○荒木国務大臣 御指摘になりましたような、一言にしていえば、不法事案が山のごとくあります。それが的確に
警察の職責を果たしていないがごとき結果も幾多あることを否定いたしません。
原則的には、
警察法その他を引用してお示しいただいたような、国民の生活を守る、平和な生活を守る、国民のために奉仕する
警察機能を地でいきますれば、事細大となく、ここに不法行為があるならば、なるべくすみやかにこれを予防し、排除するということが当然の責務であるということは、万々心得ております。末端の
警察官といえ
ども、すべてそういう考えは透徹した考えを持っておると信じております。それにもかかわらず、特に大学の
紛争をめぐりましては、必ずしも不法行為がそのつど的確に排除されないままであるという点を遺憾に存じますが、その現象だけからかりに言うとしますれば、
警察は怠慢じゃないかと国民からおしかりを受けてもしかたがないという現象のあることも、私は認めます。ただ、いささか弁解じみた気持ちも含めて申し上げさしていただけば、元来、特に国立大学について申し上げれば、私の承知するところでは、刑事訴訟法上、職務に関し公務員が不法行為があると認めた場合には、これを告発しなければならぬという義務を課しておる。それにもかかわらず、たとえば
安田講堂あるいは法学部の第何教室なんというものが不法占拠されたということがありましても、
東大八千数百人の教職員がありながら、だれ一人としてこれを告発する者がいないという非協力態度あるいは義務違反。公務員として義務違反であるということすらもが、もうあたりまえのごとく横行しておるところにも、
警察として行動しにくい根本の要因があると思うのであります。うろ覚えの法律論で申しわけありませんが、
安田講堂その他の不法占拠をとってみましても、器物毀棄罪というのは親告罪だと承知いたしております。
安田講堂を不法占拠したということは親告罪じゃございませんけれ
ども、その不法事案があること、そのことを、昼となく夜となく
警察官がパトロールするわけにも実際上まいりませんので、確認できない。本来の大学機能を阻害しておるそういう不法行為があったならば、まずもって大学当局がその不法状態を排除する、ぼやのうちに消しとめるという気持ちで、そのつど
警察主局に
連絡しながらそれを排除するということをしてもらったりせば、講堂なんかも、長い期間にわたって、見るに見かねるようなむちゃな状態は排除し得たはずであります。一月十八日、十九日の
安田講堂その他のバリケードの排除その他にいたしましても、いま申し上げるようなことがそのつど行なわれており、大学当局の責任を果たす形での
警察に対する協力があったりせば、あんなばか騒ぎをしなくても済んだはず、かように理解するわけであります。
さらにまた、
学生自治会の美名に隠れましての一種の政治集団的な、しかも暴力を伴った集団暴力団的なあのありさまは、およそ大学にあるまじき姿であると同時に、そのこと自体、ゲバ棒を持ってなぐり合いをする、あるいはしそうである、ガソリンだのその他の危険物までも運び込んでおるということも、
警察は座視することを許されない課題であるとむろん思いますけれ
ども、ただ実際問題といたしますと、妙な表現でおそれ入りましたが、いつかも申し上げましたように、
警察アレルギーとかいうものが大学当局にもあり、職員にもあり、
学生にもあるというのが通り相場みたいになっておりますが、大学当局からの求めがなくても、そこに不法事案があるときは、令状を持ち、現行犯があることが確認されるならば令状なしにでも、出動すべき責任があることも当然でございますけれ
ども、さりとて、ただ大学当局と無
関係にいきなり参りますれば、大学当局をはじめ
学生諸君も協力しようとしない、
警察アレルギーのゆえに。あえて公訴維持だけを念頭に置いて行動するわけでもないと存じますけれ
ども、効果があがらなければいわばむだになる。いわんやそれがエスカレートして、法の命ずるままに出かけました結果がアレルギー症が暴発して、妙なたとえでございますが、いかな名薬といえ
ども注射といえ
ども、アレルギー症の人に注射すればとん死するという例もあると似たような、思いも寄らないエスカレートした騒ぎを誘発するおそれもございます。さようなことで、国民一般からごらんになって、あんなに騒ぎが新聞にも出るような状態なのに、
警察は一体何をしているのだというふうなおしかりにつながる手紙をもらったり、はがきもらったり、私もいたしておりますけれ
ども、そういうふうな内情も率直に申し上げて、御理解を賜わりたいと思うわけでありますが、これを要するに、御指摘のような
警察の責任を国民のために果たすということは、今後といえ
ども、当然のこととして責務を果たしていきたい、かように思っております。