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1969-05-09 第61回国会 参議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月九日(金曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      高田 浩運君     大竹平八郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         丸茂 重貞君     理 事                 青田源太郎君                 岩動 道行君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 田渕 哲也君     委 員                 伊藤 五郎君                 上田  稔君                 大竹平八郎君                 鬼丸 勝之君                 小林  章君                 後藤 義隆君                 中山 太郎君                 西田 信一君                 藤田 正明君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 木村禧八郎君                 田中寿美子君                 野上  元君                 松井  誠君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        運 輸 大 臣  原田  憲君    政府委員        大蔵政務次官   沢田 一精君        大蔵省主計局次        長        海堀 洋平君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  山口 真弘君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵省主計局主        計官       丸山 英人君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○通行税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、高田浩運君が委員を辞任され、その補欠として大竹平八郎君が選任されました。
  3. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 通行税法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。木村君。  速記をとめて。   〔速記中止
  4. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 速記をつけて。  暫時休憩いたします。    午前十時五十一分休憩      ——————————    午前十時五十九分開会
  5. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) これより委員会を再開いたします。  質疑を行ないます。木村君。
  6. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまでの質疑答弁を総括しまして、締めくくりの質問として三点にしぼってこれから質疑をしてまいりたいと思います。  その第一は、通行税改正税制との関係、それから運賃との関係、第二は、国鉄旅客運賃引き上げ物価財政との関係、第三番目は、国鉄運賃引き上げ国鉄財政再建について、大体この三点にしぼりましてこれから締めくくり的な質問を行ないたいと思います。  まず、第一は、通行税改正税制全般の問題との関連、それから運賃との関係なんですが、そこで、通行税につきまして、これまで各委員がいろいろ質疑いたしましたが、結論として、各委員から、この際、通行税は、戦時税であるから、その発生の歴史的経緯から見まして廃止してしまったらどうかと。あるいはまた、ある委員からは、国鉄運賃が高いということは、昔の国鉄と違って、自動車とか航空機との競争力が低下してきた。国鉄独占性が失われてきている。昔のように国鉄独占性があった場合には、運賃引き上げることによって増収になったけれども、運賃が上がったからといって必ずしも増収になるとはいえないと。昭和四十一年がいい例であって、あのときの運賃引き上げによって定期以外の旅客運賃は減少しているんですね。そういう例もあるわけです。財政制度審議会報告を見ましても、昭和四十一年に運賃引き上げによって旅客の数が減ったということは注目すべきことである、そういう報告をしておりますよ。そこで、この通行税関連して、国鉄運賃が高くなるということは、民間バスとかあるいは航空機等との競争力が弱まるわけですよ。民間のほうの航空機、あるいはバス私鉄運賃を上げるなら別ですよ。これはまたあとで伺いたいが、上げるなら別です。しかし、そういうものを上げないとすれば、国鉄運賃割り高になるのですから、競争力が低下する。そうなれば、通行税を廃止すれば、それだけ——これは非常に大きな競争力増強にはならぬとしましても、国鉄のいまの財政が行き詰まり、赤字になった最も大きな原因は、競争力の低下、独占性が失われてきたというところにあるわけですから、そういう面から見ると、やはり通行税はこの際廃止したほうが、国鉄競争力を若干でもつける上から妥当ではないか、こういう議論があるわけですね。ところが、政府は、これに対して、いやそうじゃないんだと。この通行税というのはシャウプ税制改正以前においては戦時税であったけれども、シャウプ税制改正以後においては奢侈的な税金になっているんだ、負担能力のある人に税金をかけて、一般直接的消費税といいますか、そういうものと同じに考えている、税収も約百億近くある、これはいま廃止することはできないと、こう言っているわけですよ。  そこで、そういう議論もあったのですが、私としては、やはりこの際通行税を廃止すべきじゃないかと思うわけです。なぜ廃止できないか、それについては非常に疑いを持つ。第一は、通行税を温存しておいて、またいざ戦争のような場合、非常事態——これはあってはならないと思うんですよ。ならないけれども、諸外国でも戦争遺産としてこういう大衆消費税が相当残っているんですね。流通税なんかも残っています。これは戦争遺産なんですよ。そんなことをこれから日本はまねする必要はないのであって、むしろそういうものは廃止していくべきだと思うけれども、どうも、大蔵大臣は、これからの税制から見ると、所得税がウエートが多くなり過ぎるのじゃないか。そこで、所得税間接税とのバランスをとる上からも、これからは何かいい対象があれば、取引高税とか、売上税とか、あるいは、あと質問いたしますが、専売のいまの納付金消費税にするとか、そういうような消費税を温存し上げていきたい、また、新しい消費税を創設したいという考えがどうもあると思うんですよ。ですから、もしそうでないとするならば、戦時税をまた復活するということはとうていあり得ない、そんなことはないというのならば、これは廃止されたらどうですか。百億は相当の税収だと言われますけれども、政府当局は、あるときは相当の税収であると言い、あるときは大したことないと言う。四十四年度は一兆二千億の自然増収でしょう。百億の通行税をやめることによって、国鉄競争力が若干でもついて、そして国鉄財政再建に若干でもプラスになるならば、それ以上の効果があると思うんですよ。それはプラス・マイナスをよく検討されまして廃止すべきだと思うのです。この点はいかがですか。
  7. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ通行税は廃止したがよかろう、こういうふうな御意見でありますけれども、その立論の第一として、これは戦時に始まった税である、こういうお話でありますが、これは私は非常に感情的な議論だろうと思う。これは冷静に考えてもらいたいのです。冷静に現在の通行税というものを見れば、負担能力のある人に負担をしてもらう、こういうまさに税のあるべき本質をとらえた租税体系一つである、こういうふうに思います。さらに、これが将来戦争のある際に拡大されるその準備みたいなことをおっしゃいますが、これは私ども全く夢にも思わないような発想の考え方でありまして、そんなことは全然考えておりません。通行税を将来戦争財源に備えるために存続するのだというような見方をする人はよもやあるまいと思うのですが、そういうようなことを考えますと、そういう見方は当たらないのじゃないか。  それから第二は、国鉄競争力影響があるというようなお話でございますが、これは税込みで料金をきめております。それで、競争ということを十分考慮しておるわけでありまして、支障はありません。間接税については将来また検討しますが、いまここで廃止するわけにいかぬ、これが私どもの考えであります。
  8. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通行税を廃止しなくても国鉄再建支障がないと言われましたが、しかし、この前の他の委員質疑に対しまして、これは野上委員質問に対しまして、もし通行税が廃止されれば、その範囲においては国鉄のいわゆる競争力増強にはなると、そういう答弁だったんですよ。ですから、こんなに国鉄再建が重大な段階に来ているんなら、とにかくもうあらゆる面から見てできる限りの方策はきめ細かくやるべきであって、いま通行税がここに提案されていますから、この通行税も廃止することによってそういうプラスになるなら私はやるべきだと思う。ところが、大蔵大臣はやる意思がない。通行税を廃止する意思がないという最後論拠としましては、結局、これは負担能力のある人に負担させるんだと、これが最後論拠ですよ。戦時にまた復活することはとんでもない話だ。そんなことがあってはならぬと思うんです。そんなことはないけれども、非常事態にいざというときに復活されるおそれがないわけじゃない。過去の経験がそうでしょう。一時これは御承知のように廃止されたんですね、日支事変以前でしたか。一番最初は、明治三十七年日露戦争の軍費の一部支弁の目的で創設された、これが始まりですわね。その後これは廃止されたんですよ。大正十五年三月に租税負担均衡上の理由から廃止された。これは大衆課税で三等にもかかっておりましたから廃止されたんですけれども、その後、昭和十三年になって支那事変軍事費財源として再び特別税の一環として復活した。そうして、あとでこの支那事変特別税が廃止されますと、再び特別の通行税として制定された。こういう経過があるのです。こういう歴史的な経過がなければ、こんな質問はしないのです。それから諸外国においてもそうなんです。この税は取りいいんですよ。ですから、私は、温存しておけば、いつかこれがまた取りいい税金ですから復活する、これは廃止するわけじゃないので、またもとどおり拡大されると思うわけですけれども、最後大蔵大臣とわれわれとの意見の違いは、結局、大蔵大臣は、負担能力のある人にこれを負担させるべきだと、こうおっしゃるわけです。  それなら、私は、今度は一般税制との関連について伺いたいんですが、御承知のように、通行税は、国の一般経費を支弁する目的一般旅客から強制的に国庫に収納するものですね。それで、国鉄徴収義務者になるわけですわね。そういう意味で、国の一般経費を支弁する財源ですよね。国の一般経費を支弁する財源であるとなると、ほかの税との均衡があるわけですね。ほかの税のほうでは、負担能力のある人にもっと負担させなきゃならないものがたくさんあるのに、そっちのほうはむしろ逆に軽減しちゃっている。一番具体的な一つのいい例としましては、四十四年度所得税改正によりまして、高額所得のほうで、所得六千万円の人は、改正前では七〇%の税率、それが今度は六五%で、五%下がっているんですよ。六千万円超については、七五%が七〇%になった。高額所得のこういう人には負担はむしろ重くしていいと思うんです。ところが、そっちのほうではこういうふうに負担を軽減させる。あるいはまた、きょうからですか、税制調査会審議を始める。ここに諮問大蔵省はされると思うんですけれども、四十五年度の税制あるいは長期税制についても諮問されるかもしれませんが、新聞で伝えられるところによりましても、配当利子については来年三月に期限が切れますね。これを廃止するかどうか、財界はもう大騒ぎなんでしょう。配当分離課税なり、利子源泉課税ですね、これは分離課税にしておりますけれども、私は非常に不合理だと思う。その他、消費税についても、逆進課税といいますか、たばこでも酒でもこれは非常に不合理ですよ。ですから、負担能力のある人に多くの負担をさせるという論拠でこれを存続する理由にするということについては、どうも説得性が少ない。しかも、もっと割り切れないのは、いままでの一等運賃が今度は安くなるんですよね。そうして、二等の運賃は高くなるのです。これなんかずいぶん不合理だと思う、その負担能力説からいえば。一等が安くなる、なぜそうしなければならぬか。これは、資料をいただきましたが、そうしなければ、いまでさえも国鉄一等を利用する人が少ないのですから、これを今度上げたらますます利用者が少なくなるというので、これは廃止せざるを得なくなったと思うのですけれども、一等はうんと安くなるですね。この資料を見ましても、六千七百円が六千百三十円になる。ですから、負担能力論というのは、これはどうも税制全体がいまの資本主義税制においては不合理だらけだと思うんですがね。それにしても、通行税の存続に対する負担能力論というのは、あまり説得力がないですよ。一般経費をまかなう財源としましては、まだまだ負担能力論を言い出せばほかにうんと問題がありますよ、必ず過小見積もりをしているんですから。ある委員からも質問がありまして、高級織物その他には税金がかかっていない。そうでしょう、いそういう非常に不均衡があるんですよ。ですから、負担能力論説得力がない。そうすれば、存続する論拠がなくなってしまっている。ただ、問題は、百億の財源をどうするか。百億の財源がなくなるということと、これがプラスになる面、これを比較検討した場合、私はプラスのほうが大きいと思う。これは物価の問題にも多少影響があります。なるほどこれは国鉄にかけるのじゃないのですけれども、しかし、鉄道利用者には運賃と両方かかってくるのですから、両方の負担ですから、やはり運賃が高くなって、それだけ高いという感じですよ。これは一般物価にもそういう通行税だけ高いという影響はやっぱりあるわけですよ。しかも、百億でしょう。われわれからいえば百億はたいへんなものですが、国家財政はいま一兆二千億の自然増収がある。さらに自然増収がまだまだありますよ。四十三年には二千四百億あったのですから、百億というと二十四分の一です。あと三千億くらいありますよ。今年度は必ずありますよ。ですから、これは説得性がありませんから、いろいろな面から検討しなければならぬわけです。あらゆる面から検討し、それから各委員からもあらゆる面から質疑があったわけです。その最後結論としまして、これは税制調査会諮問されるかされないかわかりませんけれども、これはやめるべきじゃないですか。もし存続するのなら、私は提案がありますよ。たとえば、ロマンスカーなんて、なぜかけないか。あれは実体一等車と同じですよ。そうでしょう。ロマンスカーというのが箱根に行ったり日光に行ったりしているでしょう。実体一等車と同じですよ。それだのに、あれは一等車という名前を使わないというだけで税金がかからないんですね、私鉄資本に奉仕しているという形で。——そうですよ。そうじゃないというならかけなさい。かけるべきですよ。そうじゃなければ、あまりに不均衡ですよ。そういういろいろな非難が出ています。それからずいぶんいろいろな質問がありました、野上さんからも。マイカー族に道路をどんどん使わして税金をかけないのはおかしいんじゃないかという議論もあったわけで、不均衡論はたくさんあるわけですよ。ですから、そういう意味でこれは廃止すべきであると思うのですが、この点についてもう一度意見を伺っておきたいと思います。
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、税というものは、まず公平でなければならない、また、第二には、能力のある者に応じて徴収されるということでなければならない、それから第三には、徴収しやすい、あまり負担感を与えない形ということを考えなければならぬ、こういうことを常々考えているわけでございますが、どうも能力に応ずるという私が第二に申し上げました考え方、これを放棄するという考え方は妥当でないし、また、そういうことは考えておりませんです。これを通行税に当てはめて考える場合におきまして、国鉄の場合ですが、国鉄のとにかく一、二等は廃止にはなりますが、しかし、一等実体というものが残る。そのデラックスの施設とサービスに対しまして、高い料金を払ってもこれを利用しようとする方は負担能力がある。これはもう大きいと見て決して間違いはないと思います。そういう方に通行税負担を願う、これは、私は、税の理論からいえば必ずしも間違うところがないのではあるまいか、そういうふうに考えるわけであります。いま、木村さんは、これを所得税の本年度減税と対比して論ぜられましたが、これはちょっと飛躍があるんじゃないか。いま、直接税が多過ぎる、この問題がいわゆる負担感というような問題につながっておるわけであります。これに対して、何とかして負担感を軽減したいというので、いろいろな控除を増額する。その控除の増額というものが高額の者にも響いてくるという結果、高額所得者にも何がしかの影響が見られるという結果にはなっておりますが、私はいま経済発展の状況というものをずっと見ておりますと、直接税、特に所得税負担というものがだんだんふえてきて、国民にいろいろな感情を抱かせるような事態になるだろう。やはり、間接税というものは、よほどこれから考えていかなければならぬ問題である。そういうふうに考えるときに、通行税は、全体として百億円、国鉄とすればわずかなというか、二十五億円の問題である。しかし、だからといって、これをこの際廃止していこうということは、よほど慎重でなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。将来、間接税と直接税との関係、また、間接税の中における諸問題を検討する際に、木村さんのおっしゃることはわからぬわけではありませんから、よく頭にしまっておきまして論議してみたいと、かように考えております。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 運輸大臣、どうですか、国鉄サイドから。
  11. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 前提として、大蔵大臣意見不一致だといってあとでことばじりをとらえられぬようにお願いしておきますが、私はやはり取られぬほうがいいと思うんですよ、正直に言いまして。ただ、この問題でやはり内閣の中の一員として議論したわけです。それで、やむを得ないということでお願いをしておりますので、御質問にあいますと、いま大蔵大臣が税の主管者でありますし、大蔵大臣が言われたということで、私がよけいな口出しをすることは控えたほうがよい立場にある。しかし、私は、一、二等を廃止した、きのうも言ったように世界にないことをやったのですから、そこで、特別車両ということで実体は残っているということでございますが、もう一等がなくなったのなら通行税はやめてもらいたいというぐらいの気持ちは持っておりますが、まあ税を取るのなら、それだけ国鉄に対して  色はついておりません、これは一般のなにですからね。しかし、十分今後とも大蔵当局国鉄に対するところの援助、助成ということについて配慮を願いたい、このように思います。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは同感ですよ。私は、こういう質問をしましたのは、思いつきじゃないんです。運輸大臣もやはり根拠があって言われていると思うのです、いろいろ討議されたでしょうから。私は、今度、通行税審議するために、国鉄の勉強をしなきゃならぬので、いろいろ資料を集め、また提供してもらった。その中に「国鉄その財政的構造」という本があるんですよ。国鉄石川達二郎という方が書いた本で、非常に役に立ちました。この方が通行税について触れている。その歴史的経過をずっと述べ、最後に、「今日の社会生活における鉄道旅行の実態、生活水準の向上とこれまでの通行税本質とを考え合わせると、もはや課税根拠を失ってきているのではないかと考えられる。」と、こういう文献があるんです。いまの運輸大臣は、やはり国鉄のそういう専門の方といろいろ十分検討されて出された結論だと思うのです。ですから、あげ足は私はとりません。大蔵大臣、そういう考えもあるんですよ、大蔵当局に。ずいぶん議論されたのだと思うんです、国鉄の中で。火花を散らしてやったと思うんです。しかし、私も、もはや課税根拠を失っていると思います。特に、国鉄再建がいまこんな重大な課題になっているでしょう。運輸大臣が言われるのは当然です。少しでもそういうなにがあるのなら、そっちのほうへ回したらどうですか。これは議論になりますから、閣内不一致だ、意見がおかしいと、そういうあげ足をとって議論しようとは思いません。しかし、運輸大臣の所見にわれわれは賛成ですよ。そうじゃなければならぬのです。ですから、大蔵省も、大蔵省言い方だけが正しいというような言い方をしているですけれども、そんなものじゃない。もっといろいろなサイドから総合的に考え結論を出すべきだということを申し上げておきます。これは答弁は要りません。この点は、大蔵大臣は、前の答弁を引っ込めるわけにいかぬでしょうから。(笑声)  そこで、伺いたいのは、きょうから税制調査会が開かれて四十五年度の税制について諮問される。来年のことを問題にするとおかしいですけれども、いつももう諮問するときの段階において次の税制の骨組みはきまっちゃうんですよ。ですから、諮問する段階が非常に重要だと思います。そういう意味で伺っておきたいのは、来年は、たばこ専売納付金をやめて、たばこ消費税にこれを切りかえる、このことが検討されているんですよ。そうなると、いろんな問題が起こってくる。これは民営論にもつながってくる。諸外国では、たばこ消費税を採用している国では、たばこ民営のところが多いといわれておるのです。もし納付金消費税になると、今度はまたたばこの値上がりという問題も起こってくる。たばこの値上げというものが起こってくる可能性があります。そういう問題がありますのですが、大蔵大臣、来年は、いよいよ待望の、いままでずいぶん研究しておったようですけれども、納付金消費税化、これをやられるのですか。まずそれを諮問されるのですか。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 税制調査会に対しましては、そういう具体的な諮問のしかたはいたしません。時勢の変化に応じて税制はどうあるべきかという抽象的、一般的な諮問でございます。その点は、そういうふうに御了解願いたいと思います。税制調査会は、きょう会合をやりますが、当分の間、雑談、懇談、まあ資料集め、こういうことで推移する。それで、秋口ごろから具体的な諸問題を検討する。つまり、秋口になりますと、経済の先行きの見通しがはっきりしてくるであろう。いま、国際情勢が激動しておる。また、アメリカの経済がどういうふうに動くか、わが国にこれがどういうふうに反応してくるか、これの見通しが非常に困難であります。この困難な段階で固まった考え方を見出すことは非常に危険である、こういうふうに考えておるからなんです。  そこで、たばこ消費税の問題でありますが、これは消費税形態にいたしましょうが、あるいはたばこ価格改定にいたしましょうが、いずれも国会の御審議を経る問題であります。消費税にしたから税率引き上げが容易であり、あるいは、専売益金在来方式による納付金方式で置いたほうが価格改定がむずかしいか、その辺はどっちとも言えません。これはもう同じような状態だと思います。いま論議されている体制は、専売益金増収をはかろう、消費税形態でもって増収をはかろう、そういう趣旨じゃないんです。そういう趣旨じゃなくして、消費税形態にすると企業経理の合理化になる、こういう考え方でございます。納付金制度でありますれば、しりが抜けておるわけでありますから、これは、何というか、合理的、近代的な経理というわけにいかない。どうしても、使った、また収入があった、その差額が国庫に行くんだという安易な方式に流れやすい。それをためるためには消費税形態がいいのじゃないかというのが消費税採用論の論拠になっておるわけでありますが、実は四十四年度からそれを実行したらどうだという意見も強く出されておったんです。しかし、これは、いろいろ検討する問題が残っているから、まあ待っていようというので留保してあるのですが、九月ごろからの具体的な論議ですね、この時点におきましてはこの問題も取り上げられる、こういうことにはなろうと思いますが、結論をどうするかということにつきましては、いま見通しをつけておりません。慎重に検討いたしまして結論を得たい、かように考えております。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、四十五年度の税制改正結論はまだはっきり出ない、これから出る一つの大きなテーマになるということははっきりしたわけです。これを突き詰めていきますと、結局、企業努力を期待するという意味消費税形態にしていくというのですが、民営にすればもっと企業努力がなにされる。諸外国ではそういうところがあるでしょう。民営論というものも出てくる可能性も出てくるのじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。これは、また、いろいろ各方面に大きな影響が出てくると思うんです。たばこ耕作者にも問題が起こってくるでしょうし、それから地方自治体の地方財政に対してどうなるのですかね。いま二八・八%ですね、府県市町村に行くのでしょう。こっちのほうはどうなんですか。もし消費税にした場合、いま専売公社から地方自治体が二八・八%取っていますね、これはどういうふうになりますか。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま申し上げましたように、考え方とすると非常に大きな理由があると思います、消費税にするということは。ところが、これを実施するということにいたしました場合に、いま御指摘の地方との配分をどうするかというようなことはなかなかむずかしい問題なんです。おそらく、銘柄ごとに、中央では何%、地方では何%というような分け方をしなければならぬが、その分け方がまたなかなかむずかしい問題で、そういうような技術的な問題も、この問題がきわめて慎重な検討を要するという点の論拠になるわけなんです。その辺はよく検討してみないと、理論的にはいいが、実行でぶち当たる、こういうようなことになりかねないということを心配いたしておるのであります。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、通行税が国の一般財源一つとしての消費税である、その関連でいまたばこ消費税の問題を伺ったわけですけれども、これはそういうことが問題になっているということはやっぱり明らかにして各方面から十分に検討しませんと、ぽこっと出てきて知らないうちに——知らないうちと言っちゃなんでしょうけれども、十分検討が行なわれないまま実行されるということになると、これは問題でありますからいま伺ったわけでありますが、これからの大きな課題になると思います。  次に、もう一つ税制調査会の今後の具体的な課題として問題になるのは、何と言っても、来年度予算で問題になるのですけれども、例の配当利子、これは、大蔵大臣、どうしますか。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 非常に頭が痛いんです。あれは特別措置でありますから、特別措置としての考え方をしなければならぬ。しかも、来年の三月末にはその期限が到来する。何とかこれを再検討しなければならぬという時期に来ているわけです。この再検討にあたりましては、国会における御議論、またこれが経済社会に及ぼす影響、広範な立場から検討をいたしまして、適正厳正な結論を得たいというのが今日の私の姿勢でございます。まだ、この問題をどうするかということは、具体的に考えておりません。秋口からひとつ真剣に取り組んでいきたい、かように考えております。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、当面の通行税と直接関係がありませんから、あまり深く質問いたしませんけれど、まだはっきり結論は出ていないと言いますけれども、しかし、ずいぶん長い間の問題であって、前に長期税制に関する答申では、はっきりと、こんな不公平な税金はないと、これは早く撤廃すべきだという答申がなされているんですよ。あのころは田中角榮氏が大蔵大臣のときです、配当分離課税をやっちゃったでしょう。あのころの新聞の論説をごらんなさいよ。それから税制調査会委員はみんな反対ですよ、これは納税思想に悪影響を及ぼす、こんな不公平な税金はないと。ですから、もう結論は出さなきゃならぬと思うんですよ、早くですね。もう各方面の意見だって出尽くしておりますよ、世論としましては。大蔵大臣、やっぱり自民党のためにもこんな悪税はもうやめたほうがいいですよ。——いや、ほんとうですよ。これは大蔵当局だって困ると思うんですよ。納税思想はますます悪くなりますよ、ほんとうに。こんな悪税はありませんよ。全然働かない人、夫婦子三人で、二百八十二万七千二百円ですか、所得税がかからない。ただ、地方税が七万幾らだけですね。勤労者ですと四十八万ぐらいですか。事業者ですと五十何万ですか。もっとですか。今度は七十万ですか。こんな不公平なあれはありませんよ。何回も取り上げているのですから、もうこの際はっきりとやめて、元の二〇%の課税、総合課税にする、そこまで行くべきだと思うんです。これは利子についてもそうですね。踏み切る時期に来ているんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ秋口から真剣にこの問題に取り組みます。私の尊敬する木村先生の御意見はとくと拝聴いたしましたから、重要なる参考にさせていただきたいと、かように考えております。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 では、通行税関係ではこの程度にしておきまして、次に、一等廃止ですね、特別車両を設けることになった経過は、この前質問いたしました。そこで、これは運輸大臣に伺いたいのですが、また繰り返しになるようですが、いままでの国鉄運賃体系は、旅客運賃増収によって貨物のほうの赤字をカバーするというたてまえになっていたと思うんですね。しかし、それは国鉄独占性が強く、そして航空機とか自動車とかあるいはまたトラックなんかとの比較的競争の少ない時代ではそういうことも可能だったと思うのですが、最近では独占性がなくなってきた。したがって、旅客運賃増収で貨物運賃の赤字を埋めるという国鉄運賃収入構造というのはやっぱり変えていかなければいけないんじゃないですかね。その必要を端的に示したものが、私は、この一等車の廃止だと思うんですよ。一等車を廃止しないで運賃を上げた場合、これは資料でいただいたわけですけれども、たとえば「ひかり」の利用の場合、一五%引き上げたと仮定して、東京—大阪間八千二百六十円になるわけですね。そうしますと、航空機の東京−大阪間旅客運賃六千八百円よりはるかに高くなる。  それからこれは国鉄からいただいた資料ですが、東京−大阪間の輸送員数は、四十二年度ですが、国鉄一等車のみの場合六十九万一千二百七人、それから航空機のほうは百二十二万二千二百七十一人です。この総計のうち、航空機を利用するお客さんが六四%、国鉄一等車が三六%、こうなっていますね。  それから新幹線の乗車効率について調べていただいた。これは昭和四十三年の十月時刻表改正後ですが、一等は、「こだま」が三八%、「ひかり」が五一%、二等が、「こだま」八三%、「ひかり」九二%です。なるほどこれでは採算が合わぬわけですね。合わぬようになってくると思うんです。その上にまた上げることになるのでしょう、もし一等を廃止しなければ。ですから、結局、ますますこのままの状態では一等車は廃止しなければということなんですが、いまでさえ六四%が航空機なんですから、これは東京−大阪間ですが、もし東京と北海道あたりをとってみたら、もっとひどいのじゃないかと思うんです。われわれ、前に北海道に行くとき、国鉄のほうが安いし、われわれはパスですからただですから、少し無理しても国鉄に乗っていたんです。ところが、自分でお金を出しても、羽田から一時間で行っちゃうのですから、やはり航空機を利用しますね、どうしたって。ですから、われわれのようにただで行ける者でさえそうなんですから、いわんや運賃を払うお客さんは航空機を利用すると思うんです。結局、こういうようにうんと国鉄独占性というのは低下しているんですね。そのあらわれが一等車の廃止ということになった、これは非常に明白であると思うんです。  そこで、いまの国鉄運賃収入構造というものは、これはこのあいだも質問いたしましたので省略いたしますが、諸外国では逆なんですね。貨物のほうが運賃収入がはるかに大きいのです。これをすぐに諸外国並みにできないとしても、そういう方向に持っていかなければいけないのじゃないか。そうしなければ、私は、この問題は解決しないと思うんです。  国鉄財政の問題は、これまでの質疑の過程におきまして、たとえば自己資本が足りない、もっと国鉄に国の出資をふやすべきだと、これは私も私なりに主張したいのですけれども、しかし、これに対して、国鉄の自己資本は過小でない。たとえば、国鉄の自己資本比率は四十二年度末で三五・七%です。私鉄が二一・七一、鉄鋼が二六・一八、電力が三一・五五、電電公社が四二・九。国鉄は、四十一年は四二・三、四十二年末は三五・七、少し自己資本比率が低下していますね。もちろん、ほかの私鉄、鉄鋼、電力等よりは自己資本比率は高いですね。それから金利負担につきましても、総資本利子率を見ると、私鉄が五・〇九%、鉄鋼が四・六五%、電力が四・二二%、電電公社が三・三六%、国鉄が三・四二%ですから、総資本利子率もそんなに高くないですよ。そうすると、自己資本比率が低くない、かなり高い、それから総資本利子率はそんなに高くない、それでありながら国鉄が行き詰まるというのは、どこに原因があるか、ここが一番問題だと思うのです。それで、財政制度審議会報告を見ますと、結局、それは売り上げ高利益率と総資本収益率が極端に悪いと。ここですよ、問題は。ここが問題だと思うんですよ。だから、この売り上げ高利益率と総資本収益率をどうして高くするか。それにはどうしても貨物に重点を置いた運賃構造にしていかなければいけないんで、運賃収入構造を貨物に重点を置いた——すぐに諸外国並みまでいかないとしても、まあとんとんぐらいにするか、それに近いくらいにしなきゃ解決しないと思うんですよ。それには、旅客運賃を上げることでは解決しないと思う。旅客運賃を上げることによってまた収入が減るかもしれない、逆にね。といって、じゃ貨物運賃を上げたらいいかというと、貨物運賃を上げても、国鉄総裁の話によると、お客さんが減っちゃうと。トラックとかほかのほうへ取られちゃうから、上げることもできない。貨物運賃を上げることによって、貨物の収入をふやして、国鉄運賃収入構造をいまの旅客重点から貨物重点のほうに移行させようとしても、現実の問題として国鉄競争力は低下していて、これはできないですよ。できないでしょう。どうしたらいいかという問題ですよ、その点を。これが一番詰めじゃないかと思うんです。だから、いま、旅客運賃を上げる、そんなけちな考えじゃ私は国鉄再建はできないと思う。旅客運賃増収によって国鉄再建するといったって、国鉄競争力が低下しているのですから、旅客運賃を上げれば——これから何回上げるか、また聞いていきたいのですけれども、今回だけで済まないんでしょう。きょうの「朝日新聞」を見ますと、いままで大体二回くらいだというのが、今度は三回くらい上げなければ済まなくなると。そうすると、競争力は低下しているから、運賃を上げると、私鉄とかバスとかそっちのほうも相対的に上げないと、お客さんを取られちゃうでしょう。そういう矛盾が来ますよ。  ですから、運輸大臣に伺いますが、この運賃値上げによって収入が減らないようにするためには、運賃値上げによって当然多少ふえることを予想しているのですね、九百十億。しかし、バスとか航空機とかあるいは私鉄を上げなかったら、競争力は低下していますね。いつまでも上げないで据え置くことはできないと思うんです。そういう意味で、われわれはその値上げには反対ですが、しかし、上げない上げないと政府は言っていますが、うそです。おそらく、国鉄財政再建促進会議の十カ年計画には、私鉄とかバスとか航空機料金の値上がりというものが前提になっているのじゃないですか。それが上がらなければ、国鉄だけどんどん上げていったら、いまでも競争力は低下しているのに、それで国鉄財政再建の問題は解決できないと思う。ここにいまの国鉄の問題があると思う。一番集約すれば、そこだと思う。ここをどうされますか。
  21. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 何度もお答えいたしておりますように、私は、木村先生御指摘のとおりだと思うのです。そこで、その方法において私ども今度御提案をいたしておることは御不満でありましょうけれども、私どもはこれはもう画期的に思い切った措置をとらしてもらった、こういうことなんです。まあ、いままで、たとえば昭和四十年度から国鉄は新しい七カ年長期計画でやっていくときに、財源をどこから求めるか、こういうことで、いまおっしゃったようにこれを値上げに求めたけれども、そのときは一年ずらされて四十一年からになった。相当な、三割五分でしたか、正確な数字は覚えておりませんが、しかし、それは見込みどおり思うように増収がいかなかった。その次には、今度は画期的なことをやらなきゃいかぬというので、九百億の出資を要求した。しかし、財政当局から見ると、いまの日本の財政当局があずかっている中で九百億の現ナマをつぎ込んでいくということは、理屈はわかっていてもなかなか不可能だ、また、考え方によると、もっともっと国鉄自体が考えるべき点があるのじゃないかというようなことから、このときもこれは見送られて、結局、利子の高い金を借りて、投資を続けていかなければならぬからこれをやったと、こういうことで、昨年は定期運賃改正をやりましたけれども、この定期の改正をやりましたときにも、すでにもうそれでは間に合わないということから、推進会議で今度こそという案をつくらにゃならぬというのでこれは出てきまして、私は去年の暮れに大臣に就任をいたしまして、福田大蔵大臣と熱心に交渉いたしまして、そこで初めていわゆる三位一体という形で——まあ木村先生からはそれは三位一体といったって、一対二対三・五あるいは四じゃないかという御意見が出ておりますけれども、これはいまおっしゃった点を思い切ってやった。これによっていまおっしゃっていることを解決していこう、こういうことをやっているというふうに御理解を賜わりたい。私は、なお今後も、これはまあ先のことですからいまとやかく言うことじゃございませんけれども、今後ともたとえば大都市周辺の交通というものを解決していくためには、大蔵大臣と交渉をして、現在は、六分五厘の財政補給金を四十六年までのやつを五十年まで延ばしてもらいましたが、これを六分にするとか、先ほどいろいろな話が出ましたが、こういうことを交渉を続けて解決していきたい。  貨物のお話が出ましたが、これも確かに昔は貨物と旅客とが、半々とまではいかなくても、貨物は相当運んでおったわけですけれども、これが競合するものが出てきてそこへ取られた、こういうことですから、運賃を上げただけでは解決しないということはおっしゃるとおりなんでありますから、お客さんが納得して持ってきてくれるようにしなければならない。また、一方で、全国的な交通というものをどう持っていくか、物資輸送というものはどうするかというような点からも考慮を払いながらこの問題は取り組んでいかなければならない、このように私は考えて今度の御提案をいたしておるわけであります。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまでの質疑の過程で、大蔵大臣は、国鉄財政再建推進会議の意見書に基づいて今度の運賃改定なりそれから再建法はできている、これと全く同じじゃないけれども、大体こういう方向で再建をはかっていく、これでやっていけば国鉄財政再建はかなり楽観できるというふうにお答えになっているんですよ。しかし、その前提として、大臣は、まあ運輸大臣もお認めになったのですが、国鉄運賃収入構造を、一九六六年では旅客収入が五千四百八十四億円、貨物収入が二千二百億円ですね、こういう割合が続いていったのでは根本的に解決がつかないから、西ドイツなんかは貨物収入が五十二億六千六百万マルク、旅客収入が三十一億二千七百万マルク、ここまでいかなくても、前にはとんとんぐらいにあったんですから、そういう方向に持っていくべきで、この十カ年計画の最終年度においては収入構造をどういうふうに見ているのか。私は、貨物の増収をはかっていかなければ国鉄再建はできないと思うんですよ。それには、いま運賃を上げるだけではだめなんで、ほかのほうとの競争力が低下しているのですから、売り上げ高収益率、総資本収益率を高くするためにはどうしたらいいか。諸外国にもいろいろ例がありますよ。とにかく、運賃重点、こんなことで再建できるなんて大間違いですよ。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、十カ年計画で運賃構造を十年後にその比率をどう見ておるか、この目標なくして国鉄再建なんて考えたらナンセンスですよ。それからもう一つは、その場合のほかの国鉄競争相手のほうの状況をどう見ているのか、私鉄なり航空機なりトラックなり。諸外国の例では、国鉄のほうの貨物料金を上げないけれども、競争相手のほうをたとえばガソリン税を上げるとか税金を上げて、競争相手のほうの負担をふやして均衡をとっていく、そういうやり方が考えられている。そういうやり方もあるわけですよね。まあ、こう言うと、運送業者から反対が起こるかもしれませんけれどもね。ガソリン税なんかは、大型トラック、それからマイカー族からも取っていいな。ことに、大型トラックなんか、ものすごく破壊しているのですからね、道路を。これは前にも引用して好評だったものですからまた引用させてもらいますが、丸山君の調査だと、私はびっくりしたんですよ、ほんとうに。道路の破損度は、「大型トラックの軸重が乗用車のかりに十倍であったとすると、この大型トラックは乗用車の約一万倍道路を損傷する」ということが出ております。大蔵大臣は、受益者負担受益者負担ということを旅客運賃の値上げについて言うけれども、受益者負担というのは、こうした人たちに負担させるのを受益者負担と言うんですよ。いや、ほんとうなんですよ。そうでなければならぬ。それが常識なんです。世界的な常識なんです、いまは。いま、国鉄の問題は、自動車との問題、道路との問題なんです。ここに問題があるんですよ。受益者負担というのは、あとでもこれは質問いたしますが、四十三年度の財政硬直化から言われてきたんでしょう。財政硬直化を打開するために、利用者負担とか、受益者負担とかね。ところが、最も利益を受けている人に負担をさせないんですよ。たとえば、大会社は、低貨物運賃によって最も利益を受けているでしょう。しかし、それじゃ貨物運賃を上げたらどうかといったら、運賃を上げたら収入が減る、競争力が低下していくから、それもできない。どうしたらいいか。結局、大蔵大臣ね、貨物運賃によって利益を受けるのは大会社ですから、大会社からよけい税金を取って、一般会計から国鉄に回すという以外にないんですよ。  自己資本比率が高い高いと言うけれども、それは、諸外国から比べたら、高くないですよ。丸山君がおりますから伺いますが、諸外国における国鉄の自己資本比率というのはどのくらいですか。
  23. 丸山英人

    説明員(丸山英人君) お答え申し上げます。  財務構成の点につきましては、先生御承知のとおり、各国の会計制度が違っておりまして、自己資本比率といったようなものを的確に摘出することが非常にむずかしゅうございます。一応の試算で申し上げますと、一九六五年でございますが、西ドイツにおきましては自己資本比率が二三・一九%、フランスが非常に低うございまして四・八%、イタリアは四三・二%、こんな数字になっております。なお、資料の点でいろいろな点で不明な点があることをお許しいただきたいと思います。
  24. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ずいぶん差があるね。フランスが四・八%、これは何だかあまり信憑性がないけれども……。一般企業については、たとえばアメリカのUSスチールなんかは、自己資本が六割、他人資本が四割ですね。ことに、国鉄の自己資本比率が高い例として、ほかの企業の自己資本比率の低いのを例にあげておりますけれども、日本の場合は異常に低過ぎているんですよね。ですから、そういうのと比較してもどうかと思う。三十何%といっても、これは日本のほかの異常に低い自己資本比率と比べれば高いですが、高いとは言えないですよ、それはまだ。それをもって、一般会計から出資をするのは限界があるとか、する必要がないとか、軽々には言えないと思うんですよね。その点はどうですか。  それと、十年後の御答弁を願ってないのですが、十年後にどういうふうに予想しているか。
  25. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 十年後の収入の構成でございますが、これは現在御審議をいただいておりまする法律に基づきまして、基本方針の策定、それに基づく国鉄再建計画の策定ということによりまして、それから具体的な計画というものがきまり、投資の額等がきまりますから、したがいまして、非常に正確なことを申し上げることがちょっとできないわけでございますが、大ざっぱに考えまして、従来貨物輸送が非常に落ちてきたということは投資不足によりまして落ちてきたわけでございますので、今後の再建計画におきまして貨物の投資というものを相当増強していくということによりまして、比較的高級貨物というか、それが相当ふえてくるということは考えられるわけでございまして、かなり貨物収入がふえる、また、貨物の占める割合というものはふえてくるだろうと思います。かつて貨物収入が、半々とまではいきませんでしたけれども、それよりも若干落ちる程度の貨物収入があった、そういう構成でございましたが、十年後におきましては、私は、大体その辺をめどとしてやっていけることができるんじゃないか、五〇%を少し切る程度の姿の貨物の構成というところに持っていきたいと考えております。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国鉄財政再建推進会議の「国鉄財政の長期収支試算」というのがありますが、これはそういうことが前提になっているんですか。私はこのバックになっている資料がないものですからわからないんですが、そういうところまで検討されているんですか。
  27. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 先ほど申しましたように、これは、具体的には、再建計画によりまして投資の額がきまり、投資のやり方がきまってからでないと言えないわけでございますが、推進会議の議論におきましては、一応輸送量想定というものをやりまして、その輸送量想定に基づきまして、旅客、貨物がどのようになっていくかという想定を一応いたしまして、さらに、輸送量想定は量でございますので、量以外の問題といたしまして、賃率の問題等にも関連をしてくるわけでございますが、賃率の問題等との関連が今後の貨物輸送の投資の問題と非常に関連いたしてくるわけでございます。フレートライナー方式の採用その他各種の施策によりましてそういう面の増収というものが相当にはかられるということを期待しておるわけでございまして、私ども、五十三年時点におきましては、できるだけ従来の姿に近いような姿にまで持っていきたい、このように考えております。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 では、運輸大臣に伺いますが、さっき伺って御答弁がないので、また再質問いたしますけれども、この再建計画を実施する場合に、私鉄バスそのほかの国鉄競争相手のほうの料金引き上げですね、これは行なわないという前提でお考えになっているんですね。もし行なわないということになると、競争力がますます低下するんですが、それで再建計画ができますか。
  29. 原田憲

    国務大臣原田憲君) これはあくまで試算でございますから、この二回というのも、絶対二回というわけではございませんで、これは諸物価が上がってきたらそれにつれて上がるということで経済見通しを立てて、それを根拠にしてやっておりますから、私鉄もその他の輸送部門でも上がらないという前提に立っては計算されていない、私はそのように思っております。だから、「朝日新聞」の話が出ましたが、「朝日新聞」は、おそらく、四月一日の計画が四十日くらい延びているから、これらのことが根本で初めから狂ってきた、これをどこで埋めるかということを予想してお書きになっていると思います。総理大臣も、運輸委員会に出て、これをもとにして、これは二回行なわれることはやむを得ないだろうという答弁をされておるのですが、その根底にはやはり諸般の情勢というものを考えてそう考えておるということでございますから、その中には先生がおっしゃっているような全然ほかのものを考えていないということはない、こういうことでございます。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その問題は二つあると思うけれども、長期的とそれから当面の問題とあるのですが、今度一五%上げますね、それで私鉄バスを上げないとすると、そうでなくても国鉄競争力が低下しているんですから、上げれば一そう低下するのですから、したがって、必然的に本年度上げなくたって、来年度上げなければ、もうますます国鉄競争力が低減する、そういう関係にあるわけでしょう。ですから、長期的に見て、これは長期の物価問題とも関連があるんですけれども、いま大臣のお話のようにきちんと二回だけというわけにいかない。そうすると、三回上げるか、あるいは四回上げるかもしれないと、状況によってはね。そうなると、今度はバスとかあるいは私鉄運賃とか、そっちも上がらざるを得ないんですよ。大体、上がらなければ国鉄再建できないんですから。そこのところを……。
  31. 原田憲

    国務大臣原田憲君) どうも、木村先生のお話は、あかんほうへ、悪うなるほうばかりを言っておられるように思うのですが、私はまた今度はいいほうを考えますから、たとえば貨物輸送というものについて一応この推進会議で五十三年の姿というものは答申しているわけですね。こういうふうだと、こういうことが出ているわけです。だから、それを骨子にして基本計画はつくりますが、私は、十年後ということになりますと、先ほども言いましたように、日本の国は、欧米諸国と違って、国の全土の三分の二が山岳で、あとの三分の一のところへすべてが集まっておるという特殊な国土のあり方がある。そこへ今後の経済見通しというものを立て、それに伴うところの人口移動というようなものを考えていくときに、これは五十三年までですけれども、六十年には一億二千万の人口になる。それがどういうふうに分布されていくであろうかというような構想を立てているときに、鉄道というものがだめだという——まあ先生はヨーロッパのお話を先ほどから何べんも出されておりますが、ヨーロッパは国が確かに助成しておるが、それでもうまくいかないというのが鉄道事業というものであった。日本においては、鉄道事業というものが決して見捨てられたものではなしに、この国鉄財政再建推進会議の構想によって、これを基本として力を入れて、それぞれの引き受けるべき部門というものに政策を進めていくならば、それは効果をあげて国民経済の上で成果を放つと、こういうことですから、いまからこれを出発点として、あともっとテコ入れをしていくならば、値上がりの分もしなくて済むかもわからない。だから、二回上げるととろが一回で済むかもわからない。三回か四回と言われているが、二回で済むかもわからない。それをきちんとして推進会議が出しておるのではございませんで、あくまでこれは五十三年への見通しというものに立っておりますから、私どもは基本計画を立てるときに十分考えまして、先生の御意見を聞いておりまして私もっともだと感じることがたくさんございます。これらはよく考えまして、計画をりっぱに立てて、その再建計画を国鉄から出してもらうようにいたしたいと思っております。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国鉄が今後生きる道は、結局、貨物に重点を置いて、そうして長距離輸送、これはどうしても国鉄でなければできない。短距離はトラックその他です。その場合、どうも大蔵大臣はかなり楽観論を言いましたけれども、この中から自然に競争力がついてくる、そういうようなことが頭にあって楽観しているのじゃないかというふうにちょっと思ったんです。というのは、このままほうっておきますれば、もう自動車は行き詰まりですよ、トラックだって。それで、長期的な経済見通しについても伺いたいが、これはこの前提にならなければなりませんから、大体、三Cというのは、三Cがいままでの日本の景気をささえておりますけれども、一九七一年ごろもう頭を打つのじゃないか。ことに、自動車は、このまま政府が道路建設をほうっておけば、ますます道路が狭くなり、自動車は過剰であり、そうして能率は上がらないでしょう。国鉄のほうがよっぽどよくなりますよ。そのときに、それじゃ今度は自動車に重点を置こうとして道路に投資をしようとすれば、ものすごい投資なんです、金額は。そんなら国鉄のほうに投資したほうがむしろいい、ことに長距離輸送については投資の効率から考えた場合ですよ。そういう今後の輸送事情の変化はもちろん前提にして考えられていると思うんです、いろいろな専門家も委員になっておりますから。それと、もともと陸海空の総合的な輸送体系というものももちろんあるわけです。その中での国鉄の位置づけということを、貨物を中心に長距離——イギリスには、私は文献で読んだんですけれども、短距離については地方自治体に負担させたらどうかという意見もあるようですが、これは日本では相当問題になるでしょうね、その点は。しかし、諸外国ではそういう研究もある。すぐ日本では適用できないですがね。  そうなると、その金をどうするかという問題が一番重要になってくるんですが、どうしても運賃値上げなんというけちなことではとても追いつかないんで、三位一体だから運賃の値上げも必要だというんですけれども、旅客運賃で全部カバーするなんて、経済論理からいって不可能だと思います。私は感情的に言っているようですけれども、経済法則的な質問をしているんです。経済の論理からいって、運賃を上げて競争力がつかなくなればどうするんですか。だから、しろうと考えでは、貨物運賃は独占に奉仕しているんだから、けしからぬ、貨物運賃を上げたらよさそうなんです。われわれもそうさしたいのだけれども、そうしたら競争力が低下して収入が減っちゃうでしょう。そんな単純に貨物運賃は上げられませんよ。それじゃ、実際どうしたらいいかというと、貨物運賃を上げないかわりに、低貨物運賃で利益を得ている大企業のほうから税金を取って、それで一般会計から国鉄へ回すという方法です。そういう方法より実際問題としてないんです。それで、運賃値上げなんていうけちなことを考えるな。九百十億なんてけちですよ、こんなもの。ことに、旅客運賃は、運賃を上げたから国鉄が、再建できるのじゃないんですよ。運賃なんて、ふえても小さいです。こんなことをやっても国鉄再建できませんよ。ですから、ほんとうに長期的な観点から国鉄再建考えるならば、もっとほかに競争力をつける。ことに、貨物輸送について、長距離ですよ。それにはものすごい投資が必要なんです。その財源をどうするか、資本をどうするか、その資本の調達のしかたですね。当面は、政府も三位一体でちょっぴり負担する、それから受益者負担の原則で旅客運賃を上げてそれでカバーするというような考え方です。しかし、その旅客運賃を上げても、そちらの競争力がつかなくなる、一等を廃止したことでもはっきりわかるようにね。運賃を上げることによっては不可能なんです、経済論理からいって。昔の、国鉄独占性が強固であったときは、それでよかった。旅客増収をもって貨物の赤字を埋めたんです。いまそれが不可能になっているんです。だから、運賃を上げることによって国鉄再建をはかるということは、これは経済論理からいってもだめなんです。だから、もっと大資本のほうからいわゆる受益者負担の原則、ほんとうに国鉄によってうんと利益を受けている、あるいは道路によってうんと利益を受けている、国鉄側のほうの建設によりまして非常に地価が上がる、工場なんかでも非常によい、そういうところからいわゆる税金を取るべきですよ。そうした財源でやるべきだ。運賃なんかというのは、これはもう下の下ですよ。むしろ経済論理からいっておかしいですよ、競争力が低下しちゃって。私はそういう着想なんです。そういう着想でいかなきゃならぬし、これは私の思いつきじゃありませんよ。世界的な趨勢ですよ。日本より先進諸国はそういう方向へ行っているんですから。これはまあ社会主義になって計画的な経済になれば別ですけれども、いますぐそうはなりませんから、いまの資本主義体制のもとでさしあたり考えるとするならば、まあ五年くらいまだ革新政権はできませんからね。(笑声)あまり長期に言うと、自信がないということを言われますから、せいぜい五年くらいがいいところでしょう。そういう形でがまんしますが、とにかく問題の所在をはっきりさせるべきですよ、国会で。ですから、私は、運賃じゃだめだという結論に到達したんですよ。それは単なる感情論じゃないんですよ。経済法則からいってそういう結論になった。ですから、今後の国鉄再建運賃引き上げなんて、ことに旅客運賃を上げて貨物の欠損を埋めて大企業に奉仕する、そういうやり方はやるべきじゃないし、またそれは成功しません。この点をどう考えるか。  それから大蔵大臣に伺いたいのですが、この再建十カ年計画ですけれども、この前提となる日本の経済をどう見ているかということも重要なんです。それによって再建できるかできないかわからぬ。大蔵大臣が楽観しておるのは、おそらく実質一〇%説ですね、そのくらいは成長が今後続くであろうと見て、その前提で再建のことを考えているのじゃないかと思うんですがね。それで公明党の鈴木君も質問したようですけれども、新しい全国総合開発計画ですね。あれとの関連もあるわけですけれどもね、総合的に。その点はどうなんですか。当面としては、また通貨不安なんか出てきちゃったでしょう。それからベトナム戦争、これは私ども乏しい知識ですけれども、これはかなり近い将来に終息するという話ですよ。外交のほうは私はしろうとですけれども、専門家に聞くと。そうすると、今後の世界経済というものはかなり流動的になります。流動的というより、かなり激動的になってくる、為替調整の問題も起こってくると思うんです。これではマルクの切り上げだけでは済まない。そうなれば、いままでのような日本の経済の実質一〇%以上の成長というものは、そう楽観的に考えていいかどうか、これは相当問題だと思うんですよ。そういう点について、これの基礎になる日本経済の、それから物価についても、さっきの私鉄とかバスとか航空機も上げなければ国鉄再建はできないんですよ、実際問題として。運賃引き上げによって再建をはかろうとするそういうたてまえからいけば、ほかの物価もどんどん上がってくる。これは重大な問題になるんですね。国鉄運賃値上がりが家計に響くなんという問題じゃないんです。それはもう重大なんですよ。重大なんですけれども、ほかの私鉄運賃なり航空なりバスなりを上げなければ国鉄再建できないんですよ、競争力が低下しちゃって。だから、どうしたって上げざるを得ない。ところが、さっき伺いますと、これは三回くらい上げる。二回に必ずしもとらわれないというでしょう。二回上げていく。また、ほかに、バスとか私鉄とか航空機も上がっていく。そして、また国鉄を上げなければならぬ。悪循環になってくる。そうなると、実際に検討すればするほど、国鉄財政の行き詰まりの原因が非常にはっきりしているだけに、これはたいへんな矛盾なんですよ。たいへん大きなジレンマ、矛盾ですよ。この矛盾を解決するのに運賃値上げでやるから、ますます悪循環的に深みに入っていく。どうしても論理的にそうならざるを得ないですよ。その辺をはっきりさせなければいけないと思うんですが、いかがですか。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 貨物収入を大いに重要視すべしと、それには巨大な投資を必要とする、私はそういう考え方については全く同感です。大いにそういう方向で国鉄再建の検討をすべきである。ことに、長距離輸送とおっしゃいますが、私どもは長中距離ということをすでに打ち出しておるわけです。ただ、その建設資金を調達する方法ですね、これを木村さんは税でやれと、こういうお話ですが、しかも、これが経済法則だというお話ですが、私はそうは思わない。これは設備投資ですから、借金でいいんです。ことに、そういう見通しがいいというならば、借金でやって、あとでこれを償還する、こういう方式でいいのじゃないか。その点は、どうも木村先生ではございますが、所見を異にします。  それから長期計画はどうだということ、これは「経済社会発展計画」を改定することを考えております。いままでは八・五というのですが、それを実績が非常に上回っている。どうしても現実的なものにしなければならない。私は、いま、政治家の勘として、一〇%ぐらい五年間くらいは見たらどうだというような、これは勘でございますが、しかし、もう少し合理的、科学的に積み上げをしてみたいと、こういうふうに考えておりますが、もちろん国鉄の長期計画、そういう政府の長期計画、それと歩調を合わせて考えなければならぬ問題だと思っております。さように考えております。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 「経済社会発展計画」でいままでの成長率八・何%、それを勘として一〇%ぐらいと言われますが、これは大蔵大臣よく御存じだと思うのですが、先進資本主義国の成長率は非常に低いですよ。それは蓄積が大きいからです、アメリカでも。蓄積が大きくなるならば、成長率が低下していくのがあたりまえです。日本はいま中進国とかなんとか言っていますが、しかし、だんだん先進国並みになってくるでしょう。そうなると、蓄積が多くなって、同じ成長率で大きな成長率になっていったら、それはものすごい生産力になるんですよ。そうでしょう。ですから、蓄積が多くなるならば、成長率では低下していくというのが趨勢なんです。日本がまあそこまで来ているかどうか、そこが問題ですけれども、まあソ連を除けば世界第二位の総生産になってきているのでしょう。そうなると、経済の法則からいって先進国並みにだんだんなりつつあるわけです。そうなると、いままでの機械的にただ成長率が一本調子でずっと上がっていくということを考えるべきではない。蓄積が多くなるし、総生産の額は大きくなるんですよ、成長率は下がっても。額は大きくなるんです。アメリカなんか成長率が日本より低いのはそれでしょう。蓄積が大きいのですから、アメリカで日本と同じ成長率だったらたいへんなことになるんですからね。その点に一ついま大蔵大臣が言われていた点について問題があると思います。  それからもう一つ、国が国鉄に出資をする、国の資金でぼくはやるべきだと。これは借り入れ金でいいと言われたのですが、それで私はこの際伺いたいのは、運賃の原価計算について伺いたい。これは、運賃法によれば、国鉄運賃形成の基準について、第一条二項ですが、四項目あげておりますね。これは前に議論になったと思う。第一に「公正妥当なものであること。」、第二は「原価を償うものであること。」、第三が「産業の発達に資すること。」、第四は「賃金及び物価の安定に寄与すること。」と。そこで、その間についてはずいぶん議論があったと思うんですが、私は、「原価を償うものであること。」、ここのところをひとつ質問したいんですよ。それはいま大蔵大臣が御答弁されたことと関連があるのですが、いわゆる資本コスト方式というのをとっている、そこに一つ問題があると思うんです。どうも私はわからない点があるんですが、日本国有鉄道会計及び財務基本問題調査会というのがありますね。ここで国鉄運賃原価構成要素と算定基準というものを明らかにしている。そこで、資本コスト方式を採用すべきだと。との資本コスト方式というのは一体どういうものなのか。国鉄は国営企業でしょう。国の国営企業である。そうすると、大蔵大臣は賛成されたのですが、今後、長距離——あるいは中距離をも含めてですか、貨物輸送を重点に国鉄の収入増加をはかっていく、そういう方向に行くべきだと思うと、私の意見に大体同感だと言われた。そこで、問題は、その資金調達については、結局、国鉄もまあ国営ですけれども一つの企業体ですから、そうした貨物の増強をはかるには資本が必要である。その資本の調達の場合、普通の企業で言えば、自己資本比率を高めていけば、金利のつかない金が多くなるわけでしょう。そうすると、コストが安くなって競争できる。国鉄の場合は、自己資本というのは、国が経営しているのですから、国の出資なんですよ。他人資本というのは借り入れ金です。大蔵大臣は借り入れ金でいいと言うのですが、これは金利がつくんですよ。最近の企業は、大体一七%が自己資本で、八三%が他人資本ですよ。ものすごく自己資本比率が低くなって、借金がうんとふえて、銀行に御奉公するような、銀行に対する金利負担がものすごく多くなっているんですよ。だから、企業はものすごい負債過剰ですから、インフレによって負債を軽くしたい。インフレ体質ですよ、日本のいまの経済は。そういう面からどうしてもインフレを要望していくということになると思うんです。そういう場合に、物価政策の面からいっても、自己資本比率はやはりふやさなきゃいけない。一般企業においてもそうですよ。自己資本比率をふやせば、金利のつかない金だ。国鉄でも同じですよ。国鉄の自己資本というのは、政府の出資なんですよ。そうでしょう。政府の出資は八十何億ですか、それに再評価すれば資産が幾らあって、三七%の自己資本比率があるんですが、物価対策からいっても、また国鉄競争力を強めるという面からいっても、自己資本比率を高めるということが必要なんですね。  そこで、私は、この資本コスト方式というものは、国鉄の独特のものだと思うんですよ、国鉄の原価計算方法の。それで伺いたいんです。この資本コスト方式からいってもどうも私はわからない点があるのでありまして、これはさっき引用しました石川君の著書なんですけれども、だいぶ詳しく書いてあるんですけれども、「問題は、その資本の追加が、国家の出資で行なわれるべきか、自己資本の造成で行なわれるべきか、借入資本に依存すべきか」と、資本の追加を三つのカテゴリーで求めている。その「自己資本の造成」というのを、運賃引き上げと、そういうふうに理解しているんですね。私は、自己資本の造成というのは、運賃引き上げではなくて、普通の会社経営から言えば増資ですよ。なぜ国鉄はもっと増資しないのかですよ。増資ですよ、普通の会社なら。それで株主から取るでしょう。国鉄の株主は国じゃないですか。国がどうして増資をしないんですか、もっと。ほとんど増資しないで、借金々々でやっているでしょう。これは私は非常に経営からいってもおかしいと思うんですよ。そこで、なぜ資本コスト方式というものをとっているのか、それを伺いたい、運賃原価で。
  35. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) ただいま先生の御指摘になりました点は、たぶん国鉄に設置されておりましたところの日本国有鉄道会計及び財務基本問題調査会が出しました提案に関する事項であろうかと存じます。この調査会におきましては、運賃の原価構成の要素といたしまして、営業費のほかに資本のコストというものを考えておるわけでございますが、その場合の資本コストにつきまして、減価償却あるいは支払利子というようなもののほかに、何らかの意味の公正報酬的な性格のものというふうなものを考えるべきであるというような前提のもとに立ちまして、それを資本コストというように呼んでいるように考えるわけでございます。そこで、国鉄の場合に、そのような通常の原価以外に公正報酬というようなものを認むべきかどうかというようなことは非常に問題であるわけでございまして、一般の私企業の場合には、当然、資本の内容といたしまして、他人資本の場合もあるし、あるいは増資によるところの自己資本という問題もあるわけでございますが、その場合、まあ若干性格が異なるということで、そういう自己資本に対する報酬というものを運賃の構成要素として認むべきかどうか、非常に問題があるわけでございます。従来、運賃法の原価の構成という場合には、必ずしもそこまでは考えておらなかったようでございまして、従来の原価の構成という場合には、通常の営業費——人件費、動力費、修繕費、業務費、租税公課等の費用、減価償却費、固定資産除却費、退職引当金、あるいは支払利子というふうなものを考えまして、こういったようなものが原価の内容になるというように考えておったようでございます。したがいまして、先ほどおっしゃいましたような点につきましては、これは調査会のいわば意見として発表されたものでございますけれども、いまこれをもって原価構成の要素であるというようにはなされていないようでございます。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、なおさらですよ。原価を償うという場合には、借り入れ金か出資か、二つでしょう。そうでしょう。増資と同じことですね。なぜ株主である政府が増資しないのか。その点は財政に限界があると言うんですよ。財政に限界があると。限界と言ったって、われわれむちゃくちゃに言っているんじゃないんですよ。この十カ年計画だって、十カ年でわずかに約三兆七千億というんです。そうでしょう。いまの世界第二位の総生産を持つ日本で、このぐらいのものを捻出できないことはないと思うんですよ。いまの予算だって、自然増収は一兆二千億だというんでしょう。ですから、これは財源の配分のしかただと思うんですよ。財源配分の問題で、それで、大衆収奪によってそういう国鉄再建をしようとするのか。あるいは、低貨物運賃によってうんと利益を受けているいわゆる受益者、これこそが受益者負担の原則ですよ、そういう人の負担によって再建をするのかという問題がある。しかし、貨物運賃を上げることはできないんですよね、いまの実態からいって。上げたら増収できないですからね、競争力がつかないから。そこで、どうしてもいわゆる増資をする、政府出資をここで思い切ってふやす。もうとにかく清水の舞台からおっこちたぐらいのつもりでやらなければ、それほど重大な問題だと私は思うんですよ、いまね。これは輸送の大革命ですよ。そのくらいの問題意識をもって取り組まなきゃ、こんなけちな旅客運賃引き上げによってこの問題を解決しようなんというのはだめですよ。必ず行き詰まりますから。大蔵大臣は何か成功するようなことを言って楽観していますけれども、行き詰まりますよ。もうすでに、二回の運賃値上げなんと言っていたのが、三回じゃなければ心細くなっちゃっている。運賃を上げてごらんなさい、また競争力が低下する。今度またほかの料金を上げなきゃならぬ。それで物価は高くなり、また運賃を上げなきゃならぬ。悪循環です。そうでないというなら、これはもう委員から何回も質問されておりますが、具体的にこれに基づく案を出すべきですよ。そうじゃないという反論を出さなければいけません。出さないで、白紙委任と、こう言われますけれども、それでここで承認せよといったって無理ですよ。これは怠慢ですよ。そういう作業がはっきりして、君たちはそう言うけれども、こうこうこうなんだ、十年後においての貨物運賃旅客運賃の比率は大体こうなんだ、次は長距離、中距離の貨物に重点を置く、それには幾ら金が要って、その金はこういうふうに調達するんだと。いままでのいわゆる資本コスト方式では必ずしも意見がそうじゃないと言われるから、いまの国鉄考え方でも当然これは増資に求むべきです。どうですか。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 設備投資が必要である、それはそのとおりと思いますが、だからといって、その設備投資の財源を国民一般税金に求むべしと、つまり自己資本を充実すべしと、こういう議論には承服できません。そういう一般的原則のような考え方から出発しておる議論でありますが、私は、普通の原則は、そのときは借金でいくべきだ。借金でやって、設備が近代化、合理化されたら、能率が上がって収入が大きくなる。そこで借金を返す。これが普通の企業経営の原則で、木村さんは税金で埋めるのが経済法則だと言うが、これはもう珍説、奇説のほうだと思う、私は。そういう立場の木村さんの御議論には私はにわかに承服はできません。しかし、設備投資は必要であります。だから、借金でやっていく。やっていくが、この十年間は非常につらい。また、損益計算もなかなかうまくいかぬ。そういうようなことから、政府は、利子の補給もする、あるいは利子のたな上げもする、そういう形で援助していこう、この方式が私はむしろ企業法則に合っておるコースではないか、そういうふうに考えます。ただ、木村さんのおっしゃる、大いに貨物の能率をあげて収入をふやす、こういう考え方には賛成であります。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、借り入れ金によって長期資本をまかなうことに何も反対し、否定しているわけではない。それも企業の原則ですよ。ただ、日本の場合は、資本蓄積を急ぐあまりに、ものすごく自己資本比率が低いんですよ。それは大蔵大臣も認められるでしょう。ですから、それがどういうふうに作用するかというと、それがインフレ的になるんです。そうでしょう。借金がうんと多くなる。だから、借金を軽くするためには、インフレですよ。貨幣価値を低くするんですよ。それと同時に、企業においては損益分岐点が高くなりましょう。だから、成長率が高くなければ困るんですよ。自転車操業みたいにどんどんやっていかなきゃ。いまの日本の実態はそうですよ。負債過剰ですよ、企業の実態は。自己資本が一七%なんておかしいでしょうが。他人資本が八十何%。だから、損益分岐点が高くなきゃ、つまり成長率が高くなきゃ行き詰まっちゃう。そういう体質になっちゃった、日本は。ですから、自己資本比率をもっと多くすることによって金利のつかない資本を多くすれば、物価安定にも役立ってくるんですよ。国鉄の場合にも運賃を上げなくても済むような資本構成になり得ると、こういうわけでして、私は長期資本をまかなうのに借金でやることについて、これはいまの資本主義経営の一つの常道であることは私も認める。だけれども、日本の経済成長を急ぐために、あまりに借り入れ資本、借金政策でやっている。ひど過ぎると思う。それはある時期においてはいいかもしれませんよ。必ず行き詰まってきます。自転車操業式ですよ、いまの日本の経済は。大蔵大臣、成長率が高いということを何も自慢する必要はない。自慢にならぬですよ。というのは、負債過剰ですから、損益分岐点を高くしておかなきゃ困るんですよ。これをどんどん続けていってごらんなさい、いつか破綻が来ますよ。外部から来るか内部から来るか。過剰生産の問題が必ず起こってきますよ、どうしたってこのままで行けば。そういう点を私は言っているわけです。それについてはまた議論になりますから、もう何回も伺っていますから、半分承服したようなしないような御答弁でしたが、これは四十五年度予算編成のときにまたひとつ大論争しなきゃいけませんので、これはとっておきます。  だいぶ時間が経過したようですから、それでは最後一つ——ああまだ二つ残っているんだ。(笑声)第一項しかやっていなかった。あとみんな関連しているんです。まあ慎重審議、実質的審議をやるのが趣旨でございますから、何もいたずらに時間を引き延ばすということじゃないんですから、その点はひとつお認め願いたいと思います。  物価運賃の問題ですけれども、これはもう少し詰めて御答弁願いたいのですが、実際問題として、国鉄運賃を上げたら、次にはどうしても私鉄バス運賃を据え置くことはできないのじゃないでしょうか。ところが、据え置く据え置くと言っているんですが、ほんとうに上げないのか、ことし上げないけれども来年上げるのか、その辺を伺っておかないと、今後の物価の問題と重大な関係がありますから、その点を詰めて御答弁願いたいと思います。
  39. 原田憲

    国務大臣原田憲君) これももう何度もお答えしておりますが、木村先生に御満足をいただくことができないかもわかりませんが、先ほどから経済の安定ということを非常に御議論されておると思います。私は、日本の国で、特にことしはそれが大事だ。経済的に見て、昨年の春四十三年度予算を組んだ当時からと現在と見比べるときに、特にそれを痛感し、いま一番大事なのは物価の問題である。だから、運輸大臣としては、あなたのおっしゃるように、国鉄運賃を上げれば、当然それと関連をしている運賃というものをバランスをとらなければ理屈に合わないと、こういうことを私が運輸大臣になったときにそればかり言われたんですよ。運輸大臣、上げる言うたらおまえどうだ、こういう質問にぶつかりましたが、私は、その当時から、物価というものは相当大事な問題であると。だから、羽生さんも予算委員会で言われておりましたが、やっぱり世の中はバランスをとるということが大事だと、こういうことを言われた。しかし、バランスをとるという点からいいますと、いまおっしゃるような議論になってくる。ただ、物価という問題に対して、数字の上ではわずかでございますが、これが影響するところは大でございますから、経済企画庁長官が、特にことしはそういう方針でいかなきゃならぬと思うので協力をしてもらいたいというところから、私はそれに協力しましょうと言いました限り、この政府できめました公共料金が主導型になるということを避けるという意味から、国鉄運賃は上げても、あと関連したところの運賃は、みな上げる上げると言うけれども、極力抑制をするという姿勢を守り続けていきたい、こういうことが結論でございます。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣物価の問題で伺いたいのですが、御承知のように、「経済社会発展計画」では、いまの政府物価政策は、非常にはっきり長期と短期に分けて打ち出しているわけですよ。その中で、当面として一番実効のある物価対策は何かというと、政府関係料金は上げないことと書いてあるんです、はっきりと。これが当面一番即効があるというんですよ。そう言いながらこれを上げるのでしょう。私は、あの物価政策もおかしいと思うんですよ。それと、今度は、四十三年度の予算編成にあたりまして、財政硬直化を打開するために、いわゆる受益者負担の原則ということを言い出したんですよ。これと物価政策というのは矛盾していると思うんですよ。矛盾していますよ。受益者負担の原則ということは、料金を上げることなんです。これは、保険料を上げるとか、国鉄料金を上げるとか、社会保障的なものを上げていくんですよ、みんな。それは、はっきり、大蔵省の人が財政硬直化打開の方向として、受益者負担の原則とか利用者負担考え方を強めていかなきゃならない、食管制度の問題、国鉄その他の公共企業体の赤字の問題、あるいは政府管掌の健康保険の赤字の問題、こういう問題はみんな料金引き上げて赤字を処理すべきだという考え方なんですよ。そうしたら、そういうものを上げれば、物価は上がるんですよ。いわゆる公共料金を上げるということなんですよ。ところが政府の「経済社会発展計画」の物価対策は、公共料金を上げないことが一番効果的な即効的な物価対策である、こうなっているんですよ。矛盾しているんですよ。だから、この国鉄運賃の値上げと関連があるのでありまして、はっきり政府の今後の物価政策に対する方針というものを明らかにしてほしい。どっちなんですか。受益者負担の原則でいくのか。 「経済社会発展計画」で打ち出した長期、短期の物価政策、あれによれば、結局、昭和四十五年には三%までに値上がりを押えていくというのでしょう。四十五年は来年ですよ。三%じゃ心細いから、五%ぐらいに改定するのじゃないですか、「経済社会発展計画」を今度改定する場合に。そうなると、これは公約違反になりますし、とにかく物価政策をきちんとしておいてもらいたいんですよ。その後、矛盾した政策が出ているんです。財政硬直化対策と「経済社会発展計画」が打ち出したあの物価政策とは矛盾しているんです。二律背反しているんです。どっちをとるんですか。国鉄運賃引き上げの問題は、物価政策とも関連してくるんですよ。四十五年度予算でも今後の予算でも関連してきます。ですから、物価対策についての基本的な考え方をどうしてもこの際はっきりさしておきたい。そうしないと、国民に幻想を与えるわけです。政府物価を安定させる安定させると言いながら、片一方で財政硬直化対策としては料金をどんどん上げるという政策になってきている。政府が、片一方で物価引き上げ政策を打ち出しながら、物価安定物価安定などと言っても、全くこれは国民を惑わすものですから、ほんとうの物価対策としては一体何を考えているのか、どういう方向に物価を持っていこうとしているのか、何回もいろいろな会議なんかで聞いたりしましたけれども、どうもわからないんですね。精神分裂症ですよ。ほんとうに分裂しているんですよ。反対の方向の政策が二つある。整理していただきたい、交通整理を。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 受益者負担の原則、これも私は正しい方針だと思います。また、同時に、公共料金についてもこれを気をつけなければならぬ、これも正しい見解だと思います。要するに、それをどっちか一方に片寄って一筋にというわけにいかないような複雑な状況の経済である。要は、その間の調整をどういうふうにするか、どっちもいい考え方だ、どっちもいい考え方をどういうふうにかね合わせて物価の安定をはかっていくかということなんです。あなたがおっしゃるように全部公共料金をストップしちゃったら、一体どうなのか。これが長続きできますか。私はこれは絶対できないと思います。現に、貴重な経験が三十九年にあるんです。この時期は一切公共料金をストップした。物価は安定しました。ところが、どうですか。四十年になると、これはとてもストップ政策は持ち切れないというので、これをはずした。そうすると、物価は、いまだかつてないはね上がりを示す、こういうことになった。そこで、一がいにどっちということは言えないんです。しかし、私は、いまの経済情勢のもとにおいては、物価問題は特に重要である、こういうので、米価もあるいは麦価も、塩も、あるいは電信電話も、みんな据え置く。しかし、国鉄だけは待っておられないというので引き上げをお願いをする、こういう考え方をとったわけですが、まあその辺が最も現実的な考え方じゃないか、そんな感じがいたします。どうも、公共料金をストップすれば、それはそのときはいいに違いありません。ですから、そのメリットは全く認めないわけじゃございませんけれども、しかし、これは長い目で見て、一体それが妥当な政策であるかと、こういうことになると、これはまたまたあとになってたいへんむずかしい問題になるであろう、こういうぐあいに考えるわけであります。要は、その二つのいい考え方をどういうふうに調整、調和をとっていくか、こういうことであろうと思います。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に、大蔵大臣がいま御答弁されたことで満足できればいいんですけれども、私の質問をまだ大蔵大臣が正しく理解していない点がありますから、念のためにもう一度質問しておきますが、昭和三十九年ですか、あのときは、ストップして四・八%ですね、たしか物価値上げが。ところが、あれを解除したら七・六に上がっている。それをとらえて、こういうことがあったじゃないか、過去においてはと。あのとき一年間何しておったか。政府は、ストップしておきながら、なんにも物価対策をやっていないのですよ。ところが、「経済社会発展計画」の公共料金を押えるというのは、一応当面の政策なんです。押えておいて、一年なり——われわれは二年ストップを言っているのですが、その間にもう徹底的な物価対策をやらなきゃいけないんですよ、ただストップするだけでいいというのじゃなくて。あのときは、ただ一年ストップしただけでぼんやりしておった。それじゃだめだというんです。何のために一年ストップするかというと、ほうっておけばどんどん上がるから、ここでストップしておいて、これは当面の手当てですよ、まずやっておいて、そうしておいて根本的な対策を施さなきゃいかぬ、こういうことだと思う。だから、「経済社会発展計画」でそうなっている。じゃ、公共料金を上げないことが即効的な当面の対策だとなぜうたったのですか。私も公共料金を全部いつまでも長期にストップしろということを言っているのじゃない。どうしても改定しなきゃならないときがあるでしょう、ほかの物価がどんどん上がりますから。これは美濃部さんだって困っている。物価の美濃部と言ったけれども、そうじゃない。政府物価政策が悪いからそうなるんです。大蔵大臣はそう言っておりますけれども、政府がそういう政策を発表したのですから、長期的に一体どうするのですか。三%はもう来年ですよ。物価対策の重要性について大蔵大臣も十分に認識されていることは御答弁でわかりました。ところが、実績が伴っていないんですよ。ストップすればいいということじゃなくて、ストップという手当てをしておいて、たとえば病人なら注射をしておいて、それから手術するでしょう。その注射なんですよ。そういうふうに私は考えておる。それを怠っている。注射しておいて、お医者さんは何も手術しないでぼやぼやしている。注射は切れた、また痛み出した、それと同じことだと思うんですよね。  あまり時間を経過して悪いので、まだ第二点についても残っておりますし、第三点についてはまだ全然やっていないのですけれども、しかし、さっき関連でかなり総合的にやりましたから、この程度で、大蔵大臣の御答弁を求めて私は終わりますけれども、しかし、私、この審議のずっと経過を顧みまして、こんな重要な問題、なるほどこれは通行税法改正で、この法案自体はつまらぬように見えるでしょう。ところが、掘り下げて見れば、これは非常に重大な問題なんですよ。それが十分に審議し尽くされたと言えないと思うんです、私はまだまだ。問題はたくさんあるんですよ。そういう点で、こういう形で質疑を終了しなきゃならぬことを非常に私は遺憾に思っています。五時間、六時間ぐらいもらわなきゃ私は不十分ですよ。だけれども、やはりルールがありますから、ルールを無視してまでやるわけにいきませんから、非常に不満ですけれども、——公明党の人が主張することもわかりますよ。ほんとうですよ。ただ、ルールは守らなければいかぬですからね。それで、野党のほうは全部不満です。このようなお粗末な審議でこれが通ることについては私は非常に不満です。不満の意を述べまして質問を終わりますが、最後に、物価問題について、もう少しはっきりした、どっちも何か長所毛あるとか、そんなあいまいじゃなくて、ああいう政策をはっきり打ち出したのですから、三%をどうするのか、最後にこれを質問しまして、終わります。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど申し上げましたように、「経済社会発展計画」は、これを改定する、こういう考えです。したがって、三%問題も、あらためてこれを検討する、こういう考えでございます。まあ三十六年、三十七年、三十八年には六%台の物価が、とにかく四十一、四十二、四十三はこれだけのいまだかつてない高成長の中においていずれも四%台であるという点は、木村さんにおいてもひとつ評価をしてもらいたいと、こういうふうに思います。今後も、物価問題は、これは経済政策上の非常に大きな問題、最大の問題と言ってもいいくらいな問題であるという認識のもとに、鋭意努力いたしたいと存じます。
  44. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 本案の質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  45. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私は、日本社会党を代表して、通行税法の一部を改正する法律案に反対をいたします。  通行税法は、戦費調達の一環として昭和十三年特別税法設置に際し復活した悪税であります。審議においても明らかなように、いまやこの悪税の存在価値は全く失われているのであります。しかるに、政府は、正当なる廃止論に背を向け、詭弁を弄して今後の存続をはかろうとすることは、国鉄利用の国民大衆をはじめ、変化する社会、経済の諸情勢に逆行するものであり、直ちに廃止すべきであります。  通行税は、鉄道を利用して旅行する旅客について指定のグリーン車、特急料金、急行料金及び寝台料金に対しまして一割も課せられ、国鉄だけでも年間三十四億円、総体で九十四億七千六百万円、四十三年比で十八億九千六百万円の増収を見込まれておるのであります。今日においては、通行税は、他の消費税と同じく、担税力のある署務的交通機関の利用に対する課税であると思われますが、鉄道旅行は、その旅行目的の調査によっても明らかでありますように、その大部分が生産的活動または公的活動による生産的、必需的なものであります。指定のグリーン車の鉄道旅行を奢侈的な消費と見ることは、すでにその社会的妥当性が失われていると思うのであります。また、船舶を利用する場合は、一等でも無税なのであります。一般的に見て、船舶の一等は鉄道の指定のグリーン車よりもすぐれた設備を備えておるのであります。また、バスの利用についても、冷暖房完備、座席指定並びに定員制による場合は、鉄道に劣らない旅行ができるのであります。しかし、これらはいずれも無税なのであります。また、福田大蔵大臣答弁されました公平さ、担税力の有無、徴収体制の確立等を勘案しなければならないと言われておりますが、税体系総体から見ましても、一方では租税特別措置法による配当分離課税に見られますように、きわめて不公平なのであります。鉄道の指定のグリーン車を利用する場合は一割を課せられているので、負担が過大であります。従来、指定のグリーン車等課税対象料金利用者は乗客の一割であったものが今後は三割等になるとの国鉄長瀬常務理事の説明がありましたが、ますます大衆重課が増大することになります。  以上のように、今日において、鉄道旅行の実態、あるいは生活水準、社会情勢等の変化と、通行税本質とその沿革等を考え合わせるとき、通行税はすでに存在意義を失っており、原田運輸大臣も明確に答弁されておりますように、世界に例のないことだし、取られないほうがよいことだと答弁されております。ゆえに、これの即刻全廃されることを強く要望いたします。もし一挙に全廃することが困難な場合は、通行税法の当面の措置として、一、現行の通行税率一割を五分とすること、一、現行税収はすべて国鉄に還付すること、一、徴収事務労働者に手当を支給すること、等々の改正により、鉄道を利用する旅客並びに国鉄、同労働者に対する措置を講ずるように改正することを切望いたしまして、私の反対討論を終わります。
  46. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公明党を代表いたしまして、通行税法の一部を改正する法律案に対しまして反対の討論を行なうものであります。  今国会の最大の法案であります国有鉄道運賃法並びにこれに関連する通行税法は、議会民主主義を基調とする国会において、当初の慎重審議という約束をひるがえし、十分な審議が尽くされない段階で採決に入らざるを得ないということは、良識の府としての立場を破壊する暴挙であります。わが公明党は、あくまでも、最重要法案であり、国民生活を圧迫する要因であるだけに、慎重実質審議を尽くすべきであると主張してまいったわけでありますが、それにもかかわらず、多数与党は、衆議院運輸委員会では強行採決、本会議においては、社会、公明両党を無視した強行採決という暴挙に出たことは、国民の切なる要望を踏みにじる国民不在の何ものでもないと断ぜざるを得ないのであります。また、さらに、参議院の運輸委員会では、議長裁定によって質疑が続行されたとはいえ、質疑打ち切りを強行し、議長裁定後においても質疑時間は一方的に制限され、さらにまた、本委員会でも、昨日の理事会の、運輸大臣の出席、また十分なる審議という要望を一方的に退け、時間制限を受けて慎重審議を阻まれたことは、非常に残念なことであります。まさに国民の声を代表する正常なる審議は無視されたものと言わざるを得ません。  本法律案に反対する理由の第一は、通行税はまさに廃止すべきであるということであります。通行税は、昭和十三年並びに昭和十五年に戦費調達のために創設されました古色蒼然たる、また、戦火のにおいを発する税法であります。通行という概念からも、近代文明の隆盛の今日、戦時体制のイメージを与えるようなものは廃止すべきであり、戦争中の悪夢を思い起こさせるような悪税を早くやめるべきであります。担税力があるとの理由が底にあるようでありますが、技術革新の進歩に並行して、交通のスピード化に対応して大衆化の一途にある今日、前時代的で二十世紀にふさわしくない税体制と言わざるを得ないのであります。  第二に、運賃改正との関連から財源確保が大きな理由になっているわけでありますが、昭和十六年の国税総額に対し通行税〇・六%は、その時代の背景を考え一歩譲ったといたしましても、本年は〇・二%であり、六兆一千四百九十六億六千三百万円もの国税総額に及ぶ今日、通行税課税が必要があるのでありましょうか。現行通行税財源は百億円程度で、そのうち国鉄関係税収入は二十五億円であります。この際、減税の一環として廃止したほうがベターではないかと思うのであります。財源確保のために通行税に視点を当てるのは、大きな誤りであります。  現行の租税体系においては、所得税等直接税の比重が重いわけでありますが、間接税とのバランスということでちゅうちょするのではなく、消費の形態がそれぞれ異なる性質のものであるため、ここでおのおのの消費形態に応じて負担の調整をはかるべきであります。特に利子配当分離課税等の租税特別措置の廃止、あるいは法人税の改正、さらに間接税におきましても高級奢侈品に対する増税をはかって、税体系の調整を早急に実施すべきであると主張して、私の反対討論を終わります。
  47. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、民主社会党を代表して、通行税法の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行ないます。  反対の理由の第一は、この法案は、国鉄運賃値上げ法案と一体のものであることであります。国鉄運賃の値上げについては、今日、国民生活にとって重大な脅威となっている物価上昇に及ぼす影響が大であること、また、国鉄再建計画がずさんで、国鉄利用者に対する過重な犠牲において再建をはかろうとするものである、この二点から反対であります。また、通行税については、一、物価対策上の重要性にかんがみ、これを廃止し、運賃値上げによる国民への負担増を少しでも減らすべきである。二、一、二等の差を廃止することは、国鉄当局の説明によれば、設備格差の縮小、また利用率の平均化をはかることがその理由であると言われておりますけれども、この通行税はこういう趣旨に逆行するものである。三、旧一等車をそのまま課税対象にしているが、これは安易なきめ方である。同じ旧一等車の中でも設備の格差があり、また、私鉄バスなどの設備と比較した場合にも問題があると思います。高級な設備の使用に対して課税するという考え方は否定するものではありませんが、その趣旨ならば、旧一等車のワクにとらわれるのでなくて、総合的に再検討すべきであると思います。  以上三点により反対の意を表明いたしまして、私の討論を終わりたいと思います。
  48. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました通行税法の一部を改正する法律案に対して反対するものであります。  政府は、本法案の親法案ともいうべき国有鉄道運賃法の一部改正法案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案を今国会に提出し、別途運輸委員会審議しましたが、この二法案こそ、国鉄財政再建を名目として政府国鉄の管理運営に全面的に介入し、政府の強権をもって、国民に奉仕すべき国鉄をますます営利主義と大企業、米軍への奉仕に向かわせ、公共企業体としての国鉄の公共性を踏みにじって、国民にたえがたい犠牲を強いるものであります。すなわち、原価をはるかに上回る高い旅客運賃をさらに十年間に数回上げるほか、赤字ローカル線や小駅の廃止、無人化、また国鉄労働者十六万人の合理化など、勤労者、農漁民、中小企業家、地域住民など国民全体に重大な打撃を与える一方、大企業の製品輸送には原価を割る安い料金を据え置き、フレートライナー、コンテナー輸送、物質別適合輸送などを中心とする中長距離高速大量貨物輸送を増強して、至れり尽くせりのサービスを行なうものであります。さらに、重大なことは、私の質問に対する運輸大臣答弁がほのめかしているように、国鉄財政再建し、十分なもうけが出るようになった際は、国鉄を公社化する危険さえ含んでいるのであり、国民に奉仕をすべき公共企業の性格をますますなくし、営利主義を強めて一そう大企業のための輸送機関に仕立て上げようとしているのであります。  わが党は、旅客運賃は安く据え置き、大企業の貨物の運賃は、国鉄運賃法の定めるように、原価を償う公正妥当な水準にまで引き上げるべきであり、さらに、公共企業としての公共性を保つために、国の一般会計からの出資、補助をすべきであり、さらに、国鉄の経営、財政、管理機構を民主化することこそ、国鉄を国民に奉仕させる方向で財政再建を進める道であることを主張しております。  本法案は、以上のような政府の不当な政策を進めていくためにとられた国鉄運賃値上げに伴って通行税法改正しようとするものでありますが、これもまた国民大衆の利用する二等の旅客運賃引き上げと、それを隠すために行なう一、二等の等級廃止に伴って生まれた措置であり、全く欺瞞的なものであります。  わが党は、政府の今回の国鉄政策の全体に反対するという根本的な立場から、また、この通行税法が戦費調達のために採用された悪税の単なる継続であることから、本法案に対して反対するものであります。  最後に、本委員会でのわが党や公明党の質疑が不当な時間制限によって妨げられ、十分な審議を尽くすことができなかったことに抗議し、私の反対討論を終わります。
  49. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  通行税法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  51. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 多数と認めます。  よって、本案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十四分散会      ——————————