自然的、社会的、経済的一体性というやつは中途はんぱに終わってしまいます。もう少し論議を深めたいと思うのですが、やっておりますと時間が長くなりますので、一応お預けということにしまして、この社会的という問題を一つ取り上げても大きな問題が出てまいります。ちょっとたな上げをしておきます。  合併が格差の是正に寄与するということですね。これはもちろん、各府県の地方財政、その府県財政の格差とは私は受け取れないのですがね。いわゆる住民の民度といいますか、住民の生活上の格差を是正するためにやるんだ、こういう私は受け取り方をしているのですか、どちらですか。
  56. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) いわゆる地域格差と普通いわれるようなことをとらまえて、この場合には表現をいたしておると思いますから、いわゆる生活水準と申しますか、行政水準というようなものも含めましてのいわゆる民度というお話でございますが、民度ということになるかもしれませんが、そういう全般の格差の是正、合併自体が格差の是正のきめ手だということをこの法律では言っているわけではないので、寄与するということを言っておりますので、そういう意味での行政水準を高めていく、自治能力を充実して行政能力を高めていくことが一般の格差是正にも役に立つ、こういう意味で、いわゆるこの民度というお話がございましたが、民度の向上といいますか、そういうものに役立つというふうに御理解をいただいてよろしいかと思います。
  57. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私は、そういう国民の生活上の格差是正ということになれば、都道府県が合併して私はこれはなるとは思っておらない。現に、同じ府県の中にも、都市と農村との間の格差が出ておるのですね、山間部との間に。したがって、合併したからそれが寄与するということを言われておるが、寄与とはどういうことか、これはそれに貢献し得るという、貢献といえば、一%の貢献もあるし、一〇〇%貢献もある。全然ゼロというわけにはいきません。私はやはり、「合併関係都道府県間の格差」ということばは、関係都道府県の財政上の問題も含んでおるのじゃないかと思うのです。それは全然ないと限定していいのですね。
  58. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 私いま申し上げましたのは、そういういろいろな格差というものがつまりこれに含まれておる。したがって、行政上の格差とか財政上の格差ももちろんこの格差の中に入っておる。しかし、同時に、所得格差、そういうものを含めた地域格差という考え方も入っておるというふうにお考えいただいていいのじゃないか。そこでまあ、そういう意味では、民度というものの開きというものがあれば、そういうものの格差の是正にも寄与する、こうお考えいただいていいのじゃないかということを申し上げたわけでございまして、いろいろなことが入っておる。まあこう言うのも変でございますけれども、いわゆる格差——「関係都道府県間の格差」といわれるものの是正にはとにかく寄与するという考え方で規定をしているというふうにお考えいただきたいと思います。
  59. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうも法律案を提案された政府としては自信のない答弁でありますが、そういうもろもろのものが含まれておる、そうともとれるから私そういう質問をしたのですが、一般的に見ると、「都道府県間の格差」というものは、そういう民度の格差というものまでも含めて考えておることは、この法律文言からは出てこないと理解しておったのに、逆に説明しておる。そういう意味であれば、もう少し私は書き方があると思う。これはだれが見ても、「関係都道府県間の格差の是正」ということは、府県単位に考える文言だと思うのですがね。あなたがそうでないということを国会答弁するということになれば、私はいいのだが、自治大臣、これは重要な問題ですから、これは行政局長ではだめだ、ちょっと説明してください。
  60. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま御指摘になっております府県間の地域格差、これは法律を作成するにあたっての考え方には、局長から申しましたように、基本的な考え方一つは、これがいま山本さんのおことばに出た民度の平均化、均衡化ということ、そういう意味だと思いますが、そういうねらいからいたしました場合、やはり現在において、同地域ではございませんが、あるいは首都圏、近畿圏とか、中部圏とか、九州圏とか、いろいろ出ておりますが、その中にやはり府県によって地域の格差があるということは、これは事実でございます。その地域の格差があるということは、とりもなおさず、その地域住民の生活の格差もある。これもそのとおりでありまして、その地域の格差を少しでも是正するというのは、これは府県という問題に限らず、一般国民の生活の中にも地域によって格差が出ておるということは、これは好ましい状態ではない。国がやっておりますいろいろな総合開発の目的も、重点的にこの点を取り入れております。したがって、都道府県が合併をした場合、やはりいままでの行政区域の違った、その異なった地域が合併するのでありますから、この間にやはり地域格差があるという前提——まあなければけっこうですが、まああるというのが実情だ。そのためには、できるだけ地域の格差を是正したい。そのときにおける、これはまあ経済的、財政的にも、またいろいろな教育とかその他の文化方面につきましても、やはり是正するという目的を持っている。またその目的は、私は、法律に出ております地域格差の是正に寄与するということは大事な目的じゃないか。また一面、逆に裏から申しますと、最近出ている広域行政というものがどこをねらっているか。ただ行政区画を広げると行政がやりやすいのだというような、便宜主義で私はやっぱり広域行政ということもあり得るかと思いますけれども、それは目的ではない。やはり広域行政の目ざすところは、行政の水準を引き上げるところに目ざしていかなくちゃならぬ。こういうことと同じことでございますから、いま御指摘になりました、財政上のことはどうだというようなお話もございました。私はいろいろなものを含んでいるのじゃないかと、そう感じております。
  61. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういうことも言っておかなければ、あとでまたかってな逐条解釈をやられてはいかぬのですね。そういうことが、いわゆるこの文言からは、私はそういう住民の生活上の格差を是正するのに寄与する。全体を見ると、経済的、社会的というものが前についておるから、こういうことが言われますが、いま言われた自治大臣のそれは、答弁としては合っておるのですがね。この点だけですよ、全部じゃない。この点だけは、名答弁とはいかぬけれども、まあ了解できると私は思う。そのとおりです。したがって、広域行政は、だれも、いま言われたように、行政の便宜のためにやるとは思っておりません。それは格差を是正し、都会といなかとの格差を是正するためには地方開発が必要である。総合計画も立てておることは、それは正しい。ただ、そこで私は気になるのは、その際に、何回も言いますからあきられると思いますが、行政の便宜でやるのではないというけれども住民意思が入っておらなければ、これはどこで判断するかという問題ですね、自治の。政府が、これは開発やるのだから、都道府県合併して、そうして広域行政やるのだから、これでよくなるのだと言われても、住民自体はそうはいかない。その意識をどこで持たすかということが一番肝心だと思うのです。一番重要な問題はそこにあると思う。したがって、広域行政地方開発ということについては、だれも反対する者はない。それは社会党もそんなものには反対しておらぬ。それを住民意思によってどうしてやるかというと、あなたのほうは都道府県合併してやろうというのですが、私はそれは間違いだという前提に立っておる。それはそれで一応私はいいとしておきます。  そこで、時間も制約されておりますし、あわてなくてもいいのですけれども、ちょっと先へ進みますが、そこで一番重要な問題として提起しておきたいのは、これは衆議院でどうなるか一応わかりませんが、私は、一応これが実現するという立場で、参議院でこれがきょう議決されるわけですから、これはその立場で話します。  そういう広域行政を重点に都道府県をやられるということについて、これは具体的に前の委員も言われましたから、繰り返して確認する意味で言っておくのですが、結局、暫定的な措置は別として、議員の数も減ることになるのですね。県会議員の数も減ることになるのですね——と私は理解しているのですけれども。いまの各県にある議員を全部定数にするわけにはいかない。地方自治法では百二十名という限界がありますから、東京は特例ありますけれども。そうすると、地域は広くなった、人口も多くなった場合に、地方自治本旨に従って民意を聞くということについては、私は薄くなるという見方をしておるのですが、これは薄くならないという見解に立たれておるか、この点どうですか。
  62. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 確かに、地域が広くなり、人口が多くなる。そしてしかも、それにもかかわらず、議会を構成する定数は、従来の府県ごとの定数から比べますと、非常に減ってくる。そうすると、議会というものが民意を十分に反映するということに不都合を生ずるようなおそれがないかという問題でございます。この点は、運営のいかんによっては、お説のような点は十分心配しなければいかぬだろうと思います。ただまあ、いま考えられますことは、やはりこの百二十人という定員がそのときには実は問題になるわけでございまして、現在の地方自治制度の中での府県というものが、新しくこれから予想されるであろう合併を考えました場合でも、また現在の府県の中での広大な地域と膨大な人口を持っております府県というものを考えます場合でも、これは同じようにその問題が実はあるわけでございます。ただ、合併した府県においては、新たにそういう事態、変化というものを経験するという点が、これは一つ大きな問題だろうということは、まさにそのとおりでございます。したがいまして、その点では、暫定的には、この四年間暫定措置をつくっておりますけれども、しかし、そこの見方は、四年間で十分なのか、十分でないのかという見方がございますけれども、やはり合併をする以上は、一日も早く主体性を確保する、主体性を確保するということと同時に、一般の府県と同じひとつ制度の中にとけ込んでいくべきである、まあこういう考え方で、暫定的な制度を除いては、大きな府県になりますと、現在六百十何万をこえますと百二十人の頭を打つことになっておりますから、少なくとも六百五十万台をこえる新しい府県ができます場合には、必ず百二十人で頭を打つと、こういう事態が確かに出てまいります。それにつきましては、やはり特別なくふう、考慮を払わなければ、御指摘のように、民意の十分な反映ができないじゃないかということにこれは相なろうかと思います。したがいまして、今後の関係府県の自治の経営あるいは議会運営の努力というものが非常に要請されることは、これは当然だと思います。
  63. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあまだ私はあまり強い発言はしませんけれども、笑って言っていますが、現在の場合でも人口の比例でやっていない。これは衆議院の場合もそのとおりです。人口の過密なところでは十数万とらなければ衆議院通らないけれども、過疎のところでは三万、四万でも当選するということがありますが、私が言っておるのは、いままで地方自治の中で意識として何十年間ならされてなかった地域を一緒にしようというんでしょう。したがって、あなたの言うような一般論だけでは私はいかない。これはあなた四年間の暫定期間で吸収されるじゃないかという考え方で処理をされる。私はやはりそれではいかない。現在でも、いなかのほうに行くと、府県自治において——市町村の場合は地域が比較的狭いからいいというものの、府県の場合には十分民意を吸い上げているような状態にいっておらない。私もずいぶん地方を回りますけれども、いなかへ行っても県会議員のおらない町村というのは相当ありますよ。それが膨大になってまた数が少なくなれば、府県が完全自治体として地方自治という基本で考えるならば、民意の希薄になることは当然です。そういうことも考えずに、地方自治基本にしてやるんだと言うけれども、私はやはり、行政を優先して、行政さえうまくいけばそれで納得するんじゃないか、こういう思想が一貫してあると思うんですよ。しかし、府県が地方自治体でないのだ、一つ行政機関であるという考え方であれば、これは別ですよ。皆さんの答弁は、これは完全な自治体だということを前提にしております。そういうことの考え方は、私は、いろいろの例がありますから、そうしつこく言いませんが、この一点をとらまえても、地方自治というものに対する意識というものは非常に希薄である、むしろ行政優先をしてものを考えていこうという考え方が一貫して流れておるという私は見方をしておるのですが、これに対してどういう考え方を持っているか、大臣、これは政治的な問題ですから、行政局長と御相談になってもいいですから、ひとつあなたの御見解を聞いておきたい。
  64. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) この議員の定数の問題と、民意の浸透と申しますか、これは、御指摘のように、地域が合併すれば広くなる、しかしいままで出していた議員数は減っていく、これは地域住民意思が府県政に浸透しないのだ、私は一面の事実としてそういうことは言えると思っております。しかしまあ、この府県制の行政面で、これらの厳密な場合に、従来の府県制を見ましても、現在の府県といいますか、地域によりまして、非常に広大なところ、狭いところ、実は、先ほどからお話がありましたとおり、廃藩置県以来の都道府県でございますから、非常な地域によってのアンバランスがある。これは衆議院議員なんかの場合、これが合理性にいっているかといえば、御指摘のとおり、その選挙民の意思というものが、十万で初めて自分の代表を出せる、三万で出せるというように、まちまちです。これは一貫いたしましてやはり、現在の——これはこの府県制を言うのではございませんが、いわゆる民意の達成というものがはたして合理的に行なわれているかということになりますと、私も、山本さんと同じように、非常に不合理な点が多い、こう思っております。このまた一面、いままでの現行の府県制の中でも、地域によっては非常に広範である、しかし人口関係等でやっている。たとえば北海道に例をとりましても、あんな九州も四国も一緒になったよりももっと広いところで、いろいろな道制を敷いております。これも、それだからいいということは、これは一連の、いま山本さんのおっしゃっておるとおり、長い間の経過を経ておりますから、ちょっと表面で見てそれでよろしいじゃないかという気がしますけれども、実際もっと徹底した地方自治から考えますと、これは非常な不合理な点が出ておる、これは私も認めます。そういうことからして、いま議員定数、地方議員の定数の問題にお触れになりましたが、大きな意味で日本の政治全体を考えると、それから国の行政地方行政を考えると、私はいままでの傾向として、御指摘のありました、どうも行政が先行しているのではないかというおことばに対しましては、私も反論はいたしません。そういう傾向はない——あるとは私は申しませんけれども、相当そういう傾向があるのではないかという御意見に対しまして、ありませんと私は勇気を出してお答えするわけにまいりませんが、それらを今日是正しなくちゃならぬというのが、この終戦後二十何年になります、各方面の行政面においても弊害の多い点がございますのは、その一つとしてやはりそういう点もあることを私は認めます。したがって、いまいわゆる現行の六百万幾らの場合は百二十名という定数、これでいいのか、あるいは地域の広さによって考えると相当また違った構想をしたほうがいいのではないかという意見も当然出てきていいのではないかと思っております。しかし私は、現行のやり方をすぐ改められるかとなりますと、これはいろいろな審議会調査会、各方面の関係もありますから、もちろん意見を聞かなければなりませんし、特に国会方面の御意見も拝聴しなければならないと思っておりますが、御指摘のように、行政が非常に先行する傾向があるのじゃないかということは、私はそういうことはわれわれ今後政治家として是正すべきことじゃないかという点は同感であります。しかし、いま自治省が全部そうやっているということでないことは、誤解しないでいただきたい。これは何も私の役所がそういうことをやっているということを申し上げているのじゃございませんけれども、そういう傾向が全体的にあるということは、私は反論というよりも、むしろ、確かにそういう傾向があるから、一日も早くそういうことを修正し是正しなければならぬと、いろいろなことを考えております。だから、具体的なお答えはできませんけれども、私の考えの一端を申し述べておきます。
  65. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ大臣は、大体私の言うことを否定も肯定もされぬが、まあ肯定に近いような答弁であります。これは私は政府だけに言うのじゃない、われわれ自身も十分将来考えていかなければならぬことですが、政治の基本ですから。  そこで最後になりますが、ずっと討論を深めてきたんですが、行政の面からは広域行政というものは必要である——これは私は学者の説をかりるわけじゃない、諸外国の実例を見ても、そう進まざるを得ないような結果になっている。これは理屈、理論の問題ではない、イデオロギーの問題ではない。やはり社会経済的な進歩に合った、要するにそういう行政というものが必要になってくる、これは当然です。当然だが、自治意識を——私は自治能力と言って表現しておりますが、自治能力を抹殺するか押えるような形でやってはいけないというのが私の基本的な考え方です。しからば、府県の合併をせずにそういう方法があるかというと、あるのですよ。あるのだけれども、まだそういうことをはっきりと政府が指導せずに、国の行政でそれをやろうと思うから、やれない。府県連合という手もありますけれども、これはもっと各府県の当事者——というのは、知事もありましょうし、議会の議員もありましょう、そういう方々がもっと理解を深めなければ私はいけない。そして住民の意識も高めていくということがいま喫緊の要件だろうと思うんですね。そういう上で、住民のほうも、いまの府県だけではどうもいかぬじゃないか、何県と何県、隣と合併しようじゃないか、そのほうがむしろいいだろうという住民の意識が高まれば、私は自然にこの法律というものはでき得ると考えておる。それがないのに、こういう道を開くというのは、非常に弊害が起きるということと、非常に広域行政に混乱を来たすと思うんですね。そういう意味において、私は考え直すべきじゃないか。したがって、広域行政というものを一体どこに求めるかという——しからば府県が合併しただけで広域行政が完遂するかというと、そうじゃないんですよ。日本のような狭い国では、かりに阪奈和だけ合併したからほかはそれでいいかというと、そうでない。また隣の県との問題が起こってくる。水資源の問題でも、港湾の問題でも、これはもうすでに同僚の議員皆さん方が長らく討議されたのですから、これはわかっておられると思うんですね。したがって、府県を合併するということについてこれを開いたという基本はどこにあるかというと、そういう純粋な気持ち政府法律提案をされた、純粋な気持ちがここへ出てきておらない、それが私の結論として言いたいんですよ。地方制度調査会にずっと私は出て論議を聞いておりますけれども、一部の方々意見がそうさせてきたわけなんです、実際は。そういう発意がなければ、この府県合併というものは出てこない。前に道州制の問題が出てきました。これにはまた学者の説もあります。参考人を呼んで——恒松教授ですか、学習院の先生ですがね、いまの府県は要らないのだ、むしろ道州制にすべきであるというような意見も出ました、いろんな学者意見があります。それも私は、広域行政、リージョナリズムに通じた意見だと聞いておりましたがね。したがって、私は、広域行政面からやるならやり方があるんじゃないか。県を合併するというのは、そういう一部の人の意見でやったことは、これは間違いないですよ。しかし、何とか広域行政をやらなければならぬという気持ちはみな持っておりましたけれども、府県合併論が出てきたというのは、やっぱり関西の財界、中国といいますか、中京といいますか、東海関係の方々が、これは主導権を持って言われたことなんですがね。これが私は発端だと思う。これを否定されるなら、東北関係の方からそんな話、私は聞いたことはない。九州でも佐賀、福岡の問題は聞いたことはあります、これは別の意味で聞いたことがある。そういうことから考えると、今度の都道府県合併というのは、政府がこの法律案を純粋な意味で出された気持ちでないと、私はその気持ちを断定するのですが、これを否定できますか。大臣は、大体私はそんなことは考えていないと言われるけれども、あなたはそうでしょう、私はそのとおり受け取る。しかし、いままでの長い間、約六、七年の経過を見ていると、それが実態です、私は現実にやってきたんですから。もちろん、そういうことですから、奥野誠亮さんですか、自治省の次官をされました、いま衆議院におられますね、それとだいぶ論争をした。ふしぎなことには、あの人は奈良県出身ですが、あの人は賛成論ですが、あそこの知事さんは反対です。どっちも住民代表しているというのですが、どうも奈良県の住民はどういうのか、私は皮肉に思っていたのですが、そういう状態ですよ。だから、この問題はどうも解せないのですが、これは大臣の私は意向を聞きたいと思いましたが、この事実をどう思いますか、ちょっとそれだけ伺います。
  66. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 実は、この法案を御審議願った経過において、しばしば、府県合併の提唱はどこからきたのだ、一部の経済人その他というお話がございました。私もだんだん聞いていますと、この前もお答えしましたが、私はそれを否定するものではありませんということを申し上げました。そういう動きがあったということは聞いております。事実、私が前大臣から引き続きましてまたいろいろ説明を聞いていますときに——実際、山本さん、言いわけじゃない、事実を申し上げるのです。陳情書が一ぺん来たことが——就任のときになりますか、府県合併に関する意見書とかいうものが。その後一向接触もないし、私自身はどういうものか知りませんけれども、もうそれは私なんかに言ったってしょうがないと思うのかしれないけれども、具体的にぼくが否定しておるのは、うそも隠しもない、ありのままです。私に会ってじゃんじゃんやっているという人があれば、ほんとうにお目にかかりたいと思う。私自身広域行政というものをあまり深く研究もいたしておりませんし、山本さんみたいにずっと多年調査、御研究になっておる方の御意見ですから、少なくとも私は審議会は非常に有効に傾聴して、自分の参考になったことは多いんです、これも率直に認めます。だから、私のお答えしているうちに、私はいいかげんなつじつまを合わして言ったつもりはありません。そこで、この説明のときにも、いまお話しになりました広域行政という点からしての都道府県の合併案があるということを聞きましたが、その前に、三十何年ですか、いま御指摘になりました道州制といいますか、地方とかということばを使って答申がありました、地方制度調査会から出ております。これは、必ずしも三十何年の地方制度調査会だけでなくて、戦前もしきりに道州制ということはありましたが、だいぶ内容は違うようです。しかし、それははたしていま御指摘地方住民のいわゆる自治の行政上適当かどうか、自治能力ということばを使っておられますが、その自治能力というものとそういう機構というのはどこまで合致していくかということで、やはりいまの場合は府県と市町村の二重構造がいい。そうすれば、だんだんやってみますと、いろんな国の総合開発計画なんかによりましても、まあ先ほどお話しになりましたいろんな問題があります。一々申し上げるのも、いろいろと御論議がございましたので、私もずいぶん知らぬこともいろいろ教わったんですが、そういうことで、何としても、私の実感からいたしましても、どうもただ古い、百年にも近い府県制だから、一ぺんひとつここで編成がえをしようという、まあこれは一面行政編成の——行政区画の編成というのも意見があると思いますけれども、それといまの山本さんの御指摘になりました地方自治というものとの本来の使命から考えての案というものと、行政上の便宜主義と申しますか、まあそういう形の上のいまの府県制がどうかといういろいろ議論がございました。相当多方面にあることも存じておりますが、しかし、いまお話しになりました広域行政というものから考えれば、やはりできますならば、先ほどこれも少しおかしいじゃないかというので御指摘になりました、いろんな意味の一体制と申しますか、非常に抽象的ですが、一緒になってやったほうが力もつくし、また地域住民も生活の向上に役立つじゃないか、しかも最近特に問題になっているのは、地域の格差の問題がありまして、この問題は、どうしてもこれは、行政上というよりも、政治的にも何とかひとつ解決のめどをつけなければならぬ。そういうことを総合的に勘案いたしますと、現在のお手元にある、御審議願っている都道府県案が、これが最後のきめ手になるとか、これがなければ広域行政は破綻していくという、そういうことじゃありませんで、やはり広域行政を進めるのは、これも一つの方法であるし、むしろこのほうが広域行政運営に非常にあずかって力が出てくるし、効率的じゃないか、こういうことを私はいろいろと役所でも論議いたしまして、結論として出ております。したがって、いま山本さんのおっしゃいました、この法案全体における何と申しますか、一つのねらいどころが、あくまでも府県合併というものも、地方自治の本来持っている姿勢というもの、これを尊重していくことだと、これは必ずしもそれに合わぬのがあるんだという御指摘も私は全面的に否定しませんし、またなるほど非常に善意の御忠告もあったと存じております。しかし、私ども立場といたしましては、どうしてもこの府県合併というものが最後のきめ手ということではございませんが、やはり広域行政を進める上におきまして非常に効果的じゃないかということと、それをやります場合に、やはりあくまでも地方自治の本来の姿勢と申しますか、いわゆる地域住民意思と申しますか、これと逆行するようなことをやるということは、これは毛頭考えてもいけないことだし、やるべきことじゃない。あくまで地方自治を守るということが本来私どもの使命でございますから、そういう心がけでもってこの問題も進めていきたいと、こう特に申し上げておきます。
  67. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 最後に私は、これは答弁要りませんが、大臣なり、これはまあ委員の方にも、特に自民党の方にも聞いておいていただきたいんですが、まあ政府としては、法律案出したものを、これいかぬということは絶対に言えない、かりにどうかと思っても、絶対に成立さそうという、これは当然の立場を私は認めた上で言いますが、これは、実は私は関西出身ですから、関西の方、まあ経営者の方とも相当論議もしております。大体これは私は関西の経団連の方からいろいろ意見を聞かれたこともあります、ずっと早くですよ。で、大体こういう意見が出たというのは、関西経営者団体がはしりと申しますかね、それをサゼスチョンしたのはほとんど経済学者ですよ、大阪大学の木下和夫教授、神戸大学の——この人だけは法学関係ですが、山田幸男、関西学院の橋本徹教授、名古屋市立大学の牛嶋正助、大阪大学の米原純七郎——これは講師です。みんな経済学者です。経済学者の論理としては——論理と申しますか、思想としては、私は当然そう向いてくると思うのですね。経済というものを主体にものを考えていますからね。それで、私は相当反論してやったこともあるのですよ、だいぶ前ですがね。それが地方制度調査会に出てきて、こういう法律になってきたのですが、私は、そういう考え方、時代が移ってくるのだからそうなりますけれども、一方行政学者あるいはその他法律学者は相当疑問を持っている人がおる、これに対しては。というのは、経済学者行政の効率化、そういうものを中心にものをずっと考えて進んでおられる、論文を見ましても。しかし、行政学者は、やはり地方自治というものに対する侵害というものを非常に気にしていますね。したがって、私は、この皆さん方説明されたやつが、いわゆる行政、経済を重点に置いた行政地方開発もそうですが、そういうものに重点を置いておるということを私は前から看破しているのです。だけれども、私はそれを間違いとは言い切れない、行政上当然の問題があると思うのです。たとえば、栗本順三さんこう言ったですよ。山本さんの言われることはわかります、わかりますけれども、隣の和歌山県にも農事試験場ですか、あるじゃないか。この隣合わせたところに、大阪にりっぱなやつがある。大阪は農業県というよりもむしろ工業県なんだから、そういうものを利用したら一緒になってうまくいけるのじゃないかと、こういうことですよ。しかし、それは私は行政担当者の問題であって、だからといって府県合併したらそれがうまく利用できるかといえば、それはできないでしょう。これは大阪の公聴会で言ったのですが、それは有無通ずるようにするのだったら、いまの自治法でもやれる方法があるのじゃないですか、共同でやれる方法があるのじゃないですか。そんな端的な卑近な例だけではだめですよ。知事は確かに三県合併したら二人減りますから、この月給は助かりますね。これは確かにそうなんで、そういう合理化はできるかもしれませんよ。しかし、知事が減ったからといって、それが直ちにそれだけ助かったというだけじゃ私いかぬと思うのですね。そういうことを考えると、大臣、あなたの答弁何ぼ聞いたって、これはあきらめますと言わないし、どうこうと言うことは私はよく知っております。しかし、こういうことがありますので、十分考えていくべきである。これはこれで、一応これはもう最終段階になったのですから、ここで賛成とれば自民党さんのほうが多いのですから、これは通ることは間違いないのです。しようがない。われわれがどう理屈を尽くしてこれに対して反対したところで、数で負けちゃうことで、通される。しかし、それはそれでよろしい。よろしいが、論議を通じてどこに問題があったということを、大臣言われましたように、十分私は考えてもらいたい。あと十分か二十分かしたらこれは参議院通過ですからね、もう私のことばが最後になるわけです。これは大臣だけじゃなしに、自治省の諸君もよく聞いていてもらいたいのですよ。大臣は一年後になったら交代されますから、これはしかたないです。だけれども行政局長なり、方々まだずっとおられますから、その運用について十分考えてもらわぬと、これが私はいつも言うように——総理大臣の佐藤さんに予算委員会で言ったのです。一つ法律通ると、与党だけの問題じゃありませんよ、一九六九年の国会にこういう法律ができましたということは以後それが代々通るのですからね。私も幸か不幸か国会におりますから、山本もこれに賛成したとは思わぬけれども、われわれが関与して法律を通したことになる。どんな法律もそうですよ。それだけの自覚を持って私は立法というものがなければ、とにかく便宜的に法律を通して政治は行なえませんよ。これは非常に学生の問題もあります。文教委員会じゃありませんから私は言いませんけれども、ああいう発生した現象だけとらまえて問題解決できませんよ。これは一つの例です。私は、立法府として、やはり大きい立場からものを考え、論議をして、そして法律をつくるべきだと思う。法律をつくったら、これに国民全部従うのですからね。これは最高の機関ですから、これいかぬと言ったら豚箱や監獄に入るのですから。われわれつくったものでまた入る人もありますけどね。だから、厳粛な気持ちでひとつ大臣考えてください。  以上をもって私の質問を終わります。
  68. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  70. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となっております都道府県合併特例法案について、反対意見を述べたいと思います。  第一に、この法案は、都道府県の自主的合併の手続の特例を目的としておりますが、全国的に見て、現在合併を自主的に推進し、広域行政を実現しようとする都道府県一つも存在していないことをもってしても、府県合併が住民国民になじんでいない事実を証明しているものと思います。財界の一部に安上がりの行政の実現を求める意見があり、それが地方制度調査会によって取り上げられ、その答申を尊重して自治省が立案して、国会に提出したものであって、住民意思が立案の過程でいささかも取り上げられていないことは、この法案の致命的欠陥と言うべきであります。政府が予想し期待している阪奈和三府県、東海三県ですら、この地方行政委員会の現地公聴会において見られるごとく、財界代表学者の一部から賛成の意見の開陳があったほかは、ことごとくが時期尚早、慎重論であったことを見ても、住民意思がどこにあるかを如実に示していると言っていい。住民代表たる知事、議会議長がこのように明確に反対ないし時期尚早の意見が圧倒的である事実は、明らかに合併論が住民の側から出てきたものでなく、財界のバックアップに気をよくした政府自民党の地方自治に対する中央権力の介入の端的な表現と見なければなりません。住民不在の合併促進には、われわれは賛成するわけにはいきません。  第二には、この法案憲法違反の疑いがある点であります。憲法第九十二条は、地方公共団体の組織及び運営に関する事項は自治の本旨に従って法律で定められなければならないとし、住民自治地方団体の機構運営の基礎でなければならないことを規定しています。また九十五条は、一つの特定の地方公共団体のみに適用される特別法は、その団体住民投票において半数以上の同意がなければ制定することができないといっております。都道府県合併法案は、数個の都道府県を廃止して、新たな地方公共団体をつくる意図でありますから、法律制定にあたって住民意思表示を必要とすることは言をまたないところであります。この法案で、住民による住民の自治という新憲法地方自治の精神を抹殺して、それぞれの議会の三分の二の賛成があれば、住民一般投票を無視してもいいということは、明らかに憲法に反するものであります。公聴会において学者、弁護士の間からこの意見があったことは、真理の追求に専念する学者、法曹界としては当然と言わなければなりません。このような国民学者の中から憲法違反の疑いのあることを指摘されている以上、立法府にあるわれわれとしては、この法案に賛成して、法律制定に協力することはできません。  第三点は、圏計画と合併の関係から見て、その法案に疑点があることであります。いま、わが国は新全総という全国的な開発計画を持っており、ブロック的には首都圏、中部圏、近畿圏とそれぞれ中間的な開発整備計画があり、府県はまたこれらの全国的、ブロック的な計画に即した各府県の地方計画を持っております。特定の圏内の府県は、たとえば中部圏では九県、近畿圏では七府県が、一体性、連帯性を持って、計画が共同的に立案され、実施に移されております。関係府県は、三県あるいは三府県の合併が、全体の連帯を傷つけ、一体性を失わせることを非常におそれております。たとえば水、道路、港湾、住宅、産業立地等、いずれもそれぞれのつながりを持ち、三県ないしは三府県の合併で解決つかない多くの問題があり、それのみでなく、一部の府県の合併が、自己の恣意的関係から利己的に合併をすることにより、圏内他の県との調和が破れ、合併した圏内の一部と合併しない圏内他の県との間に圏内アンバランスと格差を増大することを地元では懸念しているのであります。近畿は一つ、中部は一つの共同的連帯が失われて、合併府県だけが利益を得ても、それは全く無意味と言わなければなりません。  第四点としては、全国的に見て、合併府県と未合併府県の格差の増大の点からの反対であります。政府は、この法案は、合併の障害除去の手続のみを規定したのであって、これを促進するため特別の行財政に対する援助を国が保証する法案ではないと言っておりますが、新公共団体の合併からくる事務の統合整理、営造物の廃止、移管、地方計画の是正と事業の援助等、新県設定に要する新たなる財政需要の増高をもたらすことは明らかであります。政府答弁によっても、新県設定に伴う行政費の増大については今後考えなければならないと言っているが、合併府県に対するこのような特別な財政援助や、機構、運営についての特別な措置は、未合併の府県に対し行財政の不公平な取り扱いをすることになり、これらの未合併の府県に対しても別途何らかの特別な措置を講ずるとすれば、全国都道府県があまねく一部の府県合併に起因する特別の援助を必要とすることとなり、制度上、財政上、その波及するところ想像に絶するものがあるのであります。もしこのような全国都道府県に対する特別の措置ができないとすれば、合併府県と未合併府県の間に生ずることを予想される格差の増大はいかにして解決されるか、審議過程政府側から何ら明確な保証が得られなかったのであります。  第五点は、法案にうたってある行政能力の充実強化が合併によって期待されるかどうかという点であります。法案は、合併の目的として、合理的かつ効果的な処理、能力の充実強化、効率的行政の確保といっておりますが、これは、明らかに、企業における合併が生産の増大、効果、能率の見地からのみ考えられているのと同じものであって、地方行政の分野に経済原則を導入しようとするものであり、安上がりの行政を意図するものであると言わなければなりません。たとえば、阪奈和の合併によって、新県の人口は八百五十一万、面積は一万二百五十八平方キロメートル、東海三県は、人口八百一万、面積二万千四百三十五平方キロメートルであります。行政にはおのずから適正な規模があるはずであります。その規模は、二百万といい、三百万といわれておりますが、いずれにしましても、阪奈和新県、東海新県が八百万をこえる人口を擁することは、一知事の行政能力をはるかに越えるものであることは言うまでもありません。東京都は人口一千万で、過大といわれております。しかし、都には二十三区の、完全自治体ではないにいたしましても、区があり、都の行政と区の行政とが相まってある程度行政効果をあげております、都区の関係には、いろいろと事務、財源の再配分意見があることは、指摘するまでもありません。しかし、都は現実に存在するものであり、合併はこれから人為的につくられるものであります。知事の行政能力を越える規模の新県をつくることは、知事がいかに、有能であっても、きめこまかい住民のための自治を達成することは不可能であります。財界の要望である安上がりの地方自治をしようとすれば、結局安かろう悪かろうにならざるを得ず、これを救う道はただ一つ、中央権力の地方支配の導入であります。制度、機構を改正して、中央が新県の行政に力をかしてやることであり、やがては府県合併が地方制、道州制への道を開くことは必至であります。  第六点は、政府にこの法案を成立せしめる積極的な統一的な意図が全くないことであります。建設大臣は、圏域開発に努力し、合併問題は関知しないと言い、総理大臣も、成立は望むが、特定府県の合併が具体性、緊急性を持っているとは思わないと言っております。要するに、この法案昭和四十一年からの懸案であって、自治大臣も引き継ぎ事項として前大臣から引き継いだだけのものであり、国会の情勢や地元住民意向など全く考慮に入れず、事務的に提案しただけのものであるとわれわれは理解しております。大臣は終始われわれの質問の矢面に立たれ、全く御苦労された点は、了としますけれども政府全体に成立に対する熱意がなければ、大臣一人ではいかんともすることができないわけであります。最初の提案以来四年、五十一国会から現六十一国会に至るまで、国会十一回にわたり、この間大臣は、永山、塩見、藤枝、赤沢を経て現在の野田大臣にかわっておられます。最初の提案と一字一句も内容が変わっておらず、最初の法案でも法律の実施以後十年間の時限立法であり、今回もまた実施後十年間の時限立法となっております。旧態依然、新味もなく、緊急性もなく、また現実性も持っておりません。自治省が好んで用いることばの、社会経済の急激な変化に即していないこの合併法案は、もう一度洗い直して出直すべきであり、このままの姿では、われわれは反対せざるを得ません。  これをもって反対の討論を終わります。
  71. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました都道府県合併特例法案に賛成するものであります。  本法律案は、都道府県の合併の手続について、地方自治法に定める現行方式のほかに、関係都道府県の議会の議決による申請に基づき、内閣総理大臣国会の議決を経て定めることができる特例を設けるとともに、その合併を円滑ならしめるために、国会議員の選挙区、合併都道府県の議会の議員の任期及び定数、職員の身分の取り扱い、地方交付税の算定等に関する特例措置を定めようとするものであります。  最近、わが国における、社会、経済の著しい発展に伴って、現行都道府県区域を越える広域行政の必要性と、都道府県の能力の充実強化とが強く要請されてきているのは事実であります。  このような社会情勢に対処するため、都道府県の自発的意思に基づく合併の道を開くことは、まことに時宜を得たものと考えるのであります。  以下、私は、合併による具体的効果について若干あげてみたいと思うのであります。  府県合併によって地域が広域化する結果、現在の狭い府県の境界内のみでは解決のつかない住宅難、水不足、公害、交通難等の諸問題の解決が促進され、また合併によって府県の行政能力が増大されることによって、学校、病院などの公共施設の合理的配置が可能となり、幹線道路、水資源の開発、住宅、工業団地など、大規模な公共事業の一貫した効果的遂行が可能となるのであります。  しかしながら、本法律案は、必ずしも民意を軽視して合併を推進しようとするものではありません。すなわち、本法律案は、府県の合併は、都道府県議会の三分の二の特別多数によるか、または過半数をこえても三分の二に満たない場合には、住民投票による過半数の同意を得なければその申請ができないことになっておりますので、どこまでも民意を尊重し、憲法の要請する民主主義的な手続を十分保障しようとするものであります。  さらに、合併によって強力になった府県による行政が行なわれます結果、従来の後進地域にも、工場、住宅等の分散配置の道が開かれ、公共施設等の設置促進により、地域の均衡ある発展が期待され、過疎問題の解決にも資するものと考えるのであります。また、合併によって府県の行政能力が増大されるのでありますから、二重構造としての府県の根幹はそこなわれるものではないと信じます。  もちろん、地方自治の問題としては、国の権限の地方移譲、税財源の地方移譲等、切実な要望はたくさんありますが、それらの問題については、一そう政府の善処を要望するものであり、また、合併後の新府県の民主的行政運営のあり方についても、なお十分配慮の要がありますが、少なくとも本特例法案により、地域住民の福祉の向上がより一そう、民主的、効果的にはかられますことは、疑いないものと考えるのであります。  以上、理由の一端を述べて、私は本法律案に賛成いたすものであります。
  72. 原田立

    ○原田立君 私は、公明党を代表いたしまして、政府提案の都道府県合併特例法案に対し反対の討論を行なうものであります。  まず第一に、結論から申し上げるならば、この法案は時期尚早であるということであります。すでに御承知のごとく、本委員会におきましては、法案審議過程におきまして、去る六月十九日及び二十日にわたり、合併を予想される東海三県及び近畿三府県に委員を派遣し、現地において公聴会を開催いたしました。特に、関西財界の賛成論、労働界の反対論と分かれた意見の中で、この法案が合併の手続上で住民投票を省いていることに疑問を持っている陳述者が多かったということが、今回の公聴会の特徴でありました。また、地元関係府県の知事の意見も三者三様であり、住民の合併に対する意欲もほとんどなく、民意の盛り上がりが全くないというのが実情であり、その後の学識経験者参考人意見もまちまちであって、その機熟さず、時期尚早であると見るのが大勢であり、妥当であると思うものであります。  第二の理由は、合併に関する政府の具体的ビジョンがないということであります。政府は、提案理由の説明の中で、都道府県区域を越える広域行政の合理的処理と府県の自治能力の強化という観点から合併は時代の要請であると述べておりますが、現在の府県制度を根本的に再検討する時期に来ているとするならば、一体どのような規模が理想の府県なのか、適正な府県の規模はどうなのか、現在の府県の境界を拡大すればそれですべてが解決できるのか、自主的合併を期待するのだから、自由に合併してくださいという、あなたまかせでよいのか、この点、はなはだあいまいであって、政府自身何ら具体的構想を持たず、あるいは持てども秘して示さないのか、全く理解に苦しむのであります。もし時代の潮流であり、現在の府県の制度を再検討するというならば、これは全国的視野に立って策定すべきであり、特定地域のみの合併や干渉は許されるべきでないと考えるものであり、納得できないところであります。  第三の理由は、府県制度そのものの改革よりも、運営の中身の改革こそが先決ではないかということであります。政府自民党は、選挙のたびごとに、中央に直結する地方自治をスローガンにうたってまいったのでありますが、このことはとりもなおさず、地方公共団体を国の出先機関化し、地方自治を中央の支配下に置かんとする意図がうかがえるのであります。現在の府県制度広域行政の役割りを果たし得ないのは、何も区域の広い狭いの問題ではなくして、府県の固有事務は一割自治で、九割からの国の委任事務を強制されていること、さらに中央各省の出先機関を通じてのリモコンに左右され、災いされていること、それにもまして地域の広域化を妨げている最大の原因は、中央各省庁のなわ張り争いによるものであります。このことは決して府県の合併によって解決できるものではなく、むしろ現行の縦割り行政の悪弊を取り除くことにあり、また、委任事務を解消するためにも、国と地方との行政事務の再配分を行なう以外に道はないのであります。なかんずく、九割をこえる国からの委任事務を押しつけられ、三割程度の自主財源、地方交付税の配分地方債の許認可で金縛りにいたしまして、一千億円を上回る超過負担、さらに膨大な赤字をかかえて動きのとれない地方公営企業と、その単年度独立採算制度等、このような弊害によって地方公共団体を極度の栄養失調におとしいれているのであります。しょせんは、府県制度の改革よりも、先ずいかにして憲法に保障するところの地方自治本旨、真の地方公共団体の姿に近づけることかであります。この点、政府自民党の運営は本末転倒と言わざるを得ないのであります。  第四の理由は、ことごとく政府のやり方は答申案のつまみ食いであるということであります。地方制度調査会は現在まで地方制度の根幹に触れる幾多の重要な答申をされているのでありますが、政府は、これらの答申の中で自分の都合のよいところだけをつまみ食いをしております。その典型が本法案であります。その証拠には、政府は、さきに地方制度調査会に対し、府県の合併に関し諮問し、その答申を得たので、この答申に従って本法案を提案したと提案理由を述べております。しかるに政府は、合併及び広域行政に伴う根本的かつ表裏一体である行政事務の再配分あるいは税財源の配分について、臨時行政調査会地方制度調査会答申には一点も触れず、行財政にわたる地方制度の根幹には一音半句も触れておらないのであります。わずかに合併に関する所要の経費を交付税及び譲与税、その他、国庫負担金、補助金等の特例をもって合併に援助、協力するとうたってあるのみで、これもまた本末転倒のそしりを免れ得ません。これらの根本的解決を離れて地方制度の改革はなく、広域行政も府県合併も全く枝葉末節であり、有名無実であります。  第五には、この法律によって決して地域格差は解消されないということであります。地方制度調査会は、「府県の行政水準はできるだけ均衡がとれていることが望ましいので、合併と並行して開発のおくれている後進県に対してその開発を進めるため行財政上の施策を講ずることが必要である」と答申しており、本法案の第二条では「合併関係都道府県間の格差の是正に寄与する」とうたわれておりますが、何ら、行財政上の保障はなく、具体的に法律化されず、穴だらけの法案であります。しかも、都道府県の適正規模も定めないで自由かってな統合を許すならば、数少ない富裕府県を中心に三、四府県の合併するケースのみが予想され、残余の弱小団体との格差はますます広がるばかりであります。申すまでもなく、わが国の人口流動は大都市及びその周辺に集中し、いわゆる東海道メガロポリスという太平洋沿岸の巨帯地域に過度集中しております。しかも、その富裕府県は現在この巨帯地域に存在しているのでありまして、これら三、四府県の合併は今後一そうのこの地域に産業、人口の過度集中をもたらし、今世紀末には取り返しのつかない過密の弊害を集積することは火を見るよりも明らかであります。しょせんは大都市の過密弊害を地続きに拡大する結果となるのであって、東京都に近接する埼玉、千葉、神奈川の近県を見れば明白の事実であります。  最後に、この法案は全く民意が反映されていないということであります。過日の公聴会の供述人の大半の声がそれを如実に物語っております。申すまでもなく、憲法はその九十二条で、地方公共団体の組織並びに運営に関する事項は地方自治本旨に基づいて法律で定める旨規定いたしております。この合併法案は、この組織並びに運営に関する基本的な事項であります。すなわち、憲法第九十二条及び九十五条を受けて、地方自治法第六条は、都道府県の廃置分合をしようとするときは法律でこれを定めるとしております。そしてその法律とは、地方自治本旨に基づき住民投票で決する特別法であることは今日の定説であります。しかるに、今回の特例法案は、将来の合併を予想しての一般的、普遍的な規定となっております。もちろん、地方自治法が市町村合併について特別法を必要としないたてまえをとったのは、市町村は元来、基礎的地方公共団体としてその住民との結びつきがきわめて強く、住民意思の反映が容易であるからであります。しかるに、都道府県は、国と市町村との中間的地方公共団体でありますので、市町村ほど住民との結びつきが強固でない。したがって、府県合併という重大な事件については特別に住民投票により住民意思を確認する方式を採用したものと解すべきであって、この点、住民投票を省略するこの特例法は、明かに憲法違反のそしりを免れないと思うものであります。言うまでもなく、地方自治は民主々義の学校であり、民主々義の基盤であると申されております。その民主々義の基盤である地方自治住民自治という本旨を忘れて、民意を反映しないこの合併法案は、明らかに時代に逆行するものと言わねばなりません。  以上、数点にわたり重大な誤りを指摘し、政府の猛反省を促して反対の討論を終わります。
  73. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  都道府県合併特例法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  75. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  暫時休憩いたします。    午後三時四十分休憩      —————・—————    午後四時十八分開会
  77. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  地方公務員法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  78. 和田静夫

    ○和田静夫君 徐々に本論に入りますが、その前に二つだけちょっと整理をさしてもらいたい。  その一つは、この前の委員会で残った問題ですが、六月の十二日のこの委員会で私は片山津温泉の旅館火災の件で質問をいたしました。その後の調査結果、何か新しい事実が判明をいたしましたか。
  79. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) その後、特別新しい事態はございません。
  80. 和田静夫

    ○和田静夫君 六月八日に片山津温泉の常願寺というお寺で罹災者の会というのが実は開かれたのです。で、私も出席を求められていましたけれどもちょっと出られませんでした。そこには罹災者のほかに加賀市の庶務課長、それから稲垣という片山津市消防本部片山津分団長も出席をされました。その模様をテープに収録をされまして私の手元へ送ってまいりました。それは消防庁長官にもぜひ録音を実は聞いておいてもらいたいと思うほどの内容のものですが、その録音を聞きますと、罹災者で当時の目撃者である人たちの口から、また消防の分団長の口から、いろいろな事実が述べられていました。その中ではっきりしたことは、まず一つは、出火があってから消防署に第一通報があるまで約十五分かかっております。それも、火が屋根を破って、外にはい出したといいますか、ふき出したのを見た外部の人が通報をしておるわけです。この通報のおくれ、いわゆる初期消火の失敗があの大火の原因であることは、消防署の片山津分団長も実はその会の中で認めているところなんですが、消防庁としては、その点をどのように判断をされましたか。
  81. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 前回も御報告申し上げましたように、出火の時間と一応推定されておりますのは一時二十分ごろでございます。それに対しまして消防署が確知をいたしました時間は一時三十一分でございまして、約十分間この間に経過をいたしております。しかし、出火時間の一時二十分につきましては、これは必ずしも正確な時間をはかっていたわけではございませんので、あるいは多少の前後があったかとも思いますけれども、いずれにいたしましても、火災の消防署への通知がおくれましたことは、私は事実であろうと思います。この前も申し上げましたように、現場で増築作業をやっておりました大工さんですか作業員が下のほうで何かぱちぱち音がするというので、ほこりをたたくような音がするというので、ちょっと不審に思いまして、現在工事をやっておりますのは鉄筋の増築部分でございますが、一度下におりて見たら、ちょうど鉄筋の増築部分と、旧館と申しますか、木造部分の境目あたりから煙が出ておるということで火事を発見したというような状況でございます。それともう一つは、やはり現場の人たちが消火をしようとして、消火器等を使ったようでございます。何ぶんにも天井裏が燃えておるので、消火器を使いましてもなかなか消えないわけであります。あるいはそういったことに時間をとったのではなかろうかというふうに考えておりますけれども、御指摘のとおりに、出火が起こったと推定されます時間から消防署に通知のあるまでの時間が相当たっている。これが火事の大きくなった原因の一つであろうというふうに考えております。
  82. 和田静夫

    ○和田静夫君 消防本部の片山津分署ですかの常勤の職員は何人ですか。
  83. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) いま正確に何人おったかという資料を持ち合わせておりませんが、常駐しております車は消防車二台でございます。
  84. 和田静夫

    ○和田静夫君 職員は。
  85. 高田勇

    説明員(高田勇君) いま長官から申し上げましたように、はっきりした人数は私もちょっと記憶ございませんが、二台でございますので、少なくとも八人はいたと思います。
  86. 和田静夫

    ○和田静夫君 そこで、その中の四人の方々が日ごろ旅館その他でアルバイトをされているという事実が明らかになってきつつあるのですが、三人は、日ごろそれぞれグランドホテル、まるや旅館、片山津百貨商事の運転手を手伝い、そのたびに日当は二千円、また一人は町の有力者で、加賀ホテル、みたにや、かのやに関係しておって、特に加賀ホテルではかなりの発言力、影響力をお持ちになっている。五月二十二日に片山津観光会館で罹災旅館のお手伝いさんたちを集めて就職あっせん会が行なわれた際に、加賀ホテルの代弁者として面接にさえ来ておる。これは明白に私は地方公務員法の三十八条に違反をすると思うのですが、事実について御存じですか。
  87. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 事実を承知いたしておりません。
  88. 和田静夫

    ○和田静夫君 これはぜひお調べを願いたい。これがいわゆる人件費を切り詰めている、あるいは切り詰めざるを得ない中小市町村消防の実態ではないかと実は思うのです。定年制などで職員の首をはねるというような筋合いのことを許容できない状態が、これらのところにもすでにあらわれていることを知らなければならないと私は実は思っておる。  これと関連をしまして、去る六月の二日、朝日新聞によりますと、消防本部を設けている自治体のうち約半数の自治体において首長が、助役が消防署長をはじめ消防の幹部職員を兼務をしている、こういう記事が載っておりましたが、消防庁はこの明白な地方自治法百四十一条の違反をこのまま放置をするおつもりですか。
  89. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 常備消防を置きます場合は、消防本部と消防署を置くことになっておりますけれども、消防本部の長、それを消防法では消防長と言っておりますけれども、消防長は市町村長あるいは助役が兼ねられることもあるわけでございまして、消防署長を兼ねておるということはないと思います。
  90. 和田静夫

    ○和田静夫君 これはありませんか。
  91. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 消防署長につきましては、一定の資格を持った者でなければ任命できないようなことに、たしかことしの政令改正等で措置もされましたので、私の承知しております限りにおきましては、ないと思います。
  92. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、この点についても調査を願いたい、そういうように思います。  建設省来ましたか。——そうしますと、建設省関係がちょっとありますが、飛びます。久しぶりに鎌田さんお見えですけれども、実は私はたいへん残念なことを言わざるを得ませんが、きのうでおかげさまで議員になってから一年たったわけです。一年間の国会審議を通じて、実は自治省に求めた資料というものは委員会で約束されてもほとんど出してきません。各省庁は大体委員会発言をしますと、約束をしたとおり連絡があります。消防庁関係も、実はこの前の論議の結果をけさほど間に合うように、すでに約束をされた部分は報告をしてくれました。自治省の財政局に関してもおくればせながら、それぞれ交付税の審議等がありましたが、法案を上げる段階でありましたけれども行政局に関する限りは、宮澤官房長に要求をした天下りの、それも意を満たしませんが、その資料が返ってきただけで、いま再びお願いをしている。ところが、そのほかのことは一つも出てこない。しかも、それらは大体鎌田公務員部長に関することである。実際こういう問題についてはどのようにお考えになっているのかということを、まず審議に入るに当たってお尋ねをしたい。
  93. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 私、資料並びに調査のお約束をいたしまして、私の記憶いたしております限りで、いま和田委員からおしかりをいただいたわけでございますが、森前公務員一課長の某所におきまする発言に関連をいたしまして、具体的に東京都内のどの区役所のどの職員の勤務状態をさして怠慢であるということを言っておるのかという点についての調査、これは私率直に申しまして今日までお返事がおくれておりますことをおわび申し上げなきゃならないと思うところでございます。そのほかの調査資料あるいは説明と申しますか、そういった点につきましては、ちょっと私心当たりがないんでございますが。
  94. 和田静夫

    ○和田静夫君 いまの点がたいへん重要なところなんですね。それは、後ほどあれをしますが、たとえばそのときに一番簡単な、森さんが長野県に出かけられた三日間の出勤簿を出してもらいたいというような具体的なお願いをしていることについても、これは議事録に残っていますからあれですが、そんなものはすぐもう写しが取れるわけでしょう、改ざんをしない以上は。そういうものさえ出てこないというのは一体どういうことなんですか。
  95. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) まことに汗顔の至りでございますが、出勤簿の写しを提出するということを私お約束したということをちょっと失念をいたしておりまして、まことに申しわけございません。
  96. 和田静夫

    ○和田静夫君 出勤状態の具体的な三日間の取り扱いの問題、それから旅費支給の問題について提出を実は要求をしてあります。  そこで、これはもうぜひやっていただきたいと思いますが、「早急に調査をいたしまして、御連絡を申し上げたいと思います。」、「本人につきまして具体的な事情を調査いたしたいと思います。」、こういう形で、実はもうこれは四月二十二日の話なんですね。大臣は、公務員部長が調べるということでございますから、調べましたあとで私の意見を申し述べたい、こういうふうに約束をされているわけです。まさに四月の二十二日から七月の八日までかかってああいう簡単なことが調査ができないというふうには考えられません。全く私の委員会におけるところの発言が無視をされている。こういうことだろうと思うんですが、いかがです。
  97. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 本人について調べたわけでありますが、東京都内の区役所の職員のことにつきましては、本人は新聞の投書なりあるいは世上のうわさなりというものをもとにして申したんだと、こういうことを言っております。
  98. 和田静夫

    ○和田静夫君 答弁にならないんですよね。これは自治大臣、私は国公法の第九十九条に明確に違反をしているということをこの前申し上げまして、大臣は、私の意見を加味しながら自後の問題について考えると、こう述べられておるわけですが、一体大臣、森行政課長の問題についてどのように処理されるお考えなのか。
  99. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私としても、いろいろの御注意や御意見がありましたので十分考えておりまして、まだこれに対して公務員部長が特に二、三の、ほかにもありましたが、特にいま御指摘の問題は調査するとお約束したことは私もそのように記憶しております。事実でございます。実は早く調査も済んでいると思っておったんですが、今日まで怠っておる、これは私もそのとおり記憶しておりますから、申しわけなく思っております。これらのことが、全体的にいろいろ資料が出まして、私自身もそのとき申しましたとおり考えをきめたいと、こう考えております。
  100. 和田静夫

    ○和田静夫君 これはいま鎌田さんのほうから、本人は新聞やあるいはと、こういうふうに全く思いつきの言いのがれの答弁をされたわけですが、そうはなりません。くどいとあれですから何べんも言いませんけれども、本人は新宿区戸塚にお住まいだ、そして自分の住んでいる区役所の職員がだらしがないと、こうなっている。そうすると私は、新宿区の区役所の職員であった私自身が非難をされた。したがって私のどこがだらけているのか、このことは明確にしてもらわなければならぬ。もし私を特定をするのでなかったならば、私の同僚であったところの千四百近い新宿区の職員のだれがどうであったのか。あるいは本人が戸塚にお住まいですから、戸塚特別出張所の所長なり、私の上司なり、あるいは職員のどこがだらけていたのかということは、これは明確にしてもらわなければならぬと思う。単に新聞の記事や、あるいは世上云々ということでもって権威あるところの話をしに行っておりながら、しかも、「期待される公務員像」という話をされに行っておりながら、一方の地方公務員に対して一方の地方公務員を非難するというような形、しかも、事実無根の話をされるというようなことは常識的に考えて許されることじゃありませんでしょう。公務員全体を侮辱するというようなこと、官職全体の不名誉になるということは国家公務員は厳に慎まなければならないというのが国公法九十九条の精神であります。したがって、これについては、やはりどのように処置をされるのかということを明確にしていただかなければ、私はどうにもならない、こういうふうに思います。
  101. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いまお答えしましたとおり、当時の和田さんの御質問、公務員部長の答も記憶しております。まあ、いまの御指摘の点で、新宿の問題であるかどうかということ、これ私も直接存じませんので、ただ公務員の勤務状況に対しての批判、これは度が過ぎるということになりますと、これはやっぱり大事なことでございますし、また、いまいろいろ公務員法その他もございましょうが、一般的に考えましても慎むべきことです。一応内容を精査しまして私がまたお答えさしていただくと、こういうことにさしていただきたいと思います。
  102. 和田静夫

    ○和田静夫君 この間行政局長は、釧路の工場誘致条例の問題をめぐる札幌高等裁判所のいわゆる判決の結果について談話を発表した覚えはありませんと、このようにかなり明確に述べられたわけです。私はその後調べました。それから行政局長の御答弁の中でも、私はいま国会に出かける最中でございますので、どうぞひとつ所管の課で、経過もよくわからないから、よく聞いてほしいということで別れたのでございます、こういうことを述べられました。所管の課といったらどこになりますか。
  103. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 一般的に誘致条例の問題でございますので、行政課であると思います。
  104. 和田静夫

    ○和田静夫君 その行政課のいまの担当責任者はだれですか。
  105. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 責任者は行政課長の森清君であります。
  106. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、長野行政局長は談話を否定をされた。しかし、長野行政局長の談話としてNHKのラジオやテレビは伝えた。そして、自分は具体的なことはあれだからとにかく行政課長に聞きなさい、その結果は行政局長が発表したと一緒だという形でもって、取材の側は談話として取材をされたということはあり得ることだと思うんですが、そのことの追及は抜きにして、そうしますと、あのときにも申しましたが、釧路のような非常識なやり方はするべきではないという形のことは、これまた森行政課長が明確に述べたということに、いまの行政局長答弁となるわけですね。したがって、まさにここにおいて、私はこの三権分立という問題に対する行政課長自身の姿勢の問題がやっぱりうかがわれざるを得ない。しかも、それが正確なら話は別であります。釧路のような非常識なというような形でもって、経過措置がないということで一方的に打ち切ったのは無謀だと、こう言うが、実際問題としては経過措置がある。事実を正確に伝えずにたいへん越権的な談話を行政局長になりかわって森清行政課長は発表した、こういうことになります。さらに、先ほどの問題に付加して、こういう事実も明確になってきています、大臣。したがって、いま大臣の処置についての御所信を抽象的には伺いましたが、かなり強い語調で申されましたから、私はおそらく私が述べてきたような趣旨に基づいて処置をされると期待をいたしますが、いかがですか。
  107. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 先ほどお答えしましたとおり、一々具体的な御質問でございますから、これに対してひとつ詳しく調査したいと思って、その結果をあとでまたお答えいたします。
  108. 和田静夫

    ○和田静夫君 大臣、これはくどいようですが、さっきも言ったとおり、昨年十月二十二日から始まっていることなんですね。そこで、この調査、調査でずっといかれたのでは、本来なら五月二十五日に国会は終わっているわけですからね、国会が七十二日延びたから国会論議ができましたが、いつまでに調査をしてもらって、その結論について、森課長に対する処置について大臣見解を承ることができますか。
  109. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 和田さんに申し上げますが、私は前の話も聞いたし、前々からいろいろな関連もございますし、実は近いうちに考えをきめなくちゃならぬということを、本人でございませんが、役所責任者にもそう注意を促しております。まだ具体化しないで、いろいろな関連がございまして出ておりませんが、ことにこういう問題がございますれば、これはすみやかに私の考えを申し述べます。これはそうむずかしい問題じゃございませんが、この調査は、これも常識的に見てすぐできることですから、ちょっと時間をおいていただいて、決して長いこと——常識の時間で私の考えを申し上げます。いいかげんに、国会が終わってから返事しようとは毛頭思っておりません。会期中に申し上げます。それだけはお約束申し上げます。
  110. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくはその問題データを知らないんですが、そういう重要な問題があって、自治大臣はその事実は確認をされているんですか。
  111. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 質問のあったことは確認しております、和田さんの質問はね。
  112. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 でなしに、それを確認して、処分についてはこれまたいろいろな問題が庁内にあると思うが、そういう事実を確認しておるのかどうかということについて大臣御存じないですか。いま言われた事実についてどうなんですか。
  113. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 実は事実は私は確認しておりません。質問があって、おそらく私にも報告があると思っておりましたが、実はこれも合わせて私はお答えいたしますが、この地方公務員の執務状況の批判があったと、それから釧路の工場誘致の問題についてこの前局長にお尋ねになっておりますが、それは私は記憶しております。そこでいろいろな関連がたくさんあるんです。森課長という問題、これは前から出ておる問題でして、新たな問題じゃない。したがって、私は私なりに考えがありますが、この問題も実はなおざりにしたようですが、ことに新宿区役所の問題、これも当時聞いておりましたので、もう少しやはりその報告は国会にも報告すると言っておりました、私にもあると思っておりましたが、実はこの点についての事実の確認ということまでいってないんです、私自身が。しかし、これは事実があるかどうかということを調べたいと思っております。だから、いま決して、何といいますか、会期が終わって、いいかげんなときにやろうということではなくて、私には私の考えがありますから、しばらく待ってください。だから私はさっき、会期中に申し上げますというお答えを申し上げたわけであります。
  114. 和田静夫

    ○和田静夫君 これは、野田自治大臣になってからはこの前の委員会で私は初めて質問しましたけれども、問題の指摘はその前の赤澤さんのときからやっているわけです。その当時は、御存じのとおり「地方公務員月報」に書かれた、人事院総裁なり人事院を否定するようなそういうような論文の問題がありました。そのときにこの長野の講演の問題というのも問題になっている、実は。ところが、その問題については、自治省の側からは、調査を約束されながら一向に出てこないもん、だから、この前一ぺんそこでまた約束をされながら今日までまだ全然未回答、しかも、これはそんなに長く時間をかけなければならぬ問題じゃないんですよね。もしこの委員会における私の質問がある一定の権威として認められるならば……まさに私なんかの発言というものは自治省の官僚によって無視されておるがゆえにこういう問題はなおざりにされてきたというふうに大臣言われてもしかたがないと思うんです。何回も取り上げてきておるんです。そしてここにきてまた、いつまでに調査ができるんだということが明らかにできないということでは、これはたまったものではない。実際問題として対象になっておる職員がいるわけですから。そうしてこの間も言うように、新宿区役所の職員をさすのでなかったならば、他の二十二区の区役所の職員をさすことになります。東京都内二十三区の職員全体に対するところの非難ということになりますから、そうして現実にその非難は事実としてあるわけですから、そういう非難はやってはいけないんだという公務員法の精神に全く違反をされておる。そうして、何べん注意をしても同じ人が同じような見解に基づいて他の問題について同じような発想に基づく発言をされる。何回も続くわけですね。いかがですか。
  115. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 実は、和田さんの発言を無視どころではなく、私は非常に重要視しておるんです。したがって、実際いつごろということは申しませんが、相当注意を喚起してどうするかということまで私相談をしたことは事実です。しかし、いま内部のことをこの席で申し上げることは遠慮したいことを御理解願います。したがって、調査では、あなたの言われたように、常識的にそうかかるものではない。私はあなたの御意見を非常にそのとき尊重して、私自身の姿勢の上において考えなければならないというので、現に多少その意向を出しております。しかし、これも役所のいろいろなことは事実おいそれとはいかないものですから、ちょっとその点は御了解願いたいんです。いまの問題が出てまいりまして回答もしていないということは実は驚いております。これについてはそう日はかかりません。私は、会期が終わったあとで何とかいたしますというひきょうなことは申しません。私の、何と申しますか、心がまえといいますか、考え方といいますか、ひとつ御了解願いたい、こう思っております。
  116. 和田静夫

    ○和田静夫君 それじゃ、大臣のいまのことばを信用しておきますから、とにかくきわめて早い時期にその結果に基づく処置についての見解というものを明らかにしていただきたい、よろしゅうございますか。
  117. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 繰り返し申し上げたとおりでございます。
  118. 和田静夫

    ○和田静夫君 ちょっと前に戻りますが、あと二、三点ですが、建設省お見えになっておりますね。  五月十八日片山津温泉大火で焼けた通称温泉御通りの災害復旧事業のために三十八年度にきめていた幅員八メートルの道路整備計画を一部は十二メートル、そうして一部を十五メートルにそれぞれ広げようという、こういう広告を六月二十一日付で出した。ところが、一部の利害関係者から、この十五メートルの部分を十二メートルにしてほしいという強い要望が起こってきた。七月三日の北国新聞によりますとこうなっておるわけです。「市当局は建設省の方針が十五メートルでないと第一種の災害復旧指定地として指定されず、三分の二の国庫補助金ももらえないとして反対を押し切り、六月二十一日に公告を出した。」、反対の態度を貫こうという人たちがずっと上京してきて、「建設省などに直接かけあって十二メートルでも補助をつけるとの約束を取りつけて市当局へ変更を迫った。市当局も地元民の協力がなければ災害復旧が遅れるとして、被災地の本建築禁止解除を前に事務処理に必要な最低期間を見込んで三日新たな公告に踏み切った。これで被災地の道路はすべて幅員十二メートルとなるわけで」云々、こうなっておりますが、それで建設省にお尋ねしたいのは、都市計画法の八十三条によりますと、「国は、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、重要な都市計画又は都市計画事業に要する費用の一部を補助することができる。」となっていますが、その政令をさがしてみたんですが、幾らさがしてもないようなんですが、ありましたらお示し願いたいと思います。
  119. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) 八十三条の法律に基づきますところの政令にゆだねられております補助率につきましては、まだ政令が出ておりません。
  120. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、政令がないのはなぜですか。
  121. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) これは、御存じのように六月の十四日をもちまして法律が施行されたわけでございますが、緊急を要するものから政令を公布しております。まだこの補助関係につきましてはそこまで立ち至っていないということでございます。
  122. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、ただいま片山津なんかの場合には一体何が判断の基準になりますか。
  123. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) 従来都市計画事業につきまして、先ほど先生が申されましたように、第一種改良というのが三分の二の補助でございます。それから二種改良というのがございまして、これは二分の一の補助でございます。それで、この二分の一になるか三分の二になるかということは、一つは県内からのいろいろな予算の御要望がございます。それの県内のバランス、それから国のほうの予算の範囲内と申しますか、ワク内でもって一応判断をしております。
  124. 和田静夫

    ○和田静夫君 その判断をされるのは、あなたの頭の中で判断されるわけですか、恣意的に。
  125. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) これは予算のワクもございまして、大体私ども考え方といたしましては、十二メートルでございますと、いわば補助の最低限度というようなことでございますので、できれば私どもといたしましては二分の一にいたしたいというように考えております。
  126. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、三分の二の国庫補助でなくて二分の一ですか、この場合は。
  127. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) これは県内にやはり同じようなと申しますか、十二メートルの幅員で二分の一補助というのがございます。あくまでこれは県内のバランスもございますので、その点は三分の二でなくてはならぬとか二分の一でなくてはならぬということは考えておりません。
  128. 和田静夫

    ○和田静夫君 この場合は二分の一にしたいと言われたのですね。二分の一ということですか。
  129. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) はい、そうでございます。
  130. 和田静夫

    ○和田静夫君 ちょっと前に戻りますが、第一種の災害復旧指定地は三分の二というのがありますね。さっき言われましたね、三分の二補助。これは道路法の何条に基づきますか。
  131. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) これはいまのところ政令が出ておりませんので、前の旧法でございますけれども、これには「二分の一以内」というふうになっております。六条の二でございます。それを、ちょっと正確には忘れましたけれども、道路緊急措置法でしたか特別措置法でしたか、それによりまして三分の二というふうに補助率が上がっております。それで、先ほどのは第一種の災害復旧地ということではございませんで、第一種の改良事業、あくまでも街路事業ということでございまして、それが災害地だろうがなかろうが、これは三分の二の補助である。それから二分の一補助であるという、そういう一般的な街路事業としての補助の採択基準でございまして、それに基づいてやっているわけでございます。
  132. 和田静夫

    ○和田静夫君 その採択基準の法的根拠というのはどういうことになるのでしょうか。
  133. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) これは毎年予算要求の時点におきまして大蔵省と協議をいたしましてきめているわけでございます。
  134. 和田静夫

    ○和田静夫君 私もそこまではわかっているんですわ。ところが、その採択基準を実は知りたいと思いましていろいろ調査いたしましたが、いまの私にはわかりません。それで、その採択基準を資料として提出していただけますか。
  135. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) 上司と相談いたしまして態度をきめたいと思います。
  136. 和田静夫

    ○和田静夫君 この採択基準、上司と相談をされなければ出ないのには何か理由がありますか。
  137. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) 急にここに来ましたものですから、そこまで上司と相談して参っておりませんので、時間をかしていただきたいという意味で申し上げたわけでございます。
  138. 和田静夫

    ○和田静夫君 その採択基準というのは、いまの答弁から言うと、何かそれでは秘密性を持っているということなんですか。いままではすらすらと答弁をされてきて、しかも新聞には三分の二の補助と書いてあることについて、今度の場合は二分の一とはっきりした答弁をされながら、そこにいくと相談をされなければならないのか。
  139. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) 新聞情報では三分の二と出ておりましたけれども、私ども地元の反対者がお見えになりましたときにお話し申し上げたのは、十二メートルになりましても補助の対象になり得ると申したのでございまして、三分の二の補助をつけると言ったことは一つもございません。それから、いまの補助の採択基準でございますが、これは毎年変わるものですから、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  140. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、毎年変わるものだから、ことしのやつはできているのですわね。できてなければ言えるはずがないわけですね。できている採択基準というものを立法府に提出できないというような印象を与えるような答弁をされなければならない理由というのはどういうことですか。
  141. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) 私はそういう意味で申し上げたのでございませんで、ただ、まあ責任と申しますか、上に上司がおるものですから、そういう意味で申し上げたのでございまして、出せないということは一つも考えておりません。
  142. 和田静夫

    ○和田静夫君 それじゃ出せないということをおお考えになっていない、私のほうの要求にこたえていただけるというふうに考えまして次に進みます。いま資料を要求しておきますから、よろしいですね。
  143. 葛生新一

    説明員(葛生新一君) 先ほど来申し上げましたように、上司と相談いたしまして態度をきめたいと思います。
  144. 千葉千代世

    千葉千代世君 議事進行で。  ここに御出席になるのは、各省代表していらっしゃるのじゃないですか。そういう点、ちょっと私伺いたい。委員長、そういう確認をしてあなたは指名しているのじゃないですか。
  145. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  146. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記を起こして。
  147. 和田静夫

    ○和田静夫君 先日の委員会におきまして、高速道路の救急業務についての私の質問に対して消防庁長官は、あくまでも市町村消防イコール救急態勢の強化、こういう観点でお答えになっておられますが、その後高速道路における救急業務は道路公団が受け持つことになったようでありますね、そうじゃありませんか。
  148. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 高速道路における救急業務について道路公団が道路管理事務とあわせて実施をするという問題について今後検討するということでございまして、そういうように全部きまってしまったという段階ではないと考えます。
  149. 和田静夫

    ○和田静夫君 まだきまっていなければなお幸いなんですが、そうすると仮定の問題ということになると思うのですが、かなりそういう新聞記事が出ていますがね。ちょっと私新聞を読みながら奇異に思ったのですが、道路公団がもし受け持つということになった場合には、法律的には現行法ではどういうことになりますか。
  150. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) したがいまして、検討するということの中にはそういう法律的な問題も含まれるかと思います。ただ、救急という問題は、法律的な面も持ちますと同時に、一面においては事実的な行為も含まれておるわけでございまして、現に事故を起こして負傷された方がおるということになれば、それを市町村の救急車でなければ絶対に搬送してはいかぬというものでは必ずしもないと思います。現在でも名神高速道路などでは一部公団で搬送されておる部分もございます。したがいまして、法律的に言えばどちらに義務があるか、義務という点まで突き詰めていけば、道路公団には義務はないということに現行法ではなろうかと思いますけれども、たとえば道ばたで腹が痛くて寝ておられる方がいるというのをかりにわれわれが病院に連れていったとしても、これは法律違反という問題ではないと思います。そういう意味で、法律的には、道路公団法のたてまえから言えば、公団に義務があるわけではありませんが、事実行為としてやるということが禁止されておるわけではない。ただ、道路公団が今後本来の業務の一つとしてやるということになれば法律的な処置も必要であろうかと考えております。
  151. 和田静夫

    ○和田静夫君 そういうことでしょうね。法律的な処置だと私も思ったのですがね。そこで、傾向としてはどっちのほうが強いのですか。前の答弁の関係で言えば、前の答弁のほうが消えて、きょう、いま問題にしたほうが強くなっているわけですか。
  152. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) この前の決定は、御承知のとおり、道路公団が高速道路上の救急業務については、道路の管理事務——と書いてありましたらちょっと正確な文面は忘れましたが——にあわせて実施をする方向で検討するということになっておりますので、そういう方向で検討するということでありますから、そういう実施の方向になるであろうというふうに私も一応考えております。
  153. 和田静夫

    ○和田静夫君 その点はあれですが、先ほどの関係で二つばかりお願いをしましたね。実は本題とかなり私は関係があるから尋ねているわけなので、その結果はいつごろ教えてもらえますか。
  154. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) 早急に調査をいたしまして、できるだけ早い機会に御報告申し上げたいと思いますが、職員がアルバイトをしておるという問題、これは加賀市との電話連絡さえつけば、また、向こうから報告いただけばすぐ報告できると思います。二番目の消防署長なりを市町村長なり助役というふうな他の者が兼ねておるという問題、これは全国的な問題として調べなければなりませんので、現在資料が手元にありますならばすぐに御報告いたしますけれども、もしも手元にそういう資料が整ってなければ、各市町村に照会しなければなりませんので、若干の時間をかしていただきたいと思います。
  155. 和田静夫

    ○和田静夫君 実は私は数を確認して質問をしたいところなんですが、「若干の時間」というのは、私の論議は大体常識的に見ても三回か四回でしょうね、私がずっとこうやっていって。……五回。私の論議中に間に合いますかね。
  156. 松島五郎

    政府委員(松島五郎君) それまでにとおっしゃられましても、私どももできるだけ早くいたしたいと思いますけれども、資料を出すように照会をいたしましても、私どもが幾らあせってもなかなか相手方が資料を市町村ごとに出していただきませんとまとまりがつかないわけでございますので、ここ一、二週間の間に出すというお約束はちょっと、またあとで、約束したのにしなかったではないかというおしかりを受けてもいけませんので、もう少し時間をいただきたいと思います。
  157. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記をとめて。  〔速記中止〕
  158. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記を起こして。
  159. 和田静夫

    ○和田静夫君 地方公務員法の一部を改正する法律案、いわゆる定年制法案の本格審議に入りつつあるわけですが、私は自治大臣と、前提的な手続として、この共通の理解といいますか、たとえばそれは見解は違っておっても、少なくとも問題点の所在について共通の理解を確定しておくとか、いわゆる概念を明確にしておく、そういう意味においてまず若干の質問をしておきたいと思います。で、これは今後の審議を深めるためのものでありますから、それに資するように、あいまいさのないはっきりした答弁を実は冒頭に求めておきたいのであります。で、またこの審議中に提出いただけるような資料、前提的な諸条件についてもどの程度まではやっていただけるものか具体的にお聞きをいたしますので、ひとつ洗いざらい明確にお答えを願いたいと思うのです。  自治大臣は、この法律案の提案理由の説明に際してこのように述べられました。「第一は、職員の離職に関する規定を整備するものであります。職員の身分変動の最も重要な態様である離職につきましては、従来地方公務員法の中に統一的な規定がなく、その運用に関しての疑義もありましたので、今回その整備をはかったものであります。」、職員の身分変動の最も重要な態様である離職について従来地方公務員法の中に統一的な規定がなくてその運用に関して疑義があったと、こう述べられているのでありますが、それはどのような疑義ですか。
  160. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) たとえば職員の辞職といいますようなときに、辞職の効果というようなものがいつ発生をするのかというような点につきましては、いろいろと取り扱い上も考え方がありまして、そういう意味での実際問題としての疑義と申しますか、そういう不明確な点がある、こういうことでございます。
  161. 和田静夫

    ○和田静夫君 「実際問題としての疑義」というのは、どういうことを意味するのですかね。
  162. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) ただいま行政局長からお答え申し上げました「辞職」でございますが、辞表を出してやめてまいる、この場合に例をとって申しますというと、御案内のとおり、これは判例もあるようでございまするけれども、この辞職の効果の発生する時期はいつであるか。辞表をぽんと出しただけでその辞職の効果が発生するものかどうか。口頭でいいのか、文書でいいのか、こういった点に問題もございます。あるいは、その辞職の効果の発生時期ということに相なりますというと、その任命権者が承認を与えた時ということで従来運用いたしてまいっているわけでございますが、これは、何と申しますか、従来の慣行あるいは良職と申しますか、こういった運用にゆだねられているわけでございます。あるいはまた、分限免職あるいは懲戒免職というものにつきましては規定があるわけでございますけれども、職を失う失職でございますとか、あるいは任期の定めがあります場合におきまして、任期満了に伴ってやめる、こういった場合の手続と申しますか、こういったものについては規定が全然ない、こういうことでございまして、そういった面についての規定の整備をはかりたい、こういうことが一つのねらいとしてあるわけでございます。
  163. 和田静夫

    ○和田静夫君 実際問題としてその整備はどこでやられたわけですか。
  164. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 第二十七条の2の規定で離職の態様というものを統一的に規定をいたしております。たとえばいま例として申し上げました辞職の場合でございますと、六号といたしまして、「辞職を申し出て、承認されたとき。」、続きまして二十九条の二で、「離職の事由、手続及び効果については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、条例で定めるものとする。」、こういう、この両方をもって整備をいたしておるわけでございます。
  165. 和田静夫

    ○和田静夫君 六月六日の衆議院地方行政委員会において、社会党の河上委員質問に答え長野政府委員は次のように述べています。「現在の公務員法のたてまえ全体から考えまして、現行法のもとで定年制をしくということは、いずれにいたしましても二十七条等の規定から考えまして、やはり法律に根拠がなければいかぬという考え方を全体としてはとらざるを得ないのではないか。定年制をしくということは狭義の意味の分限免職とは違うというふうには考えておりますが、やはり広義の意味では分限の規定と考えられる。そういうことから考えますと、現在の地方公務員法のたてまえからいいまして、やはり法律を根拠とするということが必要ではないかという考え方を持っておるわけでございます。その意味で、現行法のもとでは定年制をしくことはできない。そこで、そういう法律の根拠ということを兼ねまして離職に関する規定を今回整備し、そして離職の事由だとか手続とか効果について、法律で特別に定めております場合を除きましては条例で定めるものとするという改正規定を加えることによりまして、そこで法律上定年制を施行し得る道を開くことにいたすわけでございます。そういう意味では広義の意味での分限の規定の適用はあるけれども、狭義の意味での分限規定の該当はないということをはっきりいたしまして、そして定年制の道を開き得る体制を整えたい、そういうことでございます」、ここで私は、長野さんの言われる「広義の意味での分限」と「狭義の意味での分限」ということばの内容を確定をしておこうと思います。「狭義の意味での分限」というのはどういう意味であり、「広義の意味での分限」とは、前者よりも具体的にどのような意味において広い意味を持っているのですか。
  166. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方公務員法の現在のたてまえからいたしまして、二十七条あるいは二十八条あるいは二十九条というような、「第五節分限及び懲戒」というような関係の規定があるわけでございますが、ここにも書いておりますように、まあ二十八条に規定しておりますところの「分限」というのは、特にその中で分限免職等につきましては、これはこの節の中の二十八条ということでございますが、まあ形式からのみ申し上げるわけじゃございませんが、やはり狭義の分限だと、こう考えております。ただ、全体分限ということばの意味もなかなかむずかしいようでございますけれども、元来職員の身分の変更なり得喪に関するような事柄という、非常に広い意味にとらまえますというと、やはりこの分限免職ということだけではなくして、たとえばこの二十七条に書いておりますような一般の基準というようなものを含めて広く身分関係の得喪なり地位の保障なりというものの気持ちで考えておる。極端に言いますと、地方公務員法そのものが、地方公務員法のおおむねの職員に関する規定というものは、直接なり間接なりに職員の身分にかかわるものが多いというような意味からしますというと、そういう関係もさらに広い意味では分限に関するものだということも言えるかもしれませんが、しかし、私どもいまそこで申しました意味は、それよりはやや狭うございまして、要するに、身分の直接的な得喪に関するようなことで、この第五節の全体をおおっているような考え方というものを、ひとつやはり広い意味の分限、こう考えていいのではないか。それから、二十八条に言うところの分限というようなものは狭義の分限と、こう考えてしかるべきではないだろうかと、こう考えておるわけでございます。
  167. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時三十一分散会      —————・—————