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1969-06-17 第61回国会 参議院 地方行政委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    ————————————— 昭和四十四年六月十七日(火曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         内藤誉三郎君     理 事                 熊谷太三郎君                 吉武 恵市君                 山本伊三郎君                 原田  立君     委 員                 小林 武治君                 鈴木 省吾君                 船田  譲君                 増田  盛君                 山崎 竜男君                 若林 正武君                 竹田 四郎君                 千葉千代世君                 松澤 兼人君                 和田 静夫君                 阿部 憲一君                 山田  勇君    国務大臣        自 治 大 臣  野田 武夫君    政府委員        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        自治省行政局長  長野 士郎君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        行政管理庁行政        管理局審議官   石原 寿夫君        運輸省港湾局計        画課長      大久保喜市君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○都道府県合併特例法案内閣提出) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  都道府県合併特例法案を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 松澤兼人

    松澤兼人君 きょうは大臣も見えておりますので、大きな問題から大臣の御意見も承りたいと思います。この前もいろいろとお尋ねしたわけでありますけれども、広域行政ということは、社会経済の変動あるいは変化ということからいいますと、地方行政のどうしてもいかなければならない新しい道だと、こう思うのでありますけれども、その広域行政方式と申しますか、あるいはあり方としてはいろいろ形があると思います。  で、今般は、府県が自主的に合併したいというところについては特例を設けて合併しやすいようにしていくということであります。  そこで実際に、たとえば阪奈和の問題にいたしましても、または東海三県の場合につきましても、広域行政合併でなければならないというそういう必然的な因果関係というものはないように思うんです。現状として、阪奈和府県の場合、あるいは東海三県の場合、どの程度横連絡ができていて線密な交流が行なわれる、あるいは広域的な行政が必要である、それだから現在のような協定、協議会という方式では不十分だ、どうしても現在までにこれだけ緊密な広域的な行政をやっているとすれば、さらに一歩前進して合併をできやすいようにしてやろうじゃないか、こういう論理ならわかりますけれども、現実阪奈和府県にいたしましても、あるいは東海三県にいたしましても、現在の段階としてそれほど密接な横の連絡というものがあるかどうか。こういう点が、合併必要性というものをわれわれが認識する上において欠くべからざる要件ではないかと思います。この点、大臣としてはどうお考えですか。
  4. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) ただいまの松澤委員の御意見ですか、広域行政の必要は、つまり社会経済の進展に伴い、そういう方向に行きつつある。また、経済社会、文化その他の推移によりましては、旧来の形式的な行政機構だけではうまくいかぬので、やはり共同処理と申しますか、広域行政を進めたほうが妥当だという前提は、私は現実においてそういうふうになるし、また一般意見もそういうふうに傾いておると思うのであります。そこで、いま御指摘になりました、たとえば阪奈和地区、東海三県の問題でありましても、いま非常にそれがうまくいって、そのおのおのの地域共同なりあるいは連合処理運営、特別合併する必要もないじゃないかというようなこともあり得る。またそれはそれでよろしいと思うんです。何もこれが、たまたま阪奈和とか東海三県というその地域意見もございますが、この意見があるから、何でも合併したほうがいいんだという考え方政府としては持っておりません。これはあくまでも自主的な立場でやるものでございまして、やはりいま共同処理をやり、連帯的ないろんな事項処理にあたっておるが、まあしかしここまでいけば、府県合併やって、一緒になってやったほうが行政面において非常にプラスであるということを地域地域でお考えになれば、これは私は合併されてもよろしい。したがって、この法案の趣旨といたしましては、いわゆるその地域の自主的な考え方でやられる、その道を開いておく、そういう場合があり得るから、その場合には特例法をつくっておいて、その道を開いておいたほうが適切である、こう考えてこの法案作成にあたったのでございまして、いまの松澤委員の御意見、特別この法案提案とは矛盾がない、こう思っております。
  5. 松澤兼人

    松澤兼人君 先ほどお尋ねいたしましたのは、現状として阪奈和府県、あるいは東海三県が現在の段階、どのような横の連絡をとって行政を行なっているか。これだけやっているけれども、まだ足らないところがあるから合併したほうがいいという、そういう段階的な考え方で、現在横の連絡というものはどの程度行なわれているかということをお聞きしたわけです。
  6. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 東海三県を見ましても、たとえば東海三県だけの連絡協議をする問題というのは、伊勢湾の関係協議とかいうようなものにはそういうこともあるようでございますが、水その他になってまいりますと、やや範囲が広がっているように聞いております。近畿の場合におきましても、近畿開発促進協議会というようなものがございまして、そうしてこれが近畿圏全体の府県ということで開発関係協議をしておるというかっこうになっておりますから、これもいまの阪奈和という地域よりもやや広くなっておるような実際のかっこうでございます。ただ水関係等になってまいりますというと、和歌山県とあるいは奈良県との間に、和歌山奈良関係の水問題のための対策協議会でございますとか、そういうような直接関係するもの、あるいはまた大阪府と和歌山県の県境におきまして、最近いわゆる宅地開発とかレクリエーションセンター等を設けるというような構想があるようでございまして、そういうときに両県の協議会を開いておるというようなことでございまして、一般的には、中部圏あるいは近畿圏というような広がりの中で、連絡会議でありますとか開発関係協議会を持っておりますが、個々の具体の、水でありますとかあるいはそういう宅地造成とかいうような問題になりますと、その関係県ごと対策協議会というようなものを持って運営をしておるようでございます。
  7. 松澤兼人

    松澤兼人君 東海三県の場合は、中部圏という非常に広い、日本海まで突き抜けていくという非常に大きい地域を対象としておりますし、また近畿圏の場合も同様です。先日、私、比較的富裕と考えられるところの中で、比較的さらに富裕の府あるいは県が、比較的富裕でない県に対して財政上あるいは行政上の責任を持つという、こういう考え方は、まあ必ずしも私も否定はいたしませんけれども、中部圏の中において東海三県だけが、たとえば静岡県に比較して、非常に新しい合併による県の行政をする、静岡県は旧態依然であるということで、またそこに格差、あるいはまた差別が行なわれる危険はないかということを申し上げたわけですが、一方では政府の方針として、中部圏というものがあり、あるいは近畿圏というものがある、その中で三府県あるいは三県というものだけを取り上げて合併を推進、と言っちゃ悪いけれども、合併が可能な道を開くということはどうもわからない。その県境をお互いに接しておりますから、こちらのほうに入るのはいいけれども、こちらのほうに入らないものとの間にまた格差が生じてくる。少なくとも合併するからには、この法案に書いてありますように、より合理的かつ効果的な行政を行なうということがはっきり書いてあるわけですから、そちらのほうは、合併した後は、自治省としても非常に効果的だ、あるいは行政能力を強化する、ほかのほうは全然現行の法律で、言っちゃ悪いですけれども放置されたという形になる。それは差別待遇ではないのですか。
  8. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この法案にも書いておりますが、この合併一つの基本的な考え方として、自然的、社会的、経済的に一体性のある区域、あるいはまた将来一体性のある区域として発展する可能性のある区域、また同時に、合併関係都道府県格差是正に寄与することができるように、そういう配慮がされなければならないということが書いてありますが、そういうことでございまして、一体性のある、あるいは一体性の将来にわたって可能性のある区域、そしてできればできるだけ格差是正にも寄与できるということをいっておるのは、地方制度調査会答申もそのようにいっておるからでありますが、ただ、その答申の場合におきましても、これで合併をした県と合併しない県で格差というものが、合併県の中の格差是正はできても、合併県以外との関係ではなお格差が拡大するという問題も論議がされております。しかし、それは府県合併をすることによって未合併県との間に格差が拡大するということもいえますけれども、それは本来合併そのものが原因であるわけではない。要するに、未合併そのものの位置が現状から変わらないという点にそういう問題が起きることになるわけであります。したがって、その点につきましては、各種地域政策、あるいはそれに関連いたしますところの地域的な行政水準、あるいは所得水準向上をはかるための各種振興措置その他を併用しながら、そういうところの行政水準維持向上をはかるべきだ、こういうことにならざるを得ないと考えるわけであります。
  9. 松澤兼人

    松澤兼人君 合併をすればこういう財政的な保障をしてあげましょうというふうになっている。ところが、合併をしないほうは全く現状維持ということですから、差ができるのは当然じゃないのですか。当然格差ができる。できるように自治省はこの法律で推進しているのじゃないのですか。一方では、合併するほうにはこうしましょう、合併しないものには、この際、阪奈和合併するのだから、東海合併するのだから、あなた方にはこういうふうなめんどうを見てあげましょうという両建ての政策が打ち出されていれば納得できます。こっちのほうだけはよくしてあげましょう、そっちのほうは知らぬということであれば、たいへんな問題じゃないですか。
  10. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この合併特例法におきましては、合併府県を特別に優遇するということではなくて、合併阻害要因を除去するというにとどまるということを一つ考え方にいたしておるわけでございます。もちろん府県合併は、一つ考え方といたしましては、全国的に一つのものさしをつくりまして、そして全国的な再編成ということも考えとしてはあり得ると思います。前の地方制度調査会におきますところの三、四府県統合案などというものはそういう考え方であったと思います。しかし、その後の地方制度調査会の検討の結果につきましては、やはりそういう形式的な再編成ということはいかがであろうか、やはり自主的に一体性確保できるという見込みがあって、そして広域行政体制というものを打ち立てるための必要性というものを十分認めたところからやはり合併をしていくということが必要ではないだろうか、それと同時に、そういうことのできない地域につきましては、それはやはりそういう関連性の問題、必要性の問題、一体性の問題、それぞれ時間的な距離あるいは認識上の差があるということでございますが、そういうものにつきましては、連合方式なり共同処理なりというふうな形の、何かの必要の場合には連絡協議を整えていくというようなことをして、広域行政の必要に対応していくということを考えていくべきではないかということでありまして、合併府県につきましてこの特例法が特別に合併を進める、その府県だけを非常に優遇するのであるということになっておるわけではない。むしろ最初に申し上げましたように、合併阻害要因というものを除去する、こういう立場に立っておるわけでございます。
  11. 松澤兼人

    松澤兼人君 いまお話がありました連合形式というものも考えていくべきではないかということであるならば、この法律都道府県合併及び連合に関する特例法という形にして、合併ができないところは、こういう少し結束がゆるやかであるけれども、連合方式で、いままでの協議会であるとか一部事務組合であるとかということと違って、もう一つ強固な団体間の行政連合というようなものもできる可能性がある。合併やりたければ合併やりなさい、合併やる場合にはこうだ。合併がいやで連合したい、あるいは合併ができない、連合ならいけるというところであるならば、連合という方式をとって、さらに広域的な行政をやっていきなさいということであればよくわかるのです。で、合併の問題について私がこうやって議論すれば、連合をやりたいところは連合やってもいいというようなことをおっしゃるのですけれども、法律の立案の根本的な考え方といいますか、は明らかに二つある。いままでの一部事務組合であるとかその他の共同処理方式以外に、連合という方式があるならば、合併ができないところはこういう形で連合しなさいということを、両方含めて法案として出るならばかっこうがいいことになる。その点はいかがですか。
  12. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) いま連合と申しましたのは、共同処理というような意味を含めて申し上げたのでありますが、ここの府県合併特例法に、合伴ができないところは必ず連合しなければならないというようなことを立案するというのもおそらく一つ考えだろうと思いますけれども、合併そのものも、自主的に合併に進み得るところに自主的な合併の手続の道を開くという考え方でございます。また現在の地方団体相互の間におきまして、協議会でございますとか一部事務組合でありますとか、そういうような共同処理というものも、必要なつど自主的に行なわれておるわけでございます。法制的に連合という方式がまだ整ってないということは御指摘のとおりでありますが、合併でなければ連合で必ずいけというのじゃなくて、合併をしたいところは自主的に合併をし得る道を開く、連合をしたいところは連合し得る道を開くという方式も、ついでに考えたらいいじゃないか、それは確かにお考えでございます。その点につきましては、この前も申し上げましたとおり、なお連合方式につきましては、いま制度化の問題を含めて検討しておる、こういうことでございます。
  13. 松澤兼人

    松澤兼人君 私は合併かあるいは連合かということ、どちらかということを必ずしなさいということを言っているわけじゃない。二本の道を自治省としては設定しておいて、合併を選ぶかあるいは連合を選ぶかということは、住民なりあるいは関係団体が自主的に選べばいい。私がそういったことをすべきであると言ったようなふうにあなたはおとりになっていらっしゃるのですが、私だって決してそんなことを強制しようというふうには考えない。二つの——いままでの団体を解消してしまって新しい団体をつくるという道と、いままでの団体はそのままにしておいて、必要な行政事務共同処理をする方法、こういう方法もあり得るし、どちらでもいいほうをとりなさいということができますということを私言っている。何もどっちかとれということを私言ったんじゃない。また自治省だってそういうことを私が言っているとお考えになるのはおかしいと思う。そういうルーズの考え方で私は言っている。少なくとも合併特例法があるならば、連合特例法もなきゃならないということを言っている。それで、合併のできるところは自主的に合併したらいい。合併のできないところでは——しかも、一方では合併ができて行政能力というものは強化充実する。それに比較すれば、合併しないところはやはり差別が出てくる。だから、そういうところは合併ができないにしても連合という方法があるじゃないかということで、どちらでもその団体相互間の自主的な選択にまかせるということならば私は非常にいいかっこうだ、こう思うのです。何度これ繰り返してもしょうがありませんが。  そこでこの法案の中に、私ども、何といいますか非常に納得できない立て方があるということは、「この法律は、都道府県合併広域にわたる行政のより合理的かつ効果的な処理広域地方公共団体としての都道府県能力充実強化とに資するものであることにかんがみ、」こういうふうにもう断定してあるのです。先ほど野田大臣は、何も合併を強制するのじゃない。阪奈和の場合でもあるいは東海の場合でも、合併前提としてこの法律をつくったんじゃないというふうに言われました。大臣気持ちとしてはそのとおりだろうと思う。けれども法律立て方は、「あることにかんがみ、」ということですから、すでにそういう事実を自治省が、あるいは法律が確認した上でやろうということ、私はむしろその論理が逆であって、こういう合併、自主的な合併のできやすいようにこの法律で規定を定めるのだ、そうすれば、広域的なより合理的かつ効果的な行政もできるし、最後に書いてある「住民福祉増進に寄与すること」ができる、そういうことが結果であって、前提条件として、「資するものであることにかんがみ、」という、これはもう断定的にきめつけているという態度が、私たちには納得できない。これを目的として合併を促進するというか、合併しやすいようにこの法律は持っていくのです、こういうふうに書かなければいけないのじゃないですか。さっき大臣は、どうもそんなことを前提にしておるのじゃないというふうに言われましたけれども、この法律は、「あることにかんがみ、」ですから、そういうことがもうすでにあるのです、この法律以前に。それがどこで確認されているのですか。
  14. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま松澤さんのこの法案の第一条の御指摘でありますが、松澤さんの言われるとおり、いま広域行政というものは、これはどの地区でなくて、より地方公共団体行政能力充実強化するということは一応の定論になっている。そこで、その関連からいたしまして、松澤さんはよく御存じのとおり、たとえば中部圏とか近畿圏とか首都圏とかいろいろできておりますが、そういう傾向はそういうところから出てきていると思っております、したがって、この法律作成にあたりまして、いま御指摘になりました「広域にわたる行政のより合理的かつ効果的な処理」という前提が出ております。そうして、結論的な意味にとればそうですが、「都道府県能力充実強化とに資するものであることにかんがみ、」、こう書いてあるが、断定しているんじゃないか、資する目的でやるというのはわかるけれども、「資するものである」と断定しているのだ、こういう御指摘になりますところの文章書き方が、いろいろ解釈もできると思いますが、前提といたしまして、広域行政というものが、少なくとも今日の社会経済推移にかんがみまして、地方公共団体といたしましても何らかの形で広域行政の形をとって行政を進めたほうがその能力充実強化に資する、こういう考え方一般論としても否定できない、しかしそれはどこにそうだと、こういう御指摘になりますと、ごもっともです、ごもっともですが、この文章全体からまいりまして、最後にあります結語に、「もって都道府県における効率的な行政確保及び住民福祉増進に寄与することを目的とする。」、目的はここに明らかに出ているわけです。その前半のことばでございますが、やや断定的なというおことばがあればそういうふうにも考えますが、目的そのものはここに明らかに結論に示されております。したがって、いまこれに関連して、いま問題になっている東海三県、近畿三県というようなところにちょっとおことばが触れたのでございますが、それが現実的に充実強化に資するということを断定できる材料を持っておるか——先ほどの御質問にもありました。私はしばしば申し上げておりますとおり、特別の府県を頭に描いてこの特例法を出したのではございませんで、たまたまこの中に意見がある東海三県、近畿三県というものが、やはりそういう主張する人がありまして、それにからんでいろいろの意見なり批判が出ておりますことは承知しております。これはいまお話のありました文章の問題でございますが、この「資するものであることにかんがみ、」ということばを、まあことば表現としてはたして適切かどうかというおことばがございましょうが、真意は、最後結論にある「行政確保及び住民福祉増進に寄与することを目的とする。」ということでございまして、その意味においてひとつ御解釈を願えばけっこうかと思っております。これらの表現につきましての御注意は、なるほどそういうふうに断定しているんだという御批判がある、ことばの使い方がどうかと思いますけれども、真意は、最後のところで目的を明らかにしておりますように、この結論目的事項によって御理解願えれば第一条というものが御理解できるのじゃないかと、こう思っております。
  15. 松澤兼人

    松澤兼人君 納得できないです。こういうふうにきめつけるような書き方をするということは、少なくとも法律のたてまえからいえば必ずしも妥当でないと思う。  それともう一つは、地方自治法、この法律根本法といいますか、あるいは母法といいますか、それの中には、「民主的にして能率的な行政確保を図る」というふうに書いてある。しかし、この特例法を見ますというと、それに見合ったことばとして、たとえば「行政のより合理的かつ効果的な処理」、それから「能力充実強化」、さらにそのあとに、「もって都道府県における効率的な行政確保」というふうにある。母法である、あるいは基本法である地方自治法では、行政の能率的な運用ということだけ、それだけしかうたってない。ところが特例法では、さらに、「合理的かつ効果的」、あるいは「能力充実強化」、あるいは「効率的」というようなことで、いわば行政あり方というものを指導するというか、あるいは締めつけるというか、非常に厳格に、かつ、それは薬のきき目をいろいろ並べるように、ありとあらゆる、と言っちゃ少し言い過ぎですけれども、あの方この手でもって、こういうこと、こういうことと、自治省考えて、いいと思われるようなそういう条件なり要件なりを発生するためには合併以外にはないんだというような、そういう気持ちを起こさせるような、そんなふうに読める。自治法の中で簡単に「能率的な行政」といっているものを、特例法でさらにそれを詳しく条件あるいは要件というものをきめつける必要がありますか。
  16. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この法案合併特例法でございますから、要するに府県合併という観点に立っての考え方を明らかにするということが出てくるのは、これは御了解いただかなければならないことだと思うのであります。地方自治法は何も合併のことだけ考えているわけではなくて、地方公共団体全体の運営というものの基本的な考え方というものを明らかにしておるわけでございますから、その点では確かに表現におきますところのニュアンスというものが違ってくるわけで、これはどうもやはり合併という観点から考えてまいります場合には、いわば合併の効果と申しますか、そういうものに着目した表現がより多く出てくる。きめつけているというおことばでございますが、きめつけているということより、むしろそもそも合併というものの効果というものは、やはりこういう効率的な行政確保できる、あるいは広域行政の場合には、広域にわたる行政の合理的あるいは効果的な処理というものができる、やはりこれが合併の大きなメリットになるということは、これはどうしても出てくるわけでございまして、そういうことに当てはまるようなところにおけるところの合併というものを問題にする。そうして、その合併法律的に一方的に強制するというのではなくて、そういう認識に立つところで、一体性があり、あるいは一体性確保ができると考えられるところについては、自主的な合併の道を開く、こういうことの意味合併の効果をここに規定をする、こういうことだというふうに御了解を願いたいと思うのであります。
  17. 松澤兼人

    松澤兼人君 合併した後の県の行政機構なりあるいは知事の権限というものは、この法律では少しも変わっておりませんね。
  18. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) これは府県の規模の拡大ということを中心にした考え方でございますので、合併県の知事の権限を、ほかの県と違って拡大するというようなことは予定をいたしておりません。
  19. 松澤兼人

    松澤兼人君 この前も、阪奈和の場合と東海の場合について、人口のことを申し上げましたが、阪奈和の場合は八百五十一万、それから東海の場合は三県で八百一万。面積は、阪奈和の場合には一万平方キロ、それから東海の場合は二万一千四百三十平方キロ。地域はこれだけ拡大し、また県民といいますか、新しい県の住民は双方とも八百万をこえるという状態になってくる。それで、知事の権限なりあるいは議会の権限なり、それは少しもいじらないで、こういう大府県行政というものが、この法案に書いてありますように効率的な行政能力を高めるということに必然的に結びつくかどうか。もちろん東京都の場合は一千万をこえるのですから、それでできないこともないでしょうが、しかし東京都の場合は特別区というものがある。特別区も何にもなしに、そういう制度を全然いじらないで、地域と人口、つまり住民というものを大きくして、はたして知事が十分な権限を発揮することができるだろうか。これは行政能力ばかりでなくて、人間の能力をこえるものじゃないかというふうに考えます。大臣はいかがですか。これだけ大きな人口とこれだけ広い面積とを持ったところで、従来の権限が強化されるわけでもなんでもなしに、知事としてつとまると思いますか、どうですか。
  20. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま阪奈和東海三県の例をお引きになりましたし、また東京との比較もあったようですが、これはおのおの知事の権能と申しますか、行政能力と申しますか、それはおのずから——まあ東京みたいにする場合に、東京は特別区というものがありますが、やはり合併と同時に、行政運営のためにはどうした機構がいいかということは、これはもう必ずしもそういうことを一切考えずに合併だけをやるということと、運営というものについての考え方というものとは、おのずから私は、そこに何か具体的な案が出てくることもあるし、また出てこないでやれるという人もあるでしょうし、ただ私は、ことさら、いま阪奈和東海を例としてお引きになりましたが、県によっては二県、三県集まってもきわめて人口の少ないところもあるのは先刻御承知のとおりでございます。ただもう阪奈和東海前提として、これの合併のためにこの法案ができたというわけではない。私自身はそうは考えておりませんが、地区によっては——どの県とは申しませんが、百万足らずの県もありますし、全国的に、どことどこといつ合併したらどうなるかということは、私はおのずからそういうことも考えるし、行政能力の問題——まあ東京都知事も特別な権能と申しますか、これがことさらのものを持たないので——もちろん、都には特別区というものがある。いろいろ行政運営にはまたくふうを重ねることだと思っております。したがって、いまお話の八百万になるから一人の知事ではやれないともわれわれ断定できないし、またやれないような知事を地域住民が選ぶかどうかということも問題ですし、行政運営にはどうしたらいいということは、これは地方自治体がおのずからくふうしていくことだと考えておりますので、一がいに断定的なことは申し上げられないと、こう思っております。
  21. 松澤兼人

    松澤兼人君 私も一がいに、知事の能力がもう限度があって、こういう広域的な行政にふさわしくないとかいうようなことを言うわけではないですけれども、しかし、かりにもしもそういう非常に面積が広くなり入口も多くなるということでは、何かやはり新機軸と申しますか、あるいは新構想でも打ち出さなければ、現在でもとかく、やはり末端の住民立場からいえば、どうも県庁から遠い、あるいは県の行政から疎隔されているという感じを持つ。これがさらに三県あるいは三府県合併となれば、いよいよそういう気持ち住民が持つのではないかということを心配するわけです。この点と、それからもう一つは、たとえば知事の選挙についても従来の方針でやるのだということであれば、ここで大阪府の人口が六百万、奈良の人口が八十一万、和歌山が百万ということであれば、実際どういうふうにして知事の選挙を行なうか私よくわかりませんけれども、現行のように行なうとすれば、六百万の人口を持つ大阪府の選挙民、まあその六掛けとしまして三百何十万あるいは四百万という有権者を持っている大阪府の住民が、いままでなじんできた知事の候補者を適当として選ぶでしょうが、そうしますと、奈良は八十一万ですし、また和歌山は百万ですから、もしかりに旧大阪府の住民が結束して大阪出身の候補者に投票を集中したとすれば、これは勝つにきまっている。そうすると、ほとんど永久と言っていいぐらい人口の少ないところからは知事は出せないということになる。これはいろいろ人間次第でして、和歌山県の候補者が大阪府出身の候補者よりも力量、人格等がすぐれていれば、そちらのほうに投票が集まるかもしれない。そうすると、いつでも旧大きい府あるいは県というところで名前あるいは顔を売っている候補者がいつでも勝つということになる。現行どおりに選挙を行なうとしての話ですが、これについては何かお考えがあるでしょうか。
  22. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 合併をいたしますと、この法律にも規定しておりますように、合併府県につきましては、一般原則としては、当然に合併の行なわれた場合に議員や知事についての一般選挙、知事選挙を行なうというのが原則でございます。したがいまして、そういう意味で選挙があらためて行なわれるわけでございますから、選挙においてはもちろん得票数の多い人が当選することは当然でございます。したがって、その場合には有権者と候補者との間にどういういろいろな関係が出てくるかという問題が重要なポイントであろうと思いますが、特別な法律をもって、知事につきまして何とかということを考えておるわけではございません。通常の市町村の合併と同じように、知事選挙というものはあらためて行なう、こういうことだけでございます。
  23. 松澤兼人

    松澤兼人君 新しい県の県会議員は、それぞれやはり条例等によりまして選挙区をきめるわけですから、当然大阪府以外の地域を代表する県議会議員というものが当選し、新しい県の全体の行政に参画できます。しかし知事の場合は、大選挙区で一人を選挙することになると思いますから、そういう可能性というものは十分にある。いろいろ話し合いも行なわれるであろうというお話ですけれども、現実自治省としては、その点につきましてはどんな構想を持っていらっしゃいますか。
  24. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) この府県合併ができた場合の知事の選挙は、合併府県のうちの人口の多いところが知事選挙の候補者には有利である。実際問題そういうことも考えられましょうが、この選挙はやはり有権者の自由な選択、公明正大、これは私が申し上げぬでも御承知のとおりですが、これに対してどうも自治省から、今度の知事はこうこうだというのは、むしろこれはもう不当なやり方でございまして、かりに、いまお話の大阪、和歌山奈良にいたしましても、県民全体が、合併していま大阪にいる人がはたしてこの大県の行政運営能力があるかとうか、資格の問題——資格というか、人格、能力の問題として検討いたします。あるいは全然大阪にも奈良にも和歌山にも関係ない人が飛び出すかもしれませんし、それに対してどうも自治省が今度の候補者はこうこうだということを説明したり、こっちが利益だとか不利益だとかいうことをすることは、選挙の基本的な意味においても、間違っておりますし、これはやはり公正に合併府県の有権者の人が自由に考えて自由に判断し、自由に選択するというやり方のほか、ちょっといまのところ——いまのところというよりも、原則的に、自治——かれこれ指導したり干渉したりすることは毛頭考えておりません。
  25. 松澤兼人

    松澤兼人君 大臣、私が申しましたのは、自治省が話し合いの中に入るというようなことを申し上げたんじゃない。行政局長が、何かやはりそこら辺で——地元でですよ、地元で話し合いができるんじゃないか、あるいは話し合いをするかもしれないというようなお話だった。で、要するに選挙民としましては、現在かりに阪奈和の問題を考える場合、和歌山県にも知事がいる、奈良県にも知事がいる、大阪にも知事がいるということですから、それぞれの府県には知事がいる。その業績、あるいは手腕、あるいは人格というものをこの八百万の全住民がどういうふうに見るかという、そこにかかってくるんですけれども、何といったって、それは和歌山県のあの山の中、あの人がいいということはごくまれな場合でして、やはり長年やっていたとしても、もしその行政能力が同じだとすれば、人口の多いところに投票が集まってきて、それは大阪の佐藤義詮君をどうこうというわけじゃありませんけれども、しかし広域行政ということから考えてみると、やはり人口が、あるいは有権者の数が一切を決定するということであれば、やはりそういう結果になるんじゃないか。そういうことはどうもいろいろと問題があるんじゃないかということを申し上げているわけなんです。別に自治省としても、そういう選挙に干渉はできないでしょうし、干渉するつもりもない。ですから、これはまあ成り行きにまかせる以外にしょうがないということなんでしょう。
  26. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) それはもうそのとおりです。自治省が候補者に対して選択して、これが二重マル、これが一重マルというわけにまいりませんし、これはお話しのとおりで、現実においてそういう傾向はあらわれるかもしれませんし、また、私先ほど申しました、これだけの大きな合併県になるから、現在の一県、大阪でも奈良でもどこでも、その方にまかせておけない、もっと違った方を、三県に関係のないひとつ人物を推薦したい、またそういう人が、おれがひとつその大県に行って行政の責任をとろう、こういう方も出てくると思っております。  それから、いま局長が話し合いなんということばをつかいましたが、たとえばこういうことじゃないかと思いますが、市町村合併がよく行なわれまして、町村合併の場合にも、やはり町長とか村長を選んだ場合にいろんなそういうような同じ傾向があったかと思いますが、その際には、ひとつやはり円満な広域行政を進めるためには、そこの村長が何名か出たら、助役をどうするとか、そういうことはこれは自治省関係することでございませんが、おのずから自治体同士で円満にいこうじゃないかというような傾向も私は相当あったと思っておりますし、そういう意味のことを行政局長が申し上げたと思います。何も別に候補者について話し合いをするというような期待もしませんし、またそれに関与しようということも全然思っておりませんが、松澤さんのお話は、常識的にそういう傾向がないとは申しませんが、そこにまいりますと、そこまでどうも広域行政をやります場合にいろんなことを具体的に自治省が立ち入るということも、もちろんこれはいけないことでありますし、そういうことに特別なまた考えを持った法律をつくるということも、これはもちろん地方自治の自主性をそこなうものでございますので、できないことでございまして、おのずからこれはやっぱり常識的に適当な人を、地域住民の方がこの人ならばと思う人を選ぶ以外にない。現実は確かに松澤さんのおっしゃるようなこともそれはわかりますが、それに対しての特別な措置というものはこれはできないし、またすべきでないという考え方を持っております。
  27. 松澤兼人

    松澤兼人君 その点はいま大臣も言われましたし、行政局長がちょっと気になるようなことを言われましたけれども、行政局長としては、現行の制度あるいは方法によって知事が選ばれるものである、それは全く住民考え次第だということで了解したいと思いますが、ただ私心配しますことは、こういう大きな県ができ、しかもこれは日本経済の中において相当大きな有力な部分を地域的にもあるいは経済的にも占める。そういう新しい県ができますと、国としてもこれに対して何らか助成、指導というようなことを考えるんじゃないか。これは必ずやってみれば、一年あるいは二年たつと、知事の権限、財政能力あるいは行政的な方法、そういうものについて、これでは、現行じゃだめだと、こういうことになって、制度の改廃ということで、もう少し知事に権限を持たせてくれなければ困る、あるいは部局の問題でも、あるいはこういう部局もこしらえてもらわなくちゃならないとか、あるいは支所とか支庁というものができるかもしれませんけれども、そういうものも現行法以上に要求が出てくる。それに対して自治省は何とかしてやらなきゃならないというふうにお考えになるでしょうし、またもう一つは、先ほど大臣からお話のありました三県の知事以外にまたいい人があればということなんですが、いい人が中央から天下りみたいなことになってもらうと困る。いろいろそういう新しい県ができました後の行政機構なり、あるいは制度、あるいは人間関係、そういうものをいろいろ心配いたしますので、そこをはっきりしておいていただきたい。現在の段階としては、行政局長も自治省も、制度の改正をやったり、特別の選挙制度を採用するということはないことはよくわかります。将来どうしても現在のような現行の府県制度のもとにおける新しい県の行政あり方というものはどうもマッチしないということであれば、そこに何らか考慮が払われるんじゃないか。それは一つ府県制度の根本的な改革だと思います。現在そういうことはお考えになっていらっしゃらないと、それをはっきり言って、しかし将来また必要があれば考えるということであると、そうすると、府県合併はする、それで知事の行政能力、あるいは広範にわたる行政、そういうものがどうもぐあいが悪いということになれば、府県制度の改廃をする、しかも府県制度の改廃の中で合併県にだけ特別の制度を認める法律の改正でもやられるということになるとたいへんなことだと思います。その辺、少し先の見通しについてお伺いできたらと思います。
  28. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 合併府県につきまして、広域的な広域行政処理が合理的にあるいは効果的に処理できるようになるということは、一般的な合併の効果として考えられるわけでございますが、同時に広域行政というような観点、つまり新しい合併県においてもこれはまあ将来問題ということはもちろんございますが、御指摘のように、現在のところはこれに新しい、ほかの県と違った権限を与える、能力を与えるというような考え方は持っておりませんが、将来にわたっての問題ということでございますならば、むしろさらに一そう府県と市町村との間の事務配分というものを、こういうことを契機にしてより適正にしていく、つまり市町村にむしろ権限を譲るべきものは多く譲っていくようなきっかけができるかもしれない、こういうことはあり得ることかと思います。  それからまた同時に、国が、各省が直接掌握しておりますところのいろんな権限につきましても、府県を中心にいたしまして権限委譲を行なっていって、より広域行政を合理的かつ能力的に行なえるようにしていくという意味の権限配分ということが、こういう府県合併を契機にその必要性が唱えられ、制度がそういうような方向へ導いていかれるということであれば、これはむしろある面望ましいこと、それでまたそれに応ずる財源配分が行なわれていくということであれば望ましいことではなかろうかと思います。しかし現在のところは、そこまでのことをこの特例法では全く予定をいたしておりません。  それからまた同時に、そういうことになりました場合のほかの県との関係ということが問題になってまいるだろうと思いますが、もちろんそういう場合を予想いたしましても、そういうほかの府県との関係というものも当然考慮に入れながらそういうことを考えていかざるを得ないと思っておりまして、その点では、現在は、御指摘のとおり権限につきましても、制度につきましても、特別に新しいものを合併をいたしたからといって考えておりませんけれども、将来の方向としては、これを契機に事務配分あるいは財源配分が地方自治を拡充する方向で促進されるということができれば、それはむしろ望ましいことではなかろうかと考えます。
  29. 松澤兼人

    松澤兼人君 この法案の中に、「国の地方行政機関の所管区域」ということもありますし、   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕 「公共企業体等の協力」ということもありますし、いま行政局長が触れられました国の権限の地方委譲等々、やはり考えられるんじゃないかと思いますけれども、すでに法律地方行政連絡会議とかいうようなものができておりますけれども、その効果なりあるいは成果なりというものは、どういうものなんですか。はたして連絡会議連絡協議会というものが効果をあげていますかどうか。
  30. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 地方行政連絡会議は、各ブロックを単位にいたしまして、関係府県知事あるいは議長、あるいは指定都市の市長とか市町村の代表者、つまり地方団体側の構成員と、もう一つは国の地方出先機関が、そのブロック関係の地方出先機関が構成員になりまして、地方行政連絡会議というものを構成組織しておるわけでございます。むしろこれは実行面におきまして府県なり国の出先機関なり市町村なりの間の意思の疎通をはかって、そして行政の総合調整が円滑にいくようにしたい、こういうことでございます。各ブロックごとの運用は必ずしも一定ではございません。どちらかといいますと、特に近畿ブロックにおきましては、開催回数等は必ずしも多くないほうの部類に属しております。と申しますのは、一つには国の地方出先機関というものが非常に管轄区域がまちまちでございまして、その結果、連絡会議を正規に開きますということになりますと、出先機関が非常にたくさんそのメンバーになっておりますので、これらの調節をとることが事実上非常にむずかしいというようなことがございます。現在のところでは、関係府県あるいは指定市の市長というものを中心にいたしました事実上の協議会的な運用をしておるというところがむしろ多いようでございます。
  31. 松澤兼人

    松澤兼人君 これも国会審議のときには、どうしても必要だということで無理やりに成立させたわけですけれども、実際の効果、あるいは能力、あるいは広域にわたる国の出先機関と地元地方公共団体との連絡というものはあまりうまくいってないように見受けられますから、それを法律でこういうことを規定しましても必ずしもそうなるかどうかわからない。新県ができまして、新県の範囲をできるならばそれぞれの出先の所管区域にする、あるいはその新県の区域を含むように編成し直してくれというようなことがはたして可能であるかどうか、その点につきまして、何か各省の間でそういうお話が進んでおるわけですか。
  32. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 現在進んでおるというわけではございませんが、先ほど申し上げました地方行政連絡会議等におきましてもう痛感しておりますところは、各省の出先機関が、所管行政ごとにではございますが、一面からいきますと非常に恣意的で、それぞれの所管区域が言ってみればてんでんばらばらになっておりまして、たしか近畿なり関東地方の地方行政連絡会議でありますというと、同じたとえば営林局なら営林局というものが同時に三つも出てさましたり、あるいは港湾建設部というのが二つも三つも出てさましたり、いろいろな重複がどうしても必要だということになってまいるわけでございます。私どもそういう現状にもかんがみまして、やはり一つは、国の地方出先機関というものをそれぞれの設置の原理と申しますか、法則というものは、それぞれの所管行政においては理由のあることだということではございましょうけれども、やはり一般的な全体の行政との調和ということを考えて合理化に協力をしてもらいたいということは常に要望しておるところでございます。府県合併等におきまして新しい県が発足するということになりましたならば、そういう機会にも当然そういうことを進めてまいりまして、そういう機会にぜひ合理的に再配置し、これが要らないものなら統合するということができればさらによろしいかもしれませんが、そういうことにつとめてまいりたい、こう考えておるわけでございます。法律の第二十一条は、合併府県区域に適合するような形での所管区域の調節ということを最小限度要求をするというか、法律上の事項として義務づけるという一般的な形をその意味でとっておるわけでございます。
  33. 松澤兼人

    松澤兼人君 こちらのほうの法律で、しかも特例法という時限立法の中で、国の出先機関をできるだけ合併した新県の区域に調整をしなさい、すみやかに必要な措置を講じなければならないと一方的に宣言しましても、これはもう自治省自身身にしみてこれまで痛切に感じておられると思うんです。やはり各庁省の権限、あるいはなわ張り、あるいはセクショナリズムということが必ず出てまいりまして、場合によっては今度変更するという場合に、変更されて都合が悪いというようなところの関係者を動員して、分割反対というような運動を必ずするであろうと思うんです。それに対して、この宣言的な条文ではたして自治省のお考えになるようにうまくいくかどうか、その辺疑問に思われるが、これはどうですか。
  34. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 出先機関の中にも、言ってみますというと、県というものを単位にいたしまして三通り種類が考えられるわけでございます、大ざっぱにいいまして三通りございます。といいますのは、一つは、いわゆるブロック機関と申しますか、通商産業局とか農政局とかいいますように、ブロックを単位にして所轄しておる機関がございます。こういう場合でございますと、合併をたまたまいたしました府県が、従来その一部がブロックの外にあったというような場合には、これをそういうブロック単位の中に適合してもらうようにするということは、これは当然ある程度考えてもらわなければいけないし、当然それは行なわれていくだろうと思います。と申しますのは、この合併はほとんど対等合併になるわけでございますから、どうしてもそういう設置法、各省の設置法の中に規定があると思いますが、そういうものの改正を必要とする、こういうことにはなってまいるだろうと思うのであります。それからまた、府県を単位にして設けられている機関があります。たとえば労働省の関係府県の労働基準局なんというのがそれでございます。そういうものになりますというと、これは合併をいたしまして新しい県ができてしまいますと、これも当然に改正をするということは起こってまいるわけでございます。それ以外に、たとえば府県の一部の区域を管轄しておりますところの出先機関というものがございます。公共職業安定所のごときものは、言ってみればそういうものでございますが、そういうものになりますと、それは大きな県の合併ということと直ちには関係をいたさないわけでございますので、言ってみますと大ざっぱに申しまして前の二つ、つまりブロック単位の出先機関の区域の調節ということは必然的に起こってくる。それから府県を管轄区域にしておるような出先機関につきましても、当然に調節ということが起こってくる、そういうことには相なると思うのでございまして、その点で、この訓示的な規定といいますよりは、事柄の性質がそういうふうに当然に調整を必要とするというようなものになってまいる場合が相当ございますので、その点での新しい県との調節ということは当然に措置されなければならないものと考えております。
  35. 熊谷太三郎

    ○理事(熊谷太三郎君) では暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      —————・—————    午後一時十八分開会   〔理事熊谷太三郎委員長席に着く〕
  36. 熊谷太三郎

    ○理事(熊谷太三郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。休憩前に引き続き質疑を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  37. 松澤兼人

    松澤兼人君 行政局長にお願いいたしますけれども、この前市部と市部以外の府県税の上がりの状態について調査してお知らせを願いますということを申し上げたわけです。それはいまでなくてもよろしいですから……。
  38. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) いまできております。
  39. 松澤兼人

    松澤兼人君 じゃ、それはできていればいただきますが、もう一つは、先ほどやはり行政局長にお尋ねいたしました県市と、それから市町村との間の行政協定、あるいは協議会形式あるいは一部事務組合あるいは機関のいろいろな設置とか、いろいろそういう自治法によるものと自治法によらないものと、連絡協議というようなものがどの程度に行なわれておるのか、それにもう一つは、府県同士の横の連絡協議、そういうものが、これも法令による場合あるいは法令によらない場合、それについてもし調査して資料を出していただければ出してもらいたいと思います。よろしゅうございますか。
  40. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) いまのお話府県同士のみならず、市町村同士も入りますか。
  41. 松澤兼人

    松澤兼人君 いや、府県と、簡単に言えば大阪府とそれから大阪府下の市町村、それから大阪府と奈良県、和歌山県の間の協議会、あるいは法令による一部事務の共同処理、そういう形です。名古屋の場合でいえば愛知県と愛知県の県下の市町村との間のいまの行政協定、あるいは協議会方式、あるいは一部事務組合等、それから愛知県と三重県、それから岐阜県の間におけるそういう協議会、一部事務組合連絡会議——会議というとちょっとあれですが、まあ協議会、そういったもの、それから単純なといいますか、何か道路の問題についてちょっと話し合おうじゃないかというようなものは別といたしまして、やっぱり水の問題についてはこういうふうに協議会で相談しようじゃないかという、条例なりあるいは内部の規則なりできめられておるもの、そういうものをちょうだいしたいと思うんです。
  42. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) できるだけ早くつくりまして、お目にかけたいと思います。
  43. 松澤兼人

    松澤兼人君 この前、大臣がお見えにならなかったときに行政局長にお尋ねしたことでありますが、一応大きな問題でもありますので、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。それは、たとえば阪奈和合併が自主的に行なわれるとしまして、大きな財政力を持っておる大阪市がいわばつんぼさじきに置かれまして、それで機関的あるいは制度的には、府県合併について何らの意見も聞かれないし、また、それに対して意見を開陳するということも、この法律あるいはそのほかの制度を考えましてもないようであります。個人的には佐藤知事と中馬市長との間で話があるだろうと思いますけれども、制度の上ではそういうものは何にもない。あれだけ大きな財政力を持っていて、しかも近畿圏あるいは関西経済圏の中における大阪の実力というものは、これはもう国の経済の中においても大きな比重を占めているわけであります。その大阪市の行政を担当している市長が、たとえばこの阪奈和合併について公式的あるいはまた制度的に意見を徴せられないということは、どうもそれはあたりまえだと言えばあたりまえですけれども、そういう厳然たる一つの大阪市なり大阪市長の権限があるのに、合併について何らの制度上の意見の開陳が行なわれないということは、ちょっと変じゃないかということを行政局長に聞いたのですが、この点大臣としてはどのようにお考えですか。
  44. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま例に出されました阪奈和地区の合併で、大阪府における大阪市の経済的、社会的地位から、これはごもっともだと思います。ただこの法案で、そういうどの県も中心都市といいますか、これらも当然いろいろ大きな権力と自治を持っているんですが、法案の中に——特に大阪のごときは特別なこれは経済力その他のいわゆるウエートを持っておりますが、これを取り上げて一々合併に至るまでの手続上の方式をきめるということは、これはいまのは近畿圏とか中部圏ということに一応なりますから考えられますが、しかし、それは大なり小なりどこでもそういう考えは必要だと思っております。ただこの法案の中にも明記してありますとおり、これは自治省が特別な指導をやるとか、あるいは政府全体の指令をもって、こうして自治体に圧力をかけるというんではなくて、あくまでも自主的な立場を尊重していく、したがってこの都道府県合併の場合は、議会の議決の問題によっては、当該都道府県——住民の投票と、こういうことまでなっているのでございまして、それまでに踏み切る各都道府県の知事は、私は当然地域のそういう重要な都市の意向を聞くのはあたりまえだし、またその地域住民の意向も十分尊重してやる、こういうのは当然のことだと思っております。したがって特別にそういう手続上の法規をつくらなかったというのは、また繰り返して申しますとおり、その都道府県の自主性にまかせるということで、ことさらにこの法案の中にそういう点は織り込んでない、こうわれわれは考えておるのであります。
  45. 松澤兼人

    松澤兼人君 一つの市に特別な扱いをすれば、全市に対してやはりその意見を聞かなければならないというようなお考えのようですけれども、大阪市は自治法上特別の地位を持っているわけでして、これは指定市——特別市でありませんから、府県並みの権限ということはありませんけれども、しかしこの指定市については自治法上特別の規定もあるくらいだから、やはりその行政能力なりあるいはその市の生産力、財政力、そういうことを考慮して、自分も含まれる合併なんです。それに対して制度上は何にもいうことはできぬ。それはあるいは議会で意見書をこしらえて、それで出すということはできるでしょう。これは大阪市という、あるいは名古屋市という特別の法制上の地位なりあるいは権限なりというものを持っている市が、何ら制度上の意見の開陳もできなければ、意見が聴取されないということはどうも不自然のように思うのですけれども、そうお考えにならないですか。
  46. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) お話はよくわかりますし、特に大阪とか名古屋とか京都とか神戸、まあ特別指定都市といいましょうか、これは一つの県と同じようじゃございませんが、特別の扱いをされておるところであります。そこで私申しますとおり、これはよく事情わかりますし、そう思うので、つまり大阪市でいえば、大阪市の意向を聞くということは当然のことであります。しかし、これは私は、先ほど申しましたとおり、これはあくまでも知事の判断でございまして、またそこまでやるには、やはり少なくとも他の県と合併することでございますから、これが一番中心都市、しかも経済的に、社会的に、文化、あらゆる面におけるその地域の中心都市、特にまたそのために国がこれを指定都市として扱っておりますから、これらの市の意見を聞かないで強引にやるというようなこと、これがはたして各府県において県民が認めるかどうか、こういうことから考えますと、この中に特別の制度は設けておりませんが、やはり各合併しようという決意をした都道府県の知事というものは、手続上はもちろん、あらゆる行政運営上からも、また政治的にも、すべてにおいて、そういう主要都市の意向を測定しないでかってにやるというのはちょっと私ども常識的には考えられない。したがって、やはり合併に踏み切る都道府県は、当然これらの問題については適当な合理的な方法によってその都市の意向を十分尊重してやると、こういうわれわれは期待を持っておるのでありまして、一律に、都道府県全体の全国の合併法案でございまして、特に指定都市のある府県はこうすべしという制度を設けていないのは、やはりこれは自主的にやる地域合併でございますから、これらを勘案して、合併せんとする都道府県の知事は十分の考慮を払ってやる、こう、常識的な解釈かもしれませんが、期待しております。
  47. 松澤兼人

    松澤兼人君 大臣は自主的な解決、あるいは自主的、あるいは個人的に府知事が市長を話をすれば、その意向を十分くみ取ることができるから心配ないと、こういうことでありますけれども、しかし市長にしても知事にしても機関の人間なんですから、個人的にああけっこうですという場合があっても、やはり機関は機関であって、機関の意思を聴取するとか、あるいはその意見を聞くとか、そういうことは制度上認めても自主的な合併ということには少しも障害にならない。むしろ下部の意向を聞くということであるならば、すべての市町村——大阪市ばかりでなく、すべての市町村の意見を聞くということぐらいにしてもいいんじゃないか。で、住民投票は、結局、過半数はとっても三分の二以上は賛成派がとれないというときだけ住民投票をやるわけです。手続上としましては、本来ならばそれほどの大きな合併、いわばもう何十年の歴史というものがっくりかえられるわけですから、市町村長あるいは市町村議会の意見を聴取するぐらいのことは当然法制としても期待すべきじゃないか、あるいはそれをくみ上げるところの道を開いてやるべきではないか。で、特に指定市であります大阪市というようなそういうところの機関の市長あるいはまた市議会の意見を聞くということは、その合併が自主的であろうとなかろうと、いわゆる自治の本旨ということから考えれば当然のことだと思うのです。どうも常識的、常識的というようなことで答弁されますけれども、私は制度の問題としてやはり何かそういう意見を聞くという道を開かなければいけない。で、同意というようなことは、あるいは承認を得るというようなことはきつい表現であると思います。しかし、機関としての市長あるいは市議会、そういうものの意見を聞くということは当然だと思います。それでもやはり不適当だとお考えですか。
  48. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) まあ私、常識的に意思を尊重するという、だから不適当ということとは全然違います。私はそういう手続上のことを決して間違っているとか、不適当なんて全然思っておりませんが、少なくともやはり自治体には自治体の、やはり各都道府県にはその議会もあるから、それで議会でもってしかも三分の二の賛成がない場合には、住民投票という道も開かれております。都道府県合併しようという府県知事は、やはりその責任において合併の手続に当たるということでございますから、その責任を果たす意味においてはあらゆる方法を講ずる、これは常識的よりも、当然やるべきことだと思っております。これを府県合併府県議会以外に各市町村の議会ということになれば、これは非常に丁寧で、決して基本的な考え方は間違っているなんて考えておりませんが、一応議会の三分の二ということと、それに合致しないときは住民投票と、この道を開いてあるし、しかもこれは根本的に自主的な判断、自主的にやることでございます。何ら、これはどことどことやるがいいなんて指導するということはございませんから、そういうことでもしも自分の県の内部がまとまらぬなんという知事は、やれないですから、やれという指令を出すはずはありませんから、それはそういう道を開くだけのことですから、一応制度上いまのような松澤さんの御意見は尊重すべき御意見だと思いますけれども、この法案に無理にそれを織り込むか織り込まぬかということになりますと、やはり知事の責任でやる、知事は当然その都道府県の議会の決議を要する、こういうことでございますから、やはり地方自治としては、地方自治の責任においてこの問題の判断をするということを期待する以外ないというので、大体それまでの制度の問題を特別に織り込まなかった、こういうわけであります。したがって、それが指定都市であっても、普通の都市であっても、また一般の市町村でも、やはり扱い方としては同様な考えで扱っていいんじゃないかと、こう考えております。
  49. 松澤兼人

    松澤兼人君 この前行政局長が、たとえば阪奈和合併などが行なわれて、府県そのものに対する改正あるいは改革という、制度の問題からいえば府県そのものを変えるということではないけれども、しかし阪奈和県というようなものがかりにできる場合には、大阪市の行政能力というものを再検討して、権限をさらに拡大するようなことを考えることも必要だろうというようなお話をしておられましたけれども、大臣はこの問題をどのようにお考えですか。
  50. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま大阪市の問題をお問いになりましたが、やはり大阪府における大阪市の地位というものは、それはきわめて重要な地位に置かれているということはわかっております。その際に、いろいろ大阪市の区域とかその他の問題も、やはり合併の際にはこれは起こり得ることでございますけれども、やはり再検討の必要が出てくるということは、これは考えることでございます。何といたしましても、特に大阪府における大阪市というものは、指定都市というもちろん立場もありますが、今日の実情と申しますか、実際の大阪府における大阪市の地位というものは、これは非常に重大な感じを持っておりますから、こういう場合にはいろいろの問題が再検討の機会がある、こう私どもは考えております。
  51. 松澤兼人

    松澤兼人君 きょうお出しいただいた「大阪府における大阪市の地位」という資料の一番最後のところに府税収入の上がりの中で、大阪市から上がるものは六一・一%、それから名古屋市から上がる県税の、全体の県税収入の中における割合が五六・四%ということになっております。繰り返して言うようですけれども、国税のことは私は資料を持っておりますから行政局長にお尋ねしなかったのですけれども、これだけの府税及び県税の上がりぐあいの中において占める大阪市あるいは名古屋市の実力というものはいま申し上げたとおりであります。で、いますぐに私、大臣なり行政局長なりにはっきりとしたお考えを聞くという考え持っておりませんけれども、将来やはり府県については合併の道を開いていこうということであるならば、それは自主的な合併を可能ならしめる方途を考えていこうということであれば、その際に大都市の行政事務あるいは権限あるいは税財源、そういうものを十分自治省としてもあるいは国としても考えていくべきではないか、これは当然の論理だと思うのです。大臣がそれについて当然考えなければならないというお答えであれば、けっこうです。
  52. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は、松澤委員と同感です。当然考えなくちゃならぬことだと思っております。
  53. 松澤兼人

    松澤兼人君 自治省はこの間、いわゆる広域市町村圏に関する通牒を、次官通牒ですか、お出しになったと新聞で報道されておりますが、これは前から言われております全国で五十二ブロック、予算にして八千万円で、市町村連合の準備をするというふうに伝えられておりました、それを意味するものでありますか。
  54. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 広域市町村圏につきましては、本年度におきまして、お話ございましたように、全国に五十ヵ所程度、五十二ヵ所くらいになると思いますが、一応圏域設定ということのできます地域につきまして圏域をつくってもらいまして、そして広域市町村圏の中で取り上げますところの広域計画の策定をやってもらう、こういうようなことで、現在、地域の選定を、関係府県、及び府県の中の関係の市町村それぞれが相談中でございまして、現在各県において地域の選定を進めておる段階でございます。
  55. 松澤兼人

    松澤兼人君 この通牒は、いま行政局長が言われましたような趣旨のものであって、そしてことしから広域市町村圏というものをつくるということでなくて、その準備、調整計画等に対する話し合いをしてもらいたいということなんですか。
  56. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) まあ広域市町村圏自体の考え方は、現在市町村におきましても日常社会生活圏、住民のそういう社会生活圏が都市、農村を通じまして非常に拡大をしてきておる、そういう実態に徴しまして、そういう行政区域を越えた数ヵ町村を通ずるまあ圏域というものの中で、社会経済の進展に伴うところのそういう生活圏の拡大に応じて行政運営考えていくというようなことが必要ではないか。この点に関しましては、全国総合開発計画におきましても、そういう地域については一体的、総合的な振興、整備を促進すると、そういう意味での措置が適当だというようなことも言われておるわけでございまして、そこでそういう意味のテストケースと申すとあれでございますけれども、県の中でそういう広域市町村圏を関係市町村の間で相談ができまして設定をして、そういう行政に取り組んでいきたい、広域的な市町村間の共同処理広域市町村圏という形で取り進めていきたいというようなところにつきまして、まずどういう市町村の範囲がそれにふさわしいかというようなことがございますので、現在各府県を中心にいたしまして、関係市町村との間で地域の選定を進めておる状況でございます。したがいまして、これは新しい試みでございますので、こういうものが選定ができました上で、広域市町村圏という圏域内の共同処理的な広域行政計画というものを立ててまいるわけでございますが、こういうものを立てます間に多少の試行錯誤もございますけれども、これは伸ばしていくことが適当だということであれば、そういう措置が次第に整備されるように検討していきたい。こういうことでございまして、現在のところはそのテストと申しますか、そういう形での事実上の研究段階だと、こういうことでございます。
  57. 松澤兼人

    松澤兼人君 そうしますと、本年八千万円というのは、地方財政計画との関係では、また補助費か何かという形で出ているんですか。
  58. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 現在出ておりますのは、大体二分の一程度の補助をしたいというようなことで考えておるのでございます。
  59. 松澤兼人

    松澤兼人君 そうしますと、地元の持ち出しも二分の一であるということですか。
  60. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 一応の見込みをそういうふうに考えておりますが、厳重な条件というのじゃございませんで、むしろ一応の渡し切りと言いますか、そういう形で圏域の選定と、計画作成費といいますか、そういう関係の援助をしたい。現実問題といたしまして、テストでございますので、どの程度あれになるかもわかりませんが、そういう気持ちで、一応大体二分の一ぐらいには当たりはしないかというようなことでの渡し切り的な補助をいたしたいと、こう考えております。
  61. 松澤兼人

    松澤兼人君 本年そういう手続によりまして、協議が整う場合には、そういう関係市町村の間で新たな団体をつくって、その団体が計画実施の主体になるということですか。
  62. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) その点につきましては、先ほどのお話にもありました協議会でございますとか、いろんな共同処理方式もございますので、新たに別個な団体をつくるというほどのことまで考えておるわけではございません。現在のところでは、むしろ事実上の協議会の中で相談中であるというのが実態だと思います。そういうことが、大体話し合いがお互いに了解できたというようなことになりました場合に、そういう広域行政機構と申しますか、そういうものが特別に必要であるということになりました場合に、どういう共同処理方式をその地域においてとったほうがいいかどうかということの具体的な検討を進めていく、こういう段階にあろうかと思います。
  63. 松澤兼人

    松澤兼人君 そうしますと、関係市町村が広域市町村圏をつくりたい、現行の二百五十二条の協議会、あるいは共同の機関設置、あるいは一部事務組合といったような、そういうものではどうもだめだということになった場合にはどうなんですか。
  64. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 本年度のこのテストの場合でございますと、現行制度でしかやりようがございませんから、これは御指摘がございました協議会のような方式で多くはやっていくということに相なるだろうと思っておりますが、それではやはり結合性が弱い、どうしてももう少し広域処理というものを強くしたいということになりますならば、先ほどもお話でございました連合と申しますか、そういう方式に近いもの、あるいはそれを連合ということにしたほうがいいのか、新しい行政体制というものを考えたほうがいいのかわかりませんが、実質上連合のようなものだと思いますが、そういうものを制度化するという要望があったら考えていかなければならないだろう、これはもちろん今後の問題でございます。
  65. 松澤兼人

    松澤兼人君 そうしますと、今年度、四十四年度で非常に話が進んで連絡協議をする機関と言えば、現行法に基づく方式以外には考えられない。しかし、やっているうちに、どうもいままでのような現行法に基づく協議会、あるいは一部事務組合、あるいは共同機関の設置ということでは不便だ、あるいは効率的でないということが地元からだんだんそういう意見が出てくると、今度は自治省としても、これはもちろん地方自治法の改正か、あるいはまた特別な単独法をつくりますか、いずれかわかりませんが、地元からそういう意向が非常に強く出てくれば、法律改正なり、あるいは単独法なりを立案しなければならないということになるわけですか。
  66. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 大体お話のとおりのように考えております。現在第十三次地方制度調査会が開かれておりまして、地方制度調査会の大きな検討事項一つにも、この広域市町村圏問題というのが実は入っております。地方制度調査会におきましても、現在地域設定を進めております状況の実態というものを見ながら、そういう問題を検討すべきであるという御意見が多いようでございますけれども、そういうところの結論もいただいてからにはなると思いますが、その場合に、地方自治法の中に取り入れますか、あるいは別個に広域市町村圏というものの整備をはかるための制度をこしらえるということがいいというようなことになりますか、そういう御答申、御研究を待って考えてまいりたいと思っております。
  67. 松澤兼人

    松澤兼人君 このねらいとするところは、合併ということもあるでしょう、あるいは振興ということもあるでしょう。考えようによっては過疎対策ということも含まれているのじゃないかと思いますが、一方、都会地におきましてもやはりそういう事情に基づく共同事務処理機関というものがすでにだんだんと出ております。もし広域市町村圏というような構想が最終的には新しい圏行政のにない手として連合という形が考えられるとすれば、事務の共同処理という点から、大都市を中核とした周辺の市あるいは町等の間にもそういう連合形式の新しい自治行政の形というものが必要になってくるのではないか。そこで、もし広域市町村圏というものが法制的に連合という形をとるようになったとすれば、大都市行政連合とかあるいは団体連合とか考えるべきだと思いますが、いまの段階としては、広域市町村圏という構想は、むしろ過疎的な地域における一つの新しい試みとして、計画の樹立、それから計画の実施をお互いに話し合って進めていこう、それだけであって、大都市連合とかあるいは都市連合とかいうことはいま全然考えておらないということですか。
  68. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) ただいまの広域市町村圏につきましては、お話がございましたように標準的と申しますか、むしろ大体のところは、現在そういう市町村圏域というものが、人口にいたしまして十万程度になるようなところと——これは平均でございますから、何もそうでなくちゃならないということを考えておるわけでもございませんし、区域にいたしまして大体二十キロ圏内ぐらいのところというようなことを考えておるわけでございますが、それは日常社会生活圏というようなことから、おのずから範囲というものは考えられる。これはいろいろ広狭の意見ございますが、一応そういうようなことを考えておりますが、大都市及び大都市周辺の市町村におきましても、お話のような問題は、今日の問題としては実はあるわけでございます。これにつきまして、広域市町村圏と同じ考え方を大都市及び大都市周辺の都市圏域に応用すべきではないかという議論をございます。これは現在なお検討をいたしておるところでございますので、まずその大都市につきまして、そういうふうな都市間の提携というものが当然必要だということは、もう今日何人も認めておるところでございますけれども、それをどういうふうに、こういう考え方を応用するとしてできるかということについては、なおもう少し検討したいということでおるわけでございますけれども、カナダのトロントでございますとかウィニペグでございますとか、いろいろなところで、すでに連合都市というあるいは都市連合という一つの試みがあの辺で行なわれております。私どももそういうものを参考にしながら、今後大都市及びその圏域の問題について当然進めてまいらなければならないというふうに考えておりますが、現在のところはまだ結論を得るに至っておりません。
  69. 松澤兼人

    松澤兼人君 大臣に対する質問まだちょっと残っておりますが、また後日機会がありましたら大臣に質問したいという質問の保留をいたしまして、きょうはこの程度にします。
  70. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 自治省のほうに府県合併の要請といいますかあるいは陳情書といいますか、そういうようなものがある程度来ているんではなかろうかと思うのですが、来ているのですか、来ていないのですか、要請書だとか陳情書は。早く府県合併してくれというような要望とか、そういうような書類というものは自治省には来ていませんか。
  71. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 府県合併につきましては、要請も、これは非常に長い間のことでございますから、急にというわけじゃございませんが、そういう要請も、経済団体とかあるいは婦人団体とか地域団体等からも、来ているということであれば来ているということに相なります。
  72. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 できましたらね、そういう要望を——おそらく口頭で来ているものもあるでしょうが、口頭で来ているものはどれだけつかんでおられるか、これはなかなかつかめないと思います。文書で来ているものをひとつ、何年には何通、どういう団体からどう来ているというものを明らかにしてほしいと思います。いまここですぐできないというお話であれば、これはあとでひとつ資料としていただきたいと思います。
  73. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) あとで資料として出さしていただきます。
  74. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はこの府県合併についての一番強い要望というのは、おそらく経済界から出されているものが一番強いし、しかもかなり具体的なものだ、こういうように思いますけれども、それはひとつ資料を見た上でまたひとつ論議をしてみたい、このように思うわけであります。  そこでお伺いしたいのは、府県の機能ですね、府県というのは一体何をする機能を持っているのか、この点を——わかっているようでわかっていない点もあるわけですから、ひとつ教えてもらいたいと思います。
  75. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 端的に申しますと、地方自治法の中に第二条というのがございまして、第二条に地方公共団体の事務の例示というのが置かれております。その二条の中に五項というのがございまして、府県の一応役割りと申しますかそういうものの規定をしておりますが、それは一つは、市町村を包括しているところの広域地方公共団体として、第一番目には、広域にわたる仕事を行ない、地方の総合開発計画の策定でございますとか、治山治水あるいは利水あるいは資源の保護、開発、産業立地条件の整備、道路、河川、運河その他の公共施設の建設、改良、大規模な土地改良というような意味広域にわたる事務を行なう。  それから第二番目には、義務教育とかその他の教育の水準を維持するとか、あるいは文化財の保護、あるいは警察の管理、社会福祉事業、医事、薬事、あるいは伝染病予防、公衆衛生、労働争議の調整、労働関係事務、職安事務、あるいは計量器の検査とか、あるいは営業の許可、各種生産物の取り締まり等のような、言ってみますというと統一的な仕事をするいわゆる統一的な行政ということに相なると思います。  それから第三番目には、国と市町村との間の連絡というようなことを中心にいたしまして、国と市町村との間にある府県というような中間的な性格を持っておりますから、そこで市町村との間の連絡とか調整ということを行なう。  第四番目には、高等学校とか研究所とか、試験場とか図書館というようなもの、あるいは運動場とか、水産業とか中小企業等の産業の指導振興というようなもの、要するに一般の市町村が処理してもいいわけでございますけれども、処理する力がないというものをといいますか、普通は補完事務というふうに言っておりますが、市町村の能力の足りないところを補うというような意味での仕事、つまりそういう意味で、広域統一、連絡調整、補完、一般には府県の役割り、機能というものはそういうものだというふうに法律にも書いてありますし、学界その他でも大体そういうことで承認されておるように考えております。
  76. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもありがとうございました。それで統一的な行政というような中に、過密過疎、こうした問題を県の立場で行なうというような業務というのはどういうような業務でございますか。
  77. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 統一という点でも言えましょうし、あるいは広域という問題としても考えられますし、あるいはまた補完という面でも考えられますが、要するに過密というような問題になりますと、一面市町村の区域を越えて処理をしていく必要がある。これはまた同時に市町村の能力を越えているというような面もある。それから府県内の市町村間の均衡と申しますか、そういうものも考えていかなければならない。状況が著しいものについては再開発を行ないますとか、あるいは環境整備に力を入れるということになりますと、府県自体としてもこれに力を加えなければならないというようなことに過密問題なんかでは出てくると思います。それから過疎についても、全く同じというわけにもまいりませんが、やはり過疎という問題も、言ってみれば、ある面では中心となるべき生活圏とかあるいは経済圏というものから取り残されて、一種の陸の孤島のようなところも多いわけでございます。こういうものの原因にはいろんな事情があると思いますけれども、たとえば一つは交通、通信というものが非常に十分でない、道路の整備がおくれておる、端的に言えばそういう場合もございます。こういう道路行政というようなことになりますと、やはり府県の役割りというものがそこに十分に届いていない問題ということでも考えられるわけでございます。そういうことがございますし、また農山村地帯におきますところの産業の近代化、合理化、適正規模、適正経営ということが非常にやりにくい、そういうものを合理的にしていく。土地改良でありますとか、基盤整備でありますとか、構造改善とか、いろいろな言い方があるようでありますけれども、そういうことになってまいりますと、やはり府県というものが産業的な指導行政あるいは基盤整備というものでは、いまの広域的な観点あるいは補完的な観点から役割りを背負っていく。これは一般に現在農業構造改善とか、土地改良事業というような点についても、府県の役割りになっているところが多いわけでございますので、そういう面で、やはり過疎地域の問題の対策ということになりますと、府県の役割りというものが出てまいる、こう考えていいのではないかと思います。
  78. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、たとえば東京近県のところでも、一つの県の中で、一部分では非常に過密状況が起きる、一部分では過疎の状況が起きている、こういうような府県というものが相当あるのではなかろうかと思うのですけれども、そういうものをわれわれは府県行政という立場からどのように評価していったならばいいか、府県行政の中にそういった過密過疎のような、同じ県の中にすらそういう問題が生まれてくる原因と言いますか、それはどこか府県行政の中に間違っておるものがある、こういうふうに考えざるを得ないと思うのですけれども、それは一体府県行政の中でどう評価したらいいのか、お聞かせ願いたいと思います。
  79. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) これはたいへんむずかしい問題だと思います。正直に申しまして、私どももそういう過密や過疎の原因とか、過密や過疎ができました条件というものの中には、府県なり市町村なりの行政の責任といいますか、そういう行政の欠陥から生じておるという面も全くないとは言い切れない、やはりある面では相当責任があると思いますけれども、またそれ以外に、現在のこの土地利用のさせ方でありますとか、産業立地でありますとか、あるいは国の産業政策でありますとか、都市的なものに対する公共投資のしかたでありますとか、これは国の事業なり国の作用なりも非常に大きな影響を与えております。それからまた経済活動自体も、そういう面で非常に大きな影響を与えるわけでございまして、そこで全般としては、その場所によりましてはそれぞれ原因のかかり方といいますか、ウエートが違うかもしれませんが、しかしすべて、府県の中に過疎過密がある場合には、府県内の責任だから府県行政だけの責任だ、これはちょっと酷と申しますか、そういう面が必ずしもないとは申せません、あると思いますけれども、それだけではなかなか解決できない問題を持っておるというふうに思われるのでございまして、お尋ねでございますが、一がいにはこれなかなか申し上げかねるわけだと思います。
  80. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大体どこの府県でも、これはかなり過疎現象を起こしている府県でも、県庁所在地というのは大体人口がふえてきていますね。そのほかの地域というのは、どちらかというと過疎現象を非常に起こしてきているというのが、これはどこの県でも大体共通的な傾向であろうと思います。そうしてみますと、その問題はあえて大きく——まあ国のほうも全然関係していない、そちらの要因がゼロだというわけではなかろうと思いますが、やはり府県行政あり方自体にかなり問題があると見て、全般的にそういう傾向が出ておるわけですから、そういうふうに見ていいのではなかろうかと思いますが、どうでしょうか。
  81. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 先ほども申し上げましたような、府県行政責任が十分でないからより過疎的になったというような事例というものは私も見聞したことがございます。したがって、確かにそういう場合があることは私どもも否定できないと思います。しかし全体としては、大都市集中というようなことは、大都市というものについての大都市の機能なり、大都市にありますところの経済的な集積の利益といいますか、そういうものは公の行政投資だけでなくて、民間の資本なり経済活動なりというものが、いろいろなものが相寄ってそういう集積ができておる、そういうものの吸引力といいますか、有利性というものが、やはり一面で産業なり人口をますます集中をさしていくという傾向があるわけでございますから、単に府県行政の結果だというだけでは問題は片づかないものがあるのではなかろうかと思います。確かに、しかし府県庁の所在地はおおむね人口がふえております。それはやはりそれぞれの府県におきましては、何と申しましても県庁の所在地といいますものはその県の行政の中枢でございますし、また経済活動の一つの、県としては一番大きな拠点になっておるところが多いわけでございます。そういうことで、やはりそこに管理中枢機能というもの、あるいは拠点的な有利性というものがあるわけでございますから、それが人を呼び産業を呼んでくるというかっこうが、周辺あるいは山村の労働力の移動等に影響を及ぼしておる、これは、それだからそれは県の責任だというふうには全部はならないと思いますが、ある面で、そういう意味府県行政のしかた自体にも全く問題はないとは私どもも言えないと思います。
  82. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、この法案の要綱に、地域格差是正に寄与するという文言がありますね。いまのそうした狭い地域ですら、県庁所在地あるいは経済力が集中しているところ、あるいは蓄積の度合いの高いところ、こういうところは、県の行政の責任も若干あるにいたしましても、むしろそれは経済の力、経済の吸引力といいますか、こうしたものが過疎過密という二つの相反する状況というものをつくり上げてくる。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕 特に今回の合併特例法が予定をしている地域というのは、そうした現象がさらに激しく出ている地域というものが、いまわれわれの頭の中でこの地域とこの地域合併をしていくんじゃないだろうかというものがあるわけです。これは必ずしも阪奈和あるいは東海三県が一番先に合併するかどうか、これはわからないとしましても、今日われわれの頭の中にあるのは、確かに阪奈和であり、東海三県であり、あるいは東京、埼玉、山梨という話も出ております。大体において非常に経済力の集中されている地域、そういう地域合併問題というのが具体的な話題になっているといいますか、討議の対象になっているといいますか、そういう事態を起こしているということになりますと、こういうふうな形で数県が合併をしたところで、やっぱりそこにおける地域格差というものは私はなくなっていかないのじゃないだろうか。先ほども松澤先先のほうから、合併した県と合併をしない県の格差お話がありましたけれども、同じ合併しても、決して地域格差是正に寄与することにはならないのではないか。これをどういうふうに地域格差是正をはかって、集中過密の地域と過疎の地域というものをならしていくことができるか、あるいはおそらくこうした中には集中地域から過疎地域といいますか、そういう地域への工場の移転というようなことも一つの問題点になってくるだろうと思います。しかし、いままでもあるいは工特地域あるいは新産都市、こうしたことでたいへんいろいろなたくさんのお金もかけ、政治的にもたいへん大きな問題となったわけです。しかし現実には、そうした新産都市というものの中で成功している部分というのはむしろ非常に少ない。団地はできたけれども来てくれる企業がない。そしてそのことのために府県市町村の財政というものはたいへんな赤字になってきている。こういう失敗というものはもはや明らかである。そう考えてみますと、この合併関係府県内の、たとえば大阪にはさらに経済力も人口も集中をしていく。和歌山県の南紀のほうとかあるいは奈良県の吉野の周辺というものはますます過疎状態をつくり上げてしまう、こういうふうなことは具体的にどのようにして防げるか。いままで同じ帰属意識を持った県の中においても、そうした過密過疎の現象というのは、この地域ほど大きくないにしましても出てきているわけです。今度は二県ないし三県の合併によって、帰属意識というふうなものはもっと薄められる。こうした中で、はたして過密過疎の問題、言いかえて見ますれば地域格差是正というものに具体的にどのように寄与することができるのか、これの具体的な路線ですね、それをひとつ教えていただきたいと思います。
  83. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この地域格差是正に寄与するというのは、一つは、財政力の豊かな府県とそうでない府県というようなものが合併をいたしますと、その財政力の豊かな府県の財政力というものをそうでない府県区域においても大いにその利益の均てんを受けるということが起こるわけであります。そういう意味で、まず行政格差から中心に考えることになるかもしれませんが、行政格差と申しましても、それは公共施設の整備でありますとか、あるいは生活環境の整備とかいうような面にまでわたるわけでございますが、にわかにはまいらぬかもしれませんけれども、次第に水準がそういう意味ではならされ、均衡化されてき、そうして高い水準のほうに向かって低い水準の府県というものが引き上げられていくということは、長い目で見ますならば当然起こってくる作用だろうと思います。そういう意味で、財政力的な面だけを考えましても、そういう意味でも財政力の弱いところにはいい影響を与える、こういう点が一つ考えられるわけでございます。  それからまた、お話のございました阪奈和とかそういうところになりますと、これは見方によってはいろいろな御意見もあるわけでございますけれども、大阪を中心にしましたところの大都市圏域というものがすでに府県区域をこえて広がってまいっておる。それはつまり過密現象というものが無秩序な形でどんどん府県をこえていっておるというようなかっこうでございまして、そういうところでは、したがって、それを全体として計画的に整備をしていくということが、相互行政区域の中に閉じこもって地域開発計画を考えましたり、公共投資の計画や対策を考えるということでは、実態がそうでない場合にはあまり意味をなさないということにもなるわけでございますから、そういう意味で、行政区域現実の実態と非常に食い違っておる状況を合併によって直していくということが、今度は行政的な統一といいますか、いわゆる広域行政を非常に合理的なものし、計画的なものにし、効率的なものにしていくという意味で、非常な優位性というものを持つ。たとえて申しますと、水資源の問題を考える、あるいは土地利用の問題を考える、あるいは道路網の整備というものを考える、あるいは港湾の整備というものを考えていくということは、やはり相当広域的に考えていくことが必要だ、土地利用の中で、たとえばある県の団地というものは、すでにその県の住民の要望にこたえるということじゃなくて、むしろ大きな都市圏の必要から出てきておるというような問題が多いと思うのでございます。そういうものはやはり一体として考えていくということにならなければ、たとえば埼玉県なら埼玉県の住宅団地というもののために、県及び関係の市町村はその環境整備には小・中学校をはじめとして非常な財政負担をしいられるわけでございますが、その住民はすべて東京というところの巨大な都市の機能を維持するために生活しているにすぎない。つまり、それは東京の大都市の活動というものを維持するために生活しているのであって、埼玉県あるいは市町村の負担というものでのみ負わされる問題ではないのではないかというようなところは、現在すでに今日の問題になっておるわけでございます。したがいまして、そういう意味で、財政力の均衡化という問題と同時に、今度は行政面におきますところの行政の計画なり事業の着手というものを広域的に、すでに実態がそうなっているところを、行政としてもそれに合わしながら合理化していくということが非常に大きなメリットでもありまして、そうすることによって、少しでも矛盾と混乱を防ぎながら格差是正をしていくということには、大きい目で見ればそういうことになるのではないかというふうに考えておるのであります。
  84. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま局長のお話を聞いていると、都市は財政的にも非常に豊かだ、それで豊かなところの府県の周辺が、そこに経済活動が集中した結果過疎になる。そういうところ、いま埼玉県と東京都のお話がありましたけれども、埼玉県は東京都の犠牲になる必要はないのだ。だから、東京都の金をもっと埼玉県のほうにならして、それによって埼玉県の過疎部分の行政水準を上げていくのだ。こういうふうに承ったわけです。そうしますと、この府県合併というのは、非常に一面的なとらえ方かもしれませんけれども、富裕な県の財源を削って富裕でないところに埋めていく、ならしていく、こういうことが府県合併の基本的な考え方ことばの上には出ておりませんけれども、いまの御説明は明らかにそういう御説明だと私は承ったわけです。そうしますと、自主的に行なわれるとか、府県の自主性によって行なわれるということを言いながら、豊かな県と貧しい県との合併でなければ合併意味がない、メリットが出てこない、こういうことになるわけですが、どうですか。
  85. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 府県合併は、これは逆な御意見もございます。と申しますのは、たとえばこういうことを申すのはどうかと思いますけれども、たとえば富裕な県になりますというと必ずしも合併に賛成でない、早く言えば富裕な財政力をよそへ吸い取られるからいやだ、こういう考え方でございます。逆に今度は、弱小な府県と言われているところは合併に必ずしも賛成でない、こういう場合いがあります。なぜかといえば、それは中心府県の利益のために結局われわれは犠牲になりはしないか、ちょうど逆な心配をお互いにし合いっこしているという場合もございまして、必ずしも一がいに申し上げるわけにもいかないわけでございますが、地方制度調査会答申なり、この特例法で書いておりますのは答申を受けて書いておるのでありますが、社会的、経済的に一体である、将来また一体である地域として発展する可能性があるということと同時に、なるべくその配慮としては格差是正に寄与する、つまり、それは、一つは、過密地域と過密地域合併をして、卑俗な言い方でございますが、一そうの過密を重ねるような合併はむしろ避けるべきではなかろうか。どちらかといえば、過密と過疎と両方が長短相補うというような広域的な合併考えていく、これが、将来過密地域における再開発、それから過疎地域における開発整備というものが一つの計画の中で結び合うということが一番適切なんじゃないだろうか、こういう考え方が動いておるから、この二条には、「合併の基本」というのはそういう書き方をいたしておるわけであります。しかしいずれにいたしましても、それは合併考えるにあたっての基本的な考え方ということにとどまるわけでございまして、自主的な合併というものは、そういう観点をいろいろ考えてもらった上で、自主的な合併というものができていくということを法律としては期待をし要望もしておると、こうお考え願わなければならないだろうと思うのであります。逆に言いますと、過疎と過疎とが合併をするということはそれでは意味がないのかという問題もあるわけでございます。しかし合併は一面、先ほど申し上げました財政力の格差是正するということだけをもちろん合併のメリットとするわけではない。むしろそういう意味では、広域行政というものによって全体の体系を合理化していく、あるいは組織なり機構なりを能率化していく、それから施設の重点的な配置あるいは統廃合もそういう全体の中で合理的に行なっていくというようなことは、合併の大きなメリットになるだろうということも考えられるわけでございますから、過疎同士の合併、過密同士の合併というものがいかぬというわけではもちろんないと私は思います。しかしより望ましいのは、そういう意味では過密と過密とを重ねるようなことでなくて、また過疎と過疎とが重なるようなことでなくて、相なるべくは、過密を打開するために過疎地域というものと結びついた合併というものが望ましい。それがまた行政格差なり地域間のいろいろな格差というものを是正することにもなるということを考えておると思うのであります。
  86. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 わかったようなわからぬような説明のような気がするわけです。しかし問題は、事業の内容によってはむしろ過密同士のほうが統一的に仕事ができる、過疎同士のほうが統一的に仕事ができる、こういう場合も逆にあるわけですね。ところがいま局長がおっしゃっておるねらいというのは、むしろそういう面はどちらかというと二次的だ。金持ち県の金を削って貧乏県に回してやる、私はむしろそういうことは、税制等々に基づいて、担税能力のある地域から取って、それを過疎の地域の公共施設の改善、行政水準を高めるということにやるべきだと思うのですね。おそらく私はこういうことで、過密と過疎をなくするために、調和のある計画的な行政を行なうためにこれをやるのだというならば、こういう府県合併というものと新しい全国総合開発計画の考え方というものとは、私はまた大きな矛盾が出てくるような気がするわけでありますね。新全国総合開発計画の大きな考え方というのは、もう人口の都市集中はこれはやむを得ないのだ、それよりもそういう地域を結びつけることによって問題を解決していこうということで、新幹線とか高速道路という問題が強く打ち出されておるのではないかと私は思っております。その辺は私は非常な矛盾があるように思います。矛盾はございませんか。
  87. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 新しい全国総合開発計画につきましては、御承知のように巨大なプロジェクトというのですか、そういうもので全国のネットワークをつくっていくというような大きな考え方が出ておるわけでございますが、しかし、結局それは一面、中枢管理機能というものを、交通、通信あるいは新幹線なり道路網なり航空網の整備によりまして、そういう中枢管理機能とか流通機能というものを非常に広域的に広げていく、そうして全国的にいわばネットワークを広げていくという考え方も一面あるというふうに私どもも思うわけであります。そういう意味では、地方に拠点をつくっていくという考え方が当然出てきておるというふうに私どもは思うのでございます。そういう意味では、何といいますか、大都市の過度集中はやむを得ないのだということだけを前提にはしておらないのであります。やはり今後はそういう管理機能なり流通機能というものを大きなネットワークで全国的に分散するといいますか、水準を高めていくということによって考えていくという全国総合開発計画、均衡のとれた開発を考えていくということも一面強く打ち出されているように私ども思っております。そういう意味では、この開発の可能性というものを全国に押し広げていくという一つの大きな構想が考えられるわけでありまして、そういう意味の拠点整備は、地方にもそれぞれ行なわれていかなければならないということではないかと思うのでありまして、その点で過疎過密の問題といいますか、そういうものを考えることが、府県合併の場合に地域格差是正という形での合併考えるという配慮がこれと矛盾するものでは私はないと考えているのでございます。また、総合開発計画には、どうも少しわからないのでありますけれども、ブロック単位に広域行政機構をつくる。そして国の総合開発機能の一部をそれに持っていく、それから府県の開発機能とか、そういうものの一部をそれに持っていく、しかもこの広域行政機構というものは地域の特性に応じた——まあ地域的といいますか、地方的といいますか、自主的な性格を持った機構を整備するんだということで、現在の府県制度についての再検討を大いに示唆しておるようなものがこの項目の中に実は入っておるのでございます。その点についての是非という問題は別でございますけれども、そのもの考え方は必ずしもはっきりはいたしませんが、そういうものを見ておりますというと、むしろこの府県区域を越える広域的な開発行政を進めるために、主体性を持った広域行政体制の整備を検討すると言っておりますが、とのことは府県合併というようなものの方向とは違う方向ではない。私どもこれが正しいからこれでやりたいという意味ではございませんが、少なくとも府県合併と方向が違うということではない。しかも、こういう広域行政体制というものを全国総合開発計画は開発プロジェクトのための一つの要請として指摘をいたしておるわけでございますので、そういう広域行政体制というものの是非はこれから検討しなければならないのでございますけれども、この府県合併がその方向からそれてしまう、まるで違ったものになるということには私はならないと思います。そういう意味では、総合開発計画の方向とは違っていないのじゃないかというふうに考えております。
  88. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 局長の考え方というのは、なかなかその時とところに微妙に機動性を持って御答弁になっておりますので、矛盾がない感じを非常に与えるわけでありますが、具体的に、この東海三県なり阪奈和の一府二県、そういうところで行政水準をそろえていくというための具体的な担保というようなものは、どういう手段でその担保にしているわけですか。私はこのままでは、先ほども言ったように、おのおの合併が予想されている地域の中における過密過疎というものを必然的にさらに累積していく、そうした結果というものしか出てこない。しかし、あなたはそうではない、こうおっしゃっておられるわけです。そういうものがそうでないということは、具体的にどういう行政的なあり方を通じて、あるいは財政のあり方を通じて行政水準を引き上げていき、一致をさしていくという方向へ進めていくという、具体的にそれを保証するあり方について御説明いただきたいと思います。
  89. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) これは非常にむずかしい問題でございます。合併ということが行なわれますと、非常に端的に申しまして、いまは四十六の府県があるわけです。四十六の府県があるということは、つまり何らかの形で少なくとも最小限度四十六の拠点がある、府県という点だけから考えますれば。ほかにも拠点が考えられますが、一応四十六の拠点があるということになっております。したがって国の施策その他におきましても、その割合の度合いは違いますが、おおむねの施策の中には四十六分の一の係数が必ず入っております。そういう意味では、四十六分の一の持ち前は多い場合と少ない場合がもちろんございますけれども、そういう行政的、政治的、経済的、社会的な中心としてのいまの府県というものの役割り、これはもうその点だけから考えますと、無視することのできないものでございまして、そういう意味で、その県があるということによってその地域をそれがカバーし、地域の態勢をととのえ、地域の力を支えている、そういう点は確かにあるわけです。しかしながら、一面また、それではそういうものが合併によって全部消滅して、そうして三県の中の二つの拠点は失われて一つの拠点だけに集中してしまうかということになりますと、私は具体的な担保というものはもちろん持ち合わせはございませんけれども、やはりそれは行政というものの範囲が拡大していくということは、一面集中という作用も確かにあるかもしれませんが、同時に行政水準の統一といいますか均一化ということも、これはもう当然の要請でございます。その要請を無視して集中ということだけの行政運営ができるはずのものでは私はなかろうと思います。そのことは、範囲が小そうございますが、都市間の合併でございますとか、そういうものを考えましても、やはりそういう点は広域的に統合された結果において、短期間ではまいらない点はございますけれども、長期的にはだんだんと同一の行政水準というものを維持していくということが次第に実現しておるというのが、今日から振り返ってみて、町村合併の非常に大きな効果であったというふうに思われておりますが、同じようなことが——やはり時間はかかると思います。時間はかかると思いますけれども、やはり今日行政格差というものは、行政統合ということで、広域的な計画の中で、従来よりもむしろ短期間の間に、水準の均衡といいますか、水準の一致を見るという活動の力が強く動いていくということは信じていいことではなかろうかというふうに思うのでありまして、具体的にそういううまい担保がないではないかとおっしゃられれば、それはそのとおりでありまして、具体的にうまい担保はございません。ただ、言っておりますことは、行政広域的、合理的な計画の中で推進していくということは可能になるということ、そのことが行政水準の統一に非常に役立つということは申し上げられると思うのであります。
  90. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先ほども松澤さんのほうから知事の選挙の問題というのが出ました。私は、これはやっぱり知事は公選という形でいくならば、何といっても票のたくさんあるところから票をたくさんもらうというのが常識であろうと思います。そういたしますと、今度考えられている、かなり具体的になっております二つの合併問題からいきますと、もちろん知事でありますから、それはたとえば旧大阪府あるいは旧愛知県だけのことはやらないと思います。しかし、人口が圧倒的にその区域にあるということになりますれば、私は、行政の姿勢というものも、どこに重点を置くのかということはおのずからきまってくると思うわけです。特に都市においては、今日かなり大きな財政需要というようなものが具体的に出ていると思います。そうなってくれば、はたして局長の言ったように、大都市の比較的豊かな財政というものがそうした過疎地域に大きく社会投資が行なわれていくか、私はおそらくそういうことは出てこないだろう。むしろ逆に、ますます経済の中心地に向かってより多くの財政投資が投ぜられる、こういうふうになっていくんではなかろうかと思います。  それからもう一つお聞きしておきたいことは、先ほどのお話でも、人口が八百万の大きな、府という名前になるか、県という名前になるかそれは知りませんけれども、そうしたことになりますと、府県議会の議員の定数というのは一体そこでどういうふうになっていきますか。相変わらず自治法でいうところの百二十名の定員の中で議員は考えられるのかどうなのか。
  91. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 議員の定数は、お話しのように、現在地方自治法におきまして県議会議員の定員は百二十人で頭打ちでございます。もっとも、この前地方自治法の改正がございまして、特別区の存する区域におきましてはさらに百五十万に一人ということで、具体的には、東京都の場合は百二十六人まで定数が、今度の都議会議員の選挙のときからふえることに国会でおきめいただいたわけでありますが、それ以外の県の場合でありますと、これは百二十人で頭打ちでございます。
  92. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、今度合併して八百数十万という人口になりますれば、おそらくその限度一ぱい、あるいは百二十名を計算上からいくとオーバーをする、こういうような議員定数になってくると思うわけです。これはオーバーしませんか、どうですか。百二十人の定員の中におさまりますか。
  93. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) いまの地方自治法の議員の定数をそのまま計算をいたしますと、六百十八万でありますから、六百十八万で百二十人になるわけであります。そこで、いまの阪奈和とか東海三県の場合でございますと、八百万近い人口、いや、八百万以上でございます。阪奈和の場合は八百五十一万でございますし、それから愛知東海三県の場合は八百一万でございますから、これは百二十人の頭打ちを当然に食らうということになります。
  94. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしてまいりますと、人口の多いところから原則的には多くの議員が来る。人口の少ないところからは——これはおそらく選挙区は郡、市単位ということになって、いまの選挙区と同じような郡、市単位ということになるのだろうと思いますけれども、人口の少ないところからは出ていく議員というものは少なくなる。これは人口が集中すればするほどその傾向というものは強くなっていくんじゃないか。そういうふうになりますと、ここでもう、議会を通じて財政を比較的均てんさしていくという問題というものもやはりここで失われていくのではなかろうか。そういう意味では、まさに合併によって行政水準が均等化していくというこうした問題は、何らかのほかの方面からする強力を指導のない限りは、地域格差是正に寄与するという大きな目的といいますか、こうしたものから見て、一向に改善をされていかない、こういうふうに思いますが、どうですか。
  95. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) お話しのように、百二十人の議会に相なるわけでございまして、これは東京都の場合におきましても、一千万もありましても百二十人であったということでございます。百二十人がいいか悪いかということになれば、全般的な府県議会の議員の定数の問題という本則論に返っていくわけでございます。そういうことでございますから、現在では大阪府は百十人の定員を持っております。奈良で見ますと、奈良は四十二人の定員しかございません。和歌山は四十六人の定員ですから、それがその割合に応じまして百二十人の中に入っていくということになれば、阪奈和の場合でございますと、お話しのとおり、奈良和歌山地域から出ます議員というものの数は少なくなります。問題は、そこで発言力の強い大阪府を中心にした大阪府エゴイズムが新府県の中でも相変わらず横行ばっこをして何ともならぬということに相なるかどうかという問題だろうと私は思うのであります。まあしかし、こういう議論はここでは慎まなければなりませんが、同時に、こういう県におきまして、すでにその地域だけでは問題が解決しないというところの実態をかかえておる面が少なくないわけでございます。そういう面で、やはり全体の調和といいますか、統一といいますか、均衡というものを考えていかなければならないという発想——かりに合併ができますと、そういう発想のもとにそういうお互いの理解の中で合併が進められる。合併がいやだということで理解をしない間に合併を強制するのでございますと、相変わらず大阪は大阪だ、奈良奈良だという議論もあり得るわけでありますが、やはり自主的な合併としてお互いに相互理解をし合って合併をして、新しい県を整えていくという場合でございますと、私は、旧来の大阪府だけの地域のエゴイズムということで新県が運営されていくということは、これはそういう面が全然ないとは申し上げられませんけれども、これは長い間には、多少の時間をかけなければならないかもしれませんが、やはりならされていく問題であって、経過的な問題だというふうに考えてもいいのじゃなかろうかと思うのであります。
  96. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その辺の考え方が非常に違うと思うのですよ。まあ局長は選挙あるいは議員ということをおやりになったことがないからそういう非常に聖者みたいな考え方が貫けるのではなかろうかと思うわけですけれども、現実に議員というものは、まあいろいろな批判もあると思いますけれども、やはり第一義的には自分を選出してくれた選挙区、ここに何といっても重点を置いてものが考えられるということは、これはそういうことがいいか悪いかという議論はありますけれども、私は現実にはそういうものだと思います。私は、そうあってこそ初めて選挙民に対して責任を負うことができる、こういうふうになると思います。そういう意味で、どうも局長のいまのお話を聞いていると、何か合併さえそのときにしてしまえばいい、大阪府の府会議員のセクショナリズムをぶったたいて合併さえしてしまえばそれでいいのだ、こういうような発想、こういうものを私は強く感ずるわけです。私は問題は合併ではないと思うのです。問題は、その地域における住民福祉というものが将来にわたってどのように増進されていくかということが一番大きな問題でなくちゃならない。合併だけすればあとは非常に長い期間をかけてやるのだというどうも考え方というのは、何か名目的にこの合併だけはなし遂げてしまおう、あとは過密過疎の地域格差がひどくなろうが何になろうがそういうことはかまわない、こういうふうにしか受け取れないわけです。もしも真剣にそうした住民福祉増進というようなものに重点があるとするならば、私はそうした格差が拡大をしていくものに対するブレーキの役割りをする何かがなければいけないのではないかと思いますけれども、どうですか。
  97. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 御指摘のとおりでございまして、私どもも合併というような形だけができれば万事よろしいのだということで考えておるわけじゃございません。もちろん合併目的は、住民福祉増進に寄与するということの最上の方法として選ばれるということでなくては意味をなさないわけでございます。したがいまして、そういう意味では、ちょっと先ほども申し上げましたが、自主的に関係の県が合併に進んでいく、合併ということに理解が進むということは、こうすることが中心地域にとっても利益であるというような観点、あるいはそれを別のことばで言えば、中心地域住民にとっても福祉増進に役立つ、こういう考え方や理解がなければ、合併というところには進んでまいらないわけでございますから、そうやって合併いたしました上でも、なおかつ中心地域だけの今度は地区的に、合併しないと同様と言わないまでも、そういう地区的エゴイズムと申しますか、地区的利益の拡大というものによって問題が起こるということだけを心配することもどうであろうか。また同時に、そういうことで何か周辺地域の利益の保障というようなことを担保するというようなことも考え方としてはあり得ると思います。しかし、これをやりますと、やはり合併によって一体性確保していく、ほんとうの意味の一体化というものを進めていくという意味では、そういう周辺圏の最小の利益をそこなわないように担保するというしかたは、逆に言いますと、いつまでも一体化を妨げるという面も出てくるわけでございまして、現在のこの合併特例法案におきましては、そういう担保のしかたというものは実はいたしておらないのでございます。先ほども申し上げましたが、私ども伺いますと、中心の府県の議会の御反対の中には、むしろそうじゃなくて、自分たちが合併をすれば自分たちの利益が周辺に吸い取られる一いつまでも不平等扱いというものができるものじゃない、そこで平等扱いにすれば自分たちの利益が吸い取られるじゃないか、したがってもっともっと自分たちのすべきことをした上での話だというお考えもずいぶんあるように聞ました。また逆に、ただいま御指摘のございましたような周辺圏のほうの御反対は、むしろ御指摘のありましたとおりの御心配、つまり中心部の犠牲になるという心配、ちょうど全く逆の心配をお互いになさっておるような、そういう意向がかなり強いということを聞いております。まだまだそういうことであります場合には、なかなか合併ということは進まない。そういうものの思惑といいますか、懸念というものが、両者の意思の疎通によって全く払拭されるに近いところへまいって、そうして、この中にも書いてございますが、合併計画というものを一応つくるようにいたす。つまり、合併計画というものが、合併の意思の協議書でございまして、合併の協定によりまして、合併に伴うところの、あるいは合併条件成就といいますか、合併の一体化を促進するためにどれだけの配慮をし、どれだけの計画とどれだけの事業というものを考えていくかというようなことを当事者間で公の約束をいたすということにもいたすわけでございまして、そういうことによって合併の一体化を進めていく、これが具体的に周辺圏の保障にはなりませんけれども、まずこのあたりで合併府県の一体化というものを最小限保障していくということが最も妥当ではないかというふうに考えております。
  98. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 合併計画によって、そうした力のある県と力のない県がその合併計画によって話し合いをして、そのとおりいくのだというふうにおっしゃるわけですが、金を使うにしても、事業を進めていくにしても、私は、その計画だけが唯一のものじゃないだろう、当然それは議会を通った中で問題になっていくと、こういうふうに考えてみますと、その合併というもの、合併計画というものもやはり何らの担保にもなっていかない。ただ絵に、図にかいた一つのペーパーにしかすぎない。最初のころは守られるかもしれません。おそらく逐次過ぎていくに従ってそういうものは守れない。それから、局長が前段に申しましたように、都市地域の議員を中心とした人たちが、合併をすることによって自分たちもほんとうに利益になるのだという、逆に過疎地域の人たちは、合併によって自分たちは損をしないのだ、こういういま一番合併に対して疎外的になっている、それは心理状態とでも言っていいかもしれません、そういうものがなくなるというのは、局長がおっしゃいますように、かなりの時日を要すると思うのです。一朝一夕に頭がそういうふうな構造に変わっていくということは、これはちょっと考えられません。そうなりますれば、いまこの合併特例法を議論をしなくても、そうした合併への心理状態が動いていくというのは、おそらく私は、経済推移経済情勢の推移とともにそういう心理状態に変わっていくはずだろうと思います。そういう意味ならば、私はそんなに早く府県合併というようなものを進めるこの法律案を出していく、そういうことはしなくてもいいのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  いままでの議論の中でちょっと大臣一つ聞いておきたいことは、私がいま一番主張していることは、局長の説明ですと、どうも金のある県の金を弱小の県にならすことによって地域格差是正とか住民福祉をやろうと、こういうふうにお考えになっているようです。そういう感じがいたします。したがって、経済の法則からいいますと、そうした過疎地域府県に有力な県の財政が潤滑に回っていくというような担保はないではないかということをいま私は主張したわけですが、まあ局長も、絶対的な担保はない、これは要するに両者が合併をするということに利益を感ずる以外にはしようがないのだ、こういうお話ですが、これにはかなり私は期間がかかるだろうと思います。一年とか二、三年では当然そういうことにはならないと思います。政府として、一体そういうことだけでいいのかどうか。何らかの形で弱小の府県に対する財政的な担保、こうしたものを何らかお考えになっておられるのかどうなのか、国として何かそういうことをお考えになっておられるのかどうなのか、その辺を承りたいと思います。
  99. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 竹田さんのお話、よくお聞きしましてわかりました。つまり、いま金のある県の金を金のない貧乏県に流してうまく調整を保っていく。金のないほうはもらうからいいでしょうが、金のあるほうは非常に問題にすると思います。これは私はおそらく第二条の問題、「合併関係都道府県間の格差是正」ということになると思いますが、その貧乏のほうに何か引き上げていく保障でもないか、そういう御心配は私はよくわかりますが、この法案合併のねらいというものは、私はいまの日本の自治体の実情から見ますと、まあ広域行政というものが、何かかたいことばじゃなくて、実態においても非常に必要な線が出てきている。これは府県合併という意味じゃありません、全体の府県行政運営について。そこで、この場合、合併した場合に、中心地域と申しますか、これと、そうでない周辺の地域と申しますか、これの組み合わせというものは、もう国全体から考えますと、別に中心地域の、たとえば一つ例を引くと、経済力を引き下げよう、そして片一方の低いところを上げよう、こういう考え方では私は成り立たないと思います。だからやはり、両方に格差があった場合、できるだけひとつ、いわゆる金のあるほうと申しますか、さっきお話のあるとおり、その金をよそに回すなんていうことは、私はこの府県合併目的に沿わない。だから、できれば金のあるほうといままで金のないほうの周辺との格差を縮める、調整していく、そういうねらいがある。それじゃそのほうの保障はあるかという御質問だと私も了解をいたします。しかし、その全体の、たとえば合併をいたしました府県——二つか三つか四つあるとします。その府県格差をできるだけ縮めようという一つの筋の通った行政で、そこに財政上の処置とか、あるいは産業の立地条件を配分するとか、いろいろなくふうをいたしまして、特別に貧乏のほうに金を回すとかという保障はございませんが、その総合的な行政力と結合した力によって、その地域全体の格差が少なくなるように、つまり金持ちのほうに少なくとも寄っていくような私は施策というものが今後のやはりいろいろな面においてとるべき姿じゃないか。具体的にどうだと、私は、いま具体的に行政局長が言いましたとおり、その場合に、いままで金のあるところと金のないところの差があるから、金のないほうに保障しようということではありませんが、そこは私は、行政運営に、いままで、この府県合併以外に、たとえば新産都市とか、工特とか、いろいろな施策をやりました趣旨は、そういうものにあらわれてくるような行政運営ができないか、こう思っております。しかし、いま具体的に全くお話のとおりその保障があるかとこういいますと、この法案を見ましても具体的な保障は盛ってありませんが、そういうふうに行政を移行していく、そうしてなるべく格差を縮めていくような国も地方も一緒になって力を注ぐ、こういうたてまえでいくべきじゃないかと、こう思っております。
  100. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま大臣にお聞きしても、その点がどうもはっきりしないわけですが、これは明らかに府県合併というものはおのおの利害関係者が非常にたくさんいることであります。そういう中で、片一方のほうを、大臣削るとは言わなかったですが、実際上は削るという形になると思います。そういう形でいくということになりますと、私はおそらくなかなか、先ほど局長の言った点で私が受けた点では、合併だけさせればあとはいいのだ、これは私が受け取ったのですから、局長はそういうことを言わなかったですが、局長の発言を全体として受ける感じは私はそう受けたのです。そういうことになれば、この合併というものは、福祉に寄与するのではなしに、むしろ将来の格差をますます大きくしていってしまい、この法律目的と全く相反した方向に走っていくということが懸念されてならないわけです。しかし、これをまだ大臣の答弁で私は了解したわけではありませんけれども、どうもそういう感じが非常に強くする。それがおそらく、まだ今後お聞きしたいと思いますが、合理的かつ効果的な処理というのは、政府のほうが金を出さないで高いところと低いところをひとつならしてしまおう、そういう考え方がこの中に如実に出ているのではないだろうか、こういうふうに思います。この点にさらに今後ひとつまた論争を重ねていきたいと思います。  それから次にお聞きしたいことは、一体性のある区域とか、一体性が将来ある区域として発展をする可能性のある区域、これは一体どういう意味なのか、御説明を願いたいと思います。
  101. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) この一体性のある区域と申しますのは、現に関係区域の相当な部分が全く自然的にもそうでありますし、社会的、経済的にも一体と考えているようになっているという状態での認識だと思います。一体性のある区域として発展する可能性があるといいますのは、そこまではいっていない。そこまではいっていないけれども、やがて何年かたつ間には当然にそういう一体的な地域として考えていくべきであるし、またそういう意味での広域行政的な計画なり開発関係の事業実施なりということもすでに多くの人たちの承認を得ているというような状況で、それを実行していくことができれば当然に将来一体性のあるところになってしまう、こういうことが大方の承認を得ているような地域、こういうことでございまして、段階というか、実態が違うといいますか、そういうことを示しておると考えております。
  102. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、経済的に現在一体である区域というものは、自治省のお考えでは、当然にそれは合併をすべきだと思いますか、どうですか。
  103. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 社会的、経済的に全く一体になっておるものは、やはり一番合併しやすい、合併に向かいやすいところであることは間違いがないと思います。ただし、それだから当然にそうなるかといえば、これはいろいろな条件がほかにもございますから、必ずしもそうばかりも言い切れないと思いますが、府県合併の場合でも、市町村の合併の場合でも、そういう一体的な地域というものが一等合併しやすい地域であることは、これは間違いない。
  104. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 運輸省の方お見えになっておりますか——将来の大阪湾全体として、一体どのくらいの輸出入貨物、あるいは内陸間の貿易の貨物の取り扱い量というものは一体どのくらいになさろうというお考えなのか、それに伴う神戸、大阪あるいは和歌山を含めての大阪湾沿岸の港の設備の計画あるいは構想、そうしたものがおありでしたらこの際お聞かせいただきたいと思います。
  105. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 大阪湾の港湾の計画につきましては、昭和四十二年に港湾審議会にはかりまして了承を得ました計画が一応オーソライズされた計画としてございますが、これはどのくらいの貨物にしようということではございませんで、大阪湾周辺の経済活動、人口の集積状況から想定いたしまして、将来はこのくらいになるであろうという貨物の予想をいたしております。その予想値をもとにいたしまして、大阪湾の沿岸の各港の港湾計画を、バランスのとれた地域地域の特徴に応じて分担したような形で港湾計画をいたしております。数字的に申しますというと、大阪湾全体の港湾の取り扱い貨物量が昭和四十年で一億一千三百万トンございましたが、昭和五十年にはこれが二億五千七百万トンになるものと想定いたして、神戸港、西宮港、尼崎港、大阪港並びに堺泉北港、阪南港、こういうようなところの港湾計画をいたしております。
  106. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまのは五十年までの計画になろうと思いますが、私は参考にいろいろ意見を聞きました。日本港湾協会、ここの構想ですか、これによりますと、何ですか、神戸の西のほうから大阪の南あたりに大きな堤防を築きまして、いわゆるポート・アイランドの構想を持っているようであります。そして、そこには住宅地とそれから係船岸壁というものをつくることによって大阪港の港の機能を一段と高めようという、こういう構想が港湾協会等から出ておりますけれども、こういう構想というのは、かなり将来に向けて実現可能な、あるいは大阪港湾という形で考えていくには、やはりこのくらいのことをしていかなければならないという構想でございますが、これは運輸省のほうもいま具体的に計画としては出ていらっしゃらないだろうと思いますが、そういうような構想については十分に検討してみる必要がある、そういうふうにお考えになっているかどうか。
  107. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) ただいまのお話の港湾協会で出されております構想といいますのは、これは現在の段階におきましてはまだ正式に運輸省として取り上げているものではございませんが、一応大阪はああいうように湾の周辺に都市がじゅずつなぎにつながって、しかも相互経済活動の結びつきが非常に緊密である、こういうような地域につきましては、やはり将来はどういうふうになるであろうかというマスタープランを一応念頭に置いて各港の構想、各部分の計画をしていかなければならないであろう、こういうようなことから、第三港湾建設局長の栗栖義明氏の一つの試案を港湾協会で発表したものでございます。それで、これはむしろ問題の提起というような段階でございまして、まあこういう構想もある。で、こういう構想についていろいろな角度から検討して、将来のあるべき姿を何らかの形で打ち立てまして、それでいろいろな計画がそういうようなものと一体性を持って立てられるようにすべきではないかということでございまして、われわれといたしましては、そういう大規模プロジェクトにつきましては、やはりその実現の可能性、あるいは計画としての必然性があるかどうかということにつきまして十分調査をいたしたいと考えております。
  108. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 東京湾の計画というのは一体どんなふうになっているのか、この点もあわせて御説明いただきたいと思います。
  109. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 東京湾につきましては、先ほど大阪湾について申し上げましたと同じような趣旨で、昭和四十二年九月に港湾審議会の計画部会で東京湾港湾計画の基本構想というものを発表しております。それによりますと、東京湾は昭和四十年におきまして湾全体の貨物量が一億七千四百万トン弱でございますが、これが昭和五十年には三億九千八百万トン弱になるものと想定いたしまして、それでこの貨物が東京湾の各港でどのように分担されるであろうかということを一応想定いたしまして、千葉港、東京港、川崎港、横浜港、横須賀港、木更津港、こういうような重要港湾についての計画を立てております。それで、その港湾計画とその各港の港湾取り扱いのための施設の計画と合わせまして、それらの施設をつくるための用地造成、そういうようなものの用地造成の規模も一応想定いたしております。
  110. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 千葉県の新しい何か総合計画というようなものができたと思うのですけれども、千葉県の総合計画によりますと、大体この港に工場敷地及び港湾関係の施設、こういうのをつくるために一億四千平米の埋め立てを昭和六十年までにやる、こういうような計画を千葉県側ではおつくりになっておるようでありますけれども、そういう計画ございますかどうですか。
  111. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 千葉県の昭和六十年までの計画と申しますのは、千葉県自体が、千葉県を総合的に開発していくために将来の構想を描きまして、一応のその構想を図面化しております。しかし、それにつきましては、何分にも昭和六十年という非常に長期の将来構想でございまして、現実には、そういうような構想のうちから、やはり内容を種々検討いたしまして具体化すべき部分は固めていくという、そういうやり方をとっているようでございまして、今回の私どもの東京湾の港湾計画におきましても、そのうちの一部を取り上げておりますが、それらにつきましては、やはりその時点でどの程度までが必然性がありあるいは妥当性があるかということを十分検討いたしまして、取り上げていくべきものは取り上げる、そういう態度をとっておるわけでございます。
  112. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ついでに、伊勢湾の港湾の改築計画といいますか、いま千葉県で言いましたような工場用地の造成あるいは港湾施設の造成、こうしたものが今後伊勢湾及び三河湾でどのくらい計画されておりますか。
  113. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 伊勢湾につきましては、現在までのところ、このような東京湾、大阪湾の例に見るような形での基本構想はまだ策定いたしておりません。それで、現在、伊勢湾につきましてもそういうような基本構想をまとめるべく、各関係港湾管理者間におきまして研究会を設けて、いろいろと検討している段階でございます。なお、港湾協会の雑誌には、伊勢湾についても地元の一部の方々のマスタープランが発表されているかとも思いますが、現在のところでは、やはり東京湾、大阪湾と同じように昭和五十年までの計画という形で、できるだけ早い機会にその計画を、基本構想をオーソライズしたいと考えております。
  114. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それから、これはあなたの管轄ではないかとも思いますけれども、今日の船舶の大型化の情勢というのはどういう情勢になっておりますか。
  115. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) 船舶の大型化につきましては、これは内航、外航ともに船型の大型化の趨勢がございまして、特にその大型化の進んでおりますのは、バルクキャリアとか、タンカーとか、鉱石専用船、それから穀物の専用船、チップ船、そういうようなバルクキャリアが主導権を握っているといいますか、大型化が進んでおる状況でございます。それで、最近では、ライナー——定期船につきましては、外航コンテナというものの出現によりまして、そのコンテナ船は漸次大型化しつつあるような状況でございます。具体的に申しますというと、現在のところ、すでにタンカーにおきましては二十万トンをこえるものが出現しておりますし、それから鉱石専用船につきましては十万トン近い、九万トン程度のものが出現しております。しかし、大体におきまして、定期船については一万五千トンくらいのものが多うございます。なお、コンテナ船につきましては二万トンのものが就航しているようでございますし、さらに大型化の傾向があるようでございます。
  116. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもありがとうございました。  で、企画庁の方にお尋ねしたいと思うのですが、先ほどの東京湾、かなりこれはいま昭和五十年というと非常に短期になってしまっていると思うのですが、千葉県の場合ならば昭和六十年という形で長期でありますし、新全国総合開発計画はたしか六十年ですか、これもかなり大きいわけでありますが、各そういう臨海工業地域の現在の計画を類推していった中で、水の需要量というのは一体どうなのか、この辺の御説明をいただきたいと思います。東京湾、あるいは伊勢湾、大阪湾というような形で御説明いただきたいと思います。
  117. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 水資源の問題につきましては、東京湾、大阪湾という湾という形ではなくて、首都圏、あるいは中部圏近畿圏というような形で一応の問題を出しておりますけれども、いま港湾についての御質問にもありましたように、昭和六十年という時点で考えてまいりますと、現在までのように、産業もあるいはその他の機能も全部大都市地域に集中するという傾向がかりに続いていくといたしますというと、港湾の取り扱い貨物量の問題、あるいは水の供給の問題で、相当大きな困難にぶつかるということがはっきり出てきておると思います。また、これ以外のいろいろな条件から見ましても、企業の立地というものはいままでのように大都市の既成工業地帯あるいはその周辺地域というところに非常に集まってきておりますけれども、企業の採算の面から見ても、相当立地動向も変わるというふうに考えておりまして、特に臨海性装置工業については、遠隔地立地のパターンに変わるであろうという、こういうようなことを考えまして今度の新しい計画がつくられております。それではございますけれども、そういうようなことを相当考えてまいりましても、たとえば首都圏なり近畿圏について見ますと、水の需給係関というのはかなり苦しくなるということでございまして、このためには水使用の面における合理化ということもかなり考えなくちゃならぬ。もちろん、現在ある程度想定されます開発計画というのは、これはもう積極的に進めなければならないということでございまして、そういうような考え方で水資源開発に関する課題というような形で書いてございます。同時にまた、先ほど申しました企業の立地動向にかんがみまして、大都市地域からのそういった水を相当使うような企業は特にそうでございますが、遠隔地域に促進していく必要がある、そういうことで水資源開発問題というものを出しております。具体的なプロジェクトにつきましては、これは昭和六十年の問題でございますから、内部作業としてはもちろんそういったことの積み上げ的なこともやっておりますけれども、これをどうということで出してはおりません。で、こういった地域はいずれも水資源開発促進法によります指定水系ということになっておりまして、私どもの局で、事務局で水資源開発基本計画というものをつくるということになっておりまして、その改定作業に現在利根川水系と淀川水系については取り組んでおりまして、そういう水資源についての基本計画の段階で明らかにしていきたい。もちろんこれは、昭和六十年度までという相当長期的なものとしては、なかなか現在きめかねますので、昭和五十年ないし五十五年くらいを目途としてやろうということで、現在作業を進めております。こういう比較的短期と申しますか——で見ましても、なかなか需給のバランスをとるのは容易でないという状況でございます。   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕
  118. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもありがとうございました。  そこで、運輸省の方、企画庁の方にお尋ねしたいと思うのですけれども、港もこういうふうになってまいりますと、港の運営の一元化という問題が非常に重要になってくると思います。そういう意味では、場合によってはかなり組織立った港の運営をやっていかない限りには、港の機能というものはおそらく麻痺していくのではないだろうかというふうに考えます。しかし、日本においては、一つの湾を中心としたオーソリティーというようなものは実際上なかなかできない。主要なところは、神戸にいたしましても、横浜にいたしましても、大体その市が港湾管理者というふうになっておるようであります。名古屋においては県と市が交代で港湾管理者ということをやっておられるようでありますが、そういう意味では、広域港湾の運営ということから見て、今日の行政境界のあり方、こういうものもたいへん一つの大きな問題になってきているのではなかろうかと私は思いますけれども、私はあまり詳しく知りませんけれども、具体的にどういうふうな困難さが境界によってもたらされているのか、主要な問題についてお聞きしたいと思います。  企画庁の方には、水の問題がかなり調整がとれていない面があるように思います。近畿圏、あるいは首都圏においてもそういう問題点があるような気がいたしますけれども、そうした問題点について御説明いただきたいと思います。
  119. 大久保喜市

    説明員大久保喜市君) ただいま御指摘のように、東京湾、大阪湾、あるいは伊勢湾につきましては、隣接する港がだんだん発達いたしましてつながってくるというような形のところが相当ございます。たとえて申しますというと、横浜と川崎はそれぞれ横浜市、川崎市が港湾管理者でございますが、その境界は、図面上では一つの線を画されておりますが、実際の土地の続きぐあいはもうつながっておりまして、一つの工場が両港にまたがるというような形のところも出ております。それから横浜と横須賀との間にいたしましても、もう港がつながるというような形になっております。それで、こういうような状況にありましては、やはり広域港湾という考え方で全体を一元的に見るという必要があろうということで、先ほど御説明申し上げました港湾計画につきましては、各港の港湾計画の審議に先立ちまして、その湾全体の基本構想というものを港湾審議会で審議していただくわけでございます。それで、計画の面からいいますというと、その隣接する港の間に不連続のないように、考え方の食い違いのないようにということを、先ほどの基本構想をベースにいたしまして指導しておるわけでございます。それで、実際の港湾の管理運営の面になりますというと、それぞれ港湾の区域がきまっております。その範囲内がその港湾管理者の管轄権でございますので、その限りにおいては、各港湾管理者個々に港湾管理をやっていくことによって支障は生じておりませんが、ただ隣接する港湾間でやはりその港湾管理についての考え方が食い違うと非常に問題がございます。そういうようなことがございますので、東京湾、大阪湾につきましては、その湾を取り巻くところの港湾管理者の協議の場を持つように指導いたしております。それから、大体においてその隣接する港湾の間の問題というのは、やはり境を接している港同士でいろいろな問題が出てくるわけでございます。たとえば臨港道路のつなぎぐあいとか、それから航路しゅんせつのやり方、そういう問題が出てくるわけでございますが、それにつきましては、その当事者間——両港間でよく協議をするように、それにつきましては港湾局が仲立ちをして指導をするように、そういうようなやり方をしておるわけでございます。
  120. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 水資源開発あるいは水の需給の関係につきましては、御承知のとおり、大きく分けまして二つの困難な問題がございます。一つは、関係各省が非常に多くありまして、それぞれの行政目的に応じて開発を進めたいということで、その間にいろいろ意見の相違が生ずることが多いということでございます。このほうは、昭和三十七年に水資源開発促進法並びに水資源公団法というのがつくられまして、そして私どものほうがそういう調整の事務方をやるという形で、指定水系については関係各省が一緒になりまして計画をつくっていく、こういう形での調整がとられております。最初のころはなかなかぎくしゃくいたしておりましたが、だんだんそういう関係はよくなりつつあるのではないかと思います。  もう一つの部面は、水資源の開発をやるときに、御承知のとおり、大体上流にダムをつくる、あるいは上流にある貯水池を使って下流府県が水を取る、こういう形が一般でございます。そういたしますと、県単位で見ると、いわば水利権を持っている県と、それからこれを利用する府県という形になるわけでございまして、この間の利害というものがどうしても相反する場合が多いということで、その調整ということがかなり困難な問題になります。これにも、制度的には河川法の改正が行なわれまして、そういった重要水系についての水利権の付与は建設大臣が行なうという形で一応制度的な解決は見ておるわけでございますけれども、実際には、関係府県の同意を得なければならないということを通じまして、なかなかその辺に実態的な困難があるということでございます。つい昨年木曾川水系についての基本計画を決定いたしましたが、こういった問題についてかなりの折衝を要しました。しかし、これはそれぞれの府県の非常な御理解によりましてやっとまとまったわけでございますが、これから計画を改定しようとする利根川水系、あるいは淀川水系——御承知の琵琶湖の開発を含む問題でございますが、こういった問題についても、その辺の問題の解決ということがかなり大きな課題である、こういうふうに考えております。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕
  121. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連して。いまの河川法ですけれども、一級河川とか二級河川、そういうもので分類されて、かなり違うわけでしょう、一がいにはいかないのですね、その点どうなんですか。
  122. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 御承知のとおり、一級河川については、管理権は原則として建設大臣でございます。二級河川以下につきましては、これは都道府県知事になっております。そこで、ただいま申しましたような利根川、淀川というような非常に大きな川は、いずれも一級河川として指定されておりますので、水利権の譲渡は建設大臣がやるということでございます。
  123. 千葉千代世

    千葉千代世君 たとえば、印旛沼の水を引いて、そして千葉県の京葉工業地帯で使う、そうなった場合には、県自体の中の問題ですけれども、これはやっぱり建設大臣の範囲の中にあるわけですね。そして、京葉工業地帯は県はあるけれども、今度は京葉工業地帯の工場というのは、やっぱり首都圏整備法の関係で、これこれせよとは言わないけれども、千葉県知事に言わせれば、首都圏同士のつき合いで、こういう工事を引き受けてくれと言われれば引き受けざるを得ないような立場に追い込まれていく。こうなっていくというと、相当利害がやはり相反してくる、こうなりますね。その調整権がどこにあるか、こういうわけですが。
  124. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) そういった場合もございます。そこで、先ほど申しましたように、国として水資源開発促進法による基本計画というものをつくる。この基本計画の策定にあたりましては、国の関係各省にそれぞれ御意見を出していただきまして、それを水資源審議会という場を通じて御議論をまとめていくわけでございますが、同時に関係府県からも御意見を拝聴いたしまして、そうして実際の決定にあたっては、そういった各府県の同意を得てつくっていく。そういう過程を通じていまのような調整を行なっておるわけでございます。
  125. 千葉千代世

    千葉千代世君 実際的に調整がつかない場合には、これはどうなるのでしょう。拒否していく、これはきちっとやっていっているのでしょうね。企業がどんなに要求してもできないわけですね、その県に拒否権があるわけですから、河川法というのは。それとも、やはり河川法の中の県の拒否権というものは一切通じないと、こういうわけですか。
  126. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 河川法の手続は、これは建設省のほうにひとつお聞きを願ったほうが法律的に正確かと思いますので、私のほうの水資源開発促進法の関係だけ申し上げますと、水資源開発促進法による計画の決定につきましては、関係府県の知事の意見を聞かなければならないということでございます。したがって、意見を聞いて、意見がノーであったらどうなるかということは、ノーであってもきめられるというふうに私は考えておりますけれども、実際問題としては、その地域でもっていろいろのお仕事をさせてもらうわけでありますから、これはノーというものをきめてしまうというようなことはあり得ない。事実問題として、そういうことはなかなかなし得ないし、またやった実例もございません。もともと水資源の開発といいましても、それぞれの地域の方々のためにやるわけでございますから、十分お話し合いをしてやっていく。どうしてもそういったところでいろいろ問題があって賛成が得られないとすれば、若干時間が延びるということにならざるを得ないわけでございます。
  127. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 運輸省、企画庁の方、ありがとうございました。  そこで、ひとつ自治省にお聞きしたいわけでありますが、いまのように、港湾あるいは水の問題というのは実際分けられそうで現実には分けられない。で、この前でしたか、松澤さんのほうから、神戸と大阪の人口の流入人口、流出人口についてもおっしゃられた。そうしますと、阪奈和というものをひとつ考えてみますと、どうも兵庫県とのほうがむしろ一体性があるんではないか。交通関係にいたしましても、海の交通というものはわれわれとして忘れるわけにはおそらくいかぬと思います。陸の道路だけの問題ではおそらくなかろうと思います。あるいは船舶の大型化から将来ポート・アイランドというようなものも当然出てくる。こうなってまいりますと、おのおのの地先が違うということによって、港湾の問題も非常に大きな障害にぶつからざるを得ない。こうした問題が起きてくるであろうと私は思いますけれども、そういうことは絶対に起きないですか、どうですか。
  128. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 港湾については、先ほど運輸省の方のお話がございましたように、大阪湾なら大阪湾、伊勢湾なら伊勢湾というようなところで、実質的には湾の中で港湾機能というものが一体的に最も効率的に運営されるということが一番望ましい姿だと思います。そこで、そういうことから言いますと、御指摘のような問題が出てくるのじゃないか。私は、その点からだけ考えますならば、大阪湾を一体とするという考え方一つ考え方としては当然あるだろうと思います。現に大阪湾の場合で言いますと、たしか関西大学の教授の方だと思いますけれども、そういう方の御研究を伺ったことがありますが、その方の御意見では、阪奈和というふうな合併より、むしろ阪神という合併のほうが適当じゃないかというような御意見をお出しになっておられます。その理由の中に、港湾というものにだけ着目しての御意見ではないと思いますけれども、そういう考え方考え方としてはもちろん出てくると思っております。
  129. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、経済経済として発展をしていく、経済の法則というものは当然あろうと思います。経済だけ変わったあり方をするということはおそらくないと思いますし、また同時に地域発展の問題というのは、非常に多くの部分を経済の発展があるかないかということによって左右される面が多いと思います。特に港湾関係ということになりますれば、これから船の大型化、あるいはシーバースの設定というようなこと、あるいはたくさんの船が入ってくるためにバースの指定なり、あるいは船に対するいろいろな交通整理、こうした問題もものすごく機械化し、合理化されていかなければならない。そうなってくればくるほど、港湾管理者がおのおの違う府県の境界というようなものが問題になる。いま運輸省の方のお話でも、なるべくひんぱんに連絡協議するように指導をしているということ、これはたいへんけっこうなことだと思います。しかし、そうしたことだけでももう済まない、こういう段階がやがて十年、十五年先にはおのおのの湾に出てくるのではないか。そう考えたときには、阪奈和合併というような形では大阪湾の港の機能というものが達成できないのではないか。これは東京湾にいたしましても同じだと思います。その辺は自治省として一体、これは十年間の時限立法でありますけれども、そういうような問題を具体的にどう考えているか、いかがでしょうか。
  130. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) まあ港湾管理者の関係になりますと、先ほどもお話がございましたが、神戸港は神戸市、大阪港は大阪市というように、いろいろ港湾管理者が異なっておるわけでございます。府県合併というような問題と直接関係する面もたくさんございますし、また管理者としての都市間の問題もあるわけでございます。しかし、まあそういうことでございますが、府県合併だからといって、それだけを一つにして考えなければならないという観点からだけでも考えられないわけでございまして、港湾以外のいろいろな要素というものの組み合わせの中でどういう広域行政体制をとるかということを考えなければならないのではないかと思うのであります。かりに阪奈和ということを考えます場合には、大阪湾の南半分は一つ行政区画の中に、府県単位で考えました場合に、入っていく。そうすれば、大阪と兵庫というもの、この両者が話をすれば一致するという点では、やはり関係機関というものの数というものも少なくなりますから、一元的な管理運営という方向にむしろいきやすいということも言えるわけであります。それからまた、港湾につきましては、もし必要があればポート・オーソリティその他の方式考えられるようになっておりますから、そういう意味の港湾の一体的な管理というものを考えるときが来れば、私は考えていかなければならない場合もあるかもしれないと思いますけれども、港湾がそれぞれ機能を分担して湾全体としての機能を果たすという面もあるわけであります。これはちょうど、都市が相互に連帯しながら並んでおって、しかもそれぞれが地域的に機能を分担して、全体として総合的な効果があがっていくということも、どうも困難でありますが、そういうことも考えられるわけであります。一がいに港湾だけの点から見るわけには私はまいらないと思いますけれども、港湾の一元的な管理という面からいって、大阪湾を一つにくくるという考え方というものは、先ほどから申し上げますように、そういう面からの立論というものも一つはあろうかと思います。
  131. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ですから、自治省考えている一体性ということですね、これはかなり経済的な考え方というものをどうも非常に軽く見ている、こういう感じがするわけです。いまも、和歌山と大阪が合併すれば兵庫と今度の新しい府県との団体が二つになるから楽じゃないか、こういう考え方というのは間違っているのじゃないか。大阪湾の港湾の一番大切なところというのは一体どこなのか。私は、神戸、大阪、これに連なる地域だと思います。その一番重要な地域のまん中で境界をして、こっちからこっちは神戸だ、こっちは大阪市だ、こういうことですと、昭和六十年から七十年へかけての港というものを考えてみると、私はそういうことでは港の機能は麻痺してしまうのじゃないかと思うのです。ですから、その辺がどうも、自治省考えている一体性というのは、経済の実態というものを相当無視してかかっている、そういう考え方府県合併考えているのではないかということに、私は特に阪奈和については疑問を持ちます。むしろ、こんな合併を進めるということであるならば、おそらく大阪、神戸というものはあるいは今後都市としての発展はできないのではないだろうか、こうすら私は思います。ですから、もう少しこの一体性という中に、財政的な一体性のみを考えないで、経済一体性というものをもっと強く盛り込んでいくことが経済の発展の法則に合うのではないだろうか、こういうように思いますけれども、それは考えられないですか。
  132. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 法案にも書いておりますように、合併は自然的、社会的、経済的に一体性のある地域ということを法案でも規定をいたしておりますように、経済的な一体性ということを無視して合併ということが考えられるとは私ども思っておりません。したがいまして、そういう意味では、全体としてそういう調整というもの、あるいは一体性考え方というものには、十分経済的な一体性、合理性というものは一番大きな柱の一つとして考えなければならないものだと思っております。そういう意味でございますから、先ほどから申し上げておりますように、中には阪神の合併のほうが適当だという御意見もあるということを先ほど御紹介申し上げましたが、私どもも阪神の合併というものが絶対にいけないというような考え方あるいはそういう結論を持っているわけではないわけであります。ただ、概して言いますというと、また一面意見を持ちます方は、阪神の合併ということは、やはりそういう面での合理性といいますか——はあるとしても、また逆な面では、過密投資を重ねるという面の指摘も強くあるわけであります。したがって、合理化を進めていくという意味での合併の場合にも、全体の調節という観点とかいうものも考慮に入れながら考えていく、そういうことで阪奈和合併という御意見も非常に強く出ているということが言えるのではなかろうかと思うのでございまして、全体として、経済一体性というものはどうでもいいのだ、財政的一体性だけ考えればいいのだというような意味で申し上げているわけではございません。
  133. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 水の問題も私は同じだと思うのです。水と経済の集中というものとは、これはやっぱり切っても切れない面があるだろうと思う。先ほどもお話がありましたように、大阪を中心とした水というものを考えてみると、吉野川、紀ノ川等々の水というものも一応頭には浮かんでまいります。しかし、何といっても一番大きなものは淀川の水であろうと思います。おそらく、今後の大阪というものを考えていきますと、毎秒五十数トンの水を必要としているというのが、今日までの諸計画の中でもそういうものが出てきていると思います。そういたしますと、むしろ水の問題だということになりますれば、淀川を中心として合併をすべきじゃないか。前の地方制度調査会答申の中にも、たしか川の流域を中心として一つ地域をつくるのが適当であるというような答申があったというふうに私も覚えておりますけれども、そういう意味では、今日の都市というものと水というもの、こういうものを除いて府県合併が行なわれるということも、私は非常に、普通人の常識から考えてみますと、だいぶ違っているのじゃないか。われわれの個人的な生活においても、おそらくこれから、日量六百リッターなり、一人当たり八百リッターというようなふうに、水の需要というものは上ってくるだろう。それと同時に、いろいろな都市用水といいますか、そういうところの水の使用量というものも上がってくるし、あるいは伊勢湾、東京湾、各地におけるところの石油コンビナートというような計画も出ております。そういうものに対する水の需要というものも非常に出てきているだろうと思うのですけれども、そうした中で、一方的に国のほうが水が奪ってしまうということは、水利調整のいろいろな問題があって、私はそう簡単にはできることではないと思います。そういう意味では、むしろ合併というものを至上命令として考え立場でいけば、水源を中心として、水源あるいは河川の流域というものを一つ地域として考えていって合併をやっていく、こういうようなことのほうが私は合理的ではないか、合理的かつ効率的ではないか、こういうふうに思いますが、今度もあえて淀川というものはむしろ除いている。要するに滋賀県、京都、こうしたものの考え方をはずしている。こういう点では、おそらく大阪の水というものが一体今後得られていくだろうかどうかということが心配されるわけですが、その辺はどういうように御検討になりましたか。
  134. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 自治省としてちょっとお断わりをしておかなければいけませんが、阪奈和合併でなければいけないというような結論を実は出しておるとか、そういう指導をしておるとかいうわけではございません。ですから、先ほどのお答えの中には加えませんでしたが、阪神の合併のほうがいいという御議論、それからまた、いまのお話の淀川水系というものを一体としてとらえたほうがいい、したがって、大阪、京都、滋賀でございますか、そういうふうな合併考えるべきだ。したがって、そういう意見の場合には、むしろ阪奈和では狭過ぎる、兵庫も入れ、京都、滋賀も入れ、つまりもっと近畿圏的な一体的なものを考えたほうがいい、こういう御議論も特に近畿地方を中心にしてあるわけでございます。それも確かに一つの御意見だと私ども思います。ただ、水とか港湾だけが、合併の非常に重要な要素であることは疑いませんけれども、それだけで問題が解決できるかというと、そこに地域間のいろいろな問題がありますので、そういう意見ももちろんございますが、阪奈和というものが出ておる。阪奈和が出ておる一つは、先ほども御指摘がございましたが、紀ノ川とか、吉野川とか、そういう河川の水系の水利用というものも、和歌山県、奈良県、大阪府にとっては非常に重要な、その合理的な水利用というものが大きな問題になっておるわけであります。そういう面では、阪奈和というところが一つに統合されるということも、淀川水系ほどじゃないかもしれませんが、非常に大きな水利用の合理的な活用ということにも沿い得るという点が一つ考えられております。それからまた東海三県にいたしましても、これはむしろ伊勢湾なら伊勢湾が一つになってしまうということでございますし、また水系からいいますと、木曾川、長良川、揖斐川、ほとんどが、三川が県を境にして通っているわけでございますから、これが一つに利用できるということも一つのメリットとしては御指摘のように考えられるのではないか。いろいろの意見がありますが、結局府県合併は、それらのいろいろの要素を考えながら、同時に水だけでは考えられないので、やはり全体の一体性というようなもの、あるいは将来の方向というものを考えながら進めていくということになるのではないかというふうに思っております。
  135. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 阪奈和にとらわれないということをおっしゃられましたから、それはそれでひとつ承っておきたいと思います。しかし、自主的に進めていくということと全国の総合開発計画というものとの矛盾というものは、私はどっかに出てくる可能性はあると思います。全然自主的にやってそれでかまわないというわけではないと思います。上位の計画と下位の計画との調整といいますか、そういう問題も私は当然出てくるのではないだろうか。そういう場合に、自主的ということと、どういうふうにその辺は理解をしたらよろしいわけでしょうか。おそらくいまの形でも、初めは局長は阪奈和ということでありましたけれども、いろいろな答弁の中で、あるいは京阪神ということばも出てまいりましたし、あるいは滋賀圏という、水系別というような問題も出てきて、あえて阪奈和という形にとらわれているのじゃないのだ、こういうふうにおっしゃられたのですけれども、実際その自主的という問題とそういう国の総合的な開発計画というものとの間のズレを一体どう考えているか、それは自治省なり政府のほうで何らかの形で指導していくというのかどうなのか、その辺をお答えいただきたいと思います。
  136. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 自主的な合併ということでございますが、自主的に合併すると申しましても、府県合併ということになりますと、これは明治以来の地方の地域の統合としては一番の重大事件になるわけでございますから、関係府県におきましても、あらゆる観点からの科学的な調査なり合併の功罪というものは十分検討し尽くした上で合併していくということになっていくだろうと思います。そうでなければ、関係府県住民の納得が得られないということであろうと思います。そういう場合に、必ず上位計画との問題でありますとか、全体の総合開発計画との関連が考慮の中に入ることは当然だろうと思います。そういう意味では、自主的な合併だから、総合開発計画との食い違いが出るおそれもあるのじゃないか——絶対出ないという保証もございませんけれども、やはりそういう意味での府県合併というものを考えますと、これはあらゆる観点からの将来の方向なり地域の進むべき道なりというものを考えます場合に、いま御指摘のございましたような総合開発計画なんというものは、当然の前提あるいは調整ということが必要である。近畿とか中部になりますと、それのほかにまだ、それの下部になるかもしれませんが、近畿圏の整備計画とか中部圏の整備計画というようなものがございます。そういうものとの関連、調節というものは当然に考えていかなければ、関係住民に対して十分な納得が得られないということにもなるだろうと思うわけでございます。私どもは、そういうことでございますので、自主的な合併ということであっても、この点の調節は十分にとられるべきだというふうに思っておりますが、もし必要があれば、それは政府関係機関が適当なそういう場合の助言なりアドバイスなりをするということも、それは必要がある場合には十分いたしまして、合併というものが矛盾することのないものとして行なわれるように配慮していくのは当然だろうと考えております。
  137. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 常識的に言えば、そうなると思うのです。府県合併という問題は、ただ単に合理的な考え方だけから必ずしもいってはいないと思うのです。古い歴史的な県民性といいますか、こういうようなものがかなり根強く残っていると思います。そうしますと、経済的な合理性というものと、そうした歴史的な感情といいますか、こういうものと矛盾を生んでくるということが非常に起きやすい問題ではなかろうか。そうして場合に、たとえば個々の例で言いますと、自治省のほうは、ほんとうは神戸と大阪を含めたほうがいいのだ、これは経済の合理性に合うのだ、こう考えているにもかかわらず、阪奈和という形でどうしても押してくる、こういうときには一体自治省としてはどういうふうにお考えなのか。経済の合理性は京阪神だ、そのほうがいいのだ、しかし地元は阪奈和だと、こういう場合に一体どう調節するのですか。
  138. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) これは、阪奈和合併というものが、そういう意味では、歴史的な県民性だけから出ておる、合理性が少しもないということであれば、その合併というものは広域行政を今後展開する上では妥当でない組み合わせだということになるおそれはあるということは言えると思いますが、阪奈和合併というものもそういう意味での合理性を十分持っている、そうしてまたかたがた、そういう歴史的と申しますか、沿革的にも県民性なり県民感情なりというものにも沿うということの、両方がお互いに許し得る範囲であれば、それも一つの行き方だと——現在いわれております阪奈和合併というものも、全く非合理的な、理屈のないところに私どももいわれておるとも思わないのでございます。いろいろな考え方が、力点の置き方、あるいは将来の見通し等から、多少のニュアンスが出てくるという結果が、大きな結論の差になってくるという場合もあるわけでございますけれども、両論成り立つという場合でありますならば、自主的な合併を尊重するということは、合理性のある限りは尊重していかなければならない、こういうふうに思います。
  139. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 おそらくそういうものが起きてくる可能性が私は非常にあるというふうに思うと同時に、おそらくこの自主的ということばが、案外自主的でない。裏のほうで、たとえば国の長期計画、あるいはそれに基づく各省の地域におけるところのあり方、それからそれに自治省も一枚加わって、おそらく自主的という形、ことばの上では自主的なんだけれども、実際は上のほうで支配をしていく、こういう形がおそらく出てくるのではないか。それでなければ、どうも今度いわれている府県合併一つ一つを取り上げて検討してみても、どうも理屈にも合っていない、こういう感じを一番強くするわけです。そこで、一体府県合併というものがなぜ起きてきたのかということを私は考えてみなければならないと思うんです。おそらく私は、この府県合併というものが起きてきた根源というのは、一つには、国と府県あるいは市町村とのお互いの調整というものがうまくいってない。国のほうは国のほうで一方的に縦割り行政をやっている。県はそれを総合的に調整をする役割り、機能というものが当然あるはずです。しかし、それが果たされていない。あるいは市町村の場合には、その財政的な基礎が弱い、あるいは上部からのいろいろな政治的な干渉、こうしたものが多いということで、一つは、私は、地域行政に対する住民の不信というものが、それならば広域的な行政をやったならばもう少し住民福祉というものがうまくいくんではないか、こういう希望に、期待というものに乗って、府県合併一つののがれ道ではないかという夢を乗せて出てきているんではなかろうか。だから、私はむしろ、いまの府県自体の中でその行政において解決すべきことが非常にある、しかしそれをやってないんではないか。これはこの報告書のどこかにも、たしか国土協会でやった報告書のどこかにも載っていたかと思います。ですから、いま一番大きいことは、府県の努力によって解決できることを解決していない、それが広域的な府県合併への一つの間違った世論の方向に私は走ってきているんではないか。この報告書にもそうした趣旨のことが載っているわけであります。そういうものに関してはどのようにお考えになっているか。私は、府県の行財政を充実する、あるいは市町村の行財政をさらに充実していくということが先ではないか。そうしたものの充実の中で、初めて地域的にいろいろ問題があったときに、そこに府県合併なり、あるいは広域市町村圏的な広域行政への発展があっていいんではないか。自分の地元を固めないで、ただそういう形で行政区画を大きくする、そのことによって何か夢を与える、まぼろしを与えているという感を私は深くするわけです。どうですか。
  140. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) まあ府県合併につきましては、もう戦後、地方行政調査委員会議でありますとか、地方制度調査会でありますとか、臨時行政調査会、また地方制度調査会、そういうようなところにおきましても、累次にわたって、これからの地域開発、あるいは経済発展、あるいは交通通信網の整備、都市化の進展、まあいろんな面から考えて、またそういう面でもう府県合併というものは累次にわたって勧告なり指摘を受けている状況でございまして、それが府県の総合行政になる根本でありますから、あるいはまた市町村は財政的な基盤が弱くて何ともならないという住民の不信からという面が全然ないとも私は言い切れませんけれども、それだから別個に広域行政ということで夢を与えていいかげんなことをするというようなことでは私はないと思うのでございます。これはもうおそらく、いわば一部の識者かもしれませんが、識者の間におけるところの常識、今日の常識と言っていいのじゃないか。と申しますのは、結局都市というもの、あるいは都市化の進展というようなものは、行政区域をこえて今日大都市圏域とかあるいは府県間の総合調整の必要とかというようなものはもういろんな点で指摘を受けているところでございますから、そういうところに、まあ行政区画というものによって災いをされる——先ほど水資源のお話とか港湾のお話もございましたが、そういうようなことから、広域行政を合理的に展開するという点で、地域によって状況は違います、状況は違いますけれども、そういう必要のあるところはやはり自主的に合併方式をつくって進めていくということ、これは、府県行政責任に十分でないところがあって欠陥があるからそうなるのだということはむしろ少ないといいますか、そういう行政責任を十分果たしておってもなおかつやはり広域行政というものを受けとめるという体制をつくっていくという考え方というものは、私はどうも今日の常識でもあり、将来の方向としても当然に考えていかなければならない問題であろうかとも思うのでございます。もちろん、場所によりましては、府県の行財政能力の充実を期しながら、府県間の共同処理というものは協議会なりほかの共同処理方式なりによって調節をしながら進めていけばいいじゃないかというお考えもございます。ですから、それは県の置かれております実情に基づきまして、そういう合併をするということでいくのか、あるいは共同処理方式とか行政運営是正ということでこれからの行政需要をまかない得るという見通しが立ちそういう方向でいくのか、これはそれぞれの県が自主的に考えればいいわけで、関係県が自主的にきめていくということで私はいいのだろうと思うのであります。必要なところでは自主的な合併が行なえる方式を開いておく、こういうことにすぎないわけでございますけれども、合併そのものの必要という点は今日相当程度の意味で常識化しておるというふうに言えるのじゃなかろうかと思います。
  141. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これ、議論になりますから言うのではありませんですけれども、一応立場を明らかにする意味でも私は申し述べておかなければならないと思うのであります。まあこれは語るに落ちるということもあろうと思いますが、当初の発言のころはなるべく過密と過疎の県を合併されるのがより望ましいというふうに受け取れることばもあったと思います。もちろん私も、広域行政一般を何でもかんでも否定をしていくということではありません。しかしそれは、現実住民広域行政でなければ解決ができない障害にぶつかってきているということが自覚をされたときに、私は合併ということを考えていいんじゃないのか、いまの時期においてその合併をあふるがごとくこの特例法を出さなくてもいいじゃないか、また十年という期限を切る必要も私はないではないか、こういうふうに思うわけです。そういう意味で、この府県合併というのは中央支配というものをさらに強化していくそういう手段にしか使われないのではないかということを非常に危惧するものであります。私は、結果的にはまぼろしの夢しか与えないようなものになってしまうのではないか。それに対する、与えないという担保があるならば、ひとつ明確に出してもらいたい、どうですか。
  142. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) どうも非常にむずかしいお話でございますが、もちろん自主的な合併でございますから、関係府県住民合併に進むことが妥当であり必要だと考える場合に合併をするということでございまして、がむしゃらに何でもかんでも合併をしろということを言っているわけではもちろんございません。しかし、今日そういう意味で客観的な意見と言ってよかろうかと思いますが、そういう意味でのこの府県合併必要性というものは各方面に説かれておるところでございます。新聞等の論調にいたしましても、おおむねの新聞は府県合併に進むべき時期が来たということはほとんど異論なく社説等でも発表しておるということも、それをあらわしておるのじゃなかろうかと思うのでございまして、そういう意味でございますから、合併ということが何かの形での中央支配になるとか、そういうことを考えておるというわけでないということは、現在の府県合併方式は、法律によりまして国が個々具体の府県を指定をいたしまして合併を進めていくと、こういう方式が、御説明申し上げるまでもなく、地方自治法の中に規定をされておるわけであります。これに対しまして、やはりイニシアチブを府県に与えて、府県の中でそういう気運が出てきたところが合併に進み得るという方式の道を開くことが適当ではないかというのが地方制度調査会答申でございます。その答申に沿いまして御提案申し上げているにとどまるわけでございまして、もちろん、そういうことにいたしました場合には、結局関係府県住民のその合併に進むという理解というものが必要であることはもう当然でございますから、この合併ということによって、合併を何かしゃにむに進めていくというようなことでない、むしろ自主的な合併方式を開いていくということにとどまると、何回申し上げても同じようなことを申し上げて答えにならぬようで恐縮でございますけれども、それにとどまると考えております。
  143. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そこで、その話は一応ここで区切っておきましょう。  その次に、この調査報告書にもありますように、今日の行政を非常に混乱させているのは中央の各省庁の縦割り行政、私は、これもやっぱり、いまの府県あるいは市町村に対する住民の不信の一つというものがそういうところにもおそらくあらわれているのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、確かにいろいろな面で、この報告書の中のことを一々述べる必要はないと思いますが、国と府県あるいは市町村の計画あるいは仕事の実施上のそご、こういうものがたくさんあって、それがむしろ県政あるいは市町村政というものを停滞させておるのではないか、この指摘どおりだと思います。自治省は、そういうものに対して、一体どのようにしようと考えておるのか。先ほどの御発言の中でも、何か広域行政地方制度調査会がそういっているんだからそのとおりやるんだと、何か責任を地方制度調査会のほうに持っていっているような感じがするわけですが、この報告書は、あなた方が調査を委託した。その中に、縦割り行政の弊害、国の出先機関の二重行政、二重投資、これが地方自治というものを非常にかき乱しておるという趣旨の報告が載っておるわけです。この報告について、自治省としては一体どういう対策をとろうとしておるのか。
  144. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 縦割り行政と申しますか、国の専門的な立場からする行政というものが地方の行政の総合性というものを非常に害しておるという指摘は、確かに報告書にございます。私どもも、こんなことを申してどうかと思いますけれども、全くこの点については同感でございます。そういう面で、現在までも、国の出先機関問題というようなもの等につきましても、いろいろな各省の新しい仕事がふえますにつれまして、その行政の事務を地方にゆだねるのか、出先機関を強化する方向で考えていくのかというような問題では、ずいぶん各省との間で交渉をしたり、いろいろ折衝もいたしまして今日に及んでいるわけでございますが、そういう面では、私どもは、やはり国の出先機関というものは、でき得れば、行政の種類にもよりますけれども、直轄工事その他を行なうところを工事主体といたしまして、そうして総合的な、地方行政にほとんど密着しておる、あるいは一体として考えたほうがいいようなものは府県なり市町村なりの任務に与えていくというようなことができることが一番望ましいことだと思っておるのでございます。そういう面では、なおなお今後も努力をいたさなければならぬわけでございますが、同時に、この府県、市町村の自治体としての二重構造といいますか、そういうものも、私どもが、地方制度調査会も同じような考え方のようでございますが、やはり当分これを維持していかなければいけない。といいますのも、世間では府県廃止論というような議論もございます。あるいはまた、国の総合出先機関としての道州制を設けるほうがいいというような議論もあります。しかしながら、そういうことになりますというと、一面この地方自治というものを充実するという方向からいいますというとむしろ結果が逆になるというおそれがないか。それからまた、やはり現在市町村の行政能力というものではなお十分にまかない得ない任務というものを府県はやっておるわけでありますし、第二番目には、また行政の総合性というものも府県というところでこれを受けとめまして、府県という地域社会——必ずしもそうはいっておらぬかもしれませんけれども、全体の行政の調和ということをはかりながら行政をやっていくというまあ唯一の保証のようなところが府県の大きな任務にもなっておるわけであります。もし府県というものを廃止などいたしますというと、必ず国との間では市町村に直結するというかっこうでは、むしろ縦割り行政が市町村に直結するというかっこうになりましょうし、また逆に言えば、そういうことでなく中間機関を設ける、こうなれば、やはり国の出先機関という妙な形での中間機関ができていくというようなことにも相なるでありましょうし、こういうことはやはり地方自治を育成強化するという方向からいいますというとそぐわない、むしろ適切でないというふうにも考えられます。そういう意味で、府県の自治能力を充実、強化をいたします、また府県のそういう意味での広域行政に対応し得る体制を整えていくということは、各省の縦割り行政とというものを出先機関による行政にまかせないで府県の中へ受け入れていくという基盤をつくることにも通ずるだろうということも大いに考えられるわけであります。府県合併というものがそういう点でも出先機関支配というものを脱却させる意味でのいい効果というものを持つというふうにも考えておるわけでございます。この報告書のそういう意味の二重行政、二重監督というものの指摘は、私どもほとんどそのとおりだという意味で同感をいたしております。
  145. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 同感されるのは非常にけっこうなんですけれども、具体的にそれをどう直していくか、府県行政なり市町村行政を守っていくといいますか育てていくという自治省の役割りというものは当然あるんじゃないか。でありますから、いまこの府県合併の問題を出すよりも、国と府県あるいは府県と市町村の事務の適正な配分をしていく、能力に応じた仕事をやっていけるようにしていくということのほうが私は先ではないか、この府県合併が必ずしも全国すべてできていくわけではおそらくなかろうと思います。おそらくできるのは、この三つのセンターを持つところの伊勢湾、東京湾、それから大阪湾、その周辺くらいにすぎないだろうと思います。あと若干できるかもしれません。全府県にわたって合併が行なわれていくわけのものではないと思います。そういたしますれば、いまの府県に対してたいへん大きな縦割り行政の弊害がある。あるいは、国の出先というものが、一応通さないと文句を言うけれども、実はそこで何らの権限も持っていない、再び東京の本庁へ出ていかなければ、本省へ出ていかなければ、仕事ができない、こういう実態というものを一体なぜその前に直していかないのか、直すべき努力というものを自治省は私はもっとやっていいだろうと思います。どうなんですか。
  146. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) まあ私どもも、国会のたびごとに新しい行政事務がふえてまいりまして、そういう面での行政事務の配分を、先ほど申し上げましたように、国がやるのか地方がやるのかというのは、常に、各省との間で協議をし、いろいろ折衝いたしておるところでございます。が、一つは、最近の各省の主張と申しますものは、やはり行政広域化ということで、まあこれは一つのきまり文句のようになっておる点がありますが、いまの府県区域ではとてもいかぬというような考え方、たとえば中小企業の指導にいたしましても、やはりいろんな中小企業の系列化というふうなものを進めていく、それから企業の種類によっては広域的にそういう系列化を進めていかなければならない、あるいは最近は、過密地域から企業をそうでないところへ分散配置するということになれば、もう府県区域を越えてしまうというようなのがあるから、そういう転換と申しますか、そういう再配置というようなものに関連をする限りは、もう府県からはずれてしまう、こういうような主張というものはまあ国会のたびごとに出てまいるわけでございます。そういうことは、一つは、現在の府県というもののあり方についての一つ批判ということでもありますが、そういう面を考えましても、それだけじゃございませんけれども、広域行政体制というものに十分対応し得る、そういう行政需要のあるものに十分まかない得る体制を持つということは、やはり府県の側でも考えていかなければならぬ問題だと私どもは思っております。そこで、もちろんこの合併が全部の府県に及ぶというわけじゃございません。したがって、特定のところしか及ばないということであるから、問題をもっと別の観点考えるべきじゃないかというお話でございますが、私どもも今後ともそういう努力は続けたいと思いますが、また一面、こういうことで新しい府県ができてまいるということを契機にいたしまして、やはりその点の行政事務の再配分あるいはこれに伴う財源配分というようなものも十分また主張の根拠を新たに府県側に加えることになるわけでございますから、また、そういう府県合併が行なわれますというと、県単位に置かれておりますような出先機関、あるいはブロック単位でも県を管轄区域にしておりますようなところは、必ず統廃合と申しますか、整理ということの機会をいやおうなしに迎えるわけでございます。そういう点も考えてみますというと、やはりそういう意味での合理化というものも、こういう合併というものを契機にいたしまして、一そう努力し得る機会が出てくるのじゃないかというふうにも思うわけでございますし、それと同時に、新しいこれからの行政というものが、そういう意味でやはりこれも行政広域化というものに対応したいろんな現象をとらまえようとしていることは、これは各省の単なる表面的な理由だけでなくして、自治体もそういうものを持っておることは少なくないということは、私ども認めざるを得ない面があるわけでございます。そういう意味での体制というものはやはり地方のほうでも整えていくということ、そのことの必要なところはやっぱり整えていくようにしていくこと、これが府県合併という問題につながる面だと私は思うのでございまして、そういうことは、やはり府県側としても体制を整える対応のしかたというものは当然考えるべきじゃないかと思うわけであります。
  147. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもそのいまの御答弁というのは、私はまことに納得できない御答弁だと思うのです。行政広域化が常識化しているというようなことばで、自分たちが実際自治省として地方自治を守っていくという立場をすでにもうお捨てになっている、私はそうしか理解できません。でありますから、むしろ自治省が、極端な言い方をすれば、みずから広域化によって地方自治を失わせようとしていると言っても、私は極言ではないような感じがいたします。  そこで、行政管理庁のほうにお聞きをしたいのですが、実際いま述べられましたように、この報告の中にもありますし、まあ現実の市町村の中に入って見ますと、実際二重投資、あるいは市町村の計画というものを、出先がかってに仕事をやって、そうしてそれをゆがめてしまう。そのために、市町村としては二重投資、三重投資に悩まされているという問題は、全国に非常に多いと思う。こういうものを一体どのように考えておられるのか。縦割り行政の弊害というものが、もうずいぶん前から言われている。こういうものをどう考えておられ、どのように指導しておられるのか。また同時に、こういう合併がもしできたときに、一体そこにあるところの国の出先機関というものはどのような方針で整理をすべきだと考えておられるのか、お答えいただきたい。
  148. 石原寿夫

    説明員(石原寿夫君) 縦割り行政の弊害の問題はまあほとんど常識化しておるようでございますが、現在とられています分担管理制度の悪い面がいま先生御指摘のような縦割り行政という悪い面の把握のしかたとして出ておるのだと思いますが、これは各省の行政運営あり方を国としてそういうばらばらなことが末端で行なわれないように御努力をいただく、各省ごとに御努力をいただくということが必要でありますと同時に、国の側におきまして、行政の総合調整と申しますか、よく言われますように、近代行政は複雑化し、専門化し、分化をしてきたと、したがって総合調整という機能を充実しなければいけないということがよく言われておるわけでございますが、私どもも、そういった面から、やはり国の側としましても、末端で少なくとも御迷惑のかかることのないように、行政の総合化、一元化ということについて非常に努力をすべきじゃないかというふうには考えておるわけでございます。で、行政管理庁としましては、そういう縦割り行政の悪弊ということも踏まえまして、総体的に地方支分部局をふやさないという審査の方針をとっておりまして、でき得るなれば減らしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  次に、それでは府県合併がもし実際化した場合にどうなるのかという御質問でございますが、これはまだ具体的にどこをどうするということを考えておるわけではございませんし、私のほうといたしましては機構の審査でございますので、おそらく府県合併が実際化しました場合には、関係各省におきましても、自省の行政事務を能率的にやっていくという必要性から、いろんな組織のあり方についての御要求が出てくるのじゃないか。それを見まして、いろいろ御相談もし、検討もいたしたいというふうに考えておりますが、本法案が国会で御審議中でございますが、これが成立をしますと、この法案の二十一条に国の出先機関のそういった場合のあり方の基本線が規定してございますので、当然私どももその線に沿って審査をやっていくことになるかと思います。ただ、国の地方支分部局は種々雑多でございまして、地域住民の日常生活の便、不便に直接関係を持つような地方支分部局もございますので、これらの点につきましては、理屈は理屈といたしまして、無理のない形でいろいろな、もし合理化ということがありますならば、それを考えていくということが適当ではないかというふうに考えております。
  149. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、府県合併の行なわれたところではそういう考え方府県合併が、先ほど局長もお話がありましたように、全部の府県合併ができるわけじゃないわけです。四十六について全部府県合併ができるわけではない。そうしますと、府県合併をしたところはかなりそこで合理化されてくるわけでありますが、できないところというのは、相変わらずそういう二重行政、あるいは府県、市町村の計画を破るようなものというのがどんどんやられておるわけですね。こういうものが、一つの時期を画して、むしろそういうものを整理をすべきものは整理をしていくというものが大英断をもって行なわない限り、おそらく合併した府県においても同じようなことが相変わらず行なわれて、またもとにすぐ戻ってしまう、こういうことになる心配が非常に強いと思うのです。そういう点では、どんなふうなお考えでございますか。
  150. 石原寿夫

    説明員(石原寿夫君) 一般的には、現在御案内の三ヵ年行政改革計画というものが進行中でございますが、これは実は各省から出された意見に基づいて行なわれている改革でございまして、先生御指摘広域行政との関連におけるそういった地方支分部局の問題などは実は出ていないわけでございます。しかし、私どもとしましては、こういった機会をとらえて、おそらく行政改革の問題は今後も引き続き行なわれることかと思いますが、その中で、所掌事務の範囲と申しますか、許された権限の中で、そういう方向で努力はしてまいりたいというふうに考えております。
  151. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 おことばの上では、これをひとつ契機にそういうことを進めると、こうおっしゃられるわけなんですけれども、しかし、行政管理庁も特にそうした出先の整理というものはずいぶん長く熱心におやりになっているのだけれども、実際的には各省の抵抗も非常に強いものがあろうと思う。そういうことで、ことばの上、あるいは答申案というようなものはたくさん出てきているわけですけれども、実際にはそれがなかなか実行に移されていないというところに、また一つ住民の不満というものが私はあると思うのです、現実には。そう考えてみますと、府県合併ということは、これは実際いつ行なわれるかわけがわからない。自主的に行なうということでありますから、いついつこれを行なうというのはその地域住民の意思によってきまるわけです。そういたしますと、なかなか全国的にそういうものを計画的におやりになるということは私はおそらくできないのじゃないか。だから、府県合併の問題とは別個に、この問題は早急に取り上げるべきである。先ほどおっしゃられたように、技術が進み、経済が進めば進むほど、行政一つ一つの分野は専門化する。その専門化されていくということは、逆に総合性を失っていく大きな原因になります。その辺にいまの府県、市町村というものが非常に悩みに悩んでいるというのが私は実態ではないかと思う。そういう意味では、府県合併の問題とは別個に私はこれは取り上げていくべきじゃないか、こういうふうに思いますが、どうですか。
  152. 石原寿夫

    説明員(石原寿夫君) 組織の問題もたいへん重要な問題でございますが、これは御指摘のとおりでございますが、府県との関連におきましては、やはり事務委譲の問題がこれまた非常に現実に先生が御指摘になっておるような問題を解決していく上の大きな柱かと思います。これにつきましては、自治省もたいへんな御努力をされておるわけでございまして、私どもも自治省に、まあ側面的ではございますが、協力いたしまして、事務の委譲を含めまして、国の出先機関を合理化するという努力は今後もずっと続けてまいりたい、おそらくは行政管理庁がある限りこれは続く努力ではないかと私は存じております。
  153. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 行政局長に最後にお尋ねしたいと思うのであります。この報告書の中にも、この阪奈和の各府県の間におけるところの協議といいますか、お互いの連絡といいますか、そういうものはまことにされていないということが述べられておる。そうしますと、私は合併の話が、いま行政広域化というのは常識的にだれでも考えることだとおっしゃる反面、そういうものに対する調整、指導というようなものがあまりなされていなかった、自治省としてそういう意味で進めてこられる努力が非常に足りなかったということをこの報告書は述べているのではなかろうかと思うわけです。ですから、まずその阪奈和合併がいいにしろ悪いにしろ、考え方はどちらであろうとも、そうした意味での各府県間のお互いの意思疎通というものをもっとここで積極的にその前に進める必要があるのではないか、そのほうがずっと先じゃないかと思うのですが、どうですか。
  154. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 府県間の連絡協議という関係は、もう御指摘のとおりだと思います。で、午前中に地方行政連絡会議のことをちょっと触れたのでございますが、地方行政連絡会議におきましては、国の出先機関が非常に雑多でございまして、それが非常に重複したり、いろいろな関係がございまして、連絡会議全体としてはどうもうまく調節がとれない、また考え方の次元が非常に異なっておりまして、なかなか調節がとれないという困難な面がございます。そこで、自治省としては、最近は連絡会議の一部門という形で、府県間の連絡というものを中心にした協議をいたします場合には、率先をいたしましてその協議自治省も加わりまして、府県間の協議というものを進めていくというようなことはできるだけ努力をしておる最中でございますが、今後もそういう点は、御指摘のとおりでございまして、引き続き努力は重ねていかなければならない。それが合併前に当然にたくさんあって、むしろそちらに重点を置くべきではないかというお話でございます。私どもも、その面では、確かにそういう御指摘はそのとおりだと思います。今後ともこの府県間の連絡協議という問題、いろいろな行政の問題を含めまして十分努力をしてまいりたいと、こう考えます。
  155. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はむしろ、そういうことのお互いの調整連絡というものが進んでいく中で、初めて、これは連絡だけではどうにもならないのだと、だからここで行政区域というものを考えて見直す必要があるのだというのが初めてわかることによって、県民あるいは府の人たちと地域の人たちというのは初めてそこに合併という問題をみずから提起をする、そしてスムースに合併をしなければならないという事態というものを真に認識していくようになるだろうと思う。いまの形では、何か経済界が合併を推進する、それに踊らされた一部の婦人会がパンフレットなんか盛んにつくって、何か合併すると和歌山の奥のほうでもとたんに生活がよくなるような、そういう幻想を振りまいているように思えてならない。ですから、私は、むしろそうではなしに、実績をかせぐ中で、そこで府県合併必要性があるかないかという形をつくり上げる、そこに初めて法律ができていく、そういうことこそが地方自治という立場考えなければならないことではないかというふうに思うわけですが、何かこういう法案が先にできて、下のほうでは一般住民というのはたいした府県合併についての関心を示していないというのがおそらく私は実態だと思う。それは確かに、経済団体だとかあるいは府県の一部の人の中ではそういうことをおっしゃっておるのですが、必ずしもそれでは府県のその衝に当たる人たちがすべて府県合併に賛成しているわけでもないと思う。そういう点では、私は、何もこの特例法を早く出してそういう熱をあふるよりも、もっと地方自治という基本に基づいた仕事があるのではないか、それを進めていくべきだ、そのほうが先である、こういうふうに思うわけです。そういう意味では、どうですか、もう少しこの府県合併というのは先に延ばす意思はないですか。
  156. 長野士郎

    政府委員長野士郎君) 先ほどから申し上げておりますとおり、連絡協議というものは私どもはこれからもますます進めてまいらなければならないということでございますが、そういう意味で、地方行政連絡会議というようなものは、協議の機関としてもすでにスタートいたしておるわけです。これが十分協議の実をあげていない面があるようでございますので、一そうこれに力を加えたいと思いますが、同時に、府県合併特例法は、そういう機運が出てきたあとでいいじゃないかというお話でございますけれども、実はそうは思わないのでございまして、やはり府県合併特例法が出るということによりまして、なお一そう府県間の連絡調整、府県間の問題、広域行政の問題というものについて、関係住民の方々のものの考え方というものを集中をしていく。それからまた、議会その他の方面においても、そういう広域行政体制というものをどういうふうにとっていくのがいいか、合併がいいか、おれほうは協議でいいのかというようなこと、そういうことの一つの論議のきっかけにもなり、十分そういう論議を提供する機会にもなると思うわけです。これは、この法律を出しましたからといって、直ちに合併が始まるわけではございません。まず、そういう意味では、府県間の広域行政に対するものの考え方合併というものも踏んまえながら進めていくという一つの有力な機縁にもなるし、またそういう論議を提供する機会も与えるという意味ではぜひ必要だというふうに考えておるのでございます。
  157. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 もうそれ以上はお互いの見解をむき出しにするだけですから私やめますけれども、一番初めの資料ひとつ早急にお出しいただいて、それについての質問はひとつ保留をさせていただきたいと思います。きょうはこの辺で終わりたいと思います。
  158. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本日の質疑はこの程度にいたします。     —————————————
  159. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  都道府県合併特例法案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会      —————・—————