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1969-05-15 第61回国会 参議院 商工委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月十五日(木曜日)    午前十時二十九分開会     —————————————    委員異動  五月八日     辞任         補欠選任      山木敬三郎君     津島 文治君  五月十二日     辞任         補欠選任      津島 文治君     山本敬三郎君  五月十五日     辞任         補欠選任      白木義一郎君     矢追 秀彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         八木 一郎君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 大矢  正君     委 員                 赤間 文三君                 井川 伊平君                 大谷 贇雄君                 村上 春藏君                 山本敬三郎君                 小柳  勇君                 近藤 信一君                 竹田 現照君                 矢追 秀彦君                 瓜生  清君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   大平 正芳君    政府委員        通商産業政務次        官        植木 光教君        通商産業省重工        業局長      吉光  久君        通商産業省繊維        雑貨局長     高橋 淑郎君        中小企業庁長官  乙竹 虔三君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (対米通商問題に関する件)     —————————————
  2. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  本日、白木義一郎君が委員辞任され、その補欠として矢追秀彦君が選任されました。     —————————————
  3. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 瓜生清

    瓜生清君 中小企業庁乙竹長官に若干お尋ねしたいと思います。その一つは、中小企業基本法が制定されてからことしで五年になると思いますが、この間、その施策の概略と成果と反省といいますか、どういう面でよくて、どのような面で至らない点があったかということについて、どういうふうに認識されておるのか。その点についてお伺いしたいと思います。
  5. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 基本法が制定されてから五年になりまするが、中小企業施策各国施策と比べました場合に、わが国の施策相当程度の高いといいますか、充実されたものであるというふうに考えます。基本法生産性の向上と格差の解消、中小企業の持っておりますこの問題を解消すべく、一面におきましては近代化合理化の路線を敷き、一面におきましては格差是正を端的に取り上げまして、一面におきましては自助努力をふるい起こさせますために指導充実する、こういうふうな方向で進んでまいりまして、金融信用補完充実あるいはまた近代化合理化努力、さらにまた経営指導員等を中核といたします零細企業対策が行なわれてきたわけでありまして、ときあたかも日本経済成長の結果、国内においては労働力不足を来たし、また市場転換が行なわれ、したがいまして、豊富な労働力と、こまかく分かれた市場に依存いたしておりました日本中小企業は、大きな転換をはかっていかざるを得ず、また海外におきましては後進国追い上げないしは先進国のオープンマーケット・ポリシー、これに対処をしていかなければならない時期であったわけでありまするが、私はこの基本法の御指示に従いまして、相当程度中小企業施策効果をあげてきたと考えるわけであります。しかし、虚心これ反省いたしてみますると、この中小企業問題は、おそらく各国を通じまして日本ほどむずかしい深刻な問題を持ってきているところはない。しかも、日本ほど急激に経済構造が変わっていっているところはない、この経済構造の変わりが最も中小企業に大きく影響を与えているところはない。こういう時期でございまするので、このいままで申し上げました施策相当程度効果はあげておりまするけれども、決して十分ではないというふうに考えます。その十分ではない点を一、二反省をいたしまするのは、一つはきめこまかく、あたたかくということばに象徴されておりまするけれども、この激動期におきましては、基本的精神はきめこまかく、あたたかく行なう必要がありまするけれども、施策はむしろ重点的、効果的に行なわなければならないという点が一つ。第二に、重点効果的に行ないますためには、民間の自助努力といかに政策をうまく結びつけていくかという点が一つと、第三に、中小企業分野におきましても、特に中小企業性の強い零細企業対策にもっともっと傾斜をかけて知恵を出し、政府の効率的な支援が行なわれなければならないというふうに考えるわけでございます。
  6. 瓜生清

    瓜生清君 いま長官がいろいろ申されましたけれども、私はまだ日本中小企業政策が非常に弱いと思うんです。その原因はいろいろありましょうけれども、一言で言えば、国家財政すなわち国の予算が少な過ぎることに大きなもとがあるような感じがするわけです。本年度の中小企業策を見ましても、一般会計で四百二十億、なるほど前年度に比べて伸び率は約一三%ふえております。また財政投融資四千五百九十三億円は約一九%の伸びを示していますけれども、しかし、全体の予算規模の割合から見ますと、中小企業予算というものは一般会計のわずか〇・六%であり、財政投融資の場合でも一四・九%にすぎないわけです。中小企業日本経済の中に占める比重というものは、生産量においても従業員の数においてもあるいは輸出の能力においても、約半分近い、そういう力を持っておるわけですけれども、どうも、私、中小企業予算というものが、確かに年々歳々ふえておるけれども、スタンダードになる金額が低いので、それが顕著な中小企業対策のいわゆる政策費としての効果というのはあらわしていないのじゃないかというような思いがするわけです。このことについて、ことしは予算が通過しましたけれども、これから先、長官として一体どういうようなことをお考えになっておられるのか、わかっておればひとつ具体的にお話を願いたいと思うんです。
  7. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 先生指摘のように中小企業予算国家一般予算中に占めます比率は一%にも足りません。したがいまして、この予算の額が、もし、日本中小企業国民経済上に占めます重要性と、またその重要性を認識した国の態度を象徴するものであるとなれば、まことにこれは不十分きわまりないわけでございます。しかし、私たち考えまするのは、中小企業に対します政府支援措置は、一般予算よりもむしろこれは中小と言いましても企業でございまするので、金融ベース重点に置いて考えていってしかるべきではなかろうかということで、いままでも、財政投融資の中に占めます比率は一五%にものぼっておるわけでございますが、それはともかくといたしまして、第一の御質問に対してお答えしましたとおり、いまの中小企業は、たいへんな時期にきておりまするし、また日本経済成長性というか、これを今後確保できるかいなかは、中小企業体質改善がうまくできるかいなかにかかっておりまするので、私たちといたしましては、中小企業財政投融資面政府支援措置のみならず、一般予算につきましても全力をあげましてこれの充実をはかってまいりたいと思うわけであります。ただ、それにつきましても予算充実いたしますためには、どういうふうに効率的な予算項目を見出し、裏を引っくり返しますと、それを受けて立つ中小企業が、その予算助成によりまして、どういうふうに国民経済に対して効率的な貢献をするかという知恵を出し、そこに重点的に予算をふくらましていかなければいけない。それで本年、予算におきましても、中小企業振興事業団予算は、事業規模におきまして一般項目すなわち団地等につきましては、これは二倍近い伸びを示したわけでございますが、このように重点項目を精選いたしまして、来年度予算を編成してまいりたいというふうに考えます。
  8. 瓜生清

    瓜生清君 次の質問に移りますが、近促法に関連して伺いたいと思うのですが、今回のいわゆる中小企業近代化促進法改正提案理由として、近促法の「指定業種のうちから、その構造改善をはかることが国際競争力を強化するため緊急に必要であると認められるものを、特定業種として指定する」こういうふうに書いてあるんですが、もう少し具体的に特定業種を指示する際の基準のようなものがあるのかどうか、あるいはその前提になる考え方等についてお伺いしたいと思います。
  9. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 今回の改正によりまして特定業種制度をつくりたいと思っておるわけでございまするが、近代化促進法基本計面業種別につくりまして、その基本計画達成をするために、従来の方式というか、一般方式では毎年実施計画政府が一方的につくる、こういう方式をとっておったわけでありますけれども、五百余あるといわれますこの業種の中で、国内事情また海外事情、これの非常に大きな世の移りかわりの緊迫を強く受けておる業種が出てきておるわけであります。国内事情は申すまでもなく、第一は労働力でございますし、第二は市場でございます。第三は技術変化であると思いますし、海外におきましては発展途上国追い上げ先進国自由化、こういうようなインパクトを特に強く受けておる業種につきまして、従来の方式ではまあ手ぬるいと申しますか、こういうふうに業界が思われる、その業界が思われるものにつきまして、この特定業種制度というものを適用いたしたいというふうに考えます。
  10. 瓜生清

    瓜生清君 これは中小企業の場合どの業種でも言えることですけれども、どういいますか、業界まとまりが非常に悪い。そういうことについて、何といいますか、そういうまとまったところに対しては援助すると、こういう考え方前提にあるわけですけれども、そうでない業界というものは、どうも近代化促進法ワクからはずされるという結果が必然的に出てくるんじゃないかという感じがするんです。そういうものに対して、何といいますか、業界とか産地とか、そういう受け入れ体制の欠けているものに対して、中小企業庁としてどういうような指導をされていくのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  11. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 構造改善実効をあげますためには、政府が一方的にガイドポストをつくるということだけでは不十分でありまして、どうしてもその業界がまとまって連帯意識を燃やし、危機感を燃やして、しかも御自分知恵を出して構造改善事業に乗り出すということにならなければ実効もあがりませんし、政府支援措置効果が出ないと思うのでございますが、先生指摘のように、中小企業業界はなかなかまとまりが悪い、まとまりが悪いのみならず、いま御自分たちの置かれておる地位といいますか、状態の認識についてすら欠けておる業界が多いと思うわけであります。したがいまして、私たちといたしましては、事業努力基本といたしますものの、中小企業政策の非常に大事なポイントは、事業努力を引き出すということであると思います。したがって、必要な情報を提供することが第一、第二には業界まとまりを、あっせんといいますか、御援助することが第二である。第三は計画をつくられることについて御援助を申し上げるのが第三というふうには考えるわけでありますけれども、具体的な手段方法といたしましては、産地ぐるみないしは業種ぐるみ業界盛り上がりが期待できますので、産地組合ないしは業種組合を通じまして強力に働きかけることが第一。第二には、何といっても地域産業的な色彩の強いものでございまするので、府県庁が前面に出てそれの指導をされるということが一つ。したがいまして、中央官庁地方行政組織とが完全に呼吸を合わして指導に乗り出すことが第二。第三といたしましては、すでに中小企業団体中央会でございますとか、振興事業団でございますとか、個々業界指導組織もございまするので、この指導組織をフルに活用いたしまして組織化なり指導をいたすということが第三である。いずれにいたしましても先生指摘のように、事業努力を引き出し団結を促すことは非常にむずかしいことでございますけれども、まずそこに行政努力を集中しなければならないと覚悟いたしております。
  12. 瓜生清

    瓜生清君 乙竹長官は、構造改善を進めるにあたって最も大きな特徴というものは、ぐるみという考え方にあるということをおっしゃっておりまするけれども、実際は私どもが中小企業の実態というものを見ておりまして痛感しますことは、共同化とか協業化とか合併とか、そういうような問題について、業界だとか産地だとかあるいは業界団体だとか、確かに自由経済の原則からいきますと、あまり行政介入ということばは好ましくないとは思いますけれども、日本中小企業を見ていますと、やっぱり中小企業庁とかあるいは通産省とか、そういうところの強力なてこ入れというようなものの必要があるんじゃないか、そういう気がするのですけれども、その点について長官どうお考えになっておりますか。
  13. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) てこ入れと申しますか、先ほど御説明申し上げましたように、団結支援する、あるいは知恵をお貸しする、こういうことから誘導的にいろいろ措置をするということは非常に必要であると思います。先生も御指摘のように、ただ上から一方的に計画をつくり、押しつけということになりますると、幾ら行政官庁側として善意に富んでおるといたしましても結果としては決してこれは十分ではないということも、過去の教えるところでございまするので、中小企業庁、それから産業、各官庁ないしは府県庁というか、各行政指導と、それから業界盛り上がりと、この辺のバランスというものが非常に必要で、バランスがとれたかっこうでお互いに高め合いながら構造改善計画なりないし事業を進めていくということが必要であるというふうに思います。
  14. 瓜生清

    瓜生清君 それからもう一つお伺いしたいと思うんですが、さっきおっしゃいましたように、いま非常に技術革新というものが行なわれておる、ところが、何といっても大企業と並行するような形の中小企業技術水準というものは、やっぱり私二歩も三歩もおくれておると思うのですが、そういう点について、具体的に中小企業庁としてこれから先どういうような対応策を持っておられるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  15. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 日本中小企業先進国型に脱皮いたします到達点は、技術集約産業になりかわるということがその一つの重要なかっこうであると思います。したがって、中小企業技術レベルをどう高めていくかということにわれわれの全力をあげなければならないと思うのでありまするが、問題は、中小企業技術レベルを高めるためには、現在でも実はいろいろの制度がございます、直接補助金を出しましたり、あるいは府県試験研究所を通じて補助助成をしたり、あるいは巡回指導までやりましたり、あるいはまた、業界共同研究所をつくりたいという場合には、半額補助をしたりというふうな、いろいろの実はあの手この手をやっておりまするけれども、実は、これは総額では一般予算でわずか八億足らずというふうな非常に微々たるものであります。私たち中小企業技術のレベルアップを考えるのには、まず中小企業者技術マインドというか、技術でこれから競争していくんだということ——まず精神論になるんでありまするけれども——これがまず第一。それから第二には、技術を高めた場合には、これが収益につながるというふうなことが第二。それから第三として、そういうところまでまいりますると、中小企業に対して技術を提供する、これはすなわち親企業である場合もありまするし、機械等のメーカーである場合もあるわけでありまするが、中小企業技術を提供する他の業界が非常に興味を示してくるというふうになってくると、本格的でありまするし、そこまで高まってくれば自然と中小企業内の技術開発力も出てくると思うわけであります。  以上のような方向に従いまして、ただ狭い中小企業の中の技術開発力を高めるということだけではなくして、中小企業を取り巻く関連業界をひっくるめて技術を向上するという対策を進めてまいりたい。しかし、これは端的に申し上げまして、実は非常にいままでも貧困でございますし、さっきも申しましたように、予算額においてわずか八億にもなっておらぬという程度でございますので、よほどわれわれが勉強をしていかなければならない分野であるというふうに思っております。
  16. 瓜生清

    瓜生清君 それじゃ最後の質問ですが、乙竹長官政府部内において、長官就任前に繊維雑貨局長をしておられましたので、私も繊維関係でございますから、一つだけお聞きしたいのですが、スタンズ商務長官がこの間来られて、繊維製品輸入制限について、あとで報告があるということでございますけれども、具体的に何か提案があったのでございますか。その点だけお尋ねしておきたいと思います。
  17. 高橋淑郎

    政府委員高橋淑郎君) 今回のスタンズ長官の来日は、交渉をやるというようなことではなくて、意見交換をするということが目的であるということでございまして、繊維についてもいろいろと双方率直な意見交換がございまして、それからまた先方の抱いておる考え方についての披瀝もございました。しかし、いわゆる提案とか、あるいはこういうことを具体的にこの段階で日本側に直接的に求める、そういうようなことのアプローチはございませんでした。
  18. 瓜生清

    瓜生清君 以上で終わります。
  19. 近藤信一

    近藤信一君 前回に引き続いて御質問をいたしますが、中小企業構造改善を実施する場合に、業界が自主的に構造改善計画というのを作成いたしまして、これを主務大臣が承認する、こういうことでございます。したがって、個別企業ワクを越えたところの業界ぐるみ構造であるということでありますが、政府といたしましても、業界の将来あるべき姿を想定いたしましてこの計画をされるわけであると思います。構造改善目標を、しからば一体どこに置いておられるか、こういう点が問題になろうかと思いますので、この点について見解を承っておきたいと思います。
  20. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 構造改善計画は、近代化促進法本法に基づきます近代化基本計画達成するための具体的な手段事業をきめたというか、盛り込んだのが構造改善計画になるわけであります。したがいまして、構造改善計画のねらいは、目標基本計画に示されるわけでありまするが、基本計画のねらっておりますのは、その業種の、一言で申せば近代化でございまするが、近代化ということは、結局従来の中小企業の立っておった条件環境が変わってきている、その変わってきている条件環境に即応し、近代的に脱皮した中小企業業種になり変わるというのが、基本計画のねらいでございます。これは個々業種おのおの重点の置き方が違うと思うのであります。後進国追い上げ業種におきましては、その点が特に重点になりますし、消費需要変化の身に迫っております業種にとっては、その対応策重点になりますし、どこの業種におきましても労働力不足、この省力化ということは、一つの大きなポイントになるかと思うのでありますが、おのおの業種別にその業種が近代的な中小企業になり変わるということが、この構造改善計画最終目標でございますし、基本計画のねらいであると考えます。
  21. 近藤信一

    近藤信一君 個別企業ワクをこえて業界ぐるみ構造改善を進めていきます場合に、零細企業というものがやはり切り捨てられる危険性があるのではないかということが心配されるわけでありまして、なるほど近代化基本計画の上に立っていろいろと進めていかれるから、そうした零細企業の問題を置き去りにされることはないと思いますけれども、現在の計画性から見ますと、やはりそういう心配があるわけでございますから、この点は一体どのように対応していかれるのか、この点を承っておきたいと思います。
  22. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 構造改善計画構造改善事業において零細企業置き去りにされ、切り捨てられるのではないかという心配業界内に一部あることはわれわれも承知をしておりまして、この考え方を、そうではないと払拭しようと努力しておるわけであります。私たち思いますのは、零細企業は、従来繁栄をしてきたのは繁栄をしてきただけの理由があり、また競争力があったから繁栄をしてきたのであると思うのでありまするが、この前提になっております条件環境変化に即応して、零細企業がどう対処していくかということになりますると、おそらく業種によって違いまするけれども、技術で生きていく、あるいは設備の近代化で生きていくという近代的な業種に脱皮しなければならないわけでありまするから、この波を零細企業が一番受けることは事実であります。しかし、受けまするが、このままで放置しておいたら文字どおりその零細企業は歴史の波に覆没していくわけでございまするので、私たち構造改善計画ということで、ぐるみ思想を出しておりまするのは、零細企業をひっくるめて、そして特に世の移り変わりの波を大きく受けておる零細企業政策重点を置いて零細企業ぐるみ近代化を、その業種なりに達成をしてまいりたいというふうに考えるわけでありまして、これがまた決して不可能なことではないというふうに考えます。
  23. 近藤信一

    近藤信一君 特にお尋ねしていきたい点が一点ございまするが、この中小企業の問題で、特に現在都市におけるところの、いわゆる公害問題と中小企業の問題とは非常に密接な関係があるのです。なぜかと申しまするならば、住宅街零細企業がたくさんあるわけなんで、その場合、騒音だとか媒煙だとかいうことで、付近の住民からいろいろと問題が持ち込まれまして、その零細企業を何とか他のほうに移転させようとする場合ですね、すぐその土地を、交換で敷地を求めることができまするならば、これは税金が免除される。ところがそのあと地の問題、簡単に、こっちを売るからすぐこっちが買えるというのじゃないんで、やはり一応どこかに土地を求めなきゃならぬ。そうすると、土地取得税というものがそこにかかるわけなんです。そういう点で、やはり零細企業がいろいろと近代化をしようとする上において、一つの問題になっておる点がある。特にこれは都市住宅街零細企業に多いわけなんでございまするが、こういうものに対する近代化に関連して、何か土地取得税制面を何か考えることが必要じゃないかと私は思うのです。こういう場合には、一体どういうことになるのか。あなたのほうでは、こういう問題について、将来何か考えておられるのかどうか、この点一点お尋ねしておきます。
  24. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 中小企業と公害問題は、先生指摘のように、私は一体大企業よりもむしろむずかしいと思うのでございます。で、それはまず第一に公害問題を終局的に解決いたしますためには、都市計画国土計画と申しますか、こういう計画に組み込まなければいけない。しかし、中小企業はこの計画の中に非常に組み込みにくいものでございます。特にその労働力都市周辺都市内からに依存しておりますから、よけいその点がむずかしいという点もございますし、それから別の面から申しますると、公害の除去の技術において、大企業はすでに進んでもおりますし、また大量処理、これは媒煙でも、汚水でも大量処理が可能でございまするが、中小企業は大量処理が非常にむずかしいということ、技術的にもむずかしいというむずかしさがございますが、われわれは鋭意検討をしているわけでございますが、先生指摘の、さしあたりの土地交換の場合でございますが、土地買いかえの税制の恩典を本年度から実施をしておりますが、これだけでは十分ではございませんので、財政投融資におきましても、さらにこの点を充実して考えてまいりたいと思っております。
  25. 近藤信一

    近藤信一君 特にいま長官も言われましたように、大企業でございますと、公害に対する対策は簡単にできるわけですね、自分の資力もありますし、助成金の面もありまするから、いろいろと対策できるわけでございまするが、零細企業になると、なかなかこれはわかっておりながらむずかしい、こういう点からもやはり零細企業というものが置き去りになる、こういうふうな危険が多くあるわけなんで、そこで、私はやはりこの構造改善計画におきましても、やはり零細企業がそういうふうな結果で、置き去りになるような危険性というものはあるということを私は心配してお尋ねしたようなわけであります。  次に、指定業種の中から当面一体どのような業種特定業種として指定されるのか、この点ひとつ具体的に御説明を願いたいのであります。
  26. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 現在、業界の心がまえ、また計画も進んでおりまするし、われわれは国民経済に及ぼす影響、また、さし迫った緊迫度という点から考えましても、指定をいたしたいと思っているものは、マッチとかあるいは洋傘の骨とか、みがき棒鋼、この辺のところはさしあたり候補として申し上げられるかと思いまするが、それ以外にも非常に多数の業種において関心を示され、いま勉強し、気分の盛り上がりがだんだんなされつつあるという状況でございます。
  27. 近藤信一

    近藤信一君 指定業種は百十二業種ございまして、その中で、いま長官が御答弁されましたこうもり傘の骨とか、マッチとか、三つ四つの名前をあげられたわけでございまするけれども、その基準というものを一体どこに置いて指定というものをなされるのか、この点はいかがですか。
  28. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) まず法律案がきめておりますように、国民経済上必要性の強いものであって、また国際競争力を強める必要がある、それから業界の主体的条件といたしまして、業界内の連帯意識と申しますか、これの高まりのあるもの、さらにまた構造改善計画なり事業なりについて、実効性のある知恵が出し得るもの、こういうものが業種指定のめどになるというふうに思います。
  29. 近藤信一

    近藤信一君 中小企業近代化促進法の中には、近代化計画近代化実施計画とある、それに構造改善計画関係が加えられるわけでございますが、この三つの計画はどのような関係を持っているのか、また、どういう関係で今後結ばれていくのか、この点はいかがですか。
  30. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 基本計画到達点、その業種近代化目標と、それからそこに至ります道程のあらましをきめたものであります。最初の基本計画達成いたしますために、従来の方式は毎年度その年間において行ないます計画実施計画としてきめるのでございますが、この基本計画実施計画は、そういう関係にあるわけでございますけれども、この構造改善計画は、同じく基本計画達成するための手段、実行のための計画でございまするので、したがいまして、構造改善計画ができました範囲におきましては、実施計画よりも優先をするといいますか、実施計画のかわりと申しますか、こういうことになるであろうと思います。ただ、基本計画実施計画は、ある業種について全国一本でつくられまするけれども、構造改善計画はおそらく産地でございますとか業種の中の特定商品でございまするとか、利害を特に密接にする連帯意識の強いグループが計画をつくるということになると思いまするので、その実施計画の一部しかカバーをし得ないという場合が多いだろうと思います。  なおしかし、もしこの構造改善計画がうまいこと全国全部をカバーできるというふうな業界まとまりができた場合におきましては、当然実施計画は要らなくなるわけでございまするので、法律におきましても、その場合には実施計画をつくらないでよろしいというふうな規定があるわけでございます。
  31. 近藤信一

    近藤信一君 改正案の五条の二の2項で「構造改善計画の承認及びその取消しに関し必要な事項は、政令で定める。」と、こうあります。その政令の内容というものは一体どのようなものであるのか、この点お聞かせ願いたいのであります。
  32. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 法律が成立いたしましたならば頂ちに政令案をつくりたいと思っておるのでございまして、目下勉強段階でございまするが、概要は、まず承認基準につきましては次のようであるというふうに考えます。  まず第一が、構造改善事業目標、それから内容及び実施の時期、これが特定業種にかかわります基本計画の定める近代化目標達成するために必要なものであるという、そういうふうな目標、内容、実施の時期。それから次に、事業の実施に必要な資金の額及び調達の方法。それから計画を実施する責任主体は商工組合等でございまするが、その商工組合等の構成員である中小企業者のおよそ半数程度がこの構造改善事業に参加するとともに、この構造改善事業を実施すれば特定業種構造改善に著しく寄与すると認められるというふうなこと。以上が承認基準として政令の中に書き込みたいというふうに考えております。  それから次の御質問の、取り消しの基準でございまするが、次のように予想されます。  まず、構造改善計画の承認を受けた商工組合等やその構成員が、承認を受けた構造改善計画に従いまして構造改善事業を実施していないと主務大臣が認めるとき。それから第二は、経済事情の著しい変動に伴いまして主務大臣基本計画を変更した場合に、構造改善計画の内容が変更後の基本計画の定める近代化目標達成するために適切でなくなったとき。この場合には商工組合等が当然構造改善計画に所定の変更をしてもらわなければいけないわけでありまするが、この所定の変更承認を申し出ないという場合、この場合が取り消しの基準になるかと考えます。
  33. 近藤信一

    近藤信一君 構造改善計画の実施を受けました商工組合等の構成員、この構成員が本計画に従いまして構造改善事業を実施した場合に、金融それから税制面においてどのような一体助成措置というものがとられるのか、この点どうですか。
  34. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) まず金融でございまするが、すでに財政投融資の中にも組み込んでございまするが、構造改善特別貸し付け制度中小公庫に設けたい。これは構造改善計画に従いまして近代化設備を中小企業者が導入いたします場合及び事業転換を行ないます場合には、中小公庫を通じまして年利七%の特利による融資を行ないたい、一応ワクとして三十億用意してございまするが、もし年間幸いにしてこのワクが足りなくなるという場合には、このワクの増大をはかりたいと思います。  それから税制でございますが、二分の一の割り増し償却をこの計画に従いまして実施する、この計画に従いまして中小企業者が設置いたしました機械設備等について、二分の一の割り増し償却を認める。これは租特法ですでに成立をいたしております。  それから第三が、中小企業構造改善準備金制度の拡充をいたしたい。現在千分の十五積み得るようになっておりますけれども、これを売り上げ高の千分の二十五まで拡充をいたしたい。  それから第四は合併税制、それから合併の場合の法人税、登録税の減免税措置。以上が税制でございまするが、そのほかに技術開発でございますとか、また人材の確保につきましては、従来とっております手段を駆使いたしたい。さらに中小企業振興事業団にわずかの人数でございますが、特に産地等の構造改善計画指導いたし、組織するための人材を本年認めていただきましたので、このような制度の拡充をしてまいりたい。  なお、中小企業振興事業団の資金でございまするが、これを優先使用することは当然であるというふうに考えております。
  35. 近藤信一

    近藤信一君 しからば特定業種の指定を受けました場合に、どれくらいの期間、金融それから税制面について特別の助成というものがあるのか、その点どうですか。
  36. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 先ほど申し上げました中小公庫の特利でございまするが、これはさしあたり五年程度の金、なおしかし、これは延長をはかってなお長期の金を供給するように努力をしてまいりたいと思います。  それから振興事業団の金、これは事実上非常に多く活用されると思いますけれども、御承知のとおりこれは三年据え置き十二年でございます。  それから税制面の先ほど申し上げましたのは、計画達成期間として五年ということになっております。
  37. 近藤信一

    近藤信一君 この近代化法による指定業種が百十二業種ございまして、そのうちすでにもう指定を受けてから五年を経過しているわけでありますが、近代化計画が五年をめどとしてこれが立法措置がなされた、近促法ではすでに五年は経過しておりますので、今度は近代化計画を取り消して新しく別の構造改善計画というものをやられるのか、そうしてその業種を別に今度は構造改善計画の中でやっていかれるわけでございまするが、その両者の関係は一体どういうことになるのか、この点はどうですか。
  38. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 先刻申し上げましたように構造改善計画は、近代化基本計画達成するための手段計画でございます。したがいまして、基本計画が先行をいたしますので、ある業種につきまして、もし基本計画の期間が完了した、ざらに特段のその業種について近代化をする必要があるという場合におきましては、新たにここに基本計画がつくられまして、その基本計画を実現する手段として構造改善計画考えられる、こういう関係になります。  なお、現在百十二の業種がすでに指定されておりまして、早いものにつきましては本年から来年にかけまして次々に五年の目標期間が完了するものでございますが、その中には、さらにここに一段と近代化の必要を感じ構造改善業種に乗り移る、その場合には、先ほど申し上げましたように、基本計画をもう一ぺんつくり直されるわけでございますが、そういうものもございましょうし、あるいは一応そこで目標達成されたということで、指定業種からはずされるというか、自動的にはずされる業種も出てくる、こういうふうに考えます。
  39. 近藤信一

    近藤信一君 資本の自由化やそれから特恵関税の実施によりまして中小企業が大きな打撃を受けるわけでございます。その場合に、その一部は構造改善計画を推し進める、そしてその道を開いていく。しかしどうしても構造改善計画に入れない中小企業もあると思うのであります。それが今度事業転換する場合に、一体どのような転換指導というものをなされるおつもりですか、この点はどうですか。
  40. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) いまの中小企業の一番考えなければいけないのは、時代というか、立っております環境というか、条件と申しますか、これに適応していくということでございますので、広い意味におきましては転換が最大の問題だと思います。その意味の転換といいますのは、売り方を変える、つくり方を変えるというような狭い意味から、商品を変える、市場を変える、ほんとに転業するというふうなものまで全部ひっくるめての転換でございますが、その転換に対しまして、私たち金融上の援助措置といたしまして、商工中金なり中小企業金融公庫なりを大いに活用をしてまいりたい。ざらに情報の提供それから新しい分野に入るわけでございますから、経営技術指導、それからまた技術指導、この面も特に強化してまいりたいというふうに考えます。
  41. 近藤信一

    近藤信一君 それは転換事業に対して金融の面をいろいろと御努力なされるわけでありますが、もう一つ業界構造改善計画を進めていく場合に、転換をしたりまた組織をしたりする場合に、私は現在一番不足しておるのは優秀な指導者が不足しておるんじゃないかというふうに思うのです。これは協同組合事業でもそうでございますが、いわゆる小さな経営者が集まってこの計画に乗るわけでございますから、いままでの小企業対策とは全然違ってくるわけなんです。いわゆる営業面においてもまた労務管理面におきましても、いろいろと変わってくる場合、その場合に、やはりそれをいろいろと指導していくという指導者的な人物というものが不足しておるから、いま協同組合事業における計画なんかも挫折しておるようなこともあるわけなので、一体現在行なわれておる問題と、これから行なっていかれる構造改善事業に対して、やはり通産省として指導者を養成して配置するというふうなことが考えられなければ、この計画がよろしいからといってこの計画に乗ってくる、乗ってきて途中で挫折するというふうな結果がいままでもあったと私は思うのであります。だから、商工会におきましては指導員というものが各地区に派遣されておるわけですが、この構造改善計画を進めていって各地にこういう計画に従った事業が出てくるわけでございまするからやはりそれは総括的に指導するということ、常に見回って診断するというふうなものが私は必要でないかというふうに思うのですが、この点、あなたのほうでは将来何かそれにこたえ得るような案というものがおありになるのか、将来の展望について、この点伺っておきまして私のこの問題に対する質問を終わります。
  42. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 先生指摘のように、機械の近代化とか経営の科学的管理とか申しますが、その基本は人であります。また、中小企業者に一番欠けておりますのもこの時代の変化に適応するように企業をこれからリードしていく人、人材が欠けておる点だと思います。したがいまして、これに対します対策といたしましては、私たちまず考えますのは、その中小企業が優秀なる人材を企業内に持ち得るような規模に成長をする——中小企業の適正規模というのは、優秀な人材をその中に持ち得るということが適正規模の非常に大事なポイントではないだろうか、そういう意味の指導をしてまいりたいというのが第一であります。第二は、個々中小企業で持ち得ない場合には、組合共同事業として、組合に優秀なる事務局を持つ。それがためには惜しまずしてその組合費は出していくという啓蒙をやはり中小企業者にするとともに、組合の組織活動を活発にし、そこに人材が確保できるような指導をしてまいらなければいけない。これはいわば一般論でございまするけれども、具体的に政府指導診断についての従来ございます各種の措置制度、これは御承知のとおり各県には総合指導所が置かれておりますし、指導員のみならず診断員も各県に置かれておりまするし、この辺の活用をはかっていくことはもちろんであります。しかし、これだけでは十分でないと思いまするので、本年、実にまだわずかでございまするけれども、中小企業振興事業団に、そういう仕事を専門に担当し、業種ぐるみ構造改善の御相談にあずかるという人間をごくわずかでございまするが予算化をいたしました。この制度はことし芽を出しましたわけでありまするけれども、まず実績をつくりまして、財政当局にもそれをよく認めてもらい、また世論の支持も得ましてこの制度は急速に拡充をしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。  以上のほかに、この指導につきましては都道府県指導が非常に大事でありますし、また原局、原課、すなわち業種担当各官庁指導が非常に大事だと思うのでありますけれども、都道府県とこの業種担当官庁が、この危機というか、非常に重大な時期に当たっております中小企業業種に対して、積極的に熱意を燃やして指導をしていただくということが何よりも大事である、そういうことを中小企業庁としては各省それから都道府県に特に要請をしなければならないというふうに思っております。
  43. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますので、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  46. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 多数と認めます。よって本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  48. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、対米通商問題に関する件につき、通商産業大臣から報告を聴取し、質疑を行ないます。大平通商産業大臣
  49. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 今月の十二日、十三日、米国商務長官並びにその一行が来日をいたしまして、日米間の通商経済問題につきまして意見交換が行なわれました。その概要を御報告申し上げます。  今度の商務長官の来日は、ニクソン政権にとっての最初の閣僚の訪日でありますけれども、具体的に問題を交渉をして結論を得るという、いわゆるネゴシエーションということを目的としたものではなくて、相互の自由な意見交換を通じまして一そうの理解を深めたい。そういうふれ込みでございました。  取り上げられた問題は、大別いたしまして四つあると思います。一つ日本の資本の自由化の問題、第二は残存輸入制限品目の自由化の促進の問題、第三は非関税貿易障害の除去に関連した問題、それから第四は繊維の対米輸出自主規制の問題、この四つであったと思います。  第一の資本の自由化でございますが、今日、自由世界第二位の経済力を誇るようになってきた日本が、いまなお外資に対しまして非常に複雑な、非常に厳重な規制をいたしておるのは全く了解に苦しむ。アメリカは完全に資本の受け入れ、投資等を完全に自由化いたしております。そのことはアメリカのみならずアメリカに投資する国も、アメリカから投資を受ける国も、お互いにいままで利益を享受してきておるように思う。今日の段階になりまして、できるだけ早く一〇〇%の自由化日本に求めたいということでございました。とりわけ自動車のように十数万台も日本の自動車はアメリカ市場に出ておるけれども、日本はわずか三、四千台しか買っていないじゃないか。しかも関税が高くて、物品税が高くて、自動車税が高くて、しかもアメリカの自動車すなわち大型の自動車に一番不利に日本の体制はできておるじゃないか。何としても理解に苦しむという指摘がございました。当方といたしましては、われわれも資本の自由化をしないと言ってはいない。そういう条件を整備いたしまして、できるだけ早く自由化にもっていくべく、昨年の七月の第一次、ことしの三月の第二次、資本の自由化への前進を着実にやっておる。来年は第三次、再来年は第四次をスケジュールとして持って、不断に努力をいたしておる。ただわが国は第一、国民性から申しまして、長くアイソレートした世界におりましたので、あまり外資にもなじんでいないのみならず表面はなるほど生産力は高まっておりますけれども、経済の実態に入ってみますと非常な弱点をたくさん持っておる。たとえば技術水準においてあるいは金融力において、たいへんな格差先進国との間にあるのみならず、中小零細企業、農業という低出産性部面においては、先進国に比べまして非常に高いような状況で、完全な自由化を望もうとしても、環境は、そういうきびしい制約があるので、そういう状況を踏まえた上で漸進的に自由化をやっていっているのだという点が一点と、われわれの目標は五〇、五〇というもの、つまり外資五〇までの受け入れば認めよう、フィフティ・フィフティの方式を一応の目安としてやっておる。これはことばの正確な意味において自由化というものじゃない。自由化というのは一〇〇%のことでございますから。しかし、外資アレルギーが十分払拭されていない今日、またこういう経済の実体を抱えておるので、ひとつ試みにフィフティまでは外資を入れてみよう。外資による資本力、技術力並びに日本労働力市場に対する知識、経営力、そういったものを詰め合わせて比較的いい結果が出てきておるものもありますので、これを一つの目安としてやっていく。それで十分慣熟いたしまして、一〇〇%に自由化していけばいいものがあればやっていくつもりだし、現にそういうものもある。自動車につきましては、それは御指摘のようにいろいろ問題はあるんだけれども、何として企業格差というものは格段の差が日米間にありまするし、いま業界は鋭意体制整備に努力をいたしておるわけであるばかりでなく、去年の八月二十日に日米自動車交渉というのをやりまして、一応の了解点ができておるじゃないか。まだ一年もたたないうちに、われわれとして新しい提案が出るはずはない。しかし、私どもも八月二十日に了解があったから、もうこんりんざいそれに固執するというようなことはしない。条件ができればそれを少し早めるようなものがあるかもしれぬけれども、いずれにせよ、もうそういうことで鋭意やっておるのであって、そういう点について十分の理解を求めたい、そしてその結論といたしまして、自動車の問題については業者レベルで話し合いをさしたらどうだというような提案がありましたから、それは相互の理解を深める意味においてけっこうじゃないかと答えておきました。それが第一点でございます。  それから第二点の残存品目の自由化の問題でございますが、これにつきましては、今度の会談ではそう大きな問題にはなりませんでした。なぜかならば、去年の暮れ、トレザイス特使が参りまして、すでに御報告申し上げましたように、アメリカの関心品目三十幾つかを提示されて、政府も鋭意検討して三月に一応の答えをしたわけでございます。それに対しまして五月にもう一度アメリカから、なおこういう点は努力できないかというようなことを言ってきましたけれども、そういうような点もいま外交チャンネルを通じて交渉中、話し合い中なんでありまするから、今度スタンズ長官とお話し合いをするという性質のものでもなかろうと申し上げ、向こうもそう了解いたしまして、そういう点については深い追及はございませんでした。  それから第三点のNTB、いわゆる非関税障壁の撤廃の問題でございますが、これはすでに御承知のようにガットで非関税障壁の除去について加盟各国は交渉いたしておるわけでございます。スタンズさんのおっしゃるのは、日本側も輸入担保制でございますとか、ユーザンスの標準期限の問題とか、輸入割り当て制度の非常に難解な手続とか、さらには政府の専売制、ともかくわれわれの了解できないような非関税障壁がずいぶんあるじゃないか、ひとつこれはMITIつまり通産省というのは強い権限を持ち過ぎて困るというようないろいろ苦情がありました。あれはまあ業界からもいろいろ苦情が出ているのだと思うのでございますけれども。しかし、われわれのほうもアメリカ側にアメリカンセリングプライスとかバイアメリカンとか関税法四百二条の問題とか、いろいろこちらからもしょっちゅう会うたびごとに言っておる。これはNTBで、つまり非関税障壁で早くやめてくれと言っていることが、これは両方ともあるわけでございます。そこで、ひとつ何とか話し合いせぬかと言うから、いまガットでやっているじゃないかということがございましたけれども、ガットでやるというよりも何よりも、もう少しあれはもっと突っ込んでお互いに資料を出し合って真剣に話し合う場がほしいというようなことを言っておりました。ガットの場でそういう突っ込んだ話し合いをすることもけっこうだし、バイラティラルに日米間でNTBの撤廃問題についていろいろ資料を出し合って検討していくというようなことはけっこうじゃないかということでございます。事実われわれも非関税障壁の問題につきましては、政府自体もいろいろ考えなければいかぬことがあると思います。私も不必要なものを何も置いて置こうとは思っていない。これを除去していくという前向きの方向日本政府努力しようじゃないか、そういうことを申し上げておきました。  それから最大の問題の繊維の問題でございますが、繊維につきましては十二日の会合で触れる時間がなくて、とうとう十三日にもう一度早朝から一時間半もかけてお話し合いをしたわけでございますが、私の印象では、先方の関心は非常に強いということ、われわれが想像したとおり非常に強いということを感じました。おそらく先方の受けた印象も、日本は想像しておったより強いと、お互いにそういう印象を受けたのではなかろうかと、まあ想像するのでございますが、向こうの言い分は、要するに、アメリカの国際収支が商品貿易におきましては——貿易収支におきましては大幅の黒字を記録しておったが、だんだんとそれであとの総合収支でアンバランスを埋めておったわけでございますけれども、貿易収支の黒字幅がだんだん減ってきた。特に繊維なんというのは八億ドルもの輸入超過である、これはアメリカの国際収支の危機に非常に大きな影響をしておるわけで、その大半は日本じゃないかというようなこと、このままいけばアメリカの繊維産業はだんだん衰退して、労働力がつまり日本繊維労働力、雇用がふえて、アメリカの繊維の雇用が減る。労働力が、アメリカから日本に雇用が移動するようなことになりかねないじゃないか。しかしそれよりも何よりも、この話がつかないと、ニクソン政権としては通商拡大法とか新しい貿易自由化への立法をいろいろコングレスにお願いしようとしても、そういうスタートが切れないのだ、したがってLTAで、いままでの綿製品協定ができて、それを踏み台にしてケネディ政権がいろいろ通商拡大法とかケネディラウンドとか、いろいろなことが言えたのだが、これが最初からつまづいてしまうと、たいへん憂慮すべき結果が出るおそれがあるので、何としてもこれは理解してくれぬかというような切々たる、経済的な理由もありますが、政治的な理由、政治的な要因に対して非常に憂慮しておるということがうかがえたわけでございます。そこで当方といたしましては、そういうこと、わからないでもないけれども、いずれにせよアメリカは自由貿易の父であるし、ガットのリーダーであるし、いままで自由貿易、貿易の自由化という方向に強力なリーダーシップを発揮されて、それで貿易の拡大に寄与されてきた、そういう国柄なんで、それがこの自由規制を毛織物や毛繊維や化織にまで及ぼそうということになってくると、時計の針を逆に回すようなことでアメリカのプレスティジのためにもとらないし、そんなことになると、第一世界の貿易全体が縮小してくるおそれがある、だからどうしてもそんなことは断念してくれ、むしろ国内におきまして日本もやっているのだが、構造改善政策をあなたのほうもおやりになって、それで供給力をふやしていく、供給能力、適応力をふやしていくようにしたほうが非常にオーソドックスなやり方じゃありませんかという点、しかしそれでもどうしてもいけないという特殊な繊維分野で非常にフェータルな影響が起こるというようなことが起きた場合にはガット十九条の援用の道があるんじゃないか、ガット十九条によってガットに提訴する道があるんじゃないか。ガットの体制のフレームの中で解決するように努力してもらいたいということを切々とこっちも向こうの反省を求めたわけでございますが、そういうようなことに対して、いろいろ向こうも七十億ドルも使ってずいぶん改善をやってそれで技術水準も上がったし、供給力もふえたけれども、もういまからこちらが言うように、この上この政策を入れてもたいして余地がないというのです。ガットに提訴するなんということでガットに提訴するとなると、おそらくアメリカがそういう提訴する条件を満たしておるかどうかということを、ガットの中でいろいろ被告の立場で調べられますし、そんなことをやるよりも端的に輸入規制の法案を出すほうが簡単だというふうなことで、コングレスのほうの反応はそんなことではなかなか克服できないように思う。こちらの言うことに対して遺憾ながら消極的な反応でございました。日本としては国会から労働組合に至るまで、もういま全部、こういう自由貿易に逆行するような措置、アメリカの繊維産業の雇用や収益や生産の状況からいって、どうも理由がないんじゃないかという空気が非常に一般的に浸透しておるので、政府の立場でひとつこれに賛成せよといっても賛成できるという立場にはない。そういう理由もない。国際会議でそれじゃ討議したいから応じてくれるかというと、それに応ずるというようなお答えをすることもできない。非常に残念だが、これはお考え直し願わなければならないということで別れようとしたら、引き続き外交ルートで話し合ってくれというようなことでございました。資料の交換とか、対話の継続といいますか、そういうことはそれじゃやりましょうということでお別れいたしたわけでございます。それがあらましの経過と結果でございます。
  50. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまの報告に対し、質疑のある方は御発言を願います。
  51. 近藤信一

    近藤信一君 ただいま大臣から報告されました点について二、三お尋ねしておきたいと思うのですが、去月当委員会ではアメリカの繊維製品輸入制限の方策について反対の決議をいたしました。また去る五月の九日にも衆議院では本会議でこれを全会一致で同様の決議をしたわけであります。このことは大臣御承知のとおりだと思います。このようにアメリカのやり方に対しては国民の総意というものがもう決定しておる。そこでアメリカの商務長官であるスタンズ氏は、五月の十月に来られまして十三日に離日されたわけでありますが、その間に外務大臣、通産大臣が会見されて、その内容についてはいま若干御説明がございましたが、その際に通産大臣は、こうした日本の国民の総意というものをスタンズ長官に伝えられたのかどうか、この点はいかがですか。
  52. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) そこが問題のポイントであると私も心得まして、日本繊維産業というものは、アメリカにおいて繊維産業が大きなウエートを占めている以上に日本繊維産業というものが全産業の構成の中で、雇用の構成の中で非常に重大な地位を持っている。こえがしたがってアメリカにおいて政治問題である以上に日本においても政治問題であるという御理解は持っていただかなければ困る、それが第一点。  それから第二点は、いま近藤委員が御指摘のように、国会は与党ばかりでなく野党、政府業界、労働界、言論界、もうすべての分野におきましてアメリカの繊維の現状から見て、そういうことをやる必要がまずないじゃないかということ、これは自由貿易の精神に至大の悪影響を及ぼす意図であるということにおいてみな一致した確信を持っておる。したがって、これに対しましてはあなたのほうがむしろ国内対策として、あるいはガットの場における許された道をとることによって問題を提案、問題に対して措置されるというようなことをとるべきが望ましいのであって、アメリカの政治問題をこちらの犠牲において処理しようということに対しましては、われわれはとうてい同意ができるはずはないということにつきましては、るる御説明を申し上げましたし、先方も相当程度理解をされたのではないかと私は思っております。
  53. 近藤信一

    近藤信一君 十四日の新聞の報ずるところによりますると、スタンズ長官が離日にあたりまして毛・合繊の自主規制に対する日本側の出方がよくなかったといって失望した、こういうふうな記事が出ているわけでありますが、特に通産大臣はかつては外務大臣をやっておられまして貿易外交については私は相当熟知しておられると私は思うのであります。やはり今後この問題についてはスタンズ長官は了解したのじゃなくて、失望して帰った、こう聞いておりますので、この問題についてはまだ再三今後いろいろと会談がなされるだろうということが予想されるわけでございます。そうしてこれに対するところの解決策というものは一体どういう点でこれが一致するのかどうか、こういう問題について通産大臣は一体どのようなことを考えておられるのか、またアメリカ側の出方に対する日本側のこれに対する態度というものはどのようなものがあるのか、この点はいかがですか。
  54. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 先方がたいへん失望されて帰国されたと私も思います。それは私どもは当初から予想いたしておったことでございまして、日本が色よい返事ができる性質のものではないわけでございますから、やむを得ないと思いますが、しかし先方は、この自主規制を関係輸出国に求める意図を、もうやめたと言っていないのです。ですから、おそらく仰せのようにこれからどういうようにわれわれのほうへ話を持ってこられるか逆賭できないと思います。どの道をとりましてもたいへんむずかしいことになると思います。すなわち日本をはじめ関係輸出国に輸出規制を要求いたしまして、それらの国々がみな反対だということになりますれば、これはアメリカといたしましてたいへん苦況に立つであろうと思います。したがって、何らかの形で国際会議を持って、そこに出てきてもらって、もっと討議を続けたいという努力を先方はされるであろうと思いますが、これに対しましても、先ほど申しましたように、日本側でこれに応諾をするというわけにいかぬだろうと思います。言いかえれば、この問題につきましては、非常にもう氷が張ってしまっておるわけでございまして、政府は何か弾力的な措置があるというような性質のものでないと思うのでございます。いままでとってまいりました既定の方針で貫いていかなければならぬと思います。もしそれにアメリカ側が成功しない場合に、それじゃアメリカ側がどうやるかという問題でありますが、これは私どもの手の届かない問題でありまして、アメリカの政府と国会がどういう対応策考えられますか、いわゆる輸入制限立法というものをやらざるを得ないのだというふうなことをたびたび言われておりますけれども、もしそういう措置をとるといたしますれば、これは世界全体の自由化の潮向きをとめてしまうのですから、むしろ逆行する措置になりますから、これはもうアメリカばかりでなく、世界経済、貿易全体の大きな転換期になるわけでございまして、こういう大きな政策手段はなかなかアメリカとしてもとりにくいお立場におるのではなかろうかと私どもは想像いたします。といって、この問題は政治的にはもうニクソン政権の選挙公約でございますから、ニクソン政権といたしましては、何としても公約いたしたことの履行を迫られる。そういうどこを見てもたいへんむずかしい状態に入っておるような感じがいたします。そういう重要な問題でございますから、日本政府が、これはこうしたらうまくいくじゃないか、こういうようなごく手軽に対案が出せるような問題では決してない。いまからアメリカがどうされますか、各国がどう反応しますか、アメリカの国内でどのような反応が出てくるか、そういった点を慎重に注視してまいるよりほかに、いまのところ分別はないのであります。
  55. 近藤信一

    近藤信一君 このたびのアメリカの繊維製品の輸出の自主規制の要求というものは、アメリカの自由貿易の本来のたてまえからいくと、これは自由貿易に反するものである。しかし、それをあえて日本側に要求するということは、これはニクソン大統領が選挙中に南部の支持を得るために一つの手を打った、こういうことで、これは政治的な債務だ、これを解決するための方途じゃないかと私は思うのであります。いわゆるこれはアメリカの国内事情からこういう問題が出ているんだと私は思うのであります。やはりスタンズ長官の要求というものは、日本側としては当然これは拒否できるものであると私は信じております。もし拒否できないような軟弱外交であっては私はいけないと思うのですが、その衝に当たられる者は外務大臣であり通産大臣であると私は思うのですが、その点について、通産大臣としての強い決意というふうなものをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  56. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 静かな決意をもって対処していかなければならぬと思っております。つまりアメリカの言うのは、確かにニクソン政権の公約ではあるが、これは先生確かに自由貿易に逆行するものであることも承知だが、新しい自由通商、先ほど申しましたように、通商拡大をもたらすいろいろな措置を講じていく場合には、これを解決をしておかぬと、もうコングレスその他が動いてくれないのだと、これだけは唯一の例外として除いてくれというのが切々たる訴えのようでございまして、それはあのニクソン政権の置かれた立場に対しましては、われわれも政治の側といたしまして一応の立場はわかるのでございます。しかし、日本の立場で、いま近藤委員がおっしゃるように、これに対して何かできるかというたら、これはとても処置のとりようのない非常に悲劇的な案件であると私は考えておりまして、外務大臣も私どもと同じ、手のうちに余裕など全然ございません。
  57. 近藤信一

    近藤信一君 最後に一点、自動車の自由化についてお伺いしておきたいことは、これは本委員会でもかつて私が自由化について御質問を申し上げたことがあるのですが、やはり今回も、スタンズ長官はこの点についてもやはり不満を持っておられる。日本の自動車の自由化に対してはけしからぬというふうなことを言っておられるわけでございます。そこで、最近通産省としても、自動車の自由化については何らか方策を講じなければならぬということを考えておられるようでございまするけれども、やはり一方におきましては日本側繊維製品の自主規制は反対だと、こう言いながら、その反面では、自動車はこっちは資本自由化だめですよと言ってお断わりしておる。何かここに矛盾が生ずるような気持ちも私するわけでございますが、この自動車の自由化は、だからといっていつまでもだめだだめだということではらっておくわけにも私はいかないのじゃないか、やはりこの点、日本もだんだんと追い込まれてくるというふうなことが思われるわけなんです。やはりこのことにつきましては、またいずれ本委員会におきまして詳しく御質問を申し上げたいと思うのですが、この自動車の自由化に対して、通産大臣として、現在、将来どのように一体これを進めていくかということを考えておられると思うのですが、そのお気持ちはいかがですか。  以上をもちまして私は質問を終わります。
  58. 大平正芳

    ○国務大臣(大平正芳君) 今度の四つの問題点を先ほど御報告申し上げましたが、一、二、三はアメリカの言い分よくわかるわけです。繊維以外はアメリカの言うことに間違いはございません。ただ、そういう要望に対して、どういう速度とどういうタイミングにおいて対応できるかということが問題なんでございます。御指摘の自動車でございますが、これは確かにもう向こうがやり場のない不満を持っておるということは、これはよくわかるのでございます。日本政府業界がいかにもかたくなじゃないかと言われてみると、まあそうかなという、そういう感じは私正直にいたします。ただ私どもの良心のささえは、少なくとも自由化に前進して行っているのですよ、逆行ではなくて自由化に。繊維とは違うのです。繊維は逆行しておるのですからね。ほかに何ぼいい点数を取っても、これはあとで逆行するところを一つつくったのでは、アメリカの名誉のためによくないと思うのですけれども、日本はカメの歩み、いかにのろくとも、ともかく前進していって、そのまま後退しないというのだから、それはわかってくれと言って、しかし八月二十日に約束した、先ほども御報告申し上げましたように約束した線で、つまりあれは七二年からエンジンや部品は自由化しますとかという一連のそれまでは割り当て量をふやしますとかいう一連の了解でございますが、そういう了解でもう自動車はそれだけやっておればいいんだというような、ぞんざいな考え方は私持っておりません。したがいまして、政府も鋭意努力検討しなければなりませんが、業界におかれても内外の状況はよく御存じであるはずでございまするから、十分自由化体制に対してどのように身がまえるかということについて御検討願わなければなりませんし、事実検討は行なわれておるようでございますし、自動車業界繊維との全体を御心配になっている経団連その他との間でも相当真剣な討議がなされておるということでございまして、いま近藤委員指摘されたように、これではぬるま湯の中でじいっとしているというわけにはいかぬということは、日本の産業界全体として、政府も含めまして日本側でも非常に論議が高まってきております。したがって、私どもはこの論議を通じまして、検討を通じまして、いままでわれわれが考えておった頭にあるスケジュールをできるだけ早めていくということをやってまいらなければなりませんし、そうすることによって対日信用というものをアメリカはじめ諸外国につないでいかなければならぬと思っておりますから、私がいま申し上げられることは、いつから自由化できるかというような時期を明示できる自信もまだありませんけれども、そういう状態ではいけないので、体制の整備、自由化への身がまえというものについて、官民とも真剣に検討を重ねて、できるだけその時期を早める努力をいたさなければならぬ。そういう機運もだんだん出てきておるということを申し上げるのが精一ぱいのただいまの考えでございます。
  59. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  次回は公報をもってお知らせすることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十四分散会      —————・—————