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参考人(田口良明君) 私は
石炭鉱業合理化事業団の副
理事長をしております田口でございます。実は工藤
理事長が本日参るわけでありますが、ただいま病気加療中でございまして、はなはだ僣越でございまするが、私からお答え申し上げたいと思います。
ただいま小野先生からのお尋ねの件は、去る四月三日に当
合理化事業団の九州支部の
職員二名が加賀炭礦に関して不正容疑があるということで拘引されまして、関係書類を提出させられました。目下取り調べを受けておるわけでございます。私といたしましては、その責任の地位にある関係上、全くざんきにたえない次第でございまして、まことに私の不徳のいたすところであると、心から申し訳なく存じておる次第でございます。ただいまのお尋ねに従いまして、当時の加賀炭礦の
閉山整理交付金の支給並びに
鉱害留保金の
支払い、そういうことにわたって、ごく概略を申し上げたいと思います。
この加賀炭礦は、御
承知のとおり九州の幸袋鉱業株式
会社の炭礦でございまして、事務所は福岡県嘉穂郡穂波町忠隈一番地、
整理促進
交付金の申請年月日は
昭和三十九年二月の十九日でございます。その申請に従いまして、現地
評価調査月日は
昭和四十年の三月十六日から同年の三月二十一日までかかったわけでございます。この
評価に携わった
調査員は本部から北村辰二、原田拓郎、九州支部からは井上宏、この三名が立ち会ったわけでございます。かくして
交付決定は
昭和四十年の八月二十三日に決定したわけでございます。その
交付決定金額は約一億四百二十八万円であったわけでございます。
そこで、この
交付決定について一言御
説明申し上げたいと思いまするが、この
炭鉱の
交付金の
交付決定は、大体本部であります東京から学識経験すぐれたる
調査員が参りまして、この
調査員も二名以上を一組にしておりまして、さらに現地の支部からも参加するというたてまえになっているのでございます。そうしてこの
閉山交付金の決定につきましては、以下述べまする三段階を経ることにしております。それは専門的知識を有しておりまする本団所属の
調査員が二名以上の班を組織する、そして現地の
調査に向かい、第二がさらに本部の
調査専門
委員会にその
評価事情について、
業務方法書の細目を
規定するような
方式にのっとりまして、あらゆる角度からこれを検討する、それが第二段でございます。第三段階は、さらにこれを役員会にかけまして、
審議の上決定いたすということにしておりまするので、
交付金の決定につきましては、個人の裁量の入る余地は全くなく、
交付金の決定は当団の組織
規定上
整理部所管でございまして、今度の不正容疑者二名は
鉱害関係でございまするので、さらにこの
鉱害留保金の問題に移ってごく簡単に御
説明を申し上げてみたいと思います。
ただいま申し上げましたように、この
交付金の決定がございますると、まずこの第一回の
支払いでございますが、これは
交付金額から留保金額を控除したいわゆる差額、三〇%でございまするが、留保割合は二〇%と五〇%、合わせて七〇%でございまするので、
交付金額の三〇%相当額を
一般債務あるいは金銭
債務等に引き当てるために第一回の
支払いが行なわれたわけでございます。この第一回の
支払いは四十年の八月二十三日、第二回の
支払いでございまするが、これは九月の二十四日でございまして、この第二回の
支払い額は、ただいま申しました留保割合に従いまして、三〇%のいわゆる
賃金債務の返済の申し出に充当するためにとっておいたものでございまするが、その申し出がなかったために、この留保金額の変更の差額の返還をいたしたわけでございます。これはおそらくいろいろな
債務の使途に充てられたものと想像されるわけでございます。
それから以後三回にわたっていわゆる
鉱害の留保金の
支払いが行なわれたわけでありまするが、その第一回の留保金の
支払い、この
鉱害留保金は
交付金の五〇%でございまするので、一億四百万円の
交付金額の半分に当たる額でございまするが、それをまず第一回に四十一年の四月二十八日に三千五百十三万九千円払ったわけでございます。この第一回の
支払いでございまするが、その
支払いは未
処理物件三百八十七件のうち三百二十四件が
鉱区線外にある、あるいは採掘
影響線外また既賠償の物件であったというようなことで、残りの六十三件が賠償責任があるということが確認されました。よって要賠償物件に対する
残存鉱害算定額は四百十五万一千五百五十四円となりました。しかし物価スライド等を勘案いたしまして、約五〇%増を見込むとともに、不安定な要素も加味いたしまして千七百万円を留保いたしまして、三千五百十三万九千円を返還いたしたわけでございます。第二回でございますが、これが四十三年六月二十二日に千四百万円の
支払いをいたしたわけです。その金額は、その後この
鉱害の問題につきまして、当事者の間で交渉が進展し、だんだん申し出も取り下げがありまして、二名、十五件を残すのみとなったわけです。このうち要
処理物件は一名、十一件で、
鉱害算定額は百四十二万八千円となるのでありますが、念のために三百万円を留保いたしまして、千四百万円を返還いたした次第でございます。第三回の返還でございますが、
昭和四十三年十月七日、これは被害者全員が申し出を取り下げましたので、残り三百万円を返還いたしましてここで完了いたしたわけでございます。
なお、この機会にこの
鉱害留保金を返還するというときの金額の決定方法でございますが、
業務方法書の第六十条に基づきまして、留保金額に残余があることが確実であると認められた場合には、その残余に相当する金額を当該廃止
事業者すなわち
閉山炭鉱者に引き渡すことになっておりますが、その金額の決定は、
鉱害現地の
実態及び被害者との交渉その他あらゆる面から検討いたしまして、返還額を算定するのでありまするが、あくまでもこの返還額を算定する場合には、先ほど申しましたようにいろいろな面からセーフティーファクターを考慮いたしまして、そして多目に留保しておくのが通例でございまして、なお、この
鉱害促進協議会にはかった上で決定するということにいたしておるわけであります。この
鉱害促進協議会というのは、
合理化事業団関係の各
炭鉱の
鉱害問題の
解決を促進するために設けられております
機関でございまして、福岡通産局の
鉱害部、それから
鉱害事業団九州支部、
石炭鉱業合理化事業団の九州支部、その他必要がある場合には関係者の参加を求めるということにいたしておるわけです。こういうような組織並びに手続をとっておりまするので、今度のこの事件、どうしてこういうようなまことにお恥ずかしいような結果になったのか、私としてはまことにわからない、そういう現在の心境でございまするが、しかし、この上は一日も早く事実が解明されまして、その実際のところがはっきりすることを祈念しておる次第でございます。
なお、
合理化事業団といたしましては、今後ますます
炭鉱の
整理並びにビルドアップの仕事の中核の重要な
業務をいたしております関係上、役
職員一同いやしくもかかる不正なことがないように、私はいつも日ごろからこの点を
事業団内部に向かって啓蒙してまいったつもりでありまするが、先ほど申しましたように、こういうような
事態を招いたということは時節柄まことに残念であるとともに、また仕事が重要であるだけに、今後この
実態を把握しまして、二度と再びかかる汚名を着るようなことのないように、
事業団一同、この際奮起一番、世間の誤解を解くことに全面の努力を払う覚悟でございます。いずれ、さらに御質問がございますと思いまするが、一通り今回九州支部におきまして、二名の
職員の不正容疑にかかる、ただいま
調査中のそれに関連しまする加賀
炭鉱の
閉山交付金をめぐっての経過の概略を申し上げた次第であります。