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1969-02-25 第61回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十五日(火曜日)     午前十時五分  出席分科員    主査 植木庚子郎君       重政 政之君    松浦周太郎君       湊  徹郎君    角屋堅次郎君       木原  実君    田中 武夫君       高田 富之君    戸叶 里子君       美濃 政市君    村山 喜一君       森  義視君    小沢 貞孝君       吉田 之久君    林  百郎君    兼務 大出  俊君 兼務 武藤 山治君    兼務 山中 吾郎君 兼務 斎藤  実君    兼務 田中 昭二君  出席国務大臣         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第二         部長      田中 康民君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         防衛施設庁長官 山上 信重君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農林経済         局長      亀長 友義君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         農林省蚕糸園芸         局長      小暮 光美君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         林野庁長官   片山 正英君         水産庁長官   森本  修君  分科員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部景         品表示課長   伊従  寛君         警察庁刑事局保         安部外勤課長  井口 孝文君         外務省欧亜局東         欧第一課長   宮沢  泰君         大蔵省理財局次         長       谷川 寛三君         国税庁税部長 川村博太郎君         国税庁税部法         人税課長    井辻 憲一君         国税庁間税部長 佐藤 健司君         文部省初等中等         教育局審議官  佐藤  薫君         自治省行政局行         政課長     森   清君         自治省財政局地         方債課長    山本 成美君     ――――――――――――― 二月二十五日  分科員田中武夫君及び塚本三郎委員辞任につ  き、その補欠として森義視君及び小沢貞孝君が  委員長指名分科員選任された。 同日  分科員森義視君及び小沢貞孝委員辞任につき、  その補欠として村山喜一君及び吉田之久君が委  員長指名分科員選任された。 同日  分科員村山喜一委員辞任につき、その補欠と  して戸叶里子君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員戸叶里子委員辞任につき、その補欠と  して美濃政市君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員美濃政市委員辞任につき、その補欠と  して木原実君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員木原実委員辞任につき、その補欠とし  て田中武夫君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員吉田之久君委員辞任につき、その補欠と  して塚本三郎君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第一分科員山中吾郎君、第二分科員大出俊君、  第三分科員田中昭二君及び第五分科員武藤山治  君、斎藤実君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算農林省所管  昭和四十四年度特別会計予算農林省所管      ――――◇―――――
  2. 植木庚子郎

    植木主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十四年度一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管を議題とし、前回に引き続き疑質を行ないます。  この際、念のために申し上げます。疑質の持ち時間につきましては、先例により原則として、本務員一時間、兼務もしくは交代で分科員になられた方は三十分にとどめたいと存じます。  なお、本日は多数質疑の申し出もあり、また本会議もございますので、恐縮でございますが、質疑時間を特に厳守していただき、答弁される方も特に簡潔にしていただきますよう、各位の御協力をお願いいたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)分科員 まず、法制局長官にお伺いいたします。  先日、二月五日の予算総括質問で、ここにもおられる角屋委員が、韓国に米を三十万トン貸与するこの問題で、財政法九条と食管法関係質問いたしました。財政法九条は法律によらねばということになっておる。その法律は何か。そこで長官食管法七条一項をもってお答えになりました。七条一項が米の韓国貸与に対する財政法九条の要件を満たす法律であるかということについては大きな疑問があるのです。そこで、重ねてこのようにしてお伺いしておるわけなんですが、七条一項、それに間違いございませんか。
  4. 高辻正巳

    高辻政府委員 先般御質疑がありましたのにお答えしましたのと変わりはございませんが、財政法第九条は、国の財産は適正な対価なくしてこれを貸し付けてはならないという規定がありますが、この第九条自身に「法律に基く場合を除く外、」というのが第一項に規定されております。この「法律に基く場合を除く外、」という、この法律として、食管法の第七条の「政府ハ政令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧貸付ハ交付ヲ為スコトヲ得」、これが財政法第九条にいうところの法律に基づく場合の貸し付けになるだろう、むろんそれには「政令ノ定ムル所ニ依リ」という政令をつくらなければなりませんけれども。そういう関係だと私は考えております。
  5. 田中武夫

    田中(武)分科員 いまちょっとおかしなことをおっしゃったのですが、「政令ノ定ムル所ニ依リ」、七条一項はそうなっておるのです。ところが現在の政令――施行令の第三条、これは七条一項を受けた政令なんですが、それはいわゆる試験研究のために貸し付ける、農林大臣の認可を受けた者に対して。そうなっておる。この場合は試験研究のためのものであって、韓国にということはこの政令からは出てこないわけなんです。
  6. 高辻正巳

    高辻政府委員 その点はおっしゃるとおりでございます。食糧管理法施行令第三条、これは食糧管理法との対比でいえば、食糧管理法第七条の「貸付ハ交付ヲ為スコトヲ得」、この交付について規定しておることは明瞭でございます。貸し付けについて規定していないことは明瞭でございます。交付について無償交付を規定しております。したがって貸し付けについて道を開こうと思えば、先ほども申し上げたように政令制定する必要がある、こういうわけです。
  7. 田中武夫

    田中(武)分科員 と申しますのは、韓国へ三十万トンの米を貸与するために新たに七条一項に基づくところの政令をつくる、こういう意味なんですか。
  8. 高辻正巳

    高辻政府委員 韓国に米を貸し付けるということは、実はこれは農林省の、政策官庁考えでございますが、もしかりにそういうことをするとすれば、この貸し付けのための政令を新たに設ける必要がある、こういうことを申しておるわけであります。
  9. 田中武夫

    田中(武)分科員 政令が有効に成立するためには法による形式的委任と実質的な委任がなくてはならないと思います。なるほど食管法七条一項は政令要件をゆだねておりますから、形式的要件は満たしておると思います。次に実質的な要件が満たされるかどうかという点でありますが、それは食管法第一条目的及び食管法精神から考えねばならないと思うのです。この食管法は第一条にうたっているように「国民食糧確保及国民経済ノ安定ヲ図ル」、これが目的であります。ここでいう「国民」は日本国国民であることは当然であります。またこの法律全体を流れておるところの精神あるいは法における独立主義等々から考えましても、この法律日本国にのみ適用せられ、日本国国民食糧確保生活の安定ということに眼目が置かれております。したがいまして、この食管法第一条の精神目的、さらに法の本質としての独立主義から考えても、ただ単に言いわけ的に政令をつくった。それで七条一項の政令ができたからやれるんだということは、いささか私は本末転倒した感じがしますが、いかがです。
  10. 高辻正巳

    高辻政府委員 いま田中分科員がおっしゃったことを、私はそんなことはどうでもいいということを毛頭申しておりませんのでございまして、貸し付をするには政令制定しなければならぬということだけを申し上げておるわけで、政令制定するについてその実体的理由食糧管理法上の一つ措置でございますから、食糧管理法の体系に乗って目的に照らし合わして、それがはたしてそういう政令に乗っかるものとして食糧管理法上の取り扱いとして適当なものであるかどうかというのは、むろん、たとえば私どものほうに政令審議にあずかるようになりますれば、私どものほうはそれをつぶさに検討いたしまして、政令をもってきめていくということになるわけでして、いまの点は全然無関係政令さえ出せばよろしいというふうには考えておりません。
  11. 田中武夫

    田中(武)分科員 だいぶんお考えがはっきりしてきたと思います。あの予算委員会角屋質問に対しての答弁では、現在の法及び政令でやれる、こういう印象を受けた答弁と受け取ったわけです。ところがいま話しておるとだいぶん考え方が変わってきた。あのときからそう言っておったかもしれません。それならあなたの答弁が舌足らずであった。  そこで、私は申し上げたいのですが、まずこれはお認めになったわけですが、政令が有効に成立するためにはまず法の委任によらなければならない。これは七条一項がありますから形式的要件を満たしておる。次に実質的委任があるのかどうか。これは食管法第一条の目的及びその精神からいって、また法の独立主義からいって、私は実質的な要件を満たすものではない、こういう点に一つの疑問を持っております。さらにまた、法を変えずして政令だけで直すとするならば、政令によって法の精神をゆがめる。言うならば行政権立法権に立ち入るといいますか、ことばをかえていうなら国会軽視、そういうことになろうと思います。ただ政令さえつくればいい、そういう考えであるならば、行政権立法に対する侵害といいますか、国会軽視これ以上はなはだしいものはないと思います。したがいまして、そういう考えではないような答弁をしたと思いますが、はっきりと言ってください。政令さえつくればいいんだ、こういうことではない。しかもその政令実質的要件を満たさねばならないし、そのためには食管法自体をやはり考えなければならない。現在の食管法の条文から出てこない。出てくるとおっしゃるなら私はもっと重ねて質問をいたします。いかがです。
  12. 高辻正巳

    高辻政府委員 先ほど答弁をしたことで尽きておると思いますが、ただむやみやたらに何でも政令でもって書けるというふうには実は思っておりません。政令で定むる、形式的委任とおっしゃいますが、あるいは実質的委任がどうと区別しておられますが、食糧管理法上の七条の「政令ノ定ムル所ニ依リ」というのが食糧管理法上の委任された政令でございますので、それはもうその合理的理由といいますか、そういうものは当然考えられてしかるべきものであります。これを形式的委任実質的委任とおっしゃるわけでございますが、それはそういうことをおっしゃらなくても、当然にやはりその合理性というものは考えられていかなければならぬと考えております。したがって、いま御指摘のようなことはそう考えておるかといえば、政令さえ出せばいいというつもりではない。それからこの前はそうではなかったようであるという仰せでございましたが、それはこの前はもう少し説明の時間をお与えさえくだされば私は申し上げたわけでございますが、何やら不徹底のまま終わったような、私どものほうからいいますとそういうきらいがあったように思います。
  13. 田中武夫

    田中(武)分科員 私、その当時の議事録を持っておるのですが、確かに舌足らずであったと思います。これは委員全体がそういう誤解を受けたと思います。しかしただいまの答弁で、私はあなたの考え方は大体わかりました。したがって、ただ政令さえ出せばいい、こういうことではないということ、これだけをひとつはっきりと確認をいたしまして、次へまいりたいと思います。いかがですか、よろしいですね。
  14. 高辻正巳

    高辻政府委員 政令さえ出せばいい、何度もお聞きになりますので、確かに「政令ノ定ムル所ニ依リ」でございますから、言い方によっては政令を出せばいいのでございますけれども、その政令を出すについてこのことの合理性考えなければいけない、食糧管理法上の合理性というものを考えなければいけない、これは当然のことだと考えております。
  15. 田中武夫

    田中(武)分科員 だから政令を出せばいいだけでなくて、出すにあたっては食管法精神目的等々から見てそれに沿うべきものであるかどうか十分検討する必要がある、そういうことですね。――それでは次へまいります。  そこで、法律的なことについては一応法制局考え方はわかりました。この政令をつくるにあたってはおそらくやはり農林省が主体になって政令をつくるんでしょうね。――それでは申し上げておきますが、いまの議論を通じて御承知のとおりでございますので、農林省政令をつくるにあたっては、一応そのときにはもう予算審議は終わっておると思いますので、そこでひとつ農林委員会等にその政令の原案を示して論議の場を与えていただきたい、そのことを留保いたしたいと思いますが、いかがです。
  16. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 政令につきましてはただいま法制長官のお話もございましたように、食管法精神食管法に基づく合法性のある、合理性のある政令でなければならないということは言うまでもないことでございます。ただ、政令制定権内閣にゆだねられておる問題でございますので、もちろん政令制定をいたしました際にはすみやかに農林委員会等に御報告申し上げ、御説明をするというつもりはございませんが、国会において御審議を願うという問題ではない、かように考えております。
  17. 田中武夫

    田中(武)分科員 もちろん政令内閣にゆだねられた行政権です。しかしいま私の言っているのは、法を変えずしていまのような趣旨政令はない、こう言っているのです。したがって、これを具体的な政令をつくる段階において、もう一度議論する必要があると思うのです。ないとおっしゃるなら私はここで質問を留保し、主査の手において主査報告の中にそのことを入れていただいて、本委員会に問題を戻して、特別な時間を与えていただいて徹底的に論議いたします。限られた時間の中ではこれはやれません。
  18. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 政令事項といえども国会国政審査の対象になるということは、私ども十分承知をいたしておりますが、政令制定そのもの内閣権限にゆだねられておりますので、国会で御審議を願わなければ内閣権限の行使ができないという性質のものではないということを申し上げておるのであります。
  19. 田中武夫

    田中(武)分科員 それはわかり切ったことなんだ。しかし国会国政調査権によって、法律から見て疑問があるというものに対しては十分審議します。する必要があります。このきわめ方いかんによっては、先ほど来言っておるように、行政立法に対する侵害である。いうならば内閣ないし行政庁国会軽視である、こう言っておるのです。まだそういうことをおっしゃるのですか。なるほど政令内閣にゆだねられた権限である。そうなると憲法にさかのぼってまで議論しなければならないのですが、主査、時間くれますか。そういう憲法論まで出してくるなら、ひとつじっくり二、三時間やらしていただきます。念のために憲法を持っていますから、ひとつ政令制定権のところからやりましょう。
  20. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 政令制定するにつきまして、委任をいたしております法律精神に沿い、また法律目的に沿い、そういう意味での合法性合理性を持たなければならないという点は、法制局長官答弁のとおりでございます。  ただ、私ども政令制定するにつきまして、これらの要件を満たしておるかどうかは、内閣としてはそれぞれ審査の機構を持っておるわけでございます。内閣全体として内閣責任において、これは合法的であり、また合理的なものであるという結論が出れば、私は内閣権限に属する政令制定をすることには、何らの誤りはないというふうに思うのでございますが、なお私どもがそういうことを申しております実体的な見解について一言触れさせていただきますと、食管法第一条の目的は、法に書いてございますように、「国民食糧確保及国民経済ノ安定ヲ図ル食糧管理シ其需給調整行フコトヲ目的トス」――「価格」の分を除きましたが、そういうふうにうたわれておるわけでございます。  そこで、現在のわが国における米穀の事情につきましては、御案内のように需給が大幅に緩和をいたしました。(田中(武)分科員「そんなのはわかっておるんだ」と呼ぶ)したがって、いまちょっとお聞き取りをいただきたいのですが、食糧を管理し、その需給を行なうということになりますと、現段階における食糧管理の任務の一つは、過剰米の適正な処理をどうするかということはまさに需給調整そのものに入ると私ども理解をいたすわけでございます。したがって、外国に対してその需給調整に沿うような処置をとる、それも法律の許す範囲内でそういう措置をとることは、第一条の食糧管理目的に沿うものであるというふうな理解で、そういう理解のもとに政令制定を進めたいということでございます。
  21. 田中武夫

    田中(武)分科員 そこへさかのぼると、政策論議からやり直さなければいかぬことになるのです。とにもかくにも食管法属地主義、これを考えてその上に立って法の委任によって政令は成立する。それには自主的要件形式的要件をかなえなければならない。こう考えたときには、私は疑問を持っております。これは限られた時間において論議するのには少し時間が足りないと思います。したがいまして、主査にお願いいたしますが、この件につきましては特に主査報告の中にうたっていただきたい。取り扱いについてお願いします。いかがです。
  22. 植木庚子郎

    植木主査 田中委員に申し上げます。  ただいまの御質疑の要点並びに政府委員答弁趣旨等につきましては主査報告に特に入れることにいたしまして、あと予算委員会においていかに善処されるか、その点はとにかく、この分科会としては報告に入れることで御了承を願いたいと思います。
  23. 田中武夫

    田中(武)分科員 そこで外務省にお伺いいたしますが、政令でやれるという上に立てば――それを制定を進めるのだというのですが、私が言うのは、政令ではだめだ、こう言っているのです。もしその場合、やはり韓国に三十万トンの米を貸し付けるためには政府間協定によらねばならぬ。そして、それは国庫負担行為として憲法八十五条による国会承認あるいはまた条約として批准を求める、そういう必要があろうかと思いますが、いかがでしょう。
  24. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま御質問の点でございますが、その点につきましては先ほど法制局長官及び食糧庁長官答弁しておられます線に従いまして、食糧管理法の七条ということによって実施をするというふうに内閣全体で政府として決定いたしておる関係でございますので、特に国会の御承認を求める条約あるいは協定というものをつくる必要はないというふうに、判断が政府部内で統一されている次第でございます。
  25. 田中武夫

    田中(武)分科員 いま言っているのも、それが疑問があると言っているのですよ。もしそういうような場合は、仮定になりますからお答えできなければそれまでだが、政府がすでに政令でやるときめておるのですか。政令でできるということをきめておるのですか、政府は。  それでは、分科会では総理を呼ぶわけにいきませんから、そういうことをきめておるなら、総理論議をいたしたいと思いますので、これまた本委員会のほうへ上げていただきたい。お願いしておきます。そういうことを政府がきめておる、閣議かどっかできめておるのですね。はっきり言ってください。
  26. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 この問題はかつて前例のないことでもございますので、政府部内におきましては法の取り扱い、また法的な解釈の問題等、一省限りで判断するということは適当でないということで、関係各省間におきまして慎重な検討を重ねてまいったのでございますが、現在政府としてきめておりますことは、食糧管理法第七条によって外国に対して貸し付けをすることは可能である、したがって政令制定した上でこの手続を進めるように、なおその方向で検討を進めるということをきめておるのでございます。
  27. 田中武夫

    田中(武)分科員 政府がきめるというのは、一体どういうことなのです。閣議決定でなくては政府がきめたとは言えないと思うのです。閣議できめておるのですか。それとも各省間の連絡の何かの機関でそういう打ち合わせになっておるのですか。政府がきめるといったら閣議決定でしょう。いつの閣議でそういうことが決定せられたか。その責任者総理でありますから、閣議決定ならば総理にこの問題を伺うことにいたします。
  28. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 表現が正確を欠きましたことを申しわけないと思いますが、政府として決定ということでございますと、お話しのように、閣議決定をするわけでございますが、閣議決定はいたしておりません。政府内での関係各省間での見解の統一をとって検討を進めておるということでございまして、私どもそれぞれあずかります行政について政府の一部局であるという気持ちが強いので、つい政府という用語を使ったのでございます。これは正確には関係各省間においてというのが正しいのでございます。
  29. 田中武夫

    田中(武)分科員 外務省も取り消していただきます。
  30. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいま食糧庁長官の言われたとおりでございます。
  31. 田中武夫

    田中(武)分科員 大臣、いまのお話しのように、各省間のいわゆる事務官僚が話し合ってきめておるのですよ。そのことによって法が曲げられるようなことがあっては了承できません。その打ち合わせ責任者はだれです。桧垣長官ですか、法制局長官か、責任者はだれです、そんなことをきめた責任者は。
  32. 高辻正巳

    高辻政府委員 政令はもう先ほど来十分御承知のとおりに、閣議決定しなければ政令ができないことは明瞭でございますが、政府部内でいろいろな事務を進めるにつきましては、これは御説明を申し上げるまでもなく、一省限りでやれるものは一省で準備を進めますし、各省関係のあるものは各省で協議をして進めていく、最終的な決定内閣でやるということになる途中の段階であろうと私は思っております。法制局としましても政令審査する段階ではございません。
  33. 田中武夫

    田中(武)分科員 もうよろしい。分科会でもあるし、あまりごてごてとやりたくない。だからことしは、私はきわめておとなしく質問予算委員会でもやってきたんです。ところがそういうことを言うなら、本領を発揮します。この事務官僚間の打ち合わせ、これを政府決定なりということ自体あなた方の感覚がどうかしておるのですよ。そこに官僚政治の弊害の根本があると思うのです。政令内閣がきめることは憲法に許された権利であります。しかしその内閣がやったことに対して、それをチェックすることは国会にあると思います。したがってあくまでも、それが先になろうとあとになろうと――私は先のほうを望みたいのですが、憲法論で来るなら先おきめなさい。しかしそれは閣議において決定したものをもって農林委員会へ出ていただきたい、出していただきたい。そこで十分に論議を尽くす。これはここに農林関係者もおられるかどうかわかりませんが、農林委員会で一日くらいもらって十分本領を発揮しての質問をいたします。よろしいですね。主査、そのこともひとつお含みおき願います。  それでは先にまいります。  そこで農林大臣、いま桧垣長官が言ったように、いわゆる米がだぶついておる。そこで韓国へ三十万トンを出すことも食糧管理法でいうところの需給調整であると、ということ。これはまあ出すことにおきめになったようですが、沖繩からは内地米を供出してくれということが強い要望として出ております。これは総務長官もどこかの委員会でお答えになったようですが、どれだけをどのような条件で出されますか。
  34. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 韓国は御承知のように二年続きの大干ばつでございまして、ぜひひとつ貸し付けてもらいたいというようなお話からこの問題が出発をしております……。
  35. 田中武夫

    田中(武)分科員 韓国でなくて沖繩です。
  36. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 つい最近に至りまして、ごくまだ二、三日前でございますけれども、正式に沖繩からは米を少し出してもらいたいという、こういうように正式な要望がございましたので、それにつきましてはただいま検討をしております。
  37. 田中武夫

    田中(武)分科員 韓国は三十万トンですね。その条件。それから沖繩にはまだ検討だと言っているのですね。数量はどうなんです、条件はどうなんです。
  38. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ほんとうにまだ幾日でもないのでございまして、話があってからまだほんとうの二、三日でございまして、でありますから、その方法、価格、すべてこういう点についてはただいまほんとうにまだ検討を始めているばかりでございますから、まだ正式な折衝も始まっておらないようなわけでございます。ただ書類を私のほうはちょうだいしたというばかりでございます。その点は御了承願いたいと思います。
  39. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、総務長官は何か四万トンか何かのようなことを沖繩について言っておるようですが、違いますか。韓国の条件はどういうことなんですか。
  40. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 沖繩は大体八万トンぐらい必要なんだと。しかし沖繩産が一万トンぐらいありますから、そのあと、その残りを何とか本土のほうから保障してもらえないかという話だと思います。それに対しての数量はまだ出ておりません。向こうからの要求には数量とか方法とかなんとかまだ何にも書いてないのです。ただ米についてそういう考慮を願いたいという話だけでございます。ですから、もっぱら十分検討を加えます。
  41. 田中武夫

    田中(武)分科員 韓国の条件もまだきまってないんですね。――ここで申し上げておきたいことは、これはまた予算の締めくくり総括あたりで高辻さんと議論をする予定にいたしておりますが、沖繩県民に対して憲法が適用になるのかどうかということを前提とした論議を展開するので、予告しておきます。  ここでまた議論が分かれるかもわかりませんが、少なくとも沖繩県民は、いわゆる属人主義からいって憲法の適用を受けておる、私はこう解釈しております。そのことの論議はまたあらためてします。したがって、米がだぶついておるから、それの需絡調整をはかる、こういうことであるならば、まず韓国よりか沖繩に出すべきである。しかもその条件は、沖繩は日本国の国籍を持つ日本人である。その上に立って、韓国よりか悪い条件であってはならない。できるならば、当然無償貸与――無償贈与とでもいいますか、そういうようなことが望ましいと思います。はっきり申しておきますが、韓国の条件よりか沖繩の条件が悪くては絶対にいけない。これは法のたてまえからいっても憲法精神からいっても、それは言えると思います。大臣、確約を願います。
  42. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 両者ともまだ条件というようなものは、まあ事務的にいろいろな――韓国の点についてはまだ事務段階でございまして、私のほうには何らこういう条件というものがまだ出ておりません。したがって、沖繩もただいま申し上げるとおりでございまして、まだほんとうにわずか、日幾日もたちませんので、そこまで論議をするといいましょうか、検討を加えるだけの余裕を持っておりません。
  43. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、感じとして――沖繩のほうをよくすることが当然だと……。
  44. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 感じは、やはり御指摘の点を十分考慮に入れてこの問題の解決に当たりたいと考えております。
  45. 田中武夫

    田中(武)分科員 まだ十分納得のいかぬ答弁でありますけれども、いわゆる人情大臣としての長谷川農林大臣が、韓国よりか沖繩を差別するということはないものと確信をいたしまして、次へ参ります。  その前にちょっとお伺いしたいのですが、これは簡単でけっこうです。中国肉の輸入については、この前私が二月六日総括質問でお伺いしましたときには検討中だとおっしゃいましたが、その後どのように検討が進められておりますか。
  46. 太田康二

    ○太田政府委員 先般委員会等で大臣が御答弁なさいましたように、中国からのなま食肉の輸入の問題につきましては口蹄疫ビールスが完全になくなったという確証を得るに至っておりませんので、現在の段階ではなま食肉輸入は困難でございます。そこでそれにかわる方法として、中国からはなま食肉で買いまして船上で加工をする方法で輸入するということが考えられないかどうか。特にこれが家畜衛生上口蹄疫の侵入のおそれがないかどうかということについての技術的検討をわれわれはいたしたのでございますが、その結果、まあ本邦船上でやりますれば、製造施設のチェックあるいは製造過程のチェックができますので、家畜保健衛生上の問題はなかろうということで、その方法でいかがかという段階になっておるのでございます。
  47. 田中武夫

    田中(武)分科員 数量は……。
  48. 太田康二

    ○太田政府委員 実は数量の問題につきましては、はたして向こうから提供するといっておる肉が、肉の品質、規格、価格、こういったものが現実に私のほうのいわゆる実需者でございますところのハム、ソーセージのメーカーあるいはかん詰めのメーカーが出向きまして、現実に物を見て、はたしてどういったものができるか。それは価格との関係もございましょうし、品質との関係もございましょう。そういったことが明らかになった段階におきまして、具体的な商売の話として数量が確定になるのではなかろうか、かように考えておるのでございます。
  49. 田中武夫

    田中(武)分科員 韓国のついでに韓国ノリのことについてちょっとお伺いいたしますが、韓国ノリはたいへんもうかるそうです。韓国を出るときは、大体一枚三円かあるいは三円五十銭程度であって、それが日本にまいりまして、小売り段階になると一枚十五、六円から、いいものなら十八円、二十円もするわけなんです。相当なもうけのある問題でありますので、これにからんでいろいろな問題を起こしておるわけなんです。そこで、年間四億枚入ってくるというように聞いておりますが、どれほど韓国のノリが入ってきますか。そして三円ないし三円五十銭で入ったものを数倍で売れば、何千万円という、たとえば四億枚参るといたしましても、これは試算ですが、八千六百万円以上のもうけがある。また、長谷川農林大臣大臣に就任せられた当時、このノリの問題が大きく社会問題化したことがあったのです。そこで大臣が英断をもって、それを全部出せ、こういうようなことを言われたことを新聞でちょっと見たことがあるわけです。さすが長谷川大臣やるわい、こういうように新聞記事を読んで感じたことがあるのですが、その後の韓国ノリの状況、及び三円かあるいは三円五十銭のものが十六円から十八円するというようなこと、その間の利潤の動きはどういうことになっておるのか、ひとつ簡単に御説明願います。長い説明は要りません、時間がありますから。
  50. 植木庚子郎

    植木主査 田中分科員にお尋ねしますが、法制局長官はもうよろしいですか。
  51. 田中武夫

    田中(武)分科員 いいです。あとから出てくるけれども、またあらためてやりましょう。
  52. 森本修

    ○森本政府委員 簡潔に経過を申し上げます。  四十三年度のノリの輸入は、当初四億八千万枚ということでございましたが、その後約一億追加をいたしまして、合計五億八千万枚ということでございます。追加の一億の取り扱いが問題になっておりましたが、十二月の中旬ごろ市場に放出するということで処理をいたしました。一億枚につきましては、その後流通段階の状況を私どものほうとのり協会のほうで実際の追跡調査、それから必要な段階に対するアンケート調査というふうなものを実施いたしております。ただ、それの最終的な集計ないし取りまとめがちょっと手間どっておりまして、まだ出ておりません。私どもの感じでは、計数的にははっきりはしておりませんけれども、追加の一億分については、かなり流通段階の業者が自粛をして販売しておられるというふうに感じております。
  53. 田中武夫

    田中(武)分科員 今度は一億追加したんでしょう。年間にどれくらい入るのですか。そのもうけは幾らくらいですか。
  54. 森本修

    ○森本政府委員 四十三年度は五億八千万枚入ったのであります。
  55. 田中武夫

    田中(武)分科員 もうけは……。
  56. 森本修

    ○森本政府委員 もうけといいましても、なかなかこれは……。
  57. 田中武夫

    田中(武)分科員 いやいや、韓国港出しの値段と最終価格との差……。
  58. 森本修

    ○森本政府委員 韓国と輸入商社なり日本側とが値ぎめをいたしましたのが――数回にわたっておりますから、最終に入りました分は、一枚十円です。その前は十二、三円です。
  59. 田中武夫

    田中(武)分科員 韓国出しがですよ。
  60. 森本修

    ○森本政府委員 韓国と日本の値ぎめが、そういう形になっております。
  61. 田中武夫

    田中(武)分科員 これは大臣にお願いしておきますが、何かというと韓国ノリといわれて、ぼろもうけだということで常にいかがわしいうわさが出るわけなんです。私は韓国ノリの輸入から末端小売りに至るまでの機構をよく知りませんが、どうもそういう利権の上に相当なもうけをしておるのじゃないか、こういうように思いますので、そこはひとつ長谷川大臣の手腕をもって、できるだけ安くていいノリが消費者に渡るように指導監督をしていただきたい。それをお願いしておきますが、いかがですか。
  62. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ごもっともな説でございまして、私が就任すると同時にそういうようなお話がございまして、それは別に不正だという意味でもだんだん調べてみるとないように考えられますけれども、いずれにしてもそういうようなことがありましたので、最終の一億枚を出すときに、その分は全部消費者にお返しするかどうか。返さないとするならばあなた方にはこの営業を続けさせるわけにはまいらない、返すかどうか、今回の一億枚で必ずお返しをいたします、こういう条件つきで、最末端の小売り価格はまさにそれがあらわれたと感じております。
  63. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは次にまいりますが、先日、美濃部都知事が公営ギャンブル廃止ということに踏み切りまして以来、相当公営ギャンブルの問題が脚光を浴びたというか、新聞等にもよく出てくるようになりました。そこで、農林省の指導監督のもとにある公営ギャンブル、すなわち競馬について若干お伺いいたします。  まず第一点は、このギャンブルの警備には相当な警官が必要である。ことに八百長とかあるいは判定のミス等をめぐって、昨年は三十八件の紛争事件が起きておる。そういうことで警察官が出動しておる。警備で出ておるのが十七万七千人、それから紛争鎮圧のために出動したのが八千人、合計延べにいたしまして、昨年公営ギャンブルのために警察から十八万五千人の人が出ておる。そこで警察庁としては、公営ギャンブルの防波堤になるのはお断わりだ。したがって、主催者側に会って、これはひとつ自衛警備といいますか、自主警備をやってもらいたい、こういうことを考えられておるというか、通告せられたのか、その辺のところわかりませんが、言っておられる。そこでまず警察庁に、そういうギャンブルの警備を断わるということについての考え方をひとつお伺いいたします。そのときに犯罪が起こる、あるいは起こる可能性十分のときは、もちろん別なんです。そういう点も含めて……。  それから長谷川農林大臣は、かつて商工委員会で私と一緒におりましたときに、競輪を徹底的に取り上げたこと御承知かと思います。しかし、自衛警備といいますか、自警にあたりましては、その当時暴力団とのつながりがあった。その暴力団とのつながりを切らすために、相当委員会でもやかましく言ったはずなんです。もし警察が手を引いたときに――いまガードマンといったような制度もできておりますが、また公営ギャンブルと町のボスないし暴力団とのつながりが復活しないか、こういう点をあわせて、これは農林省のほうにお伺いいたします。
  64. 井口孝文

    ○井口説明員 御承知のとおり、公営競技の紛争が三十九年ころからふえてまいりまして、昨年は年間三十八件、相当数の警察官がこれに従事しておるわけでございます。警察としてこれに対する考えはどうかというお話でございますが、私ども、ああいう公営競技があるたてまえといたしまして、しかも施行者が地方公共団体である、また競馬法をはじめといたしまして、各法律でそれぞれ施行者、振興会等がその責任を負っておりますし、もう少し自主警備に力を入れていただきたいという気持ちは持っております。ただ、現実に紛争の起こる可能性が非常に多いという現状では、なかなか警察力を減らすこともできない。そういう状況とにらみ合わせながら、今後極力こういったほうに手を取られることがないように努力して、自主警備を強化していただきたい、かように考えます。
  65. 太田康二

    ○太田政府委員 先生お尋ねの競馬の自衛警備の問題でございますが、競馬法の施行令の十二条並びにこれを準用する十七条の七の規定によりまして、日本中央競馬会並びに競馬施行者は、それぞれ「競馬場内及び場外設備内の秩序を維持するため、入場者の整理、競馬に関する犯罪及び不正の防止並びに競馬場内及び場外設備内における品位及び衛生の保持について必要な取締まりを行なわなければならない。」ということに相なっておりまして、現在中央競馬会におきましても、それから地方のそれぞれの開催者におきましても、警備の点につきましては、特に重点を置きまして自衛警備に当たっておるのでございますが、なお今後もこの点につきましては、特に重点的に指導に当たりまして、競馬警備要員の確保というような点につとめてまいりたい、かように考えております。
  66. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 その暴力団との関係というものも、かつてのようなことは、全くないとは言い切れないでしょうけれども、このごろは非常に少なくなった。隣接競馬場とこちらのほうとの当事者の共同の警備をするというようになってから、きわめて少なくなったというお話を伺っております。
  67. 田中武夫

    田中(武)分科員 施行令だとかなんとかは、持っておるのだから、条文なんか読まなくていいのですよ。何条何項と言ってくれればわかるわけです。  私が言っているのは、いま大臣答弁せられたように、自衛警備になったときには、またぞろ暴力団とのつながりが復活しないか、そういうことのないように十分指導監督してもらいたい、こういうことなのです。自衛警備をするのはあたりまえだ、そんなことを聞いておるのではありません。  次に、これも新聞に出た記事だからお読みになっておると思いますが、高等学校の生徒がバイト先で覚えた競馬にこりまして、そして貯金三万円を全部使ってしまって、そして三カ月分ですかの月謝一万五千円を親からもらったやつもつぎ込んでしまった。そういうことで、それを隠すというか、自分の母校へ放火をした。こういう事件が最近、二月十九日に起きております。  この件につきまして、まず一つ農林省にお伺いいたします。今度は条文です。競馬法二十八条、これは「学生生徒又は未成年者は、勝馬投票券を買うことができない。」それに対しては罰則もあるわけですね。五万円以下という罰則がついております。ところが、この条文に対して私は疑問を持っております。「買うことができない。」といって、買った者を罰するというたてまえなんです。ところがたとえば、未成年者飲酒禁止法の第一条では、「酒類ヲ販売又ハ供与スルコトヲ得ス」、した者についてはこれこれの罰金に処する。あるいは未成年者喫煙禁止法は四条で、「煙草又ハ器具ヲ販売シタル者ハ十円」、ここでは十円になっておりますが、これは「〔二千円〕以下ノ罰金ニ処ス」こうなっておる。ところが、この法律では、学生生徒、未成年者は「買うことができない。」そして買った者に対しては五万円以下の罰金ということになっておる。すべて未成年者に対する問題については、買う者よりか売るほうを規制しておるわけなんです。これは未成年者に、あるいは学生生徒に売ることについては、どういうことになっているのですか。それから、それに対して指導監督等はどういうことになっておるのか。むしろ私は、この法律はたてまえを変えなくてはならない、このように思いますので、このことは法制局のほうへ……。さらに、このような問題が起こりましたことにかんがみ、教育上の問題として、文部省はどのように考え、あるいはこの対策として今後この指導をどう考えておられるか、かためてお伺いいたします。
  68. 太田康二

    ○太田政府委員 先生も御承知のとおり、競馬の勝馬投票券は短時間の間に多数のフアンに売るわけでございまして、一々売る側のほうが未成年者であるかどうかということをチェックすることが非常に困難であるというような理由もございまして、おそらくこういう二十八条みたいな規定になったのかと思うのでありまして、他の法制と若干規制の方法を異にいたしております。その点は、そういった理由に基づくものというふうに解しております。  そこで、実際に馬券の発売にあたりまして、未成年者等に対しまして発売をすることのないよう、私どものほうといたしましては各競馬施行者に対しまして十分指導しておるのでございますが、今回のような事件も起こりましたことでございますので、なお今後その指導の強化につとめてまいりたい、かように考えております。
  69. 田中康民

    田中(康)政府委員 ただいま先生のお述べになりましたことは、いまの方も申されたように、私どももまたかねてから考えておったことでございまして、これは刑事政策一般といたしまして、当然法務省とも連絡をいたしまして、われわれも検討いたさねばならない問題だと思います。ただ、いま太田畜産局長のほうから申し述べましたように、競馬については、たとえば、これは競馬場においでになっていただくとおわかりになりますが、相手方の顔も見ないでどんどん売っているという特殊な売り方になっておるわけでございまして、はたして売るほうに罰則を課することができるのかどうか、この点は実情ともあわせまして、なお慎重に検討して、先生の御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  70. 佐藤薫

    佐藤(薫)説明員 法改正の問題につきましては、農林省と同じ意見でございます。十分相談いたしてやりたいと思います。
  71. 田中武夫

    田中(武)分科員 文部省はこういう事件が起きたことについてどう思われるのかということを聞きたいのです。
  72. 佐藤薫

    佐藤(薫)説明員 この事件を通じて思いますることは、何といっても教育が大事である。あるいは従来の家庭教育の問題、あるいは学校全体をあげて指導するという体制の問題、社会教育の連携、いろいろな面につきまして必要でありまして、三十三年以来再三通達もいたしておりますが、こういう事件は珍しいことでございますので、これは十分気をつけてまいりたいと考えております。
  73. 田中武夫

    田中(武)分科員 そこで、こういう事件が起きたことについて、やはり教育界にもう一度注意を喚起する必要があると思うのですが、いかがですか。
  74. 佐藤薫

    佐藤(薫)説明員 特にこのために通達するというようなことは考えられませんが、いろいろな機会を通じまして再三――全国会議がございますから、あらゆる機会を通じて徹底していきたいと考えております。
  75. 田中武夫

    田中(武)分科員 これは大臣のお話のほうがわかりやすいのですが、売るのが顔を見ないで売っておる。これは売るほうのかってなんです。顔の見えるように設備をしたらいいのです。学生、生徒、未成年者に、まずそのほうに罰を課すというやり方は、刑罰を含むところの条文としてははなはだおかしい。売るほうを規制すべきです。現に読み上げました未成年者の飲酒禁止にしろ喫煙禁止にしろ、全部売るほうを規制しているのです。この法律は改正する必要があります。いかがでしょう。そうでなかったら、未成年者に対して刑罰を課するという上に立って、これは行刑上の問題から刑法政策にわたって議論をせねばなりません。こんな法律の立て方は間違っていますよ。いかがです。
  76. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 馬券といいましょうか、馬券も競輪も同じようでございますけれども、この売り方に関しましては、御指摘の点を十分私も知っておりますといいましょうか、おっしゃるとおりでございまして、改善する必要があると考えます。そのために、このごろは特に過大な宣伝だとか、広告だとか、あるいは観客を誘引するようなことはなるべく自粛するということを、もう強い通達を出しております。これらとあわせまして、ただいまのお話しの今後の指導に当たってまいる考え方でございます。
  77. 田中武夫

    田中(武)分科員 法の検討については――それはこっちか。
  78. 田中康民

    田中(康)政府委員 ただいまお述べになりましたことにつきましては、最近ではちょっと下火になっておりますけれども、実は法務当局におきまして、少年法というようなものが検討されております。私たちも少年、未成年者等に対する刑法上の措置というものについては、十分考慮しなければいけないし、また各法律においてのアンバランスというものはもちろん調整いたさなければならないのでございますので、少年法の立案その他につきましても、先生の御意思をよく体しまして検討いたす覚悟でございます。
  79. 田中武夫

    田中(武)分科員 競馬法の二十八条は主客転倒であるので、改めていただくことを要望しておきます。  次に、公営ギャンブルについて……。自治省は、ギャンブルの納付金で下水道の整備なんかをやる。現に地方財政をある程度潤しておることは事実です。そこで、自治省は法律を変えて――変えてというか、地方財政法、公営企業金融公庫法等の改正で、四十四年度から十年間、これはおおむねということになっているのですが、十年間存続さして、その売り上げ金の一%を納付せしめる、言うならば十年間公営ギャンブルの廃止を法律で守るというようなことになりかねない法律考えているようでありますが、自治省の真意及び方針をお伺いします。
  80. 山本成美

    ○山本説明員 ただいまの御質問の点でございますが、新聞紙上あるいは広報等で、私どもが、ただいま御指摘の公営企業金融公庫に納付金を納める、それでもって公営公庫の資金を拡充することをもって公営企業を潤していきたいという考え方を申し上げてきておるわけでありますが、これは各省との問題の調整も進んでおりませんので、どうなりますか、いまのところ申し上げるわけにまいりませんけれども考え方といたしましては、十年間公営企業を守るというような趣旨ではございません。
  81. 田中武夫

    田中(武)分科員 だけど、結果的にそうなるだろう。
  82. 山本成美

    ○山本説明員 私どもとしては、三十六年の七月に出ました地方公営企業調査会の答申の結論を前提といたしまして検討いたしておるわけでございます。
  83. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間がないので議論はやめます。議論はやめますが、この改正によって、結果的には十年間法によって保障するということなのです。そういう結果になるのです。そのことが問題であるということだけは指摘しておきます。  次に、国税庁のほうにお伺いいたしますが、このいわゆる競馬ブームに乗じて、馬主といいますか、馬の持ち主あるいはまた生産者というのですか、馬を買ってなにする等々で一年半に八億ですか、脱税があった、こういうことも伝えられておるのです。脱税なんということはどこの業界でもあるのですが、ことにこういう問題に関連しての脱税、これに対して、もう長い答弁は要りません、どういうような方針でもって臨み、あるいは対策をどうするか、それだけをお伺いいたします。
  84. 川村博太郎

    ○川村説明員 この競走馬の取引につきましては、過日新聞に出たようなことでございますが、今後国税庁といたしましては、調査の重点をこのほうに向けたいと思っております。この競走馬関係の脱税につきましては、馬主、牧場、調教師、この三者につきまして、いわば連鎖的に捜査をしなければならぬ、そういうようなことがございまして、一斉に短期間の間に調査するということはなかなか困難でございます。  それからもう一つの問題といたしましては、こういった馬主は、個人あるいは法人といたしましていろいろな事業を行なっております。そういった事業と、競走馬あるいは牧場関係の資金との金の流れがかなり関連してございますので、そういった事業所得関係の調査とあわせまして行なっていくつもりでおります。
  85. 田中武夫

    田中(武)分科員 文部省、警察、自治省、国税庁、けっこうでございます。  次は、JASマークで若干の質問をいたします。  JASマーク、日本農林規格ですね、これは今日までどちらかといえば消費者保護ということでなくて、業者を守る、業者の信用を補強する、こういうような役割りを果たしてきたように思うわけなんです。たとえば、前に問題になりましたが、牛の絵をつけてやまと煮、ニューコンビーフですね、あるいはニューマーガリン。何か牛をつけて、中はそうでなくて馬肉だったとか、こういうようなものがあるわけです。ところが、それを公正取引委員会が不当表示ということでやろうとしたら、これは農林省からJASマークの規格品として証明をもらっておるのだと、開き直るなんということがあるわけです。大体JASマークの目的及びJASマークが今日まで果たしてきた役割りを、簡単に説明願います。
  86. 亀長友義

    亀長政府委員 JASマークは、御承知のように農林物資規格法という法律に基づいてやっておりますが、もちろん産業ということはございます。しかしながら、適正かつ合理的な規格を普及させることによって消費者にも資する。農林物資の品質の改善、生産の合理化、さらに消費の合理化をはかる。このような目的でございまして、私どもとしましても、従来必ずしも業界のためにこれがあったというふうには、一方的に考えておるわけではございません。  さらに、公正取引委員会のほうで、いまの景表法に基づきまして、いろいろなことをなさっていらっしゃいます。しかし、これが必ずしも両者が相矛盾するものではなくて、公正取引委員会のほうは、御承知のように業界の規約ができるということを前提にいろいろな制度をなさっておるわけでありまして、JAS規格があるものについて具体的にそのような衝突があったということは、いままでほとんどないわけでございます。むしろJAS規格のないもの、あるいはJAS規格がありましても、御承知のように強制法規ではございませんので、その普及度が必ずしも十分でないという分野におきまして、いろいろ公正取引委員会のほうと同じようなものがたまたまあるというふうなことでございまして、私どもとしましては、両者相補って消費者行政に資するものである、かように考えております。
  87. 田中武夫

    田中(武)分科員 それじゃ公取委員長、JASマークと不当表示の問題に関連して、私は、いま言ったように、明らかなる不当表示である。ところが、JASマークによって保証せられておるんだ、こういうふうなことが過去にあったと思うのですが、いかがでしょう。
  88. 山田精一

    ○山田政府委員 過去におきましては、その点まぎらわしいものがあったという事実がございますけれども、ただ田中委員御指摘のニューコンビーフとかあるいは馬肉の大和煮でございますか、これは先般、業界におきまして自主的に公正競争規約をつくりまして、その表示を適正ならしめるということでその問題は解決いたしましたわけでございます。今後ともJASの問題につきましては、これは景表法との関係がきわめて密接のものでございますから、御担当の農林省さんと十分よくお打ち合わせいたしまして、遺漏ないようにやってまいりたい、かように考えます。
  89. 田中武夫

    田中(武)分科員 たとえば、果汁飲料の日本農林規格というのがあるのですね。これの、たとえば二条の表の、「果汁入り清涼飲料」なんというものを見ると、これは「四五パーセント未満のもの」となっている。一〇〇%というか、四五%以上の成分を含むものがむしろできないというかっこうだ。あるいはまた、この三条の濃縮果汁の点につきましても、この表の中の「標示」というところ、中の段ですが、果汁等含有率をあらわす旨の表示として、果汁四五と明記してあることとなっておる。ところが、これがほんの虫めがねで見なくちゃわからないようなものである。それしか表示がしてないということがいわれておるのですね。これはむしろ、このJASがあるために一〇〇%の天然果汁というものが妨げられておる。――いいですか。いま言ったように「四五パーセント未満のもの」そういうことになっておるので、これはむしろ不当表示という中身と、表示という感覚からいえばじゃまになるというか、悪いほうに影響している。そういう事実もあるわけですね。いかがでしょうか。
  90. 亀長友義

    亀長政府委員 現在の果実飲料に関するJASの規格は、三段階になっておりまして、一〇〇%含有しておりますものは、天然果汁と称するということに相なっております。それから果汁飲料と称するものは、四五%以上を果汁飲料と称する。それ以下のもので、一〇%以上から四五%未満のものは、果汁入り清涼飲料というふうに、規格が三段階になっております。したがいまして、一〇〇%のものは天然果汁と称すればよろしいわけでございます。
  91. 田中武夫

    田中(武)分科員 たとえば六五%入れようと思ったら、どうなるのです。
  92. 亀長友義

    亀長政府委員 これは、二番目の果汁飲料というところの表示をすればよろしいわけでございます。
  93. 田中武夫

    田中(武)分科員 四五%ということで一つの基準を引いておるのでしょう。たとえばよく天然レモンということで売り出した――このごろやっていないから名前をよく知らないのですが、ポッカレモンですか、あれはJASがあったのですか、なかったのですか。
  94. 亀長友義

    亀長政府委員 レモンについては、JAS規格がまだ制定されておりません。  それから先ほどの果実飲料の件でありますが、一〇〇から四五の間にこまかい境がないではないかという御指摘だろうと思います。その点は、確かにそこまでこまかく書いて分けておりません。もちろん、これをさらに細分化したらどうかという御意見もございますが、一応現段階では一〇〇%と四五%以上ということになっておりますので、六〇%の場合には果実飲料という分類も必要になるわけでございます。
  95. 田中武夫

    田中(武)分科員 時間がないから、論議はやめます。  農林大臣、一〇%で一つ区切っておるのですね。四五%、そういうことになっているのですよ。今日、これが悪用せられておることは確かなんです。したがって、この規格別表といいますか、これはひとつ検討する時期ではなかろうかと思うのですが……。
  96. 植木庚子郎

    植木主査 ちょっと田中委員に申し上げますが、公取委員長はよろしいですか。
  97. 田中武夫

    田中(武)分科員 いや、まだまだ。それじゃちょっと待ってください。公取委員長に先にお伺いします。  そこで、農林省は消費者団体等から、このJASについていろいろ陳情があり、あるいは要望があって、ようやくこれの改正、しかも日本農林規格法というのを、名前を農林物資の規格及び表示に関する法律と改めようとした。そのことについて、公正取引委員会のいわゆる不当景品類不当表示防止法との関係等々において、何らか問題があるように聞いております。そこで公正取引委員会の立場から、これのJASについて、不当表示防止法との関連において公正取引委員長の御意見を、急いでおられるようですから、伺っておきます。
  98. 山田精一

    ○山田政府委員 現在、果汁または果汁にまぎらわしいものの表示につきまして、先般来数回にわたりまして、消費者あるいは関連業界を交えました連絡会を開きまして、検討をいたしておるわけでございます。たとえばジュースとはどういうものに使ってよろしいかというようなことについて、十分検討いたしておりますが、まだ結論には――委員会審議をする段階にもなっておらないわけでございます。また、聞くところによりますれば、業界において、例の公正競争規約をつくる動きがあるように聞いております。その辺のところとにらみ合わせまして、農林省とも十分お打ち合わせをして、このJASと景表法との間の調和をはかってまいりたい、かように考えております。
  99. 田中武夫

    田中(武)分科員 これは農林省を悪く言うわけではないのですが、大体通産省にしろ農林省にしろ、いわゆる業界指導、監督する原局のほうは、やはり業界の立場に立ちたがるわけなんです。そこで、そういう規格等について、どんぴしゃっとやるのは、やはり独禁法の補完法であるところのいまでは不当景品不当表示防止法ですが、これが必要なら改めてもいいと思う。そういう面から規制していくほうがシャープではないか、こういうように思います。これについて、公取委員長法制局とはどういう御意見ですか。それだけを伺っておきます。
  100. 山田精一

    ○山田政府委員 私どもの立場といたしましては、消費者の選択を誤らしめるような表示はこれを排除してまいりたいということで徹底をいたしておるのでございます。その点につきましては現在の法律でもって十分できると考えておりますが、農林省さんとも十分折衝、御相談をいたしたい、こういうふうに思います。
  101. 田中康民

    田中(康)政府委員 この問題は、まだ実は法制局検討段階にまいっておりませんので、私、現段階におきましてお答えをすることはいかがかと思うのでございますが、やはり公取側のいま先生がおっしゃった不当景品の法律、それからJASの法律、いずれによるのがベターであるかにつきましては、それぞれこれから農林省がやる政策を評価いたしまして、その内容がいずれの法律に適当するかどうかということを検討いたさなければならないのでございますが、まだその内容自身を私実は全然見ておりませんので、それを見ましてから先生に対して答弁をしなければならない、このように思っております。
  102. 田中武夫

    田中(武)分科員 これはまあ新聞記事等ですがね、先ほど言ったように農林物資の規格及び表示に関する法律、これを改正して規格の点もそれに入れよう、こういう――時間がないそうですからやめますが、アメリカ等では厳格な規定を持っているんですね、アメリカの食品法は。だけれども農林省はこのことについて改正の意図があるように聞いていますが、改正の意図、どういうように考えておるのか。それに関連をして、私は消費者保護という立場からはやはり独禁法のたてまえを貫くべきではないか、このように思いますが、重ねて大臣とそれから法制局に伺いまして、中途はんぱになりましたが、これで終わります。
  103. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 今日のように、農林物資ばかりではございませんけれども、物資が非常に潤沢になってきておる今日に至って、農林省は、ただ業者の保護ばかりが目的ではなく、要は最末端の消費者をいかに保護するかということが農林省の今日の使命であろうとも考えられております。したがって今回JASの法律の改正を用意をしておりますし、さらにその規格というものをはっきりと表示を義務づけていく、そしていま田中さんの御質問のような御趣旨にぴったり合うような方法を今後十分検討さしていきたいと考えております。
  104. 田中康民

    田中(康)政府委員 ただいまの問題はJASに不可分の一体としてつけ加えられるかどうかというようなことも考えてみなければなりませんので――消費者行政は同じように公取も農林省もやっております。そこで、いま申しましたようなJAS法そのものに不可分の一体としてつけ加え得るものであれば、やはりこの法律の改正になるのじゃないかと思います。私、何ぶんまだ内容を存じておりませんので、非常に抽象的でございますが、そういう意見を持っております。
  105. 田中武夫

    田中(武)分科員 最後に、公取のこのほうの課長が見えておりますので、委員長は退席しましたが、説明員としてひとつ考え方を伺っておきます。
  106. 伊従寛

    伊従説明員 現在農林省のほうから農林物資規格法の改正について協議を受けておりまして、この中に、いま先生御指摘の表示に関する問題が含まれております。これは先ほどから先生おっしゃっておりますように、不当景品類及び不当表示防止法とその運用に影響するところが大きいと思いますので、いま現在事務局で慎重に検討中でございます。
  107. 植木庚子郎

    植木主査 次は高田富之君。
  108. 高田富之

    ○高田分科員 私は蚕糸業に関連する問題だけにしぼりまして若干の御質疑を申し上げますので、簡潔にひとつ御答弁を願います。  まず今朝の新聞でも伝えておりますが、現物が生糸相場六千円を割ったというような状況でございまして、いろいろ諸般の情勢から見まして、非常にこの蚕糸業の現在低迷しております状況には、養蚕農家をはじめ関係者は将来性という点で非常に不安にかられておるわけでございます。さような意味でありまして、非常に時節柄重要な問題でございますから、ひとつ明快な政府の見通しなり方針をこの機会にお述べいただきたい、かように考えます。  そこで、まず第一に見通しでございますが、先般作成されました「農産物の需要と生産の長期見通し」、これを見ますと、繭(生糸)の今後の需給の見通し等が立てられております。ここで問題になりますことは需要の見通しでございます。生糸、絹織物につきましてはいろいろ前から議論がありまして、化学繊維にやがて侵食されてしまう斜陽的な産業であるというような議論も一ころかなり強く主張され、それがその後の実際の成り行きによって打ち消されまして、やはり独自の分野があったんだ、とてもこの旺盛な内需の増大には追いつけないんだというようなことで、相当強気の見通しがありました。農林省で立てられました長期計画を見ますと、今後も所得の上昇に伴って高級織物分野を中心に増加していく、最終年次の昭和五十二年には四十一年の約一・四倍から一・五倍、四十三万俵ないし四十六万俵程度の内需が見込まれる、こういうふうになっておるわけでございます。今後の需要の見通しはなかなかむずかしいとは思いますが、ここまではっきり断定されておるにつきましては、かなり理論的ないろんな問題を検討された結果の結論であろうと思いますので、これについての根拠をひとつ御説明願いたいと思うのです。
  109. 小暮光美

    ○小暮政府委員 絹製品の需要につきましては、絹以外の繊維品との競合というなかなか見通しの困難な要素が介在いたしますけれども、私ども長期見通しを行なうにあたりまして、やはり所得の趨勢と絹製品の需要との相関ということに着目いたしまして、経済成長率等に基づく所得上昇のテンポに照応して、見通しに掲げましたような需要の増大を予測したものでございます。
  110. 高田富之

    ○高田分科員 せっかくの計画でございますから、なるほどと思う理論づけが必要だと思うのです。そうでないと非常に諸説紛々で、そうはいってもこれは希望的観測だろうということになってしまうのですが、それでは、はなはだ根拠薄弱だろうと思う。  たとえばこういうことが言えるのですね。最近までの内需が非常に旺盛だったということは、これははたして正常な状態なのかどうか。ものすごい勢いでここ五、六年というものは絹物の売れ行きがよかった。特に高級な訪問着や何かの売れ行きがよかった。これは、たとえば成人式なんかのときにみんなが着るということが一種の流行になりまして、そうしてブーム化してきたんだ。ところがこれは一時的なものであって、日本人というのは非常に流行を追う性格もあるので、やがてこういうブームはずっと退潮になるだろうという見方をする人もあるわけです。それからまた数からいいましても、そういう若い成人式や何かに該当する年齢というのは、昭和四十四年かを境にずっと減っていくわけですね。ベビーブームのときの山が過ぎるわけで、ずっと減ってくる。そういうようないろんなことから見まして、いままでのような強い内需の増大ということは望み得ないのだという議論がかなりあるわけでございます。  そのことが一つと、それから化繊、合繊につきましても、さっき申しましたように、一時はこれは事実をもって打ち消された形ではありますが、最近再び化合繊が特に研究開発されまして、本絹にかわり得るというようなことで盛んに宣伝をしておる新しい分野も開かれてきつつある。こういうふうなものも、日進月歩の科学技術の時代でございますので、これをどの程度に評価していいのかという問題がやはりあるわけであります。  そういうようなことについて、これだけの見通しをされている以上は、それはこうなんだ、こうなんだということが言えませんと、この見通しというものが何だか空に浮いてしまうのですが、いかがでしょうか。
  111. 小暮光美

    ○小暮政府委員 確かに将来に向かってはいろいろな要素が起こり得ると思いますけれども、経済予測の一つの手法といたしまして、何と申しましても過去における所得あるいは消費の姿の相関から導き出されます趨勢線を議論の出発点にいたすことは、一つの認められた手法かと思います。その際にこれをめぐります状況がどのようにあるであろうかということを勘案いたすわけでございますが、絹製品の需要の問題につきましては、御指摘のように強気、弱気のいろいろの議論がございますけれども、やはり化繊、合繊等の着物を着ました次には、どうしても絹そのものの着物を着たいというような形で現実の消費がいっておるようでございまして、必ずしも化合繊と絹製品が全くの敵対関係ということではないようでございます。やはり価格の安定あるいは消費の宣伝といったような努力とからみますと思いますけれども、絹製品独自の需要の増大というものは十分あり得る、過去の経験から見てもそういうふうに判断されるわけでございます。  なお競合品の問題につきましても、いま申し上げましたように、いろいろな形の新しい繊維が出てまいると思いますけれども、絹は天然の、自然の絹というところに一つ意味があるわけでございます。絹に対する強い需要選好は、今後も相当長期にわたって続くものというふうに判断いたします。
  112. 高田富之

    ○高田分科員 蚕糸業につきましては、大臣も本場の群馬県の出身であられますし、この機会にいろいろな低迷した空気を払いのけて、相当の希望をもって、養蚕家をはじめ関係業者の人たちに取り組んでもらわなければならぬと思うのであります。ただいまの御答弁である程度判明するわけでありますが、実際に去年あたりから一時的にちょっと頭打ちになっていますからね。しかしこれをばかに悲観的に見るというのは当たらないと思うのですよ。  ただ問題は、需要の開拓ということについて相当力を入れなければ負けるという可能性はあると思うのですね。ですから、そういう点についての努力というものを前提とすれば、こういう見通しは私は不当ではないと思うのです。手放しにこうなるだろうというのは私は当たらないと思います。相当の条件つきでなければならぬ。相当の努力が必要である。需要の開拓ということについては、とても化合繊にかないません、その努力がけた違いなんですから。その努力が非常に欠けておるので、私は実はそこが心配なんですが、需要の開拓という点に力を入れさえすれば、十分こういう需要の伸びる根拠はあるというふうに私は考えます。  そこで今度は輸出ですが、輸出につきましても、これを見ますとかなりの増大の見込みがしてございますね。ところがこの点につきましても、こういう見通しは書いてありましても、現実は必ずしもすぐに納得はしないと思うのですね。これに書いてあるけれども、ただ書いてあるだけじゃないかということになりがちなんです。つまり逐年減っています。どんどん減ってしまって、いまではほとんど言うに足る輸出はないわけですね。逆に輸入が激増いたしまして、いまでは輸出よりも輸入のほうが倍も多くなっている。この傾向で線を引いていったらたいへんなことになる。完全な生糸輸入国、繭の輸入国になる。こういうふうになる傾向を現状は示しておる。それがこの見通しによるとそうではなしに、輸出も若干ではありますけれどもずっとふえていく。目標年次には八万五千俵ですかになるのだ、たいへんなふえ方でございます。こういうふうな見通しをされておるわけでございますが、そこでお伺いするのですが、現在輸出が振るわない。特にアメリカでございますが、全くといっていいほど振るわない原因は何だとお考えでございますか。大臣、原因は何ですか。
  113. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 生糸の問題は非常にむずかしい問題があると思うのでございまして、先ほどからのお尋ねのように、国内の経済事情というものが大きく支配してまいることは申し上げるまでもないところでございます。したがって国内の需要を満たすために、現在ではかつての輸出国であったわが国が輸入をしてその需要を満たしておったというような事態が今日まで続いたのでございまして、したがいまして、将来しからばどのような方途でこの消費をはかっていくかということは、この問題は国内の経済も問題でございますが、現在のごとき経済が長続きをしていくということになれば、国内需要の大なる減退はないであろうと考えられます。  しかし反面、今日のように輸出がなぜこのように少なくなったかという原因というものは、申し上げるまでもなく日本の生糸相場というものの上下があり過ぎる。したがって安定した価格によってこれを引き受けて、そして引き受けると同時に、外国で取引をしてうちへ返らないうちに価格が暴騰をしておって輸出が不可能になっておったというようなことが、今日の輸出不振を招いた大いなる原因であろうと考えられます。したがいまして、今後に至りましては、何といっても生糸価格というものの安定ということが第一の条件でなければならない。高ければ高くていい、安ければ安くてもよろしい、安くて喜ぶわけではないけれども、まず価格というものの安定をはかる、これが将来の需給を旺盛ならしめる大なる原因だと私は考えるのであります。したがいまして、今日いろいろな生糸の面がございまして、現在では四十三年で織物を含め二万九千俵でございますので、生糸で出すよりも、二次製品にいたしましても常に不安定だということで輸出が非常に不振になってきております。でありますから、何といたしましても生糸価格というものを安定させるということが輸出を増大し需要を増大する原因でありますから、今後特に意を用いなければならないのは生糸価格というものの安定をはかる。これは政府責任の上に立ってそのような措置をとるということが問題だろうと考えられます。したがって、いま輸入をしておりますが、この輸入につきましても反面考えてみる必要もあるであろう。したがって輸入なんということは毛頭考えたこともなかったわが国が驚くべき輸入があり、それで国内需要が満たされておるというような欠点もあるわけでございますから、これらを総合いたしまして今後の糸価の安定をはかってまいりたいと考えておる次第でございます。
  114. 高田富之

    ○高田分科員 その点は全く大臣同感でございまして、価格が高いというよりも、むしろ不安定ということがこれだけアメリカの需要を減らした原因だというふうに私も考えます。ところが問題は、輸出ができなくなっただけならまだしもなんですが、輸入がふえてきたということ、これはまた一大事でございます。いま輸入がふえてきたのは、では一体何が原因でしょうか。
  115. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 輸入がふえたということは、昭和四十年以降続いておる経済の実態の上に立っての消費が増大したということが一番の原因であります。したがって、この輸入がふえたということも、かつて日本が生糸を輸入するなどということは毛頭考えておらなかった、そういう点にも欠陥があった。でありますから、これらの調整を今後十分とる必要がある、こういうふうに考えるわけであります。
  116. 高田富之

    ○高田分科員 ほんとうにこれは蚕糸業にとりましては重大な事態だと思うのです。そこで、結局輸出が減ったのは価格の不安定ですから、これは安定させればいい。別に安くしなくったって、品物がいいのですから。けれども、輸入がふえてくるということを考えれば価格を安くしなければいけないのじゃないか、これは非常な問題だと思うのです。韓国や中共から逐年輸入がふえてきた。生糸のみならず絹織物までふえてきたということになりますと、コストの面で向こうが優位に立っている。後進国ほど優位に立つということでありますならばこれはいかんともしかたがない。これをこのままに放置して置いたならば、この趨勢を食いとめることができないのじゃないか、こう思うのでありますが、この輸入に対してはどういう措置をお考えですか。
  117. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 この輸入に対しましては、近くこれらの問題と関連をいたしまして十分調整をとっていきたい、こういう考え方であります。その調整とはと御質問があるでありましょうけれども、まず近いうちに調整をとるような考え方でありますから、あとのこまかい点については申し上げにくいところもございますが、いずれにしても調整は十分とってまいりたい、こういう考え方であります。御承知のように、たとえば韓国や中共からきている生糸と、わが国でつくっている生糸というものは、品質においてもこれだけ大きな差がある。にもかかわらず輸入が増大しておったのでございますから、こういう点についても十分調整をとれる余地はあるというように考えております。
  118. 高田富之

    ○高田分科員 非常に大事なところへ大臣の御答弁がいっておるのですが、ほんとうにこれは重大な問題なのです。皆さんが心配しているのはこの点なのですが、一体いまの国際関係、ガットとの関係どもありまして、はたしてやれるのだろうかどうか、またどういう方法でやるのだろうかという点に非常に大きな疑念があるわけであります。今度提案されております法案を見ましても必ずしも明瞭ではないのですね。一体どういうときに、どういう状況になったときに輸入を規制するのか、またどういう方法で規制するのか、これについて法案を出しておることですからお考えがあると思うので、その点をひとつお述べをいただきたいと思います。
  119. 小暮光美

    ○小暮政府委員 輸入の問題につきましては、国内で糸価安定という日本独特の仕組みをもって価格の安定をはかっておるわけでございます。この糸価安定の仕組みがうまく動かない、動かないということが現実に起こりました場合のことでございます。このような状況では、早晩動かなくなることが明らかであるというふうに確認されます場合も含めてですが、そうした場合には、ガット上の義務の一部をそこでわれわれとしては守らないと申しますか、緊急的な措置をとる覚悟である、そういう趣旨のいわば宣言的規定を今回の法律改正案の中に設けておるわけでございますが、これはガット上の義務をそういう国内法で直す意図ではございません。ガット上のわれわれに与えられた緊急事態における措置、これを糸価安定の仕組みとの関連で発動するという趣旨でありますから、発動の要件はやはり関連の利害関係国にわれわれが十分説明ができるような客観性を持ったものであることが必要だというふうに考えております。したがいまして、具体的にどのような状況が起こりますか、それによって発動の態様は異なると思うのです。たとえば中間安定の仕組みが目下動いております。これについてもいろいろ議論がございますが、先ほど来輸入が次第にふえて輸出が次第に減っているというおことばがございましたけれども、やはり現在中間安定の買い入れを行なわなければならないような糸価の水準、これは六千百円を若干下回る数字でございますが、生産費をごくわずか割っておるのではないかと思われますが、この程度までまいりますと、明らかに輸出がふえて輸入が減っております。ですから、昭和四十二年に比較しますと、四十三年の輸出は、元数が小さいものですから俵数としてはそれほどではございませんが、比率でいいますとかなりの率で増加いたしております。輸入も一ころ三万俵に近くなったものが二万俵を割るというような形に相なっておりますので、現状のような形は十分価格を通じて経済のメカニズムが貫徹しておるというふうに判断されます。むしろ国内での二カ年間にわたる連続した豊作と申しますか、収繭量がきわめて順調であったということとの関連で、やや市況が低迷しておるというように判断をいたしておりますので、現状の程度で輸入の調整を発動するということにはならないと思います。
  120. 高田富之

    ○高田分科員 現在すでに内需の頭打ちということもいわれ、製品がダブついておりまして、輸出はほとんどないにもかかわらず、内需ですでにダブついておるわけですね。それでこれも自主的に生産制限をやっております。それから買い上げも中間買い上げをやっておる。そういう事態であるにもかかわらず、なおかつ輸入があるということは、これは国内の一切の努力というものを外部からこわされているわけで、何としても矛盾しておる、不合理であるわけですね。ですから、これだけの操作をみんなでやらなければならない段階で、輸出に全然手を触れないということはおかしいと思うのですよ。ですからこれは、今度改正されてそういうことがやれるようにするということになった場合、どういうときにやるかという疑問がそこから出てくると思うのですよ。現在のようなときにやらないんだったら、それは何を基準として――そういう飾りものの条文をどんなにつくっても、何ら実際には動き出さない条文になってしまう。現在のような状況では輸入を規制する必要がないという御判断ならば、この条文は飾りものになってしまいます。そうじゃないですか。
  121. 小暮光美

    ○小暮政府委員 現在の状況の見方でございますけれども先ほども申し上げましたように国内の糸価が一ころの七千九百円といったような状況から六千円がらみまで下がってまいりました。その間、たとえば中共からの輸入は急激に減っております。しかも中共から現在入っております糸は、日本の規格でいいますとむしろD格に相当するような、日本ではつくっておらない下級品であります。韓国からはなお若干の輸入がございますが、これも大体六、七割については保税加工ということで、国内市場には入ってまいりません。そういうような状況で、国内の価格がやや下がりまして、軟調になって、中間安定をはかっておるような状況になりますと、輸入が細ってくるというような状況に現状ではあるわけでございます。今後なお生産性向上の努力等を通じて事態を克服する余地があるのじゃないか。基本的には輸出産業としての性格をわれわれは決して放棄していないわけでございますから、全体の総生産の一割弱の輸入があるという状況で直ちに国内において規制をするというふうには、直接にはならないというふうに考えております。
  122. 高田富之

    ○高田分科員 また法案が審議されます農水の委員会のときに詳しくその点を承りたいのですけれども、ただ輸入に対して非常に甘いと思うのです。輸入規制について、これは蚕糸ばかりではないのですけれども、全体の農産物の長期見通しを見てもほとんど全部そうですが、海外の農産物との競合関係というものをあまり頭に入れていない。このまま輸入を増大する傾向を放置すれば、生糸のみならず、あらゆる農産物につきまして、国内の生産は片っ端から崩壊しますよ。ですから日本の農業というものについては、ある一定の段階の生産性を上げるまでの間は、ぴしっと押えるなら押えるという基本的な態度を立てなければ、どんな見通しを立ててもこれはだめだと思うのです。こういう長期見通しはおそらく全部輸入でくずされますよ。おそらくこれは生糸ばかりではないと思うのです。ですから、いままで一番強いといわれていた生糸でさえこういう事態になったのですから、ましてほかのものなんか当然なんですね。  ですから、ぜひその点はもっと農林省が、国内の農産物のうち、これはもうあきらめるのだというものはあきらめて、転換を考えさせたらいいと思うのですよ。しかし、あきらめないで増産するんだといっているものについては、一定期間ぴしっと輸入を押えて、そして国内の増産体制というものを全力をあげて、相当のピッチをあげておやりにならなければ、これは瓦解すると思うのですよ。だから、その方法等についても、またこまかく委員会を変えて、農水のときにやりますけれども、もう少しきちっとしたお考えがほしいですね。どういう段階になったら必ず発動する、その場合にはこういう方法でやるということを明示されなければ、法案を出しても意味がない。私はこれだけ強く指摘しておきます。いいですか。では大臣、そのことについて一言述べてください。
  123. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 もう私も高田さんと同じようにこれで悩んでおるものでございますから、先ほど申し上げたように、輸入のほうの調整は十分考えております。したがって、これらに対しましては、大いに今後善処しなければならない問題だと考えておりますので、十分検討を加えさせます。
  124. 高田富之

    ○高田分科員 それでは、ただいま大臣からお話がありましたから、今度は法案がかかります農林水産委員会ではもう一歩突っ込んだ、具体的な、どういう条件のときには発動する、そのときはこういう方法でやるということについて、そのときにはひとつ御説明をいただきたい、こう思います。  次に、いま一番大事な価格安定の問題でございますが、中間安定で現におやりになっております生糸の買い入れでございますが、これは資金が二十億でございまして、制度としては毎年度三万俵までは買い入れができるということになっているわけなんですけれども、実際今度の運用の実情を見ますると、ただいまのところは、大蔵省との相談の結果、二万俵の買い入れワクいうことで実際は現在やっておるわけであります。ところが、これでもうおしまいになってしまうのだろうかという危惧がみんなあるわけですね。三万俵までというたてまえになっているにもかかわらず、二万俵のいまのワクでおしまいになってしまうのではないか、この不安がありますために、相場がなかなか回復しない。現にきょうも六千円を割っているというようなことは、不安感が常にあるわけですよ。ですから、これはやはりちゃんと三万俵まではできることになっているのですから、もう三万俵までやるのだということがはっきりすれば、相場はもう少し落ち着くと思うのです。その点はいかがですか。
  125. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 必要があれば三万俵は必ず政府で保証いたします。
  126. 高田富之

    ○高田分科員 それで、これは明年度においても、やはりもし必要があれば、引き続いてこの操作は、中間安定をやらなければならぬ、その場合には三万俵の限度というものは制度としてあるわけでございますが、これは死文になってしまうのではないかと心配しているわけですね。ですから、来年度も引き続いてやるということになれば、資金の裏づけをしなければならぬ。その点はどうお考えになっておりますか。
  127. 小暮光美

    ○小暮政府委員 やや技術的な面を含みますので私から申し上げます。  現在中間安定のための買い入れにつきましては、政令で年間三万俵を限度とするということにいたしてございますので、ただいまのお話のように、今年度中まだあと一万俵のワクがある。こういうことでございますが、これを全部使い切って三万俵買ったという姿で年を越した場合、新しい事業年度に事業団がどれだけの買い入れができるかという問題は、御指摘のように、金繰りの問題でございますが、私ども、予算のたてまえとしては、次年度もまた三万俵という買い入れのワクを事業団に設定すべきだと思っております。その場合の現実の金繰り等は、今後起こります事態との関連もございますが、これまで事業団が輸出適格生糸ということで持ちましたものは、二万俵までは、一定の期間を経過しますと国の特別会計に移しかえることができる仕組みになっておったわけですが、今回特別会計と事業団を合体いたしますので、特別会計の中で異常変動防止のための特別勘定というものを設けまして、やはり従来と同様事業団が中間買い入れ、中間安定のために買い入れましたもののうち、輸出適格生糸二万俵は特別勘定のほうに移しかえることができるということになると思います。そのほか市況の問題でございますから、中間買い入れのものを一定の価格水準で売り渡すことも理論上ありましょうし、それらのことを念頭に置きまして、事業団の予算は、新年度においてまた三万俵という買い入れ予算を組むつもりでおります。
  128. 高田富之

    ○高田分科員 そうしますと、さしあたりいまやっております買い上げにつきましては、ある程度の回復を見た、六千三百円くらいになったというところで、二万俵のいまのワク内での仕事をしながら、買い入れを、相場の回復を見ながら中止するという心配はいまはないということですね。そういうおそれはない。引き続きやっていくということですね。
  129. 小暮光美

    ○小暮政府委員 これは先生の御指摘だけでなく、若干、巷間心配して伝えられておることでございますので申し上げますと、次年度の事業予算の組み方との関連で、私どもが二万俵でとどめて一万俵翌年度に残すのではないかということを危惧しておる向きがあるようでありますが、そういうことは全くございません。今年度三万俵を限度で買い入れるという仕組みでございますので、もし必要な状況であるというふうに判定いたしますれば、三万俵まで使います。そのことと次年度三万俵の予算を組むということは何ら矛盾をしないと考えております。
  130. 高田富之

    ○高田分科員 それから、今度の中間買い入れのあれに徴しまして、この制度についてもかなりの疑義が出てきておるのですね。大体ああいうふうな中間で安定させるという制度をつくった以上は、非常に敏速に弾力的に果敢に動かして初めて中間安定の意義があるのではないか。そのほかに安定法による上限、下限があるわけですから、中間の安定については最も機動的に弾力的にやるようにしなければ意味がないのじゃないか。時期を失してしまうのではないか。一々大蔵省へ行っては少しずつワクをもらってきてはやるということだけしていたのでは意味がない、こういう意見が相当出ておる。これは特殊な二重にやっておる価格安定制度でございますから、あまり例がないので、経験に徴しますとかなりな批判が出ておると思うのです。ですから、少なくともこの中間買い入れについては、時期を失せずに弾力的に仕事ができる、事業団が機動的にやれるというふうにするためには、今度のように、第一次三千俵、第二次七千俵、その次一万俵というふうな小出しの小刻みの、しかも手おくれ手おくれに出てくるようなこと、これは非常に愚の愚たるものではないか。これは、かつて三十三でしたか、あの大暴落のときに、これきり出さないといっては少し出し、これきりですよといってはまた少し出す、あれをやりましたときに、膨大な金が要って、しかも効果につながらなかった。初めから人気的なものですから、安心感を与えてしまうほうがいいので、今度の場合にそういう小刻みにやられたのでは、ワクが三万俵ときまっておるのですから、ぱっと自由に事業団でやれるのだという形の運用の方法にしなければ中間安定の意味がないと思うのです。この点は、ぜひひとつ今度の経験に徴しましても、またあの前の苦い経験に徴しましても、非常にまずかったと思いますが、いかがですか。
  131. 小暮光美

    ○小暮政府委員 これまでに国が直接の買い上げをやった過去の経験がございますけれども、特別会計による異常変動防止という二重底を前提にした業界の自主的な活動としての中間安定というのが、具体的に大きく動いたというのは今回が初めてでございまして、御指摘のように初めての経験でございますので、今後もいろいろ将来のためにその実施を検討すべき要素はあろうかと思います。十分関係者と協議いたしたいというふうに考えております。
  132. 高田富之

    ○高田分科員 それでは大臣に最後にお考えを述べていただきたいと思いますことは、いずれにしましても、だいぶ昨今は不安定というものが強いですね。関係業界にもう一ぺんやはりしっかりとした方向を与えまして、そうして総力をあげて努力をしていくということによって明るい将来の展望も開けると思うのでありますが、そのための第一点は、私は、やはりこの絹繊維というものの宣伝ですね。それも事実と違う宣伝ではないので、事実の真価を知らせる宣伝なんですから、大いにこれはやらなければならぬと思う。ところが、不幸にしてこの業界は零細多数の業者の集まりであり、多数の農民の集まりである業界であるがために、化学繊維のように大企業が思い切って宣伝費をかけて、ばんばんやるということができないわけですよ。アメリカあたりに行って、徹底的な宣伝をやりたくても、やるものがない。そういう点で私は、この将来を決定するものは、いかにして天然絹糸、絹織物というものの需要を開拓していくかということに非常に大きくかかっていると思うのです。この点ではもう勝負にならぬほど、化学繊維なんというものと比べたら、現状のままでは太刀打ちできないと思うのです。そういうことについて、どの程度の方策をお持ちなのか、考えをお持ちなのかということが第一点です。  第二は、やはり養蚕農家ですから、これは米の問題もありまして、むしろこれからできるだけ養蚕に適するようなところは開田などもやめて、そうしていままで桑をひっこ抜いてたんぼにしたわけですから、今度は逆にいかなければならない。それにはそれなりの、やはり養蚕農家が安心して経営を拡大していけるというものを与えなければ飛びついてこないと思うのです。ところが、養蚕は御承知のように非常に手間を食いますから、若い者はあまり魅力を持たないわけです。ですから将来は、これは十年後の計画ですけれども、十年後にやり手がなくなってしまうのではないか、一面の心配はそこにあるわけです。だから若い者が新たにどんどん養蚕業にも参加していけるというようにするには、つまりそれだけの価格面での安定性の保証はもちろんですけれども、生産体制を合理化して、そうしていわゆる省力養蚕、いまおやりになっておりますが、これらのものをもっと計画的に進めて、あるいは協業などでも成功している例も、少数ではあるけれども出てきているわけですから、そういう模範経営のようなものにどんどん力を入れて、そうして将来性のある合理的な、かなり規模の大きな養蚕経営というもののイメージを与えていくという仕事をしなかったら、やはりやり手がなくなるという面から、これは生産の面でも計画がくずれるのではないかと思うのです。  この両面ですね。消費需要開拓、もう一つは農業経営としての養蚕経営というものに魅力をつくり出すということが当面の低迷する暗雲を払いのける基本方向だと思うのです。この点についての大臣の御所見をひとつ伺っておきたいと思います。
  133. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 一番今後の重要な問題であろうと考えます。したがって宣伝に対しましては、かつては業界あるいは生産団体、さらに国が合わせまして海外宣伝をやったのでございましたけれども、その後もう宣伝も何もできなくなった。できなくなったどころではなくて、国内の需要に間に合わなくなったというような事態が参りましたので、おのずからこれが解消されておったのでございますが、今後は五十二年までの計画を見ますると、相当の数量にもなるのでございまして、これらに関しては、国内はもとよりであるが、海外に向かっての宣伝も大いに必要と考えております。これはただ農林省だけの宣伝であってはならないのであって、要は業界、生産団体ともに一体となった宣伝につとめなければ相ならぬと考えておるのでございます。  また、蚕糸業の将来性につきましては、消費需要というものが当然増加していくという上に立って、さらに蚕糸業は将来性があるのだ、心配はしなくてもいい、つくれば必ず売れるのだという、そういうような安定感を与えることがまず第一の条件だと考えます。これらに向かって大いに今後努力いたしまして、御期待に沿うような方途を切り開いてまいりたいと考えております。
  134. 植木庚子郎

    植木主査 次は森義視君。
  135. 森義視

    ○森分科員 私は林業問題、とりわけ林業労働に焦点を合わせながら大臣にお尋ねをしたいと思います。  まず第一に、林業労働の現況というものを大臣はどういうふうに認識をしておられるか、それに対してどういうふうに対処しようとしておられるか、このことについて総括的な大臣見解を冒頭にお尋ねしたいと思います。
  136. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 林業問題も、たとえば今日国内の消費にも事欠くというような事態も林産物につきましてはきておる。これに携わる者の労働問題等もまた全くこれにマッチするような方向ではないかとも考えられまするので、あわせましてどのような今後の計画を立てているかという点につきましては、長官をもって御説明をいたさせます。
  137. 森義視

    ○森分科員 大臣、やはり農林大臣として農業、林業、水産業を担当される方ですから、現在の最も重要な課題の一つである林業労働の動向がどうなっているかということは、もう少し自信のある答弁をしていただかないと、農林大臣として大きく欠くる点があるのじゃないか、そういうふうに思うのです。いますぐにバトンを長官に譲るという形でなくて、私は長官に聞きたいことはたくさんあるわけです。少なくとも大臣として林業労働の現況に対してどう対処しようとしているか、これを総括的に私はお答え願いたい、こういう質問で言っておるのですから、もう少しそれに対しては確信のある答弁をしていただかないと、これから大臣、何を聞いても、長官をして答弁させます、これでは予算分科会でせっかく大臣の出席されたあれにはならない、こう思います。もう一回大臣のほうから、もう少し自分で考えておられる信念ある答弁というものをお聞かせいただきたいと思う。
  138. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 将来の林業労働需要量は、機械化の進展等によって減少すると思われる。したがって、労働力の供給量というものが、農山村人口の流出の傾向が続くとすればこれ以上減少するということも見込まれるので、林業労働力の不足の傾向が一段と深刻化されることが予想される、こういうようなことでございまして、これに対処するために、機械化の推進だとか、あるいはまた生産性の向上、通年雇用推進等の諸対策を進めていく考え方であるというように私は申し上げられると考えるのでございます。
  139. 森義視

    ○森分科員 どうも大臣答弁は私の質問の要点にお答えいただいておらないわけですが、大臣、それでははっきり聞きますが、いまの日本の林業労働力というのは、必要な木材を出すに足る労働力なのかどうなのか、現在の木材の需要に対してそれを十分にあがない得る労働力を国内で確保されておるのかどうか、この点どうですか。
  140. 片山正英

    ○片山政府委員 補足的にちょっと御説明申し上げます。  先生御承知のように、林業労働力は、三十八年をとりますと、総理府の統計によりますと三十五万人ということになっておりますが、四十二年、五カ年たちますとそれが三十万人というふうな統計になっております。したがいまして、大体五カ年間に一四%程度の減少ということが一応見られるわけでございます。ところで、林業労働のわれわれいま対処いたします方向といたしましては、やはり農山村からだんだん出ていくという現況におきましては、どうしても機械化等によりまする一つの省力化、それからもう一つは、林業の性格としまして非常に小さい単位にものごとが生産されているという姿を、やはり協同的に、あるいは規模を大きくしてその省力化にマッチした、機械化にマッチした姿をやっていくということでわれわれは努力してやっておるわけでございます。  そこで、先生の御指摘の生産量の問題、造林の問題ということにつきましては、一応われわれ計画を立てて進めておるわけでございますが、その計画に対しましては若干下回った姿でございます。しかし、それは労働力の問題もございますが、その他いろいろな施設、いわゆる装備の問題が、われわれの計画よりも量が急テンポにやはり減ってきているというようなそういうギャップがございまして、そのような形で若干労働力の不足という、経営の合理化につながらないために労働力の不足というのが現況だ、このように判断いたしておるわけでございます。
  141. 森義視

    ○森分科員 専門家の長官がそんな認識じゃ困ると思うのです。若干労働力が不足しておるというふうなものじゃないと思う。もっと日本の今日の林業労働というのは底をついておる。これは四十二年の林野庁が行なわれました林業経営の意識調査、あれでも、林家が山林経営上最もいま困っているのは何か。それは林業労働力の人手不足、これが四〇・六%、第一位を占めておるわけですね。それから四十一年度の造林計画を実施できなかった理由、これに対する回答も、六〇%は人手不足を訴えておるわけなんです。長官も御承知のように、三十六年以来ずっと需要の拡大に伴う足らない不足分をいま外材で穴埋めしているわけですね。ほとんど内地材の生産は横ばいであります。それの状態において、なおかついま申し上げましたような林業経営者の人手不足が、今日の林業生産の自給率を高めていく、総生産を高めていくという林業の基本法が示しておる重点目標に向かって前進するについての一番大きな障害になっておるわけであります。それを、林業労働力が機械化によって、省力化によって不足する分を穴埋めできるのだ、こういうふうに印象づけられるようないまの答弁であります。若干足らないかもわからないけれども、まあ林業労働力はそう困っておらないのだ。それでは、こういう調査や統計にあらわれた数字というものは長官答弁と合わないわけですね。私はその点では、もっと林業労働力の今日の実態というものは、特に若干労働力――これから機械化を推進しようとすれば、いわゆる老齢あるいは婦人労働では消化できないものが出てくるわけです。機械化を進めようとすれば、どうしても機械化に適合し得る若年労働者というのが必要になってくるわけです。それが一体どうなのか。労働力が減っておらない、何とか間に合う、少しは不足しておる。これは機械化によって穴埋めしていくから、機械化に必要なのは若年労働者なんです。  それでは、ことしの新中、新高卒業生で全国で林業労働に従事した数字は何名ですか。――私の調査では四百六十数名であります。林野庁でここ数年の新中、新高卒の林業労働に従事した統計があるならば言ってください。
  142. 片山正英

    ○片山政府委員 実は人数的の統計を持ち合わせてまいりませんでしたのですが、私の記憶におきましては、ほんの数%程度が残っておるというふうに判断いたします。
  143. 森義視

    ○森分科員 その資料ありますか。あれば、あとでけっこうですから出してください。
  144. 片山正英

    ○片山政府委員 調査しまして後日提出いたします。   〔主査退席、湊主査代理着席〕
  145. 森義視

    ○森分科員 一番必要な若年労働力が、今日山村に残らない、こういう問題ではずいぶんと農林水産委員会でも、長官と私たちが議論をしたところであります。そのつど、何とか青年労働者が山村に希望を持って住みつけるような方向へいろいろな施策を考えていきたというのが長官答弁であったわけです。ところが具体的には、林業労働者、とりわけ若年労働者が希望を持って山村に住みつけるような施策というものは、何ら具体的に今日実施されておらないわけです。先ほどちょっと申しましたように、ことしの新中、新高卒で林業に残るのは四百数名。全国で、です。これでは十年後、二十年後の長い月日をつなぐ産業である林業の場合に、将来の展望というものが立てられないじゃないですか。その点について、私は昭和四十一年に出されました林産物に対する長期需給の見通し、あれについての昭和七十年におけるこちら側の供給に必要な労働力というものはどういうものかということを、この前聞いたわけですが、たいへんなごまかしがあったわけです。したがって、きょうここで明らかにしてほしいのですが、あの長記需給計画をつくられたときに、昭和七十年に必要とする林業労働力というものは、どういう年代の人がどれだけ必要であるか、そのときには機械化がどこまで進んでおるか、そういう問題について確たる自信をもってやられたのかどうか。その点について、この前の農林水産委員会において長官答弁ではきわめて不十分なものがありましたので、ここでもう一回ただしておきたいと思うのです。あの長期需給計画を策定されたときの、それに絶えず対応する労働力というものを、機械化の進展とにらみ合わせながら計画されたのかどうか。そういうものを数字的にはっきりと持っておられるならば、何年度には労働力がどうなり、機械化がどういうふうに進んでおる、そういう需要の拡大に伴って必要とする労働力の動向というものを資料として持っておられるならば、この席上でお聞かせ願いたい、こう思います。
  146. 片山正英

    ○片山政府委員 林業の労働力の問題の把握というのは、非常に困難な、むずかしい問題でございます。先ほど先生の御指摘の、昭和四十一年に閣議決定をいたしました木材の需給見通しというのがございます。それは昭和九十年、いまから五十年先を一応見通した非常に長期のものでございます。過日、その問題についてお答え申し上げたと思いますが、現段階においてひとつ検討いたしておりますのは、これは一つ考え方一つの試案という段階でございますけれども、一応われわれの考えておりますのは、昭和九十年という先じゃなしに、もう少し手前の昭和六十年という段階において――なぜ六十年というかと申しますと、現在のテンポあるいは現在の技術の中で達成されるであろう機械化、そういうものが達成されるであろう、あるいは林道その他も六十年を大体めどに開発いたしますから、そういうことで一応昭和六十年というものを見通して、雇用というものがどうなるであろうというのを試算はいたしております。しかし、先生のおっしゃるように、確信あるもの、こういうふうにきめつけられると、なかなかむずかしい問題でございますが、一応われわれなりの一つの試算といたしましては、昭和六十年ぐらいになりますと、機械化あるいはその他の問題、現在の技術をもって啓蒙し、そして利用していただくという形で判断いたしますと、いまの労力のおおむね七五%くらい。これはおおむねでございますが、そのくらいで事業がやっていけるのではないだろうかというのを一つの試算として持っております。ただ山村からだんだん出ていく、町に流出していくその人口の速度、労務者の速度を見ますと、それより若干上回ったような形でいままでの趨勢から見ますと考えられるわけでございます。したがいまして、さらに労務というものは窮屈になってくるのじゃないかというふうにわれわれは判断いたします。そこで私たちは、いままでの趨勢の中にプラスして、一つは、先ほどちょっと申しましたが、経営の合理化の中においてこれは引きとめていくというようなことで検討をして、そして経営の合理化とあわせてそれが確保できないだろうか。そういう方向を加味して、実情にマッチした供給を確保する形で検討をいたしておる段階でございます。
  147. 森義視

    ○森分科員 いまの答弁のそのときの国内材の自給率は何%ですか。昭和六十年で七五%ですね、現在の労働力の七五%でやっていける、そういう御答弁です。それでは、そのときの国内材の自給率は何%ですか。
  148. 片山正英

    ○片山政府委員 実は先ほどの資料に基づきますと、九十年になりますと、自給率は九割国内でできるであろうという想定でございます。そういう形でございますが、六十年の段階でどうだろうかということでございますが、実はこの基本計画でつくりました資料につきましては、若干いま検討をいたしておるわけでございます。と申しますのは、昭和五十年の段階において自給率三割、一応のそのような形で見ておりますのが、おそらく三割ではなしに四割程度には、若干上の程度になるであろうということで、いま昭和五十年を中心にして検討をいたしております。したがいまして、ここで昭和六十年ということになりますと、われわれなりのいまの想定では、やはり昭和五十年程度の外材依存というものが行なわれなければなかなか困難であろう。したがいまして、約四割強というふうに大ざっぱでございますが想定しておるわけであります。
  149. 森義視

    ○森分科員 長官、私は国内の自給率を聞いておるのですよ。需要に対して国内材の自給率が何ぼか。四〇%。落ちるのですか。そうすると六〇%は外材ですか。私が言っておるのは――長官答弁間違っておると思うのです。昭和六十年には現在の労働力の七五%で、あなたはその需要に対する労働力が提供できる、確保できる、こうおっしゃっているのです。ところが、それではそのときの自給率はどのくらいになっておるのか。それは外材がたくさん入ってさましたら、現在の労働力の三分の一でできますよ。内地材が必要な需要に対して一〇%でいいんだということになったら、労働者は要らなくてやっていけますよ。そうでしょう。内地材が必要木材需要量の一〇%でいいんだとなったら、労働者は現在の三分の一になってもやっていけますよ。少なくとも六十年に現在の七五%の労働力でまかなえるのだというならば、そのときの需要木材に対して自給率は何ぼになっているのか、こう聞いているので、それをあなた、四〇%なんということを言うと、どういうことになるのですか。
  150. 片山正英

    ○片山政府委員 いまの御説明がちょっと足らなかったようでございますが、私はその四〇%強というのは輸入材を対象にして申し上げました。したがいまして、国内の生産といたしますと六〇%弱、そういうものを確保するという形の計画でございます。
  151. 森義視

    ○森分科員 わかりませんが、長官のいまの答弁では、私いま聞きそこなったかもしれませんが、非常にわかりにくいわけです。私の聞こうとしておるのは――昭和六十年にいまの労働力の七五%でまかなえるのだ。需要木材はそのときはうんと伸びていますね。現在の需要よりも拡大する需要に対して、機械化、省力化、そういうことによって現在の労働力の七五%でやっていけるのだ、あなたはこうおっしゃっておるのです。そのときの自給率というものは何%だということがわからなかったら、今度七〇%とか七五%というものはでたらめの数字ですよ。内地材がいまの半減で、あとのなには全部外材でまかなうのだということになると、労働力というものはいまの半分でやっていけますよ。七五%なんて要りませんよ。だから自給率というものをはっきり出して、昭和六十年にはこれだけの木材が要る、それに対して外材がこれだけだ、内地材はこれだけだ、その内地材を出すのに労働力としてこれだけ要るのだ、こういうふうに出してもらわないと、そんな数字では、それはもう全く一方的な数字であり、片一方抜けておると思うのです。その点わかりますか、私の言っていることが。
  152. 片山正英

    ○片山政府委員 それでは少し数字的に触れて申し上げたいと思います。  私たち閣議決定をいたしました木材の需給並びに長期見通し並びに森林資源の基本計画というものの考え方でございますけれども、これは国内の森林資源を基本法に考えておりますように、総生産の増大、生産性の向上を期待して、国内の森林資源を最も有効に使われるであろうというものを想定いたしまして、国内供給量はどれだけできるであろうかというのをはじいたわけであります。その時点で、われわれがいま考えております昭和六十年というのは九千万立方生産されるであろうというふうに判断いたしておるわけでございます。  ところで、需要はどうであろうかという需要の問題でございますが、これは社会経済発展計画とかあるいは中期経済計画とかいろいろな問題の中で、当時判断いたしたものは、一億二千万立方であろうというふうに判断いたしたわけでございます。したがいましてその差額の三千万立方が輸入であろう、こういうふうに一応想定いたしたわけでございます。ところが、いま一億二千万というふうに判断した需要量は、これは非常に先のことですから、二十年先のことですから、なかなか把握困難でございますが、いまの想定をいたしますと、昭和五十年は――十年前でございます。昭和五十年の場合は、同じような意味で一億立方と想定いたしておるわけでございます。その一億立方はおそらく一〇%以上増加するであろう。これは当初見通しました国民所得、国民総生産よりはるかに現在伸びております。そのような関係から需要増が出ております。そういうことで、昭和六十年がはたして一億二千万でおさまるであろうかというのは、私は多少検討を要すると思います。当時はそういうふうに判断いたしたわけでございますが、そういう形で推定いたしますと四割くらいになるのじゃないだろうか、ごく大ざっぱでございますが、判断を申し上げた次第でございます。
  153. 森義視

    ○森分科員 こんな質問をしておりますと、私の聞こうとすることが聞けなくなってしまいますので、これはまた委員会であれしたいと思いますが、もっと簡単に、昭和六十年は九千万立米を国内で産するのだ、そういう想定の上に立って労働力を計算した場合、いまの七五%でやっていけるのだ、こう言われたらすぐ答弁できるのですよ。あなた遠回りして肝心なことを言わないから、時間を食うだけだ。  私の聞こうとしておるのは、今度の四十四年度の予算編成の場合における林業の予算の基本的な考え方の中に、重要な柱として、林業労働力の減少傾向と質的劣弱化に対処するため、こういう形でどういうことを書かれておるかというと、要員管理の適正化、職員の研修、機械化。これは前二つは精神面ですね、いわゆる要員管理の適正化とか職員の研修というような問題は。いわゆる機械化の問題で労働力の不足分あるいは劣弱化していく問題をカバーする、こういう考え方でおられるわけですが、私はもっと根本的に、この林業労働力を確保するためには、いつも言っていることですけれども考えなければならない。端的に言って、山村の青年労働者が希望を持って進んでいけるような賃金なり、労働環境なり、社会保障なり、そういう面においてほんとうに林業基本法で書かれておるような方針にのっとって政府当局が手を打たない限り、いま言っているような、機械化を除いては、精神面で林業労働力の減少だとかあるいは劣悪化をカバーしていくというようなことでは、とうてい日本の林業を守っていくことはできません。  私は、つい数日前に吉野の滝畑というところへ行ってきた。二年前には約四十戸の戸数がありました。この間行ってみたら、雪の中ですが、十二戸に減っているわけです。何でこんなに減ったんだといえば、もうみんな出ていくというわけです。何をつくっても――林業の合い間にちょっとした畑をつくっておったのです。自分たちの食糧だけをつくっておったのですが、イノシシに去年全部食われてしまった。もうイノシシ退治にこの山の中に残っているようなものです。残っているのは老人と子供だけであります。それは奈良県の吉野郡でも里山に近い地区で、吉野町という町の中にある一部落であります。いわんや奥地へ参りますと、どんどんと減っていくわけです。  そういう実態をながめてみますと、これで日本の林業が守られていくのかどうか。特に奈良県のように民有林の発達した地域で、労働者の近代的な権利を擁護する労働組合もしっかり持っている、そういう中においてすら、いま申し上げましたような、二年前に行って四十戸あった戸数が十二戸に減っているというふうな、あ然としなくちゃならないような実態なんです。これは林業労働者が山に住みつけるようなそういう施策について、何やかや言いながら何もしてない。このことはやはり基本的に考え直さなければならないのじゃないか、こう思うわけです。  ところが、今度労働者の唯一の社会保障である失業保険の問題が、また改悪されようとしておる。この前の森林法の一部改正のときに、ずいぶん論議をいたしました。ところが、その後失業保険法の一部改正の問題については、どういうふうになったのか。ちょうど農政局長お見えになっておるのですが、この問題について、労働省と農林省の交渉の中で、その後どういうふうになっておるのか。これは林野庁のほうからは、常々省内におけるいろいろな話し合いの中では、私たちの主張というものをかなり強く出してもらっていると確信を持っているわけですが、労働省との窓口の折衝の責任者である農政局長のほうから、現段階どうなっておるのか、そのことをぜひお聞かせいただきたい。そういう問題がはっきりしないと、いままでの、林業労働力をどう確保し、日本の総生産をどうあげていく、日本の林業をどういうふうに発展させていくかということが、全部もう絵にかいたもちだ、こういうふうに極言してもいいのじゃないか、こういうふうに感じるために、特に失業保険の問題について、いままでの窓口折衝の経過と今時点における話し合いの結果というものをお知らせいただきたい。
  154. 池田俊也

    ○池田政府委員 労働省の失業保険法の改正案に対しまして、私ども数点意見があるわけでございます。  簡単に申し上げますと、一つは失業保険の適用範囲の問題、これは農林漁業に対して当然適用という問題は考えていただく必要があるのじゃないかということでございます。  それから第二点は、被保険者期間の計算方法の問題がございます。これは農林漁業の場合に必要な労働力の確保という観点と、それから今度は農山漁村から他の産業に出かせぎにいく、そういう二つの点があるわけでございますが、そういうような点からいたしまして、労働省の案では、失業保険の健全な運営あるいは雇用の安定というような観点から、被保険者期間の計算方法を合理化しようということで、従来は暦月で計算をいたしておりましたのを満月に改める、それからその月の中の日数のとり方を若干ふやす、こういうような案がございます。  それから第三点といたしましては、国あるいは地方公共団体等の職員の適用を除外しよう、こういう問題がございます。  それにつきまして私どものほうの考え方といたしましては、被保険者期間の計算方法の合理化につきましては、これは現在の適用に対してかなり影響を及ぼす余地があるのではなかろうか。これにつきましては、原案についてやはりそのままでは多少問題があるのではないか、こういうことでいろいろ意見を申し上げているわけでございます。  それから国あるいは地方公共団体等の職員の適用除外につきましては、これは退職手当法の適用になっております職員とそうでない職員とがございます。それで、現在労働省でお考えになっている案は、こういう職員につきましては失業保険からはずそうというのが基礎的な考えのようでございますが、これにつきましては、やはり退職手当の適用になるほうの受け入れ体制との関係がございまして、どちらからもはずされるようなかっこうになるというのはおかしいのではなかろうか、こういうふうなことで、いろいろ意見を申し上げているわけでございまして、まだその調整の結論は出ていない現状でございます。
  155. 森義視

    ○森分科員 そこで、結論はいつごろ出ますか。それとも、さらに今国会でこの法改正案が出てくるかどうか、この点についての見通しを最後にお聞きしたい。
  156. 池田俊也

    ○池田政府委員 これは労働省としても非常に急いでおられるわけでございますので、私どもは早急に結論を出さなければならないのではないかと考えておるわけでございます。
  157. 森義視

    ○森分科員 そこで大臣に最後に要望したいのですが、いま大臣がこの席をはずしておられる間、失業保険の問題についてお聞きをしておったのです。林業労働者を引き続いて林業に従事するように確保するためには、いろいろな条件が必要であるけれども、その中で一つ重要な要件として、社会保険の適用というのがあるわけです。ところが、現在適用されておる者すら、今度の失業保険の改正によって奪われようとしておる。いままで農林省が林業労働者の社会保険確保のために格段の努力をするという約束を歴代大臣長官がしてこられたことが、逆に失われようとしている。労働省の圧力で頭を下げてしまったら、これは林業が守れなくなると思うのです。そこで、労働省が考えておる失業保険の改悪意図に対して、林業労働者、農業労働者を守るという見地に立った大臣の決意のほどを承っておきたい。
  158. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ただいまの御質疑を私も聞かせていただきましたが、この点については労働省とも十分今度折衝いたしまして、なるべく御期待に沿うような方向に転換できるように進めてまいりたいと考えます。
  159. 森義視

    ○森分科員 なるべくとか十分とかということでは、もう手おくれなんです。大臣、ひとつからだを張ってこれはがんばってもらわないと、農林業労働者というのは日本の社会保障制度の谷間に墜落してしまう危険性がございます。格段の御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  160. 湊徹郎

    ○湊主査代理 次に、小沢貞孝君。
  161. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 最初に大臣に、これは予算の総括質問のときにもお尋ねをして、しり切れトンボになっておりますので、お尋ねをしたいと思います。  食管関係であります。私は、食管を守るには、どうしても食管が維持できるような条件、こういうものをつくり出していただかなければならないのではないか、こういうふうに考えます。いままで農民は米の増産をやってきた。それからもう一つは、これは政府の方針ですが、外国食糧に依存をしてきた。この二つのことが原因となって、総括質問のときに私は申し上げましたが、来年三月三十一日現在で、食糧庁は千百万トンというし、私は、昭和四十二、三年のような作柄になるであろうと想定すると、一千二百五十万トン、このくらい年越しをするだろう、こういうように考えるわけです。これじゃ全く食管がパンクしてしまう、こういうかっこうになると思いますから、パンクしてしまうような条件をつくっておいて、幾ら食管制度の根幹を維持すると、こう言っても、私は不可能だ、こういうように考えるわけです。  そこで、その対策としては、政府もだんだんに進めていただいておるようなんですが、第一には開田の抑制、これもけっこうだと思います。第二には稲作の転換。これはつくっている面積を減らそう、こういうことです。第三には国内消費の拡大。そのためには学校給食とか、私がここで大臣質問しようとする外麦の輸入の抑制、消費を減らして米に転換していく、こういう問題が必要だと思います。それからその次に、四番目としては外国へ輸出する。あるいはまた後進国に援助をする。外へ持っていけ、こういうことだと思います。五番目には凶作に備えて備蓄しろ。それから六番目には、これはだれも主張しないかどうか知りませんが、私は立地条件のいいところで生産性の高い米づくりをやれば、いま倍の価格でありますが、十分外国と太刀打ちできるようになるので、立地条件のいいところなら、輸出産業としても大いにやっていける、それが第六。以上六つぐらいの対策があろうと思いますが、これを全部きょう触れるわけにはまいりませんので、大事な問題から先にやりたいと思います。  そこで外麦の問題、これは総括質問のときに大臣質問いたしましたけれども、これが私は一番大きな問題で、あまり大ぜい触れておらない問題だと思いますので、特に重点を置いて質問をしたいと思うわけです。  大臣、これは食糧庁で出した資料ですが、昭和三十三年のときには、国内の米で百八億赤字、国内の麦で九十一億赤字、合計約二百億です。外国の麦でもって約二百億黒字、差し引き食管会計への繰り入れはゼロ、これが昭和三十三年度の実態でありました。それから約十年経過した今日の予算を見ると、国内の米で二千八百七十一億、国内の麦で二百七十八億、こういう赤字。外国からの米麦でもって百七十五億の黒字、こういうことです。この趨勢は、大体国内の米、麦――主として米ですが、米で約三十倍近い、米麦合わせて十五倍近い赤字がふえてきた。こういう傾向だと思います。ところが、外国からの麦によっては、この黒字が逆に下がって、二百二十三億から百七十五億に下がってしまっておる。こういうことになっておるわけです。米のほうは十五倍から三十倍も赤字になってふえていって、そうして麦のほうは逆に、黒字がもっとふえなければならないはずのものが、二百二十三億から百七十五億に減ってしまっている。この数字を見たときに、ここに大きな矛盾があるんではないか、私はこういうように考えるわけです。  そこで、国内の来年度の予算の売り渡し量を見ると、国内の米で約六百十万トン、外国の麦を約三百五万トン――この前も総括質問のときに私、申し上げたが、国民の三人に二人は余剰で困って、いる米を消費してもらうが、三分の一の一人については外国からの麦でもってまかなっている、これが実態だと思います。そこで、国内の人に米の消費を拡大していくということになると、三分の一の人は麦を食べているのをどうしても米を食べてもらうように、政策上、価格上、そういう上から転換していかなければいけない、これが私の主張なんです。ところが、そういうことのできないように、外国の麦ばかり食べろ、食べろと、こういうことを政府がすすめているような価格政策をとっているわけです。国内の消費者米価はどういうように上がってきたかというと、昭和三十三年のときに十八キロ八百五十円のものが、ことしは据え置きだというのですから、千五百十円。一・八倍に国内の消費者米価が上がってまいりました。ところが、外国の麦を国内に売りつけるにはどういう価格で売ってきたかというと、単位がちょっと違いますけれども、トン当たり昭和三十三年のときには三万六千八百九十二円です。それがことしの予算では三万五千八百二円、外国の麦を買い込んできて、昭和三十三年のときには三万七千円近くのものが、ことしは三万五千円だ、こういうように安く国民に売りつけているわけです。そういう数字になっているわけです。これを国民が知ったら――しかもこれは貴重な外貨を払って、国内ではもう食管会計がパンクする、こういう現実の上でそういうことをやっているわけです。私がこの前聞いた数字は、来年の三月三十一日には一千二百五十万トンぐらい残ろう。来年の十月にはおそらくもうこれはどうにもしようがないようになっていってしまう。それだから、財政制度審議会は、トン十六万もかかるものを二万五千円くらいでえさにしろとか、外国へ半値で持っていってしまえとか、あるいは徳用米にして売るかとか、こういう深刻なことを提言せざるを得ないようなときになっているのに、米の値段は大体一・八倍に上がって、その間の物価指数を見ると、小売り物価指数が昭和三十三年を一〇〇とすると、ことしあたり大体一・七から一・八倍ですから、ちょうど小売り物価指数の上がってくるのと、偶然かどうか知りませんが、消費者米価の上げてきたのとは一致しておりますから、これは私は傾向としては、上がるのはよくはないけれども、とにかくいいと思う。ところが、その間に外国の麦を買い入れて、昭和三十三年には三万七千円で売ったものを、なぜことしは三万五千円で売らなければいけないか。ここに私は食管問題の一番ポイントがあるのではないか、こういうように考えるわけです。これを上げることは、この前総括質問のときに、大臣は、物価の問題から国内の麦の売り渡し価格を上げることは押えなければいけないみたいな、物価大臣みたいなことを言われましたが、私はそれを上げた分だけ消費者米価を下げる、これは食管会計の中で幾らでもできるわけですから。そういうことをすると、輸入の麦を抑制して国内の米の消費を拡大する、こうなるわけです。これを、食管会計の問題でたんぼから少し何とか転換しようなんということは容易なことではないけれども、これをやらない限りはこの食管問題はなかなか解決しない、こう思うわけです。最初に大臣に基本方針だけお尋ねしておきたいと思います。
  162. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 小麦の輸入につきましては、何といっても今日に至るまで粉食奨励をやってきておりまして、急激にこれを今日米が現在のような過剰状態になったから即刻全部を切りかえていくということは、非常な困難だろうと思います。また一方、それならばもっと小麦の値段を上げたらどうかというお話でございますけれども、消費者の家計という上に立って、御承知のようにたいへんむずかしい問題が現在横たわっておるということも、御承知のとおりでございます。しかし、おことばにもありましたように、今後は麦の買い入れ数量だけはなるべく少なくしていきたいという考え方、この方針だけは一貫をしておるのでございますが、ただ、いま御指摘のあったような三万七千円のものが三万五千円に値下げになっているという、こういう理由については私も詳細に承知しておりませんので、こういう点については長官から答弁をさせますけれども、以上のような状態でありまして、私は、御指摘にもあったように、今後小麦の輸入だけはなるべく控えて、そうして米食というものの奨励のほうへ今度転換をしなければならぬ、この方針だけは、御指摘のとおりの方向に向かって進んでいるつもりでございます。
  163. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 外国小麦の売却価格が十年前に比べてむしろ下がっておるということでございますが、これは実は常に、小麦製品の値上げの問題が出ました際に、主として製粉業界あるいは加工のパン、めん類の企業におきます人件費その他の物価の値上がりというもののために値上げを要するという場合に、政府としてそれらの製品の値上げを抑制をするということのために、小売り価格、小麦の売り渡し価格を下げるというようなことを数次行なった結果であります。その結果、御指摘のとおり、確かに外国麦の売り渡し価格は、十年前よりもトン当たり約一千円程度下がっておるというような事情なのでございます。
  164. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 経過はわかりましたし、大臣の方針もわかりました。  昭和三十三年に約三万六千八百九十二円のこの外麦の売り渡し価格を――大体消費者米価が一・八倍になりました。小売り物価も、当時から比べると一・八倍になっております。したがって、月並みにそれと同じように国内への麦の売り渡し価格を一・八倍にすれば、三万七千円かける一・八は約六万五千円くらいになる。それからことしの予算である三万五千円を引いてみると、大体トン当たり三万円くらいの益がふえる、益の増になる。それを約三百五万トンくらい国内に売り渡そうというのですから、三百五万トンに三万円をかければ約一千億、一千億の黒字が麦によってできるはずだ、こうなるのです。これは消費者物価の上からいけば、一千億の金でもって国内の米の値を下げてやってもよろしい。あるいは三千億ことしは食管会計へ繰り入れておるから、二千億になる。こういうことになれば、生産者米価を上げるか、あるいはほかに使える、こういうことになるし、またこれは理の当然ではなかろうか、こう思うわけです。どうでしょう。黒字が一千億になるのが普通です。当時二百億出していて、外国から入ってきた麦の数量は、三十三年のときには二百七十七万トン、今日においては三百五万トン、こういうわけですから、大体数量においては一割くらいふえただけです。価格の面において国内の物価に大体準ずるようにしさえすれば、外国の麦を国内に売ることによって一千億の黒字が出る。消費者物価上いけなければ、それは米を下げてやればいいんです。それによって消費拡大ができるわけです。これはどうしても農林省が取り組んでいただかなければならぬ重大な問題だ。あとこまかいことを幾らつっついたって、根本の解決にならぬと思うのです。これは再度大臣からお答えいただきたいと思います。
  165. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 大臣のお答えの前に、簡単に事務的なお答えをいたしますが、お話のような計数をかければ確かに一千億近い益が出ることに相なります。ただ考えなければなりませんことは、米は消費者価格ということで、最終の、要するは直ちに食糧たり得る姿になって価格が出ておるわけでございます。これに対しまして、小麦は製粉過程、さらに製粉から二次加工のパン、めん等の加工が必要なわけでございまして、そういう意味での均衡点は、麦の価格での均衡点でものを言うわけにはまいらないという事情を申し上げておきたいのであります。  それからいま一つ、消費者物価問題として、パン、めんの価格の問題がございますと同時に、製粉の中にも中小企業がございます。第二次製品のパン、めんについては、ほとんどが中小企業でございます。ここで急激な価格の引き上げを行ないますれば、これはそういう別の問題を引き起こす可能性も非常に心配されるわけでございます。  ただ、私ども、御指摘のように、米と麦との相対価格関係がこれでいいのかどうかという点については、それでいいのだという結論を持っておるわけではございません。本年は政府指導型の物価上昇要因というものはつくらないという政府の一貫した考え方でございまして、麦について価格の改定に手を染めなかったのでございますが、米麦価の相対関係をこのままでいいのか、現在の需給事情のもとでこのままでいいのかという御指摘の意味は、十分私どもも念頭に置く必要がある事柄であるというふうには考えております。
  166. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 こまかい流通経費とかそういう問題についてはいろいろあろうと思いますけれども政府の取り組んできた基本の姿勢を私は言っているわけです。食管制度の改善について、財政制度審議会から答申が出ているわけです。その中のことの大部分、自主流通米みたいなことを採用したのは、たぶんこういうことからでしょう。そういうことは採用していながら、この財政制度審議会の答申は、「小麦の政府売渡価格が米にくらべて著しく」とこう書いてある。「著しく安くなっているという不均衡を是正するため、小麦の売渡価格を引き上げることによって、間接的に米の消費を促進することとなり、かたがた財政負担の軽減にも資するであろう。」――財政制度審議会のやつを大部分政府は受け入れていながら、これだけ受け入れていないというところに、私は問題があるというのです。ことし急に倍にしろといったって、それはできっこない相談です。ですけれども、とにかく外国食糧に依存しているというこの姿勢を根本的に改めなければ、こまかいことを言ったってだめなんだ、こう言っているわけです。さっきも大臣答弁がないし、あわせてもう一回大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  167. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 本年度の予算の冒頭にあたりましても、小麦価格というものに対して上げようじゃないかというような意見もあり、私たちもいろいろその点については十分検討いたしましたけれども、何といっても御承知のような物価問題がうるさいというか、なかなかむずかしいときであるものですから、今年度だけはすべてのものを――生産者米価あるいは消費者米価も据え置くことになるならば、麦もどうしてもことしは据え置いておいて、そして輸入というような点について調整をとることに進めていこうではないかというような結論になったわけでございますが、御指摘の点は全くごもっともだと私も考えます。そういうような方針だけは今後貫いてまいるつもりでありますけれども、来年度はさらにこの点については十分検討しなければならない面があるというふうに考えます。
  168. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 もう一点、米の管理費、これがやはり一・八倍なり二倍に上がっているというのなら、これは私は妥当なことだと思います。昭和三十三年度と今年度と十年間を比較してその推移を見ると、トン当たりで見たほうがいいと思いますのは、集荷経費が二倍、これは大体しょうがないところだ。物価と同じだ。運賃も大体二倍、大まかな数字です。ところが保管料は四倍、事務費は約四倍、金利は五倍、こういうふうに上がってきているわけです。物価並みにいったら、二倍前後が妥当なところだ、こう思う。集荷費及び運賃は大体そういう傾向です。ところが、保管料、事務費、金利、これは四倍ないし五倍にはね上がっているわけです。これにメスを加えなければ――大体政府の買い入れる米は十三万幾らですかね、トン当たり十三万五千円くらいですか。それをトン当たり二万五千円、約二割に近い管理費がかかっているわけです。その中身を洗ってみると、金利と保管料と事務費、これが一番多くかかっているものなんです。これにメスを入れなければ、これまた重大な問題になる、こう思います。これは事務当局でいいです。
  169. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御指摘の数字は、私どももそのとおりであると肯定をいたします。保管料、金利が非常に上がっておりますのは、これは買い上げ数量がふえて、そうして常時保管する数量がふえますために、保管料の支払いだとか、それから金利の増高が見られるわけでございます。これは別段特にむだなことをして払っているというものではございません。事務費の増高は、主として人件費の累年のアップによるものが主たる原因でございます。
  170. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 これについても私は大いに意見があるんですが、かかわっておるとだんだん時間がなくなるので……。保管する数量がふえていくものだから、ますますそういう経費がかさんでしまう、こうなりますから、私ごとしの総括質問で言ったとおり、早く外国へ持っていくなりなんなりしなければいけない。これは総理も、外国へ持っていくことについてはもう政府をあげてやります、こういう御答弁ですから、これはきょうは触れないことにいたしたいと思います。  そこで、たいへんこまかい問題になりますが、開田抑制あるいは稲作転換、こういう問題について、今度は事務当局でけっこうだと思いますから、お尋ねをしたいと思います。  開田抑制から入っていきますが、事務当局の通達を見ると、大体三割一律にやろう、こういうような指示ですね。着工してないものはもうやめさせるとか、食管がパンクするのを防ぐために開田を抑制しよう、これはけっこうなことで、なかなか困難な問題だがやっていただかなければいけない、こういうことだと思いますが、この場合に考えなければならないことは、一律方式が妥当であるかどうか、こういうことです。反当三百キロしかとれないところと、反当七百五十キロとれるというすばらしく生産性の高いところと、こういうものを見た場合に、私たちは税金を納めている国民の一人ですので、同じ資金を使うならば資金効率のいいところに集中をして、そういうところは大いに労働生産性をあげる、こういうようにやっていかなければならないのに、一律パー方式、こういうことは妥当ではない。私は、このことはこういうようにやったらいいと思う。傾斜抑制方式、生産性の高いところは大いに計画どおりやっていく。そうして私は展望としては、傾斜抑制方式によって、生産性の高いところは大いに伸ばしていって、そうして外国と競争できるように、労働力も半減させることができると思うし、反当収穫量もこれから大いに伸ばしていくことができる、こう思いますから、やはり傾斜抑制方式、こういう考え方を基本的には考えなければならないのではないか、こういうように考えます。これは大臣のほうがいいでしょうかな。
  171. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 お米の例を一つとりましてみましても、北海道から九州の果てまで同じような方式でといいましょうか。それでやっていくところに今日のようなアンバランスが出てきておる。したがって、御指摘のような方向に、今後、将来には主産地制度というようなものにも考えを置いていくことが大きな総合農政の基本的な考え方であろうと考えるのであります。小澤さんのお説のように、ただ土地が米に合うから米を増産すればいいということではなくて、特にこの土地は米のうまみといいましょうか、その食味もともに関連して増産ができるという、そういうような、つまり主産地制度というものが今後すべてのものにとられていくというところに総合農政の目的があると考えておりまして、御指摘のような点については、今後早急に――来年度からすぐこれに着手するというわけにはまいりませんけれども、これらの基本的なものを早急に確立いたしまして、御指摘のような方向に向かって進んでいかなければならないということで、大体農林省の方針としては、御指摘の方向によって今後の農政を行なっていく考え方でございます。
  172. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 私の意見と大臣の意見と一致しておるわけです。そういうことですと、これは地域的のことを言ってたいへん恐縮ですが、反当七百五十キロもとれるところは、長野県だとか、山形とか、佐賀ですか、そういうところ、反当三百キロしかとれないようなところは北海道、というようなぐあいになっていくわけです。それはいろいろ総合されていると思います。これは気象条件もある。それから空中防除だか何だか知らないけれども、保温折衷苗しろとか、技術的な条件もある。いろいろの条件がかさんで、片方は三百キロしかとれない、片方は七百ないし七百五十キロもとれる。こういうことになると、私の言う傾斜抑制方式、あるいはもっと傾斜生産方式と言ったほうがいいかもしれませんが、そういうことに大臣は賛成のようなんです。  そこで、事務当局に私は具体的にお聞きしたいが、事務当局の出しているのは、そういう意味というものが中に少しも含まれておらないようです。たとえば国でやっておるものは、今後十年なら十年間に十万七千町歩を約三〇%減らして七万幾らにしようとか、国営事業については、現在進捗中のものはどうだ、着工のものはどうだ、何とか中のものは三〇%、それから補助事業はどうだ、こういうように出ていて、これは一律パー方式なんですよ。私は、政治的に考えると、そういう点も考慮しなければならない点がある。だけれども、われわれ税金を納めている者からすれば、同じ百億かけるのだったら、労働力も半分で収穫量も倍以上のこういうところを集中的にやって、大臣かどこかで談話を発表したし、きょうも答弁になっているような方向に、この通達なり、局長名の指令だか通達だか、四四農地A第一五六号、こういうようなものは、そういう趣旨に沿うていかなければならない、こう思います。事務当局どうですか。これは農地局長ですか。
  173. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの問題は、大臣からもお答えがございましたように、趣旨としては私もそのとおりだと思います。ただ、今後とりました措置は、全体として米の需給の事情から見まして、今後の見通しから見ましても、水田面積が多過ぎるというようなことがございますので……。それからもう一つは、現在着工中のものあるいは調査なりしておりますものも、大体は水田といいましょうか、米の中心地帯に集中しておるわけであります。中にはもちろんいまお話しのように、北海道あるいは東北の反収のこともありましたけれども、北海道でもやはり北海道としての米地帯ということになっておるわけであります。したがって、いま看工しておるものにつきましては、もうすでにダムができた、水路ができたというもの、それから着工したばかりのものについての取り扱い等も、実情に即してやりたい。ただ、調査なり設計をしておりますものは、現実にまだ手をつけておりませんので、その地帯につきましては、地域によりましては、米ばかりつくらなくて田畑輪換をやったほうがいいとか、あるいは畑地かんがいに切りかえたほうがいいということはございます。そのために、少なくとも調査中あるいは設計中のものにつきましては、二割とか三割とかいう目標を出しまして、それくらいはほかのものにかえていただく。そうして地域の実情に応じまして、すでに何らかの意味で手をつけておるわけでございます。開田も認めていこう、こういう趣旨でございます。
  174. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 私どうしてそういうことを言い出すかというと、私のところも含めて農林省で計画している中信平開発については、昨年の暮れの臨時国会のときに、大臣は、これはもう計画しているものだから断固やります、こういうことで、たいへんありがたいということで終わったわけです。ところが、最近は県の発表によると、開田融資一切停止だなんといって、あの辺の農民はわんわんと騒ぎを起こしているわけです。しかし、これは計画したやつだから、私は、抑制の方針は方針として進めなければならないでしょうし、進める方針のようですから、それはけっこうだと思います。思いますが、そういう中で私は大局から考えて――私の付近は反当七百五十キロ、そしてたいへん機械化も進んでいく、空中防除も日本一、それから検査の等級も一等と二等が四五%、超日本一、こういう高い生産性のものも、一律に三〇%というこの指示なりなんなりでやらせるというのは、これは資金の効率的な利用からいっても不合理ではないか、こういうように言っておるわけなんです。趣旨は、大臣趣旨に沿うてひとつ事務当局でやっていただけば、それでけっこうだと思います。どうでしょう、局長さん。
  175. 中野和仁

    ○中野政府委員 中信平につきましては、私さっき申しましたように、もうすでに着工しております。来年度の予算が通りますれば、それによって大体四割ぐらいの事業を――もう進行中のものでございます。したがいまして、ここはもう初めから三割とかなんとか切るということではございません。ただ、国営事業はそういうもので進捗してまいりますと、それに伴いまして付帯の開拓パイロットをやったり、あるいは先ほど御指摘の融資をやったりするわけでございますが、その中身で現地ともいろいろ御相談申し上げまして、オール開田にしたらよいのか、あるいは場所によって田畑転換がいいのか、その辺は地元との相談の上でやっていきたいと考えているわけです。そこで、相談がまとまりますれば、そこは付帯の県営はやりますから、それにあわせまして三割五分の融資もいたしたいというふうに考えておりまして、一律に融資を打ち切るということはございません。
  176. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 それじゃ時間も参りましたので、もう一つ質問をしたいやつがあったのですが、要望だけしておきたいと思います。  稲の作付転換の実施の基準等、これは農業新聞で見ただけですが、ことし二十億の予算をつけて、一万町歩を転換をして、二万円ずつ補助をやって、それから転換奨励金の対象に特別事業をつけてと、こういうことである程度団地を形成しなければいけない。それから特別事業をやるかあるいは造林事業をやるか、そういうようなことが一緒に条件としてきびしく入っている。こんなきびしい条件を、これは予算が通過する三月三十一日以降やって、一体この一万町歩なんですけれども、それは転換できますか。これは一つだけ事務当局で御答弁いただきたいのです。
  177. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 いま御指摘になりました案は、別に最終案ではございませんで、これをもとにして県庁その他に相談をしてきめるわけでございますが、趣旨としては、やはり個々ばらばらの転換ではなくて、ある程度まとまった集団的な団地について事業を行ない、転換の奨励金を出すというつもりでございます。  それで、何しろ私どもとしても初めての仕事でございますから、いま一万町歩確実にだいじょうぶかどうかということにつきましては、よく県段階あるいは市町村段階に調査の根をおろして今後十分検討していきたい。ただ、この仕事は、初めからの性格として、あくまで自主的な転換を促進するということで、強制的にごしごしやるという趣旨ではございませんので、農業団体あるいは農家の十分な納得の上で進めていきたい。しかし、とにかくそんなに大面積ではございませんで、一万ヘクタールでございますから、何とか大体うまくいくのではないかという感じも持っておるわけなんです。
  178. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 それじゃ時間も参りましたので、要望だけしておきますが、ことしは初年度でもあるし、これは伝えられるとろこによると、五カ年間で二十五万町歩とか、そういうぐあいにやっていかなければ、そうして百万トンか百二、三十万トン減産をさせなければいけない、こういう方針の一環として初年度にやろうというのですから、この基準を見たときに、私はこれでできるかなと直感をいたしました。初年度ですから、自主的だということばもありますが、柔軟性を持たして転換をしていこう、困難なことをやろうというのですから、ことしは基準を緩和して――基準は基準として、ある程度緩和をしながらこれが推進できるようにしないと、二十億、九億と消化は全然できないと思うのです。そういう点だけを要望をしておきたいと思います。これは大臣、一言御答弁をいただきたいわけです。
  179. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 初年度でもございますので、その点も十分留意をいたしまして指導をいたしてまいるつもりでございます。
  180. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 終わります。
  181. 湊徹郎

    ○湊主査代理 次に、林百郎君。
  182. 林百郎

    ○林分科員 最初に農林大臣にお聞きしますが、農林大臣は、今度の国会で、農林水産業の基本施策の説明の中で食管制度に触れているわけですね。私の質問は、きょうは食管制度一本にしぼってお尋ねしたいのですが、あなたは、管理制度の根幹を維持しながら、米の買い入れ、売り渡し等制度運営の各面にわたって事態に即応して所要の改善につとめる、こう言っておるわけですね。この食管制度の根幹を維持するということがどういうことかということが、議論の的にずっとなっているわけです。私もその経過は知っております。  ここで大臣の所信をお聞きしておきたいのですけれども、言うまでもなく食管法の第三条には、米の生産者価格は生産費、所得を償い、再生産を確保することを旨としてきめろと書いてある。四条には、消費者の家計を安定せしめることを旨としてこれを定める。これはもう三条、四条に書いてあるわけですね。この米の生産費、所得を償う、再生産を補償する価格、それから消費者米価のほうは、家計を安定することを旨とした価格、これを維持するということは、これは食管制度の根幹を維持することになるのですか。これをくずして、これがあいまいになって、食管制度の根幹を維持するということになるのでしょうか。その辺のあなたの見解をお聞きしておきたいと思うのです。
  183. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 御指摘のとおりでございます。
  184. 林百郎

    ○林分科員 御指摘のとおりというのは、そうすると、これはくずしてはならない、こういうことですね。
  185. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 くずしません。
  186. 林百郎

    ○林分科員 そこでお尋ねしますが、あなたはそう言われているけれども、たとえば生産者米価のきめ方については、限界反収の補償から平均反収補償に切りかえていくということが、これはもう政府の方針として大蔵大臣予算委員会答弁しています。それで、しかも最初は農林省もこれに若干抵抗していたけれども、もうことしの米審の諮問には、こういう方向をとって、資材費の値上げと相殺していこうという方向をとろうと考えていると言われたのでございます。そうすると、ここから生産費、所得を償う、米の再生産を補償する価格というのは、据え置きでもくずれるし、また平均反収補償方式でもくずれてしまうと私は考えますね。一方では消費者米価のほうは物統からはずしているわけなんですから、どうなるかわからないわけですね。これは農林省では、予算委員会でそれは需給関係で操作していくのだと言っていますけれども、しかし、制度として価格を押える制度というのは、制度的には価格の面での制度としてはないわけです。そうすると、大臣は、食管制度の根幹は、再生産を償う生産者米価、それから家庭生活に影響を及ぼさない消費者米価、これが根幹だと言っていても、これからあなた方がやろうとすることは、これをくずすことになるのじゃないですか。大臣、ちょっと答弁してください。これは維持できるのですか、あなた方これからやることからいって。
  187. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 もちろん再生産を根本的にあるとおり考えて、それを基礎として米価審議会にかけまして、そうしてその決定を見るはずであります。
  188. 林百郎

    ○林分科員 そうすると、米価審議会にどうかけるのですか。生産費を償う、再生産を確保する米価、そういう観点から米審にかけるという、四十四米穀年度の米の生産費についての農林省の米審への諮問というのは、どういう方針でやるつもりですか。
  189. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 かける方針と申しましても、まだ統計のほうからいろいろの資料が出てまいっておりませんので、それを至急に――いつもの年ですと、七月にも八月にもなりますけれども、本年は特に早目に生産者米価を決定していきたいというような考え方で、いませっかく統計のほうへ急いでその資料を提出するようにということでやっておりますので、まだそのこまかい点についてはきまっておりません。
  190. 林百郎

    ○林分科員 きまっていないのにやるつもりだといったって、やるつもりならやるつもりらしく、納得するような政策を出してくれなければ、やるつもりだけれども具体的な政策がまだ考慮中じゃ、責任ある答弁にはならぬと思うのです。  具体的に聞いていきます。自主流通米の価格はどうやってきめていくのですか。
  191. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 自主流通米の価格は、消費者が好む品種を選択するわけでございますから、配給米よりも幾らか高くなるであろうということだけは申し上げられると思うのでございます。価格を幾らにきめるかということは、この点は政府のほうできめる価格ではございませんけれども、想像はしていただけると思います。
  192. 林百郎

    ○林分科員 どのくらい高くなるつもりですか。
  193. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 自主流通米は、いま大臣もお答えしましたように、消費者の需要の動向に応じて価格形成がされるという筋合いのものでございますから、いまの段階で幾ら高くなるということを予測することは、私は非常に困難であるというふうに思うのでございます。また、一律な価格形成が行なわれるということもないであろう。そこで、一応のめどとして私ども試算をしてみますと、現在の生産者米価を前提にし、政府の管理経費を前提にいたし、現在の流通業者のマージンを前提にいたしまして、自主流通米の流通期間と申しますか、保管流通期間が短いという点を配慮して試算したものを申し上げますと、現在配給米は末端で十キロ当たり全国平均では千五百十円ということになっておりますが、それに対しまして約二百六十円ないし二百七十円程度のコストアップになる。ただし、そのコストの中には、政府職員の給与等を含みます事務費が加算されておりますので――この点は現実にそれほどの必要はないでありましょうが、一応そういうものを入れて計算しますと、いまのようなコスト高にはなるということが一つのめどになろうかと思います。
  194. 林百郎

    ○林分科員 それ以上に上がった場合はどうします。
  195. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 自主流通米については、先ほど申し上げたような性格のものでございますから、法的な規制をする考え方は持っておりません。おりませんが、先日の予算委員会の本委員会でも申し上げましたように、政府といたしましては、政府の定める消費者価格水準で一定基準量まではいつでもどこでも配給が受けられるという体制を貫くつもりでございますので、したがって私は、自主流通米についてそういう経済関係からする制約というものがあり、また消費者も、自主流通米を押しつけられるわけではございませんので、消費面からする制約があって著しく高騰するということはあり得ないと思っております。
  196. 林百郎

    ○林分科員 そうすると、管理米の価格はどうするのですか。物統からはずしたのでしょう。
  197. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 管理米につきましては、自主流通米の制度を発足させるということとにらみ合わせて考えますと、物価統制令の統制にはそぐわないのではないかというふうにいま考えておるのでございますが、一応観念的に申せば、政府管理米の末端配給価格については、何らかの規制をすべきであるというふうに思っておりまして、規制の方法としては、一つは今後検討を要しますが、物価統制令による最高販売価格の設定ということも考えられる。また、食管法十条による米穀の価格に関する委任命令、命令によって規制するということも考えられる。さらに、政府の登録業者の扱う米についての価格規制でございますから、農林省食糧庁の行政的な基準価格、性格的には行政上の指導価格というものを設けてそれによって消費者が安心をして一定価格で買うことができるということを保証することも可能である。むしろ私は現段階では行政上の指示価格というものでその点の規制を加えていくということにしたらどうかというふうに考えます。
  198. 林百郎

    ○林分科員 基準価格ということを言われましたね。いずれにしても、私は従来の農林省は基準価格へ傾いているのじゃないかというように考えていました。かりに基準価格としても、それを物統からはずしてしまっているのだから、幾らかの幅、上限と下限をきめての基準価格でしょうけれども、一方では自主流通米があるのですからね。これが値上げの要因になっている場合に、この基準価格も業者としては上げる方向へ動くことは当然だと思うのですよ。一応の基準なり一応の指示価格を出したとしても、それじゃこれを守らなかった場合は、行政的な措置以外にどうやって価格の面からこれを規制する制度があるのですか。
  199. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私どもとしましては、業者が政府の基準価格を守る守らぬという問題は、根本的には業者の商業道義の問題でもあろうかと思うのでございますが、一つは小売りの業者間における競争があることが必要だろうと思うのであります。そういう意味で今年の四月から消費者と小売り店との結びつき登録を廃止いたしまして、同一市町村内ではどこの米屋からも米を買うことができるように改めたい、そこに競争関係を入れていく。また、それぞれの小売り店については、配給標準米を店頭に展示をさせる、また自主流通米と配給米との配給区分を販売台帳に正確に記帳させて、これに対する監査を励行するというようなことをやっていきたいと思います。
  200. 林百郎

    ○林分科員 簡単でいいですよ、そこはまた私だんだん聞いていきますから。価格の面でコントロールする制度が何か保証されているかどうかということですよ、たとえば基準価格を上げた場合に。
  201. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 なお、政府行政方針がどうしても貫けないということであれば、食管法十条の命令を発動するということは最後の手段としてはあると考えております。
  202. 林百郎

    ○林分科員 そうしたら、どういう命令を出すのですか。具体的に言ってください。そんなことができますか。一方では自主流通米でこっちには自由があるわけですよ。そうすると一方は自主流通米があってどんどん値が上がっていく、一方は配給米があると言うけれども、配給米と自主流通米とを混合した場合に、米にはしるしがない。そういう場合、配給米か自主流通米かわからないようなことにしておいて、おまえのところは値が高いからといって食管法十条でどういう指示をするのですか。具体的な指示の内容を知らしてください。あなたは何をやるのですか。
  203. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 食管法十条の規定は非常に広範な権限政府に与えて……。
  204. 林百郎

    ○林分科員 それは条文を読めばわかりますから、値が上がった場合にはどうすると具体的に言ってください。
  205. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 法的規制を要するというような事態になりますれば、私としては、政令を出しまして、そうして政府管理の売り渡しにかかる米穀については、最高の販売価格はこれこれであるというような命令を出すことが考えられるというふうに思っております。
  206. 林百郎

    ○林分科員 そうすると、あなたの指示した管理米が自由米のほうへもぐり込んでいって、自由米という名前で値が上がった場合、消費者からいえばどうやって区別するのですか。
  207. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お説のとおり米に色をつけるわけにはまいりません。その点は私どもも全くそのとおりだと思います。(林分科員「脱法行為をした場合どうするか」と呼ぶ)しかし、現在の需給事情のもとで可能なことは、消費者が自分は政府の定めた価格水準で――標準配給米とかりに申しますか、その配給を受けたいということについて量的に何らの不自由を与えないように用意すれば、私はその問題についての本来の解決はできるというふうに思っております。
  208. 林百郎

    ○林分科員 あなた、大正七年の米騒動は別に米の需給関係では逼迫してなかったのですよ。しかし大米商人が出て、米を買い占めてしまう。非常に投機性を持つ。米は国民になくてはならない生活必需品だ。それを投機性を持たしてしまえば値が上がってしまうのですよ。あなたは予算の本委員会でも、需給関係で相当の操作米を政府は持っているから、これで値を下げることができますと言ったって、もうこういうように食管の流通機構が混合してしまって、自主だか政府管理米だか、そういう状態で、しかも卸売り、小売りで大きな商業資本が入る余地を、これから私聞いていきますけれども、そういうものを許してしまえば、大きな販売業者が米市場におけるシェアを大きく占めてくる、そこで投機的に値を上げてくるということになれば、これはもう大正七年の例がそれを示しているんですから、需給関係ではきまらないのですよ、これは。そこを私たちはいまあなたに質問しているんだけれども、あなた、逃げるところは、需給関係がこうあって、政府が相当の操作米を持っているからそれは何とかなりましょうと言っていますけれども、もう政府の手を離れてしまうわけですよ。自主流通米の制度をつくり、管理米は物統からはずしてしまって、そして今度は消費者のほうは自分の好む小売り業者へ行くことができる。小売り業者と特別卸売り業者と結びつくこともできるというような、流通面でも非常に自由性を今度は入れてきたわけですよ。そうなればもう政府の――あなた、まだ食糧庁長官で昔の食管制度が維持されているような頭があるが、あなたの頭自体がもっと転換しなければだめですよ。もう食管制度の基礎がくずされているということをあなた自身よく認識しなければ、食糧庁長官なんというのはたいして権威がなくなりますよ。よくそこのところを自覚しておきなさい。そのかわり三菱商事だとか三井物産だとか丸紅飯田だとか、こういう米の大資本が今度は権威を持ってくるのですよ。あなた、押え切れなくなる。そこを私はあなたに聞いているわけです。  そこで、もう少し聞いていきますが、あなた、競争があるからそんなに高い値段を一方が上げるわけにいかないと言いますが、それはある一定の段階までは米の小売り業者なり卸売り業者が競争でやっていくと思う。しかし、競争を通じて大きな資本がだんだん小資本を支配していって市場の占有率を高めれば、今度は値が上がってくるのです。また、そういうことをあなたのほうが許そうとしている。  そこで、今度配給米は一人当たり十五キロにむしろ限界を広げるということが政府の案に出ていますね。これはそうですか。
  209. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 配給改善の措置をとる際に、基準配給量を現行の十キロから十五キロに引き上げたいというふうに思っております。
  210. 林百郎

    ○林分科員 ところが、消費者のほうは、ずっと見てみますと平均して六・一キロくらいですか、そうなっているのじゃないですか。しかもそれはだんだん減っていく傾向になっていますね。消費のほうが減っていく傾向があるのに、政府の管理米を一人当たり倍もの量を末端の小売り業者に割り当ていくということは、どういうことなんですか。
  211. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 基準配給量をふやします趣旨は、食糧庁の調査によりますと、ある種の業種の従業者、たとえば漁民でございますとか、あるいはその他の重労働の性質を持つ労働に服しておる人たち、そういう人たちは十キロの配給では不十分であるという調査があるのでございます。その際に、十キロをこえる加配米の制度は現在でも残っておりますので、それらの点を勘案いたしまして、十五キロに引き上げることによって、十キロ以上の量をほしい人にはそれを合法的な範囲内で配給ができるようなことにする。また加配米制度については、十五キロの範囲のものをすべて整理してしまいたいという趣旨のものでございます。確かに一人当たりの受配量は、消費の減退に伴いまして少なくなっているのでございますが、政府が現実に配給操作をいたします場合には、これは大体その地域における現実の配給所要量というものはわかっておりますので、十五キロの基準配給量を割り当てるというようなことをするわけではございません。
  212. 林百郎

    ○林分科員 これは農林省の統計によりましても、消費者の米の消費量は昭和三十五年から四十二年まで大体ずっと漸減しておりますし、四十年、四十一年、四十二年は一人当たり大体六キロ台という数字が出ておるわけですね。それを十五キロにワクを広げる、そしてそれを卸売り業者なり小売り業者におろしてくるということになりますと、二つのことが考えられると思うのです。それだけのものを買う余裕のある卸売り業者なり小売り業者は、買って持っていますね、それだけのワクを広げてもらうわけですから。そうしますと、一つは、そういう余力のある者は――やはり消費しなければならないから、ワクをたくさん持っていて余ってしまっては困るから、力のある小売り業者はだんだん力のない小売り業者を併呑していく、こういう方向が一つ出てくると思うのですね。要するに十五キロを持ちこたえることのできる業者は持ちこたえて、そうでない業者を併呑していくという方向が一つ考えられる。もう一つは、あなたの言うように、区別がつかないのだから、自主流通米のほうにこれをまぜていく。この二つのことを防ぐことができますか。要するに一人当たり六・一というのが倍以上も割り当てでくるということになれば……。
  213. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現在でもすでに御承知のとおり、現実の受配量は六・一キロということでございますけれども、配給基準量は十キロでございます。すでにその間に、現実と配給の最高限度というものには差があるわけでございます。卸売り業者に政府が売り渡しをいたします場合には、卸売り業者の地域における所要配給量というのはもう経験的にわかっておるわけでございますので、その数量を基準にいたしまして売り渡しをし、また卸売り業者の在庫量というのは毎月報告をとり、かつその監査をいたしておりますが、大きな在庫量を現在まででも特定の卸売り業者が持っていたという例はございませんし、また、そのこと自身が持つ経済的理由はむしろマイナスに出る問題でございますので、かりに配給基準量を十五キロに引き上げたということになりましても、その間の事情は私は変化はないというように思っております。
  214. 林百郎

    ○林分科員 あなたの言うように、現在は一人当たり十キロと計算して配給をおろしていく。ところが、実際の消費量は六キロだ。それをまた十五キロも、現在よりまた五割ふやすということは、結局そういうワクを持ちこたえることのできる小売り業者あるいは卸売り業者は持ちこたえるわけですよ。そして、それをてこにして、よそのほうに自分の市場を拡大していく。あるいはそれを、米にはマークがないから、自主流通米のほうへまぜて、いままで十キロだったのを今度は十五キロ来るのですから、そして、事実上消費者米価を上げていくという作用が出てくるんじゃないか。そうじゃなくて、いままで十キロの割り当てで、そして実際の消費量は六キロというのに、なぜここで五割もたくさん割り当てるのですか。結局はそういうことになるじゃないですか。簡単に答えてください。
  215. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 先ほどから申しておりますように、基準配給量は、個々の消費者がその数量まで配給を受けることができるという数量であって、需給調整上基準配給量を配給人口にかけて売り渡すということはしておらないのでございます。それぞれの地域に配給実績というものがございますので、その配給実績で、あるところでは六・一キロ、あるいはあるところでは六・三キロというような所要配給量というものを握っておりますので、それで売り渡しを進めておるのでございます。いま申し上げましたように、十キロから十五キロに上げましてもその間の事情は変わりません。ただ加配米の制度を利用しなければ十キロ以上買えない人、あるいは就業業種によって十キロ以上実際に消費をしている人たちの便宜のために基準量を引き上げるというだけの意味を持つものでございます。
  216. 林百郎

    ○林分科員 そんなことを言ったって、小売り業者のほうは私のほうは十五キロ満ぱいいただきますと言えば、政府は米が余っておる、余っておるというのだから、私のほうは買いたいというのに、おまえのところは実績がないから売らないという規制ができますか。できるだけ在庫を減らしたほうがいいのだから。たくさん買いたい、買う余力のある卸売り業者、小売り業者に十五キロのワクまでは売ってやりたいと思うのはあたりまえじゃないですか。それが実際消費者の手にどう行くか、これは別ですよ。消費者が六キロしか買わないといったって、十五キロのワクがあれば十五キロ満ぱいいただきます、私どもの店では。それをどう使うかわからないじゃないですか。そこまでは農林省の目が行かないでしょう。たとえばそれを自主流通米にまぜたって、米にはマークがないのですから区別のしようがないじゃないですか。実績、実績といったって、自主流通米に実績はないのだから、そっちにまぜられればどうにもしようがないでしょう。あるいは十五キロ満ぱいにしても、余裕のある範囲のものをもらってそっちのほうに回すということも考えられる。  そこで、私お聞きしますが、小売り販売業者の新規参入の問題ですが、これは人口急増地域においては小売り販売業者の新規参入ができる。これは当然、人口急増地域は出資することによって特別卸売り業者にもなれるわけですね。
  217. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 人口急増地域につきましては、従来も新規の小売りの参入を認めなければ消費者がたいへん迷惑するという事例もございましたので、そういう方針をとっておったのでございますが、ただ現在までは市町村単位の新規参入を認める区域を指定しますのに、その市町村内にはすでに小売り業があるというようなことで、なかなか現実に新規のものが出ていかないという事情がございましたので、今回は市町村のうちで人口急増地域に限って指定ができるというふうに改めたという趣旨でございます。新規に小売り業が進出をするにいたしましても、それはどういう業者が出るかは、一定の省令に基づきます要件を満たすものについて都道府県知事の登録ということできまるわけでございます。一定の要件を満たせば、お話のように特別卸が小売りとして進出するという場合もないとは言えない、それはそういうこともあり得るというふうに考えます。
  218. 林百郎

    ○林分科員 特別卸売り業者は二百馬力の大型精米工場を持つということになりますね。そうするとそれが、私のところは二百馬力の大型集中精米工場を持ちます、あるいはどこどこと出資をして持ちますということになれば――これは理論的にですよ、実際上はいろいろあると思いますが、――理論的にはこれは許されることになるわけです、特別卸売り業者になるのだから。私のところで二百馬力の大型精米所をつくりますと言えば、これは断わることはできないわけでしょう。
  219. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現在すでに卸の登録を終えておるものが、二百馬力の集中精米所の施設を持ち、かつ二分の一以上の小袋詰めの米の配給いたし、また精米施設の年間操業率が確実に相当程度見込まれるというような条件が満たされれば、お話しのように特別卸ということはできます。
  220. 林百郎

    ○林分科員 それから、今度は小売り業者のほうが特別卸売り業者に対して、私のほうの営業権を譲りますというような事態が起きた場合、そういう場合には特別卸売り業者が、要するに特別卸のほうがよろしいと言えば、その営業権を特別卸業者に登録がえをすることはできるわけですね。要するに現在卸売り業者と結びついている小売り業者が特別卸売り業者に登録がえをしようとする場合には、当該特別卸売り業者がうんと言えばいいことになるわけでしょう。
  221. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 そのとおりでございます。
  222. 林百郎

    ○林分科員 それから、消費者のほうは、あなたの言うように、小売り業者はいままでのように、登録した小売り業者に結びつかなくて、自分の好む小売り業者に登録がえも今度は自由になるわけですね。
  223. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 登録そのものを廃止しますので、好むところから買うことができます。
  224. 林百郎

    ○林分科員 そうしますと、人口急増地域で新しい小売り業者が大きな資本を持って参加する、それが特別卸売り業者に出資するなり、あるいは自分が二百馬力の工場を持ち、特別卸売り業者になる。それが今度は小売り業者を吸収していく、小売り業者のほうが、もう二百馬力も八十万人分もの米が精米できるということになれば、これはいままでついていたマージンがなくなってしまうのだからこれは米の小売りだけじゃではなくなるわけです、多角的な経営をやっていかなければ。そうすると、結局大きな資本で米一本でやれるような資本力のあるところに漸次小売り業者は集中していく、こういうことになって、自由競争、自由競争といいますけれども、今度は政府のやる新しい小売り業者として新参入を許すということは、それが卸売り業者になり得るということ、特別卸売り業者は承諾さえすれば小売り業者に登録がえを認められるし、特別卸売り業者は自分の特別小売り業もできるということになる。それから今度は、消費者のほうは、自分の好むところに行くことができるということになれば、大きな資本力を持った米資本というものが米の市場を支配する道がここで開かれることになるのじゃないですか。それをどう規制するのですか。
  225. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私の説明が不十分であったためですか、少し御理解に食い違いがあるようでございますが、小売り業者あるいは卸売り業者等の新規の参入は原則的には認めないという態度をとっておるのでございますが、人口増加地域については、消費者の立場を考えて、小売りの参入を認めるようにいたします。しかし新規参入した個々の小売りが卸売り業者になりあるいは特別卸売り業者になることはこの制度のもとでは不可能なのでございます。小売りが特別卸の登録を得られる場合は、多数の小売りが出資あるいは共同をして大型搗精工場を持って小袋詰めの米を配給をし、かつその施設の操業度が相当高い数字を保持されるという条件を満たされるときについてだけ認められるのでございます。
  226. 林百郎

    ○林分科員 あなたのほうが間違っていますよ。農林省の案は、大都市またはその周辺における配給人口の著しい増加に対処する等のため、都道府県知事が指定した事業区域について小売り販売業者甲の新規参入を認める現行の制度に次のような改善を加える。認めるためにですね。事業区域内の一部区域を指定することができることとする。一定数以上の消費者の希望がある場合は都道府県知事は十分これを勘案して指定することとする。新規に加入することができるわけですよ。二百馬力の大型精米所に小売り業者として出資する、あるいはみずからが二百馬力の工場を持つということになると、これは特別卸売り業者になり得るのですよ。あなたはさっき理論上なれると言ったじゃないですか。そう言ったでしょう。いや、違うことはないですよ。これは理論上できますよ。もしあなた方がいけないと言うのなら、卸売り業者の権利を譲渡してもらってもいいのですよ。とにかく国家の統制はここのところは大きくはずれる。そんなことは理屈上どうついたって、大きな資本が入り得るのですよ。そうでしょう。あるいはそこへ出資しておる卸売り業者の権限を譲り受けたっていいのですよ。そうすれば、ここへ大きな商業資本が入れないという、そういうものを規制する道はないじゃないですか。新規参入も許される、それから権利の譲渡も許される、そういう場合には登録がえもできる、消費者と小売り業者の登録関係ははずしていくということになれば、大きな資本が入り得る余地があるじゃないですか。しかも二百馬力の大型精米所といえば、約一億から一億以上の金が要るのでしょう。そんな出資のできる卸売り業者というのは、一定の資本力を持たなければできないし、また、かりに小さい卸売り業者がそれを持ったって、その負担に耐えかねて、その権利を譲渡するということだってあり得るわけです。政府はいますぐ大きな資本が進出するなんと言えば、卸売り業者や小売り業者にいろいろの動揺を与えるから、極力あなた方は抗弁するかもしれませんけれども、道は開かれるじゃありませんか。そう思いませんか。
  227. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 まず、制度について、私が間違っておるのではございませんで、御理解のほうが私は誤解があるというふうに思うのです。  小売りについては、原則的には新規の参入を認めないけれども、人口急増地域に限って新規の参入を認めるということをこの際したということでございまして、特別卸になり得るものは、現在卸売り業者として登録されておるものか、あるいは小売り業者の共同出資あるいは共同化によって大型精米設備を持ってやるという場合に限られることになっておるわけでございます。したがって、新規参入いたしました小売りが卸の資格を持つ、特別卸の資格を持つということにはならないのでございます。
  228. 林百郎

    ○林分科員 ちょっと待ってください、時間がありませんから。新規参入した小売り業者が、小売り業者として出資して二百馬力の精米所を持つ、こういうことはそれじゃとめるのですか。あるいは新規参入した小売り業者がみずから特別卸売り業者となって二百馬力の精米所を持つ、こういうこともある。あるいは新規参入した小売り業者が二、三の小売り業者と一緒になって二百馬力の――これはあなた奨励しているんですものね、大型精米所をつくれつくれといって。だから新規参入した小売り業者が、二、三の小売り業者と一緒になって、そして二百馬力の精米所をつくりますといった場合に、これはつくらせないのですか。新規参入の小売り業者には特別卸売り業者にも加入させないし、あるいは新規参入の小売り業者が小売り業者として連携して精米所を持つこともさせないし、新規参入者は特別卸売り業者の資格も与えないと、ここではっきり言えますか。言えるなら、ここではっきり記録にとめておきましょう。それで今後の推移を見ましょう。
  229. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 新規に参入した個々の小売り業者(林分科員「個々じゃないよ。連携してと言っているじゃないですか」と呼ぶ)連携をして他の小売り業者と共同的に施設を持つ場合には、これはその方針にもありますように、なり得る。ただし、先ほど御指摘にもありましたように、二百馬力の精米所というのは、少なくとも四十万人の配給人口を擁しなければ成り立たぬわけでございます。したがって、相当の稼働が見込まれなければならないという条件が加えられておりますから、二、三の小売り業者が集まってやるとか、そういうようなことは事実上あり得ないことであります。また、そういうような精米施設については、これは登録を認めないということでございます。
  230. 林百郎

    ○林分科員 だから、あなたはそんな子供じみたことを言うのですよ。新規参入の小売り業者のうしろに三井や三菱がついていたらどうするのですか。それで二、三の同業者を集めて二百馬力の精米所を持とうじゃないか。三多摩あたりに、あるいは北九州あたりへどんな人が入ってくるかわからないじゃありませんか。その背後にどんな資本力のひもがついているかわからないじゃないですか。そこまで食糧庁長官、わからないでしょう。だからあなたの答弁も、ここまで言えばいいのですよ。要するに、新規参入者が二、三の小売り業者と一体となって、新しい二百馬力の精米所を持とうという場合には、それを規制する方法はない。そうすると、それは特別卸売り業者になる。今度は一たん特別卸売り業者の資格をとれば、小売り業者と話をして、小売り業者のほうがあなたのほうに登録をしたいと言えば、特別卸売り業者はオーケーと言えばよろしい、そういうことになって、背後に資本力のある新規参入の業者が入ってくれば、それが市場を大きく支配できる道は立てられているのですよ、あなたがどんなこと言ったって。それがもし投機性を持つような米の操作をしていったら、これは食糧庁の手に負えないような事態が起きるんじゃないか。えらい先のことを心配するようだが、あなたは食糧庁長官を何年やっているか知らぬが、それはおれがやめたあとのことで、おれのいる間はいいとおっしゃる。しかし、米というものは国民の百年の大計を考えてやらなければいけないわけですから、私はそのことを心配しているわけです。そういう道が開かれているじゃないですか。しかも二百馬力からだんだん馬力を大きくしろというのでしょう。やむを得ない場合は百馬力でいいけれども、なるべく二百馬力にしろ、今度は二百五十馬力にしろ、あなたのほうが馬力を大きくさせている。そうして大型精米所をつくれつくれと言っているでしょう。そういう大型精米所で八十何万人もの米の消費量を精米して、それを十五キログラムですか袋に詰めて、そしてデパートやスーパーマーケットにだんだん配給させていく、そういうことをやり出せば、それは規制する方法がないですよ。私はそう思います。どうですか。
  231. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 林先生のおっしゃるとおりにお答えすれば御満足かもしれませんが、間違ったことを申し上げるわけにもまいりませんのであれですが、二、三の小売り業者が共同して、消費人口四十万人以上を擁するような精米所というものはとうてい考えられません。したがって、操業度の関係でそういうものは認めないという方針でございます。  ただ、お話しのように、配給業者のうしろに有力な資本がくっつくことが絶無かということになりますれば、必要な資金としてそういう資金がうしろから応援するということはないとはいえないと私は思うのです。しかしながら、現在の配給システムそのものの中に大資本が乗り出してくるというような可能性は、新規の卸を認めるとか、あるいは純然たる新規の特別卸を認めるということがあるならばいざ知らず、現在の配給制度のもとではおよそ考えられないことである。また、かりに特別卸売りの制度なり、あるいは人口急増地帯における小売りの新規進出を認めないといたしましても、それは事情は同じである、こう私は思います。現在の既存の卸売り、既存の小売りに資本がくっつかないという理由はあり得ない。しかし、そういうようなことをする必要性、またそういうことをすることの経済的な意味というものは、私はないというふうに思いますので、お話しのような事態は、少なくとも現在の食管を運用していく限りあり得ないということでございます。
  232. 林百郎

    ○林分科員 大資本がどういう操作をするかということについての評価は、私とあなたと全然違っている。あなたは現在の小売り業者、現在の卸売り業者がずっと恒久的に続くと思っている。しかし、一たん米が食管からはずれて自主流通米ができてき、そして二百馬力以上もの精米所ができる。新規小売り業者を認める、新規小売り業者も特別卸売り業者になれる、特別卸売り業者と小売り業者との関係は非常にゆるやかだ。消費者は自分の好む小売り業者のところへ、登録をはずされたからいくということになれば、資本力のある者が、どういう形で出てくるにしても、一たんそこに入れば支配力を持ってくるじゃないですか。いまの小売り業者、いまの卸売り業者が、これから自由化された米の流通過程をずっと握っているなんということは、そんな考えを持っていれば、あなたのほうがおかしいですよ。それは今後の時日の経過を見ればわかりますがね。それはそれでいいです。  あと農林大臣にお尋ねします。いいですか、農林大臣。さっきからあなたに何も聞かなかったですが、生産者米価の問題です。これも食管制度に関係してくるわけですけれども、あなたは、生産者米価のきめ方を、限界反収補償から平均反収補償に移行させないということですね、こういうことをはっきりここで言えますか。それが言えるかということが一つと、それから毎年毎年資材費が約一〇%ずつ上がってくるのですから、昭和四十四米穀年度の生産費もこれは一〇%上がらざるを得ないわけですよ。上がらざるを得ないのに、生産者米価はそのまま据え置くということになると、農家はそれだけ出血しなければいけないということになるわけですよ。その問題と、いま言った限界反収補償と平均反収補償との関係と、このことをはっきりとあなたの口から答弁していただきたい。
  233. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 四十四年度産米価の算定を具体的にどのように行なうかということを、いまの段階でまだきめたわけではございませんので、申し上げるわけにはいきません。いずれにせよ、需給事情を反映させるようにする必要があると考えております。したがって、御指摘のような点にも十分考慮をしてまいるつもりでございます。
  234. 林百郎

    ○林分科員 生産資材費が一〇%ずつ上がっているというのは、これは農林省の統計の中からも出ているわけですね。そうすると、昭和四十四米穀年度の生産者米価のきめ方については、あなたはまだ考慮中だというのですか。そうすると、昭和四十四年の生産者米価を四十三米穀年度の生産者米価に比較して上げるということも考えられるのですか。あるいは理論上そういうこともあり得るということですか。
  235. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 まだ統計の資料が出てきておりません。全国でいろいろな統計が統計局でとられておりますけれども、まだ出てきておりませんので、その統計を基礎にしてこれから米価審議会にかけまして、その決定を見て、われわれはそれを尊重するつもりでございます。
  236. 林百郎

    ○林分科員 だから、もう資材費が一〇%上がっているのは過去の実績から明らかなんで、ことしだって五%も上がると政府は言っているわけでしょう。これはあなたも御承知のとおりです。米の生産資材費だけ上がらないということはない。上がるということはわかっているわけです、政府が言っているのですから。そうなれば、いろいろ統計が出てきた結果によっては、生産者米価を上げるということもあり得る。そうでなければおかしいじゃないですか。生産費は上がる。政府自体が物価はことしは五%上がると言っている。生産資材費も上がる。数字はもう過去の統計からいって明らかだ。それじゃ生産者米価を上げないということにすれば、どこかで生産者米価を、たとえば平均反収補償か何かということにして、実際下げて、それと相殺するかどうかしなければ、生産者米価を上げないという理論的な根拠はないことになるのじゃないですか。そこをどうお考えになりますか。理論的にはあり得るのですか。出てくる統計の数字によってはあり得るというのですか。絶対ないというのですか。
  237. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 まだ米価審議会の議を経た後でないと、どういう決定になるかを軽々に私から申し上げるわけにはまいりません。私がここできめられるならば米価審議会は不必要なんでありまして、米価審議会の議を経て決定をするわけでございます。
  238. 林百郎

    ○林分科員 それじゃ、米価審議会で上げてしかるべきだという答申が出た場合、あなたはどうしますか。理論的なことで考えましょう。
  239. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 米価審議会の決定が出れば、われわれは十分尊重するつもりでございます。
  240. 林百郎

    ○林分科員 そうすると、米審のほうで、生産者米価は資材費が上がっているからそれだけ上げるべきだという答申が出た場合には、政府としては十分それを尊重する考えだ、こう聞いておいていいですね。
  241. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 あなたが御指摘のとおり、政府としては、生産者米価、消費者米価を据え置く方針だということは、はっきり申し上げてあるとおりでございます。しかし、米価審議会というものがございますから、米価審議会にかけまして、審議会からの答申を待って、私としてはそれを尊重する考えでございます。
  242. 林百郎

    ○林分科員 だから、米価審議会のほうで生産者米価を上げるべきだという答申が出れば、あなたとしてはそれを尊重する意思があるかどうかと聞いているのですよ、当然でしょう。
  243. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 上げることもあるでしょうし、下げることもあるでしょう。
  244. 林百郎

    ○林分科員 上げる場合を聞いているのですよ。
  245. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ここで、私のほうから、上げるべきだ、上げてくれということをまだ申し上げる段階ではないのでございまして、いずれにしても、米価審議会の決定をした答申がございますから、その答申によって、われわれはそれを尊重いたしますと、このように申し上げておるわけでございます。
  246. 林百郎

    ○林分科員 もう、そんな論議を幾らしていても切りがありませんから……。  あなたは、総合農政、総合農政と言って、それから作付転換をしろと言っておりますね。あなたは群馬県の農村出身の農林大臣です。あなたは、自分の群馬県で、新しいあなたの農政に基づいて、米作から作付転換をするという場合に、群馬県の農民に何をつくったらいいと――価格とそれからその買い入れを保障するか。あるいは、いずれにしても、米作から転換しただけのそういう農業経営の保障をできるというものは、何をあなたはおすすめになるつもりか。
  247. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 県々によって適地適産というものがございますので、適地適産をおそらくやってくれるだろうと考えます。
  248. 林百郎

    ○林分科員 おそらくやってくれるのじゃなくて、あなたの出身県のことを私は聞いているわけです。よそのことを聞いているわけじゃない。
  249. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 私から強制して作付を転換させるのではございませんで、御協力を願うのでございますから、適地適産主義をとってくれるだろうと考えます。
  250. 林百郎

    ○林分科員 あなた、そんな無責任なことを言っておって、農林大臣が自分の出身県へ行って、自分の農業政策を具体的に指示もできない、そんな農林大臣がどこにありますか。結局、あなたの言う作付転換は、作付転換といっても、米作農民が保障されていたような保障は、何一つあなたは保障できないから、ここでいろいろ言えないのじゃありませんか。もしあるというならば、あなたは、総合農政として、米の作付転換としてこういうものをつくったらいいということを言ってみたらどうですか。
  251. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 群馬県は群馬県の考え方で、農協を中心とした考え方が出てくるであろうと承知をいたしております。私は群馬県だけを見ているわけにはまいりませんので、群馬県だけへ行って、私は群馬県出身だから群馬県はこれをやれと私から指示を申し上げるわけにはまいらないのであります。
  252. 林百郎

    ○林分科員 あなた、無責任じゃないですか。それぞれの県にはそれぞれの特性があるからここで一般的なことは言えませんと言うから、あなたがそう答えるから、それではあなたは自分の出身県の群馬県ではどうですかと言ったら、群馬県は群馬県でありますからここでは言えませんと言う。結局、あなた、それは詭弁じゃないですか。長谷川農政じゃなく、農協農政ですか。農協がやってくれるでしょう、そんな性格のない農政というものがどこにありますか。  結局、あなたは、畜産をやれ、あるいは果樹をやれといったって、一方ではアメリカの関税の自由化がぐっと圧力が加わってきている。一方では開発輸入がこういうふうにきている。一方では価格の補償とか、米みたいな食管による補償がないという場合に一体何をやったらいいのですか。たえとばアメリカから十五品目ありますね。これは日本の果樹とそれから畜産関係には決定的な影響を与えるようなものが自由化を迫られてきている。一方、トウモロコシだとかバナナを開発輸入で入れよう。一方では価格保障は政府は農協まかせであるとあなたは言っている。そして農民が、かりに米の作付転換といったって何を転換したらいいか。もしあなたが米の作付転換をせよと言うなら、重要農産物の二重価格制をはっきりと保障してやれば、何も日本の農民は米にしがみついておりませんよ。しかし、なぜ農民が米にしがみついておるかというと、曲がりなりにも米は生産費と所得を償ってくれるからですよ。そして消費者には政府責任をもって家庭生活に影響を起こさないような消費者米価をきめてくれるという制度があるから、農民がここにずっと集まってきた。米がたくさん出てきたって、何も農民の責任じゃないですよ。あなたはほんとうに農民に作付転換をしろとおっしゃるなら、重要農産物に対する二重価格制を保障してやれば農民は喜んでそのほうに行きますよ。あなたはそのことをはっきり言えますか。
  253. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 海外からの輸入、あるいはおっしゃるような怒濤のごとく海外から押し寄せてくる農産物、こういうものといかに対処していくかということは、これに対処していくために総合農政というものを推進をしてまいる考え方でございます。
  254. 林百郎

    ○林分科員 それじゃ、私結論を申し上げますが、結局きょうの質問ではっきりしたことは、あなたは結局いままで一九六〇年から一九六五、六年までの間に農村から流出した人口が約五百万前後といわれておりますが、このままでいって、この平均反収農家の生産費を補償するというようなことだけ――それも十分補償するかどうかわかりませんけれども、そうなれば約五割の米を生産している農家というものは米作から引き離されることになるわけですね。たたでさえ農村から人口が流出しているというのに一そう拍車をかけることになる。そして、そのことのために、農地法の改正もその裏で考えておられる。それと同時に、あなたはアメリカその他海外からの農産物の輸入に対処するように農業の体質を改善させると言うけれども政府考えているのは、結局ほんの一握りの農業である資本主義経営の大規模農業だけ残して、あとは農村から安い労働力を流出させる。そうして同時に、安い賃金に見合うような安い農産物を海外から入れてもかまわぬから、とにかく低賃金の労働者に食わせるための低農産物価格制度、農民自体の政策ではなくて、それが長谷川農政の特徴じゃないですか。  それからもう一つは、米というような国民生活に切実な影響を持つものを大きな資本に解放して、米をもうかる商品として、社会性のある、国民がどうしても自分の生活を維持しなければならない大事な米を、もうかる商品としてこれを大きな資本の手にゆだねていく。結局大きな資本家の利益にマッチするような農業政策を農民の大きな犠牲の中で行なおうとしているのではないですか。そういう中で兼業農家もますますふえていく。農家の収入は、もう農業収入よりも兼業収入のほうが半分にもなっている。そういう中で農民が安い労働賃金で、普通の労働者よりももっと安い、三割ぐらい安いような賃金で苦しめられている。これを一そう増強しようとしているのではないですか。長谷川農政を聞いてみても、そのような問題を解決する点は何一つ出ないじゃないですか。  これで私の質問を終わります。
  255. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 御承知のように、わが国は社会主義をもって農政をやっているのではございませんので、自由に選択をし、自由なる営業をさしております。したがって、自由なる農業の上に立って保護政策を十分に加えてまいっているのでございますから、見解の相違だと私は考えます。
  256. 湊徹郎

    ○湊主査代理 本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。     午後二時十五分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十五分開議
  257. 湊徹郎

    ○湊主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  植木主査が所用のためおくれますので、主査が出席されるまで、指名により私がその職務を行ないます。  昭和四十四年度一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管について質疑を続行いたします。山中吾郎君。
  258. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私は、まず北洋漁業のことについてお聞きしたいと思います。  最近のサケ・マスの――これは国際関係も含むわけでありますが、ここで言えないことは言えないでけっこうですから、それはあえて望みませんので、大体の量の増減についての状況を簡潔にひとつ長官のほうからお聞きしたいと思います。
  259. 森本修

    ○森本政府委員 ちょっと水域別にはあれでございますが、沿岸も含めました日本のサケ・マスの漁獲量を申し上げます。  四十年から便宜申し上げますと、四十年が十四万二千トンそれから四十一年が十二万三千トン、四十二年が十四万一千トン、御承知のように豊凶の差がありますから、こういう実績です。
  260. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 そのうちのサケ・マスはえなわ漁業の地区がありますが、その量の変遷はどうでしょうか。
  261. 森本修

    ○森本政府委員 はえなわ漁業につきましては、同じ年度で実績を見ますと四十年が一万七千二百トン、四十一年が約一万四千七百トン、四十二年が約一万六千九百トンというようなかっこうになっております。
  262. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 これは三陸沿岸の関係が非常に深いものですから、サケ・マスはえなわ漁業というのは、小規模であり、流し網漁業よりも漁家としても零細なものであって、非常に生活に影響するので、その量の変遷については非常に鋭敏であるわけです。それについてサケ・マスはえなわ漁業のほうはだんだんと量が少なくなっているということを聞いておるが、その点はどうでしょう。いまこれを見ますと、必ずしもそうでない数字ですが、間違いないでしょうか。
  263. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げた数字が四十二年までの実績でございます。四十三年のほうは、実は従来の日ソ漁業委員会等の話し合いで漁業委員会が始まりますまでは公表しないというふうに対外的になっておりますので、実績の数字を申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますが、大体の傾向としましては、昨年は非常に漁が悪かったという状況でございます。私どもは、先ほど申し上げましたここ三年くらいの数字と昨年の数字を見比べまして、むしろ感じとしましては、昨年は一つの異常な漁海況によってこういった魚のとれ方になったのではないかというふうに感じておるわけです。
  264. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 次に、サケ・マスはえなわ漁業と流し網漁業――いわゆるB地区ですね。その間のいわゆる境ですか、百六十度線、これは国際線でなくて、国内の行政において移動さすことのできるいわゆる国内措置による境界であるということ、それは間違いないでしょうか。
  265. 森本修

    ○森本政府委員 形式的な条約上の形から申し上げますと、御指摘のように条約に基づく規制という形にはなっておりません。しかし、例年御承知のように漁業委員会で北洋のサケ・マスについて各種の見地から討議をいたしますその際には、日本側の規制の状況としてはこういうところで線を引いておる、また、船は大体こういうふうな隻数、こういうふうな程度の船がそういう海域には出るのだというふうなことを向こうへ連絡をしております。したがいまして、向こうも十分そういう状況を承知しておりまして、向こうとの話し合いの過程ではやはり、条約上の規制ということではございませんけれども、ソ連側と話し合いをするときには、そういうことが前提になっていろいろな話し合いが行なわれておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  266. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 農林大臣、最後に農林大臣からお答えいただきたいと思いますので、いま水産庁長官質疑応答しておるのを聞いておいていただきたいと思います。  そうしますと、百六十度線は、国内措置ではあるけれども、事実上ソ連との交渉の中で状況報告をする習慣というのですか、慣行になっておるというのですか。義務づけられておるのじゃないのですね。
  267. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど言いましたように、別段条約上の義務にはなっておりませんけれども、日ソの間でいろいろな話し合いをいたします際に、両国でどういうふうな、たとえばここはB区域というわけですが、この中で一体日本側はどういう規制をしておるかということが一つの話し合いの前提になって、資源等との関係からいってそういうことでまず今回はよかろうとか、もう少し切り詰めなければいかぬとか、そういうふうな全体としては話し合いの前提になっておるということを申し上げておるわけでございます。
  268. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私、こういう点についての専門家でないので、明確にお聞きしないとわからないのでいま一度聞きますが、サケ・マスはえなわ漁業地区とB区域ですね、この区域全体含んでどれだけの量をわれわれはとっていいのだ、それ以上とってはいけないのだということは、国内措置の問題であって、ソ連との関係については別にサケ・マスはえなわ漁業地区を少し拡大するというふうなことについては、国際的には影響ないのでしょうか。全体の漁について日本政府責任を持って制限を越える漁獲をしなければいいのであって――A区域は別です。A区域は別にして、母船式のサケ・マスはえなわ漁業地区とB区域あたりはどの点に線を引くかというようなことは、これは国際的に影響はないのかと思うのですが、それはどうでしょう。あいまいで、お聞きしてもどうもわからない。
  269. 森本修

    ○森本政府委員 そこのところは形式的な話と、こういう問題が全体の日ソの漁業交渉の中にどういう影響を及ぼすかということと、ちょっと何といいますか、理念上違うようなところがございます。たとえば御指摘のように、B区域についてはその全体の漁獲量というのが規制をされておるわけです。A区域のほうはそれぞれの船団ごとの漁獲量というのが規制の対象になっておるといったようなことですが、B区域の全体の漁獲量が年々きめられる。また、それを実行していく際のいろいろな取り締まりとか、そういった問題がまたしたがって議論をされる。そういう際には、一体日本側でどういう境界線を設け、どういうふうな船を、たとえば船を大型化するようなことがあるかないか、あるいは区域を広めるといったようなことがあるかないかといったようなことについて、それぞれ相手国の事情を――ソ連の相手国といいますと日本側ですね、事情をよく聞いて向こう側としては判断をするというふうなことがしばしば行なわれておるわけです。したがいまして、先生のおっしゃっておりますそのもの自体は、国際的な約束にはなっておりませんけれども、そういう日本側のあり方いかんが、サケ・マス全体の交渉の場において非常に大きな関連を持っておるということを私が御説明申し上げておるわけです。
  270. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 大体、わかったようなわからないようなあれですが、少なくとも自主的に国内的にこれはきめる、国内措置の問題である。ただし、間接的に各年度ごとのソ連との漁獲交渉の中に、何か向こうのほうでは、日本の国内における一定の措置を素材として漁獲量をきめるときの参考にするので、不利なとか有利なとかという材料の一つになるおそれがある、こういう程度ですか。
  271. 森本修

    ○森本政府委員 おそれがあるといいますか、現実に向こう側が、こちらの日本側でどういうような先ほど言いました措置をとるかということを考えて、サケ・マスの全体の話し合いにおいて向こう側の判断を下す、交渉の態度をきめるのだということになるわけでありますから、参考にといいますか、交渉上かなり大きな要素を占めておるということは、私どもは言えると申しておるわけでございます。
  272. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 大臣にお聞きしたいと思いますが、国際的ないろいろのこともあるので慎重に答弁をされておられるようであります。私もそれについてはさらに追及したりなんかしないですが、まあ他に影響を与えるおそれはあるけれども、ここのはえなわ漁業の地区とサケ・マス流し網漁業のB区域との境界線というのは、農林大臣としては、漁業、漁家を守るためにこの線あたりがちょうどいままでの既得権の関係というふうなもので妥当である。しかし、一方に漁がだんだん少なくなれば、その実情において漁家を守っていくために百六十度線をある程度変更するとかなんかということは、やはり漁家の生活実態というものを考えて考慮すべき線であると思うのです。必要ならばある程度疑点のないように向こうに説明することも努力の中に入ると思いますが、こういう百六十度線というものは、とにかく国内措置でできるものであるので、もしサケ・マスはえなわ漁業、いわゆる小規模の漁家、サケ・マス流し網漁業よりも規模の小さい漁家のほうの漁獲が非常に少なくなってくるという事実があらわれてまいりますと、農林大臣としては、その実態に応じてこれを考慮するというのが当然であろうと思うのですが、その点を農林大臣にお聞きしておきたいと思います。
  273. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 漁区の決定というものは、いかに魚族の繁殖を容易ならしめるか、それが最大の目的であろうと考える。したがって毎年毎年魚族保護という、資源をいかに保護するかという上に立って漁獲量が決定されていく。お尋ねのその経緯でございますけれども、A区域にいたしましても、現在の状態においてこの推移をこのままいくか、それともより以上の豊漁に持っていくか。A区域、B区域を見たときに、ある程度必然的な豊漁が見込まれるという時代でも来るときになれば、それは当然考えられるときもあろうと思いますけれども、現在ソ連とわがほうとの交渉の接点というものは、何といっても資源をいかに保護するかというこの一つによって制限漁獲をやっておるわけでございますから、お尋ねのような点につきましては、今後においてその目的が達せられるときに初めてその御意見に沿うようなこともでき得るであろうと思いますけれども、現在のいろいろなお話を承った上においては、ただいますぐその地区を拡大していくということは困難ではないだろうかと考えられます。
  274. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 農林大臣には少し理解の足らないところがあると思います。乱獲というふうなおそれは少しもないのであって、われわれに与えられた漁獲量の範囲内において、いわゆる漁労のできる地区が三つに分かれて、サケ・マスはえなわ漁業地区と、サケ・マス流し網漁業地区、いわゆるB区域と母船式サケ・マス漁業地区があって、その中で国内措置として漁家の希望によって大中小と分けておる。その中で特に、もちろんわれわれの領海に近い、ソ連からずっと遠い地区のサケ・マスはえなわ漁業とB区域の境界は、その漁家の収穫に応じて、漁民の生活を守るために国内的にその線をある程度こちらに広くする、あるいは少なくするので、漁獲に関係ないのですよね。そこで農林大臣としては、その実態に即して漁家の魚獲の増減に応じて公平に、その生活を守ってやるためにこの線を画するのですから、その線において、一方の漁獲が数年にわたってずっと少なくなってくるというときには、配慮をして、そこのところを拡大してやるということで、乱獲には関係ないと思う。その理解の上で、ひとつ御答弁願いたい。
  275. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 そのようなことでございますと、現在の状況等を十分考慮いたしまして、慎重にこれらの問題を考慮してまいりたいと考えます。
  276. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 それでけっこうです。次に移ります。  国営競馬のことでお聞きしたいのですが、美濃部知事がギャンブル廃止という方針を明らかにしたために、この問題に、政治の姿勢といいますか、あるいは財政とモラルの問題として、国民が非常に関心を持ってきておるので、私は農林省管轄のいわゆる国営競馬についても、何かそれに対する政府考え方というものをお持ちになっておるのではないかと推察をしているのです。新聞を通じますと、佐藤総理大臣が、いま名前はちょっと忘れたけれども、作家の書簡をもらって、閣議でこういうものを検討したらどうかという発言があった。私は事実は聞いていない。新聞にそういう記事が載っているから、佐藤総理大臣が心を動かしたと思うのです。  それで、私は農林大臣の心境をお聞きしておきたいと思うのですが、国営競馬というものがいま行なわれておるのでありますけれども、これを国が行なっておるについての理由ですか、どういう根拠でこれを行なっておるのか、まずお聞きしたいと思います。
  277. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 要約して申し上げれば、第一には馬事の振興、また畜産振興であり、第二には国民に健全な娯楽を提供するということ、第三点は財政上の寄与をするという、この三つの大きな目的が立てられておると申し上げられると思うのでございます。
  278. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 いまあげられた理由の中で、財政ということだけは私もわかる。そのほかは全部、理屈はもう過去のものになっておるのだと思うのです。昔の軍国主義の場合は、実は軍馬の奨励という点から一つの理由があった。あるいは農耕馬の点についても理由があったが、いまどこへ行っても馬耕はもうないですね。全部牛と機械です。馬を使っておる農家はもうないのです。それから、健全なるスポーツというけれども、健全でしょうか。四つほどおっしゃったことの中で、財源を獲得するということだけは私の頭で理解したのですが、どうでしょうか。
  279. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 おっしゃるようなことも反面思われるのですが、私もいろいろ当たってみましたところが、世界的に良馬を育てるという競争みたいなものが現在ある。近いうちにも、日本でも、アジア各国から何カ国か集まりまして、日本の馬がどの程度までよくなっているかといいましょうか、こういうような点について、競走馬に対して、いろいろな観点から、わが国においても各国から集まって批評といいますか、評論といいますか、そんなようなことも行なわれるようでございます。ですから、いまおっしゃるような点は、馬の必要なときにはまさにそのとおりそうだったかもしれないけれども、現在では、国際的にどこの国がどういうようにりっぱな馬を育てるかという、これも一つの競争といいましょうか、そういうような視野に立っていることもあるようでございます。  娯楽といいますと、これが健全娯楽だとは言い切れないかもしれないけれども、いろいろギャンブルのある中に立って、国営でやっておる競馬というものも、わが国でやるばかりでなくて、各国でこれらもやっておるものですから、これらから見ていくと娯楽の中の一つには入っている、健全な娯楽でございますと言い切れるか言い切れないかは別として、その中の一つであるということだけは申し上げられると思うのでございます。
  280. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 大臣はだいぶ無理をして説明をされているように思うのですが、ヨーロッパは歴史的に狩猟民族ですからね。だから馬というものはもう生活の中に入っておるものですから、必ずしも農耕に馬を使わなくても、ヨーロッパの歴史、それは狩猟民族の発達の中にやはり競馬というものは何か生活と結びついておる。したがって、私はヨーロッパの競馬を研究したことはないのですが、どこかスポーツ化しておると思うのです。   〔湊主査代理退席、主査着席〕 日本民族は狩猟民族ではなくて農耕民族ですから、豊葦原の瑞穂の国ですから、したがって馬というものは生活に入っていないと思うのですよ。だから、国営競馬というものを明治以後に一応国が取り上げたのは、軍国主義の政策の一つとして軍馬の養成、それから農耕馬であって、これは二つとも完全にもうないのですから、ことにこういう軍備を放棄した国家としては、いろいろの伝統的に残っておる制度のうちで最も根拠のない――国営としてですよ。民間なり地方は別です。国として、制度としてこのまま残しておるもので最も根拠のない、どこを見ても根拠のないと思うのはこの国営競馬だと思うのですが、その点農林大臣はあまりこの問題について問題意識を持ったことがないようで、お答えがぴんとこないのですが、どうですか、私のこの分析のしかたは。
  281. 太田康二

    ○太田政府委員 先生が御指摘のように、確かに農耕馬が減っていることは事実でございます。現在われわれ馬の統計で見てまいりますと、昭和四十三年で全国で競走馬を入れまして、推定でございますが、二十一万五千八百頭ということに相なっております。(山中(吾)分科員「使っていないのです。飼っているだけです、殺すわけにいかないから」と呼ぶ)実は先生の御指摘でございますが、確かに農機具の導入に伴いまして、ちょうど肉牛が駆逐されたと同じような形で農耕用に使われるものが減ったことは事実でございますが、現に東北、北海道、特に九州におきましては、熊本、宮崎等におきましては農耕に使われております。そこでわれわれのほうといたしましても、十勝の種畜牧場でペルシロンとかブルトンの種牡馬、種牝馬を係養いたしまして、あるいは国有貸付の制度、あるいは牝馬につきましては生まれたものについては農家に譲渡するというような事業を実はやっておるわけでございます。確かにかつての時代に比べますと馬事振興というのは衰えたといえば衰えたわけでございますが、そういった特殊用途もなお地域によりましてはございますので、われわれもその振興につとめておるという実情でございます。
  282. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 やはりずいぶん無理をしてお答えになっておると思うのですが、競馬の場合は農耕馬に関係ないサラブレッドをやっておる。  それから私はマイナスの方面を非常に考えるのですが、この都市の住宅難のときに広大なる国有の競馬場がある。それを開放して住宅をつくってやれば、これは自民党の支持が倍ぐらいになると思うのですが、いずれにしても非常に矛盾があることが一つ。それから政治汚職というのが競馬に関係があって、あえて言いませんけれどもどうも金持ちと政治家が競馬でいろいろのことが関係がある。さらに競馬の場合の収益というのは、大体馬主というのは金持ちで賞金をばんと取るんですけれども、馬券を買うのはみな低所得者なんです。貧乏人だと思うのです。将来に希望をなくした、まじめな努力を抜きにした低所得者のふところから馬券の関係で金をとっておいて、その金がどこにいくかというと、馬主にいく。そして馬の経営企業団体にいく。それがまた、何というのですか、暴力団と結びつく団体もあり、その何分の一かだけが国の財源になっている。どう考えても存在理由というのがないので、これぐらい廃止するという姿勢を示すことは、財源が少し減っても国民の政治に対する信頼感というのは千倍もあるというので、私は少なくとも国営の競馬などは検討すべきではないか。農林大臣はこういう問題に少しく悩みを持つべきである。ところが、実際の廃止についてはいろいろ問題、利害関係その他があることはわかるのであるけれども、少なくともこれについて問題意識を持つことは、私は、農林大臣のもう現段階一つの課題ではないか。長谷川農林大臣はこういうことについて何も矛盾をお感じになっておられないのかどうか。あるいは問題としてやはり検討する、実施の方法とかあるいは財源指摘をどうするかということは非常に複雑になると思うのですが、それはお持ちであるべきではないかと思うのですけれども、いかがでしょう。
  283. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 お答えになるかならないか、なんでございますけれども、三十六年の公営競技調査会の答申の趣旨に即しましても、少なくとも現状以上にこれを奨励することのないようにというようなことで、これらについてはその回数、それから行なう日時、曜日等については十分この点を考慮に入れて、そして全く健全娯楽として取り入れられるような施策をいろいろ示しまして、このごろはだいぶそういう点は、好評という意味でもないでしょうけれども、反面だいぶよくなったというようなお話も承っておるところでございますが、いずれにしても、せっかくのお話でございますので、その点につきましても十分検討措置を命じたいと思います。
  284. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 時間がきたのでこれで終わりますけれども、いま大臣の言われた廃止ということは、理想としてはだれが見ても当然廃止すべきだと思うんだが、現実にそれがむずかしいこともわかるのです。健全娯楽ということをおっしゃったですね。それももう少し検討されて――いまは健全娯楽じゃ絶対ないと思います。その健全娯楽の方向についての施策をやはり具体的に御検討なさって、それがなければやはり再検討するということを、こういう機会であるのですから、ぜひお願いしておきたいと思うのです。地方の首長とかいうものは、戦災復旧その他の関係でやっておるんだけれども、五百万とか六百万程度の財源だけれども、廃止をするとそれだけ穴があく、廃止をしたいけれども、これはみんな言うのです。そういうことなんですから、やはり国のほうで一つのそういう姿勢をお示しになるということが、全体の市町村その他も考え直す契機になるので、そういうことを含んで何らかの機会において意思表明をされ、少なくとも健全娯楽に持っていくための施策を在識中に何か検討されて発表していただきたいと私は思うのです。  以上申し上げて終わります。
  285. 植木庚子郎

    植木主査 次は吉田之久君。
  286. 吉田之久

    吉田(之)分科員 初めに鶏卵の問題について御質問をいたしたいと思いますが、その前に今度農林省におかれましては全国鶏卵価格安定基金のほかに、全日本卵価安定基金というものの設立に踏み切られました。このことは全販連及び系統農協の系列に入っていなかった養鶏家が待望久しかった問題でございますだけに、その設立につきましては深く敬意を表したいと考えている次第でございます。  しかし、こうしてできました二本立ての安定基金というものにつきましては、今後もいろいろの問題が生じてくるのではないか。特におくれて出発した全日本卵価安定基金については、いろいろとこれからその安定のために運用をしていかれることと思いますけれども、なお養鶏家については若干の心配などが残っているようでございます。そこで、大臣といたしましては、今後この二つの安定基金の運用についてどのようにお考えになっているか、まず初めに承っておきたいと思います。
  287. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 養鶏行政の上に立ちまして、卵価、これの格差を補正しよう、したがってただいまの二つの基金を誕生をさせることに私どもは決意をしまして、全販連のほうからもいろいろな苦情もありました。しかし、手を尽くすだけのことは尽くしてみました。その要求もまた可とするものであり、また妥当性があるというようなことで手をかけてみましたけれども、何としてもこれを聞き入れてもらうことができ得ない。そこで二つのものを設立することに決意をしたわけでございますが、あとから生まれたほうに何か平等でない点があるかもしれませんけれども、これらは責任をもって同じように取り扱うようにいたしていきたいと考えております。
  288. 吉田之久

    吉田(之)分科員 そこで畜産局長にお聞きをいたしたいのですが、あとからできた安定基金のほうに対して見込まれておる出資額というのは大体どのくらいのものであるかということをお聞きいたします。
  289. 太田康二

    ○太田政府委員 事業団を通じまして新しい基金に対しましては出資をいたしたいと考えておるのでございますが、事業団の出資額あるいはその時期をいつにするかというような点につきましては、現在基金の設立準備中でございまして、各生産者団体等からの出資もにらみ合わせまして、いま検討をいたしておる段階でございます。  設立は四月を目途に現在準備を進めておるのでございます。
  290. 吉田之久

    吉田(之)分科員 いまわれわれが懸念いたしますのは、全国鶏卵価格安定基金、在来の分については地方公共団体が約二億円の出資をいたしております。この種のものがあとからできた安定基金に対しては期待できるものだろうかどうかという問題でございますが、いかがでございますか。
  291. 太田康二

    ○太田政府委員 たいへんむずかしい問題でございますが、発足当初直ちに県の出資を期待できるかという点につきましては疑問なきを得ないのでございますが、われわれといたしましては、将来この基金をできる限り育成をしてまいりまして、その際、県の出資等につきましても県にお願いするというような場面も出てこようかと思いますが、理想的に申し上げますれば、機運の成熟を待ちまして、できれば一本化というほうに持っていくべきではないか。そういう方向で、まあ多少時間はかかるかと思いますが、指導をしてまいりたい、かように考えております。
  292. 吉田之久

    吉田(之)分科員 あるべき姿としては、お説のとおり将来一本化されることが一番望ましいと思います。しかし、なかなかいろんな経緯がございまして、そう簡単に一本化できるかどうかという点ではいろいろ私も心配をいたします。それだけに、このあとからできた安定基金、その出資額、したがって借り入れ金等の操作におきましてもやや不十分な点がもしもあった場合には一体どうするか。もしもせっかくできた基金が、いろんな卵価の思わざる暴落によってパンクしてしまうというふうなことになってはたいへんだと思うのです。そういう点について大臣のほうで十分ひとつお考えいただいているかどうかという点をひとつ……。
  293. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 その点がございます場合には、私どものほうで十分努力を傾けまして、そういうことのないように計らってまいりたいと考えております。
  294. 吉田之久

    吉田(之)分科員 これは老姿心かもしれませんけれども、そういう緊急の場合には、特に農林大臣のほうで農林中央金庫等の金を借りて運転資金に回さなければならないというような時点において、十分なあっせんの労をとっていただきたいということをこの機会に特に申し上げておきたいと思います。  次に、日本の養鶏業のあり方について少しお尋ねいたしたいのでございます。  最近諸外国、特にオーストラリア等におきましては、エッグボードというような一種の半官半民の事業団をつくって、そして実に大量に、近代的に、しかも外国と比べても十分勝負でき得る体制をとって、いろいろとわが国にも影響を与えてきているというふうに仄聞いたしておりますけれども、こういう諸外国の例にならって、日本の場合もさらにひとつ大がかりな、かつ国際競争に十分にたえ得る対応措置を講ずべき時期じゃないかと考えるわけでありますけれども、いかがですか。
  295. 太田康二

    ○太田政府委員 養鶏は御承知のとおり、畜産の中では一作目といたしましては最も産出額の多い部門でございまして、われわれは養鶏振興に力を入れておるわけでございますが、その際の主眼といたしましては、一つはやはりできる限り経済形質の高い種鶏を育成するということでございまして、すでにこの点につきましては採卵鶏については国の岡崎牧場あるいは白河牧場を整備いたしておりますし、ブロイラー養鶏につきましては、兵庫の牧場を整備いたしまして、経済形質の高い種鶏の供給ということに当たっておるのでございます。いま一つは、競争力をつけるためにえさの対策でございますが、日本では残念ながら配合飼料の原料になりますところのトウモロコシ、マイロ等ができませんので、これをできる限り幅広く各国から入れまして、無税にして配合飼料原料として流すということをいたしております。  それから、なお、過剰が生じた場合には生産者団体の自主調整補完の制度を認めることにいたしておりまして、これによって将来赤字が出た場合には、その金利、倉敷を補助するという制度も畜産物価格安定法と事業団を通じて実施することにいたしております。  なお、先ほど来言われておりますような卵価安定基金というような制度をつくりまして、卵価低落時における価格補てんということを通じて、生産者に安定的な生産をしていただくという体制も整備いたしております。  それ以外に最も問題の鶏病対策でございますが、これにつきましては生ワクチン等の開発もいたしましたし、なお小さな養鶏家に対しましては、生ワクの補助もいたして自衛防除体制を整備して、病気による不測の損害を受けないような衛生行政も進めておる、こういうことで養鶏振興対策を講じておるという実情でございます。
  296. 吉田之久

    吉田(之)分科員 特にわれわれは諸外国の養鶏の実態とあわせ考えてどうも気になってならないのは、最近どんどん入ってきております液卵の問題であります。この液卵が、政府のいままでの各委員会における答弁では、その量としてはまだまだたいしたことはない。全体でわずかに一ないし二%の問題なんだからというふうにお答えになっているようでございますけれども、われわれの調べる範囲内では、この外国から輸入される液卵の伸びというものが非常に異常な傾向をたどっているのではないか。昭和四十一年におきましては二千六百トン、四十二年には八千七百トン、四十三年には実に二万トンをこえるというふうな、三倍ずつくらいに伸びてきておるということは、これはなかなかに警戒に値することだというふうに考えるわけです。これがやはり日本の卵価に対して非常なショックを与えているということはすでにいなめない事実だと思います。これに対して畜産局のほうではどのような措置を講じてこられたか、あるいは今後どのように対応していこうと考えておられるかという点についてお伺いいたします。
  297. 太田康二

    ○太田政府委員 先生御指摘のとおり、液卵の輸入が四十一年、四十二年、四十三年と非常にふえておることは、事実でございますが、四十三暦年度で見てまいりますと、国内生産量が約百三十九万トンでございまして、液卵の輸入量が二万トンでございますので、御指摘のとおり、数量的には微々たる数量になっておる。価格も、液卵の輸入が倍増いたしましたけれども、四十三年は平均価格で卸売り価格二百円という安定的価格も実現を見たと思っておるのでございまして、確かに数量はふえておりますが、養鶏産業に対しましてそれほど重大な影響を与えているとは考えられないのではないか。ただし、御承知のとおり鶏卵生産の季節変動によって価格が低落することがしばしばあるわけでございますから、そういった時期に無計画に液卵が輸入されるということになりますと、さらに市況の圧迫材料になるということもございますので、われわれといたしましては計画的に適正な数量の輸入が行なわれるように、実は輸入商社を指導をいたしておるのでございまして、いままでのところ、これには商社のほうも協力をいたしておる実情でございます。  そこで将来の問題でございますが、一たん自由化した品目でございますので、これを再び輸入を規制するということは国際貿易の大勢から見ましてきわめて問題であります。またわが国の鶏卵生産力から見まして、やはりできるだけ早く国内でも液卵の生産体制を整備することによりまして、国内市場の需要にこたえ得るような低廉な液卵生産を行なうことが可能と思われますので、実は四十四年度の予算におきましては鶏卵の出荷合理化モデル施設という事業を新しく起こしまして、生産地において鶏卵の格づけを行ない、消費者に直接これを手渡しできるような構想もやると同時に、その際規格外の鶏卵につきましてはこれを液卵に加工処理するという施設をあわせて備えた、いま申し上げた鶏卵出荷合理化モデル施設の設置についての助成もいたしまして、国内の液卵生産の普及をはかっていく、こういうことによって今後液卵対策を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  298. 吉田之久

    吉田(之)分科員 ただ私が懸念いたしますのは、現在一、二%であっても、この伸び方から見てまいりますと、何かよほどの強制的な押えをしない限り、これは直ちに六万トンにふえ、二十万トンにふえてくるのではないか。それからいま一つは、量としてはわずかなパーセンテージであっても、この液卵が入ってまいりますのは主要都市であるわけです。卵の価格というものはそういう主要都市でまず大体形成されて全国に及んでいっているだろうと思いますので、そういう点では心理的な影響は非常に大きいと思うのです。そういうことを考えますと、いままで計画的な輸入にするために、いろいろと政府としても努力をしてこられたようでありますし、その努力は効果をあらわしているようにおっしゃっておりますけれども、しかしわれわれとしては、そう十分な効果を発揮しているとはどうも考えられない。現にどんどんふえてきているではないか。政府は、かりに、ここ当分与えられたこの条件であるならば、昭和四十四年度においても二万トン以内で押え得るという確信をお持ちになっておられるかどうか、その辺のところを承っておきたいと思います。
  299. 太田康二

    ○太田政府委員 二万トンに押え得るかどうかという点につきましては、実は自由化品目でございますので、いまはっきりと押え切れますというお答えはできないのでございますが、短期的には先ほど申し上げましたように、卵価の低落時にこれが入ってくるということになりますと、市況の圧迫材料になりますので、輸入商社を指導いたしまして、そういう時期は避けるということをやってまいりたい。ただ世界的に見まして、それほど液卵の供給力が多いとも考えませんので、やはり基本的にはできる限り日本でもそういったものを供給できる体制をつくるということが必要であると思いますので、養鶏農家の構造改善を進めると同時に、液卵生産施設を設置いたしまして、国内でも低廉な液卵が供給できるという体制をすみやかに整備することが必要かというふうに考えております。
  300. 吉田之久

    吉田(之)分科員 せっかく国内で液卵をつくらせるためにいろいろと努力をしようと言っておられるやさきに、けちをつけたくないのですけれども、私はこの外国から入ってくる液卵というものは、どうも普通考えられるような奇形卵であるとかあるいは傷の卵であるとか、そういうものだけを集めて液卵をつくっているのではないのではないかというふうな気がしてならないのです。というのは、どんどんと量産がきいて、そして大量に日本に輸入されておるという事実、それからわれわれの研究資料によりますと、相当向こうの政府も輸出政策上思い切った保護をし、措置をしながら送り出してきているのではないかというふうな気がするわけでございます。日本の今日の状態で、これに対応する価格で液卵をつくることはちょっとむずかしいのではないかというふうな心配があるのですけれども、その辺どのような分析をなさっておりますか。
  301. 太田康二

    ○太田政府委員 確かに外国の場合には、一口に言いますと、ややダンピングに近い輸出をいたしておるというような実態もあるのでございますが、われわれといたしましては、先ほど申し上げましたような基本的な方向で卵の規格、格づけをいたしておりますので、先ほど申し上げましたような施設を設置いたしまして、規格外の鶏卵につきましてはこれを液卵に加工処理するというふうな形で、国内の産業を育成してまいるというものが基本で、これによって対抗してまいりたい、かように考えております。
  302. 吉田之久

    吉田(之)分科員 大臣にお伺いしますけれども、いまお聞きのとおり、少しダンピング的なにおいがするのです。いかに自由化された品目であっても、ダンピングされてまでどんどんこれを受け入れなければならないというふうなことではないと思うのです。しかも、その入ってくる液卵が、その新鮮度において、あるいは加工過程において、食品衛生上完全なものであるかどうか。あまりにも安くてあまりにも量が多いわけですから、われわれとしては何かその辺を疑わざるを得ないところが残ってまいりますが、こういう点について農林大臣としてはひとつさらにいろいろと調査検討されるべきではないかというふうに考えますが、いかがでございますか。
  303. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 液卵が毎年幾ぶんかずつふえていっておる、また需要も、それをはるかに越えた需要があるわけでございます。したがって、一応自由化をしてありますから、急に今度自由化の取り消しを行なうことは、国際的な関係もありまして困難でございます。しかし、国内の生産がこれがために圧迫されるようなことがあるとするならば、なお一そう業者の指導をして、そういうことのないような指導方針によって健全な取引が行なわれるような方法を講じてまいりたい。  また、御指摘のあったような衛生上不備な点があるとするならば、これこそ十分に検討を加えなければならない問題だと考えております。
  304. 吉田之久

    吉田(之)分科員 特に関税割り当て制度といいますか、タリフクォータというそうですけれども、そういう制度も場合によれば活用して、一定量以上はだんだんと制限をしていくというふうな措置もそろそろ考えられてもいいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  305. 太田康二

    ○太田政府委員 そういう先生の御提案のような意見もございましたので、いろいろ政府部内で検討いたしたのでございますが、先ほど来申し上げたようなことで、昨年におきましては、国内の鶏卵の価格も二百円というようなことで安定的に推移したというようなこともございまして、現段階においては関税割り当て制度を直ちに適用するということは、ちょっと困難な実情にあるのでございます。
  306. 吉田之久

    吉田(之)分科員 いま申し上げました問題につきましては、今後もさらにひとつ慎重に推移を見て善処していただきたい。  次に、森林資源に関する問題、並びに林道等に関する問題について御質問をいたしたいと思います。  ちょっと古い閣議決定ですが、昭和四十一年四月一日の森林資源に関する基本計画を読みますと、わが国の木材需要は過去十五年間に約二・六倍にふえておる。今後もますますふえていくであろう。したがって、逐年外材の輸入に待たなければならないということが書かれております。しかも、林道の行き渡っていない点が大きく指摘されております。したがって、政府としては、昭和九十年まで、これから五十年間の間に積極的に林道開発をしていこうではないかということ、まことにそのとおりでございます。しかしながら、特に林道の開発につきましては、あと五十年を待っているわけにはまいりませんので、できればここ二十五、六年の間に、現在の倍以上の新しい林道をつけなければならないのではないかということを策定しておられるようでございます。ところで、その林道のその後の推進状態はいかがでございますか。
  307. 片山正英

    ○片山政府委員 先生御指摘のとおり、四十一年の閣議決定に基づきまして、計画的な森林開発をいたそうということで、われわれは六十五年を目途に一応十八万キロの林道の開発を計画いたしております。それに基づきまして、毎年毎年予算化をいたしておるわけでございますが、過去におきましては、林道につきまして、正直に申しまして、満度の計画は実は実施はできておらなかったわけでございます。しかし今後の財政の許す限り、計画に基づいた開発をやってまいりたいというふうに考えて、今後とも努力してまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  308. 吉田之久

    吉田(之)分科員 特に現地で聞く話では、補助単価と現実単価とがだんだんとずいぶん違ってまいります。したがって、この林道の造成にあたっても、せっかく予算はつけていただいておりますけれども、地元における負担金がますますかさんでくる。なかなかついていけない。しかも現在日本の森林資源というものは、いわば蓄積している段階でありまして、なかなかに伐採している時期ではございませんから、この林道整備のために地元森林家たちが異常な支出を払うことはなかなか困難でございます。そこで、この林道開発のために負担した負担金を損金算入として租税特別措置法の適用を受けさせるようなことを考えてみるべきではないか。先ほども本会議総理が、国の特定の政策を進めるためにはそういう措置が必要なんだということを言われたばかりでございますけれども、一向木が切れないでもうからないときに、なおかつ林道に投資をしなければならない、こういう事態の中で、何か税制上の特別の考慮をすべきではないか。そのことによって、林道開発に伴って山村地域社会にも多くの住みよい条件を与えていくということになりはしないかというふうに考えるのですが、その点、長官大臣のお考えはいかがでありますか。
  309. 片山正英

    ○片山政府委員 林道の開設は、先生の御指摘のとおり国の補助金でやっておりますが、大幹線が六割五分、幹線が五割五分、その他が四割という形で実は補助をいたしておりますが、単価が逐次上がっているために、その差額の地元負担というものはなかなか困難だということは御指摘のとおりだと思います。そこでわれわれといたしましても、大きな開発をするために御承知のとおり森林開発公団というのを設立いたしまして、政府の金で先に道をつくって、そして受益があったときにそれを回収していくという方向で大きな道については開設する、こういう方途を実はやっておるわけでございます。  ただ、先生御指摘の林道開設に対する税金の緩和と申しますか、そういう問題は確かにあろうと思います。これにつきましては今後十分検討してまいりたいと思います。
  310. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 御承知のように外材輸入度というものが非常に多くなってまいりまして、国内生産により以上の力を入れなければならぬ、国内生産の飛躍的増大をはからなければならないときでございますので、いろいろな点、たとえば本年度につきましては予定したよりもそういう点についての予算は十分つけてあるつもりでございますが、お話の点にもなお一そう考慮を払いまして今後の施策を講じてまいりたいと考えております。
  311. 吉田之久

    吉田(之)分科員 五十八国会で森林施策計画制度というものが実施されることになっておりますけれども、その後、各大小の山林事業家がいろいろ計画をのぼせてきておるように聞いております。こういう一定の計画に基づいて今後山林事業を経営していく場合に、政府としては当然それに対しては特別の何らかの援助ないしは対応措置をとらなければならないというふうに考えております。特に零細経営者に対してはいろいろと造林補助金等において幾ぶんかメリットもあるようでございますけれども、やや規模の大きいほうでは、この制度では何らメリットが出てこないというふうなことをわれわれは聞いております。その点はいかがでございますか。
  312. 片山正英

    ○片山政府委員 税金の問題に関連してと思いますが、森林施業計画に基づきまして植伐あるいは造林をいたします場合に、所得税につきましては二割控除するという制度でございまして、これは大所有者、小所有者にかかわらず、全部いたすことになっておるわけであります。
  313. 吉田之久

    吉田(之)分科員 五百ヘクタール以上の造林融資については、現在五分の利子をとっておるようですけれども、これを少しでも下げるということはお考えになっておりませんか。
  314. 片山正英

    ○片山政府委員 造林の融資の問題だと思いますが、現在の制度では、先生御指摘のとおり、たしか小所有者に対して三分五厘、五百ヘクタール以上の大所有者に対しては五分というところでございます。そこで、われわれの施業計画を推進する上に何らかその金利の問題で緩和ができないだろうかということも実は内々検討はいたしておるのでございます。森林計画制度ができました際に、附帯決議等もございまして、目下検討している段階でございます。
  315. 吉田之久

    吉田(之)分科員 時間がなくなってまいりましたので、長官に聞きたい問題もいろいろございますけれども一応打ち切りまして、最後に花卉園芸についてお伺いいたしたいと思います。  最近、市民生活の様態がだんだん変わってまいりまして、今後ますます花卉園芸というものが大きなウエートを占めてくるのではないかというふうに考えております。現に関西方面では近郊農業として相当異常な伸び方を示しております。これに対しては、農林省としてのいろいろな制度上の保護がまだほとんどなされていないと存じますけれども、花卉園芸の今後について政府はどのようにお考えになっておりますか。
  316. 小暮光美

    ○小暮政府委員 御指摘のように花の生産は近年非常な伸び率でふえております。昭和三十五年を一〇〇としますと、四十二年で三一七ということですから、伸び率からいうとたいへんなものでございます。実は統計もまだ不備でございますけれども、私どもの把握するところでは年産二百三十億程度、ちょうどイチゴが一つでたしか約二百八十億かと思いますが、あれだけのたくさんの花を集めて二百三十億、今後も農家の現金収入の道としてはまことに適切なものと思いますから、次第に伸ばしていきたいとは思いますけれども、具体的な組織立った施策を講じます前に、まず花に関する統計等をできるだけ正確にいたしまして、生産者の組織的なあり方といったようなものも逐次固めまして、今後伸びていくのに照応して施策を充実するようにいたしたいと思っております。現に昨年から蚕糸園芸局が花卉懇談会というようなものを設けまして、関係者の参集を求めて寄り寄り懇談的に協議を進めておるような状況でございます。
  317. 吉田之久

    吉田(之)分科員 特にこれからの産業だと思いますので、懇談会も発足したようでございますから、いろいろと研究対策を急いでもらいたい。特にこういう花類は気候の変化に非常に大きな影響を受けます。暖冬異変によって全然球根代も出なかったというふうな問題も各地で出ております。そういう点で組織の近代化、それから研究の国家的な推進、あるいは流通機構の改革等、いろいろとなされなければならない問題が多々あるだろうと思います。特にその点を大臣に強く要望いたしておきたいと思います。いかがでございますか。
  318. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ただいま局長お話し申し上げましたように、一応の基礎づくりといいましょうか、懇談会ができました。したがって現在のように非常に生産地がばらばらでございまして、それがまた非常に過小なものですから、どこからどこまで手を伸ばすかというような点にもいろいろな疑点があるわけでございます。そういうような点も、懇談会によってだんだんと基礎づけられたものの上に立ったその施策を講じてまいりたい、こう考えております。
  319. 植木庚子郎

    植木主査 次は武藤山治君。
  320. 武藤山治

    武藤(山)分科員 まず農林大臣に心境やら、決意やら、名農林大臣ぶりをひとつお聞かせいただきたいと思うのでありますが、隣の町の親しい代議士でありますから、あまりきつい話もしにくいのでありますが、最近農林大臣政府買い入れ米の量も七百五十万トンであとは買わぬ、米の買い入れ制限、それから転換作物をつくれ、二万円くれるぞ、しかし価格の不安があり農民はなかなか飛びつけない。また自主流通米だというが、一体農協は無制限に買ってくれるのかという不安、小作料の統制を撤廃をして零細農民が苦しめられる、泣かされる傾向、また小作契約の解除も容易にできるように法改正をしようといまたくらんでおる。予約米減税もたいへんいま苦労している最中、こういう現象を農民が見て、一体これからの日本の農業はどうなるんだろうか、長谷川農林大臣はわしら農民のことをどういう方向に連れていこうとしているのだろうか、たいへんな不安を持っているのであります。戦後最大の悲劇の農林大臣になるか、それともあなたの指導によって農民が希望と期待を持ちながら農業にいそしめるか、まさに分かれ道にかかっている重大な時期だと思うのであります。いま私が指摘した五つ、六つの問題点を頭の中にちょっと浮かべていただいて、こういう農民の不安に対して、大きな見地から農林大臣はどんな心境でいられるか、まず冒頭にあなたの心境を聞きたいのであります。
  321. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 おことばのように、最近のわが国の農業をめぐる諸情勢と変化は非常に著しいものがございまして、米の問題をはじめ種々な問題が生じている。したがって、今後経済が相当成長していくと思われるのに、その他産業の従事者の所得の向上に対応した農村所得、農民生活水準をいかに引き上げていくかという、こういうような諸問題が十分この中に含まれておると思うのでございます。しかし、御指摘があったように、七百五十万トン政府が予定したからそれ以上は買わないのだということは申し上げておらないのでありまして、私のほうは、お米はつくったものは、売ってくれるというならば無制限買い上げをいたします。
  322. 武藤山治

    武藤(山)分科員 たいへん重大な話でありますが、予算には七百五十万トン買い入れしか計上してないけれども、農民が売ろうといえば無制限に政府は買ってくれるのですか。
  323. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 そのとおりでございます。
  324. 武藤山治

    武藤(山)分科員 その場合の予算措置は、しからばどうするのでございますか。
  325. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 まず買い入れをいたしますのには、買い入れのための歳出権を持つ必要がございますが、これにつきましては、千五百億の予備費と、それから予算総則十一条三項の弾力条項をお願いいたしておりますので、買い入れの歳出権については不自由はいたさないのでございます。
  326. 武藤山治

    武藤(山)分科員 千五百億円の予備費というのは、おそらく公務員の賃金改定も含めた予備費、その中で米の買い入れに流用できそうな、予備費から支出できそうな額というのは、一体幾らくらい予想しているのですか。
  327. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私が申し上げました千五百億というのは、食糧管理勘定の中の国内米勘定の予備費でございます。
  328. 武藤山治

    武藤(山)分科員 それならば、なぜ七百五十万トンという予算計上をする数字を無制限に買い入れるならば、初めから七百五十万トンときめなくてもよさそうなものですが、その七百五十万トンを買い入れるのだときめた根拠は何ですか。
  329. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 食糧庁の会計も買い入れ、売り渡しの事業を行ないますと同時に、損益に関する予算上の見通しを明確にする必要がございますので、したがって毎年度買い入れ予定数量を予定し、予定価格を予定をし、また売り払いについても売り払い価格と売り払い数量を予定をいたしまして、その間の損益の計算をすることにいたしておるのでございます。  そこで七百五十万トンを予定いたしましたのは、四十四年度の平年反収というものが計測上出てくるのでございますが、それに四十三年度の作付面積が変動がないであろうという前提を置きまして、そうして計算いたしますと、生産量が千三百六十五万トンというふうに見通されるのでございますが、その中から農家が販売に回す率、これを四十三年まだ終わっておりませんので、四十二年の売り渡し比率というものを用いて計算いたしますと、九百二十万トンというものが販売に回されるという計算が出ますので、そのうち自主流通米の流通量を百七十万トンと見込みまして、七百五十万トンが政府の買い入れに回るであろうという数量を前提にした予算を組んだのでございます。
  330. 武藤山治

    武藤(山)分科員 そうすると、自主流通米の百七十万トンを農協が買った場合、農協はそれをまた国に売ることが認められるわけですね。農林省へまた売り渡ししていいのですね、自主流通米を……。
  331. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 自主流通米は農協等の指定集荷業者に対して生産者が販売の委託をするという構想でございますので、農協自身が農民から買い取るという方式はとらないつもりでございます。委託されたものを政府に登録しております卸売り業者並びに農林大臣が指定します特殊の実需者に対して売ってよろしいということにしようという考えでございます。
  332. 武藤山治

    武藤(山)分科員 一千五百億円の予備費で、もし全額政府が米を買い入れた場合何トンくらいに該当するのですか。
  333. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 生産者米価が据え置きであるという前提でございますから、トン当たりの買い入れ単価は平均十三万八千円ばかりになるわけでございます。でございますので、約百万トンを予備費だけで買い入れすることができるということに相なります。
  334. 武藤山治

    武藤(山)政府委員 百万トンだけ予備費で増加買い入れができるということになると、八百五十万トンですね。自主流通米のほうへ農民が売りたがらずに政府に売ろうと思えば、九百五十万トン事前売り渡し申し込みがあった場合、その場合全量政府は買いますね。
  335. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 この段階でトン数を云々ということはちょっと問題かと思いますけれども、農家があるいは農協が自主流通米というものはこれだけしかやれない、よってあと政府で買ってくれという申し出がありますれば無制限に買い入れをするというつもりであります。
  336. 武藤山治

    武藤(山)分科員 わかりました。そうなれば総合予算主義というのは米の問題からくずれていくという可能性もある、こういうことになるわけですね、いまの論理を進めていくと。農民の事前売り渡しがとても七百五十万トンでは済まぬ、とにかく自主流通米を出すよりは国へ売ったほうがいいということで、農民の意思でいいわけでしょう。農民の意思できまるわけでしょうからね、どっちに売るかは。自主流通米になるか、政府に売るかというのは。そうなれば農民の心理からいって、国へ売るほうがより確実であり、より安全であるということで、国のほうに売りますね。おそらくこれが七百五十万トン、八百五十万トンでは済まぬ、豊作の場合。総合予算主義というのはくずれていくと思うのです。これはここであなたが大蔵省との関係でくずれますということは言えぬでしょうから、そこはわかります。  次に、きょうの新聞を見ると、芳賀さんの質問農林大臣は、四月ごろ米価審議会を開いて、そして生産者米価は据え置きの方針で何とかして審議会へかけたい、こういう答弁をしたと報じておりますが、どういう事情の変化があっても大臣の決意は生産者米価は上げないのだ、こういう方針ですか。
  337. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 それは少し話が違うので、私の申し上げているのは、政府は生産者米価、消費者米価は据え置くことになりました、しかし、米価の決定は米価審議会にはかった上でなければ、その答申を得て初めて米価というものは決定されるのであって、その決定は私のほうは申し上げるわけにはまいらない、まだきまらないのですから、そういうようなお話を申し上げたわけであります。
  338. 武藤山治

    武藤(山)分科員 そうすると農林大臣としては、米価審議会の答申は完全に尊重する、こういう意味ですね、いまの答弁の中身は。
  339. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 私のほうは米価審議会にはかった上で、その答申は十分尊重する意思でございます。
  340. 武藤山治

    武藤(山)分科員 食糧庁長官、自主流通米の値段が、商品取引所で取引されてきめられるようなことは予想されますか。
  341. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 自主流通米は確かに政府を通さない米の流通ではございますが、食糧管理の立場に立って行政的な規制を加えて流通の秩序を保持したいという構想でございますので、商品取引所等の介入する余地もございませんし、現段階において商品取引所で取引をする、あるいは取引価格を定めるというようなことは考えておりません。
  342. 武藤山治

    武藤(山)分科員 もし商社からそういう希望の申し入れがあっても、食糧庁としては商品取引所で取引値をきめるというようなことは認めないという方針と心得てよろしゅうございますか。
  343. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現段階ではそういうことを認めるということは毛頭ございません。
  344. 武藤山治

    武藤(山)分科員 次に農林大臣、米作を他の作物に転換した場合には、二万円ですか、奨励金を出す、補助金を出す、これはいつまでにどこへ申し出たらその補助金をくれるのですか。
  345. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 稲作転換の問題につきましては、現在農林省内部の意向がほぼ固まりかけまして、これから県庁あるいは地方農政局、市町村等々の当局と具体的な実施方針の相談に入るわけでございます。したがいまして、作付転換関係の予算は反当二万円の転作奨励金一万ヘクタール分と、さらに牧草、果樹、野菜等々に転換するための特別事業費約九億と、県あるいは団体等の指導費一億と、三本立てになっておるわけでございますが、転換奨励金の反当二万円分につきましては、できるだけ集団的に作物転換が行なわれる場合に交付するということで、これから地方の各団体と相談をするつもりでございます。いずれにしろ、ことし稲作をやめて転作したという事実に照らして反当二万円の奨励金を交付する。しかし対象としては個々ばらばらに転換をすることでなくて、ある程度集団的にまとまった事業についてこれを交付する、そういうつもりでおります。ただ、何月何日までにどこに申告しろというような詳細なことはこれからでございます。
  346. 武藤山治

    武藤(山)分科員 何月何日までに申告しろということは、あなたのいまの答弁では必要ないわけですな。実績に照らしてということだから、実際にことしつくらなかったという事実を確認しなければ出ないわけでしょう、補助金は。
  347. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 ことしつくらなかったという事実と、他の転換作物をつくったという事実と、両方の確認の上に立って反当二万円の奨励金を交付する、そういうつもりでおります。
  348. 武藤山治

    武藤(山)分科員 その反当二万円を支給された農家は、何年間は米以外のものをつくる義務があるのですか。
  349. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私ども、本年度反当二万円の奨励金を出しまして、それによって農家は法律上の義務あるいはその他の義務で、稲作を今後永久にあるいは何年間かつくらないという、そういう規制はするつもりはございません。ただそのかわりに、私がある程度まで集団的に転換をはかるものを対象として奨励金を交付しますというふうに申し上げましたのも、個々ばらばらにやりますと、転換した翌年に稲にまたかわるという可能性も大いにあるわけでございますから、できるだけ転換した作物が安定することを願って、そういう集団的な事業に対して奨励金を交付しようということでございます。
  350. 武藤山治

    武藤(山)分科員 その集団的とは、一体集団的の規模、範囲ですね、制限。何町歩、何ヘクタール以上とか、どの程度以上ならば該当する、個々のものはだめ、三軒ぐらいで五反歩や一町歩ではだめという、何かだめな基準とだいじょうぶな基準は、もうすでにできておるのでしょう。
  351. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 まだこれから県、団体等々と相談をする段階でございますから、決定はいたしておりませんけれども、特別事業として機械あるいは施設等の補助対象にする分は、ものによって違いますが、大体十ないし三十ヘクタール程度。それから特別事業の対象にはなりませんけれども、土地改良事業とか、あるいは制度資金の融資を受けて家畜、牛等を集団的に導入するような場合は飼料作物が四、五町程度という程度に考えておるわけでございます。
  352. 武藤山治

    武藤(山)分科員 その転換作物は何がいいぞという、期待すべき作物というのは、一体何か。農林省はいまの日本のたいへんりっぱな需給見通し、机上の見通しと私は思うのでありますが、需給見通しも発表された。ああいう中から見て農林省は、転換するならばこれとこれとこれがいいぞ、それは価格保障もめんどう見られるぞ、所得もやや米の所得に見合うだけの所得はあるぞ、そういうふうに目される作物は何ぞや。
  353. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 現在までも、相当ある程度水田が果樹に変わり、野菜に変わり、あるいは田畑輪換の形で牧草に変わっておるわけでございます。今年度の一万ヘクタールの転換につきましては大部分は田畑輪換あるいは牧草の栽培ということを一つのねらいとしておるわけでございますが、それ以外に、たとえば北海道でありますれば、ある程度ビート、南西諸島でありますれば砂糖キビというような特殊な作物がございますが、そのほか、都府県の問題といたしましては野菜とか果樹とかいうものに、これはそう大きな面積を期待いたしておるわけではございませんが、そういうものが転換の対象になるであろうというふうに想定いたしております。
  354. 武藤山治

    武藤(山)分科員 しかし、農民の立場から言わせるならば、野菜をつくっても、また畜産に転換しても、とてもそれはいまの米の所得までは行けぬ。具体的にこういう実情ですね。それは、官房長は抽象的に農業というものを見ているから、個々の農村を歩いてみるとそんななまやさしいものではないんですね、転換という場合の農民の心理は。これは農林省もすでに御存じかもしれませんが、私の地元の足利というところで農林省がたま菜の生産地に指定した。初めはいいぞというので、一斉につくったところが、とても、トラックにつけて神田市場や東京の市場に持っていって売ってみたら、売り上げ代金より運賃のほうが高いという実情ですね。ことしつくったものはわずか五反歩。十町歩からの割り当てをしたところに五反歩つくっていない。それで、農林省のこういう指導は全くいかさまだ、でたらめだというので、ぼくらも陳情を受けて、取り消してと言っているわけですね。価格保障がないわけですから。ほかのものに転換するといっても、先ほど農林大臣は、他産業に従事する人たちの収入に見合えるような日本農業にするのだという展望だと言うんですね。そんな展望は一つも出てこない実情です、いまの農村を歩いてみても。農林省は、ここで農業の指導理念は何かということを国民の前に明らかにすべきだと思うのです。  一体、資本自由化や開放経済体制の中で日本の農業を資本主義的な自由競争の範疇に入れて、そういう方向で日本農業をやっていけというのか、それとも生産計画、作付計画、計画出荷、そういう形である程度社会主義的な計画生産というものに農民を指導していくのか。それをやはりこの辺で明示してもらわないと、農民は非常に迷うと思うのです。これはとにかく農林大臣の範囲なんですよ。そういう大きな指導理念については長谷川農相の指導理念いかんと聞きたいのですが、いかがですか。
  355. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 私も、まだ就任して日ならずで、なかなか把握することができませんけれども、現今のいろいろの作物の実態、たとえば本年の米の実情、ミカンの実態、こういうようなものの判断の上に立ちまして、さらにまた諸外国からの自由貿易というような点、この怒濤のごとく押し寄せてくる波をいかに切り抜けるべきかというような点については、現在のようなやり方であってはなかなか御指摘のような点を満足させるわけにはまいらないであろう。したがって、もう少し一歩進み出て、そうして日本全体の上に立った生産計画というものをやはり持たなければならぬだろう。それにはいまのような、米がいいといえば北海道から九州の果てまでが米作地帯に変わっていくというようなあり方であってはならないじゃないか。そこで総合農政というものが考えられたのだとも考えられますけれども、やはり何といっても地域的な面を考え、主産地主義というようなものに変えて、そうして主産地指定を受けたところに至っては、少なくとも国がこれに思い切った抜本的な施策を講じてやるというような点、またその指定された地区内においても、指定地区ではあるけれども自分はこうやりたいんだという方があるとするならば、今日の憲法下これはやめさせろというわけにはまいりません。そういうような大計画をひとつこの際立てて、日本の主産地の青写真を新しく練り直して、そうして生産に当たっていくことができるのならば、初めて需給調整というものはとれていくであろうし、さらにまた外国との競合にあってもこれにうちかつことができ得るだろう、こういうふうに自分は考えたのでございますけれども、現在すぐそれを行なうといっても、これはなかなかたいへんな問題だと思います。したがって、今後は農業に従事しておる現地の方々の御意見と、また党と言おうか、これこそ与党、野党を問わず、日本の農業の将来をどうするんだという展望に立った以上は、お互いの意見を十分尊重し合ってその施策に向かっていかないと、今後の日本の農政というものは容易ならない事態に追い込まれるだろうと考えられます。したがって、そういう理想でございまして、いますぐそれを行なうというわけではないのですけれども、そんなような方法をとっていかなければとうてい将来安定した農業を育てていくことはでき得ないんではないだろうかというように考えておるわけでございます。
  356. 武藤山治

    武藤(山)分科員 私は昭和三十六年からほとんど毎年のように農林大臣に言っておるが低温冷蔵設備、倉庫あるいは冷蔵庫、そういうものを国営でもっともっとどんどんつくらなければいかぬじゃないか。日本は政府でつくったのは一つもないでしょう。政策で完全に野菜なりリンゴなりミカンなり、そういうものの需給がはかれるような大低温倉庫というのはないですよ。いま私の前任者が鶏の話をしましたけれども、これは外国の養鶏を見ても果樹を見ても、政府責任でそれはばかでかい低温冷蔵庫が、ブルガリアに行ってみても、ハンガリーに行ってみても、できている。それはものすごい設備ですよ。だから需要供給によって、市場に持っていったら二本指でもって野菜の値が下ってしまって農民の所得が保障されない、そういう豊作貧乏が起こらないように調整が実によくできている。日本はそれが全然ないですよ。赤城農林大臣のときにも倉石さんのときにも、前向きに検討しますという答弁は各大臣するんだけれども、すぐコストのことを計算して、利用する農民に料金を負担させると物が上がるからむずかしいとかなんとか言う。やはりそんなものは農産物の価格を安定させるために国の費用で無料で置くくらいな施策をとらぬと、他のものに転換しろといったって、他のものの価格、需給関係、こういうものを考えたら農民は飛びつけないじゃないですか。本気でこの辺で国立の低温冷蔵倉庫、こういうものをがっちりつくるという方針くらいそろそろつくっていいんじゃないですか。どうですか官庁長、あなたはいままでそういう方面をやってきたんでしょうから……。
  357. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 果樹園芸作物等につきまして国立の大冷蔵庫あるいは低温倉庫というのはございませんけれども、融資あるいは補助金で相当地元でつくられておるわけでございます。
  358. 武藤山治

    武藤(山)分科員 それはあるよ。あるけれども、全部コストにはね返るからだめなんだ。
  359. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 それから先ほどのお話で、村を歩かれて稲から何に変えるか、転換の動きはないではないかというお話でございますけれども、それは地方によってきわめてさまざまな動きをいたしておりまして、全然動かないところもありますし、大いに動こうとしておるところもあるわけであります。これから、私どももできるだけ、強制でゴリ押しするつもりはございませんけれども、下の動きを育てるというつもりでやっていくつもりでございます。
  360. 武藤山治

    武藤(山)分科員 では、一万ヘクタールは、大体地帯別に、大ざっぱにいうと、農林省の指導方針は、どの地方をまずことしの一万ヘクタールの転換地帯にしようと考えておりますか。全くそれはまだ白紙ですか。
  361. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 ことしは一万ヘクタールで、いわば実験的な段階でございますから、地方によってそう大きな差をつけるつもりはございません。多少の差はございますが、西のほう、たとえば東海、近畿、中国、四国等に多少はウエートがかかり、北陸、東北等に多少はウエートが減るという程度で、現在試算をいたしておる段階でございます。
  362. 武藤山治

    武藤(山)分科員 それで、米の総生産量がどの程度までいくまでこういう施策を続けようとするのですか。何年くらい……。
  363. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 米の問題で一万ヘクタールで大体四万トン、せいぜい四万五千トンでございますから、これが米の需給に直接響くということは、私はそれぼど期待はいたしておりません。ただ、現在の米の需給は、古米がたくさんたまっているということではございませんで、むしろ今後平年作においても相当な需給のアンバランスがあるということが、私ども、大問題として考えておるわけでございますから、ことしの転換の動きを見て将来の問題を慎重に検討いたしたいというふうに考えております。
  364. 武藤山治

    武藤(山)分科員 最後に長谷川農林大臣、米価審議会の決定を待って国の方針は米価は上げない、生産者米価、消費者米価は据え置きだ、そういう方針はやはり長期的展望に立って本年の決断を下したものだと思いますが、何年間くらい生産者米価、消費者米価は据え置くという腹づもりですか。
  365. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 どうもたいへんな問題ですが、私の申し上げたのは、本年度の問題でありまして、本年の需給の上に立ったことを申し上げたので、どうも、何年先までもその価格を維持できるかということは、ちょっと申しわけないけれどもお答えできかねます。
  366. 武藤山治

    武藤(山)分科員 それは、日経連や経済団体の諸君の文章を見ると、日本の米は高い、外国の米より高いから、何とかこれを三割程度安くなるようにしなければいかぬ、こういう提言が財界から行なわれている。そうすると、とにかく三年なり五年なり据え置きをしておけば、他の物価はどんどん上がり、そうなってくれば、国際価格との差というものが相対的に縮んだ結果になる、米自身じっとしておれば。そこで、三年とか五年とか長期的に農民いじめが行なわれるのじゃないかという不安が農民にある。そういう財界の、米の値を三割下げさせるのだという、そういう精神から、そういう論理から生産者米価を上げないといっているのではないのですね、それだけはっきり聞いておきましょう。
  367. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 武藤さんは大蔵のほうに専門だから、いろいろな危惧の念を持つでしょうけれども、再生産を確保するということもございますので、いかに財界が何と言おうとも諸物価が高騰してきて、何年も何年も毎年上昇する、当然必然的なもので、その中に立って米価だけそのままに置くという姿は、これを通すわけには、いかに政府としてもいかないだろうと考えられます。
  368. 武藤山治

    武藤(山)分科員 時間がありませんから、通告したことに触れずに横道で終わりましたけれども大臣、ひとつ大いに農民の立場に立って、やはり所得を確保してやるという思いやりのある農政を推進をしていただきたいと強く期待をして、私の質問を終わりたいと思います。
  369. 植木庚子郎

    植木主査 次は村山喜一君。
  370. 村山喜一

    村山(喜)分科員 私は十七日の日に一般質問で長谷川農林大臣に問題を投げかけたのでございますが、私が鹿児島、宮崎のしょうちゅうのことについて言ったら新聞の囲みに書かれてしまいまして、おまけに農林大臣がそれを答弁をしないものだからなお話題になりました。そこで当時のことを振り返りながら、ひとつきょうはりっぱな答弁農林大臣にしていただきたいと思うのです。  というのは、このしょうちゅうの問題でございますが、御承知のようにしょうちゅうは、七十年このかたサツマイモと外砕米を利用いたしまして、そうして製造工程の上からも硬質米である外砕米をもとにした製造施設に相なっておるのであります。したがって、そのこうじの機械なりあるいは網なんかの設備にいたしましても、軟質米である日本の米はこれに合わないようなかっこうに施設、設備がなっておる。その中で、最近不況カルテルを結ばなければならないくらいでございますが、しかし、なんといっても鹿児島、宮崎においては、これは庶民、大衆の愛飲する酒でございます。したがいまして、たしか税金のほうもこれはわりに安いのですが、それでも年間十六億余り納税をしながら飲んでおるわけです。これは百姓が主として飲んでおるわけです。  そこで、一体こういうような国内の原料でこれを充てるかどうか、あとでまたお聞きしたいと思いますが、これを準内地米である台湾の蓬莱米とかあるいは中国の小站米ですか、こういうようなもので充てるということを聞くのであります。そのあとは、今度はもう米がこんなに余るようになったんだから外国から入れないんだ、こういうようなお話を聞きますと、昭和四十五年度からは外国からそういうようなものはモチ米以外には入れないという計画だと聞いておる。そうなってくると、計算をしてみますと、準内地米を使いましても大体米製で一升について四十三円、イモ製は十八円くらい上がる。それから今度四十五年度から先になると百三十五円くらい上がる。この前三十円値上げをしまして三百九十円のものが四百二十円になっておりますから、こんなに上がるのがみすみすもう見えておるわけです。そこで私は、やはり農林行政というのは百姓のことも考えていただく。米のことはもちろんそうなんですが、それと同時に百姓が飲むしょうちゅうとか、そういうようなものもやはり総合的に考えてもらわなければいかぬし、また物価政策の上からも考えてもらわなければいかぬと思うのです。  それでいまたしか外砕米が年間十万トンくらい輸入されておるのですが、それの大部分はみそ用でございます。そのみそもまた値上げをしなければならぬということになる。私はそういうような工業用というのか、加工用というのか、そういうような原料については、これはやはり酒については好適米を使うように、しょうちゅうの最もいい材料というのは外砕米なんですから、そういうようなものは工業用原料として、食品の原料として輸入をしても差しつかえないものじゃないか、そういうように考えるのですが、これについて農林大臣はどういうようにお考えになっておるのか、お答えをいただきたいと思います。
  371. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御案内のような内地米の需給事情でございますので、四十四米穀年度からは、モチ米は別としまして、ウルチ米は外砕米を含めまして一切輸入をしないということに考えておるのでございます。しょうちゅう用は大体年間精米で一万トン程度の需要でございます。みそは六万七千トン程度の需要があるわけでございます。私どももしょうちゅうのような企業としても、中小というよりはむしろ小企業に類する企業であるというようなこと、またしょうちゅうの持っております商品の特質、そういうものを考えまして、できるだけ安い原料を振り向けるようにしてまいりたい。現在いわゆる準内地米というのを昨年の十月末の繰り越しで約三十万トン食糧庁は持っておるのでございます。この三十万トンの準内地米は四十四米穀年度、四十五米穀年度、二年間に処理をしたいというふうに考えておりまして、外砕米の価格に比べますと、確かに準内地米の中で私はしょうちゅうは徳用米向けの準内地米でけっこうだろうと思うのでございますが、それにしても現在の売り渡し価格はかなりの値上がりになるのでございます。これは私どもそういう大衆的な食品といいますか、そういうものの原材料であるという点に着目をいたしまして、できるだけ企業の負担あるいはしょうちゅうの価格の値上げ、そういうようなものを避けるように、ひとつ財政当局とも十分協議をいたしまして、努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  372. 村山喜一

    村山(喜)分科員 大蔵省の間税部長、見えておりますか。――私がさっきたしか十六億くらい間接税として、酒税として入っているというふうに申し上げたのですが、そういうような立場から、しょうちゅうというのはそんなに合理化もできませんが、いままでのそういうような施設が外砕米を使っている。準内地米というのですか、そういうようなものをこれに充てたときに、はたして中小企業として成り立つかどうか。あなた方は税の確保という立場の上から、この問題についてはどういうような考え方農林省お話しになっていらっしゃるのか、ちょっとお伺いしたい。
  373. 佐藤健司

    佐藤(健)説明員 しょうちゅう乙類の問題でございますが、いまお話がありましたように、七十年来外国砕米を使っております関係上、現在におきましてもたとえばこうじをつくりますいわゆる製麹の設備にいたしましても、いろいろな技術的な面におきましても、やはり長い間使いなれております外砕米に合うような設備あるいは処理技術とか持っておらないという非常に特殊な環境にあるわけでございまして、もし準内地米のようなものを使うということになりますと、現在の価格の立て方といいますか、そういうものからいたしますと、相当高いものにつくわけであります。原料として使えないことはないと思いますけれども、技術面でも相当無理をしなければならないという問題はあろうかと思います。さらに価格の面におきましては、しょうちゅう甲類の価格というものと同じ価格でございませんとやはり売れないという問題がありまして、現在二十五度もので一・八リットル大体三百九十円ということで、しょうちゅう甲類もしょうちゅう乙類も同じ価格で売られてようやく競争しておるという状態でありますので、価格の面で原価が上がったために価格が上がってまいりますと、これまた非常に苦しい状態になると思います。  税の面におきましては、しょうちゅう甲類としょうちゅう乙類につきまして、一・八リットルで大体二十円ぐらいの税差を置いてありまして、これは原料面におきますところのいろいろな問題をそういう税差の面である程度、いままではそういうハンディを解消するような措置をとっておったわけでありますけれども、こういうふうな状態になりますと、その面におきます配慮だけではなかなかむずかしい。そういう点で、私どもとしましては食糧庁に対しまして、できるだけそういう安い砕米のようなものが手に入りますようにお願いをいたしておるわけでありますけれども、もしこういう輸入が非常にむずかしいということでありますれば、何か準内地米あるいは国内産の古米等につきましても特別な価格設定というものができないものかどうか、その点もあわせて極力御考慮に入れていただくようにただいま折衝を続けておるところでございます。
  374. 村山喜一

    村山(喜)分科員 そこで長谷川農林大臣、お聞きのとおりでございます。外砕米はトン当たり七万一千四百円ぐらいで手に入るのです。内地米はどんなに計算をしてみましても十四万円ぐらいである。準内地米は八万幾らで手に入るかと思うのですが、しかしいずれにしても一方のほうは硬質米で、小粒で、まことにしょうちゅうの原料に適している。一方のほうは内地米であったら軟質米ですから、だんごのように固まってしまうのですよ。準内地米がどういうふうになりますか、そこらはよくわかりませんけれども、いずれにしても値段は高い、そしていまの設備に合わないようなかっこうになったのでは、これはもう甲類の業者というのは大臣承知のように三楽とかいうように大きなメーカーです。乙類のほうは小さな町の中小企業者です。値段が上がったら乙類のほうは負けますよ。そういうようなことを考えますと、この際大臣のほうで物価を値上げをするような政策というのはおとりにならないだろうと思うのです。しかも量もそんなにたくさんじゃありません。一万トン程度のものです。だからこういうような古来七十年――神代の昔からあるのだから、あなたはそういうような立場で鹿児島、宮崎のしょうちゅう愛好者に対しては期待に沿うようにしていただけると思うのでありますが、いかがでございますか。
  375. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 先回委員会においてお答え申し上げようと思っておったのでございましたけれども、時間切れになりまして申し上げられなかったのでございますが、お説のように物価安定という上にも立ち、また伝統的な今日まで業をなしている、そういう上に立っての問題でもございますので、御心配にならないように、ある程度私のほうで責任を持ってこれらの問題の処理に当たっていきたい、かく私は申し上げる次第でございます。
  376. 村山喜一

    村山(喜)分科員 いまの言、ひとつ期待を申し上げておりますのでよろしくお願いします。  そこでもう一点、これは林野庁に関係のある問題であります。自分の選挙区内の問題を天下の前に明らかに恥を知らしめるということは私もいささか残念でございますが、事実は事実としてこの際明らかにしておきたいと思うのであります。  天孫降臨の地といわれる霧島山麓、ここは国立公園があり、しかも国有林がございます。そこの管轄は加治木営林署であります。温泉地帯であり、観光地帯であり、しかも、最近においては観光ブームで国有林の敷地をある政治家が借りてホテルをつくってみたりしたような事例もある地帯でございますから、私たち県民は、絶えずそういうようなものに対しては、行政当局がどのような措置を下すであろうかということを注目をいたしておるところであります。  ところが、これは昭和四十年の三月ですかに判明したのですが、霧島観光開発株式会社なるものでございます。その会社が、昭和三十八年に、当時町有林でございました百町歩の土地の払い下げを四千万円で受けました。その四千万円の代金の内訳は、私も前に質問通告をしておる中でもお知らせを申し上げておりましたので、大臣は知らなくても、林野庁長官は御承知だと思いますが、土地代が三千七百五十万円、立木代が二百五十万円でございました。坪当たり百三十三円という価格であります。これがどのような価格で――ここはもと農林省の敷地であったのです。種馬所でございましたけれども、それを昭和二十四年に払い下げまして、そして当時ただで払い下げた上に、交付税を二年間五百万円ずつたしか金をやっておった。私はそれを記憶しておりますが、そういう土地を百町歩、今度は町が霧島観光開発株式会社に売ったわけです。  その会社は、そこをいわゆる保養地に仕立て上げまして、そして一千戸の別荘住宅地帯を形成をして、そこに五千人の保養客が泊まることができるようにしようというので、ブルドーザーやその他を入れまして、坪当たり百三十三円で町のほうから払い下げを受けました土地を工事に取りかかったのであります。それは昭和三十八年ころからですが、じゃんじゃかつくっているものだから、住民が調べてみたら、その開発株式会社がもうすでに二十万平米くらいの造成を進めておる。しかもそこをよく調べてみると、これは昭和三十三年に保安林として指定を受けているところだということがわかった。水源涵養保安林であります。そこでこれを県議会で私たちのほうで取り上げまして、工事中止命令が県のほうからおりました。そこまでわかったのです。  ところが、またその当時、そこに別荘住宅をつくるから土地を買いませんかというので、坪当たり三千円で売る契約を結んで、金を取り立てておりますから、それを何とかしなくちゃいかぬというので、また四十町歩ほど保安林を解除して、そこに川の水を取ったらこれは河川法その他でやられるので、ボーリングをやりまして、そこから水を取るようにして、それで給水をやるんだから、そのために四十町歩ほど保安林を解除してくれという申請が出ているわけであります。  そこで、初めに自治省にお尋ねしますが、ここの町長はいまでも町長でありながら、なお霧島観光開発株式会社の重役さんであります。そういうようなことは、政治の姿勢上悪いからやめなさいと言っても、なかなかやめません。そういうような姿勢であります。それから、県は県で、またその上のほうに観光課を中心にいたしまして、県有の山ノ城というところに泉源を掘さくをいたしまして、そしてそこから二本蒸気が出ております。だから今度は、水が得られたらその蒸気をまぜて、そしてこの別荘住宅に県のほうからお湯を配給をしようという計画なんです。こういうふうに受け取られてもしようがないような措置をとっております。だから町、県タイアップいたしまして、そして四十町歩の保安林の解除申請を出してくるというふうにわれわれは見ている。  そこで、その四十町歩の中に保安林整備臨時措置法に基づく整備事業計画として十一町歩のヒノキの造林が行なわれているはずでありますが、そういうようなかつて補助事業として国のほうが保安林整備をやらせたところ、そこも解除してしまう、そういうようなのはお認めになるつもりであるのかどうか。  それから県議会で林務部長説明をしているわけです。この人は前、熊本の国有林の担当の総務部長さんですよ。この人はいま県の林務部長をやっているのですが、この人がいわく、もうすでに四十町歩の保安林を解除するにあたって、その代替として同じ水系内の町の山にその保安林を設定をさしたから、それでかまわないという指導をしておる。それはどこからそういうような指導をしたのかと聞いてみたら、それは林野庁の指導方針に基づいてそういうようなことを言っているんだということを言うのであります。これは県議会で明らかにしているんですから、間違いないと思う。しかし、考えてみますと、ここは水が少ない。水が少ないがゆえに、水のために大騒ぎがいつも起こるところなんです。それが上流のほうの山の保安林を解除して、下流十何キロ、二十何キロくらい離れたところの上に、町有林が十五町歩と思いますが、そこを水源涵養保安林として設定をしたから、同一水系に属するからいいというようなことになったら、何のための保安林の指定だろうかといって、住民の人たちや関係者は指導方針というものに非常に疑惑を抱いているわけですが、そういうのに対して林野庁としてはどういうような指導をなさっていらっしゃるのかということでございます。  以上についてお答えをいただいて、それに対してまた私のほうからお尋ねをいたしますが、まずその二点お答えください。
  377. 片山正英

    ○片山政府委員 先生の御指摘の場所は、姶良郡の牧園町の保安林のことだと思います。これは先ほど先生の御指摘のとおり、農林省の畜産局から昭和二十四年に町に払い下げを受けたものでございまして、それに対しまして昭和三十三年の四月十九日に保安林の指定をいたしたわけでございます。  そこで、先生の御指摘の二つの点でございますが、まず第一点の保安林の解除の問題でございます。保安林の解除をやる場合にわれわれは二つの条件を押っております。一つは公益のために必要である場合、これは解除をいたします。それからもう一点は、保安林の必要性がなくなった場合、これは解除をいたすわけでございます。この二つの問題としてわれわれは対処してまいっておるわけでございます。  そこで、もう一点のお尋ねの水系の問題と保安林の指定の場所の問題でございます。われわれの林野庁として指導いたしておりまするのは、保安林の中で、水源涵養保安林につきましては、一定量の水を確保するというのがたてまえでございますので、一つの水系、しかし、それは受益を同じくする一つの水系、そういう前提におきまする場所の振りかえ等については、必要な場合対処するということもいたしてくるわけでございますが、これはあくまで受益を同じくする水系、こういうことに限定をいたすわけであります。
  378. 森清

    ○森説明員 地方公共団体の長が営利会社の重役を兼ねられるかどうかということでございますが、法律的に申しますと、地方自治法の百四十二条で、一定の場合に兼職を禁止をいたしております。ただいまのこの町長と株式会社の関係、実は昨日電話照会程度でございますのではっきり断定できませんが、その範囲ではこの条項には当たらないのではないか。したがって、法律的には別に兼職禁止はされておらないということでございます。
  379. 村山喜一

    村山(喜)分科員 法律的に禁止をされていないということと、政治的な道義上の問題と、これは別だと思うのです。それは、この観光開発をやることによって、出資者である長はもうかります。そうして観光開発事業をやっている人たちも、これまたもうかります。しかし、その下流のほうで、その同じ水を農業用に使いながら、そこで水田を耕作をし、あるいはそこでそれを飲み水に使いながら生活をしている流域の人たちは、水が足らない地帯ですから、困るのであります。ところが、保安林として指定を受けながら、百町歩のうち一体どれぐらいが今日まで保安林整備臨時措置法に基づいてそこが整備されておる、植栽が行なわれておると長官はお考えになっておりますか。それは報告が来ておりますか来ていなければ私がお知らせいたしますが。――来ていないようでございますが、これはほとんど造林をやらないでおる。造林をやったのは十一町歩ですよ。それはしかもこの前無断に道路をつくったり、あるいはひっくり返したりして伐採をしたのが五町歩ありますから、六町歩ヒノキ造林として十三年生の木がはえているだけです。水源涵養保安林として指定をしておきながら、やはり昔のように草刈り場、牧草を刈る場所としてそこがまた残っているということ自体も、おかしいと思うのです。これはそれを指導する県なりあるいは林野庁の指導が不足しておったのだといわれても、私はしようがないと思う。だから、草っ原だからこれは解除したらいいじゃないかということになると、一体これは水は十分かというと、そうじゃないのですから、こういうようなところにあまりにもずさんな林野行政の姿というものがあるし、またそういうようなのを食いものにする人たちがおるということを、私はこの際指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、もう時間がだんだんになくなりますので、この際農林大臣から明快な御答弁をいただきたいと思います。というのは、指定の理由が消滅をしたときにはすみやかに解除しなければならない。私は、いまの質疑を通じてお聞きになっていらっしゃるように、指定の理由が消滅したとは思えない。なぜかなれば、その下では、やはり農業に従事している農民の諸君が、水利組合をつくってやっているのです。そしてそれは上のほうに五十町歩のゴルフ場ができました。そのゴルフ場の上に百二十ミリぐらいの雨が降っただけで、その下流のほうはたいへんな土砂の流積等が行なわれまして困っている。いまいわゆる災害復旧事業等をやっている地帯なんです。そういうようなところで、もう一千戸の住宅敷地が造成され、ボーリングをして取るんだといたしましても、水が取られる。そこに水が足らなくなるのはあたりまえなんです。そのようなかっこうの中で保安林で解除されていくということになっていくならば、これはまあ観光のための政治はあるけれども、農民泣かせの政治であるということは間違いない。そういうようなのに対して、県のほうから申請が出てくるでありましょうが、それの許可権者は、農林大臣あなたであります。だから、農林大臣としては、これに対しましては慎重に対処してもらわなければならないと思いますが、そういうような心組みでおやりをいただくかどうか、明快にお答えをいただきたいのでございます。
  380. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ただいま聞いておったのですけれども、県のほうからの進達がまだ来ておらないそうでございます。こういう状況でございますので、実情をよく調査して善処いたしたいと考えております。
  381. 村山喜一

    村山(喜)分科員 もうこれであと二、三分ですが、さっき林野庁長官がお答えいただきましたように、同一水系、同じ受益地帯であればというのですが、どう考えてみましても、これは同じ町民であることは間違いないのですが、しかも同じ水系に属しておることも間違いない。しかしながら、その利益を受ける、その水を利用するのは、下流のほうではその水はもう余るくらいに、ほかのところからも合流してくるのですから、水はあるのです。上流のほうが水が足らないわけですから、そこの山を全部切ってしまったら、下のほうに水源涵養林としてそういうようなのを町有林を保安林として指定をいたしましても、実効性がないわけなんですよ。だから、そういうような代替措置を認めるような、そういうような解釈ができるような指導というものは、この際おやめをいただかないと、まあ同じ町内に、行政区域内に、保安林をこっちのほうを解除したらこっちのほうに設定をすればいいのだというような、あまりにも便宜主義的なやり方をやりますと、これは水源涵養保安林としての指定の実体がなくなってしまうということになると私は思います。ですから、そういうような便宜主義はおやめをいただきたいのです。これだけはこの際はっきり、そのようなやり方はまずいということで指導をいただけるかどうか、お答えいただきます。
  382. 片山正英

    ○片山政府委員 先ほど答弁申し上げましたのは、一般的の原則論を私は申し上げたわけでございます。先生の御指摘のこの地帯がどういう形になっておるか、実はまだ県から進達もありません。しかし、地元民が御不安になるというようなことはわれわれはすべきではないと思っておりますので、その点を十分調査した上で善処してまいりたい、かように思います。
  383. 村山喜一

    村山(喜)分科員 この際、霧島山の開発をめぐりまして私は先ほど申し上げましたが、もういまはこの人は議員じゃありませんので名前をあげてもいいのですけれども、ある参議院議員が、その国有林の敷地内に――それは正しい値段で借りておりますよ。借りて、そこにホテルをつくって営業をやっておった事実があるのです。そういうような状態の中で、国有林のその敷地に最近はいろいろな施設ができる。これは活用をはかるという意味において、収入を得るという意味においてはいいでしょう。しかしながら、一般の住民は、国家権力と政治と結びついている、政治家が不当な利得をおさめているのではないかという眼で見ております。そうして自分たちの水が、そういうような観光業者の手によって飲み水が奪われていく、自分たちの上には災害が襲いかかってくる、そういうようなことが現実に行なわれて、それが県になりあるいは市町村の行政と結託して、そうして国のほうにその解除申請を求めてくる。国のほうは、これまた自民党の政権で、そういうようなものに対しては弱い。こういうふうになったら、そこに住んでいる住民の命と生活は成り立たない。そのようなところから、政治に対する不満というものがこれ以上わき立ってきたら、私はそこの行政というのはあり得ないと思う。そういうような意味において、自治省のほうでも御指導いただきたいし、先ほど林野庁長官の御答弁をいただきましたように、また農林大臣も御答弁いただきましたが、この問題については慎重に配慮をいただきまして、そしてあとに悔いが残らないように、われわれがそれをながめて、なるほど長谷川農林大臣決定はこれは人間政治家としてりっぱなものだったということが表面にあらわれてくるように、私御期待を申し上げておりますので、よろしくその点は御配慮いただきたい。以上お願いします。終わります。
  384. 植木庚子郎

    植木主査 次は、戸叶里子君。
  385. 戸叶里子

    戸叶分科員 私は、農業改善事業の問題でちょっと伺っておきたいと思います。  昭和四十四年度予算の説明を見ますと、農業構造改善対策費として三億五千五百万円余りがふえております。それは説明書によりますと、「三十七年度から事業に着手したものであるが、四十四年度においては、四十一年度、四十二年度及び四十三年度に事業に着手した地域についてそれぞれ事業の推進を図るとともに、新たに、二百六地域において事業に着手する」こういうふうに書いてあるわけでございます。そこで、この二百六地域というのは、残地区数、残っている地域の全部という説明がついておりますけれども、それはすでにどことどこというふうに指定されてあるのでしょうか。地元と話がついて、もう二百六地区はこうこうこうであるというお話がきまっているかどうか、承りたいと思います。こまかいことは私は聞きません。ただ二百六地域というのは、すでにどことどこから申し込みがあって、それはもう話し合いがついて、大体そこへ予算を配分することにきまっているというのかどうかを伺いたい。
  386. 池田俊也

    ○池田政府委員 二百六地域につきましては、すでに計画地域の指定が済んでいるわけでございます。
  387. 戸叶里子

    戸叶分科員 そうしますと、計画地域として申し込みがあって、そしてそれを予定されているわけだと思いますけれども、その場合は、大体残存地区数としてもうこれは変えないか、変えられるか、この点を伺っておきたい。
  388. 池田俊也

    ○池田政府委員 これは計画地域として指定をいたしておりまして、四十四年度から事業の実施に入る予定でございますが、諸般の事情で地元における調整等が十分でないというような場合には、四十四年度から直ちに事業実施に入らない場合もまれにはございます。
  389. 戸叶里子

    戸叶分科員 そこで、四十五年度に大体この形の構造改善事業というのは完成するわけですね。その次にはまた新しい何らかのことが考えられると思いますけれども、たとえば二百六地域ができなかった場合に、それがずっと残っていくとかいうふうな形になるわけですね。そうした場合に、この新しい目標を立ててどういう形でおやりになるか、その点を伺いたいと思います。
  390. 池田俊也

    ○池田政府委員 現在の構造改善事業は四十五年度で終了する、こういう予定にいたしております。それで第二次の構造改善事業を私たちとしては発足させる必要があるということで、四十四年度の予算にも一部そのための準備に計画の樹立費等を組んでいるわけでございますけれども、この第二次の構造改善事業といたしましては、来年度地域の指定、計画の樹立をいたしまして、四十五年度から事業実施に入る、こういう予定にいたしております。
  391. 戸叶里子

    戸叶分科員 そうすると、第二次の計画の内容というものは、まだ全然白紙ですか。
  392. 池田俊也

    ○池田政府委員 事業の大体の考え方あるいは大筋の事業費の額というようなものは大体きまっているわけでございますけれども、詳細な具体的な内容につきましては、まだ検討中でございます。
  393. 戸叶里子

    戸叶分科員 私そこで大臣にお伺いしたいのですが、こういうことを伺いますのは、構造改善事業に伴いましていろんな問題点があることを私は聞いているわけでございます。そこで、私の周囲だけでもいろいろ聞いているわけですが、その例を示そうと思いますけれども、これは私の周囲だけの問題じゃないように思いますので、今後第二次の計画をお立てになるについても、やはりそういう点をよく洗って、そしてきちんといろんな問題を解決した上に計画をお立てにならないと問題が残ると思いますので、あえて私はここで伺いたいのですが、農林大臣は、これまでの農業改善事業というものは全部全く成功しているというふうにお考えになりますかどうですか、この点をまず伺いたいと思います。
  394. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 全部が全部うまくいっていると断定するわけにはいかないと思います。しかし、中には変更をしたり、また変更をしてそれをなし遂げたり、また、お話を私も伺ったばかりでございますからようわかりませんけれども、全部が全部でないが、中にはうまくいってなかったというようなところも何カ所かはあるようでございます。
  395. 戸叶里子

    戸叶分科員 大臣もうまくいかなかったというような点もお認めになるわけですけれども、私がいままで聞いてきた面で、大体構造改善をやりますと反収というものがふえていかなければならないわけですけれども、ある地域で――私はあえてこれはある地域と言いますけれども、ある地域で、四十一年に三十三ヘクタールを実施し、そして四十二年には二十六ヘクタール実施して、十アール当たり二俵ないし三俵減っているところがあるわけですね。こういう減るというような場合も、いままで全国的に見てありましたでしょうかどうでしょうか、まずこれをひとつ伺いたい。  それからさらに、その地域では、たとえば一アール当たり一万五千円ぐらい費用がかかったとする。そのほかにまた雑費がかかっているのですけれども、それも幾らであるかわからない、まだ収拾がつかないで困っているというような地域があるわけです。そういうような例もほかにおありになるでしょうか。
  396. 池田俊也

    ○池田政府委員 現在の構造改善事業の実施の成果につきまして、いろんな御意見が実はあるわけでございます。私どものほうといたしましては、やはり生産性の向上あるいはいわゆる農業生産の選択的拡大というような面では、一般論としてはかなり成果をおさめたのではないかという気がいたします。  いま御指摘の生産性の問題でございますが、私どもはそれをやりました結果、むしろ生産性が落ちたという例は、実はほとんど聞いていないわけでございます。一般的にはやはりかなり生産性は上がっておる、あるいは従来やっていなかった新しい作目を取り入れたという事例が、非常に多いわけでございます。  ただ、そのほかの批判といたしましては、農業構造改善事業という看板からいたしますと、どうもいわゆる構造改善に十分じゃないじゃないかというような批判はございます。しかし、一般の生産性の向上には、かなり役立ったというように思うわけでございます。  それから第二点のいろいろ負担の関係等で問題を残したということは、地域によりましては、計画が必ずしも適切でなくて、むしろ過剰投資といいますか、投資をしたけれども十分に稼働しなかったとか、機械が十分動かなかったとか、そういうことでやや問題があるという事例は、若干ございます。
  397. 戸叶里子

    戸叶分科員 私も生産性は上がらなければならないというふうに考えておりますけれども、しかし、具体的な例としてはやっぱり下がっているという場合もあるわけで、そういうようなところもよく御調査をしていただきたいと思うわけです。  それからさらに、分担といいますか、たとえば山があって、その山を隔ててこちら側とこちら側で農業構造改善事業をやったところが、こちらのほうは非常に水がよくて、こちらのほうはコンパクトしなければならない。非常に電気代がかかる。その場合、こことここと一緒にまぜて、水の出るほうまでも電気代を分担しなければならないという話が出ていて、そんなことはないじゃないかといって非常にもめている地域もあるわけです。こういう場合に、一体どっちが負担するということになるのですか。
  398. 池田俊也

    ○池田政府委員 ちょっと御指摘の点だけでは判断がよくつきかねますので、あるいは具体的にもう少し詳細の事例を出してお知らせをいただきますれば、十分検討したいと思います。
  399. 戸叶里子

    戸叶分科員 これは小さな問題ですから、いま別にすぐにどうしてくださいということを申しませんけれども、ただ問題点としていろいろあることを指摘しておきませんと、次に第二次計画なり何なりをお立てになるときに、やはりそういうことを参考にしてやっていただきたいという意味で私申し上げているわけです。  それで、基盤整備をしていく中でどこでも一番問題になるのは、換地委員というものがどうも公平でなくて、換地委員が自分のところが非常にいいものを取って、そしてほかのほうにはあまりいいのを回さない、あるいはその換地委員の主張しているためになかなか配分がうまくいかないというようなことがあるようでございますけれども、その問題については、そういう問題はいままでにないというようにお考えですか。あっちこっちで、基盤整備で一番問題なのは換地委員じゃないかということがいわれておりますけれども、この点は農林大臣、どのようにお考えになりますか。
  400. 池田俊也

    ○池田政府委員 基盤整備をやります場合の一つのあれといたしまして、交換分合というのが、実は確かに御指摘のように構造改善事業におきましては一番問題があるところでございます。当然構造改善事業というものの趣旨からいたしますと、地元の農業者の方の御意見を十分に反映して計画をつくり、それを実施するというのが本来の趣旨でございますけれども、やはり実際の場合になりますと、いろいろな利害関係が錯綜いたしまして、必ずしもすべての農業者の方から御満足をいただけない、あるいは換地委員のやり方が適切でないということも、間々事例としてはあるわけでございます。そういう点につきましては、私どもはやはりよく納得をしていただくような、大体の方の満足のできるような方向で話し合いをまとめるという指導をしているわけでございますけれども、たくさんの事例の中でございますので、ときにはそういうこともあろうかと思います。
  401. 戸叶里子

    戸叶分科員 農林大臣、お聞きのように、やはり換地委員というものが自分を忘れてみんなのためにやってくれればいいのですけれども、そうでないような場合が非常に多いわけです。そして農業改善事業、基盤整備の問題で一番問題になるのは、この換地委員考え方といいますか、態度といいますか、そういうものが非常に影響しておりますので、こういう点も今後においては十分考慮していただきたいのが一つです。  また、いろいろ聞いてみますと、十分納得をしないでやりますと、あとからいろいろ問題があると思います。そしてやはり地域の人に、その該当者に対してはよく納得をさせて、反対がないようにして、そして農業構造改善事業というのをやっていただきたいと思うわけですけれども、規則としては三分の二以上が賛成すればもうそれでどんどんやってもいいんだというようなこともあるようでございますけれども、もしもある一定の地域において十軒なり十二、三軒なりの反対者がある、六十軒あるうち十軒なり何なりが反対者があるという場合には、それでもあえて強行されますか、どうですか。その点をまず伺っておきたいと思います。
  402. 池田俊也

    ○池田政府委員 いま御指摘の事例でございますと、六十人のうちの十人というと一割五分程度になるわけで、かなりの部分だと思いますが、私どもといたしましては、そういうふうな一割ないし二割にも及ぼうという方が反対しておるのに、三分の二以上だからいいということで事業を進めることは適切でない、やはりすべての方が納得をしてやらないと、後々の事業もうまくいかないのではなかろうかというふうに考えておりますので、そういう方と十分話し合いをして、話し合いがついた上で事業の実施に入るように指導しておるわけであります。
  403. 戸叶里子

    戸叶分科員 そこで、私は具体的な一つの地域の問題として起きていることを申し上げたいのですが、実は九十一・一ヘクタールのところで九十軒おるわけです。そこで農業構造改善事業の話が出ましたときに、その地域においては、農業構造改善事業の運用によって悪い点をいろいろ聞いておるわけですから、悪い点を聞いた人は何か疑心暗鬼で、しかもその人たちはイチゴの生産で非常に成功して、もう十分収入があるわけです。いまから借金までして改善事業をやらなくてもいいということで、理事者側も一部の人は反対していたわけです。ところが、いろいろな形で説得をされて理事者が承知をして、非常に多かった反対者がだんだん少なくなってまいりまして、九十戸のうち十四戸が反対してきたわけです。それでこの間、県と改良区の理事の会議があって、それを進めるような話を聞いたものですから、その反対をする人たちが非常に不安に思っておるわけです。三分の二という規則でどんどん推し進めはしないかということを心配しておりますけれども、そういうような場合に、みんなが納得しないうちは強行はしないというふうに大臣からでもおっしゃっていただければ、その地域の人たちも安心をすると思いますが、その地域でもうすでに村八分のような形がとられておるわけです。ですから、この点について大臣からはっきり御答弁願いたいと思います。
  404. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 御承知でございましょうけれども、土地改良というのは国のほうから直接やるわけではありませんで、その地区のその組合の申請に基づいてこちらが認可するわけでございます。したがって、指導の面におきましては一応はそういう三分の二ということになっておりますけれども、このごろは特にその点については留意しておるようでございます。私も最近そういう問題で一応話し合ったことがありますが、なるべく大ぜいの人たちの納得のもとにやってもらいたいというようなことは、一応県を通じて指導をしておるのであります。したがって、さっきの換地の問題等につきましても、急に国道ができるようになったということになりますと、土地価格が上がるという先のことまで考えて、そのときは承諾していても、あとになって非常な不満を抱いてくるというようなことも間々あるようであります。共同体でありますから、納得づくの上で土地改良を行なっていかなければうまくいきませんから、そういう点については十分留意いたしまして指導をやっていく考えであります。
  405. 戸叶里子

    戸叶分科員 地域からの申請に基づいてこの事業を進められることは、私もよく知っております。ただ、その場合に、どうもボスの人たちが中心になって動いて、納得させるためにいろいろな形で圧力を加えていくというようなことも見られるわけです。私が申し上げました地域では、お葬式が部落にあってもそこに来るなとか、非常に人権じゅうりん問題が起きまして、人権擁護委員会ども乗り出してきておるわけですけれども、これからの問題として一点考えられますことは、ここにはイチゴの出荷組合というものがあるのですが、反対する人たちに対しては、出荷組合を一ぺん解散してしまって、その人たちを入れないような形をとろうということも考えられているようです。そういうこともありますので、それを未然に防ぐ意味においても、上の役所といえば農林省でございますから、そういう点もお考えになっていただいて、そういうことがないように、人権じゅうりんが行なわれないように、人情味あふれる農林大臣でいらっしゃいますから、農林大臣にそれを未然に防いでいただきたいということを最後にお願いしたいと思います。御返事をいただきたいと思います。
  406. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 具体的な事例をもって県を通じてこちらに話していただければ、私のほうから県のほうに対して、なるべく納得がいくように、したがってまた、そういうことのないように十分指導をしなさいということを通達いたします。
  407. 植木庚子郎

    植木主査 次は、田中昭二君。
  408. 田中昭二

    田中(昭)分科員 いまから私お尋ねする問題は、福岡県の零細な農民らが貯金いたしました預金が、不正に使われまして、その不正な金が多額な金であります。そういうようなことで、地元の住民、農民の方々がたいへん心配しておりますから、そういうことにつきましてお尋ねするわけでございます。  この問題は大臣も詳しくは御存じないかと思いますが、まず当局のほうから説明をいただきたいと思います。福岡県の粕屋郡というところがございまして、そこに仲原農協という単位農協がございます。この仲原農協の不正融資事件について、その詳しいてんまつを知りたいわけでございます。この問題は、地域住民の多大なる不安もあり、根強い疑問も残っているのであります。単位農協である仲原農協、また福岡県信用農協連合会並びに同中央会、県農政部、地方農政局のほか、相手方である黒瀬観光株式会社、そのほか関係の金融ブローカー等についての一連の関係を具体的に説明願いたい。
  409. 池田俊也

    ○池田政府委員 福岡県の仲原農協の不正と申しますか、不正融資事件につきましては、ここでいまさら申し上げるまでもございません。福岡県庁が直接監督いたしているわけでございますが、県庁からの報告によりますと、大体次のような内容のようでございます。  仲原農協が、ただいま御指摘になりました会社に対しまして、農協法の規定に違反した貸し付けをいたした。もちろんその会社以外の人に対しても農協法違反の貸し付けがあるわけでございますけれども、その県庁の検査結果によります額を申し上げますと、限度超過貸し付け、これは農協法に基づきまして、農協の定款によって限度がきまっているわけでございますが、その限度を超過した貸し付け額が約二億五百万円、それから定款で認められておりません員外者に対する貸し付けが六千四百万円、合わせますと約二億七千万円というような不正な貸し付けがございまして、その貸し付け額の相当部分が焦げついていると申しますか、まだ回収されてない、こういう状態のようでございます。その不正貸し付けの大部分が、御指摘のありました会社のゴルフ場の建設資金に使用されている、こういうことが県のほうからの報告結果でわかっているわけでございます。それで、県庁といたしましては、昨年の九月でございますが、貸し付け金の回収について農協法によりまして必要な措置をとる旨の命令というのがございますが、その命令を出しまして回収をさせているわけでございますが、一部につきましては回収があったようでございますが、大部分につきましてはまだ回収されておりませんので、引き続きその解決のための指導を行なっている、こういう状況でございます。
  410. 田中昭二

    田中(昭)分科員 いわゆる単位農協は県知事の監督下にございますが、いま申しましたように、福岡県の信用農協連合会並びに中央会、県農政部、地方農政局、こういうことについては、私は農林省の監督の届くところではないかと思うのです。その県信連につきましても、いろいろ単位農協に対する善後策もとられております。そういう点を少し聞きたいわけでございますが、いま答えていただきました二億七千万の不正貸し付けが、私が申し上げました会社にどれだけ貸し付けられて、焦げつきが残っておるか。それ以外がどういう内容になっておるかという点が一点。  それから県知事の改善命令はもちろんでございますが、その改善命令によって農林省当局も私はお調べになっておると思うのです。その農林省当局が調べました内容について、もう少し詳しく知りたいわけです。
  411. 池田俊也

    ○池田政府委員 当該会社に対します貸し付け額は、一億九千百七十万。端数がちょっとございますけれども、正確に申し上げますと、一億九千百七十二万円が貸し付けられておりまして、これに対しましてはまだ回収されていない。それから員外貸し付けに対しましては、本年の一月現在でございますけれども、二千五百六十万円が回収されておるわけでございます。  それから、ちょっと言い落としましたが、限度超過貸し付けのうち二百六十万円が回収されておるわけでございますけれども、これは御指摘のありました会社の関係ではないようでございます。
  412. 田中昭二

    田中(昭)分科員 それからもう一つ。いま申し上げました農政局からの報告ですね、検査した、それは全然報告はないのですか。
  413. 池田俊也

    ○池田政府委員 農政局は本件につきましては検査をしておらないので、県当局の報告でございます。
  414. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、新聞の報ずるところによれば、二億とか三億とか、そういう膨大な、いま聞いてみました金額でも、一人に対して約二億円近い農民の預金が不正に貸し付けられておる。そういうことに対して、その単位農協がいかに知事の監督下にあるとはいえ、私は――地方の農政局も検査していないというのですけれども、当然されておるのじゃないかと思うのです。その検査をした、そうしてそれが報告されたその内容については、いま全然報告はされていないと言いますが、そういう態度でいいですかね、大臣
  415. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 農政局がこれに立ち会って、立ち入り検査をするという権限を持っておらないのじゃないかと私は思っております。
  416. 池田俊也

    ○池田政府委員 単協につきましては、御存じのように県知事が検査をする。信連等は農林大臣でございますけれども、単協につきましては県知事でございますので、農政局が当該単協に対して検査をするということはないわけでございます。
  417. 田中昭二

    田中(昭)分科員 ですから、それじゃ県信連と単位農協、この問題に対して何もやっておらないのですか。聞くところによれば、その単位農協の責任は、上部団体である県信連並びに中央会がその責任を負って、そういう裏づけが上部団体としてあるから、農民の不安も除かれている。とにかく責任は県信連にある。もしも単位農協が支払いをできなかったような場合は、当然県信連がその責任を負わなければならないのじゃないですか。その点だけそれじゃお聞きしておきましょう。
  418. 池田俊也

    ○池田政府委員 私どもが県当局から受けております報告から申しますと、まだ未回収の金につきましては、現在関係者が非常に努力をしておるということで、完全に赤字、焦げつきということにはなっておらないようでございます。それで信連につきましては、もちろんその組合員でございます単協につきまして、健全な事業運営をやるということで指導する、こういう立場にあるわけでございますけれども、本件につきましては、直接信連から金が流れたとか、そういうことではないように私ども承知をしているわけでございます。
  419. 田中昭二

    田中(昭)分科員 金が流れたなんて言っていませんよ。単位農協に対する責任はあるか、ないかとだけ聞いているわけでしょう。いま二億円近い金が未回収である。この場ですからそういうことを言えますけれども、現場の農民が、そういう二億円も近い預金が焦げついておりますというようなことで終わりますか。そういうことであれば、私は農林省何のためにあるかと言いたいですよ。そうでしょう。二億円もの金が全然焦げついて回収されてない。それに対して県信連も黙っておる。黙っておるのだったら、何のため上部団体としてあるのですか。それを検査してあれば、当然県信連が――それは現実にその責任をとって、県信連のほうから人員も派遣されて、全部いま人員配置も終わっております。また、その単位農協の担保になったものを県信連が保管し、そうしていまあなたがおっしゃったように、ゴルフ場の問題も、その焦げつきの担保に取っておるわけでしょう。  それでは、もうこういうことを言っていても始まりませんから、その二億円なりそれ以上の金の焦げつきに対して、ゴルフ場を担保に取った、そういうことですね。それはいいですね。いいか悪いか、それだけ答えてください。
  420. 池田俊也

    ○池田政府委員 私ども承知しておりますところでは、単協がそのゴルフ場をさらに一部資金を出しまして買い取って、現在単協がその土地を所有している。この土地は約二十一万坪ほどあるようでございますが、その土地を取得いたしまして、それを現在金にかえるというための努力をいろいろしているようでございます。
  421. 田中昭二

    田中(昭)分科員 それでは、単位農協で一部金を出して、二十一万坪のゴルフ場を担保に取った、その背景をもう少し詳しく言ってください。いまあなたの言うたことでは全然わかりませんよ。
  422. 池田俊也

    ○池田政府委員 単協がさらに一億六千五百万ほど支出をいたしまして、そうして従来、黒瀬といいますか、御指摘の会社が投下をいたしておりました資金と合わせましたものを代金として、その土地を取得したというふうに承知しているわけでございます。
  423. 田中昭二

    田中(昭)分科員 そうしますと、約三億五千万ぐらいの担保として約二十一万坪のゴルフ場を取った、こういうことですね。そうですね。先ほどの焦げつきの約一億九千百七十二万、それと単位農協が別に一億六千万出して、そうして二十一万坪のゴルフ場を担保に取った、こういうことですね。確認だけ……。
  424. 池田俊也

    ○池田政府委員 大体そういうことのように承知しております。
  425. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、お聞きになっておってわかると思いますけれども、この問題はもう地元ではいろんなうわさがあります。そういうことについて農林省に聞いてみれば、いまのような、担保もちゃんと取って、単位農協にそれだけの金を払わして取っているということなんですから、そういう背景を私はお聞きしておるわけですよ。そうしなければ、農民は――その二億円近い金がパーになった場合には、実害を受けるのは雰細な農民です。ですから、それに見合う担保を取ってあるということになれば、安心もするわけです。そういう点もう少し現地の事情をそれは調べる権限がないとかあるとかいってほうっておける問題でないと思うのです。そういう点を頭に入れてお答え願いたいと思うのです。  次に、この不正事件は、前の組合長である菊池組合長が、農協の定款に違反して貸し付けたということは明らかになっておるわけなんです。先ほどから言いました限度オーバーの貸し付けとか員外貸し付けとか、その内容はあるわけです。常識でも考えられないようなばく大な貸し付けを行なっておるわけです。すなわち、この定款によりますと、一口三百万までしか貸せない。組合長の専決権で百万しか貸せない。それが、いずれにしろ一観光会社に二億円近い、常識でも考えられないようなばく大な貸し付けが行なわれた。その農協の上部団体であり、責任ある福岡県信用農協連合会並びに同中央会の監督者である農林大臣としては、どのような責任を感じておるか。また、この事件に対して適切なる処置をとるべきである、こう思いますが、その事後処理を簡単にお聞かせ願いたい。
  426. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 御承知のように、単協は県が監督し、県単位になったのを今度は農林省が監督する、こういう仕組みになっておるわけでございまして、したがって、単協のことだから全然責任がないんだというわけにもまいらないと考えます。これらにつきましては、農民の貴重な預金の保護という見地から考えてもきわめて重要なことでございますので、十分その実情を調査いたしまして、これらの問題を検討いたしたいと考えております。
  427. 田中昭二

    田中(昭)分科員 法務省のほう来てありますか。――農林省だけですね。  いまの改善命令ですが、改善命令が知事の名前で十一月末までには――この事件が起こったのは九月でございますから、十一月末までには県知事も責任を持って解決する、このようになっているわけです。その段階で、私は、農林省のほうも検査がなされておる、こういうふうに聞いておるのですが、農林省のほうとしては検査は全然していないのですか、いるのですか。
  428. 池田俊也

    ○池田政府委員 先ほど申し上げましたような関係になっておりますので、私どもといたしましては検査はいたしておりません。
  429. 田中昭二

    田中(昭)分科員 この問題の一番の被害者は、先ほども言いましたように、地域住民と農民の方方であります。問題の解決の方向としては、これらの人々の納得いく話し合い、それからまた安心感を持たせなければならない、こういうふうに思うわけですが、いまの大臣のおことばで、ただ今後注意してやっていくというようなことでは、いまのように検査もなされていないということについてはどういうことでございましょうか。すぐやるということでしょうか。それとも……。
  430. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 いずれにいたしましても、御承知のように、直接農林省からその単協へ乗り込んでいって調査するわけにはまいらないのでありまして、県のほうを通じまして、万全を期するように私のほうから特に申し上げたいと思います。私もきょう初めてただいまお話を承ったばかりで、どういうことかまださっぱりようわかりませんが、それによりまして、申し上げたように、さっそく福岡県のほうへ申しつけまして、十分これに対する不安のないように対処するように、よくお話を申し上げる考えでございます。
  431. 田中昭二

    田中(昭)分科員 それじゃ、農林省のほうとしまして、この組合長さんが昨年の十月捜査当局の手によって逮捕されまして、いわゆる背任ということで起訴されております。菊池組合長さんのこの逮捕され、起訴されたことについては、どのように知っているか、それを局長のほうからお願いします。
  432. 池田俊也

    ○池田政府委員 ただいま先生御指摘のように、背任というようなことで起訴されているということは私どもも実は承知しているわけでございます。その結果、おそらく、まあかなり性質がよくない農協法の違反事件でございますので、しかるべき結論が出るのじゃなかろうかと私ども考えておるわけでございます。
  433. 田中昭二

    田中(昭)分科員 もう少し聞いておきたいと思いますが、この農協が黒瀬観光に貸してこげついた約二億円近い金と、それからそのほかに貸した二千五百六十万の貸し付け、この内容はわかっておりますか。黒瀬観光にはどういう――一ぺんにそれを貸したわけではないと思いますが、内容はどういうふうになっておりますか。
  434. 池田俊也

    ○池田政府委員 きわめて何回にも分かれておりまして、回数は非常に多いようでございますが、何回という回数は、私ども承知しておらないわけでございます。
  435. 田中昭二

    田中(昭)分科員 大臣、はなはだあれでございますが、いまのように、ただ一億九千百七十二万焦げついておる、こういうことだけがわかっておるのじゃないと思うのですね。これはもう捜査当局の手も入って、ちゃんと逮捕されて、はっきりしている問題ですからね。それをその程度では、私はほんとうにこれは怠慢だと思いますよ。怠慢というか、そういうことは言えないことはないでしょう。当然それは、その個々の貸し付けについて、百万でも二百万でも金を貸すときには、その人の信用状態なりなんなり調べるわけでしょう。ですから、もう少し――一億九千百七十二万と二千五百六十万ですね。まず、黒瀬観光の一億九千百七十二万、それがいつごろから、日にちと金額と、わかっておるはずですよ、それを言ってください。
  436. 池田俊也

    ○池田政府委員 詳細な日づけは私ども承知しておらないわけでございますが、三十九年ごろからその会社がゴルフ場の建設を始めまして、その建設の資金を仲原農協が融資を始めたというふうに承知をしているわけでございます。
  437. 田中昭二

    田中(昭)分科員 だから、その三十九年からでもいいですから、三十九年、わかっておる範囲内で何月幾ら、何月幾らと……。そうしなければ、あなたたちが検査をしてこういうことが起こらないようにするということについては、どういうことをやるのですか。全然それはもう誠意がないじゃないですか。百万でも千万でも、金を貸すときにはこういうふうにやります、それがはっきりしなければ、話が進みませんよ。
  438. 池田俊也

    ○池田政府委員 失礼いたしました。さっきのはちょっと誤っておりまして、最初は三十八年の十一月のようでございます。それから非常に小口が、三百万とかあるいは五百万とかあるいは百五十万とか、回数がたくさんございまして……
  439. 田中昭二

    田中(昭)分科員 それじゃ回数は何回くらいですか。
  440. 池田俊也

    ○池田政府委員 私ども県から伺っているところでは、十五回ほどに分かれまして合計先ほど申し上げました数字になっております。
  441. 田中昭二

    田中(昭)分科員 最終はいつですか。
  442. 池田俊也

    ○池田政府委員 最終は四十二年の秋のようでございます。
  443. 田中昭二

    田中(昭)分科員 くどいようですけれども、三十八年の十一月からずっとわかっておるやつ、それを言えばいいじゃないですか。大臣、そうでしょう。農民の大切な金を農協が――もちろんそういうことをやったということは悪いんですよ。二億円近い金が十五回くらいに貸し付けられた、そんな常識でも考えられないようなことを今後やらないようにするために、この問題を聞いておるわけじゃないですか。ですから、もう少しそれは、私のほうで知っておることはと、そんなことじゃなくして、ちゃんとこうやって、こういう二億円近い背任を起こしておる組合長に対しては、こういうふうに調査しました、こうなっております、それが言えなければおかしいと思うんですがね。  じゃ、一つだけ私のほうから申し上げましょう。黒瀬観光を調べましたところが、黒瀬観光には四十三年一月二十八日現在、いわゆる借り入れ金明細、農協とかほかにもいろいろありますが、それによりますと、仲原農協の当面あがっておる金額は二億九十四万三千十五円、同じ地域の農協にまだ別にあるんですよ。こういうことも、当然、先ほど私が概況を聞いたときに、ほかにこういう農協、こういう農協がこういうふうな不正な貸し付けをやっております、このくらい親切に言うべきじゃないですか。名前を全部言ったら、あなたのほうがいま検査したという数字と違った場合、だれが責任とりますか。だから、こういう場で、机の上でただ書類の報告を受けてじゃなく、もう少し現場の実情というものを認識して話をしなければ、話が進まないじゃないですか。そのことについてどう思いますか、いまの数字と……。
  444. 池田俊也

    ○池田政府委員 おしかりを受けたわけでございますが、私どもは仲原農協について、まあそういうことがあるということは県当局から報告を受けてわかっておるわけでございますが、その他の農協につきましては、実は何ら報告を聞いていないわけでございます。
  445. 田中昭二

    田中(昭)分科員 だから、役所の仕事はおかしいのですよ。捜査当局が入ってこれだけの調査をやって、農林省の地方農政局はそれに関連して責任がありますから、県下の――県下じゃない、全国でもいいです、農協に、こういう問題がほかにあるのかないのか、また同じ地元のほんのそばにある農協、そこから金が貸し付けされているのを知らないとなったら、大問題じゃないですか。どうですか、農政局というのは、そういうふうに仲原農協が新聞に出たというと、仲原農協だけについて調べるのですか。県信連なんかも調査委託もしておりましょうし、当然わかっていることなんです。そうでしょう。大臣、どうですか。そんな幼稚なことでできますか、答弁として。根本的な姿勢をもう少し正してもらわなければいけませんね。
  446. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 今後は、こういう事態があったときはすみやかに本省まで通達をせよという新たな通達を私のほうから出させます。したがって、もちろん御指摘のように、すぐその隣にあったなんていうことは、もう今後はそういうことのないように、県のほうからは事情を――われわれには立ち入りをすることのできる権利はないけれども、県のほうは報告する義務があるはずでありますから、今後はこういう事態が一つでもあったときはすみやかにこれを本省に通達しろということだけは、各県に向かって私のほうから通達をいたすことにいたします。
  447. 田中昭二

    田中(昭)分科員 それで一応了解いたします。私がさっきから言っていることは、そういう不正事件があったのにかかわらず、それはただ仲原農協だけのことを調べられたと思われないのです。そうでしょう。それをそういうふうに隠そう、隠そうとするところに私は問題があると思うのです。はっきり申し上げておきましょう。調べてください。同じ粕屋郡の中央農協から、二百万黒瀬観光のほうは借りている。これは黒瀬観光のほうの帳面ですから、私のほうはそれだけの裏づけもとっておりますけれども大臣、この農協の貸し付けについては、全然知らない人が農協から金を借りているようになっているのです。認めの印鑑だけ偽造されて、その近所の地域住民の、この問題に全然関係のない人が農協から金を借りたようになっている。そういう問題もありますから、先ほど員外貸し付けについてもその内容を言いなさい、こう言っておるけれども、ただ全体の金額だけで、内容はわからないというわけでしょう。そういうことでは、そういう問題が起こった場合に、そういう問題が起こらないように農協のほうでも手を打たなければならない、こう私は言いたいわけです。いいですね。  それでは、もう時間もございませんから、大臣のいまのおことばの、今後そういうことがあった場合にはそのような処置をとる、そういうことで終わっておきますが、この問題についてはもう少し調査されて、もう一回当局にお聞きしますから、それを約束いただきたいと思います。
  448. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 いずれにいたしましても、農業者の血の出るようなお金を預かっている農協でございまして、これに対しましては、今後、これらの問題に万全を期するため、都道府県に対しましては検査、監督を一そう強化し、またそういうような点があったならば、先ほど申し上げたように、さっそく本省に連絡するというように指導監督をしていきたいと考えております。
  449. 田中昭二

    田中(昭)分科員 終わります。
  450. 植木庚子郎

    植木主査 次は、美濃政市君。
  451. 美濃政市

    美濃分科員 今回農林年金を改正しようとしますが、その改正の中身はいずれ法案審議のときにやるのですが、予算の関係のある財源についてひとつ明らかにしておいていただきたい。  今回農林年金を改正しようとする内容を検討しますと、こういう年金という性格のものでありますから、長期的にかなり財源が不足するという計算になるわけです。しかしながら、単年度の財政調整補助金でこれを措置して今回法案改正を提案しようとしているわけで、自後の財源はどうするのか。またこの予算の審議をしたときに、いろいろ国庫負担率の引き上げあるいは事務費の引き上げということで、確定財源を得て給付率の改定をするということでお互いに努力をされたと思うのですが、それらが今回つかみ金の調整財源で改正するわけですが、自後の約束はどうなるのか、その見通しをひとつお聞かせ願いたい。
  452. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 お尋ねの農林年金につきましては、特に意を用いましてこれらの問題と取り組んだつもりでございます。したがって、昭和四十四年度における財源の調整補助もあるので、給付に支障を生ずることは考えられませんけれども昭和四十五年以降における農林年金の事業運営の推移を見つつ、年金財政に支障を生ずることのないように善処してまいる考え方でございます。
  453. 美濃政市

    美濃分科員 そうすると、いわゆる掛け金の引き上げは絶対しない、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  454. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 もちろんいろいろ事情がありまして人員が少なくなっていくだろうというようなことがあっても、掛け金の引き上げはしませんぞ、しないことだぞという確約をとってあるのでございます。
  455. 美濃政市

    美濃分科員 大体事務当局は検討されておると思うのですが、そうすると、補助金の引き上げはしないということを前提にすると、こういう性格上、私の計算では、年限を経過するとともにかなり給付率が多くなる。したがって、今回改正に要したものがいわゆる年金組合の財政欠陥ということになるわけで、まず第一点として、今回の改正によって、現時点でこれを計算すればわかるわけですから、現時点で発生したいわゆる責任準備金の不足額は何ぼになるのか。現時点で、この改正時点において責任準備金の不足額というものは計算できるわけですが、これは保険計数で計算できるわけですね。
  456. 池田俊也

    ○池田政府委員 正確な数字ではありませんけれども、概略二百億程度ではないかというふうに考えております。
  457. 美濃政市

    美濃分科員 そうすると、大体二百億不足する。これはある程度の長期の年限にわたって給付の欠陥が起きてくると思う。計算上は一時に発生したということが言えるけれども、具体的な給付にあたっては、年次別に財政欠陥が出てくると思うのです。たとえば昭和五十年ごろになると、現行の百分の十六という国庫補助額では、相当額の不足額を生じるわけですが、いつの時期に――いつまでもこれは財政調整、財源調整費で処置するという、これは年金という性格上から見ると、ことしとった措置をいまここですぐどうこうと言おうとは思いませんけれども、いわゆる総額で見込れる財源不足額の二百億というものを、一定の時期にはかなり高額になるであろうこの不足額を、いわゆる財源調整費で支出していくということは、非常に問題があると思うのです。したがって、国庫の補助率を百分の十六から二十に引き上げるとか、そういう確定措置が必要になってくると思うのです。そういう対策は、引き続き明年やるという予定になっておるのかどうか。
  458. 池田俊也

    ○池田政府委員 二百億ということを申し上げましたのは、先生御理解いただいたと思うのでございますけれども、これは御承知のように、過去勤務債務と申しますか、整理資源がございますので、そういう金額になるわけでございます。年金の財政といたしましては、必ずしも整理資源というものを全部積まなければならぬということではないので、これの利息相当分が一応積まれていくならば、それは年金としては一応健全である、こういうふうに一般に考えられておるわけでございます。私どもがいま御指摘の点につきましていろいろ検討いたしてみているわけでございますが、十年先と申されますとちょっと――大体年金の計算期間というのは五年というのが普通の考えでございますので、四十四年から始まりまして四十八年までということで御了承いただきたいのでございますが、いろいろ検討いたしましたわけでございますが、今回の制度改正によります掛け金の収入――本来ならば、掛け金の引き上げをいたしまして収入の増加をはかるのが、年金財政としては一番健全でございますけれども先ほど大臣からお答え申し上げましたように、掛け金率の引き上げはしない、こういうことにいたしておりますので、制度改正に伴う分の収入欠陥があるわけでございます。この金額は、私どもの計算では、この五年間に約五十六億円くらいではなかろうかというふうに計算をいたしております。それならば、それを一体どういうふうにして埋めるのかという問題がございます。それはただいま先生が申されましたように、一つ政府からの財政的な支出、これは従来でございますと財源調整という金がこれに当たるわけでございますけれども、その財政支出と、それからもう一つは、年金財政といたしましては、実は政府からの補助金と、それから組合員からの掛け金の収入のほかに、また別途の財源があるわけでございます。これはどういう財源かと申しますと、相当多額の資産を管理いたしておるわけでございまして、それの利子収入がございます。その利子収入というものは当然ある程度予定をいたしまして、事務費等にも使っているわけでございますけれども、なおそれをオーバーいたします利子収入があるわけでございます。私どもは年金の財政といたしましては、大体五分五厘という予定をいたしております。ところが、実際にはそれをかなり上回る利子収入があるわけでございまして、その額を計算いたしてみますと、この五年間に大体百二十億くらいの財源があるわけでございます。したがいまして、そのほかに自然増の支出があるわけでございますけれども、そういうものを考えましても、少なくとも四十八年度までにおきまして、基金の財政が非常にまずい状態になるということはない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  459. 美濃政市

    美濃分科員 いまの話はちょっとあれですが、私の手元にある資料で見ると、これは五分五厘というのはいわゆる利回り運用を見込んで給付財源としているわけですから、確実にこの運用益が五分五厘以上出るかどうかということは、これは問題があるわけです。利回りの全部をそれに見るということは、これはこのたてまえ上そういう計算は成り立たぬと思うわけです。たとえば五分五厘が七分一厘、七分に運用されたとすると、これは一分五厘しかございませんから、現在三十七万人で七百億でしょう、積み立てておるのは。その一分五厘といえば、大体十億程度のものですね。その中から、現在で六億数千万の事務費がかかっておるわけですね。その事務費に対する国庫補助は大体七%である。この年金事務をやる事務費の大宗は、五分五厘を上回る運用益に依存しておるわけですね。そうして五カ年間で百二十億も余裕が出るという、そんな計算は絶対ここに出てこないのですがね、全然ないとは言いませんけれども、これはまた今後公定歩合の引き下げとかそういう変動もございますから、これは五分五厘の運用益を給付財源として料率を設定している以上、それをこえたものをあまり見るということは、その中でなおかつ利回りで事務費を見込んでおるということになると、そういう計算はちょっと成り立たぬわけですがね。どうですか。
  460. 池田俊也

    ○池田政府委員 先ほど申し上げましたのは、事務費の金額等を実はしょって申し上げたわけでございますけれども、確かに現在七分一厘ちょっとに回っておると思いますが、それが将来あるいは七分になるかもしれないという御指摘、それはあろうかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、今回の制度改正に伴います五年間の掛け金相当額、これは五十六億程度、それから事務費の額はどの程度かかるか、これはまた見積もりようがあるかと思いますけれども、私どものほうで大体見積もっております金額で申しますと、五年間で二十数億ではなかろうかというような感じであります。先ほど申しましたように、かりに七分一厘といたしますと、五年間のそういう利差益と申しますか、それが百二十億円でございますので、五十六億とそれから一応業務経費二十八億といたしますと八十四億ぐらいになるわけでございますが、百二十億でなお三十数億かと思いますが、そのくらいのあれがあるわけでございます。もちろんそのほかに自然増の経費がございますので、それも無視できないわけでございますが、一方からいたしますと、当然政府はさらに相当額の財政支出をするというふうに私ども考えておりますので、それを合わせれば、大体年金財政としては支障なく運営ができるのじゃないだろうかと思うわけでございます。
  461. 美濃政市

    美濃分科員 どうもいまの計算はちょっと納得はできませんが、これはいずれまた法案審議のときに譲ることにいたします。いまの説明で、どうも財源計算のあれは了承するわけにいきません、計算が少しおかしいように思いますから。したがって、これはまず掛け金を上げないということを大臣は確認されたわけですから、この掛け金を上げないという原則に立つと、そう離れない期間に、ことしはやむを得ないとしても、つかみ金でことしは十分だと私も思いますから、いわゆる財源調整資金でなしに、正式な財源の改定を行なうという点について、大臣からひとつ方針を示していただきたいと思います。
  462. 池田俊也

    ○池田政府委員 私どもは、内輪話みたいなことになりますが、補助率アップについても実はいろいろと努力をしたわけでございますけれども、他の制度とのバランスの問題が実はあるわけでございます。これは先生も御存じかと存じますが、国公共済におきます補助率の問題、それ等との関係がございますので、農林年金についてこれを引き上げるということが、実は非常にむずかしかったわけでございます。その事情は、将来も残るわけでございますけれども、私どもといたしましては努力をいたしたい、かように考えております。
  463. 美濃政市

    美濃分科員 一応、本日はお疲れでしょうから、時間を割愛して以上で終わります。いずれ細部は法案審議のときにいたします。
  464. 植木庚子郎

    植木主査 次は、大出俊君。
  465. 大出俊

    大出分科員 たいへんお疲れのところのようでございますけれども、三十分しか時間がありませんから、けりがつかなければまた本委員会ででも、大臣の古巣でございますから、少し時間をかけて質問させていただくことにしますが、大臣、最近いろいろ騒ぎが起こるわけでありますが、公営ギャンブルなるものを所管をされておりまして、御心境のほどはいかがでございますか。
  466. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 このごろ競馬、競輪、いろいろなギャンブルについて、いろいろな角度からの御批判がございます。しかし、現在私たちの考え方は、いま率直にどうするという結論も出ておりません。しかし、いろいろまた検討してみる点もあるだろう、こういうふうに考えております。
  467. 大出俊

    大出分科員 いろいろな角度からいろいろな批判があり、議論がある、したがってそれなりに検討してみる、しかし結論は出ていない、こういうお話でございますが、たいへん苦慮されておるという感じがにじみ出ているわけであります。その限りでは、どうも私とあまり気持ちの上では変わらぬことになるというふうに思うのです。  ところで、きょうお忙しいところを警察庁の外勤課長の井口さんにもおいでいただきましたし、国税庁の法人税課長井辻さんにもおいでいただきましたし、理財局次長の谷川さんにもおいでいただいたわけでございます。たいへん恐縮でございますが、簡単にひとつ最初にお答えおきいただきたいのでありますけれども、競馬についてあるいは国営競馬についていろいろ言われるさ中に、どうも一年半の間に八億円もの脱税なんということが出てまいりまして、競馬ブームの陰にということなんでございますけれども、中身をいろいろ読んでみましたり電話をかけて聞いてみたりしました限りでは、農林省所管にかかわる問題点も多多あると考えるわけでございます。  法人税課長井辻さんのほうから、これは北海道の地元の税務署で調べた中身のようでありますけれども、大体八億円の脱税なるもの――差つかえない限りでけっこうですけれども、その根源、さらにこれがいま調査をされている最中のように書いてありますけれども、どんなことになりそうなのか。一体何が原因でかくのごとき八億もの脱税が出てきて、これは調べておられるようでありますけれども、一体どんなことに決着しそうでございますか、差しつかえない範囲でお答えいただきたい。
  468. 井辻憲一

    井辻説明員 ただいまのお尋ねの件でございますが、私どもといたしましては、ここ数年来の馬券の売り上げ等、競馬界全体の上昇ブームにもかかわりませず、競馬関係、特に北海道を中心にいたしました牧場の法人税、所得税の申告状況が非常に低調であるということから、一昨年秋以来、地元北海道の国税局及び税務署におきまして、これが調査を開始したわけでございます。そういたしますと、馬主との取引関係が非常に資金的にもたくさんございまして、それから連鎖的に馬主及びその間に立って仲介をいたしたりしております調教師というものまで調査を必然的にやらざるを得なくなりまして、特に馬主等につきましては、東京、大阪等の都会署を中心にその後調査を継続したわけであります。  最初の調査のきっかけといたしましては、北海道におきまして馬主から牧場に送られてまいります送金の関係が、架空名儀が非常にたくさんございまして、相当膨大な金額が動いておりますので、この架空名儀の送金関係を解明いたしまして、これによって馬主の法人税及び所得税の調査をやったわけでございます。その結果、私どもといたしましては、馬主関係で、これは馬主個人の所得及び馬主が関係しております――中小企業の社長さんが多いわけでございますが、そこの会社の法人税を脱税いたしまして、その会社の脱漏所得を個人の馬の買い入れ資金に充てるというふうな関係企業の脱税が一緒にくっついておりますが、馬主関係といたしましては約十三億三千万円程度の脱漏所得があることが、去年の暮れまでの調査で大体わかっております。それから牧場自体でございますが、これが四億二千万円程度。法人、個人両方でございます。それから調教師でございますが、これが三億一千万円程度。所得の脱漏といたしましては、法人及び個人を通じまして合計二十億七千万円程度でございますが、税額にいたしまして、ちょっと統計をはっきりとっておりませんが、推計六億の本税に加算税が約一億程度になると思いますので、合計七億円程度になるだろうと思います。  それで、現在のところまだ資料を全部解明しておりませんので、また持っておる資料もございますが、調査が非常に広範囲にわたりますので、今後なお調査を継続いたしまして、大口かつ悪質な脱税につきましては、今後もなお厳重な調査を続行いたしたいと存じます。私どもといたしましては、やはり取引形態の明朗化、ガラス張りと申しますか、架空名儀等の取引というものを払拭されて、明朗な、はっきりした取引にしていただいて、ひとつ帳簿につけていただくということを今後もなお強く希望し、指導してまいりたい、かように思っております。
  469. 大出俊

    大出分科員 たいへんお忙しいところをおいでいただきましたので、あまりお引きとめいたしたくないのでありますが、いまお話だけ承りましたが、私のほうで聞いたりしました中身とそう変わっておりませんので、あとはひとつお引き取りいただいてけっこうであります。  それからもう一つ国税庁関係でなくて、警察庁関係で外勤課長さんにお見えいただきましたが、これは井口さんのほうでおわかりいただいていると思うのでありますけれども、昨年、一昨年の国営競技場関係で起こっておりますいろいろな事故、その他につきまして――私、実は横浜におりますので、昨年の川崎の千五百人がたいへん大あばれをした事件などは実際見ておりますけれども、ひとつそこのところあたりの警察庁の調査の内容を、簡単でけっこうでございますが、どんなことになっているか、お答えおきいただきたいと思います。
  470. 井口孝文

    ○井口説明員 公営競技――競馬、競輪、オートレース、競艇全部合わせまして、昨年は三十八件、事件が起こっております。特にこの中で、昨年の五月に桐生の競艇場で千三百万円からの被害が出たというような事件もございます。その他、検挙者すべてで約二百七十人というような数でございます。なお、昨年は非常に多かった年でございまして、昭和三十九年ごろは非常に下火でございましたが、このところウナギ登りといったようなことになっております。
  471. 大出俊

    大出分科員 これは競馬人口なりあるいは国営競技場関係にふえてきた、俗にギャンブル人口といいますか、この方々の伸びが非常な速度で伸びているようでございまして、昨年度の全国の公営競技場の入場者数が、延べ九千四百万人というのですね。日本の総人口くらいの数になると思うのでありますが、したがって、そういう伸びに比例をしていろいろ事故がふえてくる。私のお隣の川崎の千五百人が、事務所など二むねを焼き打ちいたしました事件などもあります。この傾向というのは、最近この一、二年何べんか質問しようと思っておったことでありまして、質問したこともありますが、心配しておりました。どうも心配したようにどんどんふえる傾向にある。この傾向はお認めになりますか。
  472. 井口孝文

    ○井口説明員 具体的に数字で申し上げますと、戦後ずっとかなり多かったのでございますが、十年前、昭和三十四年に年間五十三件という非常に高い数字が出ております。その後ずっと下がってまいりまして、昭和三十九年には年間三件程度であったわけでございます。それが一昨昨年は六件、一昨年が十七件、昨年三十八件というところで、このところ非常な急上昇という実態でございます。
  473. 大出俊

    大出分科員 これはもう質問が出たようでありますから、その点を深く追及はいたしませんが、警察庁が自主警備を要望して紛争出動を断わろうというふうにお考えになったという理由になったのだろうと思いますが、そういうことかどうかという点。それからこのために相当な警察官を出動さしておられますね。全国で約十八万五千人という数になっておりますが、たいへんな経費であろうと思います。そこら含めて、出動を断わるということ、並びに相当な経費がかかるという点、この辺のところを簡単にひとつそうだということをお答えいただきたい。
  474. 井口孝文

    ○井口説明員 紛争事案が起きますれば、断わる断わらぬということはなしに、警察としては任務でございますので必ず出動しなければならないわけでございます。ただ、こういった紛争事案が生じないように万全の処置をしていただくということをお願いしてきておるわけでございます。十数年前から特に地方公共団体の主催でおやりになる競技、しかも法律にはそれぞれ秩序維持の責任を持っておるということが書いてあるわけでございまして、自主警備を極力強化していただくように、また警備のための施設を強化をしていただくということをお願いしておるのでありますけれども、どうも目に見えて成果があがりませんので、もっと早いテンポでやっていただこう、われわれにあまり依存されては困りますということを申しておる次第でございます。  なお、経費は都道府県の一般の経費の中でまかなっておりますので、このための経費は幾らということはちょっと出てこないと思います。
  475. 大出俊

    大出分科員 さらに、競馬に狂った高校生活などということで、月謝の使い込みから放火なんという聖橋高校ですか、いわば月謝台帳などの焼き払いを考えたなどという、いみじくも東京都知事美濃部さんが涙が出るという談話を出しておりましたが、これも事実でありますね。
  476. 井口孝文

    ○井口説明員 そのような事実は確かにあったようでございます。
  477. 大出俊

    大出分科員 そうなりますと、大臣、どうも競馬、競輪、競艇などというものは、あんまりこれから奨励すべきものではない。少なくとも東京都においても、あるいは横浜なんかにおいても、何とかこれはやめたいという方向をたどっているようでありますが、東京都知事が提起しておりますやめるという方向について――新聞記事でございますからどこまでほんとうかわかりませんけれども、警察庁の皆さんのほうもあえて反対の意思は表明しない、こう言っておられるのですね。つまり賛成だというに近い。実は中身がここに書いてあります。そうなりますと、天下の趨勢でもございまして、昭和元禄とは申しながら、あんまり感心した方向ではない、できればやめなければならぬ、財政事情その他いろいろございましょうが、こういう気持ちを私は持つのでありますけれども大臣はどういうふうにお考えでございましょうか。
  478. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 どうも先ほどもこういうような御質問がございましたが、公営競技の調査会の答申等もございまして、その趣旨に即して、少なくとも現状以上にこれを奨励するということは基本的には考えておりませんが、いろいろな面も十分考慮しなければならないというふうに考えております。
  479. 大出俊

    大出分科員 大体お気持ちはわかりました。警察庁の外勤課長さん、お忙しいところどうもたいへんありがとうございました。  そこで承りたいのですが、横浜に根岸の競馬場というのが古くからございます。これは慶応三年、つまり一八六七年にできたのでございまして、外国居留民が始めてしまったというのが歴史でございます。日本人が始めたのではないのでございまして、たまたまこれは競馬の好きな方が昔はあったのだと思いますけれども、明治十一年に、いまの西郷大臣のおじさんに当たる西郷従道大将が、春秋二回の競馬をここで開催するということをおやりになって、これが明治二十一年の横浜以外全国十一カ所の競馬場の設置というものとからみまして、大正十二年の競馬法の制定、馬券の発行ということに相からみまして、この根岸競馬というものができ上がってしまった歴史がある。ところが、この競馬場は、昭和十八年、一九四三年でございますが、閣議決定で競馬が全国で停止をされたとき以来、今日まで行なわれていないのであります。このときに、昭和十九年でございますけれども、海軍省が収用をいたしまして、二十年に米軍が接収をいたしまして、現在に至っておる、こういうわけでございます。この間、中山で競馬法に基づく横浜競馬というものが三回ばかり回数をそっちにつけておられるわけですから、財政的な面では開催できるわけでありますので、休止をしているということではありますけれども、そういう意味の影響はあまり考えられていないんじゃないか、こう思います。  そこで、防衛施設庁長官にわざわざお出かけをいただいて恐縮なんでありますが、例の昨年十二月の日米合同委員会等の中身からいたしまして、五十カ所の解除地域に入っていると理解しておりますが、よろしゅうございますか。
  480. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 そのとおりでございます。
  481. 大出俊

    大出分科員 これは建物、言うならば上ものですね、それの除去等の関係が条件になっておりますね。条件となっているかどうかという点と、条件になっているとすれば、それをのけるのにどれぐらいかかりますかという点を、ちょっと伺いたいと思います。
  482. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 これは昨年十二月、御案内のように、日米協議委員会で一応今後整理するものとして発表にはなりましたが、具体的なことは、今後合同委員会、もしくはその下部機関の施設委員会、あるいはこれを実行に移すところの調整部会で米側と協議しないと、具体的にどれだけのものかということがはっきりいたさないのでございます。実はただいまこれらの全体の施設の問題で、いわば早く返せるものから返してもらおうというのが、一番国民の実情に合うのではないかということで始めております。したがって、移転を要するものは少しあと回しになると思いますので、いまのところその点はわかりません。ただし、全部もし持っていくとすれば、相当の金額、二十二、三億かかるのではないかというふうに、われわれ一応憶測いたしております。ただし、これは先ほど申し上げたとおり、まだ合同委員会で具体的にどれだけ移すということは話し合いが行なわれておりませんので、推測にすぎませんことを申し上げておきます。
  483. 大出俊

    大出分科員 佐藤さんのおことばじゃありませんが、はやりの両三年ということのように承ります。  そこで山上さんひとつ承りたいのですが、ずいぶんこれは長い間接収されておりまして、たいへん地域も変わってしまった。横浜は、何しろ三十八年に、私の最初の選挙のときに百六十万市民だったのですが、いまは二百万をこしてしまったのですから、たいへんな発展度合いで、地域住民からずいぶんたくさん陳情も出てまいっておりまして、また防衛施設庁の横浜の久保施設局長さんのところに日参しているという実情も、実は長らくあったわけであります。そういう事情だという点をお認めいただけますか。そういうたくさんの地元の町内会その他から横浜の施設局に再三の陳情が出ていること、御存じでございますか。
  484. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 承知いたしております。
  485. 大出俊

    大出分科員 私は、したがって解除、つまり接収解除をするというところまでこれは施設庁の権限でございますから、そこから先は大蔵省なりあるいは農林省なりということになるわけでございますが、せめて長年の懸案でございまして、再三住民がお伺いしているのでありますから、解除にあたっては、それこそ条件ではございませんけれども、地域住民からかくかくしかじかのたくさんの陳情もこれありということを、やはり事情として付しておいていただきたい、事実でございますから。と申しますのは、昨年十二月の合同委員会で五十カ所ばかりの解除地域がきまったときの解除目的というのがございます。ずいぶんアメリカ側も気を配って、日本国民のいろいろな意味での不便、また要望、それに沿いたいという気持ちがこの中に書いてある。そうすると、必ずしも解除になったら競馬をやれということで解除したのじゃない、そう受け取らなければならぬという感じが、この解除目的等からするといたします。したがって、そこまでもというのじゃありませんけれども、そういうことが事実あるということは、たくさんの陳情があり、公共用地に使いたいという陳情もあり、地域も非常にいま狭くなってきておりますから、そこらのところを、解除に至る過程あるいは解除にあたって、やはりできれば付していただきたいという希望が私はある。これは希望でございますから、それ以上強くは申し上げません。実はそういう実情にある。  大臣、そこで承りたいのですが、まず、これは大蔵省と農林省の間に、二十三年だと思いますが、次官の相互の間で文書の交換がございます。これは私は電話で承りましたから、くどく申しません。申しませんが、中央競馬会に払い下げるのだというようなことがどうもやりとりをされておるということでございますが、簡単でけっこうでございますから……。
  486. 太田康二

    ○太田政府委員 先生御指摘のとおり、確かにこの競馬場の使用許可に関する件ということで、農林次官と大蔵次官の間に文書の取りかわしがあるのでございまして、一応当時の段階におきましては、もし――ちょっと詳しく申し上げますと、横浜競馬場の使用については、日本競馬会と横浜の国際レースクラブという両者から、実は大蔵省並びに農林省あてに競願が出ていたのでございます。これにつきまして、本邦競馬行政上の重要な問題でありますので、両者のいずれに競馬の施行を認めるかの決定に関しましては、農林省決定に一任せられたい、そして農林省決定した場合、その者に横浜競馬場の一括使用が許可せられることをあらかじめ承認されたいというような形での協議がございまして、それに対しまして、大蔵次官のほうといたしましても、当時の状況におきましては当省において異存がないというような意味の次官の文書の交換があった、こういう事実でございます。
  487. 大出俊

    大出分科員 ところで、そういうやりとりがあるようでありますけれども、二十年から今日まで、ずいぶん長い間時日の経過がございまして、状況変化もありまして、すぐそばには公務員住宅なども建っておりまして、先々また公務員住宅をというようなことにお考えなのかもしれませんけれども、したがって、私はよけいなことは申し上げる気はありませんけれども、実は港湾都市に関する法律どもある。たしか昭和二十五年法だと思いますけれども、ございまして、この法律等からいたしますと、そういう港であった地域の開発については、建設大臣が所管をいたしまして、年に一ぺんその状況の報告などを必要とするというようなことを書いてある法律もあります。したがって、そこらのことも考え合わせて、また山上さんもお認めになっておりますように、地域からたくさんの陳情もあることを前提にしていただきまして、できればこれは新たな角度から十分御検討をいただきたいという気が切に、ということになりますが、地域の気持ちでございますからするのでありますけれども、そこらのところを大蔵省の谷川さんのところは、どうお考えになりますか。
  488. 谷川寛三

    ○谷川説明員 この土地が収用になりました経緯等、先ほど大出先生のお話しになったとおりでございます。それからまた、ただいま農林省の方からお話がありましたとおり、二十三年当時、この土地をめぐりまして、大蔵、農林両省間にやりとりがございました。そういう経緯はございますが、状況が当時とは非常に違っておりまして、ことに土地問題等非常にやかましい問題になっておりますから、またいまお話しのように地元からのいろいろの御要望もあるということでございまして、これはまたひとつ現状におきまして関係の方々と十分協議し、慎重に検討いたしたいと思います。
  489. 大出俊

    大出分科員 横浜国際港都建設法という法律昭和二十五年十月二十一日付で成立いたしておりまして、これは私、前に何べんか取り上げたことがあるわけでございますけれども、「国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二十八条の規定にかかわらず、その事業の執行に要する費用を負担する公共団体に対し、普通財産を譲与することができる。」なんという法律まである。まであると申し上げておきます。直ちにそうしてくれといま申し上げるわけではありませんが、そういう世の中でございますので、しかもこれは国が責任を負わなければいかぬことにもこの法律はなっておりまして、それらの関係等もありますので、できれば、いまお話にございましたように、各方面の気持ちをひとつ参酌をいただいて、新たな角度から検討いただきたい、こう思っております。  さて、そこで農林大臣に承りたいのですけれども、競馬法なる法律のたてまえがございましょう。だから、この法律を所管する行政官庁の行政長官という立場になれば、法律がございますからという話を当然これは表に出さざるを得ぬお立場だということを承知いたしております。しかし、大臣自身のお気持ちが、世の中、国営ギャンブルをめぐりまして数々の問題が出てきておるさなかでもあり、どうもこれ以上ふやすということは、またそのために紛争を拡大するということは好ましからざること、こういう気持ちをお持ちのようにそんたくをさせていだたくわけでございます。どうも長年の町内会はじめ地域住民の皆さんの各種団体の要望が続いておりますから、ここで市長みずからがやめようと言っておる世の中に、さあ返還だ、競馬が始まるのだという騒ぎになったということになりますと、これは地域としても実はたいへんな騒動が持ち上がりかねない状況でございまして、競馬場にむしろ旗を立てて、農林省がそんなことをするならというような騒ぎになっても、これはまた妙なことになる。したがって、そこらをひとつかね合わせて色よい御返答をいただきたいのですが、大臣、いかがですか。あまり過去にこだわらぬで、ひとつ……。
  490. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 当競馬場の接収が解除された場合の使途については、いろいろな経緯があるのは御承知のとおりでございまして、接収後といいましょうか、二十有余年を経過しておるので、中央競馬の競馬場としてこれを使用するかどうかという点については、関係者もたくさんあることでございまして、今後十分検討を加える必要があるだろう、このように考えております。
  491. 大出俊

    大出分科員 どうも山上さん、たいへんお疲れのところすみません。ありがとうございました。  慎重に検討する必要がある、こういうふうにいま御答弁いただきまして、あと二分くらいしか時間がございませんが、あまりどうも農林省畜産局の皆さんと、これは所管ですからやむを得ませんけれども、日本競馬会の方々のほうと話がどんどん進んでいって、どうもそこらのほうに働きかけるなどということになってまいりますと、実は参事官にお電話をいたしまして――参事官でしたか、平松さんに実は私お電話をして承ったときに、これは非公式な話ですからとやかく申すつもりはありませんが、何となく――電話ではもう少しはっきりしておったのですけれども、ここで私が申し上げるのは何となくと申し上げますが、何となくどうもそういう準備が、解除されるぞ、そうしたらという間髪を入れずくらいの気持ちで、競馬ブームですから、しきりに日本馬匹なんとかいうほうも一生懸命になるかもしれません、しれませんが、そんな感じのやりとりがあるやに聞こえるのです。それはまことに、せっかくのいまの雰囲気を逆にしてしまうという気持ちもいたしますので、そこらはひとつ慎重に扱っていただいて、何よりも、谷川さんおっしゃっておるように、時日の経過もあり、複雑な環境の変化もありいたしますし、米軍の解除目的もございますし、また大都市からの要望もございますしいたしますので、それから国営ギャンブルをめぐる昨今の各方面からの意見などもございますので、かつまた三回中山につけているという現実もございますので、法律法律として、ぜひそこのところはひとつ慎重な御配慮をいただきたい、こう考えるわけでございますが、念のためと申しますか、重ねて御答弁をいただきたいのと、もう一つ先ほど井辻人税課長さんに御答弁いただいた中で、どうも庭先取引などということが子馬等について行なわれるというのは、これはたとえば中央市場等における相対取引みたいなもので、公正のせりをはずすわけでございますから、明確なやみでございます。そういうようなことがやたらに行なわれておりますと、調教士、騎手まで入っておる、あるいはまた大会社なんかの金で馬を買っておるというようなことをやっておるということになって、それが税金の申告の面からは全部意図的に抜けている。こんなことになっている一番の根源は庭先取引その他なんでございまして、そこらのところもあわせてひとつ御配慮いただいておきたいという気がするのですけれども、その二点について。
  492. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 はっきりと御回答申し上げるという段階が、どうも非常にむずかしいのでございます。というのは、たとえば競馬法にも、競馬場として定められておるというような一点がございまして、この競馬場が在日米軍に接収されてあるのですから、こういう点も考慮に入れて、軽々にこういたしますということを、精神はいずれにあろうとも、申し上げられない段階にあることを御了承願って、つとめて慎重に検討を加えるつもりでございます。
  493. 大出俊

    大出分科員 大臣のいまのむずかしい時期にある御答弁としては、たいへん御配慮いただいた御答弁だと存じますが、私の申し上げている真意のほどはおわかりになったものと理解したいのでございますが、よろしゅうございますか。
  494. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 その点も十分に検討の中に入れる考えでございます。
  495. 大出俊

    大出分科員 ありがとうございました。終わります。
  496. 植木庚子郎

    植木主査 次は、木原実君。
  497. 木原実

    木原(実)分科員 きょうは何か競馬の問題がずいぶん御議論があるようでございますが、私も引き続いて競馬の問題を二、三お伺いをしたいわけです。  まず、中央競馬会の運営その他の問題について触れて御質問申し上げたいのですけれども、たいへん売り上げがふえたようなんですけれども、ことしは総売り上げがどれくらいで、そうして国庫への納付金がどれくらいか、内訳をまず教えてください。
  498. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 私もまだ就任早々でございまして、あまりそういうこまかい点のほうはよく存じておりませんので、局長説明をいたさせます。
  499. 太田康二

    ○太田政府委員 先生も御承知のとおり、中央競馬会は日本中央競馬会法の定めるところによりまして、その発売した勝ち馬投票券の売得金の一〇%に相当する金額を第一国庫納付金として国庫に納付することといたしておりまして、売得金の約七五%が払い戻し金として的中者に払い戻しされる。したがいまして以上の残額の約一五%というものが競馬の施行その他日本中央競馬会の運営等の経費に充てられておるのでございますが、この金額のうち、さらに毎事業年度の剰余金につきましては、その二分の一、半額を第二国庫納付金として国庫に納付するのでございます。  そこで四十二年度の決算の数字で申し上げますと、四十二年度の総売り上げ高が千五百五十八億円でございまして、その際国庫に納めた金額について申し上げますと、第一納付金として約百五十三億円、それから先ほど申し上げました第二納付金でございますが、約三十四億円、計百八十七億円が国庫に納付されたのでございまして、ただいま申し上げました千五百五十八億円の約一二%、こういうことに相なっております。
  500. 木原実

    木原(実)分科員 この納付金につきましては、使途がおのずから定まっているわけですが、この使途はおおむねどういうことになっているのですか。
  501. 太田康二

    ○太田政府委員 国庫納付金の使途につきましても法律上定められておりまして、その四分の一を社会福祉事業の振興のために必要な経費に充てる、残り、すなわち四分の三が酪農振興をはじめとする畜産の振興のために必要な経費に充てるということが、日本中央競馬会法の第三十六条に明記されておるのでございます。
  502. 木原実

    木原(実)分科員 最近ギャンブルの廃止というようなことがたいへん一つの課題になりまして、これは当然特に国のタッチをする側面についてもやはり考えるべき段階にきているのじゃないかと思います。国が監督をして施行いたしております競馬につきましては、それぞれ法の定めるところがあり、やってまいったわけなんですが、あらためて考えてみまして、これは大臣にお伺いしたいのですが、いま競馬をやるという大義名分は、一体何なんですか。
  503. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 大義名分といいましょうか、第一は、先ほどもお話申し上げたのでございますが、だいぶ時代おくれだといわれておりますけれども、私たちのほうは、そうばかりはとれないだろうということで、馬事の振興はもちろん含まれておりますし、国民の健全な娯楽、こういう点と二点ありますし、あとはまた財政上に寄与する、こういうような三つを取り上げてあるわけでございます。
  504. 木原実

    木原(実)分科員 そうだろうと思うのですが、財政上につきましては、いまお聞きしました数字、今日の予算の規模からいいますと、これは微微たるというとたいへん語弊がありますけれども、それほど国が競馬をやってその上前を多少もらわなければどうにも穴が埋まらぬという、そういう事情はおそらくないと思いますね。それから馬事の振興ということなんですが、これも昔から、私ども存じておりますのは、戦争中は軍馬の改良とか、その前には絶えず馬匹の改良とかいろいろなことがいわれてきたわけなんですが、これも今日の状態の中では、それは酪農振興はある程度わかりますけれども、馬事の改良というのは、これはまたどうも大義名分に欠けるような側面がある。そうしますと、残るところはやはり大衆娯楽、こういうことがたてまえにもなりますし、実質もそうなっていると思うのです。そうなりますと、健全な大衆の娯楽を提供するんだ、こういうふうにやはり割り切ることはできませんか。
  505. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 馬事の振興は、いま国際的にお互いが馬事改良という点について各国とも競っておることは、御承知のとおりでございます。しかし、これが御指摘のように、昔のような農耕に使うという意味でなくて、品質という――馬の品質というのがあるかどうか知りませんけれども、そういうような点について競っておる。なお、近く日本でも、各国集まりまして、そして日本の馬匹はどの程度まで振興しているかというような点の競争もあるわけでございまして、そういうような点からいきますと、やはり馬事の振興という点が含まれていくだろう、こういうふうに考えるのでございます。したがって、現在の競馬というものが、もっと娯楽に、ほんとうに一家こぞって行けるように、国営の競馬自体はある程度はそういう点には十分留意してある点だけは認めてもらうことができるだろう、こういうように考えます。  最後の一点は、財政というような点についてのいろいろな振興策には、かなり寄与していることがあるだろう、この点はさらに認めてもらうことができるだろう、こういうふうに考えられます。
  506. 木原実

    木原(実)分科員 これはまわりくどいようですけれども、馬事の改良につきましても、大体レースに伴う馬の改良という側面でございまして、そうなりますと、やはりいろいろ目的その他のことについてうたってあるわけですけれども、私が申し上げたいのは、娯楽なら娯楽で割り切って、その上でやはり何か存続の問題というものを考えていい段階に来ているんじゃないか、こういう感じがするわけなんです。それに付随して何がしか国がタッチをすれば、やはり納付金を召し上げるとか、いろいろな側面が出てくるわけですけれども、この段階に来ればギャンブルとしての競馬そのものの存続が世論の中で問われている、こういう段階ですから、存続をするならするで新しい理念構成、そういうものも必要ではないのか、こういうことなんです。それならばはっきりと健全な娯楽の要素を伸ばしていくんだ、こういうふうに割り切ればそこから次の展望も開けてくるのではないのか、こういうふうに考えるわけなんですが、いかがですか。
  507. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 いずれにいたしましても健全娯楽に持っていきたい、そうすべきである。たとえば、競馬を最初にやった先進国といいましょうか、そういう国々も、そういうところに重点を置いてある。といたしますと、それを行なおうといたしますと、どうしても馬事改良というところが重点にやっぱり並行して行なわれていかなければならないだろう、こういうふうに考えます。しかし何といっても、健全娯楽に持っていくというのには、環境というものがまず第一の条件でなければなりませんので、これらにはずいぶん留意はしておりますけれども、さらに留意をして、そうして一家こぞって一日のレジャーを楽しむというような方向に持っていくことがその目的でなければならないだろう、こういうふうに考えるのであります。
  508. 木原実

    木原(実)分科員 おことばを返すようですけれども、一家そろってというのも、これは少しオーバーだと思うのです。一家そろわなくても、すでに競馬人口が一千万といわれている段階でございます。私は、たまたま中山競馬場の近くに住んでおりますが、とても一家で行くような状態ではないわけなんですよ。ですから、これはあまりとってつけたようなことをおっしゃらないほうがいいんで、むしろ娯楽なら娯楽で割り切って、やはり娯楽として改善をしていく要素というものが、先ほども同僚の大出委員が若干触れていたようでございますけれども、施設の問題にしてもかなりあるのじゃないか。そういう側面の問題が残るので、ただ法律のたてまえもあるし、農林省が監督をするたてまえの中では、財政の寄与であるとかあるいは馬事の改良であるとか、そういうやや副次的なものがあわせうたわれているために、何か馬券を買うのも国のためなんだというようなあれが残るわけなんですが、やはりそれはそれで競馬というのは本来健全な娯楽なんで、ほんとうの娯楽のあり方はこうなんだという理念を、少なくとも国がタッチしているわけなんですから、示さないと、これはやはり競馬人口がふえればふえるほど弊害の側面が出てくるわけなんですから、その辺の理念を私はあらためて問うているわけで、いま何も直ちに廃止をしろという前提でものを申しているわけじゃないのです。いかがですか。
  509. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 中山にお住みとは知りませんで、たいへん失礼をいたしました。いずれにいたしましても、御指摘のように健全娯楽の方向に進まなければならない、これだけは申し上げられると思うので、したがって国営競馬を廃止するということはとうてい困難なことだと思いますので、御指摘のような方向に向かって大いに善処すべきだということだけは申し上げられると考えられます。
  510. 木原実

    木原(実)分科員 たいへん自信を持ったおことばなんですが、それにつきましても今度は地方競馬との関連が若干出てくるんじゃないかと思うんです。地方の場合には、確かに財政的な寄与という側面があると思います。これは国がタッチをする場合と、その辺がいまの段階で質的に違うと考えられるわけなんですが、そういうことと考えあわせまして、これはいつまでも国がタッチをしていくものなんですか。たいへん自信のあるおことばでしたけれども、何か開催については、地方にあるいは財政的な側面でおろしてやるというような方向は考えられないわけですか。
  511. 太田康二

    ○太田政府委員 ちょっといま御質問の……。
  512. 木原実

    木原(実)分科員 もう一度申し上げましょう。つまり健全娯楽を提供するんだ、こういう側面で国としてはなかなかこれを放すわけにはいかないという大臣の御答弁があったわけですが、ただ地方自治体等が主催をする競馬等については、実際問題として財政的な寄与という側面、ウエートがまだ高いという側面があるわけですね。そういうことも考えあわせて、将来の問題としてやはり国がタッチをする範囲というものを限定をして、主催県その他は自治体なら自治体におろしていく、こういう方向というものは考えられないかどうか、こういうことです。
  513. 太田康二

    ○太田政府委員 先生も御承知のとおり、現行競馬法によりますと、いわゆる日本中央競馬会が開催いたしておりますところの中央競馬と、都道府県が開催いたしておりますところの地方競馬、一部市町村も指定市町村ということで実施いたしておりますが、二つがあるわけでございます。そこで従来日本中央競馬会の前身として日本競馬会というのがございまして、民営で実施しておりまして、その後戦後特別会計で直営で実施したこともあるわけでありますが、日本中央競馬会は国の出資になる特殊法人でありまして、現在これにいわゆる中央競馬ということで競馬を開催せしめて、農林省で監督している、こういう実態にあるわけであります。そういった経緯もございますので、なおいまにわかに直ちに現在の日本中央競馬会を解体をして、これを地方公共団体に移して実施せしめるということまでは考えていないというのが率直なところでございます。
  514. 木原実

    木原(実)分科員 そこでお伺いをしたいのですけれども、この中央競馬会の役員構成というものですね、これはどういうことになっているんですか。役員構成といってもいろいろですが、役員の中に監督の衝に当たる農林省の出身の方が非常に多いという話を聞いておるのですが、いかがでしょう。
  515. 太田康二

    ○太田政府委員 現在、日本中央競馬会の役員は、理事長が一名、副理事長が一名、それから常務理事が三名、理事が五名、監事三名、計十三名の役員がおるわけでございます。そのうち、こういった役員のうち農林省出身者で直接役員となっている者――直接役員となっていると申し上げますのは、要するに日本中央競馬会の職員期間を経ないで役員に任命された者でございますが、ただいま申し上げました十三名のうち五名でございます。
  516. 木原実

    木原(実)分科員 私は、実は内閣委員なものですから、どうも役所から天下りの問題その他の問題が常時あるわけですが、このいまおあげになりました理事長さん以下――たとえば理事長さんというのは、どれくらいの給与を受けていらっしゃるのですか。
  517. 太田康二

    ○太田政府委員 他の政府関係機関との均衡も考慮して、給与につきましては給与規程で定めまして、農林大臣の認可を受けてきめておるわけでございますが、現在給与は理事長は四十一万円、副理事長が三十四万円、常務理事が二十八万円、理事が二十五万円、監事が二十三万円、こういった実態でございます。
  518. 木原実

    木原(実)分科員 退職金の制度その他があるのですか。
  519. 太田康二

    ○太田政府委員 ほかの政府関係機関と同様、退職金の制度はございます。
  520. 木原実

    木原(実)分科員 そういたしますとこの退職金は、たとえば理事長でどれくらいになるわけですか。
  521. 太田康二

    ○太田政府委員 先ほども申し上げましたように、他の政府関係機関との均衡をも考慮して定めておるわけでございまして、大体本俸の六割五分ぐらいに在勤年数がかかったものが退職金というふうに考えております。
  522. 木原実

    木原(実)分科員 先ほどお話しありました理事長さん四十一万円という給与は、いわゆるボーナスその他の手当は含まれていないわけですね。
  523. 太田康二

    ○太田政府委員 これはボーナス等は含まれておりません。
  524. 木原実

    木原(実)分科員 決して多いというようなことを言いたいことはないわけですけれども一つは、確かに業務の関係があるし、地方競馬会との関係が密接だという側面もあるし、農林省出身の方が十三名中五名を占めるということは、これは問題にすればいろいろあるような感じがするわけです。ただ、役員の中に、私はやはり一般論として監督官庁の出身者が役員の中で、たとえば十三名中五名を占めるというようなことはいかがであろうか、こういう疑念を持つわけです。他の政府機関についても同じことなんですけれども、これについてのいろいろな風聞もわれわれは聞くわけです。ふところの中に入って探るようなことはあまりしたくありませんけれども、どうも割り切れないことも実はあるわけです。  それから給与の問題につきましても、確かにいま他の政府機関との均衡とおっしゃいましたけれども、全体を通じて必ずしも高いとは申しませんけれども、しかしながら現在の現職の公務員の給与水準からいきますと、はるかに優遇された条件になっておる、こういう問題もあるわけなんです。  そこで私のお伺いいたしたいことは、そういう役員構成でそういう給与を受けて運営をされておるわけなんですが、中央競馬会が指導をする全体のいろいろな雇用関係があるわけです。馬主は別にしまして、調教師あるいは騎手あるいは馬丁といいますか、それらの人たちの給与関係、それから雇用関係というものがどうも必ずしもすっきりしない、そういう状況があるわけです。そうしますと、上のほうばかり――どうもたいへん企業としてはもうかる仕事なものですから、給与がある程度いいのはわかりますけれども、全体としてどうも雇用関係が近代化していないじゃないか、こういう問題に実はつながってくるわけなんです。  私がもう一つお伺いいたしたいことは、ともかく一番はなやかなこの仕事の中で、一番下積みになっておる人たちの給与関係あるいは雇用関係、こういうものは一体どういうことになっているのですか。
  525. 太田康二

    ○太田政府委員 先生も御指摘のとおり、競馬関係者の雇用関係で最も問題になりますのは馬丁の関係でございまして、馬丁は御承知のとおり調教師との雇用関係に基づいて、馬の飼育管理に当たっておるのでございますが、実は従来ともこういった雇用関係が非常に前近代的な雇用にあるということで、去る昭和三十六年の公営競技調査会の答申でも、その近代化をはからなければならないということが指摘されておるのでございます。そこで中央競馬会といたしましても、馬丁等の労働条件、給与の改善等につとめまして、現在馬丁さんが受けておられます給与のうちの約二五%程度の助成を競馬会が行なっておるのでございますが、それ以外に住宅とか共同浴場とか食堂、集会所等の設置を行ないまして、厩舎関係者の福利厚生面の充実につとめておるのでございまして、すでにこの関係で約八億程度の金も日本中央競馬会を通じて出ておるような次第でございまして、次第にその内容が改善されておる。かつてに比べますと、現在におきましては著しく向上してきております。  なお、労働条件の問題でございますが、労働条件につきましては、昭和四十一年から週休制が実施せられておりますとともに、就業規則につきましても、昭和三十五年から逐次制定を見ておりまして、現在中央競馬会関係で馬丁さんが千九百人ほどおるわけでございますが、全員が就業規則のもとに職務に従事しておる、こういった実態にあるわけでございますが、なお今後ともその雇用関係あるいは待遇関係の改善向上につきましても指導につとめてまいる所存でございます。
  526. 木原実

    木原(実)分科員 確かに最近改善されておるというふうに実は見るわけですが、御答弁にもありましたように馬丁が一番下積みの仕事をしているわけなんですが、雇用主が調教師である。それに対しまして、いまおっしゃいましたように中央競馬会が住宅、集会所あるいは共同浴場等を提供している。こういうわけで助成の側面はかなりあるのですが、実際の問題として調教師はどうも雇用主としての当事者能力がない。ないからこういうことが出てくる。馬主から払われた金をもらうのでしょうけれども、その中で調教師が馬丁を雇う。昔からのしきたりその他もございまして、いままではそれできたのですけれども、どうもいつも問題になりますのは、調教師の団体としてもあるいは調教師さんとしても、馬丁の人たちとの間でトラブルになった場合にどうも当事者能力がない。そういう側面がよく問題を複雑にする原因になっているわけなんです。ですからこれは将来の問題としましてこれがすっきりするためには、やはり中央競馬会なら中央競馬会が雇用主として一本化していくということは考えられないものですか。
  527. 太田康二

    ○太田政府委員 馬丁の職務内容につきましては先生も御承知のとおりの実情でございまして、中央競馬会の職員にするということになりますと、身分関係は確かに安定するというメリットもあるわけでございますが、逆に、何と申しますか、サラリーマン根性で能率の面で問題も出てくるのではないかというようなこともございまして、これらの問題を含めましてこういった問題につきましてはさらに検討したい、かように考えます。
  528. 木原実

    木原(実)分科員 これはぜひ考えてもらいませんとね。おそらく進上金などのことを言っていると思うのですが、確かにそういうことがありまして、一種の職人さん的な気風で働いているというような側面があると思うのです。しかし、いつまでもそれでもつものだろうか、こういう感じがするわけです。特に若い人たちが、どんどんというわけではありませんが、入ってきだしますと、自分の馬がたまたま入賞したから十万円進上金をもらったというだけではどうもちょっと割り切れない、こういう重労働の側面もありますから、これはぜひ将来の問題として何か考えていただきたいということと、それから住宅等についての助成その他をしておると言いますが、まだ、たとえば中山競馬場あたりでも厩舎の中に家族持ちの馬丁が同居をしておる、こういうような姿があるわけなんです。一昨年でしたか、たまたまそこの馬丁さんの子供が自分の家の前、つまり厩舎の前で馬にけられてなくなるなんていうような事件があったりいたしましたが、これも、馬のそばで寝起きをしてめんどうを見るのが馬丁さんの昔からの仕事ということになっていたのですが、第一非衛生的ですし、危険もありますし、どうにもならないわけですよね。だからもし住宅の助成をするというんならば、これは方針としてせめて厩舎と住居を分けてやるくらいの配慮をして指導をしてもらいたいと思うですが、いかがでしょう。
  529. 太田康二

    ○太田政府委員 雇用関係の近代化につきましては、先生御指摘のとおり今後なお検討をいたしたいと思います。先生御指摘のとおり厩舎内に住んでおりますのは、大体原則として馬丁でも独身の方がおられるわけでございまして、われわれはそういった面も含めまして、競馬場の周辺の環境衛生問題あるいは競走馬の調教の強化の問題、さらには競馬場内の混乱を避けるというようなことで、実はわれわれトレーニング・センター、トレーニング・センターと呼んでおるのですが、競馬場外に調教専用施設の設置を進めておるのでございまして、現に関西地方では栗東にその計画をもっていま仕事を進めておるところでございます。関東地方におきましても現にその施設を茨城県に設置すべく現在土地の取得に当たっておるわけでございますが、そういったことによりまして馬丁さんたちの住宅問題等につきましても十分解決をはかってまいりたい、かように考えております。
  530. 木原実

    木原(実)分科員 最後に一つ。他にトレーニング・センターをつくる計画があるということを私も聞いておりますけれども、中山競馬場もこれはもうどうにもなりません。開催日がふえまして年がら年じゅうやっているんですね。日曜日なんかは私の車を外へ出そうと思っても動きがつかないわけですよ。昔はみんな電車か自転車で来たわけですけれども、それがいまはみんな車で来るということで、地元に残るのは排気ガスだけだという始末なんです。この自動車置き場に現に困っておりましてね。ギャンブルが栄えるのは大いにけっこうな側面もあるのですが、そういう点については、これは変な話ですけれども、トレーニング・センターができるという機会に、きちんとした整備をやりませんと、さっきの大出君じゃありませんけれども、やがて地元もあの競馬場をどこかへどいてくれというのは、これは旗一振りすればすぐ火がつくような状態なんです。以前は環境が非常にいいところだったのですけれども、もうそれだけに周辺が住宅地になってきておりますからね。そういう問題がありますので、これはひとつぜひ御考慮の中に入れていただきたいということです。  それから、最後になりますけれども、やはり最初の問題に返りますけれども、これは大臣、ギャンブル廃止という問題について、私たちもせっかく政治的な方針というものもこれから考えて、検討してもらいたいという段階なんですが、いずれにしましても、やはり存続は政治的にあるいは世論の中で問われるという問題が出てきたものという事実、それから、そうなりますと、存続をしていく大義名分についてきちんとした方針を大臣の代で考えていただきたいということ。しかもその中で、たいへん売り上げその他が上がって盛んにはなっておりますけれども、それに伴う弊害とあわせて、それはやはり仕事に従事しておる人たちについての施設あるいは雇用関係その他が必ずしもまだ十分に近代化されていない、こういう側面がありますので、一連の競馬にまつわる改善策について御検討をいただきたいと思うのですが、どうでしょう。
  531. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 木原さんが中山だということでは、もう何も申し上げませんが、いずれにいたしましても、みずから御体験をなすっておるお話を承りまして、まず第一番に競馬場周辺の環境衛生、特にこの点は注意しなければならない問題であろうと思いますし、調教師ですか、ただいまお話しの調教の強化だとかあるいはトレーニングというような点でありますが、これらの点には私も最も意を加えまして、そうして御期待に沿うような方向に向かって努力いたします。
  532. 植木庚子郎

    植木主査 次に、斎藤実君。
  533. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、最近ソ連の漁船団によりまして銚子沖あるいは伊豆沖にサバ漁が非常に被害を受けているという事実が非常に論議になっておりますので、この点について政府でも外務省を通じてソ連大使館に善処を要望したというふうに伺っておりますが、その後具体的にどういう要望をされ処置をされたかについて、最初にお尋ねします。
  534. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 過日来公明党からの御質問もございまして、その後さらに外務省を通じましてソ連側に申し込んでございます。  経緯につきましては、長官から御説明申し上げます。
  535. 森本修

    ○森本政府委員 先般来から種々お答えを申し上げておりますが、例の伊豆沖の漁場は、わが国としては、資源保護の観点から、まき網の漁法は自粛をしたりあるいは禁止をしたりということになっております。そういうわが国がとっておりますところの資源保護の措置に、ソ連側でも協力をしてもらいたいということで申し入れをいたしておるということでございます。
  536. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ソ連大使館側の回答はいかがでしたか。
  537. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 私がソ連大使館の首席参事官を外務省に招きまして、日本漁民が一本釣りということで自主的に規制をしておるのであるから、これに対してソ連側も十分に協力をしてほしいという旨を要請いたしましたその場で、当該首席参事官は、ソ連側は領海は侵犯しておらない、漁族資源の保護については、十分にかねて注意はしておるが、本日の申し入れの内容はしかるべき本国の機関に伝達する、このように申して帰りまして、それ以後特に回答といったようなものは参っておりません。
  538. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 伊豆沖のサバについて抗議を申し込んだわけですけれども昭和四十一年、二年、三年と、ソ連あるいは北朝鮮、韓国等が、北海道周辺について非常に操業をしておる事実もあったわけですが、こういうことについて、いままでソ連に要望、善処したことがありますか。
  539. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 ソ連漁船によりまして、日本漁民の漁網の被害あるいは漁船の被害、そういうような格別の被害がございません限り、抗議ないし注意を喚起するというようなことは、私が記憶いたしている限りいたしたことはございません。
  540. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は昭和四十二年の農林水産委員会でも指摘をしておきましたけれども、今回の伊豆沖のサバ漁については、大きく政府でも取り上げて要望しております。  昭和四十二年、三年、これも北海道の十勝沖で一万トンの母船が二十数隻と、二百トンから二百五十トンの独航船が二百十隻という、ものすごい船団で漁をしているという事実があったわけです。これは北海道庁の監視船も認めているわけです。  そういったことで、いままで被害はずいぶん受けているわけです。これについて一ぺんも善処を要望しないというのはどういうわけです。
  541. 宮沢泰

    ○宮沢説明員 ソ連漁船によりまして日本漁民が不当に被害を受ける、ないしは日本の領海が侵犯される、それ以外につきましては、公海における漁業と考えまして、ただいま申し上げましたとおり、今日まで先方が公海において漁業をしております限り、私のほうで存じております範囲では抗議をしたことはございません。   〔主査退席、湊主査代理着席〕
  542. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 農林大臣にお尋ねしますが、大臣も御承知のように、昨年のソ連のサンマ漁というのは大体五万トンである。ソ連の新五カ年計画の最終年度の一九七〇年には二十五万トンの計画というものを持っているわけですね。二十五万トンという数字は、日本側の昨年の実績が二十二万トンですから、これがわが国の周辺で操業するということは、わが国の沿岸漁民にとっては重大な影響もあるし、資源保護という立場から重大な問題なんです。しかも、私が先ほど申し上げましたように、北海道沿岸沖から三陸沖、銚子、それから今度の伊豆沖というふうに、ソビエトの日本近海に対する操業の態度というものは、この数年来見れば、一貫して今後続くのではないかというふうに私は考えるわけです。こういう日本の沿岸漁民が何らかの影響を受けているということに対して、やはりこれは何か考えなければならない時期にきているのではないかと思うのですが、大臣いかがでしょう。
  543. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ただいま外務省からもお話がございましたように、公海においての漁業ではございますけれども、サンマの漁になってまいりますと、サンマは日本の近海の公海に入ってまいりますときには、もうすでにこれらは産卵期に変わっておる、こういうことになりますと、資源保護という点については一応お話は申し上げられる段階であろうと思うのでありまして、ソ連も常に資源保護だ、資源保護だということでございますので、今後そういうような事態があるとするならば、正式に資源保護という点から協力を願うように、一応外務省には申し上げるつもりでございます。
  544. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 日本は、御承知のように領海三海里ですから、それ以外外国船が操業しても文句は言えないわけです。しかも、わが国の沿岸漁民というものは日本の規制を受けておる。ここに非常にギャップがあるわけです。一体これをこのままにしておいて、将来もっともっと外国船が日本の沿岸に対して操業を続ける場合は、これは沿岸漁民にとって生活上の非常に重要な問題になってくる。聞くところによりますと、善処を要望しても、領海以外は公海だ、自由だ、こういうふうにいわれれば、それでもう取りつく島がないのじゃないか。資源保護ということを申し入れた、それが何らかの改善策にならなければ、一体これはどういうことになるのですか、農林大臣お答え願いたい。
  545. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 ただいま申し上げたとおり、たとえば伊豆沖のサバ漁の問題を申し上げましても、わがほうといたしましては資源をいかに保護するかという、特に産卵期にあるというようなこともございますので、これをまき網を許さないで一本釣りを許しておるというような実情でございます。こういう実情でございますので、いかに公海であろうともお互いさま、公海はソ連も権利があるであろうけれども、わがほうといたしましては、特に近海であり、こういう上に立って資源保護をし、そしてその保護の上に立った漁獲を永年性を持たせようという考え方でございます。こういう観点から考えましても、ただいまお話しのような点については、今後さらに十分外務省を通じて意のあるところを理解していただきたいというように考えております。
  546. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 二、三年来のソビエトの日本近海に対する操業の実情を見ておりますと、だんだん大型になってくる。一向に態度が改まっていないわけですね。大臣が言われるように、善処を要望し、外務省を通じて交渉しておっても、これから先日本の沿岸漁民が安心して操業できるということは不可能ではないかと私は思うのです。どうでしょうか。
  547. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 お説全くごもっともだと申し上げたいと存じますので、十分意のあるところを今後理解していただくように、さらに強く外務省を通じましてお話し合いをしていただきたいというふうに考えておるだけでございます。
  548. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 日本沿岸漁業を保護するためには専管水域を設定すべきである、こういう世論が相当強くなってきているわけですが、これに対してはどうでしょうか。
  549. 森本修

    ○森本政府委員 そういう意見が最近、特にソ連船の日本沿岸に対する操業を契機にしまして、たいへん強くなってきておるということは、私ども承知をいたしております。ただ、従来日本側がとってまいりました国際的な立場といいますか、主張というものもございます。   〔湊主査代理退席、主査着席〕 それからまた、漁業関係としましては相当遠くまで、各国の近くまで行って漁業しておるといったような関係もございます。それからもう一つは、やはり客観的に見まして、あるいは最近のそういった外国漁船の操業状態というものを見まして、たとえば十二海里の専管水域なり漁業水域を置くことがどの程度効果的であるかといったようなことも考えなければならぬというふうに思います。したがいまして、私どもとしては、そういうことを十分慎重に検討する、しかし情勢としましては、最近のように継続的に外国漁船が日本の近海に操業するということは、従来よりも事態としては非常に切迫してきておるというふうな感じを持って、真剣にこの問題に対処する、検討しなければならないというふうに思っております。
  550. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 それじゃ長官に率直にお尋ねしますが、遠洋漁業それから沿岸漁業、これは中小漁業も入りますけれども、沿岸と中小漁業とそれから遠洋漁業、資本漁業といいますか、海外に出ていっている漁業、この二つに分けて、一体どっちにウエートを置いているのですか。つまり沿岸漁業と中小漁業と二つ合わしたものと、それから遠洋漁業ですね、資本漁業ともいいますが、この二つに分けて、どっちをこれから長官としてウエートを置いていくのか、それをまずお伺いしたい。
  551. 森本修

    ○森本政府委員 それは、私としては、どちらというか、二者択一ないしプライオリティをどっちに置くというふうなことは、なかなか言い切れない問題ではないか。それぞれ特色を持ち、また、たん白資源の日本国内における確保という観点、いろいろな角度からそれぞれの役割りを持っておるというふうに思います。  ただ、特に沿岸漁業につきましては、最近におけるいろいろな資源の状態でありますとか、あるいは担当しております経営が零細であるとか、また工業化なり都市化に伴っていろいろな制約がきておるといったような実態を考えますならば、沿岸漁業の振興については、特段の政策的な配慮をしなければならぬという感じは十分持っております。
  552. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 長官の、この沿岸漁業について特段の配慮をする――昭和四十二年度の漁業白書によりますと、日本の漁獲量のトン数でまいりますと七百十万トン、その中で沿岸漁業と中小漁業が五百六十六万トンで八〇%を占めているわけです。資本漁業のほうは百三十万トンで一八%、その他が二%。金額の面におきましても、八〇数%が沿岸漁業と中小漁業で占めておるわけです。資本漁業のほうは、生産金額六千二百八十九億のうち七百六十億、わずか一二%。こういうことから考えると、当然やはり水産庁としても、沿岸漁民の生活を守るという意味から、やはり専管水域を設定して、そして外国漁船からの操業を規制するということが正しいのではないかというふうに私は考えるのですが、いかがでしょうか。
  553. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げたことに尽きるのでありますが、沿岸漁業なり、あるいは日本近海におきますところの中小漁業の振興なりということは、特段に意を用いなければならないと思います。  しかし、先ほど申し上げましたようなことで、専管水域を引くことがその保護なり確保の上にどの程度の有効性を持っておるかということも十分考えなければならない。また、先ほど申し上げましたような、日本の従来指向してきたところの国際的な立場、あるいは漁業全体の立場、こういったことも現在の段階としては慎重に考慮をして、この問題を決しなければならないというふうに私は思います。
  554. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は、諸外国が領海ないし専管水域を拡大しつつあることは、これは世界の趨勢であろうと思うのでございます。長官もまた同感だと思うのですが、なぜ諸外国は領海ないし専管水域を拡大しているかという理由の一つに、やはり自国の権益を保持しようとする考え方、沿岸漁民を保護するという考え方が大きいのではないか。さらにまた、海底開発ですね。海底油田あるいは鉱物資源等の開発に備えて拡大をしているというふうにもわれわれは考えるわけです。世界の趨勢がそのようになっているまっただ中に、日本が依然として三海里を固執し、しかも外国船が領海付近に進出をし、大量の操業をしているということは、そういう趨勢に逆行しているのではないか。どう見ても私は納得できない。  では、長官にお尋ねしますけれども、このままで毎年毎年大量の外国船が日本の周辺に操業するということが将来続いても、一体この三海里を固執するというお考えなのかどうか、お尋ねしたい。
  555. 森本修

    ○森本政府委員 私は、将来永久にどうこうとか、あるいはそういうことを申しておるのではございませんで、もちろん、国際的な関係、また他の諸外国がどういった態度なり趨勢をたどるかということも、こういう問題でありますから事を判断する際の材料にはなると思います。しかし、現段階におきましては、先ほど申し上げたような立場であるということを申し上げておきます。
  556. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 農林大臣にちょっとお尋ねします。  長官は、外交上の問題だという一本やりで、一歩もそこから進まないわけですけれども先ほど私が指摘を申し上げましたように、日本の漁業の漁獲量、あるいはその金額から推して、資本漁業、遠洋漁業というものはほんのわずかである。ほとんどが沿岸ないし中小漁業が占めておるわけですね。日本の中小沿岸漁業を守るという立場、またこれを発展させていくという最高責任者である農林大臣が、ここで何らかの前進したお考えを示してもらわなければ困ると思うのですが、どうでしょうか。
  557. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 わが国は、各国がかってに専管水域をきめるという点については、公海は三海里であるという主張をし続けてきた経緯もございまして、したがって、このような経緯の上に立って軽々にそれをいま是正するわけにはいかないのだというような意味長官から答えられておるのだと思うのでございます。しかしながら、現在ではもうすでに大きく沿岸漁業が変わってきたということは、お互い今度は魚をどうしてつくるかという、魚をつくるという点に今度は変わってきております。こういうような現実の上に立って、今度は考え方を変えてもいかなければならないだろうとは思いますけれども、いますぐ、各国がそういうような主張をしているからわが国もそうだとか、またソ連船が入ってきたからすぐ専管水域を拡大するのだということについては、慎重に考えなければならない問題があると思うのでございます。  いずれにしても、今後わが国は、沿岸漁業としては魚をつくっていく、魚をつくるのだという、こういう上に立っての考え方は別途考えていかなければならない問題が残されておる、こういうふうに考えております。
  558. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 最近はソ連船だけですけれども韓国、北朝鮮というのもやはり日本近海というものをねらっておるわけです。それで、将来、ここ二、三年でもけっこうですが、相当日本近海の操業をして、外国船が日本近海に相当実績を持った、そういう場合に、今度はそれがおくれる場合にはかえって逆に相手国から実績というものを主張されるのではないか。そういうふうになってからではおそいと私は思うのですがね。その点どうでしょうか。
  559. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 いま申し上げたとおりでございまして、彼らといいましょうか、彼らが日本の近海に入ってきて、それを実績として主張されることも憂慮しなければならない問題の一つだと思います。しかし何といいましても、ただいま申し上げたように、いままでと違った日本の漁業という面が魚をつくるという上に立っての主張でございますと、これはまた別途考えられる問題でございます。もうすでに御承知でもございましょうけれども、いろいろな魚がこのごろはつくられてきております。現在の沿岸漁業をこのままにしておいたのではとうてい国内のたん白給源を求めるというようなわけにはまいりませんので、すでに魚をつくるという点については、農林省といたしましても十分この点についての指導に当たる考え方が今回の予算面においてもおわかりだと思うのでございまして、こういうようなものをかてにしてそれらの交渉に当たるとか、あるいは今後の日本の将来の点について考えるべき点も十分あるだろうというように考えますけれども、いますぐそれでは専管水域を何マイルにふやしましょうというようなことは、ここで軽々に申し上げられる段階ではない、こういうふうに御理解願いたいと思うのであります。
  560. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 特に水産関係理解のある長谷川農林大臣答弁ですから、私も了としますけれども、やはり外国船に対する沿岸漁民の不安というものは、この間、私銚子にも行ってまいりました。それから北海道の十勝沖にも行ってまいりましたし、伊豆にも行ってまいりましたけれども生活問題ですから、その不安というものは想像以上のものでありました。このままで何らかの手を打ってくれなければ死活問題だ、こういう声が非常に強い。ですから、先ほど専管水域については軽々と申し上げられませんというお話でありましたけれども、もう一歩進めて前向きの姿勢でこの問題と取り組んでもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  561. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 生活の問題よりも何よりも、もう漁民が怒りに燃えておるということが一言で申し上げられると思います。その点も十分考慮の中に入れてありますけれども、いずれにいたしましても、国際問題もからんでおりますので、軽々にここでどうということは、農林省の独自の考え方をもって発表することはでき得ない、そういう点だけを御理解願いたいと思うのであります。
  562. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 以上で私の質問を終わります。
  563. 植木庚子郎

    植木主査 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は明二十六日正午より開会し、通商産業省所管について質疑を行なうことといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後八時二十四分散会