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1969-04-22 第61回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月二十二日(火曜日)    午前十一時十四分開会     —————————————    委員異動  四月十七日     辞任         補欠選任      鬼丸 勝之君     米田 正文君  四月十八日     辞任         補欠選任      米田 正文君     鬼丸 勝之君  四月二十一日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     平泉  渉君  四月二十二日     辞任         補欠選任     小林  章君      河口 陽一君     平泉  渉君     久次米健太郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         丸茂 重貞君     理 事                 青田源太郎君                 鬼丸 勝之君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 田渕 哲也君     委 員                 青木 一男君                 伊藤 五郎君                 大竹平八郎君                 河口 陽一君                久次米健太郎君                 今  春聴君                 津島 文治君                 中山 太郎君                 西田 信一君                 藤田 正明君                 矢野  登君                 木村禧八郎君                 田中寿美子君                 野上  元君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        外務省経済局長  鶴見 清彦君        大蔵政務次官   沢田 一精君        大蔵省国際金融        局長       村井 七郎君        国税庁長官    亀徳 正之君        通商産業省貿易        振興局長     原田  明君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        通商産業省貿易        振興局輸出保険        課長       平松 守彦君    参考人        日本輸出入銀行        総裁       石田  正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨四月二十一日、岩動道行君が委員辞任され、その補欠として平泉渉君が選任されました。     —————————————
  3. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいま御報告いたしました委員異動に伴いまして、現在本委員会理事に欠員がございますので、その補欠選任を行ないます。  理事選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事鬼丸勝之君を指名いたします。     —————————————
  5. 丸茂重貞

  6. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 議事進行について。
  7. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 鈴木君。
  8. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私はきょうの委員会を始めるに先立って委員長に伺っておきたいんですが、土曜日の公報に昨日大蔵委員会開会されることが載っておりました。その内容は、租税及び金融に関する調査ということなんであります。ところが、これが、実際問題としては、理事会も開かれないでやられている。いわゆる委員長職権でもってきのうの大蔵委員会というものは公報に載せられているわけです。委員長職権でやらなきゃならぬほど緊急な事態が発生しているのかということが私にはわからない。いままで円満にずっとやってきたのが急激にここのところで委員長職権委員会定例日でない月曜日にぼこっと開かなきゃならないという理由がわからない。その理事会一体開かれたのかどうかということをまず委員長に伺いたい。  それから、きのうは、一日おりましても、とうとう放送もなければ、理事会開会したということもない。いやしくも公報に載っけておきながら、やらないならやらない、本日は取りやめになりましたとか、理事会でこういうふうにきまりましたということくらい言ってあたりまえだ。あの公報を信じて来た大蔵委員の方々は、一体どういうことになる。そういうようないいかげんなことを行なわれるということでは、これは委員長信頼できなくなってくるんです。委員長は、一体、あの昨日の開会ということを知っておられたのかどうか。それから理事会が招集されて正式にきのうやるということになっていたのか。全然そういうことなしに、職権でやられたと私は承知しておりますけれども、その辺のところの経緯と、それからなぜ昨日は理事会も開かなければ、放送もしなかったのか、この点について委員長に伺いたい。
  9. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいま鈴木委員からの御質問でございますが、表向きを見ますと、まことにそのとおりでございますが、実はこれにはいろいろ理由がございました。と申しますのは、きのうの開会は一見職権開会の形をとっておりまするが、実際はさような意図をもってやったのではないんだということを冒頭はっきり申し上げておきますが、この問題は、去る日にちは忘れましたが当理事会並びに委員会におきまして、運輸委員会におきまする連合審査の申し入れをいたしました。その議決をいただきました際に、日時等については委員長に御一任をいただくということでございましたので、運輸委員長とも相談をいたしまして、運輸委員会が主として行なう委員会でございますので、日取り等その他については運輸委員会におまかせいたしますということを私のほうで申し述べてあったわけであります。そういたしますると、運輸委員会といたしましては、その開催の日取り等についていろいろお運びの段取りがあったんだと思いますが、実は、委員長は、その点は、申しわけないと思いまするが、詳細の段取りについて承知することでなかったということでございます。したがって、さような点から、何と申しまするか、連絡の不行き届きはあったということを私自身もすなおに認めまして、この点はおわびをいたします。ただ、従来ずっと円満に議事を進行してまいりました当大蔵委員会のその円満な慣習を破るというふうな気持ち委員長として毛頭なかった点は、これはくれぐれも申し上げたいところでございます。  したがいまして、鈴木委員のお申し出につきましては、委員長といたしましては、以上のような釈明をまぜましておわびを申し上げまして、自今もひとつ十分な御協力を賜わりたいことをお願いをする次第でございます。
  10. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの点で、委員長は、昨日やるということが公報に載ることを知っておられたのかどうかという点です。前段連合審査の問題につきましてはまた伺いますけれども、知っておられたのかどうか。
  11. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいまの御質問でございまするが、ちょうど土曜、日曜が間にはさまったということがまことに不幸な事態であったというふうに考えます。あとから承りますると、たしか秘書のほうに連絡があったということを聞いておりまするが、私のほうの何と申しまするか不手ぎわで、私のほうに直接入らなかったという点についてはぜひ御了解いただきたいと思う次第でございます。
  12. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その点で、とにかく委員長が知らないうちに大蔵委員会開会公報に載るということは、これは古今未曽有の出来事だろうと思う。議長の知らないうちに本会議公報に載るようなものであります。これは厳重に委員長のほうから——おそらく運輸委員会のほうで勝手におやりになったのかわかりませんけれども抗議を申し込まなければならぬ。いいかげんなことでやられたのじゃ問題になります、はっきり言って。委員長が知らないうちに大蔵委員会開会のあれが出るということであれば、委員長をのけものにして毎日開くことも中止することも自由自在である。秘書にさえ連絡しておけばいいということになったら大問題である。その点、今後の問題についてはっきりと伺っておきたい。  いま一つは、連合審査のことについては、確かに日時委員長一任になりました。だけれども運輸委員会のほうで連合審査を受け入れるということを主たる委員会である運輸委員会はまだ議決をしていない。したがって、連合審査をいつやるということははっきりしていない。はっきりしていないのにそれを日をきめるということになれば、委員長に対して運輸委員長のほうから話があるだろう、こっちから申し込んだのですから。その相談の上で日時をきめるというのが参議院の慣例ですよ。ところが、その慣例を破ったような形で、委員長の知らないうちにぽんと委員会が載っておる。連合審査日取りがきまらないうちにあのような公報に載るということは、これはおかしいわけであります。その点は、委員長は、連合審査というものについて少し甘くお考えになっておられたのじゃないか。  この二点について伺いたい。
  13. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいまの鈴木委員の御指摘は重々ごもっともだと思いますので、自今はさようなことがないように委員長は十分注意いたしますので、何ぶんひとつ御理解をいただきたいと思います。
  14. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 委員長としては、それじゃ、運輸委員長に対して厳重な抗議をお申し込みになりますか。
  15. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいま申し上げましたとおり、私のほうにも一部断絶いたしました不手ぎわがございますので、その点を考えつつ運輸委員長自今はさようなことがないように申し込むつもりでございますので、御了解いただきたいと思います。
  16. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最後に、私は一日待っておったのですが、とうとう放送もなければ、なんにもなかったわけであります。そんなばかな話はないわけであります。どういう理由でもって放送もしないし、理事会も開かれなかったのか。
  17. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 先ほど申し上げましたとおり、この大蔵委員会は、当委員会固有の審議を行なうための公報掲載でございませんでしたものですから、先ほど何回も申し上げたとおり、連合審査と関係した問題でございましたので、いろいろ御指摘のような点があったと思います。この点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  18. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これはくどいようで申しわけないけれども公報には連合審査の件とは書いてない。租税及び金融に関する調査になっておるんです、はっきり。そういう公報ですよ。だから、はっきり申し上げて、委員長のほうは、なければないと、本日は都合により取りやめになりましたという放送をするべきでしょう。それがなしなんです、私が聞かなかったのかもしれないけれども
  19. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) まことにその点は手落ちでございましたので、委員長重おわびをいたしますので、ごかんべん願いたいと思います。
  20. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 平身低頭あやまられてばかりで困ってしまうのですけれども、とにかく今後こういう変な事態がないように、やるならば、必ず理事会を開いて、そうして了承の上で全部の運営をしていただきたい。
  21. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) よくわかりました。自今さように心得ますので、よろしくお願いいたします。     —————————————
  22. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 国際通貨基金及び国際編興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律家を便宜一括して議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  23. 横川正市

    横川正市君 ちょっと出ばなで火花が散りましたのですが、(笑声)この出ばなの火花はたいへん大切な問題ですから、私は鈴木君とそれから委員長とのやりとりで了解をしたということではなしに、理事会の問題で論議をしていただきたいと思います。気持ちの面でわからないわけではないのですが、私も実は六時ごろまで部屋におりまして、いつなくなったのか全然知らないうちに過ごしてしまいましたが、うかつにして鈴木君ほど気にしておらなかったので、ちょっとおこる場所が食い違ったようですけれども理事会でこれは十分論議をしていただきたい。  どうもあまり金(かね)の縁のない者が金の価だけを非常に重要視していて、一体これはどうなるのかという気持ちが先行するわけなんですが、この鉱物人間英知交換のためのきわめて重宝なものとしてつくられて、そのつくられたことが一体いま各国でどういうような取り扱いを受けているのかという点では、端的に言えば、その価値はまだ依然として重視をされているのじゃないか。そういう重視をされているということと、それからIMF加盟国各国平価問題等、これをかみ合わせて考えてみますと、なるほど産金の度合いが間に合わないという事実、それからいろいろな交流が激しくなってきているという問題、こういうことはあるけれども、一口に言ってみると、一体SDRをつくり上げていく各国間のいわば連帯性といいますか、そういうようなものはどういうふうにとらえられているのか、加盟するという立場に立って。ことに、金(きん)であれば、鉱物そのものに対する信頼というものがあるわけですが、金以外の場合には、その国の持っている固有の力といいますか、経済力といいますか、あるいはいろいろな意味での信憑性というか、そういったものを総括的にとらえて、一つの条約にして、これをお互いが守っていこう、こういうことなんですが、一体、金の兌換がされないということを前提条件としているこういう機構に対して、どういう信憑性あるいは信頼性というものを置くのか、その点をまずお聞きをいたしたいと思います。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 戦後は、国際協調体制というのが非常に整ってまいってきておると思います。戦前では、もうほとんどそういう機構というものがなかったわけであります。まあ国際決済銀行というのがありましたが、これはドイツ賠償の取り立てを円滑にやっていこう、こういうことが主たる目的で、あと情報交換というような程度でありましたが、戦後は、IMF機構というものができまして、世界協力してひとつ世界経済を伸ばしていこう、そのための通貨供給を円滑にしていこう、こういう努力をし続けておるわけでありまするが、そのIMF体制を中心とする世界各国通貨協力、これがSDRの背景にその基盤として存在をすると、こういうふうに私は見ておるわけであります。その具体的な方法としては、協定を結び、各国がこの協定を承認をする、こういう形で積み上げられている、かように考えております。
  25. 横川正市

    横川正市君 たとえばその最も大株主であるアメリカで、ドルについてのいろんな不安が、歴史的にも時間的にも経過をすればするほど深刻の度合いというものを増してきている。そして、近年になってから、たとえば株式に対する外人の購入資金であるとかそれからアメリカ系の全国へ張りめぐらした企業の益金の本国への送金問題であるとか、それからこれはまあ日本の場合も同じですが、中期債を買うとかというような形でのドル防衛に対する協力であるとか、言ってみますと中心的なアメリカドルに対する不安というものは、以上のようなことがいろいろ行なわれてようやくその面目を保っている。しかし、実際上は一体これが全然危険を脱したものかどうかということになりますと、この点で私どもとしては非常に不安を感ずるわけなんです。端的に言うと、アメリカドル不安に落ち込んでいった経過の中に大きな転換期を言えば、終戦当時に世界経済のいわば中心的な役割りを果たして、疲弊した各国状態に対してはきわめて経済的な優位をとっておったわけですね。それから援助政策がとられる。それでもなおかつ経済的には優位であったのが、たとえばベトナム戦争という問題に飛び込んできて、はじめてドルに対する不安が深刻になってきている。私どもは、いま、日本海の波がきわめて急激を告げている。これはアメリカのそれぞれの情報筋も言っているように、長続きしたらたいへんなことになるぞと、こういうことが報道されているということになると、一つの国で、その最も中心的な国でさえ、この状態の中にあって一体どうやってその国の信憑性というものを具体的に実証してくれるのかどうか。また、この加盟国の中にも、たとえば後進地域なんかの場合には、このことが必ずしも有効な対策とはならないんじゃないかという、いわば引き出し権制限についての反対意見もありますし、それからフランスあるいは西ドイツ等の中にもこの運用その他について明らかに反対意見あるいはきわめて消極的な賛成意見というのがあるわけですが、私たちは実はこれを具体的に見せられているわけじゃありませんので、いま大臣の言ったようなIMF体制の中での各国の今日まで結束してきたこと、そのもの一つ信憑性なんだと、こういうことではどうもとらまえどころがないんで、具体的に言えば、アメリカのいまのドル不安に対してどういう対処をするのか。ニクソン政権になってからずいぶん思い切ったドル防衛策といいますか、あるいは国内経済の立て直し、国際収支への強硬な手がとられているようでありますけれども一体これをどういうふうに見るのか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 横川さんは、この問題がドル不安から発生してきておるというような見方のようでありますが、そうは考えておりません。ドルは今日やっぱり世界で最大の信頼を持ってきておる。現に、いま、ヨーロッパ通貨不安というものが、そういう不安もありますが、マルク、ドル、円、これに対する信頼感というものは非常に高いわけです。それらは、ヨーロッパのほうからアメリカやわが日本に対しまして昨年中多額の資金移動があった、こういうことでも明らかであります。問題は、ドル不安じゃないんです。ドル不安ということでなくて、ドル不足、そこから発出しておる。また、ドルばかりじゃありません。これと並んで重大な役割りをなす金の不足、こういうことから問題が出ておる。私は、決して、この問題がドル不安だ、その対策としてとられているのだ、そういう見方はしておらないんです。
  27. 横川正市

    横川正市君 私も、それはちょっとことばが足りなかったんですが、ドル不安というのではなしに、その国の持っている固有経済力、これを体制の中で私ども一つ信憑性として持っておったわけですね。だから、その信憑性が、今日の経済流動性に見合って金が足りない、それにかわって一つのかわるべき体制をとろう、それがSDRにかわってくる、こういう経過というものについては理解をすることができるのですが、その国の持っている経済性、たとえばその国の為替レートなら為替レートの中におけるその国の持っている平価価値そのものがその国の力によっていつでも流動するようなことであっては、実は非常に不安心状態になるわけです。だから、そういう不安心通貨流動性の中に存在しているとすれば一体どうかという問題を懸念するわけですね。ことに、金であれば、そのままの鉱物ですから、これは信憑性が出るが、そうではなしに金とは兌換されない形のものということになれば、その信証といいますか、そういったものを一体われわれはどういうふうに認識すればいいのか、その点がちょっと不安なんじゃないか。ことにドルポンドが実際上今日のような形で国際的な通貨としての機能を果たすためにはいろいろな制限を設けるというような状態になってきているわけですから、そういう場合に国際間の金融協力というようなものが一体成り立っていくのかどうか。ことにいま金とドルポンドというのが一つキー通貨として存在しておったが、それが単に経済交流だけが拡大していったからということだけではなしに、やはりドル交換性ポンド交換性というものが潤沢にいかない、そういう状態から別個な形というものを考え出さざるを得なかったんじゃないか、こういうふうに考えるわけなんですが、これをひとつただして答弁をいただきたいと思います。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、繰り返すようですが、ドル、金、つまり国際決済手段不足している、それを補うためにどうするかという国際間の相談の結果なんです。結果、まあ管理通貨という——SDR国際通貨というような側面も持っておりますが、その通貨だという表現をお許し願うならば、これは一種の管理通貨になるわけですね。国際的な管理通貨である、こういう性格になると思うのでありますが、その基礎はやっぱり国際間の信頼でなければならぬ。それを具体的に保証いたしておるものは何かというと、IMF協定である。今回、IMF協定の改正ということになって、各国がこれを承継しようと、こうしているわけであります。
  29. 横川正市

    横川正市君 そうすると、このSDRが、第三の通貨と言われるように、人間英知でつくり上げた金の価値にかわった第三の通貨として十分その用務を果たし得るものだと、こういうふうにお考えになっているんですね。大体、一般的に言えば、調整機能の回復の効果という点からいえば、まだまだ金に該当するほどの信頼というものを置くことはできないのじゃないか。いわば一つの段階としては効果として役立つかもわからないが、さらにこれにかわるべきものがっくり出される必要があるのではないかということがあって、前段状態に対応する今日的な状態ではSDR一つ考え出されたものとして有効な手段だと、こういうふうにいわれておるわけですが、そうすると、大臣考えでは、これはまさに金にかわるべき有効な手段としてSDRを認めることになりますね。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりでございます。ただ、これは、あなたも御指摘のように、万能薬じゃないので、今後の経済の発展、また人類の知恵の発達、そういうものが新しい制度を生み出すという時期があるかもしれません。しかし、今日におきましては、もうこの協定加盟する国国は、このSDRという第三の流動性に絶対の信頼を置き、これを運営するということに相なろうかと思います。
  31. 野上元

    野上元君 関連して。いま、大蔵大臣は、SDRの創出は、ドル不安解消、あるいは国際通貨不安解消ではなくして、いわゆる国際流動性を高める、そのためにSDRが必要なんだというわけですね。ところが、IMF体制のもとにおける国際流動性といえば一般論的にはいえるんですが、現実に突き詰めていえばドルの問題ですね。ドルが潤沢にあるかないかということの問題、そういうことになると、私はどうもこの点がよくわからないんですが、たとえば西ドイツではいま九十八億ドル外貨準備を持っていますね。あるいは、フランスは四十二億ドル、イタリアが五十三億ドル日本が三十二億ドル、その他の国々も持っているわけですね。こういう黒字国をほったらかしておいて、国際収支の改善いわゆる赤字の解消というものだけを重点に取り上げて論争されているような気がしてならないんです。したがって、こういう黒字国は、必要以上に持っているんですから、ドイツは九十八億ドル外貨準備をする必要はないわけです。日本だって、最近の新聞を読みますと、このままの状態でいくと、やがて四十億ドルから五十億ドル、六十億ドルにもなってくると、当然外国から日本に対する圧力が加わってくる。そのときに、円を切り上げろ、こういう一つの圧力が加わってくるということは考えられるわけです。そのためにすでに日本は手を打ちつつある、これは賢明な策だと思いますが、それは時期尚早という議論も出ているようですが、あなたの議論によると、輸入総額の約三分の一ですか、したがって、日本では現在の時点では四十億ドル持つということが大体正しいと思うと、こういうふうに判断されているんですが、そのことの論争は別として、やがて四十億ドルをこえるということについては、明らかに国際流動性について黒字国は重大な障害になるというふうに考えられるわけです。したがって、ドル不足なら、こんなによけい持っているところから必要以上のドルをはき出させる、そういう十カ国蔵相会議できめたようなはっきりした国際的な管理がなければ、このSDRを幾ら発行してみても、結局、ドルがどこかに偏在してしまえば、また同じことを繰り返さなきゃならぬということだと思うんです。したがって、SDRというものは通貨か信用かという重大な問題になっていますが、国内通貨とは違いますね。国内通貨のようにそのたびに支払うものじゃないんですね。国際収支の帳じりを決済するために払えばいいわけでしょう。したがって、世界貿易の規模が大きくなったからそれに比例していわゆる国際流動性が必要であるというわけではないと思うんですね。要するに、収支の変動の函数がいわゆる外貨の準備高、こういうことになるわけですね。そういうことを考えると、どうもその点がはっきりしないような気がするんです。もう少し流動性の問題について黒字国についての国際管理が必要じゃないか。そういうことをやってしまって、そうしてなおかつそのときになって国際流動性が足りるか足りないかという問題がはっきりすると思うんですが、いまばらばらのときにSDRを発動するというのは、ちょっと理論的な根拠が薄いのじゃないか。だから、ドル防衛なんじゃないかというふうに勘ぐられてもしかたがないと私は思うんですが、その点はどうですか。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、お話しのとおりなんです。どうしても、国際経済をうまくやっていこうとすれば、飛び抜けて高い黒字国というものが出てくるということは好ましくない。ですから、各国とも、恒常的な黒字傾向というものがありますれば、それを戒めるという節度を持たなきゃならぬわけです。しかし、それがいまそう簡単には実現できない問題であります。モーラルな意味においてそういう圧力というものは加わる傾向がありますが、お話しのとおり、各国とも節度を持つというようなことになって、黒字国、赤字国というようなものがだんだんと解消されていくというようなことになりますると、SDRの負担というものも軽くなってくる、こういうふうに考えます。そう簡単にまいらないのが実情でございます。
  33. 横川正市

    横川正市君 どうも私は十二時までにちょっと用事があって、自分の関係で質問を中断しなければいけませんので、最後に一言だけ聞いておきたいと思いますが、このSDRの評価の中に、国際流動性の中の量が不足をしているという意味での対策として取り上げられたと。それで、その面では、端的にいえば英国とかアメリカとかいうのは賛成の意を表しているというわけですね。ところが、それに対して、フランスとかあるいはEECの一部の中には、通貨体制の最大の問題であるドルとかポンドとかいうものの不安に対して、その国自体が国際収支の改善というものを十分にやらないで、その努力が見えないということは、これは非常に問題じゃないかという取り上げ方をしているのが一つであります。それからもう一つは、投票権が八〇%が八五%になったということが言われておっても、たとえばEECの投票権が一六・五%というように持っていればこれは一つの拒否権のような形にならないかというように、いろいろなこの条約に対する各国の思惑とか批判とかいうものがあるわけです。日本の場合には、大蔵大臣の言うように、ずばりそのもので、今日の流動性に対応するSDR体制そのものは十分に信憑性があるものだ、しかもこれは金とか何上かにかわる通貨としての価値を持っているものだ、こういうふうに言われるんですが、何の懸念もなしにこの中に入っていこうとする日本の立場としての考え方、これはいろいろ言われている各国の批判とあわせてみて、それに対してどう解釈をされてそれに対処をされるのか、その点を一つお伺いして、非常にしり切れトンボになりましたけれども、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、批判左右というお話でございますが、先進諸国というか重要な国におきましては、フランスがこれに対して批判的な態度をとってきておったんです。大体、IMFの総会等を見てみますと、フランスが従来ばいつも多数国の意向に対しまして一人対立をするような態度が見受けられたわけでございます。ですが、しかし、フランス以外の国々、ことにヨーロッパにおきましては、イギリス、ドイツ、これらの国は、このSDRという考え方に賛成をいたしておるわけなんです。しかも、最近私ども情報を見ておるところから判断いたしまして、フランスもかなり変わってきておる。ニクソン大統領の訪欧、あの前後から、このIMF体制に対するフランスの態度にかなり変化が来ておる。それは、背景に、フランスが昨年の五月フランの危機というものがあり、その後金の保有額また外貨の保有高なんか見ても減少を続けておると、そういうことも背景としてはあると思うのでありまするが、IMF体制に対しましてかなり理解を示すような態度に変わってきている。そこで、私は、この問題は、まあ大体において世界大多数の国の理解のもとに発足することになろう、こういうふうに見通しをしております。
  35. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 午後二時再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      —————・—————    午後二時十一分開会
  36. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、日本輸出入銀行総裁石田正君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  38. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 休憩前に引き続き、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私、時間が二時間に限られておりますから、それで、こういう問題について御質問しますから、なるべく簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。  まず最初に、ニクソンの国際収支特別声明とSDRとの関係、アメリカ国際収支SDRとの関係、これは非常に密接な重大な関係があると思いますので、まずこの点について。  それからアメリカ国際収支の見通しについて。  第三は、アメリカ国際収支政策と日本ドル防衛協力。特に、この点につきましては、インドネシア援助、それからリファイナンスの問題、これを具体的に伺っておきます。  それから第四番目には、SDRの問題自体、流動性の過剰か不足かという問題がずいぶん議論されましたが、これを結論的に聞いておきます。  それから特別引き出し権の性格、これもだいぶ議論がありましたが、これも結論的に伺います。  それからハーモナイゼーションの原則、調和原則あるいは復元の原則、こういう点について伺います。  それから未解決の問題として、SDRの特別引き出し権の創出の分量とか配分、対処計画発動の時期、それからEECの拒否権の問題。  それからSDRの金保証と米ドルとの関係、特にその平価関係、SDR平価の関係はどうなるのか。そういう点についてこれから伺っていきます。  まず、最初に、四月四日にニクソン新大統領が国際収支に関する特別声明を発表しました。大体六項目発表しましたあの中で、特にSDRの早期発動をかなり期待するということを述べております。なぜこの時期になってニクソン大統領がSDRの早期発動を期待すると声明書で述べたか。特に六つの国際収支改善対策に関連させて述べているのです。それとニクソンの国際収支に関する特別声明について政府はどういうふうに受け取っておるか。日本に対してどういう影響があるか、どういう協力を求めるのか、そういう点について伺っておきます。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) SDRは、元来、アメリカドル不安、ドル救済とか、そういうアメリカ的な立場で発想されたのじゃないのです。それからまた、欧州の通貨不安というものがあるから、それから発想されたというものでもない。でなくて、戦後の経済を見てみますると、どうも世界流動性不足してきた、これを何とか流動性不足問題を解決しなければならぬ。この問題は、各国の節度ある国際収支対策ということでもかなり改善をされまするけれども、それだけでも追っつかない。そこで、新しい流動性を必要とする。こういう結論になったのでありまするが、これは五、六年前からIMFを中心といたしまして検討が続けられ、ちょうどことしはいよいよその結実を見るという年柄になったわけであります。たまたま欧州において通貨不安の問題があるというような際でありまするものですから、SDRがこの時期に発動されるということは、その当面の問題の解決にも大きく裨益することはあるだろうと思います。思いますが、それは副次的な効果であって、当初のねらいというものは、あくまで長い目の世界流動性の問題である、こういうふうに理解をいたしておるものであります。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あのニクソンの国際収支声明それ自体についてはどうお考えですか。それとSDRとの関連を伺っておるんです。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ですから、私はそう考えるのですけれどもアメリカじゃ、三本柱というか、金融対策、つまり高金利政策を中心とした金融政策、それから税の政策、また、歳出のカットダウン、これが中心になりますが、その他通商上の諸政策も加味いたしまして国際収支の安定改善をはかりたい、こういうのがニクソン教書の要旨であろうと思います。そこへもってきて、たまたまSDRという問題がありますので、それに言及をしておる。これが発動するということになれば、世界の貿易全体に裨益するところがあり、したがって、アメリカ経済にも有益である、こう考えたことと思います。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、大蔵大臣は提案理由をよく理解されていないのじゃないかと思います。提案理由に二つの点をあげておるんですよ。一つは、今後世界の貿易が拡大していく。そうすれば、やはり、国際収支それから決済の問題が重要になってくる。それで、金とかドルの準備資産が必要になってくる。金とかドルとかの供給には限界があるんですね。そこで、不足になってきた場合、国際収支を改善しょうとして引き締め政策をとる危険がある。そうなると、世界の貿易を制限し、あるいは発展を妨げるということが第一なんですよ。そこで、このSDRを、新準備資産を創出する必要があるというのが第一でしょう。第二は、いわゆる流動性ジレンマのことを言っておるんです。流動性ジレンマというのは、アメリカが、国際収支が赤字になれば、流動性の供給がふえるでしょう。流動性の供給をふやすと、アメリカ国際収支が赤字になる。赤字になることと流動性の増加とパラレルなんですね。  そこで、今後、私はこう解釈するのです。ニクソンがあの国際収支改善対策を講じても、なおかつアメリカ国際収支は、これはドブレも言っておりますが、いまのドル為替本位のもとでは、早期にアメリカ国際収支は改善されることはない、長期にわたって赤字を現出するであろう。そうなると、ニクソンの国際収支改善対策にかかわらず、アメリカ国際収支の赤字はかなり続くと見なければならない。ニクソンの国際収支改善対策についても具体的に欠陥がありますから。たとえば昨年度非常に輸出が減ったにもかかわらず国際収支が改善されたのは、相当いろいろな無理をしているわけですよ。その無理が長くは続かない。しかも、ニクソンは、あれでしょう、利子平衡税なんかも緩和してしまっているんですよ。いわゆる対外投資の規制を緩和しているんですからね。対外投資の規制を強化したことがアメリカ国際収支が改善される一つ理由だったんですよ。それを今度は緩和してしまうでしょう。アメリカ国際収支は依然として改善されない。その上に、これはトリフィンも言っておりますが、すでにもう三百億ドルの過剰ドルがあるんですよ、世界には。かりにアメリカ国際収支が改善されて収支均衡がとれたとしても、すでにアメリカのインフレ政策によって、基軸通貨国としてのビヘービアの問題ですが、ベトナム戦争とかあるいは対外軍事援助とか等々によりまして、あるいはまた欧州に対する投資等を続けて、短期債務が三百億ドル以上あるんですよ、すでに現在。その問題は、アメリカ国際収支が均衡しても、SDRを出したって、解決がつかない。その問題は依然として残るんですよ。その上に国際収支の赤字が長く続くとなれば、アメリカは金交換を要求されたときにどうしますか。そのときの用意にSDRアメリカはどうしても創出する必要が出てきたと、こう私は解釈している。それで、金交換を要求されたときにSDRで支払うのでしょう、それは限界がありますけれども。出資国は金のかわりにSDRを受け取る義務はあるけれども、割り当ての二倍しかそれに応ずる義務はありません。しかし、二倍以上要求があった場合、払ってもいいんですけれども、そうなればアメリカの信用に関しますからね、アメリカは金を交換しないということになりますから。ですから、大蔵大臣は、いままでの説明をずっと聞いていますと、この提案理由の第一のことだけしか言っていないんですよ。いわゆる流動性ジレンマのことについて触れていない。これはほんとうにアメリカのジレンマですよ。アメリカ国際収支が赤字になれば流動性不足はありませんよ。現在不足じゃないですよ。大蔵大臣不足々々と言っていますけれども、そうじゃない。それは、ドブレだけではない、西ドイツのシラーも言っていますよ。はっきりと不足ではないと、過剰が問題だと言っている。まるで反対ですよ。大蔵大臣反対のことを言っているんですよ。どうも、事実認識において大蔵大臣SDRの問題についてはわれわれと違うと思うんですがね。いまの流動性ジレンマについては、大蔵大臣、どういうふうに考えますか。  それと、もう一つは、アメリカ国際収支の見通しをどういうふうにお考えになるか。私は、ニクソンのあの国際収支対策では赤字は解消できないと見るのです、かなり長期にわたって。  この二つの点について伺います。
  44. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) このあいだ、私はシドニーでアメリカの財務長官とも会談し、アメリカ経済状態の話もよく聞いてみました。ケネディ財務長官は、いま申し上げたような趣旨の政策をとっておる、おそらくその効果がそう遠からない時期にあらわれるのじゃないか、こういうふうな自信たっぷりの話をしておりました。しかし、一部の経済専門家の見方では、アメリカ経済成長の勢いはなかなかそう簡単にやまらぬのじゃないか、そういう観測をしている者もあります。ありますが、どうもよその国のことで、こっちの日本経済を見るようなわけにはなかなかまいりませんから、どうなるかわかりません。しかし、私は、長い目のアメリカ国際収支というものを考えるときに、一番関連してくるのはベトナム戦争だ、こういうふうに思います。ベトナム戦争の推移、これに対する支出が落ちてくるということになると、かなり変わった状況になってくるのではあるまいか、そういうふうな見方をしております。  それからそれより前にあなたから御質問のありました、アメリカが赤字にならなければ世界の黒字は出ないわけでありますから、流動性不足してくる。それはそのとおりであります。しかし、アメリカも無限に金を保有しているわけではありませんから、そこで、アメリカといたしましては、アメリカドルの信認を保つ必要がある。一定量の金を保有しなきゃならぬ、こういうふうになるわけであります。これが百億ドルを割ろうとしておる。これは保有するというその考え方をかたく堅持すると思います。そういうようなことから、アメリカとしても、みずからの国を赤字にし、金の保有を大きく百億ドルを割って、そうしてまで世界流動性を供給しょう、こういう考え方はなかなかとりにくいのだろうと思う。そういうときにSDRというものが出現をするということは、アメリカという小さい立場ではない。アメリカドルの信認を保つという政策をとれば、またとるに違いないが、そのときには世界流動性が減るのですから、そこに新しい流動性を注入するということは、世界経済のために非常にいいことだ、こういうふうに考えております。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 世界のために世界のためにと言いますけれどもアメリカは、イギリスも、基軸通貨であることを利用して非常にインフレ政策をやってきたわけですから、そのしりぬぐいがここにきていると、私はこう思うんです。そこで、もっと具体的に、抽象論ではなく、ケネディ氏と会って、今後の国際収支は心配ないと言っておりますけれども、同じアメリカ大臣でスタンズ商務長官自身、四月十一日の欧州歴訪を前にして、ことしの米国の国際収支は再び大幅な赤字に転落するおそれがあると、こういうふうに言っているんですね。だから、アメリカでも意見が違っているんですよ。しかし、そればかりでなく、よその国のことだからなるほど予測するのはむずかしいでしょうが、アメリカ国際収支日本の貿易なり日本の今後の国際収支について重大な影響があるんですよ。そうでしょう。したがって、客観的に分析して、それについてはその見通しなりその認識をやはり持っていなければならぬと思うんですよ。  そこで、伺いたいのですが、アメリカが、国際収支が、ことに貿易ですが、四十三年度は黒字が九千万ドルに減ったわけです。これはもちろん軍事援助などに基づいての武器輸出を除いたものですが、九千万ドル、これはいままで歴史あって以来たいへんなことでしょう。しかも、四十二年度の黒字は三十五億ドルだった。それが九千万ドルに減った。しかも、今年の二月には三億六千万ドルの赤字ですよ。赤字ですよ。従来は、多いときは五十億ドルぐらいあったと思いますね、貿易は。それで軍事援助とかその他の資本収支のほうのマイナスをカバーしておったのでしょう。それが赤字になったんです。これはたいへんなことだと思うんですよ、アメリカとしては。それにもかかわらず、四十三年度は国際収支が流動ベースで一億八千九百万ドルの黒字なんですよ。いままでずっと赤字だったでしょう、国際収支は。ところが、貿易が激減して、貿易の黒字が激減して、しかも国際収支が黒字になっている。その原因は一体どこにあるのです。これを伺いたい。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 確かに、昨年のアメリカ国際収支は、貿易上きわめて重大な事態だったと思う。つまり、ベトナム戦争の初期、またはそれ以前におきましては、五、六十億ドルの貿易黒字です。それでありますから、それに見合って、対外投資に三十億ドル、在外軍隊の維持に三十億ドルという支出が可能であったと思うのです。ところが、貿易がそこまで転落するということは非常にたいへんなことだったと思いますが、幸いに総合収支におきましては一億あまりの、わずかではありまするが黒字だと、そういうことになったわけですが、これはやはりヨーロッパを中心とした国際通貨不安というようなことから、ヨーロッパの資金が、ヨーロッパ以外において最も安定しているというふうに見られる通貨、つまりドル、それからわが日本、こういうところに流入した、これが主たる原因である、そういう見方をしております。     —————————————
  47. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 質疑の途中でございますが、この際、委員異動について御報告いたします。  本日、小林章君が委員辞任され、その補欠として河口陽一君が選任されました。     —————————————
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 アメリカの貿易の黒字が、ピーク時には、一九六四年に七十億ドルあったということですね。それが今度は赤字になった。それにもかかわら、ず国際収支が改善されたについては、いま大蔵大臣が言われたことも一つの原因ですよ。つまり、ウォール街が非常に景気がよかった、外国の対米証券投資が急増した、これは新聞にも報道されています。   〔委員長退席、理事青田源太郎君着席〕 昨年は、百七十四億八千五百万ドル、外国投資家のアメリカ証券売却分を差し引いても四十一億六千六百万ドルの純流入になっておる。そのほかに、ジョンソン前政権のもとで対外投資を規制しましたね。これもかなり国際収支改善に貢献しているわけですね。それから銀行の融資規制、こういうものがありました。これはまあ時間がありませんから数字は省略しますが、大蔵省は十分知っているわけです。それからローザ・ボンド——中期債の売却、これを第三・四半期までに十四億ドルも売却しているんですよ、ものすごく。前年度は四億九千万ドル。ですからずいぶん売っているわけです。それからアメリカの企業の欧州での起債、これもかなりあった。ところが、こうしたアメリカの貿易がものすごく悪化しているにもかかわらず国際収支を改善せしめたこういう要因が今後期待できるかというと、できない、これが大かたの意見ですよ。しかも、中期債が今後従来のようにたくさん売れるかというのですが、じゃ日本は買いますか、中期債を。この点を伺いたい。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまさしあたり計画はありません。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それからアメリカはいまデフレ政策をとっていますから、株が下がる。そうすれば、いままでのようにヨーロッパの資金がアメリカにそんなに流入するということは期待できないと思いますよ。そのほかに、ニクソンは対外投資の緩和政策をとっているんですよ。利子平衡税を緩和する政策をとっているんですよ。いわゆる対外投資規制を緩和している。いままでは、きびしくしたから、これが総合収支の改善になったのですが、今度は逆に緩和する。そういうことになれば、これは私はスタンズ商務長官の見通しのほうが正しいと思うんですよ。今後はアメリカ国際収支の改善というものは期待できない。ベトナム戦争をやめればというのですけれども、しかし、ベトナム戦争も確かにいままでの赤字の原因ですが、最近では、エコノミストの間では、ベトナム戦争が終わってもアメリカ経済の体質が変化してきていると。これは非常にこまかく分析されています。たとえば卸売り物価を最近見ましても、アメリカ、西独、日本、イタリアでこの値上がり率を見ても、アメリカのほうがはるかに高いんですよ。世界の不均等発展が今後変化しまして、ヨーロッパでも日本でも生産性は非常に高くなり、アメリカの生産力に追いついてきた。そこに大きな変化があるんです。一九四四年のブレトン・ウッズ協定時代と違った大きな変化がある。こういうところから総合的に見て、私はアメリカ国際収支が短期間に改善されるとは思えないのです。ニクソンは、国際収支は改善されても、なおすでにいまでもベトナム戦争その他で短期債務をふやしたわけですよ、外国に。三百億ドルもあるんですから。その上に赤字がずっと続けば、金兌換を要求されたときにアメリカは払底しちゃいますよ。SDRを出したところでその問題は解決しない。ですから、ニクソンは、さっき大蔵大臣の言われた百億ドルの金を何としても維持したい。そこで、金交換を要求されたとき、SDRを払うでしょう。そうなるんですよ。SDRで払えばいい。しかし、それは引き受け国の二倍しか応ずる義務はないんです。限界があるんです、この規定によれば。それ以上アメリカが要求したときに、アメリカはそれでも金を供給しないということになれば、それはもうアメリカの信用は失墜しちゃいますよ。ですから、SDRを出してもやはり限界がありますけれども、ニクソンの意図は、四月四日に国際収支改善対策として六つの対策のうちSDRの早期発動を打ち出していることは、アメリカ国際収支の将来と、そうして金百億ドルを何としても死守しなければならぬ、そういうところがら来ていると思う。そういう点についての大蔵大臣の認識がどうもわれわれと違うんですよ。その点は非常に重要じゃないか。なぜわれわれがそういうことを重要視するかというと、ただSDRを発動するだけじゃない。対外的にいろいろなドル防衛協力を今後強力に要請してくると思う。六つの対策にも、たとえば防衛負担の公平化とか、いろいろあるでしょう。ですから、SDRの問題がここに具体的に日程にのぼったこの機会に、われわれは客観的にきびしくそういうことを分析しておかなければならぬ。そういう意味で伺っているのですが、いかがですか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは、アメリカ国際収支がどうなるかはわが国としても重大関心事でありますから、よく勉強もし、分析もしております。それで、アメリカドルが不安になるということは、世界じゅうの通貨が不安になり、混乱をするということですから、これはアメリカ一人の問題じゃないんです。木村さんは、SDRというのがアメリカの利己的な立場で発想されたものであるかのごとく、そういうような考えのもとにいろいろ議論をされておりますが、断じてそういうものではない。私は、これはもう世界のためなんだという認識を持っているのです。一体アメリカドルがぐらぐらしたら世界はどうなる、たいへんな混乱になる。そういうときにSDRというものが出てくる。これはもう世界のために非常にいいんで、アメリカの利己的な立場の産物じゃないんです。どうも出発点が少し違うようですから、話が食い違うようでありますが、私はかたくそう信じて疑いません。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、提案理由でなぜ流動性ジレンマという問題を提起したのですか。ジレンマなんですよ、アメリカの。私は客覧的に見ているのであって、結果としてはそれはそうでしょうよ。アメリカのいままでの国際収支に対するビヘービアの悪さの尻ぬぐいですよ、結論からいえば。最初のスタートは、アメリカ国際収支が改善されたときに流動性不足が起こる、そのときどうするかということがこの流動性問題の出発点なんですよ。ところが、いま過剰なんですよ。それにもかかわらず、アメリカ国際収支が赤字になってドルの供給がふえればふえるほどドルに対する信認が低下するという矛盾が出てきている。そうでしょう。だから、その前にアメリカ流動性ジレンマを解決しようとすれば、アメリカ自身がベトナム戦争とかそういうものを早くやめて、あるいはまた、アメリカの生産性が非常に諸外国に対しておくれてきているんですから、それを改善する努力をすべきであると思うんですよ。まあこれは議論をしていると切りがない、時間がたってしまいますから、議論はこの程度にしておきます。  そこで、私は、アメリカ国際収支の改善というのは期待できない。したがって、あとでもまたあれしますけれどもドルのいわゆる流動性不足というのはこれは将来の問題なんですけれども、現在はむしろ不足より過剰対策が問題だと思うんですよ、過剰対策のほうが。だから、全く見解が違うんですよ。そこで、伺いたいんですが、今度具体的にニクソンの国際収支改善対策の中で、各国にやはり協力を求めていますね。たとえば、防衛については防衛費の公平の分担とか、その他日本にもいろいろ協力を求めてくると思うんですが、このあいだケネデイ長官と会ったときもいろいろ話があったのじゃないかと思うのですが、あるいはまた、すでに四十四年度の予算で海外経済協力というものがものすごくふえているんです。したがって、今後どういうドル防衛協力が予想されるか、政府はどういう姿勢でこれに臨むか。とにかく、防衛費の公平負担その他の協力についてどう考えるかですね。
  53. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ具体的に何の申し出も受けておりませんが、かりに申し出があったというものでわが国の国益に合致するというようなことであれば、私は当然協力していいと思います。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 インドネシアに対する援助についてはどう考えますか。
  55. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これも債権国会議の一員として協力すべきであると、こういうふうに考えております。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この際、インドネシアの援助にまつわって、これまでいろいろ黒い霧の問題が取りざたされてきたんです、ずっとですね。これはスカルノ時代からずっとあるわけです。スハルトになってからもあるやに聞いておるんですが、大蔵大臣、インドネシアの経済援助がばかに早く一億二千万ドルにきまったんですが、これまでのインドネシア援助についてのやり方について反省しなければならぬ点が私はあると思うんです。ことに、商社関係について、商社と政界ですね、それから向こうのインドネシア側においてもまた非常に問題があると思うんです。そういう点について大蔵大臣はどう考えるか。それから通産省の人もいましたら、いままでずいぶんたとえば川島借款とかいろいろ取りざたされているんですけれども、今後インドネシアに対する援助が相当続くとなると、この際やはりこういう点は十分正しておかなければならない。もしそこに正しからざる点があったら、これは大蔵大臣がもしお気がつかれなかったらあとで私指摘しますが、これは直さなければならぬと思うんですね。そういう点について、大蔵大臣、何かお考えになっていますか。
  57. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) かつてスカルノの時代ですか、とやかく評判がありましたが、最近は私は寡聞にして悪い話は一切聞いておりませんです。これはまあ適正にインドネシア援助は行なわれておる、こういうふうに見ております。しかし、多額の援助をするわけでありまするから、これはもうあくまでも適正に行なわれなければならぬ、きれいに行なわれなければならぬ。同時に、大事なことは、援助の目的が効を発するという形でなければならぬ、こういうふうに思うわけであります。そういう方針のもとにこの援助を配意をしていこう、かように御了承願います。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私のところへ投書が来ているわけです。これは、スカルノ時代じゃない、スハルトになってから昨年六月十五日です。はっきりと名前も出ておりますけれども、いま名前は申しません。住所もはっきりしております。こういう投書です。   過般来論議を呼んでおります対インドネシア  借款に関し一言申し上げ度くここに失礼をも顧  みず書面を記した次第であります。   実際には借款を約束された額は壱億壱千万ド  ルであって昭和四三年度分としてその中八千万  ドル供与という事でありますが今までの債務額  をも明確にせず今又多額の借款に応じられる政  府及び自民党の在り方に私は率直に不満を述べ  ます。   御承知の如く前総理が木下産商と組んで行っ  た賠償貨物船は意外の不興を呼びこの為に岸前  総理はインドネシアより愛想をつかされたわけ  でこれ等借款の陰には必ず商社との提携が約束  されて居る事の事実を直視せねばならないと  思って居ります。   スカルノ前大統領の失脚が一商社よりあてが  われたコールガールとの結びつきから急速に進  展した様に我が国の信用は全く地に墜ちこのま  まにせんか益々我が国の名声は失はれる一方で  あります。又デービー夫人と結びついた東日貿  易KKが数億の脱税に国税庁に追及されても何  時か政治的圧力で夢散——雲散夢消——した事  実は一体如何様に判断すべきでしょうか。外国へ  の援助資金の中既にこげつきのある相手国に更  に融資をしてやるという事は仮りに我々の社会  に有り得る事でせうか。自民党某幹事長——こ  れはだれだかわからないですが、大蔵大臣は御  存じかもしれません——は自からの後援する某  横綱への批露を東日貿易が負担する事に少しの  奇異も感じなかったという事実に角界の話題と  なった事は未だ記憶に新しい所であります。   希くは正しい正論の上に立って政府施策が行  はれる様切望して止みません。   当時の閣僚が問題の東日貿易と共に豪遊して  居る折の写真は国民の前に公開した場合如何な  りませうか。   先づインドネシアより悲惨な国々への経済援  助こそ目下の急務であり又国民の納得出来る融  資借款を計って欲しいものであります。国民の  血税を乱費する自民党内閣の反省を促したいと  思います。  こういう投書なんです。私はこれは事実かどうかわかりませんが、こういうインドネシアの援助に対しては、前のスカルノ時代から、ずっと引き続いて行なわれて、まだこういう疑惑が持たれている。この人は商社の人です。だから、内容をよく知っているんです。それで、自民党某幹事長というのはどなたかわかりませんが、これは思い当たるところがあると思うんです、大蔵大臣はですね。こういう点についてどうお考えですか。これ以外にも、こうしたインドネシア借款について国富の疑惑を招くようなことがないと断言できますかどうか。
  59. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 数年前はいろいろ雑誌なんかで書かれておるのを拝見しましたが、最近に至って私はそういううわさも聞かない、きわめて清潔にかつ効果的に行なわれておると、こういうふうに見ております。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、通産省、だれかおりますか。通産大臣にもあるんですが。このインドネシア借款を実行に移す場合、通産省はどういう行政指導をしていますか、商社等に対してですね。それで、具体的に昭和四十一年の三千万ドルの商品援助借款、これは全額輸銀単独融資でありますが、これを例にとって伺いたい。インドネシア側の相手はどういう商社を相手にし、これはインドネシア国営貿易だと思うのですが、日本のほうはどういう商社、そうしてその場合にこの援助がほんとうにインドネシアの経済安定なり再建に役立つためには、途中で、いろいろコミッションとかリベートとか、その他そういうものが介在しちゃいけないんだと私は思うのですが、通産省はそういうことがあっちゃならないという指導をおそらくしているんじゃないかと思うのです。この点についてはどうなんですか。四十一年の三千万ドルの商品援助借款について伺います。
  61. 原田明

    政府委員(原田明君) 円借款の供与につきまして、インドネシアの政府と日本政府との間で話がつきましたあと、その借款を実行する場合の契約といいますか、日本側の輸出業者と相手国側との話し合いは、原則としてはコマーシャルベースというのを第一義的な立場にいたしております。したがいまして、向こうから見ました場合には、インドネシアの経済の復興発展というものに最も役立つような商品が、最も安いと申しますか効率的な価格で有利に手に入るような相手方をこちらで選ぶ、こちらは、それに応じまして、わがほうの立場からも有利な相手方を選ぶという、コマーシャルベースを原則といたしておるわけでございます。この契約に際しましては、私どものほうでは、コマーシャルベース第一義ではございますが、その契約がもともと円借款と申します相手国の経済発展に役立つためのものでございます。また、先生御指摘のような問題を介在するようなことになっては困ります。とかく、こういう国では、商習慣としまして、ある程度のコミッションとか、エージェントに立った者が手数料をもらう、その手数料がやや普通の先進国の場合より高いというような商慣習があることもございます。しかし、それが度を越しておるというようなことではよくないわけですから、そういうことがないように、かたがた、円借款の目的に照らしまして、相手国の経済に効率的に役立つという目的を阻害するようなことにならないようにというような指導をいたしておる次第でございます。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この四十一年の三千万ドル円借款の場合の条件は、どうなんですか、金利、返済……。
  63. 原田明

    政府委員(原田明君) 四十一年の円借款は、金利五・五%、四年据え置きの九年という条件でございます。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いままでも、商習慣によってある程度のコミッションというものは許しておる、普通認められておる、度を過ぎた場合はこれはよくないと言うのだけれども、しかし、いま伺いますと、これは国民の税金ですよ。われわれ国民の税金ですよ。その借款がいま言われたようにインドネシアの経済安定なり再建に役立つようにするには、中間でかなり多額のコミッションとか、あるいは検査料と称して取るとか、それが度を越えて金利の五分五厘よりもこえているような場合は、これは普通と言えないと思うんですよね。ですから、どの程度を普通とあなたは考えておりますか。
  65. 原田明

    政府委員(原田明君) 商習慣として一定のめどを置いてどこからというふうにはきめてございませんで、そのケース・バイ・ケースで妥当な範囲ということになろうかと思います。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それがおかしいと思う。それでまた商社によってみんな違っていいのですか。
  67. 原田明

    政府委員(原田明君) 同じようなケースで同じような商品を同じ目的に契約をするというような場合でございますと、当然同じような率というふうにすべきではなかろうかと思いますが、しかし、商品によりまして、金額でございますとか、その仲介の労でございますとか、いろいろな場合がございましょうから、若干の幅はあり得るのではないかというふうに思います。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 若干の幅、あとで具体的に伺いますが、冗談じゃないですよ。若干だと言ったって、ものによっては二〇%のがあるんですよ。三%のもの、二%のもの、一ぱいありますけれども、それはものすごく商社によって違っておるんです。さらに、検査料としてまた取るんだそうですけれども、そうなると、せっかく与えられる借款がインドネシアの経済安定や再建に役立たないように途中で消えているわけです。  それで、伺いますが、インドネシアにこの商品援助を渡す場合に、具体的に向こうはどういう貿易商社で、日本がどういう貿易商社で、具体的にどういう形で、それは検査があるそうですが、どういう検査をして、何々検査会社というのがあるんですから検査料を払う。そうしてまた、コミッションを払う。どこに払うのですか。これは全額輸銀単独融資ですから、輸銀でも全部これは御承知のはずだと思うんです。知っていなければならないと思う。ですから、具体的に説明してください。たとえばインドネシアの国営貿易公団があるでしょう。それが今度は日本にその駐在事務所がある。JIAというのがある。あるいはセントラル・トレーディング・カンパニー——CTCというのがある。そういうものを通じてこの援助を行なうのでしょう。そのときにばく大なコミッションが払われているんですよ。通産省はどういう行政指導をしているのですか。それから輸銀はこういうものに対してノータッチなんですか。さっき、ある程度の金利とか、ケース・バイ・ケースだとか、多少の差があっていいとか言っておったのですが、私は全部資料があるので、たいへんな差があるんですよ。こんなにコミッションを取っちゃったのじゃ、インドネシアに対する三千万ドルの借款をやったって、実際に向こうの経済に十分役に立たないのじゃないですか。それで、これはいま具体的に四十一年の三千万ドルについて聞いているのですが、その後、ずっとそういうことになっているのか。もしそういうことになっており、また、今後一億二千万ドルが問題になっておりますが、そういうものについてもいままで行なわれておるようなそういう商習慣でコミッションをうんと払ってやるのなら、これは重大問題ですよ。その点をもっとはっきりさしてください。
  69. 原田明

    政府委員(原田明君) ちょっと御説明の申し上げ方が悪かったのではないかと思いますが、私どもが手数料と申しております場合には、手数料として贈りたいということは言ってまいった場合でございます。商品の金額または価格の中に利益が入っているわけでございます。その利益の一部分がコミッションということで考えられているのか、あるいはそうでないのかというようなことは、なかなか私どものほうではわからないわけでございます。これは、そのものの評価ということに非常に関係がございます。第一次的と申しますか、コマーシャル契約の原則としまして、向こうとこちらとの間で契約が成立いたしますと、それで納得されたということになるわけでございます。したがいまして、その利潤部分に当たるものの中にどの程度コミッションと本人が考えておる部分が入っているかというようなことは、そういう形で契約が行なわれる場合には私どもにはわからないわけでございます。いま御指摘の円借款三千万ドルについては、そういうコミッションというようなものは全部入っておりませんで、すべて商品の価格ということで出ておるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、この三千万ドルはいわゆる手数料とはっきりわかったものとかいうような形ではございませんで、向こうとこちらとで納得をしました妥当な価格で商品が輸出をされまして、それがインドネシアの経済に役立っておるというふうに考えておるわけでございます。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、三千万ドルについては、いま、コミッションとかなんとかそういう日本の商社がインドネシアのほうに払っているそういうことはないんだと、三千万ドル現物の物資として妥当な価格で援助されていると、こうおっしゃるわけですね。また、通産省もそういうふうに指導をされたということですね。前に、この三千万ドル借款以前には、千二百万ドルとか、三千万ドル川島借款ですね、あのころは、価格実績で言いますと、消費物資が非常に大きなウエートを占めておった。そうしていろいろ問題が起きたわけで、四十一年の三千万ドルからは非常にすっきりした形で、それでいこうというので行政指導されたやに聞いているんですよ。ですから、いまのように、これにはコミッション等々ということはないんだと、コミッション等を商社がインドネシア側に払うことはよくないと、そういう指導はされたと思うんですが、そういうことでよろしいんですか。
  71. 原田明

    政府委員(原田明君) 四十一年の前に、はっきりあったかどうかというのは、なかなか私どものほうでも証拠はないわけでございます。しかし、世間でそういううわさもございますので、そういう形ではなくて、すっきりした形と申しますか、それぞれの国との商習慣に合いましたすっきりした形で、商品の輸出ということによってインドネシアの経済に貢献するというような円借款の使い方が行なわれることが望ましい、こういう一般的な考え方を申し上げたわけでございます。   〔理事青田源太郎君退席、委員長着席〕
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど、コミッション等は含まれていないということを言われたんですけれども、それでいいんですか。
  73. 原田明

    政府委員(原田明君) 三千万ドルの円借款の分には、コミッションというものは含まれていないと承知しております。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もし、そういうものが含まれていたら、どうなんですか。
  75. 原田明

    政府委員(原田明君) 私どもでは、あくまでもそれは商品の輸出の価格ということで向こうとの間で契約が成立したと、そういうふうに考えております。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、普通、商習慣でコミッションを払うと、そこにまた今度は適正利潤というものを商社として得なきゃならぬでしょう。そうすると、コミッション・プラス適正利潤でしょう。そうなると、インドネシアに対する実質的な援助はそれだけ少なくなるんじゃないですか。
  77. 原田明

    政府委員(原田明君) 適正利潤プラス・コミッションというわけではございませんで、こちらで輸出をいたします輸出業者にとりましては、不当な暴利をむさぼるというわけではございませんでしょうが、やはり商品を売るわけでございますので、その中に適正な利潤を見込んだ価格でこの円借款の対象になる商品を向こうに売ることになろうと思います。その適正利潤の中には、手数料と考えられるものとか、いろいろなものが、いわゆる利潤とか利益マージンという形で含まれているというふうに考えております。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はなぜこういう質問をするかといいますと、これはあなたが説明しませんから、私がここで申し上げて確認をしてもらいたいんですが、インドネシア側は、受け入れ体制は、国営貿易公団というのがあるんですね。これはスカルノの時代からあって、世界的に有名なんだそうです。高級官僚の役得の巣みたいなものだといわれている。それが当たっているかどうか、そういう批評があるんですよ。利権人間の権力がからんでいるんだと、こういうことがいわれているんです。その国営貿易公団を母体として、海外に駐在事務所がある。日本の場合は、JIA——ジャパン・インターナショナル・エージェンシーというのがある。代表取締役は中国系の人でテンという人です。国籍はインドネシアで、これは日本の純然たる法人です。商社と同じなんですよ。もう一つは、セントラル・トレーディング・カンパニI——CTCというんですが、これはJIAとライバルの競争会社なんです。この二つが窓口になる。そうして、そのコミッションについてはあとからまた具体的に伺いますが、コミッション以外に、インドネシア側が一方的に押しつけた極東検査会社というのがあるんです。ジュネーブに本社があり、その日本の子会社で第一検査会社という会社がある。本社が神戸で、東京に出張所がある。ここで検査をさせ、検査料を取る。それで、第一検査会社で日本商社の貨物検査をして検査料を取って、その一部をJIA、CTCの二つの商社に割り戻している。こういうことになれば、検査料とコミッションと二重に取られるわけです。そうすれば、インドネシアに対する援助といっても、実際に商品としてインドネシアに援助される分がそれだけ少なくなる。もしそういうことが事実あるとすれば、こういうことは改めるべきじゃないか。コミッションについても伺っておきますけれども、これはさっきあなたが言われるようなものじゃないですよ。商売をやっている人だったら、あなたみたいな答弁をしたら、笑うと思うんですよ。私は商売人じゃないから、ははあ、コミッションもあれもみんな適正な価格の中に入っている、そうすると、コミッションが利潤部分に食い込んで、それだけ利潤を少なくしているというふうに聞こえるのですけれども、そんなものじゃないですよ。  いま私が申し上げたインドネシアに援助を行なう場合の仕組み、それはそのとおりですか。国営の貿易公団があって、日本にこれを母体として二つの事務所がある。これは日本法人です。そこでばく大なコミッションを取っているんです。そのほかに、第一検査会社というのがあって、検査料を取るんです。そういう仕組みになっているんです。それは事実でしょう。
  79. 原田明

    政府委員(原田明君) インドネシア側のエージェントをなすっている会社が二つあって、いま先生おっしゃいますものだけかどうかというような点ははっきりいたしておりませんが、おそらく大体そのような手続を経てやっているのじゃないかと思います。ただ、この円借款も、その実施が民間のコマーシャルの契約にまかされております。向こう側が、国営貿易機関みたいで、窓口がしぼられています。こちらが多数おります関係などで、どうしても競争いたしがちでございます。先生がおっしゃるようなやり方というものがここから出るような結果になっているのではなかろうか、かように考えます。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 当時、この検査料が非常に大きいんで、——この検査料はどれぐらいですか。契約のときにはそういう第一検査の検査ということはなかったんだそうですよ。ところが、急にその検査ということが出て検査料を取るということになったんで、商社が反撃したけれども、聞き入れられなかった。それで受け入れざるを得なかったんですね。そういう場合に、通産省はどういう行政指導をしているんですか。とにかくこれはコマーシャルベースだから、何でもかまわないで野方図でいいんですか。これは円借款ですから、これに対しては、日本国民の税金がインドネシアの経済の安定なりあるいは経済の発展に役立つように行政指導すべきじゃないか。また、石田総裁にも伺いたいんです。全部これが輸銀単独融資なんです。だから、そういうことについてもやはり無関心ではいけないんだと思う。いまお話ししたような事情になっているんでして、検査料を取られる。しかも、それは、初め話がなかった。あとで出てきた。商社が反撃した。しかし、それはいれられなかった。だから、検査料を払っているんですよ。そして、コミッションも払っているんですよ。それで、また、商社は利益を——それは利益がなきゃなりませんから、利益を得ているんですよ。そういう仕組みでいいかどうかですね。それで私はあとで具体的に照り合わしていただきたいと思うんですけれども、総裁はおわかりにならぬかもしれませんが、一つ一つ商品別にどの程度のコミッションを払っているか、ここに表があるんです、こんなに。また、輸銀のそれについてのナンバーも全部あるんです。それからコミッションのちゃんと契約書もありますよ、全部。こんなにコミッションを払っちゃって、それでその上に検査料を取られて、それでほんとのインドネシア援助になるか。援助と言うけれども、向こうの経済に役立つかどうか。しかも、今後かなりまた続くわけでしょう。私は、この際これははっきりしておかなきゃいけないと思うんです。大蔵大臣がおられますから、ちょうどいいですから、この実態を大蔵大臣も知っておいていただいて、もしこれがよろしくないということがはっきりしたら、これは是正しなきゃならぬと思うんですね。指導をされる必要があると思うんです。これがコミッションの領収書です、商社別にありますけれども。それからコミッションの確認書というのがあるんです。それからコミッションに関する明細書というのがあるんですよ。それから輸出入銀行の登録番号明細書があるんです。さっきも言われましたが、この前のいわゆる川島借款当時にはいろいろ疑惑が持たれたのですから、少なくとも四十一年度の三千万ドル借款からはすっきりした形で行政指導してやっていきたいと、そういうわけで、あなたはさっきコミッショは含まれていないと言ったんです。ところが、ぼくが、コミッションは含まれているのではないかと言うと、いやそれは価格の中に含まれていると、こういう言い方なんですね。それでは、商社は、コミッション分だけ利潤をおまけしてやっているのか。そんなことはないと思うんです、普通の商取引なら。しかも、コミッションも商社によってみんな違うのですよ。商品によっても違うのですね。こんなふうな内容で一体いいのかどうか。どうもそこにいろいろなまた疑惑が持たれる温床になるのじゃないかと思うんですよ。その検査料については、コミッションについては、どういう行政指導をされたのか。私が言ったような実態を通産省はほんとうに御存じなのかどうか。知っていながらそういうことは黙って言わないのかどうか。実態をもっとはっきり説明してください。インドネシア援助はずいぶん続くんですよ、インドネシアに関しては。これはもうわれわれの税金ですから、もっとすっきりしていただかなければ困るんですよ。リファイナンスだってそうですよ。商社の焦げつき債権を国民の税金で肩がわりするのじゃないですか。四十四年度もまた出てくるんですよ。この前も私問題にしましたが、また六百六十万ドル出てくる。さらに、一九七五年までもリファイナンスが続くのでしょう。国民の税金をこのように使うにあたっては、この際に、インドネシア授助及びリファイナンスについては、国会でその内容をはっきりさせていかなければいけないと思うんですよ、国民の税金ですからね。リファイナンスについてはまたあとで伺いますが、いまの検査料とコミッションについて伺いたい。それからなお国税庁にも伺いたいわけですけれども、まずその点についてはっきりしてもらいたい。
  81. 原田明

    政府委員(原田明君) 私どものところでは、そのように各契約ごとのコミッションが幾ら払われているかというようなことは、むしろなかなかわかりにくい状態でございます。ただ、先生御指摘のとおり、検査にいたしましても、相手方が商品の性能、品質というものの高さを確保するという本来の検査の目的から要求されるという分はやむを得ないと存じますし、また、それに必要な妥当な検査料というものは必ずしも拒否するということは困難かと思いますけれども、検査料とかあるいはコミッションという名前で不当に高い額を取るというようなことで中間の経費が非常にたくさん取られまして、実際にわが国から商品その他の形で出ます援助のほうからはそれだけ減るということは、決して望ましいことではございませんので、今後も私どもも御指摘のような点は十分気をつけまして、できます限りそういうことにならないような行政指導を続けてまいりたいと考えております。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体、向こうは国営貿易公団でしょう。それでコミッションは何で取るのでしょうか、どうもわれわれ理解できないんですよ。民間商社ならこれはあるでしょうが、国営ですよ、インドネシアの。それで日本に代理店がある。二つあるんです。そこで競争しているんですよね。どうも、コミッションが高過ぎるか低過ぎるかという点については、いろいろな国際的な商慣習によって、どの程度が適当かというのは、一応普通の民間商社の場合だったらこれはあり得ると思うんですよ。向こうは国営貿易なんですよ。それなのにそうやってコミッションを日本の商社から取ると、それは一体どういうふうになるのか。とにかく、私は、そこのところが割り切れないですね。日本から適正な価格で輸入すればいいのであって、それなのに、間にそういうものが入ってきてコミッションを取る。そのコミッションもわずかではないですよ。その上に検査料を取る。どうも普通の民間の商取引ならいいのですけれども日本は円借款でしょう。向こうは国営の貿易公団なんですね。そこのところがそういう姿で今後いいのかどうかですよ。すっきりすると言いましても、すっきりしていないじゃないですか。どうなんですか。
  83. 原田明

    政府委員(原田明君) 先ほど申し上げましたような趣旨で、なかなかわかりにくいような点もあるかと思いますが、できるだけ努力をいたしまして、先生のおっしゃるようなすっきりした形に持っていくようにつとめてまいりたいと考えております。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 すっきりした形というのは、どういうことですか。
  85. 原田明

    政府委員(原田明君) 検査料その他商慣習ないしは契約の目的を達しますに必要な妥当な範囲において中間の経費が見られる、それによりまして不当なマージンが取られるというような形がないような方向へ持っていくという御趣旨ではなかろうかと考えます。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、不当なマージンがあったということをあなた認めているんでしょう。
  87. 原田明

    政府委員(原田明君) 私どものほうでは、そのような証拠はわからないのでございます。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはわからないようにできているんです。日本の商社はジャパン・インターナショナル・エーシェンンー——JIAというところで、JIAは金が入ると大和銀行の東京支店の出張所に振り込んでしまうんですね。だからわからぬというんです。そういうようなことになっている。  それでは、コミッションですがね。コミッションはこうなっているんです。ずいぶんたくさんあるのですが、おもなものを申し上げましょうか。スチールワイヤーのロープ、これは数量で五万四千トン、価格で八百二十八万円、取り扱い業者は日綿です。払っている先はいま言ったJIA——ジャパン・インターナショナル・エージェンシーですが、コミッションは二十二万二千百八円、これは三%です。今度は住友商事が取り扱っておるものがあるんです。これはコンミッションは六%、二百十九万二千百九十七円。それから野村貿易ですか、これが取り扱っているのが百六十五万六千円のコミッションで、一〇%です、一割。それからこれも住友商事です、四百二十三万七千四百八十八円、これが五%から一割。こんなにコミッションを取るんですよ。それからトヨタモーターというのがあるんですね、トヨタモーター販売会社、これが百六十五万六千円、これも一〇%です。それから日綿、野村、大棉、東洋棉花、それから三菱商事、住友、江商、三井、日綿、丸紅、大棉、日綿、野村、三井、日綿、野村、三菱、太洋物産、兼松、旭硝子、それからモルバブというのですかモーバブですか、商社名としては大体そういうところですね。それがいまお話ししたようにたくさん件数があるんですよ。たとえば東洋棉花の例で言うと、一二%というのがあるんです。千八百六十一万千九百四十円もコミッションを払っているんですよ。それから東洋棉花、これも一二%のコミッション、百八万二千二百三十五円。それから日綿が一〇%、二百六十万。それから二〇%というのがあるんですよ。これはモリノキというんですか、四百九十五万一千三百二十四円。こういう商品別にずっとたくさんあるんです。こんなにあるんです。一々ここで時間がないから言いませんが、私は繁雑はいといませんが、二〇%というのもあるんですよ。一〇%、それから少ないのもあります。四%というのもあります。五%、一%、二%というのもあります。しかし、これは全体の金額にするとものすごく大きいものになる。一億円ぐらいになる、全体の金額ですと。その上に検査料というのを払うのです。石田総裁、こういうことを御存じなんですか、輸出入銀行の登録番号明細書というのがあるんですが、これはみんな合っているんですよ、照らし合わせてみると。これはうそじゃないです、写しがあるのですから。証人もあるのですから。もし必要なら証人に立ちますと言っている。無責任な質問をしてもいけませんからね。これは国益に関する重大問題ですからね。今後非常に大きな金額を国民の税金でインドネシアに援助されるのですから、こんな不明朗な形の援助を私は許しておくべきではないと思うんですよ。輸出入銀行が全額扱うことになっているのですが、そんなことを御存じなかったんですかね。
  89. 石田正

    参考人(石田正君) 簡単に御説明申し上げますが、御承知のように、インドネシア関係の円借款の関係というのは、政府間にまず協定ができて、こういうことでやるから、これだけの金を出すようにということで、われわれのほうがそのワク内で出す、こういうことになっているわけです。この第一次の借款と申しますのは、これはインドネシア政府とわれわれのほうとの間に百八億円という契約ができたわけでございます。その仕方というのは、インドネシアのほうがその金を使うというほうでございまして、私のほうはその金を用立てる、そういう形になる。実際問題といたしましては、一々の問題につきまして、日本からの輸出に使うべきものでありまして、したがいまして、確かに日本からのものが出ていくというところのためには契約があるはずでございますから、その契約が一々われわれのほうに向こうから参りまして、それが参りましてから、通産省のほうに、こういうのがございますがよろしゅうございますかということで、これはいろいろチェックをいやだきますのは、ただ百八億と書いてありますけれども、政府といたしましては、日本から出るものでなくてはならぬということと、それから日本から出るにしましてもどういう種類のものが出たほうがいいのかというような感覚もございます。全体の割り振りという観点もございましょう。そういう観点から政府の御意見を承りまして、そうしてこれでよろしいんだということになりますれば、われわれはすでに貸すという契約はできておるわけでございますから、したがいまして、その金をお貸しするわけでございます。ただ、そのお貸しする形につきましては、一々向こうの政府にお払いするのではなくて、われわれのほうがその契約をいたしますエキスポーターにお金を出して、そうしてそれをすぐ向こうに貸したという勘定を起こす、こういう技術的な手続をとっておるわけでございます。でございまするから、先生がお持ちになっておりますところの表というものは、私は見ておりませんけれども、これはおそらく私のほうが、どの商社に幾ら金を払った、どういう品物であるかということは私どもはちゃんとやっておりますから、したがいまして、その数字に間違いないのではないかと思っております。ただ、それがどのくらいもうかったとか、あるいは好ましいものであったかどうか、あるいはどのくらいの適正利潤であるかということになりますと、私のほうの立場からいたしまして、このぐらいはいいのだということを輸出入銀行独自の判断でやるということはむずかしい点があるかと思います。もしそういうことをやるということになりますれば、やはり政府間において御了解を得ていただいてその上でやるということがやはり国際的な問題の処理として適当ではないか、かように思っている次第でございます。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、私もそう思うんですよ。そこで、大蔵大臣大蔵大臣はこういうこまかい内容についてはおわかりにならないと思うのですけれども、いま大体質問したようなわけなんです。ですから、これはやはりもっと公然化して——国営ですからね、向こうは。そうでしょう。ですから、いま石田総裁が言われたように、はっきり向こうの政府間とちゃんと取りきめをやるならやる。そうでないと、商社によっていろいろ競争をするわけです。二つあるんですから、向こうの代理店が。そして、また、検査料を取って、その検査料が、JIAですか、そっちのほうに割り戻されている。こういうような経過になって、どうもその点はどう見ても私はすっきりした姿ではないと思うんですが、その点、いままあ質疑した程度の段階においては、これはみな資料があるのですけれども大蔵大臣はどういうふうに感じられたか。さっき通産省のほうも改善するようなお話であったのですが、大蔵大臣としても今後かなり多額の援助が続くという見通しですから、やはりこの際すっきりしておく必要があるのではないですか。いかがですか。
  91. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) スハルト政権は、清潔というのですか、綱紀の振粛、これを非常に強調いたしております。さようなことで、かなりきびしくやっているのだろうと思います。思いますが、あなたからいろいろ御注意もあります。そういう点も追跡いたしまして、それで向こう側にも、こっちのほうはもとよりです、向こう側にも批判をされるべき余地がないように、清潔にかつ効率が上がるように、この上とも努力をいたします。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国税庁長官に伺いますが、さっき私が投書にあげたんですけれども、前に東日貿易が数億の脱税をやって、国税庁に追及されたが、いつか政治的な圧力で雲散霧消したというふうに書いてあるが、こういうことはあったのですか。
  93. 亀徳正之

    政府委員(亀徳正之君) それは、私は、東日貿易という名前も初めて聞いたようなわけで、ましてや政治的圧力云々ということはございません。大体、東日貿易がどういうものか、承知いたしておりません。きょうが実は初耳でございます。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはあなたは国税庁長官になる前だから知らないと言うんですか、こんなに問題になったのに。数億の脱税というんです。デビ夫人と結びついた東日貿易、これは新聞で問題になったんじゃないですか。
  95. 亀徳正之

    政府委員(亀徳正之君) 私があるいは長官になる前の話で、私が長官になりましてからどうも承知いたしておりません。調べてみたいと思います。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、調べてもらいたい。それと同時に、今後、いまの四十一年の三千万ドルのインドネシア援助に関連して、商社が、いまお話ししたように、こんなにたくさんコミッションを払っておる。これは裏金になるのじゃないですかね。これはずいぶん多いですよ。これは四十一年ですから、その後もずっとこういうことになっているとなったら、四十一年度だけでこれだけわかったのですが、それはたいへんなものだと思うんですよ。こういう点についてはどうなんですか。国税庁としては、裏金なんですから、これについてはお調べにならないですか。
  97. 亀徳正之

    政府委員(亀徳正之君) 私も、いま先生のいろいろこまかいお話をお聞きしたばかりで、何とも……。ただ、商社側からいえば、払ったほうは経費になるので、受け取った側が、先ほど先生のお話によりますと、国営の何か企業で、その代表の日本法人があるというお話を実は私は初めて聞いたんですが、それは日本法人であるのかどうか、国営でありますと一体課税の対象になるのかどうか、いろいろ問題がありそうな感じがいたします。いずれにしろ、払うほうからいうと経費になって落ちますので、受け取ったほうがインドネシア側か、あるいはそれが日本法人であれば、日本法人のほうの調査を適正にやる。私は適正にやっておると思っておりますが、その辺の調査を徹底するということではなかろうかと考えております。もちろん、そういった風習その他は、私もいま側面から聞いていて、そういう慣行は避けていただきたいなという個人的な感じは聞いて感じておりましたが、税の面では、払ったものは経費ということで実体に即して処理せざるを得ませんし、また、払われた行くえが日本居住者がそれを受け取るということでありましたら、あくまでもそれを総合して課税するという方向で努力をしなければならないと、かように考えております。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 このあと、ジャパン・インターナショナル・エージェンシーというインドネシアの国営貿易公団の日本駐在事務所ですね、このJIAという機構のかえ玉として大棉貿易株式会社というのがあるんですよ。コミッションを受け取っておるんですから。これは純然たる日本の法人ですよ。それからJIAというのも日本の法人といわれておるのですが、JIAのかえ玉の大棉貿易株式会社というのの取締役の人がテン・ケン・インという人です。中国系の人です。そして、代表取締役は筒井松次。それから田坪正次、スデイアルソという人もおるんです。筒井松次という人の住所は、大阪市東区北久太郎町二丁目四十五番地です。それからテン・ケン・インという中国系の人、籍はインドネシアなんですが、この人は東京文京区後楽町一丁目二番地の七号。監査役は坪野秀一という人です。これはばく大なコミッションですよ。それから検査料というのは割り戻しになるというんでしょう。ですから、どのくらいになるかわかりませんけれども、私は億というものになると思う。もしかすると脱税じゃないかと思うのですが、そういうことは御存じですか。
  99. 亀徳正之

    政府委員(亀徳正之君) いずれにいたしましても、国税庁の立場といたしましては、実体を的確につかんで課税するということでございます。まあ万しっかりやっていると思いますが、なおしっかり確認してみたいと考えております。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ずいぶんこまかいことを質問したわけですが、私は、要は、こういう暴露的な質問というのはあまり得意じゃないんですがね。しかし、目に余るものがあるように思うんです。特にインドネシア援助には、不幸なことに、スカルノ時代から、デビ夫人等々が関連しましていろいろうわさがあるわけですよ。それは日本の税金からですからね。日本の国内を見ても、非常に格差がひどくなって、ともかく過密過疎の問題があるし、また、国内でさえやらなきゃならぬことがたくさんあるわけです。そういう際にインドネシア援助するとなれば、この援助は、国民の納得、納税者の納得したような形でやらなければいけないと思うんですよ。いろんな点にこういう疑惑が起こるということについては、何かどこかに欠陥があるわけですね。私は、これまで、通産省の行政指導にやっぱり手落ちがあったんじゃないかと思うんですよ。私でさえこの程度のことは調べられるわけですからね。通産省はよくおわかりにならぬと言いましたけれども、これは輸銀あたりではよくわかるんじゃないんですか。わからぬことはないと思うんです、商社の人に聞けばね。そういう点についてどうも情けない点があると思うんです。大蔵大臣も、先ほど、スハルトになってから非常に綱紀粛正ということをやかましく言っているということを言われましたが、しかし、実態においては、いまこういうような実態になっているんですね。国営貿易をやりながら非常に大きなコミッションを取っている。このコミッションはどこに行っているのか、これはわれわれわかりませんけれども、この点はもっとすっきりさしていただきたい。これは通産省にも要望いたしまして、そして、大蔵省も国税庁もいま質問したことに対して何かあったら、簡単でいいからお答え願いたいと思う。
  101. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは最近は特に気をつけていると思いますが、なおさらにそういう方向で努力をいたします。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通産省はいかがですか。
  103. 原田明

    政府委員(原田明君) 御趣旨に沿いましてなお努力いたしたいと考えます。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国税庁は……。
  105. 亀徳正之

    政府委員(亀徳正之君) これらの問題につきましては、特に適正な課税を期するように、まあいたしておると思っておりますが、なお一そうその面に配慮したいと思っております。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、SDRの本論に入る前に、もう一つインドネシアの問題についてお伺いしたいんですが、リファイナンスです。インドネシア焦げつき債権に対するリファイナンスですが、四十四年度とそれから四十四年度以後とどういうふうな計画になっているか、聞かしていただきたい。
  107. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 六九年本年は、先ほどからお話しのとおり、六百六十万ドルという金額が、これからの向こうとの合意をすべき議論をすべき対象の金額でございます。七〇年の見込みは四百万ドルでございますが、七一年以降七五年までございまして、その五年間の間におきましては、千三百五十万ドルというのが一応の対象になっておる金額でございます。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、結局、このインドネシアの——しろうとにわかるようにひとつ話してもらいたいんですが、インドネシアの四十年九・三〇事件が起きてから焦げつきになってリファイナンスの対象となる金額はどれだけで、それでいままでどれだけリファイナンスして、そうして今後どれだけ残っているか、その点をひとつはっきりしてください。
  109. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 例の事件が起こりましたのは六六年の春であったかと思いますが、六六年の六月三十日以前に効力を生じた契約、そういう契約に基づきます債務でありまして、六八年以降に支払い時期の到来が来るというものをリファイナンスの対象にしているのでございます。六七年、六八年におきましてはもうすでに合意に達しておるわけでございますが、それが五千二百万ドルということになっておりまして、その上に、先ほど申し上げましたように、六百六十万ドル、四百万ドル、千三百五十万ドル、つまり合計二千四百万ドルというものがあるわけでございまして、これらがすべて六六年六月三十日以前の契約に基づくものと、かように承知していただければいいのではないかと思います。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総額幾らでしたかね。六百六十万ドル、四百万ドル、その次は七十五年まで……
  111. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 七千六百五十万ドルに相なります。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは円にするとどのくらいになりますか。
  113. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) ちょっといま計算しておりますので……。二百七十三億円くらいじゃないかと思います。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、あれでしょう、革命が起きて取れなくなった。それで、これは百八十日以上の延べ払いですね。いわゆる輸出保険に入っているものについて政府が輸出保険料を払う。ところが、こんなにたくさんの二百七十億のとにかく焦げつき債権ができて、輸出保険特別会計では払えないわけですわね。破産してしまっているわけですよ、輸出保険特別会計は。そこで、これはリファイナンスして政府が輸銀に貸すわけですね。それで、輸銀から形はインドネシアに貸すということにして、輸銀が実際は商社に払うということになるわけでしょう。そういうプロセスと思うが、そうなんですね。
  115. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 大体さような経過を経ましてやっております。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで、伺いますが、インドネシアの焦げつき債権は、いまのような形で、いわゆる国民の税金によって肩がわりされているんですよ。そういうことは知らないんですよ、国民は。リファイナンスというと、何かばかに専門的で、政府が輸銀に貸して、輸銀から商社に払うわけですけれども、商社はあれだけの大打撃を受けても、とにかく債権の全部が回収できるわけです。それは輸出保険に入っているからだと思う。日本の貿易政策上、私は、輸出保険制度そのものが悪いと言っているのじゃないんです。しかし、あまりにも大きいでしょう、二百七十億でしょう。そういう場合に、小手先のからくりで処理すべきではないと思うんです。大蔵大臣、もっとはっきり、たとえばインドネシア焦げつき債権処理特別会計とか、インドネシア焦げつき債権処理基金とか、何かそういうものをはっきりして、ちょうど震災のときの震災手形の特融みたいなものですね、革命で取れなくなったんですから。だけれども、商社はとにかくこれでちっとも損しないんです。みんな国民の税金で肩がわりしてやって、あと政府がインドネシアに貸してやって、それが取れる取れないか、もし取れなきゃ、それが政府の損、国民の損になるんですよ。このようなものすごいことをやっているわけですよ、日本は。それで、一応商社はつぶれないで済んでいるんですから。私は輸出保険のそのことが悪いと言いませんが、これは異例のことですよ。しかも、輸出保険特別会計は、原則は独立採算になっているわけですから、ほんとうは保険料の引き上げでまかなわなきゃならぬはずです。しかし、保険料を引き上げて焦げつき債権を処理しようとすればものすごい保険料の引き上げになりますから、それは実際問題として困難でしょう。そこでこういうことになったと思うのですけれども、結局、インドネシアの焦げつき債権を国民の税金で肩がわりしている、こういうことになるんですから、これは、大蔵大臣、もっとすっきりさせる必要があるんじゃないですか。ちょうど皮肉にもそれと商社の政治献金と符節を合わせたようになっているんですよ。これは前に私が指摘しましたから、繰り返しませんけれどもね。この点、どうですか、大蔵大臣、もっとすっきり処理をする。七五年まで続くんですからね。私はこの前でもう終わるんだと思ったんですよ。そうしたら、また本年度六百六十万ドル出てきて、それでまだ七五年までこの焦げつき債権の処理がずっと続くんでしょう。何かもっとすっきりした処理のしかたをすべきじゃないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  117. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) このリファイナンスの問題は、これはわが国の商社を救済するということで議論を始めたのじゃないんですよ。インドネシアが支払い困難になっている、これをどういうふうに援助、協力しょうかというところから出てきておるわけなんです。しかし、その方法として、ただいまあなたが指摘されましたように、わが国の国内的な手続としては、結果として、商社に輸出保険を適用した場合の損失一〇%を免除した、こういうような形になっております。まあいろいろこれはやり方については方法もありましょうと思います。きわめて技術的な問題でありますが、どういう方法が一番いいか、なおこれから検討してみることにいたします。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 通産省のほうから資料をもらったんですが、四十四年度は輸出保険特別会計の回収金の金額が少し違うのですがね。当初予算では、全体で七十六億九千五百万円になっている。そのうちインドネシア関係が六十五億四千五百十七万四千円になっているのですが、このあいだもらった資料では二十一億四千百万円になっているのはどういうわけですか。
  119. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) いまの先生のおっしゃる七十六億という数字は、私、ちょっと存じません。四十二年度の全体の回収金ではないかと思いますが、先般お渡しした数字は、四十三年度におきましてインドネシアの中長期債権に関係する回収金の数字として二十一億四千百万円の数字をお渡ししたわけでございます。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 予算書を見ますと、輸出保険特別会計の回収金を見ると、全体として七十六億九千五百万円で、そのうちインドネシア関係が六十五億四千五百十七万四千円になっている。それが、この間の資料では二十一億四千百万円になっているので、これはどうしたことかと思ったんです。
  121. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) 当初の予算で六十五億四千五百万と申し上げましたのは、中長期の債権が三十六億七千三百万円で、短期債権、百八十日以内のものが二千五百万ドルございまして、これのうちの千三百万ドルが四十三暦年中に入ってまいったのが回収になったということで、二十八億七千二百万円を予算で計上いたして、合計で六十五億四千五百万という、こういう数字でございます。この前申し上げたのは、中長期債権について……。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四十四年度は回収金は全体で二十六億八千七百万円、それでインドネシア関係が十億四千九百万円、これでいいですか。
  123. 平松守彦

    説明員(平松守彦君) そうでございます。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に伺いますが、四十四年度一般会計から産投への繰り入れ額は幾らですか。
  125. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 七百八十一億円が産投に一般会計から繰り入れられた金額でございます。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 産投から輸銀への出資は四十四年度は幾らですか。
  127. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 六百三十五億円でございます。
  128. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから四十四年度に輸銀の原資はどのくらいになりますか。輸銀へ一般会計からの出資、それから財投からもありますし、それから回収金もありますが、ちょっと内訳をお願いします。
  129. 石田正

    参考人(石田正君) 四十四年度の計画といたしましては、全体の貸し出し計画が三千七百四十億円を予定いたしております。それをどういうふうに調達いたしますかといいますと、まず第一に、いま話がございました政府の出資が六百三十五億円でございます。それから政府借り入れ、これは財政投融資でありまするが、その借り入れが二千八百二十億円、それから既応の貸し出しの回収金その他がございまして、それがありますと同時にまた借りたお金を政府のほうへお返ししなければならぬということがございますので、自己資金といたしましてはネットの二百八十五億円、これを加えまして三千七百四十億円になる、かような計算になっております。
  130. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで、いま、輸出保険特別会計の回収金、それから一般会計から産投への繰り入れ、産投から輸銀への出資を伺ったんですが、結局、リファイナンスによる焦げつき債権の処理が、一般会計から産投へ国民の税金を繰り入れる、産投から輸銀へ出資して、輸銀から輸出保険特別会計に回収金として回すという形になるわけですね。結局そういうことでしょう。だから、国民の税金によって焦げつき債権の処理をする一もちろん、大蔵大臣は、これは何も商社の救済を目的にしたものではないと言いますけれども、結果はそうなるわけでしょう。ですから、そのこと自体は私は悪いと言っているのじゃないのでして、いろいろ問題がありましょうけれども、処理のしかたをもっと国民にはっきりわかるように公然とすべきだと言うんですよ。だから、インドネシアの焦げつき債権を国民の税金でこういうふうに手当てしているんだと、インドネシアにこれだけお金を貸してやってね、そういうそれ自体を私は悪いと言っているんじゃないんですからね。それをもっと公然としないと、われわれがこうやって問題に取り上げなければわかりませんよ、ちっとも、なるほど税金はこういうふうに使われているのかともっとはっきりわかるように——それはいい悪いはこれはもっと批判すればいいのであって、その前に、国民の税金の使い方としてもっとはっきりわかるようにすべきじゃないか。ですから、インドネシア焦げつき債権処理特別会計とか、あるいはインドネシア焦げつき債権処理基金とか、そういうものをやっぱりはっきり設けてやらなければ、財政民主主義の点からいって適切ではないんではないかというので質問しているんですが、大蔵大臣、この点はいかがでしょうか。
  131. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど申し上げましたように、このリファイナンスは商社救済じゃないんです。これは、インドネシアの国際収支が悪化しておる、それで国際協力のもとにインドネシアの支払いを何とかしてひとつ救ってやろうと、こういうところから出てきておるんですが、国内処理は、あなたがいま御指摘のように、きわめて複雑なことになっております。これはいろいろな方法があろうと思いますから、なお検討してみます。御注意をいろいろ詳細に承りまして、たいへん参考になりました、ありがとうございました。
  132. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は別に非難するためにやっているのじゃないんですから、その点は大蔵大臣も十分に了解していただきたいんですよ。やっぱり国民の税金ですから、われわれとしてまた責任があるわけですよね。ですから、国民にわかりやすいように、どこから見てもいろんな疑惑が起こらぬようにガラス張りでやって、政府のほうもそのほうがやっぱりいいんじゃないかと思いますね、すっきりして。そのこと自体を悪いと言うんじゃないんです。輸出保険をしなかったら商社は全部つぶれちゃいますよ。そんなむちゃなことを言っているんじゃないんです。その点はひとつ前向きで処理していただきたいと思います。  その次に、時間があまりなくなったんですけれども、いよいよSDRの本論に入るわけです。  SDRの提案理由は、さっきお話ししたように、二つからなっています。一つは、流動性不足に対処するためにSDRの創設が必要である。もう一つは、流動性ジレンマからアメリカを救うということですよ。結局、その二つからSDRの創設が必要であるという提案理由です。そこで、前から議論になっている流動性が過剰か不足かという問題です。過去にもうすでに生じている三百万ドルという過剰ドルがあるんですよ。それはもうそれだけで過剰じゃないんですかね。もしこれが金交換アメリカに要求していったら、アメリカの金準備は百億ドルそこそこしかないんですから、最近ゴールドトランシュを引くと百億ドル割っているとか割っていないとかいうんですが、それはどうなんですか。
  133. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) アメリカのゴールドトランシュと私承知いたしておりますのは、ちょうどゴールドトランシュ一ぱい一ぱいにアメリカのポジションはなっておりますが、ちょうど十二億九千九百というのが二月末の数字でございます。
  134. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと、もう一度言ってくれませんか。
  135. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 十二億九千九百、それがIMFポジションでございます。アメリカがIMFに対して債権を持っている金額が十二億九千九百、二月末の数字でございます。
  136. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私が聞いているのは、普通、過剰ドルと言っていますが、たとえば、中央銀行がドルをどのくらい持っているか、それから中央銀行以外の個人とか会社とかがそういうものをどのくらい持っているか、こういういわゆるドル債権ですね、短期の。
  137. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) お尋ねの点は、各国が、アメリカ以外の国が持っております債権、つまり、アメリカからいいますと対外の短期債務という御質問かと思いますが、そうでございますと、昨年末にいたしまして、暫定計数ではございますが、三百三十八億ドルでございます。
  138. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、これだけの短期債務があるわけですね。したがって、前に、アメリカの「エコノミックノート」という雑誌に載っていたんですが、金恐慌は二重価格制の実施により一応鎮静された。それからまた、アメリカの国内の金準備率二五%はまあ取り払ったわけですね。そういうことで、金取りつけというものは一応鎮静化しましたけれども、御承知のように、アメリカのトリフィン教授でさえ、現在のアメリカ国際収支とは関連なしに、アメリカの保有する金に対する大規模な取りつけがあるだろうということを言っておったんですね。このことがいま説明されました三百億ドル以上になるいわゆる短期債務になると思います。それは、十カ国蔵相会議等でアメリカに金交換を請求しないという取りきめをやったから、一応もう取りつけばないわけでしょうけれども、しかし、今後、その十カ国蔵相会議に入っていない国もあるわけですから、そういうところの中央銀行が要求した場合はやはり交換しなきゃならぬのです。それからアラビアあたりでは石油によるドル収入は相当あって、EECあたりに相当ドルが流れているだろうと思うんです。そうなると、まだ、ドルの短期債権というのですか、アメリカでは短期債務ですね、これはふえる可能性があります。そうすると、かりにアメリカ国際収支が改善されたとしても、絶えずその三百億ドル以上にのぼるいわゆるドルの短期債務が重圧になっているわけですね。そこが私は問題だと思うんです。それが、私は、ドル過剰、流動性過剰、そのことの一つの証拠ではないかと思うのですが、どうなんですか、流動性不足不足だと言いますけれども
  139. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、金やドルが偏在をしておる、その国においては過剰状態であると言えるのです。しかし、世界全体として見たときに流動性不足しておる。ですから、この偏在状態が是正されるということになりますれば、過剰状態不足状態というものはかなり改善をされると思います。しかし、それにしても、流動性全体として足りないというのは世界経済の問題点なんです。そこで、これは、今日の問題じゃないのです。五、六年前からこの問題が討議されておる。そういうことなんでありまして、たとえばドイツなんという国は流動性があり余っておるわけなんですが、これがほうぼうにばらまかれるということになれば、世界流動性は楽になる。楽になるのだが、それで根本的な解決になったかというと、ならぬというところが問題点なんで、そこでこういう発想が生まれてきたわけであります。     —————————————
  140. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 質疑の途中でございますが、この際、委員異動について御報告いたします。  本日、平泉渉君が委員辞任され、その補欠として久次米健太郎君が選任されました。     —————————————
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この流動性が過剰か不足かの問題はずいぶん論議されましたけれども、しかし、これがSDRに対して態度をきめる場合の非常に重要なポイントになるわけですよ。ですから、私は、さらに集約する意味で伺っておきたいのですが、これは前にも申しましたが、大蔵大臣は、流動性が過剰であるという見方は非常に少数意見だ、こういうことを言われたんです。ところが、フランスのドブレ蔵相も、それからこのあいだ西ドイツのシラー経済相も、そうじゃないと言っておりました。現在は、流動性不足するどころか、むしろ過剰であるということをはっきり言っておられます。たとえばドブレ蔵相はこう言っている。「現在、先進諸国は、需要、なかんずく公共投資の著しい膨張に直面しているわけでもないのに、支出を削減し、インフレ傾向を抑制しなければならないのはなぜか。これらの国は流動性不足に悩んでいるのではなく、生産能力と経済的、社会的発展意欲との間の不均衡に悩んでいるのである。もちろんこの間に貨幣的要因が介在し困難を加えているとはいえ、それこそがまさにインフレであり、そうしたインフレは米国の継続的な国際収支の赤字により派生した過剰流動性に基づくものにほかならない。」と、こう言っているわけですね。それからドイツのシラー経済相は、これは特別引き出し権の信用的性格を強調しているわけですけれども、特別引き出し権は、たとえばスワップその他と同じように、一つの信用である。ですから、そこで、あとにも問題になります復元の原則とかそういうものが非常に重要になってくるわけですけれども、明らかに、現在、流動性の供給は過剰でこそあれ不足していないとはっきり言っています。ただ、フランスドイツ流動性過剰論は立論が違いますね。ドイツのほうは、現在は過剰である、しかし、将来、アメリカの基軸通貨国際支支が改善されたときに流動性不足になる、そのときの用意にSDRを創設する必要がある、対処計画を早急に準備しておく必要がある、こういうわけでありますね。しかし、現状においては過剰であるという認識をしておる。フランスの場合は、現状も過剰であると考えておるが、将来においても、いまの金為替本位制のもとでは、いわゆる基軸通貨、特にアメリカ国際収支の改善を早急にはかることができない、赤字は相当長期に続くであろう、こういうことを言っておるわけです。それで、われわれも、さっきアメリカ国際収支の見通しについて質問したのですが、アメリカのいままでの経過からいって、 ニクソンがあの六項にわたる国際収支改善対策を出しましたけれどもアメリカ国際収支は簡単に改善されない、いわゆる流動性ジレンマはいつまでも続くと、こう見るわけです。そうなると、流動性不足というものは当分予想されない。ですから、同じ流動性過剰論でも、そこに西ドイツフランスとの間には考え方の違いがありますけれども、私は、やはり流動性はそんなに急に不足するということは予想されない、むしろ流動性ジレンマがかなり長期に続く、こういうふうに見るわけで、それに対する対応策というのは、われわれとしても、SDRでなく、とにかくブレトン・ウッズ協定のときの体制が変わってしまっておるんですから、それを根本的に、たとえば為替変動の問題もあります。それから金価格の変更の問題もあります。次には、SDRによってもこの事態は改善されるものじゃないと考えますし、結局、SDRというものは、前からずいぶん問題になっていましたけれども流動性ジレンマの解決策ですよ。アメリカも過剰ドルが金交換をされるとたいへんですから、そこに歯どめを求めている、そういうことだろうと思うのです。その点はどうですか。
  142. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 遺憾ながら、その点は、木村さんの説は少数説だと、こういうふうに思います。とにかく、IMFに参加しておる国は、ほとんどこの協定に署名している、私どもが申し上げておる趣旨を堅持しておるわけで、これに異議を唱えそうなのはフランスぐらいのものです。しかも、そのフランスも、去年以来少し従来の考え方が変わってきておるのでおります。これは、アメリカ救済ということ、こういうようなお考えのようですが、決してそうじゃない。これはもう世界の貿易を発展させたい、世界経済を発展させたい、そういう非常に高い見地から出ておる構想である、こういうふうに申し上げるほかないのであります。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま、フランスの態度が変わってきたということを言われた。前からたびたび言われるのですが、それはなぜ変わったか、そこが問題だと思うんです。もちろん、前から、十カ国蔵相会議で、フランスは、金問題については非常に金選好が強いわけでして、金問題にだいぶん固執しましたけれども、しかしEECの足並みをぐずしたくないということも一つあると思います。そればかりでなく、フランスは、特別引き出し権の構想は、特別引き出し権なるものは信用機能の拡張にすぎないと考えているんですね。フランスは、もしこれが新たに貨幣をクリエートする、創出するのであるならば、その価値の基礎を金に置かなければならない、こういう考えですよ。そうでしょう。ですから、フランスは、SDRが信用機能の拡張だ、こう考えているのです。そういう考えで認めているわけですよね。ところが、アメリカのほうはそうじゃないんですよ。だから、両方見て、自分の都合のいいように解釈している点があると思うんですよ。ありますが、しかし、フランスが態度が変わったというのは、金に対するフランスの従来の態度が変わったということじゃないと思うんです。よろしいですね。結局、SDRというものはやはり信用の機能の拡張であると。もし、そうでない新たな貨幣を創造するということであったらば、フランスはこれに応じないと思うんですよ、おそらくね。ドブレ蔵相はそういうふうに言っているんです、そこのところは。態度が変わったといっても、金に対する態度が変わったという意味じゃないと思うんですよ。だから、今後、SDRの発動にあたっては、EECが一六・何%の表決権を持っているのですから、拒否権を発動できるわけです。八五%以上でないとできませんから。EECが一六%以上ですからね。そういう場合に、SDRに対してどういう考え方でフランスが対処しているかということは知っておく必要があると思うんですよ。その場合には、SDRの発動に対しては非常にきびしい態度を出すと思うんです。  それに関連して具体的に質問したいことがあるのですが、たとえばSDRを引き受ける義務があるのですけれども、その当該国の通貨を引き出すときに、SDRの使途についての目的とかその他についていろんな条件をつけることができるかどうか、これも相当大きい問題になると思う。IMFのギャランティーだけでできるのかどうか、それを私は今後の大きい問題だと思うのです。そういう条件をつける、この点はいかがですか。
  144. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) SDRは、先生御指摘のように、信用供与という面はございますが、また、一つ通貨として機能させるという従来の議論からいきましても、なるべく信用は保持しながら制約はつけない。ただ、SDRの目的からいたしまして、国際収支上の必要ということが大原則になっておるわけでございますので、そういった制限は当然のことでございますし、その一つの具体例といたしまして、赤字国が黒字国に対して通貨の提供を求めるというときに、IMFが黒字国を指定するということになって、そこにIMFの一つの指定行為というものが介在いたすわけでございまして、それが全体の仕組みといたしまして通貨的な機能を果たすと同時に信用は保持する。そして、それ以上のあまりこまかい制限、まあ復元とかいろいろございますけれども通貨としての機能を減殺するようなそういう制限はなるべくつけないというたてまえになっております。
  145. 野上元

    野上元君 関連して。ちょっと午前中も蔵相に聞いたんですけれども流動性の多寡の問題については福田・木村論争にまかせるとして、SDRというものに対するアメリカ考えと、EEC諸国の考え、特にヨーロッパ考え方とは、私は非常に違うような気がするんですね。というのは、将来の世界通貨、金の産出から見て、世界貿易の拡大、このバランスがく、ずれるだろう。したがって、将来長い目で見た場合に、金はいわゆる国際通貨の裏づけにならないだろう、国際貿易の面から見て、というようなことをアメリカ考え、長い将来を見ながらいわゆる国際通貨の裏づけとしての金と絶縁していこうという考え方がアメリカには私はあるのじゃないかという気がするんです。ところが、ヨーロッパのほうは、金選好が非常に強いんですね。しかし、アメリカ考え方がかりにそうであっても、現時点の段階においては、あるいはまた近い将来においては、やはり金選好というものは強い。だからこそ、ドルの対外負債が起きてアメリカの金準備ポジションが悪くなれば、ゴールドラッシュということが起こるわけですから、それが今度はね返ってドル不安になるわけですから、まだまだケインズが提唱したようなバンコールというものはいまのところ考えられない。当分の間、私は、金が最も変化のない信用度を持って国際通貨の裏づけになるだろうと見ざるを得ないと思います。ところが、最近の金の産出と、それから産出された金が、民需に振り分けられる分と通貨用に振り分けられる分を見ると、非常にむちゃくちゃなんですね。たとえば、一八三五年から一九五二年の百数十年間にわたっては、産金のうち七〇%くらいは通貨用に振り向けられ、三〇%が民需に振り向けられた。それがだんだん率が下がっていって、そして一九六七年以降は金の産出よりも民需のほうがオーバーしているわけですね。したがって、通貨には全然振り向けられておらないわけです。したがって、この際、先ほど話をしましたように、赤字国ばかりを対象にしてやかましく見るのではなくて、黒字国がふえていくということは、結局、流動性が減っていくということ、ドル不足していくということになるわけですから、黒字国の天井を国際管理しなければならない。いまは、モラルの面で管理しておるわけですね。お互いにいわゆるインターナショナル・インタレストの問題についてみんな節度を持とう、こういうことが十カ国の蔵相会議の中で言われておる。それはそれとして、もう少し強めて国際管理をする必要があるように思うんです。と同時に、産出された金を国際管理する必要があると思う。当分金が重要な通貨の裏打ちであるということになるならば、やはり金というものを十分に考えていかなければならぬ。したがって、その両面をやっていかなければ、SDRだけで流動性の問題を補完しようとしても、私は必ず失敗すると思う。こんなものはいわゆるペーパーマネーにすぎないですからね、金に兌換性がないわけですから。そういう意味で、私は、まだまだこのSDRというものについては非常に問題があるような気がする。しかも、第一年度においては、十億ドルないし二十億ドルくらいしか創出しないでしょう。IMFは二百十億ドル基金を持っているわけですから、そのわずか五%にすぎないというような状態では、とてもじゃないが問題の解決にはならぬだろうという気がするが、そういう点についてのもう少し多角的な国際管理というものが必要じゃないかというふうに思うのですが、どうですか。
  146. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とにかく、国際流動性が一国に偏在するということは、国際貿易を伸ばす、また世界経済を発展させる上に、非常に支障があると思うのです。したがって、そういうことがないように、とにかく主要先進国は経済運営に節度を持つべし、こういう空気にだんだんとなってきておるわけです。それで、赤字国がまず第一にやり玉に上がる。だんだん野上さんのおっしゃるように黒字国も議論をされるというようになると思いまするが、しかし、これをまた協定とか義務づけをもってやるということになったら、これはまたたいへんなことだろうと思うのですね。つまり、金の保有額を削減する、こういうことになると、これはなかなかまたその協定自体がまとまらないのじゃないかというような感じもいたします。しかし、さればといって、SDRがこの段階でできるのが有害なものであるのかというと、私はそうは思わないのです。これは、長い目の問題として、いま木村先生からもドイツ考え方の御披露がありましたけれども、どうしても流動性不足を補うという問題は必要になってくる。わが国の場合を考えても的確に言えるのですがね。いま、三十二億ドル持っております。しかし、もうすでに円シフトというのが起こりつつある。多少これは減ります、減る傾向にまあなってくるわけですが、去年の国際収支を見てみると、三億五千万ドルの赤字と見ておったんです。これが、逆に十六億ドルの黒字になったんです。二十億ドルの見間違いがあったわけでございますが、ともかく国際収支の変動幅というものが非常に高い。去年のいまごろは十九億ドルの外貨しか持っていない。そこに、かりに十六億ドルの黒字になったからよかったが、逆に十六億ドルの赤字になったら一体どうします。これはとても日本の商売をやっていく上にも事欠く。そこで、非常に強い引き締め政策をとらなければならぬことになるわけです。その際、IMFからの引き出しをやるとか、今度はSDRの引き出しをやるとか、そういうようなことをして、そういう極端な急激な引き締め政策をしないで済むというようなことになりますれば、これはわが国の経済はまあなだらかな成長発展を遂げることは可能になるわけです。これはもう各国ともそういう状態が出てくるわけであります。これは、私は、とにかく外貨の少ない国にとりましては非常に大きな福音がもたらされる、これによって経済運営がなだらかになる、それによって世界経済が発展する、こういうことを確信しておるわけでありますが、しかし、まあ何回も言っておるのですが、これが万能薬じゃない。また、いろいろの問題を検討していかなければならぬ。黒字国の節度という問題、これも一つの大きな問題であろうということは考えております。
  147. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう時間がなくなりましたので、簡潔にあと一つだけ伺います。   〔委員長退席、理事青田源太郎君着席〕  特別引き出し権の金保証と米ドルとの関係なんです。それは、計画大綱によりますと、特別引き出し権の表示する価値単位は、〇・八八八六七一グラムの純金に等しいものとしてあるんですね。IMF協定の第四条第八項と同様の規定に従って金価値の維持を行なうとしるしておるんですね。そういうようになっておるんですね。これに対して、IMF協定の第四条第一項では、加盟国通貨平価は、共通尺度である金または一九四四年——あのブレトン・ウッズ協定ができた一九四四年七月一日現在の量目及び純分を有する米ドルによって表示することが規定されておるわけですね。しかし、特別引き出し権においては、このように平価を表示するか否か、まだ明らかじゃない。平価をどういうふうに表示するのか。米ドルによる平価表示を避けて、金の量目だけによって表示するわけですね。これはたまたま米ドルの純金と一致しておるだけですよ。そうでしょう。だから〇・八八八六七一グラムとなっていますが、それは実際の計算の際に非常に繁雑だと思うんですがね。それから本協定平価表示に関する条項を修正する必要がないのかどうかですね。それからもう一つ、特別引き出し権に金価値保証が付されているが、金兌換はできない。いわゆるゴールドペーパーですね。ところが、米ドルには金価値保証は付せられていないですね。その間の調整をどういうふうにするのかですね。だから、米ドルSDRとの関係ですよね。引き出し権の金保証と米ドルとの関係をどういうふうに調整するのか、この点がどうもさっぱり明らかじゃない。この点をもっと明らかにしてもらいたい。これは今後非常に大きな問題になると思いますよ。  その点と、それからもう私はこれで終わりますから最後に伺いますが、例の、このことが欧州の小国でずいぶん問題になったんですが、いわゆるハーモナイゼーションの原則ですね、これとそれから復元の原則ですね、これについてどういうふうに考えておられるのか。これで私は質問を終わるわけですから、いまの三つの点について答弁していただきたい。
  148. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) SDRは〇・八八グラムということになっておりますが、そういう意味におきましてドル価値とは関係がないというふうに御了承いただいていいわけでございます。ただ、IMFに一九四四年のときの米ドルというふうに言っておりますのは、いまもそれから変わってはおりませんけれども、ちょうど一オンス三十五ドルというものを基礎にいたしました米ドルが、まあたまたまと申しますか、そういうふうになっておるということでございますので、現在のアメリカドルというものとSDRというものとを比べてみますと、ちょうど一SDRがイコール一米ドルということになるわけでございますが、将来の問題といたしまして、かりに米ドルに変動が起きる、一オンス三十五ドルが動くということをかりに想定いたしますと、たとえば価値が半分になるというようなことになりましても、SDR自体は変わらないということでございますから、半分になりましたときは二米ドルがイコール一SDRになるという考え方でいいのではないかと思います。  それからIMF四条というものをいま指摘されたわけでございますが、そういった意味におきましてSDRは私たちは絶対的金価値保証というふうに呼んでおります。絶対的金価値保証といいますのは、協定を改正しない限りは変わらないという意味の価値保証でございまして、IMF四条にいう金価値自体は一定の手続、加重された多数決の手続をとりますと価値は変更し得るわけでございますが、それよりも強い金価値保証がついているというふうに御理解いただいていいのではないかと思います。  それからハーモナイゼーションのお話でございますが、これはSDRの性格から来るわけでございまして、SDRというものが、最初、二十四条でございましたかにございますように、IMFの目的を達成する、かつ世界的にインフレにもならずデフレにもならずという量を創出発動することによって、この価値維持、国際的な信認を維持し、ますますその維持を強めていくという感覚から申しまして、各国外貨準備SDRの保有額、まあ配分された以上の保有額、つまり、毎年配分されますと、それ以上国際収支のいい国はSDRを持ちますし、赤字の国はSDRを配分以下に減らすわけでございますが、そういう配分基準といたしましてプラス・マイナスの部分、減ったりふえたりする部分と各国外貨準備——金と外貨でございますけれども、その比率を長期的に見て等しくなるように保っていこうということ、これをIMFが絶えず念頭に置きまして、IMFが通貨提供国を指定いたしますときに、つまり赤字国が黒字国にそのSDRを持っていくわけでございますが、黒字国をIMFが指定いたしますときに、そういう配慮をしながら長期的に配慮をしながらやっていくということ。それから復元の際にも、外貨準備及びIMFポジションといいますか、各国のいわゆる外貨準備でございますが、それとSDRの保有額が等しくなるように参加国は配慮する必要があるということをうたっている。この二つのテクニックがいわゆるハーモナイゼーションに該当するわけでございますが、いずれも長期的に見ての話でございます。長期的に見てSDRというものが信認を得るということを配慮してある点だというふうに申し上げていいのではないかと思います。  それから復元でございますが、復元の仕組み自体はもう御承知だと思いますが、五年間にわたりまして配分を受けますが、その配分と保有額というものとを比べてみましたときに、これは平均的に比べてみるわけでございますが、五年間にわたって三割は平均残高が保有する、そういう配慮をしなければならないということを言っておりまして、もらって全部それを使ってしまうというようなことでございますと、長期的な意味での国際信認というものがそこなわれるおそれがございますので、その意味からの配慮がここになされているというふうに御理解いただいていいかと思います。
  149. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 だいぶもう詳しく質問がありましたので、重複する部分があるかもしれませんが、最初にアメリカ国際収支の均衡の問題についてですが、まあ現状で言えば、私は先ほどの御答弁等を聞いていまして、ケネディ長官の話等もあったのですけれども、一面を言えばこれは絶望的ではないか。特に均衡化というものに成功するということがあっても、アメリカが、金の準備が二百億ドルになるとか、あるいは対外的に固定的な流動負債は百億ドル以下というような一九五〇年代の前半分のことですが、そういうような状態にはなっていかないのではないか。そうなってくると、このSDRそのほかの問題についてもいろいろ問題が出てくると思うのですが、そういう復元の可能性を、向こうの話だけではなくて、政府自体としてはどういうようにつかまえておられるか。
  150. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ各国とも赤字国はいま真剣に赤字対策をやっておるわけでありますが、ことにアメリカは、ああいう新政権になると、新しい教書にもはっきりしておりますように、非常な努力をいたしております。つまり、考え方の基本は、総需要を減らすということ、つまりそれは輸入の減退につながるわけでありまするが、それと同時に、輸出を伸ばすという、こういうことにあるというふうに思います。非常な決意をもってやっておるようでありまするし、アメリカの責任者である財務長官も遠からずこの対策のききめがあらわれてくるであろう、こういうようなことも言っております。このあいだ財務長官の言っておるのは、いわゆるリセッションという不況状態にまでは持っていかない、しかし、の高さをスローダウンする、抑制する、これが基本的な考え方だ、こう言っております。まあ非常な努力を尽くしていますので、私はあなたの絶望的であるというような見方はいたしておりませんし、特にベトナム戦争の推移、これはまたアメリカ国際収支にはいい影響を与えるのではないか、こういう見方をいたしておるのであります。
  151. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どの程度一体均衡化のほうの復元があるだろうという予想があるのですか。
  152. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ自分の国でも予想を立てても大間違いをするような状態でありますので、ましてやよその国のことでありますから、数字をあげてどうのこうのということまで申し上げるほど大胆ではございません。しかし、傾向として、貿易黒字を実現する、そういうことを中心といたしましてかなり改善を見せているのではあるまいか。問題は、ジョンソン時代には四・五%ないし五%ぐらいの実質成長をしていた。これが高過ぎると。そこで、これを三%台に持っていこうというのが基本的な考え方のようでございまするが、いまのいろんなとろうとしておる政策がそれを実現し得るかどうかという点がかなめになるようでありますが、しばらく推移を注意深く見守りたいと、かように考えます。
  153. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ドル危機の問題でも、結局、一九五〇年代のように金の準備がアメリカが二百億ドル台にのぼっていくというようなことにならないと、一つにはドル危機というようなことは避けられないのじゃないか。再びまた起きてくるのではないか。そこまで極端にはいかなくても、現在言われておるようなドル危機とか国際通貨体制という問題になってくるわけですけれども、それの強化ということにはとうていいかないだろう。ここのところでSDRを創設するということになっても、この制度ができても、そのわずかな補強ということにしかすぎないのじゃないか、抜本的ないわゆるドル危機というものは打開できないというふうな感じがするのですけれども、そういう点は大蔵大臣はどんなふうに考えておりますか。
  154. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は常に申し上げておるのですが、SDRが必ずしも万全の策であるとは考えておりません。また、いろいろな工夫をし、いろいろな国際協力を展開して、そして世界経済を順調に拡大していく、こういう知恵が逐次出てくると思いますが、いまの段階としますと、とにかく五、六年もかかってみんながっくりあげたSDR、これが最善の策で、他にちょっとこれにかわる策はない、こういう見通しを持っております。
  155. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまこれは万全の策でないということは、これはよくわかります。ですが、一つドル危機が大きな原因であったことはいなめないだろうと私は思うのです。そういう点で、その点の努力というものがアメリカにもっともっと強くあるべきだろうと思うのですけれども、その点はどうも大蔵大臣とは見解が違っておるようなんですけれどもアメリカドル自身の危機というものがある程度回避されてこなければ、SDRがあってもわずかにそれを補強するだけにとどまるんじゃないか。これは全般的に完全なものではないから、今後の育成手段いかんによって変わってくる、各国協力によってどうにでもなるだろうという可能性は確かにございますけれども、そういう点はどうお考えになりますか。
  156. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) SDRは、多年研究されて、これがとにかく唯一だと、こういうわけなんです。ただ、フランスで、先ほど木村さんからお話がございますように、これに対して異論があったわけです。しかし、これも、フランスもこの点についてだんだんと弾力的な態度をとるようになってきておる。とにかく、これは、アメリカのひとりの問題ではないので、世界の問題です。だから、世界が寄って知恵を出し合って、世界の貿易を、したがって経済を発展させなきゃならない問題だ。これは、だれがどうのと、だれの利益になるというような角度の問題じゃなくて、もう全体一つ同じ船だというような感覚から発想されておるわけでありまして、わが国としてもぜひこの考え方というものは推進をいたしていきたい。これが、国際協力の先進国、またいわゆる先進十カ国の一員としてのわが国のとるべき態度であると、こういう考え方をしております。
  157. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は疑いを持つ点について聞いておるわけでありますけれども、今度のこのSDRというものについての評価がいろいろである。これは先ほどからいろいろ質疑が出ておりますけれども、一方では、第三の通貨である、人類の英知というものを結集したもので、現在の流動性不足している際に非常によろしいという考え方もあるし、一方では、それによって国際収支の赤字をたな上げしようとするアメリカと、それに反対していくEECとの妥協の産物だという見方がある。このために、国際通貨がかえって通貨制度というものが混乱するのではないかというそういう心配もいわれておるわけですけれども、その後段の問題ですけれども、そういう点のおそれというものはどういうようにお考えですか。あるというのか、それとも、ないならどういうふうで心配がないというのか。
  158. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 世界各国、IMFに加盟しておる大多数の国が、この考え方を中心とするIMF協定の改定に署名をしておるわけであります。EEC、EECとおっしゃいますけれどもフランス以外のEEC諸国、これはわれわれとそう考え方は違わないわけであります。ですから、私は、この制度ができますその暁におきましては、世界各国がこれを協力して盛り上げていくという態度に出るに違いない、これは信じて疑いません。
  159. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういう混乱が起きることはわれわれもいやだと思うわけですから、そういう点は十二分に今後ともやっていかなければいけないのじゃないかと思いますけれども、いま一つは、そういうようないまIMFの大多数の加盟国がというお話ですけれども一つ世界的に見れば、いわゆる共産圏というのは入っていないのです。ところが、御承知のように、ソビエトの産金量は膨大であるし、そのためにルーブルに対する金の価格ですか、こういうものを引き下げている。これがソビエトあたりでは一つの生産を向上させている面があるわけですけれども、将来そうなってきますと、いろいろな面についても無視できないような大きな力を持ってくるのじゃないか。そうすると、IMF全体にやはりそういった共産圏等もだんだん加入をさしていかなければ、ほんとうのいわゆる通貨としての意味というものが、一方は膨大な産金国であり、金を持っておるし、一方はそういうふうでないし、信用創造のごときものを持たなければならぬということになっておる。その点で、対共産圏に対してはどういうふうにお考えになっているか。
  160. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 共産圏といえどもIMF体制に入ってくる、これを別に排撃いたしておるわけではないのです、われわれとして。現にユーゴースラビアのごときは加盟しております。それからIMF体制は、国際連合と深い関係があります。国際連合にはすでにソビエトロシアも入っておる、こういうような状態です。ただ、IMF協定加盟しますと、ふところを見せ合うわけですね。いろいろな資料を出し合って、あなたの国の経済状態はどうなんでしょうか、私の国の経済状態はこうなんだと全部さらけ出してお互いに助け合うというような体制ですから、したがって、社会主義体制でこう封鎖的な考え方をとっておると、なかなか入りにくいというような事情もあろうかと思いまするけれども、ソビエトロシアのごとき大国がIMF体制に入ってくる、これは歓迎すべきだと思います。
  161. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その歓迎すべきだということはよくわかるのですけれども一つはルーブルあたりについても金の価格を下げてきたということは、ルーブルをだんだん強くしたということですね。そういう点で、将来かなり通貨にも大きな影響を与えてくるのじゃないかということを考えるわけですよ。そういう点について、わが国として何も考えていないのかということですね。いろいろ金保証をつけろというようなこともいままでソビエトの決済にはいわれているくらいですから、そういう点を伺いたいわけです。
  162. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ソビエトのルーブルは全くの管理通貨で、私は金と関係がある通貨であるとは思いません。しかし、ソビエトに、それはそれとして、かなりの金が累積されておる、こういうことは容易に想像できることなんです。たしかあれは一九六〇年でありますか、ルーブルの価値の切り上げ、あれは十倍とか何とかそういう思い切った切り上げをしたわけであります。これは金との比率を考慮していないからそういうことが可能なわけでありまして、当時のソビエトのルーブルの対外価値の変更についてはいろいろな見方がありまして、ただ、一つ見方は、アメリカドルよりも金に対する価値を少しでも高い形にしておきたいというような考え方が中心だったというふうに報ぜられておりますが、その真意はわかりません。わかりませんが、これはとにかくほんとうの管理通貨でございまするから、わが国の——わが国というか、私ども国際通貨を論ずる場合において、ルーブルがどういうふうになっているかということは、そう大きな影響を感じておりませんけれども、とにかくわが国の円の価値を維持する、金価値というようなお話がありましたが、何に基礎を置こうとも、最大の円への担保は何であるかというと、わが国の経済の実体です。この経済の実体が安定して成長していくという限りにおきましては、円は微動だもいたしません。そういうようなことを考えまして、経済の安一定的発展、これにこそ力を入れなければならぬと、こういうふうに考えます。
  163. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの大蔵大臣の話からちょっと横っちょにそれて質問があれなんですけれども経済の発展によって円の価値を維持するのがいいということを言われたわけです。そうなると、はっきり言って、SDRについては全体の総生産によってなされるとかいうことではございませんでしょうか。そういう点で、大蔵大臣、将来、これでは、はっきり申し上げて、いわゆる創出した国、創出国の創出額によって使用の額がきまってくるということですから、どうしても一方に片寄らざるを得ないわけですよ。そうすると、そういう点を考えると、国際的に不均衡がずっと続いた場合には、今度はその配分額も年々増加させなければならない。そうしていくには、今度は、SDRが偏在する。偏在することになってくると、それを防止するには今度創出額を拒否しなければならない。きめる際に拒否権を発動するようでなければ信用が落ちてくる。そうなると、今度はさらにそれ以上要求がある場合には、SDR・スーパーなんかを考えなければならなくなる。そういう点についてはどうお考えですか。それから、結局、きめ方も問題じゃないか。総生産とかあるいはそのほかのもので考えていくようなときに、ぼつぼつと変わってくるのじゃないかと思うのですけれども、その点の考え方をちょっと聞いておきたい。
  164. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) SDRのクォータは、IMFに対するクォータ、これによることになりますが、IMFのクォータ、これは五年ごとに検討して変えていく、こういうことになっておるのでありまして、ですから、SDRのほうも、その国の国力相応の引き出し権を付与される、こういうことになるだろうと思うのです。それで、何回も申し上げておりますが、SDR万能薬じゃないということでありまして、これを使い切った、国際収支もどうにもならぬというような国は、どうにもなりません。しかし、これがないよりも、これはもうかなり大きな効果が、それぞれの国の国際収支を維持し、またそれの上に立って経済が発展する上で働きがある、こういう点だけはいなめないと思いますから、万能薬じゃない、しかしこれがなかったらどうなるのか、あってじゃまになるのかというと、決してそういうことはありません。   〔理事青田源太郎君退席、委員長着席〕
  165. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 通貨体制のいろんな考え方があって、金本位制に復帰しろとか、あるいは世界中央銀行とか、金価格を改定しろとか、いろいろ出てきたわけですが、そのほかにも、変動為替にしろとか、まあはっきり申し上げて現在のところは国際通貨体制というものが何となく固まっていないというような感じを受けるわけですけれども、それが結局基軸通貨というものの信用がなくなってきている点を解決しないで今回のような特別引き出し権、こういうことになってきたわけですけれども、そういう点はちょっと私納得がいかないのですけれども、これだけでは、先ほどから、万能じゃない、抜本的な解決にはならない、こういうような大蔵大臣の答弁だったと思うのですけれども、そういうときに、今後のいわゆる通貨体制そのものというものは一体どうあるべきなのか、そういう点は、わが国政府としては、こういう方法がいいんではないかということが固まっていないのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  166. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国としては、国際通貨に対しまして確固たる意見を持っているわけです。つまり、主要国が節度ある国際収支運営に当たるべし、また、金の価値は当分これを変更すべからず、また、後進国に対しましては先進国はできる限りこれを援助すべし、そういうようないろんな通貨問題をめぐる諸問題を踏んまえまして国際社会に臨んでおる、これがわが国の現状でございます。
  167. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 一つは、私は先ほどアメリカのことを申し上げたのでありますけれどもアメリカの都合だけでSDRができたんではないというお話でありますけれども、私はSDRの問題はIMF全体から見ればそんな大きな問題じゃないだろうと思うのです。特別引き出し権といっても、結局一つにはIMFへのクォータからきまってきますから、一つには、言いかえれば、押しつけ引き出し権みたいな点も出てくるし——というのは、いままでは、アメリカが金を放出してドルの信認を保ってきている。しかし、ここのところで、先ほどから話があるように、ベトナム戦争がある、あるいはそのほかに多額の財政支出が出ていく、そういうことがあるし、一方ではユーロダラーとして欧州に流れていく、こういうことが米国経済というものをだんだん破綻の方向に導いていく、それが今回のドルというものの信認の低下ということになったと思う。それをSDRだけでもって流動性の歯どめにしようということなんですけれども、それだけではちょっと不十分なんじゃないか。だから、将来先行きは、先ほど申し上げましたように、SDRの上を回るようなSDRのスーパーみたいなものができるんじゃないか、こういうふうに考えざるを得ないという、その点についての考え方はどうですか。
  168. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあいろいろなことが考えられていくと思います。そうして、どうしても世界経済が発展します発展に応じて決済した流動性というものはこれも伸びていかなければならぬ、そういうようなこと。それから偏在が激しくなるというようなことになりますると、またいまの体制でもなかなかむずかしいというようなことも出てくる。そういうようなことを考えますと、まあいろんなことがなおまた将来考えられると思うんです。思うんですが、今日この段階で、五年も六年もの間、世界の蔵相があるいは中央銀行の総裁が毎年毎年集まって議論をしているのはこの問題なんですから、この問題が五、六年の勉強の結果到達した結着点がSDRと、こういうことになると、とにかく当面はこれをひとつ守り育てていかなければならぬと、こういうことにならざるを得ないんです。IMFに参加しているほとんどの国がこれに署名をしておる。また、もう着々とこれに対する各国の承認手続が進行しておるわけであります。いずれ秋ごろにはこれが発効するということになるだろうと、こういうふうに思いますが、何とかしてこの制度を守り育てていく、これが国際社会における発言権もある日本国としては正しい態度ではあるまいか、そういうふうに思います。
  169. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それからこのあいだからずっとわが国の金保有の問題でいろいろ質問があったのを伺ったのですが、どうも大臣は金保有についてはだいぶ消極的なんじゃないかというふうに私は感じたんですけれども、利息が金にはないとか、流動性が少ないとかいうことだけであってはならない。全世界の現状を見ていれば、どうしても金というものの裏打ちがなければならないということは、もう当然のことだと思いますし、それを捨ててしまえといっても、これは現状として無理です。将来金以上のものができてくるのが人類の英知であるかもしれません。それ以上のもの、いわゆるプラチナとかそういうふうなものではなくて、金属以外のものが創出されることはあるかもしれませんが、これは何年も何年もずっと先のことだろうと思いますし、そういう点から私は現在の外貨準備高の中において金の保有というものをかなり増加させていくということを非常に積極的におやりになる必要があろうと思うんですけれども、これはくどいようですけれども、もう一度御答弁を願います。
  170. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 長い間の方針としては、鈴木さん御指摘のとおりに私も考えております。ただ、今日は、金の中央銀行での買い入ればお互いに自制しようじゃないかと。いま非常に国際通貨不安の状態である。そういうような状態下において日本が現実に金の買い出動に立ち向かうということがあることは、世界の不安を非常に大きくゆるがすことになる。それは日本国としてはとるべきじゃない、そういうふうに考えております。長い目の考え方としては、全くあなたと同じように考えております。
  171. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、このSDRが今後発動された場合に、巨大な国際収支黒字国がもしも選択的な不参加権を行使して自国へのSDRの配分を拒否すると、こういうようなことが起きると、これは資金供給能力というものがなくなってくるわけですから落ちるわけですけれども、そういう点のおそれといいますか、そういうものについてはどうお考えですか。
  172. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) このSDRに不参加するという場合は、御承知のように、発動自体が八五%でございますので、まず不参加をするにはその残りの一五%の国ということに相なるわけでございますが、その一五%の国の中でなお第一回の発動の場合に自分の国が参加しないという意思表示を文書でもって言うということになっておりますので、全体の姿から考えますと、協定の成立をしておきながらいざというときに不参加であるという場合は全体の一部分になるというふうに考えられますし、現に、その数字だけじゃございませんで、各国の、ことに主要国の態度を見ておりますと、先ほどからのこの中の参加国すらかなりの態度の変化があらわれつつあるということでございますので、そういう事態はあまりないというふうに私たちは考えております。
  173. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それから、これからの問題に、まあ現在IMFが当面しているいろんな問題がありますけれども、それにはいろいろ考えられているわけですが、一つはいわゆる固定為替制をこのままずっと保つかどうかという問題それからいま一つはそれを認めながらも市場メカニズムを導入しょうという屈伸為替制、第三番目には金を基調とした国際流動性問題の基本的な解決ということがあって、金価格の引き上げをやる、こういういろんなことが出ておるわけですけれども、そういうふうに考えられている問題について、政府は、現在、どういうような観点に立っているか、また、評価をどうなさっていらっしゃるのか。
  174. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) フラン、ポンドの不安に関連しまして、各国の専門家、学者等の間からいろんな意見が提起されております。ただいま鈴木さんが御指摘になったように、変動幅と申しますか、それから弾力的な価額制度というような考え方、それからあるいは金価格を改定したらどうかというような考え方とか、あるいはボーダータックスによって国際収支調整を行なえるというような考え方でありますとか、いろいろ出ておりますが、私どもといたしましては、いろいろ検討いたしておりますが、固定為替制度が一番安定した制度である、そういう考え方をいたしております。また、国際社会に対しまして、わが国としてはこの制度の堅持を主張しているわけであります。
  175. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵大臣の先ほどの答弁だと、SDRは万能なものでないとおっしゃるけれども国際収支の赤字国に対する改善としては一体どの程度の効果というものを考えているのかということでございますが……。
  176. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ、赤字国というか、流動性の足らない国に対しては、かなり大きな力を持つであろう、こういうふうに考えます。わが国に例をとりますと、かりに昨年のいまごろの時点において考えますと、十九億ドルの外貨保有高、その後国際収支が改善されまして、そうして今日は三十二億ドルを保有するに至っております。しかしながら、これは、赤字になるかもしれないという国際収支が、このように十六億ドルの黒字であったという結果なんです。それが万一逆に逆目に出てまいりまして十六億ドルの赤字であったら一体どうなるかと、こういうことを考えますれば、SDRというような制度があるということは、わが国の経済のために非常に大きな力になるし、経済運営の安全弁になっていくであろう、こういうふうに考えます。そういう状況は、わが国ばかりでなく、どこでも同じだろうと思う。その一事を見ましても、この流動性通貨補給、これは偉大な効果を持つであろう、かように考えております。
  177. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私としては、その点で、基軸通貨を持っている米英、これの国際収支の改善ということがSDRの発動の大きな目的であったと思うのですが、しかし、現在の状態でもしSDRが発動されたときに、たとえばこれがドルにかわっていわば偏在してくる。一つには、赤字国にとっては、これは国際収支の改善の一時的なものにすぎなくならないか。今度は、黒字国にとっては、債権がそれだけふえてくるわけであります。いわゆるペーパーにすぎない債権というものでありますけれども、これが集積して一つ世界的なインフレというものを助長する、一方では国際収支というものを改善するという努力を怠らせるということが出てこないだろうか。そうすると、IMFそれ自体の大きな原則というものまでもこわしていくことになるのじゃないか。現在の世界の状況というのは、インフレとの戦いが全世界でいわれているような状態でありますから、こういう点ではどうお考えですか。
  178. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) SDRが発動されまして、その運営を誤りますと、鈴木さんの御心配のような事態が出てこないとも限らない。ですから、SDRの創出というか、実施のタイミングの点につきましては、きわめて慎重にやっていかなければならない。また、各国も、そういう制度、これは一種の管理流動性というものですから、そういう管理通貨を扱うような気持ちでこれを取り扱っていかなければならない、こういうふうに考えております。
  179. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういう場合に、アメリカの発言力というものがIMFにとっては大きいわけですから、そういう点を考えないと、一国の私利のためにいま言われたような国際協調あるいは国際的な管理という精神というものが欠けてくる、こういうことが起きると困るのですが、アメリカの発言とかそういうものについての歯どめ、こういうものについてはどう考えていらっしゃるのですか。
  180. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、IMFが中心になってやりますから、アメリカだけのことでは動きません。現に、IMFは、アメリカだけの意向では動いておらないのであります。これはそれぞれの国の代表の過半数というよりもむしろほとんど全部の相談でやっておる、こういうことになるわけでございます。アメリカがこれをひとりで悪用して自国の利益をはかるというようなことは、夢想だもできません。
  181. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最後に、これはアメリカフランスとの対立ということになったわけでありますけれども、今回のIMF協定体制の中で、いままでと違いまして、具体的な発動条件に拒否権が出てきた。結局、総務会の重要事項の表決権が八〇%から八五%に引き上がったということは、これはEEC諸国が拒否権を持ったということなんですけれども、こうなってくると、だんだんこれが広がってまいりますと、わが国自体としても非常に大きな責任を持つような事態がやってくるということは間違いないと思うのです。たとえば、EEC諸国のほうで一五%いかなくても、そこのところに関してわが国の拒否権というものは成立していく、そういうことが起きますし、そういう点で今後のわが国の態度というものは、実に重要な立場がとりようによっては起きてくる、こう考えるわけですが、この点に対してどういう方法というか、方針といいますか、そういうものでいかれるか、基本的な腹のうちのところをお聞かせ願いたい。
  182. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は、先進十カ国の一員といたしまして、国際協調体制の姿勢は堅持しなければなりませんけれども、その姿勢はどうあるべきかというと、何といってもこれは日本独自の自主性、こういうものでいかなきゃならぬというふうに思っております。どこかの国に遠慮して国益を無視するというようなことがあってはなりません。しかし、国際協調性ですね、今後もその姿勢は終始貫いていかなければならない。自主的に正論は正論としてあくまでも扱っていく、これは、ぜひ貫きたいと思います。
  183. 渡辺武

    ○渡辺武君 大臣は、先ごろシドニーに行かれて帰ってこられた直後のこの委員会での答弁の中に、ケネディ米財務長官がSDRの早期、大量の発動を望んでいるということを語って、それについて蔵相も賛意を表されたという趣旨のことを言っておられるわけですが、最近の新聞報道によりますと、イギリスの大蔵大臣のジェンキンズですね、彼もまた下院の予算演説の中で、SDRの本年内での発動を望むというような趣旨のことを言っておるようであります。このSDRの発動について、従来、各委員もいろいろ指摘されているように、フランスを先頭としてEEC諸国は比較的消極的な態度をとっており、また、積極的な態度をとってきたのがアメリカとイギリスであったということは、これは事実だと思うのです。このSDRの発動が、アメリカドル危機、それからまたイギリスのポンド危機、この今後の激化を何とか食いとめようとする一つ手段というふうに私ども考えているわけですけれども、これについての大臣の答弁は大体いままで伺いましたので、いまこの点についてあらためて大臣にここで伺うことはやめますが、私はこの点に関して少しいろいろな点で具体的な問題を伺ってみたいというふうに思います。  まず、最初に、IMF協定の改正案が出ているわけですけれども、この二十五条の第三項に「必要性の要件」ということがうたわれております。この第三項の(a)には、SDRを使用できる国の要件として、「もっぱら国際収支上の必要に応ずるため」ということをあげているわけですけれども、これはどういう意味でしょうか。平たく言えば、国際収支が赤字になった国ということがSDRを使うことができる条件という意味ですか、その点をお答えいただきたいと思います。
  184. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 原則といたしましてそのように私たちも理解いたしております。
  185. 渡辺武

    ○渡辺武君 国際収支赤字国という場合に、二通りの意味があると思うんですね。たとえば、趨勢的に国際収支が赤字であったという国もあるし、それから従来は黒字であったが、たとえばことしなり去年なり一時的に赤字となったというような国があると思いますけれども、この場合はそのどちらになるわけでしょうか。
  186. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 厳密に申しますと、この「国際収支上の必要」というものは、構造的、あるいは臨時的、あるいは循環経済的と、いろいろいろな場合を想定いたさなくちゃならないわけでございますが、この問題はもう少し今後IMFの場で詰めなければならない点のうちの一つであろうかと思います。ただ、ある月だけが赤字になった、しかしほかの月はおしなべて黒字であるというような場合は、これは常識的に考えておそらく該当しないのではないかというふうに私たちは思っております。
  187. 渡辺武

    ○渡辺武君 大事な協定の一番大事なところだと思うのですけれども、その点がどうも不明確ということじゃ、ちょっと困るんじゃないですか。いま、ある月が赤字で、そのほかの月は黒字だというふうにおっしゃったけれども、たとえばアメリカなどの場合、いままでずっと赤字を繰り返しているわけですね。ところが、昨年は珍しくも国際収支出が黒字に変わった、こういうような状態があらわれているわけです。こういう状態になったときも、やはりこれは趨勢的な赤字国としてSDRを使うことができるというふうに理解していいですか。
  188. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 先ほどお答えいたしましたように、「国際収支上の必要」というものは、御指摘のように、考えてみますと実はなかなかむずかしい問題でございまして、ずっと国際収支は赤字であるというだけの言いっぱなしでは事は済ましにくい問題であることは渡辺委員指摘のとおりでございますが、私たちがアメリカ国際収支考えておりますときに、先ほど来からの議論にもございましたように、アメリカの「国際収支上の必要」という意味におきましては、やはり一億六千万ドルの黒字を流動性ベースで出しておるということ自体は、流動性不足を来たしておりますし、かなりアメリカの「国際収支上の必要」ということは現在のアメリカ国際収支の場合に問題にし得る。簡単に黒字だからまだだめであるとか、あるいは「国際収支上の必要」があるとかいうふうにきめつけられないというふうに私たちは考えております。むしろ言い得ますことは、一昨年のような三十六億ドルというような赤字に比べまして、一億六千万ドルの黒字というものにとにかく来たということは、やはり一応改善の足どりをやっているということが言えますし、これがいよいよ発動する時期にどういうかっこうになるかということになると、これはもう決定的にそのときの姿できまるというふうに考えて差しつかえないのではないかというふうに思っております。
  189. 渡辺武

    ○渡辺武君 アメリカ国際収支が改善されているということを言われましたが、私はこれはあとから少し議論したいと思うのですけれども、やはり本質的には改善されてない。むしろ、改善という点からいえば、形の上では一応黒字になったけれども、その中身はかえって悪くなっておるというふうに思います。思いますが、たとえばいまかりにことしジェンキンズが求めているようにSDRがいよいよ発動されるということになった場合、いまのアメリカSDRを使う可能性はあるのかたいのか、これをお答えいただきたいと思います。
  190. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) つまり、その発動いたします時点のアメリカ国際収支、あるいは主要国の状況というものを考えて、それできめるよりほかはないというふうにお考えいただいていいのではないかと思います。
  191. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、アメリカSDRを使う可能性もないわけではないというふうに考えていいわけですね。  それからもしかりにことしSDRが発動された場合、イギリスはどうか、それからフランスはどうですか、日本は使うほうの立場になるのか、その辺もあわせてお答えいただきたいと思います。
  192. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 先ほど来からたびたびお答えいたしておりますように、そのときどきの国際収支の状況というものは、経済の動態的な動きを反射した国際収支でございますので、なかなか想像しにくい。先ほど来からも話がございますように、一年前に想像いたしました日本国際収支と非常に変わってきているというような事態もございますので、アメリカが今後非常なインフレ抑圧、総需要抑制という努力がどの程度結実するかということ、それからアメリカ以外の国際環境がどうなるかという、非常に複雑な与件の組み合わせによって決定するわけでございますので、私はアメリカが使うか使わないかということはなかなか言いにくいというふうに思いますが、ときどきアメリカのためにやるのではないかという議論につきましては、これはそうではない。ここにございますように、「国際収支上の必要」に応ずるためということで、非常にフェアに、また、みんなが集まってこの定義と申しますか、もう少し具体的な運用方法をきめていくということになるわけだと思います。  それからイギリスでございますが、イギリスはいまのような状態がかりに発動の時期にも続いているということになりますと、これは「国際収支上の必要」ということは言えるかと思いますが、ただ、発動の時期自体は、これはイギリスもかなり改善の努力をしておるということ、やはりイギリスも基軸通貨国の一つでございますので、それも必要かと思います。ちなみに、イギリスは去年の姿にいたしますと四億五千万ポンドの赤字でございましたので、私はさように申すわけでございます。  フランスでございますが、フランスもいまのところは国際収支の状況は必ずしも好調ではございませんで、ことに貿易収支があまり改善を示していないという状況でございますし、貿易外あるいは一般の資本取引という面におきましてもかなりな為替管理というものをしいておりますので、これも発動の時期にどういう姿になるか、必ずしも予測を許し得ないわけでございますが、かりに、おっしゃるように、いまの状態が発動の時期にまで続けておったならばどうであるかということになりますと、やはり「国際収支上の必要」というふうな状態ではないかというふうに考えられます。  日本は、これはちょっと「国際収支上の必要」とはいえませんで、むしろ通貨提供義務国——SDRを向けられますと、それを受け取って交換可能の通貨を提供するという側の国になる、いまの状態が続きますればそうであるというふうに申し上げられると思います。
  193. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、大体、国際収支が赤字であるということが主要な判断の基準となって、その国はSDRを使うことができるということですね。それでは、国際収支の黒字の国はSDRは使うことができないということですか。
  194. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 原則としてさようでございます。
  195. 渡辺武

    ○渡辺武君 この二十五条の第三項「必要性の要件」のいま見たところの後段ですね、一番最後のところですが、「単に特別引出権と金、外貨準備及び基金における準備ポジションの合計との間の構成を変えることのみを目的として使用しないことが期待される。」というふうにありますね。そうすると、これは、つまりあれですか、国際収支黒字国SDRを使うことができないというのじゃなくして、使わないことを期待されると、こういうことですか。
  196. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) そういうことでございます。国際収支は黒であって外貨がどんどんたまっておる、あるいはほかの国からSDRをどんどん向けられている、その結果、SDRがかなりたまったと、しかし、たまったから使いたいというのではだめなんで、国際収支が赤になってこないとそのSDRは使わないでもらいたいと期待されるわけでございますが、これはIMFが一つの要件として大原則の一つとして打ち出しておるわけでございます。
  197. 渡辺武

    ○渡辺武君 第二十五条の第五項には、「国際収支及び総準備のポジションが十分に強固」である国の場合は、「軽度の赤字を示している場合」にもIMFの指定を受けて通貨を引き出される義務を負っているというふうになっていますね。そうすると、この場合は、あれですか、つまり、国際収支黒字国は、軽度の赤字を出した場合でも、IMFの指定によってSDRと引きかえに通貨を提供しなければならない立場にいるんだと、こういうことですね。そうしますと、このことは、国際収支黒字国は、軽度の赤字が出てもSDRを使うことができない、こういうことを意味すると見ていいですか。
  198. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 先ほど御答弁いたしましたように、この「軽度」は、時期的な意味、それから全体の中で考える意味もございまして、重大な国際収支の赤字という場合、黒字という場合は問題ございませんが、非常に臨時的な場合、あるいは別個の外貨準備が非常にある、外貨準備がきわめて豊富だと、恒常的に国際収支が黒字であるという国が、かりにある程度政府の政策等によりまして、たとえば一例をあげますと、資本輸出を大いに促進するという政策的なことの結果軽い赤字を出しているという場合も含まれ得るのではないかというふうに考えております。
  199. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは非常に重大な規定だと思うんですね。軽度の赤字が出た場合でも国際収支黒字国SDRを使うことができないと、これは重大な規定なんですが、その点について、どこからどこまでが軽度で、どこからどこまでが重度か、その辺の判断の基準はどういうところに置いているわけですか。
  200. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 全世界経済はまさに流動的な動き方をいたしますので、いまからこれこれということをもちろん数字的にきめるわけにはまいりませんで、そのために、IMFの場と、しかも理事というものが絶えずおるわけでございまして、こういうまさに非常に微妙な問題につきましては、そのつどそのつどそのときの情勢で指定を行なうということに相なるのが当然であろうと思っております。
  201. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは、ずいぶん不確かな協定内容ということになりますね。最も重要なSDRを使うことのできる国の基準、これもまことに不明確です。それからまた、国際収支黒字国国際収支が赤字になった。ところが、そのときに、一体SDRを使うことができるのか、それとも、IMFから指定されて、他国のSDRと引きかえに、赤字になっているにかかわらず、通貨を出さなければならぬ、そういう立場におかれておるのか、その辺もまことにあいまいだということになっているのじゃ、これは非常に不明確じゃないですか。
  202. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) したがって、これは、先ほどから申し上げておるわけでございまして、SDRの基本的なつまり致命的な問題というのは、国際的な信認を得て世界をインフレにもせずデフレにもせず、非常に巧妙なといいますか、慎重な運営をするということが基本でございまして、そういうことがたび重なっていくことが金及びドル等の外貨準備を保有していく道であるわけでございますので、技術的な数字等によって動かすというような場合よりも、もっと全世界を動く世界を見ながらやっていく。しかしながら、原則は、先ほど来から申し上げておりますように、国際収支の赤字の国が黒字の国に持っていく、黒字の国は提供するという大原則はもちろんそこに存在するわけでございます。
  203. 渡辺武

    ○渡辺武君 かなり政治的な判断で左右されるということになるかと思うのですけれども、いずれにしても、そうしますと、いまの御答弁を考えてみますと、発動されたSDRを使うことができる国は、国際収支がほぼ趨勢的な赤字国、たとえばイギリスなどのような場合、あるいはアメリカもあるいはこれに加わるかもわからぬというような状態だということはわかります。これに反して、趨勢的な黒字国は、例外的な場合を除いては、事実上もう使用を禁止されておるということですね。使用できないということになっているかと思うのです。  ところで、二十五条の第二項の(a)ですね、「参加国は、その特別引出権を使用して、第五項の規定に基づいて指定される参加国から等額の通貨を取得することができる。」、それから第四項、第五項、これもこれに関連した規定なんですけれども、これらによれば、赤字国は、自分のところに配分されたSDRと引きかえに、IMFが指定した黒字国から交換可能な通貨を引き出すことができる、こういうことになるわけですな。そうして、その上に、第二項の(b)によりますと、「参加国は、他の参加国との合意により、次の目的のためにその特別引出権を使用することができる。」として、そのうちの(i)として、「他の参加国が保有する等額の自国通貨を取得すること。」ということになっていますね。そうしますと、SDRを配分されても、国際収支赤字国だけがその配分されたSDRを使ってそうして国際収支黒字国に対してその国が保有している自国通貨を引きかえに引き出すことができる、あるいは、IMFの指定を通してその国から交換可能な通貨を引き出すことができる、こういうことになっているわけですね。  そこで、そのIMFの指定を受ける国ですけれども、二十五条第五項の(a)の(i)ですか、「参加国は、その国際収支及び総準備のポジションが十分に強固である場合には、指定の対象となる。」としていますね。その「十分に強固である場合」というのはどういう場合ですか。
  204. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 赤字国から向けられてもびくともしないといいますか、かなり国際収支の状況も外貨準備の状況もいいという場合をさすと考えております。
  205. 渡辺武

    ○渡辺武君 わかりました。そうしますと、二十四条の第二項(b)によれば、SDRの配分の率は、「割当額の百分率によって表示される。」ということになっていますね。これはIMFのクォータのことでしょう。それによって表示されるということだと思うのですが、もしかりに百億ドルSDRが発動された場合、アメリカの受ける配分はどのくらいになるのか、イギリスはどのくらいになるのか、その点をお伺いしたい。
  206. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 百億ドルといたしまして、かりに、五年間でございますから、毎年二十億ドルといたしますと、アメリカのクォータの比率は二四・四五%でございますので、四億八千九百万ドル——二十億といたしましたときの数字でございます。それからイギリスは二億三千万ドル、それから日本は三・四%でございますので六千八百万ドルというふうになるわけでございます。
  207. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、いままでの御答弁で引き出せる結論は、少なくともIMF協定の改正案の条文に照らして言えば、SDRは、アメリカ、イギリスにとってこそ最も有利なものだというふうに考えられるのじゃないですか。配分の額も、日本などに比べてみればはるかに多い。しかも、これらの国は、もうほとんど慢性的な赤字国です。したがって、これらの国こそがSDRを使用することができる、こういうわけですね。だから、そのことから考えられますのは、SDRがもし発動されない場合を考えてみれば、国際収支の赤字が生じた場合に、アメリカドルをもって払わなきゃならぬし、イギリスはポンドをもって払わなきゃならぬ。これはいわゆる国際通貨の基軸国として当然のことだと思うんですね。ところが、SDRが発動すれば、その発動の量が多ければ、それに応じて少なくなるわけでしょう。いずれにしても、配分を受けた量に応じて、支払うべきドルポンドにかわって、SDRを発動して、そして国際収支黒字国、たとえばまあ西ドイツ日本のような国ですね、ここから自国の通貨なりあるいはまた交換可能な通貨を引き出してそして支払うことができる、こういうことですね。
  208. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 渡辺委員は大前提をお飛ばしになってお話ししておられるのではないかと思いますが、この発動をいたしますときに、世界的にインフレにもデフレにもならないという大原則のほかに、使用国はその国際収支のよりよい均衡の達成ということがなければならないと、また、国際収支の調整過程に対する可能性が見えなければならないということがうたわれておるわけでございますので、おそらくこの発動のときにはアメリカ国際収支がどういう方向に向かっているかということが非常に根本的に問題になるわけでございまして、これがよりより均衡に向かっていないということになりますと、発動できないわけでございますので、かりに昨年一億六千万ドルの黒字だといたしまして、その状態よりもやはりなお一そう国際収支の改善に向かっておるというあかしがないと、これはボタンが押せないということになりますので、ボタンを押したやいなやアメリカがすぐ使うというふうにはなかなか考えにくいとお考えくださっていいのじゃないかと思います。
  209. 渡辺武

    ○渡辺武君 SDRが発動されてすぐアメリカが使うかどうかというようなことを私は言っているわけじゃない。しかし、アメリカがいままで趨勢的に赤字をたどってきている。イギリスももう私が申し上げるまでもない激しい国際収支の赤字に見舞われているという状態ですね。しかも、いままで、これが突然あらわれた問題じゃなくて、もう十年以上の期間にわたって何回もこれを克服しようと思って努力を重ねているのです。しかも、なおかつ依然として特にイギリスはポンドの切り下げなどをやらざるを得ないような事態にいるわけですね。アメリカ国際収支についても、一億数千万ドルの黒字が昨年は出ましたけれども、しかし、先ほど申しましたように、その中身を洗って見れば、これはまことにもう政策的なものです。アメリカ国内経済、あるいはまた世界経済における地位を根本的に改善して、そのことによって国際収支が改善されてきたというふうにはとうてい見られない。これは大蔵省につくっていただいた資料ですから、おそらくアメリカの「サーベイ・オブ・カレント・ビジネス」あたりからとった数字だろうと思うんですが、これを一見しただけで明らかですよ。たとえば昨年はなるほど黒字にはなっているけれども、しかし、いままでのアメリカ国際収支赤字の根本的な原因であった海外に対する軍事費の散布ですね、それからまた、さまざまな経済援助その他でのドルの流出、つまりアメリカ政府の海外軍事経済支出、これが依然として非常に大きい。この点での純流出額を申し上げてみますと、この数字から計算したのですけれども、七十四億一千六百万ドルにもなっている。もっとも、アメリカが中古兵器などを売りつけて回収している分もありますので、その点も考慮していえば、九十七億八千二百万ドルというばく大な金額が政府の海外軍事経済支出として出ているんですね。終戦直後は、アメリカ世界支配、ドル世界体制を維持するために海外にばらまいたドルも、アメリカの貿易収支が大幅な黒字を重ねている間は、一ぺんばらまいたドルを吸収することができた。ところが、いまはどうですか。一九六八年のアメリカの貿易収支の黒字を見てみると、一九六七年にはまだ三十四億七千七百万ドルの黒字を出していたのに、一九六八年になったら一億三百万ドルと激減している。   〔委員長退席、理事青田源太郎君着席〕 これは、いかにアメリカ工業の競争力が衰えたか。これは、内部的にアメリカ資本主義が腐り始めたということと同時に、国際的にアメリカの競争力が非常に衰え始めたという二面を表現していると見て差しつかえないと思う。同時に、また、輸入もアメリカ国内のインフレーションによって急増しているというような事態の反映と見なきゃならぬと思うのです。アメリカドルが非常に流出し始めた一九六七年、八年ごろの際の貿易収支の黒字は、大体六十億から七十億ドルというぐらいの大幅なものであったと私は記憶しているんですけれども、それが一億三百万ドルにまで激減したというような状態ですね。一方では、ベトナム侵略を中心とする経済的、軍事的侵略のために政府のばらまくドルは非常に大きい、他方では、国際収支の貿易収支の黒字幅が決定的にもう減ってしまっているという事態、これはもうアメリカ国際収支の状況が内部的には非常に悪くなっているということを示していると思う。  ところで、それじゃなぜ黒字が出たのか、よく調べて見ると、主として外国からの資本の導入ということになっています。その内容を調べてみると、一つ中期債アメリカが政治的に西ドイツ、カナダなどに持たしている中期債、これがアメリカ国際収支の大幅な赤字になるべきところを食いとめている一つの大きな原因です。もう一つは、金利操作その他によって海外に流出しているユーロダラーなどをかなり本国に還流さしているということもあるし、アメリカの民間企業がそのほかの形で外国資本を導入しているということもあると思うんですが、とにかく、そういう形で、かなり政治的な努力によってやられている。ですから、これを一見して、アメリカ国際収支が黒字になったかのように見えるのだけれども、私はかなり政治的な意味を持っていると思う。なぜならば、いまあなたの言われましたフランスを先頭とするEECの非常に強い要求によって、とにかく基軸通貨国であるアメリカとイギリスこそがもう少し節度を保ってやる必要があるんだ、こんな国際収支の大幅な赤字を重ねていたのではSDRの発動についてOKを出すわけにいかぬというようなことでかなりもめてきておりますね、いままで。だからして、アメリカは、どうしてもSDRの発動をするためには、一時的にでも国際収支の黒字をつくらざるを得ない。しかし、もしSDRがいよいよ発動されるというような事態になれば、いままで国際収支の趨勢的な赤字に見舞われているアメリカとしては、SDRを使わざるを得ないと思う、私は。そこをはっきりと見てとる必要があると思う。そういう事態アメリカ国際収支が赤字でドルがどんどん海外に出て、したがって、このためにドルの信用が下落する、逆に言えば、金の値段が大幅に高騰する、こういうような事態があらわれているからこそ、したがって、アメリカはこのドルの流出を食いとめるためにSDRなるものを使って、他国の通貨を引き出してドルの流出のかわりに使おうと、こういうようなことが事の本質だと見なければならぬじゃないですか。いままでのあなたの答弁を総合してみれば、そうとしか考えられないと思う。
  210. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 私がそういう印象を与えたといたしますと、全くそうではないので、それは反対なふうに私は申し上げるべきであったかと思います。と申しますのは、確かに、アメリカ国際収支は本質的にどうかという点については、私はかなり議論し得る問題かと思います。ただ、一つ——私はアメリカ国際収支を弁護する立場には毛頭ないのでございますけれども一つ言い得ることは、旧政権時代、つまり去年の一月にジョンソンの国際収支対策というものが出されまして、その考え方というのは、国際収支が一昨年におきまして三十六億ドルの赤字であったから、したがって、対外投資を締める、それから中期債その他のこともやる、それから金融も引き締めると。つまり、金融も、外国に対する融資——ガイドラインという名前で呼ばれておりましたけれども、そういう波打ちぎわと申しますか、国際収支面で改善をするということが主体であったかと思いますが、今度の新政権の四月四日の国際収支対策の基本的な考え方というものは、あの発表文にもございますように、それではだめなんであると。総需要対策というものをオーソドックスにとって、財政面から、金融面からの引き締めを行なって、それでなければだめなので、対外投資の引き締めとか削減とかいうようなそう継ぎはぎ手段ではだめだという立場に立っているように私ども考えております。はたしてしかりといたしますと、これはやはり遠からずしてインフレ的な様相というものが鎮静してくるのではないかというふうに思うわけでございますが、かりに一たん鎮静いたしますと、ああいう巨大な八千億ドルの大きな経済力を持っている国でございますので、黒字かげんにしておいてまたすぐ赤字にするという器用なわけにはまいりませんので、非常に大きな経済というものは徐々にブレーキを切っていくというかっこうになるのが昨年、一昨年あたりからのアメリカの姿であろうかと思いますが、もしそういう状況あるいは方向というものが認識されますと、そこではじめて私たちが参加いたしましてボタンを押すという運びになるわけでございます。  したがいまして、アメリカのためにあるというふうに考えるのではなくて、先般来から議論をされておりましたように、流動性ジレンマ等から来る、やはり一国の通貨でもって国際流動性を供給するということがいかに不可能であるかということ、つまり貿易量を阻害しないように流動性を供給していくということが基本的な態度でございまして、したがって、そこからSDRの創出を行なっていくという発想方法になるのでございまして、全く間違った印象を渡辺委員に与えておったといたしますと、はなはだ申しわけないと思うわけでございます。
  211. 渡辺武

    ○渡辺武君 まことに楽天的な見方をしておられるようですが、あなたのいまの答弁を黙って聞いていてもやはり事の真相はあらわれているというふうに私考えざるを得ない。なぜかといえば、いまおっしゃった国際流動性ジレンマ、これは近代経済学の用語で、私どもはこういう用語はあまり正しくないと思っておりますけれども、いずれにしても、こういうことでしょう、アメリカ国際収支が大きくてドルが流出する、このことによって世界通貨が供給されているのだが、しかし、そうであればあるほどドルの信用が下落する、これが国際流動性ジレンマといわれていることじゃないかと思うのですね。それを何とかするためにSDRを出したとおっしゃる。ということは、つまり、なんでしょう、ドルの流出を何とかもう少し食いとめていかなくちゃならぬと、これ以上激しくなったらたいへんなことということで、そのかわりSDRを使うということでしょうが、あなた自身の答弁がそのことを物語っている。これは、そう言っても、なかなかあなた方も否定して承知はされぬでしょうけれども、しかし、実際そうなんです。もしアメリカ国際収支黒字国になって、そうしてほかの国際収支赤字国が配分されたSDRを発動して、そうしてIMFの指令を受けてアメリカからドルを引き出すということになりましたら、いまあなたのおっしゃった国際流動性ジレンマなんかは依然としてSDRが出されても引き続くことなんです。そこのところを何とか食いとめようとするために、アメリカが配分されたSDRを使って国際収支黒字国から通貨を引き出すという仕組みをとらなければ、国際流動性ジレンマなんというものは解決できない。   〔理事青田源太郎君退席、委員長着席〕 そうでしょう。そういうことにならざるを得ないじゃないですか。
  212. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) かりに百億ドルSDRを創出されますと、端的に申しまして、ほかの条件が一定であります限りは、百億ドル世界流動性がふえるというふうに考えております。
  213. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうも、かえりみて他を言われたような気がいたしますね。しかし、あなたのおっしゃる国際流動性がそれだけふえるということも、これは私は間違いだと思う。この点についてはあとからもう少し議論したいと思いますがね。  それで、質問を発展させますけれどもアメリカがたとえばSDRの配分を受けたときに、それは全額使えるわけじゃないですね。純累積配分額の三〇%は留保しておかなければいかぬ。そうしますと、大体七〇%は使えるけれども、しかしそれ以上は使えないということですね。そういうことですな。そうしますと、この基本期間が一応五年ということになっておりますけれども、この基本期間が過ぎたあとでこの七〇%を使ったSDRはどうなりますか。
  214. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) もう少し正確に申しますと、五年たってそこで計算するというのじゃなくて、平均残高でございますので、非常にたいへんなことでございますが、毎日毎日コンピューターで各国の平均残高を算出するということでございまして、これがたとえば四年半ぐらいになりましてもうこれだと全額配分されたSDRを保有しておっても三〇%の復元原則に違反するということになりますと、その五年前にそういう物理的な限界点がまいりますと、そこでIMFから通知してくるという仕組みになるわけでございます。そこで、三〇%復元原則を侵して使用した国がある、したがって、三〇%達成されなかったということになりますと、その次の五年目の段階におきまして使用を停止されるということに相なっております。
  215. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういうことを申し上げているのじゃなくて、つまり、アメリカが、自国に配分されたSDRの平たく言えば七〇%までは使える。これを使って他国から通貨を引き出して使ったとしますね。五年たったと。五年の間そうやってずっと七〇%使ったと。そうしますと、アメリカの持っていたSDRは他国へ移っていって、他国の通貨アメリカの手に渡って海外決済に使っておるわけですね。そういう仕組みになっておるわけでしょう。これが基本期間五年たったあとはどうなるのか。あるいはまた、これがさらに五年、さらに五年というふうにずっと引き続いた場合、これはどうなるのか。
  216. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 毎年毎年二十億ドル、あるいは五年間で百億ドルという通貨の発行が行なわれましたときに、十年先、二十年先にその通貨がどうなるかという御質問かと思いますが、これは通貨価値あるいは信認性ということによって非常に違ってくるわけでございまして、かりに卑近な例をとりまして、SDRの発動状況の中で金に非常に近いということになりますと、その信認の程度は高まる、したがってSDRを非常に大事にするといいますか、各国はそうでないほかの通貨外貨準備にございますほかの通貨をまず使うというような事態も起こりましょうし、そうでない場合が起こりますと、とにかくSDRのほうから使っていくということにもなるわけでございまして、SDRに対する信認の度合い、これは全く今後の発動状況、運用状況にかかってまいりますので、その点今後慎重にしなければならないということがいわれているゆえんかと思っております。
  217. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうも、質問の趣旨がよくわかっていただいていないようです。  それじゃ、端的に申しますけれどもアメリカがたとえばこの五年間に二十四、五億ドルになりますかの割り当てを受けたとしますね。そのうちの七〇%はもう使って、他国から引き出している。アメリカSDRは、たとえば西ドイツなら西ドイツの手に移っている。もう外貨準備の中に組み込まれている。それで五年たった。それからさらに五年間また延長になってさらにSDRの発行量がふえたとします。そうすると、アメリカがまた次の五年間に自国に配分されたSDRの七割はまた使うことができる。それで国際収支黒字国から通貨を引き出して使うことができる。こうしますと、SDRの発行がずっと引き続けば続くほど、アメリカが自国に配分されたSDR——つまり、これには、アメリカは一ドルの金(かね)もかけていない。そうでしょう、全然これは金が要らぬのですから。それを配分を受けて、そのうちの七割を使って他国の通貨を引き出して使うことができるでしょう。そういうことになりますね。SDRの発行量がふえればふえるほどその使う分はふえてくる、こういうことになろうかと思う。これでは、アメリカは、一ドルの金も使わずして、自分の国の輸入超過の決済じりをよその国の通貨を引き出して使うことができる。そうでしょう。そうなると思いますが、どうですか。
  218. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) かりにアメリカのような主要国がそういうかっこうで国際収支の赤字を絶えず続けていくということ自体が大前提と非常に矛盾したことに相なりますので、実際の問題としてはそうなかなかならないと思います。かりに、入り繰りがございますけれども、最初の基本期間におきまして若干年——五年全部とは申しませんけれども、二、三年そうなった、しかし国際収支の基本的な動向というものがアメリカにとってマイナスであるという事態になりますと、この基本的な五年間を一つの期間として発動を議論する仕組みになっておりますので、そういう構造的な長期にわたるアメリカ国際収支の赤字というものが十分予見されているというような事態におきまして相変わらずSDRを続けていくということは、御指摘のとおりかなり問題がある、発動の前に問題があるということになりますので、絶えずアメリカの赤字を支援していく、これで補っていくというかっこうには事実問題としておそらくならないというふうに考えております。
  219. 渡辺武

    ○渡辺武君 あなた、いみじくも事実問題と言われましたけれども、しかし、このSDR協定国際通貨協定の条文を精細に読めば読むほど——それは、事実過程においては、片方にはフランスを先頭とするEECなどがあって、そして八五%の表決でなければ主要な問題については決定できないということになっておりますから、事実関係においてはいろいろ困難はあるだろうと思う。あるだろうと思うけれども、この条文を精細に読んで、その立場を考える限り、理論的な可能性として、アメリカ国際収支の赤字を重ねている場合、あるいは一時的に黒字になってもいままでのように趨勢的な赤字があって、これをどうしても解決しなければならない、金(きん)の流出も激しいというときに、SDRを使って、そうして国際収支黒字国から自己の配分額の七割まではこの通貨を引き出して対外決済に使うということは可能性として十分あることです。そうでしょう。
  220. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) このSDRがどこでだれによってつかさどられるかということは、かなり当初から議論になったわけでございますが、ちょうど私たちの主張しておりますようにIMFの場においてこれがつかさどられる、しかもIMFの協定によってやられるというかっこうに相なりましたのは、IMFはIMFとしてそれ自体固有の目的、理想を持っておりまして、これは各国の貿易というものが自由になる、経常取引というものが自由になることを望んでの機関であるわけでございますが、一面、そういうことが達成されるためには、各国経済運営を十分の節度をもって動かさなければならぬということで、毎年いわゆる年次協議といいますか、コンサルテーションといいますか、そういうものをやっておるわけでございます。これは、八条国であろうと、十四条国であろうと、アメリカであろうと、日本であろうと、どこの国でもひとしく毎年やっておるわけでありまして、経済運営の節度いかん、ことに国際収支の赤字を蔓延的に出しておるということについては非常に強く批判するという立場にあるわけでございまして、そういう国に対しては、むやみな信用供与を行なわない。IMFの固有の信用供与でございますが、そういう大精神の中に盛り込まれたSDRの制度でございますので、先ほど来申し上げましたように、最初の基本期間においても、第二回目以降の基本期間におきましても、そういう構造的な慢性的な赤字というものは、これはなかなか放置しにくい。先ほど来の議論にございましたように、今度の第三の通貨と申しますのは、各国の共同責任、各国経済力を出し合って共同責任でやることの意味は、まさにそこにあるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  221. 渡辺武

    ○渡辺武君 アメリカがいわゆる金融節度なるものをとるということを他国がいろいろ主張する、IMFの中でそれが問題になる、それは当然のことだと思う。当然のことだけれども、先ほどあなたおっしゃいましたように、いわゆる国際流動性ジレンマなるものが生じていて、これを何とかしなければならぬ、そのためにSDRを出すということでしょう。そうしますと、結局のところは、このSDRを使って、いわゆるアメリカドルの流出を何とかもう少し食いとめ、制限するということだと思う。もしそうならばIMF協定にはっきりうたわれておる自国に配分されたものの中の七割までは使うことができる、そうして他国の通貨を引き出して自国の貿易収支決済なりあるいは国際収支の決済なりにこれを使うことができるということは、別なことばで言えば、アメリカは一ドルの金も使うことなくしてこのSDRを使って他国から無償で商品を輸入する、その決済じりにSDRを使うという結論にならざるを得ないじゃないですか。私は、アメリカドルのこれ以上の流出を食いとめよう、そのためにSDRを使ったということがこのSDRの問題の第一の核心だと思う。第二の核心は、このSDRを使ってアメリカ国際収支の赤字を決済する、つまり一ドルもの金も使わないで他国の通貨を使って無償で商品の輸入その他をやることができる、ここにSDR協定の第二の核心があると思う。  そこで、次に伺いますけれども、このSDRは金との兌換はないわけですね。
  222. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 金価値はございますが、兌換はございません。  それから先ほどのことで、根本的な問題でございますので、一言だけ答えさしていただきたいと思いますが、アメリカの場合を想定いたしますと非常にこう何かけしからんという感じにあるいはなるかもしれませんが、これは世界各国ひとしく、たとえばユーゴスラビアというような国も、全く一文の金(かね)を出さないで配分を受ける、しかもそういう国はなかなか国際収支の逆調に悩む場合が多いということでございますので、私は、各国、ことに国際収支的に弱い国というものがまず使い出すのではないか、これは私見ではございますが、そういう感じがいたしておりますし、そういう開発途上国は結果として非常に助かるという場合が多かろうと思います。むしろ、逆に、アメリカを先頭とする主要国の経済節度はあっちからもこっちからも十分監視されて発動が行なわれるという事態、これが現実の姿ではないかというふうに考えております。
  223. 渡辺武

    ○渡辺武君 大いにアメリカ金融節度などを強調されておりますが、それは、確かに、アジア、アフリカ諸国などで国際収支の赤字に落ち込んでいる諸国が、このSDRを使うということは当然考えられることです。しかし、世界最大の赤字国はだれなのかといえば、ほかならぬイギリスとアメリカであったわけですよ。まさに基軸通貨国の通貨の流出を何とかしなければならぬということでSDRを出しているわけですから、ユーゴスラビアあたりをかつぎ出してそのことを隠蔽しようと思ってもこれは議論にならぬ。  そこで、さっきの問題に移りますけれどもSDRは金と兌換ができないということになっている。そうしますと、いままでは、ドルが流出している限りは、そのドルをとにかく金に兌換することは、これは公式にはできることになっておった。最近はいろいろ制限つけておりますけれども、しかし、もうこれを全然防ぐということはアメリカにとっても不可能だろうと思いますね。ところが、今度は、SDRを使って、ドルのかわりに他国の通貨を引き出してこれを使ったときに、国際収支黒字国は、このSDRアメリカから渡されて、これを金にかえようと思っても、かえることはできないわけでしょう。つまり、SDRというものは、ドルの流出を防ぐだけではなくして、ドルが金に兌換されることを今後何とか封殺しようという役目を演じていると言わざるを得ないと思いますが、どうですか。
  224. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 国際流動性不足ということが論ぜられておりますときに、いつまでも金に全面的に依存することは非常に支障を来たすということでございますので、金にかわるべきもの、金、ドル外貨準備を補充すべきものということで勘案されたのがこのSDRでございますので、この価値保証をつけますことによってその価値を高める、願わくは金と同等の信認を得るということがねらいであるわけでございますが、金自体は、御承知のように、非常に自然的な条件、たとえば新鉱山の発見とか、そういう自然的な条件に左右されるものでございますので、そうではない、人が計画的に、かつ各国経済力を担保した、そういう共同の責任でやろうという発想方法になっておるわけでございます。
  225. 渡辺武

    ○渡辺武君 金が自然的な条件によって生産が制限されているという問題については、また時間があったら議論しょうと思いますが、全く間違っていますよ。これは経済学のイロハですよ。あなた方そんなことをおっしゃるけれども、これは終局的には自然的な条件で金の生産は制限されていますよ。しかし、先ほどもほかの委員が一言指摘されておりますけれども、これはもう流通過程からどんどん金が脱落しまして、非常に大量に退蔵されている。だからして、自然的な条件で制約される前に、まさに金が一オンス三十五ドルという低い値段でもって固定されているというところが金の不足一つの重大な原因になっている。しかし、これはいま私の質問の主要なあれではないから、その点はいずれの機会に譲りたいと思いますけれども、そういうことで、SDRは、ドルの流出を何とか食いとめるだけではなくして、金の流出も食いとめようというものに役立つことになっております。  そこで、先ほどの二十五条の第三項「必要性の要件」の(a)ですね、これのところにこういうことを書いていますね。「第二項の規定に基づく取引において、参加国は、(c)に定める場合を除き、もっぱら国際収支上の必要に応ずるため」と、これは先ほど伺いました。その次が問題なんですが、「又は自国の金、外国為替及び特別引出権の公的保有額並びに基金における準備ポジションの推移に照らしてその特別引出権を使用するものとし、」と、こうなっていますが、この「又は」以下のところはどういう意味ですか。
  226. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 外貨準備の状況によってこの特別引き出し権を使用するということでございまして、上の「国際収支上の必要に応ずる」ということと照応して「又は」というふうになっているわけでございまして、御承知のように、全体の意味は、ただSDRをほかのものに置きかえる、あるいはほかのものをSDRに置きかえるというふうに使用するのは困るという趣旨でございます。
  227. 渡辺武

    ○渡辺武君 それはちょっと答弁にならぬですが、いまおっしゃったSDRドルその他にかえるためにだけ使うことはできないというのは、そのあとに書いてあることですよ。いま私が伺ったのはそういうことを伺っているわけではないんですよ。単刀直入に聞きますが、つまり、初めのほうは、「もっぱら国際収支上の必要に応ずるため」と出ていますね。これは先ほど伺ったところですが、この次に書かれている点は、国際収支上では問題はないけれども、たとえば昨年のアメリカのように、国際収支は黒字になったけれども、金の流出が非常に激しいというような場合ですね、つまりその趨勢に照らして特別引き出し権を使うことができるということでしょう、これは。
  228. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 金だけではございませんで、金もございますし、外貨準備、あるいは外貨準備という定義の中に含まれておりますIMFに対する債権的な地位というもの、つまり全体の外貨準備の推移に照らしてそれを使うのだということは仰せのとおりでございまして、金はそのうちの一部でございます。
  229. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、このSDRは、金の兌換を防ぐだけではなくて、金の流出まで防ぐというために機能するということになりますね。ですから、このSDRというのは、アメリカ、イギリスのような基軸通貨国、ドルポンドが流出して、同時にアメリカでいえば金が流出して困っているという国が、他国の国際収支黒字国の負担においてその通貨を引き出してそうしてこれを使うことができる、これが主要な機能だと見なければならぬと思う。そこで、このSDRが今後継続的に使えることができるようになるかどうかは非常に疑わしいと思うんですよ。このSDRがもしかりに順調に機能したとしても、これはアメリカとイギリスの利益の方向で使われる、その利益のために使われるということは、これはもう明らかだというふうに私考えざるを得ない。大蔵大臣は、ドル危機、ポンド危機とこのSDRは無関係だということをしばしば答弁されておりますけれども、いまの国際金融局長の答弁からして、これはドル危機、ポンド危機と非常に密接な関係がある。まさに今後一そう激化するドル危機、ポンド危機をこのSDRによって何とか食いとめようというのが主要な役割りだと思われますけれども、その点はどうですか。
  230. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何回も申し上げておるのですが、この発想は五、六年前からもう出ているわけです。要するに、これはドルだとかポンドだとかいう問題ではなくして、世界通貨——通貨というか、決済手段の総量を補足しないと世界経済が行き詰まる、こういうことなんです。たまたまいまこの時点でこの構想が具体化しょうという、その時点という面に国際通貨不安があるというだけの話なんです。
  231. 渡辺武

    ○渡辺武君 総量が不足していると、それをふやすということですね。それはちょっとおかしいじゃないですか。いまこの協定に基づいたSDR機能を私伺って、それはうそだと思う、大臣のおっしゃることは。なぜかといえば、たとえばイギリスが国際収支の赤字に落ち込んでいる。従来ならばポンドを使って支払いをやっていますわね。ところが、今度は、配分されたSDRを使って支払いをしていいんです。そのSDRはどこへ行くか。西ドイツのような国際収支黒字国の手に移って、西ドイツの持っている交換可能の通貨を引き出して使うのです。そうでしょう。少しも流動性はふえていないじゃないですか。通貨は、結局、西ドイツが使うべきものをイギリスがSDRによって引き出してこれを使っているというにすぎない。そうでしょう。これはふえていないじゃないですか。
  232. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはそうじゃないんです。たとえばわが国の場合、非常に国際収支が悪くなったといってSDRを借りた。そうして、今度はドルを入手して、これを決済の手段に充てたと。わが国とすれば、それだけ流動性がふえたわけです。そういう現象が世界のあまたの国々で起こるわけであります。これは決済手段がそれだけ増加して、経済がそれだけ順調に動くと、こういうことになるわけです。
  233. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは、大臣、おかしいですよ。それは、国際収支赤字国だけをとってみれば、あたかも配分されたSDRを使ってそうして国際収支の決済をやることはできる、あたかもふえたように見えるのだけれども、逆に、そのSDRを受け取った国はどうですか。西ドイツなら西ドイツが、日本国際収支が赤字になったからといって、SDRを出してIMFの指定を受けて、西ドイツから交換可能通貨を引き出して使った。西ドイツ交換可能通貨はそれだけ減っているんですよ。日本ではふえたように見えるけれども、一方で国際収支黒字国交換可能通貨はそれだけ減っている。そうでしょう。プラス・マイナス・ゼロじゃないですか。どこがふえたのですか。
  234. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。私はこれは非常に重大な質問だと思う。大蔵大臣は、前から不足を補う補うと言いますけれども、これはフローの解決にはなります。しかし、ストックの解決にはならぬですよ。それを渡辺さんが言われている。これは何もわれわれが言うだけじゃないですよ。IMFの総会でも、はっきり、フローの解決にはなるが、ストックの解決にはならぬと。その一点を渡辺さんはおっしゃっていると思うのですが、これは重要な点だと思うんですよ。その点をはっきり言ってください。フローの解決にはなるかもしらぬけれども、ストックの解決にはならぬ、増加にはならぬですよ。
  235. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) 流動性不足の問題でございますが、いま、ドイツが、かなりの外貨準備を持っておりまして、そのほとんどを金で保有しております。その場合に、SDRを差し向けられて、ドルあるいは金をそれに向かって売却するということを考えてみますと、結局、国際流動性の問題とは何かということに帰着するわけでございますが、ドイツとしてはこれによっていま国際流動性の天井を感じておるわけではない、そういう黒字国である、かりにそういたしますと、これはやはり世界全体といたしましてはSDRの創出量だけふえておる。こういうことになるわけでございます。  それから木村委員のお話でございますが、これは確かにフローとして毎年二十億ドル、合計五年間で百億ドルの増加になるわけでございますが、これがストックとして機能するかどうかということでございますが、金価値保証がこのSDRに付されておるということからいたしまして、遠からずこの運用よろしきを得れば金に等しい地位を得るということが考えられるわけでございますが、そういたしますと、SDRを保有すること自体ストックにも役立ってくる。したがって、今後の運用とも関連いたしまして、将来の問題といたしましては十分ストックの機能も果たし得るのじゃないかというふうに考えております。
  236. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは答弁にならぬですよ。つまり、こういうことでしょう。SDRを配分された国際収支赤字国は、これを使うことができる。国際収支黒字国は、SDRを配分されたって使うことができない。国際収支が黒字である限り事実上凍結されておる。そうですね。さっきのあなたの答弁はそう答えておる。ところで、国際収支赤字国がSDRを使うということはどういうことかといえば、これは他国から交換可能通貨を引き出して使うということです。どこに通貨がふえているのです。西ドイツ外貨準備を持っている。その外貨準備国際流動性の総ワクの中に入れられているんです。ここに「インターナショナル・ファイナンシャル・スタティスティックス」があるのですが、この中の「インターナショナル・リクイディティ」という項目には、各国外貨準備、金準備がちゃんと載っておる。これらの合計を、あなた方、国際流動性の合計と言っているでしょう。ちっともふえちゃいないですよ。
  237. 村井七郎

    政府委員(村井七郎君) それは、私申し上げましたように、国際流動性不足とは何かということに帰着するわけでございますが、外貨準備の単純な合計自体は、これは国際流動性ではありますけれども不足問題を議論いたしますときの参考にはなりますけれども、これがすべての回答ではない。つまり、流動性には違いございません、対外支払い手段ですから。しかし、国際流動性不足しておる、これが貿易の制限になっているということが議論されておるゆえんのものは何かということを考えてみますと、まさに赤字国が外貨準備不足である、黒字国たとえば一例をあげてみましてドイツというものがSDRあるいは金の保有量をこれ以上ふやすことによって流動性を増さなければいかぬという意味の国際流動性不足は、いまのところ議論されておりません。したがいまして、国際流動性不足ということをおっしゃったわけでございますが、SDR自体は、百億ドルかりに配分されますと、赤字国がそれを使うという意味におきまして国際流動性不足にはいささか貢献しておると言わざるを得ないわけでございます。
  238. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないから、もうほんの一言二言だけ言わせてもらいますが、それは全然説明にならぬですよ。あなたさっき私に言った、国際流動性の総ワクをふやすんだと。あなたのいまの答弁は、赤字国は国際流動性不足しておる、赤字国の国際流動性をふやすんだと。これは総月頃の増大じゃないですよ。つまり、あなたの答弁の本質は、国際流動性不足しておると称しておるいわゆる国際収支赤字国、アメリカとイギリスにとってこそこれが役立つということが本質でしょう。赤字国にいわゆる国際流動性なるものがふえたって、それは黒字国から引き出すものだから、SDRというのは、読んで字のごとし、特別引き出し権ですよ。通貨でも何でもないんだ。これは大臣さっき通貨と言われましたけれども、それ自体としては流通するものじゃないんですよ。これはよその国の通貨を引き出して、その通貨が流通する。決してふえるものじゃない。国際収支黒字国通貨を引き出す権限にすぎない。国際流動性の総量はふえやしないのです。あなたの理論は、したがって、アメリカの利益を何とか守ろう、そのためにこのSDRの発動を何としてでも押し通そうという議論にすぎないと思う。大体、国際流動性不足論というのは、私それ自体として間違っておると思う。  最後に、一言だけ、時間が来ましたので申し上げますけれども大臣は、このSDRが発動されることは、日本国際収支の天井を上げる、日本の国益に合うことなんだということを言われましたけれども、これまた私間違いだと思う。時間がないから意見を申し述べますけれども日本国際収支黒字国で、IMFの指定を受けて国際収支赤字国のSDRを受け取る側だとさっき村井さんおっしゃった。そうしたら、SDRの配分を受けても、日本国際収支が黒字である限りこれを使うことができない。それだけじゃないんですよ。IMFから配分を受けた額の二倍以上はIMFの指定を受けて他国からSDRを受け取る義務を義務的に負っておる。それに加えて、IMFとの合意によっては、それよりももっとたくさんのSDR受け取り義務を負っているんです。それにさらに加えて、たとえばアメリカから話を持ちかけられて、もう少し持ってくれというときには、SDRをそれ以上に引き受けることができる。理論的に言えば、無制限SDRを持たされるという可能性を持っている。それは、あなた首をかしげているけれど、ちゃんとこの協定に出ておる。そうしますと、SDRを引き受けたって、国際収支の黒字である限りは、まあべらぼうにたくさんになる可能性のあるSDRを引き受けさせられて、これを使うことができない。これが何の国益に合致しますか。これは、日本の持っておるドルを、日本が使うことのできるドルを、日本国際収支が黒字である限り使うことのできないSDRにかえられてしまうということです。
  239. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 他に御発言もなければ、両案の質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  241. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私は日本社会党を代表して、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案並びに国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の両案に対し、反対の立場を明らかにし討論を行なうものであります。  その反対理由は、政府がSDRの創設に必要な理由としてあげている二つの点にいずれも承服しがたいということであります。すなわち、政府のSDRの創設を必要とする理由の第一は、今後世界貿易の規模が拡大するにつれて、国際収支の変動も大きくなり、世界全体として準備資産の需要が増大するが、金やドルなどの準備資産の供給は限度があって、それを十分満たすことができず、流動性不足を生ずる、そうなると、国際収支の悪化を懸念して引き締め政策をとりがちとなり、世界貿易の発展と世界経済の成長を阻害するおそれがあり、その対策として新しく流動性を創設する必要があるというのであります。  その第二は、いわゆる流動性ジレンマについてであります。現状のもとでは、国際流動性の供給増加は、米国の国際収支の赤字を意味するため、その供給が増加すればするほど米ドルに対する信認が低下するため、米国の国際収支の赤字がふえて、増加するドル債務の金への交換を肩がわりするための新しい準備資産、SDRの創設を必要とするということであります。  第一点については、福田大蔵大臣は、流動性不足しており、特に将来さらに不足すると言うが、国際流動性は、不足しているというより、むしろ過剰であり、近い将来に不足することもないということであります。すなわち、現在、先進諸国は、需要、なかんずく公共投資の著しい膨張に直面しているわけでもないのにインフレ傾向を抑制しなければならないのは、これらの国は、国際流動性不足に悩んでいるのではなく、生産能力と経済的、社会的発展意欲との間の不均衡に悩んでいるからであります。もちろん、この間に貨幣的要因が介在し、困難を加重しているとはいえ、それこそがまさにインフレであり、そうしたインフレは米国の継続的な国際収支の赤字より派生した過剰流動性に基づくものにほかなりません。西独のシラー蔵相も、現在、国際流動性の供給は過剰でこそあれ、不足していないと見ております。西独の立場がただフランスと異なるところは、ひとりでは将来基軸通貨国の国際収支赤字が解消したときには流動性不足するから、そうした事態に備えるため対処計画を早急に作成する必要を一応認めているにすぎません。フランスは、対処計画の作成に同意したとはいうものの、現行金為替本位制度のもとでは基軸通貨国が長期にわたって国際収支の均衡を維持することはとうてい困難であると見ているのであります。われわれ社会党も、すでに質疑を通じて明らかにしたように、基軸通貨国、特にアメリカ国際収支の赤字は、ニクソンの国際収支対策にもかかわらず、解消することはできないと見ております。その意味で、国際流動性は、不足対策よりもむしろ過剰対策が必要であり、したがって、SDR反対するものであります。  第二の流動性ジレンマについてでありますが、これはアメリカが基軸通貨国である立場を利用してインフレ政策をとり、特にベトナム戦費その他の対外軍事援助を行なった結果であります。そのために、米国の短期債務が金準備を大幅に上回るに至り、過剰ドルは三百億ドルにも達するに至っているのであります。しかも、アメリカ国際収支は今後も均衡を得ることはできないであろうし、その上、すでに生じている過剰ドルの金交換にも対処しなくてはならないのであります。そのしりぬぐいとしてSDR創設をアメリカは必要としているのであります。われわれ社会党は、アメリカのこうしたアメリカ自身の政策の失敗、しかもベトナム侵略戦争のしりぬぐいには反対であります。アメリカの従来の基軸通貨国としての国際収支に対する態度に対して強く反省を求めるものであります。われわれ社会党は、SDR反対を通じて、日本国民の中には、アメリカ国際収支に関する従来の不健全な態度に対しきびしい批判の存在することをアメリカに知らしめるためにも、反対すべきであると信ずるものであります。  以上、反対の立場を申し上げ、討論を終わります。
  242. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案並びに国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案の二案に反対するものであります。  まず、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正法案でありますが、この法案は、日本政府が国際通貨基金協定に規定される特別引出権制度に参加し、外国為替資金特別会計の負担において国際通貨基金から特別引出権の配分を受け、また、取引を行なうことができるとしています。しかし、この特別引出権制度こそは、アメリカドル危機を回避しようとするアメリカの音心図に基づいて国際通貨基金に創設されるものであり、日本を含む国際収支黒掌国に経済的負担を課し、犠牲を強要するものであります。  このことは、質疑の中でも明らかになったように、国際通貨基金協定二十五条三項に、アメリカが特別引出権を使ってドルを買い戻し、アメリカの金流出を防ぐことができること、また、二十五条四項で、事実上、アメリカは特別引出権を国際収支黒字国に押しつけてその国の保有する通貨を使うことができることなどの条項を見れば明らかであり、決して政府の言うように国際流動性不足を埋める第三の通貨ではないのであります。  言うまでもなく、アメリカドル危機の根源は、アメリカのベトナム侵略戦争、世界各国への軍隊派遣、軍事援助等、その世界侵略政策の結果生じたものであり、したがって、このドル危機の一そうの激化を防ぐためのSDRに賛成することは、ほかならぬアメリカのベトナム侵略をはじめとする戦争と侵略の政策に経済的に協力することであります。これは、日米安全保障条約などによって日本がすでに協力させられている軍事力の増強、アメリカに肩がわりしたいわゆる後進国援助などに加えて、一そう日本の政治的経済的な危険を増大させられるものであります。  かかる性格の法案に対し、わが党は断固として反対するものであります。  次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部改正法案でありますが、この法案は、国際開発協会を利用し、アメリカに肩がわりして後進国援助を行ない、それによって日本の独占資本の資本輸出、商品輸出を促進し、事実上、アジア市場、アジアの資源を、アメリカ日本の大企業が支配しようとするものであるばかりでなく、福田大蔵大臣のシドニー発言にもあるとおり、安全保障の立場からも促進するものであり、戦前の大東亜共栄圏を目ざすものだと言っても過言ではありません。  わが党はこのような見解に立って、この法案に断固反対するものであります。
  243. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  まず、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  245. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 多数と認めます。  よって、本案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  246. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 多数と認めます。  よって、本案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出する報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 丸茂重貞

    委員長丸茂重貞君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十二分散会      —————・—————