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1969-06-10 第61回国会 参議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十日(火曜日)    午前十時二十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         丸茂 重貞君     理 事                 青田源太郎君                 岩動 道行君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 田渕 哲也君     委 員                 伊藤 五郎君                 小林  章君                 中山 太郎君                 西田 信一君                 藤田 正明君                 矢野  登君                 野上  元君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   沢田 一精君        大蔵省主計局次        長        海堀 洋平君        通商産業省鉱山        石炭局石炭部長  長橋  尚君        通商産業省鉱山        保安局長     橋本 徳男君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    参考人        日本石炭協会会        長        大槻 文平君        日本炭鉱労働組        合中央執行委員        長        山本 忠義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日はまず、参考人方々の御意見を承ることといたします。  御出席をいただきました参考人は、日本石炭協会会長大槻文平君及び日本炭鉱労働組合中央執行委員長山本忠義君でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、たいへん御多忙のところをまげて本委員会のために御出席を賜わりまして、ほんとうにありがとうございます。参考人各位から承りまする御意見は、当委員会が今後審査をやってまいりまする際にたいへん参考になると思いますので、ありがたい次第でございます。つきましては、参考人各位におかれましては、何とぞ忌憚のない御意見を十分お寄せいただきたいことをお願いするものでございます。どうもほんとうにありがとうございます。  それでは、議事の順序について申し上げます。初めに、参考人各位から二十分程度の御意見をお述べいただきまして、その後、各委員から御質疑を申し上げるという順序で進めてまいりたいと存じます。  まず、大槻参考人から御意見をお述べ願いたいと存じます。
  3. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 日本石炭協会会長をいたしております大槻文平でございます。石炭問題に関しましては、かねてから本委員会皆さん方に格別の御配慮をいただいておりますが、きょうはまた新石炭対策につきまして私ども業界所信を申し上げる機会をいただきまして、心から感謝いたしておる次第でございます。  新対策に対する私ども業界所信につきましては、先般、私ども協会評議員会におきまして業界一致決議を行ないまして、関係方面にも表明いたしておる次第でございますので、以下その決議内容を申し述べたいと存じます。  新対策につきましては、昨年末の石炭鉱業審議会答申、本年初頭の閣議決定を経て、さきに四十四年度予算が成立し、いまや国会においてその実施を定める法律案が御審議中でございます。  石炭業界といたしましては、今日に至るまでの政府国会石炭鉱業審議会、その他関係方面石炭産業再建に対する長期間にわたる一方ならぬ御尽力と御支援に、衷心感謝敬意を表しておるものでございます。  現行の抜本対策実施後、日ならずして新対策お願いせざるを得ない事態に立ち至ったことにつきましては、客観情勢変化はあるにせよ、経営責任者として見通しの甘さ等、至らぬところもあり、深く責任を痛感いたしておるものであります。今回、政府国会の御腐心により、多額の国費を投入して破格の対策が確立されようとしているときにあたり、ここにわれわれの決意のほどを明らかにしたいと存じます。  新対策実施に移されました暁には、われわれは、企業が負うべき経営責任を十分に自覚し、石炭鉱業再建の前途に横たわる諸困難を渾身の努力を払って克服し、国の援助にこたえたいと存じます。これがため、各企業としては、労使関係の改善の上に立って一そうの経営刷新に努めることはもちろん、業界全体としても、共同共助体制のもとにできる限りの合理化メリットの追求に努めたいと存じます。  以上、国民の期待にこたえるべく、われわれの新たなる決意を表明した次第でありますが、今後とも一そうの御指導、御叱正をお願いいたします。
  4. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ありがとうございました。  それでは、次に、山本参考人お願いいたします。
  5. 山本忠義

    参考人山本忠義君) 炭労中央本部山本でございます。  一つ産業で、非常に長い間、諸先生方をはじめ、関係当局の御心労をわずらわした産業は、石炭産業をおいてほかにないだろうと、こう認識しております。それなりに、諸先生方をはじめ関係当局の御熱意についてはたいへん感謝を申し上げている次第ではございますけれども、毎日毎日が生命の危険にさらされて、しかも、坑外条件とは違いまして、坑内の暗いところであぶない自然条件を相手に働いております炭鉱労働者から見ますと、こうしてもらいたい、ああしてもらいたい、こういう要望はたくさんあるわけでございます。それぞれ機会を与えられますごとに私どものほうのそういう立場からの労働者の叫びというものについてはお訴えを申し上げてございますので、諸先生方におかれましてもそういう点には十分に御認識をいただいておるかとも存じますが、せっかく本日こうした機会を与えていただきましたので、この機会忌憚のないところを委員長のおことばにも甘えて申し上げてみたいと思うわけでございます。  ほかの産業から見れば、あんなあぶない悪条件の中で、炭鉱労働者だって、ほかにまだいまの日本の国の雇用経済からいうと働くところがたくさんあるんだから、どこか転職してはどうか、こういうような声についても聞かないわけではございませんけれども、しかし、それなりに、きびしいところで働いていればいるほど、あるいはそういうところで地域社会を構成していればいるほど、その山なりその地域社会に対する愛着というものは人一倍強いわけでございます。そういう炭鉱労働者の命を的にしての働いていこうじゃないかという気持ちが、戦争中のことは別にいたしまして、戦後のあの瓦れきの中から今日の日本経済の復興をなし遂げた大きな原動力になっているんじゃないか、そういう自負は、先輩からも語り伝えられながら、今日なお炭鉱労働者の中には脈々と波打っているわけでございまして、そういう気持ちが、とにかくいろいろな風評がございます石炭産業になおかつしがみついて一生懸命働いている、こういうことでございます。  今度の石炭政策なんでございますが、私ども、相当大きな国の税金なり、あるいは重油関税なり、こういう意味で国のお金を使うにしてはまだ徹底していないのじゃないのか、もう少し使い方を工夫するとそれなりに長期的に安定をしていくことができるのじゃないのか、炭鉱労働者のある程度気持ちについてもこたえることができるし、産炭地地方自治体の崩壊ということについても食いとめていくことができるのじゃないか、こういう立場で申し上げてみたいと思うわけでございますけれども、私どもがたびたび御指摘を申し上げておりますけれども、今日のエネルギー革命の中における石炭産業は、それなりにむずかしい条件が多々あろうと思いますが、そういう面については、イギリスにしても、あるいはドイツにしても、フランスにしても、イタリー等にしましても、重油との競合の面でその国の大きな悩みになっているという点もよく理解はしています。しかし、その国で産出をする唯一の石炭資源というものについては、もっと積極的な面で国の政策として取り入れて、撤退をするにしても、進むにしても、新鉱を開発するにしても、長期的なビジョンの上で、計画性の上でなされている、こう思うわけです。  それに比べて、第一次答申から第四次答申ということで中立側委員の方にもたいへん御迷惑をおかけしておりますけれども、いろいろやってはいただいておりますが、その案ができたそのとたんに、いまその案を実施しようということで国会の中でいろいろ御論議を願っているさなかに、その案とは全くうらはらな形で、労働者の首切りがなされたり、閉山がなされたり、あるいは大災害が発生して労働者の命が失われてきている。こういうような実情についても、今度はどうしても根本的にメスを入れてやっていただきたい。そのためには、いままで触れてはおったんだけれども政策の柱にどうしてもつくれなかった流通機構一元化の問題であるとか、あるいは、三井であるとか三菱であるとか住友であるとか北炭であるとかいうことでそれぞれ鉱区をあっちこっちに飛び飛びに持っているわけです。したがって、一例で申し上げますと、今度大災害を起こしたり、あるいは縮小分離というやむなき方向に至りました茂尻炭鉱がございますが、あの地区等につきましても、四本の立て坑を打っている。茂尻が一本、赤平が一本、北炭の赤間が一本というようなことで、それぞれの企業がその鉱区にしがみついて生産計画をつくるわけでありますから、どうしてもむだな経費が要る。ばく大な経費が要る。それらの経費等についても、国の政策におんぶしているという矛盾が今日は出てきているわけでありますから、そういう面について、やはり大きな財源を使うのであれば、はっきりしてもらいたい。そのことによって、ずいぶんメリットだって出てくるし、その山その山に個々にしがみつくということでなしに、石炭産業全体の中で労働者は働いてみようじゃないか。あの山に行ったら五年でつぶれるかもしれぬ、災害が起こるかもしれぬということで働くのと、今度はこういう国の政策になったんだから、かかや子供を養って十年や十五年はだいじょうぶなんだという決意で働くのとは、ずいぶん違ってくるのじゃないかと思います。  そういう意味で、鉱区の統廃合、流通一元化に触れてみたいと思います。それに触れると、私企業で野放しにしてあって、それに対して国の税金を援助してやる、こういうやり方の矛盾に当然気がつくのじゃないでしょうか。こんなことは何回も何回も続いていくということはないはずですから、そういう面から思い切って国有公社方向石炭産業を統一して、全体的な需給計画長期計画やあるいは開発計画等についても全国的なネットの中で国の施策と相まって強力に推進するということになれば、今日の需要の中でもまだまだ鉄鋼やガスにしても弱粘結炭など原料炭中心に必要でありますし、発電所にしても、 エネルギーの全体的な需要が増大しているわけですから、石炭エネルギーはもう要らない、こういうことにはならぬのじゃないか。あるいはまた、国際価格との競合の問題についても、それなり努力によってそうした負担がある程度解消していくということの長期的な展望の上に立って描いていくことができるのではないだろうかと思います。  それから今日最も大きな悩みになっております、炭鉱労働者平均年齢が四十歳をこえている。若手の労働者がなかなか石炭産業に魅力を持たないで入ってこない。国のお金を使うのは、葬式代ということになれば別ですけれども、そうではなしに、少しでも産業発展のために役立てようということでお使いになる金であるならば、そういう面についてもメスを入れていかなければならぬのじゃないか。魅力ある炭鉱、それに基づく地域経済発展、こういうことをひとつぜひお考えおきをいただきたい。こういうことで、答申をなされました鉱業審議会や、あるいはその後の政府筋に対しても、こういう点について御指摘を申し上げたのですが、やはり依然として今度の石炭政策という面では、そういう根本的な面に触れていないわけであります。その端的ないい例が、いろいろな国会質疑を通じて、佐藤総理大臣のほうから、やはりこの政策を通しても二年間のうちにはまた手直しを必要とする時期が来るでしょうという言明になって端的にあらわれているのじゃないか。そうなると、毎日毎日命を的に働いております私どもの生活の基盤なり、あるいはそれをもって構成しております産炭地地方経済地域社会というものは、根本的に不安が一掃されたということにはならない。毎日また同じ繰り返しで、十一万人の首を切ったときと同じように、一生懸命石炭産業で働こうと思っても、毎日毎日が不安だ。  いい例が、保安の問題については、人道上許されないことだ、経営者もしっかりやりなさい、こういうふうに言われておるのですけれども私企業にゆだねておいて監督官庁の監督するこういう組織の中では、依然として茂尻の大災害や、あるいは歌志内におけるような、私どもから見ますと、まだ原因究明が明らかになっていないときにかようなことを申し上げるのは失礼かもしれませんし、問題を起こすかもしれませんが、やはり、私どもとしては、増産増産という形の中で保安がおろそかになっている、人為的な災害の面がきわめて濃厚である、こういう立場からいま独自に究明をしておりますが、依然としてあとを絶たない。だから、経営者の方も一生懸命今度の石炭政策ではやっていこう、こういうお考えについては労働者とあまり変わりはないと、こう思っています。しかし、実際に大災害が起きますと、経営者の方のほうがよく御承知だと思いますけれども、全国の炭鉱労働者が百人、二百人というように不安動揺して退職届けを出してきている。これは今日の偽らない実情でございます。したがって、労働者の不足というのが今日盛んに叫ばれております。まさに石炭産業はそういうところに来ております。へたをすると、労務倒産をする。金や財産があっても、働いてくれる者がいなくてはその産業というのは壊滅をしなきゃならぬ。こういうような危険なところへ来ているにもかかわらず、なおかつ災害を防いでいくことができない。イギリス燃料省の長官でございますか、国有化をしてたった一つの利点というのは、いまここですぐ言えることは、人命を尊重して災害をなくしたことだ、こういうふうに言われているような点から見てみましても、やはり、今日の石炭産業というのは、私企業だけにゆだねるのではなしに、メリット面等もひっくるめて、人命尊重の面から考えてみても、大きく統合して公社で国が責任を持って、その中で労働者にもしっかり働いてもらう。上級職員についても、身命を賭して保安等を確保する、こういう気風と、それに基づく意欲が結びついて、はじめていろいろな意味お金を出していただいた国にほんとうに報いる体制ができるのじゃないか、こんなふうに思ったりしているところでございます。  労働者の泣き言ばかり申し上げているわけでございますけれども、やはり依然として労働者をどうつなぎとめておいて生産を上げたらいいのだろうかというのは、労使を問わず今日の重大な課題になっていると思います。こういう面について、政策では解消されていません。一つのいい例が、賃金に対する不満が非常に強いものが組合にはございます。ところが、ほかの産業でいま非常に力が足らないものですから、カラー写真の住宅、風呂つき募集要領を持って炭鉱の中にも入り込んできております。そういう面で、今度の賃金の場合にも、経営者等の御努力関係当局の御努力によって、一応一二%という数字で四千円見当の賃金は上げていただきました。しかし、ほかの産業の相場に比べますと、二千円から三千円依然として低い。鉄鋼産業一つの例をとりましても、約二万円近いほど月収が離れてきている。開きはますます他産業と比べて大きくなるばかりで、しかし、労働者の面からいうとほとんどは足りない、石炭はある程度やはり出さなければいけない、こういう意味で、非常にきつくなってきている。体力的に、四十歳を過ぎて先山をやるというようなことになりますと、四十七、八歳が働き盛りだ、こういうようなことで、ますますむずかしい面が内部的には大きな原因になっております。  それからいま一つは、やはり総合エネルギーの中における石炭の位置というものについてはっきりどうもきまっていない。私どもは、五千万トンはどうしても必要なんじゃないでしょうか、ぜひお願いをしたいということでございましたけれども、やはり三千五百万程度、しかも原料炭中心だ。いや、掘れるならうんと掘って四千万トンもこだわりませんよ、こういう政府筋の答弁はございましたけれども、金の裏打ちというものは五千万トンにはなっていないわけでございます。  したがいまして、そういう面から、いろいろいま申し上げましたような矛盾についての解消というものができなくて、私どもとしては石炭産業にしがみついて一生懸命うんと努力をして期待にこたえたいという気持ちがあっても、石炭政策あるいはそれを取り巻いておるいろいろな悪条件等によって、なかなかそういう意味で満足をして安心して働かせるということにはなっていません。どうか、こういう点についても今後の課題として諸先生方のいままでより一そうひとつお力添えをお願いをしたいものだと思います。  悪口ばかり申し上げておるわけではございませんので、たとえば今度政策のできる前の杵島炭鉱閉山なり、あるいはまた明治鉱業企業倒産、これはたいへんなことでございます、受けとめる私どものほうとしましては。あるいは、茂尻縮小分離、こういうことで多数の仲間がそれぞれちりぢりばらばらになっておる、こういうことでございますが、いままで大正炭鉱の例なんかにありますように、企業が赤字を出して倒産してしまうわけでございますから、二十年三十年勤めた人の退職金が一銭も渡らぬ、これは何とかしてもらわなければいかぬ、こういうことで国のほうにいろいろお願いをしたのですが、今回の場合、そういう面では御配慮をいただいて、若干金額面では不満はございますけれども、一〇〇%ぐらい今度の政策の中で見てやっていいのではないか、こういう御配慮をいただいたことについては、山の閉山大会等で私ども組合員と話し合ってまいりましたのですが、ありがたく思っておる次第でございます。   いろいろまだ申し上げたいことがございますが、あとは御質問等がございます予定のようでございますので、その中でお答えをするということで、たいへん飛び飛びではございましたけれども、その一端を申し上げまして、今後のより一そうの御協力をお願いしたいものだと思う次第でございます。失礼いたしました。
  6. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ありがとうございました。  それでは、ただいまの参考人の御意見に対し、御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  7. 岩動道行

    岩動道行君 本日はお二人の参考人の方においでいただき、まことに感謝にたえませんが、実は私は石炭鉱業審議会会長である植村さんにもぜひ御出席をいただいて総合的な立場からの御意見も承りたいと、かように思っておりましたところが、あいにく海外への御旅行で御出席をいただけなかったので、したがって、実は審議会会長に対する質問中心考えておりましたが、それは省略さしていただきまして、石炭協会とそれから組合の方に伺いたいと思います。  まず、私は、日本エネルギー供給源としては、昭和三十年ごろにおきましては石炭が約五割という非常に大きな役割りを果たし、戦後の日本経済再建のためには労使ともに非常に大きな役割りを果たしてこられた、これに対しては深く敬意を払うものでございますが、四十五年度になりますると、石炭エネルギー供給源はすでにもう二一%程度、そうして石油が六七%というふうに、非常に大きな変化が短期間の間に行なわれております。さらに、昭和六十年を一つのめどといたしまするならば、石炭は九・五%、約一〇%、そうして石油関係のほうになりますると約七五%、日本エネルギー供給源の大部分が油のほうに移ってしまう。石炭はそのような中において重要な原料炭としての役割りを果たしていかなければならないのでございますので、今後とも石炭供給につきましては原料炭という面から一そう関係各位またわれわれ国会立場からも重視してまいらなければならない、かように考えておるわけでございます。したがいまして、今回の石炭対策というものはきわめて大きな意味もあり、また、植村さんの非常な御努力というものが実ったものと、かように考えておるわけでございます。そうして、日ごろ鉱山の中において先山で一刻一刻が危険をはらんだ仕事をしておられる炭鉱労務者の方に対しては、心から感謝を申し上げ、また、われわれとしても、災害が絶無になるように行政官庁に一そうの努力を、あるいは経営者にもお願いを申し上げ、さらに、山に入っておる労務者の方御自身もまた十分にその点についての御注意も必要であろうと、かように考える次第でございます。  ところで、今回の制度の中に特別交付金というものがあるわけでございますけれども、これは企業ぐるみ閉山というような従来なかった新しい制度でございます。そこで、賃金債務につきましては支払い不能額の七五%、金融債務については五〇%、その他の一般債務については五〇%、こういうような基準が一つ設けられたわけでございまするが、賃金が七五%ということは、これは経営不振の場合にはやむを得ないとは思いまするが、このように危険の中で働いておられる限り、もっとその割合をふやしてあげるようなことも考えなければいけないと、これは企業者努力も必要ではないだろうか、かように考えておるわけでございまするが、まず現在の賃金支払いの具体的な実態というものがどういうことになっているか、それを簡単にまず教えていただきたいと思います。
  8. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 賃金支払い状況でございますが、現在遅配欠配をやっているようなところはないのではないかと思っております。少なくとも私ども協会に属しておる炭鉱においては遅配欠配というものはないと存じております。
  9. 岩動道行

    岩動道行君 現状はそうでございまするが、たとえば閉山をするという場合に、その賃金債務が残れば、やはり二五%は切られてしまうと、こういう結果になろうかと思いまするので、この賃金の二五%が残らないように、そういうような閉山計画においても御留意が必要ではないだろうかと、かようにも考えられるのでございまするが、この点については、労使がお互いに話し合いをして閉山をする場合にはどのような態度でおられるのか、伺いたいと思います。
  10. 大槻文平

    参考人大槻文平君) どうも、ほかの会社のことを一々存じておりませんけれども、私どもは過去におきまして十四鉱業所というものを閉鎖してまいったのでありますけれども、そういう非常に多くの炭鉱従業員——現在従業員が五千人ちょっとだけでございますが、一番おりましたときは五万人おったのでございますから、そういう整理をやってまいりましたけれども、私どもといたしましては、賃金をカットしたこともなければ、また、退職手当も全然払わぬということじゃなく、むしろプラス・アルファをして支払ったというのが実情でございます。
  11. 岩動道行

    岩動道行君 今後もぜひそのような方法で危険な炭鉱従業員に対し、ましては十分なる御配慮お願いしたいと、かように考えて、今度の特別措置で七五%だからそれでいいのだ、こういう安易なお気持ちでなく対処していただきたい、かように考えるわけでございます。  それから金融債務はさておきまして、一般債務につきましては、これはどうも従来一〇%程度、わずかなものしか閉山の場合には見られていない。鉱山に物資を納入しておりまする中小企業者というものが非常な痛い目にあってきているのが現在までの実情ではないだろうかと、かように考えられるわけでございます。特に、坑木でありますとか、火薬でありますとか、そういったような山に絶対必要な必需物資、一日でも火薬が切れまするならば、これはもうもはや産炭ができない、こういう意味におきまして、私は一つの例として火薬の問題を取り上げてみたいと存じまするが、火薬につきましては、今回は五〇%という最低限度が一応確保されるわけでございまするが、実は、これは、閉山になるかもしれぬ、山がしまるかもしれぬ、そうすると五割損してしまう、そういうような気持ちを持ちながらも、長いつき合い、そうしてまたこれに対して火薬を納めなければ山は直ちにつぶれてしまう、こういうような二律相反する立場から、火薬業者は泣く泣くと言ってもいいような気持ちで納入をしておる。しかも、火薬は、法律によって大量に貯蔵することができない。一定期間一定量しか山の中に持っていけない。こういうような状態に置かれておる非常に法律上の規制を受けている物資でございます。したがって、その日その日納めればよろしいということにあるいはなるかもしれませんが、ある程度まとめて法律上許された最高限度のところまで納めるということになりまするが、その間に労使の間で閉山がきまってしまうということになると、みすみす五〇%を損してしまう、こういうような状態に置かれてしまう可能性が多分にあるわけでございます。したがって、これらにつきましても、できれば長期の手形で支払いをするというようなことでなくて、現金払い、こういうような方法を経営者としておとりにならないと、火薬業者はまいってしまう。こういうような実態も出てまいろうかと思うわけでございまするが、この辺のことにつきまして、経営者としては十分に考えていただかないといけない、かように考えるわけでございまするが、その点に対して今回の特別措置を契機としてどのような話し合いをしておられるか、あるいはどのような対策閉山される対策を講じておられるか、その辺のところを伺いたいと思います。
  12. 大槻文平

    参考人大槻文平君) まことにごもっともなお話でございまして、坑木なり火薬は炭鉱の食物でございますから、これがなければ炭鉱の経営ができないわけでございますので、現金の取引ということが一番望ましいことだと思います。しかし、その山その山の事情、その会社の事情もございまして、やはり長期の手形というようなことでやっておったところもあったろうかと思いますけれども、はなはだてまえだけのことを申しまして恐縮でございますけれども、私の会社では、実は手形取引というものをやっていないのでございます。原則として現金の取引をやっている、こういう事情なんでございますが、何しろ、今度の特別閉山ということは、企業ぐるみの会社の解散でございますので、異常な事例と存じます。残りました炭鉱会社というものはかなり力のある会社ということになると思いますし、そうしてまた、これから先、いまお話の出ましたような非常に不安感のある取引ということでは、相手方もなかなか乗ってこないようなことになると思いまするので、これから先さらに不安感を除くような措置を、協会としてよく話し合ってみたいというふうに考えております。
  13. 岩動道行

    岩動道行君 ぜひ今後は、そういう納入業者の団体と協会と十分にお話しになって、そうして、金融機関あるいは電力会社、これは形が大きいものですから、ある程度の犠牲や負担にたえられる可能性があるかと存じますが、しかし、火薬業者あるいは坑木その他の日用品等、これらはいわゆる中小企業者が多いわけでございまするので、ぜひそのようなお話し合いをして、そうして、閉山をする場合には、事前にお話し合いもできればしながら、その損害をできるだけ最小限度に食いとめるようなお話し合いをぜひお願いを申し上げたいと、かように思うので、特別なる私の希望をこの場で申し上げておきたいと思います。  さらに、続きまして申し上げたいと思いますが、これは新聞紙上で私は知った限りの問題でございまするので、確たる証拠もないわけでございまするが、今回の特別措置を講ずることによって、石炭とその他の事業とを兼営しておられると申しますか、その他の事業もやって、そうしてあるいはそれによって石炭の赤字を埋めているというような会社もございましょうし、いろいろな形態で石炭だけの専業でない会社があるわけでございまするが、これが石炭部門だけを分離するというようなことが新聞紙上に一、二社伝えられておるわけでございまするが、これは今回の特別措置を契機としておやりになったのかどうか、その辺の動機も実際よくわからないのでございます。しかしながら、石炭だけを分離するということは、一そう経営が石炭だけでは困難であるということからこの特別措置もむしろ講じられたのであって、それと逆の方向に行くということは一体どういうことであるのか、そこら辺の真因も私は伺いたいと思いまするし、と同時に、あるいはこれは悪推量かもしれませんので、もしも間違っておりましたならばお許しをいただきたいと思いまするが、石炭だけを切り離すことによって、いろいろな助成を政府から受ける、事業団から受ける。それはそれなりに特別の経理をされるのでありましてけっこうだとは存じまするが、会社を分けてしまう場合に、優良資産は本体のほうに残して、不良資産などを石炭の会社のほうに回してしまう、あるいは、水増しの資産を計上して、石炭会社だけは石炭でやっていくと、こういったようなことがもしございまするならば、これは今回の特別措置を乱用すると申しまするか、うまく利用すると申しまするか、そういう印象もぬぐい切れない面が出てこようかと、かようにも感じられるわけでございます。せっかく大事な国税を使って行ないます今回の特別措置でございまするから、ゆめゆめそのようなことがあってはならないわけでございまして、われわれ国民の税金でまかなうこの特別会計の特別措置というものを十分腹の中に入れて、そうして経営を健全化していただく。したがって、会社を分離するという場合におきましても、これは会社の立場からそのような世上疑惑を招かないような措置でおやりをいただかなければならない。われわれはこれを監視しなければならないというような気持ちで実は新聞記事を読んだわけでございまするが、この辺のことについてのお考えを承っておきたいと思うわけであります。
  14. 大槻文平

    参考人大槻文平君) ただいま岩動先生のお話でございますが、それは端的に申しまして私の会社である三菱鉱業の話が主になっているのじゃないかと思いますので、お話を申し上げます。  今回の特別措置を契機としまして、石炭生産部門を分離しようということを決心しました理由について一、二申し上げたいと思います。  まず、第一に、今回の新石炭政策におきましては、経理上石炭部門としからざるものとの経理区分をはっきりさせると、そしてそれに対してはもちろん行政官庁として相当に規制をしながらやっていくということでございますが、もし経理をそういうふうに二分するということであるならば、むしろ会社を別会社にしたほうが一番すっきりするのではないかということが第一点であります。  それから第二点といたしましては、石炭生産部門は、いままで私どもの会社としては赤字を続けておりましたけれども、今回の特別措置と申しますかによりまして、ここ少なくとも数年は十分に黒字体制でやっていけるという見通しがついたということが一つであります。それから分離することによりまして従業員関係の自立意識というものを高揚することができる。これは従来の第二会社というのは縮小閉山を前提とする場合が多かったのでありますけれども、そういう会社においてもかなり従業員の士気高揚ということが現実にあらわれているように存じます。私どもの今回の分離は、第二会社——縮小閉山という形ではないのでありまして、あくまでも石炭企業というものを健全に育てていきたいという見地からやっていることなんでありまして、分離することによって従業員の意識をより一そう向上することができるのではないかということがそのねらいでございます。  それから財産関係の話がございましたが、私どもといたしましては、一〇〇%の第二会社をつくるのでありまして、その第二会社の経営というものにつきましては、親会社としての責任が当然あるわけでございます。したがいまして、第二会社として発足する石炭生産部門に関しましては、従来政府から見てもらっておりますところの財政投融資とそれから近代化資金、そういったものだけを債務としてつけてある。それからそれに見合う財産を渡してやるということにいたしたいと思っているわけであります。したがいまして、たとえば私の会社でございますと、福岡県地区に相当な鉱害というものが残っておりますが、この鉱害の復旧費用というものは全部親会社で見る。それからまた、未払い退手と申しまして、退職した方の預金として預かっておる退職手当ですね、それも親会社が見る。あるいは、第二会社をつくることによりまして従来相当金額を費やしておりました本社費というものを軽減することができるというようなことで、第二会社そのものが非常に身の軽い、借金のない会社ということでスタートいたしますので、今回の国家の保護とあわせまして十二分に黒字経営ができるという見通しがついておるということが主眼であります。さらに申し上げますならば、最近、金融機関が、炭鉱を経営しておるということ、そのことによりまして金を貸すことを渋っております。したがいまして、これから先炭鉱会社というものが金融機関から金を借り入れるということはかなり困難になってくるのではないかというふうに私は考えておるのであります。したがいまして、親会社として残る企業を、ここ三、四年炭鉱が第二会社が相当黒字でやっていけるという間にできる限り奮闘して力強いものに親会社というものを育てておきたい。そして、親会社が金を借りて子会社に又貸しと言うとおかしいですが、貸してあげる、融通するというような方法をとらなければ、なかなか困難になってくるのではないかというようなことをかれこれ考えまして、分離ということに踏み切った次第でございまして、私ども、もとより炭鉱から逃げていこうという気もありません。また、炭鉱をつぶすために第二会社にするというそういうひきょうな考え方ではないということを御了解願いたいと思います。
  15. 岩動道行

    岩動道行君 御趣旨はわかりました。いろいろな法律の規制から申しましても、そのような不当な経理分離というものは、商法上あるいは証券取引法上も許されないだろうと思いますので、もちろんいまおっしゃったような線で進められるだろうと思いますが、特に大槻さんは三菱鉱業の関係でございまするので、しっかりした会社であることはもう間違いない。その他の会社についても、やはり同様な基調をもってやっていただく。これは協会長として国会で問題になった点を協会で十分にお話しになりまして、そのようなことのないように重ねてお願いを申し上げる次第でございます。  それで、先ほど賃金の問題についてお話を承って、大体問題ないというふうに承ったのでございまするが、山本さんもそれを特に御否定にならないというような点で、まずよろしいと了解をいたしたいと存じまするが、この点が一つと、それから山本さんは、先ほど、炭鉱国有化というようなことを申された。これは社会党さんあたりでもそのような線で石炭対策というものを考えておられるわけでございまするが、実は、私は、何年か前にイギリス炭鉱視察をいたしました。しかも、先山のところまで行っていろいろと話も聞いたり、炭鉱労務者方々ともお話し合いをしてみたのでありまするが、かねてから炭鉱国有化によってイギリスはむしろ生産能率が落ちた。もちろん小さな山を閉山していったということによって全体的には上がっておりまするが、やはり国家公務員的な立場になると、どうしてもそこら辺で何か生産性が上がらないといいまするか、当時、イギリスでは、アブセンティーイズム、つまり一割から二割近い人が働く日にも休んでいるというような状況がございました。これは、社会保障が発達をして、一定の限度までの賃金をもらえば、義務教育費から何から全部いいと、あとはもうよけいかせいで税金を払うよりは家に帰ってテレビでも見てサッカーの試合とかその他のものを見ておったほうがいいんだと、こういったような安易な気持ち労務者の間に流れておったのが当時の状況でございました。今日はどうであるか私は存じませんけれども、何年か前にはそのような状況でありましたので、私どもは、企業意欲と、そして労務者が十分に働けば働いただけの報酬がもらえるようなそういうふうなむしろ企業としての石炭事業のほうがよいのではないか、かような立場から政府与党が意見が一致して今回の措置をとったんだと、かように了承いたしておりまするが、この点について、特に御意見を承る時間もないと思いますが、私ども立場というものをこの際申し上げておきたいと思うわけであります。  以上で終わります。
  16. 山本忠義

    参考人山本忠義君) 最初の賃金のことでございますが、大槻会長の所属する会社は確かにそうだと思います。しかし、全体で見ますと、たとえば雄別のように、これは当局のほうがよくわかっていると思いますけれども、毎月毎月の賃金について政府筋のほうへ金融をお願いしないとなかなか手当てができないというふうになっております。これは中小炭鉱その他をひっくるめてで、一がいに三菱を例にした形でいまの石炭産業は見れないと思っております。いま、遅欠配でも起こしましたら労働者はやめていきますから、たいへんなことになろうということで経営者も自覚して努力している点は認めますけれども、必ずしも当局のお世話にならなくてもいいという炭鉱ばかりじゃない、むしろそっちのほうが多いんじゃないかというふうに思っております。  それから国有のことでございますが、反論するつもりはございません。しかし、こんなふうに考えています。炭鉱実情をよく御承知でないとは申し上げませんが、あの中でピックで掘ったり、カッターで掘ったり、いろいろ作業態様はありますが、坑内の自然条件のもとで、仕事をなまけますと命を失います。だから、絶えずとらなければならない。石炭をとらないで残しますと、そこから自然発火が起こる。こういう自然条件に置かれるので、どうしても炭鉱の場合にはサボることができません。サボってやろうというようなことで組合の指令でも出せば別でございますが、そういう手段に使えば別でございますが、日常の問題についてはそんなことができないような実情になっておりますから、ずいぶん私どももストライキをやりましたけれども、そういうような坑内を破壊するような実情についてはよくわかっておりますので、そういうことはやりません。したがって、何か親方日の丸で公務員になれば賃金は保証されるんだからかせがないんじゃないか、能率が落ちるんじゃないか、これはちょっといまの炭鉱実情なりあるいはまた労働者の意識なりという点からお考えおきを願えば、そんなことは絶対ない、こういうことははっきり申し上げていいと思います。  それから御研究はもちろんなさっておられると思いますけれども賃金の仕組みなり何なりについて、戦争中といえども満州その他ではございましたけれども、いろいろな仕組み等によって公社になっても十分に労働意欲を刺激していけるような均等配分がむしろできる、こう思っております。おまえらのかせいだ金はわれわれは利潤としてこういうふうに使うんだということで——勝手なことをやるから争議が起こるのでございまして、納得ずくで、一トン掘ったらこういう賃金になっていますよ、こういうふうに体系をよく変えて労働者の納得ずくでやれば、もっと労働意欲を刺激してやれる面だって、合理化、首切りばかり言わなくてもできますよ。こういうことは再三経営者を相手にしてやっておりますから、一がいに国有化になったら働かないんじゃないかということには絶対ならないと、こう思っております。
  17. 横川正市

    ○横川正市君 きょうはお忙しいところを御苦労さまでございます。  二、三お聞きをいたしておきたいと思いますが、たとえば東京証券の第一部、第二部の石炭関係の株価の推移ですね、これを見ますと、現状は大幅に額面を割って取引がされている。私は、先ほど大槻さんの意見を聞きながらたいへん疑問に思ったわけなんですが、四十一年の七月に出された「抜本的安定対策」と、それから「今後の石炭対策はいかにあるべきか」という四十三年の十二月に出されたこの石炭対策とを、これを企業側でとらえてみて、それで結果からどういうことが企業経営として自信をもってやっていかれるのか。簡単に言えば、山に石炭があるから掘るわけです。採算が合うか合わないかが一つの焦点だろうと思いますけれども、山に石炭がなくなればもう当然閉山いたします。採算が合わなければ閉山をいたします。その時点までに資本の蓄積が行なわれる、あるいは、そのときとんとんであっても、諸経費、労賃、退職金、転換のための必要なもの、こういったものを一切ひっくるめて山の問題の最後が全く問題がなくてこの方針で済まされると、これはまあ一〇〇%完全な答申というふうに見られるわけですが、そうではなしに、実はこれからますます問題があるんだが、ここ当分の間、あるいは一、二年の間というふうに限定された間に、今度の答申が有効な形で動くだろう、こういうような判断をされているのか。これは石炭業界全体の立場に立ってこの答申というものの内容をどう評価されておるかをお聞きしたいと思うんです。同時に、実はいろいろ意見がありますけれども、一体石炭企業としているという立場でいま現状を経営者としてどう判断されておるのか。この二点をお聞かせをいただきたいと思います。
  18. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 新しい対策ができましてから御承知のように特別閉山をやった会社が三つ私ども協会に属しておるものでして、それからまた、先ほども話が出ました雄別のように縮小経営もしていくというところが出てきましたんですが、残ったものは十二社ということになるわけであります。十二社の炭鉱会社は、現状におきましては、相当な埋蔵炭量を持っておりますし、相当長期間いまの状態のままやれるという決意のもとに全力を尽くして合理化をはかりながらやっていこうと、こういう気持ちでございます。ただ、遠い将来どうなるかという問題につきましては、これはそういう遠い将来のことはやはりいろいろな諸条件がどう変化するかということについてはお互いになかなかわからぬことですから、そういうことは何とも言えませんけれども、少なくとも今度の対策によってはできる限り努力してやっていくという決心をしているわけです。  それからもう一つは、石炭というものをどういう気持ちでやっているかということでしたかな。
  19. 横川正市

    ○横川正市君 経営者として石炭企業を経営する立場で現状をどういうふうに見ておられるかという点です。
  20. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 要するに、私ども現在の経営者といたしましては、石炭鉱業というものはやはり私企業の形態でやっていくことが一番いいんじゃないかという考え方でおるわけです。ですから、それはいろいろ御議論があると思いますけれども、私どもといたしましては、あくまでも私企業の形でこの政策にのっかって全力を尽くしたい、こういう構えでおるわけであります。
  21. 横川正市

    ○横川正市君 実は、ちょっと矛盾を感ずるわけなんですが、私企業でやっていくことになお企業としての魅力を感じていられるということと、それから相当手厚いいろいろな援助体制というものがあり、そういう体制の中でもなおかつ将来の見通しについては長期計画が立たないという企業であるという、この二つの観点というのは、私どもから見ますと矛盾を感ずるわけなんです。もちろん至上命令で掘っておったときの石炭を違って、エネルギー革命の中で競争裏の中にある石炭というものを見た場合に、企業家の立場に立ってみて現状をどうお考えになりますかという点を、実は私どもはしろうとですから、わかりやすくその矛盾点を解明していただきたいというふうに思っているわけなんです。  それからもう一つは、非常に災害が多いわけですが、この災害対策についての企業者立場というのはどういう立場をとっておられるのか、これは全体の立場でひとつお聞かせいただきたいと思うんです。命の問題ですから、命の問題については、たとえば自動車の事故なんかは、最近は、一千万円とか二千万円とかというような補償金が払われることが当然だと、補償金についての新しい判例その他が出てきているわけです。ですから、一度事故を起こすと、個人はすでに公私ともに社会的に存在する価値を失うような過酷な条件というものが自動車事故なんかには出されてきていろわけですね。ところが、非常に災害の多い山での災害についての取り扱い、これはどうも凄惨とか悲惨とかということばで表現するほうが妥当で、経営者はそのことによって一体どういう社会的な責任というものを負っているのかはあまり明確になっておらないような気がするわけなんですが、災害についてどういうお考えを持っているか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  22. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 炭鉱会社が長期計画を持っていないということではないわけなんです。これは長期計画は各社それぞれみな持っております。そうして、相当長期のやつを立てながら、またそのときその年に訂正して実情に合わしていくということなんでありまして、長期計画がないというわけではありません。ただ、私企業であるのに多額の補助をもらっておるということは私企業でないじゃないかという議論になりますと、これはそういうことも言えるんじゃないかと思いますけれども、しかし、保護産業というかっこうで私企業ということもまた存立の意味があるのじゃないかというふうに考えているわけであります。  それから災害の問題に関しましては、これは私ども経営者としてはまことに申しわけないと思っておりますけれども、年々相当な人命を損傷しておるということはほんとうに申しわけないと思っております。しかし、災害の状況を見ますというと、私の記憶に間違いがなければ、数年前においては日本石炭協会におきましては三百人から四百人くらいの犠牲者を出しておりましたけれども、昨年度におきましては百四十人程度だったと記憶しております。そういうふうに死亡事故というものは非常に減少しておるということも言えると思います。しかし、いずれにいたしましても、年間百四十人以上の人命を損傷しておるということは、これは経営者としてまことに申しわけないところでございまして、したがって、日ごろから災害の防止、保安の確保ということにつきましては相当力を用いておるつもりでおります。したがって、まず第一に、私どもとしましては、経営者ほんとう災害防止に関する決意を新たにしまして、常に、施設の改善といいますか、環境の整備といいますか、そういうことに努力を払うと同時に、職員、従業員全体に対する保安教育の徹底ということをやらなければならぬという構えでもってやっておるわけでございます。ただ、日々が、あるいは一秒一秒が、大自然との闘争と言っていい仕事でございますので、予想外のことが起こることによって災害を引き起こすというようなこともあるわけなんでございますね。しかし、事業の性質がそういう性質でございますので、われわれとしましては、今後とも——今後ともではない、今後一そう万全の保安対策というものをやっていかなければいけないのじゃないかというふうに考えております。
  23. 横川正市

    ○横川正市君 これは株価の面からちょっと企業の内容を聞きたいわけなんですが、ここ数年一向に改善をされないで、下落の状態をたどっているわけです。もちろん、これは、会社側に関係された方の保有株と一般投資株とがあるわけですが、企業立場から見れば、投資者に対して業績があがらないという意味では相当迷惑をかけていることになる。また、一面から言えば、企業の業績というものは株価の面から見たらこれは一体どう評価すべきかという点があろうかと思います。今日、第一、第二部に置かれている主要炭鉱の株価の現状から見て、この点は皆さんの立場からすればどういうふうに判断をされておりますか。損のかけっぱなしではないんだ、将来これはもっとおこたえするように企業経営というものは健全化していくんですと、こういうふうに責任ある立場に立っておられるのか、相当むずかしい状態で、やがては証券から石炭会社が全部姿を消すということなのか、その見通し等も——これは見通しを言えばどうも投機家の立場のような気がしますけれども、実際には投資をされておる人の立場から立って見ての考え方からすればお聞かせいただきたい問題じゃないかと思います。
  24. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 御指摘のように、石炭鉱業関係の株価は、各社とも額面割れ、ひどいのになると六円くらいになっているという状態です。経営者としましては、まことに株主に対して申しわけのないことでございます。これは、要するに、株価が低いということは、資産内容が悪いということよりも、むしろ配当が全然できないということが主たる原因だろうと思います。特にまた多額の国家補助をいただいておる関係上、今後とも石炭会社としての配当ということは望みがないのではないかというふうに思われますので、そういう点から見ても、株価が低迷しておるということは当然のことじゃないかというふうに考えております。経営者側としましては、何とかしたいという気持ちを各社とも持っておるに違いないと思います。私は、一人の経営者といたしまして私の考えを述べさしていただきますが、先ほどの分離ということも配当に関係があるわけであります。大きな補助をいただいておる間は、その補助によって黒字が出てもそれはちょっと配当をするということは不穏当かと思いますので、第二会社とした場合に第二会社は配当する必要はない、親会社はできる限り業務の拡大をはかりまして努力次第では配当をし得るという体制をとりたいというのが私の考え方なんであります。石炭鉱業が今後株価がどうなるかという問題は、私はなかなか早急に回復ということは望めないのじゃないかというふうに考えております。
  25. 横川正市

    ○横川正市君 山本さんに関連してお聞きいたしておきますが、労働災害で命に対する補償が高ければいいじゃないかという意味じゃなしに、これは完全保安体制が必要であることについてはもう言をまちませんが、なおかつ労災の現況について、組合労働者立場に立ってのお考えをお聞かせいただきたい。
  26. 山本忠義

    参考人山本忠義君) 一般統計的に、指を失ったとかなんとか、そういうものを含めての災害率はある程度減少しておるかもしれませんが、御承知のように、最近は重大災害が多いのです。一ぺんにどかっと、こうやる。こういうことが多いので、これはむしろ激増しているのじゃないかと思っております。詳しい数字は統計的に持ってきておりませんので、後刻必要であれば御提出をしてもけっこうであります。それで、私ども、全くもう災害のたびに感じるのですが、企業の側から見ましても、重大災害を起こしていくと、作業停止命令、復旧なんというまでには相当の損害になるわけですから、みずから自主保安ということではっきりおやりになるほうが企業の損得からいってもいいと、こう思うのですが、なかなかこの点は事実が証明しておりまするように、重大災害が相次いで起きてきているということで、遺憾だと、こう思っております。これはどうしても企業自体の生産計画というものが重点になります。たとえば、生産第一主義ではなしに、保安第一主義に徹してやってもらいたい、こう言いましても、最近は経営者みずからの自覚ということもあるということは認めてはきておりますし、なお、監督官庁等の姿勢等についても、きわめてきびしくやっていただいておるという面についての前進はある程度どものほうとしても認識はしておりますけれども、これはある場合には五百トンや一千トンの石炭は出なくったって生産計画をつくる基盤は保安に徹しなければ結局はまる損になるのだぞと、こういう意味での生産計画それ自体をつくるということを経営者みずからがもっともっとやらなければ、なかなか解決のできない問題ではないのか。もちろん、組合員の側のほうにも不注意なことのないように、また、保安責任者等の指示についてはきっちり守るように、こういう意味での保安教育等については十分徹底する必要がある。これも、組合の側のほうでも、組合幹部みずから、坑内に入って、そういう点についての訓練なり、保安に対する意欲などというものについて向上させるという努力も相またなければならない、こう思っております。教育をするにしましても何にしましても、リーフレットとか幻燈写真を持ってきたり、ポスターをはって、こういうふうにやればこうだと言いましても、なかなかきびしい保安条件を相手にしますのですから、経営の主導権を握っております経営者側の責任というものは免れないと思っております。だから、できれば、公社というような方向の中で、それぞれの保安センター等についても、先生方の御努力で九州に一カ所、北海道に一カ所というふうに今度つくっていただいて前進はしておりますけれども、ああいうところで採炭夫であるとか掘進夫であるとか坑内に実際に働く者を、まあ理想だと言えばあれでございますけれども、国に経費の補助を仰ぎながら一月なら一月間ぐらいびっちり訓練して、その上でまた坑内に帰ってきて一生懸命働くというようなやり方等と相まっていかなければ、なかなか今日の体制の中では石炭産業についての大災害というものは絶滅を期するということはむずかしいのではないか、こういうふうに思っております。  それからまた、これは私どもの力の足りないところでもありますし、それだけにまた経営の実情の苦しい面も浮き彫りにしておると思いますが、他産業の場合には、災害見舞い金なり災害補償弔慰金なり、三百万円以上それぞれ協定しております。炭鉱の場合にはこのあいだも交渉をやりましたけれども、まだ合意に達しておりません。現行は百三十万円、しかし、現実処理で二百四十万円程度の弔慰金は差し上げるということになっておりますけれども、人の命というものが炭鉱労働者の場合にはずいぶん安いものだと、こういう歯がみをするような気持ちでございます。
  27. 横川正市

    ○横川正市君 もう一つ大槻さんにお伺いいたしておきたいのは、労働者不足で、企業がそのことによって死活問題にもなりかねないという状況だと答申の中で明らかにされておるわけですが、一体、この悪化する労働条件というものでの目に見えた具体的な対策はどういうふうな対策をとられておるのか、その点をお聞かせしていただきたい。
  28. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 石炭鉱業のこれからの一番大きな問題は、御指摘のように、労働者をいかにして充足させるかという問題だろうと思います。私どもといたしましては、御承知のように終戦直後、炭鉱は傾斜生産で、石炭を掘れ掘れで、いわゆる住宅等についても特別な配慮を願ってつくったのでございましたけれども、それらの住宅がもう二十数年たちまして、他に比べまして非常に見劣りのするものになってきておるわけでございます。働く人間を定着させるということは、単に賃金だけではないのでございます。やはり、住宅とか、あるいは働く環境の整備というようなことも大きな力がございますので、どうしても住宅の改善ということをこれから先やっていかなければいけないのではないかというふうに考えております。しかも、今度の対策の中でも、住宅の改善に対する無利子資金の融資ということが行なわれることになっておりますので、私どもとしましては、それを足がかりといたしまして、住宅の改善、それからまた、働く現場の環境改善といったようなことに全力を尽くしながら、同時に、お互いの努力によって能率をあげることによって賃金の原資を生み出しまして、そうして炭鉱にふさわしい賃金のところに持っていくように努力したい、かように考えておるのであります。
  29. 横川正市

    ○横川正市君 あとは当局へ聞きますから、これで……。
  30. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間もあまりありませんし、質問者も多いので、端的に質問してまいりたいと思います。主として第四次答申中心とした問題にしぼって質問してまいりたいと思います。  一つは、これは四月十六日の石炭対策特別委員会での議事録をずっと拝見したのでありますが、この中で、大槻さん自身が、第四次答申の新政策にはいろいろ不満がある、こういうことを端的に言われておる。具体的にその不満の内容についてお教えを願いたい、これが一つです。  もう一つは、再建をはかり得る見通しのあるものについては最大の努力を今後いたしますと、こういうことがあるんですね。そういう再建の見通しのあるものについては、具体的にどういうもので考えられておるのか。それからさらに、再建困難と思われる企業企業ぐるみ閉山をしていきたいということが述べられておる。ですから、その企業ぐるみ閉山をする対象のものは一体どういうものを考えておられるか。  こういう問題について最初に二点だけお伺いをしておきます。
  31. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 今回の新政策について私は一番不満というとおかしいですけれども、希望をしておりましたのは、原料炭に対する安定補給金というものをもう少しふやしていただけなかったろうかということなんであります。 というのは、原料炭というのは、これは御存じの方も多いだろうと思いますけれども、坑内条件が非常にむずかしいんですよ。ガスがあって、断層があってということで、採掘費が相当高くなる性質の炭なんでございますね。したがって、私は、一般炭との安定補給金の差額が少な過ぎるのではないかというのが一つでございます。  もう一つは、福岡県に何か日雇労働者かなんかの保護のために二十五億円という金が出ているわけですね。私は、炭鉱に直接今度の新対策でもふやしてもらっている金はたしか六十億ぐらいじゃなかったかと思っているんですけれども、その半分程度のものが福岡県の離職者のためにだけ費やされるということは少し多過ぎるのではないかということが不満だったわけです。  もう一つの問題は、それは、たとえば杵島とか明治とか麻生産業とかというところがまだ企業ぐるみ閉山をきめていないときの話なんですね。で、企業ぐるみ閉山をするのはその三つぐらいであるということはあらかじめ予想されたことなんでございますね。その他の炭鉱については、ちょっとないんじゃないかと思っております。
  32. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それじゃ、その四次答申について具体的にお伺いしますけれども、あなたのいま具体的に指摘をされた二点の問題、第四次答申についてはこういうことが不満だということを指摘されましたけれども、総体的に第四次で再建が可能だと思っているのかどうかという点が一つ。  もう一つは、第四次答申でもう最終だ、炭鉱再建についてはですね、こういうお考えがあるかどうかということですね。
  33. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 今度の答申によって再建が可能かどうかという問題でございますね。その問題については、先ほども実はお答えしたつもりだったのでございますけれども、私どもに属しております十六会社のうち、すでに三社は閉山決議をしておりますし、多少弱いところのあった雄別につきましても縮小していくというかっこうになったわけです。したがいまして、あとの十二社は今度の対策によって努力をしながらやっていこうと、こういうことでございます。で、未来永劫やれるかどうかということになりますと、これはまあ非常に問題がありますので、これも、先ほど申しましたように、やはり炭鉱というものあるいは石炭というものをめぐる諸情勢がどういうふうに変化するかということによって変わってくると思いますので、いまここで即断を許さないのではないかというふうに考えております。
  34. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 今回、第四次答申をもって、大体十年間の月日の中で総体八千数百億円の援助体制というものを国家がとったわけですね。ですから、私の記憶の限りでは、そういった企業体制的危機に対して国家みずからが援助対策をとったというのは、山一証券の倒産危機に見舞われた二千数百億と今回の炭鉱、こういうことになっていると思うのですが、そういうことを推して考えてみますと、さらに答申の内容を検討いたしますと、非常に重油と競合して一般炭の生産を徹底的に縮小させると、こういう方向答申の内容というものは一貫して貫かれている、私の判断ではそう考える。  もう一つは、今回三年間延長して、四十八年度まで四千二百億円程度重油関税の利益というものをそのほうへ回すと、こういうことになっているのですが、それで一体ほんとう再建分まで十分なのかどうかということに疑問を抱いているのです。言ってみれば、今後の物財費の値上がり、あるいはベア、そういった総体的経費の値上がりによって、単に赤字克服ないし赤字の若干の補てん程度で終わってしまうのではないか、だから必ずしもそういう面での援助体制は完璧ではないのではないか、こういうふうに判断するのですが、経営者側の目から見てその点はどう考えるのですか。
  35. 大槻文平

    参考人大槻文平君) お話のように、一般炭の炭鉱は非常に苦しいと思います。ですけれども、残っております一般炭の炭鉱は、比較的条件のいい山が残っておりますので、少なくともここ数年はそう大したことなしにいくのではないだろうかというふうに考えています。
  36. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それから閉山交付金というものが今回設定をされまして支給をすることになったのですけれども、この閉山交付金を支給されるがゆえに今後政府は漸減の方式というものを大体考えているようですけれども、われわれの判断としては、急速にそういうことで閉山態称がとられるのではないか、こういう心配が実はあるわけですけれども、こういう問題について企業側としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  37. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 閉山をするかしないかということは、現状におきましては経営者がきめることでございまして、結局、政府の保護を含めてもなおかつ採算に合わないということであれば・あるいはやめるということを決議する炭鉱も出てくると思われますけれども、いま申しましたように、大部分の炭鉱はそういう心配なしでここ当分やっていけるのではないかというふうに考えます。
  38. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それから一般炭が非常に圧殺をされる、そういう状況だと。ことに、安定補給金の原料炭への支給というものは、非常に差別待遇になっているのではないかと思うんですね、再建交付金を受けない企業に対しては。補給価格差が一般炭で三百、それから原料炭で五百円、こういうことによって強化をされているのですけれども、こういう状態でいったら中小企業その他は軒並みに倒産のうき目にあっていくのではないかと思うのですが、こういう点はどうですか。その支給の内容、それから見通し、中小企業の倒産の見通し、この点はどうですか。
  39. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 一般炭の産出炭鉱というのは、炭層が安定しておりまして、比較的採炭経費というものがかからない山が多いわけです。そういう過去の実績に照らしまして安定補給金の割合というものはきめられたものと思います。したがって、原料炭と一般炭との間に差があるということは当然なのでありまして、私はむしろもう少し原料炭に多くつけてもらってもよかったのじゃないかというふうに思っているくらいでございます。一般炭鉱は、いま申しましたように、残っておる炭鉱はかなり力を持った炭鉱でありますので、現在の安定補給金でやはり相当やっていけるのじゃないかというふうに私は考えております。
  40. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それから需要部面で私はちょっと疑問視する点があるのですけれども、それは、たとえば九州電力の場合は、出力の三分の二は現在火力ですね。そして、なおかつ四十四年度では四百二十万トンの石炭が必要だとしている。ところが、この答申によって閉山が起きるのじゃないかといって、いま、九州電力は、重油混焼率を高めるということで改良工事を着々とやっておる。現在五〇%程度のものを、オールマイティー——一〇〇%にしちまうということですね。そうすると、ここで四百二十万トンの需要の減少ということにならざるを得ないというかっこうになってくる。この前いろいろ質問していたときに、石炭部長だと思いましたが、電力業界で総体の約半分を消費しておる状況だと。ですから、こういう面に対する需要関係の取り扱いというものに対して、経営者側としては一体どういう配慮をなさっておるか。こういうことでどんどん需要が減少していけば、勢い閉山ないし倒産あるいは石炭そのものの縮小、こういうかっこうに行かざるを得ないと思うのですけれども、こういう点はどうお考えですか。
  41. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 需要の確保ということにつきましては、経営者側としましても、もちろん電力会社との間にいろいろお願いもし、交渉もしておりますが、同時に、通商産業省側におきましても、行政指導の面から需要確保に力を尽くしていただいておる、こういう状態でございます。したがいまして、私どもといたしましては、これから先も急激に電力用炭が減少するというようなことのないようにぜひやっていただかなければならないというふうに考えております。
  42. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それからどうしても聞いておかなければいけないのは、やはり今後の閉山対策の問題ですね。これは石炭交付金というものをやるために大量閉山ということが何か布告されたような印象を私は受けるのですけれども、私の調べた範囲では、たとえば竹ノ迫炭鉱——熊本の無煙炭ですね、これは残ると思われたのに閉山になる。それから古河の日尾炭鉱、これは福岡で、大手に属して二百九十名おられる。山住炭鉱、百五十名、長崎で中小企業。飛島炭鉱、三百四十四人、長崎。新高野炭鉱、百三十八人、長崎。明治鉱業、杵島、麻生、雄別。これは明治鉱業の中にも幾つも山があると思うのですが、こういったものは軒並み今後閉山という方向に進められつつあるということを聞いておるのですが、そういう内容についてはおわかりでしょうか。
  43. 大槻文平

    参考人大槻文平君) いまお話のございました炭鉱のうちで、大手に関する分につきましては、つまり杵島、明治、麻生、そういうものは、対策前からすでに閉山を予想されておった炭鉱でございまして、対策がきまると同時にこれが出ましたものですから、世間的には、何と申しますか、新対策によるなだれ閉山的な感触を与えたのではないかというふうに考えますけれども業界の中ではいわば既定の事実だったというふうに見ておるわけでございます。したがいまして、これから先なだれ閉山的な現象が大手について起こるというふうなことはないというふうに考えております。
  44. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 最後に二点お伺いしたいのですが、私の調査によりますと、昭和三十三年には労働者数が二十八万人、生産量が四千八百五十万、三十七年に十三万人、四十三年十二月現在で七万九千、生産量が四千六百万、こういうことです。それで、一人当たりの生産量が、昭和三十二年十三・九トン、四十二年四十二・七トン、四十四年現在は四十八トン。このように、人員は一方にどんどん減っていく、しかし生産量はどんどん上がっていく、これはまさに労働者の過酷な労働条件だと思う。ものすごい合理化だと思う。こういう状態にしておいて、なおかつ、さっきも御指摘がありましたように、災害が発生する、環境整備が悪い、各般の条件が悪い、低賃金、こういうことになったのでは、これは労働者が就労するといっても、希望がないし、そういうところへ行かないと思うんですね。先ほど山本さんも説明の中でおっしゃられましたように、一つ災害事故が発生すると百名ないし百五十名やめていく。こういったものを一体どういう雇用政策の中に生かしていくのか、石炭再建に本格的に取り組む場合に基本的な問題だ。それを一般経営者側としてはどういう判断をされ、完全な雇用政策をとっていこうとされるのか、そういう問題についてどういう改善策をはかるか、こういう問題についてお教えをいただきたいのが第一点。  もう一つは、組合からいろいろな要求がいっぱい出ておるわけですね。そして、あなたもいまいろいろと陳述をされた中で、労使一体となってということばを使われておりますが、そういう労働者の要求というものが数々出ておるんですが、これはすなおに経営の中に生かしてやっているのかどうか、あるいは労働問題についてどういう考えをこれから持っていくつもりか、そこら辺の基本的な問題についてお聞かせをいただきたいと思います。
  45. 大槻文平

    参考人大槻文平君) ただいまの能率と人員の関係でございますが、御指摘のとおり日本炭鉱の能率は非常にあがりまして、現在におきましては西欧並みに到達しておるという状態でございます。しかし、これは従業員の労働強化ということが主たるものではなくて、日本炭鉱が集中採炭というふうに坑内骨格構造というものを変えてきた、同時に機械採炭というものを十二分に取り入れることができたということによって能率が上がったものというふうに理解しております。ただ、集中採炭というものをやるために、先ほども山本委員長指摘しておりましたけれども災害が大きくなるという可能性があるわけです。これにつきましては、われわれとしましては、今後十分意を用いて減少させるような方向にやっていかなければならぬというふうに考えております。  それから労働問題に対する基本的な態度というものは、特に炭鉱のようにどうしても人力というものを主にしてやらなければならぬ、機械化をやってもやはりあるところによっては相当人力を用いなければならぬという特殊な業務につきましては、労務対策というものが非常に大きなウエートを占めるということは申すまでもありません。しかも、労務提供者の協力なしには炭鉱の能率ということは上げ得ないということでありますから、お互いに共同意識を持って、一つの目標に互いに心を合わせてやっていくということでなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  46. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 山本さんに五点ほどお伺いをしたいと思うのですが、第一点は、先ほど私も大槻さんに伺ったときに数字を申し上げたのですが、現在の炭鉱労働者の数が先ほど申し上げた全体で七万九千というのは間違いないのかどうか、そのうち炭労の労働者の数はどのくらいおられるのか、それを教えていただきたい。
  47. 山本忠義

    参考人山本忠義君) 大体七万九千人という数字については正しいのではないかと思います。  それから炭労の場合の組織人員は五万人、あとは、全炭鉱あるいは炭職協という職員組合というようになっております。中立が嘉穂炭鉱というのがございますが、これはほんの微々たるものでございます。
  48. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうしますと、炭鉱就労労働者の数のうち炭労としては約七〇%に近い労働者を持っておるということですね。  それからもう一つお伺いしたいのは、今回の新石炭対策で、第四次答申ですけれども、この答申の内容は、将来のビジョンないし労働者確保、こういった具体的な解決策ですね、こういうものが示されているのかどうか、組合から見た場合の見解をお伺いしたいと思うのです。  それからもう一つは、今後の石炭対策の隘路は何としても労働者の定着と確保にあると思いますが、こういう面に対するこの答申から来る組合側の受け取り方ですね。この面の問題についてひとつお聞かせを願いたいと思います。
  49. 山本忠義

    参考人山本忠義君) どんな企業でも、そこの社長さんとそれからそこで働いている労働者とは、その企業を見詰める場合の見詰め方というのはそう違わないと思うのです。ただし、社長さんのほうは、金をあまり出さないでもう少し働いてもらいたいと、労働者のほうは、もう少し金をくれと、こういうことで、うちの会社はつぶれるのではないのかというふうな基本的なことについては、社長も工員も、働いている場合にはあまりそう違いがない。ところが、皆さんも奇異に感じられると思うのですけれども石炭産業の場合には、そういう常識があまり当てはまっていないと、こう思います。私どものものの見方ばかりが正しいとは申しませんけれども経営者の場合だって相当自信をもってこれから取り組もうという意欲までも疑っているわけではありませんけれども、どう考えてみましても、この十年間あるいは十五年間の推移を見てみますと、この政策によって私企業として確固たる形で繁栄をしていくというようには、実際に働いているわれわれには考えられない。一企業で何百億という借金を負い、国のお世話になるところがこれからまだまだあるわけです。そういうような面から考えてくると、まずその点から利益をあげて国の借金だって返していけるというような実情があるだろうか、素朴に考えてみて、いやそれのほうはなかなかできないのじゃないのかと思います。  それからもう一つは、炭鉱で働いていて災害の問題だってなかなかこれはむずかしい面がある。どんどん災害が起こるたびに労働者は動揺してやめていっているという事実については否定できない。したがって、かつては首を切ってしまって、いま労働者確保にやっきになっているというのはいなめない事実だと、こう思うんです。首切りの費用に金がかかって、おかげで今度は人集めにトータルロスで二十万くらい金を持っていかなければ労働者も来ない。その労働者も、質のいい労働者は入ってこない。へたをするとクリカラモンモンのようなのが入ってきて、支度金だけをもらったらすぐ出ていってしまう。これは決して誇張ではありません。そういう事実だってあるわけです。  こういうような実情や、あるいはまた賃金の場合は、鉄鋼産業と比べてみたって一万円も一万四、五千円も低い。そこで働いているものは重筋肉労働者なんですから、世間相場並みの賃金をもらって、できれば、額に汗水たらしてほんとうにくたくたになって家に帰って焼酎一ぱい飲めばくたっとなってしまう、こんなようなことでないように少しは賃金を高くしてもらいたい、こういう希望は絶えずつきまとっていく、こう思うんです。それがかなえられないとなれば、少しくらい給料は安くても、命の危険のないところで、内風呂もあったり内便所もある社宅だというなら、そっちに移ってみようかと、こういうように時代の進歩とともに労働者の意識だって変わっていく。こういうように考えてみますと、労働者確保の面から考えてみますと、賃金だって上げていく。生活環境も、まくら長屋、外便所、外水道なんということだって直していかなきゃならぬ。人がいる限りは、そういう向上発展というものはしなければならない。  こういうふうに大ざっぱですけれども、もろもろのことを考えてまいりますと、なんぼ労使が協力して生産を上げても、限界があると思うんです。労働者立場というのは否定して会社べったりというのは、これは組合幹部の場合はいけませんから、労働者がいろいろ要求していることについては、実現してやろう、こういうことになるわけですから、そういう立場で、いつも一〇〇%獲得をするなんということは考えておりませんけれども、それがあまりにもまわり近所の相場と比べてみて低いなんということになってくると、組合の統制力だとか説得力だとか、あるいは会社のほうの説得力なんていうものではもう確保できないぎりぎりに来ている、そういうふうに私どもは見ています。だから、私企業でそれぞれ経営で努力をされるという気持ちはわかりますし、われわれも協力できるものならしてみたいと思っていますが、今日ふまえている現実というものは、そういうような体制の中でのみ発展をするというわけにはどうしてもいかない。やはり石炭産業という面で統合なり合併なりをしてメリット考えていく、人件費も節約をしていく、いろいろな面で建物や何かにしても一つに統合すれば経費がかみらないわけですから、そういうようなこともしていく。場合によっては、なわ張り根性があるとは思いませんけれども、三井、三菱の競争意識というものは強い。当然あたりまえのことでございますけれども、技術交流その他についても普遍的に行なうことができるのじゃないか。三井のよさ、三菱のよさ、北炭のよさだって、技術的に交流していくことはできるじゃないか。炭鉱の場合には技術の進歩がなければたいへんなことになるのははっきりしているわけでありますから、そういう面からもいろいろなメリット考えていけば、公社化の方向に持っていくということのほうが絶対にメリットがあるのじゃないか。それをしなかったら、石炭産業というのは、いろいろ御努力は願うけれども、結局、私どもの受け取り方としては、ある程度の国の補助はしてもらうけれども、スクラップ・アンド・スクラップの方式で閉山をやられてしまって、葬式代として国からある程度の金をくれるのだというふうに、邪推ではありませんけれども受け取らざるを得ない。国の必要な石炭産業ならば、ある程度総合エネルギーのパーセンテージの中で、あまり規模の大きいことは言いませんけれども、せっかく定着をして、安心して長期的に働いていける、これはどなただってそうだろうと思う。かかや子供を養ってその職につく限りは、一年や二年でやめてしまうためにつくわけではありませんから、子供を学校に入れて卒業するまでと、うちはうちなり、貧しいなら貧しいなりにおやじというものは考えるものだと、こう思うんです。毎日働いていて、いつ首切られろか、山がつぶれるかわからないということになれば、だんだんそういう意味では個人の権利についての認識だって高まっていっているわけですから、しまいにはみずから見捨てて行ってしまう。そういうときに四千億も五千億も使ったって、どぶの中に捨てた四千億ということになりかねない。どうか、スクラップ・アンド・スクラップということでなしに、そこで働いている人間、地域社会の人間が将来のビジョンが描けるような前向きの方向で御検討をいただきたい、こういって陳情も申し上げているわけです。  現実には、政策ができる過程で必ず閉山が起きてきています。というのは、これだけ金を使うんですから、経営者のほうはもう少し叱ってもいいと思うんです。まだやればやれる炭量を持っているのに勝手にやめるということはやめなさい、二千四百円が三千三百円になったからこのほうが得だからいまのうちにぶん投げてつぶしたほうがいいというような意欲については制限しなさいというふうにしましても、現実にはなかなかそうではない、こういうふうなことになっているのが実情だろうと思うわけです。だから、明治にしても、杵島にしても、ある程度労働者の面についての手厚い保護ということについてはそのとおり受け取りますけれども、つぶれたほかに、なおかつ北海道では太刀別炭鉱とか中小炭鉱がいっぱいあるんですが、幾つかつぶれました。私どもといま団体交渉中でありますが、長崎の神原炭鉱閉山の通告を私どもの組織では受けてきている。まだまだ中小炭鉱の場合は経営基盤がそういうことでありますから、私どもとしては、閉山提案というものは、経営者の一方的な判断によって、ただ単にこれ以上やっては損だ、損しないまでもとんとんでやっているような企業なんてばかくさいと、こういうようなことで閉山になる危険性は多大にある、そういうふうに考えております。  そういう事情を御説明申し上げるにしても、当然いまのままでいいというのではなしに、総理大臣もおっしゃったように、二年間で何らかの手直しというのは必要になってくる。たとえばいま大槻さんのほうから原料炭中心にするとおっしゃっているのですが、原料炭中心にすると、こういうふうになりましても、安定補給金等についてはもう少し多いほうがいい。そうでないと、なかなか黒字を出して労働者のそういう要求についてこたえるというわけにはいきませんよ、相当日にちがかかりますよ、こういうふうにおっしゃっておるのだと、こう思うんですが、そういう矛盾経営者自体からながめてみたってまだまだたくさんあるわけでございますから、そういうふうなところにやはり来ておるのではないのか、こういう認識を強く持っています。だから、あれだけ組合でも現場から上がってきて、やむにやまれず、おれの山はどうなるのじゃというようなことで東京なんかへ来てお願いをするのですが、たとえばいまおっしゃるように石炭政策が実効をあげておるとするならば——炭鉱労働者は私はまだまだ素朴だと思っています。そのいい例が、十万人も十五万人もやめていきますが、行った雇用先で悪口を言われたことは一つもありません。炭鉱労働者というのはかせぐなあと、こういうおほめのことばはいただいても、けしからぬということはないのでございますから、そういう面からも素朴だと思うんです。これがいま何を言っておるかというと、やはり石炭産業というものはだめなんだなあ、カンパもしたり何かもしてずいぶんやったけれどもやはりだめだわい、こういう空気が充満しておるという点だけは申し上げておきたいと思います。  といって、特別交付金が全然要らないとか、あるいは石炭会計特別制度なんて要らないと、こういうことでは決してありません。私どもその板ばさみで、特に特別交付金の場合なんかは、二千四百円よりも三千三百円に上がってやむにやまれず閉山になった場合に、大正炭鉱のようにまる裸になってほうり出されるといったことよりも、そのことによって閉山の諸条件を獲得できるわけですね。だから、そういう現実の上に立って板ばさみ等もございまして、一がいにこのような制度はけしからぬなんというようなことではございませんけれども、できれば、そうではなしに、そういう資金等も網羅したり、炭鉱離職者の資金等も網羅した形だけでなく、もっと前向きに石炭政策と長期的ビジョンのある政策のほうに重点を置いた形で出してもらえばそれにこしたことはないのだ、こういうふうに思っておる次第です。
  50. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これで終わりますけれども、結局、私は、いまお話を聞いても、炭鉱体制的機能、その被害はすべて労働者に転嫁されているというような印象を受けるわけですね。その中心は、何といっても私は賃金だろうと思う。これは炭労の発行された「石炭産業の現状と国有化要求」という一九六八年四月十日作成のものでございますが、この五ページに「低賃金と労働強化の実態」ということでいろいろ説明があります。「炭鉱労働者賃金は極めて低い。ほんらい、ECSC加盟の炭鉱労働者の「ヨーロッパ炭鉱労働憲章」や、ILO炭鉱委員会でも規定しておるように、危険、有害、非衛生をともなう重筋肉労働に従事する鉱山労働者が、他産業労働者より高い賃金をうける資格があることは、西ヨーロッパや社会主義国の諸国では常識となっている」と。それで、西ドイツの例を引かれましていろいろ説明されているのですが、西ドイツの場合は、賃金水準は、炭鉱坑内夫、鉄鋼、鋳造州化学という、こういう序列であるが、日本の場合は、鉄鋼、非鉄金属、化学、炭鉱坑内夫、こうなって、一番最低なんですね。二十四—二十五歳は、中卒の場合、中労委から差し示した内容によりますと、他産業労働者との比較においてはあまり差がないのです。しかし、三十五—三十六歳で製造業平均と比較をした場合、一万三千円の差がある。それから四十五—四十六歳では、一万九千円の差がある。そして、以下賃上げの状況を見ますると、石炭政策として賃金引き上げ率はわずかに五%あるいは七%にくぎづけされている。三十五年以降の賃金引き上げ額は、平均して他産業引き上げ額の六三%にしか達しない。こういうように、他産業との比較の中において非常に大きな差というものが生まれてきておる。この前、石炭部長にこの点もお伺いしたのですが、その際も、言ってみれば、他産業と比較していまが最低だ、この再建資金の中には一〇%のベア分が含まれておる、予算化されておる、こういう説明だけれども実、態は一二%上げてもなおかっ低いという状況ですね。こういういわば低劣な労働条件においてもっと働けもっと働けということは全く酷じゃないか。こういう問題について、賃金政策をもっともっとやはり経営者の中では検討し、直ちに手を打つべきじゃないかというように考えるのですけれども、この点、大槻さんはどういうように考えておられますか。何回か団体交渉もやられておるわけでしょう。今後、これらに対するどういう対策を具体的にお持ちですか。
  51. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 炭鉱の労働賃金の問題がかなり問題になりましたけれども炭鉱といいましても、現実に現場の第一線で働く者の賃金は相当高いのでありまして、それほど低いとは言えないのではないかと思います。ただ、坑外夫というように、東京にいようが、大阪にいようが、どこにいようが、同じようないわゆる坑外で働く者まで入れると、坑外夫の員数が相当いるものですから、平均すると少なくなっていくというのが実態なんであります。しかし、第一線に働く者の賃金がそれじゃ現状のままでいいかという結論になりますと、これはかなりやはり問題があって、われわれといたしましては、できる限りもう少し報いなきゃいかぬというふうには考えております。炭鉱の生活は、御承知のように、社宅の問題とか、風呂場の問題とか、燃料の問題とか、いろいろいわゆる福利厚生面でほかの社会よりも相当恵まれておる点がございますので、炭鉱賃金というものは、単にノミナルな賃金という比較だけでは必ずしも妥当を欠くのじゃないかというふうに考えております。ここでいろいろデータを出し合って議論するという意思はありませんから、このくらいにしておきます。
  52. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 最後に、山本さんに、石炭産業再建は私はまあ最終段階に来ているような考えを持つのですけれども、今後基本的に一体どうあるべきかという組合の態度を一言お聞かせ願いたい。
  53. 山本忠義

    参考人山本忠義君) 前々から主張申し上げておりますように、可及的すみやかに国有公社ですね。ずいぶんしつこいようですけれども、そういう方向への努力をしていただく。現に、植村さんの場合でも、植村構想ということで全国管理会社一本化というやつが出てきておるわけですね。今度の政策にしても、ちょっとのどへ引っかかってのみ込めませんとあの常識家の方がおっしゃっておるのですから、相当のめないということなんですね。紳士でございますから、私らみたいに変な、露骨な表現はしませんが、あの方が、審議会会長として、今度の政策についてはちょっとのどへ引っかかってのめませんというのは、これじゃだめですよと、こういうことを示唆しておると思うので、たまたま、今度、政府のほうでも、体制問題についての議論が不足であったから、体制委員会を設けて十分に議論をしようではないかと、来年の八月ころまでには答申を出すようにひとつしてもらいたい、こういうような御回答等もございますので、そういう中でいろいろ経営者のほうも私どものほうも学識経験者の方々の御意見も聞きながら、私らは私らなりの考え方を述べて、一日も早く何らかの形でもう一回やらないと、また労働者の犠牲の上に立って閉山だとかなんとかいうことで、お願いをして陳情に来る、それで大騒ぎになると、こういうことはないとは限らないと、こんなふうに思っておる次第でございます。
  54. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ありがとうございました。
  55. 多田省吾

    ○多田省吾君 きょうは、お忙しいところを御苦労さまでございました。私も二、三点御質問申し上げたいと思います。  基本的な問題からお伺いいたしますけれども、今回の第四次答申並びに政府政策というものは、いわゆる出炭規模あるいは位置づけ等を含めて体制問題が出てこないということでいろいろ不満が多いわけでございます。いままでお話もありましたように、大かたの方の意見が五千万トン確保したいということでありますけれども政府の答弁によりますと、まあだんだん静かな撤退をして三千五百万トン程度におさめたいというような答弁がどうしても出てくるわけでございます。また、体制問題につきましても、いまお話しのように来年の八月までに体制委員会をつくって答申をはかるということでございますけれども、通産省の次官なんかも、その答申が出ても財政政策については変わりはないんだというような、こういうふうなはなはだうしろ向きの姿勢のように思われます。また、佐藤総理も、国有化公社案に対しましてはまだ会社の力が差があるのでできないというような答弁もあったわけでございますが、私は、基本的な問題として、お二人の方に、今後の体制委員会に対する考え方、あるいは今後の体制問題についてどう考えておられるか。大槻さんのお話をお伺いしておりますと、会社自体においてもたとえば植村試案を支持しておられるようにも考えられます。そのほかにも、萩原さんの全国一社案とか、あるいは舟橋案の全国地域別構造別三社案とか、あるいはその他国有民営問題とか、あるいは自主再建説、さらには、国有化公社案、あるいは販売機構についても一元化論というものが出ております。そういったものに対する考え方というものについて経営者方々はどう考えておられるか。また、炭労委員長山本さんにも、まあ主張は私たちよくわかりますけれども、たとえば全国三社案にしましても全国一社案にしましても、こういったものは私企業を野放しにしておる問はベターな案とも言えない、こういうようなお考えに立っておられるのか、その辺の基本的な考え方について一応お伺いしておきます。
  56. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 体制問題に関しまして石炭協会長として意見を申し述べることはいかがかと思いますので、しいて述べろということであれば大槻個人としての意見を述べさしてもらうことにしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  57. 多田省吾

    ○多田省吾君 けっこうです。
  58. 大槻文平

    参考人大槻文平君) どういう体制石炭鉱業というものをややたらいいかという問題は、これは非常に長い歴史を持っておる石炭鉱業でもありますので、私は簡単に結論の出るものではないのではないかというふうに思います。そうして、私企業形態のままで統合とかそういったようなことを考えても、それはナンセンスだ、できない。というのは、やはり各社の統合ということは、これは個人の結婚のようなものでありまして、お互いの同意がない限りはできるわけはないのでありまして、そういうことから見まして、簡単に統合ということはできないのではないか。それは国営とかあるいは公社とか一網打尽に——一網打尽ということはどうかと思いますけれども、網をかぶせてしまえということであれば、これはまた別でありますけれども、少なくとも私企業形態の中での統合ということは簡単にはできるわけのものではないというふうに考えております。  流通機構の問題につきましては、これはぜひとも経営者側としても考えていかなければならぬと思っております。これはいわゆる共販がいいのか、あるいはカルテル的な強化でやっていくのがいいのか、そういったような問題につきましては、これから先十分検討してきめたいと思いますけれども、少なくとも流通機構については現状以上の合理化をしなきゃいかぬ。また、同時に、営業所というようなものを各社がそれぞれ持っておりますけれども、こういうものについての統合というようなこともやはり考えていかなきゃならないのではないかというふうには考えております。
  59. 山本忠義

    参考人山本忠義君) るる申し上げておりますので簡単にお答えをしたいと思いますが、一社案、三社案 植村案と、こうなりますと、私どものほうとしては、このことにしぼって申し上げますと、植村案というものと、私ども考えております公社案、こういうものとの対比の中で話は進めていくべきではないか、こういうふうに考えています。こまかい検討はまだしておりませんが、一社案にしましても、三社案にしましても、ちょっと思いつきのようなところがございまして、軽々しくどうのこうのと言えるものではなくて、むしろ石炭の歴史的な事実の点や今日の置かれた現状というような点から考えてくると、植村案というものと私ども考えておることとよく対比をしながらいろいろ自分らも反省するところは反省しながら勉強し合ってやるというふうなことのほうがやや現実的ではなかろうか、こう思ったりしている次第です。
  60. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、労働力の確保の問題でございますけれども、先ほど、山本さんからも、生産第一主義よりもむしろ人命第一主義という観点に立って、イギリス国有化メリットもやはり災害をなくしたことであるというお話もございました。私たちも同感でございます。それで、いま、労働力確保のために、大槻参考人からも炭鉱住宅の新設、あるいはお二人から保安の万全化ということもお話がございましたけれども、そのほか、医療体制であるとか、福利厚生施設の問題とか、あるいは産炭地域の文教対策の問題等、数多くあろうかと思います。長期的に石炭鉱業の伸展のためには、うしろ向きの姿勢ではなくて、あくまでもこういった前向きの姿勢で労働力の確保をはかるということが重要ではないかと、当然考えるわけでございます。これはこの前もいろいろ現地に行っていろいろな方にお伺いした中で、たとえばこれは全炭鉱関係の会社かと思いますけれども、どうしても自発的に離職したいという場合に、離職証明を半年問ぐらいはなかなか出さないというようなことで困っているというような問題もありますけれども、これはあくまでもうしろ向きの問題であって、こういった離職をしたいというような姿にならないように、やはり労働力の確保のためには、いろいろな労働者方々の万全の体制をはかるための前向きの姿勢がいろいろまた対策も必要かと思います。そういった面で、経営者側としてどうそういった問題に対して考えておられるのか、それから組合側としてもどうお考えになっておられるのか。  さらに、先ほどから、首切り、あるいは労働力確保の対策の悪循環という面も述べられましたけれども、いま現在、実情がわからなければ対策考えられないと思いますので、現在の自発的な退職希望者の姿がどのような姿にあるのか、あるいは首切りの現状に対してどう現在お考えになっておられるのか、その点に関して簡単でけっこうでございますからお伺いしたいと思います。
  61. 大槻文平

    参考人大槻文平君) まず、首切りの問題でありますけれども、この特別閉山が行なわれたあとは、ちょっと首切りというようなことはないのじゃないかと思います。できるだけ人を雇いたいというときなんですから、首切りということはちょっと考えられないと思います。  それからどういうふうにして確保するかという問題は、先ほども申しましたが、やはり、環境整備、生活のしやすい炭鉱をつくるということだと思います。そこで、われわれが最近一番悩んでおるのは、お医者さんであります。お医者さんがなかなか炭鉱に来てくれないのでありまして、これを国家的な何かうまい力で配分するようなことはできないだろうかということをしみじみ感じておるのであります。そのほか、経営者としましては、やはりどうしても環境整備、これは仕事場といわず生活場といわず、環境の整備をしていくということにこの上とも努力をしなきゃいかぬというふうに考えております。
  62. 山本忠義

    参考人山本忠義君) 病院のことなんかは、大槻さんのおっしゃったことと全く同感でございます。炭鉱の健保の問題も含めてそれぞれ陳情等もしておりますので、おわかりいただいていると思います。特に、炭鉱の場合は、けが人なんかが多いものですから、病院施設はある程度山元において充実をしてもらわないとほんとうに困ると思っております。  それから住宅の問題でございますけれども、早く直してもらいたいと思いますので、今度は御配慮いただいて無利子の金融ということなんですが、これはただ金を貸してやるということなんです。ですから、経営者のほうがやがて返さなきゃならぬのだから、ちょっと待てと言われればそれまでの話なんでして、まあ大槻さん方のほうと私どものほうの組織といろいろ話をして企業ごとの計画というものでも出して、少しでも前向きにこういうふうにしてやるんだぞというようなことを一日も早くやりたい。せっかくつくってくれた制度だから、経営者のほうでもひとつ積極的に活用するという姿勢になってもらいたい。こんなふうに思ったりして、話し合いはこれからしでいかなければならぬのではないかと、こう思っております。
  63. 渡辺武

    ○渡辺武君 大槻さんに一、二点だけ伺いたいと思います。  第一次答申以来、かなりばく大な国の費用が石炭産業に投じられてまいりました。先ほど山本さんの言われましたように、一産業としてこれほどばく大な国の費用が投じられたという産業は非常に珍しいという状況であります。ところが、国の費用を投じ始めてから現在に至るまでの歴史を考えてみると、まさにこれは石炭産業の危機がますます深まってきたという歴史だというふうにしか考えられません。特に昭和四十二年のあの抜本的再建案というのが出されて一千億の交付金が出されるということが決定されて以来、わずか一年たった今日、再び石炭危機が非常に叫ばれているというような状態になっているわけです。これは、先ほど山本さんのことばもありますし、また、一般の国民も、こんなに国の費用をたくさんつぎ込んでいて、そうしてなぜこんな状態になったのか、これから先、この四千三百何十億円の国家の助成をやって石炭産業ほんとう再建できるのかどうかという点を非常に疑問に思っていると思うんです。私どもとしては、国に石炭資源がないわけじゃない。理論的可採炭量を見てみても、約二百億トンといわれるし、九州の筑豊の宮田町の下だけでも約二億トンの石炭が、しかも原料炭を主として眠っているというような状態なんですね。しかも、今度四千数百億円の金をかけて、五年先の出炭量どのくらいになるかといいますというと、約三千六百万トンだ。石炭産業はどんどん縮小していく。一方ではばく大な国の費用がかかるということになっていると思うんですね。私どもは、日本で唯一の国産エネルギー資源である石炭産業は、これはもっと生産拡大しなきゃならぬ。少なくとも差しあたりは五千万トン程度の出炭規模を維持して、先行きなお石炭が増産できるという体制をとることこそ、国の費用をつぎ込む理由があるんじゃないかというふうに思うんです。ところが、現実はそうなっていないわけですが、経営者立場としてこれほどの石炭危機になった原因は根本的にはどこにあると考えておられるか。また、四千数百億円の国の援助をつけて、今後経営者として主としてどういう点に努力をしていこうとされているのか、その点をまず伺いたいと思います。
  64. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 石炭の置かれておりました事情につきましては、ただいまのお話のとおりだと思うのでございますが、私どもといたしましては、まことに多額の金を国家から補助を受けまして、ほんとうに申しわけのない、ありがたいことだと考えておるわけでございます。ただ、どうしてこういうような事態になってきたかといいますと、私は、一番大きな原因は、何と言っても世界的なエネルギー革命というもののスピードとそれからその規模というものが、日本の識者並びにわれわれ経営者、一切の者の予想以上に大きなものであった、速いものであったというところに問題があったのではなかろうかと思うのであります。したがいまして、数次にわたって対策を立てていただきましたけれども、その対策が、あとから考えますと、批判がましくなって恐縮なんでありますけれども、やはり後手後手に終わっていたという感じがするわけであります。それが一番大きな原因ではなかったかというふうに思います。もちろん、それは、いろいろ考えますと、経営者側にも責任がないわけじゃない、大きな責任があるわけでございますけれども、おしなべて申し上げますならば、大きな原因はそういうことではなかったかというふうに考えます。  これから先の問題といたしましては、これはいままでも何回か申し上げましたように、やはり労使一体となった形において、生産の確保と申しますか、その山その山におのおの生産計画というものがございます、この生産計画というものを確保できれば大体やっていけるということになるわけなんでありますから、その生産計画の確保に全力を尽くしていこうと思っています。そのためには、いろいろの問題があるわけでございますね。労働者の確保ということもまず第一に大事でありましょうし、あるいは坑内の機械化ということもありましょうし、いろいろな問題ありますけれども、ともかく計画出炭の確保ということに全力を尽くしてこれを実現したいというふうに考えております。
  65. 渡辺武

    ○渡辺武君 エネルギー革命の速度が予想外に速かったというふうにおっしゃいますけれども、これは昭和三十五年当時からはほぼ国の総合的エネルギー政策というのはもう出ていて、国内のエネルギーの消費量における石炭の比重はどのくらいになるというような一応の長期的な見通しがあったわけですね。ですから、そのことをもっていまの石炭産業はこういう状態になったということの主要な原因とすることは、ちょっと当たらないんじゃないかと思うんですね。もちろん、石油の輸入が非常に急増してそれが石炭産業にとって大きな圧迫になったということは、これは客観的な事実でございますから、私は否定するわけじゃないのですけれども、しかし、そのことが唯一最大の原因であるかのようにおっしゃやることは当たらないのじゃないか。もしそういうふうにおっしゃるならば、いまおっしゃった今後の対策として労使一体となって生産の確保に努めるということをいくらやってみたところで、結局はエネルギー革命なるものの速度が今後とも急テンポに進むわけですから、一体今後の見通しはどうなのかということについてまことに疑問に思わざるを得ない。私は、もしあなた方がエネルギー革命なるものを大きな原因とお考えになるならば、それはそれとして経営者立場として国のエネルギー政策について一言あってしかるべきだというふうに思うのですが、どうでしょうか。私は、実は、エネルギー革命というようなものじゃなくて、もちろん石炭にかわって石油が使われるということは一面の技術の進歩ではあるけれども、しかし、日本のようにこれほど異常に石油が急速に石炭にかわるというような国は日本以外にないんですね。火力用の石炭の消費量を見ても、西ドイツ、フランスその他から見ても、日本よりもはるかにたくさん石炭を率としては使っているというような状況でありますので、これは日本は特有の現象だというふうに考えざるを得ません。時間もございませんから詳しい数字はあげませんが、私は、これは 日本の国が日米安保条約その他でアメリカとかたく結びつき、押えられているということから、アメリカの石油資本が日本の国内市場を席巻してくるということの一つのあらわれであるというように考えているわけでありますが、そういう点について、石炭産業経営者として、石炭産業を守るという立場から、国のこのようなエネルギー政策に対して一言あってしかるべきだというふうに思いますが、その点の見解はどうですか。
  66. 大槻文平

    参考人大槻文平君) おことばを返すようで、はなはだ恐縮でありますが、日本におけるエネルギー革命というのは、西欧その他における革命よりもやはりスピードが非常に速くて大きかったのじゃないか。というのは、日本石油のダンピング市場になったということだと思うのであります。具体的には、第一次の答申でしたか、原油というものを審議会におきましては八千四百円ということを予想して対策を立てられたのにかかわらず、実際は六千円くらいになった。こういうところにやはり問題点があったんじゃないか。もしかりに六千円になるということが前提であったならば、やはりその対策費というものが相当分厚に織り込まれたのではないかというふうに考えるわけなんであります。そういう意味におきまして、私は、エネルギー革命の速度とスピードが大きくかつ速かったんだということを申し上げておるわけでございます。  それからお話のように、経営者側として、総合エネルギー政策、国の政策に対して一言あってしかるべきじゃないかというお話でございますが、総合エネルギー調査会というようなものには石炭側からも委員を出しておりまして、そういう機構の中でそれぞれわれわれの立場というものを表明しておる次第でございます。
  67. 渡辺武

    ○渡辺武君 その点についての論議は時間の関係でやめますけれども、そうしますと、エネルギー革命なるものが非常に大きな原因であるというふうにおっしゃいますと、いわば石炭産業の外部からの原因が大きな原因だという議論におのずからなっていくと思うんですね。先ほど、大槻さんは、企業としても責任があるんだというふうにおっしゃっておられましたけれども、従来こういう石炭産業が惨たんたる状態に追い込まれた上での企業としての責任は、主としてどこにあるというふうに考えていらっしゃいますか。また、これは山本委員長にもその点について組合としての見解も伺いたいと思います。
  68. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 石炭企業の今日のようになったという原因一つに私がエネルギー革命と申し述べましたのは、これは一般的な意味での理由を申し述べたわけでございまして、その他にも、もちろん、経営者側といたしまして、たとえば労務者確保が当初の予想どおりできなかったとか、あるいは出炭計画を立ててもその出炭計画を大幅に下回ったとか、あるいは爆発の場合もあったでしょうし、あるいはストライキのこともあったでしょうし、いろいろ理由がありましたけれども、ともかくも計画出炭ができなかったということについての責任というものは、私は経営者して相当大きなものがあるというふうに考えております。もちろん、いままで責任があるからといってどうこうした経営者はいないじゃないかと言われるかもしれませんけれども、これは経営者としてやめることだけが責任をとる道ではないのでありまして、できる限りふんばって業績をあげるように努力するということもまた責任のとり方の筋ではないかというふうに私は考えます。
  69. 山本忠義

    参考人山本忠義君) 外部的な要因があったということも事実だと思います。エネルギー革命ですね。固体エネルギーと流動エネルギーというようなこと。  それからどうもおまえあれだからかっこのいいようなことばかり言うなということを言われると困るんですが、金もない、財産もない、働くだけが取り柄の労働者立場から言いますと、石炭産業は必ずしも戦後べったり悪い時期ばかりではなかったんで、朝鮮動乱の時期にある程度ブームに乗った時期もありますから、そういうようなときはどうしたというようないろんなケースはあろうと思います。ですから、やはり、経営責任といいますか、怠慢さといいますか、将来に向けての石炭産業についてのビジョンといいますか、そういう面についても欠けておったということは言えると思います。  それから政府政策それ自体も、先ほど来から申し上げておるようなことでして、やはり後手後手に回っておった面もなきにしもあらず、こういうふうに思っております。  おまえたちはどうなんだということになりますが、やっぱり働くところですから、働いている人たちにもう少し工夫してもらえば、どんな環境の中でもかせぐという気持ちだけは大事にとってありますから、そういう意味で申し上げたいと思います。
  70. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、固体エネルギーが液体エネルギーに変わるという動きが確かに外部にはあったわけですけれども、しかし、同時に、石炭産業経営者としてやってきたいままでのやり方ですね、これは結局私企業としての立場から自分の企業に経営上の採算をとる、率直に言えば利潤をあげるというところに最大の眼目を置いてやってきたというところに経営者としていま一番考えなければならぬところがあるんじゃないだろうかという気がするんです。つまり、利潤をふやそうがために、労働者賃金も年七%アップで押えるとか、あるいは保安のために必要な掘進その他もあまりやらないで危険を無視して増産させるとか、その他等等一連のことをやってきている。なるほど機械化は進んだけれども、その機械の稼働率も非常に低くて、十分に生産に役に立たないというような状況を企業側がつくり出してきている。結局のところ、もうけということが頭にあって、私企業ということの体制の上でやってこようとしたところに一番大きな原因があるんじゃないかと思うのです。  ところで、いま伺ったところによりますと、なおそこに四千数百億円の国の費用を今後出すわけです。それに対応しての企業側の対策としては、労使一体となって生産を確保するとかいうような点をおっしゃいましたけれども、非常に抽象的で、どこを重点にして生産確保をなさるのか、従来の状態をどういうふうに企業の側から分析して、そうしてどこに責任があってどこを克服したらいいのかというような点をもう少し深く掘り下げてその対策を立てていくべきじゃないかというふうに思うのですけれども、その点をもう少し詳しくおっしゃっていただきたいと思います。
  71. 大槻文平

    参考人大槻文平君) これははなはだむずかしい問題でして、企業経営は非常に多面的であり、微に入り細にわたっていますので、そう簡単にこうだああだということをここで申し述べろと言われても、私はなかなか困難じゃないかと思うのです。それで、問題は、要するに、いままでのような経営者の態度というものは信用できないから、もう少し具体的なことを申し述べろということかもしれませんけれども、今回は私ども大いにふんどしを締めてやろう、こういうことでありますので、その具体的な対策というものについては、やはりそれぞれの会社の経営者におまかせ願わなければいけないんじゃないか。われわれとしましても、たとえば本店においていろいろ考えておりましても、現場の具体的な対策ということになりますと、これまた非常に微に入り細にわたってまいりますので、いまここで具体的に申し述べろと言われても、なかなか困難だというふうに考えております。
  72. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうも、非常にあぶなっかしいですな……
  73. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 速記をとめて。
  74. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 速記を起こして。
  75. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、なお一、二の点で伺いたいのですが、先ほどさしあたりはだいじょうぶだろうというふうにおっしゃいましたが、この対策が一応切れる四十九年度以降ですね、なお国家の補助を必要とするような状態を考えておられるのか、それとも、企業だけで補助を受けずにやっていくような体制になるというふうに考えておられるのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  76. 大槻文平

    参考人大槻文平君) これも、先ほどちょっと申し上げたのでありますけれども石炭企業というものを取り巻く情勢の変化によりまして私は何とも言えないのじゃないかというふうに考えておるわけです。ただ、経営者としては、これを最後的なものとしてふんばっていきたいというふうに考えております。
  77. 渡辺武

    ○渡辺武君 それから、従来、炭鉱経営者の中に、いろいろ社外投資をやられる経営者が非常にたくさんあるわけですね。これは衆参両院の石炭特別委員会でも問題になりましたけれども、たとえば常磐炭鉱のハワイアンセンターの例なんかもかなり問題になったわけですけれども石炭労使一体で生産を確保するという見地からされて、第二会社、社外投資というようなことについてどんなふうな見解をお持ちでしょうか。
  78. 大槻文平

    参考人大槻文平君) 社外投資、つまりいろいろな子会社、関連会社を持つということ、これは私の会社のことだけ申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、私は、先ほども申しましたように、非常に多くの整理をやりましたので、その整理した職員なり労務者なりというものを職にありつけさせなきゃならぬということが重点で関連会社というものにある程度力を入れてやってきたわけであります。
  79. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、今後もこれはお続けになる可能性があるというように理解していいですか。
  80. 大槻文平

    参考人大槻文平君) これから先は、いま申したようなことで考えますならば、私の会社としては、大体整理も一段落したかっこうでございますので、いますぐにどうこうするということは考えておりません。
  81. 渡辺武

    ○渡辺武君 それから保安の問題ですけれども、先ほど、山本委員長から、自主保安というようなことばが言われましたが、これは内容がちょっと私よくわかりませんけれども、私どもは、いまの保安の問題はもう経営者にまかせておくわけにはいかないのじゃないか。従来の例からいいましても、保安を確保する確保すると何回も言っておきながら、また、政府のほうもそういうことをたびたび言っているわけですけれども、結局のところ、先ほど御指摘のあったように、重大災害が続発するというような状態が一向に改まらないわけですね。私どもは、やはり坑内で実際自分の命をかけて働いている労働者こそが保安の問題については最も重大な関心を持っているというふうに考えざるを得ないわけです。したがって、保安の点については、労働組合中心として、これに技師その他の必要なメンバーはもちろんそろえるわけですけれども、自主的に保安をするような保安についての対策を立て実施するというような組織をつくるべきじゃないか。そして、また、労働者も、危険だということを察知した場合には、職場を放棄して生産もストップできるというような権限を十分与えられてしかるべきじゃないかというふうに考えておりますが、その点で山本参考人大槻参考人の御意見を伺いたいと思います。
  82. 大槻文平

    参考人大槻文平君) これは、山元には保安委員会というものがございまして、その保安委員会には組合のほうからも入っていただいております。それは常駐の人もおるわけです。したがいまして、常時、経営者側と組合側と相協力しまして、坑内の巡視、点検その他をやっておるわけです。そして、また、大きな保安設備等につきましては、それぞれ一月一回とか二回というふうに保安委員会を開きましてそこで十分検討しておると、こういうふうな実情でございます。
  83. 山本忠義

    参考人山本忠義君) いまの企業の場合、保安のウェートというのは、やはり企業責任の中にあるということを強調しているわけです。生産計画をつくったりなんかする場合といえども保安がなければこれは達成できないぞということで、自主保安の確立をどうしてもしてもらいたい。保安監督官から注意されたら直すとか、あるいは監督官のほうから何か言われたら、その意見を取り入れると、こういうケースがいままで間々多いわけですから、そういうことではなしに、経営者みずからがやるということをもっともっとこれはやってもらいたい。そういうことを組合としては絶えず主張を続けてきております。  委員会制度のこと等については、炭労傘下の場合は大槻さんからおっしゃったことでございます。安全委員というのが職場にございますし、それから保安委員という専従者も置いております。しかし、なおかつ災害が絶えないという面は、そういうところに基因するところがあるのではないかと、こういうふうに思っております。  それからもう一つは、これは方針上のことでございますが、それと現場の実情と当てはめてすぐ応用動作がそうきくかということになりますと、そういうことをすることによって危険を誘発するというようなことがあってはならないという面も慎重に働きますが、職場放棄の点ですね、私どもは、安全なければ労働なしと、あるいはまた、危険な職場に行っては、まず先に係員にガスの状況であるとかいろいろな状況等について聞いて納得した上でやりなさいと、こういうふうには言ってはおりますが、なかなか徹底しない面があるのでございます。これは労働者のほうの弱点ではありますが、反省を十分しておりますけれども、やはりここでちょっとかせがぬと賃金が安くなるというような面も働く場合もあるので、そういうことについては、自分の命が一番大事なんだからそんなことのないようにしなさい、それからあぶない個所等については監督官や組合のほうに一々知らしてください、そういうことで組合のほうの対策も立てられますから、こういうことでやってきている実情であります。
  84. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほど、閉山交付金について、一般債務負担について御質問がありましたが、私、その御質問にのっとりながら一つだけ伺いたいと思うのです。それは、私、数日前に筑豊炭鉱実情を調べに行きました。そこで、文房具屋さんとかその他の非常に零細な企業が、炭鉱にいろいろ売り掛け金を持っておって、そうして今度閉山になってどうなるだろう。田川などは、六つばかり残っておる山が、おそらく全部つぶれるだろうというような状況になっているわけですね。地域の中小企業は、非常に大きな打撃を受ける可能性を持っておるわけです。ところが、銀行などの債務は優先的に肩がわりされるし、それからまた担保など入っている企業はこれまた優先的に債務の償還があるらしい。ところが、五百万円とか一千万円とかいうような零細な売り掛け金を持っている中小企業ほどいままでの例でも踏み倒される例が非常に多いのですね。したがって、閉山交付金について、こういう零細な企業ですね、私いろいろ様子を聞きまして、大体五百万円ぐらい以下のところは、優先的にその債務の償還を保証するというように政府努力すべきだし、また、企業側こそがその点特に留意して努力してほしいというように思うのですけれども、その点でのお考えはどうでしょうか。
  85. 大槻文平

    参考人大槻文平君) お話のように、そういう事実が出てきますことは、炭鉱とともにおった商人ですから、炭鉱とともにつぶれる人もおるということになるかもしれませんけれども、できる限りお救いをするような方法がとられるならばとっていただきたいというふうに考えます。
  86. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 参考人に対する質疑は、これをもって終わります。  大槻山本参考人におかれましては、朝来、委員質問に対しまして、まことに懇切丁寧、しかも忌憚のない御意見を述べられまして、ほんとうにありがとうございました。石炭対策に対しまする委員会の今後の態度等につきましても、たいへん参考になったと信ずるものであります。なお、委員長といたしましても、正午を過ぎまして一時、たいへん非常識な時間ではございますが、問題がたいへん重要でございまするし、今後に対する影響等も考えて、千載一遇の好機会でございますので、御迷惑も顧みず、かくて一時まで委員質問お願いしたわけでございまして、この点につきましては重々おわびを申し上げるものでございます。  両参考人の御意見は、今後当委員会といたしましても尊重いたしまして、できるだけ炭鉱石炭問題がいい方向に参りますように努力いたす所存でございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げるものでございます。  二時再開することにいたしまして、休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      —————・—————    午後二時二十八分開会
  87. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  88. 横川正市

    ○横川正市君 石炭対策について四十四年の一月十日の閣議決定のときですね、大蔵省と私ども委員会に最も関係のある項目としては、再建のための助成策に必要な金として新たに一千億の再建交付金を交付する、これが直接関係のある項目だと思うんですが、このことをお聞きする前段に、交付金を交付するというたてまえに立っての企業の内容その他の検討をした点で大蔵大臣に質問をいたしておきたいと思うんですが、四十一年の七月の抜本策、それから四十三年十二月の石炭対策答申と、わずか二年半余の期間の中で、石炭企業に対しての非常に大きな検討をした機会と、それぞれの次元に立っての答申を得ているわけなんです。その答申の中で、最初の「石炭鉱業の抜本的安定対策」を策定してから日ならずして「今後の石炭対策はいかにあるべきか」ということをきめることは、これはまあいわば前段の答申についての手直しということよりか、石炭対策としての取り上げ方についての根本的な問題点の将来を展望する場合に違いがあったんではないか。ひいては、この答申を得て再建交付金を新たに支出するというそういうたてまえをとるわけですが、じゃそれは日本石炭鉱業にどういう役割りを果たすという考え方で新たな交付金の額を決定されたのか、これは根本問題じゃないかと思うのです。午前中に石炭協会会長さんの意見を聞きましたが、抽象的には、石炭企業再建のために企業側としても非常に責任を持ったたてまえで取り組みたいということを言っているわけです。ところが、それを今度は見通しの上に立って聞きますと、あるいは、たとえば株価の値段が落ち込んでいるけれども、一体投資者の立場からどうなのかということを聞きました。それから労働力不足に対してどういう対策をするかという点を聞きました。さらに、石炭需要が他にかわるべきものがないというたてまえで絶対なエネルギー源としての地位というものを持っていかるどうかという、そういう点を聞きましても、満足な私どもが理解するような答えには実はならないわけです。なおかつ、前回に引き続いて新たな交付金が出される。しかし、将来この交付金はどういうふうな生かされ方をするのか、この点がどうもはっきりと私どもは承知することができませんでしたので、その点をひとつ金を出す側の意見をお聞きしたいと思います。
  89. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 四十二年の対策は、これは石炭鉱業のエネルギー資源の中の位置づけ、これに少し過大な期待が持たれ過ぎておったように私は思うのであります。つまり、出炭の目標額のとり方ですね、そういうところに問題があったように思うのです。ところが、御承知のように、石油エネルギーが非常な勢いでわが国においては迎えられるというふうな情勢、それに並行いたしまして石炭のほうの需要というものも当時と比べまして非常に大きな変化を来たした、こういうふうな状態になりました。内外のそういう情勢が、四十二年に立てました対策とどうも平仄が合うということができなかった。そこに私は四十二年度の対策がまた日ならずして変更されなければならぬということになった最大の原因があると思うのです。しかし、対策に金を使いましたが、それがそれぞれの目標に従いまして効果はあげておるわけでございますが、新しい事態に対しましてここで思い切ったほんとうの根本対策を立てなければならぬじゃないか、そういう時期に到来をいたしておるわけでございます。つまり、当時と比べますとかなり出炭の目標なんかも下目に見る。また、こういう際でありまするから、他のエネルギーと比べて経済的でないというような面におきましては整理をいたす。閉山、廃鉱等も伴うということをあえてここでやるべきものはやっていかなければならぬのじゃないか。そういう考え方のもとに、生き残れるものに対しましてはほんとう経済ベースで生き得られるようにその基盤を整えていく必要がある。それからまた、こうすればその基盤が整えられるのだという鉱業審議会答申が得られたわけです。石炭鉱業審議会は、申し上げるまでもございませんが、各界の権威の人が集まって、これ以上の対策はないし、これならばだいじょうぶだろう、こういうふうな非常に先々を見通した答申でございますので、全面的にこれを取り入れるということにいたしまして、これに伴う財政的な措置も大蔵省としては受け入れる、かように考えているわけであります。
  90. 横川正市

    ○横川正市君 いまの大臣の答弁なんですが、それじゃ具体的に石炭鉱業はどういうふうに再建をされるのかというそういう点から実は確信をもって説明されていないのじゃないかと思うわけです。  まず第一番目には、これは絶対要件になるのじゃないかと思うのですが、石炭が他にかわることのない地位というのですか、そういうふうな厳密な意味での石炭の地位といいますか、そういったものを明確にする必要があるんじゃないか。いままで、エネルギー源としては、たとえば電力であるとか、ガスであるとか、あるいは重油、石油であるとか、いろいろなエネルギー源というものがあるわけなんですが、それはそれぞれのシェアをもって、それぞれの特徴をもって、取り入れ者側の立場に立ってそれぞれ拡大をし、あるいはこの市場というものが拡大をしているわけですが、そういうエネルギー全体の中での石炭というものは一体どういう地位を占めておるのだろうか、この点のとらえ方がいささかずさんというんでしょうか、そういうものじゃないだろうか。これは、大臣、金を出す側ですから、金を貸すのにそういうことを全然調べないで金を貸す必要はないですよ。実際は通産省からそういう事情を聞きたいわけですが、しかし、私は、一面の問題として聞きたいのは、これはやはり税金を使うわけですから、それが回収不能になったり何かするというようなことのないように、定められた金の出し方については当然厳密な検査をしてもらいたい。  それからもう一つは、金を同じ使うならば生かして使ってもらいたいと思うんですよ。その場その場に適合した金は出すんだけれども、それはあとから振り返ってみるとさっぱり金が生かされて使われておらない、こういう金の使われ方じゃ問題があるわけで、そうでなしに私、は金を出すことにはいささかも反対をするものじゃないが、しかし、出した金は有効に使ってもらいたい。そういう点からお聞きしているわけなんですけれども、そうすると、一つだけとらえてみますと、たとえば、今日の石炭産業では労働力が不足して企業が非常に危険な状態だ。労働力を確保するということになりますと、どういう問題があるかというと、やはり、労働条件とか、賃金とか、厚生施設とか、たくさんの人があすこならばといって選んで就職を希望するというふうに、そこまでいかないまでも、現状よりか幾らかでもそれらの条件が緩和される、こういうところだが、それをやりますと、今度はコストの問題で他のエネルギーとの間に競合を来たしてくる。その関係が私ども石炭企業の場合には非常に大切な問題なんじゃないだろうかと思っているわけなんで、それをどういうふうな見通しを立てておられるか。労災にしても、あるいは生活環境にしても、実際には非常によくないんですよ。その中でなおコストというものを維持しながら他の商品と争わなければいけない、そういうたてまえをどういうふうに見られていくのかという点、これも一つ問題点だと思います。  それからもう一つは、日本の中にある唯一のエネルギー源としての石炭は、非常あるいは災害等のあった場合に、他にかえられないエネルギーとして確保をしておく必要というものはないのかあるのかという問題ですね。これは、たとえば何かの事件が起こりますと、国内貯蔵の石油というものは一カ月もたないだろうという場合に、日本にある企業が停止をすることができないから、急遽かわるべきエネルギーとしては国内で唯一のエネルギーにたよらざるを得ないというたてまえからの石炭というものは一体どういう地位を持っているのか、いろいろな点から私ども考える必要があると思うのですが、その点をどのようにお考えになっているか、これをひとつぜひお聞かせいただきたい。
  91. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 石炭は、申し上げるまでもなく、原料炭として日本産業として欠くべからざる地位があるわけなんです。その原料炭ということ、それからもう一つは、企業として採算がとり得る状態であること。この原料炭として欠くべからざる地位のほかに、そういう企業として採算がとれるというものについては、これはエネルギー源として活用しなければならぬというふうに考えるわけであります。そこで、それらの見地から、いま内外の環境は非常に苦しい立場にありまするけれども政府が抜本的な対策を講すれば将来自立し得ると、こういう見通しのある企業につきましてはこれを維持していくと、こういう考えのもとに審議会答申というものが行なわれていると、こういうふうに見ているのであります。  それで、災害があったというような場合の問題でありますが、これはもとより石炭エネルギーの中における地位というものは非常に狭小になっておりますが、しかし、それにいたしましても、そういう作用を総合いたしますときわめて大事なものであります。さればこそ、政府が援助いたしましてもできる限り原料炭を維持し、また採算可能な企業はこれを維持していきたいと、こういう考え方に落ちつくわけであります。かような多額の財政援助をいたしまして対策を講ずるゆえんもそこにある、かように御理解願いたいと思います。
  92. 横川正市

    ○横川正市君 これは、実は、速記録その他を読みますと、大半のことは論議をされているわけなんですが、その論議の中で、すれ違いとまではいかないのですけれども石炭産業というのは一体どういう地位を持っているのかという、その点が明確にされておらない。いま、原料炭、それから採算のとれる範囲内におけるところの石炭の必要性という面、あるいは非常な場合におけるところのエネルギー源としての必要性、そのための基盤の強化というふうに、抽象的にあげられるわけですけれども、さて、それを現実の状態から見た場合に、二つあるのじゃないか。一つは、石炭経営者の今日経営に当たっておられる姿勢といいますか、そういう点からの問題、もう一つは、それにしても他の企業の地位に比べてみると非常に低いという問題、この二つが石炭産業の中にあるのじゃないかと思うのですが、私たちの頭の中にあるのが現業の石炭というものを把握しておらないと言われれば、あるいはその指摘には頭を下げなければいけないと思うのでありますけれども、ただ、私どもの知っている範囲内における石炭というのは、戦後の絶対至上命令での必要性といいますか、そういう必要な度合いから逐次他のエネルギギーに転換するに従って、終戦処理的に石炭の地位というものがどんどん低まってきているので、その低まっているのにどう対策を立てるかという対策に終始しているのじゃないだろうか。そうではなしに、逆に言えば、石炭の地位というものを明確にして、そしてこれ以上は他のエネルギーに転換さすことは絶対できないんだという、そこが一体どうなんだという点を明確に知りたいわけなんですよ。たとえば、第二の問題として、コストの問題、採算性の問題から出ますと、電力にしてもその他のものにしても、どんどん他のエネルギーに転換される要因というものがあるのじゃないか、また、そのコストを低めておけば労働力不足で企業が維持できないのじゃないか、そういう心配をこの企業の中に持っているのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  93. 海堀洋平

    政府委員海堀洋平君) 御質問の趣旨は、石炭産業日本の将来のエネルギー政策の中でどの位置を占めるべきかというふうなお話だったかと存じます。御存じのとおり、現在の石炭産業というのは二つの面があって、一つ鉄鋼の原料としての原料炭と、それからいわゆるエネルギー源としての一般炭ということだろうと思います。  原料炭のほうは、先ほど大臣からも御説明申し上げましたように、国際的に見ましても、今後また日本の国内産業の面から見ましても、鉄鋼生産は相当量拡大をしていくであろう。しかも、国際的に見た場合に、原料炭供給というのは必ずしも現在の価格で十分に供給できるかどうかというふうな見通しについては、相当問題があろうかと存じます。この点につきましては、しかし、豪州とかその他いろいろ新たに開発されておりますので、将来の見込みというものは非常にむずかしいかと存じます。しかし、原料炭需要というものは、しかもその価格も、今後とも決して下がっていくようなことはないのではなかろうか。したがいまして、ある価格差であるならばこれをできるだけ維持していきたいというのが通産省はじめ政府としての立場ではなかろうかと存じます。  一般炭につきましては、御存じのように、日本エネルギー源の需要というものが最低急激に伸びておりまして、一般炭の持つエネルギーの中におけるウエートというものは急速に下がってきている。しかも、タンカーの大型化その他によりましていわゆる石油エネルギーのコストが急激に低下しておりまして、この傾向はさらに強まるのではなかろうか。したがって、その場合において日本の一般炭をどの程度に維持するかという問題は、単にその量の問題ではなくて、やはり価格がどの程度まで価格差があった場合にこれを維持することが妥当かという価格との相関関係にあるのじゃなかろうかと存じます。石炭鉱業審議会のほうでその問題を論議する場合に、政府の助成として現在考えられるのはこの程度である、遠い将来は別としてここ五年程度この程度の助成を前提として残り得る炭量あるいは出炭量、それが妥当な価格との相関関係では妥当な量であろう、こういうふうな答申であったと存じます。したがって、幾らでなければならぬかという絶対量をきめて一般炭について議論したのではなくて、ある価格との相関関係において存置し得る量というものでなければいけないのではなかろうかという考え方が答申の基礎に出ているのじゃなかろうかと存じます。その場合に幾らになるかということを答申は言っているわけではございませんが、一応通産省の試算等によりますと、五年後に総出炭量として三千六百万トン程度、その中で原料炭が千二百万トンをちょっとオーバーした程度のものということになりますので、残りが一般炭ということになるのだろうと存じます。しかし、それが、理論的に数量としてこれだけなければならぬとか、あるいはこうあらねばならぬというようなところから出てきた数量というよりも、やはり国家助成と価格、国家助成を必要とするのはコストがかかるからでございますので、その価格との相関関係で出てきた数字というふうに私ども考えております。
  94. 横川正市

    ○横川正市君 そういう点で、コストの維持といいますか、これは非常に強く内からも外からも要請されるということになりますね。コストがこれ以上高くなった場合にはどうだとかいう、その石炭の地位の問題に非常に大きな関係を持ってくるわけですね。そうすると、コストの要因をなしている一番大きな問題は、これはやはり労働力じゃないかと思うんです。出炭量は、午前中もちょっと論議がありましたけれども、三十三年から比較いたしますと、一人頭の出炭量というものは当時の三倍くらいですかね、三倍か三倍半くらいに生産率を上げておるわけです。それでなおかつ今日の状態ですから、個人に依存する出炭量というものはまあいわば頭打ちだろう。それからそれ以上ということになれば、これはやはり労働力を他に求めるということになりますから・その労働力を他に求める場合のいまの企業の事情は、コスト維持をしながら労働力を確保するだけの余裕というものがあると見るか、このままじゃやはり労働力は他に逃げるが確保することは非常にむずかしいと見るか、この点が一つあるのじゃないかと思うんです。これはどういうふうに見られているでしょうか。
  95. 海堀洋平

    政府委員海堀洋平君) 現在の石炭産業に従事する労務者賃金の高さという問題でございますが、これは午前中に大槻石炭協会会長のお話もございましたように、平均してみますとそう高いということではないと思いますが、直接ぜひとも必要な労務、特に坑内労務については、相当な配慮がされているというふうに会長からも御説明のあったとおりだと思います。今後、この労務を確保していけるか、能率を上げていくのは相当限界に来ているであろうから労務を確保していけるかという問題でございますが、この点につきましては、この前の対策のときにおける労務費の見方、あるいは能率の見方というものは、相当希望的なものが含まれていたというふうに考えられます。今回の対策自体がそれではどうであるかという問題でございますけれども、一応試算としましては、労務費につきましては年間一〇%程度の伸率で労務費は伸びていくであろうというふうに見ております。それから能率につきましては、これはまあ最近の実績を前提として無理のない能率向上というふうなことで見ておりますので、能率の向上自体にはそう無理はないのではないかというふうに考えられます。ただ、年率一〇%の労務費の上昇というものが、現在の日本経済の全体の労務費の上昇というものとの関係でどうであるかということになりますと、ことしの春闘の結果は一二%でございましたので、二%こえたといえばそのとおりでございます。しかし、それは能率との関連もございますので、能率の向上がその予定を上回ればそれは可能になってくるわけでございますので、そのとおりにいくかどうかというふうに聞かれますと、これは将来の問題になりますのですが、少なくともこの前の四十二年度からとりました対策のときとは違いまして、その後の現実的の動きを踏まえまして想定を立てているということだけは申し上げられるだろうと存じます。
  96. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、今度の答申に基づいて出された内容の中で労働力の不足に対しては対応できる、そういうたてまえに立っておられるということになるわけですね。たとえば、具体的に言えば、住宅が悪いから労働力を確保することが非常に困難だという一面がある。住宅をそれじゃ改善するということが、全くコストに関係なしに住宅を建てることができるか。そうすると、その企業その企業、山の事情で、ある程度改善できるところもあるし、全然改善できないところもあるというような、そういうありきたりの状態のままに推移をされるような条件を残しておいて労働力を確保することはできない。それじゃ確保するために住宅を直すかというと、それはコストの問題で直されないというような不都合が起こってくるのじゃないかということを、午前中、山の当事者からお話があったわけですが、金を貸す場合には、結局これは返してもらわなければいけないし、無利子であったって元金は返しなさいということになるし、そういうことは一つの最低条件であって、その条件にかなった山の再建というものはこれくらいしかできません、それでは労働力は確保できませんというような関係というものは全然ないかどうかという問題ですね。あるいは、もうほとんど医者が確保できない。医者を確保しようとすれば特別な給与を山で払わなければいけない。それもいまのような関係を持っているのじゃないか。そこで、そういったことを解決するためには、もっと具体的な何か底への力の入れ方といいますか、底力の援助のしかたといったそういったことがなければ、本来、石炭の現在の地位というものは、他の企業と比べてみて肩を並べていくことができないのじゃないかという点があるわけなんですが、その点はどういうふうに見ていられるのですか。
  97. 海堀洋平

    政府委員海堀洋平君) 私がいま申し上げましたのは、その採算の前提となります基本的な考え方を申し上げたのですけれども、今回の対策自体は、先ほど申し上げました前提に立ちまして、全部が全部現在の石炭の出炭規模を維持するという考え方に立っているのじゃなくて、この程度対策によりまして維持されるものが維持されていくという考え方でございまして、この対策効果というもの、いままでの対策を含めまして今回とろうとしている対策の効果というものは、いろんな計算のしかたがありますが、大体八百五十円から九百円程度というふうにトン当たりの対策考えられるわけであります。トン当たりいま山元で原価で四千円をたぶん割っているのじゃなかろうかと思いますが、それに対しまして八百五十円から九百円程度の助成というものは、他の産業において一これは損益の面でございますから、石炭対策費はほかにももちろん必要としますが、直接企業が受けるメリットというものが八百五十円から九百円程度というもので、しかも、山元原価が四千円にもならないものにつきましてそれだけの対策をとって、そして維持できるものを維持していこうという考え方に立っているわけでございます。直接労務の対策につきましては、先ほど申し上げましたような前提のほかに、住宅につきましては、石炭合理化事業団からの無利子貸し付けの道を開きました。これは、無利子であるけれども、返済しなければならない。もちろんそれは償却費としてコストに入ってくると存じます。そういった全体のコストをどの程度直接的な石炭企業への助成として見ているかと申しますと、いろんな対策で大体八百五十円から九百円程度のものを見ている。それが、労務者の確保が重要であれば労務者の確保のほうに重点が置かれるでありましょうし、機械化が重点であれば機械化のほうに重点が置かれますでしょう。それはその企業としての一番必要なところに必要なように使われていくということに相なるだろうと思います。したがいまして、労務者の確保が非常に重要でありますれば、住宅の改良に多額の金を借りてやっていくでございますでしょうし、機械化が重要である場合には、機械化にさらに重点が置かれるというようなことに相なるのじゃなかろうか。いずれにいたしましても、今回の措置を含めまして、石炭対策が直接の企業に与えるメリットというものは、トン当たり八百五十円ないし九百円余りということに相なっておると存じます。
  98. 横川正市

    ○横川正市君 通産省にちょっとお聞きをいたしたいんですが、いまの石炭の地位の問題と関連をして、最近の国内で主に使われているエネルギーの総体と、それから各占めているパーセントといいますか、これはどのぐらいで、それから石炭の場合に、大体これはコストから言ってみて、先ほどの説明ですと、労賃ですと一〇%、その他それに付随してある程度経費がかかるが、それでコスト計算をして、そのコスト計算から需要に支障を来たさない程度の年間最低採炭量といいますか、それはどういうふうに数量を踏んまえておるか、それをちょっとお聞かせていただきたいと思います。
  99. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 昭和四十二年度におきますわが国の一次エネルギーの構成比を申し上げますと、一番大きなウエートを占めておりますのは石油でございまして、これが六四・六、それから次に石炭でございますが、これが国産炭では一四・四%でございます。輸入炭を含めまして二四・六%でございます。  次に、今後の石炭供給の問題でございますが、今回の助成策によります対策効果を勘案いたしますと、今後五年の間に、漸次その対策のもとで、どうしてもやっていけないものが閉山を余儀なくされることはやむを得ないといたしまして、四十八年度に三千六百万トン程度の出炭が可能になるものと、かように考えております。この四十八年度三千六百万トンという供給をにないます企業につきまして、今後のコストの推移、あるいは資金調達の問題、各面から検討いたしまして、今回の助成策が原重油関税収入のワク内という前提のもとで樹立されている、かような次第でございます。
  100. 横川正市

    ○横川正市君 この三千六百万トンは、先ほど言ったように、原料炭あるいは一般炭と分けて、これはもう需要家側からすればぜひ必要な数量ということですか、それとも、何年か推移する間にこれは減っていくものなのか、その点はどういう見通しになっておりますか。
  101. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) まず、原料炭につきましては、一定の海外市価が保たれます限り、できるだけ多くのものを需要家は期待いたすわけでございますが、他面、賦存条件あるいは自然条件がだんだん深部採掘に移行するに従って悪くなっていく、コスト上昇要因というふうなものを勘案いたしまして、大体現状程度のものを今後とも確保してまいりたいということが現実的な考え方ではないか、かような結論でございます。  もっとも、今後の海外原料炭の需給情勢の推移いかんによりまして、非常に高くてもほしいというふうな状況が出てまいりますれば、また事情が変わってまいるかと思います。一般炭につきましては、重油との競合関係中心にいたしまして、現在でもかなり割り高な面があるわけでございます。こういった炭価を今後とも据え置いてという想定のもとで、今回の助成策によりまして、四十八年度におきましては、電力用炭は千九百万トン程度、またその他の一般炭といたしまして四、五百万トンというふうなものを想定した次第でございます。この程度供給によりまして需要家側のほうにさしたる問題はなかろうと、かように考えておるわけでございます。
  102. 横川正市

    ○横川正市君 それで、大蔵当局は、いままでに出された石炭企業に対する援助金というのですか、貸し付け金、それからこれから新たに出されるのですが、これの返済については、どういう予定をしているのですか。そのうちに閉山その他で買い上げ金と相殺するとか、あるいはこげつき資金となるとか、いろんなものがある程度のパーセンテージを予定しておかなければいけない問題もあろうかと思のですが、どういう形での返済を予定しておるのですか。
  103. 海堀洋平

    政府委員海堀洋平君) 石炭産業に対する従来までの貸し付け金のおもなものは、日本開発銀行からの設備資金の貸し付けが一番大きいものでございます。その次は、石炭合理化事業団からの整備資金の貸し付け、その他今度の鉱害事業団からの貸し付けというふうなものがあろうかと存じます。今度並びにこの前の対策におきまして、石炭産業の借り入れ金につきまして、元本ベースで第一次のいわゆる元利補給金契約と言っておりますので一千億円、今回の再建交付金制度によりまして一千億円を限度といたしまして、政府関係機関の借り入れ金、それからの市中からの借り入れ金、それぞれにつきまして、第一次のときには多少条件が違っておりますが、今回の再建交付金の場合には、これを期間十五年、金利三%というふうに全部条件を変更いたしまして、それにつきまして、第一次の場合には元利補給金の形で、今回のは再建交付金の形で政府がそれを肩がわって支払っていくわけでございます。この場合に、市中分はもちろん市中のほうに入りますし、政府関係機関から借り入れたものにつきましては、たとえば開発銀行にその金が入っていくという形になるわけでございます。これは十五年間でございますので、十五年たてば、その肩がわりした分につきましては、政府関係機関の金融機関といえども、当初予定した金利が入らないという面はございますが、一応完済される形になるわけでございます。  途中におきまして、その企業が、つまり十五年間という期間のたたないうちに石炭企業として石炭の操業をやめました場合には、これはまず担保のある分は、それぞれ市中も政府関係機関も、その担保によりまして元利の回収をはかります。はかりましてなお回収不能額が出ました場合におきましては、その回収不能額の二分の一を政府がすなわち特別会計が補償するということに相なります。したがいまして、政府関係の金融機関におきましても、そういう事態が起こったといたしますと、回収不能額の二分の一は欠損という形になろうかと思います。その欠損になりましたあとの処理につきましては、またそれぞれの政府関係機関の経理を規制している法律によって処理されることと相なると存じます。
  104. 横川正市

    ○横川正市君 こういうようなことはやってみたいという、得をするような面が一面にあるのではないかという気がしますが、結局、この金は、石炭企業の基盤強化のためにどういう形で有効に動いているのかという、その点の政府機関としての指導とか監督とかそういったところは、これは通産省ですか大蔵省ですか、どうですか。
  105. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 御指摘の点につきましては、石炭鉱業再建整備臨時措置法、あるいはその適用を受けません企業につきましては石炭鉱業経理規制臨時措置法という法律がございまして、法律の上では、通産大臣の権限といたしまして、これだけの国家の大幅な助成を受けております石炭企業の資産処分、あるいは投融資、あるいはまた利益金の処分といったような点につきまして、再建交付金を受けます企業の場合には、その前提として、通産大臣の認定を受けます再建整備計画実施に支障を生ずるような資産処分、社外投融資、利益金処分というようなことは一切させないという法律の規定に基づきまして監督をいたしております。
  106. 横川正市

    ○横川正市君 大臣、一番最初に答弁をいただきましたように、答申に基づいてこれはもう絶対に必要なもの、間違いのないものとして政府がさらに一千億の金を出す、こういう決定をし、しかもそれはきわめて確率の高いものだと、こういうふうに答弁をされたわけですが、いまの石炭関係の幾つかの東京証券の第一、第二の株価ですね、これはもう非常に大きな下落をいたしまして、まあ無配当が最大の原因で、同時に、無配当は、政府からの大幅な援助をもらいながら配当するわけにはいかないというような何かそういう考え方もあるようですが、私は株価でもって診断するわけじゃありませんけれども、少なくともこの株価が維持できる程度までの企業の健全性というのは期待できるというふうにお考えですか。
  107. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) むずかしい問題でございますが、石炭企業の場合、急激なエネルギー革命というような客観情勢変化のもとで経営上非常に苦況に立ってまいりました。そして、政府が漸次助成を強化し、今回また新しい石炭対策が講ぜられるに至ったということでございますが、石炭鉱業の配当に関しましては、そういった状況のもとで、大手企業の場合にはほとんど全部が配当を行ない得ないと、それから二社程度昨年度の上期まで配当しておりましたものもその後赤字で配当ができないというような状況に相なっているわけでございまして、今後、再建交付金というふうな一千億円を限度とします大幅な助成、あるいはまた安定補給金を全企業に出すというような状況下におきまして、利益金の処分につきましては相当厳正な態度で臨む必要があるわけでございまして、安定補給金の交付を受けますような企業の場合には、かりに今回の国家助成の画期的な拡大ということによりまして当座利益が生ずるようなことが出てまいりましても、さらに今後五年間あるいはその先というふうな長期的な見地に立ちます場合には、やはり社内留保を厚くし経理内審の健全化をはかっていくということで、とても当座利益が出ましてもそれを直ちに配当に回すというふうな状況にはないわけでございます。そういった状況からいたしまして、ここで長期的な観点に立って企業の経理基盤の改善強化をじっくりと企業としてもやってもらうべき状況にあると、かように判断いたしております。
  108. 横川正市

    ○横川正市君 私は、だから、企業の体質の問題とか、それから需要の問題とか、エネルギーとしての地位の問題とか、いろいろな点から、一体石炭対策というものがきわめて妥当な対策として今度は出されたかどうかという点についてあわせながらお聞きしておるわけですが、ほんとうにこれが石炭企業再建となるかどうかという点については、確信ある答弁をいただいておらないわけであります。それで、これは直接大臣には関係ない、これは通産関係かと思いますが、私企業がいいのだということは、これはそれぞれ他の企業とも振り合わせてみればすぐわかることなんですが、少なくとも私企業でもたない状態になれば、その企業はやめてしまうか、あるいは、実はそれをもっと他に必要な度合いがあるのであれば、他の方法、たとえば公社とかその他の方法とかというのがとられなければいけないわけなんですが、いまのこのままでいけば、株の値段ですれば、ダウ式二千円を突破するというふうにほかの株価はどんどん上がっていって、日本経済のいわば上昇ムードを毎日見ているわけですが、その中でただ一つじゃないでしょうか、石炭産業だけが。ある程度鉄鋼あたりで、たとえば八幡とかなんとかは五十円台を行ったり来たりしているわけですが、基盤がそれとどうこうというふうに株の値段では判断がつかないにしても、しかし、石炭の場合には、太平洋炭鉱でたしか九円とか六円とかですね。株価なんというものじゃない、紙くずになってしまうとかというような状態になっているわけなんですけれども、そういう面から見ても、なおかつ私企業がいいのだということ、能率だとか企業だとかいろいろな面から見て私企業がいいというふうに判断されるのかですね。これは他の方法ということじゃないのですが、いまいろいろ聞きました問題点で言っても、私企業がいいのだという点はさっぱりなくて、私企業なるがゆえにもうとたんに経営がうまくなくなってきているのじゃないかというような点が出ているように思えるのですけれどもね、これは監督官庁ではどういうふうに見ているわけですか。
  109. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) その点につきましては、石炭鉱業審議会で昨年討議が行なわれます過程におきましても、いろいろな考え方を突き合わせながら討議が行なわれたわけでございますが、エネルギー革命のもとで非常に苦しい経営状態に石炭鉱業がなってまいっておることは事実でございますけれども、そういった状況のもとであくまでも企業として創意工夫を発揮し、労使一体となって最大限自己努力をやっていく、そういう企業の自己努力と並行して、国としてもこの際思い切った助成策を講ずる、こういうことによって石炭鉱業の長期的な再建の基盤づくりをやっていくのが一番適当である、かような結論で答申が行なわれたわけでございます。通産省といたしましても、そういった答申を受けまして、経営者企業努力というものをこの際十分に要請いたしまして、そして国の大幅な助成をこの際生かして、労使一体となって石炭鉱業を再建路線に乗せるように、せっかく努力をいたしておるところでございます。
  110. 横川正市

    ○横川正市君 あのね、努力をしていることは認めるし、一番最初に言いましたように、金を出すことも私どもは賛成なんです。だが、普通ならば、たとえば設備投資をして、それが生産に稼働していく、そして収益をあげていくというふうに、使われる金は次にはやはり一つの利潤とか生産とか能率とかいろんな点にプラスになってくることが有効な投資の姿だと思うんですよ。ところが、石炭の場合には、一体、そういう形での投資かどういうものなのか。これは、四十一年の答申に基づいて抜本策と出たものも、一年半で改定された。ことしのこのものも、一千億を出すが、はたしてどうか。これはまあ大蔵省で資金回収は確実だなんて言っても、ちょっと言えないのじゃないですか。それからたとえば閉山とかなんとかのときに、そういう運命にあるものは、やはりある程度こげつき財源で損金扱いにしていってしまわなければいけないような、そういう石炭企業の運命みたいなものですね、それに活を入れていく抜本策はいまのこのままでいいでしょうかということは私どもとしてはやはり聞いておく必要がある問題だと思うんですがね。これはどうですかね、大体生きて金が使われるんですかね、いまのこの答申に基づいて。
  111. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) 前回の抜本策におきましては、一千億円の肩がわりを中心対策を講ずれば四十五年度には石炭鉱業全体として再建できる、そして出炭規模五千万トンを維持できる、かような考えであったわけでございます。その後、客観情勢変化等によりまして、賃金その他コストの上昇が対策の中では七%程度でおさまるであろうと、かように見ておりましたのが、四十三年度には一〇%程度賃金上昇になるというふうなぐあいで、コストの上昇が予想外に自然条件の悪化と相まちまして高くなると同時に、能率の上昇も相当高く踏んでおりましたのがなかなかそういかないということで、コストの上昇と生産性の向上の関係が非常に大きな狂いを来たしたわけでございます。今回の石炭対策におきましては、そういった前回の経験を踏まえまして、非常にかたい計画を基礎にいたしまして対策が講ぜられているわけでございまして、今度の対策によりまして生産規模はある程度減少するのはやむを得ないといたしましても、残る企業につきまして、各種の助成効果と相まちまして全体として石炭鉱業の再建は可能である、かような判断でございます。
  112. 海堀洋平

    政府委員海堀洋平君) 先ほどちょっと私の申し上げたことで誤解があるのではないかと思いますのは、従来まで政府からは石炭鉱業に対して貸し付けていなかったわけでございまして、貸し付けておりましたのは、先ほど申し上げましたように、開発銀行—おもなところを申し上げておるわけでございますが、開発銀行と石炭合理化事業団から借り入れ、で、市中銀行からももちろん借り入れたものでございます。それをどういう形で処理をしたかといいますと、第一次肩がわりいわゆる元利補給金で一千億の元本、今回の再建補給金で一千億を限度としてその元本、これを十五年間で肩がわりをしていく。これは返してもらうのではなくて、それは代位弁済をして、その弁済によりまして政府関係機関等がその分を回収するというふうに申し上げたわけでございます。今後こういう事態をなるべく避けるようにということで、今回から特別会計から石炭合理化事業団に出資いたしまして、それを無利子で貸し付ける。したがって、従来の開発銀行が主として負担しておりましたあるいは貸し付けておりました設備資金を無利子の貸し付け金に切りかえた。しかも、その資金源は、特別会計の原資によっておるということでございます。したがいまして、今後は、主として特別会計で全体として貸し付け、あるいは補助という形でめんどうを見ていく形になるということを申し上げた次第でございます。
  113. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっとやりとりがその点が何か不十分で妙に聞こえていましたが、そういうふうに理解をしています。ただ、私は、いずれにしても、関税からあがってくる金の一つの使い道ですね、そのことが有効に使われるならばということを考えながら、実際には有効かどうかという点を非常に疑問に思っているわけなんですが、そこまでやってなおかつ私企業というのはどうかという点もあるわけなんですよ、実際は。その返済の方法まで手厚い方法を講じてやって、さて企業は一体どうなるのか。まだまだたくさんな問題点があるんじゃないか。いろいろな点から考えてみて、私企業として一体いい点は何ですか。私企業であることが石炭企業の特徴として何かあるんですかということを実は聞きたいわけなんですが、これはそこまではなかなか答弁をいただけないですが、ただ、再建の助成策としてはというこの各論の中に出ておるのですが、これは最終のものであるというふうに言われていますね。それからその最終のものだということは、結果的にはこれはもしもという場合にはどういうことになるのですか。そのときにはまた別途対策を立てるということになるのですか。この案に対して再建交付金としては手厚い援助としての最終のものであるというふうに意思表示をされている。その辺はどういう意味なのか、お聞きをいたしたい。
  114. 海堀洋平

    政府委員海堀洋平君) これは石炭鉱業審議会が長期間をかけまして答申をいただいたわけでございますが、従来の答申と一番違います点は、少なくとも今後うしろ向きの施策をとることはまず考えなくてもいい形になっているという点が従来の施策とは違うのではなかろうか。そこまで申し上げていいかどうかわかりませんが、さっき午前中の石炭協会会長のお話にもございましたように、石炭の現状から見ますと、市中から営利的な観点で金が出てくるというふうなことは期待薄であろう、そういうことを踏まえてすべての施策がとられている。したがって、今後の見通しは、通産大臣もこのあいだお話のございましたように、絶対にこれでもう十分なんだということは事態の推移等によって言い切るということにはむずかしい問題があろうかと存じますが、少なくとも今回のような再建交付金制度というような形で過去の債務政府が肩がわりをしていく必要が生ずるというふうなことがないという意味で、今後新規な施策をとるにしても、いずれにしてもそれはその後に対する措置としてとればいいということで踏み切ったという意味で、ある意味で最終的な対策考えていただいていいのじゃなかろうかと存じます。
  115. 横川正市

    ○横川正市君 通産省の長橋さん、労災とか、厚生福利とか、災害とか、それから保安とか、いま幾つか石炭問題と関連して重要課題があるわけですが、これは今後の施策の中にそれぞれ新しい意味でいわば抜本策を取り入れた内容になるのかという問題ですね。このあいだちょっと戸田委員からも質問をされておったのは、茂尻は天災だと、あるいは人災だと、立場が違えば天災になったり人災になったりするわけですが、私は、炭鉱の中にそういうような災害が起こり得る可能性が、これは人災にしろ、天災にしろ可能性というものがあって、それで企業安定というのはむずかしいのじゃないかというように思うんですよ。だから、そういう点では、今度の場合には相当思い切った処置——といいますか、非常に不思議だと思うのですが、監督、保安をされた責任者なんかの場合であっても、人力で及ばなかった問題は天災と言ってしまいそうな点が強いのじゃないか、もっと何か具体的にそれらの問題を防止する策がないかどうか、これは保安問題に考えられないかどうかという問題ですね。  それからもう一つは、午前中もちょっと私聞いたんですが、自動車事故でさえ個人が一生台なしにするほどに補償措置というものが講ぜられる。企業だからその補償がのがれられるというのもこれはおかしいわけですね。個人ならば災害の補償をし、企業はもうきめられた最小限の補償でいいというようなことはおかしいんで、一体その補償関係はどういうふうに変わってくるのか。  それから具体的にいえば企業の能力でいろいろ行なわれるわけですけれども、しかし、金が生きて使われるか、労働力を確保するのに万全を期しているのか、企業経営にむだがあるかないかとか、これからいろんな点で関心事になるわけですが、それらに対してどういう策をとっていくのか。いずれにしても、私は、このどたんばに来て最終案を示されて、これに期待するところが大きいという立場に立ってみて、そういう問題がどう解決するか、お聞きをいたしておきたいと思います。
  116. 長橋尚

    政府委員(長橋尚君) まず、保安確保の問題でございますが、これは今度の新石炭対策におきまして保安対策が非常に重要項目として取り上げられておるわけでございます。まず、再建交付金の交付を受けます前提として、各企業が策定いたします再建整備計画におきましては、この際、特に保安確保に関する計画を独立の項目として策定を求めることにいたしまして、およそ長期的な観点から保安確保のめどのないようなものには再建交付金を交付しない、こういうふうなたてまえで臨んでいるわけでございます。そのほか、補助金の面におきましての保安につきましては、一般の安定補給金と別個に、特に特別の保安のための補助金を本年度は十四億円前年度に比べまして増額をいたしたような次第でございます。  それから災害補償の問題でございますが、もとより労災保険の給付金の問題が一つございます。けさほど参考人から述べられました問題は、災害が起こりました場合に当該企業として罹災者ないしその遺族に差し上げる補償金の問題でございまして、それが昨年度の労使協定におきましては百三十万円で今後二カ年間ということで取りきめられたのでございますが、最近の事故におきましては、大手企業の場合、実行上二百四十万円程度が死亡の場合に支払われている、かようなことでございます。  労働力確保の点につきましては、住宅整備、あるいは賃金条件の改善というふうな面で今回の石炭対策の中で取り上げておりますことは、先日来申し上げておるところでございます。なお、企業経営をできるだけむだなく、能率的に各企業に行なってもらうという辺の問題でございますが、この点につきましても、冒頭、保安に関連して申し上げました再建交付金を受けます企業が、その前提として通産大臣の認定する再建整備計画におきまして、今回は特に管理部門の簡素化、合理化というふうな辺に重点をおいて企業経営刷新計画を求める方針で考えております。
  117. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 本案の質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時三十九分散会      —————・—————