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木村禧八郎君
国鉄が今後生きる道は、結局、貨物に重点を置いて、そうして長距離輸送、これはどうしても
国鉄でなければできない。短距離はトラックその他です。その場合、どうも
大蔵大臣はかなり楽観論を言いましたけれども、この中から自然に
競争力がついてくる、そういうようなことが頭にあって楽観しているのじゃないかというふうにちょっと思ったんです。というのは、このままほうっておきますれば、もう自動車は行き詰まりですよ、トラックだって。それで、長期的な
経済見通しについても伺いたいが、これはこの前提にならなければなりませんから、大体、三Cというのは、三Cがいままでの日本の景気をささえておりますけれども、一九七一年ごろもう頭を打つのじゃないか。ことに、自動車は、このまま
政府が道路建設をほうっておけば、ますます道路が狭くなり、自動車は過剰であり、そうして能率は上がらないでしょう。
国鉄のほうがよっぽどよくなりますよ。そのときに、それじゃ今度は自動車に重点を置こうとして道路に投資をしようとすれば、ものすごい投資なんです、金額は。そんなら
国鉄のほうに投資したほうがむしろいい、ことに長距離輸送については投資の効率から
考えた場合ですよ。そういう今後の輸送事情の変化はもちろん前提にして
考えられていると思うんです、いろいろな
専門家も
委員になっておりますから。それと、もともと陸海空の総合的な輸送体系というものももちろんあるわけです。その中での
国鉄の位置づけということを、貨物を中心に長距離
——イギリスには、私は文献で読んだんですけれども、短距離については地方自治体に
負担させたらどうかという
意見もあるようですが、これは日本では相当問題になるでしょうね、その点は。しかし、諸
外国ではそういう研究もある。すぐ日本では適用できないですがね。
そうなると、その金をどうするかという問題が一番重要になってくるんですが、どうしても
運賃値上げなんというけちなことではとても追いつかないんで、三位一体だから
運賃の値上げも必要だというんですけれども、
旅客運賃で全部カバーするなんて、
経済論理からいって不可能だと思います。私は感情的に言っているようですけれども、
経済法則的な
質問をしているんです。
経済の論理からいって、
運賃を上げて
競争力がつかなくなればどうするんですか。だから、しろうと
考えでは、貨物
運賃は独占に奉仕しているんだから、けしからぬ、貨物
運賃を上げたらよさそうなんです。われわれもそうさしたいのだけれども、そうしたら
競争力が低下して収入が減っちゃうでしょう。そんな単純に貨物
運賃は上げられませんよ。それじゃ、実際どうしたらいいかというと、貨物
運賃を上げないかわりに、低貨物
運賃で利益を得ている大企業のほうから
税金を取って、それで
一般会計から
国鉄へ回すという方法です。そういう方法より実際問題としてないんです。それで、
運賃値上げなんていうけちなことを
考えるな。九百十億なんてけちですよ、こんなもの。ことに、
旅客運賃は、
運賃を上げたから
国鉄が、
再建できるのじゃないんですよ。
運賃なんて、ふえても小さいです。こんなことをやっても
国鉄は
再建できませんよ。ですから、ほんとうに長期的な観点から
国鉄の
再建を
考えるならば、もっとほかに
競争力をつける。ことに、貨物輸送について、長距離ですよ。それにはものすごい投資が必要なんです。その
財源をどうするか、資本をどうするか、その資本の調達のしかたですね。当面は、
政府も三位一体でちょっぴり
負担する、それから受益者
負担の原則で
旅客の
運賃を上げてそれでカバーするというような
考え方です。しかし、その
旅客運賃を上げても、そちらの
競争力がつかなくなる、
一等を廃止したことでもはっきりわかるようにね。
運賃を上げることによっては不可能なんです、
経済論理からいって。昔の、
国鉄の
独占性が強固であったときは、それでよかった。
旅客の
増収をもって貨物の赤字を埋めたんです。いまそれが不可能になっているんです。だから、
運賃を上げることによって
国鉄再建をはかるということは、これは
経済論理からいってもだめなんです。だから、もっと大資本のほうからいわゆる受益者
負担の原則、ほんとうに
国鉄によってうんと利益を受けている、あるいは道路によってうんと利益を受けている、
国鉄側のほうの建設によりまして非常に地価が上がる、工場なんかでも非常によい、そういうところからいわゆる
税金を取るべきですよ。そうした
財源でやるべきだ。
運賃なんかというのは、これはもう下の下ですよ。むしろ
経済論理からいっておかしいですよ、
競争力が低下しちゃって。私はそういう着想なんです。そういう着想でいかなきゃならぬし、これは私の思いつきじゃありませんよ。世界的な趨勢ですよ。日本より先進諸国はそういう方向へ行っているんですから。これはまあ社会主義になって計画的な
経済になれば別ですけれども、いますぐそうはなりませんから、いまの資本主義体制のもとでさしあたり
考えるとするならば、まあ五年くらいまだ革新政権はできませんからね。(笑声)あまり長期に言うと、自信がないということを言われますから、せいぜい五年くらいがいいところでしょう。そういう形でがまんしますが、とにかく問題の所在をはっきりさせるべきですよ、国会で。ですから、私は、
運賃じゃだめだという
結論に到達したんですよ。それは単なる感情論じゃないんですよ。
経済法則からいってそういう
結論になった。ですから、今後の
国鉄再建は
運賃引き上げなんて、ことに
旅客運賃を上げて貨物の欠損を埋めて大企業に奉仕する、そういうやり方はやるべきじゃないし、またそれは成功しません。この点をどう
考えるか。
それから
大蔵大臣に伺いたいのですが、この
再建十カ年計画ですけれども、この前提となる日本の
経済をどう見ているかということも重要なんです。それによって
再建できるかできないかわからぬ。
大蔵大臣が楽観しておるのは、おそらく実質一〇%説ですね、そのくらいは成長が今後続くであろうと見て、その前提で
再建のことを
考えているのじゃないかと思うんですがね。それで公明党の鈴木君も
質問したようですけれども、新しい全国総合開発計画ですね。あれとの
関連もあるわけですけれどもね、総合的に。その点はどうなんですか。当面としては、また通貨不安なんか出てきちゃったでしょう。それからベトナム
戦争、これは私ども乏しい知識ですけれども、これはかなり近い将来に終息するという話ですよ。外交のほうは私はしろうとですけれども、
専門家に聞くと。そうすると、今後の世界
経済というものはかなり流動的になります。流動的というより、かなり激動的になってくる、為替調整の問題も起こってくると思うんです。これではマルクの切り上げだけでは済まない。そうなれば、いままでのような日本の
経済の実質一〇%以上の成長というものは、そう楽観的に
考えていいかどうか、これは相当問題だと思うんですよ。そういう点について、これの基礎になる日本
経済の、それから
物価についても、さっきの
私鉄とか
バスとか
航空機も上げなければ
国鉄の
再建はできないんですよ、実際問題として。
運賃引き上げによって
再建をはかろうとするそういうたてまえからいけば、ほかの
物価もどんどん上がってくる。これは重大な問題になるんですね。
国鉄運賃値上がりが家計に響くなんという問題じゃないんです。それはもう重大なんですよ。重大なんですけれども、ほかの
私鉄運賃なり航空なり
バスなりを上げなければ
国鉄は
再建できないんですよ、
競争力が低下しちゃって。だから、どうしたって上げざるを得ない。ところが、さっき伺いますと、これは三回くらい上げる。二回に必ずしもとらわれないというでしょう。二回上げていく。また、ほかに、
バスとか
私鉄とか
航空機も上がっていく。そして、また
国鉄を上げなければならぬ。悪循環になってくる。そうなると、実際に検討すればするほど、
国鉄財政の行き詰まりの原因が非常にはっきりしているだけに、これはたいへんな矛盾なんですよ。たいへん大きなジレンマ、矛盾ですよ。この矛盾を解決するのに
運賃値上げでやるから、ますます悪循環的に深みに入っていく。どうしても論理的にそうならざるを得ないですよ。その辺をはっきりさせなければいけないと思うんですが、いかがですか。