○
政府委員(
住栄作君) この
納付命令制度につきましては、一昨年の
改正案につきまして、
先生御
指摘のように、たとえば
職業安定審議会におきましては、
社会保障制度全般に関連する問題であるので、慎重に検討しなさい、それで、当面の課題としては、
不正受給の発生を防止するための
行政指導の強化及び
返還命令制度の活用につとめるとともに、きわめて悪質な事例については、
告発措置を厳正に行なうことをもって対処すべきだ、こういうようなこと、それから、
社会保障制度審議会におきましては、今回の
追徴金制度の
創設については、なお慎重に
考慮すべき点が少なくない、こういうような御
意見をいただいておったわけでございます。私
どもとしましては、そういういきさつもございまして、
審議会の御
意見にもございますように、
行政努力によってそういった
不正受給が起こらないようにつとめたのでございますが、その後の
状況を見ましても、依然として
不正受給が減らないし、むしろ増加を続けている、こういうような
状況でございます。私
ども、なぜそういうことになるかということを考えてみます場合に、いろんな点があると思いますけれ
ども、
一つは、不正が発見された場合に、現在
返還命令制度があるわけでございますが、返せばいいじゃないかというような気持ちが
受給者の中にあるのではないかということ、それから、もちろん不正の場合には、現行
制度におきましては、刑罰規定の
適用がございます。これは詐欺罪になるわけでございますが、詐欺罪には、罰金刑がなくて、懲役刑のみになっております。そういう
意味で、刑罰規定の発動ということにつきましては、
失業者という点からもなかなか発動しがたい、こういうようなことでございます。それから、もともと
失業保険制度は、こういう
不正受給が起こりやすい本質を持っている。他の
社会保障制度と比べてみた場合に、
失業は、老齢とか、病気、こういうものと違いまして、労働の意思と能力があって
求職活動を続ける、こういう
状態でございますので、事実の認定につきましても、本人の申告に待たなければならない点が非常に多いということ。他の
社会保険制度においては、ほとんど
不正受給がございません。
統計すらないような
保険制度もございます。しかし、
失業保険制度には、先ほど申し上げましたように、現在でも約三万件近く、
不正受給金額にいたしまして、五億円近い
不正受給額がございます。こういうことを考えまして、今回の
改正案に再び
納付命令制度を設けて御審議をお願いしておるわけでございますが、これにつきましては、たとえば安定
審議会におきましては、
労働者に酷なものとならないように、運営について慎重な配慮をすべきだ、あるいは
社会保障制度審議会におきましては、不正の認定、不正の種類に応じた納付金の
基準など、実際の運用に当たっては、慎重な配慮を必要とするということで、この
制度そのものについてはお認めいただいたと思っておるのでございますが、その
改正案にいたします場合におきましても、原案では、納付命令額を
不正受給額の二倍以下といたしておりましたのを
不正受給額と同額以下、それからその納付を命ずる場合におきましても、どういう
状態の場合に納付命令を出すかということにつきましては、
職業安定審議会の
意見を聞いて定める、一定の
基準に基づいてやる、こういう
制度にいたしておりまして、
失業者にとって酷にならないように、いろいろ配慮をいたしておるつもりでございます。
なお、
委員長から御
質問の、他の
保険制度におきましても
返還命令制度、それから罰則の規定はございます。
納付命令制度は、わが国の場合ございません。今回の
改正案に初めて顔を出してきた
制度であります。