○
説明員(一條幸夫君) それでは、五月十七日と六月八日の事故につきまして、概況を初めに御説明をいたします。
お手元に差し上げてございます図面が二枚ございますが、「5月17日函南・三島駅間
列車脱線事故
状況略図」と書きましたものと、「6月8日函南・三島駅間
列車脱線事故
状況略図」と書きましたもの、二つ差し上げてございます。初めに五月十七日のほうから概況を御説明をいたします。
この図で、一番上の
状況が線路の状態でございまして、左側に函南の駅がございます。これは二本線がございます。上の線が下り本線でございまして、下の線が上り本線を示しております。この事故の脱線をいたしました列車が一四六九列車でございます。この図面でまん中からやや右側に黒い矩形で示しておりますのが一四六九列車でございます。この一四六九列車が函南駅を十九時五十四分に定発をいたしております。定発をいたしまして、その後の運転
状況を概略申し上げますと、逐次加速をしてまいっておりますが、第四閉塞信号機、第三閉塞信号機、これは進行信号で通過をいたしております。第四閉塞信号機を通りまして、一一六キロ一三二と書いてありますところに白い矩形がございますが、これは
トンネルを示しますものでございまして、観音松
トンネルでございます。この
トンネルに差しかかります約三百メートル手前で惰行運転に移りまして、それから
トンネルに差しかかりますときのスピードが約六十キロでございました。その後この
トンネルの入口に近いところでブレーキをかけております。それから
トンネルの出口付近で再び追加のブレーキをかけておりまして、竹倉踏切というのが、この図の下のほうの勾配のところに書いてございますが、一一七キロ二七七メートル付近に竹倉踏切という踏切がございますが、この踏切の付近では時速が約五十五キロになっております。この踏切の付近で貨車のブレーキは緩解をいたしまして、機関車だけブレーキをかけた状態で運転をいたしております。そういう状態で運転をしてまいりまして、谷田
トンネルに差しかかったわけでございます。この
トンネルを出ましたところに第二閉塞信号機がございますが、この下りの第二閉塞信号機の進行現示を確認をいたしまして進行してまいります途中、
トンネルの出口付近で第二閉塞信号機が明滅をいたしました。ここで非常制動をとりまして、この信号機を約三百メートルほど行き過ぎまして停車をいたしました。同時に、このときに電車線も停電をいたしましたようでございます。というような状態でございますが、この
あと乗務員が後方を調査いたしましたところが、前から二十九両目の貨車三十両目の貨車の間が三百五十四メートル分離をいたしておりまして、この図面に三五四メートルと書いてございますが、三百五十四メートル分離をいたしまして、三十両目の貨車が谷田
トンネルの側壁に衝撃をして全軸脱線をいたしておりました。それから続く三十一両目の貨車も全軸脱線をいたしまして、上下線を支障しておりました。というのがこの一四六九列車の五月十七日の脱線の
状況でございます。この三十両目の貨車はワムの一二八九四二号車でございまして、パルプ材でございますが、丸太積みの貨車でございます。それから続く三十一両目の貨車もワムの八二一六一号車でございますが、これもパルプ材を積んでおります。
この事故の原因の推定でございますが、その後、国鉄の
技術研究所、現地の管理局、それから本社の要員で鋭意調査を進めてまいっておりますが、現在の段階では、脱線原因といたしましては、車両及び線路の状態、積み荷の状態、運転条件等を調査をしてまいっておりますが、それぞれの要因を調査をいたしますと、いずれも脱線を発生させるような原因が見当たらないのが現在でございます。この運転の状態、それから乗り上がり脱線をいたしました地点の軌道の状態、脱線した車両の状態など、いずれも単独では脱線を発生しない、個々の要因が競合いたしまして脱線したものと考えられております。これが五月十七日の事故の概況でございます。
それから申し落としましたが、この脱線をいたしました場所の
状況でございますが、十ミリの下り勾配の連続しております区間でございます。この十ミリの下り勾配にあります半径六百メートルのカーブ、曲線を出まして、この六百メートルの曲線と直線部分とのつなぎの緩和曲線の部分で脱線をいたしております。それからこの場合に、脱線は、この六百メートルのカーブに対しましてカーブの内側のほうに脱線をいたしておりますのがこの五月十七日の事故の概況でございます。
その次に、六月八日の函南−三島駅間の
列車脱線事故の
状況図について御説明をいたします。
線路の図は前回と同じでございます。一番上が上から本線を見ました図でございまして、まん中にございますのが断面図でございます。それから一番下に車が脱線いたしました
状況が略図で示してございます。この脱線をいたしました列車は貨物の第七四六五列車でございまして、車両が四十九両でございます。この列車は函南駅を六分三十秒おくれて通過をいたしました。この函南駅を通過をいたしましたときのスピードは五十八キロの惰行運転で函南駅を通過をいたしております。第四閉塞信号機、下りの第三閉塞信号機とともに進行信号を確認をいたしまして、観音松
トンネルの入口に差しかかりましたこのときの速度は約六十五キロでございます。この観音松
トンネルに進入いたしましてから、機関車のブレーキの圧力を示しておりますメーターがついておりますが、このメーターの針がわずかに振れましたので、このメーターから異常を感知いたしまして、非常ブレーキを使用して観音松
トンネルの中にこの貨物列車が停止をいたしました。
トンネルの入口から約四百二十三メートル入りましたところで停止をいたしました。
それで
状況といたしましては、この
トンネルの中に停止をいたしますとほとんど同時ぐらいに、あるいは若干前に電車線が停電をいたしたようでございます。ちょうどそのときに上りの第二列車が観音松
トンネルの中に入ってまいりました。この図で
トンネルの左側にちょっと首を出しております黒いものがございます。これが上りの列車でございまして、この第二列車の機関士がこの
トンネルの中ですれ違いました貨物列車の機関車のヘッドライトがだんだん暗くなるのを認めております。その後にこの行き違いました貨物列車の長さが短いということに気がついております。その直後にこの上り列車はATSが作用いたしまして、この
トンネルの中で作用をいたしましたので、制動ブレーキをかけましてこの
トンネルの中に停車をいたしました。それから一たん停車をいたしましたが、前後の状態がわかりませんので、最徐行で——この上りの第二列車は特急でございますが、最徐行で動きまして
トンネルを出たところ、
トンネルを出まして下りの貨物列車の脱線転覆の状態を見たわけでございます。順序が
あと先になりましたが、そういう状態、それが時間的な経過でございます。
それでその次に、この貨物列車の七四六五列車の脱線転覆をいたしました
状況でございますが、十三両目から二十二両、三十四両目までが脱線をいたしております。その状態がこの図面の下に書いてありますような
状況でございます。
それからこの脱線をいたしました地点の線路の状態でございますが、十ミリの下り勾配で六百メートルのカーブのところでございまして、この六百メートルのカーブの終わりごろのところで脱線をいたしております。この場合は、六百メートルのカーブの外側のほうに脱線をいたしております。現地の線路に残っております痕跡等を調べてみますと、一番上の図面のように、脱線地点と思われますところは一一五キロ七六八メートルの地点でございまして、ここで十三両目の貨車の前軸がこの地点で脱線をいたしているようでございます。この一一五キロ七六八メートルの地点で十三両目の前軸が脱線をしておるものと、いろいろな条件を調べてみますと考えられます。この一軸脱線をいたしましたような状態で六十メートルくらい走りまして、その後にこの十三両目の貨車のうしろの軸が脱線をしているようでございます。それで、分離をいたしましたのは、この図面の一一五キロ九六四メートルと書いてありますところで前のほうと分離をいたしております。この前頭の部分は、分離をいたしました後四百九十メートルくらい走りまして、先ほど申しましたような
状況で前頭部は
トンネルの中に停止をしたという状態でございます。
この事故の概況は以上御説明いたしましたようなことでございますが、この原因につきましては、ただいま鋭意調査中でございます。まだ調査中の段階でございまして、はっきりしたことは申し上げられない段階でございますが、脱線車両を調べてみますと、脱線車両のうちで車体の損傷の激しいものが四両ございます。そのうち、特に車輪あるいはその付近の付属品の損傷のはなはだしいのが、脱線車両二十二両の最前頭車でございます十三両目の貨車でございます。これは、ワムの七〇一一九号車でございまして、パルプ材の丸太を積んでおりますこの十三両目の貨車の損傷が一番ひどい、これが一番最初に脱線したのではないかと考えられます。
なお、この車両のうしろの軸と前の軸とを比べてみますと、前の軸の車輪の損傷がうしろ軸よりもひどい状態でございますので、最初に脱線したのがこの貨車の前軸であろうと考えられます。が、現在までこの車両の状態、線路の状態、この場合の機関士の運転の状態、それから積み荷の状態等をいろいろ詳細にできるだけ綿密に調査をいたしておりますが、現在の段階ではそれぞれの状態は、運転取り扱い、あるいは線路車両の保守の基準等と照らし合わせてみまして、特にその悪い状態が見つかっておりませんのが現在の段階でございます。今後なお調査を進めてまいりまして原因を究明いたしますが、現段階では、前回の五月十七日の事故と同じように悪条件が競合いたしまして脱線したものではないかと考えられます。今後もなお調査は続けてまいりますが、現段階ではそう思われます。
以上、概況について御説明をいたしました。