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1969-03-18 第61回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月十八日(火曜日)    午後一時十六分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月十七日     辞任         補欠選任      中村 英男君     阿具根 登君      渋谷 邦彦君     田代富士男君  三月十八日     辞任         補欠選任      田代富士男君     渋谷 邦彦君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         吉田忠三郎君     理 事                 上原 正吉君                 鹿島 俊雄君                 大橋 和孝君                 上林繁次郎君     委 員                 黒木 利克君                 高田 浩運君                 徳永 正利君                 山下 春江君                 山本  杉君                 横山 フク君                 阿具根 登君                 上田  哲君                 小野  明君                 藤原 道子君                 渋谷 邦彦君                 中沢伊登子君        発  議  者  藤原 道子君    国務大臣        厚 生 大 臣  斎藤  昇君    政府委員        人事院事務総局        職員局長     島 四男雄君        科学技術庁研究        調整局長     石川 晃夫君        厚生政務次官   粟山  秀君        厚生省環境衛生        局長       金光 克己君        厚生省環境衛生        局公害部長    武藤琦一郎君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        大蔵省主計局主        計官       辻  敬一君        厚生省環境衛生        局食品衛生課長  野津  聖君        厚生省保険局医        療課長      松浦十四郎君    参考人        油症研究班員   五島 応安君        カネミ倉庫株式        会社専務取締役  梅田 新藏君        カネミライスオ        イル被害者の会        会長       宇治野数行君        カネミライスオ        イル被害者の会        連絡協議会会長  紙野 柳藏君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○自然公園法の一部を改正する法律案内閣提出) ○出産手当法案藤原道子君外一名発議) ○社会保障制度等に関する調査  (米ぬか油中毒事件に関する件)  (看護婦の充足に関する件)  (水俣病に関する件)     ―――――――――――――
  2. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十七日、中村英男君及び渋谷邦彦君が委員辞任され、その補欠として阿具根登君及び田代富士男君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) この際、参考人出席要求につきましておはかりいたします。  米ぬか油中毒事件に関する件の調査のため、本日、本委員会に、油症研究班員五島応安君カネミ倉庫株式会社専務取締役梅田新歳君、カネミライスオイル被害者会会長宇治野数行君及びカネミライスオイル被害者会連絡協議会会長紙野柳藏君を参考人として出席要求いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     ―――――――――――――
  5. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 次に、自然公園法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。斎藤厚生大臣
  6. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) ただいま議題となりました自然公園法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  現在の自然公園法は、陸上の風景を保護し、これを適正に利用することを目的としておりますが、わが国周辺の海域には熱帯魚サンゴ海藻等美しい海中景観がありますので、これを保護するとともに、これを観賞し、もって国民保健、休養に資することが必要であり、とのため所要改正を行なおうとするものであります。  以下、改正の要点につきまして御説明申し上げます。  第一に、厚生大臣は、すぐれた海中景観保護するために、現在のもののみならず、今後指定する国立公園または国定公園海面に、海中公園地区を指定することができることといたしております。  第二に、海中公園地区においては、熱帯魚サンゴ海藻等海中の主要な景観要素である動植物の採捕、工作物の新築、鉱物土石採取海面の埋め立て、物の係留等を行ならときは、厚生大臣または都道府県知事の許可を受けなければならないこととし、その景観保護することといたしております。  また、海中公園地区周辺一キロメートルの海面においては、鉱物土石採取及び海底の形状変更を行なうときは、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならないこととし、必要な場合にはこれを規制することができることといたしております。  第三に、海中公園地区内においては、ごみその他の汚物をみだりに捨てる等利用者に迷惑をかける行為をしてはならないこととしております。  その他所要改正を行ならことといたしております。  なお、この改正法は、公布の日から施行することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  7. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 本日は、本案に対する提案理由説明聴取のみにとどめておきます。     ―――――――――――――
  8. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 次に、出産手当法案(参第三号)を議題といたします。  発議者から提案理由説明を聴取いたします。藤原道子君。
  9. 藤原道子

    藤原道子君 ただいま議題となりました出産手当法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  わが国母子保健現状を見ますと、妊産婦死亡、異常産、新生児死亡はきわめて高く、その上心身障害児出産も最近上昇しつつあると憂慮されております。すなわち、出生一〇万に対する妊産婦死亡率国際比較によれば、戦前昭和十五年においては、日本二三八・六、アメリカ三七六、カナダ四〇〇・三、フランス一八一・二、スウェーデン二一六・一であったのが、戦後には世界各国とも妊娠出産を国の手でと競って母子保健政治の重要問題として取り上げてまいりました。その効果は現実にあらわれ、昭和四十年度において、イギリス一八、フランス三二・二、アメリカ三一・六、スウェーデン二二・八と妊産婦死亡率減少を見ているのが現状であります。しかるに、わが国においては、昭和四十二年の最近の統計でも八六という高率を示し、かつ乳幼児死亡も死産として扱うなど、乳幼児死亡減少を誇示してるのは、悲しむべき現状であります。  次に、妊産婦死亡の主たる原因となっているのは妊娠中毒出血子宮外妊娠といわれ、特に妊娠中毒妊娠中の母体栄養不足、過労によるということは実に重大といわなければなりません。  このことは、社会環境の未整備、低賃金、殺人的交通地獄等々がこの悲劇となっていることを見逃がしてはなりません。  また、最近、心身障害児問題が社会的に大きく取り上げられております。この子たちには機能訓練医療保護が必要であり、特に重症者には国の責任で終生処遇しなければならないことは言うまでもありませんが、こうした不幸な子供たちが一人でも出産しないように努力することこそ真の政治でなければなりません。今日、専門家の間で、この出産原因の九〇%近くが妊娠中及び周産期にあると云われております。  母体保健管理を完全に行なうことにより心身障害児発生数は半減するとの学者専門家の意見に対して、国は真剣に考え、国の重要施策として取り組むべきであります。  昭和四十年八月に母子保健法が制定され、母性の尊重、乳幼児の健康の保持増進がうたわれておりますが、わが党の強い主張にもかかわらずその対象とするものはごく一部の低所得者層に限られ、すべての母と子は全く放置されて今日に至っております。  また、諸外国の例によれば、自宅出産は、救急の場合、医師、麻酔医及び看護婦が輸血の設備ある救急車でかけつけるなどの処置により、出生児のとうとい生命が救われております。  ひるがえって、最近の日本においては、自宅出産から施設出産が八七・七%に増加しておるものの、その施設はまちまちであり、政府御自慢の母子健康センターにも多くの問題があります。しかも、わずか一五%の自宅出産でありながら妊産婦死亡のうち出血が大きな原因を占めている状態を、断じてこのままに放置してはならないと思うのであります。今日、日本医学医術の進歩は世界有数といわれるとき、それに見合った施設整備を急ぎ、生命を産むためにその生命を失う悲劇を一日も早くなくすべきであります。  さらに、現行医療保険制度における出産給付は、各保険により異なっており、たとえば一番手厚い保護を必要とする国保は任意給付であるなど、大きな格差が生じております。  また、その給付額見舞金程度の僅少なものが支給されているにすぎないため、出産に要する費用国民に大きな負担を負わせているのが現状であります。すなわち、出産の際病院における支払いは、地域により三万円から五万円で、そのほかに栄養剤や赤ちゃんの衣服等を入れると、さらに加重な負担となってまいります。  したがって、母子一体理念から、妊娠手当出産手当児童手当等が国の責任とされていることは、今日国際的にも常識となっているところであります。出産費用については、先進国であるイギリススウェーデン、ソ連などは全額国負担しているのであります。  わが国においては、これまで、出産をはじめとして子供家庭で養育することは、家庭の本来的な機能であるとされておりました。  子供は、次代社会をになうべき重要な責務があり、単に両親だけの子供ではないのであります。この意味からも、いままですべて個人的に処理されてきたものを社会責任として見て、きたるべき世紀の社会にふさわしい心身ともに健全な児童を育成しなければならないのは当然であろうと思います。  以上の点からこの法案を提出いたしました。  次に、本法案について、その概要を簡単に御説明申し上げます。  この法案基本理念として、出産次代社会をになうべき者の出生をもたらすという重要な意義を有するものであることにかんがみ、出産に対する社会責任を明らかにしたのであります。  そのおもな内容は、出産に関する手当は五万円とし、第一期、妊娠四カ月五千円、第二期、妊娠八カ月一万五千円を検診料及び出産準備費とし、第三期、分べん費入院に要する費用を三万円といたしました。  認定市長村長が行ない、給付についての異議申し立てができる。時効は二年とする。手当額は三年ごとに再検討する。施行期日は四十五年四月一日とするなどであります。  経過規定といたしまして、現行各種医療保険制度による給付の五万円をこえる者については、そのこえる額について保険の従前の支給を受けることができることといたしました。  なお、本法案に関連して、働く婦人の保護見地に立って、つわり休暇及び産前産後の休暇をおのおの八週間に改善する必要があるので、わが党は労働基準法の一部を改正する法律案を近くこの国会に提出する予定にしております。  以上、この法案提案理由及び要旨を御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決されるようお願いする次第であります。
  10. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 本日は、本案に対する提案理由説明聴取のみにとどめておきます。     ―――――――――――――
  11. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 次に、社会保障制度等に関する調査議題といたします。  まず、米ぬか油中毒事件に関する件について調査を行ないますが、先ほど決定されました四名の参考人方々の御出席を願っております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、御出席いただきまして、まことにありがとうございました。米ぬか油中毒事件実情について御報告を願うとともに、忌憚のない御所見等を拝聴いたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  では、これより御発言を願いますが、まず参考人の方からお一人五分ないし十分程度で御発言を願い、そのあと委員からの御質疑に対しお答えを願うようにいたしたいと存じますので、その点をあらかじめお含みおきをお願いいたします。  御発言の順序は、五島参考人梅田参考人宇治野参考人及び紙野参考人でお願いいたします。  まず五島参考人にお願いいたします。
  12. 五島応安

    参考人五島応安君) 米ぬか油中毒症発生いたしました経過、並びに現在までやってまいりましたいろいろな研究結果の報告などをいたします。  初めて患者が参りましたのは、一九六八年の六月でございます。それから十月までに、われわれ九州大学医学部皮膚科教室に、四家族患者十三名が参っておったわけでございます。  これらは、臨床所見からいたしますと、有機塩素に基づく塩素ざ瘡であるという考え方は最初から持っていたわけでありますが、患者の住んでおりますところが小倉市及び福岡市、それから大牟田市という生活環境の相違がございます。この塩素ざ瘡は、一般産業医学で取り上げられる問題でありまして、一つの職場に従事する人に起こってまいります。今回の場合、家族発生という点、また、生活地域が異なっているという点に問題があったわけです。それに、患者の二、三におきまして全身の毛孔が非常に著明になり、過去の塩素ざ瘡とは多少異なった所見があったわけです。脂質代謝角化現象の問題は今日学問上の一つの課題になっているわけであり、そういうことから、食事等をも考慮いたしまして、一応八月中旬には米ぬか油原因ではないかという想定はすでについており、油の性状また混入毒物等調査していたわけであります。  その後、新聞紙上で取り上げられますに及んで、患者発生がかなり多いということがわかりましたので、九州大学といたしましては、本症に総合的に取り組むため研究班をつくったわけでございます。研究班は、臨床を取り扱います臨床部会、それから疫学を見ます疫学部会、それからいろいろその油の中の成分について検討する分析部会、そういった三つの班に分かれました。私個人は、臨床部会班員でございます。その後、いろいろな調査が行なわれてまいったわけでございます。  患者発生状況から申し上げますと、患者は大体において二月五日、六日、七日のカネミライス油によって起こっておるということが確認されております。患者発生いたしましたのは、早いもので三月、多くは六月から八月を中心に発生をしてきておるようでございます。  症状が若干異なりまして、最初は、目やにが出るとか、あるいはからだがきついというような症状を伴って、皮膚症状が出てまいりますのは多少前者におくれるようでございます。従来、塩素症瘡というものが皮膚科学的に取り上げられてきたわけでありますが、今回の場合、経口的に摂取しておるということで、若干全身的な考慮が必要であろうというような見地に立って、種々の内科学的な検査も行なわれたわけでございます。しかしながら、いままでルチンにやっております臨床生化学的検査では、明かに異常と思われるような所見はひっかかってこないのです。それで、多少考えてみますれば、肝機能一つでありますアルカリフォスファターゼとか、血清中トランスアミナーゼの上昇とか、それから血液における脂質――トリグリセリッドの増加、それから蛋白分画における変動、あるいは貧血、まあそういったようなものが見受けられまた。肝臓について、一人、患者の協力を得まして生検をいたしましたが、生検の所見といたしましては、光学顕微鏡的には著明な変化は認められない。それから電子顕微鏡で見ますと、粗面胞体減少とか、滑面胞体増加が見られる。また、微小体増加も認められて、一応、油症患者というものには、現在のところ、生検の結果は肝障害所見は認められない。ただ、薬物中毒の際に見られる適応現象が存在するものと認められるという結論を得ております。  それに関連いたしまして種々動物実験が行なわれたのでありますが、まあ動物と人間は多少違うものですから、いろいろ言えませんが、動物の場合におけるカネクロール体内分布というようなものを見てみますと、まず一番集まるのは皮下脂肪です。その次が肝臓、それから腎臓、脾臓、脳といったところに分布をするようです。それで、一番集まる肝臓ですが、人体の場合には少なくとも生検所見光学的顕微鏡像並びに電顕像においていまのところいわゆる脂肝状態は見られないということです。種々有機塩素による障害の場合には、まあいろいろ報告あるわけですが、一番多いのは脂肝ですが、この場合には脂肝状態は認めていないというような結果です。  それからいま一つは胎児の問題ですが、本症に関連して黒い赤ん坊が生まれたというような報告がありました。私自身が見たのは六例です。それらについて、子供皮下脂肪から同様にカネクロール四〇〇を検出しております。また、動物実験でも、母体から子供カネクロールが移行することは明らかにされておるようです。まあそういうことです。  それからいろいろデータは持ってきておりますが、御質問に応じてあと発言いたしたいと思います。以上です。
  13. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) どうもありがとうございました。  次に、梅田参考人にお願いいたします。
  14. 藤原道子

    藤原道子君 委員長、ちょっとお願いですが、もうちょっと声を大きく御説明願いたい。
  15. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 委員の方がちょっと聞き取りにくいということでございますから、たいへん恐縮でございますが、これからもうちょっと声を高くして参考人の方にお願いいたしたいと思います。では、梅田参考人にお願いいたします。
  16. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 昨年、油症事件を引き起こしまして、患者皆さま方並びに社会的にたいへん不安を起こしましたことにつきまして、衷心この席をかりておわびを申し上げる次第であります。  何といいましても、われわれといたしましてああいう事件を引き起こしまして、とにかく患者皆さまに一日も早く全快してなおっていただく、これがまず第一のあれでありまして、九大油症班のいろいろな御努力もありましたのでありますが、私のほうといたしましても、油症が確定されました患者方々に対しましては、とりあえず治療費のあれとして二万円ないし一万円を贈呈いたしまして、一応お見舞いを兼ねてやらしていただきまして、そうして、その後の治療につきましては、患者さんの負担の分につきまして私のほうで負担さしていただくように、たしか福岡県が油症関係では確症患者の方あるいは認定等が一番早く済みましたので、福岡県が十二月の下旬であったと思います。それ以後の治療費については、患者さんの方に御負担をかけぬようにまいっておる次第であります。  現在のところ、福岡県では、確症の方が決定しておりますのが、三月七日現在で三百三十四名の方。それから長崎県で現在正式に私のほうが通知を受けておりますのが二百六十二名の方。それから佐賀県が十七名。山口県が十一名。高知県が十五名。広島県がまだいま調査中の段階であるようでありまして、三月末に確定するのが四十名くらいになるのじゃないかというふうな情報が入っておる次第であります。愛媛県が現在のところ五名が確症の方がきまったというふうな情報が入っておりまして、現在正式にお知らせを受けておりますのが大体六百四十名の方の御報告を受けておる次第であります。  何と申しましても、われわれとしまして、こういう事故を起こしまして、まことに申しわけないと思っておるわけであります。何ぶんにも中小企業の悲しさでありまして、患者の皆さんの治療あるいは補償等の問題につきましても、何としても会社のみんなが働いてそうしてこれにお報いする以外にないわけでありまして、目下会社の再建につきましてわれわれ鋭意金融面なりあるいは関係方面に折衝いたしておるのが実情であります。  簡単でありまするが、これをもちまして……。
  17. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) どうもありがとうございました。  次に、宇治野参考人にお願いいたします。
  18. 宇治野数行

    参考人宇治野数行君) 患者としまして、市や県が私たち患者に対するいままでのとられた態度と、私たち不信に思っている点を、一言述べてみたいと思います。  当初この問題が持ち上がりました当時、十月の十一日、県の衛生部で市の衛生局と同時に対策本部で話し合われました結果、問題になっておりますカネミの油の販売停止の勧告を決定し一応勧告したわけでありますけれども、この勧告した席上で、カネミ社長の、管理には自信があると、だから販売してもいいじゃないかというこの発言に対して、市は、それならそれでけっこうだということで、販売中止を勧告しておりながら、またそれを許可しているような状態にあるのであります。その後、山口県では、十月の十四日に販売中止命令を出しておりますが、地元の福岡ではやっと十五日になって初めてその措置をとっておる始末です。  また、証拠品かん入り油の回収にしましても、私のところですでに十二日に製造番号(〇二 ○三三〇)の番号がはっきりしておりましたのに、このかん性質を調べるために、どういう意味のもとにこの番号がしるされたかを会社に聞けばすぐわかるというこのような状態を、会社におそるおそるおそれながら問うた結果が十六日になって初めてかん番号性質を知ったような手おくれの状態といいますか、われわれ愚者にとっては不信調査のやり方をやっておるわけであります。その後の保健所調査も、十月末ごろ私のところにたったの一回来られただけです。九大入院後もわれわれ患者は病状がますます悪化するばかりで、ほかの患者さんはどうであろうかということで連絡をとるために保健所にも行ってみました。ところが、市の衛生局係長からの通達がありまして、患者名簿はだれにも見せたらいかぬと、こういうような返事を受けまして、私は、わざわざ行きましたものの、むなしく帰ってきたような状態でございます。  当初、私たちは、一般市民の健康を守ってくれる市、県の行政機関が、栄養になると思って食べた食油によって化けもののようになったわれわれのからだを当然責任をもって善処してくれるものと思っておったのであります。ところが、現在、会社もまた県も同じようなことを言っておるのであります。刑事責任云々というようなことで責任のがれをしていると、われわれにはそのように感じられるわけであります。  発病以来一年近くなっても、市もまた県も何の処置もしていないというように感じられましたので、去る二月の二十五日、市の衛生局次長に会いましていろいろ質問をいたしましたところ、やはり食品衛生法の盲点をつきましてこの問題は添加物ではないのだからわれわれの監督のもとにないということで、一年たった現在、今後患者さんの実態をよく調べましょうと、また、県が対策本部になっているのであるから、県と相談して要望にこたえるようにしましようと、実にたよりない態度であったわけです。  その後、三月五日になりまして、市の衛生局の話も一応ありましたことで、福岡県の副知事辻さんに会いまして、市が言ったように対策本部が県であるならば早く善処してほしいという要望を持ち出しましたところ、市と県は何のかかわり合いもないのだということを聞きまして、われわれ患者は市と県の間をたらい回しにされたような状態で、あ然としたものであります。  このような状態でありますので、われわれ患者症状も実際のことがわからず、九大に来ないようにみんななったのだからよくなっているのだと、こういうような発言を県の衛生部の方がされたわけであります。実は、重症になって体がきつく、そして歩けない人も出てきておるので九大まで行けない、また、交通費もかさんで行けないというのが私たち実情であります。私たちは市に行っても県に行ってもあたたかい手は差し伸べてもらえずに、責任回避ばかりで、毒物を食べさせられており、しかもカネミの油に毒物が入っておるのだというこの因果関係もはっきりしております現状でありながら、取りつく島のない状態であります。市や県は、庶民に安全な食物を与えるようにつとめるべきであり、今度のような事件が起きたら直ちに患者の実態を把握して救済に全力をあげる責任があると思います。そして、また、その責任のありかをはっきりさせて、早期に補償問題等も解決するようにつとめるべきだと思っておるのであります。  ところが、十五日、市の議会で、ある議員の質問に対しまして、この問題は市に一切責任はないのだということを谷市長ははっきりと申し述べておるのであります。このように市や県に責任がないとすれば、われわれ庶民は日常口に入れております食品の監督をどこがやってくれるのだろうか、これは消費者自身がやらなければならない問題であろうか、こういうふうに考えるのであります。この点をはっきり本日この場で聞きたいと思いまして、一言申し上げておきます。
  19. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) どうもありがとうございました。  最後に、紙野参考人にお願いいたします。
  20. 紙野柳藏

    参考人紙野柳藏君) 紙野でございます。  いま、患者は、発病一年になりますが、ますます病状が悪化している現状でございまして、皆様も油症患者の実態を御存じと思うのですが、背中にはこうして全身に吹き出物ができておりまして、いまこの吹き出物も、第二次症状ともいいますか、ものすごく大きいのができて化膿して眠れない状態と、それから近ごろ手足のしびれが激しく、歩行に困難な状態でございます。頭のしびれを訴えたり、それから舌のしびれを訴える患者さえある状態でございます。  こうして病状の悪化とともに、学校に行けない子供、あるいは休学して通院している子供が幾らでもおります。あるいは、福岡においては、西南学院の試験にも九大の試験にも今度の試験は受けることができずにおる人もおりますし、それから大学四年で就職を前にしてじっとこの冬休みをこたつの中にうずくまっているような人がおります。それから結婚が破談になった娘。それから結婚ができずにこういうような化け物のような姿と全身の吹き出物に結婚をあきらめて、そうしてあすの希望を失い、私たち患者の求むるものは、一年前の私たちの顔がもとになおるであろうか、一年前のからだになおるであろうか、これが現在の患者の姿でございます。  こうして患者は苦しんでおりますのですが、九大におきましてもいろいろ塩化ジフェニールであるという原因をわずかな期間において突きとめていただきまして、患者のため日夜努力してそして治療してくださったことを私たちはほんとうに感謝しておりますが、だが、一年になって依然として病状が悪化している現在、私たち患者としては、もう少し研究機関を拡大して、もう少し早期にこの治療法を見つけていただきたいと、こう考えるのであります。  いろいろ治療優先だとかいうようなことを申されておりますのですけれども、私たち治療と生活とは決してかけ離れて考えられないものでありまして、私たちがもし田川郡の添田から九大病院に一家族四人行きますとしますと、バスで、一人が六百七十円要りますから、四人家族で二千六百八十円。一月に四回行きますと、一万七百二十円。九大へ行きますとどうしても昼めしを食べるのですが、この昼めしをライスカレーを食べても、一人百五十円、四人にしまして六百円、これを四回で二千四百円。四人家族九大に一月に四回行くとしますと、一万三千百二十円、こういうような交通費が要っているのでございまして、治療費が優先だというけれども、私たち治療と生活とかけ離れて考えることはできないような状態でございます。  私たち患者の中には月給二万五千円の人もおりますし、二万五千円から一万四千円を引いたらあとの生活はどうするかと苦しんでおる患者もおりますし、あるいは、日雇い労働者で母親の手で二人、三人を養っておる愚者もおります。それらの人たちはお医者にも行けれずに苦しんでおりますが、私たちがこのごろ県に行ったら、患者は病院に行っていないのだからよくなっているのであろう、こういうふうに申されますが、なぜ患者に対してあたたかい手で患者がお医者にかかれるようなふうにしてやってくれないだろうかと、私たちはこう考えるのでありまして、市民のこうした苦しみはだれも聞いてもくれず、患者はあすの希望さえ失っているのが現状でございます。  また、さっき申し述べることを落としていましたのですが、私たち九大に行って順調に診断を受けたときにはバス代六百七十円ですが、治療がおくれたりそれからいろいろ病状が悪いときにはタクシーを雇うようなことがありますが、福岡から添田までタクシーに乗ると二千四百円のタクシー代が要ります。こうして、油症患者は、ほんとうにどこに行っていいやらわからないのが現状でございます。  さっきもお願いしましたように、私たちは早くよくなしていただくために、九大油症対策班ができていますが、九大におきましてもその資料を各病院に配付し、あるいは研究機関をもう少し拡大して、この治療に一日も早くよくなるように取り組んでいただきたいと思います。  それと、さっきも宇治野参考人も言われましたように、私たちはたった一つほしいものがあります。それは、私たちがこうした病気になって、そして、県に行っても、市に行っても、どこに行っても責任回避をするんですが、はたして取り締まりはだれがするか、監督はだれがするか、これを私たちはほんとうに患者一つのみやげとして持って帰りたいと思います。庶民の私たち消費者が監督しなければならないか、取り締まりをしなくてはならないか、あるいはこれは行政官庁が当然責任を負うべきか、この問題に患者は迷うておるような次第でございます。  簡単でございますが……。
  21. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) どうもありがとうございました。  では、これより参考人に対し御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  22. 小野明

    ○小野明君 参考人にお尋ねをする前に、本日お見えの参考人のほかに、県の責任者並びに市の責任者に対しましても同じように参考人としての出席をお願いをいたしておったのであります。ところが、本日御出席でありませんので、その間の経緯について御説明をいただきたいと思います。
  23. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  24. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 速記をつけて。
  25. 小野明

    ○小野明君 環境衛生局長、最初にあなたにお尋ねをいたしておきます。  先ほどカネミの専務梅田参考人から、患者数は幾らであるか、各県にわたってこれこれであるといったことが述べられたわけであります。そこで、先回の委員会におきましてもこの患者数については御発表をいただいたのでありますが、近い時点での患者数をひとつ御発表をいただきたいと思います。
  26. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 三月十三日現在の患者数につきまして御報告いたします。  確症――確認されました患者数は七百八名でございます。その他疑症を含めまして二十三名、合計七百三十一名ということでございます。
  27. 小野明

    ○小野明君 各県別は……。
  28. 金光克己

    政府委員(金光克己君) ごく最近この資料を手に入れましたので、各県別の資料の集計したのをいま持って参っておりませんが、患者六百三名の場合の各県別の分類は手元に持っておりますので、これで御報告いたします……。
  29. 小野明

    ○小野明君 七百八名というのは、各県別に報告されておるわけでしょう。各県別のものがわからんでどうして合計が出てきますか。
  30. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 各府県別に集計されておるのでございますが、いま手元に持って参っておりませんので、後刻資料として提出いたします。
  31. 小野明

    ○小野明君 それは途中で用意をしてください。  それと、確症の七百八名とそれから疑症の二十三名については、それぞれ個々人の病状といったものが全部わかっておりますか。
  32. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 現在、個々に病気の程度というものにつきましては、病気の程度の表現というものは非常にむずかしいわけでございますが、おおむねの重症、中等症、軽症というような油症研究班等で分類はされておりますが、明後日二十日に中央におきまして地元の研究班からも先生方に出席していただきまして対策本部の会議を開くことにいたしておりますので、そこにおきまして患者数は全部整理したいという考え方でただいまおるわけでございます。
  33. 小野明

    ○小野明君 そういう手ぬるいやり方だから、いつまでたってもこの問題の解決のめどがつかない。補償の問題にいたしましても、いま患者から出ておりますように、一人一人の生活の状態、これが一体どうなのか、あるいは病状がどうなのか、そんなに何十万という数ではないわけでありますから、そういった実態把握につとめないで、どうしてこの問題の対策というものが立てられますか。これは私は意見として申し上げておきますが、後ほどまた質問をいたしますから、しかるべき方針というものをお示しをいただきたいと思います。  最初に、五島参考人にお尋ねをいたしたいと思いますが、患者の病状について、患者自体のいまの御意見によりますと、自覚症状としてはたいへん悪くなった、こういう意見であります。五島先生は、この事件始まって以来、ずっと付ききりのようにお世話を願って、私ども感謝をいたしておるわけでありますけれども、一体、九大油症班としては、患者の病状について、よくなっておるのか、悪くなっておるのか、どういった統一見解をお持ちであるか、お尋ねをしておきます。
  34. 五島応安

    参考人五島応安君) 現在のところ、患者の訴え自体としては悪くなっている人もありますが、ほとんど変化がないというのが実情ではないでしょうか。もちろん明らかな改善はありません。しかし、特に増悪しているとは思っていません。見かけ上症状が増悪しても、本症が進行性でついには死の転機をとるということではなさそうですから。たとえばハシカでもそうです。前日頭が重い、目がうるむということで、二、三日して皮膚に発疹が出たから増悪したとはいえないと同じことです。病気の始まりは、目やにが出る、食欲がない、体がだるいといったことで、それからしばらくすると、にきびが出てきた、手足がしびれてきたということは病像の必然の動きであって、したがいまして、ある患者さんがわれわれのところに受診したときは、もちろん油の摂取開始時期がいろいろ違いましょうし、摂取量が違いましょう。また、個体の反応性が違いましょう。そういうことで、初期の症状のみであるかもしれない。時間とともにカネクロール四〇〇があまり排泄されないとすれば、やがてはニキビが出てくる。見かけ上症状がひどくなるということですが、これはいわゆる油症としての自然経過をとっていったというように解釈すれば、病気がいまや悪化していると必ずしも強調はされないと思います。しかし、臨床検査で、たとえば最初著しく増していたトリグリセリッドが減少してきたなど、これを改善と言ってよいか否かわかりませんが、多少は正常な状態にもどってきているとはいえましょうが、明らかな改善はいまのところないといえましょう。――おわかりになりましょうか。
  35. 小野明

    ○小野明君 あまりよくわからない。
  36. 五島応安

    参考人五島応安君) たとえば結核なら結核の病巣があります。これは、治療が効かなければ、進行して肺全体が侵されて、体中にも菌がひろがり、死んでしまいます。こんな場合、シューブという状態は、一つの病気がひどくなったということですね。先ほど例にあげたハシカや水痘は一つ経過があって治癒するわけで、このような場合、外見症状が著明にあるからといって悪化したとはいえないわけです。この病気の場合、自然経過が治癒するとも断言できないわけですが、一応いまのところ生命の危険はないように思えます。そうしますと、最初、目やにが出る、体がきつい、食欲がない、次に、ニキビが出る、手足がしびれるということが一つの病気の形として存在しておるならば、そういう病気の経過があらわれてきたということで、ある時点で受診した人はいまやひどくなったというような発言になってくるわけですね。かなりひどいニキビの状態で受診した人は固定しておるというわけで、ある時期時期で、人によって進行した、また人によっては変わらないということが言えるのじゃないかということです。結局、たとえば栄養剤的な一般薬が効くとか何が効くとかいうけれども、いわゆるどっちつかずの薬というのはあんまり効かない。したがって、こういう場合における根本的な治療方法がない以上は、病気自体としては増悪はしていないけれども、固定した一つの疾患像として存続しておるというように解釈しておるわけです。
  37. 小野明

    ○小野明君 そうすると、しろうとのことばでずばり言えば、よくなってもおらぬが、悪くなってもおらぬと、こういうことですか。
  38. 五島応安

    参考人五島応安君) まあそうです。
  39. 小野明

    ○小野明君 私がある有力な意見をお聞きしたところでは、患者がおられて非常に気の毒でありますが、しかし、私がしろうと目で見ましても、この患者に初めに去年の十月ころにお会いをしたときよりもずいぶん悪くなっておる、外見上はですね。そういうことから、これはおそらくガンを誘発して死亡するのではないか、こういう意見を持っております。この点についてはどうですか。
  40. 五島応安

    参考人五島応安君) 私、今日宇治野さんを入院いたしまして初めて何カ月振りかで見たわけで、非常に外見上悪くなっているような印象を受けております。したがいまして、先ほど述べましたような意見は、私のところに常時通って来ている外来患者のみについての意見でありまして、北九州市において離れて治療をしておった人たちの中の所見から言ったことではありません。宇治野さんは、何カ月振りかに見て、私自身としては非常に悪くなっておるのじゃないかという印象を受けています。  それからガンの問題ですが、もちろん文献にないことはありません。ただ、それだけでこれがガンになるということは私にはわかりません。
  41. 小野明

    ○小野明君 この治療方法でありますが、先生が先ほどおっしゃったように、治療方法がない、こうおっしゃるわけですね。そういたしますと、いま治療されておりますのは、昨年の十月二十八日に油症研究班で出されました暫定的治療指針、これでその対症療法だけをおやりになっているわけですか。
  42. 五島応安

    参考人五島応安君) 私、今回、個人的な用事でアメリカに参りますので、一応過去にやっておりましたデータを集計いたしました。その印象について申し上げます。  治療自体といたしましては、対症療法ではなかったと思うわけです。というのは、私ある新聞にも書きましたが、むしろカネクロールに影響されて、カネクロールの排泄に終始した消極的原因療法ではなかったか。たとえばSH基を使用するということも解毒を考えた一つ治療法でありますし、むしろ私自身の反省といたしましては消極的原因療法であった。したがいまして、これからの治療の上の目的は、現在患者が悩んでいる症状自体を大きく取り上げて、過去の一つの疾患像と結びつけた上の考え方のもとに、もう少し症状に応じた対症療法をこれから積極的にやっていきたいというように感じているわけです。ここに過去にあげました治療指針は持っておりませんが、脂質代謝障害に対して種々のホルモン剤の投与を現在心がけておるわけであります。これは、女性ホルモン――エストロジェン、それから蛋白同化ホルモン、それから場合によっては甲状腺製剤、そういったようなものも考慮していこう、こういうわけであります。それから多少変わっておりますのは、SH基を過去の治療指針としてあげました。SH基自体、薬剤の論理としてはよく効くはずでありますが、事実われわれの臨床経験からはあまり効かなかった。過去の一般の疾患においてもそうであったと思います。したがいまして、体内的にむしろSH基をつくっていこうじゃないかということで五炭糖等の使用も現在心がけております。
  43. 小野明

    ○小野明君 もちろん、カネクロールの、塩化ジフェニールですか、の疫学調査もおやりになっていると思うのですが、研究現状、テストの現状といいますか、一日も早く治療方法を見つけてほしいというのが患者の切実な気持ちなんです。何よりもなおるだろうか、なおらぬだろうか――なおらぬことがあっちゃたいへんですけれども、一日も早く治療方法を見つけてもらいたいというのが患者の切実な願望なんです。そこで、厚生省としては、全部おたくにおんぶしたようなかっこうで、全く無責任きわまる態度なんですけれども、それだけにおたくに寄せる期待も大きいものがあるわけであります。そこで、研究現状を御説明をいただきたい。
  44. 五島応安

    参考人五島応安君) 結局、研究は、研究の成果と、これからやっていくことと、この二つに分けられると思います。したがいまして、もしも科学者としてものを言うならば、成果について述べなければならないと思うわけですが、若干これからの考察ということを加えないと前進が期待されない、そういうような感じで申し述べます。  まず、臨床側からいきますと、ここにはっきりいたしましたのは、病気を治療いたしますには、一つの病気の概念というものを医者が把握しなければならない。根底的に対症療法あるいは原因療法といたしましても、カネクロールをつまみ出して、カネクロールカネクロールというように追いかけるのでは、治療は全うできないと思うわけです。それから対症療法にいたしましても、一般にあるかどうかしりませんが、たとえば腹が痛いなら、腹痛がなおるような治療をしようということでは、これも病気の治療にはならない。一つ治療をやりますには、その病気を確実に認識することが一番だと思います。したがいまして、私は、いまここに本症における病的概念はかなり確立されているということは臨床研究一つであると思います。  それから治療法にいたしますと、先ほど言いましたように、私自身の責任でもありますが、いろいろな人からの示唆もありまして、有効と思えるものはすべてやった。有効と思えるもし理論があるならば、すべてやるという立場に立っておったわけでありますが、なかなかいい治療法が見つからないものですから、これからはそれをもう少し積極的科学的に分けて、数症例ごとに分けて、単一における大量投与、あるいはどのような投与法をするかというようなことで、もう少し規則立った形で長期計画の上で治療をしていくということを第二にあげております。  それから片一方で、もちろんこれがどういうような体内分布をするかということが非常に問題でありますので、トリチウムでラベル――同位元素で体内分布を正確に見るという試みが現在なされております。また、いろいろ動物実験はやっておりまして、おもしろい結果が出るのでございますが、これを人間に直ちに当てはめてよいかどうかということが若干ひっかかるわけです。興味があるのは、たとえばウキギなんかでやっていきますと、カネクロールは各種の異生体ですね。たくさんのピークが出てくるわけでありましょう。その中の主たる成分が一つある。ところが、ウサギなんかでやっていきますと、投与して何日何日と皮下脂肪をはかっていくと、そのピークが変わってくるのですね、ピークの相対的な高さが。ということは、一番主たる成分の排泄は人間の場合行なわれるかどうかという確証はないわけですが、ウサギの場合には行なわれ得るのではないか。これも行なわれているという確証はありません。その他いろいろおもしろい結果も出てきておるわけです。たとえば、脂質代謝というものが非常に関連がある。医学上、脂質代謝に足を突っ込む者はどろ沼に足を突っ込むようなものだというくらい、現在解決されていない問題ですけれども、非常にトリグラセライドが増加しておるわけです。コレステロールの増加は、症例によって、高いものあり、増加のないものあり、種々ですが、トリグラセライドの増加による血液の乳濁はかなり特徴ある所見です。トリグラセライドの存在する形を調べていくと、むしろ内因性のトリグラセライドで、それが肝臓でできて、むしろこのタイプとしては皮下脂肪に入っていくときに一つの酵素が働いて取り込むわけですね。皮下組織に。そこのところのはうがやられておるというような結果も出ておりまして、いろいろ脂質自体の動きにも関連して調査が行なわれております。  九大でやってまいりました研究成果というものをいずれいつかお見せしてもけっこうなわけですが、そろえてまいりますと、非常に膨大なものがあります。
  45. 小野明

    ○小野明君 先ほど、肝臓には異常がないというふうなことをおっしゃったんですが、肝臓や腎臓その他の機能障害というものはないわけですか。
  46. 五島応安

    参考人五島応安君) 非常に患者さんたちは化膿しやすいのですね。実際のところを言うと、化膿に悩んで、たとえば九州大学を受けられないことになったという新聞記事の場合も化膿症ですね。非常に化膿するわけです。そうして、また、興味があるのは、化膿を起こす原因菌が、日常病気を起こさないような菌であることです。これは、私は感染症が専門家でありますので、いろいろ興味を持って見ておりますが、普通、変型菌などというものは、ほとんど皮膚に化膿を起こすことはないわけですね。そういうもので起こってくるということです。それで、多少やはり網内系でそういう抵抗力が減弱している、こういうことは確かです。また、これも動物を結びつけてきて恐縮ですが、ニワトリなんかの場合にはずいぶんそういうような抵抗力の減弱のような病理組織は見られます。ほかのやつの網内系については調査しておりませんので言えませんが、ニワトリの場合にはそういうことが言われております。  それからしびれは、これは神経内科の人たちのやった成績では、実際神経学的には異常はない。しかし、むしろ神経の伝達速度がかなりやられておるというようなことで、あるいは神経線維自体が脂質と関連しておりますので、そういったところに関係があるかもしれません。  それからまだやってみなければいけないのは、そういうウサギの実験があるものですから、人間でも現在カネクロールがはたして排泄されていないかどうかということは、皮下脂肪を採って、過去のガスクロマトグラフィのピークと現在のピークがどういう波の変化があるか、いろいろ調べていかなければならないことはたくさんあると思います。そうして、個々の異生体の中のどれが病因かということもまだ突きとめなければならない問題だと考えております。
  47. 小野明

    ○小野明君 それでは、例の診断基準の問題ですが、厚生省の説明によりますと、これは診断基準というものではなくて、一応の診断の所見というふうに解釈をしている、こう言われるわけです。   〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕 そこで、問題なのは、この診断基準の中では、一応研究班としては十月二十八日に改定された診断基準というものを出されておるわけです。これによって確症と疑症とに分けられる。それで、これは医学的には問題は別といたしましても、補償の際に、確証には幾ら、疑症には幾ら、こういうふうに区別をされておるわけですね。いまのところ補償も何もないわけですけれども、区別をしようといたしておるわけです。それで、患者の意見を聞きますと、同じ家族で同じ油を使いながら、一方は確症、一方は疑症に分けられておる、これは矛盾があるのではないか、たとえば、そういう分け方でなくて、重症、軽症という言い方ならばこれはわかるけれどもと、こういったことを指摘をされているわけです。確症、疑症と分けられる、この点を少し説明をいただきたい。
  48. 五島応安

    参考人五島応安君) この診断基準は私がつくりましたものでございますが、現在におきましてもこの診断基準自体には誤りはなかった、ほとんどなかったというふうに自負しております。ただ、疑症、確症の解釈が少し誤られたのではないかと考えております。と申しますのは、当初は油が原因であろうというのも私個人の推論でありますし、別に確固たる根拠もなかったわけでございまして、そのような状態で参りました患者についていろいろ調査する段階でありますので、疑症、確症というようなたてまえをとったわけであります。しかし、同一家族において疑症があり確症があるということはないと思います。私はこれは県なりいろいろな認識の不足に原因があったかと思います。と申しますのは、この診断基準があればどんな人間が診断しても同じように診断するかというと、必ずしもそうではないと私は思うのでございます。と申しますのは、レントゲン写真一枚とってみましても、これが結核だとわれわれ学生のときに習っても、なかなかその次の症例に当たったときそれは結核だと必ず一〇〇パーセント言えるとは限らないのであります。したがって、これも、たとえば臨床的にすぐれた医師に最初検診をさせておれば、こういう事件はなかったと思うのですが、ここに医者でさえあればだれが行ったっていいんじゃないかというような根拠はなかったという県庁の意見ですけれども、そういうものの上に立って診断に若干問題があったんじゃないか。したがいまして、いまの時点では疑症、確症のそういう論議はほとんど存在しないと私は考えております。  また、重症度につきましては、現在私は重症度を四度に分けることを提案いたしております。
  49. 小野明

    ○小野明君 そうしますと、同一家族確症、疑症、こういうことはないと……。
  50. 五島応安

    参考人五島応安君) ないと思います。
  51. 小野明

    ○小野明君 それからいまの研究現状をお聞きをいたしまして、まだかなりこれは時日が要るような気もいたすわけですね。臨症にせよ、医学的にせよ、いたすわけですが、これの見通しをつけるということはなかなかむずかしいだろうと思いますが、ほぼいつごろになったらすべての油症班としての結論が出るのか、あるいはそれまでに国に対して一体何を要求をしたいのか、どういうことをしてほしいのか、そういった点もあわせてひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  52. 五島応安

    参考人五島応安君) ちょっと見解がいろいろあると思いますが、私個人といたしましては、この病気はいわゆる塩素ざ瘡という名前では言えないと思います。病気自体についての解釈がこれの経過並びに対策について必要だと思います。塩素ざ瘡として論ずる人もいるので、塩素ざ瘡について少し説明いたします。もちろん最初塩素ざ瘡というのは、一八〇〇年代の終わりでありまして、当時ヘルクスハイマーという人がそれを言ったのは、塩素が原因だと考えたから塩素ざ瘡だと言ったのであります。これはあとで塩素で起こらないということはもう確実になっているわけですけれども、学問上塩素ざ瘡と、ついつい偉い人が昔つけた名前だから塩素ざ瘡と言ってきたわけでありまして、決して塩素によって起こるざ瘡ではない。それで、塩素ざ瘡という名は不適当ですが、過去の塩素ざ瘡というのは非常に皮膚科学的な面だけを重視しておったわけですね。それについての文献からいたしますと、おおよそ最初発病してから数カ月間は全く病気は動かない、ステーショナリーである。それからあとの半年で消退し始める。そして、非常にわかりやすく言えば、天然痘でもありませんが、ああいったものの傷あとみたいなような傷あとを残してなおるという記載が大体塩素ざ瘡については言われてきておると思います。したがいまして、塩素ざ瘡自体としても非常に経過が長くかかるものである。それに加えて、この場合は、経口的摂取であり、全身的にとっているわけですから、全身障害についてもう少し突っ込んで検討しなければならない。いまのところルチンなありふれた肝機能というのでは引っかからないわけですから、もう少し突っ込んだ検査が必要であろう。  それから、先ほど患者の容態は動かないと言いましたが、それは九大に来ておる患者さんについてのおおよその見当であって、きょう見てみると、宇治野さんなんかはずいぶん動いておると思います。これも印象ですが、そういう感じがするわけでありまして、もっともっと突っ込んだ研究が必要であろうと思います。  それで、私が今度やってきて非常に苦労したのは、たとえば自分一人でイロハなり正月の正の字を書いてデータをまとめているわけですが、こういうことではなくて、福岡県に多発しておるものですから、情報センターなら情報センターをつくって、パンチカードで一切の情報が的確に動くとか、非常に研究の中に合理性を持たせるということをやったらと思います。  いま一つは、まあ実際言えば、これは一般研究費を持ってこい、研究費がないから仕事ができぬというわけですが、そのようなことではないと思うのです。ほんとうはやる気があるかないかということによって研究は決定されると思うわけです。しかし、多数の意見と研究成果を集めて患者に対処せねばならないからには、研究費が相当に必要であろうということです。それと、それの研究費自体にしましても、非常に使用しにくい研究費では困る。  それからいま一つは、研究費に付随した人員ですね。幾ら費用が来て、機械があっても、とにかくそこに女の子でもいいわけですが人手が不足しておってはどうにもならない。  それから、患者の要望とわれわれの意見と一致することは、巡回診療をやってくれ。われわれも、この病気については実態を常時知っておきたいという気持ちもありまして、やりたいのですが、医者だけがする仕事ではありません。看護婦も参加しなければなりませんし、いろいろな問題が入ってくると思います。したがいまして、そういうものに対する費用を十分に見ていただくというようなことも必要かと思います。
  53. 小野明

    ○小野明君 そうしますと、県内におきましても、すべての患者情報が全部九大油症班に集まる、こういう体制ではない。したがって、あなたのほうの診断基準にいたしましても、持っていって開業医によってはそれぞれ当たり方がまた違うと、こういう各個ばらばらな体制である、こういうことが言えるわけですか。
  54. 五島応安

    参考人五島応安君) 現実には、大体いまおっしゃいますようなぐあいです。しかし、各個ばらばらとも言えないでしょう。開業医の先生方は皆さん九大の意見を聞きたがっておられますし、いろいろ参考にしてやっておられると思います。しかしながら、それの報告はわれわれのところには届いてはいないということで、おそらく、開業医の先生方はほんとうは非常に協力的ではないでしょうか。むしろこの病気が新しいものですから、九大の意見に従ってやろうとされておるのではないかと考えます。ただ、それを結ぶパイプがはっきりしていないということです。
  55. 小野明

    ○小野明君 その中でもたいへん患者が困ると言われておりますのは、どこの開業医に行きましても全部基礎検査からやられるというわけですね。どこの病院に行っても血を採られる。全部やられる。だから、もともと血も薄くなっておるのに、それだけで倒れそうだ、こう言われておる。そういったものはやはりカードか何かできちっと統一すべきだという、先ほど環境衛生局長にもこのことは申し上げておったのですが、これは情報センターというようなことで解決されるわけですね。
  56. 五島応安

    参考人五島応安君) そういうことです。
  57. 小野明

    ○小野明君 カネミの専務梅田さんにお尋ねをいたしたいと思いますが、これだけ世間を騒がしたといいますか、これまでの経過によりましても、あなたのところの油が原因であるということがはっきりいたしておるわけです。この事件について責任をお感じになっておられるのかどうか、この点をお聞きをしたいと思います。
  58. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) ただいま御指摘がありましたが、この点につきましては、われわれといたしましても十分責任を感じておりまして、実は、当初、ここにおいでの宇治野さんのお嬢さんを私のところにおいでいただいて、私も実は娘を持っております親の身として、これはほんとうに申しわけないということで、何とか早くなおっていただくことが一番じゃないかということで、まあそれに私も社長も実はあれしておりまして、それで、現在のところ、私のほうでは社員七名を患者さんの宅を回らして、あるいは、いま言うように九大油症班のほうで決定的なまだ医療対策というものがないようでありまして、お医者さんの中にも患者さんでこういうふうにしてよくなったというような方法があるということをいろいろお聞きしまして、現在、オゾン療法と申しまして、オゾンでこれを治療する方法があるようであります。   〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕 これに患者さんの御同意を得ましていま施療していただいている方が八名おります。そのうち、ほとんど治癒に近い方が二名くらいできた。それから著しい効果が出ておる方が一名というような報告を受けているわけであります。この所要費用が一人一カ月に四万二千円ばかりかかるようであります。これらは、とにかくなおっていただくあれならばということで、このあれと別にいま言うようにそういう療法をしております。  それから真空吸玉療法というのがありまして、これも患者さんとお医者さんの同意を得まして、二名いま施療していただいております。そのうち一名の方は非常に経過がよくなっておるというふうな報告を受けております。これの所要費用は一人一カ月四千円くらいであるというふうな報告を受けておるわけであります。  それからカルシウムイオン水療法というのがあるそうでありまして……。
  59. 小野明

    ○小野明君 そういうのはいいです。責任を認めておるかどうか、その点です。
  60. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) その点は、いま申しましたとおりあれしております。
  61. 小野明

    ○小野明君 私、お尋ねをいたしましたのは、企業責任というものをあなたのほうがお認めになっておるかどうか、この点をお尋ねをしたがったわけであります。この点ははっきりお認めになるわけですね。
  62. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 企業責任……。
  63. 小野明

    ○小野明君 この事件を起こした責任ですよ。
  64. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) これはもういま現に……。
  65. 小野明

    ○小野明君 それで、いまあなたのほうが企業責任を認めておるかどうかという点をお尋ねをしておる。
  66. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) いま言うように道義的責任を痛感いたしておりまして、そうしていまいろいろこういうふうにやらしていただいておる次第であります。
  67. 小野明

    ○小野明君 いまあなたがいろいろおっしゃっておることは、これは企業責任をとるということと別の問題なんですよ。治療方法というのは、いま、厚生省にいたしましても、あなたのお隣の五島先生が言われるように、責任ある機関で科学的な研究を続けておられるわけです。あなたのほうでいろいろいまおっしゃったようなしろうと療法的なことをおやりになるというのは、これは間違っておるのじゃないですか。その点についてはどうお考えになりますか。
  68. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) これはしろうと療法的ではありませんで、いま申しましたように患者さんの宅を回って、そうしてこういう方法で治療してあそこのお医者さんにがかったら非常によかったというふうないろいろお話もあります。そうして、患者さんのこういうあれもあるようでございますし、どうでしょうかということでお話し申し上げてしておるわけであります。
  69. 小野明

    ○小野明君 いま、九大油症班では、治療の方法がないので、全力をあげて研究をされておるわけであります。ですから、カネミについても、この研究の成果をまって、あるいは国の責任ある研究機関で結論を出すのをまって患者に対処をしていく、こういうことがあるべき姿であって、何も治療の方法をさがしてくれなんという、それは患者から聞いたかどうか知りませんけれども、それはあなたの責任のがれにしかすぎぬ。企業責任というものをあなたがお認めになって、患者の補償は一体どうなさるおつもりですか。
  70. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 患者さんの補償につきましては、実は、いま、警察の御当局で取り調べ中の段階でもありますこと、それとまだ患者さんの数字も確定せず、いろいろ人数的にも漸次固めつつあるわけなんですが、まだこの数字がはっきりしないような現状であります。  それと、いま申しましたもう一つは、私のほうも、この油症事件を起こすまでは、北九州財務局でも税金も四、五千万円もお払いして、中小企業のうちでは指を折るほどのあれだったのであります。ところ、御承知のように、この事件を起こしまして、先月油が移動禁止が解除になりまして、いま返品がどんどん実は参っておるようなわけであります。それの返品の数量、これの運賃、あるいは品質の低下、それからいままで五カ月間も全然仕事をやっておりませんので、その間の市場、それからああいうふうに新聞紙上で大問題になりましたので、今後の市場の開拓の見通しというようなことにつきまして、実は鋭意あれをやっているわけなんでありまするが、実は実際あれがいまのところはっきりとまだ実はつかめぬような状況であります。それで、われわれといたしましては、何とか早く再建をして、そうして、いま言うように、警察当局のあれもはっきりすれば、もちろんこれはわれわれのできるだけのことはしたいと思っているわけであります。何ぶんにもこういう事件を起こしまして、中小企業のもろさといいますか、という点をしみじみ実は感じているわけであります。その面につきましても、治療費の捻出その他につきましても、皆さんのあたたかい思いやりでひとつ育成していただきまして、そうしてやらしていただきたいというふうに考えております。
  71. 小野明

    ○小野明君 あとのほうの事情はそれはそれといたしまして、どうも警察の捜査が終わらなければその補償ができぬ、こういうようなあなたの御意見のようでありましたが、それは責任のがれではないのですか。これだけの事件を起こした。そして、カネミの油、おたくの油ということが原因であるということが確定をしておる。とすれば、患者補償というものも、当然損失の中に入れて優先的にこの補償を払わなきゃならぬ。また、払うのが企業を経営する者の道義的な責任ですよ。油の損失だけが損失であって、患者補償というものはこれは第二義的で警察の捜査が終わってからというようなへ理屈をつけて、患者補償をやろうとしない。これは別に責任を感じておるというようなことばで言いあらわせん、少しも責任を感じておらぬことじゃないですか。
  72. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 責任は十分に感じて、いま申しましたように、まあかりに補償の問題が起こりましても、先立つものは何と申しましても金の問題になってくるのであります。いま申しました中小企業のもろさといいますか、だから、どうしても、将来、治療費なり、あるいは捜査段階が終わって補償することになりましても、とにかく何とかわれわれのあれで働いてそして利益をあげて皆さんにお報いする以外にいまのところないような状況でありまして、実はそれで会社のほうの再建にいま全力を注いでおるような状況であります。
  73. 小野明

    ○小野明君 捜査が終わらぬと補償が始まらぬような、そういう無責任なことではいけませんよ。これはおたくの油が原因であるということはもうはっきりしておるわけですから、刑事責任をどうするかということだけが残るのであって、あなたのお隣にすわっているような人がいつ亡くなられるかわからぬのですよ。そういう事故を起こして、警察の捜査が終わるまでと。これは無責任きわまりはしませんか。  少し具体的にお尋ねをしたいと思うのですが、油症と確定以前の治療費、交通費ですね。現に、お隣の宇治野さんというのは、八幡製鉄につとめられておるのだけれども、会社に行かれぬわけです。会社は賃金をもちろん払わない。会社に行けば、足がふらふらして、いつ死ぬような事故にあうかわからぬ。これはあなたも会社に行けないという事情はわかるでしょう。こういった休業補償。あるいは、紙野参考人が言われるように、この交通費がかなりかかる。一家全部の病気ですからね。一家全部の病気ですから、みんなが働いていないんですよ。働けないんですよ、みんなが。それに交通費は自弁で行かなきゃならぬ。これじゃ出せませんよ。出すところがないじゃないですか。こういうところにいまあなたの会社が補償をしないで、責任を感ずるということばが出ますか。その日の暮らしさえ困ってきているんですよ。これに、あなた、一時金二万円ですか、それで打ち切り補償みたいなかっこうで、あとは警察の捜査が終わってからと。これは少なくとも企業をやる者の態度じゃないと思うが、どうですか。
  74. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) いま実はお話がありまして、五島講師のほうからも、大体患者さんも四段階ぐらいに分ける必要がありゃせぬかというようなお話が出ておったわけであります。確かに、非常に軽微でお済みになった方、それからいま隣においでになる宇治野さんとか紙野さんというような方は、当然今後補償の実際実行段階においてそういう点はあれしなくちゃならんと思うわけでありますが、何と申しましても、いま言うように、いま私がこの場で……。ただ、こういうことは、われわれも、いま小野委員がおっしゃいましたように、会社としてやはり企業責任がある。だから、実際問題として過去の治療費で二万円以上かかったというあれがあれば、これはまあ一応どの程度のあれになるかということはひとつ出していただきたいということは、実は私のほうの油症班のほうでお話し申し上げておると思うわけなんであります。まだその資料が私のほうには出ておりませんが……
  75. 小野明

    ○小野明君 この補償の話について、あなたのほうは、油症班と話をするんで、患者とは話をしないのですか。
  76. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) いや、油症班ではないです。これは申し間違いです。私のほうで油症対策本部というのをつくりまして、そこにうちの職員を入れまして、それがもっぱら患者さんのお宅を訪問させていただいたり御意見を聞かしていただいたりというふうにやっておりますので、それをいま申しました。私のほうの油症対策委員とでも申しますか、そういうものの言い違いでありましたから、御訂正を……。
  77. 小野明

    ○小野明君 それも、結局、幹部であるあなたや社長の、何といいますか、下働きをするにすぎない。だから、首脳部であるあなた方が積極的に患者との話し合いに応ずる、すでに生活に困っておる患者との補償の話を始める、こういう態度であってほしいわけです。これは、聞くところによると、あなたのところは口ではいろいろうまいことを言うて、やれ患者代表なら会うとか、やれどうだと新聞にはまあうまいことを言いながら、全然補償を進めようとしない。それは、あなたが言われておるように、警察の捜査が終わってから、こういうことばに端的にあらわれておるんだが、これはひとつのけていただいて、これは刑事責任の問題だからのけていただいて、すでに大かた大勢が決しております方向に従って即刻ひとつ患者の皆さんと補償の話に入ってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  78. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 実は、患者さんとの話し合いにつきましては、、昨年の十一月二十一日でありましたか、愚者さんもおいでになりまして、それから福岡地区の九電の方々にも患者さんということでいろいろお話し合い申し上げました。そして、いま申しましたように、何といっても中小企業で、あれだけの新聞問題になっていることが、とにかく銀行関係の融資ですから、緊急融資だとか、あるいは得意さんからのいろいろ医療のあれだとか、そっちのほうに私のほうの社長も全精力を注がぬと、いつ会社がぶっつぶれるかわからぬという事態になっておりました。御了解を得まして、それじゃ私のほうで油症対策本部というのをつくって、それと患者の皆さんとひとつお話し合いをさせるようにしますからということで御了解を得まして、そしてこの委員長に私のほうの顧問弁護士の尾山弁護士をやって、もっぱらそちらのほうでお話し合いをしてくださいと。いま言うように、もういつつぶれるかわからないようなものをぶっつぶしてしまったら皆さんのあれもできないんだ、だからとにかくわれわれは全力投球をして会社の再建のほうに努力させていただくからということで大体話し合いをしまして、それならそれでよろしいということで実はあれをやっておったようなわけでありまして、決してさぼっているということでなしに、これはわれわれ中小の非常に貧弱な企業があれだけの戦争の記事よりも大きなあれで、いかにあれをこれから乗り切っていくかということがあるということも賢明な皆さんにはおわかりと思うわけであります。その点をおくみ取りくださいまして、私も実はほんとうはそちらのほうに専念したいのでございますが、大体業務担当をしておりますものですから、実は今度ちょうどこちらのほうにあれがありまして、本日は社長もちょうどいい機会だからぜひと言っておったのでございますが、あいにく病気であったものですから、私は油症対策のほうを全然やってはいないと言っては語弊がありますが、全力をいま会社の再建のほうに注いでおりますので、いまの御報告もいろいろ電話なんかで問い合わせて実は御報告したようなわけであります。
  79. 小野明

    ○小野明君 話を聞けば聞くほどだんだん悪くなる。あなたは中小企業一般の話にすりかえてはいかぬです、あなたのカネミがこの事件を起こした話をしておるのだから。いまあなたのお話を聞いておると、操業再開ができて、また、利潤があがらなければ補償をしないと。先ほどは、警察の捜査が終わらなければ補償が始められない。今度は、操業が始まらなければ補償ができない。これでは、あなたのお話は、全然補償のことなんか頭にない、こう見られてもしかたがないあなたのいまの御意見です。ですから、私が申し上げておるのは、ほんとにあなたが人命を損傷したという責任をお感じになるならば、企業の損失の中に補償の問題も含めて、人身を損傷したからそれの義務費として早急に補償の話に入ってはどうですか、それが人間としてのあるべき姿ではないですか、企業家としてでなくてもですね、そう私は申し上げているのです。おわかりになりませんか。
  80. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 補償のあれも、私としましては、いま申しましたように、何といっても補償のほうは責任をもって善処さしていただくという以外には申し上げられないと思いますが……。
  81. 小野明

    ○小野明君 あなたも、専務ですから、ここで責任ある回答をすると、帰って社長からまたお叱りを受けることになるかもしれないのですから、いま私が申し上げた趣旨をお帰りになって十分社長とお話をしていただいて、早急に補償の話にかかられますように、そうして患者の皆さんにも安心をしていただけるような解決方法をとっていただくように私は要望をしておきたいと思うのであります。この点はいかがですか。
  82. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 帰りましてただいまのお話は十分社長のほうにお伝えいたしまして、本日の空気も十分お伝えしてあれしてまいりたいと思います。
  83. 小野明

    ○小野明君 紙野参考人宇治野参考人、どちらでもけっこうでありますが、先ほどあなた方のおっしゃりたいことはかなり言われたと思うのでありますが、現在の病状、あるいは最もいまこの点が気になると、こういった点がありましたら、簡単でよろしゅうございますから、御意見をいただきたいと思います。
  84. 紙野柳藏

    参考人紙野柳藏君) 私たちは、さっきも申し上げましたように、一日も早く病気がなおりたいのでありまして、どうか治療機関を拡大して、そうして一日も早く治療法を見出していただきたいと思います。  それと、もう一つお願いしたいことは、私たちがいままで再三カネミの社長に対して会談を申し込んだのでございますが、ここにもこうして内容証明付の申込書を持って来ているのですが、私たちは、青春を失って困っている青年男女がおるのだ、学校に行けない子供がおるのだ、それから生活に困っている人がおるのだが、これをどうしてくれるか、それと、過去の治療費に対して全額補償してくれ、それから交通費についてどうしてくれるかと、こういうふうに再三にわたって内容証明をもって申し入れたのでありますが、今後カネミとの交渉に、いままでがそうであったように、カネミがはたして私たち弱い患者に対して誠意をもって話に乗ってくれるか、こういうことを私たちは危惧するものであります。どうぞ、その点、弱い私たちはどこにたよるすべもないような状態でありますから、この点について皆さま方のお力をお願いいたしたいと思います。
  85. 小野明

    ○小野明君 環境衛生局長、先ほどお尋ねをいたしました患者の各県別の内訳をお願いします。
  86. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 七百八名の府県別の患者数を申し上げます。  福岡県二百五十五名、長崎県二百六十二名、高知三十六名、山口県十一名、愛媛県六名、大阪府四名、佐賀県十七名、鹿児島県三名、鳥取県一名、以上でございます。
  87. 小野明

    ○小野明君 そのほかに、奈良県、大分、愛知というのがあるはずですが、どうですか。
  88. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 失礼いたしました。北九州市が百十三名。それからこれは実は従来確症と疑症とに分かれておりまして、疑わしき患者は疑症という患者の数の中に入っておったわけでございます。それが昨年末におきましては疑症が百十三名になりましたのを、そのうちで現在確症と疑症といいますか、確症の決定をできるだけ進めておるわけでございます。したがいまして、はっきりしたものだけを数字をあげていっており、従来疑症として残っておるものはさらに今後検討を続けていくということでございまして、先ほどのお話しの県につきましては、まだ確症の中に入っていないということでございます。
  89. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  90. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 速記をつけて。  参考人に他の委員で御発言の方がございましたら、御発言をお願いします。
  91. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私、一、二点だけお伺いしたいと思います。  五島先生にまずお伺いしたいのでありますが、先ほどいろいろお話を聞きまして、私も医者であります関係上、いろいろ御苦労なのがよくわかるわけでありますが、いまのお話の中で特に患者あたりが非常に不安な状態にある、治療がなかなかむずかしい、これはよくわかるわけでありますが、その間を何とかもう少し短縮をして、そして治療に効果をあげるとか、あるいはそのために治療研究にどういうふうなものがいいとか、それから先ほど研究費もたくさん要るようにお話しになっておりましたが、それなんかをひとつ早急に立案をしてもらって、要求するものは要求をして、そしてこの問題を解決するために先生方に大きなスクラムを組んでお願いしないと非常に社会不安というものがあると思うわけですから、そういう点について一つお伺いしたいと思います。  それからもう一点は、カネミのほうの梅田参考人にちょっとお伺いしたいのですが、先ほどから質疑の中にいろいろお話を聞きました。いろいろ治療もしておられるし、まじめに補償してやろうという気持ちで御調査願っておられるようでありますけれども、私はここでもう一つ特にお伺いしておきたいことは、私は新聞やらいろいろなものを読みましたが、何でも中小企業であるからなかなかそうお金は自由にならないのだと。ですから、操業することが第一条件だというふうな御意見も私は伺ったわけでありまして、先ほど小野委員からも質疑がありました。いま、一番大問題は、治療費に困る、働けない、生活に困るという人があるわけですから、こういう方に対しては、いまの企業云々ももちろんありましょうけれども、やっぱり責任上何とかこういう人たちには十分な治療ができるような方法を第一番目にすべきだ、私はそういうふうに考えます。ですから、そういうことに対してかたい御決意のほどを聞かしていただかないと、皆さん愚者さんは不安じゃなかろうか、あるいはまた、社会全般の人もこういう人に対しては非常に不安に感ずると思いますので、その点だけをお聞かせ願っておきたいと、こういうふうに思います。
  92. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) お話の趣旨は十分わかりましたので、帰りまして社長に本日の皆さんの御発言の趣旨を十分説明しまして、できるだけの善処をさしていただきたいと考えております。
  93. 五島応安

    参考人五島応安君) ただいま非常に御親切な御意見をお聞かせいただきましたが、われわれも、患者とともにこの問題は解決していきたいと思っております。一時新聞に騒がれまして、モルモットにするのではないかというような概念が出て、非常にやりにくい面も若干なかったとは言えないと思うのです。患者とともに協力して一緒に研究に進んでいきたい。それで、いろいろと研究のほうは考えておりますから、ひとつ早急にそういう要求はいたしたいと思っております。
  94. 上原正吉

    ○上原正吉君 宇治野さんでも紙野さんでもいいのですが、お聞きのように、カネミ梅田さんは、捜査の結論が出てから対処する。そうしてまた、事業が再開できて経営ができるようになったら賠償もしょうと、こういうお考えのようでございますが、紙野さん、宇治野さんは、再々内容証明を送って善処方をお願いしておる、こういうことなのでございますが、そこで、私がお伺いしたいのは、宇治野さんと紙野さんとは、カネミ倉庫株式会社中小企業であるから無理もないと、こうお考えで、警察の捜査が終わるまで、そうしてまた、カネミ倉庫株式会社が操業を再開して利潤があがるまでお待ちになろうと、こういうお考えなのかどうか、それを承っておきたいと思います。
  95. 宇治野数行

    参考人宇治野数行君) ただいまお話がありましたことは、実は梅田参考人のお話しを聞きながら私たち不安に思っておった次第であります。警察の刑事責任云々ということばをいままでたびたび聞いてまいりましたけれども、われわれ患者は刑事責任が決定しましてからということを当初聞いていたのですけれども、梅田参考人の話によりますと、今度は、その話の裏には企業が順調になってからという意味が含まれておるのであります。とするならば、いつの日に企業が順調になり、補償を支払う能力になるか。これは、中小企業中小企業と何回も申されたように、私たちにとっては遠い先のことじゃないかと思うのです。はるかな、はるかな、もうかなたにしか払ってもらえんのじゃないか、そういう不安を持った次第です。これが責任ある方の回答としますと、われわれ患者は、一日一日が苦しい病状で苦しい生活をしておるのに、こんなもう夢みたいなことを言われたのでは、私たちは納得いかないわけであります。普通の病気の人であれば、三カ月先または六カ月先には明るい太陽のもとに生活できるという希望がありましょう。しかし、われわれはそれもない、現在。中小企業だから長く待ってくれ、われわれが金持ちになったらそのときに払うのだと、ほど遠い返事をもらっても、安心することもできなければ、わざわざ上京しまして持って帰る話にはちょっとほど遠いものがあるんじゃないかと、こう感じておる次第であります。
  96. 上原正吉

    ○上原正吉君 五島先生にお尋ね申し上げたいのですが、この中毒事件カネミ倉庫のライスオイルにあるんだと、こういうことには御確信があるわけでございますね。それが争いになった場合に、これはカネミ倉庫のライスオイルにあるんだということを証言できる、こういう確信がおありですか。
  97. 五島応安

    参考人五島応安君) 争いの場合は私にはわかりませんが、少なくとも医学なり科学の常識からいたしますれば、それは全く確実なことではないでしょうか。
  98. 上田哲

    ○上田哲君 小野委員がもう少しくお尋ねをするはずであったのでありますけれども、参考人のお体の都合でお帰りになるということで了承するのですが、これじゃどうしても被害者の会の二人は帰られない立場にあるだろうと思うので、私は二点だけ確認をいたします。  第一点は、宇治野さんが最初にお話しになった部分でありますけれども、一体、栄養だと思って食べたものが体に毒になる、消費者がみずから食べるものを全部検査しておかなければならないのか、こういう部分だけはしっかりしておいてもらいたいということがありました。そこで、問題となるのは、食品衛生法に基づいて添加物であるかどうかというふうな狭義な法律解釈の問題ではなしに、少なくとも福岡県庁なり北九州市なりの衛生担当者がその部分についてしかるべき常識の線における行政責任を持っていなければならないはずではないかという部分が問題となるはずであります。その部分は、ある種の法律論なり社会常識論なりで展開されるべき部分を含んでおりましょうけれども、少なくともきょうここで国政調査権の中でこの問題を明るみにするというのであるならば、行政責任者も若干はこの場に顔を出すべきものであります。冒頭の小野委員の御追及の中で、事務当局からは、北九州市の議会が始まっているから云々というお答えがありまして、それはそれで了承いたします。しかし、私は参考人から事実関係について若干お尋ねをしたいのでありますけれども、宇治野さんや紙野さんは、何とかして食品衛生上の問題等の関連における市当局者なり県当局者なり――あなた方には県は遠いかもしれない。しかし、北九州市の市長さんなり衛生責任者には、ここで話しを一緒に聞きたいということで、市会議員さんなどを通じて公開、非公開の場をもつて市当局に出席を求められたと私は聞いております。それに対する答えが、谷市長は、この問題については法律上及び管理責任その他がないんだと、責任がないから出席するに及ばずと、こういうことを明言をされ、少なくとも返答をされたということに基づいて出席をされていないという情報があります。もしそういうことが、風聞にすぎないかもしれないが、もしそういう意図に基づいて出席をされないのであるならば、これは単に地元の市会が開会中であるかどうかの問題ではなしに、国政調査権がそうした立場で踏みにじられたという問題にまでさかのぼらなければならない問題だろうと思うのであります。そういう問題は他の側面から追及されなきゃならぬでありましょうけれども、事実関係としてそういうふうな事実があったかどうかについてお二人からお話を承りたい、これが一つ。  もう一つは、先ほどから企業責任を追及されております。私は、これは上原委員の御質問も含めて早急にお話し合いを始めるべきだと思うのです。いまの上原委員の関連質問によれば、ある種の法的な見解が明らかになるまで云々という見解がありました。そこまでいかなければ明らかにならないような補償上の問題はあるだろうと思います。しかし、少なくとも法の裁きなり権限を有しなくても、国会の場でわれわれが国民の良識を代表して皆さん方にお約束をいただいてしかるべき筋のものは、現実にここに五島先生が明らかに医学上の常識においては他の原因は考え得られないという一年間の研究に基づく結果を提示され、しかも、企業もそれを認め、現実に生命の危険すら目の前にしている患者が存在しておる。法律的にはいかなる基準において補償額が決定されるかどうかの問題は別にしても、両当事者が話し合いを始めるということだけは直ちに開始をしていただかなければならないはずであります。しかしながら、この辺は、被害者同盟の方と梅田参考人の両方にお尋ねをしたいのでありますが、今日まで内容証明付の何回かの通知を出されたにもかかわらず、少なくとも被害者の会の気持ちに沿うほどには梅田参考人側は会ってくれていない。たとえば、具体的に申し上げれば、この冬の期間、北九州にもずいぶん小雪のちらつく寒い日がありました。その中で患者同盟の方々があなたの会社の門前にその不自由な体を押して坐り込みをいたしました。こういう状態にもかかわらずお会いにならなかったということは、どういうことになるだろうか。あるいは休み時間をねらったならば会えるかと思って、休み時間に行ってみれば、全体はラジオ体操をしていながら二階の窓からのぞく人がありながら会ってくれなかったということを私は事実関係としてお話を聞くわけであります。こういうような実態があるとなると、企業責任は感じております、できるだけ御意に沿いたいと思いますとおっしゃっても、あなたのほうが今日まで患者同盟にお示してなっている理由は常に三点であります。それは、患者の数が確定していないのだということが一つ治療方法が確定していないのだということが二つ、資金がないのだということが三つであります。この三点が今後とも強調されるのであるならば、国会の席では、よくわかりました、御意に沿いたいと思いますと御答弁になったとしても、結局はその三点がまだ解決されないから、たとえば法的な見解が出るまでは話し合うことができないというようなことになってしまうだろうと思います。一体、梅田参考人は、いままで一年間主張されてきたその三点について、お考えをお変えになったかどうか。少なくとも結論としては、今日ただいまお帰りになってから、法的な基準における数字が出るか出ないかはもちろん問題としても、そこにいらっしゃる代表者であります。あなたは、社長ではないにしても、社長代理で権限をもってここでお話しになられたはずでありますから、お帰りになったら、直ちに補償の問題について、少なくとも責任者はあなた方なんでありますから、国の責任の問題はこれから小野委員が追及されるはずでありますが、少なくとも当面の責任者はあなた方なのでありますから、あなた方は、法的な基準の問題は別にして、直ちに患者の代表の方々とお話し合いをお始めになるかどうかということについていまの三点の問題を含めてきちんとお約束をいただきたい。  以上二点であります。
  99. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 患者の皆さん方がお座り込みになりましたときに社長がおって会わなかったではないかというようなお話でございますが、これは、広島、岡山地区に私のほうがお米屋さんに油脂類の販売をして回った、それの返品のことについて、二月の初めに打ち合わせをして、上旬にいついつに向こうに来てくれというお話し合いになっておったものですから、それでそのことは実は紙野さんにも事前に私のほうの対策委員の方がお話し申し上げて、これはもう紙野さんも御承知だっただろうと思っております。それで、二階におって会わなかったというようなことは決していたしておりません。そのかわり、たしかあれが二十何日でございましたか、二十八日には帰ってまいりますので、そのときまでひとつ面会するのは延ばしていただけぬかというふうにお話し申し上げたと、こういうふうに聞いております。
  100. 上田哲

    ○上田哲君 ですから、話し合いをすぐお始めになりますか。
  101. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) これは、いま申し上げましたように、補償の問題にいたしましても、何にいたしましても、これはやはりお互いに、お話し合いを私のほうもあれしますし、それから皆さん方に会って、いま言うように私のほうにも資金の面だとかいろいろな面があります。それについて十分検討しながらあれするように、ひとつ検討さしていただきたいというふうに思います。
  102. 紙野柳藏

    参考人紙野柳藏君) いま梅田参考人の言われたことばですが、私が前に社長のいないことを知って座り込んだ、こういうふうに表現されましたのですが、大体話は二十三日の電話でございまして、十一月の二十五日からのこのいきさつを話せばあまりにも時間を長く費やしますから、私はそういう時間をここで拝借することはあまりにも――いままでの答弁の間からカネミのとった態度がほぼおわかりと思います。私たち患者が、ちんばをひいて、そうしてああいうみにくい顔、化けもののような顔をカネミの前にさらすとしたら、たとえ広島にどんなことがあって行ったとしても、前に連絡をとっていることだから、帰って、患者がみんなが集まったのは初めてでありますから、当然患者に対して会うことがあたりまえだと、こう考えます。  それと、もう一つ、私は患者のおみやげに持って帰りたいと思いますが、厚生省の方にお尋ねしますが、二度とこういうかたわ者を出さないという保証をはたしてつけてくださるかどうか、私たちはこの悲しみと苦しみをかみしめて、そうしてこの回答を私たちは持って帰りとうございます。二度とこのようなむごたらしい残酷なことが起こらないようにする保証が厚生省におありになるかどうか。それともう一つ、取り締まりと監督ははたして厚生省の責任であるかないか、この二点をおみやげに持って帰りたいと思いますが、厚生省の答えをいただきとうございます。
  103. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 参考人に参考までに委員長からちょっと御注意をいたしたいと思いますが、参考人はもとより国会法に基づいて皆さんにお願いをいたしておるわけでございますが、参考人として厚生大臣等々に質問いたすことは国会法で許されていないわけです。したがって、皆さんは、国会議員である当委員会委員の方にいろんな御意見を参考に申し上げまして、そうしたものを踏まえて国会議員である委員方々厚生大臣質問をいたす、こういうことになっておりますので、御了承を賜わりたいと思います。     ―――――――――――――
  104. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 委員異動について御報告をいたします。  本日、田代富士男君が委員辞任され、その補欠として渋谷邦彦君が委員に選任されました。     ―――――――――――――
  105. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 お疲れのところをたいへん恐縮ですが、先ほど小野委員からいろいろと追及がありまして、その後の経過についてのあらましの状況が判明したと思うのです。今回の事件はたいへん遺憾であったと思いますが、いま参考人方々の御答弁を伺っておりますと、やはり平行線をたどって、一体いつ結論が出るのか、被害者の方は、最後に紙野さんからおっしゃいましたように、切実な訴えと聞こえるようなそういうお話でございました。ごもっともだと思います。家族をかかえ、あるいは一体これからどうしたらいいのかという、絶えずそういう不安につきまとわれて、何らの補償もない。また、治療法といっても、現在研究の過程に置かれている等々、悪条件が重なっております。加えて、カネミ倉庫さんのほうでは、先ほど来からいろいろ申されましたように、それは御事情はございましょう。中小企業の悲哀といいましょうか、われわれもその点は十分心得ておるつもりでございます。しかし、問題が社会問題に発展した以上、捜査権云々の問題も先ほどから関連して話がございましたが、これだけでは問題は解決しないと思うのですね。かりにカネミさんがこれで再建できたと、そういう事態になっても、その信用というものはやはりぬぐいされないですよ。信用を回復するまではなかなかたいへんだろう。これはまあ御商売にとっては一番大きなショックじゃないかと思います。むしろいまの段階において一歩でも二歩でも前進できる誠意あるそうした解決の方法をお考えいただいたほうがよろしいのではないかと、いまお話を伺っておりまして痛切に感じたわけです。こういう異様な雰囲気でございますから、思うことも十分お話しできなかったと思うのですけれども、その辺を勘案しまして、カネミさんのほうで、やはり積極的に、暫定的でもいいですから、この補償の問題で何らかの手が打てないものかどうか。それは、もちろん最終的な結論が出ないことには全額どうしようかこうしようかということは考えられないと思います。けれども、やはり被害者の立場に立ってみれば、これは何といっても切実な生活問題がかかっておりますので、これを一歩でも二歩でも前進的な解決をしないと、先ほど伺えば、交通費にもこと欠くと、こうなりますと、これはだれが考えたってただ自分たちの企業だけの問題を理由とすることはできない、こういうことになるのじゃないか。  そこで、これはカネミ倉庫さんのほうに私伺いたいのですが、ここでもし結論が出なければ、それはけっこうです。先ほどおっしゃっておられましたように、会社へ帰られて社長と十分相談なさっておきめいただいてもけっこうだと思うのですが、とにかく暫定的にもこれだけの補償はしょうと、また、交通費についてはこれだけの補償をしよう、こういう具体的な話の持っていき方というものをしなければ、これはますます感情が対立しちゃって、おたくも困るでしょうし、被害者の方もますます困っちゃう、深みにはまってまとまる交渉もまとまらなくなってしまうということをいまお話を伺って痛切に感じますので、この点をもしお答えいただけましたならば、暫定的に解決する方法があるかということ、もしここでお答えができなければ、持ち帰っていま私が申し上げましたことに対して明確に被害者の方にお約束できるかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
  106. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) 十分皆さんの御意見をお聞かせいただきましたので、帰りまして、何と申しましても、いま言うように、できるだけわれわれもあれをしたいという気持ちは社長にもあると思います。十分本日の空気を伝えまして、でき得る限りのことをひとつあれしていただきたいというふうに考えます。
  107. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 被害者の方にも約束できますわ。お帰りになってから、間違いなくいま私が申し上げましたことについての話し合いですね。
  108. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) それはもう……。
  109. 上田哲

    ○上田哲君 一点だけ。先ほど申し上げましたけれども、被害者同盟の方がお疲れだと思うので、私が質問したのはそういうことじゃなくて、事実の問題を、北九州市の役所の方がきょう見えていないという問題についてあなたがたの経過をお伺いしたがったのですが、委員長の御指示もありますから、お答えをいただかないようにします。それはけっこうですが、少なくともカネミの方は、いま具体的な案をお持ちでないことはやむを得ないと思いますけれども、お帰りになってすぐに、長いこととだえて不信感までが出てきている患者との話し合いを始めるのだ、法的な問題の結論が出るまでというような制限ではなく直ちに話し合いを始めるということを国会という国民の前で御確認をいただいた、私はかように理解をいたします。  それで、委員長にお願いをしたいのでありますが、先ほどの事実関係は参考人からは確認はできませんでしたけれども、そうした風聞もかなり具体的な裏づけをもって出ております。したがって、この辺は国会の国政調査権の基本的な問題にも触れることであると思いますので、ひとつ当委員会においてしかるべき措置をとられるように願いたいと思います。
  110. 小野明

    ○小野明君 先ほど紙野参考人から出ました御意見については、これから私が厚生大臣にいろいろ尋ねる問題の中心でありますから、ひとつ御理解をいただきたいと思うのであります。  それから梅田参考人に先ほど上田委員あるいは渋谷委員からも関連して質問がありましたように、何と申しましても、誠意があるかないか、この点は話し合いを拒否するなんという態度からは出てこない。私は先ほど了解をしてあなたへの質問を終わりましたのは、話し合いを始める、こういう了解があったと、こういうことで私は質問を終わったのであります。その点を、ひとつきっちり間違いのないように、いま上田委員からも念を押されておりますから、愚者との話し合いを始めるように御努力をいただきたい、また、お約束をいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  111. 梅田新藏

    参考人梅田新藏君) それはいままででも実際はお話し合いはしております。ただ、社長がいままで出なかった云々ということが問題になっておるようでございますが、その点については、いま申しましたように、ずっと私のほうも患者のほうと実際もお話ししています。これは、いろいろ私のほうも経済事情がありまして、一ぺんに云々ということはできぬと思いますが、ただ、いま言うように、いろいろ患者の方の中にもお困りの方もあるでしょうし、これは先ほど申しました過去の治療費の問題も小野議員がお話しになっておりましたが、われわれも、こういうのはやはり資料を出していただいて、そしてできるならそちらのほうからでもというふうに社長も考えを持っているようでございます。いま、こういう点から、できるほうの点からひとつ善処させていただきたいというふうに考えております。
  112. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  113. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 速記をつけて。  たいへん参考人の皆さんには御苦労さんでした。
  114. 小野明

    ○小野明君 環境衛生局長に、大臣が来られるまでお尋ねをいたしておきます。  先ほど五島参考人から意見が出ておりますが、福岡県内さえも九大油症班でやっておることが開業医に伝わっていない。あるいは、開業医のほうでやられておることがまた九大油症班との間にはパイプがつまっておる。これでは全くこの研究の体制あるいは治療の体制というものはなっておらぬ。その点をどう改善をしていくおつもりであるか、まずお伺いをしておきます。
  115. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 福岡県内におきましての患者に対しまする医療の体制の問題についてお尋ねでございますが、御承知のように、油症研究班というのは、大学、それから福岡県、北九州市等の行政当局も参画して一つ研究体制をつくっておるということで、総合的な医療に関します研究が行なわれるようにという配慮のもとにそういう体制をつくって現在まで来ておるわけでございます。それで、実態的な医療におきまして、九大を訪れる人と、一般開業医を訪れる人、あるいは国立病院を訪れる人があるわけでございますが、これにつきましては、この油症研究班を中心に学術的には改善をしていっておるということでございまして、私どもといたしましては、やはり総合活動でございますから、若干そこに問題も生じたこともあるかとも存じますけれども、まずは総合的な活動としては円滑にいっておると、かように考えておるわけでございます。しかしながら、やはり問題点等もあるという点につきましては、なお十分検討いたしまして、さらに円滑な体制が推進されるように配慮いたしたいと、かように考えております。
  116. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  117. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 速記を起こして。
  118. 小野明

    ○小野明君 大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  多少この問題は大臣も御承知のように、経過がずっとあるわけですね。これは大臣が就任以前からの問題でもあるわけです。そこで、それからたどって少し確かめておきたいと思うのであります。昨年の十月二十五日、これは園田厚生大臣のころであったかと思いますが、医療費については国で立て替え払いを行なう、このことが閣議で了承をされたということになっておるわけであります。この点について、斎藤厚生大臣はそのことを御存じであるか、また、それをそのとおりに実施をされるつもりであるか。
  119. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 私、就任いたしまして以来、この問題はたびたび伺っております。また、患者の方にもお目にかかっております。そこで、診療関係はどうなっておるか、私からも聞いたのでありますが、保険で全部まかなう、一部負担の点は会社のほうで負担をするということになっておる、こう聞いておりましたので、一応診療だけは本人の負担がなくて済むのだ、かように思っておるわけでございます。
  120. 小野明

    ○小野明君 保険についてはこれはもちろんでありますけれども、この際の園田厚生大臣の御答弁というのは、いま患者がいろいろ訴えられました費用も含めての話であると私は解釈をするわけです。いま患者治療さえも受けられないという実態の中で、会社もああいった実態の中で、医療費の立て替え払いというのは園田厚生大臣の方針のとおりにおやりになるつもりであるかどうか、再度お尋ねをします。
  121. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 医療費と申しましても、医者に通う交通費とか、あるいは弁当代とか、そういうものは考えておりません。私はそう聞いておりまするし、これは非常にむずかしい。ただ、会社のほうでは、一人に二万円ずつそういったような費用にといって渡したと。しかし、二万円ももうすぐ切れるであろうと私は考えて、先般来からも、先ほど渋谷さんからもお話があったように、中間的にでも少し、いろいろお金も要っているだろうからと言うて、一人当たりたとえば五万円でも十万円でも、それは患者の様相にもよりましょうけれども、軽い人、重い人といろいろありましょうが、そこらは実態がわかりませんから、そういうようなことで何かさしあたってやってもらう方法がないかと、われわれ遠いところにおりまするし、また、会社の資金状態、そういうものもよくわかりませんから、現場の福岡県が中心になって、そして会社患者の代表の方々やなんかと一緒になって、話し合ってうまくいく方法を考えてくれるように、先般そういう指示をいたして、いま結果を待っておるわけなんであります。
  122. 小野明

    ○小野明君 そうすると、立て替え払いというのは、これは保険のことですか。保険というのは、これは立て替え払いということに解釈されますか。立て替え払いというのは、私は、保険はもちろん、その他の治療になくてならぬ費用を国が立て替えて一時支払いをしておくと、こういうふうに受け取っておったんですが、これは誤りでしょうか。
  123. 金光克己

    政府委員(金光克己君) その立て替え払いということにつきましては、そういうようなことも含めて研究をするようにということは私どもとしても指示を受けたわけでございます。その後、その方法につきましていろいろ検討いたしまして、やはりまずは治療研究ということが一番根本問題だということで、科学技術庁の特別研究調整費その他の研究費を充当いたしまして、そして医療に関する研究につきましてはそれを充てると、こういう考え方で経過してまいりまして、そのうちカネミのほうで自己負担分についてはとりあえずは持つと、こういうことになりましたので、そういう形に移行していったというのが実際上の経過でございます。
  124. 小野明

    ○小野明君 ところが、いま患者からお話をお聞きのように、一向にあなたのお話のように話が進んでおらぬ。二万円なんて、あれはいつの話ですか。今日の二万円というのは、いま患者が話しておりますように、電車、バスが利用できないんですよ、女の人なんかは。病院というようなところに通う、あるいは町の中に出て行くというようなことになりますと、なかなか電車、バスに乗るには相当の勇気が要るわけです。そういった点もやっぱり考えていただいて、あるいは研究費の問題にしても、これは聞くところによると、科学技術庁の特別研究調整費なんかで、厚生省自体の費用は入っておらぬという話、これはまあ別としまして、患者がいまああいうふうに困っておる問題を何とか救済をする道はないものかどうか、この辺を大臣にお尋ねをいたします。
  125. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) その点は、私先ほど申し上げましたように、福岡県が中心になって、そして会社との話し合いで少なくともさしあたり困らないような方法がないか検討してくれと、こう言っていまいるわけであります。これを国費で出しておくということはいまのところ非常に困難だと、かように考えております。病院に通う費用とか、あるいは弁当代とか、そういうような点は非常に無理じゃないだろうか、また、そのくらいのものは出せるのじゃないだろうかと私どもは見当をつけておるわけであります。
  126. 小野明

    ○小野明君 だから、それぐらいのものはカネミに払わせなければいかぬと思いますね。ところが、いま参考人カネミの専務が来て言われるのは、ああいったことしか言わぬわけですよ。ですから、もっと大臣は強力にやっぱり指導してもらわなければいかぬ。先般、カネミ患者の代表が大臣にお会いをいたしました。ところが、大臣が、福岡県の亀井知事にも依頼をして、そうして患者の救済に手を尽くしておるんだということを言われた。ところが、その直後、福岡の亀井知事は、そんなあっせんなんかは私は断わると明確に言っているわけです。きょうの参考人の招請にいたしましても、県の当局、市の当局というのは出てこない。あるいはカネミの専務もああいった態度である。全く厚生大臣の権威が地に落ちておる。あなたはここで答弁するだけ、そういうふうに受け取らざるを得ぬ。また、事実はそうなっておる。こういった事実を見て大臣はどうお考えになりますか。
  127. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 私は亀井知事とはよく知り合いなことは、皆さんも御承知のように、一緒におったわけです。よく話し合えば話のわかる男ですから、必ず引き受けてくれるだろうと、こう思っておるのでありますが、本人の出てくる日を待っておるのであります。電話でも話をしたいと思っておりますが、まだ電話をかけているひまがありません。朝から晩までこういうなにをいたしておりますので、夜でも電話をかけるといいのでありますが、できるだけ近い機会に上京してもらって。とっくりと話をして、そして道をつけたら必ずわかるんじゃないだろうかと、かように思っております。御了承をいただきたいと思います。
  128. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 厚生大臣、この委員会の開会冒頭、御案内のように、小野委員参考人を要請しておった。これは、大臣御承知のとおり、国政調査権によってですね。ところが、事務当局のお話を聞いておりますと、それぞれ議会の関係で出席ができなかった、こういうことなので、特にこの点委員長として――委員長にということで委員から要請されたものですから、この際厚生大臣に私のほうから御要請申し上げたいと思いますが、次回の委員会においで願うということがはたして可能であるかどうかわかりませんけれども、厚生省のほうの当局として、県当局、市の当局に対して書面でそれぞれ回答していただくようにお願いできないかどうか、このことを厚生大臣に私から御要請申し上げたいと思うんですよ。どうですか。
  129. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) ちょっと御趣旨がわかりませんでしたが、私のほうから県当局と市当局に対して、出てくるようにということでございますか。
  130. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 次回の委員会に出てくれるかどうかということについてもここでは判断つきませんので、開会当初から、県当局とそれから市の当局、いずれも厚生省関係の方々ですね、地方自治体といいましても。ですから、厚生省として書面をもって小野委員の要請にこたえ得るように御努力願えぬかと、こういうことです。
  131. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 私は、個人的には幾らでもやります。やりますが、たとえば小野委員から要求があったからと個人的に言ってもけっこうでございますが、本来はやはり委員会の正式の書面をお出しになって、そしてこういうものを出したからということでありますれば、私のほうも側面的に御協力は申し上げたいと思います。実は、私も、きょうここに参ります少し前までは、きょうは参考人を呼ばれることを正式におきめになるだけだと、こう伺って、参ったわけです。ここへ参りましたら、参考人が来ておられて、そうしてもうすぐに呼ばれた、こういうことでございますので、私は県や市当局の肩を持つわけではありませんが、委員会で正式に参考人としての出頭要求をされたのかどうかなと、こう思っておったようなわけでございます。そういうことであれば、側面的に御協力を申し上げます。
  132. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 厚生大臣、御意見は十分委員長としては了解できますが、追って理事会で検討いたしまして小野委員の要請にこたえたいと思いますから、そういうことで場合によっては要請いたしたいと思います。
  133. 小野明

    ○小野明君 次に、十一月十九日に、同じく園田厚生大臣ですが、早く治療方法を発見をし補償を急ぎたいという発言が閣議でなされておるわけです。これはまあ了承されておるわけですが、先ほど大臣もお聞きのように、五島参考人に言わせますと、県内の治療体制、研究体制さえも不備である。まさか全国的に広がったこの患者治療体制あるいは研究の体制が整っておるとは考えられないわけであります。このときの園田厚生大臣発言というものも今日空文になってしまっておる。私は、全くこれは厚生省としてはなっておらぬと思うのです。この点について説明をいただきたい。
  134. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 私の就任前までに治療体制についてどういうことをやったかについて、局長から答弁をいたさせます。
  135. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 治療研究体制につきましては、現地に油症研究班を設けまして、それを中心にいたしまして進めたわけでございまして、これは先ほども申し上げたわけでございます。ほかの各県の研究につきましても、やはり地元の――地元と申しますか、九大を中心とした油症研究班を中心として、各府県も連絡をとって研究を進めていった、かようなことでございます。
  136. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) その後、九州大学をはじめ、国立病院におきましても、それぞれ患者に対する治療方法をいろいろとやってみたようでありますが、先ほどちょっと政府委員からも申したと思いますが、先般そういった治療状況の視察に現地に局員を派遣いたしまして、そうして、明後日、関係の治療に当たっておられた方々六名の方々と、それから国立研究所その他の専門家の人も集まって、いままでの経過を打ち合わせをし、今後どういう治療体制あるいは研究体制を整えたらいいかという相談をしてもらうつもりでございます。たいへんおそくなって申しわけありませんが、そういう状況であります。
  137. 小野明

    ○小野明君 大臣のお答えのほうが率直でいいと思います。環衛局長の答弁は、もう何回もお聞きしたようなことで、研究体制やあるいは補償がおくれておりますならおくれておりますで、率直にやはり事実を述べてもらわなければいかぬと思います。大臣も言われるように、治療の方法も今日ない、あるいは補償もいまお聞きのような状態である。これはまあ大臣が就任前のことでもありますけれども、十月から今日まで何ら事態の進展をみていないというのは、これは厚生省の行政不在である、行政責任を全く感じておらぬ結果にしか過ぎないと思うのであります。二十日におやりになるのだということでありますけれども、本腰を入れてやっていただきたいと思うのです。あすをも知れぬ患者の気持ちというのは大臣もお聞きのとおりである。これは、企業責任もあるが、行政責任もぴしゃっとやはり明確にしてもらわなければいかぬ。再度ひとつ御答弁をいただきます。
  138. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 治療体制を整え、一日も早く治療方法の発見につとめますこと、また、補償に関係いたします事柄、先ほど申しましたような方向におきましてまた再びこういうことの起こらないような取り締まりの事柄等につきまして、私、じかに責任を持って陣頭に立っていくつも参でございますから、御了承をいただきたいと存じます。
  139. 小野明

    ○小野明君 政務次官にはこの前の委員会でも私はいろいろ申し上げておきました。ですが、これはきょうの愚者の発言の中で、県や市が責任がないと。しかも、北九州市の市長が、本会議で、市には責任がない、こういうことを表現されたという。全く不見識もはなはだしいと思うのですが、法律上、県や市に責任がないものかどうか、明確にしてもらいたい。
  140. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 県や市が責任がないと言われたのはどういう意味で言われたのか、私自身も御意見を聞いてみないと詳細のことは申し上げられぬわけでございますが、私どもが判断といいますか考えておる考え方でございますが、食品衛生法に基づきまして、営業の許可とかあるいは監視指導は、北九州市長が責任を持ってやっておる、かようなことになっておるわけでございます。それから施設基準につきましては、県が施設基準を法律に基づいてすると、こういう立場になっておるわけでございます。そういう関係に県としてはなっておるわけでございますが、ただ、問題は、今回の事件に関しましては、普通の、普通のと申しますか、施設基準につきましても、一応、こういった製造業者のそういった熱媒体につきまして明確な規定がなかったということと、それからやはり特殊な事例でございますので、北九州市の食品衛生監視員が施設監視等も年に数回行なっておるわけでございますけれども、しかしながらこういった点に気づかなかったということでございます。そういう意味から申しますとそこに問題があるじゃないか、かように考えるわけでございますが、塩化ジフェニールという熱媒体が媒体として使われておったというようなことにつきまして、かようなものにつきましての規定というものが明確でなかったという点もありまして、たとえば食品衛生監視員の過失が大きいといったようなことは、これは必ずしもいえない問題だろうと思うわけでございまして、そういう意味で、全般的にかような事件が起こらないようなことにつきましては、当然これは配慮すべきものでございますが、配慮するその限界というものがどの辺でものを考えるかという問題でございまして、そういう意味におきまして、あるいは市長さんがさような表現をされたのじゃなかろうか、かように考えておるわけであります。
  141. 小野明

    ○小野明君 市長の発言をあなた同情的に見ることは要らぬわけです。油の製造業というのは政令の中にきちっと入っておると私は思う。だから、先ほど言われた県や市というものが食品衛生法上明確に責任があると、この答弁をしてもらえばいいんですよ。
  142. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 北九州市は、営業の許可あるいは監視につきましての、食品衛生法に基づいて監視を行なう、また許可を行なう立場にあるわけでございます。先ほど申し上げましたのは、ただ過失とかその程度がどうだということにつきますとまたいろいろと検討しなければならぬ問題があるかと思います。
  143. 小野明

    ○小野明君 過失があったらその前の責任が消えてなくなるようなことをおっしゃるのですが、どうですか、食品衛生法というのは、県や市に責任があるように書いてあるのでしょう。その点を明確に言うてもらいたいというんですよ。過失があれば責任はないのですか。
  144. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 食品衛生法上は、県にも市には、それから主としては市が責任をもって法律に基づいた行為を行なっているわけでございます。
  145. 小野明

    ○小野明君 そこで、これは北九州の谷市長が本会議で言われたというのだから重要だと思うのです。ですから、その詳細な議事録を資料としてひとつ出してもらいたい。
  146. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) いまの小野委員の資料要求ですが、あとで理事会で検討してみます。
  147. 小野明

    ○小野明君 それで、時間もありませんから少し急ぎますから、先ほどのような尾ひれのついたような答弁をなさらないで、きわめて明確に簡潔に答弁をいただきたいと思います。  十二月十六日に、北九州市の衛生局米ぬか油対策本部が、油症の疑いがある者の精密検査を行なっておるわけです。研究治療体制が整っておりませんから、こういった結果があなたのほうに来ておるかどうかわかりませんが、この結果がわかっておれば公表をしてもらいたい。
  148. 金光克己

    政府委員(金光克己君) まだその資料は参っておりません。
  149. 小野明

    ○小野明君 現地の責任者が行なった精密検査でありますから、これはきわめて重要な結果だと思うのです。それもあなたのほうに吸い上げられておらぬというのは、これは怠慢以外の何ものでもないと思います。さっそくこれは早急に取り寄せて公表をしてもらいたい。  次に、十二月の二十一日に、カネクロール混入源の脱臭工程を安全なものにするように改善命令を食品衛生法に基づいて出しているのですね。この改善命令がどのようなものか、内容を説明をいただきたい。
  150. 金光克己

    政府委員(金光克己君) この改善命令につきましては、塩化ジフェニールといったような熱媒体を使用しないような安全な施設に改善をするという指示をいたしたわけでございます。その他必要な衛生的な改善につきましてあわせて指示いたしておるわけでございます。
  151. 小野明

    ○小野明君 一月十四日に、市の衛生局が、カネミ倉庫製油部の営業停止命令を三カ月ぶりに解除をしておるわけですね。ところが、十二月十七日の斎藤厚生大臣の言明によると、また、先回の委員会でもあなたの言明にあったと思うのだが、操業の再開は、製造工程の故障原因、あるいは疫学調査のすべてが判明をしてからこれをやる、こういう答弁をいただいておるのですが、一月十四日に市の衛生局が三カ月ぶりに停止命令を解除した。これとの関係は一体どうなりますか。
  152. 金光克己

    政府委員(金光克己君) これは、営業停止を命じましてから期間がまいりましたので解除いたしましたが、すでに許可業種としての期限が切れましたので、引き続き営業できないという、こういうことになっております。
  153. 小野明

    ○小野明君 しかし、許可業種として期限が切れたということを見越して停止命令を出したのですか。私は停止命令を出したということが重要だと思うのです。これは、あなたや斎藤厚生大臣の言明があるにもかかわらず、解除しておる。これは一体どういうことですか。
  154. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 十月十六日に営業停止をいたしましてから、以後ずっと営業停止を引き続き命じておりましたが、十二月三十一日に許可業としての期限が切れたということでございます。
  155. 小野明

    ○小野明君 答弁になっておらぬ。
  156. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 課長、君がわかっておることは君が答弁したらいい。
  157. 金光克己

    政府委員(金光克己君) それじゃ、食品衛生課長から申し上げます。
  158. 野津聖

    説明員野津聖君) お答えいたします。  現在のカネミの製油部につきましては、食品衛生法の政令に定められております許可営業として認められてきていたわけでございますが、その許可の期限が十二月三十一日で切れたわけでございます。ただ、営業停止を十一月十五日から二カ月延長いたしました関係上、一月の十四日で営業停止のほうはそのまま解除の形になってきたわけでございますが、現在は食品衛生法に基づきます許可業種とはなっていないわけでございまして、営業を再開しようとします際には再び許可をとらなければいけないという形になっているわけでございます。
  159. 小野明

    ○小野明君 いまのは不明確ですが、十二月三十一日で許可期限が切れておるのですか。
  160. 野津聖

    説明員野津聖君) 十二月三十一日で許可営業の期限が切れているわけでございます。
  161. 小野明

    ○小野明君 許可営業の期限が切れたものに、一月十四日に、営業をしてよろしいと、こういうことは、これは一体どういう関係になるのですか。
  162. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 十一月十五日に引き続き営業停止命令を出しておりましたが、それがちょうど二カ月間出しまして、一月十四日で期限が切れるということで、その十一月十五日に出しました営業停止命令が一月十四日に解除された。しかしながら、十二月三十一日で実質的には営業許可の期限が切れておりますので、そこからこれも引き続きもう営業許可は新たに申請しないと許可は得られないわけでございますので、当然ずっと引き続き営業は停止されておるわけでございます。これはいわゆる許可されていない業種として残っている、こういうことでございます。
  163. 小野明

    ○小野明君 そこで、問題がちょっと変わりますけれども、カネミの製油部の設計施工というのは、一体どこがやったのですか。特に六号管ですか、これについての調査結果があれば説明をいただきたい。というのは、ピンホールからカネクロールが出た、これが中間発表で原因になっているようでありますけれども、その他またいろんな見解が出されておるようであります。こういった点から、そのカネミの六号管というものを中心にしてお答えをいただければいいんですが、設計施工というのはどこがやったのですか。
  164. 金光克己

    政府委員(金光克己君) いま資料をちょっと持っておりませんので、あとで調べまして御答弁いたします。
  165. 小野明

    ○小野明君 それでは、ないものを出せというわけにはいかぬが、こういった点も、設計施工というものがきわめて重大な困果関係をなすものだと思います。しかも、その指導は一体どこがやったのか、これも明確にしてもらいたい。こういうことがわかりませんと、原因究明といっても、何らしておらぬということにしか通じないわけです。  もう一つカネクロール、これは一体何ですか、これは薬務局長でないとわからぬかもしれませんが、カネクロールというのは一体何か、そうして開発は一体どこでやっておるのか、お答えいただきたい。
  166. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 商品名でカネクロールといわれているわけであります。塩化ジフェニールというものであるわけでございます。これは、現在、私どものほうの毒物及び劇物取締法では、毒性等から見まして、毒劇物には指定されておりません。いわゆる普通物ということに相なっているわけでございます。
  167. 小野明

    ○小野明君 だから、どこが開発しておるのか、そうしてこれは一体何に使うのか、そういったものを説明せにゃ、毒物、劇物に指定されておらぬということぐらいは先刻知っておるわけです。
  168. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) カネクロールというのは、国内では鐘淵化学によって昭和二十九年から販売されているものでございます。
  169. 小野明

    ○小野明君 鐘淵化学でつくっておるということも知っておるわけです。だから、このカネクロールというものは鐘淵化学が開発しておる、指導者はだれである、何に使っておるのだ、毒性の研究についてはどうやっておる、こういうふうな問題を質問しておるのですが、もう少しあなた親切な答弁をしてもらわなければいかぬ。
  170. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 塩化ジフェニールというものは、いま申しましたように、普通物ということになっております。普通物ということでありますと、直接私どものほうの行政対象の毒劇法の対象にならないわけでございます。したがいまして、その詳細は私ども承知いたしていないわけでありますが、本件の塩化ジフェニールというものについては、従来から言われておりますように、熱媒体、可塑剤等に使われているというふうに言われているわけでございます。  それからこのものの毒性でありますが、文献等によりましても、急性毒性というものはたいしたことがないようでありますが、若干の慢性毒性というものはあるようでございます。それから私どものほうの国立衛生試験所で先般来からこの毒性の分析をやっているわけでありますが、まだ最終的な結論が出ておりませんが、いままでの中間報告によりますと、急性毒性ではマウスについてやったわけでありますが、マウスの経口致死量というものは、体重一キログラム当たり一グラム以上ということになっておりますので、現在の毒劇法の対象になっております毒物ないしは劇物の基準というものから比べますと、はるかに毒性が少ない、こういうふうなことになっております。もちろん、これは中間報告でありますので、現在鋭意衛生試験所でこの毒性の分析をやっているところでございます。
  171. 小野明

    ○小野明君 この問題が起こりまして、すぐにこの塩化ジフェニールにつきまして毒物、劇物に指定をする――ああいった実際に被害を起こして、五島参考人の言われるような治療方法もないというような中毒症状を起こしておるのですが、当然これは毒物、劇物に指定さるべきだと思うのですが、この辺はどういう方針であるか、尋ねておきます。
  172. 坂元貞一郎

    政府委員坂元貞一郎君) 先ほど申しましたように、毒劇物取締法でいいまする毒物ないし劇物というものは、指定の基準が現在あるわけであります。その指定の基準によりますと、経口致死量というものを主体にしてものごとを考えているわけであります。それ以外に、吸入毒性なり、皮膚、粘膜等に対する刺激性というものを勘案しながら指定をいたしておるわけでありますが、原則的には経口致死量いわゆる急性毒性というものを中心としてやっているわけでございます。したがいまして、本件の塩化ジフェニールにつきましては、先ほど申しましたように、経口毒性というものが、現在までの指定基準からいいますと、やや毒性が弱いというようなことになっておりますので、現在のところは、この毒物、劇物の該当にならぬのじゃないか、こういうふうに思っておりますが、もちろんこれは冒頭に申しましたように中間報告でございますので、まだ詳細な実験をやらなければならぬ、こういうことに相なっております。
  173. 小野明

    ○小野明君 国立衛生試験所でこのカネミ油症事件原因物質に関する毒性研究というものがやられております。その結果を公表してもらいたい。
  174. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 国立衛生試験所の研究の結果でございますが、これは先ほども申し上げておりますように、明後日、中央におきまして研究関係の機関の合同の研究会、対策本部会議を開くことにいたしておりますので、その席で中間報告としては明らかになると思うのでございます。  いままでにやっております仕事でございますが、まず最初には原因食品の分析を行なっておりまして、なお、病因物質の毒性試験等を先ほども御説明ございましたように実施してまいっております。  それから塩化ジフェニールの毒性も調べるのとあわせまして、これが体内に入りましてどういう形をとっていくかというようなことにつきまして動物実験を通じて検討いたしている、かような内容を検討いたしているわけでございまして、明後日おおむねの中間報告は出るかと思います。
  175. 小野明

    ○小野明君 ニワトリとマウスを使って国立衛生試験所が研究をしている。それで、私が説明をいただきたいというのは、そんなに専門的な学問的な研究の結果ではないわけです。それで、私の手元に資料があるのですが、これはあさっておそらく提出されるものかもしれませんが、こういうことになっている。「ニワトリ及びマウスに対する慢性毒性を検討したところ、用いたライスオイルに著明な毒性を認め、クロロジフェニール――これは塩化ジフェニールのことだと思います――が中毒原因物質であることに有力な根拠となる実験結果を得た。」と、こうなっている。この資料がおそらくあなたのもとにはなければならんはずです。こういったものもあなた方が説明をせぬというのは怠慢ではないですか。これにつけ加えるぐらいの報告はあなたのほうにあるはずです。また、こういった結果が中間報告といたしましても出ておれば、当然これは毒物、劇物としての指定を検討しなければならんと私は考える。環衛横長と薬務局長にお尋ねしたい。
  176. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 動物実験におきまして、人にあらわれました症状と同じような症状が認められる公算が大きいということは、私どもも中間報告としては口頭で承知いたしておりますが、ただ、先ほど申し上げましたように、その後引き続きいろいろと検討した結果が明後日一応提出されると思いますので、そういう意味で特別に申し上げなかったわけでございます。
  177. 小野明

    ○小野明君 いま私が申し上げた程度のことは御承知だったわけですね。どうして説明しなかったのですか。
  178. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 実験の過程でございますので、たとえば爪の色が変わるとか、そういったような症状も出ているということは、一部の実験の範囲においては出ておりまして、こういう公算が大きいという報告は聞いておりますが、その後の検討におきましては、やはり明後日を聞いてからにいたしませんと、あるいは結果的に間違うということがあってもいけないというような意味で申し上げなかったわけでございます。
  179. 小野明

    ○小野明君 時間がありませんから急ぎますが、あさってあなた方がお集まりになって何かわけのわからないような結論を出されようというような話も私はお聞きをしているわけです。あさって行なわれるという会議が、そういったあいまいな行政責任、あるいは企業責任、あるいは塩化ジフェニールに対する、いまの薬務局長の話にも出ておりましたような、毒性さえもあいまいにするような結論を出す会議になるんじゃないか、こういったことを私は申し上げておきたいのであります。そういった会議にならぬように、それぞれの責任並びにこれだけの中毒を起こした薬品の毒性というものが明確になるような会議にしてもらいたい。御意見を伺います。
  180. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 私どもといたしましても、その原因究明につきましては一日も早く明確にいたしたいというつもりでやっておる次第でございます。
  181. 小野明

    ○小野明君 それで、このカネミの油の製造工程――これは全国で七社あるわけですが、ほぼ他の六社も同じような製造工程ではないかと思うんです。それで、私は製造工程を北九州市から出ておりますものを見ますと、この製造工程については御承知だろうと思いますが、去年の二月にニワトリが大量に死んでおるわけですね。この段階で農林省や厚生省が積極的に原因究明に乗り出せば、今日のような悲惨な結果というものはなかった。ところが、この製造工程を見ますと、脱臭に至る工程と、それからダーク油をつくる工程と、二つに分かれている。ニワトリが死んだという工程と脱臭の工程、その分かれるもとまでにすでに何らかの原因物質が含まれるような製造工程になっておったのではないかということが想像されるわけです。脱臭工程だけの問題ではないわけです。原油の関係でもこれはそういった被害があるわけです。だから、こういった製造工程の検討、そして現在得ておる結論というものを出していただきたい。
  182. 金光克己

    政府委員(金光克己君) ダーク油とそれから今度問題になりました脱臭工程の関係の問題でございますが、ダーク油との関係につきましては、引き続きどういう関係にあったかということは究明いたしております。それからダーク油そのものも検討いたしておるわけでございますが、これにつきましても、現在までの結果におきましては、ダーク油の中に塩化ジフェニールが含まれておる公算が大きいということまでは一応指摘されたのでございまするが、それがさらに確実であるかどうか、それからそれがどういう経路で入ったかという点につきましては、現在なおいろいろな角度から検討されておる、実験もされておるということでございまして、こういった問題につきましても、明後日におきましては、現在までの資料を農林省からも持ち寄っていただきまして検討いたしたいと、かように考えております。
  183. 小野明

    ○小野明君 私は初めて聞いたんです、塩化ジフェニールがダーク油の中にも入っておるというのは。――ああそうか、思い出した。そうすると、結局、脱臭工程だけではなくて、塩化ジフェニールというのはもっと原油の段階で使われておるのではないかということは、当然これはしろうとでもわかるわけですね。ですから、この製造工程に対する究明というのは、これはもっと精密にやってもらわなきゃならぬし、この製造工程でどこがおかしいんだと、こういうことは当然あなたのほうで把握しておかなきゃならぬ問題じゃないですか。
  184. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 熱媒体を使いましたところの脱臭工程以前の製造工程においては、塩化ジフェニールの検出をしていないわけでございます。そういうことでございますから、ダーク油のほうへどういう形で、まあ決定的には、その塩化ジフェニールがダーク油の中に入ったということでございますと、これはどういう経路で入ったかということは、想像はいろいろといたしておりますけれども、まだ決定されていないということでございまして、なお検討することになっております。
  185. 小野明

    ○小野明君 いろいろ質問をするけれども、満足な答弁というのは一つもない。一つも検討、研究しておらぬということの証明にしかならぬと思う。あえて言わなければならぬのですがね、これは。それで、もっと責任ある研究をしてもらいたい。九大油症班に全部まかせるのではなくて、あらゆる場所での研究が結局行政の責任者であるあなたのところに全部来るようにきちっとしてもらいたいと思うんですよ。  それで、最後になりますが、いまの食品衛生法で再びこういった事件が起こらぬように措置ができるのか、対処ができるのか、あるいは、いまの法律で改正しなければならぬと検討中のものがあれば、これを説明いただきたい。
  186. 金光克己

    政府委員(金光克己君) こういった事件を再び起こさないようにするために、政省令の改正を行ないたいと考えております。それで、一つには、従来、この油製造業につきましては、びん詰め、かん詰め類としての一括した許可業種になっておりましたので、その辺を明確にする必要があるのではないかということ。それから食品衛生管理者等も配置をして、非常に複雑な工程もございますので、品質管理をしっかりさせるということが必要なのではないかといったような、いろいろな角度から現在検討を進めております。これは、ほかに、食品衛生法につきましては、他の政省令の改正とあわせて検討したいということで、現在検討いたしております。
  187. 小野明

    ○小野明君 そういった政省令だけで部分的に扱ってこういった事件が再び起こらないかというと、あなたも自信がないだろうと思う。これは結局不当表示によって起こった事件でもある、一つは消費者保護という立場から見てですね。これは、最近、国民生活審議会――総理の諮問機関であるこれから、食品の表示についての三原則というものが出されておる。これは御承知だろうと思うのですけれども、これまで過大に企業側を保護してきた、こういった風潮があるというところからこの意見書も出されておるようです。最近また果汁等の問題についても適切な意見書が出されておると思うのです、農林規格法の問題と関連をしてですね。こういった総合的な見地からこの食品衛生法に再検討を加える、あるいは別途食品法といったようなものも起こして食品公害が起こらぬように対処すべきではないかと私は考えるわけです。この点はひとつ政務次官はいかがですか。
  188. 粟山秀

    政府委員(粟山秀君) お説のとおりだと思います。ただ、各省にわたっておりますので、早急に今国会などで間に合うというようなわけにはまいりませんので、さしあたっては政省令、そういうものをしっかりと変えていきたい。そして、できるだけ早い機会に食品法というようなものを各省でもって検討いたしまして、しっかりしたものをつくりたいと、そういうことで、もうその話し合いとかそういう研究とかは早急に始めたいと、そう思っております。
  189. 小野明

    ○小野明君 最後に、このカネミ油症事件研究に厚生省は幾ら金を出しておるのですか。
  190. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 福岡県におきます油症研究班には五百六十万五千円出しております。それから、その他国立衛生試験所等にも研究費を支出いたしております。
  191. 小野明

    ○小野明君 幾らですか。
  192. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 全部で千八百万円でございます。
  193. 小野明

    ○小野明君 科学技術庁はどれくらい出しておりますか。
  194. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) この件につきましては、厚生省に対しまして千六百五十二万三千円配分いたしております。
  195. 小野明

    ○小野明君 現地の油症班が言うには、きょう五島参考人が言われておるのは、科学者の熱意であるということを言われた。常識的には金が足らないということも言うだろうけれどもと、こう言われる。しかし、現地としては、その程度の、五百六十万程度行っておるようですけれども、それではもう足りないわけです。それで、研究体制にしても、各個ばらばらである。厚生省がやっぱりきちんとした研究体制をしいておらぬ、こういうことが言えるのでありますが、さらにいまついておる金に再度科学技術庁としては特別研究調整費あたりから追加して出す、こういう措置はできぬものかどうか。
  196. 石川晃夫

    政府委員(石川晃夫君) 特別研究促進調整費と申しますのは、各省庁の所掌にまたがります研究の促進ということを主眼としているわけでございます。この中に二つございまして、各省庁の協力を要する重要な総合研究というものと、もう一つは緊急事態に対処いたしまして早急に推進しないといけないという研究と、この二つあるわけでございます。この米ぬか油事件につきましては、特別研究促進調整費の中の緊急分の配分ということで行なったわけでございます。この緊急分の配分と申しますのは、従来から、大体一国限り、そのテーマに限りまして一回限りということになっておりまして、それ以降の経常的な研究につきましては関係省庁で予算措置をしていただくというふうなことを原則としているわけでございます。しかし、本件のように非常に特殊な事例につきましては、関係省庁からさらに緊急的な研究が必要だというようなお話がございましたら、その間の調整を行ないまして今後検討を進めていきたいと思っておる次第でございます。
  197. 小野明

    ○小野明君 いまのような科学技術庁の答弁もあるわけですが、さらに要求をして早急にこの治療方法の発見、原因の究明ということをおやりになる決意があるかどうか、お尋ねしておきます。  それと、さっきざっと言われたが、昭和四十三年と四十四年に分けて、この予算がどうなっておるかということを説明してもらいたい。
  198. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 先ほど申し上げました研究費は四十三年度の予算でございまして、四十四年度につきましては、明後日の研究会議等の結果を待ちまして、引き続きどういったことを研究するかということに基づきまして、また科学技術庁とも御相談申し上げまして予算をきめたいと、かように考えております。
  199. 小野明

    ○小野明君 おかしいな。四十四年はゼロということですか。いま四十三年度に措置されておるのであって、四十四年度の新年度予算の中には何ら油の研究には予算が計上されておらぬということですか。
  200. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 予算として計上されているいないということではなくて、厚生省にも特別研究費とか医療研究費とか厚生科学研究費等がございますし、そういった中で一部考え、また、科学技術庁の特別研究促進調整費等も御協議申し上げまして検討してまいりたい、そうしてできるだけ必要な額を早急に予算化していきたい、予算化と申しますか、要請するようにいたしたいと考えております。
  201. 小野明

    ○小野明君 その額は、西十三年度の実績から見て、なお研究の途中にあるということから見て、どれくらいをお考えになっておりますか。
  202. 金光克己

    政府委員(金光克己君) これは再度申しまして恐縮でございますが、明後日の研究発表等を待ちまして、今後どういう研究をやるかということの体制を確立しましてきめたいと、かように考えております。
  203. 小野明

    ○小野明君 それは、そういった会議に出るのに、あなたがどれくらい金をつけるという腹案がなくして出るというのは、でだらめじゃないですか。無責任きわまるじゃないですか。大体、どの人がどういった報告を持ってくる、進行度合いはどれくらいである、だから金としてはこれくらいというふうにあなたのほうはふところ勘定して出なければいかぬじゃないですか。出たとこ勝負でだれがどういうものを持ってくるかわからぬ、何がどう出るかわからぬ、金はいまのところゼロだが、向こうが言うてくればというようなことでは、まことに手ぬるい厚生行政と言わざるを得ないじゃないですか。その腹案というのはやっぱりきちっと持って出なければいかぬと思う。これは、政務次官、この前の委員会ではあなたはまことにりっぱな答弁をしておるのだが、いまのようなことではこの前の答弁はうそになるのですが、一体どういうことですか、また、どうしようと思われるのですか。
  204. 粟山秀

    政府委員(粟山秀君) 役所側では、二十日にいろいろなデータを持って集まる、いままでのやってこられた方たちの回答があり、そこでそれが問題になっていろいろな話し合いがある、そういうことをもって確かなこういうことをそれではしなければならないというようなことがわかって出そうというのは、大体役所の性質としては、前もってこれだけをというはっきりした結果が出ないうちに一言えないというのが役所の習慣なのであろうかと、私は考えますが、しかし、帰りましてよく事務関係者と話しまして、そうしていまの御質問に相当するような結論を出したいと、そう思います。
  205. 上田哲

    ○上田哲君 先ほど参考人出席している間に一言申し上げておいたのは、それに関連するんです。非常に明白なことは、四十三年度に五百六十万円ついている。四十四年度についていないのです。ここが問題なんです。これを患者が非常に心配しておる。つまり、いろいろなことをおっしゃるけれども、具体的にここへ県当局も来なければ、市当局も来ない。これは院の国政調査権に基づくものであるかもしれないけれども、少なくとも厚生省側にもそれにかわるべき十分な答弁の資料の用意もない。そうして、直接責任当局からの答弁者の出席をずらしておきながら、高いところから厚生省が十分話し合いをしようじゃないか、補償しようじゃないか、研究もしようじゃないかというような口先の答弁でごまかそうとする、これは典型的な国会答弁ですよ。ところが、そうでないとおしっゃるなら、あなた方は少なくとも研究の立場はともかくとして、行政の立場として、今日進行中の、さっきのことばをかりるならば、特に悪くなっているとも言えないけれども、よくなっているとも決して言えない、こういう状態に置かれておる患者の数が七百をこえておるわけでしょう。こういう状態が中間段階にあるということになるなら、あさって会議がありますからありますからというのは小学生だってだまされぬですよ。あさって会議があるので白になるか黒になるかわからぬというような裁判官の話とは違うのです。いかなる研究者の常識においてももはやカネクロールであることはわかっていて、七百何十人という人はもうもとに復し得ないという状態になっていて、あとは二十日が問題になると、先ほどから小野委員がおっしゃっておられるのは、カネクロールが毒性を持っていて、カネクロールがこういう状態に立ち至ったということはわかり切っているんですが、おそらくあなた方がお出しになるところのポイントの逃げ方は、そのカネクロールがどういう過程でこの油の中に入っていったかについてはわからないから、結果論としてはともかくとして、原因論としては追及できないと免責性をその辺に求められるだろうということは大体われわれ推定をしているのです。そういうことがあるのでなければ、当然予算措置がなきゃならぬと思う、少なくとも。このカネクロールの医学的な問題がまだ究明されていない。重大な問題は、普通の毒物というのは排泄されるのです。カネクロールは排泄されないのです、さっきお聞きになっていたかどうか知らないけれども。ウサギやあるいはほかの実験動物の中では、ニワトリの中には排泄という部分が出ているので、人間も排泄をする可能性があるかもしれないということを五島講師はおっしゃった。お聞きになりましたか。そういう問題があるくらいに、嫁に行けなくなったお嬢さんのまっ黒になった顔が一年たって排泄の可能性ありゃなしやについて全然いま何もないんじゃないですか。いまやっているのは、ホルモン剤とビタミン剤だけじゃないですか。さっき、先生は、いままでは対症療法ではなく消極的原因療法であったとおっしゃっている。そういう段階にあるんだから、これからこそ研究しなければ、この七百人の可能性は復元ということについては全然ないわけですよ。ところが、四十三年度には五百六十万円をつけていながら、どこをさがしてみたって四十四年度の予算がないじゃないですか。そんなことをしながら、十分な対策を講じますとか、責任をとりますとか言うのは、実に児戯に類する。具体的にここまでつけてきてあさってになっているんだというならば、これは公式には出せない条件がお役人にはあるかもしれないけれども、医学的にははっきりしているんだから、ここまでくれば、もう顔がまっ黒になってやっと歩いて来ている人がここにいる。このどたんばになれば、裁判官のように白になるか黒になるかわからぬというようなごまかし方じゃなくて、結論は、具体的に被害者はそこにいるんだから、予算がついていないということに対して政府としての責任を感ずべきですよ。もし、そうでないと、三百代言を弄せられるのならば、ことばとしても少なくとも四十三年度よりは四十四年度に具体的にかき集めても九州大学油症班に渡すべき研究費は十分にお渡しいたしますというくらいのことをおっしゃらなければいかんと思うのですが、いかがですか。
  206. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) これは大きな問題ですよ。ですから、大臣を補佐する立場にありますから、これは粟山政務次官から答えてください。
  207. 粟山秀

    政府委員(粟山秀君) 金額についてはただいま申せませんけれども、必要な研究費というものはどこからどうかき集めてもやらなければいけないと思っております。
  208. 小野明

    ○小野明君 いままでの質問で、操業が再開されるということを非常に急いでいる。カネミの社長も、四月一日には再開したいと。それに相呼応したように、営業停止命令を解いたり、どんどんおやりになっている。斎藤厚生大臣の言明と異なった行政実態であるわけですね。しかも、原因の究明はされておらぬ。操業が再開されるという以上は、きちっと原因が究明されておらなければならぬと私は思うのです。だれでも思うでしょう。製造工程に対する疑問、薬品に対する疑問、患者に対する補償、治療体制も一貫しておらぬ。あるいはピンホールからではないのではないかという疑問があるのですけれども、それに対しても何ら検討もされておらぬ。質問をする元気がなくなるわけです。もう少しちゃんとした研究体制、責任のある治療の体制、これはあながち金高ではあらわすことができないかもしれないけれども、その金もゼロである。いま言われて、何とかいたしますと、まるで台所からへそくりをひねり出してくるような御答弁ですが、きわめて不熱心きわまると思うのです。国民生命を預かっている厚生省であるとするならば、もっときちんとした体制とそれから準備をもってこの行政をやっていただきたい。最後にそれだけを私は申し上げて、質問を終わりたいと思います。政務次官、きちっとしたひとつ答弁をしてください。
  209. 粟山秀

    政府委員(粟山秀君) かき集めと申しましたが、全然ゼロになっているということをおっしゃられたので、これから金をつくってやりますと、そういう意味ではございません。これはただその時点にならないとどれだけのことをどうしなければならないかというようなこともはっきりしないので、そういうお金の金額がはっきりできないということであって、初めからやらなければならないという十分な気持ちでおります。そういうことで、いろいろと御意見を伺っておりますると、ほんとうにそういった方たちのためにも、それから今後そういう悲惨な目におあいになる方が出ないようなことのためにも、厚生省といたしましては御趣旨のように一生懸命やる覚悟でございます。
  210. 上田哲

    ○上田哲君 どの費目から出しますか、金を出す費目は。
  211. 粟山秀

    政府委員(粟山秀君) それは、局長のほうから……。
  212. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 厚生省の科学研究費としまして、厚生科学研究費とか、医療研究費、あるいは特別研究費等がございます。なお、それだけではたして足りるかどうかの問題もございますが、そういった面につきまして科学技術庁とも協議してきめたい、かように思っているわけでございます。
  213. 小野明

    ○小野明君 これで終わります。
  214. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  215. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 次に、看護婦の充足に関する件について調査を行ないます。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  216. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 まず先に人事院の問題についてやりたいけれども、まだ人事院はだれも来てないようだから、来るまでちょっと厚生省の医務局長のほうにお聞きします。  今日の看護婦不足の問題は、充足要求をされておるし、あるいはまた、勤務の状態ですね、一人夜勤をやめて二人夜勤にするとか、夜勤は月に八日ぐらいにとどめてほしいというようなことが人事院から出ているのですが、これに対しては一向厚生省はこれを実行していないわけですが、一体どういうふうになっているのか、その点をちょっと先に一つだけ聞いておきたい。
  217. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 四十年にただいま御指摘の勧告をいただきまして、それ以来三年間にわたりましては主として勤務環境の改善という条件整備のために努力をしてまいりました。大体、休憩室、あるいは連絡系統、あるいは夜間の暖房というようなことを重点に国立関係の施設について整備をしてまいったわけでございます。今年からは、やはりこれに伴う人員増ということが必要でございますので、新しく看護職員の増員をはかってまいりました。数は二百六十一名、第一年でございます。そのほか、これに関連いたしますが、新生児看護の問題も同じように一種の影響を持つものでございまして、これにつきましても昨年に引き続いての増員をはかってまいりました。
  218. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 あなたいま適当な答弁をしているけれども、前の鈴木厚生大臣のときも四十五年までには何とか段階的にこうしますと言っているが、いま現在何も効果があらわれていないじゃありませんか。あまりも等閑視過ぎるじゃないかと私は思うのですが、あなた実際に責任感を持っておりますか。これは責任行政で、人命にも関係することでありますし、基本権の問題にも属するでしょうし、いろいろな面から角度を変えていえば大問題になっているわけです。だから、何とかします、何とかしますと口だけで済ましておったら、この委員会はみんな進んでいると思っておるのですが、一方では患者が困っていることが実態においてどんどんあらわれているわけだから、もう看護婦がいなくなって夜勤ができなくなっているような状態に追い込まれているにもかかわらず、最高責任者がそんなのらくらしたことを言っておったのではとてもできないと心配するわけです。この問題については数回質問しました。また、藤原委員のほうからも何回も質問されて、同じ答弁がまた繰り返されているということに対して私は非常に不満だと思います。これはまたあとから逐一申し上げ、厚生省の考え方に対しても根本的に考え直してもらいたいし、前の厚生大臣が言ったことは今度は厚生大臣がかわればそれでいいのか、前の看護課長がわかればかわったでいいのか、あるいは医務局長がわかればそれも知らぬのか、こういうようなことではあまりにも行政というものが徹底していないということで、これは人命にも関係することだから大問題だと思う。ですから、これについてはまたあとから詳しく質疑をしたい、こういうふうに思っております。  きょうは、まず人事院の問題について、人事院の職員局長が来ておられると思うのですが、なぜ人事院の総裁は来ないのですか。大問題がいま人事院の中では起こっているじゃありませんか。あなたたちが十分管理をしなければならぬところの公務員が警察に引っ張られたり、あるいはまた非常な問題が起こっている。特に、きのう、あなたのほうへある人数の人が陳情に行かれた。私は、もし人事院に前向きの姿勢があるならば、中に入って代表者を選んで話し合うということであれば、あんなトラブルは起こらなかったと思う。私はちょっと激励に来いというので一時過ぎごろ行きました。なんと、そうしたら、もうあそこに坐って門を閉ざしてしまって入れないというような状態で、あなた方は公務員に対してそういう冷たい態度でいいのですか。しかも、きょうは、そういう問題が起こっているにもかかわらず、総裁はどこかに逃げているのですか。その事情をまずちちょっと聞きましょう。
  219. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) お答えいたします。  人事院総裁は、一昨日から名古屋のほうにちょっと用向きがございまして、今晩帰ってくる予定でございます。  それから、ただいま、きのう人事院ビルのところでいろいろ組合の方との間にトラブルがあったことで御質問があったわけですが、私どもの基本的な態度といたしましては、組合の方がいろいろ話し合いたいというお申し入れがございましたならば、あらかじめ人員とか議題とかそういうものを承って、それじゃあしたの何時に会おう、こういうことでやっておるわけであります。実は、昨日の件は突然でございまして、それでも従来のしきたりがございましたので、三十人程度は一応中に入っていただきまして、それでいろいろ話し合いをしたわけでございます。ところが、それ以外にも相当多数の方があの庁舎のところにおいでになるという話も私ども情報として聞いておりましたので、そういうことになりますと、従来、とかく大ぜいの方が庁舎内に入ることによって、あるいは坐り込みだとか、いろいろ庁舎内の管理上おもしろくない事態がございますので、そうなりますと、人事院がかりに何か組合の方とお約束するような場合にも、いかにも組合の圧力によって人事院がそういうことを取りきめたんだという印象を与えてもうまくないし、さらにまた、私どもの庁舎は、御承知のように、自治省なり警察庁も入っておりまして、合同庁舎の特異性がございますので、職場の静ひつを乱すということは好ましくないということであのような措置をとった次第でございます。
  220. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 第一、総裁が出てくる予定なのに、名古屋に行っているというのは、この前の委員会で総裁に出頭を求めて委員部から通知をしてある、それをその後にあなたのほうでは行っているのではないのですか。この会でいろいろお尋ねしたいと思って出てもらうように要請してあるのに、ほかの用があって出ていくというのは、やはり議会軽視ではないか。何の用事で行っておるのか、一応聞いておきたい。
  221. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 実は、前から名古屋地区におきまして講演を頼まれておりまして、その点が一つと、それから名古屋地区の職員と一度ぜひ会って、実は名古屋の私どもの出先の局長が今度かわりまして、そこの職員に対していろいろ激励もしなければいかぬということもありまして、そういうような用事がいろいろございまして、前から実は予定しておったわけでございます。
  222. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 前から約束があったか知らぬですけれども、講演だ、ちょっと職員と話し合うのだということと、国会の場で私がいろいろだだしたいと思ってお願いをしているのと、あなたのほうはそちらのほうが重要と考えて行ったわけですね。そこらははっきりしておいてもらいたい。
  223. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 別に人事院総裁が国会を軽視するとか、そういうことは毛頭ございません。あくまでもあらかじめ国会のほうの御了解を得ておったものと考えておったわけでございます。
  224. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 あなたに話しても、すれ違ってしまうからこれでやめておきますが、これは総裁と一ぺん近いうちに話したいと思いますから、あなたから伝えておいてください。国会軽視はけしからぬ。きょうは総裁が来られたら十分話し合いができると思って私は期待しておったのですが、局長では不十分というのではないけれども、総裁が最後の責任者であると思いますから、当然総裁が来るべきだと、こう思います。  それからきのう職員局長はおられたと思うのですが、きのうの事態は突発事項だったからというような話でありますが、あなた方人事院としては、話し合いをしたいと前もって通さなかったら、受け付けない、しかも門を閉ざすのですか、この点も聞いておきたい。
  225. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 通常の場合は、組合の方が、何名か、かりに十名なら十名の方がいついつに人事院に行きたいというような場合には、別にそのような措置はいたしたことはございません。ただし、多数の方が人事院ビルに押しかけるというような情報が入った場合には、先ほど申したような措置をやっております。
  226. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 きのうは、私も行きましたけれども、そう多数の人員じゃありません。二十人か三十人、それくらいはいつも入れられているという話を聞いておった。そういうことは水かけ論になりますから、もうよろしいわ。だけれども、きのうの事態は、もしあなたのほうで話し合いをしようということで初めから代表者を入れて、あとの人はどうしなさいという指示を与えたならば、あれほどのトラブルは起こらなかったと思う。ところが、ただむやみに門を閉ざして出てくれ。あそこへは何か会計課長とかいうのが出てきていました、私が行ったときに。これを入れるについても、自分でおこっちゃって、組合の言うことを聞かないで、一人でわめき倒しているわけですね。私は、人事院の中であの庁舎の管理をまかされている人があんな態度でいいのかということで本人をたしなめました。そうしたら、それから少し態度を穏やかにしました。こういうようなことでは、あの管理をしている人自身が挑発をして、そして来ている人が何でもなしに請願に来ているのに、非常にエキサイトさしてかえって場面を悪くしたというように私は判断をしたわけであります。おそらく皆がそういうふうに判断しただろうと思います、あの事件では。人事院の立場から言うならば、使っている人たちがいろいろな請願に来た。しかも、そのお願いに行っている人たちは、あなたのほうで実際にやらなければならぬことをやっていないために、それで行っているのじゃありませんか。悪いのはどっちかというと、あなたのほうが悪い、それは。だから、私は一ぺんその悪さをいろいろとただしてみたいと思います。そういうふうに悪いことをしておきながら、来た者に対しては門を閉ざしてお前ら悪いといってやる。  しかも、私は診断書を見せてもらった。看護婦さんたちが、左下側部の内側部の切創、その疾患によって二日間の治療。それから左足背部の挫傷、左足背部の擦過傷、三日間。左膝の打撲、挫傷、これも一週間。これは一週間といったらかなり重い傷害ですよ。私も医者で診断書を書いていますけれども、外傷を負わして一週間といったら、これは重刑ものですね。そういうものです。右下腿部の打撲傷、これも一週間、通院を要する。それから左下腿部の打撲傷、これも一週間。右下腿部膝足背の擦過傷、これは三日間。それから右足背の挫傷、これは三日間。それから左足背挫傷、これは五日間。こういうような大ぜいの人がけがをしているわけです。しかも、これはだれにけられたかわかりませんけれども、おそらくあそこを排除するということでけられたのだろうと思うのですが、あなた方いろいろ監督し指導しなければならぬ人が処置をあやまったためにこういう災害を受けておるわけです。私はこれに対して人事院も責任を持つべきだと思いますが、どうですか。  こういうような事態が起こっているのに、総裁は、講演だとか、だれと話し合いに行かれたのかわかりませんけれども、そういうことで行っておるということ自身、非常に等閑視しているのじゃないか。また、そこに局長がおられたら、何でこれを話し合いしなかったか。それも総評のほうからやかましくあなたのほうに言って、こういうことで話し合いをしている間に、書記長とかなんとかいうのをみんな警察のほうでは連れて行ってしまった。そして、排除するためにこういうけがを負わした、こういうトラブルが起こっている。私は、人事院としては、あの人事院の中で処置することがうまくいけばそういうことは全然なかったと思うのですが、あなたはこれは反省しませんか。
  227. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) ただいま先生のおっしゃったようなけが人が相当出たというお話でございますが、そういうような原因がどこにあるかは別として、そのような事実そのものはたいへん遺憾に存じております。ただ、私の聞いたところによりますと、一応時間を限って交渉に入ったところが、その時間がやや超過いたしまして、そのときに、実は庁舎内に相当お待ちになっておった方がおるわけですが、その交渉の終わる時間まではそこにおってもらいたい、それが終わり次第そこから一応俗なことばでいえば退去してもらいたいということで組合の幹部の方と大体話し合いがついておったようでございますが、だんだん組合の交渉が長引きまして、予定を相当時間超過いたしたようでございます。そうして、一方、また、そこの庁舎の外でお待ちになっていた方のところに、泊まり込み態勢といいますか、そのような泊まり込みに必要な器具をトラック等で持ち込んだというような気配が見えた。したがって、そのようなことになりますと非常に問題があるので、一応これ以上はお引き取りを願いたい、こういうことで組合の方にお話ししたところが、どうしても言うことを聞かないということから、結局、警察の方がそこにおいでになって、警察官の手によって退去を命ぜられた。あるいは、いま言ったようなけがとかそういう事態が起ったとすれば、その間にそういうことが起こったんではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、人事院として反省しないかということでございますが、私どもの考えといたしましては、やはり一応約束は約束としてそのとおり組合の方が守っていただかないと、とかくこういう不測の事態が起こりますので、やはりその点はもう少し秩序ある統制に服していただきたいというのが私どもの願いでございます。
  228. 藤原道子

    藤原道子君 関連して。私は、まさか人事院が警官を導入したとは思っていなかった。きょうは、厚生省がやったのか人事院がやったのかあとで私もお伺いする予定だった。   〔委員長退席、理事上原正吉君着席〕 聞くところによると、退去命令が出たのは午後六時十分です。書記長が逮捕されたのが午後六時二十分だった。そんなにせっかちにいままで逮捕した例はございません。しかも、あなたのほうが全医労の申請に対して判定を出されてことしで四年ですよ。その間、なんにもやっていない。そのほうはそのまま放置しておいて責任をとらないで、それで交渉が若干延びたからといって、わずか十分ぐらいの押し問答で、それで退去命令、いや逮捕する。書記長を逮捕して、いまだに水上警察署に留置されているそうでございますが、人事院は公務員の味方じゃないんですか。公務員の生活を守るのが人事院じゃないんですか。私は、いま、人事院が警官隊を導入したということを聞いてびっくりしちゃったんです。それでいいんですか。それも、ほかとの交渉じゃないんです。あなたのほうの判定、八日間の夜勤、一人の夜勤――われわれは六日の夜勤を強く主張しているのです。にもかかわらず、労働組合のほうでは、一歩下がって人事院の判定の実施を要求しておる。しかも、看護婦の過労は、これから大橋先生からお話があると思いますけれども、異常産は五〇%をこえているというんですよ。   〔理事上原正吉君退席、委員長着席〕 これほどひどい勤務をさしておいて、そうして人事院が出された判定を厚生省は実行しない。しないので、交渉に行けば逮捕する。しかも、女性がそんなにけがをさせられるということは、いままでにあまり例がございません。私は人事院の態度について了承できませんが、これに対して御異議ございませんか。
  229. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) ただいま先生のおっしゃったように、このような事態が人事院と組合との関係において起こったというのは、あまり例がないことでございます。私どもでは、先ほども申しましたように、そういった一つのルールによりまして庁舎管理というものをやっているわけでございます。したがって、そのような庁舎管理の面から見て好ましくない事態が起これば、これはある程度やむを得ないのじゃないか。もちろん、人事院というのは、公務員の利益の保護に当たる機関でございます。そのためにいろいろ努力しているわけでございますが、そのことと、先ほど申したこういった庁舎の秩序を守るということは、必ずしも、だからどんなことをやってもいいんだということでは相つながらないわけでございまして、そのようなルール違反については、やはり人事院としてもき然たる態度をもっていかざるを得ないということでございます。
  230. 小野明

    ○小野明君 関連して。ルール違反についてはき然たる態度云々と、こう言われる。まるで暴徒扱いにあなたたちはしておるわけです。あなたのほうでほんとうに労働者を守るという態度があるならば、責任者が押しかけておる人たちと誠心誠意話をすれば、必ず解決する問題ですよ。それを、強引に警察力というような暴力を使って解決をするというのは、人事院がそういうやり方をするというのは、これは私は問題だと思う。だから、誠心誠意あなた方は向こうの代表者と話をしていく。押しかけている人たちも、おれたちの気分をどうかしてくれという切実な気持ちで来ているわけだから、誠心誠意話をすれば、そういった事態の収拾というのは、こういった不幸な結果を見ないで必ずできる。初めからき然たる態度で臨むんだというような、悪ければこうだというような割り切り方でおやりになるから、こういうことになると私は思うんですよ。もっと誠意のある態度で話をすべきだと私は思いますが、どうですか。
  231. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) これは弁解するわけではございませんが、私、直接そのほうの庁舎管理を担当しておりませんが、あくまでも私の聞いた範囲でお答え申し上げておるわけでございます。したがって、事実関係においてはあるいは違っておる点があるかと思います。(「違っていることは言わんでもいい」と呼ぶ者あり)いままで私の聞いた範囲でお答え申し上げているわけでございます。ただ、先ほどのことはあるいは私の表現が正確でなければ取り消さしていただきたいと思いますが、はたして人事院が警察に要請してそのような排除をしたのか、あるいは、実は従来ああいう大ぜいの方が庁舎のまわりにおいでになるときには、警察の方が、私どものほうは警察庁が上のほうにおられますので、当然警察の任務として公安条例違反のようなことがないかどうかということを絶えず見ておられるわけでございますが、したがって、本件の場合は、人事院の要請に基づいて警察が動いたのか、あるいは、そこにたまたまずっと見ておられた警察が独自の判断でやったのか、その辺は私は詳しく存じておりません。先ほど、私が、いかにも人事院が警察に要請したというような意味にとられる発言をしたとすれば、その点はまだ事実がはっきりいたしませんので、おわびいたしたいと思います。  ただ、ただいま小野先生のおっしゃった、ルールの違反の場合にどうかというお尋ねがございましたが、私の聞いたところによりますと、きのうは、相当組合の幹部を説得したにもかかわらず、どうしても応じなかった、こういうように聞いておるわけでございます。したがって、きのうの事態は相当限度をこえたものであったというように私どもは考えておるわけでございます。
  232. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 そらぞらしい答弁をしてはいけない。私はあの場に行きまして、人が集まったばかりのところに行ったわけですよ。すぐ警察がそれを見つけて来たというのじゃない。その場で聞きましたら、やはり会計課長が呼んだのだと言っていますよ。本人にそれをあなた方は確かめずにここに出てきているんですよ。それほど、人事院で行なわれている事柄は、銘々勝手、個人個人で全部それをやって、それでいいことになっています。私は、あのときに、それだからちゃんと会計課長に言いました。あなたはなんでそんなに一人でエキサイトするんですか、何もしていないのに一人でカッカカッカとおこっておったんでは、よけい相手を誘発するような形になって悪いじゃないですか、あなた、ちゃんと話をする人だったら、代表者に話をする、それがじゃまになれば、ここへ来て待てということぐらい、あるいはまた、帰りなさいとか、いろいろ指導方法があろうと思う、なぜそれをしないかということで私は会計課長にも言いました。そしたら、そのことばを押えて、そして話をして、それからでしょう、あなたのところへ交渉に行ったのは。だから、ぼくは初めからどういうふうにあなたのほうは情報をキャッチしておったかは知らないけれども、何か悪いやつが押し寄せて、どろぼうか強盗でも来るものを迎え撃つようなかっこうでやっているところに私は問題がある。先ほどからも質疑がありましたように、あなた方はやはり公務員を守る立場にある。それらに対して、公務員にはスト権がないので、あなたたちはそこで中立な立場でいろんなサゼッションをするという立場に置かれているんですよ。それが、あなた方が挑発して、そして公務員にたくさんけが人をつくったりして検挙をされるということをさして、あなた方はそれがルールに沿うとか沿わぬということで議論をする立場とは私は違うと思う。私も初めからあの場におりまして状況をちゃんと見ておりましたけれども、初めから話をすれば、こうしろと言って話し合ったら、ああいうことは起こらぬですよ。それを、むやみにがちゃがちゃ言って、出ろとかなんとか言ってかみつくもんだから、ついそういうことになってくるんですよ。  それで、いまも話したように、この陳情が来る内容からいえば、あなたのほうが実際には行なっていないわけです。そういう段階へこれを持ってくるということに対しては、私はどうしても納得いかぬです。これはここでやっておっても、あなたは直接行っていないから、人事院総裁にもこれは逐一報告をして、今後、人事院としては、ほんとに働く者に対して、スト権を持たないそういう公務員に対して、ほんとうに中正な立場からこういう人たちを守ってやる立場にある人事院なんだから、人事院としての機能を十分発揮してやるべきだ。少なくとも、前から連絡していない、突然陳情に来たやつは、もう受け付けてくれないんだ、門を閉ざして縄張りをするんだという形でもって、迎え撃つというような形でもって話をして、私は円満な話はできないと思います。ですから、今後、人事院というものは、すっかり考え方を変えてもらわなければ相ならぬと思います。ですから、ひとつ人事院としてもそれを皆さんに対して徹底をしてもらって、今度のこの事件はひとえに人事院のほうに責任がある、私はこういうふうに考えておりますから、こういう問題について、あなたのほうで、そういうこととして、今後組合の人なりあるいは公務員に対しての態度を明確にせぬ限り、私はどこまでもこの問題に対しては議論を進め、あなたのほうの間違いを正すまで私はあらゆる機会をとらえてやらざるを得ぬと思います。これは私は当然やるべき権利であるし、私は国会議員として、ことに社労に関係しておって、こういうことが行なわれておって黙って見ていることは、自分の職責に対しても非常に怠慢だと思う。そういう形でもって、この問題に対しては、白黒をはっきりつけるまで私は議論をいたしますから、この問題に対しての見解は、きょうは総裁がおりませんから、あなた帰って総裁と話し合いの上、この次の機会には明確に答弁をしてもらいたい。こんなあいまいなことで、ほんとうに公務員が中正の立場で守られるとは私思いません。あなた方は何のために人事院におるんだ、何のために月給もらっているんだということを言わなければならぬ。自分らの使命を一つも実行せずして、それがルールだ、ルールでないと言うことは、もってのほかだ。職員局長さんの一ぺん反省した答弁を求めます。
  233. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) ただいま先生のおっしゃった趣旨は、よく上のほうに伝えまして、人事院としての考え方をいずれまた御報告申し上げる機会があろうかと思います。
  234. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私は、こうした人たちがこうした陳情に来られることに対して、今後あなたのほうではどういうふうな態度で臨まれるか、もう一つここでお聞きしたいと思います。
  235. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) ちょっと聞き取れなかったのですが、おそれ入りますが、もう一回……。
  236. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 きのうのように、前もって言わなくても、陳情したいと思って行く人があったら、今後あなたのほうはどうされるのか。やっぱり聞いてやろうという気持ちには、きのうは途中からなられたんですね。今後はどうされるのか。もう少しあたたかい気持ちで、皆さんが、言ってくることを聞いてやろうという気持ちにならないのか、そういうことを聞いておきたいと思います。
  237. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 私どもでは、組合の方のそういった陳情については、絶えず喜んでいつでもお会いしておりますし、また、今後ともそのような気持ちでやってまいるつもりでおるわけでございますが、しかし、あくまでもその場合には交渉なら交渉のルールというものがございますので、無制限の人数がおいでになっていいかということも、おのずからそこには限度というものがあろうと思います。それを組合のほうの方においてわきまえていただけば、これはいつでも私どもは喜んでお会いいたす考えでございます。
  238. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 大体気持ちはわかるんですが、それも組合のほうがそれを考えてもらえばというそういうようなことでもってあなたのほうは逃げるのじゃなくて、私先ほどから繰り返して言っているでしょう。五十人来たら五十人、三十人来たら三十人に、あなたのほうが五人に会おうと思えば、五人に会うからといって組合の人と話し合って、あなたのほうは一たん引き下がりなさい、また、どこで待ちなさいという指示を与えて話し合いをすればいいわけです。あなたのほうが初めからそういうためには話し合いをして、いつでも会うようにしなさい。ルールがあるから、何日前に言わなかったから会わぬとか、そういうようなことは水くさい、中正を守るという立場ではないということを私は主張しておるんですから、特にその点はよろしく頼みます。  それからあなたのほうは、働いている公務員の人たち調査を要求して、調査をされた。そうして、それから判定をされた。それも、判定をする義務があるから、法律的なたてまえでやられている。それには八十八条に実行しなければならないとなっておりますね。あなたのほうは、何か勧告しておけばそれでいいようなことに思っておったら、大間違いだ。法律をちゃんと読んでください。実行しなければならぬことになっているのです。それを四年間もほうっておいて、いかにも厚生省がしなかったとかほかのほうに転嫁すべきではなくて、当然する措置はやはり人事院でしなければならぬ。こういう法律になっておる。法律がわからなかったら読みましょうか。――おわかりになっておると思うから読みませんが、それすら実行してない。この代償措置なんか当然踏みにじられておるわけですから、そういう憤りが四年間ずっと続いておるわけです。いかにおとなしい公務員でも、スト権を奪われて要求もできない、そうしてこうした要求の判定をしておきながら、それをしなければならぬという義務が法律できまっているそれも実際は行なっていないから、ふんまんやるせなく、日本全国の公務員の人たちがみんな非常な憤りを持つだろうし、あるいはこれに対してどうしたらいいのだろうかということで非常に苦んでおると思います。これは厚生省のほうにも責任があります。けれども、人事院のほうにも法律的なたてまえからいっても十分責任があるわけだから、こういうことについてあなたは一体どういうふうに考えておられるか。人事院としてはどういう覚悟か、政府に対して人事院としてはどういうふうに迫るか、これらのところをきちっとしてもらわないと、こういうトラブルは幾らでも起こる。だれが起こしておるかといえば、人事院が起こしておる。政府が起こしておるわけです。当然やらなければならぬということを四年前にちゃんと判定しているでしょう。四年たっても何もそれがされていないということは、これはたいへんな問題ではないでしょうか。そこらのことがあるからこういうことが起こってくるのですから、こういうことが起こってきた責任は当然人事院にある、私はそういうふうに思います。こういうけがをした人たちに対しては、人事院からみな弁償しなければならぬと思う。当然すべきじゃないかと思う。それほどにこの問題は重大問題です。四年間ほうっておるということに対して、十分わかるような説明をしてもらいたいと思います。
  239. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 人事院の判定が昭和四十年五月に出されまして、約四年間たつわけでございます。そこで、ただいま先生の御質問の趣旨は、四年間たってもさっぱりこの判定の内容が実現されていないじゃないか、したがって、また、人事院の責務というものが果たされていないという御趣旨かと思いますが、まず、人事院の措置要求の判定の法律的な性格といいますか、これは、法律をお読みになればおわかりと思いますが、いわゆる不利益処分の審査請求に対する判定のような拘束力がございません。したがって、この性格というものは、あくまでも勧告というようなことになるわけでございます。しかしながら、勧告しっぱなしでそれじゃ人事院はいいのかということになりますと、これは人事院としては当然この勧告がどういうふうに実現されたかということを十分見守る責務があろうと思います。それからこの勧告を受けた省庁におきましては、当然この勧告の内容が一日もすみやかに実現するように努力する義務があろうと思います。  そこで、この看護婦の夜勤問題というのは、医療行政全般につながる非常にむずかしい、かつ重大な問題でございます。したがって、この判定でも言っておりますように、逐次計画的にやれということを言っております。したがって、たとえば夜勤日数を月平均八日にすることが好ましいということは言っておりますが、この八日という数字が必ずしもすぐ実現できるかというと、やはり看護婦の絶対的な不足その他からいきましてなかなかむずかしいということは私ども承知しておるわけでございます。ところで、この判定の出た時点におきまして、人事院の調査によりますと、その時点における夜勤日数の平均は九・四日でございました。ところが、現在においては、厚生省等からの、これは文部省も関係しておるわけでございますが、厚生省からの御報告によりますと、九日を割っている、まあ八・九日ぐらいに現在なっているというふうに御報告をいただいております。したがって、この夜勤日数の月八日というのは、現在直ちに実現はしておりませんが、この判定当時に比べますと、それだけ判定の線に一歩近づいておるということが言えようかと思います。  ところで、一体、人事院は、その後こういうことについてどのような努力をしておるかということでございますが、先ほども申しましたように、この判定が一日も早くすみやかに実現されますように私どもでは当然いろいろのそれなりの努力をしているわけでございますが、ただ、残念ながら、現在人事院に与えられました権限では、きめ手となるものはございません。当然この夜勤日数の八日ということを実現するためには看護婦の定員をもっとふやさなきゃいかぬということになりますので、その旨関係当局にも私どものほうからいろいろまあお願い申し上げております。したがって、たとえば来年度昭和四十四年度におきましては、看護婦のいわゆる看護体制強化のための人員増が厚生省関係におきましても二百六十一名今度新たに定数増が認められまして、そのために、看護婦の夜勤問題はこれだけですぐ解決できるとは思いませんが、このような予算がつきましたのはたしか今年度が初めてだと思いますが、これから逐次改善していくものと考えておる次第でございます。
  240. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いま聞いておりますと、逐次改善されているように聞いておりますが、全医労あたりの調査も私はもらいました。それからまた、あっちからもだいぶ出ておりますし、調査表も調べてまいりました。しかし、いまあなたがおっしゃっていますけれども、三分の二以上は一人夜勤になっているし、それからまたいま九日何ぼと言っておられるけれども、平均によって十何日でやっているのが多い。同時に、また、ひどいところは月のうち二十日間も夜勤をやらなければならぬという状態になっている。それはあなたも御承知だろうと思うのです。それなら、八日間の法律どおりにやっておるのはどれくらいあるかというと、三分の一もないわけですね、数から言えば。そのことになっていけば、ほとんどまだ改善されていない。なかなか変わらない。そういうことであって、〇・二とか〇・三以下に統計上なっておるかもしれませんが、また、一面の統計を見てみれば、そうなっていないわけです。ですから、これは一応そういうことになれば水かけ論の議論みたいになりますけれども、現実はやはりなってないことはわかりますわね。だからして、現にあちらこちらで夜勤もできない状態になって、ベッドも閉鎖しなきゃならぬような状態になっているということがあちらこちらに起きつつあるわけです。こういう状態を見ながら、あなたのほうではもっとしなければならない措置というものが、人事院そのものとしてもやらなきゃならないものが私はあると思うのです。たとえば国家公務員法の八十八条を見てみますと、 「人事院は、前条に規定する判定に基き、勤務条件に関し一定の措置を必要と認めるときは、その権限に属する事項については、自らこれを実行し、」とある。この間のことはあなたのほうは何と踏まえておられるか、それを聞きたい、実行していますかどうか。
  241. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) ただいま先生の御指摘の条文でございますが、本件についてこれを申しますと、たとえば人事院規則をつくることによって何か規制する法はないだろうか、こういうことが一つ考えられるわけであります。しかしながら、かりに人事院規則でもって、たとえば看護婦の夜勤は月八日以内にしなければならない、看護婦の一人夜勤は禁ずるというような規則を設けましても、それがはたして実行上可能かどうか。もしそれが現在の看護体制からいってあまりにも現実離れした一つの理想的な条文ということになりますと、いわば訓示規定のようなことになりまして、何ら実効の伴う規定にはならないわけであります。したがって、私どもでは、そういう人事院規則をつくることによっていま先生が御指摘のような問題が解決できるかというと、どうも私ども否定的にならざるを得ないということで、ほかに何かうまい案があるかと言われましても、なかなか私どもでは現在人事院の与えられました権限ではこれがそのまま実現することは不可能である、このように考えております。
  242. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 人事院規則を発動することはあまり有効ではないとあなたもおっしゃいますけれども、昨年でしたか、国立病院特別会計法の改正のときに、看護婦さんの賃金をストップして十四日間遅配させ、これを認めるという悪い例に人事院規則を使いましたですね。こういう悪いときだけに人事院規則をばっと使っておいて、こういうような看護婦さんなんかの労働基本権にも影響するような状態の人たちを救うためにこの規則が使えないというのはどういうわけですか。私は、こんなにして十四日も遅配をさせたということに対しては規則を使っておきながら、こちらのほうでは規則はそれくらいはできぬと言わぬで、やはりここらのことは思い切ってやるべきじゃないかと思いますが、どうですか。
  243. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 先生のただいまおっしゃったことも一つの御意見かと思います。私どもも、そういうことがはたしてきめ手になるかどうか、きめ手にならないまでも解決のための一つの方法ではなかろうかという点を含めまして、もう少し検討さしていただきまして、はたして規則をつくることがいわゆる実行できる措置であるかどうかということを検討の上、また機会を改めましてひとつ御報告させていただきたいと思います。
  244. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 ことに、これを四年間もこういう状態にしておくことは、あなたも見ておられたからわかるように、厚生省のほうは非常に不熱心です。養成所のほうももっとたくさんつくります、養成計画は何年間でやりますということを言っても、なかなか実際それほど実効があがっていない。実は、その養成するところの看護学院に対しては、もう二倍も三倍もの応募者がある。人がないんじゃない。やりたい人はおるわけです。それをつくらない。現に京都あたりで見ましたら、京都の宇多野の療養所、ここには前からちゃんと看護学院がありました。これを合理化するために京都の国立病院のほうに集めてやりますと、ちょっぴりふやして。こっちの宇多野の看護学院は閉鎖している。ところが、京都の宇多野の療養所の看護学院あたりは、もう先生はじめその他のすべての人が非常にやりたがっているわけです。看護学院を開きたいと言っておる。それをなかなか厚生省が開かないという状態なんです。厚生省はそういう点ではまだまだ非常に積極性がないと思うので、こういう点について私はもっとこまかく一ぺん厚生省と話し合いたいと思う。きょうは、時間がありませんから、先ほど申したように、人事院だけに焦点を合わしてお聞きしているわけですが、そういうような状態で厚生省のほうはなかなかやらない。誠意がない。そういう状態ならば、あなたのほうは、やはり公務員を守る立場から、厚生省に対して何らかやらざるを得ぬような手を打たなければいかぬのじゃないか。ほうっておけばいつまでたってもイージーゴーイングで楽なほうにいってしまうということになると思う。だから、そういうことに対しましては、あなたのほうは、どうしてもそういうことができるような規則でもつくり、それでぴしゃっとやるとか、あるいは、そうでなければ、話をして、この月八日以内、あるいは二人夜勤ということだけ、あなたのほうで判定したものだけは、これはぜひやりますということを明言させてやらせるべきじゃありませんか。あるいはまた、それは予算がないからできぬとかいろいろな問題はあるでしょうが、予算がなくてできなかったならば、予算を組んでもらう間の余裕を見て、いつまでにやってください、いつまでにやりましょうというととで、もっと強い姿勢で人事院総裁は政府に対して迫らなければ、人事院としてのほんとうの役目が果たされない、私はそういうふうに思います。  ですから、いろいろな点でできないとかなんとかという委員会の中での答弁は、それはのらりくらりの答弁はできると思いますけれども、私はもうそんな時期ではないと思う。もう四年間たっている。ほんとうからいえば、若い女の人の夜勤は基本的には制限されているのでしょう。それが、これは特別の場合として大目に見られている。しかし、労働基準法の立場からはそういう問題がある。若い婦女子を夜勤に使うことはできない。ほかの労働ではこれは禁止されておる。看護婦さんの業務だけがやむを得ずそうなっているのは、そうしなければ看護ができないからという特別の状態でそれが行なわれておるわけです。そういうことを踏んまえたならば、もっと働ける条件をつくってやらなければいけないと思う。現場に行ったなら、十八歳ぐらいの女の子が、一人で五十何人もの当直を受け持つ、重症患者が二人も三人もおって夕食も食べられない、ふろにも入れない、もうなんにもせずに、ごはんを食べるのも夜中の十二時を過ぎてからだ、こういうような状態を私どもはたくさん見るわけです。こういうようなことをやらせておる。その看護を受けている患者の身になってみたならば、ほんとうに命に関係することがそういうような状態に置かれておるわけです。だから、看護婦さんもかわいそうでありますけれども、それよりももう一歩前の患者こそふしあわせである。時によっては命まで失わなければならないということまで起こり得ると思う。そういう観点から言ったならば、人事院のほうでこの問題を取り上げるのに、もっと積極的であり、もっと真剣に取り扱っていただかなければ、だれが味方になりますか。それは、スト権でも認められているのだったら、もうとっくにストはやめちゃうでしょう。現に、看護婦さんが減っていくのも、免状を持っていても看護婦さんにならないというのは、そういう悪条件があるからだと私は思います。ですから、そういうことにならないように、少なくとも国家公務員の人のところにははっきりしたものをしなければ、どこで改正ができますか。そうして、これに右へならえといってすべての診療所がそれに合わしていくべきだと私は思います。そういう点からいっても、人事院のこの勤務制限の問題に対して取り組まれるのはほんとうに重要な意義があると思うし、これをやらなかったら、日本の医療というものは破壊をされる、健康というものは守られない、働いている者ももう働けない、こういう状態になってくるわけですからして、その点について、予算の問題もありましょうけれども、人事院としてはいつごろにこれをやるということでもって明確な論議をして、これで決定をして推し進めてもらわなければ、私はこれは進まぬと思います。それからあと厚生大臣にもお話をして、これらに対しては相当の取りきめをしてもらうことが必要だ。きょうは、前段階として、人事院でこれをするということだけはっきりしてください。もし予算の問題で何か心配があれば、予算がつくまで日にちを延ばしてもいい。いつならいつやるということをはっきりしてもらわないと、あいまいにしておいたら、まだまだトラブルが起きて、どんな事故が起こるかわかりません。それを守るためには必死になっておる。その立場に身をかえてごらんなさい。いまあなたが看護婦さんの立場になったら、そうならざるを得ないでしょう。毎日の勤務の悪条件を考えてみたら、そんなにのんびりしておられない。看護婦さんが間違ったら、医療過誤として罪に問われるんですよ。看護婦さんといえども、一人で十分に看護に行けなかった、その間に死んだといえば、その看護婦さんは罪に問われるわけですから、これはもうたいへんな問題です。そういうところに追い込まれながら、きょうの態度を見ていたら、けしからぬといってどんどんどんどん警察官に検束さして、あとそれを排除するというのでこれだけの大ぜいの者にけがをさして、しかも、それは一つのルールに乗らなければいかぬと思いますというような答弁をしておったのでは、ほんとうに憤りをもってあなたたちに対して対決的な気持ちを持たざるを得ぬわけです。これについてはあなたも十分考えて、少なくともこの制限に対しては、あなたはこれから協議して、こういうふうにしてもらうように努力しますということをひとつ明言してもらいたい。
  245. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 看護婦のきびしい勤務条件については、私どもは十分過ぎるくらいよく存じ上げているつもりでございますが、この看護婦さんの夜勤問題というものをどういうふうに解釈したらいいか、非常に苦慮しているわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、人事院規則をつくることがはたしてきめ手になるのかどうか、そういうことを含めまして、しかも、事は非常に急いでおる問題でもございますので、私ども部内でよく検討しまして、いずれまたあらためて御報告さしていただきたいと思います。
  246. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 あらためて報告というより、そんなあいまいなことでなくて、大体めどをつけて、私のほうで協議する、そのためにこういう最善の努力をしますと私は言ってほしいですね。そうしたら、あなたのほうの前向きの姿勢は了解できる。相変わらずあなたのほうがまだ検討しますと言うと、相変わらず人事院というのはほんとうの焦点をつかんでおられぬとしか解釈できない。ですから、私は、こういうことは、四年前にやれと言ったんだから、やれといって監督でもしていれば、あなたのほうでもある程度規則でもつくってやろうと思えばやれることなんだから、四年もたってまだしていないという段階では、ある程度の展望を持って――それは私はいつやれとは言いませんよ。けれども、どれくらいかの間隔を置いてそういうような予算措置を大いに迫ってこれはやってもらいたいというくらい前向きに言ってもらうと、やっぱり人事院はほんとうの職責に沿うて前向きに考えてくれるなということで私は納得できるわけです。私も、きのうあの前に行って現状を見ながら、人事院のやり方に対して非常なる不満を持って帰った。しかし、職員局長と話し合ってみたら、やっぱり前向きで取り組んでくれた、これは一つの前進であるから、ひとつ人事院としても最大の努力をしてもらいたい、こういうことできょうの委員会の成果が出てこなければ、相変わらずのらりくらりの答弁では私はどうしてもがまんできない。そこで、局長は、職員局長の職責としてこういうふうなことにひとつ考えたいと思いますぐらいのことは前向きに言ってもらったら、私も納得ができるわけです。
  247. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 先生の御趣旨を十分体しまして、最善の努力をさしていただきたいと思います。時期についてはいつまでにということはちょっと明言いたしかねますが、なるべく早く何とか解決に一歩でも近づけるように、人事院に与えられました権限内においてやれることは何とかやってみたいと、こういうふうに考えております。
  248. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 なるべく早くということは、ちょっとわかるような思いはいたしますけれども、なるべく早く実施するのに三年も四年もたちそうなんです、四年もたっているのだから。だから、私は、少なくともことしじゅうくらいにめどをつけるというふうに、なるべく早くはそう解釈していいですね。
  249. 島四男雄

    政府委員(島四男雄君) 上のほうとも相談しませんと、私限りではここで明言いたしかねますが、できるだけの努力はするつもりでございますので、ひとつ御了承願いたいと思います。
  250. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それからこれは保険局は来ておられなかったと思うので、大臣にちょっと聞いておきますが、一言だけ、これは別の関係の問題ですが、社会保険庁の池袋診療所ですね、あそこの診療所が去年院長がかわられて、その院長は、もうあそこは廃止するというので、診療拒否なんかをして、ほとんど患者もみていない。そうして、看護婦さんも従業員も、いままではあそこは二十五床の病床だったそうでありますが、二十四、五名もいらっしゃる、こういう状態でやっておられたやつが、いまではもう四、五名にしてしまっている。だから、入院患者も断わるし、外来患者に対してもそういうような態度で診療していらっしゃるということで、この付近では、中小企業のメーカーが多くて、いわゆる政管の健康保険の被保険者が多いので、非常に不満が起こって、そうしてあれは豊島区かなんかの区議会におきましても意見書を出しておられるようです。おそらく、それは、厚生省のほうにも出ていると思います。あるいはまた、東京都のほうにも出ているだろうと思います。そういうふうなものが出まして、周囲ではそういう国の診療機関というものに対して相当大きな期待を持っていらっしゃるというようなわけのようであります。こういうことに対して、基幹病院とかなんとかいう点で医務局のほうでも考えておられると思いますけれども、しかし、二十五床もあるような社会保険庁の病院であるとするならば、私は、もっとそういうものを少しは充実をして、そうして国の機関としての使命を果たしてもらうほうがよりベターではないかというふうに考えるわけなんですが、そういうことは、基幹病院としての構想や、あるいはまたそういういろいろな方面から、そうしないほうがいいというなら、その理由、あるいはまた、そういうふうな周囲の住民の人たちの非常に熱烈な要望があるのにかかわらずそれをしないというわけはどういうわけであるかということを、もう少し納得できるような形で進めてもらわんといかんと思います。私のところへもたくさんの署名簿を請願を出してくれということで持って来られました。そういうことで、おそらくはかの議員の方々にもいろいろな陳情が参っておられると思うのです、各党派は別として。ですから、そういうふうな気持ちは、今後医療保険というものはどうあるべきかということを考えましても、ある程度やっぱり公的な病院は公的な病院としての価値があるわけですから、そういうものをもってひとつやってもらわなければいけない。それは分布状態とかいろいろな問題もありますから、私は一がいには申しませんけれども、もしそうであるならば、それをどこへ吸収してどういうふうにしていくからそれでその付近のそういう政管健保の人たちには不安がないならないということをよく明確にしないで、ただつぶすために院長が入ってきて、そして従業員は減る一方で、どんどん減らしていく、そういうことに対しても明確なやり方をしないと、私はずっと話を聞いてみますと、働いている人たちにいま行なわれていることは大きな不当労働行為があると思います。ですから、労働省の側からこの問題を検討するときには、やはり労働問題として不当労働行為としてこれを取り上げなきゃならぬと思いますので、これはまた労働省に対してはもう一ぺん話し合いもしてみたいと思いますけれども、きょうはちょっと時間もありませんから、その一点だけをお願いしておきますから、また、きょうは、突然質問さしていただいたから、大臣のほうによくわからないと思いますが、どうぞそういう点を勘案していただきまして、将来公的病院としての価値がそこで十分に発揮できるということならば、少少金を入れてもりっぱな形にして公的病院としてのほんとうの価値を住民の人たちに分けてもらいたい、こういうふうに思いますので、その点について一言だけ質問いたします。
  251. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) ただいまの社会保険庁経営の池袋診療所のことは、私は初めて伺いますので、よく調査をいたしまして、できるだけ近い適当な機会にお答えを申し上げたいと思います。
  252. 藤原道子

    藤原道子君 たいへん時間もおそくなりまして御迷惑と思いますが、いまの看護婦問題は、国民の人命に関することでございますので、大橋先生もたいへん時間をはしょってくださいまして、私も人事院に関することは省略いたしまして、二、三の点について厚生省に御質問をいたしたい。ただ、人事院の職員局長ですかに申し上げておきたいのは、四年前に判定をしたからといって、看護婦がなきゃできないじゃないか、急にはできないというような意味のことがございました。これは私は訂正してほしいのです。看護婦の問題に対しましては、藤原さんまた看護婦問題ですかと言われるくらい当委員会で問題にしてまいりました。この看護婦の問題につきましては、昭和二十三年七月三十日に医療法が公布されておる。そうして、そのときに施行規則が同じく二十三年十一月五日に発表になっております。その十九条で、患者四人に一人の看護婦――このとき私は御質問いたしております。四人に一人はどこで割ったかと言ったら、厚生省は、病床の数と看護婦の数を割ると一人にしかならないんだ、したがって、これでは無理と思いますので、将来看護婦の増強のためには努力をいたします、こういう答弁をしているのです。私は、その後の病床数の増加看護婦増加、これを思うときに、あまりにも厚生省は怠慢だったと思います。過日、私は、肺炎と狭心症で浜松の聖隷病院に約一カ月半入院いたしておりました。元代議士の長谷川さんが、もしこのままいけば、すぐれた日本の医療が、看護婦不足から破壊されるのじゃなかろうかと非常に心配されておりました。私もそう思うのです。今度、東大で、池ノ端に六億三千万円だかかけて六階建てのりっぱな病院ができ上がっています。看護婦不足のためにそこは無人病院じゃございませんか。それは大学病院で、おらほうの関係じゃないとおっしゃるかもわからない。けれども、そうは私はいかないと思う。これほど看護婦の不足は深刻に相なっておることをまず最初に申し上げると同時に、看護婦問題は、局長、増員いたします、いたしますと言っている。一時、看護婦希望者が減りました、非常に困りますという厚生省の答弁だった。ところが、ことしは、たしか六倍くらいの志望者がある。これは高等看護学院ですが、六倍の志望者があるのに、採っていないのですよ。ここに問題がある。看護婦が足りないのはだれに影響するか。それは患者でございます。夜勤一人、機械化しましたと厚生省は言いました。ブザーを鳴らしても、一人の看護婦がほかの病室へ行っておりましたら、いくらブザーを鳴らしたって聞こえないのです。このあいだも、ある病院で、心臓の弱い患者さんですけれども、だいぶいいから自分で身のまわりのものを洗たくしたのです。干しに行っているうちに気分が悪くなって倒れました。一時間後に死んだじゃありませんか。四十歳の婦人です。看護婦の不足がどれだけ大きな社会的な悲劇を招いているかということを人事院でもお考えいただいて、厚生省のしりっぺたをひっぱたいてもらいたい。厚生省ももっと考えてほしい。  そこで、まず第一にお伺いしたいことは、私の去年の質問に対しまして、看護婦養成のためにいま一人三千円の奨学金ですか出しておるけれども、来年は五千円にいたします、そして対象をこれこれにふやします、五千円にふやすという答弁だったと記憶いたしますが、准看も、いま千五百円だけれども、三千円に増額しまして、人数もふやします、至急に御期待にこたえますとたしか答弁なすったと思います。ことし、大蔵省に看護婦問題で幾らの要求をされたのか、それから大蔵省はこれをどれだけに押えられたのか、この点から伺いたいと思います。
  253. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) 四十四年度の予算におきまして、私どもは、ただいま例示されましたように、看護婦養成の修学資金を五千円に上げたい、こういう要求をいたしましたけれども、いまのところ従来どおり三千円という形に据え置いております。人員につきましては、従来の六千四百人というのを六千九百人、約七千人近くに増加をいたしまして、人員の面では従来よりも伸びてまいりました。単価は従来のままの形でやっております。
  254. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) ただいま御指摘のございました看護婦等の貸費生の貸与補助金につきましては、四十三年度の総額が八千八百万円でございますが、四十四年度の予算におきましては八百万円増の九千六百万円計上いたしております。人員につきましては、ただいま医務局長からお答え申し上げたとおりであります。単価につきましては、御承知のようにこの単価は育英資金の単価と合わせてございまして、育英資金の場合は、高校が千五百円、大学が三千円というふうに相なっておりますので、それとのバランス上、単価につきましては従来どおりということにいたした次第でございます。
  255. 藤原道子

    藤原道子君 要求された金額は幾らだったのですかと聞いているんです。
  256. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 予算をまとめるにつきましては、御承知のようにいろいろと厚生省の当初の数字がございまして、調整を加えました結果、政府としてただいま御提案申し上げている予算案の数字になっているのでございますが、当初一番最初の厚生省からの数字としては二億九千万円ほどの金額であったと思います。
  257. 藤原道子

    藤原道子君 そうすると、二億九千万円の要求が九千六百万円に減ったんですね、そうですね。  そこで、大蔵省は、厚生省の――労働省は労働者サービス省です。人事院は公務員を守るところだ。厚生省は人の人命を担当しているところだ。ところが、厚生省の社会保障費などに対しては、これは不生産的なものだと、こういうことをよく大蔵省の人がおっしゃる。はたして不生産でしょうか。きょう私御提案申し上げました中でも申し上げたように、いま、世界各国は、妊産婦手当児童手当、生産手当は常識になっている。そして、日本は非常にその死亡率も高くって、しかも、サリドマイドの子供でも、五十日以内に薬を飲んだ子供に出ているんですよ。五十三日以後に飲んだ子供には一人も出ていないんですよ。非常に妊娠中は大事なんです。健康な子供ができることによって国の繁栄になるんじゃないでしょうか。日本は、経済成長力は第二位だなんて、国民生活は何番です。しかも、社会保障費に至っては、お話にならぬじゃございませんか。私はいろいろしてまいりましたが、きょうはすべてを省略いたしまして、この看護婦の問題を、辻さん、ひとつ頭へ入れておいてください。これはWHOの調査でございますけれども、日本看護婦さんの数は二二四・一人、カナダは六五一・三、アメリカは六二七・七、ことにスウェーデンのごときは九九七・六、こうなっているんですよ。日本は、これまた、死亡率は何倍高い、看護婦さんは何分の一なんです。これでやれるでしょうか。乳幼児死亡でも減りましたなんて厚生省もまたいいかげんな報告をしているけれども、新生児の死亡は、一週間以内で死んだ人は死産で届けているから、世界各国に比して乳幼児死亡が少ない。これでいいのでしょうか。私は、この看護婦問題は、この前の委員長に、看護婦問題だけで一日とってください、こういうお願いをいたしてございます。ぜひこれは実行してください。こういうふうにして非常に生命が危険にさらされている。赤ちゃんに、品物みたいに、おかあさんの付属物だから、看護婦はついていない。しかも、心身障害児出生は、妊娠初期が三〇%、周産期に六〇%、生後起こる心身障害児はたった一〇%です。これが無事に生まれたら国の利益はどれだけになるかと思うと、もう少し厚生省に予算を出してもらいたい。同時に、厚生省がだらしがなくて弱いんだ。大蔵省に遠慮ばっかりしている。私は、人の命を守る立場から、もっと厚生省に強くなっていただきたい。ごめんなさい、斎藤さん、変な顔をするけれども、ほんとうにそうなんですよ。ほんとうなんです。これはお願いしておきます。そしてまた――時間がなくて非常に残念なんでございます、一生懸命勉強したのですけれども。  そこで、保険局にお伺いいたしたいのは、基準看護の内容を伺わせていただきたい。
  258. 松浦十四郎

    説明員(松浦十四郎君) 現在、基準看護と申しますのは、入院している患者に対しまして、その病院の看護婦等による看護が行なわれた場合でございまして、さらにそれに対しまして一定の患者数に対する看護要員の人数が確保されている、その上で都道府県知事の承認を受けた場合が基準看護ということになっております。
  259. 藤原道子

    藤原道子君 基準看護がいま行なわれているとお考えでございましょうか。
  260. 松浦十四郎

    説明員(松浦十四郎君) 基準看護の承認を受けました病院におきましては、その基準看護どおり行なわれている。それが行なわれていない場合には、私ども、第一線の都道府県にそれぞれそういうふうな事情を当然いろいろな面から報告をいただきまして、そういう点が行なわれていない場合にはこれを指導するというたてまえをとっておりますので、私どもはそういうふうに考えております。
  261. 藤原道子

    藤原道子君 あなたは、毎日、新聞を読んでいますか。
  262. 松浦十四郎

    説明員(松浦十四郎君) 読んでおります。
  263. 藤原道子

    藤原道子君 基準看護が正確に行なわれている病院がはたしてあるかしら。看護課長にもあとで聞きますよ。ある病院では、入院するときに、婦長さんから、ここは基準看護になっておりますが、入院された方には付き添いをつけてもらうことになっておりますと。新聞にも出ております、読んだでしょうが。それで、付き添いをつけなければやってくれないんです。付き添いをつけると、一カ月に八万円から十万円かかるんですよ。夜中に三回起きたら四百円ください。そんなばかなことがありますか。それで、基準看護では二百三十円だけよけいとっております、保険では。そのほうはとって、さらに看護婦が足りないから付き添いをつけるんです。そうすると、付き添いをつけると八万円から十万円。いまあなた方は月給を幾らもらっているか知らぬけれども、いまのサラリーマンが八万円、十万円の付き添いをつけられるでしょうか。これが現に行なわれておる。名を言えと言われれば病院の名を言いますよ。あるいは、医者がやることに規定されております静脈注射、点滴注射が、ほとんど看護婦の業務にされているんですよ。しかも、そこにじっとついていればいいのですが、ついていれば仕事にならないから、ここまで来たらベルを鳴らしてくださいね、あるいは付き添いに教えてくださいよと、こう言って飛んで歩いているんですよ。そうなったときに、もし付き添いがトイレにでも行っていたらどうなるのか。この悲劇はあったじゃありませんか、この前に。これで日本の医療は全きであると言われますか。保険料が赤字だからといって金ばかりとっちゃって、内容はこういう状態でよろしゅうございますか。しかも、看護婦は嘆いております。看護学院で習ったことを実地に行なえないことの悲しみです。大学病院からも陳情に来ました。国立病院からも参りました。高等看護学院で習った中の看護が一割できればいいほうでございます。丁寧にやっていればほかの患者さんの世話ができないのです。こういう状態に置いておいて、それで看護婦が足りませんだの、基準看護でございますと、そういう考えでは、日本の医療は、長谷川前代議士が言われたように、看護婦問題から崩壊する、それを憂えておる。だから、ごらんなさい、医療に従事する看護婦さんに異常産が一番多いでしょう。職業婦人の中では家庭婦人の倍以上の異常産で、看護婦が最高であるという悲劇を御案内でございましょうか。有給休暇もとれないんですよ。いま、人事院の局長は、八・九日に減りましたと。減ったところもあるかもわからないが、産科なんかに行ってごらんなさい、十五日から二十日やっていますよ。それで家庭が維持できますか。ここに大きな問題があるということをお考えください。これらに対して、保険局ではどうお考えですか。これでいいのですか。それでもあなたは基準看護をやっているとおっしゃいますか。
  264. 松浦十四郎

    説明員(松浦十四郎君) 基準看護と申しますのは、先ほど申し上げましたように、その病院の看護婦等で看護を行なっているということと、一定の数の看護婦を置くということで、病院から、承認を受けるというととたんに申し出がありまして、そういうことをやるという条件で私ども保険のほうはそれだけの加算の点数をお払いしているという、いわば約束になっておるわけでございます。ですから、病院側としましてはこういうふうにやりますというお申し出がありましたので、私どもはその条件に沿うならその加算点数を払うということでございますので、いま藤原先生がおっしゃいましたようにもしそういう事態がありますとしますれば、その病院はやはり基準看護に合致しないということになってしまいますので、そういうことがございますれば、いろいろ私ども御指摘を受ければ、そういうふうな病院につきまして、そういうことは基準看護に合致していないんだということも指導いたしますし、あるいは、さらにそれを改めるよう十分の措置をとりたい、こういうふうに考えております。
  265. 藤原道子

    藤原道子君 よくそういう答弁ができるわね。ほんとうに基準看護ができているとあなたはきょうまで思っているんですか。怠慢ですよ。私が指摘するまでもなく、すでに知っているんですよ。知っているような顔をしていますよ。付き添いがないために家族が行く、子供が放置されている、こういう状態であることをひとつ御認識をいただきたい。  それからもう一つ、医務局長に伺います。結局、看護婦が足りないから――四人に対して一人にするんだというときはほんとうの看護婦だ。ところが、その後、看護助手を入れているの、定員の中に。准看のほうが多くなりつつあるんですよ。准看は看護婦の指導のもとにやらなきゃならないはずです。それがやられておりますか。断言できますか、やっていると。一体、日本の看護行政をどうおやりになるお考えか。そのときに、四人に一人しか看護婦がいないけれども、将来増員のために努力いたしますと。委員会が終わって、あなたたちは一体幾人が妥当と思うかと私が聞いたら、二・八人に一人くらいだ、そのために追いつくように努力いたします。何の努力ですか。いまは四人に一人の定員すらいないのですよ。それは、私が言わなくても、医務局長のほうがよく知っているわけで、これで看護学校をなぜふやさないか。あるいは、看護学校が高校卒業で三年の看護学院へ行きながら、他へ就職するときには高等学校卒の資格しかない。前々から申し上げている。いま、高等学校の衛生看護科といいますか、そこを出て短大へいく、短大二年、これで試験を通れば看護婦ですね。ところが、三年行って看護婦なんですね、国家試験を受けて。そうすると、そこに一年違うじゃないですか。あるいは、准看は中学を出て二年です。ところが、だんだん中学卒で就職する人が少なくなってきた。これに対して一体どうなさるかという点を聞きたいのです。  それからもう一つは、これは前々から三回くらい答弁を聞いているのですが、厚生省と文部省と相談をして――きのう看護協会の人に会ったけれども、看護協会でも、教育法によるところの看護婦の養成学校ですか、これにしてほしいというのが要求なんです。そうしたら、委員会では、それは文部省と相談いたしまして一日も早く実現したいと思いますと。一向に……。私は、五、六年たつのですが、そういう御意見を伺っているのです。  時間がないから続けて言います。私は、看護婦の質が低下することを喜ぶものではございません。質の向上は医療の向上とともに必要なんです。私も看護婦ですけれども、いまの看護婦はできません。技術が非常に上がっているのです。そこで、私は、技術の向上は心から念願いたしますけれども、いま現実に看護婦が過労に倒れている。有資格者看護婦がちまたには二十五万人と思ったら、もっといるらしい。これがちまたに眠っている。なぜそうなったかという検討はなさいましたか。看護婦の待遇が悪いこと、過労であること、夜勤をするには子供がいて困ること。したがって、子供には夜間の保育所が必要じゃないかということを私は申し上げてきた。このあいだ、一人看護婦が殺されたじゃありませんか。夜の夜中に通院をしなければならぬというようなことは、ひとつ、女性でございますから、特にお考えが願いたい、この点が一つ。  もう一つは、私は、いま現実に看護婦さんが倒れておりますから看護婦の質を下げてくれと言うのじゃない。准看の方が病棟主任などをしているのですよ、いま看護婦が足りないから。仕事は看護婦と同じ仕事をしているのだから、その間に通信教育なりあるいは現任訓練等をしてそのきびしい国家試験にもしパスをしたならば看護婦の資格を与えたらどうか、こういう特例法を出しておるのですが、これはつぶれてしまいました。そこで、将来は、看護婦はあくまで一本であるべきものである。同じ職場で、一は准看、一は看護婦、一は看護助手――看護助手はいいんです。これは必要です。しかし、看護婦は一本であるべきだと私は考えますが、いかがでございましょうか。私は国家試験を下げてくれとは言っていないのですよ。国家試験は厳然としたきびしいものにして、それで三年の実務によってその間は通信教育なり現任訓練なりいろいろした人に対して試験を受けさせて、そして看護婦に上げたらどうか。これが十年たっても上がらないんですよね、准看は。だから、いやになっちゃってやめるんですよ。  それから病院に何も魅力がないから、診療所であるとか大きな会社の診療所につとめれば、月給は多いし、朝行って晩帰る、こういうところへ看護婦さんが移りたがるのはあたりまえじゃないでしょうか。ちまたに眠る二十何万かの有資格者看護婦を再教育しまして、一年なり二年なり、そうして看護婦として採用する。中国あたりにおいてすら、看護婦さんは病院の近くに住宅を与えて、全部電話がついていて、いつでも呼び出せるようになっているから、待機なんていう時間はないのでございます。それで、授乳時間は二時間賃金カットなしに与えておる。こうした思いやりがあってこそ国の宝と呼べるのじゃないでしょうか。この子供の問題もあるし、国民の医療を真剣にお考えくださるならば、看護婦志望がございませんとは言わせない。去年は六・何倍、ことしは六倍が一くらい欠けておりますが、たしかその程度あったはずです。そういうことで、看護婦にどれだけの情熱をお持ちであるか、これをきょうは伺いたいと思います。
  266. 松尾正雄

    政府委員(松尾正雄君) ただいま先生からいろいろと例をあげて申された具体的なものでございますが、私どもも、御指摘いただきましたように、現状から見まして、看護婦の養成計画、需給計画というものが現状でははなはだまだ不十分だという認識を率直にいって持っております。したがいまして、前回、十二月でございましたか、大臣からもそういう計画について全部洗い直しを命ずる、こうおっしゃっております。そのとおり作業を鋭意急いでおります。この問題につきましては、需要面につきましても、単に従来の計算等にとらわれないで、ただいまいろいろ問題になっておりますような二人夜勤、八日制というような問題も、なかなかこまかく積み上げませんとほんとうにこまかい数字は出てこないと思います。そういった点も詰めまして、できるだけ早い機会に必要とする看護婦数をまず決定いたしたいと思っております。それに伴いまして、ただいまいろいろと御指摘がございましたような養成計画というものも当然これに見合って合わせなければならぬわけでございます。  その第一点は、ただいま申し述べられましたように、高等看護学院等におきましてほぼ六倍の競争率でございます。これの中には多少かけ持ち等もあるかと存じますが、実質五倍程度のものは十分期待できると思います。したがいまして、今日いろいろなことが言われておりますにもかかわらず、これだけの熱望を持っておられる方がいるわけでございまして、できるだけ早い機会にそういう養成施設増加ということに努力をまずいたしたいと存じます。  それからその養成施設につきましては、ただいま御指摘のように、従来の各種学校というような養成所というものが将来にわたりましてはたして若い女性に魅力のある養成であるかどうか、この点を十分私どもは考えていかなければならぬと思います。したがいまして、そういう情勢に応じましては、これはいわゆる大学なり短大なり、そういう学校という形でやっていただいても私はちっとも困ることはないというふうに考えます。  それからなお、中学卒業生が減ってまいりまして、中学卒業生で高等学校へ行かない方が減るということ、これは御指摘のとおりでございます。おそらく、四十八年ごろになりましたら、非進学者というものは十万ちょっとこえる程度になると思います。そういうような情勢を考えますれば、ただいまのような中学卒業の准看教育というものだけにたよっているわけにはとうていまいりませんので、その制度の改正ということもこの養成計画の中にあわせて考えていきたいと思います。  なお、ちまたにおられる潜在看護婦をもっと活用すべきであると。この点も、御指摘のように、働きたいと思っておられましても、最近のようにいろいろ看護婦事情、医療の中身も変わっておる、薬も新しいものが出ておる、不安であるという気持ちがどうも強いように私ども感じております。したがいまして、四十二年から、きわめてわずかなテストではございますが、そういう方々の講習会を実施いたしまして、結果は三分の一ほどがそのときに再就職をしていただいたという実績も現実にあると思います。したがいまして、私どもが直接やるのみならず、すでに一部の県でも始めていただいておりますが、都道府県等にも十分指導いたしまして、ほうぼうでひとつきめこまかくそういう講習会を進めていただきたいというふうに私ども考えております。  なお、准看の養成と高看のバランスの問題というふうなものが当然これは出てまいりますが、ただいま准看の養成施設のほうがはるかに大きいわけでございます。これは、しかしながら、現状では、やはり大事な看護要員でございます。この方々の養成はやはり続けてまいらなければならぬかと存じますが、御指摘のように、将来のあり方としまして、准看と高看というもののバランスの問題は、当然これは看護力の中でいろいろな問題になってくる可能性もございます。将来は一本化であるという点については、私どももそうであろうと存じております。ただ、それにまいります過程としては、にわかにそういうふうにしていくには、なかなか量の確保という面でおろそかになりはしないか。したがいまして、今日は、質も非常に大事でございます。しかしながら、その質を発揮いたさせるためには、やはりある程度以上の量がなければできないということをつくづく私ども考えております。  そういうふうなことを、ただいま、大臣から基本的に洗い直せとおっしゃったことに沿いますように、鋭意努力を続けていろ段階でございます。
  267. 藤原道子

    藤原道子君 時間に追われちゃって申しわけありませんが、私、しゃくにさわることは、たしか黒木さんが出しておられる新聞だと思いますが、それに、この前も言ったけれども、虎の門病院の事務長の石原信吾という方の書いている記事によると、いま労働組合がいろいろ要求をしていて、いまの現実で増員はしかたがないから妥結はしているけれども、そんなものは気休めのなれ合い芝居だ、できっこないということがはっきり出ているんです。こういう気持ちで、あなた方が、当委員会さえごまかせば、あとは何とでもなるというようなお考えであらわれてはたまりませんので、この点はしかといまの局長の言明を私は信頼して、その日の一日も早いことを念願しております。  これにつきまして、私、実はこのあいだ、静岡県の病院に入っておりました。静岡県の公立病院で争議が起こった。あまりにもひどいから、夜勤に耐えられないで、自主的なスケジュールを組んでやりまして、ほんとうはゆうべから夜勤看護婦は一人もいなくなるはずでございましたが、どうやら妥結したようで、一カ所だけまだ妥結していないが、きょうどうなっているか心配しているわけです。入院している者にとって夜看護婦さんがいないくらい不安なことはございません。これらに対してもあなた方が指導して、その約束の中に、県立総合病院では二年半で六十五名ふやす、富士宮の県立病院では二年で四十六名、静岡市立では三年で五十一名、清水では三年で三十一名、島田では三年で四十二名、これだけふやしますということを約束している。新潟でも約束していますね。全国各地で約束しているんです。それでほこをおさめて、看護婦さんたちは目をまっかにしてがんばって働いておるのです。これがぜひひとつほごにならないように、あなた方は、至急に看護婦の充足対策を、大蔵省も金を出して、ぜひとも一日も早く実現するようにお願いしておきます。  それからこれは厚生大臣としてよりも自民党の幹部としてお伺いをしたい。医療保険抜本改正に関する自民党医療問題議員懇談会小委員会案というものがございます。これを見ますと、 「戦後の看護教育及び養成の方法は全く誤りであった。今日の看護婦がナイチンゲール精神を忘却して権利の主張に終始し、医療の体系の中に存在する自覚を失わせたことは厚生行政の重大な過誤であったといわなければならない。」云々と出ている。そうして、「准看制度は将来は看護婦制度一本にしぼり、」云々ということが出ている。いいですか。これは自民党の小委員会の案なんです。それから「各地区医師会の准看学校は将来看護婦学校として地域における看護婦充足の重要な役割を果させるべきである。」云々ということが出ている。いま、看護協会と私との対立は、いまの准看六年以上で国家試験ということになっている。高い技術、いわゆる高い看護婦というものを要求している。ところが、天下を支配なさる自民党案はこういうものなんです。これでは、私、非常に不安でございますので、ひとつ大臣のお考えを伺わしていただきたい。
  268. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 看護婦の増員計画の必要でありますことは、私も衷心からさように思っております。四十四年度予算の折衝にあたりまして看護婦の問題を大臣折衝に持ち込まなかったのは私の手落ちであったといまつくづく考えております。まあほかにたくさんあったものですから、この程度でやむを得ないと思ったのでありますが、来年度私は予算編成までおるかおらぬかわかりませんが、初めからこれは大臣折衝と、こういうように考えて予算要求をいたしたい。その基礎となるために、先ほど医務局長が答えましたように、需給計画その他看護婦問題を根本的に洗い直し、その基礎の上に立って実現可能なものを予算要求してまいりたい、こういう決心でございます。  いまお読み上げになられましたものは、私、全然存じておりませんが、あとで拝見さしていただきます。われわれとしても、自民党としても、看護婦は准看一本に統一をしようというような考えはないと私は断言をいたします。党でもそういう考えを持っておられる人があるならば、私たちはそれは反対でございます。  なお、いろいろこの問題につきましてはなかなかきめのこまかい点が多々あると思います。基本的な考え方がまとまりましたら――そのうちに医務局長にまとめるという約束をさせておりますから、あるいはその素案が出ましたら、御批判に供して、そしてできるだけいい制度を可能な範囲でやってまいりたい。看護婦の質を落とすことは相ならぬとおっしゃいますが、私もそのつもりでございますけれども、しかし、あまりそれにのみこだわって、看護婦の養成等につきましてもあまり形式的に過ぎてむずかし過ぎて養成を困難にしないように、そこらはほどほどにやれないかひとつ考えてくれというようなことも言っておるわけでありますから、これは水準を落とす意味ではありませんけれども、何といってもいまの看護婦の数が足りないということはこれは私は決定的な致命的なことだと、かように考えておりますので、質もほどほどに保持しながらやっていく方法を講じてまいりたい。暫時時間をおかしいただきたいと思います。
  269. 藤原道子

    藤原道子君 もう一点だけですが、看護婦の初任給、これを聞かしてほしい。
  270. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) これは公立病院等の初任給であろうと思います。私も、いま数字は忘れましたが、少し低過ぎはしないか。人事院の勧告においてももう少し高く上げてもらうように折衝しないかという話を先般いたしました。これはやっておりますということで、この前の勧告は去年よりも若干よかったと思いますが、それだけでは不十分だと思います。人事院勧告をなさる際にも、さらにこちらから要望しておきたいと思います。
  271. 藤原道子

    藤原道子君 非常に低過ぎるのです。いま中学卒業生でも初任給二万五千円くらいとっております。それで引っ張りだこです。ところが、准看護婦の初任給は、たしか二万そこそこです。二万六百円だと記憶いたします。高校を卒業して三年看護学院に通って、国家試験を受けて二万六千円くらいですか。これでいいのですか。幾ら婦人の職場だってあまりひど過ぎると思いますので、この点も特に考慮を願いたいことを申し添えまして、きょうは、時間がありませんので、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  272. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  273. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 次に、水俣病に関する件について調査を行ないます。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  274. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間が相当過ぎておりますので、簡単に要点のみ質問いたしますので、答弁のほうもひとつはっきりと御答弁を願いたいと思います。  水俣病が発生してこれは奇病だということを言われたときから換算いたしますと、十五年になります。そして、熊本医大によってこの水俣奇病なるものは窒素工場の廃水から来る有機水銀の弊害であるということが出されてからでも十年になります。そして、十年たった今日、やっと厚生省がこれは公害であるという認定をされたわけなんです。だから、水俣の市民の方、患者方々は、政府が公害であるということを認めた以上は、自分たち生命は、自分たち治療は、自分たちの生活は、これは安定したものだと、こういうように非常な期待を持った。ところが、今日、現場に行って見ますと、その後何ら進展を見ていない。園田厚生大臣が現場に参りまして、看護婦が足らなかったならば、医者の認めた看護婦であるならば国が全面的に認める、こういうことまで言っております。しかし、実際は、半分も国は認めておらない。全部市が負担しておる。そして、補償等に至っては、まだ何ら話し合いがなされておらない。公害病と認めたその後の厚生省の対策はどうなっているのか、お知らせ願います。
  275. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 昨年の九月末、公害の認定の問題につきまして認定をしたわけでございますが、昨年度二千万円の医療研究補助金の予算を組みまして、そのうち一千万分につきましては、水俣あるいは阿賀野川そのほかの地域も含めまして医療研究費として補助をいたしておりますし、残りの一千万円につきましては、患者の医療費の自己負担分について補助しておるわけでございます。  それから患者の補償問題につきましては、患者互助会のほうで十月以降三回ほど会社側と話し合いを進めましたけれども、なかなか結着がつかないので、さらに厚生省のほうに十二月の初めに打開策についての依頼がございましたので、熊本県知事にお話を申し上げまして第三者機関等のあっせんを依頼したわけでございますが、地元のほうでは双方の意見を聞きましてなかなか地元では解決つかないというようなお話がございまして、本年に入りまして一月の下旬に何とか厚生省の手で第三者機関の設置のごあっせんを願いたいということが双方からお申し出がありましたので、現在その点について二月からいろいろ努力をしてまいりましたが、現在のところ人選あるいは第三者に一任するということについて患者の一部に御異論があるようでございますので、その点につきまして地元の関係者もしばらく静観したいと、こういうような状況でございますので、厚生省としては現在静観している状況でございます。
  276. 阿具根登

    ○阿具根登君 きょうは、午後から七時のこの時間まで、ほとんど公害病についての質問が続いたわけなんです。それで、たとえばカネミ油の問題でも、聞いておれば、厚生省は、被害者の立場ではなくて、加害者の立場を非常に尊重されておる、こういうような感じを受けるわけなんです。なぜかなれば、昭和三十四年にこれが公害であるということが熊本大学から出された場合に、この委員会でも数回質問を私はいたしております。その場合でも、会社側は、あらゆる資料をもとにして会社の廃液ではないんだということを立証しようとしたわけなんです。熊本の大学は、会社のものであろうがなかろうが、そういうものは一つも関係ない、この原因は何なのかということを追求したわけなんです。それに対して、厚生省は、やっと一番最後になって、それでは廃液以外ならば何なのかという追求によって、廃液ではなかろうかと思いますということをやったんです。そのときに、三十四年に、五人委員会ですか何かできまして、そして一応の和解が成立した。しかも、そのときは、会社は、会社の廃液じゃないということを前提にして交渉に入った。そうして、調停案なるものができたけれども、その調停案には、今後会社の廃液でこういう廃人ができたということがわかっても、補償はしません、これ以上は一切やりません、こういうことであったわけなんです。御承知のとおりです。部長も御承知のように、患者の大部分は漁民です。とても交渉のできるような方々じゃないんです。それが、そういう環境の中で調停をされて十年たった今日――十年間厚生省がそれをほっておいた。十年たった今日、あらゆる公害というものがうんとやかましくなってきたので、ここで公害だということを初めて明らかにしたわけなんです。十年間何しておったかというんですよ。この前聞いたときは、科学の進歩が十年間のうちにこれを明らかにしましたと。こんなばかなことはない。十年前に熊本大学が出したやつをそのまま認められておる。何も科学の進歩がこれを助けたわけじゃない。ただ国民の声がこれを公害だとしたわけなんです。それならば、それに立脚して、双方がまとまらぬから、園田さんが、第三者でも入れましょう、そうして解決してあげますと、こういうことを言った。それをたよりにしてあなたのところに陳情に来ておるわけなんです。そのとき、あなたは、いま言われましたあっせんする者がおらないのだということで一つの条件を出しておるが、反対者もあってまだまとまらないから静観している、こう言っておられるのです。で、まあ、時間がないから、私から読んでいきましょう。あなたが出された確約書なるものはこういうことなんです。    確約書   私たちが厚生省に水俣病にかかる紛争の処理  をお願いするに当りましては、これをお引受け  下さる委員の人選については、ご一任し解決に  至るまでの過程で委員が当事者双方からよく事  情を聞き、また双方の意見を調整しながら論議  をつくした上で、委員会が出して下さる結論に  は異議なく従うことを確約します。  いま、六十九人患者がおります。百十一人おったが、四十二名死んだ。そうして、お行きになったらわかると思うのですけれども、私が当委員会責任者として社労の委員長をしておりますときに団長として現場に行って、病気になった子供をかかえてみたことがございます。十年後に行ってみると、その子供はそのままの子供なんです。十六、十七になっておるはずの子供が、まだ三つか四つの子供なんです。そこまでほってあった。そうして、十年もたって弱り切ってしまっておる。それに、厚生省が、あっせんをしてあげるから委員に対しては一任しなさい、その委員会がきめたものに対しては一切異議申し上げませんと確約しなさい、そうしなければ委員はおりませんよと、こういうことをあなたおっしゃった。そうでしょうが。だから、善良な来た人たちは、もう厚生省にお願いして一切がっさい白紙でお願いする以外にはございませんと、こう言って帰っておるわけなんです。それが正しいか正しくないか、ひとつ……。
  277. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 実は、この第三者機関の問題は私から言い出しましたので、私から少しお話を申し上げたいと思います。  当初私が就任いたしまして以来、患者さんのほうからも、それから会社のほうからも、公害病ときまった以上は、ひとつ補償問題について厚生省で基準を示してもらいたいというお話がございました。私は、補償問題は、これは民事の問題だと。したがって、どうしても話ができなければ裁判できめなきゃならぬ問題でもあろうが、基準を示すといってもこれはその人々によって違うわけで、補償でありますから、この人が将来ずっと生きたら幾らになるだろうかと、いろいろなむずかしい計算があるだろうと思う。いままでまた受けた損害もあるだろうと思います。将来の期待もあるだろうと思います。人によっても違う。それからまた、会社の支払い能力という点も考えなければなるまいと。そこで、厚生省で一律の基準ということは、これはとうてい不可能なことなんです。そうかといって、裁判はなかなかかかって御迷惑であんたらも困るだろうと思うから、そこで、いま、公害の紛争処理委員会制度というものを設けて、そこで処理をしてもらうようにしたいと思っているのだがどうだと言ったところが、患者側の方々は、とてもそれまで待てません、いつごろできますかということでございますから、これが実際に働き出すのには秋ごろになるかもしれない。それから法案をつくって、そうして国会で審議をしていただいて、それから人選をして、いよいよ取りかかってということになると、夏過ぎるかもしれぬ。それまでとてもお待ちになれないということでありましたから、そこで、私は、それならそれができるまでの間お待ちになれぬというのもよくわかる。私も非常にお気の毒に思いましたから、それではひとつ事実上のあっせん機関というか調停機関というものを考えてみようかと言ったところが、ぜひそうしてもらいたいと。しかし、私は、それに一任せいとははっきりとは言わぬけれども、大体はおまかせしましようということでなければ、なってくれる人もないし、それからせっかくやってみたけれども最後はけられてしまうというようなことでも困る、われわれはほんとうに第三者の立場に立って第三者機関を設け、数名の方にお願いした場合に、その人たちだけにはまかせきりにはしないつもりだ、経過その他をずっと伺って、それではしょうがない、ここまではどうだというところまで側面的に厚生省も努力をしようということでお話をしました。しかし、確約といっても、どうしても気にいらなければ、最後はいやだと言われてもしようがないかもしれぬけれども、まあまあ普通ならそれにおまかせしましようとまで言ってもらわないとちょっと入れませんよと言ったら、大体おまかせしましょうということでその日はそこで終わったのであります。  そこで、会社側のほうに、こういうことでどうだと。会社側もなかなか納得しませんでした。まあ非常に不安だと思ったんでありましょう。しかし、いろいろ説得をいたしまして、そういう構想でいきたいと思う。その前に、熊本の知事が前のあっせん問題について中心になってやっておられましたが、こういう考え方でいきたいと思うが、それにはわれわれの人選する人をあなたとも相談をし、こういう行き方でこういう人たちを入れたらいいだろうということで聞きたいし、その構想について話を聞かしてくれと。知事も、考えはいいけれども、なかなかそんな状態じゃありませんよ。会社とそれから患者側のほうとの開きが非常に多いようだし、会社もなかなかそこまではおりてこないかもしれない。あっせんという以上は、両方ある程度歩み寄ってということも必要だから、とてもそれはできぬと思うから、私はそんなことにはよう入らぬと。まあそう言わぬでということで、かたがた会社側に来てもらって私も直にお話をいたしました。そして、だんだんとしているうちに、それならひとつまあおまかせをしましようというところまでなったわけです。で、口だけでは困るからと事務当局も非常に心配しまして、私もいつまでおるかわからぬからということがあったのかもしれません。まあこういういまおっしゃったようなものをつくって、この線でひとつ両方とも承諾してもらえばひとつ人選にかかりましょうと。その前に、あれは一月の中ごろであったと思いますが、終わりごろでありましたか、少なくとも二月末をめどに第三者機関をつくってくださいと、こうおっしゃられる。それまでまだ一カ月ありましたから、それならできるだろうと私も思ったから、二月中にはできるように努力をいたしましょう。私も、腹づもりとしてああいう人、こういう人と考えて、次官にも話をし、公害部長にも話をして、そして進めてまいりました。  ところが、会社側は、まあそれなら一応おまかせしましょうということになったのでありますが、患者側のほうでは、こんなものをまかしたらたいへんなことになるというので、ああは言うたけれどもちょっとおまかせいたしかねるというようなことだということを聞きまして、それはちょっと話がおかしいじゃないか、こちらは何も進んでやると言うているわけじゃないのだし、法律ができればその機関でやってもらえるのだから、実は、そういった第三者機関を設けたら、その事務費をどこから出そうかということまで私は心配をいたしまして、こうこうこんな方法で捻出できるだろうかと、第三者機関の事務費あるいは報酬というようなものまで考えておったのでありますが、まあそうなにされるなら、私らは実際同情してこういうなにでやってもらったらどうだろうということで、決して会社側の立場に立って考えたわけじゃありませんし、まあここらが穏当じゃなかろうかと大体みんなが思われたら、そこらでひとつ納得してもらえたらと、こう思って、いわゆる第三者としての純粋な考え方に立った人に一ぺん話し合ってもらう。それには両方の話を十分聞いてもらって、あるいはここらでどうだ、あそこはどうだと、ずいぶんとひまもかかると思いますが、まあ事をわけて両方の事情を聞き、詳しくなにをすれば、お互いに日本人だからわかるときにはわかるだろう、こう実は思って、そうして第三者機関ということを考えていま御承知のような段階になってきているわけでございます。その点を御了承をいただきたいと思います。
  278. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、そのものの考え方にあなたと違うんです。公平だとおっしゃるけれども、一方は被害者、一方は加害者です。そうですね。それで、加害者のほうがやっと納得した、そういう公平はあり得ぬと私は思うんですよ。一方はしいたげられてしまっているんです。一方は死んでいっている。一方はばかです、完全な。完全に自分の用も何ももう足し得られないんです。その加害者とこれと公平に見られるというのはおかしい。まずこれをどう助けるかというのが私は先行しなきゃならぬと思う。要求は一千三百万円です。それが正しいとか正しくないとか、その問題を言っておるわけじゃない。これを論争していくならば、いま、自動車でひき逃げされた場合は一千万以上です。どんどんそういう例が出てきておる。だから、一千三百万円を要求しておるのですから、それをそのままやりなさいとかなんとか、こんなことを厚生省に言っているわけじゃない。しかし、考え方が、あなた方は公平に公平にと言っているが、加害者と被害者の場合に、どこに公平を持っていくかです。そうですね。加害者だって、小さな町工場かなんかなら、それはまた一つの考え方もありましょう。しかし、大きな財閥ですよ。それが、今日まで、私が先ほどから言うように、十年間も厚生省が公害病だときめきらなかったのは、自分の資本を使って、自分たちが加害者じゃないぞという反論をいままで繰り返してきたから、こうなってきたわけなんです。そして、公害と認定されたところが、社長以下病院長まで、涙を流して、まことに悪うございました、今後の補償については十分考えますから、どうぞお許しくださいと言ったじゃありませんか。そうですね。十年間もそうして引きずって泣かせてきたんです。それならば、まああなたの気持ちもわかる。しかし、この一札を入れて今後どういうことになります。いつの場合だって、裁判だって、最高裁まであります。労働委員会だって、仲裁もあればあっせんもありますよ。これはそのもの一ぺんです。これやったら、金も一切文句は言いません、委員会の決定には一切異議は申し上げませんと、これに一人一人判を押して出せというのです。そうしたら、この人たちはもう何にも言うことができないわけなんです。これは白紙委任と一緒です。そういうものを厚生省が出したのが公平かというんです。気持ちはわかりますよ。たとえばこういうこともあるでしょう。そういう漁民の方々だから、自分の意見をよく述べきらぬ、しかし自分の知った人に自分の意見を述べてもらいたい、私のところの代表も出してください。また、会社側は会社側で、確かに加害者で私が悪いけれども、しかしあの要求に応じきらぬから、私のところでも代表を出す。かりに数を言えば、三人、三人。そこで、厚生省側が、それも利益代表としてよかろう、そんならその中間に四名なら四名の人を立ててもらう。そうして、この中にひとつ結論を出してもらおうか、こういうような道もあると思うのです。そういう場合でも、裁判もできないようなこういう文章を書いて判を押させるというのは、私はどこかにそういう例があったら知らしてもらいたい。これは封建的な考え方です。一切をおまかせするということですよ、これは。だから私は言うのです。なにもそれを切れといっているのじゃないんです。そういうお世話をしてくださるのはありがたいことです。そういう人にお世話してもらうことはけっこうだ。しかし、異議一つも言えないように判をこう押してしまったら、それは不平のある人、不満のある人は一体どうなっていくか。しかし、おそらく、不平も不満もないようなりっぱな案をつくる、こう思っておられると思うけれども、それは不可能なんです、率直に申し上げて。それは不可能なんです。あなた方がおやりになっても、要求どおりしてやるならば、相手が反対なんです。わかっているでしょう。要求を滅らせば被害者が反対だ。だから、どちらも泣かなければならんところを出そうとしているに違いないんです。それならば、やはりどうしてもこれではできませんという人には、もう一つの道をあけてやらなければいかんわけです。しかし、斎藤さんが言われるように、人間だから、ここまで皆さんがやっておられて、これじゃもう不満だけれどもしょうがないというようなことになってくるのはやむを得ない。それを私たちは反対だと言うわけじゃないんです。しかし、これは、官庁が、仲に入ったやつに、一切の異議の申し立てもせぬという白紙委任状を出せ、そうしたければあっせん委員会もつくってやらぬ、こういうふうにとります。こういうのがどこかに例があったら教えていただきます。
  279. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 私は、おっしゃるように、これはほんとうにちょっときつ過ぎると若干は思っているのです。私は、実際は、こういう精神でというつもりなんですけれどもね。受け取られるほうは、これで判を押してしまえばどうやられてもしようがないのかと思われるなら、これは若干ゆるめてもいいと思いますけれども、私は、本来、先ほど公平と言ったかしりませんが、なにもどちらの立場に立つとか何とかいうことなしにという意味で言ったわけなんです。したがって、その委員会、第三者機関ができましても、もちろんそこでいろいろ要求を出される、話し合いをされるというのには、代表者の方が来られてもいいんだし、第三者の人を、裁判でも弁護士がついているわけですから、そういう方を選ばれて、そして折衝の意見をこうだああだと言っても差しつかえないんです。いわゆる三者構成みたいな形にして、ここで採決をしょうじゃなかろうかという、そんな考えを私は持っていないものですから。そこで、会社もあるいは弁護士を連れてくるかもしれない。患者側も弁護士さんを出してくるかもしれませんが、しかし、いずれにしても、まあそういう善意でやろうという気持ちでないのなら、私は、法律に定める紛争の調停機関でやってもらうのが一番よろしい、私も苦労する必要はないと、かように思っております。
  280. 阿具根登

    ○阿具根登君 いや、あなたが悪意でやっておるとは言わないけれど、公害紛争処理法案まで今度出そうとされているんですよ、厚生省は。いまの斎藤さんの気持ちだったら、これは通さぬでいいですな、通す必要ないですな、裁判でやれといういまのことばなんです。そうじゃないでしょうが。それならばおかしいじゃないですか。公害紛争処理法案まで出して、今後こういうのが起こってくるんだと。これは、おそらく、公害であるか公害でないかからやると思うんです。今度のはそういう前段はない。公害だときまっておるんですね。公害だときまっているんなら、厚生省の立場としては、なるべく被害者の喜ぶようにやってやらなきゃならない。それを、あなたが悪意でやっておられるとは私は思いませんけれども、この一札を入れたがゆえに逆にあっせん委員ができぬじゃありませんか。あなた方の考えと逆になったわけだ。こういう一札がなかったなら、おそらくいま時分はあなた方の気持ちのあっせん委員ができておったと思う。あなた方がどういう人をあっせん委員に考えておりなさるか、大体私も腹の中でわかる。そういう人たちも、こういうのがなかったらなかなか受けぬでしょう。しかし、こういうのがなかったら逆に私はいま時分はできておるのじゃなかろうかと思うのです。斎藤大臣が言われたようにことばで話をされておるだけならば。ところが、これを押すということになったものだから、これは裁判も何もできやせぬ、これで一切終わりだから、この判はつかれぬぞというのがうんと出てきた。だから、何人かの代表は、皆さんのところに来てこれは納得して帰ったでしょう。公害部長の話を聞けば、これを入れなかったらできぬぞとはっきり言っている。これを入れなかったらだれもしてやらぬぞ。帰ってきた人は、判を押さなければだれもめんどうをみてくれぬそうだ、だれも中に入ってくれぬと、こう言っているわけなんです。それは一つの説得力はあるかもしれないけれども、ほんとうに組織といってもわずかな組織、六十九名の組織です。その弱い人たちに、東京まで上がってそして役所に来てびくびくしている人に対し、これに判を押さなければだれも中に入ってくれぬぞと言うのは、一つの脅迫です、私に言わせれば。なんでもっと被害者たちに親切にしてやれぬか。この人たちが判を押すか押さぬかでワイワイいまやっているわけです。だから、あなたたちが、おれたちはほんとうに良心的にこう言っているのだと言っておられるそれも疑いはしないけれども、とられている行為は逆に追いやってしまったと、私はこれしかないと思うのですが、いかがですか。
  281. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 大体の御趣旨は大臣から御答弁がありましたので、私からいろいろお話しすることはないと思いますけれども、先生のおことばの中にありました点につきまして私どもとしてもいろいろ努力をしたつもりでございます。この点はちょっと御了解いただきたいのでございますが、患者さんの代表から、あるいは会社から、早く解決をしてもらいたいと非常に頼まれたわけです。それで、いままでの経過等、あるいは先生は逐一お立ち会いになっておりませんので、あるいはおわかりになっていないかもしれません。なかなかもつれて先に進まないという事情はおわかりだと思います。何とかしてこれを早期に解決をしてくれと、こういう御依頼があったものですから、それではたとえば人選等も一応おまかせ願って、もちろん人選を決定するときには、一任されたといっても、いろいろお話はいたしましょうと。しかし、人選については、自分らはよくわからぬから、それは厚生省を信頼しておまかせいたしましょうと、こういう話も患者の代表の方々から私は聞いておるわけであります。そこで、文章としてはこうきつくなったわけでございますけれども、経過としてはそういうことでございます。  それから、もう一つの一任するの問題は、これは六十名全部の方に私はお会いしたわけではございませんけれども、十分両方からよく意見を聞き、それからその中に入った方も十分考えをお聞きになって、そして自分の考えを示されるであろう。しかし、中に入った方も、もちろん自信がなければ、あるいは十分世間を納得させることがなければ、おそらくかりに御一任ということで権限をまかされたとしても、そういう点は十分皆さんたちの意見を考えて考え方をお出しになるだろう。しかしながら、ここまでもつれてきた問題であるから、この程度の覚悟というと語弊がありますけれども、そこまでのつもりがなければ、なかなか人選を私どもとしても早期に選び、早期に解決するということは実は自信がないんだと。だから、できますれば、こういう点で仲間の方を説得していただきたいということを、これは電話でございますけれども、決して先生お話しになったように私が全部文章をつくって患者の代表に押しつけたわけじゃございません。これは地元の患者をいろいろめんどうをみておられる市の幹部の方、それから愚者の代表の方々と、三人でいろいろ相談して文章はくふうしたわけです。そういうことでございますので、もちろん先生の結論的な点については、私どももよくわかるのでございますけれども、経過としてはそういう経過でこの文章ができ上がったわけでございます。
  282. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間もあまりなくてできませんから、結論だけ先に言っておるのですけれども、私たちが現場で調査したことによりますと、水俣市の山田課長があなたのところに見えた。そうして、県の藤本部長と指導課長、この三人があなたのところに来たら、あなたがこれをコピーで刷ったのを渡された、これでなきゃだめじゃと。だから、その連中は直ちにこれを県に電話したと、こういうことでしょうが。それは間違いないでしょうが。それは間違いだというならば、これは今度証人として呼んでもらいましょう。水俣問題で課長が公式にみんなの前で言っておるのです。それで、あなたの作文だと、こう私らはとっておるわけです。また、相談を受けたかもしれません。しかし、患者代表じゃないのです。ここに来ているのは、市と県の部課長さんたちがここに来てあなたから書類を見せられた。それは公文書だったか、判は押さっておったかと言ったら、いや、判は押さっておらぬけれども、それをもらったから、それで私は急遽電話いたしましたと、こういうことなんですよ。
  283. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 三人が見えたときにお渡しいたしましたのは、会社側から提出されました案を私はお渡ししたわけでございます。
  284. 阿具根登

    ○阿具根登君 それが私もちょっとおかしいと思うのは、患者代表が来て陳情したやつは陳情のみで、会社からはこの文章を書いて渡されてあるのを公害部長か課長にこれを渡したと、こうなるわけですな。これはおかしいじゃないですか。それでは厚生省の立場はおかしいじゃないですか。
  285. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 最初とにかく市役所と患者の幹部の方と私が電話で打ち合わせた内容に沿って、会社も似たような文章を出してきたわけでございます。それを、先ほど先生がおっしゃった三人に、会社からもこういう協議がございました、こういうことで会社は承諾する予定だということをお話し申し上げたわけでございます。それには、口だけではなくて、案を見せたほうが適当であるということで私はお渡ししたわけでございます。先生がおっしゃった患者側からの確約書をいま出しておるものについては、市のほうから私のほうに連絡があって、それについては私は意見を申し上げましたし、結論的には、市と私と患者のいわゆる幹部の方とが電話で打ち合わせたわけでございまして、確約書の問題につきましては、私のところでつくってお渡しをしたという経緯はございません。
  286. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはわかりましたが、あなたのところでつくったのではないけれども、会社がつくった案をあなたがお渡しになったと、こうなんですね。
  287. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) そうでございます。
  288. 阿具根登

    ○阿具根登君 そんなら、なおさら私は悪いと思う。自分が筆でつくったやつならまだいい。それでも、自分が責任を持てばいいですよ。しかし、あなたが、これは会社の案だといって渡されても、会社が書いたこの確約書なるものをあなたが部課長に渡したら、これはあなた会社の代表じゃないですか。それは会社の取り次ぎじゃないですか。そうなりませんか。
  289. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 会社がはたしてこの人選あるいは一任するということが確実なのかどうかという質問を受けましたので、それは間違いありませんという意味でお渡ししたわけでございます。
  290. 阿具根登

    ○阿具根登君 まあ、いずれにしても、やりとりをこうやっていてもしようがないけれども、事実わかったのは、これの出どころは会社だ。
  291. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 会社の文書に患者さんたちが判をつこうとして努力されておりました文書は、趣旨は同じでございますけれども、文章そのものは違うわけでございます。別ものでございます。
  292. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、それじゃ会社の文書というのはどうですか、読んでみてくれんですか、どげん違うか。
  293. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 内容は同じでございますが、字句その他で多少違うわけでございます。あとでこれは先生にごらんに入れます。
  294. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう時間がありませんので、これでやめますが、ただ、これを会社のやつだな、と言うと、そうじゃないとおっしゃる。なら文章はどこが違うかと言うと、文章は違わない。内容は少し違うけれども、少しも変わりません。ということは、会社のやつだということなんですよ。それはテニヲハが変わっているだけです。あなた、いやいやと首を振りなさるけれども、そうじゃないです。それだったら、会社の出したやつがあるはずです。これとほとんど変わらぬはずです。この文章も少しは違っておると思うんです。これはあなたのところから出た文章をテニヲハくらいは変えておると思うのです。しかし、中身は変わらぬ。そうすると、この根底にあったものは、会社から出された確約書を逆に被害者に全部判を押させて、そうしてこうやる、こういうふうにとられてきますよ。
  295. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 経過的には、市役所と私と患者の幹部の方と相談してきめた文章のほうが先でございまして、会社のほうはそのあとでこの文章を同趣旨のことで私の手元に出してきたわけでございます。
  296. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、患者代表は、これはただ出しただけで、裁判も何もできますよ、こう言ってきておるんですよ。あなた方、そういう説明をしましたか。
  297. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 先生がおっしゃったようなことについては、何ら私どもは干渉をしておりません。
  298. 阿具根登

    ○阿具根登君 あなたが言われる代表なる人は、これがあっても裁判はできるんだ、いやだと思ったら裁判していいんだと、こういうふうにみなを説得しているわけなんです。これは法的なものじゃないからできるけれども、この一札を入れておったならば不可能だと私は見ております。やれることはやれるけれども、もうこういう一札を入れてそうして結論の出たやつに対して、裁判に持っていっても、それはとても勝ち目はありませんよ。私はこう思います。だから、そういう心配のないようにするためには、ここまで皆さんが心配されてやってもらっておるのに対しては私は敬意を表します。しかし、こういう形のものをやられるということについては私はおかしいと思うのです。こういう文書を入れさせるということは、もう今度判を押して出したならば、これはりっぱな確約書です。だから、そこまでしてわざとこんなにごまかしてしまったじゃないか。だから、逃げ道はちゃんとあけてやらねば、何の場合でも、一審があれば、二審もある、三審もある。しかし、みんなが三審まで行くことはありゃせん、ほとんど。ましてや、患者のほうは金がないんです。会社には金がある。会社は裁判なら最高裁まで行くでしょう。患者は金がないからやれないんです。そういうハンディもついているんです。病人です。貧乏です。被害者です。なら、厚生省の皆さんは、も少し被害者の立場に立ってもらいたい。通産省は大体工場の味方ばかりしている。厚生省までもこういう味方をするとは私は思わなかった。何も工場をつぶせというのではないんですよ。そう極端なことを言っているのではない。あまりにも彼我の力の差があり過ぎるじゃないか。なら、もう少し弱いほうに味方をしてもらいたい。結論は一緒かもしれません。一緒かもしれませんが、ただいま言われましたように、ほとんど会社の出した文書そのものが確約書になってくるというのでは、これは片手落ちだ。そこまでせぬでもいいじゃないか。そうして、中に入ってくださる人なら入ってもらう。ところが、これを入れなければ中に入る者はおりませんぞと言うなら、特定の人を考えておられる、あなた方は。そうでなかったらそういうことは言えないはずです。それを言っておられる。これは頭を振りなさるかしらぬけれども、そうじゃない。これを入れなかったらだれも入る者はおりませんよということをぴしゃっと言っておられる。だからこういう文書になってきたんです。
  299. 武藤琦一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 誤解がなかなか解けぬようでございますけれども、私どもは患者の代表の方から非常に信頼をされて十月以来この仕事をやってきたわけでございます。その点は私どもは非常に自信はあるつもりでございます。当初非常に患者側から頼まれまして、何とかして早期に解決をしていただきたい、何とか早くやっていただきたい、こういう重ね重ねのことが地元の関係者、つまり、市役所、県、あるいは患者の幹部から依頼がありましたので、私どもが責められれば責められるほど何とかして責任を果たしたい、こういう気持ちでこの文書になってきたわけでございます。そのあとで、先ほど大臣からお話がありましたように、いろいろ会社側にも意見があったようでございますけれども、患者側もその方向で努力をされるから、会社のほうもひとつ一任してくれないかということでお話をしましたところ、会社のほうは大ぜいでございませんし、これは責任者が決心をすれば簡単でございますので、したがって、会社のほうから文書としてはああいうものが先に私のほうの手もとに来た。ただ、文書の経過から申しますと、市役所と私と患者の幹部の方が相談したほうが先であります。
  300. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 私が患者側の立場に立っていないでどうしてこんなことを考えますか。患者側の立場に立たないでこんなことを考えるはずがないのです。会社はいやだいやだと言っている。会社はなかなか応じてこない。法律で一定の基準を出してくれ、そうでなければわれわれは困る、そうして第三者の調停なんていうものはなかなか応じないというような状況であったわけです。それを説得をして、そうしてやっと納得をさせたわけなんですが、その間において、いろいろうわさに聞きますると、あそこで代表者の方々が来てああ言われたけれども、患者の中には、そんなものにはなかなかまかせられない、まかしたら最後もう何も言えなくなるぞというようなことが伝わったり何かして、とてもまとまりそうもない、非常に困ったということを聞いてきたということが私のほうに漏れてきた。知事も、それみたことか、そんなものをつくったってなかなかみんなそれにおまかせしましようとはならぬだろう、私の言ったとおりだと、その話もあったりしたが、その前においては、しかし、両方の話を十分聞いて、そしてこれでも実際はまだ裁判の道もあるし、今度公害紛争のあれができたらそれに乗りかえる道もあるだろうと思っておりますけれども、初めから言っておったのでは、そんなばからしい第三者の中におれは入るか、そんな人たちの火中の栗を拾うようなことはようしませんというようなことが多くておそらくこれに乗り出してくれないと思うから、とにかく一応一任してくれんかと、そこへ持っていきたいために一応一任しますという形をとってもらえんかと。そうして、それならこんな文章でどうですか。ちょっときついけれども、この程度でないといかんかもしれぬなと。それじゃ、会社のほうと患者のほうと両方にこれで納得してもらえるなら話をしてもらおうと言っているうちに、会社のほうが先に返事が来て、そのときに、会社からこういう返事が来ているがどうだと、こういうことになったのだと思うのです。だから、したがいまして、私は、ほんとうは公害紛争処理法案が出ればそれでやってもらえばいい、どうだと、こう言ったのですけれども、とても待てぬと言うし、話を聞いてみると一日も早いほうがいいのじゃないかと、こう思ったから、私はあれをしたわけです。それで、私は、具体的のこの問題に取り組んでおる。第三者の人をお願いするのにも、こうは言っておりますけれども、はたしてその人が得られるかどうか、実際は心配しているのでございます、これでもですよ。実際は、しかし、そこまででもやるのが私は被害者の方々のためだと、全努力を尽くそうと、こう思って取り組んでおるわけなんです。その点をひとつ御了承をいただきまして、患者の方も賛成をしていただければ私の気持ちが通るわけだし、とてもそんなことは信じられぬということであれば、紛争処理委員会ができるまでお待ちいただくよりほかないだろうと、こう思っておるわけです。
  301. 阿具根登

    ○阿具根登君 もうこれでやめます。論争になりますからやめますけれども、大臣の気持ちはわかるけれども、私と考え方が違うものだから平行線なんです。なぜかならば、会社側が応じませんよと、いやじゃいやじゃと言うのを納得させたと。これが私はわからないのです。加害者なんです。公害はおまえが与えたじゃないかと、それを中に入ってまとめてやろうとするのを、被害者がいやだと言うならわかるけれども、加害者がいやだと言うのは何かと、私はこうならにゃいかぬと思うのです。それも、ちゃんと線が出ておるから、前はこれだけだった、そうすると、だれがやったところでこの中間か何かにどこかに線が出てくると思う。そんなら、加害者がいやだと言うのがおかしいのです。その加害者がいやだと言うのを私は納得させておるんですよと言うところに私は納得できないところがある。被害者がいやだと言うならわかる。被害者が私は千三百万円もらうのはいやです、まかせませんと言うならわかりますが、園田さんが公害だと言ってくれたから、被害者は、斎藤さんが言ったように、厚生省様々、厚生省様なら何とか助けてくださると非常に喜んでおるのです。そして、少しでも早くしてもらわねば自分たちの生活はやっていけぬと頼んできておるときに出たのがこの文書です。そうしたら、頼んでおったところから、これは白紙委任だ、一切文句ないぞということが来たからテンヤワンヤになっておるんで、へたすると私が質問したから仲裁委員会ができぬことになったぞなどということになったらたいへんですから、そうじゃないので、この文書があったからできないでおるんですから。  それからもう一つ、仲裁に入ってくださるのはりっぱな方々ばかりだと思うのです。あなた方がどういう方をお思いになっていらっしゃるか私は大体わかるのですけれども、その人方だけが仲裁の神様じゃないと思うのです。おそらく、あなた方は特定の人を考えておるから、その人たちはこういうのがなかったらいやだと。あってもあんなうるさいのはいやだとおっしゃる特定の方を考えて言っておられるのではなかろうか。学者もうんとおられます。良識のある方もうんとおられます。そういう方々が、おれはそんなのいやだと皆さんおっしゃると思う、あの現状を見るならば。それはおれがやってやろうという方もたくさんおる。斎藤さんも、あの現状を見ておるから、知っているから、あなたは買って出られたと思うのです。だから、紛争処理法ができればそれでやってけっこうだけれども、実際はそれまで待てないくらいの貧困な家庭だ。だから、それまで乗り出してもらえるなら、なぜこの文書を書きなさったかということなんです。そうじゃなくしてやってもらっておったならば、いま斎藤大臣がおっしゃったように、二月中に仲裁の名前を発表しますと約束されたんだから、できておったかもしれない。この文書ができたからそれができないようになった。  まあこれで質問はもう終わりますが、気持ちはわかりますけれども、しかし、私と大臣、公害部長には意見の相違があります。それをはっきり申し上げておきます。しかし、厚生省は、公害だと認定し、国民の一番弱い人の味方にあるはずです。さっき藤原先生もるると述べておったけれども、そういう立場に立って一刻も早く解決のできるような努力は今後とも続けてもらいたい、私はこう思います。こういう質問が出たから、もう公害紛争処理委員会にまかせるんだというような投げやりなら投げやりでいいです。それならそれで私は開き直ってやります。しかし、そういうことはおそらくお考えにならぬと思うから、ひとつお考え願いたい。  これで質問を終わります。
  302. 吉田忠三郎

    委員長吉田忠三郎君) 他に御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  なお、きょうの委員会委員長に要請のあったものは三件あったと委員長は記憶いたしております。その第一の小野君の要請の北九州市議会の会議録の提示の件については、この際委員食に御一任願いたいと思います。  それから第二の、これまた小野君の提案でありましたが、福岡県庁、北九州市当局者の出席を含めた書面回答については、理事会で協議をいたしまして御要望にこたえるように善処したいと思います。  それから第三の上田君の要請につきましても、右の問題と同様に、理事会にて協議をいたしまして御趣旨に沿うように善処したい、こう考えておりますので、御了承を賜わりたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十八分散会      ―――――・―――――