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1969-04-22 第61回国会 参議院 地方行政委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月二十二日(火曜日)    午前十一時九分開会     ―――――――――――――    出席者は左のとおり。      委員長        内藤誉三郎君      理 事                 熊谷太三郎君                 吉武 恵市君                 林  虎雄君                 原田  立君      委 員                 小林 武治君                 鈴木 省吾君                 船田  譲君                 増田  盛君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 若林 正武君                 竹田 四郎君                 千葉千代世君                 松澤 兼人君                 和田 静夫君                 阿部 憲一君                 山田  勇君    国務大臣        自 治 大 臣  野田 武夫君    政府委員        近畿圏整備本部        次長       井上 義光君        中部圏開発整備        本部次長     小林 忠雄君        首都圏整備委員        会事務局長    鶴海良一郎君        自治政務次官   砂田 重民君        自治省行政局長  長野 士郎君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君    説明員        警察庁刑事局外        勤課長      井口 孝文君        運輸省海運局参        事官       須賀貞之助君        運輸省船舶局検        査制度課長    内田  守君        海上保安庁警備        救難監      猪口 猛夫君        自治大臣官房        参事官     佐々木喜久治君        自治省行政局公        務員部長     鎌田 要人君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○地方行政の改革に関する調査  (首都圏近畿圏及び中部圏整備計画に関する  件)  (地方公務員服務等に関する件)  (地方事務官制度に関する件)  (小型渡船等安全運航に関する件)     ―――――――――――――
  2. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  首都圏近畿圏及び中部圏整備計画に関する件を議題といたします。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 松澤兼人

    松澤兼人君 前回御質問申し上げたのでありますが、そう言っては悪いんですけれども、まあ国家的な計画というものが、いろいろの立場なり、あるいは省庁関係で、それぞれ開発計画なり、あるいは整備計画なりというものが出ております。大臣もおられないし、またそういうことを言ったって、答弁責任ある立場におられない方が出席されておりますので、満足な御答弁も得られないかと思いますけれども、前回申し上げましたように、国では新全総計画というものを考え中でありますし、その他各種開発整備計画というものが、各省別にあるわけでありますが、どなたからでもいいのですが、一体どういう種類の開発あるいは整備計画というものがあるか、全部あげてみていただきたいと思います。
  4. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 私から首都圏関係につきまして御説明申し上げます。  全国的視野に立っての開発計画というものは、先ほどお話のございましたように、経済企画庁で作成いたしております全国総合開発計画というものがあります。これは目下改定作業が進んでおる次第であります。  首都圏につきまして申し上げますと、首都圏区域につきましては首都圏整備計画というものがございまして、これは先般来申し上げましたように、昨年十月に基本計画をつくりまして、目下この基本計画に基づきまして整備計画を作成いたしておる段階でございます。地域計画といたしましてはその二つが根幹になろうかと思います。  各省におきましては、それぞれの施設につきまして五カ年計画というようなものを持っております。道路でいいますと道路整備五カ年計画、あるいは港湾でいいますと港湾整備五カ年計画というような、それぞれの施設の五カ年計画を持っておりますが、これは五カ年の間に行なうべき全国的な視野に立っての事業の量を定めておるわけでございます。地域におろして、どの地域に幾らというふうな計画としては、各省の五カ年計画はきまっておりません。  地域開発につきましては、大きなものは、先ほど言いましたように全国総合開発計画、それから首都圏整備計画、なお、そのほかに、経済企画庁のほうで新産業都市あるいは工業整備特別地域等計画を持っております。首都圏におきましては新産業都市計画はございませんが、鹿島地区におきまして工業整備特別地域計画企画庁で持っておるというようなことであると思います。
  5. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういうふうに言われれば、中部圏も近幾圏もみんな言っていただけますか。
  6. 井上義光

    政府委員井上義光君) 近幾圏整備本部関係につきまして、近幾圏につきましては、もちろんいま首都圏事務局長からお話ございましたように、全国総合開発計画の一区域でございまして、その総合計画との調整をいたしますが、そのほかに播磨地域工業整備特別地域として、もちろん調整いたしておりますが、計画を進めております。  なお、北陸地方開発促進法というものがございまして、福井県か近幾圏の区域になっておりますので、福井県については北陸地方開発促進計画との調整をはかる必要があるというふうに考えております。  なお、中部圏――御承知のように、福井県、滋賀県、三重県という三県につきましては、中部圏開発整備計画近畿圏整備計画というものがともに策定されるというふうになっております。
  7. 小林忠雄

    政府委員小林忠雄君) 中部圏につきまして申し上げますと、全国総合開発計画中部圏計画上位計画であることは、首都圏近畿圏と同様でございますが、なお中部圏地域の中には、北陸地方につきまして北陸地方開発促進法という法律がさきにできておりましたので、これとの調整規定中部圏開発整備法第二十三条に掲げてございます。  なお、いま近畿圏政府委員から御答弁いたしましたように、中部圏滋賀福井三重三県につきまして、中部圏近畿圏とが地域的に重複をいたしておりますので、中部圏開発整備法第二十四条におきまして、両者の調整をはかることになっております。なお、中部圏区域の中に、企画庁所管の新産業都市建設促進法に基づきます新産業都市区域と、同じく工業整備特別地域整備促進法に基づきます指定地域、これがそれぞれございますので、これにつきましては企画庁調整をとるということになっております。
  8. 松澤兼人

    松澤兼人君 このように、一方では全総計画というものがある。そうしてどなたか全総計画上位計画であるというふうに言われましたけれども、その下に近畿圏中部圏首都圏というものがある。さらに並行といいますか、肩を並べるような計画として、北陸開発であるとか、あるいは新産、工特というものがある。それぞれ所管もあるわけでありまするが、また同時に調整する必要もある。このほかに建設省とか、あるいは自治省とか、あるいはその他の官庁におきましても同様な計画があるように聞いております。自治省としては、そういうふうな何か開発計画なり、あるいは特別の計画があるわけですか。
  9. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) 自治省関係におきましては、各省関係のそれぞれ地域開発立法に対する地方負担についてのその特別の財政措置に関する諸法律がございます。そのほかに特別な地域開発的なものといたしまして現在ございますのは、辺地対策関係、それから奄美群島振興関係、この関係自治省振興関係法律になっておるわけです。そのほかに、私どもが本年度から新しく検討いたしたいと考えておりますのが広域市町村圏整備の問題でございます。
  10. 松澤兼人

    松澤兼人君 まだこれは、いろいろ建設省関係者、あるいはその他出席を求めて質問すれば、それぞれ各省庁におきまして、こういう開発計画なり、または自主計画なりがあるというふうに言われると思うのであります。一体このように錯綜している各種開発整備計画というものは、どこで権限をもって調整するか、中心的にそれを調整する役所というものがございますか。
  11. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) お話のように、各省それぞれ独自の計画は持っておりますけれども、それを各圏域について調整をはかっていく、調整をはかって総合性のある計画にして打ち出していくという仕事は、やはり圏域官庁仕事であろうというふうに私は考えております。各省それぞれ施設につきまして計画を持っておりますけれども、それ自体には、先ほど申し上げましたように、地域別計画が具体的にきめられておるわけじゃないわけでございます。しかし、全体の事業量というものはきまっておりまして、その範囲内におきまして各地域開発が行なわれるわけでありますから、そういう調整をはかって圏域官庁計画に総合していくというようなたてまえで進むべきであろうというふうに考えております。
  12. 松澤兼人

    松澤兼人君 この前承ったかどうかわかりませんけれども、四十四年で、首都圏は百四十六億ぐらいの予算をもって事業をおやりになるということですか。
  13. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 首都圏整備委員会についております予算は、これはわずかなものでございまして一億三千万ぐらいでございます。調査費とそれからあと庁費人件費でございます。これは御承知のように計画官庁でございまして、事業執行官庁でありませんから、事業予算首都圏整備委員会にはついておりません。
  14. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういたしますと、都が施行する公共下水であるとか、あるいは都市下水公園、こういうようなものは都がみずからの予算で実施するということですか。
  15. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) ただいまお話しになりました公共下水道とか公園につきましては、これは都の執行するものにつきましては都の予算で執行いたしておるわけでございます。ただし、これにつきましては、下水道につきましては、下水道に関する国の補助建設省から出ております。公園につきましてもやはり建設省から都市公園補助金が出ておることになっております。
  16. 松澤兼人

    松澤兼人君 先般も話がありました古都歴史的風土保全というものは、またそれぞれ関係の県なり、あるいは市町村なりが財政的には負担をするということですか。
  17. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 古都保全につきましては、これは総理府のほうで処理いたしまして、これに対する国の負担金建設省で持っております。買い上げが行なわれます場合に、これに対しまして、八割だったと思いますが、建設省から負担金当該公共団体に支払っております。
  18. 松澤兼人

    松澤兼人君 さらに、首都近郊緑地特別保全というような名目の仕事があるようですけれども、これに対しても、国が何らかの責任を持って、全部または大部分国が持って、あとは都なり、あるいは、区はどうかわかりませんが、市町村が持つというたてまえになっておるのですか。
  19. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 近郊緑地につきましては、特別保全地区指定されました個所につきましては、これもやはり建設省予算を持っておりますが、買い上げます公共団体に対しまして三分の二の補助金を払うことになっております。
  20. 松澤兼人

    松澤兼人君 どの場合を聞いてみましても、国が大きな網をかぶせる。しかし、その国というのも各省別になっている。そうして、その大部分は国が持つけれども、しかし地元――都、区あるいは府県市町村というようなものが幾らかは持ち出しをしなければならないという財政的な措置になっているわけですか。
  21. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 首都圏の場合におきましては、地方が行ないます事業に対しまして全額国負担するというような制度はございません。地方公共団体が執行いたします事業に要する経費のうち何分の一かを国が負担をする、率はそれぞれの事業によって異なっておりますけれども、国がその一部を負担するというような制度になっております。
  22. 松澤兼人

    松澤兼人君 一部あるいは大部分を国、各省庁が負担する、しかし地元持ち出しはこれは否定できないわけでして、地元府県あるいは市町村というものがいわゆる単独事業というようなものを考えようとしても、こういう上から押しつけられる、あるいはかぶせられる大きな方針に従わなければならないし、単独的な、市長なりあるいは議会なりが希望するその府県あるいは市町村の自主的な財源の使い方というものはある程度制限される、制約されるということは否定できないと思うのですが、この点はどうですか。
  23. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) たとえば近郊緑地指定にいたしましても、これは制度的には国が指定することになっておりますけれども、実際の指定にあたりましては、地元府県なりあるいは市町村十分連絡をとりまして、その上で指定しておるわけでございますし、その中で特別保全地区を定める場合におきましては、地元の県に置かれております都市計画審議会に付議いたしまして、都市計画の手続に従って指定していくというふうになっておりまして、あらかじめ十分連絡をとってやっておることは事実でございますけれども、結果的に、買い上げが始まりますれば何分の一かは地元公共団体負担になるということはこれまた事実でございまして、そういう意味におきまして、地元財政に対しましてすべてが地元において自由に使えるということにはならないという点におきましては、先生のおっしゃるとおりだと思います。
  24. 松澤兼人

    松澤兼人君 この点につきまして、もちろん府県知事あるいは市町村長の同意なり協議なりということが必要だろうと思うのですが、国が網をかぶせるだけでなくて、財政的な措置も十分にしてやること、または府県市町村の自主的な計画なりあるいは政策なりというものをやり得るような状態に置かなければいけないということ、さらには、十分の意思の疎通というものがどうしても必要だと思います。強制的に、そこはこうするのだというようなことではいけないと思いますが、この点、役所として十分留意されていると思いますけれども、その決意のほどを承りたいと思います。
  25. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 従来から、整備計画をつくります場合は事前に関係都府県等とも十分に連絡をとってやってまいっておるわけでございますが、今後とも一そう緊密な連絡をとりながら計画策定作業を進めてまいりたいと思っております。
  26. 松澤兼人

    松澤兼人君 自治省の方に承りたいのですが、一時、国際平和都市とか国際文化何とか都市というようなものがたくさんできまして、長崎、広島をはじめといたしまして、軽井沢あるいは熱海というようなところまで、そういう特別の財政援助というものを期待する特別立法ができたことを覚えておりますが、最近はそういうものはどうなっておりますか。特別の財政上のめんどう自治省見ておいでになるのですか。
  27. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) これらの諸都市についての特別な財政援助立法はございませんけれども現実事業面におきまして必要な起債等措置は、これまで講じてきたわけであります。
  28. 松澤兼人

    松澤兼人君 実際としまして、四十三年度で、そういう国際平和都市国際文化何々都市というものにどれだけ財政上のめんどうを見てきたかということはお示しできますか。
  29. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) いま手元に資料がございませんけれども起債の申請にあたりましてこれらの都市のための事業であるということを明確にして申請してくる例が最近は非常に少のうございまして、私どもも、起債段階におきまして、これが国際平和都市のための事業であるということがはっきり分別できないのが現実でございます。
  30. 松澤兼人

    松澤兼人君 これは多く議員立法でできたものと思いますが、したがって政府が、こういうものはもうじゃまくさいからやめてくれと言う立場にはないと思います。しかし、実際そういう法律があっても実効が伴わない、財政上たいして国に期待することはできないというような実情にあることは確かなんですね。別段、自治省としても特別のめんどうを見ていないということは事実ですね。
  31. 佐々木喜久治

    説明員佐々木喜久治君) 自治省としましては、それぞれの地方団体におけるその年度事業計画、あるいは長期的な計画に従いまして、その年度ごと財政事情を考慮いたしまして必要な財源措置を講じておるわけでございまして、現在私どもは、地方団体のほうがどういうふうな認識のもとにそうした事業を進めておられるかということになりますと、ややその点について、地元のほうで現在において明確な目標を描いて事業計画を進めておるかどうかという点については、若干疑問に思っておるわけでございます。ただ、それぞれの団体がその住民の必要とする事業について必要な財源措置を求められる場合においては、できるだけこれに協力をしていくという立場仕事を進めておるような次第でございます。
  32. 松澤兼人

    松澤兼人君 これは議員立法であろうと思いますから、政府にいろいろ希望してもしかたがありませんが、法律がある以上は、やはり法律に従って起債等その他の面で財政的な援助をすべきだ。それは政府責任だと思う。そういうものがじゃまくさいというのであればまた別です。たいして実効がないということであれば、いまの段階としては国会としてもいろいろ考えてみなければならないことであろうと思います。法律がある以上は、やはりもし地元からそういう希望があれば、それに対して考慮してあげることが適当だと思います。それはそれだけ、希望だけ言っておきます。  それから中部圏の問題ですが、これは一例にすぎません。この中部圏開発整備関係法令の中に「保全区域」というものがありまして、その中の六一ページ、揖斐伊吹区域――これは揖斐ですね、「摂」という字が書いてあるが――これに関しまして、私たちがよく伊吹山の下を通りますけれども、まるで西の半分が削り取られたような状態になっておりますが、こういうものは保全するということはできないものか。
  33. 小林忠雄

    政府委員小林忠雄君) 中部圏整備法によりますと、保全区域に対しましては別に法律で定めることになっておりまして、それに基づきまして、中部圏都市整備区域都市開発区域及び保全区域整備等に関する法律というのがございます。その第五条によりますと、保全区域整備計画を定めるということになっておりますが、実は都市整備区域及び都市開発区域等と違いまして、中部圏保全区域につきましては、首都圏近畿圏のような私権の制限、あるいは制限に対する土地買い上げ、補償というような実体規定がまだ整備されておらないわけでございまして、これは、首都圏近畿圏近郊整備区域は主として大都市近郊緑地保全する、こういうことが目的でございますが、中部圏の場合には、大都市近郊緑地保全ということのほかに、観光資源保全開発、特に中部山岳地帯保全開発ということを、全国民の将来のレクリエーションの場として考えなければなりませんので、実は首都圏近畿圏と同様の立法では適当ではないのじゃないかということで、もう少し制度的に考えまして立法措置を考えたいと思っております。したがいまして、現在は地域指定しただけでございまして、これについて開発規制等措置中部圏法律でいたすということはちょっとできないわけでございますから、この今回指定をいたしましたところは、大体自然公園法に基づきます国立公園特定公園、または県立公園、そのいずれかの指定があったところ、または指定の近く予定されているところを指定しておりますので、現在の規制法規といたしましては、自然公園法に基づきまして各都道府県知事規制をするというたてまえのところが保全区域指定されております。
  34. 松澤兼人

    松澤兼人君 この法律自体では権限がないということのようでありますけれども、一応はこの法律の中で、たとえば「国土保全施設整備に関する事項」であるとか、あるいは「観光資源開発、利用及び保全並びに文化財の保存に関する事項」というふうにあげてありますから、この法律自体としても、そういう風致地区であるとか、あるいは自然公園であるとか、その風致保存するという権限なり責任なりというものはおのずからあるわけだと思うのです。そうじゃないですか。
  35. 小林忠雄

    政府委員小林忠雄君) 中部圏開発整備法の第十六条第三項によりまして、「保全区域整備に関し特別の措置を必要とするときは、別に法律で定めるものとする。」ということで、別に法律を予定をしておるわけでございます。それに基づきましてここにお配りしております法令集の八五ページ以下に、中部圏都市整備区域都市開発区域及び保全区域整備等に関する法律というのが現在定められておりまして、保全区域につきましては、第五条によりまして保全区域整備計画ということがきまっておりますが、これは計画をきめるということだけきめておりまして、これの規制内容その他についてはこの法律は何ら触れておりません。これは先ほど申しましたような事情で、首都圏近畿圏とやや事情が違うために、同様の立法をしておりません。中部山岳地帯全体の保全開発というのは、将来の国民の労働時間の短縮、余暇時間の増大、モータリゼーションの発達等を考えます場合に、全国民的な立場からこの地域保全開発ということを計画的に進める必要がございますので、それに基づいて諸外国の制度等もただいま研究をいたしておりますし、なおその地域の実態についての調査をいたしておりまして、もし法律的な措置が必要でありますならば、関係省と相談をいたしまして何らかの立法措置を将来講じてまいりたい。ただ中部圏につきまして特別の法律措置が別途に必要であるか、あるいは自然公園法の運用でいけるかどうかということが一つの問題点であろうかと思いますが、実質的な保全開発をどうするかという開発保全の実態的な問題につきまして、ことし一年間調査費も実は予算で認められておりますので、制度的な面も含めまして調査をいたしたいと思っております。
  36. 松澤兼人

    松澤兼人君 伊吹山ろく大阪セメントというセメント会社があるわけです。そこはこれまでたいへんな粉じんを出しまして、相当公害の問題が地元でやかましいことになっていたことがあるのです。その後、セメント製造の装置が新しいものに改善されて、あるいは取りかえられて、やや公害関係は下火になっていると聞いておりますけれども、しかし一方ではそういうセメント工場があり、また伊吹山山ろく地方からセメントの材料が毎日毎日削り取られている。これは先ほどお話がありましたように、自然公園法なりあるいは風致保存なりいろいろ法律があると思うのですが、実情はよくおわかりにならない。一方では、観光資源の確保だとか、あるいは風致保存だとかいいながら、ああいう伊吹山それ自身がまるはだかになっていくということは、何かはかに方法はないものなのですか。中部圏あるいは近畿圏としてどういうお考えですか。これは滋賀県も入っておりますから、当然中部圏も、あるいは近畿圏所管だと思うのです。
  37. 井上義光

    政府委員井上義光君) いま松澤先生のおっしゃいました伊吹山実情はつまびらかではございませんが、実際山はだが見えておることは存じております。それで、先ほど中部圏次長からお答えしましたように、近郊緑地につきましては、近郊緑地と申します制度は、保全区域のうち大都市近郊につきまして、地域住民の心身の保全、あるいは観光資源保存目的でございますから、近畿圏につきましては、工作物の設置とか土地の形質の変更ということが公益性の見地から規制されますが、一般の保全区域につきまして、目下のところは他の法律によります自然公園法とか都市計画法上の風致地区という制度によりまして、公益性が保たれない場合におきましては、所在の公共団体から勧告するとか助言するにとどまりまして、目下のところそれを保全するのは、公有地以外の土地などはむずかしいかと思うのでございます。
  38. 松澤兼人

    松澤兼人君 だれでもあすこを通れば、あの伊吹山というのがだんだんとストリップになっていくということについては、まさかあれがはだかになっていいと考える人はないと思うのですが、何か手をつけるべきじゃないかと思いますけれども、まあ、近畿圏あるいは中部圏として、この法律による規制はできないにしても、しかし他には自然公園法であるとか風致保存であるとか、関係法律があるわけでありますから、それを中部圏近畿圏整備開発ということにかけて、やっぱりこれはあまり山をはだかにしちゃぐあいが悪いんじゃないかということで、関係官庁なりあるいは府県なりに指示する、というのもおかしいけれども、もっと注意を与えるぐらいのことはあってもしかるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  39. 小林忠雄

    政府委員小林忠雄君) 先ほど申し上げましたように、中部圏都市整備区域都市開発区域及び保全区域整備等に関する法律の第五条によりまして、保全区域整備計画というものをつくることになっております。ただいまは都市整備区域及び都市開発区域の建設計画作業に追われておりますので、まだ保全区域整備計画までは手が回っておりませんけれども都市整備区域及び都市開発区域の建設計画が一段落いたしましたら、保全区域整備計画を引き続き策定をいたしたいと思います。この保全区域整備計画自体には法律的な規制力はございませんけれども、この際には鉱業権との調整等の問題もございましょうし、またこの保全区域整備計画そのものが、この法律によりますと都道府県知事が作成をし、内閣総理大臣が承認をするということになっておりますから、保全区域整備計画をつくります際に地元で十分調整がされることが期待されますと同時に、これを承認をいたします際に、鉱業権の許可権を持っております通産省その他と中部圏と十分調整をいたしまして、かりに鉱業権そのものを直接規制できないまでも、外から見た場合、その採掘の方法とかあるいはその場所というようなことにつきまして、たとえば沿線の鉄道なり道路から見た場合に見苦しくないような掘り方をさせるというようなことは、この保全区域整備計画の内容として十分計画は立てられると考えております。
  40. 松澤兼人

    松澤兼人君 それからあと、この四十二年の三月三十一日の「首都圏近郊整備計画」、これの三ページ、一番初めのところですけれども、これによりますと「青梅、羽村地区」というのがありまして、ここに「工業団地と住宅団地を造成する」ということがあるのですが、ただこれだけ拝見いたしますとよくわからないのですが、この工業団地というものは工業団地として造成する、住宅団地は住宅団地として造成するということで、この二つの、工業団地の造成と住宅団地の造成というものはなんら有機的、経済的なつながりはないと考えてよろしいのですか。
  41. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 工業団地の造成と住宅団地の造成の関係でございますけれども、青梅、羽村地区につきまして工業開発を進めていきますれば、当然に人口増、その地区の人口定着が始まるわけでございます。そういうものを見込みまして住宅団地の造成も進めておるわけでございます。
  42. 松澤兼人

    松澤兼人君 工業開発をやる、それで団地の造成をする、それはそれとして人口がふえて開発になるかもわかりませんけれども、しかしその工業団地というものはそれほど大きな規模のものでないでしょう、いろいろ書類拝見すればわかりますけれども。したがってそこに人口が増加いたしましても、一方住宅団地というものは、住宅団地としてそこの住宅に入って居住されている人たち、あるいは将来居住される人たちは、やはり勤務地として東京都のほうへ来てということになるのじゃないですか。
  43. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 青梅、羽村地区につきましては、東京都への通勤人口もかなりございますので、青梅線自体それほど強い線ではございませんし、現在のところその地区の工業団地、あるいはそれに伴ってできますいろいろな第三次産業的なもの、そういうものについての就業人口の増加もかなりみております。東京都区部への通勤人口もあるいはこれからさらにふえていくと思いますが、現地においてできるだけ就労させるという方向で、こういった職場を近郊地帯の周辺地区にもつくっていっているわけでございます。
  44. 松澤兼人

    松澤兼人君 できるだけその土地で就労させるというお考えはまことにけっこうですけれども、しかし住宅は住宅だ、団地は団地だということであれば、やはりそこでは、地元に相当膨大な人口が就労するということも考えられませんし、結局そこの住宅に住んでおられる方はどっかほかの都市に通勤するだけのことであって、それでは私、新しい意味の計画ということにはならないんじゃないかと思いますが、どうですか。
  45. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 首都圏整備委員会におきまして工業団地を各地に造成いたしておりますが、その趣旨は、大都市周辺からできるだけ離れた場所におきまして就業の機会を造成していく、それによって大都市に集まってくる人口をできるだけ周辺部に定着させたいという構想で進めておるわけでございます。御指摘の青梅、羽村地区、これは東京にかなり近うございますので、通勤人口も絶無ではございませんし、東京への通勤人口も増加しておると思いますけれども、しかしその地区に立地いたしました工場への就業者、これもやはりその近辺に定住いたしておるわけでございます。したがいまして、すべてが工場と住宅とリンクしておるというふうな施策ではございませんけれども、御指摘のような線に沿って進めておるということは、これは計画当初からの考えでございます。
  46. 松澤兼人

    松澤兼人君 私の言いたいことは、イギリスなどのニュータウンでは、工場とそれからそこに働く人口というのは密着しておるわけです。ですから、工場がニュータウンへ行く、そしてまた人口も、そこに就労する人もそこに行くということで、外へ出なくてもいい。ところがこういう日本の計画は、と言っちゃ悪いですけれども、日本の計画は、普通、千里山団地というような大きなマンモス団地をつくる、そこでは就労の機会が全然ないでしょう。工業団地ができると、そこにはまた人間がいないわけです。そういうことであっては、いつも交通が混雑したり停滞したりということになるんです。だから言いたいことは、そういうふうに工場自身も、産業自身もいなかに行くが、人間自身もそこに付随してというか、一緒に行くというような形をとらなければ、住宅ができた、しかし就労は東京へ来るんだというようなことでは、何しているかわからぬ。そっくりそのままやるというようなそういう考え方はとらないものですか。
  47. 鶴海良一郎

    政府委員鶴海良一郎君) 御指摘のように、わが国で住宅団地をつくり始めました当座におきましては、いわゆるベッドタウンというものが主体であったわけです。東京なり横浜につとめまして、そこの団地に帰って寝るだけというようなベッドタウン的なものからスタートしたわけですけれども、これではいかぬということで、工場なり、その他の施設なりを積極的につくることによりまして、そういったことをできるだけ防いでいきたいという考えで、近郊整備地帯のみならず周辺の都市開発区域につきましても、たとえば住宅公団が工業団地を開発いたします場合に合わして住宅団地も開発いたしまして、社宅用地として確保するというふうな措置をとっております。ただイギリスの場合は、町づくり全体につきまして一つの公団といいますか、事業体をつくって非常に総合的にやっておられます。ところがわが国におきましては、工業団地と住宅団地を総合的にやれるというのは公共団体か住宅公団でございまして、しかもそれは個々の団地ごとにそういう事業主体があるわけではございません。したがいまして十分に総合化できないうらみもございますけれども、方向といたしましては、ただいま先生のおっしゃった方向で進めてまいりたいというふうに考えております。
  48. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  49. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩速記を始めて。      ―――――・―――――    午後二時開会   〔理事熊谷太三郎委員長席に着く〕
  50. 熊谷太三郎

    ○理事(熊谷太三郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  地方公務員服務等に関する件及び地方事務官制度に関する件を議題といたします。  質疑のおありになる方は順次御発言を願います。
  51. 和田静夫

    ○和田静夫君 まず、地方事務官制の問題について、二、三この機会にお尋ねをしておきたいと思います。  昨年の十月二十二日の本委員会において地方事務官制についての私の質問に対して、長野行政局長は、「社会保険出張所におりますところの地方事務官問題の処理はそういう医療保険の抜本的改革の一つの案というものと並行して考えていくのが妥当ではないかというような考え方が現在関係閣僚の間で話が出ておる。」と答えておられました。また昨年十一月二十六日、労働行政機構の改革についての覚え書きが、行政管理庁長官、労働大臣、自治大臣の間で取りかわされております。この医療保険制度の抜本改革と、労働行政機構の改革が口実になって、四十三年十二月という行政改革第二次計画についての結着がまた延び延びにされてきたのだと私は理解をいたします。しかるに、今国会も医療保険制度の抜本改革は見送られるようであります。労働行政機構の改革案もまだ提案をされません。そしてこれもこの国会には間に合わないようであります。すると、またまた引き延ばしをする、こういう形になるのかと思いますが、地方事務官制度廃止問題の見通しというものを、ぜひ次官のほうからお聞かせを願いたいと思います。
  52. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) 地方事務官を廃止するという基本的な方針は何の変更も加えておりません。何としてもこれを完遂しなければならない、かように心得ております。ただいま和田先生お話にもございましたが、労働行政の問題につきましては、労働省と協議をたびたび重ねてまいっておりますが、職業安定所の職員の人事権が知事に委任される、たとえばこういう問題につきまして、国家公務員法の適用関係をどうするか、こういう法制上の非常に困難な問題に労働省は直面しているようでございまして、労働省といたしましては、この国会への提案がむずかしいという判断をしているようでございます。しかし私ども政府といたしましては、この国会への提案が間に合いませんでも、各省できる限りの努力をいたしまして、できるだけ早い時期に解決をはかりたい、このように考えております。  それから、御質問にはございませんでしたけれども、運輸行政につきましては、自治省と運輸省の間の事務的な詰めがだいぶ進んでまいりまして、もうそう時間をかけずに、これは両省の間で結論が出し得る、このように考えております。  地方事務官問題が解決されました場合に、自治省としては、財源措置も当然考えていかなければならないことと思います。関係各省との協議の中におきましても、地方事務官問題を解決いたしますときに、財政問題を同時に解決をしなければならない、自治省としてはかように決心をきめて、各省と協議、努力を続けてまいりたいと思います。
  53. 和田静夫

    ○和田静夫君 大ワクのことはわかりましたが、いま述べましたように、長野行政局長が十月の二十二日の委員会で述べたように、いわゆる医療保険の抜本的改革の問題とのかね合いにおいて社会保険出張所におる地方事務官の問題について一定の結論を得たい、そういうことが好ましいのだ。地方自治法の附則八条にいうところの取り扱いについて、いわゆる地方事務官をなくすという原則は、廃止の方向を確認をしながらそのことを行なっていくのだ、こういう二つのことが並行的にあのときも述べられているし、地方行政委員会全体の長い討論を経て、そのことは後者は後者として原則として確認をされ、前者の部分は一つの政治的な動きとしてながめられてきたと思います。ところが医療保険の抜本的改革という問題は、御承知のとおりまだ手がつかない、こうなってきますと、私はここに原則に返って、地方事務官制度は廃止をするというそのことをまず行なうべきである。二十何年間にわたって放置をされているこういう状態というものが、今後もなおある一定の見通しがなくて延ばされるということは許されない、そういうふうに考えますが、いかがですか。
  54. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) 医療問題の抜本改正というものがおくれておりますことを私も実はたいへん残念、遺憾に思っております。ただ、もう少し時間がかかるようではありますけれども、ことばづかいは悪いかしれませんが、もう何年もかかることではない。そうといたしますならば、先生がおっしゃいますところの地方事務官をなくするという原則をあくまでも私どもは捨ててはおりません。おりませんけれども、やはり抜本改正のあり方によっては、地方事務官そのものはなくすでありましょうが、事務の配分をどうきめていくかというふうなことも、抜本改正のきまり方いかんによっては出てまいる答えが違うだろう。そうであるとするならば、地方事務官として働いておられる方々に、二度も三度も御心配をおかけするということも、避けなければならない一つの問題点でもございます。したがって、もうそれほど――まだ少し時間は必要かもしれませんけれども、そう先が遠いわけでもない。厚生当局も、厚生大臣もそういうふうな見解を国会でも述べておられるところでございますが、抜本改正の答えが出ましたときにひとつ地方事務官をなくすという原則もあわせてこれを解決をしてみたい、こういうふうに考えております。
  55. 和田静夫

    ○和田静夫君 もう何年もかかることではない、こう言われるわけですが、少なくともたとえば健保特例法に見られますように、二年で一定の仕事はなし遂げるということでもって二年延長されておる。ところが、今度またさらに二年になるというような形になってきますね。そうすると、やはり少なくとも二年以内には解決をしない、そういうふうにお考えになっているわけですか。
  56. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) 厚生大臣の国会での御答弁を私拝聴をいたしておりましたけれども、私が受けておりますニュアンスは、今回の特例法二年延長をお願いされるようでございまするけれども、二年まるまるたたなければ抜本改正ができないということをきめてかかる必要はないのじゃなかろうか、私自身はそのように考えております。むしろできるだけ早い時期に、特例法で二年延長されましても、その期間内のできるだけ早い時期に抜本改正を当然行なうべきではないか、こういうふうに私らは理解をいたしております。
  57. 和田静夫

    ○和田静夫君 当然二年以内に行なうべきであるというふうにお考えにはなっている、しかし具体的には四囲の事情がある、そうスピーディにこのことを一体許す条件にあるのかないのかということを考えてみると、なかなかたいへんな状態にありますね。そうすると、私はそのことが口実になって、いわゆる地方事務官制度、身分関係そのものが遷延をさせられるということに私はなると思う。少なくとも自治法の附則八条のいわゆる主語の状態――本来的には都道府県の職員、そのことにまず自治省が手をつける、そういうことが今日私は必要なんではないか、そう思いますが、そういう努力をされるおつもりはありませんか。
  58. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) 気持ちとしては、そういう気持ちを持っていないとは決して申しません。ただ現実問題として、地方事務官の方の身分の問題、これには当然その方にいまやっていただいておる仕事の問題があるわけでございます。その仕事府県で全部やることになっていくのか、あるいは、一部は国、一部は府県というふうな事務の分配がきまってまいりますのか、その問題もあわせ地方事務官を廃止するときには当然解決しなければならない問題でございますが、そういう意味合いで、厚生省、自治省の間の思想統一と申しますか、いまの段階ではなかなか困難な事情にある、地方事務官という制度を廃止をしてしまうという原則は私どもはあくまでもこれは貫いてまいりますけれども地方事務官を廃止するときには、あわせてこの関係の国並びに府県の事務配分も、抜本的にこれも解決をしてしまいたい、そういう意味合いから、医療制度の抜本改正を待って、あわせ地方事務官問題を解決していきたい、こう考えておるわけでございまして、先生いまおっしゃいましたような抜本改正ができないから、それに名をかりて地方事務官の問題をないがしろにしておるという気持ちだけは毛頭ございませんことをお答えしておきます。
  59. 和田静夫

    ○和田静夫君 繰り返しになりますが、地方事務官の廃止の方向というのは、これは何べんも確認をされているように、政府部内でも何べんも確認されておる。ところが、それにもかかわらず、いま社会保険の問題の論議を主にしておりますが、なぜ全体としてずるずると引き延ばされるだろうか、あらためて聞くまでもないことだと思いますが、たとえばそれじゃ労働省、かなり真剣に今度法律案を用意しておる。それには必然的に身分――官吏の問題もついていきますが、これもだめになりました――だめになるかならないか、まだ国会中ですから何ですが、とにかくいまのところ出てまいりません。この辺の事情は一体どういうところにありますか。
  60. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 先ほど政務次官がお答え申し上げたような点がなかなか話し合いがまとまらないという一つの大きな問題であると思います。と申しますのは、この職安関係におきまして、公共職業安定所、それから労働基準監督署、それから今度の考え方によりますと、失業保険の関係と労災保険の関係との労働保険関係の徴収を一元化するという意味で、労働保険徴収事務所というようなものを置きたいというのが労働省の考え方でございますが、そういうものにつきまして、やはり少なくとも、今後検討するとしても、いまのところは非常に大きな変革になるので、従来のような形の機関として置きたいというようなことがございました。ただその場合にも、しかしこれらの事務所の職員の人事は、国の機関とはするけれども都道府県知事に機関委任をするというようなことで、従来でございますと、事務の指揮監督はあるけれども人事権がないといわれておりました地方事務官及びそれに関連するような取り扱いの弊害を、少なくともその面では避けるということで考えておるわけでございますが、これが実は非常に技術的な問題をも含めましてなかなか関係各省のそれぞれの見解が一致をいたしません。そういうことで、それが中心の一つでございますが、現在のところそこの問題が解決いたしませんというと、これはどうも地方事務官を解決するという問題でもまだ不十分なことではありますけれども、そこら辺までが解決しないということであれば、どうもこの改革というものに一気に乗っていくわけにはなかなかまいらないというようなことでございまして、そういう意味でもう少し時間をかけたいということがございますので、関係各省とさらに引き続いて検討しようということに現在のところはなっております。
  61. 和田静夫

    ○和田静夫君 まあ覚え書きをつくられたのは四十二年十一月二十六日で、かなり時間をかけて煮詰められて、そうしてこの覚え書きができた。それを実行に移す段になるとさらに手間どる、こういうことになっているわけです。さらに時間をかけられると、こう言われるんですが、一体どれくらいの時間をおかけになるつもりですか。
  62. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) どのくらいの時間かということになりますと、ここで明確にお答えすることがなかなか困難でございますが、問題の一つといたしましては、労働保険の関係の一元化という問題は、時間的に一つの期限がまいるときがくるようでございます。そういうことがございますので、そういうものを解決するというときまでには、私どもも何とか解決をいたしたいというふうに思っております。ただ正直申しまして、関係省の間におけるところのこの覚え書きに盛られたものの考え方についても、だんだん具体化の問題に入ってまいりますと、実申しまして相当距離がございます。その距離をやはり私どもある程度時間をかけても詰めてまいらなければならない。それから公務員関係の身分の取り扱いでございますので、人事当局と申しますか、そういうところから一つの特例をこしらえるという意味で関与してまいるわけでございますが、それらの公務員制度に対する一つの特例的な考え方というものがなかなか例のないことにもなっておるわけでございます。やはりその点も、関係機関がだんだん加わりますものでございますから、その理解を進めることにも多少時間がかかるように私ども思います。それから基本的には、それと同時に、いま申し上げましたように、どうもこの覚え書きに盛られておるものの内容のアプローチのしかたといたしまして、まだ相当距離がどうも正直申しましてあるようでございます。これをもう少し私ども詰めてまいりませんと話が共通の問題になってこないということもございますので、いま少し時間をかしていただきたいと、こう考えております。
  63. 和田静夫

    ○和田静夫君 ざっくばらんにいって、やはり所轄官庁のなわ張り争いというような形のものがたいへん濃厚だと、いま言われたように覚え書きまではいったけれども、これを一体具体化する段階ではたいへんな距離があるという答弁は、そういうふうに理解をしてよろしいですか。
  64. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 御指摘のなわ張りと申しますか、そういうこともあるかもしれませんが、どちらかといいますと府県行政というようなものについてのものの考え方、扱い方、自治行政というものに対する理解のしかたの差異、あるいはまたこういう労働行政についての、何と申しますか、国際的な所管行政等を中心にいたしまして、国際的な条約機構、条約から出ますところの共通的な機構というような約束があるとかないとかいうような議論もございまして、なかなか今度は労働行政に対する見通し、考え方というものにつきましても、関係機関の間でもやはりまたそれについての理解のしかたに違いがある、正直申して違いのある面がある、こういうものが問題を具体化してまいりますときにやはり出てくるわけでございまして、この点を一つ一つ解決してまいりませんと、いいかげんなことで制度を動かすというわけにはどうしてもまいらないわけでございますので、まあその点が、必ずしも所管権限を争うという意味じゃなくて、やはりまだ考え方に相当開きがあると申したほうがよろしいかと思います。
  65. 和田静夫

    ○和田静夫君 さっき政務次官も言われたのですが、いまも述べられたように、地方事務官の所掌していた事務をどういう方向で処理すべきかという形で所轄官庁のいろいろの主張がなされる、それが前提になっている、そういうふうにどうも感ぜられますね。たとえば、附則八条の中の「当分の間、」を取ってしまいます、こういうふうにおそらく自治省の側も私と同じような形の立場で述べている。それに対して、いみじくも政務次官言われたように、現実やっておる事務をどこに持っていくかということがやはりひっかかる、そういう問題の立て方になっているようにこの答弁を聞いていて思うのですが、しかし私は、その問題というのはもう答弁に実はならないものだと思います。結末がついている問題だと思う。もっと言ってしまえば、そういう問題の立て方がなされること自体がもうすでにおかしいのじゃないかというふうに私は少なくとも思います。なぜならば、昭和二十五年のいわゆるあの神戸勧告が地方自治法の附則八条によるこの制度というものを暫定措置として認める勧告を行なったのは、社会保険業務や労働基準監督業務や職業安定業務をはじめ多くの国家事務が地方事務に間もなく移譲されるということがきわめて当然のこととして考えられておったからにほかならないと私は思うのですよ。臨時行政調査会その他の答申も私は同様の考え方に立っているものだといってよいと思うのです。国家事務の地方への移譲ということのほとんどが役所のなわ張り争いによってほとんど骨抜きにされてしまった現状であっても、私たちは、いま昭和二十五年当時の初心を取り戻す必要が政府の側にある、そういうふうに思うわけです。当分の間といいながら、すでに二十年余を経過しているのでありまして、ちょうど十二年目ぐらいでしたか、前の自治省の事務次官で当時東京都副知事の鈴木俊一氏が国会の参考人として述べているように、十二年もたって、当分の間ということにはならないのじゃないか、すみやかに国は地方に移管すべきだという主張を参考人として述べられましたね。それからまた十年余たとうとしておりますね。そして、その間私は見のがすことができないのは、歴代の自治大臣が、努力をする、と明確に答弁をされ続けてきております。委員会でこの問題が論議をされるたびにそうしているわけですから、私は砂田政務次官が述べられたように、原則はそのとおり確認して、そのことを行なっていくのだと言われておりますが、また、その原則を確認をしてそのことを努力をするんだという答弁に一体とどまってしまうのかどうかたいへん危惧いたします。ひとつ野田自治大臣の体制の中でこの問題は解決するのだ、こういう御答弁をなされませんか。
  66. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) 事務の地方移譲の問題、和田先生と私どもは同じ主張で今日までやってまいりました。今後も自治省としての方針は何ら変える気持ちは持っておりません。ただ、時間がかかっておりますので、自治省の努力が足りなかったのではないかというおしかりは、これはもうあえて受けなければならないかもしれませんが、先ほども申し上げましたように、事態は進展をしてまいっております。ただいま長野局長もお答えいたしましたとおり、労働省との関係も相当進めてくることができました。運輸省・自治省間の陸運事務所の問題についても、もうそう長い時間かけないで結論が出せるところにまいっております。原則的には事務を府県に全部移譲させていく、こういうたてまえを自治省は取り続けてまいっておりますけれども、こまかいことを詰めてまいりますと、長年かかっておりますからこういう変化が出てくるのかもわかりませんが、例を一つ申し上げますと、対運輸省との関係で、車検でありますとか、登録でありますとか、こういうことは、府県が持つよりは、やはり全国的な規模でやるほうがと申しますか、コンピューターもこれだけ発達をしてきたり、通信関係もこれだけの発達を見てまいりますと、必ずしも府県が車検の登録というふうな事務をそれぞれ持つことがいいのか、あるいは全国的な規模で見ていくのがいいのか、そういった変化もまた出ておるところでございまして、そういうことの詰めに少し時間がかかって、私どもといたしましては野田大臣在任中に何とか結論を出したい、そういう努力は今後とも引き続いてやってまいりますことをはっきりとお約束いたしますと同時に、こういった事務の問題、先生おっしゃったような役所のなわ張り争い的なところがないとはあえて申しません。私も多分にそれを感じます。大臣政府次官といたしましては、そういうなわ張り争い的な感覚に巻き込まれないように、国民立場で、あるいは地域社会住民立場で、どうすれば行政が簡素化され、どうすれば地域社会住民としてより便利な行政になるか、そういう角度で、できるだけ早い時期に結論を出す、そういう努力をしてまいりたい、かように考えております。
  67. 和田静夫

    ○和田静夫君 行政局長、労働、それから運輸の関係というのは覚え書きまでいっていますからあれですが、厚生当局との話し合いというのは、具体的にはどういうところがいまネックになっておりますか。医療制度の抜本改革問題をおいてみてもまだあるでしょう。たとえば公社化案でいってみようとか、いろいろなことが言われたことがあるのですが、その辺は一体どうなっているんですか。
  68. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 御指摘のような案も一時あったことがございます。それから医療制度の抜本改革というもので伝えられておりますところのものにも、職域保険、地域保険というような大きな分け方などされて、大きな改革が行なわれるようでもあります。その前に、厚生省との関係で考えましたときには、具体的な問題と申しますよりはむしろ考え方といたしまして、私どもはこれは完全に地方の事務として考えるべきもので、そして地方事務官というのは地方公務員に切りかえる、これが最も大切なことといいますか、必要なことだという主張をしておりますが、そこら辺に対しまして、結局問題といたしましては、社会保険と国民年金と二つございますが、保険というものは政府の管掌する、政府が経営する保険である。したがって保険というものは、全国一本で経営者が経営する。したがって同じ経営主体として考えていく以上は、あらゆる末端の機関と申しますか、組織というものは、その一本の経営体の手足として動いていくというのが筋であって、したがってそういうものとして、西欧諸国でも一種の経営体として経営しているというのが考え方の一つとして現に出ておるではないか、こういう思想を基礎にいたしまして、厚生省当局としては従来からこれに、私どもの議論にはかみ合ってきていないというところがございます。正直に申しまして、これがもう根本的な意見の分かれ目と申しますか、そういうことでございまして、そういうことをめぐりましていろいろやりとりをして今日に至った。その間に、先ほど政務次官が申し上げましたように、医療保険制度の抜本改革という問題が出てまいっておる、こういうことでございます。
  69. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、そんなことはありませんと言われればそれまでかもしれませんが、たとえば厚生省の論議が勝ったという場合に、身分は、地方に移管されるのではなくて、すべて国家公務員になってしまうという、そういう可能性というものは存在をするのですか、そういう一面もありますか。
  70. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) いまのようなお話の抜本改革というものができました場合には、そういう場合もあると思います。
  71. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうですからそういう場合のことがたいへん一つは危惧をされます。そうなりますと、先ほど私が述べましたように、長く論議をしてきて、しかもわれわれがこの正しいという、そういう考え方が結果的には否定をされてしまう。それも、医療制度のたとえば抜本改革という問題なんかは、いま局長も述べられましたように、身分移管の問題の論議が起こった歴史的な流れから見れば、近々のわずかの時間に入ってきた問題にすぎません。言ってみれば、論議の原則というものは長く時間をかけておったほうに私はあったと思いますよ。そうすれば、それを先決的に解決をしていく。なぜならば、自治法の附則八条ができたときの精神というのは、事務の取り扱いの問題についてはすでに私は解決をしておることという前提に立ってできておるがゆえに、いまのような主張が当然成り立つと思います。よって、一番最初の論議に返りますが、それらの医療制度の改革の動きであるとかというようなものをそのままの形において、まず基本である地方事務官制度は廃止をするという原則をこの機会に実現をする、そういう立場自治省当局として立たれるのは私は当然ではないか、そう思うんですが、いかがですか。
  72. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 地方事務官問題として考えます場合には、先ほど政務次官の申し上げましたように、解決の方法は自治省としてはさまっておる、と申しては語弊がございますが、きまった方向で常に考えておる、こういうことに相なります。先ほどお話がありました論議の時間の長いほうに先にいくべきじゃないか、これも一つの御意見であると思います。ただ、どちらかといいますと、そういう言い方がはたしてそれだけが適用するというか、それが重要な討議だということは申しませんけれども地方事務官問題を解決しろという迫まり方といいますか、問題が大きくなったことが、逆に言いまして医療保険問題の抜本改革という面を促していったという面も私ども確かに見のがすことができない一面ではないか。厚生当局というものもそういう面で、それだけを申しますと変でございますけれども、私ども話し合っております間にもだんだん追い詰められてきた。それがいろんな問題と一緒になりましていまの抜本改革というように考えて、内容はともかくといたしまして、いく、一つのささやかだったかもしれませんがそういう空気をつくっていったということも見のがし得ないのではなかろうかというふうに考えております。
  73. 和田静夫

    ○和田静夫君 かなり局長の答弁は厚生当局に善意にあれされておるんですが、私は逆に窮鼠ネコをかむだろう状態において、どうも厚生当局というのは抜本改革という問題を出してきた、それに籍口をさせる、こういう状態というものを強く感ぜざるを得ません。したがって、繰り返しませんが、私が申し述べましたような形での努力というものを続けていただきたいと、こう思います。大臣が見えましたが、いま政務次官からも、野田大臣在任中にこの地方事務官廃止問題については解決をする、こういう形で努力をすると、私はそれに対しては日時を遷延させられては困る、全くそれは早い機会に、短期間のうちに解決をすべきだ。これはまあ考えてみれば、野田大臣が次の内閣改造でも自治大臣に残られるというようなことがあるんだから、その間に解決するんだということに逆ではなるかもしれませんが、ともあれ地方自治法の改正にまっこうから踏み切って、地方事務官制度を廃止をし、身分を地方に移譲するという考え方に反対をする各省とはまっこうから論陣を張る、そういう考え方というものを強くしていただきたいと思うんです。私は、そうすれば世論は圧倒的に野田自治大臣を支持するだろうと思います。国民の多くは野田自治大臣を名自治大臣として記憶し続けるだろうと、こう思います。大臣、決意はいかがですか。
  74. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) 地方事務官問題は、和田さんの非常な御熱意なおことばを承ったのですが、自治省といたしましてもこの問題はなるべくすみやかに実現したい。そうして自治体の自主的な行政に取り組みたいというのは基本的な考えでございまして、私といたしましても非常にこれを希望いたしておるところでございます。先般の関係大臣と前自治大臣との覚え書きも御承知のとおりでございますが、今国会においてぜひ解決したいという方針でいっておりましたが、労働行政につきましては、職業安定所等の職員について、国家公務員法の適用関係その他において、法制上非常に困難な点が残った、こういうことで、最近に至りまして、どうも今国会に提案する運びに至らないということになりまして、きわめて遺憾に思っておる次第でございます。そこで、もしかりに今国会の提案ができないといたしましても、私といたしましては、さらに今後関係各省間で協議を行ない、できるだけ早く本問題の解決に当たりたい、こういう考えを持っております。
  75. 和田静夫

    ○和田静夫君 後ほど、いままでの論議の経過というのを政務次官、行政局長からお聞き取り願いたいと思うんですがね。とにかくさっきも述べたんですが、昭和二十五年以降、各大臣は努力をするということを言い続けられてきているわけです、自治大臣はずっと。野田自治大臣もまたいま、努力をする、こういうふうな答弁なんですが、そうすると、努力をするという形の言いのがれで、この問題というのは未解決のまま二十何年間流れてしまっている、こういうことになるわけですけれども、その辺のやっぱり政治的責任の自覚といいますかね、そういうものをやっぱり政府としては感じ取ってもらわなければならない。そういう意味で、私は、野田自治大臣の在任中に事務官問題というものは解決をするんだ、こういう形で決意をして、それこそ全く短時日に努力をしていただきたい、そういうふうに思います。  次に進みますが、去る三月二十九日の予算委員会の第四分科会で、私が時間がなくて質疑を残した分で、大臣に後ほど尋ねますと言っていた二、三について尋ねておきたいと思うんです。まず一つは、自治省の森清氏は「地方公務員月報」の十二月号に、公務員第一課長の当時の肩書きで次のように書いております。「ある人は、国や地方公共団体は、「つぶれない企業」であるから、労働者側は「会社をつぶすと同時に自分も失職する」という心配はないし、理事者側としても、いわば「雇われマダム的」事勿れ主義に陥り易いと指摘している」、ここまではある人が指摘しているんですが、「残念ながらこのことを認めざるを得ないであろう。」ここは森さんの主観であります。そこで大臣にお尋ねをしますが、美濃部東京都知事は、「「雇われマダム的」事勿れ主義」におちいっていますか。
  76. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) それは美濃部都知事だけではなくて、やはり公営企業関連の理事者としては、私はみんな一生懸命公営企業が健全になるようにもちろん考えていると、こう思っております。
  77. 和田静夫

    ○和田静夫君 とにかく「「雇われマダム的」事勿れ主義」におちいっていると、こう言われるのですが、それじゃ、あれでしょうか。美濃部さんはおちいっていない、あるいは京都の蜷川知事もおちいっていない、こう理解していいわけですね。
  78. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) まあ私のは常識論でありまして、個々の人をだれだれということは、調べなければわかりませんけれども、私は常識的に申せば、やはり皆さんが、自分が理事者になって公営企業に関連する以上は、何といいますか、「事勿れ主義」でいけるなんという――これは一種の常識ですから、私は一般論で、どの人がどうだと和田さん言われても、一々私は直接本人に聞いたことはないので、無理な御質問だと思うのですが、一般的に常識論として、私はそうだと、こう思っておるわけです。
  79. 和田静夫

    ○和田静夫君 無理な質問なんですよ。ところが書かれているんです。書かれているんですから、やはり確かめておかなければならない。そうすると、いま一応革新と言われる方は「事勿れ主義」じゃないという。そうすると、ここにたとえば大正十三年組の町村金五さん、北海道知事。あるいは最近なられた十八年組の山本壮一郎さん、宮城県知事。あるいは昭和九年組の神田群馬県知事。あるいは津田文吾神奈川県知事。友納千葉県知事。中西陽一石川県知事。西沢権一郎長野県知事。知事会の会長である桑原愛知県知事。あるいは野崎欣一郎滋賀県知事。金井兵庫県知事。大橋和歌山県知事。奥田奈良県知事。あるいは鳥取、岡山、鹿児島と、知事関係はいろいろたくさんいますが、こういう人たちのことを一体言われているんですかね。これも一人一人聞いたことがないからむずかしい質問だということになると思いますが。
  80. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) 私はさっき言ったとおり、少なくとも公営企業に関連のある企業の理事は、私はすべての人がそういう良識でいっておられるであろうということを最初から言っておるわけで、革新関係の知事だとか、保守系とか、そんなことはぼくは頭にないものですから、当然理事者になる人なら、自分の仕事がりっぱにいくように考えるのが常識ですから、和田さんのような革新とか保守ということは頭にない。人間というのはそれは良識だと思うのです。
  81. 和田静夫

    ○和田静夫君 大臣はそう思われます。しかしこれは大臣、あなたの管轄するところの自治省の公務員課の当時第一課長が書いているのですよ。たいへん失礼な話だと思うのです、言ってみれば。ここに石川県の副知事でいらっしゃった安田さんもこの席に見えます。あるいは長野県知事の林さんもこの席に見えます。明確にこの二人の方を森清さんは侮辱されている、この論文は。こういうことになります。こういうことが一体許されるかどうか、この措置について一体どういうふうに考えられるのか、明確にしていただきたいと思います。
  82. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) まあその人の持っている意見を出すということは、これはある程度やむを得ないことで、そこまでかれこれ人の考え方、思想を牽制するわけにいきません。しかし少なくとも、これも常識的なことばですが、妥当ではない、どうも穏当ではないという気はいたします。
  83. 和田静夫

    ○和田静夫君 昨年の予算委員会で、私が、「自治研究」などと違って、「地方公務員月報」は同人雑誌ではない。自治省の指導機関誌である。そういうものに自治省の重要ポストにおる人が一個人の主観的見解を載せることは問題ではないかという趣旨の質問をいたしました。それに対して野田自治大臣は、たいへん良識的にお答えになりました。それは、和田さんの御指摘になりました局長、課長、重要な自治省の職務を担当しておる職責を持っておるものでありますから、これは個人の感情とか、個人の考え方を局長とか課長の名前において発表するのは、やはり十分考慮してもらわなくちゃならぬ、こう言われまして、注意いたします、と述べられました。この森氏の文章について、森氏本人に大臣は注意をされましたか。
  84. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) 次官を通じて一応注意しました。ぼくは最近あらためて全体において和田さんお話しの、局長とか、課長とか、重要な任務を持っている人は、まあ自分の個人的見解ということもありましょうが、それにもおのずから節度がございます。やはり良識ある言動をするように、あらためて注意したいと思って、実はいま私が申し上げておるのですが、常々考えておるところです、それをやりたいと思っております。
  85. 和田静夫

    ○和田静夫君 特に森清氏の場合は、何度も同じ形の誤りをおかされている。こういうことになっておるわけでありまして、前の論議について私はここで重複をしようとは思いません。内部的な問題でありますから、深く人事問題に立ち入るということにもなかなかならないと思いますけれども、しかし、どうしても考えてもらわなければならないことは、この人はいま行政課長というポストについております。自治省の組織令の第六条によれば、そこで行政課の任務を明示をされておりますが、特に、「地方自治法その他の法律に基き自治大臣に属せしめられた地方行政に関する権限の行使に関すること。」これは彼の任務の一つであります。課長はその末端の管理職でありますから、ある意味では一番大きな影響力を持っておる。したがって、私は後ほど若干質問を続けますが、厳重に処置をしてもらわなければならないと思います。私はこれを三月二十九日の予算委員会の第四分科会で、野田自治大臣に対し、時間がございませんでしたから、抽象的に確認をしました。その部分を、きょうはむしろ具体的に一ぺん読み上げておきますが、「一つは、公務員部は、地方公共団体の労使双方に対し常に公正中立の立場で行政指導、助言を行なう。二つは、公務員部は、財政事情のいかんを問わず、地方公務員の待遇改善、定員確保、権利保護のために絶えず行政上注意を払って積極的に発言し、行政指導を行なう。三つは、公務員部は、労働運動に干渉したり弾圧するためのものでないことを確認する。四つは、公務員部は、地方公共団体といわゆる職員団体等の関係におけるこれらの紛争について地方自治体の自主性を侵すような介入、指導は行なうべきではない。特に任命権者に属する懲戒処分などについて、その具体的な内容にまで立ち入って任命権者に強制を加える指導助言をしない。」ということを実は言っているのです。昭和四十二年八月十八日の衆議院地方行政委員会における藤枝自治大臣の確認事項の大ワクをこの前自治大臣に再確認をいたしました。ところが昨年九月に各自治体に配られた対策資料は、そのはしがきに、「昨年、日教組、都市交などがストに突入したにかかわらず、自治労のみがストを中止したことについて自治労の面子、下部反主流派の突上げなどがあり、今年は、自治労中央執行部としては、背水の陣を敷かざるを得ない事情となっている。以上のような闘争の展望と経過に基づき、本年の自治労等の秋闘対策に」云々という述べ方がされております。これは私は昨年、政府が五百十一万五千円委託費を出した地方公務員制度研究会の発行した資料であります。こうなると明らかに藤枝自治大臣以来の約束がほごにされていることがわかります。国会における大臣の約束というものは、一体そんなにも権威のないものであるのですか。私はそうであってはいけないと思います。野田自治大臣はさきの確認に基づいて、このようなことが惹起しないということを約束することができますか。
  86. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) いまお読み上げになりました公務員部に対してのいわゆる三原則、私はこれはやはりこの三原則に沿って事柄を処理していくのは、これはもっとも妥当だと思っております。
  87. 和田静夫

    ○和田静夫君 ところで、私は昨年の十月二十二日の本地方行政委員会において、当時の自治省公務員部公務員第一課長の森清氏が昭和四十三年九月十四日、長野県信州新町福祉センターにおいて「期待される公務員像」と題して長野県上水内郡、更級郡のうち西山部の五カ町村の理事者及び職員を対象に話した発言中、森氏が住んでいる区役所の職員を誹謗した発言について、公務員部の責任において調査をするよう、どこの区役所のだれがどういうふうにだらけているのか、報告するよう求めておきましたが、その後の調査結果はどうなっておりますか。
  88. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 公務員部長でございます。確かに昨年和田議員からその点の御発言がございました。森君は私のほうの当時の課長でございましたので、森君にそういう事実を――私のところに持ってまいるように話をいたしてございますが、いまだに提出をみておらないのでございます。
  89. 和田静夫

    ○和田静夫君 いつまでに調べられますか。
  90. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 早急に調査をいたしまして、御連絡を申し上げたいと思います。
  91. 和田静夫

    ○和田静夫君 たいへんな時間がたっているわけですからあれですが、当時の私の調査では、話を聞いて驚いたのですが、森氏は新宿区戸塚に住んでおられます。そうすると、その対象は東京都全体の区役所でもあり、また住んでいる東京都新宿区役所でもあるわけです。私は昨年五月三十一日、東京都新宿区役所を退職いたしました。約二十年近くこの新宿区役所の職員でありました。そうなりますと、森氏が発言されたその対象には私も入るわけです。たいへんふしぎな縁でありますが、話をされた場所は実は私の父親の出身地であります。私のふるさとにつながる。その自治体でもって実はこの発言がなされたわけですが、こうなりますと、どうしてもお聞きしなければならないのは、私の一体どこがだらけていたのか、明確にしてもらわなければならないと思います。また私をさすのでなかったならば、約二十年間、私の同僚であった新宿区役所の職員のだれがだらけておったのか、また私の上司であった人たちのどの人がだらけておったのか、明確にしていただかなければなりません。あるいはそれを新宿区役所をさすのではないのだと言われるならば、他の二十二区の区役所の他の同僚職員のだれかがだらけておったのか、ここで明確にしていただきたい、そのことを約束できますか。
  92. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 本人につきまして具体的な事情調査いたしたいと思います。
  93. 和田静夫

    ○和田静夫君 私はここに、そのときお話になった全部をテープにとって翻訳したのを持っています。したがって、そのことをよくお知りになって、十分に調査をしていただきたいと思います。大体私が前に質問してから、公務員部からは何の連絡も、実は今日までこのことについて連絡がなかったのです。したがって、長期間かけて調査をされている、あまりに期間がかかりすぎる、こういうふうに考えておって、きょうは自信をもってその信憑性についてあなた方のほうが明らかにすることができるだろう、こう考えておったのでありますが、いまなおその調査を怠っていた、こういう残念な結果になります。私は、委員会における発言は単に無責任に発言をしているつもりはありません。あなた方に求めておるところの資料も、あるいはその返答も、私の期待したように実はなされておらない。したがって、今後このようなことが起こることのないように注意をしていただきたいと思いますが、私は無責任もはなはだしいと言わざるを得ません。森さんの例で考えてみますと、多くの旅費が用意をされ、多くの謝礼金が支払いの準備をされて、そして権威ある中央の担当の役人の話を聞こうということでもって、自治体関係の人たちがとにかくあれだけ集まっている。そこに出向いていって、集まった地方公務員に対して同じ立場にある地方公務員の侮べつをするというような形の発言がなされる。このような発言がれっきとした国家公務員の口からなされる。全く国民全体の奉仕者たるにふさわしくない言行ではないかと、こう私は考えますが、大臣、いかがですか。
  94. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) 私はその話の内容を詳しく知りませんが、いま鎌田公務員部長が調べるということでございますが、調べましたあとで私の意見も申し述べたい。実は具体的に本人が何かつかんで話をしたのか、一般的にそういう話をしたのか、そういうことも少し調べまして、その上でひとつ事実に基づいてお答えをしたい、こう思っております。
  95. 和田静夫

    ○和田静夫君 大臣、事実はもう明らかなんであります。明らかなんでありまして、しかも昨年の十月から今日まで調べると答弁をされながら結局は調査をされないで放置をされている。私のほうは、もうつまらぬ問題だから、調べるのは実は手数だからそっちで調べてくれ、こう言ったのであります。ところがたまたま自分がいたところのものであったものですから、より突っ込んで調べざるを得ないという状態になったのでありますが、国公法の第九十九条は、「職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」とあります。この森発言は、まさに官職全体の信用を傷つける行為、それは東京都の区役所職員という地方公務員であっても、いわゆる公務員一般の権威を冒涜する行為と言って私は差しつかえがないと思いますが、いかがですか。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕
  96. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) いま申しますとおり、いま和田さんの御指摘のとおりでございますと、これはやはり相当穏当を欠いていると思います。しかし、もう少し事実を調査するとせっかく公務員部長も言っておりますから、それに基づいてまた私の意見を申し述べたい、こう思っております。
  97. 和田静夫

    ○和田静夫君 それじゃこの項については、なお調査をされた結果に基づいて論議をするとしますが、ともあれ、こういう場合においての一体出勤簿の取り扱いがどうなっているのかということも興味のあるところでありますので、森さんが長野県のここに出かけて行かれた前後の三日間の出勤状態の取り扱いはどうでありましたか。あるいは旅費支給法の取り扱いはどうなのか、資料として同時に提出をしていただきたいと思います。ともあれ、自治大臣に考えておいてもらわなければならないのは、こういう言行について私は厳格な処置をする、そういうおつもりがなければならないと、こう思います。ここに岩手県大船渡市長と職員組合の交渉の速記録があります。そのすべてを読み上げようと思いましたが、時間もありませんからちょっと要点だけ二、三読みます。「〇市長 御目玉ちょうだいしたからです。」「〇市長うん、第一課と言ってましたね。」、これは公務員部第一課をさすんです。「〇市長課長だか、そりゃわかりませんが。第一課と言っていましたよ。」、こうなっている。それから市長から電話かけたのかという問いに対して、「〇市長 いや前に電話があったというんだ。」、それから、「〇市長行政指導です。」、この措置は行政指導であると言っている。それからこうなっております。「われわれの一番の親分だから、あれは。あれに鼻を曲げられた日には、」たいへんなんだ、こういうふうに述べております。親分だから鼻を曲げられないようにしなければならぬ。それから、「〇市長 私は、その時電話で聞いたがね、これはどこの法律で、どういうことになってそういうことになるんだと、そんなことは聞く必要がないんだと。こっちでそうするならば、取り上げればそれでいいんだと、こう言うんで、もう頭からガツンなんだ。なんだ、しょうがねえんだなあと、そんなことは、そのあんたは経済人だが知らんけど、市長になったからつてそんな法律わかったもんでねえから、ちゃんとこっちは専門にやってるんだから、そんなこと聞く必要もなければ、こっちでそういえばそれでそのとおりしたらいいじゃないかと、」、いわゆる、あなたは経済人あがりの市長だから、法律なんかわからない、法律は専門家の森清にまかしておけ、要約してしまえばこう言っているわけです。したがって、市長は、「はなはだ不本意ながらね、取り消しなんかねぐなったと」、こういうふうに、以下一ぱいあるんですが、要するに、これは市長と組合との間ですでに出されたある一定の処分ですね、その処分を、市長と組合がまさに自主的な関係でもって話し合って、市長の側が他の関係等をずっとからめてきて、少し重かったと思ったから少し下げましょう、修正をしましょうとしたんです。ところが自治省公務員部が介入をして、もとの処分内容に実は返ってしまった。そのときのことをめぐる実は団体交渉のやりとりなんです、いまちょっと申し上げたのは。その市長の態度、方針の不当性についてのいきさつを話し合っているものなんですね。これによると、任命権者が一たん行なった懲戒処分の取り消しまたは撤回は、任命権者といえどもできないから、処分を修正すること自体が違法となるという考え方に基づいていると思われるんですね。いま言ったようなことは、一月の七日毎日新聞の森清談話に実は載っておるんですよ。その切り抜きもここにあります。経済界あがりの市長に対して、とにかく経済界あがりだからおまえは何もわからぬのだということで、そこに地方自治の本旨は置き忘れられてしまっていることについて、大臣はどう思われますか。また先ほど確認をしていただいた基本的な大きな四つの項目が、みごとに大臣の意思を体することなくゆがめられてしまっている、こういう状態についてどう考えられますか。
  98. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) はなはだ僣越でございますけれども、事実関係を若干、大臣詳細御存じでございませんので、私から便宜説明をさせていただきたいと思います。  事実関係は、和田議員はすでに十分御存じでございますが、大船渡市長から私どものほうの当時の公務員第一課長に聞いてまいりましたのは、一ぺん有効に言い渡した懲戒処分というものを取り消しないし撤回できるかということにつきましての法的な見解を聞いてきたわけでございます。法律的な見解でございますので、当然法律的な答えを申し上げたわけでございますけれども、すなわち、一たび有効に成立いたしておりますところの懲戒処分につきましては、いわゆる行政法学上申しておりますところの行政処分の法的執行力あるいは確定力、こういったもろもろの効力があるわけでございますが、そういったものからいたしまして、明白かつ重大な過失、事実誤認というものがある、あるいは人事委員会なり、公平委員会なり、あるいは裁判所なり、正当な審査機関あるいは裁判機関によりまして取り消される場合を除きましては、取り消すことはできないという趣旨のことを申し上げたわけでございます。これは懲戒処分の撤回ないし取り消しに関する通説であると私ども考えておるわけであります。またそれに基づきまして、指導を従来とも一貫して行なってまいっておるわけでございます。したがいまして、そういう見解を伝えたことに基づきまして、大船渡市長の御判断に基づきまして、その後の処置がなされたわけでございます。経済人云々ということばがございましたが、そういう失礼なと申しますか、問答無用的な問答をした事実は、私はその点も、新聞に実は載っておりましたので、特に念を押して確めたのでございますが、そういう事実はないようでございます。
  99. 和田静夫

    ○和田静夫君 公務員部長がまず部下をかばわれるということはあたりまえのことでありまして、そうなりますと、大船渡の市長が多くの職員との交渉の席上で述べたことは全くうそである、こういうことになりますね、森さんが言わなかったということになりますと。そういうふうに理解をしてよろしいですか。
  100. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 先ほど申しましたように、法律上の見解はどうであるかということが、この場合の私どもと大船渡の市長さんとの間の問答と申しますか、そのやりとりの内容でございまして、事後の判断はすべてこれは市長の御判断においてなされるのが当然でございます。またなされるべきものでございます。実は私、ただいまお読み上げになられましたのを聞いておりまして、たとえば親玉だとか、あるいは親玉が鼻を曲げられたらどうしようもないというような、そういうことでこのお話をなされたとするならば、非常に何と申しますか、それこそ先ほど来お話がございましたような、いわば労務管理と申しますか、というものについてのちょっとやはり態度としていかがであろうか。あくまでもそれは市長さんが任命権者としての御判断において最終的に御決定になられたことではなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  101. 和田静夫

    ○和田静夫君 いま公務員部長が言われるように、労働関係というのは、何といっても解釈法的なドグマにとらわれることなく、もっとやはり社会学的な目で見ていく、こういう形のことが必要なわけですから、そういう立場に立って、いわゆる任命権者である市長が判断をすることがよろしい、こういうことで、判断の余地があるというふうな答弁と承ってよろしいわけですね。
  102. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 懲戒処分の取り消しあるいは撤回ということが許されるかどうかにつきましての法的な見解を私どもにお尋ねになられたわけでございますので、それはできませんということを申し上げたわけでございます。そういう判断に基づいて、最終的に、市長さんは一たび電話で取り消されたのをさらにまた電話でもとに戻された、こういうふうに聞いているわけでございます。
  103. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうですからいわゆる市長が最終的に判断をする、それはもう当然のことである。いまのこの結論は別として、当然のことである。よろしいですか。
  104. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 任命権者として最終的な御判断は、おっしゃいますように市長さんの御判断において行なわれてしかるべきものでございます。
  105. 和田静夫

    ○和田静夫君 いまの解釈と判断の問題についてはそれでけっこうだと思うのですが、大臣、事実関係の問題について、公務員部長から、そのようなことがなかったのだという言い方をしていますが、実は私は、二月十九日の午後二時、岩手県庁を訪れまして、河野岩手県総務部長といろいろ話しをいたしました。その中でも確認をしたところですが、総務部長も、私に電話をくれればあんなようにはならなかったというようなことも織りまぜながら、結果的には森公務員第一課長の指導であったということを、直接のやり取りであったけれども認めたのです。その直接のやり取りの中で、まさに先ほど言ったように、経済界上がりの市長に対して法律のことは専門家であるおれにまかせておけというような言い方をされるという、そういう行政指導のやり方というのはこれはないと思いますから、大臣、常識的にはどうお考えになりますか。
  106. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) まあ市長の前の身分が経済人であろうが法律家であろうが、そういうことばはちょっと不可解に思いますがね。おそらく、どういうことばを使ったか知りませんが、まあそれはちょっとおかしいことじゃないかと、こう思っております。
  107. 和田静夫

    ○和田静夫君 まあ森さんに関しては、いまのこともあるということを、先ほどの調査と、それから大胆が一定の考え方をお示しになる前に、十分に材料としては、まだしさいにあげればいくらでもあるのです、実は。これはわれわれの側ばかりにあるのじゃなくて、あるいは知事会の中でも、市町村会の中だってたくさんあるのです、実は。その人たちが必ずしも森さんの言行をみな是としていると思ったら大きな間違いですから、そのことも大臣、考えてもらいたいと思う。あげろといわれれば、将来にわたって一つずつ実態を明らかにしたいと思います。  それからこのことは、さっきの私の、調査といいますか、調べてもらいたいということに対して遷延をしてきたということを含んで、公務員部長、行政局長だってこれは責任をのがれられないと思うのです。十分にその辺のことは、行政局長、公務員部長のもとにいらっしゃる方なんですから、現在も課は違ったって、いる方なんです。とにかく十分に考えてもらいたいと思うのです。  同時に私は、鎌田公務員部長責任が逃れられないという一つに、あなたは四月三日午前十時、柴田事務次官室で行なわれた柴田事務次官と自治労栗山委員長との交渉に同席をして、定年制が前国会で流れたのは国会の怠慢であると、国会を侮べつする言辞を弄されたようであります。自治大臣大臣はこの交渉の席上にはいらっしゃらなかったので、ほんとうは大臣と交渉を求めたのですが、国会のほうが忙しかったからあれでありますが、こういう公務員部長の態度、姿勢、言ってみれば発想ですね、発想というものは、私は国家公務員として一体許していい発想なのだろうか。われわれ全体が侮辱をされているわけです。どうですか、大臣
  108. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 確かに私のことばに不穏当な点があった点はおわびいたしたいと思います。ただ一言弁明を許していただきますならば、ちょうど自治労の諸君と私とは非常に親しい仲でございますので、まあ国会において審議を一ぺんもしていただかないままに、前国会におきまして地方公務員法が審議未了になったということにつきましては、これは和田議員も私ども公務員の特に法律にかける情熱と努力――あたりまえのことでございますけれども、これにかけておりまする気持ちというのはおわかりになっていただけるのではないだろうかと思うわけでございます。よけいな弁解をいたしませんが、そういう気持ちがつい、雑談の間ではございましたが、怠慢ということばを用いまして、これは私のことばの不穏当なところでございまして、おしかりはいかようにでもお受けいたしたいと思います。ただ、気持ちはそういうことで、地方公務員法のすみやかな審議と成立をお願いいたしたい、この私の衷情のほとばしりだとお聞き取りいただきたいと思う次第でございます。
  109. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連質問。定年制の問題が審議未了になる、あるいは通らなかった、こういうことは一体だれの責任だとあなたは思っているんですか。国会の怠慢だということばは、まあ不謹慎であったとおっしゃっておりますね。これは不謹慎とか、反省とかじゃないでしょう。本質的に自治省が指導しているんでしょう。あなた、それがたまたま出てしまったんでしょう。そうじゃないんですか。どうなんですか。もっと具体的に言えば、立法府と行政府とのそういう関係は一体どうなっているんですか。失礼ですけれどもそれから伺いたいのです。というのは、私たいへんいきなりむっとしたのは、ずっと前の――いつごろでしたか、地方行政委員会でも、あなたのお書きになった問題で、かなり大きな問題を含んでおったんですね。そういうことがあるんで、続いてまたそういうふうな食言をおかしているとすれば、本質的にやはりこの定年制法案に対してあなたの持っていらっしゃる考えというものを聞かしてもらいたいと思うのですね。人事の衝に当たる方がそういうふうな話をするということは、たとえ雑談の間であっても、不用意に出てくるということはどういうことなんでしょう。私どもは雑談の間であっても、自分の心にもないことを言っていないんですよ。心にあればこそ、お互いに何か場をとらえて言いたいことがあるのは、これは当然なんですけれどもね。省みて反省するどころじゃないでしょう、これは。本質的な問題じゃないですか。みんなあなた、自治労さんも、私ども出身の教員でも、地方公務員の人は今度のこの定年制に対してどんな思いを持って国会を見つめているかということをあなたも御存じでしょう。毎日毎日請願して、署名だって何十万と積もっているか、請願だって見てごらんなさい、ずっといかなる日だってない日はないでしょう。地方公務員の定年制に反対をするという請願をごらんになっていますか。そういうことで軽々しく言える問題かどうかということなんです。たいへん失礼ですけれどもね、ちょっとその点、答えてもらいたい。
  110. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) 地方公務員法案の問題になったわけでございますけれども、この地方公務員の定年制の問題につきましては、これは自治労を中心といたしまして反対運動があることは私ども百も承知でございます。逆にまた、地方団体の任命権者、あるいはまた一般の新聞、論説等におきましても、地方公務員の定年制というものをすすみやかに実施すべきだ、こういう意見があることも事実でございます。それだけにやはり――ここから先は、私の何と申しましても用語の不注意でございますので、これは弁解がましいことは申し上げるつもりは毛頭ございませんけれども、ただひたすらなるお願いといたしましては、国会の場におきまして、そういう問題のある法案でございますから、文字どおり徹底的に御審議というものをお願いをいたしたい、そういう審議の場が持たれないままに、前国会、あの法案が流れたということにつきましてのまあ私の一片の感懐を申し上げたわけでございまして、私といたしましては、あくまでもこの国会におきまして地方公務員法のすみやかな審議というものをお願いいたしたい、その気持ちのあらわれであったわけでございます。
  111. 千葉千代世

    千葉千代世君 ほんとうにこの法案は前国会で流れたとおっしゃったけれども、前々国会の関係はどうなっているのですか。
  112. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) この法案が国会に出ましたのは、実は三回目、先生承知のとおり三回目でございます。昭和三十一年に、当時まず第一回目でございますが、国会に提案になりまして、参議院を通過いたしまして衆議院にまいりました。衆議院で二回継続審議の結果、廃案になった、これが第一回でございます。それから第二回は、昨年、昭和四十三年の通常国会、これに提案をいたしまして、審議未了、廃案になった、それから今国会に提出をいたしまして、御審議をお願いいたそうとしておりますのが今回、こういうことでございます。
  113. 千葉千代世

    千葉千代世君 その通らなかったというその裏には、どういう事情があって通らなかったということを把握になっているのですか。ただ通らなかったのじゃないでしょう。
  114. 鎌田要人

    説明員(鎌田要人君) まあ私ども公務員でございますので、国会のことはよくわかりませんけれども、結果的には、この審議が、昨年の四月二十何日であったと思いますが、衆議院の本会議におきまして提案理由の説明がございまして、総理大臣、自治大臣と社会党の山口鶴男議員との間に質疑がございましたあと、衆議院の地方行政委員会はたしか五月の十日過ぎであったと思いますが、いわゆる提案理由を大臣から読み上げまして、あと全然審議というものが行なわれないまま会期末を迎えた、こういうふうに承知をいたしているわけでございます。
  115. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連ですから、あまり長いのはやめますけれども、それは表面であって、この定年制法案の内容の意味するものというものがどういうふうに地方公務員の身分というものについて拘束を加えるかとか、そういう問題が、たいへんな陳情で明らかになっていったわけですよ。そうして各議員さん方も、やはり今度の国会ではこれは無理だなということは、これは与野党ともずいぶん審議をされたわけです。審議というのは、一人一人考えておったわけなんです。表面では、日程の都合であるとかいろいろな都合があったのですけれども、そう簡単ではなかったと私は思うのです。ですから国会が怠慢であったということ、このことはいま取り消されたから私はそれをまたそれ以上は追及いたしませんけれども、この重大な時期に、私は非常なあなた誤謬をおかしている。一秒を争うくらい非常な真剣な気持ちでもって取り組もうと思っています。ですからこの法案については、いま衆議院のほうの段階でございますので、これからの問題でございますから、じっくりこれに対決しようと私は思っております。そういう意味で、ですから一言一句ゆるがせにしない考えでお尋ねをしたわけなんです。そういう意味で、他意あって聞くわけではございませんけれども、そういう重要な法案ですから、しかもそれを当事者の自治労の委員長さん、栗山さんの前でそんなことを言われたら、これはよくも黙っていると思うのですね。私はそのくらい腹が立っているのですよ。きょうはこのくらいにしておきますけれども……。
  116. 和田静夫

    ○和田静夫君 大臣、たいへん不謹慎であったということで、取り消しはされておらぬわけですけれども、これは国会の怠慢であると、こう言われているのですよ。国会の怠慢であると言われて私たちは黙っているわけにいきません。問題はその定年制の論議にまでなってしまいましたけれども、そのことよりも、私はいわゆる官僚が持っているところの思想性です。まさにこのことばの中に内務官僚的なものが復活をしている。このこれからの過程というものがありありと頭の中に浮ぶではありませんか。大臣、これに対してどのように処理をされますか。
  117. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) ただいま初めてお聞きしたんですが、いやしくも国家公務員が国会の批判をするということ、批判の内容にもよりますが、国会の怠慢ということばは、これはやはり私も不謹慎だと思います。本人がいま自分の不穏当だということを認めまして、まことにすまなかったと言っておりますが、本人がついそのときその場の雰囲気で、自分の立法した法案でありまするから、その関連で、法案作成の情熱といいますか、そういうもので、ついことばの走り、そう私もその点は相当了解できます。いずれにしましても、本人が不穏当で申しわけなかったと言っておりますから、一応それをもって御了解願えれば非常に幸いだと思っております。
  118. 和田静夫

    ○和田静夫君 大臣、これは了解してくれと言ったって了解できる筋合いのものじゃないんです。大臣としては一体国家公務員法に照らしてどう思われますか。
  119. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) いま申しましたとおり、本人が自分のほんとうの意思じゃなく、つい――自分の気持ちとしては国会を無視したり国会を軽視するとか、あるいは国会の怠慢というような、国会を誹議した、誹謗したということじゃなくて、自分の気持ちのそういうあらわし方に非常に誤謬があった、本人もそのように弁明いたしておりますから、それが、いや自分の言ったことは決して不穏当じゃないということになりますれば、これは私としても十分これに対する処置をする必要がございますが、本人――世の中に、よく口が走りまして、ポカといいますか、そういうことがないとも限りませんし、そういう意味において、一応本人がみずからまことに不穏当だ、こう言っておりますから、それはもう本人の意思を私はそのまま受けておきたいと、こう思っております。
  120. 和田静夫

    ○和田静夫君 まあ、昨年の国会で倉石自治大臣も一言多かったということでもってやめられたわけですね。今度は西郷法務大臣も、御存じのとおり、三権分立という問題を基本的にわきまえないような裁判所に対する圧力をかけるというような発言をされて、あわてて取り消された。あれも法務大臣、取り消したくらいじゃ済む問題じゃないと実は思っているのですが、委員会の場所が違いますから多くを述べませんが、国会議員や大臣の側ではきびしくそのことを追及をされる。しかし官僚は何を言っても超然としておれるということは、大臣、許されることじゃないと思うのです。したがって、厳重にやっぱり今後について注意をしてもらわなければ困ると思うのです。いかがですか。
  121. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) 私は実は和田さんの御注意を受けるまでもなく、最近、これは自治省がどうこうというのじゃなくて、一般的にも考えまして、特に私の主管する自治省内部のいろいろな言動について、なおいろいろと不穏当と認められる点が相当ありますので、ひとつ厳重に注意したいとかねて思っておりますから、注意いたします。
  122. 和田静夫

    ○和田静夫君 長野さん、あなただってそうなんですよ。十七日の十七時のNHKラジオ、あるいは十九時のテレビであなたの談話が発表されました。これも一言多かったでは実は済まない内容だと、こう思うのです。それは、釧路のように一方的に打ち切るのは無謀である、こういう談話です。これは談話の原文ですから――これは前段のほうは大体ここちよく私は聞いておったのですよ。地方自治体が、進出してくる企業に対する奨励金、助成金など出すのは好ましくないと考えていたので、この判決を歓迎する――ここまでは私はさすがに長野さんだと思って聞いていた。そしたらあとがいかぬ。釧路のように一方的に打ち切るのは無謀である。その前段には、あなた、経過措置が必要である。経過措置が全然ないのなら、ある意味では許せることかもしれません。しかし釧路の条例だって、経過規定というものは皆無ではありません。そのことは争われて、高裁でも市側が勝っている。それに対して無謀であるという言い方は一体どういうことなのか、この談話に対して、行政局長はどのような形でお考えになって出されたのですか。
  123. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 私は釧路の事件について、高等裁判所でございますか、判決があったという話は、新聞記者の人から廊下で立ち話で聞きました。ただそれについて、私はいかなる談話も発表した覚えは全然ございません。そこで、私もそういうことがラジオか何かで放送されているということを聞きまして、非常に驚いたのでございます。実は私はそういう談話は全然話もしておりません。むしろそういうことを教えました新聞記者に、私はいま国会に出かける最中でございましたので、どうぞひとつ所管の課で、経過もよくわからないから聞いてほしいということで、私は別れたのでございまして、私の談話という、言われることは私はあとから聞きまして非常に驚いた次第でございまして、残念でございますが、どうも私はそういう談話を発表した覚えは全然ございません。そういう経過でございます。
  124. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、釧路市議会での決議に対して、判決についての談話というものは出されなかった。NHKの記者に対しては出されなかったということですか。そういう談話というのは、いま私が言った内容をさされる談話は一切出されなかった、どちらですか。
  125. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 私としては一切談話は出しておりません。
  126. 和田静夫

    ○和田静夫君 自治大臣。いま局長は談話を出されなかったということでありますから、私どもさらに調査をしてみなければなりませんが、ともあれ、先ほどからずっと述べてきましたように、野田大臣が管轄をされる自治省の内部のそれぞれの主要なポストにおられる方々が、重複を避けますが、以上述べたような形での多くの発言なり、あるいは文書を発表されるという事態が行なわれています。そうして、大臣とこの国会を通じての私たちとの関係でいえば、良心的につとめていらっしゃる自治大臣とは全く別の感覚で物事が言われ、述べられ、やられる、こういう状態になっているわけであります。で、これらの問題については、先ほど大臣は厳重に注意すると約束をされましたが、今後再びかかる誤りが起こらないように、大臣責任において措置をしていただくことを約束していただきたい。
  127. 野田武夫

    ○国務大臣(野田武夫君) 和田委員のおことば、よく私理解をいたします。私もいろいろな個人、だれだれということは別にして、幾多のことがあるようであります。一応いろいろなことを耳にいたしております。先ほどお答えいたしましたように、厳重に注意いたします。再びこういうことが起こらないように、自分としても各員に対して注意を促したい、こう思っております。
  128. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  129. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 次に、小型渡船等安全運航に関する件を議題といたします。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  130. 原田立

    ○原田立君 愛知県吉良町で、過日定員五人くらいの漁船に二十人くらい乗っかって沈没し、五人が死亡する事故がありましたが、こういうような、ただ単に不注意ということによってとうとい人命が失なわれるということはたいへん残念なことであります。それで、これからも季節がよくなって船遊び等がだんだんふえるであろうと、こういうふうに思うのでありますが、それに従って事故の多発ということもこれまた心配する種の一つであります。愛知県の吉良町のこの事件について、知り得る限りの情報をまず御報告願いたい。
  131. 猪口猛夫

    説明員(猪口猛夫君) 昭和四十四年の四月二十日午前十一時ごろ、ただいま御指摘のありました三河湾の矢作古川の河口で、約〇・六トンくらいの箱舟とでも申しますか、ノリ作業に従事する舟に約二十名の潮干狩りの客を乗せまして、船主船長の小島喜太郎が運転中、乗客過載が原因と見られますが、その船が転覆いたしまして、四名死亡、ほかの十七名は地元漁民に救助されたということが現地の私たちの出先衣浦海上保安署から報告が参っておる次第でございます。当時の現場付近の気象状況は、南東の風が八メートル吹き、波が約〇・五メートルから一・二五メートルくらいのはなはだ小さな波が立って、天気は快晴であった状況でございます。  上記事故の情報は、私たち衣浦の海上保安署に地元の西尾警察署から十四時五十分ごろ通報があったものでございまして、この事故の調査取り調べにつきましては、西尾警察署と衣浦海上保安署との間で話し合いの結果、地先海面を持っておられます地元の西尾警察署で取り調べ調査に当たっておられます。事故の取り調べ内容等につきましては、警察のほうからまたあらためて御報告があると思う次第でございます。
  132. 井口孝文

    説明員(井口孝文君) 事件の概要につきましては、ただいま海上保安庁から御報告があったとおりでございます。その関係者、特に船頭が死亡しておりますので、詳細必ずしもわかりませんけれども、結局いまのような状態で、非常に干満の差が激しい所でございまして、干潮時は非常に浅いのでございますが、満潮時には、水深の一番深い所が約四メートルくらいというところで、一番深い場所に差しかかったとき、へさきから突っこんで転覆したという状況でございます。向いの浅瀬まで一人五十円程度の料金をとって運んでおるというふうなことが、いままでの調査ではっきりしております。
  133. 原田立

    ○原田立君 地元の警察署もいろいろ御調査のことと思いますが、こういうノリ舟のような非常に小さい舟、それで人を運搬する、送るというようなことは、これは許されないことなんでありますけれども、こういうことについて、監督官庁としてどういうふうな注意をしてきたか。また、地元の警察署も、いままでこういうふうな事故がなかったから全然等閑視していたのか、あるいはまた、こういう問題について、起こり得るであろう、そういうことを予測して前々注意を促していたのかどうか、そこら辺、運輸省のほうと警察のほう、いかがでしょうか。
  134. 猪口猛夫

    説明員(猪口猛夫君) 御承知のように、四月は行楽時期でございますし、五月のいわゆる連休を控えておりますので、毎年、海上保安庁といたしましては、海上におきます行楽客の過載による海難事故等が起きないように、本年も四月の十四日から二十六日の間を、行楽期におきます旅客船の安全確保に関する運動期間といたしまして、全国の海上保安庁の出先機関が関係各省庁の出先とよく打ち合わせいたしまして、また関係の民間業者とも連携をとりながらその指導並びに取り締まりに従事しておった矢先でございますが、この問題につきましては、先ほど警察関係からもお話がありましたように、非常に干満の差のあるところでございまして、まあ言うならばふだんは、引き潮のときには陸地のようなところで、どういう実情でございましたかそのときの状況はよくわかりませんが、物理的に五、六名しか乗れない舟にその倍近くの人が乗っていたというような状況が出ましたことは、まことに遺憾に存じておる次第でございます。私たちも今後なお一そうこれらの点を反省いたしまして、その指導、取り締まりをなお一そう厳重にいたしたいと痛感しておる次第でございます。
  135. 井口孝文

    説明員(井口孝文君) だんだん季節があたたかくなってまいりまして、ただいま五月ごろから夏にかけまして水難事故が全般にふえるわけでございます。その中でいろいろな形のものがございますけれども、小さな船、あるいは船と言えるかどうかわからぬようなものまで乗りまして、不幸にして死に至ったというような事故も、毎年各所で見られるところでございます。特に行楽期になりまして、非常に人が多く押しかけてまいりますので、こういう危険が非常に多いわけでございますので、警察といたしましては、地元の警察を通じまして、他の防犯関係の懇談会といったような席上、その他いろいろな機会に、乗せ過ぎをしないようにという指導をいたしておるわけでございます。なおそのほかに、こういった時期になりますと相当各地をパトロールさせまして、そういう危険な状況を見ましたときには、警告しあるいは制止してやめさせるというような措置をとっておるわけでございます。しかしながら、今回のようなケースとなりますと、これを業として、業態としてやっておるようでもないようでございます。また、こちらが見ておるときにはやらなくて、隠れてやるということでございまして、今後とも極力そういったパトロールなどを強化して、そういったことのないようにつとめてまいりたいと考えております。
  136. 原田立

    ○原田立君 いろいろ御苦心なさっておられるだろうと思いますけれども、従来事故というのは、事故が起きてからいつも当国会の委員会なんかでも問題にしているというようなことは再三あるわけなんです。かねがねこういう、今度のゴールデンウィークの月であるとか、あるいはこれからずっとあたたかくなっていく面において、第一回に、この前事故があった。これを契機にして、ほんとうからいえば事故絶滅、皆無に等しいような状態にまで持っていこうというような、そういう努力をせっかく十分にしてもらいたいということを強く要望したいのです。  ところが今度は、今月の二十一日の夕刊読売に、太田区の多摩川大橋近くにある渡し船の船の状態が写真に出ておる、新聞に。ごらんになっただろうと思うのですけれども、これはエンジンがついて、渡しに使っているのだろうと思うのですけれども、これこそ定員オーバーでものすごいじゃないか。新聞記者の人がこうやって写真を写したのですから、何回となくやっているのだろうと思う。もし一朝ちょっとした波なんかで事故にあったらたいへんな問題だ。こういうようなことを心配して、先々のこと、またこんな事故が起きないようにと思ってお聞きしているのですから、一応愛知県の吉良町のこの事件を素材にいたしますけれども、そればかりではない、ほとんど全体のことを言っているのだということをひとつ記憶して答弁願いたいと思います。  定員オーバーのために起きた船の事故でいえば、三十二年の四月十二日に、広島県三原市沖合いで転覆した第五北川丸、定員八十六人に対して二百三十七人乗船させたので船が転覆し、八十人が死んだ。三十三人が行くえ不明になった。これはちょっと一番大きい事故のように私思うのでありますけれども、こんなことが二度とあってはならない。そこでお聞きしておるのですが、今度のような小型船の場合には、何か法的に盲点になっている部分の船であるように聞いております。船舶安全規則に規定された船舶検査合格証を受けなくては、人は運搬してはならないというようになっているそうでありますが、ノリの採取船は一トンに満たない、〇・六トンくらい、こういうようなのが法の盲点をついた商売であって、こういうような事故が今後起きる可能性があるのではないか、非常に心配している。ただ単にパトロールあるいは通達というようなことだけでは、こういう事故は絶滅を期するわけにはいかないのじゃないか、こういうふうに心配していますけれども、その点はどうですか。
  137. 内田守

    説明員(内田守君) いまの御指摘にございました船舶安全法でございますが、これは国が一定の技術基準を制定いたしまして、一定の期間ごとに構造その他について船舶検査を実施するという法律でございますが、いまお話ございました小さい舟につきましては、法の盲点と申しますよりも、船舶安全法で、そういう人を運送する舟でかつ推進機関を持っていない舟、いうなれば先ほどちょっとお話ありましたような箱舟のようなそういうようなものについては、法の適用を設けておりません。ただそういう舟について、特に必要ある場合に、これは安全法の二十九条で都道府県知事が規則を設けるというような場合には、運輸大臣の認可を受けなければならないという条項になっております。
  138. 原田立

    ○原田立君 そんなことはわかっているのですよ。それは一トン未満の舟はそういう法の対象外になっているのだ。ところが今度の事故は、〇・六トンのノリ採取舟ですよ。だから全然適用外になっている。だからこういうふうな事故が起きた、今後も起きるだろうと心配しているわけです。心配する必要がなければけっこうなんだけれども、心配あるのじゃないですか。
  139. 井口孝文

    説明員(井口孝文君) 御承知のとおり、各地の観光地はたいへん過密でございまして、水の上だけではなしに陸も一ぱいであるというわけでございます。そういったところで、明らかに法令違反ということでありますと、取り締まりしやすいわけでありますが、きめ手となる規定がないということであると、現にこの目で見まして、やめたほうが安全であるというふうに説得する場合がたくさんございます。そういった意味で、ただいまお述べになりましたような点、法律にもう少しはっきりした点が出ておれば指導取り締まりがしやすいということになろうかと思います。
  140. 原田立

    ○原田立君 何か吉良町では――愛知県ですか、条例をつくって規制を加えるのだというようなことで、最近調査したということだそうですけれども、そういうように、こういうような事故が再び起きないようなためにそういう条例をつくったほかの県ですね、愛知県は何かいまつくりつつあるそうだけれども、ほかの県の状態はどうですか。
  141. 内田守

    説明員(内田守君) 現在、先ほど申しました安全法二十九条に基づきまして認可いたしております都道府県知事規則は、三県でございます。
  142. 原田立

    ○原田立君 四十何県あるうちの三県、たいへん少ないようだけれども、ほかの地域ではまだこういうふうな事故はあったということは聞いておりませんけれども、これは先ほどから何回も指摘するように、こういう事故が今後ないとは断言できない話である。それに対して、事故が起きてからしかるべく処置するというのではなしに、やはり事前に、前もって処置しておかなければならない、こう思うのですよ。それで、この条例できめられるそうだが、こういうようなノリ舟みたいな小さな舟ですね、これなんかを条例でしっかりとらえて、こういう定員オーバーみたいなことがないように指導するようなそういう条例になっていますか、中身は。
  143. 内田守

    説明員(内田守君) こういう小さい舟でございますと、それぞれその地域的な特殊性とかそういうようなものがございますので、先ほど申しましたように船舶安全法で画一的に統一的にきめるというのは非常に困難でございまして、したがいまして、認可いたしております三県の検査基準等も、安全基準というものも若干食い違いがございます。ただ、それぞれ指定した舟につきまして一定の定員等を付与いたしまして、登録制なり、あるいは検査証書と申しますか、そういうようなものを県から交付いたしまして、それぞれ定員等について順守させるというような内容になっております。
  144. 原田立

    ○原田立君 愛知の事故のその舟では、長さが六・九メートル、幅が、広いところが一・四メートル、定員が五人、それで何か一人五十円の小づかいかせぎでやっておった。これは何といいますか、小づかいかせぎをやっているようなそういうようなのを、これは正規ではないと思うのですよ。要するにやみでやっている行為だと思うのでありますが、地元の警察では、吉良漁業協同組合に、こういう渡し舟を中止するように警告した、あるいはまた地元の組合でも、漁民に、行楽客を舟で運ぶことは禁止したというようなことが新聞に載っているんですけれども、こういうのはただ単に禁止措置だけではとめられないんじゃないか。むしろ積極的に、こういうようなことはしてはならない、ここまではいいんだぞというような方法といいましょうか、そういうふうなことが講じられないと、これはいつまでたってもやみがあって、たいへん事故が起こる可能性が強いんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、いま三県と言ったけれども、何県と何県なのか。それからその中身、こういう小さな舟に対する中身ですよ、それに対する取りきめ方はどんなですか。
  145. 内田守

    説明員(内田守君) その三県は、茨城県、神奈川県、滋賀県でございます。いまそれぞれの規則の中身を持ってまいりませんでしたのであれでございますが、茨城県は、いわゆる霞ケ浦でございますか、あそこの観光の渡船、何というんですか、娘船頭さんといわれております観光の伝馬船程度のものでございます。それから神奈川県はいわゆる釣り舟でございますし、滋賀県は琵琶湖のその種の小さな遊覧船等を対象にしております。  それからその中身は、いずれも先ほど申しましたように県で検査をいたしまして、定員を定め、それに証書等を交付し、定員オーバーをしない、あるいは救命設備等を持たせるというような内容になっております。
  146. 原田立

    ○原田立君 定員オーバーしたときの罰則規定はどうなんですか。
  147. 内田守

    説明員(内田守君) これは先ほど申しましたように、いま手元に持っておりませんけれども、それぞれの都道府県知事規則で定め得る限度と申しましょうか、たしか、間違ったら訂正いたしますけれども、二千円か何かが限度だったと記憶しております、これは都道府県知事規則できめ得る何か限度がありまして、いま手元に資料を持っておりませんけれども、たしかその程度の金額であったと記憶しております。
  148. 原田立

    ○原田立君 それから前段の質問のお答えがないんですが、小づかいかせぎなんていうような、要するにやみ行為でやっているわけですよ。これはただ警告したり何かしただけではとめられないだろう、だからこういうようなむしろ小さい舟なんかに対しても、ほんとうはノリ採取舟なんかに人を乗せるのはどうかと思うんですけれども、ここまではいいんだとか、ここからはしてはいけないんだぞというような、そういうような何か措置を講じてやれば、むしろこういう定員五人のところへ二十人も乗せるというような、そんなばかなことは起こらないと、こう私は思うんですよ。そういうようなものに対する考え方はいかがですか。
  149. 須賀貞之助

    説明員須賀貞之助君) 先生の御質問にそのまま当たっているかどうかわかりませんですが、お答え申し上げたいと思います。海上運送法によりまして事業監督をしておるわけでございます。この海上運送法におきましては、旅、客船と称するものは十三人以上の定員を有するものでございまして、十三人以上の旅客定期につきましては免許ということになっておりますし、不定期航路につきましては、許可あるいは届け出ということになっておるわけでございます。これはすべて十三人以上の定員を持っておる船についてでございます。こういうものにつきまして、特に定期、不定期につきましては、旅客の運賃というものも認可しておりまして、これは認可運賃でございまして、必ず守るということになっておるわけでございます。そういうことでございまして、こういう舟につきましては正式な運賃というものがないわけでございます。それから、これは事業監督の面でございまして、運賃もないし、事業計画の変更というようなものも、もちろんこういうものについてはやっておりますが、その他のものについては法律の対象外でございます。いわば盲点であると言うこともできるかと思います。それで、こういうものにつきまして、十三人以下のものにつきましても、船舶の安全の面から、うちのほうで申しますと船舶局、それから船頭、船員、こういったものにつきましては船員局でいろいろ所管してやっておるわけでございます。その他海上交通といった面につきましては海上保安庁というふうに、各局に分かれていろいろ規制しているわけでございますが、そういういわば法律の外に置かれているというようなものにつきまして、先ほど出ました釣り舟といったようなものにつきましても、ときどき問題が起こるわけでございます。大きな船の事故というようなものもときどき起こります。その原因となりますものはいろいろあるわけでございますが、定員のオーバーといったことにつきまして、特に運輸省でも配慮しておるところでございまして、海上運送法の旅客船につきましては、特に海上保安庁と地方海運局と連絡をとりながら、多客期を前に、いろいろ指導、監督、監査といったようなことをいたしておるわけでございます。そのついでに申し上げてはまことに恐縮でございますが、対象外のものにつきましても、できるだけ多客期を前に、海上保安庁と運輸省と打ち合わせまして、指導いたしておるというような状態実情でございます。
  150. 原田立

    ○原田立君 その適用外の舟のことについても十分調査、注意しておるということだが、今度の事故は適用外の舟の事故なんです。たまたまことし第一号で出たわけです。適用上の船の事故なんというのは、先ほど言ったような、八十六人乗りに二百三十九人も乗せたというような、どう考えても考えつかない、そういう大きなばかげた事故があるわけです。大きい船に対してはいろいろと苦心なさっておられるだろうと思うのですけれども、私きょう取り上げている問題は、そういう適用外の小型の舟なんかについて、もっとしかるべき考え方を持たなければいけないのじゃないか、こう思って実は取り上げておるわけです。事故が起きてから、なぜあんなことをやったのだというようなことでなしに、こういう、舟が小型になればなるほど目が届きにくい、いわゆる事実上野放し状態になっておる。これをまず注意をさせるべきだと思うのでありますけれども、ことしに限らず、今後のこともずっと含めて、こういう事故を絶滅する意味においてどういうふうな措置を講じられようとなさっているのか、お考えはいかがですか。
  151. 須賀貞之助

    説明員須賀貞之助君) 先ほど申し上げましたように、主として旅客船事業につきましていろいろ指導、監督、監査等をしておるわけでございますが、でき得る限り釣り舟その他の舟につきましても、そういう危険のあるような、シーズンに危険のあるような場所におきましては、いろいろそういう事業者と申しますか、そういう舟を持っている人たちの集まりの場所等でもいろいろ注意を喚起しているわけでございますが、その他そういう時期、そういう場所におきましては、でき得る限り現地に臨んで監査をしているような実情でございますが、ただ、何ぶんにもそういう船が多い関係上、十分にはいっていないというのが実情でございます。
  152. 原田立

    ○原田立君 旅客のほうに対する注意の喚起と、それから船を持っておるものに対する注意の喚起と二通りあるだろうと思うんですが、具体的にはどういうふうな注意の喚起をなさるのか、立て札をつくるとかあるいはビラ――役所としてのきちっとした掲示を出すとか、いろいろの方法はあるだろうと思うけれども、そういうようなことはやられておるのかどうか。あるいは事故絶滅という意味でおやりになる考えがあるのかどうか、その点はどうですか。
  153. 須賀貞之助

    説明員須賀貞之助君) でき得る限りこういう船につきましても指導、監督、監査等を強化していきたいというふうに考えておるわけでございますが、先ほど来話が出ておりますように、運輸省関係の出先だけでは十分でないということでありますので、今後地方自治体とも十分に連絡をとって、でき得る限り善処していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  154. 原田立

    ○原田立君 これは地方自治体の協力を得なければできないことであろうと思いますし、また、警察のほうとの連携あるいは海上保安庁との連携、そういうようなことも当然あり得るであろうと思うんです。それで何度も言うように、事故が起きてからばたばたするのではなくて、事故が起きないようにするためには、ただ地方自治体の協力を要請するなんという簡単なことでなしに、こういうふうな通達を出したいんだ、あるいはまたこういうふうな調査依頼をしたとか、するとか、もっとはっきりしたことはありませんか、運輸省として船のほうの関係として。
  155. 須賀貞之助

    説明員須賀貞之助君) 従来、観光シーズンを迎えるにあたりまして、絶えず、陸海空の交通を主管しております運輸省といたしましても、そのつど地方の出先機関あるいは地方関係団体等に対しまして注意を喚起しておるところでございますが、先ほど来先生の御指摘のような趣旨もございますので、今後特にこういう船に対する関係の向きに注意を喚起していきたい、通達を出したいというふうに考えておるわけでございます。
  156. 原田立

    ○原田立君 海上保安庁もなかなか御苦労だと思うんですけれども、運輸省はそういう答弁なんですけれども、海上保安庁はもっともっと、こんな小さな船のことなんかなかなか手に負えないといえばそれまでですけれども、そうではなくて、こういう小さな、小型の舟が今後どんどんふえておりますから、これに対して具体的にどういうふうに対処していくのか、その点いかがですか。
  157. 猪口猛夫

    説明員(猪口猛夫君) 先ほども申し上げましたように、今年も旅客船安全確保の週間をやっておるわけでございますが、実を申し上げますと、この種の船は旅客船でもございませんし、   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕 旅客を運搬する目的のための船でもございません。ノリ作業のために使う舟が、たまたま今度事故が起きましたような状況を呈したわけでございますが、先ほども先生からお話がありましたように、対象となる船につきましては、従来も、幾多の経験にかんがみまして、十分こういう週間を設けましてやっておるのでありますが、対象外の、しかもそういうノリの作業舟のようなものにつきましては、一般の海難防止週間というようなもの、あるいは海難防止講習会というようなところに漁民を集めまして講習する際に、一般的な海難防止思想の普及にやっきになっておるのでございますが、こういう事故が起きますれば、この点にも重点を置きまして、私たちの手の及ばないところでは地方の警察の御協力を得たり、またそういう海運業者あるいは漁業協同組合の協力も得まして、いわゆる海難防止関係の、こういう事故の防止のための啓蒙指導をしていきたいと思っておる次第でございますけれども、先ほども警察のほうからお話がありましたのでございますが、これを取り締まるためには、制度的に何かはっきりすると非常に取り締まりやすいのでございますが、そういうものが先ほど来話のありましたようになかなかむずかしい状況であるといたしますれば、この種の事故の起きそうな対象となるものにつきまして、根気よく関係者が啓蒙指導していくしかないんではないかと存じておる次第でございます。そういう方向に向かいまして、私たちも今後一そう努力していきたいと思っておる次第でございます。
  158. 原田立

    ○原田立君 警察庁は全国に通達を出したということを聞いておりますけれども、その内容はいかがですか。
  159. 井口孝文

    説明員(井口孝文君) 今回、いまの時点におきまして通達をしたという事実はないのでございますが、ただ例年春から夏にかけまして、これは、こういった船の転覆ということだけでなしに、水遊び、水泳等一切含めまして、いろいろな種類の水難事故が多くなる時期でございますので、こういったことについて、例年最近の実情等の統計を調査いたしまして、それに対する注意事項を全国に通達いたしております。ですからことしにつきましても、そういった処置をとりたいというように考えておる次第でございます。
  160. 原田立

    ○原田立君 まあ通常の通達だろうと思うんですけれども、それはそれでそれなりに効果はあるだろうと思うけれども、やっぱりもう少し人命尊重という面からいって、とにかく第一号の事故が出ちゃったんですからね。そんなことが、昭和四十四年度のこれから夏に入ってそんな大きな事故をまた再び繰り返すようなことがあってはならないということで、もう少し熱意を込めてやってもらいたいと思うんです。それで、先ほどのお答えの中に警官を警らさしたりなんかして注意をうながしているというようなことだったんですが、にこういうふうに日本は海で囲まれているんですし、川はたくさんあるし、沼はたくさんあるし、現在の状態で警察官だけが警らするということだけで事故の絶滅を期するわけにはいかないんじゃないかと思うんです。そうなると、ただ警官だけが警らするだけでは意味ないと思う。そこでもう一歩突っ込んだような、こういう事故絶滅のための処置として、警察庁としてはどんなふうなことを考えているのか、その点どうですか。
  161. 井口孝文

    説明員(井口孝文君) ただいまお話がございましたように、全国各地でこういったような問題があるわけでして、容易に手が回らないことも確かでございます。また同じ危険と申しましても、この種の危険だけでなしに、あらゆる危険が至るところに満ち満ちておるというのが実態でございまして、警察側の指導といいますか、そういった面もいろいろなほうへ分散されるというのが実態であるわけであります。まあいろいろなケースがあろうと思いますけれども関係地元団体にお願いして、監視員を置いていただくというような措置をとっているところもございます。また地元の、ことに子供さん方の多いようなところでは、父兄の方々、特におかあさん方が協力して、いわゆるパトロールをやっておるようなところもございます。また、私ども究極的に考えますのは、指導とか取り締まりとか申しましても、やはり結局はその関係者の方々が危険を自覚して、良識ある措置をとっていただくということに最後は帰着するように思うのでございます。そういった意味におきまして、例年私ども口をすっぱくして言っておるわけでございますけれども、例は違いますけれども、きょうは台風だから海へ入ってくれるなと言いましても、どうしても海から上がってこない人がある。警察官が一人一人手を引っぱって引き上げなければならないというのが実態でございまして、そういった一番根本の、危険な状態のときに、自分の生命があぶないだけでなしに、もしそういうことがあれば人も迷惑するというくらいの気持ちで、自覚してやっていただくということが必要であろうと思います。私どもといたしましては、平素そういったことを、こういった現地だけでなしに、学校とか職場とか、そういう関係団体にもいろいろとお願いいたしまして、そういう自覚を持っていただくようにという努力をしておるつもりでございます。いま仰せられましたように、いろいろな意味で、事実として事故が多発いたします。なかなか十分にいってないという状況であります。
  162. 原田立

    ○原田立君 ですからね、努力はしてないとは言わないんですよ、しているだろうと思うんですけれども、とにかく第一号が出たわけです。これからもまたことしは多いんじゃないか。多かったじゃたいへんな話なんですけれども、それとやっぱり本気になって取っ組んで、ただ感情論、精神論だけではなしに、やっぱりある種の体制をとらなければ事故の絶滅を期するわけにはいかないんじゃないか。だから、通達をこれから出されるそうだけれども、さっそく早くやったほうがいいと思うんですね、それは。それと、そういう地元の方々との強力ないわゆる協力体制ですね、そういうようなものをもっとしっかりとつくるべきだというようなこともやっぱり通達の中には入れる必要性があるんじゃないか。ちょっと口はばったいことでありますけれども、事故が起きてからじゃ何にもなりませんので、そんなことを申し上げるわけです。二十一日の新聞には、「警察庁ではこれから夏にかけ水難事故がふえるシーズンなので、このような事故防止について①警察官の監視体制の強化②関係業者への自粛申し入れ⑧利用客への注意喚起――などについて検討することになった。」と、こう書いてあるんですが、通達を出すんだと思うんですが、何かきまってないようなお話だったんだが、もう少し、担当委員会ですから、ここではお話し願えればと思うんですけれども
  163. 井口孝文

    説明員(井口孝文君) この新聞記事によりますと、いまからあらためて検討するというようにあるいはおとりになるかとも思いますが、私どもといたしましては、年に二、三回ブロックごとに関係者の会議などを開いておりまして、ある程度の傾向といいますか、実態というようなものは地域的にはつかんでいるわけでございます。年々やはり様相も変わってまいりますし、それからそういった場所も移動してまいるというような状況でございます。そういった点を十分検討の上で、この措置をとるということになるわけでございますが、通達というお話がございましたけれども、通達と申しましても、やはり非常に地域事情あるいは季節あるいは曜日といったようなことで、実際にあらわれる姿というのは非常に変化があるわけでございます。やはり具体的にそれぞれの地元での適合した措置ということが必要であろうかと思います。そういった意味で、基本的な内容をそれぞれ地元において検討するような措置をとらせるように措置をしてまいりたい、かように思うわけであります。ただいまお話がございましたように、こういった事故が起こった際でもありますので、なるべく早く有効適切な措置をとるように促したいというように思っております。
  164. 原田立

    ○原田立君 けっこうです。
  165. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十五分散会      ―――――・―――――