○黒柳明君 当然これは、金銭及び物品ともに国庫に納入して、その
歳入歳出を明確にしなければならない。けれ
ども、この場合においても明らかに、一私企業と直接に各教授ないしは研究所が物品ないし金額を受領して、その使金も不明確であると、こういうことです。これは私、ここに昨年四十三年三月から十二月までに、先ほど申しました薬事審議会を通りまして、新薬の認可を得た百八十六種類
——その中で審議会の審議というのは三段階に分かれておりますが、一番厳密な部門である、すなわち世界で初めての新薬品及び結核、ガン、らいの薬、こういうものに対しての新薬、それが十六件昨年あったわけですが、その十六件に対して、先ほど申しました権威ある教授がレポートなどを書きましたり、臨床実験ないしは種々の研究発表というものをしたわけですが、その十六件の新薬に対して、各国立大学の教授、その教授がどの
会社からどういう新薬の研究のために、どれだけの金銭あるいは物品を取得したか。これは、文部省当局に調べていただいたものがここにあります。このリストを一応読み上げさしていただきますと、東京大学は吉利内科の鈴木秀郎
——まあ敬称は略させていただきますけれ
ども——これは第一製薬の新薬のミオトロン、これで二十万円。同じく吉利内科の清水喜八郎、塩野義製薬のゲンタシン、これで五万円。脳神経外科の明石勝興ほか数名、日研化学のイソバイドの研究で十万円。また吉利内科の内海吟ほか数名、藤沢薬品のバドリン、七万二百二十円、ちょっとこまかいです。千葉大学第一外科の綿貫重雄、第一製薬のミオトロンの研究で八万。それから群馬大学の産婦人科の
松本清一、塩野義のクロミッドの研究で四万。同じく群馬大学の産婦人科の五十嵐正雄、塩野義のクロミッド、五万円。それから九州大学癌研の教授の遠藤英也、三共製薬のプロレジド、百七十万円。それから同じく九州大学の小児科・永山徳郎、塩野義製薬のゲンタシン、三万円。名古屋大学の佐々木時
三郎ほか数名、第一製薬のミオトロン研究で五万円。これは金銭です。
さらに現品としては、東京大学の古川利温、高津忠夫各教官、日本レダリー株式
会社からメソトレキセート、白血病の新薬ですが、現品百本。一本四千八百円ですからまあ四十八万円相当の現品。以下現品を受け取っているのが相当ございます。こういう文部省当局でお調べいただいたリストがございます。これがすべて国庫に納入されてないのです。
で、私は、ここでまあ便宜上、
問題点を項
目的に
指摘いたしますと、まず第一には、要するにこれらの金銭、物品というものが、先ほどから、また、さきにも
指摘しましたように、成規の手続がとられてない。国庫に納入されてない。要するに各薬品メーカーから教授
個人に行きまして、その使途というものは不明確である。これが第一点です。
第二点は、確かに一教授の
——遠藤教授ですか
——百七十万を除いて、二十万、五万、五万、十万、七万、非常に金額は少ないように見えます。ただし、この六国立大学、また教授の数にすると二十数名、これはもう、ほんの氷山の一角でございます。これはお調べいただいた文部省当局が十二分に知っていただいていることだと思います。また、この金銭にしましてもですね、必ずしもこの新薬研究のための受託研究費とは限りません。非常にこの金銭も、もう氷山の一角のうちの一角である。大学の数にしても、教授の数にしても、この金銭にしてもですね、まだまだこれを調べていただければ、もうこういうことが通例、日常茶飯事として行なわれておることであって、金額が少ないとか、あるいは教授の数はこれだけである、こういうふうなことではなくして、ごく一部の金額が教授の口から出ただけのものであって、むしろこの百七十万円をちょうだいしたという遠藤教授は、これは一番まじめな人であって、あとの教授はまあ何とか言っておけば、というようなことから五万、二十万もらったと、こういうことではないか。要するに、これは調べようがないわけです。そういうわけで、結論的にはごく氷山の一角の数であり、金銭の授受である、これを
指摘したいと思います。
さらに第三点は、研究をしてですね、当然そのレポートを提出しなければなりません。ところが、この金銭授受にあたっていわゆる名義料
——研究はおろか、製薬
会社のメーカーからすでにレポートをつけ、現金をつけて、そうして教授の手元にくる。要するに、名義料としてこれらの現金をもらう、こういうケースも相当あります。ですから、新薬認可にあたって
指摘されました五項目、さらにはその効果、そのようなものがメーカーである製薬
会社のほうから、すでにしかるべき書類として添付されている。それについて教授がサインをするだけである。このような
実態までもこれに伴っております。これが第三点。
それから、第四点は、私は昨年の
予算委員会におきまして、この新薬認可にあたっての不備な点を厚生省に聞きました。そのときに、厚生省の答弁は、新薬の認可にあたっては、公正を期し、また多くの
委員がこれに当たり、何段階にもそのチェックの場所がありまして、決して一教授あるいは一
個人の自由にはならないと、このようなことを聞いたことがありますが、残念ながら氷山の一角である、このいまのリストの中だけ見ても、ここには薬事審議会の大ものの教授が
——その教授の
関係の教授が入っていますし、また新医薬品
調査会のメンバーもこの中に入っておるわけです。有能だからこそ当然、各メーカーから受託研究をされると、こういうようなことも一応常識的には考えられると思うのですが、その衣装はそうであって、作用はあくまでもメーカーと、こういう研究所、教授とストレートで直接お互いに持ちつ持たれつの仲で、そういう研究というものをやる。あるいは中にはやらずして、それで薬事審議会のほう、あるいは新医薬品
調査会のほうにいく。当然、担当教授がその
委員のメンバーに入っているわけです。こういうことは非常に大きな世間の疑惑を招く
一つの要素であるのじゃないか、こういうことも私はここで
指摘したい、こう思うわけです。
その他こまかい問題は種々あると思うのですが、大きくあげましても、いまのような四点を私はここで
指摘したいと思います。先ほ
ども申しましたように、ただ単に、これはやみ受託研究費という問題だけでなく、新薬を許可すると、こういう問題にからむだけに、先ほどの五点
——レポートを書き、権威ある学者が臨床実験ないし研究の結果、間違いないと、こういう研究結果を添付しての新薬の許可になるわけですが、その点について、私は不明朗な点があるのじゃないか。また、そういう疑惑をいだかせるような点がここにあるのじゃないかと、こういうことも含めて、この受託研究費というものに対して大きな、ずさんな問題がここにある、こう思うのですが、文部
大臣の所感をお伺いしたいと思います。