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1969-04-15 第61回国会 参議院 運輸委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十五日(火曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員の異動  四月十一日     辞任         補欠選任      藤田  進君     上田  哲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岡本  悟君     理 事                 江藤  智君                 金丸 冨夫君                 谷口 慶吉君                 瀬谷 英行君     委 員                 河野 謙三君                 佐田 一郎君                 菅野 儀作君                 平島 敏夫君                 前田佳都男君                 山崎 五郎君                 渡辺一太郎君                 上田  哲君                 加瀬  完君                 木村美智男君                 森中 守義君                 田代富士男君                 三木 忠雄君                 中村 正雄君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        運 輸 大 臣  原田  憲君        国 務 大 臣  菅野和太郎君    政府委員        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        経済企画庁総合        開発局長     宮崎  仁君        大蔵大臣官房審        議官       細見  卓君        運輸大臣官房長  鈴木 珊吉君        運輸省鉄道監督        局長       町田  直君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  山口 真弘君        郵政省簡易保険        局長       竹下 一記君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        日本国有鉄道総        裁        石田 禮助君        日本国有鉄道副        総裁       磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまから運輸委員会々開会いたします。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置案法を便宜一括して議題といたします。  質疑ののある方は順次御発言を願います。
  3. 森中守義

    森中守義君 国鉄に伺いますが、推進会議報告書の中で「第三次長期計画については改めて検討を加え、新たな構想に立ってこれを推進する必要がある。」、こういうふうに述べております。同時に、しばしば私が提起してきました、国鉄監査報告の中でもほぼ同様趣旨のことがいわれております。そこで、今回の特別措置法、この中で基本方針であるとか、あるいは再建計画だとか、こういうことが規定づけられようとしているのですけれども内容においてどうしても三次長計とぶっつかるところが非常に多い。しかるに、四十四年度予算の中に三次計画を一体どういう扱いをしようとするのか、少なくとも、三次計画と五十三年段階に至る再建計画との関係は一体どういうようにお考えになっておるのか、このことをひとつお伺いしたい。
  4. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 第三次長期計画は、御承知のとおり昭和四十年度から発足したわけでございますが、その後いろいろ輸送情勢の変化がございまして、再検討すべき段階になっておることは、先ほど先生のおっしゃった監査報告書並び推進会議意見書にも盛られておるところであります。実は御承知のとおり、推進会議意見書が出ましたのが、ちょうど十一月でございます。また監査報告書はその少し前に出ております。したがいまして、私どもといたしましては、推進会議会議過程におきまして、第三次長期計画改定という——検討と申しますか、改定というのはちょっと悪い、再検討といいますか、そういう角度から第三次長期計画考え直すということにいたしまして、新しい内容推進会議投資計画に盛り直した。そのおもな変更点を申し上げますと、大体第三次長期計画は、昭和三十八年度ないし九年度輸送実績を基礎としてつくったものでございますが、その後の道路の発達の状況その他から見まして、全国的に、たとえば幹線複線化するというふうなことは少しオーバーじゃないかというふうなことも検討いたしました。そのかわり機械化近代化投資重点を置く、あるいは大都市通勤輸送重点を置くというように、具体的に内容を相当こまかく検討いたしまして、そしていま先生お話しになっております再建推進会議の総括的な六ページの四つ項目にしぼりまして、新しい投資計画をつくった、したがいまして、そのつなぎが多少四十四年度にあらわれております。たとえば、いわゆる幹線複線化等につきましては、全線全部複線にしないでほんとうに困っているところだけを複線にするというふうなことで過般成立いたしました四十四年度予算におきましては、ちょうどその過渡期でございますので、過渡期的な投資内容に変更いたしております。
  5. 森中守義

    森中守義君 そうなりますと、その三次長期計画で選択をされた三本の柱、これは一体、長期計画途上において放棄することになるのか。いま副総裁の御説明からいけば、再建計画の進行の過程において手直しする、これに乗せ直す、こういうことのようですが、おそらくこういうものを採用されるのじゃないかと、こう思うのですけれども、大体しぼられている重点というものは、再建計画方向と三次長計方向とはかなり質的には変わっている。この辺のかね合いはどうされますか、それが一つ。  それから計画推進過程で乗せ直すということのようなんだが、すでに新しい年度が四十四年度の場合始まっている。しかるに措置法案からいけば、まず設置法の改正が必要である、設置法がかりに仕上がったあと基本方針ができる、それを運輸省国鉄に知らしめる、国鉄は答えを送る、こういう段取りなんですね。かなり真空状態が出てくるのじゃないか。この間におけるたとえば、工事の進捗であるとか、予算の投入であるとか、その辺のことはどうなんですか。四十四年にかかることは、それは問題だと思う。切りかえの時期ですからね。
  6. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 実は先生の御指摘の点、一番私ども苦労したところでございまして、ただ、幸い第三次長期計画は七年間計画でございましたので、一応前半が昨年の十月に一つの形としておもな工事ができたということになっておりまして、四十四年度からは現計画では五千億の投資ベースでやることになっておりましたが、五千億ということはとても国鉄財政状態からできないということで、これを四千億——大体三千七百八十億にスケールダウンいたしたわけでございます。したがいまして、第三次長期計画、いわゆる七カ年計画の後期三カ年間として、これから、四十四年から着手しようと思っていたことにつきまして、それをことに幹線輸送力増強地方幹線と申しますか、ことに一番問題は複線化でございます。大体全線複線化の予定で第三次長期計画は立てておりましたが、それを部分複線に直すということで改めまして、全線複線化いたしますにいたしましても、こう部分的にやってまいりますので、その点は四十四年度は、たとえば羽越線等になりますと、すでに着工いたしておりますところは、どうしても、たとえ第三次長期計画を再検討してもやらなければならないところを重点的に先に予算をつけまして、そうしてその後はしばらく今度の再建計画遂行途上検討し直すというふうにやったわけでございます。ちょうど四十四年度はその切りかわりのときでございましたが、幸い第三次長期計画を七年間前半四年と後半三年というふうに分けましたので、前半四年で大体できたところでございましたので、再検討がわりあいにしやすかったというふうな事態でございます。
  7. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、あとで、まあ実際問題として、いつ基本方針ができるのか、それに関連をする再建計画ができるのか、これはあと議論としまして、とりあえず、その第三次長期計画というものは、いつでも再建計画に乗せる用意がある、そうしなくてはならない、こういうふうに理解してよろしいですね。  そこで、長期計画の中で進行してきたが、残ってきた部門——少なくとも再建計画に乗せ直す場合にどの範囲手直しが必要なんですか。ちょっといま言われる御説明では、複線化という、こういうことは、大体わかりますけれども、もうちょっと具体的に——かなり三次長期計画というものは詰められたものだと思う。それが実行に移されておりながら、再建計画に切りかえるということになると、相当大幅な手直しになる。たとえば三つの柱のうちのどれかがダウンする、どれかが非常に突出をする、こういう現象も出てくるのじゃないかと、こう思う。その辺の調整をどういうふうにされるのか、もう少し詳しく御説明をいただかないと理解できない。
  8. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 簡単に申し上げましたので、あるいは御説明が不十分だったかと存じますが、第三次計画は、御承知のとおり幹線輸送力増強、それから安全対策、それから通勤輸送、この三つをおもな柱にしてやってきたわけでございまして、そのうちの幹線輸送力の中でも、たとえば東北線複線電化等につきましては、幸い昨年の十月の一日に完成いたしましたし、また北陸線につきましても、大部分がことしの秋までには完成する。まあこまかいことは省略いたしますが、線別に申しまして、何と申しますか、ほんとう日本の大動脈をなす部分幹線と、それからこれに次ぐ第二次的な幹線と二つあるわけでございまして、第一次的な、いま申し上げました東北線あるいは北陸線というようなものにつきましては、既定計画どおり昨年の秋、あるいは一部ことしの秋までに大体の幹線輸送力増強ができてくるということになります。それから、その残りの、たとえば鹿児島本線熊本以南、あるいは日豊線大分以南、あるいは山形県、秋田県のほうの羽越線というものにつきましては、それを部分的に複線化するというふうなことで、一番ネックになるところだけをすでに手をつけておりましたので、それは予定どおりやってしまう。しかし、全線全部複線化することは、これは少しそのテンポをおそくするというふうなことで、主として幹線輸送力増強のところで手直しをいたすのが一番適当かと、こういうふうに存じまして、あと通勤輸送安全対策既定計画どおりというふうな手直しが、今度の四十四年度移り変わりの時期に行なわれていくわけでございます。
  9. 森中守義

    森中守義君 さっきお示しになった再建計画投資計画、これが四項に分かれているのですね。つまり、都市間旅客輸送、中長距離大量貨物輸送大都市通勤通学輸送合理化安全対策、まあこの四つに分かれている。そこで、いままでの三次計画の選択された三つのものとは、さっき申し上げたものはだいぶ質が違う。そこでこの問題は、構想がまとまっているのかどうか、よくわかりません。おそらく、まとまっていなければもううそだと思うのだけれども、これをひとつ四項目別に、三次計画と合わせてみればこうなる、どういう相違点が出るのか。どこに重点を置くのか。しかも、その再建計画の中では金額を示しているわけだ。で、それと三次計画の中に盛り込まれた資金計画、これと対比しながら、一ぺん資料で出してほしい。少なくともこれはこの案件審議の大きな素材になると私は思う。早く出せますか。
  10. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) その点は、いま先生のごらんになっております推進会議意見書の六ページのいわゆる投資内容、三兆七千億になっておりますが、これと、それから——これは大体年間三千七百億になります、平均いたしますと。それから三次計画はさっき申しましたとおり、あとの三年は大体五千億で組んでおったわけでございます。そこで年間千三百億くらいのスローダウンということに相なったわけでございますが、その部分は大部分をさっき申しました幹線複線化というところに充てまして、その他の安全あるいは貨物等につきましてはおおむね三次計画どおりでございますが、若干の入り繰りがございますので、これはなるべく早く三次計画の原案と対照いたしまして、多少分類が違っている点がございますので、たとえば「都市間旅客輸送」などはこういう表現になっておりますが、三次計画のほうにも入っております。その項目別の入り繰りが多少ございますので、これを整理いたしまして、なるべく早くお手元にお届けいたします。
  11. 森中守義

    森中守義君 運輸大臣、この特別措置法の中で基本方針、それから再建計画、これはまたあとで大きな問題になりますが、この前、中村君から問題が提起されておったのと同じ趣旨において、法案成立をしたあと基本方針をつくる、しかして再建計画をつくるというふうに——いま実はその三次計画の問題でもこういうものが一つの案として出ておれば、あまり審議に難渋を来たされない。率直に申し上げて、一体何が基本方針として再建計画をやろうとするのか、全く五里霧中ですよ。まことに国会に対する法案提出の方法としては不親切だと思う。  そこで私は、先般のお尋ねに対して、いやそれは設置法成立し、しかもそこが総合運輸政策をつくるために審議会をこさえる、それが参謀本部なんだから、それができたあとでこういうものをやるのだと、こういうことなんですか。設置法状況はどうなっているのですか。ある意味では、これは通行税とやや似たような性格を持っている。設置法が通り、それで参謀本部ができて総合政策を詰めていかなければ、こういうことは軌道に乗らぬと、こう思うのですよ。その点どうなんですか。
  12. 原田憲

    国務大臣原田憲君) いま森中さんのお話しは、総合的な今後の交通問題等につき、それと関連して御質問がありまして、それで今度、内閣委員会提出しております中に政策審議会というものをこしらえておる。そこで今後全般的な交通という問題について、もう参謀本部として考えていくのだということは申し上げました。これがなければこの基本計画というものは立てられないということは私は申し上げておらないのであります。したがいまして、先般から何べんでもお答えいたしておりますことは、政府は、法律が通らなければ、私どもはかってにやるということはできません。法律というものが通りまして、これは国の意思でございますから、この意思に基きまして、基本計画というものを出して、国鉄にこれに基づいて再建計画を出しなさい、こういう順序になるわけでございますが、その基本的な考え方というものは何だ。これはたびたび申し上げておりますように、国鉄というものが今後果たすべき役割りは何か。これは都市間の旅客輸送である。中長距離貨物輸送である。あるいは大都市におけるところの通学通勤輸送である。こういうものは基本的に今後国鉄が背負ってやっていくべきものである。これが根本であろうと、それに基づいた今度は国鉄自身計画というものを出していくと、こういうことになるということを申し上げているのであります。
  13. 森中守義

    森中守義君 よくわかりました。そうなると結局、設置法とは関係なしに計画ができるということであれば、先ほど副総裁にも申し上げたように、すでに新年度は進んでおります。そこで大体、閣議に対していつ決定を求めるんですか、その時期はいつですか、それと内容。少なくともこれは時間的にかなり制約を受けるものです。少なくとも現状において十カ年計画再建計画の初年度のすべり出しの時期ですから、大体の構想はまとまっていると思う。それを出してもらわなければ——たたき台になるような素案でかまいませんよ。素案もありません、これからやりますでは話にならぬ、あればひとつお示しいただきたい。私は、設置法成立を待ち、それで参謀本部をつくったあとでこういうものだという理解のしかたをしておったものだから、その時期がいつなのかということが疑問でもあったのであるけれども、いま大臣は、そうではない、必ずしもそれにこだわる必要はないし、すでに運輸省では基本計画の策定、こういうことでやるということなんだから、もうすでにその年度は進んでいるわけですから、いつ閣議決定を求めようとされるのか、その大綱は何なのか、ひとつ素案をお示しいただきたい。
  14. 町田直

    政府委員町田直君) 国鉄財政再建特別措置法によります国の施策閣議決定による国の基本方針につきましては、法律が通りましたら、通り次第できるだけ早い機会に国の方針閣議決定いたしたいと、こう考えております。そしてその国の方針国鉄に示しまして、国鉄からはそれに基づきまして具体的な十年間再建計画というものが出てくるわけでございます。それにつきましては、ただいまの考えでは、おそらく作業等がありますので数カ月はかかると思いますけれども数カ月の間には出していただくと、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから閣議決定をいたしたいと思っております国の基本方針は何かという御指摘でございますが、抽象的に申し上げますと、国の施策といたしましては、いろいろすでに御議論になっておりますけれども法律にも大体書いてございますが、国、地方公共団体財政措置とか、あるいは、これもいろいろ議論がございますけれども国鉄合理化に伴います赤字線の問題、あるいは新線建設方針、それから公共負担をどうするかというような問題、あるいは国鉄業務範囲が問題になっておりますが、その業務範囲についてどう考えるか、それから運賃料金制度の中でこれをできるだけ柔軟な運用をいたしたいと考えておりますが、そういう問題、あるいはいま御指摘がございました総合的な交通体系の中における国鉄考え方、位置というようなものを主として考えたい。それから国鉄措置といたしましては、業務合理化の問題、あるいは輸送近代化合理化の問題、収入の確保の問題、それから施設の整備の問題というような国鉄自身のとるべき措置の基本的なものを閣議決定いたしたいと、こういうふうに考えております。これらの方針に基づきまして国鉄が具体的な十年間計画を立てるということを考えておる次第でございます。
  15. 森中守義

    森中守義君 これはないものを出せというのもはなはだ失敬千万なんだけれども、私は率直に申し上げて逆だと思うんだな。出した法案ができ上がればそういうものをつくりますというのでは、あまりいい表現じゃないけれども国会審議権に対する何とも言いようのない一つの手落ちですよ。私はそう思う。本来これは考えられるのは、なるほど形としては法案が通ってからだと、そういうことになろうかと思うんであります。しかしおおむねかくかくの内容のもとに基本方針をつくり、その趣旨に基づいて国鉄再建計画を求めるんだという大綱的なものはお示しいただかないと、ただ法案をひとつ審議してくださいよではちょっと話にならない。これはひとつ運輸大臣、将来の問題でもありますが、大体そういったような法案提出のしかたというのは、国会側としては求めませんよ。本来ならば、あのあたりでちょっと一服させてもらって、もう一回練り直せ、考え直せというところですよ。しかし、それは数日前から何回もやっているから、あまりやっていると、議事引き延ばしをやっていると言われちゃ困るから、そこまでは言いませんが、少なくとも正常な法案提出のしかたじゃない。国会に十カ年間にわたる再建計画を求めようという、より親切な、より建設的なやり方とは私は思わない。しかし、それはそれとして、いま町田鉄監局長からまことに大ワク的なことを言われたわけですが、これはやっぱり特別措置法審議するには、そういうことがある程度内容的にわかっておんりませと、内容のないものをやってもしようがない。そういう意味でいま確かに言われたわけですから、しかも推進会議報告書が出たのは、去年の十一月です。それからいろいろと話を詰めて、法案整備にかかられたのも相当前じゃないかと思う。したがって、そういうものを内容にして基本方針をつくり、再建計画国鉄につくらしめるというその段階においては、あらかたの構想がまとまっている。だから、がっちり固まっていなくても、大体の構想はこうなんだ、その程度のものを出さなければ、これは話にならない。どうですか、出せますか。そういうものが出てこなければ、幾ら特別措置をやってくれと言っても、概念としてはわかるけれども、やはり十年間にわたって運輸委員会責任を持たなければならぬ。運輸省または国鉄責任でもありましょうけれども、これの審議に参画をしたこの運輸委員会責任でもあります。いやしくも私はそういう無責任なことで、この法案審議をしたくない。したがって、これは午後なり明日なりに出せますか。
  16. 町田直

    政府委員町田直君) ただいま簡単に口頭で御説明申し上げましたが、繰り返して恐縮でございますが、これは法案が通りましてから閣議決定を求めるものでございますので、運輸省考えておる考え方ということでございましたら、お出し申し上げられると思います。
  17. 森中守義

    森中守義君 それは皆さんの言われるたてまえが閣議決定が一番最初のようですから、行なわれていない先に出せと言ってもしようがないが、それは運輸省の見解でもいいし、あるいはぎりぎりの積み上げたものでなくてもいい。大体審議としては、こういう方向にあるのだというそのとらえ方をしなければなりませんから、それでかまいません、これを出してくれますか。
  18. 町田直

    政府委員町田直君) できるだけ二、三日のうちにお出しできると思います。
  19. 森中守義

    森中守義君 二、三日うちということですが、できるだけ早く……。  そこでその話は、その時点に譲るとしまして、総理が見えたあとで少し詳しく聞きたい点もありますが、部分的になりますけれども、ちょっと国鉄お尋ねをしておきたい。  再建会議試算表が出ていますね、この中で合理化による経費節減額が四十四年度において四十九億、四十五年が百二十八億、四十六年が二百五十八億、四十七年が四百十九億、四十八年が五百八十九億、四十九年が八百三十一億、五十年が一千百二十八億、五十一年が一千五百十八億、五十二年が二千三十四億、最終年度が二千七百四十一億、総額九千六百九十五億という数字が出されている。むろんこれには赤字線問題等も含まなければ、こういう高額な数字は出ないと思う。そして赤字線に対して、むろんこれも基本方針あるいは再建計画のワク内における問題ではありましょうけれども、この数字を出すためには、決意としては赤字線の廃止をやらざるを得ない、こういうふうに受け取らざるを得ないんだが、そのとおりかどうか、しかも、それによって九千六百九十五億の中でどの程度のファクターを持ち、また残余のものは大体どういう内容のもとにおける合理化節減なのか、ひとつ具体的にこの点をお尋ねしておきたい。
  20. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) これは試算でございます。先生のおっしゃったのは試算でございますが、いろいろ前提が含まれておりますが、一応前提は省略いたしまして、内容だけ申しますと、まず節約でございます。これは一応収入経費等試算をいたしましたが、なお修繕費等については節約をしなくちゃいかぬという意味で、節約を相当見ております。それから、いま先生のおっしゃったとおり、ローカル線につきましても、諮問委員会で出しましたが、一応八十三線について検討しております。ローカル線によるこの経費節減額は、この九千六百億のうち、約千五百億でございます。まあ、これは非常な試算でございますし、それから、その中には、ローカル線に従事する職員のベースアップ等を含めまして、全部で合計五十三年度まで十年間で約千五百億というふうに見ておるわけであります。
  21. 森中守義

    森中守義君 これはなるほど前提があり、しかも試算だということですけれども、まあ私のその認識では、たとえば今回の運賃改定法案にしろ、あるいは特別措置法にしろ、すべて報告書が中心になってるんですね。したがって、その限りにおいては、なるほど表現試算であるけれども、大ワクとしてカテゴリーをはめていますよ。したがって、最終的にはこれがびた一文というわけにはまいらぬでしょうけれども、おおむね数字としてこの金額が確保されなければ十カ年の再建計画はできない。いわんや五十二年度段階からやや黒字に転ずるというんだが、非常な私は問題だと思う。で、そこでかなり脅威的な数字としての合理化節約というのは、これはもう簡単に赤字線といっても、そう簡単にいきませんね。しかも企業努力というのは、企業内における合理化節減といっても、これは限度がある。したがって、私はぎりぎりこの数字が最終的にはまってこないと再建はできないという認識に立つ限り、この合理化はできるのかどうか、その自信があるかどうか、こういうことを非常に注目せざるを得ない。できるのですか。
  22. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 先生の御質問は、たいへん私どもといたしましても大事な点でございまして、ことにこの経費節減額のうちのいまおっしゃった赤字線の問題、これはまあ九千億のうち千五百億ではございますけれども、あの問題以来非常にいろいろ派生的な問題が起きております。しかし私のほうといたしましては、これに書いてございますとおり、やはり鉄道では輸送力がオーバーである、設備的に鉄道が過剰投資であるというところにつきましては、できるだけ地元の方々の御理解を得て赤字線を、ローカル線合理化していくということは、ぜひやはりやらなきゃいけないし、これはどこの国でもやっていることでございますので、われわれの努力でできるだけのことはやってまいりたい。しかし、その努力の限界があるだろうというふうに御質問がございましたので、その点につきましては、確かに限界があると存じます。しかし、限界を見きわめることなしにできるだけ努力してまいりたい。そしてまあ、どうにもこうにもいかなくなったときは、そのときのことだということになりますけれども、私どもといたしましては、できるだけの赤字線合理化はやらなきゃいけないということを信念的に考えております。
  23. 森中守義

    森中守義君 これはなるほど気持ちとしてはわかるのです。人間のやることですから、コンピューターではじき出すようなわけにはいかぬでしょう。ただしかし、はっきりしておきたいのは、要するに九千六百九十五億ということは、再建計画のこれこそ政府財政措置、それから施策増収、それで償却前、償却後というものを勘定してみてはじき出された金なんです。これが出てこないと再建にならぬのです。だから、私はこれは試算だという逃げ方は、これはそうですかというわけにはいかない。かなりこの試算は、なるほど文字としては試算になるだろうけれども拘束力を持っている、このとおり進めていかなければならないという前提に立つなら、九千六百九十五億という巨大な企業内における節減というのは、はたして可能性があるのかないのか。そうなると、いや努力すると、しかし限度があるからできなければしょうがないんだというならば、ちょっとやっぱりこの再建計画審議段階においてはどうしてもいただきかねるお答えなんですね。ですから、くどいようですが、九千六百九十五億の中に赤字線の廃止も入っている、それは強行するのかしないのか。しかも、それによってどのくらいの数字を見込むのか。残余のものはいわば国鉄内部の企業節減ということになるでしょう。しかし、それはまたいろいろ態様があるでしょう、この企業合理化ということになると。さらに、あとでも問題にしますけれども総裁、副総裁あるいは理事諸君の一方的な意思によってできないものがたくさん出てくる、非常にむずかしい。そういう要素がいろいろ重なっている中にできるのかできないのか。むろん一方的にできない、それじゃあ片側に対してどういう対応措置をとるのか。その辺のことまでも実はこの際は議論を発展させておかないと、なかなかこの数字がとらえられない。私は率直に言って、やや冒険に近い、できないだろう。そうなると事実上再建計画というものは出はしたが、五十三年段階は自己満足にとどまって、さらに五十五年あるいは六十年段階にエスカレートするのではないか、非常に悲観的な見方を私はしておる。だから、その辺のことをあとでもう少しこまかな議論もしますが、大綱としては赤字線、それによってどのくらい金額が出るのか、残余の企業内の努力というんだが、それは一体どういうことなのか、もう少し詳しくお尋ねしておきたい。
  24. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 先ほど私の答弁がたいへん足りませんで、だめになったらしようがないというふうにもしおとりになったら、これは表現の不足でございますから。これはそういう意味でなしに、できるだけやるということを申し上げたのを少し強く申し上げ過ぎたのですが、その点は私どもといたしましては、いまの赤字線の問題は、いまの九千六百億のうち千五百八十億でございます。これは計画といたしましては大体年度別に必ずしも平均していない。初めのうちは確かに非常に困難でございます。したがいまして、だんだん初年度、次年度というふうに徐々にこれをやっていく。そのうちに道路計画等も相当進捗してまいりますし、実際にそのモータリゼーションも相当進んでまいるというふうな客観情勢の変化も相当ございます。それらを勘案いたしまして、大体年次別に一応初年度からずっと下半期までにだんだんふえていくと申しますか、合理化を強化していくという方法でやってまいりたいということで、これは私どもといたしましては極力地元住民の協力を得て実行してまいりたいということを思っておる次第でございます。一方、国会の席上におきましても、決して地元住民の意思を一切無視して合理化するということもできませんので、これは私どもの努力以外に何ものもないということを痛感する次第でございます。  その他企業内の問題につきましても、先生おっしゃるとおりいろいろな問題がございます。これにつきましても、やはりわれわれこれからのきびしい国鉄再建の途上にある責任者としてのわれわれに与えられた使命を十分考えまして、やはり全力をあげて関係者を説得する以外に、そうして協力さす以外にないということを考えておる次第でございます。
  25. 森中守義

    森中守義君 それはあとでもう少しいたしますが、この場はそれで一応終わっておきますが、この九千六百余億の中で、つまりまあその合理化節減ということなんだが、特に私はこの際問題にしておきたいと思いますのは、資産充当がかなり長期的かつ計画的にございます。大体手持ちの財産幾らぐらい持っているのですか。
  26. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 固定資産としては貸借対照表上約三兆ございます。しかし、このうちほとんどはやはり現実に国鉄資産で使っているものでございまして、大体、資産充当になる。いままで多少年によって増減はございますけれども、十億ないし二、三十億のところで資産充当をいたしております。今後こういったものが全然不用資産であるかどうかということにつきましては、相当問題だと思う。しかしながら大体、たとえば線路をこう場所を変更すれば、もとの線路の土地が要らなくなるというふうな問題もございますし、たとえばいまわれわれとして直接使ってないところで一番大きなところは、駅前の広場でございます。たとえば東京駅の駅前は約一万坪の土地がございます。これは資産に入っておりますが、これは一切国鉄として使えない、公共用に供しておるところでございます。こういった問題を今後どうするかなどにつきましていろいろ考えまして、大体年間今後三十億ぐらいの資産充当をしてまいりたいということを考えております。
  27. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  28. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記をつけて。
  29. 森中守義

    森中守義君 総理に少しお尋ねしたいと思います。今日の日本の産業に三つの斜陽産業があるといわれる。一つは石炭、一つ国鉄一つは米。まあこういうところまで今日の国鉄は落ち込んでしまっているわけですね。そこでこれはどうにかせにゃなるまいということで推進会議を提唱してその報告書を求められて、再建計画が今日一応国会に出されているわけですけれども、要するに三十五、六年段階における高度成長政策、その計画の当初において、一体、十カ年あるいは長期にわたる国家産業あるいは国家経済の動向というものの中に、一体、基幹輸送としての国鉄はどういう地位を与えるべきであるか、輸送体制はどうなければならぬかということがまあ遺憾ながらワク組みの中になかったわけです。それが今日の私は国鉄の状態だと思う。ついては、やがて基本方針あるいは再建計画というものが、法案がかりに制定をされたとするならば始められるようですけれども、まあ将来としてどういうようにお考えですか。少なくとも過去に対するひとつの反省があってもいい、こういうように思うんです。  それで具体的にその内容として問うておきたいと思いますのは、すでに新全国総合開発計画のプロジェクトがもうできている。すでにもう計画に入っているという。これはしかも六十年段階をにらんでいる。しかるに国鉄再建計画は五十三年、ところが新しいプロジェクトは六十年をにらんでいると、こういうわけですよ。しかるに再建計画の中には、まあそういう将来の展望を求めるとはいいながら、具体的に新総合開発計画とどういう対応性を求めるかということは残念ながらまだ明確でない。しかも最近出された河出英治という人の所説によれば、大体仙台から博多に至る中枢管理機能の中に新幹線的なものがやや国鉄の問題として表明されているにすぎない。一つも具体性がない。私は率直に申し上げて、五十三年に至る単なる再建計画ではもう間に合わぬのじゃないか。しかも、五十三年過ぎたあと国鉄をどうするかということは、またこれからだということかもわかりませんけれども、あまり運輸大臣からも総理からも、先般の本会議における木村質問に対しての答えとしても明確でない。少なくとも、将来にわたって高度成長政策の中における失敗があるわけだから、政策を展開する中にはこういうものが当然求められなければいかぬと思うのですが、一体、総合的な運輸・交通政策を総合開発という時点からとらえる措置はどういうようにお考えでしょうか。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 森中君の質問はたいへん簡単な質問なんですが、実はただいまお尋ねになりましたその中に国鉄の悩みそのものが入っているわけでございます。まず第一に斜陽産業、こう言われております。私は国鉄自身必ずしも斜陽産業、このようには考えておりません。ただいま国鉄のこれから交通機関として果たすべき役割り、これはなかなか見のがすことはできない。だから、いわゆる斜陽産業として取り扱うにしてはこの使命はあまりにも大きい。しかしながら、とにかく最近の経済発展は目ざましい。その経済発展の目ざましいものに国鉄がついていってない態勢にある。これは確かにただいま御指摘になりますように反省すべき問題だと思います。これはもっと国鉄自身が最近の経済動向を見ておくれをとらないように、こういうことで常時気をつけていたら、今日のような非常に目に見えてのきびしさ、それをはずすことはできたのじゃなかろうか、こういうふうにも私は思います。申し上げるまでもなく、この鉄道がいろいろに言われましても、通勤通学輸送、これはやはり国鉄でなければ果たせません。貨物輸送も近距離貨物は別として、中距離、長距離貨物輸送、これまた国鉄によらなければならない状況にある。さらにまた都市間の交通というようなことを考えると、これはやはり国鉄で果たす。これが最も大衆性があり、高度の利用を持つもの、かように思います。あるいは人によりましてはもっと日本は飛行場によってやるべきだ、もっと飛行場があり——アメリカの一州あたりと日本の面積と大体匹敵するんだが、そういうことを考えると飛行場の数はもっとあっていい、このほうに旅客をもっと取られる。こういうことを指摘する人もありますけれども、いまの国内の航空網から見て、はたして——幹線等が果たしておる役割り、これはもうたいへんなスピードアップをしております。私はやはり料金・運賃等も大衆的である。こういう意味において国鉄が果たすべき役割りは非常に大きいんじゃないか。また、そういうところで今日私ども目をつけて伸ばしていかなければならぬ。まあエネルギー革命におくれをとった石炭と一緒にされたのでは、これは国鉄の使命はとんでもないことだと私は思います。だからこそ、まだ国鉄の使命はかなり重大なんだ。ここでおくれをとらないで、おそいけれども今日十カ年計画を立てよう。そしてその長期計画に乗せてその機能を果たしていく。こういうことをひとつ考えていきたいというのが、いまの再建計画だと思います。  御指摘になりますようにもっと長期計画を立てて、そうして真剣に取り組んでいく。国民のためにかくあるべきだと私も考えます。でありますから、いまの長期経済開発計画等におきましても、道路同時に鉄道、この二つがやっぱりその根幹、骨格をなすものだ、かように思います。通信のコミュニケーション、広い意味においてのコミュニケーションの整備、そういう意味ではやはり鉄道は忘れられないというのがいまの状況ではないかと思います。その点をただいま森中君御指摘になって、もう少し長期にわたって考えを立てておかないといかないのじゃないか、私はさように思います。しかし、現在、あまり将来の変化、これをいろいろ考えましても、想像できる範囲で一応対策を立てる、こういうのが審議会、調査会等で結論を出したゆえんであろうと思います。石炭の場合は過去三回もいろいろ基本的な対策というものが示されました。しかし、十分な効果をあげることができなかった。今回の鉄道の場合でもああいうことがあってはならない、だからひとつ思い切ってこの際、抜本的な考え方にひとつ徹しよう、これが鉄道当局の考え方でもあるし、また政府自身もそういう意味でこれと取り組んでおるのであります。  申すまでもないことですけれども、道路の発達は先ほどの航空路の開発と同時に、たいへんなことだと思います。道路が非常に開発されれば、当然近距離旅客はそちらに取られるだろうし、貨物輸送のあるものはトラック輸送に適する。しかも、これから大きなトラックがどんどんできるでしょうから、そういうことも考えれば、貨物輸送もそちらへ取られる。だから中長距離貨物輸送、これはやはり鉄道にたよらなければならない、こういうことを指摘したのであります。まあ四面海に取り囲まれているとはいえ、海上輸送、その面ではあまり今日は鉄道と競争するものはなくなっておる、かように私は思いますけれども、それにいたしましても、空、陸、海上、この三つが総合輸送力としての鉄道とあわせてどういうようにやったらいいのか。また同時に、私が申すまでもなく、鉄道に対しては、一般会計からのずいぶん補助も、今回はいままでの固いからからそれを破って、そして政府もこれに積極的に援助しよう、こういう形になりましたが、しかし道路整備、港湾の整備あるいは空港等の整備について、ほとんど利用者負担というものは考えられておらない。最近の高速道路については、利用者負担というものも考えられますから、これからの道路、港湾、こういうものについてもいままでとは負担形態も変わるだろう。そこらに鉄道自身も競争し得る基本的態度ができようかと思います。しかし私ども、今日鉄道自身が非常な苦労をし、そうして国民大多数の要望にこたえていきながらも、その輸送の目的を遂行しておる。国民もやはり鉄道当局に対しまして、感謝というか、そういう気持ちがあってしかるべきではないか。そしてその産業は国の交通の大宗とでも申しますか、一番大きな幹だと、こういう意味でやはり守り抜く、そういう立場に立ってただいまの問題と取り組みたいものだ、かように私は考えます。
  31. 森中守義

    森中守義君 たいへんお忙しいようで、そう長々質問ができませんが、私が斜陽という表現を使ったのは、本来的斜陽じゃない。総理にたいへん失敬な言い方になりますが、結局、政府施策が悪かった、ことしは思い切って金を入れた、こういうことなんだけれども、おそすぎたのですよ、おそ過ぎた。もうちょっとなぜ早くしなかったのか、これが一つのあれになると同時に、私は具体的に新全国総合開発計画というのは、もはや現実の日程にのぼっているのです。企画庁の総合開発局において、すでに着々と準備が進んでおる。これは総理が一番、支持されたわけで、御存じのとおりです。そういう総合開発計画の中で国鉄の位置づけをどうするかということが、過去の経験に徴するならば、当然採用されるべきであろう、するのかしないのか、こう言っているのです。  いま一つは、なるほど貨物収入のことをずいぶん気になさってのお話のようですが、これは磯崎総裁の説によれば、石炭の輸送が最高のピークにおいて四千五百万トン年間輸送した。それが、今日はすでに三千万トンに低下したのが貨物輸送収入が激減をした最大の理由である、こういうふうに指摘をされている。こまかな数字を私はよく存じませんけれども、なるほど概念としては石炭が傾き始めて、四千五百万トン、それが三千万トンになったということは、まさにこれは大きな打撃であろう。しかしこのことをよく考えていけば、やれ新産都市だ何だかんだというわけで、コンビナートがつくられた。これらは産業の立地条件からいってなかなか簡単でありませんよ。むしろ内航運にそのほうは取られるという可能性が強い。それならば単に旅客運賃収入のみに依存をして、そのために輸送政策をとるということでは、やはりこれは私は限度がある。そうなれば貨物に対していま少し新しい方策というものが生まれてもいいじゃないのですか。これはまあ非常に具体的なことになりますけれども、確かにその通運事業をいま通運事業法によって禁止されている。そこまでワクを広げて国鉄の営業の拡大をはかるというのも一つの方法じゃないかと思うのです。それがたとえば一般運送業者に圧迫を加えるとか、いろいろ問題はあるでしょうけれども、しかしほんとうに将来の国鉄、しかも独立採算をより完ぺきなものにしていくには、しかも公共性をだんだんと高めていくにはそういう方策をとられていいのじゃないか。したがって、そういうことを検討するに値するものなのかどうなのか、それが第二点。  それからせんだって、これは運輸省では大体否定をされておるようですけれども、何か設備会社的なものをつくられるような構想日本経済新聞に出されておる。今月の八日の夕刊ですね。交通施設整備株式会社構想というものが運輸省の中にある。次の国会法案を出すというわけで、かなり内容的に興味ある問題の提起だと思いますね。そこでいま国鉄の中にむろん表立った議論ではないでしょうけれども、第二国鉄、第一国鉄というように分離したらどうかという一つの方法論が存在をするようです。これらのことをあわせながら運輸省——事実であるかどうかこれは別な問題として、日経による限りこれは、私は一つの方法であると思う。そこで今日の過密状態の中に一体どういう輸送体制がとられているかということは非常に重大な問題だと思う。ですから、この際一つ構想として、あくまでもこれは私の単なる思いつきにすぎないけれども、首都圏等を中心にした、国鉄とは別個な体系をつくり上げるというようなことはいかがなものかという、これも一つの発想として考える。運輸省のこういう計画等もあわせながらですね。その辺のことは総理はどういうようにお考えでございますか。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま貨物の大宗である石炭が非常に減った、一千五百万トン。これをキロ兵輸送距離等をかけてみれば、いわゆるトンキロからいったらこれはたいへんなことだと思います。国鉄一つの大きな悩みだと思います。それにかわるような新しい貨物が見つかるか見つからないか、そこに問題がある。ことにまたこの石炭輸送のために設備したもの、それはもう全部役に立たないというか、使えない。そこにたいへんな損失がある。まあ森中君も御承知のように、九州——私がちょうど若いときの筑豊炭田、もうそこらの施設は、全部使えなくなっている。これはたいへんなものだと思いますね。だから、同時に、そこらの港湾施設もそうでしょう。これにうんと投下したが、それがいま使えなくなっている。こういうところにも原因があると思う。しかし、これはもうエネルギー革命から生ずる事柄で、それにかわるような何かないか、そういうようなものをいろいろ鉄道でもさがしておることだと思います。一般の問題として、こういうものがなくなった。そうしてその他には、コンテナ輸送ども始めた、そこらにも新しい分野は見つけておると、かように私は思います。あるいはまたパイプ輸送というようなものは考えられないものか——これは具体的にひとつ考え得るのではないかと思います。けれども、まだ、鉄道自身はそれをやっておるわけじゃありません。新しいものとしてどんなことが考えられるか、これはいま当局自身が頭をひねっている最中だと思います。まあ私の持っている知識は、これは古いので、ちょっといまの時代には通用しない。とにかく近いうちによほど変わる。  そこで、いま、通運事業をやったらどうかというお話であります。私は、どうも兼業として適当なりやいなや、これはよく検討しないと、ちょっと鉄道のような輸送形態から、その末端の整備にみずからが経営していいかどうか、うまくいくかどうか、私はちょっと疑問だと思います。しかしながら、これはやっぱり、この鉄道輸送と一体となって考えなきゃならない問題だと思います。別会社にいたしましても、鉄道との関係は十分密接でないと、これは十分の成績をあげることはできない。通運自身が主体のものになりまして、鉄道輸送は通運事業を助けるために使われるというようなかっこうになったら、これは本末転倒になるのです。最近、ややそんな形が出ているのではないかと、私は、実は心配をしています。だから、いまのように、通運事業を兼業したらどうかというようなお話が出るのじゃないかと思います。ここらに、まあ本末転倒をしない考え方が必要じゃないだろうか。  で、その次は、設備投資会社、これを一応何かよさそうにも考えられるものだと思いますが、私は、いま申し上げるように、どうも、これもこれもどんどん分離し、そうしてその経営上のいろいろな負担をあとで鉄道自身が引き受けていく、これはむずかしいことだろうと思います。いままだ聞いておりません、この設備会社自身は。しかし、いま聞いたところで、ちょっと飛びつきにくいんじゃないか。それよりも、もっと本格的に鉄道自身のやるべきことがあるんじゃないだろうか。いま新線建設を別会社でやっております。これもいろいろ今回のような事態になってくると、問題になってくる。どうも鉄道自身がもうからないところに新線をつくる。そういう意味で、その建設費の負担までは困るというので、実は、建設会社ができているのだと思います。そうして、資金の調達は別会社でやる。しかしながら、でき上がった後にはこれを国鉄が引き受けなければならぬ。まあ赤字線というか、そういう意味のものになる。しかし、これは前から鉄道は開業して十年くらいは大体赤字だ、そのうちペイするようになるのだということがいわれておりますが、開発路線はそうしたものじゃないかと思います。でありますから、あの鉄道建設会社を全部やめろと私は言わない。しかし、その路線の選定、これについてはやはり慎重でなければならぬのじゃないか。まあそういう意味では国会ども線建設について積極的にやはり協力することが必要だろうと思います。私どもいなかへ参りますと、鉄道の建設よりも地方開発、それに特に重点を置いて、何とかこの地方を開発したい、それにはまず交通整備することだ、一番先に言われるのがそうであります。しかし、最近は必ずしも地方開発は鉄道だけによるわけじゃない。鉄道にかわる道路の整備もできるし、また鉄道によらない自動車交通、そういうものも考えられるから、鉄道の建設と道路開設と両方あわせてその地方に有用な交通機関を整備する、しかも国として効用のある方向をとる、これが望ましいのではないかと思います。  それからもう一つ最後に、この首都圏を中心にして交通整備したらどうか、こういう御提案がありました。これは私の考えお尋ねとやや違うかわかりませんが、私は、政界入りをした当初、吉田内閣時分に、吉田さんが非常に国鉄の民営論者、非常に強い民営論者なのですけれども、そうして、佐藤、おまえは鉄道出身だから、いまの形態をいいように思っているが、どうして民営ということを考えないのか、ひとつ小林一三君のところに行って考えを聞いてこい、こう言われたことがあります。そこで私が一夜行ったのですが、小林一三君が北海道の開発の上において鉄道全部を引き受けるとおっしゃるなら、ひとつやらしてみましょう、おそらく小林一三君は反対されるだろう——私がその話を持っていったら、案の定、実は反対をされました。そんな開発途上にある、これからうんと開発しようというそんなところで鉄道はできない、やはりもうかるところでなければ困ると言う。民間では実はそういう話なんです。いまやはり鉄道はもうかる路線、もうからない路線、もうからない路線はやめろという話が審議会等で出ておりますけれども、私、これは極端な言い方をすると、公共機関がエゴイズムになる、そういうことは許されないと実は思っております。そこでいま提案されたところは、あれはおそらく一番いいところだろう。しかしずいぶん投資もかかります。最近の地価の高騰等から見まして、はたしてどんなになるか、採算はどんなになるか。いまある鉄道そのものを国鉄から分離して新しい会社をつくれとおっしゃならば、あれはあまりにも国鉄の負担を他の場所で重からしめる、こういうことにもなるのじゃないかと思います。やはりもうかる路線ともうからない路線、それを合わして初めて国鉄は国家的な使命を果たしつつあるのだと、かように実は思います。でありますから、非常に極端な赤字、将来の見込みのない線、こういうものについては私は思い切ってこれを削除するも、国家百年のという立場に立つと、それが望ましいかもわからない。しかしながら、いま一番いいところだけを抜いて、そうして経営形態を別にする。これは国鉄の使命遂行上もたいへんな問題だと、だから、そういうことはあまり軽率には考えられない。慎重の上にも慎重にやっていきたい、実はかように思います。どららかと申せば、ただいまの御提案については私はやや賛成しかねる、こういうように思います。
  33. 森中守義

    森中守義君 あと質問者がおりますので、二点だけお尋ねしておきます。  一つは、先ほどから運輸大臣あるいは国鉄総裁、副総裁ともいろいろお話を申し上げておったのですが、推進会議試算ですね、これは表現試算なんだけれども、率直に言って、これはまあ非常に固められたものである、こういうように私は考える。なぜかならば、これにかわるべき国鉄再建の試算をされたものが政府にないのですね。で、しかも出された措置法案にしても、あるいは運賃改定法案にしても、すべてこれに準拠しておる。そこで問題なのは、どうしても、企業努力をやりあるいは財政措置をやってもいけない、間に合わない、五十二年あるいは五十三年で黒字に転ずるには、四年ごとぐらいに二回、期間中に運賃改定をしなくちゃならない。むろんその公共負担の改正、是正を含んでおる、こう言っておる。そこで私は少し国鉄予算を見てみますると、四十四年度で九百九十九億試算では示している。それから実際問題として国鉄予算上は九百十億になって、八十九億の差がもうここで生じているのですね。したがって、いろいろな施策等が行なわれた結果ぴしゃっと最終年度において試算にあらわれるような数字が出てくるかどうか、かなり疑問だと思う。ですから、四十八年及び五十二年、まあ大体二回にわたる一〇%程度運賃改定が必要であろうという、こういう示唆を与えているのです。で、私はその裏には、数字がこのとおりいくかどうかわからない、だから二回を調整期として、不足を生じた場合には四十八年及び五十二年において一〇%を最低にして不足する数字を合わせるような、つまり一五%になるのかあるいは二〇%になるのか、これこそその時点が来ないとわからないでしょうけれども、大体調整をつくるために一つには二回の運賃改定が見込まれる、こういうことだと思う。で、されば、本会議では、いやそのときになってみなければわからない、いまそういう予定はないけれども、こうおっしゃるのだけれども、予定は未定という話もありますからね、だからいま正確にそのことを引き出すことは困難であるかわかりませんが、さっき私は、この数字にある程度大ワクとしてはまっているのだから、このとおりに進んでいかないと再建はできない、逆説的に言うならば、四十八年及び五十二年にはいやがおうでも運賃改定をせざるを得ない、それならばやらなくてもいいような他の資金確保、財源措置ができるかというとこれも私は容易でないと思うんですよ。それならばこの措置法案が提案をされ、よしんばこれが一人歩きをするということは、十年間に、四十八年及び五十二年二回にわたる運賃の値上げということ、その率は最低一〇%であるということ、つまり二回の再建期間中における運賃値上げを約束させられるものである、こういうふうに私は理解せざるを得ない。で、したがって、事はきわめて重大だと、こういうことになる。この点はどうなのか。  それから、いま一つは、なるほど再建会議報告書なりあるいは運輸審議会等の議論の経過等を見ても、鉄道運賃法に定める一条二項の運賃四原則、こういうものが全然踏まえられていないですね。たとえば第一項の「公正妥当なものであること。」、一体平均一五%——実質はそれを上回るわけですね。はたして「公正妥当」とは何を根拠に公正妥当と判断をしたのか、あるいはまた「原価を償うものであること。」、というのだが、一体、国鉄の今日の原価計算がどうなっているのか、その辺のことが一つも明確ではない。それから「産業の発達に資すること。」、こういうのだけれども、これは包括的に産業の国鉄が寄与していることは大いに認めなければならないし、むしろその先端に立っているわけですから、その限りにおいては異論はない。それから最後の「賃金及び物価の安定に寄与すること。」、これがまあ大ざっぱに言えば運賃四原則になる、この鉄道運賃法というのは生きているわけですからね。推進会議の中でも、運輸審議会の中でも、一番重要な運賃四原則が否認をされたような状態で出されるということは、これは許しがたい。明らかに私は「公正妥当なものであること。」、それから最後の「賃金及び物価の安定に寄与する」ということには相対立する現状なんですね。明らかに私は運賃四原則を否認をする違反をした値上げである、こういうように極論をするのですが、総理の見解、どうですか。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 森中君に申し上げますが、いま鉄道当局が運賃を進んで上げたいと、こういうのじゃございません。上げるのは実際は鉄道当局自身も避けたいのです。それが何だか聞いておると、やたら上げることに積極性を持っておるように聞かれますが、それはそうじゃない、上げたくないのですね。しかしながら、どうしてもやっていけない、そこに一つの問題がある。先ほど来、交通機関の変わり方というのはすばらしい、どこかにいままでやはり対応策抜かっている、こういう問題もありましょうけれども、それをまあ指摘されているのだが、今度はそういうことがないようにしようというわけですね。そこでいまちょうど菅野君、私がかわりに来たので、かわったばかりですが、問題はやはりこれは何といいましても、経済活動の状況によって物価の問題との関連は、これは見のがすことはできないと思います。幾ら鉄道自身が合理化をやり、ここには多数の鉄道出身の方もいらっしゃるが、それらを顧みてすばらしい合理化をやっていくときに、労働過重じゃないか、そういうことが事故を続発さすゆえんではないか、そうまで言われるほど、合理化もやっておる。しかしながら、その合理化をやっても、どうも全体としてバランスがとれておらない、採算がとれておらない。これはもうけるつもりはありません。ただ私は赤字にならないことが本来の目的だと思う。したがいまして、十年の長期計画を立てたときに、これから予想される物価の推移等を見ると、自分たちの合理化は進めても、ある程度運賃を上げなければならぬのじゃないか、そういう実は心配をしておるわけです。これはずいぶんいろいろな問題をいま提供して、鉄道部内において一番の問題は、国民に対しては運賃を上げてください、部内においても職員に対してはどうか合理化に賛成してください、そうして国民に対してりっぱなサービスをすることにしようじゃないか、その両方ともにいけないと言われちゃ、私は国鉄の立つ瀬がないのじゃないかと思います。そういう意味で、この国鉄自身総裁をはじめ、皆さん方も、また組合の諸君もそういう点では協力して、そうして率直な意見を交換しながらこの問題と取り組んでいるのだと思います。でありますから、いまのような一般の物価の推移等を見ると、毎年それぞれ賃金も上げていく、能率もあげていく。そういうところを見ると、国鉄は長期的観点に立つと、今後ともやはり合理化はしても、なおかつ運賃を上げざるを得ないのじゃないだろうか、こんな想像がつくのだと思います。しかし、私はただいま第二次運賃の値上げ計画、第三次の値上げ計画、そういうものをはっきりとは申しませんが、と申しますのは、せっかくいま皆さん方が努力してそういうこともないようにしよう、そうして皆さん方は、これはもう非常にわかりいいことなんですが、旅客運賃を上げればお互いの生活に直ちに影響をもたらす、貨物運賃を上げれば物価に直接の影響を持つ、そうすると物価が上がるから鉄道は値上げをすると言うが、その値上げした結果はさらに悪循環を起こすんじゃないか、こういう御心配があると思います。その悪循環を断ちたい。それを断つことができたら、いわゆる私どもが言っているような長期的観点に立てばこれは物価の安定に寄与する、こういうことに実はなるのであります。回りくどい説明をいたしましたが、結局そういうことになるのです。したがって、ただいま手を振っておられますが、運賃四原則、これを無視した、逆行する、こういうものじゃない、そこに関連があるのだ。そうして国鉄の財政が健全になればこれは国民経済に直ちにつながりますから、そういう意味において皆さん方に御迷惑をかけない、結局物価の安定に寄与するのだ、長期的に見ればそういうことに実はなるのです。私はただいまのような努力が、せっかく国鉄の幹部、経営者、経営陣ばかりじゃなく、組合の諸君も私はよく、私の経験から見ると最近はよく相談に応じておられると思いますよ。私はその点はやはり国民の一人としてそのまま率直に理解していいことだと思う。だけれども、やはりときに利害が反するといいますか、多数の犠牲者を出して処分を受けておる、こういう事態については私ほんとうに気の毒に思っております。しかし、いまの皆さん方も国鉄合理化を積極的にはかって、そうして運賃を上げなくても済むように、そういう事態を起こさない、そこでずいぶん無理がかかる。それが無理にならないようにくふうする、ひとつ知恵を出す。問題はそういう場合に国が負担すればいいんじゃないかという問題になりますが、欧米の状態を見ましても、国が負担いたしまして経営が立ち直ったという鉄道の例はあまりないのであります。こういうことはやはり利用者負担、その観点においても一部はどうしても負担してもらいたい。国自身はやはり非常な資金を必要とするのでありますから、こういうものに低利長期の融資を考える、こういうことは必要だと思います。しかしながらこの輸送原価、それをまかなう、これはやはり利用者負担、それが中心をなす、これだけをひとつ考えていただきたい。
  35. 森中守義

    森中守義君 あと何回も見えるそうだから、全く承服できぬが、一応きょうはこの程度にしておきます。
  36. 加瀬完

    ○加瀬完君 政府国鉄、国、国民の三位一体で国鉄赤字の解消をする、その内容は三方一両損ということで解決をしたい、このように御説明を承っておりますが、よろしゅうございますか。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 加瀬君、この点はよく御承知だと思いますが、いわゆる三方一両損ということでなしに、やはり三位一体、積極性をもって取り組んでいこう、こういうのが考え方でございます。
  38. 加瀬完

    ○加瀬完君 三方一両損ということではございませんね。比率を見ますと、国が一、国鉄が七、国民が、運賃のほうが二という割合になっております。三位一体ということでもって三方一両損ということではないと了承してよろしゅうございますね。
  39. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは均衡がとれているか、とれていないか、非常に議論があると思います。とにかく国民、経営者、同時にまた国もこの問題については十分手をかける、こういうことでございます。
  40. 加瀬完

    ○加瀬完君 運賃にある程度解消のめどをとらなければならないことはうなずけるわけでございますが、その運賃の上げ方です。通勤定期で品川と横浜を見ますと、一カ月で千十円上がることになりますね。これはアップ率が三八%であります。上野——市川を比べてみますると一五・六キロでも九百三十円私鉄のほうが安い。したがって、やはりこれは比べてみると三九%私鉄のほうが安いということになり、私鉄よりも高い国鉄の負担というものがはたして妥当かどうか。上げることは一応認めるとしても、私鉄よりもはるかに大幅な上げ方だというのは妥当を欠くということにはならないか、この点どうですか。
  41. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) そこが先ほど来いろいろ議論があるところだと思います。いわゆる首都圏を中心にしての鉄道を考えたらどうか、いわゆるもうかる線をやっているものが私鉄である。したがって、そこの経営からみていくと、これは安くても済むのだ。それは鉄道の場合はもうかるところもあればもうからないところもある、それを全体として考えるというところに問題があると思います。なお、いまのようなお話があれば私もお話し申し上げますが、私どもが鉄道にいた時分から、たいてい同一区間は鉄道も私鉄も同一運賃、こういうのが大体たてまえであったと思います。そういう場合に、多くの場合に国鉄自身が非常な力を持っていたのでありますが、私鉄のほうの経営上私鉄運賃を上げるが国鉄もそれにつれてそのときに上げる、しばらくそういう状態が続いたと思います。しかしいまは逆になっておりまして、私鉄のほうは考えてみればもうかるところだけをやっておりますから、採算としてはたいへん計算のしいいところであります。だからそれに鉄道、国鉄自身を合わすというわけにもいかないと思います。
  42. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかし安いのと高いのと並行して走れば、これは安いほうへ乗りまして高いほうは避けるということになりますね。そうすれば幾ら幾らアップして収入がこれだけ増したという計算が基礎からくずれてくるというのが四十三年の運賃を上げたわりに収入が上がらなかったという一つの原因でもありましたね。  そこで総理は先ほどから御説明がいろいろあったわけでございまするが、日本国鉄というのは初めから官営主義という形で進んで、国鉄自体にこのような赤字の解消を負担をさせるということ自体が体質的に無理じゃないか。逆に言うならば、もっと国が赤字の補助対策というものを立てていかなければ、公社にしたときに企業自体の採算だけを固めて公社に移したわけでなくして、当然いままで国が赤字を負担した分まで一緒に公社の中に入れてしまったわけですから、この官営主義の責任というものをもう少しいまもって政府がとるという態度でなければ、国鉄の赤字というものは国鉄自体ではどうにもならないというように歴史的には判断できるのじゃないですか。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 実は公社をつくったのはこの私なんでございますが、また電電公社もつくったのが私なんでございます。したがって電電公社、国鉄この二つの公社については私はずいぶん苦心をしたものであります。いま言われますように、もとが国鉄であったものを民間に移すときに十分考えられてないのじゃないか、これは先ほどちょっと私ここへ入ったときに議論がされておったようでありますが、投資、そういう資本、そんなものがそこに影響があるように思います。私どもが鉄道にいたとき、加瀬君もご存じのとおり当時一番最初は減価償却を大体考えないものでございました。しかしながら私どもがまだ若い時分、途中で、長崎のときかと思いますが、減価償却制度をようやく取り入れた、その辺から国鉄近代化経営に移りつつあったと思います。したがって、官営それから公社に移ったときは、私はその状態ではあまりいま批判されるようなことはそのまま当たらない、かように思います。ただもう少し民営のよさがあってしかるべきだ。でありますから、次にこしらえました電電の場合は鉄道の公社よりももっと民営に近い形態をとったと思います。そのほうに右へならえしたいというのが国鉄の願いでもあります。最近はそういう点よほど改正されていると思います。でありますから、これは大体われわれも責任のあることだと思っております。
  44. 加瀬完

    ○加瀬完君 ほかの説明では、赤字解消のために国鉄みずからの経営の能率化、合理化それから国び及地方団体の財政援助並びに運賃改定の必要ということを説いているわけでございますが、地方団体の財政援助というのは納付金を削減する以外に何か別なものが考えられておりますか。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これはいま地方でいろいろ国鉄の改良をはかる、そういう場合の資金をその地方で引き受ける、これは公債を引き受けてくれる、こういうことはあったと思います。それはもっと受益者負担というか、そういう立場で、利用者負担というよりも受益者負担、そういう意味で財政的な援助があってしかるべきだ、かように考えております。
  46. 加瀬完

    ○加瀬完君 その負担はもちろん法律命令に定められたワクの中ということになりますね。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) もちろん法律に定めてないことは地方団体に及ばない、かように考えます。
  48. 加瀬完

    ○加瀬完君 大都市への通勤通学輸送対策、これはこのたびの運輸行政の改革をしていく一つの大きな目標だと考えてよろしゅうございますね。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 一つの目標でございます。
  50. 加瀬完

    ○加瀬完君 では、首都圏人口の増大現象の原因は国鉄あるいは地方責任によるものだとはお考えにはなれないでしょうか。
  51. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) それはそのとおりでございます。
  52. 加瀬完

    ○加瀬完君 ところが、法律にも命令にもよらないで通勤通学輸送対策の負担というものが地方にかぶせられておる現状がございます。一つ例を申し上げますと、見通し立たぬ立体交差ということで、常磐線の複々線化について、千葉県松戸市長は、三月市議会でその施政演説で立体交差問題を取り上げ、次のように述べられたという付言がありまして、二十億円余の負担は市財政を破壊するものだ、負担軽減について二年越し国、県に陳情、請願を続けたが何らの解決も見ていない。そしてさらに、地方財政に一顧も与えない政府国鉄の横暴に対し激しい憤りを覚えると、強い口調で述べたと書かれている。これは遺憾ながら自民党の市長さんでございまして、私どもではございません。こういう市長の所見というものについてどのようにお感じになりますか。
  53. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これは一方的な主張だと私は思います。もともと道路法で国鉄の場合は協議をして、そしてきめるということになっております。私自身もたびたび協議した経験がございます。ことに監督行政をやっておりますと、民間会社の場合に内務省の道路局としばしば協議するということがありました。最近は私よほど事情が変わっておるから、その点では国鉄が過去においてずいぶん負担してきたようなああいう状態ではなかなかこの問題は進まないんじゃないか。いまの地方自治体におきましては、自治体そのものに言い分はありましょうけれども、もう少し実情をよく相談し合えば結論は出るんじゃないかと、かように考えております。
  54. 加瀬完

    ○加瀬完君 具体的に申し上げますと、松戸市の歳入総額は概算三十一億、税収入が十四億、国鉄の負担金がいま二十億と市長は言いましたが、正しく言うと十六億八千七百万です。柏市は歳入が十六億、税収入が七億九千万、国鉄の負担金は十五億四千五百万。いま松戸市の場合をとるとしますと、歳入の五五%、税収入の一一九%ということになります。柏市の場合は歳入の九六%、税収入の約二〇〇%、地方団体では人件費が非常にかさむというふうに言われておりますけれども、人件費と比べてみますと、国鉄の負担が松戸市は人件費の二・九倍、柏市は四倍でございます。こういう負担金は地方としてはとうてい背負い切れないと思うわけであります。そこで、何らか地方に財源を与えるか、あるいは国鉄に持たせるわけにまいりませんから、その通勤輸送対策ということで政府が何らかの財源措置を講ずるか、そういうことになりませんと、どうしてもこれは解決のめどというのがつかないというのが現状でございます。この点総理の御見解を承りたい。
  55. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この問題は国鉄当局でもだいぶ苦労しておられる。ただいま私どものところへメモがまいりました、そのメモを見ると、大体話はついたというような書き方がしてございます。この辺は私ももちろん、いま加瀬君の御指摘がありますからこれから気をつけてまいりますが、おそらく国鉄当局から説明させて当該事件は解決されましても、同じようなことが各地において次々にあるだろうと思いますので、それらに対する対策はやはり政府としても考えざるを得ないだろうと、かように思います。
  56. 加瀬完

    ○加瀬完君 話はついておらないわけでございます。そこで、総武線のほうは、結局、鉄道に交錯する道路や何かの問題が主でございますから、これは県の都市計画によって事業を施行するということになりましたから、三分の二は国の補助がありますから地方の負担は三分の一、その三分の一のまた二分の一を市町村に負担をさせるということで話がつきました。同じような方法を常磐線ではとらないわけです。各市町村で都市計画をやれといったって、一本の道路だけを都市計画するわけにいかない。これは県の都市計画ということにしていただけるなら問題の解決は早い、また、県なら事業特別交付税といったようなものがあるわけですから、財源も現行規定の中でもやりくりがつく。ところが、地方では起債といったってほかにいろいろな仕事をする起債も仰がなければならないわけですからなかなか困難だ。これは県の責任でやらせる、最低限そういう方法を運輸当局で指導してもらえば解決が早い。この点だけひとつお答えをいただきたい。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 加瀬君から一つの解決案として出されたのですが、私はやはり県なりあるいは市町村に対して特別交付税の関係で処理できる部分もあるだろう、かように思いますが、いずれにいたしましても、もう少し事情を関係当局と話し合い、さらにそのあとでそれが一般交付税あるいは特別交付税で処理できるかどうか、できないか、そういうことを検討すべきだ、かように思います。
  58. 加瀬完

    ○加瀬完君 国鉄はどうも地方に対して不合理な負担をさせている点が多いと思うのですけれども、そういうことはございませんですか。たとえば、これは総理に伺うのですけれども、、昭和四十二年の六月十六日の閣議で、総理は当時の大橋運輸大臣に、毎日新聞に大きく報道されました国鉄一家の土地買い占め事件について、厳重に調査して適切な措置をとれとの指示をいたし、運輸大臣閣議後の記者会見で、早急に調査をすると言明したと伝えられておりますが、御記憶ございますか。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) なかなか多いですから、どのようなことでしたか、新聞にその当時出たならたぶんその当時指示したと思います。
  60. 加瀬完

    ○加瀬完君 これを調べてみますと、団地の買い入れや分譲の際不正はないと、こうお答えになりましたけれども、同一人に、五口、四四九−一〇六、四四九−一七〇、四四九−一七一、四四九−一七七、それから同一家族に四四九−三六九、こういう番号の土地を売却をいたしております。しかも、これは国鉄共済組合から不動産業者に直接売ったもの、あるいは同一人が二口を買って直ちに不動産業者に売り払ったもの、こういうものが三百六十八口のうち三十口近くございます。これは当時の大橋運輸大臣が不正はございませんとおっしゃったのですけれども、不正がないとは言い切れないと思うのです。私がこういう問題を出しましたのは、この団地が結局道路や上下水といったような施設をすることになりまして、上下水は別として道路の敷地が大体相当あるのですが、これを町に寄付をするということになりました。一見寄付をするということはいいことでございますけれども、この道路を舗装するのに町は二千五百万から三千万かかります。こういう情実による配当や何かをして不当利得を得さしているようなら、共済組合がほかの宅地造成の会社と同様に負担金を払うべきじゃないか。ところが町がどんなに交渉をしても負担金は払いません。そこで三千万というものを町はみすみす持ち出すということになります。ほかに町は駅もつくってもらいたいから泣き寝入りいたしましたけれども、一般の市民の感情は、こういう不正と思われることが情実のもとで取り引きされておって、そういうものにわれわれが税金を払えるかという怨嗟の声が非常に強いわけであります。こういう点ですね、これはこういうことをやったことがどうこうということではなくて、当然ほかの宅造の会社ならば負担義務を負うべきものを、さっぱり国鉄ということになると負担義務を負わない、これはちょっとおかしいじゃないか、こういう不合理な負担というものをさせるというのは、法律にも政令にも定められておらないことですからどうしてくれるんだと伺いたいのですけれども総理に伺うというほどのことではございませんが、閣議総理が御指示をいたしておりますので、この際伺います。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 国鉄自身がいろいろな広範な接触を地方自治体と持っております。そういうところからいろいろな問題が起こるだろうと思いますが、いままでむしろ国鉄は喜ばれ感謝されることが主であって、いまのような特殊な例は非常に少ないように思っております。しかしながら、現実の問題として提起されておりますので、ただいま総裁、副総裁もお話を聞いておりますから、こういう事柄は地方のやはり支援がなければ公共機関としての目的を達するわけにもいきませんから、そういうことで問題を起こさないようにこの上とも注意するようにいたしたいと思います。ただいまこの地方との問題では、昔は地方の負担を全部国鉄がやっていたのですが、したがって、そういう意味では国鉄が非常に喜ばれ、最近は国鉄がそのために地方の財政負担を当然やるべきだ、あれだけの施設を持っておるというようなことで、どうも権利義務の観念がだいぶやかましくなってきております。そこで問題がなかなか理解されにくいというようなこともあろうかと思います。とにかく国民の支持がなければ公共機関の本来の使命が達せられない。こういうところに思いをいたしまして、問題を起こさないように気をつけてまいるつもりでございます。
  62. 加瀬完

    ○加瀬完君 これ一問で時間がないようでございますから終わりますが、先ほどちょっとお話にも出ましたが、この際、一応整理の対象として検討すべきじゃないかという幾つかの線が出ております。これはその該当の住民としては、現状で採算が合わないからということだけで判断をされては困る、将来の地域計画なりあるいは社会環境の変化なりそういう見通しも十分組み入れて、そうして将来性も過去の実績もないというようなことならともかくも、将来の発展性が予知されるものまで一がいに整理をするというような画一的な方法をとられると非常に困るわけでございます。まあ、総理のほうを引き合いに出しては恐縮でございますが、総理の御郷里のほうにもその対象の線があるそうでございますが、それは何か少し伸ばすと山陰線につながるというので非常にいい。私どものほうにもちょっとつなげると非常にいいという線もあるわけであります。こういう場合はつなげた場合はどうだという計算も十分していただいて、それから一方が工業地帯で非常に発展をすると、そのすぐ背後にあるものがもう人口希薄で将来性がないという判断もつきかねると思いますので、そういう諸般の事情を十分検討をしておきめをいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これ、もう切実な地方開発の問題だと思っております。私は、いま赤字で、それが十分使命を達することができない途中に打ち切られている。そういう点も十分考えまして、将来の見通しも立てて、そうして建設線の整理などは十分地方の方も安心できるように、そういう方向であってほしいと思います。私のところなどはもともと銅鉱の山、それをトラック輸送をした。相当の量でありますから、そのトラックが一日に百五十も二百も走る。地方の人も不自由に思っていた。そこへ鉄道ができて鉄道輸送になった、これなどはたいへん便利になった、しあわせになった。しかし、その線は客としてはあまり利用されておらない。でありますから、そういう一会社の鉱山のためにそういう問題が果たされる、これだけじゃどうも不十分だ。やはり山陰線につながって初めて一つのルートができる、そういうことをいろいろ考えられて地方の方はなくさないでどうか早く建設してくれ、そうして交通の利便を提供してもらいたい、これは地方の方の要望だと思います。私が知っておるからというわけではございません、おそらくそういうところが至るところにあるだろうと思います。地方鉄道は網になったときに初めてその効用が発揮できるのでありますから、それらの点を十分考えていきたい。  いままで建設がおくれていたところ、大体それらは山間僻地、それに違いありません。したがって、適当な輸送物資もなかなかそれが黒字になるにはずいぶんかかると思います。そこらもよく考えまして、公共的な使命、これを達するということが国鉄としては何よりだろうと思います。そういう意味では国の財政負担が少ないじゃないかという、こういうような御指摘があり、そういう意味のおしかりも受けていると思います。しかし、鉄道敷設法そのものになってみますと、ずいぶん古い状態で、途中で改正はしたと申しますけれども、もう事情も非常に変わっておりますからそういうものはよく検討して、そうして地方の方々にも納得がいくように説明の結果整理するものは整理すると、こうあってほしい、かように思います。
  64. 加瀬完

    ○加瀬完君 最後に、いま総理から国の財政負担の問題が出ましたけれども、道路あるいは住宅あるいは外航船舶、こういうものの政府の支出金なり、補助金なり、利子補給金なりというものと比べまして、いままで国鉄にお出しになった政府からの支出金というのは、私は均衡がとれておらないと思う。公共性というものを考えれば、鉄道のほうがはるかに高い。しかし、出している金が非常に少ないというように判断をされるわけでありますが、これは可能な範囲国鉄に対する財政援助というものは国としても考えていただけると了承してよろしゅうございますね。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ちょっと、結論をそこへ持ってこられると困るのですが、いま国が道路あるいは空港あるいは港湾、それらに出しているこの財政援助のしかた、いまのままが、これが筋が通っている姿だと必ずしも言えないのじゃないか。鉄道に対する国の援助が非常に薄い。しかし、これらのものは全部、国が負担している。しかし、これはもう将来やや方向が変わってしかるべきじゃないか。これらについても受益者負担というか、そういうような意味において整理されるほうがしかるべきじゃないか。こういう議論もあるのでありますから、そこらもよく検討いたしまして、あまり均衡の、権衡のとれない、国鉄だけいじめるようなかっこうのものでないような……。
  66. 加瀬完

    ○加瀬完君 いままではそうでした。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) わかりました。
  68. 田代富士男

    田代富士男君 最初に私は総理に希望並びにお願いになるかわかりませんが、この委員会におきまして、きょうもある程度の時間制限がされております。これは国会運営の上からいくならば、当然のことじゃないかということがいわれますが、そこに今回の国鉄運賃問題におきましては、国民の生活に密着した大きな問題でございます。まして、衆議院の段階におきましては、総理御自身が審議をしたいというのがやはり本心じゃなかったかと思うのです。その場を衆議院においては失われた。あのような結果になりまして、せめて参議院におきましては、良識の府といわれるように審議をしていきたいというのが、当委員会における各委員の希望じゃないかと思います。  そこで、この問題を二十分や三十分あるいは一時間で審議をしろというのは、これはもう私が言わなくても当然のことじゃないかと思います、無理であることは。まして、私が言いたいのは、歴代の総理の中でも特に国鉄出身の総理というのは佐藤総理が初めてじゃないかと思います。こういう問題は歴代の総理のうちだれよりも佐藤総理が一番よくおわかりじゃないか。さすれば、衆議院においても出たくても出られなかった。まして、あのような結果になったならば、せめて参議院におきましては、この委員会を通じまして、国民の皆さん方にも言うべきことを言っていきたいと思われるのは当然じゃないかと思います。われわれも慎重に審議をやっていきたいと思いますし、今回第一回目の御出席でございますが、あと二回、三回と、もちろん国会のルールによって私は出席いたします、と申されますが、それはそれとして、総理御自身が私の個人的意思においても出席して審議したいという意思がおありになるかどうか、ということをまず最初にお伺いしたいと思います。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いろいろ私に聞きたいと言われますが、私は御承知のように、国鉄出身です。しかし、まあ古い国鉄については十分の知識を持っております、次官までしたのですから。また監督行政もいたしましたし、したがって、当時の国鉄なら大いに自信を持ってやりますが、しかし、いま総理としての最高的な責任者でものごとは見ております。やっぱり有能な、それぞれ運輸大臣または総裁、副総裁等がおりますから、その辺にひとつうんと働いてもらう。私の呼び出される、またおまえの経験を話せと、そういうことはたいへんありがたいことではございますが、ただいま申し上げましたように、だいぶ専門的な問題になってくると、最近の状態はこの御両所にまかせてしかるべきかと思います。その辺もひとつ御了承いただきたいと思います。
  70. 田代富士男

    田代富士男君 いま御謙遜の意味で古いと申されましたが、私がこういうことを申しちゃなんですが、総理は若いころには儒教を勉強されたと思います。それには古きをたずねて新しきを知るということがございます。こういうことばもございますし、やはりそういうことが役に立つこともありますから、これもあわせて総理に御希望を申し上げておきます。できるだけ御出席をしていただくように。だから二人にまかせた。まかせたということとやらすということとは根本的違いがありますから。この点の論議をしていたら与えられた時間がありませんから、これでとどめます。  私は最初に、この運賃問題がわれわれの物価問題とどのような関係にあるか、その方面から少し総理に対してお尋ねしてみたいと思いますが、それで、総理は、施政方針演説におきましても、また、大蔵大臣あるいは経企庁長官の財政演説におきましても、物価安定の必要性を強調されております。特に今回の、物価と、予算編成におきましては、最大の眼目として総理みずから取っ組んでいることは、何回も私は実のところ聞いてまいりましたが、今回も、その決意のほどをお聞きいたしましたが、物価問題に対しまして国鉄運賃も含めましてどうような御決意をお持ちであるのか。また、そのときに申されました、政府は四十四年度予算編成方針におきまして、経済成長率名目一四・四%、実質九%、消費者物価は五%にとどめる。このように言われておりますが、はたして消費者物価の上昇率を五%にとどめられる決意がおありになるのか。このことは、昨年の暮れにこのように発表なされましたが、まだ、この段階では運賃一五%値上げの問題は出ておりませんでした。さすれば、運賃一五%の値上げとなりますと、それぞれ計算なされまして、われわれの生活に響くパーセントを出していらっしゃいますが、それも含めて五%以内にとどめる決意がおありになるのかどうか、あわせてお願いいたします。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ことしの物価は、政治課題として、この点が一番大事だと、かように御指摘になりましたが、私もさよう思いまして、施政方針演説にも特にその点に重点を置いたつもりでありますが、その際にも申しましたが、一番国民の生活に影響のある、この一つは米の値段であります、もう一つ交通料金、国鉄運賃、かように実は思います。主食のほうは、主食に、さらに麦、塩、これなども米塩と申しますが、そういうものは据え置くという基本的な方針を立てました。そうして、残念ながら鉄道運賃を唯一の例外として、これを上げざるを得ない。これを上げる。しかし、直接物価に影響のない——貨物運賃は避ける、旅客運賃を上げる。こういうことを当時申したのであります。これは、この公共料金のうちでも、鉄道運賃がやはり影響を与えるというか、心理的な作用を国民に一番与えやすいのであります。また、政府がこれをきめるという、そこに政府の主導型、それで物価が上がる。こういう影響を多分に持つ、かように思って私は演説をいたしたわけであります。今日もその考え方は変わりはございません、したがって、鉄道、国鉄貨物運賃はいじらない。しかし、旅客運賃については、これを上げる。同時に鉄道の、地方鉄道あるいはバス、トラックその他のものについても、交通料金といわれる限りこれを便乗値上げはいたさない、絶対に許さない。十分そのほかに方法があるかないかよく考えまして、民間の事業ですから、これがつぶれるというそういうことでは気の毒ですから、やはり国民の方もそういうものは一応認めてもらいたいが、しかし審査にあたっては、それを逆に、いわゆる便乗値上げはさせない、こういうことをひとつ堅持していこうというのでただいま取り組んでおる最中でございます。幸いにいたしまして、昨年度これは大体予想したとおりの数字になっております。したがって、三月、四月その辺のところはちょっと物価が上がりやすい形にあるわけでありますが、しかし、これもことしは何とか押え得ているのではないか。実はかように思っておりますので、いまの鉄道運賃だけで済むならば比較的に影響は少ないと思います。〇・二、パーセンテージにして〇・二という数字を出しております。そういうところで比較的影響は少ないのではないか。しかし一番心配するのは、政府がこれを上げる、それが一般国民にどんな心理的な作用を与えるか。物価問題はそういう心理的作用が非常に鋭敏に働くものですから、その点を特にただいま注意しておるというのが今日の状態であります。
  72. 田代富士男

    田代富士男君 何とか五%にとどまるように努力したい、努力していらっしゃるときにとやかく言うのも何かと思いますが、やはり過去の実績から申しまして、昨年は、あくまでもこれは数字の上でございますが、四・八%に押えたいと、そのような努力をされておいでになった。ところが五・三%に落ちついた。そのような一応そのくらいの数字が出ておりますですけれども、そうしますと、今回の四十四年度は経企庁の経済研究所のこれは人間ではございません、電子計算機でございますが、これは成長率が一〇%程度で、政府の経常支出が一四%増の場合には五・六%程度上がるという答えが出ております。また、経企庁の非公式の試算では、過去のデータからの傾向線をたどっていきますと、これは見込みでございますが、五・八%というような、こういう数字が出ております。いま努力すると、そのように申されておりますから努力はしていただきますけれども、このような数字が出ますればどういうことになるか。まあ私が言うまでもなく、アメリカの連邦準備銀行のある理事は、物価が一%ないし一・五%上がってもこれは絶対避けなくてはならない。また、これは西ドイツの中央銀行の総裁もこういう意味のことを言っています。日銀総裁も、五%程度のこの上昇が続いたならば、これは正常ではない。このような、暗に危機感を与えるかのような発言をしておるわけです。そういう場合に、これが五%こえるような段階になったならばたいへんだと思いますが、こういうこともあわせていかがでございましょうか。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 昨年度でございますが、大体四・八年度途中でこえまして、そうして一月の初め、年末から一月初めにかけてなかなかおさまらないんじゃないか、一時、五・六くらいになるのではないかと心配したときがございます。しかしながら、幸いにして年が明けてからの物価の変動が比較的落ちついてまいりました。いま事務当局に伺ったのでは、大体四・九程度だ、五%は確かにいかないというのが大体の見方であります。そこでいま言われます五・三かあるいは五%を割っているかと、これはたいへん大事なところでありまして、これから先の物価の変動、その基礎になる数字が、一体五%をこしているか割っているか、ここに問題があるわけです。そこでいま企画庁長官いたらもっとよく説明するでしょうが、その底が大体浅くて済むのか、したがって、これから先の処理が間違わなければこの年内に五%にとどめる、大体その方向にいくんじゃないか。しかしもちろんこれはこれから先に処置を間違えないことです。これが大事だと思っております。そういう意味で絶えず物価の変動、同時にまた経済の変動、これから目を離せないというのがいまの現状でございます。一時、いわゆるかげり現象、それなども一つの心配の種だといわれておりますが、しかし、かげり現象がないと、今度はまた物価のほうにどんなにはね返るだろう、これがまた心配なんでありまして、とにかく経済現象は油断はできない。十分注意してそうして処置を誤らない。ことに五%というものがいま金利水準からいきましたら一つのめどになっている。これが高くなるとだれも貯金する人はない。こういうような心配もございますから、それがまたそういうことになると貯金ができなくなる、物価は拍車をかけて上がると、こういうことになりますので、ただいまその状態が一番心配なんでございます。田代委員指摘のとおり、ここは十分私どもも気をつけてまいります。そういう意味で物価の動向を非常に注意したい、こういうように思っております。
  74. 田代富士男

    田代富士男君 いま総理が慎重に検討していくという前向きの姿勢をあらためてお示しいただきました。ですから、私もそれをぜひとも実践していただきたいと思います。  そこでいま総理が申していらっしゃいました、これが、あえて言うならば運賃だけ上がってほかが上がらなければ何とか五%を守れるのじゃなかろうか、そのようにお話がございましたが、事実私鉄ではすでに値上げの要求を出しております。いま資料がこちらにございますが、十四社の私鉄値上げの要求が出ている一覧表がございますが、この私鉄値上げに対する政府考え方でございます。先日佐藤総理は施政方針演説の中でも、万やむを得ないけれども国鉄料金だけは上げなくちゃならないけれども、ほかは極力押えていくと、こういう演説をなさいました。私が先日本会議でまたこの問題を質問したおりに経企長官は、私鉄は国鉄と違って一番もうかる乗客だけの輸送をやっているじゃないか、国鉄はもうからない貨物もやっている、その私鉄の運賃値上げを、そういうことを言うこと自身がおかしいじゃないかと、そういう意味の、あえて言うならば私鉄の運賃は値上げすべきではないということを答弁されましたが、ところが、その当事者であります原田運輸大臣は、おれは上げたらよいのか上げなくてよいのか、私にも意味がわからないようなことを申していらっしゃるのです。特に、原田大臣と同じ大阪ですから最も懇意である私がわからないのですから、国民大衆の皆さんわかるわけはないのです。そうするとやはり日本の国というものは、総理の一言ですべてがきまるのじゃないかと思うわけなんです。このように閣僚が、片方は極端に言うならば上げる必要はない、片方は上げてええやら悪いやら、総理は極力押えると、あいまいでございますが、この際、この委員会を通じまして、いま注目されている国鉄運賃に対し便乗値上げがあるということをいわれておりますが、あらためて総理の明白なる国民に対する姿勢をお示しいただきたいと思うんですが、いかがでございましょう。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) よく事情は御存じのとおりでございます。私どもは便乗値上げはさせない、こういう基本的な線をとっております。また、先ほども申し上げたのですが、昔は同一の区間は同じ交通機関ならば運賃が同一であるべきだと、競争をさせなくて済むんだと、こういうことを言っていたが、今日はこの原則——同一区間・同一運賃、この原則はこわれております。こういうことも先ほど申したとおりであります。したがって、前のような議論はしないで、真にどういうような状態にあるのか、もう値上げをしなければその会社がつぶれてしまうとかというような状態になっているのか、他にくふうの余地がないのか、そこらを十分考えてそうして慎重な結論を出すと。これはどうも民間のことでございますから、民間の会社に料金の認可をする、これは運輸省がやるんでございますけれども、しかしそれが便乗値上げにならないように、そうかといってその会社をつぶすようなことがあってはこれはたいへんだと思いますので、そういうことのないようにそこらの審査を十分して適当な処置をとると。私は極力押えると、これがいまの態度でございます。その点では誤解のないようにお願いしたい。
  76. 田代富士男

    田代富士男君 総理は極力押えると言う。日本語はまことに極力というところに全部が含まれますが、これは上げるのは上げるように極力押えるのか上げないように極力押えるのか、どちらの姿勢であるか、それを聞きたいんです。極力押えるという点はもう何回も聞いてまいりましたが、幸いこの際私は、私鉄がつぶれるということは、それは全国いろいろな私鉄もございますが、大体関連事業と申しますか、百貨店経営とかそういう総合的な収支からいったならば総理も御承知のとおりでございます。じゃあ私鉄の現況それから国鉄の現況、あるいは国民一人一人の家庭の状況から、この国鉄運賃を上げたために、便乗したためにどれだけの負担をなさるか、いまさっきもいろいろ話が出ておりましたけれども、私はここを言いたいんです。では一人一人の家庭にするならば微々たるものじゃないか、じゃあ家庭に与える影響は〇・二%であるというようなことも出ておりますが、これはまた考え方にもよります。これはその数字を出した対象自身が、これは次回の機会に回すとしまして、私は最も大きいと思うんです。大体乗客の三人のうち二人まではいままでの十円区間、二十円区間を買う人たちです。実質的な運賃値上げは二〇%あるいは三〇%、そういうような負担を受ける人たちが多大にあるわけです。そういうわけで、ここは思い切った総理の御答弁をお願いしたいと思います。総理としてもなかなか言いにくい面もあるかと思うんですが……。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いや、ないですよ。
  78. 田代富士男

    田代富士男君 それならはっきりお願いしますよ。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま極力押えるということを申しましたが、極力押えるということは、上げないでそのままやっていくということでございます。これははっきり申し上げます。上げるように押えるということばはないんでございます。上げないように押える、これはもうそのとおりでございます。別に私は矛盾はないと思っておったんです。ただ、私が非常に心配しておりますのは、大きな鉄道会社にはこういう問題はないと思います。しかし小さな鉄道会社、非常に区間の短いもの、そして兼業等もあまりやっていないもの、そういう弱小の機関もございますから、そういうものの運賃まで全部だめなんだ、上げることまかりならぬと、こう言ってしまうことはたいへんだと思います。その点は一つの条件をつけたつもりであります。このことはやっぱり同じようにタクシー会社などにも言えることであります。この辺には小さな業者もずいぶんいますから、そういうものに運賃を守れと言ったらやっていけない、そういうのが至るところに出ておりますから、中小企業等については特別な配慮があってしかるべきだと、かように私は思いまするので、その辺を申し上げた。だから、総体として上げないように処理していく、その辺がいろいろくふうし、また鉄道当局自身にもそういう意味で知恵をかすこともあろうかと思いますが、そういうことでございます。
  80. 田代富士男

    田代富士男君 いま私鉄のことは、答弁していただきました。いま総理御自身もおっしゃいますとおりに、今度は私鉄が上がります。タクシーも便乗値上げと申し上げましょうか、これが申請されております。いま運輸省には、各地方の陸運局長から、タクシー値上げに対しましてこれは妥当である、そのような意見書もつけて提出されております。これに対して、また原田運輸大臣を引き出して申しわけございませんが、原田運輸大臣は白紙であると言われた。白紙というのは、赤でも青でも染まるということです。色どりの濃いほうに染まっていくわけです。タクシー運賃もいま総理が申されたように極力押えると申しますか、上がらないようにひとつ検討していく、そういうように白紙を染めていく、そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 上げないように検討していく、これはもっともです。物価はともかく上がらないようにすべてを考えていく。ひとり鉄道関係交通業者ばかりではございません。そういう意味でいろいろ指導をしていくわけです。でありますが、政府もさることながら、問題はやっぱり何といいましても国民の協力を得ないと、この効果は十分あがるものじゃございません。私は政府責任をのがれる意味で言うわけじゃございません。どうかそういう意味で、やっぱり物価は安くとどめる、そういう方向で御協力願いたい。  たいへん卑近なお話をして恐縮ですが、農林大臣が現実に八百屋を回って現場を見て、同じようなミカンでもやっぱり値段を高くつけたほうが売れる。おかしな話です。どうも六百円の値段がついていると買わないが、八百円だと八百円のものが売れていく、こういうものがあるのですね。これはやっぱり利用者——国民のこういうものについての判断力がないと、私はなかなかうまくいかないのではないか。ことに交通機関の場合は、定期の場合は、多くは会社持ちですから、これは安かろうが高かろうが会社持ちで個人にはすぐ関係はございません。しかしながら、家庭の方がいろいろ利用される、そういう面から見ると、たいへんな問題だと、かように考えます。また鉄道あたりも、十円区間が今度は二十円区間になる、これはたいへんな値上げですから、そういうところは区間のきめ方なども、たいへん問題があろうと思います。できるだけこういう点は、利用者に便するようにくふうしていかなければならぬと思います。ともかくもう少し皆さんが、国民自身がこういう事柄に真剣に、そうして最も正しいあり方、それを見つけるようにすべきだと、ことに生鮮食料品、生鮮魚貝類等については、なおさらこういうことが言えるのではないか、かように思います。
  82. 田代富士男

    田代富士男君 次に私は申し上げたいのですが、いまの私鉄といいタクシーといいこれは便乗値上げと申しますか、大もとは国鉄運賃が上がるに従って上がるという考えで出発してきておりますから、運賃さえ上げなければ、このような心配もしなくてもいいわけなんです。  そこでこれはこの道理が当てはまるかどうかわかりませんが、ちょうど運賃値上げというのは——一軒のお店があった。そのお店でまあいろいろなものを売っていたけれども、この店を改造しますから、近代的な建物にしますから、ここで売っている商品は一五%上げますよ。定期代は四〇%上げますよ。そうしてその家を改造するために、そこで扱っている商品は一五%、あるいはこの前の定期は四〇%上げた場合に、物を買いにいく人がはたしてそこに買いにいくか、だれも買いにいかない。じゃ上げないところに買いにいく。これは当然です。ところが、これが国鉄の場合に、さあ、いまから新しい線路を通しますから、お金が要るからこれだけ上げなくちゃならぬから、ひとつ利用者の皆さんお願いします。じゃわれわれはほかに乗る道があったならば乗りはしませんよ。しかし、国鉄が独占企業であるためにこれをやることができるんです。私は、そこで何とか、いま総理も、上げなくて済む道はないものかと努力していらっしゃるのです。私は、いま最初に申しましたように、歴代の総理の中で、おそらく運賃問題に一番心を砕いていらっしゃるのは、とやかくの批判はあるけれども、佐藤総理じゃないかと思うのですが、その佐藤総理が、ここでひとつ大いに検討していただくべきじゃないかと思うのです。おそらく総理としても、首相である吉田さんに次ぐところの総理としての歴史も築いていらっしゃるし、だから国鉄出身の佐藤総理が、とうとうこういうことをやったかと、虎は死んだら皮を残す、人間は死んだら名前を残すというのですが、こういうところでほんとうに英断をもってやるべきじゃないかと思うのです。そうすれば、いまさきヨーロッパの例も出ておりましたが、国鉄の赤字といいますか、政府国鉄に対してどのくらい出資をしているか、まあ、そうしますと全資産分の政府支出は〇・四%になっています。そうすると、ほかの政府機関の同じパーセントを見てみますと、石油資源開発株式会社には六四%、日本住宅公団には一五%、日本道路公団には一〇%、東北開発株式会社には四〇%、電源開発株式会社には一四%、日本航空株式会社には一四%と、このような率で出されまして——国鉄こそが一番国民の足です。まだ、航空機時代といわれますが、そこまでの脱皮はしておりません。一番われわれは、ここに力を入れなくてならないところに〇・四%なんです。ところが国鉄法の第五条第二項に、「政府は、必要があると認めるときは、」「日本国有鉄道に追加して出資することができる。」と、このように規定されてあるわけなんです。そうすれば、いまさきからいろいろもう話がございましたが、ここで抜本的に、総理御自身が前向きに検討していただきまして、そうして国民大衆の皆さん方の負担を少しでも軽くすべきじゃなかろうかと、そのように前向きの姿勢をとるべきじゃなかろうかと思うのです。まして、今度はこのような国鉄に対しましていろいろ融資されている。そのような金の金利ですが、基幹産業の金利よりも国鉄が受けている融資の金利が高いんです。こういうばかげたことがあるかというんだ。また、そのような融資の期間にしましても、他の基幹産業に比べまして短いんです。こういうところは、私は総理のお立場であるならば、改めるべきことは改めることができるじゃないかと。そういうことをしてこそ、初めて近代化ということも言えます。国鉄出身の佐藤総理として、初めて名前が後世に残っていくんじゃないかと思うのです。そういうことをあわせまして、ひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま非常にわかりいいのは融資、これが低利長期という点ですね。先ほども私そういうことを考えるべきだという、そういうことを申しました。また、今回政府自身もそういう方向へ一歩踏み出している。しかし、その踏み出し方が小幅だと、もっと広げろということに皆さん方が御賛成いただくならば、たいへん国鉄もしあわせでございますし、われわれもやりやすいと思います。こういう点はさらに検討することにいたしたいと思います。  ところで、いまの国鉄の資本構成でございますが、資本構成については再評価益、これがずいぶん出ておりますので、そういうことからみると資本構成は必ずしも不適当だと、こういうものではございません。しかし、現金そのものが足らない、そういうところに問題があるのでありますから、こういう点がいまの低利長期の融資でまかなっていける、こういうことになりますと、よほど改善されるようになると思います。
  84. 中村正雄

    中村正雄君 これは国鉄の現在の具体的な内容や、あるいは再建に対しまする具体策につきましては、運輸大臣なり、国鉄関係者にお尋ねすることにして、国鉄財政の破綻の原因と、これが再建に対しまする政府の決意及び見通し、その一点について総理お尋ねしたいと思います。  推進会議意見書によりますと、その四十四ページに、こう述べております。「ここに至った根本的原因は、過去の投資不足により輸送増強及び近代化が立ち遅れ、また公共的負担等、各種の制約もあって他輸送機関に対する競争力が低下し、一方において労働生産性の向上が阻害されたことにある。」、こう述べております。確かにこの推進会議意見書の見方は、表面にあらわれた形の上において、国鉄という企業の形態においては、このとおりでございます。しかし、なぜ投資不足を今日まで放置しておったのか、また労働生産性の向上がなぜ阻害されておったのか、その底にあるもの、根本的な原因を私は明示しておらないと思います。  昭和三十六年の運賃値上げのときに、第二次五カ年計画が策定されました。昭和四十年の運賃値上げのときに、第三次長期計画が策定されております。この二回の運賃値上げ法案審議会議録を見てまいりますと、政府委員との質疑応答においては、この法案さえ成立すれば計画いたしておりまする施策は実行できると答弁いたしております。国鉄財政の危機は回避できると、たびたび答弁されております。しかるに、その結果はどうでありましょうか。  特別措置法案の提案理由の説明の際に、運輸大臣が述べておりますように、「国鉄財政の現状は、昭和三十九年度以来大幅な欠損を続け、昭和四十三年度におきましては、同年四月一日から定期旅客運賃改定を行なったにもかかわらず、なお、一千四百億円に及ぶ膨大な欠損が見込まれ、このまま推移すれば、」云々と言って、最後に「破局的な状態に立ち至るものと憂慮されるのであります。」、これが国鉄の現状でございます。では、昭和三十六年の運賃値上げのとき、第二次五カ年計画策定のときに、今日の状態が想像できなかったでしょうか。また、昭和四十年二月の国会審議のときに、今日の事態が考えられなかったであろうか。この二回の国会審議の際政府国鉄国会提出しました参考資料を私ここに全部持っておりますが、その中の財政計画に関しまする数字は、収入におきましても、支出におきましても、大きな狂いが出ております。このような甘い見通し、何とか目の前の事態だけ切り抜ければいいという無責任な運営、私はこれが国鉄を今日に至らしめた根本の原因ではないかと思います。計画に狂いが出ようが、見通しが間違っていようが何の責任もありません。一、二年すれば大臣もかわります。局長もかわります。国鉄の役員もかわります。このような官僚主義的な機構、そこに私は今日の国鉄の欠陥があると考えます。  特別措置法案によれば、その目標は十年後に、すなわち昭和五十三年に黒字にするというところにございます。しかし、過去十年、二十年の国鉄運営のあり方を考え、また今年度国鉄予算に盛られておる程度政府の再建の意欲等から見て、私は、十年後に三兆七千億にのぼる投資を完全に行ない、なお国鉄が黒字になるという見通しは不安を感ぜざるを得ないのであります。  私は、佐藤総理に、国鉄がこのような事態に立ち至ったことについて、政府はどのように反省いたしておるか。もちろん佐藤さんだけの責任ではありません。しかし、自民党内閣責任であることだけは間違いございません。また、十年間で必ず国鉄を黒字にするという考えであれば、その決意の内容を私はお尋ねいたしたいと思います。時間がありませんので、この一点だけで私は質問を終わります。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) その一点ができればほんとうにえらいですが、そう明解にその一点を答えるわけにもまいりません。私は同じように苦労した中村君と私との間でありまするから、私も率直に申し上げますが、いまの鉄道の見方はあまりに甘い、ことに大臣局長がかわっていく、そこらに問題があるのではないかと言われますが、いま公社形態でありますし、これは総裁、副総裁、これが経営の衝に当たる。したがって、いわゆる大臣が全責任を持つものではなくて、第一次的にはやっぱり総裁、副総裁の公社としての責任において遂行される。そこで、私は、この大きな変化、これはもう労働組合の協力がなければできなかったことです。国鉄で一番職員が多かったときはどのくらいかというと、六十万をこしたのではないかと思います。それが現在は四十七万程度になっております。そうして、仕事の量はどうなっておるか。たいへんなふえ方です。新幹線もできている。したがって、その意味から見ると、これはずいぶん合理化は進めていると思いますが、そこらに、よけいなものはないような考え方ですが、しかし、さらにまだ国鉄の当事者はもっと、労働過重にはしたくはないが、もっと合理化ができるのじゃないかということで、いろいろくふうをしております。その中には、やめてもらっちゃ困る路線もあるだろうし、路線も整備したらどうか。あるいは小駅、閑散駅を無人駅に変えたらどうか、あるいは一人乗務を励行したらどうか等々のくふうをされております。しかしながら、何といいましても経済が発展するにつれて物価も上がれば、人は減らしたけれどもやはり賃金を上げざるを得ない。そこらに私は、やっぱり収入としては鉄道運賃一本で、これだけですべての賃金もまかない、同時にまた国鉄が使う資材、これもまかなっていくという、そこらに問題があるのだと思います。私は、むしろ国鉄運賃を値上げをすることは、これはずいぶん国民の理解を得にくいことではあるが、今日まで努力されたその結果なおかつ運賃を上げざるを得ないようなこの状況になっておる、その辺には、私はもっと同情あってしかるべきじゃないかと思います。総理大臣がこういうことを申すのは珍しいことだと思いますが、私は国鉄の方々の努力、これは無にはできないような気がする。先ほども、別に好きこのんで運賃を上げているわけじゃないのだというお話もしましたが、私は運賃を上げないで、ただいまのような合理化や、そうしてサービスの向上ができればこれにこしたことはありません。しかしながら、とにかく経済の発展につれて物価はとにかく上がっているのだ、そうして私は、この従業員の方も、他のいわゆる利益の非常に多い産業があるのにがまんをしながらも、いまのような労働強化のもとで、やっぱりサービスを提供しておられると思います。この事柄を、よく国民の方々にも理解してもらいたいと思います。そうすれば、運賃以外に鉄道の収入はないのだ、そうしてこれを、それでは国民の負担、税でまかなうことができるのか、そういうわけにはいかない。これはやっぱり利用者が中心になってこの国鉄を維持し、その公共的機能を低下させないように守っていく責任があると思います。そういうことも考えると、私はいままでのところが、努力は足らないとはなかなか言えない、私はよくやってきていると思います。ことに石田総裁など老齢にかかわらず、何ら疲れも見せないで活動しておる、このことは、私はもっと高く評価してしかるべきだと思います。しかしそれかといって、運賃を上げること、それだけが唯一のものだ、それだけにこだわるというようなことでなしに、まあおそらくやってきたことではありますが、この上ともできるだけのくふうはひとつしてもらいたいし、また赤字克服のためにあらゆる努力をしてもらいたい、かように思います。  私ども昔おりましたときに非常な不況にあって、貨物が足らない、そのために出荷誘致をする、特別な貨物をさがし出してくる、あるいは旅客輸送、そのために社会に飛び出して団体募集までした経験がございます。私は、いまの国鉄もそういう苦しい状態に当面しながら、よくやっておられる、この点はむしろ評価してしかるべきじゃないかと思います。運賃を上げるのはどうも政府責任だ、政府はけしからぬと言われるから、私はもっと実態をよく理解してもらいたい、かように思うので、率直に申し上げておきます。私は国鉄出身でありますだけに、実は国鉄にも私の気持ちは通ずるものがあります。しかし、それは悪いほうではないので、むしろ皆さん方の努力に十分報いる、国民もそういう意味運賃の引き上げ、これも必要な貨物はとにかく上げないように努力をする、サービスはさらによくしますと。またわれわれの目標とするものは都市交通通勤通学輸送、そこらにこと欠かさないようにする、こういうようなこと。貨物輸送長距離、中距離、そういうものに力を入れますという一つの目標をはっきりさして、そうして努力する、この点をひとつやっぱり買ってやらなければならないのじゃないかと、私はかように思います。
  86. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 午後二時より再開することといたし、それまで休憩いたします。   午後一時十分休憩      —————・—————    午後二時十八分開会
  87. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 運輸委員会を再開いたします。  午前に引き続き、二案を一括して質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言ください。
  88. 森中守義

    森中守義君 副総裁、午前中ちょうど一番いいところで中断いたしましたので、あの項目からひとつ続けてまいりましょう。  それで、けさのお答えがちょっと質問の要領が悪かったのか正確でなかった。私は、国鉄の資産がどれくらいあるかということではない。簡単にいえば、不要不急という、要するに毎年相当額を資産充当されていますね。それが大体計画的にどういうものであるか。同時にまた、個別的に分ければ、各年次ごとに、ある年は四十億であったり、ある年は五十億であってみたりするでしょうが、そういうものを全体まとめてみれば幾らになるか、そういうことをお尋ねしたつもりなんですがね。
  89. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 先ほどの御質問、私も少し答弁が足りませんで申しわけございませんでした。実はそのお話は、推進会議のときにもいろいろ先生方から御意見が出まして、相当実は詳しい調査もしてみたのでございますが、一応お手元に差し上げました資料でごらんくださいますとおり、大体年間二十億から三十億ぐらいというのが相場でございます。十億台のときもございますけれども、大体三十億ぐらいはぜひとも資産充当していきたい。これは、現在持っております資産のほかに、これから新しい資産を買い足してまいります。三兆七千億資本投下いたしますので、土地も非常に買ってまいります。そうすると、当然要らなくなる土地も出てまいるわけであります。たとえば、線路のカーブを変更する、そうすると、もとの線路敷が要らなくなるというようなことでございまして、いま持っている、いま使っている財産が全部将来とも要るとは限らないわけでございますので、これから毎年約三千億工事経費を投入いたしますと、用地代がごく大ざっぱに見まして約一〇%といたしましても、二、三百億の土地がふえてまいるわけでございます、もちろんこれは時価で、価格の評価は違いますけれども。そういたしますと、やはりそれだけの土地がふえれば、それだけそれと見合って、何分の一かの土地が要らなくなってくるということも考えなければいけないわけです。それらを推定いたしまして、推進会議の想定では、年間三十億というものは資産充当でやるべきだ、これは一応ごくマクロ的な試算でございますので、一々一品一品当たったわけでございませんから、多少出入りはあると思いますが、その程度の努力はしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  90. 森中守義

    森中守義君 国鉄の中に財産管理等公正委員会というのがあるんですね。ここで大体その公正な処理をする、あるいは計数設定をする、こういうことになっておるんでしょうな。
  91. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 事務といたしましては、私どものほうの施設局に用地課というのがございます。そこで事務をいたしますけれども、大体大きな財産の売り払いその他は全部、大臣の認可事項になっております。大臣の御認可を得る前に、部内の規定でもって理事会にかけます。その理事会にかけるものの中でも特に重要なものは、いま先生おっしゃいました委員会にかけまして、その正否をはかるわけです。その委員会の起源と申しますか、実は数年前に国会で問題になりまして、土地の処分の適正を欠くものがあるというふうなことがございました、主として高架下の問題でございましたが。それに端を発しましてそういう委員会をつくりまして、その後その問題が解消いたしましたので、それを少しほかの委員会と合わせまして、そしていまのおっしゃった委員会になっておるわけでございます。おもな財産の売り払い処分等につきましては、一応その委員会におはかりするというたてまえにいたしております。
  92. 森中守義

    森中守義君 これは相当膨大なものでしょうから、台帳あたりでも簡単にできるとは思えないですよ。しかし今回のように、再建計画の中に企業としてどのくらいの自己資本を持つかということが一つの大きな命題ですから、そうなれば、この処分さるべき資産というものが、これが再建財源の大部分を占めるという、そういうことにはむろんならない。しかしながら長期的かつ計画的というのは、少なくとも期間中おおむね年間にこの程度のものは処分し得るであろうというそういう大ワク程度のものはおつくりになってもいいんじゃないか。むろん大体限度額としては二十億ないし三十億程度のものは見込めるんじゃないかということですから、むろんそれはそれでいいんですが、もっと正確なものを実は私はほしい。そのことが、けさほど問題にしている約九千六百何十億のその中の一つ部分になるわけだし、それといま一つは、多少これは精神強調みたいになってくるんですけれども、一般世の中の受け取り方が問題になる。どういうことかといえば、毎年三十億、四十億の資産処分をやっているじゃないか、おてまえの資産、財産は全然握ったままで、やれ人のふところにばかり手を入れるのはけしからぬと、こういう意見は私は素朴な利用者の意見としてあると思う。これは私は受け取っておくべきじゃないかと思うんですね。そこで、一たん、計画はこういうことなんだ、なるほど財産を持っております、不要不急のものがある、評価すればこうなるんだが、しかしそれをいま一ぺんにやってしまったんじゃ、つまりあと計画なり、あるいは転用するとか、少なくとも流動していくんですから、必ずしも一挙に売却ということはできない。しかし、手持ちの財産といえども、今日のこの赤字の状態、再建体制に入った国鉄としては、持つものを全部吐き出していく、そういう姿勢というものがやはり出てこないと、なかなかこれは素朴な利用者の感情としてはちょっと割り切れない問題だと思う。そういう点が私は必要だということで特にこの問題を提起したわけなんですけれども、まあ気持ちはそういうことで、ぜひ何かの形で表現される必要がある。そのためには一通りの計画をおつくりになるべきじゃないか、こう思うんですがいかがですか。
  93. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 実は先生のおっしゃったことをそのとおり私ども考えまして、こういう公のものではございませんけれども、私のほうの持っている財産、特に土地でございますけれども、その土地にごく大ざっぱに分けて三種類ございます。一つは、将来とも使う見込みのある土地、あるいは将来、たとえば東北に新幹線を敷くような場合にかえ地としてどうしても持っていなければならない土地が一つございます。それから一つは、実ははしにも棒にもかからないと申しますか、そういう種類の土地がございます。たとえば山の中の線路をつけかえたときにその余った土地、あるいは午前中ちょっと申し上げました駅前広場、これは処分したくてもできない土地、こういう、私どもが所有権を持ちながら、全然処分の対象にならない土地が第二番目でございます。それから第三番目に、いま先生がおっしゃった、国民感情から見て、よけいな財産を持っているじゃないかという非難を受けるに値するような土地が実はございます。それは主として大都市に宿舎用地といたしまして終戦直後ばらばらの宿舎を買った例がございます。そういうものがだいぶ数が多いものでございますから、これはもう徹底的に整理しようということで、実はいま先生おっしゃったとおりの委員会、私が委員長になりましてつくりまして、これは部内だけの問題でございますが、将来まで残しておかなければならない土地と、それから、いまこの時点でぜひとも処分すべきだという土地と分けまして、そうしてそれを、いまの三十億のほかにでございますね、いままでの日常の資産から出てこない財産の売却をすべきじゃないかということで、主としてこれは東京、大阪、北九州等の大都市だけでございますけれども、そういう小さい百坪とか百五十坪の土地を積極的にいま処分するような具体案をつくっているところでございます。いま先生御注意のとおりの点で私も考えておったわけでございます。
  94. 森中守義

    森中守義君 それは多分にいろいろな関係が出てきますから、気持ちのとおりにはいかないでしょうけれども、しかしやはり世の中はそうは受け取らない。これはやはり運賃を上げるからには、みずからもこういうように自粛している、手持ちの財産まで売っておりますということを、何らかの形で世の中に訴えるべきじゃないですか。これはぜひお考えをいただきたいと思います。  それから、けさほど来問題提起した合理化節減ですが、これはこれから先も多少詰めていくべき筋合いのものかわかりませんけれども、けさの御説明では、なかなかぴんとこない。大づかみにいえば、努力すると、できないときはそのときのことだ、こういうことじゃちょっとやはり引き下がるわけにはいきません。むしろ、私はやはりこの資産というものは絶対的だ。それならば合理化節減というものは、どちらかというと、私は、前段の施策による増収、どちらが確定かといえば、まだこちらのほうが比較的確定要素が強い。しかし、この合理化節減というのは一番不確定要素が強いと、こう私は見ている。これがどういうように変形していくのか、そのことが、総理にもお尋ねしたように、四十八年、五十二年に関係してくるという、そういう受け取り方をしているのです。しかるがゆえに、もうちょっとこの内容を少し議論してみたいと思います。
  95. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) けさほどの先生の御質問並びに先生総理お尋ねになっている事柄を拝聴いたしておりましたが、やはりこの資産の中でも、再建推進会議の席上でも、やはり合理化による経費節減額、これが相当論議されたことも事実でございます。そして結局、やはりこれにはさっき申しましたとおり、企業外と申しますか、企業外的ないわゆる赤字線式の、赤字線的の問題と、それから企業内の問題と、二つに分けて考えられると思います。  企業外の問題は、主としてけさほど御指摘のいわゆる閑散線区の合理化の問題でございまして、これは申し上げましたとおり全体で約千五百八十億の節減額を織り込んでおりまして、これは九千六百億の中に含まれておりますけれども、これをたとえば八十三線、二千六百キロを毎年平均二百六十キロずつやめていくというような架空的なことは考えておりません。やはり四十四年度予算には、実は全然これによる節減額が入っておりませんのは、結局四十四年度から八十三線のうち、実際地元とお話しいたしましてさほど支障なしに合理化できる線区につきましては、ぜひ合理化をまず手始めやっていきたい。しかし、それが経済効果として出ますのは、四十五年度にならなければ出ないわけでございます。ことに赤字線につとめておる職員の首を切るとか、やめさすとかいうことではございませんので、結局、赤字線から出てまいります経常費等が節約できるということ、人件費以外の物件費が節約できるということになりまして、それが全部四十四年度に、たとえば百キロできたといたしましても、百キロ分の節減額は四十五年でなければ予算としてはあらわれてこないということになるわけでございます。したがいまして、それが累積してまいりますので、四十四年から五十三年までの逐年をごらんくださいますと、下半期に至るほどふえております。初めが少なくてあとがだんだんふえているということは、その累積分と、それから情勢の変化によって、場所によっては道路ができる、あるいはその他の関係でもう地元のほうでも、こんな古い鉄道は要らない、もうはずしてもらってもいいというふうな状況が必ず出てくるということも考えられるわけでございます。そういうことを勘案いたしますと、この計画の主として下半期において、そういうことがあらわれてくるだろう。あと五年もすれば、相当道路事情も変わってまいりますし、あるいは地方の過疎化対策として地方に逆に工場等ができて、赤字線赤字線でなくなることも考えられると思います。そういうその時点、時点の状況考えましても、全体として二千六百キロを平均的に合理化することは非常に不可能に近いということで、初めは少しずつ手をつけて、そして計画としては何とか十年間に二千六百キロぐらいの合理化をしていきたいというのがこの計画内容でございます。  それから、もう一つ、企業内の問題につきましては、これはもう素手ではどうしてもできない合理化でございます。御承知のとおり当然、投資を伴わなければできないわけでございます。大体この推進会議意見書の中にも、合理化と安全投資で約一兆八百億をみております。そのうちの安全対策を除きまして、約五千五百億ぐらいの投資をみております。そのほかに、上のほうのほかの項目に入っております、たとえば電化とかディーゼル化とか、こういう動力の近代化の問題がございます。これはいまの合理化と別の項目に入っております。これが大体千七百億ぐらい、合計いたしまして七千二、三百億の投資をして、それでもって人件費の節約、物件費の節約をやっていくというわけでございますので、これも投資してすぐその効果があらわれるわけでもございませんので、なるべく早期に投資をして、そうして効果を早くあげたいということで、やはり計数的に見ますと後年に至るほど金額がふえております。したがって、この数字をごらんくださいましても、九千六百億は、初めは四十四年度五十億ぐらいのものがずっとふえて、最後には二千七百億になるという、こういう数字になっているのは、いま申しました二つの投資の見合いの問題、それから赤字線合理化のテンポの問題この二つの角度からこういう三角形の計算になっているというふうな内容でございます。
  96. 森中守義

    森中守義君 そこで副総裁、これは少し概念の問題ですが、けさほど来、新総合開発計画ということで私は提起している。ところが、なるほど百二十四線区ですか赤字線の問題、その中で八十三線云々ということなんだけれども、これは新総合開発計画段階は踏まえていないわけですね。少なくとも現状の国鉄の青写真を基調にしてそれで割り出された答えですから、ちょっとその辺にかかっていない。それならば一体、新開発計画の、少なくとも今日の過密、過疎ということを肯定しているわけだ。だから相当詰められていくわけです。そこで、その中枢管理機能あるいは全国を七つかの集合圏に分類していくわけですね、そういう開発の中に、かなり過疎過密という問題はある種の変貌を来たすのではないか。いままで未開の地が急激に開発されるということも予想されるだろうし、あるいは主として太平洋沿岸ベルト地帯といわれておる今日の主要な臨海工業地帯も少し変わっていくのじゃないか。こういう想定も全く成り立たないことはないのですね。だから、私は現在の時点、少なくとも現状の国鉄の状態を踏まえた割り出しとしての赤字線区というものを、はたしてこれが将来にわたってそのとおりであるかどうかというと、かなり疑問が出てくる。その辺に、この九千六百九十五億を何とか出さなくちゃいかぬ、初年度四十九億だというわけで、単年ごとにいろいろ操作をされ努力をされた結果として、いよいよ開発計画が動きだした際に、状況はまた一変しているというふうなことも予想されないことはない。その辺が将来の展望として私は非常に重要じゃないか。ただ赤字だから、現状はそうだからこういう割り出した答えによって赤字線区の整理を促進するということには、ちょっとやはり踏み切れないような気がする。むしろ、地元で必要であるのかないのかという、そういういわゆる公共性という、そういう次元とは別な問題としてですよ。だが、その辺がちょっと私はここで割り切ってしまうのは早過ぎるのじゃないかというように思うのです。ですから、この辺が総合的にどう見ていくのか。つまり私が総理にお導ねしたように、再建計画終了の五十三年までは一応のプログラムがある。それから五十四年後のプログラムがないのじゃないか。具体的に言うと、そういうことをさしているわけなんです。その点どうですか。国鉄としては一考の余地があるというお考えですか。それとも、いやそれはもうそういう気長のことは言っておれない、要は金がないのだから、いま何とかして合理化節減でこれだけ出さなくちゃならぬので、先は先としてこの際八十三線区については手を加えるという見解であるのかどうなのか。その辺、少し将来の問題として議論を展開しておく必要があるのじゃないでしょうか。
  97. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 実はその点は経済企画庁の新国土総合開発計画のときにずいぶん議論になりました。先ほど先生総理お尋ねの、五十四年度以降こういったものの輸送的な使命はどうなのかという御質問だったように伺っておったのですが、この問題につきましては、私どもといたしましては、実は昨年八十三線区を一応発表いたしましてから相当思い切った徹底的な調査をいたしました。各線区ごとに現状、それからいわゆる過疎問題から見た各線区の性格、ちょうどいま先生のおっしゃった、将来ほんとうに、たとえば住宅地として開発される可能性があるか、あるいは工業地帯として発展する可能性があるかということなどにつきまして、相当各線区ごとにこまかい調査をいま実はいたしている最中でございます、一部でき上がっておりますけれども。それを見ますと、やはりいま残っております八十三線区の中に、大ざっぱに分けて二つの性格があると存じます。一つは、明らかに将来とも、あと五年か十年の間には、いま先生がおっしゃった過疎問題とからんで、逆に発展する可能性のある線もございます、率直に申しまして。それから、中にはどう考えてもだめだろう、あるいは逆にそれが地元の道路交通その他に相当じゃまになっているといったような問題が提起されているところも実はございます。それからもう一つ、それと関連いたしまして、現在、たとえば奈良県でございますが、鉄道を敷設する前提といたしましてバスをやりました。そのバスの先をいま鉄道の建設をいたしておりますが、地元の方々なんかは、先はぜひバスにしてほしい、鉄道はけっこうだと言って相当強い——これは奈良県から和歌山県に抜ける五新線という線でございます、五条から新宮に行く線でございます。その線の沿線の方たちは、もう鉄道じゃだめだ、どうしても道路とバスのほうがいいんだということを積極的に主張なさっていらっしゃる方々もいらっしゃいます。そういう意味で、将来ともあまりどういう角度から見ても発展の可能性がない、これは国鉄の小さい目でなしに、県なりあるいは先生がおっしゃったブロックとしての広い視野から見た場合、まあここは大体それほど大きな見込みはないだろう、この道路で十分だろうというような線区と、大ざっぱに分けてその二つに分けられます。  それで、その二つのうちの前のほうは、いま先生おっしゃったように確かにいま現時点で白黒をつけることは間違いだと思います。したがって、これはあと年間模様を見ましてそうしてほんとうにいまの計画が、主として大きな企業が進出するかしないかの問題になると思いますけれども、各企業のほんとう責任者の考え方を具体的に聞きまして、ほんとうにその地域の方々が将来進出する可能性が、具体的にこの計画があるかどうかということなどを確かめて——時点がまだちょっと早過ぎると思います。これはやはり数年しまして、やはりその時点における具体的な現象を調べた上で考えるということで、私どもの申しました第一のカテゴリーのほうは、いますぐ手をつけることは無理だと思います、また間違いだと思います。しかし、第二のカテゴリーにつきましては、ある程度ごく少しでございます、例外的なものではございますけれども、地元が、道路に譲ってくれというようなところなどは、もうそういうふうにしてもいいのじゃないかというふうに考えまして、多少、間にはニュアンスはございますけれども、その二つのカテゴリーに分けて次元的に考えていくというふうに、先生のおっしゃったことと大体私は同じような考え方考え、また、いっているようなわけであります。
  98. 森中守義

    森中守義君 結局、私はいまの副総裁考えに匹敵すると思います。そうなりますと、いまのものの考え方というのがこの数字にどう反映しているか、これが問題なんですね。  そこで、どうなんですか、これは全体を通してお尋ねすることにもなりますが、大体合理化節減の九千六百九十五億というこの上下幅は、これはどのくらいに見ておりますか。
  99. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) この中でさっき申しました、いわゆる企業内の国鉄だけの力では何ともならない要素が約千五百億ございます。さっき申しました千五百八十億でございます。この中でいま申しました第一のカテゴリーに属するもの、これは多少甘いといっておしかり受けるかもしれませんが、もし数年後にそうやって産業が、過疎対策としてもう一ぺんそこが産業的に見直されるあるいは住宅的に見直されるという場合には、いまの赤字のままでは私はないと思います。やはり経営的によくなるということを期待しなければいけないと思いますし、また、そうだからこそやはり過疎問題の対策になるのだと思いますので、その意味でその第一のカテゴリーの問題は、予定どおり工業地帯なりあるいは住宅地帯になればある程度いまの赤字は減ってくる、逆にある程度収入増になってあらわれてくるということを考えても差しつかえないのじゃないかと思います。多少甘いかもしれませんが、私はそういうように思います。したがって、いまの千五百八十億のうちやはり二割くらいのものは節減額が減るかもしれませんが、その分は逆に収入増になってはね返ってこなければいけないというふうに私は考えます。したがいまして、もしこちらのほうで減りますれば、その分が何らかの形で一番上の収入にはね返るという施策的な、そういう考え方でこの問題を扱わなければいけないのじゃないか、そういうような考え方でございます。
  100. 森中守義

    森中守義君 ですから、あまりこの問題、数字を詰め過ぎるのもどうかと思うけれども、その九千六百九十五億という、この数字は、さっきから申し上げるようにきわめて不確定です、要素として。それならばどんぴしゃりこの数字に合うことはないはずだ、ずいぶんものの考え方あるいはその経済性、社会性は変わるわけですからね。そうなると大体どの程度の上下幅を持つのか、こういうことなんですが、大体どの程度見ておられますか。
  101. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 企業内の企業努力による節約額のほうは、これはもうぜひ予定どおりあげなければいけないと思います。やはりこれは前提はあると思います。はたしてさっき申しました七千何百億の投資が資金的に可能であるかということが前提になりますが、もしそれが可能であるといたしますれば、企業内から出てくる予定のものは、これは是が非でも私どもはやらなければならない、そうして予定金額に近いものは節約しなくちゃいけないというふうに思っております。しかしながら、さっき申しました企業内の千五百八十億につきましては、大体二割くらいのアローアンスは出てくるのじゃないか。これは非常にマクロ的に申しまして申しわけございませんが、そのいまの二千六百キロをずっと頭に描いてみまして、将来、けさほどの加瀬先生のお話ございましたが、たとえば鉄道の性格は違ってくる、そうすると収入はふえてくるというようなことも考えなければいけないと思います。そういうようなことなど考えますと、この九千六百億について三百億くらいのアローアンスは考えておかなければいけないのじゃないか。これはほんとうにマクロ的なもので恐縮でございますが、在来線の、ことに赤字線のことにつきましては、そういう線の性格から申しましてその程度のアローアンスは出てくるのじゃないか、こう考えるわけであります。
  102. 森中守義

    森中守義君 まあこれは一つの問題点として将来の施策の中にかなり重要なものとしてお考えになる必要があると思います。そこでいまこれにこだわっておりますと先にいきませんので、いま、はしなくも言われた、その企業内の問題、これはどうなんですか。報告書等によりますと、国鉄の生産性が四・八%、これに対して航空あるいは海運、トラック、これらが二〇、一〇、九%、こういう数字を示しておりますね。だから、期間中において大体倍率一〇%近い生産性をあぐべきだというのが報告書指摘なんですよ。ただ、それを肯定するかしないかは別ですよ。まあ私は別にその問題について意見を持っておりますがね。しかし、これを実際遂行する中において、単年ごとにどの程度の生産率の上昇を見込むのか。
  103. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) その私どものほうの実は生産性は、ほかの企業の生産性の見方とちょっと違いまして、いわゆるほかの企業ですと、売り上げ高とかいうもので非常に端的にごらんになりますけれども、うちのほうは実はそれができませんで、まあ世界共通に使っております換算客貨車キロというのがございます。結局一年間にどれだけの客車と貨車が何キロ動いたか、何キロ動かしたか、これが一つの鉄道の業務量になっております。ですから、ちょっと生産性と申しましても、いわゆる一般の産業の生産性と少し違いますけれども、まあほかに表現する方法がございませんので、結局輸送力のアウトプットと申しますか、もう一つの生産性として見ております。それを私ども換算客貨車キロということで呼んでおります。これはよその国の鉄道も大体同じようなものを使っております。これでまいりますと、いま先生のおっしゃたとおり、過去十年間国鉄の生産性の平均の年間伸び率が四・五%、すなわち昭和三十年度を一〇〇といたしました場合に、昭和四十二年度は一七〇、多少年によって違いますが、年間平均四・五%、この四・五%の伸びは、その中の一応計算的なものといたしまして、たとえば新幹線の開業というものがございますが、こういうものは一応無視いたしまして、大体一つの答申に見合って輸送——設備がよくなり、そして輸送量がふえるという、一つの過去十年間の姿が平均的な姿というふうに推定いたします。ほんとうはもう少しこれは、昭和三十年代の前半におきましては、それほど大きな改良的な意味投資をいたしておりませんので、ほんとうはもう少し、今後十年間は四・五%を五%ぐらいに見るべきだというふうな意見もございましたけれども、一応過去の実証的な伸び率ということで見るべきじゃないかということで、一応四・五%という数字で見たわけでございますが、それはいま申しましたとおり、今後もし三兆七千億の投資をするといたしますればちょっと低いんじゃないかというふうな、もう少し上がらなければいけない、過去の実績から申しましてもう少し上げるべきじゃないかという一方の議論を私ども忘れてはいけないというふうに思っているわけでございます。一応過去の実証的な数字を今度は基礎にして考えております。
  104. 森中守義

    森中守義君 結論として、なかなか年率も出しにくい、したがってこの十年間に、単年ごとに年率これこれだというふうに出てきませんね。したがって、五十三年段階において、報告書が四・八%がその倍にならなくちゃならぬというんだけれども、そのとおりにはいかぬということですか。
  105. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) その点は実は非常に、私ども使う生産性ということば自体にも少し問題がございます。先ほど申しましたとおり。それから計算のしかたにつきましても、いろいろな計算のしかたがあることでございますから、一応過去の実証的なものを一つの基礎にして、そして過去の第一次五カ年計画、これは主として老朽取りかえで、あまり輸送増強になっておりません。第二次五カ年計画では、新幹線を含みます相当な輸送増強になっております。今後の三兆七千億というものは相当輸送増強に直結する工事ではございますが、やはり今後の輸送全体の国鉄に対するシェアと申しますか、道路の発達、あるいは飛行機、海運等の状況から見まして、大体活動のシェアはこのぐらいだろうという経済企画庁の一つ輸送分野の推定がございますので、それと鉄道の輸送力と総合的に計算いたしまして、委員会としてはこの程度の結論を出した。しかし、いままでの四・五%ではちょっと甘過ぎる、かといって倍では少しきつ過ぎる、これも推定でございますのではっきりいたしませんが、私どもの感じといたしましては、過去の実績が一つの柱になっているというふうに申し上げていいかと思います。
  106. 森中守義

    森中守義君 私も、確かに国鉄という企業の中に、生産性という一般原則論的なものをずばり当てはめることが適当であるかどうかはずいぶん異論がある。それはいま、大体同じような御意見のようですからいいとしまして、ただあまり正確に航空と比較する、あるいは海運と比較する、トラックと比較して、他は二〇%いっているのに、ないしは一〇%、九%いっているのに、ひとり国鉄だけが四・八%じゃだめじゃないか、だから、これは期間中にその倍率を一〇%程度まで上げろという指摘がやはり気になるんですよ。だからそのことが将来、国会あるいはいろんな会合等の議論の際に、国鉄側でいまのようなことでずっと終始されるならば、これは何も言うところない。しかし少なくともそういうようなことで、やはりあまり無理を来たさないようなやり方をしませんと、あまり数字にこだわり過ぎて、四・八%倍だ、倍だと、こう言われると、ちょっとこれは問題が非常に波及していくような気がするんです。ですから、その点は一通り安心いたしましたが、その次にやはり合理化一つの問題として、減耗要員の一部は補充するな、こういうことがいわれているんですね。この点についてはどうなんでしょうか。
  107. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) その点につきましては、私ども二つの点から見なきゃいけないということでございますが、一つは、まず何と申しましても国内の労働力の供給の問題だと思います。今後やはり日本全体の教育のレベルが上がりまして、高校卒のまま社会に出るという人は非常に減ってくる、これは労働省の統計でございますが、御承知のとおり現に減ってきておりますし、今後ともふえないということがいわれておりますが、たとえば雇用数で申しますと、昭和四十二年度、三年度が新規高校卒の男子の新規労働供給力としまして最高のピークでございます、約四十万ですが。それからずっと下がってきておりまして、五十四年度時点では三十五万ぐらいになってしまう。これは労働省の職業安定局の雇用政策課の資料でございますが、そういう資料が出ております。私どももまずこれを見まして、労働省からもいろいろ専門的なお話も承りまして、結局国鉄が所要とする新規労働力というものが現在は高校卒に頼っているわけです。また、高校卒と申しますと必ずしも大学卒を必要としない職種もあるわけでございます。しかし、こうやって徐々に高校卒の供給量が減ってまいりますれば、国鉄としても、いままでのように定年でやめた人のあとは全部若い高校卒で埋めるということは非常にむずかしくなってきている。逆にそれを大学卒で埋めるといたしますれば、あまりにも大学卒ではレベルが高過ぎるという職種もございますので、結局、思い切って機械化近代化をして、新規のそういった高校卒でなければならないような職務分野を狭めていく、いわゆる機械化合理化によりまして。ということが一つ考え方だと思います。したがって、私どもといたしましては、全体の人件費を圧縮するという意味の減耗不補充、これも考えなければいけないと存じますが、それ以上に増して新規高校卒の労働力の供給という立場から、やはり現在高校卒の人でやらしているような仕事はなるべく機械化していきたい、そして所要人員を減らしてまいりたい。そうすれば、全体として高校卒でもって減耗を補充する数が減ってくる、こういう見方でもって、これは年間に約一万人前後の減耗がございます、国鉄全体といたしまして。地域によってずいぶん違いますが、一万人のうち、いまの労働の供給力から申しまして五千ないし六千ぐらいならば国鉄で確保できる、それ以上は無理だというふうな、高校卒の配給といいますか、割り当ての面などから考えまして、その程度ぐらいに考えておかないと、結局、労働力不足でもって輸送がとまってしまうということは考えられると思います。したがって、私どもといたしましては、いわゆる機械化近代化の一番のポイントを、第一線の新旧労働力で間に合う面を極力機械化近代化していきたい。たとえば一つの例が操車場の連結手でございます。これは作業が危険なせいもございますが、主としていま高校卒を使っておりますが、もうああいう仕事はやり手がなくなるということを考えなければいけません。したがっていま私どものほうで一番力を入れておりますのは、操車場の自動化、コンピューターを使いまして貨車の仕分けを全部自動的にやる。そして一番危険な、しかも若い人でなければできないような仕事をなくしてしまうというふうな投資をやりまして、減耗の補充が要らなくなるようにしなきゃいかぬという角度から、減耗の不補充ということを考えております。
  108. 森中守義

    森中守義君 それに、ちょっとこれは派生的な問題ということでもありませんがね、いま四十七万数千人の中で、現業部門と非現業部門の数の割り振り率においても、実際の実数においてもどういうことになっておりますか。
  109. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 現在、非現業が二万六千、ちょっと数はこまかいのは省略いたしまして、二万六千、約五%、九五%は現業でございます。
  110. 森中守義

    森中守義君 これは一度行管あたりに来てもらって、現業部門、非現業部門の実情というのをもう少し私は実際にチェックしてもらいたい。そこで、その実際の実情を知らないでとかくの批判を言うのもどうかと思うんですけれども、まず本社がある、支社がある、さらに無数の管理局があるんですね。大体、行政機関あるいはその余の政府機関では、一番多いんですよ、国鉄の場合。これは一体どういうことが主要な目的として支社制度あるいは一ブロック内における複数の管理局制度をとられているのか、この辺ちょっと聞かしておいていただけませんか。
  111. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 実は、この現在の制度には多少歴史的ないきさつがございますが、ちょうど十数年前にやはり国鉄の組織がいろいろ国会で問題になったことがございます。その際に、国鉄はあまり全国一本で見過ぎる、なるべく地方分権にすべきだという御意見が相当実はございました。ちょうど昭和三十年前後でございます。そのときはもちろんいまほど電話が発達しておりませんし、電子計算機もございませんので、やはりなるべくブロック、ブロックに分けて、ブロックごとにある意味の計算上の独立採算をとってやるべきだというふうな議論が相当強かった時代がございました。ちょうど十数年前、昭和三十年前後でございます。そのときにいまの支社というものをつくりました。そしてそれから昭和三十年から五、六年までの間は、やはりなるべくブロック、ブロックで、一つの収支計算をやっていく、ブロック、ブロックで収入をあげ、経費を精算していく、こういうふうな全体としての仕事のやり方をしてきた時代がございます。約五、六年続いたんでございます。しかしその後、これだけ電話が発達し、電子計算機ができてまいりますと、ブロックごとにいまの収支計算をやるとか、あるいは経理計算をやるのは少し無理だ、またブロック自身が非常に人為的なものでございますので、無理だということで、現在そのブロックを解体いたしまして、直轄——全部本社で直接握るという体制に変えつつあります。したがいまして、支社と申しますものも昨年の春に思い切って三分の一に人を減らしました。支社の人間を管理局なり現場に配置転換いたしました。支社は主として各ブロックにおけるブロックとしての地域開発、あるいはブロックとしての輸送計画、たとえば東北なら東北全体としての東北だけの一つの開発計画がございますが、それとどう国鉄が調子を合わしていくか、あるいは北海道、九州でも同じでございますが、そういう地域、地域の開発計画なり将来の発展計画に対して、地域として鉄道はどう対処するかという問題、それから地域ごとの一つ投資計画をどうするかという、こういう問題に重点をしぼりまして、支社長はそのままでございますが、スタッフも半分以上、三分の一に減らしました。また、その下の実際の支社員も約六割五分ぐらい減らしました。そして、支社をいま簡素化している第一段階が終わったわけでございます。今後もう少し私どもといたしましては、各支社を身軽なものにいたしまして、ほんとうに各ブロックの通信と連絡だけにしてまいりたいというふうなことも考えております。これはまあ、まだきまっておりませんけれども大体、支社という制度はなるべく簡素化していきたいという形でいま考えております。  それから、管理局のほうはいま二十九ございますけれども、これは大体一管理局、まあ一人の管理局長がコントロールできる最高は一万ないし一万五千というふうに考えております。それ以上になりますと、ちょっと——昔の師団の大きさ等を申し上げるのはかえって恐縮ですが、私自身、管理局長やりました経験などから申しましても、やはり二万から三万になりますと、とっても実際には掌握できない。もちろん直接掌握しなくても、駅長、助役等を使いますが、その数が非常にふえまして、やはりほんとうに監督できる、ほんとうに仕事をさせ得る目の届く範囲というのは大体一万五千人くらいが一つの姿じゃないか。大体どの企業を見ましても一人の責任者が三万、五万を持っているところはほとんどございません。民間企業で申しましてもやはり一万から一万以下で小さく分けて持っております。私どものほうといたしましても、大体四十四、五万の現業職員を三十で管理するということは、大体一局長が一万五千を管理する、平均いたしますとそういうことになりますが、この大きさは多少大小がございますが、まあまあこのくらいならばそうむだな大きさとも思えませんので、一万五千くらいのものを基準にいたしまして管理局をつくっております。管理局の下がすぐ現場でございますから、これは現業で列車を動かす、線路の保守の作業をやっております。その管理者として現業職員の数に対して、一万五千対一局長というのはそれほど膨大な管理機構とは必ずしも考えておりませんが、ただ、先生のおっしゃった中で、支社というのはそういったいままでの経過がございますが、これは徹底的簡素化の方向に今後とも進むつもりでございます。
  112. 森中守義

    森中守義君 この機構の問題は非常にむずかしい、しかも沿革を伴っているわけですから、それでなかなか簡単に手をつけるというのもいかがなものかという気がいたしますが、ただ、数字として現業が九五%、非現業五%というこの数字のはめ方もいろいろ見方によって違うのですよ。むろんこの中を一体非現業何%、現業何%が正当かというと、特段の定見というものを持っているわけじゃございませんが、しかし多分にこの辺のことについてはもう一回吟味の必要がある、こういうふうに思う。中でも、いま言われた支社、管理局ですね。ただ、これは例にとってどうかなという気もいたしますが、たとえば郵政を見た場合に、むろんこれは三公社五現業と一口には言うが、国鉄とは郵政はだいぶ違うのは違う。しかし、東京郵政局は七万人持っている。むろんこういうふうな民間の企業も他に何もありませんので、それで一万から一万五千が管理、掌握としてはいいかどうかという、これもあながち私は副総裁の言われることを無条件に承服するわけにはいきませんが、もう少し管理局というものを含めて支社体制を検討してみたらいいのじゃないか、率直に言ってそう思う。それでこれからだんだん、企業合理化という問題もさることながら、もう少し人事の刷新といいますか、いま少し国鉄の内部に新風を吹き込む必要がある。報告書の中で昇進制度の改善をはかる、こういうことをいっている。私の知る限りかなり国鉄は、学閥なんということは私はあまり好きでないが、少なくとも人材を適材適所に配置している、そういう状況にあるとは概念としては言いがたいような気がする。これはまは別の問題手が、事のついでに——いままで、公社になったあと、本社の理事以上の役職に、つまり特進の人の場合ですね、いわゆる学卒でない人たち。昔流にいうと学卒、高文というそういう以外の人が理事以上の者に何名くらい抜てきしたことがあるか、起用したことがありますか。
  113. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) その問題につきましては、総裁からかねがね私ども言われていることでありまして、また、意見書にも書かれております。私どもも何といいましても官庁から変わった企業体でございますので、いわゆる官庁的人事の色彩が非常に強いということで、なかなか人事の問題で一朝一夕にはまいりませんが、私ども相当強い決意でいわゆる新風を吹き込むことをやっておるつもりでございますし、しかしいまお尋ねの、過去、公社になってからとおっしゃいますと、実は理事以上は一人でございます。現在九州の支社長が理事でございますが、これは旧制中学だけでございまして、あとは全部うちの中で現業でたたき上げた人であります。これを理事にしたのは初めてでございます。
  114. 森中守義

    森中守義君 報告書がいっている昇進制度を改めろということは、私のいうような考え方でこう指摘しておるかどうか、この辺はちょっと疑問がある。何もこれにこだわるというわけじゃございませんがね。いま副総裁の言われる旧制中学を卒業した人が九州の支社長で、一名理事をつくった。こう言われるけれども、これはことばは悪いけれども、お情け理事ですよ。少なくとも中枢部、経営の最高スタッフじゃない。私はそういうことを言っているのじゃない。ほんとうに経営の中枢部に人材をなぜ置かないのか。官庁じゃありませんからね。企業の特性はその辺にあると思う。それが依然として、かつての大学高文あるいは今日の上級職という、そういう特進エリートコースによって一体国鉄が経営されていいものかどうか。もちろんそういう頭脳も必要でしょう。しかし現場でかまをたいてみた、出札もやってみた、ほうきも握り、ぞうきんを握ったという、そういうつまり豊富な事業の体験、あるいは人生の体験を持ったような、そういう人をもっと起用すべきだ。これがほんとうに私は新風を吹き込むことであり、ややもすると国鉄が官僚的だという、独善的だという弊害を除去できる唯一の道じゃないだろうか、こう思うんです。それで副総裁のおことばを返すようで悪いんですが、なかなか簡単にいかぬと、こう言われる。しかし、これは国鉄自体でやれることでしょう。国会の承認を必要とする人事案件じゃないんですね。だからこれは、皆さんがその気になって一ぺんやってみよう、そういう方針決定できれば、あとの選考の問題で、やる気があるかないかという問題、こういう問題じゃないですか。むろん、いろいろ運輸の事情もあるでしょうから、縁もゆかりもない私が外側からああじゃないか、こうじゃないかというのは迷惑かもしれない。しかし私は、今日のこの事態というのは少なくとも行政官庁ではない、企業ですからね。これもことばはよくないけれども、やっぱりもうけなくちゃいけないですよ。それには、人がどういったようにうまいぐあいに組み合わされていくのか、そういう織りなす人情の機微というものも私は必要じゃないかと思う。そういうのが人事管理の中に要員対策として採用されなければまずいんじゃないか。これはひとつ非常に重要な問題であり、これこそ特別措置法とかあるいは運賃改定とかいう、そういう問題じゃなくて、国鉄の管理運営上の問題ですからね。副総裁あるいはまた総裁からも、この点についてはひとつ将来の構想として漏らしておいてもらいたいと思いますね、どうですか。
  115. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) この問題につきましては、実は私が監査委員長のときに、どうも国鉄にはいわゆる岩盤というものがある。大学を卒業するまでに高等文官試験を受けないでそれで国鉄に入ってきておる人は、いかに優秀な人であっても本社の課長にはなれぬ。局の課長が終わりだ。そこにいわゆる岩盤というものがあって、一歩もそこから抜け出すことはできない。こんなことは人事行政の上からいくと問題にならぬですということで、時の総裁の十河さんにお話しまして、とにかくこの岩盤に新しい空気を入れるために、岩盤からひとつ局長を出したらどうか。それもあんまり一ぺんにやるというとこれはディスターブするので、ひとつ三、四人出したらどうかというのでさっそく出しました。さっき副総裁から理事になった人を申しましたが、これは一人なんですが、局長になった人は相当あるということで、これはもう岩盤に新しい空気を入れる。段を追うてますますベンチレーションをよくするということに進んでおりますので、いま森中さんの言われた御趣旨は、今後国鉄において実現されることだと、私は考えております。
  116. 森中守義

    森中守義君 まあひとつ、これは私の願望ということでお聞きいただいて、ひとつ寄り寄り具体的に御検討いただきたい。  それからいま一つ合理化の点に関して、要するに賃金の問題ですね。これはほどほどにしておくと、こう言っておるのですね、報告書では。それで、この期間中に大体年率何%くらいのベースアップを見込んでおるのですか。在来は九%と、こういうことのようでしたが、そこで在来そうであったのだが、再建期に入れば言われたまま出すわけにいかぬということで、在来の率を多少とも切り下げようというのか、あるいは適正な要求である、あるいは適正だと認めた場合には九%以上出そうというのか、その辺の賃金の問題どうなりますか。
  117. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) その推進会議試算をいたしました場合に、やはりその点非常に問題になりました。したがって、答申でそこら辺ちょっとあいまいに書いてあるのはそういうことでございますが、いろいろ議論の末、結局定期昇給を含めまして九%、大体定期昇給が三・四前後ということで、これに五・五、六%を足しまして九%ということで単価のアップを見ておるわけでございます。しかし、御承知のとおりの公労法がございますので、毎年毎年の賃金は結局最終的には仲裁委員会できめられることになると思います。一応この推進会議では、相当論議の末、九%ということで試算をいたしたわけでございます。
  118. 森中守義

    森中守義君 私もこれはかなり賃金の問題は、激しい流動を続けますからね、過去のキャリアが九%であった、それでいいということにはむろんならないと思います。しかし、いま言われるように裁定機関、あるいは調停機関、もしくは他の二公社五現業、こういう関係もありますがね、しかしよそ並みにはするんでしょうね。国鉄は再建期間に入っているからおれのほうはオシャカなんだ、よそはよそ、うちはうちということで、よそ並みにしないというようなことはないんでしょうね。
  119. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) これはけさの総理の御答弁にもちょっと触れておられたように私承っておりましたけれども、まあ従来の三公社五現業の関係から申しまして、再建期間だからどうにもならぬということは言えないと思います。結局最終的には仲裁委員会の裁定でございますので、私どもいまそれをどうこうは申し上げられませんが、ただ一番の問題は、いわゆる償却前赤にもし転落した場合にどうなるかという問題が一つございます。これは全く支払い不能ということでございます。物件費を払わなければ収入が減ってしまう。また利子は、社会党のこの間の久保先生の案でも五%までは払うという案でございます。ですから、それらを考えますと、その利子くらいはどうしても払わなければならないとなれば、結局人件費のベースアップはどうなるかという問題が一つ残りますが、しかし、幸いこの試算では、償却前赤という試算になっておりませんので、その問題はございませんが。現実の問題として非常にこの試算以上に、ことに収入の減がひどくなりますれば、万が一そういう事態がこないとは限りません、そういう場合には非常に大きな問題になると思いますが、私どもそういう事態がこないように全力をあげてやるつもりでございますけれども一つだけ心配なのは、そういう事態が絶対ないということが言えないということはございます。あとはよその公社並みというようなことで計算はできておるわけでございます。
  120. 森中守義

    森中守義君 別にこれは、私は組合の人間でないので、団体交渉をここでやっているわけじゃないから、あまりその辺は用心しないでいいですよ。ただ、私は償却前赤字になるかならないかということを言われるけれども、歯どめができますよ、これで。歯どめするためにこれが出ているのだから。それと、なるほど試算表をずっと吟味してみますと、相当不確定な要素がある。しかし、心配されるような事態は起きてこない。これは明らかに私は歯どめがきくと思う。ただ問題は、四十八年あるいは五十二年にわたる一〇%なのか幾らなのかということが一つの問題である。あるいはしなくちゃいけないのかどうかという、こういう将来の問題がありますが、いまそのことが直ちに賃金までも圧迫を加えるという、そういうことにはならぬ。これは私は正確に言い切れると思うのですね。ですから、やはり他の二公社あるいは五現業のおつき合いというのか、おつき合いということばはよくありませんが、ほんとう国鉄従業員諸君も日に夜を継いで一生懸命再建に努力しておるのだから、のみならず、賃金四原則の中で賃金の安定をはかれ、寄与せよと、こう言っているのですから——これは運賃決定のときに守っちゃいないわけだ。しかし、せめて職員の処遇については、賃金四原則の一項を守りなさいよ。これはひとつ約束しておいてもらいたい。
  121. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 過去の例から申しまして、実は国鉄だけで団体交渉で賃金をきめた例がございませんので、やはり今度も仲裁委員会の結局お世話になると思います。したがいまして、私どもとしましては仲裁委員会の裁定に対しましては、法律上最終的には服従するということだけを、はっきり申し上げておきます。
  122. 森中守義

    森中守義君 それからこれも事のついでで恐縮ですが、非常に具体的な問題でね、四月十一日、朝日新聞に、あまりいい見出しでもない、内容も適切ではないと思われる記事が出ている。そこで、この内容をごちゃごちゃ聞こうとは思いませんがね。なぜこういうのを早くから制度化しておかなかったか。また、鉄監局長に聞いておきたいと思うのですがね。大体こういうことを違法な行為であるということで、調査をするなんというばかなことをやっちゃいけませんよ。これは国鉄の裁量権によってできる筋合いのものだ。しかもこれは三十九年以降のことですからね。それをいま国会運賃審議されている、再建でやかましいからこのくらいのことはやっておこうという演出じゃ困る。むしろこういうことは早く制度化しておくべきじゃなかったのですか。内容は触れませんがね。出している、出す可能性——筋が通ったから出したのでしょう。こんなの、どうですか、さっささっさ制度化してしまったら。
  123. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 実はこれは御承知のとおり、だいぶ前からいわゆる報労物資といいますか、初め物で支給されていたものが、途中から金にかわったといういきさつのものでございます。ほかの公社も調べましたら、たとえば郵政の繁忙手当、電電の生産性向上手当、いろいろございますことは知っておりますけれども、ただ金額が非常に私どものほうとしては少ない。いわゆる手当として出すべき三千円くらいのものでございますので……。
  124. 森中守義

    森中守義君 もっとよけい出したらいい。
  125. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) それはとても出せませんので……。結局いわゆる手当として労働の対価にするには少し性格が違う。やはりこれは多少古めかしくて恐縮ですけれども総裁ほんとうに御苦労だったと言って、何がしかのもので、金一封的な気持ちでもって労をねぎらうという意味のものでございますので、もしいわゆる繁忙手当みたいなものにするならば、これは電電、郵政のようにもっと金額が大きくなって、そうしてほかの労働の対価だということがはっきりしなければ、繁忙手当とするには少し性格が違い過ぎる。沿革的に申しましても、私どものほうの非常に古い歴史を持っておりまして、そういうたくさんの人間を使う際の一つの気持ちとしていままで使ってきたという形でございまして、ことし——四十三年度にこれを出しませんでしたのは、いろいろな意味でこの問題を再検討したいということで出さなかった次第でございます。
  126. 森中守義

    森中守義君 しかし、これはこれだけ世の中に新聞でいわれた以上、何とか結末をつけなくちゃいけますまい。それで、たとえば郵政とか電電とかね、あとどういうことをさされているのか知らぬけれども、金額が低くて話にならぬというのなら、もっと上積みしたらいい。筋の通ったものは出さなければいけませんよ。それと制度化するでもない、何かこう、認知しないようなそういう金の出し方ということは要するによくないですよ。だからこれは、運輸省がいま調査に乗り出しているということなんだが、私は、調査それ自体が勘違いしているのじゃないか。調査の必要なんかありませんよ。むしろ運輸省はすみやかに制度化すべし、金額を上乗せすべし、こういうことを総裁のほうに指示したほうが適切でないですか。どうですか、運輸大臣
  127. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 先ほど国鉄総裁から、このやり方について、ことしは検討を加えたと、こういうことでございました。私は、その検討の結果を見てみたい。こういうあなたのおっしゃるように、正規な、法律的に違法でなくても、賃金か何かわからぬというようなものは、だんだん少なくしていくことがいいのじゃないか。あなたは制度として取り入れたらいいじゃないか、こういう御意見でございますが、そういうものはやはり明らかにしておく必要があるであろうということは私は同感でございますが、このことについては国鉄検討する、そのことを待ちたいと思います。
  128. 森中守義

    森中守義君 その次に少し公共負担関係お尋ねしていきたいと思うのですが、運賃の構成要素の中に、一体、公共負担というものは入っているのかいないのか。この点、どうですか。
  129. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) これは非常に結果的な数字の御説明になりますけれども昭和三十二年の運賃改正までの際には、一応感覚的には公共負担をほかの人がカバーするという形で、運賃改定をいたします計算の基礎といたしました。と申しますのは、国鉄全体として収支のバランスがとれる、こういう運賃改定をいたしたのであります、三十二年度まで。その際には、たとえ片方で公共負担があっても、それをどこかほかの人が見ている、しょっているという形の公共負担の転嫁が部内で行なわれておったと申し上げたほうが適切かと思いますが、したがいまして、全体として国鉄の収支が、単年度でバランスがとれるという運賃をつくっておりました。それが三十六年以降になりますと、必ずしも償却費が完全に計上できないということになってまいりまして、赤字に近くなってまいりますと、結局公共負担が完全に外へ出てしまうわけであります。したがって、現時点におきましては、やはり公共負担はまるまる国鉄が、ほかの人に転嫁させないで、収入減になっているというふうに申し上げたらいいと思います。多少終戦後のいきさつがありますが、初めのうちはやはりほとんど転嫁ということで、転嫁されるほうも能力があったわけです。しかし、その後だんだん競争機関がふえ、競争力がなくなってきますと、結局転嫁を受ける能力がなくなってしまった。結局、公共負担がはみ出してしまった。これが現在の姿である。ちょっとわかりにくいかと思いますが、そういう説明、それが実際の姿でございますが、あるいはおわかりにくかったかと思いますが、感じとしては現在としては公共負担、外へ出た感じになっております。
  130. 森中守義

    森中守義君 そうしますとね、どうなんでしょう。これは形式的といいますか、一口で公共性、公共的というか、だから私は本来的にはこれはもう純度——できるだけ高純度の公共性、公共的なものを自動的にきめていくというのが、これがあるべき姿だと思うんですね。ところが実態は必ずしもそうじゃないというようにいろいろ聞いておる。まあ、それが私の聞き違いであれば幸いですが、しかし、やっぱり基本というものは公共性、公共的というんですか、高純度のものが、きわめて自然な状態での割引き選定が正しいと思うんです。そこで、そういうものの基調に立った場合に、実際問題としてどうなるのですか。その選定の経過、それからまたその一つには財政の規模がこの程度のふえ方だからこの程度にとどめておこうという、つまり財政の規模からにらみをきかして決定をされるのか。それから、いま一つは、現在のように三十九年以来かなり赤字が蓄積をしておる、その間に若干の手直しが行なわれているわけです。その割引きについて、その際に、赤字がこれこれだから極力これを増高させないためにチェックしなくちゃならぬということで、赤字に対してにらみをきかしている。これは一体どうなのか。いま一つはその営業収益、まあこれはかなりコンスタントに一応きています。大体一〇八%台に乗っているようですから。だから、営業収益をにらみをきかして公共負担をおきめになるのか。まあ、そのほかいろんな政治的な背景もずいぶん複雑のようですけれども、まあこの辺のことはどうなんでしょうか。
  131. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 非常に御質問がむずかしくて、端的にお答えできるかどうかよくわかりませんが、結果的に、逆に申し上げますと、国鉄運賃収益がこれだからこれだけの公共負担をしょうべきだとかという議論じゃ実はございませんのです。いま御手元に資料を提出いたしましたが、非常にいずれも歴史的な経過でもってそのつどそのつど生まれてきた公共負担と申し上げたほうがいいと思うんです。たとえば公共負担などになりますと、貨物の等級制度というもの自身は、これは戦前からずっとあった制度です。しかし、あとの二つの割引きは、これは片一方は昭和三十年、片一方は昭和三十六年にできた割引きでございます。要するに必ずしも理論的に、先生のおっしゃった純度の高い理論で制定されたというよりも、そのつどそのつどのやはり状態に対処してできたものであるし、また逆に申しますれば、国鉄全体の財政の上からこれまではしょうべきだというふうな理論づけでやったものでないことだけは確かでございます。
  132. 森中守義

    森中守義君 この中に非常にやはり問題になるのがあるんですね。たとえば一次産品あるいは二次産品等の場合、生産者にどのくらい、消費者にどのくらいのメリットを見ているのですか。
  133. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 貨物公共負担全体で約九十四億ぐらいでございますが、このうちさっき申しましたとおり、いわゆる等級表でもって、法律によっております等級表の中で、もとからきめておる公共負担と、それからそれを基礎にしてさらに割り引きする公共負担と、二つあるわけでございます。主としてまあ農林水産物資が多いわけでございますが、若干の鉱工業生産もございます。これが一体どこに、生産者にそれが還元されているのか、あるいは消費者にそれがほんとうに反映しているのか、これは非常に不明確な点でございます。流通過程の中でどこで一体吸収されているのか、あるいはその中間の取り扱い業者の負担がそれだけ減っているのか、その点が非常に不明確で、実はこれは農林水産関係委員会で始終問題になる点でございます。私どもといたしましては、いやしくも割り引きした以上、それが何とか生産者か消費者に反映してほしいという最小限の希望だけはつけておりますけれども、それがそれじゃ、たとえば魚の運賃を割り引きした、それじゃその魚の運賃の割引が、どの人がそれを享受しているのかということは非常にわかりにくいというふうな現状でございます。
  134. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) ちょっと私から補足して説明いたします。  公共負担の問題でございますが、さっき副総裁からも説明いたしましたが、国鉄に余裕があるゆえに出そう、ないがゆえに出さぬとかというのじゃなくて、まるで政府の租税のようなものですね。国鉄が損であろうが、得であろうが、とにかく出さにゃならぬ。その結果はどういうことかというと、国鉄に余裕のあるときはいいですが、余裕のないときにはその結果は結局、工事費に対する投資がそれだけ減ったということです。結局、国鉄というものがあまりおとなし過ぎた、政府の言うことを唯々諾々として聞いた、はなはだ勇気がなかった、こういうことを言っているのです。(拍手)
  135. 森中守義

    森中守義君 どうもその点は、総裁総理がいるときに向こうに言わなけりゃだめです、私に言っても。私も拍手を送りますよ。お隣の運輸大臣もうんとひとつ聞いておいてもらわぬといかぬ。  そこで、これはいま副総裁、非常に実際むずかしいと思う。しかし、やるからにはどのくらい生産者、どのくらい消費者が恩典にあずかるかということは、これはやはり追跡をされておかなければまずいですよ。いま、なるほど副総裁は政策的にそうすべきものなんだと、私もそれはそうだと思う。しかし、やるからには、これらのことをやれば、生産者にはどのくらい、消費者にどのくらいのはね返りがくる、このくらいのことをやっぱりつかんでおかないと、少々やるのに意欲はわかぬのじゃないですか。私はおそらく国鉄のこの機構をもってして、しかもこの頭脳をもってして、その追跡が行なわれていないことはありませんでしょう。あったら出してください。
  136. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) それは全くうちのほうにはないのです。と申しますことは、たとえば魚で申し上げますと、途中にせりというものがございまして、非常に市場性のあるものにつきましては、市場でもって、すっかり流通過程で変わってしまいますので、一体だれがその割引きの恩典に浴したかということは、市場でもって完全に吸収されてしまう。たとえば、毎日の魚市場のサバならサパの市況を見ますと、一日にやはり値幅が相当ございます。値幅の数分の一しか運賃がないということで、やはり値幅にいつでも吸収されてしまっておるという御説明になっているわけでございまして、実はその点は私どもずいぶん農林省等にも、一体この割引きでだれが恩典を受けているかということを追及いたしましても、それは全体として農林水産物資がそれだけ安くなっているという説明しかできないというようなことでございまして、これは一時、私、農林水産委員会でそういう答弁をいたして非常にしかられたことがございまして、そういうことは国鉄の知ったことじゃない、これは農林省のやることであると言ってしかられたことがありますが、結局、全体として農林水産物資の運賃が安いということは、どこか、生産者か消費者か、どこかわからないが、どこかでだれかが恩典を受けていることだ、こういうふうな非常にばくたる説明でございます。  ただ、一番明瞭なのは米でございます。これはもう食管特別会計の関係がございますから、これは非常にはっきりいたしております。米以外の、ことに生鮮食料品に至りましては、流通過程で二つ折れ、三つ折れということばがあるように、非常に流通過程の膨張係数が大きいものですから、運賃値上げ分がどこに入ったかということが実際わからない。したがって私は、わけがわからない割り引きはやめてほしいということを強く実は主張していますけれども、なかなか私ども力が足りなくて、その実現ができなかったという経過でございます。
  137. 森中守義

    森中守義君 これはやっぱり根本としては、総裁が言われたとおり。しかし実際、実行に移す場合にやることに、どういう方向を一このことが明確でなくてせにゃならぬからするというのじゃ、ちょっと私はどうかと思うのです。これは私も、数年前、農水の理事をやって、だいぶこういうことに関係したことがありますが、私は言わなかった。しかし、今日運輸にごやっかいになっておってこういう大事な問題を扱うという際には、もう少しやはり一口にただ公共負担だ、公共負担だというような唱え文句じゃだめじゃないですか。私はたいへんくどいようだけれども、その追跡が行なわれていないとは思いません。そういうとにかく全体を通じて生鮮食料品の市場価格に何がしかの寄与をしているという、そういうばく然とした理念じゃないと思うんです。それはむろん四%もあり、あるいは六%も、いろいろですがね、全体をとらえればそうなんだろうけれども、簡単な意味で、それじゃ中間経費がずいぶんそれで浮いているということじゃないんですか。生産者に、消費者にどういう均てんを与えているかということはかなり疑問だと思うんです。だから、これは国鉄と農林省で片一方はお役所だと、片一方は公社で当たり負けをするというなら運輸省でやってもらったらどうですか、これは正確にしなくちゃだめですよ。運輸大臣、お聞きのとおり、国鉄はどちらにどういう均てんがいっているかわからないというお答えですよ、これは一体運輸省として、行政庁として少し手を入れる必要ありはしませんか。幸いにして菅野企画庁長官もおいでになっている、企画庁はどう考えますか。これはしかし、笑って済まされない重要な問題です。どうですか。
  138. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私はそのとおりだと思っております。したがいまして、公共負担というものをそれじゃだれが負担するのかという問題になってきますが、ここは話が、そこは別にいたしまして、国鉄に割り引きさす、公共負担だといってさして、ほったらかしにしておった、私が弱かったんだという国鉄総裁のお話は、私はそのとおりであると受け取ってよいところがたくさんあると思っております。  そこで今度の予算編成におきましても、私はできる限りの努力をいたしまして、いわゆる三位一体方式、いままでは率直に言いまして、あれだけの第三次計画をやるといってやっておきながら、これのいい悪いは別にしまして、四十年に実施するそれの一番大きな財源は何だ、運賃収入である、運賃値上げをさしてもらえぬ、一年延びた、ほかに何もない、そして利子の高い特別債でやれ、こういうやり方というものは、これはいかに国鉄が公共事業に近いものであるといって、独立採算制をたてまえにするといえども、これは考えなきゃならぬ問題があるじゃないか、こういうとらえ方で、私は今度の再建計画の実際の予算化ということに取り組んだつもりでございまして、この点につきましては今後も私は検討を加えるべき点があると考えております。まあ経済企画庁長官が御答弁になることでありましょうから、私は経済企画庁の分まで、要らぬことまで言う必要ないと思いますから、私の考え方を申し述べておきます。
  139. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 今回の生鮮食料品の運賃の値上げをストップしたのは、やはり直接消費者物価に影響するということを考えて、そしていままでどおりに割り引きしてもらうということをお願いしたのでございますが、しかし、そういうような運賃の割引きが、それが生産者に利益をもたらすか、消費者に利益をもたらすかというような問題は、そのときどきによって私は違うと思うんです。需要供給によって違うと思うんです。でありますからして、これは一がいにこれだけは生産者が利益するとか、これだけは消費者が利益するとかということは、私はこれをすぐ論ずることは困難だと思います。であるからして、今回の場合は、特に私は、これは消費者に影響すると、消費者物価に影響するということで、従前どおり値上げを抑制して、ストップしてもらうことにお願いしたのでございます。
  140. 森中守義

    森中守義君 これは一般の消費経済論じゃないんですよ。つまり国鉄が公共の目的を果たさなければならぬ使命を持っているわけだから、その使命にのっとって公共負担やっているわけですね。それならばそれはよろしいと、よろしいんだが、やるからにはもっと純度の高い、ほんとうに公共的である、高い公共性を持っているというきわめて自然な状態でやるべきだと、私はこう主張する。そこで、実際やった結果として、一体すべての国民に、消費経済のワク内にある生産者あるいは消費者がどういう恩典を受けているのかということは、これは当然追跡さるべきである、そのことを踏まえていなければ一体公共性とは何なのか、はいそれはせにゃならぬからやるのですよと言っているのでは話にならぬのじゃないか、こう言っているわけですよね、わからなければやめちまったらいい。
  141. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 大体生鮮食料品の運賃の割引きは、これはやっぱり物価を上げないという公共性から、それは出たものと私は思います。であるからして、もともと生産者を利益するということよりも物価を上げないというその目的からこれが生まれてきたものであると、こう私は考えております。が、しかし、そのときどきによってそれが生産者に利益する場合もあるし、消費者に利益する場合も、そのときどきによって私は、そのときの経済事情によって違うということを申し上げたのでありまして、根本はやはり物価を上げないという目的が根本だと、こう私は考えております。
  142. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 公共負担の問題でありまするが、公共負担で一番大きな問題は通勤通学の割引き問題、通勤通学のこの割引き問題というものは、これは私は政府の教育政策からきている問題で、全く政府の政策のうしろをつがされたのが国鉄なんです。この点は、たとえば食糧に対する割引きとはだいぶ違う。全く政府の政策を国鉄の犠牲においてやったというのが、これが通勤通学の割引きと、こういうことなんで、そのために国鉄が二十四年から四十二年までに公共負担であれしているのが一兆二百億であるのですが、そのうちの大部分通勤通学の割引きなんです。全く国鉄というものは公共性というものに踊らされて政府の犠牲になったと、政策の犠牲になったと、こういうことなんです。
  143. 森中守義

    森中守義君 それはまたあと議論になりますので、そこまで言いませんが、それは言わないけれども、しかし、少なくとも国鉄の側におかれてもどのくらいの均てんを与えているのか、これはひとつやっぱり追跡しなくちゃいかぬ。せにゃならぬからするのだ、それは総裁の答弁けっこうですよ、大いに賛成だけれども、やった効果はどういうものだくらいのことは把握しておかなければ意味がないですよ、私はそれを主張している。だから国鉄の頭悩、国鉄の統計機構からいって、そういうものが把握されていなくちゃならぬだろうということを言っているのだが、それが残念ながらないということならばそれはしかたがない、しかし、つとめて将来の問題、できるだけ早くその点を一ぺん洗ってみる必要があります。そうしなければ何のためにやっているのか、ただ中間経費がそれによって浮いている、それじゃその仲買人なのかいろいろな団体なのか知らぬけれども、そういうものに利潤をあげさせるための公共料金、公共負担ではこれは困ると思う。いわゆる国民に返されなくちゃ困るですから、そういうことにぜひすみやかに洗い直してもらいたい。  そこでひとつ話を進めてみたいと思うのですが、これは今度、まあ運賃の場合ですね、あまりそういう向きの方は見えませんけれども、一たん貨物がどうだという場合はたいへんなことになるのですね、したがって、いまの公共負担決定の根拠というものはまさに運賃法八条以外ないのじゃないですか、どうですか。
  144. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 運賃法八条でやっております。
  145. 森中守義

    森中守義君 ですからね、この運賃法八条というのはまことに簡単なんで、それでお出しいただいた公共負担の額からいけば四十三年六百十余億、運賃法八条で六百十余億動いているわけです、そういうことでしょう。
  146. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ちょっと私の答弁が簡単過ぎましたので、この中には運賃法八条によるものと、それから運賃法の例の定期の法定限度で定めました、運賃法の第五条でございます。つまり、これによりますと、大臣の認可になっておりますので、その認可条件。それから貨物につきましては、等級表は運賃法の第七条でございまして、いまの六百十二億の中で、純粋に運賃法第八条でやっておりますのは、貨物の暫定割引きと特判措置、この二つだけが第八条でございます。旅客運賃のほうは、これは学生のいわゆる定期でなしに、学割りというものがありますが、これが運賃法八条でありまして、これが全体で二十六億でございます。定期のほうは、先ほどの法律によって直接やっておるわけであります。直接やりましたあとは、大臣認可を得ております。ですから、運賃法第八条でやっておりますのは、この中で学割りと、それからこまかい、お手元の資料の二枚目にたくさんございますが、あのうちで法律できまったものはごく少数でございます。それ以外と、いまの貨物の政策割引き、これだけが八条で、あと法律から直接出てまいります。
  147. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) この学生割引きの問題でありまするが、森中さんによくお覚え願わにゃならぬのですが、国鉄が学生割引きとして公共負担をやっておるのは五割以上なんです。五割はこれは当然国鉄が公共性に免じて負わにゃならぬものだ、こういうことで法律化している。それでは五割というものはどのぐらいになるのかということを申しますと、四十二年あたりを見ますと、通勤でもって千二百億以上、通学でもって五百億以上、それで五割で、合計でもって千七百億以上。そのほかに、五割を超過した額が現在どのくらいあるかというと、通学でもって約三百三十億、通勤で百十億、合わせて四百四十億。それだからして、五割を入れるというと二千億以上の国鉄が荷物をしょわされている、こういうことであります。
  148. 森中守義

    森中守義君 ですから、これは公共性、企業性、そして独立採算というこういう因果関係がめぐっているわけですよ。ですから、本論に返りますけれども、やはり運賃改定、この中に公共負担の是正を含めとしてある。そういうことですね。同時に、監査報告でも、どうも公共負担が重過ぎる、こう言っている。にもかかわらず、さっき言われたように、運賃法八条なりその他二、三の条項によってこういう措置がとられるということになると、これはどうにもならない。だから、私はこの際、この辺の問題一ぺん規律化してみたらどうか。たとえば特別措置であるとか、あるいは暫定措置とか、こういうことも、さっきから申し上げるように、純度の高いもの、きわめて自然な状態として公共性のワクの中にはめていく、そのためにはどうしたらいいか。大体、今日の国民生活に必要な生鮮食料品の部類というものはおおむね分類できますよ。したがって、基準表なんか一ぺんつくってみたらどうでしょうか、自動的に当てはめることができるような。これはいま総裁が言われる五〇%以上、まさにそのとおり。しかも、それがたいへんな圧迫になる。しかし、公共の目的を果たすために手段として企業採算をとっているわけですね。しかし、これが限度だ。だから企業採算をことさらに圧迫しないように、国が、それによって生じたものについてはどのくらい分担をしよう、国鉄はどのくらい分担をしよう、こういうことで法制上の手直しを加えるなり、あるいはもっと変わった方法なりで、一ぺん制度としてこれをこの際規律化する必要があるんじゃないですか。それをしなければ、この議論というのはいつまでたっても尽きませんよ、これは。そうして再建計画の途中においてどんどんまたその暫定措置や特別措置の対象品目はふえていく、その可能性は私はあると思うんですね。あるいはその学割りにしろ、通勤通学の割引きの率にしろやはり問題ですよ。だから公共性、企業性、独立算制、この因果関係をこの際は整理をつける。そのためには、結論としては国鉄が幾らを負担しましょう、それから財政規模の全体の中で財政に圧迫を加えない限度は幾らなんだ、その限度額を出す、片や政府が出していく、こういうようなことがこの際考えられなければいかぬのじゃないでしょうか。これはひとつ運輸大臣並びに国鉄、特に大蔵大臣、きょうおいでになりませんがね、財政当局ともこれからは大きな折衝を行なわれてもいいと思うんですが、ひとつ両当局からそのことについては慎重にお答えいただきたいと思いますね。
  149. 原田憲

    国務大臣原田憲君) この問題につきましては、先ほどの答えと重複することになるのでございますが、だれがそれじゃそれを負担するということは問題は別でございます、と言ったことがここでやはり問題になってくると思うんであります。国が、ということになりますと、国鉄を利用しない人の金でもってこの公共負担を補う、こういうことになるのでございますから、何も国鉄を利用していないのに何でそこまで、割引きの負担までしなければならないか、こういうことになりますから、この割引き率の負担分について、お説のように、これをどうしたらいいかということについては相当検討を要する問題であろう、このように思います。日本の、これは国鉄だけに限りませんが、私鉄でも定期というものを発行していますが、これほど何といいますか、便利というか、使う人にとってはオーバーな便利を与えている制度はないと私は思う。たとえば、学校だということだけで、その名前のもとにすぐ定期券はもらえる。その定期券を一ぺんもらったら、その学校へ通う以外でも、どこへ何に使おうとも割引きを利用さしてもらえる、こういうところの恩典が与えられておるわけであります。一度与えた恩典というものを取り去るということは非常にむずかしい問題でございますから、私もこの問題につきまして、先ほど検討に値するものであるという答弁をいたしましたのはそこにあるのでございまして、今度の場合にも、この推進会議では定期運賃の問題について答申をいたしております。しかし、私は物価の問題と関連して考えるときに、やはりこれは政治的な配慮を加える必要があるであろうということで、今度は昨年、定期の運賃改定したところでございます。これは公共負担を一般利用者によって是正しようということでやっておるわけでございます。今度それを引き続いてやるということは、これはまた二重なことになる。いわゆる物価という問題、個人負担の問題について政治的な配慮を払わなければならない、こういう配慮のもとに基本運賃だけを上げさせていただく、こういうことをやったのでございますが、いま森中さんのおっしゃるとおり、いわゆる公共負担という問題については今後とも慎重に検討しなければならぬ、ということを先ほど申し上げましたが、私は重ねて申し上げる次第であります。
  150. 森中守義

    森中守義君 これは運輸大臣、むろん会議録にも残されていくお互いの話し合いなんですがね。しかしどうなんでしょうかね、ただ、まあ言われた、聞いたという関係じゃやはり済まないと思うんですね。こういう機会でなきゃこういう問題を抜本的にいじるということは困難ですよ、私はそうだと思う。ですから、今回、近々の基本方針なり、あるいは再建計画の中でじっくりとこの問題と取り組んでみたらどうですか。一つは金ですよ、金をどことどこが負担するか、大臣も言われるとおり。それと、どういうものを対象にするか、貨物の場合ですね、私はしょっぱなから割引きを全部なくしてしまえ、そういう暴論を言っているんじゃない。むしろこれは強化をしても、軽減すべきものじゃない、こういう見解を持つ。ただ、そのことが国鉄の財政に圧迫を加えることじゃ困るから、だから純度の高い、自然なものを対象にすること、それによって生じた負担というものは国鉄及び国が均等に負担をするなりなんなりしたらどうか。したがって、基準表をつくったらどうか。こういうやや具体的な提案ですから、大臣、これはどうですか。ひとつ基本方針なり再建計画の中で、詰めるなら詰めるという答弁をされておいてもいいんじゃないですか。
  151. 原田憲

    国務大臣原田憲君) この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、国鉄財政再建のための三位一体という形をとってまいりました。私は、いわゆるいままでかつてない方針というものを取り入れたということを申し上げておるのでございまして、今後におきましては、この問題につきましても検討を加えるべきであるという考えを持っておりますが、いま御提案を申し上げておりますことをまず実施をしていただく、このようにお願いをいたしいと思います。
  152. 森中守義

    森中守義君 どうも話が一方的なおっかぶせであって、こっちの話聞かないわけですな、そういうことであれば、こっちも聞くわけにいかない。それは最終的にどうなるかということですから、おくとしまして、真剣に公共負担の問題考えようじゃないですか。これはぜひやらなければだめですよ。  それでもう一つ合理化節減の問題で気になりますのは、労働問題だと思うのです。どのくらいの生産性をあげるかというのは一通り答えられた、あるいは減耗要員のおおよその方向も明らかになった。しかし、節減対策をやるには、さっき申し上げたように当局の一方的な措置によっちゃできない。労使間におけるいろいろな協約事項もあるでしょう。また、話し合いが進展をしていけば協約という合意に達しなければできないこともある。そうなるとどうしても労務対策というのが一つの問題になるんですね。そこでこの再建計画を進めていくあるいは合理化節減を促進をするというその展開をされていく政策の中で、一体どういう労務政策をおとりになろうとするのか。これはある意味では再建計画一つの大きな軸でもあると思うのですね。この点どういうお考えをお持ちなのか、ひとつ聞かせていただきたい。
  153. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) いま先生のおっしゃったとおり、この再建計画ができるかできないかの一つのポイントはその点だと、私もそう思います。実は今度の問題の前に、御承知のとおり、一昨年の春からいわゆる近代化合理化ということで約五万人前後の配置転換の申し入れをいたしました。機関士・乗務員の問題を除きましておおむね合意に達しまして、大体実施の段階に現在入っているわけでございます。その前に、戦争直後軍からいろいろ引き継ぎました、志免の炭鉱だとかあるいは被服工場とか車両工場とか、いろいろなものがございました。こういうものもほとんど整理を完了いたしました。そこでやっと今後ほんとう国鉄としてのあるべき姿の近代化合理化に進むわけでございますが、それにはやはり働いている諸君のほんとうの心からの協力が得られなければやっていけないことも、これ事実なんです。私といたしましては、やはりこの問題につきましては、率直にいろいろ話し合いいたしまして、そうして計画内容について十分了解をしてもらう、そうして全面的に協力をしてもらうという私ども責任者としての組合との接触と申しますか、組合に対する説得と申しますか、そしてその合意に達するという方法以外にはないと思って、これは全精力をあげて私は組合と今後この問題について折衝してまいるというつもりでおります。
  154. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 一体、国鉄の生産性というものは、これは普通の私企業の生産性ということとはだいぶ違った考えを持たなければならぬ。ということは国鉄の仕事はもうかるからやる、もうからないからやらぬというのではなくて、赤字線のごときは一年に千数百億のマイナスなんです。これは私企業ならこんなものやりやせぬ。生産性が上がったからベースアップをするとか、上がらぬからベースアップしないとかいうわけにはいかぬ。いわんやいま言った公共負担なんというものは、政府の政策の犠牲において国鉄はやっておる、生産性上がりっこない。こういうことで、生産性のいかんによって給与をどうするかということはこれはできない。ただ、われわれとしては、組合員としては、そういう変な国鉄の中にいるが、しかしできるだけやはり生産性を上げるということに努力するということは、国鉄職員としての私は尽くすべき義務と思います。運賃値上げが反対だとか合理化反対だとか、これは私は聞こえませんと言うんですが、この点はわれわれとしてもよくわかりますが、そのつもりでやはり国鉄職員というものは、できるだけ生産性を上げる、こういうことに努力するということにつとむべきことであり、そうして総裁としては、まだ生産性が上がらなくても、とにかく国鉄職員の努力に対しては適当に報いるところがなければならぬ、こういう両方の責任観念に立たなければいかぬと思うんですね。
  155. 森中守義

    森中守義君 ちょっと石田総裁演説が長過ぎた、これは早過ぎますよ。まだいろいろやっている最中だから。自前になってから言ってもらわないと困る、それで速記を消しておけとは言いませんがね。  それで合理化節減というものは、いま非常に抽象的なお答えでむろん得心をしたわけではありませんけれども、やっぱりものの基調というのはその辺にある。よほど慎重な配慮と真剣さが必要ではないか、こう私は思う。だから、あまり独断専行ということが限度を越すと、これは大ごとになりますから、むしろ建設というよりも破壊ということも予想されないではない。そういうことがないように大いに自戒自重を、私はこの際要請しておきたいと思うんですね。それで大体、合理化節減というものが一通りそれらの内容を包括しながら、私は要するに非常に不確定な要素が多過ぎる、こういうことを言っておきたいと思うんです。  そこで今度は政府財政措置ですがね、運輸大臣どうなんですか、これは九千六十七億ですね。先ほど来しばしば三位一体と言われるけれども、少なくとも位は同一ではない。政府が最下位だ、利用者こそ最高ですよ、三兆三千七百六十億の負担です、企業である国鉄さんは一兆八千七百八十四億、政府はその半分ですからね。これ三位一体とかあまり胸を張った話はできないんじゃないかと思う。これは運輸大臣に言ってもしようがないんです、かもわかりませんけれども、これは再建計画の名に値する政府財政措置とは思われない。が、しかし、出されているこの内容からいった場合、ことしは幾ら出ていますか。一応試算では四十四年度では五百十四億なんだが、二、三億違っているでしょうか、幾ら出ていますか。
  156. 町田直

    政府委員町田直君) 実はこの試算でやりましたものと、それから予算とはいろいろな点で若干の違いがございます。で、財政措置だけ申しますと、まず補助金でございますが、これは試算では七十一億、財政再建補助金のほうは七十一億でございます。これは同じでございます。それから政府管掌資金の利子のたな上げというのがありまして、利子のたな上げ分は四百八億でございますが、これは御承知のように、財政再建債ということで、その四百八億に相当する分を債券として借りるという形になる。それに対する十三億という利子が別についておるわけでございます。これは一般会計からの受け入れの分でございます。それから市町村納付金でございますが、これはこの財政再建推進会議試算では大幅な節減ということで、三分の二節減するという予定でございましたので、四十六億と予定いたしておりましたが、これは現実には百三十一億から二十五億減らすということで百六億になっておる。こういうことで六十億の差があるわけでございます。そういうようなことでございまして、それらを総合いたしまして、その他入り組みがいろいろございますけれども、それらを総合いたしまして合計で収支の差が、再建会議計画いたしましたものとの差が二百四十八億だけ悪くなっておる、こういう結果になっております。
  157. 森中守義

    森中守義君 ここの試算でいわれている財政措置というのが五百十四億ですね。これは財投の原資とか、いろいろ突っ込んだものでしょうから、ずばりとはこれはいかぬけれども、いかぬというか、内容としては問題がありますが、しかしどうなんですか、そういう融資をずっと含めたものとして単年ごとに数字出してありますね、それで総額において九千六十七億と、こういうんだが、これはきちんとした、財政当局とたとえば閣議で覚え書きがかわされているとか、あるいは運輸省、大蔵当局との間に話がまとまっておるとか、そういう筋のものですか。
  158. 町田直

    政府委員町田直君) 試算表のほうに出ております九千六十七億はそういう性質のものではございません。この推進会議の中に指摘されている事項を大体試算した、こういうものです。で、現実には予算で、一応四十四年度予算できめたわけでございます。これをまた御提出いたしております財政再建特別措置法の中で、法律としてその総ワクはうたってあるわけです。それから市町村納付金は、御承知のように、市町村の納付金及び交付金に関する法律のほうで手当てをいたしておる、こういうことでございますので、大体項目につきましては再建会議で述べられた措置と、そうしてこの試算の中で考えておるものについて一応ほとんどは財政措置としてできている、こういうふうに申し上げていいんじゃないかと思います。
  159. 森中守義

    森中守義君 鉄監局長、そうすると、いまの説明によりますと、試算試算で別に政府は持っておる、こういうことなんだが、九千六十七億の推進会議試算に対して、政府は幾らに見ておるのですか。
  160. 町田直

    政府委員町田直君) 大体実は今度きまりましたのは、たとえば国鉄財政補助金につきましても、五十年度まで六分五厘、こういうことでございます。それから市町村納付金につきましても、昭和四十六年度工事までの施設に対する何と申しますか特別措置というもの、それからずっとあとに響いてくるわけであります。そういうような前提で勘定いたしまして非常に大ざっぱでございますけれども、九千六十七億に対して約十年間の合計で二千億くらい少なくなるのじゃないかというふうに考えております。大体七千億くらいと考えていただいていいと思います。
  161. 森中守義

    森中守義君 それでは二千億も減って七千億ということになれば大体、措置法案それ自体そういう推進会議試算を一応基調としている、すべてそういう文言も出るし、提案理由の説明もそうであったわけですね。だから私は国鉄に対しては、増収及び節減合わせて一兆八千七百八十四億というものはびた一文とは言わないけれども、その数字が出されるということが前提だとこう言ってきたのです、いままで。国鉄はそれに対して反論がなかったのです。なぜかというならば、これを準拠にしているであろうし、別に用意されたものがない、こういう認識を私は持っておりました。ところが、財政措置に至って今度は政府は二千億下げた、そうなると、この試算というものは一体どうなるか。なるほど試みにつくったものである、試みにはじき出したという用語上の問題もありましょうが、性格としては動かしがたいものだと、こういうとらえ方をしているのです。そういうことでしょう。そこに政府は二千億下げた、七千億しか調達できないと、こう言うならば、この計画、つまり再建計画というのは根底においては狂ってくるのじゃないですか。その辺どうですか。試算の性格をどういうように位置づけるか、それを最初にはっきりしておきましょう。
  162. 町田直

    政府委員町田直君) まあ、おっしゃるとおり、現在の時点で財政措置考えますと、約二千億くらいあると思いますけれども——ということになるのです。それでは試算の性格をどう考えるかということでございますけれども、原則として私どもはこの試算を、試算と申しますか、国鉄財政再建推進会議の答申というものをもとにして考えていきたい、こういうふうに考えておるわけでありますが、したがって、財政措置につきましては七千億という、いまの段階ではそういうものが一つの基準になるということになります。それで十年間計画というものをどうするかということを国鉄が十年間再建計画というものを考えていく場合に考える、こういうふうにお考えいただいていいと思います。
  163. 森中守義

    森中守義君 どうも鉄監局長のお話を聞いていると、だんだん心細くなっていきます。そういうことであれば措置法は出した、運賃改定はしている、しかも企業当局に対しては一兆八千億の捻出を要求する、しかも利用者に対しては三兆三千七百六十億を要請する、差し引いた残りが九千億と、こう出ているわけだが、これがぴしゃっと当てはまってこなければ再建計画はできませんよ。あれですか、これは五年間くらいやってみて、どうもうまくなければまたやり直す、十年間やってみてうまくなかったからまたやり直すという、そういうたぐいのものですか。要するに再建計画とは、政府は七千億しか出ませんと、あとは企業に、二千億下げているわけですから、一千億を水増しをする、あるいは利用者に一千億の水増しをするというわけで、企業と利用者に転嫁しよう、こういうことですか。それともこの計画はいいかげんでもいい、政府はこれだけ出しておけばそれで事は済むんだということですか。そういうことであれば、これは問題は全然白紙だ、そういういいかげんなことであれば。
  164. 町田直

    政府委員町田直君) 先生のおっしゃるように、確かにこの試算というものが、いま、何と申しますか、現在の段階では、ただいま唯一のものでございますから、これをもとにして、これに今度の財政措置をはめ込んでいけば、そういうことになるということはおっしゃるとおりでございます。ただ、決してその足りなかった分をほかへ押しつけるとか何とかいうことじゃなくて、実はまあ一つの例を申し上げますと三兆七千億というのがこの十カ年間一つ計画になっているわけです。で、それは大体三兆七千億ぐらいが適切だということでございますけれども、しかし、これにつきましても、まあこれから計画を立てる上において、まだ若干の議論はあるところでございまして、三兆七千億になるのか、あるいは六千億になるのか、その辺のところももう少し詰めなきゃいけないということも考えておりますし、その他、まあ先ほどから国鉄の副総裁のほうからいろいろ御説明申し上げましたように、国鉄自身合理化、それから今後の増収努力、こういうようなものも、いろんな過程をおいて一応の計算はこれにできておるわけでございまして、そこで、そういうものを具体的にどうはめ込んでいくかということが——もちろんただ数字の上だけのものではございません。実際にできるもの、あるいはそういう計画をしなければならぬものというものを検討した上ではめ込んでいく、こういうことで十カ年の計画は立てる、こういうことになっております。ただ、そういうことで国の財政措置というのは、まあ二千億減って七千億になっていると、これが十年間絶対もう動かないものであるかどうかという問題も一方にはございます。これは予算の折衝の際にいろいろな主張を運輸省としてはいたしたわけでございますけれども、そういうような将来の問題というものは別途あるわけでございます。しかし、現在の段階で、この法律が通って、そこで再建計画を立てるという段階におきましては、この財政措置はそういう形である、その他もろもろのことを考えて十年間計画を立てる、こういうことを考えているわけでございます。
  165. 森中守義

    森中守義君 どうもやっぱり鉄監局長かみ合わない。理解できませんよ。ですから、先日来言っているように、やり方が逆だと私は言っている。そうじゃないですか。とにかくこれを通してくれ、それで基本方針をきめて、国鉄再建計画をつくらしめる、いさいはその内容にゆだねる、こう言うのだけれども、それじゃ審議できないじゃないですか、そうじゃないですか。それではだめですよ。それと、現在は七千億がもうマキシマムなんだ、こういう答弁をされる。そうだと思うと、いや先は先で、現在は七千億なんだが、別段、不足する二千億を利用者、あるいは国鉄に全部回そうという気持ちはない。そうかといって、じゃどうするかといえば、それは先のことだと、こういうのではちょっとやはり審議できませんよ。少なくとも私はこの試算というものは、たいへん繰り返すようですが、なるほど用語としてはためしに計算をした、確定的なものじゃない、こういう逃げ方もありましょうけれども、すべてのことがこの報告書及び試算を中心に実働に移っているということですよ。だから、この試算というのは、ことばとしては試算なんだろうけれども、現実的なものとして私どもは受け取らざるを得ない。それならば、当初九千六十七億必要だと、政府財政措置をとると、こう言っているんだから、これに対応できる九千億が出てこなければ、二千億というものはどこへいくんだという理屈になるのはあたりまえじゃないですか。これはもう非常に重大な問題だと思うんだが、試算をそういうように軽々に使われたのじゃ困る。それなら別に、かわるべき、政府みずからが、運輸省自体がはじき出したものがありますか。それがあるというならば、これにあえてこだわらない。何回聞いても、ないとおっしゃる。ただ内容を、こういうところをどう配分するかというと、それらの計画は、それはさっき出すと言われたけれども、全体をとらえている試算というのはないのです。政府にはこれ以外ない。ないならこれに頼らざるを得ないじゃないですか。その辺、どうもやっぱり釈然としませんよ。二千億が不足して、七千億で現状はすべりだすということであれば承服できない。これはどうしてもやっぱりそれじゃ困る。  そこで国鉄に聞きますが、国鉄の両方合わした一兆八千七百八十四億というのは、これは了解されているんですか、副総裁努力すると言われた。しかし、政府側においては、九千億は二千億切りますと言っておりますよ。あなた方は——私はさっきからこの合理化節減というものはきわめて不確定な要素がある、これはむずかしいのじゃないか、こう言っているわけです。しかし、副総裁は努力をすると、極力それをしなきゃならぬと、こう言われる、決意の表明があったわけですよ。政府はそうじゃない。予定を、九千億は二千億下がります、こう言っている。いいですか、国鉄、それで。
  166. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 政府から御返事いただく金額につきましては、一応試算で九千何がしになっておりますが、いまの、現時点の四十四年度予算ベースでまいりますと、いま町田局長言われたように二千億ぐらいショートします。しかし、私どもといたしましては、そのショートする原因が、一つは、利子補給の六分五厘と六分の違いが一つと、それからもう一つは市町村納付金で約八百億ぐらい違っておりますが、この二つが大体おもなる理由でございまして、その二つにつきましては、私はそう遠くない近い将来において、運輸省の御尽力によりまして、大体原案に近いものが実現を期待できると私どもは確信いたしております。また、そういうふうに希望いたしておりますし、全体、十年間の総収入が十二兆でございまするので、十二兆に対しまする一%で、千億で約一%でございます。したがいまして、非常に、十年先のことでございますが、十二兆に対する千億あるいは百億ぐらいあるものならば、やはりこれはある程度の努力でもって生み出すこともしなければいけない。収入の面において、いま言われた二千億のショート分は、その二点、ほかにまだいろいろこまかいことがございますが、省略いたしまして、大体その二点でございますが、これは私どもといたしましては、いずれ遠くない将来に私どもの希望どおりやっていただけるというふうに、私どもなりに確信いたしております。
  167. 森中守義

    森中守義君 鉄監局長国鉄はのみ込みが早くて、ばかに政府がもたもたするのはどういうわけですか。——それから話はここへ続きますが、院の調査室から出した刷りものがある。この中に、「国鉄財政再建債発行総額」が二千四百七十六億円というのがありますよ。それから「右に対する利子補給金総額」が九百七十二億円、それから「財政再建補助金総額」が一千二百八十億円程度三つ合わせると四千七百二十八億になるのです。ただ、この中で抜けているのは、地方納付金のいわゆる減免の総額、これがない。これと合わせて七千億ということですか、それじゃあちょっと金高が多過ぎる、どうなんですか。
  168. 町田直

    政府委員町田直君) 実は——実はと申しますか、ここで答弁のことでございますけれども国鉄財政再建推進会議の長期試算は、利子のはね返りを含んだ数字になっております。つまり、それだけのものがなければ、それを借りてこなければならぬから、そうすると、その利子のはね返りを含む、こういう形で計算してございますので、利子のはね返りを含んで現在計算をいたしております。で、いま大体、非常に大ざっぱな言い方で恐縮でございますけれども、利子のはね返りを含めまして、国鉄財政再建推進会議でいっております中で、利子補給の分が大体千億か千百億ぐらい、それから市町村納付金の計画より減をしたものが十年間で利子を含めまして千億前後、こういうことで約二千億ショートする、こういうふうに申し上げている次第でございます。数字の計算のほうは間違っていないと思います。
  169. 森中守義

    森中守義君 それから、郵政省来ておりますか。——さっき国鉄の副総裁が言われた六分、六分五厘ですけれども、その種類ちょっと言ってみてください。どの借り入れ金が六分、どれが六分五厘なのか。六分五厘と七分か。
  170. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) たいへん種類が多うございますけれども……。
  171. 森中守義

    森中守義君 それではそれは資料で出していただこうか。
  172. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 非常に種類が多くてちょっと申し上げてもたいへんわかりにくいと思いますので……。
  173. 森中守義

    森中守義君 それではやはり資料として出してください。
  174. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) で、平均いたしまして現在七分ちょっとになっております。それを今度のあれでは六分五厘まで利子補給していただいたわけでございます。
  175. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、その補給金は別として、全体として七分ちょっとオーバーするのですか。
  176. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) はい。
  177. 森中守義

    森中守義君 郵政省、四十四年度で三百二十億かな。
  178. 竹下一記

    政府委員(竹下一記君) 四十四年度で三百二十億です。
  179. 森中守義

    森中守義君 三百二十億。これの金利は七分になっておるようだが、それで、資金運用部資金が六分五厘でありながら、郵政の簡保が七分とはどういうことですか。
  180. 竹下一記

    政府委員(竹下一記君) この簡保の貸し付け利率と資金運用部の貸し付け利率、これは必ずしも一致いたしておりません。国鉄に限りませんで、政府関係機関、つまり各種の公庫、公団の融資の場合に、債券部分あるいは貸し付け部分、やり方が二通りあるのでございますけれども、貸し付け利率につきましては幾つかの種類がございまして、資金運用部と私のほうとは完全に一致しているというわけのものではございません。国鉄の場合には私のほうでは七分ものと六分五厘のものと二通りの貸し付け方をしております。これは従来からそういたしております。
  181. 森中守義

    森中守義君 そうすると、いまこれは事のついでで悪いですが、その六分五厘もの、七分もの、二つに分けて、六分五厘が幾ら、七分が幾ら、ちょっと数字があったら教えてください。
  182. 竹下一記

    政府委員(竹下一記君) ただいま融資残額といたしまして七百八十七億あるはずでございますが、九対一ぐらいの程度でもちまして、七分ものが九割、残りが六分五厘、こういうことになっております。
  183. 森中守義

    森中守義君 全体の財政措置の中で簡保の貸し出しの額もきまっていくだろうと思う、将来の問題としてね。そこで毎年三百二十億がはたして郵政がなし得る限度額であるかどうか、それはわかりませんが、おそらくこの状態でいけばコンスタントにこの程度必要であるのか、あるいはもっと上回っていくかそれはわからないけれども、大体国鉄に貸し得る限度額というのは幾らぐらいですか。
  184. 竹下一記

    政府委員(竹下一記君) 国鉄はきわめて公共性の強い事業でございますので、簡易保険の資金といたしましては、他より優先的にと申しますか、金額的にも一番よけいに融資をいたしております。四十四年度の運用計画を見ましても、新規に運用できます資金が三千二百億の中で一割に相当するものを国鉄に融資を予定しておるのでございます。これは従来も大体総資金の一割見当のものを国鉄に融通いたしておる、こういう実績がございますのですが、その方向で今後も目一ぱいのことは見て融資いたしていっていいんじゃないか、こういうふうに考えております。
  185. 森中守義

    森中守義君 そうすると、大体この程度の額というものは、要請があれば出しても郵政自体の資金需要を圧迫するとかあるいは他の需要家に対して断わらねばならぬ、こういう現象は起きてきませんか。
  186. 竹下一記

    政府委員(竹下一記君) この融資の計画を立てますにつきましては、大蔵のほうで財政投融資計画の基本をきめますので、それを受けまして資金分担ということで大蔵省と十分協議をしてやっておりますが、簡易保険の立場といたしましては、私どものほうの持っております資金の一割程度であれば今後とも融資は可能である、それ以上にというお話になりますると、いろいろとその他にも資金需要もございますので、ちょっと無理かと思いますが、一割程度であるならば可能である、資金量そのものは年々少しずつふえていきまするから、国鉄に対する融資ワクの数字としては若干毎年ふくらんでいくんじゃなかろうか、こういうように見込んでおります。
  187. 森中守義

    森中守義君 わかりました。  それで監督局長政府の財政計画がかなりこれに大きな影響をもたらしてくるでしょうが、十カ年間の進行の過程の中で借り入れ金の金利たな上げなんて、そういう措置はおやりにならぬでしょうね。
  188. 町田直

    政府委員町田直君) 借り入れ金の金利たな上げではございませんで、ただいま考えておりますのがその年の工事資金に対する六分五厘までの補助、こういうことでございます。
  189. 森中守義

    森中守義君 そこで、もう一回もとに戻りますがね、さっきからのその二千億の問題ですね。これはやっぱりどうしても理解できないのですよ。むろんその金利がどうだこうだというお話のようですが、しかしそれはまた副総裁のほうから資料も出るということですが、ただ、ここで整理しておきたいと思いますのは、この試算以外に政府の手持ちのものはない、こういうことに理解をしていいかどうか。したがって、計画が進行していく過程の中に所定額の九千億というものは確保できるという約束ができるのかどうか。この二点についてはどうなんですか。
  190. 町田直

    政府委員町田直君) 非常にむずかしい御質問でございますけれども、現在の段階では、国鉄財政再建推進会議試算というのが一つございますということです。それから資料としてお配りいたしておると思いますけれども、本年度試算、この試算と実際との比較、こういうものができておるわけでございます。で、将来の計画というのは、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、法律の施行された段階におきまして基本方針を定めて、十カ年の計画を立てたいということでございます。大筋はやはりこの試算と申しますか、むしろ推進会議意見書にのっとったものにしたいということを考えておる次第でございます。数字で具体的につくり上げたものというのはまだできていない、こういうことでございます。
  191. 森中守義

    森中守義君 いまのことはもう一回最終的に総括としてお尋ねすることにしまして、もう一つ重要な点は、総理との間にだいぶ問答しましたがね。四十八年、五十二年ですね、この二回の運賃改定ということは、この試算というものが根拠になる限りやらざるを得ない、するしないの問題でなくて、やらざるを得ないという言い方が私は適当でないかと思う。大臣、どうなんですか。本会議では木村質問に対して、その時点にならなければわからぬと、こういうことでしたよね。また、けさの総理は、だれも好きこのんでやっているんじゃないのだ、しかたがないからやるのである、こういうようなことなんですが、具体的な事実問題として、公共負担の是正を含んで一〇%ずつやれ、こういっているんです。この点どうなんですか。だから私は、さっきも総理に言ったように、この特別措置法というものは、四十八年、五十二年、二回にわたる運賃値上げを約束づけられるもの、こういう受け取り方をしなくちゃならない。これは実は非常に大きな問題点でもある。運輸大臣どうなんです、せざるを得ないんじゃないですか。
  192. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 木村さんにも確かに本会議で申し上げたとおり、これはあくまで試算試算であることに間違いがない。先ほどの、この十年計画の中で、十年後の形を見たら、国鉄の事業費が約十三兆になっておる、その中で二千億という差は、これは御容認を賜われる数字じゃないか、ということを国鉄の副総裁が申したわけでありますけれども、私の考え方といたしましても、これは最低の財政措置をこの再建法によって私は運輸大臣として財政当局から担保した、逆にこの法律というもので国鉄をがんじがらめにするんじゃないか、これはちょっと議論は別ですが、そういう意見もありますが、私はこれによって担保し得る、これ以上まだ交渉によってやり得ることはあるんだ。しかし、先ほども公共負担の話が出ましたけれども、これはいま四十四年度予算がすでに通過した現状におきまして、私が一応、国務大臣としてこれをいまこうしたらよいとは思いましても、——御意見はありがたく拝聴しております。先ほどからいろいろな面で、公共負担の面の話も。だから、私は今後、たとえばこの間ここに大蔵省の次長が出てきておりましたときに申し上げたように、六分五厘の金利を六分に下げるということについても努力をしなければならないし、あるいは国鉄納付金の問題につきましても、今後において努力を重ねていかなければならない。これは先ほど申しましたように、納付金の法律は、両三年、今後三年ということに一応考え法律を出しておる。そうすると、これは今後に残されている問題もございます、あるいはまたこの五十年まで財政援助をする、これもこの時点におきまして、大体償却ベースになってくると見込みを立てておるわけでございますから、したがいまして、私はこの国鉄の問題につきまして、今後の努力をいたすことによって十分期待し得るものがある、こう考えております。
  193. 森中守義

    森中守義君 これは大臣としては、なかなかいまどうなるかわからぬという運賃改定、いわんや海のものとも山のものともわからぬ特別措置法、その時点で、四十八年、五十二年のことまで言えるか、そうきついことを言うなということが顔にあらわれておる、まさにそれは私は泣きどころだと思うんだ。しかし審議する側からしますと、四年ごとにふところに手を入れられちゃかなわぬのだ、実際問題として。ところがですよ総裁、言い方があまり適当でないから気分が悪いでしょうが、ふところにしょっちゅう手を入れられて、また十年の間に二回取られるのか、措置法というのはそれを約束づけられるものだという理解のしかたをしているんですよ。そこが問題なんだ。何も私はことさらにことあげをして、ためにせんとする反対をしているんじゃない。これはわかってもらいたい。これをきめるということは、すでに十年間に二回の値上げを承知しなくちゃならぬ、こういうことになるわけですね。だから、はっきり言ってくれ、それが言えなければ前に進めません。したがって、私は質問できない。だから、だいぶ疲れてまいりましたから、あとは十七日に譲ることにして、これはもう少し正確に、二回の値上げをするのかしないのかはっきりしたことを、この次までひとつ出してもらいたい。そのことを留保して、私はきょうは質問を終わっておきます。答弁はこの次でけっこうです。
  194. 加瀬完

    ○加瀬完君 私も森中委員の質疑と同じようなことになるので、ちょっとまた逆戻りのような傾向になりますが、国鉄の赤字の要因、それから国鉄の財政原則、国鉄に対する政府の財政援助、国鉄運賃内容国鉄に対する地方負担等の問題で伺ってみたいと思います。  大臣説明も承りましたし、それからいろいろ国鉄関係から出されました印刷物等も拝見をいたしたのでございますが、特に、推進会議ですか等の資料もいろいろ拝見いたしましたが、大臣が提案説明の中で「国民経済及び国民生活における要請にこたえる」と御説明されておるわけでございますが、ではどんな国民経済、どのような国民生活の要請というものがあるとお受け取りになったか、それをひとつ大臣から伺います。
  195. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 国鉄が、将来のわが国の総合交通体系における基幹的な輸送機関として、国民経済及び国民生活において重要な役割りを果たすべきことを要請されておる、このように把握いたしております。それで、そのために国鉄は近代的な経営体制の整備をはかることによってその要請にこたえるべきである、このように考えております。
  196. 加瀬完

    ○加瀬完君 推進会議の報告の中に、「これらの提案の具体化が旧来の慣行的、制度的な諸制約、社会的、政策的な配慮等により彌縫的、部分的なものにとどまった結果であることも否定できない」ということがございますね、これは大臣お認めになりますか。
  197. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私は、国鉄総裁がたびたび私が就任いたしましてから同席いたしました席で国鉄総裁として述べられておること、それを国鉄推進会議がいま加瀬さんのおっしゃったような意味で申しておることについては、十分聞くべきところがある、このように考えております。
  198. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういたしますと、法律的、制度的または政治的、財政的にも国鉄赤字を生ずる要因があったと受け取ってよいんですね。大臣に伺います。
  199. 原田憲

    国務大臣原田憲君) まあその当時の考え方については、これで努力していけば十分やれるという考えを持ってやったに違いない。初めから赤字が出るというような計画をだれも立てるわけがないのでございますから、その当時はそういう考えを持ってやったけれども、特に昭和三十四、五年以後、わが国の高度成長経済政策というものが進められ、国内におけるところの世界にもまれな人口移動といったようなことが実現をしてくる。一方、技術革新というものが、たとえばついこの間まで想像もし得なかった日本の国の自動車を輸出するというような状態に立ち至ってくる。これがもたらしたところの交通体系の中の変動、こういうことがやはり一つの大きな原因になっておろうかと考えます。
  200. 加瀬完

    ○加瀬完君 衆議院における委員会で、森永参考人から、十数年来、国鉄当局は近代化合理化の努力を怠っておられないのでございますが、という発言がありますね。総裁せっかくお残りでございますので、この発言に対して御所見はいかがですか。
  201. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私は怠ったということよりは、できなかった、こういうことのほうが適当な言いあらわし方だと存じます。
  202. 加瀬完

    ○加瀬完君 私も、どのように国鉄が勉強したところで、ああいう財政状態の中では独自で近代化を可能にする条件はないと思うわけでございますが、そう判断をしてよろしゅうございますか。
  203. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) しようと思ってもできなかった、こういうことであります。
  204. 加瀬完

    ○加瀬完君 また一つ、参考人の陳述の中に「国鉄は総合的な輸送体系の上において、特に都市間旅客輸送、中・長距離大量貨物輸送大都市周辺の通学通勤輸送、この三つの分野において、何人も果たせない重要な役割りをになっておる。今後、国民経済の発展あるいは国民生活の充実のためには、その方面で国鉄に期待せられなければならないこと甚大なものがある」、同様に森永参考人が述べておりますが、こういう要請も国民の側にあるというように先ほど御説明がございましたが、そう受け取っていいですね。
  205. 原田憲

    国務大臣原田憲君) いまの何は通勤通学輸送に対する国民の要請というものがある、こういうことでございますか。
  206. 加瀬完

    ○加瀬完君 いえいえ、いわゆる国鉄があげている重要事項ですね、——もう一回言いましょうか。森永参考人は、国鉄は総合的な輸送体系の上において、特に都市間の旅客輸送、中・長距離貨物輸送、それから大都市周辺の通学通勤輸送、この三つの分野において、何人も果たせない重要な役割を背負っておるのだと。
  207. 原田憲

    国務大臣原田憲君) そのとおりだろうと思っております。
  208. 加瀬完

    ○加瀬完君 都市間の旅客輸送、中・長距離貨物輸送大都市周辺の通勤通学輸送国鉄の企業ベースだけでできると大臣はお考えになりますか。そういう要請が国民にあるということはお認めになったんですか。——では、それを国鉄だけにやれと言ったって、国鉄のいまの企業ベースでそれができますか、こういう問題でございます。
  209. 原田憲

    国務大臣原田憲君) これが議論の分かれるところでございまして、国鉄総裁は、自分が総裁に就任をして一番総裁としての新しい——いまの今国会でお願いしておることは別にして、第三次長期計画、中期計画というものを立てられた際に、自分たちはいわゆる運賃収入というものを中心としてこれの財源というものを考えたが、国会はこれを通してくれなかった、四十一年もおくれて出てきた、こういうことをおっしゃっておるということは、国鉄というものにとっては、運賃でまかなっていけというなら、それをやらしてもらえるなら、やれたらやろうということを、先ほどやりたかったが、やれなかったということをおっしゃっておると思うのであります。過去において、そのことがもしやれておったとしたら、また形は別な形であったではないかということは申し上げられるのではないか。ただそれは、事実と異っておりますから、現時点で私は考えまして、今後はこうしなければならないという立場に立って二つの法律案をお願いを申し上げておる次第でございます。
  210. 加瀬完

    ○加瀬完君 先ほども伺ったのですが、大都市周辺の通勤通学輸送、これは大都市周辺を首都圏に限りましても、首都圏人口の拡大をいままで政府はどういうふうに見ておられたか、またこれに対して運輸行政としての取り組み方はどういう方法であったか、これをひとつ大臣から承っておきたい。
  211. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 過去の運輸省の取り組み方については、私ちょっとまだ……、事務当局から、政府委員からお答えさせますが、都市周辺ということになりますと、日本の総合的なこれからの開発計画ということに論ぜられておりますように、昭和六十年というものが、人口にして約一億二千万、そのうちの八〇%はいわゆる都市というものに集中してくるのではないか、そのうちのまた八〇%くらいが太平洋メガロポリスという形で、好むと好まざるとにかかわらず集まってくるのではないかというようなことをいわれ、今後それに対処する日本全国的な立場に立って総合開発をどうするかということをいわれておる中で、この首都圏の、関東地方の中では、正確な数字は間違っておりましたら訂正をしていただくことにして、二千数百万の人口が三千八百万人程度に達してくる。こういう見方をしておるその中で、まあこの通勤通学というものがどうなるかということが考えられてくる。こういうことが基本的になろうと私は思うのでありますが、今回お願いを申し上げておりますのは、その前半と申しますか、五十三年までの特に財政面から国鉄を立て直すということを考えなければ、根本的に国鉄というのはくずれてしまう、こういうことを憂えまして、財政再建というものを打ち出しておる、こういうことでございます。
  212. 加瀬完

    ○加瀬完君 根本的にもうくずれておるわけですね、くずれているような運輸行政しかなかったと、率直に言えば私は言いたいのですよ。一番通勤通学にひどいのは都下でしょう、それから神奈川、埼玉、千葉という順序になります。その一番に混雑程度からすれば下位にある千葉県に例をとりますと、昭和二十二年には総武線関係の千葉市、習志野市、八千代市、船橋市、市川市の沿線人口は四十一万六千九百二十一人、それが四十年は八十一万四千八百三人、増加数は三十九万七千八百八十二人、大体一〇〇%ふえているということになるわけですね。常磐線の沿線をやりますと、二十二年は十九万六千三百六十二人、四十年は三十九万二千五百四人、これも大体一〇〇%、いわゆる倍になっているわすけでね。逐次こういう状況になっておりますのを、国鉄では運輸行政としてこの人口増というものにどう取り組んだかということが私は問題だと思う。大体五年ごとに調査しておりますから、四十年と三十五年を比べますと、船橋では六五・九%、松戸は八五・二%八千代は六四・二%、柏は七一・四%、郡部でも三三%程度というように異常に人口増が激しいわけです。先ほども総理に聞きましたが、これは地域の責任とか、国鉄がよけい人を運んだからみんなそっちに行ってしまったという国鉄責任ということにはまいらぬでしょう。政府の住宅政策なり、都市政策なりということが問題じゃないですか。住むところだけはつくりましたけれども、足はつくらなかった。これが混雑を来たし、国鉄がいま多くの負担を背負わなければならないような羽目におちいっている。明らかにこれは政府責任と言って過言であれば、少なくとも政府が大半の責任を負うべき、政治が責任を負うべき問題ではないかと思うのですが、その点大臣いかがですか。
  213. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私は政治の責任内閣が全部持っておるとするならば、その責任はそのとおりであろうと思います。しかし、これは言いわけではありませんが、政治というものは確かに政府責任を国民から負託されて持っておりますが、すべての国民によって動いておるのが、いわゆる民主主義の国の特質であろうと私は思っております。したがって、いまの都市政策の十分でなかったという御指摘、私はそのとおりであると申し上げてよいと考えております。したがって、各政党とも都市政策というものに先般から熱心に取り組んでおるということは、政府が行政の責任を持っておる限り、一番責任があるということについては、私はそのとおりであろうと思いますが、総力をあげて、国民の総力をあげて取り組むべき問題である、このように問題を把握いたしております。
  214. 加瀬完

    ○加瀬完君 国民が総力をあげるといったところで、国民の代理権を持って現在責任の衝に当たっているのは政府ですから、少なくとも政府がこの問題を解決しなければならないという熱意と態度はお持ちになっておると解してよろしゅうございますね。
  215. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私は、その点について、運輸大臣といたしまして、微力でございますが、私の全力を尽くしておるつもりでございます。
  216. 加瀬完

    ○加瀬完君 で、この輸送対策の解決を、国民は運賃の値上げだけでやってもらいたいと、一体、政府に要望しているでしょうか。国民の要請というものは、一体、国がろくすっぽ金を出さないで、運賃だけで解決しろと考えているとお考えになりますか。
  217. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 運賃だけでただ計算をするならば、すべての計算をするならば、運賃を幾ら上げたらこれはこうなるという計算は成り立つのであります。しかし、それは政治ではございません。先般から何度も申し上げておりますように、このことにつきまして、いままで過去において政府はいわゆる財政援助というものを十分、十分というよりもやっておらない。独立採算制で運賃値上げでやれということをやってきたわけです。今回、私はその意味運賃だけではいかぬという立場から、いわゆる三位一体という形でこの問題を解決しようという立場でお願いを申し上げておるのであります。
  218. 加瀬完

    ○加瀬完君 先ほど冒頭に、私は、どういう国民生活における要請を政府としては受け入れたのかということを伺ったわけです。三位一体とおっしゃいますけれども、いま政府考えている三位一体で解決しろと国民は要望しているのでしょうか。それが国民生活を取り上げたことになるでしょうか、国民生活の要請を取り上げたことになるでしょうか。運賃が私鉄よりもはるかに高い。競争線のあるところは私鉄に乗りかえますよ。競争線のないところは三割も五割も上がった運賃を払わなければならない。これは先ほどからいろいろ同僚議員が述べられましたが、物価にははね返らないというけれども、総体的な物価の指数にはそれほど出てこなくても、個々の各家庭の生活の内容には大きな響きを与える問題が所々に出ますよ。一カ月五千円の支出増があってもいいから運賃を上げてくれと要望している国民は一人もありませんよ。国鉄の御説明でも大体、会社持ちだというけれども、会社持ちでない通勤の定期の者もたくさんいるのです。そういう人の生活のほうが定期の値上げによって与えられる響きは大きい。そういう点はどれほど考えて、国民に負担をさすべき定期その他の運賃の値上げはこれだけ、しかしこれはそうはまるまる国民にはかぶせられないから、政府としても大幅にこれだけ出しましたと、それが三位一体なり三方一両損で、一対一対一ということであれば話がわかる。政府は幾ら出していますか。先ほど総理は、それはちょっと具体的な例をあげられても問題が違うと言ったけれども、公共性というものから言えば、国鉄というものと外航船舶の建造というものとどっちが公共性があるのです。外航船舶の利子補給というものにはたくさん金を出していますよ。公共性ということで、いま非常にいわゆる通勤をしている勤労者が多いことに比べますならば、これはもう食管赤字を穴埋めをすることとも匹敵をさせるべきです。食管の赤字に幾ら政府が出していますか。しかし、国民の生活に大きな響きを与える国鉄の赤字というものに対してさっぱり出していないじゃないですか。道路はずんずんつくられて、これには相当の補助金が出ています。先ほどからの御説明もあるように、これからは幾らか出すというけれども、いままで一体何を出しましたか。これからも一体国鉄の赤字に比べて政府の出す支出金というものや補助金というもの、利子補給というものは、一体パーセンテージでどのくらいの割合を占めますか。国民生活というものにはこたえていないじゃないですか。たいしてこたえていないじゃないですか。政府も金を出さないで、しかも国鉄の赤字も解消しなければならないから、国民にかぶせろ。企業性というものを重視ばかりしているこれはやり方じゃないですか。違いますか。この点ひとつ御所見を承りたい。
  219. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 国鉄の経営のもとは、国鉄の歴史始まって以来、世界でもただで汽車を走らせている国は私は寡聞にして——あるだろうと思いますが、知りません。運賃収入をもって経営する、こういうのがたてまえであります。したがって、国鉄は戦前においては日本輸送を独占しておりましたから、赤字が出るどころか黒字が出る。そうしてこれをあるいは軍事費にまで持っていくぐらいな余裕があったわけであります。ところが、先ほども申し上げましたように、世の中は変わってきまして、この新しい時代になって、国鉄が全然形態が変わってきている。しかし、やはりその企業性というか、運賃をもって経営をまかなっていくという原則は、あくまでも原則としては国鉄経営というもののもとになるべき筋合いのものであろうと考えます。ただ、私は、先ほども申し上げましたように、法律によって、たとえばいま加瀬さんの言われた、特に通学通勤の問題を法律によって五〇%をもとの値にしてしまっておる。その場合それを払うのはだれであるか。電車を利用しておらない人の金を持ってきて払わせるのがよいのか、その電車を利用する人によって払うのが当然なのかという議論の分かれるところでございますが、このことがそうしておかれる限り、いま言われる国鉄投資をしなければならない、人はふえてくる、これを運ばなければならないというところの投資に要する経費というもの、資本というものの出てくるところがないわけでありますから、これをどうするかという問題に国鉄は突き当たらざるを得ないんであります。その際に、これは利用者負担であるという意見というものが強かった、いままでは。しかし、私はこの面につきましても、やはりいわゆる公共負担というものに対するところの国の財政支出、あなたがおっしゃったように、船に対してはこういう利子補給制度をやったじゃないか、そのために貿易がなければならない日本の国で今日の海運事業というものはようやく再建せられたじゃないか、このようなことを同じように国鉄でやるべきではないか。私はそういうことから、十分とは申し上げません、しかし、できるだけの努力をいたしまして、いわゆる三位一体という形をもって国鉄財政再建の方策を立てたと、こういうことでございます。現在すでにこの制度が定着をいたしておりますから、一ぺんにこれをひっくり返すということは政治ではないという判断に立ちましてそのような措置をとったと、こういうことでございます。
  220. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういう考え方政府考え方ですからいろいろ問題が起こるわけですね。電車に乗らない者に電車の赤字の負担はできないというなら、国民健康保険はどうですか。病気にならない者にそれじゃ医療費やなんかを払わしちゃいけないということになったら、健康保険は成り立たないでしょう。社会政策というものはそういうものじゃないんです。全体を考えて国が出すべき金は出すということでなければ社会政策にはならないでしょう。しかし、ここで私は議論をするわけじゃありませんが、具体的なことを聞きます。国鉄と国と国民が三位一体になって再建策をこれから推進していくということは間違いないわけですね。そこで伺いますが、さて解決をしなければなりません赤字を出した最大の責任者は国民であるとお考えになりますか。電車に乗った者、汽車に乗った者が赤字の原因者であるとお考えになりますか。大臣に伺います。
  221. 原田憲

    国務大臣原田憲君) それは国鉄の財政のよってきたる原因は、先ほども申し上げましたように、国鉄輸送というものを独占しておった時代というものが変わり、それに適応するということに対して十分でなかった。したがって、財政的に見ますと、資本はかかってくる、借り入れた金に対する利子はふえてくる、一方では人件費は毎年上がる、また投資はやはりしなければ需要は強い、こういうことが重なって今日の赤字になったと、こういうことが原因であろうと思います。
  222. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は端的に伺っている。責任が三位一体で、これから解決するというならば、現在赤字を出した責任は国なのか、国民なのか、国鉄なのか、国民が最大の責任者でございますかと伺っている。そうだとか、そうでないとか、お答えをいただければそれでよろしい、一番の責任者は国民ですかと伺っているんです。——じゃ逆に聞きます。国鉄総裁せっかくお残りですから伺いますが、もしその赤字責任の順序をつけるならば、最大の責任者は国鉄だとお考えになりますか。
  223. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私は直接の責任国鉄であると思います。しかし、国鉄をそこに押し込んだのはだれかということになると、政府であり、立法府であると考えます。だから要するに、この問題は立法府の責任であり、政府責任であり、国鉄責任だ、三つ責任です。
  224. 加瀬完

    ○加瀬完君 なかなかうまいことをおっしゃいますが、結局国鉄ではないということを暗におっしゃっているわけですね。国鉄ではあるけれども国鉄をそうさせたのは政府であり、立法府だと。立法府で私ども弁解しょうとは思いませんが、少なくも国民だけの責任で赤字が出たんじゃないということはこれは否定をするわけにはいかぬと思うんです。どうでしょう。四十三年度千四百億円の赤字が出たと言われますけれども、もしどうすれば出なくて済んだとお考えになりますか。
  225. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) それは少し説明が長くなりますが、よろしゅうございますか。
  226. 加瀬完

    ○加瀬完君 けっこうです。
  227. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 要するに、この国鉄が公共企業体になってから一体どういう経路をたどってきたかというと、ぶちこわされた鉄道施設を直すのにきゅうきゅうたるものであった。ところが金がないんです。なぜ金がないかといえば、運賃の値上げというのは議会なり政府が許してくれなかったからです。これはお認めでしょう。そこに問題があるんです。とにかく、国鉄は二十四年に公共企業体になってから、三十一年までずっと損ですよ。三十二年に運賃の値上げをしてようやくプラスになった。プラスになったが、そのときにひとつ思い切ってやろうというんで、五カ年計画やったが、わずかに一年に一千億だ、それ以上のことは政府も議会も許してくれないんで、それで、これじゃいかぬというんで、三十二年から少しふやしてやった。これだってわずか二千億です。その間に東海道新幹線なんかつくった。結局運賃の値上げというものに対して議会なり政府がみみっちかった。いつも物価政策からきておる。時はまさにインフレーション、政府なりこの議会というものは物価と非常に戦っておるときだ。だから、国鉄運賃の値上げなんか持っていくと、何を言っているんだ、われわれはいま物価政策で悪戦苦闘しているときだ、このときに公共料金の値上げなんか問題にならぬ。これで全然却下するか、あるいは許してくれてもほんのわずかしか許してくれない。ちゃうどいまの状態と似ているんですよ。同じことをいま繰り返さんとしているんです。そういうことでやってきた。それをなぜ国鉄はもう少し強く出てやらなかったかという、こういうところに国鉄もいくじがないところがあった。それは直接の責任はやっぱり国鉄です。
  228. 加瀬完

    ○加瀬完君 それも全然否定はしません、一面の理屈はありますよ。しかし私は国鉄当局にも言いたいことは、国鉄における会計の原則というのが昭和二十八年に変わりましたね。特に利益及び損失の処理方法というものが政府責任があった形になっておったものが国鉄オンリーの責任のように変えられてしまった、これが一つの原因じゃありませんか。会計の原則というものを変えたところに国鉄の赤字を処理できない原因がありませんか。これは副総裁でけっこうです、事務的なことですから。
  229. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) その点はけさ総理がおっしゃった点でございまして、電電公社があとからできましたときに、やはり公社の会計制度というものはあくまでも企業会計でいくべきだということで、国鉄は実は昭和二十四年にコーポレーションになりましたときは、当時までの会計制度、すなわち国有鉄道事業特別会計を実質的にそのまま踏襲して四年間続けております。しかし、電電公社ができましてやはり企業会計にすべきだということで、まず発生主義の原則に全部改めた。また、発生主義でございませんと、やはりその時点時点の企業会計が明確にならないということで、電電公社ができますとすぐ国鉄の会計制度を改めました。先生のおっしゃいましたとおり、いままで赤字でも黒字でも全部、これは黒字の場合には政府に上納する、赤字の場合には政府が交付金を下げるというような鉄道会計自体の制度を全部改めました。いま御指摘のとおり、企業会計として決算する繰り越し制度というものをつくったのが昭和二十八年、ちゃうど電電公社と同じスタートになったわけであります。
  230. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  231. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記を始めて。
  232. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは大臣でも運輸当局でもけっこうですが、商法二百八十八条と旧国鉄法の四十一条の相違はどういう理由ですか。商法二百八十八条を使わせないで、国鉄法四十一条というのを設けた趣旨は何ですか。
  233. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 現在の国有鉄道法四十一条の利益及び損失の処理の規定は、先ほどもお話がございましたが、前の日本国有鉄道法制定当時は、国鉄に損失が生じたときは政府が交付金を交付する、それから国鉄に利益が生じたときは一般会計に納付すべきものとされておりましたが、これでは企業会計、企業意欲等を減退せしめ、企業能力の能率的経営のため適当でない、こういうことでこのたてまえに改めたのでございます。したがいまして、この規定によりまして、損益計算におきまして利益が生じたときは、利益積み立て金として積み立てる、それから、繰り越し損失があったときは、損失の補てんにまず利益を充てて、そうしてその残余のものを利益積み立て金として積み立てるというふうな経理方式に従ったわけでございます。  商法二百八十八条は、これは会社がその資本の四分の一に達するまでは毎決算期ごとに金銭による利益の配当額の十分の一以上を利益準備金として積み立てることを必要とするということにしておりますが、これは株式会社の問題でございまして、そうして株主の利益という問題を考えたことでございまして、したがいまして、国の会計と一般の株式会社の会計の原則とはおのずから違うというたてまえでこのようなものに制定されたものと思われます。
  234. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは商法の二百八十八条では処理すべきものではなくて、政府が、国鉄のいま問題になっているような赤字のようなものが生じた場合は、責任を持つべきであるということで、損失の補てん制度というものを確立するために別の四十一条の規定ができたのでしょう。ですから、政府は、日本国有鉄道に損失を生じた場合において特別の必要があると認めるときはその損失の額を限度として交付金を交付することができるという条項も旧法にはあったのです。こういうものがあれば、今度のような問題も当然政府責任ということになるわけです。それが二十八年の改正で、いわゆる政府責任国鉄の損失を補てんするという制度がなくなっちゃったわけですね、実質的には。どうしてこれをないままに、このような赤字になってもこの復活あるいはこれと同趣旨の立法というものを考えないでいるか。これは私は国鉄も怠慢だと思う。それから政府も、なぜこういうものがあったかということをもう一回議論を起こして、政府が一半の責任を当然負うべき、旧法はそういう性格であったのだということを強調をしないのかと私は思うわけです。この点は大臣いかがでしょう。
  235. 原田憲

    国務大臣原田憲君) それは非常に意見の分かれるところであろうと思います。やはり、この国鉄の独立採算性ということを特に法律でうたってある条文ではなかろうかというように考えます。したがって、損するときばかりではない、もうかるときもあるのでありますから、そのときは国に持ってこなくてもよい、こういうことでございますから、いま損をしているから、加瀬さんはこれは旧法によっては国が当然見ておったのだ、こういうことでありますから、これはやはり企業性と申しますか、まあ下世話で言う親方日の丸というような経営のやり方でなしに、能率をあげてやったらこれは必ず損ばかりするものではない、こういう考え方にウェートが置かれてこの法律というものがつくられていると、このように解釈いたします。
  236. 加瀬完

    ○加瀬完君 これはちょっと質問の筋からはずれるわけでございますが、そういうことをおっしゃるなら、あまりにわれわれしろうとよりも認識不足ですから申し上げたいのですがね。いまの国鉄の体質で黒字が出るなんということは、べらぼうな運賃値上げというものをしない限りありませんよ。これはどうですか。国鉄の体質というものはさっき総理も言ったけれども、たくさんの社会的要請で赤字線をかかえておるし、赤字であるが将来国民生活の上にあるいは経済目的のためには新線も敷設しなければならないという見込み線に投資もしておるわけですから、赤字が出るのは当然じゃないですか。それがひとりでに、捨てておいて、国鉄の努力だけで黒字に変わるという性格のものじゃないでしょう。これは大臣ですよ。大臣、そう考えていますか。
  237. 原田憲

    国務大臣原田憲君) それは黒字を出したらいかぬということでは私はなかろうと思うわけです。
  238. 加瀬完

    ○加瀬完君 そんなこと言ってない。出せますか。
  239. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 現実に黒字を出しておる線もあるわけであります。これを総括的に見て、残念ながら現在赤字を出しておるという形になっておるのでありまして、私は国鉄の性格からいって、どんどんもうけなさいというわけにもいくまいと思いますけれども、黒字を出したらいけないということではなかろうと考えます。これはまあ人間の使うことばですから、私の言い回しがへたで少し加瀬さんのお取り方に誤解を与えておるかと思いますけれども、どんどんもうけるということではありませんが、現在の国鉄自体でも黒字線というものと赤字線というものとあるという現状は御理解願えると思うのであります。
  240. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) ちょっとこれは私は加瀬さん少し誤解しておるのじゃないかと思うのだが、たとえば国鉄は将来とも黒字になる見込みはないなんということは、ことはどうもあまりに悲観に過ぎた観察じゃないかと思うのです。たとえば、国鉄は二十四年から三十一年までずっと損でしたが、三十二年に運賃の値上げをやってから三十二年、三十三年、三十四年、三十五年、三十六年、三十七年、三十八年と、これはかなりりっぱな償却をしましてプラスになっている。損になったのは三十九年からです。何で一体損になったかと、こういうことを説明しますが、三十九年にはとにかく国鉄の諸君の給与というものがほかの二公社に比べて不本意に安過ぎると、こういうことで国会へお願いして、それで仲裁裁定へ持っていって、思い切ってベースアップやってしまった。それがゆえに、それが原因で三百億のマイナスがようやく出た。それもちゃんと償却を引いてですよ。それから四十年から第三次計画をやると、それについては通勤通学のようなものに対して非常に大きな金をかけなければならぬと、ここにおいて運賃の値上げと、こういうことを要請しまして、大体それでもういいということになっておったのです。ところがまぎわになってから、ちょっと待てと、こういうことで一年ずらしてしまった。それで四十年に出た損は、それだけ運賃をミスしたにかかわらず損になったのは千二百三十億だ。これは四十年まではちゃんとあたりまえにいけばこれはプラスになったのですよ。問題は四十一年と四十二年、四十三年、たった三年の問題だ。何もこれだけを見て、国鉄は未来永劫プラスになることはないなんということはあまりに私は悲観に過ぎるのじゃないかと思う。
  241. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういうお説ならば、何も十カ年の再建計画なんというものを立てて国民に過重な負担をかけなくて済むわけです。そういう計画で国民に大きな負担をかけなければならないようになったということは、国鉄そのものの体質の上で、それはあなた方一生懸命やったから三十八年以前は黒字になったかもしれないけれども、黒字にはなりにくい線もあるのだ、業務面もあるのだということをお認めにならなければおかしい。赤字線を切って採算とれるものだけで出発すれば私鉄と競争したって楽々と勝てる。そういう方法がとれなかったというのは、国鉄そのものの性格にいろいろの問題があるからでございましょう。それで、一体私はもっと運輸当局には国鉄の歴史というものをたぐってもらいたいと思う。私鉄であったのでありますが、それが明治三十九年、鉄道国有法か何かで買収をしたわけですね。そのとき政府はどういう態度でいわゆる当時の新しい国鉄というものを考えたか御存じですか。その精神がいまないのです。半までだそうですから、ひとつ調べてきて答えてください。そのときの内閣総理大臣、西園寺公望は何と答えたか。ちゃんと施政方針で演説をしていますから、ひとつこの次の私の質問の最初にそれを答えてください。その態度というもので国鉄というものを見ていけば——国鉄自体、いま総裁のおっしゃるように、何とかやりくりして黒字にしていこうとお考えになるのはけっこうだ。しかし、なかなかやったって当然、運賃を値上げするという方法を除いてはやりにくいですよ。しかし、一体運賃も、私鉄よりも三〇%も四〇%も競争線では高いという運賃のきめ方をしなければならないということは、これは妥当な運賃のきめ方とは言われない。また競争したって負けますよ。三〇%も高いものに乗るばかはない。そうなってくると、どうしたってもう少し財政的な問題では政府責任をとるという基本的な態度を、森中委員もたいへん指摘されたけれども、私は考えていただかなければ基本的には問題の解決にならない。そこで、いまの政府よりも昔の政府のほうがもう少し考え方が、国鉄に限っては、私ははっきりしておったと思いますから、その資料をお調べの上で御回答をいただくことにして、一時、質問は保留をいたします。
  242. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十二分散会      —————・—————