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政府委員(
吉國二郎君) ただいま御指摘がございましたように、税金が
所得がふえた
程度ではないけれどもやはりふえているのではないかという御指摘でございますが、
所得税は、御承知のとおり、累進課税でございますから、
所得がふえれば本来なら
所得税はべらぼうにふえるはずのものでございます。それを
減税をして現在でもほとんど負担は同じであります。たとえば
国民所得の中の
個人総
所得に対する
個人所得税の
割合をとってみますと、
昭和二十五年当時は七%近かったわけでございますが、その後低下をいたしまして、三十年代を通じて四%前後、現在でも五%前後でございます。ということは、
所得が実際上
昭和二十五年から十倍
程度に名目ではふえておるにかかわらず、税負担率は、平均的に申しますと、ほとんど変わっていないということでございます。それだけ
減税が行なわれているわけでございます。累進課税であるにかかわらず、
所得税は現在
減税によって比例税率と同じ運用がされておる、これはもう歴然たる事実でございます。もしシャウプ
税制のとおりいま
所得税を課税したとすれば、
所得税収入は二十兆円になると私どもは
計算をしているわけでございます。それだけ
減税をされているということは、これはもうはっきり申し上げられると思います。
それから今回の
減税で税率をやり過ぎておるのではないかという御説でございます。これは確かにことし初めて三十二年以来税率に手をつけたわけでございますが、御承知のとおり、いままで三十三年以後の
減税に使いました
所得税の
減税の八七%が課税最低限の引き上げによって使われた。したがいまして、課税最低限は、先ほど来申し上げておりますように、非常に急速に引き上げられてまいっております。すでに西独水準をこえるというところまでまいりました。ところが、課税最低限が二倍、三倍に引き上がったにかかわらず、税率の適用のきざみが依然として昔のままでございますので、課税最低限に取りかかったとたんに税の負担が急激に上がっていくような形にある。そのために、百万円をこえて三百万ぐらいまでのところ、
所得が一〇%伸びた場合の税負担の増加が二八%というような非常に極端なものになってきている、これが現在税が重い重いといわれている
一つの大きな原因だと思われます。したがって、課税最低限がかなり高くなれば、その上に適用されるべき税率もかなりの幅をもって累進するのが適当だと考えられますが、それが従来据え置かれておりましたので、ことしはその点を是正して、全体の
バランスをとろうという意味で税率の改正の第一歩に着手したわけでございます。それで、税率の適用の幅を広げることと、逆に下のほうの税率の刻みをやや低目にして累進させるという二つの
考え方がございます。
税制調査会では、その二つを併用して
一つの新しい税率の形を提案しております。これは下のほうの税率を二%、それから漸次三%、四%、五%、こういう累進を適当とするという
考え方でございまして、ことしはその一部を実施するという意味で下のほうの税率を四%にする
程度にとどめておりますが、いわばそれだけ初めて税率に手がついたということでは、御指摘のようにことしだけの
数字をとってごらんになりますと、上のほうの階層の
減税額が大きいという結果は、これは否定できないと思います。ただ、
昭和四十一年にこの百万円という構想が出てまいりましたが、その
昭和四十一年から累計で考えてみますと、たとえば夫婦子三人で申しますと、百万円の給与
所得者は今度の改正で実に八四・五%はもう軽減されてしまった結果になりますが、二百万円の
所得者が四〇%、五百万円の
所得者が一九%という
程度に、やはり下のほうの
所得者が優先的に
減税になっている姿が見られると思います。確かに、単年度だけでごらんいただくと、
税制改正というものがゆがんだ形に見える場合があると思いますが、
税制調査会の答申を二年に分けて——私どもは二年でできればいいと思っておりますが、少なくとも二年ないし三年に分けて実施するとすると、単年度ではやや形の悪い姿も出るかと思いますが、四十一年以来の税の姿を総合して考えるならば、税率にあまりにウエートが置かれ過ぎているということは言えないのじゃないか、かように考えております。