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政府委員(
荒玉義人君) まず実効性がないという論議の中に二つございます。一つは、先ほどドイツ法は公開であり、第三者が実施をすれば直ちに補償金請求ができる。ただし裁判所は、その
権利が、
特許性に対して確信が持てない場合には中止をして、
特許庁の処分が終わるまで待つという
改正になっております。オランダの場合は、登録された後。
日本は
出願公告ですから、ちょうどまん中でございます。これが第一点。これにつきましては、
衆議院段階でも論議がございました。原案の
考え方は、なぜドイツ法をとらなかったか、理由といたしましては二つございます。一つは、大体先ほど言いましたように、
出願が
特許になりますのは約四割でございます。そうしますと、六割は
特許性がないという場合でございますので、それと
日本の国情は、これはいろいろ
審議会でも論議になった場合に、比校的ドイツと比べて
権利乱用、
特許性がないのに請求権ということをやると、むしろいわば
権利の乱用というものが社会的な特色、と申し上げては恐縮でございますが、そういう実態があるということをまず
考えなければいかぬ。それが第一。
第二は、
日本の裁判所と
特許庁の権限分配は、
特許性があるかどうかということは、あげて
特許庁の
判断をとる。現在でございましても、
特許権の侵害訴訟がございまして専決問題としてその
特許が無効かどうかということを争った場合には、
特許庁の審判、無効審判の請求をして、そうして無効になるかどうかを
特許庁できめる、こういう
制度をとっております。外国の場合ですと、そういった場合には裁判所が独自で
特許性を
判断できるという
体制がございます。そういった
日本の
制度的な特色ということを
考えまして、やはり一応
特許性があるかどうかは、一応のめどがついた
出願公告である、それからということにしたわけであります
ただし、その点につきましては、何らかの対策を
考えなければいかぬということで、われわれ一応
考えておりますのは、そういった模倣の事実があった場合には、
出願人または第三者の請求によりまして
審査を開始するわけであります。通常の場合より優先して早い時期にイエスかノーかをきめていきたい。いわゆる緊急
審査制度というものをまず導入して、その間の不便を解消したいということが第一点。第二は、はたして
権利はあっても取るかどうかという問題でございます。この点につきましては、要するに、これは
一般の
特許訴訟と非常に似てくる面もございますが、やはり
出願人のほうで
権利を行使するという場合には、それだけいろいろな準備と
努力をするということが当然必要になると思います。
権利者が自分自身の
権利を守るというためにどの
程度の措置があるか。一応相手方に金幾らを払へというわけでございますが、もちろん当事者で話がつけばこれはそのままでございますが、いわゆる訴訟をする場合には、やはり相手方の実情というものを絶えず調査をいたしませんと
——いわゆる証拠をそろえるということが必要になってくるわけでございます。それは
一般の
出願公告後とそう大差がない。相手方が訴訟でかりに帳簿がないと言った場合にも、相手方の実績等を想定いたしまして、そうして相手方に帳簿がないといった場合には、裁判所は
権利者の主張を正当と認めるという措置はございます。そういった
権利行使の
法律的な措置といいますのは、これは一応あるわけでございます。したがって、そういう措置を必要により講ずることによりまして
権利の実効をあげていくと、ただ、これは
衆議院段階で問題になりましたですが、小
発明者の場合はなかなか訴訟をやるといいましても非常にむずかしい面もある。これは何も今回の補償金請求権だけではございませんが、そういった点も考慮いたしまして、われわれといたしましては、事実上
権利者と第三者が協議いたしまして
解決していくことができるよう、いわゆるあっせん機関という、訴訟にかわる一つの
制度を
考えまして、そういったいわゆる無資力者に対する事実上の救済をはかっていきたい、そういった
法律措置と緊急
審査並びにあっせん機関ということによりましてこの
制度の実効をあげてまいりたい、かように
考えておる次第であります。