○国務
大臣(大平正芳君) 第一の御
質問は、安全性と経済性のかかわり合いの問題でございますが、冒頭に申し上げましたように、安全性が確保されないと売れ行きも鈍るわけでございまして、経済性は生きてこないわけでございますから、本来矛盾する概念ではないと思うのでございます。ただ、できるだけ
生産工程において合理化をやりまして、コストを下げて苛烈な
競争に打ち勝とうという
努力と、技術面でできるだけ完全なものを仕上げたいという技術家的な良心、そういったものがまま摩擦を起こす現象は、
自動車産業ばかりでなくどの
産業にも私はあり得ることだと思うのでございます。そこで問題は、全体として安全性があなたがおっしゃるように重視されなければならぬという観点に立ちまして、私
どもは、まず第一に安全技術の開発という点に力点を置いて政府の施策は進めていかなければならぬと思っております。現に、工業技術院におきましても、そういった安全技術の開発が行なわれておりまするし、また民間に対して補助金を交付いたして開発を急いでいるわけでございまして、それとあわせて、現に
生産の
責任を担当しておる各
産業に対しまして、材質
管理、
設計、構造その他について
一般の周到な
配慮を
行政面から求めてまいりまして、先ほど
運輸大臣がおっしゃいましたように、高い技術水準を誇る良質のものを世界に供給するような
産業にどうしても育てなければならぬと思います。
それから第二の、
部品工業の指導の問題でございますが、
わが国の
自動車産業におきましては、欧米に比べまして下請形態がやや比率は高くなっております。下請と親会社との間の問題というのは中小企業政策の中でも重要な柱として、われわれと公取のほうで協力してその間の秩序を保証すべく
努力をいたしておるところでございますが、われわれが見ておりますと、ユニット化しておるものもだいぶできてまいりましたけれ
ども、欧米各国のようにまだ単品のが多うございまして、どうしてもこれはもっと近代化を促進せなければならぬ、したがって機振法に基づきましてそういった指導をやりまして
体制をもっと強靱なものにするということをつとめてまいるとともに、あなたが御指摘のとおり、技術水準の
向上に力点を置いた指導を怠ってはならないと
考えております。
それから両先生からの自由化に関連しての
体制整備の問題でございます。従来
世間では、
通産省はトヨタ、日産二大系列に集約を
考えておるのだというようなことが流布されておりまするけれ
ども、そうではないのでございまして、
通産省が
考えておりましたことは、いまのままではいけない、できるだけ、いずれかの時期に自由化に踏み切らなければならぬといたしますならば、もう少し集約した形が望ましいのじゃないか、しかしこれは強制するわけにもまいりませんし、相談があればそういう
方向に漸次誘導してまいるべく
配慮をいたしてきておったのでございますけれ
ども、この間、御案内のような三菱とクライスラーとの提携というような問題が起こりまして、われわれはできるだけ集約化を急ごうと思って、外国の
メーカーと
国内の
メーカーとの間の提携は御相談があってもいまは応じませんよというラインで去年の八月の二十日の日米
自動車交渉もそういうベースで行なわれておるわけでございまして、そういう線をくずしていないわけでございますが、今度は
メーカー同士がその結婚の内話を始めたわけでございまして、これは確かにわれわれにとりましては大きな衝撃であったわけでございます。そういたしますと、できるだけわれわれが善意をもって集約化をしようと思いましても、企業のほうで外資と結ぶというようなことが行なわれるということになりますと、これはわれわれの鋳型の中になかなか入らないわけでございます。でございますから、私
どもとしては、まず第一の
考え方は、せっかくここまで成長した
自動車産業でございまするし、たくさんの雇用をかかえておるわけでございまするし、
輸出戦略産業としても雄渾な地歩を占めてきているわけでございますから、できるならばこの
産業を健全な成長の軌道に乗せなければならぬということは、日本の民族資本といたしまして、そういう基礎を危うくするようなことは何としてもこれは避けなければならぬという点が一点。それから第二点といたしまして、いずれ自由化をするというようなことが、あいまいな
状態において
業界が、アッセンブルの
業界ばかりでなく、
部品業界も、
販売業界も動揺するようなことがあってはこれはたいへんなことになりますので、できるだけ早い機会に、いつ自由化するということを、まず
目標を、道標を設定するということを、これを秋やりたいと思っております、この秋。それで、そういたしますと、各
業界はそれに対して身がまえをしていくだろうと思うのです、自分たちの死活の問題でございますから。内資と結ぶものもあるかもしれませんし、外資との提携をもくろまれる方もあるかもしれません。しかし、そんなことはわれわれが規制できないわけでございますから、その身がまえの様子を見ながら、第一の原則の健全な育成の上から申しまして、賢明な指導を行ないつつ、基幹
産業として存立と繁栄が可能なるような条件をつくってまいらなければいけない、そして私はそのことは可能であろうと思うております。いま当面の
目標としましては、自由化の時期を秋にきめるんだと。それまでに
販売業界に対してはどういうことを
考えなければいかぬか、
部品業界に対してはどういうことを求めなければならぬか、いろいろな考慮すべき
事項をいろいろ吟味いたしまして、そういったことで自由化を迎えてどじを踏まないようにする。それから自由化時期を明示して、この秋からどのぐらいの期間、タイミングが必要かなどをはかりまして、自由化の時期を秋申し上げようというようなことで、いまみなで知恵をしぼっているところでございまして、それがどういう姿になるかというようなことは、いま私の頭に青写真がないのでございまして、各企業の自由化時期が明示されたときの身がまえの姿勢を見ながら、
自動車産業全体が健全な発展が可能なように導いていかなければならぬと
考えているだけでございまして、終局的にどういう姿になるだろうかというようなことについては、全く不敏にして見当がつきかねておるというのが正直なただいまの
心境でございます。