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参考人(
山本忠義君)
炭労中央本部の
山本でございます。
一つの
産業で、非常に長い間、諸
先生方をはじめ、
関係当局の御心労をわずらわした
産業は、
石炭産業をおいてほかにないだろうと、こう認識しております。
それなりに、諸
先生方をはじめ
関係当局の御熱意についてはたいへん
感謝を申し上げている次第ではございますけれ
ども、毎日毎日が生命の危険にさらされて、しかも、
坑外の
条件とは違いまして、坑内の暗いところであぶない
自然条件を相手に働いております
炭鉱の
労働者から見ますと、こうしてもらいたい、ああしてもらいたい、こういう要望はたくさんあるわけでございます。それぞれ
機会を与えられますごとに私
どものほうのそういう
立場からの
労働者の叫びというものについてはお訴えを申し上げてございますので、諸
先生方におかれましてもそういう点には十分に御認識をいただいておるかとも存じますが、せっかく本日こうした
機会を与えていただきましたので、この
機会に
忌憚のないところを
委員長のおことばにも甘えて申し上げてみたいと思うわけでございます。
ほかの
産業から見れば、あんなあぶない
悪条件の中で、
炭鉱労働者だって、ほかにまだいまの
日本の国の
雇用経済からいうと働くところがたくさんあるんだから、どこか転職してはどうか、こういうような声についても聞かないわけではございませんけれ
ども、しかし、
それなりに、きびしいところで働いていればいるほど、あるいはそういうところで
地域社会を構成していればいるほど、その山なりその
地域の
社会に対する愛着というものは人一倍強いわけでございます。そういう
炭鉱労働者の命を的にしての働いていこうじゃないかという
気持ちが、戦争中のことは別にいたしまして、戦後のあの
瓦れきの中から今日の
日本の
経済の復興をなし遂げた大きな原動力になっているんじゃないか、そういう自負は、先輩からも語り伝えられながら、今日なお
炭鉱労働者の中には脈々と波打っているわけでございまして、そういう
気持ちが、とにかくいろいろな風評がございます
石炭産業になおかつしがみついて一生懸命働いている、こういうことでございます。
今度の
石炭政策なんでございますが、私
ども、相当大きな国の税金なり、あるいは重油関税なり、こういう
意味で国の
お金を使うにしてはまだ徹底していないのじゃないのか、もう少し使い方を工夫すると
それなりに長期的に安定をしていくことができるのじゃないのか、
炭鉱労働者のある
程度の
気持ちについてもこたえることができるし、
産炭地地方自治体の崩壊ということについても食いとめていくことができるのじゃないか、こういう
立場で申し上げてみたいと思うわけでございますけれ
ども、私
どもがたびたび御
指摘を申し上げておりますけれ
ども、今日の
エネルギー革命の中における
石炭産業は、
それなりにむずかしい
条件が多々あろうと思いますが、そういう面については、
イギリスにしても、あるいはドイツにしても、フランスにしても、
イタリー等にしましても、重油との
競合の面でその国の大きな
悩みになっているという点もよく理解はしています。しかし、その国で産出をする唯一の
石炭資源というものについては、もっと積極的な面で国の
政策として取り入れて、撤退をするにしても、進むにしても、新鉱を開発するにしても、長期的なビジョンの上で、
計画性の上でなされている、こう思うわけです。
それに比べて、第一次
答申から第四次
答申ということで
中立側の
委員の方にもたいへん御迷惑をおかけしておりますけれ
ども、いろいろやってはいただいておりますが、その案ができたそのとたんに、いまその案を
実施しようということで
国会の中でいろいろ御論議を願っているさなかに、その案とは全くうらはらな形で、
労働者の首切りがなされたり、
閉山がなされたり、あるいは大
災害が発生して
労働者の命が失われてきている。こういうような
実情についても、今度はどうしても根本的に
メスを入れてやっていただきたい。そのためには、いままで触れてはおったんだけれ
ども政策の柱にどうしてもつくれなかった
流通機構の
一元化の問題であるとか、あるいは、三井であるとか三菱であるとか住友であるとか
北炭であるとかいうことでそれぞれ
鉱区をあっちこっちに飛び飛びに持っているわけです。したがって、一例で申し上げますと、今度大
災害を起こしたり、あるいは
縮小分離というやむなき
方向に至りました
茂尻炭鉱がございますが、あの
地区等につきましても、四本の
立て坑を打っている。
茂尻が一本、赤平が一本、
北炭の赤間が一本というようなことで、それぞれの
企業がその
鉱区にしがみついて
生産計画をつくるわけでありますから、どうしてもむだな
経費が要る。ばく大な
経費が要る。それらの
経費等についても、国の
政策におんぶしているという
矛盾が今日は出てきているわけでありますから、そういう面について、やはり大きな財源を使うのであれば、はっきりしてもらいたい。そのことによって、ずいぶん
メリットだって出てくるし、その山その山に個々にしがみつくということでなしに、
石炭産業全体の中で
労働者は働いてみようじゃないか。あの山に行ったら五年でつぶれるかもしれぬ、
災害が起こるかもしれぬということで働くのと、今度はこういう国の
政策になったんだから、かかや子供を養って十年や十五年はだいじょうぶなんだという
決意で働くのとは、ずいぶん違ってくるのじゃないかと思います。
そういう
意味で、
鉱区の統廃合、
流通の
一元化に触れてみたいと思います。それに触れると、
私企業で野放しにしてあって、それに対して国の税金を援助してやる、こういうやり方の
矛盾に当然気がつくのじゃないでしょうか。こんなことは何回も何回も続いていくということはないはずですから、そういう面から思い切って
国有公社の
方向で
石炭産業を統一して、全体的な
需給計画や
長期計画やあるいは
開発計画等についても全国的なネットの中で国の施策と相まって強力に推進するということになれば、今日の
需要の中でもまだまだ
鉄鋼やガスにしても弱粘
結炭など
原料炭を
中心に必要でありますし、
発電所にしても、
エネルギーの全体的な
需要が増大しているわけですから、
石炭の
エネルギーはもう要らない、こういうことにはならぬのじゃないか。あるいはまた、
国際価格との
競合の問題についても、
それなりの
努力によってそうした負担がある
程度解消していくということの長期的な展望の上に立って描いていくことができるのではないだろうかと思います。
それから今日最も大きな
悩みになっております、
炭鉱労働者の
平均年齢が四十歳をこえている。若手の
労働者がなかなか
石炭産業に魅力を持たないで入ってこない。国の
お金を使うのは、
葬式代ということになれば別ですけれ
ども、そうではなしに、少しでも
産業の
発展のために役立てようということでお使いになる金であるならば、そういう面についても
メスを入れていかなければならぬのじゃないか。魅力ある
炭鉱、それに基づく
地域経済の
発展、こういうことをひとつぜひお
考えおきをいただきたい。こういうことで、
答申をなされました
鉱業審議会や、あるいはその後の
政府筋に対しても、こういう点について御
指摘を申し上げたのですが、やはり依然として今度の
石炭政策という面では、そういう根本的な面に触れていないわけであります。その端的ないい例が、いろいろな
国会の
質疑を通じて、
佐藤総理大臣のほうから、やはりこの
政策を通しても二年間のうちにはまた手直しを必要とする時期が来るでしょうという言明になって端的にあらわれているのじゃないか。そうなると、毎日毎日命を的に働いております私
どもの生活の基盤なり、あるいはそれをもって構成しております
産炭地地方経済、
地域社会というものは、根本的に不安が一掃されたということにはならない。毎日また同じ繰り返しで、十一万人の首を切ったときと同じように、一生懸命
石炭産業で働こうと思っても、毎日毎日が不安だ。
いい例が、
保安の問題については、人道上許されないことだ、
経営者もしっかりやりなさい、こういうふうに言われておるのですけれ
ども、
私企業にゆだねておいて
監督官庁の監督するこういう組織の中では、依然として
茂尻の大
災害や、あるいは歌志内におけるような、私
どもから見ますと、まだ
原因の
究明が明らかになっていないときにかようなことを申し上げるのは失礼かもしれませんし、問題を起こすかもしれませんが、やはり、私
どもとしては、
増産増産という形の中で
保安がおろそかになっている、人為的な
災害の面がきわめて濃厚である、こういう
立場からいま独自に
究明をしておりますが、依然として
あとを絶たない。だから、
経営者の方も一生懸命今度の
石炭政策ではやっていこう、こういうお
考えについては
労働者とあまり変わりはないと、こう思っています。しかし、実際に大
災害が起きますと、
経営者の方のほうがよく御承知だと思いますけれ
ども、全国の
炭鉱の
労働者が百人、二百人というように不安動揺して
退職届けを出してきている。これは今日の偽らない
実情でございます。したがって、
労働者の不足というのが今日盛んに叫ばれております。まさに
石炭産業はそういうところに来ております。へたをすると、
労務倒産をする。金や財産があっても、働いてくれる者がいなくてはその
産業というのは壊滅をしなきゃならぬ。こういうような危険なところへ来ているにもかかわらず、なおかつ
災害を防いでいくことができない。
イギリスの
燃料省の長官でございますか、
国有化をしてたった
一つの利点というのは、いまここですぐ言えることは、
人命を尊重して
災害をなくしたことだ、こういうふうに言われているような点から見てみましても、やはり、今日の
石炭産業というのは、
私企業だけにゆだねるのではなしに、
メリットの
面等もひっくるめて、
人命尊重の面から
考えてみても、大きく統合して
公社で国が
責任を持って、その中で
労働者にもしっかり働いてもらう。
上級職員についても、身命を賭して
保安等を確保する、こういう気風と、それに基づく意欲が結びついて、はじめていろいろな
意味で
お金を出していただいた国に
ほんとうに報いる
体制ができるのじゃないか、こんなふうに思ったりしているところでございます。
労働者の泣き言ばかり申し上げているわけでございますけれ
ども、やはり依然として
労働者をどうつなぎとめておいて
生産を上げたらいいのだろうかというのは、
労使を問わず今日の重大な
課題になっていると思います。こういう面について、
政策では解消されていません。
一つのいい例が、
賃金に対する
不満が非常に強いものが
組合にはございます。ところが、ほかの
産業でいま非常に力が足らないものですから、
カラー写真の住宅、
風呂つきの
募集要領を持って
炭鉱の中にも入り込んできております。そういう面で、今度の
賃金の場合にも、
経営者等の御
努力や
関係当局の御
努力によって、一応一二%という数字で四千円見当の
賃金は上げていただきました。しかし、ほかの
産業の相場に比べますと、二千円から三千円依然として低い。
鉄鋼産業の
一つの例をとりましても、約二万円近いほど月収が離れてきている。開きはますます他
産業と比べて大きくなるばかりで、しかし、
労働者の面からいうとほとんどは足りない、
石炭はある
程度やはり出さなければいけない、こういう
意味で、非常にきつくなってきている。体力的に、四十歳を過ぎて
先山をやるというようなことになりますと、四十七、八歳が働き盛りだ、こういうようなことで、ますますむずかしい面が内部的には大きな
原因になっております。
それからいま
一つは、やはり
総合エネルギーの中における
石炭の位置というものについてはっきりどうもきまっていない。私
どもは、五千万トンはどうしても必要なんじゃないでしょうか、ぜひ
お願いをしたいということでございましたけれ
ども、やはり三千五百万
程度、しかも
原料炭が
中心だ。いや、掘れるならうんと掘って四千万トンもこだわりませんよ、こういう
政府筋の答弁はございましたけれ
ども、金の裏打ちというものは五千万トンにはなっていないわけでございます。
したがいまして、そういう面から、いろいろいま申し上げましたような
矛盾についての解消というものができなくて、私
どもとしては
石炭産業にしがみついて一生懸命うんと
努力をして
期待にこたえたいという
気持ちがあっても、
石炭政策あるいはそれを取り巻いておるいろいろな
悪条件等によって、なかなかそういう
意味で満足をして安心して働かせるということにはなっていません。どうか、こういう点についても今後の
課題として諸
先生方のいままでより一そうひとつお力添えを
お願いをしたいものだと思います。
悪口ばかり申し上げておるわけではございませんので、たとえば今度
政策のできる前の
杵島炭鉱の
閉山なり、あるいはまた
明治鉱業の
企業倒産、これはたいへんなことでございます、受けとめる私
どものほうとしましては。あるいは、
茂尻の
縮小分離、こういうことで多数の仲間がそれぞれ
ちりぢりばらばらになっておる、こういうことでございますが、いままで
大正炭鉱の例なんかにありますように、
企業が赤字を出して倒産してしまうわけでございますから、二十年三十年勤めた人の
退職金が一銭も渡らぬ、これは何とかしてもらわなければいかぬ、こういうことで国のほうにいろいろ
お願いをしたのですが、今回の場合、そういう面では御
配慮をいただいて、若干
金額面では
不満はございますけれ
ども、一〇〇%ぐらい今度の
政策の中で見てやっていいのではないか、こういう御
配慮をいただいたことについては、山の
閉山大会等で私
ども組合員と話し合ってまいりましたのですが、ありがたく思っておる次第でございます。
いろいろまだ申し上げたいことがございますが、
あとは御
質問等がございます予定のようでございますので、その中でお答えをするということで、たいへん飛び飛びではございましたけれ
ども、その一端を申し上げまして、今後のより一そうの御協力を
お願いしたいものだと思う次第でございます。失礼いたしました。