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枝村分科員 昭和四十一年の七月に開設されました山口県宇部市の宇部空港に関する問題について質問いたしたいと思います。
これは地元の住民が一致して強く要求しています、いわゆる約束履行の問題と、それから生活の安全を脅かす問題が三年たった今日まで尾を引いておりまして、しかもそれは未解決であり、これからも全然解決の
見通しがない。そうしてその紛争はますます拡大していく
状況にありますので、この問題に
関係を持つ
運輸省当局の明快なる答弁を受けて、早期解決のめどをつけて、地元の住民が安心して生活できるようにしたいと思っておるのであります。
問題のいきさつについては、しばしば陳情その他のいろいろな方法で運動がされておりまして、
関係当局の方々よく知っていらっしゃると思うのでありますが、念のために簡潔に、そのいきさつをいまから申し述べていきたいと思います。
その前に四十三年十二月十日付で、地元の空港対策
委員会の
委員長、副
委員長名で
運輸省当局に対して申し入れがあります。参考の意味でひとつ読み上げてみます。
宇部空港の運輸にかんする件
去る
昭和四十一年六月五日首記空港開港に当り、山口県知事と当
委員会との間に「宇部空港にかんする協定書並びに諒解事項」を締結しましたが、その経緯、内容については、航空当局は充分御
承知のことであり、また、世間
一般周知のところでもあります。
甚だ恐縮でありますが、ここにそれを要約しますならば、滑走路の方位と標高等にかんし、大臣の許可条件を無視して完工され、しかも遺憾にも
あとで、さらに、そのような誤った方位、標高等を官報告示の権威を失墜してまでも、追認許可され開港を敢行せられたのであります。世間からいわゆる「政治空港」だと称せられるのも故なしとしません。
このため空港東側の当部落民にとっては、不必要に危険にさらされることになったのでありますが、開港直前に企業の公共性にかんがみ、忍びがたきを忍んで当
委員会は、県との間に「向う三ケ年を目標に安全な新滑走路を新設する」ことを、骨子とした協定書を締結し、そして部落民挙つて、必らずやそれが実現されるものとの信頼のもとに、紛糾した事態を一先ず紳士的に解決し、開港を祝福した次第で、このことも既に御
承知のことであります。
ところが協定締結後既に二ケ年半にもなります現在、県側の不誠意のためか履行の曙光すら見ない現状で、このまま推移すれば協定は反古となること必至で、早くも本件は部落の枠を超えて、政治的、社会的問題化しようとする形勢にあります。
現在県当局は周知の如く、協定
期間内における解決の意思はなくむしろ、それとは逆に条例を変更し、乗入れ航空会社と共に(一)夜間で飛行すべく、また(二)飛行着陸回数を増すべく、その運航時間帯の変更等を企画中であります。
右協定実現をみない現
段階において、更にかようなことを許可されることになれば、三部落二千の住民の危機感は倍加するものと憂慮するところであり、かような企画は道義的にも著しく欠くる処があり、また運輸御当局の権威回復どころか、むしろ
一般の不信を招くこと必至であると確信いたします。
何卒大臣におかれては、宇部空港の現状が如何なる時点におかれているかを御賢察下さいまして、空港の運航等については、右協定が実現後におとり上げ願い度く、また協定実現方についても県当局に対し格別の御指導ないし御勧告を賜りますよう重ねて陳情申し上げる次第であります。
以上が、先ほど言いましたように十二月の十日付で当局に提出されておると思います。いまは参考のために読み上げただけであります。
それで、四十一年七月の一日に、いわゆる空港開設に至るまでに、
施設の変更の許可が三度にわたって行なわれているのでありますが、その中で一番問題になるのは、いまもありましたように、滑走路の方位と飛行場の標高のミス、それに基づく変更であると思うのであります。
昭和三十八年、山口県知事から申請があってこれを許可した方位は北五十五度、標高は五メートルであったのでありますが、いわゆる地元住民の意向を十分にくみ入れたために北五十七度に、いわゆる二度振りかえたのであります。その理由は、言うまでもなく二度振りかえれば住宅地の上空を避ける離着陸コースになるからであります。これは非常に民主的に地元の意見を取り入れたということで、これはたいへんけっこうなことであります。それに基づいて申請がされて、変更されて許可されたのでありますが、その時期が四十年の四月であります。住民はこれによって非常に安心感を覚えるし、これでまあま
あということで、解決はされたものと見ておったのであります。
ところが、どうかということでありますが、
工事が進むにつれまして、どうもこの協定のように五十七度の
方向で滑走路がこしらえられておらぬような気がする、おかしいということが地元民ではささやかれておった。しかし、
工事進捗中でありますので、どうすることもできませんので、終わってから検査しよう。
——検査はもちろん県当局がやるのでありますが、検査してみたところが、滑走路の方位は北五十四度四十六分、標高が二メートル八十六になっていることが、機械で出すのですから、はっきりしてきたのです。このことは、言いかえれば、住民と県当局で話し合って、了解して、住宅街の上空を避けるという、これが完全に踏みにじられて、飛行機の離着陸が、いま言いましたように住民の住宅の上を通って、いわゆる生活の安全を脅かす、重大な問題になってきたのであります。
もちろん、検査の結果知事はたいへん驚いたことであろうと私は思う。このままでは、四十一年七月一日から開港することはできなくなる。だから、どうしても告示を変更しなければならぬということになってくるのです。そのためには、先ほど言いましたように、住民との懇談会、そういう意見を聞くといういきさつもそれまでいろいろございましたので、地元と十分話し合いをして、その上に立って告示を変更しなければならぬ。さらに、そのことができぬ限りにおいては空港の認可すらも得られない、そういう立場に当時あったと思う。ですから、県当局が必死になって地元の住民と、先ほど言いましたように接触を開始した。そして、いろいろその内容はありますけれ
ども、宇部空港に関する協定並びに了解事項を県知事と空港対策
委員会の正副
委員長あるいは部落会長の名でその間における公文書が取りかわされ、そして妥結した。そういういきさつであります。その申請に基づいてまた三たび滑走路の方位の変更、標高の変更というものがなされた、そして七月一日にはいろいろ問題はありましたけれ
ども、宇部市民あるいは山口県民の祝福を受けて開港された、こういうことになっておるのであります。
それで、先ほどの地元民の陳情書にもありましたように、その
人たちの気持ちは、空港のできることはきわめて大賛成でありますし、いささかもその間にイデオロギー、政治色というものは
一つも介入されておりません、純粋な立場であったのであります。あくまでこれは実のある社会生活の環境の安定を要望するというところから出発しておるのでありまして、協定の内容そのものは、私
どもから見れば、これは明らかに政治色を帯びたような、ごまかすような内容のものであると思われておっても、彼らは、先ほど言いましたように、ひたすら純粋な立場から、そして当局を信頼して
——そのことは政治を信頼するということになるのでありますが、誠実に努力してきた、こういうことであります。
ところが、今日まで地域住民と約束いたしましたその事項が、特に方位の変更と標高の問題、この措置が解決の
方向をたどっていない。このことに強い不満を地元住民は持っておって、そしてこれはあたりまえのことでありますけれ
ども、約束どおり履行せい、こういう運動がいま展開されておるのであります。いろいろな方法でその運動というものは進められておりますが、私
ども一番心配するのは、これをこのまま放置しておりますと、形式的には地元と県との間の紛争でありますけれ
ども、それはやがて政治に対する不信へと発展していって、弱い者は強い者にいじめられどうし、どうにもならぬ、こういう問題から、いわゆる社会道義の上からも許せないことになってくるのではないか。そしてそれがさらに大きくなれば、先ほど言いましたように社会問題、政治問題へも発展していく、こういうおそれを私は持つわけであります。
この際私は初めに申し上げましたとおりに、
関係当局者に率直に質問いたしますから、当局もひとつ前向きの姿勢で答弁をしていただいて、解決のきざしあるいはめどが一日も早くつきますように、努力していただくようにお願いいたしたいと思います。これはきわめて前段における経緯が長くなりましたけれ
ども、これを言っておきませんと
あとの質問に差しつかえがありますので申し上げます。
質問は、飛行場の地盤だとか標高を定める基準や方位を決定する場合の要件というものは、その他いろいろありましょうけれ
ども、これは主として航空機の安全を守る立場からきめられていくものか、それとも地域住民の生命財産を守り、大きな迷惑をかけないようにするという立場、そういうことを中心にやるのかどうかということであります。私の知るところでは、
運輸省航空局の規定は、やはり前者にあるような気がいたすのです。しかし私は、この二つの要件というものは、いずれも
一つの問題として
考え取り扱われなければならぬと思うのです。それは言うまでもなく、どっちにしてもこれは人命に関する問題であるからであります。一度
事故が起これば上も下もないということでして、人命財産を失って社会の環境を破壊することでありますから、飛行場設置にあたっては、それがたとえ三種あるいは二種以上の飛行場であろうがなかろうが、国として厳格な規定のもとに監視監督して、いささかも不安をすべての者に与えないようにすべきではないかというように
考えるのです。
関係当局も知っていらっしゃいますが、宇部の場合は大きなミスが起きておるのです。三回も変えていくというのは大きなミスです。しかも地元住民と約束した方位の問題、上空を通らないという約束をしておきながら、上空を通るようになった。そういう方位に
工事が完了しておるということは、航空当局の定めておるやり方
——制度とは言いませんが、やり方が、三種は地元にまかせる、こういうことなんです。ただ図面によっていろいろ審査し、
調査して許可を与える、こういうやり方そのものが、ルーズな地元のそういう
工事のやり方を放任しておるということなんです。航空行政全般にわたってそれを見た場合には、それが先ほど言いましたように、どんな種類の空港であろうとも、大事にしなければならぬと思うのです。そういう立場から、今日とられておる航空当局のそういうやり方は、これは航空全般の立場から見てどうもよろしくないと私は思いますが、その点についてまず一応御質問したいと思います。