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1969-07-01 第61回国会 参議院 地方行政委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月一日(火曜日)    午前十時四十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         内藤誉三郎君     理 事                 熊谷太三郎君                 吉武 恵市君                 山本伊三郎君                 原田  立君     委 員                 小林 国司君                 小林 武治君                 鈴木 省吾君                 船田  譲君                 増田  盛君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 若林 正武君                 竹田 四郎君                 千葉千代世君                 松澤 兼人君                 和田 静夫君                 阿部 憲一君                 山田  勇君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        建 設 大 臣  坪川 信三君        自 治 大 臣  野田 武夫君    政府委員        近畿圏整備本部        次長       井上 義光君        中部圏開発整備        本部次長     小林 忠雄君        首都圏整備委員        会事務局長    鶴海良一郎君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        労働大臣官房長  岡部 實夫君        自治省行政局長  長野 士郎君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        防衛庁人事教育        局人事第二課長  平井 啓一君        大蔵省銀行局中        小金融課長    長岡  実君        文部大臣官房総        務課長      岩田 俊一君        厚生大臣官房総        務課長      曽根田郁夫君        農林大臣官房地        方課長      鈴木  諒君        通商産業大臣官        房参事官     井土 武久君        運輸大臣官房審        議官       内村 信行君        労働大臣官房参        事官       橋爪  達君        建設大臣官房文        書課長      吉田 泰夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○都道府県合併特例法案内閣提出)     —————————————
  2. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  都道府県合併特例法案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 山田勇

    山田勇君 都道府県合併特例法案についていろいろな角度から討議がなされておりますが、私は重複する面もあると思いますが、少し質問さしていただきたいと思います。  まず、広域行政ということはだれしも推進しなければならないように大体理解しているように思いますが、事実明治二十一年以来府県行政区がほとんど変更されずに今日に至っているということは、経済社会の急激な変動、または情報化時代と言われる今日の情勢から見ても、何らかの方策が講じられなければならないと思います。でありますが、先般行なわれました関西における公聴会での各陳述者意見では、今回のこの合併特例法案について積極的な支持の意見が少なかったのですが、この点、大臣としてどうお考えでしょうか。
  4. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私も、この間の皆さまのおいでになりました地方公聴会の模様を一応お聞きしておりますが、積極的な合併に対する意思は出なかったというようなことも二、三お聞きいたしております。もとよりこれは府県といたしましてはやはり重大な問題でございまして、軽卒に、ことに府県知事としても発言をすることは容易ではないと、こう感じております。いま山田さんのお話しになりましたとおり、府県制が経過的にきわめて古い制度でございまして、今日の時代にはたしてこのままでいいのかと、ことに最近広域行政というものが非常にその重要性を認められてきておりますときに、やはり府県制度がそのままでもって運営していっていいかという議論ももちろんあることは、お認めになりましたとおりでございます。しかし、私がしばしばお答えいたしておりますとおり、これはやはりその府県の方方の自発的なお考えによってきめることでございまして、国がかれこれことさらに指示をしたり指導するということは控えたいというのでございますから、各府県責任者の方は、それだけにまた非常に実情を把握し、どうすれば自分府県が今後行政面の推進をあげるためにはどうすればいいかといういろんな御意見もありましょうから、まあことに私どもが一番考えなければならぬことは、地域住民の方の意思というものが大事でございますから、そういうことを勘案して、公聴会なんかの御意見というものは非常に慎重であったろうと、こうお察しいたしております。
  5. 山田勇

    山田勇君 まあ合併意識というのはたいへん尊重しなければいけないというような意味だと思います。また一般住民において、自分の住んでいる府県名称が変わるかもしれないという重要な問題であるのに、一向に関心がわいていない。もちろんこれは名称が変わるだけの問題ではないと思うが、とにかくこの立法が、住民意思を最も尊重しなければならない地方自治の精神から非常に離れた方向に進もうとしているように私は思えるのですが、その点いかがでしょうか。
  6. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま山田さんの御指摘のとおり、この法律を施行する段階に入りますれば、一番やはり大事なのは地域住民意思というものを尊重しなければならない、こう考えております。
  7. 山田勇

    山田勇君 時代先覚者といわれるような政治家は、歴史的にもその時点では一見無理とも見えるような施策を行なう場合もあるわけですが、この特例法についても、住民意思決定、すなわち住民投票を待っていてはなまぬるいと、すみやかに立法して広域行政基盤をつくるのが、結局は住民にとってプラスになるといった信念を持って大臣はこの立法化を推進しておられるんでしょうか。
  8. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私はいま山田さんが御指摘になります今日の経済社会の推移にかんがみて、どうしても広域行政というものが必要だと、これはとりもなおさず地域住民の幸福と生活の向上だと、こう考えておりまして、やはり府県合併ということに限らないで、広域行政というものは今日の事態においては必要だと、またそれから推進していくのが地方行政全体から考えても機動的あるいは効果的だと、こう考えております。そこで、そのために、御承知のとおりすでにもう市町村合併は相当終わっております。また各地域におきましては、ブロック的ないろいろの協議会その他も設けられております。   〔委員長退席理事熊谷太三郎着席〕 これからいたしまして、やはり府県によりましては共同処理とかその他の方法もございますが、この際やはり府県がその事態を把握して、完全に一本化して強力になっていくということも、一つ広域行政を進める道としては必要ではないかと、こう考えております。したがって、先ほどもお答えいたしましたとおり、地域住民意思を無視してやるということはこれはもう絶対に避けねばなりませんので、地域住民意思を尊重し、その地方公共団体責任において合併に踏み切る場合に、やはり政府といたしましてはその道を開いておったほうがいいと、またそういうふうに進む傾向が私は将来あると、こう感じましてこの法案を提出した次第でございます。
  9. 山田勇

    山田勇君 地方自治を尊重するということは民主主義の基本とされておりますが、この特例法について、地方自治を破壊し中央集権化につながるというような意見をしばし聞くんですが、政府側としてはそれは誤解もはなはだしいということになると思います。また、一部財界のプッシュがあるんじゃないかというようなことは、きのうの建設との合同委員会においても、四人の委員のうち二人、三人まではそういうような意見もあったようでございます。この反対意見に対して大臣はどうお考えでしょうか。
  10. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私はこの地方自治中央集権化するということには絶対抵抗しなくやならぬと、したがって府県合併をいたします場合も、これは国の指導、国の企画に沿うように国自体がイニシアチブをとって府県合併をするというたてまえを排しているのは、いわゆるいま御指摘のありましたあくまでも地方自治団体は民主的な運営をすべしということからきております。中央集権化ということは私どもが常に排撃していることでございまして、したがって、きのうも私お答えいたしましたとおり、今日の国の行政地方行政というものの区分をもう少し明確にして、できるだけ国のいろいろの権力下にあるような事務その他については地方に委譲してもらいたいという考え方を持っております。したがって、いろいろな御懸念もございますが、私どものこの法案に対する態度というものは一貫しておるのでございます。また一部の財界人経済人が云々ということがございました。これはきのうお答えしましたが、そういううわさがあるし、また事実多少、前にはあったようでございますが、今日の時点では、私どもに対しましてはそういう動きは皆無と言ってもいいほど今日の、何と言いますか実情は何もありません。また私思いますのに、一部の経済人財界人の方が、これもいろいろ府県がそうすれば地域住民がしあわせになるというお考えかもわかりません。しかし、これは一部の方々意見でもって府県合併ができるということは、私はこの法のたてまえから申しましても不可能、別にその方々動きがけしからぬとか、またいいとかそういう批判は私はいたしませんが、実際問題として不可能、これは御承知のとおり府県からの発意で、それからそれに対しては地方議会手続、その結果によっては住民投票、そこまで考えての法案でございますから、ほんの思いつきとか、あるいは一部のいろいろな思惑からの動きというものが、大体府県合併の実現に私はそう力のあるものじゃない、私どもは全然それに関知いたしておりません。したがって、われわれの態度がそういうものによって動かされるもので絶対にないということもしばしばお答えいたしておりますが、今日もそのとおりでございます。
  11. 山田勇

    山田勇君 きのうの合同委員会で社会党の田中委員が言ったように、議席の上で負けているけれども、そういうふうにいろいろな意味では私らのほうが上だというようなことを言われております。ということは、ぼくはなぜそういうことを申すかといいますと、やはりだんだんとこれから都会化されてくると思うのです。おそらくここ十年ぐらいで日本の八〇%ぐらいが都会化されてくるということになってきますと、勢い革新の力というものが出てくる。そういう力のバランスをくずすためにこういうものをつくる。こういうものから、都道府県合併特例法案から続いて道州制に持っていくのだというような勘ぐりをすることも考えられるわけです、私たちとしては。そういう点は、大臣のいまの答弁でそういうことは絶対にないということですが、先般の公聴会の話に戻るのですが、いわゆる労働側意見資本の側の意見とは、これは必然的に対立する宿命を持っていると思うのですが、それでも資本の側は、合併特例法の成立を推進しているのは決して企業のエゴイズムではなく、経済人合理性追求からで、行政のむだをなくする意味であって、ひいては住民福祉向上をもたらすための要望であると述べております。しかし、私はどうも資本側の言うことは全面的に信用できないものを感じるわけでございます。  話がそれるかもわかりませんが、経済の発展、高度成長が遂行された反面、いまや公害による被害は、水俣病や阿賀野川、四日市のように白日のもとにさらされたものはもとより、大気汚染、河川の汚濁等目に見えない公害住民被害を与えております。事実、一時工場誘致に狂奔したいわゆる自治体も、現在ではこれを敬遠する方向に進んでいる。利潤の追求第一義である資本の側は積極的であるということは、住民福祉向上をもたらすという結論とは裏腹に抵抗を感じるわけでございます。それはともかくとしまして、労働側は、最近の産業界大型合併と同じように、府県合併職員首切り、いわゆる労働強化につながるものであるという見解もありますが、そういう点はどうでしょう。
  12. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 府県合併によりまして組織が統合されるというようなことは当然に出てくるわけでございます。したがいまして、そういう面で組織の変更が起こる、統合が起こる、あるいはまた再編成が起こるということは、むしろそれが一つ合併の効果でもあるわけでございますが、そういう点を配慮いたしまして、この法律の第十条におきましては、それはそれとしても、職員身分扱いというものについては別個に考えなければならぬという意味で、合併関係府県職員としての身分を新しい県においても引き続き保有するように考えなければならないということと、それから、合併いたしました新しい府県におきますところの職員の任免、給与その他の身分取り扱いに関しましては、関係府県職員のすべてに通じて公正な処理法律としては要求をいたしております。そういう意味で、職員首切りに通ずるというような考え方でなくて、もっと職員の再配置というようなことは当然に考えなければなりませんが、公正な扱いというものを保障したいということで考えております。
  13. 山田勇

    山田勇君 私は初めに申したように、行政広域圏化時代の進展に伴う必然的な方向であると理解するのですが、府県合併ということになりますと、府県間に社会的、経済的、文化的、それに自然環境の上でも十分に共通の基盤があり、また住民意識の中にも、合併による福祉向上が、地域エゴイズムを克服して将来にわたって達成できるという信念が醸成されていなければならないと私は思います。いたずらに住民意思を無視する方法で、議会住民意見を代表しているというものの、合併というような大きな問題、住民にとっての大きな問題は、議会議決するということではなく、住民投票できめることが妥当だと考えますが、その点いかがでしょうか。
  14. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 立法論としての考え方はいろいろあると思いますが、現在市町村合併につきましては、これは地方自治法の第七条の規定にございますが、関係議会議決によりましてその申請をする、それを知事県議会議決を経てきめる、こういうことになっておりまして、この場合は過半数議決ということで行なわれるようになっております。府県合併につきましては、自主的な合併手続を開くということで、府県議会におきまして議決をするということを考え改正法案ができておりますのは、市町村合併扱い等のことも考えながらこういう新しい法律の道を開こうということでありますが、その際にも、市町村合併と違いまして、ただ過半数議決というのでは、やはり住民意思との背馳ということも考えられる。したがって過半数議決というような僅少差ではいけないので、三分の二以上の賛成があるというようなことでない限りは、過半数と三分の二の間ぐらいのところではいけないので、そういう場合には、住民投票に付してその過半数同意を得なければならないというような、二段がまえにしておるわけでございます。その三分の二ということは、これは絶対多数という、以上ということでございまして、つまり言えば、議会の中に三分の一の方が御反対であるということであれば、これは動かないわけでございますから、そういう意味で、過半数議決に対するたいへんな例外でございますが、そういうことで、やはり議会意思住民意思とが食い違うというようなことがあっちゃいけないということで、そういう絶対多数といいますか、三分の二以上の同意がない限り住民投票に持っていくということに考え措置をしておるわけでございます。この点は、地方制度調査会答申では、過半数議決でいいということも実は答申があるのでございますが、ただその際には、住民の理解と協力を得るための周到な配慮を要請されておる。それは調査会審議の記録を拝見いたしますというと、やはりそういう場合にも、公聴会を開きますとか、あるいは世論調査等のことを行なうとかというようなことで、民意の把握につとめながら議会議決というもの、それに至る審議を十分に進めていくべきだと、こういうことのようでございます。むろん、これをこの法律にいたします場合には、むしろ三分の二以上の議決を経ない場合には住民投票に付するという意味で、もっと周到な法制的な保障をしたい、こういうことでございますので、これであれば住民意思議会意思が背馳するということはまず考えられない、こういうふうに思っておるのでございます。
  15. 山田勇

    山田勇君 先般の学習院大学の教授でありました参考人恒松教授のほうからも、憲法上の問題はないのだ、法制上の問題は憲法違反ではないというような御見解だったと私は記憶しております。そこで、法制上のいろいろな問題等あるのは別としまして、ぼくたちしろうと考えでは、これだけ地域住民に対する大きな問題なんだからという気持ちがございます。ですから、県議会のほうで議決をしたといいますが、地域住民代表者である県議会議決があったのだからいいのだというのじゃなくて、しかしそのときには、府県合併問題は賛成であるとか反対であるとかいう意思表示というのはその当時にはぼくはなかったように思います。私のしろうと考えですから、それじゃ一々そういう行政上の問題があるたびにそういう地域住民に対してそれを問うのかという問題が出てきますが、この都道府県合併という大きな問題になりますと、ぼくは問うてもいいというふうな気持ちがあるわけです。それで、この問恒松さんなどに先日の参考会あと終りましてからお聞きした。これは一番いいのは、県議会を一度解散して、私は府県合併に対して賛成である、反対であるということをはっきり言って、そうしてもう一度議決されたらいかがですかというと、それが一番妥当だということをおっしゃっておりました。ぼくもそれが一番いいのじゃないか、この法律でいくならば、もう一度県議会の解散ということを考えて、そうしてやられてはいかがでしょうか。というのは、一番いいというわけなのは、一般住民投票というのは、恒松教授としてはもう一つ重く見てないということをはっきりと私にも言っておりました。というのは、討論とか公聴会というそういう制度というのは、一般住民投票した場合には語り合う場所というものがないというようなことをおっしゃっておりました。ですから一般住民投票がすべてが一番正しいものであるということは言い切れないということを私どもにもあとで申しておりましたけれども、そういうような問題があります。ですから、ぼくはそういうふうに県議会が一度解散されて、私は合併については賛成議員である、反対議員であるというようなことを、意思表示をはっきりさせるということも一つ方法であるように思います。  最後にもう一つ自治省としては地方自治の確立を第一義としてお考えのようですが、合併に伴う行政権の再配分、さらにそれに伴う財源の確保というような面で、今後どのような具体案があるのか、ここを詳しくお聞かせ願いたいと思うのです。
  16. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この合併特例法におきましては、この前も申し上げましたように、一つは、まあ国としての府県合併に対する基本的な考え方、つまりそれは、広域行政というものを処理するために府県合併が合理的、効果的なものであるということになるように、そういう合併の基本的な考え方を明らかにしているわけでございますが。そのあとは、合併手続の、民主的な手続の道を開くということと、あと合併に伴いますところの障害を排除するといいますか、国会議員選挙でありますとか、あるいは職員身分取り扱い、あるいは県会議員選挙関係、そういうものがずっと入っておりまして、そのほかには、交付税道路譲与税義務教育費国庫負担というものがございます。これは合併に伴いますときに不利にならないようにするということが一つ第一の考え方としてあります。それからその次には、合併に伴って臨時的に必要な経費というのは、しかしながらその中でも当然考えていかなければならないということは明らかにしておりますが、補助金交付地方債に対する特別な配慮というようなものについては、具体的にどの事業、どの事業ということではございませんで、一般的に国の協力措置というものが規定をしてあるのでございます。これは、実は合併を行ないました場合に、関係府県合併についてのいろんな考え方、新しい府県合併に対する構想というものが当然明らかにされるわけでございます。   〔理事熊谷太三郎退席委員長着席〕 その中には、府県実情によりましてそれぞれ内容が違うと思います。しかしながら、一つは、いずれにいたしましても、新しい県を一体として建設し、発展さしていくための施策というものが中心になっておるということは間違いないところだろうと思います。そこで、そういうものの内容としては、あるいは大規模な建設事業というものを行なうということを内容としておるもの、あるいはまた施設の統廃合その他の整備計画というものを一つの大きな柱にしておるもの、いろいろあるだろうと思いますが、具体的な問題は、やはり具体的な県の合併というものができてから、その中で計画の中に明らかにされる、そういうものが明らかにされます場合には、国としても、補助金起債等を通じまして協力をしていくという考え方、具体的なものが出て来ました場合に、その具体的な援助なり、協力なりというものがはっきりしてまいる。現在のところは、それが法制的には必らずしもはっきりしていないというのは、そうう事情があるからだというふうに御了解を願いたいのでございます。  それからまた、合併後におきますところの問題点、つまり合併をしたあとにおきまして、新しい広域府県ができてまいりました場合、さらに府県権限を移譲し、そして府県自治能力を強化するということがはっきりここではしていないという御指摘かと思いますが、その点につきましては、なおこれは合併後の問題をどう扱うかということにつきましては、国の出先機関でありますとか、公共的な団体統廃合整備とかいう点についての一般的な協力規定というものはございますが、それ以上のことはこの中でははっきりいたしておりません。これはやはり私どもとしては、府県合併というものはたいへんな問題でございますが、その合併ができ上がっていく過程におきまして、やはりそういう権限配分事務配分というようなものは、国、府県市町村を通じて、今後さらに整備をとげていく。そうして合併の実があがっていくように、これはぜひともさせなきゃならぬと考えております。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 私は、いままでの委員の皆さんとの重複をなるべく避けながら、一つ地方自治の区域の問題、一つ広域行政府県合併の問題、そして、さらに法案上の逐条若干の疑義についてお尋ねをしていきたいと思います。  まず、この都道府県合併特例法案を強力にプロモートした代表的人物といわれます元自治省事務次官、現在の衆議院議員奥野誠亮氏は、その府県合併促進法なる論文を作成するにあたって、今日、七十六年前のままの府県の区域は、拡大する社会経済圏の実情と合わず、不合理なものとなっていると考えられている、ということばをもって始めていらっしゃるわけです。こうした立論の基礎には、合理的な、適正な規模の府県のイメージがあるはずであります。昭和二十六年九月二十二日になされました地方行政調査委員会議行政事務配分に関する第二次勧告は、この府県の合理的な適正な規模というのがどのくらいかという問題をまっこうから大胆に取り上げていますが、それによって見ますと、「人口おおむね二百万を目途として、藩その他の沿革にとらわれず、文化的、経済的、社会的に密接な関係のある地域をもって区域とし、」とありますが、この勧告は政府にとってまだ生きておりますか、自治大臣
  18. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方行政調査委員会議の勧告につきましては、これは一つの勧告として、その後の行政事務配分、あるいは地方団体の再編成というものに非常に大きな影響を与えました。この勧告に基づいて、全部じゃございませんが、相当の措置が実現をされたのでございます。何さま時代が多少古くなっておりますから、現実の問題点との調整ということは必要だと思いますが、考え方としてはなお十分今日的な意味を持つ部分が少なくないと考えております。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 具体的に、人口おおむね二百万云云という結論が出てきた理由については、この資料の三ページから五ページに掲載をしていただいておりますので、地方自治体の区域が適正かどうか、合理的かどうかというメルクマールをどこに置いたらいいのかという私の基本的問題意識に立って、これを実は読んで見たのであります。しかるに、この地方行政調査委員会議のメルクマールの設定の仕方は、一つに、これ以下の人口の場合には、歳出に占める庁費の割合の問題、もう一つは、現存する県の人口規模別に見た人口と職員数の関係の問題、三つ目は、人口一人当たり行政費に占める一人当たり税収の割合の問題この三つの観点からの検討を通じて、どこらあたりの人口規模が最も能率的かという方法なのであります。この人口規模のみによって地方自治体の適正規模を設定するやり方について、どのように考えられておりますか。
  20. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いまの御指摘にありました調査委員会議行政の能率の範囲といいますか、能力の範囲といいますか、人口別の云々ということでございますが、私は人口ももちろん考慮に入れなくちゃなりませんが、やはり地域々々の実情、それから環境、いわゆる自然的、経済的、社会的な、基本的なそういうものを把握して考える必要がある。ただ人口だけでこれを判断または基本とする、人口のみに限った基本的な考えだけでは足りないのじゃないかと、こう考えております。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 かのリップマンも言っておりますように、地方自治の区域の性格は、そこで行使される個々の行政機能に応じて異なるものであります。しかるに、今日の府県の主たる行政機能は一体何であるか、それは地方自治法二条三項及び五項で明文例示をされていますが、財政構造から見ますと、警察、教育、公共事業で八〇%を占めております。人件費の構成も、教員、警官のみで八〇%を占めているのであります。ということは、当然少なくとも教育行政なり警察行政なり公共事業なりとの関係で、府県の規模の問題が検討されてしかるべきであります。ましてや、この教育行政と警察行政こそ、戦後の地方自治制度変革の中にあって、事務配分の点からいえば極限を示すとまでいわれた変化をこうむった行政であります。その後いわゆる逆コースを、この二つの行政を軸として進んでいるといわれているところでありますが、府県合併によって少なくともこの二つの行政がどのような影響をこうむるのですか、このような観点からの討議、検討はどこかで行なわれたわけですか。行なっていたのであったならば、概要を御説明いただきたいと思います。
  22. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 府県合併についてのまあ考え方として、人件費とか、経費の効率とか、あるいは各行政の分野における合理化の問題でありますとか、まあいろいろな観点からの検討ということは御指摘のとおり確かに必要だと思います。そういう点で、警察、教育、そういうものと府県の適正規模というようなものとの関係についていろいろ研究したものがあるかというお話しだと思いますが、私どもがいままで見ておりますところでは、警察、教育というものの個別な行政を中心にして適正規模をはかっておるというものは、これはそう申してはあれですが、あまりないように思います。と申しますのは、教育の中には二つもちろんございまして、高等学校以上の教育、まあそういうふうに分けるのがどうかわかりませんが、高等学校以上の教育行政関係といわゆる義務教育の関係、両方のものがあると思います。高等学校以上の行政につきましては、おおむね府県というものが大体管理責任者になっておるというものが多いだろうと思います。義務教育につきましては、市町村の教育関係ということで、人事的、給与的に府県というものが管理しているというかっこうでございます。この点での適正規模という問題は、議論すればそれぞれに出てくると思いますけれども、現在の何と申しますか、府県が持っておりますところの人口規模、府県が持っておりますところの面積というようなものとの対比で考えますと、相当大きな人口をかかえておるところがあり、大きな面積をかかえておる府県もあるわけでありますから、そういうものの中での教育行政、警察行政にもいろいろ問題があると思いますけれども、これは府県の適正規模というものを考える場合の大きなウエートであることは御指摘のとおりでありますが、現在のところ、それが現在の大きな規模を持つ府県においてたいへんな支障を生じておるかということになりますと、そこまでのことは考える必要がないというような検討程度でございまして、それ以上に詳しい検討をしておることは承知いたしておりません。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、この法律案出されたわけですからね、いま申し上げた警察行政なり教育行政が一体今後においてどうなっていくのかということは、この法律案との関係では非常に重要な部分だと私は思うのですよ。したがって、閣議は一定の討論をされて、たとえば文部大臣意見もあれば国家公安委員長意見もあればという形で、この法律案が提出をされるまでには当然論議をされておらなければならないと思うのです。論議をされずに出されておるということになれば、この法律案はそのことにおいて法律案たる要件を欠いておると思うのですよ。いかがですか。
  24. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) この合併特例法との関係の教育、警察の行政問題でございます。もちろんいずれの場合でも、教育行政、警察行政というものは地方自治団体といたしましても重要な行政の部分であります。ただ、いま和田さんから御指摘のありました府県合併後の教育行政、警察行政はどう変わっていくか、これは府県合併内容にもよることでございますが、いま御承知のとおり、行政局長もお答えいたしましたように、いまの地方公共団体の大きな行政区域としては、北海道とか東京都とかの自治体の教育、警察の行政の運営、私どもはいろいろこれに改善を加える必要は将来あると思いますが、現在におきましては、一応教育行政、警察行政も、その大きな区域の自治体におきましても一応今日軌道に乗った行政の運営をいたしております。したがって、府県合併になりまして、これがどのくらいの規模になるかわかりませんが、常識的に申しますと、おそらくいまの北海道や、これは地域の面積ですが、人口としては東京都、これより膨大な府県合併というものはいまさら……。これはちょっと常識的な想像でございますが、したがって、一応の想定でございますから、それは結果は待たなければわかりませんが、特に府県合併したからいままでの地方自治団体にないような特別な行政区域というものができるかというと、私は現在の人口また面積というものの一番大きいものに比較して、それだけの膨大な府県合併は容易に現実的に実現しないだろう。そうすれば、もちろんこれはいろいろ改善の方途を持たなければならない。なりませんが、特に府県合併特例法案が出たので、これに伴うて新しい警察行政、教育行政をこの時点でもって考えて、これに合うような行政の運営をせなくてはならぬという、いまさしあたっての私は心配はないのじゃないかと、こう考えております。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっといまのあれで、それじゃたとえば首都圏なら首都圏の構想ですね。あるいは東京都、千葉県、埼玉県というような形でのこれぐらいの広大ないわゆる合併というものは実現をしないだろう、そういうことですか。
  26. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) それはもちろん首都圏の合併というものがないということは私は断言いたしません。そうなりますと、これは常識論を私は言っているのでございますから、現実に、永遠に、いま御承知のとおり府県合併でなくて、いろいろ東京都を中心とする行政の機構の問題も出ておりますが、これはなかなか容易ならざることであると。そこで、まあ大体どの程度の規模のものが生まれてくるかといいますと、この特例法のねらいといいますか、いまの和田さんのお話のような首都圏が一本になるというようなところまで——まあこれは現実問題ですから、なるとかならぬとかと言うことは切りがないことですが、一応の想定の範囲内では、そこまではいかぬだろうと、こういうことを考えておるものですから、率直にお答えをしたわけなんです。  そこで、まあ首都圏全体一本になるというと、これは県という名前をつけていいかどうか、いま都となっておりますが、都の名前よりももっと、いわゆる前に言われた道州制みたいなふうに発展しやしないかと。そこまで——これは法律論とかあるいは何とか論じゃなくて、私は常識論を申し上げておるのですが、まあそういう段階の構想ではなくて、やはりその範囲内のことが現実的にあらわれるのじゃないかと、こう思うものですから、特別、府県合併があるからといって特に、いまこれと同時に警察行政、教育行政を基本的に改めていかなければならぬということは、いまのところは研究をいたしておりません。しかし、将来の必要に応じて、これは当然改善すべきことは必要でございますから、これはそのときにおいて当然これは調査、研究し、検討すべき問題だと考えるのでございます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 くどいようですが、ちょっと心配なんですよね。野田自治大臣の常識はわかりました。私の常識よりもちょっともう少し大きい常識のようです。ところが、この法律案が通りますとね、関東にしろ関西にしろ中部圏にしろ、そこの経済界の方々の、彼らの常識は、私がさっき設問したような形の常識があるわけですね。そういう形になってきた場合に、たとえば警察行政という問題について検討をせずに法律案が用意をされるということは、これは私は手落ちだと思うのです。今後検討されると言われますが、たいへんな手落ちじゃないかと思うのです。いかがですか。
  28. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) これは、いま和田さんのお話しのとおり、いろいろな構想がありましょう。私はまあ私なりの考え方で、これが当たっているか当たらぬかという議論は、これは結果を見なければわかりませんから、ここで申しませんが、そこで、やはりこの法案をつくりますにあたりましては、警察当局、文部当局と当然これは話し合っております。御承知のとおり、これはこういう画期的な合併案でございますから、ただ自治省だけの独自の考え方、独断でもってこのなにが、特例法案をつくるわけにはまいりませんで、相当教育問題でも警察問題でも関係のほうと話していることは事実でございますが、いまどういう案を持っているかというお話でございますから、私はいままあ東京都の地域でも、まあ人口ですが、北海道のあの面積の地域でも、一応の教育行政、警察行政を一応運営いたしております、もちろん改善の余地があるかないかということは、これは私は相当検討すべきことがあることは存じておりますが、そこでこの特例法と一緒に——その大事なことはわかっておりますが、特別、警察行政、教育行政についての案といいますか対案というものは現在は持ち合わせていませんが、これはその実態実態によっては当然検討しなくちゃならぬと、こうお答えする次第でございます。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 この法律案は、いわゆる十年間の時限立法ですよね。この十年間の時限立法というのは、世の中で言われるいわゆる七〇年代の時限立法です。七〇年代にわが国で起こるところのいろいろのことを、創造的に発展的に考えてみますと、たとえば東京や千葉や埼玉というような合併が可能になったというような条件の中で、横田に軍事基地がある、あるいは成田空港ができるというような状態が一県の中で起こるわけです。このことを、警察行政上どうなるのだということを考えずに七〇年代に適応する十年間の時限立法が出されるということは、たいへん不用意な話だと私は思うのです。そうじゃありませんか。これがもし閣議で論議がされずに出されているとするならば、この法律案を提案するところの要件というものは、そこでもう欠かれているたいへん非常識な提案だ、こういうふうに思います。
  30. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 先ほどお答えいたしましたとおり、閣議で論議はいたしませんでしたが、事務的には相当教育関係、警察関係とは、この法案を作成するときには相当事務的な打ち合わせをし、検討をいたしておるわけであります。いまの和田さんのおことばもよくわかりますが、これは大事なことでございますから、やはりその実態に沿うて十分検討していかなくちゃならぬと、こう思っております。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 行政局長、いま言われたように、事務段階レベルでの十分な検討がなされたということなんですが、そうすると、なされた概要というのはお持ちになっているのですね、それは大体資料として提出していただけますか。
  32. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この特例法案は、大臣申し上げましたように、これは関係各省といいますか、この府県行政に関連をしておりますところの、国の行政をつかさどっております所管の省とも、全部ほとんど関係のない省はないくらい関係がございますので、いずれのところとも協議は重ねております。協議は重ねておりますが、結果におきまして賛成だとか、格別に意見がないとかという回答を得ているのでございまして、その警察なり、例にあげられました教育なりということについて、文部当局あるいは警察当局がどういう検討をした結果、そういった異論はないという意見を出してきたかということにつきましては、私どもはその内容は持っておりません。ただ、そういうことでございますから、御心配のお話もございましたけれども、今後の府県合併というものに対応して、現在の教育行政、あるいは警察行政というものは十分対応し得るという考え方関係各省が持ちまして、その上で異存がないということの結論を私どものところによこしてくれたものと考えております。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 それはやはり、抽象的な答弁ではちょっと私、理解はできません。できないほうがあたりまえじゃないかと思います。そこで、大臣が述べられたように、十分な検討を加えていただくことをまず求めておきたいと思います。  次に進みますが、かのホワイト教授が、「行政学徒の研究を期待しつつある未開拓の分野は、行政上の区域の問題である。」と書いたのが、一九二六年のことでありました。そうして今日に至っても、地方団体の区域を決定するための合理的な基準はなお明確にされたとは私は言えないと思うのです。一般的に区域の合理化、適正化を考察の主題にするときに、一体地方自治とは何かということが当然問題になるのであります。この地方自治とは何かというきわめて自明の問題として処理されてきた事柄が、実は私は少しも自明ではないと思うのであります。日本国憲法第九十二条に言う「地方自治の本旨」ということばは、憲法制定当時においてもいろいろ論議をされました。結局結論が出なかったので、その実体は自明のことであろうという形で処理されたにすぎないのであります。そこで私は私なりに、地方自治とは一体何かという問題をこの法律案とともに考えてみました。こういう場合いつも手がかりになるのは、いま答弁に立っていらっしゃる長野行政局長が書かれたこの「逐条地方自治法」という分厚い大冊であります。長野さんはこの「逐条地方自治法」の冒頭でこのように述べられているのであります。「地方自治、あるいは地方自治の根底をなしている自治権とは何をいうものであるか。通常、地方自治とは、国家の内部において、国家とは別の人格を有する独立の地域団体の在存を認め、その地方における地方公共の事務を、その地域団体をして自主的に処理させることをいい、その地域団体の有する自主的な事務処理権能を自治権というものと解されている。」そして長野さんは、いわゆる地方自治固有権説と委託説とを紹介されたあとで、「もちろん、近代的な統一国家が成立する以前に、部落や村落を中心として自治が行なわれていたという歴史的あるいは社会的事実を否定し去ることはできないが、近代国家における地方自治制度は国法によってはじめてその存立を認められるものであり、したがって、地方公共団体の自治権は国家の統治権にその源を発しているものといわなければならない。」と述べて自己の立場を明確にされているのでありますが、私もこの意見に必ずしも反対ではありません。ただ私は、さんのこのことばの中に、「近代的な統一国家が成立する以前に、部落や村落を中心として自治が行なわれていたという歴史的あるいは社会的事実を否定し去ることはできない」という部分のほう、この部分のほうに重点を置いた考えであります。長野さんが言われているように、「地方公共団体の自治権は国家の統治権にその源を発している」ということは、近代的中央集権国家における地方自治である限りそのとおりだと考えますけれども、「近代国家における地方自治制度は国法によってはじめてその存立を認められるもので」あるということは私は間違いであると思うのです。これは比較憲法の上からも明らかでありまして、むしろ地方自治の国といわれ、民主的地方自治を持つ国々において、憲法上ほとんどその規定を持たないという事実を長野さんはどのようにお考えになりますか。イギリスは成文憲法典を持たないのでありますから別としても、スイス、アメリカなど地方自治の確固たる基礎を持っている国々においては、憲法で明確な規定を持たないのであって、これらの国々に近い民主的地方自治を持つ北欧諸国において、またほとんどその規定が設けられていないにもかかわらず、これらの国々に厳然たる地方自治の存することは疑う余地がありません。一九六一年に私もこの地方を回ってそのことを痛感いたしました。その点長野行政局長はどのようにお考えになりますか。
  34. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方自治というものをどういうふうに考えるかということは、いろんな議論が行なわれるわけでございます。また同時に、もちろん歴史的なあるいは沿革的な事情というものを無視してその国々の地方自治というものを考えるわけにもまいらないと思います。ただ結局しかし、そうは言いましても、近代国家におきましては、やはりことばは変なことばになりますが、地方自治というものはやはり法律社会におきましては国家の創造物であって、天然自然にできあがったものではないという説明だけが法理論的な説明として認められるのではないか。これが近代国家における法的な説明としては最小限度要求をされるのではなかろうか、こういうふうに思われるわけでございます。したがいまして、結局地方自治というものが国家を離れて存在するという考え方は、もはや近代の国家の法理論の中からは出てこない。そういう意味で、地方自治も国家の創造物であるという一つの制約を脱することができない、こういうふうに考えざるを得ないということだと思うのであります。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 さきに延べた長野行政局長のことばの次に、次のように続いているんですよ。いま言われたことを頭に置きながら、「このように地方自治制度を国家が確立し、その保障につとめようとすることは、歴史的社会的事情に基因することもさることながら、何よりも国家の統治組織として国家的にも有益かつ必要なものと認められるからにほかならない。」ということばを、実はいま答弁にあったことともひっくるめて、私の考え方に立って言い直してみれば、このような地方自治制度を国家が確立をし、その保障につとめようとすることが、歴史的社会的事情を踏まえて、それらの事情を何よりも国家の統治組織として再編成していくことにほかならないということであるのじゃないだろうか。ともあれ、私がここで言いたかったことは、地方自治の区域の合理化とか適正化とかいったところで、まさにそれが地方自治の区域である限りですよ、端緒的には歴史的に形成されたものでありますから、それは人為的、便宜的な行政区画ではないということです。そしてその事情は、おのずからそこにいわゆる合理化や適正化に限定的な制約を加えるのであろうということでありましょう。  明治二十三年に確定したといわれる府県制が、資料の五五ページから六二ページを見せていただきましたけれども、ここに示されていますように徳川時代の藩に基礎を置くものであり、戦後の少なくとも憲法的理論においては完全自治体として生まれ変わった県の区域が、戦前からの府県の区域を踏襲したに過ぎないということは、地方自治の区域の合理化や適正化というこのことにとって存在をするこの限定的な制約を私は意味しているに過ぎないと思うのです。したがって、この制約をのがれて、初めて純粋に理論的に府県制の改革の問題を俎上に乗せたのがいわば戦後状況であります。昭和二十六年のリッジウエー声明に基づく政令諮問委員会であったことは、私は今日考えてみるときわめて象徴的なことであった。  以上のような前提の上に立って実は質問を続行したいんですが、二十六年のあの政令諮問委員会に端を発した都道府県の区域にかかわる改革論議は、二十八年の第一次地方制度調査会答申において、府県の規模の合理化については、その実態に即応し、道州制度の問題とあわせて考慮する、そういうものとなったわけです。その内容について調査審議を行なった第四次地方制度調査会は、資料の八ページから一二ページに示されていますように、府県制度の根本的改革を正面から取り上げる、府県のあるべき改革案として、三十二年地方案と称する道州制案答申をしました。しかるに最近に至っては、三十八年の第九次地方制度調査会答申にしろ三十九年の臨時行政調査会答申にしろ、行政事務の再配分広域行政体制の整備という形で問題を提起をしている。この都道府県合併特例法に至る最終結論としては、四十年に第十次地方制度調査会によって、いわば手続を中心とした府県合併に関する答申がなされたわけでしょう。このような地方制度調査会等の答申の変転は、それなりに背景があったはずであります。その背景も含めて、答申の変転を一体どう説明をするのか、この都道府県合併特例法が結論をされるのか、自治大臣から御説明を願いたいと思います。
  36. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) これは逐次調査会の調査事項、結論の答申になっておりますので、一応事務当局から御説明いたします。
  37. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 戦後におきまして、地方行政の分野におきまして、特に府県行政というものについての変化が、戦前戦後を通じて一番地方行政での変革としては大きい変革であったわけでございます。といいますと、戦前の府県というものは、府県制というもとにおきましては、いわゆる地方自治体、地方団体としての府県というものを指定をし、それを設置しておることになっておるわけでございます。府県の執行機関というものは、いわゆる普通地方行政官庁でありますところの地方長官以下の職員をもって府県の執行機関というものを構成する。こういうことでございまして、言ってみれば半分官庁であり、半分自治体であるというような要素としての府県が、戦後において完全な自治体に変化を遂げたわけでございます。この点で、戦後におきまして、従来のような府県行政内容を、国との関係におきましてそのまま府県として担当をしていくことができるかどうかというようないろいろな議論が、その当時の状況を背景にいたしまして起こりました。つまり言ってみれば、府県制というものが一番大きく変化をいたしましたと同時に、国政との関係におきまして、その合理化なりその改革なりというものも非常に大きく全面的に打ち出されてきたわけでございます。その中での内容の大きなものは、先ほどもお話ありました教育とか警察とか、一つ府県制の改革を迫る大きな問題でもあると思います。あるいは食糧行政とか、そういうものもございました。そこで、戦後におきましての府県行政についての改革論が必ず出てきておるわけでございますが、それが、地方自治というものを推進していくというようなたてまえからの府県行政についての考え方というものが出てまいりましたのが、地方行政調査委員会議行政事務配分に関する勧告ということから、はっきりそういう考え方が出てきたように思っております。しかし、その後の警察行政あるいは教育行政あるいは国の出先機関といったようなものを含めましての合理化という問題はなお残っておりまして、地方制度調査会は累次にわたってそういう検討をしてきたというかっこうでございます。一時は、御承知のように地方制という問題の結論を、非常に少数ではございますが、一応地方制度調査会意見として出したこともございます。しかしこれはやはり問題がきわめて重大であり、ということと同時に、やはり一面の行政改革としての考え方としては、やはり地方自治の充実強化という線で、つまり行政事務の再配分ということを基本にした行政改革というようなもので考えていくという一つの強い考え方がずっと続いてきて今日に至っておるというふうにお考え願えればよかろうかと思います。  その途中における地方制というものはどういう発想からでてきたかということが問題になるといえばなるわけでございます。これは、やはり戦後におけるいろいろな行政というものが地方と国との間において非常な変化を遂げてまいっておりまして、つまり言ってみれば、従前は、普通地方行政官庁としての地方長官という地位は非常に強大な地位でございましたが、同時にそれはほとんどの地方行政を総合的に所管しておったという体制が整えられておったわけでございますけれども、戦後におきましては、そういうことでなくて、自治体としての民選知事といいますか、公選知事、首長のもとにおきまして、国政をそこまで知事をして所管させることは適当でないというような議論、あるいはまた社会経済の変転に伴う行政広域化的要請というような議論というようなもので、これはある面、統制経済からの関連というものもあるのでございますが、国の出先機関というものが非常に乱設をされました。そこで、地方行政におけるところの行政全体の総合化ということが非常に困難な時代を迎えてきたというようなことから、そういう発想が、むしろ地方制というものによってもう一度地方地方におけるところの行政広域化を整えながら、同時に行政の総合化、計画化をはかっていくということにしたいというような、まあ行政の効率化ということをむしろ中心にしたような考え方というものが、国との多少の妥協もございましょうが、地方制というものを生んだ一つの背景であったと思います。  しかしその後における地方制度改革というものは、やはりそういうことではなくて、自治を充実するという方向での改革というものを行政事務配分というものを中心にして行なっていくというような考え方がずっと一貫してとられてきておるというふうにお考えいただいていいのじゃないかと思うわけでございます。その一つのあらわれ方が、その後におきますところの事務配分、財源配分、そういうことで考えられておりますが、ただその途中におきますところの臨時行政調査会答申は、この地方制を答申しました地方制度調査会と思想的背景が同じだというわけではないとは思いますけれども、やや総合的な行政の効果というようなものを中心にして臨時行政調査会行政改革というものを、これは国のサイドからの発想という点からの制約がございますから無理もないわけでございますが、そういう点からの臨時行政調査会答申というものが出ていることも、これは御指摘のとおりであります。  地方制度調査会といたしましては、自乗一貫して現在の府県市町村という二重の構造というものを維持しながら、その自治能力の拡大強化をはかっていくという方向を、現実の社会経済の変化に対応し得るような制度としてどういうふうに考えていくかということの検討に自来一貫しておるというふうに考えていただけばよろしいのじゃないか、こう思っておるのでございます。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 私は先に述べましたように、地方自治の区域の問題というのは、それがまさに地方自治の区域の問題として成り立つ限り、地方自治の本質からして純粋に理論的に適正な規模だとか合理的な規模だとかいうものを設定し得るものではないと実は思うのでございます。それをあえてやろうとしてきたところに、真正面からやったかやらなかったか別として、人々の発想の上にそういう面があったところに、私は従来の国のレベルでの調査会の観念性があったと思うのであります。地方制度調査会が、あるときにはラジカルに道州制まがいの地方案を出すかと思えば、その実現が不可能となるや、今度は現状妥協的に自主合併などという方式を答申をする。この辺の論理の一貫性の欠除は、さっき述べた観念性に由来をすると思うのであります。私はこの観念性が、地方自治体を単なる行政管区としてしか見ない見方に通ずるがゆえに、重視するのでありますが、この点については後ほど触れたいと思います。私は地方自治の区域の問題というのは、それが単なる人為的な行政区域の問題ではないがゆえに、純理論的にはその合理性なり適正さなりを論ずることができないということをいま述べたのですけれども、にもかかわらず、各近代国家共通に地方自治の区域の問題が常に問題になっておることは認めますが、その際、まず何よりも確認をしておかなければならないことは、地方自治の区域の問題は、その区域において行使される行政機構との関係において、立体的に考察されなければならないということだろうと思うのです。イギリスの地方境界委員会が一九四八年に公表をした第二回報告書が、「区域の問題は密接に事務の再配分のそれと結合している。」と述べたのは、私はそういう意味であると理解をいたします。したがって、西ヨーロッパなどの場合には、地方自治の区域の問題の本質というのは、明確に地方分権の再編成の一環であったのですよ。しかるに、日本の場合は一体どうなのか。地方行政調査委員会議の設置法の提案理由の説明は、私は問題の所在を一番よく指摘しているのだとこう思う。それはこう言っています。「今日までの地方自治制度の改革によりほぼその成果をあげ得ましたのは、主として地方公共団体の機構及び運営に関する部面における民主化の徹底についてでありまして、地方公共団体処理すべき自治事務及びその裏付となるべき財源の賦与等の部面につきましては、遺憾ながら未だ十分な成績を収めておらず、新憲法の理想と致しまする地方分権の確立は、まだまだ不徹底のそしりをまぬがれない状態にあるのであります。」「政府はこの勧告の趣旨を尊重致しまして、思い切って地方分権を断行し、地方自治を充実強化して国政の民主化を推進する見地から、地方自治を基底とする市町村都道府県及び国相互間の事務配分の調整等に関する計画につき調査立案し、その結果を内閣及び内閣を経由して国会に勧告する任務及び権限を有する地方行政調査委員会議を設置することとし、これに関する法律案を今期国会に提案いたすこととしたのであります。」何はともあれまず地方分権を確立する。そのために行政事務の再配分を断行するという問題意識はどこにいってしまったのですか。この問題意識は、何も古く地方行政調査委員会議設置当時だけのものではないはずであります。資料の三二ページを見て下さい。第九次地方制度調査会答申にこう書いてあるではありませんか。「この行政の民主的処理と総合的処理を確保するためには、国、都道府県及び市町村間の事務配分に当って、国よりも地方公共団体なかでも市町村を優先させるべきである。このことは、同時に日本国憲法及び地方自治法の精神に合致する。地方行政調査委員会議は、かつて「行政事務配分に関する勧告」を行なったが、これも同様な考え方に立っていた。」第九次地方制度調査会答申のうち、この部分を資料の四二ページで見てみます。「都道、府県についても、その規模拡大の必要性が各方面から指摘されてきたが、最近一部の地域において府県合併を提唱する動きが出てきている。当調査会は、社会的、経済的に密接な関係にある都道府県が自主的に合併することは、都道府県広域地方公共団体としての行政能力を充実強化することになるので望ましいと考え、その実現を期待する。」こういうこの部分だけは尊重して、行政事務配分の具体的提言を何も聞いていないのは一体どうしたことなんですか。
  39. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 前に申し上げましたように、この行政事務の再配分というものは、一貫した考え方地方制度調査会でとられたことはそのとおりでございまして、この答申の線に沿いまして一向にとられてないとおっしゃいますけれども自治省としましては、その後国の行政改革等の問題が出てまいりますたびに、実は地方制度調査会答申の基本線というものを軸にいたしまして、改革の推進を、国、地方を通じた行政改革として取り上げていくべきであるというようなことは、累次にわたって強く要請をしておりますし、現在行政改革本部におきましても、その線に沿った検討が行なわれております。  また、国会のたびごとに地方行政に関しますところの諸法制についての改正がございますが、そういう場合にも、自治省としましては、この地方制度調査会答申あるいは臨時行政調査会答申にございますところの行政事務の再配分というものに関係のある改正部分につきましては、この際に実現方を強く要請をいたしまして、逐次できる限りのことの実現ができるように努力はいたしておるつもりでございます。そのあらわれ方が非常にはかばかしくないという御指摘は御指摘として受けなければならない面もあると思いますけれども自治省として、この行政事務配分の勧告、答申というものを決してないがしろにしておるというわけじゃございません。地方行政の改善のために考えております基本的な立場は、この行政事務の再配分に関する勧告でございます。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 さっき、「行政事務配分の問題は、地方財政の確立と不可分のうらはらの関係にあり、かつこの問題を背景とする委任事務、特に機関委任事務の役割は単にプロイセンドイツ型のシステムであるばかりでなく、戦前の普選下の政党政治を遂に太平洋戦争への突入に誘導していった内政の基本線であったという意味から見ても、現在の時点で再びこの方式が唱道されることは見のがすことができない」という論文を目にしました。私は並行的にさらにこれからの論議の中で、いま読み上げた部分の問題も頭に入れながら論議を展開いたしますが、長野行政局長は、そう言われるならば、陸運事務所の問題は一体どうなっています。地方事務官制の廃止の問題は一体どうなっています。
  41. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方事務官問題につきましても、現在なお最終結論には達しておりませんけれども関係省間で現在も折衝を続けております。まあ労働行政につきましては、多少いろんな問題の処理が、この四月の時期におきまして、なお見通しがつかないということでございましたので、さらに検討するということで、関係省の間の話し合いをそういう形でなお持っておりますが、運輸行政につきましては、これからの間にひとつぜひとも片づけたいということで、なお折衝中でございます。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 この問題、まあ後ほどもう少し突っ込みますが、大臣時間があるようですから、大臣に午前中最後に質問しておきますが、自治大臣は、先日原田委員の質問に答えて、この自主的合併制度の突破口に、懸案の行政事務配分の問題も解決したいという趣旨のことを言われたのですよ。いま長野行政局長努力しております、努力しておりますで、努力はたいへんな努力なんで、二十年たっても努力なんですよ。これじゃ話にならぬのですね。野田自治大臣は、臨時国会でありましたか、この国会の冒頭でありましたか、私の質問に答えて、私の在任中には目鼻をつけますという答弁をされているのですが、地方自治の区域の問題をこの行政機構との関係で立体的にとらえて、行政機能の問題としては一体的なものである。したがって両者は切り離すべきものでないというのが私の意見です。その点どうですか。
  43. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私もこの区域の問題は、先ほど冒頭申し上げましたとおり、人口の問題もありますが、ただ一つの規格と申しますか、地方自治の歴史的な事実と、それから自然的な環境——もちろん経済、社会の問題もありますが、これを一つの規模をきめてその型にぶち込むというような考え方は当たらないということを、冒頭私も申しておいたのですが、やはり今度はその区域を立体的にというお話でございますが、私は大体、和田さんの御意見は一応そのとおりだということ、非常に理解をいたします。それはまだ私の最後の見解を申しませんけれども、非常に理解いたします。  それから行政面のことでございますが、これもありのまま申し上げます。労働行政と運輸行政が、御承知のとおりに行革の中に入ってまいりまして、もうまさに実現するかと思っておりました。当時、閣議でもこの問題が取り上げられまして、私は強く主張いたしましてその実現方を希望いたしたのでございます。当時閣議でだれだれがどう言われたということはお許し願いたいのですが、相当意欲的な、みんなひとつこれだけは実行すべきだという空気が盛り上がってまいりました。その問に、特に労働行政は、もう一応の役所間の話し合いは煮詰まりつつあります。いろいろまあ途中で御意見も、これは別に、いろいろの方がどういう意見を出している、これは役所以外の御意見も出てまいりますし、非常に実はあのときに、打ち明けますと、どの党がどうと、そんなことじゃございません。私は個人のことはあまり触れたくないのですが、いろんな問題が起こってまいりまして、一応私も踏み切って声明いたしておりました。労働省でも相当踏み切って、まあ事務的な少し困難がありましたけれども、出てまいりましたけれども、多少政治的な意味がございまして、これはどの党がどうだということだけはお許し願いたいと思います。しかし、私は、その当時も申しましたとおり、私の在任中にどうしてもこれだけは片づけたい。  それから運輸行政につきましても、これは運輸当局のほうで、また労働行政とは違って、事務的にいろいろのものが、注文がついたりなんかしております。基本的には一応事務当局も了解していることは、これは事実でございます。そこで今度は、次にはどこまで勇気を持ってやるか、先般行革におきましても、行政監理委員長も、まあこの点を指摘しまして、何とかひとつ、われわれのほうで一応案をつくったのだ。それに向かってひとつ、実現をしたいということにいっておりまして、私は、まあこれが、いわゆる和田さんの御指摘されることは、まことにわれわれは恐縮に思っております、そのとおりであります、実現しないことは。しかし、いろんな事情と言いますか、政治的な理由も加わりましたのですが、もうこれは時間の問題にまで迫っているとまで言える。しかし、いま申します運輸行政で少し事務的に残されているということだけ申し添えておかないといけませんが、相当、もうこれまでまいりましたから、最後のふんばりをしたい。どうしても、まだこんなことで事務分担が、一部でございますが、まあいろんな問題が残されていると思いますけれども、ひとつがんばりたいと、こう思っております。
  44. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      —————・—————    午後一時三十三分開会
  45. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、都道府県合併特例法案を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 地方事務官制の先ほど答弁がなかったのですが、厚生省関係の進行状態というのは一体どういうことになりますか。   〔委員長退席理事熊谷太三郎着席
  47. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 厚生省の関係につきましては、医療制度の抜本的な改革、これの改革の見通しがつきましたときにその一環として解決をしていくということが目前の問題として迫っておるというようなことがございまして、昨年関係省庁の間で行革本部を中心にいたしまして御相談がございましたときに、その関係はそういう根本改正の一環として解決をするということで考えるのが一番適当であるという結論に達しまして、運輸省、労働省の関係は、行管長官と各大臣と自治大臣との間で一応の覚え書きの基本的なものができ上がりましたが、厚生省の関係につきましては、そういう意味での改革ができますまで見送ろうということに相なっております。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 厚生省官房長見えていると思うんですが、厚生省の考え方を承っておきたいんですけれども
  49. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 社会保険関係地方事務官の問題につきましては、いろいろの経緯がございましたけれども、ただいま検討中の医療保険制度の抜本改正にも関連する問題でございますので、抜本改正の具体的内容との意味合いにおいて最終的に結論を出すということになっております。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 いつごろまでに出るんですか。
  51. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 抜本改正につきましては、御案内のように、早急に結論を求められておりまして、今国会に御提案いたしております特例法の延長期間二年ということになっております関係からも、その期間内にはぜひとも結論を出すことになるわけでございますので、一応その辺が一つのめどになろうかと思います。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 御存じのとおり、特例法の延長の期限は二年で、この前のときだってその二年がめどであったわけですね。そうすると、この二年間のうちにはできなかった、内閣総理大臣が本会議で異例なわびを入れる、こういう形になっているわけですね。したがって、二年がめどというその二年間の信憑性というのは、今日まさにそのほうが正当性を持っているくらいのものなんですね。よって、具体的にどうして作業ができないのか、医療制度の問題と公務員制度の問題はなぜそんなにかかわらなければならないのか、地方自治法規定に基づいてその主要なる部分というものは先行されて解決をしたって決しておかしくない、いかがですか。
  53. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 抜本改正の中身は非常に広範にわたるわけで、その内容につきましてもいろいろと意見のあるところでございますが、たとえば社会保険の分野だけ見ましても、地域、職域の保険をどういうふうに編成し直すかというような問題がございますので、当然に現在の健康保険あるいは国民健康保険がどういうふうになるか、そういう問題もからんでまいりまして、したがいまして、当然にその社会保険の事務を担当する機構もそれに応じてどのように編成されることになるかということも考えなければなりませんので、ただいま申し上げましたように、一応抜本改正の最終結論を待ちまして具体的な機構についても結論を出したい、このように考えているわけであります。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 やっぱり二年間もただし書きまでつけておかれてきて、それである意味では見通しのない状態の答弁でこれは推移するということでは私はならないと思うのです。したがって、二年間が医療制度考えるにあたっての一つの基準だとすれば、その中で地方事務官の問題については一体それらが結論づけられなければ結論することができないということではなくて、少なくとも公務員が、地方事務官の職員が今日置かれているところの実情というものと要求というものを端的にくみ上げて、そして解決をするということが好ましいと思うのですよね。どうですか、できませんか。
  55. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) まあ、現在の地方事務官、いろいろ問題があるわけでございまして、その一つ地方公務員との待遇の均衡の問題等もあろうかと思いますけれども、まあ抜本改正の問題と切り離してという御意見も御意見としてはごもっともと思いますけれども、私どものほうはやはり、ただいま申し上げましたように、抜本の内容が非常に広範多岐、かつ各方面の利害も対立しているような情勢でございますので、その間の推移を待って最終的に結論を出したいという考えでございます。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 この趣旨に基づいて、本来それでは地方公務員であるということはお認めになりますか。
  57. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 御質問の趣旨がよくあるいはのみ込めない答弁になるかもしれませんけれども地方事務官の経緯につきましては、まあ私必ずしも明るくございませんけれども、いずれにしましても、現在の社会保険を前提として全国的、画一的な行政を行なう上においては、国家公務員としてのそういう制度の必要性というものはあるのではないかというふうに考えております。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 地方自治法附則第八条の法文の解釈というのは、いわゆる地方事務官というのは本来地方公務員であるというそのものについては、あなたはお認めになりますか。
  59. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) どうもたいへんあまり法律的なものはよくわからないので恐縮でございますけれども、本来的に地方公務員というものかどうか、たいへん恐縮でございますけれども、私法律の読み方としてどうもはっきり断言できかねます。的確なお答えにあるいはならないかとも思いますが、やはりいわゆる現在の地方事務官というものは、その職務の特殊性からこのような取り扱いをしておるので、当然にこれは地方公務員であるという趣旨ということになるかどうかについてはやはり問題があるんではなかろうか。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 これは長い国会の論議を通じて、まあ本来的には地方公務員であるということは認められてきたわけです。これは読んで見たところで、「当分の間、なお、これを官吏とする。」というふうにしてあるんであって、主たる者は都道府県職員ですから、したがって本来的にはこれは都道府県職員である。だれが見てもそうでしょう。  自治大臣、もうこれは聞くまでもないのですが、これは前に私の質問に対する答弁で、第八条の事務職員都道府県職員であるということについては回答をいただいているんですが、いま厚生省の側で明確な答弁がないもんですから、そのことは間違いないですね、第八条に関する。
  61. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方自治法に書いておりますのは、附則第八条におきまして、御指摘のとおり、「政令で定める事務に従事する都道府県職員は、第百七十二条、第百七十三条及び第百七十五条の規定にかかわらず、当分の間、なお、これを官吏とする。」という規定でございます。したがいまして、その職員身分は国家公務員である。官吏というのは古い用語でございますが、国家公務員であるということでございますが、その職員のあり方と申しますか、それはまあ、この法文の意味は少し矛盾したような考え方になっておりますが、法文の趣旨を合理的な考え方考えてみますと、その職は府県の職である——少なくとも府県の職である。その職に従事している職員身分が国家公務員である、こういうことをあらわしているということに言えると思います。したがいまして、まあ自治省といたしましては、この関係事務につきましても、これは経過的な措置として、こういう特殊性というものは考えられたかもしれませんけれども、元来こういう社会保険行政に従事する職員地方公務員に切りかえることは当然考えられていいのじゃないかという考え方をとっております。ただ、この「当分の間官吏とする」ものをどう変えるかというときに、従事する事務についてもどうするかという問題を含めた考え方がこの表現になっておるのだというのが、おそらくこの場合でございますと厚生省なら厚生省のお考えの中にはあるように、私どもはいままで折衝をいたしております。まあ法文の解釈ということになりますと、多少法文がその点に不明確な点もありますが、その職は、この法文から見ますと、府県の職だということはどうも言ってよろしいのじゃなかろうか、こう考えております。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 いま後段強調されて答弁されたその職は府県のというくだりですね、厚生省の側はそのままお認めになりますか。
  63. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 解釈上の問題としてあるいはそのようになるかもしれませんが、私ども考えは、いずれにしても都道府県はそのような特殊な職務を都道府県の職としておること自体が問題である、そういう態度でございますので、御了承願います。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 そういう特殊な職を都道府県のものにしておくこと自身が問題であるという厚生省のお考えだとすれば、そうすると、厚生省はそういうお考えをお持ちになっておる限りにおいては、医療制度の抜本的な改革がなくても、本来的にはそのことはおかしいのだという考え方の上に立って検討が進められておる、こういう理解になりますから、あなたの先ほど来答弁されておるように、二年間のうちに医療制度のこの改革がなければこの問題については結論づけることができないのだという論法にはならないわけですよ、いかがです。
  65. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 先ほど申し上げましたように、この問題の最終的結論は、前大臣当時、関係大臣お集まりの際に、一応地方事務官については廃止の方向で結論を出すということになっておりまして、私どもそのように承知して、最終的な具体的結論は抜本との関連で決着をつけるという考えでございますけれども地方事務官を廃止した後の取り扱いはどうかということになるわけでございますけれども、これにつきましては、もちろん最終結論は、先ほど申したとおりでございますけれども、現段階におきまして、私ども考え方としましては、都道府県のほうに移すという方向は事柄の、職務の性格から言っても問題があるのではないかということでございます。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 事柄の、職務の性格からいっても都道府県に移すことが問題があるのではないかという前提がある、その前提に基づいていろいろなことが考えられていく、こういうことになっていきますと、医療制度の改革なんという抜本的なものを待たなくったって、厚生省の側は現時点においてすでにこの地方事務制度そのものに対して地方に移していくという考え方はお持ちにならない。地方に移していく考え方はお持ちにならなければ、何にするのだということが必然的にいろいろな考え方があるでしょう。たとえば公社の職員にしてしまうとか、国家公務員にしてしまうのだとか、何かのお考え方がなければそういうことにならぬわけでしょう、それはどういうことですか。
  67. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) ただいま先生御指摘の二つの案が考えられるわけでございますが、それらにつきまして抜本とのからみにおいていまだ最終的結論は出し得ないという、大まかに言いまして、そういう考えでございます。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 各省の責任者の集まりでもって、地方事務制度はなくするといういわゆる結論を出された。その地方事務制度のいわゆる身分は、附則第八条によってきまっておる。その地方事務制度をなくするということになったならば、この第八条に基づいて都道府県職員に一たんは返る、こうなるのでしょう。地方事務制度はなくするという決定をされたとたんにここを改正をしてもらって、そうして本来的には一ぺん個々の都道府県職員に返る、法律上はそうなるでしょう。そのことが、いまあなたのさっきからのいろいろ答弁を総合すれば、先行してできるのじゃないかと私は言いたい。ここに一ぺんお返しなさい。
  69. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 先生のようなお考えも当然あろうかと思いますけれども、私どもは、先ほど来申し上げておりますように、この職務そのものをいまの段階でどのようにとらえるかが問題だという態度でございますので、いずれにしましても、地方事務官という制度が廃止されるならば、それをその時点でどのような制度のものとして改正するかという立場で考えております。御了承願いたいと思います。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 地方事務制度が廃止をされたその時点では、これに基づいて都道府県職員になるのでしょう。その後その都道府県職員をどうするかということは別の問題でして。
  71. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 何ら他の手当てをすることなく、このままの形においていわゆる地方事務制度を廃止いたしますと、和田先生御指摘のようなことになると思うのでありますけれども、私どもはその廃止するということイコールこの取り扱いをどのような制度でやるかという結論が同時に解決される時期であるというふうに考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 それだから、何かの手だてをすれば違ったことになるのだけれども、手だてをしない限りはその時点においては都道府県職員である、そういう答弁になりますね。本来的にこの法律からいえば都道府県職員である、こう理解してよろしいですね。
  73. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) そのようなことになろうかと考えます。   〔理事熊谷太三郎退席委員長着席
  74. 和田静夫

    和田静夫君 そういうことになるわけでありますから、そういう趣旨に基づいて、大臣自治省の側がやはり強く主張をされるべきだと思うのです。それも二十年以上たっているのですからね。こういう状態というものは、やっぱり放置できることではありません。  で、大臣は約束されていますから、任期中にやられるということで。これができなければ、大臣、自治大臣をやめてもらっては困るわけですから、ひとつ必ずいま言った趣旨に基づいてやり通すようにお願いできますか。
  75. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 地方事務官廃止の問題は、いまいろいろ質問応答がありましたことはわかっておりますが、自治省としましては、もう繰り返し申しますように、地方事務官廃止に向かって強く要望し、また、厚生省は別として、他省からも具体案が出ております、御承知のとおり。私、任期中、できるだけ最善の努力をしたいと、ほんとうにそう思っております。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 全国知事会編の「府県政白書」は、「事務配分の現状を見ると、府県がその地位を活用するために必要な権限が与えられているわけではなく、国にかなりの権限が留保されているために、府県行政の総合性が損われる場合が少なくない。一方、府県の範囲で完結する行政について国に権限が留保されているため住民が不便を蒙る例も少なくない。」と一七ページで述べています。それで、幾つかの例をあげていますが、その一つ一つについて各省のお考え方をお尋ねいたします。  まず、厚生省ですが、「府県政白書」は、「府県単位の社会福祉法人については、その設立申請に関する調査や設立後の監督は府県が行なっているにもかかわらず、厚生大臣が形式的な認可権をもっているために、総合行政の見地から問題があり、」としていますが、この点について厚生省はどのようにお考えになりますか。
  77. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 社会福祉法人制度は、戦後の新しい立法である社会福祉事業基本法に基づいて設けられた法人でございまして、かなり高度の広域性と申しますか、そういうものが要求されます関係上、特に、一府県単位のものでありましても、設立認可はすべて大臣権限といたしております。現段階におきましては、したがって、これを直ちにここに書かれておりますようなことで改正の必要があるかどうかについては問題があるところでありますけれども、ただ今後の方向としまして、かなりの数の社会福祉法人が実際に健全に運営されておりますので、将来の方向としては、一つの検討事項にはなろうかと存じます。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 労働大臣官房長が急がれるようですから、労働省、ちょっと飛びますが、「府県政白書」で実はこう言っているのです。「職業安定行政は、地域住民の生活、地域の産業と密接なつながりをもつものであり、実質的には、学校教育行政や中小企業行政との関連において実施されているのであるから、国の地方出先機関である公共職業安定所で処理していることは適当ではない。」、この点について労働省はどうお考えになりますか。
  79. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) ただいま御指摘の職業安定行政につきましては、職業安定法によりまして求人者及び求職者を国の組織によって結合させるということが狭義の職業紹介のねらいでございまして、労働市場が現実には全国的な広がりを持っておりますので、国が職業紹介について基本的な義務を持つという法のたてまえから、それを十分達成するためには、全国的な組織を持つ国の機関で職業紹介事業の基本的な業務を行なうことが適当であろうというふうに考えております。  なお、広く職業安定行政全体は、単に狭義の職業紹介ばかりでございません、いろいろ失業対策事業その他もございまして、それらは都道府県を通じて行なうというようなことに相なっておりますので、その点、職業安定行政のうちの特に紹介の活動を安定所がやる、こういうたてまえになっておりますところを御了解いただきたいと思います。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 この「府県政白書」の労働省の指摘に対しての労働省のいまの見解について、自治大臣、いかにお考えになりますか。
  81. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 職業安定行政につきましては、職業安定行政広域的な行政の必要ということは、労働省の主張される点は、確かに一つはそのとおりだと思います。しかし、同時にまた、この行政が、一面学校教育とも関係をし、一面地域の産業におけるところの雇用の需給なり何なりというものとも大いに関係をし、その他、人を対象とする行政でございますから、あらゆる地方行政の各分野と密接に関係を持っておるわけでございます。したがいまして、広域行政という点だけからものを考えるということだけではなくて、むしろその面では、職業安定行政というものが、広く雇用対策といいますか、雇用の促進なり雇用の確保というような広い観点から考えてまいりますと、教育なり、産業なり、衛生なり、いろいろなものに関連をいたすわけでございますから、そういう意味では、自治省としては、この職業安定行政というものはむしろ府県行政の中で国との統一なり広域的な調整というものを考えるべきではないかという考え方を持っておるのでございます。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 労働省に伺いますが、私も大体いま自治省長野行政局長の答弁されたような考え方を持っておりますが、それは誤りですか。
  83. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 私どもも、広い意味の職業安定行政は、いまお話しのように、教育行政その他とも密接に、あるいは産業行政とも密接に関連をいたします。その面では、十分地方団体の総合的な行政の立場から運営をされ、またそれとの緊密な関連のもとに運営さるべきだと思っております。ただ、先ほど申しましたように、安定法のたてまえ上、職を求めあるいは人を求めているものに対して、国が責任を持ってその求人、求職の結合をやるということが職業安定行政の中の狭義の職業紹介行政として義務づけられておりますので、その面を中心といたしました公共職業安定所の機能というのは、国の機関として全国的に一律の基準をもって労働市場の実態に合わせた形で全国的に運営されることが至当であろうと、こう考えておるわけでございます。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、その事務に携わるところの職員は、地方公務員であっても、たとえばあなたのほうの趣旨というものが十分に徹底しておれば別に支障はありませんよね。
  85. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) その携わる職員の問題は、いまの安定所の職員そのものにつきましては、国の機関である安定機関が狭義の職業紹介をやらねばならぬというたてまえから、そこの職員は当然国の職員であろうと考えております。都道府県の中で総合的な立場から、職業紹介のみならず、広く職業安定行政の仕事に携わる者につきましては、これは都道府県知事の指揮下に現に入ってやっておりますし、そのやり方については今後十分検討をしてしかるべきと考えております。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 いまのあなたの御答弁は、職業安定法という現行法に基づいての御答弁です。それを先ほど——おくれて来られましたから、先ほど来論議をしたんですけれども、全体的には地方にこの仕事も移していただくような形のほうが妥当だと、こう思う。そうすると、それに向かって改善をする御意思はありませんか。
  87. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 実は職業紀介自体につきましては、これは国際的なILOの条約等におきましても、国が直接監督する組織を持って、全国的な統一的な立場から職業紹介業務を行なうべきであるという条約も採択されておるわけでございます。それは単にILOがそのような条約を採択したということだけでございませんで、その根本には、国がその直接の末端組織を持って職業紹介という求人、求職を結合させるという機能は全国的な立場から労働市場の実情に即してやるべきだという基本の精神が流れておると思いますので、事安定所におきまする職業紹介業務につきましては、現在の考え方が適当であろうと、こう考えております。ただ、都道府県の中におきまして、それと関連していろいろな業務がございます。で、これらにつきましては、総合的な立場から十分その効果があがるように考えていくべきだというふうに思っております。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 ILO条約の何条か忘れましたが、二条でしたか、九条でしたか、採択をされておるところの条約は、決して国家公務員でなければならないといっているのではなくて、公務員であってその身分は保障をされていなければならないということをいっております。身分が保障されている公務員というと、地方公務員だって身分が保障されている公務員なんで、決してその条約にはずれることには私はならないと思う。いまここに条章を持ってきていないからあれですけれども、そういうふうに記憶しております。いかがですか。
  89. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 私も実はいま条約が手元にございませんので、正確な御答弁はできかねますが、ILO条約で申しておりますのは、国が直接監督する組織を持ってやれということになっております。したがいまして、そこの組織職員がどういう身分かというようなことは、それはいま先生御指摘のように保障されるということでいいと思いますが、国の組織で国がみずからの責任を持ってやるべきだという趣旨のことが条約の基本的な精神だと考えております。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 そこの直接ですがね、いわゆる国家機構の中において当然いろいろの流れがありますよね、それをたとえば労働大臣が末端まで直接指示するところの権能を持っておると、そして身分的にもそこに拘束をしているというような形のことをあの条約は求めていない。   〔委員長退席理事熊谷太三郎着席〕 全く常識的に国家機構の中の一つとして安定行政というものはある。それを、たとえば具体的には道都府県事務として、そして身分が保障された都道府県の公務員が全体の政策に基づいて行なっていくということは、あの批准をされている条約には何にも違反をしない。したがって、やはり事務の委譲、身分の移管というものが行なわれたところで、ILO条約の違反にはならないと、私はそう考えております。いかがですか。
  91. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) いま先生御指摘のように、条約そのものにつきましては、そうおっしゃるように厳密に規定しておるものではございませんので、その点、いま直ちに条約違反——もし移した場合に違反するかどうかという点は、そう明確に私も申し上げるべきではないと思っております。ただ、全体のいまの労働市場、あるいは求人・求職、職業紹介の現状から申しますと、供給地から需要地への大量の移動、それからまた最近におきましては大都市からまた新しい産業都市へ移動等、府県制のワクを越えまして労働量が移動するという現状が非常に多いのでございます。もちろん県内での需給の結びつきというものがございますけれども、そういう全体の労働市場におきます労働力移動の実態から申しますと、国が行なうというたてまえが現代の職業紹介行政に対処するたてまえとして適当であろうというふうに考えているわけでございます。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば現状はこう移動するという論法で言われるのですが、たとえばここで言ってしまえば、石川県の選出の方もおるし、岩手県選出の方もおり、福島県選出の方もおり、福井県選出の方もいらっしゃる。俗に言えば過疎地帯、ここから外へ移動して行くことを選出されている方には求めていないわけです。そういうような状態というものは、必ずしもよい状態とも思われていない。したがって、こういう法律案には反対ですけれども、一例で言えば、こういう形のものをいろいろ苦慮して出してくるということでしょう。そうして過疎過密問題の解決をしよう、そうすれば、石川、岩手、福島、福井、その中に産業が起こされれば、そこへ人口が吸収されていくという形のものが政治の常道として考究をされなければなりません。そのことをやっぱり求めていくという形の大所に立った政策があり得べきことでしょう。したがって、現状高度経済成長政策のもとで、太平洋岸のベルト地帯に片寄ってこうなっている、したがってというような論法というものは、私は原則的な論議には当てはまらないと思います。現状に適合させるというのは、そのつど、そのつどいろいろ考えていってできることであって、原則的なことにならない、そういうふうに思いますが、したがって、原則的なものとしては、地方がそれを掌握をしていくということに誤りはないと思いますが、どうですか。
  93. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) おことばを返すようなつもりは毛頭ございませんが、安定行政といたしましては、職を求めるいわゆる求職者に対して適職を何とかして見つけていこうもう一つは、労働力に対する需要に対しましてこれを何とか充足していこう、この二つの要望に対して、それをどう結び付けていくかということに簡単に言うとなるわけであります。その場合に、労働力の面からいいますと、いわゆる求職者といたしましては、職業選択の自由というたてまえから、やはり自分に合ったと思われる、あるいは自分の望む職に就職することを希望するわけでございます。したがいまして、そこらは求職者の意思を十分尊重しながら結びつけていくということ、それからもう一つは、いま御指摘のございましたような需要が——現に労働力を求めるところに対しましては、それがどの地帯でございましても、それを何とか充足していこうということでございますので、私はいま地域的にある一定地域に対する流動ということばかりを申し上げたわけじゃございませんで、少なくとも全国的な規模においていろいろの形の流動化が行なわれていくということで、それに対処する形で国がその組織を持って当たることのほうが全国的な立場からの調整が可能であろうということを申し上げたわけでございます。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 そうしたら、それらのことは、この国家機構、組織として掌握をしていく、地方自治地方自治としてずっと確保をされていくというような形で、矛盾は全然出ないでしょう。何も直轄的に下まで握っていなかったならば何もできないのだという論理にはならないでしょう。
  95. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) 私の申し上げておりましたのは、その理論的な問題もさることながら、現実に、先生御案内のように、安定所では求人・求職の票をそれぞれ書きまして、それをいま御承知のように機械に載せまして中央の労働市場センターで全部統一的に把握しておるわけでございます。それで、求人の質と量に見合った求職の希望に応じながらそれを結びつけていくという現実の姿で、まあ全国的な安定機関、安定所を介して結びつけまして、労働市場センターを中心にやっておりますので、そういう作業の流れが国の統一した形でやったほうが適当であろうと、こう申し上げているわけでございます。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 時間ですからあれですがね。そうすると、あなたのところと自治大臣のところで地方事務制度を廃止しますという覚え書きを結ばれて出されていますね、どういうふうに廃止されるのですか。
  97. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) この自治大臣と行管長官とうちの大臣との間でかわしました覚え書きの中身といたしましては、労働省の地方行政機構につきましてこの際抜本的に改正をしていこう、その一環として当然地方事務制度は廃止していく。それは、直接関係していくのが職業安定行政でございますので、末端の第一線の公共職業安定所の職業紹介機能は、あるいはその仕事は現状のままにしておきまして、県の中でのいろいろな需給調整とかいう、あるいは雇用計画とかいう問題につきましては、これは県の仕事としてやっていただくというような割り切り方で、その過程において地方事務制度は廃止していこう、こういうふうな趣旨で覚え書きに記されているわけであります。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 それをこの国会に提出をされると言いながら、どうして出ないのですか。
  99. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) その覚え書きの中には、安定行政ばかりでございませんで、基準関係行政の問題も触れております。そこで、あの覚え書きにもございますように、基本的な考え方についてはあの覚え書きの線で合意をいたしたわけでございますが、その後さらに細部の点については関係省の間で協議するということになっております。その後、できるだけ今国会に提出を目ざしまして、私どもも、関係各省——覚え書きの当事省のみならず、人事院あるいは大蔵省等とも話し合いをしてまいったのでございますけれども、十分意見調整が達せられないままに今日に至ってしまったもので、今国会の提出をあきらめざるを得なかった、こういうことでございます。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 労働省の考えておられる形のようなものがそのままあの覚え書きで通ると考えていらっしゃいますか。
  101. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) あそこの覚え書きに書いてありますこと自体が、私どもも実は、労働行政が、都道府県行政として行なわれるにふさわしい部面と同時に、国の行政として行なわれるべき性格を非常に多く持っている部面と、いろいろございます。それらをどう調整するかということで非常に部内でもいろいろ苦慮いたしたところでございますが、私どもといたしましては、何らかの形で地方行政——都道府県のほかの行政と一体化させながらなおかつ労働行政の特殊性が保障されるという形を考えるならば覚え書きの線によるしかないと思ってまいったわけでございます。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 かなり意見に懸隔があるので、その問題については後日もう少しやります。  あと労働省だれかお残りになりますね。
  103. 岡部實夫

    政府委員(岡部實夫君) かわりに参事官をいま呼んでおりますので。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 先ほどの厚生省から続きまして、この「府県政白書」の中に「府県単位の中小企業等協同組合、府県単位の商工組合、商工会議所等の設立認可および指導監督や前払式割賦販売業者の規制等について国に権限が留保されているものが多く、とくに協同組合、商工組合関係では、その所管業種ごとに通商産業省、大蔵省、運輸省等が関与しているため、地域の中小企業行政の総合性、一貫性の妙味が損なわれている。」とありますが、通産省、大蔵省、運輸省それぞれどのようにお考えになりますか。
  105. 井土武久

    説明員(井土武久君) 中小企業行政につきましては、できる限り府県の指導が必要でございますので、府県に仕事をやっていただくという基本的な考え方でございますが、経済行為の効果は府県の範囲にとどまらない問題がかなりございます。これらの問題につきましては、全国的な統一的な方針から措置をしなければならぬという問題がございます。これらの問題は中央所管庁で所管をいたしておりますが、それ以外に経済行為の効果が府県内にとどまるものにつきましてはできるだけ府県事務をお願いをしておるのでございます。
  106. 熊谷太三郎

    ○理事(熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  107. 熊谷太三郎

    ○理事(熊谷太三郎君) 速記を始めて。
  108. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 建設大臣お見えになりましたから、中心に御質問申し上げたいと思います。  実は、昨日連合審査会がありまして、私ども地方行政委員会所属の者は、建設大臣に対しまして質問をしよう、こう考えておりましたが、昨日の議事の運営は、主として建設委員の諸君が建設大臣あるいは自治大臣等に質問をするようにということで、その質問の機会がございませんでしたので、あらためてたいへん忙しいところを御出席いただきましてまことに恐縮でございます。  地方行政委員会に付託されておりますいわゆる都道府県合併特例法でありますが、このことについては建設大臣もすでに御承知のことでありますし、また昨日の連合委員会におきましてもいろいろとこの問題が取り上げられてまいったのであります。私もこの地方行政委員会の実地調査に加わりまして、いわゆる東海三県の実情やあるいは地方開発計画等につきまして、三重県、岐阜県、愛知県の計画を聞きますとともに、いろいろと検討を加えてまいったのであります。さらに、地方公聴会におきまして、関係三県知事、議長、あるいは学識経験者等の意見を聞いてまいったのであります。実は中部圏、特に東海三県と言われます三重、岐阜、愛知県等におきましては、中部圏構想というものに非常に大きな期待を持っていることをあらためて認識をしたわけであります。したがいまして、建設大臣とされましては、大臣の出身県であります福井県もその中に入っておりますが、この中部圏構想というものを今後強力に推進していくというお考えをお持ちのことは申すまでもございませんし、またこの委員会におきまして、首都圏、近畿圏に加えまして中部圏を入れまして国の財政的な援助を与えるという、そういう法律案を可決いたしまして、現在衆議院に送られていることを、御存じのとおりであります。したがいまして、私ども非常に興味を持っていると申しますか、あるいは関心を持っております点は、東海三県の考え方というものが、中部圏という一つの網の中に入って、お互いに自分の力を発揮し、あるいは三県共通の問題については三県が共同に処理していくけれども自分たちだけが富裕になって、中部は九県でございますが、他の六県の人たちをほうっておいてもいいという考えにはなっていないと思うのです。この点は非常に私関心を持って御意見を聞いたわけでございますが、この中部圏構想の将来の推進、あるいは発展、あるいは国の財政援助等につきましては、建設大臣として また中部圏の本部長といたしまして、建設大臣非常に大きな責任を持っておられると思うのですが、今後の中部圏構想あるいは中部圏の開発整備計画というものをどういうふうに推進していかれるか、あるいはその推進についてどのような決意を持っていらっしゃるか、まずこれを伺いたいと思います。
  109. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 松澤先生御指摘になりました、中部圏開発構想といいますか、わが国の国土総合開発の持つ中部圏の使命というものは、私は非常に大きくその将来を期待いたしております一員でございます。  御承知のとおりに、首都圏、近畿県の中部に位し、しかもわが本土の中枢部の地位を持っておる次第でありますとともに、いわゆる海岸地帯の工業地区並びにこの中央部におけるところの観光の大資源、また水資源等を含めました、日本のいわゆる屋根に当たるところの持つ観光その他をめぐっての大きな開発の重要性、また北陸一帯を持つところのいわゆる海岸並びに観光及びそれらに関連する工業、こうした中にあっての農業地帯、こうしたものを含めましての、中部圏の産業の上からも、あるいは観光の上からも、あるいは水資源の開発の上からも、非常に大きくその開発の将来性を期待いたしておるような次第でございますので、私は、中部圏の開発につきましては、いま前段で申し上げましたような大きな期待、また積極的なる施策に万全を期したいという決意を持ってこれに当たっておるような次第でございます。
  110. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで、この「中部圏基本開発整備計画」——中部圏開発整備本部がお出しになりました中に、六ページのところに、「なお、今後予想される全国総合開発計画等の改訂、科学および技術の革新等情勢の変化に応じてさらに調整をはかるものとする。」というふうに言っているのでありますが、新全総の構想もだんだんと固まりつつありますが、この点について、この「中部圏基本開発整備計画」をどのように改定されるか、あるいは検討されるか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  111. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 松澤委員承知のとおりに、国連地域開発調査訓練計画というものがなされており、ことに、たびたび、累次にわたりまして来日、来訪されておるワイズマン氏も、この地区に対するところの将来性と未来像には大きな期待と、またあらゆる立場からの調査計画等も提言をちょうだいいたしておるような次第でございます。そういった立場に立って、私はこれらに即応し、またあらゆる変化に対応する立場に立っての計画を推し進めてまいりたいと、こう考えておりますが、具体的な点につきましては政府委員から答弁させたいと思います。   〔理事熊谷太三郎退席委員長着席
  112. 小林忠雄

    政府委員小林忠雄君) 全総計画ができたので、中部圏の開発基本整備計画の改定をどのようにするかという御質問でございますが、実は中部圏のこの開発基本整備計画ができましたのは昨年の七月でございまして、そのころすでに企画庁のほうで新全国総合開発計画の作業が始まっておりまして、そこで中部圏のこの基本計画が決定いたします前に企画庁といろいろ調整いたしましたので、新全総の第二部の中部圏に関する記述事項はこの中部圏の基本計画と大体一致しております。したがいまして、新全総ができたから中部圏の基本計画をすぐ手直しするという考えはただいまのところ持っておりません。ただ、新全総の第二部の地域別の計画の中で、具体的な計画としてでなく、構想として将来検討するというような大型プロジェクトが幾つかございますが、そういうふうなものが具体化いたします段階におきましては、そのものについて技術的な改定が必要であると思います。
  113. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 「中部圏基本開発整備計画」によりますというと、「この計画の原案は、中部圏開発整備地方協議会等の調査審議を中心として、地域住民の意向を反映して作成されたものであり、」——そういうことでありますから、地域地方開発計画というものと、それから中部圏基本開発整備計画というものとは、不離一体といいますか、一心同体のような関係でつくられたものと考えていいわけです。そこで改定の必要が、たとえば愛知県なり、岐阜県なり、あるいは三重県なり、それぞれやはり地方計画を改定し、たとえば第三次計画までできているというところがあります。そうしますと、そういう下からの改定によりまして、やはり中部圏基本開発整備計画というものも変更していかなければならぬということになるのだろうと思いますが、その点はさよう了解してよろしゅうございますか。
  114. 小林忠雄

    政府委員小林忠雄君) 現在各県で作業をしております地方計画は、中部圏の基本開発整備計画によりまして決定されましたことに基づきまして、それぞれの県の計画をつくり直しておるわけでございます。この基本計画はごく大まかなことをきめておりますが、各地域別の建設計画というのを知事が作成をいたしまして、中部圏本部に提出をし、関係各省と協議の上、内閣総理大臣の承認を得るという作業が現在進行中でございまして、おそらく今月中には各県から、——今月あるいは来月半ばごろまでには案が出てくることを期待しております。そこで各県では、中部圏計画の基本計画に基づきまして、各地域ごとの建設計画を作業をする。その作業をする段階におきまして、県全体の計画も当然改定をする必要があるということで作業をしておりますので、もともとこの計画が、原案を各県が集まりました協議会で作成をして、これに政府が調整を加えてできたものでございますので、それをもう一ぺん各県へフィードバックして、各県が計画をつくり直す。したがって、各県の計画から逆に積み上げてもう一ぺんこれを改定するということは、ただいまのところはその必要がないと考えております。
  115. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 非常に強い御断定のようですけれども、なるほど、国の基本的な計画、あるいはその県、その県の計画というものは、そう朝令暮改的に改定される、再検討される性格のものではないと思いますけれども、やはり必要なことは、中部圏は国の新全総計画あるいはまたは各県の地方開発計画というものにうまくマッチしなければ生きていけないと思うのです。ですから、改定する必要ないというふうに断定なさらないで、やはりそういう改定すべき要件があれば、それは国の施策によっても改定される必要もあるであろうし、あるいはまたは県のいろいろ社会・経済情勢の変化によって改定することもあるだろうというふうな答弁でないと、何も上とちっとも相反してないのだし、下とも相反してないのだから、これは絶対のものだというふうに、かたくなになる必要はないのじゃないかと思いますが。
  116. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) ただいまの次長の答弁に、誤解といいますか、御疑念を持たれましたことは、申しわけなく思いますが、私が前段で申しましたごとく、全国総合計画、あるいは各県内の持つ計画、その他に関連いたしましては、やはり時代に即応した私は対策を講じたいということを答弁申し上げましたことで御理解いただきまして、政府委員の答弁も、そうした意味をとらえましての答弁であったことで御了解願いたいと、こう思います。
  117. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この新全総計画の中では、やはりよく言われております赤字ローカル線といいますか、そういうものは、「自動車輸送に代替させることが適当な鉄道線区はこれを整理し、」、現在工事中または計画中の新線についても同様の観点から計画を再検討を要するというような意味のことが載っております。ところが、こちらの中部圏のほうでは、交通の問題につきましては、そういう赤字線の整理とか、あるいはまたは新線建設経済的でないものについては、これを再検討するというようなことは全然載っていない。載っていないばかりか、「地域開発を促進し、既設線の輸送力を補足するために必要な新線の建設および工業開発等に伴って必要となる臨海鉄道等の建設を推進するものとする。」とある。こういうふうに、片っ方では、自動車輸送によって大量安全な輸送ができるものにあっては、いわゆる具体的に言えば地方のローカル線の廃止を考えるべきだというふうにうたってあるし、こちらのほうではそういうふうには言っていないわけであります。そこで、多少の食い違いがあるのじゃないかという疑念を持つわけですが、この点につきましては、次長及び経済企画庁のほうから御説明を願いたいと思います。
  118. 小林忠雄

    政府委員小林忠雄君) ただいまの鉄道新線建設あるいは赤字線の問題でございますが、これは各県から出てまいりました原案、地方協議会案というものにつきましては、もっと非常にたくさんの新線建設の要望と申しますか、案が入っていたわけでございますが、ただいまのような国鉄の赤字問題、あるいはいまの新全総のような考え方も、片っ方でかなり進んでおりましたので、ここでは運輸省あるいは国鉄等と協議をいたしまして、差しつかえのないもの等は具体的な線名を建設としてあげているわけであります。非常に問題のあるものにつきましては、具体的なものはみな地方案にありましたものも落としているわけでございます。ただ、その後国鉄の関係調査会でいろいろ調査して、これは撤去をすべきであるというような発表がされております中には、この中部圏の計画の中で実は具体的な線名をあげているものが二、三入っていることは事実でございますが、これは国鉄の調査会の案でございまして、まだ運輸省なり国鉄の正式の意思表示ということでございませんので、現段階では、運輸省と調整しました限りにおきましては、国家計画としてここにあがっている線については中部圏の計画として建設をしていきたいという考えでございます。
  119. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 新全国総合開発計画の中におきまして、ただいま御指摘の点は、「地方都市の環境保全のための主要計画課題」の中におきまして、いわゆる広域生活圏といわれますところの交通体系の整備の問題として書いてあるわけでございまして、今後におけるモータリゼーションの急激な進展ということも一方に考えまして、こういった広域生活圏における交通体系というものを合理的に、しかも、非常便利なものとして整備していく必要がある。そういう観点から自動車輸送に代替させることが適当な鉄道線区は、これを整理したほうがいいだろう、全体として一時間程度で圏域内が結ばれるように考えていく、こういう提案でございます。具体的な問題になりますと、いま現にいろいろ問題になっておりますことで相当困難もあろうと思いますが、将来の姿としてはこういう形が適当であるという考え方を出したつもりでございます。中部圏のほうとの関係もいまお話が出ましたけれども、私どもは、基本的にこういった考え方を十分いまの中部圏の計画の中で、矛盾なく、実行上は運用できるものと考えております。
  120. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 まあ、政府部内におきましては意見の調整ができているかもわかりませんけれども、しかし、新全総の考え方は、明らかに自動車輸送等によって代替されることが適当であるというようなところは、これは整理していくという方針であるし、具体的に言えば、中部圏のほうではむしろ新線の建設も必要である、あるいは臨港鉄道も必要である。まあ臨港鉄道の関係は、工業基盤の育成というようなことから言えば、一般のいわゆる地方ローカル線ということとは別の性格を持っているかもわかりませんが、片方では新線の計画をやっていかなければならないと言い、片方では自動車輸送によってかわられるところは整理していくべしといった違いがあるのですが、これは新全総のほうがあとから出てきたことであり、中部圏の計画のほうは先にできたものでありますから、そういうところに幾分の食い違いがあるということは私認めますけれども、やはり、こういう調整を政府全体として、あるいは国全体としてとっていかなければならないじゃないかという、そういう疑問を持っているわけなんです。  それからもう一つ。それでは、その点は将来調整してもらうことにいたしまして、この新全総計画の中では、現在の都道府県制度については、基本的に改革は必要であるがというふうに言ってあります。経済企画庁としてお考え府県制の基本的な改革ということはどういうことを意味していらっしゃるのですか。
  121. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) これは計画第三部において述べてあるところでございますが、そのいまお読みになりましたあとで、「都道府県の区域を越える広域的な開発行政」ということにある程度具体的内容が書いてございますが、要するに、この計画が指向しております内容は御承知のとおりでございまして、交通通信のネットワークの整備等によって、今後、経済活動、社会活動が非常に広域的に行なわれる。そうしてまた、こういうような国土の利用を果たすためにいろいろの具体的プロジェクトを提案いたしておるわけでございますが、こういうものも一つ府県の区域を越える相当大きな面積に対して行なわれるものが相当大きくなるというようなことから見まして、特に開発行政の面からはそういった広域行政というものが必要であろう。また、それ以外の面を考えましても、ただいま申し上げましたように、経済活動あるいは社会活動というものが非常に広域的に行なわれるということになってまいりますと、現在の政府組織も、あるいはこの府県制度というものも、基本的に検討される段階に来ているのではないか、こういうような認識でこの第三部のところが書かれてあるわけでございます。
  122. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 広域行政の必要性ということは、私たちもこれは認めているわけです。経済企画庁が新全総の中において、都道府県制度については基本的に改革が必要であると、こういうふうにきめつけるには何かその根拠があるわけでしょう。ただ広域的に府県間の共同事務考えられるものは共同的に処理しなさいということであれば、都道府県制度の基本的な改革ということを意味するわけじゃないでしょう。都道府県制度の基本的な改革といえば、その中かその外か、いずれにいたしましても、それ自身に対する基本的な改革ということでしょう。府県制度をこのままにしておいて、それでこっち側は広域行政をやって、それで都道府県制度の基本的な改革とは言えないでしょう。だから、こう書く以上は、何か経済企画庁として、府県制度はこうあってほしいという、そういう考え方があるのじゃないですか。そういうことを言っているのじゃないですか。そこをはっきりしていただきたいと思う。
  123. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) お断わり申し上げておきますが、この計画経済企画庁が確かに実際の作業はいたしておりますけれども、国土総合開発審議会を経まして、国としての決定でございますので、経済企画庁の事務の範囲だけのことを書くという趣旨ではございません。この内容は、それぞれ各省の仕事としてやっていただかなければならぬことが非常にたくさん書いてございます。ただいまの点でございますが、先ほども御説明いたしましたように、今後におけるわが国の経済、社会の発展の方向ということでいろいろと考えてまいりますと、経済活動についても、あるいは社会活動についても、人間の活動というような面で考えますと、相当広域にわたって活動が行なわれるようになる。一日行動圏というようなことで考えてみましても、大体ここで書きました七つのブロックというようなことが大体そういうところを意味してつくられておるわけでございますが、そういうふうに広域に活動するようになる。当然地方行政というものにつきましても、そういったように経済活動、社会活動が広域に行なわれるようになってまいりますと、そういうことに応じて行政のほうが行なわれていかなければならぬということになってまいると思います。そういう面から見まして、現在の府県制度、特にその区域の問題についてはやはり改革が必要である、こういうようなつもりでこれは書いたわけでございます。
  124. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、現在この委員会に提案されております府県合併特例法のような都道府県制度の基本的な改革を新全総としては歓迎しているということですか。
  125. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) これは昨日も御答弁を申し上げましたが、この計画は昭和六十年度を目標年度とするかなり先のことを考え計画でございますが、いま問題になっております府県合併特例法は、当面の問題として、しかも時限法としてこれはつくられておるものでございますから、そこに当然この目標とする時期の違いによる考え方の相違というのはあってしかるべきだと思いますが、いずれにいたしましても、こういった形で広域行政というものが必要になってくるという点から見まして、この特例法考え方は全総計画の線に沿っておる、こういうふうに私ども考えております。
  126. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで、その合併と中部圏構想との関係になります。いま局長は、新全総の立場から見てもいわゆる都道府県合併特例法は必要であるというようなことを言われましたけれども、私はまだまだ問題があると思うのですよ。新全総という大きな網の下に中部圏という一つの網があるのです。その下に府県があるわけです。それでは合併したら木曽川の水は三県合併したものだけで処理できますか。そういうわけにいかないでしょう。合併合併。あるいは岐阜、三重、愛知、その三県で木曽川の水について三川の協議会というものができております。これは合併しなくてもそういうことはできているわけなんです。合併したらどうなるか。三県が合併しても水の源は長野県にあるわけですから、長野県を除外して合併したらそれで水の問題が解決するかといえば、そうじゃないと思う。そこで、合併は適当であり、新全総の網あるいは中部圏の網というものが、この三県の合併によって満たされるとか達成されるとかという問題ではないと思いますが、その水の問題について局長の御意見を伺いたいと思います。
  127. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 私どもの理解といたしましては、都道府県合併特例法考えておりますのは、自然的、経済的、社会的に一体化することが適当な地域、または将来そういう可能性のある地域というようなことで考えられておるわけでございまして、また、その合併が自主的に進められるということから見ましても、当然そういう一体化する地域というものが経済的にも社会的にもこの合併によって発展が進むというような前提でこれは行なわれるものと、こういうふうに考えております。そういう意味におきまして、たとえば水の問題などにつきましても、それがその地域の工業あるいは生活の問題といたしまして非常に重要な要素であるならば、当然そういう点も考慮の中に入れられて合併という問題が具体的に議論されるものと考えております。いま木曽三川の問題をお話しになりましたけれども、これは具体的にいまこの法律によってその三県が問題になるのか、あるいはそれ以外の地域も入って問題になるのか、その辺につきましても、私よく承知をいたしておりませんけれども、ただ木曽三川だけの水資源開発の問題として少しお答えを申し上げておきますると、私どものほうは、実は水資源開発促進法により仕事もやっておるわけでございますが、昨年この木曽三川の水資源開発基本計画を策定をいたしたわけでございますが、その間におきまする調整の問題として非常に困難な問題がいろいろございましたけれども、ほとんどその問題というのは、愛知、三重、岐阜三県の間の調整問題であったということだけお答え申し上げておきたいと思います。
  128. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 建設大臣に伺いたいんですけれども、たとえば中部圏の三県が合併いたしましても、まだまだ中部圏の中における水の問題は非常に多岐にわたっていると思うんですが、そういう点考えまして、三県合併だけで中部圏における水の問題というものは解決できる問題でもないし、お互いに関係のあるものが順次そのリンクといいますか、その連鎖的な共同事務というものが川の水域に従って広げられていくということは十分認められると思うんです。そこで木曽川の場合は、いま開発局長は三県だけの問題だというふうに言われましたけれども、しかし、やはり木曽川を考えてみましても、長野県の問題もありますし、また、ほかの河川——天竜川とかあるいはその他の問題を考えてみましても、それぞれ関係する県というものがあると思うんです。で、水はかえって三県合併よりも広域処理しなければならない問題だと思うんですが、この点建設大臣いかがですか。
  129. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) ただいま宮崎局長も答弁いたしましたごとく、木曽川水系を中心とする計画につきましては、昨年策定をいたしましてその推進をいたしておるのでございますが、中部圏におきましては、私が先ほど申し上げましたごとく、水資源の開発という仕事は、単なる木曽川だけでなく、松澤委員承知のとおり、九頭竜川あり、あるいは黒部川あり、あるいは庄川あり、神通川あり、その他数多くの水資源を持っている地域でございます。これらは、これらの独自的な立場において、水資源の開発を政府が目下建設省を中心に、また水資源公団を通じまして開発に全力を注いでおるような次第でございますので、これが合併という問題と関連いたしまして、自主的な合併が促進されるということは別個にいたしまして、私ども広域行政の立場から、また水資源の開発の重要性の立場からこれを推進していくということで、いわゆる府県合併促進に期待をいたし、これが促進できなければこちらのほうも促進でき得ないという考えはみじんにも持っておりませんことを表明申し上げておきたいと思います。
  130. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 建設大臣は先日琵琶湖に行かれましていろいろ地元府県知事とお会いになりました。そのことはきのう委員の質問の中で明確にお答えになっていらっしゃったのであります。たとえばいま話題になっております阪奈和の合併にしても、琵琶湖の水ということになると、滋賀、京都、兵庫というふうに三府県ばかりでなくて、他の府県にも関係があることですから、水は、先ほども申しましたように、非常に広域的に処理をしなければならない、そういう問題だと思うのでありますが、この点につきまして、琵琶湖の総合開発の問題について具体的な案が建設省におありでしたら説明していただきたいと思います。
  131. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 町日の連合審査会に私から御答弁申し上げましたとおり、琵琶湖の開発事業ということは、阪神地区におけるところの、近畿地区におけるところの最も重要な水資源開発として重要性を持っておる地区でございます。したがいまして、私は琵琶湖の治水計画並びに琵琶湖周辺の総合開発の施策推進並びに下流区域に対する水資源の確保という三つの柱を踏まえまして建設省といたしましては地元の滋賀県の御協力と御理解を得なければなりませんので、その話し合いと理解と納得のいく場を政府が誠意を持って配慮するところがいまの問題点の解明の焦点であろうという気持ちをもって過般私は滋賀県に参ったわけでございます。そうした立場をとりながら、いま地元と話し合いを誠意をもって続け、建設省といたしましても七月一日より事務次官を、推進役といいますか、議長という立場におきまして省内の総合的な事務の推進の統一、また各省庁間との連絡、現地との連絡等に当たらせてこの問題に取り組む次第でございます。そうした問題がありますとともに、やはり阪神、近畿地区には御案内のごとく桂川あり、木津川あるいは紀ノ川水系といういろいろの水系の開発をいたしまして水資源の確保に当たってまいりたい、こういう方針であることを御理解いただきたいと思います。
  132. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この問題は、私どもも実は淀川の水がだいぶこのごろきたなくなっておりますけれども、それをいただいているわけでございまして、私どもとしましても琵琶湖の開発といいますか、あるいは琵琶湖の水を阪神間に持ってきていただきたいという現実の強い要望があるわけでございます。きれいな水を大量に確保するということは、下流各府県の共通の願いであろうと思うのでありますが、どういうふうに持ってくるかといういろいろパイプラインというような話があるわけですが、そういう具体的な構想というものはまだ建設省として煮詰めていらっしゃらないわけですか。
  133. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) いま私のほうの手元でそれぞれの立場で具体的な構想を検討いたしておりますが、これにつきましてやはり優先するのは、私はやはり滋賀県側の御理解をいただくということ、滋賀県側と納得の話し合いを続けるということが最も優先的な問題である。これにいま全力を注いでおりますので、いま私がこの時点でこれはこうなってこういたしますということを申し上げることはかえって事業の推進に支障を来たすような気持ちもございます。この点は、私は大事業の成就を願う立場から、責任者といたしまして具体的なことに取り組んでいることは事実でございますが、いま確かにそうした具体的な問題に触れられますと、おのずからいろいろの関連性が出てまいりまして支障を来たしてまいりますので、その点はひとつ御理解を賜りたい、こう思います。
  134. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 まあそれ以上詳しいことも私追及いたしません。しかし、琵琶湖の水をもし下流府県に流していただくとすれば、当然京都も入るわけです。大阪も入りますし、あるいはまたは兵庫県も入るというふうに了解してよろしいだろうと思うのですが、これに阪奈和の合併というものがどういう関係にあるかということが私たちいま地方行政委員会の関心のあるところですが、昨日の建設大臣の御答弁によりましても、こういう水の問題は水の問題として、府県合併ができても、またできなくとも、これは国家的な仕事として推進していかなければならない、こういうふうにお答えになったと思いますが、その点もう一度確認いたしたいと思います。
  135. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 私が閣議の場において二度にわたりまして琵琶湖総合開発の重要性につきまして提案いたし、関係閣僚の御協力の確約も得、また総理の強い協力態勢の指示をいただいたというような立場から、私が過般現地におもむいた気持ちもここにあったような次第でありまして、私は非常に国家的な大事業としてぜひともこれを成就さしてまいりたい、こういうような熱意と決意を持って臨んでいるようなわけでございますとともに、京都府の利水対策といたしましては、御承知のとおりに、疎水その他の水利用の確保はもちろんでありますとともに、琵琶湖からの供給という点についてはいま決定的な考えはございませんけれども、桂川あるいは木津川等の調査を行ないまして、これらの川に応じまして私は所要の対策を進めることが京都府の利水、治水対策にとっては最もよき方法ではなかろうかという考えを持っていることだけは御了承願いたいと思いますとともに、大阪並びに兵庫の知事あるいは市長等にもお会いいたしまして、下流地域の御協力方も十分要請もいたしてまいりましたので、私の考えといたしましては、ぜひともこの案のまとめをいたしまして、でき得るならば四十五年には着工の段階に入らしていただきたい、こういう強い熱望を持っていることを表明申し上げておきたいと思います。
  136. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 近畿には、近畿は一つという非常に地域的な結びつきがあるわけでございますが、何と申しましても、やはり近畿の問題としましては、来年の万国博覧会とか、あるいはまた本四連絡橋の問題、いまの水の問題等があると思うのでありますが、新聞等によって伝えられているところによりますというと、この本四連絡橋の問題は七月には決定を見るだろう、しかし、順位あるいは施行者その他の問題については八月になるかもしれない、あるいは鉄道併用橋ということになればさらに延びるかもしれないというようなことが次々に新聞の情報として流れているわけでありますが、建設大臣としてはどのようにお聞き及びか、またどのように決定されるのか、これを承りたいと思います。
  137. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) この本四架橋の問題は日本の国土開発未来像につながるまことに重要な大事業でもあり、いわゆる西日本開発の基本をなす大事業でありますが、御承知のとおりに、地理的な条件あるいは気象的な条件、あるいは台風、地震等々の条件等も考えますと、また、まことにきびしい過酷な大事業でもあろうと考えておる次第でございますが、そうした条件のもとにおけるこの大事業の着工及びその竣工に国家的な大資本を投入いたしながらいたす場合におきましては、やはり細部にわたる十分なる計画、技術計画あるいは技術効果あるいは経済効果等、あるいは総合的な問題点をよく解明いたしまして、その結果の結論に立って基本計画を打ち立ててまいりたいという政府考えでありましたので、かなりの今時点に至るまで年月とまた経費を投入いたしましたことも御理解いただけるのではないかと思いますが、私どもといたしましては、かなり予算委員会その他においても答弁申し上げましたが、いよいよ七月一ぱいには結論を出したいという方針でございましたけれども、御承知のとおりに、国会が長期にわたり延長を見ましたようなこともございますので、事務的な立場、言いかえますならば、建設省あるいは運輸省並びに鉄建公団、各種関係省庁、企画庁あるいは大蔵省等々の事務的な慎重な打ち合せ協議も必要としますので、おのずから時間的と申しますか、というような事情から、やむなくおくれるということから、これは七月と申し上げておきましたけれども、最終的な結論を政府といたして出す時期は八月に入ったことを御理解いただきたい、こう考えておる次第であります。
  138. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 田中幹事長も結局三ルートの建設を正式にきめるのは八月になるだろうというふうに言っておられると思うのでありますが、すでに技術的な調査も済み、あるいは経済的な効果に関する調査も済み、あとはもう政府の決意いかんといいますか、決定いかんによるところだろうと思うのであります。もし七月に三ルート決定ということにならなければ、八月になると、三ルートの決定及び着工の順位等が八月中にきまるかどうか、鈴木鉄道建設議会の会長は、もし併用橋というふうにすることになると国鉄新幹線全体の計画をにらみ合わせなければならないので十一月になると言っておりますが、こういう時間的な問題はどのように建設大臣考えでございましょうか。
  139. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) ただいま御指摘になりました後段のいわゆる鉄道建設議会の立場から来るこの問題に対するタイミングの問題点でございますが、私といたしましては、いずれの立場いずれの事情になりましょうとも、八月には政府としてこの問題にどうあるべきかという結論だけは出したいという方針であります。
  140. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 こういうふうに、広域行政と申しましても、いろいろと、さらに港湾の問題は阪神というものがむしろ阪奈和よりは一体的な関係もありますし、あるいは昼間の通勤着の人口から申しましても、阪奈和間の昼間人口の移動ということよりは、むしろ阪神なり、あるいは京阪なりということによる昼間人口の移動ということが非常に顕著だと思うのであります。結局、一体性ということから思えば、必ずしも阪奈和が一体性をというふうにも考えられませんし、いろいろとそこに問題があると思うのでありまして、建設大臣としては、そういうことは自分の所管でもないし、合併ができればそれにこしたことはないと思うけれども、しかし、近畿圏の開発整備計画なりあるいは中部圏の開発整備計画なりは、そういうことに関係なく、政府としてこれまで決定された方針、さらに新しい事情が加わってきたらそれを検討しながら、強力に推進していくのだというふうに了解してもよろしゅうございますか。
  141. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) ただいま御指摘になりました阪奈和地区のいわゆる状況、あるいは阪神地区の状況、ことに昼間、夜間の人口の移動、あるいは空洞化、あるいは過疎過密というような問題点をとらえましての府県合併という問題点に対する私の考え方をお尋ねになったと私は解釈いたしておりますが、私はきのうの委員会においても答弁申し上げましたごとく、あらゆる立場から私は国土の均衡のとれた建設開発をいたすということ、また、しあわせな生活、魅力のある暮らしの場をつくるという国土の開発建設をいたすということから、私は少なくとも均衡のとれた生産の場あるいは行政の場、財政面の場、あらゆるものを打ち立てていくことが、いまの国土開発現状を見ますときに、当然とるべき政府施策であると、こう考えておりますので、私といたしましては、府県合併の推移あるいはその成り行き見通しいかんを問わず、私の方針は、均衡のとれた国土建設開発並びに過密過疎対策に全力を注ぐという方針でありますことを御了解願いたいと思います。
  142. 和田静夫

    和田静夫君 農林省見えていますね。行政の総合性、一貫性がそこなわれているという点については、この府県政白書に、「府県単位の農業団体、水産業団体の設立認可その他の指導監督に関しても同様である」、こういうふうに述べています。農林省はその点どういうふうにお考えになりますか。   〔委員長退席理事熊谷太三郎着席
  143. 鈴木諒

    説明員鈴木諒君) 先ほど通産省のほうからお答えありましたのと同じ考え方でございまして、最近農林水産業団体の事情につきましては、都道府県の区域を越えない場合でも、その活動範囲が県のみに限定されていないというようなことがございます。また、いわゆる商品の流通市場の変化等に応じまして対処のしかた等が広域的になっておりますので、いまの御指摘の点につきましては、行政指導監査等につきまして従来どおりやってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。よろしくお願いいたします。
  144. 和田静夫

    和田静夫君 自治省、どうですか、いまの答弁、さっぱりわからなかったのですけれども
  145. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 自治省は従来から、府県行政区域の中にありますところの地域を単位といたしますところの経済団体とか、あるいは社会福祉関係団体とか、いろいろございますが、原則としては府県の区域を設置単位としておるところのそういう団体の指導なり監督なりというものにつきましては、やはり総合行政の観点から府県あるいは府県知事権限を委譲すべきであるという考え方を持っております。
  146. 和田静夫

    和田静夫君 私もそう思うのですが、農林省どうですか、いまの自治省の答弁について。
  147. 鈴木諒

    説明員鈴木諒君) この点につきまして、私どものほうといたしましては、これまた原局である農政局等のお考えもございますけれども、私どものほうといたしましては、そういった問題の権限地方農政局に委譲いたしまして、御指摘の点につきまして円滑に進めるように対処してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  148. 和田静夫

    和田静夫君 「またその影響がおおむね府県地域内にとどまる百貨店の認可等が国に権限が留保されているが、中小企業保護、振興という点から現地性、総合性が要請される。」ともあるわけですけれども、この点について通産省はどのようにお考えですか。
  149. 井土武久

    説明員(井土武久君) 百貨店の認可につきましては、百貨店と地元の商工業者との利害の調整が必要でございまして、これにつきましては、県当局のあっせんをお願いいたしておるわけでございます。最終的な認可につきましては、全国的な統一的な基準に基づいて行なうことが必要でございますので、通産大臣が認可をいたすということにいたしておる次第でございます。
  150. 和田静夫

    和田静夫君 自治省はどうお考えになりますか。
  151. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 百貨店行政につきましては、自治省としていままでのところは明確な考え方をきめておるというようには記憶いたしておりません。おりませんが、全国的あるいは統一的な基準とか取り扱いということも大切な中央で所管される事業一つにいまおあげになりましたけれども、およそ行政というものの一つの取り扱いというものは、程度はございますが、全国的、統一的な基準というものの必要なものが多くあるわけでございます。現在の府県行政の中でも、そういう基準に従いながら地域の実態に即して行政処理しておるものも少なくないわけでございますから、総合的な行政の上で必要だという場合の基本的な考え方からいたしますというと、そういうものも府県行政との関係の中で円滑に処理ができることが望ましいだろうと考えられます。
  152. 和田静夫

    和田静夫君 私もそう思うのですが、通産省どうです、いまの答弁。
  153. 井土武久

    説明員(井土武久君) 確かに地元の商工業との調整ということが非常に大きな問題でございますので、地元の指導が非常に必要なことはただいまの御意見のとおりであると思います。ただ、全国的にばらばらになりますと紛争が起こる。調停についても非常に問題がございますので、最終的な解決につきましては、全国的な審議会にはかりまして、その御意見に基づいて処理をいたしておる次第でございます。
  154. 和田静夫

    和田静夫君 一定の政策指針があって、それに基づいて現地性を十分尊重して、そして現地でもって総合的なこの地方自治団体処理をしていくということで、別に障害になることはないんじゃないですか。
  155. 井土武久

    説明員(井土武久君) 百貨店問題につきましては、画一的な基準が非常に設けにくいわけでございまして、したがいまして、先ほど申し上げましたように、地元における調整が非常に重要であろうかと思います。地元でごあっせんをいただくケースが非常に多いわけでございます。ただ、最終的の基準がばらばらでありますと問題でございます。したがいまして、審議会にはかりました上で決定をいたしていくことにいたしておるわけでございます。
  156. 和田静夫

    和田静夫君 いわゆる最終的な結論に至るまで審議会でもっていろいろな論議がある。それが尊重されながら、最終的にはいわゆる自治体の業務としてこれを決定づけていく、そういう形で別に矛盾が起こらないじゃないですか。
  157. 井土武久

    説明員(井土武久君) 確かに地元の調整が非常に重要でございまして、地元のそれぞれのケースを十分に尊重することが必要であるということは御意見のとおりだと思います。したがいまして、現状でも、地元で調整協議会をつくりまして調整をいたした上で最終的に審議会にはかって決定をすると、こういう手続をとっておるわけでありまして、いずれにいたしましても非常にむずかしい問題でございますので、十分に地元の御意見を尊重してやっておる次第でございます。
  158. 和田静夫

    和田静夫君 大体、たぶん私の主張を認められながらも、一番けつのほうだけでちょっとひっくり返らなければならないことがわからないのですがね。支障ないでしょう。どうしてもなわ張りとして縦に持っておらなければならぬと、こういう理由しかないわけです。
  159. 井土武久

    説明員(井土武久君) ただ、地元だけでやりました場合には、各地において非常に異なった事態が起こってくる可能性がございます。この辺はやはり全国的に統制をする必要があるのではないかと考えております。
  160. 和田静夫

    和田静夫君 それは結論が出されるまでの過程でですよ。通産行政として当然その審議会なら審議会というようなものが考えられる。何もそこが結論を持つ、いわゆる通産本省が最後まで握っておらなければならないというような筋合いのものじゃないんじゃないですか。
  161. 井土武久

    説明員(井土武久君) 現在の百貨店審議会は通産大臣の諮問機関でございまして、この審議会の御意見を伺った上で通産大臣が決定をするたてまえにいたしておる次第でございます。
  162. 和田静夫

    和田静夫君 それはわかっているのですよ。わかっているんだけれども、何もそういうことにしておく必要がないんじゃないかというのです。いわゆる自治団体にまかしたところで弊害がない。弊害がないことはお認めになっているのですから、そうすればそこにお移しになったってよろしいんじゃないですか。
  163. 井土武久

    説明員(井土武久君) 先ほど自治省行政局長からもお答えがございましたように、これは行政のあり方につきましては、程度の問題があろうかと思います。実質的に地元の御意見を非常に尊重してやっておるわけでございまして、現状で支障は生じていないのではないかと考えております。
  164. 和田静夫

    和田静夫君 私の主張に対して、将来の通産行政のあり方として自治省等と十分に調整をするお考えがありますか。
  165. 井土武久

    説明員(井土武久君) 自治省のほうで御意見がございますれば、十分に協議をいたしたいと存じます。
  166. 和田静夫

    和田静夫君 第九次の地方制度調査会では、資料の四十ページにありますように、次のような答申を行なっております。「地方公共団体に対する国の関与には、法令に基づくもののほか、補助金、通達等による事実上の関与が広く行なわれ、しかも、しばしば法令に基づく関与より以上の実質的影響を伴って行なわれている。  当調査会は、このような事実上の関与が、しばしば行政責任の所在を不明確ならしめるばかりでなく、地方自治の健全な発達を阻害する一因となっていることにかんがみ、今後必要なものは法律に明記することとして、事実上の関与は廃止するとともに、現在の補助金制度そのものに根本的改革が加えられることが必要であると考える」、また府県政白書では、「国庫支出金(特に補助金)を通じての事実上の関与その他法令によらない事実上の関与(多く通達による。)は、きわめて広汎にかつ細かく行なわれている、」こう述べております。ここでわかっているのは、昭和三十八年度における各省庁のこのような通達件数であります。防衛庁が十三、法務省が四、文部省が四十七、厚生省三百四十三、農林省百五十七、通産省三十六、労働省七十六、建設省三十六、自治省七十三ですが、いま読み上げました各省庁にお尋ねをいたしますけれども、昭和三十九年度、四十年度、四十一年度、四十二年度、四十三年度、それぞれについて都道府県におろされた通達の件数を教えてください。
  167. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 厚生省でございますが、実はこの別表一の通達の基準がどのような基準であれされているのかによって、必ずしも的確かどうか不明でございますが、四十一年度以降の次官通達だけがわかりますので申し上げますと、ちなみに、四十年前はすでに文書保存期間が経過しておりますので廃棄になっているものもございますので、四十一年以降申し上げますと、三十八年四十九となっております次官通達は四十一年は六十八、四十二年六十四、四十三年八十二、四十四年は一月から六月までの半年分四十四件でございます。ただし、これは予算関係通達を除いた一般通達のみの数でございます。
  168. 岩田俊一

    説明員(岩田俊一君) 文部省関係について御説明申し上げます。  四十二年度の状況でございまするが、全体で都道府県知事並びに教育委員会あての分全体で二十六件ございます。そのうち教育委員会あてが二十件でございますか、それから、四十一年四十年につきましては、ただいま精査中でございまするので若干数字が狂うかもしれませんが、大体四十一年度が二十五件、四十年度が三十六件、それから三十九年度が府県あて二十七件というふうになっております。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 四十年は。
  170. 岩田俊一

    説明員(岩田俊一君) 四十年度が、三十六件というふうに把握いたしておるのでありまするけれども、なおこの点につきましてはにわかの調べでございますので若干数字が上下するのではないかと思われますが、大体そういう状況でございます。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 四十一年は。
  172. 岩田俊一

    説明員(岩田俊一君) 二十五件でございます。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 四十三年、四十四年はわかりませんか。
  174. 岩田俊一

    説明員(岩田俊一君) まだ調査いたしておりません。
  175. 平井啓一

    説明員(平井啓一君) 私、ちょっと御質問の趣旨をお聞きできませんでしたが、自衛隊に対する防衛庁から出している通達の件数ということでお答え申し上げますと、大体防衛庁といたしまして毎年出しております件数は五件ないし六件くらいになっております。これは先生も御存じのところかと思いますが、自衛隊法の九十七条の第一項の規定に従いまして、自衛官の募集事務の一部を都道府県知事及び市町村長に委任しているわけでございますが、この委任の事務に伴いまして、都道府県知事に対して、毎年自衛官のうちの二等陸海空士の募集に関する募集の計画を通知いたしまして、都道府県知事にそれを告示していただく。募集の数あるいは募集の期間あるいは試験の場所、そういったものを告示していただく。そのために通知申し上げる通達が毎年大体二回くらいございます。と申しますのは、年の冒頭に一回年間の計画を通知いたしまして、それから年度の途中でその募集計画が変更することが大体平均いたしまして年一回ぐらいございます。その変更の通知を出す。これが一つございます。  それからもう一つ、自衛官募集の委任事務をやっていただきますに伴いますところの地方公共団体への委託費、この委託費を各都道府県知事に対して毎年お流しするわけでございます。そのときの委託費を流すに伴いますところの文書、これがやはり年に二回くらいございます。これは最初に配分の予定額を流して、そして年度の途中で決定しました額を通知する。大体こういうことで年に五回くらい、まあ通達と申しますか、通知と申しますか、そういう文書を都道府県知事に差し上げているというのが実情でございます。
  176. 和田静夫

    和田静夫君 法務、農林、通産、労働、建設、自治。
  177. 吉田泰夫

    説明員(吉田泰夫君) 建設省につきましては、恐縮でございますが、とりあえず四十三年度だけを調べてまいりましたが、四十三年度の都道府県あての通達の数が、次官通達八件、局長通達四十件、課長通達十三件、計六十一件となっております。
  178. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 自治省でございますが、この三十八年度やっております次官通達の件数、大体こういう件数でございます。大体二十件から三十件くらいが次官通達として毎年出しております。
  179. 鈴木諒

    説明員鈴木諒君) たいへん申しわけございませんが、きょう調べてまいっておりませんので、後ほど調べまして御報告いたしたいと思います。
  180. 井土武久

    説明員(井土武久君) ただいま調査中でございますが、まだ結果が判明いたしておりませんので、後ほど御報告申し上げます。
  181. 橋爪達

    説明員(橋爪達君) 労働省関係も、非常に恐縮でございますが、四十三年の次官通達以上の件数をとりあえず調べてまいりました。それによりますと、四十三年度二十四件、その他につきましては現在調査中でございますので、後ほど御報告いたしたいと思います。
  182. 和田静夫

    和田静夫君 防衛庁ですね、三十八年の半分以下になったというのは何か別に理由がありますか、特別に。
  183. 平井啓一

    説明員(平井啓一君) 先生のお手元にあります三十八年の件数が実は何の件数か、私どもも実は十分承知しておりませんですが、もしそれが先ほど私の御説明申し上げました募集事務に関する通達であるとした場合に、三十九年くらいまでは実は自衛官の募集の計画に関しまして都道府県知事に通知申し上げる文書を一四半期ごとに分けまして年に四回、それぞれの募集計画を通知申し上げております。それから、さらに年間計画をその冒頭に通知申し上げる。それから途中の修正、そういったものがありましたので、当時の件数は現在に比べて多かったんじゃなかろうか、そういうふうに考えられます。
  184. 和田静夫

    和田静夫君 何か法務省もう帰っちゃったと連絡いまあったんですが、これじゃちょっと論議になりませんので、たいへん恐縮でございますけれども、こんなもの半日もあったらちゃんとできると思ったもんですから、克明に事前に申し上げてあったんですが、出てこないわけなんですが、いま調査中なんというのは答弁にならないと思うのですが、しょうがないから、明日一ぱいで——一ぱいといっても、考えなければなりませんから、午前中にできますか。
  185. 熊谷太三郎

    ○理事(熊谷太三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  186. 熊谷太三郎

    ○理事(熊谷太三郎君) 速記を始めて。   〔理事熊谷太三郎退席委員長着席
  187. 和田静夫

    和田静夫君 先ほどに戻りますが、大蔵省と運輸省の答弁を承りたいと思います。
  188. 長岡実

    説明員(長岡実君) 大蔵省から中小企業金融の面に関しましてお答え申し上げますが、中小企業の専門金融機関といたしましては信用協同組合が都道府県知事の監督にゆだねられております。これは信用協同組合というものの基本的な性格からいたしまして、当該地域に非常に密着しておる。したがって、地域的な特色を発揮すべき金融機関であるということ等から、大蔵大臣権限を包括的に知事に委任をいたしております。一昨年の秋に金融制度調査会から答申が出まして、中小企業金融制度のあり方が新たに示されたのでございますが、金融制度調査会の議論の過程では、そういう地域性もさることながら、金融機関というものは国民の大切な預金を預かるものでございまして、そういう点については大蔵大臣の監督する金融機関と都道府県の監督する金融機関でその信用の程度その他に差があってはならない。ある意味においては、むしろ中央集権的な方向に改善すべきであるというような意見も出たわけでございますけれども、結論的に申しますと、大蔵省といたしましては、国と都道府県との権限関係は一切そのままにいたしまして、ただ非常に基本的な問題で、あらゆる金融機関を通じて守られなければならない問題につきましては、権限は現在のままの配分のもとに大蔵省と都道府県との間で密接に連絡をとっていくようにつとめてまいりたいと考えております。ですから、したがいまして、権限関係も通達関係も特にその後改めてはおりません。
  189. 和田静夫

    和田静夫君 運輸省は。
  190. 内村信行

    説明員(内村信行君) 御質問の御趣旨は、いわゆる協同組合等につきまして地方自治体の権限が全部かぶっておらない、国の権限が留保されておる面があるんじゃないか、それについてどうかという御質問だと思います。それについては私のほうといたしましては、なるほどその一つ地域性ということから考えますと、これを一括して全部統一的な方向考えるということが一つ方法かと思いますが、一方から言いますと、業種ごとに一応業種の実態を把握しなければいけないという意味におきまして、国として統一的な方向へ持っていくという場合には、やはり国というものも協同組合の問題についてタッチせざるを得ないというぐあいに考えております。ただ、その運用上においては資金の問題あるいは企業診断等の問題につきましては、これは自治体との連絡をとりまして密接な関係のもとに行なってまいるというのが現状でございます。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 同じ中の「運輸行政の分野については、従来府県行政にあまり取り入れられていないが、道路、産業、住民生活等と密接な関係にあることからも、当然に府県行政との結合がはかられなければならない。たとえば、ハイヤー、タクシーのようにその影響区域がおおむね一府県内にとどまるもので、住民生活と密着するものが住民と直接的なつながりのない陸運局で処理されているのは問題であるといえよう。さらに、地域開発行政関係する公有水面埋立免許権も小規模なもののみしか府県権限とされていないことは、地域総合行政の見地から問題である」、こういう指摘をしているのです。この点のそれぞれについて運輸省はどういうふうに考えますか。
  192. 内村信行

    説明員(内村信行君) まず第一番のハイヤー、タクシー等の陸運行政の問題でございますけれども、これは確かに地域住民に非常に密着した問題でございます。したがいまして、こういった地方交通行政につきましては従来とも陸運局でやっておりますけれども、その場合に民意を反映する方法といたしましては、地方陸運協議会といったようなものも、いままで道路運送協議会がございますけれども、さらにこれに鉄道も含めまして地方の陸運協議会というものを今度つくりまして、従来よりも一そう民意の反映ということを考えております。  それからさらに、非常に地区的な問題であるからそれについてはまかしたらどうか、こういうふうなことでございますけれども、その点につきまして、あるものは確かに地区的なものでございましょう。しかし、あるものは必ずしもハイヤー、タクシーといえども地区のみに限定されないものもございます。そういったところで、この前、三大臣のお話がございました。たとえば地方陸運事務所を統合するといった問題でございますけれども、それにつきまして、一体今後地方に移譲するのはどういうふうにすべきであるか、あるいは留保するものはどういうものであるべきかということにつきまして目下自治省当局といろいろ協議中でございます。そういう段階でございます。  それから最後の港湾の御質問でございますけれども、これも港湾というものは新全国総合開発計画にもございますように、非常に大きな国の政策の一環として考えられ、また臨海工業地帯の設定にしても同様に考えられるものでございまして、そういった意味におきましては国の意思というものが大きく反映すべきものであると思います。したがって、そういうものでないローカルな小規模というものを除きましては、やはり国としての意思を反映する必要があるかというふうに考えております。
  193. 和田静夫

    和田静夫君 いまそういう答弁がありましたが、たとえば国土計画協会の府県合併調査報告というのがあります。その九一ページにこういうのがありますよ。「国の地方出先機関のもつ問題点」の中に、「その管轄区域が各省庁ごとに当該行政を全国的に均衡をもたせて、如何に地域分担を行なうかという立場からのみ定められており、国の出先機関相互の関連及び府県行政との関連はあまり考慮されていない。例えば、同じ運輸省の出先機関である近畿海運局と第三港湾建設局は、前者の所在地が大阪にあって、大阪、京都、奈良、滋賀、福井、和歌山を管轄しているのに対し、後者は所在地が神戸市にあって、兵庫、大阪、京都、滋賀、鳥取、島根、岡山、広島、和歌山、徳島、香川、愛媛、高知を管轄している。」、こういう状態というのはたいへん問題じゃないですか、ここでも指摘しておりますがね。
  194. 内村信行

    説明員(内村信行君) お説のような御議論もあるかと存じます。ただ、いわゆる機構というふうなものは、やはり行政の実態を反映してつくられなければならないものだというふうに考えております。そこで、陸運局のほうは、これは主として海ではなくこれは陸上の部分を扱っております。港湾建設局あるいは開発局といったようなもの、それは海が対象でございます。したがって、おのずからその管轄範囲というものもある程度違ってくるのもやむを得ないことだと考えております。
  195. 和田静夫

    和田静夫君 これ、自治省どうお考えになりますか。
  196. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この各省の国の出先機関につきましては、各省のこの所轄行政の目的達成という意味であると思いますが、その行政の必要からそれぞれ管轄区域を定めております。それ自体として考えました場合には、いずれも合理性があるというふうにも言えるであろうと思いますが、それをそのある特定の地域における行政として、それぞれの各省の出先機関相互間の関連、あるいは地方団体との行政の関連というものを考えますと、一つ地域を中心にして考えますと、その管轄区域がいずれもばらばらに置かれておるという状態でございます。そういう意味では、やはり出先機関それ自体の問題もございますが、同時にまた、出先機関相互間あるいは地方団体との関連において合理的な再編成ということがぜひ考えられてしかるべきではないかというふうに一般論としては考えております。
  197. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 佐藤総理大臣がお見えになりましたので、これより総理大臣に対し質疑を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  198. 和田静夫

    和田静夫君 今日の地方自治をめぐる諸問題が、多かれ少なかれ府県制のあり方との関連において発生しておる以上、この都道府県合併特例法案審議の過程において、私が総理大臣に対して、わが国の地方自治の現状をどのようにお考えになっておられるかという質問をしたい気持ちは、あながち不自然ではないだろうと思います。わが国憲法における地方自治規定は、憲法構造が全体として保障する民主主義体制との関連において不可分の要素として、わが国の伝統的な官僚制支配に対する深刻な反省を込めたものであることを私はまず総理に思い浮かべていただきたいのであります。もちろん、アメリカあるいはイギリスの民主的な地方自治制度を原理的に導入してきたはずのわが国の現行制度が、わが国の政治的、社会的風土の中で所期の効果を十分発揮していないことも、知らないわけではありません。住民の権利意識の未成熟、あるいは議会や議員活動からいろいろと前近代的なにおいをかぎ分けることもできます。だが他方、それにもまして、自治体の活動を不満足なものにしているのは、中央政府の官僚的拘束なのであります。このことは私一人の言い分ではありません。多くの識者が共通をして今日言及をしているところであります。いま広域行政の要請という、そういうことで、この都道府県合併法案が出されてきているわけでありますけれども府県自治の伝統のきわめて浅いわが国において、府県がまさに完全自治体として、さまざまな新しい時代の要請にこたえ、自主的な解決機能を涵養していく上で、一体政府はどれだけのことをしたというのでありましょう。府県の自治体としての自主的な解決機能を養成するどころか、新河川法やあるいは道路法などで権限を上に集中をしてみたり、地方建設局、通商産業局、地方農政局など国の出先機関や、公社、公団をやたらにつくり、いわゆる天下り官僚を府県におろして、府県の自治体としての性格を薄め、国の出先機関化してきたのはほかならぬ政府ではありませんか。ほかならぬ内閣総理大臣の諮問機関であります地方制度調査会も、私がいま述べたことを総称をして、「行政の変化を理由として、行政権限の地方公共団体からの国への引き上げ、国の地方出先機関の強化、国の地方公共団体に対する関与の増大等、中央集権的統制を強化する傾向がみられることは遺憾である」、こう明確に指摘をし、述べているのであります。地方制度関係する政府の諮問機関が、府県なり市町村の自治体機能の拡充という観点から行政事務の再配分を何度答申をしたかわかりません。けさ来その論議を一々繰り返してきたところですが、これに対して政府は一体どれほどこたえたというのでございましょうか。地方事務官制の問題一つをとってみましても、「当分の間、」という、そういう文言が二十余年を経過をしていまだに、これも、先ほど来論議をしたのでありますが、各省間の調整がつかないということで、やりっぱなしに実はなっているのであります。まさに二十余年間も「当分の間、」という形でもって放置されております。その間、その廃止について地方制度調査会やあるいは臨時行政調査会答申をした。行政監理委員会が何度答申したか実はわからないくらいです。佐藤総理は、この現象をどのようにまず認識をされていらっしゃいますか。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 和田君にお答えいたしますが、たいへんむずかしい御質問なんです。中央と地方と一体どう……端的に言えば、そういうことに尽きるだろうと思いますが、その間に、いわゆる官僚的機構だとか、あるいは中央集権だとか、一方で地方分権だとか、こういうことをいわれるのですね。ところで、やはり中央と地方が実は対立をするとか、あるいは無縁なものではない、これは御了承いただけるのじゃないだろうかと私は思います。ただそういう場合に、中央が中心になるのか、あるいは地方にうんと重点を置くか、ただそれだけの考え方である。ものによっては中央にうんと中心を置く、ものによってはやはり地方に重点を置くとか、それぞれ事務の性質でそういうことを考えていくんじゃないかと私は思うのです。いま、わが国の地方制度府県制度は、たいへん新しいものだと、こう言われますが、私は、むしろわが国に根をはやした地方制度、今日まで何らの変わりなしにそのまま続いてきた。これはずいぶん長いことじゃないでしょうか。その同じ地方制度では、地方自治体であります府県市町村の場合を見ると、市町村のほうはうんと合併が行なわれて数が当初から見たらけた違いに減ってきているのですね。しかし、都道府県、これは都というような名前が新しく出ましたけれども、とにかく最初からの数ではないだろうか。さように私は思います。そうすると、ここらにやっぱりいろんなくふうがあるべきじゃないだろうかということ、そのくふうをするときに、その基本的なものとしてあるのは、これはやっぱりわが国の憲法、この憲法が定めているところ、それに従っていかなければならない。中央と地方が対立するような問題、あるいは全然別個な行動ができるようなものじゃない。だから、憲法で与えておる地方自治といいながらも、これはおのずからワクのあることじゃないのか。実はさように私は考えております。しかも、いままでの産業の発展その他によりまして非常に実情として変わってきている。だから、いままでのような財源処置ではなかなか地方自治とはいいながらも、地方自治団体が単独では処理し得ないような状況になっている。むしろ、中央からのその援助というか、それが適正であるようなことが要求されておる。かように私は見ておるんですがね。そこで、とにかくいま提供された問題があまりにも大きいですから、どの辺の点についてお答えしたらいいんだろうかと思いながら立ったのであります。そこで、もし私、まあいま言われる中で私ども直さなければならない、やはり、ただいま民主主義の世の中ですから、官僚的な中央制度でもいかないし、地方制度でもいかない。官僚的主義は除けとおっしゃる。それはそのとおりだとさように私も思います。また地方府県団体、これらに対してもう少し仕事が地域住民を中心にしてやるべきことがあるんじゃないだろうかという御指摘になるそういう点は、ただいま地方制度調査会などが取り組んでいる問題ではないかと思います。しかも、このことは地域的にずいぶん違う。非常な極端な例を申せば、東京都とあるいは地方と、これを比べるとよほど違っておりますから、一がいには申し上げかねますけれども、そういうものができるだけ差等のないように、差別のないようなものにしろということ、そういうことはわれわれが努力しなければならぬことだろうと、かように思いますので、とにかくいま簡単な御説明だったけれども、提供された問題は基本的な問題であり、非常に範囲が広いものですから、私もちょっと答えかねております。いまのように一応お答えいたします。そうして、なおこの点が不十分だと、こういうことがあれば重ねて私はお答え申し上げます。
  200. 和田静夫

    和田静夫君 なお、具体的な問題は各省庁と明後日いろいろと質問いたしますから、私は中央の官僚の方々、別に非難ばかりするわけじゃない。たいへん優秀であると思っております。日本の官僚制の数少ない魅力というのは、むしろ若い才能ある行政官の感覚や、あるいは近代的な素養、ときには毛並みからくる教養やあるいは品性に官庁が指導されてきた。そういうことがあったかもしれないと私は思うのです。そうした例は現代にも見られます。ときには老化した官庁事務処理に生気を吹き込むこともあるでしょう。特に若い行政官の社会科学の素養というのは政策に指導性を持ち込んでさえおります。そのことを否定しようとは思いません。しかし、その積極面は積極面として実は成績主義だけでなく学閥、昇進と結びついておる。あるいは門地と結びついておる。これが彼らの身分安定を導いて、その他大ぜいの行政官に従属と無気力をしいてきた一面も見のがすわけにはいきません。ましてや、この強大な自己保身組織としての官僚制が地方自治体を巻き込もうとする、天下っていく中央官僚一人一人の善意を越えて、その存在そのものが地方自治の理念とまっこうから矛盾するものとなって現象するのであります。去る三月十八日の実は本委員会において私の質問に答えられた現宮澤官房長が、自治省幹部職員名簿に登録されているもののうち、現在府県課長相当職以上にいるのが百七十人ぐらいいると答えた。ここに先ほど来、各省の官房長の方々がお見えだったのですが、実はその各省ごとに人数を明後日は確かめてみたいと思っていますけれども、佐藤総理、その辺のところは、有能な官僚上がりですから御存じだと思うのです。私はこの部分が若干重複するのですが、ぜひ総理大臣にお聞き取り願っておかなきゃならぬ。自治大臣はちょっとひど過ぎるという表現で認められたことがあるのです。四十三年の六月一日に、福岡県社会課長に三十一歳という若い特権官僚が就任をしました。厚生省の三十五年組の川崎幸雄さんがそれです。彼は当時、厚生省大臣官房企画係長だったのですが、福岡県に転勤をする前日、課長補佐に昇格をして、社会課長の発令を県から受けた。福岡県には、昭和二十八年から三十五年までの人事委員会の上級職の試験合格者が、実は七十四人いるのです。その中から本庁の課長には一人も任命されていません。そこへ川崎氏が赴任をして、福祉行政については何も知りませんと言ったこともあって、職員の実は憤激を買うこととなりました。  同じような事件が四月、新潟県でも発生しました。新設された豪雪地域振興課長に、県は上川博、二十九歳を発令をしました。彼は三十七年の自治省特権組に登録された者ですが、岐阜県企画課から経済企画庁に、そこから自治省交付税課と、ポストを飛び歩いて新潟県に入ったのです。せめてこのポストぐらいは地元の中でベテランをつけるべきだし、新潟県の県民にとっては積雪という問題は、政治に対する求めるところの悲願なんですね。そういう感じがありますから、県民の反感を強く買ったのは言うまでもありません。  県の最高幹部の一人である部長が、知事の留守中に更迭されるという事件もありました。六月十五日、愛知県衛生部長の金光克己氏は、桑原愛知県知事の海外出張中にもかかわらず、厚生省環境衛生局長に就任をしました。また、この六月異動の中では、茨城県の副知事、二年目の任期の中途で、大蔵省の理財局次長に転任しました。後任には大蔵省会計課長が任命されるというたらい回し人事によって、大蔵省の内部の都合で、県の重要な人事が左右されたと言って過言ではありません。私は、さらに詳細なことを目下調査をしているのでありますが、こういう最近、知事反対をしたにもかかわらず、ある省の役人を土木局長に押しつけた事例を耳にいたしまして調査をいたしております。このように、中央官庁高級官僚の一方的都合によって県の人事が動かされているという事態を、総理は、地方自治の原則に照してどのようにお考えになりますか。
  201. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま一々実例をあげてこうこうだと、こういうお話でありますが、私はその中には県議会の関与するような人事があると思う。たとえば副知事、そういうのならば、これはもう明らかに県議会関係するのじゃないか。そういうところで承認をとられるという、まあ一応とられた人事だと見なきゃならぬから、それは別としても、その他のものについて、いまお話しのあったとおりであればこれは不適当なことだと思います。やはりこれは自治権者と申しますか、何といったって知事自身が最高の責任者ですから、やはりその人の意に反して、ただいまのようなことが行なわれるとは思いません。私はそういうことがあってはならないと、かように思います。だから、事前によく話し合いができていないと、他からそういうところへ行くということはなかなかむずかしいことだと思います。また、人事でありますから、いまもお話しがありますように、福岡県には上級職の試験に合格した者が七十名もいる、そういうのを追い越して若いのが出て行く、そういうのは不適当なことだと思います。とにかく実情に合った処置がありますから、そういう方向でなければならぬと、私はさように思います。
  202. 和田静夫

    和田静夫君 本題に戻りますが、私は、広域行政の要請ということから、国の縦割り行政を総合する行政が県段階でますます要請されるという意味においても、府県の自治体機能の拡充ということは結論されても、府県合併というのは必ずしも結論されないと思うのであります。詳しくは後ほどの委員会でさらに論じていきますけれども広域行政の要請には、現行自治体間協力方式の運営の改善によって十分こたえられると思うのです。そのことを自治大臣も、この国会の冒頭、その所信表明に対する私の質問に、その是なることを答弁されているのですが、一体、閣議ではどのような議論の経過を経てこの法律案を結論されたのか、総理にぜひ承りたい。昨日、実は建設委員会とこの委員会との合同審査を行ないましたが、建設大臣は明確に必要性を感じていらっしゃらないですね。
  203. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) まあ閣議決定をしたのですし、私自身、もちろん総理、閣僚ともそれぞれ同じ立場で意見を交換して、そうして最後に閣議決定をするのであります。これは、まあ総理が押しつけるというものでもありません。ところで、ただいま言われるように、ものによっては改善の程度で事が済むものもあります。しかし、やっぱりものによっては広域行政という限りにおいて合併まで必要とする、このほうがしいいと、こういうものもあります。ただいま国の行政そのものから申して、経済的発展、また社会的な点からも、最近は広域行政方向にとにかく行きつつある、向かいつつある。この傾向は御了承願えるんじゃないかと思いますね。たとえば東京について申せば、東京を働く場所にしておるが、住まいは千葉県かあるいは埼玉県か、神奈川県か、こういうような住所は別なところだ、働くところは東京だ、こういう方はずいぶん多数いらっしゃる。それがただ単に、住宅の問題だけで広域行政を要求するわけでもないし、あるいは道路の点等からもいろいろの要望が出てくる。そういうことを考えると、やはり一つの大きな地域考えて、そうしてその間にあまり考え方が相違しないことが望ましい。同一の考え方ですべてが進んでいくということが望ましい、これはいなめないことだろうと思います。しかし、もちろん都市に集中することは、これは一つの弊害も伴いますから、ただそれだけのために、ただいまのような府県合併をする、こういうと取り残されるところはどうするかというような疑問も出てきましょうから、それはそれとしての対策を講ずるとして、とにかく広域行政の必要性、これはたれも否定するものはないと思います。ただ、それが府県合併という形で広域行政を達することの必要があるのかどうか。ただ単に連携を緊密にすることによって大体目的を達しやしないか、協議会等を緊密にすることによってこれはできやしないか、こういうのだと思いますが、そこが程度の問題だろう。だから、地方制度調査会なぞでは、やはりこの種の議論が出てくるのも、これも当然のことかと思います。なかなかわれわれも今回のこの合併法案、これはまあ促進法ですが、それを取り上げるについては相当な慎重な態度であったつもりです。と申しますのは、国全体についてこれを全部直ちに適用するという、そういう考えなら、これはよほど掘り下げての話もありますけれども、どうもいまのところ一部において合併が議論され、そういう場合の根拠法がない。いままできめておる憲法に定むるところでは、どうも手続上は不便だと、そこらから見てこれから広域行政を進めていく上から合併の話が出る。そうすると、やはりそういう際に根拠になるものをつくろう、それが今回の提案した法案だと思います。その程度にひとつ御理解をしていただいて、いまそれでは具体的にそういう話があるのかどうか、こういう問題もあります。そういう動きのあることだけは確かだと、まだしかし、確定的な地域住民意思、意向として合併が具体化しつつあると、そういうところまではいっておらない、かように私は思っております。しかし、ただいまの広域行政の必要だということは、国の縦割り行政という面からばかりじゃありません。これは実際に地域住民としてもその必要を痛感しておるのじゃないか、かように私は思います。
  204. 和田静夫

    和田静夫君 私は広域行政に関連をしていま述べましたが、佐藤総理に、一体、現行制度のもとでやれるだけのことをほんとうにやっていらっしゃったのだろうかと実は反問をしたいのであります。あるいは閣議でそうしたことが真剣に取り上げられて論議をされて、こうした法律案になってきておるのかということに実は疑問を投げかけざるを得ないのです。これはもうすでに総理大臣のお耳に入っていなかったら、自治大臣は約束をほごにしているのだから、たいへんなことなんですが、中部圏という法律案を、たいへん問題があったのだけれども、通したのですよ。そのときに自治大臣に、総理大臣にぜひ伝えてくれと言って注文をつけた。それをちょっと確認をしておきたいのです。たとえば昭和三十一年に首都圏整備法という法律ができた。この法律は第十五条で、「委員会は、毎年度、内閣総理大臣を経由して国会に対し首都圏整備計画の作成及びその実施に関する状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならない。」、こうなっているのです。また近畿圏整備法も、中部圏整備法も、それぞれの整備計画内閣総理大臣が所要の手続を経て決定すると明記をしているのです。しかるに、私はこの辺を調べてみたのです。ところが全然やられていない。さきの首都圏及び近畿圏の近郊整備地帯等の整備のための国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の審議の際、これらの整備計画を資料として提出するように求めたところ、これが法律で定められたとおりにつくられていないということが事業計画の部分について明らかになったのです。つまり、首都圏整備計画なり近畿圏整備計画なりの重大な構成要素である、毎年つくられるべき事業計画が過去一度もつくられてこなかったのであります。そういう事情が判明を、いかに抗弁をされようとも、いたしました。これは首都圏整備委員会なり近畿圏整備委員会なりが法律にきめられた義務を怠ってきたということです。これはまず本部長の責任なんです。こいつを読んでみますと、これは首都圏整備法の第十条によりまして、内閣総理大臣委員に職務上の義務違反があると認めたときは罷免をすることになっているわけであります。法を厳密にあのとき適用をしておれば、この法律案は通らないばかりじゃない。坪川現建設大臣は佐藤総理大臣の手によって罷免されておらなければならないのであります。もっと突っ込んで言えば、前建設大臣保利現官房長官も、前内閣時代に罷免をされていなければならない。罷免された大臣を官房長官に任命されたということになって、おそらく住民に対して地方自治を掲げた総選挙が行なわれている、こういう状態になっておったと思うのですが、きょうあらためて内閣総理大臣にこのことを申し上げたのは、広域行政をいろいろの面で強調されるんですが、広域行政などというものが、あるときはいま申し上げたようにたいへん軽く取り扱われているんです。あるときは何かそれが決定的な要因であるかのように扱われている、そういう政治姿勢をこそ私は実は問題にしなければならない、こう思うからなんです。その点、総理はいかがお考えになりますか。
  205. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま首都圏あるいは近畿圏、この整備計画と申しますか、基本的なものが全然なされておらない、こういう御指摘ですが、これは基本的なものはできたのであります。しかし、そのできた後に毎年それに対する事業計画も出て、こういう場合に基本計画に合わないというか、基本計画より以上に事態が進展しておる。あるいは人口の集中度、あるいは産業の集中度等、本来ならばわれわれの基本計画に載っておらなければならないもの、それより以上の事態が出ている、それがけしからぬと言われれば、けしからぬことに違いないのですが、なぜ実情に合うような計画を持たないか、こういうおしかりはもっともだと思いますが、一応立てた計画自身、それより以上のものがとにかく出てきた。そうして年々これに対する事業計画を立てるということ、それまでの事柄が基本を直してかからないと合うものができないんですね。これはまあ最近の都市の膨張程度が非常に早いですから、その辺はある程度お許しを得たいと思います。しかし同時に、これで政府責任をのがれようというのではありません。だからこそ、皆さまから御鞭撻いただくように、われわれもさらに追っかけてそういうものを訂正しながら、それぞれの事業計画を持つと、こういうことでなければならぬと、これは理屈だと思います。なお、きょうはここにもそのほうの担当の事務当局が来ておりますから、そちらで詳しくは御説明をすることと思いますが、ただいま申し上げますように、一応持った計画、それより以上に事態は進展しておる。だから狂ったというか、狂った計画に対する事業計画、これは立てることが無意味になったと、かように私は思っております。しかし、これでただいま言われるようなそれぞれの連中の責任を免れようという、そういう意味の弁解ではありませんが、とにかく事態が非常にむずかしくなってきた、その点の御了承を得たいと思いまして、事態のありのままを正直にお話した次第であります。
  206. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと総理大臣、もう少しいまのやつは検討しておいていただきたい、期待はいたしませんが。衆議院にまだ法律案かかっていますから、これは衆議院通らないこともありますよ、もしそういう事務当局の総理に対するサゼスチョンなり、あなた方、委員会でどういうふうに述べられたか、どういうふうに私に約束されたか思い浮かべて、もっと親切に総理大臣に教えておかなければ、いまのような態度なら衆議院で通しません。そんなばかなサゼスチョンのしかたありませんよ。なぜ私がこの問題取り上げたかと申しますと、国土計画協会が行なった府県合併調査報告書を読んでみますと、近畿圏本部の活動が十分でないことが阪奈和合併促進の一つの理由でありますと、こう言っている。したがって、近畿圏本部の活動というものが具体的に事業計画等を設定して十分であったならば、逆に阪奈和合併ということの必然性はないということなんですよ。そういうことを私は指摘したいがゆえに、再びこの問題を取り上げたんですが、時間がありません。  最後に、東京都議会議員選挙を前にして、タイムリーに地方制度調査会で首都圏をどうするか、東京をどうするかという議論がなされておりますので、私はこの問題についてお聞きをしておきたいのですが、実は去る二月二十五日の本委員会で、私の質問に答えて野田自治大臣は、「私が二十三区を一緒にして云々と言ったことが記事に出ておりますが、私はいろいろな意見があるということを申し上げたのでありまして、いま自治省がこういうことに向かって二十三区を一緒にしてあるいは東京市をつくるとか、こういう構想を持っているというようなことではございません。」と答えられておるのでありますが、六月十九日の日本経済新聞によりますと、「自治省では四都県が合併して大東京圏が誕生した場合、日常生活の根幹となる自治体として、二十三区を一体化して「東京市」とする考え方を固めている。」と報道をした記事がまたまた載りました。そうすると、その後、自治省の腹が固まった、こういうことにとらざるを得ないのですが、内閣の責任者としての総理はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) そういうたいへんな重大問題は事前に総理の耳に大体入るのであります。まだ私の耳にはそういうようなことは全然入っておりません。しかし、もうすでに雑音とでも申しますか、雑音などは、相当新聞その他で報道されている、だから、いまの新聞その他に報道されているものを私は全然否定はいたしません。新聞の諸君も根のないことは出してこないと思うのですね。だけれども、いま言われるように、一つの構想としてまとまると、その方向でさらに中身を整備しようじゃないか、こういうような段階になれば総理の耳に入るはずであります。また、もちろん自治大臣は、そういう問題はみずからの仕事ですから一番先に耳に入るか、自分考えるか、どちらかでございますが、本日、自治大臣自身まだそういうことも全然やっておりませんものですから、その辺は誤解のないようにひとつ御了承をいただきたいと思います。
  208. 和田静夫

    和田静夫君 そう言われると何ですが、朝日新聞が最近連載した「都議選に臨む各党の抱負」という座談会で、あなたの腹心中の腹心といわれる自民党の田中幹事長は、「自民党が持っているといわれる東京市構想、首都圏構想や中央政府との関係はどう考えるか。」という設問に対して、「どちらも、まとまった構想じゃない。だいいち社会、共産両党の支持で成立っている美濃部都政下で、この構想を持出せば、自民党の報復と受取られやすい。しかし、いまとはいわないが、いつの日にか国民的課題として考える必要がある。私の考え方からすれば、都道府県は真の自治体ではない。」と言いきっている、「せいぜい市、郡どまりを自治体と呼べるだろう。単独の財源が一〇%にも満たない県もあるんだから。」、こういうふうに答えておりますが、それじゃその点、総理はどのようにお考えになっておりますか。
  209. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは新聞の企画でそれぞれが思い思いの意見をぶっているという形だと思いますので、おそらく社会党の方にしても共産党の方にしても、私のほうの田中幹事長と同じような意味発言しているんじゃないかと思います。だから、いまの時点で具体的なものがあるかというと、そうじゃない、やっぱりいつの日かという、そういう意味でこれからの将来の展望をやっぱり描いているものはあるだろうと思いますね。そういうものが自由に論議されると、そういう場面だったのではないでしょうか。だから、そういう意味から考えて、おそらくいまのままで未来永劫この姿がいいのだ、こういうことを言う人はだれもいないだろう、これはやはり絶えずいいか悪いかが考えられ、研究されながらより住みいいような、より行政が効果的なもの、そういうものを打ち出すべくいつも考えられるのじゃないかと思います。たいへん申しわけないことですが、田中幹事長にしてもその発言自身、いまある読まれた文言自身、どこからもしっぽをつかまえられないように話しているのではないかと私は聞き取ったのであります。さすがに私の信頼する幹事長だけのことはあると、こういうふうに感じております。
  210. 和田静夫

    和田静夫君 一九五六年の「イングランドとウェールズにおける地方自治体の組織構造及び区域に関する英国政府白書」、これでは地方自治体の組織構造を決定する基準は、民主主義的性格を維持しつつ所与の諸機能を効率的に果たすものであるかいなかによるとしていますが、行政効率と民主主義のいずれによりウエートを置いて地方自治制度考えるかは、広域行政をめぐる最大の私は焦点だと思うんです。しかるに、地方自治体が単なる行政区画と異なるところは、行政機能の側面とともに住民の自己教育の場であるという側面があることだと思うんです。そしてわが国の現状の中で、この後者の側面を伸ばしていく中でいわゆる大都市問題も解決をしていくという視点が、何より私は肝要であると、そういうふうに先ほども触れたんですが、確かに生活圏といわれるものは首都圏といわれる規模にまで拡大しました。しかし、そこにコミュニティーができているかどうかということは、私はおのずから別だと思うんです。都市自治イコール生活圏自治というものを軸に地方制度の改革を考えていこうという考え方がありますが、私はこの考え方には必ずしも反対ではありません。しかし、それはその都市圏なり生活圏なりコミュニティーが形成されていく、あるいは形成していく過程の中で追及されなければならないと思うんです。それはどのように一体形成されるのか。いま住民に現にある自治意識の芽ばえを伸ばす以外に私はないと思うんですよ。総理は、東京都政調査会が行なった「東京都民の自治意識と特別区制に関する世論調査」の結果をおそらく御存じだと思いますけれども、「区長は公選にすべし」という意見が六三%、「現行の選任制度がよい」という意見が一三・八%しかないんですよね。そうして、いま起こってきている地裁の判決の勝訴まで進んだ練馬区を中心とする区長の公選運動に象徴されたような市民運動を、そうした都市自治への芽ばえとして評価をする、位置づける立場に立つならば、先日の地方制度調査会における美濃部都知事発言は、時間がありませんから重複を避けて読みませんけれども、きわめて私は前進的な改革的な内容を持っているのではないかと思うんですが、その点は一体、総理どのようにお考えになりますか。
  211. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま東京都の場合、地方制度調査会ももう十何回目ですか、とにかく取り組んでせっかく検討している。私はいま言われる特別区とでも言いますか、区長さん、そういうのが他の市町村と比べまして任命制になっている、そこらにややふに落ちないものがある。しかし、この区制をそれじゃ片づけるのかというと、それもなかなか決しかねる問題じゃないか。どうも私自身が現段階でこういうことについて言うことがいいでしょうか悪いでしょうか。さっきの新聞じゃないが、また少し先ばしり過ぎたということになるんじゃないかと思うんですが、せっかくのお尋ねだからそれはお答えするのが当然かと思いますが、ただこの問題は、いま選挙がやられておるし、そういう際にその影響などを考えると、もっと私自身は慎重であってほしいと、かように思いますので、お許しを得て、できればひとつそれは他の機会に譲らしていただきたいと思います。
  212. 和田静夫

    和田静夫君 いまの時期だからこそ、私は総理の見解を求めたかったのですけれども、それじゃ総理に対する質問は一応時間でありますからやめます。
  213. 原田立

    ○原田立君 いま和田委員からも質問がありましたことに多少重複する面があるかもしれませんが、私はやっぱり大事な問題であると思いますのでお伺いしたいと思います。先月、今月でしたか、地方公聴会に私大阪に行ってまいりましたが、また当日、中部、名古屋のほうでも公聴会があり、それらの意見を聞いてみますと、現場をあずかる知事さん並びに議長等の意見は、都道府県合併にはきわめて消極的である。そういうふうな結論を私持ってまいりました。それからまた当委員会において自治大臣は、しばしば合併手続だけの法律をつくるのであって、阪奈和問題とか、東海地域合併に使うのじゃないというようなお話しもありました。それから建設大臣は、さしてこの法律は重要とは思われないというような発言もございまして、そうすると、現在どうしてもつくって置く必要性のある法案とは思えないですね。そういうふうな意味で、これはもう引っ込めたらどうなんだというような感じを持つのですが、たいへん総理にぶしつけな質問ですが、その点まず第一にお伺いいたします。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) やはりいまはっきり支配的な意見だと、かようには申しませんが、合併したらいいだろうという意見、かつて私も島根でしたかどこかに行って、島根、広島、山口、これなどは一緒になったらもっと効率が上がるだろうということを発言したこともございます。これは総理の見解というよりも個人の見解、それに類似した個人の見解を私どももしばしば聞くのですが、たとえば大阪、和歌山、奈良、あるいは愛知、岐阜、三重、そういうような意見をしばしば聞きます。あるいはまた四国四県を一つにしたらどうか、こういうような話もあります。そういうような話がもやもやしていることだけは事実ですね。これは支配的な意見であると、そうは言えないが、相当な主張者もある。こういうものがさらに前進するといいますか、そういう場合に基本になる、そういうものを片づけるような手続法、あるいはもっと実のあるような何か寄るべきものがほしくなるのではないか。だからこそ、調査会ども何か政府考えたらどうかというような意見が出てきております。かように私は理解しておりますが、原田委員が言われるように、地方住民の自発的意思によって圧倒的に心から願っている。そこまではございません、ございませんが、ただいまのようなそういう動きのあることだけはいなめない事実である、かように私は思っております。
  215. 原田立

    ○原田立君 当委員会でもしばしば指摘しているところですが、都道府県合併をして、ただワクを大きくするようなことよりか、もっといまやらなければならない問題があると思う。それは何かといえば、手厚い行政、財政の裏づけをする。特に仕事をやるのに財政的な裏づけをがっちりしてあげるということが これが現在の大都市問題及び過疎過密問題を解決するかぎじゃないかと思います。それで、現在においても知事の連絡会議とか、あるいは各種の協議会、そういうものを積極的に活用して多大の効果を上げる、あるいは一歩でも二歩でも前進していく、こういう現状なんですから、むしろそっちのほうを強化すべきじゃないか。ただ単に都道府県合併してワクを広げるだけでは、大都市問題過密、過疎問題等を解決するものではない、こう私は思うのですが、いかがですか。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) もちろんそのとおりだと思います。ただ合併するだけが能ではない。合併してその行政の効率を上げる、地域住民の利益になること、それがやりいいというか、やりやすくなる。そういうことをやらないで、ただ一緒にするだけで万事終われりじゃない、かように思います。やや違いますが、市町村合併が、ずいぶん各地で行なわれております。しかも市町村の財政事情はそれぞれ違っている。しかし、大体合併した後に、その市町村広域住民はいいほうへ大体均てんしているといいますか、悪いのが合併して、それじゃ薄められるかというと、薄められないので、やはりいいほうにみななっている。その辺など考えると、やはり府県の場合もそういう方向に指導ができるんじゃないか。そういう方向に物事を考うべきじゃないか。この辺が合併論者の一つの言い分です。いまのように合併して全然効果がないんじゃないか、あるいはもっと合併したら弊害がある、こういうところまで言えるか、私は少なくとも弊害はないように思います。そうすると、やはり合併したら合併したように、それから先は身をひとつ入れる、力を入れる、こういうことであってほしいように思います。
  217. 原田立

    ○原田立君 その裏づけをがっちりさせるということは、いまも申し上げたように従来から言われている事務の再配分、あるいは税源の再配分ということがもっと具体的に出てこなければ、そういう口だけのことであって実際は何もないことになる現に岐阜の平野知事権限委譲等による国、都道府県及び市町村間の事務の再配分をしてくれ。あるいは三重の田中知事も、市町村の行財政能力の拡充をはかり、県との機能分担を明確にすべきである。あるいは国の権限の委譲をはかれ。また、和歌山の大橋知事行政事務の委譲、それに伴う財源付与等合併を促進する積極的な方策が織り込まれていないことが不満である。あるいはまた奈良の西口議長は、市町村の行財政の充実をはかり、府県市町村との間の事務の再配分府県合併の基本的要件である、こういうふうな意見を言っておりました。それで、この前、自治大臣にお伺いしたときに、今度はこの都道府県合併法案を出すにあたって、このことをなお一そう積極的に取り上げていく、突破口にしていくというような意味合いの御発言がありました。これは何も都道府県合併にかかわらず、従来から言われている大きな問題なんですから、それに対して総理は積極的な意味での事務の再配分、税源の再配分を取り上げていかれるかどうか、この点をお伺いしたい。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いまのお尋ねなんですが、これは合併するから事務を再配分しろ、そういうのじゃございません。合併とは別個にして、国、府県市町村、こういう三段階の行政のあり方、そこらに、中央に適当なものは中央に、また地方に適当なものは地方に分けろ、こういうようなことはいつも言われております。でありますから、行財政の再配分ということが地方自治を論ずる場合にいつも議論になります。そのいい例が、ただいまの地方事務制度、そういうものについて議論が集中しておると思います。また事務を分ける以上、それにお金もつけてやるというか、財政的な措置が当然とられなければならない、かように思います。しかし、ただいまの問題、合併と結びつけて、合併するからそういうところについては特別な事務の再配分をしてくれろということであったら、私はノーと申しますか、そんなことにならない。やはり地方府県というものが中央からどういうような権限を持つか、またさらに市町村からどういうような仕事を吸い上げるか、あるいは分配するかというそういう地方自治の当然のあり方として考うべきだ。これは合併するとかしないとかということじゃなしに、別個に筋の立った考え方をしたい、かように思っております。
  219. 原田立

    ○原田立君 よく意味が受け取れないのですが、同じ問題ですけれども、それはやめましょう。  次に、住民投票の問題なんですが、それぞれの都道府県合併には、いままでも住民投票を要することになっているのを、これを三分の二以上の議会賛成があれば住民投票は不要であるというふうにしているのですが、奈良県の奥田知事は、住民投票手続は断然踏むべきである、こういうような意見でありまして、和歌山の大橋知事は、住民意見を十分に聞くことが必要である。あるいは大阪の八木議長も、住民投票による現行法のほかに特例を設ける必要は認められないというような意見をるる言っておりました。それで、投票等は必要欠くべからざるものにするのが民意の尊重につながる、住民投票の不要論はやむべきである、こう思うのであります。このことはいままでの自治大臣といろいろ意見交換しておりましたが、三分の二以上あれば要らないのだということは終始一貫しているけれども、それは法を軽く見るおそれがある、こういう態度法律というものをつくるべきではない、やはり多くの人の意見のように、住民投票というものは必要欠くべからざるものにそこは改めるべきである、こういうように思いますがいかがでしょうか。
  220. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 住民投票、本来がそういう形のものだと思います。しかし、圧倒的に地方議会で通過した、そういう場合に住民投票をやらぬでもいいだろう、これがものの考え方です。そのいまの三分の二以上の賛成、これが圧倒的な支持と見るか、あるいは四分の三以上でなければならぬというならば、そこらの問題はございますが、私ども三分の二以上といえば、これは圧倒的な支持だ、かように思います。さらにそれを直接投票にまで問う必要はないだろう、この辺はいわゆるかわって地方議会の数で賛成票できめたらいいじゃないか、こういうのが私ども考え方であります。だから住民投票によれという本来の筋はいまのような形、これは曲がった形といわれるかもわかりませんが、全体の投票よりも、ただいま申すように一応住民意思によって、手によって合併するというような場合には、地方議会のまず三分の二以上の多数があれば、さらに地方住民の一般投票に問わなくてもいいだろう、これが考え方であります。
  221. 原田立

    ○原田立君 ですから、総理、そういう考え方が、簡単にするというだけで現在地方自治法できまっている、憲法でちゃんと住民投票は必要である、あるいはまた憲法九十六条にも、憲法改正するときには必ず住民投票を要する、こういうふうに法を尊重する意味において手厚くしているわけです。それをそういうふうに、いま総理自身仰せになるように手軽く扱うということは法を軽んずることになりはしないか、そこを指摘しているのです。
  222. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたしましたように、今回の場合は、これは地方住民の発議で合併する。国からの命令だ、あるいは中央から命令だ、それで合併するという場合なら、これは全然事柄が違いますから、それは地方住民意思を聞くという、それは直接投票によりますが、ただいま申すような、もともとが地方住民の発議じゃないか。それならばいまの地方議会過半数ではなくて三分の二以上、普通ならば単純多数でしょうが、そうでなしに三分の二以上ということで、そこに特別な注意が払われておるということを御了承いただきたい。
  223. 原田立

    ○原田立君 これで終わりたいと思うのですが、先ほどもちょっと言いそびれたのですが、都道府県合併は、そうすると、それは地域住民が住みよい社会をつくり環境をつくる、こういうところにつながっていかなければならないと思うのですね。しばしば地方公聴会に行ったときに各知事さんたち意見もそうです。それで、今回の法案では積極的なプラス面は見られない。従来のことを補償する、すなわち合併によるマイナス面を補償するという消極的特例だけしかありません。積極的プラス面というものをもっと打ち出すべきではないか、かように思うのです。自治大臣はしばしば、この法案特例法で促進法ではないといっておりますが、そうなると、不要不急の法案ではないかということになるわけです。まあそれはそれとして積極的プラス面をこの法案で打ち出すべきであると、こう思うのです。マイナス面だけを補償するというような、そういうようなことで従来長い間親しまれてきた現在の区域、地域、これらをただ法律だけで合併するというのは明らかに間違いじゃないか。私、言いたいのは、もっと積極的なプラス面というものを打ち出すべきだ、こう申し上げたい、いかがですか。
  224. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 原田君、まあ先ほどちょっと言いかけて途中でやめられたのはいまの問題だとこういうことですが、これは確かに合併して、そうすれば全体の住民、これが等しく便益を受けて住みいい社会ができる、そういうものでなければならぬ、これはもう言われるまでもないことであります。ただ、法できめることと実際出題として話し合われることと、これは方法があるだろうと思います。私は合併するという場合に、ただこの法律で定めてあるその条件の三分の二がすぐ賛成するものとも思いません。まずどういうような申し合わせで話が進んだか、これは普通の結婚の場合でも媒酌人の仲人口というのがありますけれども、とにかくその間を取り持っていろいろの話をして、双方の意見が一致してやはり結婚の話ができるというのがいままでの例ですね。最近は直接話し合うことも多いと思いますが、とにかく双方が話し合って初めて具体的な話をして、合併条件というか、そういうものが満たされる。だから、法律でこの合併法、そういうものの基本をつくったが、それに基づいておそらく一緒になろうというところは話し合いが始まるだろう。その話し合いで、ただいま言われるような問題が必ず出てくると思いますね。自分のところではこんなむずかしい問題をかかえている、これはどうも過疎地帯になる、おまえのところはみんな工場ばかりかかえていてうんと富裕じゃないか、ひとつそこらも分散しようじゃないか、こういうような話ができて、おそらくやろうとか、あるいはどうも道路も一方にだけ片寄っている、これもまんべんなくやるようにしてくれないか、それには一緒になればできますという、いわゆる合併条件を形成している話が進んで初めて両者の意見が合致する、あるいは三者の意見が合致する、そこで初めてこの手続によると、こういうことになるのじゃないかと思いますね。法律はそこまできめておりませんが、そしてその上で、いままたこれを、希望を与えるわけでもありませんが、いまは御承知のように新国土総合開発計画というものがある、その線に乗せれば一体どうなるのか、あのマスタープランでわれわれが一緒になったときにどういう役割りを果たすか、そういうときになると今度国に対していろいろ要望も出てくるのではないかと私は思いますがね。その辺のことを考えながら、いま原田君が言われるように、とにかく合併した以上その地域住民がよりしあわせになるような、また知恵をしぼってそこへ持っていかないことには、何のために合併したかといって後世からしかられるようじゃいかぬ、さように私は思います。
  225. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 佐藤総理大臣、ありがとうございました。  暫時休憩いたします。    午後五時六分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕      —————・—————