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1969-04-09 第61回国会 参議院 石炭対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月九日(水曜日)    午後一時四十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿具根 登君     理 事                 鬼丸 勝之君                 川上 為治君                 小野  明君                 藤原 房雄君     委 員                 石原幹市郎君                 剱木 亨弘君                 西田 信一君                 松平 勇雄君                 吉武 恵市君                 米田 正文君                 大矢  正君                 原田  立君                 片山 武夫君                 須藤 五郎君    衆議院議員        発  議  者  岡田 利春君    国務大臣        通商産業大臣   大平 正芳君    政府委員        通商産業省鉱山        石炭局長     中川理一郎君        通商産業省鉱山        石炭局石炭部長  長橋  尚君        通商産業省鉱山        保安局長     橋本 徳男君        労働省労働基準        局長       和田 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君    参考人        石炭鉱業合理化        事業団理事長  田口 良明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○石炭鉱業再建整備臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○石炭鉱業経理規制臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○石炭鉱業国有法案衆議院送付予備審査) ○日本石炭公社法案衆議院送付予備審査) ○派遣委員報告 ○当面の石炭対策樹立に関する調査  (空知炭砿出水事故に関する件)  (石炭鉱業合理化事業団業務運営に関する件)     —————————————
  2. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまから石炭対策特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  当面の石炭対策樹立に関する調査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することにしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 阿具根登

  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました三法案提案理由及び概要を御説明申し上げます。  まず、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  今日の石炭鉱業が深刻な若境に立たされていることは、御承知のとおりであります。この事態に対処するため、政府といたしましては、昨年十二月の石炭鉱業審議会答申趣旨を尊重して、去る一月、今後の石炭対策について閣議決定を行なった次第であります。  この新石炭対策におきましては、わが国エネルギー安定的供給雇用の安定、地域経済発展など国民経済的観点から総合的施策を講ずることといたしております。閉山対策の面におきましては、石炭企業閉山を行なった場合に、その従業員鉱害被害者、周辺産炭地域中小商工業者等に多大の影響があることは、いまさら申し上げるまでもありません。特にいわゆる企業ぐるみ閉山の場合には、多額の未払い債務弁済ができないため、産炭地域に対する影響はさらに著しくなることが懸念されますので、社会的混乱の防止にも配意して、新たに石炭鉱山整理特別交付金制度を設けることとした次第であります。  また、石炭企業が、個別企業利害を越えて全体の合理化をはかるため、いわゆる体制整備を行なうべきことが重要でありますので、鉱区の再編・調整及び流通合理化等を重視し、地域実情に応じて、共同行為事業共同化等実施を推進することといたしております。これらの措置を講ずることに伴い必要となります制度追加及び改善を主たる内容といたしまして、今回この法律案提案いたした次第であります。  次に、この法律案概要を御説明申し上げます。今回の改正の第一点は、今後やむを得ず生ずる企業ぐるみ閉山による社会的混乱を防止するため、石炭鉱業合理化事業団石炭鉱山整理特別交付金交付する制度追加することであります。この交付金は、閉山を行なう石炭企業がその資力をもってしては支払うことができない従業員関係債務一般債務鉱害債務及び金融債務のそれぞれについて一定限度までは充足が可能なように所要の金額が交付されるものであり、その全額について石炭鉱業合理化事業団がその会社にかわって弁済をすることにしております。  第二点は、石炭企業経営合理化を徹底せしめ、必要な場合には、採掘権者または租鉱権者相互にに協力して事業を行なうか、またはその事業を一体的に運営するための体制整備するために必要な勧告制度を設け、また、石炭流通円滑化及び石炭販売業者相互協力をはかるための共同行為指示制度を設けることといたしております。  このほか、石炭鉱業合理化基本計画目標年度昭和四十五年度から昭和四十八年度に改めること、採掘権者または租鉱権者が、石炭鉱業合理化事業団に納付する納付金限度額を引き上げることなど、所要改正を行なうことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。     —————————————  次に、石炭鉱業再建整備臨時措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  今日の石炭鉱業が深刻な苦境に立たされていることは御承知のとおりであります。この事態に対処いたしますため、政府といたしましては、昨年十二月の石炭鉱業審議会答申趣旨を尊重して、去る一月、今後の石炭対策について閣議決定を行なった次第であります。  この新石炭対策におきましては、わが国エネルギー安定的供給雇用の安定、地域経済発展など国民経済的観点から総合的施策を講ずることといたしております。現在の石炭鉱業の危機は、資金経理面の悪化に集約的にあらわれており、金融機関及びその従業員に対する債務償還の過重な負担を取り除かない限り、石炭鉱業経営基盤の回復、安定を期しがたい状況にあります。このような現状にかんがみ、今回の石炭対策におきましては、その重要な一環として、総額一千億円程度再建交付金交付措置を講ずることとしたい考えであり、これに伴ない必要となります制度追加及び改善を主たる内容として、今回この法律案提案いたした次第であります。  次に、この法律案概要を御説明申し上げます。今回の改正は、再建交付金交付に関する規定追加することであります。再建交付金は、再建整備計画について本法施行の後新たに通商産業大臣の認定を受けた石炭企業に対し、その負っている債務償還とそれにかかわる利子の支払いに充てるため交付するものであります。  その際、再建交付金交付の対象としましては、金融機関からの借り入れ金債務とともに、従業員に対して負っている賃金支払い債務などのいわゆる従業員関係債務をも含めることといたしております。なお、借り入れ金債務のうち、昨年十月から本年四月までの間の石炭鉱業運営に特に必要であったものについては、所要の配慮をいたすこととしております。このため、再建交付金を受けようとする会社についての再建整備計画の作成、再建交付金交付契約締結等につきまして、新たに規定を設けることといたした次第であります。  このほか、再建交付金制度一環として、いわゆる担保抜きを行なうことにより石炭企業資金調達を容易にすることを目的として、特別の損失補償を行なうことができることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。     —————————————  最後に、石炭鉱業経理規制臨時措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  今日の石炭鉱業が深刻な苦境に立たされておりますことは御承知のとおりであります。この事態に対処するため、政府としては、昨年十二月の石炭鉱業審議会答申趣旨を尊重して、去る一月、今後の石炭対策について閣議決定を行ないました次第であります。  この新石炭対策におきましては、今後の石炭鉱業再建をはかるため諸般の対策を強力に推進することといたしておりますが、なかんずく、石炭鉱業安定補給金制度の拡充は、今回の対策の重要な一環をなすものであります。  すなわち、石炭鉱業安定補給金につきましては、その交付先企業の範囲の拡大及び補給金の額の引き上げをはかろうとするものでありますが、その反面、石炭鉱業安定補給金交付を受ける石炭企業におきましては、真にこれを石炭鉱業再建目的に沿って使用することが要請されるところであります。このため、これら企業経理適正化について所要法規制を行なう必要があると考え、この法律案提案した次第であります。  次に、この法律案概要を御説明申し上げます。第一は、石炭鉱業経理規制臨時措置法適用を受ける会社として、石炭鉱業安定補給金交付を受け、かつ、石炭年間生産数量一定規模以上である会社を新たに指定することにより、これらの会社が行なう利益金処分等について所要規制を行なおうとするものであります。  第二は、本法有効期限昭和四十五年度末から今回の石炭対策目標年度である昭和四十八年度末まで延長することであります。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ慎重御審議の上御賛同くださいますよう、お願い申し上げます。     —————————————
  7. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 石炭鉱業国有法案日本石炭公社法案、以上二法案を一括して議題といたします。  提出者から提案理由説明を聴取いたします。衆議院議員岡田利春君。
  8. 岡田利春

    衆議院議員岡田利春君) 私はただいま議題となりました石炭鉱業国有法案並びに日本石炭公社法案について提出者を代表し、その提案趣旨を御説明申し上げます。  戦後日本経済再建のにない手となった石炭鉱業は、その後石油の進出により急速にその需要が減退し、千二百円炭価の値下げとともにスクラップ・アンド・ビルド政策が強行され、その結果失業者のはんらん、関連中小企業の倒産を引き起こし、産炭地域は荒廃して大きな社会問題となり、労働者中心として、中小企業者、住民、自治体、一体となって政府石炭政策の転換を迫ったのであります。  昭和三十七年四月、政府石炭鉱業調査団を編成し、第一次、第二次、第三次の答申がなされたのであります。ことに第三次答申抜本策として一千億円の債務肩がわりという私企業への異例の措置であったのであります。しかしながら、これらの諸政策もことごとく失敗に終わり、石炭鉱業全面的崩壊は必至の情勢となってきたのであります。  かくして、政府石炭鉱業審議会答申を求め、昨年十二月二十五日第四次答申がなされたのであります。この第四次答申の基調は再度一千億に及ぶ債務肩がわり中心とする五年間四千億程度財政支出を行ない、この間に出炭規模を三千五百万トン程度に縮小しようとするものであります。  この答申は、私企業としての経済的基盤を完全に失っている個々企業をそのままの形態にして再建交付金交付するものであって、全く従来の政策を踏襲したのみであります。これは金融機関の救済と個別企業対策であって、石炭産業政策ではありません。再び過去の失敗を繰り返すことは火を見るよりも明らかであります。  私は今日までの政府政策について、その欠陥を指摘しつつ政策の提言をいたしたいと思います。  第一に、従来の政策の最大の欠陥個別企業対策に終始したということであります。相次ぐ答申が挫折した原因にはもちろん予想以上の重油価格の低落、諸物価の高騰などがありますが、政策を策定するに際して提出された各社計画が常に会社利害の上に立ってつくられ、さらに答申に基づく再建計画実施が無秩序に行なわれ、計画がそごを来たしたという事実を見のがすことはできないのであります。第四次答申による石炭再建策もその轍を踏むことは確実であります。  第一次答申以来各社は競って、第二会社化閉山、首切りを進め、五年間逐次実施する予定のスクラップ計画をわずか一年半で強行し、その後における合理化もベースアップの抑制、労働時間の延長、組夫導入等全く非近代的方向で行なってきたのであります。この結果、大災害の頻発となり、労働者炭鉱の将来に対する展望と希望を喪失させ、離山ムードをかり立て、ついに計画出炭体制経営者みずから放棄するに至ったのであります。  第二には、かように企業内合理化非合理化の段階まで落ち込んでいるのにかかわらず、企業間の合理化は全然放置されてきたということであります。石炭鉱業近代化を阻害しているものは、明治以来の先願主義による鉱区大手炭鉱の独占に錯綜する鉱区の分布によるものであります。鉱区統合石炭生産構造整備基本であります。地下の鉱物資源土地所有権に属す法制になっていた英国においては群小の炭鉱が存在し、近代化が著しくおくれていたところから、早くより国有化が叫ばれていたのであります。イギリスの国営、フランスの公社営制度は大胆な鉱区統合再編成でもあったのであります。したがって、生産基盤整備を行なわずして石炭鉱業近代化はあり得ないのであります。  次に、石炭鉱業近代化のおくれはその流通機構にも見ることができるのであります。わが国においては数百種に及ぶ銘柄があり、しかもこの輸送コストの高い石炭交錯輸送が行なわれている現状であります。最近は石炭供給構造が変化し、北海道に重点が移行し、さらに石炭各社出炭販売シェアが変わりつつある今日、流通機構一元化が緊急な課題であります。石炭需要は電力並びに鉄鋼が大宗を占め、いわばその大部分が政策需要であることからも販売における競争はもはや意義を失っているのであります。今日まで政府がこれらの根本的問題の解決に手をつけようとしなかったところに、わが国石炭鉱業の悲劇があると言わざるを得ません。  第三には、今後の石炭政策において最も重要な問題は、いかにして労働力確保するかということであります。鉱山の命数は鉱量によってきまり、個々炭鉱に就職することは若い者にとっては永遠の職場たり得ないのであります。高温多湿の地底に、しかも災害の多い職場で、低賃金で、退職金すら確保の保証のない状態において、労働力の吸収が困難であることは当然であります。それには災害を防止し労働条件を引き上げ、現在のような各炭鉱別雇用でなく、石炭鉱業全体としての雇用形態に改め、少なくとも現存する技術者並び労働者確保しながら若い労働力の養成をはかることが必要であります。  第四には膨大な債務残存鉱害処理の問題であります。欧州各国とも石炭政策については多くの予算を計上して保護助成政策をとっているのでありますが、わが国のごとく私企業たる個別会社政府債務肩がわりをした例は皆無であるとともに、企業間においてきわめて不公平な施策となっているのであります。しかも一千億の肩がわりでは立て直しが困難であることが判明した今日、個別企業を再編成し、公的機関統合してこの債務整理鉱害処理を行なう必要があります。  以上の観点より、これらの問題を総合的に解決する方法は、炭鉱国有化して公社において経営する以外にないと思うのであります。  わが国におけるエネルギーの消費は年々経済成長率とほぼ同一テンポで増加しているのであります。これがために供給源分散化海外原油開発備蓄等対策が進められ、増殖炉等発電用原子炉開発が期待されていますが、国内資源である石炭鉱業の継続的安定こそ最も確実な安定供給であります。また鉄鋼生産の飛躍的な増大に対処し、その原料炭確保は、最も肝要であり、国内炭のみではなく、海外開発もみずから行なう体制の確立が必要であります。  国民総生産は世界第三位に達したわが国経済において、今日の出炭規模程度の維持はけだし当然といわなければなりません。  かかる見地に立って、以下石炭国有法案概要について説明申し上げます。  第一章は目的についての規定であります。石炭わが国における重要エネルギー資源であり、エネルギーの将来にわたる安定的供給確保する上に重要な地位を占めていることにかんがみ、石炭の掘採、取得及び輸入権能を国に専属し、計画的、合理的な生産及び供給確保し、石炭鉱業の継続的安定をはかり国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものであります。  第二章は前述のごとき目的に基づき石炭鉱業に対する国の権能規定しました。しかして、その権能実施日本石炭公社をして行なわしめることにいたしましたのであります。  第三章は石炭需給計画について規定いたしました。石炭審議会意見を聞き、毎年通商産業大臣当該年度以降五カ年間の需給計画を定めることにいたしたのであります。  第四章は石炭審議会規定を設け、公社の労使、需要者学識経験者からなる四者構成といたしました。  第五章は石炭鉱業等買収について規定いたしました。買収価格方式についてはわが国における従来の鉄道国有法日本製鉄株式会社法日本発送電株式会社法の場合、並びに欧州における国有法公社法の場合の方式等を検討いたしましたが、わが国における石炭鉱業企業経理実態から一定期日一定期間平均株価基準として評価することにいたしました。これらは政令によって定めるわけでありますが、わが党としては国有法案国会に提出された二月十八日前一年間の株価平均といたしたいと存じます。  非上場会社については評価審査会において上場会社買収価格を考慮に入れながら資産を評価し、それから負債を控除した額を基準とすることにしました。兼業会社政令による基準によって指定し、当該企業石炭部門買収することとし、この評価は非上場の場合と同じ方式をとることにいたしました。現在稼行していない鉱業権については消滅さすこととし、その際これによって生じた損失について補償することにいたしました。買収時において鉱業権者等が有する権利、義務は国が承継し、直ちに公社に引き継がれるものといたしました。これらの買収代金並びに補償金については、国債証券交付し二十年以内に償還することといたしました。  なお本法律施行に伴う諸種の法律整理については別に施行法を提出する所存であります。     —————————————  次に、日本石炭公社法案について説明申し上げます。  第一章において日本石炭公社国有法に基づき、石炭の掘採、取得輸入販売海外を含め未開発炭田開発等業務を行なうことを規定いたしました。輸入業務は委託を行なうことができるように規定し、また販売についても小口等は従来どおり商社を通じ販売するつもりであります。  資本金は二百億円と全額政府出資といたしました。  第二章に業務運営重要事項を決定する機関とし経営委員会を設け学識経験者労働者を代表する委員公社を代表する特別委員で構成することにいたしました。  第三章は役員並びに職員について規定いたしましたが、職員身分関係については公社労働組合との協約並びに就業規則に譲ることにいたしました。  なお、職員労働諸権につきましては、ILO結社の自由に関する実情調査調停委員会ドライヤー報告書の「すべての公有企業が、関係法律上区別することなく、同一の基盤で取り扱われることは適当ではない」と述べている勧告に基づき、本公社職員は公労法の適用を受けず一般労組法労調法適用を受けることにいたしました。  第四章は財務及び会計について規定いたしました。この点に関し、現行の三公社と異なる点は給与総額を設けず、かつ予算上不可能な資金支出内容とする協定を締結したときは、その協定締結後十日以内に必要な補正予算国会に提出しなければならない旨の規定を設けました。  その他石炭債券発行等規定を設けました。  以上が日本石炭公社法案概要でありますが、すでにわが国と同じく石炭私企業として会社別経営をしてきました西ドイツにおいては、昨年石炭鉱業適応化産炭地域健全化に関する法律が成立し、ルール石炭鉱業株式会社が発足し、ルールにおける二十九炭鉱会社中二十四炭鉱会社を吸収統合し、その下に七社を置き、石炭生産シェア約八十数%、従業員十九万人の一大体制整備を断行し、今後二十年間にわたる西ドイツ石炭鉱業の安定を目ざしているのであります。  また、わが国においても第四次答申に至る間においては、石炭経営者側から、全国一社化案、三社化案販売機構一元化案提案され、またいわゆる植村構想が検討された経緯もあり、石炭の長期安定のためには、いまや抜本的な体制的解決が不可決の要件となっているのであります。今日までの石炭政策のきびしい反省と、石炭鉱業実態を直視すれば、石炭鉱業国有公社化が最善の道であると確信するものであります。  わが党政権下であるならば、当然エネルギー全体を把握し管理する方式をとるべきでありますが、現在の政治的分野を配慮して、この崩壊しようとする石炭鉱業に限定し、その立て直しをはかり、国産エネルギー源確保する見地から、石炭鉱業国有法並びに日本石炭公社法案提案する次第であります。  何とぞ、本法案がすみやかに審議され、可決されんことをお願いいたしまして、提案趣旨説明といたします。
  9. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 以上の五法案についての質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  10. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 次に、当面の石炭対策樹立に関する調査議題といたします。  去る四月七日、八日の両日にわたり、当委員会から派遣いたしました雄別炭鑛茂尻鑛業所におけるガス爆発による災害状況調査のための派遣委員から報告を聴取いたします。鬼丸君。
  11. 鬼丸勝之

    鬼丸勝之君 今回の委員派遣にきまして、調査の結果を御報告いたします。  去る四月二日に発生した雄別炭礦株式会社茂尻炭礦ガス爆発事故実情調査のため、本委員会から阿具根委員長藤原理事大矢委員と私、鬼丸の四名が派遣されました。  ところが、出発当日の七日、空知炭礦株式会社空知炭礦において出水事故が発生したとの報を受けまして、派遣委員において協議の結果、日程を一部変更して空知炭礦災害実情をもあわせて調査することにいたしました。  派遣期間は四月七日及び八日の二日間、まず七日の午後に札幌において札幌鉱山保安監督局札幌労働基準局から災害の概況、今後の保安対策被災者及び遺族の救護措置につき説明を聴取いたしました。  翌八日赤平市役所において雄別炭礦株式会社事業所のあります市町村、すなわち赤平市、阿寒町、音別町及び白糠町の当局からの陳情を受け、その後災害現場であります茂尻炭硬におもむきました。  茂尻炭礦では、まず会社側から災害概要及び当面の対策、特に茂尻炭礦を分離して第二会社とする案の説明がありまして、これに対して派遣委員からきびしい質疑が行なわれました。続いて労組、職組の代表と面談し、その意見、要望等を聴取いたしました。  この後に出水事故のありました空知炭礦に参りました。空知の事故は、排気風道昇りをハッパで掘進中、突然出水し、土砂くずれを伴って下の風道になだれ込み、係員一名と掘進夫四名が行くえ不明になったものでございます。災害が起こりましたのは、四月七日の九時三十分ごろ、私どもが空知炭礦に参りましたのは八日の十四時で、災害発生後すでに三十時間を経ておりましたが、救出作業は意外に難航し、会社側も保安要員を除く全員をあげて救出作業に投入し、労組も事故の責任はあとに徹底的に追及することとし、当面は救出に全力を尽くすという態度を表明しておりました。結果としましては、九日午前零時二十五分、全員救出に成功という朗報に接したわけでありまするが、この出水がどこからきたものか、原因の究明と責任の追及を忘れてはならないと思うのであります。  次に、茂尻炭礦について調査概要報告いたします。当礦は桂本坑、柏露頭坑、桂第三露頭坑の三坑を有し、今回の災害の起こりました桂本坑は最も大きく、かつ、甲種炭鉱でございます。稼行の区域は大別して一の沢区域、鴨の沢区域、柏区域に三分されておりますが、今回の災害の発生個所は柏区域七片十一番層払い山形切替昇り付近と見られます。ガス爆発が起こりましたのは四月二日十三時二十分ごろで、七片運搬坑道におりました運搬係員が圧風を感じて鉱務所に急報、十分後の十三時三十分、全坑内就業者に退避命令が出されて、各入坑者は係員指揮のもとにおのおの昇坑し、十四時三十分退避を完了いたしました。しかしながら、爆発地点に近い七片十一番層払い並びに入排気側に配番されておりました五十四名中十八名は爆発により即死、残り三十六名は自力脱出あるいは救護隊によって救い出されましたが、このうち二十六名が病院に収容されました。この二十六名中一名は五日十二時三十分に死亡し、九名はその後退院いたしております。したがって、四月八日十二時現在において入院しております者は十六名であります。なお、当初美唄労災病院に入院した者のうち十三名について大型高圧酸素室による治療を行ない、数名の者は病状が軽快し退院いたしております。その後なお引き続き治療を必要とする者は四名でありますが、いまのところco中毒後遺症患者発生の可能性は少ないとのことであります。  次に、死亡者の遺族に対する労災保険による補償の状況について申し上げます。遺族補償費については、前払い一時金で最高九十一万六千円、最低四十万二千円、総額千二百七十三万一千六百円、年金で総額四百五十九万五百三十円となっております。このうち葬祭料につきましては全員について支給を終わり、遺族補償費も組夫二名については前払い一時金の形ですでに支給されております。なお、このほかの人々に対する遺族補償費については年金によるか、前払い一時金によるかの意思表示を待って、直ちに支払いができるよう準備しつつあるとのことでございました。なお、このほかに社内預金と退職金が算出されておりますが、組夫二名については不明であります。  次に、今回の事故の原因について申し上げます。爆発地点は先ほど申しましたように七片十一番層払い準備坑道の山形昇り付近と推定されておりますが、原因につきましては、現在鉱山保安監督局において調査中でありまして、ハッパによるガス爆発であるという見方が有力であります。ハッパ作業の直前にはガス量を測定することが義務づけられておりまして、一%以上ではハッパ作業は禁止されておるのでありますが、このガス検定に手落ちがなかったかどうか、大いに疑問のあるところであります。この疑問がもし当ってたいるとすれば、今回の事故は保安技術以前の事故、別の表現をもってすれば、昭和初期ごろのまことに単純幼稚な事故であるということができます。通産省におきましても、積極的にこの方向で事実認定をすみやかに行ない、経営者の責任を厳重に追及するという姿勢を打ち出しております。従来、とかく裁判をしてみなければ事故の原因は断定できないということで、結局責任の追及がうやむやになるといううらみがあったのでございますが、今回の通産省の態度は大いに評価されてよいと考えます。  茂尻はもともとガスの多い山でありまして、昭和十年五月五日九十五名の死者を出した事故をはじめ、戦後の昭和三十年十一月一日には六十人の死者を出すガス爆発事故を起こしております。その後、坑内保安に力を入れて、十三年余にわたって犠牲者を出さずにきたわけでありますが、四千億以上の金を注ぎ込む新石炭政策が実現するかどうかというこの重大な瀬戸ぎわにおきまして、このような保安の手抜かりと見られる原因によって多くの犠牲者を出したことは、まさに痛恨のきわみと申すほかありません。  今後の対策としましては、ハッパによる爆発災害防止のためのガス測定の励行、超高安全度ハッパの開発等、事故の絶滅を期して、きめのこまかい保安対策をさらに強力に推進すべきことはもちろんでありますが、何よりも今回の事故について責任の所在をはっきりさせ、特に経営者側に社会的責任を徹底的に果たさせることが根本だと思うのであります。これこそが石炭産業を再建する道につながるものであると信ずるのであります。  なお、茂尻炭鉱生産の再開及び再建につきましては、以上申し上げました保安対策確保を前提として考えなければならないのは当然であり、この点各委員一致して会社当局に強く反省を促したのであります。地元赤平市商工会、また会社の労組、職組、いずれも炭礦の存続を熱望いたしておりますが、会社経営者側がいま申しましたような保安対策の完全実施、あるいは人事、労務管理の適正化について自主的な努力を払い、また所要資金対策等につきましても他力本願によらず、みずからの責任において将来のビジョンを確立して対策を確立しなければならないと思うのであります。会社がその社会的責任を十分自覚して、合理的な再建策を打ち出すということになれば、政府においてもこれを十分に指導し、援助することが必要であると認めた次第でございます。  以上をもちまして派遣委員報告を終わります。
  12. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 以上で派遣委員報告を終わります。  続いて空知炭礦における出水事故について、政府側から報告を聴取いたします。橋本鉱山保安局長
  13. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) たび重なる事故につきまして、まことに申しわけないと存じておりますけれども、空知炭礦につきましては、御承知のように七日九時三十分ごろでございますが、風道の二号昇りでハッパをかけました際に、ヘドロが流出いたしまして、それがハッパ係員並びに他の四名の作業員をのみ込んだのではないかということで行くえ不明となっておりました。その後、さっそく鉱山保安監督局はもちろん、当省といたしましても石炭課長が現場に急行いたしまして、全力をあげてこの救出作業に当たるという方法をとりましたが、作業は非常に難航いたしました。ヘドロの流出があまりにも多く、作業に非常な困難を来たしたわけでございますが、それでもいろいろな経験からいたしまして、こういうハッパをかける際におきましては、多くはかなり安全な場所に退避しておるというのが通例でございますので、そういった望みを託しながらこの作業に当たったわけでございます。  幸いにいたしまして、本朝零時二十五分でございますが、全員が無事に救出されたわけでございます。労使双方全力をあげたこの努力につきまして、われわれは非常に感謝をしております。しかし、どうしてこういう形になったかということにつきましては、ただいま鬼丸先生の御報告にもありましたように、やはりこういう事故を起こすにはそれはそれなりの理由がなくてはならないという意味におきまして、こういったハッパをかける際における周辺の調査が十分に会社として行なわれておったかどうか、また事前のそういった調査に合わしまして、会社全体として今後どういうふうにこういった事故の再発を防ぐために処置をとっていくかといったような問題につきましては、引き続き十分な調査をいたしまして、しかるべく適宜の措置はわれわれとしても講じてまいりたいというふうに考えております。
  14. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ただいまの派遣委員報告等に関連して質疑のある方は御発言を願います。  なお、参考人として石炭鉱業合理化事業団理事長田口良明君が見えております。
  15. 大矢正

    大矢正君 ただいま報告がありました茂尻炭礦の爆発事故について、調査団の一人として、政府側に二、三お尋ねをいたしたいと思います。  先ほどの報告にもありましたとおり、今回の茂尻炭礦の爆発事故の原因というものはきわめて単純であり、また簡単な調査によってもおおむねその原因がどこにあったかということは推定のできる内容のものであります。それだけに、今日石炭問題と取り組んでおりまする私どもとして、きわめて遺憾であると言わなきゃなりません。いま政府の新石炭対策中心として、今後五カ年間で四千億円の国費を投じて石炭産業の長期安定をはかるために、その法律的あるいは予算的な措置を私どもが検討しているさなかにこういう事故を引き起こした、しかも原因があまりにも単純であり、明らかに怠慢であり、そうしてまた注意力が散漫であり、はたしてきびしい今日の石炭情勢の中で企業を存続していこう、産業を存続していこうとする意欲があるのかどうか、疑わしいようなこの種の事故に関しまして、私はまず第一に経営者がどういう責任をとろうとしているのか、そうしてまた政府自身も私どもと同様なことを考えておられると思いまするがゆえに、政府自身は今日まで茂尻炭礦それ自身に対して会社側との間にどういう折衝の経過があるか。他の炭鉱を含む全炭鉱の保安確保についてはあらためて質問をいたしますが、第一として、茂尻炭礦に関連をする対会社との責任のあり方を今後どうするつもりか。特に再建計画を立てない限り山の存続はむずかしいといわれておりまするこの炭礦であるだけに、経営者がどのような判断を持ち、通産省と折衝をされておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 最初に、このような大災害を惹起いたしまして、国民に対しましてはもとよりでございますが、国会におかれましても、たいへん御心配をかけまして、責任者といたしましてまことに申しわけなく存じております。  通産省といたしましては、今回の災害につきまして、中央鉱山保安協議会の答申の線にも沿いまして、鉱山保安によるきびしい態度でその措置に臨む方針でございます。その旨会社側に通告をいたしましたところ、会社側もその責任の重大性を痛感して、本日社長名をもちまして、当礦山の保安統括者たる所長を解任する旨連絡を受けたのでございます。当省といたしましては、会社が社会的な責任の自覚に立ってこのような措置をいたした以上、この措置を了承することにいたしたいと考えております。
  17. 大矢正

    大矢正君 いま私が申し上げましたとおり、茂尻炭礦それ自身は経営存続のために重大な時点に立たされておりますが、この種の事故というものが起こるようでは、先行き安心をして経営をまかすことができないという判断が出てくると思います。ただ私は、茂尻炭礦を閉山せいとか、その他経営形態を変えろというのではなしに、経営者が保安確保についてどの程度のこれから熱意をもってやるかということが第一だと思いまするし、それからいま一つ問題なのは、保安の確保が長期にわたってはかられるし、重ねてこの種の事故がこの炭礦においては起こらないという前提がない限り、再建計画というものをかりに労使がまとめたとしても、議論することはこれはさか立ちになりますから、そういう意味でこの茂尻炭礦に対して、政府としては保安確保の責任体制は、所長の更迭だけで問題が解決したと判断されておるのか。あるいは別途にこの炭礦に対する保安の確保についての具体的な指示その他を行なって保安の万全を期するという態度をお持ちなのか。この点についてのお答えを局長から願いたいと思います。
  18. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) お尋ねのようなことがございますので、過日大臣のところに石炭協会加盟の全社の社長を呼びまして、大臣から説示を加えてもらったわけでございますが、その趣旨は二つございまして、今回の石炭対策、御審議を願っております法案等が実現いたしました暁におきまして、いま御指摘のように、再建交付金交付を受けるということに相なりました場合のことでございますが、今回私どもが考えております対策の中でも、保安確保というものは何にも増して優先して取り組むという姿勢でございますが、このことをより一そう明確にいたします趣旨におきまして、ただいま御審議いただいております法律案の考え方では、再建整備計画というものを取り扱うに際しまして、長期的な保安計画の提出を求めて、そのことによってその炭鉱の保安確保というものについて長期的な見通しが私どもとして判断できない限り、場合によっては再建交付金交付いたさないという制度に相なっておることをよく思い起こしてもらって、二度とこのような事故のないように、あるいはまた慢然と経営していって、再度財政援助を求めるということのないように、今回の政策の中で長期的な保安確保の見通しを経営者としてはっきり持ってもらいたいということを大臣から言ってもらったわけでございます。  第二点は、今回の政策が実行に移されます段階におきまして、ただいまの保安確保も当然のことでございますが、本委員会でもいろいろ御議論のございました全体としての体制整備、その他おのおのの企業内での努力はもとよりのこと、企業間全体としての合理化というものについて真剣に取り組んでもらって、せっかく用意しておる新しい対策の上で、石炭鉱業がほんとうの意味で再建できることをひとつよりよく検討し、いまからその準備に入ってもらいたいということを大臣から言っていただいたのでございますが、御指摘のとおり、保安の確保というものを具体的なその計画を取り寄せまして、保安局長のほうで十分見ていただいて、私どもも今回の施策を進めてまいりたいと考えております。
  19. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 仰せにつきましては、いま石炭局長が申し上げましたとおりでございます。長期にわたる計画につきましては、この再建整備法が通りまして、将来この山がいろいろな危険な条件に遭遇した場合に、その条件を克服するためにいかなる保安の考え方を持ち、保安の姿勢を持ち、保安に対する投資をいかほどにやるか、その上で、はたしてこの山がどういう形において再建し得るかというふうな全般のビジョンの上に立ちまして、毎年の計画鉱山保安法によりまして聴取いたします。で、その長期的なビジョンとそれから短期的な問題、この二つを組み合わせまして、各鉱山についての保安について遺漏のないような措置をとっていきたいという考え方を持っておるわけでございます。さらに、このいろいろな計画実施段階におきまして、保安というものが、かりにその実行段階において不適当であるというふうな状態が発見されますれば、それ以上の不安な状態のまま操業を拡大することには、いろいろな多くのこういった問題を発生させる要因ともなりますので、合理化事業団の無利子融資といったようなものも、単なる拡大のためには不良鉱山には融資を見合わせるといったようなものの考え方をいたしまして、こういう経営者みずからが保安に努力する姿勢を確立して初めて再建基本となり得るといったようなことをやっていきたいというふうに考えております。  さらに、この茂尻炭礦につきましては、実はこの保安法に基づきまする措置といたしましては、鉱業権の停止問題、あるいは作業の長期停止、それから保安統括者の解任といったような措置が、これが保安法で一応裏づけられておるわけでございますが、当面何といいましても、原因がほとんど確定されたこの段階におきましては、保安統括者の責任というものが、これは法の要求する責任でございます。したがいまして、先ほど大臣から申し上げましたように、まず保安統括者にその会社を代表いたしましてその姿勢をただしていただくというふうな措置に出たわけでございますが、さらにこの会社につきましては詳細なる実施計画、いわゆる四十四年度の実施計画を提出を求めまして、その中に含まれる個別のいろいろな保安対策と同時に、そういった実施計画の中に浮き出ます会社の姿勢はどうであるかというところまで検討いたしまして、それによってこういった事故の再発を防上するための万全の措置をとっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  20. 大矢正

    大矢正君 大臣にお尋ねをいたしますが、この種の事故が発生をいたしますると、まず第一に考えられることは、かけがえのない貴重な生命が多数奪われるという点があると思います。第二は、国民から納めてもらった税金を四千億円もこれから使おうとしているのに、このような人殺しをするような石炭企業に何のために国民の税金を使わなくちゃならぬかという社会的な批判が起こってくるという問題があります。第三点は、この種の事故を起こすことによって会社経済的にも非常に多くの負担を負わなければならぬことになる、そのことがみずから企業の首を絞めることにもなりかねないという経済上の問題もあります。第四点は、爆発事故を起こしたのはなるほど茂尻炭礦ではあるが、この事故によって炭鉱に働いておる多くの人々が一そう不安を持ち、その結果山を去っていく、そのために他の炭礦まで労働力不足その他のために企業の安定をはかることができないという問題点が出てまいります。  このように考えてまいりますと、今回のように若干の注意力を保安面で果たしていたならば、このようなことにならなかったということを考えると、ますます残念でならないし、責任も重大だと私は思うのであります。なるほど会社側が自主的に保安の統括責任者を解任するという態度の表明があったようでありますが、先ほど橋本局長からお話しのように、重大災害を起こした際においては、法律に基づいてその保安統括責任者というものを解任する権限というものが行政官庁にあるわけでありますから、もし経営者がちゅうちょしてそのようなきびしい態度をとらないようなことがあったら、すみやかに行政的にそういうことをやらせるように私はぴしっとこの際やってもらいたい、こう思うわけであります。  それから次に、先般通産大臣が石炭各社に行なった警告の内容についてでありますが、これを読ましていただきますると、また中川石炭局長からの先ほどの説明によりますると、長期保安計画の提出を求めた上で、長期にわたる保安確保の見きわめなしには再建交付金交付しないと、こういう内容が書かれております。まことにけっこうなことであります。がしかし、ここで私は足らないと思われることは、長期の保安計画の見通しが立たなければ、再建交付金がもらえるもらえないの問題ではなくて、保安不良炭礦として当然のことながら閉鎖しなければならぬということになっているはずであります。だといたしますれば、長期の保安確保などという問題ではなくて、現実的に生命に危険を感じさせる、保安が不備であるというような炭礦に対しての問題のほうが重大であると私は思うんです。現にこの種の爆発事故を起こした過去の例を見ましても、長期の保安計画がなかったから事故が起きたのではない、その対策がなかったから事故が起きたのではない。短期的なむしろ保安計画なり保安に対する施策対策ということが怠たられていたから事故が起こっておるわけでありまして、ここに書かれておるような長期保安計画の見きわめがつかなければ再建交付金交付しないなどというようななまやさしいものではないわけです。もっともこういう問題はきびしく、いまの時点で保安確保ができないような山があるなら、企業があるなら、再建交付金その他国が行なっている助成を一時はずすくらいの強い態度をもって臨まないと、私はこれからの保安の確保は困難だと思うのでありますが、大臣の御見解を承りたいと思います。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のようにこのような事故で尊い生命を失い、社会のきびしい批判にさらされて、この会社ばかりではなく、石炭鉱業全体が大きな被害者の側に立つことは御指摘のとおりでございます。しかも、この会社自体が存立の岐路に立っておるやさきでございます。会社自体並びに従業員の不安というようなことを考えてみますと、この影響の及ぶ射程というものははかりしれないほど重大だと思います。したがいまして、われわれは法の運用にあたりまして、よくおちいりがちな傾向といたしまして、十分改心の色が見えているから、将来に向かってかたい決意の表明があったからというような理由だけで、きびしい行政上の処分を欠いたりするというようなことは許されないことと思うのでございまして、仰せのとおり今後行政上の処分は厳正に行なってまいりたいと思います。  それから第二点の長期保安計画——長期にわたる保安計画の確立を前提として再建交付金交付する、これについての御指示でございますが、まさに御指摘のように、もっと根本的な問題が伏在していはしないかということでございまして、仰せのとおりだと思います。とりわけ今度の茂尻炭礦の災害につきましては、原因の究明中とは言え、非常に初歩的な手抜きというようなものが大きな災害を結果したのではないか、先ほどの御報告にもございましたように考えられるのでございまして、保安意識がほんとうの意味で確立していなければ、行政上の手打ちだけで事を済ませるという性質のものではないと思います。この点は御指摘のとおりだと思うのでございます。この再建計画の採否にあたりましては、いま大矢委員が指摘されたより重要な局面、そういった点も十分私どものほうで配意をいたしまして、誤りのないことを期したいと考えます。
  22. 大矢正

    大矢正君 私はこの事故が起きたことについて、監督官庁という立場において、あるいは所管省としての立場において、ある意味において責任を感じておられることだと思います。しかし、いままでの事故後にとられた態度と異なって早い時期に事故原因を推定し、その事故原因を究明し、あわせて再発を防止するための処置をとられた当局に対して、私はこの際敬意を表したいと思います。あるいはまたとかく責任ということになりますと、逃げがちだったいままでの事故後の経緯にかんがみて、今回はきびしく責任問題を明らかにされたことも、まことに時宜に適したことと私は感じております。そういう意味においては、私もほんとうに所管官庁として積極的に今後の保安確保に取り組む姿勢を見出したことを喜んでいるものであります。ただ、大臣が先般の警告の中で申している部分にもありまするように、最近の石炭経営者というものは政府に寄りかかることばかりを考えて、自己責任、みずからの果たすべき役割りというものを忘れているのではないかという感じを率直に私ども抱くわけであります。山に働く労働者は、ほかの産業の労働者が一五%、二〇%も賃金が上がっても七%か八%にとどめられて低い給与に甘んじていなければならぬ、あるいはこのような災害に遭遇して命を失わなきゃならぬというような非常にきびしい環境にありながら、一方経営者というものは経営責任を忘れて、いままでわれわれが長い間石炭経営に対してあらゆる助成を行なってきたことをあたかもあたりまえのごとくに考えて、さらにそれを上積みだけしていこうというようないまの経営者の態度というものは、私ども絶対に認めるわけにまいりません。これを機会にきびしく、やはり経営者経営責任というものを、保安の確保と同様に持たせるような指導を私はしてもらいたいということを強く希望しておきます。  そこで、責任体制の問題が一つと、続いて私は再びかかる事故を防止するためにどうするかという具体的な点についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、幾ら火元があってもガスがなければ爆発しないことは言うまでもないところであります。したがって、どううまいぐあいに言いのがれしようとしても、二度目までのハッパをしかけてもさほど爆発の現象がないから、おそらく三発目のハッパもガスの測定をしないでそのままハッパをしかけたのではないかという感じを私ども持つわけであります。したがって、ハッパをかける以前にガスの測定をするなどということは、われわれが国会で議論をするような問題じゃなくて当然やらなければならぬことであります。それをやらないような、言うならば保安担当者などの問題はもう論外であります。したがって、この面は触れる必要のないことであり、当然のことだと思いますから私は申しませんが、そういうガスが多少でもあった際にハッパをかけた、しかしハッパをかけても火が出なければ爆発せぬわけですから、爆薬あるいはまたハッパの手順等の問題について今後どうするかということは課題として私残るのではないかと思うのであります。そこで私もしろうとでよくわかりませんので、従来炭礦においてはどういう爆薬が使われておるのか、どういう手順でハッパが行なわれておるのか、技術的な問題でもありますから、局長が御答弁できなければ課長でけっこうですからお答えをいただきたいと思うのです。
  23. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) いま先生のおっしゃいましたこと、まことに当然でございます。それで、一つの問題といたしまして、議論の前の問題ではございまするが、やはりハッパの係員というものが人間である以上、何らかの錯覚を起こすというふうなこともあり得ると思いますので、何かそこに相互チェックが作業場においてできるような仕組みはとれないものかというふうなことで、さっそく保安協議会を私開きまして、相互チェックでそういうガスの測定等をやっていくようなことを研究したいというふうに一つは考えております。  それからハッパのしかた、火薬の問題につきましては、御承知のように石炭の規則によりまして、いろいろな方法、基本的に守るべき事項を載っけておりますけれども、その山の炭質なり岩石の形状なりというものによりまして、いろいろ種類が違っております。しかし、従来一般に使われておりました爆薬は硝爆一〇五号というもので、どちらかといいますれば比較的危険度の高い火薬でございます。それがいろいろ保安協議会の技術部会における検討の結果、一昨年あたりからいわゆるEQSといいまする非常に安全度の高い爆薬が出されまして、これを現在各監督局におきまして、それぞれの山のそれぞれの作業現場にいかなる方法で適用できるかということを検討いたしまして、すでに札幌の監督局といたしましては、山ごとに、こういうたとえば沿層の場合とか、欠口払いの場合はどうするとか、見通し払いの場合はどうするとかというふうなことで、それぞれの作業ごとにどういう火薬を使うべきか、またどういうハッパのしかた、込めものをどうするかといったようなことにつきまして山ごとに指導をし、多くの山につきましては、監督指示書という形において、そのいろいろの組み合わせで指示をしております。しかし、まだこれだけではおそらく十分ではないと考えておりますので、さらにそういったいろいろな火薬の使い方、あるいはその他作業のしかた等、並びに火薬の種類といったようなものにつきまして、さらに検討を加え、より安全な方法を見出していく、この方向に各社を持っていくというふうにしなければならないというふうに考えております。
  24. 大矢正

    大矢正君 保安局長、私は希望しておきたいと思うのですが、一〇五号よりは安全度の高い爆薬がある、だが、しかしこれは効果を考えると非常に効果が減殺される。したがって、実際に仕事をする者としては、安全度の高いことはわかっても、あとの効果のことを考えて使用をためらうといいますか、しかも規則その他で一〇五ではいけない、必ず安全度の高い、いまあなたがおっしゃった爆薬を使いなさいということにはなっていないだろうと思うのですが、これは今後この種の事故を防止する意味において非常に重要なことでもありますから、十分ひとつ検討していただきたい。  それから大臣に希望いたしたいと思うのでありますが、たとえばいまの爆薬一つの問題をとってみましても、石炭企業を重点として使用される爆薬のような場合には、その試験なり研究というものは非常におくれがちであります、もうかりませんから。ですから、政府がもっとそういう試験研究にはさほど金がかかるわけでもないから、やはり金を出して、今後十分新しい安全度の高い、しかも効果の高い爆薬の開発等につとめるようにしていただきたい、私はかように希望いたします。  そこで最後に労働省にお尋ねをいたしておきますが、現地に参りまして、いつものことでありますが、起こってしまった事故はいたしかたないことでありまして、人の命は戻ってくるわけでもありませんから、結局のところ遺族対策をどうするかということになります。そこで私自身現地で基準局長から、遺家族に対する年金あるいは一時金の場合の見積もり金額、あるいはまた会社がその責任において補償するその金額の内容等々聞いてまいりましたが、しかし個人的に非常に差が大きい。特に組夫の場合におきましては、全体として低い上にさらに組夫の場合にはなお低いということ、同じ死んでいながらそういう矛盾が一つあります。これは今回だけじゃなくて、毎回事故のたびに私ども申しておることでありますが、この面についての何らかの配慮が労働省としてなされないものかどうかという問題点。それからいま一つは、炭礦も不要なところには極力人を配置しないで、より効果的な人員の配置をしようとする傾向が最近特に強いのであります。それだけに遺族の方が働きたいという場合においての働く職場確保ということがなかなか困難であります。適した職場を未亡人に与えるということは、口では簡単であっても現実的にはなかなか困難であります。したがって、職安また基準局双方のあなたのほうの出先の機関において十分ひとつ検討されて、再就職の道が求められるように配慮を願えるかどうか。この二点についてお尋ねをしておきたいと思う。
  25. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 毎回こういう災害が出ましたときに、いま御指摘のようにほとんど必ず遺族補償の金額のアンバランスといいますか、でこぼこについての御指摘がございます。これは先生よく御存じのように、労災保険が賃金を基礎にいたして同じ率で計算をいたしますので、賃金に差等がある場合やむを得ずこういうことになっておる、かように考えるわけでございます。それと、それ以外に各会社でいろいろ手当てをされます場合には、自分のところで直接お使いになっておる場合と下請の場合における制度、それから民間の保険に加入していらっしゃる姿勢、そういうものが違っておりますので、どうしても直用の場合と下請の場合の間において差等のあることは先生御指摘のとおりでございまして、そのことが同じ事故でなくなった場合に露骨に出てまいります。そういう点私どもとしても十分考えなければならない。そういうことでございまして、ただいま労災保険審議会におきまして、遺族補償及びその率の問題、それから各会社がお出しになる見舞い金あるいは弔慰金、そういう問題を、いまのようなアンバランスということを念頭に置きながらどう処理をすればいいか、こういうことでせっかく御審議をいただいておるわけでございます。法律的な問題は、それらの結果を待ちまして、私どもとしても処理をしてまいりたいと思いますが、当面、今回の事故についてはその点は間に合わないわけでありますので、よく現地の基準局におきまして、会社側とも御相談をしながら、できるだけの善処をさせていただきたい、かように考えるわけでございます。  それから就職の問題につきましては、すでに基準局と北海道庁のほうで、それぞれ遺家族の方の意向を聞きながら、一番希望されるにふさわしい職場確保する努力をしたい、こういうように北海道庁でも言っておりますし、基準局のほうでもその協力をしたいということでございますので、各家庭ごとに調査をさせていただきまして、できるだけ遺族の方の御希望に沿うように努力をさせていただきたいと考えております。
  26. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を落としてください。   〔速記中止〕
  27. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を起こしてください。  質疑を続行いたします。
  28. 藤原房雄

    藤原房雄君 いまも大矢委員からいろいろ質問がございましたが、私も災害のことについて二、三の点についてお聞きしたいと思います。  いまも赤平の市長さんのお話がございましたように、非常に地方自治体の心配、これが今後石炭産業にどういう影響を及ぼすのかということで、この心配ははかりしれないと、このように思うのでございます。いまのいろんなお話を聞きますと、本来ならば会社が真剣になって通産省にお願いしなきゃならないところを自治体の方がいまもいろんなお話がありましたように、真剣に訴えていらっしゃる。こういうことを考えましても、ほんとうに産炭地としまして重大な問題であり、さらにまた、このたびの事故がどれほど大きな影響を及ぼすものであるか、こういうことで真剣にこの問題は考えていかねばならないことだと思うのであります。私はこのたびの事故に対しまして、二度と同じような事故は起こしてはならない、いつも叫ばれるわけでありますが、こういう観点の上から考えまして、どうしてもいままでのような同じような形態といいますか、体制といいますか、それを踏襲したんでは進んだ姿というものは出てこない、このように思うのであります。それはこのたびの通産省のとりました厳罰主義といいますか、厳重な態度というものは、確かにいままでになかったもので、大きな前進であると思うのでありますが、しかし、それのみによって二度と災害が防げるというわけではないと思うのであります。先ほど保安局長からお話ありましたが、保安について相互チェックをするようにしなきゃならないと思うというお話がちょっとあったのでありますが、人間にはやはり限界があります。でありますから、事故はたいへんおそろしいことをわかっておりながら、やはり人間でありますから欠ける面もある、こういうことからいたしまして、相互チェックといいますか、こういう考え方は非常に賛成でありますが、具体的にどのようにお考えになっていらっしゃるのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  29. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 災害を防止するためにいろいろな技術面においての問題点、これは必ずしも一〇〇%解決されたとは言えないと思いますが、最近におきまするいろいろな事例、特に今回の事例等を見ますれば、非常に考え方によりましては幼稚な災害である。幼稚な災害というものの発生原因は何かということは、これはやはり山としての姿勢の問題、これがいわゆる全員一人一人に至るまで保安の意識に徹底しているかどうかという一つの問題と、それからもう一つは、いわゆる従業員の錯覚といいますか、何かの手違いといったような問題ではなかろうかという実は感じがいたしておるわけでございます。したがいまして、そういう意味において前者につきましては、何とか姿勢の確立というふうな意味も含めまして、先ほど申し上げましたように法的な体系におきましても、それを裏づける制度をつくりたい、それからまたいろいろな会社の責任につきましても、十分姿勢を正していただくようにしたいという考え方をとりたいと思いますが、こういった人の錯覚等による問題につきましては、やはり現在のたてまえは、保安係員というものが、今回の場合はハッパ係員ではございますが、それがいわゆる全部責任を持ってそのハッパをかけるという仕組みになっているわけでございまして、これを先ほどのように何らかの人の錯覚、そういったものをだれかチェックができるといったようなやり方によりまして、気づかないこと、あるいは錯覚の点といったようなものを是正していくために、技術的にはいろいろな問題が生ずると思いますが、そのやり方次第によりましては、これは法的な責任を非常にほかの人がかぶらなければならないという問題も含みますので、たとえて言いますれば先山といいますか、係員ではございませんが、こういった人との坑内におけるいろいろな相互の連絡といったようなものもあるいは考えるとかといったようなことで、人の錯覚を防止するような形というものを即刻保安協議会を開きまして検討し、その方向を見出していきたいというふうに考えております。具体的にいま直ちにこれということは、なかなかむずかしい問題でございましてできませんが、何らかそういった従業員相互におけるいわゆる助け合いといいますか、何かそういった仕組みというものができないかということを考えていきたいと思っております。
  30. 藤原房雄

    藤原房雄君 まあ事故のおそろしさというものは、これは山に入る方は十分承知なんでありますが、そういう方々の心境としましては、われわれ経験のない者にははかり知れない自覚があると思います。その中でそういう事故が続発するということは、やはりこの点は考えなきゃならないことだと思うのでありますが、よく世間に言われておりますが、まあ生産第一主義にどうしてもなってしまう。保安のほうが二の次になって、保安に力を入れても結局は採算ベースということを考えるということになってしまう、こういうような関係も出てくるわけであります。当然出炭量を多くするためには、しなきゃならないことも手が省けてしまう、こういうことも考えられるわけであります。そこで、このハッパの係の方でございますが、この実際作業に当たる鉱員の方と、またハッパをかける責任者という立場の係員という立場と、また会社側の方と、おのずとその立場が違うわけでありまして、やはり会社側はどうしても生産に力を入れなきゃならない、こういうことになる。働く立場の方といたしましては、どうしても安全ということをやはり念頭に置くんではないか、このように考えるわけでありますが、いまのお話、具体的なお話がなかったわけでございますが、相互チェックという形の上において、やはり働く者の立場においても、ガス量の検定とかあるいはチェックをする立場の人がいて、一人の方で一切をやるのではなくして、ダブルチェックをしていくような形のものが考えられなきゃならない、このように思うのですが、こういう考え方につきましてはどうお考えでしょうか。
  31. 鬼丸勝之

    鬼丸勝之君 ちょっといまの藤原委員の御質問に関連して伺いたいんですが、あのハッパ係ですね、あれは、あのときにはたしか鉱員から係員になって、助手というようなことばを使っておったようですが、準職員職員に準ずる身分の者だというふうに聞いたんですけれども、藤原さんが言われたように、これはまあ生産のほうに片寄って無理をするか、あるいは逆に鉱夫の人たちと非常になじんでおりますから、まあ多少気がゆるむような点がありゃせぬか、この点ですね。やっぱりハッパ係員というのは職員としての処遇を確立していく必要がありゃせぬかと思うのですが。  それから責任体制も、いまの具体的にチェックされるように、そして係として完全に責任を果たすような体制も具体的に進めていかなきゃならぬというふうに感じましたから、この点あわせて局長にお答えを願います。
  32. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 炭礦の場合のいわゆる保安係員なりハッパ係員なりといいますものは、これは国家試験をとり、そうして一定の年限を経た者でなければできないというふうなことになっておりまして、このハッパの係もそれだけの資格は十分にとっているわけでございます。したがいまして、会社における助手というのは、必ずしもその助手であるが故にハッパ係員になれないというのではなくて、むしろそういった非常にいろいろの試験を経た上の十分な資格を持った者であるという感じがしておりますが、そういった意味におきまして、会社としましても、これは係員だから身分がどうだと、そうでないからあるいは違った身分だといったようなことではなくて、それは会社会社として、確かにおっしゃるとおりに十分なその職務に合った身分というものは必要であろうと思いますが、そういった会社の内部のことについてどうこうということはできないにいたしましても、少なくともその資格につきましての十分なる配慮は、国家試験等を通じてやっておる次第でございます。
  33. 藤原房雄

    藤原房雄君 確かに資格があって、そういう危険な仕事をするのでありましょう。また法規のとおりやるんでありましょうけれども、どうしてもその限られた人で多くの仕事をしなければならないということになると、十分に自分が検査をし、また法規にのっとった点検をしなければならない、これがどうしても手落ちが出てくる、そういうところに問題があるということも考えられるわけであります。そういう観点から資格云々という——それはもちろん資格がない者がやるわけがないと思いますが、そういう点で作業をどうしても急ぐ、そうしてまた生産ということを考えますと、限られた立場の人たちだけでそういう仕事をするわけでありますから、どうしても手落ちの面が出てくる。事故なんてそうしょっちゅうあるものでもありませんから、大体自分の長い間の経験の勘とか、いろいろのことでやる場合もあるのではないかと思います。それがまま大きな事故を誘発するということも考えられるのではないか、こういうことからいま話したわけであります。先ほど私の聞いたことについての答弁になっていませんので、もう一度お願いいたします。
  34. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) たいへん失礼いたしました。係員につきましては、これは全責任を持ってこういった事故防止に当たるという体制はとられておりますけれども、おっしゃいますとおり、確かにいろいろの面におきまして手落ちその他のものがあるのではないかと思うのでございます。従来のやり方といたしましては、係員がそれぞれの業務をやりました場合に、毎日それを保安日誌というものをつけまして、そうしてそれをなお上席の技術関係の係員の方がそれを点検し、そうして悪い点は指摘をし、指導するというふうな実は仕組みになっております。実際問題として、今回のような場合は、作業にかかった当日でございまして、どんな姿でやっておったかということは現段階ではまだ聞き出せない段階でございます。したがいまして、想像されるところ、あるいはそういった係員の何らか作業上の手落ちというふうなものも考えられる。そういったものが、もちろん故意ではないにしましても、何らかほかの要因に左右されるというふうなこともあるいは考えられると思いますので、十分係員だけの行為ではなしに、係員を相互にチェックするといった、全体働く人たちすべての協力によって、安全を守っていくような仕組みを考えていきたいというふうに考えております。
  35. 藤原房雄

    藤原房雄君 それから会社によりましては、労働組合によりましては、ときおり保安の点検ということをやるようであります。監督官庁の抜き打ち検査、これもいつもこういう事故があるときには話に出て、抜き打ち検査を厳重にやりますというような話が出るわけでありますが、これは監督官庁としてこの監督を厳重にすることはもちろんでありますが、労働組合、労組側としまして、この保安点検をしたときに、いろいろの山に、法規に照らして違反な面が多々ある、こういうことをときおり聞くわけであります。まあ監督官庁の方、監督局が検査に来るというのはこれはわずかの日の限られたときでありますし、いろいろのことが想定されるわけでありますが、それ以外の日に、労組の幹部の方々が厳重に検査をして、そこでいろいろなことを発見したということは、これは非常に重大な問題だと思うのであります。こういう労組側が点検して法規に反するというそういう問題が素直に、ストレートで関係当局に受け入れられて、会社側に厳重にその面については行政指導をする、こういうような仕組みというものはあるのかどうか、お伺いいたします。
  36. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) この会社で申し上げますと、月に一回は労使双方によりまして総点検をやっております。それ以外に労働組合のほうで一日点検をやっておるというふうな姿でございます。それからまた保安委員会というものなり保安安全委員会なりというものをこの山は持っておりまして、いろいろその場で労使双方話し合っております。それ以外に御承知のように監督をしておりまする監督局で検査をやっておるわけでございますが、労使双方ないしは労働者のほうでいろいろ検査をいたしまして、問題がございましたときには、いわゆる無災害報告運動という形におきまして、会社の幹部にその報告がなされておりまして、その実行状況をいわゆる保安委員会でチェックをしておる。またそれを監督官庁であられます監督局のほうでもいろいろチェックをして、不十分な点につきましては会社にいろいろ指示をしておる状態でございます。またそれ以外にもいわゆる法によりまして申告制という形におきまして、働く労働者の方が気がついた不良な場所、あるいは不良な作業がございますれば、それを直接監督官庁に、監督局のほうに申告をする、そうすれば監督局のほうでそれを取り上げまして、会社側に対して是正の指示をするというふうなことをやっております。また監督官庁といたしましては、ついこの三月の十八日から二十三日まで検査をしておりますし、それ以外毎月この鉱山につきましては監督検査をやっておりまして、そのつど改善個所につきましての指示書を出してやっております。ひどいときには部分的ではございますが、作業停止をかけておるといったようなこともございまして、仕組みといたしましては、十分そういったものがチェックし得る仕組みになっておるわけでございます。しかし、まだ十分そういったものが完全に行なわれておったとは言えない点もあるんではないか、そういったことがこの山におけるこういった事故の誘発にも影響しておるのではないかというふうに感じておりますので、なお一そうそういった面は指導監督を強めていきたいというふうに考えております。
  37. 藤原房雄

    藤原房雄君 絶対にあってはならないことでありますので、二重、三重の体制をしいて事故を防ぐような強力な指導を進めていっていただきたいと、こう願うわけであります。去年の暮れですか、中央鉱山保安協議会、あすこから答申が出まして、保安のことについても相当対策が講じられたようでありますけれども、依然としてこういう事件が絶えないということからいたしまして、ただ精神的な問題や、またはただ項目を並べているようなことではなくして、やはりその体制上の中にも強力な姿勢というものがなければならないということからいろいろ申し上げたのであります。  それから先ほど質問したことにもちょっと関連するのでありますが、ガスの検定器ですね、まあガスがなければこのたびのような爆発はないわけでありますけれども、ガスの検定器の信頼度というものはどうなのかということも一つの大きな問題になると思います。実際ガスの自動警報機が鳴っておりながらも、まああれは故障じゃないかとか、または鳴ってもだいじょうぶじゃないかとか、この警報機に対する信頼度というものが薄いということも聞いておるわけであります。それからまた係員の判断によってガスの濃度というものが一応測定され作業が進められると、こういうことなんかも聞いておるわけでありますが、信頼の度合い、ガス検定器ですね、信頼の度合いというものはどのくらいまで現在進んでおるのか、この点をちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  38. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) ガスの検定器、自動警報機、それからもう一つは係員が持ちますガス測定器というのがございます。現在われわれ聞いておるところによりますれば、ガス測定、いわゆる係員が携帯いたしまするガスの測定器、これは十分信頼できるものであるというふうに聞いております。ガスの自動警報機、これは一応必要な場所には設置をすることになっておりますが、今回の場合は、あの場所は始めた当日でございまして、その場所自体に設置することはこれは不可能でございます。しかしほかの場所においていろいろ設置はされておる。用意はございますが、非常に通風がいい場合には、こういったガス警報機がガス量が所定量に達しないために警報を発してないということは、これは当然想像されることでございまして、今回の場合に警報機とその事故との関係は直接にはむしろ関係はない。むしろそれよりは係員のガス測定が完全であったかどうか、あるいは考えられることは、いろいろ火薬をしかける場合のさく乱のしかた、こういったところに落ち度はなかったかというところのほうがむしろ問題だと思うのでございます。したがいまして、係員がガスの測定をいたしまするガス測定器というものにつきましては、十分信頼を置けるものと考えております。
  39. 藤原房雄

    藤原房雄君 ガスの測定器が信頼できるというお話でありますが、その信頼できる測定器がただ一人の人にゆだねられているというところに問題があろうとも思うわけであります。まあこういう点なんかも先ほどと関連いたしますが、二重三重によくこの点の検討をなさって、二度と災害の起きないように今後とも万全の対策を講じていただきたい。このことを心からお願いする次第であります。  それから労働省の関係の方に伺いますが、いつもこういうことがありますと、先ほどの大矢委員の話がありましたように、組夫の話が出るんでありますが、先ほどもちょっとお話がありましたんですが、具体的にそのお話は進んでおるのかどうか、内容についてきまっておるのか、ある程度のことがきまっておればお聞かせ願いたいと思います。先ほどお話のありましたように、組夫のような方々に対しても補償という点について、いまいろいろ審議するような段階になっているというお話でありましたが。
  40. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 組夫のなくなった方がお二人いらっしゃいますので、この方につきましては遺族補償の一時金の支払い請求がございましたので、すでに支払いを終えております。それから葬祭料につきましては、合同葬儀がございますので、これは全員の皆さんに終わっております。先ほどお答えしましたのは、法律の手続に基づきますものは、請求があり次第、それ以外のものも全部お払いする体制ができておりますが、会社側との関係の問題につきましては、なお現地におきまして、それぞれの関係者の方々と御相談をしながら処理していきたい、かように考えております。
  41. 藤原房雄

    藤原房雄君 いつも引き合いに出されることは、自動車事故でも三百万円補償される、しかるに、たいへんな仕事をなさっていらっしゃってなくなった方がわずかなお金で、しかも子供をたくさんかかえて今後の生活がたいへんだということ、このことはいつも引き合いに出され問題になるわけでありますけれども、そのことについてこの組夫の方々は非常に恵まれない。会社の関係なんかはわからないのでありますが、そういう方々に対する対策ですね、具体的な進めていらっしゃるお考えがあればお聞きしたいと思います。
  42. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 遺族の方々に対しますところの補償の問題につきましては、実は労災保険法では、最初は一時金の支給というかっこうで、賃金の千日分を差し上げるという制度をとっておりましたけれども、遺族の方の生活の援護をしていくという考え方からいたしますと、年金のほうがいいのではないかということになりまして、現在では年金制をとっております。自動車賠償保険のほうは、先生がいま御指摘になりましたように、一時金でございまして、一時に金を出しまして、あとはその自動車賠償保険のほうでは知らないというかっこうでありますが、労災保険のほうは年間一定の率でずっとその遺族の方がなくなるまで、給付を続けていく、こういうことでございます。遺族補償としてはどちらが妥当であるかというのは、いろいろな議論がございましょうが、まあ世界的な傾向としましては、一時金支給よりも年金支給が当を得ているというのがその傾向のようでございまして、労災保険もその趨勢に従って年金制をとっておる。ただ、いままでが一時金制度でございました関係上、なくなったとたんにいろいろの出費が要るというようなことがございまして、年金のほうから割り引きをするようなかっこうで、一時金を支給する制度を現在併用いたしております。そういうことからいたしますと、自動車賠償保険のほうの制度と労災保険のほうの年金制度とのかね合いは、にわかには比較が困難な問題があるのではないかと思います。ただ、最近におきまして、先生の御指摘のありましたように、労災の賠償問題が自動車保険のほうとの関係でいろいろ話題になりました。そういうこともございまして、現在、先ほどもお答え申し上げましたが、労災保険審議会におきまして、これらの遺族補償の姿について根本からひとつ検討しようということで、御検討をいただいておるようなわけであります。その姿勢としましては、遺族年金の支給率を上げる、それから会社が労災保険以外に出しておる弔慰金とか見舞い金に対する考え方をどうするか、一時金と年金というものに対してはどういうようにものを考えていったらいいかというような点で、現在検討を進めておる。こういう段階でございまして、結論が出ましたならば、労働省としましては、その結果を十分尊重をして処置をいたしたい、かように考えております。
  43. 藤原房雄

    藤原房雄君 確かにこのたびの死亡者の家族の方々も、年金にしていただきたいという方々が多いようであります。まあここで考えられることは、どうしても組夫の方々は勤続年数とか、またはいろいろな面で鉱員の方々と立場が違いますので、まあ金額が少ない、こういう問題が起きてまいりますので、こういう点について大きな差のないような補償というものがなされなければならないという、この点のことを私は心配するわけであります。こういう点について具体的に進んだ考えがおありかどうかということでありますが、もう時間もありませんのでこれで終わりたいと思いますが、どうか組夫の方々に対しましても、あたたかい措置の講じられるように十分な配慮をいただきたい、このように思うのであります。
  44. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 保険の規定によりますことは、現在法律規定でございますので、そのとおりやらざるを得ないと思いますが、その他の問題につきましては、関係者の方々の協力を得てできるだけの努力をしたいと考えております。
  45. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 組夫のこういった年金問題につきましては、いま労働省のほうからお話がございましたのですが、弔慰金の問題につきましては、事故が起きまして、即刻会社の幹部に対しまして、特に弔慰金の問題については、従来ややもすればこの組夫が非常に低額に過ぎるというふうな傾向があるので、法的ないわゆる雇用の関係は別として、十分一般の従業員労働者の方とバランスをとってほしいというようなことを申し入れまして、会社としては十分配慮するというふうなことになっておりますので、均衡が保たれた形になるであろうということを期待しておる次第でございます。
  46. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 実はこの茂尻炭礦の災害が起こったことで、私も党から言いつかりまして、四日の日朝早く東京を立って現地へ行って調べてまいりました。奥さんたちにも会いました。ところが、奥さんたちの私に対する第一の訴えは、このようにたびたび災害が起こって、自分たちの夫が死んでしまうというような状態では、私たちのかわいい子供に再び炭礦につとめろ、炭礦で働けということはどうしても親として言うことができないというこの訴えがまず第一でした。この訴えは、私は前に参議院から九州地方に石炭調査に参ったときにも、私はあと一日残って三池のほうへ参ったわけですが、そのとき三池の炭礦夫の奥さんたちもそのことを私に訴えました。そこで私は奥さんたちに言ったんです。奥さんたち、いまは若い労働者は外で十分働くこともできる、労働力が不足しているために、炭礦におるよりもいい条件で働くことができるような条件はあります。だから炭礦をつぶしてしまってよいというならば、もう皆さんも外に出て働かれるということも一つの方法かもわからぬ。しかし日本の将来のエネルギー資源として、われわれはやはり石炭というものは守っていかなければならぬというふうに考えております。共産党もそういうふうに考えております。それではどうしてこの石炭を守っていくかということで、奥さんたちひとつ考えてみようではありませんか。まず第一は、毎々言うようでありますが、まず夫を殺さないために、子供を殺さないために、保安を十分にしてもらいたいというのが、これが奥さんたちの声でした。私もそのとおりだと思うのです。だから保安を十分にして働く労働者の生命を守るということを第一に考えていかない限り、石炭産業というものは私は守っていくことができない、こういうふうに私は思うのです。皆さん方もそういうようにお考えだろうと思うのです。  それじゃどうして守っていくか。まず保安を第一にして、それから今日安い給料で働いている石炭労働者賃金を、普通のところで働く鉄鋼関係の労働者なり、そういう労働者と比較して決して劣らぬだけの賃金を保障することだと思うのです。それから炭住の問題をまず解決して、住みよい、明るい生活のできる住宅を建設しなければならぬ。それから民主的な諸権利も守るようにしていかなければならぬ。この四つが守られて、初めて日本の石炭産業というものは私は将来明るい見通しがつくと思うのですね。それともう一つ必要なことは、この石炭産業に対する今度の答申ですね、これが五年後に三千五百万トンという数を出されたところに私は問題があると思うのですよ。いわゆるそういう消極的な線を政府並びに答申で出されるならば、今日働いている石炭労働者は、もうだめだ、先細りで、われわれはここで働いても将来性がないよというふうに考えていくだろうと思うのですね。だから私は植村さんの答申の中で三千五百万トンという数をはじかれて出されたことは大きな失敗だ、私はそういうふうに考えております。むしろ積極的にわれわれはエネルギー資源として石炭を守っていかなければならぬから、五千万トンでも六千万トンでもひとつ山を掘ってやっていこうじゃないか、そのために労働者諸君もひとつ大きな希望を持って働いていってほしいというふうに積極的な、そうして将来性の明るい見通しを出していくことが一番よいことだと、私はこういうふうに考えるのですね。  そこで、私は今度のこの中央鉱山保安協議会から出た答申を、ずっと審議する中で問題にしたいと思っておったところですが、ちょっと今度の茂尻炭礦と関係があるので私は伺いたいのですが、今度のこの保安に関する予算を私は調べてみました。保安局長は、今度の予算は昨年度と比べると数倍にふえたというふうに言っていらっしゃいますが、私の数の読み方が間違いでなければ、昨年は三億四千二百万円ですか——そうですね。それがことしは十六億七千百万円にふえたと、こういう数がこの資料の中に出ております。確かに数は五倍ほどにふえておりますよ。しかし、いま申しましたように、日本の石炭産業を守っていく第一の問題は保安の問題という見地から判断しますならば、十六億七千百万円という数がはたして妥当な数なのかどうか、私たちは非常に少ないと思うのですね。まず保安に金をかけてちゃんとやるという体制をしいていかないと、私はいけないと思うのですが、この十六億七千百万円のこの内訳はどうなっているのか。それもここに資料をいただいておりますから大体わかりますが、これで政府当局は、りっぱに保安が守っていけるというふうに考えていらっしゃるのかどうか。その点をまず伺っておきたい。
  47. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 確かに十六億といいますのは、石炭全体の予算からいいますならば、そう大きな額ではないという御指摘かと思うのでございます。ただ、保安の予算といいますのは、実は、たとえば坑道一つをとりましても、生産坑道というものとそれから保安坑道というものとは、せつ然と分かれないわけでございます。で、いわゆる排気坑道、通気坑道あるいは運搬坑道、こういったものがこん然となっている場合が多うございまして、保安に関する予算といいますのは、この十六億だけのものではなくて、これは全くその保安以外には使わないというのが十六億の補助金でございますが、それ以外に坑道掘進補助金とか、またこの十六億以外に、いろいろな融資の面でも、合理化事業団融資の面でも保安機器等についての融資ということも考えておりますので、そういった全体の面から見ますれば、いわゆる保安の専門的なものの項目といいますれば、さしあたってこの程度あれば、相当進んだ保安の体制確保できるのではないか。しかし、まだ将来ともいろいろな事態に即しまして、そういう事態を克服するための助成措置というものはなお必要になってくると思いますが、そういった点につきましては、今後も大いに努力して確保はしていきたいと、こう思っております。あくまでも保安の予算というものは、これだけではなくて、ほかのたとえば坑道等につきましても、これはもう考え方によっては、保安が中心であるというふうに考えてよろしいかと思うのでございます。
  48. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私はこの中央鉱山保安協議会からの答申を見まして、まだ不十分だとは思いますけれども、この答申は従来から見れば相当前進していると思うのですよ。この答申だけでも完全にやっていくのに、この十六億ぐらいの金でやっていけるかどうかという私には疑念があるわけなんです。とにかく一千億というような交付金を出して四千二百億というような金を炭鉱に注いでいこうというそういう今日、この最も重要な保安に対して十六億くらいの——まあはした金と言っても差しつかえないぐらいの金ですよね。そのぐらいのことでもしも保安局長が満足して、これで十分保安はやっていけるのだというふうなお考えでは、私は橋本さん、少し心もとないと思うのですね。それでは不十分だと、こういう私は見解を持っておるのですよ。それで橋本さんに、この十六億で今後保安が十分守られて、再びこういうことのない保障が立つかという、そのぐらいの決意があるのかどうかですね。ないならば、もっと十分なことを考えていくべきでなかろうかと、こういうようにむしろ私は思うのですが、どうですか。
  49. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 確かにこういった種類の金といたしまして、それは金というものは多ければ多いほどこれに越したことはないと思うのでございます。しかし、いずれにしましても、資金の適正額の配分というふうなものの上に組み立てられておりまして、そういう面から見ますと、今日予想されるようないろいろな災害の要因を排除するための要素、しかも、その中に保安にだけというものを考えますれば、おおむねこの程度でさしあたってはいけるのではないかというふうに考えております。で、保安の答申は、これはまず第一に保安答申としてあげられている大きな問題は、やはり石炭産業全体の安定というふうなものが基本的に必要であり、もう一つの大きな柱として経営者の保安に取り組む態度、この二つの大きな柱があって初めていろいろな施策が実を結ぶ姿になっておる、形になっておるのです。したがいまして、そういった経営の安定並びに保安に取り組む姿勢というふうなものから見ますれば、やはり石炭全体のあり方といいますか、そういったものがこれまた考え方によっては保安ということも言えるわけでございまして、いろいろな見方からいたしますれば、そういったいろいろな考え方がとられるわけでございますが、これで完全なものであるかどうかということについては、なお研究の余地はあるとは思いますが、保安専門の事項についての予算でしたら、さしあたってこれで十分やっていけるというふうに考えておるわけでございます。
  50. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあこの問題は橋本さん、また日をあらためて中央鉱山保安協議会の答申を私は一ぺんずっとやってみたいと思っておりますので、そのときにあらためてやることにして、この問題はこれで打ち切っておきましょう。  それでほかの問題についてちょっと触れますが、私が行ったときに、先ほども労働者の奥さんの訴えをまず最初に申しましたが、あそこの労働組合の佐藤委員長は、こういうことを言っていらっしゃるようですね。今回の災害は、会社生産重点主義と合理化政策を進める最中で保安が無視されたことが重大災害に結びついたと、こういうふうに組合長が指摘しているわけですね。私は、従来もこの答申が出る前後には災害が非常に大きくいつもふえておるということを申し上げたわけですが、今度でもあそこに行って労働者から聞きますと、やはりそういう点が出ておるようなんですね。保安の面をそっちのけにして、もう要するに生産第一主義で掘れ掘れということだったと、それが今度の問題と結びつくと、すなわち労働者を、ぼやぼやしておると閉山になるぞと、こういうことで脅かし、おどかして、そうしてうんとこさと働かす、そうして保安の面が抜けてしまったという面があるというのですが、局長はこの間茂尻に行かれて、こういう点はどういうふうに見て帰られましたか。どうでしょうか。
  51. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 特に今回の災害というのは、非常にその原因がわれわれ想像いたしましても幼稚なものであるというだけに、その原因の背景をなしている諸要素は非常に多いであろうという感じがいたしております。確かに現地に行きまして、組合の方からいろいろお話を聞きますれば、分離再建という問題とか、あるいは閉山ではないかというふうなことをいろいろ取りざたされておる。それがかなりの人たちの頭の中に大きく位置づけられておるというふうな点、これは強く指摘がされております。したがいましてそういったもの、それからまたいろいろ最近におきまするまあ何といいますか、会社側のいろいろな再建並びに閉山等の関係を含んでの諸問題を会社も考え、従業員も考えるというふうなことからいたしますれば、これが直接の原因であるというふうなことは私は言えないと思いますが、しかし今回の原因の背景の何ものかでこれがあったのではなかろうかということは、これは否定はできないんじゃないか。それがどの程度影響し、どの程度にそれによって左右されたかということは私はよくはわかりませんが、一般的な感じといたしましては、何らかそういったような諸要因が動いておったのではないかということは想像はされるわけでございます。
  52. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一つ労働者から私は聞いたんですが、労働者の保安に対する要求はずっとまあ高まってきておった。そうすると、会社は無災害報告運動をやったと、先ほどあなたもおっしゃいました。それから保安競争による表彰制度、そういうものをしいてごまかしてきた、こういうふうに労働者は言っているのですね。この点は私いいようで非常に弊害が起こる制度だと思うんですよ。この間岐阜のある鉱山で、うその報告をしているのです。そうして通産省から表彰状を取ったということが労働者のほうから暴露されまして、私のところに報告がきたのです。それで私はその点をあなたのほうに調べてもらうように言いました。そうしたら、案の定、会社はうその報告をして、災害があっても災害がないという報告をして、そうして政府の表彰状や、いわゆるたてを取っておったということがはっきりしました。それでまああなたのほうも表彰状は取り返すし、何もかも取り返して、そこの鉱山の所長を罷免するように勧告したと、こういうふうな私は報告を受けました。こういうことをやると、一面そういうことが起こってくるのですね。ただうそをついているだけならいいけれども、そういうことが炭礦でたび重なっては、やはり災害に通ずるという結果がきますので、これは資本家としてはそういうことをやるのはごまかしていく手段であって、実際に保安を責任持ってやっていくという腹がまえならば、こういうことをしなくてもいい方法があるわけです。十分に実際にやればいいのです、実際にやれば。ところが、実際にやらないでこういう制度をつくってごまかしていく、こういうことを労働者は私に訴えておりました。そんなことでごまかされている。労働者は現場で働く人ですから、一番災害を早く気づくわけなんです。現に最近では、二月二十六日本坑九片第一上層立ち入り十番層においてガス突出により五名の仲間がガスを吸って入院するという事態が起こり、ガスに対する取り締まりを強く要求してきましたと、こういうふうになっておるのですね。ところが、これを会社は放置しておったわけですね。それが今度のガス爆発と通じるように私は感じますね。  それと同時に、先ほど私は予算面であなたに申し上げましたように、ことしの予算面を見ると、ガス突出防止対策費というものが昨年はわずかですが二十三万組んであった、ガス突出防止対策費というものが二十三万昨年は組んでありましたが、ことしはその二十三万もなくなってしまって、ゼロになっておるのですね。これは一体どういうことかという私には疑念が起こるのです。ガス突出があって、そして労働者は気をつけておった、ところがそれを会社は無視しておった、そして爆発になった。国のほうの予算ではガス突出防止対策費がことしははずされてゼロになってしまっておる。こういう姿勢でガス爆発を今後防いでいけるものかどうかという点をまあ伺ってみたいのです。
  53. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 二つの御質問でございまして、第一の点につきましては、確かにおっしゃいますように、二月の二十六日にそういう御指摘になられたような事実がございます。それも監督官が三月の十八日から二十三日の間に調査をいたしました際に発見し、保安法に基づきまして、監督指示書を交付して会社に対する責任を求めておるわけでございます。  表彰の問題でございますが、表彰につきましては、まあ一つのよかれと思ってやりました行為について、これを悪用するというところまでいきますれば、これはどんなことをやりましても、なかなか防止はできないのでございますが、現在の情勢としまして、非常にむずかしい保安について懸命な努力を払っておられる人たちに対し、何かやはりそういった人たちをほめてあげるということは、ますますそれに従事する人たちの勇気が倍増いたしますので、これを悪用するといったような場合につきましては、お話しのように厳罰に処するつもりでございまして、やはりこういった制度は今後も続けていくことが保安上はやはりいい措置ではなかろうかという実は感じがしております。  それから先ほどのガス突出の予算でございますが、実はこれはいろいろの研究費でございまして、これは毎年テーマをきめまして、大学の先生その他いろいろな専門家に寄っていただきまして、そのテーマについて一年ないし二年の期日をかけまして研究の結果を出していただくことになっておるわけでございます。したがって、そういう意味におきまして、毎年そのテーマは大体変えてきておるわけでございます。それで大体ガス突出につきましてもいろいろな説が分かれまして、これは三年かかりましたが、やっと一応の成果が出まして、その報告書がまとまるという段階にこぎつけましたので、明年度からはまた別の項目についての調査をしたい、こういうふうなことで毎年そういったテーマをきめてやるものですから、テーマを変えた形で予算を組んだわけでございます。
  54. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いま参考人という名前で——失礼ですが、参考人とおっしゃるのは労働者のどなたでしょうか。
  55. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  56. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 速記を始めて。
  57. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 先ほど通産大臣も、今度の災害に対して一つの決意を示されて、所長を罷免するように処置をとった、こういうふうにおっしゃるのですがね、私は一所長の罷免では問題は済まないと思うのです。それで労働者の今度の災害で死んだ遺家族に対するいろいろな問題もあることと思いますので、私はこの際、委員長にお願いしたいのですが、いわゆる社長なり副社長を、もっと会社の首脳をここに呼んで、そしてその首脳から直接私たちはいろいろなことを聞きたいし、また究明もしたいと思っておりますので、この点をひとつ委員長のほうでお取り計らいを願いたいということをまず申しておきます。  それから労働省に私は尋ねたいのですが、今度の被災者に対してどういうふうな措置を、年金を幾らぐらい払っているか、あなたのほうには各個人別の資料があるはずだと思うのです。だれだれに幾ら出して、だれだれにどうだという資料があるはずだと思うのですが、それをずっと一度述べていただきたいのです。
  58. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 各個人別に支払われております賃金が違いますので、それぞれ給付額としては違ったものになってまいりますことは先生御承知のとおりでございます。それからもう一つは遺族の数によって給付率が違います。奥さまが一人ですと、賃金の三〇%を年金として払う、子供さんが一人ふえれば五%ずつふやしてまいる、そういうことでございますので、遺族数によっても違いますので、ここで申し上げますのは、そういう賃金の差があるということと、遺族数によって違うということを前提にしてお聞き取りをいただきたいと思います。平均的に申しますと、年間二十四万二千五百八十八円、私どもの資料で見ますとそういうことになっております、一人当たり。これはなくなるまでずっとお支払いをいたします。一番高い方が三十三万四千三百四十円、これが一番高い方でございまして、一番安い方が十四万六千九百四十九円、こういうことでございます。その間に十八人の方いろいろ差があるわけでございます。
  59. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は各個人別にだれだれはこれだけ、だれだれはこれだけという資料をいただきたいのですが、それは資料として出してくれますか。
  60. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) いま手元にございます資料は一応の試算をしたものでございまして、遺族の状況が全面的に入っているものじゃないのだそうでございます。そういう意味で、いまここで申し上げましたことがそのとおり遺族の方に伝わりますと、多少金銭の出入りに差があるそうでございますので、遺族の方からの請求、それから遺族の数の問題、平均賃金のとり方、それが請求書が出まして、その請求書を審査した上でこういう事実が確定いたしますと、お出しをすることになりますので、全体についてのこまかい数字につきましては、いましばらくお待ちをいただきたい。で、請求書が出てまいりまして審査が確定いたしますれば、その結果によってお渡しをいたしたいと思います。
  61. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃまだ準備はできないからということで私も了承しておきますが、最後的にはだれだれにどれだけ渡ったということを資料としていただきたいわけです。それだけ確約しておいてください。  それからこの年金ですが、年金制度もいいと思いますが、これは物価にスライドする年金というふうに考えていいのですか。
  62. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 一定の条件のもとにスライドをいたしますスライド制をとっております。だから賃金が上がってまいりますと、それにスライドをするようになってまいります。その工場、事業場における賃金が上がってまいります。それから工場、事業場がない場合には、その地域賃金が上がってまいる場合には、それにスライドする、そういうふうになっております。
  63. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 会社の弔慰金というものは大体見当がついているのですかどうですか。それをちょときまっておったらお知らせください。
  64. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 会社の弔慰金は、従来組合と会社との間で百三十万というようなことになっておりましたが、昨日来交渉しておりまして、いま手元に入りましたのでは二百三十万円というふうなことで妥結したというふうに聞いております。
  65. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 空知礦の五人は、私たちは非常に胸を痛めておったのですが、幸いに救助されたということをけさほど伺いまして、非常に私も喜んだわけですが、一つ問題があるのは、空知の災害に対する会社措置のやり方ですね、これにもやはり問題があると思うのです。こういう問題が起こったにもかかわらず、会社はやはり災害中も平常出炭をして、ずっと続けておったということなんです。それで、その全体の山に働く労働者に対して、この災害のあったことを知らせず出炭を続けておる、こういう事実が報告されてきておるんですが、こういうことが許されてよいものかどうか。
  66. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 私の承知しておりますところでは、災害がありましてからは全山休止しております。それで従業員の三分の一程度が救助に当たったというふうに聞いておりまして、引き続いて操業をやっておったというふうには承知してないのでございます。
  67. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この点もなお一そう調べていただきたいと思うのです。私たちに現地から来ておる報告には、この五人の災害を知らせずに、そして災害時も平常どおり出炭をしておったという報告が来ておるので、こういうことは私は黙ってほうっておいてはいけないことだと思いますので、もしもそういう事実があるならば、政府のほうから強く私は注意をしていただきたい、こういうふうに考えます。  それからもう一つ。ほかの方がみなお聞きになりましたから、私はこれで最後にしますが、この鉱山保安協議会の答申の九ページにこういう条項があるのですね、「危険ありと判断して措置を命じた管理者、係員等の行為が決して非難されることのないような体制ないし職場環境を確立してこそ、真に保安意識が充実しているといえるのである。」という条項があるのですが、当然だと私は思うのですね、こうあるべきだと思うのですが、しかし管理者、係員だけの行為が非難されることがないということだったら、むしろ現場で働いておる一般労働者がまず危険を察知するだろうと思うのですね。そのときに危険防止の措置を一般労働者がとった、その結果災害が起こらなかったけれども、こういう労働者がそういう措置をとったときにも何ら処罰されるようなそういうことがないのだ、非難されることがないというようなことに私は考えていったほうがよくはないかと思うのですが、保安局長はどういうふうにお考えになりますか。
  68. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) 炭礦内における保安の秩序といいますか、保安体制運営といいますか、こういったものは一つにははっきりと秩序を立て、その秩序のもとに置いて、そのかわりに問題がありますれば、刑事責任まで追及されるという仕組みになっておりまして、したがって、いかなる時期において退避をし、いかなる時期において指令するかということは、これはあえてそういったいわゆる責任を持った係員なりあるいは管理者なりというふうなところに責任を集中させて、そういう体制をやっておるわけでございます。したがいまして、いま先生のおっしゃいましたように、具体的にたとえば落盤等があって、そのために労働者各自がそれを退避するということは、これはもう必然的な危害の予防として当然のことだと思うのでございますが、全体に対するいわゆる指令その他をやるというふうなことになりますれば、これは坑内における秩序と、それからまた将来における、それをやったやらぬの責任の問題というふうな点から、すべての人にそういう体制をしくということはどういうものであろうかという感じがしておる次第でございます。なお、そういった形におきまして、さらにより労働者との間における具体的な問題につきましては、少し実態を研究させていただきたいと思っております。
  69. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私こういうことを言うのは、働いている労働者にも保安に対してより一そう積極的な意識を持ってもらうと同時に、やはり労働者が不安だといったときに、その災害に対する応急措置をする。しかし、それがたまたま災害に至らなかった場合、おまえ出過ぎたことをやって、行き過ぎたことをやってけしからんというふうに責任を問われるということがないように、その場合も労働者のとった態度は是認されるという、そういう方向に行くならば、労働者災害に対してより以上一そう責任感を感ずるでしょうし、注意も深まっていくだろう、こういうふうに私は思うのでございます。労働者がそういう措置をとらなかったから処罰するのじゃなしに、そういう措置をとっても、災害に至らなくてもその行動が非難されることはない、こういうふうに考えていったほうが私はより一そうよくはないかと、こういうふうに私は考えて、いまこういう意見を述べておるのですよ。
  70. 橋本徳男

    政府委員(橋本徳男君) ここにございまするのは、「危険ありと判断して措置を命じた管理者、係員等の行為」ということで、この「等」がそこまで労働者のいわゆるいろいろな措置まで含まれておるかどうかということにつきましては、実除問題としてそれが坑内秩序を維持し、かつまたいろいろ法的な関係においてどう解釈できるかということで研究させていただきたいと思います。もちろん労働者みずからが危険を感じて退避するとか、あるいは事実行為として非常に危険な状態を発覚して逃げるとかいうようなことは、これはもう当然の行為でございます。ここに言っておりますのは、職場の全体に対して命令をし、ああやれ、こうやれという場合の問題でございますので、そういった点につきまして、坑内における秩序と危害とそれから責任の問題という問題がからんでまいりますので、検討させていただきたいと思うのでございます。     —————————————
  71. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) では、田口参考人長い間お待たせいたしました。ただいまから質疑に入ります。
  72. 小野明

    ○小野明君 時間もありませんから、簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。  去る三日の晩に、合理化事業団の九州支部で汚職があったということで、礦害部長代理並びに礦害第二課長が逮捕をされており、この件について閉山交付金というこれからきわめて大きい問題になります事柄の汚職であるだけに重大でありますが、概要を御説明いただきたい。
  73. 田口良明

    参考人(田口良明君) 私は石炭鉱業合理化事業団の副理事長をしております田口でございます。実は工藤理事長が本日参るわけでありますが、ただいま病気加療中でございまして、はなはだ僣越でございまするが、私からお答え申し上げたいと思います。  ただいま小野先生からのお尋ねの件は、去る四月三日に当合理化事業団の九州支部の職員二名が加賀炭礦に関して不正容疑があるということで拘引されまして、関係書類を提出させられました。目下取り調べを受けておるわけでございます。私といたしましては、その責任の地位にある関係上、全くざんきにたえない次第でございまして、まことに私の不徳のいたすところであると、心から申し訳なく存じておる次第でございます。ただいまのお尋ねに従いまして、当時の加賀炭礦の閉山整理交付金の支給並びに鉱害留保金の支払い、そういうことにわたって、ごく概略を申し上げたいと思います。  この加賀炭礦は、御承知のとおり九州の幸袋鉱業株式会社の炭礦でございまして、事務所は福岡県嘉穂郡穂波町忠隈一番地、整理促進交付金の申請年月日は昭和三十九年二月の十九日でございます。その申請に従いまして、現地評価調査月日は昭和四十年の三月十六日から同年の三月二十一日までかかったわけでございます。この評価に携わった調査員は本部から北村辰二、原田拓郎、九州支部からは井上宏、この三名が立ち会ったわけでございます。かくして交付決定は昭和四十年の八月二十三日に決定したわけでございます。その交付決定金額は約一億四百二十八万円であったわけでございます。  そこで、この交付決定について一言御説明申し上げたいと思いまするが、この炭鉱交付金交付決定は、大体本部であります東京から学識経験すぐれたる調査員が参りまして、この調査員も二名以上を一組にしておりまして、さらに現地の支部からも参加するというたてまえになっているのでございます。そうしてこの閉山交付金の決定につきましては、以下述べまする三段階を経ることにしております。それは専門的知識を有しておりまする本団所属の調査員が二名以上の班を組織する、そして現地の調査に向かい、第二がさらに本部の調査専門委員会にその評価事情について、業務方法書の細目を規定するような方式にのっとりまして、あらゆる角度からこれを検討する、それが第二段でございます。第三段階は、さらにこれを役員会にかけまして、審議の上決定いたすということにしておりまするので、交付金の決定につきましては、個人の裁量の入る余地は全くなく、交付金の決定は当団の組織規定整理部所管でございまして、今度の不正容疑者二名は鉱害関係でございまするので、さらにこの鉱害留保金の問題に移ってごく簡単に御説明を申し上げてみたいと思います。  ただいま申し上げましたように、この交付金の決定がございますると、まずこの第一回の支払いでございますが、これは交付金額から留保金額を控除したいわゆる差額、三〇%でございまするが、留保割合は二〇%と五〇%、合わせて七〇%でございまするので、交付金額の三〇%相当額を一般債務あるいは金銭債務等に引き当てるために第一回の支払いが行なわれたわけでございます。この第一回の支払いは四十年の八月二十三日、第二回の支払いでございまするが、これは九月の二十四日でございまして、この第二回の支払い額は、ただいま申しました留保割合に従いまして、三〇%のいわゆる賃金債務の返済の申し出に充当するためにとっておいたものでございまするが、その申し出がなかったために、この留保金額の変更の差額の返還をいたしたわけでございます。これはおそらくいろいろな債務の使途に充てられたものと想像されるわけでございます。  それから以後三回にわたっていわゆる鉱害の留保金の支払いが行なわれたわけでありまするが、その第一回の留保金の支払い、この鉱害留保金は交付金の五〇%でございまするので、一億四百万円の交付金額の半分に当たる額でございまするが、それをまず第一回に四十一年の四月二十八日に三千五百十三万九千円払ったわけでございます。この第一回の支払いでございまするが、その支払いは未処理物件三百八十七件のうち三百二十四件が鉱区線外にある、あるいは採掘影響線外また既賠償の物件であったというようなことで、残りの六十三件が賠償責任があるということが確認されました。よって要賠償物件に対する残存鉱害算定額は四百十五万一千五百五十四円となりました。しかし物価スライド等を勘案いたしまして、約五〇%増を見込むとともに、不安定な要素も加味いたしまして千七百万円を留保いたしまして、三千五百十三万九千円を返還いたしたわけでございます。第二回でございますが、これが四十三年六月二十二日に千四百万円の支払いをいたしたわけです。その金額は、その後この鉱害の問題につきまして、当事者の間で交渉が進展し、だんだん申し出も取り下げがありまして、二名、十五件を残すのみとなったわけです。このうち要処理物件は一名、十一件で、鉱害算定額は百四十二万八千円となるのでありますが、念のために三百万円を留保いたしまして、千四百万円を返還いたした次第でございます。第三回の返還でございますが、昭和四十三年十月七日、これは被害者全員が申し出を取り下げましたので、残り三百万円を返還いたしましてここで完了いたしたわけでございます。  なお、この機会にこの鉱害留保金を返還するというときの金額の決定方法でございますが、業務方法書の第六十条に基づきまして、留保金額に残余があることが確実であると認められた場合には、その残余に相当する金額を当該廃止事業者すなわち閉山炭鉱者に引き渡すことになっておりますが、その金額の決定は、鉱害現地の実態及び被害者との交渉その他あらゆる面から検討いたしまして、返還額を算定するのでありまするが、あくまでもこの返還額を算定する場合には、先ほど申しましたようにいろいろな面からセーフティーファクターを考慮いたしまして、そして多目に留保しておくのが通例でございまして、なお、この鉱害促進協議会にはかった上で決定するということにいたしておるわけであります。この鉱害促進協議会というのは、合理化事業団関係の各炭鉱鉱害問題の解決を促進するために設けられております機関でございまして、福岡通産局の鉱害部、それから鉱害事業団九州支部、石炭鉱業合理化事業団の九州支部、その他必要がある場合には関係者の参加を求めるということにいたしておるわけです。こういうような組織並びに手続をとっておりまするので、今度のこの事件、どうしてこういうようなまことにお恥ずかしいような結果になったのか、私としてはまことにわからない、そういう現在の心境でございまするが、しかし、この上は一日も早く事実が解明されまして、その実際のところがはっきりすることを祈念しておる次第でございます。  なお、合理化事業団といたしましては、今後ますます炭鉱整理並びにビルドアップの仕事の中核の重要な業務をいたしております関係上、役職員一同いやしくもかかる不正なことがないように、私はいつも日ごろからこの点を事業団内部に向かって啓蒙してまいったつもりでありまするが、先ほど申しましたように、こういうような事態を招いたということは時節柄まことに残念であるとともに、また仕事が重要であるだけに、今後この実態を把握しまして、二度と再びかかる汚名を着るようなことのないように、事業団一同、この際奮起一番、世間の誤解を解くことに全面の努力を払う覚悟でございます。いずれ、さらに御質問がございますと思いまするが、一通り今回九州支部におきまして、二名の職員の不正容疑にかかる、ただいま調査中のそれに関連しまする加賀炭鉱閉山交付金をめぐっての経過の概略を申し上げた次第であります。
  74. 小野明

    ○小野明君 大体概要なり、今後の御決意というものについてはよくわかったのであります。結局一億四百二十八万という交付金額の決定については個人の裁量が入る余地がない、こういう御説明であるわけであります。それは私もそうだろうと思います。問題はこの二分の一の五千二百十三万円ですか、この留保金の問題であろうと思いますが、この留保金というのは、先ほど三回にわたって支払いをされたと御説明をいただいたのでありますが、結局、鉱害には幾ら使われたのか、その点をひとつ再度御説明をいただきたいと思います。
  75. 田口良明

    参考人(田口良明君) 先ほどの三回にわたって支払われた鉱害留保金の返還の状況の問題でありまするが、この三回にわたっての留保金の返還につきましては、先ほども申しましたように、返還にあたっては炭鉱並びに被害者関係の鉱害の復旧並びに補償問題、そういう問題がありまするので、これは十分その道に通じたものでないと十分な査定もできかねるということもございまするので、合理化事業団といたしましては、できる限り同一職務に三年以上長く携わるということを避けるようにしてございまするが、鉱害問題は非常にむずかしい問題である関係もございまして、やむなくその道のエキスパートを長くその職務にとどめたということがやはり一つの今度の容疑の遠因になるのではないかということを私は反省しておるわけでございます。  ただ、ただいまのお尋ねのその金額がどこに回ったかということに対しましては、これは先ほども申し上げましたように、十分それぞれの手続によりまして、なお被害者の同意を十分とりつけて、そうしてこれが取り下げに従って返還額をきめていくということになっておりますので、先ほど申しましたように、物件が三百八十七件というようなうちから三百二十四件がこのあれに該当しないというような、いわゆる破断角外の問題、あるいは採掘の影響線というのは破断角の問題でございますが、そのほか鉱区外の問題、あるいはすでに賠償してしまったというような物件であるとかいうようなことがはっきりして、そういうことによってこの返還額が決定されるわけでございます。そういうことで、なお先ほど申しましたような協議会を経てこれが決定をするということにいたしておるわけであります。
  76. 小野明

    ○小野明君 御説明のようですけれども、現地の警察あたりの言い分を聞いてみますというと、これは氷山の一角である、まだまだこの問題は発展をすると、このように見ておるようであります。さらにまたこの炭礦経営者閉山ぶとりをしたというようなうわさもいろいろ流れておる。炭礦閉山、あるいは鉱害復旧にからむいろいろな不正というものがいろいろ取りざたをされておるわけであります。でありますからして、この問題がたまたま表面に出てまいりまして、徹底的な解決をいたしませんと、国民のこの閉山交付金あるいは閉山に対する疑惑というのはこれはぬぐい得ない。いま副理事長の御説明によると、閉山交付金の決定から、あるいはこの鉱害の問題まで、個人の裁量が入る余地がないというような御説明でありますけれども、現に鉱害部長代理がつかまえられ、あるいは鉱害二課長がとらえられておるが、そういたしますと、三百八十七件の鉱害申請があって、これがわずか六十二、三件に落ちた、これによって閉山炭礦、この加賀炭礦の受け取り額がふえてきた。鉱害はおっしゃるようにきわめてむずかしい問題であるわけなんです。それだけに専門家が要る。合理化事業団の中のこの人はやはり専門家であるわけでしょうが、その点で泣かされている鉱害住民というものがいるのではないか、その辺が問題ではないかと私は推定をするわけであります。副理事長は一体、逮捕されたこの事件のどこに問題があるか、原因はどこだろうという御推定がなければならないと思うのですが、その辺は一体どのようにお考えですか。
  77. 田口良明

    参考人(田口良明君) ただいま小野先生から御指摘の、まずもって氷山の一角じゃないかというようなおしかり、まことにごもっともと思いますが、この合理化事業団は、すでに昭和三十年に整備事業団としてできたわけであります。この十三年の長きにわたり、まだ一度もこういう不正なうわさが立ったことはなかった、これをいつも私は心ひそかに満足しておる。私はいつも役職員に申しておることは、事業団は三つのSをモットーとする。第一は清潔、第二が親和に第三が誠実でございます。第一の清潔はこれは申し上げるまでもございませんが、親和は、合理化事業団は当初五年間の時限法でできた整備事業団でございまして、みな一年生から養成する時間を持たなかった。したがいまして、やむなく各炭礦会社、あるいは官庁、あるいは銀行、そういう方面から出向の形で勤務に当てられたわけであります。まあそれだけに人呼んで寄り合い世帯というような批判もあったわけでございまして、それにはお互いが炭礦の再建整備に全力を尽くすという一つの目標に従って親和をモットーとしなければいけない。お互いに仲よく楽しく仕事をやっていってもらいたい。それが第二点。第三が誠実でございますが、いかなる仕事においても、これは仕事ばかりでなくて人間生活においてやはりこの誠実という、真心を持つということ、そして人に対して親切でなければならぬということから誠実を第三のモットーといたしまして、この三つを事業団の柱として今日までやってまいったのでございまするが、まことに残念ながら、こういう事態が起きたということにつきましては、いま小野先生のお尋ねでございまするが、副理事長の勘から言って、何がそこにこうさしたのか、それについての何か当てはないかというお話のように承りましたが、私といたしましては、まことに残念至極、それこそ腹をかき切ってでも場合によっては死にたいぐらいな非常な憤りと落胆を感じておるのでございまして、先ほど来お話し申し上げたように、少なくとも組織の面において、あるいは業務の面において、個人的な利害が介入する余地は私はないと確信いたしております。この間にどういう事情があったのか。ただ今度の容疑者二名はある会社からの出向者でございます。そうして、しかも加賀炭礦はその出向者とは非常に関係の深い間柄であったことが偶然にわかったわけでございます。そういうところに、これはそういう何かの利益なり、その炭礦のためにせんとするようなことではなしに、むしろ他の問題でこういうような容疑を受けたのではないかというようなことを私はひそかに考えておりまするけれども、問題は、ただいま福岡の警察において取り調べ中でございまするので、その調査の結果によって善処し、今後事業団の行くべき道をまたさらに考え直さなければならぬのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  78. 小野明

    ○小野明君 副理事長のお気持ちというのは私もわかるような気がいたすわけであります。しかし、現実に鉱害関係の方が二人逮捕されておる。しかもまあリベートを受けておるわけなんですね。これと、私どもしろうとから見ましても、鉱害処理というのはきわめて複雑な問題をはらんでおる。といたしますと、その辺にしか問題が考えられない。しかも留保金、鉱害が少なくなればなるほど留保金というのは会社に返っていくわけです。どうもその辺が私は問題だとしか考えられないと思うのであります。まああなたの説明を聞きますというと、警察段階だから一体どうなるかわからぬと、こういうふうなおっしゃり方なんでありますが、事業団自身としても何かそういった裁量の入る余地はないのか、この点をしさいに究明をされて、警察の捜査が終わるのを待ってどうするということではなくて、早急に原因探求、そして今後ふたたびこういったことが起こらないように、団自身としてもそういった措置をとられるのが至当ではなかろうか。驚かれておる実情というのはわかりますけれども、いま国民の疑惑というのはこの事業団に向けられておるわけです。それに対応していかなる措置をとられるのかということが私は問題だと思うのです。冷厳な現実を踏まえられて、今後の措置というものもお考えいただいたらどうだろうかと、このように考えるわけであります。再度御意見を承りたいと思います。
  79. 田口良明

    参考人(田口良明君) ただいまの小野先生からの御指摘の点全く同感でございまして、決して事業団はこの問題を等閑視し、あるいはいたずらに司直の結果をただ傍観しておるというのではございません。直ちにあの問題以来、本団からも各理事あるいはその他関係の者を支部につかわしまして、どこにこの原因があるのか、またこういうような原因の起きやすいような点はどこにあるのかというような点を事業団独自でして、そしてこの問題を可及的すみやかに解明をしなければいかぬという指示をいたしました。そうして、ただいま九州支部におきましては、その問題について本団のほうとお互いに気脈を通じて、これが解明に乗り出しておるわけであります。これはひとり九州支部ばかりでなく、他の三支部に対しましても、かかる事態に対処し、再びこういうようなことがあってはいけないということの厳重な通達を出しまして、この問題の処理に対しましては遺憾のないように本団といたしまして、また責任者といたしまして、最善の努力を尽くしておる次第でございます。ただいまの小野先生の御指摘の点全く私も同感でございます。
  80. 小野明

    ○小野明君 通産省にお尋ねをいたしておきますが、この事件の決定の当時はトン当たり二千円であったと思います。そうですね。ことしの予算で見ますというと三千三百円の平均である。その上に特別交付金というようなものが加わりまして、大体トン当たり七千円、八千円ということがうわさをされておるのであります。予想をされておるのであります。この第四次石炭政策の中で、もうすでになだれ閉山という現象が出始めているのでありますが、そのやさきに一番大きいポイントになるこの閉山交付金の問題で汚職があった。きわめてこれは重大な問題だと私は思う。大臣がおられれば大臣にぜひこの問題に対する所見なり今後の対策等についてお聞きをしたいのでありますけれども、所管者である局長の御意見なり所信をお伺いをしておきたいと思います。
  81. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) まだ容疑段階にあるとはいえ、閉山交付金の事柄に関連した不正の疑いを合理化事業団が持たれたということにつきましては、事業団はもとよりのこと、通産省としてもたいへん残念なことでございます。閉山交付金——一般交付金でも特別交付金でもそうでございますけれども、この制度趣旨は、たびたび当委員会でお話ししておりますように、閉山あるいは会社の解散に伴います社会的な摩擦、なかんずく関連中小商工業者であるとか、鉱害の被害者であるとか、退職者である労働者であるとかという弱い部面に閉山によるしわが寄るということを国の制度の上で緩和をいたしたい、こういうことでございますので、この交付金交付にあたりまして、いやしくも不正とか、あるいはその容疑を受けるというようなことがあってはならないことでございます。むしろ、私どもの個人的な考え方から言いますならば、こんなあぶなっかしい制度というようなことは避けたいというぐらいな気持ちを持っておりますけれども、冒頭申しましたような閉山という事態に対処する国の施策として、閉山を円滑に行ない、その摩擦を最小限のものにするという大きな目的のためには、あえてむずかしい、非常にやっかいで複雑な問題であり、その間にとかくうしろ指をさされるようなことが起こりがちであるという危険をも承知の上でこの制度に踏み切っているようなわけでございまして、ただいまのような容疑が絶対出ないように厳正な執行をいたすべきものと考えております。今回の増額にあたりましても、当然国民一般のそしりを受けないような正しい制度の執行をいたしたいと考えておる次第でございます。ただ、その際に、特別交付金の場合と一般交付金の場合では、これは小野委員承知だと思いますけれども、選択制にいたしております。一般交付金は先ほど副理事長が御説明になったような仕組みとあまり変わってない状況で、客観的な基準に基づきまして評価をして額を決定するということでございますので、当該閉山鉱業権者にとりましては、債務状況その他の違いから見ますと、当該鉱業権者にとっての受益度合いと申しますか、これはもうまちまちになるのが当然な仕組みでございます。極端なことを言いますと、若干のものが残るということがあってもやむを得ない。平均的な制度として考えておりますので、およそ閉山に必要な債務処理というものが円滑に行なわれるようにということで定めておりますので、部分的には先ほどのおことばのように、閉山太りと申しますか、残るものもあり得るということは、制度そのものが前提といたしておるわけであります。特別交付金のほうは、御承知のように超過債務一定比率を定めるということでございますので、これはいかなる意味でもさような事態はございません。これらの額の決定につきましては、国会の御意見も十分に承って閉山処理を円滑にするために定めたことでございます。このような大事な制度が、このような不正容疑というようなことでいろいろと議論を呼び起こすということはまことに残念で、今後事業団にも厳格な執行をお願いいたしますとともに、私ども自身も厳正な執行をいたしたいと思っております。
  82. 小野明

    ○小野明君 局長にお尋ねしておきますが、私はこの問題を取り上げまして、率直に疑点のあります点を二点申し上げたい。  一つは、先ほどお話が田口参考人からありましたが、当初申請の鉱害件数三百八十七件、それが第三回の支払いをする時点では三百二十四件というもの、これを鉱害の破断角外であると、あるいは鉱区外であるということで落とされておる。この落ち方というものがきわめて激し過ぎるのではないか、多過ぎるのではないかということが一つ。  いま一点は、この閉山交付金支払いの速度が、この加賀炭礦においては、他の閉山礦に比べてかなりスピードアップされて支払われておるのではないか。これはもちろん金利等の関係もあるのでありますが、その辺はどのようにお考えであるか。そして通産省としては、この問題についてどういった今後の対策を考えられておるのか。その辺の御意見も伺っておきます。
  83. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 先生も御承知のように、鉱害の被害者の立場からいろいろな話が出てきます。客観的な事実として鉱害現象があるということに疑いがない場合でございましても、その賠償責任を持っておる鉱業権者がだれであるかということについての意見の違いと申しますか、判断の違いというものが非常に多くあるケースでございますので、一がいに申し立て件数と最終的に判定されたものとの割合だけでもってそのことを判断すべきかどうか。これはたとえば鉱区の錯綜しておるような場合、鉱業権者がいろいろあって、Aのほうの責任に帰属するのかBのほうの責任に帰属するのかということがわかりにくい場合、隣接してたくさんある場合には多い。したがってそういう場所では、そういう歩どまりというものは少なくなることもあり得るわけでございますし、先ほど副理事長から破断角での説明があったわけでございますけれども、そういうケースは状況によって相当違うわけでございますので、申し立て件数と最終的に判断された件数との隔たりだけでもって判断するということが適当であるかどうかは、これはおよそ別な問題だと私は考えますけれども、非常にその差が大きいということに、何らかあったんではなかろうかというお疑いをお持ちになるのもまたこれ無理からぬことであると思います。ただしかしながら、これらの申し立てを最終的に引き下げられて留保金を解除するというときには、当然にこれは被害者が納得をした上で行なわれていることでございまして、これは被害者にまだ疑念がある限りにおいては留保ははずせないことになるわけでございますから、その点から判断する限り、私は先ほどの副理事長の御意見のように、この留保そのものの問題について何か不正があって、それの何と申しますか、見合いで何らかもらったか云々というようなことに直ちに私はつながるものだとは、どうも制度そのものから考えまして考えられないわけでございますが、まあその間に、たとえば被害者と鉱業権者の中に立っていろいろと話をしておるというようなことも場合によってはあり得るかもしれない。しかしあくまでこれは被害者の同意を取りつけて了解の上でやっていることでございますので、その辺の実態は、事業団自身でもうしばらく実態をお調べになり、あるいは司直の手でその間の関係が明らかにされる、これを見きわめた上で私は処理をいたすべきことだと考えております。現在ただいまの状態では、いやしくも閉山交付金その他の制度の執行にあたって不正の疑いを持たれるようなことのないように、厳正な運用をやってほしいということ以外に、このケースをもって直ちに何らかの措置に出なければいかぬというのは少しく早いのではなかろうか。その間の事情を私どもも実は納得しかねておる。さようなことはあり得ない。何かほかの個人的な関係ででももらったのじゃなかろうかというような気さえする状況でございますので、もうしばらく状況を調べてみたいと思います。  なお、取りくずしの状況が早過ぎたのじゃないかという御意見がございましたけれども、本件の約三カ年での公害留保金の引き渡しの期間というものは、鉱業権者の処理状況によって異なってはおりますけれども、本件のような、約三年間で全額を引き渡したというのは、平均的にはさほど短いことだとは言えないということを担当のほうで言っております。これはもちろん状況によるわけでございまして、北海道のように鉱害のないところは直ちにお渡しするわけでございます。いまの時間的な遅速という点から、きわめて何かあるらしいということがはっきりしておるケースだというふうには私どもは考えておらない次第でございます。
  84. 田口良明

    参考人(田口良明君) ただいまの局長の御説明に、なおつけ加えまして小野先生に申し上げたいと思いますが、まあ、この炭礦がどうも鉱害留保金の返済が、償還が早いのじゃないかという点につきましては、ただいま局長から御説明があったとおりでございます。さらに、この炭礦は非常に良心的な炭礦でございまして、債務総額が一億一千九百万円余りでございまして、賃金債務、あるいはただいまの鉱害賠償債務はもちろんのこと、これは優先債務と申しておりますが、そのほか一般債務につきましても、全部一〇〇%の弁済率をしております。そういうわけで、特にこの山が留保金が早く片づいたというようなことではないのであります。なお、ただいま申しましたように、かなり良心的にやっておりましたために、この弁済率がすべて債務を一〇〇%完成しておるという事情にございますことをつけ加えまして、補足説明を申し上げたわけでございます。
  85. 小野明

    ○小野明君 これで大体終わりたいと思っておったのですけれども、いまの局長のことばじりをとらえるわけではないのですけれども、私は私なりに疑い得る事実という問題を率直に出してみたわけですね。そうしますと、私も先ほど副理事長からお伺いをして了解をしておったのですが、こういった事件が起こったのですから、その問題をこの事実の上に立って追及し、やはり今後かかることがないように対処いたしますということだったのです。局長のお話ですと、私の取り違いかもしれませんけれども、何か、ほかの件での収賄ではないかというようなお話があった。それはまことに、逮捕されてこの問題に疑いを持たれておるという事実を踏まえない私はことばではないかと思うのです。ですから、こういう事実が起こったのですから、率直に原因は何なのか、それをやはり局自体としても通産省としても解明をしていく、国民の疑惑にこたえていくという態度があって初めて私はこの問題に対する解明をすることになると思うのです。どうもおれは知らぬというようなことでは、これは問題があると思うので、再度質問をいたします。
  86. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 多少ことばが足りなくておしかりを受けておるような感じがいたします。私の申し上げた気持ちは先生御指摘のとおり、いやしくもこういう疑いを持たれたということからすれば、よほど今後厳正な執行をやっていかなければならないし、こういう容疑を受けたということの理由なり何なりというものは徹底的に究明すべきである。その点は小野委員御指摘のとおり私は何ら違った考えを持っておるわけではございません。ただ制度の仕組みなり何なりから申しますと、どう考えても何か便益を供与してやってどうかしたというような仕組みにはなっていないので、そこのところは私はまだ個人的にはわからない感じがするくらいだということを申し上げただけでございまして、いやしくも警察が容疑をもって調べております以上、そこには何かあるはずだと思いますので、その点は率直にわれわれもなお事実の解明と今後の改善について努力すべきことは御指摘のとおりでございます。多少ことばが足りなかったかもしれませんのでおわびを申し上げておきます。
  87. 小野明

    ○小野明君 終わります。
  88. 阿具根登

    委員長(阿具根登君) 本件についての質疑は本日はこの程度にとどめます。  次回の委員会は四月十六日午後一時からに予定いたしております。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会      —————・—————