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1969-06-24 第61回国会 参議院 地方行政委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月二十四日(火曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  六月十九日     辞任         補欠選任      鈴木 省吾君    久次米健太郎君  六月二十一日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     鈴木 省吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         内藤誉三郎君     理 事                 熊谷太三郎君                 吉武 恵市君                 山本伊三郎君                 原田  立君     委 員                 小林 国司君                 鈴木 省吾君                 船田  譲君                 増田  盛君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 若林 正武君                 竹田 四郎君                 千葉千代世君                 松澤 兼人君                 和田 静夫君                 阿部 憲一君                 山田  勇君    国務大臣        自 治 大 臣  野田 武夫君    政府委員        通商産業省企業        局立地公害部長  矢島 嗣郎君        自治政務次官   砂田 重民君        自治省行政局長  長野 士郎君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        大蔵省関税局企        画課長      渥美 謙二君        厚生省環境衛生        局環境衛生課長  赤穴  博君        厚生省環境衛生        局公害部公害課        長        橋本 道夫君        水産庁長官官房        調査官      竹原 幸吉君        運輸省港湾局技        術参事官     岡部  保君        海上保安庁警備        救難監      猪口 猛夫君        建設省道路局企        画課長      井上  孝君    参考人        東洋大学教授   磯村 英一君        成蹊大学教授   佐藤  竺君        一橋大学教授   田上 穣治君        学習院大学教授  恒松 制治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○都道府県合併特例法案内閣提出) ○派遣委員の報告 ○連合審査会に関する件     —————————————
  2. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  都道府県合併特例法案を議題といたします。  本案につき、参考人として一橋大学教授田上穣治君、東洋大学教授磯村英一君、成蹊大学教授佐藤竺君及び学習院大学教授恒松制治君が出席されております。  参考人方々には本日お忙しい中を御出席いただき、まことにありがとうございました。  これより参考人方々の御意見を伺うのでありますが、初めにお一人十五分程度でお述べをいただき、続いて委員の質問にお答え願うことといたしたいと思います。  磯村参考人にお願いいたします。
  3. 磯村英一

    参考人磯村英一君) 私から意見を述べさせていただきたいと思います。  現在、責任を持っておる大学が二日前から封鎖の現状にございまして、非常にむずかしい状態にございます。したがって、お許しを得まして一番最初に意見を申し上げたいと思います。  この法案につきましてはすでに幾多の御意見がございますと思います。私は自分専門のたてまえからいたしまして、主として地方自治体機能がいろいろの面から変わりつつあるというそういう現状から、この案につきましての意見を申し上げたいと思うのでございます。  第一の問題は、戦後におきます日本のいわゆる地方住民というものの生活それ自体が変わっているということでございます。これは非常に抽象的に申し上げますが、私どもはいわゆる地方自治体というものは主として触覚的段階にあったとこういうふうに位置づけをいたします。いわゆる人間関係が触れ合うという、そういう形で地方自治というものがつくられておったと、こういうふうに考えますのでございますが、このいわゆる触れ合うという形でつくられておりますのが市町村段階自治体であるとこういうふうに考えます。その触れ合う段階というものが、今度は私どもは見る段階と申しますか、一応景観的に、たとえば愛知県であるとかあるいは東京都であるとか、生活動きの中におきまして自分たち生活というものの基盤というものが見られる範囲ということで、ここで一つの視覚的な段階自治体、こういうものが、これが大体県というようなものの段階ではなかったか、こういうふうに思いますが、それが、最近のように交通が発達をいたし、あるいは通信等が発達いたしまして、これが知覚的段階にまで変わってきておる。繰り返して申し上げますると、触れ合う段階からお互いに見合う段階、それからお互いに今度は頭で知り合う段階触覚的段階から視覚的段階に、それから知覚的段階へと生活意識が変わってきております。これがすなわち現状におけるところ地方自治体中心にした住民生活に対する考え方基盤である、こういうふうに思うわけでございます。地方自治体と申しますのは、こういう形の中でどこに基盤を置いておるかといいますと、やはり依然として触れ合う段階、これは考えようによりましてはいわゆる住民ということになり、住民意識というのは最も触れ合う段階におけるこの生活の実態でございまするが、その触れ合いの中におきまして、地方自治考え方というものも出てきたのでございますが、必ずしもこの地方自治というものが、あとで申し上げました視覚的、知覚的段階における地方自治であるかどうかということについては、地方自治そのもの自体についての基本的な検討が必要なのがやはり今日ではないか、こういうふうに思うわけでございます。したがいまして、私は自分立場からいたしまして、必ずしも経済効率だけというものが生活圏というものを、あるいは生活意識というものを進めたものではない、こういう立場に立つものでございます。  こういったようないわゆる生活基盤変化に伴いまして、自治というものをそれではどのようにとらえるかと申しますと、私は生活を営んでおる場所、いわゆる触覚的な住居ということだけでとらえませんで、これを生活動きの中でとらえるのが当然ではないか。生活動きと申しますのは、最近各政党のお出しになりました地方自治体についての、あるいは都市政策についてのいろいろな御意見の中にも、職・住の分離ということを言っておられるわけでございます。職場住居というものが離れるということでございますので、したがいまして、住民生活というものは住んでおる所と職場とのつながりにおいて自治意識というものを考えるべきではないか。住居だけで考えるというような自治、それについてはこの際検討をする必要があるのではないか、そういうことでございまして、その間におきまして、それでは職・住というものを分離いたしますと、そこにやはり交通というものが加わってまいります。それが加わってまいりますと、それではその交通というものが無制限に広がっていくかといいますと、私は必ずしもそうとは思いません。そこに職・住は分離いたすのでございますけれども、その分離いたしました機能というものは二十四時間でこれはもう一回元に返ってくるので、これを生活機能の一日完結性というふうに考えております。すなわち、たとえば最近言われますように、東海道メガロポリスと、そういうことを申しますけれども東海道メガロポリスというのは、これは経済的に、東京——名古屋は二時間である、そこで往復する人が多くなるから、東海道メガロポリスというものが一つ組織のもとで考えられるということは、これは私はとらざる立場でございまして、それは必ずしも生活機能が一日で完結するというものではない。自治というものが考えられましたならば、やはりこの二十四時間の生活というものが、一つ動きの流れに沿いましてそれが完結するというところに初めてその地域、その生活圏のその動きの中におけるコンセンサスと申しますか、いわゆるお互いにこれは自分たちの共通の生活の場であるというものが出てくるのではないか、このように考えるわけでございまして、これがいわゆる私の考えまする第二点の、自治意識というものはそのようにとらえるべきものではないか、こういうふうに思うわけでございます。  以上のような観点に立ちまして、実は私は数年前に、東京都周辺の市町村住民につきまして、そこの住民がどういう自治意識を持っているかということを調べたことがございます。その場合におきまして、川崎、川口、市川という住民につきまして、こういう問いを出したのでございます。あなたは東京都民という意識をお持ちですか、という問題に対しまして、いずれも平均いたしまして五七%というものが、東京都民という意識を持ちます、こういう返事をいたしております。で、これは考えようによりましては、神奈川県、埼玉県、千葉県に住んでおられる方、東京都民という意識をお持ちですか、ということに対してこういう数字が出るということは、これは一つの、いま私が申し上げましたようないわゆる住民というものが自治意識というものを生活動きの中でとらえていく、住んでいるのは市川でありまするが、職場東京である。そうなってくると、ここに職・住というものをつなげて考えてみますると東京都民と考えるという、そういうことを市川住民に問うということは非常な矛盾でございますけれども、その矛盾をあえてして東京都民として答えるというところに一つの課題があるのではないかと、このように思うわけでございまして、以上のような観点からいたしますると、私は原則的に現在の市町村、現在の府県範域というものは、以上のような原理に従いましてこれが再検討せらるべき段階にきている、こういうふうに思うわけでございます。  そういう前提に立ちまして、もう一つの問題は、別の今度は行政効率という面からでございますが、私は現在の行政というものが細分化しておりまするために、細分化しているということがそのまま自治意識につながるということではないということは、いま申し上げました自治意識変化でおわかりになると思うわけでございまするが、これに対しまして行政という面からいたしますと、都道府県段階、あるいは市町村段階、たいへん言いにくいことでございますけれども国家公務員地方公務員との間に若干これは機能的な段階がございます。今後の見通しからいたしますると、特にこのレベルの違いまする地方公務員の中における人的な要素を補充していくということは、かなりこれは問題になると思うわけでございます。一方におきまして行政機能そのものが非常に機械化をいたします。そういう段階からいたしますると、現在のようないわゆる明治百年を迎えました段階においての府県範域というものがはたして妥当であるかどうかということについては私は疑問を持つ立場にございます。しかしこういうふうに申し上げましても、私がこの法案の実施というものが、日本列島の全体について画一的に実施されるなんということは毛頭考えておりません。私がもしこういったような法案の中で将来に期待するものがあれば、やがてはこういう府県都市というものが同じレベルでこの日本列島をおおうようになるんではないか、このように見るわけでございます。昨年日本列島を主として交通経済という面から、府県あるいは市町村という、そういう範域を取り払いまして調査をいたしましたときに、最も広く日本列島を分割してみますると、四十二で十分である。それをもう少し広げてみますと百四十、どんなに広げましても六百八十四の都市があれば、日本列島というものは、必ずしも都道府県とかあるいは市町村という非常に古い体制がなくってもよろしいのじゃないか。そういう結論が、一応の調査をいたしたわけでございます。  これは私の年来の考えておりまする、すでに県というものよりか、都市という形でもって日本列島をむしろくくるべき段階ではないか、そういう点からの調査でございまするが、そのように考えまして、以上のような立場からいたしますると、今回の府県合併促進法というものは、これは必ずしも日本列島全体に適応するものではない。しかし、比較的、いま申し上げましたような、生活機能行政効率、それから住民の移動というものが激しい地区におきましては、そこの住民意識に沿うような体制にこれはなるべきである。必ずしも地域を広げるということだけではなく、私は、体制ということが前提になりまして、このような法案というものがその面におきまして一歩を進めるものである。しかし、それが直ちに道州制につながるというようなものではないという前提におきまして、私はこの法案というものが、われわれの自治体というものの将来の動きの中で一つのメリットがあるのではないか、このように考えるわけでございます。  ただし東京都につきましては、これは私はこの問題がそのまま適用されるということは、これは理論的に適当ではない。東京都というのは、これは首都と申しまする特殊な一つの姿を持っております。したがいまして、東京都もこの法案趣旨に従いまして、一つ一体性を持つようなすでに状態になっているということは十分に認めるわけでございまして、もしこの法案が成立すれば、実現する過程にあって私はよろしいと思います。ただしその場合においては、首都というものがどういうものであるかということを、国においてその体制というものを明らかになさるべきである。明らかにいたしませんで、ただ都を中心にしましたものがここに適用できるということになりまするのは、これは少し違うのじゃないか。しかしこれは必ずしも法案そのもの趣旨ではございませんので、かなりこの問題が実際の場合におきましては、そういう特殊な事情があるということをつけ加えまして、私の与えられた時間を終わりたいと思います。
  4. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ありがとうございました。  磯村参考人は時間の御都合がおありのようですから、質疑のある方は御発言を願います。
  5. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま行政効率という面でお述べいただきましたのですが、その中に、地方公務員国家公務員関係がありました。私はいま伺いたいのは、企業が進出していきます。大企業の社員がその地方の県の職員になる。そしてその県の職員としての地方公務員としての給与をもらう。同時にその足りない分、あるいはボーナスの足りない分という名目で企業からもらう、こういうことについてどのように考えていらっしゃいますか。地方公務員法違反ではございませんかということを一つと、それからもう一つは、その大企業から、たとえば通産省なら通産省に出向して、その省の仕事を手伝っている、統計その他について。そういうことについてはこれはどのように考えていらっしゃいますか。二つお尋ねいたします。
  6. 磯村英一

    参考人磯村英一君) 前半につきましては、私その経験を持ちませんでございますから、お答えいたしかねます。  後半につきましては、そこに私は国家公務員地方公務員の、日本のいわゆる公務員制度の中における一つの大きな問題があると思うわけでございます。なにか国家公務員上位に立ち、地方公務員が下位に立つということは、おそらく今回の府県合併の問題の中におきましても一つ傾向だと思います。しかしこれを機能的に申し上げますと、いわゆる地方自治体行政のいろいろな効率というものは、必ずしも府県とかあるいは中央のレベルと同じとは考えられないわけです。自治省などは自治大学というものもつくられまして、そのレベルをできるだけ同じようにしようと努力をしておられるのでございますけれども、やはりそれは格差がございます。そういう意味におきまして、この出向されて指導されるということは一つの方法だと思うのでございますが、なにかそれが地方自治体のいわゆる地方公務員といったようなものとの間に意識的な格差を与えるような、特権を与えるような傾向がもし出るといたしましたならば、これは私は排除されなければならない。したがって根本的には、一体公務員というものが、国家であるとか地方であるとかいったような問題は、この合併促進なんというものと別の面で私はこれは是正さるべき問題である、かように考えております。
  7. 松澤兼人

    松澤兼人君 磯村先生にちょっとお伺いします。  たいへん発想の根拠と申しますか、あるいは発想自身興味の深い、いわゆる社会学あるいは都市社会学立場からりっぱな御見解と思いますが、しかし触覚的とか、あるいは視覚的とか、あるいは知覚的とかいうことは、先生がお考えになりました社会一つの外にあらわれたというか、あるいは内在している特質というふうに考えまして、たいへんけっこうなんですけれども、必ずしもこれをもって多くの人たちに納得させるという理屈になりますかどうですか。この点はいろいろと私たち検討をしなければならぬ問題だと思いますが、ただ、何といいますか、住民接触性ということを重視するという考え方は全く同感であります。  そこで私は、古い考え方ですけれども共同社会的とかあるいは利益社会的とかといったような考え方が、やはりこういう行政の問題を考える場合に基礎的に必要なんじゃないか。私も、必ずしも古い社会学の中でいっているような、共同社会利益社会に発展していくというような考え方同感ではございませんけれども市町村におきましては、やはり血縁的といいますか、地域的な一つの約束事で社会が成立している面が非常に多いと思いますが、農村社会なんか特にそうだと思いますが、それが大きな市あるいはまた府県になりますというと、今度利益的な結合ということが非常に重視されてまいりまして、先生おっしゃいました一日生活完結性といわれますが、しかし、朝出ていって夜帰ってくる、これは確かなんです。確かなんですけれども、それじゃ二十四時間のうち何時間は家にいるとか、あるいは何時間は外に出るのかという問題になると、一日生活完結性ということは、必ずしも私はその団体あるいは地方公共団体の必然的な条件あるいは要件にならないのじゃないかなあと、こんなふうに思うのです。私は、町村先生のおっしゃるとおり現象的な結合であるし、大きな市と府県になりますと、利益とか打算とか、あるいは経済というものが非常に発達してきて、そういうことで結ばれることが多いのじゃないか。そこでこの住民意識とかあるいは市民意識とかいうものは、必ずしも居住しているということ自体によるものでなく、たとえば埼玉にいる人でも東京へつとめに行くということで結ばれている新しい住民意識というものができつつあるんじゃないか、それを私重視する必要がありはしないか、これが一つ。  それからもう一つは、先生おっしゃいました、都市日本列島をくくってしまうという考え方、これはけっこうなんですが、府県合併はその段階として賛成であると先生おっしゃった。府県市町村というものは非常にこう本質的といいますか、性格的に違うものだと私たちは考える。で、小さな市それから町村、これは一体的な密着性というものがあると思うんです。行政に対しても密着性がある。また隣人に対しても密着性がある。ところが、大きな市、あるいは府県になりますと、そういう密着性がなくてほかに結びつける要素がありますから、必ずしも段階として府県合併がいいというふうには言えないんじゃないかと思います。たいへん失礼ですけれども、この二点につきまして。
  8. 磯村英一

    参考人磯村英一君) 貴重な御意見を承りましたんですが、一点だけ申し上げますと、私が申し上げました生活機能の一日完結性と申しますのは、卑近なことを申しますと、こういうくくり方と申しますか、かりにそういうことでないといたしますと、最近のようにいわゆる情報社会というようなことになってまいりますと、たとえば皆さんがここで御審議になっていることはあるいは奄美大島でこれを同時に見たりあるいは聞くことができるような体制になるわけです。そうしますると、いわゆる市町村といったようなものの住民意識というものは、必ずしも住んで、あるいは職場でという、この二つの空間だけではございませんで、もう一つ空間があり得るんじゃないかと、こういうことがあるわけでございます。それを無限に広げてまいりますと、もう市町村とか府県といったような、いわゆる地域的な区分ということはこれは考えられなくなる。しかし、そういう傾向を私は触覚的とか視覚的とか知覚的とか、これは学生に説明する一つのルールとして申し上げましただけでございまして、そういう点からいたしますと、しかし知覚的と申しますか、情報社会的なものも将来これは非常に早く進んでいくんじゃないかということを考えてまいりますと、ここでも段階的にまあ住んでいるところから職場へつないで、そしてその問でいろいろ与えられた情報といったような問題でしめくくっていきますと、一つまあ生活圏的なものの中でしめくくりができるんじゃないかというのが私の考え方でございまして、したがいまして、ただいまの御意見確かに一つの私への示唆として承っておきますが、後段の御指摘でございました府県都市とは違うのではないかということでございまするが、私は現在の地方自治法の上におきまして、戦後の場合におきましては理念的には必ずしもそうとは考えないわけです。現実的においてはそうなりつつあるところに問題があって、何かいつの間にか府県というものが市町村上位概念であるというようなふうになってしまう。私は地方自治体としてのレベルとしては、対象とします範域においては違いございますけれども、必ずしもそうじゃないんじゃないか。むしろそういう指導をと申しますか、そういう考え方をはっきりしない自治省それ自体指導に私は若干問題があるんじゃないかと思いますが、結果としてはいま御指摘傾向も認めますのでございますけれども、理念的には、私は府県市町村というものをむしろ同じレベルのものとして考えていくべきじゃないかと、こういうふうに考えております。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 実は磯村先生の「月刊ぺン」の七月号の「横暴な『都市の論理』に反論する」というのを読ましていただいたわけですけれども、この中で、いま述べられたと同様のことが指摘されておると思うんですが、先生は、「市民生活が成り立つ都市自治体、われわれに生活らしい生活を与える自治体、要するに、われわれが、生活らしい生活をするところ、そしてそのための組織が問題なのであり、したがって自由な、進歩する生活を与える組織をつくり出さねばならない」というこの羽仁五郎さんの提言をそのまま受け入れられていらっしゃいます。そうして、「都市といえば、生活空間地域場所等にのみ関心をもたれていたが、むしろそこに住む人間生活、それも生活組織体制に問題がある。最近都市問題をば、生活体制のなかでとらえようとする傾向は、徐々に現われているが、このような提言は、都市形成の理解についての起爆剤として大きな効果のあることが指摘される。  問題は、このような生活体制が、空間として定着する場合に、そこにコミュニティとしての形成があるかどうかである。」、こう述べておられるわけです。  私はここで言われるような意味でのコミュニティ地方自治体の基礎に置くということは全く正しいと私自身も思います。しかし問題は、先生も言われているように都市圏という形で人間生活体制空間としてたとえば定着をしても、そこにコミュニティとしての形成があるということについてたいへん考えざるを得ないわけです。それは一体どういう形で形成をされるとお考えになっているのかということが一つなんです。  で、現在ある府県を幾ら合併したところで、このコミュニティの一致する可能性というのは私どもはどう考えてみてもないように思うのですね。また、このコミュニティと現在の市町村自治はどのような関係に立つとお考えになっているのかという点について伺いたい。
  10. 磯村英一

    参考人磯村英一君) 一つの雑誌に書きましたものを御引用いただきましてたいへん恐縮でございます。私はああいう羽仁五郎氏の意見に対する考えということは求められましたのですが、決してああいう題をもって書いた覚えはございません。こういう会におきまして私の一応の釈明をさしていただきましたことをつつしんでお礼を申し上げたいと思います。いわゆるマスコミの不当なるああいう扱い方につきまして非常な抗議を私は申し込んでおります。学生を相手にしておりますと、われわれの態度も非常にはっきりいたします。研究室をあげていま抗議を申し込んでおります。  まあそれは別といたしまして、いまの御意見非常に私として考えさせられるのでございますが、それじゃ一体いわゆるコミュニティとしての形成をどのように考えるかということにいまのお考えの焦点があると思うのでございますが、私はその点で、先ほど申し上げました触覚、視覚、知覚というようなたいへん——そういう一つの用語を使いましたのでございますが、かりに府県の合併を見ましても、それが一体コミュニティであるかどうかという、そういう御意見だと思うのでございますが、私はかりに現状において東京都それ自体一つコミュニティということを考えました場合におきましては、あるいは東京都というものが伝統的な一つ地域の拡大をしてまいりましたからコミュニティ的なコンセンサスがあるかと思うのでございますが、それがかりに東京中心に神奈川、埼玉千葉と広がった場合にどうかと、こういう御意見でございますが、私はその段階こそこの知覚的な範域ではないか。したがいまして私はコミュニティというものを、触覚的段階におきましてはあるいは学区でありますとか、そういったようなもの、これはお互いに触れ合う、現実においては互いの顔も子供を通じて知り合うようなそういう範囲がこれが触覚的コミュニティレベルじゃないか。それが今度は視覚的なものになりますと、あるいはそこにかつては鎮守の森があったとか、あるいは今日においてはテレビ塔があったかどうか、それはどうかわかりませんが、そういうものが視覚的な段階でもって一つコミュニティというものをやはり私はつくり得るのじゃないか。それが駅であるか、あるいは私は公共の建物ということをその点では非常に重要視するのでございますけれども、そういう公共の広場であるとか、そういうものの中で第二の視覚的な——あるいは公園であるとか、そういうものの中に、むしろここでは制度的な中に一つコミュニティのつながりを持ちたいと思いますが、それの上に今度は知覚的に、これは東京の、日本首都であるとか、あるいは大阪の中心であるとかいう形というものをこれは知覚的な面から取り上げたいので、必ずしも経済的な効率だけからとらえるわけではございませんので、ただいまの御意見コミュニティというものを触覚的なレベルから視覚的、知覚的にまで広げていきましたその最大限として取り上げるとすれば、府県の合併−私は府県の合併したものを、ほんとうのことを申し上げますと、それを県と考えていいかどうか疑問を持つのでございまするが、そのような考え方でいわゆるコミュニティというものを三つのレベルで考えていきまして、その広がりの中でとらえたらばどうか。したがいまして、これは東京とか名古屋とか大阪ではじめて知覚的な範囲まで考えられるわけでございまして、それがかりにいわきであるとか、あるいは郡山である場合におきましては、かなりスケールが小さくて、それが必ずしも郡山がすなわち福島であるというような考えは決してこれは持たない。その点ではこの府県合併というものが、主として東京、名古屋、大阪といったようなものを対象にする限りにおいては、一応いまおっしゃいましたようなコミュニティという概念というものを知覚的にまで広げてまいりますれば一応のところまでいくのじゃないかというのが私の態度でございます。
  11. 原田立

    ○原田立君 先ほど先生のお話を聞いておりましたところ、現在の府県区域は再検討を要するというお話でございました。そのあとに明治百年たった現在の組織、それをそのままにしておくことは疑問を持っている。府県市町村が同じレベルでやるようにしたならばいいのじゃないかというようなお話でしたが、この点をお教え願いたいと思うのですが、実は国と市町村の間に府県という制度があって、いわゆるワンクッション的なそういう意味合いでの効果というものがあるんじゃないだろうか。そういうふうに思うと、先ほどの先生のお話の、府県市町村と同じレベルでというのがちょっとよくわからないので、この点をひとつお教え願いたいということと、それから、日本は四十二あれば全部行政がとれると。ふやしても百四十であるから、最大限どんなにふやしても六百八十四の都市があればよろしいというお話でありましたが、その場合に、府県というものは存在するのかしないのか、その点、いかがでございましょうか。
  12. 磯村英一

    参考人磯村英一君) 前段の問題につきましては、府県市町村同じレベルでというふうに申し上げましたのは、これは将来のものとして考えたいわけでございまして、したがいまして、現在の段階府県市町村を同じレベルでこれを見るということになりますと、どちらかをなくなしてしまうということになりますから、そういうことはいまも考えておりません。ただ国家公務員も、先ほど御質問がございましたように、いろいろな格差があるように見ている。それはレベルを同じようにしていって、将来はこれは一本にすべきじゃないか、こういう考え方でございます。  それから、あとの御質問はちょっといま失念をいたしましたのですが……。
  13. 原田立

    ○原田立君 四十二ふやしても百四十四。最大限ふやしても六百八十四である。そうなった場合に、府県はどんなふうにお扱いになるのか。
  14. 磯村英一

    参考人磯村英一君) お答え申し上げますが、その場合は、ただいま申し上げましたように、府県という名前を存続しますか、あるいは市という名前を存続しますか、私といたしましては市という名前でこれを呼んだほうがよろしいんじゃないか。ですから、私は廃県置市という、県を廃止して市を置くという、そういうことを申しておりまするたてまえからして、県よりは市という名前が適当ではないか。ただ、いま申し上げました四十二と百四十。これは一応現在ただ一つの、交通経済ということだけで整理しただけでございまして、これはもちろんいろいろ調整をする考えではおりますけれども、現在調べました調査ではそういうものが出ておりますということだけにお許しをいただきたい、こう思います。
  15. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 磯村参考人ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  16. 佐藤竺

    参考人佐藤竺君) 佐藤でございます。  私は、都道府県合併特例法案の問題を、特に現在の府県の合併がはたして必要であるかどうかということにしぼりましてお話を申し上げたいと思います。  法のねらいが一体どこにあるのかという問題が当然出てくるわけでございますけれども、私が全国各都道府県をたびたび歩いております感じでは、合併の必要性というものを感じておりますのは、これはごく一部の府県ではないか、合併という方法をとるかどうかは別にいたしまして、区域が狭いのじゃないかと感じているのはごく一部だと思います。一般の府県におきましては、むしろそういったことは感じていない。少なくともよそごとのような感じではないか。  で、その理由といたしましては、私は、現在の府県というものは一般に広過ぎるというように思っております。広過ぎるといのうは、これは一体性がないということでありまして、伝統的な対立が、旧藩以来のことがずっとあったりいたしまして、これは例を全国にわたってあげていってもけっこうですが、そういった点では、一つの施設をやるにいたしましても、倍あるいは三倍の金を用意しなければならない。あるいは議長の一年交代の問題にいたしましても、あるいは知事が東から出れば副知事は西から出る、日本自治体特有のバランスの問題を一つとりましてもこれは言えると思います。それからもう一つは、県内格差の解消という問題に現在の県は追われております。とても他との合併どころではない。たとえば東厚西薄であるとか、北厚南薄であるとか、そういった問題は至るところにあるわけでございます。それからもう一つは、区域の再編成という問題は、一般的にかりに合併ということを考えましても、それは既存秩序の打開につながるということから、不安がどうしてもつきまとうわけです。特例法というのはそういったものを緩和する意図をもって出されるものだと思うのでありますが、しかし他方では、こういった合併に伴って格差が拡大するのじゃないかというような問題、あるいはボーダーラインにありますような地域は、その帰趨をめぐって、ちょうど市町村合併があれだけの、千をこえる紛争を招いたというような、そういった問題が当然府県合併の場合にも出てくると思います。  この点合併といいますと、区域が狭いということを痛感しておりますのはこれは一部の大都市圏であるというように考えております。ただし、それは、府県合併がいいかどうかはあとで申しますように別でございます。この地域でそういった問題を痛感しておるというのは、結局、通勤圏が都道府県境を越えて周辺部に深く入って、周辺県に入っていっているという問題でございまして、いま磯村先生から御指摘ございましたような生活圏の分裂という問題が特に通勤者をめぐって出てきているということは、これは否定できないと思います。それからもう一つは、大都市としての広域的処理が必要になってきて、それが府県境がじゃまになっているという場合が見られるということは事実であります。それからもう一つは、さらにそういう通勤の問題をこえまして、生産流通活動のための一体化という問題、これは磯村先生がいま四十二年度のことについて申されましたが、あれは通勤圏というよりも、自動車交通をとっておられますから、むしろ私は住民生活に直接関係のある問題でなくて、生産流通の面の問題であると思っておりますが、そういったようなことがあるのではないか。で、水行政の一体化というような問題が府県合併の契機になっておったわけであります。これは結局、生産活動のための工業用水の確保というようなことに、あるいは府県がじゃまになっているんじゃないかという認識から出ている問題だと思います。  そういったようなことを考えまして、それでは合併論の根拠としておりますものは一体どういう点があるということを考えますと、私は五つくらいの点をあげているのではないかと思います。  その第一点は生活圏の拡大でございます。これは都府県境を越えて生活圏が拡大しているということでありますが、先ほど申しましたように、確かに一部の大都市圏ではそういった点がかなり目立つと思います。だがその場合、それがその地域のそれぞれの住民の全体の問題であるかといいますと、私はそうは思いません。自分調査をやった限りでも、かりに通勤しております一家の主人とそれから主婦との間には、そういった点の分裂が明らかにございます。で、かりに通勤者の三〇%がいわゆる就業依存率の面で大都市に依存しているといたしましても、主婦はそれほど多くはないわけでございます。そういったことと並んで、いま磯村先生指摘のように、生活圏というものは、一人一人の人間をめぐって、特に大都市におきましてはこれは複雑多様化しております。したがって、一様なものをそこに出そうといってもこれは無理だと思います。私の生活圏というものと私どもの隣人の生活圏とは違います。同じところにつとめておりましても、その人のつとめの態様によって違ってまいります。そういったようなことで、たとえば自治省が現在作業を進めております広域市町村圏の構想にいたしましても、あそこではすでにそういうものを三次圏まで設定いたしております。市町村段階でも三次圏の設定が必要であるということを考えますと、ここでは私は、府県というようなものを一元的にとらえるわけにいかないのではないかというふうな気がいたします。  それから第二点は、明治の中期以来、府県の区域が変わらないということはしばしばいろいろな方から指摘されますが、私は、これはいつも書いていることでございますが、実情を無視したものであるというふうに考えております。それは、戦後の府県制と戦前の府県制とを同一視するというところに、そもそも、この自治法あるいはそれ以前の、憲法に関する理解が全くないということを意味しているのではないだろうか。戦前におきましては、いわば国の広域出先機関であります。そういったようなことで、市町村に対する監督機関としての意味を持っていたのではないか。それに対しまして、戦後の自治体としての府県というものはそういうものではないはずであります。ところが、府県ではその運営のしかたに問題がありまして、結局府県職員の間でも、「本省」という言い方をいまだにいたしておりまして、そして何でもすべてそちらに相談しなければできない。要するに、機関委任事務が八割五分ないし九割であるという実情でございまして、そういったようなことで、何か、戦前と戦後とを同列視するところに出てきているのじゃないかと思います。  それから第三点としまして、都市化の進展あるいは広域化の進展の中で、市町村が広域化してきている。そういったことから、府県も相対的に狭過ぎるということが指摘されております。そういった点と、もう一つは全国的な均質化が推進されているということで、市町村自治能力が強化され、また平準化しているということから、府県が不要であるというような意見も出ているわけでございますが、私は都市化の中でむしろ域内の不均等が強化されているのじゃないか。そういう意味からいたしますと、弱小市町村に対する補完という意味での、中間団体である府県の役割りというものがむしろ今日増大しているというふうに考えております。で、そのことが都市の側から府県に対する廃止論を出している、たとえば全国町村会あたりがずっと意見を出しておりますのは、中心都市考え方でありまして、そのことは逆に町村の側では、それに対して府県の必要を痛感しているわけであります。とすれば、区域の拡大というものは府県のきめこまかい施策を破壊してしまう危険性があるのじゃないか。それは府県の役割りに逆行するものであると考えます。  それから四点目は、合併による能力の強化の主張でございます。東海三県をはじめとしまして、そういう主張があったわけでございますが、そうしてその中で特別な権限が期待されております。しかし合併によって、たとえばこの特例法案に一体どれだけの約束があるかといいますと、たとえば事務再配分の問題については何一つないのでございます。そういった、区域を拡大することが即機能の強化であるというふうな判断を私はとるわけにはいかないという気がいたします。で、かりに強化されるという、それが事実であるといたしますと、面積の拡大が強化であるならば、東北とか新潟、長野のほうがよほど大きいわけでございます。それから行政力というものはむしろ府県では弱まります。これは財政力についても同じでございます。それからもう一つ、むしろそういう中で内部対立が複雑化するのではないかという問題を指摘したいと思います。  それからもう一点、開発に対する妨害ということを指摘しておりますが、これは私の持論でございますが、むしろ府県のセクショナリズム以上に、中央各省庁におけるセクショナリズムが水の問題その他の一つの大きな原因になっておるのではないかというふうに考えております。  時間がございませんので、さらにこの合併に対する、あるいは合併論に対する積極的な私の反対意見だけを申し上げたいと思います。それは結局一部の大都市圏の要請であるということを考えますと、私は区域の拡大だけでは大都市問題は解決しないというふうに考えます。大都市問題に対してほかにどれだけの用意があるかということがあわせて出てこなければこれは意味がないのじゃないか。それからもう一つは、大都市の拡大の要請というものを考えますと、実は府県合併という方向で考えてまいりますと、たとえば大阪の例をとります。大阪市は大阪府の施策を受け入れない、一切入れない。これは自治だということでやっております。そういった意味では、この府県というものが、好むといなとにかかわらず、とにかく弱小市町村に対する補完団体であるということを意味しておるわけでございますが、そういった点で、かりに大阪府を阪奈和という形で合併いたしましても、大阪市の市域、こういうものを拡張したいための阪奈和合併であります。提唱がそうであります。そういう形でこれが拡大されますと、実は大阪市は拡大された地域について大阪府の施策を受け入れないはずであります。東京の場合は東京市復活構想というものがございます。これは、この場合に東京市を政令指定市というものにして強化するということを言っております。そうしますと、ますます市と府下との間の一体性は阻害されるだけであります。ですから府県の合併によって大都市問題に対処しようということは、私は現行の制度のもとでは無理であるというふうに考えております。  それからもう一つ、なぜ府県を合併しなきゃならないか、あるいは府県として大都市が合併しなければならないと考えておるのかという点でございますが、私は自治法におきます——六条でございますか——の規定で十分やれるはずだ、ほんとうに必要性を痛感するならば、それで十分である。これは英米法の伝統に基づきまして、要するに地方公共団体がある一つの特別法をつくってもらいたいというときに、これを国会に出しまして、そうしてその地域の要請を受け入れる。それにさらに憲法九十五条の住民投票があるわけでございます。ところがこの合併特例法案というものはそうではなくて、一般的に府県を合併させるようにして、常にそういう画一的な方向を打ち出しておる。それで住民投票の問題に関しましては、三分の二の賛成が得られなかったときだけ、その場合に住民投票にかけるのだ、こういうことでございます。こういうやり方は戦前のドイツの考え方をそのまま踏襲しておる考え方ではないかという気がするわけでございます。要するに、府県というものをどう理解するのか、あるいは市町村をどう理解するかという点で、結局国と都道府県市町村の間の関係というものが地方自治を基礎にしたそういう体制に戦後変わったという問題をここでは理解していないのじゃないかというふうに私は考えておるわけでございます。そういった点からいたしますと、現在のこの府県合併特例法案というものについては私はどうも賛成するわけにいかない。で、それがまたかりにできたとしても、そういうものによって府県合併が行なわれたとしても、一番痛切に感じております大都市問題の解決にはならないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。むしろ必要なことは、中央の出先機関としてこの府県を考えております。そういう態度をやめるべきではないか、あるいは財政的な基礎をもっと府県に強化すべきではないか、そういったような方向で問題が語られるべきでありまして、こういったような区域だけを、要するにやれるところだけをやって、あとは、中央各省庁の複雑ないろいろな問題についてはやらないのだということは、私は正しい方法ではないと考えております。
  17. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ありがとうございました。  次に、田上参考人にお願いいたします。
  18. 田上穣治

    参考人田上穣治君) 私は憲法学のほうを専攻しておりますので、先ほどの磯村参考人それから佐藤参考人専門とされますところとやや角度を違えまして、憲法学の立場から、この特例法案につきまして簡単に意見を申し上げたいと思うのでございます。  地方自治法では、第六条で、都道府県の廃置分合につきまして法律できめるというふうになっております。したがいまして、現行法のもとで廃置分合を、合併を行なう場合には、法律をもってすればよろしいわけでありまして、むろんこれは憲法九十五条の特別法として住民投票が必要でございますが、この点で、同じく地方自治法の第七条にある市町村の合併の場合とはこの規定が、方式が違っております。市町村の合併は、御承知のように関係市町村の議会でそれぞれ合併の議決をし、そしてその所属の県にこれを持ってまいりまして、県知事が県の議会にはかって、そして決定をする、こういう仕組みでございます。ところで今回の特例法案を見ますというと、この地方自治法の七条、つまり市町村の合併の方式、これを都道府県の合併についても認めようというふうに私は見るのでございます。むろんこれにつきまして、さらにそれだけではなくて、そういう合併を一応好ましいものとし、その合併を容易ならしめるためのいろいろな方策が条文の中に盛り込まれておりまするから、したがって立法の趣旨から申しますと、合併をできるだけ促進する——促進とは書いてございませんが、そういう合併が適当であるというふうな意味が含まれていることは明らかでございます。そこで私の申し上げたいのは、その府県の合併が好ましいかどうかという問題もございますが、むしろそれよりも、府県の合併にあたりまして現行法のような法律の形式によることと、それから特例法にあります、この関係府県の議会の議決、その申請によって政府が国会の議を経て決定をするという方式、これを比較して簡単に申し上げたいと思うのでございます。  まず第一点といたしまして、現在の憲法は、現在ある府県の存在、将来これが存続するということの保障をしていない、府県という制度の保障についてはこれも若干議論がございますが、二重構造が、つまり府県市町村という二重構造が憲法で保障されているという意見は、今日多数の学者の見解でございます。その場合に、しかしながら保障されるのは、東京都であるとか神奈川県とかいうふうな個々の具体的な府県の存在、将来これが維持されるということ、それの保障とは必ずしも考えられないのでありまして、府県という制度、市町村という制度が憲法で保障されている、あるいはもう少しこれをばく然と申し上げますと、地方公共団体という制度を、憲法は、法律をもって維持すべきであり、たとえ法律を改正しても地方公共団体という制度をわが国から抹殺することは許さない、かように考えるものでございます。その理由はいろいろございましょうが、簡単に申し上げますと、町村合併できわめて明瞭でございまして、現実にこれまで存在した町村が合併をするということは、すでにその具体的な個別的な町村の存在がそれによって否定される、あるいは大きく変わることでございますが、これは現行憲法に何ら反するものではない。といたしますというと、市町村の合併が行なわれている、これを認めるならば、府県について特に合併そのものが憲法に反するということにはならない、この点は明瞭だと思うのでございます。府県を全部廃止するということになって、市町村のみを残すということになりますと、二重構造が否定されます。そういうことになりますと、そこで府県という制度の保障が憲法に含まれているとすれば、そういうやり方は憲法違反ということになるでありましょうが、この点はしかしながら学界においてもむろん意見が分かれているところでありまして、憲法の条文の上では都道府県とか市町村ということは何も書いてない。マッカーサーの案にはそういうことばが使ってありましたが、憲法の中には、ただ地方公共団体とありまして、その内容、これが二重構造を含むものかどうかというふうな点も必ずしも明白でないのでございます。しかし、その制度ではなくて、当面問題になっておりますのは、特定の府県、必ずしもこれは東京とか阪奈和とかというふうにこの法律では指定しておりませんけれども、とにかくある具体的な個別・特定の二つなり三つなり、数府県、そういうものの合併ということについての規定でございますから、そういう府県の合併ということを考えること自体がいまの憲法で疑義があるということにはならないし、またそのような説は私は聞いていないのでございます。おそらく当然だと思いますが、ただ適当かどうか、府県の合併が必要かどうかになりますと、それはいまお二人の意見を横で拝聴しておりましたが、やはりいろいろ問題があることは私も認めるのでございます。ただ一言その点つけ加えますと、府県につきましては、町村合併の促進法が二十八年から三十一年までの間にかなりの町村の合併を実現したのでございます。そのほかにもいろいろそれに同調する動きもございまして、そういう意味町村の規模が次第に大きくなりますというと、補完行政的な任務を持つ府県立場というものもおのずから変わってくるのではないか。必ずしも従来の府県の規模が適当かどうかということについて、私は簡単に言えないと思うのでございます。  それからもう一つは広域行政の問題でございまして、この点は従来から私どもは、市町村に対して府県というものは広域行政を担当するに適しておる。しかもその府県の機構から申しまして、その総合的な行政というか、その運営にも適している。それに反して国の方、中央でありますと、俗に言う縦割り行政という、つまり官庁の間のセクショナリズムによりまして、きわめて足並みがそろわない。こういう意味で、われわれ府県立場に立ちますというと、中央の縦割り行政は好ましくない。できるだけ行政事務を府県のほうに移すべきであるという考えを私もとっているのでございます。しかしその場合に、広域行政ということばが、よく御承知のように最近の府県ではまだまだ少し狭過ぎるのではないかという見方がございます。そういう、何も私はこれを一々の例をあげて、いまの佐藤参考人のように専門的に申し上げる知識はございませんが、ただきわめてばく然とした考えでございますが、補完的な行政を担当する府県、また広域行政を担当する府県といたしまして、最近の状態であればある程度の合併によって府県の区域が拡大されるということは必ずしも不適当と思わないのでございます。  その程度でこういう立法が必要かどうかということにつきまして、一つの私の感じを申し上げたのでございますが、本日の私が特に申し上げたいのは、もう一つの合併の手続でございます。合併にはいろいろな方式がある。大きく分けますと、一般的な法律によって全国的に府県の統廃合を行なうという、あるいは市町村についても同様でございますが、そういういき方が一つございます。この場合は特別法ではない、特定の少数の地方公共団体のみに適用する法律ではありませんから、御承知の道州制のようなものをもし法律で実現するとすれば、これは特定の地域住民投票を要する場合ではないのでございます。国会が法をおつくりになって、そういう根本的な変革、改革をすることも憲法上は不可能ではない。ただ道州制ということばに私は必ずしもとらわれませんが、そういう府県制度の本質を変えてしまうと、完全自治体市町村の一種類ということになりますと、二重構造とは変わるわけでありまして、もし二重構造が憲法で保障されている制度として、保障の中に含まれるとすれば、そういうやり方は憲法違反となりますが、今回の場合はそういう行き方ではありませんので、これは省きまして、そして第二の合併の方式は、従来の地方自治法第六条の規定のように、特定の二、三の県が法律をもって合併する。この場合は憲法九十五条の適用がございます。それから第三の方法が、今回の特例法のような、つまり市町村の合併の方式でございまして、これは地元の申請によって国が決定するという——国というのは、市町村合併の場合には府県知事が国の立場において決定をする、この方式をもし府県の合併に当てはめますというと、今回の特例法案のように、内閣総理大臣が、府県議会ではなくて今度は国会の議を経て決定するという方式になると思うのでございますが、こういう三つの方法が考えられる。  この場合に、私の申し上げたいのは、たまたま現在の地方自治法は、府県についてはもっぱら法律によって合併、それから市町村の場合には地元議会の申請によって合併が行なわれるとなっておりますが、この区別は憲法上の必然的なものではない。でありますから、自治法の改正をして、あるいは府県の合併についても法律ではなく市町村と同じ方式をとるというふうにいたしましても、私は憲法に直ちに反するとは思わないのでございます。あるいは現在の特例法のように、自治法の六条の原則は残しておきまして、ただそれに並行して、十年間の間でありますか、その間は市町村と同じような合併方式を採用するといたしましても、そのこと自体特に憲法に反するというふうには考えないのでございます。憲法九十二条で、地方自治の運営組織は法律をもって、地方自治の本旨に従って定めるとありますが、この場合の法律は一般的な法律でございます。一々の具体的な特定の自治体について異った法律をつくるという趣旨でないことは明瞭でございまして、制度として地方自治の制度を法律できめるという趣旨でございます。したがってそのことから直ちに、合併について特別法でなければならない、地元の申請による市町村の合併の方式をとることができないという結論は出てこないはずでございます。  そこで、次にいろいろな方法についての比較ということになりますが、現在の府県合併についての法律の形式、なるほどこの場合は地元の府県住民投票が必要ということに憲法上相なっております。しかしながらイニシアチブというか、合併の発案といいますか発議は、これは法律でございますから、必ずしも地元府県の議会なり住民のほうから出してくると、そういう明確な形にはなっていないのでございまして、国会のほうで通常の法律案を提出すると同じ要領でできるわけでございます。むろん実際はそんなことはなくて、地元の府県の意向をよく尋ねてからでありましょうが、形の上では通常の法律案の出し方、そして国会が法律をおきめになる、その法律に従って住民投票となりますから、最後の決定には府県住民が参加いたしますけれども、やはりどちらかと言えば国のほうの発言力と言うか、これが現在の制度、合併の方式では強いのでございます。そしてそれは必ずしも憲法から直接に要求する方式ではない。ところがこの考えは、おそらくは——だから府県が過去において不完全な自治体であった。市町村と違うということの影響があると思います。国の発言権は市町村の合併の場合よりは府県の場合のほうに一そう強く認められなければならないという気持ちがあったのであろうと考えます。ところが私どもはこれに対しまして、市町村の合併方式あるいは特例法案の認めておるような手続、これを考えますというと、このほうは地元の議会から申請をするのでございます。だからこのほうは、まず口火を切るというか、合併を言い出す、合併の手続を求めることが地元府県のほうに認められておる。これはだから地方自治立場からいいますと、一般的な議論でございますが、地方の考えというものが現在の現行法よりはこのほうが徹底している、しかしそれだけにまた国のほうの発言力は弱くなる、かように見るのでございます。もちろんその場合であっても、この地方自治というのは単なる私的な、プライベートな自治ではなくて公的なものであり、行政権、これに付随する若干の立法権も地方に認めているのでございますから、これは国家の、国の政治と不可分の関係を持っております。したがって普通の会社の合併のように地元府県の話し合いだけでできるなんという方式は憲法上許されないと思うのでありまして、内閣総理大臣がこの特例法案に従って合併を決定する場合にも、そこに相当広い政策的な考慮あるいは自由裁量、裁量権が認められなければならない。地元の府県の話し合いだけで九分どおりきまってしまう、極端に申しまして、総理大臣はこれを機械的に国会に伝達しなければならないというふうな意味には考えないのでございます。そういう意味において、従来のこの現行法の法律によるということとそれほど違いはない、けれども程度におきまして地元府県の意向というものが現行法以上に特例法案では尊重されている、かように見るのでございます。  そこで、もう一つ最後に申し上げたいのは、特例法案によりますと、この関係都道府県の議会で合併をきめる、そのときに単純な過半数の場合と、三分の二をこえる特別多数によって可決された場合とを区別しております。特別多数の三分の二以上でこの関係府県議会できめますというと、もはや住民投票を要しない、これは総理大臣から国会に提案されて、国会の議決があれば総理大臣が決定できる、こういう仕組みでございますが、単純な過半数で、三分の二に達しない程度の多数で可決された場合には、あらためて、総理府に持ってくる前に住民投票が必要であるという規定になっております。この点は大体もっともというふうに御理解いただけるかと思いまするが、民主政治は、特別多数ではなくて本来はそのときどきの過半数できめる、単純な過半数できめるというのが民主政治でございます。三分の二ということは望ましいことでありますが、初めから三分の二を欠けると、三分の二に達しないと議決できないという方式は、これは必ずしも民主政治に合わないのでございます。つまり三分の一のものが非常な強い決定権を持つことになるのでありまして、多数ではなく少数が決定権を持つという意味において非民主的であるとわれわれは考えております。ただし憲法改正のようなそういうきわめて重大な政治をきめる場合であり、現状維持が原則である、よほど極端な場合でなければ現状を変えるべきではない、こういう問題につきましては、現在の憲法でも総議員の三分の二というような特別多数の規定がございまするし、これは地方の政治についても同様だと思うのでございます。ところで従来の市町村合併の方式を見ますというと、むろん単純な多数決、出席議員の過半数で関係市町村議会が合併を議決をする、そして知事のほうに申請をするわけでございますが、この方式によると、しばしば地元で反対があり相当紛糾することがございます。訴訟に持ち込まれる。つまり住民の一部の中では議会が合併をきめたことには反対である、極端な例では議会のリコールが成立いたしまして、合併をきめたその直後に町村の議会がリコールによって解散させられてしまう、そしてその次に一般選挙、そしてその結果はむしろ合併反対の議員が多数当選するというふうな事実もないわけではございません。しかし現在の地方自治法では、一たんこの合併の議決があり、そしてその関係の議会の議決が一致いたしますと、県のほうで知事が県の議会にかけて合併を決定することができるのでございます。そうするとちょっとわれわれは変な感じがするのであって、どうも市町村の議会があるいは住民の意思を無視して軽率に合併をきめてしまうと、そしてそれがしかも抜き差しならない形でその合併が本ぎまりになるというふうな印象を持つことがございます。私は、やはり合併ということは関係自治体にとってはきわめて重大なことであり、従来の府県が合併によって消滅をするというふうにとりますというと、これは国の場合には憲法改正を類推してもよかろうかと思うのでございます。つまり特別多数の議決が必要ではないかと、したがって現在の地方自治法七条で、市町村の議会で単純な過半数で合併の議決ができるということになりますと、これは疑問がある。その意味でこの特例法が三分の二ということを一応考え、もし関係府県の議会で三分の二の多数できめることができるならばそれでよろしいと、あとは政府のほうの、国会の手続をとればよろしい。しかし、過半数ではあるが三分の二に達しないという場合には、やはり慎重を期して地元で住民投票まで行なうという態度がとられていることには賛成でございます。そういう意味で、ちょっとこの点は特別なくふうがこらされていると思いますが、結果的に私はこの特例法案に賛成でございます。繰り返し結論を申し上げますと、この地方制度調査会の答申の大体線に従って二重構造をこの法案では維持するというたてまえであり、そしてそれは強制的画一的に全国に通じまして合併をさせるということではなくて、自発的に近隣の府県が話し合って合併について話がまとまるならば合併ができると、その場合は、だから関係府県の議会のほうで申請をすると、そして国会にむろんかけるのでありますが、特別法という形式はとらない、こういうやり方になっておりまするので、この点で賛成でございます。ただし、初めに申し上げましたように、専門が憲法学のほうでございますから、以上申しましたのは憲法に反しないと、憲法上決してこの法案が不適当と思わないし、違憲とは思わない、こういうことでございまして、この法案に従ってどの程度に合併を進めるべきであるかというあたりになりますと、これは都市社会学なり行政学の御専門の、先ほどからお話がある参考人の御意見は私もふだんからいろいろな機会で聞いておりまするし、非常に私どもも参考にしているところでありまして、その点で必ずしもそれほどの食い違はないと思いますが、私の申し上げた憲法論、この法案が現在の地方自治法と比較して憲法上疑義があるかどうか、あるいはその意味できわめて不適当かどうかという点につきましては、以上申し上げたとおりでございます。  以上をもって私の意見を終わります。
  19. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ありがとうございました。  次に、恒松参考人にお願いいたします。
  20. 恒松制治

    参考人恒松制治君) いま田上参考人が憲法の立場からというふうにおっしゃいましたですが、私は経済学あるいは財政学という立場から、この都道府県の合併特例法についてお話し申し上げたいと思います。   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕  実は、私もう三年ぐらい前に中央公論の誌上で府県廃止論という論文を書きました。その立場はいまでも私貫いているつもりでございます。正しいと思っております。で、したがって、今度の合併特例法につきまして、都道府県自治体として存続するということが前提になります場合には、私はこの合併に対しては反対でございます。しかし、合併ということが、そにによって地方公共団体である都道府県が消滅するのだということを意味するといたしますならば、私は合併に対して賛成でございます。したがって、都道府県という自治体をどうするかということによって私の意見は全く正反対になってまいります。と申しますのは、先ほど磯村参考人が言われましたように、府県を合併してそうして究極的には都道府県というものが自治体としてなくなるのだというふうなお話でございましたけれども、私は都道府県を存続するかあるいは都道府県というものがなくなるかということは本質的に違うものであって、段階的に解消していくような性質のものではないと思っております。したがって、いま田上参考人のほうから、現在の憲法論の中では、府県制度というものは保障されている。したがって府県を廃止するということは、いろいろ異論はあるけれども憲法に違反するのではないかというお話もございました。私、憲法学者でございませんのでその点についてはよくわかりませんが、少なくとも現在の憲法を見ますと、先ほども指摘ありましたように、「地方公共団体」とあるだけで、そこには府県とか都道府県とかあるいは市町村というような規定は全然ございません。非常にしろうと論議で暴論ではございますけれども都道府県をなくすということも私は必ずしも憲法には違反しないのではないかというふうに思っております。で、したがって、そういう意味で、都道府県自治体として存続することを前提にいたします場合には、今度の合併に対してはかなり疑問を持っております。  で、なぜ疑問を持っておるかと申します点について、幾つか項目に分けて申したいと思います。先ほど磯村参考人からの発言にもありましたけれども、広域行政という形で能率的な行政の実施が必要であるということはだれしも私は認めるところだと思います。たとえば交通通信の発達だけをとってみましても、現在の都道府県が、一つ行政を実施するという立場から申しますとかなり狭くなっているように思います。したがって、広域化することによって能率化の余地があるということは私は全面的に認めたい。正しいと思っております。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕 しかし、地方自治体の要件というのは、先ほど佐藤参考人も言われましたように、行政が能率的に処理できる、もっと具体的に申しますならば、私ども行政実施に伴うところの税の負担がそれだけ安くなる、低くなるという点だけで判断はできないと思います。で、住民自治体に対する責任とかあるいは義務感とか、そういう意識がもっと私は大切だと思います。したがって、その意味では、現行の都道府県の領域でさえ私はそうした住民の責任とかあるいは義務、こういった面から考えます限りは、少し大き過ぎはしないかとさえ思っております。したがって、こういう合併がこうした要件を満たすものとは考えておりません。これが第一番目の点でございます。  それに付随いたしまして、法案は合併が自主的に行なわれる道を開く、言いかえれば都道府県の議会の議決をもって、あるいは住民の投票をもって自主的に合併ができる、そういう道を開くことをもって地方自治にかなうものと考えておられるようでありますけれども、合併した府県地方自治体の要件を満たすかどうかということについての配慮は私はほとんどなされていないのではないかと、こういうふうに考えております。  それから第二番目に、この特例法案では、「都道府県の合併は、自然的、社会的及び経済的に一体性のある区域又は将来一体性のある区域として発展する可能性の」強い区域である、こういうふうに規定しております。しかし、こうした一体性ということが一体どういうことなのか、これは具体的には非常にむずかしい問題であろうかと思います。で、交通通信の発達によりまして、一体性ということは、ある意味では無限に領域を広げることになってしまいます。あるいは自然的な一体性というものが必ずしも経済的な一体性でない場合もございます。あるいは経済的な一体性が必ずしも自然的な一体性になり得ない場合もあると思います。したがって、この一体性をどの観点からこれを進めていくかということについては非常に多くの疑問があるわけであります。特に、最近広域行政のあり方として開発行政ということがよく言われております。私は中央政府と市町村あるいは地方団体との行政の違いというのは、一つは開発行政が主になるということであって、市町村の場合には、あるいは地方自治体の場合には、できるだけ生活的な行政というものが中心になったほうが望ましいと思っております。したがって、もし都道府県自治体として存在させます場合に、かなり生活環境的なと申しますが、生活行政的な色彩が強くなるほうが望ましい。しかし、現在の都道府県の領域はそういう意味では開発行政も十分に行ない得ないし、かといって生活行政を行なうにはあまりにも広過ぎる、こういうふうに中途はんぱな状態であるかと思います。それが第二番目で、一体性が非常にはっきりしないという点でございます。  それから第三番目に、地域格差の是正に寄与し得るということが今度の合併の一つの目的になっております。あるいは条件になっております。この地域格差の是正ということは、具体的にいうとどういうことを意味するかということについては、それほど、はっきり示されておらないわけであります。地域格差ということが何であるかということについては、さまざまな指標によってさまざまな角度から私は取り上げられるべきことだと思います。もし地域格差ということが、それぞれの地域に住む住民の所得格差ということでありますならば、府県合併をいたしましても、貧困な人は、あるいは貧困な村は依然としてこれは貧困に変わりないと思います。あるいはもし地域格差ということが府県行政水準の格差という意味でもし理解されるといたしますならば、それは府県合併という問題ではなくして、むしろ財政調整をどのように公平に行なうかという、いわば財源の配分の問題であろうかと思います。したがって、合併ということだけで解決できるものとは考えておりません。それが第三点でございます。  それから第四番目に、はなはだへ理屈を申すようでございますけれども、今度の特例法に出ておりますいろいろな財政の援助措置でございます。たとえば交付税の配分を厚くするとか、あるいは災害復旧の補助金の配分を厚くする、こういった措置が講じられております。今度の合併の大きな目的は、広域にわたる行政をすることによって、合理的かつ能率的に行政を処理するということであります。したがって、それはもっと端的に申しますならば、安上がりの政府をつくるのだ、行政効率をできるだけ高めるということは、それだけ安上がりに行政を処理するということでございます。安上がりということは決して質を低下させるということではございません。その意味では私は大賛成でございますけれども、こうした安上がりの政府の実現を目ざした合併であるにもかかわらず、その合併をした地域に対してはたくさんの財源を配分する、できるだけ厚く資金を配分するということは全く論理に矛盾があると思っております。もちろん奨励的な意味が含まれておるとは思いますけれども、合併を奨励するという意味でそうした財源の厚い配分ということが考えられているとは思いますけれども、もしそうであるといたしますならば、それほどまでにしてしなければならない合併であるかという疑問が新しくわいてくると思います。  これが私の反対のおもな論拠でございます。したがってこれらの反対理由は、合併した府県自治体として存続させるということに伴うものでございまして、もし府県の広域化ということが、府県の廃止あるいは道州制であるならば、こうした反対の論拠というものは全くなくなってしまうわけであります。したがってむしろ広域化の持つ一般的な有利性でありますところの行政の能率化、あるいは開発行政の一貫性、こういうことは、むしろ道州制にとって重要なメリットになるからだと私は考えております。  なお先ほど田上先生、手続上の問題としていろいろおっしゃいましたけれども、私ども合併申請というのは国会の議決を経て総理大臣がきめられることになっておりますが、はたしてこれでほんとうに地方自治と言えるんだろうかというような疑問は、非常に法律に対してしろうとの私ではございますけれども、何か割り切れないものを感じます。  以上、非常に簡単でございますけれども、一応問題点をあげてお話し申し上げました。
  21. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ありがとうございました。  参考人方々の御意見陳述はこれにて一応終了いたしました。  これより参考人に対する質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  22. 松澤兼人

    松澤兼人君 三人の先生方に一問ずつ御質問申し上げたいと思います。  佐藤先生には、いろいろ合併の問題につきまして、その理由とかあるいは条件とかいうものをお聞かせいただいたわけでありますが、最後のところに、こういう府県合併の要求というものが大都市圏から出てくる、大都市圏の要求である。地域の合併ということが大都市圏の一つの要請であるけれども、これが十分にいかないし、また大都市圏というものが県境を越えて伸びていくというところから要求が出ているというお話でございましたが、私名古屋に現地調査に行き、かつまた現地の公聴会に行きました。公聴会におきましても、あるいは法案の内容を見てみましても、大都市というものが全然法案の中で、合併の手続における一つ要素あるいは要件としてその意見一つも聞かれていないというところに私非常に不審を感じているわけであります。たとえば阪奈和の場合、大阪市、あるいは東海三県の場合は名古屋市でありまして、国税担税力あるいは府県税担税力にしましても、名古屋市、大阪市というものがもう過半数まで持っているわけですが、そういう実力のある自治体として、いわば三県あるいは阪奈和の中核になるべき市の意見が——市長の意見も市議会の意見も全然聞かれていないということは私ちょっとふに落ちないんですが、それは法律の立て方ですから理屈ではございません。したがいまして大都市圏からの要請というものが非常に強く、それが一つの原因であってこういう府県合併というような法案ができたんだということはどうも私納得できないのですが、それともう一つは、私たちが名古屋へ行きましたときには、やはり中部経済連合会というものが、ずっと地方制度調査会で答申ができるそのさ中から運動をしているんで、財界からの要求ということが市町村からの要求というもの以上に大きな作用を果たしているんじゃないか、こういうふうに思いますが、そのいまの大都市圏の問題と産業界の要請という問題をちょっとお伺いしたいと思います。あとの参考人の方にはまたあとで申し上げます。
  23. 佐藤竺

    参考人佐藤竺君) ただいまの点でございますが、私、大都市圏におけるいわば社会的な要請であるというふうに考えておりまして、で、まあ大阪の場合は、すでに御承知のとおり市域というものが二百三平方キロしかない、そういう状況で、早くから市域の拡張を考えたいわけですが、大阪府が全国一狭い府県であるということで、これを拡張されますと、現在の大阪府は大阪市から上がる税金で、おそらく市税より大きいんじゃないかと思いますが、にもかかわらずその守備範囲がますます狭くなっていくということで、むしろ市のほうが積極的に阪奈和という合併の方式を打ち出した。これは本来私は阪神の一体化のほうがもしも出てくるならば当然だと思うんですが、そういう方向はたいへんむずかしい、まあ二眼レフだとかいろいろなことがございます。そういうことで、むしろやりやすい方向をという提唱だろうと思います。このことが府の議会が賛成できない、あるいは知事さんも——知事さんにしてみますと、議会への気がねもありましょうし、あるいは市民に対する気がねもありましょうし、そういったことで、はっきりした態度をとれないんではないか、私、前からそういうふうに見てるわけでございます。そういった点から、大都市圏における要請ではないか。それからまあそこには水問題その他もあるわけでございます。  それから名古屋の場合は、いま御指摘のとおり、中経連の考え方が、まあ三つとも通そうという形で先行したわけでございますが、これに対し後に、名古屋が、東京と大阪へ、新幹線だとか道路完備で両極分解していく、特に本社機能が分解してしまうというそういう心配から、むしろ中部経済圏の構想を今度は逆に打ち出してまいりました。これはまあ商工会議所のほうの考え方だと思います。そういったような構想と車の両輪であるというような説明をしておりますが、私はこれは実際に学界でそういう構想を進めてこられた方々と議論したときも、車の両輪だと。確かに両輪かもしれない、しかし逆回りしてる両輪で、だんだんと経済的な地盤沈下をしていくんじゃないかという話をしたこともあります。そういった意味では、まあ財界ということばをどういうふうに考えていいのかわかりませんが、少なくともあそこに工場基地を持っております大企業にとりましては、水問題非常に深刻であろうと思う。そういう点から合併という要請でしょうけれども、そういうことに対しましては、むしろあそこに工業の問題として重工業の基地として考えていくというのではないという立場からしますと、財界の意向はそれでは困る、むしろそういう意味では中部経済圏の構想という方向に出ていく。ですからそういった意味では、名古屋の場合はちょっと東京や大阪とは都市の規模の問題にしましても違う面があるように思います。しかし、一般的に東京とか大阪とか、あるいは一部そういう名古屋を中心にしましたようなそういう地域において、現在の府県の区域が狭いのではないかというような議論が出ているように見受けたわけでございます。そういう意味で、その都市の意向を聞くか聞かないかという法律上の手続の問題は、これはまた別の問題ではないかと思います。
  24. 松澤兼人

    松澤兼人君 ありがとうございました。  それでは田上先生にお伺いします。私、憲法全くしろうとでございます。しろうとにお話しするような気持ちでひとつお答え願いたいことを申し上げておきます。  先ほどお話がありました、憲法の改正ということは国民にとって非常に重要であるから、三分の二というようなこととそれから国民投票という形をとっているのだというお話でありました。それはもっともであると思います。しかし、府県の統合ということをまあ言ってみますならば、東海でありますならば何という名前がつきますか知りませんけれども、かりに東海県というようなものができるといたしますと、いわゆる旧県というものはなくなってしまうわけでありまして、文化的にも、あるいは自然的にも、社会的にも、そういう旧県の中で共同意識的な感じを持ちながらやってきた県民にとりまして、その県がなくなってしまう、統合されるということは、住民にとっては非常に、憲法と国民の関係と同じように、県民と合併の問題は密接不可分な、非常に何というか、致命的といいますか、運命的といいますか、非常にかかわりの強いものではないかと、こう思うのです。そこで、三分の二ありさえすれば住民投票をとらないでもいいという規定になっておりますけれども、それよりもやはり最初に住民の意思を聞くといろことのほうがむしろ地方自治の本旨に沿ったものではないか、こう思うわけでありまして、三分の二以上あれば住民の意思を聞かなくてもいいということは、憲法上疑義がないにいたしましても、私はどうも住民自治ということを自治の本旨というふうに考えれば、不適当な手続ではないかと思うわけであります。それに関連いたしまして、今度は新しい県の県知事なりあるいは議員なりというものが選挙されるわけでありますが、たとえば東海の場合は人口が八百一万ですか、そして愛知県の場合が六百万ぐらい、それで知事を選ぶ。それで、議員のほうは条例をこしらえまして、どこの地区、どこの地区と分けますから、比較的いわゆる後進的といいますか、あるいは過疎的なところでもそれを代表する議会の議員というものが出てくると思いますが、知事の場合は、やはり投票ということになると、愛知県で非常に名前を売っていらっしゃる現在の知事さんが、もし出られるということになるとごそっと愛知県の投票がその人に集まって、まあこれはどういうことになるかわかりませんけれども、三重県の知事さんがもし候補者としてお出になってももう絶対的にだめだし、あるいは岐阜県の知事さんが候補者としてお出になっても絶対に当選の見込みはないというようなことで、人物本位といいますか行政手腕といいますか、それを三県の県民が十分に認識していれば問題ございませんけれども、民意の表現とか反映ということからまいりますというと、そういう結果が出てくるのではないかと、住民の意思を尊重するという立場からいうとどうも、いまの法律に関係のある問題ではございませんけれども住民意思の反映ということがそういう知事及び議会議員の選挙に対して片寄ったような結果が出てきやしないかということを私心配しているわけです。こういう点につきましてはいかがでございますか。
  25. 田上穣治

    参考人田上穣治君) お答えになるかどうかわかりませんのですけれども、初めのほうのおっしゃいましたことで、まあ憲法改正ということを私引き合いに出したのでございますが、正確にいえば、憲法改正に当たるものは、しいて申せば、町村が市になるというふうな場合でありますと、それに適用さるべき制度にかなり変革が起きる。最近は、今日は同じ地方自治体ということになりますが、昔であれば町村制が市制になる、こういう場合が憲法改正に比較できるかと思います。それはとにかくといたしまして、府県の合併のような場合でありますと、従来の府県は消滅をする、いわば法人の解散でありまして、その解散によって新しい府県が生まれる、大きなものが生まれる、こういう場合でございますから、確かに事は重大である。そこで三分の二でよろしいかどうかという、あるいは住民投票まで必要ではないかという御意見かと伺ったのでございます。ただ、従来の地方自治法でありますと、最初に住民投票を行なうのではなくて、おわかりのように、まず国会で法律をつくる、つくってからそのあとで住民投票ということに現行法はなっておりますが、今度の場合には、最初に申し出る、現実的には総理府のほうに申し出る場合に関係府県の議会でおのおの合併の議決をすると、こういう方式でございますから、前後の関係から申しますと、まず最初にスタートを切るときに、関係府県の意思、自治体の意思をまず聞くと、それが尊重されるという意味において、特例法なり、あるいは従来の市町村合併方式のほうがより地元の意見の尊重ということになるのではないかと、これが先ほど申しました、ことばは足りませんけれども、私の考えでございます。法律できめるというのは、むろん最後に住民投票となりますけれども、これはやはり国のほうの発言力がかなり強く認められるわけでございまして、そういう意味で、どちらかといえば特例法の方式のほうが現在の自治法の第六条の法律できめるよりはより一そう地元の考えに近いものであろうと、かように見るのでございます。しかしそれにしても、議会だけできめるのではなくて住民投票のほうが一そう徹底しているのではないかという御意見のように伺いますが、むろんそのことは私も異論はないのでございまして、従来地方自治法の中にも、特に住民投票の規定、それからこの場合以外に規定がございます。そういうことで、けっこうだと思いますが、ただ、地方議会できめることと、住民投票とはどちらがより重大かというと、私は必ずしも住民投票のほうが常に重きを置かれなければならないというふうには考えないのでございます。もっともこれが国民全体の場合と違って、府県とか市町村という範囲になりますと、かなり住民と申しますか、選挙権者の間で意見の交換も不可能ではないと思います。いろんな機会、集会とか、あるいは刷り物などを通して意見の交換、賛否両論を戦わせることができると思いますが、大体申しますと、この住民投票というのは、議論があまり行なわれないで、ただ結論について頭数で、多いほうできめるということになりやすいのでございます。ところが民主政治は、やはり十分に議論を戦わした上で、いろいろな立場意見を聞き、そしてその考えを練って歩み寄りをはかるということが根本にございます。討論というものが肝心であって、その結果の多数決ということになるのでございますが、住民投票の多数決というのは、これはまともな討論があまり行なわれないで、結局、一部の代表的な意見は地元で言われると思いますけれども、有権者が一々話し合うということで投票することは不可能であります。そういう意味で、必ずしも常に直接のそういう投票、直接民主政治の行き方が、議会を通しての間接民主政治に比較してより一そう民主主義であるとか、あるいは地方自治の本旨にかなうというふうには私はちょっと簡単には思わないわけでございます。しかし、立法論として、さらに住民投票の規定をここへ入れるようにという御意見であるといたしますと、別に正面からそれに反対をする考えはございません。ただ現在の制度でも、いま申しました単純な過半数ではないということで、特別多数ということで一応十分ではないかと、かように考えるのでございます。  最後の御意見でございますが、合併になれば、三つの県が一つになれば、当然に知事が一人、三人が一人になる。そうすると、新しい候補者が知事になるかもわかりませんけれども、少なくとも従来の知事、残るとしても一人であって、二人は結局失格してしまう。その場合にどなたが残るかということになりまして、結局は地域が広いほうの、強いほうが、従来の県の人口の多いほうが有利ではないかというように拝聴したのでございますが、それはまさにそのとおりだと考えるのでございます。しかしそれならば、そういう場合に、いまの具体的に三重県とかいろいろ御意見ございましたけれども、もしそうでなくて、少数というと変でございますが、小さいほうの県の代表者が、合併された結果としての大きな県の知事にならなければ、なるべきだということでございますと、ちょっとそのほかに、これは一般の合併についても共通なことでございまして、あるいは知事に限らず、議員につきましても、現在の定数をふやすということでなければ、従来の議員が合併後の議員には必ずしもなれない、人数に制限がございますから。そういうことで、これも特例法には若干の手当てがございますが、結局はそういう役職が減る可能性はございます。そういう点で地元の住民の代表として不徹底になるという御意見ならば、そのとおりでございますが、私はこれは府県の合併に限らず、一般にこういう問題につきましては、同時に何と申しますか、財政的に見ても、あるいは一般的に行政のほうの能率化という点も十分に考慮しなければならないのでありますから、合併に伴って、合理化というか、能率化といいますか、そういう意味で、そういう知事とかあるいは議員とか、そういう方の人数が減るといたしましても、これは、やむを得ないというよりむしろ当然ではないか。問題はむしろ選挙権者の心がまえでありまして、その有権者が一体従来の自分地域から出しておった知事を当然支持するというか、人情としてそういうきらいは、傾きはあると思いますが、その点は、やはり選挙権者の十分な資格、そして人を見る目というか、政治を批判する能力を期待するほかはない。もしそういう点でわれわれ心配があるならば、やはり十分にそういう意味住民の政治教育に力を入れるべきではないか、啓発というふうなことになりましょうか、どうもそれ以外にちょっと申し上げる頭もございませんですけれども、以上が私の答えでございます。
  26. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは田上先生にちょっと。憲法に関する立場からいろいろお述べになったのですが、いわゆる憲法にいう地方公共団体、二重構造、憲法の明文では認めておらないということはそのとおりだと思いますが、しかし地方自治法が制定される当時、第六条と第七条で市町村都道府県の合併について非常に論議されたと思うのですね。したがって、私は同じ地方公共団体でも、市町村都道府県は、現実においても、役目と言いますか、仕事も違いますし、市町村は基礎的公共団体と言っておりますけれども、しかし都道府県の事務内容と市町村の内容を見ますと、言われたように非常に性格が違うものでありますが、私はやはり七条と六条に分けて設定されたということは、一応やはり二重構造を認めている、これは先生もそうおっしゃっていることですが、そうすると、都道府県の境界の変更ということについては相当重要視していることは、いまの地方自治法でもそのとおりでありますね。やはり統治機関として、地方公共団体であるけれども、国の統治の一つ行政の機関である自治団体といっておりますけれども、そういうものは事務の内容に相当あると思うのですね、たとえば機関委任なんか、ほとんどそういうものが含まれているということから、私は政府としても、立法の精神からいっても、町村の合併は若干簡略にできるけれども都道府県の場合はそう簡単にしてはいけない、こういう思想は私はあったと思うのですね。したがって、先生はそういう意向で言われていると思いますが、それにちなんで今度は、現在の地方自治法では、できるけれども住民投票が原則になっている。したがって、特例では、特定多数の、いわゆる議決三分の二でもいいんだと、こうおっしゃるのですが、私はやはり原則に返っていくべきである。私の思想としては、たとえば七条で、市町村の場合簡略にしていますけれども市町村の場合でも、私は住民投票は必要なんだという主張なんです、実際は。しかし市町村の場合は、経済事情の関係社会事情の変化によって相当変わっておりますから、変わる可能性もあるので、私はある程度簡略であったけれども都道府県のほうはそうはいかないぞという規定のほうはやはり堅持すべきだと思います。  憲法論から言われましたけれども、したがって、地方自治団体の事務内容を見ましても、やはり政府といいますか、国の統治としての考え方から見ると、いろいろな問題があると思うのですね。私は、実は三つほど学者が言っておられます。先ほど申しました、国の統治規模と、行政の一方法として地方団体があるのだと、これは佐藤先生言われました、昔の府県の場合はそのとおりだったと思いますがね。それと、いま先生が言われます成文法、憲法によって地方自治に対する行政権を付与したのだという、この点は私は否定もいたしませんが、それよりも第三の、私は自然法として、固有の権利として地方自治法があるのだという私は主張をしてきているのですね。しかし現在でも、いまの実態からそのままいけるとは思いません。しかし都道府県市町村の事務内容を見ると、この三つのものが私はまだ混在していると思う。その三つの点のおのおのの立場から論ずると、私は意見が分かれてくると思う。そういうことで、私は多少意見が入りましたけれども田上先生に最後にお伺いしたいのは、やはりこの特例法のようなものを認めることは、私はやはり都道府県というような区域を変更するにはやはり原則に返るべきではないか、こういう主張でございますが、これは議論になりますけれども、ただ地方自治法制定当時の七条、六条に分けられたその思想からいって、私は当然、特例法でやるならば、やはり依然として住民投票を主体に考えて特例法を考えるなら考える、こういう方向に進むならばまた論議は別でございますけれども、いまの場合は、三分の二、特定多数のものが原則であって、住民投票というものは第二次的にやっている。これについては私は問題があると思いますが、その点ひとつお伺いしたいと思います。  それから次に、恒松先生にちょっとお聞きしておきたいのですが、府県の廃止であれば私は賛成だ、しかしいまのような都道府県というものを合併して、いまの都道府県の権限、そういう実態をそのままでおくことには反対だ、こう言われることだと思うのですがね。そうすると、都道府県をなくするということは、道州制と申しますか、国の出先機関によってやって、市町村だけで地方自治団体はいいのだ、こうおっしゃると思うのですが、現実の状態というものを私は無視できないと思うのですね。大都市の場合はその行政能力が十分あると思うのですが、単に指定都市だけではございません、ある程度の都市になれば私は行政能力あると思いますが、日本全国二千七百ほどの市町村がありますけれども、これがひとしくみずから地方自治団体を維持するだけの能力があると思っておりません、財政的に見ましても、行政的に見ましても。そうすれば、いわゆる補完あるいは調整、それから連絡という、いまの地方自治法で定めておる府県のいまの制度というものは、将来は別といたしましても、現実としてはそういう府県制度というものは必要ではなかろうか。これは地方自治団体としての府県としては必要ではないかと思うのですが、この点ちょっとお伺いしておきます。
  27. 田上穣治

    参考人田上穣治君) 先ほど私申し上げましたことが幾分不正確でございまして、都道府県の合併特例法案についてのきょうは意見を申し上げることでありましたので、府県府県制の廃止ということについては直接議題ではない、審議の項目でないというふうな考えで、申し上げませんでした。それを大体、憲法学、公法学の日本における通説、比較的多数の見解が、学界におきましては二重構造を認めるという立場でございます。その点にもう少し触れますというと、私自身は必ずしもそのように窮屈には考えないのでございまして、これは要するに、憲法には地方公共団体とあって、都道府県とか市町村ということが書いてない。そこでこれは実情を申しますと、知事官選論のような議論にちょっと通じるかと思いますが、府県を完全自治体として残さなければならないという、そうでなければ憲法違反であるという必ずしもきめ手がないのではないかと、もっと極論いたしますというと、市町村府県も一緒に制度を廃止したらどうか、つまり完全自治体でなくしたらどうかという議論も一部にはあるのでございますが、それを少々困る。そうなると憲法の地方自治の規定が完全にから回りすることになるから、たとえ一時的にもせよそのような立法は憲法に反するであろうと、しかし市町村をかりに完全自治体からはずして、府県だけを残すということも憲法上は可能ではないかという、あるいは通常現実的には府県のほうを憲法のいわゆる地方公共団体のワクからはずしまして、市町村だけ残すということは合憲である、こういう学説もかなりございます。私といたしましては違憲論はあまりそれほど強く考えておるわけではないのでございまして、したがってこの点多数説とはちょっとあるいは言いかねるのでございますが、要するに府県なり市町村なり、何らかの形で完全自治体の制度を残すということであればそれは合憲であると、かように考えるのでございまして、これは本日の御議論、審議の題からはちょっとはずれるかと思いますが、しかしそういう立場でありますというと、ただいま御指摘のように、憲法には区別がなくても、実際に府県市町村の実態というか、内容が違っておる以上は、その現実を踏まえるというと、法律の中で差別をするのが当然ではないか。これを地方制度におきましても、地方自治法の中でも、占領が終わりましてから後徐々にそういう方向に動いてきておることはたしかでございます。そういう意味で、どこまで府県市町村に差をつけることができるか、これは議論がございましょうが、まああまりこんなことを申しますと、ちょっと主題からはずれますから省略いたします。  そこで住民投票というお話でございますが、私は現在の地方自治法の六条にある府県の廃置分合、あるいはまあ合併を含めまして、それが法律によらなければならない、その法律は住民投票が要ると、この制度は住民投票のほうに必ずしも重点があるのではなくて、法律できめるという、つまり国が主導権を握って府県の統廃合は決定しなければならないという、そこに主眼があると思うのでございます。むろん市町村の場合にも、御承知のように府県知事が決定するという、そこに国の立場、国の機関としての立場がかなり強く出てくると、かように見るのでございますが、しかし府県の場合には、直接に国会で法律できめるという——きめて、端的にこれは国が元来決定すべきことである。その場合に、地元の府県に押しつけるということは、あるいはその関係府県にとって非常な不利益になるおそれもございますから、そういう意味で例外として、法律は国会のみでつくるべきであるけれども、例外として関係府県住民投票が要ると、これは憲法九十五条の要請であり、それを自治法のほうで受けて規定しておると、かように見るのでございます。したがって府県の議会ではなく、住民投票に付するためにこの国会で法律をつくるというふうではなくて、法律できめると。しかしその法律は、特にこの憲法の規定によって住民投票に付する。法律を制定する場合の一つ条件がつくというふうに考えるのでございます。府県合併、この府県の廃置分合の主体は国にある。ところが市町村の場合の方式は、どちらかといえば市町村のほうに主体性があるわけであって、それを受けて、まあ申請といえば簡単なようでございますが、つまり地元の市町村の議会が議決をし、それを受けて、それを最後に知事のほうで県の議会にかけて決定をする。こういう形でございますから、まあ住民投票という考え方は、それは法律がその特定の地方公共団体のみに関係があるということで必要になる、まあ法律できめるというほうが中心ではないかと考えるのでございます。しかしそれにいたしましても、特例法の中にもっと広く、三分の二と言わなくて、住民投票の制度を入れるという御意見に対しましては、私は必ずしも反対の考えはございません。けれども、先ほど申しましたように、住民投票ということと、それから議会における、府県議会における審議、議決、こういう方式と比較いたしまして、いずれがより民主主義的であるかというと、私は必ずしも住民投票が常に優先する、重く見られなければならないというふうには考えないのでございます。ただ単純な多数決でありますと、ややもすれば一部少数の意見が不当に軽く見られる。そういう意味におきまして、このような重大な問題は府県議会におきまして特別な多数の賛成がなければならない。そういう意味で単純な過半数の場合は、それを補完する措置が必要であろう。これが結論的には現行法、この特例法案と一致するのでございます。  それからあとは、お話がございましたこの自然権、自然法としての地方自治というふうなことになりますと、これはかなり学問的な議論でございまして、市町村については、歴史的に見てかなり自然権的な色彩が強いのでございますが、私どもの見るところでは、人権とはかなり違っている。ヨーロッパの憲法、外国の憲法を見ましても、ものによりましては国民の基本権の中に並べてこの地方自治権というものを保障した例がございます。しかしまたわが国の憲法のように、ことさら自治権というものを憲法第三章に置かないで、それとは別に、いわば国の組織の規定、政治組織に関する国会、内閣、裁判所、それにあわせて地方自治体というか、こういうふうに並べる行き方もございます。このほうの考え方でございますと、自治体の権利というよりはむしろ行政権、立法権、それのあり方として、必ずしも行政権は内閣が独占するものではなくて、かなりの部分が、内閣のほかに地方自治体のほうに憲法であらかじめ分けて与えることを認める、こういう含みで、司法権は裁判所が独占する、けれども行政権のほうは、同じように国の内閣が独占するという方式をとらないで、現実には、まあ大ざっぱに申しまして、五〇%は内閣のほうで、残りの五〇%は国と言わないで府県市町村のほうにこれを配分する。こういう意味で、むしろ国の政治組織のほうの制度が保障されていると——権力分立の議論でございますが、三権分立か四権分立というふうに言ってもよろしいかと思いますが、そういう意味で、自治権という考え方よりも行政の配分について、内閣だけという六十五条に対して、別に第八章の規定がある、かように見る見方がございます。まあしかし、ここは別に特例法案と直接あるいは関係ないかと思いまするのでその程度にして、そういう学説もわれわれは十分尊重し、敬意を払うものでございまして、その程度にして、私の意見は差し控えたいと思っております。
  28. 恒松制治

    参考人恒松制治君) いまおっしゃいましたように、私の考え方は、都道府県をなくすということは、国あるいは中央政府と、地方団体市町村だけということでございます。非常にはっきりしておるわけでございます。で、その基本的な考え方の中には、一体地方自治体というものが二重構造であるということがほんとうにいいかどうかという疑問が私には基本的にございます。私、そういう制度には非常にしろうとでございますけれども、ある府県がある市町村の領域内に、たとえば府県道を新たにつくりたいといったときに、その市町村が、自分のところではそういう道路をつくってもらっては困るといったときに、一体どちらの自治権が優先するかということになると、私はたいへん問題は複雑だろうと思います。現実にそういうことはないかとも思いますけれども、もしそういうことになった場合には、非常にそこに自治というもののあり方について基本的な問題が出てくるのじゃないかというふうに思っております。ただいま御質問がありました点で、たとえば現在そういう都道府県をなくしたとした場合に、一体それで市町村だけで地方行政ができるかという御質問でございます。それは、私、現実は確かに現在の市町村行政能力というのはそれほど高いとは思っておりません。しかし高くないがゆえにいつまでもそれを都道府県が保護する、あるいはそれを指導するというようなことは、あまり続けておりますと、市町村自治体の能力というものは決して伸びてこないというふうに私は逆に思っております。言いかえれば市町村行政は、これは府県にとっての立場からということになりますけれども、むしろ過保護の状態にあるので、そのままにしておいては、やはり一人前の自治体にはいつになってもそれができないということであります。ですからある意味では、かなり大幅な行政事務をおろして、そうして各市町村自分でできるような力を与えてやるということが非常に大切だと思います。でその一つは、たとえば人件費などを見ましても、市町村の場合はかなり低い、ということは給料が低いということ、給料が低いということは、決して能力のある人物というものは来てくれないということでございますから、したがってそういう意味では、財政力をつけるということが市町村行政能力を増すことにも私はなると思っております。で、したがって都道府県をなくしても、そういう措置を講ずれば、市町村行政能力が低いままでいるということにはならないというふうに私は考えております。それからもう一つは、いま御質問の中に、現実は市町村行政は非常に弱いではないかという現実論からのお話がございましたけれども、私はむしろそれを、現在の都道府県の現実を見てみますと、はたして地方自治体であるかどうかということがかなり疑わしい面がたくさん出てきていると思います。で、いろいろな面で国との関連というものが、中央政府との関係というものが非常に大きい、あるいは大きくなりつつあるわけでございます。私は、そうした府県の実態あるいは現実というものが決して悪いというふうに価値判断しているわけではございませんので、経済が発展してまいりまして、開発行政がかなり重要な意味を持ってまいりますと、府県と中央政府との間の関係というものはより密接にならざるを得ないということは、私は事実だと思うのです。ですからそれが悪いというわけではございませんけれども、現実はまさにそうなりつつあるわけです。そうすると、もし現実論という立場から申しますならば、府県というものは、むしろ国の出先機関といいますか、中央政府の一つの分身といいますか、出張所と申しますか、そういうふうな形になることのほうが私はむしろ自然ではないかというふうな感じさえ持っているわけでございます。
  29. 原田立

    ○原田立君 恒松先生にちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、先ほどのお話の中で、都道府県を現在の自治体として今後も存続するならば、今回の特例法には反対であるというお話が前提にあって、五つばかり理由をお話になったわけでありますが、最後のところにいきましてのお話の中に、それほどまでして合併しなければならないのかと疑問を持たれる、こういうようなことで結論となさっておるわけなんですが、私も大体同感なんですが、今回の特例法では、あまり行政効果といいますか、財政効果というか、これは非常に期待薄じゃないか、こう実は私も思っているのです。そんな点、もう少し仰せいただければと思いますが。
  30. 恒松制治

    参考人恒松制治君) いまの御質問でございますけれども、私は、やはり合併したほうが行政の能率が高まるということは否定できないと思います。幾つかの府県が合併をいたしまして広域的な行政をやりますと、その行政が能率化され合理化されるという面は私は否定できないと思っております。ただ、そうした能率化あるいは合理化というメリットに比べまして、一方でその自治意識といいますか、住民自治体に対する関心といいますか、責任あるいは義務感というものが、広くなることによって失われることの不利、デメリットのほうが私は現状では大きいと思っております。そういう意味で、私先ほども府県自治体として存続するならば、合併というものには批判的であると、こういうふうに申し上げたわけでございます。  それから最初におっしゃいました、それほどまでにしてという意味は、私は財政の援助の面で申し上げたわけでございまして、本来安上がりの政府を目標にしてこうした合併というものが行なわれるにもかかわらず、たとえ奨励的とはいえ財政資金をたくさん配分するということはおかしいじゃないか、行政を能率化して安上がりになるわけなんですから、むしろ財政資金は減らしてもいいのじゃないかとさえ、この理屈で言えばそういうことになるはずです。むしろ奨励的であるとすれば、そんな奨励的な措置を講じてまで合併するというのはやはり少しおかしいのではないか。合併というものはもっと積極的に進められるべきものではないかというふうに感じたわけでございます。
  31. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわらず御出席をいただきましてまことにありがとうございました。本案審査のため貴重な御意見をお伺いすることができましたことを心から厚く御礼申し上げます。  暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      —————・—————    午後二時十分開会
  32. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  都道府県合併特例法案を議題といたします。本法案の審査に資するため、先般委員派遣を行ないましたので、まず派遣委員から御報告を願います。第一班安田委員
  33. 安田隆明

    ○安田隆明君 私どもは、都道府県合併特例法案の審査に資するため、大阪府、奈良県、和歌山県のいわゆる阪奈和合併問題に関する公聴会を開催し、あわせて三県の広域行政、総合開発計画等の状況につき、六月十九日及び二十日の両日にわたり調査いたしましたので、その概要を御報告申し上げます。  派遣委員は、内藤委員長、山本理事、原田理事、山田委員と私の五名でございます。  私どもは、六月十九日午後一時、新大阪ホテル三階会議室におきまして、阪奈和三府県の合併問題に関する公聴会を開催いたしました。意見発表者は、大阪府知事左藤義詮君、奈良県知事奥田良三君、和歌山県知事大橋正雄君、大阪府議会議長八木清八郎君、奈良県議会議長西口栄三君、和歌山県議会議長笹野勇君、関西経済連合会副会長栗本順三君、大阪総評議長帖佐義行君、大阪大学教授木下和夫君、弁護士菅原昌人君の十名であります。会議は、午後一時から午後三時までそれぞれ十分程度の意見発表が行なわれ、午後三時から午後四時までこれに対する委員の質疑が行なわれました。この公聴会におきましてきわめて有意義な意見発表並びに委員の熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細につきましては、時間の都合上、その意見要旨並びに質疑についての報告書を委員長の手元に提出いたしておりますので、委員長において会議録に掲載されるようお取り計らい願い、これによってごらん願いたいと存じます。  公聴会終了後、午後四時から午後五時まで、大阪府における総合開発計画等の状況につき、副知事及び関係部課長から概要を聴取いたしました。  六月二十日午前九時から午前十時まで、奈良県庁において、知事、副知事、関係部課長から奈良県総合開発計画の概要を聴取し、同日午後二時から午後三時まで、和歌山県庁におきまして、知事、副知事、関係部課長から和歌山県総合開発計画の概要につき説明を聴取いたしました。これらの調査は広範多岐にわたりますので、詳細な内容につきましては、委員長の手元に提出いたしました報告書を委員長において会議録に掲載されるようお取り計らい願い、これをごらん願いたいと存じます。  非常に限られた日時でありましたが・現地関係各位の熱心な御協力をいただき、調査の上に多大な御便宜を賜わりましたことを、この際厚く感謝の意を表する次第でございます。  以上、御報告申し上げます。
  34. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 第二班、熊谷委員
  35. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 都道府県合併特例法案の審査に資しますため、増田委員、竹田委員松澤委員、阿部委員と私の五名は、去る十九、二十日の両日にかけ、東海三県といわれる愛知、岐阜、三重の三県において調査、視察を行ないました。  まず、十九日には、三重県、岐阜県の順に県庁を訪問し、東海三県合併問題との関連において、各県の地域開発計画、その現況等について説明を聴取し、翌二十日には、午前中愛知県庁において前日と同様に開発計画等の説明聴取を行ない、午後一時から愛知県産業貿易館会議場において現地公聴会を開きました。  現地公聴会においては、愛知県知事桑原幹根君、愛知県議会議長橋本繁蔵君、岐阜県知事平野三郎君、岐阜県議会議長伊藤薫君、三重県知事田中覚君、三重県議会議長西島好夫君、中部経済連合会会長井上五郎君、愛知県地方労働組合評議会事務局長岩瀬幸男君、南山大学教授酒井正兵衛君、中京大学教授渡辺龍策君の十名から熱心な意見の開陳があり、次いで派遣委員からの質疑がなされた後、午後四時に閉会いたしました。  意見開陳の要旨及び質疑応答の要旨は、別途委員長の手元まで提出いたしますので、委員会会議録に掲載されるよう取り計らっていただきたいと存じます。  また、三県において聴取いたしました地域開発計画等の概況につきましても、取りまとめて委員長に提出いたしたいと存じますので、委員会会議録に掲載されるよう御配慮願いたいと存じます。  終わりに、今回の委員派遣に御協力いただきました各県知事をはじめ職員方々、現地公聴会において貴重な御意見をお寄せくだされた方々、現地公聴会の運営に終始御協力をいただきました方々に対しまして、深甚な謝意を表しまして御報告を終わります。
  36. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) おはかりいたします。委員長の手元に提出されております詳細な報告文書は、これを本日の会議録に掲載することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  38. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) それでは、これより質疑を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  39. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は、広域行政に関連しまして、産業公害対策、港湾の整備状況並びに海上救難対策等について質問したいと思いますけれども、それに先立ちまして、企業の社員が地方公務員を兼ねておって問題がないのかという点についてお尋ねしたいと思います。具体的には、ある大企業の会社の社員がある県の地方公務員となっている。そしてそれは県の要請だそうです。県から地方公務員としての給与をもらう。ところが、会社のほうの給与が高いもんですから、その差額とかボーナスの差額もこれは会社で持つ、このようなことが地方の県でたいへん問題になって監査を受けているわけなんですが、こういうことについて自治省は問題がないと言われますか、またそういう実情を把握していらっしゃるかどうかについてお答えいただきたいと思います。
  40. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 企業の社員が、いま承りますと、地方公務員を兼ねておるといいますか、身分を併有しているというお話でございますが、そういう事実につきましては、まだ詳細なことを私どもまことに申しわけございませんが知っておりません。ただ、いまのお話を伺いますと、地方公務員としてのあり方の問題があろうかと思うのでございまして、たとえば御指摘の事例が一般職のいわゆる常勤の公務員ということでございますと、これは公務員立場からいいまして当然には私企業に従事するというわけにはまいらないわけでございます。公務員は職務に専念する義務を負っておるわけでございます。同時に、公務上他の私企業と特別な関係にあるというようなことは、公務の公正なあり方に対する基本的な公務員の規律というものから考えまして、矛盾するといいますか、それの趣旨に違背するというふうに一般的には思われます。ただ、地方団体におきまして、特定の専門的な事項等におきまして、いわゆる嘱託と申しますか、非常勤、その雇用の形態はいろいろあると思いますが、嘱託なり何なりということで、あるいは非常勤の職員というようなことで、一定の知識なり技術なり経験なりをお借りするという意味での地方公務員ということで何か関係づけてあるというようなことでございました場合には、これは公務に専念するという立場ではないというようにも考えられますので、そういう場合には許される場合があろうかと思いますが、ただ、お話を承わりますと、給与が違うからその差額について云々というようなことがそれにくっついておるといたしますと、いまのようなことではございませんで、常勤の職員、つまり一般職の職員としての関係があるからこそそういう問題が出てくるんじゃなかろうかと思います。もしそういうことであったらば、これは公務員法上確かに問題だと私は思います。
  41. 千葉千代世

    千葉千代世君 自治省公務員一課の吉本さんでいらっしゃいますか——課長補佐の方で、その方がこの件について見解を出しているんですけれども、それ御存じでしょうか。
  42. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 私まだ存じておりません。
  43. 千葉千代世

    千葉千代世君 具体的にしていきたいと思います、何か抽象的になってしまうとポイントがはずれますので。この例は、千葉県に八幡製鉄という大きな会社がございます。その八幡製鉄の社員を——十二人がれっきとした八幡製鉄の社員であったわけです。それを千葉県の公務員として、そして正式に千葉県の公務員になっているわけなんです。給与を千葉県から受けているということです。そこで、この問題について、地方公務員法違反ではないか、こういうことでたいへん問題になっております。もう少し具体的に申しますというと、千葉県の君津海岸に進出しております八幡製鉄の君津製鉄所というのがございますが、これが県営の工業用水の水道をもう建設中なわけなわけです。急いで完成させようとしておりますけれども、人が足りないと、そして社員十二人県の公務員として出しているわけなんです。その君津港湾工業用水事務所ですね、そこには八十一人の職員のうち十二人がれっきとした八幡製鉄の社員なわけです。ですから、そこの副主査を筆頭に、工事の第一、第二課にいる、みんな係長級です、これらの方々や、あるいは一般の職員もいます。これが十二名きちんと、給料も、ここにも書いてございますけれども、県からもらう給料には限度があるから、それ以上もらえないから、その差額をどうするということがずっとあるわけです。これは県の監査の問題になっているわけです。それで監査委員会としては、民間の一企業のためにその従業員を一時的に県職員に仕立てて県営工事を担当させるのは不当な利益を与えることにならないかと、第二番目としては、裏給与、つまり八幡製鉄の負担分が出ているのは地方公務員法三十八条違反になって県の給料は不当支出にならないかと、こういう二点で監査委員方々がずっといったところが、人事委員会の承認を得ているからずばり地方公務員法違反とは言えないと、民間の大企業のために、しかもその社員を使って工事をするのはサービス過剰だけれども、県はほかの福祉事業についてもいろんな融通をしているから云々ということがずっと述べられているわけなんです。それで当事者である港湾工業用水の局長のいわく、望ましいことではないけれども、県営の開発事業がほかにも多く、県は技術者が不足している、どうせ八幡のためにつくる工業用水だから社員を貸してほしいと去年申し入れたと、県職員になると給与が下がるので差額分は八幡製鉄が本人に支払うと、こういうことで県人事委員会の承認を経ていると、こういうことなのです。まだ以下ございますが、私これたいへんおかしいと思いまして、地方公務員法をずっと調べてまいりました。それから人事委員会の規則も見てまいりました。端的に申し上げますと、地方公務員法二十四条というのに、地方公務員は他の職員を兼ねてもそこから給与をもらってはならないと——他の職員というのは県同士の職員のことなんです。いま申し上げているのは県同士ではなくて大企業の社員と県の職員、だからこの条項にも当てはまらない。全然違うものなのですね。県同士で兼ねても給与をもらってはならないと規定しているのに、よそからここへ入ってきて給与もボーナスもやる、給与の差額をもらう、ボーナスの差額をもらっていると、こういうことなのです。これは地方公務員法の違反ではないかと思います。人事委員会規則の中にも、ずっと見ていきますと、全然そういうことは人事委員会の承認事項でも何でもないということは明らかになっておりますけれども、まずこのことについてあなたはどのようにお考えになっていますか。
  44. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 先ほど申し上げましたように、地方公務員につきましても職務専念の義務、これは当然のことでございます。また、職務の性質上、公正を害するようなそういうようなことがあってはならないということは、職員の規律としても当然のことだと私は思っております。先ほどもちょっと申し上げましたが、そういうことがございますので、職員の側から考えました場合の規定が地方公務員法にあるわけでございます。それは、地方公務員法の三十八条という規定がございまして、職員は任命権者の許可を受けなければ営利企業に従事するというようなことができないということになっております。しかし、これはあくまで職員であることが本体という人間についての問題でございまして、任命権者の許可と申しますのは、その場合いろいろな事情でやむを得ないという状況が個人についてあるといたしました場合でも、それが公務に支障がないという考え方に立っての上での問題でございます。御指摘のお話は、むしろその話が逆でございまして、もしお話のとおりであるといたしますと、八幡製鉄といいますか、私企業職員を県の職員に持ってくるというようなかっこうでございますから、これにぴしゃっとはまるわけでは私はなかろうと思います。そこで、そういう意味では、本来そういうことを公務員法では予想していない。つまり、県の職員として職務に専念するということであれば、原則的には会社の職員であることをやめると申しますか、その関係は断ち切られるということが前提であろうと私は思います。具体的な事情はいま初めて伺ったようなことでございますから、断定的なことは申し上げかねるわけでございますけれども、御指摘のとおりのような状態でございますと、私はやはり、公務員法上の直接それにひっかかる問題より、むしろ全体としてそういう扱いは正しくない、妥当でないというふうに思います。
  45. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま局長さんが述べられた地方公務員法三十八条、いま拝見したのですけれども、ちょっとこれは違いますね。あなたのおっしゃっているのは全然違いますね。三十八条は、「職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。」と、その次に「人事委員会は、」云々と書いてございますね。ですから、これはいまおっしゃったように違うわけです。私の伺いたいのは、いまこういうことが現実にあるわけです、あなたは知らないとおっしゃったけれども自治省に問い合わせたところが、自治省公務員一課の吉本課長補佐は、地方公務員法では自治体職員が営利企業などに従事することは制限されているが、この場合は全く逆で違法だとはきめつけられない、しかし一企業と県がコネをつけて職員とやりとりすることは好ましいことではないと、こう言っておるのです。そういう報告は、こういう重大な問題がありながら、全然あなたのほうには報告はないのですか。自治省というものは、この課長補佐の方が一人で、これから詳しい事情を聞くつもりだと、こう言っておるのですね。どういうふうになっておるのですか、あなたのほうの行政システムは。
  46. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) いま伺いますと、私が先ほど申し上げたようなことを言っておるようでございますが、つまり、三十八条に書いてありますことは、公務員がと書いてある。それが営利企業に行くのを原則として禁止しておるというかっこうでございまして、こういう意味のことではなく、つまり営利企業から公務員になるということは初めから予測もしてないということを考えておるわけでございますから、法律上の直接の条文に触れるか触れぬかという形式上はともかくとして、法律上考えている基礎と申しますか、立っております立場というのは、そんなことはとうてい考えられないということを前提にしておる、これは明確なことではなかろうかと思います。そこで私どもも、そういうことは当然予想し得ないことであるという意味で、すみやかに、そういうことがあるといたしますならば、是正をされなければならないと思いますが、そういう重大問題を報告を受けてないのかというおしかりでございますが、どうも、国会に来ておりますからかどうかよくわかりませんけれども、正直に申しまして、まだその話を私自身は聞いておりません。帰りましてさっそく調べまして、また御報告さしていただきたいと思います。
  47. 千葉千代世

    千葉千代世君 それではもう一度お尋ねいたしますけれども、いま申し上げたのは、八幡の社員をやめて県に入って、入りっきりじゃないです。八幡の社員で一時県の公務員になりました。その期限は一年だということです。一年間地方公務員となって県にいて、一年間過ぎると地方公務員をやめて八幡にお帰りになるわけです。私これを調べて、県の職員になるのに一体どういう経路を経ねばならないのか、大企業の社員であれば、何にも、選考試験も受けなければ、講習も受けないし、選抜試験も昇任試験も何にもノーカットですらり来てしまってやれるかどうかということを聞いてみますと、このこと自体問題があるわけなんです。局長さん、政務次官どちらでもいいですけれども、このことは地方公務員法二十四条あるいは地方公務員法全体のこれは違反にならないですか、違反とは思いませんか。局長は正しいことではないとおっしゃったのですが、正しいことではないということは違反だというふうに解釈してよろしいのか。違反という字を当てはめていった場合には、違反だとあなたはおっしゃいますか、どうなんですか。
  48. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) ただいま千葉先生のお話を伺っておりますと、私は地方公務員法に違反しておるような感じを受けます。どうも局長が、先生のお話のように、課長補佐から連絡を受けてなかった——省内の連絡不十分な点はまことに申しわけないのでございますが、局長も私もまだその事実を承知いたしておりません。重大な問題であると考えますので、実情をよく調査をいたしまして、先ほど千葉先生の御意見の中に人事委員会の許可をもらっているからというようなお話もございましたが、どういう解釈で人事委員会が許可をなすったかということにつきましても実情をよく一ぺん聞いてみまして、その上で明確に省のほうの態度を先生のほうにお答えいたします。地先のほうにも指導してまいりたい、こう考えております。
  49. 千葉千代世

    千葉千代世君 その人事委員会のあれを見てみますと、それについては、人事委員会の任務はそういうことではなくて、八条の中にございますけれども、「人事行政に関する事項について調査し、人事記録に関することを管理し、及びその他人事に関する統計報告を作成すること。」、その次には、給与その他勤務条件について絶えず研究を行なって云々と、それから七号の中に、「職員の給与がこの法律及びこれに基く条例に適合して行なわれることを確保するため必要な範囲において、職員に対する給与の支払を監理すること。」 人事委員会は。ですから、今度は、人事委員会は許可したけれども、何で許可したのだと言われたら、まさか給与をそんな会社からもらっていると思わないからということで簡単に認めたような形にはなっているのです、このあれを見ていきますと。県の監査のときも、そういうことを言われているようなんです。ですから、地方公務員法の中の人事委員会の項を見ていきますと、ずっと私見て、法律私専門ではありませんでうといものですから、これは間違ってはいけないと思って、公の席上ですから、千葉県版見たのです。新聞ですから、新聞だけではいけませんから、監査の当事者その他にも聞いたわけです。どの条項と照らし合わせてみても、どの条項を見ても該当するものはありません。ですから、これはまた違反じゃないか、こういうふうに考えていったら、なお驚いたことには、こういうことが言われているわけなんですね。八幡製鉄の人事課長はこう言ったのですね。そのいまのことについて弁明したほかに、当事者からは、通産省経済企画庁にも社員が統計等の手伝い等で出張してこれと同じ扱いになっていると、しかし県との契約が違法だとしたらばこれは十二人を引き揚げなくてはならないでしょうと、こう語ったと、こう書いてあるのです。そこで、通産省に私けさほどお願いしたはずなんですが、そういう実態がおありでしたらちょっとお答えいただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか、通産省の方。
  50. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) ただいま先生の御質問は、八幡製鉄が通産省に先ほどの千葉県の場合と同じように出向して仕事をしているのではなかろうか……。
  51. 千葉千代世

    千葉千代世君 しているということを言っています。
  52. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) そういう八幡の人事課長の話を引用しての御質問でございますが、通産省には現在、八幡製鉄に限らず、いわゆるメーカーからの出向者は一人も来ておりませんです。過去においても、私の記憶する限りにおいては、八幡製鉄等から通産省に出向している例はありません。
  53. 千葉千代世

    千葉千代世君 私はこれを見ましてふっと思い浮かべた。というのは、デパートに入れておりますメーカーが出張販売員をよこして給料はそのメーカーで払ってやっているのをよく拝見するのです。電気会社やなんかよく調べていくとそういうのがある。だから似たようなことをやられているのじゃないかということを感じたのです。八幡製鉄が現に——これは事実です。県の監査になっているのですから、事実ですから、お調べいただくと。  それからもう一つは、広域行政の中で、やはり総合開発とか、そういうことがかなり主になるように伺っております。してみまするというと、ここをやはりきちっとしておきませんというと、やたらにこういうことが横行していったらばたいへんな紊乱状態になってくるということを心配いたします。こういうのがほかにあるのかどうか。第一にはこれを詳しくお調べいただいて、そうして正式に、私、当委員会なり、あるいは資料としてお出しいただきたいと思っております。それからほかのもありましたらお願いしたいと思っております。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと関連。  やっぱり一番気にかかるのは、局長が公務員法上直接関係のある問題ではないけれどもというようなことで表現をされましたが、私はもう明確にその表現のしかたは誤りだと思います。いまやはり最初に考えなければならないのは地公法第三十条だと思うのです。服務の根本基準という問題がやはり私は追求されなきゃならない。いまの新聞記事を聞いてみましても、主として八幡のためにつくる工業用水道だからこの社員を貸してほしい、こういうような自治体側からの要求がある。こうなってきますと、すべての職員は全体の奉仕者であるという根本的な基準というものがもう概念上抜けてしまっている。そこにやはり明確に地方公務員法上の違反がある、こういうふうに理解をいたしますが、いかがですか。
  55. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 私も大体お話のとおりだと思っております。ただ、この営利企業との関係というような条文がぴしゃっとはまるものでない、形式的には——ということを申し上げただけであります。しかし、制度の基本としての考え方は、そもそもそういうものを許さないというたてまえの上に立って、公務員としてのあり方というものから考えまして、この公務員の服務規律の原則から考えますと、そういうものは入り込む余地がない問題ではなかろうか、こう考えております。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、どうせ千葉委員のいまいろいろ資料要求がありましたから、私はそれと一緒に、三十一条が義務づけているところの服務宣誓が一体どうなっているかということをひとつやはりお調べになって明らかにしていただきたいと思います。  それからもう一つは、やはり二十二条でいうところの「条件附採用」という問題が一体どういうふうになるのか。これは明確に、いまのお話を聞いていますと、一カ年間に限って職員という辞令を出しているということですから、これは二十二条にも明確に違反をしておる、こういうことにもなろうと思うのですが、その辺はお調べになったあとでもけっこうです。
  57. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) 同じような感じを私も受けます。そこで、千葉先生のお話もございましたし、実情をよく取り調べまして、実情の線の上に地公法をかぶせて、明確な自治省としての態度をはっきりさせたいと思います。けじめをつけなければならぬ問題だと思いますので、はっきりさせまして、千葉先生のほうへも御回答をいたしますし、資料も、いまのお話のような資料を提出させていただきます。
  58. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、広域にまたがる大気汚染対策、特に緊急時の処置についてお尋ねいたします。公害には局地的なものもございますけれども、大多数が広い範囲にわたって発生しているわけなんです。特に大気汚染については面的な広がりが非常に大きい。したがって、これを防止するためには広域的な対策が必要とされていることは御承知のとおりなんですが、ところがこの法の不備のために緊急の処置がとれないで困ることが起きている。私はこれは法改正の必要がないかという観点で厚生省、通産省ともにお尋ねしているわけですが、たとえば去る五月九日から十日にかけまして東京都の大田区と世田谷などの地域がたいへん高濃度の亜硫酸ガスの汚染に見舞われました。大田区の糀谷保健所では、十日の午前七時に〇・二四PPM、同八時〇・三五PPM、同九時〇・三九PPMを記録しているわけです。このときの発生源は川崎市内の工場群であることはわかったわけであります。東京都は川崎市に対して工場のばい煙を減らすように要請した。ところが、川崎市のほうでは、協力したいがどうにもならない、そういうことで、高度の汚染の状態がその後も数時間続いておった。大気汚染防止法によれば、大気が一定以上の汚染濃度になった場合は、汚染地域の知事が当該汚染地域のばい煙排出企業に対してばい煙等の排出量を減らすように協力を要請できることになっている。それから東京都としては、都内の工場に対しては協力を要請した。ところが、当日の発生源が、さっき申しましたように、川崎市の工場群だった。だから都内の工場群を押えても一向に効果があがらなかった。そこで川崎市に対して前に述べたような要請を行なった。東京と川崎の間では広域汚染対策としての協定が結んであった。その協定の内容は、かいつまんで言えば、二つの地点で同じような条件で、たとえば同時に〇・二PPM以上という条件に該当していた場合に発動する。そのときには、風向きの都合で発生源のあるほうはそうでもなくて、逆にそうでない東京のほうが多かったということであったために、これが出せなかったということになるわけです。問題は、協定にもいろいろな欠陥があるわけですが、川崎市のほうとしても、この欠陥を改めて、そうしてどちらか一方が達したらば協力要請を出せるようにしたいという意向であった。ところが、東京都のほうとしても、逆に東京が出した場合に、東京のほうはもうなくなったけれども、風のぐあいで逆に横浜や川崎のほうがひどかったときには、今度これも出さなければならないわけですから、この大気汚染防止法の定められた欠陥というものを地方自治体が運用面で埋めていくための協定であるならば、この点についても欠陥を直していかなければならないのですけれども自治体同士がそれぞれに自主的に交渉して協定を締結していくとしても、大気汚染防止法の主管庁であります厚生省とか通産省としても、手をこまねいているのではなくて、積極的に指導しあるいは助言していくとか、法改正についてのお考えがあるかどうか、この点についてお尋ねしたいのでございます。
  59. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま、御指摘のございました点につきましては、大気汚染防止法の十七条に緊急時の規定がございまして、この十七条によりますと、「都道府県知事は、指定地域に係る大気の汚染が著しく人の健康をそこなうおそれがある場合」云々というのがございます。この条文は、実は旧ばい煙規制法の場合には、都道府県の知事は自分の管轄下の指定地域内のばい煙発生施設という呼び方をする形になっておりましたが、今回の大気汚染防止法では、法制局の審査の段階で、東京都がよごれて、その原因が神奈川県にあるときには、本来その神奈川県のばい煙発生施設者が、東京都のほうの側のためにばい煙の減少をはからなければならないというぐあいに解釈されるのだというような実は経緯がございました。ところが、実態問題といたしまして、なかなか県境を越えた形で別の県の知事のために別の県にある発生施設者が緊急の命令を受けるということは実態上起こりませんので、その件に関しましては、法律によりまして、大気汚染防止法第二十八条に関係行政機関の協力というのがございまして、本来は関係行政機関の協力と緊急の措置、両方を動かしてやる筋合いのものでございます。ところが、現在、御指摘のありました東京都が川崎市に要請したというのは、実は少し見当が違った話でございまして、緊急時の措置の権限は都道府県知事に入っております。本来ならば東京都の知事が神奈川県の知事に協力要請をするというのが妥当だったわけですが、いろいろ、ちょうどそのとき職員があちこちに動いておりまして、その間の連絡がやや不備であったやに聞いております。厚生省といたしましては、この問題につきましてかねて関心を持っておりまして、この問題の起きた直後、直ちに広域の問題をどういうぐあいに対処するかということを、一部三県を集めまして、それ以降ももう一度会合を持ちまして、この際法律を改正しなければできないのか、あるいは改正するほうがいいのか、あるいは国として直接広域の監視体系というものを事務を起こしていくのが妥当なのか、あるいは都道府県同士の協定というものを法に基づいてつくらせるようにするのか、そのいずれをとるのかということで現在検討している段階でございます。この点につきましては、広域問題で厚生省は、本来は都道府県あるいは市町村のほうに、できるだけ地方に権限をおろすという主張の方向を持っておりますので、よほど慎重にこの問題に対処しなければならないと思っておりますが、両県の利害がかなり反する場合がございますので、国がかなりの形に関与しなければ実際の緊急時の措置における対策はむずかしい面があるのじゃないかというぐあいに思っております。
  60. 千葉千代世

    千葉千代世君 ちょっといまの点ですけれども、法律では緊急時の措置を知事がとれるというのは、スモッグ注意報とか警報を発令した際に、県内の発生源に対してばい煙の減少方を要請するだけだ。こういうふうに、他県に対して強制的なそれはないわけでしょう、いまの法律では。だから、東京都の知事が怠ったわけじゃないでしょう。全然違うでしょう。指導も何もしていなかったのでしょう。
  61. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま申し上げましたのは、東京都知事は東京都下のばい煙発生に対しては勧告権あるいは協力要請権というのがございます。神奈川県下のばい煙発生施設に対しては神奈川県知事がその権限を持っているわけです。関係行政機関の連絡といたしましては、東京都知事から神奈川県知事あてに連絡をして、神奈川県知事から神奈川県下のばい煙発生施設に対してその協力をやらせるように勧告するというのが筋でございます。その知事対知事の連絡ではなしに、知事と市長というはすかいの連絡になったというところに、片一方の市長としては、権限は持っていないというところに問題があったわけでございます。
  62. 千葉千代世

    千葉千代世君 わかりました。そこで、あなたもおっしゃったように、法の欠陥というのが出ているわけです。いま言った知事対市長、こういうふうに連絡してやればいいでは済まされないでしょう、いまの問題は、連絡を受けたほうが、自分のほうでもそうじゃないか——東京と神奈川の場合だけを言っているのじゃありません、ほかの場合にもありますので、これはやはりある程度、同時に同じPPMが出なくても、片方で出た場合には、その発生源と目されたほうに対して、ある程度といいますか、私はある程度でなくて、ほんとうに強制力を持った防止策が講じられなければならない、緊急体制が。私はそれが本筋だと思いますが、そういうふうに法律そのものを改正されなければならないと思うけれども、それに対してどうかと伺ったわけです。   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕
  63. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 現在、法に欠陥があるのではないかという御指摘でございますが、第十七条の緊急時の措置と、第二十八条の関係行政機関の連絡、協力が円滑にいけば、これはできるわけでございますが、実際問題としては非常にむずかしい面があるということでございます。おのおのの権限で利害が相反しております。そこで、私どもこの点につきましての調整に、約二年間実はいろいろ大阪のほうでやってみましたが、やはり自治体同士の中ではどうしても話し合いが最終のところつかない面が実際問題としてございます。その点については法律としてどう対処するかということは、自治体の権限を重んじながらも、よほど今後積極的に検討しなければ広域行政に対処し得ない、そういうぐあいに考えております。
  64. 千葉千代世

    千葉千代世君 私くどいようですけれども、やっぱり検討ということではなくて、現にそういうことが起こっておるわけなんです。これからも広域行政の中で産業開発が主としていかれますというと、亜硫酸ガスの発生源その他については、近接ですから、たとえば神奈川、東京千葉と、首都圏内の事業関連で見ていってもびっしりでしょう、京葉や京浜へ行かれますというと。それは地方自治体の利害が云々という段階ではなくて、やっぱり人の命ということに重点を置いた公害対策でなければならないわけですから、それはやはり全体的な関連で把握していらっしゃるのが厚生行政なんですから、あなたは公害のたいへんな権威でいらっしゃるということを聞いておりますから、私が言うまでもないことですが、やはりそこは思い切って法改正に踏み切っていくという、検討ではなくて改正すべきだという検討お互いに話し合ったことがあるのかないのか、これからやっていくつもりなのか、つもりでないのか、ほっておいて検討だけするわけですか。
  65. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 検討と申しますか、これは私どもは法改正をすべき事項ではないかと思っております。ただ、自治体の権限に対して国の別の権限があらわれるということに問題がありはしないかという論議が一部にございます。私どもは、機械的に両県をテレメーターで結び合わせて、感情を抜きにして運用できる方法が一番スムーズではないかと思っておりますが、費用問題等で現在行き悩んでおります。
  66. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、公害対策についての府県間の連合、こういう方式の推進について伺いたいのですが、公害の特殊性から見て、公害対策の必要性についていま指摘したとおりなんですが、その具体的な方法となりますというとずいぶん幾つもあるように思うのです。たとえば東京と川崎の間で結ばれている協定、二都県間あるいは市県間の協定方式も一つの方法でしょうけれども、現在府県間とかブロック別あるいは全国的な種々の地域単位で設けられている協議会方式も一つの方法だと思うのですが、そういう例をあげていけば、地盤沈下の協議会であるとか、あるいは一都三県の公害降止協議会とか、関東南部地区水質汚濁防止調査連絡協議会とか、あるいは全国大気汚染防止連絡協議会とか、いろいろ数えていけばたくさんあるわけなんですが、おそらく十数団体にものぼるのじゃないかと思うのですが、これらの団体がすべて十分な活躍をしているとは私思っていませんし、現にまだつくられたばかり、あるいはこれからという段階のもかなりあるようですし、単なる情報交換の場でしかないようなところも幾つかございました。しかし、地方自治体の任意の広域公害対策協議会方式というのは非常にいい面があると、さっきお述べになった一つのあれかとも思いますが、地方自治体の権限を侵さないようにしていい方法をはかりたいといまあなたがお述べになったのですが、私も全くそのとおりだと思うのです。そういう面では、発展の方向へこれを助長していくべきだと私は思うのですけれども、そういう点については全国の活動をキャッチしていらっしゃるかどうか、知っている範囲でお答えいただきたいと思います。
  67. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 大気汚染の問題につきましては、東京湾沿岸の一部三県の協議会というのがございます。いろいろ法律に基づく基準をきめます場合に、私ども地方自治体と絶えず事前に相談をしながらいたしておることろで、そこで非常な論議をされております。そういうことで意思疎通が円満にいきますことと、もう一つの問題といたしましては、いままでのところ、過去約五年以上になると思いますが、季節を分けまして全部で広域の汚染調査をいたそうということをやっております。私どもは、この調査をさらに進めて、先ほど先生指摘の、広域の汚染体制というものに対して適切な国の関与をしながら、自治体の自主性をフルに生かされた形での広域体制をつくるのが一番理想的であろうと思っております。同様のものが阪神にございます。阪神の協議会ということで、同じく基準問題の協議及びこのシーズンを含めましての調査ということをいたしております。全国的なものもございますが、地域、広域の問題に具体的にタッチをいたしておりますのは、大気汚染の関係では以上申し上げたようなところでございます。水質等につきましては、ほかの省のほうで、私どもは直接関与いたしておりません。
  68. 千葉千代世

    千葉千代世君 美濃部東京都知事は、関東都府県間で組織している関東地方行政連絡会議の活用をはかる、そうして水道、公害などの各問題ごとに各府県が話し合って事業をはかる、こういう連携組織をつくってはどうかというのを提案しているわけなんです。それからまた、公害に関係のある都市が公害対策などの特殊な問題に限って都市連合をつくっていきたい、こういうふうにしているわけです。しかし、これは現行の府県とか市町村の合併を伴うというのではないのですね。公害の広域行政ということはたいへん大事だということなんです。その面で、いまおっしゃった法的な面、あるいは協定の面、いろいろな具体策でこれを補っていく。しかし、広域行政でこの面が必要だから即これが現行の府県とか市町村の合併を伴っていったほうがいいのじゃないかという、こういうことでは私はないようにずっとあれを拝見して思ったわけですが、この公害の広域行政のこういう協議会の活用方法について、あなたのほうは具体的にどういうお考えをお持ちでございますか。
  69. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 活用の具体例でございますが、私どもは、広域の調査に関しましての調査委託費を厚生省から昨年以来出しておりまして、それによって広域問題の対応を進めるということをいたしております。  もう一つは、基準設定の場合に、他県の発生施設が自分の県に対する影響を持つとかいうことでございますが、広域の協議会の中で基準設定の問題をいろいろ論議いたしまして、その意見を極力生かすという形をとっております。現在の段階は大体以上の段階になっております。
  70. 千葉千代世

    千葉千代世君 公害行政についてもう少しお尋ねしますけれども、公害行政についての国と地方の権限の配分、特に規制の権限を知事にゆだねてはどうかという、こういう点でお尋ねをいたします。公害行政の権限については、地方自治団体はほぼ一致して、地方自治団体の権限が弱いために行政がやりにくいということを指摘しているわけなんです。たとえば大気汚染防止法上の権限について見ると、鉱山は全面的に防止法から適用除外をされている。それから大気汚染の主要源であります電気事業とかガス事業についても、規制の権限の相当の部分が通産大臣の手元に留保されているわけです。知事の権限が一部に及ぶだけではないかと思っております。こういうふうに考えていきますというと、これはやはり権限の問題について考慮を要することではないかと思っているわけです。ばい煙の発生施設の新増設にあたっても、施設の設置を知事に届け出ればいいということになっておりますけれども、これでは事前の規制を完全に実施することはできない。届け出ですから、事前の規制が完全にできないわけなんです。法案審議の際にも、政府の説明によりますというと、届け出制でも実際の効果においては許可制と何ら変わるところはないと言っていらっしゃるのですが、実際において公害行政の第一線に立っている地方自治体からは、許可制にすべきではないかという声があがっているわけです。これは届け出制が事前規制という観点から見ると不完全な制度であるけれども、許可制に踏み切って、生活環境が著しく悪化するような場合は企業の立地を許さない——いわゆる立地条件にいくわけなんですね、許さないというようにすべきではないかと、こう思っているわけなんですが、この許可権限を都道府県知事に付与すべきではないか、こういうふうに考えているわけですけれども、これは厚生省、通産省自治省について伺いたい。いわゆる公害行政をやりいい立場から、そういうものがいいのではないかと質問しているわけです。
  71. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) 先生のおっしゃるように、公害に関する規制の権限を都道府県知事にゆだねろということは正しい方向だろうと思います。それで、現在、たとえば大気汚染防止の関係をとってみますと、先生の御指摘になりました電気、ガス、鉱山、それ以外は全部法律上、都道府県知事の権限になっているわけでございます。ただ、電気、ガス、鉱山の保安につきましては、おっしゃるような特殊事情によりまして、通産大臣の権限にしたほうが適当であるということで、昔のばい煙規制法以来、そういうような考え方をしております。その理由と申しますのは、たとえば電気の例をとりますというと、電気につきましては公害規制もございます。同時に電気につきましての保安というものが非常に大事なことになっております。それで、実際問題として、この電気の保安と電気の公害規制というものは機能的に分けられない。たとえば、その火力発電所のボイラー、タービン、煙突その他のものについては、これについて保安の面から非常に厳重な規制をやると同時に、同じものについて電気の特殊性に基づく公害の規制というものをやらなければいけない。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕 そういうことで、ここだけは、保安の関係もございますので、どうしても一体的にやらなければならないというふうになっております。それらは電気事業法でやっているわけでございます。  それからなお、電気事業法の関係では大気汚染防止法よりも実はもっときびしい規制がやれることになっております。と申しますのは、先ほど先生、届け出制の問題をお話しになりましたが、これはあとでお話しするとして、電気、ガス、鉱山につきましては、計画の段階から認可制をとる。それからボイラー、タービンができる場合、使用する前の検査ということで、保安上間違いないか、公害上間違いないかという、使用前の検査ということをやっております。それから二年に一ぺんくらいの定期検査ということもやっております。そういうように、一般の大気汚染防止法ではできない、よりシビアな規制を電気事業法でとっているということでございます。また運用に関しましても、大気汚染防止法というのは指定地域制をとっておりまして、指定地域だけについて排出規制ということをやっておるのでございますが、電気等につきましては、亜硫酸ガスを大量に出すという関係もございまして、指定地域に限らず、すべての火力発電所について電気事業法によって規制をやっておる。そういうような関係もございまして、たとえば電気について見ますと、通産大臣が一体的にやったほうがいい。なお、電気につきましては、たとえば東京電力につきましては、静岡から山梨、群馬、茨城というようにたくさんの府県にまたがっているのでございまして、そういう広域的、これこそ広域的に監督しておるわけなんですが、そういう観点からいって、主務機関である通産局がちょうど管轄区域を同じくしているので、それを規制するのが適当ではないか、こういうわけです。同様な理屈は、ガスについても、鉱山保安についても言えると思います。以上が、例外として電気、ガス、鉱山につきまして都道府県知事に権限をゆだねないという理由でございます。  それから次の御質問の、届け出制と許可制という問題でありますが、確かにいろいろ論議のあったところでありますし、ますます公害問題がうるさくなって、亜硫酸ガスについては環境基準ができまして、今後これを政府としては達成するためにあらゆる努力をしなければならない。そういう際におきまして、現在の届け出制、あるいは届け出だけでなくて、計画変更命令、あるいは計画中止命令といった強権もございますが、やはり何といいますか、工場をつくる前にこれをチェックする、事前にするというような意味で、許可制をやる必要があるということは十分認められるわけでありまして、今後の問題としてはそういう方向に行かなければならないと思いまして、通産省といたしましても、何らかの新規のその他の措置をとりましてそういう方向に参りたいと思いまして、目下検討中でございます。   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕
  72. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いまの御質問の点につきましては、通産省の立地公害部長がお話しになりましたように、私ども基本的に地方自治体に権限をおろしていくという方向を終始一貫してとっております。最初のばい煙規制法に比べましたならば、今回の大気汚染防止法はかなり自治体のほうにおろしたことは事実でございます。まだ電気、ガス、鉱山というものが入っていないというところに、いろいろ自治体からの問題があるということは事実でございますが、どの面が公害として審査すべき事項であるかというところにつきまして、現在立地公害部長がおっしゃったような観点の議論もあるわけでございます。そういうことで、私どもは、火力発電所の建設に際しては、ばい煙発生施設の届け出よりもさらにきびしくなっておりまして、基本計画をずっと数年前にきめるという段階ですべて関係地方自治体意見を聞いております。その意見が整わなければ前に行かないという形で、厚生省がその間に立ちまして、現在都道府県知事の意見を聞きながらやっております。その結果、出てきましたのは、東電大井発電所の低硫黄燃料を使った発電所ができたというのが一例でございます。そのほか緊急時の措置につきましては、発電所に対しましては都道府県知事が立ち入りができるというようなぐあいに広がってまいってきております。ただ自動車の面につきましては、現在大気汚染防止法では直接にこの基準をきめるだけにとどまっておりますので、自動車の基準のほうにつきましては自治体におりていないということは、これは交通政策等の問題からのことでございまして、私どもはその点につきましてはなかなか簡単に割り切りができないというような考え方を持っておるわけでざいます。基本的には自治体のほうにはおろすということで私どもは対処しております。  許可制の問題は、通産省立地公害部長がおっしゃられましたが、私どももこれは将来許可制にしなければならないと考えております。どういうような法律の体系でという一つの問題点があろうかと思いますが、私どもは将来ぜひとも実現いたしたいという考え方で現在まで努力をいたしておるわけでございます。
  73. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、水質保全の行政についてお尋ねしますけれども、今国会に提案中の水質保全法の改正案ですけれども、それによって、公共用水域の調査、基本計画、この立案にあたって知事の意見を聞くこととしたり、それから指定水域の水質の汚濁状況の調査を知事が行なうなど、知事の権限強化について若干の改正が加えられているようでございますけれども、本質的にはあんまり変わっていないように思います。工場に対する監督あるいは規制権限は、依然として工場の種類によって中央官庁がこれを握っているように思います。たとえば製造業の大きなところでは通産省とか、あるいは医薬品製造業は厚生大臣、アルコール製造業は大蔵大臣、農林関係の食品加工業のほとんどが知事に委任されていると思います。そうなりますと、水質保全行政については、都道府県知事が、紛争を起こしたときあるいは生じたときに和解の仲介を行なうことができるくらい、それくらいでもって、規制に関する実体的な権限は与えられていないのではないかと、こう思うわけです。ここにも国と地方自治体行政権限について、中央の権限の温存ということばはどうかわかりませんが、保存でもいいし、依然そのままに浮かんでいるわけです。ですから、監督の権限、それらを大幅に地方に移管すべきではないか。これはもちろん立ち入り調査、立ち入り検査権も含めてのことなんですが、通産、大蔵がここに出ていらっしゃいますか。厚生省の見解を聞きたいわけです。あわせて自治省の見解も聞きたいと、こういうことなんです。
  74. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) 先生の御質問の第一点の、現在提案中の水質保全法改正について、基本計画の調査、それに関する都道府県知事の立場はどうかということは、これは所管が企画庁でございますので、私どものほうからお答えする筋合いではないと思います。あとでもって先生が非常に御強調なさった水の関係の監督権限を知事におろすという話についてお答えいたします。  具体的には、工場排水規制法がございまして、それで、先生のおっしゃるように、形といたしましては、五省−通産、大蔵、厚生、農林、運輸というようになっておりますが、ほかの省との関係もそれぞれあると思いますが、通産省関係につきましては、先ほどから大気について申し上げましたように、基本的には都道府県知事に権限を委譲するという方向でございまして、発足の当初は、相当部分が、通産大臣と申しますか、通産大臣の支分部局である地方通産局が工場排水規制法に基づく監督権を持っていたわけでございますが、その後だんだん地方自治体のほうでも水に対するスタッフも充実してまいりましたし、それに関連して、この権限をぜひ委譲してくれという声も強い状況でございますので、逐次権限を委譲いたしておりまして、先般、ことしの初頭におきましても、残っておる権限を相当部分都道府県知事に委譲いたしまして、現在残っているのは通産関係ではわずか七業種、これも地方自治体の、何といいますか、そういうものに対する監督体制の整備——これは何もスタッフの問題だけでなくて、大阪府ができれば、奈良県もできる、水は幾つかの県にまたがっておりますから、その一つの川について関連するすべての県について監督体制を整備するということに応じまして、これを逐次委譲してまいる、こういう方向でおるわけでございまして、基本的には先生のおっしゃるとおりにやっておるつもりでございます。あと四省のほうにつきましては、それぞれお答えがあると思います。
  75. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 工場排水規制法の中での厚生大臣の権限につきましては、いま立地公害部長のおっしゃいましたように、本年初頭に都道府県知事におろしております。
  76. 千葉千代世

    千葉千代世君 経企庁、これは呼ぶのを忘れましたからいいです。自治省のほうはよろしゅうございますか。
  77. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) いま関係各省のおっしゃいましたとおりでございますが、私どものほうといたしましては、公害の関係、いまお話のありました水質保全等につきましても、河川の管理、用水の利用というような観点、あるいは衛生上の観点からいたしまして、特定の企業の排水というふうなものが特定のところで規制され地域に総合されない場合にはやはり問題があるわけでございまして、機会のありますたびに、そういうものが総合的に規制ができるようにという形で、都道府県知事を中心にいたしまして、調整ができるように、関係各省にぜひ協力していただくように、機会のあるたびに御協議をいたしております。そういうこともありまして、各省もだんだんそういうことに応じて検討していただいているという状況でございます。
  78. 千葉千代世

    千葉千代世君 次には、公害対策と財源の配分ということで伺いたいのでありますが、その前に地方自治体と免税という点でたいへん私は気になることがあるのです。それは、千葉の京葉工業地帯を一つとってみましても、川崎製鉄——また川崎製鉄が出ましたが、あれが一番先に来まして、いまどんどん京葉工業地帯は伸びているわけです。そのほかたくさんの企業が進出しております。当初の第一期、それから第二期とずっとやるわけですが、その時分には工場誘致をむしろ自治体のほうからしておった。それに対して通産省指導していった。こういうふうな形をとっておったが、だんだんこういうふうに公害が出てくるし、それから工増誘致も飽和状態になってくる。こうなってきまして、今度は財源の問題なんかもいろいろ出てきた。一番初めにたとえば川崎製鉄を千葉県に呼ぶ場合には、五つの条件をあげて呼んだわけです。いろいろありますが、その条件はやめまして、その中の一つに、地方税については、全工場完成後五年まで、県は事業税、市は固定資産税を免除するという一項が入っております。ですから、地方自治体と免税ということで考えていきますと、地方自治体の人々の税金によってささえられて企業が発展していったという面がずっと出ているわけです。これはまさに川崎製鉄だけではなくて、たとえば市原についてもそうですし、それから石油コンビナートのずっとございますところもそうです。市にも免税の措置がある。そうして一方には三千万円、あるいは幾ら幾らの減税をしていくわけですから、減税というのは、結局これは、県民の払った税金、その当然払うべきものを払わないのですね、減税という名目だけ。実際的には、企業が払うべきものを県がまけたわけでしょう。そうすると、それだけこの負担分が住民にかかっていくということになる。県は何もお金があり余ってまけたわけじゃない、赤字があるわけでしょう。そうすると、二重、三重の被害を受けているのはだれかということになってくる。その上に公害対策、またその公害対策についても、これも脱硫装置などもなかなか行なわれていない。それについては、脱硫装置について補助金をどうするんだというと、企業が全部出すんじゃなくて、これは通産省、国が出すと、国の税金がそっちへいくと。こういうふうに考えていくと、二重、三重、四重、五重に、一つ企業のためにみんなが力を合わせて——ことばは力を合わせてですが、裏を返していくというと、まあ犠牲になっているということばはあれでしょうが、こういうふうになって出てくるわけです。  私はこの中で伺いたいのは、公害対策と財源の配分で、去る五月の二十三日に千葉県と岡山県、三重県の知事が、公害対策について国の公害関係官庁に対して要望を申し入れておりますけれども、それ御存知でしょうか、厚生省の方。御存じでしたら、内容をちょっと説明していただきたい。
  79. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 非常に申しわけございませんが、公害部の庶務課のほうが担当しておりますので、私、内容といたしましては、おおよその概略としてのみ存じておりますので、不十分な点があってはまずいと思いますので、説明するのを差し控えさしていただきたいと思いますが、税金の問題につきまして、コンビナートがあって、その従業員が、本社のほうが人数が多いので、そちらのほうに税金がたくさん落ちている。片方の工場のほうは、煙と水は落ちたけれども、税金は落ちないということについて、もっと税制の問題をよくしてくれるようにというような点、あるいは、原油関税、重油関税の活用というような点につきまして、かねがね強い御要望のあった点が、今回公害防止計画の基本方針策定の際に、三県の知事の連名で出されたというふうに記憶しております。ぜひこれを強く推したいということで、厚生大臣もそのような気持ちを持っております。
  80. 千葉千代世

    千葉千代世君 公害課長の把握なさっているとおりなんですが、ちょっといろんな税金の分配率なんかも基準としてございますので、申し入れたその要望事項の一つには、法人事業税の配分基準の改正ということがございますね。現行地方税法では、複数都県への法人事業税の配分という——これは電気事業については固定資産評価を基準として行なわれているわけですね、現行は。それから、または石油製品製造業については、従業員数を基準として配分する、それもあなたのおっしゃったとおりです。ところで、臨海部に立地する電気供給業のすべてが火力発電にたよっている。しかも、この火力発電所から排出する亜硫酸ガスが、発電所周辺における大気汚染の主要原因となっている。特に最近は発電機一基四十万キロワット、こういう大容量の発電所の立地が普通の姿だと。そうすると、発電容量が大きくなればなるほど亜硫酸ガスの排出量も多くなる。これによって発色する公害も著しくなる。地方自治体としては公害対策費もよけいかかる。たいへんかかります。これは数字を示すことはいまは省略いたしますけれども。それから、現行の税法のように資産評価方式、これをとりますというと、大容量の発電によって多大の公害をこうむっている地域に対する事業税の配分は少なくなる。これは御指摘のとおり。で、石油製品製造業についてもほぼ同様のことが言われるわけなんですが、この税法では従業員数による方法をとっていますから、税配分を行なうにも、そういう点でいくというと、工場の立地している府県に対する配分が非常に少ない。たとえば具体的にいえば、東京でとっている税金をもっとよこせという、端的にいえばそういうことになっているわけなんです。だから、税の配分についてのやり方を、ここで再配分ということになっているわけなんですが、そういう点について、私は一つのところで税金の奪い合いということ、そのこと自体にはかなり問題を含んでいると思うんです。税金についても、私地方行政に入って間がないので、初めての経験でよくわかりませんが、こう同じ中のものをぶんどり合いということでね、そのことよりも、もっと公害の発生源であるところから、たとえば重油なり重油を使って、脱硫装置をせよ、それに対して公害を受けているものは、税金を課したもの、その税金を関税なら関税でいいですね、関税をそれを公害税に回すとかいって、そういうふうないわゆる税の再配分と同時に、根本的なものをやっていかなければ、これは意味がないのではないか、このように思っているわけなんです。  そこでいま伺いたいのは、いま言った面については、いま厚生省のほうで考えているとおっしゃったのですが、これは関税は大蔵省でしょうか。たとえば重油の輸入についての関税のそのお金を、石油のときに、よく石炭対策に回しているように伺って、私答弁を聞いていたのですが、石炭対策に回したものをこっちへよこせとか、私そんなようなことを言っているのではなくて、全体的な中に立った公害対策として、主としてそういうことも考えられるのかどうか。あるいはそれよりほかに、公害の発生源に対する規制と、それから出すべきものは出させる、もっと言えば、煙突なら煙突、脱硫装置について、一つのあれが大体何十億とかかるそうですね。そういうのをやるには大企業でなければできない。中小企業に対しては通産省はどういう指導をしているかという、その点もあるわけですから、立ったついでに、あとの質問ですが、それもあわせて中小企業の煙突なんかに対してどういう助成をするつもりかということと、それから関税のお金をそういうふうに回すということについてはどういう考えでいるか、二つをちょっと。
  81. 渥美謙二

    説明員(渥美謙二君) いまの御質問でございますけれども、御承知のとおりだと思うのですが、関税はいわゆる国際的にいろいろ価格差がある。そうして関連する国内産業を保護する必要最少限度においてかける、これがたてまえです。また特に原・重油というのは、国民経済からいいまして、基本的な物資でございます。それが関税を高くして、その製品なりなんなりの価格が上がるということは好ましくない、こういうことが一般的に申せるかと思います。  それから税収というものは、これはもういまさら申し上げることもございませんけれども、総合的にそれをいろいろな産業目的に、プライオリティーに応じて有効に配分していく、こういうことがたてまえでございまして、その限りにおきまして、目的税的なものはなるべくこれを設置しない。これが財政の弾力性を確保しますし、効率化の道であろうというふうに考えます。御指摘のように、石炭につきましては現在原・重油関税の相当部分を、特別会計の財源として繰り入れるという特殊なことをやっております。これは石炭産業の現在の緊急事態、これを解決するために集中的な対策を講じられておるわけでありまして、その財源として臨時的に、時限的にこれを与えておるという非常に特別な例外でございます。公害対策につきましては、したがいまして、このような方法によらないで、財政支出あるいは財政投融資というようなもので、必要に応じて措置をしてまいるべきではないか、これが大蔵省の考え方でございます。  それから中小企業その他の問題、実は私関税の担当でございます。よく存じませんので、ちょっとはっきりしたことをお答えいたしかねる次第でございます。ちょっと、いまの言い直します。歳出面の予算措置というようなことにつきましては、通産省のほうからお答えいただきたいと存じます。
  82. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) それでは先生の御質問の、中小企業に対する助成という問題についてお答えいたしますが、一般的にこの公害対策を進めるにつきましては、もとより企業中心になってやらなければならぬわけでありますが、やはり国といたしましても、企業がやれるような、インセンチブとしてある程度の助成というものを進めていかなければならぬということで、通産省は毎年公害対策のための助成策について、強力に推進している段階ですが、ことにこういう助成は、中小企業について必要性が特にある、こういうことでいろいろやっておるわけですが、公害対策に対する助成は、金融面と税制面とあるわけでございまして、金融面につきましては、公害防止事業団というのが四十年から設立されまして、いろいろな施策を講じておりますが、この公害防止事業団の融資条件の改善というのは、金利の引き下げとか、その他貸し付け期間の延長であるとか、頭金の縮小とかいうのがいろいろあるわけでございますが、こういう点について毎年改善を加えておりまして、たとえば金利につきましては、中小企業向けの金利が昨年度は六%であったのが、本年度からはさらに一%下げて五%とするというようなことをやっておるわけでございます。さらに来年度以降におきましても、その線でさらに金利の引き下げ、その他の融資条件の緩和ということをはかっていきたいと思っておるわけでございます。  なお、中小企業に対する公害対策の金融機関といたしましては、それ以外に中小企業振興事業団もございますし、それから中小企業金融公庫もあるわけでございますので、こういうものも同様な線によって、資金源の確保、融資条件の緩和というようなことを進めてまいりたいと思います。  それから税制面も、これまた大事でございまして、これはいろいろなことをやっておるわけですが、たとえば本年度におきましては、公害防止施設につきまして、特別償却という、去年の三分の一の特別償却というものを実現したわけでございます。それからこれは国税の関係でございますが、地方税の関係におきましても、騒音関係について今度騒音規制法ができたわけでございますので、固定資産税の免除というようなことをやりましたし、さらに従来から懸案になっておりました高煙突の——先生指摘の煙突を高くするという関係で、七十メートル以上の高煙突につきましては固定資産税を半分にするということに、自治省の御協力を得まして実現したわけでございます。来年度におきましても、さらにその他の面において必要な措置を実現いたしたいと思っております。
  83. 千葉千代世

    千葉千代世君 いまの高い煙突ですけれども、七十メートル以上について、固定資産税の半分を免除するわけですね。そうすると、その七十メートル以上を建てられる工場というのは、相当大きな工場でなければ自力では建てられませんね、かりに固定資産税の免除を半分にしても。ですから中小企業の工場、そういうものはやっぱり野放しですか、指導だけなんですか。具体的には七十メートル以上の大きな煙突を建てられる工場というのは、京葉地帯なら京葉工業地帯に、あそこからずっと市川から富津までかけた大工場群に対して、どのくらいの割合で建つのですか。私あそこを見てまいりましたのですが、なるほど大きいのがずいぶんあります。あったし、それから、それとあわせて公害のほうから見ていくと、植木をたくさんやって、緑地ですね、煙突と同時に緑地対策をやっていたのです。ところが、たくさんな木を植えてあって、緑地の木が全くちょぼちょぼなんです。全然、こう公害に強い木を植えたと県でいっていたのです。ところが、その木をごらんになったでしょうか、通産省で。ごらんになっていただけばわかるように、ちっともおい茂っていないのです。小さくて、いわゆる縮かんでいて、ちょぼちょぼちょぼとあって、どこにあるかわからない、荒涼たる中に。これから大きくなるのかもしれませんけれども、あれが大きくなっていって、そうして緑地帯をつくって、工場地帯と、それから高い煙突と、これ相関関係の中で、人の命が守られていくということについて、ほど遠いと思うのです。とりあえず煙突の高いのということになりますというと、あの工場群の中で、どのくらいの。パーセンテージでそれは建つものですか。
  84. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) 最初、先生は七十メートル以下のものは野放しかというお話でございましたが……。
  85. 千葉千代世

    千葉千代世君 いや、全然建てられないところもあるわけですね。自分の小さい、もう問題にならない……。
  86. 矢島嗣郎

    政府委員(矢島嗣郎君) それで野放しという意味ですが、中小の煙源といえども全部大気汚染防止法の規制の対象になっているわけでございまして、現在は、伝熱面積十平方米以上ということでございまして、まあふろ屋の大きいやつですね、非常に大きいふろ屋以上のものはすべて大気汚染防止法の規制の対象になっていると、したがいましてふろ屋の大きいものでさえ入るのですから、工場群につきましては、ほとんどすべてが大気汚染防止法の規制の対象になっているということがいえると思います。それは排出の面の規制でございます。  それでさっきの話の助成措置は、なるほど七十メートル以上ということになっておりますから、七十メートル以下のものにつきましては、税制上の、少なくともいまの地方税ですね、地方税である固定資産税の面における恩典はないわけでございます。しかし、まあ税制上はそうですが、金融上はいろいろな公害防止事業団その他の金融機関等の助成の対象にはもちろんなっておりますが、たまたま高煙突につきましては、われわれもなるたけ煙突を高くしょうという指導をしているものでございますので、その指導のための方策として、三十メートルでも五十メートルでもいいから税金をまけるというわけにはまいらないので、七十メートルという線を切って、地方税法上の恩典を与えていると、七十メートルということになると、七十メートルが千葉地区の何割になるかということは、ちょっと正確な数字で申し上げられませんが、私も千葉には何回も行きましたが、あすこは、千葉というのは新しい工場地帯であって、主として中以上の、あるいはもっと大に近い工場が大部分を占めているのは、先生御承知のとおりでございまして、いわゆる中小工場というのは、比率から見ると非常に少ないのじゃないか。それから、少なくとも亜硫酸ガスの排出量から見ると、非常に微々たるものではなかろうかと思いますから、数字的には申し上げられませんけれども、七十メートル以上固定資産税半分という恩典は、少なくとも千葉県に関しては非常にきくのではないか、効果があるのではなかろうかと考えております。  それから緑地帯の話が出ましたが、私も市原の緑地帯も行きましたし、四日市も、両方とも緑地帯としては第一号ができたわけでございます。両方とも不幸にして、先生のおっしゃるように、最初の段階だものですから、できたばかりなものですから、まだ木が十分育っていないというのは、私も目でもってよく見てきたわけですが、これはやっぱり最初ですし、たまたま水の手入れが十分でなかったとか、その他の事情もありまして、見たところ貧弱であるという印象は受けましたけれども、いずれ、緑地帯は完成したわけですから、手入れを常時やっていれば、そのうちにはりっぱなものになるだろうと期待しております。なお、こういう緑地帯につきましては、これまた公害防止事業団におきまして対象の事業として取り上げております。市原、四日市等に続きまして、赤穂とか徳山とか、それぞれこういう地帯をつくって、公害防止対策に資するようにいたしておる次第でございます。
  87. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、厚生省に伺いますけれども、厚生省は、きのう、何か汚水のひどい海水浴場の規制に乗り出して、全国に通達を出したように聞いているんですけれど、それについて望ましい水質基準というのは、どこに基準を置いて出したのかという、その根拠を示してもらいたいことと、それから海水汚濁の原因、これがどこに一番多いかということです。これ全国的に、たとえば大阪とか、その他も全部そうですが、東京湾、それから江の島、その他ずっと限ってされているんですが、これから六年後には三倍近いよごれになるということでもって、公害調査も急がれているようなんですけれども、一片の通達でこれが効果があるものかどうかというのは、海水浴場はもう開いて準備をして、そしてお客の受け入れ体制、民宿は全部受け入れ体制は二月ころに満員なんだそうなんですね、ずっと。こうした場合に、これは出さないより出したほうがいいに違いないわけです。で、行政指導に乗り出したのはもちろんいいことだと思っておりますし、ただもう一歩進めて、この基準のそれ以下のものについては人がそれに入っては害があるとかって、こういうふうな強い行政措置はできないものかどうか、その点について概略を説明してもらいたいと思います。
  88. 赤穴博

    説明員赤穴博君) それでは、海水浴場の水の基準についての考え方を私のほうが御承知のとおり先週か発表いたしました、その基本的な考え方について御説明申し上げたいと思います。  最近、御承知のとおり、海水浴場が非常に汚染されておるという問題が一般的に明らかになっておりまして、かなりなそういう公害になっておるわけでございます。で、こういう問題に対してどのように方向からいかに対処するかという方法論の問題があるわけでございます。第一点は、海水浴場の水質と人の保健衛生上にどのような因果関係があるかと、こういういわば下のほうから悪いものを、これ以下であれば非常に健康に影響があるというような上から攻めていく方法と、それからもう一つは、きれいな海水浴場というものをどのように考えて、いわば上限をきめて、その上限のほうになるべく近づけていくということによってきれいな海水浴場というものを確保していく、この二つの方法論があるわけですが、それで、従来から海水浴場の水質について諸外国でもいろいろ調査をやっておりますが、それからわが国でも一部の学者の方々がいろいろ調査をされておるわけでございますが、海水浴場の水質がどの程度よごれたならば人の保健衛生と相当関係があるというような、いわば下限から基準を設定いたしますことは非常につかみにくい。いろいろ調べてみて海水浴場の水質がよごれていたから直ちに人の保健衛生に影響が相当あるというふうなところに——諸外国においても、かなり大がかりな調査をアメリカ等でもやっておりますけれども、それでも出てこない。そういう人の健康、保健衛生というところから非常に密着してとらえにくい問題であるわけでございます。そのような観点からいたしまして、非常に迂遠な方法ではございますが、逆に非常に推奨できるきれいな望ましい海水浴場としての基準はどのような点から考えたらよかろうか、こういう観点から、その水質基準は、私のほうで水質にかかる環境基準専門委員会というのを公害部会につくったわけでございますが、この委員会の考え方も大体そのような考え方できまってきたわけでございます。そのような考え方を基礎にいたしまして、現時点において望ましい海水浴場として考えられる水質の基準というものはこれこれこれであるというのが、先週発表いたしました水質の基準でございます。第一点が透視度が三十以上であること。それから第二点が、アルカリ性過マンガン酸カリウムによる化学的酸素要求量(COD)、これが二ミリグラム・パー・リットル以下であること。第三点が、大腸菌の問題として、試量百ミリリットル当たりの最確数(MPN)が千以下であること。それから第四点が水域全体に油膜を認めないことという、この四つの点から、一応こういう水質に合致すれば、非常に清らかな望ましい海水浴場の水質として考えられる、こういう基準が一応その委員会の分科会におきまするある一つ検討の過程における現在の段階における結論として出たわけでございます。したがいまして、私どもとしては、海水浴場をいかにきれいにするかということがいろいろな社会的な要請でもございますので、この際、現在考えられるきれいな海水浴場としての水質基準はこういうものでございますということを皆さま方にお示しし、それによって現在汚染されております海水浴場の水質を一歩でも近づけていただこう、こういう意味で、さような考え方から発表いたしたわけでございます。私のほうの考え方といたしましては、昨年全国的におもな海水浴場の調査をいたしたわけでございますが、考え方としては、本年も昨年と引き続いて海水浴場の水質についてのどのような状況になっておるかということを調査する、そういう調査するということを各府県にお願いするということを主体にいたしまして、それと同時に、望ましい海水浴場の水質の基準としては、現在考えられる一つの数字としてはこのような基準がございますから、これを一つの足がかりとしてなるべく海水浴場の水質についてよりよきものにするように確保していただきたい、かような趣旨の通牒を今週中に出すと、こういうような考え方で進めておる次第でございます。
  89. 千葉千代世

    千葉千代世君 この水の汚濁の原因は、たとえば工場排水だとか、あるいは船舶の油によるとか、それからまあし尿処理——沖合いに流すとか、こういうふうにいろいろ言われていますね。あなたのほうの把握では、この海水浴場、ところによって違いますけれども、一番早急に強力な指導をしなきゃならないというところの汚濁状況についての原因は何と思っていらっしゃいますか。
  90. 赤穴博

    説明員赤穴博君) いままでの資料で見た限りにおきましては、これは学者の先生方その他の御検討もいろいろ資料があるわけでございますが、そのお考え方とも、大半が、いわゆる河川による人工的な汚染が大半の要素であろう。しからばそれがどういう、個々の具体的な海水浴場のいろいろな条件もございますし、それじゃ何%が河川によるか、あるいは何%がその他の要因によるものかということについては、はっきりした数字が出るわけもございません。非常に海水浴場全体の、大きな海の中の水質の問題でございますから、その一部のデータをもって全体を云々することは非常にむずかしいわけでございます。少なくとも大半は、河川の流入のないところのほうが明らかに河川の流入のある海水浴場よりも非常にきれいだということは、もう現実的な数字として出ておるわけでありますので、当然河川がその大半の汚染の原因である、河川の流入が汚染の原因であるということは明らかなことであろうと思います。
  91. 千葉千代世

    千葉千代世君 もう少しこの問題に触れたいと思いますが、時間の都合でこれは省略いたします。  次に、建設省に伺いますが、端的に伺いますけれども東京、横浜を結んだ道路計画、それから東京湾の計画なんですけど、その中で、環状道路と申しますか、横須賀、東京千葉、木更津、富津と百六十キロを結んだ環状道路とか、あるいは富津と横須賀市の走水に海上十キロ橋をかける、それから東京湾の中央部に海上横断連絡路十五キロをかけるとか、こういうことをよく聞きますけれども、具体的に建設省としてはそういう計画をお持ちなんでしょうか、あるいは道路の整備計画の中にそういう調査等おありなんでしょうか、その進捗状況等についてお聞かせいただきたいと思います。
  92. 井上孝

    説明員(井上孝君) お答えいたします。  ただいま御指摘の道路は、私どものほうで東京湾環状道路と申しております。先生御承知のように、全線で百六十キロ、これは実は昭和三十七年から建設省で本格的に調査をいたしまして、現在までに約一億円の調査費を投入いたしております。特に昭和四十二年ごろから、先ほど来お話の出ております千葉県、あるいは東京湾周辺の埋め立てが進行いたしまして、いろいろな企業の立地が非常に盛んになり、また東京湾におきましては、海上コンテナ埠頭等のいわゆる港湾施設、あるいはその他の流通諸施設が非常に多く立地をいたしております。この事業を早急に着工いたしたいということで、実は船橋に専門調査出張所も設けますし、それから、御指摘東京湾の主航路を横断いたしますトンネル工事、首都高速道路公団の手で着工をいたすということに本年度——四十四年度から手がけていきます。なお、陸上部埋め立て地につきましては、すでに国の、建設省の直轄事業といたしまして、たとえば船橋——千葉間、特に国道十四号線の混雑をいたしております区間につきましては、すでに総幅員五十メータとってございますが、その中で二車線すでに舗装を完了いたしまして、交通に供用を開始いたしております。本年度なおさらに二車線追加するという工事もすでに実施いたしております。また、千葉から木更津のほうへ参りますいわゆる京葉の工業地帯には、すでにかねてから、国道十六号線のバイパスといたしまして、総幅員五十メーターのうち、まん中を残しまして両側四車線を、埋め立て及び企業の立地の進捗に応じまして実施いたしております。千葉の側では、すでに姉崎の地先まで千葉から全通いたしております。さらにその先のほうへも延伸を工事中でございます。  なお、東京湾を横断いたします川崎−木更津の横断計画につきましては、これは非常に技術的にむずかしい問題でございます。東京湾のあの軟弱地帯にどのような形式の橋あるいは築堤あるいはトンネルをつくるかということは、ただいま、今年度一億二、三千万円の調査費をとって調査を推進いたしたいという段階でございます。
  93. 千葉千代世

    千葉千代世君 たとえば、三浦半島と房総半島とずっとこう両方あって、湾を置いて、あそこを私ら泳いで渡ったんですが、走水とあそこのところ——金谷海岸ですね、ちょっとこっちが富津ですか、あそこのところはどのくらいですか、昔二里半と言ったんですが、いま何と言っていいんでしょうか、キロメートル——十キロ。あそこから橋をかけると一番やさしいから、一等先に橋をかけるということを、これはうわさで聞いたんですが、それはどういうふうに——いまお話の中に、計画の中におありのようなんですが、これは具体的にはどのような進捗状況なんですか。
  94. 井上孝

    説明員(井上孝君) 東京湾環状道路で、実は特に千葉県、神奈川県側で当初から御熱心でございましたのは、おっしゃいます東京湾湾口の架橋でございます。これは三十七年から調査をいたしておりますが、調査をいたしました結果、非常に海が深いということ。それから、昔あそこは東京川という川が陥没以前に流れておりまして、特にその川筋−いまは海底でございます川筋に橋脚を建てて橋を渡すということが、非常な技術的な難問をかかえております。現在に至るまで、あちらこちらのルートを選びまして、ボーリング等の地質調査をいたしておりますが、現在の段階では架橋が可能であるという結論はいまだ得られておりません。ただいままでボーリングをいたしました結果を見ますと、少なくとも橋をかける橋脚を置くに十分な地質はいまだに見つかっておりません。したがいまして、いまの段階で、不可能とは申しかねますが、たいへん技術的にむずかしい。なおもう少しいろんなルートを調査を進めまして、なるべく早く技術的に可能であるか、あるいは不可能であればトンネル計画に直すというようなことで、調査をさらに進めたいという段階でございます。
  95. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、いまその横須賀市の走水と千葉県の富津との問題がそういう状態だと、これからの段階だと。それからもう一つ東京湾中央部ですね、川崎からこうずっと通って木更津へ来る、これも同じような状態調査段階ですか。環状道路というのは一番急がれているわけですね。これら三つの中で進捗状況というのはどれが一番進んでいるか、これを伺わしていただきたい。
  96. 井上孝

    説明員(井上孝君) 先ほど申し上げましたように、私どもは環状どまん中の川崎−木更津間の横断道路を考えておりまして、まあ八の字と申しますか、現在一番急がされておりますのは、先ほど申し上げましたように、東京千葉に至ります埋め立て地の進捗に応じて、その埋め立て地の利用のための環状部分の道路、したがいまして、現在工事を進め、あるいは計画を固めつつございますのは環状部分でございます。しかしながら、将来の木更津付近の発展等を考えますと、船橋、千葉付近を経てぐるりと回って木更津へ参るというのはたいへん時間もかかる。何とか房総と東京、川崎付近と直結いたしたいということで、先ほど申し上げた湾口の架橋につきましては、現在の段階では、技術的に可能であるか、不可能であるかという非常に基本的な調査をいたしております。川崎−木更津間の横断堤の計画につきましては、これは技術的に可能でございます。ただし、工事そのものが、東京湾非常に深うございますし、しかも下が軟弱でございますので、どういう設計が最も工費が安く妥当な計画であるかという、技術的に可能であるという前提の上で、設計計画の調査を進めておる段階でございます。
  97. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ちょっと関連。いま川崎−木更津の横断堤の話がありましたが、技術的には可能であると。大体どのくらいの将来の貨物流通量を考えながら、どういう構造を構想になっておられるのか。たとえば若干聞いている点では、この横断堤を——自動車道路はこれはもちろんのことだと思いますが、ここに房総と京浜工業地帯をつなぐところの貨物幹線あるいは旅客幹線という新しい幹線鉄道、こうしたものもこの横断堤の中に含めよう、こういうような構想もあるというふうに聞いておりますけれども、その辺鉄道との関連、それから道路はどのくらいの輸送量を想定しての横断堤をつくろうとしておられるのか構想を承りたい。
  98. 井上孝

    説明員(井上孝君) ただいまの段階では、道路を単独で調査をいたしております。鉄道を乗せるということはまだ鉄道側と打ち合わせにも入っておりません。私どもは承知いたしておりません。川崎——木更津間の横断道路として計画を立てておりますが、先ほど申し上げましたように、技術的に可能であるとはいいながら非常にむずかしい仕事でございます。たとえばあの間に堤防の築堤でまいりますと、築堤の沈下の問題がございます。また、大きくは東京湾の水質の汚濁という問題もございます。したがいまして、ただいまいろいろな案を——築堤の案、あるいは橋をかけて、船が通ります航路の部分だけはトンネルにして海底をもぐって行くというような計画で、いろいろな案で考えております。  交通量につきましては、これはいろいろ解析はいたしておりますが、環状道路の交通量——あるいはかりに湾口に橋がかかる、あるいはトンネルができるといった場合と相当違いますが、大体交通需要量としては昭和六十年に十万台以上の一日交通量があるということで、おそらく総幅員百メーターくらい、十車線以上の道路を計画する必要があろう、こういうふうに考えておりますが、まだこの辺の計画は固まっておりません。
  99. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは港湾局とも関係が出てくるだろうと思うのですけれども、その横断堤に付設して、むしろ陸地側に、一つの内陸地帯といいますか、あるいは倉庫地帯になりますか、工場地帯になりますか、あるいは場合によれば住居地帯になるかもしれません。そういうような横断堤に続いて、そうした一つの埋め立をおやりになるという構想は全然ございませんか。
  100. 岡部保

    説明員(岡部保君) 港湾局の技術参事官でございます。  いまの御質問でございますが、私ども東京湾の今後の構想といたしまして、いまお話しのございました横断堤と申しますか、横断橋と申しますか、それの根もと——いま考えておりまするルートでは川崎の地区あるいは木更津地区、これの根もとのところには当然埋め立て地を造成するかっこうになるかと存じております。特に木更津地区のほうでございますが、木更津地域の相当な発達、発展もございましょうし、したがって、いま御指摘のございましたように、いわゆる流通団地的な総合機能であるとか、そういう流通機能を有した土地の利用というものも相当考えなければならぬという考え方を持っております。ただし、これはまだほんとうの構想の段階でございますので、まだ具体化している計画ではございません。
  101. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまのお話は、何か横断堤の根もとのところというようなお話なんですが、根もとのところはもうもちろん両方から埋め立てて当然そういうものができると思う。さらにもっと湾内のほうですね、そういうところにそういうものをつくる構想があるのかないのかという点でございますが、いかがでしょうか。
  102. 岡部保

    説明員(岡部保君) いまおっしゃいました、横断堤のルートの中にたとえば島をつくってそこを流通の基地にするというような計画の意味かと存じます。私どもといたしましては先ほど建設省のお話もございましたように、たとえば、あのルートの本船航路のところをトンネルで通すといたしますと、その両端にどうしても島をつくらなければならぬ、そういうような場合には、その島を利用いたしまして、せっかくの土地ができますものですから、そういうものを考えるということは可能でございます。ただし、あすこのあたり、先ほどお話がございましたように、相当水深もございますし、必ずしも土地をあの付近に深いところに造成してそういうものを考えるというところまでわれわれの考えが向いてはまだきておりません。ちょうど竹田先生にたしか先回の委員会で御説明申し上げたかと思いますが、大阪湾でやはり湾のまん中に島をつくっていわゆる流通基地等、住宅用地にもなるかと思いますが、そういうことが構想としてあるのだというお話を申し上げたかと思いますが、そのような大阪湾での一つの、これも全く構想段階でございますが、そのようなものと同様な構想というものはまだあまりはっきり出てきておりません。大阪湾の非常に先が開いた面積の広いところに島を設けるというのと東京湾のかっこうがちょっと違っておりますので、あまり広い面積の島をあすこにつくるということも必ずしもいいかどうかという問題もございますものですから、その点でまだ構想は固まっておりません。
  103. 千葉千代世

    千葉千代世君 いまの建設省の計画は大体伺いましたけれども、これはいま伺っていると、運輸省の港湾計画とも相当密接な関係があるようですね。これは十分御連絡の上で仕事を進めていらっしゃるわけですね。
  104. 井上孝

    説明員(井上孝君) 港湾局から御返事があると思いますが、おっしゃるとおり、この湾岸道路につきましては運輸省の港湾局あるいは東京都庁の港湾局、千葉県と十分打ち合わせをして計画を進めております。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕
  105. 千葉千代世

    千葉千代世君 水産庁にちょっとお尋ねいたします。  最近、公害によって、東京湾、あるいは大阪湾でもいいし、四日市でもいいし、九州のほうの湾でもいいし、船舶の油とかあるいは廃油等によってノリの被害とか魚介類の被害とかずいぶん多いようなんです。補償問題などについてもいろいろ聞いておりますけれども、いま時間がありませんので、概略的に、全国的にたとえばノリならノリに限定して、どんな被害であったかということと、それから東京湾内における千葉県、神奈川県、これらのノリの被害の実態と補償等について、あるいは助成金等でもけっこうですが、おわかりの程度でけっこうですが、述べていただきたいと思います。
  106. 竹原幸吉

    説明員(竹原幸吉君) 水質の汚濁によりましての漁業関係の全国的な被害状況でございますが、これは最近年次の、昭和四十二年度におきますところの各県から報告を受けました数字を集計したわけでございます。それによりますと、これは海面それから内水面も入っておりまして、すべての数字になるわけでございます。工場、事業場等からの排水、これによりましての被害金額が約百十六億円になっております。それから船舶からの廃油によりまして被害を受けた金額が約十七億円、そういったような数字が出ております。  それから特に東京湾におきますところのノリの被害の状況でございますけれども、これも、ただいまのように県からの報告によります数字でございますが、県も組合からとった数字を私のほうに報告してまいっておるわけでございますけれども、その数字によりますと、東京都の場合はノリの養殖業はございませんのでそういう実態はございませんけれども千葉県と神奈川県両方合わせまして、ノリにつきまして約十八億円の被害額が報告されております。そのほかノリ以外の魚介類等につきましては約三千万円の被害額があったということが報告されております。これは四十二年度の数字でございます。
  107. 千葉千代世

    千葉千代世君 こういう被害がだんだんふえていくような状況に私把握しております。というのは、さっきちょっと申し上げたんですが、海水の汚濁状況が、おもに油とかあるいは河川の排水その他によって年々ひどくなっていく。そうすれば、したがって、それらの水産物等も被害をこうむるわけなんですけれども、そういう点についてどのような見通しを持っていらっしゃいますか。
  108. 竹原幸吉

    説明員(竹原幸吉君) これも先生の御指摘のように、公害によりますところの水産物の被害は、県の報告によりますと、毎年増大してまいっておると思います。それで、漁業のほうから申しますと、できるだけ被害を防止するということが前提にならざるを得ない。まあ被害者の立場にあるものでございますから、そういう公害の発生がされないような方途を企業側のほうでしていただくのが、これが一番いいわけでございますけれども、これはそれぞれの所管官庁が別でございまして、私のほうからそういう措置をすることができないわけでございます。したがいまして、ただいま申し上げましたように、水産側のほうといたしましては、できるだけ被害が起きないように——起きないようにと申しますか、被害が起きましても大きくならないように、増大しないように、そういったような対策をまず考えていかなければならないだろうというふうに思います。それからさらに、被害が起きた場合には、それに対する救済的な方途をやはり考えていかざるを得ないというふうに考えております。
  109. 千葉千代世

    千葉千代世君 やっぱりそれには、対策をお立てになるには科学的な実態調査が必要なことは申し上げるまでもないんですが、そういう調査を進めてもらいたいと思うんですが、そういう点については何か腹案なり計画ございましょうか。
  110. 竹原幸吉

    説明員(竹原幸吉君) これは全国的に昭和四十三年度から重要な水域につきまして、その水域におきますところの水質の状況それから底質並びにそこに住んでおりますところの底棲の生物、こういったものの科学的並びに生物学的な調査都道府県に委託いたしまして、昭和四十三年度は二十水域、四十四年度には二十七水域実施いたしているわけでございます。四十五年度以降につきましても、さらに水域の数をできるだけふやしてまいりたいというふうに考えております。これによりまして、その水域におきますところのいわゆる水のよごれ方といいますか、そういう実態が把握されてまいりますので、この実態が把握された上でそれに対応した措置というものをとってまいりたいというふうに考えております。
  111. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に運輸省に伺いますけれども——水産庁はけっこうでございます。運輸省に伺いますが、京浜とか京葉あるいはこれを取り巻く一帯の港湾の整備計画、この間竹田委員の質問のときに、年次計画の中に進捗状況について少しお述べになったんですけれども、もう少し詳しく述べていただきたいと思います。
  112. 岡部保

    説明員(岡部保君) ただいまの御質問でございますが、東京湾の中にございます港、と申しますと御承知でもございましょうが、西のほうから申しますと、重要港湾で横須賀港というものがございます。それから特定重要港湾で横浜港がございます。さらに全く隣接いたしまして川崎港、これも特定重要港湾であります。それから東京港、これもやはり特定重要港湾。それからちょっと東京都地先、千葉県地先、ちょっと間があいております。次に続いてまいりますが千葉港、これも特定重要港湾。これは先年区域を拡大いたしまして船橋、市川地区まで含めまして千葉港、一つの港といたしております。それからさらに若干間があいておりますが木更津港、これは重要港湾でございます。大体東京湾内でのおもな港はこの地区にほとんど接しておるわけでございます。この東京湾の各港、いま申しました港で現在取り扱っております貨物量、これは昭和四十二年の統計の値でございますが、全体で約二億四千万トンの貨物を扱っております。そのうちで外国貿易、いわゆる輸出輸入のトン数が約一億トンでございます。それから国内の内航海運によります貨物量、これは湾内のいま申しました港の相互間の貨物も含んでおりますが一億四千万トン、合計約二億四千万トンの貨物を現在扱っているわけでございます。そこで、われわれこういう施設計画をいたします際にどうしても相当長期な見通しを必要といたしますので、将来の見通しを考えますと、大体いわゆる国全体としての経済力の伸びと、あるいはその地域の産業の伸びというようなものを考えまして、昭和五十年時点で大体四億トン程度の、ちょうど先ほど申し上げました二億四千万トンの四十二年の実績に対して大体四億トンくらいの貨物が東京湾内の各港で動くということを考えております。相当な貨物の伸びがございます。したがって、港湾施設も相当にこれに応じて伸ばさなければいけないという考え方を持っておるわけでございます。  そこで、いま御質問のございました、どういう考え方で進めておるかという点をまず最初に、何と申しますか、定性的に述べさしていただきますと、大体外国貿易でも、いわゆる定期船ライナーの貨物、これは大体が雑貨、いわゆるゼネラル・カーゴと呼んでおりますが、雑貨が主体の貨物というものの外国貿易の港湾というものは、従来ほとんど横浜港で扱われておりました。これを今後も横浜、川崎、東京、この中心部の港を整備していくということを考えております。それから外国貿易でもいわゆる不定期船——トランパーの貨物でございます。これはおも立ったものはいわゆる工業原材料が多いわけでございます。たとえば原油であるとかあるいは鉄鉱石であるとか、原料炭であるとか、こういうものになりますと、それぞれの立地しております企業が港湾施設を自分で持っております。そういうところに直接参ります。それ以外に奥地の工業原材料を運びますトランパーの輸送というものにつきましては、極端に申しますれば、いわゆる混雑する都市交通を緩和するために、なるべく周辺の港を利用したほうがいいんじゃなかろうかということで、たとえば横須賀港でありますとか、あるいは千葉港でありますとか、あるいはまだまだの段階ではございますが、今後の木更津港であるとか、そういうところを利用してまいりたいという考え方を持っております。さらに内航海運によります国内の輸送の海運貨物でございますが、これは何と申しましても東京都区内が非常に人口が密でございますので、そこの消費物資等はやはり東京港を当然整備すべきだということで、東京港を今後とも進めていく。しかしながら、東京都区部の背後、周辺の貨物は、なるべく東京港を使わないでやはり周辺の港を活用するということで、たとえば横須賀港でありますとか、あるいは千葉港、特に船橋地域あるいは千葉の本港地区あるいは木更津港、こういう周辺の港をそういう意味では相当整備する必要がある。まずいまわれわれといたしまして考えておりますのは、千葉港の船橋地域の整備というものは相当に内航海運のための整備として考えなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  そこで今度は量的な進捗状況でございますが、現在私ども港湾を整備いたしますのに、昭和四十三年度から四十七年度までの港湾整備五カ年計画というものを持っております。これは御承知のようにいわゆる公共事業として国が一部補助をいたしましたりあるいは負担をいたしましたり、あるいは外貿埠頭公団という公団に出資をいたしましたり、そういう国費に関係ある事業というのがこの港湾整備五カ年計画で、全国で八千億ございます。そのうち千百五十億が調整項目といたしまして、これは一応保留しておる。必要に応じてまた配分をきめていくというワクで考えております。その残りの六千八百五十億でございますか、そのワクはすべて全国の港に一応計画として張りつけたという姿になっております。その姿で申しますと、この東京湾の港湾整備計画というのが千九十億予定をいたしております。この千九十億の五カ年計画というものに対しまして、いま申しました六港でございますが、これで千九十億を考えておりますのに、四十三年度に約百三十億、四十四年度に約百六十億、合計二百九十億強事業を実施いたしております。したがって、二〇数%、二七%ぐらいになると存じますが、二年間で二七%を実施いたしたわけであります。それであと四十五、六、七、と三年の間で残りの約七五%を進めていくという考え方に立っているわけでございます。以上、一応数字的に申しますとそのような状態であります。
  113. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうすると、数字的に言えば、一応目標に達しているわけですね、進捗状況は。
  114. 岡部保

    説明員(岡部保君) お説のとおりでございまして、大体既定の計画どおり、予算でございますので、大体毎年々々何%ぐらいずつ伸びていくというむしろ等比級数的な感じの予算配分になってまいりますものですから、大体予定どおり進めておるということが申せると存じます。
  115. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほどの運んでくる物資のおもなものの中に、原油の問題がありましたけれども東京湾におけるCTSの構想ですね、どうなっておりましょうか。鹿児島湾かなんかあって、これは私も確かなことはわかりませんけれども東京湾の湾のすぐ近くでは困るのだけれども、館山の外かどこかあの近くに一つ予定しているとか、ちょっと県のほうからうわさを聞いたのです。館山だと、御承知のように自衛隊があって、場所としては航空隊などの山があって非常にCTS構想の根拠地にはいいように思うのですけれども、そういう点なんかどうなっておりますか。
  116. 岡部保

    説明員(岡部保君) いまの御質問ございましたCTS構想でございますが、油の問題で、わが国でいままでほんとうにCTS構想の一つの例として現実にございますのは、御指摘のございました鹿児島湾の喜入の日本石油のCTSでございます。東京湾につきまして、確かに館山付近にそういうものを設けて活用するということがいいんではなかろうかというお話は各界の方のお話の中に十分あらわれていると存じます。しかしながら、具体的にそれではどういうふうにするのだという段階には、まだ全くなっていないと存じます。と申しますのは、これはCTS構想、確かに一つの非常な利点がございますが、ある面では欠点もあるわけでございます。と申しますのは、これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、結局横浜港でございますとか、たとえば根岸の日石の地域であるとか、あるいは千葉港のずらりと並んでおる石油基地であるとか、あるいは川崎の古くからございます石油精製工場であるとか、そういうところに非常な大型のタンカーが入ってくるということは、これは海上保安庁のほうから御説明いただいたほうがいいのかもしれませんが、確かにもしも火災でも起きたらという危険の問題があるわけでございます。ただその場合に、館山湾あたりにCTSを設けまして、そこで集約輸入基地をつくりまして、そこからさらに湾内の各工場に運ぶという場合に、現在の状況でございますれば、二次輸送用の小さな——小さなといっても相当大きなタンカーと申しますか、小さいタンカーが何ばいも湾内を走り回わる、これが必ずしも海上交通の安全になるかどうかという点ではいささか疑問があるわけでございます。そこで、いわゆる。パイプライン輸送というようなものが問題にされておりますが、なかなか実際に土地の取得であるとか、いろいろな難点がございますもので、現在の段階ではまだまだそこまでいっておりません。したがって、一応東京湾で現状を申しますと、CTS構想ではなくて、各千葉港なり川崎港なりに、海上にドルフィンあるいはブイバースを置きまして、いわゆるシーバースと呼んでおりますが、海上での港湾施設をつくり、そこから海底をパイプを走らして工場まで運ぶというやり方のほうが現実に現在使用されております。今後の問題といたしましては、確かに検討に値することでございますが、まだ具体的に現実性があるというところまでは残念ながらいっておりません。
  117. 千葉千代世

    千葉千代世君 いまの御説明でもわかったのですけれども東京湾の中の船舶の航行状況というのは非常にひんぱんで、もう極限にきているんではないか。そこで、これは海上保安庁の管轄でしょうか。それに関連して、浦賀水道における航行の安全対策を伺いたいんですが、これはどこの管轄になっているんでしょうか。
  118. 猪口猛夫

    説明員(猪口猛夫君) 先ほど来からお話のありましたように、東京湾におきます海上の交通量は年々ふえてまいっております。私たち、現地に巡視船艇を派遣いたしまして調査いたしました実情を申し上げますと、四十二年度には、浦賀水道の一月におきます交通量が六百十五、六隻でございましたが、四十三年度には七百五十隻ぐらいのようなことでございまして、港湾局のほうの統計によりますと、昭和五十二年度には、過去十年前の二倍の船舶が東京湾に入ってくるという状況のようでございますので、今後の浦賀水道におけるところの海上交通量というのは、非常にふくそうを来たすことが当然予想されるわけでございます。その中には、御承知のように大型タンカーも含まれております。現在すでに、二十五万トン近くのタンカーが東京湾に入ってまいっておるのでございますので、四十三年の十二月にも、第二海堡と第三海堡の中間におきまして日本船と外国船との衝突によって約二十五トンばかりの油が流れまして富津方面に相当の被害を与えたような事件も私たち最近経験しているわけでございます。でありますから、これに対します海上交通対策というものは当然考えなくてはならないんでございますが、現在、港内におきましては、御承知のように港則法がございまして海上交通規制が行なわれておるわけでございまするが、東京湾の港内を除いた他の海域におきましては、現在、海上衝突予防法以外には、船舶相互間の一つ交通ルールというものは、ほかに規制する制度的根拠はないわけでございます。今後制度的には現状に即応するように慎重に研究していかなければならないと思いますが、私たち東京湾内に巡視船艇二十四隻、航空機五機持っておりますので、与えられました船艇、航空機によりまして、浦賀水道を毎日一隻ないしは二隻巡視船艇を哨戒配備いたしまして、海上交通行政指導に専念しておるものでございます。また、私たちがたびたび経験いたしました油による海水汚濁防止ということに対しましても、一たんもし事故が起きました場合に備えまして、民間の協力も得つつ油の拡散防止をはかるためのオイルフェンスを国もみずから準備いたしておりますし、民間の協力も得まして大体六千メーターくらいのオイルフェンスの準備をしてあります。また、油を除去するための除去剤も官民合わせまして約五十トンばかりのものが東京湾内には常に準備されておるというような状況でございます。
  119. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま救難体制について伺ったのですけれども、先般のあれはノルウェーの船でしたか、衝突されて油がたくさん流れて出光興産だったか岸壁にすぐ入れないでもって、東京湾のあすこをぶらぶら遊泳して行方不明になっている間に油がうんと流れてノリの被害があったのです。その被害状況を先ほど伺ったのですけれども、それの補償等はここの議題でありませんから触れませんけれども、補償等についてもやはり見舞い金程度しか出ないわけですね。ですから、この責任についても責任の所在がちゃんと明らかになっても、はっきり言えば、出光興産なら出光興産が早くあれを受け入れてやればいいのに、流れたものは岸壁につかせないとかいって、とんでもないところを泳ぎ回らしているというようなことで、今度、いまおっしゃった油を消す何というのか知りませんけれども、油を消す何かありますね、お薬が。粉や何かやっていた。ところが、そのときにはすでにノリをさくの中へ油が全部流れてしまったわけです。ノリにくっついてしまって、そのノリはちょっとでもにおいがつけば全然つくだ煮にもならない、ノリににおいがついてしまえば。そういうことになっているわけです。ですから、一つの石油コンビナートならコンビナート、あるいは企業なら企業が重油をそこで使う、あるいは精製するためにこうなってくるわけです。ですから、これが重油にはA、B、Cとあるそうですが、その説明を伺っていくと、やはり非常に発火の早いものであった場合にはたいへんなことになるということも伺ったのです。救難体制の中で、いまお述べになった飛行機とか巡視船二十隻とか伺ったのです。それは現段階であるいは手一ぱいじゃないかと思うのですけれども、そのこと一つと、それから浦賀水道の航行状況、さっきお述べになったのですけれども、もうこれ以上来年度はもっとふえるという構想があるようですけれども、これ以上ふえたらどうにもならないんじゃないかと思うのですけれども、どうなんでしょうか。というのは、いま述べられた大型タンカーと、それから小さいのに移して東京湾の中をたくさん運搬してやるよりも、むしろ、大型があすこへ入って事故でも起こしたらたいへんだという相関関係で考えていった場合に、対策は相当慎重でなければならぬと思うのです。ですから、どれがいい、これがいいと。湾はとにかく狭い限られた範囲ですから、湾というのは限られておって、そこに、今度聞くところによると、千葉港もこれは東洋一の港、おそらく日本一の港になるのじゃないかと思うのです。おそらく外国の貨物はあすこに集中してくると思う。船橋から一帯にかけた埋め立てから考えていった場合には、限度もいいところではないかと思うけれども、そういう点について、これは救難体制ももう少しがっちりしていくことと、それから、財政の問題でこの間竹田委員が質問したときに——話が飛びますけれども、港湾管理者の財政負担の問題で竹田委員が質問したときに、やはり改善策を考えなければならぬのではないかということもちょっと出たのですが、その点もちょっと詳しく一緒に述べてもらいたいと思います。   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕
  120. 猪口猛夫

    説明員(猪口猛夫君) 先ほど申し上げました東京湾におきます巡視船艇二十四隻のうち、その半分は化学消防能力を持っておりますし、私たち過去に経験いたしましたにがい船舶火災の実績に照らしまして、昭和四十三年度に建造いたしました世界にもまれな化学消防船が現在すでに東京湾に就役しております。約二百三十五トン、それから消防能力は八百七十トンパワーの消防ポンプを二基持っておる。しかも、二十万トンタンカーにいつでも対応できるように、その化学消防船は、浦賀水道を入出港する際には必ずその前後を護衛すると申しますかエスコートいたしまして、もし万が一にも火災を起こした場合には三十分以内に消火でき得る態勢で哨戒配備についております。そういうような体制で、必ずしもそれで万全だとは申し上げられませんが、現時点において考えられます。体制は一応整っておると思います。  それから、先ほど先生もおっしゃいましたように、これは繰り返すことになりまするが、油の流出拡散を防ぐ、防止するということは、水産養殖物の被害を局限する原因にもなりますので、オイルフェンスあるいは流れた油を除去するための除去剤、それらはそれぞれ、先ほど申しましたように、東京湾には六千メートルぐらいのオイルフェンス、それから除去剤は五十トンばかりの除去剤が常に準備されているというような状況でございまして、現時点では最善の努力を尽くしておるわけでございます。ただし、先ほど申し上げましたように、浦賀水道の狭水道の中を毎年毎年船は増加していくわけでございますので、現状のままで単なる二船間の一つ交通ルールだけではとうてい海上交通の安全を期することはでき得ないということを私たち十分承知しておるわけでございまして、運輸省といたしましても仮称海上交通法と申しておりますが、それを立案いたしまして国会に提出するための努力をしているわけでございます。要するに、ただ二船間の交通ルールではなくて、一つ交通秩序を維持するための制度を確立する必要がある。たとえば浦賀水道のごときは一方通行をして交通秩序を維持するというようなことでもしなければ、とにかく二船が会った場合にはお互いに右によけるのだというルールだけでは、現在の海上交通量を安全の面からまかなうことはできないと思われます。そういう意味合いにおきまして、制度的には先ほど申したような体制を整えておりますし、現在はすでに浦賀水道の中に航路標識を五個入れておりまして、その五個を中心として現地で巡視船艇が船を行政指導して交通秩序の維持を保つようにもうすでに三年前から実施しております。そういうような体制で現在私たちは処理しているわけでございます。
  121. 千葉千代世

    千葉千代世君 やはりその事故があった場合の救難対策といいますか、そういう点についての関連性が非常に欠けているということなんです。これは海上保安庁のことではありません。というのは、さっき申し上げたノルウェーのタンカーの問題ですけれども、事故が発生してすぐ私どもは飛んで行ったんです。飛んで行って漁業組合に入っていたところが、もう何か外人の人が通訳をつれて飛び込んできたんです。船から来たのかと思ってよくよく調べてみたところが、その人はノルウェーの船が保険に入っているわけですね、英国の保険に入っている。その代理店か何か横浜にある。それが報告を受けてすぐ飛んで来て被害調査にやって来た。私たちお茶を一ぱい飲んで岸壁に行ったら、油が流れて岸壁にべとべとについてしまっている。行って見てくれと言うからすぐ行こうと思ったら、写真にぽんぽんとっている。早いの早くないのったらないんですね。そこで、今度わがほうはというと、これから農林省へ連絡して県の水産課と、たいへんに御丁寧なわけなんです。海上保安庁は保安庁としての十二分の処置をとってこられたようで、私ども聞くところでは、ただ出光興産がそこでなかなか拒否したりなんかして延引したもとがあったわけなんですね。ですから、そういう点考えていった場合には、やっぱり機動的に動いて、一貫した救難体制がとられていく。海上保安庁さんはもちろん特に中心になって、それらがすべて地方自治体と連携がとられて、水産物資の補償なら補償、自治体なら自治体と、こういう有機的に活動が行なえるような体制が、今後特に広域行政の中で、一つ府県でなくて広域府県になってきますと、首都圏整備の中の東京、神奈川、千葉とか、こういうふうになってきますと、なかなか問題が大きいと思うのです。そういう点を希望を述べまして、あとまだございますが、時間の都合もありますので、委員長、質問をあとに残してこれでやめたいと思います。
  122. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 せっかく自治大臣、先ほどから千葉委員東京湾の開発をめぐる諸問題についてじっくりお聞きいただいておりますので、自治大臣に若干——一、二問でございますけれども、お尋ねしたいと思います。私も先ほど御報告がありましたように、東海三県を見せていただきまして、一応公聴会に臨んだわけであります。また本日も、四人の先生方から合併に関する御意見を承りまして、いろいろ勉強したわけですが、その中で現実に私どもの受けた感じといいますのは、広域行政府県合併の要求というようなものは大企業から出ておりまして、現地の知事さんあるいは県議会の議長さんあるいはその他の有識者のお考え方も非常に消極的な考え方でありますし、府県合併をやるにいたしましても、住民が十分に納得をした、よく知った上でやる必要があるのでありますから、たとえば三重県の知事さん等においては、これからひとつ府県合併についても十分研究会を県民の中に組織をして、府県合併是か非かこれをひとつ考えてみたいというような御発言もあったわけでありますけれども、そういうことを見ましても、大体この府県合併が具体的に話題になっている地域というのは、港を持ち、そこに工業地帯というものが発生しているところにその意見が強いということも同時に言えるんではないかと、このように思うわけであります。いま東京湾の開発の諸計画というものをお聞きいたしましても、その計画というものは、大体国の機関で基本的にその計画がきめられてきている。地方はむしろそれに従属をしているというようなことが言えるのではないかと思います。そういう意味で、国の港を中心とするところの、あるいは工業地帯を中心とするところの開発計画というものは、非常に地域府県あるいは市の計画、こういうものとの間のそごというものが非常に多いし、またそうした計画に府県市町村がなかなかついていけないということが実態ではないかというふうに思うわけであります。特に港の開発ということになりますと、大部分の市民、県民というものは陸上に生活をしているわけであります。したがいまして、なかなか海の実態というものはわからない。しかし、かなり強力に海の、港の開発計画というものは進められていってしまう。そして、もちろんそれは府県にもあるいは大きな市におきましては総合開発計画審議会等の諮問機関はありますけれども、実態にはそうした開発計画というものが府県民あるいは市民が熟知をしないままにどんどん進められる。その結果、でき上がった問題には予想もしなかったような公害やあるいは交通の混乱や、そうした生活上の不便というものがぐんぐんと押しつけられてきているというのが、ある意味では、現状ではなかろうかと思います。私、愛知県に行きまして、愛知県の第三次の計画というものをどのようにしてつくったかということについてお話を承りました。これは非常に示唆に富むつくり方だと思いまして感心をいたしましたけれども、各界あるいはかなり広い範囲の人の意見というものを聞きまして、その意見一つ一つ一枚のカードにまとめまして、そのカードを集約することによって、かなり広い範囲の意見というものを集約をしていくというような手法をとっておりました。もちろん、この手法が完全に私は十分なものであるというふうにはそのときも感じませんでしたけれども、少なくとも住民、県民各層の意見というものを非常に集約をしようとするそうした努力というものがうかがわれまして、少なくとも新しい手法であることは間違いない、さらにそうした手法を発展さしていくべきではなかろうか、こういうふうに思ったわけであります。そうした意味で、いまわれわれが審議している府県合併の問題点も、背後にはやはりどこの立場においても経済関係の開発構想、あるいは経済優劣的な開発計画というようなものがその裏にあるということは、これまた否定のできないことであろうと思うのです。そういう観点で、こうした形で問題が発展をしていきますと、どうも住民不在、経済優先というような開発計画に終わってしまうんではないか、こういうふうに思うわけでありますが、いまいろいろあちらこちらでプランがつくられております。そうした地域的な開発計画というものについては、もっと住民意見を十分に聞くという制度を何か私は法定をしていくべきではないだろうか、そういうところに、全体的に考えて見て、今後の広域行政なり、あるいは地域によっては確かにある面では住民と調和をした開発計画というものもつくられなければならないと思います。港を中心とするそうした計画には特にその点が強調されてよかろうと思いますけれども、そうした意味住民意見がもっと反映するような制度というものをつくっていかない限りには、地方自治というものはくずれ去っていくんではなかろうか、あるいは地域の開発と住民の利害というものがお互いに相対立してしまうという方向にいくんではないだろうかというような懸念が今後ますます生まれてくるわけでありますが、そういうものを解消する一つの制度として、住民の意向を聞くことによってそういう意見を計画の中に反映できるような制度というものを何らか法定する必要があるんではないか、そうしなければいろんなこれからの広域行政の中で住民はますます置いていってしまわれるということになると思いますが、そういう点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  123. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) 竹田さんの御質問でございますが、先般東海地区を御視察くださってたいへん御苦労さんでございました。いろいろ実際のところをごらんになりましたから、そういういろいろな御注意を得ることは私は非常に参考になると思います。ただ、基本的なことを申し上げますと、つまり、地域開発、ことに港なんかいま非常に東京湾の問題も出てまいりましたが、原則として地方住民意見が反映する必要があるのじゃないか、私はこれは当然だと思っております。つまり、地方住民の意思を全然無視して国が大きなプランをつくってこれを押しつけるという態度は避けなくちゃならぬ。ただこの際、私どもがいろいろ計画なり——これは自治省だけではございませんが——プランを立てます場合におきましては、やはりただかってに一つの役所が自分の計画を遂行するという、これは全然不可能でございまして、ことに地方開発計画にはおのおのいろいろな審議会もございますし、また、地方議会も当然これに関連いたしております。そこで、ただいまの東京湾のお話、私も長くお聞きしておりましたが、その背景に経済開発ということがあるのじゃないかと思う、それはそのとおりと思います。これはあります。同時に、経済開発はやはり地域住民経済生活といいますか、また、住民の日常生活にも相当影響する問題でありまして、やはりこの開発がなければ地域経済上の発展もないし、また地域住民生活の向上もなかなかむずかしい。たとえば、いま東京湾の開発をお聞きしておりますと、これは海難救済の問題も出ておりますが、それは別といたしまして、一つの線として、東京千葉県を結ぶ道路をつくりたい、これは長い間私どもももうすでに聞いております。その場合に、木更津と川崎でやるか、富津と横須賀でやるかという問題、これはおのおの地域住民の方はやはり自分地域に持ってきたい。かりに神奈川県−千葉県のほうは避けます、神奈川県のほうは多少知っておりますから——非常に大きな問題なんです。十年も十数年も前からの問題であります。こうなりました場合に、住民の意向というものは千葉県と神奈川県と一つの連関道路をつくって、そうしておのおの地域の繁栄を来たしたいというねらいはきまっておりますが、一つ県内でもやはりなかなか住民の意向というものばかり考えておりますと、どちらにきめていいのか、これはたいへんなことだと思っております。と申しますのは、たとえば私は運輸省の話も聞いております。私ども専門家ではありませんからわかりませんが、その海底の土質がどうだとか、海流がどうだということ、そういう科学的な厳密な調査をいたしませんと、ただどことどことをくっつけるということだけでもいけないし、そうかといって、これが経済価値がないところに、これは私は経済というのは産業だけの問題じゃありません。やはり地域の開発、こういう面からいって、いわゆる接点というものがおのずから、やはり千葉県はどこどこ、神奈川県はどこどこと、こういうことになってまいると思っております。それから、これはやはり進めますにおきましては、これは別に千葉県と神奈川県と合併すると、こういう合併案と離れますが、やはり東京湾全体からまいりますと、東京、神奈川、千葉と、こういうものがやはり広域的な一つの話し合いと、これは広域行政の一環として考えることでございましょうが、私は、そういうことは理屈は別としてもっと話し合いをしなければならぬ。そういうことでございまして、これはなかなかむつかしいが、また一つのそういうような開発にあたりましての財政措置をいたします場合に、これは私ども自治省といたしましては、なるべく地方公共団体に負担をあまりさせたくない。財政当局なんか、何かかんかでもっていろいろ地方公共団体の受益者とかなんとかということばを使っておりますが、この場合は東京湾の開発に、つまり地方公共団体の負担の問題はこれは別に問題になっておりませんが、いろいろな機会にやはり地方公共団体の負担というものはわれわれが考えてなるべく軽減する。もちろん負担がなるべくないようにひとつする。国がしょっていくくらいのことを考える。そういういろいろなことを考えますと、たとえばいま竹田さんがお話しになりました東海地区のお話でございますが、また東京湾を例としてお引きになりましたが、これは一面経済的な産業関係がバックにあって、その力において事を進めている。私は産業界の一部にそういう意見があると思っておりますが、しかし、その一つのかりに東京湾を取り上げますと、そういう神奈川県と千葉県とのそういう道路が完成した場合には、これは産業ばかりでなくて、やはり大きな意味のまた観光的な上にも使えるだろうし、それから、流通機構として物資の運輸については、これはやはり生活の、物価の問題にも影響がありましょうし、かたがた、できるだけ開発に向かっていくことがいいと。そこでその場合に、この地方住民意見というものは、これは私は今後の運営にあたりましてはこれを無視しては、国が地方公共団体の開発をするから国の考えどおりいけというような態度をとるべきでないということもよくわかります。したがって、当初に申しましたとおり、地方の総合開発計画にはいろいろな機関がございます。どこの都道府県におきましても独自の開発審議会を持っております。名前は別といたしまして、実態において持っております。それからつまり国土総合開発法におきましても、地方の意思を尊重するような、またこれを参考にするような組織体がありますし、そういうことからいたしまして、私は竹田さんの御意見というものはよくわかります。私も大体同感なんです。そうやるからといって国がかってにいろいろな一部の意見において動くというようなことは、私自身がこれはどうしても納得できない。しかし、いま申しましたとおり、総合的な開発になってまいりますと、やはり国の立場で考えまして、どこに一番重点を置いたほうが、どういう開発計画を立てたほうが、この関係都道府県に対してより開発的な効果があるかと。それから、国全体の総合開発の一環として考えていくことでございますから、やはりこれは国の総合的な計画の中に当てはまるような計画をするのが私は国と地方公共団体の考えなくちゃならぬ問題じゃないかと思っております。しかし、繰り返して申し上げますが、これはもうそういう場合において地方公共団体住民の意思というものはこれは参酌しないで、かってに上から持っていってこうするのだという断定的なやり方というものは、これは私どもはあくまでも好まないことでありまして、そのための御意見でございますと、私は竹田さんと大体同感であります。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕  そこで、これを法制化したらいいじゃないか、地方住民の意思が反映するような制度化をしようということでございますが、これはいまこれも二度も三度も繰り返して申し上げましたとおり、これは国土総合開発法の中にもうたっておりますとおり、地方開発計画にはつまりもちろん地方公共団体意見というものが各所に出るような組織体になっております。それを総合的に勘案して行政上これを判断してやるのが正しいのじゃないか。特別に制度化して、ほかの計画性があっても絶対地域住民の意向を尊重しなければならぬ、そこまでくるのが大体国全体の総合開発に照らしてはたして適当するかどうか。それは行政上、政治上やはり地方公共団体と国というものは一環、一連の一つの意思の融合をはかって、そうしてやはりやるべきが至当じゃないか。だから、政府といたしましての考え方といたしましては、いま竹田さんのお尋ねになりましたようなこと、また、いま愛知県で非常にそういうことを周密に計画性に入れておるそうでございますが、そうなりますと、そういう意見がやはり各関係の役所にも浸透してまいりまして、私は非常に重大な参考資料として取り上げるということは当然だと思っております。私は決して反対どころでなくて、御趣旨はよくわかりますし、私も賛成でございますが、ことさらに住民意見が反映するような特別の制度化、これは必要によってはもちろん検討すべきことでございますが、今日の場合、直ちにそういう法制化するという考えは持っておりません。まあ、いろいろの御意見を拝聴いたしまして、私どもは十分検討してみたい、こう考えております。
  124. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ、そういう意見には賛成だけれども具体的にそれを制度化するということをしなくともいいじゃないかというように承りましたけれども、現実には国の役人と地方の、特に府県の役人とが話し合ってきめていくというのが私はいままでの実態だと思うのです。全く住民にとっては不在な計画になっている。そういう意味で、私はもっと住民の中にそういう計画というものを作成をする段階で——できてしまってから幾らビラを流してやったところでこれは住民のものにならないと思う。できる段階住民が参加をその計画の中にしていく形はいろいろあると思う。人を集めるという形もあるでしょう。意見を出させてそれを整理してやっていくという愛知県方式というのも私は一つのやり方だと思います。それが何らか一つ法制化するか、あるいはそういう運営上の問題として解決していくか、これにもいろいろ方法があると思う。少なくとも私は自治省として各地域にそうした総合計画というものを今後必然的にどうしてもつくらなければいけないものだと思うのです。計画なしで進めるということはおそらくこれはできないと思います。そういうものは何らか制度化ということを、これは私はあえて先ほども法制化ということを言いましたけれども、必ずしも法制化しなければならないというところまでいくかどうかはこれはやり方によって違っていくと思うのですけれども、何らか制度化していかない限りは、せっかくの開発計画が住民との調和を失ってしまうという問題が出てくると思うのです。これは府県合併においても私は同じだろうと思うのです。そういう意味で何らかの形でひとつ制度化してもらいたいと思う。これは具体的に行政局長どうですか、そういうものを制度化していくということはどうですか、お進めになる意思はございませんか。
  125. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) ただいま大臣がお答え申し上げたところで尽きるわけでございますが、国土総合開発の関係におきましては、学識経験者とか関係者の意見を聞くために組織が一応法制化されておりまして、そういうことによりまして運営をされているわけでございますが、お話の御趣旨は、むしろ一般の住民の理解をさらに深めるような形で問題を考えていくべきじゃないかというお話だと思います。この点につきましては、大臣のお話もございましたが、私は運用によりまして、事実問題といたしまして、当然にそれぞれの地域におきますところの計画というものは、最近では市町村におきましても開発の基本的な考え方というものを持たざるを得ないような状況になっております。そういう意味で、関係住民の関心というものは非常に高まってまいっておりますから、そういうこともあわせて考えますというと、これはもう運用によって現実問題として十分やっていけるものだと思っておりますが、なお実態を見まして、さらにそれが徹底するように進めてまいりたいと思います。
  126. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本日の審査はこの程度にいたします。     —————————————
  127. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 次に、連合審査会に関する件についておはかりいたします。  都道府県合併特例法案について建設委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これにて散会いたします。    午後五時十三分散会      —————・—————