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国務大臣(
床次徳二君) ただいまの
お話でありますが、大体この
経過の初めから申し上げたほうが御
理解がいいと思うのですが、しかし、長くなりますので要約して申し上げたいと思います。
まず、
ストに至りますまでの
経過の第一は、全
軍労が五月二十五日第十五回の
臨時大会を開きまして、空軍百五十名の
解雇申し渡しに対して
解雇の撤回、
大幅賃上げ等を
要求し、
米側の
回答がない場合は六月上旬
ストに突入する旨を決定いたしたのが五月二十五日。
それから次に五月二十九日、
屋良主席が
カーペンター民政官と会談した際におきましてこの問題に触れておるのでありますが、(イ)
解雇は
合衆国予算の
削減によるものであり、現地ではどうしようもない。(ロ)全
軍労が
ストをかまえて
団交しているのでは軍のメンツから
団交に応じられない。すなわち、
米軍側におきましてはこの
ストは
違法ストであるというふうに
考えております。なお百五十名の
削減は
予算の縮小に伴うやむを得ざる
解雇であるという
立場に立っておるのであります。また同日、
上原全軍労委員長が
カーペンター民政官と会談した際、同
民政官が、「とりあえず
冷却期間を置くため
ストを二週間延期してほしい」ということを
委員長に要請したのに対しまして、
上原委員長は、「明白な
回答がない限り
ストは中止できない」ということを答えております。
次いで、全
軍労は六月の二日
中央闘争委員会を開き、(イ)
時給——時間給ですね
——十七セントの
ベースアップ、(ロ)
退職金の
本土並み支給、(ハ)百五十人の
解雇を七月一日まで延期すること、以上三点についての
要求を掲げ、これらの
要求がいれられない場合は六月五日に二十四時間
ストを行なうことを決定した。
スト決定をいたしたわけでありまして、六月三日に
米側は、これはフェーラー前
労働局長でありますが、全
軍労に対しまして表明いたしたのでありますが、(イ)百五十名の
解雇者に対し七月一日より
実施の新
賃金表により
退職金を支給する、(ロ)諸手当、
退職金の増額については
交渉に入る、(ハ)
組合側の苦情、争議問題について早急に
意見交換をする、(ニ)今後の問題として双方とも
団体交渉を妨げるようなことはしないとの四点につきまして
あっせん案を示したのであります。これに対して全
軍労は、(イ)七月一日よりの新
賃金表の
具体的内容を明らかにせよ、(ロ)
ベースアップの
有額回答をせよ、(ハ)
組合の
要求に応じて
団交に応ぜよとの
態度をきめ、全
軍労役員が
米側と
話し合いに入った。しかし、
米側との
話し合いが進展を見ないまま、四月に至り、全
軍労中央闘争委員会で「
ベースアップ並びに
退職金について
具体的回答がないので、
ストを回避する絶対的な条件はない」との
上原委員長の提案を了承して
スト決行をきめたというわけであります。
なお、
実施の
状況は、六月五日午前零時より
ストに突入いたしたのでありまして、
参加の規模は、地元の警察の調べによりますると、六十カ所の
米軍キャンプ・ゲートで三千名が
ピケを張ったのでありまして、全
軍労側の発表では、七十六カ所の
ゲートで
ピケを張り、
スト参加人員は、
組合員二万六百名全員と非
組合員の七割であるというふうに言っております。
米民政府側では、
軍労務者の約半数が就業したと言っておりますが、この点、それぞれの見方によって
参加者の数が違っております。
さようなわけでありまして、その間におきまして
安里委員長の
負傷事件というのが出たわけでありますが、そのいきさつを調べてみますると、ただいま申し上げましたように、
ゲートの数が七十くらいで非常に数が多いのでありまして、そこの個所でも
ピケを張っておったというわけでありますが、たまたま
安里委員長が参りましたところの
ゲートにつきましては、その数時間前に
全学連の一派が
基地突入をいたしたのでありまして、そうして
基地に守備しておりました者があわててその
突入者を追い出したという状態と聞いております。そのしばらくたった後に
安里委員長がその場に参りました。そうして自動車から
ゲート側のほうへおりた。おりたところへ
ピケを張っておりました
組合員の
人たちが
安里委員長を取り囲んで話をしたわけでありますが、そのときに大ぜいかたまって、門の前にかたまりができたために、門内でもって警備しておった兵隊が銃剣を持ってきてこれを道路の
反対側に押しやった。その際におきまして
安里委員長は左の手の甲に軽い擦過傷のようなものを負っておる。なお、
背広の
左そで口二カ所が切れておる。
背広の
左ポケットが裂けておる。左のみぞおちにかすり傷を負っているようで、その辺の
背広も裂けておるというので、七名の人が負傷をしたと聞いております。
なお、このときの
関係者の意見があるわけでありますが、大体この点両方の意見が一致しておると思うのであります。
それで事情は、
米側のほうにただしてみますると、元来警備につきましては原則として民警察が第一線に当たる、次に
ゲートの守備員というものがこれに当たる、最後に軍隊が当たるという三段がまえの体制をもって
米側は
ゲートを守るというたてまえになっておるようでありますが、たまたまこの場所の警備は、ふだんあまり使わない
ゲートのようでありまして、民警察あるいは守備の警備員がいなかったところのようであります。しかも、学生の連中が
基地内に飛び込もうという形があったもので
——これは革マル学生二十名
——その直後でありましたので、厳重な命令を受けておったので、入ることに対してとっさに銃をかまえて飛び出した。かようなふうに見ておるのであります。ただ、銃剣をつけて出たということにつきましては、これは突入を防止するのに対しましてはいささか不穏当ではないかというふうに
考えられるのでありまして、
屋良主席は正午過ぎ抗議の
意味を込めて談話を発表いたしました。軍側が
基地の外に出てきたのは過剰な行為であって、これは
労働争議のあり方ではない、ましてや銃剣により労働者や安里社大
委員長にけがをさせたことは許せないという談話を発表し、立法院におきましては、社大、人民、社会及び革新系無所属の議員が合同議員総会を開いて、立法院の意思として
米軍に抗議すべきものであるとの
態度をきめて自足党と
話し合いましたが、自民党は、まず実情を
調査すべきであり、立法院の軍
関係特別委員会に付託すべきであると主張したためにこの話は持ち越しまして、立法院では抗議に出ておりません。
なお、これは関連しまして、革新共闘会議等におきましては抗議をするという
態度をきめ、また、五日十五時から
スト中全
軍労は抗議総決起集会と銘打って集会を開きまして抗議文の採択を行なっております。なお、
カーペンター民政官は十四時三十分から一時間
屋良主席を訪問して会談し、席上安里社大
委員長の
負傷事件に対し遺憾の意を表しておる次第でありまして、
日本政府といたしましても、牛場外務次官がバージャー氏に対して大使館におきまして、米国が
沖繩の治安維持の責任を持っているのにかかる
事件の起きたのは遺憾である旨を申し入れたのに対して、先方は
負傷事件の発生に対し遺憾の意を表明しておる次第であります。
なお、その後の
経過といたしまして、立法院におきましては抗議決議は行なわれておりませんが、高等弁務官は六日自民党議員団との会見の際におきまして、(イ)
安里委員長の
負傷事件に対し遺憾の意を表明し、(ロ)在沖四軍に最大の注意と自制心をもって住民に対するよう指示しておりますということを申しました。さらに、全
軍労の争議に関しては円満解決の
方向で臨みたい。しかし、
ストを前提とした
団交ではまじめな話し会いはできないと述べております。
次いで、全
軍労委員長は六月六日主席に対しあっせんを依頼いたしたのであります。復帰協は六月六日抗議声明を発表、革新共闘会議も同じ趣旨をUSCARに伝えております。県労協は六月十日
米軍の武力弾圧反対労働者総決起大会を開催する予定であって、実行したわけであります。
次に、
米軍の合同労働
委員会は、これは議長はジャコブソン氏でありますが、六月六日、次のような声明を発表いたしました。(イ)合同労働
委員会は
米軍被用者の実質賃金の増額を目的とした
賃金表作成の最終段階にある。来週中に発表する予定である。(ロ)
米軍合同労働
委員会は、再び
ストを行なわないことを前提として全
軍労代表と会見する用意があるということを発表いたしました。なお、翌六月七日
カーペンター民政官は
屋良主席と会談し、
米軍合同労働
委員会の
賃金表等について
説明をいたしております。これに対して全
軍労上原委員長は六月九日ジャコブソン議長と予備折衝を行ないまして、次の点について合意を見たのであります。(イ)一両日中に
米軍合同労働
委員会と全
軍労との間で正規の
団体交渉を再開する。(ロ)
団交はまずベースァップについて討論して、その席で
米側から新
賃金表の原案を開陳する。(ハ)ベースアッブ以外の
退職金並びに今回の
ストに伴う処分などの問題は今月一ぱいかけて話し合う。
大体以上のような形でもって
話し合いが進むことになったのでありまして、したがって、第二波の
スト期日は設定しないという形でもって、六月九日夜
経過を報告して了解を得ているというのが今日までの……きょうの一時半から、ただいま申し上げました
団交を開始しておるとの通知が入っております。
さような状態でありまして、一時、険悪と申しますか、衝突も
懸念されました全
軍労との問題も、私どもの推測で申しますると、これから
話し合いが円滑に進行するのではないかと、かように
考えておるものであります。
以上でございます。