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1969-06-17 第61回国会 参議院 運輸委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十七日(火曜日)    午前十時二十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岡本  悟君     理 事                 江藤  智君                 金丸 冨夫君                 谷口 慶吉君                 森中 守義君     委 員                 河野 謙三君                 佐田 一郎君                 重政 庸徳君                 菅野 儀作君                 平島 敏夫君                 前田佳都男君                 渡辺一太郎君                 加瀬  完君                 木村美智男君                 瀬谷 英行君                 田代富士男君                 三木 忠雄君                 中村 正雄君                 市川 房枝君    国務大臣        運 輸 大 臣  原田  憲君    政府委員        警察庁交通局長  久保 卓也君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        通商産業政務次        官        植木 光教君        運輸省海運局長  澤  雄次君        運輸省自動車局        長        黒住 忠行君        海上保安庁長官  河毛 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    参考人        明治大学教授   清水 義汎君        東京農工大学教        授        樋口 健治君        日本自動車連盟        常任理事     マキノ正美君        日本自動車工業        会安全公害委員        会委員長     家本  潔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法等の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○運輸事情等に関する調査  (自動車構造上の欠陥に関する件)  (第一伸栄丸衝撃事件に関する件)     —————————————
  2. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法等の一部を改正する法律案議題といたします。  本法案につきましては、去る十二日質疑を終局いたしておりますので、直ちに討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますから、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  4. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  原田運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。原田運輸大臣
  6. 原田憲

    国務大臣原田憲君) ただいま外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法等の一部を改正する法律案について、慎重審議の結果、御採決をいただき、まことにありがとうございました。
  7. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記をとめて。   〔速記中止
  8. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記を起こして。     —————————————
  9. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 次に、運輸事情等に関する調査議題といたします。  本日は、自動車構造上の欠陥に関する件につきまして、四名の参考人方々から御意見を伺います。  参考人皆さま方に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会のために御出席くださいまして、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  それでは、これから参考人方々に順次御意見をお述べ願うわけでありますが、議事の進行上、お一人大体十五分程度でお述べ願い、参考人方々の御意見開陳が全部終わりましたところで委員質疑を行なうことにいたしますので、御了承願います。  それでは、まず清水参考人にお願いいたします。
  10. 清水義汎

    参考人清水義汎君) 明治大学清水でございます。  今回問題になっております車両欠陥について意見を申し述べたいと思うわけでございますが、こまかい問題に入ります前に、車両欠陥なり保安基準の問題につきましては、従来現場の、特にプロドライバー関係あるいは労働組合等から、車両保安基準適正化の問題につきましていろいろ要望が出ていたわけでございます。それが十分な対策がとられないままに今回のような問題が出てきたということは、非常に残念なことだということをまず申し上げたいと思うわけでございます。  まず第一点は、この保安基準内容の問題でございますが、御承知のように、この保安基準内容と申しますものが非常に抽象的なきめ方がされております。たとえば、車体については堅牢なことが必要であるというような形で、その基準がどのような形が望ましいのかという点については、むしろ生産者の良心に期待をするというような形になっているのが現実の姿でございます。たとえばバンパーの高さでございますとか、あるいはバンパーの鋼板の厚さの問題でございますとか、あるいは特にバス関係運転手からの苦情が出ておりますところの日よけの色彩の濃度の問題でありますとか、これらの点につきましては、非常に安全の問題とは密接な関係がございますが、これらについての基準というものが問題にされておらない。この点については、この際ぜひ一定の基準を設定することによって、強度なりあるいは保安条件なりを整備するようにすることが至当ではないかと考えられるのでございます。  それから第二番目の問題でございますけれども、この欠陥部分に対する対策というものがはたして十分であったかどうか。今回、各メーカーから公表されておりますところの内容を拝見いたしますと、従来、各メーカーサービスニュースというメーカーから出しておるところのニュースがございますけれども、これは工場であるとか、あるいはハイ・タク関係者のほうには配付をされております。たまたまオーナードライバーは全然その内容を知らないというだけでございますが、そういうところですでに欠陥指摘をされている。それが今回まで全面的に公表が行なわれないで、この問題が起きてから新聞公表されているというような問題がございます。また、この欠陥対策につきましても、この欠陥そのものが出てきた条件と申しますのが、主としてトラックバスハイ・タクのような職業的に使っているところの整備工場からの苦情がディーラーを通じてあげられておるというような形で、メーカーがそれ以前に自主的に判断をして警告を出す、あるいはそれに対する十分な対策使用者に対して要請をするという点については欠陥があるんではないかと思うわけでございます。また、通産省なり、あるいは運輸省監督官庁のほうから随時これらの欠陥指摘を自主的に行なっているというような点についても問題があるのではないかと思うわけでございます。それでありますから、この欠陥対策につきましても、設計上の問題についても、これを包含して直さなければならない点につきましても、欠陥部分部分的な補強というような対策に終わっているような点が使用者側整備工場側からは指摘をされているわけでございます。こういう点について、はたして欠陥対策というものがこれで十分であるのかどうか、この点についてやはり何らかの審議あるいは審査をする機関必要性が出てくるのではないか。いまここに私が持ってまいりましたのは、ある東京の大手のタクシー会社整備工場で問題になっているドアのロックでございますが、の欠陥でございます。これはここにつめが本来あるわけでございますけれども、このつめが折れますとドアがあいてしまう。そのために乗客がこぼれ落ちたり、あるいは停車中ドアがあいてそこに自転車やオートバイがぶつかるというようなことが運転者の側からあげられております。整備工場側では、この欠陥については、車内にありますところの引く取っ手でありますけれども、この辺へ乗客がどうしてもつかまりやすい、また、つかまりやすいような状態にあるために力を入れてつかまってしまう。そうすると、二十キロぐらいの圧力がかかるために、どうしてもこのつめが折れてしまうというのがこの整備工場側の私どもに対しての説明でございます。ところが、これに対する対策つめの折れた部分についての補強というものしか考えていない。むしろ、このドア取っ手のところまでの設計変更をしなければ整備工場側では安全じゃない。私は技術屋でございませんので、技術屋の言い分をそのままいま御披露しているわけでございますけれども、そういうような点についての実は整備側の不満もあるわけでございます。こういう点について対策がはたして発表されている中でとられているのかどうか、この点については十分な判断ができ得るような機構なり対策が必要ではないか。  それから三番目には、特に乗用車が問題になっておりますけれどもバスなりトラックについても問題があるわけでございます。たとえばバスの車種につきましては、サイドミラーの左側の位置乗降客なりあるいは通行中十分見えないような位置、これ等も乗務員から苦情が出てきた、あるいはブレーキが非常にぐあいが悪い。これは一つ構造上の欠陥現場では言っておりますが、そのために事故が起きている。あるいはバスにおいては、上げぶたが脱落をいたしまして、子供がそこへおっこって死亡をしている。あるいは通行中に、バスにおきましてはルームライト照明度、サイクルの基準がございませんために、あれをつけることによって非常に安全運行が阻害をされて運転者が苦労をしているというような問題等。あるいはトラックにおきましては、電気の節約あるいは経費の節減の点から、高速バスにおきましては、御承知のように十二気筒エンジンをつけておりますけれどもトラックについては八気筒の直接噴射というもので非常に騒音がうるさい。そのために運転手疲労度は倍加をしている。これに対しては、安全運行という点で考えれば、やはりこれらの構造についての是正という問題は現場から強い声が起きているわけであります。そういう点を含めまして、特に公共輸送機関につきましては、乗客それから乗務員等条件をも含めた形での保安基準というものをこの際ぜひお考えいただくことが適当ではないか、かように考えるわけでございます。  四番目には、非常に新しい——もともとあったことばでございますが、マスコミ等で非常にいわれております型式指定方法要員の問題でございます。御承知のように、現在モデル数が約百三十ございます。これを検査官が十名でやっているという実態でございます。これは陸運局担当者幾ら責任を追及いたしましても、一体十名の要員で百三十の型式指定ができるかどうか。しかも、この車両検査につきましては、でき上がった完成車書類上の審査、外観上の審査がおもでございます。もっと材質なり機構上の問題については突っ込んだ検査が必要かと思いますが、現在の検査に要する日数を見ましても、一台当たり四人目でございます。そうしますと、モデルチェンジの時期というものが大体集中してまいりますので、この約百三十台のこのモデル数を現在の要員でやりますれば二月間ぶっ通してやらなきゃできない。検査基準をもう少し拡大をしようといたしますれば、とうていこれは不可能なことでございます。しかもこの要員は、昭和二十五、六年から現在までふえておりませんけれども、逆に自動車車両数というのは、昭和二十六年には五十三万一千台、昭和四十二年には千百六十九万台というふうにものすごい数にふえております。自助車量の激増とそれに対する監督指導検査体制要員とのアンバランス、この点は現場の官僚の問題ではなくて政治姿勢の問題ではないかというふうに考えるわけでございます。この点につきましては、型式指定だけではなく、保安と重要な問題を持ちますところの検査についても同様のことが言えるわけでございます。検査関係要員昭和三十九年に七百八十四名、現在八百三十名でございます。この間五十名程度の増員しかしておりませんけれども自動車台数昭和三十九年が六百九十八万五千台、昭和四十一年が先ほど申し上げたように千百六十九万台でございます。現在では約倍の数になってきております。こういう形が、一部においては検査外注化というような形で指定工場への委託というような問題が、この辺と私は無関係であるというふうには考えないわけでございます。  五番目にはメーカー公表のしかたであります。新聞その他で公表されております内容というものを、私は試みにプロ運転手さんたちに聞いてみましたが、プロ運転手さんたちも、あまりにも専門的過ぎてわかりにくいということを言っておる。そういたしますと、一般オーナードライバーがあの公表された広告を見ても、どこがどうなっているのか十分にわかりにくいという点でございます。監督官庁に対する報告なり書類提出内容と、一般使用者事故を未然に防ぐための広告の手法というものは当然変わってこなければなりません。その点についても広告しかた等についてはより親切な形で行なわれることが望ましいのではないかということでございます。しかし、今回の広告で出されているものは、今回あらためて発見されたものではございません。たとえばこのフロント・サスペンション、バンド・ストッパーにつきましては、すでに三月十日の東ペサ技五五五号一のサービスニュースにも発表されている内容でございます。非常に社会的に問題になり、政治的に問題になったために、万一、従来すでに一部工場に出されている欠陥点について整備して報告している、新たにここで徹底的な検査の結果ではないということになりますと、そこには非常に問題点があるかと思います。  それから六番目は、メーカー過大宣伝と、使用者に対するところの配慮が欠けているという点でございます。先般、薬品については過大広告に対する規制が出ましたけれどもメーカーについては、居住性なり安全性なり、そういう面の宣伝はございますけれども、この車を持つ者はこういう点に注意をしなさいというようなものは全然欠けております。この点については、タイヤについてもそうであります。  それから七番目には、軽四輪という問題についてこの際もう少し考えたらどうか。従来から、軽四輪の保安基準の問題については非常に問題になっております。極端な言い方をいたしますと、軽四輪は、軽四輪そのもの安全基準からいえば危険車だというようなことをプロドライバーは申しております。こういう点についてもやはり検討をしていかなきゃならぬのではないか。  それから八番目については、完成車に対する検査陸運局はやっておりますけれども保安基準の問題になりますと、生産工程の中における合理化なりコストダウンの問題とは無関係ではないわけであります。その点についての通産省の指導監督、こういう面が陸運行政と有機的に結合をしてまいりませんと、現行の制度の中では十分な形にいかないのではないか。  九番目につきましては、とかくこの種の問題が起きますと、法外指導と申しますか、行政指導によってその欠陥を補おうという形が出てまいります。しかし、この行政指導が、いわゆる通達行政といわれるところの一片の紙ぺらでは何の意味もないことは、いままでの通達行政欠陥の中で指摘をされておるところでございます。そうなってまいりますと、行政指導徹底をしますためには、どうしてもそれに必要な人員というものを確保いたしませんと、行政指導徹底というのはむずかしいんではないか。  それからもう一つは、行政指導だけではなくて、法的規制というものの基準を格上げをしていくという問題も、この際検討さるべきじゃないかと思います。  同時に、日本自動車メーカーの場合には、多数の部品外注下請に出しております。これら外注下請工場に対する指導なり、あるいは合理化の段階で必要以上に外注下請工場にしわ寄せされることによって生産商品が粗悪化していく、この点に対する防止対策も必要ではないかと思います。  あるいは——時間がございませんので結論をしぼってまいりたいと思いますけれども中古車に対する問題。この中古車に対する問題は、よほど考えませんと、現行の中では、これに対する保安基準というものをどのように守っていくか、中古車に対する安全性をどう確保するかという点については、全く方法はないわけでございます。  あるいは整備の問題にいたしましても、キロ整備というものが一応精神条項的な義務化はございますけれども現実にはキロ整備というものが底抜けになってしまっている。この点をどのような形で認可をしていくかという問題等もございます。  最後に、先般から論議されておりますこのような基準を、単に整備工場なり、ユーザーの一部からの苦情が出てきた場合にこれを公表するというような受動的な形ではなくして、第三者的な審議会等を設置いたしまして、保安基準の制定及びこれの実施、励行という点について、より客観的な前向きな政策が推進できるような機構の設置が望ましいのではないかというふうに考えるわけでございます。  時間が制限がございますので、非常にしぼって項目的に申し上げたわけでございますけれども、以上をもちまして私の発言を終わらしていただきます。
  11. 岡本悟

    委員長岡本悟君) どうもありがとうございました。  それでは次に、樋口参考人にお願い申し上げます。
  12. 樋口健治

    参考人樋口健治君) 私、東京農工大学の工学部の機械工学科教授でございまして、専門が力学でございまして、それを応用いたしまして、自動車関係の研究並びに教育をいたしておるものでございます。今回の欠陥車問題につきまして、私なりに専門的あるいは技術的な立場からいろいろと調べてまいりましたので、それにつきまして申し上げたいと思います。  大体大まかに申し上げますと、まず欠陥車現状はどうであるかということ。次に、自動車欠陥というのはどういうふうにしてできてくるかという問題。それから三番目は、これも専門的立場からでございますが、欠陥車に対してはどういう対策をとったらよろしいだろうかという私の個人的見解でございます。それから、問題は、欠陥はわれわれの生命あるいは財産の安全につながる問題でございますので、専門技術者として安全に対してどういうふうな考え方を持っているか、これも私の個人的意見でございますが、こんな点について申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。  欠陥車現状につきましては、ただいままで私どもにございます手持ちの資料といたしましては新聞紙上にすでに発表されたものだけでございますので、非常に狭いかと思いますが、一応それの範囲で申し上げたいと思います。現在まで発表になりました分では、日本自動車メーカーから発表になったのでございますが、欠陥車件数としましては六十九件、それが市場に出ております台数としましては約三百万台弱と発表されております。さて、問題はその欠陥車内容でございますが、ただいま清水参考人から出ましたように、非常に表現に専門的ことばを使っておりますので、おわかりにくいかと思いまして、私なりにそれを整理してまいりました。まず、欠陥がどういうところに起っているかということを安全の面から重要な順に申し上げたいと思います。先ほど申し上げました六十九件の欠陥発表があったのでございますが、まず一番大きな問題としまして、ブレーキ関係。これはブレーキが故障しますと、重大な事故につながるおそれがありますので、われわれとしても一番重点を置くところでございますが、それは二十一件の発表がございます。次にはハンドル装置でございます。これも御承知のとおり、故障しますと重大なことが起こります。ブレーキに次いで重要ではないかと思いますが、これについては十一件の資料が見つかりました。それから直接には、安全とはやや離れますが、やはりエンジン関係で火災その他の事故が起こっております。これが十五件ございます。次は、エンジン動力車輪に伝えて自動車が走るための装置関係でございますが、われわれはそれを動力伝達装置ということばを使っておりますが、その関係では八件ございます。この中には重大な事故を及ぼすような、たとえばエンジン車輪とをつなぐシャフトが抜けた大事故がございますが、そういうものと、そうでない非常に軽微なものとがまざっているかと思います。次には車体関係、これはおもに車体基本的構造と、先ほど清水参考人が述べられました安全上の部品の問題と二つ入っておりますが、一応件数としては六件ございます。そのほか、自動車車輪車体との間にスプリングその他の緩衝装置がございますが、その辺にふぐあいがあった。その件数が八件。以上合計六十九件でございます。この資料はあくまで新聞紙上発表された資料だけでございますので、信憑性はやや薄いかと思います。  さて、これらの原因、あるいはなぜこういう欠陥が出たかということを一部のメーカーはそれにつけ加えてございますし、一部のメーカーはまた対策まで書いてございますが、私なりに判断をいたしますと、次の五つの原因が考えられると思います。まず第一番は、設計が不適当であった。必ずしもミスということばは私どもは使いません。不適当であった。これにはいろいろなわけがございますが、またあとで機会がありましたら申し述べたいと思います。これが二十七件。これの対策は、当然設計変更すればある程度技術的に可能でございます。その次が、材質が不良であった。これは激烈なる競争をするために、コストダウンということの一つのあらわれかと思いますが、やや価格の安い材料を使ったためと思われるものが大部分でございます。それが十一件。それから加工方法が悪かった——そういう部品をつくるときに酸素溶接が悪かったとか、あるいは焼き入れがまずかった、そのためにこわれた、そういう面でございます。それが十五件。それから、そういう自動車を組み上げていくときにコンベアラインの上で工員さんたちが組み立てますが、その組み立てがよくなかった。これが十六件。以上合計六十九件でございますが、これも私なりにあまり十分でない資料から判定いたしましたのですが、おおよその傾向はこれからも言えるのではないかと思います。  ただいま申し上げましたのは欠陥車の現在までに発表された状況でございますが、それでは自動車欠陥というのはそもそもどういうものであるか、あるいはどういうふうにして発生するか、一応現在の原因別には説明いたしましたのでございますが、基本的に自動車というものがたくさんの部品から成り立っておって、それを使っていけば自然にある部分はすり減り、ある部分は衰損してくる、機能が低下してくるということはいろいろ問題がございます。当然欠陥には最初からぐあいの悪い欠陥もございますし、使っていく上に欠陥を生ずる問題もあるかと思います。それを私は大きく三つに分けてみました。まず一番は、今回出ましたような、たとえば使う立場の者、われわれユーザーと申しております、あるいはドライバーでございますが、そういうものが予期しないで出てきた欠陥、これは非常に重大だと思います。それからその次は、使っていけば自然と欠陥が生ずるという部品がたくさんございます。平たく申しますと、まずタイヤがすり減ってきてパンクする、あるいはブレーキ装置がすり減ってくる、いろいろございますが、こういった使ってくるといたんできて欠陥になる、そのまま手入れをいたしませんと、これは当然整備という形でもって直していくのだと思います。その次は、使っていく上に特別に、急におかしいという症状ができてこないが、長い間使っているといたんでくる、こういう部品がたくさんございます。それを定期点検、あるいは整備するというはっきりとした基準がとりにくい面もございます。あるものは長持ちし、あるものは早くいたむという面がございます。たとえて申しますと、大まかにゴム製品でございますが、これは使っていく上に目で見てはわかりませんが、中の材質がいろいろと紫外線あるいはガソリンその他油類の影響を受けまして、いたんでまいります。われわれはそれを劣化、衰えてくるということばを使いますが、そういうために生ずる欠陥。以上三つあるのじゃないかと思います。今回の欠陥は、そのうち、使う立場で、通常使っていく上にいたんでくるもの、あるいは自然と機能が衰えていく、そういう以外の問題であると思っております。以上が自動車を使っていく際に起こる欠陥の問題でございます。  それから三番目に申し上げますことは、欠陥車に対してはどういう対策をとったらよろしいかという点でございますが、この点につきましては、いささか私の工学部における機械工学の専攻という点から離れておりますが、長年私自身も自動車関係設計、研究あるいは整備関係、その他教育関係、いろいろ携わっておりますので、専門家ではございませんですが、少なくともそれに相当深い関心を持ち、あるいはいろんな委員会その他へ出ておりますので、一応申し上げてみたいと思います。  まず欠陥車現状というものを詳細に、しかも厳格に調査していただきたいと思っています。ただ一部の方あるいは特に、まことに申しわけないのでございますが、専門的立場あるいはごく狭い分野からの発言だけをお取り入れになりまして、それがすべてであるというふうにお思いにならずに、あらゆる専門家を招集いたしまして、それぞれ総合的に調査をしていただきたいと思います。それから二番目は、その調査の結果、欠陥ということが間違いなく認められた場合、まず技術者としてこの欠陥を直すことは技術的に非常にやさしい問題ばかりと言い切れると思います。特に今度起こりました問題で、基本的に解決がむずかしいという点は技術的にはなかったと私は思っております。ただ問題は、それがなぜできないかという点。私の専門外になりますが、そこには経済的な問題、ユーザーの教育の問題、いろいろと問題点が多うございますが、とにかく純技術的に私の専門立場では解決はやさしいということでございます。それからその次は、自動車人口が急にふえてまいりまして、わが国も世界第二位の生産あるいは保有台数となってきたわけでございますが、そこで問題は、急激な自動車関係の成長に対しまして、もちろんつくる側はすばらしく成長したのでございますが、われわれ使うほうの技術的の素養と申しましょうか、教養、これが少し足らない面がある、要するに車を扱いなれておられない方がわりあいにふえてきた。それに対しては一つは、私ども大学で教育に携わっておるものですから、そういう運転者の教育ということも大切かと思いますが、一方、あまり専門的でなくても使えるような自動車、安全な自動車、わりあいに専門的じゃない人が使っても事故にならないような自動車をつくるという責任もわれわれにあるのだと思いますが、そういう意味で使う方が、なれていない方がふえてきたということ。それから二番目は、たくさんできてきまして、車を手入れし、点検し、あるいは整備する、先ほど清水参考人から出ましたように、車検その他の問題がございますが、そういう体制が自動車台数の増加に伴っていないような感じがいたします。これは感じということばをあえて使っておりますのは、統計的資料によっておらないからでございます。それからその次には、特に私の専門外になりますが、その適用を受けておりますいろいろな法律上の問題、まず一番には保安基準その他の問題あるいは型式認定、定期整備あるいは車検、いろいろございますが、そういう問題。それから一方、道交法その他車を運転する上の法律、いろいろございますが、それが現行では技術のいろいろな発展と、あるいは自動車台数の増加と少しく傾向が違うのではないか。違うという言い方は、ちょっと誤解を受けるおそれがあるかと思いますが、少し違った方向にいくおそれがあるという感じがいたします。  以上が欠陥車に対する私の個人的な見解でございます。  それから、最後になりましたのですが、私ども、あるいは私かもしれませんが、技術者として安全に対してどう考えているかという点でございます。  まず一番目に、人の生命財産というものはあらゆるものに先立つべきものであることは十分承知しておりますが、そのためには、いろいろと私ども専門立場から自動車の安全ということにつきましては大いに努力いたしておるというつもりでございますが、残念ながら現状では、いろいろと安全については十分でない点があるかと思います。しかしながら、一方、安全に対しては極限まで、経済的にある程度導入いたしますと安全性は向上するということも常識的であるかと思います。極端な例をあげて恐縮でございますが、たとえば人工衛星に対する乗員の安全という面につきましては、現在考えられるわれわれの頭では最高の技術的のスタッフとあるいは経済をつぎ込んで、しかも長年の研究の積み上げの上に安全装置がいろいろできておるのでございますが、それにしてもやはり事故が起こり、やはり貴重な人命が失われておるという現状は、感情的には何とでも申し上げることができますが、われわれ専門的な立場で冷静に考えますと、そこに問題点の発足があるのじゃないかと思います。それでは、自動車の問題にこれを移しまして、どうなりますかと申しますと、まず値段の高い車、大きな車、じょうぶな車、安全な車、これは安全に対しても相当費用をつぎ込んでおります。衝突しましても乗っておる人がけがをしないように、あるいは歩く人がけがをしないようにいろいろと配慮がなされております。しかしながら、われわれ勤労生活者あるいは一般の者が使う車は、なかなかそういう車は高価になりますので使えませんので、それでやむなくかもしれませんが、比較的安い車が市場にはたくさん出回り、われわれも使っております。私自身専門的に安全を研究いたしておりますので、安全という立場から見ればこういう車は使うべきでないともちろん思っております。しかし、現実的にそのために出し得る私の経済力の点からおのずから制限がございます。そこで、安全を経済力でカバーするかわりに、私の運転技術なりあるいは経験なりによってできるだけ安全な運転操作をし、あるいは欠陥問題につきましても、先ほど申しました部品のいろいろな損耗につきましてもできる限り早目に手当てをし、手入れをして、そして使って、安全な行動をとるということをやっております。もっと極端な例をあげますと、自動車は最近軽自動車といって非常に安い価格の車がございますが、これは安全という点でごらんになれば、どなたがごらんになってもわかりますように、非常に足らない点があるかと思います。しかし車の大きさの小さいこと、機動性のよろしいこと、あるいは安いこと、こういう意味でわれわれ大衆にとってはこの上ない便利な交通機関として、あるいは遊びに使うこともあるかと思いますが、使っております。そういう一面も御検討いただきたいと思っております。  それから一方、今度は純研究者の立場として、日本自動車技術を向上し、あるいは産業をさらに伸展するために今度は違った立場意見を申し上げますが、現在の激烈ないろいろな産業関係の競争下にありましては、同じ性能あるいはよりすぐれた性能を出すためにできるだけ安い経費でつくらなければならない。専門皆さま方を前にいたしまして一介の機械技術者がこういうことを申し上げるのは失礼でございますが、そういう意味で品質につきましては適正品質、だれでもいい材料を使って高い費用をかけて安全なものをつくるということは、最初申したとおり技術的には非常に簡単でございますが、そういうものは機能としては十分でございますが、経済的に多少問題点が生ずる。たとえば、われわれが使うことができないという面でございますが、あるいは一般産業においても非常に高価な車は実用性がないという意味で、問題はそういう実用性がないという面等を除きまして、安全その他について実際の事故をたくさん調査いたしまして、もし事故がなければ少しでも装置が簡単で、しかも長持ちして故障しないで、しかも安い材料で簡単な構造というふうに設計しておるのが、今日われわれ技術者の立場でございます。  そういう意味で現在の日本自動車というのは、専門的な立場から申しますと、いささか欠点も多かったのでございますが、一方、品質的には非常に過剰なものも残されております。具体的に例を申しますと、一台の車を使い始めて使えなくなるまで走る距離が非常に長い、十万キロ、二十万キロも走れるような部品を相当使っておる。こういう意味では、われわれ専門的な立場から、そういうものは過剰品質ということでございまして、いま少し耐用命数が少なくて、一般ユーザーが新しい車に乗りかえるというなら、もう少し材質的に、あるいは設計的に考えて安い経費で同じ性能、あるいはより以上の性能のものができるものがないかということを研究いたしております。  だいぶざっぱくな意見になりましたが、時間もまいりましたので、終わりはまとまりございませんですが、これで私の意見を終わります。失礼いたしました。
  13. 岡本悟

    委員長岡本悟君) どうもありがとうございました。  それでは次に、マキノ参考人にお願い申し上げます。
  14. マキノ正美

    参考人マキノ正美君) 日本自動車連盟常任理事のマキノと申します。  私は、全くユーザーといたしまして約三十三年、現在もなおハンドルを握っておるものでございます。連日、新聞やテレビ、ラジオで騒がれましたこの欠陥車問題でございますけれども新聞でもほとんど出尽くしたかと思われます。今後は発表しなければいけないということがきめられましたので、これを機会にメーカーは一日も早くこの欠陥車を回収していただきまして、今後はこういうことのないように努力を最大に発揮していただきたいと、こう願うものでございます。  それから関係当局に対してでございますけれども型式指定、また年一回ないし二年ごとに行ないます車両検査、これをひとつ御一考願うと同時に、聞くところによりますと、日本乗合自動車協会中央技術委員会というものがございまして、これはバスの技術委員会だそうでございますけれども、一年間に起こりましたいろいろの事故、またはその欠陥等をメーカーを呼んで訂正をさせるというような会をお持ちになっておられるそうでございます。現在まで年一同ずつ行なわれて、十七回か行なわれたそうでございますから、こういうような審議をし、そうしてメーカーにぶつけるような委員会一般自動車にも行なわれれば、こういった欠陥車問題も早く取り上げられ解決に向かうのではないかと思われます。  それからユーザーについてでございますけれども、私もユーザー立場で、ユーザーに文句をつけるのはおかしいのでございますけれども、私たちが免許証をとった当時は、相当構造をよく知っていなければ免許証がとれない時代でございました。構造も図解で筆記試験をしましたけれども、最近ではマル・バツ式で、そうして構造もよく御存じない方が簡単に免許証をとれる時代になりまして、また町には相当自動車がはんらんしておりますので、こういった状態でほうっておきますことは、こういった欠陥車の発見だとか——また交通事故につながるものだと、そう思います。  自動車連盟で昨年の十一月にとりました統計がございますけれども一般道路と高速道路に分けて統計をとってみましたが、一カ月に一万九千二百四十九件の道路上の修理をいたしまして、そのうちバッテリーがチャージをしてなかった件がトップでございまして、一万九千件のうち五千四十一件、二六・四%でございます。それから二番目にディストリビューター、これは危険ということではございませんけれども、三番目にキャブレター、そうして四番目にファンベルト切れ、それから危険と思われますブレーキの故障が二百三十一件、一・二%でございます。それからエンジン焼きつきが一万九千件のうち九件、これが高速道路になりますとエンジンの焼きつきが百七十件、三・四%でございます。それから高速道路での燃料切れがトップで八百三十四件、一六・七%、こういう状態でございまして、よく自動車構造を御存じない方が多うございます。タイヤの丸坊主のまま走られる方がかなりございまして六百十六件、これは二番目でございますが、ハイウエーの件数でございます。こういう状況ですので、先ほども樋口先生から御説明がありましたとおりに、運転者の教育をもう少しやったらどうかと思われるところでございます。  そして、この欠陥車でございますけれども、私も三十三年の間に外車も国産車もかなり乗りましたけれども、これはどこの国も同じような状態だと思います。外車でも水たまりへ入ってブレーキがきかなくなるような車もございますし、アメリカの場合でまだ約二十種ほどは車検が行なわれておりませんし、ヨーロッパにおきましても、英国、ベルギー等は何らかの車検なるものをやっておりますけれども、フランスにしても車検制度はございません。やはり自分の命を乗せる車でございますから、毎日乗られる方がよく点検をし、そして自然にこういったものを見つけて、そうして修理なりメーカー側に苦情を言うということでかなり減るんじゃないかと思います。  たいへん簡単ですけれども、終わらせていただきます。
  15. 岡本悟

    委員長岡本悟君) どうもありがとうございました。  それでは最後に、家本参考人にお願いします。
  16. 家本潔

    参考人家本潔君) 私、日本自動車工業会の家本でございます。本日御指名をいただきましたので、業界として自動車欠陥の問題にどのように対処し、かつ今後どのようになさんとしているかについて申し上げたいと思います。  御承知のように、自動車は非常に数多くの部品と材料からなっておりまして、先ほど樋口参考人からもお話がございましたが、それぞれの部品につきましてはそれぞれの特性を持っております。使用期間中に、使用の度合いに応じあるいはまた単に時が経過しただけで品質劣化を来たす。そういう性格を持った部品も使用されておるわけでございます。したがいまして、自動車を正常の状態で使いますためには、適切な整備点検ということが必須の要件になるわけでございます。自動車欠陥問題を論ずるにあたりまして、この整備上の問題と本来の欠陥との境目というのはたいへんデリケートな関係にあると思います。一応ことばの上では、整備不良必ずしも欠陥とは言えないというふうに言えるかもしれません。私どもメーカーの考え方といたしましては、先ほどからいろいろお話のありましたように、自動車の使われております環境が逐次変化してまいっております。たとえば、昔は自動車を運転する者は構造的にも十分よく理解をして自分で修理もできるというのが使っておった。しかし今日現在では、構造をほとんど理解せず、要するに操作だけを覚えた方が大部分である。このように大きな変化があるわけでございまして、私どもといたしましてはその点を十分考慮に入れた上で車の製造を心がけているつもりでございます。これは私どもの基本的な考え方としてまず第一に御披露申し上げておきたいと存じます。しかし私は、本日の欠陥の問題につきましては、一応整備関係から生ずる問題は除外さしていただきまして、構造の面から本来の欠陥の問題について論じてみたい、かように思うわけです。  御理解を容易にするために、自動車というのは一体どういうふうにしてつくられるであろうかということを、きわめて基本的に一般論としてまず最初に申し上げたいと存じます。  新しい車をつくろうといたしますときには、それまでの多くの技術的な経験の累積の上に立ちまして、かつまた基礎的な研究資料調査の上に試作設計をいたすわけでございます。試作の設計をいたしますと、試作車によって多くの実験が繰り返されます。実験は車両について行なうばかりではございませんで、しかるべき部品なり装置なりは、同時に並行して実験室の中におきまして特性の研究なり耐久性の試験が行なわれるわけでございます。このような過程を経て最終的に、生産設計と私どもは申しておりますが、いよいよこれで生産をするんだという設計を固めてまいるわけでございます。この実験の過程におきまして重要なことは、実験をしたときの条件が、あるいはやり方が、市場における製品の信頼性を保証できるかどうか、つまり技術的にここに一つの問題があるわけでございます。で、この点につきましては、私どもは常に市場の状態からフィードバックされてまいります情報なりあるいはみずからの経験の累積に基づきまして、どのように実験すれば市場における信頼性、安全性を保証できるかということを常に見返りを行なって、実験のやり方の改善をいたしておるわけでございます。  実験が完了いたしまして生産設計ができますと、この図面に基づいて生産の準備が行なわれるわけでございます。この準備の良否が製造品質に多大の関係を持つわけでございまして、せっかく実験でいい結果が出たとしても、同じものがつくれなければ製品は期待どおりにはいかないわけでございます。したがいまして、実験の結果、よしときめたその同じ品質のものを実際につくり出すためには、多数の部品をそれぞれの工程について厳密な検討を行ないながら量産の準備を進めまして、いよいよ本来の生産に入ります前に、私どもが通常生産テストと申しております、試作ではございませんで、生産の図面によってつくったものが、はたして期待どおりであるかどうかということを確認するわけでございます。この間に数多くの問題が発生いたしてまいりますので、この問題点の発見とその対策を立てる、そうしてこれが一つ一つの確認を行なっていく、そういうふうな企業内活動が微に入り細にわたって繰り返されまして生産に入るわけでございます。  このようなプロセスを経まして市場に出された車に、遺憾ながら回収を要する問題が発生しておるわけでございます。これを大別いたしますと、まず第一に、先ほど申し上げました実験の過程で発見できなかったもの、それから第二には、製造品質のばらつきから発生してくる問題、この二つに分けられると思います。  第一の、実験の段階で発生しなかったトラブルが市場で発生することに対して一体どういうふうに対処すべきかということが第一の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、私ども実験をいたしますのに、どのような条件で実験をすれば市場の品質を保証できるかということは、日々の仕事として常に見返りをいたしておるわけでございます。結果として欠陥車が発生したということは、まだまだこの点に不十分さがあったと言わざるを得ないわけでございます。この点につきましては、今後の諸般の研究を重ねていかなければならない重要問題点であると思っております。  第二の、製造品質のばらつきでございますが、これはいわゆる品質管理の問題の範囲に入るわけでございますが、私ども自動車をつくり上げますのに、みずからの工場で生産をいたします部品のほかに、数多くの外製品を使用いたします。自動車全体の品質を保証いたすためには、私どもみずからのあり方のみならず、協力関係にあります部品工場の業態の改善も同時に行なっていかなければならないわけでございまして、現在自動車メーカー各社とも、そういう意味でそれぞれの外注系列工場の組織化を懸命に進めておるのが現状でございますが、製品のばらつきをいかに少なくするかということのほかに、今後は、信頼性の考え方もあわせ含めて、さらに基本的な研究を進めてまいる必要がある、かように考えておるわけでございます。  以上を要約いたしまして、業界といたしましては、先般の運輸省の通達に対しまして、今後、品質管理体制を一そう強化して、構造安全性について万全を期するようにいたしたい、かように御回答申し上げた次第でございます。なお、同時に、業界の内部におきまして、具体的には、各社に発生いたしました欠陥内容原因等は業界の内部で公開をいたしまして、そうして相互に経験、知識の持ち寄りをいたしまして、一日も早く類似のケースの発生を防止するということを申し合わせた次第でございます。また、業界の共同研究機関であります日本自動車研究所も発足いたしましたので、材料の面あるいは安全に関する基本的な研究課題については、一そう積極的に取り組んでまいる所存でございます。  次に、不幸にして欠陥を発見いたしまして対策を必要とした場合の処置でございます。従来とも、それぞれのメーカーは、自分の製品の安全性と信頼性は企業の根本でございます。したがいまして、これをなおざりにするというようなことは、個々の企業として絶対に許されないことでございます。したがいまして、それぞれ全力を尽くしてそれが改善対策につとめてまいったわけでございますけれども、今回の通達に対しましては、次の二つのことをお答え申し上げました。その第一は、リコール公表は緊急の場合とし、各社の自主的判断によって行なうこととするけれども、緊急の範囲はこれを広く解釈をして、手広く進めるようにいたしたい。第二には、今後リコールキャンペーンについては積極的に行なうと同時に、リコールキャンペーンが次第にわが国にも定着するよう環境の熟成について各方面の御理解を求めることにいたしたい。以上の二項の申し合わせを行なうと同時に、当局に御回答申し上げた次第でございます。  リコールキャンペーンを積極的に行なうということは、対策処置をさらに一そう予防的に考えていくということでございまして、事故があったから即刻対策をするということではなくて、あらゆる方法を考えて未然に事故の懸念を発見することに努力をする、その懸念に基づいてリコールキャンペーンをしていこう、たてまえはそのように考えて、このような表現に相なった次第でございます。  そのようなわけで、今後しばらくは見かけ上回収件数は増加いたすかもしれません。今回相当件数報告をされましたけれども、しかしわれわれが前向きにこの問題に取り組んでいく限り、やはり懸念のあるものは対処すべきである、こういう態度を持った場合には、今後かなり数多くの回収ということが現実に生ずるかもしれません。なければまことに幸いでございますけれども、しかし件数がふえた場合でも、どうかこれは品質の低下ではなく、そういう意味で品質の前進であるという、ひとつ御理解と御支援をいただきたいと存ずるのであります。  最後に、御参考までに申し上げるわけでございますけれども、一九六六年以降、アメリカでいわゆるリコールキャンペーン制度というものが実施をされておるわけですけれども、そのやり方といたしましては、メーカーがみずから安全性に関連する欠陥と判定した場合は、購入者に書留郵便をもって連絡をする、そうしてメーカーユーザー及びディーラーにそういう通知を発行したならば、同時に運輸長官に報告をする、それから運輸長官は各社の報告を四半期ごとに取りまとめて刊行物として公開をする、基本的にはこういうことでございまして、われわれが欠陥車を回収いたしますのにどういう方法が最も確実適当であるかは、それぞれの車種あるいは得意層によって異なるものと考えられます。たとえばバスにつきましては、先ほどお話もございましたように、日乗協の自動車バス技術委員会というものとわれわれメーカーとはきわめて密接な関係を持っております。したがって、常時そういう問題の交換が行なわれておりますので、これを特に報告公表等のことをせずとも、対象の車両は絶対確実に捕捉できるわけでございます。そのようにいろいろの場合があるわけでございます。メーカーといたしましては、最も適切な方法をとりつつ、あくまでも安全の確保はみずからの責任であるという態度で今後対処していこう、かように考えておる次第でございます。  予定時間がまいったようでございますので、私の公述はこれで終わらしていただきます。
  17. 岡本悟

    委員長岡本悟君) どうもありがとうございました。  以上で参考人各位の御意見の開陳を終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  18. 森中守義

    ○森中守義君 各参考人の貴重な御意見を拝聴しました。少しそれぞれお伺いいたします。  まず最初に、清水参考人にお尋ね申したいのですが、御説明の中に、すでにブレーキであるとかその他部分的に不良個所を発見をした、しかし、それは結果的に設計の変更等に至らないで、単に手直し等に終わった、こういう実はお話があったわけです。そこで、この辺が一番重要なことだと思うのですが、結局、企業優先あるいは企業上位、こういうことがこの問題を契機に——むろんいままでの公害の問題の際にも言われてまいったことでございますが、さらに痛切にそのことを感じます。したがって、こういう不良個所が発見されながら、設計の変更に至らない、一体企業は何を考えておるか。よくユーザーテストということを何回か聞いたことがございますが、各メーカーにおいては、開発をしてそれを乗せてみる、悪ければ手直しをする、こういうことが、言ってしまえばユーザーテストということじゃないかと思う。したがって、御指摘の中にありました、つまり、悪い部分が発見されながら手直しにとどまり、設計変更に至っていないという、その背景は一体どういうことであるのか。いま少し具体的に御説明をいただきたいと思います。  それから、やはりお話の中にありましたが、これから先の材質の管理あるいは材質の向上ということがとりあえず問題になるであろう。そこで先日、通産大臣が関係メーカーの代表を呼んでややそれに似たようなことを指摘したようであります。しかし、その中で私気になりますのは、やはりメーカー部品メーカー、端的に言うならば、つまり下請等に対する選択権がことさらに強化されて、下請を圧迫するような結果になりはしないかということを懸念するのであります。したがって、現在における親企業と部品メーカーとの関係といいものは、対等の商取引が行なわれているかどうか、その辺の実態ということを少しく御説明をいただきたいと思います。  次に、まことに残念なことながら、国内でこういうことが問題にされないで、太平洋のかなたから問題が提起された。まさに私どもとしては青天のへきれきというのか、ふんまんやる方ないものを覚えます。しかし、先ほどお話がありました、ことしの三月十日、メーカーサービスニュースの中に実はこういうことが出されている、こういう御説明がございましたが、読売新聞の記事によりますと、実はトヨタの場合には一昨年にすでにこの問題が社内で問題になったのみならず、昨年の春、東京陸運事務所の車体検査の際にこういう問題があがっております。トヨタのメーカーが来た、次にディーラーが来た、それでブレーキの不良個所についてすでにこのカーについては部品の取りかえが行なわれているから、このことについては問題にしなくてもよろしい、ついては、ここではなぞのステッカーといわれておるのですが、そういう部品が取りかえられたものについてはステッカーが張られている、こういう記事が出ている。こうなれば、すでに、国家機関である運輸省の端末の機関である陸運局あるいは陸運事務所の段階においては、このことが問題になっている。そのことがなぜ全体的な問題として運輸行政の中に生かされていかなかったか、この辺にまことに理解しがたい問題があるのであります。したがって、何も太平洋のかなたから問題を持ち込まれるまでもなく、みずから進んでこういうことに対する行政指導あるいは行政上の措置がとられてよかったのではないか、私はこう思うのですが、こういうことに対する御見解を承りたいと思うのであります。  それから、次の問題は、これもきのう、あるいはきょうの新聞だったと思うのですが、昨年の春に公取が関係メーカーに対して、誇大な宣伝等はやるべきでない、こういうことで何か要請を出したように聞いております。それを、この問題が発生したと同時に、メーカーにおいては自粛をしようという申し合わせが行なわれたように聞いているのであります。そしてこれはいま一つ清水参考人に最後のお尋ねでございますが、九日の日にメーカーの常任委員会が開かれて、この際はこういう制度を明らかにしようということで意見の統一が行なわれた。ただし、その中で緊急の度合いということが新聞でいわれておる。一体緊急の度合いということが具体的にどういう内容であるかというのが示されていないのですね。結果的に、緊急の度合いというものは十二メーカーのおのおのの判断にゆだねるという、こういう実は意味合いだということが新聞の報道として出されているのであります。したがって、これも、先ほど相当部分の法律改正等を伴うのではないかという皆さん方の御意見等もございましたが、この緊急の度合いということに対するメーカーの認識、あるいはどういうことを規定すればよろしいのか、これを清水参考人に最後にお尋ね申したいと思うのであります。  それから、時間がございませんのでそれぞれお尋ねいたしますが。家本参考人にお尋ねしたいと思います。いま各メーカーで新車が開発された場合、試験の走行距離というのは大体どのくらい出しているか、あるいは、最も理想的な方法としてはどの程度走行させたらよろしいか、これはかなり専門的な問題でございましょうし、私もしろうとでよくわかりませんので、できるだけ詳細に御説明いただきたいと思うわけであります。それと、新車のときにはなかなか不良個所が発見できにくいということは私どもしろうとでもうなずける。しかし、その後に事故が発生をする、そういうことになると、ただ検査に合格をした、これでだいじょうぶであるということでほっておいていいかどうか。おそらく今回の問題はこういうことにかなり関係があるのであります。したがって、一たん登録あるいは検査等に合格したあと、どういう方法でこれをチェックしようとするか。これも、登録あるいは検査という制度に関係をしながら、つまり仮登録あるいは仮合格、こういったような制度もこの際はとっておく必要があるように考えるのですが、この辺のお考えはいかがなものでございましょうか。  それから、マキノ参考人にお尋ね申したいと思うのですが、今日の自賠法では、言うまでもなくユーザーと被害者、これだけが対象になっている。したがって、警察庁では、すでに刑事責任を追及するというかなりきびしい姿勢をとり始めたようでございますし、全国の交通担当官会議を開いてその指示を行なったようであります。九月かあるいは八月等には料率の改定等もいろいろいわれておるようでありまするけれども、まずその前段にあるものは、ユーザーと被害者、この関係のみに自賠法をとどめる現行法がいいかどうか。少なくともこの自賠法の中には、メーカーあるいはディーラーに対する厳重なる規制を織り込むような法律改正がこの際必要だと思うのですが、この点についていかがなお考えでございますか。  以上、おのおのお尋ね申しますので、お答えいただきたいと思います。
  19. 清水義汎

    参考人清水義汎君) それでは、お尋ねの点につきましてお答えをいたしたいと思います。  まず設計変更欠陥の是正との関連でございますけれども、最近の幾つかの点を具体的に見てみますと、たとえば本年の一月十七日に東京の大田区で、これは東急のバスでございますけれども、ワンマンカーにおけるところのドアの開閉事故で一人のおばあさんが車に巻き込まれて死んでおります。これは従来から、この現場関係では、ワンマンカーについては、発車する場合とドアの自動開閉というものを完全に連動にしてもらいたいということがワンマンカー運行のときも盛んに問題になっております。ところが、現在でもこの開閉というものが中途はんぱなままで、しかも運転手が完全にそれが締まったかどうかの検査等については何らされておらない。このような問題が、たとえば新潟の長岡におきましても、乗客を引きずったままワンマンカーが、これは四十二年、少し古くなりますが、やはり引きずって死んでおります。こういうような幾多の事故陸運局なり警察に報告されているにもかかわらず、この点については何らの改正が行なわれておらない。これはどういうような原因かということになりますけれども、これは一つは、現在の自動車産業における企業競争の激化、それからコストダウンの問題が、よりベターというものの考え方の基準が、安全を基準とした場合のベターの考え方と、それから経済主義を中心にした場合のベターとは全く基準が狂ってくるわけであります。安全のためによりよくする場合にはこれはもう徹底的によくしたほうがいいわけです。このためにはコストがかかるわけであります。ですから、先ほど出しましたこのセドリック、これは六九年セドリックのドアでございますけれどもつめが折れるという欠陥についてはつめ部分補強をして、これは整備関係その他といいますけれども、これはドアの内側の内部にある装置でございますから、一々それをあけて見るということは事実上これ困難であります。しかもそのつめが折れるというのは、引き手を引っぱったときの圧力がかかるからだということは、メーカーのほうからの欠陥指摘にも出ておる。ところが、ドア取っ手設計変更して直すとなると、これは相当の費用と期間がかかってくる。こういう点から、いわゆるまあ救急処置のような形で手直しがされている。こういう点が、欠陥対策上の場合にも、現象面の欠陥の個所の改善ということと、その欠陥個所に欠陥が起こるように作用する背景なり、間接的に原因になっているような部分についての改善、こういうところまで伸ばしていきませんと、この問題は解決がしないのじゃないか。そうなってまいりますと、どうしても企業経営という観点からまいりますと、コストとの関係で何らかの外的な規制が必要になってくるかと思います。そういう点ではアメリカ等の資料を見ておりましても、これは一九六六年九月九日に制定をされました国家交通及び自動車安全法の中に規定をされておりますけれども監督官庁が必要によって調査検査を実施するための立ち入り検査権、報告聴取権というようなものまで規定をしておる。そういう一つの行政上の、あるいは社会的な規制の中で品質なりあるいは設計の変更というものも考えてまいりませんと、完全な対策というものは立てられないのではないか、こういう点が言えるのではないかと思います。  それから第二点の材質向上につきましては、材質に対する検査、これが現在御承知のようにございません。これはやはり科学的な材質検査機関を設けまして、一定の基準というものを考えませんと、この点についても材質向上の方法は考えられないのじゃないか。  第三点の下請との問題でございますけれども、これはもう御承知のように下請化というものは、これは企業の合理化一つ方法でございます。下請のほうが生産コストが総合的に見て廉価につくから下請化するわけでございまして、そういうような関係なり資本との関係なりを考えますと、形式的には対等な条件がございましても、経済的には対等な条件というのは、これは常識的に考えられないわけでございます。それでありますから、先ほど私が申し上げましたように、むしろ通産省の企業育成、指導、監督の中で、下請企業と親会社の中での対等条件設定の一つ条件なり指導なり規制というものが当然外注化が拡大していく過程の中では必要になってくる、こういうことでございます。ですから、それらのことがむしろ経済政策の中での公共統制、いわゆる。パブリック・コントロールの一環としてお考えいただければありがたい、かように考えているわけでございます。  それから、問題の起点が「ニューヨーク・タイムズ」から出ている、まことにそのとおりでございます。なぜ一体それまで問題にならなかったのかというのは、実は私自身もふしぎであります。サービスニュース等については、指定工場あるいは自動車整備工場、ハイヤー・タクシー業あたりには、従来からメーカーでは出しておられます。しかし、自動車プロのほうでは、日常の営業的な関係もございますし、それからどうやら直って営業車として使い得れば済むのだという形で、企業内部なりあるいはディーラーなり対メーカー関係で処理されておる。  それからもう一つは、交通事故が起きますと、従来は整備不良なり運転手の責任という形で警察の事故報告書というものが支配的にまとめられておりまして、構造的な問題について考えるというのは、この問題が起きてからの警視庁なり警察庁の態度でございます。そういう点で、資料的に、外から問題が起きないと監督官庁では前向きの方向を考えないのではないか。というと少しひど過ぎるかもしれませんけれども、そういう点が、一つは従来山と積まれておった問題が、積極的に行政的な形なり政治的な形でもって監督官庁の形で取り上げられなかったということでございます。この点につきましては、私は今度の欠陥車の問題について、国産車が悪い、しかし外国車はいいんだというふうな問題にすりかえられていったらたいへんなことだと思います。といいますのは、米国における一九六六年から一九六九年三月までの資料しかこれはございませんが、リコール台数というものは、すでに公表されておりますし、監督官庁でもお持ちのはずであります。それを見ますと、一九六九年の一月から三月までで、五百五十八万四千七百三台の台数が出ている。しかも大手のゼネラルモーターズにおきましては、そのうちの五百五十三万九千二百八十九台がリコールされている。で、そういう点を考えますと、アメリカ自体にもリコールの問題が大きな問題となって内蔵されているということでございます。  そうかといって日本の車がその中で同じ程度かというと、必ずしもそうはいえないかと思いますが、御参考のために申し上げたいわけでありますけれども、「米国における輸入自動車のリコール台数」という表がございます。これを見ますと、一九六六年の一月から三月までに六万六千四百十六台のリコールが出ている。この中でアメリカの木田モーターは数字がゼロでございます。日産モーターはこの中で三万九千四百二十六台出ておる。半数以上が日産の車でございます。それからトヨタはこの中で一万八千六百五十八台。輸入車の中に占める国産車のリコールの数が圧倒的だという点は指摘せざるを得ないわけであります。しかもこの数字は「ニューヨーク・タイムズ」でたたかれる前に行政官庁が持っていた資料であります。にもかかわらず、本日までなぜ問題にならなかったのかということは、むしろ私どものほうであるいは国民のほうで、疑問にしたい問題でございます。  それからもう一つは、運輸行政上の問題でございますけれども、これは先ほど私も若干触れたわけでございますけれども、現在の制度なり機構の法律上のワクの中で、あるいは要員のワクの中では、きわめて要員が不足しているということである。検査官にいたしましても、ここにこまかい数字がございますが、自動車検査だけを見てみますと、型式指定の問題につきましては先ほど申し上げましたが、十名の中で百三十カ所ぐらいのモデルの形を行なう。そのほかにモデルチェンジ等がございますが、型式指定だけ考えてもたいへんな検査官の業務量だということを申し上げましたが、逆に、今度、自動車検査体制の概要を申し上げますと、検査場の数が六九年現在八カ所でございます。検査対象の車両数というのが、昭和四十四年の三月三十一日現在で、九百四十五万五千四百六十九両でございます。これが現行の必ずしも十分でないと思われる検査基準でいいましても、この検査を四十四年度の検査要員でまいりますと、八百三十名でやらなければならないということであります。一千万近くの車を八百三十名で検査を行なって、そうして完全に欠陥車なりあるいは安全——事故防止という検査ができるかできないかは、これはしごく常識的に判断できることであります。その点について問題があるのじゃないか。  それから誇大宣伝との関係でございますけれども一つの例を引きますと、御承知のようにアメリカのたばこ会社は、ガンの問題が起きましてから、喫煙——たばこを吸った場合にはガン発生の危険性がありますよということを、あらかじめ明示して吸わせている。あらかじめ明示して吸わせていればいいか悪いかということにも議論はありましょうけれども、一応警告を発しているということであります。ところが自動車の場合を見ますと、動く応接間である、あるいは動くリビングである、あるいは軽自動車については普通並みの性能であるという、性能の面については非常に宣伝をされている。しかしこの車を扱う場合に、こういう点を気をつけて大事に使ってくれと、あるいは安全運行をしてくれという点については伏せられているわけであります。  で、しかも先ほど御発言がありましたように、アメリカではこの車の購入者に対して、一々リコールされた欠陥の問題については、個人あてに内容を明示をしておる。わが国の場合には、今回リコールの問題が新聞広告という形に出てきておりますけれども工場なり職業関係のいわゆるハイ・タクなりトラックなりバス整備工場にしかいかない。ドライバーまでには徹底をしておりません。こういう点の徹底というものが、当然車の場合にはアフターサービスの中に入ってこなければならないと思いますし、同時に、運転者というものが現在の急速に発達をしていったわが国のモータリゼーションの中で、アメリカのような場合と土壌が違いますし、車の使用経験年数が違うわけでございますので、それに即応した教育というものが政府機関の中からでも正しく行なわれていかなければならぬと思います。メーカー使用者に対する教育、宣伝も必要でございましょうけれども、むしろこの辺に対する最も公正な客観的な国民教育というのは、ここまでモータリゼーションが発達した中では、当然政府機関の責任ではないか、かように私は考えるわけでございます。  それから最後の緊急の度合いでございますけれども、私はむしろこの問題は緊急の度合いというような基準ではなくして、先ほど御紹介いたしましたアメリカの国家交通及び自動車安全法の基準と同じような位置づけが正しいのではないかと思います。御参考のためにそれはどういうように規定をしているかと申しますと、「六」に車両欠陥の通知というのがございますが、メーカーは安全上の欠陥を発見したときは購入者、販売者に書留等により通知することということで、緊急という文字は入っておりません。それから二番目に、通知内容欠陥の状況、危険度、改善要領とする。三番目に、メーカーは運輸長官に欠陥の状況を通知しなければならず、運輸長官はこの法律の目的の遂行上助けとなると認めるときは、これを公表しなければならない。むしろ公表の義務づけは、わが国でありますれば運輸大臣に義務づけされております。それから、ただしその場合でありましても商業上の秘密に属することは公表してはならない。この辺の解釈上の問題が非常に微妙な点だと思いますが、以上の形が一応の基準になっております。  非常に満足ではないと思いますが、お答えを終わります。
  20. 家本潔

    参考人家本潔君) 私に対する御質問は、新車を開発する際に一体どのくらいテスト走行をするか、これが第一点でございます。この御質問にお答えするのには、新車という対象が非常に広範でございまして、なかなか一口にお答えしにくうございます。しかし、全く新しい車を開発するという場合には、今日現在では各社とも——これは私の推定でございます。まだ業界相互にそういう問題を持ち寄って基準をつくるというところまでまいっておりません。推測でございますが、最低十五万キロは走っているというふうに私はお答えを申し上げたいと思います。メーカーにより、あるいは対象車種により、もっと走っている場合がもちろんあると思います。最低そのくらいは当然走っておる、そう考えてお答えを申し上げたいと思います。  それから試験の方法でございますが、やはり時間の節約のためには、試験の目的によりましては過酷条件に置いてそうして時間を短縮する、ある速度で普通の道路を走った場合のどのくらいに相当するかというようなそういう技術的なくふうは当然伴っております。たとえば、私どもトラックの場合には、基準といたしましては一五〇%のオーバーロードをして、そうして通常の道路に対して二倍ないし二倍半の過酷度を持った過酷走行をする、このような基準をもってテストをいたしております。ほんの一例でございますが、御参考に申し上げておきます。  それから新車はなかなか不良個所が直らないではないか、ユーザーテストというようなことをやっておるのではないかという御質問でございますけれども、確かに日本自動車の技術的水準が低かった時代には結果としてそういうことにならざるを得なかったという過程を経ております。しかし今日では、われわれの考え方といたしまして、商品を売ってそれでユーザーにテストをしてもらうというそのような考え方は、今日すでにどのメーカーも持っておらないわけでございます。ただ、モニター制としてある限定された台数のものをある特定のユーザーに使ってもらって正確な情報を資料から採集する、これは当然やっておることでございます。なお各社とも新製品が送り出されましたときには、その状況把握のために特別な組織をつくりまして、通常これを初期流動管理といっておりますが、実験の過程でテスト生産を行なって十分であると思って出した車に対しても、さらに数カ月の間特別チームを編成して直接的にその状態を調査する、そうしてもし問題があれば遅滞なくそれを手元にはね返すという体制はどのメーカーもおとりになっておることでございます。  以上でございましたでしょうか……。
  21. マキノ正美

    参考人マキノ正美君) 御質問は自賠法についてと伺っております。自賠責保険の料金並びに料率引き上げに対しては、その合理化と充実、そして保険料の所得税法上の控除等を本院議長に請願書を提出いたしております。森中先生の御意見はごもっともと思われますので、新しい問題といたしまして自動車連盟の理事会及び事務局で検討いたしまして、なるべく早く善処したいと考えております。
  22. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 まず、この欠陥車の問題でありますが、最初に清水参考人、それから樋口参考人にお伺いしたいと思います。  運輸省陸運行政関係官庁として何をなすべきかというような問題、ただいま、たとえば検査官の数が非常に少ないということを言われました。しからばこの検査官の数をふやしたらいいじゃないかということにもなるわけでありますが、そのほかにも陸運行政と安全の問題でもってやるべきことは端的に言ってどういうことかということ。それから通産省は、業界に対する指導監督の責任があるわけでありますけれども、通産省がはたして業界に対する指導、これでいままで十分であったのかどういうかという問題がありますし、通産省としてはいかにすべきか、こういう問題。それから今度は事故関係なんでありますけれども、検察庁ですね、事故が起きるとたいがい運転者の過失というようなことで片づけられるケースが多かったようでありますけれども、車の欠陥あるいは車の特徴、こういうことも事故の背景に少なからず存在をしたのではないかと思われる。その場合、事故が起きた現況等を十分に調べて、いかなる種類の車がどういう事故を起こしておるか、これも統計をとってみればおのずから数字的に明らかなものがあるのではないかという気がするのでありますけれども、警察庁として、主として交通事故対策の面から突っ込んだ指導なり方法ということがあるのじゃないかと思われますが、この点どうかという問題。これはそれぞれの官庁のやるべき仕事として参考意見をお伺いしんい、こう思うのであります。  それから特にこれは清水参考人のほうから御意見が出ておりましたが、軽四輪車の問題、軽四輪車は非常にこれは端的に言えば危険であるというふうな御意見がございましたが、車検その他で若干軽四輪車の場合は事情が違っておりますが、軽四輪車はどうしたらいいか、どうあるべきかということ。  それから中古車の販売、これは現状でよいのかどうか。中古車の販売は各所で行なわれておりますし、毎日の新聞にも載っておるのでありますけれども中古車には相当危険が伏在をしておるんじゃないかというふうな気がするわけでありますが、いろいろな意味で、中古車というのはどこかに欠陥があるのじゃないか、そうでなければ値段をうんと安く売るわけがないので、そうすると、この中古車の危険を知らしめる方法あるいは中古車の危険を事故防止のためにどうしたらいいかということを徹底をさせる方法としては、はたして現状でいいのかどうかという問題があるのじゃないかと思います。  それから車検のあり方、この車検がおざなりであれば、やはりかえってやらないより悪いという結果にもなってしまうのじゃないかと思います。車検のあり方が現状でいいのかどうかということ。もし改めるとしたならばいかにあるべきかということ。  その次に、保安基準はどういうぐあいにきめたらいいか、たいへん抽象的であるというお話がございましたが、きめ方と、それからきめるメンバー、あるいはきめる役所といいますか、つまり構成はどういう構成でもってこの保安基準をきめたらよろしいのか、こういう問題。  それから非常に多くのメーカーがあるのでありますけれども、それがいろいろな広告をしております。広告だけを見ておればどの車もすばらしい車ばっかりです。欠陥車なんかとうてい考えられないのでありますけれども安全性を考慮した選択の方法というものができないものかどうか。つまりこの車はこういう点が安全であるというようなことを、安全性を比較をして選択をするという方法が、現在のところ購入者には事実上不可能な状態であります。これを何とか、安全性の面から選択するという可能はないのかどうか、その方法はどうしたらいいのかという問題。  それから外車の場合、国産車がいまやり玉に上がっておりますけれども、外車といえども欠陥車がないことはなかろう、国産車に比較をして、多い少ないは別といたしまして、何らかの欠陥がないとは言い切れない。外車だけ大目に見られるということであってはならないと思うのであります。外車の安全性あるいは欠陥指摘というようなことが今日十分に行なわれているのかどうか、こういうような問題、それをお伺いしたいと思います。  それからこれはマキノ参考人にお伺いしたいのでありますが、自動車構造上の改善とかくふう、こういうような問題は考えられないのかどうか。十年一日のように、自動車の形、よほどこれは年代を経てもあまり変わりがないわけです。しかしこの日本自動車、何も外国と同じまねをする必要はないので、ドアにいたしましても、いつまでも現在のような開きドアにしておかなければならぬというものじゃないと思うのです。これはちょっと飛躍するかもしれませんが、昔の乗りものはかごだったわけですね。かごは開きドアじゃなくて上へ持ち上げて出入りをする、そういうしかけになっておりました。日本のように狭い道じゃドアをあけるとたいへん困るということがあります。われわれもこれはかごに乗りたいというわけじゃないけれども、ああいうとびらを持ち上げて出入りする、あるいは引き戸にする、こういうような方法も考えられていいじゃないかという気がいたしますし、それからほかのものと違って火がついたりするとたいへん危険なわけであります。それからブレーキがきかなくなってもたいへん危険なわけでありますけれども、これらの点についてももっと思い切った改善、くふうというものが行なわれていいんじゃないか。つまり、自動車の現在の構造なり形態なりというものを根本的に改めていく、こういう努力が行なわれていいんじゃないかという気がするのでありますが、それらについての考え方というものを積極的に打ち出していくことができないものかどうか、これもこの機会にひとつお伺いしておきたいと思います。
  23. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  24. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記を起こして。
  25. 清水義汎

    参考人清水義汎君) お答えをいたします。  第一の、この安全行政として何をやるべきかということになりますと、これは非常に広範囲な問題になってまいりますし、いわゆる交通事故防止対策全般に対する問題になってまいりますので、おそらく御質問の趣旨は、この欠陥車なり、構造上の欠陥に重点を置いた安全に対する問題だというふうに理解をいたしますので、それに限定をして意見を言わさしていただきます。一つは、形式的な検査から実質的な検査という形の中で監督なり検査権限を強化をしろという点が一つでございます。それから第二は、幾ら強化あるいは要員をふやしましても、現在の日本の産業組織の中なり産業の業務といたしましては、法律なり規則に縛られてまいります。そうなってまいりますと、監督官庁の担当官が業務執行を行なう場合にあたって、いま申し上げたような諸点が十分行ない得るような法律の改正なり、規則の改正なり、施行規則の改正というものが並行をして伴わなければ何にもならないわけでございます。それから三番目には、とかく交通事故問題なり労働基準法違反等の問題については通達行政という傾向が従来の傾向でございます。ところが通達行政には御承知のように罰則規定がございません。ですから、その通達行政というものはそれを強制実施させ、効果を最大限にあげるためには一定の限界がございます。もちろんそれは社会的秩序であるとかあるいは国民の意識水準の問題にもよりますけれども、わが国の社会的意識水準なり、国民なりメーカーの意識水準の中で、従来の通達行政というものが非常に限界があるという点は指摘ができるわけでございます。この点で通達行政偏向という形から法内規制を重視するというふうに切りかえていく指向性が必要ではないか、かように原則的には考えるわけでございます。  それからこの事故の取り扱いの方法でございますけれども、交通事故が起きた場合に、それが運転未熟であるのか、構造上の欠陥であるのか、あるいは整備不良の問題であるかということは、簡単に判断しかねる問題がございます。そうなってまいりますと、検査というものが型式指定——これは車検等を中心にいたしまして現在は陸運局の行政範囲になっておりますので、これらの問題については運輸省の担当官と警視庁とが協力をした形の中で、事故原因に対する徹底的な分析とそれに対するところの評価、対策というものを立てるような機構なりシステムが必要になってくるんではないかと思います。  それから三番目には、軽四輪の問題でございますけれども、御承知のように軽四輪については車検がございません。私は、これだけ高速道路ができて車が混雑している中では、一つは、軽四輪というものがブリキ板でおおったスクーターであるという自覚でドライバーが運転をするか、さもなくば、軽四輪というものについて車検を行ない得るように現在の法規を改正し、同時に国民車的な方向へこれを拡大をしていき、品質なり安全度の向上につとめる、この二者択一の問題ではないかと思います。そういう方向で軽四輪についての再検討が必要ではないか。  それから中古車の問題でございますけれども中古車の問題については、車検が切れた中古車については車検を通って販売をいたしますから一定の基準がございます。しかし、車検の有効期間内における販売というのは、たまたま所有者が、非常に故障が多い、あるいはその車がどうも能率がよくないということで売り渡す場合が往々にしてございます。これに対してチェックをする機構なり規則が現在ございません。私は、中古車の場合に、これがあらためて商品として販売する場合においては、中古車が商品としての適性を持つかいなかの判定を下した後において商品として市場に売り出されるような機構なり処置が必要ではないかと思います。特にオーナードライバーの個人間の譲渡という問題については、現在全くこれは方法がございませんので、その点についてはぜひひとつ制度をお考えいただきたいと思います。  それから車検でございますけれども、現在でも定期点検、それから仕業点検、それらのものは規則としては定められておりますけれどもプロドライバーを除きましては事実上は抜け穴になっております。新車の場合も、アフターサービスが終わりますと、キロ整備についても、事実上はおかしくならなければ持っていかないというのが現実の姿でございます。そうなってまいりますと、このキロ整備というものも法的に義務づけると同時に、車検を受けるときに、キロ整備を行なっているかどうかというものを同時にチェックしていくというような関連性を持たせた整備体制の強化の問題が必要になってくるかと思います。  それから保安基準の定め方でございますけれども、この内容につきましては非常に技術的な問題がございます。技術的な問題については私は専門ではございませんのでわかりませんけれども、たとえば一つの例を申しますれば、バンパーにつきましても地上からの高さの基準というのがございません。ですから、衝突をいたしましてもバンパーというものが全く無用の長物になっている場合がございます。また、現実にはアクセサリー化しております。そういう点について、このバンパーの強度の問題、使用する鋼板の厚さの問題、それから地上からの高さの問題、こういうような点も一つ基準を具体的に定める必要もあるかと存じます。また、強度の問題等については、当然これは専門家の意見を聞かなければならないと思いますが、そういう点では、この委員会の構成については、監督官庁メーカー、それからユーザーユーザーの中でも特に一番車の使用頻度の多いところの自動車関係ドライバーの代表をも含め、そこに学識経験者を入れた四者構成的な委員会構成の中で審議されれば、現在より、より客観妥当性が出てくるのではないか、かように考えます。  それから購入者の安全の選択の問題とリコール公表の問題でございますけれども、リコールについてはメーカーからの、メーカーの良心による自主的な欠陥指摘と同時に、監督官庁が随時立ち入り抜き打ち検査、実際走っている走行車の安全度の、あるいは欠陥検査等も行なうことによって、むしろ指導的な形を発揮していただくと同時に、安全の公表内容については、行政指導を行なうと同時に監督官庁みずからが公表すべき必要があるかと存じます。また、メーカー公表なりあるいはユーザーに対するところのサービスニュース等につきましては、監督官庁指摘発表した点についてはそのままプリントしてニュースに流すことを義務づけることも必要かと存じます。  それから外車の安全性につきましては、この際やはり監督官庁において公表をすることが必要かと存じます。  で、少なくともこのリコール台数につきましては、先ほど申し上げたようなばく大な台数が出ておりますので、ぜひこの点を国民に明らかにしていただくと同時に、車に対する国民の公正な判断が下し得るような条件設定を政府関係当局においてお考えいただければありがたいと思います。  以上でございます。
  26. 樋口健治

    参考人樋口健治君) 時間を少しちょうだいしてお答えさせていただきます。私自身は大学の教師でございますが、学会——日本機械学会、自動車技術会の自動車の安全公害関係委員会委員でございますし、また、事故調査を担当いたしまして、投資効率その他をチェックする委員でもございます。また一方、日本交通科学協会あるいは日本交通安全協会などの委員としまして、いろいろなドライバーの教育あるいは運転管理者の教育の講師あるいはその運営に当たっております。また一方、日々起こる交通事故問題に対しましては、東京地方裁判所、民事、刑事、あるいは各地の全国にわたる裁判所における交通事故関係をやらされております。そういう立場でまた申し上げてみたいと思います。  まず第一番に、いわゆるこういう欠陥問題、あるいは自動車の安全問題に対する監督官庁の指導その他の点でございますが、技術者としての立場から申し上げるわけでございますが、まず、現状のやり方でもっていかに設備を充実し、あるいは人員をふやしましても、このばく大な車の数あるいはドライバーの数に対しましては対処し切れないと私は思います。そういうわけでまず第一番に望みたいことは、メーカーなり販売店なりあるいはユーザーの反省も一面ございますが、一方監督官庁側におきましても、き然たる態度をもって業界なりわれわれを指導しあるいは育成するだけの自信とそれから実力を持つべきであろうかと思います。現状では残念ながら、膨大な産業界の投入しておりますこの問題に対する人とお金に対しまして、監督官庁、われわれもお手伝いさせていただいておりますが、研究所あるいはそういう技術的な面では非常にささいな金額と人員しか投入されておりません。これでは自信をもって業界の指導育成に当たるということはとうてい不可能であるかと思います。そういう意味で、実際の指導育成につきましては監督官庁がき然たる態度をもってやっていただきまして、そして現実の日々のばく大な数の自動車ドライバーに対する指導育成その他の検査の問題は、私はやはり民間的なベースで自主的なものに待つべきだと思います。実質上不可能だと思います、ばく大な数に対しまして。  それから二番目の交通事故関係調査でございますが、これについては現実には、末端の警察官の膨大な人力と時間とを費やしておりますが、発生する件数に対してはとうてい及びもよらないわずかな人と時間でございますので、十分な調査ができないと思います。私自身も確かに構造上の欠陥による事故か、あるいは運転者の過失による事故か重大な問題あるいは刑事的な問題、その他専門的な立場から鑑定させられておりますが、それに対しましては十数年あるいは二十年以上の経験を投入してもなおかつ困難な問題が多いかと思います。これを末端の警官まで教育して、しかも完全にもっていくということは技術的の立場から見れば不可能かと思います。精神的にはやるべきであるかもしれませんが、私自身は正直な技術者として申し上げます。  それから、三番目の、軽四輪車の危険性でございますが、これは先ほど申し上げましたように軽四輪のよい点というのは、安全の面で多少欠けるところはございますが、非常に安いこと、機敏なこと、大きさの小さいことという優位な面もございますので、あくまでこれは使う人の良識に待つ以外にしようがないと思っております。もっと危険なものをあげれば日常われわれはいろいろの危険なものを使っております。自動車だけが特別に危険だというのでありませんので、われわれ日常使っておる機械装置はますます複雑、高度になっております。そのときに対処していくために、すべて私ども技術者としては一律にこれを扱いたいと思っております。  それから、車検のあり方につきましては、先ほど申しました監督官庁の指導、育成と同じ考えでございますが、あくまでその車検の実施方法その他具体的の細目につきましては、十分官庁間で、単に行政的だけではございませんで、技術的にも十分裏づけと自信の持てる研究をいたしまして、そのもとに実施方法をきめ、そして末端の実施の現場は民間ベースでやるべきじゃないかと思っております。これはあくまで膨大な運転者の数、ドライバーの数に対する車検制度、あるいは免許証試験その他を含めております。  それから安全関係の活動につきまして誇大広告その他の問題でございますが、われわれ自動車を使う立場としては、単に自動車を交通機関だけで使っておるわけではございません。それはいろいろな意味もございまして、皆さまもすでに御承知かと思いますが、自分の権威の代償として、あるいは欲求不満の解決とか、あるいは人によって違うかもしれませんけれども、確かに個人でオーナー的に使っております場合は、交通機関として使うことは私は少ないと思っております。その他トラックとかバスとか、公共機関あるいは会社関係で使う自動車として全く異質なものであると思います。それに対しまして、往年はそういう車が多かった時代の行政なり指導なり育成の方法が、現在の個人ドライバーが急激にふえてむしろそのほうが非常に多い場合も全く同じようにやろうというところに問題点が出ているのではないかと思っております。  それから、外車に対する問題、これは私かねがね申しておりますが、欠陥問題につきましても、国産車の技術は相当レベル的に上がっておりますので、外車も全く画一的に扱っていただきたいと思います。あくまで技術的の立場からでございます。  簡単でございますが、以上で終わります。
  27. マキノ正美

    参考人マキノ正美君) 御質問は自動車構造についてだと思いますが、機械工学の専門家でございませんので、的確なお答えはできないと思いますけれどもエンジンがありガソリンがあってバッテリーがあれば自動車は動くと、これは昔からいまも変わりはございませんけれども部分的な面に関しましてはかなり進歩してきたと思います。  それから先ほど御質問ございましたドアの点でございますけれども、試作車でプロトタイプのものがございますけれども、これなんか鳥の羽のように上に上がる車がございます。それからマイクロバスなどは、引いてあけるドアも現在まだ、数は少ないのでございますけれども走っております。おいおいそういうふうになるんではないかと思いますけれども、やはり経済問題がからんでくるんではないかと、そう思うわけです。  以上でございます。
  28. 前田佳都男

    前田佳都男君 私は主として家本さんに説明をお伺いしたいと思うのであります。これは非常に簡単な問題ですが、日本における乗用車の生産量というか、それと、そのうちでどのくらい輸出されるのかという問題、それからその輸出のうちでアメリカに対して輸出するものがどれだけであるか、おそらく非常な伸び方をしておるだろうと思いますが、その点をひとつ最初にお伺いいたします。
  29. 家本潔

    参考人家本潔君) 正確な数字をいま手元に持ち合わせておりませんが、輸出先といたしましては目下のところアメリカが一番市場としては大きゅうございます。逐次ヨーロッパ方面にも市場が拡大している方向にございますけれども、目下のところはアメリカが一番大きゅうございます。  それから輸出の量につきましては、これはメーカーによって差がございますし、一番多くて一四、五%であるかと存じます。  以上でお答えになりますでしょうか。
  30. 前田佳都男

    前田佳都男君 今度のこの欠陥車問題の発端といいますか、いきさつは私は実は詳しく知らぬ。大体そのいきさつを、アメリカでどういうことからどういうふうに起こってきたかということをちょっと詳しく説明していただきたいと思うのです。私は別に国産がよいというのじゃありません。しかし何かどうも、日本の車がどんどん対米輸出というか、アメリカに対するシェアがふえてくる、それに対して何か疑うわけじゃありませんけれども日本の車もこれは万全とは言いませんよ、それは欠陥もある、しかしどうも意図的なものもあるんじゃないかというふうに思うんですが、そんなことはあなた言えぬでしょうけれども、そのいきさつをひとつ説明をいただきたい。
  31. 家本潔

    参考人家本潔君) たいへんむずかしい御質問でございますけれども、アメリカのリコール制はすでにもうある程度定着をいたしておりまして、日本車が今回アメリカにおいて申告いたしましたような回収措置というものは、もうすでに常識化しておるわけであります。したがいまして、特に新聞がこれを取り上げて云々するような一般的環境にはないと、私どもはそう思うわけでございます。しかし、それがなぜ取り上げられたかということにつきましては、これは推測になるわけでございますけれども、そこに多少日本車の進出に対するある種の意図がなかったとは言えないんじゃないかというふうに推定をいたしております。
  32. 前田佳都男

    前田佳都男君 実は今度の欠陥車問題が起こりましてからある会社のディーラーですが、非常に喜んで、それ見ろと言わぬばかりのことを言うて、やっぱり外車がいいんですよということを言うた人がおる。現にそういう人が二、三人おる。私はけしからぬと思っておる。私も実は自分みずからが外車を使っておりました。国産車はきらいだから使ったことがなかった。しかし、故障した場合に部品がなくてなかなかめんどうで、修繕屋に簡単に部品がないということで、いまは国産車ばかり使っております。しかも私の感じでは、外車にも欠陥が相当あると私は思うのです。きょうの新聞あたりには外車の欠陥公表していますよ。しかしまだまだ私はことに外国、アメリカとかそのほかの国でつくったその車が、かえって日本の風土というか、土地にわりあいに適合しない場合が多い。われわれの郷里はいなかのほうですが、そういうことで故障ばかりです。これは道が悪いせいもあるだろうが、実はもう外車にはほとほと困っている。外車の欠陥はほとんど黙っておって、国産車の欠陥ばかり次から次に言う。それに対して私はまことに遺憾というか、さればといって日本の車がこれでいいというわけじゃありませんけれども、外車の欠陥というか、ことに日本の風土、日本条件にあまりよくない点が多いのじゃないか、むしろ欠陥が非常に出てくるのじゃないかという点について専門家の清水先生にお願いしたい。
  33. 清水義汎

    参考人清水義汎君) 外車の欠陥についてということでございますが、これは先ほど私資料的に申し上げましたように、ゼネラルモーターズにいたしましても、リコールの台数というものが一九六九年三月までに大半を、ゼネラルモーターズが五〇%以上を占めておる、しかも台数が五百万台という数にのぼっている。ただ、そういう形がアメリカの自動車市場の長い歴史の中で、ユーザーメーカーとの一つの社会的秩序の維持の慣習になっているということであります。と同時に、特に欧米ですぐれておりますのは、業界の自主調整というものが日本よりすぐれている。日本のほうでは監督官庁なり世論が起きないと、なかなか自発的な自主調整が行なわれないという後進性がございます。そういう土壌の違いというものをまず一点としてあげておかなければならない。  それから日本の気候、風土の問題につきましては、私も技術屋でないのでわかりませんけれども、東京都内の大手四社の中に入りますハイ・タク業者について、私は、外車と国産車との整備費がどのくらい一台当たりで違うかを、実はこの問題の参考人をお引き受けしましてから調べてみました。そうしますと、車検をとりますまでの一台当たりの整備費用というものは、これはハイ・タク会社が自分の整備工場で考える整備費用でございますが、国産車のほうがもちろんパーツは安いわけでございますけれども、価格面で申しますと、国内中型車と外国の大型車がほぼ同一金額であります。二万円ちょっとでございます。ということは、相対的にはまだ国産車の整備費用のほうがかかっている。しかし、これは東京の場合でございますので、非常に地域格差のあるわが国のようなことになりますと、私非常に不勉強でございますのでよく存じあげないような実情でございます。
  34. 前田佳都男

    前田佳都男君 この外車の問題をひとつ東京農工大学樋口先生にお伺いいたしたい。
  35. 樋口健治

    参考人樋口健治君) いまの技術的な問題でございますけれども、私自身は、外車、特にアメリカ車と日本車を比べるのは不適当かと思います。と申しますのは、最初に私が安全について申し上げましたように、大体において価格の高い大きな車は安全でございまして、安くて小さな車は、ことばは悪いのでございますが、危険でございます。そういたしますと、アメリカの車にいわゆる3ナンバーと申して大型でございます。私自身も非常に重要な用事のときはなるべく外車の、アメリカ車の大きなハイヤーをお願いします。それは費用は相手持ちでございます。ただし、私は自分自身の用を足す場合には国産車を使っております。これは危険でございます。値段が安い、六分の一でございます。危険が、それと比例とは申しませんけれども、やはり伴ってまいります。そういうわけで、比較すること自体が私はできないと思います。というのは、安全の問題を技術的に比較すれば、大きくて高い車が安全だということはあたりまえだと思います。そこは経済的な問題と、その人の使う立場の問題で総合的に判断しなければいけないと思います。いま清水参考人が費用の問題を述べましたが、私自身は長年使っておりますので、車にかけた費用だけの問題じゃないと思います。そのためにどれだけの時間の損失があったかということを基礎に考えております。そういたしますと、たとえばいい機械を使いまして、またに故障が起きても、その部品を飛行便で持ってこなくちゃ困るという場合、相当長期間とまります。それを私は経済的な損失と考えて、貨幣換算いたしますと、技術者として比較してみて、当然国産車のほうが手近に部品が早く入って直るという点では、私は総合的に見て優位であると思っております。  結論から申しますと、国産車は現在アメリカの新聞紙上その他で問題にされるほど、早く言いますと、技術的にも伸びまして、生産量が上がったということに対して、私自身技術者として非常に光栄と思っております。  以上でございます。
  36. 前田佳都男

    前田佳都男君 もう一つだけ。外国の自動車産業は大体百年の歴史を持っている。日本自動車産業の歴史は大体三十年から四十年くらいだ。その年数のギャップがあるわけです、歴史の差異がある。しかし、いま樋口さんがおっしゃったように、非常に光栄であると自慢される。私もそう思う。それで、ただしかし、メイド・イン・ジャパンということ自体が欠陥車のイメージになっちゃいけない。だから、この機会に直すのなら直すということが私も必要だと思う。ただ、私一つ伺いたいのは、ブレーキとか、あるいはチェンジレバーとか、いろいろな問題の材質が、基礎材料というものが、基礎材質というものがどうも日本のほうが落ちておる。それはそうですが。
  37. 樋口健治

    参考人樋口健治君) お答えいたします。  私自身自動車免許証をとりまして約三十年近くになっておりますが、われわれからすれば、機械というものは非常にたくさんの部品から組み合わさっておりまして、たとえば三千点の部品が三千時間に一回こわれても、機械は必ず毎時間こわれることになります。というわけで、機械というものは必ずこわれるという前提で長年いじってまいったものであります。ところが、最近のモータリゼーションというものは、われわれの教育の足りなかった点もございますが、一方売られるほうの方も、非常に安全だ、こわれないということを非常に強く主張されたために、たとえばイージーケアだ、手入れをしなくてもいいということを言ったために、その逆効果が出た面が一つあります。あるいは、私はいろいろな教育活動をやっておりますので、ものの現象は振り子の運動のようだと思います。一方に傾けば慣性で他方に戻らなければいけない。現在日本の車は、安全性についても、耐久性についても伸びましたですが、それが少し行き過ぎて、あまりにも安全であり、耐久性があるということを何も知らない方に言い過ぎたのではないかというふうに考えております。ですから、一つは、メーカーの方、販売の方に望みたいことは、自動車が危険であるとか、耐久性がないということを言えと申しておるのではありませんけれども、いわゆる機械というものは元来こういうものであるという説明で始めていただきたいと思っております。われわれも教師ですから、もちろんそういう点については、あらゆる機会を使って、できるだけたくさんの方が安全で経済的に楽しく生活がおくれるように努力しておるわけでありますが、残念ながら研究の面でも、教育の面でも不十分であると思っております。  以上でございます。
  38. 河野謙三

    ○河野謙三君 関連して。いま前田さんから日本の輸出の車の話が出ましたがね。アメリカなりその他に国産車を輸出する場合の検査機構といいますか、検査の手続、それは国内販売のものと輸出のものと同じでございますか。これはどなたに伺ったらいいのか、工業会の方か、通産省かだれか存じませんが。
  39. 家本潔

    参考人家本潔君) それぞれの仕向け国の特別な規則に照らして見る場合だけが国内と違うのでありまして、基本につきましては、国内販売車も輸出車も全く同じであるということを聞いております。
  40. 河野謙三

    ○河野謙三君 もう一つ、私は率直に申しますが、この事件が起こってから自動車工業で働いている人から聞きますと、輸出する車と国内で売る車とでは全然扱いが違う、こう言うのですよ。たとえば大工仕事で言えば、一つの羽目に三本くぎを打たなければならぬものを、下請になると二本しか打たないというようなことがありますね。びょうを一つはめるのに、ぐっと締めればいいものを簡単に締めて終わってしまう。これはまああらゆる産業で、輸出産業は非常な過当競争にあるし、国内よりももっとより安く、場合によってはダンピングもしなければならないという経営の苦心はあると思いますよ。しかし、きょうおいでの方にこう言っても否定されるでしょう。されるでしょうけれども現実に私が信用できる自動車工業で働いている人がそう言うのですよ。私はそれを聞いて非常に何か不審に思いますね。だけれども、同時にあり得ることだな、こう思います。単に色彩がどうとか、ていさいがどうとかという問題でなくて、そういう問題で、国内のものは輸出のものより幾らか手を抜いて、輸出のものは入念にやるということは各産業界にあるでしょう。しかし、極端に言えば、事生命に影響するもの、こういう自動車産業におきまして、国内消費のものと輸出のものをそういう点で差別をされてはたまったものではない。こういうことで私は率直にいまちょっとお尋ねしたわけです。こういうことはもちろんあなたの工業会ではないとおっしゃるでしょうが、これは現実にあるでしょう。私ははっきり言いますよ。またしかし、あなたが率直にそういうことがあるが注意しましょうというならば、これは別ですよ。これは場合によっては、立場をかえて、樋口さんなり清水さんから、あなた方は工業界について精通されておるから、私もそういうことを聞いておりますというならば、私はそれでもいいと思います。もしそういうことがあるというならば、一体今後検査規定その他でどういうふうに対処されるかということも私は伺っておきたい。こういうことで、実はいま前田さんから輸出車の問題が出ましたから、この際参考に伺っておきたい、こう思うのです。
  41. 家本潔

    参考人家本潔君) 河野先生の御指摘のつくり方が違うという点につきましては、輸出車の中に部分的にバラされた状態で輸出するものと、それから完成車で輸出するものがございます。したがいまして、作業の場所もそれから内容も、私どもがノックダウンと申しております、そういう輸出のしかたではこれは全く異ります。しかし完成車で輸出をするという場合には、これは国内の製造工程を全く同じところを通るわけでございまして、特に作業のしかたを変えるということは、現実の問題としては不可能と申し上げられると思います。しかしそういう御指摘に対しましては、私ども業界といたしましては、さらに万が一のことをも反省いたさなければならないとは思いますけれども、御説明申し上げればそのようなことでございます。  それから、つけ加えさせていただきたいのでございますが、先ほど来、今度の欠陥について材質が不良ではないかという御意見がしばしば出ております。私どもそれを伺いまして、一体どういう点を御指摘になっているのかちょっと判断に苦しむのでございます。たとえばブレーキパイプが欠陥の対象になっております。しかしあのパイプの材質なり処理の方法はその他の各社が全部同じものを使っております。しかるに特定の車だけが欠陥を生じておるということでございまして、これは材質の問題ではなくて、設計上のまずさというところに問題がある一わけでございます。そのほか、合成樹脂を使って車を安くあげようとしたから欠陥が生じておるのではないかというような一般の一部の御指摘もあるようでございます。具体的な例は、ブレーキオイルを入れておきますこういう形状をしたタンクがございます。合成樹脂などというものがございません時代には、当然これは鉄でつくられておりました。当然さびどめをいたしておるわけですけれどもブレーキオイルを入れておきましても一ぱい入れるわけじゃございませんで、上に空間がございます。こうして振動しておりますと、この中に空気が入ります。そういう影響でこのタンクの中がさびるわけでございます。そのさびがパイプを伝わりまして、ほんとうにブレーキを作動させるバルブ、マスターシリンダーのあたりにいたずらをしまして技術的には相当困り抜いた、そういう過去の歴史がございます。ところが合成樹脂の適切な材料が発見されまして、それが使われるようになったということでもう絶対さびない。しかも油の量は一見して外からわかる。こういういままでにない利点を備えておるわけでございます。私ども新しい材料を使いますのに、従来の品位を落とすことまであえてして重要な保安部位に冒険をおかすことは絶対にいたしません。これは私どもにとって冒険であります。そのようなわけで、材質が悪かったからその欠陥が生じたというきわめて端的ないろいろな御批評については、ぜひ、私どものやり方からいいますと、ここで御理解をいただきたいというふうに考えるわけでございます。
  42. 樋口健治

    参考人樋口健治君) 河野委員の、輸出車と国産車のつくり方が違うのじゃないかという点について、私自身が見学者として各自動車会社を相当回数多く見させてもらっております。その点で申し上げてみます。結論は、違っていると思います。と申しますのは、外国に輸出する場合には、相当長い距離、長い時間をかけて輸出いたしますので、当然自動車の塗装その他がいたむという点がございますので、包装とか梱包とか、そういう点は国産車と違いまして、国産車はでき上がりますとすぐに車に積んで自動車で運ぶという点でございますので、そこにはっきりとした違いがございます。  それから一方、仕向け地によりましては、ハンドルが左についたり右についたり、あるいは安全基準、その他法律もございますが、基準が変わってまいります。そうしますと、特に安全基準のうるさい国に輸出する自動車はそれなりの安全装備のたくさんついたものが輸出されます。こういう点で、仕向け地によって、それぞれ違った材料、あるいは違った設計、あるいは違った加工方法、あるいは違った組みつけ、これは私は技術的に見て当然だと思っております。ただ、単にそれが、日本の車はいいかげんでよい、輸出するものはちゃんとつくる、そういう意味ではないと解釈いたしております。
  43. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は要するに、輸出の場合は、あらゆる商品にあるごとですが、日本の国の信用上からいって、外国のものには特に入念にやる。これは自動車だけではありませんよ。国内販売のものはいいかげんということではないけれども、それほど緊張しない。これがやはり自動車の輸出の場合にもそこに働いている、工場に働いている人なりあるいはまたそれを指導している人——工場の幹部なりにそういうものがあるのではないか、あるということを私は聞いたから伺っておるのです。だから要するに極端なのは手を抜く。びょうを三本打つところを二本しか打たない、また、締むべきところを締めないということがあるんじゃないか。私はあるということを聞いたから、ありそうなことだなと思って、それはほかの産業と違って、自動車工業にそういうことがあっては困る、こういうことで、まあなければ幸い、ありましたらまた御指摘をいたしますから、どうぞひとつ御参考までに……。
  44. 市川房枝

    ○市川房枝君 樋口参考人にちょっと伺います。先ほど欠陥車内容としてブレーキだとか、ハンドル関係等々についてのお話がございましたが、そういう構造上の不良のために事故を起こして死傷者を生じた割合、これはさっきの御答弁でなかなかわからぬというようなお話があったんですけれども、しかし、構造上の欠陥のために事故が起こり、死傷者も生じているということは肯定なさいますでしょうか。  それが一つと、それから欠陥車という名称ですね、私どもしろうとにはちょっと何か、一体どこからそういう呼び方をするのか。欠陥車というとあまりそう悪いように聞こえないみたいですけれども、しかし、それが事故を起こし、死傷者も出だすということになりますと、もっと適切な名前、非常にこれが悪いことはいかぬ、もっと気をつけなければいかぬという響きのあることばのほうがいいと思いますが、それを一点伺いたい。  それから業者を代表しておられます家本さんにお伺いしたいのですが、今度の自動車の安全問題は、自動車の所有者とかドライバーだけでなくて、タクシーやバス乗客としての一般国民も非常な関心を持っております。家本氏は業者の代表として、先ほどの御意見発表の最後に、安全の確保はみずからの責任であるという覚悟で対処いたしますということをおっしゃいましたが、これは当然といえば当然なんですけれども、私どもとしては力強く伺ったのであります。しかし、今度の欠陥車の発見といいますか、これは先ほどから皆さんから御質問がありましたように、アメリカで発見されて、そしてやっと日本の国内で問題になった。それもせんだってから会社の名前あるいは自動車の種類あるいは台数なんか発表されておるのを見ますと、ずいぶんたくさんあるので実はびっくりしておるわけなんですが、ちょっと自動車に乗るのがこわくなったような気持ちもするのですが、いままでは安全というよりも、会社のほうはまあもうけるといいますか、安全を一応——いま先ほどおっしゃったようなことは、これからはそうしてくださるのかもしれませんが、いままではそういうことはしなかったのじゃないかという気がするのですけれども、その点についてお答えを願いたいと思います。  それから下請の問題、これも先ほどから御意見が出ておりましたが、私がほかの方から伺ったところによりますと、自動車の現在の部分品の六〇%は下請業者がつくって納めている。で、その下請業者に対しては親会社からかなりの締めつけがあって、下請業者は相当苦しいらしい。下請業者がつくった製品を会社に納入する場合、もちろん会社としてはそれを検査をなさるでしょうけれども、普通の検査では納入品の七五%しか合格品はない。つまり二五%は不合格品なんだ。しかし、そうしたら下請も困るし、会社も困るからといいましょうか、少し大目に見て九五%くらいは合格にしているのだ。そこで部品に不良なものがあって、そしていわゆる欠陥車としての今度のような問題が起こるという、問題の所在の一つは、やはり下請業者の問題にあるのじゃないか、こういう意見を聞くのですけれども、その間の関係は一体どうなんだということ。  それで下請業者に六〇%もさせているということは、やはり経済的に見て採算がそのほうがとれる、つまり会社がもうかるということがおもな理由かもしれませんけれども、現在自動車会社は相当にもうかっているのですね。私どのくらいもうかっているかよくわからないのだけれども、たとえば一番大きな日産とトヨタですね。トヨタは一体どのくらい配当をしているのかちょっと聞かしてください。結局業界は、これはなるべく配当をたくさん株主にするようにというのでしょうか、業績をあげる。輸出をたくさんして、そして日本の国の経済力を強くするという国益もありますけれども、基本はやはり会社がもうけるということ、これは私企業といえばそれが現在当然なのかもしれませんけれども、しかしそのもうける限度というものが、安全の問題、これはすべての製品がそうであって当然なんですけれども、特に生命に関係のある業界、たとえば薬品の問題、薬品業者とかあるいは食料品の会社とか、あるいは自動車会社なんか、こういう産業では安全ともうけとのかね合いが私は問題になってくるのではないか。それは結局はその業界のいわゆるモラルといいますか、ということにあるので、その点業界に私ども期待をするわけなんですけれども、その点もひとつ業界の考え方をお聞きをしたいと思います。
  45. 樋口健治

    参考人樋口健治君) 二点についてお答えいたします。  最初は、交通事故において、欠陥車の問題のために起こった事故があるのではないかということでございます。確かにあります。私自身昨年、一昨年、先ほど申しました自動車技術会の全国の交通事故調査委員として参加いたしました。そして調査期間が短こうございましたが、全件数のうちに、構造上の問題で、あるいは整備が悪くて起こった事故もございました。しかしその件数は、非常に概算でございますが、思い出しでございますが、違うかもしれませんが、おおよそ一%にも満たないと思っております。しかもそれが構造ふぐあいであったのでありますが、一つは、先ほど申しました私の自動車欠陥の定義で言いますと、たとえばブレーキが減っておったのに直さないとか、そういう整備が不良で起こったものと、それから今度問題になっております根本的な構造上の欠陥の問題で起こったものと分けてみますと、全事故では一%にも満たない構造的なあるいは取り扱いふぐあいで起こった事故のうちのまた一割以下、いわゆる材料が悪いとか、設計が悪いとか、つくり方が悪いということで起こった事故は、全事故に対しましては、非常に乱暴な推定でございますが、〇・一%にも満たない。あるいはそれ以下じゃないかというふうに推定されます。ただ問題は、なぜその事故があがってこないかと申しますと、現在の事故は、交通事故を起こしますと警察官が実況見分調書という形でつくりますので、これは相当専門家でないと判定ができかねると思います。要するに運転のふなれで事故になったかあるいはブレーキとか、その他の装置が十分性能を発揮しなくて事故になったのか、あるいは一生懸命整備しておったけれどもふぐあいで起こったのか、非常にその判定はむずかしいと思います。しかし事故としては確かに起こっております。  それから二番目の、欠陥車ということばは不適切ではないかということでございますが、私自身としては実は二つの立場を持っております。一つは、自動車の安全あるいは性能という意味で、研究者としての立場であるわけであります。それから一方、教育者として一般の方にわかっていただくにはどういうことばを使ったらいいか、二つの面がございます。  まず技術者の面としては、私は不適当ということばが一番的確ではないかと思っております。要するに、われわれ技術者としては、いい材料を使って、費用をかけて、いいものをつくるということは非常にやさしいことであります。先ほど申したとおり、欠陥車対策はやさしいことはもう明瞭でございます。しかし一方、使う立場に立って言いますと、いいけれども高いというのでは、一面価値がないと思っております。結局限られた費用で同じ性能あるいは少しいい性能をねらうというのが現実的な問題であります。そういうことで、多少不適当であったと解釈しております。  それでは、一般の人にはどういうことばで言ったらよろしいかということでございますが、私自身、要するに三十年近く車を扱っておりますと、機械というものは必ずこわれるわけでございます。日常の家庭用の扇風機でも洗たく機でも必ずこわれます。そういうものを欠陥と言うでしょうかということでございますが、たまたま、ある方が欠陥ということを言う。最近の風潮としてというと失礼でございますが、最近は皆さんが無分別に使うという感じをちょっと持っております。私自身とすれば、扇風機がこわれたとか洗たく機がこわれたと全く同じように考えております。ただ問題は、相手が人間の生命と財産に関するものでございますので、全く扱いを同じにしろというわけではございません。その内容をよくこまかく調査し、分析した上で適切なことばを使ったらいいかと思います。要するに、欠陥ということばは一面の理でありまして、確かに欠陥ではございます。しかしわれわれ使う立場で、われわれ人間のつくったものは絶対無欠なものはないと信じております。そういう意味で、必ず欠陥があるかと思います。その欠陥を除けばわれわれに利益が返ってくるなら、その行き方もいいかと思いますが、われわれの毎日の生命、財産が危険にさらされているということを承知しながらも、しかし一方には、できるだけそれを守るために努力して、平和な生活を願っているわけであります。そういう意味で、今度の欠陥という問題も、私はやはり、欠陥ということばは、少し言い過ぎになるかもしれませんけれども、報道機関関係の方があまり詳しいことを御存じない方を相手にアピールということを少し重点に置き過ぎたやに思いますが、しかし結論から言って、いいことばが浮かばないでまことに申しわけないのでございますが、専門家の立場としては不適当ということばが適切かと思いますが、一般の方に言う場合には、それはまた不適当かと思います。以上、二つでございます。
  46. 家本潔

    参考人家本潔君) 最初に、いま樋口参考人からお話のございました事故調査に関連して、一言申し上げたいと思います。  私ども自動車工業会は、総合的安全対策に関しまして、みずからの製品をさらに一そう安全な方向へ持っていくと同時に、一般的な交通安全という広い角度から問題を見ていかなければならないという考えで、実は政府、通産省の助成金を得まして、先ほど樋口参考人から御紹介のありました事故実態調査ということを自動車技術会に委託をいたしまして、二年間継続いたしました。この調査は、ある日にちを区切りまして、一般の警察官の方々の御協力を得ると同時に、各社の技術者をその期間警察に常駐させまして、そうして先ほど来、事故現象の判断が技術的には警察官には非常にむずかしいという点を、われわれの技術者の判断によってもっともっとえぐり出していこうということで、この実態調査を実施いたしました。二年間継続いたしまして、本年度はそのデータに基づいて深く解析を進めるということで行なっております。その結果が、ただいま樋口参考人からお話のございましたような、構造上の問題に基づく比率というものはあの程度の結果になっていることを特に補足さしていただきます。  それから次に下請の関係の御質問でございますが、確かに自動車メーカーは六五%とか、あるいは七〇%とかいうふうに部品を外から購入いたしまして、そうして自動車を組み立てております。その外から買う比率はほかの国に比べて少し高うございます。これはやはり日本自動車産業の発展の過程から自然にでき上がった姿であるわけでございます。そして確かにかってはそういう下請にやらしたほうが安いということが一つの基本になりまして、いわゆる部品メーカーとか下請産業とかいうものが発展してまいりましたが、しかし今日現在では、御承知のような人件費の高騰を来たしつつある今日ではもう下請だから安いという利点はすでになくなっております。私どもはいま安いから下請を使うのじゃなくて、日本自動車産業の構成がそのようにでき上がっておるという、その上でいまものをつくっておる。品質につきましては、ただ押えつけるとか締めつけるとかいうようなことで今日現在の状態では解決できるわけではございませんので、下請に対して必要があれば仕事のやり方、検査のしかたを逐一指導してともに進むという形をとっておるのが現況でございます。先ほど簡単に触れましたが、新しい部品をある下請なり部品メーカーなりに発注いたします場合には、その部品がその下請に対してはたして適当な部品であるかどうかという判断から出発するわけです。そのためには平生自分の使っておる協力関係の会社の状態を非常に詳細に調査し、把握しておりまして、この部品はまずあそこにやらせるのが適当であろう、このような考えに基づいて内外製の決定をいたすわけです。そしてその部品を発注いたしました際には、じゃどういうふうにしてこれをつくるか、どんな機械でつくるか、その一つ一つの工程について工程監査を行ない、結果を見て、そしてこれならば検査をまかせてもまず信頼できる状態の部品が購入できるということを確かめて購買契約を結ぶというのが常識でございます。したがいまして、先ほど来お話のありますように、ただ、とにかく高圧的に命令をしてものをつくらせるというようなことではとうてい今日現在の状態は成り立ちません。ともに発展するようになるのにはいかにすべきか、たとえば協力関係をしかじかかくかくすることによってコストが下がるという提案などは積極的に受け取ります。そうしてそれを採用するにあたっては、当然メーカー側の実験検査というものがあるわけでございまして、それに合格いたしましたならば、その利益はたとえば折半するとか、あるいはたとえば何年間は下請のほうにそっくりそのまま与えて体質の改善に役立たせるようにするとか、いろいろな角度から対策が立てられておるというのが現況でございます。  以上でよろしゅうございましょうか。
  47. 市川房枝

    ○市川房枝君 配当の問題について……。
  48. 家本潔

    参考人家本潔君) メーカーがもうかっている、たくさん配当しているというお話でございます。これは自由化の問題に関連して業界としての考え方をいろいろな機会に申し上げておるわけでございますけれども、米国の巨大資本に対抗していくためにはもっともっと体質がよくなくては太刀打ちできない。したがって、いま、いかにも大きな利益をあげているように見えるけれども、それは欧米の巨大メーカーに比較したらものの数ではない。そういう意味で、われわれ国産メーカーが自由化に対処していくためには、実はもっともっと体質の改善が必要であるということを申し上げておるわけでございます。きょう私から申し上げられることはそういう程度でございます。
  49. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 参考人皆さま方に申し上げますけれども、もう昼食の時間が過ぎましてたいへん恐縮でございますが、もう三人おられますので、いましばらくお願い申し上げます。
  50. 木村美智男

    木村美智男君 だいぶ質問されまして、大体一通り尽くされたような気もするのですが、ぜひ伺っておきたい点が四つばかりあります。一つはこれは家本さんにぜひ伺いたいのですが、先ほど河野先生からも、外国へのいわば輸出車というやつ、これが日本の国内需要車と違うのじゃないかというお話がありました。これは自動車業界の話ではありませんが、たとえばカラーテレビが、一昨年あたりやはり国内販売価格の約半値以下で出されておった。こういう経緯から、電気業界と自動車業界と同じだと、こういうふうには言いませんけれども、しかしこの点はやっぱり問題があるのじゃないのか。特に今回の欠陥車の出どころがとにかくアメリカの輸出先から出てきた。こういう問題について、私たちは、たとえば日本のお酒ですね、日本酒の中には——実は私もこれやっておってよくわかったのですが、防腐剤として水虫の薬であるサルチル酸が実は入っているわけです。そのためにいま外国では日本酒に対してそういうサルチル酸、防腐剤の入ったものは輸入禁止をしておるわけです。したがって、いま輸出されている日本酒にはサルチル酸が入っておりません。日本人が飲むお酒はサルチル酸が依然として入っている、防腐剤として。こういう関係から見ると、どうもやっぱり売らんかな、もうけんかなの今日商法というものは、私は自動車業界といえども例外であろうはずがない。その意味で河野先生が指摘をされた点は、これはぜひ何というか、自主的に、ひとつそういう状態があるとすればこれは排除をしてもらわないといかぬ。特にそういう立場で、去年私たちは消費者保護基本法という法律を実は議員提案でつくり上げたわけです。これは食品関係が中心でしたけれども、命とからだを守るという意味では、自動車もまたこれはわれわれ国民は消費者の立場なんです。したがって、この法律というものは、今日問題になっている欠陥車の場合にも考えていかなければならない問題になると私たち考えておりますので、大体自動車工業会のほうとしては、今日そういう法律ができているということを御存じかどうか。そういうことが何らかの形でその工業会の機関として議論の対象になったことがあるのか、これひとつ私お伺いをしておきたいと思うのです。  それから二番目に、新聞やなんか見ますと回収ということばが出ております。リコールという問題でしょうが、しかしこの回収ということばからだけ受け取ると、私たちは常識的にいま消費者として放任をして、自家用なり営業用なり持っているこの車を、会社が一つ一つナンバーごとに何かそれこそ回収をして、そうして欠陥のあるところを直してまたもう一回戻す、こういうふうに印象として回収ということばからはとれるわけです。ところが、実際これを見てみますと、これには隠密回収ということばもある。あるいは極秘修理という、そういうことばを使われる。ほんとうの意味で言うと、私がいままで言ったような回収じゃなくて、大体極秘修理なり隠密回収といったことが実態だと、こういうふうにどうも説明を聞いておって、つまり欠陥のあるところを部分的に修理をして、そうして戻すのだということであります。どうもそういうふうに受け取れるわけですが、回収ということは、一体正確にどういうことなのか、部分的な回収をやって、それで終わりか。しかし、その回収も一体お金は取るのか取らないのか、それについてメーカーは一体、生産者としてどういう責任を持っているのか、ここら辺を、回収というものについてひとつ伺いたい。  それから三番目には、清水参考人が先ほど、アメリカに輸出した欠陥車の比率として、本田モーターがゼロである、日産は三万台、トヨタは一万八千台だということを言われた。しかし本田モーターについても、輸出については欠陥車はゼロであったかもしれぬが、すでに二、三欠陥車が出たということで、本田モーターは、新聞発表によると、本田技研としては欠陥車について生産中止ということを言っている。これがもし事実であるとすれば、私はきわめて本田技研は良心的というか、生産者としてきわめて今日の時点に即応したモラルのよさというものを私は高く評価したいと思うのです。で、もしこれが事実だとするならば、ひとつ工業会として、木田技研のようなお手本を工業会全体のモラルとして、今日日産、トヨタも右へならえをさすべきじゃないのかというふうに私は考えるわけです。この点についてどういうふうにお考えになっておられるかということを伺いたいと思います。  それから樋口参考人ですが、私、論争をするつもりはございませんけれども専門家であるあなたに私たちが伺うということは、私たちしろうとだから技術的にどこに問題があるかということを実は伺っているわけです。ところが、もう競馬やパチンコじゃあるまいし、あなたのお話を聞いていると、とにかくたくさん車があるんだから、もうどうにもしようがないんだ、そういう車にぶつかったのは運が悪かったのだといわんばかりのことを答えられるのでは、それでは私たちとしては取りつく島がないじゃないですか、国民の立場としては。だからそうではなくて、むしろ技術的にここに欠陥がある、これを直すためには現在の運輸省検査体制欠陥があるのだというのか、もっと生産者側の、技術陣の側に問題があるというのか、それともほかからもう少し改善をすべき方法があるというのか、こういうことを実は伺いたいわけです。したがって、マスコミが少し知らぬものだから書き立てるというに至っては、消費者保護の基本法の精神から言って——先ほどあなたうなずいておられたからよく御理解されていると思いますけれども、これは新聞がかりに書き立てたにしても、書き立て過ぎたとしても、この欠陥車がなくなり、それにより事故が減って国民の命が一つでも二つでも救われるとするなら、これはやはりたいへん貴重な価値のあるものだ、こういう理解に私たちは立つわけです。そういう意味でひとつ、この点は特にお答えをいただくということじゃなしに、先ほどちょっと本心からいま私が申し上げたような意味でお考えじゃないと思いますけれども、これはきわめて大事な点でありますから……。先ほど前田委員が、ある種の意図があるのじゃないのかと言われたが、それはそういうことも多小あるかもしれませんよ、いまの国際競争の中ですから。しかし、自由化の中では、これは資本の自由化もいまのような貿易の自由化という関係になったら、それこそ相手に対してとにかく、あまり欠陥を持たない体制をつくり上げるということが競争に勝つことなのであって、性能や価格なんかの宣伝によって相手を凌駕するというのはいずれば敗れるのです。私はそういう意味で日本の産業再編成の問題だって、何かチョコレートの宣伝じゃないけれども、よくいう、大きいことはいいことだ、でかくなりさえずれば競争に勝つような考えを持っているのは根本的に間違いじゃないか。やはり、もう少し安全性の問題、あるいはそれに対する信用、商品の信用度、こういうところでひとつ外国の会社との競争もやり、国内でもそういう競争をやっていくという意味での生産者側のモラルをやはりつくり上げてもらわないと、場合によっては、私たちがいわばテスト材料にされている、人間が。そういうようなことでは今日問題があるので、この点はひとつ言わんとする意図だけ——決して先生がそうだと申し上げているのじゃありません。意図をわかっていただけばそれはけっこうだと思うのです。  あと委員長にお願いをしておきたいと思うのですが、これはこういう機会ですので、この欠陥車全体がこういう社会問題になった以上、当運輸委員会としてはもちろん、通産、運輸あるいは警察庁それぞれ広範に問題が関連をしてきています。これらを質疑のしっぱなし、参考人意見を聞きっぱなしで、そういうことでやるのだったら、これはあまり値打ちのないことです。したがって、私は、予定に従って議事は進めていただきたいと思いますけれども、何らかの形でこれに対して締めくくりをひとつつけて、必要とするならばメーカーの代表にも技術者を含めて出ていただいて、そうしてほんとうの意味で当面する欠陥車に対して、全面的になくしていくというくらいに政治の問題としてここにひとつ取り組んでいくということにしていただかないと、これは意味のないことではないかというふうに考えられますので、最後の問題だけはさらにひとつ質疑の段階では必要な方々に来ていただいて、そうして公聴会あるいは必要によっては産業公害及び交通対策特別委員会、こういった関係を含めて連合審査くらいまでやって、運輸委員会として権威ある欠陥車撲滅の方針というか対策というか、こういうものをひとつつくり上げていただくように、これはお願いをして、あとはこの問題についての取り扱いについては理事会に一任いたします。前のほうの二つだけお伺いいたします。
  51. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 木村委員に申し上げますが、ただいまの御提案につきましては、後刻、理事会にはかってきめたいと思います。
  52. 家本潔

    参考人家本潔君) 外国向けの車が違うのじゃないかという御質問に対しましては、先ほど河野先生にお答えいたしたとおりでございまして、仕向け地の注文に応じた設計変更はございます。それから輸出車は輸送の姿によりまして生産の工程も違います。先ほど樋口参考人から、完成車を輸出する場合にも塗装も違うという話がございました。確かにメッキのさびどめなどの工程も、その上につけなければ長い船旅に耐えられないという必然性がございまして、そういう違いはございます。しかし、基本的には、信頼性とか強度においてそのものが違うということは、私どのメーカーでもそういうことはないということを重ねて申し上げておきます。  それから第二番目の回収の問題でございますが、いろいろ御指摘もありました。この間まではこうだったではないかという点につきましては、先ほどメーカーとしては、自分の製品に対する信頼というものが何よりも財産であるという考えで従来ともやってまいりましたことを申し上げました。この間までは公表することなくやっておったということもこれは一つの慣行でございまして、従来の慣行に従って最善を尽くしてきたということをぜひ御了承いただきたいと存じます。  それからアメリカからこの問題が入ってきたという点につきましてですけれども、アメリカでリコールいたしました原因も、国内で回収作業をいたしておりましたのも、各社とも全く同じ問題でございます。回収のしかたがアメリカのやり方と日本のやり方と違っておるということであるわけでございます。それから本田さんが、コロナ、ブルーバードがアメリカで欠陥発表したときにはゼロであった、そのゼロであった本田が今回欠陥公表してそのために生産を停止することになったという点でございますが、生産を停止されるのかどうか私存じませんけれども、アメリカで発表になりました時期のズレがあるわけでございます。一九六六年から始まっておりますので、そして先ほど申し上げましたように四半期ごとに締めくくりをして公表される。ですから、時期のとらえ方によりましてゼロになったり、たくさん出たりというようなことがございます。私は、アメリカにおける発表日本の国内における対処のしかたに、輸出だから国内だからといって扱いが違うとか、車の質が違うとかいうことは全くあり得ない、ぜひこの点は御了承いただきたいと存じます。  以上でございます。
  53. 木村美智男

    木村美智男君 基本法の問題御承知かどうか、そういうことを……。
  54. 家本潔

    参考人家本潔君) 消費者保護基本法については工業会の部内の広報委員会もしくは流通委員会等におきまして、広告宣伝の問題に関連してしばしば取り上げられておることを仄聞いたしております。私は安全公害委員会のほうでございますので、詳細は存じませんけれども、そういうことは関心を持って取り上げられておるということを仄聞をいたしております。
  55. 樋口健治

    参考人樋口健治君) 木村委員からの御指摘ありまして、私、技術者として確かに大きなメーカーの膨大な力その他に対して圧力を感じます。私自身はささやかな研究費とささやかなグループで研究いたしましたものについては膨大なものを持っております。というわけで、先ほど私申しましたとおり、こういう問題につきましてはやはり第三者的、ときには国が、ときには第三者の機関がやはり自動車業界に対して何かの形で、法律的なことはよく存じませんが、第三者としてやはり関与したほうがよろしいのではないかと思います。そういう意味で一つの考え方としては、いま現行の研究機関、国、公立、民間いろいろございますが、特に自動車メーカー関係ない、こういう安全その他について相当な充実した内容を持った研究機関が必要じゃないかと思っております。現実の世界は自動車メーカーが安全に対して研究投資をいたしておりますが、その金額に比べますと、現在われわれが聞いております通産省、運輸省、あるいはわれわれの大学に対する研究費はあまりにもささやかで比較するに足らないほど、数学的に言えばゼロと言ってもいいのではないかというくらいに思われる点がございますので、やはりメーカーの人たちが少し行き過ぎがあっても、われわれとしては自信を持ってそれをどうということは一声えないと思います。その辺の苦衷を察したいただきたいと思います。  以上でよろしゅうございますか。
  56. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  57. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記起こして。
  58. 清水義汎

    参考人清水義汎君) 先ほどの欠陥車のアメリカにおける数の問題につきまして、確かに四半期ごとに締めくくっておるわけでございますが、私が先ほど申し上げましたのは一番新しい数字でございます、一九六九年の一月から三月まで。たまたま現在六月以降に欠陥車の問題が出ておりますので、これに一番参考になるこの種の数字は、いろいろな統計もある意味では参考でございますけれども、一番新しい段階のリコールの数字というものが一番大事な数字だと思います。そういう意味で一九六九年の一月から三月までの数字を申し上げたことをあらためて申し上げたいと思います。  それからもう一つの問題につきまして、ただいま樋口参考人のほうから言われました技術的な研究上の問題でございますけれども、私の理解しておりますところでは、この種の構造上の欠陥の技術開発については、運輸省の中のたしか船舶研究所の中の一部でやっておると思います。これだけモータリゼーションが進んできた段階で船舶研究所という一つの目的を持った研究所の副業的な形では私は問題があるのじゃないか、むしろ自動車部門を独立をさして、そして独自の研究所を設立して必要予算を組んでそこで行なうという形でなければ、この問題についているところの構造上の欠陥、技術開発、あるいは研究の問題については不足であるというふうに考えております。
  59. 江藤智

    ○江藤智君 先ほど市川先生からもお話がありましたが、この欠陥車の問題でございますね、それにつきまして樋口参考人ですか、その他御意見のある方がございましたら教えていただきたいと思います。  この欠陥車というもののディフィニションですね、どういうものを欠陥車というのか。当初新聞記事などにあらわれておったときには、いまにもエンジンが火災を起こしたりなんかするような話も出ておりますが、だんだん聞いてみるとそうでもない。だから私自体は、こういうものを欠陥車というのかなと思っておったのですが、どうもそうでもないらしいのです。私は、安全運転上重大なそこに欠陥があるので、直ちにそれを回収して処置せにゃいかぬ、そういうものを欠陥車というものだろうと思ったのでございますが、けさ運輸省に届け出た結果などを見ますというと、十台のうちで一台は欠陥車が走っておるというようなことになりますと、そこに相当のゆとりがまだあるのではないかという気もするわけです。それからこういう重大な問題、生命に影響する問題でございますから、その定義づけをするのは第三者の専門家がやるのが、専門的な機関がやるのがしかるべきものでないかと思うのでございますけれども、現在のところは当の責任者であるメーカーが自発的にこれは欠陥車でございますというふうにして欠陥車をきめておるように先ほどからのお話では聞いておるのであって、このことはまことにおかしい。非常な社会的影響を及ぼし、またメーカーにも非常な損失を与えるような問題でございますから、また私の知っておる人などもびっくりして、これはたいへんだというので、二、三私の親戚の者もあわてて修理に行ったりしているので、非常な必要以上の恐怖心を起こさしておるようでございます。そこで、欠陥車というものはこういうものだということをもう少しはっきりひとつ御説明をしていただきたい。これはいずれ運輸委員会におきましても他の機会にはっきりさせなければいけませんけれども皆さま方としてはこういうものなんだということをもう少しはっきりさしていただきたいと私は思うのであります。  それからもう一つふしぎに思いますのは、ある期間に製作されたある型式のものにこういう事故がある、欠陥があるというようなことが発表されておるように思います。ブルーバードにいたしましても、コロナにいたしましても、その他その内容を拝見いたしますと、ある時期の製作のもの、日本よりもはるかに自動車工業の先輩国であるクライスラーも先般非常にたくさんのリコールをやっておるようでございますが、この問題が出る前に、新聞で見て私はそのときから疑問に思っておったのです。非常な経験を積み、しかもだんだんよくなっていくものでありますから、それがそういう非常な欠陥がひよこっと出てくること、どこにそういう原因があるのか、この二点についてひとつ御説明をお願いいたしたいと存じます。
  60. 樋口健治

    参考人樋口健治君) 先ほどの御説明で、蒸し返しになって恐縮でございますが、私自身は欠陥に対してこう考えております。  一つは、使っていくといたんでくる部品その他がございます。すり減ってくる部品、たとえばタイヤとかブレーキ装置でございます。こういうものは私は現在では欠陥と言わないほうがいいのではないかと思います、この場で討議されております。  いま一つの問題は、長年使われていると、知らない人にはわからない、早く言うと専門家でないとわからないけれども、何かあると事故につながるかもしれないというものがございます。これはおもにゴム製品とか合成樹脂製品でございます。これがときによって、設定する側がたとえば十万キロもつのだとかあるいは五年もつという設定をいたしております。ところが、ユーザーのほうは、使い方によりあるいはまた好みによりまして、長年使う方もおりますし、すぐそれを捨ててしまう人もおります。そういう際に、設定する立場の側の設定と、使う場合の設定と違う場合がございます。そういう場合には、やはり統計的な調査をいたしまして、設定側はこのくらいが適正である——たとえば十万キロとか、五年とか設定いたします。一部の方はこれをそれ以上使います。そうするといたんでまいります。こういうものを一々、欠陥と言えるかもしれませんけれども、今回特に問題になっております欠陥は、そういう日常われわれが長年自動車を使っておりまして、こういう部品はたとえば十万キロもつとか五年もつというような、いわゆる長年のデータがあるわけでございます。それに対して、予想以外に早くきたものは私は欠陥ではないか、こういうふうに解釈いたします。具体的に各メーカーから発表されております欠陥車欠陥部品は、すべてそういう部類に入ると思います。  もう一度繰り返しますと、われわれ使う立場の者が——それぞれの自動車には欠陥がありますが、その出方が予期以上に早かった場合、そういうものを欠陥と現在は私は解釈いたしております。私自身の欠陥に対する基本的な心がまえは全然別なところにございますが、現在、この場なり新聞紙上なり運輸省なりメーカーさんなりが考えています欠陥はそういう意味の欠陥だと思います。  それから製造時期の関係につきましては、いろいろと新しい車が出ます場合、われわれが聞いております範囲では、最初の新しい型が出ますと、いろいろな設計その他をいたしますが、すべての部品が全部新しいということはございません。当然相当な部分はすでに売り出している車のものを使います。しかし、そのほかに、場合によっては、性能を向上するため、あるいはつくりやすくするため、値段を安くするため、いろいろと設計上の変更をいたします。そういたしますと、最初の車を売り出した場合に、たとえば五万台なり十万台なり売り出します。そして当然これも欠陥が出てまいります。いわゆるここの場における欠陥も出てまいります。それに対する対策も立てます。一方、それでは問題のない部品はどうしていきますかというと、そのままほうっておくわけではございません。私が先ほど申したとおり、過剰品質というものを使いますが、必要以上にいい材料を使っておれば高くなります。利益が減ります。われわれの立場からすれば車が高くなります。そういう意味で、技術的な立場では、同じ性能、あるいは少しいい性能を出すなら、少しでも安い材料、あるいは安い工作法、それを一部の人は悪い材料ということばを使いますが、私は適正ということばを使いたいと思います。そういう変更をいたします。そういたしますと、ときにはえてして安ければ悪かろうということで大まかな面も出てまいります。そういたしますと、ときにはふぐあいな点が出てまいります。今度の場合もそういう問題が幾つかあると思いますが、現実に私が調査したわけではございませんので、そこまでは言えませんが、そういう推測がされます。そういう意味で、途中から、すでに売り出された車が何年かたってから欠陥が出始めるということも当然あるかと思います。
  61. 江藤智

    ○江藤智君 私は、相当使いまして摩耗したり老化したりするものをいまわれわれが欠陥車と言っておるのではないと思うのですよ。欠陥車というのは、やはりその人がいいと思っておったが、たとえば急に——私は知りませんが、新聞で見れば、キャブレターかどこかのことになるというのだが、そこで引火して爆発したとか、あるいは予期いたしませんけれどもブレーキ部分がさびていたんで、まだだいじょうぶだと思っているうちに折れてしまったというようなことを欠陥車と一応考えておる。ただ、その欠陥においてもいろいろな緊急の度合いがありますね。ですから、どの程度のことを欠陥車といってやるべきであるか。たとえば八月までにみんな回収させるのだという説もあるが、そういうふうに同じ期限でやはり切ったほうがいいのか、そういう点がはっきりしないのでお尋ねしておるわけなんです。その点ほかの参考人の方にも御意見ございましたら、ひとつ聞かせていただきたいと思います。
  62. 樋口健治

    参考人樋口健治君) 欠陥の問題については全く同意見でございます。予期せざる欠陥、予想以上に早くいたんで、気がつかない間にこわれておった、こういうことだと思います。  ただ問題は、欠陥に対する対策でございますが、期限を切るのがよろしいか、あるいは一つ一つ部品を見て、その上でやるのがよろしいかという問題になりますが、残念ながら欠陥の状況をしさいに見ませんと、一がいに言えない面があると思います。たとえば仕向け地によって、ユーザーの使う場所によって、非常に海に近いところ、あるいはアメリカのように、道路に塩をまくところ、そういうところはすぐさま見なければいけないと思います。その点、私自身は東京で使っておりますが、そういうところでは欠陥の可能性は少ないと思っております。そういたしますと、当然一がいにこの車のどこのところに欠陥が生じたから、すべての車を同時にやるという必要はないと思います。もちろん安全のためにはすべて優先しますから、最優先だと思いますが、われわれの日常生活は常識どおり緊急の度合いがございます。そこにおいて、専門家は専門家の立場で度合いをきめ、使う者は使う者の立場で度合いをきめておるのでございますが、今回の新聞紙上では一律に交換するやに新聞は見受けられます。これは少し実際の受け入れ態勢その他から考えますと、私自身では、あるいはわれわれユーザーの混乱を来たすのではないか。現実新聞その他報道機関を見ますと、販売会社、修理工場に殺到しておるというそういう際、あわててこそくな修理をすることは、かえって危険を招くと私は思いますので、もう少しきめのこまかい指導によりまして——仕向け地、仕向け地、使い方により、それぞれ危険の度合いが違います。そこまでいって初めてやるべきではないかと思います。  回答になりませんかと思いますが、そう考えております。そういう一律の扱いはできないということでございます。
  63. 家本潔

    参考人家本潔君) 欠陥の考え方につきましては、ただいま樋口参考人からお話のありましたとおりでございまして、これはことばをかえて申しますと、あすにでも事故につながるというような状態をいま欠陥車と称しているのではございません。事故につながる懸念がある、こういう角度から回収を必要とするという判断をいたしておるわけでございます。もちろん、非常にたくさんあります回収対象の中には、おのずから緩急の順序がございまして、たとえばブレーキパイプにつきましても、ただいま樋口参考人から発言のあったとおりに、それが正しい合理的な考え方だと思っております。以上であります。
  64. 清水義汎

    参考人清水義汎君) 私は、欠陥車の定義というものをいま新しい段階でここに概念の規定をするということは、かえって混乱におちいるのじゃないかと思います。すでに欠陥車に対する一定基準というものは、御承知のように法律で明らかになっております。すなわち、昭和二十六年に道路運送車両保安基準というものがございます。少なくとも市場に出ている車両が道路運送車両保安基準に完全に適合しているかしていないか。それに適合していない技術的な部分的な問題があったからこそ欠陥車という形が出てきたわけであります。もう一つは、先ほど指摘をいたしましたように、この基準内容が非常に抽象的に規定されている条項が多過ぎる。たとえば「堅ろう」であることが必要、ところが、どういう形が「堅ろう」かという点について施行規則であるとか、あるいは運輸省行政指導の内部規則であるとかいうものがありますれば、この辺に対する問題がすでに解決され得た問題だと思います。そういう点では、欠陥に対する現在起きておる問題を含めまして、今後のそういう規則の改正なり、行政指導のやり方の変更等もございますけれども、とりあえず道路運送車両保安基準を厳密な形でメーカーに守らしていくというのが一つ欠陥車の概念の具体的な内容ではないかと、かように考えております。
  65. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 各委員質疑並びに参考人の各位のお話によりまして大体了解いたしましたが、一点だけ私ちょっとお伺いいたしたいと思います。  家本参考人にお伺いしたいのでございますが、それは生産者の責任に関連しての一点でございます。欠陥車内容等につきましては、いま御議論ありましたから非常に明らかになったわけでありますが、今回のこの欠陥車の問題が外国から問題になったとか、あるいはまたいろいろ取りざたされておるわけでありまするが、先ほど家本参考人のお話にもありまするように、わが国においてもすでにそういう具体的な問題は起こっておったんだと、問題は以前から判明しておってそれをいろいろ研究しておると、しかも二カ年間この実態調査もやられたというし、あるいはまたリコール問題についても、形こそ変われ、アメリカにおいてやるのとは違いましても行なわれておるというようなことを言われておるわけでありまするが、製造上のいわゆるメーカー欠陥と認められて、そうしてリコールを事実上ほかの形においてやられておるということはこれは事実でございましょうね。しからば、それについては私ども行政並びに法制上の関係についてこういうぐあいにお尋ねしておるわけですから、後々また問題になるわけでありまするが、これは通産省あるいは運輸省関係機関についてはすべて御連絡の上にやられておるわけでございますか。それとも、まあ秘密裏に自分の会社のメンツも相当に考えながら会社自身でやられるとか、あるいは工業会全体で申し合わせでやるとか、そういうぐあいになっておるのか、その一点だけひとつはっきりさしていただきたいと思います。製造上の欠陥に限ってお伺いしたい。
  66. 家本潔

    参考人家本潔君) 従来から事故報告の義務が、ある範囲に規定されております。それは転覆、転落、火災、踏切衝突、死者、負傷者、重傷者の発生、当該車、貨物、家屋に五十万円をこえる損害発生、かじとり装置、ブレーキ、車軸、車ワク、スプリングの破損による運行不能の場合、下記の者は知事を通じ運輸大臣に報告しなければならない、こういう規定がございます。で、その対象となるものは自動車運送業者、自動車を持って営業しておられる人、それから十一人乗り以上のバスを持っておられる自家用の所有者、並びに総重量八トン以上の自動車を五両以上持っておられる自家用の所有者、それからその他軽四輪、二輪を除いていろいろなものをまじえて十台以上の車を持っている自家用の所有者は、先ほど申し上げましたような事態が発生した場合には届け出をしなければならないと、それによって運輸省は必要とあらば事故警報を出すと、こういうたてまえがございまして、私どもその事故が発生した場合の処置といたしましては、従来のこういう規則に該当する場合には届け出をいたしております。ただし、乗用車の関係ではいままで必ずしもそれが明確になっておりませんので、届け出が必ずしもされていないと、こういう状態であったかと存じます。しかし繰り返して申し上げますように、メーカーといたしましてはそういう事態はみずからの責任において一日も早く終息しなければならないという立場から積極的に改造をいたしておりますということでございます。
  67. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 いま届け出をちゃんと法規によって指示されていると、これは当然そうなんでございましょう。私の申し上げるのは、たとえば生産のほうの関係においては、先ほど実験の問題がございますが、十五万キロ、ちゃんと新しい型をきめた場合においてはこれを守っていくことにして、そうしてよろしいということになれば出すと、こういうことでございますけれども、いわゆる欠陥として皆さま方のほうで考えられて、しかもリコールまでしょうというのについては、これは単に使用者側の不注意であるとか、あるいは無理解であるために事故になるとかいうことではなくて、車の製造構造上遺憾であるということが、これは初めからわかることではないと思いますが、そうすれば直すと思うのですけれども、あとでそれがわかった場合に、これは事故発生のおそれがきわめて濃厚であるからこれをリコールするのだということだろうと思うのですが、そういうものについては皆さま方のほうでさような場合においては、届け出したものについてはこれはもう当然ですけれども、そうでないものであってもそれをリコールしていく、また今回のごときは幅広くリコールしようということですから、そういうものについては従来ともに運輸省あるいはまた通産省において了解を得てそうしてそういう措置をとっておるのか。あるいはまた、ただ単に製造業者として、自分の会社として、あるいはまた自動車工業会として申し合わせによってそれをやっているのか。そういうものがあるはずですが、それわからないですか。
  68. 家本潔

    参考人家本潔君) 従来のやり方といたしましては、義務のあるものは当然届け出ているわけです。そのほかの問題につきましては必ずしも届け出がなされているとは申されません。そうしてやはりその処理はケース・バイ・ケースで行なわれてきたと申し上げてよろしいかと存じます。しかし今回の運輸、通産両省からの通達によりまして、届け出の範囲と義務が拡大明確化されましたので、今後はいま取り上げられておりますような問題が発生した場合には必ず届け出がなされるということになるわけでございます。
  69. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 あなたが先ほど、製造業者が製造した車については何といっても安全であり、かつりっぱな車であるということが第一の信用だということをモットーとしてやられる、工業会もたぶんそうだろうと思うのですが、そういう観念から考えれば、かりに通産省から通達がきてもこなくても、やっぱり大いにこういう部分品、こういう構造自体はいいと思って出したけれども、ほんとうはあまりよくはないということがはっきりわかればこれをやっぱり回収する、リコールしていくということが行なわれる、その場合にはそれをただその会社あるいはまた工業会だけにとめておくだけではなく、さらにこれを通産省なりあるいは運輸省なりに連絡を進んでされるのが当然じゃないでしょうか。そういうことはいままでやっておらないのですか。
  70. 家本潔

    参考人家本潔君) それは先ほど申しましたように、ケース・バイ・ケースで行なわれておったと存じます。すべてということでは必ずしもなかったと思います。工業会の内部でそういう問題を表向きに取り上げるという状態でございませんので、工業会の立場からはこれは正確なことはわからないわけでございます。
  71. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 それでは工業会御自身の責任、生産業者としても少し——まあくさいものにはふたをしろというような気持ちが手伝っておられるのも、あるいは人間の感情としては考えられるかもしれませんけれども、事人命に関連する重大な問題になってきておるわけですから、今後はひとつそういうことについては徹底的に、皆さま方のほうでお聞きになったのはこれは運輸省にもあるいはまた通産省にもよくこれを通して、そうしてわれわれといたしましても法制上遺憾の点があればこれをやはり直すことについて努力しなければならぬ問題があると思うのですが、ひとつその点は十分責任を重んじてやっていただくように、特に要望いたします。
  72. 森中守義

    ○森中守義君 最後になりましてたいへん恐縮ですが、一点だけ清水参考人とマキノ参考人にお尋ねしたいと思います。  現在の問題が、相当の時間がかかるでしょうけれども、何かの落着はつくと思うのです。しかし問題は、そのあとに一体どういうことになるのか。端的な言い方をしますと、おそらく日本の今日の産業の体質からしましても、事がなくなれば元に戻るような気がしてしようがないのです。おそらくわが国の産業が、保守的というのかあるいは秘密主義というのか、そういうものを土台にして成長してきておりますので、おそらく事が終われば元の状態に戻るということが十分予想される。むろんこれは行政当局あるいは国会等におきましても重大な関心を将来とも払っていかなければならないのですけれども、まずユーザーの側から何か自己防衛的なものが将来的な問題として検討されていいのではないか、こう思うのですね。したがってもし事故が起きたならば、まず車を疑う。それで損害賠償あるいはまた負傷等、あるいは心理的にかなりショックを受けるわけですから、慰謝料の請求をする。つまり企業に対して東洋的な倫理であるとか、あるいは道義的な責任を追及してもあまりこたえないと思うのですよ。どういう対策が必要かといえば、やはり経済的にユーザーの側から打撃を与える以外に方法がない。これが私はメーカーあるいはディーラーに対する最大の自己防衛の方式ではないかというように考える。したがって諸外国にそういう例があるかないか。あるいは将来のユーザーの側から自己防衛のための一つの全国的な組織化、あるいは対抗策、こういうものが考えられていいのじゃないかというふうに思うのですが、両先生の御意見を最後に承っておきたいと思います。
  73. 清水義汎

    参考人清水義汎君) この問題が落着したあとにどういうような問題が残っていくかという点が一つと、もう一つユーザーの自己防衛の問題、御質問の要点は二つに分かれると思います。  この問題が落着したあとの問題については、私は二つの問題が残されてくると思います。一つは、現在問題になっておりますのは、自動車メーカーに対する問題点として問題がクローズアップされてきている。ところが現実には、たとえば再生タイヤのメーカー、いわゆるタイヤの山欠けに対する問題も現実としては非常に問題がございます。これに対する基準なりあるいは問題点については問題になってきておりません。しかし問題は、タイヤのバランス等について非常に問題が残っておる。あるいはまた一部のオイルメーカーあるいはタイヤメーカー過大宣伝によってユーザーが必要以上にその宣伝を信頼し過ぎてしまう、こういう点についてやはり一緒に取り上げていかないと、いわゆる自動車メーカーだけの問題となってしまって、他のはずれた問題で保安なりあるいは安全問題について残された問題として未解決になってしまうということであります。  それから第二の問題点としては、これは国内の国民経済上の問題あるいは経済政策上の問題でございますけれども、この問題が混乱をしている中に、御承知のようにアメリカにおけるところの自動車自由化の強力な政治的な圧力がかかってきております。この問題が、国内の問題が混乱をしているままでこの力に押し切られたといたしますと、わが国の国民経済にきわめて重要な影響力を持ってくると思います。この点につきましては、むしろ国内経済に対する経済政策上の問題として重要な、やはり混乱をしているだけに課題としてお考えをいただかなければならない問題である。  もう一つは、ユーザーの問題でございますけれども一つの精神上の問題といたしましては、近代国家に見られる合理主義、こういうものを学校教育の中において、社会教育の中においても徹底をして植えつけていただくということが必要でないかと思います。いわゆる権利と義務の関係であります。これはメーカーにいたしましてもユーザーのほうにいたしましても同様の問題であります。と同時に、車というものを無原則的に、車を使用するという条件にはずれている中でも無理に使用してしまうというような問題についてのやはり正しいあり方というのも徹底をすべき問題ではないかと思います。これは法的な問題を御質問の中におかれておりますけれども、これらの合理主義なりあるいは権利と義務の問題が徹底をいたしますれば、これが社会的な規制力となり、それからこれは放置しておきましても個々の法律問題として出てきますために、当然これは間接的にあるいは直接的に、生産者に対する大きな規制力となってあらわれるわけであります。そのような社会秩序の確立というものがまず前提条件になり、原則的な問題になるのではないか、こういうように考えております。
  74. マキノ正美

    参考人マキノ正美君) 清水参考人からのお話のとおりに、宣伝過剰ということが確かにございますと思います。でも、わりと最近は物をよく見分けて買う時代になったと思います。マーケットのほうの日用品にしても、カラーテレビにしても、クーラーにしてもしかりだと思います。山欠けタイヤのお話が出ましたけれども、これは昔は山欠けのタイヤを使用いたしましたけれども、最近は山欠けは早くちびてしまって、結局経済的には何にもならないということで、新しいタイヤを使うという方向にかなり向かっていると思います。  それからユーザーといたしまして、今後こういう問題をどうするかということにつきましては、私ども自動車連盟が現段階では会員が二十万人でございます。本年中に約三十万人になると思いますが、会員外にも呼びかけまして、先ほどお話し申し上げましたように、バスのほうの技術委員会でございますか、こういったようなものを参考にいたしまして、横の連絡をよくとりまして、メーカーのほうに注文をしたりしてやっていこうと、こういうふうに考えております。
  75. 岡本悟

    委員長岡本悟君) これにて参考人に対する質疑を終了いたします。  参考人皆さま方に申し上げます。本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見の開陳を賜わり、まことにありがとうございました。つつしんで厚くお礼申し上げます。本委員会といたしましては、皆さま方の御意見を今後の審議に十分活用させていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。  午後三時まで休憩いたします。    午後一時五十九分休憩      —————・—————    午後三時二十七分開会
  76. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまから運輸委員を再開いたします。  運輸事情等に関する調査議題といたします。  第一伸栄丸衝撃事件に関する件について、政府から報告を聴取いたします。河毛海上保安庁長官
  77. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) 第一神栄丸の事件につきまして、お手元に調査報告の概要を提出いたしております。これによりまして御説明を申し上げます。  まず事件発生の日時、場所でございますが、去る六月五日十五時二十五分、位置はカッコ内にございますように、沿海州のデカストリ港の沖合い約六・二海里の地点でございます。  被害を受けました第一伸栄丸の要目でございますが、総トン数が二千九百九十六トン、船主は今治船舶——愛媛の船主でございます。これを新和海運が用船いたし、北洋材の積み取りに向かったわけでございます。乗組員は船長以下二十四名ということでございます。  そこで事件が発生いたします前後の第一神栄丸の動静でございますが、木船は五月二十四日今治港を出港いたしまして、これが処女航海、初めての航海でございます。二十九日に同じく沿海州のラサレクに入港いたしまして、ここにございますように、北洋材を約三千トン積み込みました。六月二日同港を出港いたしまして、三日デカストリ港に入港、同じく北洋材を二千百四十二トン積み込んでおります。その後五日十四時二十分、デカストリ港を出港いたしまして、十五時二十五分、前に御説明いたしました地点で事件が発生いたしました。事件発生にかんがみ、十六時三十六分デカストリ港に再び引き返し、入港いたしております。その後、七日出港いたしまして、九日小樽に一たん入港いたしまして、十日出港、当初の仕向け地は今治港でございましたが、距離その他の関係から変更いたしまして、十二日五時四十分七尾港に入港いたした次第でございます。  これまで前回この運輸委員会で御報告申し上げましたが、十四日の十八時二十分に本船は北洋材を揚げ切りまして、出港。十六日の十三時三十分今治港に入港いたしました。現在木船は被害個所の修理のために今治造船所に入渠中でございます。  次に、事件発生時の状況でございますが、私ども調査いたしたところによりますと、ここにございますように、当時右舷の真横約五百ないし六百メートルの海上に赤い炎となった高さ十五メートルくらいの水柱が立ち、衝激音とともに赤い火の玉のようになった無数の破片が同船に飛び込んできたということでございます。  被害の状況でございますが、まず乗り組み員の関係につきましては、ここにございますように司厨長が重傷を負いまして、これは動かせませんので、デカストリで入院させ、現在同地にいるわけでございます。あと機関員、機関長、検収員がそれぞれ負傷いたしましたが、特に機関員につきましては、そのまま航海ができないという判断で、小樽に寄港いたしましたときに小樽で上陸いたしまして、目下入院中でございます。  次に、船体各部の損傷状況でございますが、右舷外板三カ所の破孔がございますほか、十一カ所に損傷がございます。それからレーダー、無線機等が使用不能になっている次第でございますが、幸い喫水線以下に被害がございませんので、独力で日本に帰り着き、また母港にまで到着することができたと、こういう状況でございます。  次に事故調査関係でございますが、この件につきましては、私どもが了知いたしましたのは七日でございますが、直ちに在ソ日本大使館を通じまして本件に関し事実調査、負傷者の状況、あるいは安全航行の保障等を申し入れておいた次第でございますが、現在までのところ、残してまいりました乗り組み員の生命は異状がないということ、それから安全の保障につきましては了承するという回答がございました。事実の調査等につきましては、いまだ回答に接しないという状況でございます。  一方、第一伸栄丸の船内でなお相当の破片その他の物件を収集いたしまして、これにつきましては、海上保安庁といたしましてはその専門的な鑑定の能力がございませんので、政府の専門の鑑定機関にこれを委嘱いたしまして、現在調査をしてもらっておる現況でございます。  なお、事件の発生いたしました場所につきましては、事前に射撃訓練等の通報には接しておらない、そういう海域でございます。  以上簡単でございますが、経過を御説明いたしました。
  78. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまの報告について質疑のある方は順次御発言を願います。
  79. 江藤智

    ○江藤智君 私は六月七日の新聞紙上で初めてこの第一伸栄丸の被爆事件を承知いたしました。まことに不可解な事件でございまして、火の玉が船の中に飛び込んできたとか、何だかわからないような爆発物が飛び込んで大破をしたとかというような記事でございましたが、ただいま正式に御報告を受けまして、やはり同じ不可解の念を深くするものであります。今後この問題については、政府といたしましては十分に事実を調査して、しかるべき処置をとっていただく必要がある、かように考えます。  まず第一には、事実を調査をすることが必要ではないか。第二は、日本の船の航海の安全を保障するということでありますが、これについてはソ連側のほうから返事があったようでございますけれども、事実の問題についてはまだ何ら返事がない。で、事実の調査が終われば、それに伴いまして当然、これだけの被害を受けており、また重傷者も出しておるわけでございますから、損害賠償や陳謝の問題もこれは起こってくると思いますが、いずれにしても善良な仕事をしておる船が公海と申しますか、あるいは領海であるかもしれませんけれども、そういう平和な場所におきましてこういう事件があるということにつきましては、ひとつ責任を持って政府で明快な解決をはかるように努力をしていただかなければいけない、かように考えております。  その後の新聞によりますというと、破片などだいぶん船の中に残っておったのを収集されまして、その写真などもございますが、その中には明瞭にその型式その他について、ソ連の文字も刻まれておるということでございますから、そういうものを示して、早く事実調査をすることも可能になるのじゃないかと私は考えますが、その点につきましてまず大臣の御決意、それから外務省のほうでいろいろ折衝していらっしゃいますでしょうから、そういうような折衝の経過についてのお話をまず承りたい、かように考えます。
  80. 原田憲

    国務大臣原田憲君) このたびの第一伸栄丸事件に関しまして、私の所信をお尋ねでございます。このたびの事件、これはまことに第一伸栄丸及びその乗り組み員にとってはきわめて不幸なできごとでございまして、特にこれにより負傷されました方々に心から同情いたす次第でございます。先ほど海上保安庁の長官から経過を御報告を申し上げておりますが、政府といたしましては七日本件を知りまして、直ちに外交ルートを通じまして事情の調査、乗り組み員の安否につき照会するとともに、日本船舶に対する航行上の安全措置について申し入れをいたしたのであります。しかるところ、残留乗り組み員の生命に危険のないこと及び日本船舶に対する航行安全上の保障の要望につき了承した旨の回答を得ておりますが、いま江藤委員仰せのごとく、事故発生事情については現在までのところ答えに接しておらず、督促を行なっておるのでございます。さらに、第一伸栄丸は十二日七尾に入港いたしましたので、直ちに船内調査を行ない、発見された残存破片について政府といたしましても目下調査中でございます。今後これらの調査結果によりまして、ソ連側の責任が明確になった場合には、直ちに同政府の責任ある措置を外交ルートを通じて申し入れ、その実現を期する、こういう所存でございます。
  81. 有田圭輔

    政府委員(有田圭輔君) お答え申します。  ただいま大臣並びに海上保安庁長官のほうから御説明がございましたように、事件発生は六月五日でございますが、七日に新和海運から連絡がございまして、私どものほうで直ちに在ソ大使館のほうに訓令いたしまして、ソ側に直ちに事情調査をやること、また負傷者の氏名、容体等を含め万般の回答を要求するように訓令いたしました。たまたま土曜でございましたが、大使館のほうでは電報接到後直ちに同日、ソ連の外務省極東部のほうにこの申し入れを行ないました。それから、引き続きまして十日にソ連の回答を督促すると同時に、重ねて日本船の航行安全保障のための必要な措置をとるように申し入れて、これは十一日に極東部に対して申し入れております。先方は、船舶航行の安全にかかわるきわめて重要な問題であるということを認めております。したがいまして、ソ連側でも直ちに慎重に調査する、そして近いうちに回答するということを申しておりますが、実は現在まで詳細についての回答はまいっておりません。  で、今後の取り扱いでございますが、ただいませっかくこの船舶も帰ってまいりまして、海上保安庁その他において調査分析中でございます。ほぼ結論が出つつあることだと存じますが、これらの結果を待ちまして関係方面と十分協議の上、ソ連側に対してこの補償要求、あるいは最も大切な安全保障の要求、その他万般の対ソ折衝を行なっていきたいと、このように考えております。
  82. 江藤智

    ○江藤智君 この問題はまだ対外折衝中でもございまするし、これ以上突っ込んでお話を聞く材料もあまり持っておりません。ただ私は、そういう証拠物件がこちらのほうでもあがったのですから、そういうものも示して、そして早く事実を究明できるようにひとつさらに努力をしていただきたい、こういう気持ちがいたしますので、その点を要望いたしますとともに、こういうような問題がなぞに包まれたままあやふやのうちに葬られることのないようにひとつ処置せられるように要望いたしまして、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  83. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。     —————————————
  84. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 休憩前に引き続き、自動車構造上の欠陥に関する件について質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  85. 森中守義

    ○森中守義君 きのう運輸省欠陥車の全容ということで公表された。これによれば、五十五種、延べ二百四十五万台、しかもこれを八月末までにリコールを完了するようにという要請が行なわれたということのようですが、事実に間違いありませんか。
  86. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 昨日十社報告がございました。で、十一日に報告がございましたトヨタ、日産の分を加えまして五十八件でございますが、これらにつきましての措置がまだ終わっていない車につきましては、おおむね八月一ぱいまでには措置を完了するという計画の提出がございました。
  87. 森中守義

    ○森中守義君 この五十五種、延べ二百四十五万台のほかに——これは入っているんですか、いないんですか。トヨタのハンドル不良品がある、それからホンダNにも三十七カ所の不良個所がある、こういう記事が朝日及び日経において出されておる。したがって、この種類が五十五種、延べ二百四十五万台の中に算入されているものか、あるいは全然まだ目こぼしになっているのか、その辺はどうでしょうか。
  88. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 本日の朝日新聞に報道されましたトヨタの分とホンダの分は、この中の数字には入っておりません。で、これはいわゆる欠陥車であるかどうかにつきましては、さっそく調査をいたしております。
  89. 森中守義

    ○森中守義君 そうしますと、その欠陥車の全容ということの発表は、いままでのいわば中間的な発表であって、これで欠陥車に関する行政府当局の整理したものは全部終了したということにはなりませんね。
  90. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 国産車のいわゆる四輪の軽自動車あるいは自動車につきましては、ただいまのところ運輸省で受けました報告は五十八件の延べ二百四十五万六千両でございます。そのほかの分につきましては、ただいま御指摘の分はこの中には入っておりませんので、いわゆる欠陥車であるかあるいはそうでないかということの点につきましては、ただいま調査を開始したところでございます。さらにこの車両の中には二輪車が入っておりませんので、二輪車につきましては数日中に報告を受けることに相なっておりますのと、それから輸入車につきましては、本日ちょうどだだいま時刻かと思いますけれども報告を持ってくることに相なっております。したがいまして、国産車の二輪車につきましてはこの数に明白に入っておりません。
  91. 森中守義

    ○森中守義君 要するにこれが最終的な全容というものでなければ、さらにこれから拡大の可能性がある、そういうように理解をせざるを得ない。  そこで、どういうことなんですか。大体メーカー報告を基礎にしてこういうものを整理されておるのか、あるいは運輸省みずからが進んで調査に当たっているのか、要するに報告、つまり積み上げられる内容というものはどういう作業の過程によっているのでしょうか。
  92. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 従来、運輸省令で自動車型式指定規則というのがございます。この型式指定規則に規定いたしておりますところの諸元に関するものにつきまして、それの変更をし、あるいは届け出しまして変更をする場合におきましては、運輸大臣の承認を受けなければならぬということでございまして、規則に明白に規定をいたしたものは当然その措置が必要でございます。ただそれ以外の、従前、規則に規定していない項目につきましての点は報告の義務を与えておりませんので、メーカーのほうでこれを自発的に回収し、修理をしておったわけでございます。今後におきましては、その規則に規定いたしておりますものはもちろんではございますが、それ以外の点につきましても、型式や構造、装置に関するものにつきましては、厳格に報告を徴しまして、運輸省といたしましては、適正な措置を講ずるということにいたしたわけでございます。従来は規則に当てはまってないものにつきましては、報告義務を与えていなかったわけでございまして、メーカーが自発的に処理するというたてまえになっていた次第でございます。
  93. 森中守義

    ○森中守義君 その辺の議論は、またあとでしますが、なるほどその指定規則によって報告義務というのが限定されているのは知っておる。だからいま自動車局長の言われるように、報告の義務を課していないものについては報告はない、したがってどこにどういう欠陥があるかにつきましては、報告されない限り不明であるということであるかどうか。同時に、運輸省が進んで全体的に洗い直しをやっていくかどうかというその辺のお答えが明確でない。少なくとも、新聞等に運輸省公表されるものは、メーカー報告を基礎にしたということがほとんど支配的なものになっておるわけですね。ですから、報告に基づくものですべてが整理されているのか、あるいは運輸省みずからがやって実数を当たっているのか、その辺もう少し明快に答弁をいただかないと答えになりません。
  94. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 運輸省といたしましては、事故が起きました場合に警察の通報あるいはこちらの調査によりまして車両欠陥事故であるということを把握いたしました場合におきましては、積極的に事故警報を発しまして、自動車使用者整備業者あるいはその他の関係者に通知をいたしております。しかしながら、事故が起きる前におきましてメーカーが発見し、ディーラー等を通じまして車が参って直すというふうな場合におきましては、報告の規則にも、そうして型式指定規則にも当てはまっていない場合におきましては、従来は報告を受けていなかったわけでございます。
  95. 森中守義

    ○森中守義君 要するに、問わんとするのは、きのう全容を発表されたというので、五十五種延べ二百四十五万台、こうなっておるのだから、これが最終的なものであるのかないのか、これが一つの中心点なんですね、私が聞こうというのは。  そこで、新聞の記事によれば、けさの新聞ですかね、トヨタのハンドル系統に不良品なんか相当ある。またホンダにもそういうのがある。いまの局長の答弁ではっきりいたしました。さらに二輪系統もあるということですからね。したがって、要約をすれば、五十五種二百四十五万台のほかにさらに増大の見込みである、こういうように理解しておいてよろしいですね、その答えてもらえば簡単なんですね。
  96. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 先ほど申し上げましたように、二輪につきましては明白に入っておりませんから、これもあるものと思っております。しかし、四輪につきましては、先般六日の日に、自動車工業会、そうしてまた関係の会社にも通達をいたしまして、この際欠陥車につきましては、すみやかに報告すると同時に、それの処置につきまして計画を出せということを言っておりますので、出た範囲内におきましては一応網羅したものと思っておりますけれども、しかし、けさの新聞のような事態もございますので、一〇〇%であるかどうかということは、これを確実にそう言い切ることができませんので、これらにつきましてはさらに調査をいたしまして今後対処していきたいと思います。
  97. 森中守義

    ○森中守義君 それではちょっと大臣に念を押しておきますがね、なるほど、その報告の義務を課していないものについてもこの際のことだから進んで、義務はなくても報告を要請をする。したがって、できるだけすみやかに、いまだ正確に不良車、欠陥車というようなことであるかどうかわからないけれども新聞でいわれているようなトヨタあるいはホンダ、さらに二輪車等についても調査をする、こういうことにしてほしいと思うのですが、そのとおりおやりになりますか。
  98. 原田憲

    国務大臣原田憲君) いま局長から申しましたように、そのような措置をとりたいと思います。  私、この際申し上げておきたいのは、これは、車はいい車をこしらえて、そうしてどこにも負けない車をつくろうということを考えているのが私は業界の本質的な姿であろうと思っております。したがって、日本自動車産業というものがそれを、非常に効果をあげてきたので、世界一流国であるアメリカにまで輸出するに至った、このように私は考えております。しかるところ、一〇〇%というものは、絶対というものはないのでありますから、これを一そうよりよくしていくということについて常に努力をしていかなければなりませんが、そのやり方について、今度の場合は、アメリカでは公表制度をとっておった。日本ではこのやり方について、道路運送車両法あるいは道路交通法をもとにして車検制度あるいは事故警報というようなやり方で、半年に一ぺん車を持っている人が必ず整備をするとか、二年に一ぺん必ず車検を受けるというような方法でこの欠陥車というものに対処をしておったと、こういうことで万全を期したつもりであったけれども、たまたま制度の違いから、アメリカにおいても日本の車の問題について指摘されるところがあった。私は野にあるときからこの車検制度というものについて、これが万全であろうかということを考えておりました。また日本の車が、先ほど申しましたように、世界の一、二を争うところまできておるという状況でありますから、また自動車産業の自由化というようなことが叫ばれておるときでありますから、より一そう日本自動車産業というものを確立するためにもこれは念には念を入れた安全、質のよさというものを確保する必要があるであろうという判断をいたしておりました。たまたま今回このような問題と突き当たりましたので、これは公表制度というものを取り入れたほうがいままでの制度以上のものになるのではなかろうか、このように考えまして、問題を指摘された二社に対しまして、いま問題になっておることをどうするつもりであるか返答をいただきたいという通達を局長をしてさしたわけでございます。そのほかの会社に対しましても、日本で一、二といわれておるトヨタ、日産にしてしかりでありますから、きっとほかの会社にもあるであろうと考えまして、このほかの会社にも同様な措置をとってもらうように通達をいたしました。また、これは業会を通じてやることがよかろうと考えましたので、業会を通じてこの措置をとったわけでございますが、輸入車についても同様な措置が必要であろう、こういう意味でこの措置をとったわけでございます。  その措置の結果あらわれてきたのが、いま先生に御答弁を局長からいたしました五十八件にのぼるところの、二百四十五万と称される欠陥があるという車が出てきたわけでございますが、その中で措置が済んでおるのが百十五万である、まだ措置がされていないのが百二十九万ある。そこで、いまだ走っておる車の中の十台のうち一台は欠陥車である、というような表現できょうの朝の新聞にも出ておると思うのであります。今後いま御指摘のありましたような、トヨタ並びにホンダの問題が指摘をされておりますが、これらの問題につきましても、それがはたしてほんとうにそうなのかどうかということも調査をいたします。今後はこの措置によりましてできるだけ早く欠陥車は改良をする、そのことによって欠陥車日本の国で少なくなるということの目的を達成するようにつとめてまいりたい、このように考えておるのでございます。
  99. 森中守義

    ○森中守義君 まあ前段、後段は答弁としていただきますがね、中段のあたりについては、必ずしもそうですかというわけにはまいりません。むろんそれはこれから調査及び議論を重ねたあとの総合的な結論ということに相なろうかと思うのですが、そこまでいまエスカレートして議論を展開したいとは思わない。そこで端的に答えてもらえればいいのですが、そういうことであれば結果的に、全容の発表ということはむしろ中間的な発表であって、もっと拡大の要素が十二分にある、そういうように私は理解をいたします。また大臣、局長の答弁もそれを否定されておりません。したがって、この件については極力すみやかに最終的な全貌を把握されるように、あまり時間をおかないでやってほしいと思う。  そこで次に伺いますが、いま大臣が言われる未処理のものが百二十九万台、新聞によれば、大臣が言われるように十台に一台、まさにおそるべき状態であろうと私は憂慮いたします。そこで運輸省が八月の末までにリコールを完了せよと、こういうことはメーカーに対する要請ということで新聞にいわれておりますが、つまり期待をされる要請であるのかあるいは行政的な拘束力を持つのか、その辺はどういうことなんですか。
  100. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) この件は先ほど申し上げましたように、六日の日に通達をいたしまして、すみやかに欠陥車を、従来の措置と現在まだ未処理のものについて、その計画を報告せよということで指示いたしました。これは行政指導でございます。これに対しまして、車種によりまして、会社によっていろいろございますけれども、七月の初めのもの、あるいは中ごろのもの、八月のものというふうにありますけれども、全体的には七月ないし八月には会社として回収をいたしますという計画を出したわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、その計画は実行できるように十分監視をしてまいりたいと思っております。
  101. 森中守義

    ○森中守義君 拘束力を持つかどうかということを聞いているんですよ。監視とか期待をするということでは困るんですよ。要するに、新聞では要請ということになる。だから、要請ということは拘束力ないということですからね。だから、八月までに完了せよと、こういうことは強い行政上の拘束力を持たしているのか、あるいは行政当局の期待であるのか、そのことが実はリコールの問題に重大な影響がくるんです。さらにいま一つは、二次あるいは三次のユーザーに渡った場合に、なかなか追跡が困難だという見方がある。二次まではまだいいかわからない。三次になれば、要するに、これは非常にむずかしいと思うんですね。しかし、百二十九万台がいまだに未処理で残っているということは、その中には二次、三次のユーザーに渡っているという、そういう数が相当あるんじゃないか。それらも含めて行政上の拘束力を持ってリコールをするというのかどうなのか、その辺どうですか。
  102. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 先ほど申し上げましたように、これは通達いたしましたが、行政指導として強く通達をしたわけでございます。したがいまして、現在の規則に入ってない構造、装置のものにつきましては、法的なものではなくして、とりあえずは通達によりまして行政指導をしたわけでございますが、それに対しまして、メーカー側のほうからおのおのの車種につきまして、いつまでにこれを完了するという報告がまいりました。その報告によりますというと、おおむね七月ないし八月でございますから、これが実施できますように、強く今後も行政指導をしてまいりたい、かように考えております。
  103. 森中守義

    ○森中守義君 どうもそのことの繰り返しですが、なるほど現行保安基準であるとか、あるいは事故報告の規則であるとか、そういうものからいけば、なるほど行政指導という、そういう程度に終わるかもしれない。しかし、いまこの欠陥車の問題は国をあげての問題ですよ、少々オーバーな言い方かわかりませんがね。おそらく報道機関といえどもこの種の問題、これだけ数多く重視していることはない。そこで私は、行政指導ということであれば、拘束力はない、これは法律的にそういうことだと思う。しかし、いま言ったように、保安基準であるとか、幾つかの規則であるとか、そういうものに準拠すれば、そうであるかわからないが、設置法の中に定めてある運輸大臣の権限、要するに指揮監督権を持っているはずだ。こういうときに要請とか行政指導とか、締めくくりのつかないようなことじゃ私は困ると思うんです。毎年メーカーも漸次良心が復活してきたようだから、その要請あるいは期待にこたえると思う。しかしこの際は、設置法の中に明確に明定されている運輸大臣の指揮監督権を発動すべきだ、行政上の拘束力を持たれるべきですよ。そういう意味において、八月の末までというならばわかる。しかし、要請、期待、行政指導では困る。したがって、設置法上の大臣の指揮監督権を発動して八月の末までに整備をするという意思があるかどうか、これはひとつ正確にお答えを願っておきたいと思います。
  104. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私は私に与えられた権限を十分把握いたしておるつもりであります。これに従って局長をもって各業界の方々に対しまして、今度の問題についての報告を求めるとともに、この欠陥車についてどうするつもりであるかという返答を求めたのであります。その中に八月末までにこのリコールをして万全を期したいという答弁がなされておるのでありますから、これは私は、そのことは必ず業界の人たちに守ってもらえるというかたい確信を持っております。そのことがもし行なわれないといたしますならば、私といたしましても、続いて私の許された限りの権限において指導監督、こういうものを十分にいたす所存であります。
  105. 森中守義

    ○森中守義君 私は何もメーカーを信頼しないというわけではないが、問題が問題ですから、だからそういう信頼関係において、いや行政指導でよろしい、要請でよろしいということであれば何をか言うところはありませんけれども、十台に一台はあぶないのが走っている。ある人に言わせると動く棺おけとも言う、動く凶器とも言う。あぶないことこの上ありませんよ。だからこの際は、八月の末という日限を切るならば、それには大臣の固有の権限として有する設置法上の指揮監督権を発動して行政上の拘束力を持たすべきだ。もし万一、要請あるいは行政指導にこたえない場合には伝家の宝刀を抜くぞというやり方では、問題に合わせていく大臣の行政方策としては少々どうかと思う、そこまで決心つきませんか。
  106. 原田憲

    国務大臣原田憲君) いまの点で私に何をせよと仰せられているのかわかりませんので、事務的に答弁させようとしたのです……。
  107. 森中守義

    ○森中守義君 これはしかし、事務的な答弁じゃない。要するに、新聞では要請といっている。しかし、行政指導だという局長の答弁だが、行政指導だということならば拘束力を持たぬのじゃないか、私はそう言っている。だから、拘束力を持たせるには、保安基準であるとか事故報告規則だとか、そういうものには何にもないから、この際は設置法の権限を発動して行政上の拘束力を持たせる、持てと、こう言っているわけです。わかりませんか。
  108. 原田憲

    国務大臣原田憲君) いまのお尋ねでありますと、いま保安基準を直せということを仰せられているように私は受け取りましたので、事務的に一応答弁さそうとしたわけです。私がやりましたことは、要請したのではないのでございまして、私は今回のこの問題についてメーカー二社——日産それからトヨタを呼んで、今次の場合についてあなた方はこの問題車をどうするのかということの答弁を求めたのであります。これに対しまして、八月中にこれを回収します、こういう報告を受けましたので、私はそれを業界の人たちがやってくれるということを信じておりますから、私の行政指導を行なった、こういうことになる、こういう判断をいたしております。
  109. 森中守義

    ○森中守義君 そうすると、大臣から要請したのじゃなくて、業者側が八月の末までによろしゅうございますと、そういう返事をしたということでございますか。その辺がはっきりしない。
  110. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) これは現在欠陥車があるかどうか、あるとすればその内容はどうか、その欠陥車についてこれを回収して対策を講ずるための計画を出しなさいということを指導したわけでございます。それに対しまして報告がまいりましたものが、先ほど申し上げましたように、七月ないし八月の間には対策を終了するという報告運輸省に提出されたということになっております。
  111. 森中守義

    ○森中守義君 どうもちょっとかみ合いませんがね。それならばさっき言うように、中古車ということで、新車を買った人から次の人に、さらに次の人にというように譲渡されている場合、所有者がかわっている場合、それも百二十九万台の中に入っているのですね。それらも含めて八月一ぱいにリコールしますと、そういうメーカー側の返事ですか。その辺はどうなんです。
  112. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 第一次ユーザーから二次、三次と移っているものもおそらくあると思いまして、それらをすみやかに把握いたしまして対策を講じますために、公表その他の方法によってやるわけでございまして、七月ないし八月の措置の中には、第三次ユーザーにつきましても含めての措置の計画でございます。
  113. 森中守義

    ○森中守義君 そうすると、メーカーの措置を信頼をする、つまり八月一ぱいに終わりますと、こう言うから、それを運輸省としては信ずる以外にはないと、結論はそういうことになるわけですか。それで終わらなかった場合どうするのです。私はどちらかというならば、八月末以降にこういう問題が残るということは困る。それならば拘束力を持たして八月一ぱいに終わったらどうか、こういうことをさっきから聞いているわけですが、いやそれは業者のほうもそういう約束しているのだからそれを期待します、信頼しますという大臣の答弁ですからね、それ以上これは言う気はないけれども、もし終わらない場合どうします。
  114. 原田憲

    国務大臣原田憲君) これはもう終わるということを前提に業界のほうも努力をしておりますので、終わらなかった場合ということを私はいま考えておりません。  なお、いま森中さんのおっしゃっている中で、少し申し上げておかなければと思う気がいたしますので、その問題がこれで終わるということでこれは終わりますが、欠陥車というものが絶対に出ないかということになりますと、それはそうは言えないわけでございます。その欠陥車に対してどういうふうにして防ぐかという制度上の問題で、公表制をとっているものと、日本のようなやり方をしているものとの問題が生じてきた。私は、念には念を入れて、これから公表制というものも取り入れていくほうがよかろうと、こういうことでございます。欠陥車というものが絶対に出ないかというと、そうは言えないので、きょう外車のほうも報告が来ますが、きょうの新聞ではアメリカでも千七百万台ぐらいの欠陥車があるということをいっているので、この欠陥というのは、もうそれがすぐ事故につながるような大きな問題から発生をしたものではありませんで、専門家の人たちの話を聞いておりますと、たとえば人間のからだでいうと、当然五体満足で生まれたけれども、日にちがたつと虫歯ができた。この虫歯は、結局これはほうっておくと重大事故につながるかもしらぬ。しかし、虫歯をすぐになおしに行く人もあれば、なおしに医者に行かない人もある。医者に行くほうがよろしいから、これは欠陥をなくすために万全を期していこう、こういうことを期してこの絶対に近づけていこうという努力をしておるのでございまして、この今次の問題は私はできるだけ八月までにこれをやる。そのあともう欠陥車が出ないかということになるとそうは言えないから、万全の方法を講じていくために、日本のいままでの制度というものに加えて、公表制度を取り入れて、業者みずからこういうところに気がついたからどうぞひとつ持ってきて早く直してください、こういうようにやってもらう。またユーザーのほうでも、現在でも自動車を買ったら必ず半年目には整備しなければならぬという規則があるにもかかわらず、罰則も何もありませんから、それは車検のときまで待っているというようなことになっているわけでありますから、こういう機会に災いを転じて福となすように、みんなが気をつけられて、欠陥車をなくしていくということに努力する。こういうことでだんだんと百点満点に近づいていく。このように了解いたしておりますので、今度の場合も、新聞にも災いを転じて福をなすというようなことが書いてありますが、そういうふうに望んでいるということを申し上げておきたいのであります。
  115. 森中守義

    ○森中守義君 原田運輸大臣の浪花節は大いに音はいいですがね。いまはいいでしょう、そういうことは。ただし、あとの議論として、あるのがあたりまえであって、ないのがおかしい、これからも欠陥車あるんだぞと、それじゃあ大臣、困りますよ。その前提は、私はやはり考え直してもらわなくちゃ困る。まあしかし実際問題として、八月の末までにリコールを終わりたい、業界もそれを了承しているということであれは、その時点でまたお尋ねすることになるかわかりませんが、私はやはり期待とかあるいは要請ということじゃ片づかない、相当きつい規制をこの際加えなければ、おそらく八月一ぱいに残余の百二十九万台が完了するということはまず困難なんじゃないだろうか、こういうように——大臣に言わせると、よけいなことだ、おれの言うことを信じておけということかもわかりませんが、国会としてはそうはまいりません。だから私は相なるべくは単なる要請、期待ということではなしに、行政上の拘束力を持たして八月一ぱいに終わらせるように義務づけるところまで、実はもう一回再検討してほしいと思う。  警察庁が何かお急ぎですから、ちょっと先に聞きますが、新聞によりますと、刑事責任を追及する、しかもこのために全国の交通担当の課長をお呼びになったそうですが、指示された内容はどういうことでしょう。それと刑事責任を追及するという大体の方向はいかなるものでしょう。
  116. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 全国の交通課長会議は、これはこのために招集したのではなくて、従前の予定であったわけでありますが、たまたまその前日に業者のほうからこの問題の説明を受けましたので、急遽さしあたっての方針をきめてその際に指示したわけであります。  そこで、その指示をした内容——これは問題が非常に社会的に大きくなってまいったので、われわれのした仕事の中で反省をすべき分があるかもわからないし、問題の未解明の部分があったかもわからない。そういう意味で、さしあたって本年の一月以降の警察が取り扱った事故の事件の中で、車両整備不良として処理されたもの、その分について、これはすでに日産とトヨタにつきましては、当日の朝でありましたか、前日の朝でありましたか、新聞内容が出ておりましたので、その欠陥車両であるということで事故が起こったもの——この事故というのは言うまでもなく人身事故であります。人身事故原因となったものがあるならば、それを調査してあげてきなさい、それに基づいてどこにどういう責任があるかを検討してみたいということを申したわけであります。  そこで何が問題になるかといいますと、刑事上と申せば、刑法の業務上過失傷害ということになりましょう。そういたしますると、業務上の過失、つまり業務上客観的に見て必要な注意義務を払ったかどうか、どの段階でだれがそういう義務を払っておったのか、おらなかったのか、そういうことを検討しなければならないわけでありますが、ただ抽象的に申しても始まりませんので、具体的に事例が出てまいればそれについて相当な追跡の調査をやってみたい、こういうことを申したわけであります。
  117. 森中守義

    ○森中守義君 これは法務省にお尋ねすべきかわかりませんが、すでに事件として立件をされた、それで送致をされて裁判に付された、しかもその公判等の経過の中で明らかに構造上の欠陥である、しかし実際に刑の確定というものはメーカーあるいはディーラーが処罰の対象にならないで、ユーザーあるいは被害者というこういう関係において処理されてきたようです。自賠法それ自体がそういう仕組みに現在なっておりますね。そうなると、明らかに構造上の欠陥であるということが立件以降明らかになりながらユーザー等が罰せられた問題についてはどうなりますか。それが一つ。  それからこれは運輸省関係かもわかりませんが、これから先の自賠法の問題ですが、午前中参考人にもお尋ねしましたけれども、やはりメーカー等を自賠法の中に組み込んでいって罰則規定等のワクを拡大するということはお考えにならないかどうか。この辺のこと、それとそういう判例がどのくらいあるか。要するに、構造上の欠陥指摘をされ、それが認められながらメーカーは罰せられてない、こういうことが幾つかあったと思う。その辺のことはどうでしょう。
  118. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 前段の問題は法務省の問題でありますが、僭越ではありまするけれども、法務省と連絡した場合の法務省の考え方及び私どもといたしましては、刑事責任ではなくて行政処分でやはり同じような問題がありますので、その辺関連さして申し上げてみまするというと、裁判で本人が問責されておる、ユーザーが責任をとらされておるといいますのは、これは車の欠陥と別個に本人に過失があったかどうか、道交法違反があったかどうか、そこに着目されて判決が出ておるはずであります、間違いがなければ。したがいましてそこで生ずるのは、車の欠陥によっても事故が起こっておる、ユーザーの責任もあるという場合には責任の競合がある、ただし、従来は市の欠陥問題が必ずしも問題でなかったということであります。そこで行政処分も、やはり同じ問題でありまして、車の欠陥もあったかもしれないけれども、少なくとも本人の道交法の違反があった、その点に着目されて行政処分が行なわれておるということであります。  そこで、それでは本人に責任がなくて車にのみ責任があったというものについてはどうしておるかということになりますと、事故のきわめて軽微なものについては、これは警察限りで処置をしておるそうであります。この件数報告にもまた統計にもあがっておりませんので、今回調査をすることになっておりますので、その結果わかると思いますが、さらにやや大きな事件以上のものにつきましては、これは陸運事務所の技術的な鑑定も得まして検察庁に送致をいたしております。その際には、処分はしないようにしていただきたいという意見書がついております。そこで検察庁はそれは不起訴にするということで、ユーザーはもちろん業者のほうも、その場合には問題になっておらぬということが現状であります。そこで今回このように大きく問題になった場合に、そういった構造欠陥事故が生じておることが明白になった場合にそれをどうするかというのが今後の問題であります。  なお、自賠法の関係は私全然わかりません。運輸省の所管でございます。
  119. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 従来の関係でございますというと、被害者側はその事故の態様に応じまして、メーカーあるいは自動車の所有者に対して民法七百九条によりまして損害を賠償するというたてまえでございました。しかし、被害者側から加害者側の故意過失の挙証をしなければならないたてまえになっておりますので、したがいまして技術的な面その他でもありますし、被害者の保護にはなりませんので、自賠法によりまして、この自賠法の三条によりますというと、まず自動車の保有者に責任があるということで、被害者からその挙証をしなくても原則としては保有者に責任があるということにいたしまして、被害者の保護をはかったのがこの自賠法第三条でございます。したがいまして被害者のほうでは、自動車によって身体または生命を傷つけられました場合においては、要求だけすれば責任云々については問わなくても、加害者のほうで免れるためには自賠法第三条のただし書きによらなければならないというふうに相なっておるわけでございます。法律的な構成といたしましては、かりに車体欠陥事故であるということが明白な場合におきましては、被害者のほうは自賠法第三条によりまして保有者に損害賠償を求める方法と、民法七百九条によりましてメーカーのほうに損害賠償を求める方法、二つあるわけでございます。しかしながら、保有者に求めたほうが責任関係が明白であるということと、また保険の一定金額までは損害賠償保険のカバーがございますので、そのほうにいくということかと思います。そうなりますと、かりに被害者のほうが自動車保有者に損害賠償を請求いたしまして保有者が支払いいたしました場合におきましては、今度は保有者が車体欠陥事故であるということを挙証いたしましてメーカーのほうに求償をするという法律関係になるわけでございます。ところが、技術的な知識等の問題がございましたが、今後この公表制度を徹底する、あるいは事故解析等を徹底いたしますというと、いわゆる自動車保有者からメーカーのほうに対する求償の証明というものがやりやすくなるのではないかというふうに考えますけれども、被害者、加害者との関係におきましては、自賠法第三条というものは民法の特例といたしまして被害者の保護に徹しておるものでございますので、やはりこれが被害者のためにはいいのではないか、かように考えております。
  120. 森中守義

    ○森中守義君 警察庁お急ぎのようですから、もう一つだけお尋ねして、次の機会に譲りますから……。  結果的にこういう社会問題に発展をして、しかも、明らかに道交法の責任も何にもない、ただもう一口に言って構造上の欠陥による事故という場合ですね、すでに行政処分に付されたというような問題については全部これは遡及して免責の措置をおとりになりますか、それとも過去のものはしかたがないということでこのまま放置されますか、その辺はどういうようにお考えですか。
  121. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) この問題は当時の、行政処分を出した場合に公安委員会が判定するわけでありますが、その際に故意過失があったかどうかということが判断基準になるそうでありまして、非常な過失によって公安委員会判断したとなれば、これは取り消すと申しましても、まだ免許停止中ならばよろしいですけれども、済んだものは取り返しがつかないわけでありまして、もしそういう事態であれば国家賠償法の対象になろうかと考えまするけれども、故意、過失がないという判断であればそれは不問になります。裁判の例はそうなっているそうであります。
  122. 森中守義

    ○森中守義君 それからもう一つ、先ほどちょっと申し上げたように、メーカーの刑事責任を追及されるという問題ですね。これはさっき運輸大臣も言われたように、好きこのんでやったかどうかという、そういう精神的なものはいろいろあると思う。あるいはまた産業政策上の問題等もいろいろあります。それはここでこれから議論していくことですがね、しかし要するに十二社という全部のメーカーがこれだけ膨大な欠陥車を出したということ、この事実は何としてもやっぱりとことんまで洗い直してもらわなくちゃ困ると思うのですね。ですから、大体すでにもう調査にかかっておいでのようですが、どの程度の期間かけて最終的に終了されるのですか。出た答えをどう処理されようとするのか。いま将来のことまでここで聞いておくのは少々早過ぎるかもしれませんが、一つの方向としてどういうふうにお考えでしょうか。
  123. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 私どものほうといたしましては、大体六月くらいまでの事故について、人身事故につきまして、車両欠陥に基づいてそういった事故が生じたことが明白になったものを八月一ぱいで報告してもらいまして、それに基づいて個々の事件についてどういう背景であったか、たとえば修理がどういう段階で行なわれているか、あるいはどういう自動車の使用状況であったか、使用期間はどうであったか、それから部品についてはどういうふうな供給状況であったか、そういうことを総体的に調べる必要があります。さらにまた客観的に見ますと、注意義務の懈怠があったかどうかということから、これは私どもの判定ではなくて、技術者の判定に待たねばならない、そういったものを個々の事件について行なわねばならないと考えています。いままでの刑事事件などで見ますると、そういった技術的な問題を含むものについては、結論を得るまでには相当長期間を経ておりますので、見通しはいまのところちょっと申し上げかねます。
  124. 森中守義

    ○森中守義君 愚問かわかりませんが、これは警察権をお持ちになっている警察庁として、つまり捜査権の発動による捜査ですか。それともメーカー等に報告を求めるのか、あるいは参考人を招致して事情聴取するとか、その程度のものであるのか、あるいは捜査権の発動による捜査であるのか、その辺はどうですか。
  125. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 現在の段階は捜査以前の調査の段階であります、八月一ぱいに調べてみようということは。
  126. 森中守義

    ○森中守義君 そこで、そういうものが進展した過程の中では捜査活動もあり得る、そういうように理解しておいていいですね。
  127. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 調査は、八月一ぱいで調査いたしまするが、その結果もう少し総体的なバックグラウンドを調べてみまして、その結果犯罪がありと考えられれば捜査活動に入ることになると思います。
  128. 森中守義

    ○森中守義君 自動車局長、今月の六日の読売新聞はごらんになりましたか。「欠陥車つんぼさじき」「知っていた陸運局」「修理ずみの車に秘密ステッカー」、こういう見出しで取り上げられている。この内容——東京の陸運事務所にトヨタの欠陥車が持ち込まれた。それでブレーキの修理部分に特定のステッカーが張ってある。それはすでに取りかえが済んでいるのだから、検査の必要はございませんよということをメーカーあるいはディーラーの代表が来て伝えている、こういうことなんですね。張ってないのについてはよく見てほしい。それから一日か二日たちまして、千葉県のどなたかわかりませんが、やはり朝日か読売か毎日だったか、どれかよく記憶いたしませんが、このことの投書を出しております。車検に出したところが変なステッカーをつけたまま自分の手元に戻ってきた、こういうことが二、三日あとの投書で出されている。そこで、この読売の内容にいっておるのは、出先の陸運局ないしは陸運事務所ではすでにこの事実を知っておった、こういう言い方をしておる。  それからけさ午前中の参考人のお話によれば、メーカーが出しているサービスニュースで何回となくこういうことが指摘をされておる、そういう話がある。さらに一昨年あるいはその前の年くらいの段階で——全国自動車労働組合、全自交、こういうのがある。ここは何か運輸省にその立場から、つまり欠陥車についてはすみやかに善処されたいという書面による要望が出されたという話を私は聞いておる。したがって、私が申し上げたいのは、何も海のかなたのニューヨーク・タイムズによって端を発したことではなくて、すでに一昨年あるいは一昨々年の段階において、この欠陥車の問題は国内において摘発をされているのであります、こういう経過が言われておるんですね。むろん、読売新聞によれば運輸省の本省は全然知らなかった。しかし、現場段階では知っておったんだというようなことで、何となく私も割り切れない。一体陸運行政自動車行政というものはどうなっているんだろうか、こういう疑問を持つのは私はユーザーの素朴な気持ちであろうし、私自身も、そういうものを読んでわかっていたんじゃなかったのか、なぜそれが大きな問題として提起されなかったのか、こういうことに対する対応策がもっと具体的に早くとれなかったのか、こういう疑問を持つんです。先般新聞によれば、黒住自動車局長は全くの初耳であって、こういう事件が存在しているとは思わなかった、こういうような何か談話を出されたようですが、ほんとうにそうであるのか。あるいは読売新聞サービスニュース等がいっているように、もっと早くこういうものを察知されていたのかどうなのか、その辺ひとつ率直にお聞かせいただきます。
  129. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) いま先生が御指摘のトヨタ車の件につきましての新聞記事は拝見をいたしております。欠陥車と申しますものには二つございまして、一つ型式指定規則あるいは保安基準に不適合のものでございまして、構造装置においてそれらに違反している場合。その第二番目は、そうではなくて指定規則あるいは保安基準には違反していないけれども構造欠陥があって、あるいは事故等の原因になるおそれがあるものという二つに分かれると思うわけでございます。前段のものにつきましては届け出をし、その改善をするということを——たとえば型式の場合におきましては運輸大臣の承認を受けなければならないわけでございます。ところが後段の、規則に規定いたしておりますもの以外の面におきますところのものが、これがいわゆる欠陥車として今回指摘されておるものでございます。したがいまして、先ほどのトヨタ車の場合は、いわゆる届け出を要しない車でございますので、陸運事務所では承知をいたしておったかとも思いますけれども、会社がそれを回収するということにつきましては承知していたかとも思いますけれども運輸省に届け出をいたしまして、指揮を仰ぐというふうな事項になっておりませんので、運輸省としては知らなかったわけでございます。  それから次に、全自交の四十二年の申し出の書面の件でございますが、当時私も自動車局に在任しておりませんために、この事実は承知いたしておりません。しかし、四十二年にこういう書面等による意見具申があったかどうかについては、さっそく調査をいたしたいと思っております。  なお、この報告の件でございますけれども、先ほどから申し上げましたように、今後におきましてはメーカーのほうが欠陥車を発見したような場合におきましては、先ほど申し上げました一のもの、二のものにかかわらず、全体につきまして報告をしようということに相なっておりますが、役所のほうにおきましても、出先機関等におきまして欠陥車を発見した場合におきましては、すみやかに本省のほうに報告するように指示をいたしていきたいと思います。
  130. 森中守義

    ○森中守義君 これはまだまだたくさんありますが、だいぶ時間も約束の時間をはずれておりますので、あと一、二問できょうのところ終わっておきたいと思いますが、一つには、先ほど来ちょっと問題として提起した関係の法令、これらのものが今日の大量生産時代の自動車を、あるいは大量に突っ走っておる自動車を予定してつくられたかどうか、少なくともそういうものではないと思う。非常に大きく時代が変わっておる、それなのに法令の整備が全然行なわれていない。これは私はひとり運輸省のみならず、政府一体の責任において責められてもしかたがないと思う。いま少し新しい時代に対応する法令の整備が終わっておったならば、もう少しこの種問題はチェックできたはずではないか、こう思うんですね。むろん人の配置等についてもそのとおり、ここにそういうものの抜け穴がはしなくも問題として出されていると思う。つまり新車の陸送で、計器を固定したままで突っ走っておる。新聞をごらんになったと思う。きのうは鳥取か松江で一つありました、せんだっては福島にあった。こういうふうにでたらめというのか、むちゃくちゃですよ。しかも罪のない何人かの人をあやめるということになってはもってのほかと言わざるを得ない。この辺は一体どういうことなのか、これだって言ってしまえば法令の整備が行なわれていないということであろうし、行政の怠慢ということにもなろうし、もっと悪い言い方をするならば業界に対して政府が甘過ぎる、監督官庁が甘過ぎる、こういうことにも相なろうかと思う。したがって、いまここでそういうことまで詰めようとは思いません。まだこの議論というものは長く長く継続されるわけですから、そういう経過の中でもっと問題点として提起したいと思うんです。しかし、いま新車を陸送する場合に走行メーターをとめる、あぶなくてしようがありませんよ。まさにこれはなめられっぱなしじゃありませんか。したがって、法令の整備等もこの際はいま一度洗い直してみる必要がある、こう思う。  それと、通産政務次官がおいでですからちょっとそのことに関連して聞いておきたいと思う。  いただいた資料の中で、おそらく四十二年の実績だと思うんですが、業界における売り上げ高及び純利益、これからいけばトヨタが二千七百七十六億一千六百万、純利益が百四十一億五千九百万で五・一%、日産が二千九百六十二億八千六百万で百八億一千万の三・六%、それからマツダが一千八十八億一千七百万で純利益は五十三億六千八百万というように相当の利潤をあげております。この中でトヨタの五・一%というのは最高を占めておる。むろんこれは企業のことだから、どの程度利潤をあげるかということはおのおのの力量にもよりましょう。だから、高利潤だからけしからぬという言い方を一がいには私はいたしませんけれども、少なくともこれはたいへんな日の出の勢いの産業だと言わざるを得ない。大体日ごろにおける通産省の業界の指導というものは、とにかく売ればいい、何でもかんでももうかればいいぞ、道路交通法であろうとあるいは保安基準であろうと、そんなものおかまいなしにとにかくつくれ、売れという指導をやっておられるんじゃないですか。今回の欠陥車の問題は、そういう意味では産業政策ということが一つ基調にあります。これも議論は果てしなく展開せざるを得ない。したがって、ひとり保安を担当する運輸省だけの責任ではない。しかるに、この欠陥車の問題が表面に出た以降今日における情勢の推移というものは、ひとり運輸省がかぶっちまっておる。通産省、一回か二回自動車工業会の代表と大平さんが会って、あまり下請にしわ寄せしないようにしてくれ、この程度で大体終わっている。しかも、午前中に私もその質問をしたがったんだけれども、河野さんからこういう質問が出た。国内に売っている車と海外へ出しておる車と違うんじゃないかと、こういう質問がありました。どの新聞でもそれは指摘しておりますよ。この辺のことを考えていけば、あげられた利潤、売り上げ高——大体産業政策として自動車産業にどういう対策をとってこられたか、これは一つさっきの新車の陸送の問題、これは通産じゃないかもわかりませんが、これだってよく内容を見ると、メーターを上げれば車のフレッシュさがなくなる、売りにくいからメーターをとめて走らしているんだ、こういう言い方をしておりますよ。買ったほうは何のことはない、ごまかされるようなもので、したがって、この問題に対する運輸省及び後段に対する通産省の見解をこの際お尋ねしておきたいと思う。
  131. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 走行距離計は自動車運行の際に装着を義務づけております。これは道路運送車両保安基準の四十六条に義務づけておりますので、これを装着しないものは明白に違反でございます。違反の結果、整備命令を出す、あるいはそれに服従しない場合におきましては、車両の使用停止等の方法がございます。なお道交法の第六十二条におきましても、整備不良車両の運転の禁止という規定がございまして、現に今回の場合は、福島において警察のほうから摘発されておるわけでございまして、道交法から見ましても車両法から見ましても、この走行距離計を装着しないということは違反でございまして、それは今後厳重に取り締まっていくべきものであると思います。
  132. 植木光教

    政府委員(植木光教君) 仰せのとおり通商産業省は産業所管官庁といたしまして、自動車の生産販売あるいは研究開発、さらにまた輸出という面について所管をいたしておるわけでございます。したがって、安全性の問題についても常時強い関心を持ちまして指導に当たってまいったのでございまして、しかしながら、今回のような人命に関する大きな問題が起きましたことをまことに遺憾に思っております。したがって、大臣が直ちに自動車工業会の会長を招致いたしまして厳重に注意をいたしますとともに、これの対策を早期に樹立し措置をするようにということを強く要請をしたのでございます。さらにまた、同趣旨のことを重工業局長から全社の社長に対しまして、通牒を出しまして、強く要求をし、措置をしているのでございます。  先ほど来お話がございまして、通産省は安全というようなことについては何ら留意することなく、ただ生産と販売ばかりに力を入れているのではないかということでございますけれども、決してそうではございませんで、自動車というものは、その商品の性質からいたしましてブランドで売られるものでございますから、各社とも非常に激しい競争はいたしますけれども、それは品質、性能——これは安全性を含めてでございますけれども、そういう面において十分でありません限り、結果といたしましては競争に敗れる、ブランドに傷をつけるということになりますので、この面については激しい競争の中で品質、性能を高めることに努力をしている、またすべきであるというふうに考えて指導をいたしているところでございます。したがいまして、仰せのごとく、需要が急速に伸びまして、また海外へも多量に進出するということになりましたので、売り上げが高くなっておりますが、しかしながら、最近需要も少し落ちついてまいりまして、利益率も鈍化をしてきているというような状況でございます。しかし蓄積いたしましたものは、さらに研究開発その他に投ずべきであるということで指導いたしておりますし、業界においても努力をしていると信じております。  以上のような状況でございますので、私どもとしてはさらに運輸省と十分に連絡をとりまして、強力な指導を行ないつつ、安全性の確保その他について努力をしてまいりたいと思います。
  133. 原田憲

    国務大臣原田憲君) また日を改めて御質問もあろうかと思いますが、通産省並びに運輸省に対する御質問でありますので、私からももう一度お答えを申し上げておきたいと思うのであります。  とかく企業に対して政府が甘過ぎるという御批判がございます。私はそういう考え方もなきにしもあらずというふうに考えなければ、ほんとうに事故というもの、人命尊重というものは期せられないという考え方に立って今回の措置を踏み切ったつもりであります。安全と公害防止ということが今後の企業の中で最も重視されなければ、いわゆる人類の進歩と調和ということがうまくいかない。そのためには、われわれが企業に対してもできるだけの行政指導を勇敢にやっていかなければならぬ。まあ森中さんからは手ぬるいという御批判もございましたが、私はこの措置をとるときに、大平大臣に連絡をいたしまして、私どもは国内の車の面において、私のいわゆる所管というものに対してこういう措置をとります、あなたのほうへ通告をいたしておきます、こういうことに対しまして、大平大臣も、よろしい、やってくれということで、とかく甘いといわれておったことに対しまして、私は、通産大臣がおとりになったことも、いままでと比べると、手ぬるいという御批判もございますけれども、意欲を持って対処しておるというふうにお考えを願いたいのであります。  ただいま手元に外国車の欠陥対策状況というのがまいりましたが、これを見ましても、アメリカのゼネラルモーターズが二十四件、二千五百十八台、フォード九件、一千五百八十九台、クライスラー七件百九十三台、アメリカンモータース三件、八台、小計で四十三件、四千三百八台。欧州で、イギリスが十七件、千八十八台、西ドイツ九件、二千八百十七台、イタリア二件、百六十五台、フランス一件、四台、スウェーデン三件、二十六台、オーストラリア二件、十九台、小計三十四件で四千百十九台、合計七十七件、八千四百二十七台。それに対して措置したものが六千三百七十一台、未措置が二千五十六台というような報告がまいっております。  私どもは、日本自動車産業というものが世界の中で処して、より一そうりっぱな車というものになるためにできるだけの努力をし、御批判を承っているところは率直に受け入れて対処していくという覚悟で進んでいるということを、この際お答え申し上げておきたいと思います。
  134. 森中守義

    ○森中守義君 これできょうは終わりますが、先ほどお尋ねした関係法令の手直しですね、手直しというよりも、現状に合わせるように抜本的な改正を意図されるかどうか。ことに九日の日にメーカーの代表が集まって、緊急の度合いによって公表をきめよう、こういう自主的な話し合があったそうです。しかし問題は、一体、じゃ緊急とはどういう態様をいうのかというのでなかなか議論がまとまらなかった。したがって、緊急ということに対するものの判断というものは各社各様においてやろうということで、統一された見解が出ていないようです。だから、私は法令の抜本的な洗い直し、その中で公表ということを法制化する意思があるかどうか、これをひとつお尋ねしておきたい。  それからいま一つは、はしなくも大臣が言われたように、良質低廉なものを提供しなければならぬというのは、これは自由競争下における当然なことだと思う。しかし問題は、この事態で相当需要は減少する。そこで、あえて需要の減少あるいは企業の成績の低下、こういうことをも甘んじて、要するに欠陥車を追放するためにやっていこうという意思があるかどうか。  それからいま一つは通産省にお伺いしたいのですが、これもあとの問題になりますけれども、要するに、資本の自由化というものがいよいよ本格的になる、第三次の決定がこの秋には行なわれるようですけれども、一体自動車についてはどういうお考えであるか。さらにまた、その自由化の問題に関連をし、そうして今回の欠陥車に問題を踏まえながら、新聞紙上等では業界の再編成というものが問題になっておるようです。この辺に対してどういうお考えをお持ちであるか。  以上のことをお尋ねして、きょうの質問を終わっておきます。
  135. 黒住忠行

    政府委員(黒住忠行君) 先般来の通達、六月六日の通達に対しまして、六月十二日付で工業会の川又会長から申し合わせの報告が参っております。その報告の中の第二の点に『リコールの公表は、緊急の場合とし、各社の自主的判断により行なうこととするが、「緊急」の範囲は広く解し、手広く進めてゆくこととしたい。』ということになっておりますので、したがって、われわれといたしましては、危険のおそれがあるというふうなものは、これはやはり緊急の範囲になるというふうに考えますし、業界のほうもその範囲を広く弾力的に解釈いたしまして善処するものと期待しております。  それから型式指定の規則あるいは保安基準の改正等の制度改正の問題でございますが、型式指定自動車につきまして、先ほど申し上げましたように、現在直接規定があります点につきましては届け出をし、またその変更につきましては運輸大臣の承認を受けなければならぬということになっておりますので、その項目を追加するという点、それからそれ以外の場合におきましても、さらに明細の事項等を追加する、あるいは届け出義務というふうなものを課するというふうな点につきまして、型式指定規則の制度の改正につきましては検討を始めておりますので、なるべく早く結論を出したいというふうに考えておりまして、前向きの形におきまして検討をしている次第でございます。
  136. 植木光教

    政府委員(植木光教君) 御承知のとおり、昨年、日米交渉におきましていろいろな今後の問題をきめたわけでございますが、自動車資本自由化についての要請はその後非常にきびしいものがございます。そこで国内のわが国自動車産業は、御承知のとおり、生産あるいは整備、販売などを含めまして従業員が百四、五十万人になるというような膨大な労働者もかかえておりますし、さらにまた関連の企業もたくさんあるわけでございます。したがって、体制の整備を進めてまいりまして、国内体制を強くするその時期と合わせまして自由化を考えていこうということで鋭意努力をしているわけであります。ことしの秋に自由化の時期を明示するということにいたしておりますので、それまでの間、鋭意体制の整備をはかっていくという方針でございます。
  137. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三分散会