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1969-02-26 第61回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十六日(水曜日)     午後零時七分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       重政 誠之君    松浦周太郎君       湊  徹郎君    板川 正吾君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       田中 武夫君    高田 富之君       中谷 鉄也君    西風  勲君       広瀬 秀吉君    田代 文久君    兼務 川崎 寛治君 兼務 島本 虎三君    兼務 竹本 孫一君 兼務 近江巳記夫君    兼務 松本 忠助君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         法務省民事局長 新谷 正夫君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業大臣官         房長      両角 良彦君         通商産業大臣官         房会計課長   進   淳君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業省繊維         雑貨局長    高橋 淑郎君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         通商産業省公益         事業局長    本田 早苗君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         運輸省港湾局長 宮崎 茂一君  分科員外出席者         警察庁刑事局保         安部防犯少年課         長       本庄  務君         大蔵省主計局主         計官      亘理  彰君         通商産業省企業         局参事官    井上  保君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         運輸大臣官房観         光部長     蜂須賀国雄君         労働省労働基準         局安全衛生部長 山口 武雄君         建設省道路局高         速国道課長   松崎 彬麿君         自治大臣官房参         事官     佐々木喜久治君         自治省税務局府         県税課長    森岡  敞君     ————————————— 二月二十六日  分科員田中武夫君、高田富之君、塚本三郎君及  び林百郎君委員辞任につき、その補欠として板  川正吾君、中谷鉄也君、玉置一徳君及び松本善  明君委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員板川正吾君、中谷鉄也君、玉置一徳君及  び松本善明委員辞任につき、その補欠として  西風勲君、田邊誠君、岡沢完治君及び田代文久  君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員田邊誠君、西風勲君及び岡沢完治委員  辞任につき、その補欠として柴田健治君、広瀬  秀吉君及び受田新吉君が委員長指名分科員  に選任された。 同日  分科員柴田健治君、広瀬秀吉君及び受田新吉君  委員辞任につき、その補欠として高田富之君、  田中武夫君及び田畑金光君が委員長指名で分  科員に選任された。 同日  分科員田畑金光委員辞任につき、その補欠と  して塚本三郎君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  第二分科員川崎寛治君、島本虎三君、竹本孫一  君、第三分科員近江巳記夫君及び第五分科員松  本忠助君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算通商産業省所管  昭和四十四年度特別会計予算通商産業省所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十四年度一般会計予算及び同特別会計予算中、通商産業省所管を議題といたします。  まず、通商産業省所管について説明を求めます。大平通商産業大臣
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 昭和四十四年度の通商産業省関係予算案及び財政投融資計画説明はお手元にお届けいたしてありますが、要点のみ簡単に御説明申し上げます。  昭和四十四年度の通商産業省所管一般会計予定経費要求額は九百十六億千四百万円でありまして、前年度予算に対して六十三億七千七百万円の増加であります。  次に、重点事項別に内容を御説明申し上げます。  第一に、貿易振興経済協力推進につきましては、発展途上国、一次産品輸入促進特別基金への出資ジェトロ等輸出振興機関拡充経済協力施策強化等のため九十億八千八百万円を計上してあります。  第二に、産業構造改善企業体質強化につきましては、繊維工業構造改善事業に織布業紡績業のほか、染色業及びメリヤス製造業を追加することとし、五億二千二百万円を計上しております。  第三に、中小企業対策拡充をはかるため三百十三億四千八百万円を計上しております。このうち中小企業振興事業団事業規模を大幅に拡大するため二百十一億六千二百万円を計上し、また小規模事業対策中小企業指導事業等、従来の施策につきましても一そうの推進をはかることといたしております。  第四に、技術開発力の培養と技術的最先端産業育成のため海水淡水化副産物利用を新たに大型プロジェクトとして取り上げ、また情報産業育成海洋開発に本格的に取り組むとともに、技術の急速な進歩に対応し、特許制度改正をはかることとし、技術振興全体では百九十五億三千七百万円計上しております。  第五に、総合エネルギー政策推進資源開発促進につきましては、国内における天然ガス及び非鉄金属資源探鉱開発とともに、海外鉱物資源開発の一そうの推進をはかり、また、ガス事業対策強化をはかる等、二十八億二百万円を計上しております。  第六に、公害対策及び産業立地推進のため、七十億五千六百万円を計上しております。このうち、産業公害対策産業公害総合事前調査拡充等、大幅な充実をはかっております。  第七に、消費者保護強化流通部門合理化をはかるため、商品試買検査倍増等消費生活改善対策に格段の配慮をする等、一億五千二百万円を計上しております。  第八に、来年三月に開かれる日本万国博覧会開催準備と運営のために、百十九億六千七百万円を計上しております。  以上の一般会計のほか、特別会計といたしまして、アルコール専売事業特別会計は、歳入九十億九千四百万円、歳出七十億九千三百万円、輸出保険特別会計につきましては、歳入歳出とも二百二十七億五百万円、また、機械類賦払信用保険特別会計につきましては、歳入歳出とも十五億一千六百万円を計上しております。  また、石炭対策特別会計につきましては、歳入歳出とも八百八十四億五千三百万円を計上しておりまして、先般の閣議決定に基づいて、石炭鉱業の再建、雇用の安定、保安の確保、終閉山円滑化鉱害処理推進産炭地域振興等施策推進してまいることといたしております。  次に、昭和四十四年度の通商産業省関係財政投融資計画について御説明申し上げます。  昭和四十四年度の当省関係財政投融資計画は、総額一兆百五十九億円でありまして、前年度当初計画に比べて約一千六百億円の増加となっております。  以下おもなる機関別にその概要を御説明申し上げます。  まず、日本輸出入銀行につきましては、プラント類融資条件維持のため、六百三十五億の出資を確保いたしますとともに、資金需要の増大に対処するため、貸し出し規模拡充することといたしております。  次に、中小企業関係金融機関につきましては、前年度当初計画に比べて一八%増の八千四百九十九億円の普通貸し付け規模を確保いたしますとともに、新たに構造改善ワクを設ける等、特別貸し付け制度拡充をはかることといたしております。また、中小企業振興事業団につきましては、大幅に事業規模を拡大するために必要な財政投融資を確保することといたしております。  日本開発銀行につきましては、繊維工業アンモニア工業等を対象とする産業構造改善金融ワクを拡大いたしますとともに、特定業種特利適用をはかることといたしております。また、国産技術振興資金の一そうの拡充をはかる等、資本自由化を控え、産業体質改善をはかることといたしております。  金属鉱物探鉱促進事業団につきましては、鉱物資源の低廉かつ安定的な供給を確保するため、海外探鉱について五億円の出資を行なうとともに、国内探鉱についても事業規模の拡大をはかることといたしております。また、海外原油開発体制を抜本的に強化するために、石油開発公団に対する出資九十五億円を予定いたしております。  公害防止事業団につきましては、事業規模を大幅に拡充いたしますとともに、中小企業向け貸し付け金利の引き下げをはかることといたしております。また、亜硫酸ガス対策緊急性にかんがみ、開銀の産業公害ワク拡充し、重油脱硫装置の建設を促進することといたしております。  以上、通商産業省関係予算案及び財政投融資計画につきまして簡単に御説明申し上げました。何とぞ十分御審議の上、すみやかに可決されますよう、お願い申し上げる次第であります。
  4. 植木庚子郎

    植木主査 以上をもちまして通商産業省所管についての説明は終わりました。
  5. 植木庚子郎

    植木主査 これより質疑に入ります。  質疑に先立ち、念のため申し上げます。議事進行の円滑をはかるため、質疑を行なわれる方は、あらかじめ政府委員等を御要求の上、主査に御通告をお願いいたします。  質疑の持ち時間は、先例により、原則として本務員は一時間、兼務もしくは交代して本務員となられる方は三十分にとどめていただきたいと存じます。  質疑通告がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  6. 田中武夫

    田中(武)分科員 私は、去る二月六日に予算委員会におきまして、総括質問でお伺いしたわけなんですが、そのとき、時間の都合等で省略したり、十分論議が尽くせなかった点についてお伺いいたしたいと思います。   〔主査退席湊主査代理着席〕  そこで、まずお伺いいたしますのは、日中貿易についてであります。いわゆる日工展出品申請品中、十九品目輸出禁止、十九品目持ち帰り条件つき、こういう決定になったわけでありますが、持ち帰り条件つきというのは貿管令の一条六項で、「条件を附することができる。」ということに基づいての条件であろうと思いますが、そうであるかどうかということ。それから禁止品目持ち帰り条件つき品目との間にはどのような相違があるのか。一方は渡してはいけない、一方は持って帰れ、そういうことではなく、持ち帰り禁止ということの区別をせられたその理由といいますか、どういう点が持ち帰りになり、どういう点が禁止になるのか、お伺いいたします。
  7. 原田明

    原田政府委員 持ち帰り条件をつけました輸出承認根拠は、輸出貿易管理令第一条第六項に基づいているところでございます。申請の十九品目について不承認といたし、他の十九品目について持ち帰り条件を付しました理由は、政府といたしまして、自由主義諸国間の申し合わせ趣旨を尊重いたしまして、これらの諸国との協調をはかることが、わが国貿易及び経済発展をはかるために必要であるとの考えに立って行なったわけでございます。その自由主義諸国間の申し合わせ趣旨を尊重いたしました場合に、品目によりまして全然輸出承認の見込みがない品目と、品目によりましては、その最終用途が民需的なものに限られるといったような要件が充足されるならば、場合によっては輸出承認を行ない得ることもあり得るというように、程度の差がございます。したがいまして、そういう程度の差に応じまして、輸出不承認という品目と、持ち帰り条件をつける品目というものが出たということでございます。
  8. 田中武夫

    田中(武)分科員 あまり抽象的で、少しわかりかねるのですが、具体的に言ってこうこうこういうものだから禁止だ、こちらは自由に輸出はできないけれども、こうこうこういうものだから条件つきとした、こういったような、何かもっと具体的な基準というものがあるのじゃないのですか。それから、この問題について現在係争中でありますので、あまり深く掘り下げてやることはどうかと思うわけなんですが、いま自由諸国間の申し合わせと言われたのはおそらくココムを指さしてのことだと思うのですが、やはり法律あるいはそれに基づく政令、これを解釈するときに、法的基礎を持たないもの、これをその解釈の上に置くということは許されないと思うのです。それらの点も含めて、もう一度御答弁をお願いします。
  9. 原田明

    原田政府委員 自由主義諸国間の申し合わせ趣旨の中に、その品目性能でございますとかその他の条件から見まして、これは輸出を認めないことにしようという話し合いが行なわれております品目と、それから性能その他がやや低いので、もし民需用に使われるのであるということがわかるならば認めることにしても差しつかえないのではないかというようなことが話し合われている品目とがございます。前者が、不承認にした品目がこれに該当するわけでございます。後者が、持ち帰り条件をつけた品目に該当するわけでございます。
  10. 田中武夫

    田中(武)分科員 いまの話しだと、後者のほうは輸出を許していいんじゃないですか、いまのような説明であるならば。
  11. 原田明

    原田政府委員 最終用途民需用であるとかその他の要件が充足された場合に、輸出を認めることにしようという話し合いがございます。展示会展示をするという段階では最終用途がわからないわけでございます。したがいまして、その段階では無条件輸出を認めるというわけにまいりませんので、持ち帰り条件というものをつけて、輸出をすることを認めざるを得なかったということでございます。
  12. 田中武夫

    田中(武)分科員 そうしますと、持ち帰り条件つき品目は、民需用として商談がまとまった場合は輸出できる、そういうことですね。
  13. 原田明

    原田政府委員 話し合い趣旨では、民需用であるという用途が確認されさえすればいいという話し合いになっておるものもございますが、それだけではだめで、やはり一ぺんみんなで相談をしようではないかということになっておる品目もございます。したがいまして、持ち帰り条件をつけました十九品目すべてが民需用であれば、輸出承認されるということにはなりませんが、その中に、先生指摘のように、もし展覧会終了後、民需用に売却したい、その用途は最終的に民需用であるということが確認されるということになりましたならば、輸出を認めても差しつかえないというものが含まれております。
  14. 田中武夫

    田中(武)分科員 すっきりしませんが、次へまいりたいと思います。  今度の輸出禁止品目の中に雑音測定器MFMI1というのがあるわけです。これはおそらく貿管令別表一三九によって、千メガサイクル以上の周波数を測定するもの、これによって押えられたんであろうと思うのですが、私は、雑音測定器のようなのがただ千メガサイクル以上の周波数云々だけで禁止品目になるということもいささか考えられないし、それがあくまでも政令別表である——私の持論といたしましては、ものを輸出し輸入することは憲法二十二条で認められたところの職業選択の自由、いわゆる基本的人権である。   〔湊主査代理退席主査着席〕 したがって、これを押えるためには公共福祉に反するということが積極的に立証せられなければならない。そういう趣旨から外為法の四十八条第二項は、一項をあげた条件に対して例外的規定として「範囲をこえてはならない。」と特にきびしく規定しております。こういうように規定しておるところから見て、すべてこの種のものについては拡張解釈をいたすべきではない。できるだけ厳格に解すべきである。そういう観点に立てば、現在の措置別表一三九であるということなら、これは論争は避けましょう、やがて裁判において明確になると思いますから。しかし通産大臣、この別表二二九でそういうことになる、これは私は納得いかないわけです。したがって貿管令別表は新しい観点に立って全部検討し直す必要があるのではなかろうか、こう思うのですが、いかがでしょうか。その辺はひとつ大臣に答えてもらってください。
  15. 原田明

    原田政府委員 技術的なところだけを答えさせていただきます。  雑音測定器は、先生指摘輸出令別表の二二九に該当いたしますので、これが今回の輸出不承認の処分を行なう根拠となったものでございます。ある一つ品目貿易及び国民経済上の観点から輸出を認めないかどうかというのは非常に大事なことでございまして、輸出が自由に振興さるべきもので、法的規制は最小限にとどまるべきであるという先生の御説には全く賛成でございます。  そういう趣旨に立ちました上で、こういう自由主義諸国間の申し合わせ趣旨を尊重いたしました場合に、御指摘品目が三千メガサイクルにわたるくらいの範囲まで使用できる高性能のものであるということから、各国ともこれの輸出を認めないことにしようと申し合わせをしている品目に該当いたしております。したがいまして、そういう申し合わせ趣旨を尊重しないで、わが国だけが協調を破るということになりますと、貿易経済の健全な発展を害するおそれがあるということで、今回のような措置輸出令に基づきましてとらざるを得なかったということでございます。現在のところは輸出令の中に、そういう申し合わせによりまして各国話し合いをしてまとまったところが盛り込まれておるわけでございます。しかし、こういうものは技術進歩国際情勢等々によりまして検討すべきものであることは当然でございますので、そういう機会をとらえまして、話し合い趣旨その他がどういうふうになるべきかということにつきましては、わが国意見を十分に反映するように努力をしておる次第でございます。
  16. 田中武夫

    田中(武)分科員 私が先ほど申しました点ですね、法制局部長さん、いわゆる基本的人権であるということ、したがって外為法四十八条二項は厳格に解さなければいけない、したがって、それを押えるための積極的な公共福祉に反するということを立証する必要があるということを含み、いま原田局長答弁は、いささかまだ歯切れが悪い。諸国との申し合わせというのはココムであろう。これはいつも言っている、法律でも条約でもない。これはもちろん政府間の協定というか申し合わせですから、政府行政の上で配慮することは、これはとかく申しません。しかし法律運用するにおいては、それを優先してはならない。しかしいま、やられたことが違法であると幾ら言っても、事が係争中ですから、あなた方はそうは言えないと思う。だからそれはやめます。しかし今後、私の言っているような趣旨の上に立って、これは別表を改める必要がある。たとえば別表地域甲地域となった場合、これは読まなくてもわかるように、世界の半分くらいの国の名前があげてあるわけですね。ABC順にあげてあるわけなんです。その中には自由国あり、中立国あり、共産圏があるわけです。だから、これでココムを避けながら——実際はココムを考えておるのだが、法律的には避けながらやろうとするところに無理がある。だから、やるのならやるで、ぼくは、はっきりした法の改正をしたらいいんじゃないか。あるいはそうじゃなくて、やるとするなら、もっと合うように別表改正する。甲地域なんか、ABC順世界の国の約三分の二の名前があがっておるわけですね。そういうのでもって特定の国だけをチェックしていくということはおかしい。そういう点を含めて、通産省とそれから法制局、最後に大臣から、どうするのか、ひとつ責任ある御答弁をいただきたい。
  17. 真田秀夫

    真田政府委員 私に対する御質問の点についてお答え申し上げます。  貨物を輸出し輸入すること、それが即国民職業に関する場合には、もちろん職業選択の自由の保障の及ぶ範囲内でございます。そうでございますから、したがいまして、その職業選択の自由を制限するためには、もちろん公共福祉という見合いがなければならないことは当然でございます。しかも、その公共福祉による基本的人権の制約につきましては、法律にその旨の明文の規定があるとなしとにかかわらず、厳格に解釈しなければならないことも当然でございます。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘のように、ココム申し合わせというものが直接、日本ばかりでなく、ココムに参加しておる諸国国民権利義務を縛るものでないということは当然でございます。したがいまして、わが国といたしましては、そういう申し合わせは尊重せにゃならぬけれども、法律に基づく政令でこれを受けて、ていさいをとっておりますことは、田中さんよく御承知のとおりでございます。  まず第一に、これは一体別表品目は、より弾力的に改正が可能なものかどうかという点につきましては、先ほど局長からも答弁いたしましたけれども、技術進歩もありまするし、これはレビューを重ねまして、情勢に即して改定さるべきものだと思います。  それから第二点といたしましては、抜本的に法律改正して、堂々と取り組めばいいじゃないかという御意見でございますが、そういう考え方もあると思いますが、わが国は、いま貿易立国で立っておる国でございまするし、貿易立国の柱はやはり国際信用だと思うのでございます。したがって、非常に微妙な国際信用をいかにかして維持していかなければならぬといたしますならば、こういう微妙な問題でございまするから、できるだけ用心深く法制的にも行政的にも処置してまいるべきじゃないか、こう思うのであります。ココムというような委員会があることは世界にとって不幸なことでございますけれども、現にあるわけでございますし、そういう中に日本も参加して今日まで討議に加わっておるわけでございますから、その申し合わせを尊重するというようなことが、日本国際信用の根基にさわる問題でありますならば、これを受けて用心深く順奉してまいる姿勢が、やはり国際信用の上から大事なのではないか、そう考えております。そういう国際信用を維持する上におきまして、もっとほかにいい方法があるじゃないかということにつきましては、いい知恵がありましたならば、それはずいぶん考えられると思いますけれども、根本は国際信用の問題じゃないか、そう私は思うのです。
  19. 田中武夫

    田中(武)分科員 私は法律改正して、押えるという観点に立っておるのじゃないのですがね。これは通産省だけではないのですが、よく政府のやることが、法律趣旨と違ったこと、それを政令でやるとかあるいはそれ以下の内規でやるとか、そういうことは、法の精神なりあるいは立法権行政権との限界ということを侵すというような問題が考えられるわけです。だから堂々と立法に訴えて、こそこそやらずにおやりになったらどうですかという意味なんです。  そこでその一つは、私は先日も指摘しましたが、外為法がある。そして貿管令がある。そのもとに「輸出貿易管理令運用について」というのがあるんですね。これは名のとおり、貿管令運用規定している。その一の一の一というところに、「戦略物資輸出承認」という項がありまして、そこに「戦略物資輸出承認等事務処理要領により行なう。」となっているのですね。そうして別に、「戦略物資輸出承認等事務処理要領」というのがあるのです。これは昭和三十三年七月二十八日、当時の通商局ですね。二二一五号で出された、言うなれば内部的事務規程なんです。これが実際は窓口に働いてチェックしておるのです。そういうことについて私は疑問を持っているわけです。それで何回もこういう同じようなことを、観点を変えて聞いておるわけなんです。これ以上私申し上げても、事が現在仮処分について口頭弁論が開始されておる段階でございますので、あなたのほうもこれ以上は言わずに逃げ切ろうとする。私がこれをあくまで追及をしていくと、何だか法廷の論争をここへ持ち込むようなことにもなりかねないのでやめますが、貿管令別表あるいはいま申しました事務処理要領等は、私は、もっと検討しなおす必要がある、こういうことだけを指摘いたしたいと思います。先日もそれは変えることがあるというような答弁だったのですが、もう一ぺんはっきりと検討してもらうことをお認め願いたいと思います。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 この間予算委員会のあなたとのやりとりで出てきたときに私の答えた趣旨は、そういう事務要領というのはかってに事務当局がつくり上げたものではなくて、貿管令運用にあたっての要領を事務当局内できめたものであって、貿管令のらちを越えるものではないというように御承知願いたい、もしそういうことがあれば御指摘いただきたいのでございますけれども、私は事務当局をそういう意味で信用いたしておるわけでございます。ただあのときのアクセントは、あなたが指摘する戦略物資ということばはあんまりいい表現ではないじゃないかというような趣旨に私は響いたわけです。戦略物資というのはなるほどそういえば、法律用語として定立した観念であるかないか私は存じませんけれども、これは貿易管理令事務細則というようなことばにすれば田中さんのかんにさわらなかったのじゃないかと思ったのですけれども、つまりやっておりますことは法律政令に基づいた事務の細則でありまして、そのらちを越えたものでない以上は田中さんのおとがめをこうむる筋合いじゃないのじゃないかという趣旨答弁を私はしたのでございます。
  21. 田中武夫

    田中(武)分科員 もう時間がかかるだけですからやめますが、ココムということについては、はっきりいって法律的な用語ではないのです。これが戦略物資輸出承認事務取扱要領にココムというのが出てくるわけです。それから戦略物資というのは、あのときはたしか行儀がよくないということを言われたと思うのです、大臣が。そうして、内規ですからそれは直すこともあり得る、こういう答弁であったと思うのです。いまのはちょっと後退したと思うのです。その点をもう一ぺん確認いたしたいと思うわけです。これは理屈を言うなら、通産省の中に堂々と武器課というのがあったり、武器の製造何とかという法律があったりすること自体私は気に入らないのですから、ほんとうは。そういうことを言っておってもしようがないのでこの程度にしておきますけれども、これはやっぱり検討してもらいたいと思う、こういうように申し上げたいと思う。  それから先日パリですか、ココム交渉があったと思うのです。そのときに日本はどのような態度で臨み、その経過、結果及びそれに対する今後の日本としての態度、これだけ伺ってこの項を終わりたいと思います。
  22. 原田明

    原田政府委員 第六十国会におきまして田中先生から、たとえ細目的事項を定めました運用通達みたいなところでございましても、ココムということばが直接法律根拠になっていない以上、これを使うのは不適当ではないかという御指摘がございましたので、その後さっそく検討いたしました結果、四十三年、去年の十二月二十一日付をもちましてその取扱要領を改正をいたしました。ココム物資ということばをかえた次第でございます。ただその場合に、戦略物資ということばは、正確には輸出令別表第〇〇号、第〇〇号に掲げられている物資というふうに書かなければならないわけでございますが、なかなか長くなりまして非常に書きにくいという問題もございますので、便宜上まだそれを一括して掲げているわけでございます。  現在、自由主義諸国間の申し合わせの場所におきまして話し合いが行なわれておる最中と承っております。この話し合いは、去年の秋ごろでございましたか行なわれました会議に引き続いて行なわれているものでございます。私ども日本といたしましては、技術進歩等に応じまして、必要性の薄れたものにつきましての規制をはずすべきであるという方向で努力をいたしております。ただ私どもが伺います範囲では、品目も非常に多うございますが、各国ともそれについて非常にいろいろな意見が出ておりまして、まだ見通しがついていないというような状態であるということであります。
  23. 田中武夫

    田中(武)分科員 それじゃ最後に、まあココムと言いましょうね、それについての日本の交渉に当たる態度と、それからこれに対してどうするのか、これだけちょっと大臣に伺ってこの項は終わります。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 日本といたしましては、内外技術進歩に応じまして、この協定のレビューに参加しておるわけでございまして、われわれがココム強化するとかあるいは品目の拡大に積極的に加担するとか、そういうような態度はとりたくないと考えております。
  25. 田中武夫

    田中(武)分科員 それじゃもう次にまいります。ここで私は訴訟についての問題に触れたいのですが、これはもうやめておきましょう。  次に貿易、資本の自由化問題で伺いたいと思うのです。  まず資本自由化の問題につきまして、自動車及び部品の資本の自由化ということが大きな問題になっている。これに対して一面では、自動車産業は過度の保護にわたっておる、これを自由化しないことが他の業種にも反射的に影響があるので、早く自由化したほうがいいという意見、あるいはまたそうではないという意見等々あり、熊谷次官が談話を発表したというようなこともあるわけですが、大体自動車の資本自由化についてはどのような方向で考えておられるのか、簡単でけっこうですからお願いします。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 自動車につきましては、いま輸入の自由化を逐次始めておるわけでございまして、その見当がついて資本の自由化を考えるべきが常識じゃないかというように私どもは考えておったわけでございます。ところが自由化論議というのが民間におきましても非常に盛んになってまいりまして、自動車業界と経団連側との間でこの問題が一応政府とかかわりなく論議されたというように聞いております。私どもはそれを拝見しておりまして、民間側においてそういう場で論議されて、それである種の合意というかコンセンサスというか、そういうようなものができますと、それは行政にとりましてもたいへん裨益するところが多いのじゃないかと思うて見ておったわけでございます。ところがその結果発表されたところを見ますと、四十六年度末においてネガチブリストに自動車を入れるのだというようなことは書いてないようでございまして、できるだけ早く自由化のほうに踏み切らなければいかぬのだというようなニュアンスの意見が表明されておったので、それはある種の私は実質的前進を見たものと思うておるわけでございまして、なお時日の経過とともにこういう論議は各方面に出てくると思いまするし、それは大いに歓迎すべきことだと思っております。
  27. 田中武夫

    田中(武)分科員 何だかわかったようなわからぬような答弁なんですが、時間の関係で、次は電子工業関係の製品の貿易の自由化、進んでは資本の自由化とこうなるわけですが、聞くところによると、小型電子計算機等は輸入の自由化が約束せられたかのように伝えられておる。しかし私は、一面において現在まだ電子工業振興臨時措置法あるいは大型プロジェクト等によって国内産業振興段階じゃなかろうか、こう思われる。こういうのに対してまだ自由化は、これは双方、資本と貿易を含んでいるわけですが、少し早いんじゃないか、そういう感じがしております。  それからICですね、集積回路。これは先ほど言っている貿管令別表第一の一七二だろうと思うのですが、それで輸出禁止されているわけです。しかしそれを部品に使った完成品の卓上小型電算機は自由に輸出できるようになっておるわけです。それが行っておるのに部品の輸出禁止になる。そういうことでアフターサービスといいますか、そういうことができないということ、これはココムとかなんとかいうこととは問題なしに私は検討してもらわなければならない問題じゃないか、こう思うので、これらの点について御答弁をお願いします。
  28. 吉光久

    ○吉光政府委員 最初の御質問でございますが、電子計算機の本体あるいは部品、周辺装置等について現在まだ輸入は自由化されておりません。したがいまして、その輸入自由化のための交渉と申しますか、一般的に残存輸入制限についての交渉というふうに申しておりますけれども、現在交渉が続けられておるわけでございまして、いま御指摘の一般に伝えられておる小型電算機等について輸入の自由化が決定しておる、こういう事実はございません。  それからこういう自由化問題を含めまして資本自由化の問題といたしましても、この電算機産業というものが将来の情報産業自身をかかえるような、何と申しましょうか、そういう将来における産業発展のかぎと申しますか、そういうものをになうべき産業であるというふうな立場で情報産業あるいはいまの電子計算機工業の育成というふうなものを考えておるわけでございまして、したがいましてそこらの体制整備の進捗ぐあいとの見合いで自由化問題は、資本自由化問題も検討されるべきであろう、こういうふうな考えでございます。  それから最後に輸出貿易管理令のお話しで、製品は、たとえば卓上電子計算機は管理令からの規制外でどんどん輸出されておりますが、そのICについて輸出禁止されておるという御質問でございますけれども、お話しのとおり卓上電子計算機の輸出は年々猛烈な伸びを示しておるわけでございまして、むしろ最近における日本輸出の本命というぐらいにまで相当の勢いで伸びつつあるわけでございますが、残念ながらICにつきましては、実はまだICの、先ほど来の御問答のありましたような、そういう問題のあることもございますけれども、それとは別に、IC自身の生産余力がまだ日本にないわけでございまして、むしろICはアメリカあるいはアジアの近隣諸国から相当量を輸入しておるというのが現状でございます。現状で判断いたしますと、政策的な当否の問題は別といたしまして、輸出余力はないというのが現在の姿でございます。
  29. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間の関係で急ぎます。  これも予算の総括で若干触れたのですが、現在のアメリカにおける輸入制限運動ですね。ことに、これはまだ結論は出ておりませんが、富士、八幡が大体合併が是認されるような方向になる、このことがアメリカの業界に大きな反響を呼んでおるとも聞いております。したがって鉄鋼の輸入制限はますますアメリカのほうでは強くなってくるのじゃないか。あるいは繊維、いろいろあります。法律も四十何法案が出された、用意せられているものを含むと百法案といわれておる。これはまあ全部成立するとは思いません。しかしそういう運動が起こっておることは事実なんです。それをまた一面自主規制ということで、国内においてコントロールせよ、こういう方向もある。ところが繊維業界等は、それじゃ困る、もっと政府の強い外交と申しますか、経済外交によってひとつ解決してもらいたい、こういう要望があることも御承知と思います。こういうことを含めて、アメリカに対する貿易の問題とこの輸入制限の動き、国内の動き、どういうように今後持っていかれるか、そういう決意といいますか、これは大臣からお伺いいたします。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカに新政権ができましたが、新大統領は、たびたび記者会見等で表明をされておる意見によりますと、自由貿易の原則を生かさなければならぬという御方針のようであって、保護主義的な傾斜については非常に警戒的であるというように私どもは考えております。しかしながら、アメリカにおきましていま御指摘のように保護主義的な措置政府に要望する声が非常に高くなり、ことしの一月三日に開会された国会には百をこえる法案が出ておるそうでございます。したがって、この容易ならざる事態に対して、われわれといたしましてもよほど警戒した体制で臨まなければならぬことは当然だと思います。ただ、いま一番センシティブな状況にある繊維にいたしましても、アメリカの繊維産業はここずっと繁栄を記録いたしておるわけでございますし、アメリカ全体の総輸入に対して日本輸出品のシェアがほとんど変わりがないという状況でございますから、先方が特に日本に対しまして自主規制を求める根拠というのが、どうもわれわれ発見に苦しむわけでございます。この場合は、去年たまたま六五%もの輸入がふえましてたいへん大きなマーケットの変化がありましたわけで、EECと日本に対して等量の自主規制を求めたという事情は一応わからぬでもないのですけれども、繊維につきましてなどは全くどういうことでああいう議論が起こっておるのか、了解に苦しむところでございます。アメリカ国内におきましても、なるほどメーカーやそのほか繊維の労組なんかはこぞってそういうことを希望いたしておりますけれども、インポーターや小売り業者は反対しておるようでございますし、また有力紙の報道を見ましても、そういうことは必ずしもアメリカにとっても利益ではないのじゃないかという反省も論説に出ておるようでございます。したがって、決して今日までまだ政府に対して何らの話し合いの手が伸びてきていないわけでございますから、いま私どもでとやかくこれを論議するのはいかがかと思うのでございますけれども、御指摘のとおり政府も業界も固い決意で貿易のより自由な体制の維持に全力をあげてまいらなければなりませんし、万一そういう申し出がきたといたしましても、私どもはこれに対して応諾は絶対にできないという強い態度で経済外交に臨まなければならぬ、政府においても意見の一致を見ております。
  31. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間の関係で次へまいります。  次は、中小企業政策について若干お伺いいたします。  これは総理がおられたらいいのですが、総理はおられないのですが、総理は施政方針演説で、中小企業が少ない人手で高い生産をあげるよう中小企業の金融、税制の措置をとる、こう言っておられるんですね。ところが一番問題である中小企業の倒産について一言も触れておられないわけです。私はいささか総理の施政方針演説でその点が気に入らなかったわけです。大臣も御承知のように、これは東京商工興信所の調べなんですが、四十三年度中に倒産をした企業は一万七百七十六件、前年に比べて三一・五%ふえておるわけです。その負債額は七千九百七十四億円で、前年に比べて六四・一%の増であります。こういう結果を見た場合に、まあ通産大臣中小企業庁長官を含めて、中小企業の施策に当たっておる人はどう思っておるのか。それから中小企業庁長官には、いや、あなたじゃない、二、三代前の人ですが、予算委員会で、中小企業の倒産が興信所の調べだけでしかわからないということはどうもおかしいじゃないか。中小企業の振興に業種別振興法があって、きめこまかいことをやろうというのならば、これを言うならば積極的中小企業政策とするならば、中小企業倒産をもっと分類をし、分析をしてその予防手当てをすることは、言うならば消極的なとでもいいますか、中小企業政策の大きな柱じゃなかろうかと思うのです。このことについて予算委員会で強く言ったことがあるのですが、その後そういう方針の上に立って中小企業庁はあるいは通産省はやっておられるのかどうか。  それから大臣には、このような毎年記録を更新するような状態、これについては私はもっと強い施策が必要じゃないかと思うのです。と同時に、いま政府通産省は、産業構造改善政策というのを繊維その他でも進められておるわけです。ところがその結果が、企業倒産がいま言ったような現状であるということ、そうすると遺憾ながら政府のとる、中小企業庁のとる産業構造改善政策は、弱いものの切り捨て、零細切り捨てというような結果になっておる。そのつもりじゃないだろうが、どうもそうなっておる。こういう結果が出てきておるわけなんです。そういうような点について大臣、長官はどのように考えられ、今後どのように対処しようとされておるのか、お伺いいたします。
  32. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず事実を私、御説明申し上げます。  数年前に、興信所の調査だけに倒産の数字を依頼しておるのはおかしいじゃないかというお話がございました。そのことは私も承知をいたしております。そのことにつきましては、この調査は、全般的に日本全国で行ないますためには膨大な費用が要りますのと、また興信所の調査は、その後興信所間の競争もございまして相当精密をきわめるという情勢で、利用するに足るということになってまいりましたので、一般的には興信所の調査を依然として使っております。ただし、先生御承知のとおり、あれは負債総額一千万円以上ということでございまするので、下のほうにメスを入れることは困難でございます。その点がございまするので、若干おくれて恐縮でございますが、来年度の予算から大都市、特に東京、横浜地区につきまして零細層の倒産調査を予算に組み込みまして、特に一千万円以下の倒産調査を明年度行なうというふうに手配をいたしております。これが第一であります。  それから第二に、先生指摘のように、倒産によりまして出てきましたことは、景気のしわ寄せによる倒産もございまするが、世の中の移り変わりによります構造倒産がだんだんふえてきておるということでございます。したがいまして、特に建設業等がだんだんふえてきておるわけでございますが、この辺につきましては、その倒産の数字に基づきまして建設業に対しても特に構造問題を勉強するというふうなことで、中小企業政策審議会の専門委員会、いわゆる篠原委員会においても特に建設業を取り上げたというふうに、いま活用しておる次第でございます。  それからなお最後に、構造改善政策は零細層の切り捨てということで、倒産の数字にあらわれておるのではないか、政府構造改善政策を進めてきておるけれども、倒産の数字が減っておらぬという御指摘でございます。これは、私たちはこういうふうに思うのでございます。確かに倒産の数字は、中小企業が世の中の移り変わりに適応しきれないで倒産をしておる、世の中の移り変わりに適応しきれない人が多いということを示しておるわけでございますので、いよいよもって構造改善政策を進めていかなければならないというふうにいま考えておるわけであります。したがいまして、これの結果、繊維におきまして特別の法律をすでに発足いたさせましたし、繊維のみではございませんで、今国会に御審議を賜わりたいと思っておるのでございまするが、近代化促進法を改正いたしまして、ここに特定業種制度を設け、この特定業種におきましては業種ぐるみの構造改善をいたしたいということで、特に繊維におきましても注意をいたしたのでございまするが、業種ぐるみ、産地ぐるみ、特に弱い業者の方々も一緒に構造改善をしていくという点に注意をしてやってまいりたいと思うわけであります。
  33. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣お聞きのように、中小企業庁は中小企業白書でも三年ほど前から倒産の問題を分析して、構造的な問題がある、こう指摘しておるわけです。そこで構造改善ということを取り上げてやっておられるわけです。ところが、その結果はやはり倒産がふえておるわけです。どうもわれわれ見ておって、構造改善というのは優等生教育である、ある一定以下のレベルのやつはかってにしなさい、どうもこういうような感じを受けるわけです。冷酷無比とは言わぬまでも、それに近い感じを受けるわけです。これはやはりいま長官も若干触れたが、業界ぐるみで、落ちるもののないような構造改善政策というものが必要だと思います。これは大臣、ひとつ政治的に答弁してください。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 倒産論議が、国会ばかりでなくいろいろ行なわれるわけですけれども、ここにふしぎなのは、それでいて中小企業の数がだんだんふえるのですよ。今度、三月早々中小企業白書を出しまして、差し上げますけれども、これを見ましても、年々歳々ふえてきているのですね。それで、倒産の統計ばかり追うわけですけれども、新しく誕生したもののほうの統計はみんなあまり論議しないので、そこに私は、いま長官が言われた転換の作用がいろいろあったのじゃないかと思うのですが、なお政策的に究明しなければいかぬ問題だと思っております。  それは別といたしまして、いま、構造改善が切り捨てにつながるのじゃないかということでありますけれども、私はめずらしく田中さんは保守的なお方だという感じがするのです。できるだけいまやっておる商売を適応力をふやしてあげて、そして立っていくようにしろというふうにぼくに聞こえたのですけれども、私はむしろ、いま長官が言われたように、ちょうどいま大きな転換期でございますから、やはり転換していかなければいかぬと思うのです。同じ平面でいまの業態を維持するというのでなくて、一つ上の段階にみな乗せつつ構造改善をしてあげるような親切さがやはり中小企業対策に要るんじゃないか、つまり転換策ですね。転換策を助成していく、日本の中小企業でいえば、より高度の加工工業に持っていくようなくふうをこらしながら転換をしていく。もっと、いまのままで維持するのでなくて、そういうくふうを中小企業庁等もやろうじゃないか。この間もそういう勉強をお互いにしておるところでございますが、私ども政治的な立場といたしましては、現在非常に、何といいますか、きのう商工委員会でも申し上げたのですけれども、とにかくもうたいへんな繁殖力ですよ、日本の企業は。たくさん出てくるわけですから、これだけの成長力を持っておるわけでございますから、それを時代に合った適応力を持ったような部面に、できるだけうまく転換さすような構造政策、そういうものであるように気をつけてまいりたいと思います。
  35. 田中武夫

    田中(武)分科員 もちろん私は現状のままでとは言っていないわけです。業界ぐるみ体質改善構造改善が必要である、そのときに弱いものを落としていくというようなことはいけないじゃないか、こう申しておる。  それから、企業の転換の問題につきましては、中小企業基本法の中にもうたわれておるのです。そういうときに、いわゆる緊急救済といいますか、どうでもいまのままでいけないということで転換さす場合、緊急救済が必要だと思うのです。これは税金とか、あるいは金融とか指導とかということになろうと思います。たしかこれも中小企業基本法の精神だと思うのですが、そういう政策を今後もっと推し進める必要があるのじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  36. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のとおりでありまして、大臣が申しましたように、積極的に転換をしていくというか、新しい事態に適応していく、適応する力のある人は積極的に適応していくと思いますからけっこうでありますが、適応する力の弱い人に対する施策が必要だと思います。したがいまして、その点については、今回の財政投融資計画及び税制にも若干のものが出ておるわけでございますけれども、業種ぐるみ、産地ぐるみの構造改善計画につきましては、中小企業金融公庫に金利七%の特別ワクを設けたわけでございます。これは、そういう転換資金にも優先的に使っていきたいというふうに考えておりますし、また、この構造改善計画には、構造改善準備金を積むことができるということにおそらくなると思いますけれども、これにつきましては、現在千分の十五までが税制上損金算入を許されておりますのを、二十五までに格上げして積み増す、そして二十五まで積み増したものは、転換の場合に優先的に取りくずすというようなことを税務当局と了解済みでございまして、先生指摘のようなところにわれわれは知恵を出しておるつもりであります。
  37. 田中武夫

    田中(武)分科員 そこで、倒産はないようにすれば上等なんですが、さて倒産が起きたときに、その救済方法については、二、三年前からいろいろ議論をして、法律改正とか等も行なわれました。しかしまだ不十分である。ことに、やはり倒産のときに気の毒なのは、まずそこの従業員です。そして、そこの下請企業、これがやはりいつも泣かされておるわけです。それが少しでもよくなるようにということで、先年会社更生法の改正もやったのです。やってみても、実際においてあまり効果があがっていない。そこで、中小企業庁長官と、それから法務省の民事局長来ていただいておるのですが、会社更生法をもう一ぺん考え直したらどうか、こういう気持ちを持っておるわけですが、いかがでしょうか。
  38. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 会社更生法につきましては、かねがね田中先生の非常に有益な御示唆等もございまして、昭和四十二年にただいま仰せの下請業者あるいは従業員の保護をはかるということを一つの柱といたしまして、かなり大幅な改正を実現させていただいた次第でございます。一昨年の秋、あの改正法律が施行されまして以来、裁判所におかれましてもあの法律趣旨にのっとって運用されておることと思うのでございますけれども、何分一年ちょっと経過したぐらいのことでございますので、最高裁判所のほうから私どものほうに対しましては、まだその運用に伴ういろいろの問題点、あるいは要望とか意見、こういうものも出てまいっておりません。したがいまして、ただいまのところは会社更生法をすぐ改正しようという考えは、実は持っていないのでございます。ただ、先ほど来御指摘のようないろいろの問題があるようでございます。通産省におかれましても、これに対する対策をさらに新たにお考えのようでございますし、裁判所のほうの運用の実態等もながめまして、改正の必要があるというふうな問題がございますれば、これについては真剣に検討いたすことは当然であろうと思います。
  39. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 会社が倒産をいたしまして、これが分解をいたしますことは、従業員にとりましても、また、特に関連企業にとりましても非常に大きな損害でございます。国民経済上もこれは非常に大きな損害でございます。したがいまして、会社更生法の運用につきましては、国民経済的なそういう活力が極力失われないように、損害が少ないようにというふうに運用されなければいけないと思うわけでございます。本件につきましては、実情をよく勉強いたしまして、法務省とよく連絡の上、勉強を進めてまいりたいと考えております。
  40. 田中武夫

    田中(武)分科員 これは中小企業庁が適当なのか法務省かわかりませんが、会社更生法の改正前と改正後、このように変わった、あの改正がこのように実際において生きておるんだというような調査なり統計はとれぬですか。
  41. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 御承知のように、会社更生法は裁判所が運用いたしておりまして、法務省では直接あの仕事に関係ございません。したがいまして、もしそのような調査をするといたしますれば、中小企業庁あるいは裁判所でやっていただくほかはないだろう、かように考えております。
  42. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 会社更生法の対象になります会社そのものは、おそらく中小企業でない場合が多い。私の所管しておりますのは、いわば被害者、こういうことであります。したがいまして、そういう被害者意識を旺盛に持っておるという意味から私たちは勉強さしていただく。しかしそれとともに、おのおの会社を所管しております各省、各原局と密接に一緒に勉強していく必要があるだろうと思います。
  43. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間の関係がありますので、これからはまとめてひとつお伺いしますから、それぞれの御答弁をあとでお伺いしたいと思います。  大臣、これは昭和四十二年の税務統計速報で調べたわけであります。四十二年の法人税額は一兆一千七百四十億円、そのうち資本金五千万円以下、すなわち中小企業が四千億円法人税の税金を払っておる。さらに個人企業の所得税の納税額を加えると、中小零細企業が約一兆円の税金を納めた、こう見ているわけなんですが、それに対して、少しずつは増加をしておりますが、中小企業対策という点でまことにお粗末である。ことしも全体予算からいえば〇・六%ぐらいじゃないですか。〇・六%ぐらいでしょう。これは税金を納めておるからそれだけ返せというわけじゃないですが、税金の見返りという点から見まして、どうも中小企業は不遇なところに置かれているような気がするのです。したがって、中小企業の対策費はわずかずつではなしに、もっと飛躍的に、けた違いにふやす必要がある、こう思いますが、その点が一点。  それから、これは自治省来ていると思うのですが、むしろ自治省にお伺いすることになろうと思いますが、関連をして中小企業庁のほうも考えてもらいたいと思うのですが、私は、いわゆる中小企業とか小規模企業とか零細企業とかいわれておりますが、これを二つに分けることができると思うのです。というのは、企業性の強いもの、企業性のあるものと、企業性のないもの。企業性のないものというのはどんなものかといえば、家族だけで何かやっているというもの、あるいは若干名の従業員とおやじさんが一緒になってやっておる。真黒になって朝早くから夜おそくまでやっているという企業といいますか、があると思うのです。企業性のあるのは、おやじが一週間や十日休んだって私は動くと思うのです。これは組織的に動くようになっておると思うのです。ところが、後者のほうは、おやじが三日も休めばこれは事業として成り立たない。俗にこれを生業とかあるいはなりわいの道とか、こういうことが言、えると思います。町のかじ屋とか、とうふ屋とかいうものだと思うのです。こういうのに対しては、私は勤労性企業ということばを使っているわけです。事業ということばを使わない。そこで、こういうものにつきましては、事業とみるべきでない、勤労なんだ。したがって事業税は課すべきでない。こういう法律的にいうなら小規模事業、私の観念でいうなら勤労性企業、これは事業税を課すべきではない。企業であって事業ではない、こういうふうに考えておるのですが、それらの点について、これは地方税でありますので自治省、それから政策的な面からいって通産省ないし中小企業庁にお伺いいたします。  さらにもう一点。これは最後でありますが、これは総括質問のときにも若干触れたんですが、中小企業の倒産の一つの原因に人手不足というものがある。労務倒産というものがある。いま若い労働力を手に入れることはたいへんなんです。これを私は統制しようとかなんとか言っておるわけじゃないのですが、やはり中小企業に人手が定着するような方法、これは福利厚生、あるいは職場環境をよくしていく必要がある。それから不健全だと言えば語弊があるかもしれませんが、そのような第三次産業に往々に流れがちの人たちを、もっと第一次ないし第二次産業にとどまるような魅力ある政策が必要でなかろうか。これは何も通産省だけではできないので、労働省、厚生省もあると思いますが、その企業を指導するという、監督するという立場の通産省として、そういう点についてどうお考えになるか、この点を三つお伺いいたしまして、時間の都合でこれで終わりたいと思います。答弁のいかんによっては再質問いたします。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 中小企業予算と中小企業者の納めます税金のバランスの問題でございますが、農業のように資本の回転率が非常に鈍いというようなもので、どうしても財政が関与しないと企業として成り立たないというものと違いまして、商工業の場合は、田中さんの御理解いただけるように、農業とは違うと思うのでございまして、私どもはむしろ金融とか税制の面で、中小企業者が自分の事業を維持しあるいは発展させていく上においての便益を享受するのに支障がないような状態を政治がつくるべきじゃないか。それは直接に端的に一般会計に出た補助金というかっこうのものがいいのか、あるいは財政投融資みたいな本のがいいのか、それは個々の案件の性質によりまして考えるべきじゃないかと思うのでございまして、現在の予算財政投融資も決して満足すべきものではございませんけれども、しかし、非常に非薄なものであるというようにも考えていないのでございまして、問題は、与えられた予算をできるだけ有効に使っていかなければいかぬと考えておりますが、しかし、御指摘の他産業とのバランス、そういった点については私どももしょっちゅう注意をして、公正を失うことがないようにやってまいらなければいかぬと思います。  それから最後の流動性の問題、つまり勤労者が中小企業で定着性を保つという点、これは中小企業政策の最後のゴールじゃないかと思うのです。それを終始道標にしてすべての中小企業政策が組織され、組み立てられていかなければいかぬ。最後の、いつもわれわれを導く道標はそこになければいかぬと思うのでございまして、おやじさんがもうかるとかいうようなものではなくて、そこにおつとめになっておられる方々が未来に希望を持って、また毎日の生活が快適、清潔であるように、そういうことを道標にいたしまして、終始中小企業政策については反省を怠らないようにやっていかなければいかぬと思います。
  45. 森岡敞

    ○森岡説明員 お答えいたします。  個人事業税の問題でございますが、個人事業税につきましては、税制上負担の軽減、合理化ということを考えてまいらなければならぬと常々思っておるわけでございます。現在の課税の方法は、御承知のように事業の所得を課税標準にして税額を計算いたしておりますので、私どもといたしましては、御案内の事業主控除あるいは専従者控除というふうな制度を設け、その検討なり改善を通じまして負担の軽減をはかっていく、こういうことで進めております。お話しの小規模企業あるいは勤労性事業と申しますか、そういう事業について考えました場合にも、やはり事業主の控除なり専従者の給与をどう見るかというふうな問題として処理していくのが税制上筋ではないだろうかと考えております。御承知のように、来年は私ども地方税制を改正いたしまして、完全給与制の実施なり青色申告者の専従者控除の大幅な引き上げをやるということで、小規模事業者の負担は大幅に緩和される、こういうように考えておるわけであります。
  46. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 大臣のお話で尽きておると思うのでありますけれども、事務当局といたしまして、中小企業予算でありますが、これにつきましては私はこう思うのであります。すなわち、これは当然国民の税金でございますので、中小企業者の頭数はたくさんございましょうとも、中小企業が国民経済にいかなる貢献をするかというところをまず第一に当然考えなければいけないわけでございますので、その予算費目が中小企業をどう強化し、それがどういうふうに国民経済強化するかということのいい知恵が出れば、中小企業予算はふえると思います。申すまでもなく、たとえば中小企業振興事業団の金もほとんど前年度の倍になりましたし、たとえば繊維の対策費等もほとんどゼロであったのが数十億ついたというようなことでございますので、その辺の知恵を出して、ほんとうに中小企業というものを日本経済の中の大事な構成要素に持ち上げるというのが私の責任であると思います。  それから中小企業に対する労務の定着問題、これは大臣の言われたとおりでございまして、それをめどに私たち勉強しております。
  47. 田中武夫

    田中(武)分科員 最後に要望。いま自治省から答弁がありましたが、私は疑問を持っております。そこで国務大臣としての大臣に要望しておきます。  いま私が申しましたような勤労性事業は、その所得の源泉は事業ではなくして勤労だと私は理解するわけです。したがって税金は勤労所得税でいいじゃないか、事業税は課すべきではない、これは私の信念であります。ひとつ閣議等でも十分考えていただきたい。これだけを要望いたしておきまして、終わります。
  48. 植木庚子郎

    植木主査 次は高田富之君。
  49. 高田富之

    高田分科員 ただいま田中君から中小企業の倒産の問題が出されたわけでございます。実は私もこの問題に触れたいと思ったのでありますが、大臣の御答弁からいたしまして、たくさん倒れることも問題だがふえるほうも見てくれ、非常な繁殖力がある、成長力があるというようなお話でございますが、私はむしろそこに問題があるのじゃないかと思います。農業でも同じことなんです。農業で立っていけないものが年々ふえております。それにもかかわらず農家戸数が減りませんね。そして農業だか農業でないのかわからぬような兼業農家がますますふえていく。あれに似たような現象でございまして、特にわが国の中小企業は、数におきましては、構成の割合からいったら先進国に例がないほど多いのでございますが、その末端の部分というのは非常に不安定なものでございまして、最後に田中君からお話しになったような労働者であるのか企業者であるのかわからぬというような底辺の数は非常に多いわけでございます。これがある程度安定的にやっておる間は経済社会状態が安定性があるのでしょうけれども、いまのように激動期になりますといよいよ不安定性を増してまいりまして、倒産する者は、この統計は一千万円以上の負債だが、これに載らない部分におきましては非常な数にのぼる。しかもまた、つぶれたあと別の者が同じようなことをまた始めてくる、そしてまたつぶれていくという、これがますます激しくなっている。ここに大きなわが国の社会問題があるのではないか。最終的には、やはり比重としては農民人口も中小企業の人口も減るのが当然だし、産業経済の高度化に伴って当然減っていくべきだと思う。しかしそれが減っていくのに、秩序ある減らし方、摩擦の少ない減らし方、犠牲の少ない減らし方をどうやっていくかということが農業政策であり、中小企業政策であり、構造政策ではないかと思うのですね。その点いま非常に欠けておって、現実の激動のほうが激しいものですから、その手当てがとても追いつかないというのがいまの状況ではないかと思うのです。  私、実はもうちょっとこまかく知りたいのですが、倒産件数で申しますと、これは通産省でいただいた資料なんですが、三十八年から四十三年までの六年間を見ますと、これはやはり負債一千万円以上のところですけれども、千七百三十八件から逐年ふえてきて一万七百七十六でしょう。六年間にこんなにふえちゃったわけですね。ふえ方もかなり異常なんですけれども、ものすごい勢いで、千七百三十八件から一万七百七十六件に六年間に逐年ふえてきておるわけでございます。その中の中身をちょっとそちらでおわかりでしたら質問の前に御発表いただきたいと思うのですけれども、この倒産のうち製造業がこの一万余件のうち三千五百九件となっておりまして、その中で一番多いのは繊維工業及び繊維製品、製造業の中では繊維関係が一番多くて、四十三年六百十件、こうなっております。商業で倒産した数が、数については非常に圧倒的に多いわけです。四千百八十四件、こうなっております。この四千百八十四件のうち業種別がもしわかれば、私は工業で繊維及び繊維製品が非常に多いですから、商業のほうでも衣料品関係、繊維関係が多いんじゃないだろうかと思いますので、四千百八十四という商業のうち、繊維関係がもしおわかりでしたら御発表いただきたい。また、さらにその四千百八十四のうちの卸と小売り別がわかりましたらちょっとお示しいただきたいのです。ですから、衣料品関係の卸、衣料品繊維関係の小売りというふうにわかればなおさらけっこうなんですが、おわかりでしたらすぐに御発表いただくし、おわかりでなければ後刻資料をいただく、どちらでもいいですが、いまおわかりですか。
  50. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 いま先生指摘の内訳、正式な数字を手元に持っておりませんので、後刻すぐ提出いたします。
  51. 高田富之

    高田分科員 私は特に繊維関係のことについてお聞きしたいと思います。工業方面ではここの数字にありますとおり一番多いわけでございますし、ちょっと新聞の記事で数字を見たのです。これも帝国興信所調査で、商業倒産の中で卸が非常に多く出ております。その中で繊維問屋が非常に多いんだというような記事を見たのですが、もし数字がそんなに間違いないとすれば、やはり流通部門におきましても繊維関係が非常に多い、卸、小売りを通じて非常に多いというふうに言、えるのじゃないかというふうに思うわけであります。ただいま、先ほどの御答弁の中にもありましたが、倒産はいろいろな原因がある。特に最近では単なる不況ではなくて構造的なものだというお話がございますが、最近は特に繊維界でこういうふうに倒産がふえた。また最近におきましては、昨年の景気動向等から見まして、手形の決済期が集中するこの三月ごろには繊維界にはさらに一そう深刻な倒産旋風がくるのじゃないか、いわゆる繊維三月危機説なんというのが流布されておるわけでありますが、こういうふうなことを考えますと、特に中小企業の中でも問題を非常にたくさんかかえておる当面重大な部門でありますので、このいわゆる繊維三月危機といわれる——おそらくこれは製造部門におきましてもあるいは流通段階におきましても共通に言えるのじゃないかと思いますが、それの状況をどのように判断されておるのでありますか。原因がどんなふうになっているか、その実情についての御認識をまず伺いたいと思います。
  52. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 手元にいま数字がございませんので、さっそく取り寄せますけれども、商業の中で繊維関係者すなわち繊維の御、小売りの倒産が相当多いということは事実でございます。この原因でございまするが、一般的な昨年の景気の、金融の引き締めというふうなことがもう一つの原因でございましたが、さらに加えまするのに繊維マーケットと申しますか、繊維品に対します消費が非常に大きく動いてきております。これは衣料が豊かになりまするとAの衣料からBの衣料に、AのカラーからBのカラーにというふうに非常に大きく動くわけでございまするので、この消費者の浮気と言ったらあまり適当ではございませんけれども、この需要の変動に応じ得ない問屋、小売り商が非常に大きな被害を——経営が立ち行かない、多数のストックをかかえて経営不振におちいる、こういうふうなことは確かに事実としてございます。  それから第二に、これは世上よくいわれていることでございまするけれども、暖冬でございまして、冬は御承知のとおり繊維の需要期でございますけれども、これの異変のために消費が急激に減少した面があるという点がいわれております。  第三に、繊維の流通段階はなかなか複雑にこまかく分かれておりますけれども、片一方には生産は大量になりましたし、また消費も大量になっておるわけでありまして、その大量な生産と消費を結ぶパイプも当然短絡化と申しますか単純化と申しますか、こういうところにだんだん追い詰められていくというか、そういうふうに進んでいくのは歴史の一つの流れである。歴史の流れからはみ出ている問屋さん方について、いろいろ経営上の問題が起きてきているというふうに感ずるわけでございます。  さらに先生指摘のように、製造段階におきまして、綿におきましても、合繊におきましても、必ずしも昨年中期以降はいい景気ではないということでございますので、この辺も流通段階に響いておって、繊維問屋が相当苦しくなっておる一つの原因をなしておるのでないかというふうに考えております。  なお、三月危機というふうなことをいわれておりますけれども、私は、危機と申すような様相に立ち至らないでいき得るのではないか。依然として消費は部分的には動きますけれども、全般といたしましては堅調でございますので、当然暖冬の影響もだんだんなくなってまいるでございましょうし、危機というふうな様相にはもちろんならないで三月の期は過ごし得るというふうに考えております。
  53. 高田富之

    高田分科員 お説のように無事に切り抜ければけっこうなんですが、いずれにしましても繊維業界は、いままで特に中小企業問題で一番むずかしい分野をなしております。したがいまして、ことしは各繊維とも不況であることは間違いないのですから、ここでいままで以上の倒産旋風が万一来るようなことがあれば、相当打撃が大きいのでございまして、十分ひとつ実態を精密に御検討願い、できるだけ早急にそれに対する措置をお考えおきいただきたいということを強く要望いたしておきたいと思うのであります。  そこで、私は先ほど乙竹さんのおっしゃるような、繊維界のいわゆる構造倒産問題ですが、これは第二次繊維加工部門、織物でありますとか各種の繊維製品、化学製品というような製造加工部門における中小企業のあり方というものが、いまの要請に沿わないようなおくれた形態だというようなことももちろん一つあろうと思います。  それから流通段階もそれに対応して非常におくれた形態です。繊維界というものは種々雑多でございまして、零細多数でありまして、幾つかの段階になっております。製造段階に見合って流通段階もきわめて複雑多岐かつ非常に膨大な業態になっているわけであります。こういうところに一つの大きな異変がいま起こりつつある、しかも非常にスピーディーに異変が起こりつつある。これがやっぱりあなたのおっしゃる構造倒産ではないかと思うのでありますが、この間、読売新聞社がアンケート調査をやった報告が載っておるのです。これは非常に最近の様子を端的に集計してありまして、興味深いのでございますが、いま小売り商の大型化というものが非常なスピードで進んでおる。これが五年後ぐらいになりますと、いまのスピードで予想されるものはたいへんなものであって、まるで様相が一変してしまうということが、アンケート調査で各小売り商の五年後に対する設備拡張とか業態の改善に対する見込みを全部とって、これに基づいて集計しておりますので、非常におもしろい集計になっておって参考になるわけであります。これによりますと、本年度年収五十億円以上と予想されます小売り商が百十二社、これはトップクラスでございます。それの合計売り上げ高は五兆九千八百億、約六兆円でございます。小売りの全体の総売り上げが現在二十二兆九千億円ですから約二十三兆、そうしますと四分の一近い。パーセントを現在この百十二社ですでに占めているのですが、これが五年後には、それらの拡張予定等をアンケートによって調べてこれを集計してまいりますと、さらにずっとシェアが大きくなってまいりまして三分の一ぐらいになる。品物によりましては、特に消費頻度の高い商品については、ビッグストアーの占拠率が四十四年現在ですでに五割をこえている。これが四十八年になると、場合によっては八割ぐらいになるのではないか。年収二億以上というようなところで区切ってみると、全部の企業数の大体〇・一%、千分の一です。二億円以上というと、これでもって九割ぐらい占める見込みだ。〇・一%の企業で売り上げ総額の九割ぐらいを占めるだろうというのです。さっき申しました百十二社ということになりますと〇・〇一%、全体が百三十七万店でございますから、企業のうちの百二十、〇・〇一、一万分の一でしょう。こういうような勢いで、しかも現在の動きがものすごいですね。大きなメーカーや大きな商社、問屋を中心にして小売り業界の再編成が猛烈な勢いで、どんどん競争で始まりますと、たちどころに一つの流れができてきて、いままで比較的平穏であった小売り業界に一大波乱を起こすのではないか。実際、感じといたしましても、私の住んでいる埼玉県の深谷市、人口五、六万の中堅都市でしょうが、いままで大規模の小売り商なんてなかった。そういうところへ昨年あたりから急速に進出が始まっております。私の住んでおりますところが深谷、その次は熊谷、東京から離れたこういう都市に対しても、丸井でありますとか、その他のかなり大型の小売り商が続々進出してまいりますと、一カ月か二カ月という間に大旋風を起こすわけです。そして宣伝の方法といい、顧客の誘引の方法といい、目玉商品の販売のやり方といい、これはいまだかつてその地方の消費者が体験したことのない方法で進出してまいりますので、一挙に同業者をなぎ倒すといっても過言ではないくらいであります。これは一カ月ぐらいの間に倒産した食料品店もありますし、また売り上げが二割、三割激減したという日用品店もございますし、このままでいけば、かなりの数の食料品——食料品が一番大きいと思いますが、食料品並びに洋品雑貨類、こういうものは立ち行かないのじゃないかというふうな雰囲気が出てしまうのです。こういうふうなことがこれから先数年の間猛烈に、大都市はもとより中小都市にまで及んでまいりますならば、ここに書いてありますように、ほんとうに少数の独占的な大型小売り商業というものが九割ぐらいのシェアを占めてしまうのじゃないかということが考えられます。その場合、さっきの大臣のお話じゃないですが、いわゆるなりわい的な、家族だけでやっているというようなものは、比較的、やる人はかわっても存続していく、数において減ったりふえたりというようなことだろうと思うのですが、中堅がこれはやられちゃうのじゃないかというのが専門家の一致した見方なんです。中堅商店が立ち行かなくて、それこそ本格的に倒産してしまうだろうということが指摘されておりまして、これはかなり重大な、差し迫った問題だと私は思います。かつて、こういうことを予見いたしまして、スーパーを規制すべきじゃないか、百貨店には法律があるわけなんですが、何かそういったようなもので、ある程度規制しなかったらたいへんなことになるだろうという世論もあったわけでございますね。もちろん、しかしそればかりが対策じゃなくて、そのほかにいろいろな対策を急遽講ずる必要があると思うのです。いまの、たとえばスーパーの進出に対してただ拱手傍観しているということはたいへんだと思うのですが、これに対してどういうことを対策としてお考えでございますか。
  54. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生指摘のとおり、流通段階、特に繊維の段階は、いわば近代化が日本では一番おくれておった部分だと思います。これはいろいろな理由があったのだと思いますけれども、まず昔のことを考えますと、商圏と申しますか、商売をする範囲が狭かった。これは地域的にも狭かったし、品種的にも非常にこまかく分かれておった、これが一つ。それから第二に、問屋さん、商店の金融力が弱かったから、大きな商売はなかなかできなかった。市中金融も、問屋、小売り商に対して良質な金を大量に流すということはしなかったというふうなことが第二。それからまた第三に、繊維の特性といたしまして、卸とそれからメーカーとが非常に密接に結びついておりまして、糸が布になって問屋に入り、問屋がそれを染めに出して、それからまた問屋に返ってまた縫製屋に出すというふうなことで、メーカーと卸が非常に密接に結びついておる。こういうふうな事情もあったと思いますけれども、先生指摘のように、いま申し上げましたことは、いずれもこれは大きな革命と申しますか、変わりつつあると思います。商圏はもうどんどん地域的にも大きくなっておりまするし、それから需要のほうはだんだん洋風化しておりますから、需要も単純化してきておる。それから金融力でございますが、これは市中金融が余力がだんだん出てまいっておりますから、流通金融に金をどんどん大量に流すということになってきております。そんなことで、また一面消費者のほうは極度に安いものを手に入れたい、大量消費の反面、安いものを手に入れたい。さっき申しましたように生産のほうは大量生産ということになっていますから、どうしてもその中間の流通段階というものは、いわば太くなってくるということはやむを得ないというか、歴史の合理的な流れだというふうに私は考えざるを得ないし、このことはまた、いま政府が持っております一番大きな物価問題を考えます場合においても、非常に大事な問題だと思うわけであります。しかしこの革命があまり急速に進みますと、先生指摘のように、百数十万の小売り屋さんから数十万の卸屋さんがたいへんなことになるわけでございますので、できるだけスムーズにこの近代化というものを進めていく必要があるというふうに思います。この流れをとめるということは、歴史の合理的な流れに反する、だから流れをとめることはできぬが、しかしスムーズに変革を行なわせていく必要があるというふうに思うわけであります。したがいまして、私たちはそういう方向でいまいろいろ対策を考えておるわけでありますが、百貨店に関しましてはこれは規制法がございますから、これを運用、活用していくことはできるのでありますけれども、スーパーにつきましてはございません。したがいまして、スーパーにつきましては、個々の事象につきましては地元の紛争というかっこうであらわれてくるわけでございますので、地元において小売り商の方々とそれから大型店、スーパー等の方々と、いわゆるこういう当事者のほかに、当事者だけでは話がつきませんので、これに商工会議所が一番適当だと思うのでございますが一枚加わってもらいまして、さらに府県、市町村それから私たち通産省、中小企業庁の者が加わりまして、協議体と申しますか懇談会と申しますか、これを各地につくってまいりたい。そこで地区的に紛争状態というものの妥結点を見出していって、そうしてこの変革が少しでもスムーズにだんだん行なわれていくようにということを考えておるわけであります。しかしそれだけではこれはもう受け身の政策でございまするので、小売り商、卸屋さんとしても極力いわば近代化、合理化をせねばいかぬということで、私たちといたしましてはボランタリーチェーンでございますとかあるいは卸商業団地でございますとか、あるいは商圏がいまだんだん、たとえば東京でございますと都市部から周辺部に移動しておりまするが、この商圏移動に関しまする情報の提供でございますとか、そういうことによりまして現在の卸、小売り屋さんが近代的なものに生まれ変わるということについて御助力をしたい、こういうふうな二つの方向で政策を進めておるわけでございます。
  55. 高田富之

    高田分科員 その政策がピッチが相当早まっていくのでないと、ただいま申しましたような大型商店の進出が非常に急でございますので、たいへんな摩擦を起こしておるし、犠牲も相当大きなものになり、一つの社会問題をなしておると思います。したがって、これはひとつ早急に、ただいま言われましたような政策に力を入れて、ピッチを早めていただくということが大事だと思いますので、この点もひとつ強く御要請を申し上げておきます。  いま物価問題の見地からというお話があったのですが、私はいつもちょっとひっかかるのですけれども、ものによっては物価問題の見地から流通機構が単純化しているものもあるわけであります。しかし中には必ずしもそうでないものもあるだろうと思う。と申しますのは、最近いろいろあるのですが、薬品だとか洗剤だとか、ああいったような単純化された大企業生産部門におきましても寡占状態がかなり出ておる。特に再販指定なんか末端でやっておりますような品物につきましては、逆に零細な小売り業者がやっているときは値段で競争しますからいいのですけれども、ああいうふうに直販体制がどんどん強化されてくる、販売会社を全国につくって、そのもとに優良店を全部専門化して自分のところに系列化する、すぐってしまうわけですね。そうすると個々の値段は下げませんから、結局リベートかなにか取って、そこだけはいいかもしれませんが、他の小売り業者が犠牲になる、消費者が犠牲になる、そういう形の流通機構の整備が大企業の主導下に行なわれていること、これはひとつ厳格に区別してお考えを願わないとたいへんなことになると思うのです。  それで次に、こういう小売り業界の変革が当然のことながら繊維界の、特に卸段階にも最近は非常に大きな変動が起こってまいりまして、つい最近非常なセンセーションを起こしました三菱商事と西友ストアの提携の問題でありますとか、あるいはこの西友ストアに対しましては丸紅、三井物産、伊藤忠というようなところもそれぞれ連係を強化いたしまして、一つのブロック体制をつくっておるわけであります。言いかえれば、大型の小売り店のチェーンストアに対しまして、大型商社がこれと完全にタイアップしてくるというような動き、同様のことが東洋棉花とダイエー、このダイエーは今日では最大のスーパーチェーンになっておるわけでありますが、東洋棉花、ダイエーあるいは蝶理が帝人や旭化成の原料部門と提携しつつ、小売り部門では全購連と提携していくというような動きも出ている。こういうふうな非常に大型の商社が大型な小売り組織と直結いたしまして、いままでの卸段階を大きく編成がえしつつある。これがまたいまたいへんな刺激を与えておるわけでございまして、これも何らかの策を早期に打たなければ、わが国の繊維関係の卸段階は相当複雑多岐にわたっておりますだけに、摩擦は小売り段階に決して劣るものではない。これもたいへんな社会問題ともいうべきような摩擦状況を起こしつつある。今後もまたさらに一そう起こすだろうと思うのであります。そこで一体卸——いま繊維に限って申し上げておるのですが、衣料品関係の卸段階をどういう方向へ今後持っていこうというビジョン、政策、方針をお持ちでございますか。
  56. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 ただいま先生から御指摘のように、非常に目まぐるしく大きな変革期に当たっております。先ほど来、中小企業庁長官からお話しのありますように、この繊維の流通機構が著しく複雑である、従来からその実態についていろいろと調査をいたしておりますけれども、なかなかその実態がつかめない。そこで四十四年度の予算で千五百万円を計上いたしまして、予算がお認めいただけますならば、この流通部門について基本的な調査を行ないまして、それから得られる結果をよく検討いたしまして、必要な処置あるいは方向づけをしてまいりたい。一般的に申し上げられますことは、このような急激な変化が中小企業の方々に大きな影響を与えないように何とかその間の過渡的な措置を考慮していきたい。ただいまは具体的にどういうことをするかという点は申し上げられませんが、基本的にそういう考え方でおります。
  57. 高田富之

    高田分科員 大臣にお伺いしますが、いままでお聞きのとおり、非常にここのところ急速なんです。いままでよりもピッチを早めた流通段階の変革が行なわれつつあります。これにつきましては、昨年通産省で、俗称流通五カ年計画というのですが、流通合理化、近代化ということにつきましての考え方を発表されておるわけです。非常に期待はされておるわけなんですけれども、事態が非常に急速に進んでおるので、単なる青写真では追いつかないのでありまして、この小売り段階におけるいまのような編成がえ、卸段階におけるいまの編成がえ、これに対して適切な処置を講じなければ、さっき申しましたようなスムーズな転換とかスムーズな業界の高度化ということはとてもできない、たいへんな摩擦を起こし、倒産ももちろん起こるでしょうし、一種の社会問題みたいな紛争を起こす。ですから、これはかなり重大視していただいて、いまのようなばく然としたことじゃなしに、的確な具体策を早期にとっていただきたいと思うのです。いかがでしょう、大臣
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりだと思います。ただ、業界内部の内在的な理由からいたしましても、人手がだんだん不足してまいりますから、在来の経営態度、規模、手法、そういったものでなかなかやり切れないという内在的な理由もありますから、それを十分くみ上げながら、いま申し上げておるような方向に政策的な誘導を、おっしゃったように精力的に行なわなければならぬものと心得ます。
  59. 高田富之

    高田分科員 そこで、非常に重要な段階にありまして、繊維関係の中小の卸売り業が存廃の危機に立っているというような状況になっておるのですが、そういうときにお互いに協力し、相談をし、知恵をしぼり合いながらある程度自主的にその新しい情勢に対応して立ち上がっていくというふうな体制をつくらせ、同時にこれを政治的に指導、助成する、こういう体制が必要だと思うのです。現在あります。これは具体的な例を申し上げるのですが、東京の織物関係の商業組合、卸でございますが、その構成を見てみますと、五百五十五店がこれに参加しておるのです。ところがこの五百五十五店は、全部中小企業ではないのでありまして、きわめて大規模のものも包含されております。日本における第一級の企業もみな入っておる。総合商社の繊維部門がこれにみんな加盟しておりまして、伊藤忠、伊藤萬、兼松、三共、蝶理、田村駒、帝人、東棉、日綿、丸紅飯田というようなところがこの五百五十五の中に入っております。この総合商社十社を含めます大規模の卸商が二十一社ございますが、二十一社ですから全体の三・九%を占めておるわけでございますが、との二十一社でもって売り上げ高の四四・八%を占めておるわけであります。したがって、この総合商社十社を含む大企業が、わずか二十一社で半分の販売高を持っておる。これが同じ組合員になっておるという組織になっておるわけであります。そこで、これは中小企業団体法に基づいてできておるのでありますから、趣旨は中小企業の立場を改善するための団体のわけなんですけれども、こういう構成ではなかなか運営はむずかしいわけでございまして、組合としては鋭意努力はしておるのでしょうけれども、これではいまのような激動期に存廃を問われておる中小の問題の立場に立った再編成計画を立てて遂行するなんて力はここからはわき出さないわけでございます。昔の非常に安泰な時代の同業組合のようなものでございまして、一種の社交といっては言い過ぎなんですが、比較的当たりさわりのない全業界共通の利害に関することだけを処理するということにとどまらざるを得ないと思うのです、こういう構成では。そのためにしばしば実は内面的に問題を起こしておるわけでございまして、役員の選挙のときなどは、大企業による一種の買収に似たような不在投票でありますとか委任状集めとかいろいろなことが行なわれたりいたしまして、なかなかそういう面では公正に運営することがむずかしい。またいろんな不公正取引やなんかについて調整規定がありましても、これを的確に摘発し、きびしく扱うなんてことはなかなかやりにくいという面がございます。そういうのを考えますと、いわゆる中小企業という概念が——私はこれはひとつお考え願いたいのですが、全般に共通する中小企業ということで、資本金一千万円、従業員五十人とかいうふうな線で切っておりました時期といまとでは情勢が違うのじゃないかと思うのですね。もっときめこまかく、業態によりまして、製造業、卸、小売り、またその中の品目別などこまかく検討いたしまして、その中における少数の大企業がぐんぐんのしていく時代、金融力なども全部そこが独占してしまうというような時代でございますので、これに対応した組織づくりをさせるためには、この中小企業団体法の組織原理にも少し考え方を新しくしてもらわなければならぬだろうと私は思います。中小企業の定義、範囲のきめ方ももっときめこまかくしなければならぬではないか。具体的に申しますと、いまこの組合を見た場合で申しますと、いま申しましたように五百五十五のうち、いまの基準でいきますと、二割近くが大企業——三割くらいですか、が大企業ということでしょうけれども、そういう基準では実際的でない。五十人以下というのでは実際的でないし、それにさっき申しましたような総合商社十社を含む二十一社が飛び離れておるわけですが、売り上げ高においても次のランクを大きく引き離しておるわけでございますので、これを一つの大企業と見、この二十一社以外のものは中小の企業と見て、それ以外のものがいかにしてその立場を近代化し、強化し、そして今後大型化していく、組織化されていく小売り段階とどう組織的に結びついていくか、また生産段階における構造改善とどう結合していくかということを考えなければならぬ。その立場にあるのは、その二十一社を除く大部分の企業だと思うのですね。ですから、こういうときに基準を上げる必要があるんじゃないか。これでいきますと、一社当たり平均が、いま言いました二十一社については三百六十人雇用しておるのでありますが、次のランクになりますと——いまの二十一社というのは、年商五十億円でございます。ですから、その五十億円以上というのはいまの二十一社で、五十億円未満のところ、そのすぐ次の三十億から五十億というランクになりますと、平均百二十人、がたっと落ちます。この売り上げの比率も、その次のランクが二十二社ありまして一二・三%ですが、その上のランクが四四・八%占めるのに対しまして、がたっと落ちるわけであります。ですから、そういうふうなところあたりでこれからは相当階層の分化が明確に出てくるというふうに考えられますので、対策の対象にすべき層というものを明確に位置づけて、これに対する適切な措置をとるには、やはりこれらの団体のあり方自体も考えなければならぬのじゃないか。そうしなければ、この中でただ行政指導などによって区別をして指導、推進するといいましても、なかなかむずかしいのではないかと思われるのですけれども、さしあたっては、こういう中での運営を中小企業の立場から合理化するための行政指導というものが、現在強く要請されておるのです。ですから、そのことは一つありますが、根本的に考えると、中小企業団体の組織原理そのものの再検討期になっておるのじゃないか、そういうことを考えざるを得ません。これらについての中小企業庁長官のお考えを承りたいと思います。
  60. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私のほうでも、いま先生指摘の具体例の組合について調べてみたところ、おおむね先生指摘のような数字であります。組合員は、もちろんこれは法の命ずるところによりまして、中小企業者が三分の二以上でありますし、また議決権も一人一票でありますので、もし中小企業者と大企業者の利害が非常に先鋭に対立しておれば、役員の数もそれを比例した構成になるはずであります。役員の数は、理事の定員が三十名でございますけれども、そのうち中小企業者は八名でありまして、二十名余が大企業者ということでありまして、これはどういうふうに考えますのか、ちょっと先生もおっしゃったようなことで、選挙等にいろいろなことが行なわれて、中小企業者の利益が正当に反映しないような役員構成を大企業者が意識的にもたらしておるのか、あるいはまた、大企業ではあるけれども、役員としての行動は中小企業者のためであるということで信望が厚いから、こういうふうな役員に選ばれているのか、その辺はよくわからぬわけであります。具体的な事業を調べてみたのでありますけれども、われわれのほうで調べたところによりますと、啓蒙、普及の仕事でございますとか、いろいろなマーケッティングの仕事であるとか、実態調査であるとか、大体メンバーである中小企業者のためにいま役立つことをやっておりますし、さらに調整事業は、不当廉売の防止とか、代位決済等もやっておりますが、どうも表向き調べたところによりますと、必ずしも中小企業者のためになっていない、と申しますか、大企業者の影響力が不当に強過ぎるというふうには考えないわけであります。ただ、先生指摘のようなこともございますので、われわれといたしましては、いろいろ監督規定もございますから、この組合のあり方については特に中小企業者の利益が守られますように監督をしてまいりたいと思います。なお、ただ御指摘のように、確かに現実の流通革命の時代にありまして、中小商業者としては団結して大企業者に対抗することの行動をとる必要が大いにありますし、そのための組織地盤としては商業組合制度が非常にかっこうでございますので、そういう新しい時代の要請にこたえます商業組合のあり方ということを勉強していかなければいけないと思っております。
  61. 高田富之

    高田分科員 時間が参りましたのでこれでやめますが、大臣お聞きのとおり非常に重大な段階なんで、特に三月危機なんかといわれておりますし、構造的変革期なので、特に実態をよく調査していただいて、そしてすみやかにこの危機を乗り切り得る近代的な体制を整備されるよう、強い援助と指導をお願いしたいと思います。大臣、最後にひとつ一言……。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり、非常な変革期でありますばかりでなく、いま御指摘の中小企業、とりわけ構造上問題を多く内在しております繊維産業、そういったものの構造的危機が叫ばれておるときでございまして、私どもとしては、業界自体、あるいはその団体の指導、またその体質の改善等につきまして、精力的に措置してまいる所存であります。
  63. 植木庚子郎

    植木主査 次は、川崎寛治君。
  64. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 私は、第二次世戦大戦の結果、鹿児島県の一部であります奄美大島が二十八年まで米軍の占領下にあったわけですが、そのために現在大島電力、つまり島民の生活に非常に関係の深い電力会社がいろいろ苦労しておるわけですけれども、なかなか九州電力との合併が元の状態になれずにおるわけですね。そこで、この問題は将来沖繩が返還をされました際にもまた出てくる問題でもあろうと私は思いますし、この大島電力の問題をひとつお尋ねしてみたいと思います。  まずお尋ねしたいことは、大島電力が九電から分離をされた経緯というものを明らかにしていただきたいと思います。
  65. 本田早苗

    ○本田政府委員 大島電力が分離された事情でございますが、昭和十八年に配電会社の統合がございまして、それが奄美大島群島の中に五つの事業者があったわけでございますが、これが九州電力に統合され、九州配電の名で大島営業所、徳之島、沖永良部島等に出張所が設置され、経営しておったのであります。ところが、それが戦後奄美大島が米軍の管理下に入ったわけでございますが、二十二年に米国政府がこれを接収して、経営を管理しておったわけでございます。二十八年に日本復帰に先立ちまして、二十七年の一月に、米民政府のほうから米軍管理下にあった九州配電の諸設備を現地人に引き渡して会社を設立してはどうかという勧告がございまして、当時一千五百万円の資本金で大島電力が現地人資本によって設立された、こういう事情になっておりまして、米軍管理に入ったときに離れまして、その後二十八年に現地人の資本で大島電力というものが創立、発足したという事情にございます。
  66. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうしますと、現地で設立されたのは二十八年ですね。そうすると、それまでは、管理は米軍のほうにとられたにしても、資本の形としては九電の一部であったわけですね。
  67. 本田早苗

    ○本田政府委員 二十二年に米軍がこれを接収しておりますので、接収した上で米軍が管理しておったのであります。
  68. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それじゃ旧電気事業法——私持っておらぬのでわからぬのですが、供給区域というのは通産大臣の許可事業ですから、供給区域というのは、十八年に合併をされたときに奄美大島を含むという、その点は明確になったわけですね。そしてそれが接収されて変わったとしたならば、そのときに供給区域の変更というのが通産大臣の許可を得ていなければならぬことになりますね、理屈の上から言うと。この辺はいかがですか。
  69. 本田早苗

    ○本田政府委員 いま御質問の点に直接に知識はございませんが、旧配電会社は、御承知のように電力の九分割という際に、九州電力として、二十五、六年だったと存じますが、そのころ新しい会社として発足したわけであります。したがって、その際の供給区域としては、米軍管理下にあった地域は供給区域からはずされておったのではないかというふうに思います。
  70. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 あまりここでどうだこうだというようなことは、きちっと詰めようとは思いません。ただしかし、いまだに九電に吸収できていないという点について、私はこれは政府側に責任があると思っているのです。といいますことは、分割をされた、米軍の管理に入ったというのは、これは国の統治行為の結果そうなったんですね。国の統治行為の結果がそういう事態になったわけですから、これは企業の責任で分離とかいうことじゃないわけです。だから、ここに一つ問題があるわけでしょう。そうすると、それが復帰してきたとしたならば、いまの電気事業法等の精神から見ても、いまのこの点をもう少し前の法律、それからいまの法律の受け方をずっと追っていきますと、国の責任というのはもっと明確でなくてはならない、私はこういう気持ちでおるのです。だから、そこを少し明確に詰めて、そして大島電力はとってほしいと言うほうですから、九州電力に対してはもっと強い国の指導責任があるのではないか、私はこういう立場に立つのです。  そこで、いまおっしゃられるように、ポツダム政令で旧電気事業法がたいへん制約を受けて、非常に強い支配を受けておる時期があるわけですね。だから、そこのところは一ぺん——ここで先ほど言いましたように詰めませんから、その点は明らかにしてもらいたい、これはあとでひとつ回答を願いたいと思います、法的にどういうようになって移っていったかということは。そうしますと、それをずっと受け継いできておるという精神からいくならば、いまの電気事業法の六条ないし八条というものからいっても、これはかつて九州電力の供給区域に入っておったということは明らかですね。まず、この点を明らかにしておきたいと思います。
  71. 本田早苗

    ○本田政府委員 先ほど申し上げましたように、ちょうどその間に九州配電が解散になりまして、九州電力が新しく発足した。その際に供給区域が許可書の中で明確にされたということからいきますと、当時のなんでまいりますと、奄美大島は入っておらなかったのではないかというふうに考える次第でありますが、これは後刻調べましてお答え申し上げたいと思います。
  72. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 つまりいまの九州電力に分割になるときに入っていなかった、こういうわけですか。
  73. 本田早苗

    ○本田政府委員 そのようにいま考える次第でございますが、これは後刻明確にしたいと思います。
  74. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 それではどうもそこら辺が法律なり証拠がありませんからきちっと詰まりませんが、そうすると、戦争中は供給区域であったことは間違いありませんね。
  75. 本田早苗

    ○本田政府委員 九州配電の供給区域でした。
  76. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 わかりました。としますならば、いずれにしてもそれは変化の中でそれぞれの手続なり変更なりというのはあるにしても、奄美大島が鹿児島県の一部でありながら、そしてかつては供給区域でありながら、それからはずれたということは、先ほど来言っておりますように、これは戦争の結果だということですね。そういたしますと、もとに戻させるということについては、やはり国の責任じゃないか。その点、大臣いかがでありますか。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 現実の問題といたしまして、いま御指摘の大島電力でございますか、そのほかに四つの公営電力の供給事業があるようでございます。でございますから、いま手順といたしましては、その四つを一ぺん大島電力に吸収いたしまして、した暁にこの大島電力というものと九電との関係をどのようにしていくか考えてみたらどうだというふうに私どもは大まかに考えておりますが、あなたがいま御指摘になったような段階におきましては、そのいろいろな経緯も十分吟味しなければなりませんし、九州電力の供給範囲に置く場合に解決しなければならぬ問題がいろいろ出てくるのではないかと思いますけれども、これは十分慎重に従来の経緯を検討させていただきまして、いずれにせよ、早晩広域運営の中に包摂していかなければならぬ問題だと考えております。
  78. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 その公営のほうは、戦後復帰をしてきてからつくっていったわけですね。それぞれの自治体の公営としてやってきたわけです。現在御承知のように、奄美大島の管内において電力料金の差というものは、中においてもたいへんアンバランスがあるわけですね。しかもまだ及んでいない地域もある、こういう実態にあるわけです。そこで地域差が非常に大きいわけであります。そこで現在の四公営を大島電力に合併をさした上で慎重にひとつやっていこう、こういういまの大臣の御答弁になりますと、大体前途遼遠じゃないかという感じがするわけですね。そうしますと、そこらは先ほどの供給区域その他の関係、あるいは国の行為による結果等を受けておる現地住民の打撃ですから、また企業としてもですね、そこで公営を大島電力に移させる道筋というのは、どういうふうに見ておるのか。次に、じゃそれを大島電力に合併をして、今度は九州電力にと、今度はそこをどういうふうに——計画としても何年くらいでそういう方向にもっていこうとしておられるのか、企業体との話し合い等はどういうふうになっているか、明らかにしてもらいたい。
  79. 本田早苗

    ○本田政府委員 先ほど御指摘もありましたように、大島電力は先ほど申し上げたような事情で二十八年に発足しております。四公営は二十九年から三十一年の間に四つ——三つの島と本島の一部で公営が発足しておるという事情になっておるわけです。その後、電力事情が、需要の増加に伴いまして、非常に不足するということから、電源増強というふうなことでいろいろ地元の要望も強く、本土からの調査あるいは鹿児島県の調査等がございまして、三十五年から開発銀行の融資がつくことになりまして、この四十三年までに約九億円の開銀融資がつけられて電源増強を助けたということになっております。それからいまもお話の四公営と大島電力との間の設備の水準が、やはり公営のほうの送電線、配電線等がかなり劣っておりましたり、電圧の維持の状態が異なるというようなことから、四公営の設備の増強が必要だということで、四十一年には辺地債が出されまして、四十二年以降には辺地債と国と県の補助金が出まして、本年度予算が成立をしまして支出されることになりますと、大体このような辺地債と国と県の補助金で二億七千万円の資本金が設備の改修のために出されることになります。当面は、この四十二年の補助金を支出する際に、大島電力に四公営をできるだけ早く吸収してほしいという要望が、自治省からも出たわけであります。これに対しまして、大島電力との間では順次一年一カ所くらいずつの程度で吸収を行なうようにいたしましょう。実情は四十三年の補助金で大和村が大体完了することになっておりますから、おそらく大和村の吸収が一番早かろうと思います。それからあと、四十五年以降に一年一カ所ずつということになりますと、これは島でございますので、順序等はまだきまっておりませんで、あるいは現地との間へ県等も入って順序をきめていくということになろうかと思います。そうしてその上で大島電力と九州電力の吸収合併についての時期を検討する、こういうことになろうと思いますが、いま大臣のお答えになったとおりでございます。
  80. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 そうすると、大体大島電力に吸収されるのはいつですか。四十五年に大和でしょう。そうすると、いつになるのですか。
  81. 本田早苗

    ○本田政府委員 おそらく四十四年から始まりますので、一年一カ所ずつできますと、四十七年度にできます。
  82. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 私は、ここで電力の料金の差は申し上げません、時間があれですから。しかし、たいへん開いているわけでしょう。そこへもってきて、ずっとこういう形で先へ延びていくわけですね。では、四十七年から具体的に九州電力が大島電力を吸収するという、その話し合いはございますか。
  83. 本田早苗

    ○本田政府委員 四十七年以降、直ちに大島電力との合併を進めるというところまでの了解にはなっておりませんが、四公営を吸収した段階で大島電力との合併について検討しよう、こういうことになります。
  84. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 じゃ、九州電力は、現在関連企業というか、そういう企業にどのくらい出資しておりますか。
  85. 本田早苗

    ○本田政府委員 いま手元にその資料を持っておりませんが……。
  86. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 しかし、なかなかできないんだという場合に、そういう企業の中の実態ということも分析してもらいたいと思いますし、特にこういう戦争の結果という一つ段階を経ているわけですから——たとえば九州の中でも、共同事業というようなもので九電にまだ合併されていないものもたくさんありますよ、僻地で。しかし、そういうものと性格が違うと思うのです。戦争の結果、国の行為とかいろいろなものが重なっているわけですからね。これが吸収合併については、国の責任はもっと重い、こう思うのです。だから、大体四十一年度の経常経営費を見ると、三十三億九千二百六十二万という出資が、九州電力からほかの企業に出資されているわけですね。これだけの関連企業に、その中には何とかパラダイス、たとえば博多パラダイスというレジャーセンターもあるのです。ホテルだとか、これは予算の総括の際にも、何べんかこの電力料金の関係等で問題もありました。しかし私は、こういう——それは関連企業に出している出資ということについては、企業自体の考え方があるでしょうし、いろいろあるでしょうが、しかし、開発銀行等から長期の投資もなされて、特に公益事業としての性格からするならば、私は、まずこういう大島電力との吸収合併、レジャー産業等に投資をする前に、こういうことが急がれねばならないのではないですか、大臣いかがでしょう。
  87. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘の点、まことにごもっともな点でございますが、われわれとしては、業務の監査にあたりまして、不適当な点は修正すべきであるということで言っております。御指摘出資につきましても、地域的な性格を持つ電力会社として、地域の企業の不振が地域に影響するという理由で肩がわり出資をしたという点については、ある程度理解できるとしても、適当でない性格がある。すみやかにこれは処分すべきであるということで指導いたしておる次第でございます。そのほか関連の企業につきましては、やはり変圧器その他の器具の修理工場とか、あるいは資材消耗品その他の燃料系統の調達のために、特に緊急時の調達を要するということから、関連企業への出資というものはある程度やむを得ないものだろうと考えるのでありますが、ただ大島電力を最も優先的にやるべきであるかどうかという点につきましては、九州電力の場合、最近御承知のように、石炭産業の電力需要が非常に減ってくるということとからみまして、他の地区と比較いたしまして電力需要の伸びが非常に小さい、そのため新鋭火力の導入がおくれがちになる、あるいは同じ水力をかなり持っておりながら、水力規模が他の地域よりも小さいために発電コストが高いというようなことで、九州電力自身が、料金問題としてはできるだけ合理化をはかって、他の地区にそろえるような効果をあげねばならないという事情が基本にある上に、先ほど御指摘のありましたように、離島あるいは未点燈の僻村等をかかえておって、本島内においてもすみやかに対策を要するというような事情が重なっておりますので、それらとの調整も考えながら、大島電力について合併の時期をできるだけ早く結論を出すように指導してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  88. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 九州管内というのは、確かに、おっしゃられるように、本土の中国だとか近畿だとかと比較しますと、たいへん経済条件が違うわけですね。そうしますと、やはりここで電気事業としても、九電気事業においても料金の格差というのがたいへんあるわけですね。そしていま御指摘のように、地域の開発という問題を考えてまいりますと、今日の公益事業である電力事業が分割されているということに非常な矛盾もあるんじゃないか。だから、これはやはりまた一社化すべきだ、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  89. 大平正芳

    大平国務大臣 それは大問題です。せっかく九電力に分割されて、そのあと電源開発促進の意味で電源開発公社ができまして、いま十社体制というもので一応安定供給が確保をされておるわけでございまするから、私といたしましては、この体制で鋭意能率をあげて、公益事業としての責任にこたえていくべきであるし、またいけるんじゃないのか、そう考えております。  それから九電の大島電力の問題は、あなたが仰せのような経緯がいろいろあるわけでございまして、それも私どもは電力会社を指導する場合の気持ちとして当然心得ておらなければいかぬことでございまして、順序を踏みまして九電の指導には当たっていくつもりでございます。
  90. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 電力一社化の問題については、きょうは大島電力の問題があれですから、非常に次元がまた変わりましたけれども、これはあらためていろいろ検討もしたいと私は思うのですね。  そこで、大島電力については、いま大臣からおっしゃられたように、ただ企業のほうのスケジュールだけでなくて、いろいろ監査等のお話もございましたが、そこらを整理をして、しかも私はこれは国のほうにも責任がある問題だと思いますから、大臣のおっしゃられるように、早急に進めてもらいたい。それは公営を引き取ると同時に、公営と大島電力との合併と同時に、次のスケジュールについては、してからということではなくて、早くその計画に入れるように指導してもらいたい、こういうふうに思います。  それから、時間があとわずかでありますが、沖繩の現在の電力の事情というのは、御承知のように、アメリカが完全に管理をしておるわけですね。しかし、このことから、沖繩の県民経済にとってはたいへん大きな制約を受けておるわけです。基幹産業を握られておるわけですから、制約を受けておる。あるいは油脂等の他の米軍管理の事業等についても、油脂等からあがってくる剰余金の使い方にしても、そのときそのときの気分で金の使い方を方を変えていくというやり方が、弁務官資金としてもやられているわけです。こういう点について考えますと、施政権の返還ということについては、いまの佐藤内閣のスケジュールからすれば、ある程度の時間がかかるように見られますね。その間でも、電力とか水道とか油脂とか、こういうものについては、現地で非常に強い要望がありますように、琉球政府の管理に移させるべきだ。そのためには、日本政府がどれだけ金を出せば買い取れるのか、その辺ひとつ、もう時間が非常に限られておりますから、大ざっぱになるでしょうけれども、明らかにしてもらいたいと思います。
  91. 本田早苗

    ○本田政府委員 沖繩は、御指摘のように民政府の付属機関である電力公社がほとんどの発電設備を握っておるわけでございまして、配電関係は民間でやっておるという事態が、本土のやり方とは違ったやり方になっております。そのほか、電力需要構成が五〇数%が米軍需要であって、四〇数%が沖繩島民の需要であるというようなこと、特に電灯需要が非常に高いというようなこと、あるいは宮古島、八重山等の島においては、やはり先ほど御指摘の大島電力に類するような非常な小規模発電が行なわれておって、料金差が非常に大きいというような点がいろいろございますので、それらの実情をよく把握いたしまして検討いたしたいと存じますが、いま幾らで買えるかということにつきましては、沖繩の電灯料金あるいは総合料金が本土と比べて必ずしも高くないという情勢にあるわけであります。ということは、あの規模の発電であの程度で売るということにつきましては、収支としては、あるいは設備費等が初めから落としてあるのかもわかりません。したがいまして、これが幾らで買えるかということになりますと、ちょっとわれわれのほうで見当がつかないという状態でございます。
  92. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 最後に一問。そうしますと、大臣、この企業については、施政権の返還がきまらぬ限りは具体的に内容等については話し合えない。つまりいま局長からお話しのように、中がわからぬのだということですが、そうしますと、施政権が具体的に返還されない間は、水なり電力なりというものは、基地の自由使用というものの最も物的な基礎として重視しておる。だから、基地の態様等にもからむ。こうなれば、施政権の返還までは具体的にこれに入れないという考え方なのか、あるいは県民生活というものを重視するならば、施政権返還の前であっても具体的に詰め得ると日本政府は考えておるのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 いまたいへん沖繩に対しましては経済援助を日米協力としてやっておりまして、電力事業につきましては、技術援助はいたしておりますけれども、資金的な援助はないようでございます、お尋ねの問題につきましては、施政権が先方にある間は、いま局長申しましたように、実情の把握、推移を十分掌握して勉強しておかなければいかぬことは道でございます。返還にあたってあわてないように、用意だけはいたしておかなければいかぬと思います。
  94. 川崎寛治

    川崎(寛)分科員 終わります。
  95. 植木庚子郎

    植木主査 次は、中谷鉄也君。
  96. 中谷鉄也

    中谷分科員 和歌山北港という港の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、最初に、質問の順序として大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、企業合理化促進法という法律ができてからすでに十七年になります。そこで、現在の経済発展その他との対応関係において、この法律についても検討すべき時期に来ているのではないか。特に公共性という問題については、全体の地域開発、産業発展の中において考えらるべきではなかろうか、こういうような点をひとつ大臣の御所見を承りたい。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 実はその問題につきましては、私は深く検討していないで恐縮でございますが、いま私ども用意いたしました態度といたしましては、わが国産業合理化、近代化をはかりまして、産業の効率化、国際化に対処いたしますためには、生産施設等の合理化、近代化をはかってまいらなければなりません。それが経済発展の基盤である道路、港湾等の産業関連施設の整備を促進するためにも必要であると考えますので、この法律の効用については、依然として必要である、そう考えております。
  98. 中谷鉄也

    中谷分科員 企業合理化促進法に基づく産業関連施設の整備については、公共性ということが、当面非常に重視され、配慮されぬばならないのではなかろうかという点について論議を進めたいと思っておりましたが、そのような一つの私の考え方を前提にしまして、ひとつ港湾局のほうにお尋ねをいたします。  実は和歌山北港という港があります。これは昭和三十四年に五億以上のお金を和歌山県下も出して、そうしてつくった港です。ところが、現在全く住友金属という会社の専用港になってしまっている。公共岸壁もなければ公共道路もない。はたしてそんなことでいいのだろうかということが、和歌山県の県民の中からたいへんな疑問として出てきている。これは法としては企業合理化促進法との関連において問題になってくると思う。  そこでお尋ねいたしたいが、運輸省にお尋ねいたしたいのは、港ができてすでに十年以上、公共岸壁もないし、公共道路もない、ただ一つの企業だけが、その港を利用している、こういうようなことをやっているこの責任は一体だれにあるのか、どういうことにその原因があるのか、この点について率直にお答えいただきたい。
  99. 宮崎茂一

    ○宮崎(茂)政府委員 お答えいたします。  和歌山北港と申しますのは、お話しのように住友金属が立地いたしておりますが、昭和三十四年から本港につきまして事業をいたしております。過去十カ年間に国費を五億程度投入いたしております。御承知のように、住友金属だけではないか、どこに公共性があるのか、こういうようなお話でございます。その北港の岸壁につきましては、これは全部住友金属の施設でございます。したがいまして、これは公共じゃないわけでございますが、港全体と申しますか、港といたしましては、これは和歌山県が港湾管理者になっておるわけでございまして、したがいまして、住友の専用港ということではないわけでございます。その航路でございますとか、あるいは泊地、防波堤、こういったようなものは住友の関係の荷物を持ってくるでしょうけれども、そこへ入りますところの船舶は、これは住友の所有の船舶じゃないわけでございます。不特定多数の船舶が利用する公共施設である。また、避難船とか官庁船とか、そういったものが入ることを決して拒んでおるわけでも何でもないわけでございます。また、この企業合理化促進法に関連いたしまして、特定港湾施設整備特別措置法というようなものがございますが、これには、この法律の目的といたしまして、「輸出貿易の伸張及び工業生産の拡大に対応して、重要な港湾施設を緊急に整備することにより、経済基盤の強化に資することを目的とする。」というふうになっておりまして、私どもこの法律で定められた目的に従いまして、それに定められた政令におきまして、和歌山北港の航路と防波堤というものは、明確に政令別表で指定されているわけでございまして、そのような観点から工事を進めているわけでございます。もちろん住友も負担を相当負っております。
  100. 中谷鉄也

    中谷分科員 私の質問は、いつも要領がいいはずなんです。短いですから、御答弁のほうも、ひとつ簡単に的確にお願いをいたします。  質問はこうなんです。要するに、公共岸壁の整備がおくれている理由は一体何なのか。また、公共岸壁の建設が予定されているということであるけれども、一体これはいつごろ公共岸壁の建設をなさるのであるか。重ねて申し上げますけれども、昭和三十四年以来、今日まで公共道路もつかなければ、また公共岸壁もないということについて不満を持っておる。その責任は、一体県なのか、国なのか、お答えをいただきたい。
  101. 宮崎茂一

    ○宮崎(茂)政府委員 この港湾の基本法でございますところの港湾法というのがございます。これは港湾の開発、発展の責任者をきめた法律でございます。これには港湾の開発、発展の責任者は港湾管理者であると明記してございます。したがいまして、私どもは、港湾の管理者の計画、これを審議し、港湾の管理者から出てまいりますところの予算要求というものに対しまして、国の補助をするとかしないとかいうことをやるわけでございまして、お話によりますれば、港湾管理者の責任である、こういうふうに考えます。
  102. 中谷鉄也

    中谷分科員 そうすると、かねて、ここ十年ぐらいになりますけれども、港湾管理者、すなわち県のほうから、公共岸壁等についこの国に対する交渉はなかったということになるわけですか。
  103. 宮崎茂一

    ○宮崎(茂)政府委員 過去十年間の交渉について私存じませんが、三十九年五月に改定されました計画会議におきましては、これは運輸大臣が県の港湾管理者に対しまして計画を提出させるわけでございますが、これにおきましては、その中に二バースの十メートル岸壁と道路、いまのお金にいたしますと十億から十五億程度だと思いますが、これが計上されております。最近では、来年度の予算ではそれの要求はないというふうに私は考えております。
  104. 中谷鉄也

    中谷分科員 次に、通産省の公害立地の関係の方にお尋ねをいたします。  海南市の関西電力の火力発電所、私何回かこの火力発電所の問題についてはお尋ねをいたしましたが、今度、三、四号機が新設されるということになっております。ところが地元住民は四十五万キロワットだということで、あらゆる公害対策等についての準備と心がまえをしてきた。ところが、新設される三、四号機は六十万キロワットだということである。すなわち一ないし四号機全体として百八十万キロワットではなしに、二百十万キロワットになった。こういう経緯について、きわめて簡単でけっこうですから、変更されたと地元住民は受け取っておるが、その理由についてお答えをいただきたい。  それから、第二点の質問を続けます。第二点は、四十五万キロワットの火力発電機については、煙突の高さ百八十メートルということですでに地元との間の了解がついた、しかし、公害防止という観点から言うならば、六十万キロワットということであるならば、百八十メートルという従来の煙突の高さではたして公害防止が可能かどうか。このことを地元住民は非常に不安に思っている。  いま一点、燃料消費量は、当然、三、四号機の四十五万キロワットから六十万キロワットによってふえてくるだろう。そうすると、今後の燃料をどのような成分を含んだところの重油を使うかということについても、住民はきわめて関心を持っている。聞くところによると、本件についての着工は、三号機については四十四年の四月、同じく四号機についても同月ということになっておるけれども、通産省としては、地元住民との煙突の高さあるいは使用する重油等、要するに公害防止についての円満な話し合いが解決しない限り、これらの工事を着工さすべきではないと私は考えるけれども、まとめて御答弁いただきたい。
  105. 本田早苗

    ○本田政府委員 確かに海南火力発電所の二基の増設につきまして、四十八年度までに運転開始をしたいということで、六十万キロワット一基の希望がわれわれのほうに述べられております。当初四十万キロの予定であったのが六十万キロになぜ変わったのか、経緯はどうかという点につきましては、一号、二号機四十五万キロということは、地元ともよく話し合いをして、現在建設中でございます。三号、四号機につきましては、幾らにすべきかということについて計画の確定はなかったわけでございますが、四十五万キロでいろいろ数字その他の試算等が話し合いの間に出たようでございますので、そういうふうに地元が理解されたという向きがあったであろうということも考えられるわけでございますが、最近の関西地方における電力需要の増加の状況からまいりますと、六十万キロ二基の増設というのが、四十七年度の需要を考えますと、非常に必要になっておるという事情になっておりますので、この点については地元と十分よく話し合いをして了解を求めるべきであるというふうに考えております。  それから百八十メートルの煙突の点につきましては、最近における高煙突化の傾向はございますけれども、姉崎あるいは堺の高煙突というものが百八十メートルあるいは若干それをこえるという程度のものでございまして、わずか三本しかないという最高級の高煙突でございますので、その拡散効果についてはきわめて大きいものであろうと考えられるものでございます。  それから硫黄分につきましては、一応現地とあすぐらいから公式に話し合うようでございますが、一応関西電力としては一・七%の重油にしようということで話し合いに出ようというふうに考えておるというふうに聞いております。  それから現実に着工の希望としては、四月からということになっておりますが、電源開発審議会の審議によりまして着工時点を決定するということになっておりますから、この決定にあたりましては、地元県知事の意見を聞くことになっておりますので、地元県知事との間に意見が同意するという形になって決定するというたてまえは今後も続きます。そういうことを前提に、会社として現地と十分話し合いをして了解させるようにという指導をしておるわけでございます。
  106. 中谷鉄也

    中谷分科員 大体いまの答弁で問題の所在は了解ができましたが、念のためにお聞きをしておきます。一・七という含有量の問題については、これは関西電力のほうからの提示であって、さらに住民との間にその点についても誠実な話し合いをする。煙突の問題についても、御答弁があったように、いわゆる百八十メートルというのはすでにかなり高い煙突である。それをさらに二百メートルというようなことについての若干のいろいろ技術上の困難な問題は私も承知するけれども、この点についても地元住民と開西電力とが誠実な話し合いをする、そういうようなことであってもらいたいというように、政府として、通産省としてはお考えになっておられるというふうに理解してよろしいですね。
  107. 本田早苗

    ○本田政府委員 関西電力からも、そういう意向で話し合いをするという申し出が出ております。
  108. 中谷鉄也

    中谷分科員 質問が変わります。  今度は万博関係ですが、次のようなことを国民生活局に一つお尋ねをいたしたいと思います。  地域差指数というふうな問題に関連して、少しお尋ねをいたしたい。地域差指数が、関東地方が九七・五で、近畿地方が九五・六でございますね。それは昭和四十三年十二月の統計によると、そういうことになっておる。ところが、和歌山県に例をとりますと、これは見通しですが、四十四年は万博の事業の最盛期になりますね。そうして四十五年は万博でございます。昭和四十六年は和歌山国体というふうな、向こう三年間のそういう各種事業の中で、近畿、特に和歌山県などに局地的物価高を招来するおそれはないかどうか。そうしてそういう局地的物価高というのは、たとえば労務費の高騰であるとか、食糧費、住居費が高くなるとか、いろいろなことを招来するだろうと思いますけれども、それに対する対策は一体どうなのか。この質問趣旨は、万博はけっこうだ。国体も非常に成功させたい。だからといって、その主催地の住民が地域的、局地的物価高に苦しむということはどうしても避けたい。したがいまして、お答えいただきたいのは、そういう局地的物価高の招来する見通しと、それに対する適切な対策はどのようにあるべきかという質問でございます。
  109. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 物価につきましての地域の問題でございますが、これは二つの側面から考えられるわけでございます。一つは、ただいま御引用になりました四十二年の十月末あるいは十一月末の時点における各地方間の地域差、それからもう一つは、毎回やっておりますけれども、それぞれの地域の対前年でどれぐらいどの地方では上昇率があるか、それが全国的に見て比較的上昇率が高いところであるかどうかという、つまり二つの側面からの問題があるわけでございます。  最初の、いわば横断的にと申しますか、その時点について申し上げますと、いまお話しになりましたように、東京都の区部を一〇〇といたしますと、順次並びまして、関東地方あるいは近畿地方が高いということになっております。同様の統計の中では、現在の——現在のと申しますか、その調査時点では、和歌山は実は必ずしも高くない地点でございます。もっとも先生御承知のように、同じ和歌山県でありましても、あるいは少し南の有田、これは東京都区部よりもなおかつ高いというような現象はございますけれども、和歌山市自体は必ずしも高くない。  そこで、万博とか国体とか、そういう事業がその地帯で突然ふえてくる、そして物価指数がどうなるであろうかという問題でございますが、端的に申しまして、いまの調査は四十二年でございます。それからいままでは事業はもちろん進んでおりますが、統計的に顕著に、あるいは有意的にそういう傾向が出ているということは、現在までのところ見られません。それからまた、かつて国体をやったという地方都市があるわけでございますが、先生の御指摘、私のほうで少し調べてみたのでありますが、確かにあるいはその時期生鮮食料品等の値上がりがしたかと思いますが、国体程度の事業では、国体のためにいろいろな建設をするとか、あるいはそのときに選手が集まり、観客が集まるということだけでは、いわば長期的にその物価高がそのまま残るという傾向は、必ずしも見られないようであります。ただ、これは非常に胃袋の大きいところへ比較的小さな事業が行く場合と、あまり大きくないところへ大きな事業が行く場合ともちろん違いますが、どうもあまり国体程度ではそのまま消費者物価の指数にはね返るというような傾向はないようであります。いずれにしましても、ただ地域ごとの物価は、やはりその地域の流通機構、あるいは消費地と生産地との距離等が影響しまして特徴があるということと、一番大きな特徴は、やはり住居費のようでございます。住居費も、家賃はやはり地方都市は東京の半分以下、しかし、一方いわゆる住居費という中には、テレビとかというものが入っております。これはもうほとんど同じというようなことで、一時的には確かに影響があろうかとは思いますが、そう統計上有意にあらわれてはまいりませんが、おっしゃるように万博等の事業があそこで急ピッチで進められますと、おそらく人件費を中心としての問題が出てまいります。そのためには、やはりそういう日常の生鮮食料品等の流通をいわば計画的にやる。もちろん経済法則が働きまして、たくさん集まってくるということも考えられるわけですが、やはり計画的にやる。あるいは労務者等についての需給関係を円滑にやるというようなことに力を入れていって、論理上考えられます一時的な急騰と申しますか、騰貴にはやはり対応していくということになると思うわけであります。
  110. 中谷鉄也

    中谷分科員 万博関係について、時間もあまりないようですから、まとめてお尋ねをいたします。  一つは建設省に対する質問です。いわゆる近畿自動車道和歌山線阪和高速道路についてですが、近畿自動車道和歌山線の計画と今後の見通しは、一体どういうことになっておるか。和歌山線が、高架方式あるいはその他の盛り土方式というふうなことが言われておるけれども、どういう方法をとるのか、これが質問の第二でございます。第三は、第二阪和国道との連結は一体どういうふうにされるのか。これが建設省に対する私の質問です。  それから万博関係についての第三の質問は、入場券の問題について担当の方にお答えをいただきたい。入場券の売り上げ目標と実績、この点については、一体現在どういうことになっているのだろうか。入場料収入というのが運営上非常に重要だと思われるけれども、この点について現在どういう状況になっているか。さらに、入場券の売り上げ目標と実績とを一致させるために、どのような努力をされるか。きわめて遺憾なことであるけれども、万博の結果もし赤字が生じたというようなことがあった場合には、それは運営費などを中心にしてであろうと思われるけれども、その可能性は一体どういうところに原因があるのだろうか。それに対する対応策はすでにお立てになっておるだろうと思うけれども、どういうことかという点についてお尋ねをいたしたい。  第四点についての質問は、すでに何回か大ぜいの人から質疑をされた万博宿泊施設の問題であります。万博開催期間中には、外人を含めたところの大ぜいの宿泊が予定されております。だから、予想している宿泊人員というのは、一体どの程度あるだろうか。現在の万博宿泊対象となっているところの近畿各県のホテル、旅館の不足分は、一体どの程度あるのか。これらについて、ひとつホテル、旅館、民宿というようなものも含めてお答えをいただきたい。そこで、さらにその点についてお尋ねをいたしたいのですけれども、要するに万博協力態勢ということで、和歌山県などでもホテル、旅館等について増改築をしようというふうな動きがあるけれども、融資の関係において非常に困難を来たしている。これについては、一体どういうふうな特段の配慮をするのかという点。さらに、いわゆる有馬温泉の火事であるとか、最近旅館についての不祥事がきわめて招来されているけれども、万博開催中に火事が起こるというようなことがあってはたいへんである。これらについての特段の措置、配慮はどのようにするのかというような点についてお尋ねをいたしたい。  第五点の万博に関連したところの質問というのは、次の点です。先ほども指摘をいたしましたように、昭和四十四年から工事の最盛期に入ります。ことに特殊な建物が多い。そういう中で、一体労働者災害を防止するためにどうするのか、この点です。すでに次官通牒が出されているということは万々承知をいたしておりますけれども、重ねて次官通牒を出す、あるいは労働大臣が直接これについての指示を与える等、いわゆる万博工事によるところの死傷者というふうなものを出さないところの対策はどのように講ずるかという点と、いま一点は、労務者不足に対するところの措置はどのように講ずるか等について、ひとつそれぞれ簡潔にお答えをいただきたい。
  111. 松崎彬麿

    ○松崎説明員 近畿自動車道の和歌山線のうちの阪和高速道路と申しますのは、大阪府の東鳥取町から海南市までを結びます延長約二十九キロの高速道路でございまして、昨年四月一日に日本道路公団に施工命令を出しまして、現在鋭意事業の推進をはかっております。この二十九キロのうち、和歌山市松島、紀ノ川の左岸でございますが、そこと海南市の藤白までの十四キロにつきましては、昨年の十一月二十日に路線発表を済ましております。その後、地元と協議中でございます。  それから和歌山市の松島から北、大阪府の東鳥取町までの間につきましては、雄ノ山峠等の難所を控えておりますので、現在路線の検討を進めておる状況でございまして、できるだけ早い時期に路線の発表をいたしたいと考えております。  四十四年度の仕事といたしましては、全線の用地買収を極力進めるとともに、紀ノ川橋を含めます一部の工事に手をつけたい、このように考えております。  それから高速道路の構造をどういうものにするかというお尋ねでございますが、一般論としまして、高速道路の構造は、通ります地域の地形の条件あるいは土地の利用状況、こういったものも考えまして、盛り土にしたり、あるいは切り土にしたり、ところによっては高架構造というようなことも考えております。特に高速道路の通過することによって地域が分断されるようなところ、こういったところについては、地域の将来の開発のことも考えまして、横断する構造物、こういうものをどういうふうにするかということをいろいろ考えて設計しております。  和歌山線につきましても、これと同じような考え方に従って現在設計を進めておる段階でございます。  それから最後の御質問の、和歌山線と第二阪和国道との連結はどうするか、こういう御質問でございますが、直結する考えでおります。  なお、施工の時期だとかこまかいことにつきましては、現在近畿地方建設局と大阪府並びに道路公団の三者でいろいろ協議を行なっておる状況でございます。以上です。
  112. 井上保

    ○井上説明員 お答えいたします。  入場券の売れ行き状況でございますが、万博協会では、昨年の十月三十一日から発売いたしまして、第一期分六百八十万、現在二百五十万枚程度売れておりますが、ちょっとその売れ行きが悪いのではないかというあれがございますが、具体的に協会から出しております数字は、六百三十万をこえておりまして、今後相当さばけるのではないかと思っております。ただ、結果的に見まして、六百八十万というのはやや評価が多過ぎたのではないかという感じがいたします。  それから運営費の赤字の問題でございますけれども、これは三千万人の入場者があるという予定でありまして、いまのところいろいろ検討いたしておりますけれども、特にここで決定的な赤字、全体的な赤字が出るというようなことはございません。そういうことでございますので、今後またいろいろ問題が起こってまいると思いますが、その中で極力おさめる、またおさめる責任があるというように協会としては考えております。
  113. 山口武雄

    ○山口説明員 労働災害のことにつきましては、先生指摘のように、これからいよいよ本格的な建設が始まりますので、私たちも非常に憂慮しておりまして、できるだけ災害を防ぎたいという体制を整えてまいったわけでございます。先ほど先生も御指摘のように、次官通牒も出しましていろいろ対策を講じておりますが、今後、現地にも私のほうの出先から四人常駐させておりまして、いろいろ指導監督をしておりますが、それが現地の連中と連絡をとりまして適時適切な対策を講じるとともに、近くまた具体的な問題について通達を出したいと思っております。  それから労務対策のことでございますけれども、ちょっと私のほうの主管と違いますけれども、十分努力するつもりでやっておるところでございますから、御了承願います。
  114. 蜂須賀国雄

    ○蜂須賀説明員 宿泊設備につきましては、通産省のほうで現場に行っておられますが、運輸省といたしましても、特に外人客の対策について考えております。万博開催時におきます外人客は延べ百万人来るといわれておりまして、そのうち宿泊を要する者が延べ七十万といわれておりまして、一番最盛期の平均が一日六千二百人くらいになりまして、現在近畿地区におきますホテルは三十一軒、五千七百室、収容力九千二百人、それから登録旅館のほうは九十一軒、三千四百室、収容力は一万二千四百人でございます。今年度さらにホテル十軒三千室、旅館十六軒三百二十室につきまして、新築または増改築につきまして日本開発銀行及び中小企業金融公庫の融資のあっせんをいたしております。これらの施設につきまして、万博開催中はオリンピックのときと同様に外客の優先利用とういことを指導いたしておりまして、外国の人に対しましては万全を期するように努力しております。なお、今後も宿泊設備の整備につきましては、日本開発銀行、中小企業金融公庫の融資のあっせんにつきまして格段の努力をいたしたいと考えております。なお、四十二年から四十四年度までの資金につきましては、実は七十億円を計画したわけでございますが、実績はそれを相当上回るものと考えております。それから先般来の火災事故にかんがみまして、その防止方につきましては、消防庁、建設省等と十分協議いたしまして、これも万全を期したいと思います。
  115. 中谷鉄也

    中谷分科員 終わります。
  116. 植木庚子郎

    植木主査 板川正吾君。
  117. 板川正吾

    板川分科員 通産行政と公害防止問題について、通産大臣に見解を伺いたいと思います。  大臣は、通産大臣に就任なさったときに、テレビで、日本の社会は繁栄の恩恵を受けておったから、これからはその代償を払うべきではないか、こういう意味のことばを諮られました。私は、これはなかなか名言であったと思っております。御承知のように、公害防止には膨大な資金がかかります。また非経済的な投資でもあります。ですから、完全に公害防止を行なおうとするならば、まさに繁栄の代償だということが私は言えるのではないかと思います。そこで、大臣に公害防止にいかに取り組む心境であるかということについて伺いたいのであります。  ロンドンの例を申し上げるまでもありませんが、ロンドンでは一九六二年の十二月、濃いスモッグが英国の南部を襲って、四日間に呼吸器をおかされて死亡した人がロンドン地区だけでも百六人に達した。それから十年前、一九五二年の大スモッグのときは、何と死者が四千人にのぼっておる。二回とも霧と密着した煙の中に含まれる亜硫酸ガスが呼吸器をおかし、人々はいがらっぽい大気の中で絶えずせきをし、呼吸器の弱い老人は窒息した。六二年のおりに、ロンドンのある新聞は幽霊の町と報じたそうだ。こういう新聞の報道がありますが、最近、東京における相次ぐスモッグの現象を見ておりますと、同じ状態がいつ起こるかわからないようと思われるのであります。公害は国民の生命と健康を脅かすもので、特にその防止のために、公害の発生源の企業を管掌する通産大臣として、当面の責任は重大であろうと思うのでありまして、その意味において、公害防止に取り組む大臣の心がまえ、特に環境基準決定されたことでありますから、この際大臣の所信を伺っておきたいと思います。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、非常に緊急を要する国民的課題であると思います。そこで、まず第一に、私といたしましては、事業者が第一の責任者でございますが、国、地方公共団体、それから地域の住民の方々、こういった四者の間の協力関係をどうして打ち立てるかという点に一つの力点を置いていきたいと思います。  第二は、仰せのように非常に非経済的な投資でございますけれども、すでに代表的な石油とか電力等におきましても、膨大な投資のうちの六%ないし七%は公害防止投資であるというような実情でございますので、まず公害防止技術を国が牽引力になりまして開発して、そしてそれを、事業者自身も努力いたしますけれども、協力いたしまして、できるだけ経済的な投資に持っていくようにして差し上げなければなるまいと考えております。  それから防止施設に要する投資につきましては、なるべく長期、低利のお金の融資につきまして、財投のあっせん等について十分配慮して差し上げなければならぬと思っております。  それからさらに、環境基準決定あるいは現実の公害行政でございますが、これはたいへんテクニカルな面が多うございまして、まだ一般の国民に十分理解されていない、また担当者に十分消化されていない面が多いと思います。若い行政でございますので、十分これを砕いて、非常にポピュラーな形にいたしまして、迅速かつ的確に、万人によくわかるようなぐあいに、公害防止行政の民衆化といいますか、そういう点に努力をしていかなければならぬのじゃないか。言いかえれば、私は、新しい通産行政の最重要な一つの道標として、私どもが予想している以上に大きな課題に年々歳々なっていくのじゃないかということを覚悟した上で取り組んでまいりたいと思っております。
  119. 板川正吾

    板川分科員 亜硫酸ガスによる大気汚染公害を防止するには、幾つかの方法が考えられます。  第一は、発生源である工場を他の地区に分散させること。しかし、これは実際は金がかかり、時間がかかり、急にこれが実現するということであり得ない実情であることは、私も認めます。  第二は、硫黄分の少ない原油を輸入すること。しかし、これもまた、実はいまの石油の需給関係を見ますると、実現不可能の現実であります。石油は、御承知のように、九九・九%を輸入して、その九四、五%は、ほとんど中近東から輸入されておるハイ・サルの原油であります。米国に次いで世界第二の石油消費国となったわが国のこの膨大な石油の消費量を低サルの原油でまかなうということは、不可能と言っても過言ではないのであります。したがって、低サル原油を輸入することも不可能であります。  第三は、残る道ですが、これはハイ・サルの原油を輸入しても、脱硫して、そうして有害な硫黄分を除去して使うという以外に道はない、私はこう思います。ところが、脱硫することには幾つかの問題があるのです。大臣もいま触れられましたが、第一は、技術的に可能かどうか。第二は、技術的に可能であっても、経済ベースからいって問題になるという点であります。第三は、膨大な資金需要を要する。これをどうして確保するか。こういう三つの点が解決をされないと、脱硫問題に関する問題は解決しないのです。  第一の技術の問題ですが、脱硫技術は、精製会社によって直接脱硫方式、間接脱硫方式、あるいは電力会社が共同で開発する排煙脱硫装置、こういう問題があります。この中で、技術的にやや完成したというのが、直脱方式であり、間脱方式であります。電力会社がやっております排煙脱硫方式は、残念ながら、通産省の援助がありながら、まだ技術的な解決のめどがついていない。直脱方式がいいか、間脱方式がいいかというと、これは間接脱硫方式というのでは硫黄を十分に取ることはできないのです。直脱方式が一番能率的なんです。直脱方式では、いま世界で初めてで日本で初めてなのが出光の——UOPという会社のパテントをとって出光石油が千葉工場につくったというのが、世界で初めてであり、日本で初めてだ。実は、出光という名前を出すのはどうかと思ったのでありますが、しかし、出光石油が、世界の企業に先がけて公害防止のために膨大な非経済的な投資をした。しかもその投資は、理論的にはUOPの方式というのは解決しておっても、技術的には問題があった。で、膨大な七十億円という金を、生産設備でなくて公害設備のために投じた。こういう点は、企業の社会的良心として、また公害防止技術のパイオニアとして、社会も正当に評価していいのではないか、こういう気持ちからあえて名ざしをしたのでありますが、この出光が採用したUOPの技術は、初めてのために、残念ながら、理論上はよかったのでありますが、一年ちょっとの間は事故ばかりで、最初の計画においては、稼働日数が九割、一年のうち三百二十三日は働くという予想をしておったのでありますが、こちらにひび割れ、こちらに何かパイプの漏れというようなことがあって、稼働がその半分を割るという状況であった。この脱硫装置というのは、高圧、高温のために、わずかなブッシュ——ひびが割れるとかあるいは熱が漏るとかいうことになりますと、その装置をとめて、一週間から十日自然冷却をするまで待って、それからわずかな修理をする、こういうことのために、非常に稼働日数が落ちたために、能率が悪かった、こういわれております。当時——これは昨年のことでありますが、出光は膨大な投資をして、技術的にも完全でなかったものを入れてたいへんばかを見たのではないかという業者間のうわささえあったのです。ところが、昨年十月、十一月、二月間かかって脱硫装置を停止させて、いままでの経験によって得た材質、あるいはしょっちゅうこわれやすい個所、そういうものを徹底的に直したために、昨年十一月末から運転して今日まで故障なく脱硫装置が働いておる。そこで、ようやく理論的にも解明をできたし、技術的にもほぼ直脱方式がここで完成を見つつあるという状況だろうと思います。ですから、こういうふうにUOP方式で直脱方式が完成されたならば、これを精製会社の各工場に取りつけさせるようにすれば、この亜硫酸ガスによる公害問題は大きく解決の方向に前進するだろう、私はこう思いますが、これに対して大臣の見解はいかがでしょう。
  120. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 ただいま板川委員おっしゃいましたとおり、出光が他に先んじまして非常に勇気を持って脱硫装置に着手をしたというのは、先生と同じように評価をいたしていいのではないかと思います。おっしゃいましたように、いろいろやってみますと、工作上の問題点があって、いままでの実績でおそらく稼動率は五〇%を割るくらいのところになっておるのじゃなかろうか。これをいろいろ手直しいたしまして、これからやろうということでございますので、どれくらいの能率で動くかということは、むしろいままでの経験から判断いたしまして手直しをしてこれから動き出すという状況でございますので、これからの実績というものをよく見守る必要があろうかと思っております。ただ、稼動率の問題だけではございませんで、触媒その他の関係かと思いますが、脱硫の効率そのものも、所期のところにはきておらぬようでございます。したがって、年間を通じての稼働率、あるいは脱硫の効率というものは、これからを見て考えるべきだと思っております。UOPの方式だけが唯一のものだとも考えられませんし、いまの公害対策の状況からいたしますと、各社技術的に信用し得るということで考えておる、たとえば間脱方式というようなものも、これはやはりそれぞれの考え方に従いまして、可能な会社につきましてそれぞれの計画どおりやらせるということが、トータル量としての亜硫酸ガスの対策として有効であろう、こう考えておるわけでございます。  現在の建設状況を簡単に申し上げますと、稼働中のものは五社ございます。計画中のものが九社ございます。稼働中のものは、出光興産、富士石油、東亜燃料、日本石油精製、大協石油の五社でございます。計画をいたしておりますものが、昭和石油、九州石油、西部石油、三菱石油、丸善石油、日本鉱業、ゼネラル石油精製、興亜石油、鹿島石油の九社でございます。これらはやはりそれぞれ得意な技術でやっております。そのうち直脱で考えておりますのは、現在稼働中の出光興産だけであります。計画といたしましては、先ほど申しました中で、日本鉱業と鹿島石油が直税を考えておるわけでございます。大臣から先ほどお答えございましたように、公害対策緊急性、緊要性から考えまして、技術的にまだ未確定なものもございますが、どれがいい、これがいいということは今後判断すべきことであって、いまのところは各社がやりたいといっておるものをできるだけひとつやらせるという方向で進ませたらどうかと思っております。
  121. 板川正吾

    板川分科員 いま動いているのは、ほとんどが間脱方式なんですね。   〔主査退席湊主査代理着席〕  問脱方式では、電力会社が最近新しい電力設備をつくるところで一・五%とか一・六%の原油をたくという約束をしておりますが、これは低サルの重油の奪い合いになる。なぜかといえば、それは直脱方式をとらないで、間脱方式という安全だけれども能率の悪いもの、こういうものであるから、低サルの重油がいま払底しているのです。そこで、いま発電会社等に低サルの重油を十分に供給するためには、やはり間脱方式では解決をしない、直脱方式にいかざるを得ない。だから、出光の問題も大体ここで解決しそうだから、それをよく研究して、もし確実であるならば各社にそれを推奨するような措置をとられたらどうだろうか、こういう気持ちで私は申し上げております。間脱方式では、残念ながら亜硫酸ガスの環境基準を五年でやるとかいっておったって、できるはずはない。直脱方式を大幅に取り入れなくちゃならない、そう思います。その場合、やはり問題は資金面であります。脱硫装置には膨大な資金がかかって、技術としても、初期の段階ですから完全無欠ではない、これはおっしゃるとおりなんです。どこの会社でも、それぞれ多少の危惧があるからこそ、直脱方式をとらずに、安全な間脱方式をとっている。しかし、それじゃ問題は解決しない。直脱方式のほうがいい。直脱方式をさせるためには、資金の問題で危険を分散する方式をとられたらどうだろうか。その方法として、脱硫装置を精製装置と区分して、脱硫装置だけ別途の会計を持つ別会社組織にある。精製工場がある。ここに脱硫装置をつくる。それだけ別個の収支勘定を持つ企業とする。そしてそれに要する膨大な資金というのは、精製会社がある分負担をし、大手需要家である電力とか鉄鋼でもその脱硫装置に出資をする、原油供給会社であるアラビア石油等もこれに出資する、こういう方式で別途の会社をつくって資金を各社から集めてやれば、危険の分散ができるのじゃないだろうか、こう思うのであります。次は、精製工場はその脱硫装置を有料で借りるという方式をとる。さらに政府は、脱硫装置を促進奨励するために、その脱硫会社が脱硫に高温高熱を使いますから、それに使う原油については原油関税を払い戻しをするとかあるいは特別償却を認めるとか、こういうような援助措置をすれば、私は、この能率のいい直脱方式を各社が採用するのじゃないか、こう思うのであります。この点どう考えますか。
  122. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 私どもといたしましても、今後の検討にあたりまして、たいへん有意義な御意見をいただいたというふうに考えております。重油脱硫設備の建設につきましては、ただいま御指摘のとおりに、脱硫技術の未成熟、設備建設費の膨大さというものから見まして、石油業界にとりましては大へん大きな負担になろうと予想されております。しかも、片方石油企業の経営状況というのは著しく悪化していることを考え合わせますと、公害対策推進していくためには、重油脱硫設備の建設に関して国の助成措置というものを考えていくことも必要であろうと考えます。このために、四十四年度から特別利息によります開銀融資の道が開かれることになっておりますことは、御承知のとおりでございます。  関税還付等につきましては、石炭対策の財源の関係等もございますので、これも慎重な検討を要するものと考えております。  現在具体的な低硫黄化対策につきましては、総合エネルギー調査会を中心にいたしまして検討中でございます。その結論も参考といたしまして検討を進めてまいりたい。  ただいまお話のございました脱硫の効率化等をはかるための需要業者、精製業者あるいは原油の供給者というようなものが共同して脱硫を行なう方式ということも、確かに傾聴に値する御意見だと思います。これにつきましても、経済性等さらに検討を要する点も少なくなかろうかと思います。また先生の御指摘のところでは、やはり技術的に未成熟であるというところからくる企業者のリスクというものについて何か考えてやる必要があるのじゃないかということが、御発想の大きな動機になっておると思います。それはいま申しましたような事態から申しまして、確かに私どもも考えなければならぬことだと思っております。いま申しました総合エネルギー調査会における結論をベースにいたしまして、御指摘の点を含めまして具体的な対策というものを考えてまいりたい。  なお、先ほどの間脱のお話でございますが、差し迫っておりますので、あのところ、このところ、いろいろ併用したいという気持ちで考えておりますことのほかに、確かに脱硫の効果といたしましては、先生指摘のとおり、直脱というものはいいのでございますけれども、費用その他の問題もございます。片一方ローサル原油の入手についての努力というものは、マクロで考えますと、板川先生指摘のように、そう大きなものが期待できるかどうかということになると、御意見どおりだと思いますが、これにつきましても、やはりそれぞれの精製会社の原油の入手ルートというものがございまして、会社によりましては、ローサル原油の入手に相当努力の必要もあるところもあります。こういうところのからみ合いで検討してまいりたいと思います。
  123. 板川正吾

    板川分科員 ローサル原油が十分に供給されて、電力会社が低サル重油の奪い合いがないような状態があれば、それはけっこうでしょう。しかし、なかなかそういうことはできないという見通しに立って私は言っておるのであります。  それともう一つは、間脱方式は金が少なくて済む。技術もあまり大きなリスクはない。そのかわり効率は低い、こういう欠陥があるのですね。直脱方式も、大体われわれしろうとですが、出光の例を調べてみましても、完成されつつあるのじゃないか、大きな危険はもうないのじゃないか。しかし一抹の危険が——われわれリスクしょわない者からいえば簡単に言いますが、企業家とすれば問題でしょう。だから、それを分散してやることによって奨励するような方式をとられたらどうだろう。ぜひひとつ来年の予算措置等においては考えてもらいたいと思うのです。また、そういう装置をすれば、準国産原油とよくいわれるアラビア石油の原油を国内精製会社が引き取るのに、クレームをつけて、安いとか高いとか、ハイサル原油は公害問題があるから取れないとか、こういうような紛争が毎年毎年ありますが、この問題が解決すれば、そういうことはなくなります。アラビアのカフジ原油というのは、御承知のように四十年の期限つきの借用です。四十年たってしまえば、残っているものを向こうに返すという約束になっているのですから、四十年間にこれをなるべく多く採油して国内に消費するということが、国の経済の面から見ても私は必要だと思うのでありまして、そういう意味でこの直脱方式をぜひ採用してもらいたいと思うのであります。またそういう結果なれば、いまアラビア石油では年間七十億の利益金をあげております。一割六分配当をしております。引き取りのほうの会社は八分か一割、高いところは一割二分、東燃は同じですが、とにかくただハイサル原油を供給して一割六分も配当して、七十億も利益をあげていたというようなことが引き取り問題にからんでおると思うのでありますが、そのアラビア石油がたとえば二分減配をするとか、七十億円の中から相当の金を直脱方式の奨励のために出資をする、こういうような方式をとれば、アラビア石油も喜んで引き取るであろうし、また四十年期限であるカフジの原油もできるだけ国内に多く入る。九九%輸入なんですから、それを準国産油であるアラビア石油ができるだけ国内で消費されるということは、国家の利益でもあるだろう、こう思います。それから電力会社が電力不足で発電所をあっちこっちでつくり回り、至るところで反対運動がある。それはなぜかというと、中近東ハイサル原油が輸入される。その重油はサルファ分が多い。だから、公害だということでうるさくなって、反対運動があって、そのために新設する電力は、地元の人と話し合った結果、重油のなるべく低サルのやつを供給しますということでようやく承認を受けておる。しかし、いまのままでいったら、電力会社が約束した低サル重油も確保できない情勢になるのではないだろうか。じゃ原油のなまだきでやればいいのではないか、こういう議論もあるだろうけれども、これは石油全体の需要供給から見て、原油なまだきばかりでやることも問題があるわけであります。ですから、いずれにしてもこの直脱方式をさっき言ったような方式で解決をするならば、すべての点において——公害防止のためにもなるし、また企業間のそういう紛争もなくなるし、すべての点において私は有効な働きをするだろう、こう思います。ぜひひとつ、ことしで間に合わなければ、来年の予算措置にはそういう点を芽を出してもらいたいということを希望いたしますが、大臣からひとつ見解を承って終わりといたします。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の点は、われわれも真剣に検討いたします。
  125. 湊徹郎

    ○湊主査代理 次に、竹本孫一君。
  126. 竹本孫一

    竹本分科員 私は二つほど問題をお尋ねいたしたいと思いますが、まず最初は、印刷工業の構造改善その他についてであります。御承知のように、印刷工業は昭和三十九年ですか、近促法の業種指定を受けて、手動印刷機の自動化については大きな成果をあげております。しかし、最近におきましては、御承知のように、コンピューターまで使って印刷をやるというように、非常に技術革新がこの分野においてはおそるべき勢いで進んでおるわけであります。この技術革新に取り組んでいくという姿勢を必要とする中で、わが国の非常に数が多い、そして零細企業に多い、この印刷工業の構造改善については、政府はどういうような考え方を持っておられるか。  時間の関係もありますのであわせてお伺いしますが、これは業界ぐるみの構造改善ということが絶対に必要であると思いますけれども、政府においては、この印刷工業の構造改善のために、これを指定をされる御予定があるのかどうか。また、ありとすれば、いつごろどういう御指定をなさるつもりであるかということをお伺いしたい。
  127. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 ただいま先生指摘のとおり、中小印刷業については、一万五千以上の企業者がございまして、なかなか体質改善もたいへんな仕事でございますが、昭和三十九年以来、中小企業近代化促進法に業種として指定されまして、その結果、いろいろ近代化の方策を講じました。一例としまして、自動化率をとってみますと、昭和三十九年に凸版で一二%、平版で三三%であったものが、四十三年の推定では凸版四四%、平版六六%というように、ある程度の効果をあげてきております。しかし、これでは不十分でございますので、今後、中小印刷業をめぐる急激な環境の変化というものに対応しまして、構造改善をはかることが必要であるという場合には、まず第一に、業界の方々が自助の企業努力をされる。その自助の努力と相まちまして、今回改正を予定いたしております近代化促進法の特定業種に適当な時期に指定して、そしてそれには極力多数の企業が参加して一そうの体質強化をはかる、こういう方向で検討していきたいと思っております。しかし、この場合何より大切なことは、業界がその構造改善にほんとうに役立つよい計画をつくられることが肝心であろう、このように考えております。
  128. 竹本孫一

    竹本分科員 局長の御答弁にありましたように、自主的な努力というものが非常に大切、むしろ前提条件になることは当然でございますが、また印刷業については、当面すぐ外国の企業が自由化の波に乗って入ってくるということも、普通の産業一般の業種に比べるとそれほど脅威があるとも思えませんけれども、先ほど申しましたように、技術革新がよその分野以上に非常に大規模、急テンポで行なわれておるということと、それから業種が、いまお話のありましたように、むちゃくちゃ数が多いということ等を考えてみますと、やはり構造改善、単なる一業種の中の機械を入れかえてみて近代化を促進するということではなくて、業界全体の体質改善構造改善ということが、緊急な課題であろうと私は思います。そういう意味で特定の業種に指定する。今度法律改正が行なわれますれば、むしろまっ先に取り上げるべき問題ではないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  129. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 これにはやはりいろいろと準備も必要でございますし、現在まで印刷業の関係の方々からのお話を伺っておりますところでは、もしできれば、昭和四十五年度からこの改正が認められますれば、いわゆる新近促法の特定業種に指定を受けてやっていきたい、こういうふうに伺っております。まだ私も準備——それから先ほど申し上げましたように、りっぱな確実な、着実な計画をつくるという意味合いからいって、早くて四十五年度からではないか、このように考えております。
  130. 竹本孫一

    竹本分科員 大臣にちょっとお伺いしたいのですけれども、いまお聞きのように、日本の中小企業というのは数ばかり多いのですが、印刷業はそのまた最も数が多いほうなんです。しかもこれは、いわゆる一九七〇年の問題も控えて、実は非常に大事な分野なんです。革命を行なう場合には印刷工場を押えろとさえ言われておるくらいに印刷工場というのは——これはあとでお伺いしようかと思いますけれども、非常に大事な文化的な機能も持っておる。そういう業種でございますが、やはり日本の中小零細企業すべてがそうであるように、政府が腹をきめて、これは構造改善をやるんだぞ。またいま御答弁の中にもありましたけれども、四十五年になればやる。少なくともことし一ぱい早く自主的な努力をやれというような、積極的なイニシアと指導がないと、民間はやはりお互いに足を引っぱり合ったりいろいろな事情がありまして、なかなかうまく進まない。私は、印刷業の重大性を考えますから、どうしてもこれは政府においても今明年のうちには指定して、構造改善までひとつ真正面から取り組んでいくのだ、こういう姿勢を示していただきながら、印刷工業全体としての構造改善にひとつつとめていただきたい、かように思いますけれども、大臣のお考えはいかがですか。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 いま予算の御審議を願っている最中でございまして、一応この段取りがつきましたら、さっそく個々の業態について検討を始めまして、仰せのようにタイミングを失することなく進めてまいりたいと思います。
  132. 竹本孫一

    竹本分科員 ぜひこれは早急に指定をしていただくような準備を進めていただきたい、重ねてお願いを申し上げておきます。  なお、この機会に関連してでございますけれども、実は私は戦争中に出版課長をやっておりました関係で、この辺の関係は若干知っておるのでございますが、その当時から印刷工業というものは紙業課の一係というか、そういうところでやっているわけです。しかし、これからの印刷工業の発展というものを考え、またその文化的な機能を考えますと、紙業課のすみのほうに印刷工業の担当官がおるというだけでは問題にならない。やはりこれは一課をほんとうは設けるべき大きな大事な仕事でもあると思いますが、急に課を設けろというお話でもありませんけれども、取り組み方として、いままでのとおり、何年たっても——戦後だけでも二十年たっておりますが、これだけ大事な印刷工業部門というものを、思想もなければ文化もないと言ってはおしかりを受けるかもしれませんが、単なるマテリアルとしての紙業課の片すみに置いておくということは、行政のあり方としてはなはだ遺憾であると思いますが、いかがでございますか。
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 非常に重大な御警告でございまして、つつしんで承っておきます。
  134. 竹本孫一

    竹本分科員 これは哲学、文学のおわかりになる通産大臣のことでございますから、ぜひともひとつ印刷を、単なるプレスか何かのような感じで考えてみたり、あるいは紙の業種の横のほうに置いておくという考え方は、その国の文化性を疑われると私は思うのです。そういう意味で、これはぜひどういうあり方がいいか、ここで一々論議はいたしませんが、それこそ前向きに、レベルの高い、次元の高いところで取り組んでいただくようにお願いをいたしておきたいと思います。  次に、近促法の指定があり、あるいは構造改善に近く指定をしていただくということになりましても、やはりその業界を取り巻くいろんな条件が十分整備されないと、いろいろ困難があろうと思いますが、時間がありませんので、問題をしぼって一つ、二つ伺いたいのでございますが、その一つは、印刷局の印刷業務のみならず、電電公社とか、あるいは国鉄、あるいはその弘済会、その他政府政府関係機関が、それぞれ付属の印刷工場を持っておる。これは必要な場合はそれでやむを得ない場合もありますけれども、それがどのぐらいあるものか。特に私が問題にしたいのは、中小零細企業を守るというわれわれの立場から御質問をするわけでございますけれども、御承知のように、そうした業界のためには、官公需の受注を中小企業のために確保しておく、こういう特別な立法措置までとられておるわけであります。ところが、実際においては・政府の印刷局等でもいろいろあちらからもこちらからも注文を受けて、本来ならば民間の印刷業に振り向けるべき注文でも、むしろ政府あるいは政府関係機関の付属工場が引き受けておるという分野があまりにも多過ぎやしないかと思いますが、いかがでございますか。
  135. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 いわゆる官公営等の印刷所の数を調べてみたわけでございますが、三十数カ所地方のほうにあるようでございます。ただ、いま御指摘のような中小印刷業の業務分野を特に圧迫しておるような事実があるかどうかというようなところは、承知をいたしておりません。ただ、いま申し上げましたような地方自治体等の一部においては、そのような事例があり得るということも考えられますので、まず実態の把握につとめてまいりたい。そしてその結果、いま御指摘のような大きな影響を中小業者へ与えておるというような事実がもしありますれば、関係の機関ともよく協議して善処してまいりたいと、ただいまはこのように考えております。
  136. 竹本孫一

    竹本分科員 二つほどそれに関連してですが、一つは、そういうような圧迫しておるか圧迫してないか、なかなかこれは水かけ論になる心配もありますが、どういうところでどういうふうな消化をしておるかということについての一とおりの資料をあとでひとつ見せていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  137. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 いたします。
  138. 竹本孫一

    竹本分科員 それからもう一つは、圧迫しておるというような懸念、御心配があるようでございますけれども、そういうことではなくて、最近中小零細企業問題がこれだけ重大になっておるので、本来ならば、もっと積極的に、従来は官公営の工場に回しておったけれども、これからは中小零細の印刷工業を助成するという意味でそちらにむしろ注文を振り向けてやろう、こういう御努力が最近において行なわれたかどうか、その点もひとつ伺いたい。
  139. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 特別そういうような積極的な努力はいたしておりません。
  140. 竹本孫一

    竹本分科員 それでは大臣にお伺いいたしますが、中小印刷企業を守ってやるという立場からするならば、なるべくならば民間に回していいものは民間に回すように行政指導をされてしかるべきではないかと思いますが、この点についての大臣のお考え。並びに、官公営の工場でやるべきものは、私は二つしかないと思うのです。一つは、民間の企業では採算上あるいは技術的にもとうてい不可能だ、これはまあ印刷局なら印刷局でやらなければならぬというような特定な部門。それからもう一つは、官の秘密というような機密保持の立場から、これは民間に出してはどうもおもしろくないというものもあろうと思います。大体その二つくらいなものに限定すべきであって、何もかも便利がいいからとかいうようなことで官公営の工場でやらせるということは、これからの方針としてはむしろ避けるべきだ。官公営でやらなければならぬものは、いま申しましたようにきわめて技術的な要請のあるもの、あるいは秘密を守る必要があるもの、あるいは民間では採算が合わないもの、この辺に限定をして、あとはなるべく民間に開放すべきである、こう思いますが、いかがでございますか。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 通産省の例で申しますと、四十二年度を調べさせてみましたら、大企業に出したのは一つもございませんで、全部中小企業に印刷を頼んでおるようでございます。  いま全体としての政策の問題でございますが、官営の印刷機関でやるものと民間の印刷業者でやるものと、大きく分けて言えば、こういう方々の商権を擁護、確立して差し上げるということは、仰せのとおりだと思うのです。これは印刷業ばかりでなく、商業、特に小流通部面で多いのでございますけれども、いろんな商権擁護の問題が出てまいりまして、自立企業を擁護していかなければならぬ政治の立場があろうと思いますので、商工業を通じまして、仰せのようなことは政策的課題として、よく実情を把握した上で実効ある対策を考えさせていただきたいと思います。
  142. 竹本孫一

    竹本分科員 官公需の問題と並んで、もう一つ印刷企業の中小の立場をわれわれ考えた場合に必要なことは、これは印刷だけではございませんが、最近において大企業が中小の分野にどんどん進出する。これがために大企業に中央突破をされて、ローラーをかけられたように中小のものが次々にまいってしまう。われわれは御承知のように、やはり企業分野をはっきりさせろということを盛んに主張いたしておるわけでございますけれども、印刷なんかは、極端に申しますと、大きな印刷会社が本気になれば全部やられてしまう。名刺とか年賀状とかといったようなものまで、大企業はこれは採算上めんどくさいから手をつけないでしょうけれども、極端な例を言えばそういうものにまで進出してくると、中小零細企業はたまったものではありません。それかといって、それだけ能率があがるものかというと、それほどのものでもありません。そういう意味から、やはり印刷工業の分野においても、大企業の担当すべき分野と、中小零細企業のためにリザーブしておくべき分野と、おのずからあると思うのです。これについて、今後行政指導を積極的に展開される御意思はありませんか、お伺いしたい。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、印刷も確かにいまの環境から考えまして取り組まなければならない政策的課題であろうと思いますので、検討さしていただきたいと思います。
  144. 竹本孫一

    竹本分科員 ぜひ政策的課題として、これは真剣に取り組んでいただきたいことを強く要請をいたしておきたいと思います。  なお関連して一つお伺いいたしたいのですけれども、今度政府は家内労働法を提案されるようであります。謄写タイプその他の家内工業的な印刷工業について、この家内労働法は一体適用されることになるのかどうかということです。そしてまた、通産省はこの問題についてすでに相談をお受けになっておるかどうか、相談を受けた場合には、これは適用することにする検討をされておるのかどうか、その辺をお伺いをいたしたい。
  145. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 労働省から十分と申しますか、密接に連絡を受けております。また、これは御承知のとおり、審議会で相当長期間審議されたものでございまするが、審議会にも私のほうから委員が出ております。  それから次に、適用範囲でございますけれども、これはわれわれはこういうふうに考えておるのですが、適用の範囲については、実はいろいろ問題があると思います。これは下請の人でございまして、主として労働の代償としてその下請賃をもらうというふうな企業といいますか、生業は、これは大体適用になるというふうにわれわれも考えておるわけでございまするが、一応法律的には、すでに最低賃金法にも家内労働の規定があるわけでございます。それによりますると原則として親族以外の者を使っていない者は家内労働法の適用になる、こういうふうになっておるわけでございますけれども、親族以外の者を使わなければ全部家内労働法の適用があるのかどうか、この辺は私どもは実はまだいろいろの問題があるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  146. 竹本孫一

    竹本分科員 通産省のお考えは、結局どういうことになりますか。
  147. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 この辺は、先ほど申し上げましたように、主として労働の代償的な意味で下請賃を受けているというふうな生業は、これは適用があるというふうに考えていいのではなかろうかというふうに考えております。
  148. 竹本孫一

    竹本分科員 時間がありませんので、印刷工業はそのくらいにしておきまして、次にもう一つ、小売り商の問題をお伺いしたい。  これも、最近は百貨店の進出、スーパーマーケットの進出、そういうような問題で、地方におきましてはたいへん小売り商の皆さんが窮地に追い込まれているのです。極端に申しますと、いま悲鳴をあげております。これに対して、もちろん最後にわれわれが守るべきものは消費者の利益でございますので、小売り商業の大規模化あるいは量販店の進出、もちろんこれを一がいに否定するものではありません。当然のことであります。しかしながら、ただ急激に、あるいは無計画に、乱暴にどんどん進出して中央突破をやってもらっては、やはり地方の小売り商の立場は全面的に否定されることになります。  そこで、お伺いをしたいと思うのでございますけれども、小売商業調整特別措置法というのが、三十四年でございましたか、できました。この法律ができてから、この法律に書いてある第十五条、十六条、十七条、十八条といったような規定が、現実に適用されたことがあるのか、あるいは今後もそういうものを適用するというような問題が各地に起こっておるんではないかとい思ますが、そういう実態を通産省ではどういうふうにとらえておられるか、承りたいと思います。
  149. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生指摘のような、いまの法律の該当条文の適用例でございますけれども、現在までのところ、実は一件もございません。ところが、実態そのものにつきましては、各地に相当紛争が起こっておるわけで、特に小売り商と大型店舗との間に紛争が起こっておるわけでございますので、一体この法律法律の仕組み自身にとって欠点があるから適用されないのかということを勉強してみたわけでございますけれども、仕組みそのものには特に私どもはこれは欠点があるというふうには思いません。小売り商の方々がもし大店舗の進出に悩まされておる場合には、都道府県知事に対してその旨を申し出られればすぐ調停あっせんが開始されるという仕組みでございますので、現在の法律が特に煩瑣であるとか、仕組みがおかしいとかいうことではございません。何となく小売り商の方にこの法律がなじんでいないという事実は、認めざるを得ないと思います。
  150. 竹本孫一

    竹本分科員 この法律を読んでも、小売り商業の立場を守るためのいい法律だと思うのです。ところが、一ぺんも適用になっていない。しかし、われわれが現実にあれだけあちらでもこちらでも問題にぶち当たっておるのに、一回も適用されていないというところに実は問題があると思うのですね。これはいま、長官の御説明では、法の仕組みに欠陥があるというよりも、なじんでいないんじゃないかと言われておりますが、私はこれは両方だと思うのです。特に、たとえば県知事、地方通産局長、あるいは商工会議所の責任者といった者が、この法律の存在をはたして知っておるかどうか、またこれを知らせるために従来どのくらいの、どういう努力をされたか、それをちょっとお伺いしたい。
  151. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先ほどのお答えに対しまして若干補足の意味も含めさしていただきたいのでございますが、この十五条から十七、八条が適用にはなっておらないのでありますけれども、実はこの法律が存在いたしまするので、紛争が起きた場合に、通産局長なり、あるいは都道府県知事なり、ないしはこのごろ商工会議所によく御出馬を願うのでありますけれども、この辺の第三者の調停あっせんに従っていただかないと、この法律が発動いたしますというふうなことで、伝家の宝刀的な役割りを私はしているというふうに思っております。そういう意味におきまして、紛争の起きております地区の商業団体の責任者の方々は、この法律を十分御存じである、また御存じない場合は、紛争が起きた場合に、私たちとしてはこういう法律があるということを直ちに御連絡申し上げておる、こういうことでございます。
  152. 竹本孫一

    竹本分科員 にらみがきいているからというのだが、にらみがきくのにはその存在がはっきりしていなければいかぬのですけれども、実は私どもいろいろ業界の相当の人に会って聞いてみても、こういう法律であなた方の立場というものは最終的には守られておるのだと申しましても、そんな便利のいいものがあるのですかというような調子で、なかなかこの法律の存在自体を知ってない。それから商工会議所あたりに聞いてみても、知っている人もおれば知らない人もおるといったような調子でございますので、ぜひこれは周知徹底方をもう少し積極的にやってもらわなければならぬじゃないかと思う。  それからもう一つ、同時にこれも、通産局や商工会議所に行ってごらんなさい、あるはずですといったようなことではなくて、やはりこれは百貨店法における百貨店審議会みたように、少なくとも中央にそういう考えがあるということではなくて、そういう存在を明らかにして、しかも各府県ごとに、地方ごとに、紛争の受付の処理機能が十分果たせるように準備してあるのだ、こういう形にまで整備強化しなければいかぬ。それには、場合によってこの商調法もひとつ前向きに改正をして、その存在を主張するとともに、その機能も各地域ごとにこれだけ充実されたのだ、こういう体制の整備をやる必要があるのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  153. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 実はこれは先生も御承知と思いますけれども、松山の紛争、これは昨年起きました。松山市に数軒にわたるスーパーがほとんど同時に進出をいたしまして、地元の小売り商と相当大きな紛争が起きたわけでございます。これに対しまして、私たちこの商調法をすぐ運用されてはどうかということを最初は県御当局とも相談をしたのでございますけれども、まず何といっても地元のもめごとでございますから、地元でもめごとをさばくと申しますか、相談に乗ってさばく場所をつくるということがまず必要ではないか、商調法というものに乗り出す前にまずそういう場所をつくったらどうかということで、紛争の当事者と、それから商工会議所の責任者と、それに県と通産局、この三者が入りまして、紛争の調停の場所をつくったわけでございます。この調停の場所のお話し合いが非常にスムーズにまいりまして、それで大型スーパーも節度ある御商売の態度をおとりになる、それから地元の小売り商の方々も納得される、こういうことで非常にうまくいったわけでございますが、この方式は非常にいいと思っておりますので、全国の都道府県におすすめをしようと——通牒というと非常にかた苦しい話でございますけれども、むしろおすすめしよう、そして紛争解決にこういう場所を使っていただくということがいいのではなかろうか。そういうふうな場所ができますと、かりにこの場所でもってなおかつ紛争が片づかぬという場合には、すぐそれから商調法のほうにつないでいくというふうなことも可能であろうと思っております。
  154. 竹本孫一

    竹本分科員 時間が来たようでございますから、もう一つこの点はっきりしておきたいのですが、おすすめというのは、おすすめが徹底するかどうかも問題ですし、すすめられただけでもどうにもならぬということがありますので、やはりこれはいまの松山の例をお引きになりましたけれども、これは御承知のように大問題が起こりまして、あそこの中小企業からいえばB52が落ちてきたぐらいの大騒ぎだったろうと思うのです。だから、たまたま各方面も一大事を控えて非常に連絡がうまくいったと思うのです。きわめて例外的な場合じゃないか。だから、例外的な場合をもって一般を律するわけにはいきませんので、やはり法の改正等についてもひとつ検討していただくし、同時に一応はいまの段階でおすすめをされるというならば、それも確かに意味のあるやり方でございますから、ぜひ周知徹底を早急にやっていただいて、小売り商の連中にやはりスーパーが来てもこういうふうにしてわれわれは守られているんだという安心感だけははっきり与えるようにしていただきたい。強く要望をいたします。  それから最後にもう一つだけ、簡単でけっこうですが、そういう小売り商の過当競争の問題で、おふろ屋さんだとかお薬屋さんでしたか、小売り商等について一定の距離制限がありますね。距離制限、こういうことは将来いろいろな商店等の場合についてもお考えになるのかどうか。私はある程度考える必要があるのではないかと思いますが、それだけ承って終わりにいたしたいと思います。
  155. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 現在の一般の小売り商について、距離制限を考えるという段階には至っておりません。
  156. 竹本孫一

    竹本分科員 終わります。
  157. 湊徹郎

    ○湊主査代理 島本虎三君。
  158. 島本虎三

    島本分科員 大臣にちょっとお伺いいたします。  これは新全国総合開発計画経済企画庁から出されて、第三次案まで出ておるようであります。この中で、計画の主要課題、その一に新ネットワークの形成、こういうようなものがございます。その中には、「中枢管理機能の集積と情報を含めた物的流通の機構を広域的に体系化する」新しいネットワークを整備する、そして、なお情報通信網の形成を詳しく載せてあるわけであります。先ほども河本郵政大臣に聞きましたところが、その主要な部分をなす昭和四十年度を基準年度にして、六十年度を達成目的にしている、この中で取り上げている情報網の確立、こういうふうな中の一つとして、データ通信、この問題については、河本郵政大臣は、電電公社に独占させないで民間にも一部開放する、こういうようなことを言明されておるわけであります。これは聞きましたところが、そのとおりであります。通産省としては、今後情報会社というようなものをつくったりして別に運営するような構想なのですか、どうですか。この構想をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  159. 大平正芳

    大平国務大臣 情報産業は、まだいわば濫觴期にあるわけなのでありまして、いろいろのミッションが先進国に行きましていろいろ御報告をいただいたり、それから私どものほうでも産業構造審議会のほうで御審議をいただいておるわけでございまして、まだ確たる方針が立っておるわけではございません。ただ、いままでの状況を見ておりますと、民間のほうからは、いま御指摘の電電公社が独占しておりまする通信回線は、民間に一定の条件で開放していただくということにしないと動かぬ、そういう声が非常に強うございます。そこで郵政省のほうも、郵政大臣が言われたような方向でお考えをいただいておるだろうと思います。  それから私どものほうは、産業官庁といたしまして、コンピューター産業育成、それから要員の育成、養成、そういったことをここ数年来ぼつぼつやってきたわけでございまして、これから情報産業が大きなキーインダストリーになるだろうということは見当がつくわけでございますが、日本情報産業のあり方がどうあるべきかということにつきましては、目下政府におきましても、民間におきましても鋭意検討中でございまして、これで行くのだというきちっとした定立した政策がまだあるわけではないわけでございます。
  160. 島本虎三

    島本分科員 それはどうせ郵政審議会のほうに諮問されて、それには当然通産省意見も反映されることだと思います。しかし、今後の一つの大きい見通しの明るい産業である、こういうふうなことからしても、これには完全に間違いなく対処するような状態でなければだめだ。それに危惧される問題としては、米国なんかの電子計算機メーカー、こういうようなものによって情報産業が制圧されるようなおそれがあるかないか。これはやはりあまりそういうようなことをさせては困るわけでありまして、この点は厳に注意しないといけない問題ではないかと思います。それと民間企業では情報の機密保持、こういうようなものが、開放された部分の運営に対してどうもできないのではないか、こういうふうな心配もあるわけであります。こういうような点は十分責任と予防を考えてこれに対処するのでなければ、今後また重大な問題になっては困りますので、この点は十分考えてもらいたい、こういうふうに思いますが、大臣よろしゅうございますか。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり、コンピューターの製造業、またその技術水準、これはまだ非常におくれておりますので、いま仰せのように自由化の嵐にさらすというわけにはいかないだろう。そこはよほど警戒してかからなければいかぬだろうと思います。まだ情報をいろいろ計算しておるという段階でございまして、情報を処理し、加工してそれを売るというようなところまで日本の場合はまだ全然いっていないわけなのでありまして、全くこれからなのでありますから、いま御注意になったような事項を、われわれの政策立案にあたりまして当然検討すべき課題であると考えております。
  162. 島本虎三

    島本分科員 十分検討しておいてもらいたいことをお願いしておきます。  次に、大体公害問題に対する基本的な考え方を伺いたいと思います。それは二月の十七日だったと思います。それは日本経済新聞によりますと、関西の経済同友会の次期代表幹事であります鍋島綱利という方ですが、これは住友電気工業の社長さんです、その談として新聞に出ておりましたが、西独、英国、イタリアを回ってきたが、西独では山の中の工場でさえ徹底した公害防止対策を講じておる。わが国の場合、国、地方公共団体の役割りと企業の責任がまことにあいまいである。公害防止は企業経営者の責務と考え、適正な社会的費用は積極的に負担していく必要がある。このとおり書いてあるわけであります。私はこれを見て、やはりこういうような人たちの考え方が全企業に行き渡ってほしい、つくづくそう思ったわけであります。それで、閣議で今度は亜硫酸ガスの排出基準がきまりました。その際に大臣は談話を発表されました。しかし、環境基準達成の助成策、国のためにすべきこの施策、大部分これに依存しておるようであるけれども、これは悪いとは言いませんけれども、産業界の協力義務、これが第一義であるはずなんでありますが、大臣のあの中に、国の責任を強認するあまり、あまりにも産業界に対しての協力義務、こういうようなものを言っておらないようであります。もう関西の同友会の次期代表幹事といわれる人でさえこうはっきり言っているのですから、企業に対しても、き然としてこれくらいの点は言っていいと思いますが、この談話の趣旨を見まして、私少し、国の責任、国の責任と強調するあまり、企業の責任、これが第一義であることを大臣はあまり主張なさらなかった。これは何か裏がございますか。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 それはあまりにも当然なことでございますから申し上げなかっただけでございます。
  164. 島本虎三

    島本分科員 当然なことであるから申し上げなかった、そうすると、企業の責任は第一義、これはもう当然であるから言わなかった、こういうふうに理解してもいいわけですね。まことにけっこうでございます。  そうして、今後産業界を強力に指導していかなければならないはずであります。そういたしますと、工場などの新設、増設、こういうようなものに対してはやはり許可制ぐらいにしないと、規制の実効はあがっていかない、こういうように思うわけです。企業はやはりこれくらいはやらないと、公害防除のいろいろな施策をするためにつぶれた工場なんというものは、私不明にしてまだ聞いておりません。今後公害を防除するような企業、産業はこれから大いに伸びるわけでありますが、これからは許可制くらいにしないと実効をあげていけない、こういうように思うのですが、これに対して大臣はどのようにお考えですか。
  165. 大平正芳

    大平国務大臣 私は就任以来、各業界の代表首脳者との懇談会をずっと持ちましたけれども、総じて私の予想以上に公害対策に対して熱心であるようです。それで私は、日本産業家が公害をないがしろにしているとか、公害は二の次だとか、そういうような考え方ではないと確信をいたしております。  それから、許可制にしたらどうかというような点は、お説のとおり考えております。
  166. 島本虎三

    島本分科員 今後は新増設については許可制にするという前提で大いに指導し、各省間の連絡を十分とっておいてもらいたいと思います。  次に、東京電力ですか、ここと美濃部都知事との間に十五項目にわたりまして、いろいろと協定をなさったようでございます。その原文は見ておりません。しかしそのポイントは、硫黄分の少ないミナス系の重油、この使用によって亜硫酸ガスの排出量を減らして、昭和四十八年には四十二年の半分以下にする、大体こういうような考えのようであります。これはまことにけっこうな話です。法的な権限によるものじゃなく自治体と企業の間のいわば私的な契約で、これほどまでに協力しておるということはなかなかいいと思います。しかし、やはりこういうような重油が中小企業のほうにも行き渡らないと、実際の効果をあげることができないわけです。しかし残念ながら、この輸入量が少ないというような欠陥があるようであります。  したがって、今後は硫黄分の多い中近東原油の輸入よりも、硫黄分の少ないソ連なんかの石油や天然ガスの輸入をするためには、やはり、自由化ではございませんけれども、貿易構造の転換、こういうようなものも考えて指導すべきである、そういうようなことが実効をあげる一つの要因にもなる。しかしながら、現在のところではその自由選択度は二四ぐらいしかない、こういうふうにいわれておるわけですが、通産省としてもこの点は大いに画期的な意欲を持って指導すべきである、こう思いますが大臣いかがでございますか。
  167. 大平正芳

    大平国務大臣 私の理解では、対ソ貿易はきのう計画がきまったようでございますが、毎年日ソ両国で協定を結んで貿易が行なわれているわけでございます。とりわけ石油につきましてどこのを押えるとか、そういう政策を実行しているわけでは決してないわけです。むしろそれは貿易協定上の、お互いにバランスのとれた貿易をやっておりますから、合意した品目と数量を入れる、そのような貿易をやっておると理解をしておるわけでございまして、あなたのお説によりますと、むしろ貿易協定でもう少し石油をふやしたらどうだという御意見として承っておきます。
  168. 島本虎三

    島本分科員 次に進みますが、公害防止事業団の件について、ちょっと大臣に基本的な考え方を伺っておきたいと思うのです。  先般、私ども公害の点検をした際に、いろいろ中小企業から質問を受け、またその意見を聞いたりしてみましたところが、中央に公害防止事業団があるということを知らない企業が意外に多かったのであります。これはやはり中央に本部一つしかありませんから、地方に出先がありませんから、それはやむを得ないと思う。しかし、この貸し出しを見ますと、大企業の場合は九三%もこれを借りているのに、中小企業と目される部分は七%しか借りておらない。この公害防止事業団はむしろ逆の比率にして貸し出すのが当然なんですが、何のためにこういうような比率が出てきたのか、まことに残念なことなんです。これは中小企業、こういうようなものの貸し出しを今後強化してやっていかなければならないはずなんですが、この九三%と七%の比率は、私はなかなか納得できないわけですが、どうしたことでしょう。
  169. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 公害防止事業団につきましては、来年度、四十四年度でございますが、画期的に事業を強化しようということで、財政投融資も前年度の五十五億に対して百億とふやしましたし、特に中小企業関係には重点を置いていきたいと考えております。中小企業に対します共同公害防止施設に対する融資等は、金利の引き下げを来年から行なうことにいたしまして、貸し付け対象によりまして〇・五%ないし一%の引き下げというような措置を講じまして、重点を注いでおります。  中小企業に対する徹底のしかたでございますが、従来から通産局長を使いまして徹底をさしているつもりでございますが、さらに一そう努力させていただきたいと思います。
  170. 島本虎三

    島本分科員 大企業は九三%、中小企業七%、この比率は、いかにこれは努力したといっても、そのあとの数字になってあらわれてこない限り、今後支店を設けるかまたは何らかのPRを行なうか、比率を逆転させることも皆さんのほうで努力してやってほしい、こういうふうに思うわけなんです。画期的な対策をと、こういうことでございますが、若干は認めます。しかし、これでどうでしょうか、中小企業振興事業団がございまして、共同公害防止施設の設備資金への融資の部分があるわけでございます。そして、公害防止事業に対しては無利子ということになっておりまして、そのほかに工場の団地事業、こういうようなものに対しては二・二%の利息。公害防止事業団の場合は、利息は去年はまさに六・五%から六%に下がり、本年また五%になった。これは、二年も続けて下がったということはいいことです。しかしながら、まだ依然として中小企業振興事業団とこの公害防止事業団との間にこういう差があるということは、望ましいことではないのではないか、こういうふうに思うわけなんです。少なくとも予定どおりに三・五%ぐらいまで下げるように、利子補給もさせるように当然努力をすべきである、こういうふうに思うわけであります。この点はいかがでございましょうか。
  171. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 一挙に下げられれば一番好ましいわけでございますが、極力努力をしたつもりでございますが、順序を追って下げさせていただきたいと思います。
  172. 島本虎三

    島本分科員 そうだった場合には、これはやはり中小企業振興事業団の方面のワクを広げて、そしてこの方面に対して強力に指導を働きかけたほうが結局は公害防止の事業の実があがるということに相なるじゃありませんか。これは同じ目的のものがあるんですから、その場合にはやはり公害を防止するための施設に対しては公害防止事業団がこれを行なうというんだ、こういうようなことが正しいんです。しかしながら、その正しい利用の方法によると利息が高いというんじゃ困るんです。ですから、これはせめて中小企業振興事業団、この辺の条件まで下げてやる、こういうような考えが当然だと思うのです。まあ皆さんの努力が認められないわけじゃありませんけれども、年々、こう下がったということは、これはいいことだ。しかしまだ差があるということです。努力のあとを認めないわけじゃありませんが、一そうの努力を期待したいわけです。来年は三・五%、だいじょうぶですか。
  173. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 中小企業の振興事業団のほうは、共同排水処理施設ということで、施設の対象が異なっておりますので、その間の調整等なお検討したいと思います。共同排水処理施設自体のワクもできるだけ大きくしていきたいと考えております。
  174. 島本虎三

    島本分科員 時間もだいぶなくなって、短くて残念です。もう少しこれやりたいのですが……。  大臣、これはどんなものですか。茨城県の鹿島の臨海工業地帯でございますが、これは今度のいろいろな亜硫酸ガスの基準によって、事前防止グループであったはずのものが、今度は五年後達成グループのほうになったようであります。そしてこれは、県のほうでもそれじゃ困るということが新聞談話として出ております。また、四日市のほうでは、あれほど被害が起きて、これは一日も早くやってもらいたい、いまの基準ぐらいだったらだめだ、こういわれている四日市、これが五年ぐらいでやろうとするならいいんですが、十年以内のグループにこう下がっているようです。努力は認めるにしても、これでは靴の裏から足をかくようなあんばいで、なかなか容易なことじゃなかろうと思いますけれども、これはこの程度じゃ満足できないと思うのです。まして、住民のほうでもそれ以上の期待をしているわけです。このグループから、もう一つ短いほうのグループにこれは転換させるべきだ。一つは四日市、一つは今度茨城県の鹿島臨海工業地帯、この二つに限ってやってもよろしいと県当局でも言っているそうですけれども、なぜ国のほうでやらぬのですか。
  175. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 最初に四日市のほうから申し上げますと、四日市のほうはいまだ、いわゆる十年ものになるか、五年ものになるかきめてございませんです。いずれ公害防止計画というのが各省で相談いたしまして、公害基本法の十九条で内閣総理大臣が関係都道府県に指示することになっておりますが、その際において、十年ものにするか五年ものにするか、とくと相談いたしてきめたいと思います。  それから、次に問題の鹿島でございます蚕鹿島につきましては、いわゆる五年ものに形式的には入っているわけでございますが、ここで誤解のないように県にも説明しているわけでございますが、五年ものになっているからといいまして、決して五年間の途中において環境基準をオーバーしてもいいということではないわけでございまして、当初から環境基準をオーバーしないようにつとめていきたいわけでございます。実はこれを第三グループの新たに大規模の工業開発を予定されている地域というふうにすることも検討したわけでございますが、鹿島につきましては、二十三企業というものがもうすでに予定されておりまして、ほぼ工業用地も全部そこに払い下げしておりまして、全部計画が確定してございますので、やはりこの第二グループの、現に大規模の工業開発が進行している地域というふうに解せざるを得ないわけです。このまま放置しておきますと、実際問題としてあるいは環境基準をオーバーするような事態になりかねない。むしろ第二グループに入れまして、第二グループにおきましては、新増設に適用する基準というものがございまして、これでがっちりコントロールできるシステムになっておりますから、むしろ第二グループに入れまして、そうして放置すれば環境基準をオーバーするかもしれないものをむしろここでがっちり押えて、絶対に環境基準を越えないようにいたしたい。そういう配慮から第二グループに入れたわけでございまして、繰り返しますが、黙っていればオーバーするかもしれない、しかし、第二グループに入れまして新増設の環境基準というものを適用して押えれば、五年後はもちろんのこと、五年の前におきましても絶対環境基準をオーバーいたさないようにする所存でございます。この点につきましても、茨城県のほうにも先般十分説明いたしまして、十分御了解を願うようにいたしております。
  176. 島本虎三

    島本分科員 四日市の場合には、これはやはり五年後達成グループのほうに入れるのが妥当だというふうに思っているわけです。まだきまっていないのは、知っているのです。ただ、最近十年間のほうの意向が強いのだ、十年でなければだめだというような意向が強いのだ。それだから心配しているわけです。いまのようにきめる場合は、五年グループの中に入れて完全にやるように心から期待しておきたいと思います。大臣、こういうような問題でございますから、この点はよく御理解を願いたいと思います。  それからもう一つ。これからはっきり基準をきめていろいろ条件に合わせてやろうとするのに、これが五年グループのほうがいいんだというような理由づけは初めて聞きました。しかしながら、これは五年グループであろうと、これからやる事前予防グループであろうと——事前予防グループにしておいたほうが一番いいはずなんですが、ちゃんと規制できるのだから、あらゆる点で規制できるのだから。五年後達成グループのほうが妥当だ、その考えはどうもあいまいです。初めから強い規制ができるようなところを弱い規制にしておいて、それのほうがいまあるからいいんだ、そういうことだったらやはり指導の方法は的確じゃない。四日市をなるべく五年グループに入れるようにしてもらうのはいいとして、鹿児島の場合には事前予防グループに入れるほうが私は正しいと思う。五年後達成グループのほうがいい、こういうふうに言われるならば何をか言わんやですが、五年後達成グループが事前予防グループより絶対いいんだということをもう一回説明していただきたい。
  177. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 第三グループと申しますのはまだ工場の計画が出ていない地域を予定しているわけでございまして、たとえば周防などのようなものが将来大規模工場地帯としてできるわけでございますが、そういうものにつきましては、最初の、工場がどういうふうに計画されるかという立地計画段階から立地政策を十分活用し、それから住宅等の関係は土地利用計画、そういうものを考えてやるような仕組みになっておるわけでございますが、鹿島は不幸にして先ほど申し上げましたように、もうすでに二十三企業がべったり計画ではりついておるわけでございまして、このまま立地政策の段階でやるというわけにはまいらない。手法といたしまして、第三グループの手法は使えないわけでございます。今後環境基準を絶対オーバーしないようにやるつもりでございますが、そのためには第二グループで用いられております新増設の基準というものでがっちりコントロールする以外に、その環境基準をオーバーしないための手法がないわけでございます。そういう意味であえて第二グループに入れたわけでございます。
  178. 島本虎三

    島本分科員 最後にもう一問。これはほんの身近な問題なんですが、外の街頭についている電灯なんです。この電灯はそれぞれ町内会やまたは個人負担、こういうようなことになっておりますが、実際はこれは交通事故防止や犯罪の防止にも大きく貢献しておるわけなんです。しかしながら、これを明るくすればするほど各家庭の自己負担がよけいになってくる。こういうような点で、だいぶ負担増に苦しんでいる傾向が最近とみに多くなってきているようであります。それで町を明るくする第一の条件である街灯、その街灯の料金を負担している地域住民の負担をまず軽減してやる、そして整備拡充を容易にする必要がある、こういうふうに考えますけれども、街灯料金を大幅に下げるためには、電気会社に対して、値下げした分は当然税法上の損金として算入できるような特別措置をしてやる必要があるのじゃないか。こうしたならば現在でもすぐこれは可能になるのではないか、こう思いますが、この権限は電気事業法第二十三条によって通産大臣にあるわけでございまして、通産大臣もその点を十分考えて、町を明るくするためにも損金に繰り入れてやる、こういうようなやり方を取り上げて明るくしてやってほしい、こう思うわけですが、大臣、最後ですから的確な御答弁を願いたいと思います。
  179. 本田早苗

    ○本田政府委員 御承知のように電力料金は適正な原価に適正な利潤を加えたもので、かつ特定の者に対して不当な差別的取り扱いをするものでないことということになっておるわけでございます。  御指摘のように街路灯につきましては一割割り引きしております。これはいかにも政策的に、いま先生おっしゃったような目的に沿うた用途だから割り引きしたように見えるわけでございますが、実はおっしゃるように市町村あるいは商工会あるいは町内会というふうな、まとめて契約をしていただいておりますために、集金経費がかなり軽減されておるわけでございます。そういう蓋然性でいきまして約一割ほど安くなるというところから、一割引きを各電力会社とも行なっておるという事情になっております。  それから、いま御指摘のように税金等で安くしてはどうかという趣旨に沿いましては、電気ガス税の税金につきましてはこれは免除ということになって、通常七%かかる電気税は免除されておるという事情になっております。  それから、大臣の権限で料金についてとおっしゃられるわけでございますが、原則はいま申し上げたような原則に従ってきめるということになっておりますので、それ以上のやり方というのはなかなかむずかしいという事情にあるわけでございます。
  180. 島本虎三

    島本分科員 もうすぐやめますけれども、戦前は街灯については無料だった。しかしこれは占領期間中にGHQの行政指導によって、このアメリカ的な体制に組み入れられてこれが有料になって、その後一〇%下げておる、こういうようなのが年次的にあった。一〇%より下がっておらない。それでもたいした負担だから、これを何とかしてやってもらいたい。この権限は通産省にあるのだから、何とかやってもらいたいと電力会社のほうに何度訴えてもだめだとか、こういうような方法ばっかり考えないで、あらゆる方法を考えてやったらいいじゃないか。そういうような官僚的な答弁ばかりしないで、こういう実際の苦しみを訴えているわけですから、その点は可能性をさがして、その趣旨に沿うてこれくらいがんばらないとだめです。——あなたはいいよ。大臣の政策的なことを聞きたい。
  181. 本田早苗

    ○本田政府委員 質問の御内意を受けまして……。  戦前無料であった時期があるということにつきましていろいろ手元を調べたわけでございますが、まだ街路灯が無料であったということはないのでございます。ただ一つ、戦争中に出征軍人あるいは戦病死者の場合に定額電灯について一灯だけ無料にするという制度がございましたが、戦後廃止になっておるという経緯が一つございます。   〔湊主査代理退席主査着席
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 電気事業法で料金の算定につきましての一つ基準があるようでございまして、その原則に従いまして私が電気料金を認可するということと理解しておるのでございます。でございますから、その原則に一つの例外を設けるということになりますと法律事項になるのではないかと思いますが、せっかくのお話でございますので、なおよく検討させていただきます。
  183. 島本虎三

    島本分科員 検討をお願いして、これでやめます。
  184. 植木庚子郎

    植木主査 次に松本忠助君。
  185. 松本忠助

    松本(忠)分科員 重工業局長に伺いたいわけであります。  東京都の板橋区に中小企業の双眼鏡の製造業者が密集しております。これはほとんどが輸出向けの双眼鏡を製作しておるわけでございます。しかも、この輸出の数量が相当伸びてまいりましたのにもかかわらず、国内の取引価格が下落をいたしました。ちょっと古くなりますが、四十一年の一月ころには生産能力が輸出業者の発注を上回る状態になりまして、大体一台が二千八百円程度まで下がってまいりました。二千五百円になりますと採算割れの状態になります。四十一年の末には二千五百円程度まで落ちてくる投げものも出まして、業界が壊滅状態になりまして、経営のずさんさから倒産をするものが相次いで起きました。その後、輸出双眼鏡の業界が体制を整備しなければ共倒れになりかねないということから、業界が四十二年の四月にその体制の整備をいたしまして、輸出双眼鏡業界体制整備協議会、こういうものが発足を見たわけでございますが、その後同協議会の活動状況がどうなっておるか、この点をお伺いしたいわけであります。
  186. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまお話しございましたように、双眼鏡の業界は、その中心でございます完成品のメーカー、製造業者ほとんどが中小企業者でございます。また双眼鏡関係の関連の供給業界も非常に多岐にわたっておりまして、それに加えましてまた輸出業者も零細な企業者が多いということのために、従来から中小企業団体法でございますとか、あるいは輸出入取引法に基づきまして、各種の規制がそれぞれの業界について行なわれておったのでございますけれども、やはり個々の相互の利害を調整いたしまして、これらの規制措置の円滑な実施をはかるということのために、いまお話しございましたような双眼鏡業界の九団体が集まりました話し合いの場として、輸出双眼鏡体制整備協議会というものが設立されたわけでございます。設立後今日までの二年間におきまして、おもな事業といたしましては、完成品の輸出向けの出荷を八協同組合を通して輸出をするというようなこと、あるいはまた輸出数量の規制の内容をこの整備協議会におきましてだんだんと改善いたしておりまして、自己ブランドのあるものでございますとか、あるいは高級品の輸出を自由にするとかいうふうな内容の改善をはかっております。今後ともこの協議会の持つ機能は非常に大きいのではないだろうか、このように考えております。
  187. 松本忠助

    松本(忠)分科員 大体輸出の双眼鏡の業者といいましても、九九%は中小業者でございます。その実態をわれわれは常に見ているわけでございますが、現在日本にはこの種のメーカーは何社くらいあるのか、その点を聞かしていただきたい。
  188. 吉光久

    ○吉光政府委員 全体といたしまして完成品メーカー百六十五社でございまして、うち七社を除きましては中小企業の定義に入る企業者でございます。その内訳を申し上げますと、資本金百万円以下、この企業体が九十九社、六〇%でございます。また従業員二十人以下の企業が百二十六社、七六%というふうに、中小の中でも零細企業と申しましょうか、小企業のほうが大きなウエートを占めております。
  189. 松本忠助

    松本(忠)分科員 それらの業者が苦心して、いま日本のいわゆる外貨獲得のために努力をしているわけでございますが、現在世界の市場に輸出されておりますそのうちで、わが国から輸出する分、どれぐらいのシェアを占めているかについてお聞かせを願いたい。
  190. 吉光久

    ○吉光政府委員 わが国輸出双眼鏡の最大の輸出市場はアメリカでございまして、これで日本輸出の約五四%がアメリカに向かっておるわけでございます。特に、すべての国を含めてアメリカが外国から輸入いたしております双眼鏡の中で、わが国の製品の割合は九五%前後、非常に大きな数字を占めております。それから、第二の輸出市場は西ドイツでございますけれども、昭和三十八年以来、着実に西ドイツ向けの双眼鏡も輸出がふえておるわけでございますが、西ドイツが輸入いたしております総輸入の中に占めます日本品の割合は約九〇%でございまして、これも圧倒的に日本の双眼鏡の市場でございます。その他イギリス、カナダ、オランダ、いろいろの市場に出しておるわけでございます。
  191. 松本忠助

    松本(忠)分科員 それでは、その輸出の総体の金額は幾らぐらいになるか、四十二年と四十三年……。
  192. 吉光久

    ○吉光政府委員 四十二年度におきまして、億で申し上げまして、輸出金額が百億円でございます。四十三年が百十三億円、こういうふうになっております。
  193. 松本忠助

    松本(忠)分科員 それで、私の承知している四十一年が大体百十四億円だったと思いますが、百八億円、百十三億円、いずれも百億円台を突破しておりますし、たいへんな外貨をかせいでいることになると思います。  今後一そうその輸出振興をはかるためにどのような施策が必要なのか、その点について御当局の考えを聞かせてもらいたい。
  194. 吉光久

    ○吉光政府委員 従来、双眼鏡の輸出に関しましては、現在ございます軽機械の輸出振興に関する法律、これを中心にいたしまして振興事業をはかっておったわけでございます。その法律は、この六月三十日までに廃止するものとするというふうにこの法律規定されておるわけでございまして、私どもといたしましては、大体この法律の使命を達成したものと考えて、この廃止期限が到来いたしますのを機会に、この国会におきまして廃止法を提案いたしたいというふうに考えておるわけでございますけれども、その後の体制の問題といたしましては、従来は、日本双眼鏡輸出振興事業協会という特殊法人が設立されておったわけでございますけれども、新たに日本輸出双眼鏡協同組合連合会というものが設けられましたので、ここでやっておりました事業は、この協同組合連合会で全面的に引き継いで実施いたすということにいたしておるわけでございまして、関係業界でも、そういう姿勢でやってまいりたいということを意思表示をいたしております。  なお、外国にございます、ジェトロの下部機構になっております軽機械センターを通じます双眼鏡輸出振興事業につきましては、これはそのまま残しまして、ジェトロを通じての補助というものも従前のとおりにやってまいりたい、このように考えておるわけでございます。  また、輸出秩序の問題でございますけれども、現在せっかく製造業者間におきまして集約化されました八協同組合というものがございますので、それを中核にいたしまして、先ほどお話しございました双眼鏡の体制整備協議会、そこらの意見を尊重いたしながら、団体法あるいは輸出入取引法等の法令を適切に運営してまいりたい、このように考えております。
  195. 松本忠助

    松本(忠)分科員 外国に輸出されました双眼鏡について、その後のいわゆるアフターサービスがない。このアフターサービスを充実せよ、あるいは長期的な取引によって価格を安定せよ、こういう希望がきているということを聞いておりますが、この点はどうでしょうか。
  196. 吉光久

    ○吉光政府委員 具体的な問題としてのお話はまだ承っておらないのでございますけれども、そういうこともあり得ようかと思います。やはり海外にせっかくこれらの軽機械関係の輸出振興の事業をやるためのセンターを置いておりますので、そこらのセンターの活動をさらに強化いたしまして、いまのようないろんな苦情に早急に対処できるような体制というものを整える必要があるのではないであろうか、このように考えます。
  197. 松本忠助

    松本(忠)分科員 中小企業庁の長官に伺いたいのですが、いまお話を担当の局長からいろいろ伺いまして、輸出の双眼鏡の業者が一応の体制が整備ができて、昨年度の輸出の総額が百十三億円、こういうふうな多額の外貨をかせいでいる。これに対しまして、政府のいわゆる三機関、中小企業に対する金融の三機関の融資の総ワクはどれくらいか、この点を聞かせてもらいたいと思います。
  198. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 中小企業金融公庫では、四十三年度、これは四月から十二月でございますが、一億三千百万円、これは顕微鏡と望遠鏡が若干入っておりますが、主として双眼鏡のアセンブラー及び部品メーカーと考えていいと思います。それから、ちなみに、四十二年度はフル年度で二億円であります。  それから、国民金融公庫のほうは、これは業種分類が双眼鏡だけでとっておりませんで、非常に多数の業種が入っておりまして、十五億六千二百万円というのが四十三年度の四月−十二月、同じく、四十二年度フル年度で十六億三千五百万円という数字がございますが、これは医療機械から理化学機械までずっと入っておりますので、主として板橋地区の業者でございますから、国民金融公庫の王子支店が扱っておると思いまして、そちらで調べましたところ、おおむねでございますけれども、一億五千万円程度という数字が一応手元にきております。  それから、商工中金でございますが、四十三年度の四−十二月で、十二組合に対しまして三億六千五百万円、四十二年度は三億八千七百万円、こういう数字が出ております。
  199. 松本忠助

    松本(忠)分科員 いずれにいたしましても、政府関係の金融機関は、結局は、市中の金融機関等で貸し付けがむずかしいものを補完的に金融するという役目を持っているのではないかと思うのです。そうするならば、やはり中小企業金融公庫あたりが主体になって、それらの双眼鏡の業者のような小規模零細の貸し付けをやらなければならないと思うわけであります。外貨を獲得する割合からいっても、年間二億円くらいの程度では非常に少ないと思いますが、この点はもう少しふやすわけにいかぬのですか。
  200. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先生指摘のように、政府の機関は民間金融機関の補完ということでやっております。なお、この双眼鏡は、先生指摘のように、非常に大事な輸出業種でございましたし、それから、このために特別の軽機械輸出振興法もございましたし、近代化促進法の指定業種ともなっておるというふうなことで、政府としてはむしろこれは力を入れておる業種でございます。したがいまして、中小公庫なり国民公庫なりに融資の御要望があれば、これはむしろ優先的に御用立てするという態度で実はいっておりまして、商工中金なども、現在三億五、六千の融資残でございますが、かつてアメリカの双眼鏡が売れませんときには、五億ぽんとまとめて滞貨融資をしたという経験もあるわけでございます。したがいまして、必要なお金は、私たちは双眼鏡については極力御用立てするというつもりでおります。
  201. 松本忠助

    松本(忠)分科員 たいへん心強いお話を聞きましてけっこうでありますが、実情はなかなかそういってない。われわれの承知している限りにおきましては、お百度参りをしなければやはりなかなか出てこないわけです。そこで三公庫の四十二年度の一件当たりの貸し付け額は幾らくらいになっていますか。
  202. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 中小公庫は、一件当たり直貸しで二千八十万円、代理貸しで四百七十万円。それから国民公庫が七十六万円、商工中金が、これは組合貸しでございますが、五千三百九十八万円ということでございます。
  203. 松本忠助

    松本(忠)分科員 組合貸しのほうはまあ別の問題として、個人が窓口へ足を運ぶということになりますと、実際問題としてなかなか出ておりません。そこで、これは本来からいえば、中小企業金融公庫の担当の人に来てもらって、その態度についても聞きたいわけでございますが、窓口においては、その取り扱いがどうも十分でないというふうに私たちも思います。最末端の窓口の状態などは長官はごらんになったことがあるかどうか。
  204. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私たち中小企業行政に携わっております者といたしましては、特に中小企業者に接しておる現場の機関の態度は非常に大事でございます。先生指摘のとおりでございます。したがいまして、その件につきましては、私たちは常時三機関の首脳部と定期的に会談をいたしておりまして、御苦情等も耳に入りますと、すぐその場で披露して究明するというふうなことをやっておりますが、何と申しましても、そういう数の多い支店でございますし、それから特に金融というのは、金融を受ける能力が片一方にまたあるものでございますから、もちろん親切には融資を申し上げていると思うのでございますけれども、その辺のところがいろいろ問題があって、かたがた御要望に沿ってないという部分もあるかと思いますけれども、今後とも十分に関係機関の監督、督励をいたしたいと思います。
  205. 松本忠助

    松本(忠)分科員 お話がありましたので、大いに長官が現場に出張って、その実態を見てもらって、そして改善をしてやっていただきたい。そうして中小企業者を守っていただきたい、こう思うわけであります。実際問題として窓口が不親切だという声はまだございます。  それから、貸し付けに至るまでの期間が相当長いわけです。その一つのネックと申しますか、東京の場合おくれるのは、結局東京都の信用保証協会、ここの事務がかなりおくれているように思うわけでございます。またその信用保証協会が、最近は品川、池袋などにもできたようでございますけれども、いままでやはり取り扱いの場所が少なかった、こういう点から迅速化されていない、まだ相当に日数がかかるわけでございます。どうかこの保証協会の手続等も迅速にしてもらいたい、こういう点について長官のほうからでもお話がいただければたいへんいいのではないかと思うわけでございます。この点どうでしょう。
  206. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 金融機関の貸し付け所要日数は、中小公庫、国民金融公庫、——中小公庫は、どうも比較的長いようでございます。これは新規の方が多いのと、それから普通金融機関は普通預金とか貸し金とかでしょっちゅう出入りというか、ふだん接しておられるので、融資先の経理内容もよくわかっておるので、市中金融機関は比較的早いのでありますけれども、どうも私たちの持っております金融機関、中小公庫、国民金融公庫は、いわば新手のお客さまが多い。しかも預金業務を扱っていないという面で、貸し付けまでの期間が比較的長くなる、御指摘のようなこともございますので、私は極力督励し、だいぶこのごろは短くなってきていると思います。中小公庫におきましては、四十三年度は三十五、六年度に比べまして一週間程度短くなっておるというふうに承知しております。  それから保証協会でございますが、これは特に小口の方に対してはすみやかに保証事務を完了するようにということを督励いたしまして、現在では五十万円以下の小口が三、四日程度で保証事務を完了しているようであります。それから大口になりますと七日程度。ただ年末等の繁忙期になりますと、若干どうも遅延をするという状態があり得ると思います。  先生指摘のようなことはまことにごもっともでございますので、今後とも窓口業務の改善に努力をいたしてまいります。
  207. 松本忠助

    松本(忠)分科員 けっこうであります。どうかそのいまのおことばをお忘れなく、ひとつ督励をして、すみやかにやっていただけるようにお願いしたいと思います。いわゆる中小企業者に言わせますと、お役所のすることは少なくとも血が通っているとはいえない、こういうことを申しております。実に残念なことばだと思うわけです。こういう非難の声を聞くということは、私どもも残念でございます。どうか血の通った、ほんとうに真心を込めた指導をしてやっていただきたい、育成をしてもらいたい、こういうふうにお願いするわけでございます。  それでは、次に移りまして、昨年の二月、いわゆる中堅企業の倒産が相次ぎまして、昨年の実績でございますと九百二十六件、そのうち資本金百万円以上のもの五百五十九件。今年はそういう傾向はあまり見えてないようでございますが、いよいよ来月三月を控えておりますし、年度末で各企業間同士の決済期に当たります上に、納税の時期ともダブってまいります。この関係上切り抜けに問題があるのではなかろうかと思いますが、当局の考えを聞かせていただきたい。
  208. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、昨年は倒産件数が二月ごろから三、四、五、六と非常に高くなってまいりまして、一千万円以上の負債総額のものでも月に千件をこえるというベースであったわけでございますけれども、幸いなことにだんだん金融引き締めの解除とともにでございましょうか、落ちついてまいりまして、現在のところは月六百件程度、しかしいずれにせよまだ大きな数字でございますが、こういうことであります。  しかし、一応だんだん落ちついてきているというふうに考えております。この三月でございまするが、落ちついてきておりますものの、何と申しましても、中小企業は国会でも各方面から非常に御審議いただいておりますように、いまある意味では脱皮の時期でございますので、私たちとしてはよほど注意して中小企業の状況を見ていかなければならない、そういうふうなことで、政府金融機関等をてこにし、信用保証協会等もてこにいたしまして、三月期には十分の注意を払ってまいりたい。しかし、私は、世上たまに聞くような危機とかなんとかそういうことには絶対にならない、そういう心配はない、ただ注意していかなければならないというふうに考えます。
  209. 松本忠助

    松本(忠)分科員 昨年の二月は、東京手形交換所におきます不渡り手形が三万九千四百二十一枚、取引停止処分が千八百十八件、前年同月に比べますと、それぞれ二%、また二・三%減少でございましたが、本年の二月ももうあと二日で終わるわけでございますが、ことしの状況はどうでございますか。
  210. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 昨年の二月は、私たちのほうの資料によりますと、不渡り手形が三十二万四千枚というふうな大きな数字であったわけでございます。三月にはそれが少し落ちまして二十八万四千枚ということでございますが、昨年末からずっと落ち着いてきておりまして、現在も落ち着いた数字をたどっておりますので、特に激変がない限りこの状況で落ち着いたかっこうで推移していくというふうに考えております。
  211. 松本忠助

    松本(忠)分科員 次に、問題をかえまして、中学卒業の人たちの問題でございます。若い労働力を要求する中小企業者といたしまして、この面が非常に不足してきております。三十八年に中学を卒業して就職した数が、全国では七十六万三千人、四十三年は四十万四千人、四十四年はおそらく三十五万一千人と予想される。そうなってまいりますと、二年後の四十六年三月には、中学を卒業して就職する人よりも、大学卒業の者のほうが多くなるといわれておりますが、こうなってまいりますと、名の売れている大企業が有利になりまして、中小企業のほうにはますます人が来なくなる。また中卒をいたしました者の初任給は、大企業よりも中小企業のほうが高いという逆の格差を生んでおります。これがもう半ば常識化しているわけです。これに対して長官はどのように指導し、中小企業の育成に当たるかを聞いておきたい。
  212. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 数字につきましては、先生いまも御指摘のとおりでありまして、労働力は毎年減ってきております。特に中卒者に対する需要と供給のアンバランスが強く、かつ中卒者が中小企業層に行かないということの数字になっております。私どもで調べました数字でも、百人の需要に対しまして、五百人以上の企業では三十七人とれているけれども、五百人以下百人までは二十六人、それから三十人までは二十人というふうなことで、二十九人以下でも同じく二十数名ということで、中小企業の下のほうからだんだん中卒者がとりにくくなっておる、特に取りにくくなっております。これは御指摘のとおりであります。  実はわれわれ大臣から指示を受けておるのでございますけれども、中小企業の政策で、いま端的に一体何をねらっておるかというと、結局ずばり申せば、この労働力不足に対しまして中小企業がどう適応していくかという一言に尽きるのではなかろうかと思います。それがために、それならばどうするかということになりますと、結局いわゆる体質改善の省力化、合理化ということが一つのきめ手、もう一つ技術対策、これは生産技術のみならず、製品に対する技術の勉強をして、高級品をつくっていく、こういう面が一つ、こういうことで切り抜けるようにするよりしようがない。そしてこういうことになりますれば、中小企業の職場が魅力のある職場で、高賃金を支払えることになるわけでございますから、結果として、だんだん人がよけい苦しくなりましょうが、大企業と遜色なく働く人がとれる、こういうことになる。こういうことを目がけて実は諸般の構造改善対策、近代化対策及び職場の環境整備対策をわれわれはとっておりますが、相呼応いたしまして労働省におきましては、この労働力を極力有効に活用する、定着をはかっていく、また宿舎等の環境整備をはかっていくというふうなことで、労働省と私たちとお互いに緊密に連絡をとりながらさしあたりの労働問題に対処している、こういうわけでございます。
  213. 松本忠助

    松本(忠)分科員 持ち時間も参りましたので、最後に大臣に伺っておきたいわけであります。  きょうは特に板橋区におきますところの代表的な中小企業であり、外貨獲得にかなり大きな力を発揮しております双眼鏡の業者のことを中心としてお尋ねいたしたのでございますが、いずれにいたしましても、中小企業の工場、商店、こういうものに対して最近の求人難あるいはまた金融難、こういうために経営者が困っている事実がございます。深刻な様相をしてこれらの人たちが私のところに悩みを訴えてくるわけです。これらの方々に融資の手続を教えたり、激励したりして帰しているわけでございますが、これらの金融機関から見放された——そう言うと、いまの長官のお話ではそういうことはないということでございますからたいへん心強いわけでございますが、この金融機関がなかなか思うように金を回してくれない、こういう点で悩みを訴えてきます。  そこで、これらの中小企業の人たちが十分に融資を受けられるように、また経営の相談、税務の相談、労務の相談など、あるいはまた輸出振興に役立つカタログのセンターであるとか、区内産業製品の展示会、こういうものが行なえるような中小企業の育成強化に威力を発揮できるところの中小企業センター、こういう施設をつくってはどうかと思う。各所にぜひひとつつくってもらいたい。現に、私のおります板橋区におきましては、これらの施設を一切整えたところの産業文化会館というのが近く竣工することになっております。こういうものに対して、通産省として大幅な援助を与える考えがあるかどうかを最後に大臣に伺って、終わりたいと思います。
  214. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の中小企業の労務、金融、税務、経営全体についての親切な御相談に乗るというためには、私どものほうでは経営指導員というのを全国に五千人余り配置し、その補助員もつけておりますし、また都道府県や六大都市におきましては総合的な指導所を設けて、コンサルタント的な相談に乗っているわけでございます。  いま、そういったものをもう少し総合化し、もっとていさいのあるものにし、機能的にも充実したものにするということになった場合に、通産省として、政府として助成する用意があるかという御質問でございますが、いまそういう既定の政策を実行いたしておりますが、確かにまだ隔靴掻痒の感があると私は思います。したがって、そういうような建設的なもくろみがあった場合に、政府として財政の許す限り助成をしたり、あるいはそれにいろいろお伝いを申し上げるということは当然考えなければいかぬことだろうと心得ますので、既存の政策の効果を十分に診断しながら、新しい政策のメリットについて検討させていただきます。
  215. 植木庚子郎

  216. 西風勲

    西風分科員 京都に平安製作所というかなり名門の中小企業があるわけです。この企業が去年の暮れに倒産したわけです。この平安製作所の倒産についてさまざまな憶測や、大企業と下請企業との関係という点でかなり多くの問題が出ておりますので、まず通産省や中小企業庁が平安製作所の倒産の実態についてどういうように把握されたか、お伺いしたい。
  217. 吉光久

    ○吉光政府委員 お話しございましたように、平安製作所は昨年の十二月の五日に倒産いたしました。十二月の十四日に京都地方裁判所に対しまして会社更生法の適用申請を行なっておるわけでございます。  いまの倒産の実態でございますけれども、原因等につきまして、私ども、倒産いたしました平安製作所のほうからと、そしてまた主たる親会社と申しますか、下請関係主要取引五〇%以上依存しております三菱重工業、その両方から原因について申し立てを伺っておるわけでございますが、必ずしも両者の申し立てが一致いたしておらない。主要な点について食い違いがあるというのが現状でございます。  さらにしさいに申し上げますと、その食い違いの非常に大きなポイントになるわけでございますけれども、第一は、平安製作所のほうの申し立てでございますが、三菱の乗用車の増産計画に従いまして四十一年から四十三年にかけて一億五千万円の設備投資を行なった。ところがその後、さらに自動車の部品関係を対象に、四十二年から四十三年にかけまして三千五百万円の投資を行なっておりますが、その結果、要するに生産計画と実際の購入の関係が食い違って設備が過大になり、そのため、過小資本による経営の圧迫あるいは売り上げの伸び悩みその他の要因によって経営が困難になったということ、さらに子会社に対する援助資金の負担がこれに拍車をかけたというふうなこと。このため四十三年の三月に三菱から、さきに行ないました一億五千万円の設備資金に対する融資として七千五百万円を借り入れた。他は京都銀行その他の金融機関から借り入れをしております。ところが資金力が悪化いたしましたので、四十三年の八月、九月、十月の三カ月に製品の前払いという形で、三菱から五千万円を導入し、三菱側が資金なり生産の面で指示を行なうようになったということ、そしてまた四十三年の十一月末に三菱重工が五千万円の前払い金と売り掛け金を相殺いたしましたため、ついに倒産したというふうに見立てておりますのが平安製作所のほうの申し立てでございます。が、三菱重工のほうで申しておりますのは、むしろ倒産の原因は、そういう問題より、平安製作所の経営者の経営態度の問題に相当の部分があるのではないかということ、それから第二点といたしまして、いまの経営態度の問題で、経営悪化を救済いたしますために融通手形を発行したことによるものではないであろうかということを申しております。また、三菱からの七千五百万円の貸し付けの問題につきまして、自動車部品のための設備投資を行なったため資金繰りが悪化したという点につきまして、三菱からは七千五百万円それに備えて貸し付けておるわけでございまして、そのような事実はないということを三菱サイドでは申しておりまして、そこいらの基本的な点で両者の言い分に食い違いがございますので、さらに調査を続けてまいりたいと思っております。
  218. 西風勲

    西風分科員 ほんとうに経営者の放漫経営というようなことでそうなったのならやむを得ないのですけれども、私どもが調べたところによりますと、これは明らかに三菱重工の側が平安製作所を三菱の系列企業に完全に編入する意図に基づいて行なわれたのではないか、断定はしませんけれども、そういうふうに思われる節があるわけであります。  まず第一に、自動車の自由化に伴って三菱が全体の量産体制を整える必要があるので、三菱の下請企業に対して——特に平安製作所を中心にした三菱の下請企業で柏会というのがあるのです。この柏会の総会で、平安製作所を中心とした人々に対して三菱重工の京都製作所の所長をはじめとする人々が、下請企業でかなり責任を持って量産体制を整えてもらいたいというようなことを言うと同時に、平安製作所に対して月産最低二万台から三万台の需要に応ずることのできるような生産設備をしてもらいたいということを要請しておるわけです。これは確かに正確に言いますと公的文書にはなっていないかもしれませんけれども、常に問題になりますように、大企業と下請企業との関係は皆さんが指導しているような形では行なわれていないのです。現実には大部分がそういうことが行なわれていない。だから、大企業が下請企業に対してこういうふうな設備拡大をやってもらいたいというような要求があれば、これは文書がかわされていようといまいと、事実上の命令的権威を持つわけです。しかも、小さくなりたいと考えている企業はないわけですから、三菱のような大企業からこれだけの設備拡大をやって仕事をもっと引き受けてもらいたいと言われれば、飛びつかない企業はどこにもないわけです。そこで、ここの企業がそういう状況になる第一の前提条件は、三菱が量産体制を整えてもらいたいというので二万台の三菱の要求に応じた生産設備の拡大をやったら、実際には三菱は一万台、半分の仕事しかよこさないというようなことが直接の原因になっているわけです。私どもはそういうように思っておるわけですけれども、この点どうですか。
  219. 吉光久

    ○吉光政府委員 三菱重工のほうの自動車の計画を見てまいりますと、四十年に三菱重工全体で三万台計画を達成いたしております。ちょうどこの貸し付け等で設備拡張が行なわれました四十一年には、全体として四万台の計画を持っておったようでございます。四十一年から全体として四万台、そのうち三菱重工の京都製作所におきましては二万台計画というものがあったようございます。現在その京都製作所の現実の実績といたしましては、大体一万三千台程度の実績でございますけれども、四十一年当初にそういう会社全体としての計画があったことは私どもも承知いたしております。ただ、これを先ほどお話しございましたような一つのものごとの筋道として、先ほどの下請企業に対する動き等も察せられないわけではないのでございますけれども、そういう点につきましてのその後の設備投資あるいはその金繰りをめぐっての両社の見解になお開きがあるというのが現状でございます。
  220. 西風勲

    西風分科員 私も見解の相違のある点は通産省や中小企業庁で十分調査してもらいたいということを前提に申し上げているわけですけれども、たとえばそういう設備の拡大をやった。ところが三菱が仕事をよこさない。仕事をよこさない三菱に対して、当面そうした仕事が充足されるまで金融上の援助をしてもらいたいと下請企業が言うのは当然の要求ではないかと思うのですが、どうですか。
  221. 吉光久

    ○吉光政府委員 そういう事態を前提にいたしますれば普通の話である、このように考えます。
  222. 西風勲

    西風分科員 あなたが言われたように、第一段階では平安製作所の要求に応じて二月に七千五百万円、五月に五千五百万円の融資をすることを三菱が約束した。第一次七千五百万円は出たのですけれども、第二次の五千五百万円がなかなか出ない。しかも七千五百万円と五千五百万円の借款をするに際して、私の調べたところでは、一億三千万円に、二倍ぐらいになるのじゃないかと思われるほどの抵当権を設定してこの金を貸すことにしているわけです。しかし、最後の五千五百万円については仕事をしたことに対する前払い金であるというようなことで、事実上その約束を履行しないことによって、最終的には二千五百万円の手形が落とせないためにこの企業が倒産するというような状況になっておるわけです。しかし、その場合でも三菱に入っている抵当が一部分でも解除されれば、二千五百万円の手形を流さずに平安製作所が今日のような事態にならずに済む方法があったわけですね。時間がありませんからいろいろ詳しい説明をすることができないのは残念ですけれども、ところが三菱がそういうふうな約束を、平安製作所を助けようとする積極的な処置をとらないために、二千五百万円の手形が落ちないで倒産したというような状況になっておるわけです。こういう事実があるということを御存じですか。
  223. 吉光久

    ○吉光政府委員 まず最初の七千五百万円の融資という点につきましては、三菱側からもはっきり伺っております。それから第二回目のいま五千五百万円というお話がございましたが、五千五百万円の融資という点については三菱側からはそういう申し立てをいたしていないわけでございます。ただ、いまの最後の段階である一定の量の手形の決済さえ済めば倒産しなかったという点につきましては、これは私ども聞いておる中に入っておるわけでございますけれども、ただそこらのしさいな事情につきましては実は調査が完了いたしていないわけでございまして、確実にどうであったかという点につきましては、さらにあらためて調査さしていただきたいと思います。
  224. 西風勲

    西風分科員 時間がないから話を飛ばさざるを得ないのですけれども、たとえば去年の十月三十日に平安製作所が三菱重工に下請代金二千万円を受け取りにいったわけです。そうすると、三菱の側は、いまの条件のままでは下請代金二千万円を支払うことができない、したがってあなたの会社の株を持ってきなさい、株を持ってきたら二千万円支払いますというので、事実十一月一日に六〇%に近い株を持っていって、その株が抵当のようなかっこうで正当にもらうべき下請代金が支払われている。これは持っていったほうもおかしいと思うのです。こんなことを言われたところで、要求をはねればいいのですから。ところが大企業と下請企業との関係でいいますと、常識で考えてあり得ないことが、これは弱者と強者という関係において現実に存在するのです。だから、そういう点でこういうふうな行為が事実行なわれているとしたら、通産省や中小企業庁がどういう取り扱いをするのかということをお伺いしたいと思う。
  225. 吉光久

    ○吉光政府委員 事実関係につきましてさらに詳細にさっそく調査させていただきたいと思うわけでございますけれども、いまのお話のように株券を持ってくることを強制し、あるいはまた相当大きな、経済上均衡のとれないと申しますか、総体として交換価値以上の不当なものを要求しておるということであるといたしますれば、これはほんとうに三菱重工側に相当大きな落ち度があるということになると思うのでございますけれども、そこら関係につきましてはさらに事実を調査させていただきたいと思うわけでございます。
  226. 西風勲

    西風分科員 これは事実ですよ。現在三菱重工業と弁護士が振り分けて預かっている平安製作所の株は——担保でも何でもないですよ。株券は三十九万一千六百四十四株です。ここは資本金三千万円で六十万株ですから、約六〇%の株を、金を借りたカタでも何でもない、大企業と下請企業という関係で、持ってこなければ応援しない、持ってこなければ援助しないというようなのは、私から言わせれば、ことばが過ぎるかもわかりませんけれども、半ばどうかつのようなかっこうで、現に六十万株の中で六〇%の株が何にも法律根拠なしに三菱側に掌握されているわけです。これは事実ですよ。この点についてどういうふうにお考えですか。
  227. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまお話しの数字の株式を三菱側が保有しておるということは三菱側からも聞いております。
  228. 西風勲

    西風分科員 それは聞いているじゃ困るのですよ。こういうことをやっていることに対して、通産省や中小企業庁は行政的にどういう態度をとってどういう処置をするのかということをお聞きしているわけです。事実があったらよけい問題じゃないですか。
  229. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず一般問題といたしまして中小業者は不当に圧迫を受けたという事実があったならば、中小企業庁にまずお申し出をいただくということは設置法にはっきり書いてございます。そのお申し出がございました場合には、私たちは中小企業者の味方といいますか、そのサイドで直ちに調査を開始いたします。これは一般でございます。  それから第二に、下請代金支払遅延等防止法の所管官庁としての私たちは職務、義務があるわけでございますが、これによりますと、先ほど先生のお話を承っておりますると、不当受領拒否、つまり買うという約束をしておいて買わなかったという不当受領拒否とか、それから早期相殺すなわち弁済期に来ない債権をもって相殺をやったとか、こういうふうなことは下請代金支払遅延等防止法の条文上違反行為になっておるわけでございます。したがいまして、もしそういう違反事実がありといたしますならば、直ちに中小企業庁は書面ないしは緊急を要する場合には立ち入り検査をいたしまして、そしてその事実ありということをつかみましたならば公正取引委員会に通知をする。そうすると公正取引委員会はこれに対しまして勧告をする。勧告を聞かざる場合はこれを公表する。こういうのが下請代金支払遅延等防止法のたてまえになっておるわけでございます。  したがいまして、先生お話しのようなことが事実なりといたしますれば、早急に私たちのほうはこの法律の執行をお預かりしているものとして調査に乗り出したいというふうに考えます。
  230. 西風勲

    西風分科員 長官、法律解釈なんかしてくれと頼んでない。私どもが言うておるのは、こういう事実があるのを確認しておるわけです。重工業局長は、さっき三十九万千六百四十四株については弁護士との振り分けの関係において三菱重工が預かっているということについては確認しておりますと答弁をしておる。確認した。また事実これだけの株を預かっておる。これだけの株を預かられますと、前の社長や専務が残っているとはいえ、執行権を持っていないです。三菱が六〇%の株を預かっているわけですから。事実として現にもう存在して、しかも重工業局長は確認しておるわけですから。  こういう点について、通産大臣どうですか。これはどういう書類が来ようと来まいと確認しておるわけですから、直ちに十分な処置がとられるのが当然じゃないかというふうに思いますが、どうですか。
  231. 大平正芳

    大平国務大臣 さっそく会社について調査して、処置するものは処置いたします。
  232. 西風勲

    西風分科員 大平さんから政治的な答弁があったわけですけれども、私この際、これは何も必ずしも三菱を追及するというつもりでやっているわけではないわけです。私どもは三菱を追及するというよりは、平安製作所が従来のように隆々とした企業として、下請系列三百五十を持っているわけです、三百五十の下請が平安製作所を中心にして三菱の仕事をしたってもちろんいいわけです。従来のような秩序を取り戻して、京都の名門企業として十分な仕事をやっていってもらいたいということがわれわれの本意なんです。そのために明らかにしていただかなければならないのは、個条書きで言いますと、まず第一は、三菱が設備の拡大について事実上平安製作所に対して命令に値するような要求をしておるわけです。これがまず第一にあるわけです。  第二は、そういうような命令を下して、二万台の三菱の要求するものを生産する設備をつくらしておきながら、一万台ないし若干のプラスアルファしかその企業に仕事を与えないというのが二番目です。  それから三番目は、しかも三菱の半ば命令によって行なわれたにもかかわらず、仕事を十分に与えないために、十分な金融的な援助をしてもらいたいということを要求したにもかかわらず、三菱が平安に対して半ば強制的な内容においてそういう設備拡大をやらしておきながら、しかも第一回七千五百万円、私の聞くところでは第二回五千五百万円という援助を約束しながら、事実上これを最終的にはほごにするような、五千五百万円のときには売り掛け金と相殺するというような処理のしかたをしているというのが四番目であります。  それからその次は、二千五百万円の手形が不渡りになるときに、三菱の抵当に入っている、たとえば牧野観光ホテルに関する担保を一時解除すれば二千五百万円の手形決済は可能であるし、倒産を防ぐことができたんです。そのときに三菱の側は、こういう問題について積極的な処置をとっていない。これは私どもの聞くところではですよ、そういう処置をとっていないというのが五番目であります。  それから六番目は、先ほど言いましたように、正当な下請代金を受け取りに行った平安製作所に対して、株の提供を強要して、株の提供によって正当な下請代金を払っている。これは先ほども言いましたように、持っていっているほうもこれは言うまでもなくおかしいです。これが六番目であります。  それから七番目は、担保でも何でもないのに、六十万株の過半数の株である、先ほどもたびたび申し上げましたように、三十九万一千六百四十四株というのを、これは法律的な抜け道をつくるためかどうか知りませんけれども、三菱の顧問弁護士との振り分けにおいて実質的に執行権を取り上げるような形の株を三菱が握っている。何にも法律根拠がないのにそういう株を握っているということです。  それからその次は、平安製作所の側が再三再四にわたって、三菱重工の京都製作所の責任者とさまざまな話し合いによって問題を解決したいというので話し合いを申し入れているし、聞くところによりますと、中小企業庁や通産省の関係機関が話し合いを持つようにあっせんしたそうですけれども、三菱側はこれをかたくなに断わって、顧問弁護士に話してもらいたいという血も涙もない態度で三菱側が平安製作所に対して臨んでいるというような点ですね。  これはやはり、こういう京都の中堅企業であり、京都府始まって以来といわれる倒産防止条例まで適用されているこういう三百五十の企業の経営に当たっているもののみならず、そこに働いている家族の死活に関する問題であります。そういう点では、通産省や中小企業庁が、これらの間にあるわだかまり、誤解を解いて、従来のような態度になるように、しかもこれが事実であれば法律上問題になるような、さまざまな許すことのできない行為が行なわれているわけですから、そういう点については十分調査すると同時に、いま私が申し上げましたようなことについて、通産大臣中小企業庁長官は十分な処置をとっていただくことができるかどうか、そういう実情について十分調査していただけるかどうかということをお伺いしたいと思います。
  233. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私たちの所管上、先ほど申し落としたのでございますが、先生指摘のように非常に多数の関連中小企業がこの平安製作所の存廃にかかっておるわけでございます。その辺につきましても実は私たちは非常に心配しておる問題でございます。  なお先ほど下請代金支払遅延等防止法について若干申し上げましたけれども、あの法律の構成も、これは親会社が存続しているというのを前提にして、そして親会社の態度を改めさせて下請の世話をさせる、もうちょっと手厚く世話をさせるというのが実はこの遅延防止法のたてまえになっているわけでありまして、親であります平安製作所が死んでしまったのでは、実はこの防止法は困ってしまうということにもなるわけでございますので、私どもとしてはその問題について十分調査をいたしますとともに、関係者の話し合いが行なわれまして、そして関連中小企業者の利益が守られますように、従業員の利益が守られますように努力をいたしたいと考えます。
  234. 大平正芳

    大平国務大臣 長官が御答弁申し上げたとおりのラインで調査をいたしまして、措置すべきものは措置をいたします。
  235. 西風勲

    西風分科員 一つは、債権者会議の議事録が、ここに第二回、第三回とあるのです。第四回が最近行なわれたようですけれども、この債権者会議の議事録でも、平安製作所をすみやかにあれしてほしい、三菱が横暴ではないかという声が充満しているわけであります。時間がないから一々紹介できませんけれども、そういう点で私が申し上げたさまざまな点について十分な処置をとってもらいたい。その報告をしてもらいたい。問題によっては、再び関係委員会質問したい。  そこで、もう一点だけお伺いしますけれども、きょうの新聞を見ますと、日産と東洋工業がアメリカのフォードと提携して自動変速機の合弁会社をつくる。通産省に対して内々の申し入れがあって、通産省としてはこれの正式な申請があった場合は許可する意向であるということが、きょうの夕刊のトップで、三月一日自動車自由化を控えた局面において出ているわけです。これは極秘というようなことばが使われております。これはもう日本の自動車業界のいわば死活に関する問題であります。こういう問題について公開の場所で十分な話し合いや協議が行なわれて、自動車業界内部の将来の発展の方向を十分に考慮しながらこういうことが行なわれるのならいいのだけれども、こういう特殊な企業がアメリカの三大自動車メーカーの一つであるフォードと提携してこういうことをやるということを、通産省が十分な協議を経ていないのに、もし申請があればこれを許可しますというようなことを言っているということがここに載っているわけですね。こういうことが事実かどうか。事実であれば非常にゆゆしき問題だと思いますので、お伺いしたいと思います。
  236. 吉光久

    ○吉光政府委員 私、まだその夕刊を読んでおらないわけでございますけれども、自動変速機につきまして、かねがね、先生御承知のとおり自動変速機の技術というものは日本でも開発されたものはございますけれども、そのもとは全部アメリカで持っておるわけでありまして、そこらの技術を導入いたしませんとアメリカに輸出する車ができないというふうなことで、実は先般来トヨタのほうでいろいろと問題があったわけでございます。これはいま現にトヨタでつくっております自動変速機がアメリカの特許法に違反しているというふうな疑いがあるということで、アメリカの自動変速機の製造業者と、自動変速機について、現在つくっております車を合弁企業でつくったらどうであろうかという話は、かねがねあったわけでございます。  いまの場合は、実はフォードと日産、東洋工業というふうなお話でございますが、私ども正式な話としては伺っておりませんけれども、これは内々そういうふうな動きがあるというふうなことは承知いたしております。ただ、それが出てくればすぐに通産省はそれを認可するとか、やれどうするとかいうふうな、それはおそらく新聞の観測記事であろうと思いますが、私どものほうに正式にそういう申し出が出ておるという段階ではございません。
  237. 西風勲

    西風分科員 それは、新聞記事が一〇〇%全部真実だとはぼくも言いませんけれども、しかし、これだけ大きな記事がトップに出ているんですから。あなた方初めてらしいから見てもらったらいいと思いますが、これだけ大きな記事が出ているわけです。「巨大外資上陸の先兵」ということです。しかも考えようによったら、日産、東洋が団結していってもフォードに最終的にやられるんじゃないかというような懸念もあるわけで、他の自動車産業との関係もあるわけですから、こういう点についてはもっと慎重な配慮がやっぱり必要ですし、そのプロセスが非常に重要ではないかと思う。だから、こういう点についてもっと慎重な態度で、自由化を控えた日本の自動車産業発展の方向について、ここに出されているような軽率なやり方ではなくて、もっと慎重な態度で事に当たる用意があるかどうか、通産大臣にお聞きしたい。
  238. 大平正芳

    大平国務大臣 私も初めて聞く話でございまして、御承知のように、そういう問題は慎重に処理しなければならないことは当然であると考えております。
  239. 植木庚子郎

    植木主査 次は柴田健治君。
  240. 柴田健治

    柴田分科員 時間がございませんから簡潔に質問申し上げますから、簡潔にお答え願いたいと思います。  警察庁の方が見えておりますが、警察庁の方にまずお尋ねしたいのですが、防犯灯の問題で前に島本君から御質問があったと思いますけれども、重ねて防犯灯に関してお尋ねしたいのですが、防犯灯というものはどういう意味を持っておるのか、同時にまた、あの施設は公共的施設であるかどうか、この二つの点で見解を警察庁にお尋ねしたいと思います。
  241. 本庄務

    ○本庄説明員 お答えいたします。  防犯灯につきましては、三十六年の三月に防犯灯整備対策要綱が閣議決定をされまして、それの設置あるいは費用等につきまして基本的な方針が決定いたされております。  公的な施設であるかどうかということでございますが、民間等で設置しておるものもございますので、一がいに公的施設であるということは言えないかと思います。地方公共団体等が施設しておるものにつきましては公共的施設ということです。ですから、地域によりまして両方の性質を持っておるものがある、かように考えます。
  242. 柴田健治

    柴田分科員 民間でやっておるのは公的な施設でない、市町村とか地方公共団体がやっているのが公的施設だ、こういう解釈ですか。
  243. 本庄務

    ○本庄説明員 私がいま申しました公的施設というのは、地方公共団体が設置し、地方公共団体が直接管理しているものはやはり公費で支弁をいたしますから、そういう意味におきまして公的施設だということをお話し申し上げました。民間が設置し、かつ民間がやっているものにつきましても、財産上は公的なものではないという意味で申し上げたわけでございまして、その機能といたしましては、効用といたしましては、公的性格を帯びている、かように考えております。
  244. 柴田健治

    柴田分科員 防犯灯が果たしている役割りというか、防犯灯が地域社会において、また国家全体に貢献している役割りはどういう意味を持っているのですか。
  245. 本庄務

    ○本庄説明員 防犯灯が果たしております役割りを簡潔に申しますと、夜間における犯罪の発生を防止し、ひいて大衆の安全をはかる、一言にして申しますとそういうことに要約されるかと思います。
  246. 柴田健治

    柴田分科員 役割りからいうと、民間施設だろうと町村の半額補助、全額負担でつくった施設であろうと同じであるが、そういう考え方が違うというのは、全国の各警察署がそういう考えを持っているのは間違いないですか。
  247. 本庄務

    ○本庄説明員 私が先ほど申しましたのは、財産の性格といたしまして公的なものであるかどうかということを申したのでありまして、その効用といたしましては全く同一でございます。さように私たちは考えております。
  248. 柴田健治

    柴田分科員 いま全国で防犯灯は何カ所あり、何万灯ついておりますか。
  249. 本庄務

    ○本庄説明員 少し古い調査でございますが、四十一年の三月下旬までで合計いたしまして約二百六十万という数字が出ております。その後ふえておるかと思います。
  250. 柴田健治

    柴田分科員 各警察の防犯担当の職員、警察官が、それぞれ町村、部落、また青少年不良化防止を兼ねての治安対策上、いろいろ防犯灯の施設を奨励している。その先棒をかついで地方公共団体も何ぼか施設の補助をし、また電力会社もそれに対して施設設備等の協力をする、また住民もそれを理解し、半額地方公共団体が負担するという場合には個人負担で半額やっているところもある。地域によって町が全額持つ、また地域の住民が半額負担する、町内会は町内会の基本財産から負担している、こういうように負担の内容はいろいろ違いますけれども、何としても警察と地方公共団体が協力し合って防犯灯の設置奨励に努力していることは間違いない事実だ。  それで、これらの電灯料金については地方住民がほとんどかぶっている。町内会は一カ月分の町内会費を全部電灯料金に払って、一カ月に一回の町内会のレクリエーションの経費がないくらいその防犯灯の電灯料金を払っておる。もしくは個人が払っておる。それは電気ガス税のかからない基本料金でありますけれども、個人が負担する。こういうのは完全な公共的施設だと思うのです。ただ商店街のアーケードの中で灯をともしておるのは商法上の関係もありましょうけれども、非連檐地域における防犯灯についてその料金を個人が持たなければならぬという理由は、われわれには理解できないし、また住民も、そういう施設については各個人の門灯とは違うのでありますから、これらについてやはり料金の引き下げをやるか免除するか、どちらかを考えたらどうかという声があるわけであります。これらについて、いまの電気事業法二十七条の使用制限等のところにある公共の利益というものは——いまの電気事業法は電気会社、独占企業のほうの味方の法律でありますから、消費者側の公共の利益、国民の立場に立っての公共の利益という解釈ではないけれども、この公共の利益という文章があれば、やはり両方考えなければならぬ、われわれはそう考える。やはり電力会社のことも考えなければならぬでしょう。けれども消費者である国民の側の公共の利益の立場で法の運用をすべきではないか。これらを考えたら、電力会社はこの料金について免除するとか、半額に引き下げるとか、そういうことを考えたら、私たちは国民に対してあたたかい政治である、こう言わざるを得ないのでありまして、通産省その点についてどういう見解を持っておられますか。
  251. 本田早苗

    ○本田政府委員 電力料金につきましては、事業法の規定によりまして適正な原価に適正な利潤を加えたものであって、かつ特定の需要家に対して不当な差別的な取り扱いをするものでないように定めなければならないというふうになっておりまして、いわゆる原価主義の原則、公正報酬の原則、それから公平の原則という規定があるわけでございまして、この原則に基づいて料金を定めるということになっておるわけであります。したがいまして、特定の需要につきまして政策的な観点から原価を離れて特殊な料金をつくるというわけにはまいらないというたてまえになっております。  ただ、御指摘の街路灯、防犯灯と称せられるものにつきましては現に一割引きの料金になっております。この点は原価主義から例外のように見られますけれども、実はそうではなくて、集団的、包括的な契約関係になっておるものですから集金費が非常に節約されておるわけでございまして、蓋然的にいいまして大体一割くらいの節約になるという点がありますので、一割引きの料金ということになっておるわけでございます。なお、電気・ガス税につきましては七%ということになっておりますが、これは用途免税という形で税金はとられないという措置がとられております。  基本的に申し上げまして、政策的な意図で料金をきめるということにはまいらないというのが現行法のたてまえでございます。
  252. 柴田健治

    柴田分科員 大口消費者については一キロワット五円くらい、半額以下で使っておる。それは基礎的な条件があるから大口消費者については電力料金の大幅な値下げをして使用させておる。これは理解できますけれども、それらの日本産業全体の発展という一つの大義名分を使って、どちらかといえば資本家の奉仕になる。けれども住民が、個人個人がそういう施設に奉仕しなければならない。そうでなくても国税、地方税の税負担というものは非常に大きい。こういう一つ一つの負担を軽減して、一般の負担を軽減していくということも国民生活を安定させる一つの手段ではないか。そういうことから考えたら、いまの電気事業の、ただ公共の利益というと電力を確保するだけが公共の利益のような解釈だ、それじゃいけないので、やはり国全体の、公共の施設に対して使うのはやはり国が料金については調整する。一割くらいの減額措置で調整しておるとはいえない。  私はもうそういうことには納得ができかねるのだが、時間がございませんけれども、通産大臣にお尋ねしたいのですが、通産省としてはこういう処置はとれない、けれども住民個々の負担にしてもらうのは気の毒だ、自治省と話し合いをして地方公共団体が全部持つ、交通反則金を地方公共団体に配付しておるのだから、防犯灯や交通信号機の電灯料金については地方公共団体が義務的に義務づけて全部負担するということが話し合いができるかどうか、通産大臣と自治省との見解をお尋ねしたいので、両方お見えになっておりますから、お答えを願いたい。
  253. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 防犯灯につきましては、現在地方交付税の算定にあたりまして、この防犯灯といいますか、あるいは街路灯といいますか、この経費につきましては、都市計画費に算入いたしまして所要の財源措置を講じているわけであります。ただ実際の問題といたしまして、いわゆる防犯灯というものの範囲につきまして、その実態がいろいろなものがございますので、私どもとしましては、現在の地方団体が設置いたしております実態に応じまして、それぞれの必要経費を見積もって交付税に算入するという措置を講じております。また同時に、地方団体側につきましても、警察庁のほうとの打ち合わせから、できるだけ地方団体において公費をもって負担すべきであるというふうな見解のもとで指導いたしておるところでございます。
  254. 大平正芳

    大平国務大臣 電気事業法に基づく電力料金行政の中では、仰せのような弾力的措置を講ずる自由を私どもは与えられていないことは、御案内のとおりでございます。いま御指摘の問題は、しかしながら、そういう御提言がありましたということにつきましては、自治省のほうにお伝えを申し上げます。
  255. 柴田健治

    柴田分科員 自治省が都市計画法によってというと、都市計画法の区域指定を受けていない市町村は何も交付税の算定に入らない。どうもそういう点がはっきりしないので、やはり自治省が通産省話し合いをして、たとえば一キロワット現行のやつを半額なら半額下げる、通産省は電力会社と話しをして下げる。料金については半額、地方公共団体にもうこれは義務的に義務づけて、地方公共団体が持つ。これだけの処置をしてもらいたい。  それで、都市計画法で区域指定を受けているというのは、全国で三千三百の市町村の中で幾らありますか。交付税の算定というのは都市計画法の区域指定を受けていない町村なんてものは何もないじゃないですか。その考えはどうですか。
  256. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 ここで算定しておりますのは、都市計画費としての費目に算定しておりますわけで、これにつきましては都市計画決定が行なわれた地域についてのみ計算をするということではございませんで、事業の種類をこの項目で算定をいたしておるわけで、現在街路灯は道路の付属物としての計算をしておるわけであります。そういうことで、この都市計画費中に計算しておりますのは、街路灯のいわば光熱水費としての計算を行なっておるということでございます。
  257. 柴田健治

    柴田分科員 街路灯というものが国道、県道、県道でも主要県道もあれば一般県道もあるし、結局自分の商店に使う門灯とか、アーケードのようなところの普通の街路灯じゃないのですよ、私が言うておるのは。防犯灯として、国道や県道や市町村道という、連檐戸数地域でないところ、非連檐地域、都市計画にも何も、区域指定も何も受けていない、そういうところに各家庭から線を引っぱってわざわざ県道のへりへ防犯灯をつけて交通災害の防止、また夜間の通行の安全性をはかる。何か都市のまん中の美観の美しさを増すためにやっている街路灯じゃないのです、私の言っているのは。そういう点の防犯灯については、通産省は電力会社と話し合いをして料金の引き下げをやる。その料金については、一般の住民個々には負担をかけない、地方自治体の義務として地方自治法に任務づけていく、そういう程度の法の改正くらいする姿勢がほしい、こう私は申し上げておるのであります。この点についての取り組みの姿勢なんです。見解はどうですか。
  258. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 地方におきます行政水準の問題につきましては、いろいろ議論のあるところでございますけれども、ただいまお話のございました防犯灯の問題につきましては、現在の交付税で見ております。この防犯灯の範囲自体につきましても、やや私どもも問題があるかと思っております。その点につきましては、さらにその実態を調査いたしまして、そのたびごとに経費の算定を重ねていっているわけでありますけれども、さらにまた、私どもとしましてはそうしたものについての調査を重ねまして、実態に即するような経費の算定に心がけてまいりたい、かように考えております。
  259. 柴田健治

    柴田分科員 地方財政計画がいずれ出てくるだろうとわれわれ心待ちに待っているんですが、いまだに出てこない。地方財政計画の中で基準財政需要額はどういう算定をするのか、あとでまた聞かしてもらいますけれども、地方財政計画さえ出してこないような自治省なのに、それをいまの時点で、どういう算定をするのか。たとえば、いま警察庁は昭和四十一年の数字を——もう四十四年になっているんですが、警察はたいへん奨励をして町村に呼びかけて施設をどんどんつくっているんですよ。相当の数字にのぼっているわけです。全国の三千三百六十五市町村、その市町村の中で東京だとか大阪だとか市のほうは別としても、町村という数字でも相当の数があるわけです。各町村の数字をどういうふうに自治省はつかんでおるのか。そうして今度の地方財政計画の中でこの基準財政需要額をどういう数字で押えているのか、ちょっとお答え願いたいと思います。財政計画が出てこないから私はお尋ね申し上げるのです。
  260. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 街路灯につきましては個数では押えておりません。この経費につきましては、現在地方団体が負担しております街路灯の光熱水費の実態を調査いたしまして、標準団体について光熱水費幾らというふうな計算をいたしておるわけでございます。
  261. 柴田健治

    柴田分科員 自治省も通産省も警察庁も、答えを聞いておりますとまだ十分実態を把握してないというような感じがいたしますから、今後十分勉強していただいて、間接的な大衆負担を免除するという姿勢で取り組んでもらいたい。通産大臣もひとつその点を確約してもらいたい。いかがですか。
  262. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、現在の電気事業法は柴田委員の御指摘の方向からいって非常に冷たくできております。これも電気事業の電力の安定供給という大きな目的からそういうきびしい料金原則を打ち立てられたものと思うのでございますが、その範囲内で私どもが行政的にどれだけの配慮ができるか、それは仰せのとおり、問題でございますから十分検討いたしてみます。  それから、御提案がありました問題につきましては自治省のほうにもお伝えいたします。
  263. 柴田健治

    柴田分科員 時間がございませんから、もう一点簡単にお尋ね申し上げます。  いま都道府県で県営の、企業公営で運営しておる電気事業なんですが、この電気事業の内容を調べてみますと、常に問題になりますことは、それぞれの電力会社——日本には九つの電力会社がある。われわれは一本になさい、こう言っているのですが、一本にしない。依然として分けているのです。その電力会社への売電交渉が——都道府県がやる場合には、多目的ダムとして河水統制上、飲料用水、工業用水、はたまたそういう防災を含めての任務の区分、これはもう電源開発促進法できまっておりますから、その負担区分というものによってダム建設をやる。ところが県民からいうと、電源開発の事業費は全額起債で、六分五厘の金利です。それで工事をするわけです。でき上がって、年々償還していく。償還していくたびに売電の料金を下げなければならぬ。何としても不合理なんです。ダムの耐用年数を通産省はどの程度見ておるのかわかりませんが、たとえば三十年なら三十年、四十年なら四十年の耐用年数、結局償還は二十五年でありますから、二十五年間で償還が終わったら、もうダムの効能というのは十分発揮できないというので埋没されるかもわかりません。そういうことを考えた場合に、地方県民の負担で県営のダムをつくる。いま河水統制が十分に発揮されなければならぬ。売電価格に追われている。元利償還をするために電力をフルに発電をしなければならぬ。こういうことから、もう電気事業オンリーになっている。多目的ダムの本質が失われておるということも言えると思うのであります。そういうことは、答弁は別として、とにかく売電価格の交渉でどこの都道府県もたいへんな苦労をしておる。これについて通産省はまことに冷たい。いまの電気事業法をたてにとって、とにかく次の施設についてのそうしたプール計算方式で、減価償却が済んだら売電価格は安くしてよろしいのだ、安くしなさい、こういう指導を通産省——何も個人個人がしているのじゃないのです。法律がそうなっておるから通産省の役人がそういう指導をするのです。結局いまの電気事業というものが、電源開発促進法に基づいてもどちらにしても、不合理きわまる。いまの政府は、食糧管理制度は昔つくったんだからもう不合理だから、そういう言い方をするなら、電気事業法でももっと国民的な立場に立って改正すべきじゃないか、こういう気がいたすわけであります。各都道府県が売電交渉でどれだけ苦労しておるか。この点について通産省は将来どういう姿勢で指導をし、地方公共団体の財政を豊かにするような方向で努力されるか、簡単にお答えを願いたいと思うのです。
  264. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、公営の電気事業者は九電力に対して電力を売っておるわけであります。その売電価格につきましては、減価償却は定額法でやっておりますので、ダムにつきましては五十年を均等で計算をすることになっております。  ただ、御指摘の料金改定ごとに安くなる要素があるではないかという点は、企業では結局、政府債その他の資本費のほうが、償却が進むにしたがいまして減ってくるということでございまして、三年あるいは十年というふうな期限をきめて料金をきめております。その期限が切れますともう一ぺん料金改定をやるわけであります。その際の資本費の算定で逐次下がってくるということが値下下げ要素になってくるわけで、御指摘の傾向があるわけでありますが、反面賃金の値上がり等のために、これは値上がり要素として算入しておるわけでございます。最近の傾向からまいりますと、豊渇水の関係もございまして上がったり下がったりというような状況でまいっておりますが、最近は労務費等の関係で値上がりのケースも出てくる、こういう状況になっております。   〔主査退席湊主査代理着席
  265. 柴田健治

    柴田分科員 固定資産の減価償却、事務費、維持管理費その他の評価、四十四年度なら四十四年度、四十三年度なら四十三年度のその見方が、電力会社のお先棒をかついだような指導を通産省がするから、都道府県のほうはほんとうは困るのです。ただ人件費だけが値上がり、あとは物材費や何かはあまり見ない。ただ機械的に算定基礎はこうであります、こうだからことしの電力料金は、売電価格はこれでしか買わないといって、いつも難航しているのですよ。そういう問題を、通産省はあくまでも国民的な立場で電気事業というものを考えなければならぬ。電力会社のお先棒をかついでくれちゃ困る、こう私は申し上げておるので、この点については、時間がありませんから数字的論争はいずれ次の機会にいたしましても、どうぞひとつ国民の電気事業というか、多目的ダムをつくるときの趣旨を殺さないように、その意思を尊重してもらいたい。これを強く要望して、地方府県の企業会計について電力会社のお先棒をかつがないように強くお願い申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  266. 湊徹郎

    ○湊主査代理 次に広瀬秀吉君。
  267. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 私は、近く国会に提出を予定されているといわれますガス事業法の改正等をめぐって、関連する諸問題について通産大臣質問をいたしたいと思うわけであります。  一昨年国会でLPGの保安の確保及び取引の適正化に関する法律が成立したわけでありますが、現在家庭燃料あるいは業務用燃料、こういうようなものでLPGが家庭用燃料だけでも、あるいは業務用のものも含みますが、約千三百万戸の供給をいたしておる。いわゆる百年の歴史を持つ都市ガス事業者のそれらに対する供給は六百五十万程度というようなことだ、そういう数字が出ておるわけであります。そういう事態を踏まえて、通産大臣は、今回のガス事業法の一部改正を通じて全国で約六万に近い、LPGを千三百五十万戸に供給している小零細な業者、それだけ急速に、年率相当高率でここ十五年間に、都市ガスが百年かかって六百五十万というのをその倍にも発展してきた、需要者の簡便な家庭燃料を得たいという需要にこたえてきたそういう者に対して、この事業法改正の中でどういうようにお考えになるのか、この点をまずお伺いいたしたいと思うわけです。
  268. 大平正芳

    大平国務大臣 局長から先に……。
  269. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘のようにLPガスのボンベの販売というのは急速に伸びておりまして、かなり長い歴史を持っておる都市ガス事業の供給世帯数をはるかにオーバーする、しかも短期間に進んだという御指摘は、まことにそのとおりでございます。これは要するに運搬、貯蔵の取り扱いが非常に便利でございまして、しかもきわめて簡便に需要にこたえることができるという特性から、従来の薪炭その他の厨房用エネルギーにかわって普及したというふうに考えられております。したがって、その供給の市場というものは、導管供給方式が経済的に成り立たないという地域は非常に広くあるわけでございますので、こうしたところでなお大きな市場を持つであろうというふうに考えられております。それから最近の都市化の状況が、都市地域から離れたところに集団住宅ができるというようなことで、そうしてその飛び離れた集団地域と従来の都市地域とが逐次つながれる、こういう都市の発展の状況があるわけです。この際やはりコストの少ない、小規模でしかもある程度包括的に供給できるこうした簡易小規模の導管供給方式というのが、これまたかなりのテンポで普及が行なわれております。そういう点を考慮いたしますと、保安あるいは公益事業的な性格も考慮しながら、その間の調整を考えながら今回のガス事業法の改正というものは考えねばならないと思っておりますし、そういう配慮を入れつつ検討いたしておる次第でございます。
  270. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 お話はそれなりにわかるわけですが、根本的な問題として、ガス事業法では、これは第十二条でありますが、「通商産業大臣の許可を受けなければ・ガス事業以外の事業を営んではならない。」という規定があるわけであります。「通商産業省令で定める事業については、この限りでない。」そういうことがありまして、このガス事業者が兼業をしていいというか、やっていい事業というのは、ガスの製造に伴うコークス、タールその他の副産物の販売であるとか、あるいは自己生産にかかるガスを利用したアンモニアあるいは硫酸アンモニアの販売だとか、自己製造のタールの販売だとか、可燃性天燃ガスの導管によらない販売であるとか、ガスメーターの修理あるいはガス器具の修理、販売だとか、こういうふうに省令か政令規定されているわけでありますが、たとえば東京瓦斯が、これは兼業というのではないけれども、子会社を設立をして、東京液化ガスというようなことで、いわゆるLPG販売に乗り出し、相当な巨額な黒字も計上しているというような例もあるわけであります。そういうような、今日のガス事業法の中でも、少なくとも形の上ではこの十二条に触れないにしても、子会社をつくってそういうことをやらせるというのは、まさにいわば脱法行為であります。そういうものが安易に通産省の許可を受けてそういう事業をどんどんやれるということは、けしからんことだと思うのです。  今度のガス事業法で、簡易ガス事業というものがガス事業法の中に取り入れられてくるわけでありますが、こういうような通産省の考え方というものを背景にして考えてみますと、やはりこの簡易ガス事業というようなものは、こういうようないわゆる大都市の、いままでのガス事業法による許可を受けているガス事業者というものが中心になってそういう簡易ガス事業というものもやるのではないか。そういうものに大きく道をあけてやった、こういう、いま私が前段に申し上げたようなことが、反対なしに大っぴらに堂々と今度はやれる、そういう道を開いたのではないかという考えが、今日LPガスを零細な規模でやっている業者が非常に不安に感じておる最大の点でありますが、その点について通産省はどういうようにお考えでしょうか。
  271. 本田早苗

    ○本田政府委員 都市ガス事業者が、兼営であれあるいは別会社であれ、小規模導管供給事業をやることがLPGの小売り業者に対する摩擦をいろいろと生ずる可能性もある、にもかかわらずそれを認めるということは問題があるのではないか、こういう御質問趣旨かと存じますが、ガスの供給をだれに認めるかということよりも、原則としては消費者の利益にどちらが有利かということが一応基本的な問題であろうというふうに存ずる次第でございます。片一方で都市ガス事業というのは、むしろ都市の都市計画に沿うて不特定多数の者にガス供給ができることによって消費者の利益を満たしていくということであろうと思います。その際、供給網が十分整備される可能性のないところにまで小規模供給を認めるということは適当でない。したがいまして、現在はかなり大きな供給地域があるわけでございまして、その中にかなりの数の小規模導管事業というものが置かれております。その関係で申し上げますと、都市ガスについては、供給計画に沿うた供給のものでなければ認めがたい性格を持ちます。したがって、一般のLPガスの販売業者がそうした地域において導管供給をやるということについては、認めていくということを考えておるわけでございます。したがって、ガスの事業者のために今度の改正を行なうというような考えは毛頭持っておらない次第でございます。
  272. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 現実の問題として、大体通産省でお考えになっておられることは、LPG新法の中で導管供給は五十戸未満ならば法の規制のもとで認めていこう、こういうようなことが今度法律改正されればはっきりすることは、そのとおりと承知をいたしておるわけであります。しかし、五十戸以上は簡易ガス事業の規制を今度新しく受けなければならない。これはいわばLPG新法にまさる強化された規制のやり方が加えられるということは当然だろうと思うわけです。この場合に五十戸というものが下限できまっておりますが、上限は一体どういうことになるのですか。
  273. 本田早苗

    ○本田政府委員 このガス事業法の改正につきまして諮問いたしました総合エネルギー調査会のガス部会の答申によりますと、五十戸から千戸ということを考えておるわけでございますが、五十戸につきましてはLPGの販売業者との関係がございますので、この際明確に規定をいたしたいと思います。千戸のほうにつきましては、今後の情勢を見なければ、技術その他の変動もございましょうし、明確でございませんので、千戸というものは目安ということで考えて、規定をするということは一応考えておりません。
  274. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 五十戸ないし五十戸以上、千戸以内くらいのところ。これはいままでの都市ガスを中心にしたガス事業者というものが、大体千五百戸くらい供給戸数がなければ成り立たない、ガス事業法の適用を受けられないだろうというような見通しもありますから、それはその範囲でけっこうだと思うのですけれども、五十戸以上の集団供給をやるという場合に、これは現在の業者の中で、特に大手の場合には、ある程度簡易事業をどんどん——その五十戸ないし千戸に至る導管供給ということを技術的にも経理的にも、あるいは保安その他のいろいろな規制を消化する能力があろうと思うわけでありますが、大部分の既存の小零細業者というものはそういうものに手を出せない状況というものがあるのではないか、こういうように思うわけでありますが、こういうことについての見通しはどういうことですか。
  275. 本田早苗

    ○本田政府委員 五十戸で切った際に、五十戸以上の経営規模について、中小零細の方ではなかなかやれないのじゃないかということには、二点あろうと思います。  一つは、主任技術者を設けなければならないということになっておるわけであります。したがってその主任技術者に高い水準の技術要求することによって、零細事業者としては主任者の選任がむずかしいのではないかという御心配があるというふうにも聞いておりますが、今回は新たに丙種主任技術者というのを設けることにいたしておりまして、従来から高圧ガスの取り扱い技術者は置いておるはずでありますから、こういう主任者が導管供給についての知識、これは軽い知識でございますが、これを備えれば十分丙種主任技術者になれるということで、技術的な問題は解決できるようなことを考えております。  それからもう一点の、五十戸以上の規模の事業ができるかという点につきましては、中小企業一般としてもやっておりますが、特に零細な方々についてはLPGの販売段階におきましても協業化、共同化ということを進めていただきまして、簡易ガス事業の経理的な基礎を持っていただきたいというふうに思うわけです。ただ五十戸程度の設備資金といいますと大体百万円程度でございまして、それほど大きな資金は要らないので、協業化その他によってやりますれば十分調達も可能だろうというふうに思うわけでございまして、通産省といたしましても、中小企業対策の一環としましてそういう方向の指導を行なうという考え方でおるわけでございます。
  276. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 五十戸というところに線を引いたその根拠といいますか、LPG業界等ではこの問題が一昨年以来ずっと論議されて、その中では百戸という議論が出たり、あるいは五百戸までという議論が出たりしたいきさつもあるわけであります。総合エネルギー調査会のガス部会の答申があったわけでありますが、その中でどのような論議があり、どういうような合理性というものをもってこの五十戸というところに線を引かれたのか、その点をはっきりさせていただきたいと思うのです。
  277. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘のように、このガス事業法の改正につきまして、総合エネルギー調査会のガス部会の答申が五十戸以上という線で出ておるわけでございます。今度のガス事業法の改正におきましても、そういう線で簡易ガス事業の規模をきめたいというふうに考えておるわけでございますが、御承知のように、一応小規模といえども導管によるガス事業をやりますと、一たん布設されてしまうわけでございますので、その地域におけるガス供給というのは、容易に他の供給業者に転換するというわけにはまいらぬわけでございまして、結局エネルギー選択が非常に困難になるということになると存じます。ただ消費者の数が少ない場合には、この業者の供給をやめて他の業者に移ろうではないかというような意思の統一が、わりに楽だというようなことが一つ考えられるわけで、かなりまとまりますとこれがなかなか困難になるのではないか。それからまた、二重投資の問題が国民経済上不要の投資になるという観点があるわけでございますが、五十程度以下のものになりますと、競争がかりに生じた場合でも、二重投資の弊害としては小さいというふうにも考えられるわけでございます。そういうようなことが基本的に考えられたわけでございます。  そのほかに、住居表示に関する法律というところで街区という観念が出ております。街区というのは従来の隣組に相当するような単位であろうと思いますが、われわれのほうでその一街区というのはどの程度かというのを、全国的ではございませんが、調べましたところ、大体五十戸未満というのが七六%を占めておるというようなことで、かなりまとまりのいい単位としては五十以下というのが住民意思の疎通がはかりやすい単位だ、こういうふうに考えられるわけでございます。それからまたほかの立法例でも、土地収用法におきましては五十戸以上の一団地の住宅経営事業については公益性を認めて収用の対象にし得る、こういうふうにきめておるというようなこともございまして、五十戸というのが一つの区切りであろうというふうに考えるわけであります。
  278. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 いろいろ理由を言われたわけでありますが、現在ある小零細業者が簡易ガス事業に飛びついていける、五十戸以上の供給、百戸にもあるいは二百戸にも導管供給がやれるというような方向を目ざしているのか。そういうように小零細業者が新しい簡易ガス事業に飛びついて、そしてそれをこなしていくような方向に誘導していく根本的な考えなのか、それとも大資本にこういう事業はやらしたほうがいいんだということで、いわゆる都市ガス事業者、こういうような大資本を擁しておるそういう人たちにこの簡易ガス事業にもどんどん手を出さして、LPGの導管供給を、五十ないし千戸のところは、みなそういうことでやっていくという方向が目ざされているのか、一体どっちでございますか。
  279. 本田早苗

    ○本田政府委員 先ほど申し上げましたように、消費者利益というものが基本になろうと思います。いずれのほうが消費者にとって有利かという判断で、地域によって小規模事業の方が出るほうがいいという場合もありましょうし、あるいは都市ガス系統のものが出るほうがいいという場合もあろうと思います。われわれといたしましては、その地域の特性に応じてLPG販売業者が協業化その他によって適当な範囲で出て、LPGの販売の形態をより合理的な導管供給方式に移ることが望ましいと思うわけでございまして、そういう指導をいたしたいと思っておるわけでございます。
  280. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 現在まで五十戸内でも、導管供給を三十戸なり四十戸なりというようなことをやっている人たちが、五十戸以上に簡易ガス事業の適用を受けるようになる場合にはそう支障はない。しかし導管供給にまだ手をつけてない、しかし、そういうことでやりたいという希望を持っている人たちは、局長のおっしゃるのは、なかなか個人ではむずかしいという考え方を持っているわけです。いわゆる協同組合方式というような形でしかこれはなかなか飛びつけないということを言外に物語っておられると思うのですが、やはり今後提出される簡易ガス事業におけるいろいろな許可の基準とか、あるいは規制のあり方、こういうようなものについてどのようにそれらのところをお考えになっておられるか。
  281. 本田早苗

    ○本田政府委員 むずかしいといっても、ごく零細企業の方が単独でやるのはむずかしい事情もあろうということでございまして、現在のLPGガスの販売業者ではかなり手広くやっておられる方もありますし、現に約一万に達する簡易ガスの導管供給の業者の中には、LPGの販売業者がかなり含まれておるわけでございます。したがいまして、非常にむずかしいということではなくて、むしろ中小企業全体が新しい流通体制に応じていくというために、やはり規模のある程度の確保が必要だ。その規模の確保のやり方としては協業化、あるいはおっしゃるような協同組合方式等によってやることが必要なので、そういう方式をこの際大いに活用していただいて、新しい簡易ガス事業にも適当な地域に進出されることを指導していくということが適当であろうというふうに考えておるわけであります。
  282. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 今度のガス事業法の改正によって、いままでのいわゆる都市ガス事業者が供給すべき区域を指定されながらやらないで、百年もかかって六百五十万戸にしか供給してなかったというようなスローテンポのやり方というもの、そのままむしろ導管を延ばしていくということよりも、いままでのガス事業法の第二条における導管を再延長していく、そういう努力というものがかえってさぼられて、新たに簡易ガス事業でLPGの供給をしてどんどん乗り出してくる、こういうことが考えられるのではないか、こういうこともおそれられるわけでありますが、そういうことになると、これはもう供給区域と指定されたものの中は、今後はみんな都市ガス業者が簡易事業の許可を受けて、零細業者をほとんど駆逐するような形で乗り出し、みずからが布設しておった導管の再延長という本来の義務は忘れてそういうことに走るのではないか、そういう危険性が多分に考えられる。その点についてはどう見られますか。
  283. 本田早苗

    ○本田政府委員 都市ガス事業者は導管によってガス供給をするのが本来の姿でございます。そういう姿になるための一時的なつなぎとしての簡易ガス事業は考えられますけれども、それによりまして本来の供給区域をいつまでも確保しておこうというようなやり方はとるべきでないと思うのです。ガス部会の答申におきましても、供給区域のうち相当期間にわたり本管が延びていく可能性のない区域は実情に即し妥当な範囲に削減すること、という答申内容になっておるわけでございまして、こういう答申の内容に沿うた考え方をわれわれとしても持たねばならないというふうに考える次第でございます。
  284. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 そういう答申はあったけれども、やはりそうしますと、削減をもう最初から予定して、もうこれは営利企業としてやっているわけですから、どちらのほうがよりよくもうかるであろう、そういうビヘービアで考えていくということによって、本来の都市ガス業者としての使命というものを忘れて、いたずらに導管供給のほうが有利だ、簡便だ、やりやすいというようなことで、小零細既存業者を駆逐して、大資本にものをいわせてそういうことばかりやってしまうということ、そういうことは一体どうやって防ぐ可能性があるのか。そこらのところをひとつ……。
  285. 本田早苗

    ○本田政府委員 現在一万弱の小規模導管供給事業があるわけでございますが、百戸以下というのが九十数%でございまして、百戸以下くらいの集団を確保するために供給区域を広く掘り出すというような形でまいることは合理的でないというふうに考えるわけでございます。供給区域の答申のような考え方でいくとすれば、かなり広い地域について調整を考えなければならぬというふうに考えるわけでございまして、ぽつぽつととった形で供給区域をはがしてしまうということは合理的ではなかろうというふうに考えます。
  286. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 もう時間がありませんから、最後に通産大臣の考え方、お気持ちを聞いておきたいのですが、いろいろな情勢の変化、進展、こういうようなものによって今回のガス事業法の一部改正ということにもなるわけでありますけれども、その背景については都市化が非常に進んだとか、あるいは消費者の利益を守らなければならない面が非常に出てきているとか、あるいは公共の安全を確保するとか、ガス事業の健全な発展をはかるとか、いろいろな理由はあるわけでありますが、しかしいままでの御答弁を聞きましても、そういうものにこたえるという、新しい経済情勢の進展に応じてガス事業を適合させていくという努力、さらにまた、急速に十五年くらいで千三百万戸というような家庭燃料のシェアを確保してきた業者というものがある、そういうものはやはりそれだけ大衆の需要にこたえてきた、そういう面があるわけであります。ところが、やはり簡易ガス事業というものの概念をガス事業法の中に導入される、そしてそれに手をどんどん出して、そういうものに、飛び離れた団地というようなところになかなか導管再延長ができないという場合に、簡易ガス事業の許可をとって大資本がどんどん進出していってしまうというようなことが、どうしても現実の問題としては非常に大きい問題だと思います。それは国民の需要がある限りそういうところに応ずるのは当然のことでありますけれども、その中において今日まで小零細業者が大部分でありますが、そういう人たちが千三百万戸に供給をしてきた。そういう実績、そしてまた十五年間築き上げた商権といいますか、そういう人たちが大資本に押されて、みんな食い荒らされて、供給区域を奪われて、商売として成り立たなくなっているという問題とのぶつかり合いというものは、やはり必ず出てくるだろうと思います。そういうものに対しては、やはり小零細業者の意見というようなものを十二分に聞いて、そういう面も何とかある程度の保護をしていく、立ち行くような方策というものを同時に考えていくというような、そういう血の通ったものがなければ、これはこの業界における弱肉強食を意味するのではないかと思うわけであります。それらについての通産大臣の気持ちというもの、考え方というものをひとつこの際聞かしておいていただきたいと思います。
  287. 大平正芳

    大平国務大臣 いままでやってまいりました都市ガス供給業者、これは信用もあるし、規模も大きいし、歴史もあるし、特に私どもが気をつけなくても存立し発展していくと思いますけれども、いま御指摘の多くの中小零細の企業者で、わずかの間にこれだけの商権をみずからの血と汗で築いてこられた方々、こういう方々の商権は、これを奪うどころでなくて、むしろこれを十分擁護していくということが政策の基調でなければならぬと思います。それから、同時に、くれぐれも消費者、これはものを言わない大ぜいの不特定多数の方々でございますから、私どもといたしましては、消費者の声、要求、そういうものには絶えず耳を傾けながらやってまいるべきものと考えております。
  288. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)分科員 時間がありませんから、以上で終わります。
  289. 湊徹郎

    ○湊主査代理 次に田代文久君。
  290. 田代文久

    田代分科員 通産大臣にお尋ねしますが、一月の閣議決定で、石炭鉱業の再建は雇用の安定なくしては成り立ち得ないということを打ち出しております。これは全く正しいと思うのです。  ところで、ここで打ち出しておられる新石炭政策というのは、石炭企業あるいは労働者に対して、労働意欲を高めて、これならやれるというようなそういう政策になっておるかどうか。この政策によりますと、大体昭和四十八年の最終年度には出炭目標といいますか、実際に出る石炭の量というのは大体三千五百万トン程度だということをいろいろ答弁などで聞いておりますが、そうしますと、現在よりは大体一千万トン以上これがダウンしてくるということになりますし、それから炭鉱労働者の側からいいますと、大体現在八万程度にこれは非常に激減いたしておりますが、それが大体四十八年ごろになると三万程度に減る。つまり端的に申しますと、合理化によって整理されるということに大体見通しをつけておられる。それで、四十四年度——ことしですね、ことしの年度においては炭鉱労働者が一万一千人程度の離職、解雇、こういうものが出るという見通しというふうに、いろいろ参議院などの説明で聞いておりますが、はたしてそうですが。これを伺いたいと思います。
  291. 大平正芳

    大平国務大臣 数字の点はあとから政府委員説明させますが、考え方は、幾ら幾らの出炭目標にするとか、あるいは幾ら幾ら閉山にするとか、あるいは解雇するとか、そういうことを政府がきめようとしておるんでは決してないのであります。政府は、石炭政策に割愛できる財源のめどをつけまして、この財源を四十四年度から始まって五年の間に石炭産業計画的に投入してまいることによって、石炭産業経済的なエネルギーを供給する企業として自立できる状態になることを期待しておるわけでございます。それはあくまでも労使の方々の協力、努力にまたなければならぬと心得ておるわけでございます。非常に用心深い政策の立て方でございますけれども、私どもとしてはそういう気持ちで立てたのでございます。ただ、予算は一応数字を盛り込まなければなりませんので、一応の積算上の数字は持っておりますけれども、それを政策の目標であるとかというような性格のものであるとは私は考えておりません。
  292. 田代文久

    田代分科員 大体いまの御答弁でも明らかですが、財源との関係で、やはりその計画の中には実際の数字として最終年度には大体どのくらいの出炭量になる、そこで働く労働人口は幾らだということがなければ、これは問題にならないですね。その点を聞いたわけですが、いずれにいたしましても、それはそういう方向になることは間違いないと思うのです。そこからきます、いま政府が新石炭政策ということで打ち出しておられるこの政策は、これは石炭産業並びに労働者に非常に大きな不安を与えていると思うのです。再建政策であるからこれはむしろ希望に満ちたものを与えなければならないにかかわらず、これは現実に、あなたが知っておられますように、非常に大不安を与えております。石炭産業は一体どうなるのかということは、これはもう事実だと思うのですが、すでにそういうことからこの政策を見越して、たとえば明治鉱業とかあるいは麻生産業あるいは杵島炭鉱なんかに見られるように、この新政策なるものを見越して、そうして山ぐるみの閉山あるいは縮小というようなことを考えて、そのねらっておるところは、このばく大な閉山交付金というようなものをもらって、そうしてこれによって自分からつくった赤字などを肩がわりして食い逃げをやるというような、端的に申しますとこういう方針だと思うのです。そうしますと、この非常に希望を持たせなければならない——最初に閣議できめられたように、労働者の雇用の安定がなければだめだといわれておるにもかかわらず、実際問題としては炭鉱業者もこういう方向をとっておるし、むしろ私はこの政策というやつは、これは全部とは申しませんけれども、なだれ的な閉山、あるいは企業の縮小すら促すようなおそれがありはしないかということが非常に心配なんです。それで私は、ほんとうの石炭再建政策というものは、いままでの、石炭資本家が赤字をつくったならばこれは政府が穴を埋めてくれるといった式の寄生的な、国家依存的な姿勢、これをやめさせなければだめだというふうに思うわけです。そこで、ほんとうの抜本的な再建政策のために、閉山ということは原則的にやめさせる。そうして閉山交付金というようなものはこれは廃止すべきだというふうに考えますが、どうですか。
  293. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど私が申し上げましたように、石炭関係の企業がいつまでも政府の輸血で生きていくという姿でなくて、ある時点で自立した企業として、エネルギーを経済的に供給できるというノーマルな状態にもっていかなければいかぬわけです。そのために過去三回も石炭政策をやってきたわけでございますけれども、御案内のようにエネルギー革命が非常なスピードで進行いたしまして、競合するエネルギーの進出に耐えきれないで、石炭政策が所期の目的を達し得られなかったのでございまして、第四次の石炭政策をやらなければならぬということは非常に残念でありますけれども、しかしそれでもなお政府は、大事な石炭産業でございますので、思い切った財源を投入いたしまして、努力を積み重ねておるわけでございます。したがって、あなたがおっしゃるように、閉山をしてはならぬ、閉山交付金は削除してしまえということは、言いかえれば、どういう山もいまの規模において操業を続けろ、出炭せよということにつながる思想だと思うのでございます。そういうことになりますと、それを経済的に維持していくためには政府の援助というものはますます過大になってくるわけでございまして、私どものねらいとするところと、若干そこにニュアンスの違いが出てくるわけでございます。私どもは、いま操業をしておる山の中で、経済性をもって自立産業として残り得るものを、一つ政府の財政的な支えを柱とし、他方におきましては労使のお互いの努力をもって切り開いてまいれば、りっぱに残るというものが、りっぱに経済における市民権を主張できる山としてその光栄をになうことができるのではないか、そういう頭で石炭政策を考えておりますので、あなたがおっしゃる閉山をしてはならぬとか、閉山交付金はもうやらぬとか、そういうような考え方とは基調を遺憾ながらちょっと異にするわけでございます。
  294. 田代文久

    田代分科員 いまのあなたの御答弁と、私なり私のほうの党が考えておるのと非常に観点が違っているということは、これは平行線という意味じゃないですよ。あなたの方針というものは、全く、これを縮小してつぶれるならつぶれてしまえ、そうしてとにかく政府が援助して、ほんとうに残るものだけは、三千万トンか二千万トンか知りませんけれども、残してこれは息をつがせてやる、これは初めから縮小計画なんですよ、明確に。ですから、日本の国固有のそういう大事な唯一のエネルギーを、これをとにかくますます拡大、発展して再建させるという立場に立たない思想、姿勢ですね。そこに問題があると思います。そういう姿勢だから無限に、国家がとにかくありとあらゆる財源を、思い切った財源を使ってこれを助けるなんということになって、いまの御答申のとおりなんですけれども、しかしそういうことになって実際どうなっているか。第三次までのいままでの計画は全部これは失敗です。しかも、私調べましたあれによりますと、大手十六社で六十一年下半期と六十七年上半期の資産内容を比べました場合に、固定資産が六三%の増加です。ところが、社外の投資はまさに三倍というような大きなものをやっておる。しかも、その社外投資の対象というのが観光事業とか、あるいは不動産あるいは宅地事業、こういうようなほうにばく大な社外投資をやっておるというようなこと自体、これは政府のそういう政策自身が一部の石炭資本家、業者に対してこういうことをなしておる。これで日本の石炭が再建されるというようなことは思いも及ばないと思う。私は、政府はそういう点をはっきりつかむべきだと思う。  したがって、石炭再建の道というのは、当面五千万トン出炭規模、これはやはりはっきり目標を出して政府は堅持すべきだ。そうして、それを基礎に将来とにかく生産の拡大ということを見るべきであるし、それからもう一つは石炭が、エネルギー革命などということをおっしゃいましたけれども、そういうところにあるのではなくて、これは炭鉱労働者の労働意欲、これは政府の間違った政策のもとに全く労働意欲をそいでしまっておる。そのそいでおる根拠として、これはあなたでも御承知でしょうけれども、炭鉱の労働者が何万、何千人殺され、何十万の炭鉱労働者が手足を折り、身体を破壊されるような犠牲を負っておるか。ですから、そういう点からいいまして、これは保安に絶対に万全を期する、そうして炭鉱災害を根絶する、そうして労働者の生命と健康を保障するということはやはり確保する必要がある。それから、炭鉱労働者の賃金があまりに安いです。しかも長時間労働にさらされておる。そういう炭鉱労働者の低賃金給与体系、労働条件を改善して、そうして民主的な権利をやはり保障するということを明らかにする。それからもう一つは、産炭地住民の生活と営業を守る、こういうこと以外に私は石炭産業の拡大、再建というものはあり得ないと思います。  そこで、まずそういうことからお尋ねするのですが、五千万トン出炭規模、これを目標になぜ政府はやらないのか。私はこれはできると思います。第三次は少なくともそういう目標をはっきり出されましたね。大体五千万トンなり四千七百万トンくらいの出炭規模でいくんだ、これで再建するんだ、こうおっしゃった。今度は全然そういうことは出されていない。やはり労働意欲をわかせ、あるいは石炭産業に熱意を持たせるためには、とにかくいまどうなっておる、こういう方向で政府は政策としてやるんだということを出すべきだと思うのです。これはどうですか、その点。時間がないから簡単にお願いします。
  295. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 確かにおっしゃいますように、前回のときには五千万トンという目標で政策体系が組まれておったのでございますが、その後の石炭鉱業の置かれました困難な状況というものはまことに著しいものがございます。これから先五カ年間の動向を予測いたしましても、原価上昇の要因その他から見まして、五千万トンを維持するというような考え方に立ちますと、おっしゃるような国の負担というものがきわめて大きい形に相なりますので、私どもとしてはそういう形になるか、あるいはほっておくと全体が総くずれになるという事態でございますので、大臣がお話しになりましたように、今回国としてさき得る最大限の助成体系を考えまして、その中で労使相互の判断をしてもらう、こういう立場で新しい答申を受け、この方針で政策を組んでまいった次第でございます。
  296. 田代文久

    田代分科員 石炭を五千万トンあるいは六千万トン出すには、国の助成、国が何もまる持ちとは申しませんけれども、とにかくこれがなければやれぬような御答弁ですけれども、そういう観点は第一次案からずっと貫いているのです。これは完全に失敗するあれであると私は思うのです。いまのような立場なら、私ははっきり申しますけれども、これは五年を見ておられますけれども、五年もたないですよ。こういうことでは事実、二年もつかどうかわからないと思う。私は時間がないからそれを申しませんけれども、これは非常にはっきりしていると思います。そういうことをやる前になぜ——エネルギー革命などとおっしゃるのだけれども、アメリカから自由に原油や重油をどんどん入れるというようなことを野放しにすることをやる。あるいは電気産業なんかは、これはいま火力産業がもちろん主でありますけれども、非常に大もうけをやっておる。そういう輸入規制をやるとか、日本の石炭をとにかく保護し発展するようにやるとか、あるいはまた電気産業に対する取引なり割り当て量を一定量義務づけるというようなことをやるとか、それから何といいましても、これは基本的には労働力をとにかく確保しなければ、どんなにばたばたしたって出ないと思うのです。とにかく労働者がほんとうに熱意を持って石炭を掘るというような政策は、ほとんどとってないじゃないですか。そうしていま国の限度においてこれを援助しておる、それはなさっておるでしょう。しかしその限度なるその援助というのは、全くこれは炭鉱のさっき言ったようなもうけた金はほかの産業につぎ込むというような、そういう方向へ援助する。山はつぶれても自分の収入は——三井だって三菱だって、住友だって古河だって、日本産業発展を見ますと、石炭産業でばく大なもうけをやり、もうけを他産業にどんどんつぎ込んでいって、そうして現在になったら独立採算とかなんとかいって、これは赤字だ、赤字は政府にしりを見てもらう、こういうやり方です。これでは事実、日本の石炭産業発展するなんて考えられない。  ですからやはり明確に、抜本策をやるということを言われる以上は、抜本策をやらなければならない。そのためには、先ほど私が申しましたような政策をとって、こういう政策はやむべきだと私は思うのです。今度の政策が出しておる予算を見ましても、そういう日本の石炭産業発展させるというために四千億円をこえる、実にこれはばく大なる金を使うという予算になっておるのですね。ところが、これはいま申しましたような形で使われておる。しかし日本に、じゃ石炭埋蔵量はないのか、石炭はないのかといいますと、これは学者の説によりますと、可採炭量が二百億トン以上あるというのじゃないですか。また通産省自身が探査されておる数字によりましても、たしか私はいつか御答弁で聞いたように思いますけれども、四千五百万トンずつ掘っていっても、大体七十年以上ぐらいの石炭を掘るだけのものがあるということが発表されたように記憶いたしておるわけであります。いずれにしましても、そういう資本家救済のばく大な再建交付金とか閉山交付金、そういうものは石炭のほんとうの再建のために使われるのではなくて、そこに金を貸しておる銀行資本家なんかにトンネルで行ってしまったり、もうけたやつはほかの産業に移したり、とにかくほんとうに労働者を中心とした再建案がとられておらないということは、これはもう明らかだと思うのです。  そこで、私は今度の予算を見てみましたけれども、いま言いましたように、それほど喜ぶべき資源がまだある。しかしそれは開発されておらない。ですからこれは非常に石炭のコストでも安くするとかなんとかというようになれば、石油をどんどん入れたり、あるいは外国から原料炭を入れるというようなほうへ目を向けるのではなくて、日本にあるその資源をどんどん、とにかく新しい技術を、最大限に金と技術を使って、そうしてそれを掘り出すというために、私は炭量の調査とかあるいは新鉱の開発、そういうことでやるべきだと思うし、そういう予算を組まなければならぬと思うのですが、そういう予算はあまり組んでないと思うのです。  これは通産大臣にお尋ねしますけれども、そういうために大きな予算を投入される意思があるかどうか、これを聞きたいと思います。
  297. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのようにエネルギー資源を将来長きにわたって確保せなければならぬわけでございますから、政府としては、御案内のように国内ばかりじゃなく、海外におきましても資源の探鉱、開発という点には努力をいたしておるわけでございます。田代さんがおっしゃる気持ちもわかるのでございますけれども、これは経済政策でございますから、原油を入れるのをやめて石炭に振り向けるとかいうことも、それは一応考えられますけれども、たいへんコストが高いものになることは御承知のとおりでございまして、私が冒頭に申し上げましたように、経済的な資源として日本の石炭の採掘をやるということを目安にいたしましてわれわれはこの政策を編んでおるのでございまして、経済性を一応はずしますればいろんなことが考えられるわけでございますけれども、一応われわれの置かれたきびしい条件のもとでの政策であるということだけは御理解いただきたいと思います。
  298. 田代文久

    田代分科員 時間がありませんから、簡単に質問だけいたしますけれども、災害の問題ですね。これは労働力が、とにかく政府が言われているとおりで、大事ですけれども、災害は依然として続発して、とにかく炭鉱労働者は安心して石炭を掘る、そういう意欲がわかないような状態になっておる。ところが依然として政府保安対策なりあるいはそういう点は不十分である。  そこで一つお聞きしますけれども、たとえば三池の災害にしましてもその他筑豊における山野やあるいは北海道やら長崎やら、何百人というような災害が次々と出てきて、これは将来そういうことは絶対起こらないという保証は何らないのですがね。そういうときに、災害を起こした資本家、会社側は、これに対してもう少し罰則を強化すべきだ。何百人死んでも会社側はほとんどその責任を問われたことがない。私はそういう点で罰則を強化するような方向をやはりとるべきであると思うのですが、そういうことをやる意思があるかどうか。  それからもう一つは、一昨年、御承知のように三池炭鉱のあの事故を中心として、一酸化炭素中毒のいわゆるCO法案、これが通過いたしました。ところが実際にあの法案よって——三池の炭鉱労働者なんかに会ってみまして、どのくらいあれはためになったかというと、ほとんどためになっていない、全然とは言いませんけれども。自分たちがそういう一酸化炭素の中毒で障害的なからだの苦しみを持っておるのに、そいつはきわめて不十分である。だからあの法案をもうちょっと前向きにとにかく改正してもらいたいという意図が非常に強いですね、そういう点を、たとえば完全治療、あるいは解雇制限とか、あるいは全収補償をするというような点が非常に欠けているので、あまりこれは役に立っておらぬということを、実際働いておる労働者が言っておるわけなんですけれども、不十分な法案はより前向きでこれを変える意思があるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  299. 橋本徳男

    ○橋本政府委員 一つは、災害につきましての罰則をさらに強化すべきである、鉱業権者については弱いじゃないかというふうなお話でございますが、今日までのところ、いろいろの災害を起こしておりまして、それぞれほんとうの原因を究明いたしまして、もし鉱業権者に罪ありといたしますれば検察庁のほうへ送致しております。現に三十八年で五名、三十九年で三名、四十年で十名、四十一年で十九人の鉱業権者を送致しております。こういったような形で、これは司法的な関係といたしまして検察庁とともにやっておりますので、いまの司法的な措置としましては十分ではなかろうかというふうに考えております。  ただ行政運営といたしましては、今後の再建問題もからめましてわれわれも、鉱業権者の保安に取り組む態度というふうなものはより明確にあるべきであるというふうな考え方から、行政措置としては従来以上にきびしい態度で臨んでいきたいというふうに考えております。  それからもう一点の、炭鉱災害の一酸化炭素中毒に関する法律でございますが、これは実は労働省の法律でございまして、通産省といたしましては、こういった事故の起こらないように、それから事故が起きた場合に備えるために、この一酸化炭素に対しまして自己救命器等を携帯させるといったようなことを法律で規制いたしまして、またこれに対しまして十分な補助金も与えておるといったようなことでございます。一応この法律自体の運用は実は労働省のほうの所管になっておりますので、われわれのほうとしましてはその前とあとの問題について万全を期したいというふうに考えております。
  300. 田代文久

    田代分科員 時間がありませんから、最後に労働大臣質問いたします。  今度の案によりますと、山ごと閉山なんかやって労働者が離職したという場合に、大体炭鉱で働いて、そうして退職金あるいは炭鉱に自分の貯金をしているとか、あるいは未払い賃金がある、自分自身の骨身を削った金を、閉山した場合にこれすら取れないという事情、御存じでしょう。こういうことは人道上からいっても全く許されない。そういうことがなされておる。そうすると、今度の法案の中でも、そういうふうにもしまるごと閉山したような場合に、大体政府は七五%はいまからは——過去のは違う。過去の大正炭鉱、大辻炭鉱なんかは、実際まだ自分の骨身を削った退職金すらわずか二〇%しかもらってない。また四〇%くらいしかもらってない。自分の預けた金すら会社に使われてしまってもらってないという、こういう非惨な状態があるのですね。今度の法案でも、実際に政府がまるごとめんどうを見てやるといっても、最大限七五%です。そうするとあとの二五%は、労働者はもうそういう場合はしようがない。その二五%を埋める資力が炭鉱にあれば炭鉱からもらうべきであるけれども、もし炭鉱が資力がない場合には、もうおまえ泣けということになっておるという事実。そういうことで済まされるかどうか、これが一点。  それからもう一つは、この産炭地自治体ですね、市町村がこの閉山に次ぐ閉山で全く荒廃しています。たとえばその中の特殊な県としても、福岡県の中の例をとりますと、その県内の閉山による失対事業費を自分が一部持たなければならぬとか、生活保護費を持たなければならぬとか、あるいは鉱害の一部負担、こういうようなことが二十三億円、福岡県だけであるんですよ。そうすると、これは佐賀だって長崎だって、山口だって常磐だって、北海道だって、これはばく大なあれがあると思うんです。そうすると、そういう特殊のこの炭鉱破壊による地帯に対して、政府は地方の交付税を引き上げてやって特にこのめんどうを見るというような姿勢に立っておられるかどうか。この二点について答弁していただいて、私の質問終わりたいと思います。
  301. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 第一点の、閉山の際に起こります従業員に対する債務、これの企業側の弁済でございます。いまお話しのように、大体七五%程度を充足し得るように考えております。これはまあ一〇〇%が望ましいという気持ちはありましょうけれども、他の債務に対しましては大体五〇%程度でがまんをしていただく仕組みにしておりますし、いろいろなバランスから見て、なし得る最高限ではなかろうかと思っております。  第二点の、産炭地域失対に対する地方財政の問題でございますが、従来から地方交付税の配分にあたりましては特別の配慮を加えております。そのほかに、産炭地域産業基盤整備促進のための道県に対する地方債の利子補給、あるいは市町村に対する補助率の引き上げというような措置をいままで講じてきておるのでございます。ただ、おっしゃいましたようなこともございますので、四十四年度からは新たに石炭対策に即応いたしまして、産炭地域の地方財政対策を一段と強化するために、終閉山を受けた地方公共団体の財政援助措置といたしまして、産炭地域振興臨時交付金を新たに設けまして、約十億の所要の予算措置を講じておるのでございます。
  302. 田代文久

    田代分科員 終わりますけれども、とにかく七五%しておるから最大限やっておるとかなんとかというような、そういう冷酷な姿勢を私は改めてもらわなければならない。あなたが炭鉱労働者になったつもりで考えてもらいたいと思うのです。
  303. 湊徹郎

    ○湊主査代理 次に近江巳記夫君。
  304. 近江巳記夫

    ○近江分科員 委員長大臣、関係者の皆さんも、非常に長時間の御審議でお疲れと思いますが、私が一番最後でございますので、よろしくお願いいたします。  大臣にお伺いいたしますが、まず資本の自由化、これの第二次が近々行なわれるわけでありますが、この資本の自由化に関連して国内のそうした業界というのは、外資に牛耳られるということを非常におそれておるわけです。これは体制の弱体、いろいろな原因があろうかと思いますが、大多数は非常に消極的である。この資本自由化の対応策として、国際競争力をつけるための企業の合併の促進、それから外資のかってな企業活動のチェック、つまり独禁法を外資にはきびしくといった、そういう意見産業界に非常にあるように思います。この資本自由化と独禁政策との関係、これについて大臣の所感をお聞きしたいと思います。
  305. 大平正芳

    大平国務大臣 外資の問題は、独禁法以前に外資法の問題でふるいにかけられるわけでございまして、そこで国内に入ることを認められた資本に対しましては、国内の資本と同様に独禁法の厳正な支配のもとに入ると承知いたしております。
  306. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そこで、認められた外資については、独禁政策上、外資であろうとそれから国内資本であろうとこれは平等である、このように言われたわけでありますが、そうすると、産業界が合併促進を唱えている、これは積極的に国際競争に打ち勝つということでどんどん進めていく。そうなってきますと、外資系の企業が同じようにどんどん合併によって大きくなってくる、こういう傾向に対して、大臣としてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  307. 大平正芳

    大平国務大臣 それはいま問題になっておりますように、独禁法の十五条でございますか、一定の取引分野、すなわち日本という領域において、合併によって実質的に競争が制限されるという場合の合併は認めないという規定が働くわけでございまして、これはケース・バイ・ケース、公正取引委員会が具体的に判断して認否をきめるということになるわけでございます。外資であろうと内資であろうと、先ほど申し上げましたように区別はございません。
  308. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そういう外資の攻勢に対して国内業者は非常におびえておる。それが、要するにいま大臣がおっしゃった公平であると、どんどん進んでいく。そうすると、業者のそうした反応等をどう受けとめていかれるのですか。これは仮定の問題であるか何か知りませんが。
  309. 大平正芳

    大平国務大臣 ですから、冒頭に申し上げましたように、先進諸国からはいろんな批判がございますけれども、外資法で外資の導入につきましてはいろんな規制を設けておるわけでございまして、政府のほうで認めるものは、国内に大きな衝撃を与えないようにということを頭に置いて認否をきめておるわけでございますから、まだ見ぬ幽霊に別に民間がおびえる必要はないと思うのでございます。まだ、自由化をいたしましたのは多くの業種の中で一部のものを自由化したにすぎないのでありまして、これからもう、どんどん、政府は全部ドアをあけてしまったんだというようになりますと、あなたが御指摘のようにみんな御心配でしょうけれども、そういうような点は、政府は十分配慮して衝撃を回避するように考えておりますから、特に取り越し苦労をする必要はないと私は思います。
  310. 近江巳記夫

    ○近江分科員 しかし、それは要するに資本の自由化というのは、これは世界の趨勢になっておりますが、そうすると、いつまでもそのチェックをできるという段階ではないと思うのです。ここ数年の間だと思うのですよ。その間に、要するに心配のない体制を完ぺきにつくる、そういう自信はおありですか。
  311. 大平正芳

    大平国務大臣 でございますから、鋭意いわゆる体制整備と申しますか、構造改善、体質の改善ということに産業政策は力点を置いてやっておるわけでございますし、企業側におきましても、だんだんとみずからの力で実力をつけていっているわけでございます。そういう状況を見ながら資本の自由化に、そのペースを見ながら対処していっておるわけでございます。仰せのように、いつまでも閉鎖した状態におれるなんて私どもも考えておりませんし、また民間でも考えていないであろうと思います。あなたがおっしゃるように、ここ数年非常に大事な時期であると思います。
  312. 近江巳記夫

    ○近江分科員 しかし実際は、いままでの政府のやってこられた、特に中小企業等にしぼった場合、実際、名前はあっても実はない。これは大多数の声ですよ。したがって、いろいろな政策もこれから打ち出されると思いますけれども、われわれとして、はたしてどれだけそれが効果があるのか、はなはだ疑問を持っております、正直に言って。そうした場合、どんどん外資が入ってきて、そうして合併をどんどん進めていく、こういう点について非常に心配をしておるわけです。  そうした場合、例の問題になっております八幡、富士、これがまだ公取の最終的なことは、いまあくまで事前審査の段階でありますからわかりませんが、雲行きとしては、いろんな条件をつけて、その対応策を業界、二社がどのように持ってくるか、それによってきまると思いますが、ほぼ決定のような、そういう現状だと思います。そうなってくると、日本の一位、二位と、世界的に見てもあれだけの大きな規模が合併する。そうなってくると、あと合併ということがチェックできるということは、他の会社についてはほとんど考えられない。完全に独禁法の骨抜きというような状態になるんではないかと私は思います。そうした場合、当然ここ数年にどんどんと資本の自由化が行なわれて、外資もどんどん入ってくる。そうしたときに、国内の中小業者が非常に荒らされてくる。この点を非常に心配するわけです。その点に対して、特に中小企業に対して、資本の自由化が急ピッチで進んでおる。これに対して早急な、いままでのようなただ総花的な政策ではなくして、これだという、てこ入れのできる、そういう対策をお考えになっていらっしゃいますか。
  313. 大平正芳

    大平国務大臣 私は近江さんと少し考えが違うので、私は日本にもっと自信を持っているのです。日本の企業は、そんなに、あなたが御心配されるようにひよわいものとも思いません。ただ、正直に申しまして、蓄積は乏しいし、利益水準はなお低いし、金利の負担も重いから、まだ十分、どんと来いというところまでいってないことは認めまするから、資本自由化が手放しでいまどんどん大幅にやれるというような段階ではないと思いますが、しかし相当競争力が増してきておることは、最近の輸出の伸びを見ましても御理解いただけると思うのでございます。  それから、国内的な対策として体制の整備でございますけれども、まあ合併もあれば、また分離もあるし、共同化もあるし、協業化もあるし、また業界ぐるみのいろいろな整備もございまするし、あの手この手で民間も考えられるし、政府もあとう限りの助成を考え、税制上のフェーバーも考え、金融上のあっせんもやり、この手というわけではございませんが、いろいろな手をあわせてやっていくべきものと思います。  それから、八幡、富士の合併がかりに認められたという場合に、もう独禁法は骨抜きじゃないか。私はそんなこと思いませんがね。そんなに合併が簡単にできると思いません。合併の決意をするというのは、なかなか容易なことじゃないと思うのです。それぞれの企業は個性がありまするし、いろいろな沿革もあるし、企業意識も違いまするし、いろいろな人事上の問題もありまするし、なかなか合併なんかできるものではないと私は思います。現になかなかできないのです。たまたま富士と八幡が合併に合意して、独禁法で規制されておる限界を越えない範囲で合併ができたとすれば、それだけのことじゃございませんか。そのことが非常に重大なことのように考える考え方には、私はにわかに賛同できないのでございまして、大きいとか小さいとかが問題ではなくて、独禁法は要するに取引の分野で実質的な競争制限にならぬような合併であればいいということでありますから、八幡、富士だって、日本の法人としてそういう許された範囲内において合併をする権利を持っておると私は思うのでございまして、何かこれが犯人のようなことを言うのは、私は非常な間違いだと思うのでございます。そこはもっとリベラルに考えたらいいんじゃないかと思います。
  314. 近江巳記夫

    ○近江分科員 要するに合併の件につきまして、われわれが考えておることと大臣のお考えになっておることとやはり相当な開きがあるわけです。そうした管理価格、そして硬直化、それが、あくまで基幹産業でありますから、あらゆる点に影響してくる。特にこれだけ国民が物価高で苦しんでおりますので、もしもこの鉄鋼がそうした管理価格ということになってくれば、この物価という点について非常に大きなはね返りが来る。さらに一般の工業製品も全部影響を受けるわけです。ひいては、そうした日本の工業製品は非常に弱くなってくる。いろいろ消費者に対する影響、あるいはまたそうした工業製品、あらゆる点のはね返りということをわれわれは深刻に考えております。ですから、最近独禁懇話会の出した生産集中と価格動向、これを読んだところが、公取の調査によれば生産集中度の高い品種ほど価格が硬直化しており、生産集中度の低い品種ほど価格が低下する傾向が一般的に明らかになっている。八幡、富士合併による各品種の生産集中度はいずれもきわめて高く、この一般傾向から見ても、いわゆる管理価格が形成される危険はきわめて強い。こういうことを書いているわけです。  これは、学者にしても説がいろいろあるわけですが、合併について反対という学者が非常に多いわけです。大臣は、そう心配ないとおっしゃった。その根拠はいろいろあろうかと思いますが、その根拠を聞かしてほしい。管理価格にならないという根拠がもしあれば、出してもらいたい。
  315. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび議論がありますように、管理価格理論というのは、経済学的にまだ定立した議論でもないようでございますが、寡占化が進めば価格が管理価格化していく、硬直化していく傾向があると理論的にはいわれる。私はそれを否定するものじゃございません。問題は、いまの日本経済の実態の中で一体それが働いているかどうかということを実証的に確かめる必要が、政治家にも学者にもあると私は思うのです。  それで、私のほうで産業構造審議会基本問題特別委員会というのがございまして、昭和三十五年から四十一年にかけて市場構造別価格の推移というものを調べたのです。そうしたら、競争型と寡占型と高度の寡占型と超高度の寡占型と、四つの類型に分けまして、三十五年を一〇〇といたしますと、非常に皮肉な結果が出ているのです。   〔湊主査代理退席主査着席〕 これはぼくがつくった数字じゃないんで、実際に価格を分析するとこうなるのです。競争型が三十五年を一〇〇といたしますと、四十一年が一〇九・五です。それから寡占型が三十五年を一〇〇とすると九七・一、高度の寡占型が、同じく三十五年を一〇〇とすると四十一年は九四・七、超高度の寡占型は同じ四十一年が九三・六という、全然違った傾向が出ておるわけです。それで学者さんなんか、こういう問題がなぜこういうことになったかということをもう少し実証的に勉強してもらわなければいかぬのじゃないかと私は思うのです。寡占になれば管理価格になるぞというようなことを、ただいちずにそんなことばかり言っているのですが、そういう原理が現実に日本経済の中で働いておるか、働いておるとすればどの程度働いておるかというようなことを、ほんとうに実証的に研究していただく必要があるのではないかと思うのです。この点をぼくはこう判断するのです。  日本経済は寡占型と申しましても、協力型の寡占もあれば競争型の寡占もございますから、これも個々のケースで分析してみなければわからぬことでございまするし、同時に、日本経済は、この時期は非常な成長期でございますから、たくましい設備投資によりまして生産性が非常に進んだ時期でございますから、生産性の向上というファクターが寡占価格を形成しようという力を押えてこういう結果になったのかもしれませんし、これは私どもはいずれとも断定いたしませんけれども、十分検討に値する議論じゃないかと思うのです。  私が申し上げたいのは、日本では皆さん非常に管理価格のことを心配しますけれども、競争は非常に激烈だということ、若い、たくましい競争力を持っておる、成長力も持っておる。そういう経済においては、管理価格の形成というようなことについては非常に強い抵抗力がある。そういう型の経済じゃないかと思いますので、これは日本の特徴でございますけれども、それは近江さんもひとつ吟味していただきたい。私は何も断定するわけじゃございません。問題を提供するわけでございますが、そういう意味で、私はいずれが是とかいずれが非というわけではなくて、問題は抽象的な理論でなくて、日本経済の実態を実証的に解明していって、真実を突きとめてみようじゃないか。与党も野党も、役人も学者も業界も、いろいろやってみて、真実を発見するという努力が非常に大事じゃないか。いまの合併論の論議を見ても、どうもそういう点が若干弱いのではないか、お互いもっとやらなければいかぬのではないかという感じがするのでございます。
  316. 近江巳記夫

    ○近江分科員 どこからその資料を持ってきたのか知りませんが、私もそれは一応は研究さしてもらいます。しかし、きょうはもう時間が限られていますから、なんですが、一ぺん大臣とその件につきましていろいろと討論さしてもらいたい、このように思います。  私は、管理価格を絶対形成する、こういう考えに立っております。したがって、これは国民生活に与える影響は非常に甚大である、この点を私は申し上げておきます。  それで、結局合併を実際にやったときにどういう形が出てくるか。これは、いまおっしゃったように、あらゆる点の総合的な、マクロ的な立場で見ていかなければならない。ところが、公取のやり方なんか見ていますと、品種別のそういう点をより出してきて、非常にミクロ的といいますか、そういう点で非常にチェックをしているような感じがするわけです。企業自体のそうした能力というか、そういうものが、もしも合併した場合は、一位と二位は非常に大きな差があいてくる。こうなってくると、いまおっしゃったようなそんな実証は、現実には私は絶対されないと思う。私がおそれている結果が必ず出てきますよ。ブリキだって合併すれば六三・六、レールなんかほとんど一〇〇ですよ。鋳物銑鉄なんか五四・二、鋼矢板が九六。数字は時によって若干の変動があるかと思いますが、最近の私が聞いた資料です。そういうわけで、合併してからああまずい、弊害が出てきた、だからチェックしようとしたって、現在の独禁法のどこでチェックするか。そういう点で非常にこういう弊害というものはいろいろと議論されているし、現実にアメリカなんか二位と五位の合併のときだって、あれはさしていないわけです。あれだけの超大型だったUSスチールが、大男総身に知恵が回りかねなんということわざがありますが、そのとおりで、結局技術開発にしたって何にしたって、できていない。生産性だって上がっていない。大きくなったから国際競争力がどれだけ出てくるか、またどれだけそれがプラスとなって国民に還元されていくか。結局業者の競争制限、そうした形にして安泰の形態を早くつくろう、そういう意図がありありと私には見えるわけです。そういう点で、公取のほうも一応事前審査ということで、正式な届け出を待って、対応策を見てどうするということを言っておりますが、これだけ国民が関心を持って、しかも重大な影響を与えるという問題ですよ。ですから、私は公取にも言っておるのですが、当然正式な審判をすべきである。それは対応策を見てからやりますと公取委員長は言われましたけれども、対応策はいろいろと話の合うように考えてくるかわからない。しかし対応策がどうあろうと、正式な届け出があれば当然正式な審判はすべきである、私はこのように言ったのです。このことは、通産大臣は公取委員長と違うわけですが、どうだということは言えないにしても、通産大臣としてはどういうようにお考えになりますか。
  317. 大平正芳

    大平国務大臣 公取のほうの権限の問題でございまして、公取は私は厳正にやられておることと思うのでございまして、私からとやかく申し上げるわけにはいかないと思います。
  318. 近江巳記夫

    ○近江分科員 鉄鋼合併の問題、先ほどに続いてですが、公取の事前審査の結論ですね。二社がこれに対して対応策をいま出すように言われておる。その際に、私の聞いておるところでは、鋳物用銑鉄について、通産省の指示のもとに鋳物用銑鉄の需給委員会を設けて生産調整をやるような案が見えるようなことを聞いているわけです。通産省はそのような意向を持っているかどうか、この点を確かめておきたいと思います。
  319. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまの鋳物の需給委員会のお話でございますが、現在需給委員会をつくろうという動きがあるわけではないわけでございます。実は現実に鋳物用銑と鋳物需要業界、これは機械業界でございますけれども、機械業界の成長が非常に激しくなっております。したがいまして、この関係で従来予想していた以上に鋳物用銑が必要である、こういう事態になってまいっておりますので、したがいまして需要サイド、供給サイド、供給不安を起こさないという意味で会合を持ったことはございますけれども、それを直ちに需給委員会として取りまとめてまいろうというところまでいっているわけではないわけでございます。
  320. 近江巳記夫

    ○近江分科員 名前はそれは仮称であって、私は別にどうと言いませんが、少なくともそういうような考えを持っていることは問題だと思うのです。結局これは行政指導カルテルといいますか、実質的にそういう形になってくることは独禁法の違反行為である、私はこう思います。それに対してどう思われますか。
  321. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいま申し上げました需給の調整と申しますのは、決して各業者間で幾らつくりましょうというふうな意味の申し合わせ事項ではないわけでございます。機械業界ではどれくらい銑鉄鋳物が——これはトータルでございます、各業者全部集めまして。どの工場どの会社という意味じゃございません。トータルとしてどれくらいの需要があるか、また伸び率はどのくらいかという推定をやっておるわけでございます。またそれに対応いたしまして、鉄鋼の供給業界として、各社別の問題じゃございません、鉄鋼のサイドとして、鋳物用銑鉄の供給量はどこまで出せるかというふうな将来の需要供給予測と申しましょうか、そういうふうなことでございまして、各社別にこれをどういうふうに打ち合わせてこれをどうこうしていくということを論議する場ではないわけでございます。
  322. 近江巳記夫

    ○近江分科員 全体のワクをきめれば、当然どこの会社はどのくらいというような話し合いが行なわれることはきまっていますよ。もしも具体的にそういう案が通産省に出されたとした場合、通産省は正式にそれをどうしますか。そこのところを……。
  323. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほども御指摘がございましたように、独占禁止法というものが厳としてあるわけでございます。したがいまして、独占禁止法に違反するような各社別の取りきめをそこでやるとかどうとかということは絶対に認められない筋合いのものであろうと思います。したがいまして、通産省としてもそこまでの意見がもしあるとすれば、当然それは採用いたさないということになると思います。
  324. 近江巳記夫

    ○近江分科員 いまいろいろと独禁法の問題が論議されておるわけですが、いま独禁法の改正をどうするかというような意見がだいぶ出ておるわけです。これについて合併の規制要件強化、またカルテル規制の強化、こうしたことをこれからの資本自由化——先ほど一番最初に申し上げたわけですが、当然ヨーロッパなどはワールドエンタープライズに相当荒らされているわけです。そういうような点で、ますますこれから独禁法が強化されていかなければならない、私はこのような考えに立っているわけです。こういう点でいま独禁法を今後どうしていくかということがいろいろ論議されておりますから、この点について通産大臣としてどのようにお考えになっていらっしゃるか、この点を最後にお聞きして終わりたいと思います。
  325. 大平正芳

    大平国務大臣 独禁法改正論というのはいろいろあるやに聞いておりますけれども、あなたの御意見のように強化すべしという御意見もあれば、いや、緩和しなければならないという意見もあると思います。しかし私は、独占禁止法というのは、戦後の日本経済の秩序を規定する基本的なファクターだと思うのでございまして、軽々に改正論は取り扱うべきものでないと思うのでございます。私どもは現実に産業政策をやっておりまして、独禁法は、何としてもこれを改正してもらわなければならぬとかいうような現実の必要を別に思いませんし、こういう問題は広く深く国民的な世論における論議をろ過した上で、各政党が十分お考えになった上でお考えになるべき問題でございまして、いま通産省といたしまして独禁法改正についてとやかく考えておるとか、また考えようとしておるとかいうようなことは全然ございません。
  326. 近江巳記夫

    ○近江分科員 これで終わります。
  327. 植木庚子郎

    植木主査 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は、明二十七日午前十時より開会し、通商産業省所管について質疑を続行することといたします。本日は、これにて散会いたします。   午後八時二十分散会