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参考人(村井進君) 村井でございます。私も前は内藤さんと一緒にこの
基準法の制定の際に参画、お手伝いをいたしまして、現在
日本建築センターというところにいます。ここには
建築の技術者のほかに
建築関係の材料のメーカーその他しろうとの方もたくさんおいでになりまして、
建築関係の知識を交換すると申しますか、御相談に応じ、御
意見を伺うという機関ですが、そこでずっと仕事をしておりまして、
建築基準法に関しまするいろいろな御
意見を承っておるわけであります。そういったものをもとにいたしまして、私の持っております
意見を簡単に述べさしていただきたいと思います。
今度の
改正案を拝見いたしまして感ぜられますことは、初め一昨年あたり
建築基準法の根本的
改正をするんだという声があったのでありますが、でき上がってみますと、それほど根本的な
改正ではなく、まだまだ問題として考えなければならないものがたくさん残っているように考えます。ただ、法をつくります場合、私どもが
経験いたしておりますが、ある
一つの方向がありましても、それに至ります具体的な施策というものが必要なんでございます。この施策につきましては、いろんな
意見が出まして、したがいまして、この
法律改正にあたりまして、
建設省のほうから草案を出されましたときから、現在まで各方面のいろいろな
意見がございまして、まとまらないままにございます。
それからさしあたって必要なものだけをお取り上げになっておきめになるのじゃないかというふうに思います。したがいまして、どうか今後、この
基準法につきまして、制定当時からもうすでに二十年近い年を経ているわけでございます。大いに
改正点はごめんどうではございましょうが、
改正を根本的にやっていただきたいというふうに考えておるものでございます。
まず、今後の
改正案につきまして、提案
理由の御説明がございましたのでそれの
順序で申し上げたいと思います。すでにほかの
参考人からいろいろ御
意見が出ておりますので、できるだけ重複を避けて申し上げたいと思います。
建築物の用途の細分化というものにつきましては、私は賛成でございます。ただ内藤さんおっしゃいましたように、
都市計画的なものにつきましては全国画一でなければならぬという
理由はあると思います。また、そういったような運用の幅を認めるということも必要なんじゃないかというふうに考えて、この
改正案に賛成するものであります。ただ、
建築基準法という
法律のたてまえから、
建築物の用途だけにしか制限がかからないわけでございます。
都市計画法上の用途地域といいますのは、やはり土地の利用という問題ではないかと思います。そう考えてみますと、
建築物ではない工作物または工作物のない置き場
——ごみを置くというようなものは置き場というのかどうか知りませんが、そういったような土地の使い方、そういったものについても
規制が行なわれませんと、
建築物だけの
規制ではもの足りなくなってくるような気になってくるのではないか、というふうな気がいたします。たとえば普通の自動車の置き場でございますと、われわれの家の周辺にもたくさんございますが、あれがトラックの置き場になりますと、非常にやかましいことになってまいります。そういうところには必ず事務所があるではないかというような御
意見がございますが、たまたまその事務所が道路の向こう側にございますと、現在の
基準法のワク内から申しますと、敷地単位で
規制が行なわれておりますので、自動車の置き場に屋根がない限り制限ができないというようなことになると思います。やはり
土地利用という面からも、この辺はなお詰めておきませんと不満が出てくるのではないかというように考えます。
今度の
改正案の中におきまして、特に住居地域等につきまして一部建蔽率の緩和の措置がとられました。
住宅環境の整備という面からのみ見ますと、一応は残念なことだと思うのであります。しかし、現在の
住宅の事情を考えますと、わずか三十になったかならぬという人が自分で自分の家を持たなければ適当な住居が求められない、というような
状況でございまして、要するに、分不相応なことをしようとしているわけでございます。私どもが若いころの、三月分の敷金を用意いたしまして、広さも手ごろ、家賃も手ごろといったようなものをさがせるような形ではない。どういうわけでこういうふうになってしまったかという点については、いろいろあると思いますが、こういうふうに敷地が狭くなってしまった時代では、
違反が出てまいりましても、ある
意味ではやむを得ないというふうに考えております。この
違反をたくさんつくりまして法をやっていこうということは、運用としてはできないわけでございますので、守り得る
法律に近いという
建設省のお考えにはやむを得ないものと考えて賛成をせざるを得ないと思います。
また、日照、通風等のための北側斜線の
制度等が設けられましたが、非常にむずかしい問題でございまして、いろいろ現在のような
都市の形が変わってまいりますさなかにおきましては、非常に問題があるのじゃないかと思います。結局やはり、こういう問題は現在、
基準法がたてまえにしております
一つ一つの敷地単位で片づけていこうという行き方にもう行き詰まりがきているのじゃないか、というふうに考えておるのでございます。私は、この
一つの近隣区域のようなものを考えまして、その中で敷地の制限、道路の配置等はもちろんのことでありますが、建物と建物との
関連というものをできるだけ
計画的に育てあげていくという努力がなければ、
一つ一つの敷地を単位にして、この中で何とかやっていくという
考え方では、もう行き詰まってくると思います。
今度の新
都市計画法によりますと、開発には全部許可が要るということになっておるのでありますが、私も役人でございましたことから申しますと申しにくいことでございますが、私も現在の
日本の
都市の開発のために、持ってこい、許可してやるというやり方では、とてもできないんじゃないか。むしろ、公共団体の側から、この辺はこういう形で開発していきたい、こういう
計画で開発していきたいのだ、
皆さんの御
意見はどうかというようなことで訴えていくことをやらない限りだめだと思います。またそういう訴えに対して賛成して立ち上がっていく、協力しつつ、一地区についてはいろいろな形で援助をするということが必要なんではなかろうかと思います。
先ほど今さんから
建築協定をもっと活用しろというようなお話がございました。非常にかたっ苦しい条件のもとでなければ、この
建築協定が成立しない。たしか
日本でも
一つしかできていないのじゃないかと思います。そういう
制度でなくて、もっと活用しやすいように
改正をしていただければいいんじゃないかというふうに思います。別に私は
外国がいいとか悪いとかいうことを申し上げるわけではございませんが、参考までに申し上げますと、ロンドンの旧市街地
——十七世紀ごろの市街地から後にできましたところはほとんど全部開発されて、その中に家が建っております。私は数年前に向こうに参りました。
皆さんもおいでになったかと思いますが、地図を買って驚いたのでありますが、市街地のまわりは全部、うまいか、へたかは別にいたしまして、
計画的に開発された地区でございます。
都市計画道路だけがあって、その間を宅地として開発するようなことが行なわれておらないことは非常な違いがございますことを目にいたしまして、驚いたのでございますが、おそらくロンドンでは宅地造成された、
計画的に開発された土地以外は宅地ではない、したがって家は建ててはいけないんだという観念であるのじゃないかと思うのでございます。
日本の実情に合わせましてそういうものをどういうふうに育てていくかということは問題であろうと思いますが、大いにそういうことの促進のために助成の
制度等をお考え願いたいと考えております。
次に、
建築物の防災
基準につきまして一言申し上げたいと思います。
今度
改正されます、まことに
理由のある
改正でございまして、しかし問題は、これからできるものだけの
規制でいいんだろうかということであります。私は、
住宅その他のものは除きまして、少なくとも病院であるとか旅館であるとか学校であるとか、いわゆる不特定多数の用に供しまする
建築物につきましては、一定の期間を定めましても、これをいまの
規定に合わせるように命じやらせるべきではないかと思うのであります。自分の家はすみずみまでも知っておりましょうが、宿屋に泊ります人は、この宿屋を知っているわけではないわけでございます。そういったようなことで、新しいものだけがよくて古いものは依然としてそれでいいんだということではなくて、やはり不特定多数の用に供する、特に営業の用に供するといったようなものにつきましては、そういうことをやらしていただきたい。これは現在の法規にも
根拠規定があると思います。それを運用するかしないかということであろうと思います。ただその際に必要なことは、何にもしないで
行政命令だけでやれるというものではございません。資金の世話をするといったようなこと、あるいは直し方の指導をするというようなことも必要だと思います。そういったようなことをして不特定多数の用に供する既存
建築物についても、できるだけこの新しい
基準に適合するようにごあっせんを願いたいというふうに考えるのであります。
次に、ここに先ほど今さんからもお話がございました
建築材料というものにつきまして一言申し上げることをお許し願いたいと思います。
建築材料といわゆる材料、
建築材料の性能というのはいろいろなものが求められておりまして、
基準法上では主として強度の問題、それから耐火性の問題というようなものがあります。今回JIS、JASの
規定を御採用になりましたが、JIS、JASの防火性能あるいは強度の性能といったようなものが中心の性能でございます。今後材料がだんだん進んでまいりまして新しい材料が出てまいりますと、ある性能には非常にすぐれていても、ある性能には劣っているというようなものが出ることは必然のことだろうと思います。昔のことを申し上げますが、昔、防火木材というのがございました。戦争中防火改修をやったわけでございますが、防火木材は確かに発煙しては燃えません。ただし、この防火木材に
くぎを打ちつけると
くぎがみんな腐ってしまう、すぐはがれてしまう、これでは
建築材料として使えないというような問題がたくさんございます。特に内装材におきましては、防火だけでなくて衝撃についてはどうか、あるいは傷がつきやすいかどうか、吸湿性があるかどうか、断熱性があるかどうかといったような材料の性能が必要でございます。そういう
一つの材料につきますと、ある性能については非常によろしい、ある性能は少し劣る、この性能はゼロである、そういうようなことがあるわけでございまして、こういうような性能の評定というようなことをぜひやっていただきたい。フランスのCSTBでは、そういうことをやってそうして証明書を出すというようなことをいたしております。
日本でも今後材料につきましては、そういうような評定をやっていただいてそれを一般に周知させるというようなお世話を国としてやっていただきたいと考えておるのでございます。
それから最後に
執行体制につきましていろいろな御
意見がございました。私どもも現に
執行いたしました
経験があります。今度の
改正によりまして、いよいよ
建築主事の仕事をしなければならぬ点が非常に多くなってまいります。地方の
行政に携わります人間は非常に少ない、特に地方におきましてはいい
建築屋、少なくとも指導のできる
建築屋というのは非常に少ないのであります。今後多くの人を要するようになると思うのでありますが、この技術者を人員を充員するということは、技術者の質の問題から、また財政の面からいっても容易なことではないのじゃないかというふうに考えます。それにつきまして
一つの案みたいなものでおかしいと思いますが、恐縮でございますが、民間の
建築屋をもっと活用していただいたらどうか。特に法規関係におきましては
建築主事の資格というのを
建設大臣が審査いたしまして、資格ありということできめているわけでございます。その人たちは
建築行政の
経験を持っておるわけでございます。これももうそういう
制度をつくりましてから十八年か九年を経過しておりますので、民間においている人が相当あるんじゃないか、こういう人をまあ第一次に使えるんじゃないか。さらに、
設計関係につきましては、民間の
建築士をもっと活用していく
制度を考えるべきじゃないかというふうに考える次第でございます。特に現場検査をしない
建築基準法の施行というのは問題外でございます。現場検査は非常な手間を要します。そういったような点にでも大いに活用して、
行政の円満な進展をはかっていただきたいと思います。
最後に、
先生方にひとつ御配慮願いたいと思うのでありますが、この案の附則を拝見いたしますと、まあいろんな事情があったと思いますが、この法は、
改正法が成立いたしますと、公布後施行まで一年間の余裕がございます。ただ、地域地区につきましては、その後さらに三年間の余裕があるわけであります。まあ新たになりますところでは、それくらいの時間がなければできないのかもしれませんが、東京、大阪のような大
都市で権利関係が非常にふくそういたしまして、特に先ほど今さんからも御
発言になりましたように、今度の緩和というのが発表されまして、それを待ちに待ってるという人が相当あるという
状況におきまして、この限度のきりきり一ぱい
——公布になりましてから合計四年でございます。こんな長い間待たされたんでは、とても法の施行、
執行はできないんじゃないか。もっとこの点につきましては、できるならば
原則としては法施行と同時に地域が変わっていくというような御努力を願いたい。まあ、その辺のところにつきまして特段の御配慮を仰ぎたい。
まあ、私といたしましては、今度の
改正がもうこれですべてではないという前提に立ちまして、今回の
改正は一刻も早く成立することを望むものでございます。