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1969-02-25 第61回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十五日(火曜日)     午前十時二分開議  出席分科員    主査 赤澤 正道君       加藤 六月君    小坂善太郎君       竹内 黎一君    中野 四郎君       灘尾 弘吉君    八木 徹雄君       大原  亨君    阪上安太郎君       島上善五郎君    島本 虎三君       内藤 良平君    山内  広君       大橋 敏雄君    樋上 新一君       伏木 和雄君    兼務 畑   和君 兼務 玉置 一徳君    兼務 和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         労働政務次官  小山 省二君         労働大臣官房長 岡部 實夫君         労働大臣官房会         計課長     藤繩 正勝君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基津         局長      和田 勝美君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      村上 茂利君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君  分科員外出席者         行政管理庁行政         管理局審議官  木下  薫君         自治省行政局行         政課長     森   清君     ————————————— 二月二十五日  分科員灘尾弘吉君、阪上安太郎君、山内広君及  び伏木和雄委員辞任につき、その補欠として  加藤六月君、島上善五郎君、米田東吾君及び樋  上新一君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員加藤六月君、島上善五郎君、米田東吾君  及び樋上新一委員辞任につき、その補欠とし  て灘尾弘吉君、島本虎三君、安宅常彦君及び沖  本泰幸君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員安宅常彦君、島本虎三君及び沖本泰幸君  委員辞任につき、その補欠として内藤良平君、  阪上安太郎君及び大橋敏雄君が委員長指名で  分科員に選任された。 同日  分科員内藤良平君及び大橋敏雄委員辞任につ  き、その補欠として平林剛君及び樋上新一君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員平林剛君及び樋上新一委員辞任につき、  その補欠として山内広君及び田中昭二君が委員  長の指名分科員に選任された。 同日  分科員田中昭二委員辞任につき、その補欠と  して伏木和雄君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  第一分科員畑和君、第二分科員玉置一徳君及び  和田耕作君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算労働省所管  昭和四十四年度特別会計予算労働省所管      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内主査代理 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は、主査が所用のため出席がおくれますので、私が主査の職務を行ないます。  昭和四十四年度一般会計予算及び昭和四十四年度特別会計予算中、労働省所管を議題といたします。  政府から説明を求めます。原労働大臣
  3. 原健三郎

    原国務大臣 昭和四十四年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分について、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管一般会計歳出予算額は一千百四十三億二千八百六十二万三千円で、これを前年度予算額一千九十八億二百八十九万円に比較しますと、四十五億二千五百七十三万三千円の増加となっています。  労働者災害補償保険特別会計予算は、歳入及び歳出予算額ともに一千八百七十一億六千七百四十三万四千円で、これを前年度予算額一千四百九十四億五千二百万円に比較しますと、三百七十七億一千五百四十三万四千円の増加となっています。  失業保険特別会計予算は、歳入及び歳出予算ともに二千三百八億八千六百五十万一千円で、これを前年度予算額二千六十八億一千七百二十九万七千円に比較しますと、二百四十億六千九百二十万四千円の増加となっています。  最後に、石炭対策特別会計中、当省所管分としては、炭鉱離職者援護対策等に必要な経費として七十六億三千六百五十七万円を計上していますが、この額は前年度予算額五十億九千五十万二千円に比較しますと、二十五億四千六百六万八千円の増加となっています。  次に、そのおもな内容について、概略を御説明申し上げます。  その一は、総合的雇用政策展開に必要な経費であります。  今後、わが国においては、新規学卒労働力が減り、人口構成が高齢化する等、労働力量質両面にわたる変化が急速に進み、労働力不足の傾向が本格化する情勢にあります。  このような情勢に対処し、すべての人の能力が十分に生かされるような社会経済体制への移行を促進し、労働力の面から国民経済発展と豊かな国民生活の実現に寄与するための総合的な雇用政策を積極的に展開したいと思います。  このため、新たに重要産業、特に輸出関連中小企業への雇用促進をはかるための一環として共同福祉施設を設置し、広域職業紹介の実効を期するため公共職業安定所の窓口における職業紹介即時処理体制確立することとします。  次に、新規学校卒業者職場適応等をはかるために年少就職者相談員制度を創設し、勤労青少年センター勤労青少年体育施設等福祉施設を設置して、勤労青少年中小企業労働者福祉増進に資することとしています。  さらに、港湾労働者身体障害者、建設出かせぎ者等に対する就職援護措置強化することとしており、万博建設工事の円滑な実施を促進するため、適正な労働条件確保及び労働災害防止措置徹底等対策を講じます。  産炭地域労働対策としては、新たに産炭地域開発就労事業実施するほか、炭鉱離職者就職援護対策充実をはかることとしています。  失業対策事業については、就労者賃金を一二%引き上げることとし、これと相まって失業対策事業運営管理が適正に行なわれるよう、引き続き努力したいと思います。  これらに必要な経費として七百七十九億九千三百九十八万五千円を計上しております。  その二は、職業訓練制度全面的改正に必要な経費であります。  最近における技能労働者不足深刻化及び技術革新進展に伴う技能労働質的変化に対応して、労働者能力開発とその質的向上対策を体系的に強力に推進する必要があります。このため、職業訓練法改正案を今国会に提出し、時代の要請にこたえ得る腕と頭を備えた新しいタイプの職業人の養成をはかりたいと思います。  まず、事業内職業訓練については、補助単価改善等、その助成強化をはかります。また、公共職業訓練については、各種訓練施設新設拡充中高年齢失業者等能力開発訓練効果的実施等をはかってまいります。  技能水準向上のためには、新たに中央及び地方に技能検定実施する民間団体を設立し、これにより技能検定の飛躍的な拡大実施をはかることとします。  また、職業訓練計画職業訓練基準、教科書、教材の充実をはかるとともに、社会一般技能尊重機運を醸成するため、卓越した技能者の表彰、青年ブルーカラー国際交流及び昭和四十五年にわが国で開催される技能オリンピックについても所要の準備を進めることとしています。  これらに必要な経費として百三十三億九千六百九十万一千円を計上しております。  その三は、産業構造社会環境変化に対応する労働基準行政展開に必要な経費であります。  労働力都市集中化技術革新による労働態様変化等から、職場環境労働者生活の面には新たな問題が生じており、また、零細企業労働者あるいは家内労働者等労働条件のおくれが目立つものも残されています。  これらの諸問題に積極的に対処し、きめのこまかい施策を講じるため、労働基準に関する基本的調査研究を始めたいと思います。また、最低労働条件確保のための指導監督強化最低賃金制普及、仕事と能力に応じた合理的賃金制度推進勤労者財産形成政策推進重度障害者対策及び労災援護対策強化をはかることとします。  家内労働対策としては、家内労働者最低工賃制安全衛生措置等家内労働条件適正化対策強化をはかることとし、今国会家内労働法案を提出したいと考えております。  これらに必要な経費として四十一億六千二十万七千円を計上しております。  その四は、労働災害防止のための抜本的対策確立推進に必要な経費であります。  労働災害防止については、技術革新進展により新しい災害職業性疾病の発生の危険が高まり、労働力不足とともに未熟練労働者、高年齢層労働者増加等災害増加要因もあらわれています。  このような情勢に対処して、労働災害防止計画普及促進科学的災害防止対策展開職業性疾病予防対策強化をはかる必要があります。また、安全衛生センター拡充等災害防止サービス網整備し、災害多発危険有害事業場への重点的監督指導を行なってまいります。なお、本年九月にわが国で開催される国際労働衛生会議についても所要助成を行なうこととしています。  これらに必要な経費として十三億二百四十二万二千円を計上しております。  その五は、婦人能力有効発揮福祉対策推進に必要な経費であります。  経済社会発展に伴い、婦人社会的、経済的役割りがますます大きくなってきていますので、婦人が、職場、家庭、社会においてその能力を有効に発揮できるよう条件整備を進め、その保護、福祉増進と地位の向上をはかりたいと思います。  このため、就業分野拡大職業講習実施パートタイマー対策推進等中高年齢婦人雇用円滑化推進します。また、働く婦人の家、内職公共職業補導所の増設などの施策を行ないます。  これらに必要な経費として三億二千五万円を計上しております。  その六は、勤労青少年のすこやかな成長のための総合的施策樹立推進に必要な経費であります。  勤労青少年は、明日の日本をささえる原動力であると考えます。心身とも成長期にある勤労青少年の限りない将来性に期待し、健全な職業人社会人として成長することができるよう積極的な援助を行なうため、総合的施策展開したいと思います。このため、勤労青少年ホーム等福祉施設拡充整備職場適応促進のための相談指導態勢強化余暇活動指導援助強化をはかることとしています。  これらに必要な経費として十八億三千七百六十三万四千円を計上しております。  その七は、社会経済情勢変化に即応する積極的労政行政展開に必要な経費であります。  資本自由化進展雇用労働者増加、その他、経済社会の急速な変化により労働情勢は大きく動いています。これらの情勢を的確に把握し、長期的展望のもとに労使相互信頼関係確立労使関係合理化をはかる必要があります。このためには、まず、労使間の諸問題を、話し合いで、合理的に解決する機運の醸成をはかりたいと思います。  さらに労働教育等指導啓蒙に意を用い、中小企業における労務管理改善に必要な助成強化し、あわせて中小企業退職金共済制度普及等を行ない、労働福祉向上をはかりたいと考えています。  これらに必要な経費として十六億一千八百八十二万円を計上しております。  その八は、労働保険制度改善と適正な運営に必要な経費であります。零細企業労働者福祉向上をはかるため、失業保険及び労災保険を五人未満事業所へ段階的に適用してまいります。また、失業保険保険料率を引き下げ、低所得者層中心とする保険給付改善及び福祉施設充実を行ない、あわせて制度健全化をはかりたいと思います。さらに、この機会に両保険適用徴収事務を一元化したいと考えています。  このため、失業保険法労災保険法の一部改正法案、両保険適用徴収事務を一元化するための法律案とこれらの両法の施行に必要な技術的な整理法案を今国会に提出いたします。  これらの改善等に必要な経費として九十八億七千七百十万九千円を計上しております。  以上のほか、国際労働行政充実、その他一般行政事務費等に必要な経費が計上してあります。  以上、昭和四十四年度労働省所管一般会計及び特別会計予算について概略説明申し上げました。  何とぞ、本予算の成立につきまして、格段の御協力をお願い申し上げる次第であります。
  4. 竹内黎一

    竹内主査代理 これにて説明は終わりました。     —————————————
  5. 竹内黎一

    竹内主査代理 これより質疑に入るのでありますが、質問者は割り当て時間三十分を厳守されるとともに、政府当局答弁もまた簡単明瞭にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。加藤六月君。
  6. 加藤六月

    加藤(六)分科員 私は、本日は労災法の中の遺族補償年金中心として質問いたしたいと思います。質問というよりか、意見が多くなると思いますが、その点はひとつよろしく御容赦願いたいと思うわけでございます。  まず第一に、労働省労働基準局の皆さんがおつくりになっておる「明解労災保険法」というのを読ましていただいたわけでございますが、この中で、「能力に応じて保険料をとり、必要に応じて給付を行なう」、これが社会保険である。労災保険の場合は、「責任に応じて保険料をとり、必要に応じて給付を行なう」、こういうようにまず解説で書いてあるわけでございますが、その中をずっと読んでいきますと、「業務災害をこうむった労働者やその遺族のかたは、もれなく必要に応じた保険給付を受けてください」という非常にいい精神が出てきておるわけです。   〔竹内主査代理退席主査着席〕  そして、さらにこの内容を読んでみますと、一二六ページ、一二七ページに、「損害賠償との調整」の二番目の「自動車損害賠償責任保険との関係」というところに、最近いわゆる自賠法保険金額に比べ、労災保険遺族補償給付が低過ぎるという問題について、種々御説明が行なわれておるわけでございます。その中に、「遺族補償一時金と自賠保険金とを比較することも、当を得ません。遺族補償一時金は、旧遺族補償費の名残りとして補足的な給付であるにすぎません。諸外国の例を見ても、むしろないのが普通です」ということから始まりまして、「遺族補償給付とは、そもそも同じ次元で金額的に比較するになじまないものであって、それぞれ役割がちがっているわけです。自賠保険保険金額が、かりに将来大幅にひきあげられたとしても、同じことです。」という内容説明があるわけでございますが、これはもちろん自賠法労災法との性質上の違いということで納得いくわけでございますが、同じ自動車による死亡事故を起こした場合に、たとえば大きな工場敷地内におきまして、自動車と同じような原動機を使い、同じような運搬輸送の任務を持った機材が稼働しておりましても、特定の限られた地内で作動するということで、一般路上を運行する自動車特殊自動車と異なって、いわゆる運輸省のナンバープレートをつけてない、自賠法に入ってない機材が作動して、過失により労働者死亡した場合に非常に問題が起こるわけです。同じような性質、同じような機材、ただ路上にある場合には自賠法に入り、ナンバープレートをつけておる。工場敷地内で稼働しておったのでこれは労災法適用、もちろん自賠法にも入ってないというところに非常に大きな問題が起こりまして、最近重要な訴訟問題が起きておるということを聞いたわけでございます。  これは局長に承りたいと思いますが、たとえば基礎日額が七百円であった、扶養家族が三人あった、この人が路上交通事故にあって死亡した場合は、いまの段階でいきますと三百万円もらえます。ところが労災法でいきますと、年金でいきますと十万二千二百円。それで受給期間がかりに二十八年間年金をもらえた。労災法年金平均受給期間は二十八年、こういうようになっております。それから平均受給率は百分の三十八というようになっていますが、この場合百分の四十、こう計算しますと、二十八年間で総額二百八十六万一千円しかもらえない。もちろんその間にスライドとかいろんな問題等があるわけでございますが、ただ自賠法の場合は今度は五百万円に本年度中に上げなくてはならないという点が起こってくるわけでございます。  まず私が考えるのは、社会通念上、保険性質が非常に違うのだということをいまの本にも書いてあります。われわれも規則的にはなじまないものであるということはわかるわけですが、どうも矛盾と疑問が起きてくるわけでございます。一般事例と違って、いまのような事例についての局長の御意見をまず承りたい、こう思います。
  7. 和田勝美

    和田政府委員 お答え申し上げます。  加藤先生の御質問の中でも、労災保険性格自動車賠償保険との差等についてたいへん御理解をいただいた上での御質問でございますので、そういう観点から申し上げます。  御指摘のありましたように、両保険性格はそれぞれ違っておりまして、自賠法のほうは民法的な考え方でやっております。労災保険のほうは使用者の無過失賠償責任補償をするという立場で行なっております。そういう点で、自賠法のほうは、年金とかそういう長期的な給付でなくて、一時金でものの処理をするという考え方でございます。労災も四十年の改正までは一時金のシステムでありましたが、ILOにおける条約が、こういう遺族補償につきましては年金的なものを取り入れるべきである、各国におきましても、年金制度のほうが一般的であるというようなことを考えまして、四十年の改正の際に労災につきましては年金制度を取り入れたわけでございます。  それで個々の具体的な例につきましては、いま御指摘のように、ものによって金額差等がございます。しかし、どちらがより有効であるかということになりますと、何かと御議論の多いことではございましょうが、労災保険のように使用者賠償責任ということで、残された、扶養されておった者の生活を長い間めんどうを見るということのほうが、今日としては一般的な大勢のようでございます。そうなりますと、こういう長期にわたってめんどうを見る際におけるめんどうの見方の金額、そういうものが問題になるわけでございまして、ものによっては自賠法より高くなりますし、取っておる賃金その他によっては自賠法より低くなる。そういう意味で先ほど御指摘の本でも必ずしも金額で比較することはむずかしいのではないか、こういう書き方をしております。  しかし、自賠法が現在の三百万円がさらに増額をされるというような趨勢にあるようにも私ども承知をいたしております。そうしますと、理屈理屈といたしまして、どういうふうに労災のほうの給付改善をしていったらそういう趨勢に合うかという問題がございますので、私どもといたしましても、昨年の六月から労災保険制度全体の改正問題を取り上げまして、昨年中に一応労使両方から問題点を全部出していただきまして、その問題点整理が終わりましたので、ことしの一月から労災制度全体につきまして改善審議労災保険審議会のほうでお取り上げになっておりまして、現在のめどとしましては、労災審議会のほうにおいては、年内にでき得る限り結論を出したい、こういう気持ちのようでございます。  その中では、いま御指摘のありました自動車賠償保険との兼ね合いから考えて、給付改善について十分考慮をしてやろうという御意見になっておりますので、それらの趨勢を見ながら、先生の御指摘も考え合わせて審議会審議の結果を待ちたい、こういうように考えております。
  8. 加藤六月

    加藤(六)分科員 あとからお尋ねしたいと思ったことを局長はいま仰せいただいたのですが、この法律の別表第六の中に、これは大臣にちょっとお伺いしておきたいと思うのですが、五十九番に、「船舶製造又は修理業」という項目があるわけです。これはどうでもよろしいのですが、この関係分野における資料がいま私の手元にあるわけです。労災保険だけでは遺族補償がどうしても足りないというので、会社内規の中に——九つの大手の造船所内規が私の手元資料があるわけですが、労災保険以外に、いわゆる私企業における弔慰金見舞金規程というのをつくっております。そうして、ある造船所見舞い金百五十万円、葬祭料十万円、またある造船所弔慰金百五十万円、社長香典五十万円、あるいはある造船所は、弔慰金とは別に給付日額かける五百日分を贈る、会社労災保険関係なしに支払うというような規程を設けておるわけです。この対象人員が全部で四万九千五十名、造船所関係でおる。  ところが、下請関係がまたそれぞれ各造船所単位にできておるわけです、名前はいろいろ違うわけですが。この下請のいわゆる労災保険以外の会社弔慰金見舞金規程はどうなっておるかというたら、いま申し上げました九社の中で、一つだけある。ある協力会見舞い金七十万円を死亡のときに出そう。あとは全部ゼロなんです。この対象人員は何ぼかと申し上げますと、二万三千二百五十名。この問題がいい、悪いというのはいろいろ議論になるところでございますが、現在私が申し上げたいのは、現在の労災法というものの給付基準が、これは局長もちょっと申されましたが、現在の社会規範に適合しなくなっているのではないかということがまず第一に考えられるわけです。これに対しての大臣のお考えはどうですか。
  9. 和田勝美

    和田政府委員 私から事務的に御説明申し上げて、大臣のほうからまたお答えをいただきたいと思います。  労災保険のほうは、いま御指摘がありましたように、使用者の無過失賠償責任を、基準法で定められている部分を労災保険肩がわりをしてやっておるわけでございます。その点につきまして、これは御存じのように、休業補償については平均賃金の六割とか、いろいろなことがございます。あるいは遺族年金につきましては、平均賃金の二五%を基礎にしまして、遺族の数によってということで、一応の肩がわりは終わるわけでございますが、会社によっては経済事情その他の問題やら、社会の動きやらに応じまして、それぞれ会社経営内容の許す限りにおいてその上に上積みをするわけでございます。これは任意会社がそれぞれの事由によってやるわけでございますが、いま御指摘のように、大企業におきましては相当手厚くやっておるところがあるわけでございます。中小企業になりますと、なかなかそういうことを任意にやれるだけの資力がないということで、ゼロのところもございまして、ここらあたりのかね合いで、実質的に業務災害賠償責任は終わりましても、賠償責任以外の点でばらばらの問題があるということは御指摘のとおりでございます。そこらあたりもかね合わせまして、この審議会では御議論が出てくる、かように考えておる次第でございます。
  10. 加藤六月

    加藤(六)分科員 そこで、いま局長から御答弁になりましたが、この問題で第二番目に言えますことは、大企業中小企業との企業格差、いわゆる賃金格差といいますか、企業格差基礎日額の相違によってまずあらわれてくる。それが同じ労働、同じ作業を行なっておっても、同じ人間が死亡した場合に、いまの給付内容が非常に違ってくる。一時金、年金あるいは葬祭料の差となってあらわれてくる。これが私が先ほど申し上げましたように、現在の社会規範に適合しないんじゃないか。局長もおっしゃったように、能力のある大企業は、任意上積みができる。ところが能力がない中小企業は、これはもう労災だけ払うのがぎりぎりで、有志やみんなが集まって香典をそろえてやろうとか、葬式の手伝いをしてやろうとか、あと家族のいろいろなめんどうをできるだけ誠意を持ってやろうという努力はされておりますが、実際に手に入る金額においては非常な差がある。ここに一つの問題があるわけでございます。このように労働災害が、企業によって遺族あるいは本人の給付が変わってくるということでは、労災そのもののあり方に非常にこれから一般の人が危惧の念を持ってくるのではないか。これも給付改善をしなくてはならないという大きな根拠ではないかいうことで、実は私が本日質問をさせていただく根本の原因になったわけです。これについての大臣の簡単な所見を承りたいと思います。
  11. 原健三郎

    原国務大臣 ただいまの加藤さんの御質問、まことに同感でございまして、大手は非常にそういう災害があったときに手厚くするし、下請中小企業ではそれがはなはだ手薄であるという現象は、まことに公平を欠いて残念に思います。それで、そういういまお話しの点も考慮しまして、この労災保険審議会にいま答申を求めておりますので、それが出ましたときにまた労働省で検討して、労災保険改正をやりたいと思っておりますので、それを十分考慮して善処いたしますから、御了承願いたいと思います。
  12. 加藤六月

    加藤(六)分科員 大臣から非常にありがたいことをおっしゃっていただいたので、感謝いたす次第でございます。  それで、局長にお伺いいたしますが、業務災害給付条約というのがございますですね。これは現在、聞くところによりますと五カ国ぐらいが批准しておるようでございますが、この条約の休業とか障害、あるいは遺族、葬祭に対する給付補償はどの程度の率になっておるか、ちょっと承りたい、こう思うわけです。
  13. 和田勝美

    和田政府委員 いま御指摘の条約はILO百二十一号条約の御指摘でございますが、これで見ますると、休業補償につきましては日本と同じく賃金の六割でございます。療養補償につきましては日本の制度とほとんど同じでございます。障害補償につきまして、日本の現在の制度よりは向こうのほうが多少高い、条約のほうが多少高い、こういうことが言えるのではないかと思います。それから次に遺族補償につきましては、日本よりこの条約のほうが高うございまして、向こうは大体所得の五〇%ぐらいがもらえるのでございますが、日本のほうは、先ほど御指摘がございましたように、平均的に見ますと、人によって違いますが、大体三八%、そういうような差がございます。
  14. 加藤六月

    加藤(六)分科員 そこで、大臣局長から先ほど御答弁のありました労災保険審議会にいま諮問をされておる、昨年の十二月十三日に小委員長が会長に一応の労働者意見使用者意見ということで、小委員会における労使意見整理についてという内容のものをお出しになったわけです。いま承りますと、それに従って本年度に入ってからこの審議会でいろいろ検討していただいて、近いうちに答申が出るだろう、その線に従って労働省としてはいろいろ考えていきたい、改正していきたい、現在の事情にマッチしたように直したい、こういう御答弁があったわけでございますが、そこで、この中で私が一番最初申し上げました遺族補償等を中心とするものについて、一つの方向について御質問いたしたい、こう思うわけでございます。  障害の給付率が日本とILO百二十一号の分とでは若干違う。それから遺族補償の分が違う、こういういま局長から御答弁がありましたが、その中でこの法律の附則の四十二条ですか、遺族に対する一時金の支給に関する暫定措置、これは五年以内ということになっておりますね。すなわち昭和四十六年一月三十一日で一時金を出すのは打ち切るという内容のものがあるようでございますが、現在、最初から年金を希望する方と一時金を希望する方と、私の承ったところではフィフティ・フィフティ、やはり一時金を要求する方もずいぶん多いように思うわけですが、これを打ち切るのかどうかということがまず第一点。  第二点は、この一時金について、この答申に出ておりますが、遺族年金の受給権者のいない場合の一時金については、基準法どおり千日分とすべきである。現在は四百日分、これを将来千日分に改正する御意思はありやなしや、この二点についてまず承りたい、こう思います。
  15. 和田勝美

    和田政府委員 先生指摘の、労災保険法の附則の四十二条でございますが、これは年金に移行しますときに、一時金にドラスティックにやるとなかなか問題があるという御希望が非常に強うございましたので、調整的な機能を果たすために、一時金を御希望の方には四百日分差し上げて、年金のほうで、それを差し引いて年金をお渡しする、こういうことになっております。この点も実は今度審議会で、これを続けるべきかどうかということについていろいろ御議論になる問題点一つにあがっておりますので、四十六年の一月でございますから、十分に法律改正に間に合うと思います。御議論を伺った上でやっていきたい。  それからもう一つは、扶養を受けていなかった子女の問題でございますが、これは実は日本だけの特有の例でございます。非常に日本はその点特異な例なんでございますが、そういう手厚い例を年金のほかにさらに設けておくかどうか、これはなかなか議論のあるところでございます。そういう点がございまして、普通は年金で、そのほかに扶養義務のなかった者にさらに一時金をやるべきかどうかということにつきましてはいろいろと御議論がございますので、これも同じく審議会で御議論になることになっております。それらのことを待った上で処理させていただきたいと思います。
  16. 加藤六月

    加藤(六)分科員 時間がもうあまりございませんので、この一時金の打ち切りはどうなるか、時間が十分あるのでこれから検討してやろう、こうおっしゃったわけでございますが、私は、できたらこれは残してもらいたい。しかも四百日分というのはぜひ千日分ぐらいにしていただきたい。自然に両方ともそうなるようでございますが、そこでかりにそれを打ち切るといった場合に、前の法律改正のときも若干問題になったと思うのですが、いわゆる担保融資、年金証書によるところの担保融資の問題が当然出てくると思う。国民金融公庫でこれを行なうか、労働福祉事業団で行なうか、しかも、どうも聞くところによりますと、国民金融公庫でこれをやったのでは普通の年金、恩給と同じように三十万しか出してくれないというような内容等が出てくるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、かりにやられるにしても、一時金の希望者のほうが逆にふえておるということ等も勘案してもらって、貸し付け金のいわゆる担保融資の金額のワクは大幅に広げるように将来とも努力していただきたい、これは希望だけでございますから答弁は要りません。  その次に、この基礎日額の計算で、死亡の時期によってボーナス分が入る場合と入らぬ場合がありますが、この基礎日額の計算について少し改めてくれという要望が非常に多いのじゃないか、こう思います。これが第一点。  それから第二点は、先ほど申し上げました年金給付率を大幅に上げてもらいたい、千日分とともに給付率を上げてもらいたい。  この二つについて、おおよその意向をお示し願えればありがたい、こう思っております。
  17. 和田勝美

    和田政府委員 実は労働基準法のほうにおきまして平均賃金考え方が出ておりまして、それを労災保険が受けたわけでございます。その平均賃金考え方は、臨時の収入は一応除外をして考える、こういうのが基礎になっております。そこで無過失賠償責任の限度をはじくときの基礎的な考え方がございますので、いまのところ、私どものほうとしましては、基礎日額の中に三カ月以上の期間ごとに払われるボーナスは一応入れないという考え方でございます。平均的な生活について補償するという考え方でございますので、そういう点を今回の審議会でも御議論になると思いますが、なかなかむずかしい問題があるということは、ひとつお含みをいただきたい。  それから率の問題については、今後検討させていただきたいと思います。
  18. 加藤六月

    加藤(六)分科員 時間が来たようでございますので、私の質問はこれで終わりたいと思うわけでございますが、先ほど来主として質問よりか意見をたくさん申し上げたわけでございますが、現在の日本の社会情勢から見ましても、またこれからの日本経済発展のにない手であるものは、これら働く人々で、これら働く人々が後顧の憂いなく安心して働ける労災法にしていただきたい。これはもう日本人全体、国全体の強い願望でもあるわけでございます。もちろん労災会計のいろいろの問題等はあると思いますが、その中には、全額事業主が負担するという抜本的な問題等にも触れてこなくてはならないかと思いますし、大企業中小企業との格差がますます激しくなってくる、あるいは自賠と労災との性質は違うにしても、遺族が受け取る金についての非常な差というもの、こういうものがあらわれてきますと、それぞれの職場で、それぞれの労働者、働く人々が安心して働けないという状態になっては困りますので、どうぞ大臣以下労働省の皆さん方、ひとつこの点は前向きで、先ほど来おっしゃっていただきました審議会の答申等も出ると思いますが、労災法改正問題に取っ組んでいただきたいということをお願いいたしまして私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  19. 赤澤正道

  20. 島上善五郎

    ○島上分科員 三十分という限られた時間で大問題と取り組もうというのですから、非常にむずかしいのですが、大臣にひとつ簡潔、率直にお答えをいただきたいと思います。  まず最初に、労働基準行政が、私どもの見るところによりますると、はなはだしく不行き届きである、あるいは怠慢であるといってもよろしいかと思います。したがって、労働基準法が十分に守られていない。特に労働組合のない中小企業の、そうでなくてさえ劣悪な労働条件下で働かされておる労働者の間には、労働基準法が十分に守られていないといううらみがあるのであります。これは私は個々の基準監督署の監督官の怠慢を言うのではなくて、十分に監督行政を徹底するに足る人員がいない、人員がはなはだしく不足であるというところに原因があると思います。この現状に対して、大臣が現状を改革しようという積極的な意欲がおありかどうか、改革するにはどうしたらいいとお考えか、まずお伺いいたしたいと思います。
  21. 原健三郎

    原国務大臣 島上先生指摘のように、労働行政の中核をなすものはこの労働基準行政でございまして、これは大体大企業にはよく徹底しておるが、中小企業で、ことに労働組合のないようなところにおいては行き届いていないという御指摘でございますが、私もそういうふうに感じております。それで、もう少しこれをいろいろ能率的に、重点的に労働基準行政をやるように指示はいたしておるのでございますが、そういう監督すべき事業場がふえるわりに——いま統計を見ましたが、そのわりに監督官のほうがふえていないというのが実情でございます。二十年間に適用事業場数が五〇〇%もふえておるのに監督官のほうは七%くらいというようなわけで、できれば将来これはもう少し人員をふやしてもらいたいと思って交渉もいたしておるのですが、行政管理庁ではどうも人員削減とかいうので、非常に難航いたしておりますが、昭和四十四年度でも二十五人増というようなわけで非常に微々たるものでございますがふえておりますので、まあ少数精鋭主義で、非常に効率的に重点的に指導監督をしたいというようなことでございます。お説のように、来年度からもう少しふやしてもらうように交渉いたしてみたいと思っております。
  22. 島上善五郎

    ○島上分科員 四十人、五十人の問題ではなくて、もっと相当大ぜいふやさなければならぬ。そうでなければ、いまの人数では、私の聞き及んでおる、私の調べたところによりますれば、十年に一ぺんくらい事業場を回る程度しか人手がない、こういうことでは労働基準法があってなきにひとしいものにだんだんなってしまうのですよ。日経連では、労働基準法を、改正ではなくて改悪したくていろいろ協議しているようです。労働基準法が今日実態に合わぬ面も、あと質問しますが若干あると思いますけれども、現在の基準法をまず十分に徹底させ、十分に守らせるというところに私は第一の重点を置くべきだと思うのです。かりに改正すべき点があるにしても、それは検討事項として検討するのもよろしいけれども、現在の法律が十分に守られていない。その守られていないという実態の中には、承知して故意に違法、脱法行為をやっている事業場もありますし、またいろいろこまかい災害とか、衛生とか、安全とか、そのほかいろいろな点に——中小工場主は、自分も働きながら、工員と一緒に菜っぱ服を着て油にまみれてやっている人が多いのですから、そういうところでは、こまかい点に気がつかないというか、十分理解していないというところからくる違法、脱法もあると思うのです。ですから、監督行政を十分にやると同時に、必要なことは、労働基準法のこまかい点をよく理解させ、指導するという点に、もっともっと力を入れなければならぬと私は痛感しておりますが、大臣、いかがでしょう。
  23. 原健三郎

    原国務大臣 まことに御説同感でございます。事業場が約三百万もあって監督官が約二千七百人、これは私なんかもっといるかと思っていましたが、内輪を洗ってみますと御説のとおりはなはだ少ないので驚いておるので、ぜひ来年度からもう少し復活要求をして人員を……(「少しではない、うんとだ」と呼ぶ者あり)うんとふやすように尽力いたします。これは大いに皆さん方から御声援していただいて、ふやしていきたいと思います。
  24. 島上善五郎

    ○島上分科員 時間がないのであまり同じことばかり質問しておれませんから、特にいま大臣から率直に御答弁いただいたので、そのつもりで来年度から大いに監督行政が十分に徹底するに足る人員を確保するためにがんばってもらいたいと思います。定員を減らすといったような問題がありますけれども、減らしていいところは減らしていいでしょう。しかし必要なところはふやさなければならぬですから、これはひとつ強い希望を申し上げておきます。  それから、今回労働省では、機構の改革を一部考えているようでございますが、この機構改革は行政監理委員会でも反対の意見を出しているようですし、現場の行政に携わっておる人々の間にも異なった意見があるようですが、この問題はあまりこまかい点に入りますと時間がかかりますし、おそらくあとで他の機会に同僚議員が深く追及すると思いますけれども、どうも今度の改革の、地方に移管するといったようなことは、労働基準行政——いまそうでなくてさえ不徹底であり、怠慢であるとさえ思われる労働基準行政が、地方によってばらばらになってしまう。現在よりもさらにはなはだしく後退するということを心配せざるを得ないわけですが、その点についての大臣の考えを伺いたい。
  25. 原健三郎

    原国務大臣 この労働省関係の行政改革をやるという意見は、昨年の十一月二十六日、労働大臣と自治大臣及び行政管理庁長官の間で申し合わせができておりまして、私もそれの引き継ぎを受けたのです。御承知のような反対意見もございますが、労働省といたしましては、二十数年もたったこういう労働行政を、この際中央、地方一貫してもう少し強力にやりたい、こういう意図からこの申し合わせ事項になったのでございます。  あまりこまかく言うと時間がかかりますが、結局各都道府県にいま独立した労働部というのがあるのはわずかに八都道府県でございまして、残余のところはございません。それを今度独立した新たな労働部というものを新設していただく、これは自治法の改正でやりますが、これから労働行政は、大都市のみならずだんだん全国的に重要になってまいりますので、各都道府県に労働部を新設してもらって、これを強力に推進いたしたい。その中で、しかし労働基準局はその労働部に入るとか、あるいは婦人少年室というのは地方の労働部に入るのでございますが、労働基準監督官というのは現状のままにしております。その都道府県にある局だけが一部そこに入って、そして労働基準監督官というのはそのままにしておりますから、いままでどおりにやっていただく。  それで、いま申されたように、各都道府県で画一性を欠くじゃないか、これはILOの精神にも反するのでございますが、それで各ブロックごとに、たとえば六つになりますか八つになりますか、各プロックごとに労働局というのを新設しまして、そして本省と地方の労働局と、それからさらに都道府県の労働部、これを一貫して、こういうような労働行政を推進いたしたい。  さいぜん御指摘もありましたように、もしできたら行政管理庁とも話し合って、労働基準監督官の増員をこの機会にはかって、労働基準行政の万遺漏なきを期したい、こういうように思っておる次第でございます。
  26. 島上善五郎

    ○島上分科員 私はこまかい話はできませんけれども、今度の改革、特に地方移管によって——労働基準法に定めた労働条件というものは、御承知のように最低の基準であって、地方によって異なるべきものではないわけです。ところが、今度の改革によってその地方権力というか地方の政治勢力というか、そういうものの影響を受けてばらばらになるという心配が一つある。それから司法処分等の際に、地方局にゆだねる結果は、いままでに比べて非常に不便な面が出てきはしないか、こういうことが考えられる。他方の権力あるいは地方の政治勢力が介入をして、労働基準行政の適正な運用がゆがめられてしまうという心配については、実はかつて東京都の実例ですけれども、東京都の病院関係で超勤手当の不払い事件があった。これは摘発されまして、相当多額のものを都があとで払った事例がありますけれども、これは御存じだろうと思いますが、こういうような問題に対する監督、摘発、あるいはときには司法処分といったようなことが、従来に比べましてずっと不便になり、力が弱くなってしまうということが心配されますが、そういうことはありませんか。
  27. 和田勝美

    和田政府委員 いま具体的な問題にもお触れになりましたので、私からまずお答えをさせていただきたいと存じます。  いまお話のありました地方勢力との関係において、監督の適正を害するとか公正を害するとかいうようなこと、あるいは司法処分が現在発表されておるあれでは非常に不便になるのではないかというお話でございますが、確かに先生指摘のような懸念が十分に考えられます。私どもとしましては、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、監督官制度はこれを堅持するということで、地方勢力に毒されないような監督官制度を今後もぜひ維持をしていくというのが基礎でございます。そういう点、先生の御心配も十分考えさせていただいて、監督が、全国的に最低基準が同じものが守られる、こういうものにつくり上げていきたい、かように考えております。それから、司法処分のあり方につきましても、地方労働局に司法処分の事件をやらせるという覚え書きになっておりますけれども、いま申し上げましたような配慮からするものでございますが、監督の実態におきましては、その点につきましてもなかなか問題がございますので、今後十分考えさしていただきたいと思います。  なお、都道府県自体の基準法の違反の問題に対しましては、これは実は県の中に自分が入って、自分のところを監督するというのは非常に問題がございますので、これは事物管轄の問題として、ことによったらそういうものは地方労働あたりがやることにして、府県自体がやらない、こういうような問題も、現在のところ私どもとしては検討いたしておるところでございまして、自分の監督を自分がやるという制度にはしたくない、かように考えております。
  28. 島上善五郎

    ○島上分科員 この改革はたいへん問題があるようですから、十分に検討して、各方面の意見も聞いて、かりそめにも基準行政が後退することがないように十分に配慮していただきたいということを御希望申し上げて、この問題は打ち切ります。  次に、労働時間の問題ですが、御承知のように、労働基準法は実働八時間をたてまえとしておるわけですけれども、最近は労働時間短縮、さらに一週二日の休暇という傾向がだいぶ出てまいりました。こういう点からしますると、一日八時間、一週四十八時間制という労働基準法の規定は実態に合わなくなってきていると思いますが、大臣いかがでしょうか。
  29. 原健三郎

    原国務大臣 この労働時間の短縮は、ここにも統計がございますが、製造業で見ましても、昭和三十年の平均で月間実働時間の推移を見ますと、百九十八時間、それからちょっとふえまして、昭和三十四年では月間二百四時間、それがだんだん減ってまいりまして、昭和三十七年では百九十八時間、それから昭和四十三年では百九十三時間で、漸次時間の短縮の傾向でございますが、大企業では一週二日休業のところもあるというように、非常にいいようでございますが、御指摘のように、中小企業においては、やはりそれが守られていないようなところもあるし、女子、年少者の長時間労働なんかもございますし、これなども大いに排除したい。あるいは交通のタクシー等の運転者などについては、長時間労働があるとか、こういうのに非常に問題点がある。あるいは商業、サービス業におけるこれも、昔に比べれば、一週一日休日制になって、だんだんよくなっておりますが、まだ問題がございます。これらの時間の労働基準が完全に守られていない点については、今後ともそれを大いに指導し、監督していきたい、こう思っております。
  30. 島上善五郎

    ○島上分科員 いまお答えにもありましたように、もう実働八時間から、だんだんだんだん短縮されてきている。そういう実態にあることは、これは事実ですね。そうしますると、八時間労働ではなくて、一日実働七時間だ、こういうふうに現になっているところがありますね。あるいはもっと短い六時間のところもある。そういうところの残業は、法律的にいうと、労働基準法上どういう解釈をなさるか。その点をはっきりお答え願いたいと思います。
  31. 和田勝美

    和田政府委員 労働基準法では、先生指摘のように一日八時間、一週四十八時間、それをこえますと時間外手当が——基準法三十六条に基づきまして時間外協定ができましたときには二割五分の割り増し金をつける、こういうのが基準法の規定でございます。したがいまして、その八時間を切りまして、会社が七時間にしておる。七時間を八時間に延ばす場合につきましては、基準法のほうでは二割五分の割り増し賃金をつけろという規定はございません。したがいまして、その間時間を延ばしたときにどうするかということは、労使の協定によって定められるのが普通であろうと思いますが、そういう協定のないときには使用者側が一方的に定めることになりますが、そこのところは基準法から見ますると自由にしてございます。したがいまして、特に二割五分を払わなければならぬということにはなっておりません。
  32. 島上善五郎

    ○島上分科員 確かに基準法からまともに解釈すると、八時間以上の場合は払わなければならないけれども、八時間以内の場合には払わぬでもよろしい。しかし、基準法制定当時と今日との間では、もうだいぶ情勢変化があって、先ほどお答えのように時間短縮が趨勢になっている。そうして七時間ないしは六時間、こういうふうになっている。ですから、かりに七時間となった場合に、一時間は残業ですからね。基準法の条文をそのまま解釈すれば、あるいは残業手当を法律的に無理に——無理にといってはあれですが、法律をたてにとって払わなければならぬということではないだろうけれども、きめられた労働時間以外の残業には残業手当を払うというのは、やはり基準法の精神でもあると思うのです。ですから、労使の間で八時間をこえていない残業に対しては、では一割残業手当を払おうとか、一割五分払おうとか、労使の間で取りきめをしておるところは問題ないわけです。取りきめが成立していない場合、それから全然会社が一方的にやっている場合、こういう場合には、監督行政庁としては、行政的な指導をされなければならぬと思うのですが、どういう指導をされるお考えですか。
  33. 和田勝美

    和田政府委員 ただいまの点でございますが、監督官としましては、基準法に書いてあることを十分に実行させるということでございますので、ただいま御設定になりました七時間から八時間までにつきましては、監督官の権限行使ということはできないことになっております。しかしながら、先生指摘のように、七時間までが所定の時間で、それを八時間に延ばせば、世間的にいえば残業であることは間違いないわけでございますが、法律論としてそれを基準局のほうでとかくは言えませんが、残業なんだから何とかしてやったらどうかというような意味のアドバイスは適当にいたしますが、中に割って入るという姿はいかがかというようなことで差し控えておるような次第であります。
  34. 島上善五郎

    ○島上分科員 それでは伺いますが、残業手当ではなくて、きまった所定の六時間なり七時間なりをこえた時間は、残業手当のつく残業ではないけれども残業ですね。この残業の賃金はどうあるべきと解釈されますか。
  35. 和田勝美

    和田政府委員 所定の賃金というのはきまった時間働くときの賃金でございますから、それに合わせてできておる賃金以上に労働させる場合には当然それに見合う賃金を払うべきだと思います。ただ、八時間以内の場合には、割り増し賃金をつけなければならぬとは申せません。一時間延ばしたら一時間分の賃金は付加すべきである、こういうふうに私どもとしては考えております。
  36. 島上善五郎

    ○島上分科員 私も、少なくとも所定の時間に割り出した賃金は払うべきものだと思う。さらに残業ですから、残業手当も法律の拘束によって払うのではなくて、企業主の良心のあらわれとして払うべきものだと私は思うのですが、少なくとも所定内の労働時間を平均にした賃金は払わなければならない。そこで、現在その所定の時間内の賃金を払っていないで、残業になるのに残業時間の労働については賃金が著しくダウンしておるという実例がたくさんありますが、御存じかどうか。
  37. 和田勝美

    和田政府委員 先生の御指摘でございますが、私どものほうでは手元にそういう資料をいま持ち合わせておりませんので、はっきり申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  38. 島上善五郎

    ○島上分科員 あとで実例をお示ししますが、ひどいのは三〇%、四〇%ダウンしている。ここに資料があります。つい二、三年前までは一時間五十円というのがあった。これも少し改正されまして、百五円、百二十円というふうに、大体この実例は、時間当たり二百四十三円あるいは三百三十二円、四百三十九円といったようなダウンをして、実際にもらう賃金は四三%あるいは三六%、二七%、二四%、こういうひどいところがあるのですよ。これはあとでお示ししますが、こういう際にはどのような指導をされますか。
  39. 和田勝美

    和田政府委員 手元資料がございませんので、あと先生にその資料をちょうだいさせていただきたいと思います。  中身につきましては、それぞれの事業場につきまして一応事情を聞いた上で、余分に働かせた分については、ちょうどその時間に見合うくらいの歩合——歩合と申しますと失礼でございますが、割り算をした分を払うのが適当ではないかと存じますので、事情をよく聞いた上で処置をしたいと思います。
  40. 島上善五郎

    ○島上分科員 たとえば宿直とか日直とかいって、本来やる仕事と仕事の内容ががらりと変わっている場合には、多少賃金が違うということは肯定しなければならぬ場合もあると思うのです。同じ仕事をしておって賃金がいま言ったようにダウンしておる。これは私は許されることではないと思うのです。これは巧妙な基準法の脱法行為だと思うのです。しかも採用する際には、うちの会社は九時から四時までですよ、一時間休みがあって、実働六時間ですよということでもって採用して、実際には、一週間に一ぺんとか十日に一ぺんとかいうことじゃなくて、常時に四時ではなくて五時ないしは六時まで残業させている。同じ仕事ですよ。これは非常に悪質な脱法行為だと私は思います。どういうふうにお考えですか。
  41. 赤澤正道

    赤澤主査 島上君、それで質問は終わりですか。もう時間です。
  42. 和田勝美

    和田政府委員 その点につきましては、各事業場の事情もございましょうから、よく調べまして善処したいと思いますが、考え方といたしましては、六時間ないし七時間のほかに働きました分は、それに応じた賃金が払われるのが普通であろう、かように思います。
  43. 島上善五郎

    ○島上分科員 まだあるのですけれども、時間が来たそうですから、主査に敬意を表してやめますが、ここで資料をお出しします。  これはそこらの名も知れない小さな会社じゃないのです。生命保険の大手ほとんど全部やっておるのですよ。これはひとつ強力な監督指導をやってもらいたい。労使の間にもうすでにかなり前から問題になっておるのですが、法の盲点を巧みに悪用してこういうことをやって、依然としてまだ改まっていない。きわめて悪質巧妙なる詐欺的違法行為とでもいいましょうか、私はここで適当なことばの発見に苦しむのですが、これはこのまま放任できない問題であるということだけはよくのみ込んでいただきまして、強力な行政指導をやってもらいたいということを希望しまして、ちょうど時間を正確に守って終わります。
  44. 赤澤正道

  45. 島本虎三

    島本分科員 私は、きょうはしぼって大臣とここで対話をしてまいりたい、こういうように思っております。その対話の案件は、労災保険と港湾労働法、この問題に関連します二つだけであります。  まず第一点の対話、労災保険についてですけれども、古い話です。つい最近、私ある機会に見ることができたのですが、昭和四十二年八月十八日のテレビの案内欄にこういうのが出ておりました。「NHKテレビ「現代の映像」労災審査官の調査活動」、「NHKテレビ今夜の「現代の映像・第61号労災審査請求事件」は、ワンマンバス運転手の死をめぐる労災審査官の調査活動を追い、ワンマンバス労働の実態と労災保険制度の意味を考える。労働者の負傷や死亡が、業務に起因するものかどうかを判定するために、労働基準局には専門の審査官がいる。この番組で取り上げたのは、東京労働基準局に持ち込まれた労災審査請求事件である。昨年の十二月一日、ワンマンバスの運転手が運転中にとつぜん意識不明になり、五日後に死亡した。二人の幼児をかかえた未亡人は、ただちに労災保険の支給を請求したが、監督署は医師の脳内出血という診断により、死亡業務上ではないと判断、労災保険を支給しないという決定をした。これに対して遺族は、決定を不服として審査請求をしたのがこの事件である。」これは担当の山口審査官の現場調査によって解決に導かれた。大体こういうような趣旨のことが書いてあったわけであります。私はこれを見て、偶然にも同じような事件がいままた起こって抗争中である、この内容もほぼ同じような状態である、こういうことに気がついたわけです。そしてこの労災保険適用ということ、これはやはり災害を受けた労働者に対する給付で、ぴんぴんしたじょうぶな人に対するものではないわけであります。まして死んでしまうということは最大の不幸な事態です。そういうようなさなかでもやはりこういうような悲劇が繰り返されているということになれば、これはどこかに欠陥がある。法に欠陥があるか、行政的な措置に欠陥があるか、いずれかにこれ欠陥があるということを、大臣もこの際よく考えておいていただきたい、こう思うわけなんです。  それで、最近の労災保険適用の問題とあわせて現在抗争中のものが何件ございますか、これをひとつお知らせ願いたいと思います。それを事務当局から聞いたあと大臣に所感を聞かしてもらいます。
  46. 和田勝美

    和田政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま労災保険保険給付に関することで行政訴訟が出ておりますのが二十九件でございます。  それからなお、先生のいま御質問の中に出ておりました脳溢血の問題でございますが、脳溢血につきましては、その原因が大体高血圧等によりますもの、あるいはまた基礎的な疾病がございまして、それが脳溢血を誘発するということが通常の場合多うございます。したがいまして、そうなりますと、業務に起因をする、業務との相当因果関係があるという点からいうと、なかなか問題がございますので、通常の場合、脳溢血につきましては業務外である、こういう認定をいたすのが私どもの通例でございます。  ただ、通常の業務以外に非常な精神的な緊張が高まるような業務を特にやっておったとか、長期にわたる疲労が累積をしていると認定されるような業務についておったために脳溢血が出たのではないか、そういう疲労の累積というようなものから脳溢血が出たんじゃないか。こういうような場合につきましては、業務上と認定する場合もございますが、普通の場合は大体私どもとしては業務外、こういう解釈のしかたをいたしております。
  47. 島本虎三

    島本分科員 二十九件もそういうようなのがあるというのは、私もいま初めて聞いてがく然としたわけです。しかし、やはりこういうような問題については相当に法そのものの精神も組み入れ、そしてその措置そのものもあまりきびしくすべきじゃない。まして死んでしまった場合には、これは何ものにもかえられないじゃありませんか。そういうようなところまで一言一句にこだわってやっておるような、こういうような行政措置というものは、私は愛情の問題から、姿勢の問題から考えなければならない、こういうふうに思うわけなんです。こういうような点で大臣いかがでございます。
  48. 原健三郎

    原国務大臣 御説ごもっともでございますし、いま聞いてみますと、この労災の件数からいうと、およそ百万件ぐらいあるそうでございまして、それが対象となって労災保険を支給されておる。その中の御説のワンマンカーの運転手さんが脳溢血で倒れられた力ごく非常に少ない例でございますが、数も少ないのでございますし、できたら愛情のある、温情のあることをやるほうがよろしいと思うのですが、まあ数も少ないことでございますし、その場合にぜひひとつ、長年の疲労が累積してそれで業務上倒れたというようなところにいきますならば、これは保険の支給になるのでございますが、そういうもう少し弾力的に愛情のこもったことをやることも考慮したいと思っております。
  49. 島本虎三

    島本分科員 私がいま例に出したこの山口審査官が取り上げた問題の結論はどうなったのですか。——これの返答ございませんか。
  50. 和田勝美

    和田政府委員 具体的な山口審査官の取り上げた件自体につきましては、いま私ども手元資料がございませんので、至急取り寄せまして、どういうように認定したかを申し上げたいと思います。
  51. 島本虎三

    島本分科員 四十二年八月十八日に、これもすでに解決されたものであるとして、テレビの「現代の映像」の中で、労災審査官の調査活動ということでもう出してあるのです。調べなければならない問題じゃないです。もう結論は出ておるのですよ。大きく全国放送になったのがわからぬというのは困るよ。どなたです、わからぬのは。
  52. 和田勝美

    和田政府委員 先ほど大臣がお答えしましたように、審査件数も相当たくさんありますものですから、先生指摘のように、要するに四十二年八月十八日の件でありますから調べればすぐわかりますが、それが山口君の案件——ここでいま私とも相談してみましたけれども業務外にしたか、業務内にしたか、どちらかちょっと確認できませんので、至急調べてお答えしたいと思います。
  53. 島本虎三

    島本分科員 これは支払い命令も出してちゃんと解決したではありませんか。それをどうしてわからないとこの際逃げるのですか。
  54. 和田勝美

    和田政府委員 逃げるわけではございませんが、具体的な、山口審査官がやったこの事件というお話なものでございますから、どちらにしたかはっきりしませんので、ここで不確定なことを申し上げてもたいへん失礼でございますので、至急調べさせていただきたいと思います。
  55. 島本虎三

    島本分科員 時間がなくなりますから、それでは先に進めますが、なるべくならば、どなたか行って私の質問が終わるまでに調べて報告してください。  大体、精神的な緊張と長期の疲労、この認定ができる場合には、これは業務上と認定してもよろしい、こういうようなことのようであります。  そこで、私が一つ同じような事件を申し上げておきたいと思う。それは昭和四十年二月二十二日九時三十分に、北海道の中央バスの運転手である大友栄という人が、同じような状態で死亡しております。それは小樽の山手循環線の運転者として、洗心橋の停留所からいま出発せんとしたとたんに意識不明になって昏倒してしまったわけであります。死ぬ最後までブレーキを踏んでおったので、そのまま川へ墜落するのだけは防げたわけです。しかし、そういうふうになって倒れたものですから、乗客が騒ぎ、そのまま小樽病院へ収容いたしました。残念ながら午後三時五十分に死亡してしまったのです。同じ状態です。それで、本件については、やはり小樽労働基準監督署は業務外と認定したわけであります。これは当然家族のほうから不服の申し立てが出ました。そして北海道労働者災害補償保険審査官に審査の請求をしたわけでありますが、これはなぜか棄却されているわけです。そして再審査の要求をしたが、四十二年七月十三日にこれは棄却するというような通知が出ているようであります。あと残された手段は裁判によるよりしようがないというようなことになって、行政訴訟に踏み切って、現在抗争中のものなのであります。  そして、これを見ます場合には、前の事件とどこが変わっているのか、これで困るわけであります。私どもこれを尋ねられ、社会労働委員の一員として、この問題に対して、前者はこれが認められたけれども後者はだめだというような判定が私としてははなはだできかねる。そして一方は抗争中である。一方はそれがあたたかい愛情によってうまく処理された。しかし、労災法適用の基準、これは行政レベルであまりにも狭くやり過ぎているのではないか。いま申しましたように、精神的緊張、長期の疲労、これが認定できた場合は業務上と認めてもよい、こういう態度をもう少し下部末端までやっておいて、大臣のいまの、このくらいのやつは、やったってどうということはないじゃないかということばをそのままちょうだいしても、おそらくこれは愛情をもって感謝こそされ、それによって基準行政がふるわなかったなんということは、つめのあかほども出ないはずです。それで、これは実情としてあまり狭く考え過ぎておらないだろうか。全般的にこういうような傾向があるのではないだろうか。これはちょっと困るのですが、これはどっちでやっていただきますか。
  56. 和田勝美

    和田政府委員 先生がただいま御指摘の小樽の大友栄さんの問題につきましては、現在札幌の地方裁判所で審理係属中でございます。先ほども申し上げましたように、脳溢血につきましては、普通の場合業務との相当因果関係がないのが普通でございます。ただ、例外的には、いま先生が御引用になりましたように、精神的な緊張が特に高まったような状態での勤務が実証されるとか、長い間にわたって、長期労働時間の結果疲労が蓄積をしてきたということが認められるような場合に限りまして認定をいたしております。したがいまして、監督官が、死亡通知がありましたときに、業務上外の認定をしますときには、そういうものにつきましてはそれぞれのケースに当たって具体的に判断をいたします。大友さんの場合には、いま申し上げましたようなことが一応認定できなかったのと、医師の所見も同一でございましたので、私どものほうとしては、小樽の監督署で業務外という認定をいたしましたが、遺族の方の御不満がありまして、それぞれ審査事務をやりました結果も、まあ審査会にまで参りましたけれども、だめだということでいま訴訟になっておる。こういうことでございますので、この具体的な問題につきましては、訴訟が係属中でもございますので、審査会の審査も経た問題でございますので、私どもとしては訴訟の結果を待つ以外には現在方法がなかろうということで、訴訟の結果を待たしていただいているような状況でございます。
  57. 島本虎三

    島本分科員 これはやはり大事な問題です。大臣、よく聞いておいてもらいたいのですが、あとから意見書を付した医師は本人の死亡診断書を書いた医師じゃないのでありまして、その人はもうすでに留学しておらなかったので、実際は臨床に立ち会った先生意見書を書いたのではなかった。そうして審査官、それが証人調べの段階で、奥さんの友人である人で、そのバスに乗っていた人、その人の自宅におもむいて、証言についてこういうふうに言ってくれといって、これを示唆したということで実例もあがっておるわけであります。そういうようなことからして、監督官は途中で更迭させられておる。それも妊娠ということで更迭されておるが、その後産んだ気配はない。こういうようなことまではっきりしておる。はなはだ、この問題については少し疑義を持たれておる問題であります。私は、こういうようなことが——抗争中ですからあくまでもこれは裁判の決定を待つべきです。しかし、今後これと同じような問題があるとしたならば、皆さんのほうで、いま言ったように考えて処理しなければならない。これは精神的な緊張と長期の疲労、これが認定できるならば業務上であると認定してもよろしいんだ。こういうふうにしたならば、東京ならば平均でハンドル時間が五時間、北海道の場合は七時間ですが、これだって一つの疲労の度合いになる、まして、ワンマンカーですから、乗せるときから降りるときまで全部気をつけます。したがって、疲労の度合いはなお倍加しておる。そのほかに運輸行政の一環として利用者の安全性を常に考えておりますから、これは緊張していないということにはならぬ。運転労働者はこういうようなときには労働過重になっている傾向がある。おそらくここにいる山内広さんもそっちの系統の人ですから、よく私の言っていることは理解できると思うのです。そういうふうにして、やはりこれは疲れておるのですから、何をもってこういうようなことになっておるのか、私としてはまことに残念です。審査の場合、審査官一人でこれをやっておったという事態、それから健康診断を行なっておらなかったという、こういうような事態さえもはっきりあげられておるわけであります。それなのになおかつこれを棄却するというのは、二十九件だといっても、あまりひど過ぎるのじゃないか。何者かどうかしたのか、こういうような疑いさえも持ちたいほどです。私は、こういうような問題に対しては、やはり先ほど言ったように愛情ある解決を今後してやるべきだ。大臣も二十九件くらいじゃないか、このくらいならば当然やってやるべきだ、こういうような気持ちでいるのです。こういうようにして狭めて、そうして適用除外が多くなっても、これは労働省の誇りになる問題じゃないはずです。やはりこういうような問題を考えて、ひとつ大臣の決意も伺っておきたいと思います。
  58. 原健三郎

    原国務大臣 島本さんの御意見よく承りました。この間、数日前に東京の新聞に、ワンマン運転手は疲労してきげんが悪いというような記事を私も見たばかりで、まだ印象に残っておるような次第でございます。ワンマン運転手は非常に緊張度も高いし、疲労も多いということを、最近、数日前の新聞を見て、写真が載っておって私非常に印象に深いのですが、さいぜんからいろいろありました長期の疲労の累積と緊張の度合いが高かったというのにこれが当てはまるかどうか、何ともいま即断はできませんが、お説のように愛情のこもった対策、一度省内で相談して労働災害の基準等々いろいろ善処いたしたい、このことをお約束申し上げておきます。
  59. 島本虎三

    島本分科員 それと大臣、いま労災法について改正を考えられておるということを承っておるのです。やはりその際には、いまのような条件を十分考えて、この金額が低過ぎるというふうな点も一つの大きい欠点でしょう。それから同時に、その適用があまりにも狭くかつきびし過ぎるというような点は、仏をつくって魂を入れないような結果を招来するようなおそれもある。いまの実例によってもわかるとおりなんです。これはやはり今後は考えていかなければならない、こういうふうに思います。そういうふうな点を十分考えて、適用の範囲を広げるように今後の法改正を考えていただきたいと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
  60. 原健三郎

    原国務大臣 長く、二十年以上もやっておりますので、この労災保険のほうも近いうちに改正いたしたい、こう思っております。その際にはお説のような御意見もよく取り入れて善処いたしたいと思っております。
  61. 島本虎三

    島本分科員 だいぶ時間もたちましたので、あとは大急ぎで端的にやってまいります。  港湾労働法が全面施行されてからことしでまる二年にならんとしておるわけですが、施行は四十二年四月一日でございます。そうしてこの施行状況を見ますと、残念ながら業者の法無視が意外に多いわけであります。それと同時に、政府の指導のまずさでしょうか、まさにざる法化しているような傾向があらわれておるわけです。したがって、この登録に魅力もなく、登録労働者になり手がなく、逆に登録返上の声さえ高まっているような状態だと聞いております。これは施行状態とともに、このような状態では法そのものの精神を踏みにじった結果に終わることを一番おそれますが、法そのものに欠陥があるのかどうか、また、施行の状態とあわせてひとつ決意も承っておきたいと思います。
  62. 原健三郎

    原国務大臣 港湾労働法が適用されております六大港について、日雇い港湾労働者雇用の状況を見ますと、四十三年におきましては、地域平均の就労者数で、公共職業安定所紹介によるものが約十七万六千人、それでそれに対して直接雇い入れというのが約三万七千人ございます。このように直接雇い入れがいまなおある程度行なわれておるものの、しかし、前年度の四十二年度の直接雇い入れによる就労者数約六万人に比べますと半減いたしておるわけでございまして、かなり減少はいたしておりますが、まだこういう実情であることはどうも残念でございますが、だんだん減っていくのじゃないかという見通しでございます。
  63. 島本虎三

    島本分科員 私がいま聞いているのは、大臣とそれぞれ同じ見解に立って聞いているわけであります。減っていかなければならぬのに逆に減らない。これは常用という名で、それの上に新をつけて新常用という名をつけて、たらい回しにしておる。こういうふうな結果からして、これはもう減るわけはないのであります。そのためにこの登録労働者の数が制限されるようなことになり、あわせてそれに対して魅力を失うようなことになっておるわけであります。これはもうまことに重要なんですけれども、港湾労働法第一条によって、この労働者に対して責任はだれが負うべきものなのか、同時に港湾労働者の定数というもの、こういうふうなものはどういうふうにしてきめておるのか、この二点はやはり重要なんであります。これは事務の方でもけっこうですが、お知らせ願いたいと思います。
  64. 村上茂利

    ○村上政府委員 私からお答え申し上げます。  先生指摘のように、港湾労働法の目的は第一条に規定してございますが、この法律の施行に当たるのはもちろん労働省でございますけれども、御承知のように、港湾運送事業そのものにつきましては関係各省もございますし、業界関係もいろいろな種類があるわけでございます。要は港湾労働法の趣旨、目的を体しまして関係者がこの法の施行の万全を期するということであろうと思います。  それから先生指摘の登録労働者の数などの問題でございますが、御承知のように、港湾雇用調整計画というものを毎年策定いたしまして、港湾調整審議会にはかりまして決定をいたしておるところでございます。目下同審議会において審議をいただいておりますが、この中で、日雇い港湾労働者の定数といたしまして御検討いただいておりますのは、四十四年度分は一万四千百二十名でございます。ちなみに四十三年十一月末の登録人数を申しますと一万二千六百四十二名でございます。それをやや上回る形で港湾雇用調整計画の策定をお願いいたしておる次第であります。ただし、いまのは日雇いだけでございまして、常用港湾労働者その他を合算いたしますと、その数は八万をこえるということでございます。
  65. 島本虎三

    島本分科員 これが運用の面で円滑さを欠いておるのは、常用の上にいわゆる新常用という特別の常用制度をつけて、それをたらい回しにしている。この実態をよく労働省当局も見詰めなければならない、こういうように思うわけであります。  それで、やはりこの就労保障、これに対して、登録した以上責任はだれなのかということも明らかにしておかないといけないと思う。この就労保障については十六条ただし書きにあって、事業主の直接雇用も認められておる。こういうようなこともあって、登録雇用者に対しては一体どなたが責任を持っているのか。たとえば港運業者に聞くと、これは職安だという、職安のほうに聞くと、これは単なる紹介事務をやっているだけだ、両方とも回避する。その間に賃金を一定的に払っていく、それで来なければ、今度はおまえらには雇用調整手当は支給しないぞ、こういうようになってしまう。どうもこういう循環を繰り返してきますと、いい結果は招来しません。これで登録労働者雇用、その責任、これに対しては事業主に当然あることははっきりしていますが、そういうような場合は話し合いを十分させること、団交というものをやったことはあるのでしょうか。私もそういうような点で十分今後の対策として皆さんに考えておいていただきたいと思います。  それと、荷主と船会社の就労保障の責任はないのかということです。これは港湾労働者雇用関係は港運業者であるということは第一義的でしょう。しかし、その背景にある作業面から見ますと、これは荷主、船会社は、これも同じように、労働者としては従属的な関係にあるわけですから、そういうふうになってみますと、単に港運業者、これだけを交渉の相手であり、使用者と認めるのには範囲が少し複雑になっておるようであります。この点今後十分考えていただきたい。港湾労働法の実施に対しまして、新しい一つの港湾形態のためにこれができたのでありますから、それが全然実らないということは抜け道が多過ぎるからであります。そしてこれがいまや全面的に登録労働者を拒否するような態度になっておるということは、これは重大だと思うわけであります。労働省としてもこれを放置しておくわけにはいかぬだろうと思います。いま私が申し上げましたような点、これも十分考えて、今後法改正に踏み切ってもらわなければだめなんじゃないか、こう思いますが、これは事務当局も知っておられます。大臣、いま言ったようなこともあわせてひとつ決意を伺っておきたいと思います。
  66. 原健三郎

    原国務大臣 御説よくわかりました。法ができてまだ二、三年よりたっておりませんので、法改正というところまでまだ話はまとまっておりませんが、運用面におきましては、御説のようなことを、万遺漏なきを期して、よく相談してまとめてやるようにいたします。
  67. 島本虎三

    島本分科員 では、いま言ったような趣旨を十分体して法改正を考えられて善処されますことを強力に要請して、ちょうど時間になりましたので終わりたいと思います。
  68. 赤澤正道

  69. 内藤良平

    内藤(良)分科員 大臣、私は出かせぎ労働者の問題だけにしぼっていろいろ御質問をしたいと思っております。新任の大臣ですけれども、私は秋田県でございますが、秋田県だけでも出かせぎ労働者がことしは四万七千五百人くらいおるのではないか、これは市町村の調べでございますけれども、しかし、実際はこのほかにもう一万ちょっとくらいおるのではないか、秋田県の場合五万七千、まあ六万。しかも政府でもいろいろ施策をやっておるようだけれども、出かせぎは減らないのですね。昨年から見ると約一千人くらい増加しておる、こういう状態なんです。そこで、今日の日本の産業界の中で出かせぎ労働者というものをどういうぐあいに位置づけて大臣はお考えになっておるものか、これをひとつ伺いたいと思うのです。
  70. 村上茂利

    ○村上政府委員 たいへん重要かつむずかしい問題でございますが、私どもは、出かせぎ労働者という状態がかなり広範に生じました原因は、産業界とそれから出かせぎ側の両方にその原因があると思いますが、要するに一般的な人手不足のもとにおきましてその必要労働力を出かせぎ労働者に求めるという、そういう要因がかなり増大してきたわけであります。一方、農業を営む出かせぎ労働者が、いわゆる農家経営のもとにおきまして他に現金収入を求めたいという欲求から出かせぎに出てくる。   〔主査退席、竹内主査代理着席〕 こういう出る側と受けとめる側と両方の要因がございまして、現在のような形になっておると存ずるのであります。  その数の増加傾向でありますけれども、的確な数字はございませんが、私ども失業保険の支給状況などから見まして、失業保険の面におきましては五十八万とつかんでおりますが、これらの労働者がどのような面に分布されておるかと申しますと、約六割は建設産業でございます。しかしながら、残余の者は食品工業等にも最近増加いたしておりますし、中に顕著な傾向といたしまして一般製造業にも……(内藤(良)分科員局長、簡単でいい」と呼ぶ)分布しておるというような傾向が見られます。
  71. 内藤良平

    内藤(良)分科員 こういうことなんですよ、大臣。いまのお話の中でも五十何万おって、六〇%は建設業界でやっておる。だから局長は農村の実情によって自然発生的に出かせぎ労働者が出てきた、食うに食われなくなってきて職を求めてというような感じのする発言をしておるけれども、現実の上では日本の建設業界だけをとってみてもたいへんな貢献をしておるのではないかと私は思う。そういう点は労働省として大臣はどういうぐあいにお考えになっておるか、たいしたことはないというお考えですか。
  72. 原健三郎

    原国務大臣 いや、労働力不足のおり、ことに出かせぎ労働力は日本の生産、経済発展に非常に寄与したことはもう明らかでありまして、深く敬意を表します。わけても、いよいよ来年三月開催することに予定している万国博覧会等につきましては、労働力不足対策を非常に問題にされて、労働省としても非常に力を入れておるところでございますが、これがいま先生のおっしゃったように秋田県から六万人、この大半がやはり大いに——万国博覧会開催がようやく軌道に乗って、一番問題になっておった労働力不足もまず解消して、アジアにおいては初めての万国博覧会も成功裏にいくという一応の見通しが立ちましたので、そういう万博という点から見ましても、この出かせぎ労働者各位の貢献については深く敬意を表しておるところでございます。
  73. 内藤良平

    内藤(良)分科員 大臣のお考えはわかりました。出かせぎの何十万の労働者に対しては、日本の産業界に貴重な労働力を提供して貢献しておる、こういうお考えでございますね。
  74. 原健三郎

    原国務大臣 そうです。
  75. 内藤良平

    内藤(良)分科員 しからば労働省として、この産業に寄与しておる貴重な労働力の持ち主の出かせぎ労働者にサービスをどのようにされておるか。一般の組織された労働者はたくさんあるわけですけれども、この方々は全然未組織なのです。ほとんど職場においては団体交渉のような実態もないし、あるいは代表発言をするような状態もない。したがって、やはり労働行政によって、俗なことばでいいますと、いろいろめんどうを見てもらう面が多いわけで、労働基準監督の行政でも、あるいは職安行政でも、そういう点は、この過去十年の間に出かせぎ労働者がふえつつあるわけでございますから、いま一年、二年の問題じゃないわけです。相当の時間的経緯がある中で、こういうりっぱな労働力を持っておる出かせぎ労働者に対して、どういうぐあいに労働省がサービスをしてこられたか。これをひとつ顕著なものをお話し願いたいと思います。
  76. 原健三郎

    原国務大臣 一般的な労働基準監督をしたり、あるいは労災対策をやった、これは言うまでもないことでございます。そこでお尋ねのように、出かせぎ労働者に対してだけ特にどういうことをやっているか。くにを出てから、くにに帰るまでということを、労働省としては農林省と緊密な連絡の体制を強化して、そういう行政指導、くにを出てから、くにに帰るまでというようなことをいま言って、やっておるわけでございます。  いま一番やっておりますことは、出かせぎ労働者の働く事業所を把握して、事業所台帳というのをつくっております。これに基づいて事業主に対しては、採用経路、労働条件及び作業環境の適正化を台帳に書かせて、これを労働基準監督官が見て、あるいは職業安定所が見て指導をいたしております。さらに健康診断の実施、常用化の促進を勧奨するなどやっております。また、そのほか出かせぎ労働者自身に対しては、出かせぎ労働者手帳というのを交付して、就職経路の正常化、就労前の健康診断の実施等々につとめております。さらに出かせぎ労働者の援護をはかるために、出稼援護相談所というのを東京、大阪、札幌に設置し、各種の相談に応じて便宜をはかっておりますが、これが四十四年度予算におきましては、今度は名古屋に新設し、またこれを方々に増設する計画を立てております。そのほか出かせぎ労働者の常用化——できれば常用化したほうがいいと思いますが、常用化促進のために通年雇用融資制度、建設業、水産加工業にこれは適用いたしますが、その融資制度を設けて、年間を通じて事業を行ない、かつ労働者雇用するために必要な設備の設置及び整備に要する資金の貸し付けをいたしております。それから四十三年度に通年雇用奨励金制度を設け、失業保険の季節的受給者を年間を通じて雇用する事業所について雇用奨励金を支給するようにいたしております。これは一人について三万五千円程度でございます。  そういうようなことを、出かせぎ労働者に対してだけ特別なことを、くにを出てから、くにに帰るまで、労働省としても決してほうっているわけではございませんで、重要視して大いにやっておりますが、今後とも非常に貴重な労働力でございますので、せいぜい行政指導、まためんどうを見させていただきたい、こう思っております。
  77. 内藤良平

    内藤(良)分科員 御努力されているように思われます。  そこで、その御努力のあらわれにもなるわけですが、昨年でしたか、建設業附属寄宿舎規程というものができましたね。これは労働省でたいへん御努力された結果と思って、感謝したいところでございます。ただ、これはせっかくやられても、各事業所の実態というものをぼくらが調べた——これは小範囲になると思いますけれども、その状態を見ても、非常に規程にそぐわない宿舎がまだたくさんあるわけです。これは、やはり監督官が少ないという現実がそうなっているんじゃないでしょうか。  そこで、監督官はここ五年くらいの間にどの程度増員のかっこうになっておりますか。これを計数的に御説明願いたいと思います。
  78. 和田勝美

    和田政府委員 私から申し上げます。  監督官は、全体の政府の方針としまして、公務員の数をふやさないというワクの中に入っておりますので、最近におきましては、大体四十年が二千五百九十八人でありましたが、四十三年が二千六百五十三人ということでございまして、差し引きいたしますと、五十五人の増という程度になっております。なお、来年は二十五人の増を予定いたしております。
  79. 内藤良平

    内藤(良)分科員 それは四十年から四十三年の三年の間に五十五人ですか。
  80. 和田勝美

    和田政府委員 はい。
  81. 内藤良平

    内藤(良)分科員 四十三年から四十四年にかけては二十五人ですか。
  82. 和田勝美

    和田政府委員 はい。
  83. 内藤良平

    内藤(良)分科員 大臣、この人数では、とてもいまの六十万人という建設関係に出ている出かせぎ労働者——せっかく労働省でつくりました建設業附属寄宿舎規程なんかを完全に実施させるために監督するなんていうことは、年間に二十五人程度の増ということでは問題にならないじゃないですか。どんなものでしょうか。自衛官は六千人くらいふえるというのですが、こういうこれは閣内でどういうぐあいに御論議になっているのですか。
  84. 原健三郎

    原国務大臣 さいぜん島上さんからも同様の質問がございまして、また要請もございまして、労働基準監督官が少な過ぎるからもっとふやせという非常な激励を受けまして、私は、これを閣議にも出しまして、来年度においてはもっと大幅にふやしていかないと、労働行政の進捗に支障を来たしますから、御説のように増員を要求する考えでおります。  それで、さいぜん申されました建設業附属寄宿舎規程を去年こしらえまして、昨年の九月にこれを、一斉に五千カ所を労働省で調べましたところ、大体七割五分が不適格でございまして、非常に成績が悪いので、それでひとつそれを改善するように警告を発しました。また、御要望のございました東京都については、二月十日から十五日までやりましたが、その結果はまだ出ていないそうであります。しかし、全国的に五千カ所をやりましたときには、七割五分が不適格であるということでございまして、建設業の寄宿舎はまことに不適格が多いので、今後ともまたときどきこれを調べまして、警告を発し、是正をさせる考えでおります。
  85. 内藤良平

    内藤(良)分科員 この監督官の問題はぜひひとつ増員を願いたいと希望しますけれども、特に当面、せっかく規程ができたのですから、これは業界に対して周知徹底になっていると思います。しかし、なかなかこれが改善をしないという業者に対しては、やはり相当強い態度を政府としても打ち出していただきたいと思うのです。これはなかなか簡単にいかぬかもしれませんけれども。監督官が少ない、そこで規程どおりの内容改善も行政指導が直接できない、こういう面もあると思います。しかしながら最近は、この寄宿舎が悪いということによりまして、出かせぎ労働者の勤労意欲といいますか、あるいは出かせぎをする意欲といいますか、たいへん悪影響があるわけであります。もちろん衛生的な面でも問題がございます。そういう点を考えますと、ぜひひとつ、この規程によるところの改善に熱心でない業界、業者に対しては何らかの行政措置をとっていただく、こういう面での、また改正面の促進を、これは希望しておきたいところでございます。  それから、最近、どうも職安の窓口を通じまして出かせぎにまいりましても、労働条件が事業場に来た際に違っておる、職安の窓口と工場に来た際の話とだいぶ違いがある、こういう声が聞こえてくるわけであります。この出かせぎ労働者に関してのいろいろなトラブルが多いものでございますから、どうしてもやはり正規のルートを通じて、特に職業安定所を通じて就職をするように、こういうことをわれわれ自体もすすめておるわけでございます。ところがなかなかまだそのルートに乗らないのですね。これはいま申し上げました労働条件の違いばかりじゃなく、ほかにもいろいろ問題があるようです。たとえば税金の問題等もあるようでございます。職業安定所を通じますとどうも課税が強化されるのではないかとか、こういう不安から行かないという方もおります。最近は、どうも安定所の話と行ったところの話と、話が違う。これはどうも安定所のほうでは業者の皆さんの言ってくる労働条件をうのみにして、それでそのまま職業あっせんをしてしまう。ところが本人は、職業安定所でございますから、信用してそこに参りますと、がらっと変わっておる。ところが一たんこっちへ来てしまいますと、またいなかに帰るなんてことはできませんから、泣き泣き働かざるを得ないという状態がある。そこで考えられるのは、やはり職業安定所も人間が少ないせいか、その業界の皆さんのおっしゃる、業者のおっしゃる労働条件を、実際にそういうぐあいにやっておるのかどうか確認しておるかどうか。そういう時間といいますか、予算といいますか、労働力がないのか、そこら辺に問題があるような気がしますけれども、そこら辺どうですか。
  86. 村上茂利

    ○村上政府委員 御指摘の点は、そういう問題が起こり得ることが十分予想されますので、私どもは出かせぎ労働者手帳というものを交付いたしまして、現在差し上げている方の人数は約二十三万人でございます。その手帳の中に、求人申し込みの条件としての賃金その他の条件を明示するということで、後日問題が起こらぬように処理しておるわけであります。しかし、行ってみたら条件が違うじゃないかというのはあり得ることでございますから、手帳制度によりましてこれを明らかにしたいという気持ちでございますけれども、現実に食い違うという問題がございますれば、できるだけその土地の職業安定所を利用していただきまして、そして条件の是正につとめたいと思います。職業安定所を利用すれば税金がかかるのではないかとか、それは全くの杞憂でございます。できるだけ私どもの出先の機関を御利用くださいまして、そういった条件の食い違いなどを直さすようにいたしたいと思います。その点につきまして御協力を賜わりたいと思います。
  87. 内藤良平

    内藤(良)分科員 これは局長、業者のおっしゃる労働条件を所員が出張して確認するようなことを一年に一ぺんでもやっていますか。人手が足りなくて、やっていないのじゃないのですか。言っているとおりうのみにしているのではないかと思う。安定所の役人が年に一ぺんくらい調べるようなことをやっているかどうか、そういうことを聞いているのです。
  88. 村上茂利

    ○村上政府委員 ところによりますけれども、私どもは、手帳制度とともに、別に東京とか大阪とか札幌とか、来年は名古屋というようなところに、出稼援護相談所というものを設けまして、そういった条件が食い違うという場合に御相談に応ずるほか、私どもはこういった方につきまして、できるだけそういった食い違いをなくするように是正をいたしたい。ただ労働省の出先機関としては職業安定所だけではございません。労働基準監督署でもそういった事業場のいろいろな監督指導をされておりますが、労働基準行政の面におきましても、就職時における労働契約の明確化といったようなことで具体的な指導をいたしております。そういった関係機関が協力をいたしまして、御指摘のような問題についてこたえてまいりたいと思っております。
  89. 内藤良平

    内藤(良)分科員 それではまたがんばっていただくことにしまして、ちょっと問題を変えますけれども、最近、地方の職安の窓口で、どうもわれわれから見ると解せないことがあるのです。それを大臣にお聞きしたいのですけれども、いま労働行政の中では強制労働のような感じを受けるようなことはしていないでしょうね。する者はないでしょう。あなたは国際的にもいろいろ経験がある方だし、強制労働のようなことが職安の行政なり窓口の中でもしあるような感じを国民に与えておるとするならば、あなたはどうお考えになりますか。いいですか、悪いですか。
  90. 原健三郎

    原国務大臣 強制労働をしているようなことはよくないことであるし、そんなことは万々なかろうと存じております。あれば取り締まります。
  91. 内藤良平

    内藤(良)分科員 そこで、これはわれわれの知っている範囲だから、秋田県内になってしまいますけれども失業保険の離職票を持って失業保険給付を受けに参ります。すると、秋田県内の職業安定所の窓口においては、何か悪いことをしたように、おまえ何しに来たんだ、失業保険をもらうなんてとんでもない考えだ、働け、こういうところがあるじゃないか、どうだと、一喝されるような傾向があるのですね。そこで純真なる労働者は辟易してしまうわけだ、何かしかられるのではないかと思って。これを客観的に見ると、何か国の職業安定所が働かせるために強制しているような、強制労働のような感じを持つのですね。だから大臣は、そういうことがあってはだめだ、取り締まる、こういうお気持ち、そのとおりだと思います。しかし案外窓口に参りますと、失業保険の問題にからんで、どうもわが国民に職業安定所の窓口というものはわれわれを強制的に働かせるような印象を与えておる、これをどう思っておりますか。
  92. 村上茂利

    ○村上政府委員 御承知のように、失業保険は、就職口がないときに、失業状態のときに差し上げるものでございます。それを、いま人手不足のときでございますから、働き口はあるぞと幾つか御紹介なさいますが、それはいけない、失業保険金をもらいたいというようなことであっては、全体がゆがんでくるわけでございます。そういう意味から、現在の人手不足のおりから求人も相当ありますので、ここに就職しないかという話をするのは、これは業務性質上当然のことだと思います。失業保険金をもらうよりも就職をするということが本筋でございますので、求人口があればそれを紹介するというのは当然だろうと思います。ただ、いま先生の御指摘のように、応待の態度、言い方がきわめて何らかの印象を与えるようなことを受けたといたしますれば、これは不適当でございます。ただ、失業保険金をもらいに行きたいのが主眼で、就職するのはできるだけ回避しようといったようなことでございますと、これは行かれる方にも若干の問題があるわけでございます。いまの人手不足という労働市場の状況から見まして、そういった問題が円滑に処理できるように十分配慮いたしたいと思います。特に応待その他につきまして誤解をいただかないように、十分、厳に注意をしてまいりたいと存じます。
  93. 内藤良平

    内藤(良)分科員 これはまあ、何も法律論なんかやる気はないですよ、局長さん。それはそのとおりですね。だけれども、いやなところには行かなくてもいいのでしょう。職業選択の自由はあるのでしょう。おまえ、じょうぶだから働け、見たところ頑健だから、若いから、とにかくここに働く場所があるから、万博なんだから、人が足りないのだから、おまえここへ行け、こういった場合にはやはり強制のにおいはしませんか。おまえ失業保険をもらいに来たけれども、こういうところがあるんだ、見たところじょうぶだから働くべきじゃないか。それはことばのあやになってしまいますけれども、水かけ論になってしまうけれども、やはりいろいろな関係で、もう少しいいところへ行きたいとか、あそこは安いとか、ぼくのからだに合わないとか、ぼくの希望に合わないとか、いろいろなことがあるわけでしょう。そういう選択の余地はあるわけだ。ところが窓口では、おまえ、離職票を持ってすぐにも失業保険金をもらいたいというのはけしからぬ。そこで、こういう働き場所がある、おまえ、じょうぶだからここに行くべきだ、こういうぐあいに行政指導をしておるとすれば、これはやはり強制のような印象を与えるのじゃないかというわけです。そういうぐあいに指導しておりませんか。失業保険金をくれたくないという最近の傾向にからんで、そういうぐあいにしておりませんか。
  94. 村上茂利

    ○村上政府委員 いわゆる季節的受給者、毎年きまって失業保険金をもらうというのは、これは本来の失業保険の趣旨から見ておかしいじゃないかというような意見が相当各方面にございます。そういった背景のもとにいろいろ問題が考えられておるわけですが、私ども、そう無理しようとは思いませんけれども、ただ夏場、失業保険金をもらうような方が、現に農業の仕事があるというので戻ってくるというような方が、失業中だから失業保険金をもらいたい、あるいは夏場働き口がたくさんございますのに、そっちのほうにはなかなか応じないというような問題があるわけでございます。そこで、そういった問題について争いが起きませんように、客観的に見て拒否することが正当な事由があるかどうかといったような点については、指導基準をきめましていろいろやっておるような次第でございまして、常識的に見て無理がなければ就職をしていただきたい、こういうことでやっておるわけであります。ことばの行き違いその他無用の摩擦を生じないように、今後十分注意していきたいと存じます。
  95. 内藤良平

    内藤(良)分科員 これはひとつ労働行政の中でそういう誤解を生じないようにしていただきたい。ことばの使いようでこれはできることだと思いますから。  失業保険改正問題は毎回出ていますね。今度も出るようなお話ですが、それは失業保険が足りないとか多いとかいうことで失業保険法改正をしようというわけでしょう。法改正になったときはしようがないでしょうけれども、現在の法律ではもらえるわけでしょう、六カ月働いたら三カ月。それを何か行政指導でけちめいて、くれたくないような気持ちになっちゃう。それで窓口ではがんがんやって、そのために労働意欲を失っちゃう。もうどこにも行かない、もうよそなんかに行かないということで、せっかくいま大臣がおっしゃったけれども、貴重な労働力が産業のためにフルにうまく生かされないというぐあいになったら、これはどっちが得なものだろうかとぼくなんか思うわけだ。だから、あまり重箱のすみをつっついたり、角を押えたりして牛が死んじゃうなんてことがあるのですから、そこら辺もう少し考えてもいいんじゃないかというぐあいに思うのです。  結局、出かせぎの皆さんがなぜこうなっているかということは、いろいろ議論はあるけれども、働かなければもうどうにもならぬのです。働いて収入を得なくちゃならぬ。しかもまだ残っておる田畑、これもやらなければならぬということで、その間に失業保険の問題も介在するわけだ。だから、合法的にどうにかしてまず暮らしを立てたいというのが、出かせぎの皆さんの願いだと思う。それをあちこち法律上の問題や行政指導で茶々を入れて、せっかくの勤労意欲も失うようなかっこうで、ひいては期限の迫っている万博もできるかできないかというような心配をするようなことではなく、喜んでもらうような状態——もしできるなら、私は原労働行政でそういうぐあいにやっていただきたいものだと思うのです。法律改正をこれでセーブしようなんてけちな考えはありません。それは出すなら出していただきたい。現在の労働行政の中でいろいろやり方がかえってあるんじゃないか、大臣にひとつそういうことを要望しまして、私の時間も来ましたから終わります。
  96. 竹内黎一

  97. 玉置一徳

    玉置分科員 問題を労働力不足における雇用政策並びに工場、事業場における保育所の設置、この二つに限って御質問申し上げたいと思います。  そこでまず第一点、新規労働力がますます窮屈になっていくということは周知の事実でございますが、従来ともすれば就職の機会が非常に乏しかったときの、したがって基準行政を主としたような労働行政であったと思いますが、日本の産業が異常な成長を遂げまして、今後ますますこの成長を続けていくということになりますと、日本の産業の成長そのものをささえるのは、これからの雇用政策のいかんにあるとも私は言い得ると思うのです。私は商工委員になっておりまして、いろいろな展望は聞かされますけれども、はたしてそれに見合うような労働給源があるのかどうかということが一番問題であります。また中小企業問題にいたしましても、税と金融というような問題はすでに第二次的な要素になりまして、第一次的には人手不足の問題が一番問題になっております。  こういうような展望に立ちまして、今後労働行政が大きく重点を変えていかなければいかぬというようなことを思うのですが、私は議案審査の会長をいたしております関係で、先般来各省の予算並びに法案のヒアリングをいたしたのであります。労働省は非常におとなしいと見えまして、われわれ国会議員としては非常に好ましいのですが、地方にありますものを気持ちよく移譲される。見上げたものではありますけれども、いま申しましたような観点からすれば、もっとすべきものをそのかわりに大きく要求するというようなことがあってもいいんじゃないかとすら、横から見ておって感じるわけであります。  さような観点から若干の質問を試みたいと思うのですが、ただいま申しましたような、新規労働力が非常に枯渇する、しかもこれの需要はますます拡大する、こういう中にあってどういうように労働行政を持っておいきになろうと思っておいでになるか、大臣からその基本的視野につきまして、まず冒頭お伺いしておきたいと思います。
  98. 原健三郎

    原国務大臣 いま玉置さんから御指摘のように、近来になってから労働力が不足してまいりました。一方においては、非常に経済拡大が最近数年間珍しく拡大する、それに伴うて労働力の減少、わけても新規学卒者の不足、それから若年労働者の不足、そうして人口構成も老齢化するというような、非常にお説のような時代になってまいりました。それで、この労働力不足基調が進む中で、需要側に対しては労働力の節約、求人源の転換を促進するとともに、供給側に対しましては、能力開発職場進出の流動など、量と質両面にわたって十分配慮する必要があろうと思います。  それで、この機会に労働条件向上させたい。また第二は職場環境整備をやりたい。第三には労働者福祉施設等の改善を強力にやりたい。そして労働省としては、労働者がその能力を十分に発揮して楽しく愉快に勤労意欲に燃えて生産増強をしていただきたい。こういうような観点に立ってやりたい。  さらに、最近人手不足のとき、有効にこの労働力を活用するために、労働省職業紹介のいわゆる機関をつくりまして、職業紹介のセンター、労働市場センターというのを東京の上石神井にいまつくっておりまして、そこに電子計算機を備えて、全国の職業安定所に電波設備をやりまして、電波でその中央のセンターへ送って、そこで電子計算機を使って職業紹介をやる。現にこれを全国的にいまやろうと思って予算を計上して、さしあたり即時紹介ができるシステムを考えまして、万博に間に合うように、ことしの秋から大阪、和歌山、奈良、兵庫、こういう地域におきましては、求人者と求職者をこのカードに書き入れましたら、それを即座に東京のセンターへ送って、中継所を通って送ってくる。東京のコンピューターでこれを区別して直ちに現場の職業安定所に通知する。それで大よそ二十分間で、たばこを一服吸うている間に求職者と求人者がぴしゃっと合うというシステムができまして、まことに夢物語じゃといわれたのでありますが、夢物語がことしの秋から実現いたします。これは外国からでも、すでにソ連、アメリカから視察に来まして、びっくりしているほどで、近く西独からも来るそうですが、できたらこれを全国的に及ぼしたい、こう思っております。さしあたり、いま申した府県において、この世界でも珍しい——これは労働省で自慢のものでございますが、やっておりまして、これも労働力不足時代にむだに失業したり遊んでいる遊休労働力が出たりしないように、非常に時宜に適したものだ。ちょっと自慢たらしくなりましたが、自慢の一つで、大いに活用いたしたい、数年のうちに全国的にこれをやりたい、こういう考えを持っていま進めております。
  99. 玉置一徳

    玉置分科員 このことをお願いするのは、私は五、六年前でしたか、ヨーロッパを歩きましたときに、ヨーロッパの経済の伸び率が非常に低いのはなぜかと申しますと、やはり労働給源であるということが非常に端的にあらわれておりました。日雇いのような単純労働はすべて外国から移入をしておったと思います。労働力の給源が少なくなるということは、私は、先ほど申しました経済発展の伸び率を徐々に緩慢にしていくようないまの方針じゃなしに、あるいは八幡製鉄、富士製鉄の合併等ですら雇用の問題から考えていかなければいかぬ時代がくるのではないか。この間ある大きな会社が相当赤字の会社を合併しました。私はこれは、雇用する七千名の熟練労働者の一人当たりのあれを考えると、非常にうまくしおったなと思って感心したのですが、そんなことすら今後行なわれていかなければならないんじゃないかという気もします。こういう観点からすれば、通産行政の根本は労働行政にある。これはいよいよ国全体として見ていかなければいかぬし、大きく力強い政策を打ち出していかなければならない問題じゃないか、かように思うがためにただいま御質問を申し上げたわけでございます。  そこで、何と申しましても一番問題は、新規学卒者を、一番需要に適するような、国民経済発展の動向に役立つような方向に紹介するということがまず始まりだと思いますが、これにつきまして、窓口行政として今年以降どういうような御方針をおとりになっておりますか、特別の政策がございましたらお答えいただきたいと思います。
  100. 村上茂利

    ○村上政府委員 御指摘のように、ますます逼迫してまいります若年労働力でございますので、御指摘のような趣旨も行政面に反映したいと考えておりますが、新規学卒の中で中学校卒業につきましては、従来同様、職業安定所が中心になりまして取り扱いますので、そういった面についての配慮は行政指導上できるわけでございますが、高等学校卒業者につきましては、量的に見ますと、会社、事業場が直接学校に参りまして処理をするという件数が相当ございます。そこで、四十四年度からは求人関係の事務を職業安定所でまとめて扱いまして、その求人口やその事業内容あるいは求人条件その他を勘案しまして、そこにそう強制にわたるような働きかけはできませんが、政策意思として重要な産業その他に対する配慮を加えつつ、高等学校卒業者につきましても、従来はほとんど自然の流れにまかしておりましたけれども、それに政策意思を働かすといったようなかっこうで取り扱いを変えたい、かように存じております。そういうような形で、学卒全般につきまして——大学はやや別でございますけれども、中卒、高卒全体につきまして職業安定所の関与する余地を増大し、御趣旨のような方向で努力を進めていきたいと考えております。
  101. 玉置一徳

    玉置分科員 これには二つ方法があると思うのですが、一つは、賃金水準が非常に高くなっていくと、日の当たる産業、日の当たらぬ産業、したがって成長する産業と非成長部門によりまして、おのずから賃金で規定されていくという経済の法則が一つあります。もう一つは、何らかの作為的な政策で、たとえば中高年齢者と新卒者の比率をはめていくとか、なかなかむずかしい問題ですが、そういうような二つの方法があると思いますが、当分の間後者のほうはおとりになるつもりはあるのかどうか。あるいは、現在もそのことは勧告権があるように承っておりますが、もう少し強制するようなほうにもっていけるかどうか。ちょっと私の質問のピントがはずれておるかもわかりませんが……。
  102. 村上茂利

    ○村上政府委員 御指摘の点、私どももそのような気持ちを持っておるのでございますが、強制にわたるような措置は行政機関としてできません。ただ新規学卒を御紹介いたします場合に、中高年者をかなり御採用いただいておるとか、そういった条件を、御紹介申し上げるときの一つの有力な条件として考えるといったような形で中高年者の採用といったようなものをお願いしておるわけでございまして、数的にきっちり結びつけて強制するといったような形をとることにつきましてはいろいろ問題がございます。そういった点、指導はいたしておりますが、十分配慮をして措置をいたしておるような次第でございます。
  103. 玉置一徳

    玉置分科員 たとえば中高年齢者雇用促進法案というようなものをつくりまして、業種によって新規の者と中高年齢者の比率をこしらえるというようなことをもってセーブしていくということは、これは憲法違反になりますか。
  104. 村上茂利

    ○村上政府委員 職業選択の自由という憲法のたてまえもございますし、これはやはり守らなければならぬ基本権利でございます。しかしもう一つ職業紹介、就職の問題は年齢が基本ではございません。むしろ若年者も中高年者もその能力に応じた仕事につけるというのが基本でございます。  先ほど賃金の高いこと、こういうお話がございましたが、もちろんそれも大事でございますが、基本は、やはり能力に応じた職業を紹介するということが、求人側も求職者もお互いに幸福になるゆえんでございますので、この線を守りたい。そこで、抱き合わせと申しましても、能力も加味した抱き合わせということがはたしてうまくいくかどうか、それを法律で強制できるのかどうかという実態の問題もありますので、私どもは、当分は行政指導の面におきましてあとうる限りの措置をとりたい、しかし強制にわたることは避けたいと存じております。
  105. 玉置一徳

    玉置分科員 次に中高年齢者でありますが、新規学卒者の供給源というものが年々どうなるかということは、もうすでに数字で出ておるわけでありますから、産業の拡大はとてもこれでもって補う方法はございませんわけですから、したがって中高年齢者を相当供給に充てなければならない。これについての施策を強めていかなければならないわけでありますが、これについてどういう施策を講じておいでになるか。
  106. 村上茂利

    ○村上政府委員 この点につきましては、まず再就職する場合の能力の問題がございます。その適性を判断し、訓練あるいは講習などを必要とする方には、その訓練、講習をいたしたい。それからまた、転職をいたしますにつきまして、暫時生活に空白ができますので、職業転換給付のお金を支給するといったような措置も講ずるというような、いろいろな施策を講じております。その前提になりますものとして、中高年者の職としてどういうものが適当であるかというものをさらに科学的に明らかにし、これを一般に御認識いただきまして、中高年者の職場を広くするというのが基本でございますので、こういったものも、職業研究所の新設等と相まちまして、さらに努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  107. 玉置一徳

    玉置分科員 質問がもとへ戻りますが、これは一般にも言えることでありますけれども、ことに新規学卒者の就職を、先ほども申しました重点の方向に向けるという問題につきまして、就職指導の任に当たる学校の先生方、もしくは一般社会、あるいはそれの父兄、こういうものに、日本の労働給源がこうなって、日本の成長を考えれば、このようにならなければ日本の成長は続けられないのだというような、一般的なPRが一番大事じゃないかという感じもするのです。それは私は、そこまでは行き渡ってないんじゃないか、こういう感じもしますので、労働省だけの予算でどうせいということはかえってむずかしい問題かもわかりませんけれども、通産省なんかの予算と一緒に合わせて、中学校の卒業生の就職指導をされる方々、一般社会の御父兄の人々に、もう少し的確なPRもしておいていいんじゃないかということを思います。  第二点は、ただいまの問題の中高年齢者の就職の機会が、これから非常に多くなると思います。訓練所の設置は各都道府県にほぼ行き渡りましたけれども、私は、大企業といえどもこれからいよいよ中高年齢者を採用せざるを得ないようになってくるのじゃないか、現になりつつあるということを考えれば、大企業ではおそらく自分の会社の中でやるのじゃないかということが考えられることと、訓練所の設置の場所と、中小企業にいたしましても、工場群のある職なら職、いろいろなもので、地域的に偏在というのはおかしいのですが、かたまってあるところがございますが、そういうようなところには、その連合体もしくは大企業そのものが職業訓練をするような機関を何か考慮すべきではないかと思いますが、どのようにお考えになりますか。
  108. 村上茂利

    ○村上政府委員 二つの内容がございますので、前段は私からお答え申し上げたいと思います。  御指摘のとおりPR活動をするということは非常に重要だと思っております。そしてその中でも隘路となっておるものは何かという点につきまして、いわゆる学歴偏重、ホワイトカラー偏重といった点を是正しなければならないという観点から、実はごく最近、労働大臣の提唱といたしまして、人事管理につきましても、技能者であっても工場重役になれるような青天井式の人事管理を採用すべきではないかといったような、具体的な内容を含めまして提案をいたしておるような次第でございます。そしてその問題は訓練にもつながるわけでございますが、後段の訓練の問題につきましては私の所掌ではございません。訓練局長からお答えがあると思います。
  109. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 中高年の就職につきまして職業訓練が非常に大事であるということは御指摘のとおりでございます。私ども全国に四百二十の職業訓練所を持っております。この訓練所におきまして、転職訓練というものは、若年労働者の職業訓練と並びまして最も重要な任務として推進をいたしております。なかなか中高年の方は訓練を受けるのがめんどうくさい、あるいは手当その他が不十分で家庭の事情がある、あるいはその人の希望する職種と事業主側の需要とが一致しないということで転職訓練が思うように伸びておりませんので、今後制度改正もあわせて考えて、転職訓練につきましては一そう力を入れたいと思います。
  110. 玉置一徳

    玉置分科員 就職の機会が非常に乏しいいままでの時代には、転職訓練というものもある程度希望して行ったかと思いますけれども、何らかの新しい手を打たないと、だれでもいいから来てほしいという時代には、よほどうまく運営されないとなかなかむずかしい問題があるんじゃないかと思いますので、一そうの御研究をお願いをしておきたいと思うのです。  そこで、そういうことになってまいりますと、家庭においでになる主婦というものも、これから職場にかり出される機会が非常に多くなるんじゃないか。私は全繊の関係で糸へんの工場をずっと回りますが、構造改善で回りましたときにいつもお話をしておりますのは、他府県から新卒者をもらえるというような機会は非常に少なくなってくるんじゃないか、その周辺の奥さん方をどのようにして、職場についていただくかということがこれから各工場の研究の課題だぞとはっきり申し上げておるわけですが、それにつきましても、実地に工場を回りますと、保育所が工場に施設されておるわけであります。この資金は事業団のほうから長期低利融資が出ておるように聞いておりますけれども一般の厚生省の行政のような措置費というものは一切出ておらぬわけです。厚生省のほうでは八割その措置費があるわけでありますが、厚生省のほうにも私申し上げておきましたのは、三歳児以下の、ことに零歳児の保育所が厚生省所管でも非常に少ないのであります。厚生大臣には、学齢一年前の保育所の普及率が今日のように高まってまいりますと、これはもう文部省に移したらどうだ、義務教育を一年繰り下げろ、もうそういう時期に来たと思う、その検討をしなさい、保育所の保育費、あの一年間がもったいない、普及して八割五分近くまで入ってこられたのだから、その検討をすべき時期に来ておる。こう話しておったのですが、この三歳児以下、ことに零歳児なんかのあれで、市町村立のものは厚生省所管にまかしておいていいけれども、ほんとうに職場まで連れていって保育していただいてくる、あるいは職場の周辺の——工場群と申しますか、そういうところに預けておいて、働いて帰っておいきになる、そういう実例をたくさん見ておりますが、これに対する何らかの施策労働省が取り上げなければならぬと私は思うのです。しかも、これからその必要は非常に多くなるのじゃないか、こう思いますが、大臣並びに政府当局のお考えをお述べいただきたいと思います。
  111. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 御指摘のように、最近既婚婦人が非常に雇用市場に出てまいっておりまして、今後もますますその傾向は強まると思われます。したがいまして、これらの婦人労働者が家庭責任との調和をどのようにはかっていくか、これが非常に大きな私どもの行政の課題となっておりまして、そのように意識いたしております。  お尋ねの保育所ないしは託児施設でございますが、保育所行政、これは厚生省の御所管でお進めいただいているわけでありますが、託児施設に関しましては、労働省といたしまして従来から「働く婦人の家」という施設を設けまして、ここで総合的に働く婦人福祉をはかっておりますが、その中に託児施設を設けております。これは現在までに約二十カ所ございますが、そのほかに先ほど御指摘企業内に託児施設がありまして、これは雇用促進融資という方途で設置のための融資をいたしている次第でございます。いずれにいたしましても、御指摘のように、その運営につきましての補助は従来までいたしておりません。この問題につきましては、私ども非常に重大なことと思いますので、今後も検討を続けてまいりたいと思います。
  112. 玉置一徳

    玉置分科員 時間がまいりましたから最後のお尋ねをしたいと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、非常に求人難になってまいると思います。そういうことになりますと、すでに五、六年前にヨーロッパにおきまして行なわれておったように、デパートへ行きましたら御年輩の御婦人ばかりで若い方々が一人もおりませんでしたから、若い人はどうしているのかと言ったら、若い人は若い人でなければつとまらない職に当たっております、こういうことが五、六年おくれて日本に来たのだと思います。私は、よほど思い切った施策を、しかも強力に打ち出していかなければ、ヨーロッパのごとく、経済成長は、人間の問題から、労働給源の問題から必ずにぶってくるのじゃないかという感じがいたします。  そこで最後に、一番大事なことは、それぞれの職場においでになる方々を、転職訓練じゃなしに、技能をもう一つ思い切ってもう一割なら一割どう引き上げるか。それで、人手がなくなってきたときに、外国から単純な労働力が入ってきても、こちらの人々と労働問題が起こらぬ、その競合が行なわれないというところまで、ここ五年、十年の間に質を高めるという訓練——訓練ということばはおかしいのですが、これをもう一つ何か思い切った施策として取り上げなければいかぬのじゃないか。  また工場でもあのくらいいろいろな問題が合理化されてきました。したがって、それに追いつくように労働力を質的に高めていくということが、また一割労働給源をふやすゆえんになるのじゃないだろうか、こういうことを思いますので、こういう点につきましても、ひとつ画期的なくふうをなされるようにお願いしたいと思いますが、こういう問題につきまして、どなたかひとつ所見をお聞かせいただきたいと思います。
  113. 原健三郎

    原国務大臣 ただいまの御意見まことに賛成であります。結論といたしまして、ぜひ技能をもっと高めていきたい、あるいは労働の質を高めていきたい。私どもも大賛成で、ぜひ職業訓練等に対しそういう気持ちで、労働省あげてこれに取り組んで善処いたしたいと思っております。
  114. 玉置一徳

    玉置分科員 時間が一分残りましたので、もう一つだけお願いしておきたいと思います。  私は文部大臣質問申し上げたときにちょっと誤解を受けたのですけれども、日本の国民経済成長に見合うように学制改革ということばを使ったのが、六三三制をどうせいというようにとらえられたのじゃないかと思うのですが、そうじゃなくて、文科偏重の現在の状況を、技能者を相当数養成するように徐々に変えていかなければ、ホワイトカラーで第三次産業のほかには入るのはいやだという者ばかりをつくるのはいかがかと思う。こういう問題につきましても、ひとつ国務大臣としての労働大臣は、文部大臣、通産大臣等々と一緒になりまして、将来御検討いただくことをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  115. 原健三郎

    原国務大臣 御説まことに同感でございます。私も労働大臣に就任してから、学歴偏重を打破せよ、ホワイトカラー偏重を打破せよ、そしてもっとブルーカラーを尊重せよ、そして人事管理の面においても、そういうブルーカラーの人を天井を低くして束縛しないように、天井をはずして青天井にして、ブルーカラーでも工場長、重役になれるように指導していくべきである、こういうことを叫んで、過般、雇用対策協議会の財界の人が集まりましたところでこの意見を発表して賛成を得まして、各産業においてもそういうことをいまやっておるところもございます。ソニーとかその他でも将来やるということを言明いたしておりますが、なおこれは強力に何回も言いませんと、一ぺんや二へんではいけませんので、これはマスコミにも協力していただき宣伝していただいておりますから、ぜひそれをやりたいと思っております。  さらにもう一つ技能者尊重のための学校教育その他について、昨今、大工場、中工場でも、自分の事業場の中に学校のようなものを持っております。たとえば中学卒業者のための高等学校程度のもの、それをいま文部省は高等学校として認めないというあれがありますので、時間数さえ大体そろっておれば、その課程内容など文部省はあまり干渉せぬように、技能を七割やって教養を三割でも、時間数さえそろっておれば高等学校の免許を与えるべし、こういうことを閣議でも発言をし、文部大臣にも申し入れをいたしております。何とか研究いたしますが、まだ返事は来ませんけれども、そういうふうにぜひ進めていきたいと思っております。
  116. 竹内黎一

    竹内主査代理 次に、畑和君。
  117. 畑和

    ○畑分科員 私は労働省関係で、今度の行政機構改革に関連をいたしまして、地方の婦人少年室を廃止しようという考え方があるようでありますので、その問題に関しまして、私は反対という基本的な態度をもとにいたしまして、二、三質問をいたしたいと思います。  御承知のように、今度行政の簡素化をはかるということで、行政機構改革が各省によって進められております。その中で、労働省関係で去年の暮れに、そうした都道府県における出先の婦人少年室と労働基準局を廃止して、その事務を地方の県の労働部局に委譲するというようなことが発表されました。そのことによりまして、戦後、婦人少年局の手足となってずっと働いてきた、婦人や年少労働者の地位の向上のためにずっと地道な活動を続けてきた婦人少年室が廃止をされるということによりまして、各方面に非常に深刻な波紋を投げかけておることは御承知のとおりであります。全国で、婦人議員をはじめといたしまして、日本婦人有権者同盟などという七つの婦人団体の議会活動連絡協議会ですか、あるいは日本有職婦人クラブ、主婦連、革新系の政党婦人部といったような各種の婦人団体が、こぞって廃止に反対の運動を始めております。国会の方面におきましても、これに関連した請願あるいは陳情等がなされておりますが、基本的に一体どういう考えを持ってこういう案を進められるようになったかという点について、まず質問いたしたい。  政府が各省あげて行政の簡素化、行政の機構の改革をやることはけっこうなんでありますけれども、ものごとによって、やはり整理をせずにむしろ前進をさせなければならぬものごともあるわけであります。特に婦人少年室の問題等については、私は方向が逆だと思うのです。そういう点で、基本的に一体どういう考えでこういう廃止の方針をきめられたか、その点をまず承りたい。
  118. 原健三郎

    原国務大臣 ただいま畑さんから御質問がございましたが、私のほうでも各方面から婦人少年室の廃止の問題について反対の意見をよく承っております。  もう戦後二十年以上になりますので、労働省の機構も、この際、中央、地方もう少しバランスをとって、行政改革の線に沿うて一応やってみたい、こういう方針でやりまして、これによって労働行政の伸展をはかる、また婦人少年行政についてもこれをもう少し発展させたい、こういう意向で、去年の十一月の二十六日、労働大臣、自治大臣、行政管理庁長官三者の間に話がまとまりまして、覚え書きというのができて、そのまま私も事務引き継ぎを受けたようなわけでございます。  ついでにちょっと申し上げますが、都道府県に労働部というのを新設いたしました。これは、いままで全国の八都道府県には労働部という独立したのがございますが、全部あるのじゃございませんので、残余のところにも全部独立した労働部というのを新設してもらう。これは自治法の一部を改正する法律案によってやってもらう。これが非常に労働行政を進捗させると思います。  それから労働基準行政などは、各地方によってあまりやり方が変わるといけませんので、ブロックごとに地方の労働局を新設いたしまして、それで本省と地方労働局、それから県の労働部が一体となって労働行政を推進いたしたい。私どもの考えでは、非常に伸展はするが後退したりすることはまずない。労働基準行政のほうは、労働基準監督官制度というのは置きます。いわゆる手当てのほうは現状のままでございます。  婦人少年室を廃止する、廃止すると申しますが、廃止でなくて、一応地方の労働基準局婦人少年室とは県の労働部へ入ってもらう。それで先生も御承知でしょうが、私も実はびっくりした。都道府県にある婦人少年室というから、かなりなものかと思っておりましたら、五人か六人しかおりません。これで婦人と少年を両方やる。これははなはだぼくは弱体であると思う。何人もえらい人がおるでしょうが、こんな数では——多いところで七人、大体四人のところもあります。もう少しこれを強化したいというのが私の本音でございます。これで経費を調べてみましたら、給料は政府からもらっておるが、事務費というのは年間九十万円、一カ月七万五千円。これは普通の家の世帯ほどしかない。これでは、実際有能な人がやっておられますが、婦人少年室をそのままにしておくことは——もっとこれ強化することが私は望ましいと思う。公平に申し上げて、やはり非常に貧弱でございます。この間、参議院の市川さんは、それならそのままでもっとこれを強化しろと言いますが、これは定員その他があって、これを強化することは予算をよけいにとる。急激にやることは非常にむずかしいので、むしろ地方の労働部へ入れますと、これは大きな県でありますと二けたになります。二十人。課にしてもらえば労働婦人課。そうしてむろん地位は、国家公務員から地方公務員になるというのが非常にさびしいとおっしゃる方もございますが、労働行政全体から見ると、その地方の府県の労働部へ入っていただいて、その室長は県の労働部の課長とか室長になってもらう、労働基準局のほうはその局長が新設の府県の労働部長になってもらう、こういう話も進めております。  それで、婦人少年室の仕事といたしましては、勤労婦人勤労青少年の地位の向上福祉増進等々をやってもらうのはもちろんでございます。第二は婦人の地位の向上婦人社会的に男子との間に、いまでも依然としてギャップがございますので、ぜひ一般婦人の地位の向上社会的活動をよくさすとか等々、こういう二つの面に向かって婦人少年行政を推進していただきたい。それには、いま申したように、大きな県でも小さい県でも、四人や五人や六人ではとても手が回りませんが、地方の県の労働部に入りますと、上には部長がある、さらには県知事がおる、各県全体に出張所とかいろいろな県の機関がありますから、これと協力してやることにおいては、予算もまた人も両々ふえて、かなり強力なものになってくる。その上には地方の労働局もあって、連絡をとって本省とやる。こういうふうにやったほうがむしろこの婦人少年行政を推進するゆえんではなかろうか、私はこういうふうにいま考えておるのであります。現実に調べてみましたところが、かなりどうも貧弱であるので、ぜひこの機会に強力なものにすればよかろう、こう思っておる次第でございます。
  119. 畑和

    ○畑分科員 労働大臣の話を聞くと、後退でなくて前進だということの意見のようでありますけれども、大体いままで婦人少年局のもとに各地方の出先がわずか四、五人というような貧弱な体制でおったこと自体が間違いだと思う。その小さい陣容でともかくいろいろな仕事をやってきたいままでの婦人少年局並びに婦人少年室の功績は、私は非常に大きく買っておる。ところが、それをやらせないようにやってきたのがいままでの現状だ。ところで、たまたま機構改革を機会として逆にそれを拡大するというのがいま労働大臣考え方のようでありますけれども、ただ問題は、各都道府県にいままでちゃんと労働部があったのは八つくらいなところである。ほかはほとんど労働部というのがない。それを、新たに地方自治法を改正して、関係法令を直して、各都道府県に労働部を設置することを義務づけるということによって、労働基準行政並びに少年婦人のほうの関係をその中に包含させるということにすれば非常に数も多くなる。したがって、仕事もしやすいであろう、こういうようなお考えでありますけれども、しかし、それではやはり都道府県によって劣勢のところとそうでないところと、また、労働関係にあるいは婦人少年関係に関心の薄いところと厚いところと、いろいろでこぼこぼがあると思うのです。それは、きちっと法規で縛ってやればよろしいというお考えのようであるけれども、やはり全国的な規模においての調査その他の活動というような面においては、欠けるところがあるのではなかろうかと思うのです。そういう点で、しかもまた、地方の事業や何かとの癒着関係等も、私は、従来の都道府県でやると、どうしてもそういった弊害も出てくるのではないか。そういう点においては、やはり国が直接労働問題については、もっと責任を負ってやっていいのじゃないか。行政改革だからといって遠慮せずに、もっと国自体が地方の労働関係あるいは婦人少年関係にまで乗り出していって、婦人の地位の向上や少年の労働者の地位の向上等を積極的にはかるということのほうがむしろ先ではないか、こういうふうに思うのであります。特に、労働省婦人少年局長及びその出先の婦人少年室の組織というのは、これはもう国際的にもなかなか高く評価されておるはずだ。国際連合あるいは国際労働機構なんかにおきまてしも、ほかの国と比べて案外日本はこの点早く目がさめて、こういった組織をつくったということで、婦人の地位の向上あるいは少年の地位の向上、民主化等に対する一つのモデルケースということで評価されておるように聞いておるのですが、そういう点で、発展的な機構改革だと言われるけれども、その辺、非常に私としてはさびしい感じがいたす。また、地方の婦人運動をする人たちが非常に心配をいたしているところがその辺にあるのではないかと思うのです。その点についてどのように労働大臣は考えておられるか、承りたいと思います。
  120. 原健三郎

    原国務大臣 御説のように、私どもも、婦人問題等の多いときですから、国として一律一体にやることもいいということもわかっております。でございますが、各都道府県の知事が民選であるから、知事の行政のやり方によって婦人少年行政が後退するところも出てくるであろう、こういう説をするところもございます。しかし、まあ、そういうようなことのないように、地方の各ブロックごとに労働局というのを、これは非常に労働省が、内輪話をすると、各都道府県や自治省は反対したのですが、これを強力に言うて労働局をつくって局長を置く。いまほかには、建設局とか通産局とかいうのがみなあるのですよ。それに対抗する、それと同じような労働局を置いて、そこに婦人少年の専門官というものを置きます。そうして、都道府県を監督するかどうか知らぬが、大いに連絡をして、中央の労働省からの意向をよく伝えて、なるべく熱心なところと不熱心なところのないように監督いたしたい。  それから、私もこの問題が起きてから、方々の懇意な知事に聞いてみました。そういう法律をつくって労働部というものを新設さすが、そのときに婦人少年課か室か、こういうものについて考えはどうかということで聞いたんですが、いままでのところは、いろいろ議論はあるが、そういうふうにきまってしまえば、われわれは婦人や少年を重要視——それらの人が言うんですよ、ぼくが言うのではないんです。いまの段階では選挙もあることだし、知事も選挙で出てきておるんだから、婦人少年をまま子扱いにしたり、粗末にするようなことはどの知事もやりませんから御安心願いたい。なるべくだったら部、課にしても重要視することは——これはもう私が三人か四人に聞きました。これは議員もそうだし、知事もそうであるから御心配はない。もうできたら、必ずいまのよりはよくなることは間違いない、こういう意見です。それで私も一安心しておるのですが、そういうわけでございますから、弱体化することは万々なかろう。  私どもの本省におきましても婦人少年局というのがあって、その局長婦人である。これも、日本で局長婦人がおるのはたった一つでございますので、非常に尊重しておるし、できたら各都道府県の労働部の課長さん、婦人少年課長は、いまの室長さんの女性をもって当てるように、こういうことは大体話し合いがついております。決して心配さすようなこと、不安になっていただくようなことのないように、こまかいところにいろいろ気を配って進めていきたい、こう思っておりますから、ひとつ御安心のほどを……。
  121. 畑和

    ○畑分科員 地方に地方労働局を置く、これは労働基準法か何かにもうちゃんと予定されて出ておるのです。ところが、実際にはいままで労働省としては地方の労働局というのを置かなかった。通産省や何かは初めから置いているけれども、法規にはそういうことを予定されて書いてあるけれども、それが置いてなかった。この際、各ブロック別に地方労働局を置く、こういう点でそれを補う、こういうような話でございますが、これもけっこうでしょう。しかし、各都道府県においてはたしていま労働大臣の言われるような形で、婦人少年の地位を守るためにやることを義務づけることができるかどうかということは、私は非常に問題があると思う。地方によっていろいろ事情が変わっておりまするし、その点非常に心配をいたす点です。  そうすると、婦人少年室というものを各都道府県に必ず設ける、義務づける、しかも、課長は女性を充てるというようなことまでもきっちりきめられますか、どうですか。
  122. 原健三郎

    原国務大臣 自治法の改正の場合においては、各都道府県に労働部を新設するということは、これは法律改正に入ります。それから、課というのは法律に入らぬのだそうです。課を置けということは法律には書けないそうでございますが、そのかわりに、たとえば勤労婦人、勤労少年についてはこの労働部で扱うというようなことを入れます。それは、扱うならやはり課を置かぬと扱えないようになってしまう。それから、一般婦人の地位の向上についても、この労働部で扱うようにする。これは法律の中に入れます。労働部の仕事の中に入れてしまいます。そうすると、それが入っておるのに課を置かぬという、そんなことはないので、こちらもよほど気をつけていまして、食い逃げされてはたいへんですから、そんなことのないように十分に法律の文章の中にも書き入れる考えでおります。  それから、各都道府県によって知事の裁量で婦人少年を、いろいろでこぼこがあって、重要視するところと重要視しないところとあるというお考えですが、さいぜん私が申したように民選知事でありますから、また議会人にいたしましても、決して私は粗末にするようなことはなかろうと大いに自信をつけております。あるいは一時的には、やはり初めてそういうことをやりますのですから、多少濃度の差があるかもしれませんが、長い目で見ると、私は、この機会にもう独立した——将来はもう一億総勤労者という時代でございますから、この労働行政を中央、地方を通じて一貫してもりと拡大強化して推進することが必要であると思います。それには、この機会にこの行政改革のチャンスを活用いたしまして労働部というのを置くことは、やはり将来のために非常にいいことだ。これはもう社会党さんなんか、私はまっ先に賛成されるんじゃないかと思うのですがね。これを逸したらたいへんです。私は、それで方々の知事に聞いてみた。社会労働部があったり商工労働部があったりするが、全然労働というのが入らぬところもあるのですよ。調べてみると、全部社会労働部は厚生省関係の人が部長をやっておる。商工労働部なんというのは商工部長が部長で、労働なんかはるかかなた、あるかないかですよ。福島県の例で、どうだ、これは独立してやろうじゃないか。いや、商工と労働とは一本でよろしいのだ、そんなことではぐあいが悪いから一緒にやろう。ああそうですが、一緒のほうがいい、そういうふうに地方の県では考えておるのですから。独立した労働部を新設することは、私は労働行政を非常に全国的に推進すると思う。もう五年か十年のうちに一億総勤労者になりますから、地方においても、いまのうちにこれをやってやらぬと、この機会を逸したらできないと思う。社会党の皆さんの御賛成を願っておきます。
  123. 畑和

    ○畑分科員 実は、私の県は大きな県だから、相当前から労働部というのが別にあるんだけれども、八つぐらいしか独立したものがないとは情けないことだ。そういう点は、そのこと自体大体たるんでおると思う。各府県がたるんでおると思う。しかし、いま大臣のおっしゃることによれば、独立した労働部という、ほかとくっつけるものではなく、労働部というものをつくらせるということは間違いないですね。
  124. 原健三郎

    原国務大臣 間違いございません。その下に課をたくさん置いていく。
  125. 畑和

    ○畑分科員 独立した労働ができるということになれば、各地方によってそれに力を注がざるを得ないということにもなろうと思う。そういう点ではある意味で前進だ。しかし反面、依然としてやはり心配があるのです。  ところで婦人局長大臣がいるところで酷な話だけれども、あなたの立場でどう考えているのですか。
  126. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 この問題につきましては、いろいろな方面からたいへん御心配をいただきまして、いろいろな御不安、危惧といった点を私どももいろいろと伺っております。たいへんごもっともな御意見も多いのでございますが、私どもといたしましては、そのような不安、危惧という点につきましてこまかく検討いたしまして、いやしくも行政の後退ということがないように、こまかな点に配慮いたしまして検討を進めていく、こういう段階でございます。  なお、事務的に申させていただきますと、最近、婦人少年行政に非常に期待されるものが大きくなってまいっておりまして、新しい行政課題が非常にふえておるわけでございますが、その中には、地域住民の生活と非常に密着した問題が多いのでございまして、これは国の出先としての婦人少年室の行政範囲では受けとめかねる、かような問題も非常にたくさん出てまいっておるわけでございます。府県に入るという場合に、そのような行政需要に対してこたえて、広く国民の需要におこたえできる可能性もあるか、かようなことも考えながら、先ほど申したような姿勢で検討を続けている段階でございます。
  127. 畑和

    ○畑分科員 労働省の方針がそういうことであるということであれば、いずれはそういうことの案が出てくると思いますが、私の心配は、先ほど来ずっと言ったことでおわかりだと思う。結局、そういったことがないように、しかも逆に、先ほど労働大臣が言われたように、これを転じて、さらにこの機会に婦人少年関係の行政がもっともっと進展ができるように、ひとつぜひ努力をしてもらいたい。  時間が参ったようでありますから、以上で質問を終わります。
  128. 竹内黎一

    竹内主査代理 この際、本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     午後三時二十五分開議
  129. 竹内黎一

    竹内主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大橋敏雄君。
  130. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 労働省ではこのたび雇用対策情勢調査というものを行なって、その行なった結果、失対制度については法律改正をせず、運用面で対処する、このようにきめて、その理由をあげた一枚の労働省から配付された要旨を私は手元に持っておるわけでありますが、その中から二、三質問してみたいと思います。  私がいま手にしておる資料は「失業対策制度の検討の結果について」これは労働省から配付されたものであります。その二番目の中に「雇用失業情勢は、近年における経済のめざましい発展労働力の不足基調を反映して雇用需要が若年層から漸次中高年層へ浸透するなど一層の改善が進んでおり、」このようにありますけれども、これを要約しますと、労働力不足から中高年齢層にも雇用の機会がふえたということから、いろいろと失対制度改正までやる必要はない、そうして、運用面でこれを善処していこうということになっているようであります。  ここで私は、福岡県の場合を取り上げて、これに関係してお尋ねするわけですけれども、福岡県の場合は、炭鉱の終閉山という特殊事情がありまして、非常に失業者の続発といいますか、これが予想されているわけであります。その福岡県の炭鉱閉山による失業の増大と、この失対事業との関係ですが、これは全く切り離されて考えられるのかどうかということですね。というのは、産炭地域開発就労事業という表現でいろいろと予算関係が組まれておるようでありますけれども、結論として、これとの関係を聞きたいわけです。
  131. 村上茂利

    ○村上政府委員 福岡県におきましては、御指摘のように、炭鉱離職者が滞留いたしております。失対事業等の実施は、福岡県全体で三万七千、県営事業で一万七千という、非常に大量の失業対策事業実施しておる次第でございます。  そこで、今回の石炭合理化に関連いたしまして、御指摘の、産炭地域開発就労事業というのを新しく実施をいたしたいと思っておりますが、その考え方としては、産炭地域におけるこのような雇用機会造出を、イメージを若干転換いたしまして、もっと明るい面を開拓したい。そこで、今後展開されます産炭地域開発の公共事業などを関連づけまして、たとえば工場誘致の団地造成その他の事業などを結びつけまして、それとの補助的な関係のもとに就労対策事業を実施いたしたいと思っております。そしてこれは、今後新たに発生します炭鉱労働者、それから一般の関連事業等の離職者を広く吸収いたしまして処理したい。しかし、考え方は、その事業に吸収するんじゃなくて、その運営は、建設業者に対する委託という形で運営をいたします。できるだけ正常な労働関係の成立をこいねがいながら、この事業を運営していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  132. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 いまの産炭地域開発就労事業運営の方法と具体的な案は、もうまとまっているわけですね。この案はもうすでにぴちっとまとまっているわけですか、運営の方法。
  133. 村上茂利

    ○村上政府委員 運営の骨子はまとまっておりますが、運営の細部につきましては、関係方面とさらに詰めたいと思っております。
  134. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 その骨子でけっこうですが、あとでよろしいですが、その資料をいただきたいと思います。
  135. 村上茂利

    ○村上政府委員 まだ公にするほど固まっておりませんので、事業実施が六月になると思いますので、お手渡しできますのはちょっとまだ一、二カ月先になると思います。その点、御了承いただきたいと思います。
  136. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 渡される段階でけっこうですから、早い機会にお願いしたいと思います。  従来の炭鉱離職者に対するいわゆる研修事業ですか、こういうのとは全く関係なくやられる考ええですか。
  137. 村上茂利

    ○村上政府委員 そのとおりでございます。公共事業と関係さすということでございます。
  138. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは、たとえば炭鉱離職者が職業を求める場合、就職促進手当とかいう手当を受けて、そういう保護のもとになされているわけですが、そういうのとは全く関係ありませんか。それは利用できるわけですか。
  139. 村上茂利

    ○村上政府委員 御承知の炭鉱離職者手帳を持っておる人もありますれば、炭鉱会社の人でない人は手帳を持ちません。しかし、いずれにいたしましても、手帳の有無にかかわらず、職業安定所に職を求めに来た人、これが一般的には対象になるわけでございます。その際に、能力を判断いたしまして紹介したいと思います。
  140. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 集中的に閉山が予想されているその炭鉱離職者、これは従来のその取り扱いと同じようになされるわけですね。
  141. 村上茂利

    ○村上政府委員 炭鉱離職者の就職あっせん、その他処理は、従来どおり実施したいと思っております。
  142. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは、産炭地域開発就労事業というのは、必ずしも炭鉱離職者のみということではないわけですね。
  143. 村上茂利

    ○村上政府委員 手帳の交付を受ける法律適用になる労働者以外の者も含めたいと思います。
  144. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは、話を次に進めますが先ほどの資料の続きになりますけれども、「新たな失業者については、職業紹介及び職業訓練の実施、職業転換給付金の支給等による就職促進の諸対策がかなりの効果をあげているため、大多数の者が失対事業に就労することなく通常の雇用の場へ復帰している。」これを読みますと、非常に聞こえがいいし、好ましいことだと思うのですけれども、実態はそうなのかという、私はここに懸念があるわけなんです。つまり、職業訓練等を受けて、その人たちがはたして一〇〇%就職しているのかどうか。あるいは、もし訓練を受けても就職していない人はどうなっていくのか、いろいろと考えれば考えるほど、ここに表現されているようなものではないのではないか、このような心配があるわけです。特に失対の就労ワクというのが年々縮小されていっております。特に福岡県の失業状態を見ますと、このワクは、まだまだ縮められる状態ではないのではないか。こういう立場から、いまの資料に表現されていることばを疑うわけです。この点、説明願いたいと思います。
  145. 村上茂利

    ○村上政府委員 失対紹介対象者の数は年々減少をいたしておるところでございまして、たとえば昭和三十五年三月末におきましては、対象が三十五万でございましたが、四十年では二十六万、四十三年では二十二万というように減少いたしてきております。その背景には、わが国経済発展に伴う雇用量の増大と、一方においては学卒者の相対的不足ということで、雇用の場が非常に広がりましたために、失業対策事業に入るという方々が少なくなったということと、現に就労している方々が職業転換をはかるといった両面の作用によりまして、対象者が減少してきておる。したがって、これとの関連におきまして、失対事業のワクも減ってきておる、こういう形をとっておるわけであります。  しかし、福岡についてはどうかという点については、先ほど申し上げましたような新しい事業を実施いたしまして、従来と異なった観点のもとに処理していきたいということでございます。
  146. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 昭和三十八年に失対二法が改正されたわけでありますが、その改正前は、たとえば失対に働いている人が就職をしていく、ところが、それから一年もたたないうちに再び失対事業に戻る。こういうのが男で約二〇%あった、女性で一一%あったということを聞くのですが、これはどんなもんですか。三十八年以前ですよ。
  147. 村上茂利

    ○村上政府委員 Uターンしましてまた戻ってくるという数は、ちょっと手元にございませんが、そんなに多いかどうか、私ども若干疑問に思っております。
  148. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 ある正規の組合の団体の資料には、それがはっきり明示されていたんですがね。これは一つの参考として私は申し上げたわけですけれども、三十八年のその失対二法の改正がなされる前は、ある程度帰りがあった。そして失対へ入っていけたわけでありますが、それは言うなれば、かりに一時就職しても再び失業した場合、またそうした失対事業等に入れるということであるならば、ある意味で安心して働ける。ところが今日では、一たん職業につくと、あとワクがないために帰れない。それでかりに失職しましても、そのままずるずるにかわいそうな立場で過ぎている。こういうふうに私は思うのですけれども、その点はどうなんですか。
  149. 村上茂利

    ○村上政府委員 失対事業は、どこにも働くところがない、やむを得ない一番最後の手段であるわけであります。しかるに、現在のような人手不足で、人をたくさん求めているというときに、そちらのほうにはおもむかずに、失対事業のほうに就労したい。こういうことがございますれば、これは制度本来の趣旨から見てはなはだ遺憾なことでございます。  ところが、昭和三十六年、七年ごろは、神武景気以来の好況が持続いたしまして、非常な雇用量の拡大があったのです。ところが三十六年は、新しく失対に四万四千、三十七年は四万一千ふえるといったような形で、非常に好況で雇用量が拡大したにもかかわらず、失対のほうに入ろうとする人が多い。これがいろいろ批判を受けまして、三十八年に御承知の改正をした、こういう形でございます。  そこで、われわれの行政の姿勢といたしましても、人手不足の情勢にこたえまして、できるだけ正規の労働の場に就職をしていただくように大いに努力をする、こういった努力を継続しておるわけでありまして、あくまでも失対事業というのは、最悪のやむを得ない場合の臨時の就労の場でありますから、そういった本旨を貫きますように、努力をいたしておるような次第でございます。
  150. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 雇用情勢が好転して云々という話があったのですが、職安を通じて就職をしたというその実態が、四十二年の十月の資料が私の手元にあるわけですけれども、それは景気好転のときですね。四十二年の十月、確かに若年層はそうかもしれませんが、中高年齢、その資料を見ますと、四十六歳から五十五歳は十三人に一人、それから五十六歳から六十五歳は二十二人に一人、六十六歳以上は四十三人に一人だ。非常に困難な就職の状態を示しております。また、雇用動向調査という労働省の調査内容を見ましても、これは三十九年度の資料でございますけれども、失業者が再就職するまでの期間は、三十歳未満の人では三カ月以内が八割を占めている。また五十歳以上、中高年齢層ではその六割弱にすぎない、こういうことですね。つまり、私がここで言いたいことは、炭鉱離職者やあるいは失業者の中にはかなりの中高年齢層がいるわけです。これをいま言うような現在ある制度だけでまかなえるかどうか、この点が非常に心配です。その点についてお聞かせいただきたい。   〔竹内主査代理退席主査着席
  151. 村上茂利

    ○村上政府委員 いまの中高年齢層の就職が非常にむずかしいという御指摘がございましたが、一般的に申しましてなかなか容易ではないですけれども、しかし、求職倍率などを見ますると、中高年齢者に対する率もかなりダウンしてまいりまして、五十歳以上の方々になりますとまだ求職のほうがはるかに多いのですけれども、四十九歳以下になりますと一を割っております。求人のほうが多いということでございます。ただ、これは全国的な数字でございますから、御指摘の福岡のように失業者が滞留しておるという地域においては、このような求職倍率もまだ高いわけでありますけれども一般的に申しまして現在の雇用情勢から見て、だんだん就職しやすくなっておることはもう客観的な事実であります。  そういう観点から私どもは、職業転換給付制度を活用するとか、あるいは中高年齢層に対する特別の指導、たとえば個別的な就職相談に応ずるとか、あるいは技能がないという人には訓練あるいは講習などを行ないまして、技能を身につけていただくとか、いろいろな措置を施しておるわけであります。それが効果を発揮しておると私ども考えますので、今後の雇用情勢見通しのもとに、一そうそういった施策を強力に展開していきたいと思っております。
  152. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 中高年齢者の能力開発雇用の促進に関しては、強力な施策が必要であろうと思います。つまり、労働省資料を見ましても、「積極的能力開発推進」として「雇用失業情勢の推移にかんがみ、現行の職業転換給付制度を活用して能力開発雇用の安定をはかる施策」云々とあります。ここにうたわれております職業転換給付制度、これは就職促進措置のことだろうと思いますけれども、ことしは去年に比べてこういう制度改善ははかられたでしょうか。
  153. 村上茂利

    ○村上政府委員 御承知のように、雇用対策法による転換給付制度がございます。各種の給付金が支給されるわけでありますが、来年度予算につきましても、たとえば訓練手当を引き上げるといったような措置は講じておるわけでございます。
  154. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 どの程度引き上げられたのか。
  155. 村上茂利

    ○村上政府委員 ちょっといま資料に当たりますから……。
  156. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 では次のことを聞きます。いままでの制度と別に特別の措置等はとられてないのですか。そういう新しいものはないわけですか。
  157. 村上茂利

    ○村上政府委員 現在の中高年齢措置といたしましては、大体体制としてはできておるわけでございます。そこで、現在のできております体制をいかに円滑に運営していくかということが現段階における実情じゃなかろうかというふうに私は考えております。したがって、職業転換給付につきましても、従来の就職指導手当を月額一万四千三百六十五円から一万五千六百十五円に引き上げる、あるいは訓練手当を九%引き上げまして、月額一万九千六百八十円から二万一千四百五十円に引き上げるといったように、制度そのものはできておりますので、こういった額の引き上げ等実情に沿うように処置いたしまして、この制度の利用をはかってまいりたい、かように考えておる次第であります。  なお、中高年者のための人材銀行の数をふやすとかいったような点につきましては、さらに数をふやす、こういうことでやっておるわけでございます。
  158. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 こういう場合はどうでしょうか。職業訓練を受けたい、受ければ手当が出るわけですけれども、その手当の額よりも失業保険の受給額のほうが多い、こういうことは考えられませんか。そういう人は、職業訓練を受けたいけれども、受ければ手当のほうが少ないから損をするということで受けられない、こういうことはないですか。
  159. 村上茂利

    ○村上政府委員 失業保険の受給者が訓練を受けて、しかもそっちのほうが金額が高いというのは、失業保険金をもらうわけですから、損になるということはございません。また、その方々が寄宿舎に入るという場合に特別の経費がかかれば寄宿手当を出すというように、上積みになりこそすれ、減ることはないわけです。
  160. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 失業保険をもらっている者は一応それは取られて、そして手当だけになるのじゃないですか。併給できるのですか。
  161. 村上茂利

    ○村上政府委員 訓練を継続します場合には失業保険給付も延長します。しかし、失業保険をもらい切っちゃって、もらうだけもらって、さあ全然もらえなくなってから訓練所に入ってやろうというような断層がございますれば、これはもう失業保険受給者じゃなくて一般の求職者になりますから、そのときには、訓練手当の先ほども申しました額を支給するということでございます。ですから私どもは、一休みせずに失業保険をもらっておるときにどうぞ訓練所にお入りいただきたいということをお願いしておるわけでございます。
  162. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 時間がないので次に移ります。  「高齢者に対する就労上の配慮」ということですが、やはりこの資料の中に、今度は「屋内作業の拡大、安全・健康管理の充実労働時間の調整等の高齢者対策推進する。」とこうあるのですけれども、これは時間がありませんから具体的に要領よく答えてもらいたい。
  163. 村上茂利

    ○村上政府委員 御指摘のような点が示されておりますけれども、具体的な事業実施につきましてはなお検討を要しますので、まだ結論を出しておりません。
  164. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 失対労務者の平均年齢は若くなることは絶対ないわけです。年々年をとっていくわけですから、この屋内労働の方向は当然のことだろうと思います。そこで、この中に「労働時間の調整等」とありますけれども、これはどういうことなんですか。
  165. 村上茂利

    ○村上政府委員 この点も結論を出しておりません。それが時間で調整すべきか、仕事の内容を軽易なものにすべきかという点にいろいろな考え方がありまして、結論を出しておりません。
  166. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 それでは検討の参考に申し上げておきますが、現在でも非常に就労規則がきびしくなりまして、以前よりも非常に窮屈な思いで働いております。当然といえば当然ですけれども、私がここで申し上げたいことは、監督のしかたに不平等があるということです。というのは、大きな組織にいる労務者、つまり組織労働者ですね、その組合等が大きい場合と、それから小さな弱い組合とでは、かりに弱い組合はまじめに働いている、大きな組合の労働者は非常にだらしない就労の姿である、それでいながら別に賃金が変わるわけでもなし、ですからまじめな労働者は働いていること自体が何だか、おかしな言い方になりますけれども、損をしているような感じを受ける。これでは失対事業、その労務の状態がよくなっていくわけがない。いろいろと検討をされていくでしょうけれども、この問題は非常に大きな問題だと思うのです。現実にいまありますこういうことに対しては、どのような考えで今度手を打たれるか、それを聞いておきたい。
  167. 村上茂利

    ○村上政府委員 私どもも御指摘のようなことがあってはならないというふうに注意をいたしておるところでございますが、御承知のように、失対事業は都道府県または市町村が事業主体になって行なう事業でございます。しかもそれが国税と地方税、要するに国民の税金によって行なわれる事業でありますので、やはり社会的に見ましても適正な就労をしていただかなければならないというふうに存じております。  そこで、先生も御承知のように、数年前から、事業実施につきまして正常化をはかるという努力をいたしております。しかし、何ぶんにも都道府県、市町村が事業主体でありまして、いろいろな地方的な事情もございます。そして特に事業現場を管理いたします管理体制が一番基本になるわけでございます。そういう観点から事業の正常化をはかると同時に、その一番ポイントになりますものは、管理体制の強化と申しますか、確立することでありますので、管理体制の確立という観点から、いま御指摘のような批判が起こらないように今後も努力をいたしていきたいと思います。
  168. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 組合の団体といってももとは人間でありますので、やはりまじめに働く組合員もおればなまけるのが好きな組合員もできるというものですね。そういうとき、ある意味で賃金などで等級をつけて、まじめに働くほうはいい等級、なまけるほうは低い等級でというような運営のしかたは考えられていませんか。
  169. 村上茂利

    ○村上政府委員 現在は作業の種類などによりまして賃金の区別をいたしておるわけでございます。いま御指摘のように、歩掛かりその他を入れまして、あるいは先生のおことばですと、もっと出来高的な要素を入れろというお考え方かもしれませんが、そういった問題になりますと、失対事業の性質そのものにつきまして、そういった要素を事業計画の中に入れるかどうかという基本的な問題があるわけであります。この点につきましては、先生が冒頭に御指摘の今後の失対制度改善の問題につきましてもそこまでは触れていない、こういう問題もあります。確かに検討を要する問題でありますけれども、失対事業の基本的性格そのものにも関連する問題でありますので、慎重に扱わざるを得ないと存じております。
  170. 大橋敏雄

    大橋(敏)分科員 人間の本心というのはだれだってまじめにやりたい。ですから、まじめに働いている組合のほうに行きたいなという気持ちで来る人も事実あるわけです。ところが、そちらに来ると監督が非常にきびしい。就労規則で、悪いことばでいえば締め上げていく、組織の強いほうはなまけていても黙認している、こういうことがあっては相ならぬと思います。こういう点については特に徹底した指導を要望しまして、時間が参りましたので終わりたいと思います。
  171. 赤澤正道

  172. 和田耕作

    和田分科員 私は、労働省の今回の職業安定業務あるいは基準、あるいは婦人少年局の地方移管の問題について、労働大臣中心にして御質問をいたしたいと思います。  今度の改正で地方労働局というものをブロック別に設けるということですけれども、ブロック別というのはどういうところなんでしょうか、大臣
  173. 原健三郎

    原国務大臣 大体全国に七つ、八つぐらい、たとえば北海道、東北、関東、近畿、中国、四国、九州、こういうような一応の基準でその程度地方労働局を置きたい、こう思っているわけであります。
  174. 和田耕作

    和田分科員 これは労働行政だけではないのですけれども、最近の異常な経済発展ということで、行政全般をもっと広域的な行政に編成がえをしなければならないという強い傾向があると思うのですが、この問題、大臣どのようにお考えになりますか。
  175. 原健三郎

    原国務大臣 まことにそういうことも考えられますので、いま言いました地方労働局というのを置いて、中央とその労働局と連絡をとり、それから地方自治体、都道府県とも連絡をして一貫した労働行政を推進していきたい、こういうような趣旨でございます。
  176. 和田耕作

    和田分科員 その場合に、職業安定業務あるいは基準業務等の問題、いままで労働省が直轄してやっておったそういう行政事務を地方に移管するというこの考え方が骨子になっていくわけですね。これを補完するために地方労働局を設けるというようなことだと思うのですけれども、今度の改正案の焦点は、やはり地方に行政事務を移すというところにあるんじゃないですか。
  177. 原健三郎

    原国務大臣 これはほんとの趣旨は、御承知のようにここ五年か十年近いうちに一億総勤労者、総労働者、こういう世の中が出現しようとしております。それに即応するようにいまから準備しておくことがきわめて必要である、労働行政をどうしてももっと推進いたしたい、強力化したい、こういうのがほんとの趣旨でありまして、たまたま政府においても機構の改革をやるという考えがありましたので、それに合わせて、昨年の十一月二十六日に労働大臣、自治大臣、行政管理庁長官の三者の間で合意に達して覚え書きをかわし、私もその事務引き継ぎを受けた次第であります。だから、地方へ移管するから労働行政が弱くなる、労働本省が握っておるから強くなるというのではなくて、むしろ私どもの考えとしては、労働行政を全国的に浸透さして一貫性あるためには、もう少し地方自治体に入り込んで、各知事などが力を入れてやってもらうことがきわめて大事であるというので——御承知のように、いま都道府県で独立した労働部を持っておるのはわずかに八府県でございます。私なんか初めは全部あるのかと思ったらそうではないので、あとはたとえば民生労働部とかあるいは商工労働部というのがございましたり、全然ないところもございます。部の名前のないところもございます。いずれにしろ、商工労働部などといいましても商工が中心で、労働はすみのほうに置いてある。むろん民生労働部というのは福祉関係、厚生省関係が主で労働はすみっこにおる。こういうようなことでは、これから一億総勤労者をかかえていく時代にはなはだ不適当である。どうしても各都道府県に労働部という独立したものを置いて、それに中央からも労働局を置くし、そうして各知事にも労働行政に携わってもらってこれを推進してもらう。そうでないと、東京の本省とその出先だけでやるということでは、この大業を完遂することははなはだおぼつかない。それで、移すことは、政府もいわゆる行政改革をやるといっておるときでありますから、これと歩調を合わせてこの際思い切ってやることが将来労働行政を全国的に強力に推進するゆえんである、私どもはそう考えてこれを推進いたしたい、労働行政を強めていく、こういう趣旨でおるわけであります。
  178. 和田耕作

    和田分科員 この改正のもとの考え方の出たところは、昭和三十九年の臨時行政調査会の答申に基づくと思うのですけれども、その答申の趣旨は、こういう種類のものは、もっと地方の行政の主体が地方の事情を総合して見るようなものにしなければならない、こういう趣旨のものだったと思いますけれども、これに間違いがありますか。
  179. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 趣旨におきましては、ただいま先生お話のとおりでございます。
  180. 和田耕作

    和田分科員 とすれば、つまり労働省がこれまで、不十分ではあっても一元的に安定行政をやり、基準行政をやっておった、その安定あるいはは基準の行政を新しく地方の労働部長というところに集中をする。しかも、その労働部長を地方の県知事、あるいは知事に当たるものが任命をするというのが今度の改正だとするなれば、つまり労働省の全国的な、統一的な、総合的な行政というものの重要な部分を、地方に移管するという意味なのですね。そういうふうな意味で、地方に権限委譲するということになると思うのですが、大臣、どうですか。
  181. 原健三郎

    原国務大臣 一番問題になってまいりますのは、地方の労働基準局というのを労働部の中に入れるということになります。しかし、その労働基準行政というのは労働行政の中核をなすもので、非常に大事なものでございますから、全部知事に移管するのでなくて、労働基準行政の一番前線を承っておる労働基準監督署というのがございます。その監督署はいままでどおり本省の直轄にいたしまして、それから基準監督官はもちろん国家公務員にして、このままやらしていきますから、私どもからいうと、労働行政がこれで後退することはないし、また地方の知事なんかの力を活用して、ともどもにひとつやっていきたい。問題になるのは、そういうふうにすると、労働行政でも、各県によって薄い濃い、濃度が変わってきやしないかという御心配をいただきますので、そういうことのないように、地方労働局長をして、出先機関からも監督し、指導するということをやっていきたい、こういうようなわけでございます。
  182. 和田耕作

    和田分科員 いまの大臣のお答えの中に、第一線のところの、たとえば職業安定所、あるいは労働基準監督署というようなものは、依然として労働省の直轄下に置いていく。新しくブロック別に——このブロックはどこに置くか、まだはっきりしないようでありますけれども、七、八カ所の場所に直轄の労働局というものを置く。しかし、一番中心のところは各府県にある労働部、ここでもっていままでの問題をまとめていく、ここのところ地方公務員——つまり地方公務員という資格で、任免は知事がやる、こういう形のものは、私どもしろうとが考えても、何か複雑な感じ、はっきりしない感じ、労働大臣がおっしゃるように、もっと強力に労働行政を推進していくとするならば、もっとはっきりした形があると思うし、また地方に委譲するものとすれば、もっとはっきりした形がある。何かふん切りの悪い感じを受けるのですけれども労働大臣責任者としてどういう感じでこういう改正案をお出しになっておるのか。
  183. 原健三郎

    原国務大臣 感じだけから申しますと、私どもは、初め多少そういう感じを持たないわけじゃなかったのですが、実際の労働行政推進という実務上のことからいろいろ考えてみますと、かなり効果を発揮して、これが五年、十年と将来のことを思う場合においては、私はどうしても都道府県に労働部という独立した部を置いて、知事と協力して推進しなければ、東京の本省の出先だけではとても動かない。出先もやるし、地方の知事にもそういう関心を持ってやっていただく。そうしてともどもに手を携えてやることが、私は将来の労働行政推進に非常に役立つ、こう思うのです。私なんかも、さいぜんも申し上げましたが、八都道府県だけに独立した労働部があって、ほかにはないということは知りませんで、全部あるのかと思っていた。この機会にそれを置かないと、労働行政は全国的に——昔は東京や六大都市くらいでしたが、これからは全国的に勤労者が激増してまいりますし、それに対応するのには、いまから都道府県に入り込んで、独立した労働部を置いて、中央と地方が協力して、これは一人は地方公務員であり、一人は国家公務員であるという多少の違いはありますが、日本の行政の実情から見ると、役所におる人は、国家公務員が地方公務員になるのはちょっとぐあいが悪いという現状もありますが、それは、一年や二年は何かちぐはぐなものもあると思いますが、五年、十年、二十年の先のことを思うと、この際思い切ってやっておかないと、やるチャンスがなくなってしまうので、この機会にぜひ皆さん方の賛同を得てやりたい、こういうふうに思っております。
  184. 和田耕作

    和田分科員 なお、もう二、三聞いておきたいことがありますけれども、今度の地方労働局、そして各府県の労働部、それと一線の安定局あるいは基準局、この三つの系列があります。つまり地方労働局というものは労働省の本部と地方の行政主体である労働部との、連絡調整の任務を持っておりますか。
  185. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 地方労働局は、実は覚え書きの線にもございますように、都道府県の業務とはダブらない、重複を避けるということになっております。したがいまして、都道府県の区域を越える、いわゆる広域的な事項について地方労働局が所掌する。国との関係におきましては、国は全国的な事案を処理できるわけでありますから、したがいまして、広域的なものを取り扱える。しかし、そのブロック特有の問題については、国はこれに対して連絡あるいは必要な指示をして、国との間にもダブった権限の行使はやらない、こういうふうにいま考えております。
  186. 和田耕作

    和田分科員 地方の行政の主体である府県の労働部というものが、今後非常に重要な役割りを果たすことは間違いないですね。私が一つの論点にしたいのは、ILOでこの問題は非常に古くからあるのです。一九二〇年代のILO条約の関係者が非常に気を使っている問題が、その問題なんですね。つまり、一つの国の労働行政というものは、国の直轄的な直接の監督という、この筋が通らなければならないというのが基本精神ですね。つまり、これはその国の人間の平等な問題を確保するという意味が第一にあると思います。そういうふうな意味から申しまして、今度の改正というものが地方府県の労働部、その労働部の責任者は知事がこれを任命する、労働省に多少相談するでしょうけれども、知事が任命する労働部というものが、今度の地方労働行政の中核になるということですね。むろん第一線の二つのものは国の直轄になっておりますけれども、その中核の部分として労働部がやるという場合に、いまのILO条約というものに違反しないような配慮をしたと思いますけれども、精神は違反をしている、あるいはその精神とは少し違っておるという感じを私受けるのですが、労働大臣、この問題はどうですか。
  187. 原健三郎

    原国務大臣 その点についても、内部でもいろいろ研究いたしたのですが、ILO条約で非常に強調しておる全国的な統一性、あるいは全国的な公正性、こういうようなものが労働行政で失われることのないように十分配慮したつもりであります。すなわちさいぜんから申し上げるように、中央の本省がある、それから地方労働局がある、その下に第一線は依然として中央のその回りにある職業安定業務、それから労働基準監督署、第一線からずっとある。その中間的なところに府県のほうも存在して、手助けをしてもらうというわけですから、決してILO条約の精神から逸脱もしていないし、破壊もしていない。先生も御承知のように、一時的にはそういう国家公務員から地方公務員にいったり、国家公務員から県に入ったりするから、多少いろいろな心の不満足なこともありましょうが、私は五年、十年先のことを考えると、この際思い切ってこれをやっておいたほうが非常に強力になる、そう思っております。
  188. 和田耕作

    和田分科員 大臣答弁を聞いておりますと、先ほどの問題点、私が質問しているときは、地方の労働局というものではとてもじゃないが、地方の人たちでは十分できないから、労働部というものを設けて、地方自治体の強力な力を呼び込んで、そして労働行政をあれするという。つまり地方労働部というものを非常に評価して、重要なものとして御答弁なすったのですけれども、いまの答弁によりますと、国の行政では足りないから、手助けを頼むんだというような意味だから、つまり労働省の直轄的な労働監督という線は曲がらないんだという感じの御答弁なんですけれども、そこのところが問題なんです。
  189. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいまの御質問でございますが、私ども実はこう考えておるわけでございます。労働行政全般がいま都道府県の段階でばらばらになっている。あるものは都道府県の個有の事務としてやられております。ある事務は国の事務として委任されておる。そこでILO条約その他で申しておりますのは、労働行政の中の監督行政、あるいは職業紹介行政という、本来これは国の監督のもとの組織で、統一的にやれというのがILOの条約その他の基本的な考え方であります。そこで、今回労働行政全般を、府県の段階で都道府県寄りに一体化いたしますが、その中で当然監督行政、安定行政とそれぞれの特徴がございます。それに基本的には第一線は監督署、安定所、それと紹介業務並びに監督業務は国の直轄機関でやる、中間的なものは都道府県知事に対する機関委任をいたしまして、それに対して国の指揮監督権を強化していくということを考えておりますので、基本的にILOの精神に反するものではないというふうに考えております。
  190. 和田耕作

    和田分科員 いまの府県にある労働部というものは、知事がこれを任命するというはっきりした明文がございますけれども、知事が任命するというのは、知事は地方の直接選挙によって選ばれた人ですね。またこれはいろんな党の立場を背景に持った、いろんな政治的な方針を背景に持った、違った人が地方の知事である。特に現在そういう状態がはっきりしている。しかもこの人たちが、地方の非常に重要な労働行政をつかさどる労働部長を任命をする。ILO条約で心配しておるのは、地方のいろいろないい意味でも悪い意味でもボスとか、あるいは地方の有力者が、あるいは地方の地場のいろんな産業その他に支配力を持っている人が人間を扱う。平等に扱わなきゃならない人間を、差別するような結果になりはしないか、ここのところを一番心配しているわけですね。そういう面から見て、いままでのものの改正は、もっと中央行政を合理的に強化していく方向にこそ必要であれ、地方への無原則なこのような委譲のしかた、しかもILOとかいろんなものと反しないような手の込んだ委譲のしかたを——私、地方行政を軽視しているわけではないのです。地方行政は地方行政として強化していかなければならないのですけれども、ものによるわけですね。こういうような問題は方針としてどうかと思うのです。つまり知事の判断というものが、ILOのいま申し上げたような精神と違った判断が入る余地を残していく意味で、この案は問題だ、私はそう思うのです。
  191. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 いろいろ御心配をいただいておりますが、たとえば労働部長の問題につきましては、本来ならば都道府県の労働部の部長でございますから、知事が自由に任命できるというたてまえでございます。しかしながら、労働行政を大幅に県の中に取り込んでいくということから、やはりこの人事につきましても、労働大臣としても重大な関心を持たざるを得ない。そこで、そういう原則に相当反しまして、実は覚え書きの中でも監督官をもって労働部長にあてるということをいたしておりますのも、実は先生の御懸念のようなことが人事面においても防止されますように配慮したわけでございます。そこで、全般的にそんな手の込んだ変なことをしないで、国が直轄で握ったらいいじゃないかというお話も、御意見として十分拝聴されるわけでございますが、現実のいまの労働行政の姿は、御存じのように助長的な行政面は、労働行政の中で、これは大体県の中でいまこなされておるわけです。そこで紹介業務、あるいは監督業務という基本的な業務は、ほかの助長行政の面とも密接に関連をいたしますので、いま現にありますものを引き出してきて、県、国一本でやることは、現実上非常に困難でございます。そこで、一体化するということによって、もし基本的な国の性格の強い行政がそこなわれないような保障があるならば、取りつけられるならば、助長行政の面と一本になるほうが、労働行政全体の推進のためには有効ではないかということで、実は現実の問題、それから考え方の両方をいろいろ検討いたしました上で、いま現実に機構を変えるとすれば、私どもがいま考えておるようなことが現実的であり、かつ有効ではなかろうか、こう考えておる次第であります。
  192. 和田耕作

    和田分科員 いまの問題はしばらくおきまして、自治省の方、行政管理庁の方もいらしていただいておりますので、まず行政管理庁の方に質問したいのですけれども、地方事務官制度を廃止したほうがいいという——それだけじゃないのですけれども、臨時行政調査会の三十九年度の勧告の中で、地方事務官を廃止するということがあるが、それは労働省以外にどことどこがありますか。
  193. 木下薫

    ○木下説明員 お答え申し上げます。  地方事務官制度を現在持っておりますのは、労働省のほかに、厚生省と運輸省とございます。
  194. 和田耕作

    和田分科員 厚生省、運輸省は、この勧告に対してどういう反応の示し方をしておるのですか。
  195. 木下薫

    ○木下説明員 臨時行政調査会の答申が、地方事務官制度を廃止すべきであるという形で出まして、その当時から現在まで相当期間がたっておりますが、労働省を含めて、しばらくの間は地方事務官制度の廃止の方向に各省は向いていたとは思われませんので、むしろ地方事務官制を廃止するのに、かなり難色を示してきたというのが事実でございます。
  196. 和田耕作

    和田分科員 それに対して労働省は、それだけではないでしょうけれども、行政管理庁の勧告を受け入れる形で、こういうふうな案をつくるというのも、今度の案については一つの理由ですね。それにつきまして、行政監理委員会というのがございますね、管理庁長官荒木さんを議長でしたか委員長でしたかにした委員会が。最近ある新聞に、この委員会が、今度の労働省の案はけしからぬのだ、あんな中途はんぱな案はだめだ、もっと三十九年の勧告の精神に戻ったほうがいいんじゃないかという決議をしたというのですけれども、これは事実ですか。
  197. 木下薫

    ○木下説明員 今回の地方事務官制の廃止の問題につきましては、先ほど申しましたように、各省かなり難色を示したのでございますが、昨年来、やはり廃止の方向で各省とも検討しようというような形になりまして、関係大臣との申し合わせと覚え書きというのが出てまいったのであります。その一つとして、労働省の機構改革の問題が出てまいりました。  事の起こりは、地方事務官制を廃止する場合に、単に廃止だけでは困りますので、廃止に伴う善後措置をどういう形でするか、そういう場合に、労働省におかれましては、労働行政の前途というものを考えられて、今回のような労働大臣、行政管理庁長官の覚え書きという方向で将来中身を詰めていこうという形になったわけでございます。この労働省の地方事務官制の廃止、及び労働省の機構改革の問題につきまして、行政監理委員会もやはり臨時行政調査会の答申をフォローするという立場にもありますので、非常に強い関心を持っておるわけでございます。私ども事務当局といたしまして、この覚え書きの線というものを監理委員会に報告をいたしまして、監理委員会といたしましても、この持っている強い関心のもとにいろいろな形で検討されましたが、ただいま和田先生のおっしゃったような形で監理委員会で一本の決議が出たわけではございません。  現在までの内容を申し上げますと、委員さん方は、行管長官が委員長でございますが、このほかに委員が六人でございます。その中で、大別いたしますと二通りの考え方があるようでございます。  一つは、今回の労働省の機構改革の構想といいますものは、臨時行政調査会の答申に盛られておるものとかなり内容が違う。答申で、今度の機構改革の構想に関係いたしますものは、地方事務官制を廃止しようというのは勧告の一つですが、しかし、労働基準関係につきましては、臨時行政調査会の答申では、国の機関である職業安定関係は地方事務官も廃止し、職業安定所も府県に移す、そういうようなことも言っておりますが、さらに臨時行政調査会の答申に触れていない地方労働局の問題もあると思います。こういうような問題では、形は行政改革の方向ではあるが、内容的にかなり離れておりますので、もう一度基本的に考え直す必要があるのではないかという意見一つでございます。  もう一つは、とはいいながらも、臨時行政調査会の考え方と申しますのは、なるべく行政事務を地方に委譲いたしまして、総合的な立場で行政を執行していくという線もあるわけでございますので、そういう角度から見れば一つの前進である。労働行政を府県という中で総合的に処理していくという方向に向かっていくのは、一つの大きな前進だと思うので、そういう方向は認める、しかし、中身として、地方労働局の問題であるとか、あるいは職業安定所なり労働基準監督署をそのまま残しておくという考え方については、さらに検討する必要があるんじゃないか。  こういうような二つの意見があるわけでございまして、これは委員会の意見として形づけられて出たわけではございませんので、私どもは、委員さん方の意見にはそういうような意見があるということを各委員から委員長に話をしたという形になっておるように聞いております。
  198. 和田耕作

    和田分科員 よくわかりましたが、いま二つの意見は六人の委員の中でどうなりますか。何対何ということになれば、どういうふうな意味になってくるか。
  199. 木下薫

    ○木下説明員 おおよそのところ半々のように伺っておりますが、委員会そのものの意見としてまとまったものではございません。
  200. 和田耕作

    和田分科員 行監の委員会の人たちは、先ほどから問題になっておるILOの、労働行政というものは全国一律の、つまり国の精神が突き通ったものでなければならないという非常に重要な一つの精神があるわけですけれども、この問題を議論なさるときに、このILOの基本精神というのを、どのように評価なさってこのような議論をなさっておるのですか。
  201. 木下薫

    ○木下説明員 行政監理委員会の委員さん方も、もちろんこのILO条約なり、勧告なりを十分勉強いたしておりまして、考え方としては、労働基準行政について全国的に、統一的に行政の確保が保障されるべきであるという関係については、みな同じような考え方を持っておる、私はそのように拝聴しております。ただその確保する方法論として、国の直轄の行政でなければならないかどうかという問題については、労働省のおっしゃっておりますように、国の管理といいますか、その線を、実効を確保していく方法をとれば、条約なり勧告の趣旨は保たれるのじゃないか、そのような考えを持っておるように伺っております。
  202. 和田耕作

    和田分科員 ここでILO条約の本文を読んでみますけれども、「労働監督は、加盟国の行政上の慣行と両立しうる限り、中央機関の監督及び管理の下に置かなければならない。」という条文ですね、これはすなおに読めば、中央政府の管理、監督というものは——これは回り回ってということもありますけれども、またこういうことをきめた精神というのは、いろいろな地方の、いろいろな違った勢力の意見が介在してはならない、影響力を及ぼしてはならない、そういうことを防ぐためにこういう条文ができておるわけですから、そうであるのに、いまの労働行政の重要な基準あるいは職業紹介業務に対して、いろいろ違った意見を持ち、違った立場の知事、それを背景にしている知事の重要な発言力が入っていくという問題は、確かにこれはILO条約の精神と反していると見なければならない。それがために今度労働省は非常に苦労なさって、いろいろな手を打っておられるわけですけれども、つまり行政管理庁は、こういう問題を考える場合に、ILO条約というものは、あんなものは大したことはないのだとまさかお考えになってはいないだろうけれども、もう一ぺんその問題について……。
  203. 木下薫

    ○木下説明員 行政管理庁におきましてももちろんでございますが、行政監理委員会の委員各位におきましても、ILO条約の趣旨というものは十分勉強してこの問題を研究しておる、そう申し上げておいていいと思います。
  204. 和田耕作

    和田分科員 今度は自治省のほうにお伺いしたいのですが、最近都市問題ということで、政府並びに各党も盛んに議論をしているわけですけれども、この議論の集約点は、地方の行政というものは再編成されていかなければならない、もっと広域的な行政になっていかなければならない、つまり府県の廃止という議論まで出てきているわけですね。あるいは東京中心、あるいは名古屋中心、あるいは近畿中心、あるいは北九州中心というような、現に経済が踏み込んでおる姿、日本人の新しい社会が踏み込んでおる姿にマッチしたものにしていかなければならないという、これはニュアンスの違いはあっても各党各様、私も民社党の都市問題の責任者をしているのですけれども、とにかくそういうふうな感じの行政の新しい方向というものがひとつ常識になっておると思うのですけれども、自治省のほうはどういうようにお考えになりますか。
  205. 森清

    ○森説明員 お答えいたします。  先生の御指摘のとおりでございまして、経済社会の大きな変動があり、地方行政がそれに十分対応して展開されていかなければならないが、現在の体制でそれが可能かどうか、あるいは変えるとすればどういう形がいいかということについて、私のほうでも検討いたしております。また地方制度調査会等にも諮問を出しまして十分検討いたしていただております。
  206. 和田耕作

    和田分科員 つまりそういうふうな新しく開けていく日本の国の姿、それに合わそうとする行政の姿勢、これを大きく考えまして、今度の労働省の取り上げておられる意味がわからぬわけではないのです。わからぬわけではないのですけれども、何かしら、そういうふうなものとちぐはぐな感じを受けるのですけれども労働大臣、どうでしょうか。
  207. 原健三郎

    原国務大臣 こういう行政改革でございますから、いままでの因縁もあるし、この機会にやるといいますと、やはりそういうちぐはぐのような印象、また国家公務員から地方公務員になるという方々の気持ち、若干のそういうものがあることはいなめない事実であります。私は、これを十年、二十年先のことを考えて、この際思い切ってやって、ILO精神を生かしてやるような面については、労働省がこれを指揮、監督してやる。それからまた助長業務とか助長行政とか、いろいろな、労働行政も幅広いものでございますから、その他のことも県当局にやってもらうほうが——いまのようなのでは非常に力が、あまり強くないというような印象ですがね。
  208. 和田耕作

    和田分科員 労働大臣は二十年、三十年の国家の大計というものを考えて、現在これを踏み切っていくのだという、先ほどから三回ほど御意見を述べられておるのですけれども、現在日本の地方自治体というものは、その内容からいってもこの三、四年で非常に変わっていますね。いままで一等県で、相当産業があると思われた県がずっと下へ下がって、いままで三等県でしようもない県だと思っておったものが、ずっと上に上がってきている。現在この大きな変化のただ中にあるわけです。今後二十年のうちには、われわれの予想もしない大きな変化が予想される、このような変革のただ中にあるときに、重要な、つまり産業の開発、国民の生活と非常に関係の深い労働行政の基幹部分を、このような形に変えるということが適当かどうか。また将来どういうようになるかわからない。臨時行政調査会などの答申が出たときは昭和三十九年、政府が新産都市の問題を奨励した時分ですね。あの新産都市の計画は、せっかくの御努力にもかかわらず、あえなくついえ去ったと言っても過言ではないかもわからぬが、ともかくついえ去った。こういうような変化の年に起こった臨時行政調査会のあの勧告というものと、現在の状態とは非常に違います。現在、地方の過疎の問題もある、過密の問題もある、いろいろ考えなければならぬけれども、基本的な手を打つ、特に行政的な手を打つという場合に、まだまだ時期が早過ぎる、もっと正体を見届けなければならない、こういう感じがするわけです。特にこの方向というものは、広域行政の方向を向いているというわけでございますので、そういうふうな意味で私どもは非常に問題のある法案であるというふうに考えるわけですけれども労働大臣、ひとつ……。
  209. 原健三郎

    原国務大臣 広域行政的なこともありますが、それで和田さんのおっしゃるように、いろいろ変化があるとおっしゃいますが、小さい変化もあるでしょうが、大づかみな、大きな波としての変化は、だんだん農村や地方の人口が減っていく、日本が工業国となってきて、そうして勤労者が激増してくる、それから賃金労働者雇用関係者がどんどんふえて、一億国民ほとんどになってくる、こういう大きな動きは変わらないと私は思います。地域的にはそれはふえたり減ったりすることはありますが、日本の今日の経済発展、工業の発展等を見ますと、そういう大きな波、大きな動きはまず間違いなかろうと思いますので、この機会に、いままでのような、勤労者とか、賃金労働者雇用関係者が少ないときのようなことでは手が回らないから、この際思い切ってこういう行政改革もやったほうがいい。さいぜんから、午前中にもいろいろ御質問をいただきましたが、結論はもっと労働基準監督官を激増さすべし、三百万も四百万も事業所があるのにわずかに約二千七百名より監督官がいないから、これをふやして、労働行政、基準行政を推進せいという御注意をいただき、私も賛意を表しております。そういう基準監督官もふやして、そして労働基準行政を、これが労働行政で一番の中心ですが、もっと推進いたしたい、ふやしてやりたい、こう思っております。  それから第二に、地方地方によっていろいろボスが入ったりして、多少これをいじったりするというようなことも全然ないとは考えません。私は初めのころには、多少そういう傾向もあると思いますが、長い目で見ると、これは法律もあることだから、その法律の命ずるままにやりおるのですから、監督官はそれが本職でございますので、これは法律の何条でやっておりますというようなことになっていきますと、知事がそれを歪曲したり我田引水したりする——多少はないとは言えないでしょうが、大局的に見てそういうこともそれほど多くなかろうし、一、二年はどうかと思うと言ってもだんだんなじんできて、私どもそれほど心配は要らぬのじゃないか、こういうふうに思っております。
  210. 和田耕作

    和田分科員 もう予定の時間も来ましたのでこれだけでやめますけれども大臣のおっしゃる将来の展望、私も同じ意見なんです。同じ意見であるからこそ、現在のこの困った府県というものに労働行政というものをこういう形で移管するのは問題じゃないか、もっと違った全国一体の労働行政というものが必要ではないか。悪くすれば地方地方のカラーで、地方の労働者をしっかりと引きとめるような政策を、地方の行政庁はとるかもわからない、こういうことは困るでしょう。一つの地方で、たいして産業もない、さほど重要でないのに、何かのレジャーのところがあるとして、レジャーのところにうんと金を出して、そこで若いエネルギーを引きつけてしまう、そうなると全国的な重要な産業というものは困ってしまうでしょう。そういうふうなことのないようにということを申し上げておるわけなので、前提は労働大臣と同じです。労働大臣は大局から見てやったんだということで一向にかみ合わないんですけれども、時間が来ましたからこれで終わりたいと思います。
  211. 原健三郎

    原国務大臣 よくわかりました。
  212. 赤澤正道

  213. 樋上新一

    樋上分科員 午前中からいろいろ、今度の労働省の機構改革問題について質問が出たのでございますが、私、ただいま参りまして前者の質問を聞いておりまして、ほとんど重複するところが多いので、重ねてくどくどしく質問をする必要もないという点も考えられるのでございまするが、せっかく参りましたのですから、重複するところは復習する意味におきまして、もう一ぺん御答弁をお願いしたい、こう思う次第でございます。  まず、この機構改革につきまして、婦人少年室は現在どのような機能を持って、またどのような事務を現在まで行なってきたか、こういう点についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  214. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 お答えいたします。  婦人少年室は、現在各府県に国の直接出先として設置されております。その規模といたしましては、大体定員四名から七名でございます。  その任務といたしましては、調査、啓蒙を主たる業務といたしまして、それに加えまして相談あるいは連絡調整、そのような業務を担当して、国の出先として勤務しております。
  215. 樋上新一

    樋上分科員 それだけの人数で、所期の目的にある仕事が、はたしてできているでしょうか。それだけのいま言われた人数だけで、婦人少年室として活躍がはたして可能であるか、この点重ねて伺いたいと思います。
  216. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 定員につきましては、私どもも常に十分ではないと思いまして、いろいろと増員の努力もいたしているわけでありますが、現在そのような次第でございます。ただ国の出先という一つ性格がございますために、個別的なサービス、直接的な事業というものは、本来的に担当いたしませんので、その意味におきましては比較的小人数で機能し得る、そのような性格もあるわけでございます。
  217. 樋上新一

    樋上分科員 これはあるところで聞いたのですけれども、大体本省から派遣された人数以外に、その地方で一年間にほんとうに些少なお礼だけ出して、そして何十人かの人が応援している県もあるやに聞きますのですが、こういう点はどうでしょうか。
  218. 高橋展子

    ○高橋(展)政府委員 御指摘の点は、婦人少年室協助員制度のことであるかと存じます。これは労働大臣が民間の有識者の方々に御委嘱申し上げまして、婦人少年室の業務に対する協力援助をいただいている制度でございまして、十数年前から存在いたしております。現在全国で三千五百名の方々がおられまして、仰せのとおりたいへんに少ない手当でございますが、非常に熱心に御協力を賜わっておりまして、地域における行政への理解、また行政の浸透のために力をいただいておるわけでございます。
  219. 樋上新一

    樋上分科員 それでは今度は婦人少年室を廃止して地方に委譲される、そのほうがあらゆる活動において、あらゆる点において最も妥当と思われて出されたのだと思いますが、地方の委譲の際に、富裕県においては設置できる、貧乏な県においては設置できないというような心配を老婆心ながら考えるのですが、その点はいかがでございましょう。
  220. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 ただいま先生の御懸念の点は一応考えられますが、現実の問題といたしまして、婦人少年室で行なっている仕事がそのまま県に入ってまいります。それで予算も、これはたとえば調査費その他につきましては、国の全額の交付金あるいは委託費ということで県に流れてまいります。それで現にまた県の中には、婦人少年問題あるいは児童問題を扱っているようないろいろな課がございまして、そこら辺との事務の配分等によりまして、これだけの行政が入ってまいりますれば、全国に、課ということはどうかと思いますが、課または室として大小の違いはありましょうが、まずまず全部できるものと私ども考えておりますし、自治省もそういう方向で地方公共団体を指導するということを約束しておりますので、そういう方向で全国に課ないし室が設けられるものと考えております。
  221. 樋上新一

    樋上分科員 もし地方において、つくらないというような県がかりにありとするならば、婦人労働行政の後退になると私は思うのですが、そういうことは絶対ございませんか。
  222. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 もちろん課の設置は、都道府県の規則によって行ないます。したがいまして、労働大臣として直接設置する権限はございません。したがいまして、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、各地方公共団体が婦人少年行政の重要性につきましては十分御理解願えると思っておりますし、たとえ小さな室でございましてもできることを期待しておりますし、十分理解されない向きにつきましては、私ども直接、いろいろ地方団体の長ともお話しして、ぜひ設置していただくということで進めるつもりでおりますし、またそうなると信じておるわけでございます。
  223. 樋上新一

    樋上分科員 各地方が婦人課、婦人少年室を設けるために特別の配慮をするというように覚え書きに書いてございますが、かりに各地方で課ないし室を設置するとしても、各地方別にばらばらになることは明白であるが、この点はどうでしょうか。
  224. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私どもは実はこういうふうに考えているわけであります。ただいまの婦人少年室が現に行なっております仕事は、そのまま県の中に引き継いで持ってまいる。そのために必要な予算措置その他は、先ほど申しましたように国が全額の金の手当てをして入っていくということになりますので、実質的には少なくとも現在婦人少年室でやっております行政は、そのまま全国的に県の中で行なわれるということになると思っております。
  225. 樋上新一

    樋上分科員 では、婦人少年室の業務は、一般婦人や働く婦人、年少労働者福祉向上労働実態の調査等があげられるのだ、こう思うのです。ところが、地方に委譲されたときには、その地方に不利益になる実態調査報告が中央に上がってこなくなるという弊害が起こると思うのですが、その点労働省の見解をお伺いしておきます。
  226. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 実はほかの労働省関係の調査で、たとえば一番大きな毎月勤労統計調査というものがございますが、これは国の委託費をもちまして都道府県の統計課にやってもらっております。これは統計課でございますが、統計調査といたしまして十分満足すべき結果を持っておりますので、統計調査といたしまして正式な調査を行ないますれば、たまたまその不利か有利かという問題はどういうふうにあれしてよろしかわかりませんが、少なくともいままでの私どもの経験からして、お話しのようなことはないと思っております。
  227. 樋上新一

    樋上分科員 婦人少年室の問題につきましては、いろいろと憶測、心配して、いろいろなことを取り越し苦労しているのですけれども、私たちの申し上げるのは、あくまでも健全な発展のためにこっちを廃止して地方に委譲されたときに、所期の目的がいろいろな面にゆるめられて、弱体化していくのではなかろうか、こういう心配の面からお尋ねしたのですけれども、御答弁を聞いておりますと、絶対だいじょうぶだ、あらゆる私たちの心配していることは過去の経験から推してだいじょうぶ、こうおっしゃるのですから、それは安心して、私もこういう問題につきまして、私も若い時分からそれに携わってきましたし、いろいろな隘路がありまして、もっと予算をふやしてもらって、この婦人、年少労働者のために活発な戦いをやってもらいたい、ややもすると地方は予算がない、ほんとうに奉仕している人たちは、涙ぐましいように労力奉仕をして、不良化問題、あるいは働く婦人の問題のために戦っておる、このときに国がもっともっとこういうところに力を入れて、人数が足らなかったらそれを増員して、今度の改革を契機として、将来の日本をしょって立っていくところの青少年の不良化防止、また暴力によってすべてを解決するというこの世相を指導していかなければならぬ。この婦人少年室の廃止と地方委譲ということは非常に私は重要に思っているわけです。どうか願わくばそういう点に力を入れて労働大臣もやっていただきたい、こう思う次第です。これでこの婦人少年室の問題は終わりたいと思いますが……。
  228. 原健三郎

    原国務大臣 たいへん婦人少年室に御心配の御様子でございますが、さいぜんから政府委員も御答弁申し上げましたように、私どももこの婦人行政というのを——しかも、労働省には婦人少年局があって、この局長が女性である。課長も女性なんです。そういう日本でも珍しい、新しい、きわめて進歩的なものがありますから、これをだんだん衰微さしたりするようなことは毛頭考えておりません。ぜひこういう——世界からも非常に珍しい行政として喜ばれておるのです。日本国民も当然そうでございますから、これはもうあらゆる面で——私なんかもほんとうは労働大臣になってみて、婦人少年室なんかは各都道府県で五人や六人、予算なんかを見ましても事務費が一月七万五千円、こんなことでよくほってあったと思うくらい驚いたわけですが、それを労働部という各都道府県に独立した部をこしらえてもらって、そこへ必ず婦人少年課ないしは室、小さい県では室でもいいと思いますが、間違いなく設置してもらうことを、これは自治大臣ともかたく約束してあるし、自治大臣責任をもって地方長官にそれを押しつける——押しつけるというとことばは悪いが、やってもらう。それから自治法の改正をやりまして、独立した労働部というものを各都道府県に置くということを自治法の改正案の中に入れて、その中に労働部はどういうことをやるかということもついでに入れまして、それには勤労婦人とか、勤労青少年のこと、あるいは一般婦人の地位の向上等についてのことも行なうというようなことを書き加えて、法律の中にもしっかり入れておきたいと思います。そして後退することのないように、もし地方にいって課にしますと、おそらく二十人とかにふえてまいります。少なくとも十人になるとか、その課長は必ずいままでの婦人少年室長をもって充てるべし、これはもう大体了解がついております。それから労働部のほうへは基準監督官を部長にしてもらいたい、こういうことも進めまして、決して後退することのないように万般の配慮をしてやりますから、御安心願いたいと思います。
  229. 樋上新一

    樋上分科員 大臣の力強い御決意のほどを承りまして、大いに私たちは期待しております。もしそういうことができなかったら、何回も何回本あなたのことを、実現されてないじゃないかという追及をしていきますよ。
  230. 原健三郎

    原国務大臣 そこまで申されますと、私も決意を新たに——もしそういうことが実現されないなら、この法律改正案を提出いたしません。
  231. 樋上新一

    樋上分科員 次に、都道府県労働基準局を地方に移すということですが、これはどういう理由ですか。簡単にひとつ説明願いたいと思います。
  232. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 これは労働省の県段階におきまする地方行政の組織はいま県婦人少年室、基準局といろいろばらばらにございます。これを組織的に一体的組織をもって運営していきたい、そういう意味で基準局を県に委譲していくという構想でございます。
  233. 樋上新一

    樋上分科員 現在政府労働省直轄の労働基準行政が、有形無形の政治的圧力により必ずしもうまくいってないというのが現状じゃなかろうかと私は思うのです。今回の改正では、地方委譲により地方ボスの介入が加えられて、労働者保護の行政が骨抜きにされる危険が多いと思うのですが、この点はどうお考えになりますか。
  234. 和田勝美

    和田政府委員 基準行政の公正な運営についてたいへん御心配をいただいておりますが、御指摘がありましたように、私どもとしては、現在の機構におきましては全国が地方ボスの力によってゆがめられることのないような行政運営を主眼としてやっております。しかし、実際問題としては多少の問題がありますことは、御指摘のとおりであります。しかし、そういう経験にかんがみまして、今度都道府県段階におきまして、基準行政のうち問題があります監督行政を府県に入れるという問題につきましては、先生の御指摘のような点が非常に問題でございます。それだけに、どうすれば監督行政が全国的に公正性をもって行なわれるかということにつきましては、特段の配慮をしたい、かように考えておりまして、三大臣の覚え書きでも、労働基準監督官制度は堅持する、こういうように言っておりますし、第一線で現実に監督をいたします基準監督署は、国の機関として存置をする、こういうことになっております。その中における監督官のあり方あるいは府県等の人事権の問題、そういう点は、先生の御心配のないようなことにしたいということで、現在鋭意関係方面との折衝を重ねておるところでございます。
  235. 樋上新一

    樋上分科員 ILO八十一号条約の四条には、労働監督は「中央機関の監督及び管理の下に置かなければならない。」とありますが、これはこの精神には反しない、こういうぐあいに先ほどちょっと聞いておりましたが、労働省は、本来労働者の保護の立場に立つべきでありまして、またこのILO条約もその精神でありますが、この精神に逆行するような行政機構にあえてするのではないかという点について、大臣のお考えを承りたいと思います。
  236. 原健三郎

    原国務大臣 御承知のように、ILO条約によりますと、労働行政の根幹をなすものは全国的の共通性あるいは公正性を保持しなければならぬということになっておりますので、その点はよく承知の上で、万々ILO精神に反しないようにという意味で、中央の各ブロック別にはまた労働局というのを——局長も置きます。それから第一線の基準監督署においては、これは国の機関としてやるというわけでございますから、一部の者がその都道府県に入りましても、中央、それからブロックの地方労働局長、それから第一線の労働基準監督署の監督官等々によってそのILOの精神を十分生かしていきたい、決してそこなうことのないようにいたしたい、こう思っております。  また県で、さいぜんからもいろいろ御質問がございまして、県知事が少しこれを適当にいじるのではないか。ことに選挙で出た知事であるから、いろいろ文句をつけるのじゃないかというのですが、これは第一線の基準監督署が国の機関であるし、それから労働基準法という法律がございまして、それにも時間から条件からはっきり書いてございますので、それはまあ少し扱いを簡単にせいというようなことは知事が言うかもしれませんが、本質的にはそれをゆがめたり、知事によってかってにやられたりするような精神のものと違います。私は立法の精神からいっても、全然ないとは申しませんが、まずまずILO精神を生かしていけることについては、われわれは本省からことに注意して、これを指示、指令し、監督していく場合においては、間違いなかろうと思うのであります。
  237. 樋上新一

    樋上分科員 わかりました。過去十年の監督結果でも、全事業の七〇%以上に基準法の違反がある。労働災害は年間百七十万件をこえておる。災害補償も十分ではない。もし地方の労働基準局が、地方産業の実情に沿った労働基準の行政運用の名のもとに、労働基準が実質に切り下げられ、全国斉一の労働基準確保できなくなる、こういうことが各方面で心配されているのですが、この点はどうでしょうか。
  238. 和田勝美

    和田政府委員 ただいま先生指摘のような意見が今度の改革案をめぐりまして非常に強く出ておりますことは、私どもも十分承知いたしております。しかし、ただいま大臣からお答えを申し上げましたような気持ちで先生の御心配のようなことのない機構にしたい、そういうものをつくり上げていかなければならない、こういう気持ちで現在細部の問題について取り組んでおりまして、心配のないような方向に持っていきたい、かように考えております。
  239. 樋上新一

    樋上分科員 行政監理委員会は、地方労働局の仕事である労働力の需給の調整などの雇用対策労働基準法による司法処分の指揮、監督等は、新設の理由として認められないといっているのですが、この点はどうでしょうか。
  240. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 行政監理委員会の御意見につきましては、先ほど行管の担当官からのお話ですと、まとまった決議等ではないようでございますが、いまお話しのようなことがその中身にあるようでございます。ただ、私ども労働行政の特殊性から申しまして、必ずしも雇用あるいは労働市場というものが都道府県の行政区域と一致いたしませんものもございますし、それからまた基準監督の執行の面につきましても、ある重要事案なり、重要権限の行使につきましては、都道府県知事に委任することが適当でないというのも現実にあるわけでございます。これは職安行政なり監督行政の一つの特殊性と見てよろしいと思うのでございます。これらの問題を、一応行政を全部地方委譲するにあたりまして、そういう特殊な分野につきましては、これは地方労働局ということで国の機関がブロックにおきまして好意的な立場から取り上げたほうが妥当であろうというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  241. 樋上新一

    樋上分科員 実際の運営にあたって、指揮命令系統が今度は増加するので、事務処理が繁雑になってくるのは、これは明らかでありますが、その結果、法に触れる違反者に対し厳格な措置がとれなくなることを危惧するわけでありますが、この点はいかがでありましょうか。
  242. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 私どもも実は屋上屋を重ねるような行政組織のあり方は、それ自体好ましくないと思います。そこで地方労働局の権限につきましては、これが都道府県と国ともダブらないような形で、地方労働局の権限とそれぞれ知事の権限とを調整をしてまいるつもりでございまして、いまお話しのようなことはこれによって避けられると思っております。
  243. 樋上新一

    樋上分科員 私は、ブロック局の新設によって、地方労働局と地方労働部の二本立てになり、そこで都道府県一体化の趣旨に反するのではないか、こういう点を心配しているのです。
  244. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 実は地方労働局は、先ほど申しましたように、都道府県の区域を越えて発生いたします事案を処理するということを中心に、いわば広域的なものを処理することにいたしまして、覚え書きでもその事務の所掌を明らかにすると同時に、都道府県との重複を避けることという一項を入れましたのも、それは県に委譲する限りにおきまして、相当ダブった形で地方労働局が事務を所掌することを避けるということを明確にしているわけでございます。その方向で具体化していくつもりでございます。
  245. 樋上新一

    樋上分科員 いろいろお伺いいたしましたが、最後に一言、これも老婆心ながらお伺いするのですが、新聞紙上に報じられております「行革三カ年計画に早くも暗雲、労働・自治省が対立、職安事務の地方委譲で」対立しているということが新聞に報じられているのですが、この点はどうでしょうか。
  246. 原健三郎

    原国務大臣 そういうことも聞きまして、この間予算委員会の総括質問のときに参りましたので、自治大臣からも答弁がありまして、ともに手を携えてこれを推進いたしたい、他意はないということを自治大臣も申しておりますので、だいじょうぶだと思っております。
  247. 樋上新一

    樋上分科員 まだ少し尋ねたいのですけれども、時間が参りましたので、これで終わりたいと思いますが、特に今度の問題に対して、運用面においても、いろいろな面においても、十分な考慮を払われて問題の起こらないように要望しておきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  248. 赤澤正道

    赤澤主査 次回は、明二十六日午前十時から開会し、厚生省、労働省及び自治省所管を一括して審査することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会