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政府委員(新谷正夫君) 戸籍
関係についてまずお答え申し上げますが、前にもお答えいたしておりますので、若干重複するかと思いますが、お許しいただきたいと思います。
戸籍につきましては、
沖縄と比較するのが一番御理解が早いのではないかと思うのでございますが、
沖縄におきましては、連合軍が占領いたしまして、その後、昭和二十一年の一月二十九日、
行政分離の覚書が出ました。その後平和条約ということになるわけでございますが、その間一貫いたしまして、連合軍側としましては、従前の日本の戸籍法の適用を肯定しておったわけでございます。したがいまして、
沖縄に従来本籍を持っておった人は、そのまま
沖縄に本籍を持つ、市町村も従前の市町村がしばらくは続いていたわけでございます。そういう体制にあったのでございますけれ
ども、
沖縄に本籍を有する人
たち十数万人の方が日本の本土に居住しておられた。
行政分離によって
沖縄と本土の間の交通も遮斯されまして、戸籍の届け出もできないというふうな事態になりましたために、昭和二十三年のポツダム
政令というものによって、
沖縄に本籍を持っておる人
たちのために、日本
政府で戸籍
事務を取り扱ってよろしい、こういうことになったわけであります。その限りにおきましては、いわば現地の施政権の一部が日本
政府に移された、こういうふうに見てもよろしいかと思うのであります。そういう経緯がございますので、
沖縄に本籍がある人
たちの戸籍
事務を向こうの市町村にかわって日本の内地の特別の
事務所でやってよろしい。こういうことになったわけであります。ところが、
北方領土におきましては、ソ連軍に占領されまして以来、米軍あるいは連合軍のとったような措置が、
北方領土地域については行なわれておりません。現在も、
政府の見解といたしましては、
北方領土地域はいずれの市町村にも属しない地域というような、特別の地域と考えられておるわけでございます。したがいまして、そこには市町村というものもなければ、また、当然市町村の理事者あるいは市町村
事務をとる機関というものもないわけでございます。戸籍法によりますと、御承知のように、本籍というものは市町村の区域内に本籍を置くと同時に、当該の市町村長が戸籍
事務を管掌する、こういうことになっております。
沖縄の場合には直接日本の
法律が施行されていたのではございませんけれ
ども、間接的に従前の
法律によって、従来の戸籍
事務が扱い得る体制にあったのが、日本側の特別の機関によって戸籍
事務をとり得るということになったわけでございますけれ
ども、
北方領土についてはそういうことが考えられません、
法律的には。そういう問題がございますので、
北方地域に現在本籍を設けるということはできないということが
一つでございます。それと、終戦後大部分の方は本土に引き揚げられまして、こちらに本拠を置いて生活しておられます。また、転籍の手続
もとっておられるのでありまして、
沖縄の場合とは事情がだいぶん違うわけでございます。もちろん、現在釧路の法務局の根室支局、そこに
関係の戸籍簿とあるいは副本、さらに除籍簿等も全部保管してございます。したがいまして、
関係の方々にはできるだけの御便宜ははかってまいっておるので、ただいま申し上げましたような事情によりまして、
北方地域の戸籍
事務というものは取り扱うことができない状況に置かれておるのでございます。
それから、財産権の
関係でございますが、これは登記の
関係を中心にして
お尋ねであったと思うわけでございますが、登記
事務といいますのは、ただ簿冊の上で記入だけすればよろしいという
仕事ではございません。相続におきましても現在の相続法の
関係で、共同相続さらにその遺産の分割という問題も起きてまいりますと、実地の分割、合併というような措置も必要となってまいるわけでございます。登記所といたしましては、実地の調査、測量、検分等をいたしまして、表示の登記というものを行なうという仕組みになっております。ところが、
北方領土地域には、そういった
行政権が事実上及び得ない状況でございますので、登記
事務はこれは事実上行ない得ないというのが現状でございます。とは申しましても、相続の
関係で非常にお困りの方もおありだと思いまして、前にもお答えいたしましたときには、その点について何か
一つくふうをこらしてみましょうというふうにお答えいたしたわけでございます。現在私
ども考えておりますのは、相続の登記はできませんけれ
ども、特別に帳簿を設けまして、相続の申告がございました場合には、その
関係の
事項を一応記録にとどめておきまして、施政権が復帰した暁に直ちに適正な登記簿に再現できるような措置を講ずる、こういうことにいたしておる次第でございます。