○
政府委員(
長野士郎君) 戦後におきまして、
地方行政の分野におきまして、特に
府県の
行政というものについての変化が、戦前戦後を通じて一番
地方行政での変革としては大きい変革であったわけでございます。といいますと、戦前の
府県というものは、
府県制というもとにおきましては、いわゆる
地方自治体、
地方団体としての
府県というものを指定をし、それを設置しておることになっておるわけでございます。
府県の執行機関というものは、いわゆる普通
地方行政官庁でありますところの
地方長官以下の
職員をもって
府県の執行機関というものを構成する。こういうことでございまして、言ってみれば半分官庁であり、半分自治体であるというような要素としての
府県が、戦後において完全な自治体に変化を遂げたわけでございます。この点で、戦後におきまして、従来のような
府県の
行政の
内容を、国との
関係におきましてそのまま
府県として担当をしていくことができるかどうかというようないろいろな議論が、その当時の状況を背景にいたしまして起こりました。つまり言ってみれば、
府県制というものが一番大きく変化をいたしましたと同時に、国政との
関係におきまして、その合理化なりその改革なりというものも非常に大きく全面的に打ち出されてきたわけでございます。その中での
内容の大きなものは、先ほ
どもお話ありました教育とか警察とか、
一つの
府県制の改革を迫る大きな問題でもあると思います。あるいは食糧
行政とか、そういうものもございました。そこで、戦後におきましての
府県行政についての改革論が必ず出てきておるわけでございますが、それが、
地方自治というものを推進していくというようなたてまえからの
府県行政についての
考え方というものが出てまいりましたのが、
地方行政調査
委員会議の
行政事務再
配分に関する勧告ということから、はっきりそういう
考え方が出てきたように思っております。しかし、その後の警察
行政あるいは教育
行政あるいは国の
出先機関といったようなものを含めましての合理化という問題はなお残っておりまして、
地方制度調査会は累次にわたってそういう検討をしてきたというかっこうでございます。一時は、御
承知のように
地方制という問題の結論を、非常に少数ではございますが、一応
地方制度調査会の
意見として出したこともございます。しかしこれはやはり問題がきわめて重大であり、ということと同時に、やはり一面の
行政改革としての
考え方としては、やはり
地方自治の充実強化という線で、つまり
行政事務の再
配分ということを基本にした
行政改革というようなもので
考えていくという
一つの強い
考え方がずっと続いてきて今日に至っておるというふうにお
考え願えればよかろうかと思います。
その途中における
地方制というものはどういう発想からでてきたかということが問題になるといえばなるわけでございます。これは、やはり戦後におけるいろいろな
行政というものが
地方と国との間において非常な変化を遂げてまいっておりまして、つまり言ってみれば、従前は、普通
地方行政官庁としての
地方長官という地位は非常に強大な地位でございましたが、同時にそれはほとんどの
地方行政を総合的に所管しておったという体制が整えられておったわけでございますけれ
ども、戦後におきましては、そういうことでなくて、自治体としての民選
知事といいますか、公選
知事、首長のもとにおきまして、国政をそこまで
知事をして所管させることは適当でないというような議論、あるいはまた社会
経済の変転に伴う
行政の
広域化的要請というような議論というようなもので、これはある面、統制
経済からの関連というものもあるのでございますが、国の
出先機関というものが非常に乱設をされました。そこで、
地方行政におけるところの
行政全体の総合化ということが非常に困難な
時代を迎えてきたというようなことから、そういう発想が、むしろ
地方制というものによってもう一度
地方地方におけるところの
行政の
広域化を整えながら、同時に
行政の総合化、
計画化をはかっていくということにしたいというような、まあ
行政の効率化ということをむしろ中心にしたような
考え方というものが、国との多少の妥協もございましょうが、
地方制というものを生んだ
一つの背景であったと思います。
しかしその後における
地方制度改革というものは、やはりそういうことではなくて、自治を充実するという
方向での改革というものを
行政事務再
配分というものを中心にして行なっていくというような
考え方がずっと一貫してとられてきておるというふうにお
考えいただいていいのじゃないかと思うわけでございます。その
一つのあらわれ方が、その後におきますところの
事務再
配分、財源
配分、そういうことで
考えられておりますが、ただその途中におきますところの臨時
行政調査会の
答申は、この
地方制を
答申しました
地方制度調査会と思想的背景が同じだというわけではないとは思いますけれ
ども、やや総合的な
行政の効果というようなものを中心にして臨時
行政調査会が
行政改革というものを、これは国のサイドからの発想という点からの制約がございますから無理もないわけでございますが、そういう点からの臨時
行政調査会の
答申というものが出ていることも、これは御
指摘のとおりであります。
地方制度調査会といたしましては、自乗一貫して現在の
府県、
市町村という二重の構造というものを維持しながら、その
自治能力の拡大強化をはかっていくという
方向を、現実の社会
経済の変化に対応し得るような
制度としてどういうふうに
考えていくかということの検討に自来一貫しておるというふうに
考えていただけばよろしいのじゃないか、こう思っておるのでございます。