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国務大臣(佐藤榮作君) いま
貨物の大宗である石炭が非常に減った、一千五百万トン。これをキロ兵
輸送距離等をかけてみれば、いわゆるトンキロからいったらこれはたいへんなことだと思います。
国鉄の
一つの大きな悩みだと思います。それにかわるような新しい
貨物が見つかるか見つからないか、そこに問題がある。ことにまたこの石炭
輸送のために設備したもの、それはもう全部役に立たないというか、使えない。そこにたいへんな損失がある。まあ
森中君も御
承知のように、九州
——私がちょうど若いときの筑豊炭田、もうそこらの施設は、全部使えなくなっている。これはたいへんなものだと思いますね。だから、同時に、そこらの港湾施設もそうでしょう。これにうんと投下したが、それがいま使えなくなっている。こういうところにも原因があると思う。しかし、これはもうエネルギー革命から生ずる事柄で、それにかわるような何かないか、そういうようなものをいろいろ鉄道でもさがしておることだと思います。一般の問題として、こういうものがなくなった。そうしてその他には、コンテナ
輸送な
ども始めた、そこらにも新しい分野は見つけておると、かように私は思います。あるいはまたパイプ
輸送というようなものは
考えられないものか
——これは具体的にひとつ
考え得るのではないかと思います。けれ
ども、まだ、鉄道自身はそれをやっておるわけじゃありません。新しいものとしてどんなことが
考えられるか、これはいま当局自身が頭をひねっている最中だと思います。まあ私の持っている知識は、これは古いので、ちょっといまの時代には通用しない。とにかく近いうちによほど変わる。
そこで、いま、通運事業をやったらどうかというお話であります。私は、どうも兼業として適当なりやいなや、これはよく
検討しないと、ちょっと鉄道のような
輸送形態から、その末端の
整備にみずからが経営していいかどうか、うまくいくかどうか、私はちょっと疑問だと思います。しかしながら、これはやっぱり、この鉄道
輸送と一体となって
考えなきゃならない問題だと思います。別会社にいたしましても、鉄道との
関係は十分密接でないと、これは十分の成績をあげることはできない。通運自身が主体のものになりまして、鉄道
輸送は通運事業を助けるために使われるというようなかっこうになったら、これは本末転倒になるのです。最近、ややそんな形が出ているのではないかと、私は、実は心配をしています。だから、いまのように、通運事業を兼業したらどうかというようなお話が出るのじゃないかと思います。ここらに、まあ本末転倒をしない
考え方が必要じゃないだろうか。
で、その次は、設備
投資会社、これを一応何かよさそうにも
考えられるものだと思いますが、私は、いま申し上げるように、どうも、これもこれもどんどん分離し、そうしてその経営上のいろいろな負担を
あとで鉄道自身が引き受けていく、これはむずかしいことだろうと思います。いままだ聞いておりません、この設備会社自身は。しかし、いま聞いたところで、ちょっと飛びつきにくいんじゃないか。それよりも、もっと本格的に鉄道自身のやるべきことがあるんじゃないだろうか。いま新
線建設を別会社でやっております。これもいろいろ今回のような事態になってくると、問題になってくる。どうも鉄道自身がもうからないところに新線をつくる。そういう
意味で、その建設費の負担までは困るというので、実は、建設会社ができているのだと思います。そうして、資金の調達は別会社でやる。しかしながら、でき上がった後にはこれを
国鉄が引き受けなければならぬ。まあ
赤字線というか、そういう
意味のものになる。しかし、これは前から鉄道は開業して十年くらいは大体赤字だ、そのうちペイするようになるのだということがいわれておりますが、開発路線はそうしたものじゃないかと思います。でありますから、あの鉄道建設会社を全部やめろと私は言わない。しかし、その路線の選定、これについてはやはり慎重でなければならぬのじゃないか。まあそういう
意味では
国会な
ども新
線建設について積極的にやはり協力することが必要だろうと思います。私
どもいなかへ参りますと、鉄道の建設よりも
地方開発、それに特に
重点を置いて、何とかこの
地方を開発したい、それにはまず
交通を
整備することだ、一番先に言われるのがそうであります。しかし、最近は必ずしも
地方開発は鉄道だけによるわけじゃない。鉄道にかわる道路の
整備もできるし、また鉄道によらない自動車
交通、そういうものも
考えられるから、鉄道の建設と道路開設と両方あわせてその
地方に有用な
交通機関を
整備する、しかも国として効用のある
方向をとる、これが望ましいのではないかと思います。
それからもう
一つ最後に、この首都圏を中心にして
交通を
整備したらどうか、こういう御提案がありました。これは私の
考えと
お尋ねとやや違うかわかりませんが、私は、政界入りをした当初、吉田
内閣時分に、吉田さんが非常に
国鉄の民営論者、非常に強い民営論者なのですけれ
ども、そうして、佐藤、おまえは鉄道出身だから、いまの形態をいいように思っているが、どうして民営ということを
考えないのか、ひとつ小林一三君のところに行って
考えを聞いてこい、こう言われたことがあります。そこで私が一夜行ったのですが、小林一三君が北海道の開発の上において鉄道全部を引き受けるとおっしゃるなら、ひとつやらしてみましょう、おそらく小林一三君は反対されるだろう
——私がその話を持っていったら、案の定、実は反対をされました。そんな開発
途上にある、これからうんと開発しようというそんなところで鉄道はできない、やはりもうかるところでなければ困ると言う。民間では実はそういう話なんです。いまやはり鉄道はもうかる路線、もうからない路線、もうからない路線はやめろという話が
審議会等で出ておりますけれ
ども、私、これは極端な言い方をすると、公共機関がエゴイズムになる、そういうことは許されないと実は思っております。そこでいま提案されたところは、あれはおそらく一番いいところだろう。しかしずいぶん
投資もかかります。最近の地価の高騰等から見まして、はたしてどんなになるか、採算はどんなになるか。いまある鉄道そのものを
国鉄から分離して新しい会社をつくれとおっしゃならば、あれはあまりにも
国鉄の負担を他の場所で重からしめる、こういうことにもなるのじゃないかと思います。やはりもうかる路線ともうからない路線、それを合わして初めて
国鉄は国家的な使命を果たしつつあるのだと、かように実は思います。でありますから、非常に極端な赤字、将来の見込みのない線、こういうものについては私は思い切ってこれを削除するも、国家百年のという立場に立つと、それが望ましいかもわからない。しかしながら、いま一番いいところだけを抜いて、そうして経営形態を別にする。これは
国鉄の使命遂行上もたいへんな問題だと、だから、そういうことはあまり軽率には
考えられない。慎重の上にも慎重にやっていきたい、実はかように思います。どららかと申せば、ただいまの御提案については私はやや賛成しかねる、こういうように思います。