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1969-03-18 第61回国会 参議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月十八日(火曜日)    午前十時五十五分開会     —————————————    委員異動  三月八日     辞任         補欠選任      小林 国司君     小枝 一雄君  三月十八日     辞任         補欠選任      林  虎雄君     占部 秀男君     ————————————— 出席者は左のとおり。   委員長           内藤誉三郎君   理 事           熊谷太三郎君   委 員                 吉武 恵市君                 林  虎雄君                 松澤 兼人君                 原田  立君                 小林 武治君                 鍋島 直紹君                 船田  譲君                 増田  盛君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 竹田 四郎君                 千葉千代世君                 和田 静夫君                 阿部 憲一君                 山田  勇君    国務大臣        自 治 大 臣  野田 武夫君    政府委員        自治大臣官房長  宮澤  弘君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省行政局選        挙部長      皆川 迪夫君        自治省財政局長  細郷 道一君        消防庁長官    佐久間 彊君        消防庁次長    山本  弘君 事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君 説明員        運輸省鉄道監督        局業務課長    大久保一男君        自治大臣官房参        事官       岡田 純夫君        自治省税務局府        県税課長     森岡  敞君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○奄美群島振興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出) ○地方行政改革に関する調査  (昭和四十四年度自治省施策及び予算に関す  る件) ○理事補欠選任の件     —————————————
  2. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  三月八日、小林国司君が委員辞任され、その補欠として小枝一雄君が選任されました。     —————————————
  3. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 奄美群島振興特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  提案理由説明を聴取いたします。野田自治大臣
  4. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) ただいま議題となりました奄美群島振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容概要を御説明申し上げます。  奄美群島につきましては、昭和二十八年の本土復帰に伴い実施いたしました復興計画に引き続き、奄美群島振興特別措置法に基づいて振興計画を策定し、各般の事業実施してまいったことは御承知のとおりであります。  振興事業実施により群島産業の基盤も逐次整備され、主要産業振興もようやく緒につきつつあるところであります。  しかしながら、奄美群島をめぐる諸条件は依然としてきびしく、住民生活水準はなお本土との間に相当の格差があるのみならず、この間におけるわが国経済発展は著しいものがあるのであります。これらの諸般の事情にかんがみ、群島経済自立的発展の基礎を確立し群島民の福祉の向上を期するためには、さらに振興計画を延長して、引き続き群島について特別の措置を講ずる必要があると存ずるのであります。このことにつきましては、すでに一昨年奄美群島振興審議会から建議がなされているところでもあります。  政府といたしましては、このような観点から、奄美群島振興特別措置法存続期限を五カ年間延長し、引き続き主要産業振興を中心とする事業の推進をはかるべきであると考え、ここに本法律案提案いたした次第であります。  次に、この法律案内容概要について御説明申し上げます。  第一に、現行の振興計画は、昭和三十九年度から四十三年度までの五カ年間となっておりますが、これをさらに五カ年間延長し、十カ年計画とすることといたしたのであります。  第二に、これまでの振興計画実施状況等にかんがみ、振興計画に基づく事業について、国が負担または補助する場合の負担率及び補助率の一部を改めることといたしました。  第三に、奄美群島における公立学校施設災害復旧事業について、国が負担する場合の負担率特例を設けることといたしたのであります。  以上、この法律案提案理由及びその内容概要について御説明したのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本案に対する質疑は後刻に譲ることといたします。     —————————————
  6. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 地方自治法の一部を改正する法律案議題といたします。提案理由説明を聴取いたします。野田自治大臣
  7. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  最近の特別区の区域における都の行政実態と、その制度上の特殊性にかんがみ、都の議会議員定数について特例を設けることとするとともに、直接請求制度等所要改正を加え、あわせて許認可報告事項整理等地方行政にかかる制度合理化規定整備を行なおうとするものであります。  次に、この法律案の要旨について御説明申し上げます。  第一に、この法律案においては、地方公共団体の処理すべき事務の例示中に、消費者の保護及び貯蓄の奨励を加えるとともに、市町村は、議会の議決を経てその行政運営基本構想を定め、これに即してその事務を処理するようにしなければならないこととしております。  第二に、都にあっては、その議会議員定数について、条例で特別にこれを増加することができるものとし、これとあわせて公職選挙法改正し、特別の事情があるときは、選挙区ごとの定数について、おおむね人口を基準として、地域間の均衡を考慮して定めることができることとしております。また、昨今の制度運営実態にかんがみ、国及び地方公共団体選挙が行なわれる場合は、一定期間、直接請求のための署名の収集行為をすることができない旨の規定を置くこととしております。  第三に、行政簡素化の方針に即し、許認可報告事項整理するとともに、地方税の例によって滞納処分することのできる収入を定める等、地方行政合理化のための制度整備をはかることといたしております。  第四に、地方公共団体の処理しなければならない事務等を掲げた別表に所要改正を加えるなど、法令の制定等に伴う規定整備をはかることといたしております。  以上が地方自治法の一部を改正する法律案提案する理由及びその内容概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  8. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本案に関する質疑は後刻に譲ることといたします。     —————————————
  9. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 昭和四十四年度自治省施策及び予算に関する件を議題といたします。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  10. 阿部憲一

    阿部憲一君 自治大臣にお伺いしますけれども、今回創設されます宅地開発税目的について御説明願いたいと思います。
  11. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 宅地開発税は、目的税として創設しようとする、これは御存じのとおり、最近特に過密地帯周辺、非常に住宅問題が難渋いたしまして、宅地造成が各所に行なわれておるのは御存じのとおりだと思います。それにつきましては、造成後の、つまり地域住民の皆さんがかってに家をおつくりになると、家はできましても、大体道路がどこにくるかわからない、水路がどうなっているか、排水路もない、きわめて、環境衛生からいたしまして、また交通関係生活全体から考えましても非常に不便であると同時に、不合理である。それはしかし、一つ一つそれを地方公共団体がその宅地開発に伴って施設をするということになりますと、非常な費用がかさみまして、なかなかこれが思うようにいかずに、かえってそこに住まわれる方が非常な御迷惑になる。そこで、従来からもいろいろそういうことで、宅地造成されるほうから、地方公共団体がいろんな名目でもって土地の提供とか、あるいはその他のある程度の資金を出してもらうとかやっておりましたが、非常にこれが不統一でして、ばらばらだったんですが、そこで、今度ひとつやはり宅地造成してそこに家を建ててお住まいになる方が、つまり住居に適応した生活をそこでやっていただけるようにするには、地方公共団体がやはりこれに関連する公共施設というものをつくるということについて、やはりその費用の、いわゆる利益者と申しますか、法律じゃそういうこと書いてありませんが、考え方としてはそういう方々からひとつその費用の一部を分担していただく。それには、あまりでこぼこがあっちゃいかぬから、いまいわゆる申しました宅地開発税として、ある程度負担をしていただくと、こういう考え方でございます。
  12. 阿部憲一

    阿部憲一君 この開発税は、大体のところ五百円ですか、この限度をお考えになっていると思いますけれども、どの程度の額でございますか。
  13. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 政府委員から……。
  14. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 程度につきましては、地方公共団体条例に、原則にゆだねております。と申しますのは、その地域地域によりまして、何と申しますか、土地熟度でございますとか、その他の施設整備状況が違いますので、これでなければならぬというふうにきめつけることは、その筋からいってどんなものであろうか。そのところは市町村を信頼してまいる。しかしながら、それにいたしましても、ある程度めどがございませんというと、何せ最初の新しい税でございますから、当分の間、あらかじめ自治大臣届け出をしてもらいたい。届け出の際に指導をしてまいりたい、かように思っております。指導の際に、いまおっしゃいましたようなこと、五百円ときめたわけではございませんけれども、その公共施設の中で、ただいま大臣が言われましたような都市計画事業対象にならない程度の、身の回り道路でありますとか、それから排水路といったようなもののために整備するといたしますと、まあ千五百円くらいかかろうか、もちろん高いところもございますし、もっと安いところもございます。その中で、まあ五百円程度が穏当な線じゃなかろうかということで、地域によりまして、四百円でございますとか、あるいは五百円でございますとか、そういったことについて意見を言ってまいりたい、そういうような指導考えております。
  15. 阿部憲一

    阿部憲一君 そうすると、額についてはマキシマム幾らというように指導される目算といいますか、めどがついておられるのですか。
  16. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) ただいま申しましたように、厳密な規定とかというものではもちろんございませんから、行政指導ではございますけれども、当分、当面五百円を限度として指導してまいりたいというふうに考えております。——失礼いたしました、平米五百円でございます、一平米五百円でございます。
  17. 阿部憲一

    阿部憲一君 一平米五百円という額でございますけれども、これはいまの物価なんかから考えますと、道路建設にしろ、どういうような公共施設をつくるにしろ、非常に額が少ないので、何といいますか、これといったような、いまお考えになるような道路とか地域住民に対する施設というものに充ててもあまり効果がないので、いま大臣のおっしゃったような目的を達成することができるかどうか非常に懸念されますが、この辺お考えいかがですか。
  18. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 実は私も、最初この税制につきましていろいろ意見交換いたしましたのですが、これがあまり高くなりますと、土地価格関係してまいりまして、いまの住宅政策上、非常にまたこれが矛盾してくるという点がございます。そうかといって、先ほど私御説明申しましたとおり、ほうっておけば、家をつくっても歩く道がないというような状態でありますし、私はできるだけこれ、あまり高くなると、いま申します土地価格に関連があるということを懸念いたしまして、実は私押えたのです。ざっくばらんに話しますと、できるだけ押えてくれと、そこで、その他のことについて、そこまで財政上の措置として、まあある程度目安がつけば、これはまた自治省としては、その場合には、地方公共団体に対して考えをしなければいかぬと、こういう非常に住宅政策、それから土地価格の問題と、そこにひっかかるものですから、非常に苦心いたしまして、実は阿部さんのおっしゃるとおり、立案者としては、これではとてもいけないと言っておりました、これは事実でございます。しかし、そこが、ちょっと待ってくれと、非常にそこにむつかしい問題が起こるからというので、一応まあひとつその程度考えてはどうだと、もちろんこれは条例できめることでございますから、事情によっては、何も五百円が最高だと無理に押えることはございませんが、まあ一応その程度にひとつ押えておこうじゃないかと、こういう考え方で、いま申しました一平米五百円というのを限度にした考え方にいたしたのであります。その点は、いろいろまた御議論があれば、これは決してわれわれは改めるにやぶさかでございませんから、それは御理解願いたいと思います。
  19. 阿部憲一

    阿部憲一君 いま伺いました非常に額が少ないということは、結局またこの目的を達成するのに非常に不足であるというような考えを私も感ずるのでございますけれども、そうしますと、開発税よりも負担金のほうが地方団体には非常に有利な場合が多い。そうすると、この税法はかえって妨げになるようなことはないかということでございます。それからまた、開発税を利用すると、いままで負担金でまかなっておりましたときよりも、さらに多く一般財源の持ち出しになるというので、かえって敬遠されるというような事態になりませんか、この辺ちょっと大臣に……。
  20. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 負担金にいたしますというと、これこれの都市整備したいからこれだけの負担金に応ずるか、こういったような性質になってまいります。したがいまして、ケース・バイ・ケースということでございますので、負担される方の負担金というのは、非常にいわば逆に高くなってまいるということも考えなければいかぬ。それからもう一つは、市町村のいわば地域計画地域一般、と申しますと大げさでございますけれども、そういうふうな構想と無関係であってはならないということで、そこで税といたしまして、ある一定区域から、まあ、自主的な場合としては、いまおっしゃいますような受益者負担的な要素を多分に持っておりますけれども、税として、地域内の宅地開発をする場合に、一般的にいって計画的な整備をするようにいたしたいということで、税という姿をとらしていただいた。それから一般財源につきましては、なるほどやはり市町村としても相当負担ということはございます。ございますけれども、従来は全然負担がなかった。いままではいやおうなしに、市町村は泣き泣き全額自己負担でもってやらなければならなかったところに、まあ、そこのところは負担される方の将来の受益でもございますし、軽度の負担をしていただきたいということでございますので、そう巨額の負担にもなりませんし、従来、繰り返しますけれども、全然なかったものに、これだけわずかでも入ってまいるという面もございます。
  21. 阿部憲一

    阿部憲一君 いま都市化が非常に激しい勢いでもって進んでおりますが、都市計画法による市街化区域の指定と、実際に宅地開発事業との間にずれが起こっておりまして、この市街化区域の外で今度は宅地開発がどんどん行なわれるという、こういうような場合にはどのように対処していかれますか。
  22. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 市街化区域はこの六月ころから指定されてまいります。六月以降、まず大都市周辺から逐次、まあ、十万都市を目がけて建設省に指定されていく。その指定されました場合には、その市街化区域の中で、しかし市街化区域と申しましても、向こう十年を見越した市街化区域でございますので、現状からいきますと、まだまだ当分、いわゆる開発さるべきところと市町村から見れば考えられないようなところも、対象に入ってまいるということでございますので、その中から、当然ここら辺はまとめて公共施設整備をしなければならない区域というふうに考えられるところを、さらに市町村のほうで指定いたしまして、そこに入ってこられる方について宅地開発税をいただくとともに、計画的な整備を進めたい、かような趣旨でございます。
  23. 阿部憲一

    阿部憲一君 最近、この地価安定政策やそれから宅地対策が、建設省関係でも非常に重視して、今度の国会におきましても、地価公示制度などもできますし、また一方では地価を安定させるための一連の税制改正が出るようでございますが、そのようなときにこの開発税を出されたわけですけれども、これは建設省とか、あるいは国の考えと矛盾したようなことになりはしないか、こういうことをおそれるのですけれども……。
  24. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私が先ほどちょっと御説明申しましたのはその点であります。ただ、いま政府委員からお答えしましたとおり、市街化区域というものが十年間くらいの目標でやるわけですから、ところが、なかなか住宅問題というものは十年も待たないで、もう一日一日造成が行なわれて、しかも最近の実情を見てみますと、全く、先ほど私が申しましたとおり、道もない。そういう排水のこととか、道路とか、身の回り生活圏といいますか、その中に生活ができないような地域も選んで、どんどん造成していく、家が建つということでございますけれども、いまの大局から申しますと、私も阿部さんと同じように悩んでおります。しかし自治省といたしましては、やはり地域住民の方が不便がないように、少しでも生活が一応できるような体制に持っていく、それには、時間的に非常に制約もございますし、大局から申して、私は阿部さんの御意見と私自身が似ておりますから、かれこれとここで申し上げられませんけれども、実情に即しまして、まあひとつこの程度のことをやって、お住いになる方に便益を与えたい、こういうことでございますし、これが将来において、非常に国策、といいますより住宅問題、土地政策と非常に大きな矛盾が出た場合には、これは私はそのときに考えてもいいが、とりあえず、実情に即してひとつそういうことをやって、住まわれる方に便益を与えたい、こういう趣旨でございます。だから、いまのお話、決して私は反対意見を申し上げるのではございません。
  25. 阿部憲一

    阿部憲一君 最近アメリカのニクソン大統領やまたフランスの大統領ドゴールなどが、地方制度大幅改革を目ざし、着々と地方分権を具体化しておると、こう聞いておりますけれども、わが国においても、欧米諸国と、政治的な環境だとか、あるいは歴史的な伝統的な相違はございますけれども、当然この問題については早急に手をつけなければならない、こう思います。この際、地方制度調査会あるいは臨調の答申のごとく、国の機関がみずから処理すべき事務と、それから地方自治体が処理すべき事務を明確に区別して、この根本的な事務配分の上に立った税財源配分を行ない、地方自主財源を確保することが根本であると、こう思いますのですが、これについて大臣の御所見を伺いたい。
  26. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は、いまの御意見に全面的に賛成であります。今日の地方公共団体行政上の内容を見ますと、御指摘のように国の出先機関といいますか、国の事務といいますか、これが非常に大きな部分を占めております。それで、国の行政地方自治の本来の行政事務の分担というのは、これはできるだけひとつ明確にすべきだと、そこで、これは私どもといたしましては、この意味において、まず国と地方事務整理と申しますか、それは当然そういう地方行政能率化にもなりますし、それから地方行政そのもの責任体制を確立する、こう思っております。これに引き続いて、やはり財政上のことも考えなければならない、こう考えております。
  27. 阿部憲一

    阿部憲一君 まだ相変わらず役所のなわ張り争いとかいうものがございまして、これも結局、この根強いいままでの悪い習慣というものをほっておくことは、やはり住民不在行政と、こういうことになります。これにつきまして自治大臣からお考えを承りましたけれども、行政の確保、改革ということについて、ひとつ勇気を持ってがんばって地方行政のために戦っていただきたいと思います。  次に、私、公営賭博のことについてちょっとお尋ねいたしたいと思います。  少しさきになりますが、美濃部東京都知事公営ギャンブルを廃止しようというような宣言をされました。これは一応大きな問題になりましたのですが、すでにこの公営ギャンブル弊害というものを認めてこれをやめた都市もございますけれども、このような公営ギャンブルというものに対して、自治大臣はどのようなお考えでございますか。
  28. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) やはりギャンブルということばからいたしまして、これは常識的に必ずしも好ましいことではないということは、これはもう私も考えております。ただ、いまの公営ギャンブルが、歴史的な道をたどっておりますが、御承知のとおり、当時、終戦直後から始まって今日までの間に、地方行政財政上たいへんな功績があったことは、これはもう何人も否定ができない。道路学校、あるいは社会保障事業とか、いろいろなことに相当の貢献をいたしました。そこで、これも御存じのとおり、公営競技調査会なり審議会においては、なるべくひとつ弊害を除去して、そうしていけば、続けてもよかろうと、そこで法律もできたわけです。こういうことでございまして、今日まで続いておりますが、端的に申しますと、私も、まあ阿部さんもおそらく御同感と思いますが、ギャンブルですから、もともとこれがいいものだといって奨励すべきものではないことはわかっておりますが、地方財源で、いまでも約九百億くらいの財源を持っております。これがその都市におきまして、大体これは一番財政に困っておるような、いわゆるいま政治問題になっておる過密地帯なんかは非常に関係がある。そこで、一面、決して奨励すべきことではございませんが、地方行政関係のある私としては、財源問題というのに相当の、何といいますか、ウエイトを置いておるわけです。これはしかし私は、最近来公営ギャンブルの問題がありましたときに申しましたのは、これはひとつ率直に言って、現在の公営ギャンブルにおける収益というものは無視できないが、一面、この問題をどういうような考えで取り扱うかというと、これはやはり地方公共団体自由意思にまかせたがいいんだ、また地方住民自由意思にまかす。それは、もうやめたほうがいいということになれば、これは決してわれわれは反対はしない。しかし、実はやめるという公共団体と、あくまで続けていこうという希望を持っておるところがあるのです。ですから、一律にこれをどうということもいまできませんで、結論はひとつその地方公共団体自由意思によってきめたらよかろう。そのかわり、やはり財源については十分地方公共団体考えていただかぬと、やめたから自治省がすべてこれをまかなっていくということは、これはなかなか困難でございますから、そのあたりが、やめられる地方自治体と、続けていかれる地方自治体との考え方の差が非常に出てくると思っておりますから、これは自由意思によってきめられたらいい、こう考えております。
  29. 阿部憲一

    阿部憲一君 この公営ギャンブル、これはいいことじゃないということは大臣もお考えと思いますけれども、私はもう少し積極的に、このようなやはり必要悪でございますか、でありますけれども、必要性そのものが薄れてきている現代ではないかと思います。御承知のように、このような公営賭博というものを始めたのは、あの終戦後の非常に荒廃した時期で、あの時点におきましてはあれが必要悪としてやむを得ないことだった、こう思いますけれども、もう御承知のように、非常に日本の国力というものも世界何番目というふうにいわれておるような時期でございますし、また、地方財政におきましても、当時とは、まあいまつらいとはいっても、比較にならないほどの豊富な、ゆたかな状態に比較的なっておるわけですから、私はむしろこの際、こういったものに対しては、自治省として、大臣とされても廃止させる方向に向かっていくべきものじゃないかと私は思うのでございますけれども、私が申し上げるまでもなく、非常にこの公営ギャンブルのための悲劇といいますか、弊害というものは起こっております。時には、インチキがありまして暴動化するというようなこともありますし、また、個々の家庭におきましても、そのために非常に家庭の不和をもたらすとか、あるいはまた行き詰まって自殺するというような悲劇があとを断たないわけでありまして、そういうような意味合いにおきましても、この公営賭博というものはできるだけすみやかに廃止の方向へ持っていくべきではないか、こう思うのでございます。この傾向が、しかも私見まするにだんだんと盛んになってくる。むしろこれを押えていくといいましょうか、この公営賭博そのものが一般から薄れていくというような傾向ならまだしも、最近は逆に非常に盛んになっていく。競馬なんかにおきましても、場外なんかも非常にあっちこっちでやるようになりましたし、決していい傾向になっておりません。したがいまして、これについていま大臣からもお考えがございましたけれども、これは、このような時点においてすみやかに、まあ何年計画かで、もちろんこれはその都市によって、地域によって事情があると思いまするけれども、これを廃止させるという方向に向かってもらいたいと思いますけれども、この辺についてもう一回大臣にお考えを伺いたい。
  30. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 阿部さんのお気持ちもよくわかります。私も先ほどお答えいたしましたとおり、決して好ましいものではない。ただ、地方財政がだいぶ好転してきたのは事実でございます。そこで、一挙にこれを廃止ということにしからば持っていけるかどうか。これは、これも阿部さんも御承知と思いますが、各都市の公営企業、地方の公営企業なんというものは非常な赤字に苦しんでおるのです、実をいうと。この公営企業の財政措置をどうするかというので、一応地方財政は好転いたしてはおりますが、実態はなかなか充足しておりません。しかしそうだからといってギャンブルを奨励するなんということは毛頭考えておりませんが、そこで何年計画かでこれを廃止ということに路み切ってまいります場合には、やはり財政計画を立てませんと、地方財政が非常な大きな影響を来たしてまいります。したがって私は、先ほど申しましたとおり、地方の、つまり都市によって自主的に考えていただいて、これはやめたがいいというような都市には、私ども全然反対いたしません。これはしばしば私は言明いたしておりますが、自由意思によっておきめください。それでこの傾向が出て、東京都がそういう主張をしておられますから、これが全国どう響いていきますか見ておりますが、やはりこれに共鳴してやられるところもあるし、また逆に、いや、おれのほうはとてもそんなことできないといって、あくまでもこれを持続したいというところもありますし、むしろ今日ではまだ廃止のほうに傾いていく地域のほうが少なくて、持続したいという——もし廃止するならば、しからば今度いままでやってない連中が、自分のほうにやらしてくれという声も出ているという実情でございまして、これは帰するところ、やはり地方財政に関連がある。何もギャンブルがいいからと思って持続しようというのではないのですが、だからこれを踏み切りますには、どうしても財政計画というものを確立してまいりませんと、何年間で廃止ができるということまで、いま腹をきめる段階では少しむずかしい段階だ、こう考えております。よく御趣旨はわかっておりますから、さらに十分われわれも考えますが、実情はまだ何年してやめるということまで踏み切れるだけの、地方財政内容というものが伴ってない、こう考えまするから、そこになかなか勇気を持ってやれないという状態でございます。しかし御趣旨は十分わかっておりますから、またいろいろ検討いたしたいと思っております。
  31. 阿部憲一

    阿部憲一君 モラルよりも財政というようなお考えで、私ちょっとその点非常に残念に思いますが、大臣の御答弁を了といたしまして、最後に一つお伺いしたいのですけれども、政府は今度、地方財政法及び公営企業金融公庫法の一部を改正して、公営ギャンブル益金の一%を公庫に納入させる、地方公営企業の貸し付け金の金利の引き下げを考えていると、これについてはこのとおりでございますか。
  32. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 先ほどちょっと私が触れておりましたが、地方公営企業の財政が非常に悪いのでありまして、東京都もこの間、都の交通のストライキもやろうというので、これは押えられたんですが、ことに六大都市の公営企業なんか、ほとんど再建団体になっているほどの財政事情の、苦しい財政をまかなっているわけです。そこでこれを何とか地方公営企業を、財政上まあできるだけのひとつ安定性を与えたい、これは当然です。それにつきましては、なかなかこれで、だんだん改良もしなくちゃいかんし、地方公営企業として、それから建設——たとえは一例を申しますと、六大都市のごときはやはり地下鉄一つつくりますにもたいへんなことでございます。これらにつきましては、私は四十四年度の予算編成期で、大蔵大臣とも話し合いまして、四十四年度からは少し積極的な地下鉄の計画財政措置についての覚え書きまでつくっておるのでございますが、そういうことでございますから、その方法といたしましては、もちろん政府資金を投入するとか、その他交付金その他の財政措置を——これにも限度がございますが、まず一番に感じましたのは、公営企業金融公庫の金利が高い、こういう金利の高いものを使っているんで、金利に追われるというんで、これを引き下げたい。それをなまじっかな金利を引き下げて、名目だけ、形だけ引き下げましたというようなことじゃだめだというんで、いま大体七分三厘と七分という金利でやっておりますが、上下水道は七分というようなことでやっております。それを少なくとも、できれば五厘ぐらい下げたい、下げるならその程度まで下げようじゃないか、そういう目的を持ちまして、いろいろ財源措置考えましたが、なかなか五厘も下げるということになりますと、財源になかなか苦しいものですから、そこでいまちょうど、阿部さんが先ほど御質問になりましたギャンブルの問題ですが、これがなかなか廃止ということをやられるところもあるが、やられないところもあるので、このギャンブルの収益が年々ふえてまいります。そこでこういう金を、いままでは道路とか教育機関とか、社会福祉なんかも使っておられますが、やはり地域住民の一番いま難渋しているもの、地方の公営企業ですね。このほうに投資はしてもらえないが、せめて収益のほんの一%くらい出してもらってもいいのじゃないか、そうしてその一%の金を入れてもらえば、大体五厘ぐらいの金利の引き下げができる。こういうことで、ギャンブルの収益の一%をお願いして、公営企業の金利の引き下げに充てたいという計画でございまして、いま折衝をいたしている段階でございます。
  33. 阿部憲一

    阿部憲一君 このギャンブルのテラ銭の一部を出すということでございますけれども、これはしかし、いまお話のありましたように、地下鉄という非常に金のかかる事業に出されるということもありますし、現在地方の公営企業は非常に行き詰まっているものもある。それに対しての補助ということもあると思いますけれども、いまの地方公営企業の赤字補てんに、はたしてどのくらい効果がありますか。あるいは気持ちだけというようなことじゃないかと思いますけれども、この辺、大臣非常に効果があるからぜひ推進するのだというようなお考えかどうか。
  34. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) これはお話しのとおり、ただ金利を引き下げたからといって、すぐそれが非常に大きな効果はありませんが、いろんなことの方法を考えて、そして別に、何と申しますか、あらゆる手を差し伸べて、公営企業財政の確立をはかりたい。これは一つのいまの考え方でございます。そこで、どうせいろんな手段を講じませんと、御承知のとおり料金問題にかかってまいります。そうしますと、さらでだに物価問題にも影響し、住民生活というものを、かってに料金を引き上げて、それはまあこれは大体公営企業というものは独立会計で、本来営業でございますから、それはもう上げるほうも理由がありましょう。理屈としてはわかりますけれども、しかし大局から考えますと、できる限り押えていかなくちゃならぬ。住民生活考えますと、これはわれわれとしては簡単に賛成はできない。そういうことでございますから、その中の金利というものは、やはりその負担というものは相当大きいものです。公営企業の、金融公庫ばかりじゃありませんけれども、その債務というのはばく大なものになっております。  それからもう一つは、私どもは、一つギャンブルの収益問題についていま考えておりますことは、ギャンブルの収益というものが、御承知のとおりいろんな公共施設相当役立っております。しかし、これはギャンブルを主催している都市だけのことでありまして、これは全国的にいいますと、実は非常に不公平があるのです、実を言うと。やっているところは非常にそれは金が入るし、やらぬところは入らぬ。そこで、もっとわれわれの考え方を率直に申しますと、いろいろ今度の金利の引き下げにも協力ができるとか、できぬとか言っておられるのですが、できるか、できぬか、折衝の結果ですからわかりませんが、本来から言えば、ギャンブルの収益というものは、実は均てん化していいのじゃないか、最初の動機は、阿部さんもお話しのとおり、その地域の特殊な事情だけれども、もう二十何年たった今日では、もう特殊事情ということは大体薄らいでおりますから、できればやはりギャンブルの収益というものは全国的に均てん化していくほうが本筋じゃないか、こういう考え方もございます。いまいろいろいたしておりますが、しかし、いまお尋ねの金利を下げてもそう効果はないのじゃないかということは、私は、やはりこれをもって公営企業がうまくいく、財政がうまくいくということは言えません。しかし、これも一つの方法じゃないか、こう考えております。
  35. 阿部憲一

    阿部憲一君 最後に公営企業のことについてお伺いしますが、いま大都市の交通事情が赤字を出しているために、従業員の昇給ということがとめられているのが多いわけですね。これはあくまでも独立採算ということをうたっているからでございましょうけれども、これらの職員に対するベースアップというものは、非常に物価高の環境の中におきまして、採算が取れぬからおまえらの給料を上げないのだということで押し切ることは間違っているんじゃないかと思いますけれども、この点について大臣のお考えを承りまして、私の質問を終わらしていただきます。
  36. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) これは一がいに押えておるということではございませんで、その公営企業、大体六大都市をとりますと、これはほとんど再建団体になっています。これは今日までやはり話のついたところは上げることに承諾しております。ただしその条件があるのです。やはり、たとえば上げられるということについて、われわれは趣旨はよくわかります。わかりますかわりに、やはり再建団体の団体も、あるいは職制の改革とか、あるいは合理化とかを自分でやりませんと、ただ何でもかんでも、自分のやることはやらないで、ただ金をひとつめんどう見てくれというようなことでは、いつまでたっても再建団体というものは生きていかないのです。そういうことで、いままでも全部これをストップしておりません。いま、今度のいろいろな最近起こったこともありますから、政府委員が交渉相手しておりますので、政府委員説明させて、ひとつ御理解を願いたいと思っております。
  37. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 大都市はみな交通再建団体でございまして、再建をいたします方針としては、一つは企業内の合理化一つは国の援助、一つは企業の仕事の範囲を縮めると申しますか、変えていく。たとえば、具体的には電車をバスに変えていく、これは都民に関係のあることでございます。そういったような方向で再建計画をつくってまいりました。  そこで、ベースアップにつきましては、そういった再建計画が七年とか八年かかっておりますが、それを達成できるような、やはり大きな目的に沿う範囲でものを考えていきたい。都市によっていろいろ事情も違いますから、必ずしも一律にどうやればいいということは申し上げかねますけれども、そういった大きな目的に沿うような方法でやっていただきたい、こういう私どもは考え方でございます。  昨年の暮れに八賃のベースアップの変更計画の協議が整った。ただいま九賃についてはこれから始まろうとしております。まだ各都市におきまして、それぞれ労使間が折衝いたしておる段階でございますので、私どももその一々の具体的な内容は聞いておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、今後についてもケース・バイ・ケースで指導をしてまいりたい、かように思っております。
  38. 和田静夫

    ○和田静夫君 引き続きまして、概括的な御質問を一、二しておきたいのですが、まず最初に、天下り人事問題とでもいいますか、そういう側面について大臣の所見を二、三承っておきたいと思います。  この間手にしました、人事院の昭和四十三年度の「営利企業への就職の承認に関する年次報告書」、これを見たのでありますが、これについては中央各新聞は「やっぱり官僚天国」という見出しを御存じのとおり掲げました。また三月六日の衆議院の決算委員会は、昭和四十三年度に公社・公団に天下った高給官僚の氏名、前歴、給与などの資料提出を求めました。私は、この委員会において、高給官僚の府県など地方自治体への天下りを問題にし、その実態を明らかにすることが最もふさわしいと実は考えておるのであります。この種の天下りこそ、今日の地方自治のあり方の問題に深くかかわりを持っていると考えるからであります。  そこでお聞きしたいのですが、自治省の幹部職員名簿に登録をされている者のうち、府県など地方自治体に天下っている人はいま何人いますか。
  39. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) 数字を申し上げる前に一言だけ御了解を得ておきたいことがございます。と申しますのは、天下りというただいまお話でございますが、天下りとおっしゃいます定義と申しますか、意味の問題でございます。戦争前でございますと、高等文官試験、戦後でございますと上級職国家公務員試験、これを通りまして、ただいまは自治省のお話でございますが、内務省なり自治省に採用になりまして、それからほかの府県に出ました者、あるいはまた中央の内務省なり自治省なりに行く、こういう人間をおっしゃっているものというふうに考えております。  ただ、その場合に、たとえば私どもの同僚の数が多くあるわけでございますけれども、試験を通りまして、すぐ自分の郷里に帰りまして、そこで課長補佐、課長、部長というようになりました者も少なくないわけでございまして、したがいまして、私どもがこれから申し上げます数字は、その辺、はなはだ主観的にも客観的にも分別しがたいものがありますので、大体の傾向ということでお聞き取りをいただきたいと思います。  自治省の名簿に登録をされているというお話でございましたけれども、これは実は大正の初め内務省時代から登録をされておりますが、便宜戦後ということで御答弁を申し上げさせていただきたいわけでございます。  昭和二十年、二十一年ぐらいはそうたいして採用いたしておりません。二十二、三年ぐらいからということで一応数を申し上げるわけでありますが、大体毎年採用いたしております人数が、その年度によって出入りがございますが、多いときは三十人ぐらいのときもございますし、少ないときは十三人ということもございまして、平均大体二十人ぐらいというふうにお考えいただいてよろしかろうかと思います。そうしますと、戦後二十数年たっておりますので、四百人か四百五十人、そのくらいの人数になります。ただ、その中にはすでに死亡いたしましたり、あるいは退官をいたした者もございます。その辺の数字を申し上げますことはお許しをいただきたいと思うわけでありまが、大体そのくらいの人数でございます。それに対しまして、現在府県の課長相当職以上におります者でございますが、これが大体百七十人ぐらいでございます。ただ、この百七十人の中には、ただいま私は戦後四百人なり五百人なりということを申し上げたわけでありますが、なお戦前の採用の人間も多少おります。そういう意味合いでは必ずしも正確な答えにはならないわけでありますが、大体傾向といたしましては以上のとおりでございます。
  40. 和田静夫

    ○和田静夫君 この人たちは、いわゆるどこまでも自治体におるというわけではないでしょう。したがって、この人たちのことを含めて、全体としての人事計画とでもいいますか、そういうものは立っているわけですか。
  41. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) あるいは御質問の御趣旨を誤解をいたしているかと思うんでございますが、地方に行っております者は、県でございますれば、知事の要請に基づいて地方に行っているわけでございます。したがいまして、知事が非常に信頼いたしまして、参りましたままでずっとつとめる者も出てまいりますし、あるいは二年なり三年なりで、今度は新しい人にかえてほしいというような要望もございます。したがいまして、ただいま申しました約百七十人の人間を、計画的にだれがいつどう、こういうような意味での人事計画は持っておりません。そのときどきの任命権者とのお話し合いと申しますか、御要請に応じて人事配置をいたしておるわけでございます。
  42. 和田静夫

    ○和田静夫君 昨年の六月十五日に、愛知県衛生部長の金光克己さんという人が、桑原愛知県知事が海外出張中にもかかわらず、厚生省環境衛生局長に就任をしています。また、昨年六月の異動では、茨城県の副知事は、二年目の任期途中であるにもかかわらず、大蔵省理財局次長に転任をしております。後任には大蔵省から任命をされています。前者は青鹿明司、後者は村田博さんと、こういいますが、なお青鹿さんは大蔵省関税局総務課長から副知事になった人であります。このように、中央官庁、高級官僚の一方的都合によって、県の人事が動かされているという事実は、これは否定をすることができないと思うんですが、これは、地方自治にとって私はたいへん重大なことだと思います。  自治省にしたところで、毎年何人かが幹部職員として、いまも言われたとおり、新たに名簿に記載をされます。そしてそれは、その名簿の記載者のうち、何人かが地方自治体の重要ポストにつくことを、私は現実をながめていて、前提としている、いま計画はないと、こうおっしゃったんですが、そう考えざるを得ません。こうなると、事態は、この天下り人事などというものではなくて、まさに高級官僚の特権人事である、こう言われてもしかたがないと思うのであります。府県がもはや地方自治体ではなくて、自治省出先機関である、こういうふうにちまたで言われるわけでありますけれども、そう言われるのも全く理由のないことではないということを、いま申し上げた事象を追ってみて申し述べることができるのではないかと思うんです。その点、大臣はどのようにお考えになりますか。
  43. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 地方自治の中に国の高級職員が入っている、これはいまお話しのように、たとえば大蔵省、厚生省の話がございましたが、まあ私はほかの役所について言うことは控えますが、自治省といたしましては、これはいまお話しのような点もあると思いますけれども、基本的にはと言いますか、大体において、都道府県知事のほうの要請にこたえて行った者が多いのであります。これは事実でございます。これは地方行政そのものの運営が、そこに一つ欠陥があるという原則論とか基本論は別にいたしまして、実態といたしまして、ずっと聞いておりますと、やはりどうしても地方行政をやっていくのに中央との連絡上、非常にそのほうが能率的だというような考え方からして、地方の首長が進んで要請する、これにこたえて出すというようなほうが大体多いように私は聞いております。  そこで、その場合において、地方行政自治省によって圧迫されるか、そういうこともないようでございまして、私の関知する限り、一つのパイプとなって、非常に中央と地方行政においてスムーズにいく点が、どっちかというと多いんじゃないか。そこで、これをもっと別の面から見ますと、和田さんのお話のように、先ほどもちょっと阿部さんからも御質問がありましたけれども、つまり地方行政が独自の自主的なすべての責任体制をとるようにという、こういう面から見ますと、私は、やはり基本的な問題でございまして、いまの人事にからまるということよりも、国の仕事と地方の仕事との区分が非常に不明確だとか、また国の委託の仕事が多いとか、こういうところにも非常に欠陥があると私は思っております。したがって、いまの人事というものから見ますと、自治省はことさらに押しつけて、そうして自治省自身の力を各地方公共団体に培養しようというような傾向は私には感じられません。繰り返してくどいようですが、むしろ地方のほうから、どうもそうしてもらいたい、ひとつぜひいい人を世話してくれというようなほうが多くて、現に数字で出ておりますが、こういう数字になっている。私自身はそういう感じがしております、事実。
  44. 和田静夫

    ○和田静夫君 どうも大臣そう言われていますがね。実例をちょっとあげてみます。そう言われても、たとえば旧内務官僚の話がさっき出ましたが、特権組同士で、地方自治体、特に都道府県の主要ポストを占有していることだけを私は問題にしているのではございません。特権組同士でポストをいわゆるたらい回しをしている。こういうことで一体ほんとうの仕事ができるのか。  たとえば一例ですが、自治省の二十三年組に松本亨という人がおられます。この人は、昭和三十九年、徳島県総務部長、四十年・四十一年、公営企業金融公庫企画課長、四十二年、福岡県総務部長、四十三年、自治大学教授を転々と歴任しておられます。同じく自治省三十七年組に上川博さんと読むんだと思うんですが、という人がいらっしゃいます。この人は三十九年、岐阜県企画課、四十年・四十一年、経済企画庁開発計画課、四十二年、自治省交付税課と職を転々としたあと、四十三年、新潟県豪雪地区振興課長となっています。同じく自治省三十七年組に滝実という人がいらっしゃいます。この人も三十九年・四十年、自治省文書公報課、四十一年、自治省指導課、四十二年、中部圏開発整備本部と動いたあと、四十三年、三重県学事文書課長になっています。  このように、昇進を目ざして、とにかく毎年ポストを変えて飛び歩いている特権組がいるんです。その事実を見ると、いま大臣いろいろじょうずに言われましたけれども、全然当てはまらないような気がするんです。これでは当該行政に全責任をもって取り組むということにならないんじゃないですか、いかがですか。
  45. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いまの和田さんのおあげになった事例でございますが、お聞きしていますと、少し転々とし過ぎているように感じます。これはどういう事情か、これは事情説明しろと言われれば説明しましょうけれども、その事情は別といたしましても、まあこう転々といたしておりましては、落ちついて仕事ができないという御批判は私は率直に受けます。これはいろんな特殊事情とか、要請がどうとかありましょうが、こういうことはやはり特例でございましょうが、これはやはりなくしていくべきことだ。しかし全体としては、和田さん、私ほんとうに思うのは、よく知事あたりから、私も自分の郷里の知事なんかに言われる。いまはありません。私のところがらは一人も推薦しておりませんからはっきり言えるのです。私が一人でも推薦しておればこんなことは言えませんが、   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕 幸いに一人も私が自治大臣になってから、自分の郷里へもどこへも推薦したことがないんですが、その前ですよ、その前から、どっか自治省にどうとか、あるいは建設省にどうとかという相談を受けた私記憶があるもんですから、私は率直にこういう人事の、どうもそういう地方のほうから中央に要請された面が相当多いのじゃないか、これは実感を申し上げたのです。御指摘のいまのあとの人事につきましては、私も大体それは少し度を過ぎているのじゃないか、こう感じます。
  46. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。ちょうど同じようなことがかっての文教委員会で質問されておったんですが、そのときに、勤務評定や学力テストの問題がありまして、各県でそれぞれ大きな問題を含んでおる。具体的には岐阜県の問題をはじめ、かなりありましたんですけれども、これは文部省から勤務評定その他の問題を予期して、ある程度政策的に交流が行なわれておったという事実があったわけなんです。そして全国的に調べていきますというと、人事の交流とか、パイプを通すとかという、名目はたいへんいいし、特に大臣の言われたように、地方からの要請であったということに表向きはなっております。しかし内容を見ていきますと、必ずしもそうではなくって、相当意図的にされておったということを私は聞いておるわけなんです。  やっぱり政治の民主化とか、そういう問題は、地方自治のほうできちっとしていかなければ、地方分権になってほんとうの民主化の実をあげていかなければならない本家本元の自治省が、そういうことを大っぴらにされておったということについては、私問題があると思うんです。これをずっと広げていきますと各省、たとえば厚生省関係では衛生関係あるいは保険関係については、ずっと交流の名のもとに行かれる。行きますというと、パイプを通すというけれども、実際的には中央の命令系統だけが先行していくような政治にもしいくとなったならば、あるいはいきつつある現状もかなりあるように思います。その一例が、この間でも労働省関係の問題であげられたことがあるんですけれども、必ずしもそうでなしに、労働行政の推進という名のもとにあったんですけれども、やっぱり聞いてみますというと、その衝に携わっている方々は、それではいけないんだということを、具体的に自治省あげているのです。それにもかかわらず、労働行政の中で労働省の案がきちっと通って、上のほうでそういう案を練っていって、これがいいんだということで押しつけられていくという、こういう実際の中でいきますというと、ここらで自治省あたりが本腰を据えて、民主化の基本というものを貫いていくためには、納得のいく、交流ということばはおかしいんですけれども、人事をしていかなければいけないんじゃないか。  私がいま申し上げたのは、できれば参考資料として、各省で地方に、たとえば現在課長になっている者でもいいし、課長以上の者でもいいですけれども、どの程度の比率になっているか知りたいと思うのですが、これはおそらく総理府に要求しなければならないと思いますけれども、やっぱり自治省あたりがその辺に手をかけていただいて、資料をいただけるものならば次の委員会にちょうだいしたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  47. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) 実は先ほどちょっと申し上げましたように、いわゆる天下りでございますか、この定義自身、ちょっと見解の不明確な点がございます。それで実は私どものほうも各省のほうに照会をいたしまして、大体の数字は持っているのでございますけれども、ところが、各省の人一々につきまして、私どものほうが個人的にチェックするわけにまいりませんものですから、大体の傾向の数字は私は申し上げられると思いますけれども、それはしかし正式の資料として申し上げられる性格のものではないと思います。もしお許しをいただければ、後ほど千葉委員に、私どもが一応持っておりますものを大体の傾向として申し上げることでお許しを願いたいと思います。
  48. 和田静夫

    ○和田静夫君 先ほど大臣、私のあげた事実に基づいて、それを特例なものとしながらも、その部分についてはたいへんひどい、こういうふうにお答えになったわけです。そうならば、今後はこういう状態は起こらない、そういう態度を明らかにこの委員会でされますか。
  49. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 先ほどお示しになりましたのは、私はどういう事情か知りませんが、一般的な常識から言うと、和田さんが御指摘になったような感じがいたします。もう一つ、ちょっとその前につけ加えて申し上げたいと思いますことは、きょうそういう御質問があるとかなんとか、全然私予期しないで参ったのですが、ちょうど政府委員室で役所の首脳部と一緒におりますときに、いろいろの情報が各地方公共団体なんかから来ます。あの県はこういうことを言ってきているとか——そのときに私は偶然言ったんですが、各役所の方が地方行政のほうに入っていただいて、それは非常にまたいいこともあるだろうし、いろんなこともあるだろうが、これはよその役所のことは私言えませんが、自治省は若いころに、少しでも地方公共団体の中に入って、一つの修行といいますか、実態を知る、地方行政の。これは私は決して言いわけではない。さっきそう言ったんです。この制度というものは、向こうから要請されるだろうが、やっぱり何年間か地方へ行って実態を見て、ただ中央におって、何かしらん命令系統みたいな、いま命令というのはありませんけれども、指導助言するということでなくて、一応自治省としては、ある程度の人は実態を把握してきたほうがいいんじゃないか、これはきょうの御質問を予期しないで先ほども話したわけですが、これは一つの話ですから、何もそれがいいと私は決してがんばるわけじゃありませんが、こういう感じを先ほど偶然委員会に出る前にしておったのです。  なるほどそうすると、将来上級幹部になる人は、若いときやはりそういう経験があるのは、これはプラスになるかもしらぬ。これは和田さんの意見反対しているわけじゃありませんので御理解願います。ざっくばらんにそれは話したことがあるのです。その点は弊害があってはいけませんから、これはもちろん除去いたしますが、自治省で、地方のほうに頼まれて、また、いろんなことで行っているのは、多少そういう点を御理解願えれば、私自身はそういう感じを実は少し持っているものですから、ざっくばらんのことを申し上げるわけですが、いまの特例の問題につきましては、これは御指摘のとおりでございまして、十分今後は注意するように、ひとつ私からもいろいろそういうことについての注意を促しておきますから、御了承願いたいと思います。
  50. 和田静夫

    ○和田静夫君 私やっぱりこういう実態、官僚の実態というものを、もっと国民の前に明らかにすべき委員会としての義務を持っているような感じがいたします。そこで千葉委員からもあったんですが、その資料も資料として、私がお願いをしたいのは、自治省の幹部職員名簿ですね、これはもうすぐ出るわけですから、さっき言われたように古いやっといったらまたいろいろ言われると思いますから、この委員会に提出していただきたい資料を限定したいと思います。幹部職員の名簿は毎年作成されているはずですから、過去十年間にわたっての自治省幹部職員の名簿、それを提出していただきたい。これは先ほど、人事計画というものはないというふうにおっしゃいましたけれども、その辺は別にして、とにかくこの十年間の名簿を資料として提出していただきたい。それはもう約束できるでしょうね。
  51. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) 過去十年間の名簿でございますが、はたして委員会の皆さま方にお配りできるだけのものがありますかどうか、ちょっと十年間となりますと私は無理だろうと思いますが、しかし一度調べまして御連絡を申し上げます。   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕
  52. 和田静夫

    ○和田静夫君 地方財政計画についてちょっと一、二点だけお聞きしたいのですが、全体の問題についてはまた後の機会に御質問いたしますが、私はここに昭和三十九年から四十一年までの地方財政計画とその決算額の比較を実は持っておりますが、お聞きをしたいのは、四十二年度の純計決算額はもうすでに出ていると思うんですが、ちょっと教えていただきたいと思います。
  53. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 四十二年度の純計は、私ちょっといま手元に持っておりません。近く白書の形で国会の皆さんにお配りできると思っております。月末ごろになると思います。
  54. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、純計の数字はおわかりにならなくとも、計画額との差ですね、差し引き、大体どのぐらいですか。
  55. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 計画と決算の差につきましては、おおむね数千億円に開いておると思います。
  56. 和田静夫

    ○和田静夫君 この数字は明確に月末までにはなりますか。
  57. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 明確に月末には御提出できます。
  58. 和田静夫

    ○和田静夫君 それじゃ、そのときにいたします。この地方財政計画説明の中にあります一四ページのいわゆる給与費の中の(オ)ですが、給与改善措置に必要な経費の増、金額がありますね、総額。この算定の基礎を御説明願いたいと思います。
  59. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 地方財政計画の給与関係につきましては、御承知のように、給与のベースを国家公務員のベースに置きまして、それに財政計画上認められております職員の数を掛けたものを基礎として給与費の計算をいたしております。
  60. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、たとえば人事院勧告を予測をしながらでありますが、閣議でいろいろ協議をして、大体五月実施というような形の論議が、人事院勧告の完全実施という形でもって、なるべくそれに近づけようという論議をする。それから野田自治大臣は、九賃のときの私の質問に対して、四十四年度からは完全実施という形のことについて努力をするというような答弁をされているわけですが、それらとの対比で五月実施何%増という形で増額が決定をしていますか。
  61. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 給与費一般ではなくして、四十四年度の給与改定のときの財源措置がどうなっているかというお尋ねのようでございます。それにつきましては、国の四十四年度の予算計上の方法に準じた措置をいたしております。具体的には、給与費の部分に一部分、それから予備費的な年度内追加財政需要額——財政計画で申しますと一般行政経費のところでございますが、そこに一部こういうことで見込んでおりますが、その総額につきましては、前年度給与改定に要した額を大体めどにして組んでおります。したがいまして、何月実施で何%といったような根拠に基づいた数字を計上はいたしておりません。
  62. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、前年度を見込みとして組まれた。そこで、一般行政経費の中で盛られているものは大体どれぐらいのことを考えていらっしゃいますか。
  63. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 国に準じたわけでございますが、国は、給与費中に約五%分のアップに相当する額を見込んでおる、他は予備費でこれをまかなうという、こういうことでございます。地方財政計画におきましても、それに準じて、おおむね五%に当たる部分について給与費のところで、残りにつきましては一般行政経費の中で、給与費以外に御承知のように災害による経費等もございますので、そういうのと一緒に計上をいたしております。
  64. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうすると、五%以外の部分について、災害を含めてどれだけの額ですか。
  65. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 約三百億程度でございます。
  66. 和田静夫

    ○和田静夫君 そうしますと、大臣、四十四年度、いわゆる五%部分についてはわかりました。それ以外のものを災害を含めて三百億と、こう言われました。それで、大臣がこの委員会で完全実施という形のものを約束をされた、そのことを満たしておりますか。
  67. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) この前和田さんにお答えいたしました。私自身は完全実施したいということをいまでも思っております。しかしこれは、先ほど財政局長からもお答えいたしましたとおりに、やはり人事院の勧告に基づいて国の公務員の給与は決定しまして、それに従って政府考え方がきまるというので、地方公務員の給与も、従来どおり国に準じてやるというこの原則は、私どもは守っていかなくちゃならぬと思います。したがって、いま五%を計上していると、災害その他の三百億が一般行政経費に入れてありますが、この前の一カ月間アップしましたときに、最初に一カ月間アップする予算はつくっておりません。地方もつまりそのときの財政処置でやったんでして、完全実施が希望どおりできました場合は、やはりその財政処置は当然考えてできると思っております。
  68. 和田静夫

    ○和田静夫君 一般行政費の中において完全実施ができた場合には、当然考えているということですね。  次に、過疎の問題で二、三基本的なことをお尋ねをしておきたいと思いますが、国鉄関係来ておりますか——昨年九月の国鉄の諮問委員会の答申、あるいは国鉄財政再建推進会議の結論では、八十三線二千六百キロメートルの赤字線廃止を打ち出しておりますが、この問題は地域住民の福祉増進の立場に立つ地方自治体の立場からも考えるべき私は数々の問題を実は蔵していると思うのであります。ここでは、国鉄諮問委員会の廃止勧告のあった赤字路線の一つ、石川県能登線の問題を取り上げることを通じて、問題を私は全体的に浮き彫りにしてみたいと思います。  まず確認をしておきたいことは、沿線人口の推移でありますが、それは、昭和三十五年八万四千五百四十九人から昭和四十年には七万六千百二十八人へと減少、明らかに過疎化現象を呈しています。しかし、国鉄輸送量の推移を見てみますと、輸送人員においても、三十五年八十四万七千人、四十年三百二十二万三千人、四十一年三百四十九万一千人と、順調に伸びております。人数と距離を加味した輸送人キロにおいても、三十五年千二百八十六万人キロ、四十年四千七百七十万六千人キロ、四十一年五千二百五十三万五千人キロと伸びております。また、貨物の輸送の面でも、輸送トン数は、三十五年二千トン、四十年は六万トン、四十一年は六万五千トンと伸びております。トン数とキロ数を加味した輸送トンキロにおいても、七万トンキロ、あるいは二百八十四万六千トンキロ、三百十二万三千トンキロと、こういうふうに伸びております。  そこで大臣にお聞きをいたしますが、この能登線を廃止することは、少なくとも能登線使用人口という形で定着をしている人口を浮動させるという意味において、能登半島の過疎化現象を促進することになると思いますが、いかがでしょうか。
  69. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 私は、この国鉄の赤字線廃止問題につきましては、非常な重要な自治省としては関心を持っております。また持つべきだと思うんです。先般の閣議でも、赤字線廃止について、国鉄当局はただ発表した何線かをどういうふうな順序においてこれを廃止をしていくかということを聞きました際に、いやこれは地域住民の人と懇談してやるんだと、こう言うんです。それは、委員会においても、国鉄総裁からもそういうその後答えがあったようです。いまとにかく赤字線廃止ということにつきまして、もちろんかわるべき交通機関整備されるとか、その他の地域住民が不便を感じないという対策が立てば、これは別でございます。そこで、いまおあげになりました石川県の能登線でございますが、私は実態を存じませんが、一般論といたしましても——ことに能登線のごときは、いまのような相当住民も定着している、どういう意味でこれは赤字になったかわかりませんが、そういうことを私は特に能登線についてお答えは知識がありませんからお答えができませんが、一般論といたしましては、やはり国鉄の公共性にかんがみまして地域住民の不便を来たすということ、それから納得のいかないということ、また対案かできない——対案ができればこれは別でございますが、そういう意味からいたしまして、これは簡単に国鉄が赤字だからというんで廃止されることについては、私は必ずしも同意できない。ことに能登線についてのお話でございますが、この状況でございますと、これは国鉄のほうも十分お考えになることだと思いますし、私は何も国鉄にかれこれ申し上げるのではございませんが、お考えになる線じゃないかと思いますが、一般論としましては、重ねて申し上げますが、ただ赤字だからというだけの理由で、あとの対策もつけぬで、また地域住民の理解と納得が得られないで廃止されることについては、私としては相当異論を持っておると、これだけ申し上げておきます。
  70. 和田静夫

    ○和田静夫君 いま言われたとおり、交通という現象は、とにかく国民大衆の生活に最も身近であります。むしろ生活に直結をし、生活そのものであると言ってもいいと思います。したがって、もともと赤字路線になることがわかっていて、そういうような地域でも住民の内的要求に押されて鉄道を敷いたという例も、私は国鉄なればこそあるのだと思っております。四十五億円の巨費と十年十カ月の歳月をかけて、しかも四年前にやっと全線開通したのですね、これは。この能登線を廃止する、そういうばかげたことが一体あるのだろうかということで、いま能登半島の住民の皆さんが立ち上がっています。鉄道の沿線には廃止絶対反対の看板が立ち並んでいます。自治体始まって以来の全住民による署名運動が行なわれています。私はそれもそうだろうと思うのです。国鉄当局はこういうふうに言っているのです。バスによる通勤通学を確保いたします、そういうふうに言っていますけれども、生徒の通学定期代は、バスは列車の二倍になるということでありますね。こうした地域住民の利益を守るという観点に立って考えてみますと、国鉄全体としての累積赤字が二兆円になった、だからローカル赤字線を廃止するという、そういう論理というものは、私は成り立たない、そう思います。少なくとも中央に対して地方の立場に立つ自治省でありますから、そういういま申し上げたような地域住民の立場に立って、過疎対策の観点から、あるいはひいては全国的開発計画の立場から、国鉄の画一的赤字路線廃止論には反対をすべきだと思います。それについては、自治大臣反対と御答弁をされておるわけでありますから、歓迎をしたいと、こう思うのです。  そこで、国鉄当局にお伺いをしますが、恵まれた自然の景観と素朴な人情、戦後奥能登は能登線の開通と相まって観光ブームに実は乗っているのであります。昭和三十七年の観光客は四万五千二百人でしたが、四十年には十九万八千八百人、四十二年には四十九万人にも伸びている。能登半島国定公園に指定された四十三年は七十五万人を数えました。四十五年には倍増の百五十万人が見込まれております。このため、観光シーズン中の急行列車はどれも超満員です。住民は、夏場はあれだけ混雑しているのにそれでも赤字なのだろうかという素朴な疑問を抱いておりますが、観光周遊券による収入をそれぞれの線区に応じて配分しても、能登線は赤字になりますか。
  71. 大久保一男

    説明員大久保一男君) 運輸省業務課長の大久保でございます。  ただいまのお尋ねでございますけれども、手元に四十一年度の実績しかまだ出ておりませんので、それを申し上げますと、能登線につきましては、四十一年度におきましては、収入が一億六千五百万、それから総経費が五億五千七百万、したがいまして、私どものほうでは営業係数と言っておりますけれども、収入一〇〇に対しまして支出が何ぼかかったかという数字でございますが、これは三三八ということになっております。
  72. 和田静夫

    ○和田静夫君 さっき私申しましたが、いわゆる観光周遊券による収入というのは一体どこの線区で計算をしたのですか。能登線区で計算をしていますか。
  73. 大久保一男

    説明員大久保一男君) 収入につきましては、これは非常にこまかい原価計算の手法があるわけでございますけれども、まあ数次にわたりまして学者の御意見等も取り入れまして、逐次完ぺきなものにしつつあるわけでございますが、その発着費と輸送費とに分けまして、それから貨物、旅客別に分けまして、いろいろこまかな計算で成り立っておりまするので、お尋ねの観光客の旅客収入につきましても、発着費を除きまして、輸送費につきましてはキロ程の案分比例によって配分してございます。
  74. 和田静夫

    ○和田静夫君 この国鉄の長期ビジョンを読んでみますと、新幹線網完成後の東京−金沢間の所要時間は一時間五十分、こういうことになっています。ここで私は、まあたいへん最近読ませていただいて感心をして、われわれ全く、何といいますか、もっともっと勉強しなきゃならぬと思ったんですが、別におべんちゃら言うんじゃないんですが、自治省官房長の宮澤弘さんの書物がここにあります。この中の、「新国土計画論」の一説を引用してみますと、「タイムディスタンスの短縮が、そのままエコノミックディスタンスの短縮に結びつくとすれば、それは、西ドイツの例にみられるように、一方で、日本列島における地域分業を徹底させるとともに、他方で、人口・産業の立地に対する遠心的エネルギーを誘発し、それが求心構造を弛緩させるとともに、国土全体のバランスのとれた開発に与える影響はきわめて大きいものがあると思われる。このため、離島や豪雪地帯など極度に自然的条件に恵まれない地域をのぞけば、いわゆる後進地域と称されている地域の多くにおいても、ダイナミックな開発の可能性が拓けてくることが予想されるのである。」ということになっているのであります。で、国鉄の長期ビジョンを打ち出している国鉄当局が、ほんとうにここまで、いま読み上げたような形の長期ビジョンの上に立って赤字線の廃止ということも考えているのかどうか、その辺をまずひとつお聞かせを願いたいと、こう思うんです。東京—金沢間の所要の時間が一時間五十分になったときに、能登半島は現在の伊豆半島とちっとも変わらなくなるんですよ。名古屋や大阪からの距離を考えてみると、それ以上の観光地となる可能性さえ有しているわけですね。そのことも十分踏まえた上で能登線廃止を打ち出しているのかどうか、明確に答弁してもらいたい。
  75. 大久保一男

    説明員大久保一男君) お答えいたします。先ほど先生の御質問に自治大臣がお答えになったことは、基本的にそのとおりでございますし、私どももそういう態度でおるわけでございますが、多少ふえんして御説明させていただきたいと思います。御指摘のように、昨年の九月四日に、国鉄総裁の諮問機関でございます国鉄諮問委員会から、御指摘のように、八十三線区二千六百キロを廃止してバス輸送に転換すべきである、こういう意味の答申がなされました。で、われわれといたしましては、それは国鉄総裁の諮問機関の御意見でございますので、まあ一つの有力な御意見として承っておるわけでございます。それから一方政府では、閣議了解におきまして国鉄財政再建推進会議というものが持たれまして、昨年の十一月一日にやはり運輸大臣に答申があったわけでございますが、このローカル赤字線の問題につきましては、道路輸送への転換が適切なものについてその転換を促進すべきである、こういう御意見がなされております。で、運輸省といたしましては、国鉄の財政というのは御承知のようにいま非常ににっちもさっちもいかない状態になっているわけでございますけれども、赤字線をやめるということは、その影響するところがきわめて重大でございますので、一つ一つの線区につきまして、鉄道網に占める地位であるとか、あるいは地域交通に占める役割りでありますとか、それから総合的な国土開発計画との関係とか、あるいはその地域におきます地域開発から見た将来性でありますとか、あるいは、さっき先生のおっしゃいましたように、道路整備状況といったものを具体的に、そして綿密に調査をいたしまして、総合的な観点から慎重に判断をすることといたしております。したがいまして、先ほど大臣がお話しになりましたように、やはり地元の方々あるいは地元の市町村反対を押し切って強行するというような意思は毛頭ありませんで、十分お話し合いをした上で、御納得ずくの上で進めてまいりたい、このように考えております。
  76. 和田静夫

    ○和田静夫君 能登線を廃止されないというわけですか。
  77. 大久保一男

    説明員大久保一男君) 先ほどことば足らずであったかもしれませんけれども、国鉄諮問委員会は、個々の具体的な線名について列記をいたしまして、それは国鉄財政上から廃止すべきであると、こういう御意見でございましたけれども、政府の諮問機関であります国鉄財政再建推進会議におきましては、個々の線名というものは全然ございませんし、何千キロ何線区切れということもございませんし、先ほど申し上げましたようなことを一線一線慎重に考えながら、そうして地元の御了解を得ながらやめる、やめられるものがあればやめるべきであると、まあこういうようなことになっておりますので、全然白紙でございます。
  78. 和田静夫

    ○和田静夫君 能登の地元では、鉄道のない都市の汚名を返上した喜びもつかの間に、わずかに四年後に廃止の声が打ち出されたと、であ然としているというか、まあ信じられないというか、そういう気持ちでいるという状態であります。で、国鉄の納付金をなくすためのかけ引きではないだろうか、こういう声さえあります。珠洲市という自治体の当局は、この国鉄の納付金をなくすためのかけ引、それが原因ならば国鉄納付金をもらわなくてもいいと言っているくらいですよね。これはまあ一例です。その辺は一体どうなんです。
  79. 大久保一男

    説明員大久保一男君) 御指摘の納付金のことでございますけれども、これは先生のおっしゃったような趣旨ではございませんで、いまの非常に破産状態におちいった国鉄を立て直すためには、ちょっとやそっとの単純な方策ではとても再建ができないということで、まあ財政再建推進会議におきましても、そういう御認識のもとに、いわゆる三方一両損と申しますか、あるいは三位一体と申しますか、国鉄みずからもまず徹底的な近代化、合理化をやるのだということが第一点、それから国とかあるいは地方公共団体においてもこの際まあ財政措置考えるべきであるということが第二点、それから第三点といたしましては、国民の皆さまにもまあこの際その運賃の改定ということによって国鉄再建に御協力していただきたいという、そういうまあ以上三つの柱を基幹といたしまして、三位一体でやらなければ国鉄財政は再建できないのだと、まあこういう御意見をいただいておるわけでございます。  そこで、先ほどの納付金のことでございますが、自治省御当局の格別の御配慮によりまして、かなりの納付金の軽減をしていただくことになっております。で、それが一つの方策でございますし、赤字線のやめられるものはやめていくということも、これも再建のための欠くべからざる一つの方策でございますので、別段その両者に御指摘のような関係はございません。
  80. 和田静夫

    ○和田静夫君 新全国総合開発計画の策定も大詰めを迎えて、あらためて全国的なフレームワークが問題になっておりますし、その中に位置づけられての地方自治が私は考えられるようになってきていると思うのです。そういう意味での自治の転換ということが政策当局者から言われるようになったきょうこのごろでありますから、それに逆行するようなこともこの政策当局においてなされているというような形の点ですね、たいへんわれわれは奇異に感ぜざるを得ません。国鉄当局が打ち出した赤字線の廃止についても、すべてにわたって私は検討したわけではありませんが、福井県の赤字線その他も視察もしてみましたけれども、能登線一つをとってみても、国の総合的な開発計画に、あるいは過疎対策に逆行しているように私は思えてならないのであります。国鉄の財政再建ということ、そこではそれだけが考えられていてですね、現段階の開発計画に位置づけられて立てられてきている市町村のこの自主的な開発計画などは全く忘れ去られてしまっているのではないか。自治省は、たとえば能登線の廃止によって、それを前提として立てられてきている周辺市町村の総合開発計画が全くパーになってしまう、こういうことについてどういうふうに考えられているのですか。市町村段階の開発計画が問題になる場合に、同時に府県段階におけるそれが問題になると思うのでありますが、先ほど引用しました宮澤弘さんの新国土計画論の中で、「各地方公共団体は、各々その地域について長期開発(経済)計画を策定していることは既述のとおりであるが、各府県の作成した開発計画も、その内容において、ややもすれば、過大な目標やビジョンを掲げ、しかも、その府県の独自性を主張するあまり、自己完結的な開発の考え方および手法により、全国的な分業という観念はなく、また、広域的見地から隣接府県等との調整をとっていないものも少なくない状況である。」と述べておられます。私は、いま運輸省の肝いりで進められておる金沢新港の建設などは、地域エゴイズムに基づくそうした総花的開発計画の実は典型であると考えておるのであります。金沢新港の問題は、これは後に別に取り上げるつもりですが、問題は、一つ石川県をとってみても、国鉄の財政再建計画によって市町村の総合開発計画はパーになる。一方では日本海開発などという大きな絵のもとに新港が建設され、そうして中央の御都合で県段階の開発計画さえばらばらにされてしまう、こういうようなことではならないと実は考えます。そうした点について、自治大臣としてどういうふうにお考えになりますか。
  81. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 全国の総合開発と各自治体の開発計画、これは当然、これに矛盾があれば、これは全国の開発計画というものは推進しない。もちろん、いまちょっとお話しのように、地方公共団体がただ独自——ちょうど宮澤君の本に書いてあるように、自分かってに、国なんかどうでもいい、よそはどうでもいいというような開発計画というものは、これはいわゆる市町村における開発計画でも、非常にそれは欠陥の多い開発計画であって、われわれが主張いたしております広域行政というのは、やはりそういう点に発想があるわけであります。やはりこれはどうしても、地方公共団体は国の総合的な開発計画とにらみ合わせて、国の総合開発計画は当然地方の開発計画とマッチするような、さっき国鉄が三位とか四位一体とか申しましたが、これは二つはほんとうに一緒に歩かなければとても総合的な開発計画はできない。その意味において、いま御指摘になりました交通機関というものは、これは総合開発の中の国または地方の開発計画と同じような意味において重要な開発計画の一環をなしておるのであります。それを無視して、たとえば国鉄はおれのほうはかってに赤字だからやめるんだ、建設省はおれのほうはかってにどうだとか、そういうことを言っておっては、これは総合という名にふさわしくないし、私は、いまお話しになりましたとおり、こういうことはいわゆる看板にあるとおり総合的な計画、その中には各般の産業、経済、文化、観光すべてが包含されなければならないと思いますから、これがちぐはぐになるということは、自治省としては、市町村の持っている開発計画の推進にあたりましても、私はこれを調整していくべきだ、こう考えております。
  82. 和田静夫

    ○和田静夫君 地方自治体が地方自治体として成立をする最低の条件を守るという、そういう観点に立って自治大臣は努力をされる、そういうふうに理解しておいてよろしいですね。  先ほどありましたが、引き続いてギャンブルの問題で簡単に二、三お尋ねをしておきたいと思うんですが、美濃部東京都知事は都営ギャンブル廃止の方向を先ほどあったように打ち出して以来、公営ギャンブルの是非をめぐってさまざまな議論がなされております。ところが自治省は、ギャンブルを廃止するくらいの財政の余裕があるなら、水道や地下鉄工事の地方債を減額したらどうだという、いわゆるギャンブル財政論の立場に立って、きわめて冷淡な態度を出され続けています。先ほど来の答弁を聞いておっても、そう感じます。二月二十日の朝日新聞は、アルバイト先で誘われるままに覚えた競馬に毎月の授業料を使って、学校から催促されるのをおそれて、証拠書類を焼こうと学校に放火した高校生の記事を載せていました。こうした記事が紙面をにぎわす一方、余裕を持ったギャンブル愛好者からの発言も少なくありません。これは雑誌「現代」、ことしの四月号に、食糧庁長官檜垣徳太郎氏は、「とにもかくにも私は二十年間競馬をやり続けてきた。私にとって競馬は人生の伴侶だと思っている。大げさに聞こえるかもしれぬが、競馬によって私の人生は豊かになりました。うるおいのあるものになりました。したがって、美濃部東京都知事公営ギャンブルの廃止論のようなものに接すると、農林省の役人としてよりも、まず一競馬ファンとして考えてしまう。大衆をばかにしてはいけない。大衆には大衆の判断力があり、それに従って競馬をやるファンがふえているのだ。美濃部さんが言われるように、ファンは人間性の弱みにつけ込まれてのみやっているのではない。競馬には競馬の魅力があり、それは結局のところ競馬ファンにしかわからないのではないかと思う。」などが、私は代表的な発言だと思います。食糧庁長官という立場の人が述べるには、政治的に、また時期的にたいへんどうかと思われる発言ですが、きょうは私はそのことを追及しようとは思いません。ギャンブルを余裕を持った目でこういうふうに見つめている人、あるいはレジャーとして楽しむことができる人々、こういうのは一定の水準以上の所得を私は保障された人々であるということを一般論として考えることはできると思うんです。そうして一般論としては、一月二十九日の朝日の「天声人語」が指摘しましたように、地方自治体が胴元になってギャンブル日本を形成している結果は、低所得者からの収奪であり、社会を荒廃させる害悪が大きいと私もまた言えると思うんです。もっともそれはわが国だけのことではないらしくて、二月二十日の朝日新聞によれば、初めての市営くじを大ロンドン市が計画したが、その国会における認可の段階でその計画はつぶされてしまったそうです。つまり、イギリスでは、さっきもお話がありましたが、道徳論の前にギャンブル財政論は敗退をしたのであります。  そこでお聞きをしたいのでありますけれども、ギャンブル財政論に立つ自治省も、国民的モラルの問題としてはギャンブルは好ましいものではないと考え公営ギャンブル漸減の方向は確認できると思うんですけれども、そのことは確認をしておいてよろしいですか。
  83. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 和田さんにお答えしますが、先ほど阿部さんにお答えしたとおり、ギャンブルがいいかどうかということになれば、やはり決して好ましいものじゃないということを前提にしておきます。ただ、いま私は食糧庁長官の何か話を初めて聞いたんですが、これは一般論としては、そういう方もおりますし、また大衆といいますか、一般の人も、レジャーとして楽しんでいる人もありましょう。しかし、それを一々私は根拠にして言うんではなくて、私は私自身が幸か不幸か競馬にも競輪にも行かぬものですから、そのほうにどれぐらいの楽しみがあるか私も理解できない。非常にぼんくらな男、無趣味な男です。そこで、わりあいに私は公平だと思っております。自分がやっていない。自治省がモラルを無視して財政に片寄って非常に暴論を吐くというようなことが朝日の「天声人語」にあったということですが、それはおかしいと思います。それはつまり、終戦後の日本の財政、先ほどもお話がありましたとおり、やっぱり地域開発というものについてこれが果たしておる役割りというものは、私は相当評価していいと思う。そこで、その役割りが果たせたかというと、地方財政は必ずしも——先ほどの地方公営企業でもごらんのとおりであります。イギリスが云々、イギリスは競馬が世界一盛んなところで、これは非常になかなかイギリス人というのは、しかし決してイギリス人のモラルは疑いない。だから、一片のモラル論とそれから一片の財政論では片づかない問題である。しかし、好ましいことであるかどうかということになると、私は好ましくない。できるだけ、ちょうど和田さんの御指摘のとおりの、私の意見というものは漸減論に賛成であるが、私は先ほどもはっきり申し上げました。やはりこれは主催している地方公共団体の自主的な判断にまかせる。それからその地域住民の自主的な判断に待ち、そしてできれば、こんなものをいつまでもわれわれがんばって、地方財改に影響があるから何でもかんでもこれをがんばっていこうなんていう考えは毛頭ございません。ございせんが、廃止論となりますと、一挙に廃止ですから、このいまの地方財政の中に占めるギャンブルの収益というものは相当な、先ほどお話どおり、計画の中に入っているのです。それはもうこれは非常なウエートです、ある地域によっては。そこで、私の自治省といたしましては、これを廃止論に踏み切る勇気をつけますには、やはりそれだけの財政計画を持ちませんと無責任じゃないかと私は思う。そこで、漸次この問題が、地域住民の方、また地方公共団体が自主的にこれを判断されておやめになるということに、何らの抵抗もわれわれはするべきではないし、私はそれでけっこうだと思う。そういう意味ですから、その点は、モラル論からいえばどうか、財政論からどうかということになりますと、これはなかなか私の自治省としては非常にむずかしいのです。これは実態を申し上げる。ただ一片のそういう批評はけっこうですが、それでもって地方財政はそれじゃおまえがしょっていけと言われた場合に、非常にこれはまた計画に欠く、それこそ地域の開発計画に支障を起こす。住民の福祉増進ということ、つまりどのくらいの動員——相当このギャンブルに動員数が多いのですが、まあしかしそれは地域からいえば相当たいした、何%ですか、あとの人のためになっているということ、それだから、私は繰り返して誤解のないように申し上げます。これをどこまでも保持していかなければならないというのじゃないのですが、漸次おかげさまで地方財政も好転のきざしが見えております。これが漸次地方財政がまあまあということになりますれば、これはやはりギャンブルというものは好ましいものじゃありませんから、これは決して廃止に反対いたしませんし、廃止しようということを言ってこられたところについては私は賛成する、私自身はそう思っております。その点をひとつ、自治省がいかにもギャンブルに味方して、ギャンブルでもって地方財政を持っていこうというようなことに、よくよくそういう議論が出るようですが、私はあまりそれには頭を痛めておりません。私は、実際論だったら、やめたいところはおやめなさい、しかし財政の問題があるからよく注意してください、好転してくれば、その計画が立てばけっこうだ、こういう姿勢をとっておりますから、この点は特に御理解を願いたいと思っております。
  84. 和田静夫

    ○和田静夫君 わが国公営ギャンブルに関する行政の方向というのは、言われるまでもなく、単に比喩的に、評論的にものを申すのではなくて、昭和三十六年七月二十五日付の公営競技調査会答申の「現行制度の存続を認め、少なくとも現状以上にこれを奨励しない」という方向で確定しているのでありますから、そのことはわかっております。ただ問題は、現実がその方向とは逆の方向に進んでいるのではないか、そういうことを思うのですね。たとえば四十三年の全国の公営ギャンブルの開催の延べ日数を調べてみたら、一万七百四十八日、入場者数が九千百四十三万七千九十九人、実に五年前の七三%増であります。これは国民一人が一回は競馬場か競輪場か競艇場に行った勘定です。大臣も行かれないし、私も趣味がないから行かないということになると、どこかに片寄っていくわけでしょう。また、昨年の公営ギャンブルの売り上げ高は一兆六百十二億円で、五年前の二倍半です。こうした公営ギャンブルのエスカレートに比例して各種の紛争が激増しておることは、御存じのとおりであります。場内外の混雑もとどまるところを知りません。警察庁もたまりかねて、二月十五日に、不正レースの防止と自主警備の強化を各主催団体に申し入れることをきめたということであります。で、幾種類もの競輪や競馬の新聞はちまたにあふれております。車内広告はギャンブルの祭典をはなやかに盛り上げております。週刊誌の予想やテレビのコマーシャルに至るまで、ギャンブル熱をあおっております。このような状態を放置する限り、政府がかりに「少なくとも現状以上にギャンブルを奨励しない」、また大臣もたいへん良心的に言われたように、財政好転とともにやめていくのだということを言ったところで、それは私は言いわけ程度の意味しかなさないのではないか、こういう現実の中からそう思うのです。この中にあって、美濃部東京都知事が、さまざまな財政的な困難を十分に認識しつつも、都営ギャンブル廃止の方向を打ち出されました。飛鳥田横浜市長もその方向を支持されました。どうしてそれを政府地方自治体の英断として積極的に支持しないのですか。それぐらいにして初めて、私は、「少なくとも現状以上にギャンブルを奨励しない」という政府の方針も、少しは私は真実味を帯びるというふうに考えるのであります。で、支持しないばかりではなくて、自治省の態度というものは、私はどうも逆であります。矢つぎばやに出た新聞のそれぞれの談話を見ても、そう思うのでありますね。一々読み上げません。少なくとも、通産省は、東京都が主催を辞退した日本選手権競輪と並ぶ競輪界六大行事の一つであります都道府県選抜競輪を来年からやめることを明らかにしましたよ。自治省は一体何をされたのでありますか。ギャンブル財政論を指摘をすると、いろいろのことを言いのがれますけれども、公営ギャンブル廃止論に水をぶっかけただけではなかったかという感じがいたします。自治大臣いかがですか。
  85. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 非常に回数がふえて、入場者が多くなった。これは回数をふやすとかふやさぬとかということは、自治省は何も関係がなく、競馬は農林省、競輪は通産省ですから、ここの許可がなければ……、何も自治省が別に回数をふやしたわけではありません。各役所が——監督官庁がおのおの違います、運輸省もありますし。ギャンブルの監督官庁としてはどうお考えになっておるか。私は回数をふやしてないように聞いておりましたが、私のほうは関係がないからわかりません。  それからもう一つは、自治省が水をぶっかけたということですが、それはつまり私のほうは、たとえば先ほどお話しした給与体系の問題でもそうでありますが、給与を決して押えようという考え方ではない。つまり、合理的に労使間で話していらっしゃい。それから再建団体には、再建のつまりお互いに申し合わせた条件があるから、これを実行してください。そうしてお互いに助け合っていこう。これはもう自治省地方団体を悪くするなんという考え方はありません。  そこで、たとえばギャンブルの収益でやっておる地方団体の仕事も、一ぺんにギャンブルをすぐやめてしまえば、当然やはり地域住民の税金にかかってくるとか、いろいろの問題にひっかかって、他の面において財源考えなくちゃいけない。そこで、ただ、いわゆる普通の御意見のように、自治省としては地方財政に対する責任を持っておりまするから、そこでその責任をどうして果たすかということになりますと、おやめになるところは御懇談をして、こういう財政計画を持っている、こういうふうにして地域住民負担を加重するようなことはしない——これは大事なことだと思います。ただ、やめたあとは地域住民負担でけっこうじゃないか、それですぐ施設をつくったらいいじゃないかということになりますれば、自治省はこれこそ無責任であります。ただ一片のそういう話し合いで、世間がやかましいから何でもよかろうというようなそういう態度は、私は政治としてもとらない。やはりわれわれは、責任ある以上は、その役所としての責任を果たさなければいかぬ。それには何といっても地方財政というものを基本として考える。しかし、いま申しましたとおり、ギャンブルの収益によって地方財政をまかなっておるということは決して好ましいことではないから、好転していって大体めどがつけば、しかも自由意思によってやめたいと、しかもこういう財政計画を持っておるという話があれば、決して自治省反対いたしません。私は最初から、新聞記事どう書いてあるかわかりませんが、主催者の自治団体の自由意思地域住民自由意思によって御決定になったらいいということを、はっきりその瞬間から答えております。したがって、何も自治省がこれに最初から計画的に反対するとかどうとかということは、これはおもしろおかしく書いてあるかもしれませんが、実態をつかまないものは、私はあまりそういうことは気にしないのです、私はまじめに考えておるから。財政計画はどうでもいいということになれば、これは私はまた別に議論を進めてもいいのですが、しかしいいものじゃないという考えを持っておりますから、自由意思によって御決定なさいということを言っておりますから、しかし財政計画はお互いに話し合おう、そうせぬと、簡単にやめることは賛成だということは、これは逆に無責任のそしりを免れない、こういう考え方を持っております。
  86. 和田静夫

    ○和田静夫君 そう言われたところで、あなたの新聞記事というのはそういうことになっていないので、それではこれから発言されるときには十分に注意をして発言をしてもらいたいと思うのですよ。美濃部さんがギャンブル廃止の声明をしたその翌日に出た、いまちょうど持ってきておりませんが、あなたのいう新聞記事というものはそういうふうになっていませんよ。まさに、たとえばさっきもちょっと私言いましたけれども、地下鉄工事のためにもっともっと使っていったほうがいいのではないか、そういう形のことになっていって、ギャンブルを廃止するというそのことに対して、その自治体が自主的にやってもよろしいなんというような言い方にはなっておりません。それでもし、あるいは新聞だからその記事はおもしろおかしく書かなければ記事にならぬからそうだというならば、あと信憑性の問題はまた次の委員会あたりに資料を持ってきてやりますけれども、とにかくそういうことを言われますけれども、それじゃ私聞きますけれども、どうもいろいろ関係各省を調べてみますと、ギャンブル問題では自治省の態度が一番悪いというふうに考えられます。  たとえば、昭和三十六年の、さっきも言いましたけれども、公営競技調査会の答申を受けて、競馬法は地方競馬の施行者を原則として都道府県に限定をしていく。著しく災害を受けた市町村またはその区域内に地方競馬場が存在する市町村であって、かつ財政上の特別の必要を考慮して、自治大臣と農林大臣と協議の上、必要な期限を付して指定するものは、その指定期限に限り例外的に地方競馬を行なうことができるものと改正をされました。その際、自治省の主張によって、改正前の法律により現に指定を受けている市町村については、三カ年の猶予期間を認め、昭和四十年三月三十一日まで競馬を開催できるような経過措置がとられたはずであります。それがさらに自治省の主張によって、四十三年三月三十一日まで延期され、そうして昨年の三月三十一日の段階でまたまた延期を強力に主張されたのです。一体自治省は、さっき大臣、たいへん高飛車な答弁がありましたけれども、何を考えていらっしゃるのですか。  そこで自治大臣にお尋ねをいたしますが、自転車競技法の「財政等を勘案して」とか、あるいは小型自動車競走法の「地方財政の健全化を図るため」とか、あるいはモーターボート競走法の第一条の「地方財政の改善を図るため」とかいう、すべて第一条の字句が自治省のいわゆるギャンブル財政論の根拠であります。これはもう、否定をされても、私はそうだと思うのです。これらの字句は、競馬法第一条第二項の「財政上の特別の必要を考慮して」という字句に相当するものだろうと思うのですね。で、競馬法の第一条第二項は、「著しく災害を受けた市町村」または「その区域内に地方競馬場が存在する市町村」で、「その財政上の特別の必要を考慮して自治大臣が農林大臣と協議して指定するものは、その指定のあった日から、その特別の必要がやむ時期としてその指定に附した期限が到来する日までの間に限り、この法律により、競馬を行なうことができる。」となっているのでありますが、ここでいう「財政上の特別の必要」とはそれじゃ一体何ですか。また、モーターボート競争法の第二条第三項の「指定の理由」とは一体どんな理由ですか、御答弁願いたいと思います。
  87. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 財政上の理由は、多少時代とともに動いております。かつては戦災都市の復旧といったようなものが非常に表面に出ておりました。だんだん時代も変わってまいりまして、最近では、人口が非常に急増しておるという過密現象を生ずるような地帯、非常に都市財政需要が大きい、よその団体に比して特別大きい、無限に大きいと言ってもいいくらいである、そういったようなところでありますとか、災害を受けてその復旧のためにいろいろ金がかかる、こういったようなものについて特別の考慮を払うという行き方をとっております。
  88. 和田静夫

    ○和田静夫君 指定の理由は。
  89. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) いま申し上げましたような事情のある市町村で、府県は指定が要りませんが、市町村あるいは組合等で、それぞれの議会公営競技をやるという議決をとってきたものについて、私のほうで指定をいたしております。
  90. 和田静夫

    ○和田静夫君 それじゃ事務当局に要求をしておきますが、指定市町村の指定の理由、いまなっておる財政上の特別の必要を証明する資料を提出をしていただきたい、いま言われたような形での。たとえば財政力において平均以下であるとか、あるいは道路の舗装率が特に低いとかいうような形のものを、各市町村名をあげて証明をしていただきたい。
  91. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 道路の舗装率をどれくらいに上げるかといった全国的な共通の行政需要に対しては、私はやはり、交付税なり起債なり正当な——正当なと言っちゃたいへんことばは悪いので取り消しますが、普通の財源をもってこれは地方財政の水準を保障すべきものと、こう考えております。しかし、住民の要望は非常にそれをはるかに越えて高いのでございまして、特にいま申し上げましたような特殊な地域ではなかなかそれを満たすことができない、そういった場合に、普通の場合を越えて仕事をしたい、それはやむをえないけれどもギャンブルによろうと、こういったような議決を経ましたところについて実はいたしておるのでございますから、いまおっしゃったような全国的な基準を越えているからどうと、そういったような判断でございませんで、非常に事柄は個別的になっております。そういう意味合いから、個々の団体について出せとおっしゃれば出せぬことはございませんけれども、非常に膨大な資料になってまいりますので、もしどこどこの市町村について特にということでございますれば、そこについて提出をさせていただきたいと、こう思います。
  92. 和田静夫

    ○和田静夫君 私は、戦後いわゆる公営の収益事業の開始が公認された裏には、いまも言われたが、戦災復興という特殊事情があった。そういう意味で、私はあくまでも臨時立法的なものであると考えているのです。その辺にまあ考え方の大きな相違があると思うのですね。それぞれの理由は変遷をしてきたということ、これは私は、競馬法やその他立法されたところの立法の趣旨とはたいへんな違いがあって、拡大解釈をされて運用されている、そういうふうに考えざるを得ません。したがって、全競技について、指定自治体一つ一つについて、この指定の理由としての財政上の特別な必要が明確にされるべきだと私は考えます。少なくとも法律的に疑う余地のないものでなければならない。それは非常に膨大なものになる、こういうふうなことでありますから、私はそれじゃ指定をいたします。競馬について指定市町村、四十二年度は百三十六市町村ですけれども、その一々について、財政上の特別の必要を証明する資料を早急に本委員会に資料として提出をしていただきたい。よろしいですか。
  93. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 競馬の指定市町村は全部ということでございますか。
  94. 和田静夫

    ○和田静夫君 四十二年度百三十六市町村でありますから、それについて。
  95. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) そういうことでございますと、先ほど申し上げましたように、相当膨大な資料になると思います。私は別に資料の膨大さを拒否いたしませんけれども、個別の事情でございますので、なかなか一定の尺度のものがむずかしいと思います。特に災害なんかでございますと、災害の分量も市町村によっていろいろ違いますし、そこの財政の大きさによっても違ってまいりますから、ぜひ出せとおっしゃられれば私のほうは出すにやぶさかではございませんが、関係の農林省とも十分相談をいたした上でまた後刻御連絡をさせていただきたいと存じます。
  96. 和田静夫

    ○和田静夫君 二月二十四日の読売新聞や、三月十日の毎日新聞によると、さっきも指摘がありましたが、自治省は上下水道、交通、地下鉄などの赤字に悩む地方公営企業の資金コストを下げるために、来年度から地方公営競技の売り上げの一%を開催団体から納付させる、これによって公営企業金融公庫の貸し付け資金の現行利率をそれぞれ年〇・五%引き下げるなどを中心とした地方財政法及び地方公営企業金融公庫法改正案の骨子をまとめたそうです。これはいかにも美濃部革新都政に対する官僚的でこそくないやがらせに私は思えてしかたがありません。こうした自治省のやり口は、保守革新を問わず、私は識者のひんしゅくを買うことになるだろうと思うのであります。それにしても開催団体からは、ギャンブルの金を自分でギャンブル廃止をきめた団体に使わせることはない、この強い突き上げがある。自治省としても融資しない方向に傾いているとのことですが、こうなると、もう私は感情論ではない、政治ではない、そう思うのです。初めから開催していない団体には金を出すが、途中でやめた団体には出さない、こういうめちゃくちゃな論法というものは成り立たないのではないかと思うのですがね。その辺は一体、まさか自治省はそんなことを考えているのではないと思いますけれども、どうですか。
  97. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いや、和田さんのおことばじりをとるわけじゃありませんがね、地方公営企業は非常に困っているというので、これは私が実際申し上げていろんな手を打ったがなかなかうまくいかない。私は最初、実はずっと説明を聞いているうちに、金利が高いのですよ、金利が。こんなに困っている公営企業に出す公庫の金がこんなに、七分三厘も五厘も出すようなことを何とか金利引き下げはできないかということを私は自分で感じたのです。そこで、いろいろこれはその方策をやってみるというわけで、その前から自治省でも話があっとったようです。局長なんかも考えておったようですが、そこで結局いろいろ財源措置考えましたけれども、これも予算編成のとき、地方財政全体の問題で大蔵省とぶつかったわけですが、なかなか金利までの話が進まない。そこでこういう案ができたんで、これは美濃部知事が発言したからといって、それだけは取り消していただかぬと、私なんかも全然いま言ったとおり、わりに虚心たんかいです。やめるところは自主的におやめなさい。何にもこだわってない。だれにしろギャンブル自治省はかばっていると思われてはならんことで、もうそれは自治体自体がこぞっておやめになる構想は、私がはっきり言っています。新聞にも、自主的な判断でおやめになるところは決してわれわれは反対しない。これはこのたてまえはやっておりますから、ことにいま重ねてくどう言いますが、美濃部知事があれを言い出したから、ギャンブルから一%取って金利のほうに持っていったなんて、それから、やらぬところは金をやるとかやらぬとか、そんなことは毛頭考えておりません。そういうようなことでは行政の公平が保てません。それはひとつ誤解のないように、具体的には局長が答えましょうが、私の政治的信念と申しましょうか、考え方と申しましょうか、これははっきりしておきます。決して感情とかそれからギャンブルを擁護したのだとかなんとか毛頭考えておりませんから、その点はひとつ御理解をいただきたい、こう思っております。特に申し上げておきます。
  98. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 私どものこの構想は、ただいま大臣申し上げましたとおり、ギャンブルというものがいいか悪いかの議論はいろいろあると思いますが、ある以上、やはり私ども財政的に見て、いかにプラス・アルファの施設をしているとはいいながら、不均衡の問題があるじゃないか、しかも、ある施設をある団体が使っておりますと、なかなかよその者を入れてやらない、そういったような問題から、財源の、これの収益の均てん化ということは、もうずいぶん前からやかましい問題であったわけです。特に昭和三十六年の政府調査会の答申の中にもそういう趣旨のことが盛られているわけです。その後、収益もだいぶふえてまいっておりますものですから、ますますそういう声が自治団体の間からも起こっておったわけでございます。一方、公営企業のほうの金利の問題もやかましい問題でございまして、東京都なども、何とかして金利を下げてほしいということを非常にたびたび私のほうへ強い要請を実はしているのでございます。そこで、このままに放置いたしますと、公営競技をやっておりますところはそこの公営企業に金を入れることができる、やってないところは全然できないというようなことから、その両者を結びつける考えを持ったわけでございます。いろいろ御批判はあろうと思いますが、私は、やはり一つ考え方であり、ギャンブルというものの存在が、理屈の上の問題じゃなくて、現実の問題であるという点から考えますと、実際的な一つ考え方だろう、こういうふうに実は思っております。そこで、そういう考え方は実は私ども前から持っておりまして、逆に、美濃部知事がギャンブルの廃止を言われたときに、私どもは実は東京都庁から連絡を受けまして、美濃部さんはこういうわれわれの考えを知っての上のことだろうかと言ったら、全然知っての上のことでなくて、お一人の御発言であった。事務当局も何も聞かされていない。あとになっていろいろ、こういう考え方もあるのだああいう考え方もあるのだというようなことが庁内で議論になったようでございまして、先ほどのお話とは私はむしろ全く逆ではないかという感じがいたします。  それから、やめたから返還するとかしないとかということは、私どもまだこの構想が成案を得ておりませんので、その内容について正確を期してお答えをすることはむずかしいと思いますが、いま考えておりますのは、納付金を出して、その団体がギャンブルをやめた場合に、過去において出した納付金を返してくれ、こうおっしゃられても、それは一応考えていない、こういう意味でございまして、ちょっと、先ほど御質問のような趣旨の、返すとか返さぬとかいう、そんな感情的な考えは毛頭持っておりません。
  99. 和田静夫

    ○和田静夫君 私は、なぜこのように公営ギャンブル存廃をめぐる自治省の態度に不満を実は表明をしたかといいますと、行政需要の地方財政とのアンバランスが解消するどころかむしろ拡大する傾向の中で、ギャンブルによる収益金が地方財政構造の中に組み込まれてしまって、固定化をすることをおそれるからであります。国会図書館を通じて先進諸外国の例というのを十分に調べてもらう時間も取ったのでありますが、ほとんど文献は見当たりません。それは逆の意味では、ギャンブル収益というものが財政構造の中に役割りを占めていないということを私は物語っておると、こう思います。現に公営競技収益金は、昭和二十五年に三十三億九千五百万円だったものが年々増大をしています。四十二年度には八百六十九億三千万円、二十五倍以上になっているのですね。そして、それとともに地方団体総収入に占める割合も増大をしています。自治省はそうした傾向をやむを得ないことと考え、改善をする意思がないのではないだろうかと、実は考えておったんですが、ないのならば、もっと国民の前に、ないと明らかにしたほうがいい。そうしたら世論がもっとほかの問題に向くだろう、そう思っておったんですが、そうでもないようであります。先ほど来大臣が言われているように、少しでも改善する意思があるなら、私はどこかでふん切りをつけてもらいたい、こう思います。ましてや、ギャンブルを廃止するくらいの財政の余裕があるなら水道や地下鉄債の地方債を減額したらどうだなどというようなやぼなことは私は言うべきじゃない、そう思います。その能力のある地方団体がどんどん地方債を発行していって、私は悪いことはないと思うんですよ。ギャブルによる収益金にたよる財政構造のほうが私はよほど不健全だと思います。そういうふうに考えていますので、十分に意見を慎重に取り上げてもらって、今後の資としていただきたいと、こう思います。
  100. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 和田さんの真意、よくわかりました。これは固定化していく場合、ギャンブルというものが財源に固定化していくという傾向について警戒すべきだ、やはりそれは私は同感であります。これが永遠にギャンブルをやって、これが地方財政の大きな財源として固定化していくという傾向は、これは私は好ましくない。よくわかりました。自治省としても、そういう点は、大体基本的な考え方というものはそう違っていないと思いますが、現実的なことと、それから一つの基本的な考え方というものが、やはりすぐこの場でもってあらわれないものですから。いろいろ御配慮の点、よくわかりました。
  101. 和田静夫

    ○和田静夫君 きょうは時間の関係はどうなっていますか。
  102. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  103. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 速記を起こして。     —————————————
  104. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、林虎雄君が委員辞任され、その補欠として占部秀男君が選任されました。     —————————————
  105. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまの委員異動に伴いまして、理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事の補欠選任を行ないたいと存じます。  理事の選任につきましては、先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に松澤兼人君を指名いたします。     —————————————
  107. 山田勇

    ○山田勇君 昭和四十四年度の地方財政計画は国会に出されましたが、最近にない積極的な大型財政ということで、総額は六兆三千百九十七億と、前年度に比べて一八・五%の伸びとなっております。また、自主財源は六五%と、地方財政計画始まって以来の最高ということは、自治体が自主的に単独事業を推進していく上で喜ばしいことだと私は思っております。ところで私は、地方財政が好転しつつあるこの際、地方税のうち、住民税について若干自治大臣にお尋ねをいたします。  自治省は、四十四年度において住民税を七百十四億減税する方針を打ち出しておられますが、所得税の課税最低限度額は、標準所帯九十三万五千九十三円というのに比べて、住民税の最低限度額は六十二万三千七百七十一円と低く押えているのはどういうわけかお伺いしたい、これが一点でございます。  それから、地方財政が好転しているといわれるわりに、最低限度額の引き上げが九万一千円ぐらいでは、低所得者に対しての恩恵はたいしたことはないと思うんですが、将来どこまで上げるおつもりかお伺いしたい。よろしくお願いたします。
  108. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 住民税の最低額が、いま御指摘のとおり、四十四年度は九万一千円引き上げております。これは所得税との均衡上、最低額が非常に低いんじゃないかと、私もそう思います。ただ、これは少し理論的になりますが、税制調査会でも、所得税と住民税は違った関係で取り扱っていい、住民税は、地域住民ができるだけわずかでも負担をして自分の町づくり地域づくりをやるようにするんだから、必ずしも所得税と住民税を同じ基準で考えぬでもよろしい、こういうのが税制調査会の基本的な考え方。しかし、そうかといって、やはり私は、いま御指摘になりましたとおり、できるだけやっぱり最低額を引き上げる。そこで、目標としてはできれば所得税に並行していくぐらいの心がまえがほしいと思いますが、御承知のとおり、好転いたしたと申しましても、地方財政はまだ大きな欠陥もあることでございますから、私は特に考えますのは、今度九万一千円でございましたが、昨年も——四十三年度も上げております。次に、できるだけその所得税に近い——なかなか同じような額までいくのは困難ですから、実際を申し上げますと、近い線で、できるだけ追いつくように年々配慮したらどうか、そういう心がまえでいまおるところでございまして、これが決して九万一千円が、私どもといたしましては、まだまだこれでは不足だ、もう少し最低額を高くするようにしたい。九万円以上にやりたい。だから、将来はそういう方針でいきたい、こう思っております。
  109. 山田勇

    ○山田勇君 では、次のお尋ねをいたします。市町村民税、都道府県民税、ともに累進税といった面から見ると十分な措置がとられているとは思えないが、この点、どうお考えになっておりますか。低所得者の住民負担を軽くするために累進税をもっと積極的に取り入れる考え自治省のほうではございませんか。
  110. 森岡敞

    説明員(森岡敞君) お答えいたします。御指摘の住民税の税率の問題でございますが、御承知のように、現在の住民税の税率は、市町村民税は二%から一四%まで十三段階、一%刻みの累進税です。県民税は二%と四%という二段階です。で、住民税の税率のあり方につきましては、税制調査会でもいろいろ御審議がございます。一つ考え方といたしまして、先ほど大臣から申し上げましたように、地域社会の費用を広く分担してもらうという住民税の性格から申しますと、むしろ累進度を緩和するのがこの税の性格上妥当だ、そういう税制調査会昭和三十九年の答申が出ております。しかし、いずれ累進構造をそのように変えていくということになりますと、納税者ごとの負担にかなりの変動も出てまいりますので、一がいにそういう方向がいいとも申し上げかねます。いずれにいたしましても、税率の問題は課税最低限の問題と不可分の問題でございますので、その両者を合わせながら税率の問題を将来考えていく、こういうことじゃないかと私どもは考えております。
  111. 山田勇

    ○山田勇君 次に、超過課税の問題ですが、庶民にとっては住民税の標準課税すら大きな負担となっているわけでございます。市町村民税においては超過課税を行なっている市町村が、自治省税務局の参考資料によりますと、四十二年度末で千十六市町村あります。そのうち、最高の一・五倍の課税を実施している市町村が四百十六市町村もありますが、自治省はこれに対し、住民税を中心とする地方税の超過課税を解消するようという通達を、二月二十八日に都道府県知事を通じ各市町村に出したということですが、これについての、市町村における自主的な解決は非常にむずかしいと思いますが、自治省としては特別交付金による措置考えておられるようですが、具体的な方策としてはどのようなものかお聞かせ願いたいと思います。
  112. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) これは御指摘のとおり、超過課税をどうしても早く解消をせなければいかぬ、これは御意見のとおりでございます。そこで、いまお示しの税務局長から都道府県知事に通達をやって、ここに事務当局おりますからお答えいたしますが、四十四年度から一応三カ年くらいで何とかひとつ解決策を考えてみたらどうかということでございます。これ事務的にまたお答えいたします。
  113. 森岡敞

    説明員(森岡敞君) 御指摘のように、超過課税の合理化の問題でございますが、かねがねいろいろ地方団体に対して指導してまいったわけでございますけれども、この二月に、市町村予算編成時期でもございますので、四十四年度から一そう超過課税の解消に努力してもらいたい、その場合に市町村民税の超過課税の合理化を中心にやってもらいたい、こういう通知を出しました。超過課税という問題は、御承知のように、標準税率制度という地方税制度と関連することでございます。特別の財政需要があります場合に、まあ一時的に超過税率を採用するということが地方税法上認められているわけでございますけれども、えてして固定化いたしまして長期間にわたる、こういうふうなことになりがちな向きもございますので、そういう固定化のないように措置してもらいたい、ただその場合、御指摘のような財政需要の問題が当然出てまいりますので、自治省といたしましては、特別交付金で相当程度措置をするということを前提といたしまして自治体を指導してまいる、こういう通知を出したわけでございます。
  114. 山田勇

    ○山田勇君 次に移りますが、国は地方交付税から四十三年度に四百五十億借り、さらに四十四年度には六百九十億を借りております。地方財政が好転しつつあるといわれる裏では、超過課税に苦しむ住民があり、また、自治省の過疎地帯の調査結果に見られるように、過疎地の財政需要は増大する一方でございます。財政運営が非常にむずかしいとあり、自治省はこれに対し、過疎化の地すべり現象を歯どめするため八百億円を計上しておりますが、この成果については疑問視する向きも非常に多いと聞いております。過疎過密という大きな問題も含めて自治体の財政需要は今後ますます増大すると思いますが、自治省は自治体の自主財源の増強という面で、地方交付税の増額は考えておられるかどうかお伺いしたいと思います。
  115. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 過疎過密対策というものは、今日地方自治におきましては非常に困難でございます。これに対する財政の需要も非常に大きいのでございます。お話のとおりであります。ただ、この際ちょっと一言申し上げておきますが、四十三年度で四百五十億、金を大蔵省に貸した。さらに今度六百九十億、四十四年度に貸すことにした。これは実は四十三年と四十四年度の貸し方が違うのでございまして、最初大蔵省の希望は、やはり四十三年度と同じような方法で、地方財政は豊かであるから貸してくれということだった。それと同時に、いまの御指摘のとおり、交付税を増すところの税率を下げたい。これは数年前から言っておるようであります。この二つのほかにもありますが、二つのことが私どものほうに参りました。二つとも私はこれを拒否しました。それで、地方財政が豊かというのは大蔵省と認識が違うのだ、そういう認識でもって今後地方財政の処理を国が考えることはとんだ間違いだ、そこでまず、交付税の税率の引き下げというようなことはいかに大蔵当局が地方財政に認識を欠いているかということである、これは大体は地方財政の固有の財源である、これは特別会計でもつくって、大体一般会計に入るから、それからもらうようなことになっているのだから、形はそうだけれども、実質は地方財政の固有の財源である、これに指をさされることはもってのほかだということで、まず峻拒いたしました、第二は、借り貸しのことについても、ただ一般的に地方財政が豊かで相当好転したから貸せということはまっぴらだ。だんだん折衝いたしました結果、大蔵省は、地方財政の交付税の税率の引き下げはやらない。やらないだけではいけないから、今後当分ひとつやらぬことにしてくれ。何年かということは言いましたけれども、当分ということで妥協しましたが、それは相当私の考え方は、これは結局地方財政の固有の財源の形にしたいと思いまするから、何年かなんと言う必要はない。いまのような形だからそういうことになりますから、もともと大蔵省の一般会計に入っていくからそうなりますから、入らないような方法を今後考えなければならぬ。そうすると、何年間なんと言う必要はない。それは二年目でできるか三年目でできるかわかりません。当分の間ということで大蔵大臣と確認しまして覚え書きをつくった。それから第二は、七百五十億の金を貸してくれと、だめだと言ったわけです。結局、いろいろ折衝の結果、四十三年度に自然増収が出てまいりました。これがその当時——私が大蔵大臣と折衝している当時——大体七百二、三十億の地方の交付税の自然増収で出てくるということを確認しました、実は。そこで、それは予算編成の末期でございまして、出てまいりましても、御承知のとおり、それはすぐ四十四年度に使えない。この出てきた金は四十五年度に使う金、一年間、俗に申しますと、遊ぶわけです。それが一年間遊ぶ金が出ているから、それはこっちも使えぬから、それなら融通してよろしい。そのかわり四十五年度に返す。返す返さぬもない、固有の財源ですから。返すということばはおかしいので、書いてあることが。当然のこっちの金です。そこで私はそのとき、ここだけですが、大蔵省とそれは別に約束をいたしませんでしたが、今度補正を組みましてはっきりしまして、その場合七百二、三十億と見ましたから、その以内、限度だということで、いろいろな折衝で、私は、これは別に根拠はなかったのですが、六百九十億という数字に落ち着いたと思うのですが、そのめどをちゃんとつくっておりまして、それから四十四年度の地方財政には支障ないという確認をいたしましたから、そうしてその金は、自然増収の金を充てるということを確認しまして覚え書きをつくったんでございます。  それから、地方交付税は上げるほうがいいじゃないか、それは非常に私どももありがたいことでございます。いま申しましたように、大蔵省が逆に数年来税率を下げようというのをやっとここで食いとめたんでございます。それを当分の間持ち続けようというところまで大蔵省が譲歩してまいりましたから、上げることはありがたいことでございますが、いまの見通しからするとはっきりせぬと申したほうがいいと思いますが、なかなか上げることは困難だ、こういう情勢でございます。
  116. 山田勇

    ○山田勇君 じゃ、これで終わらしていただきます。
  117. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) これにて休憩いたします。    午後一時四十一分休憩      —————・—————    午後五時三十一分開会
  118. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  地方自治法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより補足説明を聴取いたします。長野行政局長。
  119. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 地方自治法の一部改正大臣説明に対しまして補足さしていただきます。お手元の「法律案関係資料」というものの要綱によりまして御説明申し上げたいと思います。青い紙の次を開いていただきますと要綱がございます。  地方自治法の一部を改正する法律案につきましては、従来からいろいろ懸案になっておりました問題もこの改正の際に取りまとめを多少さしていただいたわけでございまして、第一の総則に関する事項につきましては、御承知のように、地方公共団体の処理する事務がいろいろ地方自治法の第二条に明示してございますが、その中に消費者の保護と貯蓄の奨励ということばを加えたい、こういうことでございます。これは消費者基本法ができましたときに、消費者につきましては消費者の保護という関係地方公共団体一つの責任という意味で明らかにしろという国会の附帯決議がございました。それの懸案をここで規定さしていただくことによって果たさしていただきたい。それから、貯蓄の奨励につきましては、貯蓄の増強につきましての政府の方針がございまして、閣議決定におきまして、地方公共団体において貯蓄奨励についても積極的な活動をするようにというようなことがございました。そういう意味で、貯蓄奨励の仕事も例示するということで加えさしていただきたいと思うのであります。  第二番目は、「市町村は、議会の議決を経て行政運営基本構想を定め、これに則して事務を処理するようにしなければならない」という規定を入れたいと思うのでございます。これは市町村につきまして行政運営を、総合的、長期的、計画的に行なっていくという要請は、最近の地域関係の立法の制定に伴いましてますます必要になってまいりました。最近におきましては、新しい都市計画法におきましても、市町村の定めた基本構想に基づいて都市計画をつくるというような規定になっております。農業地域振興関係法律につきましても、そういうことになっておりまして、市町村が基礎的な団体として行政運営基本構想を定めるようにするということを、地方自治の基本的なあり方、市町村運営のあり方として基本規定として入れさしていただきたいというわけでございます。  第二に議会等に関する事項でございますが、都につきましては、特別区という特殊な制度をとっておりまして、他の府県と異なった任務を都は持っておるわけでございます。最近ますます人口が増大いたしまして、都市的需要は非常に大きくなってまいりました。そういうことがございますので、都の特殊性にかんがみまして、特別区の存する区域の人口の一定割合に基づいて議員の数を増加する、それを条例で増加することができるようにさしていただきたい、こういうことでございます。ここでは、「人口を百五十万人で除して得た数を限度として増加することができるもの」ということにいたしております。この関係は、その次の法律の条文をちょっと見ていただきますと、青い紙をもう一つめくっていただきまして三ページでございますが、そのまん中のところに第九十条という関係の部分の改正がございます。「議員定数は、都にあっては、特別区の存する区域の人口を百五十万人で除して得た数を限度として条例でこれを増加することができる。ただし、百三十人をもって定限とする。」、こういうことにいたしておるのでございます。この場合におきまして、次の人口調査までの間におきましては、特別区の存する区域の人口として政令で定めるところによりまして自治大臣が推計して告示をいたしました人口によるということに、特に特例を開くことにいたしております。と申しますのは、最近の人口移動、人口の増加の激しい現状でございますので、昭和四十年の国勢調査人口というのでは実態にも必ずしも適合しないという面がございますので、この関係規定は附則の第二項、この法案のおしまいのほうと申しますか、七十六ページの次に「附則」というのがございます。その関係のところに、附則第二項に、そういう読みかえをいたすようにしているのでございます。  第二番目には、地方団体の事項に入りますが、地方団体議会議員選挙区ごとの定数につきましては、特別の事情がありますときには、おおむね人口を基準として地域間の均衡を考慮して定めることができる、こういう規定公職選挙法関係部分の改正として入れさせていただきたいというわけでございます。  第三番目は、公職選挙法に定める選挙、つまり国の選挙地方公共団体の長及び議員選挙が行なわれます場合には、一定の期間、選挙の行なわれる地域につきましては、直接請求の署名を求めることができない。つまり、その期間につきましては、直接請求の署名は選挙の終わったあとに回していくということが、現在いろいろな選挙期間中の直接請求との間の混淆といったような実態もござますので、そういうことにさせていただきたいということでございます。  第三の行政合理化に関する事項でございますが、第一の、市町村長が新たに生じた土地を確認した場合の自治大臣への報告、議会の会議の結果の、府県議会につきましては自治大臣市町村議会につきましては都道府県知事への報告を廃止いたしまして、あるいはまた、監査委員の監査の結果の報告も廃止する。それから、地方公共団体におきますところの協議会につきまして、機関委任事務についての協議会につきましては許可が要ることになっておりますけれども、その設置の許可も廃止する。それから、市町村区域内の字区域の設置とか変更につきましての報告がございましたが、これも廃止する。これはいずれも、行政の簡素合理化趣旨によるところの内閣の方針に基づきまして簡素化をいたすということでございます。  その次の二番目は、地方自治法の百五十六条におきまして、国の出先機関の設置につきましては国会の承認を得るという規定がございます。この関係につきまして、税関の支署並びに税務署及びその支署につきましては、国会の承認を受けなくてもいいという除外規定の項に加えることは、過去の経緯から見ても何ら支障がないのではなかろうかというような結論を得ましたので、行政の簡素化というような点をも考えまして措置をさしていただきたい。  第四番目の関係でございますが、最初の港湾法の関係、それから土地改良法に基づく土地改良事業に基づく徴収金等の関係でございますが、これらは、地方自治法におきましては、法律に定める、法律の指定にある収入でなければ公の収入というかっこうにならないということに先般地方自治法改正になりました。この際、その法律に定める、法律の定めとしてこの規定を入れさしていただきたいというわけでございます。  それから、次の第二番目は、地方自治法改正昭和三十八年以降行なっておりませんので、自治法には別表がついておりまして、府県が行なわなければならないというふうに法令で定まっておる事務は別表第一に掲げてございます。それから市町村で行なわなければならないということになっておるものは別表第二に掲げてございます。知事の機関委任事務市町村長のそれもそれぞれ別表がございます。それにつきましては各省の法令が非常に改正されましたのでございます。それに合わせますために別表の整理をいたさしていただきたいということでございます。  その他、これらの改正につきまして関係条文その他が動きますので整理をさしていただきたい、このようなことでございます。  以上で補足説明を終わらしていただきます。
  120. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本案に対し質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  121. 和田静夫

    ○和田静夫君 今度の地方自治法改正がうわさをされだした段階から国民全体が認識をしているのは東京都議会議員の定員増の問題だけである、こういうふうに一般は考えてきておったと思うんです。私もまたそのように理解をしていた一人でありますが、出てきた法律案を見てみますと、それ以外の幾つかの改正が、いま述べられたように付加されております。その中にはかなり重要な事項が含まれております。私はころんでもただでは起きないなあというような感想を抱くと同時に、この法案をそんなに簡単に通過をさせるわけにいかないと実は思ったのであります。  まず、第一に、地方自治法の第二条第三項第十七号に消費者の保護及び貯蓄の奨励をつけ加える件ですが、消費者の保護はともあれ、貯蓄の奨励を地方自治体がやることに一体どれだけの意味があるのでしょうか。政府がもっとやらなければならないことは、物価を下げるという具体的な政策をもっと真剣に追求すべきであります。まさに貯蓄の奨励を通して地方自治体が銀行資本の下請になる、こういうような感じをさえ物価政策との関係で私は感ぜざるを得ません。したがって、地方自治体に具体的にどのような形で貯蓄の奨励をさせようというのですか、明らかにしてもらいたいと思います。
  122. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 貯蓄奨励につきましては、実を申しますと、従来から府県市町村一つの随意事務と申しますか、そういう形で貯蓄の奨励をはかってきておるところであります。そういうもののあらわれが、たとえば学校などにおきましては子供銀行でありますとか、いろいろなことで出てきておるわけでございますが、そういうことで住民の貯蓄心に訴えまして貯蓄を奨励するということは、住民の福祉なり、そういうものと必ずしも無関係なことではない。そうして住民生活の安定ということにもなるわけでございまして、そういう関係から、従来から県、市町村を通じまして貯蓄奨励ということは現実に取り上げられてきておるわけでございます。それにつきまして、国民貯蓄の増強ということにつきまして、政府としましてそういう強い方針を三十八年に閣議決定をしておりまして、そういう意味で地方団体の一そうの積極的な活動を期待するということになっておりまして、地方団体一つ事務の例示の中にこれを加えるということは、その意味で貯蓄奨励の活動の積極性を増すゆえんであるという要請がございました。そういう意味で、長い間の懸案というふうに私は考えまして、この改正の際に加えさしていただきたい、こういうことでございます。
  123. 和田静夫

    ○和田静夫君 自治大臣は、いま言われたように、生活の安定のために貯蓄を奨励をされると、こういうことですよね。やはりもっと自治体に対して、たとえば流通機構をどうするんだというような形で、物価はこういうふうにして下げていくんだという具体的な指導を合わせて行なうと、そういうようなおつもりはありますか。
  124. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 物価問題は特に地域住民生活に直接関係することでございますから、この施策につきましてももちろん私ども十分考えなければなりませんが、これが法律上どういうふうな表現で、流通機構の問題も大事なことに違いありませんが、法律上の技術としてどういうふうにあらわれるかということであります。いまお話しの貯蓄のことですが、これは貯蓄奨励という特別にこれ一つ抽出しますと何かしら大蔵省の法律みたいになってきましてなにですが、しかし、行政局長がお答えいたしますとおり、従来から、やはり善良な市民生活といいますか、そういう意味において、家庭から地域住民からできれば貯蓄という気持ちを要請するということは、これは私は悪いことじゃなしに、こういうことばであらわしたのでちょっと和田さんのお答えに私、即答しかねますが、むろんいいことだからいままで事務的にもいろいろ手伝ってやっておった、これは事実でございます。これは戦争後とか戦争前でなくて、長い間の貯蓄奨励、貯蓄のすすめとかいうので相当社会運動にもあらわれております。ただひとりこれは金の問題でなくて、住民生活の心がまえとして、将来の生活というものをつくり上げる、築き上げる基盤としてのこともありますし、そういうところで、できればそこに入れてそういう意味の指導をやりたい、こういうことだと思います。
  125. 和田静夫

    ○和田静夫君 私が特別にこれ取り出したわけじゃなくて、特別に取り出されて入れられたから問題になるわけであります。特に、いま言われましたね、黙っておっても銀行なりあるいはいろいろのところから貯蓄を奨励に来ますよね。それを何も自治体がやる必要はない。もっと言ってしまえば、政府全体としてここに盛り込まれることによって、たとえば郵便貯金をもっともっとやってください。全体としては財政投資プールを通じて第三次防衛力整備計画を裏づけるとか、あるいはもっともっと現実的なものを充実をしていきたいのですよ。そういう裏が自治大臣、おありになるのではないですか。
  126. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) これ自治法の二条に事務の例示というのがたくさんいろいろと書いてあります、何十というようなことが。そこで、貯蓄の奨励ということ一つだけ抜き出しますとちょっとこの法律とそぐわないような感じでございますが、二条に並べてあるのを一々これは読むとたいへんですが、たくさんの事項がここに別記してあります。 その中に一つ入れようということで、そこで、いまこれはやはり地方地域住民生活の基盤としてそういうことを奨励し、また、そういう心がまえを持ってもらうということで、二条のつまり列記してあります事務の例示としてここに入れようというそれだけで、運動を特別開始するという意味ではございませんで、これは例示をお読みいただきますと多少おわかり願えるかと思います。
  127. 和田静夫

    ○和田静夫君 どうも私たちが昭和二十年までに政府やいろいろのところからたいへん貯蓄を奨励された。その結果、みずからが生活と生命を奪われていくというような歴史的な悲劇というものを経験しているわけです。ところが、いま、そういうようなことを一方にわれわれが持っておる、こういう時期に貯蓄の奨励という問題がずっとピックアップされる、こういうことになれば、これは邪推ではなくて、国民がそこに思い至ると思うんです。したがって、いま大臣が言われたようにあまり重要でもないんですね、御答弁を聞いておると。そんなに重要でないものをわざわざここで盛り込む必要はないんですから、さっぱりとこの辺は削られたほうがいいような気がしますがどうですか。
  128. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) これは和田さんの御意見、私、相当理解するんです。ただ、悪いことじゃないと思うんです。これを読みますとずいぶん時間がかかりますが、何十と出ております、事務が。それで、これに一つ入れるというわけでございまして、特別の貯蓄のところの法律をつくってやるというのではなく、これを入れて——ずいぶん出ております——何かしらぬ、老人ホームやら汚物処理場やらいろいろのものが出ております。その中に入れるという、まあ悪いことじゃないから、そのところはひとつ御了解願えればけっこうだ。私もこれを固執する意味じゃございませんが、貯蓄心というものは、そのために戦争とかなんとかいうことでなくて、やはりできればゆとりのある生活——少ない人もあるでしょうが——幾ぶんでもそういう心がまえをやはり地域住民の方方にお持ち願えば非常にいいんじゃないかということからで、特別の意思がないことは間違いありません。私が先ほど申したとおりですから、御理解願えればけっこうだと思います。
  129. 和田静夫

    ○和田静夫君 住民のほうは、大臣おわかりのとおり、貯蓄心は旺盛ですよ。それは老後の保障なんというものは十分じゃないんですね。社会保障制度が十分じゃないんですから、それは全く自分の食べるものを削っても貯蓄をしているんですよ。そこへわざわざ、そんなに旺盛なのに、自治体がもっと貯蓄をしなさい、しなさいという意味は何もないんじゃないですか。もっと政府が真剣に考えられるのならば、たとえば無拠出老齢福祉年金も、七十歳で動物園のカンガール並みの値段しか出していないのを象並みにするとかいうような形のほうに目をやることこそが、いま求められている政治だと思うんです。したがって、あまり拘泥をされないと言われるならば、この項目というものはいさぎよく取り下げていただいたほうが私はいいと思うんです。これは意見になりますから。
  130. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。先ほどの答弁の中に、たとえば学校等とおっしゃっております。貯蓄の件で、学校の教育活動の面で、どの面で奨励しようとなさっているのか、そういう事務をだれが扱うつもりですか、その点ちょっと。
  131. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 学校につきましては、学校の中に最近では生徒が——先生の指導はもちろんあるのでございましょうが——自主的に貯蓄のいろいろな取り扱いをいたしまして、貯蓄心を教育的な形と結びつけて実施をしておるというところがわりあいに多いようでございます。私どもが先ほど申し上げましたのは、例として非常にそういう活動があるということで申し上げたのでございます。ここに出ます場合には、これは県市町村事務の例示でございますから、府県の場合にも府県の各行政の担当がそれぞれ分かれておりますが、そういういろいろなセクションの中で、貯蓄に多少でも関係のあるところというものは、そういうことの目を向けていく。教育機関等でも、学校教育あるいは社会教育等にも、そういう点では従来から行なってきておられるわけでありますけれども、そういうこともこういうことの活動の大きな意味では一つになろうかと思います。市町村の場合にも状況は同じことでございまして、市町村全体のいろいろな行政活動なり、社会教育活動なり、公民館活動なりの中で取り上げられる。私どもはそれをどこでどう取り上げるべきだということを申しておるわけではございません。貯蓄の奨励という奨励事務地方団体事務一つとしてこの例示の中にあげることは適当ではないかということだけでございます。
  132. 千葉千代世

    千葉千代世君 それならば全く問題外だと思うのです。というのは、この前の予算委員会で私質問したことがあるのですけれども、学校の中で貯蓄の問題を取り上げているとすれば、特活と申しまして、特別教育活動の面でやっているという、こういう答弁があったわけでございます。現在学校の中では、簡易保険の問題、あるいは郵便貯金、それから銀行貯金、たいへんにわずらわしい問題が出てきているわけです。大蔵省の銀行局長さんの答弁の中でしたかちょっと忘れましたけれども、現在たしか三億だと思いましたが、かなりな額であったと思いましたが、それで、成績のいいところは県別に選定して表彰する、そうしてなお奨励するということでした。それから、はなはだしい例は、たとえば具体的にはこれは下関郵便局であったと思いますけれども、郵便局長さんが先頭に立って、そのときは教育局長さんも御一緒で、学校に簡易保険の勧誘をやっている。その簡易保険に団体で加入すれば手数料をあげる。つまり、リベートをあげるわけです。手数料の何割かをPTAの費用にするからお入りなさい。そうして、その内容の中には、現在の日本の社会の一流のところで働いている方々はみな大学を卒業している、あなたのお子さんも大学を卒業させなければならないでしょう、この簡易保険に加入しておって、そうして、育英資金でなくして、大学の入学資金に充てはまる種類もある、だからお入りなさい、こういう勧誘状なんです。教育の機会均等ということなんか全然無視されてしまって、そうして——私は別に大学に行くばかりがいいと決して言っているのではありませんけれども——やはり教育の機会均等の点から考えると、お金のある家の子供も、ない家の子供もあるわけです。しかも、もし義務教育の場でこれを強調なさるとすれば、これはたいへん問題が起きてくる。特に子供は生産者でもなければ、自分でお金をかせいでくるわけでもない。これはお盆でもらうとか、あるいはお正月に親戚からお小づかいをもらうとか、それをむだづかいをしないように指導するということが教師の役目なり親の役目であって、そうして分に応じて貯金を自主的にしていくという、そういう指導は、これは当然親御さんと一緒になって教師がすべきですけれども、無理無理に学校でもって半ば強制的になるわけです。校長さんも、あそこの学校では成績がよくて表彰されたのだ、今度はうちのほうも額で負けないようにと、これは必然的にそういうような競争が起きてきているわけなのです。その弊害か訴えられているのです。しかも、そのお金の取り扱いはだれがするかというと、ここには文教の御経験者の方もずいぶんいらっしゃるようなのですけれども、超過勤務手当を要求する教師にそれをやらせて雑務はだんだんふえていく。百何十種の雑務をかかえた教師の中にまた貯金の問題を処理させられる。これは仕事のいい悪いの問題ではなくて、そういう生徒のほんとうの教育活動を十二分にやっていくための全能力を発揮するだけの環境を整えてあげるのがやはり行政面の役目だという中で、今度は簡易保険局のほうは簡易保険をやれ、今度は大蔵省の銀行局では貯金をせいと言う。今度は自治省までがこれに乗って、わざわざ貯蓄の奨励と、ちょっと聞くとたいへんいいようなのですけれども、ここに例示されるということは、例示されれば、各県に行った場合は、やはりここにあったから、よしこれをこう向けてと、こういうことになってくるわけです。ですから、もう一度詳しく言わしていただけば、やはり貯蓄ということは、社会保障のほうの裏づけがありませんから、何とか少しでも、利子の安いことを知りながら貯金をしていきたいというのは人情である。一生懸命貯金している。ところが、一方では、物価の上昇率というものを経済企画庁はどういうふうに見ているかというと、郵便局の利子よりも上がったように出されては困るので、それより少し少ない予想でもって上昇率を出しているわけでしょう。そこにすでに矛盾がある。今度その犠牲が次々に一番下のほうにそういうものが及んでいくということを考えたときに、特に大蔵省の資金運用部あたりにこのお金が行って利用される面、いろいろ考えていった場合には、貯蓄のいい面だけ、それだけがフルに利用されてほんとうに生かされているかというと、その反面にはマイナスの面がどんなにあるかということをもう一ぺん考え直していただきたいことと、大蔵省と郵政省、それにまた自治省がもう一枚加わる必要はないと思うのです。私はほかの面でやはりこれは考慮すべき点があるのではないか、こういう意味で申し上げたのですけれども、いま具体的な面で伺ったら、学校でも従来やっていらっしゃるようだからという意味から申し込んでこられたわけですね。そういうような点についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。どうしてもやりたいですか。
  133. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 先ほど御説明申し上げましたように、貯蓄増強といいますか、そういう問題は政府としても一つの方針になっておるものでありますし、また、地方団体におきましても、従来から貯蓄の奨励ということはいい意味でやっておったところでございます。それをさらに活発な活動を期待したいということがございまして、そういうことのお話があったわけでございます。私どもも、地方団体にそういう意味での貯蓄の奨励ということが活発に行なわれるといいますか、積極的に行なわれることは決して否定すべき事柄でもないので、私はそう思うので、貯蓄心を養うということは、私はまあいろんな議論はあると思いますけれども、それをすなおにとっていくと、最近の貯蓄という問題は単なる金銭の貯蓄というだけではなく、いろいろな意味での心の貯蓄と申しますか、いろんな貯蓄というもの、そういう貯蓄というもの全体の大切なものをつくり上げていくということが必要なんだということも貯蓄の本を見ますとだいぶ書かれておるところもあります。私は、どこの銀行に持っていけばよろしいとか、あるいは郵便貯金がよろしいということばで申し上げたり、あるいはまた、貯蓄奨励についてどういう方法を講じてやるのがよろしいということをここで取り上げて言おうとしておるのではございません。御承知のように、地方自治法事務の例示と申しますものは、地方団体が適切と認められるような仕事の分野をあらゆる分野にわたりまして書いておるわけでございまして、その中に今回入れさせていただきたいというのは、第十七号に、消費者の保護と貯蓄の奨励というものを——計量器なり生産物の検査等の仕事というようなものの項目がございますが、その上に消費者の保護と貯蓄の奨励というものを加えさせていただくと、こういうことだけでございまして、その意味は、もちろん、貯蓄の奨励をするということを地方団体の仕事の一つとして例示することが適当だという判断に立っておることは間違いございません。しかし、その貯蓄の方法なり貯蓄のしかたなりということまで私どもがとやかく申すわけではございませんで、一応の例示の一つとして入れさせていただきたい。そのことは、まあ、貯蓄心を養うということ自身は非常にけっこうなことではないかと思っているわけでございます。
  134. 和田静夫

    ○和田静夫君 とにかく、いろいろ言われますけれども、日本人の貯蓄率というのは大体所得に対して二〇%にもなっている。ヨーロッパ全体、先進国をながめてみて、六%ぐらいである。それ以上にまだ貯蓄の奨励をしなければならぬ。心の貯蓄、こういうことを言われたのでございますけれども、貯蓄心が全く非常に旺盛ですよね。それに輪をかけてやられなければならない。考えてみれば、銀行に対する貯蓄はふえているけれども、だんだん簡易保険やあるいは郵便貯金が減っていく。どうも大蔵省のいわゆる資金運用部資金がもっとふえることが好ましい、ひとつ自治体がしりをたたいて貯蓄心を旺盛にしてそちらのほうに目を向けさせるのだと、そういう意図に、この時期に出てくるのは、どうもとられざるを得ない。したがって、私のほうとしては、この部分については、とにかく削られたほうが賢明である、こういうふうに思いますが、再度申し添えておきます。  次に、やはり第二条に、「市町村は、その事務を処理するに当たっては、議会の議決を経てその地域における総合的かつ計画的な行政運営を図るための基本構想を定め、これに即して行なうようにしなければならない。」という一項をつけ加えられる点でありますが、これは直接的には、都市計画法十五条の三項にいうところの、「議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想」及び継続審議になっている農業振興地域整備に関する法律案の第十条にいうところのそれにリンクするものであろうと私は思いますけれども、趣旨は、市町村段階における行政運営基本構想も全国的なフレームワークのもとに位置づけられておるべきであって、行き当たりばったりであってはならないということであろうと思います。しかし、府県段階における総合開発計画が全国レベルでの総合開発計画に位置づけられており、その中に市町村段階での計画が包括される以上、わざわざこうした規定を私は入れる必要はないのではないかと思うのですが、いかがですか。また、府県段階における総合開発計画が、必ずしも議会の議決を経ておらず、公聴会などによってきめられていることと関連して考えてみますと、市町村段階における行政運営をはかるための基本構想も必ずしも議会の議決を経る必要はないのではないでしょうか。むしろこうしたものは、住民の自覚、教育という観点からも、少しは手間どるかもしれませんけれども、直接民主主義的な方法とでも申しましょうか、直接住民の町づくりの意見を聞いてつくっていく、そういう形のほうがもっとよい、こういうふうに考えますが、いかがですか。
  135. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 地方団体が仕事を、事務を処理するにあたりまして、行政運営の基本方針を立てまして、そうしてこれに即しまして計画的総合的な執行をはかっていくということは私どもは当然のことだろうと思うのでありますが、御指摘がございましたように、特に最近では、都市計画法の制定とか、あるいは農業地域整備に関する法案の提案などで、地域計画的な振興についての法制度というものが相次いで整備をされるような状況でございます。府県につきましては、すでに地方自治法のさっきの二条の条文の中にも、「地方の総合開発計画の策定」ということが一つの府県の任務としても明示されております。市町村について今回そういうものを明示しようとしておるわけでございますが、そういう場合に、やはり基礎的な地方公共団体としての市町村、その市町村は、住民に特に身近なところの地方団体であるという特性もございますので、やはり市町村の建設なり経営の基本構想というものを定めるという場合には、やはりこの住民の代表の機関であるところの議会の議決というものを経て将来の予測を立て、将来のあり方というものを考えまして、総合的、計画的な構想を定めていくということがふさわしいのではないか。もちろん事柄が専門的になってまいりまして、そして専門的ないろんな学識経験者でありますとか、あるいはまたそういう方々から専門的な知識を吸収するために、審議会とか、そういうものを開くとか、あるいはまたそういう基本的な計画を、構想を練りますために、地域地域住民の方々の意向を徴するというようなことは、これはまたそれで非常にけっこうなことだと私思います。しかし、まあ基礎的な団体としての市町村のあり方としましては、何と申しましても議会地方団体の意思機関、そういうものとのつながりにおきまして基本的な構想を定めるようにつとめる、努力をするということは、これはまああってしかるべきことではないか、こういうことでございます。おっしゃいますような意味での、他の住民との対話とか、あるいは学識経験者の意見を採用するとかいうようなことは、もう全然要らないというような意味で考えておるわけじゃございません。
  136. 和田静夫

    ○和田静夫君 私はなぜこれにこだわったかと言いますと、一方では広域市町村圏のいわゆる法案が用意をされつつありますね。これが日の目を見た場合に、いま御答弁になったような趣旨にはならなくて、逆になる危険性を実はこの改正は持っておる、こういうふうに思うからであります。言ってみれば、日の目を見たときに、どうも地ならしとして、自治省が八千万円という予算を使って、そうして市町村を強力に指導する、この改正によって。市町村の自主的立案がさまたげられることになる可能性のほうが実は多いように考えられるのです。で、そのようなことはなさらないと、こういうふうにいまの御答弁を承っておいてよろしいですか。
  137. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 先ほども御指摘ございました都市計画法等の論議を通じまして、もう私が申し上げるまでもなく、従来都市計画法は建設大臣がきめるというようなことであったわけでございますが、元来都市計画というものは、市町村の建設にかかわる基本的に重要な問題でございます。そういうものが、新しい都市計画法におきましては、府県計画というものもございますけれども、市町村で定められるようになってまいりました。そういう場合に、都市計画の基本をつくるということをどういうふうに考えるかということの議論がありました末に、現在の都市計画法では、市町村の建設に関する基本構想——議会の議決を経て定められたものに即して市町村都市計画を定める、こういうことに現行法でも相なったわけであります。   〔委員長退席、理事熊谷太三郎君着席〕 やはり地域立法というようなものがだんだんできてまいりますというと、その場合に、基本的な構想というものは、その基礎的な団体であるところの市町村におきまして、特に議会も参加いたしまして、地域社会の将来の予測をいたし、将来の目標を設定をする、そうしてその建設なり開発なり、あるいは経営なりという基本的な構想というものを総合的に立てて、そうして総合的計画的な運営ができるようにする、こういうことでございます。自治省が広域市町村圏を主張するためにこれを使うんだとか、使わぬのだとかというようなことでは毛頭ございません。
  138. 和田静夫

    ○和田静夫君 次に、第七十四条に「第一項の場合において、当該地方公共団体区域内で衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体議会議員若しくは長の選挙が行なわれることとなるときは、政令で定める期間、当該選挙が行なわれる区域内においては請求のための署名を求めることができない。」という一項をつけ加えることになります。これは、公職選挙法で禁止されている戸別訪問にこの直接請求の署名運動が利用されるという判断からのものでありましょうが、直接請求権は地方自治法上、住民に与えられた基本的権利の一つであることは申すまでもありません。しかるに、鉄は熱いうちに打てと言われますように、その成否が、始める時期に実は大きくかかっているものである以上、私は、それを少しでも制限をするということは許されるべきことではないと思いますし、したがって、そういう意味では反対であります。それでなくても、今日、地方自治法上の直接請求制度が形骸化しているといわれています。それは、一つには、直接請求を行なう場合の重要な手続の多くが政令にゆだねられ、その成否が行政当局の恣意にまかされる傾向にさえあるからと、私は実は日ごろ考えておるわけですが、この法改正においても、地方自治法施行令九十二条四項に、解散の場合と任期切れの場合とに分けて、直接請求のための署名を求めることができない一定の期間を書き加えるのでしょうけれども、こうした重要な事項が行政当局の手にまかされてしまう、そのことが実は私は問題であると思うのであります。小さな利点を追及する結果、直接請求制度をますます住民から遠ざけてしまうこの法改正に、私はそういう意味で絶対に反対であります。選挙期間中に直接請求の署名運動がひんぱんに行なわれる、そのことによって自分にも直接請求という権利があったことを住民が知り直す、そしてあらためて確認をする、そういう住民が数多くいることを自治省当局者はやはり自分の責任として、何といいますか、   〔理事熊谷太三郎君退席、委員長着席〕 痛感さえしなければならない性質のものだと思うのですが、いかがですか。
  139. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) もう御承知のように、現行の公職選挙法上は、この選挙運動をなし得る期間は一定の期間に限られておるわけであります。また、この選挙運動中におきましては、選挙人の家を戸別訪問いたしまして選挙運動を行なうということは、これは法によって禁止されておるところでございます。一方、この地方自治法に基づきますところの直接請求は、法律によりまして、一定数以上の署名をまとめませんというと直接請求が成立しないということになっておりますので、その署名を収集いたしますために、請求代表者が、署名収集の方法といたしましては、各家を訪問をいたしまして署名を収集するというのが通常の状態でございます。そういうことでございますので、直接請求制度は直接請求制度として、お話がございましたように手続が進行してまいります。そういう場合に、選挙にごく近い期間にそういう請求の署名手続が開始されるということになりますというと、どうも実態におきまして、選挙運動と署名運動との間にまことにまぎらわしい事態が生じておる実態は、各所に見受けられるところでございます。そこで、それぞれの制度が公正に運用されることが私どもは必要であろうと思うわけでございまして、したがって、住民の基本的な権利の行使ということはよくわかりますが、一方また選挙権の行使というものも、これはもう住民のまた基本的な権利の行使である。この両方をどういうふうに調節していくかということになりますというと、いろいろな考え方があると思いますけれども、やはり請求の署名収集を選挙一定の期間これをとめるということはやむを得ないことではないだろうか、従来の実態から考えますと、やはりそういうことで両方の混淆を避けるということが、一番それぞれの制度が適正に運用されるゆえんであると、かように考えておるわけでございます。
  140. 和田静夫

    ○和田静夫君 この項については、後ほど他の質問も用意されているようでありますから、次に移りますが、最後に、第九十条に「前項の議員定数は、都にあっては、特別区の存する区域の人口を百五十万人で除して得た数を限度として条例でこれを増加することができる。ただし、百三十人をもつて定限とする。」という一項を書き加えているのでありますけれども、法律案要綱に「次の人口調査までの間は、特別区の人口は、自治大臣が推計して告示した人口によるものとする」とありますが、これによると、今度都議会議員は何名ふえることになるんですか。
  141. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 自治大臣の推計は、まあ人口の推計の方法といたしましては一つの方式があるわけでございます。私どもが人口の推計を考えましたのは、先ほど申し上げましたとおり、四十年の国勢調査のままでは、現在増員するということといかにも実態がかけ離れている。現在正確な数字はまだはっきり、いまいろんな方式の試算中でございまして、はっきり申し上げられませんけれども、私どもの予定では、九百十万内外の人口になるであろうと考えております。
  142. 和田静夫

    ○和田静夫君 それで議員数は何名ふえることになるんですか。
  143. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 失礼いたしました。  そこで、百五十万人で除して得た数を限度として条例で増加するということでございますから、六人、その関係でふえるわけでございます。百二十人プラス六人、つまり私どもの想定では、都で増加するアッパー・リミットと申しますか、これは百二十六人になるというふうに考えております。
  144. 和田静夫

    ○和田静夫君 この自治法の改正にあわせて、公職選挙法第十五条第七項のただし書きとして、「特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができる。」ものとするという条項を書き加える理由を御説明願いたいと思います。
  145. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) この公職選挙法におきましては、現在、選挙区の間の議員定数配分につきましては、人口に比例して定める、こういうことになっておるわけでございますが、最近の激しい人口移動によりまして、都市部の人口、まあ都市部に人口が一般的には集中しております。しかしながら、都市部におきましても、都心部におきましては、むしろ常住人口は非常に減少をいたしまして、そうして周辺部に人口が片寄るというような状況がございます。こういうような人口移動が相当現在激しく行なわれておりますときに、従来のように、各選挙区間の定数配分を人口によりまして比例的に機械的に配分するということになりますと、むしろその点でかえって地域間の均衡というものが失われるというようなおそれも出てまいるわけでございます。つまり、たとえば都心部等におきまして、常住人口は減ったと申しましても、都市的な行政需要はますます増大していく。つまり流入人口が非常に多いわけでございまして、ますます流入人口は多くなりますから、したがって、そういう意味での都市的な行政需要は非常に高くなる。しかるに人口は減る。したがって、人口に比例した議員定数でございますと、定数も減っていく。このことは両方の間で非常にアンバランス、食い違いを生ずるわけでございますので、そういうような事情のある場合と思いますが、そういうような事情が特に著しい場合には、そういう地域間の均衡をむしろ回復するといいますか、均衡をとるというようなことも考えたほうが行政の要求に合うのではないか、こういうことでございます。ただ、これは絶対にやるというのではございませんで、原則はあくまで人口に比例して配分する。ただし、特別の事情がありますときには、人口を基準にして、地域間の均衡を考慮して定めることができる、こういうふうにいたしたいと考えております。
  146. 和田静夫

    ○和田静夫君 問題は、その特別の事情限度ですね。特別の事情とは、一体どういう形のものであらわされるものですか。
  147. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 理由は先ほど申し上げたように思いますが、したがって、結局特別な事情と申しますのは、人口の著しい移動の結果、常住人口と行政需要との間に非常な不均衡を生ずる、こういうような場合が一番典型的な場合ではないかと思います。そういう場合には、地域間の均衡を考慮するといいます意味は、いわゆる地域間の形式的な均衡ではなくて、実質的な均衡を考慮するという意味でございます。どこまでいったらバランスがとれなくなってくるのか、どこまでがバランスを失しないのか、これはそれぞれの状況が違いますから、それぞれの自治体の実態との点で考えまして、配当をしていただきたい、こう考えるわけでございます。
  148. 和田静夫

    ○和田静夫君 今回、このように東京都だけ特別扱いをする理由は何ですか。
  149. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) この条文につきましては、都だけではございません。これは公職選挙法の十五条でございまして、これは御案内のように、地方公共団体議会議員につきましての選挙区についての関係では、すべての地方公共団体について適用があるという関係改正でございます。東京都だけにいま申し上げましたような事情が実はあるのではございません。ほかの府県にもみなそういう事情がありますものでございますから、そういうことを考えてまいったほうが、この際、都の実態にも即するし、ほかの府県の実態にも即し得るのだ、こういうことでございます。
  150. 和田静夫

    ○和田静夫君 以上で質問を終わりますが、とにかく住民に与えられた基本的権利である直接請求権、それを制限をするという形のものを抱き合わせとして法改正を意図される、そういう本案については反対であるということをはっきり表明をしておきます。
  151. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 時間もだいぶおそくなりましたので、二、三お伺いしておきたいと思います。  この法律は、公布の日から実施することになっておりますが、自治省としては、大体いつごろをめどとして法律実施考えておられますか。
  152. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 法律が成立いたしますれば、なるべく早く公布をして施行をいたしたいと考えております。
  153. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 なるべく早くということでありますけれども、政令をきめなければならない個所が二、三あるように思うんですけれども、その政令の内容というものは、すでに自治省では腹案を持っていらっしゃいますか。
  154. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 政令については、まだ法律を国会で御審議中でございますので、まだ確定したものを持ってはおりません。現在立案した当時の関係で検討をし、幾らかの草案を事務的に取りまとめしようとしておる段階でございます。
  155. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その政令をつくるという作業にどのくらい必要だとお考えですか。
  156. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) この政令の内容にもよりますし、政令の審査とか、手続その他の関係もございますが、おおむね一週間ないし十日ぐらいの間には、政令は確定するものと考えております。
  157. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そしてその手続としては、最終的にやはり政府の態度をきめて、公示と言いますか、告示と言いますか、そういうものをしなければならないわけですね。
  158. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) そのとおりでございます。
  159. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうすると、大体自治省内部で案を固めるということは、十日ぐらいあればいいということですか。
  160. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) まあ法制局を含めまして、十日ぐらいで済ませてしまいたいと、こう考えております。
  161. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、その十日ぐらいの政令作成の作業を終えて、ほぼそれからあまり遠くない時期から実施するというふうに受け取ってよろしいのでございますか。
  162. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) そのとおりでございます。
  163. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この中に別表の改正というものが相当ありまして、それを一々論議をしていても始まりませんし、また同時に、これは他の法律地方にかぶさってきているわけですから、法律を決定したわれわれとしましては、当然別表の改正ということが行なわれることは予期しなければならないと思います。ただ、一番初めのところに、これは内容の実質的な改正ではありませんけれども、いわゆる都道府県の局、部、課というようなものに対しまして、これは実質的な改正を意味していないように読めるのですけれども、「百五十八条第二項及び第七項」云々とあります点、実質的に局、部、課の変更を意味していないというふうに考えてよろしいですか。
  164. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) この百五十八条の関係改正は、前のほうに項目を加えましたので、条文の整理でございまして、実質的な意味はございません。
  165. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこでちょっとお伺いいたしたいのですけれども、最近公害問題ということが非常にやかましい問題になってきているんですが、この百五十八条の中には公害という文字はもちろんありません。まあ、公害を取り扱う局、部、課というものは、当然この都道府県の局、部、課を置く場合に、内容として考えておられることは確かだろうと思うんです。その点はいかがですか。
  166. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 公害行政につきましては、地方団体、県市町村が行ないます場合には、当然この局、部の中で、それにふさわしいところで担当するというふうに私どもは扱っております。
  167. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この別表改正の中で、公害対策とか、大気汚染とかというようなことが出ているわけなんで、そちらのほうを都道府県が処理しなければならない義務というふうにいっておいて、それでその都道府県の局、部、課をちっとも変更しないで、それでできるという、そういうことは妥当ですか。
  168. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) そういう事務が新しく加わるから、百五十八条の中に公害についての所掌を明らかにするような規定を入れるべきではないかという御趣旨を含めてのお話かと思いますが、私ども、この府県の局、部のあり方につきましては、いろいろな点で考え直さなきゃならぬ時期が実はきていると思っております。そういう際には、そういうことで、公害行政等につきましても、この中にその位置をはっきりさせることがいいと思っておりますけれども、実はこれまでの府県の扱い方、これはいろいろございまして、たとえば経済関係の部局で扱っておるところもございます。それから総務部系統の局で扱っておるところもございます。あるいは企画部あるいは企画室等の部局で扱っておるところもございます。あるいはまた、そういうことじゃなくて、農林関係でも公害を扱い、土木関係でも公害を扱い、まあそれぞれの所掌に応じて公害は扱っておるというやり方をいたしております。そういうことで、この行政はまだ若い——若い行政と言っちゃ語弊がありますけれども、そういうことで、もう少し、部局の扱い等もいろいろと検討しておる最中でございますが、したがってそういうことで、一つ整理が整いましたならば、部局の関係の中に新しく、規定としては整備すべきものと考えております。
  169. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 いまの局長のお話のとおり、たとえば民生部の中に公害課というものが置かれているところもある、また商工部の中に公害課というものが置かれているところがある、あるいは別に企画部の中に公害課というものが置かれている場合もある、その他にもいろいろの形があると思うんです。政府は、公害関係は厚生省というふうに、おもな役所として厚生省ということになっておる。したがってもとがそうであれば、やはり地方の局、部、課というその編成をする場合に、公害に関する事項というものはどこの部に入るかというようなことをお考えになって適当じゃないかと思うんですけれども、一応この法案で別表の改正などもなさって、これまでたまっていたものがまあ大体これで整理がついたというかっこうだろうと思いますが、またこの通常国会で新しい法律ができて、それがまたその都道府県の処理しなければならない事務というふうに規定されれば、また新しい問題も起こってくると思いますけれども、この問題は懸案として、行政局において十分検討して、国の公害対策のあり方、それと地方の局、部、課のあり方というものを検討していただきたいと思いますが、そういうお考えありますか、どうですか。
  170. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) おっしゃるとおりでございまして、私ども、ぜひそういう扱いにつきましては考えていくべきだと思っております。
  171. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで、別表の中ですが、これはいずれも都道府県の処理しなければならない事務というふうになっているようですが、この中で、たとえば自治法の二百五十二条の十九ですが、そういう規定がある。しかし、そのいわゆる特別指定というものをしたあとの事務の委譲のことは規定されているわけですけれども、それがあるから、したがって都道府県が処理しなければならない事務のうち、いわゆる十六項目に該当する事務というものはやはり指定都市がやるというふうに考えてよろしいのですか。
  172. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) この十六項目につきましてはおっしゃるとおりでございます。法律によりましては、この十六項目以外におきましても、わざわざ、府県だけ書きませんで、府県及び地方自治法の二百五十二条の十九の都市ということで書いておる関係もありまして、そういうことになっておるものにつきましては、十六項目以外にも当然に指定都市事務ということになるわけであります。
  173. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この別表改正の中で、当然指定都市事務として処理しなければならない事務、そういうものはどれとどれなんですか。つまり、十六項目以外の指定都市事務
  174. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) この関係、資料の十七ページを開いていただきますと、(一の二)とか(一の三)とかという別表がございます。これらは、ここに書いてありますように、「第二百五十二条の十九第一項の指定都市に限る。」わけであります。  それから、その次のところを開いていただきますと、十九ページでございますが、(五の二)、(五の)(三)というのがございます。たとえば、「共同溝の整備等に関する特別措置法の定めるところにより、その区域内に存する都道府県道に共同溝を建設」すること。こういうことは指定都市の問題。指定都市はほかの都市と違ってこれを行なうということで、ほかの法律におきましても、機関委任事務等におきまして、そういう指定都市事務というので特別に書いておるのがそのほかにもございます。たとえば、そのさらにあとのほうで、六十ページから六十一ページを開いていただきますと、この別表第四と申しますのは、市長が管理する事務でございます。その六十ページのおしまいのほうにも流通業務市街地の整備に関する法律及びこれに基づく政令の定めるところにより行なう仕事、あるいは古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法等によりまして行なうもの。その次の六十二ページに(二十の三)、あるいはその次に(二十五)というような、あるいは(二十六)というような規定で、個々の法令によりまして、ほかの一般の市町村にはそういう権限を認めておりませんけれども、つまり自治法の十六項目以外にも、個個の法律で府県並みに扱っているというものがあるわけでございます。これらがいま申し上げたようなところの別表にあらわれております。
  175. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 これらはもとの法律が、都道府県またはそういうふうに指定市というふうになっているからだろうと思うんですけれども、たとえば老人福祉法というのがあります。これなどは、いわゆる十六項目の一つとして、いろいろ仕事を拝見してみると、都道府県でなくて、指定市のいわゆる十六項目による市長の事務処理というふうになるわけですね。
  176. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) そのとおりでございます。
  177. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そのほかにもそういうものがあると思うんですが、それはどういう、一々言うのもごめんどうかと思いますけれども、そういうものがあるということは言えるわけですね。
  178. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) そのとおりでございます。
  179. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで大臣にお伺いしたいんですけれども、いろいろこの都道府県の局、部、課の設置の問題に関連いたしまして、あの当時といまの大都市と申しますか、指定市、そういう問題は、新たな要素が非常にたくさんつけ加わってきているんじゃないかと思いますけれども、指定市の問題について、今後どのようにお考えでしょうか。まあ、府県合併特別措置法ですか、そういうことも考えられておりますし、あるいは、首都圏あるいは東京都あるいは特別区というようなことも今後の日程にのぼってくるんじゃないかと思いますが、指定市は、実力の上から言えば府県と肩を並べて行政事務を処理する実力、能力というものが十分にあると思う。これを現在のように、市の一部であって、特別に十六項目に限って、あるいは他の法律によって指定市あるいは指定市の市長に限られた権限だけしか与えていない、与えられないということでは、実態に即しないんじゃないかというふうに、経済の伸展と行政制度というものが実際に即していないんじゃないかという感じを持ちますけれども、そういう問題について、大臣の所見を承りたいと思います。
  180. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま御質問の趣旨、私も非常にわかります。大都市、指定都市ですか、これは人員配分財源配分と、もっと充実さし、また権利を、これは相当実力を持っておりますから、仕事の上におきましても力を与えてもいいのじゃないかという感じがいたしております。ただ一面、この広域的な行政措置考えておりますので、広域行政の面でも、いろいろそういう共同で仕事に当たる、事務を遂行する、行政的なこれは事務だけじゃなくて、財政上も水準を上げていこう、こういう点も出てまいりますので、その間の調整は考えなければならないと思いますが、大体の御趣旨は、私は松澤さんの御意見と同感でございます。
  181. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この委員会では、ここ両三年の間、当面の大都市あるいは特別市の税財政の問題についてはいろいろ論議もいたしましたし、その附帯決議もたびたびやっているわけなんです。それでも大都市行政の水準がきわめて上がっているというふうには考えられません。この問題は、税財政の問題と同時に、制度の問題としても今後考えていく必要があるのじゃないかと、このように考えます。で、税財政の問題と並行して、制度そのものについても考えていく時期ではないかと、こう思いますが、当面の税財政の確立の問題、同時にこの基本的な大都市制度のあり方ということについても考えていくべきじゃないかと思いますが、この点いかがでございますか。
  182. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) 大都市問題は、お示しのとおり、財政上の内容におきましても、特にもうこの過密都市の対策等、たいへんその点で困難をいたしております。それから、行政面でもだんだん複雑になってまいります。まあ各面から考えましても、やはり大都市の問題というのは検討を要すると、しかもこの段階で検討を要するのじゃないかと思っております。ただいま、大都市問題については地方制度調査会で検討いたしておりますが、これらも十分参考にしたい。そして自治省といたしましても、いま御意見のように、このあたりでひとつもう大体の検討をして対案をつくったらいいと、こう考えております。
  183. 原田立

    ○原田立君 この新旧対照表の中にある、先ほども質問がありましたが、第二条の五項であります。「市町村は、その事務を処理するに当たっては、議会の議決を経てその地域における総合的かつ計画的な行政運営を図るための基本構想を定め、これに即して行なうようにしなければならない。」と、「しなければならない。」というふうにはっきり規定してあるのは、ちょっとこう私理解しがたいのですが、こういうふうにはっきりとこういうきめ方をするお考えはどういうことなんですか。
  184. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) これは、一つには、この地方自治法には地方自治法規定の書き方というのがございまして、修文上の問題もございます。地方自治法におきましては、大体このたとえば二条の十二項を見ますと、「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」こういうふうな「ようにしなければならない。」とか、はからなければならない、こういうような一つのパターンがございます。それで、そういうこともございまして、一つの方針、姿勢といいますか、そういうあり方というものをあらわすという意味で、基本的な運営の方向なり姿勢をあらわしたいというようなこととあわせて、そういう修文ができておるのだろうと思うのでございます。そういうものもありますので、「基本構想を定め、これに即して行なうようにしなければならない。」こういう書き方をするのが適当ではないかということで、この中にそういう書き方でおさめたのでございます。
  185. 原田立

    ○原田立君 まあ局長は官僚でありますから、別にこうということはないんだろうと思うんですが、何か頭からぐっと押えられている、そういう感じがするんですね。このことは、多少私も笑い話みたいなことで言いますけれども、実は基本的に、地方自治の本旨というものはたっとばなきゃいけないということがはっきりとうたわれているわけですね。その面からいって、何か頭からがんと押えられるような、そういう感じの表現というものは、慣例であるというお話があったけれども、あまり好ましくない、そんな感じがするわけなんです。それで、それは私の意見ですから、別にどうのこうのということはないわけですが、いま自治省地方制度調査会に広域市町村圏化のことを諮問しておるけれども、これをもし答申された場合に、ここにくっつけるという意図があってここにくっつけたのかどうか、この点はいかがですか。
  186. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 先ほども御質問がございましたので申し上げましたが、この関係規定は、広域市町村圏の地方制度調査会で御審議を願っておる問題とは、一応無関係でございます。したがいまして、地方制度調査会等で御答申をいただきました場合に、広域市町村圏について法制化が必要だというような場合には、これは別個に広域市町村圏の制度化をはかるということに相なるわけでございまして、それが地方自治法の中に加えてしかるべきものとなるのか、あるいはほかの法制として考えていったほうがいいのか、しかしそれは地方自治法と密接な関係のあるものであることは間違いございませんけれども、そういうこともまだ考えていないのでございます。
  187. 原田立

    ○原田立君 「議会の議決を経て」と、こうなっておりますけれども、もしこういうことがその議会で議決されなかった場合、すなわち「その地域における総合的かつ計画的」ということですから、「その地域」というのはたいへん広い地域をさしているんだと思う。二市何町とか三市何町ということになるだろうと思うんですが、そこのところの見方はどうなんですか。一つの市の中を対象にしているのか、あるいは数市町村対象にしているのか、その点はどうなんですか。
  188. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) これは市町村がつくる基本構想でございますので、市町村がほかの市町村のことまで手を伸ばすわけにはまいりません。したがって、「その地域における」と申しますのは、市町村のよって立つ地域というような感じ、市町村区域と申してもちっともかまわないのでございますけれども、まあ最近はそういう地域における振興整備計画とか、まあいろいろなそういう用語も出ておりますので、「その地域」ということばを用いただけでございます。
  189. 原田立

    ○原田立君 そうすると、それは一市町村というふうに理解してよろしいわけですね。
  190. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) そのとおりでございます。一番広くて一市町村全部の区域、あるいは市町村の一部の区域ということも、問題によればあろうかと思います。
  191. 原田立

    ○原田立君 それならば何となく理解するような気がするのですが、そのあとに、「総合的かつ計画的」という、これはどうも、計画はどこでも計画するのですからあれですけれども、「総合的」というのは、数市町村にまたがる、そういう意味じゃないのですか。
  192. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) これはさっきも申し上げましたように、行政運営の基本的な方針を立てて、つまりそれは市町村の経営という面からいえば、経営計画でございましょう。それから地域社会の振興という面からいえば、一つの建設計画でもあれば整備計画でもある。施設の面でいえば、そういうこともある。あるいはまた、産業の振興とかそういう問題、あるいは民生とか福祉とか、あるいは生活環境とかいうような問題に具体的に突っ込むというか、深く入るわけじゃございません。そういう問題全体を総合的なものとしてとらまえて基本の構想を立てていくと、個々ばらばらのものではないという意味で、その市町村としての総合的な基本構想、そして将来を見通しまして、その将来の予測を立て、目標を置きまして、そういう総合的計画的な構想を立てていくという、こういうことを意味しておるといいますか、こういうことがわかるような意味で、「総合的」ということばを用いたわけでございます。
  193. 原田立

    ○原田立君 ことさらこういうところにこれ入れる必要はないのじゃないかとぼくは思うのですよ。こういうのはいままでの市町村だって、総合的かつ計画的に行政運営してきたはずだと思う。それが特にここに入れたというのに、何か意図を感ずる、悪く考えればですな。まあ私これ何もここに一項目入れなくてもいいのじゃないかという気が強くするわけなんです。入れるところに、何か広域市町村圏化をああいうところへひっかけていく意図がおありなんだろうと、こう推則しているわけなんです。だけれどもそれはそれとして、いまのお話ですと、現在の通常の行政をよくし、内容を充実するのだというような意味に受け取れるのですけれども、それならば、何もつけなくてもいいのじゃないかということなんですが、もし他に何か意図があるとするならば、この条項はいつ活用されるのか、その点はいかがですか。
  194. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 先ほども申し上げましたように、新しいこの都市計画法におきましては、都市計画法の十五条に、御指摘にもございましたが、「市町村が定める都市計画は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想」に即したものでなければならない、継続審議になっておりますが、農業振興地域整備に関する法律の第十条には、「市町村の定める農業振興地域整備計画は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想に即するものでなければならない。」、こういうふうに、最近市町村を中心といたしますところの地域振興整備に関するいろいろな立法が行なわれておるわけでございます。それにもう市町村議会できめましたところの基本構想というものがあるのだと、建設につきましては基本構想があるのだ、基本構想に即してそういう振興計画なり都市計画というものはつくっていくのだ、こういうこの前提を一つ立てておるわけでございまして、地方自治法は自治体の運営の基本法でございますから、そういう意味で、常時各地方の中にそういう市町村基本構想を立てるということの意味を明らかにいたしまして、その基本構想なるものは、こういう都市計画とか農業地域振興計画とかいうようなものを集大成をした、と言っては語弊がございますが、そういうものを総合した総合的な、計画的な基本構想、つまり都市計画なり農業地域整備振興計画なりのその土台になるような基本構想というものを考えるという考え方で、都市計画法なりそういうものと平仄を合わせるという意味もございます。また、全体を考えてみましても、自治体の行政運営の基本方針を立てまして、それを計画的に、総合的に行なっていくという基本の考え方があることはちっともふしぎでも何でもない。いまお話のございましたように、当然のことではないか、まさにその当然のことを、関係法令との間の符節を合わせますためにここに規定をする、そのことは、やはりひとつの意味があることではないかというふうに考えておるのでございます。
  195. 原田立

    ○原田立君 あまりよくわからないけれども、理解したことにしておきましょう。  それから、九十条の都道府県議会議員定数、これを、「百二十人を以て定限とする。」、こうなっておりますが、今回の改正の中で、定限をば百三十人にする、都の場合のことですね、こういうふうになっておりますけれども、これは、都の場合こういうふうに規定されたことであって、もし、東京都のように人口がぐんぐん急増してきたような都市が今後できた場合、今回行なわれた都の特例、すなわち百三十というような特例を適用することがあるのかどうか、この点はいかがですか。
  196. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 今回の改正案は、法律で、いま御指摘がございましたように都にあっての特例でございます。したがって、ほかの府県なりほかの都市、都以外のところが、極端に申しますと、人口が幾らふくれましても、この規定は働きません。これは都という特殊な事情、都の特殊な制度、特性にかんがみまして、都だけの特例、こういうことでございます。
  197. 原田立

    ○原田立君 それはよく理解しておるわけです。ただ人口がどんどんと、東京都と同じように、それに準ずるような、そういうふえ方をしたような場合という前提、仮定なんですけれどもね、そういうような場合は、こうやって定限を、現在百二十ときまっていますけれども、都の特例のような百三十ということを利用するような考えはあるのかないのかということです。
  198. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 現在の制度からいえば、都だけの特例でございますから、ほかのところに関係がないわけでございます。しかし一面、都の実態の人口、一千万以上の大人口であるという実質を踏まえての都議会という問題も考えなきゃならない面もある。こういうことになりますと、今後ほかに人口一千万程度になってくる都市についてはどうかということに立法論としてなるのではないかというお話かと思います。人口問題研究所であったと思いますが、人口問題研究所におきますところの人口想定を見ますと、大阪府が、何年か、ずっと先でございますが、大阪府が、いまのままでも一千万ぐらいになるときがくるようでございますが、そういうときの問題は、別個の問題として考えなければならないというときがくるかもしれません。現在は都だけの特例として考えておるのでございます。
  199. 原田立

    ○原田立君 時間がたいへんおそいからそのぐらいでやめましょう。  それから七十四条の、〔条例の制定又は改廃の請求とその処置〕のところ、この五項の直接請求をばこうやって制限をしている。先ほど和田委員のほうからもお話がありましたように、直接請求は私たちの基本的権利ですよ、それをこういうふうに制限する。それは那辺のところにその意図がおありなのか、その点はいかがですか。
  200. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) これは、先ほど申し上げましたが、直接請求につきましては、もちろんお話のように、基本的な住民の直接請求権でございまして、基本権でございますから、これ自身としての発動は当然保護され、保障されなければならないわけでございますが、従来からのあらわれ方を見ますというと、中には選挙の期間にかかるような直接請求の署名の収集ということが間々行なわれておるのでございます。しかし、これは地方自治法の上では、そういう基本的な権利でございますから、それ自身としてはその手続はどんどん進んでいくということになっておりますけれども、実際の直接請求については、一定数の署名を求めて、そして初めて直接請求が成立するということになっております。その署名のとり方といたしましては、請求代表者が住民の個々の各家庭を訪問いたしまして署名をとるということが通常の行われ方でございます。そうしますというと、片一方で、それが選挙期間中でございますと、選挙運動は、公職選挙法によりまして戸別訪問は禁止されておる、こういうかっこうでございますが、直接請求ということであれば、当然に、ものは違うのかもしれませんけれども、戸別訪問的なそのような集め方というものが行なわれるということで、選挙運動と直接請求の署名収集運動というのは、非常にまぎらわしい形で選挙期間中に混在をする、これでは、それぞれ制度の基本について非常に公正な運営ということが行なわれない結果、かえって中には直接請求を乱用しているのじゃないかというようなことも間々指摘があるわけでございます。このことは、そういう基本権の運用のしかたとしてはやはり大切に考えなければいけない問題でございます。一方、選挙もこれは住民の基本的な権利でございますから、これはやはりどちらかがその道を譲っていって、それぞれの道をきれいにしたほうがフェアであるといいますか、そういうことにもなるわけでございますから、いろいろな考え方があると思いますが、やはり直接請求を一応時期をずらしまして、そうして選挙期間中の署名収集だけは避けるということが適当ではないか。これは現在までのあらわれ方から考えまして、一つの懸案になっておったわけでありますが、この際、そういうことをぜひ実現をさしていただきたい、こう考えておるわけでございます。
  201. 原田立

    ○原田立君 国民的権利をこうやって拘束するわけなんですから、だから、またいまのお話の中に、こういう例が間々あったというお話もありましたけれども、じゃ具体的に、その法の精神を逸脱して、違法行為があったようなものはたくさんあったのですか。具体例はどのくらいあったのですか。
  202. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) 具体例の全部を私ども承知しておるわけでございませんが、これは偶然にもそういう時期にぶつかったというものが、むしろ真実は多いのだと思います。多いのだと思いますけれども、やはり相当数ございまして、そうしてそれらの中には、非常にもう直接請求運動と選挙運動とがまぎらわしいかっこうになっておるというのがございます。直接請求におきましては、運動は非常に自由でありまして、そうしていろいろな制限がほとんどございません。したがいまして、そのあらわれ方を見ますというと、間々選挙運動を、何と申しますか、言い方は非常に適切でないかもしれませんが、免れるために直接請求という手段をとっておるのじゃなかろうかといわれるようなあらわれ方をしておるものもかなりあるのであります。こういうことは、やはり基本的権利の行使というものを正しく行なっていく、そうして選挙というものは非常に重要な国民の権利の行使でございます。これにそごを来たさないということが、やはり適当であろうということでございます。決して基本的権利を制限するというわけではございませんが、選挙期間中は一時それを、収集行為をやめてもらいまして、選挙が終わったあとでまた続けていただく、こういうことにするのが一番適当ではないだろうか、こう考えておるわけであります。
  203. 原田立

    ○原田立君 結局それが制限じゃないですか。制限じゃないといっていながら制限をされる。それでいまの説明の中に、相当数とか、かなりの数とかいう、そういうぼけた数の表現なんですけれども、それをもう少しはっきりしてください。
  204. 長野士郎

    政府委員(長野士郎君) これは、選挙のたびにすべて私どもが資料をとっておるわけではございませんので、はっきりしたことが申し上げられないのでございます。私どもの見ておりますところでは、やはり相当数(笑声)あるように思います。
  205. 原田立

    ○原田立君 まあそこら辺は差しさわりがあるのでしょう。それで、「政令で定める期間」というのが実は問題になっておるわけですよ。「政令で定める期間、当該選挙が行なわれる区域内においては請求のための署名を求めることができない。」、その「政令で定める期間」というのをどのくらいに考慮しているのか。また、どういうふうなきめ方をなさるのか、その点いかがですか。
  206. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) この署名収集行為は、いま権利の制限をするとか、これはまあ一つ考え方でありますが、なるべくその制限を長くしないようにしたいという考えを持っております。同時にまた、選挙運動とまぎらわしいとなりますと、これは常識的に考えてやはりまぎらわしくないすっきりした選挙をやりたいというのがありまして、そこが非常にむずかしい点でありまして、どちらの御意見も、私はお聞きしてもっともだと思っております。そこで一応の、まだこの法律ができ上がったんでもございませんし、御審議中でございますから、ここでそうはっきりしたことを申し上げることはどうかと思いますけれども、いま申しましたとおり、できるだけ最小限の期間としたいと、そこでいま一応考えておりますのは、政令で定めようと考えておる期間は、任期満了に伴う選挙の場合は、任期満了前六十日に当たる日からの選挙期間の間だと、六十日間ということを考えております。その他の選挙の場合は、やはり当該選挙を行なうべき事由の生じた日から選挙の期日までの間を、大体同様な期間に考えております。これは、いま申しますとおりまだ御審議中のことで、はっきりこう政令でしますということは少し出過ぎておりますけれども、せっかくのお尋ねでございますから一応申し上げておきます。
  207. 原田立

    ○原田立君 政令は自治省だけでおきめになる問題であると思うのですが、この問題はやっぱり大きな事柄であります。一つの話によれば、この政令で定める期間は三カ月間というような話もお聞きしました。このことに対しては、各党ともたいへん大反対です。それでいろいろと交渉が重ねられておるように思いますけれども、これがもし事務段階で簡単に、期間をきめるのをぱっぱっと簡単にきめられたのでは、いま自治大臣は六十日間というお話であったけれども、まあ半年ぐらいたったら、九十日間にまたなっちゃったなんというようなことになったらもうたいへんな話であります。それで、もしそういうふうな、変えるような考えがあるときは、必ず国会の同意を得るとか、ないしは承認を得るようにするとか、ここをはっきりしておいてもらわなければならぬと思うのであります。事務段階で簡単にその長短をきめるということは、これは軽々にすべきでない、こういう考えがあるのですが、いかがですか。
  208. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) これはきわめてこの法律の中でも重要な事項でございます。私は決して軽々に申し上げているのではございません。一応事務段階で、いまお話がありましたから申し上げますが、三カ月なんという案が出ておったのも事実でございます。しかし、これはやはり各党の方方の御意向をわれわれは参酌し、これを相当尊重していくのがまあ私の政治的な姿勢でございますから、したがって、その点を十分考慮いたしまして、いま申しました大体の腹案と申しますか、案としては六十日ということを考えております。したがって、この法律改正にあたりまして、私いま責任者でございますが、いやしくも事務段階で軽軽にこれを変えるなんということは、これは法律をもてあそぶものでございまして、私はこういうことはやるべきでない、こういう考え方を持っております。その点はひとつ御理解を願いたいと思います。(「大臣、いつまでもいてもらわなければ」と呼ぶ者あり)
  209. 和田静夫

    ○和田静夫君 私の言いたい点をいま松澤さんがずばり仰せになったわけですけれども、大臣も、軽々に扱うようなことはしないと、こう仰せでありますが、たいへん不信のことばでおそれ入りますけれども、大臣がかわると、ころころころころ変わる場合があるんですね。それを心配するわけなんですけれども、重ねてそんなことはないでしょうなとお伺いするんですが、いかがでしょう。
  210. 野田武夫

    国務大臣野田武夫君) いま私率直に申し上げまして、ここまでの論議を尽くし、ここまでの御注意や警告を受けている法律案改正にあたりまして、事務当局もかわるかもしれませんけれども、大体事務当局も相当若い者も来ておりますし、ここまで論議が尽されます以上は、軽々に変えることはないと、私はそういう推測をいたしております。私自身がそういう方針で指導したいと、こう思っております。
  211. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  212. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  213. 占部秀男

    占部秀男君 私は、日本社会党を代表して、この地方自治法の一部を改正する法律案について反対の態度を表明いたします。  今回の法律に、第七十四条の直接請求の制約の問題が出ております。これは言うまでもなく、憲法に規定された地方自治内容は、住民自治と団体自治であることは、これは皆さんも御存じのとおりでありますが、この直接請求ということは、住民自治の基本的な権利であります。それを、単に選挙の場合に乱用をされる心配があるという理由だけで制限をするということは、われわれはどうしても納得ができません。しかも、この法律案によりますと、制限する期間を定めるのは政令であるということでありますから、したがって、憲法上の基本的な権利、この権利を大幅に政府に移譲したような形になりますし、また、ただいまの原田委員の質問の中で、おおよそ任期のはっきりしておるものは投票日前六十日、その他は選挙期日まで、その生じた、たとえば解散が生じた、そういうような理由が生じた日から選挙期日まで、こういうように大臣は言われておりますが、こういうとり方自体が、非常に何かどんぶり勘定でやっているような根拠薄弱な考え方でありまして、私どもとしてはどうしても納得ができないのであります。  第二に、選挙の公正を期するためにこういう扱いをしなければならないとかりになったとしても、問題は公職選挙法改正でこれを扱うべきであって、地方自治法の中でこういう規定を行なうべきではない、かようにわれわれは考えております。なぜなら、この自治法の目的のところを見ていただけばわかりますように、地方自治法そのものは、民主的な地方団体運営住民の権利を保障した法律であります。それを、この選挙であるという一つの特殊な事情から、その中で制限しようということは、これは現行の規定考え方自体に照らして、本質的な問題があると思うのであります。  それから最後に、私はこれは政治問題としてではありますが、この法律案の末尾に理由というものがございますが、この理由を読んでいただけばわかりますように、初めこの法律案が出されたもとは、率直にいって、東京都の定数のアンバランスを是正しようということが都議会のほうで起こって、各党間でいろいろと話し合いも行なわれた問題であります。そこへ、われわれの考えによれば、突如として、それを理由として直接請求の制限という問題を出されてきた。これははなはだ心外な政治的な扱いでありまして、どうもこういうようなその場当たりの、何かものごとをやったらば、それ以上に食っちまえというような感じをわれわれ自身としては与えられておる。  こういうような三つの理由から、この地方自治法改正する法律案には反対いたします。  以上、簡単でありますけれども、反対の態度を明らかにしたいと思います。
  214. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  215. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  地方自治法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  216. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。      —————・—————
  218. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 再び昭和四十四年度自治省施策及び予算に関する件を議題といたします。  御質疑のおありのお方は順次御発言を願います。
  219. 和田静夫

    ○和田静夫君 午前中に質問をした答弁につきまして御質問をしたいのでありますが、いわゆる地方財政計画に盛られています地方公務員の給与費について、七月実施五%という昨年を上回る部分についての一般行政経費中盛られた給与改定の費用、並びに現年発生災害等の年度途中における追加財政需要の発生に備えての金額について、先ほどは三百億という御答弁があったのでありますが、すでに自治省から出されております四十四年度地方財政計画説明書中十九ページには、同趣旨のものについて五百億円を計上していると明記をされておるわけです。したがって、先ほどの答弁と、この記載されておるものとどちらが正しいのか、説明していただきたいと思います。
  220. 細郷道一

    政府委員細郷道一君) 五百億円が正確でございます。私先ほど三百億円と言い間違いました。五百億が正しい……。失礼いたしました。
  221. 内藤誉三郎

    委員長内藤誉三郎君) 本日はこの程度にとどめます。これにて散会いたします。    午後七時三十分散会      —————・—————