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田原分科員 ところで、漢方医学について私の貧弱な経験ですが、新聞雑誌から集めた資料をこの際読み上げて、
厚生大臣の御参考に資したいと思います。医務
局長も知っていることと思いますが、ここで繰り返します。
第一は、明治四十三年に、和田啓十郎
医師が「医界の鉄椎」という本をあらわして、漢方が
治療医学としていかにすぐれているかを強調しました。第二は、この書物で眼を開かれた
医師湯本求真は、
昭和二年「皇漢医学」という本、全三巻をあらわし、現代医学の立場から漢方医学が
治療にすぐれている点を強調した。第三は、馬場辰二
医師は、東京大学医学部学生時代に、この「医界の鉄椎」を読んで感動し、銀時計で卒業するや直ちに漢方医を開業し、後、吉田元首相の主治医となり、またその推薦で鳩山首相の主治医となったことは御承知のとおりであります。第四、東大医学部の生理学教授からもとの一高校長となった文部
大臣橋田邦彦博士もこの「医界の鉄椎」に感動し、ドイツ留学にも携えて行き、
日本医学の講演に使ったという。橋田博士は常に、わが国に古来から伝えられ進展した東洋医学は、病気の
治療についてははるかに現代医学にまさっておる、
日本医学をこれから樹立しようと言ったといわれております。第五点、薬学では長井長義博士が漢方の生薬を研究し、麻黄から有名なるエフェドリンを抽出して使っておることは御承知のとおりであります。第六点、薬理学の猪子吉人博士が、漢薬の作用を研究し、現代医学の立場から多くの業績を残しております。第七点、
国立千葉病院では東西医学研究会なるものをつくり、松下、伊藤、藤平等の九人の博士が一年間研究をし、「生薬投与の効果に関する研究」を発表をしたが、結論を見ますと、慢性疾患に対する東洋医学の
治療は、西洋医学の
治療とともに用いることは有効である、また東洋医学の
治療を単独に施しても有効であると言っております。この研究には
厚生省からわずか四十万円の補助金が出たそうであります。金額は問題でありませんが
厚生省もようやく注目しているということが、これでもわかる。第八点、大阪大学教授沢潟久敬博士は「医学概論」の中で言っていわく、漢方医学の
治療効果を知らずに非難することは非科学的である、西洋医学のみを身につけた者は漢方
一般の研究をする必要がある、漢方の講義を行なうことは
国立大学に課せられた使命であると言われて、そういうことを書いております。また第九点、杏雲堂病院のもとの院長でありました佐々木隆興博士、彼はガン研の吉田富三博士の師匠格であります。
昭和二十八年、
日本内科学会で、医学には縦の
両面がある、東洋医学と西洋医学である、この長短を取捨し、よりよい
治療をせなければならぬと言っております。佐々木博士は、その後文化勲章を受けたことも御承知のとおりであります。第十点、名古屋大学のもとの総長、勝沼精荘博士はいわく、三浦謹之助博士は杏仁チンキという漢方薬をぜんそくに用いた、また甘草を胃かいように用いて卓効をあげておる、ドイツでも甘草を使っている、生薬に対する真剣な反省を求めると言っております。第十一点、東大物療内科の大島良雄博士は、
昭和三十五年、テレビで次のように言っております。漢方では証を見て
治療ができる、西洋医学の盲点が漢方医学の得意とするところであると言っております。第十二点、順天堂大学教授小川鼎三博士は、
昭和三十八年、西洋医学は万能とは言えない、分析だけではだめで総合が大切だ、漢方の主眼は病人をなおすことである、ヒポクラテスの精神と一致しておるではないかと言っております。第十三点、ストレス説のカナダのハンス・セリエ博士は、私も会いましたが、先年東京へ来て東大での学術講演で、東洋医学を理解し体系化することは
日本の医学者の責務であると言っております。第十四点、ドイツのヘルベルト・シュミット博士は著書で、漢方は西洋では新しい将来性のある医学であると言っておられます。第十五点、フランスのマルセル博士は、私は
日本の知識人が代々伝わった精神的遺産をすっかり投げ出すのではないかとおそれると言っております。
以上の点について、技術的な面は医務
局長、それから政治的面は
厚生大臣から、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。