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1969-07-17 第61回国会 参議院 建設委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月十七日(木曜日)    午前十時十六分開会     —————————————    委員異動  七月十六日     辞任         補欠選任      松本 英一君     藤田  進君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大和 与一君     理 事                 大森 久司君                 山内 一郎君                 沢田 政治君     委 員                 上田  稔君                 小山邦太郎君                 高橋文五郎君                 中津井 真君                 林田悠紀夫君                 米田 正文君                 田中  一君                 松永 忠二君                 二宮 文造君                 宮崎 正義君                 高山 恒雄君                 春日 正一君    衆議院議員        建設委員長代理  遠藤 三郎君    国務大臣        建 設 大 臣  坪川 信三君    政府委員        建設大臣官房長  志村 清一君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        建設省住宅局長  大津留 温君    事務局側        常任委員会専門        員        中島  博君    参考人        東京大学教授   高柳 信一君        横浜国立大学教        授        内藤 亮一君        日本建築家協会        会員       郭  茂林君        全日本建築士会        事務局長     今   洋君        財団法人日本建        築センター常務        理事       村井  進君        東京都首都整備        局都市計画第一        部長       脇坂 忠良君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○自転車道整備等に関する法律案衆議院提出)     —————————————
  2. 大和与一

    委員長大和与一君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十六日、松本英一君が委員を辞任され、その補欠として藤田進君が選任されました。
  3. 大和与一

    委員長大和与一君) 建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本法案審査のため、皆さま方のお手元に名簿を配付してございます六人の方々参考人として御出席をいただいております。  それでは、参考人の方に一応ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙のところわざわざおいでいただきましてまことにありがとうございます。  皆さん方からそれぞれ専門のお立場から十分に御意見を開陳していただきたいと思います。言論の自由はお互いでございますから、言いたいことをどんどん言っていただきたい、こういうことをお願いして皆さんの御苦労に報いたいと思います。  これより御意見をお伺いいたしたいと存じます。議事の都合上、御発言をいただく時間を大体お一人十五分以内にお願いいたしたいと思います。なお、参考人の御意見の開陳のあとで、委員方々からの質問がありますのでお答えをいただきたいと存じます。順序といたしまして、最初に、御都合もございますので高柳参考人から、先に御発言をいただきたいと存じます。  それでは高柳参考人からお願いをいたします。高柳参考人
  4. 高柳信一

    参考人高柳信一君) 高柳でございます。本務の都合上、時間、順序に関しまして無理を通させていただきましてたいへんありがとうございました。  この建築基準法改正案に関しまして、ごく簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。ポイントは三つないし四つございますが、最初一般論でございます。  で、序論的な問題ではありますが、私はあとの具体的問題を考える場合に、建築基準、あるいは都市建築行政というものについて持つところの姿勢というものが非常に重要だろう、というふうに思っております。忌憚のない個人的な経験に触れて述べさせていただきますが、私は二年余在外研究の機会を持ちまして、外国都市生活市民生活において非常に大きな感じを持ったのであります。それは確かに戦争直後の日本民族挫折感虚脱状態ということからしますと、私どもは十数年たってから外国へ参りましたので、日本民族の優秀さといいますか、勤勉さということ等ちっともひけをとらないという感じを持ちまして、衣食住の中で、なかんずく衣と食に関しては日本生活のほうがぜいたくなところがあるという感すらしたのであります。ただしかし、国民総生産が世界第二位である。それにしては、住宅状況があまりに差があり過ぎる。なかんずく都市住宅状況、これは雲泥の差があるという感を持って帰ってまいりました。それはいろいろ分けて言えると思いますが、一つ政府住宅政策が非常に貧困ではないか、つまりアメリカは戦災を受けませんでしたが、ヨーロッパで数国回っただけでも、どこでも非常にりっぱな中下層階級のための国営、公営住宅というものがどんどん建っている。そういう点においては、非常にわが国は見劣りがいたしました。といいますことを多少補足いたしますと、わが国では住宅は票にならぬということだそうでありますが、外国ではおそらく正反対であろう、つまり中産階級あるいは都市の中、下層階級のために積極的に住宅をどんどん建てるという政策を持たない政党というものは、おそらく相手にされないだろうと思うのであります。それがわが国では逆であるということについて、非常にマイナスの感じを持ちました。もちろんその理由についてさらに考えたいわけですが、ここでは結果だけを申します。  第二は、都市あるいは土地利用あるいは都市建築に関しまして、およそそのプランニングの意識というものが、わが国行政にはないのではないか、もちろん都市計画法とか、計画とか基準と名前のついた法律はありますが、後に申しますように、ちっともエンフォースメント局面が熱意を入れられていない。つまり全くの骨抜きであって、形骸化されていて、ほんとう意味での計画——行政プランニングというものの名に値しないということであります。  第三は、それと当然関連いたしますが、政府行政当局プランニング及びそのプランニングに従った住宅建設というものを優先的に行なわない。したがって結局は主人の努力に住宅建設というものを待たざるを得ない。ところがその主人住宅を建てる部面において、違反の九〇%というような状態であります。これまたたいへんショッキングな感を持ったのでありますが、イギリスにおりますわずか十カ月の間に、二度も新聞で、日本に関する本の書評を目にしたのでありますが、日本都市世界で最も醜い、ザ・アグリエスト・シティであるということがその本で言われており、それをわずか五、六段の書評でまっ先にそこに注目して紹介しているわけであります。なぜかというと、こんなに無秩序で、およそ都市の名に値しないような、こういう何といいますか、大きないなかというのは、ちょっとヨーロッパ的な感覚では考えられないというのであります。まあそのことに関連しまして、私はやはり都市建築行政というものに対しまする根本的な姿勢というものに、何か狂いがあるのではないか。そこをまず反省してかからないと、いつまでたっても同じではないかと思うのであります。具体的に申しますと、今回の改正にあたりまして、法自体ではありませんが、違反建築九〇%というのを何とかしなくちゃならない、違反を是正するのではなくて、違反にあわせて法令改正する、極端に言えばこういうことであります。つまり建蔽率違反が多過ぎる、実情に合わないのだから建蔽率自体を緩和する、こういうことでいいのだろうか。むしろといいますか、私の忌憚のない考え方を言わせていただければ、向こうで非常に痛切に感じましたのは、ゾーニングに関する関心というものがわが国とは比較にならない、一地域社会ではゾーニングに関しましては、住民がかんかんがくがくの議論をやりまして、その上でやっときまる。しかしきめた以上は守る、これが都市生活を秩序あらしめる出発点だろうと思うのであります。ところが、そういう都市生活規制の基本である計画に関しましては住民参与というものなしにきめて、したがって守れない。守れなければ違反を放任する、放任し過ぎてどうにもしようがなくなると、今度は法令を変える、こういうことでは、はたして世界で最も醜い都市と言われるような、そういう悪評をはねのけることができるだろうか。ほかの言い方で言いますれば、日本人は経済的動物だ、金もうけばかり熱心であって、精神生活の再生産の基盤である住宅というものに関して、あまりに無関心である、そういうことでいいのだろうか、ということをまず感じたわけであります。  具体的に申しますと、今度の改正案で、違反に合わせて法令あるいは法令実施状況を変える、それに対応すべく執行体制の強化というのがほとんど見るべきものをあげていないということであります。衆議院修正におきまして、多少よくなったと思うのですが、なおいろいろ問題があります。この違法建築といいますか、建築基準を正当に実現するという場合に、私はその行政の要諦は違法建築ができてしまったら終わりである。つまり違法建築ができる前に未然に防止するということだろうと思うのであります。それにはいろいろな根拠がありますが、第一は、できてしまったものをこわす、これは投入された資本や労力を全くむだにすることであります。第二に、違反建築ができ上がってしまいますと、必ずといいますか、こういう住宅事情の劣悪な状況では、すぐ人が入る、一度人が入りますと、問題は新しく展開するわけで、つまり居住権生活権というものがそこで成立する。これを侵害してまで建築基準法違反状態を排除する必要があるかどうか、これは新たな判断を必要とする問題でありまして、一たび違反建築ができてしまいますと、その排除というものは非常にむずかしくなる第二の理由があるわけであります。つまり居住権生活権侵害という新しい問題に当面する。第三に、住んでいる人が悪いのではなくて、そういう場合もありますが、つくった人が悪い。住んだ人は何も知らないで違反建築を買ったという場合があるわけです。そういう罪のない人を追い出すという結果になる。第四に、これは同じことでありますけれども、事前の規制を確実に順守せしめる、つまり違反未然に防止するということをしないと、罪のない国民同士がいがみ合わねばならない、こういう悲惨な不幸な状態が起きます。第五は、これはもっと前に言うべきことでありましたし、あとでも何度も繰り返して申しますが、一つ違反を見のがすということは、全部の違反を全部見のがすということと同じだということであります。つまり一つ違反を見のがして、二つ目違反者に対して強力に行政代執行をやろうとしても、あれを見のがしてなぜおれをやるのだという文句が必ず出ます。そうしているうちに第三、第四の違反が出てくる。第二の違反建築についてそういう文句がついてやれないうちに第三、第四というふうに進んでまいりますれば、結局は公平という原則からいって、全部の違反を見のがさざるを得ない。だから、ここで建築基準法改正して執行体制を強化しようというのであれば、いままで一、二%しか違反は是正できなかった、これを五〇%まで上げようというのではなくて、一つ違反をなくそう、そういう覚悟でなければ、おそらく前と同じ結果になると思うのであります。そこで重要なことは、まず決断といいますか政策の確定であります。つまり、違反が惹起してしまったあとでは、もはや違反の除去ということは非常にむずかしい。だから健全な都市生活を実現するためには、違反未然に防止することが重要である、こういう政策をとるかどうかであります。そういう政策をとらない立場もあります。いや経済的動物に徹すべきだ、経済成長が一番高ければ都市生活がどんなにみじめで、世界で一番醜い都市だといわれたっていいじゃないか、そういう考えももちろんあると思います。それならそれで、その政策について大いに議論したい。  しかし、もしそうではない、こういうことではだめだ、これをほっておいたらりつ然とするような都市状況になる、ここで何とかしなければ健全な都市生活を実現することはできない、もしそういう政策選択決断において確立しているのであれば、次にしからばそれを実現するにはどういう手段があるか、こういう順序になると思います。で、違反建築未然に防止する、つまり具体的に申しますと、工事停止命令が出た場合に、それによって相手方不作為義務を負います。つまり違法建築を続行すべからざる義務不作為義務を負うわけであります。現行法ではそれに対しては強制執行手段がない、処罰規定があるだけであります。それでいいのかという問題でありまして、それでよくないということは、現在の状況がそれを実証しているわけです。そこで、これを何とか変えなくちゃいけない。先ほどの政策樹立において賛成であるのであれば、その目的を達成する手段を考えるべきであります。考えられるのは幾つかあります。一つではありません。第一は執行罰であり、第二は裁判所命令制度であり、第三は、これは厳密な意味では強制執行手段ではありませんが、事後処罰に関して強制執行手段を兼ねさせる、これは英米建築行政においては非常に広範にとられているのでありますが、建築基準違反あるいはゾーニング違反建築に対して、違反日数に応じてファインをとる、罰金を取るという制度であります。これは違反者にとっては非常に痛いわけで、違反を早くストップしなければたいへんな罰金を取られるということになります。そのどれが先ほどあげました政策にとって合目的的であるか、これをその利害得失をさらけ出して、そして目的との関連でこれが一番合目的的であるという選択をすればいい。そういう発想がこの改正案立案過程において全然ないということを、私は非常に驚き悲しむのであります。  それらについて建設省当局に伺いましたけれども、はっきりした答えは得られないのであります。  第一の執行罰でありますが、私はこれが唯一の手段だとは必ずしも思いません。つまり司法的強行原則、ジュディシャルインフォースメントの原則というのが英米にありまして、代執行に当たる者とか、裁判所命令でやるわけであります。私はそのほうが筋が通っていると思います。しかし、もし政策、先ほどの第一にあげました政策において正当であり、ほかに手段がないのであれば、英米では裁判所において命令でやっていることを執行罰でやるということも十分ジャスティファイされるわけであります。これについて処罰執行罰、つまり過料、ドイツでは強制金といっておりますが、こういう金銭的不利益を課するのは二重の不利益を課する、そういう反対があるようでありますが、強制執行というのはすべて二重の不利益であります。租税逋脱に対しましては逋脱罪として処罰をされると同時に重加算税を取られる、あるいは租税滞納処分を受けて身体財産——主として財産でありますが、不利益を受ける、代執行だってそうであります。処罰されると同時に貴重な財産を破壊される、二重の不利益を受けるのでありまして、執行罰だけが二重の不利益ということはない。そういう点を詰めて、なぜ執行罰がふさわしくないかということをはっきり理由として出すべきだと思うのであります。  第二の裁判所命令、私は筋としてはこれを一番推奨いたします。つまり英米ではゾーニングのインフォースメントの最も強力な手段は、インジャンクションであります。建築行政当局だけでなくて、隣人もまたインジャンクションの発揮を請求できます。これは裁判所命令ですから、これに従いませんと、こっぴどい裁判所侮辱罪の制裁を受ける。非常に強力であり、目的を達しておるようであります。  第三の違反日数に応じた罰金を取るという制度、これも英米で非常に多く使われていて、建築基準あるいは都市計画を守らせる上において重要な役割りを営んでいる。なぜこういう制度をとることをやらないのか。法律的実際的に問題があるなら、前記の目的との関連においてはっきり出すべきであろう。少なくとも民主主義のもとでの国民のための立法であるならば、国民がなぜこういう立法でいいのかと聞いた場合に、はっきりとした理由を出してほしいと思うのであります。  それからもう時間がありませんからほんの二、三つけ加えますが、第二に具体的な改正案条項では九条の十二項の違反建築物に対する立て札による表示でありますが、これは特定行政庁は「その旨を公示するものとする。」と、その場合に「第一項又は第十項の規定による命令をした場合において、」ということになっております。つまり命令相手方がはっきりわかって、命令が出された後に初めて公示されるということになります。しかし、実際の取り締まりにあたって一番困ることは、次々に建築主や持ち主が変わって、この命令を出す相手がつかまらないという場合であります。この命令が出ないと立て札が立てられないということでは、全く形骸化するというおそれがあります。ですから私はこの九条十項の要件をそのまま書きまして、違反建築であることが明らかな場合には立て札を立て得るというふうに、その旨を公示するというふうにしたほうがいいと思うのであります。  それから最後に、建築基準あるいはゾーニングあるいは都市計画等々において諸外国でも一番問題になるのは、住民の協力がなければ、いかにりっぱな計画を立てても形骸化する、骨抜きになるということであります。 つまりドイツではバウ・ナハバル・レヒトと申しまして建築相隣関係人違反建築に対して不服申し立て裁判所に対して出訴権があるかどうかということが一番問題になっておって、それを肯定する傾向が強いわけであります。それから英米で、インジャンクションは州によって違いますが、被害者隣人等が請求できる場合が多い。で、わが国の場合にはそれが全然ない。これは、取り締まり当局におきましても、周囲の隣人が無関心であったら、いかに法律でこうなっているからといって、違反建築に対してきびしく出るということは、心理的にむずかしいだろうと思います。ところが最近、被害者が黙視しない、こういう状態を見のがさないということで非常に積極的関心を示してきているわけですから、これを大いによりどころにして取り締まりに当たってほしい。で、それを制度化することを少し考えたらどうか。つまり、違反建築に対して現在は——違反建築と申しますかちょっと言い直しますと、特定行政庁処分に対して、現在は、それによって不利益を受ける処分相手方、つまり建築主等々でなければ建築審査会に対する異議申し立て訴訟ができないのですが、その隣の者いわゆる被害者等がこれに対して不服申し立て訴訟のできる方向を考えていくべきだろう。そういうことが制度化されておりませんと、幾らりっぱな基準をつくっても実施されないというのが、経験の示すところであります。まして、現在の改正法に盛られた基準法あるいは基準内容というものは、先ほど申しましたようにいろいろ不満がある。そして被害者隣人積極的関心をかきたてる制度も落としてしまうということでは、エンフォースメント局面においてもますますむずかしい問題が出るのではないかというふうに思います。  なおそのほか、水道をとめることがはたして申し合わせだけでできるかどうか。これをはっきり否定した判例があるわけですから、はっきりした法的根拠を置かないでほんとうにこれは実行できるという自信が、この法案をつくられる方々においておありなのかどうか。その他いろいろ問題がございますが、時間超過いたしましたので、一応以上で終わらせていただきます。
  5. 大和与一

    委員長大和与一君) ありがとうございました。  高柳参考人に対して質疑のある方は、御発言を願います。
  6. 田中一

    田中一君 いま高柳先生の大体の御意見の範囲が住宅建築というものに一応限定された御意見のように伺いますが、そこでいま九条の問題を、衆議院修正の九条のことでこの問題をお話しになられましたが、執行罰を受ける、当然の執行罰を受けるという該当者は何者なんでしょうか。これはいろいろ、先生も御承知のように、日本住宅を建てるというこの行為には、たくさんの段階があります。人の手をたくさん通っております。したがって、執行罰を受ける該当者というのはだれなのかということを、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  7. 高柳信一

    参考人高柳信一君) そこらが、その立法者においてなぜこの執行体制を強化しなくてはならないか、また執行体制を強化する場合に、なぜこの手段をとるかというその出発点と関係するといいますか、そこがまずはっきりしていれば、その次の問題は幾らでも立法技術上解決できるというふうに思うわけです。立法技術上と申しますのは、まずその工事停止命令を課して、その命令内容は、行政処分内容不作為義務を課することであります、その不作為義務の主体はだれであるか、これは法律の定め方いかんによるわけであります。この工事停止命令を出し、そしてそのことが衆議院改正にありますように、立て札で公告されたという段階で考えますと、何人もそういう違反建築であるということが公示された——公示というのは公に示すですが、公示されたその建築物工事を続行してはならないというそういう条項を一本加えれば、それに違反した者に対して、処罰と同時に、必要があれば強制執行不作為義務強制執行を行なうということが可能になると思います。
  8. 田中一

    田中一君 住宅建築に対する違反事項というものはこれはたくさんございます。したがってこれはもうきびしく取り締まるべきだと思うのです。これはもう同感でありますが、たとえば、軽微な住宅等は、何も建築士という称号を持っている職業の者に頼まないでもできるわけなんです。えてして庶民住宅的な軽微なものにそういう違反が多いということです。したがって、一面、建築士という職業を持つ者以外は建築設計監理等は行なってはならないというようなことになれば、これは別の面で責任者が明らかになるわけなんですね。ところが日本法律はそうなっておりません。建築士法でもそうなっておらない。軽微なものはだれでも自由に——私でもできるわけなんです。そこで、じゃはたして建築士という職業の者以外には設計監理、いわゆる設計図書調製とかという仕事ができないということになると、これはまたいろいろと問題が起きるわけなんです。そこで問題は、住宅問題に限られますと、違反建築というもの、その違反建築であるかないかの問題は、大体において、最近有泉先生が中心になってやっていらっしゃるところの建築被害者同盟というような形の半専門的な団体があると、これはおのずから発見できますけれども、隣人がこれを発見するということになると、日照がどうの何の、敷地が境界がどうのとかという被害を受けられる人が意思表示をすることであって、まあ日本地域社会ではあまり他人のことまでも口を出すという慣習が、だんだんなくなってきております。昔はもう一つ長屋をつくる、長屋生活するには、それこそ、くぎ一本打つにでもお隣同士くぎ一本打ちますよ、おやかましゅうございますと言ってやった慣習があったのです。それがいまはない。そういう地域社会状態から見ますと、だれかがそれを摘発してやったらどうかというような考え方まで求めても無理じゃないか。そうすると、法律的に規制をしなければならない。こうなりますと、たとえば、建築をしようという発想は資本を持つ者が始めます。たとえば自分の家であろうと他の家であろうと始めます、貸し家をつくるのであっても。それに対しては、設計並びに監理という職業を持つ建築士に頼む場合もあれば、そうでなく自分でやってしまう場合もある。そうしてまた、設計でも、設計だけやるけれども監理はごめんこうむりますという場合もある。これは決して違法でも何でもないわけなんですね。これは建築士法でそれをきめております。そうして、それをまた請負に出す、日本じゃ請負という制度しかありませんから請負人に出します。請負人はそれをそっくり、まあ小さなものを下請に出す、そのまま。そうすると、下請は今度はその各職の大工さんなりあるいはブリキ屋さんに部分的に頼んで仕事をしていくというのが今日の現状なわけなんです。こういう形でくると、被害者はだれなのかとなると、設計上の図面その他が全部これが確認されてこれを行なっている場合に、それを請け負っている人たちは、これはもう図面が完全なものであるという前提でやるでしょうけれども、大工さんなりブリキ屋さんは、そういうものが当然正しいものであるという前提で引き受けるわけですけれども、引き受けて途中でストップする。そうなると、その職人たちの生活は何でささえられるかということになるのです。そういう悪い仕事を、不正な仕事を引き受けるからいけないのだといっても、これはいまのわれわれ地域社会の慣行でもあることなんです。だから、被害者はだれかとなると、仕事を実際する者が被害者になるのじゃないかと思うのです。こういうような気持ちもするのですが、その点は、それらをも救われるというような方法を、一つ何かお考えでしたら教えていただきたい。
  9. 高柳信一

    参考人高柳信一君) いまのお話で若干のことがわかりましたが、建設省ではこの違反建築に対しては、建設業者、建築士等に対する建設業法、建築士法等により、積極的に監督権を発動する。これによって十分違反建築に対する是正の効果はあがるというお答えでありました。私もなるほどそうかと思っておったのですが、いまのお話伺いますと、建築士でなくても建築できるのだから——いま議員の方が、私でもできるというふうにおっしゃいましたが、そうしますと、これで建設省の考えておられる違反建築に対するチェックの手段というのは、あまり役に立たないのではないかということを感じました。  それはそれとしまして、いまの御質問でありますが、私もそういう点は非常に重要だと思います。たびたび申しますように、日本都市生活状況というものをほうっておいたらどういうことになるかという点に関して、どれほど深刻に、いわば戦慄を覚えるか、そこのところがまず実は伺いたいわけです。これはほうっておいてもたいしたことないのだ、なるようになるさということも一つの考えでありますが、交通戦争ということ一つ考えてみましても、都市生活と関係いたしますし、それと違反建築が重なり合って相乗的に進んでいきますと、日本都市生活というものはどういうふうになるだろうか。現在ここで建築行政について立法行政の責任を持っている者としては、十数年後あるいは数十年後の結果に対して相当深刻な責任感というものを持たなければいけないのではないか。われわれももちろん現在都市生活を憎んでいる者として、声を大にしていろいろ言いたい。その確認の上に立って、さてどうするかという手段の問題になると思うのであります。  いまおっしゃいましたように、実は建築労働者も被害者であるという、そういう結果は十分伴うと思います。しかし、それは立法上全然防止排除できないかどうか、これはむしろ立法に携わる方々の英和に御期待せざるを得ない。私は一介の法律の研究者として、その点について考えれば必ず方法がないわけではなかろうと思うのであります。英米裁判所インジャンクションの発給を求めるという場合に、やはり裁制所は違反建築であるということがはっきりしていなければ差しとめ命令を出してはくれない。そうしますと、そういうことがある程度はっきりしているといいますか、裁判所に行ったら通るようなものについて、ちゃんとある程度資料を——しろうとですから完ぺきを期することは困難ですけれども、大体ああいう石の置き方で二階建てであれば、これは明らかに建蔽率違反だということは、だれでも言えるような状況がかなりあると思います。そういう場合に、その違反が既成事実化することを未然に防止する手段を考えると、先ほどあげた三つの方法があるわけです。それによって罪もない建築労働者が被害をこうむるということは、もっとほかの観点で救っていくということが可能ではないか。私は経済の情勢はあまり知りませんけれども、現在その大工さんその他建築関係の事業が、人手も足らないのでサービスの対価が上がっているわけであって、そうその一つの仕事で違反建築だからというので、建築を実行してはいかぬという差しとめ命令が出て、生活権に響くということはないのではないかと思います。かりにあるのであれば、これはその事業者が、下請等の下部の建築労働者の生活に対しては、違反建築をした以上は、それについての責任を負うというくらいのことがあってもいいのではないか。どこまでそういう点について踏み切るかということは、現在のその違反建築状況が、このまま進行したら一体どういうことになるかということについての深刻な自覚ないし反省の程度とかかわるというふうに私は思っているわけです。
  10. 田中一

    田中一君 もう一つ工事された現場におって仕事をしている者に、質問することができるとなっておりますね。これは衆議院の一番最初修正には、質問するだけじゃなくて、質問してそれは罰を受けるのだということになっておった。今度はそういうことの明文はなくなって質問することができると。質問するということは結局答弁を求めているわけですね。しかし御承知のように、黙秘権という権利があるのです。国民の持っている固有の権利がある。黙秘した場合に、必ずそれを答弁しないという形で処罰するということにして、はたして妥当であるかどうかということですね。この点はそれと、そうした一つ工事の進行中の過程——進行のプロセスの中において起きるいろいろな問題が、また建築基準法という大体において技術的な基準をきめようとしているこれらの法律の中に、突如そういうものが挿入されるということは、これはいまのような問題も含めて正しいとお思いになりますか。こうした事こまかな問題が、これは法律の中にですよ、法文の中に——これは政令またはその他行政上の違反を、建築主事等がそれぞれの管理をそれぞれの地域社会によってやる場合もありますが、条例等にゆだねる場合もありますけれども、今回の場合、こうした基本法に一つの現象というものを取り上げて、強い処罰をしようという考え方を打ち出すことが、はたして法体系の上からいって妥当であるとお考えであるかどうか、その点を伺っておきます。
  11. 高柳信一

    参考人高柳信一君) いまの点は修正案の第何条でしょう。
  12. 田中一

    田中一君 修正案見てるんですがね、十二条の四項です。先生のところへいってるのは、古い法律ですと、ちょっと載ってないかもしれません。衆議院修正した分の法律案ですから……。
  13. 高柳信一

    参考人高柳信一君) いまの御質問の点は、私は黙秘権に関係があるとは思わないのですが、つまり自分がある違法行為をしたということをその本人の口から引っぱり出す、これは黙否権の保証からすれば許されない。ここで定めておりますものは「建築主若しくは建築物に関する工事の施工者の氏名又は名称及び住所に限る。」というふうになっておりますが、これらについて現に工事に従事している者に質問するということですから、本人の罪責の根拠となる事実をその者の口から言わせるということではないと思います。問題は建築基準を確立し、またその違反建築を防止するためにどれだけの義務を関係者に課するかと、こういうことだろうと思うんです。これはアメリカの憲法で言いますと、サブスタンティブ・デュープロセスという観念がありますが、ある公益的な目的というものがはっきり設定されると、それを達成する手段として、手段目的に対する合理的関係にあるかどうかということで、違憲かどうかがきまるということになります。その前提には事実認識があるわけで、違反建築のやり方というものの実態からして、容易に違反建築の中止ないしは是正命令を出す相手方がつかめない、こういうことでは建築基準を十分守らせるということが不可能であるという事実について、立法者が十分事実を提供して実証する。その事実の上に立って工事停止命令の実効性を、この場合には工事停止命令に対する強制執行を考えているわけではありませんから、建築監視員がその違反建築違反の事実を確知する、そのために一定の手段を考える。そこで質問という手段を考える。この質問という手段及びその質問という手段を確保する罰則の定めを百条の中には掲げたということになると思います。ですから、これは黙秘権の問題ではなくて、そういうサブスタンティブ・デュープロセスといいますか、実質的なデュープロセスと、そういう問題ということになると思います。それが結果的に、結論的に、総合的に違憲かどうかというのは、いま申しましたような諸要素を総合的に判断してきまるということになります。私は、質問に答えないと相当の重罪に処するとかそういうこととか、質問をしなければならない目的というものがそれほど重要でないとか、そういうことであれば問題になる余地はあっても現在の建築基準法に対する違反状況と、それを是正しようという場合の一つ手段としては、十分憲法上ジャスティファイされ得ると思うんです。で、より言えばこういう姑息な手段よりも、もっとどうして不作為義務強制執行するという本来のまっとうな方法に踏み切らないのだろうか、そっちのほうに重点があるというふうに思うわけであります。
  14. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 きょうは、時間は一体いつまでやるのですか、大体の見通しは。
  15. 大和与一

    委員長大和与一君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  16. 大和与一

    委員長大和与一君) 速記をつけて。  他に御発言もなければ、次に移ります。  横浜国立大学教授内藤参考人
  17. 内藤亮一

    参考人(内藤亮一君) 私は、横浜国立大学の建築学科で現在都市計画建築法規の講義を担当している者でございます。私事にわたりますけれども、昭和二十五年までは建設省の住宅局の建築指導課長をしておりました。いま御審議いただいておる建築基準法の立案を担当した者の一人でございます。自分の研究の専門建築法規でございますので、これに対して本日は率直に意見を述べさせていただきたいと思います。また、そういう機会をいただきましたことを光栄に存じております。率直に申しますから、あるいは建設当局の方に多少快からざる、耳に快からざることを申し上げるかもしれません、また建設委員の皆さまにもし失礼なことがございましたら、御注意いただきたいと思います。  私が、今回の改正案につきまして申し上げるのはおよそ三点ございます。第一点は、法の執行について、いま高柳先生がおっしゃったようなことであります。第二は、都市計画関係の事項、まあ用途地域のほか特に道路と下水、建築物の敷地と道路と下水の関係についての意見を申し上げたいと思います。第三番目は、法律全体の取り組み方でございますけれども、地方自治の推進、つまり中央集権的よりはもっと地方自治のほうへ向かうべきであるというようなことを申し上げたいと思います。  まず、第一点の法の執行についてでございますが、先ほど高柳先生のおっしゃったことは、私も全面的に賛成でございますが、実は私建築審議会の委員の一人を仰せつかっておりまして、今回の建築基準法改正についての当局への答申意見を申し上げたわけでありますが、その審議の過程において、名前は伏せますけれども、ある委員の方から現在のように違反建築が野放しで、世間では、新聞なんかでもよく「ざる法」とも言われております。それではいかに法律を整備しても意味がないと、まず重点は違反建築対策に輝くべきだと、こういろ意見がありまして、これは私ももっともだと思うわけであります。ひとつ統計資料を、これは各府県から建設省へ集まったものの統計資料でありますが、昭和四十一年建設省の統計調査によりますと、違反建築、各府県あるいは市、各区なんかから報告のあったものが三万二千八百五十五件ございます。これは見つけたものだけでありますから、このほかに見つからないものがあるかもしれません。そこの中で手続違反が大部分でありますが、単なる手続ばかりでなく法規の実体に触れている、たとえば高さの制限、空中割合がどうかとかそういう実体に触れているものが一万二千六百七十九件報告されております。そのうち、告発したものがどれだけあるかと、各県で十三件、二十五都市で十三件、東京の二十三区で八件と、合計して三十四件は告発されている。これで見ますと、全体から見れば違反建築千件に対して一件、〇・一%です。それから手続違反ではなくして実体違反のものにつきましても千件について二・七件であります。〇・二七%、そういうふうに違反建築が見つかりましても、発見されましてもわずか一件、実体違反については三件くらいしか告発してないと、これは現在法律改正しなくても、各都道府県の建築主事の力によってできないことがないわけでありますから、少なくとも違反があってもこのような告発の状態では、これはまことに嘆かわしいと、これは別に、これは参考までにこんな状態だということをここで申し上げたわけであります。したがいまして、この違反建築につきましては、各都道府県並びに市の建築主事も首脳部も、もっと真剣に考えなければいけない。  そこでいろいろまだそのほかに努力すべき点がございます。二、三の例を申し上げますと、いまの執行方法については高柳先生に譲りまして省略いたしますが、実は住宅の場合、たぶんこれは地方税法に載っておると思いますけれども、五年間固定資産税の二分の一を免除することになっております、減額することになっております。これは違反建築物についても行なわれておるのではないかと思います。将来スラムの温床になるようなものにも、やはりそれは行なわれておるのではないか。私はきちっと調べたわけではございませんが、もしそうだとすれば、こういうものは少なくとも建築主事の検査証明書のないものにまで、つまり違反建築まで固定資産税の減免をする必要はないのではないか、これらは地方税法の改正になるかと思いますけれども、検討の余地があると思います。いま一つは、これは実はアメリカに土地分割条例というものがございまして、これは政府が勧告をしておる案でございますが、それを見ますと地方公共団体の許可を受けない宅地造成、宅地分譲については、不動産登記を拒否する、制限するというようなことが載っておるわけであります。これは不動産登記の私、専門ではございませんけれども、一つ財産の保護でもある不動産の売買、坪数だとかいろいろな農地であるとか地目だとか地積、いろいろ書いてあるわけでありますが、たとえば家屋の場合、違法建築はいつ除却されるかわからない、あるいは現在百平米ありましても士平米ぐらいは削られるかもしれない。そういうような不安定な財産を、すでに建築検査が済んだ建築主事の証明のある財産と同じように扱うということは、多少問題があるのではないか、それでアメリカの一部ではやっておるだろうと思いますけれども、登記を拒否することは、これはちょっと行き過ぎかと思いますけれども、まだ建築法規のそういう検査を受けていないのだ、あるいは違反建築であるということを付記することが考えられないだろうかどうか。これはいろいろ建設省では水道とかガス供給の停止とかいろいろ研究されておるようでございますけれども、そういう点をぜひ参議院の皆さん方におかれましても御検討いただければしあわせだと思います。先ほど高柳先生もちょっと触れたように、アメリカの標準建築法規なんかを見ますと、違反建築のあった場合には、措置命令に対して一日につきたとえば十ドルとかいったような罰金刑の制度があるわけであります。いたずらに単に罰金だとか、そういうことだけで違反建築が片づくとは思いません。思いませんけれども、いまのままでは何としても施行の効果があがらないわけでありますから、いま言いましたこと、あるいは高柳先生のおっしゃられましたことも、あわせてひとつ検討していただきたいと考えておるのでございます。  次に第二点、都市計画関係でございますが、私、本日、当時のことで多少告白めきますけれども、建築基準法立案に際しまして、四十三条に建築物とその敷地と道路のこと、それから下水道関係が十九条に書いてございますけれども、いかんせん昭和二十五年では道路とか下水整備が十分でございませんので、たとえば四十三条ではただし書きによって道路に接する義務を免除してみたり、あるいは十九条の下水に関しましては、敷地と下水の関係もきわめてあいまいに適当にこれを処理するというわけで、明確に規定していないのであります。それは規定すれば建築が一時ストップするというような関係もありましてあいまいな表現になっておるわけであります。そこですでに二十年経過しました現在どうか、今度の法律改正案にも実はその点は昭和二十五年そのままになっておるわけでありまして、それでいいかどうか、私は大いに疑問に思っておるわけであります。と申しますのは、昨年成立いたしました新しい都市計画法、この都市計画法は英国の都市計画法をモデルにしたといわれておるわけでありますが、それは開発について、どんな小さな開発でも一切の許可、開発許可という制度をまねたんだろうと思いますけれども、これは宅地審議会の答申にもそういう小さな開発でも許可というような答申もあったわけでありますけれども、成立いたしました都市計画法は〇・三ヘクタール以下の開発はいわばざるの目で、こぼしておるのであります。ということは都市計画法では規制しない、それではこれは建築基準法規制するか。当時は建築基準法規制に譲るんだということも聞いております。それでは建築基準法でそれが規制できるかどうかといいますと、それは今回の改正案を見ても規制はできないのであります。いま申し上げましたように、別に下水がなくても建築はできる。そこにいろいろ今度の法規によりまして、最悪の場合、こういうものが建ち得るということが、模型もあるようでございますけれども、それは詳細は省略いたしますが、とにかく下水のないところにも建築ができる。それから郊外に行けば敷地の周囲に広い空地があれば、道路がなくてもいいというような、やはり一つのこれは「ざる」になっているわけであります。そういうような状態ではいい市街地の確保はできないというのが、残念ながら私の結論でございます。もちろん、それでは制限をきつくしたらいいじゃないかということも出ますけれども、遺憾ながら現在の道路あるいは下水道の整備の状況では、これはかりに私が建築基準法の再び立案の責任者になりましても、首をかしげざるを得ないということは言えます。言えますけれども、都市計画的な関係で、道路、下水については昭和二十五年以来二十年間そのままである、いささかも進歩していないということを指摘したいのであります。  それからなおついでに申しますと、提案理由には用途地域の純化をはかるということが書いてありますけれども、工業地域に住宅を制限してないのは文明国では日本だけである。もちろん当局に言わしめれば、住居専用地区、これには住宅を制限しております。と申しますのは、住居地域に居住するものについては住居の安寧を保護されておる。ところが、工業地域にやむを得なく居住しておるような国民、市民については住居の安寧が保護されてない。昭和二十五年は今日ほど公害の問題がやかましくなかったのでありますけれども、ここ数年来公害の問題がこれだけ脚光を浴びておるところに、やはり工業地域の中に住宅を依然として無制限に認めようという、こういう法律の行き方には大いに疑問があるわけであります。用途地域の純化ということを看板に掲げた以上は、これはぜひ検討していただきたい。いたずらに不適格な地域ができるだけだという説もありますけれども、とにかく姿勢として工業地域の住居を野放しにしておるということは、 これはエコノミック、アニマルの一つであると言われても、あまり大きな顔で抵抗できない、反駁できないという一つの証拠じゃないかと思います。  第三点は、地方自治の推進でございますけれども、実はほんとう言えば、法律ではもう少し国の義務とかあるいは地方公共団体の義務で行なうことを、きちんとうたうことが大事で、こまかい建築の制限は地方公共団体にまかしたほうがいいというのが、私の考え方であります。たとえば西欧の公衆衛生法、パブリック、ヘルス、アクトというんですが、これには地方公共団体に下水設置の業務を命じておるわけであります。現在下水道法も、公共下水道は地方公共団体がやることになっておりますけれども、いつまでにどういう整備をしなければならないといったような、こういう規定まではない。いま一つの例は、ある場所に建築しまして、下水道の本管から百メートル以内は個人の負担だ。ところが百メートルこえた下水管の敷設は、超過した分は地方公共団体があとで負担するというようなことも書いてあります。そういうむしろ国の義務だとか地方公共団体の義務規定して、詳細な制限はむしろ条例にゆだねたらどうかという考えであります。私が建設省におりましたときに、建築基準法の立案に際して、基準法という名前をつけましたのは、国は一つのスタンダードをつくる、そして現在法律の四十条、四十一条にございますけれども、制限の付加とか緩和はなるべく地方公共団体の条例にゆだねるという考え方を持ったわけであります。これはしかし現在の条文では、建築物の構造、設備、つまりいわゆる単体規定についてだけであります。これはいわゆる都市計画関係事項、たとえば用途地域なんかにつきましても、地方公共団体にもう少し自由を与えたほうがいい。その具体的な例は、日照権の問題が今度新しく五十六条と思いますけれども、取り上げられておる。第一種住居専用地域では、隣地境界に接して建てる場合は、五メートルまでの高さを建てて、あとは一対一・二五の比率で斜線の制限でいくことが考えられてあります。よく知りませんけれども、承りますと東京では、現在それが五メートルが四メートルになっておる。それが今度五メートルになる。こういう問題は何も国できちっときめる必要ない。地方公共団体の、日本のいろいろ都市がありまして、住居都市もある、あるいは工業都市もある、いろいろな都市があるわけでありますから、大都市もあり、中小都市もあり、郊外の都市もいろいろあるわけでありますから、こういう問題はほんとう住民の希望するような住宅地ができることが一番望ましいのでありまして、こういう問題を、たいして科学的根拠もないのでありますから、法律できちっときめてしまうということは、いまの行き方としては好ましくない。かりに基準法律できめましても、緩和したり制限を付加することを認めるようなふうにしていただきたい。  以上が私の申し上げた三点でございます。御質問でもございましたら、お答えしたいと思います。
  18. 大和与一

    委員長大和与一君) ありがとうございました。  次に、日本建築家協会会員の郭参考人
  19. 郭茂林

    参考人(郭茂林君) いま紹介していただきました日本建築家協会の会員で、建築法規の会の幹事をしております。実際の活動としては、七、八年前から中高層建築の実現につとめまして、武藤先生の耐震構造理論とタイアップして霞が関ビルを仕上げてまいりました。それのプランナーであります。初めての中高層ビルでございましたが、すぐれたたくさんの技術者の知能の集積によりまして、めでたく竣工し、その後一年間たちましたが、幸いにして皆さまの好評を得ている現状でございます。その後浜松町の貿易センタービル、これは四十階建てでございますが、それにも企画者として参加し、いま新宿副都心の新しいダイナミックな町づくりに、地主協議会の側の専門部会委員として参加しております。こういうふうに実際に建つ大型の建物の企画設計に参加している立場から、今度の建築基準法改正について考えを述べさせていただくわけでございますが、今度の改正につきましては、私たち設計者の側としては原則的には賛意を表するものでございます。しかし法は生きものであり、今度の改正も必ずしも完ぺきであるとは思いませんので、将来への展望として多少意見を述べさせていただきます。  まず第一に、今度の改正で三つポイントがございますが、執行体制の整備と違反建築対策の推進についてでございます。先ほど来お話がございますが、もちろん法律は守られなければならない、守らない者にはしかるべき処置をとるということが必要でありますが、そのことが今度問題になっているということは、これはひとつの進歩ではあるまいかと考えております。しかし、私たち専門家仲間でも、建築基準法はなかなか難解で読みづらいという定評でございます。もう少し読みやすく親しみやすい、そして守られるような体系に再編成する必要があるのではないかと思います。その一例が、たとえば建築について二重三重の規制があるということです。建物を建てるのですから建築基準法だけを読んでいたら、そうはいかなくて、消防法のものすごい規制があったり、それから病院建築なら厚生省の病院建築規制がある、学校なら文部省の学校建築規制があったりして、非常にあらゆる面にわたって多岐にわたって法の規制がございます。そこらあたりを建築基準法一本にしぼって非常に単純明快にしていただきますと、たいへん守りやすいし非常にうまくいくんじゃないか、そういうふうに考えております。  それから二番目の建築物の防災基準の整備についてでございますが、防災関係については特に消防法のほうで非常に微に入り細に入った規制がございまして、なかなかたいへんでございます。何か防火のための建物を建てるような感がなくはございません。建物の構造の安全性につきまして、大臣に付属した構造審査会というものがありますように、今後ますます高層化、大型化していくプロジェクトに対しては、防災審査会といったようなものがあっていいんじゃないかと思います。いまの規制では非常にあらゆる災害の場合を考えまして、小は木造二階建てのケースから、大はそういうふうに三、四十階のものにまであらゆる場合に、しかもあらゆる事故に対応できるようなこまかい規制が入り乱れてかぶさっております。それはなかなかお金のかかるものでございますが、ほんとうに役に立つものに重点的にお金をかける、ほんとうに役に立つ防災計画を立てるべきだというふうに考えます。防災のディテールを云々するよりか、その建物、あるいはその地区、あるいはそのプロジェクトの防災計画を立てて、その防災計画を審議していくというふうなことがよくはないかと思うのです。こまかいことでございますが、いま消防法で三十一メートルの高い建物には消防自動車が届きませんで、三十一メートルから上はすべて天井から自然に水が出るスプリンクラーという設備を義務づけております。火事になって熱が出れば水が自然に出て火を消すことになっておりますが、もはやそういうふうにスプリンクラー万能の思想は、再検討されなくちゃならないんじゃないかと思います。と申しますのは、これからの建築は完全不燃化、燃えない建物、燃えるとすれば持ち込んだ程度のもので、燃えるというよりはくすぶるという、熱を出すよりは煙の問題である。そういうふうに根底から防災関係について思想的に何か再整理する必要があるんじゃないかというふうに考えております。  最後に、用途の純化と土地の高度利用の促進についての改正でございますけれども、用途地域の再編成によって一般市民にわかりやすい形の地域地区になったことは、たいへんけっこうなことであります。しかし、この地域地区問題は指定の合理性によっていろいろ問題が起きることで、地域の指定にあたっては、民間サイド、先ほど地域住民社会の話がだいぶ出ましたが、そういう民間サイド、特に計画者、開発業者などの意見も広く聞いて慎重にきめていただきたいということでございます。きめ方に問題があるんじゃないかという気がします。  それから、一種、二種の住宅専用地域内に北側斜線の法定化がされておりますが、日照権については一歩前進したような感じでございますが、膨大な人口、この人口を再び都心部に呼び戻そうという、こういった現在、どうしても住宅は高層化にならざるを得ないというときに、北側の斜線がどういう問題を起こすか。これは一にこの地域指定に混乱がないように、そこらあたりに問題があるような気がします。  それから高さ制限にかえて全面的に用途規制に切りかえたことは、たいへんけっこうでございますが、さらに欲を言いますれば、地価の値上がりでだんだん敷地が狭小化していっている、この趨勢を何とかして食いとめる手だてがないものかどうかと考えます。敷地の共同化、大型化は今後の都市問題のさまざまな解決にきわめて重大な利点があります。むしろ小さい敷地に建つということが悪いことであるというぐらいな気持ちできめていくべきではないか。そういう小さい敷地を共同化しなさい、大型化しなさい、そして大きく計画しなさい。そのことによって、共同化した努力に対して行政的、法制的に援助の手を差し伸べてあげましょう、こういうような態度で大いに導いていただかなければならないかと思います。霞が関ビルの例で恐縮でございますが、そこに緑を持ったささやかな広場ができております。それはやはり敷地を共同化したメリットであり、かつその共同化に対して、その地域は特定街区に指定された地域で、容積の割り増しがございまして、そのために生み出された公共の広場でございます。そういったような手法を、どんどんこれから民間の住宅建設のほうに大いに手を差し伸べていただきたい。今年度の民間投資額は約六兆円といわれております。それらの力をそういったような手の差し伸べ方によって大いに社会的に意義あらしめたいと、こう思います。私のあいさつを以上で終わります。
  20. 大和与一

  21. 今洋

    参考人(今洋君) 私の団体は主として二級建築士が会員の大半でございまして、したがいまして、手がけている工事住宅が多く、建築規模にいたしましても、大体中小の建築が多いわけでございます。特に木造建築などは非常に多い。そういう立場から今度の建築基準法改正案そのものについていろいろ検討をしてまいりました。そして若干意見を述べさしていただける機会を与えられましたことを、たいへんうれしく存じている次第であります。  建築基準法のような法律は、それを施行するにあたりましては、どうしても工事を発注する側と、そして工事設計する側と、施工する側と労働者、そういう多くの人たちの協力なり法律の理解がなければ、実際問題としては効果ある運用はできないのではないかと考えています。ところが、最近はそうした建築をめぐって隣人同士が相争う、あるいは刑罰を並べて取り締まらなければならなくなってきた。このことはたいへん不幸なことだと考えています。で、建築基準法が守られなくなってきたことには、いろいろの背景があると思います。しかし、そのいろいろの背景の中でも直接的にはやはり都市計画なり住宅政策なり地価対策、こういうものの政策が十分に連係をもって効果ある政策になっていなかった。こういうことがやはり一つの原因ではないかと思うんです。で、結果的にいろいろの違反建築が出てきた。そらして強力な取り締まり、あるいは罰則適用といった考え方、これがだんだんと広まって、いまや国民の中にも何か中世紀の魔女狩りを行なうような形で非常に大きな問題になってきた。このことは先ほども申しましたように、たいへん不幸なことだったと思います。たいへん精神的な言い方になるかもしれませんが、今日の人口集中の著しい大都市並びにその周辺では、もはや住民は、自分たちの郷土を愛する、あるいは自分たちの町をよくしていこうという一つ考え方に欠けてきている面があるのではないか。マイホーム主義に乗っかって、それを巧みに利用した分譲業者たちのあの手この手に乗せられた善意の人たちが泣く泣く犯している違反が多いことも御承知のことだろうと思います。  それでは具体的に建築基準法改正案の問題点について申し述べたいと思います。まず守れる基準にしようということで、空地地区などを廃止して、用途の純化をはかり、容積率を一般化し、建蔽率を若干緩和したことについては、私たち実務家にとってはたいへんうれしいことだと思います。十分ではないと思いますけれども、まず現状よりは幾らかよくなってきた。このことはたいへんうれしいことだと思うのです。しかし、それを考えてみますと、それは一つのメニューでございまして、いろいろと実際の指定にあたってはまだまだ問題があるようであります。したがいまして、都市計画がきちんとできて、都市計画その他のいろいろな計画と緊密な連係の中で適正に指定がもし行なわれなければ、私たちがいまここで緩和になった喜びは、たちどころにして翌日から苦しみに変わってくるわけでありますから、その点十分実際の実施にあたっては御検討願いたいと思うのであります。  先ほどもお話がありましたように、土地の面積はだんだん狭く切り売りされるようになっております。ところが住宅のほうは、各政党の政策を見ましても、一人一室の住宅をということで、ますます住宅は大きくなろうとしています。土地は狭くなってくる、住宅は大きくなってくる。そこに実は問題点があるわけであります。すでに一般庶民でも、中級サラリーマン以上が住宅を求める場合に、私たちに要求してくることは三DK、ないし3LDKの建築物が標準の形となってきております。そういう住宅の容積を十分に収容し得る土地問題、ここに単なる基準法の問題でなくして、そうした土地問題との関連が非常に強いということが考えられるわけであります。それが法の運用の中で生かされてこないと、実際には違反建築というのはなかなかなくなり得ないのではないか。  また一方、京都だとか奈良だとか、そういう古い都の市街地では、明治、大正時代につくられた建築物が非常に多いわけであります。もうぼつぼつ古くなった住宅を改築しようとしますと、従来の面積よりも、つまり建築基準法が施行される以前に建てられて、その後建蔽率、容積率が課せられているわけでありますから、したがって改築しようとするときには、新しい法規、新しいものさし、新しい容積の中に押え込まなければならない。ところがすでに五十年、六十年、七十年という生活基盤がそこにでき上がっているわけでありますから、なかなか小さくするということは、非常に忍びない問題があります。ですからこういうように建築基準法施行以前に、すでに既存建築物であったもの、そういうものが多くある地域については特にこれらの問題については配慮が望ましいと思います。  次に確認制度でございますが、法の第六条第三項では、受理した日から二十一日以内にその可否を審査して申請者に通知しなければならない、こういうことになっているわけでありますけれども、実際にはなかなか二十一日以内に、だめだとか建ててもよろしいという確認の通知は、実は私ども小さい建築をやっている者にはなかなかいただけないのでございます。そうしますと、建築主のほうはいまアパートに入っている、一日も早く自分の家を建てて入りたい。一カ月おくれれば一カ月分の家賃が出る。したがって一日も早く建ててくれとせかれる。やむを得ず、確認の通知をいただかない前に着工をいたすというのが多くの現状でございます。その場合に監視員が回ってきて、確認がないじゃないか。いや、目下申請中なんだけれどももう二十一日以上たっている。まだ確認がおりないけれども近く確認がおりることを期待してとにかく着工さしていただいた——形式的にはこれは基準法違反ということになってしまうわけであります。そういういろいろな違反にも問題点がある。したがいまして、この建築確認がもっと私たちの仕事に差しつかえないようにスピーディーにスピード・アップされることを望みたいと思います。  衆議院修正案では、第九十三条の二として、確認申請図書の閲覧をさせなければならないというように定められています。先年私どもの会員の中で、東京の大田区でささいなことでいさかいが起こりました。それはどういうことかと申しますと、新築家屋の便所がちょうど隣家の玄関先に出てきた。そしてその距離がわずかに二メートル程度であった。そこで隣家の主人は、多少建築がわかる人とみえまして、布基礎を打った段階で区役所に飛んでいきまして、どうもあそこに便所ができるそうだ、ひとつ確認の図書を見せてほしい——おそらく区役所では見せたのだと思います、それが便所だということを知って、猛烈な勢いでかけ込んで争いになりました。便所をどける、どけないという問題だけならそれでもいいんですけれども、便所をどけることにして、隣りの主人は新築の家屋の建築主に対して、ここに居間があるのはおかしいじゃないか、夫婦の寝室はここにあったのではぐあいが悪い。どうも、おれのところの寝室とおまえさんのところの寝室は一メートル半ほどしか離れていないので、窓をあければのぞかれるじゃないか。これは困るからひとつプラン全体をやり直せ、そんなことがある、ないということで、おれは区役所に行っておまえさんのところの建築を調べた。こういうことでいさかいがあって、なぐり合いまで始まってお巡りさんが来てとにかくおさまった、こういうような事件が起こりました。ですから、しかし閲覧ということについて、利害関係者にしか見せないということはなかなかむずかしいにしても、不特定多数の人にまでこれを見せるということになると問題です。まあ、法文を見ますと、詳細は政令あるいは省令できめるのだということになっておりますから、よもや、だれにでも見せるということにはならないと思いますが、そういう心配が私どもにはございます。  最近の火災では新建材がいろいろの問題になっておりまして、それは新聞紙上でも正しく伝えられていない面があります。一般に難燃材料、準不燃材料は煙を多く出すからあぶないのだということになっておりますが、したがって、それによって死亡すると伝えられます。それ以来私どもの立場から考えれば、むしろ可燃材を内装材に使うよりは難燃材、準不燃材を内装材に使うほうが延焼を防ぐ意味においてもいいと考えるわけでありますが、そういうような伝えられ方をしておるために、最近では難燃材、準不燃材に対する一般のお客さんの不安というものが、非常に大きくなっております。したがって、こういう状態を放置しておきますと、むしろ難燃材、準不燃材は人間が死ぬ材料だというような誤った考え方が固定化されていくおそれがあります。したがいまして、これらの事故の報道等についても十分配慮をされ、またその材料がはたして認定時においての性能がその後ずっと維持されておるかどうか。つまり大臣認定後における適時の検査、査察等についても十分の施策が望ましいと思います。  最後に、問題の違反是正のいろいろな措置について触れてまいりたいと思います。特に衆議院修正においては九条、九条の二、九条の三あるいは十二条の改正等についていろいろと手が加えられております。考え方から申しますと、違反建築物の物件を取り締まるということよりも、むしろ人間を取り締まるということに非常に重点があるように思います。もちろん、私は違反建築を取り締まるなという意味で申し上げておるのではなく、先ほど来幾つかの例をあげまして違反の起こってくる事例について申し述べたわけでありますが、十二条改正の質問権であります。その可否はともかくとして、先ほど御意見の中にもありましたように、国民の基本権として認められ、あるいは保障されておる黙秘権との関係でちょっと疑問がありまして、その点についてこういう条文をおつくりになった段階で十分法制局等との調整は済まれておると思いますけれども、まあ私たちの立場から見ると、そこに一つの疑点が生じています。黙秘とまではいかなくても、知らないと答えた場合、それは答えになるのかどうかということも心配があります。特に中小工事になりますと、作業所に工務店の屋号あるいは名称を掲げるという場合も少ないわけでありますから——大きな工事になりますと看板を掲げ、株式会社何とか組の施工だ、設計事務所はどこだと大きな字で書いてございますから一目りょう然でありますが、住宅などになりますと、そういうものもほとんど出ておりません。したがいまして、このような規定ができるのだと思いますけれども、実際に現場で働く労働者にしてみれば、建築主がだれであるのか、あるいは元請人がだれであるのか、そのことは知らずに、ほんとうに知らないで現場にやってくることが非常に多いわけであります。たとえばかわら屋さんが、板金屋さんが、左官屋さんが親方に、きょうはあそこに行ってあそこの壁を十坪ほど塗ってこい、床を三坪ほど張ってこい、こら言われて道具をかついでやってくる。建築主がだれであるのか、元請人がだれがやっておるのか、そんなことは知らない。そこに監視員が来ます。この建築物はだれが建築主か、元請人はだれだ、おまえ答えないと一万円の罰金だぞ、こういうようにおどかされますと、労働者は働く意欲を失ってしまいます。たださえ労働力不足に悩んでおる建築業界において、そんなうるさいことを言われるような現場でおれたちは働きたくない、こういうことになってしまうと、ますます労働力不足ということが深刻になってくるわけでありますから、この点についても十分の御配慮が望ましいと思うのであります。監視員の制度につきましては、先ほど申しましたように、建築基準法の運営にあたっては、民間の協力が必要であることは冒頭に述べました。昭和四十二年十一月十五日付で建設事務次官より私どもの団体にも、「違反建築物対策の推進強化について」という御依頼の文書をいただきました。その中に、今後違反建築をおかしたような設計者、工事管理者、建設業者はすべてそれぞれの法の定めるところに従ってびしびしと免許あるいは登録の取り消し、あるいは業務停止というようなことをやるので、そんなことにならないように各団体でも会員に周知徹底させて万全を期してほしい、という内容の文書であります。私たちもそれは必要なことであるということで、会員に周知徹底させるようにしております。つまりそういうようにそれぞれが法の執行にあたって責任を持つという立場でいけば、民間の協力が必要であり、今後、このような建築監視員といったようなものよりもむしろ、建築士なりそういうものの活用をここのところではかるべきではないか。十二条第一項、第二項の改正ではすでに検査確認についての建築士制度を利用できるように改正されているわけであります。つまり取り締まり強化よりも、むしろ民間の協力を仰ぐという体制が望ましい。  時間がないようでありますからちょっとはしょらしていただきますが、これだけは申し上げたいと思いますが、最後に先ほど来地方自治あるいは地域住民参加の問題が出ておりますが、具体的には私は建築基準法第四章で定める建築協定、この中の制度が現在の建築基準法の中にりっぱにあるわけでありますから、なぜこれが利用されていないのだろうか。むしろ行政を進めるほうの側では、これを利用しようというお気持ちがないのではないか。実際問題としてなかなか困難だとは思いますが、こうしたものを利用しながら、ほんとうに地域住民あるいは市民が参加する中でそういうものが実施されていく、ということが望ましいと思います。また実際問題としては、建築を進めていく場合に非常に好ましいことではございませんけれども、たいへん私も悩んでいる問題がございます。それは鬼門、家相というものが今日でもなお累々と生きております。プランニングする場合、家相が悪い、鬼門に当たる、いろいろなことで注文がつけられ、それを拒否することはなかなか困難である。そういうものが違反につながっていくという事実もあるわけでありますから、ぜひ今後の審議の中で御検討され、よりよい成果を納められるようにお願いをいたしたいと思います。
  22. 大和与一

    委員長大和与一君) ありがとうございました。  次に、財団法人日本建センター常務理事村井さんお願いします。
  23. 村井進

    参考人(村井進君) 村井でございます。私も前は内藤さんと一緒にこの基準法の制定の際に参画、お手伝いをいたしまして、現在日本建築センターというところにいます。ここには建築の技術者のほかに建築関係の材料のメーカーその他しろうとの方もたくさんおいでになりまして、建築関係の知識を交換すると申しますか、御相談に応じ、御意見を伺うという機関ですが、そこでずっと仕事をしておりまして、建築基準法に関しまするいろいろな御意見を承っておるわけであります。そういったものをもとにいたしまして、私の持っております意見を簡単に述べさしていただきたいと思います。  今度の改正案を拝見いたしまして感ぜられますことは、初め一昨年あたり建築基準法の根本的改正をするんだという声があったのでありますが、でき上がってみますと、それほど根本的な改正ではなく、まだまだ問題として考えなければならないものがたくさん残っているように考えます。ただ、法をつくります場合、私どもが経験いたしておりますが、ある一つの方向がありましても、それに至ります具体的な施策というものが必要なんでございます。この施策につきましては、いろんな意見が出まして、したがいまして、この法律改正にあたりまして、建設省のほうから草案を出されましたときから、現在まで各方面のいろいろな意見がございまして、まとまらないままにございます。  それからさしあたって必要なものだけをお取り上げになっておきめになるのじゃないかというふうに思います。したがいまして、どうか今後、この基準法につきまして、制定当時からもうすでに二十年近い年を経ているわけでございます。大いに改正点はごめんどうではございましょうが、改正を根本的にやっていただきたいというふうに考えておるものでございます。  まず、今後の改正案につきまして、提案理由の御説明がございましたのでそれの順序で申し上げたいと思います。すでにほかの参考人からいろいろ御意見が出ておりますので、できるだけ重複を避けて申し上げたいと思います。  建築物の用途の細分化というものにつきましては、私は賛成でございます。ただ内藤さんおっしゃいましたように、都市計画的なものにつきましては全国画一でなければならぬという理由はあると思います。また、そういったような運用の幅を認めるということも必要なんじゃないかというふうに考えて、この改正案に賛成するものであります。ただ、建築基準法という法律のたてまえから、建築物の用途だけにしか制限がかからないわけでございます。都市計画法上の用途地域といいますのは、やはり土地の利用という問題ではないかと思います。そう考えてみますと、建築物ではない工作物または工作物のない置き場——ごみを置くというようなものは置き場というのかどうか知りませんが、そういったような土地の使い方、そういったものについても規制が行なわれませんと、建築物だけの規制ではもの足りなくなってくるような気になってくるのではないか、というふうな気がいたします。たとえば普通の自動車の置き場でございますと、われわれの家の周辺にもたくさんございますが、あれがトラックの置き場になりますと、非常にやかましいことになってまいります。そういうところには必ず事務所があるではないかというような御意見がございますが、たまたまその事務所が道路の向こう側にございますと、現在の基準法のワク内から申しますと、敷地単位で規制が行なわれておりますので、自動車の置き場に屋根がない限り制限ができないというようなことになると思います。やはり土地利用という面からも、この辺はなお詰めておきませんと不満が出てくるのではないかというように考えます。  今度の改正案の中におきまして、特に住居地域等につきまして一部建蔽率の緩和の措置がとられました。住宅環境の整備という面からのみ見ますと、一応は残念なことだと思うのであります。しかし、現在の住宅の事情を考えますと、わずか三十になったかならぬという人が自分で自分の家を持たなければ適当な住居が求められない、というような状況でございまして、要するに、分不相応なことをしようとしているわけでございます。私どもが若いころの、三月分の敷金を用意いたしまして、広さも手ごろ、家賃も手ごろといったようなものをさがせるような形ではない。どういうわけでこういうふうになってしまったかという点については、いろいろあると思いますが、こういうふうに敷地が狭くなってしまった時代では、違反が出てまいりましても、ある意味ではやむを得ないというふうに考えております。この違反をたくさんつくりまして法をやっていこうということは、運用としてはできないわけでございますので、守り得る法律に近いという建設省のお考えにはやむを得ないものと考えて賛成をせざるを得ないと思います。  また、日照、通風等のための北側斜線の制度等が設けられましたが、非常にむずかしい問題でございまして、いろいろ現在のような都市の形が変わってまいりますさなかにおきましては、非常に問題があるのじゃないかと思います。結局やはり、こういう問題は現在、基準法がたてまえにしております一つ一つの敷地単位で片づけていこうという行き方にもう行き詰まりがきているのじゃないか、というふうに考えておるのでございます。私は、この一つの近隣区域のようなものを考えまして、その中で敷地の制限、道路の配置等はもちろんのことでありますが、建物と建物との関連というものをできるだけ計画的に育てあげていくという努力がなければ、一つ一つの敷地を単位にして、この中で何とかやっていくという考え方では、もう行き詰まってくると思います。  今度の新都市計画法によりますと、開発には全部許可が要るということになっておるのでありますが、私も役人でございましたことから申しますと申しにくいことでございますが、私も現在の日本都市の開発のために、持ってこい、許可してやるというやり方では、とてもできないんじゃないか。むしろ、公共団体の側から、この辺はこういう形で開発していきたい、こういう計画で開発していきたいのだ、皆さんの御意見はどうかというようなことで訴えていくことをやらない限りだめだと思います。またそういう訴えに対して賛成して立ち上がっていく、協力しつつ、一地区についてはいろいろな形で援助をするということが必要なんではなかろうかと思います。  先ほど今さんから建築協定をもっと活用しろというようなお話がございました。非常にかたっ苦しい条件のもとでなければ、この建築協定が成立しない。たしか日本でも一つしかできていないのじゃないかと思います。そういう制度でなくて、もっと活用しやすいように改正をしていただければいいんじゃないかというふうに思います。別に私は外国がいいとか悪いとかいうことを申し上げるわけではございませんが、参考までに申し上げますと、ロンドンの旧市街地——十七世紀ごろの市街地から後にできましたところはほとんど全部開発されて、その中に家が建っております。私は数年前に向こうに参りました。皆さんもおいでになったかと思いますが、地図を買って驚いたのでありますが、市街地のまわりは全部、うまいか、へたかは別にいたしまして、計画的に開発された地区でございます。都市計画道路だけがあって、その間を宅地として開発するようなことが行なわれておらないことは非常な違いがございますことを目にいたしまして、驚いたのでございますが、おそらくロンドンでは宅地造成された、計画的に開発された土地以外は宅地ではない、したがって家は建ててはいけないんだという観念であるのじゃないかと思うのでございます。日本の実情に合わせましてそういうものをどういうふうに育てていくかということは問題であろうと思いますが、大いにそういうことの促進のために助成の制度等をお考え願いたいと考えております。  次に、建築物の防災基準につきまして一言申し上げたいと思います。  今度改正されます、まことに理由のある改正でございまして、しかし問題は、これからできるものだけの規制でいいんだろうかということであります。私は、住宅その他のものは除きまして、少なくとも病院であるとか旅館であるとか学校であるとか、いわゆる不特定多数の用に供しまする建築物につきましては、一定の期間を定めましても、これをいまの規定に合わせるように命じやらせるべきではないかと思うのであります。自分の家はすみずみまでも知っておりましょうが、宿屋に泊ります人は、この宿屋を知っているわけではないわけでございます。そういったようなことで、新しいものだけがよくて古いものは依然としてそれでいいんだということではなくて、やはり不特定多数の用に供する、特に営業の用に供するといったようなものにつきましては、そういうことをやらしていただきたい。これは現在の法規にも根拠規定があると思います。それを運用するかしないかということであろうと思います。ただその際に必要なことは、何にもしないで行政命令だけでやれるというものではございません。資金の世話をするといったようなこと、あるいは直し方の指導をするというようなことも必要だと思います。そういったようなことをして不特定多数の用に供する既存建築物についても、できるだけこの新しい基準に適合するようにごあっせんを願いたいというふうに考えるのであります。  次に、ここに先ほど今さんからもお話がございました建築材料というものにつきまして一言申し上げることをお許し願いたいと思います。建築材料といわゆる材料、建築材料の性能というのはいろいろなものが求められておりまして、基準法上では主として強度の問題、それから耐火性の問題というようなものがあります。今回JIS、JASの規定を御採用になりましたが、JIS、JASの防火性能あるいは強度の性能といったようなものが中心の性能でございます。今後材料がだんだん進んでまいりまして新しい材料が出てまいりますと、ある性能には非常にすぐれていても、ある性能には劣っているというようなものが出ることは必然のことだろうと思います。昔のことを申し上げますが、昔、防火木材というのがございました。戦争中防火改修をやったわけでございますが、防火木材は確かに発煙しては燃えません。ただし、この防火木材にくぎを打ちつけるとくぎがみんな腐ってしまう、すぐはがれてしまう、これでは建築材料として使えないというような問題がたくさんございます。特に内装材におきましては、防火だけでなくて衝撃についてはどうか、あるいは傷がつきやすいかどうか、吸湿性があるかどうか、断熱性があるかどうかといったような材料の性能が必要でございます。そういう一つの材料につきますと、ある性能については非常によろしい、ある性能は少し劣る、この性能はゼロである、そういうようなことがあるわけでございまして、こういうような性能の評定というようなことをぜひやっていただきたい。フランスのCSTBでは、そういうことをやってそうして証明書を出すというようなことをいたしております。日本でも今後材料につきましては、そういうような評定をやっていただいてそれを一般に周知させるというようなお世話を国としてやっていただきたいと考えておるのでございます。  それから最後に執行体制につきましていろいろな御意見がございました。私どもも現に執行いたしました経験があります。今度の改正によりまして、いよいよ建築主事の仕事をしなければならぬ点が非常に多くなってまいります。地方の行政に携わります人間は非常に少ない、特に地方におきましてはいい建築屋、少なくとも指導のできる建築屋というのは非常に少ないのであります。今後多くの人を要するようになると思うのでありますが、この技術者を人員を充員するということは、技術者の質の問題から、また財政の面からいっても容易なことではないのじゃないかというふうに考えます。それにつきまして一つの案みたいなものでおかしいと思いますが、恐縮でございますが、民間の建築屋をもっと活用していただいたらどうか。特に法規関係におきましては建築主事の資格というのを建設大臣が審査いたしまして、資格ありということできめているわけでございます。その人たちは建築行政経験を持っておるわけでございます。これももうそういう制度をつくりましてから十八年か九年を経過しておりますので、民間においている人が相当あるんじゃないか、こういう人をまあ第一次に使えるんじゃないか。さらに、設計関係につきましては、民間の建築士をもっと活用していく制度を考えるべきじゃないかというふうに考える次第でございます。特に現場検査をしない建築基準法の施行というのは問題外でございます。現場検査は非常な手間を要します。そういったような点にでも大いに活用して、行政の円満な進展をはかっていただきたいと思います。  最後に、先生方にひとつ御配慮願いたいと思うのでありますが、この案の附則を拝見いたしますと、まあいろんな事情があったと思いますが、この法は、改正法が成立いたしますと、公布後施行まで一年間の余裕がございます。ただ、地域地区につきましては、その後さらに三年間の余裕があるわけであります。まあ新たになりますところでは、それくらいの時間がなければできないのかもしれませんが、東京、大阪のような大都市で権利関係が非常にふくそういたしまして、特に先ほど今さんからも御発言になりましたように、今度の緩和というのが発表されまして、それを待ちに待ってるという人が相当あるという状況におきまして、この限度のきりきり一ぱい——公布になりましてから合計四年でございます。こんな長い間待たされたんでは、とても法の施行、執行はできないんじゃないか。もっとこの点につきましては、できるならば原則としては法施行と同時に地域が変わっていくというような御努力を願いたい。まあ、その辺のところにつきまして特段の御配慮を仰ぎたい。  まあ、私といたしましては、今度の改正がもうこれですべてではないという前提に立ちまして、今回の改正は一刻も早く成立することを望むものでございます。
  24. 大和与一

    委員長大和与一君) ありがとうございました。  次に、東京都首都整備局都市計画第一部長脇坂参考人
  25. 脇坂忠良

    参考人(脇坂忠良君) ただいま御紹介いただきました東京都の脇坂でございます。都の都市計画行政の担当者といたしまして、主として集団規定関係について意見を述べさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、東京の現状は、公害であるとか、あるいは交通麻痺、住宅難あるいは日照権の問題等、過密の弊害に悩まされております。この根本原因は、もちろん急激な人口の都市集中と、それに対しまして公共施設の整備が追いついていけないというふうな点もございますが、同時に建築行政並びに都市計画行政執行体制の不備、あるいは急激な社会変動に対しまして、法の体系の整備がおくれがちであるというようなことも一因になっていると考えられます。したがいまして、昨年御審議いただきました都市計画法改正とともに、今回の建築基準法改正は、東京都の現状を考えますと、むしろおそきに失したような感すらいたしますが、一日も早く成立されんことを期待いたします。  なお、今回の改正案のおもなる点につきまして、意見を申し上げたいと思います。  第一に用途地域の問題でございますが、これの基本地域が、従来の住居、商業、準工業、工業という四つの地域から細分されまして、八つの地域に分けられましたが、これは東京都におきましてはすでにその細分の必要を考えまして、今回新たに制定されました第二種住居専用地域を除きましては、住居専用地区あるいは工業専用地区、それから特別工業地区、小売り店舗地区というような、特別用途地区の制度によりまして、すでに現在この法に提案されました地域の内容に近いものを実施いたしております。したがいまして、今回大きな影響はないものと考えますが、一般の方々にも非常にわかりやすくなりまして、非常にすっきりした形に整理されますので、これは行政指導上非常に望ましいことと考えております。  次に建蔽率の件でございますが、この件は、昭和二十五年に建築基準法が参議院で審議されました際に、旧市街地建築物法で商業地域八割、住居地域では六割という制限であったわけでありますが、それが住居地域で三十平米を引いた六割、商業地域では七割というふうに非常に強化されたわけであります。この規制は、当時の東京都の実情といたしましても、すでに宅地が相当細分化されておりまして、この規定が非常に実施が困難であるということで、当時東京都の建築局長から反対の意見書を提出したことを記憶いたしております。その後、準防火地域の指定による緩和措置その他によりまして、一部次第に緩和されてまいりましたが、基準法の制定当時よりもさらに宅地の細分化の傾向が強い現在、この改正は非常に実情に即した改正であると考えております。まあ細分化されましたといいますか、ごく狭い敷地にわずかな空地を無理やりとるよりも、むしろ都市計画上はさらに重要な要素であるところの建築物の容積規定を全面的に採用されたということは、非常に大きな前進と考えております。  次に、第三に日照の問題でありますが、近年、東京都では、高層マンションの建設が急増いたしておりまして、毎年飛躍的にふえておるわけでございます。昭和四十三年には都内に約四百棟以上のマンションが建設されております。これらは、低層住宅地にこれらの高層建築が混在いたしますと、どうしても日照であるとかあるいは見おろしの問題等が起こってまいります。非常にそういう問題が起こりかける状況にありましたので、東京都ではいち早く住居専用地区及び住居地域の一部につきまして高度地区を指定いたしまして、建築物の高さ並びに北側の斜線の規制をすでに行なっております。今回の改正で包括的に用途地域の中に組み込まれましたことはたいへんけっこうなことであると思います。ただ、都の実情から考えますと、高さの最高を十メートルに制限したいわゆる低層住宅地においては、この問題はほとんどございませんが、中高層の建築物が建てられるような地区におきましては、まだ相当日照の問題が起こっております。で、今後このような北側斜線の規制が設けられましたが、さらに都といたしましては、都の実情に応じて、新法の第五十八条の高度地区の指定によりまして、さらに実効をあげるように検討いたしたいと考えております。  第四は、郊外地が非常にスプロール現象が起こっておりますが、それと同時に既成市街地の中におきまして道路であるとか公園等の都市の基盤の施設の整備が整わないうちに、または従来非常に木造の低層市街地のための敷地割りのままで非常に道路も狭いというような場所に、小規模な事務所であるとかあるいは商店のビル、あるいはマンション等が小さな敷地のままで高層化が進行していることでございます。これらはいわゆる日照の問題を引き起こします大きな原因になっておりますし、将来再開発いたします場合のガンになると考えます。これらを防ぐためには、根本的には市街地のまとまった再開発に期待しなければならないわけであります。したがって、再開発事業の促進をはかるための助成措置とともに、建築規制立場からも誘導措置が必要かと思います。このため、この改正案では、良好な総合計画による場合には、必ずしも一般的な基準によらなくてもいいというメリットが与えられておりますことは、非常に合理的であると感じておりますが、一方、道路、下水その他の未整備の敷地では一般基準よりも相当にきつい制限を加えるというようなやり方で、健全な町づくりを誘導すべきではないかとも考えられます。したがいまして、この容積の問題でございますが、これは容積は一応容積率の指定方針の問題ともからんでまいりますけれども、なお狭い道路に面する建築物の容積規制については、従来の十分の六という規定よりもさらに強化するというようなことも一案かと考えております。  最後に、建築基準法という規制法の限界の問題でございます。これは周辺地区のスプロールの問題にしましても、あるいは日照権の問題あるいは公害対策の問題にいたしましても、建築基準法に定める最低限の規制だけでは、りっぱな町づくりというものは期待できないのではないかと考えます。もちろん、最低限の条件を守るための規制の必要性を否定するものではございませんけれども、そういった規制と同時に、積極的な開発事業並びに税制面及び金融面からの誘導策をあわせ行なわなければ、東京のようにすでに深刻化いたしました東京の町づくりは、大都市都市づくりはできないのではないかと考えます。たとえばスプロールの問題にいたしましても、根本的には地価と——土地の値段と、国民の所得がアンバランスであるというようなことも、大きな原因かと考えますが、これらをただ単に規制を強化することによりまして解決するということには、限界があると思います。もちろん道路でありますとか、排水、建蔽率などの最低限の規制は必要でございますが、それと同時に、そういったスプロールの予想されます地域に対する区画整理であるとか、一団地の住宅施設というような開発事業を積極的に実施して計画的な施策を講ずることが、よりよい施策と考えます。  今回の改正案は、もちろん都市の環境を守る最低基準として必要なものでございますし、一日も早く公布していただきたいと存じますが、同時に、根本的な町づくりのための開発事業に対して、国のさらに大幅な財政措置の御援助をお願い申し上げたいと思います。それと同時に、健全な町づくりのために税制面あるいは金融面からの誘導措置を積極的に進めるよう、御検討をお願いいたしまして私の意見を終わります。
  26. 大和与一

    委員長大和与一君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見開陳はすべて終わりました。  これから質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  27. 松永忠二

    ○松永忠二君 ちょっと内藤さんと村井さんにお伺いしたいと思います。  内藤さんには、法の執行のお話がありまして、その告発の件数が千件に対して一だと、三十四件しかないというお話が出ておりましたね。私たちも九条の各項目を読んでみると、相当現在の法律でも執行をきびしくやっていくということによって違反建築を是正をしていくことができるのではないか、というようなことを感ずるわけであります。そこで、これについてはいろいろ各参考人皆さんから、政策的な背景というものが伴わないために自然無理が出てきて、そうして違反せざるを得ない状況もまた他面にあるというお話も、もちろんわかるわけでありますけれども、特にここで言う違反建築に対する措置としての十分できなかった理由というのは、どこに原因があるのか。つまり、ここでも今度出てきますような公示であるとかあるいは監視員の制度であるとか、あるいは二十五万以上の都市に今度は地方でそういう建築主事を置かせるとか、そういう面の執行体制の不備ということももちろんあったと思うのですが、そのほかに、あなたのお考えになっているいわゆる第九条の執行が十分でなかった原因はどこにあったのか、ひとつ内藤さんのほうからお話をいただきたいと思います。  村井さんについては、お話しの面で私は非常に参考になる面がなかなかあるわけでありますが、その中で、特に用途地域について、細分化をしてきたことは非常にけっこうだけれども、建築基準法における用途地域と都市計画などに伴う用途地域とは区別をすべきではないか、こういうお話があったわけですね。これは具体的にたとえばお考えになっている点があれば、それを少しこういうふうに分けたらどうかというような御意見等、分ければ非常に適切であるというような御意見があれば、この点についてひとつお聞かせをいただきたい、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  28. 内藤亮一

    参考人(内藤亮一君) 第九条で違反建築措置の規定もあるのだけれども、どうしていままで告発なんかが少なかったか、どんな理由かと、どう考えるかというお話でありますが、一つは、これはかつて市街地建築物法の時代は警察権等をバックにしていた。建築基準法からの、その前でもそうですが、警察権を離れて取り締まっておるのは建築技術者である。そこで明らかにある違反建築が見つかったと、だれが建築主かということを調べるのに、これは普通もうかかり切っても三日や四日かかるのです。現場へ行って大工さんがやっていて、だれに頼まれた、親方に頼まれたと——もう結局捜査権がありませんからね。建築主事には警察権も捜査権もないからわからないのですよ。これを苦心惨たんして……。私も約十カ年近く横浜市の建築局長として施行に当たっていたのです。主事になぜ告発しないのかと言われましても、相手がだれか一生懸命調べてもよくわからないのだと、そこでやっとどうも何町何番地の何がしが建築主だということがわかってきたと、もう工事中止命令は出すわけですね。ところが所在不明で郵便が帰ってくるというようなことなんです。もう私どもいかに主事を叱咤激励しても戦意を喪失するというか、労多くして功少なしといったような面が——全部じゃありませんよ、全部じゃありませんがそういう面があるのです。第一やっと見つけて工事中止命令出すと、工事中止しない。今度は告発ですね。告発も私が横浜市の建築局長しておりましたときに年に二、三回しかしないのです。もっとやれと言われましても、今度また警察へ行っていろいろ手続するということも、主事としては余分な仕事のように考えてやらない。かりにやっても、検察当局で不起訴、不起訴処分となる。かりに起訴されても罰金が五万円とか十万円、こういう程度ではもう建築主事だけいかに悪戦苦闘しても、その成果は少ない。だから、もうこれは各府県を聞きましても、大体建築主事はもう、これは言い過ぎかもしれませんけれども、私の受け取った感じでは疲れ果てておるというような、極端に言えば投げやりになっておると、これがもうざる法だざる法だと言われて最近まできておるといりようなことです。そこでかりに罰金でも三万円、たとえばこの工事で建て売りやってもうければ百万円すぐもうかると、それで三万円くらいのことは、悪質な業者にはたいして苦痛でも何でもないのです。これを一ぺん工事中止命令を出すと、きかなければ告発する、それによって三万円の罰金だと刑が確定して。また、一週間待ったって工事中止をしない、もう一ぺん工事中止命令を出す、その命令にも従わない、今度それに対して告発する。私も横浜では地検の次席検事と一事不再理で一つ違反建築に対して何回もけんかするわけにいかないけれども、工事中止命令を出した。これに対して従わなかったということに対して一週間ごとに出す、極端に言えば毎日出すと、三日ごとに出すと、これに対して罰金取れるのじゃないかというような激励を検事から受けたことがあるのであります。いずれにいたしましても、きわめて労多くして功少なし、だからこれをもうだれが違反建築だということを不明のままに告発をする新しい方法も考えなければならぬ。それでこれは確かに法律の不備という点もあるのです。第一、第一線の主事ももら少しこれについて責任持ってやらなければいかぬと私は思うのですよ。しかしまあ、建築主事を代表する現在各府県の担当課長、部長に言わしむれば、いろいろ理由はあると思います。私が松永先生の御質問によれば一応そういうふうに感じております。見ております。
  29. 村井進

    参考人(村井進君) お答え申し上げたいと存じます。新しい都市計画法の第九条では「住居地域は、主として住居の環境を保護するため定める地域とする。」、そういう書き方をいたしております。住居環境を保護するための地域である。で、第十条におきましては「地域地区内における建築物その他の工作物に関する制限については、この法律に特に定めるもののほか、別に法律で定める。」と、こういうことになっております。建築基準法は御承知のように建築物規制ができるということになっておりまして、したがいまして、この法律におきましても、これこれの地域においては別表の建築物以外の建築をしてはならない、そういうようなことで建築物をつかまえている。ところが、住居の環境を維持してまいりますものは、建築物だけではない。たとえは工作物で——かってございましたが、セメントのミキサー、レディメードのコンクリートをつくりますプラントが置かれている、建物が何にもないという場合に、あれをがらがらやられますと、これは住居の環境を乱す。これが工事の臨時的なものでございますればかまいませんが、プラントとしてそこに当分の間置かれているという例もございます。それからアスファルトを煮て固めるといったような作業場があったりする。先ほどちょっと申し上げましたが、そういうものを置いておく、ドラムかんをそのままにして置いておくといったような使い方をしている。これは住居の環境を保護するためという意味で、土地の利用について一つの制限をするということも考えられるのじゃないか。そうしますと、建築物につきましては、この基準法で相当書かれてございますが、工作物につきましては別に法律をおつくり願って、あわせて住居の環境を保護するための立法をお願い申し上げるべきではないかという意見でございます。特に工作物だけではまだ落ちているものがある。工作物でもないというようなものもあるということを申し上げたような次第でございます。
  30. 田中一

    田中一君 内藤君に先に伺いますが、いま、地方自治体に相当こまかい問題はまかしてくださいと、これは原則的には賛成です。しかしたとえば一つの例をとると、東京の条例と隣の川崎の条例とは似て非なるものがあるのです、解釈で。したがって、あなたスタンダードということを言っていたけれども、それだけはきめなければならぬ。えてして、今度二十五万という制限を緩和した、また二十五万以下の都市においても建築主事を持たせようという考え方に立つと、訓練ができません。したがって政治的配慮が、地域地域の市民のいろいろな要求で基準法の解釈がまちまちになるおそれが多分にある。現在でもあるのです。これはむろん条例という形でこれがきまる。この条例の中でも地域差、この地域差は認めます。認めますけれども、根本の考え方を裏返しにするようなものもあるのです。これが一つです、条例で。もう一つ、内規的な解釈があるのです。まだひどいのは、伝家の宝刀的に、内規というもの以外に解釈というものをまちまちに建築主事が持っているという例もある。これは内藤君だって横浜にだいぶ長くおったのだから、また指導課長時代にもほうぼう歩いたと思うのです。こういうものが全国的に何百となくあるということになると、これは一体どうなるのかということですね。こいつはある程度まで基準をきめて、その条例なりあるいは解釈による指導なりといもうのの範囲を、やはりどこかでチェックしなければならぬと思うのです。そういう点がどうしても必要だということを実態論として考えてみますならば、その点はどう思いますか。
  31. 内藤亮一

    参考人(内藤亮一君) 確かにもし地方公共団体にまかせれば不統一のことも起こると思うのです。それでどちらがいいかと、中央集権的にしてとにかく地方自治を極端にいえば圧殺する、それも弊害がある。
  32. 田中一

    田中一君 それは極端だよ。
  33. 内藤亮一

    参考人(内藤亮一君) いや、だから、圧殺すれば弊害もある。そこで地方自治にまかせれば不統一なことも起こる、どちらをとるべきか。私は若干弊害があっても、まず地方自治にまかせなければ日本建築行政は進歩しない。弊害があるということは私も認めます。ということは、アメリカは各市でみんなそれぞれの自分の適当だと思う建築法規を持っているわけですね。用途地域制限も持っているわけです。しかし、プレハブなんかの大量生産の住宅をつくると、ある市へもっていってはそれはオーケーになるが、隣の市へもっていくとだめだというような弊害も起こっているわけです。だから、アメリカの連邦政府は何とかこれを統一しよう、政府の統一する建築法規をつくろうとしているのです。しているけれども、しかしマイナス面もある。地方自治をやはり育てる——圧殺ということばは取り消しますけれども、育てるという意味で弊害があるのですね。連邦政府、アメリカのあの広いところで一本の法律でやることは弊害がある。日本はアメリカほど広くないから中央集権的でいままでたいして地方も文句を言わずにきておりますけれども、しかし本来言えば、私が先生にお願いしたいのは、ほんとうは下水のことなんかでも道路のことなんかでも、都市計画法ができて、いかにも新都市計画法でりっぱな都市ができるように考えられていますけれども、私はあの法律だけで東京の都市がいい都市になる、あるいは地方の都市がいい都市になるとは思いません。ということは肝心の道路と下水のことだけでもやはりあいまいに置かれているのですよ。国の責任がない、地方の責任もないのです。そうして住民に対して開発についてのいろいろ規制をする。建築基準法ももちろん住民規制をするのはいい。いいけれども、大事なそういう点が抜けている。だから、地方公共団体や国は、そういう点について力を入れるべきだ。こまかい隣との間をどれだけあけてどういう傾斜なんということは、やはり地方の住民にまかせるべきだと思います。
  34. 田中一

    田中一君 条例をつくって、それで公示してやるならば、まあ条例をつくるのは少なくとも本省が他の地区をもいろいろ勘案しながら、これが妥当だと思えば条例を、認めろという制度は自治法にはないけれども、そのぐらいのことはしなければいかぬのです。だけれども、横浜市だって、君がおった時分に、建築主事の考え方なんかも変わるでしょう。あるいは課長の考え方、係長の考え方も変わるのですよ。強硬にそれを主張するわけですね。条例があるかというと条例なんかないのですよ、解釈なんですよ、行政指導なんです。こういう面にまでくるとこれは逸脱でしょう。だから、すべてが条例によるということになるならば、条例集というものを、これはまたたくさん、何百というところから、条例集がしょっちゅう変わったのではかないませんが、そういうものが公示される。どこかの特殊な出版社で建築条例集というやつを出して、いつもそれが市販されているということになるならばまだいいのです。そうではないのですよ。それで条例なんというものは、おのおの地域の多少の抵抗があればすぐ変えたり何かする。いまの東京あたりでもそうです。そういうことでは困る。だから、これは自治法の精神から見てもいろいろ問題があるの思うのですが、そういう点は、私はやはり全国の統一したところのものがあって、地域差というものを認めるという程度のものでなくちゃ困ると思うのですよ。それからいま下水だ何だと言っておりますけれども、この問題は当然問題ですよ。建築物法に戻れという思想ならば別ですが、今日市街地建築物法ではなくて建築基準法というもの、都市計画法というものになっているのだから、この間のミックスというものは土木屋と建築屋のけんかみたいに、同じ役所におってもなかなかできないことが多いのですよ。本来ならば道路なり下水が先行して住宅地ができるのがあたりまえですけれども、それがお互いに同じ役所におりながら理解が足りないために、セクト主義が強いためにもうどうにもならぬというのがあるのであって、あなたの考え方は、いままでのあなたの役人としての体験からきておる、反省からきておると受けとめておる。  次に、村井さんと郭さんにお願いしたいのだが、現在財団法人日本建築センター、これは法的に何らの役目も果たしてない団体なわけです。かねてから問題になっております東京駅前の東京海上の建築申請の問題でも、東京建築センターが技術的なチェックをして、そして最後の判断を建設大臣に持ってきた。建設大臣はいまだにこれに対するところの許可をしません。そこでこの基準法改正というものが行なわれるならば、現在日本建築センターが行なっているところの業務、少なくとも建設大臣なり国が諮問をしておるところの業務というものは、当然法制化すべきだと思うのです。一体何の権限があって総理大臣や建設大臣が、建築基準法に許可になっておる建築物に対して最終的な判断をくださぬということは、違憲もはなはだしいことなんです。それに一枚加わって、まさか日本建築センターが変な意思表示をしておるのじゃないと思うけれども、この点は、全部の建築家がこれに対するところの大きな抗議をしなければならぬと思うのですよ。したがって郭さん、あなたがいままで浜松町なりあるいは霞が関なりに対して御関係なさっていらっしゃるということを聞きましたので、そうしたものに対する考え方をどっかの意思できめる、これは技術的にきめるということが第一の問題です。あと建築基準法現行法によっても何らあれをはばむものではない。したがってこういう矛盾というものをこの辺で、強力な政治的な暴力というものに対して、あなた方はどういうお考えを持っておるか、お二方に伺っておきたいと思うのです。それから郭さんにはもう一つあとで伺いますけれども、その点……。
  35. 村井進

    参考人(村井進君) 田中先生にいまの問題につきましてお答えする前に、先ほど内藤先生に私は賛成してしまいまして、一緒におこられてしまったのですが、私が少しことばを簡単にしたいと思いまして、内藤先生に賛成だと申しましたが、ちょっとニュアンスが違うのであります。私のあれは、地域の特別の事情によって用途地域の制限に付加したいものがあったら、それが付加できるような形を考えてみたらどうかという意見を持っておる。基本的にはやはり日本の現状におきましては、標準的なものは国がきめていくのもやむを得ないのじゃないか。ただ地方に裁量を全くなくしている点について疑義を持っておるということでございます。  それからただいまの御質問、東京海上につきまして日本建築センターの立場のことでございますが、日本建築センターは何らの権限を持っておりません。東京海上の問題につきましては、本来ならば建設省御自身がよくお調べになりまして、構造認定をなさるべき性質のものだと思います。ただいろいろな関係がございまして、みんなで審査して、そしてその結果を私たちに参考に出してくれというようなことでございまして、日本建築センターで各種の学者、実際の設計者、その他の方々に御参集願いまして、御参集を願います範囲も、一応建設省の御意向を聞いて御参集を願いまして、そしてそこで議論いたしまして、あの構造なら安全であろうということになりましたので、そのことを申請者にお知らせし、また建設省にもそのことを御報告した、それだけでございます。それから先、それをどういうふうにお考えになりましょうとも、それは建設大臣の権限に属することと思うわけであります。私なんか、東京海上のことにつきましてブレーキをかけているようなものの一員であるようなふうに思われたんじゃないかと思うのでございますが、私はむしろ全然逆の立場でいままで動いておったと思います。それから、建設省の方々にも、とにかく建設大臣にそういう権限ないじゃないか、もしあるとすれば、あの構造がこの点は悪いと、これを直せ、何かそういう御指示が早くあってしかるべきだ、あとから出て同じようなレベルで建築センターでは審査して、片一方は建設大臣が御決定になり、片一方は決定になっていないという点は——ほんとうにこれは政治的な問題ではないので、純技術的な問題で、安全かどうかという問題であると私はいまの法律の解釈から考えております。で、できるだけ早くおきめになるべきだというふうに考えておるものでございます。あるいは誤解がございますかとも存じますが、そういうことでございますので、御了承願います。
  36. 郭茂林

    参考人(郭茂林君) 私は高い建物を手がけてきたものでございますので、東京海上があそこへ超高層ビルの計画をするということには、私は最初からたいへん賛成でございました。しかしその後何年かたちまして、いまだに問題が具体化していないということに対しては、非常に残念に思っているものでございます。先ほどから違反建築に対する取り締まりその他のことについていろいろお話ありましたですが、私たち建築家の立場としては、むしろ建築基準法にとらわれることなく、基準法より以上のものをこしらえようとしている、またそういうふうに努力しているということでございます。東京海上の設計者は前川国男先生でございますが、建築家協会の前会長でもあり、そういうりっぱな方が法に照らして一生懸命やったものが、いまだに具体化してないということは、ちょっと残念な感じがするということでございます。もしだめならだめで、どこがだめであるか、こうしろ、ああしろということを早くおっしゃっていただきたい。宮城前に建つ日本のシンボルとして、りっぱなものをこしらえていただきたい、こういうように考えております。
  37. 田中一

    田中一君 そこで、もしもかりに、技術的基準に対する検討というものができないからだとするならば、基準法の面においてそれらの機関をつくるということの提案がなされなければならぬと思うのですね。私は、建築基準法を担当する建築主事というものを、かつて政府案として知事、市長にゆだねようというような草案が出たことがあります。これは大反対でした。技術的な基準を定めているものであって、それは地方長官とか市長とかにゆだねるものじゃないと思う。したがって、これは今度建築主事が全部担当するということになりますと、小さな都市ではいま言うあれが、郭さんなんかやっている仕事がとてもこれはチェックできません。そうすると、幸い基準法改正が出ているのだから、この中にそうした機関をつくらなければならないということの成文化ぐらいはあるべきだと思うのです。御意見が出ないところにちょっと問題が、疑点があったので伺ったわけです。その点はひとつ郭さん、あなたも希望しているわけですからね、あとで答弁していただきたい。  もう一つ伺いたいのは、残念じゃないと思うのですよ。不当であり不満であるという表現が一番正しかろうと思う。  それからもう一つの問題は、霞が関ビルの三十三階以上については、日本の消防の設備ではとても消火の問題は解決されない。スプリンクラーを配置したらどらかという意見があり、これも同感です。しかしこれが、人間が住む、人間が常に常住する建築物でありますから、記念塔でも何でもない。これは実用化されておるものだ。そうなるとそれにかわる何かの措置がなきゃならぬと思う。スプリンクラーというものは金がかかってしようがない、経済性がたいへんだからやめたらいいんだというこれには大賛成ですが、利用のしかたの問題に対して建築基準法はちゃんときめるべきだと思う。たとえば書類、紙類、可燃物のものは、こういう書庫でこう始末しなきゃならないとか、それから床はナイロンのじゅうたんは敷かないようにとか何とか、そうした住み方、利用のしかたの問題の規制は、当然建築基準法のワク内じゃないとおっしゃるかもしらぬけれども、建築物というものは、ただ個々の建築物が存在することにおいてあるんじゃないんです。必ず建築物の利用、建築物の効果、建築物の生産の媒体として建築物があるはずなんですから、その場合にそれを利用する場合の注意ぐらい、基準法上はっきりきめればいいんです。そうすれば、むだなスプリンクラーその他余分な施設をする必要はないんで、そういう意味の超高層に対するところの利用のしかたの要求はやはり基準法で示してもいいんじゃないか、この二つの御意見ひとつ伺っておきたい。
  38. 郭茂林

    参考人(郭茂林君) 東京海上のことにつきましては、全くおっしゃるとおりでございます。何というんですか美観地区、ここが美観地区、旧丸の内が三十一メートルのシステムでそろえてできている、非常に秩序正しい。そこへ突然高いものは、美観上よろしくないだろうという、そういうことで問題になったというふうに私最初伺っておりましたんですが、そんならば、そこの美観地区がほんとうにいいことであるかどうか、美観地区は何であるかといったようなことをそこから解きほぐしていきたい、またいかなくちゃならないと考えます。いまの状態では私たちもよくわかりませんが、非常にあいまいもことしているというので、何か先生方のお力によって何とかはっきりさしていただきたいというふうに考えております。美観地区については、それなりの専門家たちを集めていただいて大いに議論をしていただきたい。東京都の中でどこを美観地区にするか、美観地区の定義とはどういうことであるかといったようなことを明確にきめていただきたい。私建築家の立場として、これは非常になまいきなことばかもしれませんが、最近赤坂にあるホテルができております。非常に細長い敷地に細長くできて、壁がピンク色の横しまでできておりますが、その隣が衆参議長公邸でございます。あの場所にああいったようなデザインがほんとうにいいかどうか。むしろそこにこそ美観地区の概念をはめるべきではないかという、そういったような感じがしますが、かようにして美観の問題は、たいへんむずかしいことであります。美観の問題で東京海上をあれするというならば、それはそれで非常にはっきりさせていただきたいということでございます。  それから、高層ビルの先ほど防災計画のことでございますけれども、私が申し上げたいことは、その防災に関してはたいへんお金がかかっております。これが日本全国から考えますと相当な金額になります。そのかけているお金を有効にかけたいということなんです。一例を申しますと、その建物にまず部屋に消火器を置け、それからある階には消火栓を出せ、それからスプリンクラー、それから何か非常にあらゆる場合を想定して、非常にたいへんな設備がしてある。で、スプリンクラーというのは、御承知のように温度が上がってきまして、もう人がいられなくなるような状態に作動して水が出、一たん出るとたまっている水がなくなるまでとまらない。むしろ火災によって燃えることよりも、スプリンクラーの水による水害のほうが今後問題になるのではないか。その建物の中に高価なコンピューターやら大事な機械、書類、その他が入っております。それが全部水浸しになってしまう。スプリンクラーを最後の最後まで万能と考えるような考え方ではなくて、こういう場合にはスプリンクラーを考えなくても、それにかわるものはこういうものなんだというような、全体として防災計画は何が一番大事であるかたとえば私は霞が関のような完全不燃化した建物でございますと、問題があれば放って置けばいいんじゃないかという考え方です。それより人を早く逃がしてやる、避難させてやる。われわれの考え方では一階分下におりれば、一階分上に上がれば火が上がってこない、煙が上がってこないような考慮がしてございます。何も下までおりていく必要はございません。そういうような意味でバルコニーを設けたりして人をいち早く混乱なく避難させる、そのほうをまず第一にやるべきである。完全に燃えない建物、そこで何かちょっと燃え始めたら人を避難させる、そのさせるほうにお金をかける。それで初めてぼやが出たわけだから、かけつけていって火を消すという、何か防災の中でもそういう防災計画が必要なんじゃないかということを常日ごろ考えております。そういうことで霞の場合は、新しく煙感知機というのをつけました。スプリンクラーが作動するまでに約七、八分余裕がございます。ある燃焼状態からぱっと炎がついて熱が上がってくるまで七、八分だろう。私たちは完全不燃化に徹底した保安を考えた。それでまず最初に初期防火を考える。ちょっとした最初のトラブルのときに押えつけて置こうというので、煙を出した状態ですぐそこへ飛んで行って消してしまう。そういうわけで新しく煙感知機というものを取りつけたわけでございますが、その後の法改正を見ますと、スプリンクラーにさらに煙感知機が義務づけられてきたようで、非常にたくさんこれでもかこれでもかというふうに非常にアップして考えられる、非常にもったいないではないか。かけるならかけるでけっこうですが、ほんとう意味のあるものをかける。そういう意味で防災計画というものが新しくクローズアップされてくるのではないかと、そういうふうに考えております。
  39. 田中一

    田中一君 いまの何はどうですか。建築センターというのは技術的にチェックする場所ですけれども、これは法的根拠ないんです。基準法改正とともに、一々建築センターに持ってきてもこれは法的根拠ないんですが、法律の中でそうしたもの、そういう機関の設置を義務づけるというようなことをやることはどうであろうか、賛成か不賛成かという意味のお話を伺いたいのですが、それはどうですか。
  40. 郭茂林

    参考人(郭茂林君) けっこうだと思います。義務づけること、けっこうだと思います。
  41. 田中一

    田中一君 もう少し声を大きくして言ってください。
  42. 郭茂林

    参考人(郭茂林君) その防災計画考え方に対して、工事審査会に似たような何かそういう委員会でチェックしていただく、そこで判断していただく、いろいろ判断する、そういったようなことをつくっていただくことは、たいへん賛成であります。
  43. 大和与一

    委員長大和与一君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  44. 大和与一

    委員長大和与一君) 速記つけて。
  45. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 私の質問も郭さんにお願いしたいのですがね。いまも御質問がありましたから、その点はお尋ねいたしません。スプリンクラーの問題ですがね、完全不燃焼という建材の問題ですが、むろんそういう高層ビルの場合はできたかもしれませんが、日本の建材として全体的に見て、そういう建材がもう完全に整っておると、こういう見方をされるのか、その点はどうですか。不燃焼建材ですね、たとえばミネラルトンとかあるいは化粧板のメラミントンとか、化粧板とかありますね。そういう日本の建材としてはいま整っておるとかどらか、これをお知りでしたら教えていただきたい。  それから今さんにちょっと聞きたいんですが、衆議院のほうの法案の中で、改正した中で、作業員の一労働者に対して監視員がそれに質問して罰金制度を設けるのは非常に酷だと、こうおっしゃっておるんですが、先ほど聞いた内藤さんの御意見のように、全く所在不明の建築が行なわれておるという事態を、しからばどこで食いとめたらいいのか、そういう点の考え方はないですか。全くわれわれも気の毒じゃないかと思いますから。しからばそういうだれが一体責任者でやっておるのかということが食いとめのできないかご抜けのやり方ですね、これをどこで食いとめたらいいか、こういう点皆さんお考えがあるならばお聞かせ願いたい、それだけです。
  46. 郭茂林

    参考人(郭茂林君) いまの御質問の不燃建材のことにつきましては、たいへん日本も生産技術力が進歩しておりまして、大体私たちがいままで経験した結果では、非常に満足すべきものが出てまいっております。それはしかし、ただし非常に実用的な建物の場合でございまして、その建物に相当趣味的なものを盛り込もうというときに、ちょっとまだ足りない面もございます。たとえば、こういう壁にもう少し木造っぽいものをつけようとか、カーテンでも少しナチュラルな感じのものをぶら下げようとかいった面では、多少まだ問題がありますが、これも日ならずしてきっと改善される日が近いことと思います。
  47. 今洋

    参考人(今洋君) 私が申し上げましたのは、それは知らないんだというように答えた場合に、質問に答えられなかったという解釈になるのかどうかということが、一つ前提にあるわけですね。現実にほんとう建築主も知らない、元請人も知らない、しかし自分は親方に頼まれてここへ行けと言われたんだから、親方の名前は答えられても、質問するほうの側がそれでは満足しなくて、一体建築主はだれなんだと、元請はだれなんだとしつこくつきまとわれると、それは知りませんと言ったときに、おまえは完全に答えられなかったじゃないか、だから罰金一万円だぞと、こういうふうになったのでは困るという心配がある。このことが一つの前提であります。それから、そこでわからなかった場合にどうするかということでございますが、原則としまして、その工事物件が確認されておれば、当然法に定めるところによってその確認されているという標識を、看板を掲げなければいけないわけですね。ですから、それが行なわれていないということになれば、当然確認書がどこかにあるわけです。確認した場所があるわけですから、当然それからしからば建築主の名前がわからないということはあり得ない。で、問題は、したがいまして確認もしなかった、つまりその手続いかんによって、一体だれが工事しているのかわからない、だれが建築主かわからない、まあこういうことになろうかと思うんですけれども、それはもう現実に現場に行って調べてもほんとうにわからなければ、それはもうやりようがないんじゃないか、やはり何らかの方法で行政の側が調べていく以外にないのではないかと思います。現実にわからないわけでございますから。
  48. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私、今さん、それから内藤先生にちょっとお伺いいたします。  先ほど今さんのほうからこまかい実際の事例をあげられて御意見がございましたけれども、このマイホーム主義というようなお話もありました点から考えまして、土地のことを考えられないで、増築、増築、増築をしていくというようなことで、これはしろうとがやろうと思うならばやれますし、それから大工さんの人なら、ちょいちょい手が出るわけです。そういう面で先ほどは三項についてお話ありましたように、六条の、「その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内のものについては、この限りでない。」、こういう問題について相当の事例があると思うのです。問題が起きている事例があると思うのです。この点の解釈をどうされますか。  それまた内藤先生には、この基準法のことを手がけられたということでございますので、将来これはどういうふうにこの面をお考えになっていかれようとするのか、将来の面も伺いたい。
  49. 今洋

    参考人(今洋君) 法律の解釈でございますから、私どもの解釈が正しいかどうかわかりませんけれども、かりに増築、増築、十平米以下のものがどんどん増築していって全体が大きくなる。その場合に建蔽率なり容積率というものが、敷地に対する建築面積の割合あるいは敷地に対する床面積の割合を規制しているわけですから、かりに確認を要しないものであってもそれを増築したことによってそのキャパシティをこえてしまえばやはり違反違反だ、こういうことになると私どもは解釈しているわけです。
  50. 内藤亮一

    参考人(内藤亮一君) お尋ねの第六条の十平方メートル以下の取り扱いの将来の問題でありますが、立案当時のことを思い浮かべますと、とにかく建築手続というのはもう敗戦後の混乱状態で、住むところがないのだ、自分で建てるのが何が悪いのだということが一般的に相当考えられていた。そこでごく小さな増築まで手続とるのは少し酷じゃないかということで、私ども建設省の担当者は非常に遠慮したのですね。遠慮したというか、控え目にした。これが確かに違反建築のはびこる一つの要素になってきたことは事実だろうと思う。最近特に子供の勉強部屋なんかで、六畳一間、みんな十平米以下なんです。ああいうものを空地の十分ないところへ持ってきて建てる。これは全然手続が要らないということになりますと、もっともこれは防火地域だとか準防火地域は手続が要るのですけれども、手続が要らぬということは、空地率も建蔽率も何も制限ないのだ、かってに建ててもいいのだというふうに誤解されるかと思うのです。実はこれは言いのがれですけれども、手続だけ免除してやっても空地割合は守らなければならない。したがって、もしそれが建築主事によって発見されれば、違反建築の対象の一つになりますけれども、現実に手続を免除してありますから、おそらくどこの建築主事も私は取り締まってないのじゃないかと、これは想像です。実際取り締まっていればたいしたものですけれども。以上が実情ですよ。今後どうなるかということですが、やはり今度は最低限まで空地制限の緩和をしてあるわけですね。どこまで緩和されるかは別といたしまして、最低限やはり十平米以下の増築でも確認は必要なくても届け出くらいは必要がある。つまり何々ハウスなんかのプレハブのものを建てた場合に、極端に言えば何々番地のどういう場所に何平米のプレハブをつくるのだというはがきの手続くらいはしないと、これは空地制限はその面から大きくくずれる心配がある。私、まだ突然の御質問で結論は出していませんけれども、そこまで考えなければならぬのじゃないかという、これは単なる私見でございます。
  51. 米田正文

    ○米田正文君 きょうは建築のエキスパートだけそろっていますから、一つだけお尋ねします。  けさ高柳教授も、日本の市街が非常にきたない、町がきたないと、イギリスの新聞の論説か報告かでそういう引例をされて言われておる。私もそう思うんです。近ごろ町を通っても、実に日本の町はきたない、こう思う。これは何といっても、都市計画というものがあって、それを今度受け継いでやっていく建築基準法というものがあって、二つでやっていこうとしておるわけですね。で、その間に非常に大きなブランクがあるという感じが私はしておるものだから、それでお伺いするんです。それで、ずっとメインストリートを通ってみても、ところどころぽかっと大きい建物ができている、隣はかわらぶきの二階屋根だというような形が、いまの日本の東京を中心とする姿だと思うんです。それで非常にきたなく見える。これは市街地成長の一つの過程だと思って私はあきらめてはおりますが、しかし、これを何とか秩序のある町並みに早くしたいものだという意欲は非常に強く持っております。そこで、きょうは基準法の関係で皆さんおいでになっていただいたんですが、しかし、この基準法がもう個々の問題だけを扱っておる。そこに私は一つの問題がある。で、今度の都市計画法で、用途地域、ゾーンがそれぞれ決定されていく。そのゾーンの中の問題を、もう少し、今度はそれより範囲の狭い地域といいましょうか、地域の問題か、あるいは街区の問題というような、一つの小さい、もう少しブロックの小さいものについての計画というものがどうしても必要だ、それがないと建築基準法も適正な運用ができないんではないか、こう思うんです。もっと詳しく言えばまだ了解を得られるかもしらぬが、私はそういう感じを非常に強くしておるものですから、幸いきょうおられるから、ひとつ皆さんに御意見を承りたい。私はかねてからこういうように研究をしておるという方があったら、ひとつ皆さんにお伺いしたい。——内藤さんに。
  52. 内藤亮一

    参考人(内藤亮一君) 実は建築基準法が、いま米田先生のおっしゃるように、一つ一つの建物に取り組んでおるということで、限界があるわけです。そこで考えてみると、日本建築法規、非常にきついとかなんとか言われていますけれども、全般的に見て、とにかく下水のないところにも家が建つ、それから自分はでかいビルを建てたいと思えば建ててもいい、高い建物を建てたければ高い建物を立ててもいいと、これだけ自由な国は先進国ではないと思います。で、自由ということはけっこうなんですけれども、しかしながら、米田先生がおっしゃるように、結果から見ればきわめて不ぞろいでみにくい町もできる。で、日本に次いでアメリカは比較的自由なんです。ゾーニング日本よりは厳密な規制はございます。ございますけれども、アメリカの都市をごらんになりまして、ニューヨークでもシカゴでも、やはり建物は非常に不ぞろいである。まさか町のまん中に木造はございませんけれども、不ぞろいである。しかしそのアメリカが、最近これはアメリカの雑誌で見たんですけれども、アメリカの地域制は、一九一六年ニューヨークが初めて総合的なものをやったんです。それからちょうど五十年を経まして、去年でしたか、ニュージャージー州にユニット・デベロップメント・アクトという法律ができたのです。それは何かというと、先生がおっしゃるように、一つ一つの建物をやったんではいい町はできない。だからユニット・デベロップメントで住宅も学校も幼稚園もスーパーマーケットも、あるいは商店も、一つの単位として開発して、一単位として開発しなければ——先生はワンフロックの計画がないのじゃないかとおっしゃいましたけれども、そのとおりなんです。ワンブロックよりももっともう少し大きな区域の一つのユニットとして開発しなければいい町はできないということ。これはどちらかというと、ヨーロッパがそういうことをやっておるわけですから、アメリカも五十年を経てもう限界を知ったわけでして、どうしてもユニット・デベロップメントによってやらなければいい町はできないということで、アメリカのASPOといって都市計画の関係の役人だけの会合があるのですが、盛んにそこでもって徹底的に地域制を変えなければならぬということで、ようやくニュージャージー州で新しい法律ができた。これはただし強制しない。 ユニット・デベロップメント・アクトは強制しないで、ただユニット・デベロップ——一固まりの総合的な計画をするならば、地域制、ゾーン——いままで五十年、六十年やってきた地域制はやめてしまう。いい計画ならば、すべての法律というか、そういう制限をやめてその計画を援助しよう、こういう法律ができた。おそらく一九二八年にニューヨークのゾーニングができましてから全国にこれが広がったように、いまやニュージャージーの新しくできた法律は、全米にこれは数年にして広がるだろうということが言われておるのです。だからほんとうはそこまでいかなければいい町はできない。しかしいまの日本が追いかけているのは、ちょうどアメリカの五十年ぐらい前のことを一生懸命やっているわけですから、非常におくれていることは事実です。それで、これは考えようでありまして、非常に経済力が盛んでありますから、いまある建物はまた二十年、三十年たつとこわしちゃう。つくってはこわし、つくってはこわしで、それで建設業も大いに発展して、日本のバイタリティを示すのだと、こう割り切ってしまえば、これはまた別ですけれども、しかしその間住民……、特に私はここに郭さんもおいでになりますけれども、超高層も私は別に反対論者ではありませんけれども、これはほんとう言えば超高層の建築をある意味では日本のシンボルとしておりますけれども、その陰に木造六畳一間のアパートに住まざるを得ないという、非常にそういう格差が大きいのですな。こういう点をほんとうはもっともっと国会の先生方にはお取り上げいただきたい。残念ながら世界の大勢にはうんとおくれているのです。私かつては自分でおくれたことをやっておりましたけれども、学校へ行って勉強してみますと、あまりにも差が大きいので、最近は少しある意味では将来を悲観的に見ております。
  53. 大和与一

    委員長大和与一君) ただいまの質問に対して脇坂君に答弁を認めます。
  54. 脇坂忠良

    参考人(脇坂忠良君) 現在の基準法では実際にあるがままの道路に合わせて家を建てるということで、町全体として非常に理想的な形になりにくいというようなのは御指摘のとおりでございます。一つのモデル的な理想的な形というものを計画しまして、それに合わせて誘導していくというようなことは、当然必要だと思いますが、現実に緑地地域を解除いたしました場合に、全域に土地区画整理区域の決定をいたしまして、それに対しましてはそういうモデル的な街区の計画をして、それに誘導するようなかっこうで許可をしていくという方法を考えております。現実にそういうふうにしておるわけでございますが、一方この既成市街地の中におきましてそういうことを実行いたします場合に、現在では幹線街路だけは都市計画決定をしておりますが、それ以下の区画街路につきましては、全然計画がないわけでございます。将来そういう街区として開発をしていく場合に、その街区全体の人たちが、何といいますか、建築協定なりあるいは今回新たに制定されました都市再開発法によりまして一つの街区としてまとまった形で開発をしていくということが必要かと思います。ただモデル的な画を書きましても強制力がございませんので、われわれとしてはそこまで現在のところやる手が及びませんが、将来の方法としては一つのモデルをつくって、それに近い形で再開発というものを誘導していくということは必要なことだと思います。
  55. 村井進

    参考人(村井進君) 私から発言を求めたようなかっこうになりましたのですが、私は現在の日本都市計画というものは一種の制度法じゃないか、制度をきめているので、こういうことができるということだけをうたっている。実態はそれに基づいていろいろな具体的な方策が樹立されない限りだめなんじゃないか。現在、制度であるというような考えで都市計画路線が敷かれている。建築基準法はそれを受けましてその都市計画路線の中の制限をいたしておる。ところが東京の都市計画は、脇坂さんがここにおられるのですが、いまきまっている都市計画を全部いまの財政規模でやっていったら一体何年かかるんだと、おそらく百年ではできないだろう。やっぱりそれは都市計画都市計画でやるのだというのじゃなくて、道路、街路は道路法でもどんどんやっていただくと、その計画によってやっていただくというようなこと。今度出ました再開発法にしましても、都市区画整理法にしましても、いま問題になっております基準法にいたしましても、そういう都市計画を実現していくための一つ一つ手段であるというふうに考えていいんじゃないかと。ですから、一つ一つ手段でございますので、ほかが全然動かずにこれだけでいけるということは絶対にあり得ないんだと。ただ一番先に申し上げましたように、地域の開発計画というものが大穴で落ちているじゃないか、これは私は基準法だけでやれる、基準法の性格でやれるかどらかちょっと疑問に思います。もう少し幅の広い新たな立法としてお考え願わなければできないんじゃないかというような感じがいたしておりますが、この辺は、今後の都市計画法制の大きな問題じゃないかというふうに考えております。
  56. 大和与一

    委員長大和与一君) 以上で参考人に対する質疑を終わります。  参考人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、非常に御多忙中のところたいへん長時間貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。慎しんでお礼申し上げます。  本案に対する審査は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  57. 大和与一

    委員長大和与一君) 次に、前回に引き続きまして、自転車道整備等に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。   〔委員長退席、理事沢田政治君着席〕
  58. 田中一

    田中一君 これは遠藤さんに伺いますが、きょう資料として財団法人自転車道路協会の寄付行為と、それから四十三、四十四年度の予算を拝見しましたが、結局この団体は自転車メーカー並びに自転車製造を振興しようという方々の寄付行為によってなされている団体であるということがはっきりいたしました。したがって推進しているところの団体は再度申しますと、自転車メーカーの意思が非常に強く反映しているんだということがわかりました。これについて私はわかったと言っただけじゃ困るから、遠藤さんはどう御理解なさっていらっしゃるか。また、いままでこうした自転車道路協会というものの内容もお知りにならないで、そしてこの法律の提案をなすっていらっしゃるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  59. 遠藤三郎

    衆議院議員(遠藤三郎君) いまこの自転車道路法が自転車関係の業界からの強い要望によってというお話がありましたが、実はこの予算はごらんのとおり自転車関係からかなり多くの寄付行為が行なわれております。しかしこれは一般の公共事業へ自転車のほうの寄付金が使われておるという、そういう一般的な趣旨からきておるものでありまして、この団体の構成をごらんになってもわかりますけれども、自転車関係の人ももちろん入っております。しかし、それ以外の一般の方々が大多数を占めておるようなものでありまして、公共事業に自転車関係の金を寄付するという一般のたてまえ上こういうことになって、ほかに金の出るところがないものですから、こういうことになっておるということを御了承願いたいと思います。
  60. 田中一

    田中一君 この実態、この協会はことごとく二年間を通じて約一億五千万程度の寄付行為によってなされておるということになっています。おそらく基本財産としての一千万も、それらの範疇に属するものであろうと推測いたしますが、実態としてむろん少年たちのレクレーションとしての自転車で遊ぶということも、これが完全に体力増進のために不可欠なものだということには疑問があるけれども、一応この問題はこの問題として了承しようという、かりに認めようという立場に立つならば、何もこうした単行法出して、せんだって沢田君も言っていたように、どうして、繁雑な法律の積み重ねを必要としない道路法の一部改正でできるわけなんです。道路法に五項目ぐらいに自転車専用道路、自転車歩行者専用道路というのを入れれば、おのずから解決がつくわけなんです。そこで、まあ、道路法上歩道というものがありません、歩道も道路と見なせば道路に違いないのでありまして、あなたたちが入れればいいのでありまして、これについてひとつ蓑輪君どうですか、それは入れたら問題は解決されると思うけれどもどうですか。
  61. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) ちょっといまの御質問の趣旨よくわかりませんですが、いまの道路法では歩道という形できまっておりません。いまの私たちがやっておりますのは、自転車歩行者通行帯というようなものになりますと、これは実はいまの道路法の中の道路構造令でいきますと、路肩を利用するというような形になっております。正式には道路構造令の改正でそういう路肩以外に歩行者と自転車の通行する部分を設けたいと思っておりますが、いまの構造令は緩速車道には自転車通りますが、歩行者と自転車を通すというのは路肩をそういう形に利用すると、一時的に利用するということになろうかと思います。そういう意味で言いますと、いまのこの法律であります自転車歩行者通行帯というのは、いまの現状はそうでございますが、私たちいま考えております構造令では、こういうものについてははっきり規定をしたいというように考えております。
  62. 田中一

    田中一君 だから、構造令では規定する、構造上の問題を規定する。道路法にこの二項目入れたらいいです、これ、解決するでしょう、これは。
  63. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) もちろん、そういう道路法を改正いたしましてやっても解決できる問題かと思います。道路法の改正になりますと、いろいろまだ管理その他の問題で改正しなければならない問題点が多いので、いまのところまだそこだけで、道路法の改正をしようということにまだしてなかったわけでございます。
  64. 田中一

    田中一君 これは、道路法では御承知のように、御承知というよりも、高速自動車道、国道、地方道、これがあるのですね、そのあとに入れたらいいじゃないか、この精神で道路をつくればいいのでしょう、管理方法は政令その他できめればいい。何もこういった単行法出す必要ありません、目的が達するならば。同じことだ。道路法——だからむろん高速道路という大型の施設もあれば、幼児もちょこちょこ歩けるような歩道があったっていいわけです。したがって、この基準等はこれは構造令できめて、それから道路自体をどうするなんてことは、全面的にこれを道路に併置するということになっておらぬでも、かりに併置しようという考え方があるならば、現在でも歩道はつくられておるんですね。市街地においてはつくられている。これは何も単行法によってつくられているんじゃない。われわれの社会が何も法律がなくちゃどうにもならぬというものじゃないんですよ。国民の安全、生命を守るため、健康のためには拡大解釈もかまわない。しかし、この拡大解釈云々といっても、ただ単行法を出すということじゃない。道路法の改正でもできると思う。これはいま道路局長が言っておるように可能ですね、可能ですか。
  65. 蓑輪健二郎

    政府委員蓑輪健二郎君) 道路法でそういう規定をつくりまして自転者の専用道路をつくることは、可能だと思います。
  66. 田中一

    田中一君 可能ですね。遠藤さん、それはどう考えます。何もこうして——単行法というやつはとてもかなわないんだ。終戦後二十五、六年ごろから陸続として特別都市というやつが三十幾つあります。その特別都市立法化によって何の利益がある、何にもない。法律をつくった以上、国には一年間のその特別法の特別法的な何かをした場合の報告をする義務しかないんです、特別都市というやつはね。したがって一つの現象、われわれの社会の一つの現象というものを、地域差も何もないんですよ。それを単行法で出すということは、これは立法上も、議員提案で出すんだから、このほうがはっきりしていいかしらぬけれども、現在道路法という不動の法律がある、ことに近代的な装いをしたところの道路法があるんだから、道路法の一部改正でやれば三行ぐらいで済むじゃありませんか。あれでいいじゃありませんか、あのままで。私はいたずらにこういう単行法でものをきめるという煩は避けたいんです。その意味で、ひとつ私が代案をつくります。そうして、参議院において各党の方々に御相談をして、これ三行でいいのです。三行くらいでもってこれは解決します。そうして、まだ会期もございますから、それを衆議院にお送りして向こうでも賛成してもらう。衆議院委員会の委員の諸君の、ほんとうのものをですね、すっきりした形でもって目的をかなえさすということにしたいと思いますが、むろん遠藤さん御賛成でありますね。
  67. 遠藤三郎

    衆議院議員(遠藤三郎君) いまこの自転車道は道路法の道路でいいじゃないかというお話でしたが、今度のねらいは、河川の堤防あるいは国有林あるいは公園等へつくっていくことになりますので、で、公園は厚生省の道路ですとか、あるいは国有林は農林省の道路にするとか、最後には農道の面についても触れていくようにしたいと、いまは、今度は出しておりませんけれども、そういうふうにして各省にまたがるような道路になってまいります。そういう関係がありまして、これは道路法による部分は建設省が手ぎわよく扱うことが簡単でありますけれども、他の省の所管の道路については、所管の土地については、建設省だけではなかなかうまくいかない、こういう意味で別の単行法にしたほうがこれはよりスムーズにいくと、こういうふうに考えた次第でございます。
  68. 田中一

    田中一君 これは主管は建設大臣ですね、この法律ができた後の主管は。
  69. 坪川信三

    ○国務大臣(坪川信三君) 建設大臣でございます。
  70. 田中一

    田中一君 それではね、厚生省、それから厚生省の公園課長くらいだな、それから農林省の農道を担当する人、それから林道を担当する人、これひとつ呼んでください。またほかに、このここで考えられておる、この法律で考えられておるところの自転車道並びに歩道というものをどこに求めていくのか、それひとつ提案者にもよく聞いていただいて、それぞれの部局の人たちを呼んでいただきたいと思うのです。
  71. 遠藤三郎

    衆議院議員(遠藤三郎君) その問題は各省とそれぞれ話してまいりましたのですけれども、こういう形でつくることを各省みな賛成をしてくれました。そうして、建設省の所管にしておくということも賛成をしてくれたわけでございまして、それで、各省との関係はいま何も問題ありませんから、ここでひとつぜひ審議を進めていただきたい、こういうことをお願いしておきたいと思います。
  72. 沢田政治

    ○理事(沢田政治君) ちょっと速記とめて。   〔午後一時三十七分速記中止〕   〔理事沢田政治君退席、委員長着席〕   〔午後一時五十分速記開始〕
  73. 大和与一

    委員長大和与一君) 速記をつけて。  本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、散会いたします。    午後一時五十二分散会