○国務大臣(大平正芳君) 御
指摘のように、わが国の海外市場における
輸出繊維品のシェアでございますが、これは発展途上国に比較いたしましていまたいへんおくれをとっておりますことは御
指摘のとおりでございます。その内容をたとえば米国市場において見てみますと、綿、まくらカバー、シーツのように、急激に発展途上国が伸びておるのでございます。三十九年に一二%であったものが四十二年には四三%に躍進いたしております。それに引きかえまして、わが国は三十九年に八二%のシェアを持っておったのが五一%に低落しておる。これは顕著な例でございますが、そういう
傾向がはっきり見えております。その他の
繊維品につきましても、そういう鋭角的な姿ではございませんけれ
ども、漸次シェアがわがほうに不利に働いておりますことは仰せのとおりでございます。それから
輸入面を見てみますと、三十九年に六千百万ドルであったものが四十二年に一億一千八百万ドルと漸次わが国に対する
輸入がふえております。それは申すまでもなく
綿糸が圧倒的に多いのでございます。この前から本
委員会でもわれわれから御報告申し上げておりましたとおり、わが国の
繊維産業の構造が先進国に比べまして非常におくれてきた、
生産性もまた非常に格差がついてきたということがそのおくれをとりました大きな原因の
一つであると思うのでございます。
私
どもといたしましては、まず第一にみずからの体質を改善いたしまして、自動化率を高め、
生産性を高めまして、先進国との競争におくれをとらないだけの体制を整備せねばならぬ、それが第一でございます。それからいま後進国の追い上げの
状況でも申し上げましたように、低級品あるいは二次加工品等、チープレーバーを利用いたしましたものにおいて追い上げがきいてきておる
関係がございますので、われわれが
体質改善していく場合に、その方向をどういたしましてもより高級なものに指向してまいらなければならぬ、あるいは多様なものを開発していくことによって追い上げをはねのけていかなければならぬということが切実に
要請されておると思うのでございます。
特繊法、近促法等をまつまでもなく、
繊維産業は、いま大きな試練に立っておると思うのでございます。したがって
政府としては、そういった時代の
要請に即応した実効ある政策を着実に推し進めてまいらなければなりませんが、ただ
業界は、御承知のように非常に数が多うございまするし、たいへんまとまりのむずかしい
業界でございますので、こういう
近代化への政策を実行していく上におきまして、いろいろな制約がたくさんあるわけでございますが、鋭意そういった障害を軽減ないし除去してまいりまして、思い切った体質の改善に持っていかなければならぬと思います。
それから第二の問題といたしまして、世界市場の自由化という点に特段の配慮を払わなければならなくなっております。とりわけ
繊維品についてそのことが
要請されておると思うのでございます。われわれは数年前
綿製品協定というようなものに同意いたしたのでございますけれ
ども、そのことはいま振り返ってみますと、実際の実行の過程におきまして、ますます緻密なものになり、それが桎梏となりまして思うような進出が非常に巧妙にはばまれておるという苦い経験を持っておるわけでございまして、あるいはこれを拡大強化するという
動きが見えておる今日、こういった過去の苦い経験を踏まえた上で、自由化をはばむというような
動きに対しましては、全力をあげてはね返す用意がなければならぬと思うのであります。その他いろいろあると思いますけれ
ども、大まかな
考え方といたしまして、そのような気持ちでおるわけでございます。