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大和与一君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となっております
国際通貨基金協定の
改正の
受諾について
承認を求めるの件につき、反対の意思を表明するものであります。
反対の基本的な理由は、現行
IMF体制が
アメリカの
ドル支配のもとに置かれ、いまや深刻な危機に直面しているにもかかわらず、今回の
特別引出権創設を
中心とした
改正が、国際
通貨危機の本質をおおい隠し、
ドル支配の
IMF体制の矛盾から目をそらして、かえって
ドル支配強化を意図したものにほかならないからであります。
以下具体的に申し上げますと、第一に
IMF体制のもとでの
ドル散布
政策の破綻をつくろおうとするものであります。
IMF体制、いわゆるブレトン・ウッズ
体制は、
IMF協定第四条において、
アメリカの
ドルを金と同列ないしは金より高い地位に置くことによって、国際
通貨の面から
ドル支配を約束したものであります。すなわち、第二次大戦以降一貫して、
アメリカは、圧倒的な生産力を背景に、
一つにはマーシャル・プランをはじめとする巨額の対外経済
援助を行ない、二つには、東西緊張の激化とともに、みずから
世界の警察官として君臨し、海外に無数の軍事基地と多数の軍隊を置き、対外軍事支出を増加させ、さらに三つには、貿易と資本の自由化を推し進めて、
アメリカ資本に有利な海外投資を促進するというふうに、経済
援助、軍事
援助及び資本進出という三つの面から
ドルを海外にばらまいてしまったのであります。その結果、
アメリカはみずからの相対的な地位を低下させ、
国際収支の慢性的な
赤字と巨額の金流出を招いたのであります。
アメリカの
ドル不信が抜きさしならぬところにまで追い詰められ、国際
通貨危機の矛盾に直面したのであります。今回の
SDR創設は、
政府の説明においても、また
制度上から見ても、国際
通貨危機対策ではないとされているが、その真のねらいは、
アメリカの
国際収支対策であり、当面の国際
通貨危機対策を強く意識したものであることは、審議の過程において明らかにされたところであります。明らかに、
アメリカの
世界戦略の一環としてとらえなければならないのであります。
特に
日本は、安保体調のもとで日米運命共同体に置かれており、政治的、軍事的のみならず、経済的にも
ドルに大きく依存しており、対米従属をしいられているのが現状であります。
日本の
外貨準備が最近好調になっているが、相変わらず金準備は三億、
ドル台を続けており、
アメリカに気がねして金保有をふやすことができなかったのもそのためであります。
第二に、
アメリカの
インフレ政策の破綻であります。
アメリカの財政の
赤字は、
一つには
国内の景気刺激、不況対策として、二つには軍事経済の肥大化によって慢性化し、特に朝鮮戦争の始まった一九五〇年から防衛費の増大が著しく、ベトナム戦争の本格介入によって一そう拡大し、財政
インフレが進行してきたのであります。その結果、一オンス三十五
ドルの
IMF平価は実質的に半減し、
ドルの減価によって実体を失なっています。この面からも、
ドルの切り下げないし金価格の引き上げは避けられない
情勢にあります。
SDRの創設がこうした
事態に対して無力であることは、経済法則上から見て明らかなはずであります。
第三に、
SDRが
世界貿易の拡大と低開発国にとってプラスになるとされているが、これはあくまでも
社会主義圏を除いた話であります。対
社会主義圏とは金で貿易の決済をするしかないのであります。また、低開発国にとって利益となるという議論は、
先進国、特に
アメリカの利益に立って行なわれる議論であり、決して被
援助国の利益に立ったものではないのであります。その証拠に、対外
援助にバイ・
アメリカン、シップ・
アメリカンなどの制約がつけられたり、何らかのひもつき
援助が最近大幅に増大していることを見れば、明らかであります。
今回の
改正が
ドルの
アメリカと金選好の強い西ヨーロッパの間の妥協の産物として成立したわけでありますが、これは決して
制度そのものの成功を約束するものではない。逆に「恐怖の均衡」といわれるような資本主義国家間の矛盾の勃発による混乱を避けたいという共通の利害があったためであります。
アメリカが
インフレ抑制に乗り出したことにより、
世界的に異常な高金利時代を迎えている。これが逆にまた大きな混乱や国際
通貨危機を激化させかねない危険な
状態を招いております。いわば前門のトラ後門のオオカミといったところであります。
日本としては、
SDRによる国際
通貨制度の改革が決して
事態の解決にならないし、また日米安保
体制の中で対米従属、
ドル依存を一そうしいられていくことになりかねないことを心配するものであります。現にニクソンは、中期債購入、兵器購入、防衛責任の負担などを打ち出しており、東南アジア経済
援助も大幅に増大されつつあります。
日本は、
ドル依存を抜け出し、経済自立を確保するためには、金保有を高め・
ドル切り下げに備えるとともに、日中
関係を一日も一早く正常化し、日中貿易の拡大につとめるべきであると
考えるのであります。同時に、
アメリカに対しては、このようなこそくな
改正によって
事態を回避する安易な道を選ばず、
アメリカが
世界戦略の破綻を直視して、
ドル不信の回復の努力を払うことを要求していくべきであると
考えます。
以上をもちまして、反対討論を終わります。