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1969-05-08 第61回国会 参議院 建設委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月八日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  五月七日     辞任         補欠選任      向井 長年君     高山 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岡  三郎君     理 事                 大森 久司君                 山内 一郎君                 沢田 政治君     委 員                 上田  稔君                 小山邦太郎君                 高橋文五郎君                 塚田十一郎君                 中津井 真君                 林田悠紀夫君                 柳田桃太郎君                 米田 正文君                 田中  一君                 松永 忠二君                 松本 英一君                 二宮 文造君                 宮崎 正義君                 高山 恒雄君                 春日 正一君    国務大臣        建 設 大 臣  坪川 信三君    政府委員        法務省民事局長  新谷 正夫君        大蔵大臣官房審        議官       細見  卓君        建設大臣官房長  志村 清一君        建設省計画局長  川島  博君        建設省河川局長  坂野 重信君        建設省住宅局長  大津留 温君    事務局側        常任委員会専門        員        中島  博君    参考人        東京財務局長  萩本 俊助君        東京住宅局長  伊藤 節三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○地価公示法案内閣提出衆議院送付) ○急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律  案(第五十八回国会内閣提出、第六十一回国会  衆議院送付) ○公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 岡三郎

    委員長岡三郎君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。昨七日向井長年君が委員を辞任され、その補欠として高山恒雄君が選任されました。     —————————————
  3. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  公営住宅法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会東京財務局長萩本俊助君及び同住宅局長伊藤節三君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 地価公示法案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。坪川建設大臣
  6. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) ただいま議題となりました地価公示法案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  近年における地価高騰は、基本的には、産業、人口の急激な都市集中等による土地需給の著しい不均衡に基づくものでありますが、さらに、土地は他の諸財と異なり、合理的な市場価格形成がきわめて困難であることから、不当な付け値による取引価格が容易に一般化し、実勢をこえた地価高騰をもたらしている場合も多いものと認められます。  このため、公共用地取得価格公共事業相互間において必ずしも統一されているとはいいがたく、しかもこの公共用地取得価格周辺に影響を与えて、一般地価水準を引き上げているとの批判も少なくないのであります。  このような事態に対処するためには、土地取り引きがひんぱんに行なわれる都市地域標準地について、その正常な価格公示する制度確立して、適正な地価形成に寄与する必要があるものと考えられるのであります。  この制度確立につきましては、昭和三十九年五月、衆議院会議における「地価安定施策強化に関する決議」で御指摘を受けまして以来、政府といたしましても種々検討を重ねてまいったのでありますが、昨年十一月住宅宅地審議会からの「地価公示制度確立に関する答申」もあり、ここにその成案を得るに至りましたので、この法律案提出することといたした次条であります。  次に、この法律案要旨を御説明申し上げます。  第一に、この法律は、都市地域において、標準地の正常な価格公示して、一般土地取引価格に対して指標を与え、及び公共用地取得価格算定等に資し、もって適正な地価形成に寄与することをその目的といたしております。  第二に、土地鑑定委員会は、建設省令で定める市街化区域内の標準地について、毎年一回、二人以上の不動産鑑定士等鑑定評価を求め、その結果を審査、調整して判定した正常な価格を、標準地面積形状利用現況等とともに官報公示し、あわせて関係市町村において一般閲覧に供することといたしております。  第三に、公共事業施行者公共用地取得価格算定する場合及び不動産鑑定士等土地鑑定評価する場合には、公示価格規準としなければならないこととし、収用委員会が収用する土地に対する補償金算定する場合にも、公示価格規準とした価格を考慮しなければならないものといたしております。  第四に、建設省に、土地鑑定委員会設置し、地価公示に関すること及び不動産鑑定士試験に関すること等の事務を行なわせることといたしております。この土地鑑定委員会は、委員七人をもって組織し、そのうち六人は、非常勤としております。これらの委員は、両議院同意を得て建設大臣任命することといたしております。  第五に、標準地鑑定評価等に伴う土地立ち入り及びこれによる損失補償土地鑑定委員会鑑定評価命令等地価公示に関して必要な事項を定めております。  第六に、この法律は、本年七月一日から施行することとし、最初に行なう地価公示は、施行の日から十月をこえない範囲内において別に定める日に行なうことといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださるよう御願い申し上げます。
  7. 岡三郎

    委員長岡三郎君) この際、引き続き補足説明を聴取いたします。川島計画局長
  8. 川島博

    政府委員川島博君) ただいま議題になりました地価公示法案につきまして、逐条的に御説明申し上げます。  この法律案は、六章二十九条と附則九項からなっております。  第一章総則。本章は、この法律目的規定したものであります。  第一条は、この法律目的を定めたものであります。この法律は、都市及びその周辺地域におきまして、標準地選定し、その正常な価格公示することにより、一般土地取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もって適正な地価形成に寄与することを目的といたしております。  第二章地価公示手続本章は、地価公示実施に関し、必要な手続規定しております。  第二条は、地価公示実施地域及び標準地価格判定方法等について定めたものであります。  すなわち、土地鑑定委員会は、建設省令で定める市街化区域内の標準地につきまして、毎年一回、二人以上の不動産鑑定士または不動産鑑定士補鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行なって、一定基準日における当該標準地単位面積当たりの正常な価格判定し、これを公示することといたしております。この場合におきまして、「正常な価格」とは、土地について、自由な取引において通常成立すると認められる価格をいうものといたしております。  第三条は、標準地選定基準について定めておりまして、標準地は、自然的及び社会的条件から見て類似の利用価値を有すると認められる地域におきまして、土地利用状況環境等が通常と認められる一団の土地について選定することといたしております。  第四条は、不動産鑑定士または不動産鑑定士補は、標準地鑑定評価を行なうにあたっては、建設省令で定める基準により、近傍類地取引価格から算定される推定の価格等を勘案して、これを行なわなければならないことといたしております。  第五条は、標準地鑑定評価を行なった不動産鑑定士または不動産鑑定士補は、土地鑑定委員会に対し、鑑定評価額等を記載した鑑定評価書提出しなければならないことといたしております。  第六条は、標準地価格等公示方法について定めたものであります。  すなわち、土地鑑定委員会は、標準地価格判定したときは、標準地所在標準地単位面積当たり価格及び価格判定基準日標準地地積及び形状標準地及びその周辺土地利用現況等官報公示しなければならないことといたしております。  第七条は、公示にかかる事項を記載した書面等関係市町村での閲覧について定めたものであります。  すなわち、土地鑑定委員会は、地価公示をしたときは、関係市町村の長に対して、公示した事項のうち当該市町村が属する都道府県に存する標準地にかかる部分を記載した書面及び当該標準地所在を表示する図面を送付しなければならないこととし、関係市町村の長は、前項の図書を当該市町村事務所におきまして一般閲覧に供しなければならないことといたしております。  第三章 公示価格効力本章は、公示された価格効力について規定しております。  第八条は、不動産鑑定士等土地についての鑑定評価準則について定めたものであります。  すなわち、不動産鑑定士または不動産鑑定士補は、地価公示実施されている市街化区域内の土地について鑑定評価を行なう場合において、当該土地の正常な価格を求めるときは、公示価格規準としなければならないことといたしております。  第九条は、公共事業の用に供する土地取得価格算定準則について定めたものであります。  すなわち、土地収用法その他の法律によって土地を収用することができる事業を行なう者は、地価公示実施されている市街化区域内の土地当該事業の用に供するため取得する場合において、当該土地取得価格を定めるときは、公示価格規準としなければならないことといたしております。  第十条は、収用する土地に対する補償金の額の算定準則について定めたものであります。  すなわち、収用委員会は、土地収用法第七十一条の規定により、地価公示実施されている市街化区域内の土地について、当該土地に対する事業の認定の告示の時における相当な価格算定するときは、公示価格規準として算定した当該土地価格を考慮しなければならないことといたしております。  第十一条は、第八条から第十条までの場合において、「公示価格規準とする」とは、対象土地価格を求めるに際しまして、当該対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる一または二以上の標準地との位置、地積環境等土地価格に作用する諸要因についての比較を行ない、当該標準地公示価格当該対象土地価格との間に均衡を保たせることをいうことといたしております。  第四章土地鑑定委員会本章は、土地鑑定委員会設置組織等について規定しております。  第十二条は、この法律及び不動産鑑定評価に関する法律に基づく権限を行なわせるため、建設省に、土地鑑定委員会設置することといたしております。  第十三条は、土地鑑定委員会所掌事務は、地価公示に関すること、不動産鑑定士試験に関すること、その他法律の定めるところにより委員会権限に属させられた事項を処理することとし、土地鑑定委員会は、その所掌事務を行なうため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体に対し、資料の提出意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができることといたしております。  第十四条は、土地鑑定委員会は、委員七人をもって組織し、委員のうち六人は、非常勤とすることといたしております。  第十五条は、委員の資格、任免等について定めております。  すなわち、委員は、不動産鑑定評価に関する事項または土地に関する制度について学識経験を有する者のうちから、両議院同意を得て、建設大臣任命することとし、委員の任期は三年とすることといたしております。  また、禁治産者、準禁治産者もしくは破産者で復権を得ないもの、または禁錮以上の刑に処せられた者は、委員となることができないこととし、これに該当するに至った場合以外は、罷免についても両議院同意を要することといたしております。  第十六条は、土地鑑定委員会委員長を置き、委員の互選によってこれを定めることといたしております。  第十七条は、土地鑑定委員会は、委員長及び三人以上の委員出席がなければ、会議を開き、議決をすることができないこととし、土地鑑定委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決することといたしております。  第十八条は、委員の服務について定めたものであります。  すなわち、委員秘密保持義務及び政治的行為の制限並びに常勤の委員営利事業からの隔離について規定しております。  第十九条は、委員給与は、別に法律で定めることといたしております。  第二十条は、土地鑑定委員会の庶務は、建設省計画局において処理することといたしております。  第二十一条は、この法律に定めるもののほか、土地鑑定委員会に関し必要な事項は、政令で定めることといたしております。  第五章雑則。本章は、土地立ち入り及びこれに伴う損失補償不動産鑑定士等秘密保持義務鑑定評価命令及び不動産鑑定評価に関する法律特例に関する事項規定したものであります。  第二十二条は、委員または土地鑑定委員会の命を受けた者もしくは委任を受けた者は、標準地鑑定評価もしくは価格判定または標準地選定を行なうために他人の占有する土地に立ち入って測量又は調査を行なう必要があるときは、その必要の限度において、他人の占有する土地に立ち入ることができることといたしております。  この場合においては、土地に立ち入ろうとする者は、立ち入ろうとする日の三日前までに、その旨を土地占有者に通知しなければならないこととし、土地占有者は、正当な理由がない限り、立ち入りを拒み、または妨げてはならないことといたしております。  第二十三条は、建設大臣は、土地立ち入りにより他人損失を与えたときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失補償しなければならないこととし、損失補償について、建設大臣損失を受けた者との協議が成立しないときは、建設大臣又は損失を受けた者は、収用委員会に裁決を申請することができることといたしております。  第二十四条は、標準地鑑定評価を行なった不動産鑑定士または不動産鑑定士補は、正当な理由がなく、その鑑定評価に際して知ることのできた秘密を漏らしてはならないことといたしております。  第二十五条は、土地鑑定委員会は、標準地鑑定評価のため必要があると認めるときは、不動産鑑定士または不動産鑑定士補に対し、鑑定評価を命ずることができることとし、この命令により標準地鑑定評価を行なった不動産鑑定士または不動産鑑定士補に対しては、旅費及び報酬を支給することといたしております。  第二十六条は、不動産鑑定評価に関する法律特例について定めたものであります。  すなわち、不動産鑑定士または不動産鑑定士補が行なう標準地鑑定評価については、不動産鑑定評価に関する法律不動産鑑定業に関する規定は、適用がないことといたしております。  第六章罰則本章は、罰則に関する事項規定したものであります。  第二十七条は、標準地鑑定評価について虚偽の鑑定評価を行なった者または標準地鑑定評価に際して知ることのできた秘密を漏らした者は、六月以下の懲役もしくは五万円以下の罰金に処し、またはこれらを併科することといたしております。  第二十八条は、標準地選定標準地鑑定評価等のための土地立ち入りを拒み、または妨げた者は、十万円以下の罰金に処することといたしております。  第二十九条は、土地鑑定委員会標準地鑑定評価を命ぜられた者が、正当な理由がなく、鑑定評価を行なわないとき、または鑑定評価書提出しないときは、一万円以下の過料に処することといたしております。  最後に附則でありますが、附則におきましては、この法律施行期日を定めるほか、最初に行なう地価公示等特例最初委員任命並び建設省設置法特別職職員給与に関する法律特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律及び不動産鑑定評価に関する法律の一部改正に関する事項等規定しております。  附則第一項は、この法律施行の日について定めております。すなわち、この法律は、昭和四十四年七月一日から施行することといたしておりますが、第十五条第一項中両議院同意を得ることにかかる部分は、公布の日から施行することといたしております。  附則第二項及び附則第三項は、最初に行なう地価公示等特例について定めております。  すなわち、建設省令で定める都市計画区域昭和四十五年一月一日までに市街化区域が定められていないものについては、当該都市計画区域にかかる市街化区域が定められ、当該市街化区域内の標準地について地価公示があるまでの間、当該都市計画区域にかかる用途地域市街化区域とみなして、この法律規定適用することとし、この法律施行最初に行なう地価公示は、この法律施行の日から起算して十月をこえない範囲内において別に定める日にするものといたしております。  附則第四項は、この法律施行最初任命される委員任命について、国会の閉会または衆議院の解散のために両議院同意を得ることができないときは、建設大臣は、両議院同意を得ずに委員任命することができることとし、この場合には、任命後の最初国会において両議院の事後の承認が得られないときは、直ちに、その委員を罷免しなければならないことといたしております。  附則第五項は、建設省設置法の一部を改正して、地価公示法施行に関する事務建設省所掌事務に加えること及び土地鑑定委員会設置して、不動産鑑定士審査会を廃止することを定めております。  附則第六項及び附則第七項は、特別職職員給与に関する法律及び特別職職員給与に関する法律等の一部を改正する法律の一部を改正して、土地鑑定委員会委員が受ける給与を定めております。  附則第八項は、不動産鑑定評価に関する法律の一部を改正して、不動産鑑定士審査会を廃止し、不動産鑑定士審査会所掌事務土地鑑定委員会が引き継ぐこととし、附則第九項は、これに伴う経過措置を定めております。  以上をもちまして、この法律案逐条ごと説明を終わります。
  9. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 本案につきましては、本日はこの程度とし、質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  10. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 次に、急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。坪川建設大臣
  11. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律案提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  わが国においては、近年、集中豪雨等のために急傾斜地崩壊による災害が頻発し、特に一昨年兵庫、広島、長崎、佐賀、新潟等の各地において、急傾斜地崩壊により多数の犠牲者を出したことは、なお記憶に新たなところでありまして、かかる事態に対処し、急傾斜地崩壊による災害から国民の生命を守ることは、きわめて緊要なことと存ずる次第であります。  従来、急傾斜地崩壊による災害防止については、砂防法宅地造成等規制法等適用される地域については、これらの法律規定に基づいて対策を講じてまいり、これらの法律適用対象とならない地域につきましても、昭和四十二年度から都道府県施行する崩壊防止工事に対する助成措置を講ずることにより、その災害防止につとめてきたところであります。しかしながら、急傾斜地崩壊による災害防止について万全を期するためには、有害な行為規制強化、急傾斜地における崩壊防止工事施行等により積極的に急傾斜地崩壊防止をはかる一方、急傾斜地崩壊による被害を軽減するための警戒避難体制の整備、住宅移転に対する融資等所要措置を講じ、急傾斜地崩壊による災害防止のための総合的な対策確立する必要があるのであります。  以上がこの法律案提出した理由でありますが、次にこの法律案要旨について、御説明申し上げます。  まず第一に、急傾斜地崩壊危険区域制度を設けることにいたしたことであります。都道府県知事は、市町村長意見を聞いて、その崩壊により相当数居住者等に危害が生ずるおそれのある急傾斜地等を急傾斜地崩壊危険区域として指定することとし、この法律案適用される範囲を明らかにしたのであります。  第二は、急傾斜地において有害な行為を行なう者及び急傾斜地土地所有者等に対する規制措置を定めたことであります。急傾斜地崩壊危険区域内における急傾斜地崩壊を助長し、または誘発するおそれのある一定行為都道府県知事の許可にかからしめるとともに、これらの行為に伴う急傾斜地崩壊防止するため必要があるときは、都道府県知事は、土地所有者行為者等に対し、急傾斜地崩壊防止工事施行を命ずることができることとしたのであります。また、一般に、急傾斜地崩壊危険区域内の土地所有者等に対しても、都道府県知事は、急傾斜地崩壊による災害防止するために必要な措置をとることを勧告することができることといたしました。  第三は、都道府県施行すべき急傾斜地崩壊防止工事範囲を明らかにしたことであります。都道府県は、宅地造成その他の行為に伴って必要を生じた工事以外の工事で、その急傾斜地所有者被害を受けるおそれのある者等施行することが困難または不適当と認められるものを、施行するものといたしました。  なお、都道府県施行する急傾斜地崩壊防止工事については、国がこれに要する費用の二分の一以内を補助することができることといたしております。  第四は、急傾斜地崩壊による災害防止するため、都道府県または市町村は、急傾斜地崩壊危険区域内における急傾斜地崩壊による危険の著しい区域を、建築基準法による災害危険区域として指定することとしたことであります。  第五は、急傾斜地崩壊による災害防止し、または軽減するために、市町村地域防災計画に、急傾斜地崩壊危険区域ごとに、災害に関する情報の収集及び伝達、避難救助等警戒避難体制に関する事項を定めることとしたことであります。  第六は、都道府県知事の勧告を受けて、急傾斜地崩壊により被害を受けるおそれのある住宅移転等を行なう者に対して、これを容易ならしめるため、所要の資金を住宅金融公庫から融資することとしたことであります。  以上がこの法律案提案理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  12. 岡三郎

    委員長岡三郎君) この際、引き続き補足説明を聴取いたします。坂野河川局長
  13. 坂野重信

    政府委員坂野重信君) 急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律案について、逐条的に御説明申し上げます。  第一条は、急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律案目的に関する規定でございまして、本法案が急傾斜地崩壊防止するとともに、急傾斜地崩壊に対しての警戒避難体制を整備する等の措置を講ずることにより、急傾斜地崩壊による災害から国民の生命を保護し、もって民生の安定と国土の保全に資するものであることを明らかにいたしたものであります。  第二条は、本法案において用いられる用語の定義に関する規定でございます。本法案におきまして「急傾斜地」とは、傾斜度が三十度以上である土地を言うものとしております。「急傾斜地崩壊防止施設」とは、後ほど御説明申し上げます急傾斜地崩壊危険区域内にある擁壁、排水施設等急傾斜地崩壊防止する機能を有する施設をいうのでありまして、かかる機能を有する施設は設置者、所有者または管理者のいかんにかかわらず急傾斜地崩壊防止施設として取り扱われているのであります。「急傾斜地崩壊防止工事」とは、急傾斜地崩壊防止施設の設置等急傾斜地崩壊危険区域内で行なわれる急傾斜地崩壊防止するための工事をいうものとしております。  第三条は、急傾斜地崩壊危険区域の指定に関する規定でございます。  第一項は、都道府県知事の急傾斜地崩壊危険区域の指定の権限、指定の範囲及び指定の手続規定したものであります。この法律は、全国すべての急傾斜地適用されるものではなく、人命保護の見地から防護する必要のある急傾斜地区域適用しようとするものでありまして、都道府県知事が、その崩壊により相当数居住者等に危害が生ずるおそれのある急傾斜地及びこれに隣接する土地で急傾斜地崩壊を助長、誘発するおそれのあるものを、市町村長意見を聞いて指定することとしたものであります。  第二項は、急傾斜地崩壊危険区域の指定の範囲の限界を定めたものでありまして、指定によりその区域内におきましては行為の制限等が行なわれるものでありますから、必要最小限度に限るべきものであるとの趣旨であります。  第四項及び第五項は、都道府県知事が急傾斜地崩壊危険区域を指定または廃止した場合には公示するとともに関係市町村長に通知するものとし、この公示があった場合に区域の指定または廃止の効力が生ずることとしたのであります。  第四条は、急傾斜地崩壊危険区域の指定にあたっては、必要に応じ現地調査を行なうものとし、区域指定の慎重を期したものであります。  第五条は、前条の調査を行なうために必要な場合には、他人土地立ち入り、または他人土地を一時使用することができることとし、そのための手続立ち入りまたは一時使用による損失補償について規定したものであります。  第六条は、急傾斜地崩壊危険区域の指定があったときは、都道府県は当該区域内に標識を設置するものとした規定でございまして、これにより国民一般に危険な急傾斜地を知らしめ、警戒を促すとともに、行為が制限される地域を明らかにしようとしたものであります。  第七条は、急傾斜地崩壊危険区域内における行為制限の規定でございまして、急傾斜地崩壊を助長、誘発するおそれのある一定行為は、都道府県知事の許可を受けなければしてはならないこととし、急傾斜地崩壊防止しようとする趣旨でございます。しかし政令で定める軽微な行為等については本条の許可を要しないこととなっております。  第二項は、許可に急傾斜地崩壊防止するために必要な条件を付することができる旨の規定であります。  第三項は、急傾斜地崩壊危険区域の指定の際すでに着手している行為については、許可手続は不要といたしましたが、行為の状況を届け出ることとし、都道府県知事行為の内容を的確に把握できるようにしたものであります。  第四項は、国または地方公共団体がこれらの行為をしようとする場合には、その地位の特殊性にかんがみ、許可を要せず、協議することをもって足りることとしたものであります。  第八条は、都道府県知事の許可を受けずに、その他違法に第七条に規定する行為を行なっている者に対し、許可の取り消し、行為の中止等必要な措置を命ずることができることとするとともに、その者を確知することができないときは、都道府県知事は、みずからその措置を行なうことができることとした規定であります。  第九条は、急傾斜地崩壊危険区域内における土地の保全等に関する規定であります。  第一項及び第二項は、急傾斜地崩壊危険区域内の土地所有者等は、急傾斜地崩壊による災害防止するために、土地を適正に維持管理するようつとめなければならないとともに、他方、急傾斜地崩壊により被害を受けるおそれのある者は、被害を除却または軽減するために必要な措置を講ずるようつとめるべきことを定めたものであります。第三項は、都道府県知事は急傾斜地崩壊による災害防止するために必要がある場合には、急傾斜地崩壊危険区域内の土地所有者等、急傾斜地崩壊により被災するおそれのある者等に対して、急傾斜地崩壊防止工事施行、家屋の移転等、防災上必要な措置をとることを勧告できることとしたものであります。勧告は強制力を有するものではありませんが、住宅金融公庫の融資措置をはかり、勧告の実効性を確保することとしております。  第十条は、都道府県知事が行なう改善命令に関する規定でございます。  急傾斜地崩壊による災害防止の万全を期するために、急傾斜地崩壊危険区域指定前に行なわれた行為その他都道府県知事の許可を受けなければならない行為に伴って急傾斜地崩壊するおそれが著しい場合には、一定の要件のもとに、土地所有者行為者等に対し、急傾斜地崩壊防止工事施行を命ずることができることとしたものであります。  第十一条は、行為の許可その他この法律に基づく権限を行使するため必要があるときは、都道府県知事またはその命じた者は、土地等に対して立ち入り検査することができる旨を規定したものでございます。  第十二条は、都道府県施行する急傾斜地崩壊防止工事に関する規定であります。  第一項は、都道府県施行すべき急傾斜地崩壊防止工事範囲を明らかにしたもので、都道府県は、第七条第一項各号に掲げる行為に伴って必要を生じた工事以外の工事で、その急傾斜地所有者被害を受けるおそれのある者等施行することが困難または不適当と認められるものを施行するものとするとした規定であります。  第二項は、砂防指定地、保安林、地すべり防止区域等においては、それぞれ砂防法、森林法または地すべり等防止法に基づき、砂防工事、保安施設事業、地すべり防止工事等として、急傾斜地崩壊防止工事施行されることとなっておりますので、これらの地域においては、重複を避けて、本法の規定による急傾斜地崩壊防止工事施行しないこととしたものであります。  第三項は、漁港区域、港湾隣接地域または海岸保全区域における急傾斜地崩壊防止工事施行に際しては、それぞれの区域の管理者と協議することとし、調敷をはかった規定であります。  第十三条は、都道府県以外の者が急傾斜地崩壊防止工事施行する際には、都道府県知事に通知または届け出させることとした規定でございます。  第十四条は、急傾斜地崩壊防止工事を、有効かつ適切なものとするためにその施行基準について規定したものであります。  第十五条は、砂防工事・保安施設事業にかかる工事、地すべり防止工事等については、それぞれ急傾斜地崩壊防止について考慮されているので、都道府県知事への通知の規定及び施行基準に関する規定は、適用しないこととしたものであります。  第十六条は、付帯工事に関する規定でありまして、他の土木法規の例に従って規定したものであります。  第十七条は、都道府県知事が急傾斜地崩壊防止工事施行する場合における土地立ち入り土地の一時使用についての規定であります。  第十八条は、都道府県が急傾斜地崩壊防止工事施行する場合において、その付近の土地につき損失を生ずる場合における損失補償に関する規定でございます。  第十九条は、建築基準法による災害危険区域の指定に関する規定でございます。都道府県等は、急傾斜地崩壊危険区域の指定があったときは、その急傾斜地崩壊による危険の著しい区域災害危険区域として指定するものとしたもので、これにより危険な地域における住宅等の建築を制限または禁止し、急傾斜地崩壊によって生ずる被害防止または軽減しようとするものであります。  第二十条は、災害対策基本法による市町村地域防災計画に、急傾斜地崩壊危険区域ごとに急傾斜地崩壊による災害防止するため必要な警戒避難体制に関する事項を定めるべき旨を規定したものでございます。  第二十一条は、国は、都道府県施行する急傾斜地崩壊防止工事に要する費用について、その二分の一以内を補助することができる旨の規定でございます。  第二十二条は、付帯工事に要する費用に関する規定でありまして、他の土木法規の例に従って規定したものであります。  第二十三条は、都道府県の急傾斜地崩壊防止工事により著しく受益する者があるときには、受益者負担金を徴収することができる旨を定めたものであります。  第二十四条は、都道府県知事の勧告を受けて家屋を移転する者及び都道府県知事の勧告または命令を受けて住宅の敷地について急傾斜地崩壊防止工事を行なう者に対する資金の貸し付けは、住宅金融公庫法の定めるところによって行なわれる旨の規定であります。  第二十五条は、都道府県設置する急傾斜地崩壊防止施設のために国有地を無償貸し付けまたは譲与することができる旨の規定であります。  第二十六条は、都道府県知事土地所有者等に対する報告徴収の権限を定めた規定であります。  第二十七条から第三十条までは、本法の規定に違反した場合における罰則規定でございまして、これにより本法の規定が順守されるようはかったものであります。  次に、附則でございますが、第一項は本法の施行期日に関するものでございまして、公布の日から三カ月以内において別に政令で定める日から施行することといたしたのであります。  第二項は、新たに本法の施行のための事務が生ずることに伴い、建設省設置法の一部を改正しようとするものであります。  第三項は、都道府県知事の勧告を受けて家屋を移転する者等に対する資金の貸し付けに関する規定を設けるため、住宅金融公庫法の一部を改正しようとするものであります。  第四項は、急傾斜地崩壊防止工事のため必要な土地を収用することができるように土地収用法の一部を改正しようとするものであります。  第五項は、家屋の移転等に要する資金の貸し付けに関する住宅金融公庫法の一部改正に伴って必要となった北海道防寒住宅建設等促進法の一部改正をしようとするものであります。  第六項は、急傾斜地崩壊防止工事の附帯工事が海岸保全施設に関する工事であるときは、海岸法に対して本法の規定を優先させることとして、その調整をはかったものであります。  以上がこの法律案の逐条説明でありますが、何とぞ御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  14. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 本案につきましては、本日はこの程度とし、質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  15. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 次に、公営住宅法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次、御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  16. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をつけて。
  17. 春日正一

    ○春日正一君 初めに、公営住宅を中心とする政府住宅政策について、大筋をお聞きしたいんですが、この公営住宅法によると、低所得者のための低家賃住宅を供給するというふうになっていることになっているのですが、この低額所得者というのはどこまでを低額所得者というように見ているのか。その点ひとつ。
  18. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 低額所得者の特に定義というようなものはございませんけれども、そのときどきの社会情勢から見まして、所得が比較的低い方々というふうに考えていいんじゃなかろうか。具体的に申しますと、現在の五カ年計画におきましては、勤労所得者の中で低いほうから、四〇%程度以下の方々を対象に計画を立てておるわけでございまして、一応、そういう方々を対象とするというふうに、現在は考えております。
  19. 春日正一

    ○春日正一君 その説明ですが、具体的に言えば、現在入居基準が四万円ということになっておって、これにいろいろの控除その他を入れると八十三万五千ですか、年収にすると。大体そういうことになっておるのですけれども、そうすると、ことしの税法で言うと、五人家族で免税点が九十三万ということになっているわけですね。それより低い、つまり、税金を納められないようなものよりも低いものということに限定しているわけですか。
  20. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 年収八十三万五千円と申しますのは、標準家族の場合でございますから、五人家族の場合と数字がちょっと整合いたしませんけれども、この入居基準というのは免税点と必ずしも合わせるということは考えておりませんが、先ほど申しましたように、比較的所得の低い方々というので、勤労所得者の方で四〇%程度以下の方という見当で定めておるわけでございます。
  21. 春日正一

    ○春日正一君 その比較的低いという非常にばく然たる規定ですが、それを所得の順位からいって下のほうからまあ四〇%までというふうにきめた根拠はどこにあるのですか。
  22. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 五カ年計画を策定いたします段階で、いろいろ政府施策の住宅対象別に計画を立てたわけでございますが、その際にやはり所得に応じましていろいろな供給の政策を立てるという段階で、一応公営住宅は低所得者の方々のためということから勤労所得者の中の四〇%程度以下の方ということに計画を立てたわけですが、特別の根拠というようなものはございません。
  23. 春日正一

    ○春日正一君 全くこれは恣意的にきめたということですか。で、私は、この程度の収入の者だったら、当然政府、自治体が責任をもって住宅を供給する義務があると、この点まではやらなければならぬというような判断でおきめになったと思っておったのですけれども、そうではなくて、ただばく然と、まあそのくらいにしておこうというような無責任なきめ方をしたのですか。
  24. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 先ほどから申し上げておるとおりでございまして、まあ無責任というようなつもりはございませんが、やはり低所得者の方々につきましては、国、公共団体ができるだけ手厚い援助の方策をすべきだという観点からそういうところにめどを置いて計画を立てたと、こういうわけでございます。
  25. 春日正一

    ○春日正一君 もう一ぺん聞きますが、できるだけ手厚いということは、結局その程度の所得の人には国や自治体がめんどうを見なければならぬだろうと、そういう判断があったわけでしょう、その点どうですか。
  26. 大津留温

    政府委員(大津留温君) その程度の所得の方々に対しましては、現在公営住宅あるいは改良住宅というような施策で住宅を提供するのが適当であろうというふうに判断したわけでございます。
  27. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、この八十四万、大ざっぱにですね——八十三万五千、それ以下の所得層というのは戸数にしてどのくらいありますか。そうしてそれらの所得層の中での住宅不足率といいますか、求められている率はどのくらいありますか。
  28. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 昭和三十八年の調査でございますが、いまの勤労者世帯のうちの四〇%以下の方々で住宅難の方々、これが二百二十二万世帯ございます。これは全体の住宅難世帯が四百三十万世帯でございますから、一般の普通の世帯数に対する住宅難の世帯の割合に比べますと、そういう四〇%以下の所得の低い方々の住宅難の割合というものが高くなっているという状況が見られます。
  29. 春日正一

    ○春日正一君 その数字で見ますと、いま局長答弁された八十四万以下、つまり国や自治体でどうしてもめんどうを見なきゃならぬという標準できめた階層の中にも非常に大きな二百二十万というような住宅難があるということは、公営住宅の絶対数が非常に不足しておるということの一つの論証になると思うんですけれども、その点どうですか。
  30. 大津留温

    政府委員(大津留温君) そういう階層の方々に対しましては、もちろん公営住宅あるいは改良住宅というものを提供するわけでございますが、そのほかにも、たとえば公庫融資の住宅あるいは公団の賃貸住宅、こういうものにつきましても入居の能力あるいは資格のあられる方もおられますから、そういうのも含めましてこれらの方々に対処をいたしたいという考えでおります。
  31. 春日正一

    ○春日正一君 それは絶対数が足りておるのかおらぬのかということを聞いておるんですよ。だからそういう人に対して、その人たちだって現に住んでいるのだから、どっかに住んでいるけれども、しかし不足数が二百二十万あるということを言われた。そうすると足りないのじゃないかと、そこを聞いておるんで、そこをはっきりしてくれればいいんです。
  32. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 御承知のように、五カ年計画におきます公営住宅の計画のトータルは五十二万戸でございますから、二百二十二万世帯に対しましては数が少ないということは御指摘のとおりでございますが、その他の施策等をあわせましてこれに対処したいと、こういう計画でございます。
  33. 春日正一

    ○春日正一君 足りないということをなかなか言いたがらないのですがね、あなたは。五カ年計画で五十万戸だからというようなことを言うけれども、五カ年計画の公約どおりいけば来年度ですか——は、一世帯一住宅が完了して住宅難がなくなるという約束になっているはずですわ。ところが、あなた方の資料で見ても依然として四百十六万ですか、何がしの住宅不足ができている。都市集中が激しいのだから、もっとふえてくるんだから、ただ三十八年の数字を持ち出して、これを五カ年間やったら五十万できるから、それがその分だけ減るというような考えじゃものが片づかないんで、現実に深刻な住宅難がある。特に低所得層にとりわけ強い住宅難がある。そこから見れば、現在建っておる公営住宅の数が百万戸少しよけいぐらいという数だし、それからこれから建てていく数にしたっていま言われたような五カ年間で五十万というような数字ですから、だから絶対数が足りないのだと、これはお認めになってもいいんじゃないか。あなた認められないなら大臣にお聞きしてもいいと思うんですが、どうですか。
  34. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) ただいまの御質問に対する住宅局長の答弁につきましての私の判断でございますが、建設省といたしましては、御承知のとおりに公営住宅に対する政府施策というものに最重点を置きながら、その建設の進捗につとめたい、こういう方針でおるような次第でございます。認める認めぬ問題の決して否定とか肯定とかあげ足取りとか、それに対するおことばを返すというような意味でなく、政府といたしましては一応のメドに対する、五十七五月に対する進捗率の七八%ができている。しかし、これに対して決してわれわれといたしましては、安易な気持ちを持って事足れりという感覚を持たずに、われわれといたしましては、やはり低所得者に対する住宅政策に最重点を置きながら進めてまいりたい、こういうような現在の方針でありますので、この点御了解いただきたい、こう思います。
  35. 春日正一

    ○春日正一君 私の言っている趣旨は、先ほど最初に触れたように低所得者八十三万五千円以下というのは、税金を納めなくていい所得階層ですから、当然国や自治体で住宅のめんどうは見なければならぬ最低限度のものとしてその程度までおきめになったのだろう。だとすれば、いま言ったような不足状態を見れば公営住宅が足りないのじゃないか。最低限それらの人に対する責任ぐらいは果たす必要があるのではないかということを言いたかったわけです。  そこでその次の問題ですけれども、それでは八十四万円以上の所得者の住宅対策、これは一体どうなっておるのですか。特に八十四万円、それから入ってから出ていけといわれる百五十万円までの間の人たち、この人たちの住宅不足はどのくらいあって、これはどのような住宅に入れようとしておるのか。
  36. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 先ほどの三十八年の調査はちょっと古うございまして恐縮ですが、いまの年収八十四万以上の方々の住宅不足の状況ですが、これの合計が二百十九万という数字になっておりますけれども、これらの方々に対しましては、住宅金融公庫の融資あるいは住宅公団の賃貸住宅、あるいは分譲住宅あるいは厚生年金の還元融資というような方法住宅を提供したい、こういう考えでおります。
  37. 春日正一

    ○春日正一君 それであれですか、それ以上の人たちの中で自分で家を建てることのできる人たちというのは、どのくらいあるというふうに見ておられますか。
  38. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 自分で家を建てることができるということは、必ずしも年の所得と並行的に能力があるとも言えないと思いますけれども、やはり所得の多い者ほどそういう能力があろうと思います。どの程度以上のものならというはっきりしためどを特に持っておるわけじゃございませんけれども、やはり所得の多い方ほどそういう能力が高いであろうというふうに思います。
  39. 春日正一

    ○春日正一君 人事院の四十二年の四月の標準生計費という調べでも四人世帯でもって全国平均で五万九千二百七十円、五人世帯で六万六千四百六十円というふうになって、この中で住居・光熱費が四人世帯で九千円、五人世帯で九千百四十円というふうに見込まれておる。この標準生計費というのは、人事院の調べというのはわりあい甘い、そんなことじゃとてもやれぬというふうに一般に批評されているものですけれども、しかも都市に来れば生計費が上がってくるということを考えると、いま言ったようなこれだけの金額ででも生活を維持してさらに住宅を持つために積み立て金をやる、あるいは元利返済を行なえるという人たちは、かなりな所得水準にならないと、一般的に言って——特殊な人は別ですよ、親の遺産があるとかなんとかいう人は。だけれども、一般的に言えばかなりの所得水準になりませんと、住宅を自分で買うということにはならないんじゃないかというように思うのですけれども、その点どうですか。
  40. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 現在民間自力の建設が年間九十万から百万近いものが建っております。この中の約半数が持ち家でございます。したがって、相当な持ち家が自力で建設されているというこれは実績が見られるわけでございますが、また一面、最近消費者金融というので住宅建設に対する融資が相当伸びてまいっております。また企業におきましても従業員の持ち家奨励策として住宅資金を貸しつけるという制度を始めた会社も出てきております。そういうような他からの借り入れというか援助を仰ぎながら、勤労者が自力で住宅を建設されるという傾向は相当見られるわけでございますけれども、しかし御指摘のように、それらの借り入れ金も、いずれ自分の勤労所得によって返済しなければならないわけでございますから、やはり相当額の収入がある者でないと容易でないということは、私どもも十分想像されます。
  41. 春日正一

    ○春日正一君 そこで貸し家に入るということですけれども、そうすると、公営住宅を除くといろいろ先ほど言われたようにこまかいものはありますけれども、公団住宅というものが政府の施策住宅としては中心になってくるわけです。この公団住宅の入居資格ですね、これは現在どうなっているのでしょうか。
  42. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 家賃の四倍以上の収入があるということを原則として入居資格ということにしております。
  43. 春日正一

    ○春日正一君 家賃の四倍というと、それは月に二万円なら月収八万円と、こういうことですか。
  44. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 年間のいろいろなボーナスその他の収入を含めましてそれを十二で割ったものが家賃の四倍以上、こういう基準でございます。
  45. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると最近できる公団ですね、新しい公団の家賃というのはどのくらいになっていますか。
  46. 大津留温

    政府委員(大津留温君) これは建てます場所により、あるいは規模によっていろいろございますが、いわゆる団地の中層アパートで面積が五十二平米程度のもの、これがことしの予算でいきますと一万五千二百四十六円という家賃になります。また、いわゆる面開発で都市内に高層で建てます場合は同じ広さのものにいたしまして家賃が二万三千九百三十一円、こういうことになる予定でございます。
  47. 春日正一

    ○春日正一君 そうしますと、一万五千円の四倍なら六万円ということですからあれですけれども、そういうところが必ずあるとは言えない。いま言ったように二万三千といったようなことになってくる。そうしますと、八十四万円と公団の入居基準との間に開きが出てきて入れない。だから、この中間の人が一番困るのですね。この前の公聴会の公述人の方も言われたけれども、つまり公営住宅には四万円以上だから入れない、しかし公団には入る資格がない、そこで六畳と三畳の部屋というようなところで親子五人暮らさなければならぬというようなこの人たちの住宅ですね、これをどうするのか。これは私この前からもこの矛盾、つまり公営住宅には入れないのだ、これ以上の者は入れないのだ、じゃ公団に入ろうと思うてもそれ以上収入が足りないから入れないのだ、この間をどうして埋めるのか。今度この住宅法を改正するなら、むしろそういうことを改正をして、せめて公団に入れない程度の人はもちろん公営住宅に入れるというような改正でもやると私は思っておったのです。ところがそうじゃないのですね、そこら辺どうなんですか。
  48. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 先日の公聴会におきまして公述人の方からそういう御趣旨のお話がございましたが、これはちょっと私誤解もあるのじゃないかというふうに伺ったわけでございます。と申しますのは、公営住宅の入居資格の月四万円というのは、御承知のとおり年収からいろいろなものを引いたいわば裸でございますから、これをもとになおしまして月額になおしますと六万九千何百円になる、約七万円近いものになります。したがいまして、公団の賃貸で団地の五十二平米程度の住宅でございますと、先ほど申しましたように六万円の月収があれば入居資格がございますから、その間に空隙はないものと私は考えております。しかし、市街地の高層アパートにおきましては、家賃が二万円以上のものがございますので、これに対しては確かに入れないという現状がございます。これにつきましては、大臣の御指示もございまして、いろいろいわゆる傾斜家賃というようなことで研究は進めておりますけれども、まだ実は結論を得ておりませんが、一般的には公団と公営の入居資格の間にはそういう連続性がございまして、空隙はなくて、どこにもいけないという方々はないように考えるわけでございます。
  49. 春日正一

    ○春日正一君 その問題は大臣もひとつよく考えていただいて、そういう矛盾がなくなるようにしてほしいと思います。  それからその次に、今度の全国総合開発計画ですね、この間きまった。あの見通しによると、六十年までに新たに約三千万戸ですね、二千九百万戸余りの住宅需要が生じて、その間に民間の住宅投資は百十兆ないし百二十兆円というように見込まれておるのですけれども、この約三千万戸の住宅をつくるという場合に、民間と公共ですね、これの比率をどのくらいに見込んでおいでになるのですか。
  50. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) いま御指摘になりました新たなる総合開発の試案として出てまいりました今後の住宅政策に対するところの展望等につきましても、私も熟読をいたしたのでございますが、特に住宅政策が重要な問題点として府政としていたさなければならない責任といいますか、使命観を私をそれを読みながら非常に痛感いたしたようなわけでございます。したがいまして、二千九百五戸、やはり三千万戸等を目標に置きましてこれの建設をいたすべきであることは当然でございます。したがって、民間の依存また政府施策による住宅の建設というものについての数の配分等につきましては、過般以来の委員会で私が申し上げましたごとく、新たなる五カ年計画の策定に対しましても、これらの点を十分踏まえまして数の配分等もひとつ真剣に、科学的といいますか、正確なる判断を下すべき段階に入りつつあるとこう考えておりますので、私といたしましては、いま直ちにその配分等の数字の具体的なことを軽々に申し上げるということは、もう少しやはりかすに時をもって、あらゆる客観的な点を真剣に取り上げました上において決定もいたしてまいりたい、こういうふうな気持でおりますので、いま直ちに具体的なパーセンテージあるいは数字の配分ということについては申し上げかねることを御賢察いただきたいと思いますが、ただ私といたしましては、頭に入れておきたい最も重点的な問題は、やはり低所得者に対するところの住宅を数の問題とともに質の問題等も考えながら推進をしてまいりたい、こういう所存でおることを御了承願いたいと思います。
  51. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、現在でも不足しておるし、特に低額所得者の場合は非常に住宅難が強いという現状、そしてさらに、この新しい総合開発計画で大都市に人口が密集してきて住宅需要は非常にふえてくるということが計画の中でももうこれは予想されているわけですね。しかもこの大都市に集中する人口、世帯の多くが低所得者と見ていいんじゃないか。いわゆる一般の勤労者、そういう人たちですから、当然それらの人たちが自分で家を建てるということになれば、それは限られたものになってくるということになります。やはりここで私は大臣に考えていただきたいのですけれども、そしてお考えをお聞きしたいのですけれども、この公営住宅というものに対する考え方といいますか、規定というか、これをいまはっきり変えるべき時期にきているんじゃないか。公営住宅ができた最初の事情は、二十六年、引き揚げ者があった、戦災者があった、そういう状態の中で低所得の人たち、住宅困窮者に安い家賃の住宅を提供するということから始まって、低額所得者のための低家賃住宅ということでずっと法でいままで引き継がれてきておるのですね。しかしいまでは、人口構成も非常に違ってきて一般の労働者、勤労者というような人たちが人口構成の中でもずっと多くなってきているし、特にこれから進められる総合開発計画というようなものによれば、それが一そう多くなってくる。都市に集中してきてそこに住宅需要が大量に発生してくるというような状態のときに、税金を納められない程度の人だけ国が責任を持って入れるということじゃなくて、国が政策として人口を都市に集中し住宅需要をつくり出しておるわけですから、当然国として勤労者に対する低家賃の住宅建設省自体が保障するというようなふうにこの公営住宅という概念を拡張しなければ、この計画で集中してくる人口なり住宅需要に対して、とてもじゃないけれどもこたえきれないで、非常に多くの矛盾が出てくるということになるのじゃないか、この辺についての大臣のお考えをお聞きしたいのですが。
  52. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 春日委員の低所得者に対する住宅の不幸を憂慮されましての御意見とまた御質問、私も深く傾聴いたしております。これにつきましては私はやはり言いのがれではございませんけれども、総合的な施策が必要であると、私はこう判断もいたし、また重点的にいたすということはさっき申し上げましたとおりでございます。その総合的な問題として解決点をどこに見出すかということにつきましていま御審議を願っておる、もう二十年以上を経過した公営住宅法の改正をお願いいたしまして、この不幸をなくしていくという一つの大きな一助になるということで期待をいたして、この法律の改正をお願いいたしておる気持ちもここにあるのでございます。とともに、総合的に考えますときに、私はいま事務当局に指示いたしておりますことは、さっきも局長が申しましたごとく、いわゆる傾斜家賃の制度の問題、これなども十分考えなければならぬのではないかということ、あるいは当委員会においておかげさまで議決をちょうだいいたしました都市再開発法による運営によりまして人の流れの、ことに都市集中におけるところの人の流れというものを横の流れから縦の流れにひとつ求めたい。それはいわゆる職住近接の立場からも土地と建物と住宅というものをひとつ縦に持っていきたいということから中高層の住宅政策を立てまして、そうして一つでもこれらの不幸をなくしていくといういわゆる縦への空間利用によるところの住宅政策をいたさなければならぬということ、私はそうした総合的な問題を十分ひとつあらゆる法の運営に関連いたしながら低所得勤労者の各位に対するところの住宅政策に全力を尽くしてまいりたいと、こういうような考えでおることを御了承願いたいと思います。
  53. 春日正一

    ○春日正一君 いま大臣の言われることもわかるのですけれども、しかし実際に五カ年計画でもって一世帯一住宅ということでやってきまして、それで今日でも四百十六万世帯が住宅難であるというようになって、人口がどんどん集まってくるのに追いつけない。それだけでなくて公営住宅の比率が全住宅建設の中で非常に低いために、結局分譲住宅とか最近行なわれている宅造工事のそういうところを買える人はいいけれども、買えない人たちのために都市の近郊で非常に狭い粗悪ないわゆる住宅、ここへ来た二人の公述人の女の方は、一人は六畳と三畳に五人で住んでおる、一人は六畳一間に四人で住んでおる、こういうような状態ですね、多かれ少なかれそれに似たような粗悪な住宅というものが出てこざるを得ない。しかも家賃は公営住宅は非常に高いというような、そういうのが出てきて、そこにスラムのような現象が出てくるし、一方ではもう少しましなところを考えれば、非常に遠隔な不便な、土地の安いところというところへ行くわけですから、スプロール現象というようなものが、それで促進されてくる。だから、スプロール現象が起きるとか、スラム現象が起きるというようなことは、それはやむなく出てきたということよりも、むしろ、政府のそういう政策上の欠陥からやはり生み出されてくるという要素が非常に強いと思うんですよ。そういうように考えていけば、住宅政策というものを考えていく上でも、今後、十五年くらいの間に三千万戸というような新しい住宅が必要とされる。しかも、その中には、自分で建てられない者がうんとたくさんいるのだということになれば——私の言いたいことは、つまり、公営住宅というものの位置づけですね、それをもっとはっきりさせて、比重をもっと高める、そうして低所得者の定額という古い規定でなくて、勤労者に対して、安くて住みよい住宅を国と自治体が保障するというようなところへ発展していくことが、公営住宅法の改正の基本的な方向だろうと、まあそういうふうに考えているわけですね。そういう意味から見て、大臣が、いまこの法律の今度の改正案は、そういう趣旨でもというふうに言われましたけれども、まさに私は逆行しているというふうに思います。そういう時代の趨勢なり、公営住宅に対する必然的な要求、政策的にもそう直していかなければならぬという方向に対してこれは逆行している。改正点の全部が逆行しているこんな改正案というものは、私は初めてだと思いますよ。いいところが一つもないんだから。幾らかいいところがあって、もう少し悪いところが入ってきたというならいいけれども、いいところは一つもないというような改正案ですね。  それで、その次に用地費の補助の問題ですけれども、打ち切りの問題ですけれども、この公営住宅の超過負担について、政府は四十三年度から三カ年計画で解消するというように言ってこられたんですけれども、その具体的な措置はどういうふうにやってこられましたか。
  54. 大津留温

    政府委員(大津留温君) この公営住宅工事費につきましては、四十二年度の決算の結果調べましたところが、超過負担率が七%ございまして、これを四十三年度から三カ年間で解消いたしますというお約束になっておるわけでございまして、この七%に当たる分を四十三、四十四、それから来年度と、三分の一ずつ、予算単価をそれだけアップいたしまして、解消するということで進めております。それから用地費につきましても、四十二年度の決算の結果四九・三%という超過率の実績が明らかになりましたので、これにつきましては、本年度低利融資に切りかえる際に、単価を七〇%近くアップいたしまして、これは四十四年度から解消するという計画でございます。
  55. 春日正一

    ○春日正一君 全国平均でまあ毎年七・七%ずつ上げていけば三年間で解消するという計算のようですけれども、東京都のほうを調べてみますと、四十三年度に比べて一平方メートル当たりで一〇・三%工事費が高くなっているのですね。だから七・七%アップしたのでは足りない。それが累積されていくと、こういうことになるわけですわ。だから、そういう点でも、この七・七%で工事費のほうの超過負担は解消しますということには実際ならない。そういうことになるわけですけれども、こういう場合はどうなんですか。特に大都市のような場合ですね、工事費というものを、そういう値上がりに対して、実態に即して単価をきめて補助するというような措置をとらなければ、これは三%ずつ年々累積されていってしまうということになるわけですけれども、その点どうですか。
  56. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 私どもの調べでは、四十二年度におきます東京都の超過負担九・四%ということになっております、工事費の場合。それで御指摘のように七・七%というのは全国の平均でございますから、これを実際に実施いたします場合には、そういった特に工事費が高い大都市東京、大阪のような場合、それからあるいは積雪寒冷地のような場合、それから離島というようなその地域ごとに単価を定めますので、御指摘のように東京都の場合におきましては、平均の七・七%を重点的に振り向けまして、三年間でこれを解消するという計画でおります。
  57. 春日正一

    ○春日正一君 そこで工事費でもそうですけれども、用地費になるといま御説明があったように、平均して四九%とかいうような非常に大きな超過負担になっている。だから、当然用地費というものが建設費の中では、特に大都市では非常な大きな比重を占めるわけですから、当然、それを国のほうから法律に基づいて埋めてやって、その超過負担を軽くするということで、住宅建設戸数をふやさしていくということにならなければならない。ところが今度の改正案を見ますと、用地費は超過負担が多過ぎるから、いっそ補助という制度をなくしてしまえ——それは補助しないということになれば超過負担というものはなくなりますよ。超過負担がひどいと文句を言うなら、それなら補助はやらないぞというのと同じことで、そういう何というか、措置というものは、これは何というか、ちょっと常識では考えられないのですね。超過負担がひどいから何とかしてくれと言ったら、そんなにひどければ、補助制度をなくしてしまえば超過負担そのものはなくなってしまうじゃないかというような論理ですね。だから、これは政府の責任を逃げることだと思うのです。この点では切りかえによって融資の基本額と実情に合わせた措置で超過負担はなくなる。そうして額もふえるから、まあさしあたっては建設戸数がふえるというようなふうに説明されておりますし、この間の参考人の大阪府の建築部長ですか、あの人もまあそんなうまいこと言っておりました。それで東京都の実例を調べてみますと、そうなってはないのですね。それで特に起債も、その融資の基本額については八五%ということですけれども、その起債の中身も、いわゆる国からとか、あるいは財政投融資みたいな安い資金ですね、これが七〇%、それから民間の起債、縁故債が三〇%というように私前説明聞いておったのですけれども、そういうふうに実際考えているのですか、起債の関係は。
  58. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 用地費に対します融資が二百八十六億でございますが、この中で七三%が政府資金、二七%が公募債、こういう割合でございます。
  59. 春日正一

    ○春日正一君 そういう説明だったんですが、東京都の場合見ますと、東京なんか一番公営住宅よけいつくるところですけれども、起債は、四十四年度の東京都の予算ですね、これで見て、東京都では政府資金が二五%、六分五厘、二十五年元利均等償還、それから縁故債七五%、七分三厘、二年据え置き七年償還、こうなっているんですね。これはどういうわけなんですか。東京都の場合、それは私、全国と逆になるというのはおかしな話だと思うんだけれども。
  60. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 起債におきましては、いわゆる富裕団体、まあ不交付団体とも申しますが、これに対しましては政府資金の割合が少ないというのが、従来からの扱いになっております。
  61. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると結局、六大都市のような大都市ですね、こういうところに一番人口が集中して特に住宅難が激しい。公営住宅というようなものはよけい建てなきゃならぬ。しかし、そういうところは金があるから、結局政府資金の融資は少なくして、そうして民間の非常に高い資金を融資を受けろというような扱いですね、そういう扱いをされておるわけですわ。そうすると結局、大都市住宅難を解消するということにブレーキをかけることになると思うんですけれども、その点どうですか。
  62. 大津留温

    政府委員(大津留温君) これは地方財政に対する援助でございますから、地方公共団体の財政力の強い弱いに応じまして資金を振り向けるというのも、地方財政政策としてはやはり一つの考え方であろうと思います。この公営住宅の建設に必要な用地費につきましては、必要な額の八五%は起債でめんどうを見ましょうということで、この建設に要するイニシアルコストといいますか、所要資金の手当につきましてはそういうことでまいりますが、御指摘のように、その資金の利息につきましては、財政力に応じた扱いになると、こういうことでございます。
  63. 春日正一

    ○春日正一君 あなた方のこの前の説明では、この制度を始めて十年ぐらいは楽だと、それで十年後になると元利償還が始まるから、それから二十五年ぐらいまでは苦しくなるというような説明であったのですが、これは一つのケースの場合ですわ。ところが、実際東京都の住宅局のほうの資料を調べてみますと、いま言ったように政府資金が二五%、それから縁故債が七五%と非常に金利の高い金が大きな比重占めますから、これで見ますとこういうことになりますわ。第一年度が、都の負担として補助制度の場合には二十二億五千三百万、これが融資の場合には二十一億九千三百万、第二年度は、補助制度で十七億のものが十七億二千五百万、それから第三年度は、十五億のものが融資の場合には二十一億九千三百万、それから十六億から二十六億三千七百万、十一億に対して三十一億三千六百万というような形で、第二年度からつまり補助制度よりも融資制度のほうが負担が多くなってくる、そしてぐんぐんふえてくると、こういうことになっているんですね。そうすると、富裕団体という大都市というところは、おおむね東京と同じでないにしても、そういう傾向を持っているんじゃないか。しかも、ここが一番公営住宅をたくさん建てなきゃならぬというようなことになると、非常にこのこと自体矛盾している。だからこの間の公述人の諸君も賛成意見を述べた。本来補助してもらえれば当然だと、ほしいんだけれども、いまのように四九%も超過負担をしょわされるようではどうにもならぬから、だからむしろ融資のほうが一時間に合うからいいのだというような趣旨で大体賛成の意見、この問題では述べられたと思うのですよ。だから補助がみんないいのだが、しかし、しかたがない。どうせ金出さなければいけないなら、借りてもよいからよけい建てさしてくれというような立場から言われておったのですけれども、そういう立場から見たところで、東京都の場合なんか二年目から持ち出しになっている。融資制度のほうが。そうして年々財政負担がふえてくる。こういうことになるならば、当然公営住宅の建設にブレーキになる、あるいはそういうものが家賃にはね返ってくるということになります。ここら辺どういうふうにお考えですか。
  64. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 全国の各事業主体を平均的に見ますと、先般御説明したようなことで、当面十年間は持ち出しといいますか負担が減少して、公営住宅の建設の促進に役立つであろうというふうに考えます。富裕団体である東京都のような場合は、御指摘のように縁故債等の割合が多うございますから、したがって、一般的な平均の場合よりはちょっと違った傾向を示すだろうということは、御指摘のとおりかと思います。ただ従来用地費で超過負担が著しかったのは、やはり東京都とか大阪のような大都市でございましたから、今度の融資に切りかわりました場合に、平均して七割程度の単価アップをいたしますけれども、これはそういった従来超過が著しかったところに重点的に振り向けるので、たとえば東京都というものは、平均単価が二・二倍に上がる前年度に比べまして予定でございます。また大阪府の場合も、この間公述人が申しましたごとく三・五倍程度に上がる予定でございます。そういうことで事業主体といたしましても、富裕団体とはいいながら、やはり超過負担というのが財政上非常に苦しゅうございますから、そういう資金の手当を国でめんどうを見るということは、非常に建設上楽になると言って私は間違いないと確信しておるわけでございます。
  65. 春日正一

    ○春日正一君 だからこの問題では、どう見たって改善じゃない。政府が金を出したくないから、だから補助という制度を取ってしまえば、金を出さなくて済むということ以外ないでしょう、これは。  それからもう一つ超過負担の原因になっている補助対象の制限についてですけれども、保育所だとか集会所、こういうものは当然必要な施設です。補助の対象とすべきものと思うのですが、その点どうですか。
  66. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 集会所等のいわゆる共同施設、これに対しましても、建設費につきましては補助、またその用地費につきましては融資をすることができるという法律上のたてまえになっております。しかしながら、従来御指摘のようにやはり公営住宅の建設は戸数の建設ということに重点を置いてまいりました関係で、そういう共同施設に十分には手が回らなかった。やりくりしてごくわずかそういうものを建てた例があるというふうにとどまっております。今後余裕ができるに伴いましてそういうものも完備していきたい、こういう考えであります。
  67. 春日正一

    ○春日正一君 だから、結局用地費の補助の打ち切りということは、国の財政支出が不足する、そのために融資制度に切りかえて自治体に負担を肩がわりさせたのだということ以外には、積極的な意味はないということになるわけですね。もし政府説明どおり地方の負担が軽減されて住宅財源が豊かになるということになれば、じゃ公営住宅がそれによってどのくらいふえるのか、その見通しを聞かせていただきたい。
  68. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 先生御指摘のように、用地費に対します補助単価が適正に是正されまして補助が続けられますならば、私どももそれが一番好ましいと思います。しかしながら、限られた財政資金をそのほうにかりに回すといたしますと、同時に戸数も伸ばしたい、また質の改善もはかりたいといいました場合に、そちらのほうに回りにくくなるというおそれがございます。本年度の計画におきましては、用地費に対する補助を融資に切りかえましたのに伴いまして、戸数におきましては一万二千戸、それから面積も若干ふやしました。それから何よりも中高層の住宅の割合、これが前年度は四六%程度でございましたが、本年度はこれを五六%というふうに上げております。そういうような質の改善もはかることができたわけでございますし、それでこの公営住宅の予算をその用地費に対する分を除いて比較いたしますと、前年度に比べて三四%程度伸びることができたというのも、この一つの効果であろう。これが本年度を基準といたしまして来年度以降また伸ばすことができますならば、長い目で見ましてこの融資の切りかえというのは、マイナスではございますけれども、公営住宅自体の建設を伸ばす上におきましては大きくプラスになるであろう、というふうに私どもとしては確信しておるわけであります。
  69. 春日正一

    ○春日正一君 この問題でもう一つあれですが、いま融資制度にしたために用地費の資金というものがある程度ふえた。それはふえるでしょう、借金すれば。しかし借金して家を建てていく、借金して土地を買っていくといったって、これは転売のきかぬ公営住宅土地ですから、だからそういう意味で見れば借金がずっと累積して、公営住宅というものはずっと建てていくものでしょう。しかもだんだん戸数をふやしていく性質のものでしょう。そうしたらだんだん借金が累積していくということになると、地方自治体が、現在でもいろいろな意味での負債が多くなって負債の元利償却というものが自治体財政を圧迫する一つの要因になっておる。そこでまた新たな負債でまかなわなきゃならぬ。しかも毎年義務的に拡大してまかなわなきゃならぬような制度を押し込んでいきますれば、当然自治体の財政というものを将来にわたって私は圧迫してくる、破綻する。一番いい例は国鉄でしょう。借金でどんどん新幹線つくる、何かつくるとやってきて、いま借金の利子分だけ赤字になっているでしょう、元利払い分だけ。そういうことで国鉄運賃大問題になっている。そういうように、借金でやっていけば目先きはいいでしょう。しかし、あなた方は将来にわたってこの借金の制度がいいというけれども、そうではなくて、将来を見通せばこれは地方財政を圧迫して、公営住宅そのものの実際上建設を困難にするような事態が起こる。しかも、そう将来といっても何十年先じゃなくて十年、十五年という近い将来でもそういうことが見越されるのじゃないか、その点が私一番心配だ、その点どうですか。
  70. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 家賃収入補助という新たな補助を設けまして、これがいわば利子補給の役割りを見方によってはなしておるわけでございます。それから、その残りの六分五厘なり七分なりの残りの部分につきましては、家賃に算定されておる部分もございます。したがいまして、政府資金の場合は、二十五年の期間は借金が残りますけれども、それ以降は家賃の収入、それから家賃収入補助というものが残りまして、したがって、その分は財政的にはプラスになるということに計算上なるわけでございます。それから、地方財政もこれはいろいろときどきの情勢によって変わりますけれども、将来はだんだん財政も力をつけてまいるというふうに見込まれておりますので、ここ十年の負担を軽くするということが、十年以降の返済よりは事業主体としては非常に好むところだというふうに私どもは考えて、この切りかえが地方財政に特別に圧迫を加えるというふうには考えていないわけでございます。
  71. 春日正一

    ○春日正一君 いまの説明では、単年度について、今年借りたものは二十五年後になればからになるという、個人が自分の家を買って二十五年で払えばからになるという計算ではないわけです。毎年借金して毎年住宅を建てていかなければならぬのでしょう。だから、十年たてば相当それがたまるわけです。だから、そういうふうな計算でいきませんと、単年度分でもって、今年借りた分は十年据え置きか、二年据え置きか、何年で払うから何年先にいけばからになりますというような計算では、この問題ははっきり説明できないだろう、そういうふうに思います。それで、その点はそれとしまして、この際大臣、特にお考え願いたいのですけれども、やはり結局この問題も、政府から超過負担を解消するための用地費の補助の資金が十分出せないという財源の問題でしょう。だから、先ほども言いましたように、今後住宅問題に対して非常な大問題になる。そうしますと、やはりその中で公営住宅というようなものの位置づけをもっと高めて、国家資金全体、あるいは財政投融資の資金全体の中で、この公営住宅をつくる、そういうもののための資金の率を何%か上げれば、これは相当な資金がふえるわけですから、そういう位置づけをしませんと、いままでどおりのつまり全体の財政規模の中での公営住宅の資金の比率というようなものを固定しておいて、それで今度の新しい計画で盛られるような十五年間に三千万戸建てなければならないというようなことに対応しようとすれば、とても応じ切れないことになる。だからこれは政府としても真剣に考えてほしいと思うのです。もっとこの位置づけを引き上げていく。  そこで、次の明け渡し義務の問題ですけれども、二十一条の三で、政令で定める基準をこえる高額収入のあるときは、明け渡しの請求をすることができる、請求を受けた者は期限が到来したときにすみやかに明け渡たさなければならない。こうなっておりますけれども、この政令で定める基準の額とそれからその額を算出した根拠ですね。
  72. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 新規に公営住宅に入られる方につきましては、現在の入居基準の計算方法によりまして一種は四万円までといっておりますが、それと同じ計算方法によりまして月額の所得が十万円をこえる場合、それから経過規定として、現にお入りになっている方につきましては、同じような計算方法によりまして月の所得が十四万円をこえる場合、こういうふうに政令で定める予定でございます。それで十万円と申しますのは、年の粗収入に直しますと、標準世帯の場合百六十万円をちょっとこした程度、それから十四万円と申しますのは、同じく標準世帯で年の粗収入が二百八万円程度になります。
  73. 春日正一

    ○春日正一君 そうすると、いままで百五十万、二百万といわれておったけれども、百六十万に値上げしたわけですね。それでこれが三年間、法律でいえば五年住んでおって、その間の二年間が平均でいま言った基準ですね、百六十万以上、あるいはいままで住んでいる方は二百万以上というようになれば立ちのかなければならない、ということになっているのですけれども、そうするといまこの法律をきめて、百六十万あるいは二百万という数字をきめたとして、それで新しく入ってきた、五年間住んでいるわけでしょう、その間の二年間ですね平均で、それなれば出ていけということになるわけでしょう。そうすると五年間の間にどれだけ生活費が上がるのか、物価が上がるのかということを考えますと、この百六十万という数字は、ことし入った人たちが立ちのきを迫まられる時期——五年間経過したという時期にあてはめてみれば非常に低い不当なものになってくるおそれは十分あると思うのですよ。そういう点はどうなんですか、ここでそういう基準を政令できめてしまって。
  74. 大津留温

    政府委員(大津留温君) この明け渡し基準を入居基準と同じように、そういった年々の物価の変動の状況あるいは所得水準の上昇の状況等を見まして、必要があれば毎年でも改定すべきものだと考えて一おります。  それから、ただいま申し上げました百六十万という年収の基準をどういうところによって出したかというお話でございますが、勤労所得世帯の所得の状況を見まして、上のほうから百六十万というのは九・二、三%に当たります。でございますので、高いところから、一割未満のような高い所得の方を対象にしようというのが一応の基準として考えておる線でございます。
  75. 春日正一

    ○春日正一君 物価の変動に応じてスライドさせるといいますけれども、入居基準にしましても相当長い期間変えなかったという前例があるわけですね。だから、必ず物価に応じて変動するというならスライドさせるということをはっきりさせておいたらよさそうなものなので、ただ、必要に応じて変えますということになれば、ことしきめて政令を出して、すぐ変えるということにはならぬでしょう。だからそういう点でやはりこの金額をきめて出せということが、いまではあなたの言われるように比較的高額所得者でよそへも移れるという現状では条件かもしれないけれども、多少年数がたてば、それだけの収入では世間並みだということになってしまう可能性が十分ある。それらの面も考えてこういうことをおきめになるのか、またスライドするというのは一体どういうことで保証されるのか、いままでの前例ですね、長いこと変えなかった前例がある。
  76. 大津留温

    政府委員(大津留温君) この点は、入居者の方々に非常に利害の大きい点でございますし、また衆議院でもその点いろいろな観点から御論議がございまして、附帯決議をいただいているようなわけでございまして、建設大臣もそれを十分尊重して今後運営に遺憾なきを期するということを言明しておりますので、事務当局といたしましても物価の状況、所得の水準の状況を絶えず調査いたしまして、先ほど申しましたような基準の線に一致するように政令の改定に時期を失しないようにいたしたいというふうに考えております。
  77. 春日正一

    ○春日正一君 そこで、こういうものをつくる必要があるかという問題ですけれども、私の記憶では現在この超過基準に該当する世帯、四千六百戸だったと思いますね、そうでしょう。そうすると、公営住宅全体で百四万戸ですか、そのうちの四千六百戸でしょう。しかもこれ衆議院の段階で家族とか同居者の収入の全部合算というものを五十万円までは控除するとかいうようなことになるとそういう該当者がもっと少なくなるということだったんですけれども、そういう基準でいくとその四千六百戸というのはどのくらいに減りますか。
  78. 大津留温

    政府委員(大津留温君) この四千六百世帯というのは御指摘のとおりでございます。この中には確かに家族の収入も合わせてこの水準に達した方々もまじっております。その数をちょっと調べておりませんけれども、ある程度これが減少するものというふうに考えております。
  79. 春日正一

    ○春日正一君 私ちょっと聞いたのでは、これは役所から聞いたんではないのですけれども、半分くらいは該当者がなくなるのじゃないかというふうに聞いたんですけれども、そのくらいにはならぬですか。
  80. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 私ちょっとこの中身につきましてそこまで調べておりませんので、どの程度ということは申し上げかねます。
  81. 春日正一

    ○春日正一君 その数の問題はまあいい。とにかく四千六百よりさらに少なくなるということですね。そうすると、これだけの人間を何で法律をきめて、裁判にかけて追ん出すというようなことをことさらに法律にきめなければならないのかという問題です。  そこで、この関連で、現行法では二十一条の二でもって、政令できめる基準をこえる収入のあるときは、明け渡すようにつとめなければならないという努力義務をきめているし、また事業主体には明け渡しを容易にするようにいろいろ住宅あっせんその他に努力ぜいということが義務づけられていますね。この法律ができたとき、私どもはこの明け渡し努力義務というような規定には反対したし、いまでも反対という立場でおります。これははっきり言っておきます。しかし、それにしても、この条項が三十四年ですか、できたのは。あれからいままで十年間、ずっと適用されてきて、実際に超過基準に達して、出ていった人ですね、これはどのくらいあるんですか。
  82. 岡三郎

    委員長岡三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  83. 岡三郎

    委員長岡三郎君) じゃ速記をつけて。
  84. 大津留温

    政府委員(大津留温君) いまちょっと調べておりますので、あとでお答えを申し上げます。
  85. 春日正一

    ○春日正一君 部分的なものは私どももちょっと調べているのですが、四十二年十月十二日の大阪地方裁判所における当時の角田正経建設省住宅総務課長の証言、これによると、四十年で二千六百戸、四十一年で二千戸、このくらいが、この条文で転居しているというふうに言っているのですね。そうすると、けっこう私どもはこの法律は悪い法律だと思っているけれども、高額所得者が明け渡し努力義務ですか、そういうような道徳的な規定で、実際上出ていっておる。そうすると、あとに残って、いまだに出ないというものは、やはりいろいろな事情があって、なかなか簡単に移れないというような事情困難な人たちが残っておるというふうにしか考えられない。大体、所得が上がればもっといい住宅に住みたいというのは、これは常識ですから、出て行く条件がととのわないで出られないという事情のものが多いのではないか、そういうように思うのですけれども、その点の事情は調べていますか。
  86. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 三十四年の改正によりますこの収入超過者、したがって明け渡し努力をしていただく方、この方々、実はその超過基準をこしておる方は、現に入っておる方々のうち二十二万五千戸という非常に多い数になっているわけでございます。これらの中で、確かに私のほうの調査でも、千六百ないし千七百の方々が年々出ていっていただいております。したがいまして、その努力義務でも、そういう努力をしていただく方がございますけれども、その割合は非常に少ないわけでございます。今回の改正は、そういう収入超過基準をこえられた方はそういう努力をお願いするわけでございますけれども、やはり、全国の勤労者の中で一割もいないというような高額の方々は、この際、低所得者のために席を譲っていただこうということでございまして、それらの方々に対しましては、御指摘のように、行き先のあっせん、その他にはできるだけのことはお世話するという考えでおります。
  87. 春日正一

    ○春日正一君 私がさっき質問したとき、あなたは向こうのほうを向いて話しをしておったから聞かなかったと思うのですけれども、つまり四千六百戸がそういう規定があるにもかかわらず残っておるというのは、越したくても越せないいろいろな事情があるからじゃないのか、そういう事情をお調べになったかということを聞いたのですがね。
  88. 大津留温

    政府委員(大津留温君) この四千六百戸の方々も従来努力義務は負っておられたわけですが、今日までなお引き続きおられる理由は何かという御質問かと思います。その理由、特にそういう理由を調べてはおりませんが、やはり努力義務でもございますし、おってもいいということならば、いろいろなやはり御事情もございましょうから、それじゃそのまま引き続きおろうというような方が多い。これはまあ自然の人情かと思います。
  89. 春日正一

    ○春日正一君 そういうことでわずか四千六百戸だと、それ全部追ん出してみたところでその数というものは知れたものだ、全国の公営住宅の数にすれば、住宅需要者の数にすれば。だから、そんなところに法の重点を置くのじゃなくて、もっと住宅をよけい建てる、そういうことで解決していくという方向へいくべきじゃないか。この際特に私大臣にも聞いておいてもらいたいのですけれども、これをきめて、しかも、今度は強制的にもう追ん出せるということになるわけですから、そうしますと、これはいま住んでおる人たち、これから入る人たちの相当な広い部分に非常に大きな不安を与えることになる。この点はあなた方計算に入れていないのですか。たとえば私のところへでも、自分のところではいま夫が忙しくて残業しておる、そのために百六十万の基準に——前に百五十万と言われておった——残業してかせいでいると百五十万になるのですよと、しかし残業がなければ百五十万にはならない、残業したものでしょうか、しないものでしょうかと、こういう相談がある。まだほかからも、いま二人で働いているけれども、これがいつまでも続くかわからぬというような不安ですね。だから、百五十万に二人で働いていればなるけれども、それじゃこれがよそに出ていって、それでその共かせぎがいつまで続くかという当てはないのだ、非常に一時的なものだというようなこと、それでもこういう法律ができたら追ん出されるのじゃないかというような不安ですね。そういうようなことで、非常に直接この対象になる四千六百戸じゃなくて、非常に広い人たちに大きな不安を与えるということになる。だから、その点まで考慮してこういう処置をとられたのかどうかということですね。
  90. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 一時的な所得の増によりまして高額の所得を得るという方までもこの対象にすることにつきましては、御指摘のような問題もあろうということを考慮いたしまして、二年間引き続きその基準をこえた収入があるということにいたしまして、恒常的にそういう高い所得がある方ということにいたしたわけでございます。  なお、春日先生当初の御質問にございました公営住宅の性格を変えたらどうかという御質問とも関連いたしまして、私どもといたしましては、やはり国の補助が建設費につきましては二分の一なり三分の二入っている低家賃住宅というのはやはり低所得者のために提供するというもので、またそういうものとして拡充していきたい。これに相当な国家財政資金を今後引き続きふやしていくためには、こういう公営住宅にそういう全国の一割にも満たないような高額の方々がいつまでも住んでおられる、低家賃で住んでおられるという状況のままでは、なかなかこれをふやしていくということは困難ではなかろうか。したがいまして、公営住宅が低所得者のための低家賃政策であるということをはっきりいたしまして、そして今後これを伸ばしていこうと、こういう心組みに基づいた改正であることを御理解願いたいと思います。
  91. 春日正一

    ○春日正一君 その説明ますますわからなくなるんですがね。だから私、冒頭に低額所得者とは一体何を基準にきめたかと言ったら、別に基準はない、四〇%ぐらいが相当だろうと言って、八十三万五千円ですか、税金を納めなくていい人たちには、国としてあるいは自治体として住宅のめんどうを見なきゃならぬだろうというような見当できめたというふうなことを言われたんですね。しかし、住宅に困っているというのは、税金がそれじゃあ一円でも払えるようになれば住宅を自分で見つけられるのかということになると、そういうことじゃないのだ。だから、そういうところへ一つの何かワクをきめて、公営住宅というものを生活保護みたように、これ以下のものには保護する、これ以下のものは入れるというような住宅にする、そういう考えの土台の上にいま言ったような収入がふえたら出ていけと、困った者を入れておいて、それで収入がふえたら出してやって、また新しく入れてくるということで、何か公営住宅というものを一時の足場みたいな、入れかえしていくような考え方にそれはなっていってしまう。だからそれをなくしてしまうために低額所得者云々ということは取っちまえと、勤労者全体に与えるようにしていけということを言っているのだが、しかしあなたはそうじゃない、低額所得得者だからと、こう言うんですけれども、国が補助していると言うけれども、それじゃあ地方自治体で公営住宅をたくさん建てなきゃならぬ事情になって迫られる場合に、国の政策というものはどれほど影響しているのか。たとえば今度の新総合国土計画でも非常に大きな集中を国が予定して計画して、それで三千万戸というような大きな住宅需要をつくり出そうとしているということになれば、当然これは自治体でやるということじゃなくて、国としてもその半分持つとか三分の二持つということはあたりまえなんだと、国の政策でその状況というものは変えられてくるわけですから、だからあなた方の、国が補助しているから低額でなきゃいかぬし、高いものを入れたら成り立たぬから収入がふえたら追い出すというような論理というものはおかしな話ですよ。国の政治でもって都市への集中が促進されて、政策でそこに住宅需要が出てくるのです。公営住宅を建てなきゃならぬというような状態が出てくるんだ。当然国としてそれに対して見合うべき補助をすべきだ。そうでしょう。だから、国の補助を理由にして、そうして公営住宅はだから低額所得者に限らなきゃならぬとかなんとかという論は成り立たない。これは議論になったんですけれども、私はそう思う。だからあなた方がそんな考えじゃ困るんですよ。そうして生活保護みたようにこれ以下の人は入れておく、それ以上になったら出して、新しく貧乏な人をまた入れるような、公営住宅をたまり場みたいに考えるんじゃなくて、やはり勤労者の安定した生活環境を与えるというものとして考えていかなければ……、だから私は、この条項というものは非常に大きな問題を含んでいると思っているんですよ。単に該当者が四千六百人だとか、いや二百万円だからいまいる人は心配ないだろうという問題じゃなくて、収入が多くなれば出ていけと、そして新しいものを入れていくと、ここいらの限界をきめておいて、そういう入れかえをしていくみたいなものに公営住宅の性格を変えられちゃ困るんだ。やっぱりそこを故郷とし、自分の生まれたところとして長く住んでいきたいし、安定した生活を営むということになれば、やはりそういうことじゃ困るんですね。だから四千六百のために特に法律をつくって強制するというようなことはする必要はないではないか。むしろそういうものは撤廃したらいいじゃないかということを私は言っているのです。だけどこれもいろいろ言っていると時間がなくなりますから、最後に移ります。  それで建てかえの問題ですけれども、この改正案で建てかえを制度化しているのですけれども、建てかえする場合の手順ですね、これがどういうふうになっていますか。
  92. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 法律上の手続きといたしましては、土地の有効利用と公営住宅の建設を促進するという観点から、事業主体がそういう古い公営住宅の団地は建てかえ計画を立てるようにつとめなければならないということを課しまして、それから具体的には建てかえ計画を立てまして建設大臣の承認を得る、その間にもちろん入居者の方々にPRもするし、またいろいろ御意見を聞くという機会は当然あろうかと思いますけれども、そういたしましてこの建てかえ計画の承認を得ましたならば、また正式にその旨を入居者にも通知いたしまして事業に取りかかる。そうして必要な場合には、仮住居をつくりまして、必ずその間の住居を確保するということを事業主体に義務づけております。  それからそういう工事進捗に伴いまして、いよいよ古い住宅を明け渡ししていただく必要があるという場合には、三カ月の猶予期間を置きましてその用意いたしました仮住居に入る、あるいは新しい住居に移っていただくことを請求する。それから新しい住宅に入居を希望される場合には、必ず入居させなければならない。それから仮住居に移る、あるいは新住居に移るということのために移転料が必要となりますので、その通常必要な移転料は補償しなければならない、こういうのが大まかな手順でございます。
  93. 春日正一

    ○春日正一君 私どもはいまの用地事情その他から考えて、都会の中にある低層住宅を建てかえて中高層のものにしていく、それで家数をふやしていくということの必要をわれわれ否定するものじゃないのです。何でもかでも建てかえいかぬのだというのじゃないのですが、この順序でいきますと、順序がちょっと逆になっているのじゃないですか。つまり事業主体が建てかえ計画をまず建てて、それから大臣の承認を受けて、だから建てかえるということをきちっときめてやっている。入居者にその旨を通知して、その説明会なんかを開いて、きまった計画を説明して、とにかくこういうふうにきめたからのんでくれということですよ。説明して、そうしてさて明け渡しをしてくれというような段取りになる。いわゆる上できめて、建てかえということをかってに強制するということになるわけですよ。そこで実際建てかえということになれば、だれでも居住者は、生活環境が変わるわけですし、それから家賃とか、その他を値上げするとかというようなことで、生活条件の上にやっぱり建てかえとなれば、非常に大きな変化が出るわけですね。だから当然居住者の協力を得ようとすれば、建てかえ計画を立てるそのときから、こういうわけで建てかえなければならぬのだということをまず説明をし、そうしてどういう手順でやっていくのだ。それなら協力しましょうというような形できめていきませんと、非常に問題が起こって、せっかく計画をきめても実際何年もできないというような事態になってくるんじゃないか。たとえば戸山ハイツの問題、この間も公述人もいろいろ話しておりましたけれども、十年もかかっている、建てかえの話が出てから。そういうことになるわけです。そのほかにも川崎の登戸の例の問題、私以前ここでも質問しましたけれども、やはり住民と相談なしに役所だけできめてしまって、さあこれをやるから協力しろという形では、これは順序が違うのじゃないか。その前に十分建てかえの必要性、そういう点も住民に訴えて住民も納得する。それではどういうふうに建てかえて、どうなるのだ、それなら協力しましょうという協力を得てやるというような仕組みにしなければならないのじゃないか。そうすると、やはりこの順序を変えて、事業主体が計画作成して大臣の承認を受けるというその前に、居住者の間で十分その計画意図について説明もし、そして納得を得た上で、そこで決定もし、大臣の承認を受ける。受けたらそのかわりすぐやれるというような手順をとるべきじゃないか、その点どうですか。
  94. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 先ほども申しましたように居住者の方々にあらかじめ十分御説明してその御協力を得る必要があるということは御指摘のとおりでございまして、法文におきましても、二十三条の九というところに「説明会の開催等」という条を設けまして、事業主体が建てかえ事業を行ないます場合には、説明会を開くなどの方法によりまして十分入居者に趣旨を徹底させ、また御意見も聞いてその協力が得られるようにつとめなければならないという精神規定を特に置いておるのですが、やはり建てかえというのは現在入居しておられる方々が、その生活環境がそこで大きく変更を余儀なくされるわけでございますから、御指摘のとおり十分御説明もし、御納得も得て進める必要がある、こういうことは私どもも当然そうあるべきだと考えております。
  95. 春日正一

    ○春日正一君 いま言ったように、それは説明会というけれども、計画がきまってからの説明会でしょう、きまる前にやるのですか。計画をきめる前に説明会をやって、それで居住者の同意を得てということに……。あなたのさっきの説明で言えば、事業主体が作成して、建設大臣が承認して、入居者に通知をして、こういう順序でやるという説明をされたのでしょう。そうすると、どうもおかしいのですね、そこは。
  96. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 説明会の開催は、これは何回もやはりやるべきだと思います。計画を立てる段階あるいは実施にかかる段階、それぞれの各段階におきまして十分御了解をいただくように説明会を惜しむべきでないというふうに考えております。
  97. 春日正一

    ○春日正一君 そういう考えは非常にいいんですが、それでなきゃ実際できないと思うのだけれども、それが前にもやる、あとにもやるというようなことで、いつやってもいいというようなことになってしまったのでは、これはやる人によって違ってくるわけですから。そうでなくて、やはり少なくとも建てかえ計画について居住者から意見書を提出して、そしてその計画に居住者の意見が反映されるというような措置をきちっと設けておく必要があるんじゃないか、建てかえの場合ですね。そうでないと、説明会といっても、やってもいい、やらぬでもいい、前にもやれるし、あとにもやれるというような意味での説明会では、これは非常にうまく運用されれば一定の効果があがると思うのですけれども、非常にやはりこうはっきりしないものになってくるわけですから、そういう点は考えていないですか。こういう建てかえをしたいのだということをあれしながら、意見書でも出させて、そういうものを十分審議して、そういう上で計画をつくってさらに説明もするというようなふうに十分慎重な手続をとるということは、これは居住者にとっては非常に大事な問題だと思うのですけれども、どうですか。
  98. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 説明会の開催等を極力何回も行ないまして、という趣旨は、要するに入居者の方々に十分御理解をいただいて御協力を得るためでございますから、そういうために必要なことは、説明会を開く、そのほか御意見をちょうだいする、いろいろなことをやるべきだと考えます。この法案の法文の趣旨もそういう趣旨で書いておるわけでございます。
  99. 春日正一

    ○春日正一君 それから、建てかえ後の家賃について、法律の中には何も書いてないわけです。しかし、居住者の立場から見れば、家賃が著るしく上がるというようなことのために生活が圧迫される、そういうこともやはりいままでの幾つかの建てかえの問題の事例の中では、居住者が建てかえに反対する一つの大きな理由になっておったと思うのですが、だから、たとえば東京の大田区の西六郷の例を見ますと、二十四年に建てられた木造の一種の住宅でも家賃が二千二百円から千三百五十円、こういうくらいのものが、一種の中耐に建てかえられてきまった家賃八千七百円から八千六百円というふうにぐんと上がるのですね。そうすると、それはまわりにもっと高い家賃のところもあるじゃないかと言えばそれはそうだけれども、しかしいままで千五、六百円という予算でずっとやってきたものがいきなり八千六百円ということになれば、これは相当家計の予算にも響いてくるしというような問題があるわけですよ。東京都ではそういう意味で二年間減免措置をきめて、一年目が一種で五割、二種で四割、二年目は一種で三割、二種で一割五分減免するというような措置をとっておるのですけれども、そういうような家賃のいままでの居住者ですね。それは公共の利益のために建てかえということに協力させられるわけですから、当然そういう面を考慮するならば、いままでの居住者に対しては家賃の減免の措置、そういうものがとられるべきだというふうに思うのですけれども、その点どうですか。
  100. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 建てかえによりまして新たに建てます公営住宅の国の補助金が出るわけでございますから、家賃は一般に比較して非常に低くなるわけでございます。したがいまして、建てかえによってお入りになる方々、普通これが負担に耐えないというような程度のものではないと、私どもは考えておるわけでございますけれども、ただ御指摘のように、従来非常に安かったという関係で家計に与える変動が激しいといういわゆる激変緩和という趣旨から、事業主体が従来やりました例におきましても、東京都の例のように二年間程度ある一定割合を軽減するというような措置をとってまいっております。私はこの建てかえ事業を円滑に進めます上に、そういった措置も必要であろうと思います。ただ、従来いろいろ事業主体によりましてその扱い、軽減の度合いなり扱いが違いますので、一律な扱いにするのはどうかという気がいたしますので、なるべく従来のやり方との均衡もございますし、そういう趣旨で扱うように各事業主体を指導してまいりたい、こういう考えでおります。
  101. 春日正一

    ○春日正一君 これはあれですか、そういうような基準を統一的にというか、一般的にきめる法律の文の中に書き込めぬとすれば、別な形できめるというようなことはできないんですか。というのは、あっちではこう、こっちではこうといろいろまちまちになるわけでしょう、だから少なくとも最低これだけ、それよりももっとまけるのはけっこうだけれども、最低これくらいの措置はとる必要があるというようなことを指導してと言うけれども、ただ指導してということだけでそれがうまくいくものかどうか、そこら辺どうですか。
  102. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 従来東京都、大阪府あるいは市、そのほか北九州市、福岡市その他やっておりますそれぞれ軽減のしかた、度合はいろいろございますので、これから新たにそういう事業を始めようというような事業主体等に対しましては、この程度の扱いが適当であろうというような指導はしたいと思いますけれども、現にやっておりますところは、従来やりましたあれとの均衡の問題も事業主体内でございましょうから、その辺のことをあまり統一的にやりますと、その辺の問題があるいは出てくるおそれもございますので、趣旨は御指摘のような趣旨で私どもも考えておりますので、そういう線に沿って指導いたしてまいりたい、通牒等も出してまいりたいと、こういう考えでおります。
  103. 春日正一

    ○春日正一君 建てかえの問題になれば、家賃の問題だけじゃなくて、当然仮住居への移転の問題とかその費用の問題、あるいは新しく戻ってくる場合のどの部屋にはいれるかというような問題とか、いろいろ具体的の問題でありますけれども、この移転の問題その他については、ほかの委員からも聞かれておるので私はこれは省きますけれども、建てかえをやる場合にくれぐれも私言っておきたいことは、住民が納得して喜んで協力できるような努力、それが前提になるので、無理して強制的にやるということになれば、非常に大きなトラブルを起こすことになるし、だからそういう点は十分注意して、さっき私法律の文章で変えろと言ったけれども、説明会というものは前にも開けるのだということをあなた方は強く言うのだけれども、やはりそういう意味で住民の意見を十分に聞いて、みんなの賛成を得た上で建てかえをするというようなことを十分考えてやってほしいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  104. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩     —————————————    午後一時五十分開会
  105. 岡三郎

    委員長岡三郎君) ただいまから建設委員会を再開いたします。  午前に引き続き、公営住宅法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  106. 田中一

    ○田中一君 最初に、参考人としてきょうおいでを願った東京都の方に伺いますが、一体、都では公有地というものをどのぐらい持っておるのか、それからその公有地のうち、過去一年間で払い下げをしたものがどのくらいあるか、それがどの地点であるか、それから公有地を住宅利用しているものがどのくらいあるか、これを東京都の方に伺います。同時に政府にも、国有地がどのくらいあるか、それからその国有地の過去一カ年間の払い下げというものをどのくらいしているか、同時に同じように国有地に国家公務員の住宅をつくっているのは承知しております。したがって住宅適地というものが相当あるはずであります。終戦後物納によって相当取得したものがあるはずでありますから、これらが現在利用しているものがどのくらいあるか。同時に主として公営住宅をつくるという大都市並びにまあ五十位くらいまでの都市における公有地の面積、個所等、ひとつ説明してほしいと思います。
  107. 萩本俊助

    参考人萩本俊助君) お答えいたします。東京都が現在保有しております財産でございますが、土地でございますが、御案内のとおり、これは自治法の規定その他によって一般財産と公営企業財産に分かれておるわけでございますが、御質問の御趣旨といたしましては、一般会計に属する分についての御質問だと承わりましたので、その面について申し上げます。
  108. 田中一

    ○田中一君 いま申し上げているのは、むろん特別会計の企業体の土地も含めて伺っておるわけです。
  109. 萩本俊助

    参考人萩本俊助君) はい。全体といたしまして、一般会計におきまして四千八百四十四万四千平米が一般会計に属する財産でございます。それから病院であるとか埋め立てであるとか準公営企業に属するものが六百十七万平米、それから公営企業の交通、水道等のものが二億三千三十万平米、合わせまして、二億八千四百九十万平米ということに相なっておるわけでございます。これらの財産はいずれも行政財産として現に行政目的に使用され、あるいは普通財産として貸し付けその他収益のために使うというような区分になるわけでございますが、現在その保有の状況でございますが、貸し付け、これはちょっと古いので恐縮でございますが、前年の九月三十日現在で調べたものでございますが、貸し付け財産といたしまして、これは一般財産といたしまして百十九万四千九百六十五平米の普通財産のうち、貸し付けが九十五万五千四百五十五平米、これらは河岸地であるとかその他の形においてあるものでございます。それから保有しておりますのが十六万百十一平米、それからその他の形でこれは不適正財産とわれわれのほうでは称しておりますが、合法的でなく占有されておるものが残念ながら若干ございまして、これが七万九千百九十九平米ばかりございます。これらの、こうしたような態様で現在財産があるわけでございますが、このうち特に御質問の御趣旨からいたしまして、保有財産がどうなっておるかということについて申し上げますと、保有財産につきましては、ことしの四月一日現在で数字がまとまっておりますので、先ほどの数字と若干違うのでございますが、あらためて申し上げますと、保有地として十三万七千六百六十平米、このうち現在まで各局から事業目的を終了した等のために財務局のほうへ引き継ぎましたのが二十一万四千八百五十二平米、それから国から譲り受けましたのが、六万七千九百五十四平米で、合わせまして二十八万二千八百六平米というものが昨年四月一日から現在までの間にふえたものでございます。  それから利用の状況、各局の事業に充てるために所管がえをしたとかあるいは区であるとか市町村へ譲渡または譲与したものあるいは売却処分したもの、こういうことで減の分が出てくるわけでございますが、各局へ所管がえしたものが七万四千八百六十三平米でございます。このうち公営住宅用地として、住宅局のほうへ所管を財務局から移したものがほぼこの半分の三万七千七百十二平米、その他心身障害者施設の用地であるとかあるいは道路用地というような形でそれぞれの所管の局へ移しましたのが三万七千百五十一平米、ほぼ半分が公営住宅に充て、半分はその他の事業用地に充てた、こういうような形でございます。二番目が区その他への譲渡または譲与したものが十六万三千八百六十七平米でございます。これらは区の保育所であるとかあるいは子供の遊び場、学校あるいは区の道路敷等のために譲与譲渡したもの、最後に売却処分したものがございますが、これが一万二千九百九十七平米でございまして、大体が国から譲渡を受けました廃川敷、廃道敷等で、百一件に相なりますが、これが一万二千九百九十七平米で、いずれも狭小の土地でございまして、大体隣接地主等に売却した、こういうことでございます。所管がえいたしましたものあるいは利用いたしましたものは合わせまして二十五万一千七百二十七平米ということでございまして、差し引き十六万八千七百三十九平米というものが現在財務局の管理のもとに保有されておる、こういうことでございます。  なお、御参考までに申し上げますと、この十六万八千平米の今後の利用計画でございますが、都が転活用を予定しておりますのはこのうち一万八千四百八十平米、区市町村にすでに譲渡を予定しているものが十三万八千三百八十八平米、売却処分を予定いたしておりますものが三千三百四十平米、それからなお手元にあって処分の保留のものが八千五百三十一平米、こういう状況でございます。
  110. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 公営住宅の建設に国有地または公有地をどのように利用しておるかという状況、全国のトータルを申し上げます。四十一年度におきましては、国有地を払い下げまたは借地いたしまして建てましたのが千六百四十五戸、公有地を利用して建てましたのが七千七百五十戸でございます。四十二年度におきましては、国有地を利用いたしましたのが千四百十二戸、公有地を利用いたしましたのが一万一千三百五十五戸、四十三年度におきましては、国有地を利用しましたのが二千五百十五戸、公有地を利用いたしましたのが九千九百九十二戸でございます。四十四年度におきましては、これは予定でございますが、国有地を利用いたす予定のものが三千二百九十七戸、公有地を利用いたしますものが九千八百二十一戸、この四年度を合計いたしますと、国有地を利用いたしましたものが八千八百六十八戸、公有地を利用いたしましたものが三万八千九百十八戸ということで、全体の建設戸数のうち一三・九%が国有地を利用して建てたと、こういう実績になっております。  なお、お尋ねの国有地の保有の全量と四十三年度の払い下げの実績、これはただいま大蔵省の理財局のほうに問い合わしておりますので、後ほどお答えいたします。
  111. 田中一

    ○田中一君 都のほうに少し二、三伺うのですが、都が国会と近いものだから、公営住宅をつくる事業体の代表ということで来られたのですから、御迷惑でもひとつ答弁していただきたいと思います。  そてで、いままで区にしても市町村にしても、公営住宅をつくるんだから都有地を払い下げてくれいという要求は相当ございましたか。
  112. 萩本俊助

    参考人萩本俊助君) 都有地を区はほとんどやっておりませんが、市のほうで市営住宅を建てるについて譲渡してほしいと、こういうような御趣旨かと拝聴いたしましたが、私の記憶では最近におきましてはございません。
  113. 田中一

    ○田中一君 そうすると、都は都単独の賃貸住宅をかつて終戦後つくったこともあるように記憶しておりますが、それらはやはり物納とかなんとかということでもって都に入ったものに建てているのか、あるいはいま言っているような都の保有地を利用したのか、その歴史的な経過はどうなっておりますか。これは何戸ぐらいありますか。
  114. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 都単独で公営住宅をつくっておりますが、その土地の所有の経過と申しますか、それはちょっと私手元に持っておりませんので、後ほどまた正確にお答えしたいと思いますが、都有地あるいは民有地を活用したと、かように考えております。
  115. 田中一

    ○田中一君 何戸ぐらい建てましたか。
  116. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 通計七千六百九十二戸になっております、ただいまのところ。十五万戸のうちでございます。
  117. 田中一

    ○田中一君 これは大臣に伺っておきますが、せんだって都市再開発法の審議の際に、総理が国有地等は民間払い下げを極度にこれは進めなければならぬという発言があった。これは何も建設大臣が払い下げをするわけじゃありませんから、どうこう言いませんけれども、いま東京都の話を聞いても、区は仕事をやっておりませんから都自身がやっている。市町村のほうは、仕事をやっておりますけれども、都の保有地に対して払い下げてくれというような要求がいままでなかった、こういう発言を私と同じようにお聞きになったと思いますが、一体土地の、用地の取得に対しては、どういう手を打てということを指示しておるのか。そういうものは、いま一年間の払い下げを聞いたものですから、過去にさかのぼって相当な払い下げがあったものと思いますけれども、用地取得に対しては、全部買え、新しく買え、購入しろというような指示をしているのか、少なくともこの用地の問題というものが大きく問題化されている現時点においてこれまでの指導というものは、いま言うとおり相当の保有地を持っておりますから、これは東京都の例でありますが、おそらく地方の都道府県にいたしましても、あるいは大都市あるいは中都市といってもいいが、五十万以上の都市等は、相当数の市有地を持っているはずです。これは一つ、二つ事例をあげてもわかりますけれども、いま申し上げているように、都の説明があったように、なるほど一般会計の分ではなかろうとしても、特別会計の独立採算制の企業体においては、相当持っております。たとえば都電には、都電の車庫がある。バスにしてもバスの車庫があるとか、ガス、水道局、あらゆる面の東京都の各種の企業体を見ても、相当なものを持っておりますが、どうしてこれらを安く転用させるという方法をいままで指示しなかったのか、この点に非常に疑問を持つわけなんです。そうしていままでも相当大きな土地の払い下げは、各地でやっている傾向は、いままでありました。最近では相当高くなっているし、ことにかつて終戦後いわゆる帳簿価格主義でもって売却した時分には、払い下げた時分には相当取得しているものがたくさんあります。最近は時価主義になったものですから、そういう要求がなくなっていると思いますが、お互い国民の公僕である集団であるところの都道府県なり県というものが、国民のために用地というものを遊ばしておる、それを活用しようとしない。ことに住宅局は、おれのほうはただ金さえ、補助さえやればいいのだ、土地は自由にしたらいいのだということに尽きるのじゃないかと思う。いままで用地取得に対しては、どのような指導をしてきたか、伺っておきます。
  118. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 住宅政策の推進にあたりまして一番重要なことは、いま田中委員、御指摘になりましたとおりに土地問題であると考えるのであります。これは当然の話でございますけれども、それに対するところの用地の取得ということは、非常に重要な問題点でございますので、政府といたしましても、国、公有地の活用ということが、住宅政策の総合政策の中においても最も優先すべき政策の一環としまして、昨年十一月の御承知のとおりの住宅政策に対するところの土地問題に対するところの閣僚協議会においての決定の第二にうたわれていることは、御案内のとおりであります。したがいまして、政府といたしましては公有地の活用及びその指導行政をいたすということは非常に重要なことでございますので、今後ともこれらの点に対しましては、十分積極的に指導をしてまいりたいというのが、私の基本的な方針でございますが、詳しいことにつきましては住宅局長から答弁をいたさせます。
  119. 田中一

    ○田中一君 一体ごまかしをしちゃいかんということなんです。国民が住宅がほしいといって占領軍の梱包材を三千円で買って三角屋根のうちをつくって住んでおったというわれわれです。多くの国民はそうしておった。それは当時GHQから日本人のうちなんか要らぬ、こう言って住宅建設というものを相当干渉したということもうわさとして聞いておりますけれども、物納で相当な土地が当時の終戦直後の財産税等の問題で相当大きく集めて後にまた払い下げをしているという現状があるのです。けれども、いまここで坪川建設大臣からのめのめとそんなことを聞きたくないのですよ。いまの閣僚会議で何をきめたか。公営住宅法ができてから約二十年になるのです。二十年間どういう態度をとってきたか。国民は現在でも住宅難であえいでおるのです。当然国が遊ばしているものは時価で売ってその金をどうするとか、これはかつては公務員住宅に全部つぎ込んだものです。公務員住宅の特別会計というものはこれは帳簿価格の差というものを積み立ててそうして高級公務員の住宅を建てた、原資としたことを記憶しております。おそらくいまでもそうした原資をもってやっておるのではなかろうかと思いますが、公営住宅法ができてから二十年になるのです。ことにこうして今回の法律改正によって補助は打ち切る、金を貸してやろう、だから土地を買えということばを出す前に、なぜ各都道府県なり、市町村なりが自分の持っている土地住宅に優先して使え、あるいは特別会計で持っているところの市電でも、バスでもこれらの施設の車庫にも相当空間はあいておるわけです。こういう指導をしたことがないんじゃないですか。建設大臣からのめのめとそんなことを聞いたって、そんなことは何もならないのです。具体的にあなた方はかつては補助金をやるといって住宅政策を相当干渉しておった。よい知事、よい市長は何とかして住宅優先に一般財政を使いたいと思っても、呼び水であるところの公営住宅の補助金がなければ各市、地方自治体ともに予算の計上できないわけです。東京都はかつて七千六百九十二戸という都単独の事業を行なっておりました。よその都道府県市町村においても熱意ある長はおそらくそういうことをやっておったと思うのです。今回の融資制度というものを持つ前にそのような指導をしておらないのでしょう、私はかつて聞いたことがないのです。そんなことで、金さえあればということで行なうよりも、都有地にすらあなたの政令の四条では六分の金利を取っておるのです。東京都の土地東京都民のものであります。東京都という行政官庁のものじゃないですよ。何でも金で始末しようという考え方があなた方の住宅政策に入っているならば、あなた方は不適格者です。内閣に堂々と一省として住宅省をつくりなさい。坪川さんのいまのような発言は聞く耳持ちません。閣僚会議で何と言おうと、具体的にそうした方途の行政指導をいたしましたか。これからしようとするのか、はっきり答弁してください。
  120. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 私、決しておことば返す意味じゃございませんけれども、いま住宅局長から具体的な問題について御報告をいたします、こう言うたことによって具体的な指導がどう行なわれているかということを御理解いただきたいために私は申し上げましたので、どうかその点ひとつあまり感情とかあるいはことばの上に走らずに、ひとつ冷静にお聞き取りを願いたい。私はそれほどまで重要な厳粛な問題だろう。田中委員も興奮をされるほどまで重要な深い関心を持っておられることに対して、私は敬意を表したいと思います。その点一つ前もってお願い申し上げておきたいと思います。
  121. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 国有地の利用の具体的な例でございますが、いま問題になっております戸山ハイツもこれは国有地でございます。それから東京都内では北区に桐ケ丘という都営住宅の団地でございます。これも国有地を利用したものでございます。それから申すまでもなく都営住宅の建設に国有地ないしは公有地をできるだけ有効に活用して建設すべきことは先生がおっしゃるまでもなく、私どもとしても当然そういう考えで従来からやってきているわけでございますが、特に用地の取得に困難しております東京都におきましては、都有地の活用ということについては、従前から非常な御苦心を払っておられまして、たとえば先ほど例にお述べになりましたように、車庫のあと地あるいは車庫の上を利用するとか、あるいは消防署に併存して上を利用する、あるいは保健所、税務署というようなものを活用された例がいろいろございます。他の大阪市なりほかの都市におきましても病院と併存するとか、店舗を利用するとかいうようなことは、これはやっているわけでございまして、先ほど申しましたように、そういうことの結果といたしまして、過去四年間におきましても国有地、公有地を利用いたしました戸数が四万七千七百八十六戸で全体の一四%程度に当たる、こういうような実績になっておる次第でございます。
  122. 田中一

    ○田中一君 そうすると、国の保有地ですね、地方はたくさんあるでしょうから、何というか市町村には、大きな市町村所在する所有地、それを説明してください。きたでしょう、財務局から。
  123. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 国有地の保有の量でございますが、普通財産が三十四万一千九百ヘクタール、行政財産が八百八十万二千二百三十三ヘクタール、こういうことになっております。これは特別会計、一般会計を含めての数字でございます。
  124. 田中一

    ○田中一君 それに対して今回の用地費の融資というものを踏まえて前もってそうしたものの転用というものを、利用ということを、国有財産局なり、大蔵省なり、あるいは都道府県に、市区町村等にもそういうものがあるから、これはどうか使えというような行政指導をしておりましたか、するつもりですか。
  125. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 従来ともそういうことを指導してまいっておりますが、四十四年におきましても、先ほども申しましたが、国有地を利用する計画のものが三千三百戸ばかり、公有地を利用するものが約一万戸というまあ計画になっておるような次第でございます。
  126. 田中一

    ○田中一君 国有地の量はわかりませんか、まだ。
  127. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 関連。いま田中委員の要求しておられる国有地の問題は、私が前回の委員会の席上において資料要求をしてるはずです。いま何とも言ってきていないということは、これは不届きだと思うのですがね。これはどうなってるんですか。
  128. 岡三郎

    委員長岡三郎君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  129. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をつけて。
  130. 田中一

    ○田中一君 立体化する利用方法なども、こまかく指示をしておりますか。
  131. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 本年度から、御承知のように高層公営住宅の予算として正式に認められました。また、従来御承知のように住宅金融公庫におきましては中高層融資というので公営住宅を上に乗せる。足に当たる施設部分につきましては公庫から融資するという制度も開いております。そういうような制度とあわせまして、できるだけ土地の高度利用ということで指導してまいっておりますので、先ほど申しましたように、いろんな公的施設との併存、または民間の店舗との併存という形式の公営住宅が、主として大都市にあちこち見られるという現状でございます。
  132. 田中一

    ○田中一君 東京都に聞きますが、東京都は四十四年度の予算に計上している自治省の土地の先行投資という意味の六百億の予算がありますね。あれどのくらい配分がきましたか。せんだって配分されたように記憶するのですが、工場あと地等の買収資金がね。
  133. 萩本俊助

    参考人萩本俊助君) たいへん申しわけないんですけれども、私のところまでまだそうしたものがきたという報告受けておりません。
  134. 田中一

    ○田中一君 これは間違いなく六百億というものは計上されてるはずなんです、自治省が各都道府県に配分するために。もうこれは五月ですからね。そういうものが都の予算としては何にも計上されておらぬということですね。まああなたのほうは二月に一ぺんずつ都議会開いて、予算審議の要求案つくってやっていきゃいいんでしょうけれども、やはりこれは自治省のほうで計画的に、計画あるものに配分するわけなんです。だからそれがないというのは、これは建設省に聞いてもわからぬから、建設省に聞いてもしようがないです。そこで、それはまあ、あなた、財務局長がわからなければ、住宅局でもわからないかな。
  135. 萩本俊助

    参考人萩本俊助君) ちょっと私誤解したようでございますが、予算化はされておりますが、現実の四十四年度の東京都に対する配分がきたかどうかというふうに承知いたしたのですが、それについては、あるいは担当のほうにきているかもしれませんが、私どものところにはまだ参っておらない。手続的なことを申して恐縮ですが、工場あと地の関係になりますと、首都整備局が窓口になりまして、私どものほうは財政の総括として連絡を受けることになりますが、その連絡はまだ受けておらない、首都整備局にはきておるかもしれない、こういう趣旨で先ほど申し上げたのです。予算に計上しております。
  136. 田中一

    ○田中一君 それでいま住宅局長が言っておるように、遊休地はむろんのこと、保有地はむろんのこと、それから公共企業体は事業はおおむねこれは特別会計の財産だと言いながらも、これは都民のものなんですね。したがって、これらをいままで転用したことは、住宅に転用したことは、これはありましたか、また空間に住宅をつくったことはどっか一カ所ぐらいあったと思いますが、どこですか。
  137. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) バスの車庫あと、品川の場合が一つございます。それから区有地に、その上に建てました、そういう事例もございます。
  138. 田中一

    ○田中一君 これはこの特別会計の企業体から買収したものですか、空間の買収というか……。
  139. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) それぞれ空中権を買収いたしまして、上のほうにいわゆるげたばきで住宅を建てました。
  140. 田中一

    ○田中一君 その空中権の買収価格が比率にして、あなた方が見込んでいるものと、どういう配分で買っておりますか。
  141. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 空中権の算定の要領でございますが、まだ都といたしましても、一般的に成熟した制度ということにはなっておりませんです。品川の場合は両者の意見を話し合いで最後的にきめたわけでございますが、はたしてそれだけのきめ方がよかったかどうかということにつきましては、都議会内部におきましても若干の異論がございまして、ただいま財務当局とも調整をいたしておりますが、いずれにいたしましても、都がいろいろの補償をする場合と同じ考え方をもって、都の内部の金銭のやりとりをする、こういう仕組みになっております。議論としては内部であるから、もっと少し割り引きをすべきだという議論と、やはり特別会計と一般会計の財政経理の区分を明確にする意味からそういうことは必要ないのだという、両方の議論が私のほうの委員会でもございましたことを申し上げておきます。
  142. 田中一

    ○田中一君 都民の感情は交通局であろうと、一般財源で持つ財産であろうと、同じものだと思うのです。交通局が赤字になれば、一般財源でもって補てんする道も、自治省がやかましいか知らんけれども、それはないとは言えないわけですよ。あなたは住宅局長として、少なくとも低廉なよい住宅をどう都民に提供するかということにつきなければならない、はっきり言ってください。その地価は幾ら幾らで、空中権は幾らで買っておるか。
  143. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 土地建物の用途に応じて利用効率を算定したわけでございますが、建物が十階建で、施設が一階と二階、住宅が三階から十階、各階の延べ数は百平米で、全部の延べが千平米、土地が千百平米で、さら地価格が五万円でございます、平米当たりの額が。そうして建物が住宅部分で各階とも〇・三に算定し、施設は一階が一、二階が〇・七、それから土地の空中の千平米については住宅と施設で半分ずつ利用したそれぞれの利用率〇・五と、こういう計算をいたしました。相当複雑な計算をいたしましたが、住宅部分が二千九百六十一万五千円、それから施設の部分が二千五百三十八万五千円、こういう計算でございますが、公式につきましては非常にこまかい計数でございますが、読み上げてよろしゅうございますか。
  144. 田中一

    ○田中一君 もっと簡単に言ってくれないかな、この地価は、売買されている時価は幾ら幾らだと。帳簿価格は帳簿価格で聞く必要はないと思うのです。それは幾らで空中権に対して平米当たりで幾らの金を払ったかということだけ聞かせてください。そのパーセンテージでもいいですよ。
  145. 萩本俊助

    参考人萩本俊助君) パーセンテージで一応申し上げますと、土地の時価の六五%ということで一応空中権を見ておるわけでございますが、品川の例でございますと、あれは買収したのでございませんで、借地というような形になっております。そこでさにら借地権率を見て、これに六八%をかけたものを権利金として一応交通局へ住宅局が支払った、こういうことでございます。
  146. 田中一

    ○田中一君 これは大津留住宅局長、借地権が地価の六五%というのはこれは正しいかね。
  147. 萩本俊助

    参考人萩本俊助君) 先ほど住宅局長が申しましたとおり、この空中権はどれだけ見たらば妥当なのかということにつきましては、今後十分検討しなきゃならぬ問題だとわれわれ存じております。その建物の種別によりまして、都営住宅を建てるとか、あるいは商業的なものを建てる、貸しビルを建てる、そうしたいろいろな形態があるわけでございますが、ただいま申し上げましたのは、車庫の上に都営住宅を建てる、こうした場合の例として申し上げたわけでございますが、財務局といたしましても、住宅局あるいは国のほうでもこの問題は検討中と承知しておりますので、それらと十分連絡をとりながら今後適正なものを立てていこうと、こう考えておるわけでございますが、現実の問題として処理しなきゃならぬ、こういうことで、現在品川の場合は先ほど申し上げたようなパーセンテージでもって一般会計から交通会計へ支払っているこういうことでございます。
  148. 田中一

    ○田中一君 これは坪川さん、こうして各都市とも、高度利用という面でもって、ばらばらにやはり与野党の力関係で適当な比率でもって権利を——これは買ったんじゃない。借地権を設定してもらったというにすぎない。これはおそらくバスの車庫があったところぐらいでは、さっき五万だとか言っておりましたね。平米当たり五万円と言っておりましたね。はたしてそれすら妥当かということになるとこれは疑問があるわけですよ。それはケース・バイ・ケースでもって各地方等にいろいろ地価等に問題があろうと思うので、こういう点の指導というものをきめこまかくすべきだと思うのです。これはむろん建設大臣ができるわけじゃございません。自治大臣と話し合って、事、住宅建設のために要る用地でありますから、ほんとうに話し合ってそうした指導をすべきだと思うのです。そうして今度の場合でも土地を買いなさいというのだが、借地権というものがはたして財産権として——永代借地権ならいいかもしらぬが、いまの法律じゃなかなかそうはいかぬ。借地権というものでもって財産と見られるかどうか。それも同じ都が経営するところの事業です。たとい特別会計といえ、たとえば片方が赤字といえ、それをこうした高い金で買わなければならぬということは、これは私はいつだったか、おそらく美濃部知事の時代じゃないと思うのです。美濃部知事の時代かもしれない、そうじゃないかと思うくらいに思うのです。そんなべらぼうな都民に負担のかかるような買い方をすべきじゃないのです。一面こういうものを利用しなさいとこう言ってすすめながらも、これは当、不当はわかりません。わかりませんが、この問題については、全国的に一ぺん建設省調べておいてください。どういう形で同じ自治体の内部でもってこうした取引が行なわれ、それが国民の家賃にはね返ってくるということになると、これはたいへんなんですよ。本来ならばゼロでいいのです。そうしてかりに、あなた方がいつも言っているように、特定なる都民に利益を与えるのだから、だから六%という施行令の四条の規定でもって家賃の計算をするだろうけれども、これはゼロには利率はかけられないわけですから、そうした意味のいろいろなケースがあると思うのです。一体実態としてどうなっておるか、ひとつそれを調べてください。そうして当委員会に報告してください。一年かかっても二年かかってもかまいません、やってください。  そこで、細見さん見えているね。今度の法律は、御承知のように大体高額所得者の所得というものが二百十二万八千円というようなことを言ってそこに線を引いて、それ以上の税金を納めた者、それ以上のそれに見合う税金を納めた者は高額所得者として立ちのかせる、こういう法律なんですね。これは御承知のとおりです。そこで二百十二万円というものが高額かどうかということです。それから、今日の所得税法ではいろいろな所得税に対するところの減免というか、臨時措置法もあれば、いろいろな形でこれを高額所得者という形でない形にもっていこうというものがたくさんありますね。たとえば一件の株の配当が五万円以下ならば、これはどういうのですか、分離課税というのですか、それから一万円や二万円の、私ももらった経験がありますが、放送料とかあるいは原稿料なんというものもこれは申告しないでいいのだよとなっていますね。これは一万円とか二万円とかというものは公営住宅に入る人はたいへんなことなんですよ。あなたのほうでは一万円とか二万円と言っているけれども、これはたいへんなことなんですよ。そこで、今日の所得税法というものが、公営住宅に入っている方々の収入というものが家族構成等も考慮しないでただ機械的に二百十二万八千円相当の税金を納めた者は、この裏づけによっておまえさんはこれだけの金が入っているのだから立ちのけと、こういうことになるわけです。問答無用の線なんでしょう、それが。住宅というものに入る、これは憲法上きめられたところの国民の権利なわけです。その権利が中断されるのです。中継されるのはいま言う二百十二万八千円という線で押えろこう言っているのです。これは政令できめるのか。そうすると二百十二万八千円という線は総所得のうちのどの比重を占めるか、分離課税ならこれは別にたとえば株式を五%を持っていれば、これは当然所得に入れるのだとか何とかやりますね。私は税のほうあまり詳しくないけれども、そうなってくるとですね、幾らでも税金を何とかして二百十二万八千円にならないように何とかごまかそう、まあごまかすということばはよくないけれども、何とか縮めようという考え方を持つと思うのです。それで二百十二万八千円というものは家族構成何人ならばしあわせないい文化生活が送れるのか、これはひとつあなたの体験から見たところの額というものを率直に披瀝してほしいのです。あなたは高級官僚のはずですね、もう。だからひとつ説明してください。
  149. 細見卓

    政府委員(細見卓君) たいへんむずかしい御質問でお答えができるかどうかわかりませんが、粗収入金額、いま二百万円ということになりますと、まあいまのところで大体全体の所得者のうちそれをこえる方というのは、一割ないし二割程度というのが現状でございます。もちろんその間にいろいろ租税特別措置的なもので所得があるといいますか、そういう収入があっても課税になっておらないというものもございますので一概には言えないと思いますが、そういうことはございます。で、ただこの金額を見ます場合に、私どものほうで課税所得として考えておるものは、一時所得でありますとかあるいは継続して収入が入ってくるのじゃないがある程度の金が入ってきたということになれば、所得税のたてまえとしてはやはりそういう収入があり、そういう生活ができるということで課税する、いわゆる課税所得金額に入れておるわけです。そういうものがはたしてこういう定める基準というものをお考えになるときに適当かどうか。さらには退職所得とかあるいはまた山林所得とかいうもの、あるいはまた原稿料収入で非常に変動のあるものといったものをどういうふうに調整するかということは、これはこの委員会で立法論として御研究願うことであろうと思いますが、私どもは担税力ということでつかまえて税の問題を取り上げておるものでありますので、しかもその年の一年間の収入金額ということで、極端に申せば翌年は収入金額がなくても、たとえば退職所得のようなものあるいは一時所得のようなものも課税いたしております。その辺の調整はあるいは要ろうかと思いますが、それには一体まあそういうふうにして計算いたしました所得金額のどれくらいが文化的なものであるかということでありますと、これはなかなかむずかしい問題ですが、先ほども申しましたように、二百万円をこえる収入金額のある方ということになりますと、全体の所得者の一割あるいは多くて二割くらいということになっておりますので、やはり一割ないし二割の人が選ばれた生活をしておると考えるのが常識的ではないか、かように考えております。非常にむずかしい御質問でお答えになったかどうかわかりませんが、私一応の答弁をさしていただきます。
  150. 田中一

    ○田中一君 それじゃね、現在所得税法あるいは臨時措置法がありましたね。それらたとえば配当所得とかいろいろありますね。利子所得とかいろいろありますね。これらはどういう形の法制で徴税しておるかですね、ざっと書いてもらえればいいのですけれども、説明してくれませんか。こういうものはこうだ、ああいうものはああだというふうに。
  151. 細見卓

    政府委員(細見卓君) 非常にむずかしい御質問ですが、簡単にそれじゃ申し上げたいと思います。まあ一番代表的なものといたしましては御承知の給与所得がございまして、これは給与所得の収入金額からいわゆる給与所得控除を差っ引いたものが収入金額になるというわけでございます。まあ先ほど利子のお話が出ましたので利子で申し上げますと、公債とか社債とかというようなもの、あるいは預貯金の利子というようなものをそっくり収入金額がそのまま所得になるというふうにいたしております。ただこれにつきましては、田中委員から御指摘がございましたように、むろん本年度一ぱいは特別措置がございまして、一五%の税率でいわゆる源泉選択と申しまして、確定申告に所得税のたてまえというのは、いろいろな所得の累積がある所得を全部総合して申告をしていただくというたてまえになっておりますが、この利子所得と配当所得につきましてはいまも申し上げましたような特別措置がありまして、一五%の税率で徴収されてそれをほかの所得と分離して、それだけでおしまいだというふうに、課税関係は打ち切るというふうにできるようになっております。これらのこの所得につきましては地方税の上では申告をしていただくたてまえになっております。ただ現実問題として資料が十分集まらないとかという問題はございますが、そういう点がございます。それから典型的ないわゆる事業所得ということになりますと、これはその年の収入金額と申し上げますか、売り上げ金額から材料費でありますとか人件費でありますとかといったような必要経費を差し引いたものが所得になってこれに税率がかかるということになるわけです。それから不動産所得がだいぶふえてまいっておりますが、これは御承知のような不動産あるいは不動産の上の権利あるいは船舶、航空機というような例外的なものもございますが、そういうものを貸し付けによって、その維持とかあるいは修繕というようなものは経費といたしまして、別途手元に残るものがおおむね所得になるというような構成になっております。それから配当所得につきましても、これも特別措置がございまして、全体の持ち株の五%あるいは年の配当所得の五十万円以下という形につきましては二〇%の源泉徴収税率をもって課税関係は一応おしまい。いわゆる総合が要らないということになっております。さらに配当所得につきましては先ほど御指摘のありましたように、五万円以下のものにつきましては、これは申告を要しないということになっておりまして、非常に微妙なものでありますが、課税しないとは言っておらないのですが、申告を要しない。だから実際上課税が実際問題としてできないというようなものがございます。それから譲渡所得、これにつきましては、先般ここでもいろいろお話が出ましたように、収入金額から現在でありますともう新制度が発足いたしまして、百万円を控除したものについて長期であれば一〇%あるいは自分の売り上げ金額が所得が非常に少ないものについては五%くらいの税率になる人もあるかと思いますが、そのいずれか有利なほうで税を払っていただくということになっておりますし、短期につきましてはこれは収入金額の中から元手を引いたものを全額課税するというたてまえになっております。それから一時所得というのがございまして、これは非常に典型的なもので申し上げますと、たとえば賞金が当たった。非課税と特に明記していないような賞金が当たったとか、あるいは何か予期しない文字どおり一時的な継続的な行為によらないで一時的に収入が入ってきて、そしていま申し上げましたような利子だとか事業だとか、あるいは不動産所得だとか配当だとか給与だとかというような形の所得にならないものを、一時所得といたしておるわけでございます。それから一時所得よりもやや継続的であるというような性質のものが多いわけでありますが、雑所得というカテゴリーがございます。よけいなことかもしれませんが、政治家の収入はこのカテゴリーにいたしております。それからいま一つ、山林所得というのがございまして、これはいわゆる収入金額から経費を引きまして、これを五分五乗というようにいたしております。それから山林と退職手当につきましては特別な所得であるということで、一般の所得とは総合して課税しない、それぞれ別個の所得として課税するということになっております。  そういうふうにして出てまいりました所得から、先ほどはすぐ税率をかけると申しましたが、実際は基礎控除でありますとか配偶者控除でありますとか、あるいはまたいろいろな扶養控除というようなものを差し引きまして、これは所得の上でいわゆる経費というものではないのでありますが、そういったものは担税力というか、税を払う上においては、それだけやはりその負担がかかっておるであろうということでそれを差し引いたものを、いわゆる課税所得として計算いたしておるわけであります。したがいまして、先ほど申し上げましたように、所得税でありますので、どえらい賞金が入ったというようなときもやはりこれを所得税は払っていただかなければならない。ただ、若干税率その他では考えますというようなもの、あるいは山林とか退職手当というように反復できないものについても、所得税は税率その他についてそれに見合う配慮はいたしておりますが、そうしたものを取り入れております。  これらのものがそっくり入居基準の上に取り入れるべきものであるかどうかというのは、政策として、立法論として御検討願うことであろう、かように考えております。
  152. 田中一

    ○田中一君 これは政府も相当詳しく所得というものに対する調査はしていると思うけれども、こんなに複雑に所得税というものが分類されている。徴税をしているわけです。二百十二万八千円という納税額というものは、いま細見君が説明した総収入を言っているのか、分離課税とかその他無申告でいいようなものは除外しようという考えに立っているのかそれはどうなんですか。実態の問題と形式の問題なんです。私は実態の問題として考えろと言っているんです。だからどこかで線を引かなければならないのは事実でしょう、高額所得というものとそれ以下のものとは。どういう根拠でやったんですか。
  153. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 二百十二万と申しますのは、勤労世帯の標準家族におきます年の粗収入を申しております。標準家族の場合に二百十二万の粗収入がございますと、それから勤労者の場合は給与所得控除相当額を差し引きます。また、家族一人当たり月に三千円の割合で控除いたします。そういたしまして裸になったものが月に十四万相当というのを明け渡しの基準にいたしておりますので、むしろ十四万というものから逆に勤労所得者で標準家族の場合は年の粗収入が幾らになるかという計算をいたしますと二百十二万になる、こういうことでございます。
  154. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  155. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記を始めて。
  156. 田中一

    ○田中一君 そうすると、その裏づけのものがいま言うとおり二百十二万の相当の税金を払うというところでくるわけですね。本人が申告しない場合はどうしますか。本人が、自分は二百十二万以上でございますと言わない場合はどうですか。
  157. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 入居者に申告していただくわけでございますが、申告がない場合は管理主体におきまして地元の公共団体また税務署あるいは勤め先の事業所等に照会いたしましてその所得を調査するわけでございますが、実際の問題といたしまして、やはり課税上の基準になった年の所得というのが一番信頼すべきものかと思いますので、実際はその額によることになろうと思います。
  158. 田中一

    ○田中一君 これは細見君、税務署は、たとえば東京都が田中一の税金はどのくらい払っているかといって調べる権限はあったのかな。
  159. 細見卓

    政府委員(細見卓君) 私どものほうでわかりましたものについては、連絡する義務がございます。
  160. 田中一

    ○田中一君 あなた方がいま考えている扶養家族一人の免除というか、控除、大津留君、君の長男幾つだい、年、だいぶいっているだろう。
  161. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 高校生です。
  162. 田中一

    ○田中一君 高校生は一体一カ月にどのくらいかかる……。
  163. 大津留温

    政府委員(大津留温君) ちょっと計算したことございませんけれども、学資だけでございましょうか、生活費も含めまして……
  164. 田中一

    ○田中一君 むろん生活費から一切、小づかいから学校のものからレジャーのものも全部入れて、それが生活費というものです。
  165. 大津留温

    政府委員(大津留温君) ちょっと計算したことございませんが、手取り九万何がしの給料で五人家族で生活しておりますので、平均いたしますと一人二万円弱じゃないかと思います。
  166. 田中一

    ○田中一君 大津留君が十万円足らずの給料で一人二万円の生計費がかかる。そうすると、ここであなた方が扶養親族というか、家族の同居人の控除というものを一人月三千円だという押え方をしている。どこからこういう計算が成り立つのか伺っておきます。  あなた方は総所得の扶養家族の控除額は一人三千円と言っておりますね。生活費そのものをどのくらいに見て三千円と言っているんですか。これは粗収入から一人月に三千円を引こうというのでしょう。あなた二万円かかっている。あなたが二万円かかるなら、もう少しかける人もいるわけだ。大学へいけばもっとかかる。そうするとこれ税のほうからくる控除額というものか何かを、こういうぐあいに徴税のほうからくるところのものを基礎にして書いたのか、やはり私は実態のことを言っているんです、実態のことをね。子供が大ぜいいて、三百万入るけれども子供なり扶養家族なり大ぜいいて、そうしてもっといいうちに入りたいけれどもこのうちでなければやれないのだという人もいると思うのです。一人三千円の控除というのは、どういうところからこの数字を引っぱり出したか、伺っておきます。
  167. 大津留温

    政府委員(大津留温君) もちろんこの三千円で月の生活費相当額というふうに考えているわけじゃもちろんございません。これは田中委員も御承知のように、入居基準を月四万円とか二万四千円という場合の所得というものを算定する場合に、扶養家族一人当たり三千円控除しております。それを明け渡し基準の場合におきましても、同じ所得というつかまえ方をいたしますので、同じ方程式を使ったというわけで、それから入居基準の場合におきます三千円というのは、これは公営住宅法の制定当初から、家族一人当たり千円というので始まったわけですが、その後の物価の変動等からいたしまして、今日、それが三千円相当だということで、そういうことになっているわけでございます。
  168. 田中一

    ○田中一君 そうすると何も実態からくるところの根拠はないのだね。いままでそういう形、千円からだんだん二千円、三千円とふやしたのだとこういうことですね、そういうわけですね。生活の実態から見るところの計数ではないというのだね。
  169. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 生活費は、それはそういう控除いたしました残りで、もちろん御家族が生活されるわけでございますからあれですが、やはり家族が多い方はそれだけ負担でいろいろ多いだろうということで、扶養家族一人当たりの控除額という制度が考え出されたわけだと思います。そこで制度発足当時の、そういう思想を受け継ぎまして、その後の物価の変動等によって三千円という数字を出したわけでございます。
  170. 田中一

    ○田中一君 国民所得も数字でおわかりのとおり増大しています。しかし物価も増大している。生活は苦しい、だから二百十二万という数字が高額ということは言えないのですよ。所得の面だけを見れば、それは百五十万円より二百十二万円のほうが高いということは言えるけれども、生活の実態から見た場合には。公営住宅で住んでいるのがちょうどいいのだという階層もあるわけなんです。そうして所得税というものを、所得という実態というものは君らがしゃくし定木に考えたものと非常に違うということです。二百十二万円という数字をどこからはじき出してきたかということ、それが憲法で保障するようなよい環境の住生活が送れるかどうかという問題が、基本的な公営住宅法目的なんです。これを得るための家賃なんですね、負担なんです。二百十二万という数字もどうも明確でない。扶養家族一人三千円というものもこれも明確でない。いま非常に二十年前から見た場合には、物価がどのくらいになっていますか、それに従って収入もどれくらいになっておるか、われわれ国会議員の歳費だってずいぶん上がっているのです。昔ある時期にぼくら月に四千円くらいしか入らなかったんです、三千円だか四千円だかです。いま何と二十八万五千円、もっとも手取りは六万円か七万円にしかなりませんけれども、そういう幅がある収入になっている。それが千円から三千円にしていいんだということではないのです。一人当たりあなたですら二万円かかるのでしょう。こんな控除額なんてありっこないんです。二万円として五人いたら十万円です。だからあと百二十万か百五十万程度のものが総収入として計上される限度くらいがようやく高額所得者の限度なんです。だから三百万以上の収入があるのが、これむろん家族構成によりますが、それは控除していく、それ以上が高額所得者なんです。いま健康保険だってずいぶん悪くしようしようとして、ただじゃないのですよ。家族が多ければ病気もある。そうした全体の生活という問題、数字から割り出さなきゃだめです。三百万以上の者は高額所得者だというきめ方をするならばこれも一つの根拠がありそうです、われわれの生活の実態から見ても。私はそういう明確な、あなた方はいままでも物価の上昇なり賃金の上昇なりというものは知っているはずですよ。むろん賃金も上がっております。労働者は春闘でかちとっておりますよ。しかし一面株の配当によって生活する者とか、アルバイト的な余技がある収入、原稿料にしても何にしても、こうしたものの収入はこれに算定されないというならば、当然これは三百万程度の者が高額所得者ということにならざるを得ないのですよ。二百十二万というきめ方というものは何にも根拠がないじゃありませんか。われわれは力が弱いからこいつをつぶすわけにまいりません、おそらく押し切るでしょう。しかしこれだけは譲りません。二百十二万の所得が高額所得者である、これ以上の者は追い出すのだということは譲れません。この限度を上げなければ譲れない。私は実態はそうではないのですよ。この点が納得できません。あなたのほうだって、いままで一人千円控除、貸すときには千円控除で考えておったという。一体税の上では幾ら見ていましたかな、扶養者控除。
  171. 細見卓

    政府委員(細見卓君) 従来八万円でありましたのを今回二万円上げまして十万円に引き上げたというわけでございます。
  172. 田中一

    ○田中一君 それは年額ですね。
  173. 細見卓

    政府委員(細見卓君) はい。
  174. 田中一

    ○田中一君 三千円ならば幾らになります。三万六千円ですよ。一番きらいな税務署でも十万円にしているのです。いいですか、建設大臣。この点明確にしなければ私は承知しません。明確にならないのですよ。みつぎ取りのほうですら年額十万円というものを控除しているのです。みつぎ取りということばは悪いかもしれませんが、これは聖書に書いてあったから言ったんだけれども、そういう控除額三千円なんというのはありやしないのですよ。少なくともこれが限度が三百万以上となるならばいざ知らず、二百十二万なんという数字はどうしても承服できませんから、この点だけははっきり申し上げておきます。  次に伺いたいのです。民事局に。いままで二十年間伝統的に——伝統というか慣習的にというか、公営住宅というものはこれは一時使用である、こういう原則をとっていままできておったのです。これは今度この法律の改正でもって、改正の際に法務省と建設省はいろいろ話し合って、そしてわれわれがいまもこれは賃貸じゃないかと言っても、そうじゃございませんというのが一貫した政府答弁なんです、今日までは。今度これは借家法によるところの賃貸借ということに政府の意思統一ができたわけですね。そういうわけですね。
  175. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 公営住宅の使用関係が私法上の賃貸借かどうかという問題でございます。私どもは、これは民法あるいは借家法の適用を受ける私法上の賃貸借である、このように考えてまいったわけでございます。学説も公法学者も私法学者も大多数の学説が同じように考えております。また裁判所の裁判例は、これはほとんど例外なくわれわれのほうと同じ見解に立っております。
  176. 田中一

    ○田中一君 この問題は今度の法律の改悪に際して意思統一をしたものだと思います。そこで、都が行なっている従来の入居者との間に取りかわした契約約款というものがもうできていると思うのです。それ一つ出してもらえませんか。それからあるいはいままで一時使用で入れてやるんだ。臨時に一時に貸してやるのだ。いつでも追い出しますよというのが一時使用の原則である。これは、借家法は適用しないのだということになっていますね。借家法見ましても一時使用のものはこの限りでないといって、借家法から除外をしております。したがって、いままで都が行なっているところの現在そういう政府の統一見解が出たのだから、賃貸借は相互契約ですからね、契約の約款の見本をお出し願いたい。もしもお手元になければ、直ちにそちらの部局に電話でもしていただいて、さっそく取り寄せてください。どういう契約でいままでの一時使用という問題を行なっておったか。どうも東京都ばかりやりだまにあげてすまんけれども、一番手近に東京都がいるものだから伺うのですから。さっそく取り寄せてください。
  177. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 私どもの住宅の条例の施行規則によって、本人から請書という形をとっております。後ほどごらん願いたいと思います。
  178. 田中一

    ○田中一君 請書ですから、おまえ入れてやるよということなんです。民法上の契約ならば。委員長、これプリントして全委員に配ってほしいのですが。請書ということは、入れてあげますよということです。恩恵的態度ですよ。相互契約じゃない。民法ではどの場合でも契約というのは相互契約というものがあるでしょう。大体、双方の利益、双方の権利というものを認めながら借家法ではそうなっています。その点民事局説明してください。
  179. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 契約の形式の問題でございますが、もちろん契約という形式をとった約束が原則でございます。しかし、ものによりますと、必ずしもそうではございません。たとえば、よく言われます例として付合契約というのがございます。これは、たとえば運送約款あるいは保険約款さらにガス、電気の使用料使用方法についての定め、これはどちらかといいますと、一方的に条件を示しまして、それに従って契約をするかしないかということになるわけでございまして、とのような場合に、必ずしも契約という形はとらない場合もございます。もちろん、その申し込みと承諾が一致すれば、そこに契約が成立するわけでございまして、請書という形をとりましても、民法上の契約である場合もこれは十分考えられるわけでございます。
  180. 田中一

    ○田中一君 むろん、口頭でも契約ですよ。文書の取りかわしがなくても契約には違いない。これは雇う、雇われましたという場合には、これは永久ですよ。途中で中断するまではそうなっていますね。したがって、いままでは一方的に入れてやるのだからこれだけを守れよ。この場合にはこうだよああだよという入れる条件だけ、貸し主のほうの条件だけをやって入れているわけですね。しいて言えば命令ですよ。また、恩恵的な態度ですよ。それは公務員の態度じゃないのですよ。いままで一時使用というような考え方で、国の財産あるいは公共の財産をお前に貸してやるのだというところから出発しているのがいままでの一時使用という概念、一方的な契約行為だった。ところが今度ははっきりとこれは民法上の契約ということになると、文書がなくてはなりません。私はいまのこれリコッピーしますけれども、これから、この法律が通った場合に、あなた方はどういう約款をつくろうとするか、契約約款をつくろうとするか、そのひな型、もうできていると思うのです。あるいは政府からかくかくのものであるというのが出るのが当然であります。これは値段の問題でも、家賃の問題とかなんとかいう問題、いろいろ地方的にあるでしょう。しかしながら、こうした大胆な法律の改正をする以上、やはり全国公平な入居者と、それを管理しているところの都道府県公共団体との間に、地方公共団体との間に当然そうした双務的な契約がなくてはならない。家賃払うのだから。したがって、そのひな型はおそらく政府から出ていると思う。それをひとつ資料として委員長、要求してください。
  181. 岡三郎

    委員長岡三郎君) ただいまの資料は……。ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  182. 岡三郎

    委員長岡三郎君) つけて。
  183. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 従来の例からいきますと、法律が通りまして、地方団体にその趣旨を通達あるいは会議等が持たれまして、徹底させられる。かように考えております。その際、ただいまお話しのような従来の公法上の契約から私法上の契約に変わるとか、変わったに伴ってこうするのだとか、いろいろ適切な指示があろうかと思います。私ども内々では研究いたしておりまするが、政府の指示を待っておるというのが、ただいまの状況でございます。
  184. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 従来この条例のひな型といたしまして指導した通牒がございますので、それを資料として提出いたします。
  185. 田中一

    ○田中一君 いますぐに持たしていって、リコッピーして全部に配ってください。それを要求してください。
  186. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 大津留住宅局長、いまの資料、すぐできますか。
  187. 大津留温

    政府委員(大津留温君) ちょっと、いま直ちに準備にかかりますけれども、一時間ぐらい時間の余裕をいただきたいと思います。
  188. 岡三郎

    委員長岡三郎君) それではその時間に間に合うようにお願いします。
  189. 田中一

    ○田中一君 そこでもう一ぺん聞きますが、前回の公営住宅法の改正では、割り増し家賃を取るということに法律の改正をやったのです。一定限度以上の高収入というか、収入がこえた場合には。そうすると、これは、当時は一時使用、一方的に貸し与えてやるのだというところに思想的根拠があったために、いま借家法第七条ですね。借家法の第七条というものが、公営住宅法の、この単行法でそうしたものをきめた、一方的にきめた場合、これは借家法違反になるのじゃないか。この解釈をひとつ、何もあなたは建設省じゃないのですから、あなたは法律家として、この主務官庁として、ほんとうに言ってくださいよ。いいですか。私は非常に疑義があるんですよ。一つの法律を一つの法律で消していくということもずいぶんありますがね、割り増し家賃というものを取っておった。これは一時使用という形で、上から乗っかって取っておった。公営住宅法を改正して。これは非常に、借家法の適用が、いまから五年、六年前から思想的には借家法の適用を受けるのだという前提に立っているならば、これは問題があるのじゃなかろうかということを考えなければならないと思うのですが、この点どうですか、この七条の問題。
  190. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 借家法の七条によりますと「建物ノ借賃カ土地若ハ建物ニ対スル租税其ノ他ノ負担ノ増減ニ因リ、土地若ハ建物ノ価格ノ昂低ニ因リ又ハ比隣ノ建物ノ借賃ニ比較シテ不相当ナルニ至リタルトキハ」云々と、こう書いてございます。これが借家法の家賃の増減の請求の理由とされております。ただいまお尋ねの割り増し家賃と申しますのは、入居基準が二万四千円、あるいは四万円ということに定められておりまして、そういう点も考慮して、一般の家賃よりはかなり低額に定められておるのでございます。したがいまして、その所得が多くなりますれば、言いかえれば、その入居基準をこえるというふうなことになりますれば、それに応じて、普通の家賃に近づけていくということも、当然考えてよろしいだろうと思うのでございます。その趣旨が公営住宅法の割り増し家賃という形で出ておるのではないかと思います。借家法と必ずしもこれは結びつきません。しかし、低額所得者に対して低廉な家賃で住宅を貸し付けるという社会政策的なこの法律でございます。その法律の趣旨から申しましても、これは、そういう割り増し家賃を定めるということは、特段に借家法に違反するという問題ではあるまいと思うのでございます。
  191. 田中一

    ○田中一君 たとえば税金が上がるとか、書いてあるのはそうですね。それから、何というか、近所の家賃が高くなったとかという社会的影響でもって上げなくてはならないというものではないのです。あなたの言ったように、低廉な家賃で貸すということが原則になっているのです。これは一方的な——それからもう一つ、社会的な流動というものを当然、先ほども申し上げたように、所得も増大する、しかし、物価も上がっているということですね。所得が増大するということによって高額、割り増し家賃を取るということは、間違いです。いいですか。住宅は生活の根拠なんです。収入が上がって生活が苦しくないならば、これはいいでしょう。それ以上に政治的な物価の値上がりをやっている政府が、政府の一方的な意思でもって上げているのですよ。これは、私がここで言うまでもなく、あなたがよく身をもって体しておるあなたの奥さんに聞いてごらんなさい。そうすると、一面、収入の面だけを押えて家賃をとるということは、一連の高物価政策をやっているということにつながるのです。物価は上がっているのです。せめて住宅行政に携わる建設大臣は、家賃だけは上げない、よそのどれも物価が上がっているけれども、おれは国民大衆のために家賃は上げないぞという姿勢こそ、よい政治家なんです、またよい行政官なんです。物価と収入とのイタチごっこ、それはたとえ三万円の収入が四万円になっても、生活自体というものは、割り増し家賃というものを取られることのできないという情勢であることは、あなたも承知のはずですよ。だから、借家法の精神、公営住宅法の精神から見た場合には、当時こうした割り増し家賃というものを取るということを、一方的にですよ——一方的にというのは、収入の額だけを示して上げるということは、少なくとも借家法の精神には違反している。これは当時は一時使用という、国並びに公共団体の持っている家に大ぜいの人が、入れない人もたくさんいるのだ、いるけれども、特にお前を入れてやるのだというような恩恵的な非民主的な住宅政策をやっておったから、そういうことが、まだ家に困っているから、やむを得ず泣き寝入りして入っている人もいるわけです。公営住宅法の精神はそんなものじゃないのですよ。ことに——もう一ぺん言いますよ。収入が増大するという面だけとらえて割り増し家賃を取るということは違法です。われわれ生きる権利があるのです。生活をする権利があるのです。一方においては物価はどんどん上がっていくじゃないですか。私は、こういう問題は庶民大衆と触れ合っているところの公営住宅法実施しようという主務官庁である建設大臣の良心的な——あとで聞きますが、そのあなたの気持ちを聞きますけれども、当時です、当時ぼくはこれがもし借家法の適用を受けるのだということになっておるのならば、こんなことは認めませんよ。おそらく公営住宅の入居は全部反対するでしょう。われわれが承知しないです。恩恵的な一時使用だということになっている。これはどの政府のどの政府委員もそう言っているのです。ところが実態は一つも変わらないで今度初めて民法上の賃貸借だということに政府の統一見解が出たならば、いままでの過去の割り増し家賃を払い戻しなさい。こんなものはあり得ないと思うのですよ。法律というものは、そんなに解釈が——国民生活に密着しているこの法律というものがそんなに解釈が変わるべきものじゃないのですよ。裁判できまったならばいざ知らず、どんな法律だって社会情勢、社会の流動によってそれは解釈変わりますよ。この公営住宅法の問題、一つも動いていないのです。ただ根拠は、基準収入よりも余分に取っているからお前さん割り増し家賃くれというのでしょう。だれもかれもみんな賃金は上がっているじゃありませんか、当時よりも。これはもう一ぺんひとつ、あなた裁判官になったつもりになって、目をつぶってちゃんと説明してください。そんなに迎合する必要ありません。
  192. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 物価と収入の関係等から考えますと、確かに収入のノミナルな額が上がったからといって、当然にその割り増し料金を徴収してよろしいということにはなるまいと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、この公営住宅法は低廉な家賃で低額の所得者に住宅を多く供給しよう、これによって国民生活の安定をはかろうというのが趣旨でございます。一方、この借家法の七条は客観的な家賃というものを常に頭に置きまして、情勢に応じて客観的に妥当な金額にこの家賃をきめようというのが七条の規定の趣旨でございます。でございますから、もしもこの公営住宅法の借り賃の規定がないといたしますならば、当然に借家法の七条の適用があるわけでございまして、その時点時点における客観的な家賃というものが、その賃貸借関係の賃料になるということになるわけでございます。ただ、公営住宅法のその法律の趣旨にかんがみまして、特別にこれは賃料を低額にいたしております。ということは、客観的にあるべき賃料以下に下げて公営住宅の借り賃をきめてあるわけでございます。ただしかし、それは一定給与の水準に達するまでの人についてのみの特別の措置でございます。したがいまして、その収入が水準をこえるということになりますれば、それに応じてその家賃を若干増額しても、これはあえて不当とは言えないだろうと私は思うのでございます。その増額のしかたがこの借家法に定めております客観的に適正な家賃まで一挙に上がるということになりますれば、これは公営住宅法法律の趣旨にも反することになろうと思いますけれども、そうでなくて、やはりある程度のところでこれを押えていくということでございますれば、これは公営住宅法の精神にちっとも反するものじゃございませんし、また借家法の規定を免れるとか、これに違反するとかいうことにはなるまいと思うのであります。
  193. 田中一

    ○田中一君 家賃の基準ですね、これを上げればいいんです。物価が上がっているから当然家賃の基準限度というものを上げればいいんです、当然上げるべきです。どうも常に二つのものの比重を考え、弱い者に対してはしない。これだって三万円限度を四万円にすればいい、四万五千円にすればいいんですよ。生活水準はみんな上がっているんです。サラリーマン階級、働く者の階級が公営住宅に多く入っている。この連中は非常な苦労をしながら賃金闘争をやっているんです。そんなに高賃金というものは黙ってもらっているものではないんです。生活の水準が上がっているんです。物価が上がっているんです。基準を上げたらいいじゃありませんか、基準を上げれば割り増し家賃払う必要はないでしょう。そのようにかたわな、たとえば物価が上がっているにかかわらず、おまえの賃金は上がっているといって、基準率をこえたから、基準率も社会の全般の情勢からいって、統計上一世帯当たりの収入は上がっているんです。全部が、決してそれが特定なるだれかが上がっているのではないんです。上がっているんです。なぜ法律、この施行令によるところの額を上げないんですか。あなたの言っているのは低廉な家賃云々という法律の精神を言っているけれども、この法律によるところの一方的なものできめている。基準額を三万五千円ときめれば三万五千円でしょう。社会の生活の水準が上がれば四万五千円にしたっていいじゃありませんか。それをしていないでしょう。それをしないでいいと思いますか。そういうことは目をつぶっていいんだ、あらわれている現象、物価の問題を忘れている、自分のほうで。基準を上げれば割り増し家賃払わんで住めるんじゃありませんか、道はあるんでしょう道は。どう思います。
  194. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 物価なり収入にスライドと申しますか、それに応じて基準を上げていくということも、これは当然考えられることでございます。これはしかし原則論になります。一定の収入以下の者に限って公営住宅に入居を認めるとこういうことでございます。その基準を定めたその収入というものが、一般の水準が上でっていけば検討されるのはこれは当然であろうかと私は思います。ただしかし、その基準にのっとってその入居を許された人たちが、はるかにその基準をこえるというふうな状況になりました場合に、一般の家賃と比べれば安い家賃のままでよろしいかとこういうことでございます。したがいまして、そういった基準をこえた人についてのみ若干割り増しをお願いする、これがいまの割り増し家賃の制度だと思うのであります。もちろん、その原則的な水準を上げるかどうするかということは、一般的な物価なりその他の情勢を勘案してきめるべき事柄であることは、田中委員仰せのとおりだろうと思うのであります。この割り増し家賃といいますのは、その基準をこえた、水準をこえた人たちについての特別の措置であろうと思います。さりとてこれが客観的な家賃にまで急にはね上がるものではございません。やはりそれ以下で妥当なところで割り増し家賃を定めていくということでございます。決して不当だというふうなことにはなるまいと私は考えます。
  195. 田中一

    ○田中一君 どうもあなたも政府の一人で、なかなか譲らぬだろうと思う。自由労働者にしてもニコヨンといったものですよ、二百四十円。いま幾らになっています。いいですか、自由労働者すら、失対事業をやっているニコヨンが二百四十円ですが、いま幾らもらっているか、二千円以上もらっていますよ。ちょうど一人の控除率が千円から三千円にしたのだという思想とちっとも変わらないのです。弱いところから取っていこうというのですよ。国民の政治をしているんじゃないんですよ。これはあなたも裁判のとき云々と言われるからこれ以上聞きませんが。もう一つあなたに聞いておきたいことがあるが、一体借地借家法によるところの住宅というものは、借家ですね、住宅というものは土地のない住宅というものはありますか。住宅というものと土地との関係はどういうぐあいに解釈しておりますか。
  196. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 土地住宅の関係でございますが、これは住宅所有者が持っておる土地の場合もございますし、また他からそれを使用貸借で無償で借りる場合もありましょうし、また賃貸借で土地だけを借りてその上に建物を持っている場合もございます。
  197. 田中一

    ○田中一君 ちょっとぼくの質問の御理解がなかったので、住宅というものは土地の上に定着しなければ住宅と言えませんかと聞いているんです。
  198. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 住宅は建物でございます。ですから土地の上に定着しておるものが建物なんでございます。
  199. 田中一

    ○田中一君 南方では木の上にうちをつくっています。これも住宅なんです。この場合に、住宅とは必ず土地の上に建てなきゃならないという定義になるのでしょうか、どういうぐあいに解釈するか。
  200. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 南方の法制は私は存じませんが、日本の法制におきましては、土地に定着したものでなければならないわけでございます。しかしその定着のしかたはこれはいろいろございます。
  201. 田中一

    ○田中一君 そうすると宅地と、借家と土地とは不可分なんですね。その不可分の限界はどのぐらいを不可分の範囲といえますか。十五坪のうちを持っている、そうするとその家に住むのには、十五坪の土地があれば——割増して十六坪あればいいんだというように考えていいんですか。
  202. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) これはたいへんむずかしい問題でございまして、一律に十五坪の建坪のところへ十六坪の敷地があればよろしいというわけのものではあるまいと思います。それぞれの事情に応じてその建物を維持する上に必要な敷地というものが考えられるわけであります。必ずしもその範囲を、一定の建坪に対してこれだけのものでなければならないというものではないだろうと思います。
  203. 田中一

    ○田中一君 現行法にはこういう条文があるんですよ。耐用年限の四分の一を経過した場合には払い下げすることができる、しかしこれは一方的に改正して建設大臣の許可が要ると、こうなっているわけです。その条文があるから結局建設大臣という人間がこれはイエスかノーかをきめるわけです。そこで今度こういう公営住宅というものは、不可分として土地がなくちゃならないんだということが前提で考えられるわけですね。私は木の上にもあると言った、木の下には、むろん木も土地からはえておりますから、その部分でいいのか、あるいは川の上にも住宅があるんです。これは川底には土地があるからやっぱりこれは土地だと、こういうことで判断するか、あるいは飛行機に乗って往復する人間がある、途中でどこにも、どこの領土も通らないで行っているという場合もある、これもうちには違いないのですよ。家的なものなんですよ。だから私は払い下げ問題等で、今度は土地と家という問題は不可分のものであるという前提に立つならば、どの範囲土地というものは必ず家には付随しなければならないものだということに借家法な立場からひとつ解釈していただきたいのです。なるほど行政的な、あらわれている面、われわれの見る面にはあります、いろいろな形があります。しかし払い下げにはうちは払い下げてその部分土地も払い下げてやろうといったところが、住むに耐えないものになる。民法の上からいえば出入りする公共通路がある場合いいですがね、ない場合はよそのところを通らなければならない。これは民法上いろいろ制約がありますし、また建築基準法の上から見てもいろいろ制約があります。借家法上から見て、法律的な見解としてはどの程度が正しいのか、これひとつ説明してください。
  204. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 一定の建物に対する敷地がどの程度が相当であるかということになりますと、これは法律ではその問題は解決いたしておりません。実際の生活に即して一定の家を維持するためにこれだけの土地が必要であるということになれば、それだけの土地を買うなりあるいは必要な範囲土地を他から借りるなりしまして、そこは契約にまかされておる。ただ逆に、ただいまお話しの建築基準法のように敷地が先にあって特定の事情のもとにおいてその建蔽率をきめるというふうな場合には、これは逆に建物が制約されてまいります。そういう場合がございますけれども、逆に建物からそれに要する土地がどの範囲のものが相当かということは、これは家をかまえる場所、時期、いろいろの条件を考えてきめられるべき問題でございまして、法律的にその何%が相当であるということはちょっと言えないと思います。
  205. 田中一

    ○田中一君 民法の上から見ると、たとえば隣りに隣地がある。しかしその隣りのうちの道を通らなければ自分は何にも生活はできないのだという場合には、これを一時使用してもいいというようなことが、条文があるはずですね。そうすると、どういうことになりますか。
  206. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) それは建物と建物との間の相隣関係でございまして、建物に要する敷地全体の面積の問題とは関係がないのでございます。現実に建っておる建物相互間の権利関係を調整するために、民法の所有関係の規定があるわけでございます。
  207. 田中一

    ○田中一君 そうすると、家の払い下げというものは必ず一定規模の土地が付随して払い下げなければならないということに解釈していいわけですね。
  208. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 建物自体は土地に定着しております。したがいまして、建物が売買されますれば、その土地利用関係もそれに付随して動いていくことは間違いございません。その場合に土地も同時に譲渡されるか、あるいは土地については借地権が設定されるか、それはやはり当事者の自由意思に基づいてきめられる問題であります。
  209. 田中一

    ○田中一君 しかし通路も何にもないところに、自分のものでないところに住めないのです。社会生活営めないのです。そうすると、払い下げする場合を言っているのですよ、いま。必ず十五坪の家にはせいぜい二十坪なり二十五坪なり自分が、公共歩道でもいいし、道路でもいいし、それらに連絡するという土地もつけなければ、本質的な家というものの機能は発揮できないのだから、必ずそういうものがあるのだということになりますね——なりますね。
  210. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 家を利用するためにはやはりその敷地を利用しなければなりませんので、全く周囲に出る道もないような土地を建物の敷地として取得いたしましても、その限りにおいてはその土地利用することはできません。そこは通行権を設定するとか、あるいは賃借権を設定する——いろいろの方法がございます。そういったことによって解決されるべき問題だと、こう思います。
  211. 田中一

    ○田中一君 これは住宅局長、払い下げ問題は数量として相当なものが年々払い下げられておりますけれども、建設大臣はどういう基準で、どういう考え方で、払い下げをしないならしない、するならするという態度をきめるのか。むろんケースバイケースで、ここはどうにもならぬという判断をすると思うのです。ちょっとあなたが優柔不断ということじゃ困るのですよ。せんだっても総理を呼んでいろいろ聞いてみると、まだ丸ノ内の東京海上の建築認可をしないらしいのですけれども、ああいうことは早くしなければならない。ことに住宅問題はもっと先です。したがって払い下げの基準というものをこの際明らかにすることが、あなたが非常に国民から信頼される建設大臣であるはずでありますから、どうかその点ひとつ明らかにしていただきたい。そうしていまの場合、いまの法務省に質問しているような問題、一戸の払い下げする場合には、これに対してどのくらいな土地をつけて払い下げするかというと、それがまあ今度建築物の面からくると、建築基準法では一定の建蔽率がありますから建蔽率の限度は、当然これは払い下げになるのか、その点の基準をもっぱら建設大臣の腹一本、一つで、あいつは気に入ったから、あいつは気に入らぬから認めないということじゃ——客観的な社会情勢、地域の情勢というものを考慮しながらやられると思うから、この際ここではっきり基準を示していただきたい。それがもしも基準がなければ、私、待っておりますから、これを採決する前までに意見をまとめて説明していただきたいと思います。
  212. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 先ほどからの展開されている議論について、私も傾聴いたしております。いま御指摘になりました基準の問題につきましては、やはりその客観的な立地条件あるいはその環境におけるところの経済状況、すべてを判断いたしまして、建てかえあるいは払い下げ、あるいはそれらのそれぞれに適応した措置を講ぜなければならぬと考えておりますので、いま直ちにここにおいてすべての基準を設けまして、その基準に応じて行なうということの判断はむずかしいことであろうと私は考えておるのであります。
  213. 田中一

    ○田中一君 日本は立憲国なんです。ことに主権在民の平和国家なんです。国民の当然の要求にこたえるというものが、あなたの主観でもってものをきめられちゃ困るのです。それぞれみな基準があるのです。あなた、判断する基準はあるはずです。でなければ、去年、おととし、さきおととし、ずっと払い下げしているはずはないのです、あるはずです。それをひとつ明確にしてください。いまこの質問を、ぼくは君のところにこういう質問をすると言っていないから困ったかもしれぬけれども、それはだれかと相談して基準を、統一見解を出しなさい。だめですよ、いますぐにしたらどうですか。
  214. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 御指摘になりましたごとく、重大なこれらの措置あるいは行政上の措置指導並びに政治判断というものが、感情によって、主観によってこれを判断いたしましたり、あるいはこれを行なったりするということは、最もいけないことだと私は思っております。したがって正鵠なる判断、客観的、総合的な判断のもとにおいて、これらの措置を判断を下すべきであるとこう考えておるのでございますが、いまの時点におきますところの基準といいますか、これらに対する考え方につきましては、住宅局長から答弁させます。
  215. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 基本的な方針といたしましては、先ほど建設大臣がお答えしたとおりでございまして、やはりその地域土地事情、あるいは住宅の環境の状況その他いろいろな状況から判断して、建てかえるべきかあるいはその建てかえの必要がないというので払い下げをいたすかということになろうと思いますが、具体的な基準といたしましては、東京、大阪のような大都市地域で、及びその周辺地域で今後都市化が予想される地域におきましては、原則として建てかえを進めるということで、払い下げは原則としていたさない考えでございます。大都市におきましては、その既成市街地内の主要な場所でまとまった団地は、やはり建てかえを原則として将来にわたって保留すると、ただしその郊外だとかあるいはその他の町村におきましては、建てかえの必要ということも将来にわたって必要がないというようなところは、管理上の必要あるいは入居者の希望によりまして、払い下げを行なうということをやっております。したがって、現在もそういう基準から払い下げを行ないました例はございます。
  216. 田中一

    ○田中一君 いまの大津留住宅局長の発言をひとつ文書にして当委員会に出してくれるように要求しておきたいと思うんです。
  217. 岡三郎

    委員長岡三郎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  218. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記つけて。
  219. 大津留温

    政府委員(大津留温君) そういう基準を内規として実は建設省で持っているわけでございますが、内規でございますから、そう外に出す性質のものじゃございませんけれども、御要望によりましてそれじゃあ提出いたします。
  220. 田中一

    ○田中一君 そこでもう一つ局長に伺いたいんですが、借家法では第五条に、関西方面では御承知のように、借家というのはみんな畳、建具は全部借家人持ちということが長い間の慣行で行なわれているわけです。これではこの場合には当然買い取り請求権があるんだというように読み取れるのですね。ちょうど戸山ハイツがそうなんですよ。あれは、占領軍がいろんな古材等の物資を東京都にまで送ってくる、それで東京都が何千戸かつくったわけです、畳なんか要らぬと。板敷きですか、そこに建て増しをして畳なんかを入れて生活しているわけですね。そうですね局長。そうして増築は一定限度、あれは七坪半だったな、一定限度の許可をすると、三坪だったか五坪だったか建て増しも認めたわけです。そうしてそうした許容されている分の建て増し部分とか畳、建具という類は追いたてを食うんですから、これは困ります。持っていく場所がない。ほかはみんな畳、建具がありますから要らない。その場合当然、戸山ハイツはいま建てかえをやっているけれども、そうしたものは当然これは借家法からくると買い取らなきゃならないんだ。買い取るんでしょうね東京都は。また、それらの考え方を政府は全国の都道府県公共団体に徹底的にそれを知らしめるという措置をとるかとらないか——とらなきゃ困るんです。その点もひとつ答弁してください。
  221. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 先ほど法務省の局長の答弁にもありましたように、公営住宅は原則としては民法、借家法の適用がございます。公営住宅法に特段の規定がない限りにおいては民法、借家法にかかるわけでございますが、御指摘のように造作買い取り請求権というのが入居者が造作を付加いたしました場合にはございます。したがいまして、公営住宅の場合にもこの規定適用になることは当然でございます。したがって、借家法にいう造作買り取りに該当する場合は、そういう買い取りに応ずるという義務を負うというようなことになるわけでございます。
  222. 田中一

    ○田中一君 東京都はそのように措置してやっておりますか。
  223. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 入居者からそういった要望が非常に強うございましたので、他の一般との比較におきまして御説のとおり西洋式の住宅をつくって、それから畳を全部入れたという事実、これに着目いたしまして、私のほうでは一定基準がございまして、建てかえの際にたとえばガス、水道、電話施設等々に、ことばとしては私ども補償ということばは使っておりませんけれども、そういう気持ちでその畳の部分につきましては、金額をプラスアルファーをいたしております。
  224. 田中一

    ○田中一君 借家法では買い取りの義務になっていますね。そうすると、そうしたあいまいなことばじゃなくて、はっきりとこれは借家法によってこれ買うんだということを政府はこれを通達すること、それでそれを受けて東京都はあいまいなことはしないで、ちゃんとこれとこれとこの部分についてこれは評価して、これを買うんだというふうにしなきゃならぬですよ、どうも君、やってないんじゃないかなあ。
  225. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) ほかの団地に比べまして、その部分だけは確かに金額は多うございますから、確かにやっております。
  226. 田中一

    ○田中一君 これは建設省の所管でありますけれども、法務省に聞きますが、戦争中の遺物の地代家賃統制令が残っているのです。これは自民党からしばしばこれに対する廃止の要求があり、三回か四回提案しましたが、全部これは流れてしまいました。いままで不成立です。そこで地代家賃統制令とこの公営住宅との関係です。これは一体まあ極端なことを言うと、いまの土地の問題が、あのときにはこういう答弁をしているのです。あれは戦時中の立法ですが、地代家賃を上げちゃならぬというやつです。これはどの範囲まで上げていいのか。建物の土地以外のところは上げていいのです。それが限度です、地代家賃統制令は。これは居住という一つの目的ですね。通路なんかは上がってもしようがない。それが明らかになっておらなかったように記憶しているのですが、したがって、それらの問題も関連して、これから払い下げ等の場合には、地代家賃統制令というものを、この戦時中の幽霊ですが、物価を上げるという姿勢を変えないために、われわれは通さないのです。もう十年以上も前です。そこで、払い下げに関連して地代家賃統制令というもの、公営住宅はなるほど地代家賃統制令が生きている形で、ちょっとこれは見ないで来たものですから、生きているか生きていないかの問題ですが、二十五年から公営住宅ができました。二十五年から今日まで地代家賃統制令のこのワク内に入っている対象物が入っているかどうかの問題、大津留君ちょっと知らせてほしい。
  227. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 公営住宅には、地代家賃統制令の適用がないというふうに私どもは解釈しております。
  228. 田中一

    ○田中一君 そこでいよいよ本論に入るのですが、いままでは本論じゃないのです。公営住宅が今日まで約二十年、主として木造建築がそのまま残されておる。そこで民法上の借家権というものは、その住宅が滅失した場合には、借家権がなくなるのだというのが民法上の規定でしたね、たしか。それが減損してしまえば、これはもうあるいは火事で焼けてしまえば、借家権はないのだというのが民法上の規定と思いますが、どうですか。
  229. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) そのとおりでございます。
  230. 田中一

    ○田中一君 そうすると、かつて十年ほど前に公営住宅に対する修繕を全然しない。公共団体が金がなかったからしないのですよ。だから修繕の義務という改正をしたことがあります。いまそれをやっているはずであります。ただ建てかえをしようといって、建てかえの計画に入っている団地だからといって修繕をしないという行為が、しばしば行なわれているのです。修繕を義務づけているけれども、しばしば行なわれているのです。この点はひとつ建設大臣そういう事例がたくさんあるのです。したがって、この問題について政府の態度、そうしてこの問題も全国の百万戸以上の公営住宅の団地あるいは管理者に対してその義務を必ずやれということ、あるいはそれをしなければならないのだということ、たとえば、三年後に建てかえるという時点であろうとも、三年間はその修繕の義務はあるのだ、居住者の申し出によっては必ずやる場合においてはやれという通達を出していただきたい。その通牒ができたならば、われわれ委員全部に配付していただきたい。
  231. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いまの関連を御質問いたしたいのですが、公営住宅法の第十一条の二に「事業主体は、常に公営住宅及び共同施設の状況に留意し、その管理を適正かつ合理的に行うように努めなければならない。」こう管理義務が掲記されております。そこでいま田中委員の修繕ということもありますけれども、管理の上からいきましてこれは独身寮といわれておりますが、清和寮というのがあります。この状態を御存じであるかどうか。おそらく御存じないと思いますけれども、申し上げますと、ここは七百二十円と八百円の家賃になっているといわれております。この中のトイレも破損しておりますし、しかもこれは電気代が納められていなくて約一カ月間ぐらい停電をさせられておった、こういうふうな状態でもありますし、現にこの住宅難のおりから空室がかなりの数ある。それと同時に非常にいま申し上げましたように、修繕するどころじゃない。掃除も満足にできていない。この状態で団地サービス業というのが行なわれておるようでありますが、これらに対するものについてどういうふうな管理を今後行なっていくのか。今日このままの姿で放置しておくということは、いまの田中委員に関連してからの管理業務の上から義務づけられておる上からいっても、非常に不行き届きだとこういうふうに思うわけです。この点について法の解釈の上からどういうふうに処置をとっているか。
  232. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) ただいま御質問になり、また御指摘になりました点は非常に大事な問題であると私は思います。私が大臣に就任いたしまして直ちに東京都内あるいは中京地区等の公営住宅の現地を視察をいたしましてこの目で見てまいりましたことは、やはり低所得者のお気の毒な庶民の大衆の各位がその恵まれない住宅環境、言いかえますならば住み心地のよくない非常な暗いといいますか、寒々しい公営住宅の中にお住まいになっておられて、そうしてふすまは破れ、あるいは畳は全く表のほうも痛み切っておるというような公営住宅の実際の姿を見ますときに、まことに私自身暗い感じを受けまして、これらの方々に対してもう少しこれらの管理という問題、修繕維持という問題について、こまかい配慮をいたしていかなければならぬということを強く感じましたようなわけでございます。したがいまして、それぞれ行政指導におきましても、私はそれぞれの機関を通じて指導もいたしております。まあ、しかし御指摘になりましたとおりの姿であることを思うときに、私はさらにそれぞれいたすべき点、またお入りになっていただく方々がともに協力していただく立場から、また償いもしていただかなければならぬということも私はお願いをいたさなければならぬ、こういうふうな二つの考え方から行政指導に十分配慮をいたしておるような次第でございますが、いま御指摘のとおり、今後もそれぞれの機関を通じてこれらの不幸を除きました幾ぶんなりとも明るい住みよい住宅環境の公営住宅の規模内容に、維持管理、修繕その他に十分こまかく配慮をいたしてまいりたい、こう考えております。
  233. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 清和寮についてのお尋ねでございましたが、居住者間に意見が分裂いたしておりまして、ただいま話し合いをいたしておりますので、電気の点その他最近において解決するのじゃないか、かように考えております。  それから第二点の空室の問題でございますが、実は昨日あき屋抽せんというものを行ないました。入居者が決定いたしましたので近く入居者がきまると思います。  それから団地サービス業というお話ございましたが、東京都の場合は全部都庁みずからが直接に修繕その他の管理業務に当たっております。他に委託しているというのは技術としてのたとえば大工さんであるとか、そういうものの技術行為はいたしておりますけれども、いわゆる修繕業務の責任主体は、私ども直接持っております。
  234. 田中一

    ○田中一君 大津留君、住宅局長、公営住宅で民有地を借地して建っているものが全国的にどれくらいあるか、これを調べて報告してください。わかっておれば答弁してください。
  235. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 数量的なことをちょっと資料を持ち合わせございませんので調べまして後ほどお答えをいたします。
  236. 田中一

    ○田中一君 そこで都に伺うのですが、この法律が成立した暁には、あなた方が先ほど答弁があった六千戸以上の都費単独の住宅というものをどういうぐあいに扱おうとするのか、むろん革新都政だからそれは別である。この法律が都の単独の事業には関係ないのだから、だからそれはそのままでやりますという答弁があろうと思います。その点一つ……。
  237. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 率直に申しまして、ただいまの私どもどうしたらいいかということを研究中でありまして、方向というものもまだきまっておりません。法律が改正になった暁においては、いずれまた本省ともいろいろ打ち合わせて最終的な腹をきめたい、かように考えております。
  238. 田中一

    ○田中一君 政府はどう考えているか、全国で地方費でもって単独に行なっている住宅がどのくらいあるか、どの都市にどのくらいあるかということをひとつ資料として出してください。    〔委員長退席、理事沢田政治君着席〕 そうしてそれに対する態度はどうするかということです。これはむろん政府の関与していることじゃない。全然政府に関係のない費用で建っている住宅でありますから、本省に相談するなんということはありようがないです。もしも本省に相談して本省が妙な行政指導をすれば、これはたいへんなことになります。何の権限があってやるかということです。内閣総理大臣が全国的な住宅政策の面からかくかくしようじゃないかという閣議決定でもするならばいざ知らず、一住宅局長あたりが行政指導するなんということはあり得ようはずがないのです。したがって、この点については坪川建設大臣から御答弁願います。
  239. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 私からお答えを申し上げます。
  240. 田中一

    ○田中一君 だめ。私は住宅局長に質問してるんではない。
  241. 沢田政治

    ○理事(沢田政治君) ちょっと待ってください、大臣の答弁があるまで。
  242. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) どうも失礼いたしました。御承知のとおりに、御指摘になりました地方が単独でやっております、この戸数、管理戸数といたしまして、大体推定されますのが二万戸と推定されております。これらがこの法に適用されるものではないと私は考えておるような次第でございます。
  243. 田中一

    ○田中一君 明快な答弁でしあわせでありました。そこで、伊藤住宅局長は本省に相談してということ、本省として指示しないと建設大臣言ってるんだから、そのことば取り消して、お帰りになったら美濃部さんと相談して、自由に、都民のためになるような施策を考えてほしいと思うんです。
  244. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 私は、先ほど本省に相談云々と申しましたのは、やはり全国的に多数ございますので、他の団体の実施の状況等も知りたいと、そして私どもの上司に対する補助行為の中身にしたい、かような意味で申し上げたつもりでございます。
  245. 田中一

    ○田中一君 耐用年限、木造の耐用年限をこえてる住宅はどのくらいあります。   〔理事沢田政治君退席、委員長着席〕
  246. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 木造の耐用年限は、御承知のとおり二十年でございますので、したがいまして、昭和二十四年以前に建築されたものが耐用年数を過ぎてるというふうに考えます。その二十年、二十一年、二十二、三、四と、五年間に建てました住宅、ちょっといま数調べますので、あとでお答えいたします。
  247. 田中一

    ○田中一君 建設大臣は、一体、木造建築はこれから漸減して、耐火構造建築に、あるいは高層建築に移行するということになっておりますからいいですが、この木造の耐用年限というものをこえてる住宅というものは、現在どういう形で維持されておるかということ。そうして、これは法務省へ聞きますが、少なくとも公営住宅です。かりに木造建築が新築された。そうして、それに一定基準で家賃を払い、修繕の義務を完遂しながらも、十五年くらいたったら滅失しちゃう。そうすれば家賃を上げるどころの騒ぎじゃなくして、だんだん安くなっていく傾向が一番正しい政治の姿じゃないかと思うのです。ゼロになるわけです。初めは、なるほど一戸当たり、当時の金ですから五十万なら五十万かかったかもしれません。むろん物価の上昇等も勘案しなきゃならぬ。これに変な答弁をすると、さっきはおかしいじゃないかと別のことにいきますから、よく注意してくださいよ。だからある一定価格はいいでしょうけれども、これはだんだん滅損していくんです。耐用年限があと四、五年間の建物はもう価値がなくなってきている。それでも一定の家賃を取ってるんです。新築当時の家賃がいまだに、修繕不可能のような状態になっても、そのままの家賃を取っているというようなのは不当じゃないか、家賃を更改しまして……。したがってその点は法務省でどういうぐあいに法律的に考えますか、こういう考え方は。
  248. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 公営住宅の、ことに木造の老朽化という問題は、地方公共体の持つ非常に問題点として苦慮されている点だと私は考えております。ことに戦災等の痛手を受けましてそれから復興いたしまして、その応急措置として住宅建設をされました都市が非常に多い。私も個人にわたっての発言失礼ではございますけれども、昭和三十四年から四年間福井市長をつとめまして、戦災、震災と痛めつけられた福井市の応急措置として建てられました公営住宅が、大体昭和二十一年、二十二年、三年、四年、福井の震災は二十三年、空襲は二十年でございましたが、それらからくる公営住宅の現況を私つぶさに見もし、またこれらに対してかなり勉強もいたし、またこれらに対する応急策として苦労もいたした一員でございますが、二十五年以後に建てられている公営住宅の木造に対しましては、かなり完全といいますか、まだ満たされる姿があると思いますけれども、二十四年前はほんとうに気の毒なほど痛めつけられてしまっておる、老朽化しておるということを思いますときに、これらにつきましての維持あるいは修繕、あるいはこれらに対するところの改造、建てかえというような問題は、公営住宅の問題を解決する非常なウエートを持っている重大な仕事であろうと、こういうような気持ちを持っておりますので、私も建設大臣に就任いたしまして以来、これらの点にはかなり配慮をいたして、ひとつ指導もいたしてまいってもおり、これからもこれらの問題点には、もっともっと政府といたしましても真剣に取り組んでまいりたいと、こういうような決意であることを表明申し上げておきたいと思います。
  249. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 建物が使用されまして老朽化してまいりますれば、当然その使用料も逓減していく筋合いのものであろうと思います。ただ修繕義務の履行の程度とか、あるいは物価の上昇の度合い、そういうことも考慮に入れなければなりませんので、一がいに家賃が逓減していってゼロになるということは、実際問題としてはなかなかないであろう、かように考えております。
  250. 田中一

    ○田中一君 いい政治はそうしなければならないといっているんですよね。だってもう三年たてばこれがゼロになる、借家権もなくなるのだというものを、だれが家賃払いますか。盗難等の予防にも苦心しなければならぬし。だから当然木造住宅なんというものは、どんどん耐用年限来るころになったら、最後にはゼロになるまでの家賃で入れるような政治をしなさいと言っているのです。どっちみち住むに耐えないで、あなた方のほうじゃ作為的に修繕の義務を怠っている。計画的に今度は建てかえしようとすれば、そうならざるを得ないのです、あと三年で年限がくるというような場合は。長い間私は、しばしば木造建築はだめだぞ、耐火建築やれやれとすすめてきたのです。ようやくこの辺で踏み切ってきたのでありますが、そのくらいの政治をしなくちゃだめなんです、住宅政策というものは。もう二、三年でもって自分の持つ権利がなくなってしまうんですよ。そこでいまこの法律によって想定しているものは耐火建築だと思うのです。そうすると、この耐火建築の家賃の算定基準からくるところの耐用年限というのが七十年ときめているのですが、一体いま中高層の四階建てあたりの住宅が耐用年限七十年持つか持たないかという問題を技術的に検討しなきゃならぬです。なるほどコンクリートは石になってしまいますから、これは百年も二百年ももつかもしらぬが、はたして居住という目的に耐えるかどうかの問題が残るわけなんです。そしてことに住宅政策の面から言えば、二十五年くらいで建てかえるのが一番いいことなんです。かつて明治憲法時代でも不景気になると土木建築事業を起こしたものです。日本の景気はことしも上昇するであろうということを経済企画庁もこれを指摘しておりますが、私はこの住宅建築というものは、せめて二十五年ないし三十年あたりにはもう建てかえるという前提で建築をすることが必要であろうと思うのです。常に新しく常に近代的な、たとえば熱源の問題にしたっていろいろ技術開発が行なわれておる。それに適応するような、日本の大衆を愛する気持ちでもって住宅政策を考えるということでなくちゃならぬと思うのです。それにはつくられるもののコストダウンです。二十年一日のごとく同じものをつくっているというのじゃなくて、もっとくふうが要ります。今度の法律の改正というものの主眼の一つは、土地が高いということをいっているのです。土地を上げているのは政府じゃありませんか。民間が上げているのじゃないのです。政府が非常な高度成長というものを作為的にやってそうして土地を上げている。需要を喚起して上げている。住宅金融公庫にしたって公団にしたって、土地がある者には金を貸している。やたらに木を切り谷を埋めて、そして開発という名において緑の野原を全部切りさいなんでいるのです。民間企業は相変わらず団地づくりをやっております。無責任な、その部分だけの住宅団地をつくっている。これからくるところの公共投資というものはばく大なものです。だから住宅というものは周期的に常に新しいものを供給するのだという考え方で、木造建築はこれからなくなっていくのですから、安くて、しいて言えばこのままの家賃でもって入れるというような考え方を持たなきゃならないと思うのですが、その点のひとつ姿勢の問題を伺うのと同時に、いまのように施行令四条にあるいわゆる家賃の算定基準というものに対しても、あなた方はこのままでいいかどうか。今度の法律ではあれに触れておらないですね。あれを改正しようという意図がないですね。あれは施行令にあったかな。法律のはずだったかな、あれは政令できまるのかな、どういう形でそれを変えていこうとするか。いわゆる家賃のあの基準というものは二十年一日のごとく同じものじゃ困るんですよ。たとえば都有地の場合には、土地価格というものは原価主義という建設費主義でくればゼロでしょう。ゼロなのにもかかわらず、また国民に負担かけるような、同じ都有地でありながらたらい回しにしながら借地権というものを設定して、これだけ金がかかったから吸い上げろということをしているのです。これは悪政です。一番初めに伺っておるように、公共用地、国有地等はどんどん公営住宅に転用することなんです。金がある者は自由にするのです、どこの土地でもね。公営住宅は違うのです。先ほどはっきりと言っておるように安い家賃で入れるということが前提でありますから、いかに安く建てるかということの研究をしなければならないのですよ、努力をしなければならないのです。したがって、家賃算定基準というものを全廃して、そうして全体的な統一したところの家賃法、公営住宅家賃法的な統一したものをつくる考え方はないか。二十年前に住宅に入った者は安い家賃で二十年間ぬくぬくとしてまいりましたというのは、これは比較の問題ですよ。まだ家を持たない人は、二十年待ってできた建物というものは何かというと、家賃が一万円近いものでなければ家がない。最低限度の家でも一万円もかかるということになれば、これは公平じゃないのです。百万戸以上になったのだから、この際、公営住宅家賃法というような単法でも出して、こまかいファクターで出して、都有地を転用した場合であろうとも、高層化した場合であろうとも、土地が高い安いの問題に関してどっちみち今度の公営住宅法の改正では家賃の補助をしようということは出ているのですから、地域格差というものも考慮しながら、地域地域におけるところの生活水準等も考慮しながら、統一した家賃法をつくる意図がないか。これは重要な問題です。そうして足りないものは政府が今度の改正にあるように家賃の補助をしなさい。なるべくたくさん補助をして、十五年前の方々、二十年後の方々も同じような負担というもので、安い負担というもので入れるということを考える時期がまいっております、百万戸できているのですから。そうして耐用年限を経過したものは、それこそきん然として建てかえに応ずると思うのです。その場合には逓減をする、家賃の逓減があって初めてきん然として賛成します。だれも木造の二十年前の戸山ハイツでもって生活をしようという考えを持っておるものじゃないですよ。みんなやはりせめてこれだけ成長したところの日本の経済生活というもの、それに適応したところの住宅を持ちたい気持ちはあるのです。ただ強権で一方的に生活の実態も考えずに二百十二万円なんという数字を押しつけて、そうしておまえたちは立ちのくのだというところに、信頼されない住宅政策があり、かつまたいたずらなゲバ棒が生まれてくるのですよ。いたずらな刺激です、これは。家賃法をつくろうという考え方、これを検討しようという考え方、いかに低廉な家賃でよい環境の住宅を供給するかという、あらゆる低家賃にするためのファクターというものを集めてその方向にいくかということの考え方を、建設大臣ひとつお示し願いたいと思う。
  251. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 何といっても私は国民生活、民族のしあわせというものは、住宅環境の整備、これが私は至上なものであると考えるのであります。そうした意味に立って公営住宅の持つ使命というものは、ことにお気の毒な勤労者、庶民大衆、国民の大半の方が住まわれる住宅、これに対する私は社会正義感と人間尊重、ヒューマニズムに立っての住宅政策をやるということは、いかなる政党、いかなる政府であろうとも、私は最大の問題点として取り組むべきである。これは私の政治姿勢の最も優先した考え方であります。したがいまして、それらの考えを私は胸の中に入れながら、失礼ではございますけれども、微力ではございますけれども、住宅政策に取り組んでおるようなわけでございますが、その立場に立って私はぜひともそれを実行に移し、実現の暁を迎えたいというのは、やはり質の向上、量の増大ということをひとつ前提に考えてまいりたい、こういうような気持ちでおるようなわけでございますが、それを達成させるためには、やはり建築費のコストダウン、いま田中先生がおっしゃったこの問題でございます。これにやはり真剣に取り組むということが、これらにこたえる唯一の道ではなかろうか、こう考えまして、私はいわゆる住宅工業の生産化ということを叫んでおり、新たなる新五カ年計画の基本構想に私はうたっておるのもこれでございます。住宅宅地審議会において諮問の対象にお願いいたしておるのも、この点でございますが、これに対しましては私はいい勉強をいたしましたが、先月日仏住宅建築両国の協議会を晴海で開きましたが、そのときにもフランスの大使が述べられまして、私この委員会が御披露申し上げたかもわかりませんが、フランスの大使が言われるのには、ドゴールが政権はなやかなりしころ、二十一世紀のパリというものの不幸は何であるかというと住宅問題である。都市計画の問題である。それはフランスの全人口の五分の一がパリに集中するであろう。これに対するいまから国の指定した設計士が、アイデアマンに、これに対するところの都市計画、開発と住宅建設の設計を命じたという、さすが私はドゴールのりっぱさだと思いましたが、感銘を打たれましたのは、いまから三年ほど前だったと思いますが、その話を聞きながら私はその政策を思い出したのでございますが、そのとき私も思いますのは、日本の二十一世紀には格差あるいは過疎、過密の問題から考えて、均衡ある国土開発をいたしたいと思いますが、都市人口への集中というものは避けられないものを感ずるときに、住宅政策の必要性、緊急性がなお一そうあることを私は考えます。そうしたときに、私はいま田中委員が御指摘になりましたような、いわゆる質の向上をはかる意味においてのコストダウンからくる生産化、工業化ということに対しまして、私はいま住宅局長その他関係課長とも協議いたし指示いたしておりますのは、やはり工法の上においても設計の上においても材料の上においても、あらゆる面から私は検討を加えていきたいと、こう考えておりますとともに、たとえばワンセット玄関に入ったところから台所に至るまでの一つのワンセットによって生産化が急がれる、あるいはエレベーターも企画に順応したエレベーターをつくりまして、生産率があがって、そして低廉な建築費になる、あるいはふろ場、台所というようなガス、水道すべてを入れましたワンセットの工業化によって、公営住宅の建設をひとつやろうじゃないか、やるべきであると、こういうような指示をいたしておるのも、私はかような観点でありまして、住宅こそ私は人の世のことわざにあるごとく、日々新たなりという考えを私は国民生活に一番直結する住宅問題であろうと私は考えております。お互い田中先生やわれわれが子供時代あるいは青年時代だったと思いますが、安部磯雄先生や江戸川乱歩先生があの江戸川アパ−トにお住まいになっているときの江戸川アパートに対する魅力というものは、やはり青年らしい情熱と夢を持って修学旅行に来ましたときに、私はわざわざ江戸川アパートを見に行った思い出がありますが、それほど人間生活において住まいというものに対する関心と夢というものは離れがたいものがあろうと思います。私はかかる気持ちに立って、田中先生同様住宅に対するコストダウンからくる質の向上と内容の充実に、公営住宅を重点に置きながらはかっていきたい決意であることを御了解願いたいと思います。
  252. 田中一

    ○田中一君 どうも気持ちよくしゃべられたものだから。問題の要点だけを答弁してくれないと困りますよ。もう百万戸もこえたんだから、ことに建てかえということを実施しようというなら、この際公営住宅家賃法というものをつくって統一したところの家賃を、そうしてこの今度の改正法律には内容は別にして家賃補助をしようとなっておる、家賃補助をうんと出しなさいよ。この点をどうするかということです。
  253. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 大事な御質問を何しまして失礼いたしましたが、御意見は御意見として、また貴重な御意見として私は十分私の住宅行政の指針にいたしたいと思いますが、いま直ちにこれに対する立法措置なりあるいはそれらを講ずるということのまだ時点に至っていないことを御了解いただきたいと思いますが、私はそれよりも第一種、第二種の公営住宅というものの差別をなくして、公営住宅の方向に私は真剣に取り組んで検討を進めていきたい、こういう考えを表明いたしておきたいと思います。
  254. 田中一

    ○田中一君 大臣、あなたのことばにぼくは反発するんですが、一体第一種と第二種ということは、家賃が第二種で建物は第一種だという考え方は認めます。家賃は第二種の家賃、できるものは第一種といった差別をとるなら認めますが、第二種という低家賃のものをやめて第一種の家賃を取ろうというならこれは反対です。全部第二種の家賃で第一種の住宅を統一してやるというならこれは賛成しましょうが、まあそれはいい。あなたの意見ですから。  もう一つの問題は、いまあなたコストダウン、コストダウンと言っておる。ところがあなたは建設大臣建設省はあなたの所管の住宅対策というものは年間何戸つくるのです。いいですか、コストダウンと言うなら年間政府は五十万戸つくるという約束をすればコストダウンできるのです。公団その他を全部ひっくるめたって二十万戸ないんじゃないですか。そんなものでだれがコストダウンできますかというんです。コストダウンするものじゃないのです。むろん新しい仕事もあるし、目先の開発もある。しかし計画的に十年間で五百万戸つくるんだということをきめてごらんなさい。工場生産なり何なりちゃんとコストダウンします。民間の自力建設に大部分のものを依存して何がコストダウンです。そういうものではないのです。それは大津留君も技術屋じゃないから、ぼくも技術屋じゃないのだ、ぼくは門前の小僧だけれども、長い間この問題に取り組んでおるから大胆に発言するんだが、年間五十万戸必ずつくるという約束をしてごらんなさい。安くなってそうして建設大臣目的が達せられるのです。大部分のものを民間に依存して何ができるものですか。それは坪川さん大言壮語です。それはとても問題になりません。これは私のあなたに対する批判です。(「委員長」と呼ぶ者あり)いや、もういい、あなたに対する批判だから。
  255. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) たいへんおことばを返すようでございますが、コストダウンの問題について私の考え方を申すとそれは反対だ。あるいは第一種、第二種の問題についての解明をいたしたい、それも反対だ。どうも私は田中先生、建設行政に非常に理解を持っていらっしゃる田中さんがすべて反対。ある程度共鳴も持ちながら批判と理解をちょうだいするということが、私は田中委員の建設行政に絶対に協力をいただいている、期待をいたしておるおことばでございますが、どうもきょうは残念ですが、そういうことばの出ないことを私は非常にさみしく思っております。
  256. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  257. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をつけて。
  258. 田中一

    ○田中一君 都の住宅でね、木造の第二種住宅、これは地代家賃統制令を適用しているものがありますね。
  259. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 的確な資料を持っておりませんので明確なお答えはできませんが、法律の直接的な適用はないように理解しております。
  260. 田中一

    ○田中一君 それでは政府もそう言っておりますから、この点は東京都は十分ひとつ調べて、次回の委員会で私は質問いたしますから……、あなたお忙しいところ来てもらうのはたいへんだから文書で出してください。あるならどの地区で何があるか、どういうふうなものがあるか出してください。政府はひとつこの問題については、主要大都市でいいと思うから、その点を先ほどはないということを言っておるけれども、適用されているものはないだろうと思っておりますけれども、あるかもわからないから調べておいていただきたい。  そこで私は締めくくりとして言いたいのは、先ほど二百十二万八千円とか、これが高額所得だという定義、これは政府は相当の譲歩をしなければ、この次の委員会でもう少しその点を詳しく調べて再質問をする用意があることを申し上げておきます。  もう一つ伺っておきますが、七十年の耐用年限ということを考えておりますけれども、これは建設費主義でありますから償却が行なわれるわけですね、償却を行なうと無料公開ということになるのが有料道路の原則なんです。高速道路、有料道路というものは建設費を償却すると無料公開にいたします、道路は国民のものにいたします、自由通行できるようにいたしますというのが、有料道路のたてまえなわけです。したがって公営住宅も建設費を償却した場合には、これはただになるというのが正しいと思う。国民が自由に使ってよろしいということは原則でなければならない。これは一貫しなければいけませんよ。有料道路というものは金がないから国民から利用料を取って、通行料を取って、そしてその道路というものの建設費を償却していく。これは建設大臣、あなたの所管している有料道路はそういう方針です。そこで公営住宅も七十年あるいは四十五年目で償却するかわからないが、家賃あるいは割り増し家賃も取るんだから早くなるかもしれない。そうすると七十年にはゼロになる。原価を割ったという場合には土地も含めてただになる。その場合にはどうしますか、ただになるわけです。思想的には有料道路と同じ思想から発想するならば、ただになるのが当然なんです。ただになればもう神様のものではない。政府のもの、あるいは地方公共団体のものではないということにならざるを得ないのでありますが、どうするか、ひとつ考えてください。
  261. 大津留温

    政府委員(大津留温君) 田中先生のきわめてユニークな御発想でございますが、住宅の家賃というのは、住宅の効用に対する対価でございますから、償却が終わったからただになるという性格のものではないというふうに考えております。そういうことよりも、耐用年限がくる、あるいはそれ以前に住宅としての効用という観点から言いまして、あるいはまたその土地の有効な利用ということから申しまして、やはり建てかえを積極的に行ないまして、もっと時代に即した住まいを提供するというふうにつとめてまいりたい、こういうふうに考えております。
  262. 田中一

    ○田中一君 七十年の耐用年限、二十六年に高輪の公営住宅の第一号がたしかできたはずです。あれは東京都ですね。あれがいままでの料金で幾らになっておりますか。そうしてどのくらいまで償却したかそれを出してください。これも資料でいいですよ。建てかえる原則はけっこうです、今度建てかえの法律がこれが通れば出るわけですから。ただね、七十年というもの、これが妥当か妥当でないかの問題は、私も非常に矛盾を感ずるのはこれを短くしろと、いまの法律を短くしたらたいへんなことになる。そこで三十五年で積算してください。大体あなた方が、国が六分五厘の金利だといっているのを住宅政策の遂行だからこれは何とか五分にしようという努力が建設大臣あたりにあっていいのです。財投は全部六分五厘だ、場合によれば七分五厘だというのが通例であります。一方的に大蔵省がきめていることにすぎない。これは全部国民の貯金です。土地に対する融資もそのとおり。だからその利子を五分くらいにしたらずっと安くなるのですよ。七十年を百年にしたって幾らもかかりゃしません、金利というものが高いから。金利というものはおそろしいものです。だからコストダウンの問題をそうした面から攻めなければだめだと言っているんです。私は、坪川建設大臣の意欲的な発言に対しては賛成しているんですよ。ただあなたの言っていることは、具体的に六分五厘の財投をこれを四分五厘にしましよう、年間五十万戸十年間これを継続してつくるから何とかセメントやら鉄やら何とか計画的にやってコストダウンしてくれよ、こういうものを示すということによって、初めてコストダウンをするのだというのですよ。六分五厘の金利でもって年間あっちこっち寄せ集めようたって、たかが知れたもんです。あとは全部国民のふところに依存している自力建設なんです。そんなものでコストダウンはしないと言っているんですよ。それで、いまのようなコストダウンに対する考え方を住宅対策審議会、宅地審議会か、建築審議会等にもまじめに答申を求めたことがございますか。
  263. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) まじめに住宅、宅地審議会に諮問をいたして、いま審議をいただいている最中でございます。
  264. 田中一

    ○田中一君 宅地造成はこれからも方針としてどんどんやるつもりですか、建設大臣
  265. 坪川信三

    国務大臣坪川信三君) 御指摘の宅地造成の開発も、もちろん私は大事な仕事として進めてまいりたいと、こう考えております。
  266. 田中一

    ○田中一君 東京都に聞きますがね、住宅公団あたりが、あるいは宅地造成業者が、やたらに東京周辺あるいは東京都内、それから東京都の遠隔地、三多摩地方とかあるいは東京以外の神奈川とか川崎にやたらに団地をつくる、そうしてそれをどうしても運ばなければならない義務が、東京都の区域内は東京都が引き受けなければならないでしょう。そうした一部の業者や一部の公団等によって強制されるところの公共投資というものは、これは予算に組みきれないですよ。しかし国民は、都民じゃない、国民は要求します、宅地造成を。宅地造成を行なうところの罪悪、宅地造成を無計画に行なうところの地方財政に寄せるしわ寄せというものは大きなものです。これはあなた方は身をもって知っておると思います。宅地造成はこれからもうやめてくれ、かつて千葉の友納君がそういうことを発言しておりまして、住宅公団は千葉県にきてくれるな、困ります、こういうことを言っている あなた方はそういう方針を、建設大臣はこれからもどしどしやりますと言っておりますけれども、あなた方は賛成ですか、どうですか。
  267. 伊藤節三

    参考人伊藤節三君) 私は直接宅地造成の監督といいますか、そういう立場をとっておりませんが、私自身が都営住宅の団地をつくるために、三多摩その他で宅地開発をいたしております。お話しのように地元の市町村から学校あるいは道路、上下水道等々の公共の施設を、われわれ都の住宅局の立場で、それを完備してもらわなければ、急激に人口がふえて、その行政需要には対応できないというので、実はこれは非常に私どもの団地の開発に一つの隘路になっております。おそらく民間の場合は、かりにその宅地を売り払う場合に、坪幾らというふうに転嫁して、地元市町村との肩がわりというものが転嫁できるという妙味もあろうかと思いますが、お説のように、われわれは安くていい土地を求めるのですから、それはまた家賃に対して転嫁できませんので、かなりの負担になっていることは事実でございます。したがって、東京都といたしましては、御案内の多摩のニュータウンというのを、これを別の組織をもちまして、そこに大々的に開発して、かってな造成、かってないわゆるスプロールを造成するような、そういう開発はやめてもらいたいものだ、そういうような理念は持っております。
  268. 田中一

    ○田中一君 時間が近づいたから、私はその他の質問は次回に譲ります。きょうはこれで私の質問を終わりたいと思います。
  269. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時五十三分散会      —————・—————