○
政府委員(
川島博君)
法律案の第二条の二項をちょっとごらんいただきますと、いわゆる正常な
価格は
最後の二行目にございますように、「(当該
土地に建物その他の定着物がある場合又は当該
土地に関して地上権その他当該
土地の使用若しくは
収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる
価格)」とございます。したがいましてここで公示しようとする
価格は、まさに完全
収益価格でございます。したがいましてかりに正常
価格が坪一万円というふうに公示されましても、その一万円を
地主が何ぼ取る、借地人が何ぼ取るかということは、この公示
制度自体からは
判断がつかないわけでございます。これは全く別途の問題でございます。ただその場合に、この借地権
価格と底地権
価格というものは、大体商慣習として確立をしておりまして、たとえば借地権利金のやりとりという慣習のない関西においては、
地主の取り分が非常に多い。それに
比較いたしまして関東地方におきましては
土地を貸す場合に借地権利金としていわゆる所有権
価格の七割ないし八割もを
地主が先取りするという慣行がございます。その場合には当然売った場合にその取り分はその借地人のほうが非常に多く取る、これは当然でございます、先に払ってあるわけでございますから。したがいまして、御説のように、
地主が五割取るか六割取るか七割取るかという争いが、そうあるわけではございません。しかしながら、そういう争いが——
地主も欲の皮が突っ張っておりますから、先に七割権利金としていただいても、また売るときには半分よこせとか七割よこせという欲張った
地主もあるわけでございます。その場合に、たとえば補償の場合には、これはしかし最終的にはこの
公示価格で正常
価格が一万円ときまりました場合にも、その取り分について争いがある場合には、当然、これは収用
委員会で争う、最終的には民事訴訟で争うという道が開かれております。その場合には、収用
委員会なりあるいは裁判所が、これは
地主が三割でがまんすべきである、二割でがまんすべきであるという最終的な
判断を示して話はきまるわけでございますが、大体の商慣習として、ここらの
土地は大体何ぼは
地主の取り分であるということは大体きまっておるわけでございまして、そうたくさんトラブルがあるわけではございません。また、それに対する救済の道も開かれているということを申し上げたかったわけでございます。
それからもう
一つ、公共補償の場合には、公共団体等が公共用地を取得する場合には、どうも財産権の物理的な
価格だけの補償でどうしても生活権が脅されるというような問題は確かにございますが、しかし、この場合には、この正常な
取引価格を用地補償として支払うほかに、いわゆる通損補償といたしまして、たとえば物件移転料とか、あるいは休業補償とか、そういう形でもろもろの物的損害は別に支払うことになっておりますので、両々合わせまして、やはり、従前の生活、あるいは営業が十分償って続けられるという形において、
現実には補償が行なわれておるわけでございます。