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1969-02-25 第61回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十五日(火曜日)    午前十時二分開議  出席分科員    主査 臼井 莊一君       川崎 秀二君    田中伊三次君       橋本龍太郎君    中澤 茂一君       中谷 鉄也君    長谷川正三君       畑   和君    山中 吾郎君       小平  忠君    兼務 安宅 常彦君 兼務 井上  泉君    兼務 島本 虎三君 兼務 米田 東吾君    兼務 岡沢 完治君 兼務 沖本 泰幸君    兼務 松本 忠助君  出席国務大臣         法 務 大 臣 西郷吉之助君  出席政府委員         内閣官房副長官 木村 俊夫君         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         警察庁刑事局長 内海  倫君         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務大臣官房会         計課長     安原 美穂君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省保護局長 鹽野 宜慶君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         法務省入国管理         局長      中川  進君         厚生省援護局長 実本 博次君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      金光 邦夫君         文部省初等中等         教育局中学校教         育課長     奥田 真丈君         通商産業省重工         業局自動車課長 田中 芳秋君         労働省労働基準         局監督課長   細野  正君         労働省婦人少年         局年少労働課長 山口 政治君         最高裁判所事務         総局家庭局長  外山 四郎君     ————————————— 二月二十五日  分科員畑和委員辞任につき、その補欠として  長谷川正三君が委員長指名分科員に選任さ  れた。 同日  分科員長谷川正三委員辞任につき、その補欠  として中谷鉄也君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員中谷鉄也委員辞任につき、その補欠と  して畑和君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  第二分科員井上泉君、岡沢完治君、第三分科員  安宅常彦君、島本虎三君、米田東吾君、沖本泰  幸君及び第五分科員松本忠助君が本分科兼務と  なった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算法務省所管      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十四年度一般会計予算中、法務省所管予算を議題とし、質疑に入ります。  質疑通告がありますので、順次これを許します。畑和君。
  3. 畑和

    畑分科員 私は時間を非常に早くやる関係で、協力するために、本来一時間の持ち時間があるのでありますけれども、三十分で切り上げたいと思います。したがいまして、質問通告などにはもっとよけいに出してあるのでありますけれども、はしょって、ほんとの一部だけについての質問になるかもわかりません。以下、法務省当局のほうに質問いたしたい。  御承知のように、法制審議会で、いまいろいろ日本刑法全面改正を企図いたしまして、何回か続けて法制審議会あるいはその部会等が開かれておりますが、特にその中の刑事法特別部会において、最近において新しく特徴的な、いままでと変わった考え方、こういった法文を入れたいとか、何らかそういった新しい傾向について議論がなされたと思うのです。その点について刑事局長に、特徴的な点をまず最初に簡単にお聞きいたしたい。
  4. 川井英良

    川井政府委員 いろいろございますが、一番特徴的な点といたしましては、近代的な問題として、たとえば公害罪に関するものでありますとか、ただいま御指摘のありましたと思いますが、企業スパイに関する犯罪でありますとか、あるいは騒乱罪予備罪と申しましょうか、刑法では騒動罪というふうに今度の改正規定しておりますが、騒動予備罪新設でありますとか、あるいはまた一般的な問題といたしましては、保安処分というような制度を新しく導入したいというようなところが最も特徴的な点でございます。
  5. 畑和

    畑分科員 その中でおもな問題の点は、いま述べられました企業関係秘密を守るための産業スパイ罪とでも申しましょうか、この罪に関する問題、それから公害罪、いままでは飲料水に対する関係の罪だけしがなかったようでありますが、それが最近のこうした公害の蔓延というようなことから、公害に対する罪をもっと、飲料水以外に大気その他の公害、そうした公害の新しい罪を設けようということのようであります。この点と、騒乱罪予備罪、これの新設企図等が、このうち最も重要視される案件のようでございます。  そこで私は、とりあえず産業スパイ罪新設の問題について私の意見を申し上げ、またさらに法務当局のほうの意見等もお聞きいたしたい、かように思っております。産業スパイ罪新設をされるようになった背景と申すか、それはどういうところにあるか、承りたい。
  6. 川井英良

    川井政府委員 御承知のことと思いますが、法制審議会刑事法特別部会目下審議中でございますので、法制審議会でこれが確定いたしますと、法務大臣に対してあらためて答申があるわけでございます。答申を受けまして、私ども政府立場においてその内容を検討いたしまして、国会に提案するかどうかを意思決定する、こういうような段階になっております。今日はその法制審議会刑事法特別部会段階でございますので、その辺のところを一応御了解賜わりたいと思います。  そこで、刑事法特別部会企業スパイ罪が必要だ、こういうふうに考えましたのはいろいろ理由がございますけれども、まず第一に、最近いわゆるノーハウと申しましょうか、技術秘密についての、不当な方法でもってそれを利欲を目的として悪用するというふうな事例が、最近に至りまして顕著な事例が数例出ております。そういうふうなものを告訴なんかを受けまして調べましても、現行法刑罰規定ではなかなかとらえにくいというようなことが一つ理由になっておりまするし、また近代的な産業国家におきましては、どこの国におきましてもこの種の秘密保護するというふうな規定を持っておりまして、そのことが企業の公正な競争をより育成していくというようなことで、多くの先進諸国におきましてこの研究が、刑法の分野からの研究が進められておるというようなこと、それからさらにノーハウについての民事的な研究がかなり進んでおりますが、それらの研究者が、刑事的な面においてわが国においてこれを規制するような法律がつくられていないのは、これは不備ではなかろうかというような指摘も一方においてあるわけでございますので、それらの実際的な必要の面と理論的な要請とを一応かみ合わせまして、刑事法特別部会におきましては企業秘密をきびしく要件を制限した範囲内においてこれを認めることが適当ではないかというようなことが、この立法理由のおもなる要点でございます。
  7. 畑和

    畑分科員 この問題については、その背景として最近何件かのこうした企業秘密に関する問題が、刑事問題あるいは民事問題等がございました。その顕著な例は、もう二、三年前だと思いますけれども、御承知の凸版印刷と大日本印刷の関係のやはり企業機密に関する事件、この件には私もちょうどその中の被告の一人の弁護をやった関係もありまして若干承知いたしておりますが、この問題については、もちろん企業秘密を守るスパイ罪がまだきまっておるわけではありませんから、在来の刑法を適用して、窃盗罪とかあるいは場合によったらそれに関連してテレンチェフ関係では恐喝というような関係起訴されておるようです。それから最近になっては東洋レーヨン日本レイヨンとの間のやはり企業スパイというかそういった事件、これは業務上横領その他で、あるいは臓物故買罪等起訴になって裁判になっておるようです。そうした実際の必要というか、企業側要請というか、そういうことが法制審議会刑事法特別部会で問題になった背景だと思うのであります。また同時に、国際的にも諸外国においてもこういう企業秘密を守るというような傾向があることはあります。しかし、私も調べてみましたけれども、ずいぶん先進国でも、規定が全然ないところもございまして、まちまちだというふうに私は思うのですが、結局、しかし将来の傾向としては、資本要請というか企業要請というものがございますので、こうした企業秘密を守るというようなことで、そうした立法化が行なわれる傾向にあることは、否定することはできないと思います。  ただしかし、この問題が刑事法特別部会を通った。そして全体会議でこれが承知をされた。いずれは答申として、政府のほうに、法務省のほうに答申が出るんだと思いますけれども、それによって次に原案が作成されるという段階に進むと思います。しかし、その段階におきましては、よほど慎重を期してやってもらいたいということが私の結論であります。  この問題は、いろいろ関連する問題を生んでおります。御承知のように、企業秘密ということになりますると、なかなか際限がないと思います。何でもかんでも企業生産技術上の秘密ということになるおそれがある。そういうことになりますると、いま現在、御承知のように特許法というのがきめられてありまして、特許を受けたものは特別に保護される。そしてそれに料金を払って、その技術一つ自分のものにして使うことができるという制度でありますが、ノーハウの問題は、その特許に至る前の技術でありまして、最近は特に、特許をとっても、特許が、出願をしてから許可がおりるまでの間が非常に時間がかかる。こういうことが一つの障害にもなっておりまして、むしろ特許をとらずに別に、いわゆるノーハウ段階でこれを保護してもらおうというのが私は企業要請だと思う。そういう関係からも、むしろ特許でなくて、その前に、特許と同じようなものであるけれども、特許をとるとめんどうくさいから、そしてノーハウ段階でそれを保護してもらおうという企業要請だと思うのでありますが、本来ならもっと特許制度を、出願から特許に至るまでの期間を早めてもらうということが第一に必要だと思う。そういうことが必要である。  同時にまた、私の考えといたしましては、こうしたノーハウ等企業秘密保護するのあまり、かえって、結局技術というものが停滞をするおそれがあるのではないか。その技術自分独占的に使う。しかも特許まで至らないで、しかも独占的に使いたい。そのために企業秘密を守ってもらいたい。こういう企業要請からいたしますると、逆に技術進歩がおくれる、かように思うのです。技術というものは、これは私すべきものでは本来ないのでありまして、特にそれまでの技術に達したその努力に対しては買ってやらなければならぬ。そのために特許出願して、正式に特許を得て、それに対して、特許を使おうとすれば金を払う、こういう制度、これが本来であると思うのです。その特許制度のいまの欠陥というか、それを補おうというところにも、私は、このノーハウ関係企業秘密保護要請というものが生まれてくると思うのであります。そうなると、先ほど言ったように、かえって技術進歩を阻害するのではないかということが私の心配の第一点であります。  それから第二点といたしましては、結局これが軍事機密等保護立法関連を持ってくるおそれが多分にあるということであります。  最近、御承知のように、兵器産業は盛んでありまして、その兵器産業の中で、外国の、アメリカ等機密的なものも入ってくる。F4Eファントム問題等においても同様であります。この間来、この予算委員会でだいぶ問題になっておりましたけれども、そうした秘密の問題、そうするとどうしてもそうした企業秘密というものがやはり保護されなければならぬということになって、兵器産業保護される。そうするとこれが防衛産業防衛機密国家機密というようなことになって、日本がいまの平和憲法で、従来の行き方と違った行き方をしておるはずの日本において、また再び旧来のような暗い影がさしてまいる徴候がこの辺から出てくるおそれがある。かような観点で、一つは、そうした機密保護立法との関連が出てくる。立法しないでも、事実上それがそういった関係で、企業秘密だということで、それが規制されるであろうし、またさらにそれがエスカレートして、機密保護立法をする必要があるというふうになってまいるのではないふという心配一つあります。この点は私ばかりの心配ではございません。報道関係等におきましても、社説等でこの辺を心配いたしております。  また同時に、次の心配一つある。それというのは、基本的な人権を侵害するおそれがあるのではないかという事実であります。あるところにつとめておった技術者が、その次に今度は引き抜かれて次の別の企業につとめるようになるといった場合に、前の会社におった当時の機密というか、企業機密というものを侵害したということになる可能性が非常に多いのであります。この法律案準備草案というか、その案によりますると、特別にそういった約束をした義務を持った者だけが、退職後は規制されるようになっておるようでありますけれども、しかし概して入社をするとそのときに、もういつでも退社しても義務を負うというように、入社当時に判こを押させられるのが普通であります。たとえば結婚をしたら会社をやめますといったような誓約書を取る会社が、ずいぶん女子なんかにも多いようであります。そういう弱いときに、弱い人に対して包括的にそういった契約をしてしまう。こういう場合も相当多いのでありまして、そういうことになると、安い給料で優秀な技術者をその企業独占をする、こういうような傾向になるわけです。したがって、人権を侵害することになる。  また同時に、一方では知る権利もみんなあるはずでありまして、ただ企業秘密は守るということにきゅうきゅうたるあまり、わきのほうからの知る権利というものを侵害するおそれもあるのではないか。また表現の自由を侵害する危険性多分にある。かようなことが私の第二のというか、第三のというか、心配でございます。  それからもう一つ問題は、ちょうどこの間偶然朝日ジャーナルを読んでみましたところが、この朝日ジャーナルの中に、なかなかいい観点での批判がございました。武谷三男さんという立教大学の教授でございますが、「産業スパイ罪危険性」ということで、公害観点から、公害究明に対して、企業産業スパイ罪防壁として使うおそれがないか。こういう問題で、これはなかなかいい観点でとらえてあると私は思ったのであります。結局、御承知のように、最近いろいろ公害の問題が起こっております。この本にも出ておりますけれども、三井ポリケミカル千葉工場でのコンプレッサー室付近での火災の場合に、企業機密があるからというので、せっかく消防が行っても門の前でとめられちゃって消防活動ができなかった。一体どうなっているのかさっぱりわからない。これは結局アメリカデュポン社の系統の関係であるからというので信頼しておったけれども、しかし、通産省関係でもそういった内容などさっぱりわからぬという、こういうことだったということもありまするし、また例に述べてありますが、例の水俣病水銀中毒関係での熊本大学の医学部の熱心な教授のこれを追及していったときの経過におけるやはり企業側のそれの妨害ですか、そういう点もあったようだ。  また、さらに第二の水俣病であるといわれている阿賀野川の水銀中毒事件の際の昭電の鹿瀬工場調査団との間もそういった問題があったようであります。そういった問題は、結局企業秘密ということでいつも公害関係究明がそれによって妨げられておる、こういうことでありまして、結局こうした企業は、大気あるいは水等を自由に自分独占して使っていままできた。それによって公害をまき散らして今日まできたわけでありまして、さらにこれが産業スパイ罪新設をされると、そのことによって企業秘密を守るんだということが前面に出てまいりますると、その企業秘密を守るのあまり、その企業がまき散らす公害関係究明がそれによって妨げられる、それが防壁になるというような危険性をこの著述では述べておるわけでありますが、これも非常に私は新しい一つ観点だと思うのであります。こうした一つ最後心配があるわけであります。  この件に対して三つ、四つ私が申し述べましたけれども、この点に対しての法務省当局の御見解をひとつ承りたいのであります。刑事局長最初にお伺いし、それから大臣にも最終的な見解が聞きたい。  結局私は、企業要請資本要請にこたえるのあまり人権を侵害してはならぬし、また国家機密保護というようなことにつながってもいかぬし、また同時に、公害究明という点に妨げになってはいかぬ、そういう点を十分考えなしには、企業要請だけで動くということは非常に危険だ、こういう点が要するに私の考え方であります。これに対する御意見を承りたい。
  8. 川井英良

    川井政府委員 確かにこのいわゆる企業スパイ罪と申しますのは、その必要性十分理解ができるわけでございますが、その規定のしかたないしはその運用のいかんによりましては、ただいまこまかく御指摘がございましたように数々の問題点がございます。法制審議会におきましても、ただいま御指摘になりましたようなそれぞれの問題点につきまして、かなり突っ込んだ議論が一応なされております。  たとえば三番目に御指摘になりました退職者の問題でございますけれども、これも確かに職業の自由との関係におきましても大きな問題を含んでおると思います。ただ、いままで一応の解釈といたしましては、現在の法制のもとにおきましても、雇用契約に基づいて企業の中の一員となった者は、その雇用契約に基づいて勤務している過程において知り得た企業秘密につきましては守秘義務と申しましょうか、秘密を守る義務というものは現行法のもとにおいても一応課せられているんではなかろうか、こういうふうに考えられておりますが、それにしましても退職した後においてはいかがなものだろうかということになりますので、今度考えられました案におきましては、御承知のように、先ほど冒頭に御指摘がございましたが、法律上、特に退職後においても秘密を守るということを約束をしたというふうな場合に限って退職者については秘密を漏らしちゃいけない義務があるんだというようなところで、でき得る限り構成要件をしぼりまして、御心配になるような点についてはでき得る限りそういうふうな問題点を避けていくというふうな努力がなされております。  それからまた軍事秘密につながるのではなかろうかというふうな点につきましても、全くいろんな御心配があるとおりでございますが、これにつきましてもこの法律そのものがそういうふうなものを特に目的としたものではございませんで、もっぱら企業の公正な競争の育成というところに主眼が置かれておりますので、そういうふうな観点からでき得る限りまた構成要件立言のしかたに留意をするというようなところでもって、そういうふうな特別な秘密を特に保護していくというようなことにこの法律が使われないように、一応いろいろな面からの研究がなされているわけでございます。  それから、さらにまた公害の問題でございますけれども、正当な理由がなくて漏らしてはいけないと、こういうふうに特に規定してございますので、ただいま犯罪になりまして、たとえば公害犯罪のために検証に行くとか、あるいは今度考えられております公害対策基本法に基づいての公害防止のいろいろな法律ができておりますが、それで立ち入り検査をするというふうな場合におきましては、これは正当な理由に基づいての調査あるいは捜査でございますので、企業の側におきましては当然これに応ずる法的な義務が出てまいりますので、一応そういうふうな場合におきましては、この法律は真正面からはその妨害にならないように、一応の手当ては考えているわけでございます。  また、企業進歩妨害するのではないかという最初の御指摘でございますけれども、これは確かに企業進歩をむしろ育成するために考えられた法律でございますけれども、規定のしかたによりましてはまた逆に作用することも考えられますので、これらの点につきましては、同じことでございますが、その立言方法とかあるいはその解釈とかというふうな面におきましても、かなりまたいろいろな面から検討がなされております。  要するに、いろいろ御指摘になりました点につきましては、答申を受けました際に、政府といたしまして十分ただいま御指摘の点を立法の面に反映をいたしまして、問題点を十分に解明をした上で立法に持ち込むかどうかということを慎重に考えたい、こういうふうに思っております。
  9. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 ただいま刑事局長から詳細にお答え申し上げましたが、法務当局といたしまして法制審議会最終答申を得ました場合でも、ただいま非常な貴重な御示唆を拝聴いたしましたので、十分それらを頭に置きまして善処してまいりたいと存じます。
  10. 畑和

    畑分科員 答申が出た段階においてひとつ十分に検討するというお答えでございました。企業要請というか資本要請というものはなかなか巧妙にしかも強いものでありますから、よほどこの点をつばつけてよく検討せぬと引っかかるおそれがある。一般国民が迷惑するような企業秘密保護刑事立法は非常に危険だと思います。現にきのうも、富士や八幡の合併の問題で、だいぶ合併を前提とするような事前審査等が行なわれて、結局合併ができそうなような模様で、ああして企業あるいは独占資本といったものの要請は非常に巧妙にしかも強いのでありますから、それを保護する関係にある政府としては、逆に国民立場ということも十分にひとつ重点を置いて今後ともやってもらいたいと思います。  それからもう一つ最後にちょっと簡単にお聞きします。この間の新宿の騒乱罪関係でありますが、あの関係起訴になった者は類別にして何名か。首魁あるいは率先助勢指揮あるいは付和随行ですか、そういった区別にしてひとつ人数を簡単に報告してください。
  11. 川井英良

    川井政府委員 騒擾罪で検察庁が受理しましたのが四百四十五名でございます。そのうちで、その後取り調べの結果起訴いたしましたのは十八名でございます。そのうちで七名を騒擾指揮起訴いたしております。それから十一名を率先助勢起訴いたしております。それから家庭裁判所に二名送致いたしております。残り四百二十五名につきましては処分留保のまま捜査中でございます。
  12. 畑和

    畑分科員 いまの数字が示すように相当大人数の逮捕はしたのでありますけれども、もっとも公判維持その他もいろいろ考えての起訴だと思いますけれども、結局そのうちわずかに十八名という数字、しかもその中で首魁は一人もいない。指揮が七名で、十一名が率先助勢、合計で十八名。それ以外はおそらく付和随行というような関係起訴猶予その他の処分になるのだと思いますけれども、この点がいままでの騒擾罪内容と非常に違っておる。もっとも、ああした場合においての例の三派全学連関係の学生の関係であるということもあろうと思いますが、この点、いままでの騒擾罪と非常に変わっておるというふうに私は思うのであります。したがって大山鳴動してたいしたものは出なかったということになるかと思います。  それから、あと騒乱予備罪等の問題に触れたいと思いましたけれども、時間に協力する関係がございますので、以上だけで質問を打ち切りたいと思います。
  13. 臼井莊一

  14. 米田東吾

    米田分科員 私は、朝鮮民主主義人民共和国に対する帰還の問題につきまして御質問をしたいと思うわけであります。  戦後の日本の外交政策の中で評価されるものがあるとすれば、民族の平和的移動として世界的に評価されました、在日朝鮮公民の祖国北朝鮮への帰還の問題ではないか。約八万九千、八年間にわたって、この事業が人道と正義の名のもとに平和的に進められたわけであります。これは私は世界的に高く評価をされておると思うわけでありますが、これが打ち切られましてすでにもう一年以上経過しておるわけであります。聞くところによりますと、これは新聞の報道によって私は承知したわけでありますけれども、政府は、木村官房副長官の記者会見によりまして、近く引き続きこの帰還の道を開く、そういう措置を日赤に指示をした、こういう報道が、これは木村官房副長官の記者会見という名目で発表されたというふうに聞いておるわけでありますが、この事実につきましてお聞きいたしますとともに、その内容は一部新聞に報道されておりますけれども、副長官からその内容についてあらためてここに説明をしていただきたいと私は思います。
  15. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 この問題に関しましては、法務大臣からお答えするほうが適当かとも存じます。いまお尋ねの点で私が記者会見で申し述べました範囲のことについてお答えしたいと思います。  御承知のとおり北鮮帰還問題、コロンボ会談以後の経過についてはもう米田委員も御承知のとおりでございますが、諸般の事情でたいへんおくれておりますが、コロンボ会談決裂後におきまして国際赤十字を介しまして、また日赤、北鮮赤十字間で電報による交渉も続いておりまして、ようやく最近に至りまして北朝鮮と日赤との話が煮詰まってまいりました。もちろんこれは会談によるものではございません。電報の往復によるものでございますが、その内容といたしまして、最終的の詰めとして残った点が一点ございます。それは暫定期間終了後における北鮮からの配船に乗船してまいります北鮮の代表の入国手続の問題でございます。この入国手続につきまして、未承認国の北鮮代表に対しまして、渡航証明書を非常に簡略して交付をしてほしいというような北鮮赤十字側の希望、これが最後に残った一点でございます。その点につきまして政府部内でいろいろ協議をいたしました結果、一案がまとまりまして、それについてただいま日赤からその仲介に立った国際赤十字に対して照会中というのが現状でございます。
  16. 米田東吾

    米田分科員 たいへんこの問題につきましては官房副長官並びに関係法務省あるいは外務省等でいろいろ御努力をされておることにつきまして、私は非常に敬意を表したいと思います。  そこでいまお話がありましたが、新聞の報道によりますと、だいぶもう少しこまかくしておるようであります。要点はいまお答えになりました朝鮮赤十字の代表に対する渡航証明書の交付の問題、要するにこの交付の手続の問題、こういうふうに聞いておるわけでありますけれども、これが新聞報道によりますと、あるいはいまのお答えでもそうであったようでございますが、国際赤十字を通す、こういうことのようでございます。これはどういうことでございましょうか。たとえばコロンボ会議でこの部分についての合意の関係については、日本政府は手続についての簡素化と妥当な方法をひとつ検討しましょう、こういうふうになっておるようであります。その限りにおきましては国際赤十字という名前は出ておらないわけであります。簡素化、妥当な方法という中で考えられるということになれば、これは話がまたわかりますけれども、いずれにしても国際赤十字機関を通すということは考えられておらなかったようであります。さらに従来木村副長官のお考えの中には、とにかくこの入国の問題につきましてはできるだけ簡素化して、たとえば寄港地新潟でビザを渡してもいいじゃないか、こういうような趣旨の見解も示されておるように聞いておるわけであります。そういう面と比較いたしますと、いま国際赤十字を通してという関係についてはだいぶ後退しておるように思いますけれども、これはどうでございましょう。
  17. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 これはもう御高承のとおり、通常の場合であれば当然、渡航証明をもらうべき本人が、たとえばナホトカとかモスクワのわがほうの総領事館に出頭いたしまして、その上でビザを発行するというのが、これが通常の方法でございます。しかしながら、その本人の出頭を要せずして渡航証明書を渡すというところに、この簡素化の意味があると思います。そういう意味におきましては、ただいま申し上げましたとおり、国際赤十字を介するということが、私は、決して簡素化に反するものではない、こういう考え方でおります。
  18. 米田東吾

    米田分科員 幸いに、国際赤十字に受け入れられれば、また一つ方法として考えられると思いますけれども、これも新聞報道でありますが、朝赤代表団の身分証明について、国際赤十字に頼まれた、しかし、それは断わられた、こういうような報道も新聞ではなされておるわけであります。おそらくそうじゃなかったかと思うのでありますが、要するに、そのことは、この種の問題について国際赤十字が介入することはよろしくない、朝鮮民主主義人民共和国という固有の独立国の赤十字会に対して、国際赤十字が証明するとかあるいは介入するということはよろしくない、これは国際慣習としても、そういうことはよろしくないという配慮から断わったのではないかと、私は思うのでありますけれども、その後に出てきたのが、いま説明があったように、渡航証明書、しかもこれは国際赤十字を通してという、いまのお話でございますけれども、こういうことは、見通しとしてはどうでありますか。いままだ照会中だということでありますけれども、断わってきた経緯にかんがみまして、またこの種の内容から考えまして、見通しとしては、おそらく再度断わられるという、そういう見通しが強いのじゃないかと思いますが、この見通しはどうでございますか。
  19. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 国際赤十字が断わってまいりましたのは、いま御質問のような趣旨で断わったわけではございません。こちらから出しました案は、国際赤十字としては、少なくとも、無国籍者に対するような取りはからいの旅行文書、そういうものを発行するという意味に受け取っておりまますので、そういうことになれば、北鮮の赤十字は決して無国籍者ではもちろんございません。完全な独立した赤十字社でございます。そういう意味におきまして、そういう完全な国際赤十字に入っておる構成員である北鮮赤十字に対して、無国籍と同じような扱いはできないという意味で断わってきた、こういうふうに私は承っております。そういう意味におきまして、今回の、当方から提案いたします趣旨は、むしろ国際赤十字社の出してまいりました代案の趣旨を取り入れたような方式でございますので、当然、国際赤十字において、これに対して同意の返事があるものと期待しております。
  20. 米田東吾

    米田分科員 報道によりますと、いまの御答弁の趣旨で、国際赤十字に照会されたのが二月の二十日です。本日はもうすでに二十五日でございます。まだ返事がないということでございますが、重ねて聞きますけれども、見通しはいかがでございますか。
  21. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 こういう文書の往復でございますし、また国際赤十字自身のいろいろ判断も、考え方もあろうと思います。しかしながら、私は、そう遠くない、近日中に国際赤十字から返事があるものと、こう考えております。
  22. 米田東吾

    米田分科員 なお、もう一点。いまの説明によりますと、電報であるけれども、朝鮮赤十字会とも、この種のことについては折衝している、交渉している。要するに、渡航証明書を国際赤十字を通して、という関係については、それとなく朝鮮赤十字に、電報であろうとも、一応接触をして、交渉しているというお話でございますが、それは間違いありませんか。
  23. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 いままで私が申し上げましたことも、これは赤十字でやるべきことでございます。政府といたしましても、間接にもちろん責任がございますので、お答えしたのであります。  なお、詳細は、赤十字等でまたお答えする機会があると思います。
  24. 米田東吾

    米田分科員 きょうは赤十字は呼んでおらないわけでございますので、それで官房副長官にお伺いするのであります。  確かに、この窓口は日赤だと思いますけれども、やはり、相手の当事者である朝鮮赤十字会と、この種の政府考え方については事前に連絡をとって、了解を得ておる。これは新聞にもそういうふうに出ておるわけであります。そういう見通しだ、了解を得ておるのだから、妥結の見通しだ、ということも副長官は言われておるわけであります。そういうことが事実だとすれば、私は、けっこうだと思うのでありますから、そこで念を押しているのでありますが、これは、副長官も、日赤については十分いろいろ連絡をとっておられるわけでありますから、確認はしておられると思いますが、繰り返して、連絡をとっておるわけですね。日赤は朝赤と連絡をとっているわけですね。
  25. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 今回の措置については、日赤として、朝赤との連絡はまだとっていないように承っております。
  26. 米田東吾

    米田分科員 この点につきましては、厚生省の援護局長もおいででございますので、あわせてお聞きしたいのでありますが、いずれにいたしましても、会談を開こう、そして、何とかこの帰還の問題については打開策を講じようということで取り組んでおられるわけでありますから、当然日赤は朝鮮赤十字会と交渉も持たれることになる。したがって、その当事者である相手のほうと——国際赤十字じゃなくて、朝鮮赤十字のほうとある程度の接触はあるのだということであれば、私も、ある程度の見通しが持てると思うのであります。  それで、非常に重要だと思いますので、厚生省の援護局長がおられますから伺いますが、日赤は、朝鮮の赤十字会のほうと、いま政府考えておる手続、方法等については、事前に連絡をしておられるかどうか、接触をしておられるかどうか。援護局長監督でありますから、日赤のほうの状態を聞かせていただきたいと思います。
  27. 実本博次

    ○実本政府委員 いま、日赤と朝鮮赤十字との間で、国際赤十字委員会を介する方法を連絡しているかというお尋ねがございましたが、私が現在まで日赤から聞いておりますところは、そのような連絡はとっておりません。それはやはり、国際赤十字委員会との間の完全な了解に達してからという配慮を、日赤が行なっているからであろうと思われます。
  28. 米田東吾

    米田分科員 法務大臣にお聞きしたいのでありますが、この種の問題は、帰還協定に基づいて八年間継続された段階では問題がなかったわけであります。おそらく、協定の第七条に基づく措置として、政府に入国を認めて、ずっと継続してこられたと思います。これがどうして今度の延長の段階で踏襲されないのか、入管法の関係でどういう支障があるのか、これをひとつお聞かせいただきたいと思う。国際赤十字を通すとか、あるいは渡航証明書を渡すとかいうようなことじゃなしに、当然継続して、そういう手続は継承されてよろしいのでないか、こういうふうに思うのでありますけれども、お聞きしたいと思います。
  29. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 お答えいたしますが、そのストップをいたしましてから以来の経過もございますので、入管局長からちょっと御説明させたいと思います。
  30. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいま御質問の点でございますが、問題になっておりますのは、いわゆる暫定措置が終わりましたあとの事後措置でございまして、暫定措置というものが行なわれる六カ月の間は、ただいま御指摘のカルカッタ協定第七条を援用いたしますから、それによりまして、何ら、ただいま官房副長官がお述べになりましたような特別の措置をとる必要はないわけでございます。ところがこれが過ぎましてから、いわゆる事後措置になりまして、国交のない国の人を入れるということにつきましては、やはり渡航証明書というものを持ってきてもらう必要があるからでございます。
  31. 米田東吾

    米田分科員 それは、いまの入管令の何条の何項に関係するのですか。
  32. 中川進

    ○中川(進)政府委員 入管令の第三条、「(外国人の入国)」「外国人は、有効な旅券又は乗員手帳を所持しなければ本邦に入ってはならない。」こういうことでございます。
  33. 米田東吾

    米田分科員 そうしますと、協定中並びに暫定協定に基づいて、六カ月間の間の入国は、この入管令の関係ではどれに該当するのですか。
  34. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいま申し上げましたカルカッタ協定の第七条によりまして、特別な国家間の合意でございますから、それに基づきまして入国さすのでございます。
  35. 米田東吾

    米田分科員 そうしますと、要するに入管令の第四条の第二号が適用されるということでありますか。
  36. 中川進

    ○中川(進)政府委員 第四条の第二号は「日本政府の承認した外国政府又は国際機関の公務を帯びる者」となっておりまして、そうではございません。
  37. 米田東吾

    米田分科員 カルカッタ協定は、日本赤十字と朝鮮民主主義人民共和国の赤十字間の協定でありまして、政府間の協定ではございません。その赤十字相互間の協定を、一応正当な第三条の適用に値するものとみなされたという根拠はどういうことでありますか。その協定を政府が承認したからということでありますか。
  38. 中川進

    ○中川(進)政府委員 さようでございます。
  39. 米田東吾

    米田分科員 そうだとすれば、私はこの協定が承認されるということよりも、この種の帰国業務、そうしてそれが人道と正義の国際赤十字の趣旨に沿って、両国赤十字間がこの平和的な民族の移動を行なうということを、政府は認められて、そしてこの第三条を適用されたと思うのであります。したがいまして、朝鮮赤十字会と、その赤十字会が行なう帰還事業というものについて、政府が認められたとするならば、同じ団体と、同じ目的の事業が継続されるわけでありますから、当然政府は認めていいのじゃないですか。協定が問題じゃないと私は思うのでありますが、この点はいかがでございますか。
  40. 中川進

    ○中川(進)政府委員 御承知のごとく、一昨年の閣議決定によりまして、カルカッタ協定は一昨年の十一月十二日をもって打ち切るというふうにきめられたのでございます。その後に、御承知のコロンボ会談によりまして、また新しく帰還業務が始まってから、六カ月に限って暫定措置ということで、そのカルカッタ協定の規定を準用することにきまったのでございまして、そのあとは、何と申しますか、無協定状態に入るわけでございます。そこでやはり、一般に国交のない国の人が日本へ入る手続を順守してもらいたい、こういうことでございます。
  41. 米田東吾

    米田分科員 時間があれですから、この問題はあとに譲りますが、大臣、いかがでございますか。閣議決定は私も了承いたしておりますけれども、しかし在日朝鮮公民が六十万おる、この中にはまだ帰りたい者がおるんだ、そういうものについては今後も便宜をはかる、閣議決定はそういうことも付帯をされて、現行の協定というものは、一応協定に基づく帰還は終わったとみなすべきだということで、打ち切るということを決定されたように聞いておるわけであります。したがって、形式はとにかくとして、帰還の問題については今後も政府努力をするということがいわれておる。これは従来、私どもが大臣やあるいは政府機関、官房、日赤その他に、いままでいろいろ折衝した段階でも、そういうことは繰り返しておるわけであります。そうだとすれば、この協定の帰還は、あるいは協定そのものは打ち切っても、帰国の問題については、当然便宜をはかるという措置がなされてしかるべきじゃないか。そうだとすれば、私は、この外国人の入国というような入管令を適用して、ことさらにめんどうな、国際赤十字を通すとか、そういうようなことは、それこそ私は必要はないのではないか、むしろいやがらせをやっているのではないかという気がするのでありますが、いかがですか。
  42. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いろいろだだいまお尋ねがございましたが、先ほど来木村官房副長官も申し上げておりますとおり、政府としては、この帰還につきましては非常な熱意を持っておりますので、先ほど局長の申しましたいろいろの経緯もございますけれども、いま国際赤十字等に依頼をいたし、何とかこれを円満に打開、促進してまいりたいために、いま非常な努力をしておりますので、いま少し時間をおかし願いたいと存じます。
  43. 米田東吾

    米田分科員 これは、時間をかすことはもうやぶさかでございませんし、時間が必要だと思いますので、ぜひそうしてもらいたいと思いますが、私は、この法務大臣の裁量によって、特に国際赤十字を通す、しかも一旦断わられた——それは、官房副長官の言われる理由はそういう処置だったと思いますけれども、断わられた国際赤十字をまた窓口として通して、そうして渡航証明書を渡してもらう、そんなばかげたことはやらぬで、政府が出すなら出して、そうして朝鮮赤十字会に渡す。これはりっぱな国際赤十字加盟の朝鮮赤十字会である。どうしてそういうことがとられないのかという疑問を実は持っておるわけであります。そういうふうにされれば、この問題はスムーズにいくのじゃないか、そういうふうに思いますので、ひとつぜひそういう英断をとっていただきたい、そういうことも申し上げておきたいと思います。  なお、木村副長官に、最後にもう一点だけお聞きしたいのでありますけれども、この間——この間といいましても一月でございますが、韓国の張基栄特使がおいでになりまして、いろいろ政府関係首脳部と折衝あるいは交渉、会談があったようであります。その特使が韓国にお帰りになって、韓国日報にその成果を公表されておるわけでありますけれども、それによりますと、佐藤総理大臣から親書をもらって、北鮮帰還の問題については打ち切る、絶対やらないという一項をとっておる、こういうようなことが韓国日報に堂々と報道されておるわけでありますが、どうでございますか。信書を出したというのはほんとうなんじゃないかと私は思いますけれども、表現はなんですが、とにかく北鮮帰還はやりません、そういうあれを与えておられるのですか。言質を明確に与えておられるのかどうか、要するに張基栄特使には、政府としては、この種の北鮮帰還のことについてはやりませんよという内諾を与えておるのかどうか、これは韓国の新聞が報道しておりますので、念のためお聞きしておきたいと思います。
  44. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 張基栄特使が来られましたときに総理と会談をいたしました。そのときにも私立ち会っておりますし、また、総理から朴大統領に対する親書の内容も私よく存じております。いずれの場合におきましても、そういうことを約束したことは絶対ございません。
  45. 米田東吾

    米田分科員 じゃ、私はこれで終わります。
  46. 臼井莊一

  47. 安宅常彦

    安宅分科員 委員長、これはかってなお願いですが、朝鮮問題が非常に重要なので、米田君のあと、大体総括的に私やろうという話できたものですから、そういう事情があった上でいろいろお答え願う、そういう気持ちですから、政府側のほうでも、各委員の諸君も、そういうふうに心得ていただきたい、こう思うのですが、もしただいまのような発言が分科会にそぐわないということでありましたら、速記からとってください。  これは所管の厚生省にお伺いいたしますが、日本赤十字社というのは、何か政府の命令で動くのか、あるいは独立した国際的なそういう協定に基づいて、歴史的な伝統があって、そして人道的な問題を取り扱う、政府に拘束されない、そういう機関なのか、一体どっちなんでございますか。
  48. 実本博次

    ○実本政府委員 いま手元に法律の条文を持っておりませんが、日赤社法には、日赤の活動というものは、博愛の精神に基づいて、何からの拘束も受けないで、独立して行動するということになっております。
  49. 安宅常彦

    安宅分科員 この在日朝鮮人の帰国の問題について、いろいろ過去九年間、岸総理の時代からですか、行なわれてきたわけですが、一昨年でありますか、その前の年になりましたか、閣議で、帰国の問題は打ち切るということを政府が発表いたしました。とたんに日赤がそうだそうだといいました。こういうのは、これは日赤の社法にそぐわないものだと私は思うのですが、そういう意味からいって、これは日赤の社長がおれば一番いいのですが、あなたの見解を聞きたい。これが一つ。  それからもう一つは、帰国の問題で、いろいろ政府がせっかく努力をしていると、いま法務大臣が言っておりましたが、厚生省としては、日赤はやっぱり独立しておっても、ある程度援助しなければならないという立場もあろうと思います。新潟港から出るという予想があれば、大体これはまとまるだろう——コロンボ会談以降たいへん日数がたっているのですから、そういうことで、帰国する人たちの宿舎であるとか、これに伴ういろんな輸送といいますか、人をお送りする、そういう施設であるとか、経費であるとか、こういうことについて、厚生省は来年度の予算に何か配慮しておるのかどうか、それをちょっとお伺いいたします。
  50. 実本博次

    ○実本政府委員 コロンボ会談の結果のお話をいま先生が申されましたが、これは全く赤十字社の仕事として帰還協定でやっておりました事柄と、それからその帰還協定を終了した後帰国する人の取り扱い、この二つのことで、赤十字社はコロンボ会談に臨んだわけでございまして、後者のほうは日赤独自の仕事でなくて、協定が済んだあとの帰国の場合の出入国の手続、こういうものは全く政府の所管する仕事でございますから、それを赤十字社に政府がその部分は委任して、コロンボ会談に臨んだ。その結果がああいう結果になったわけでございまして、いわゆる暫定措置と申しておりました部分については、これはもう赤十字社単独で、赤十字社の独自の見解で決着をつける。その以後の問題につきましては、政府が全く委任したことでございますから、政府意見を聞いて動く、こういうふうになっておったわけでございますので、そういう立場からの意見の発表が行なわれたわけでございます。  それから、あとの第二の問題でございますが、これは協定が有効であったときには、その所要経費を全部厚生省が窓口で赤十字社に補助いたしておりましたが、協定が失効いたしました一昨年の十一月以降の状態におきましては、政府は、その再開ができればそれを待って予算化するということで、一切予算は計上いたしておりません。
  51. 安宅常彦

    安宅分科員 たいへん理路整然たる答弁のようですが、あべこべじゃないでしょうかね。つまり日本赤十字社と朝鮮赤十字会が協定を結んだ、これは自主的な協定だ、なるほど政府もそれを援助したという形であろうと、私は日本赤十字社の社法からいって、そうだと思うのです。あとまた結ぶかもしれない。これは政府としては、その帰還の協定を政府の方針で打ち切ったのだから、なるほど日本赤十字社に対しては、そういう方針でひとつやってくれないかということは言えるが、どういう方式であろうと、何かの協定、何かの取りきめ、何かの意思の統一が行なわれるであろうことは、政府としても了承しておるのですから、こういう形になろうと——先ほどからちょっと聞いておりますと、無協定の時代になりました場合にはどうのこうのなどという、入国管理局長の話がありましたが、無協定にならないようにするのでしょう。協定ということば、条約ということば、専門用語は別にして、何らかの取りきめが行なわれるということを予想し、これを援助して懸命にやっておるのが政府の方針だというふうに私は承ったのですが、予算措置は別として……。そうしますと、あとの部分は委任をしたので、おれの方針以外に一歩も出てはならないぞなどということは、ほんとうは赤十字社の活動に対する政府の支配、介入になるのじゃないですか、どうですか。局長さん、そうじゃないですか。
  52. 実本博次

    ○実本政府委員 帰還協定の問題は、赤十字社が、これはもう終戦——終戦じゃございません、三十四年始めましたときの状態から見て、もう大部分の方は帰還されたということで、帰還協定時代に帰りたいと言った、一万七千人の人たちの問題だけについて、これは赤十字社としてまだ必要だ、だから何かの協定で、六カ月なら六カ月の協定でやっていこう、いままでの協定に準じたものでやっていこうという判断、その後はもう要らないという赤十字社の判断、これは全く赤十字社が、そういう判断を下したということでやっておるわけでございますので、そこはひとつ先生御了承願いたいと思います。
  53. 安宅常彦

    安宅分科員 もう役人の答弁というものは大体そうなるのです。実本さんらしくない答弁をしておるのですがね。  これは官房副長官に伺いますが、あなたは官房長官のときから、たいへんこの問題については御努力を願って、これは一つの人道的な問題として扱う、こういう基本方針で、たとえば暫定期間六カ月の分はどうのこうのなんて、六カ月になるかどうか、これもまだきまっていないのです、コロンボ会談が破裂しているんだから。そういう固定概念であなた方は——管理局長も言っておるけれども、これはどこまでも役人の固定観念の頭。ですから、日赤は、これは要らないという日赤の自主的な判断だろうなどと言っている。要らないんだったら、日赤は交渉する気はないですよ。電報を往復したり何かする必要はないでしょう。必要だからやっておるんでしょう。これはどこまでも、副長官、人道的な立場で今後も何らかの方式をとってもこの帰国の問題というのはやらなくてはならない、こういう御方針には変わりないと思うんですが、どうですか、そうなんでしょう。
  54. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 北鮮帰還問題、これはもう終始政府としては人道問題として処理している、今後も処理してまいります。ただ、その方式いかんの問題になりますと、これは赤十字間の話し合いにいたしましても、それは政府の方針に基づいての話でございます。政府の方針に基づいて赤十字が取りきめる協定あるいは暫定措置あるいはその後の事業、事実措置、いずれにいたしましても、政府の方針に基づくものでございますから、ただ日赤、朝赤間で単なる任意でそういうものを取りきめるものではございません。
  55. 安宅常彦

    安宅分科員 もうきょうは時間がない。予算分科会ですから、私はそのことで官房副長官とやり合ったり、お役人さん方とやり合ったりする気はありません。きょうは、ただ矛盾を指摘した程度にとどめましょう。したがって、いま何らかの方式の問題ということで、官房副長官が言われました。この方式の問題については、それこそこれは日赤と朝赤の話し合いによるべきであって、一々各省がこうしなくてはならない、ああしなくてはならないなんという筋合いのものではないと私は思っておる。なぜかと言いますと、これは耳痛い人は、いやなことを言うやつだと思うかもしらぬけれども、自由民主党の中でも政府を代表したのではまずい、政経分離だからなどということを——意を体してだかもしれませんが、中国との間にはいろいろな貿易の協定なんかを民間でやらせたりしておる。やらせていますね。そういう表現がまずかったら直しますが、大体そうだと思います。そうして古井喜實先生だとか松村謙三先生だとか行って、そうして中国と協定を結んでくる。その協定の中は——私は日本社会党所属の議員でありますが、見て、なかなかおもしろいものだと思っているんですよ。佐藤政府アメリカの手先になってなどと書いてあったかどうか、ちょっと記憶ありませんが、とにかく中国敵視政策をやっておるのははなはだ遺憾であるなどという協定書にぽこんと判こを押してきている、そうそうたるメンバーが、国会議員が。そうしておいて中国と貿易しておるんですね。そうして、中国の貿易の代表団なんかは日本に長い間ゆうゆうと来ていますね。北ベトナムの国から今度は踊りの人なんか来ますね。そうすると、六十人じゃ多いから四十人ぐらいにしようかなんて、西郷さん、うまいことやって、入れていますね。人道主義の協定を取りきめよう、何とか帰国問題をやらなくてはならないという政府が、今度は、そういうときになると人道主義はどこかへ吹っ飛んでいって、これはベトナムの民主共和国に対して失礼でありますが、そういう演劇団なんか来るときは、さあさあいらっしゃいというようなあんばいで入れて、そうして今度、人道主義だと言われる朝鮮の帰国の問題ではすべったのころんだの、こういう手続が必要だの、カルカッタ協定がどうだのなんということを言わなければならないのは、何か韓国あたりからちょこまか言われておるからですか。そのほかに何か理由があるんですか、どうですか、法務大臣、あなたはいまにこにこ笑っておりましたが、笑いごとじゃない、どうですか。
  56. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いろいろいま御意見を拝聴いたしましたが、われわれも今後とも誠意をもちましてこの問題に前向きに対処してまいりたいという努力中でございます。よろしくお願いします。
  57. 安宅常彦

    安宅分科員 なぜ差別をつけるのかと聞いておるのです。なぜ中国とベトナムの民主共和国と朝鮮の民主主義人民共和国と差別をつけなくてはならないのか。しかも、同じ立場ならいいですよ。片方は人道的な立場で、日本に在日朝鮮人が来たのは、かってに来たんじゃない。当時の日本の帝国主義的な政府が強引に引っぱってきたんだ。そういう歴史があって、その歴史に基づいていまいろいろ問題が起きておる。そういう立場だから、日本赤十字をして人道的な立場でこれを解決しなくてはならないというのが政府の方針だ。佐藤総理もそういう答弁をしておりますよ。人道的な立場で解決いたしますと。ところが人道的なはずなのが、どっちが人道だかわからないみたいな差別をつけるのはどういうわけでございますかと聞いておるのです。それは役人の答弁は要らない。これは政治論ですからね。
  58. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いろいろお話はございますが、私どもも、御承知のとおり、非常に誠意をもって善処してまいりますけれども、芸術団とか、そういうものと対比しまして差があるではないかというお話でございますけれども、故意にそういう差をつけて検討するというような考えもございませんが、御承知のとおり、なかなかそう簡単にもいかぬもので、熱意を持っておりますが、やりにくい点もあることは御承知のとおりでございますが、今後ともそういう点はできるだけ乗り越えまして、大いに推進をしてまいりたいと考えております。
  59. 安宅常彦

    安宅分科員 この間あなたと私が会ったときには、いや、なるほど西郷隆盛の孫だけあってたいしたものだとほめたですよ。何かというと、帰国の問題は、これは出るだけの問題、あとこちらに来るのは朝鮮赤十字会の代表数名の問題。ところがあなたは、この間八人の人を墓参という理由によって帰す。これは出るのと、また行ったのを再入国させるという権限をあなたは行使されたですよ。自分がやるときには一ぺんでオーケーと言いながら、今度帰国のほうは四の五の、四の五の言っておるのは、これはどういうわけですか、それじゃ。そういう権限を持っていて、実際行使されたんじゃありませんか。なぜこのことについて、ビザがどうの、何とかがどうのといわなければならぬのですか。
  60. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 御承知のとおり、先般、人道的な見地から里帰りをさせた者もございますが、なおその他の、そういう問題と、代表の入国をどうして違った考え考えておるのかというお尋ねかと思いますが、この間の場合も、非常にいろいろの点はございましたが、熱意をもちましてようやく実現させたのでございますが、先ほど来いろいろ御論議もあるとおり、両国の間に国交もまだないので、何かにつけて、理届からいうとちぐはぐな点等も出るかと思いますけれども、できるだけそういう問題を今後起こさないように前向きで善処し、円満に交流のできるような努力をいたしたいという考えを持っておりますので、御了承を賜わりたいと思います。
  61. 安宅常彦

    安宅分科員 これは了承できません、大臣。このたびの帰国の問題については、入国の問題に関する限りは、朝鮮赤十字代表数名です。しかも赤十字国際委員会に正式に加盟しておる、独立国のそういう赤十字会の代表であります。この人の問題については、たいへんきびしいことをあなた方はいままでがんばってこられた、内情を知っておるから、私は言いますがね。ところが一般の在日朝鮮人のあの八名の問題については、行くこともオーケー、来ることもオーケー、簡素化もいいところ。そうしてやっておる。やっていけないというのじゃないですよ。たいへんいいことをしてくれたと思っておるのですよ。だけれども、朝鮮赤十字代表という権威のある人の入国に対して、なぜ、先ほどわが党の米田委員が言ったように、ジュネーブへ行ってどうだとか、領事館で旅券を出すとか、そんなこまかいことをやらなければならないのかと聞いておるのですよ。おかしいとは思いませんか。どうなんです。
  62. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 先ほど申し落としましたけれども、ベトナム舞踏団なんかの例をおあげになりましたが、あれらは香港のわが領事館に出頭いたしましてビザ等をとっておりますから、正式に入ってこれるのでございまして、その辺がございますので、先ほど来官房副長官も御説明のとおり、いろいろ幾多の変遷はあったけれども、国際赤十字にお願いして、そうして入れることにいたしたい。まあこれは変則といえば変則でございますが、やらぬよりはいいので、変則ではございますが、そういう方法をとり、他のそういうことをやっておるうちにだんだん打開もできて円満な交流ができるということであります。この間の八名はああいうふうに決定いたし、六名帰しましたが、今後の向こうから入る問題も、やはり根本には国交がないからいろいろな点が出ますけれども、それはそれなりにいたしまして、今後とも一応は国際赤十字を通すという方法をとり、それで満足しているわけではございませんので、今後とも一そうの努力をしたいと考えております。
  63. 安宅常彦

    安宅分科員 これは北ベトナムの話を聞いておるのじゃない。いまの比較は在日朝鮮人といえども——これは当然在日朝鮮人も朝鮮の公民だ、こういうことをはっきり日本政府にも言っているわけですよね。そうして朝鮮総連の幹部の数名は朝鮮の共和国のいわゆる国会議員でもある。そういう立場ですよ。日本人じゃないですよ。いいですか。香港に何も旅券を申請したりなんか手続したわけじゃありませんよ。その人の出国を認め、入国を認めておるのに、なぜ同じ朝鮮公民であり、しかも赤十字代表である、この機関の業務に携わろうとする——この協定もいまからできることですが、もしできたと仮定をしたならば、その人たちの問題について、今度は国交がないとか、すべったのころんだのとあなたは言うけれども、ある程度の取りきめができるのです、あなたはそれをやりたいと言っておるのですから。何らかの取りきめがあった、ないのとは違う。あった人の、しかも権威ある赤十字代表に対して、何もない一般の在日朝鮮人はあっさり帰すけれども、あっさり入国させるけれども、今度は権威あるそういう人に対してはジュネーブだとかナホトカだとかモスクワだとかということをなぜ言わなければならないのかと聞いているのですよ。どうですか。   〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕
  64. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 御承知のとおり、入国管理令というものもございますので、ただ、それ以外の方法をやるということはやはりなかなか、法律違反にもなりますので……。
  65. 安宅常彦

    安宅分科員 八人はなぜやった。六人はなぜやったのですか。
  66. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 便法といたしましてああいう方法をとっておる次第でございまして、あの八名の者につきましても、御承知のとおり、非常にたくさんの里帰りをしたいという希望者があったわけでございます。しかし、それがそのままになっておりましたが、私どもといたしましては、ただいま御論議の、決定しておる一万五千人の問題もございますので、それが停とんをいたしているような現状にもございますので、何とか誠意を披瀝いたしまして、それも漸進的に進めてまいりたいというふうな気持ちもございましたので、今回、いろいろ難関はございましたが、特別に里帰りという方法もとったわけで、あれによりましてわれわれの誠意も先方もわかってくれるかと考えるのでございます。先ほど来いろいろ御意見もございますけれども、やはり漸進的に進めてまいりませんと、一ぺんに、国交のある国のようにまいりかねますので、今後われわれも一そうの努力は重ねてまいりたいと考えております。
  67. 安宅常彦

    安宅分科員 だから、そんなわけのわからない答弁じゃだめですよ。西郷さん。何ですか西郷さんともあろう人が。一般の在日朝鮮人は人道的な立場だというので、墓参をあなた許可したでしょう。それは出るのと、また再入国するのと、あっさりあなたはやったでしょう。ところが、権威ある朝鮮赤十字会の代表を、なぜあの六人の人のようにできないのですかと聞いているのですよ。それはどうなんです。おかしいじゃありませんか。それはおかしいじゃありませんか。おかしいなと思いませんか。大臣。どうですか。おかしいと思うでしょう。それは官房でやるのだからおれは知らないというのですか。
  68. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いろいろ御意見を承っておりまするが、私どももやはり責任ある立場にございますから、かってなことを、思ったとおりはここでも申しかねるのでございますが、御質問のとおりいろいろ筋を通していくとこんがらかっておる点もあるかと思いますけれども、できるだけ、こんがらかっておりましても、できる場合には少しでも誠意を示して、そうして行き帰り、往復がだんだん拡大していくようにいたしたいという気持ちでございますので、御了承願います。
  69. 安宅常彦

    安宅分科員 時間がないからもういいですが、大臣、そうしますと、八名を帰しますよ、安宅君と、わざわざ私のところに名簿まで持ってきて発表さして、今度あとから二名はちょっとだめだった、ちょっと待ってくれなんていうのも、何かそれも、筋を通したらこんがらかったうちの一つですね。そのこんがらかる原因は、人道主義などといっても、どうもその時期に韓国の何とかいう代表が来たり、また、この間わけのわからない連中が来て、わあわあ言った。それは政府に対しては、あんなことをやると国交断絶をするとしょっちゅう抗議が来るのだそうですね。前の官房副長官の亀岡さんからしょっちゅう聞いたものです。国交断絶するなんておどかざれたら、困るのは、あなた、向こうじゃありませんか。それくらいのことを言ってやってぴしっとやらなければならないのは、どうも二名分もこんがらかったのは、南のほうの圧力に皆さんが屈したことになりはしませんかね。日本の独立国の閣議で八人を帰しますということを決定したのが六人になって、あとの二人はどこかへ吹っ飛んでいってわけがわからなくなるなどということは、よもや——将来何とかするのかもしれませんが、皆さん大国だと言っておる日本の閣議決定を韓国の圧力でくつがえしたりはしないでしょうね。これだけは聞いておきましょう。
  70. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまの点なかなか微妙な関係があるわけでございますが、何といたしましても、イデオロギーのいかんを問わず、わが国としては世界各国と親書関係を結んでいかなければならぬ、こういうこともございますので、よその国の御意見があったような場合に、根っから無視もできませんので、その辺が非常にわれわれの苦心の存するところでございます。御了承賜わりたいと思います。
  71. 安宅常彦

    安宅分科員 それでは根っから、向こうから抗議を受けて、そのとおりにしなければならないなんというのは、閣議決定したものを、外国から文句を言われてでんぐり返すなんということはたいへんなことです。その国の下風に立つ植民地か属国だったらいざ知らず、だれだか間違って大日本帝国なんて言った人がおりましたね、大臣、いっか二、三年前に。そのくらいの気概を持っておるあなた方が、何ですか。アメリカのかいらいだなどと一般に新聞などにも書かれておるような国から言われてふらふらするとは、はなはだ見識のないことだと私は思っています。あなたが、二人はそういう義理合い上もあって何とも困ったなあとは思っておっても、閣議の決定した最低限度はくつがえさないだろうということを期待しておりますから、そのことはだいじょうぶでしょうな。
  72. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 なかなかやっかいないろいろなこともございますけれども、私も大きな人道的な立場でやっておることでございますので、今後とも熱意を披瀝して推進してまいりたいと考えております。
  73. 安宅常彦

    安宅分科員 最後に副長官にお伺いいたします。  これはコロンボ会談が始まるときに、これを成功させるために、あなたが官房長官でありましたが、そのときにわが党からの申し入れで、ひとつ実務的には、内閣からは副長官の亀岡君、わが党からは当時朝鮮問題委員長の石野君、それから私と、それからもう一人は当時厚生政務次官でありました田川誠一君、この四人で大体の方針をきめて、ひとつ成功させようじゃないかという話し合いになり、それがだんだん発展をしていって今日までいろいろやってまいりました。そうしてその問いきさつはございましたが、最終的にわが党の長谷川正三さんが日朝協会の代表として朝鮮民主主義人民共和国を訪問したときに、向こうの朴副首相との間に話があって——その行くときに官房副長官と話し合いをして、あんなもの、めんどくさいこと、どこから圧力がかかってもできませんよ、ビザを新潟で渡しましょうということを聞いて行ったものですから、向こうの副首相さんに、日本の官房長官はそういうことを言っていますよ、御心配なくと。それから朝鮮赤十字から、それならいいだろうというので電報が来たんですよ。そういういきさつは、あなた、知ってのとおり。したがって、それを生かすためにどうするかということになりますと、実際問題として、いま行なわれておる政府のいろいろな三省の話し合い、こういうものは、新潟で渡すこともどこかに吹っ飛んでいき、日赤が保証したら何とかする、それはたいへんいいことだ、宮本さんいいことを言ってくれた、朝鮮はそんなことを言っていますかと言って、共産党の宮本さんが言ったのにもあなたは歓迎の意を表するなどと新聞に出している。その歓迎したところもどこかに吹っ飛んじゃったわけですよ。これは朝鮮のほうで言うのは、日赤が保証するということであって、国際赤十字が保証するとは一つも言っていないですね。だから、そういうものは、本来ならば、私は私なりに解釈いたしますが、今後帰還協定なるものをどういうふうに扱うかという両赤十字間の会談を開くにあたってのやり方の技術的な問題だと思っておるのです。それを日本政府が、各省の次官や実務者と話し合った結果、こういうふうにするのが日本案だということをひとつ意思統一をしたんだということが、新聞に先に出ただけの話だと私は思う。そういうふうにして理解していいんじゃないですか。どうなんですか。
  74. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 当然これは日赤、朝赤、両赤十字社間の話し合いによるものですが、事入出国になりますと、当然これは政府の権限でございますから、その政府の方針を体して両赤十字社で話し合う、これはもう当然の筋道だと思います。そういう意味におきましては、政府としては、先ほどから申し上げますとおり、人道的立場でできる限りの便宜をはかりたい、この精神には変わりございません。
  75. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 時間が参っておりますから、簡単に願います。
  76. 安宅常彦

    安宅分科員 だから、そういう精神に基づいていうならば、これはいろいろないきさつから新聞に発表になってしまったけれども、しかし日本としてその会談に臨む態度はこうだ、交渉によってどうなるかは、若干の変更があるか、あるいはそれより後退するか前進するか、右か左かなんといったら、どちらかわかりませんが、とにかくある程度違った——政府にとって有利か不利かは別として、そういうこともあり得る。一つ日本案だというふうに理解してやらないと、それがどっちにも、右にも左にも動かないものだという交渉は初めからあり得ないのでありますから、そういう一つ技術的な外交上のやり方、提案のしかた、こういうものだと私は理解します。きのうあなたに言ったときも、そのとおりだと言っていましたが、そういうことでしょう。一つ日本側の提案ですね。要すれば、あれは日本側の提案でしょう。新聞に発表になった分、ジュネーブに行ってどうの、領事館でどうのなどということは、一つの手続としての議題でしょう。
  77. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 先ほどから、国際赤十字から断わってきたと、まあこういうおことばがあり、誤解があるといけませんから……。(安宅分科員「それは知っています。時間がないから」と呼ぶ)そのいきさつは御承知のとおり。したがって、今回政府部内の話し合いでそういう簡易手続をとろうではないかということにきまって、それを日赤に指示したわけですから、その指示に従って日赤が国際赤十字に、国際赤十字から出してきた代行案の内容としてまた提案をする。それについて国際赤十字から、それでけっこうだという返事が参りますれば、あらためて北鮮赤十字と交渉に移る、こういうことになります。
  78. 安宅常彦

    安宅分科員 それは当然でしょう。わかりました。  それで、時間ももう過ぎて、橋本君からおこられてもつまらない話でありますから……。  そういう方針で、つまり国際赤十字から返事が来る。来なければ話にならないですね。あれは国際赤十字は、はてな、正式の加盟国である日本からこんなことをしてきたけれども、同じ正式加盟国である朝鮮側とも相談しないと、うっかり返事を出せないかもしれないということになるかもしれませんね。わからないのです、これは仮定ですから。そういう返事が来たとしても、それは日本側が提案する議題であって、向こうと相談——だからこそ会談を開くわけですからね。そういう意味に理解すべきだというふうに日赤にも言いました。そうしたら、日赤はそのとおりだと言っておるのです。あなたもそのことをきのう、いいでしょうと日赤の副社長に電話をかけたはずであります。電話をいただいたと言っておりました。だから、私はそういう理解で今後やりたい。  そうするとどういう結果になるかというと、いろんな方法がある。簡易化する方式はいろいろな方法がある。それは権威ある朝鮮赤十字の代表についてこまごまとしたことをやっているが、一方、同じ朝鮮人民である在日朝鮮人の墓参に対しては、そんなこと、国際赤十字だの何だの、何にも言わないですらすらと行ったり来たりできるようことを、西郷さん、たいへんりっぱなことをやってくれた。そういう方法もあるということを私は確認しているわけでありますから、どこまでもそういう議題でもって向こうと交渉を大至急させるという意思には変わりありませんね、官房副長官。
  79. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 変わりございません。
  80. 安宅常彦

    安宅分科員 じゃ、終わります。
  81. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 岡沢完治君。
  82. 岡沢完治

    岡沢分科員 与えられました時間がわずかに三十分でございますので、端的に最初からお尋ねをいたします。  最初に、法務大臣に、いわゆる学生にはスト権があるのかないのか、団結権があるのかないのか、団体交渉権があるのかないのか、お答えを願います。
  83. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 学生団体は、御承知のとおり労働組合とは違いますので、いま御指摘のような権限はないものと考えております。
  84. 岡沢完治

    岡沢分科員 じゃ、いまのお答えは、スト権はもちろん、団結権も団体交渉権もないという見解と理解してよろしゅうございますね。  ところで、現在の日本国内において、七十校近い大学において紛争があり、そのうち五十数校をこえる大学において、いわば治外法権的な無法状態が続出しておる現状は肯定になりますか。
  85. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 御指摘のとおり、各地で学生紛争が続いておりまして、非常に遺憾に存じております。
  86. 岡沢完治

    岡沢分科員 私が聞きましたのは、学生紛争のことを聞いているのじゃなしに、大学内において法秩序無視、無法状態が続発しておるという現状を認められますかということであります。
  87. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 御指摘のように、最近の各地の大学紛争は非常に暴力集団的な行動がございまして、しかも、ときたま学園外においてもそういう学生の集団暴力があるというようなことで、まことに遺憾しごくでございます。もちろん大学構内における学問の自由とか自治ということは尊重しなければなりませんけれども、そういう問題と集団暴力とは無関係なことでございますので、われわれも学園の場を治外法権とは考えておらず、法律によりまして厳正に治安の維持に当たってまいりたいと考えております。
  88. 岡沢完治

    岡沢分科員 治外法権でないということは、法務委員会におきましてもたびたび御答弁がございました。しかも、現実には無法状態、法律無視の状態があることを肯定なさっておる。司法の最高責任者として、検察庁あるいは警察当局の背任的な結果がこういう状態を起こしておるという指摘をせざるを得ないのでありますが、それについて刑事局長から、現在各大学に起こっております学生紛争と結びついて、刑事的にはどういう犯罪が行なわれておるかということについて、一応類型的なものだけでけっこうでございますが、御指摘をいただきたいと思います。
  89. 川井英良

    川井政府委員 学園の中におきまして、たとえば建物の不法占拠でありますとか、あるいは派閥争いということで、お互いが角棒なんかを持って闘争をするということで暴力行為等処罰ニ関スル法律違反であるとかいうふうなものか、あるいはまた、その際に建物をこわすというようなことで器物損壊というようなのが典型的なものだと思います。
  90. 岡沢完治

    岡沢分科員 類型的ではないかもしれませんが、学園内で窃盗類似行為あるいは傷害的な行為、場合によりましたら傷害致死的な行為等も行なわれておるというのが現状の正しい認識ではないかと私は思いますが、どうでございましょうか。
  91. 川井英良

    川井政府委員 学園の中というのは、御承知のとおり普通の市街地と違いまして、警察官があらかじめパトロールをするとか、あるいは内偵捜査をするとかいうようなことは多くの場合しておりませんし、またできないような事情もございますので、その中で行なわれておることが、客観的には御指摘になったようなことがあるいは数多く行なわれているのかもしれませんけれども、治安当局が証拠に基づいて、そういうふうな行動が日常常に行なわれているというふうに確認するわけには必ずしもまいらないと思います。届け出とか、あるいは別の機会でもって捜査の端緒をつかんで捜査をした結果、御指摘になったような、いろいろはなはだしい逸脱した行為があとから発覚したというようなことは間々あるようでございます。なお、われわれといたしましては、いろいろな方法とくふうを重ねまして、学園の中における御指摘のような著しい法無視の行動というふうなものを早期に的確につかんで、そしてそれぞれ迅速に妥当な手を打つということが必要だと思います。
  92. 岡沢完治

    岡沢分科員 時間の関係で、議論を詰めることは避けますけれども、的確に情報をつかんで責任を果たしたいという刑事局長の御答弁とは全くうらはらに、現実の大学の実態は全く無法状態、無秩序の状態というのが正確な認識ではないかと思います。こういう状態を放置されて、しかも、先ほどの法務大臣の御答弁では、治外法権ではない、しかも学生諸君の行動は大学の自治とか学問の自由とは関係がないという御答弁があるわけであります。大学に対して警察権の行使を慎重にというのは、歴史的に見ましても、学問の自由とか大学の自治を尊重するたてまえから確立された慣行かと思いますが、ところが、むしろ現在の学生諸君の、特に暴力的な行動は、逆に大学自治を、学問の自由を破壊する行動であります。そういうものを守るために、逆に大学自治を守るための慣行を適用するといいますか、それに準拠して治外法権的な結果を呈するような現状を黙視されるということについては、私としては納得できないのでございますけれども、重ねて法務大臣あるいは刑事局長の御答弁を願います。
  93. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま御指摘のようなふうにとられる向きもあるわけでございますが、やはり学生でございまして、場所が学園というようなこともございますので、一般犯罪と違いまして、非常にやりにくい点もあるわけでございますけれども、しかし、今日の状況はそういう程度を越えまして、すでに社会問題、治安問題と相なっておりますので、今後、いままでのいろいろな点を反省し、そうして治安維持の万全を期してまいりたいと考えます。
  94. 岡沢完治

    岡沢分科員 私が指摘するまでもなしに、現在の大学は、数におきましても八百校をこえて、学生数も百五十万。一つの大学に数万の学生がおり、学校用地というのが何万坪という大学も決して珍しくございません。また、一般人は自由に出入りできるのが原則でありますが、その大学内であるからといって、警察権の行使、あるいはその秩序維持の責任が実際につかまれておるのかどうかもわからない状態。また、つかむ努力はするとおっしゃいましたが、現実には内部でどういう犯罪行為が行なわれておるか、おそらく実態はつかみかねておられるのではないかというような感じを持ちますだけに、やはりこの際は、もう少しき然とした態度が治安当局に望まれるのではないかと考えますが、時間の関係で次に進みます。  法益の代表者の立場から法務省の御当局にお尋ねをするわけでございますけれども、大学紛争の被害者はだれだれか、どういうものが考えられるかということをお尋ねいたします。
  95. 川井英良

    川井政府委員 大学紛争の被害者はだれか、あるいは法律的にはその被害の法益は何か、こういうふうなもっと高度の御質問だと、こういうふうに考えるわけでありますが、大学というものが、国における非常に重要な進歩の原動力となる、あるいは国の基本の、基礎になる青年を育成していくということにかんがみますと、その大学が荒廃をして、そうしていまのようなままでもって、静かな学園の中で真理が十分に研究されないということは、これは国家的な立場からの大きな損失がまず考えられなければならない、私はそう思います。具体的には、建物をこわせば、国立大学でありますれば国有財産の損壊ということであり、また、他人を傷つければ、その他人の個人の身体を損傷したということでありましょうけれども、それらをひっくるめて、それ自体の被害法益というものは、はかり知れない大きなものがある、こういうふうに理解いたしております。
  96. 岡沢完治

    岡沢分科員 刑事局長の御答弁、間違っているとは私は思いませんけれども、法務大臣としては、他にどういう法益が、あるいは国民的な被害があるとお考えでございますか。
  97. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま、刑事局長からいろいろ御答弁いたしましたが、いま申し述べたそれ以外にも個人の被害等もあるわけでございますが、これらの国または個人が受けました損害というものにつきましては、御承知のように民法の一般原則によって損害賠償を請求できるわけであります。また、今度のように集団的に多数の者が一緒になって被害を与えているような場合に、それが、だれが何をしたということがわかりません場合でも、そういう行為をした者全体の連帯責任におきまして、国なり個人は損害賠償を請求できる、さように考えておりますし、すでに御承知のとおり、東大からもそういう告訴が出されておるわけであります。
  98. 岡沢完治

    岡沢分科員 大臣の御答弁、これも間違っておるとは申し上げませんけれども、いささかさびしい感じがいたします。もちろん、刑事的な被害あるいは民事的な財産上の被害、それが国立大学の場合、国有財産、納税者であるとかいうことも言えるかと思いますし、大学周辺の個人的な民事上の被害というものももちろん否定できません。しかし、先ほど刑事局長がむしろ高度の立場から御答弁になりましたような観点からいたしますと、たとえば憲法第二十六条の教育を受ける権利を当然持っておる一般学生が教育を受ける権利を奪われておる。あるいは教授の教える自由、研究の自由が阻害されておる。あるいは私学の場合でございますと、私学経営者の経済的な負担ももちろん大きなものでございましょう。あるいはまたそれ以上に、民主主義とか憲法の理念が否定されるような行動ということを考えました場合に、国の基本に関する挑戦だという見方もできるかもしれません。あるいは、端的に申し上げますと、ああいう学生というのは、いわば政治的にも知的にも一応水準の高い連中で、そういう連中の暴力行為を認めることによって、一般の市井の暴力行為の取り締まりが非常にやりにくくなるというような点もあるかと思います。あるいは警察官に対する国民の信頼を失う。これは金にかえられない大きな無形の損失かもしれません。また、見方を逆にいたしますと、紛争学生自体も、ある意味では、私は最大の被害者ではないかという感じもいたします。十年前の安保闘争のときの全学連の指導者は唐牛という北大の学生でございましたが、その後、彼はいま飲み屋をやっておるという実態を見ましても、しかも彼の家庭の環境を見ますと、母一人子一人、おかあさんが苦労して国立大学にやったその御本人の末路が、現在学園を追われ、飲み屋をやるというような姿を見ましても、ある意味では最大の被害者はむしろ紛争当事者の学生自身だという見方もできるかもしれません。そういうことを考えました場合、あるいはまた、もちろんよく指摘されますように、これから大学に入りたい学生が進学の権利を奪われる、あるいは東京の学生が京都を受けるということによって、大きな経済的な負担もあるでありましょう。有形無形のはかり知れない被害を国民に、納税者としての国民に、あるいは法の権威あるいは国家の権威という立場からいいましても、民主主義そのものが、あるいはまた学生が、国民が、一般市民が、特にまた教授が、また御承知のように東京大学の場合、教授の個室が大きく荒らされて、研究の大きな成果が犠牲に供される。これは一教授の損失ではなしに、国家全体の文化的な損失だという見方もできるかもしれません。こういう状態をどうして放置されるのか、法秩序の責任は何と申しましてもやはり当局にあるのではないかと、私は最終的には感じます。もちろん大学の自治だとか学問の自由ということは否定するわけではございませんが、先ほど来申し上げましたように、これとは全く関係のない、むしろこれに挑戦をするような行動をとっておる諸君を保護するために、いま申しましたような被害が続発する現状を放置されるということについての責任は、私は免れないのではないかと思いますが、御見解を聞きたいと思います。
  99. 川井英良

    川井政府委員 大学紛争につきましては、その被害の甚大なこと、また及ぶその影響というようなことにつきましては全く同感で、御指摘のとおりだと思います。ただ、今日の大学紛争なるものの原因は一体どういうところにあるのだろうかというようなことにつきましては、各方面からいろいろの研究がなされ、また検討がなされておりますけれども、その世界的な趨勢、また日本における全国的な趨勢にかんがみましても、根源をつかむということ、したがって根源に応じた実効のある対策を打ち立てることはなかなか困難な問題であるということは、これは御承知のとおりでございます。そういうふうな大きなことを申し上げませんでも、現実に治安が乱れておるということであるならば、まず乱れておる治安を正したらどうだ、こういう御見解、これもまことに同感でございます。ただ、政治的な目的を持って何千という大衆がこの秩序破壊の行動を行なうというふうな場合に、それを戦闘という方法によらないで、憲法ないしは刑事訴訟法という、法のたてまえにおいて、法のルールのもとにそれを規制するということは、ここで言うことはやさしいことでありますけれども、実際問題といたしましては非常に困難でございます。遺憾ながら困難でございます。もっぱらこれは警察が行なう分野だと思いますけれども、私ども法務当局の分野といたしましては、警察が検挙いたしましたものを、そのときの情勢に応じまして、寛厳よろしきを得てこれを処理していくということが、私ども法務当局のもっぱらの立場でございますけれども、私どもは、先般御承知のとおり、東大事件以後におきましては、もはや放置を許さない、厳格な態度をもって臨むということが、この学生問題に対する治安的な観点からの最も妥当な、またわれわれに課せられた最も緊急な課題であるというふうな感覚のもとに、御説明申し上げるまでもなく、非常にきびしい態度を検察、法務といたしましてはとっているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、てまえの自慢をするわけではございませんけれども、それぞれの守備範囲に応じまして、ただいま御指摘のような趣旨に沿った、きびしい厳正な態度をとって臨んでいるということを申し上げることができると思いますけれども、なお御指摘の点もございますので、あらゆる面から検討いたしまして、警察当局とも十分協力いたしまして、御趣旨に沿ったような、あるいはまた国の将来に最も適当なような方法考えて、それを実施に移していく、こういう覚悟でございます。
  100. 岡沢完治

    岡沢分科員 私自身も、この大学紛争をいわゆる治安問題として、あるいは刑事問題としてのみ解決するというふうなことは妥当でないことは十分承知いたしておりますし、より深い、またある意味では、この大学紛争を、災いを転じて幸いにするためにも、大学制度のあり方、あるいは大きくは政治全体の反省も必要かと思いますけれども、しかし現実の現象面を見ました場合、やはり法に照らして違法行為を放置するということは許されないし、逆に違法状態を放置することが彼らの行動を正当化さすような錯覚を、彼ら自身にも国民にも与えて、大学紛争がエスカレートした一因ではないかというふうに私は考えます。また、刑事局長は法に照らして厳正な態度を持してきたとおっしゃいますが、私は局長自身も本心はそう思っておられないのではないかと思われます。ようやく安田講堂の事件を契機にして、かなりきびしい態度が見えることはよくわかりますけれども、しかしなお現在、全国の大学紛争の実態を見ました場合に、まだまだ私は違法状態が許されておる、放置されておるというのがすなおな現実の姿ではないか。もちろん私は、きょうは法務省の時間でございますので、警察庁に対しましては別の機会に、あるいはまた文部当局に対しましては所管の文教委員会等でお尋ねするつもりではございますが、やはり私は、検察の最高責任者、法秩序維持の立場から、今後いまのお答えどおりのお態度を堅持していただくことをお願い申し上げますとともに、いささか心配になりますのは、たとえば今度の東大事件等における大量起訴で、はたして検察官の能力と申しますか、それに対応できるだけの、数の上でも能力の上でも用意があるのかどうか。ほんとうはもっと心配なのは、警察の能力がはたして私が考えておりますように、大学の紛争につきましても、要請があるなしにかかわらず、当然無法状態な行為に対しては、あるいは法違反の行為に対しては、警察力は及ぶべきだと考えるわけでありますが、そういう前提に立った場合に、各地に起こります大学紛争をはたして警察力で処置できるだけの用意があるかどうか、この辺も心配なわけでありまして、法務省のこれについての御見解をお尋ねします。
  101. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 この問の東大の例等もお考えくださると、多数の者を検挙しておりまして、いま御心配の点、私どもの範囲に属する検察陣は、今後の問題に何ら支障はないと思いまするが、私どもが心配いたしますのは、最近の裁判所の公判で多数の者が騒いだりいたしまして抵抗いたしますので、そういうことが私ども心配でございますが、そういう点につきましても、裁判所も今後考えてまいるでありましょうけれども、検察といたしましては、大いにわれわれも協力を惜しまないつもりでございます。
  102. 岡沢完治

    岡沢分科員 与えられました時間があと十分足らずでございます。質問したいことがたくさんございますので、非常に残念でございますが、端的に京都大学の紛争に見られましたように、大学が自分の力で自衛をするという行動を妥当と見られるか違法と見られるか。東大における解決あるいは立命館大学における解決等々を結びつけて、法務当局の御見解を聞きたいと思います。
  103. 川井英良

    川井政府委員 良識ある、暴力によらない、社会通念上許された行動でもって、みずからがみずからの学園を守るということは、私は基本的には正しい考え方だと思います。ただ問題は、一部で現実に見られておりますように、許されない暴力をもって、そして暴力に対していくということは、結局は許されない暴力の行使である、法律上はこういうふうにいわざるを得ないと思います。刑法的には、正当防衛に当たるような状態ではそういうことが許されましょうけれども、私ども見ておりまして、多くの場合にはそういう条件に当てはまらない場合が多いのではないか。そういうような際に、やはりまた暴力をもってそれに向かうということは、日本の法秩序のたてまえといたしましてはとうてい許されない行動である、こう思います。
  104. 岡沢完治

    岡沢分科員 先ほど私は、大学紛争における被害者はだれか、被害法益はどういうものがあるかということに触れて御質問いたしました。質問した私も、御答弁いただきました法務当局も、大学紛争の被害の及ぶ範囲がきわめて広範囲で、あるいはまた深刻なものであるということは御理解いただけたと思います。あるいは共感できたと思います。そういう意味から私は、こういう大学紛争、特に刑事事件を起こした学生の中で、未成年者は別として、成人の人々に対してはその氏名を明らかにし、責任の所在をはっきりするということが国民に対する義務ではないかという感じがいたします。きょう、私の立場から、現在まで大学紛争で起訴された学生の氏名、住所、大学名、年齢等を御提出いただくように要求しておきます。御提出いただけますか。きょうでなくてもけっこうですから。
  105. 川井英良

    川井政府委員 起訴した者の氏名、年齢ないしはその学校別あるいは住所、あるいは派閥における役職あるいは起訴罪名というふうなものを公表するかどうかという問題につきましては、私はこう思います。第一回の公判が開かれるまでは、御承知のとおり、当局が積極的にこれを公にするということは、私は原則としては必ずしも適当でない、こう思うわけであります。ただ、しかし、刑事訴訟法にもありますように、国会の要求とかあるいはこれに準ずるような正当な理由があるというふうな場合におきまして、それをその時点で公表することが、かえって起訴された者の個人の利益よりは公益のためにそれが優先するのだというふうな観点に立った場合においてのみ、限られた範囲においてそれを公表するということも許されるのではないか、こういうふうに原則を理解いたしております。  そこで、本件の東大事件の場合におきましては、東京地検はこの辺のところを十分に勘案いたしまして、五百九名起訴いたしましたけれども、その中で三十二名だったと思いまするけれども、何度も逮捕歴があり、しかも重要な分子として法律違反の行為に役割りを演じたというふうな者につきまして、この氏名をある程度記者会見の際に明らかにしたことがございますので、私はその程度が適当な措置ではなかったか、こういうふうに思っております。したがいまして、御要求がありますれば、東京地検が公表いたしました三十二名の者につきましては資料を用意してございますので、それを差し上げたいと思います。
  106. 岡沢完治

    岡沢分科員 私ももちろん公益の立場から御要求を申し上げているわけでございますし、また一般の慣例といたしましても、成人の被疑者の場合、被告人の場合、逮捕勾留の段階でも新聞等に氏名が往々出ることがあることは御承知のとおりであります。まして、この東大の場合一つをとりましても、東大は国立でございますから国有財産、いわば国民の財産、国民の血税によってまかなわれている学校だと見ていいと思いますが、公表された範囲内でも五億円近い物質的な損害もあるということを前提にいたしましても、先ほど申し上げましたような一般学生、これから進学する者、教授国民の被害を考えましても、私は責任の所在をはっきりするということのほうが公益に合すると確信をいたします。そういう意味から、先ほど刑事局長が御答弁になりました三十数名ではなしに、五百余名全体の氏名の公表を私は要求いたします。それは決して学生個人に対する私怨ではございませんけれども、学生が覆面をかぶっていかにも責任をのがれるような行為をしながら、実際には国民に、あるいは先ほど申しましたような各方面に大きな被害を与えておる実態を本人にも確認をしてもらって、責任の重大さを自覚さす、それがまた今後こういう学生の発生を防ぐ大きなブレーキにもなるのではないか。われわれも何とかして、先ほど申しましたような意味で学生自体も大きな被害者だと思うものでありますだけに、私はこの際、情を忍んで公表されることを要求いたします。  また、先ほど刑事局長の御答弁で、この学生運動の原因について若干お触れになりました。私も、国際的に見ましてもこれは一般的な傾向としてきわめて根が深い、また原因も一つではないということは重々承知いたしますけれども、しかし、やはりだからといってこれは原因解明が不可能だという前提に立つのでは、これは怠慢ではないか。そういう意味からも、少なくとも逮捕し、勾留をされた段階におきまして、その学生個々につきまして、年齢とかおい立ちとか、あるいは大学に入るまでの高等学校の環境とか、交友関係とか、特にその学生の年齢等を考えました場合に、それを教育した先生方の思想傾向というものを含めて、私は今後の対策の手段として明らかにしていただくことは、私は決してその思想を敵とするという立場ではなしに、こういう大学紛争を未然に防ぐ、あるいは政策的に防止するという立場から必要ではないかと思いますので、事情の許す範囲のそういう面での原因究明についての御努力をお願いいたしておきます。  最後に、九州大学の井上正治法学部長の発言について当局の見解を聞きます。  井上教授はTBSテレビの公開放送におきまして、私の敵は警察です、警察は私を敵視していますということを明言されました。国立大学の、しかも法学部の教授であります。しかも専攻は刑法であります。国立大学の刑法の、しかも現職の法学部長が国民に向かって、警察は敵だという御発言をなさっておることについて、どういうふうにお考えになりますか。
  107. 川井英良

    川井政府委員 常識的にいって、やはりたいへん検討の対象になることばではなかろうか、私もそう思います。
  108. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 岡沢君、時間が参っております。簡単に願います。
  109. 岡沢完治

    岡沢分科員 この問題はぜひもう少し誠意のある、あるいはお互いに法律に基づいた論議を尽くしたいと思いますけれども、時間が参りましたのできようはこの程度でやめまして、法務委員会その他で御質問をさしていただくことを留保いたします。
  110. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 島本虎三君。
  111. 島本虎三

    島本分科員 私の場合は大体公害の問題一つにしぼって、いま法務省考えられているいろいろな立案の根拠やその進行の状態等についてお聞きしておきたい、こういうように思うわけでございます。  まず、公害というものの特質について、法務省のほうでも今後いろいろな点で、この多難な問題の処理に当たられることは言うまでもないわけであります。いろいろ私どもも委員会でこの問題を扱ってまいりましたが、幾つかの特徴をあげることができます。  この特徴の第一は、侵害の規模が意外に大きくて被害の範囲が広いということ。第二番目は、加害者らしきものが存在するが、これを特定しがたいことが多いということ。第三番目は、加害と損害の因果関係の立証がなかなか困難であるということ。第四番目は、加害者が法令の規制を順守していて、一応の合法性を保持しているのに被害が発生するということであります。第五番目は、損害が物的なものにとどまらないで、精神、人体の健康、快適な生活等にかけがえのない、こういうような状態にまで及んで、しかもこれが不断に継続されておるという、これはやはり典型的な一つの特徴だと思うわけであります。いままで一たん裁判になりますと、これが意外に長引いてしまいます。要するに典型的な公害公害らしき公害ほど民事司法的解決の意味が小さくなる傾向があるのみではなくて、今度は民事司法的な解決は、公害が徐々に累積してきて被害が受忍限度を越えるに至って初めて発効される傾向が多いということです。そうなりますと、自然に事後的なものとなってまいりまして、継続的、反復的な侵害の救済に対して至ってこれは力が弱くなってしまう。こういうようなことからして、私はいままでの国会で、またいろいろ扱ってきた体験等を通じまして、公害の処置はいままでと同じような考えではだめだ、こう常々思ってまいったわけであります。  いま公害罪ということが叫ばれておりまして、立法調査活動を進めておられるということを聞いておるわけであります。また、報道でもこれを私は若干存じておるわけでございますが、不幸にしてその程度でございまして、その内容並びに進行の状態はわかりません。私は早くこれを進めてもらいたいし、早くこれを立法化してもらいたい、こういうような気持ちがあるから、いまのような私の体験に基づいて、この解決の困難性を加えて公害罪が一日も早くでき上がることを望むわけなんであります。この件についてどのようなことになっておられましょうか、ひとつ発表願いたいと思います。
  112. 川井英良

    川井政府委員 公害罪につきましては、昨年の秋の法制審議会刑事法特別部会でその他の犯罪類型との関係において最近の公害の実態にかんがみて公害そのものを処罰できるような法律をつくるべきではないか、特に先ほど御指摘がありましたように、法律問題といたしましても因果関係の立証というのはたいへん困難である。だから因果関係の立証を必要としないで、そういうふうな多数の人の健康を害するようなものを放出とか流出とかさせることによってそういう公共の危険を生じたということだけで、その刑事的責任を問えるような方法考えるということはいかがなものだろうかというふうな提案がなされまして、大方の賛成を得まして、いま刑事法特別部会一つの小委員会でもってこの問題を取り上げて、法律の条文化をするためにいろいろ検討中でございます。現実の客観情勢とにらみ合わせまして、優先的に取り扱って研究を進めておりますので、かなり近い機会にこの小委員会の結論が一応出るのではないか、こういうように期待いたしております。出ればこれをまた刑事法特別部会の全体会議にかけまして、そこで了承されますと刑法改正の全般の問題の中に繰り込まれまして、そして刑法全般の全面改正の一環としてそれが法制審議会の総会にかかる。総会で可決されますとあらためて答申のかっこうにおいて法務大臣にその全文が参る、答申される。その段階で私ども政府の手に渡りますので、政府の手元におきまして慎重検討いたしまして国会にかけるかどうかということを判断する、一応こういうふうないきさつになっておりますけれども、公害問題につきましては小委員会で鋭意迅速に検討しておる、こういうことでございます。
  113. 島本虎三

    島本分科員 そして、いま取り上げられているその公害罪に該当するような一つ一つ事例があろうかと思います。それはどの辺まで取り上げられておりましょうか、技術的に事務的にその点おわかりの程度でお示し願いたいと思います。
  114. 川井英良

    川井政府委員 あるいはちょっと質問を取り違えておるかもしれませんが、たとえば水俣病とか、あるいは阿賀野川の水銀中毒事件、あるいは神通川のいわゆるイタイイタイ病とか、その他水質汚濁ないしは大気汚染、あらゆる公害問題にわたりまして、法務省は刑事事件、民事事件だけではありませんで、人権問題として処理いたしましたものもかなりな数に及んでおります。したがいまして、そういう民事、刑事ないしは人権問題として問題になったようなケースを、私ども刑事局におきましてはすべて過去にさかのぼって一応集約いたしまして、そういうふうな事例にかんがみまして、それらの最も典型的なものを最も確実な方法でつかむにはどういうふうな構成要件にしたらいいかということを検討中でございます。
  115. 島本虎三

    島本分科員 現在考えられているものは何と何だというようなことまで、ついでですから……。
  116. 川井英良

    川井政府委員 御承知のとおり、公害は対策基本法で掲げられておりますように非常に広い場面になっておりますが、刑事事件といたしましてはおそらく水質汚濁の関係大気汚染の関係、この二つくらいが一応公共危険罪という形でつかむことができるのではないか。その他のものにつきましても必要性は認められますけれども、いま小委員会で検討しておる段階では刑事事件でつかむことは非常に困難だということでありますので、繰り返しになりますが、水質汚濁の関係大気汚染の関係にしぼって現在は検討中でございます。
  117. 島本虎三

    島本分科員 大体公害基本法では、基本法が認めている公害というのを六つあげておるわけであります。六つあげておるならば、せめてその六つに対してはやはり法的に規制してもしかるべき問題じゃないかとも思いますが、いま水質汚濁の問題と大気汚染の関係のみに限定されておられたようであります。以前食品関係の問題もこれには含めるということを私も若干聞いておったわけでありますが、この食品関係は当然基本法に入っておらないと思います。おりませんけれども、これを含めるということは一歩前進じゃないかと思ったのですが、これはいま考えておられないような御答弁でございます。これはいかがなものでございますか。
  118. 川井英良

    川井政府委員 これはたいへん規制の場面が広範でございます。御承知のとおり業務上過失致死傷罪というようなものである程度はまかなってまいりましたけれども、その他一般、特別法の関係公害関係で罰則を持っておるものだけでも、私ちょっと現行法を整理してみましたところ、これは二十幾つ法律があるわけでございまして、水質汚濁の関係、あるいは大気汚染の関係、あるいは騒音の関係、それから地盤沈下の関係、その他いろいろ、先ほど六つあげましたものにつきまして多いところは七つ、八つから十くらいの法律がございまして、それぞれ今日罰則を持っておるわけでございます。そういうようなものをいろいろ検討いたしまして、最も被害の大きい大気汚染と水質汚濁の関係以外の公害は、一応現行法にあるその他の罰則でもってかなり十分まかなえるのじゃないか。むしろそういうふうなものを刑法の中へ取り込んでまいりますと、肝心なものは取り締まりが困難になるというかぼけてくる。最も重点的なものに焦点を合わして、そこで立法したほうが、その他の法律との関係において適当ではないかというところが、現在その小委員会の大方の意見でございます。まだ小委員会のほかに、先ほど申し上げましたとおり全体会議もございますし、総会もございますので、ここでいろいろな立場から御指摘をいただきました意見もその委員会のほうに反映をいたしまして、十分あらゆる角度から検討いたしまして最もいいものをつくりたい、こういう気持ちでおりますが、率直に申し上げまして、いままでやっておりますのは水質と大気の点に焦点を合わしておる、こういうことでございます。
  119. 島本虎三

    島本分科員 水質と大気汚染に焦点を合わした、それは賛成なのです。ただ基本法は六つの公害を具体的に名前まであげてあるわけです。基本法であげられておるもの、この程度には範囲を広げられないかどうか。これはやはり基本法が認めて、具体的な問題は全然ありませんということならなおいいのかもしれませんけれども、そういうことはあり得ない。やはりこの二つにしぼるならば、あとの四つも被害が当然起こる。これは国が基本法によって当然処置しなければならない種類のものですから、そういうようなものも合わせて考えるべきではないか、こう思っていままで聞いていったわけでありますが、この他の四つは全然入れる意思はございませんか。
  120. 川井英良

    川井政府委員 十分検討いたします。
  121. 島本虎三

    島本分科員 その場合には、やはり産業界やいろいろ各方面から、ことにこれは新しい意味で、われわれは期待いたしますが、ある場合にはこれに恐怖を持つような人たちも、私はあると思います。そのような場合には、えてして圧力という問題が当然かかってまいります。そのためにひん曲げられて、そしてとんでもない法案になることは万大あり得ないと思います。これにはやはりいろいろ皆さん方を中心にして、異常なる最近の情勢等からして、決意をもって当たってもらわなければならない。こういうような圧力なんかに一切屈しないで、やはり人命尊重の上に立って、あくまでもこれの立法化に邁進する、こういうような決意でやってもらいたいわけですが、大臣、この点よろしゅうございますか。
  122. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 全く同感でございます。
  123. 島本虎三

    島本分科員 それと、公害裁判といままでいわれております各種の裁判、こういうようなものは人命にかかわる問題が意外に多うございます。あるいはそればかりだといっても差しつかえないかもしれません。しかし裁判はまさに遅々として進まないのが現状であります。そういうようなことからして、公害裁判に、特に人命にかかわるような場合には、何らか急いで結論を出させる方法がないのかどうか。これは緊急の問題ですが、こういうような点は大臣十分考えてしかるべきじゃございませんでしょうか。現行と同じような考えで臨みますか。これは百尺竿頭一歩を進めて、公害裁判に関しては、今後重大な決意をもって審理を早める、そして実効あらしめる、こういうような決意で臨むのが法務省のこれからの生きた態度じゃなかろうかと思います。大臣の決意を伺っておきたいと思います。
  124. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 全くごもっともなことでございますし、今日も裁判を早くという声も強いので、今後とも全力をあげて御趣旨に沿ってまいりたいと存じます。
  125. 島本虎三

    島本分科員 それではイタイイタイ病の問題になりますけれども、鉱業法の百九条によりまして無過失責任賠償請求、これで患者、要観察者、遺族等を含めて三百七十七名の方々が損害賠償の請求を裁判所に行なっておるわけであります。その間に裁判長の忌避問題が起こったりいたしまして、なかなかこの問題は遅々として進んでおらないようであります。イタイイタイ病といわれておりましても、これはカドミウムによる被害でございまして、その裁判でございます。そうなりますと、これは私はだれが見ても明らかじゃないかと思うわけです。ましてこの鉱業法にも明らかなように、イタイイタイ病の原因物質がカドミウムであることが明らかになれば因果関係がはっきりする。そしてこれだけでも裁判上の因果関係が成立するのであるから、法的にはこれは十分やれるということは自明の理じゃないか。この量の関係までいったりいろいろやったら、また伸びるだけである。何かずれてずれておそくしているような感なきにしもあらずであります。こういうような重大な問題に対しては、やはりこれは重大な決意をもって臨む必要がもちろんあるんじゃないかと思うのです。いま私がこうあげた点、やはり不備でございましょうか。私は、これだけでも早くやれる、こういうような確信を持って言っているわけですが、大臣いかがですか。
  126. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまの問題は非常に重要な問題でございまして、法律解釈等もございますので、民事局長から説明いたさせます。
  127. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 具体的な民事の訴訟事件につきましては、法務省の民事局では全くタッチいたしておりませんので、裁判の実情がどうかということについて詳細お答え申し上げることができないのは残念でございます。  ただ、しかし考えられますことは、先ほど御指摘になりましたように、公害問題につきましては、原因関係が把握できない、またその原因を与えた者がだれであるかということが、特に原因の複合いたしております場合に把握できないのみならず、その原因と結果の関係が単に因果関係があるということでは、現在の法律上は損害賠償の請求もできないわけでありまして、これはいろいろの配慮から相当因果関係ということがいわれております。これによって結果に対する責任を負うということになるのでございます。  ただいまのカドミウムの被害の場合に、一定の原因たる事実があって、それによって生じた結果がはたして相当因果関係があるのかないかというふうなところも、おそらく訴訟上の論点になっておるのではないかと考えられる次第でございます。これは公害問題が起きまして以来、私どもも非常に頭をいためておる問題でございます。厚生省からもいろいろ相談がございます。今後の対策等についても相談を受けておるのでございますけれども、なかなか刑事と同様に困難な問題が伏在をいたしておるわけでございます。これが現実の訴訟になりました場合に、なおさら裁判所といたしましては、その責任の帰属を明確にする、またその賠償の範囲をどうするかというふうなことになりますと、これはなかなか容易ならざる困難な問題であろうかと思うのでございます。そういう意味で、訴訟があるいはお説のように長引いておる面もあろうかと思うのでありますが、裁判所も、最近の自動車事故等の問題もこれは一種の公害だという意識で訴訟の促進をはかっておられるようでございます。同様に、今後生ずる一般公害の場合におきましても、何らかの対策を立てて訴訟の促進をはかられるのではないか、かように考えておる次第でございます。   〔橋本(龍)主査代理退席、主査着席〕
  128. 島本虎三

    島本分科員 いまの御答弁は、ますます私はその解決よりも困難になるような印象を受けて聞いて残念です。と申しますのは、イタイイタイ病の被害者は、半年に十八億もの利益をあげるといわれておりますところの三井金属の神岡鉱山、その繁栄のいわば犠牲者と一応考えられるのです。そうしてそういうようなことを言ってはなんですけれども、現実にもう調べて、ある程度以上のデータもあがっておるわけです。現実の問題だけを見たらないのです。以前にはカドミウムは流してしまった。昭和三十一年以後、今度カドミウムが原子力開発のために必要な中性子中和材ということになって、これが高価な様相を呈してきて、まっ先にそれをつくる。流すばかはありません。そうして現実ばかり見ていても、もういまは流していませんから、何もとらえられない。こういうような裁判は幾らやってもこれはだめですよ。以前の傾向から十分その点調べて当たるのでなければ、私はほんとうの解決にならないと思う。最も私が残念なのは、それだけじゃないのです。医療費や看病、その他目に見えない出費が相当患者にはかさんでおるわけです。それと、貴重な労働力を失ったり農業被害をこうむったり、そして裁判に踏み切らざるを得なくなった、こういうような状態でも裁判は遅々として進まない。そうして加害企業がみずからの加害責任を認めて被害者に対して賠償の義務を負う、まさにこれは当然であると思われても、その辺は一切否認によってこれがもうだめになってしまう。流しませんと言えば流し  ておらない。現に調べてみたらいま流していないです。全部精製してもうけておる、こういうような状態なんです。そういうふうになりました以上、これはもう裁判による以上の救済はありませんが、これの裁判による救済さえいつの日に結論が出るかわからないような状態に追い込まれてしまっておるではありませんか。私は、そういうような点からいたしまして、この被害者が多額の裁判費用の負担、こういうようなことは、まさに日本有数の大企業、三井金属を相手にしての裁判に踏み切った以上、これは費用の点で並みたいていのものじゃなかろう。したがって法のもとに平等であり、ひとしく裁判を受ける権利を有するはずなのでありまするけれども、これがその面から逆に否認されるような結果を招来することは私は望ましくないと思います。したがって、やはり大臣はじめ公害の問題は今後積極的に取り組みたい、こういうようなお考えの表明がございましたが、今後公害裁判の場合には特に実情によってこの費用を免除する方法を何か新しい見地から、またいわば法のもとに平等であるというこの考え方から、経済的な負担にたえかねて、あたら正義が通らないということがないようにするために、特にこの公害裁判の場合には費用免除の方法等を今後考えられてしかるべきじゃないか、こういうように思いますが、大臣、これいかがでございましょう。
  129. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 ただいまのお話もございますので、われわれといたしてもさらに検討を加えてまいりたいと思います。
  130. 島本虎三

    島本分科員 大臣、いつも検討ばかりじゃ見当が狂っちゃうです。たまにそのとおりですということを言ってもらいたいです。いま言ったこと間違いですか、私の言ったこと。間違いでなければ、検討より一歩進めてそのように研究いたしますくらいは言っても差しつかえないじゃございませんか。
  131. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 裁判に費用がかかりますことはお説のとおりでございます。これは何とかして費用の支出に、負担にたえられない人たちを救済する方法はないかと、こういうことでございます。現在、民事訴訟法にも訴訟上の救助の規定がございますし、また、別に人権擁護の観点から法律扶助の制度もできております。こういったことを利用するのも一つ方法ではなかろうかと思いますが、しかし、特に公害に限りまして御意見が出ましたので、その点につきましては裁判所のほうにもその御趣旨を伝えまして、今後の問題として検討いたしたいと考えます。
  132. 島本虎三

    島本分科員 成果のあがるように心から期待して皆さんの努力を感謝しておきたいと思います。感謝されるような結果の招来することを心から期待しておきます。  それで、同じ公害の裁判におきましても、いろいろな要素があるうちで水俣病に関して、これは有毒の重金属を流してその有機水銀によるところの被害患者百十一名、四十二名死亡、こういわれておりますが、もうすでにその原因で死亡してしまったならば、これはまさに警察権さえ発動しても差しつかえないんじゃないかと、こういうように私は思われるわけであります。三十四年の十月には、水俣工場ではネコによる実験をして、酢酸工場の排水をネコに与え、ネコは——それは一〇〇PPM以下の水銀の含有量だったそうですが、七月七日から始めて、二十グラムずつの基礎食にそれを食わしたところが、十月六日に失調、麻痺、死亡と、動物実験の結果ははっきり立証されておるというととはおわかりのとおりなんです。そしてこれが一人や二人ならまだしも、四十二名という、こういうような大量の死亡者を出しておる。原因はまさにそれだと厚生省が認定しております。厚生省がはっきりこれを認定しておるわけです。そうした場合には——それさえもいまだに争わなければならない、結論を見出すことができない、それほどおそいものであるということになりますと、まさに私は遺憾なんであります。厚生省や国がそれが原因ではないと、こう言った場合はまあどういうようになるかわかりませんが、国が責任をもって原因をこれだと認めている問題です。それでさえも裁判になってはこのようにおそくなる。こういうようなことではいつの日にか患者が救われるのか、これはわからぬじゃありませんか。国が結論を出したものに対しては、やはり裁判の場合もこれは促進されてしかるべきじゃないか、こういうように思うわけですが、大臣いかがでございましょう。
  133. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまお話しのように厚生省からもそういうあれを出しているそうでございますので、その線に沿って今後善処してまいりたいと存じます。
  134. 島本虎三

    島本分科員 ほんとうに善処してもらいたい、こう思います。  なお私は、今後の公害問題に対処する法的ないわば責任者の大臣にひとつ見解を伺っておきたいと思うことが一つ、二つございます。  いままでいろいろ申しましたように、公害紛争、これは従来は一般民事に持ち込まれることがわりあい少ない。そしてこれはかえって法的の根拠のない公害担当の行政庁に苦情として訴えられることが多いわけです。したがってその理由も、一般民事調停では、これは調停委員に事件の真相を理解させるだけでも骨が折れる、公害の特質上。そして時間と労力が必要以上によけいかかる。こういうようなことから、公害紛争では高度の技術的、専門的な知識、経験、こういうようなものが必要であるために、実務から遊離した一般調停委員にはなじまない点が多いわけです。そうなりますと、適当な解決は期待できない、こういうのが一般傾向としてあるわけです。しかしながら、公害担当の行政官、こうなりますと、常に苦情を処理し、データを集めておりますから、したがって経験も重ねております関係上、公害施策にはなじんでいる。こういうような状態からして理解も早い。行政指導の名において相当の効果をあげているというのがいままでの結果であります。  しかし公害基本法ができて、公害関係法ができている現在の法体系の中で、公害が発生してもその根本的な是正さえまだやっていけない、救済さえもできない。こういうような状態の中では、やはりもっと法体系を別なものに進めなければならないのじゃないか、こう考えられるわけでありますけれども、そうしている先に被害のほうが先に起こっております。私は、一方この行政指導を担当する公害担当官が紛争の処理や調停をしてはどうだろう、こういうようにも考えられないわけじゃございませんが、これでもまた問題があると思います。超越性や公明性、こういうようなことは当然要求されましょう。そうなりますと、今度担当行政官から独立の行政委員会を設置して、公害に対してはやはり行政組織法第三条による、こういうような機関、最近の公取は少しおかしいところもありますけれども、せめてあの程度までのものにしないと、これは現実の問題として公害の解決にならないのじゃないか、こう思うわけなんですが、大臣、この私の考え、間違いでしょうか。
  135. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまお話のように、なるべくすみやかに基本的人権立場から実効をあげるようにというお話でございますので、今後とも現在の点不十分な点があれば再検討を加えていきたいと考えております。
  136. 島本虎三

    島本分科員 大臣は全部検討でありました。しかし、もうこれ以上時間もなくなってどうも残念でありますけれども、私も公害を担当し、いろいろやってまいった中で、やはり公害紛争の処理ということは緊急な問題であるということ、それから、それはもう場合によっては強権的に行なわなければならない問題があるということ、こういうようなことからして、やはりこれはもう強権調停あたりまではかってやるのでなければ、いまだに裁判が長引いたああいうような状態、国が結論出してもまだそれが白だというとどうにもならないような現在の状態の中では、人が死んでも解決にならないという点はまことに残念に思うわけであります。したがって、今後の体系としては、いわば職権調停のできるような機関が必要なんじゃないか、こういうように思っているわけなんですが、大臣、私のいろいろ言ったことの中から、私の考え、間違いでしょうか。
  137. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまありまする公害関係法律で不十分であろうかと存じますので、いまの御高見も拝聴いたしましたので、われわれも大いにその意を尊重いたしまして、検討してみたいと思います。
  138. 島本虎三

    島本分科員 では、その検討が実を結ぶことを心から期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  139. 臼井莊一

    臼井主査 井上泉君。
  140. 井上泉

    井上(泉)分科員 簡単な問題ですから、ひとつ率直に御答弁願いたいのですが、大臣は白鳥事件というのを御存じですか。まずこの点から……。
  141. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 存じております。
  142. 井上泉

    井上(泉)分科員 白鳥事件で村上さんが拘禁されて、現在何年になるのか、これを御存じですか。
  143. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 こまかい点よく記憶しておりませんが、十五、六年になるかと存じます。
  144. 井上泉

    井上(泉)分科員 勾留されてからどれくらいになるかということは、白鳥事件では、そうこまかいことじゃない。一番大事なことなので、これを御存じないということについては非常に遺憾ですから、十分ひとつ研究をしておいてもらいたいと思います。いま白鳥事件の再審の要求が出されておるということ、このことは御承知だと思いますが、どうですか。
  145. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 承知いたしております。
  146. 井上泉

    井上(泉)分科員 その再審の結論については、これは裁判所の判断によるわけですけれども、問題は、無実であるからということにおいて、いろいろな再審の請求がなされておるわけです。現実において、いま大臣も言われましたとおり、十五年も拘禁をされておるということは、これは無実な村上さん本人にとっては耐えられない人権の問題だと思うわけですが、かりにこれが法の規定による刑の中で服役をしておるとしても、すでにもう三分の一は経過をしておるわけです。もう釈放の要求がずいぶんなされておるのにかかわらず、まだ一向釈放されないわけです。この点については、もう釈放されてもしかるべきだと思うのですが、どういう点に釈放のできない問題があるのか、その点をひとつ大臣がおわかりでなければ、わかっておる方から御答弁願いたいと思います。
  147. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 白鳥事件の仮釈放の問題についての御質問でございますが、仮釈放の審理は、御承知のとおり地方更生保護委員会で審理決定をするということになっておりまして、ただいま北海道の地方更生保護委員会で審理中でございます。仮釈放の問題は、御承知のとおり、刑期の三分の一を過ぎたということと改悛の情があるということが刑法上の要件になっておりますが、受刑者を釈放するということでございますから、そのほかに、再犯のおそれがないかどうかという点、それから社会感情がこれを是認するかどうかというような点をもあわせて考慮いたしまして、最も適当な時期に仮釈放の手続をする、こういうような運用をいたしておるのでございまして、現在北海道の地方更生保護委員会において慎重に検討いたしているというふうに承知いたしております。
  148. 井上泉

    井上(泉)分科員 北海道の更生保護委員会でというのは、いまうしろにおられます田中先生が法務大臣のときに、非常に便宜をはかっていただいて、私その獄中に面会に行ったのであります。そのときにも札幌のほうで審査中だ、こういうお話でありましたが、一体いつそのめどをつけるおつもりなのか。これは向こうでやっておるから本省のほうは何も知らない、向こうにまかしておく、こういうことでは、やはり法の運用というものから、あるいは人権を尊重するたてまえからも、私は、そのまま放置するということは、こういう白鳥事件のような問題によって村上さんが不法に拘禁されておる実情からして、不適当だと思うわけですが、この点について、いつごろまでに結論をつけられる見通しにあるのか、その点についての御答弁を願いたい。
  149. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 問題の事件の仮釈放の時期についてのお尋ねでございますが、これは結論を申し上げますと、現段階で、いつということはお答え申し上げかねる次第でございます。  仮釈放の事件は、御承知のとおり全国で非常にたくさんございますが、全体的に見ますと、審理を始めましてから二カ月、三カ月という段階で決定が行なわれるというケースが多いのでございます。しかしながら、ケースはまちまちでございますので、中には六カ月ぐらいかかるものもございますし、さらに一年ぐらい審理にかかるというケースも、ときにはあるのでございます。個々のケースによりまして、本人の性格とか、それから刑務所内の行状あるいは仮釈放になった場合の帰住地の状況とか、あるいはそれを取り巻く社会感情の問題、いろいろ問題がございまして、これらの諸事項を勘案いたしまして、本人の更生のために最も適当だと思われる時期に仮釈放をするように、地方更生保護委員会では配慮しておるわけでございまして、本件につきまして、御承知のとおりすでに数カ月間審査にかかっておりますが、いつその決定がなされるかということは、ただいま私どもとしては承知いたしていない次第でございます。
  150. 井上泉

    井上(泉)分科員 その再審の要求が裁判所で採択をされる、これは新聞報道ですけれども、まあ六月ごろには再審の要求が通りやせぬか、いままでのいろんな裁判所に提出した事実の資料等によっても、当然再審をしてしかるべきだというのが、もう一般的な意見になっておるのであります。そのことは、やはり村上さんが無実であることを裏づけする、実証するために再審が行なわれるので、これは普通の仮釈放を要求する被告とは全然趣を異にする方なので、その点からも、私は釈放の条件というものを一つのしゃくし定木に当てはめた形で考えるのは非常に間違っておると思うのですが、これについてはやはり、そういう事件の性格から見て、もう釈放すべきではないかと思うのです。その点についての法務大臣見解を承りたいと思います。
  151. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 ただいまの仮釈放の問題と再審とは関係がない、そういうふうに考えております。
  152. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは確かにそうですよ。再審と仮釈放とは関係がないです。関係ないけれども、それなら再審は再審として考えた場合でも、それでかりに無実でないとして、いま刑が確定をしておる。刑が確定をしておるけれども、もう三分の一以上は経過をしておる。三分の一以上が経過をしておるという事実から考えても、仮釈放の条件はある。改悛の情があるとかなんとかということは、本人は何もしてないというのですから、改悛も何もあったものじゃない。私はそのことに固執をするということは間違っておると思うのですが、それについての局長見解を承りたいと思います。
  153. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 白鳥事件は、ただいま再審の申し立てをして、その点についても審理中であるということは、御指摘のとおりでございます。大臣から答弁がございましたとおり、再審の手続中であるということと仮釈放の問題とは直接関係ございません。したがいまして、再審の手続中でございましても、仮釈放ができないということではないのでございます。ただ時期的に申しまして、いま御指摘のとおり、間もなく再審開始になるかどうかということが問題になっておりますので、それと仮釈放の時期と何か関連があるように考えられる向きも、あるいはあろうかと思いますけれども、審査会といたしましては、そういう点はおそらく頭に置かず、仮釈放は仮釈放なりに審理を進めている、というふうに私どもは考えております。   〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕
  154. 井上泉

    井上(泉)分科員 その再審の問題については、これは裁判所の関係ですから、これの論議はさておきまして、仮釈放の申請について、仮釈放の審理を二年前からやっておるのでありまするから、もうたいていのところ、結論を出さないということはおかしい。これほどかかるということは、私は不可解千万に思うわけですが、これはひとつ大臣どうですか、二年前に私が、田中先生の法務大臣のとき向こうへ行ったときに、再審の審査会にかけるとかいうようなことを話されておったのです。それが、刑務所で本人に面会したときにも、その話がなされておったのですが、それから二年たって、まだ今日再審のことについて検討しておる、こういうことですが、こういう状態というものは、これは仕事があまりにもルーズなスローモーなやり方ではないか、こういうふうに思うのですが、そのように思わないですか。
  155. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 裁判所に関することでございますから、直接私どものほうではございませんが、かなり時間がかかっているようでございますけれども、ほかの事例に比較して、そう長過ぎるということでもないそうでございます。
  156. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、法務大臣はどういう仕事をされるのが任務ですか。その点が聞きたい。
  157. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 法秩序の維持並びに基本的人権の尊重ということが、法務大臣としての一番大事な仕事だと考えております。
  158. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、その一番大事なお仕事である基本的な人権を守るその仕事から考えて、二年もまだ、釈放していいのかどうかという審査がかかっておるということは、これは基本的人権を守るという立場から見て、あなたはおかしいと思わないのですか。
  159. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 お説のとおり、ほんとうにそれは私も遺憾に思いますが、仮釈放の問題は、去年の秋から始まったことだそうでございまして、しかし、お説のとおり非常に長くかかっておりますことは、私も遺憾に思っております。
  160. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは去年の秋からだと言いますが、秋といいましても、九月も十一月も秋ですから、これは三カ月も四カ月も違いがあるわけですが、一体何月から始まっておるわけですか。これはひとつ局長のほうから……。
  161. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 正確に記憶いたしておりませんが、十月ごろというふうに記憶いたします。
  162. 井上泉

    井上(泉)分科員 局長は、大臣の任務というものは、いま大臣が言われたとおりに確認をしておられるのですか。その点ひとつ……。
  163. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 法務大臣は、法務行政全般について指揮、監督の責任を負っていらっしゃる、またその権限をお持ちになっていらっしゃるというふうに承知いたしておりますが、仮釈放の審査につきましては、具体的な事件の審査決定につきましては、地方更生保護委員会の専権に属するところでございまして、具体的な事件につきましては、大臣指揮権は及ばないというふうに考えております。
  164. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは局長、その具体的な指揮権は及ばないというのは、大臣の任務とする、基本的な人権を守るために法の秩序を維持していくということからいうと、そういう仮釈放の委員会というものも、一つの法のもとにつくられた委員会でしょう。では、その委員会の基本的な人権を守る作業というものがこのように渋滞をしておるということは、これは大臣指揮権がないとは言うても、大臣としては、当然そういうことについては意見を申し入れることはできるはずですが、できないですか。
  165. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 法務大臣一般的な指揮監督権を持っているという点は、御指摘のとおりでございます。ただ、仮釈放の審理決定ということになりますと、これは、裁判によって確定した判決内容、これを執行しているものにつきまして、どの段階で仮釈放の手続に移すかという問題でございます。司法の運用と非常に深い関係があるところでございまして、そのために、地方委員会においてこれを審理決定するという委員会制度が定められているのでございまして、委員会制度がありまして、その委員会において慎重に検討し、公正妥当な結論を出すというところに、この制度の特徴があるわけでございまして、具体的な事件につきまして、法務大臣がああせよこうせよというふうな指示をするのは妥当でなく、また、そのような権限を与えられていないというふうに考えております。
  166. 井上泉

    井上(泉)分科員 その委員会の審査がどのように手間どっても、それに対して行政指導する大臣としては、それを指導するところの権限を与えられていない。そうすれば、そういう委員会に対しては、どこが行政指導するのですか。
  167. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 委員会の運営につきましても、大臣一般的な指揮権は持っておられるところでございまして、全く指揮監督権がないというわけではございません。ただ、先ほども申し上げましたように、個々の事件の審理ということになりますと、ケースによって非常に違うのでございまして、先ほど申し上げましたように、二カ月、三カ月で結論の出るというふうなケースもございますし、ときには六カ月かかりあるいは一年かかってようやく結論に達するというような事件もあるのでございまして、ただいま問題になっている事件につきましても、現在数カ月かかっておりますが、そのことだけで、この事件が長くかかり過ぎているというふうに見ることは、必ずしもできないのでありまして、その点につきまして、やはりこの種の事件の審理決定でございますから、ケース・バイ・ケースで考えていかなければならないというふうに考えております。
  168. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、ケース・バイ・ケースで考えるとしても、去年の十月から始めておって、それが現在までやっておっても、そう長くはかかっていない、こういうふうにあなたはお考えになっておる。私は非常に長いと思うのですが、一体あなたは、これはいつごろまでに結論を出されるのが、この種の事件とすれば適当だと思うのですが、その点ひとつ……。
  169. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 私ども、事件内容につきましては、裁判所の判決程度のことしか承知していないわけでございまして、現在審査会でどの程度の資料を入手しており、また今後どの程度の資料を収集し、また調査を必要とするかということを私ども承知いたしていないわけでございまして、この段階で、いつごろが適当かということは、私どもとしては判断いたしかねる次第でございます。ただ、しかしながら、非常に重要なケースでございまして、それだけに、いつまでも便々として時期を過ごしていくということは許されないことは当然でございまして、おそらく北海道の地方委員会におきましても、ただ漫然と時期を過ごしているということは万々ないというふうに私ども考えております。御承知のとおり、この事件につきましては、各方面から、私どものほうにもいろいろ陳情がございますし、また、地方委員会のほうにもいろいろな陳情があったというふうに聞いております。さようなケースにつきまして、漫然として、審理を進めることなくして時を過ごすということはあり得ないと思いますので、充実した審理をできるだけ早くいたしまして、最も適当な時期に決定がなされるというふうに、私どもも期待しているわけでございます。
  170. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういうあなたの期待が実現をされるように、やはり上級の機関として、それの行政指導といいますか、助言なり、そういうことをしていただきたいということをお願いするわけですが、その私の要請に対してお答えを願って、私の質問を終わりたいと思います。
  171. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 具体的事件の取り扱いにつきまして、何らかの指導をするということは妥当でないと存じますが、一般的な問題につきまして、何か審理を促進するためのネックになっているというような問題がございますれば、できるだけさような点は解消するように努力をいたしてまいりたいと考えております。
  172. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは、あなたがさっき、白鳥事件のことはこうこうこういう問題だからと言ったこととまた違うじゃないですか、そういうことを期待すると言ったことと。何か、そういう白鳥事件のような事件については、特に配慮して審査を進めるように希望すると、あなた言ったでしょう。私は、あなたのその希望するという気持ちを、ひとつ助言をしてやってもらいたいということをお願いをしたのですが、それができないのかどうかということを重ねてお尋ねしたいと思うのです。
  173. 鹽野宜慶

    ○鹽野政府委員 先ほども申し上げましたように、具体的な事件の取り扱いについて助言をするということは、私ども妥当でないと考えております。しかしながら、もし審理を進めるにつきまして、何らかの事務的な障害、たとえば十分に調査したいあるいは出張して調査したというような場合に、予算面等につきまして特別のネックがあるというような問題でもございますければ、そういうネックを取り除いて、できるだけ審理が促進できるように、法務省としてもできるだけの努力をいたしたい、こういう考えでございます。
  174. 井上泉

    井上(泉)分科員 それでは、現在審査中だそうですから、その審査の経過が現時点でどういうふうになっておるのか、この審査の状況等の向こうのほうの報告を求めまして、それを資料として、法務委員会等で再度この問題について質問をいたしたいと思いますので、ひとつその準備をしておっていただきたいと思います。終わります。
  175. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 沖本泰幸君。
  176. 沖本泰幸

    沖本分科員 法務大臣並びに法務省関係のお方々に、出入国管理業務の内容について御質問したいと思います。  これは前々からいろいろ御質問してきたわけでございますが、最近になりまして、法務省のほうも、出入国管理法という法律もおつくりになっていくという状況になってきたわけですが、これは、別の機会に内容についてはお伺いすることにしまして、現在入国管理業務の中で取り扱われている、特に飛行場の問題、これについてお伺いしたいわけですけれども、現在、羽田あるいは大阪国際空港の伊丹、それから板付、こういう方面の管理業務はどの程度の仕事をやっておって、現在それで足りるのか足りないのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  177. 中川進

    ○中川(進)政府委員 お答えいたします。  まず羽田でございますが、これは国際的な旅行意欲の増大とかあるいはわが国の実力の上昇とかいうようなことから、非常に来往者がふえておりまして、四十二年の羽田におきます内外人の出入国総計は百五十二万七千三百九十四名でございますが、昨年の昭和四十三年は百六十四万六千五百五十五人ということになっております。同じく羽田に昭和四十二年に出入りいたしました内外の、外国向けあるいは外国からの飛行機総計一万六千七百五十一機でございますが、昨昭和四十三年は二万二十六機ということになっておりまして、たいへんなふえ方でございます。一方、これを取り扱います人間のほうはどうかと申しますと、羽田は、昭和四十三年、ただいま現在の定員は百三十一名でございます。ところがこの間の予算折衝の結果、ただいま御審議をお願いしておりますところの昭和四十四年度の概算要求におきまして、羽田に十二名の増員が認められまして、百四十三名ということになる次第でございます。一方、伊丹のほうはどうかと申しますと、伊丹は、昭和四十二年におきましては十六万七千五百五名という人の出入りがございましたが、これに対しまして、昨年、昭和四十三年は二十四万七千八百四十二名という人の出入りがございまして、御承知のようなたいへんなふえ方でございました。飛行機も、昨年は六千二百八十三機というものが出入りしております。これをさばきますところの人間でございますが、これはしばしば先生からも御注意を受けておりますように、万博その他を控えまして、鋭意その増員に努力しておるのでございますが、ただいまの人員は二十名でございます。しかしながら昭和四十四年の概算要求におきましては、これに四名の増員が認められまして、二十四名ということになる次第でございます。
  178. 沖本泰幸

    沖本分科員 では、それだけの人員を増加していただいて、いずれことしの暮れにジャンボが入る、こういう事態がきているわけです七おっつけSSTが入ってくる、こういう事態になりますし、あるいは成田が新しく国際空港になるか、あるいはまた関西のほうに、淡路島に国際空港ができるか、あるいはその他の地にできるか、いずれにしましても、新しい国際空港をつくって受け入れ体制をしかなければならない、こういう差し迫った事態を迎えているわけなんですけれども、そういうものに対して、現在の予定されておる人員でまかない切れるか切れないか、こういうことになるわけです。ジャンボジェットが入ってくると、一挙に人員がふえてきます。それが、同じように、現在のように昼間飛行機が入らなくて、夜になって一ぺんに入ってくる、こういうことが一挙に重なってくると、とうてい整理し切れないということになって、日本に来た外国人のお客さんが、一時間も二時間も立って入管を待たなければならない、こういう事態がくることは、日本の国としてたいへんな恥になるわけです。こういう点について、現実にどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、この点についてお答え願いたいと思います。
  179. 中川進

    ○中川(進)政府委員 お答えいたします。  先ほどから御説明いたしました数字で明らかでありますように、現在羽田では一日ほぼ四千五百名というものを処理しており、伊丹では約八百人ぐらいの人を処理しているわけでございまして、御指摘のごとく、ジャンボジェットというようなものが入ってまいりますと、この数はまたさらに飛躍的にふえる可能性もあるかと存じます。ただし、ジャンボジェットは、いまのところは、先生よく御承知のごとく、昭和四十五年の大体四月ごろからということでございまして、これが若干延びるかもしれないという情報もございます。もちろんジャンボジェットの就航、あるいは御指摘のごとく成田新国際空港の開設というような新事態が生じました際には、私どもといたしましても画期的な定員増をお願いいたしまして、事態の円満な処理に大過なきを期したい、かように存じております。
  180. 沖本泰幸

    沖本分科員 大過なくという御返事なんですが、現在の進行状況でいって、はたしてまかない切れるかどうかという点、あなたはどうお考えかということなんです。
  181. 中川進

    ○中川(進)政府委員 もちろん外国から人が入ってきました場合に、若干待つということはございますが、しかし、いまのところは入国手続あるいは出国手続をしますためにたいへん待たされるということは、そうはございませんので、いまの人員で曲がりなりにも昭和四十四年度一ぱいは何とかまかなえる、かように考えております。
  182. 沖本泰幸

    沖本分科員 そうしますと、たとえば万博が来年訪れるわけですが、来年度の万博に対して、伊丹の大阪新国際空港では二十四名になる。現在二十名。二十名とおっしゃいますけれども、所長が一名入りますから十九名ということになります。そして四名ですから二十三名。この二十三名の人なんですが、現在の大阪新国際空港のブースは幾つありますか。大体私が調べたのでは入国のほうが二十あって、出国のほうが十四ということになるわけです。それで、結局はまかない切るだけの人員数がないわけですね。だからブースは半分締めなければならない。こういうことで、全く新しく店開きをしたけれども、新しいターミナル飛行場の入国管理、一番の玄関口をふさいでしまっている、こういう現況になるわけです。現実の人たちが、たとえば四名ふやしていただいても、現地で聞きましたら、現在外国人だけで伊丹で年間二十二万八千人処理している。そして、ちょうどこの二十二万八千人を処理する能力の当時の羽田は、四十名の管理官でやっておった。それが現実には十八名でやっておる。それで新しいターミナルができて、そして上下にずいぶん離れるということになると、配置を二つに分けなければならない。それで二交代にしなければならないから四分の一の人員しか配置できない、こういうふうな現況になるということです。このままの人員で万博を迎えるわけです。四名増員したってこれは焼け石に水ではありませんですか。一挙に直接飛行機が入ってくるということになるわけで、とても四十三年度に入管が扱っただけの人員どころではない外国人が入ってくるということはおよそ想像ができるわけです。ですから、現地に行って、羽田で現在の人員のときは四十名だったのです、こう言っていることは、現実に明らかに足りないのだ、足りなくて困っているのだということが裏書きされているのではないか、こういうふうに思うわけなんです。だから、その足りない分をどうするかということなんですが、以前に御質問したときは、養成するには大体期間が二年かかる、あるいはほかの港のほうにいらっしゃる管理官をこっちに持ってくるにしても、三カ月は養成するのにかかっていく、こういう人たちを回して急場の間に合わすということをおっしゃっていらっしゃいますけれども、実際に行って調べた結果では、海の人たちは机で事務をとっている。だから、お入りになる方はいすにすわって入国管理をやっていく。こういうテンポでやっていたものが、飛行機で入ってくる人は立ったなりすっすっ入ってくるわけです。そういう全然感覚の違いですぐには間に合わない現状なんだということなんですが、こういう点について局長はどういうふうなお考えを持っていらっしゃいますか。
  183. 中川進

    ○中川(進)政府委員 たいへん専門的な御質問でございますが、まず大阪万博は御承知のごとく、たしか昭和四十五年の三月からだと承知しておりまして、昭和四十四会計年度におきまして万博の開催期はほぼ一カ月以内、一カ月ないと思います。しかし、もちろんその前にも、準備その他で万博のために直接大阪へ入国なさる方がふえるということは承知しておりまして、まさにそれゆえにこそ四名というのははなはだ少人数ではございますが、とにもかくにもこの定員予算の窮屈な時代に定員の増加を特別に認めていただきまして、ただいまそういう予算案の御審議を仰いでおる次第でございます。しかしながら、二十四名で場合によって足りないことが起こり得ることも予測せられます。その際には、近在の入国管理事務所から臨時的に応援を出すことを考えまして、その応援のための旅費その他の手当ても一応はしておる次第でございます。  それから、新大阪国際空港のブースの数がどうであるとか、二階と下がどうであるとか、班をどういうふうに分けなくてはいけないということは、はなはだ不勉強で申しわけございませんが、私ずっと忙しくて、まだ現地を視察しておりませんので、できるだけ早い機会に直接大阪新国際空港に伺いまして、現場の配置状況その他を所長からよく説明を受けて、また新たな見地で人員の配置その他は研究させていただきたいと存じます。  海と空とでは扱い方が違うじゃないかとおっしゃいますが、もちろんそのとおりでございます。しかし大体入国審査業務というものは、海から入りましても、空から入りましても、本質的にそう大きな差があるものでない。それからまた、羽田でこれだけの人員を扱っておったときには四十名の人員を擁しておったのにかかわらず、同じ人間を扱うのに二十名ないし二十四名というのははなはだ不足であるということは、もちろん御指摘のとおりでございますが、入管業務もすでにもう二十年近くやっておりまして、その間進歩、能率化ということもございますので、人数の少ないところはそれだけ事務能率をあげるということで何とか間に合わしたい、かように考えております。
  184. 沖本泰幸

    沖本分科員 大臣にお伺いいたしますが、こういうふうな人員の配置と増員という問題は、入管の問題だけが法務省の中に置かれておるからこういうことになるのじゃないでしょうか。刑務所の看守さんもそのほかの方々も、同じ一つのワクの中でプールされておる人員を配置されていくということですから、結局ほかの人員はやはり一つ凍結されたものがあって、その凍結を解かれていくに従って人員が増加されておる、こういうことになりますから、同じ法務省の中の総人員に見合って入管の人員もふやす、こういうことになると、ものの考え方が全然違ってくると思うのです。だから、万博を控えたところの外国人を扱わなければならないというような非常な問題があるし、あるいは新しい航空機の時代を迎えなければならない入管業務というものがある。こういうものを控えておる中に、ただ対外的なものを扱う入管の仕事が法務省の中にあるということが一つの大きなネックになっておるのじゃないかと私は考えるのですが、法務大臣のお考えはいかがでしょう。
  185. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 おっしゃるとおりに、入管も、明年度予算につきましてはかなり人員の要求をしておったのでございますが、御承知のとおり、増員につきましては行政管理庁に非常にやかましい規定がございまして、そのほかにも、本年から三カ年で五分定員削減というのがございまして、法務省一つ考えましても、非常に増員を要する際に四百十九名の減員をしなければならないということもございまして、いまの両空港に対する人員も十二名または四名というふうになりましたが、これで十分とはいえないのでございますが、法務省全体として五%の減員もありますので、総数ふえたのがわずかに三十五名でございます。そういうふうな必要性があることはわかっておるのでございますけれども、増員については非常に厳格な考えなものでございますから、いまのように局長の説明いたしましたとおりの人員にとどまりましたが、万博等で非常に必要な場合には配置転換等もいたしまして、善処いたしたいと考えております。
  186. 沖本泰幸

    沖本分科員 その辺、法務省の上級の方々のお考えが、法務省全体のワクの中で人員をお考えになっているということになるから、入管もその中の一つだ、こういうことになっていくと、大きな事態が来ておっても、全然考えが違ってくる、こういうことになります。一つの例として、たとえて考えてみますと、これは大阪で聞いてきたわけですが、たとえば大阪の入管自体が報告をするのに、大阪の出張所を一つワンクッション置いて法務省のほうに連絡しなければならないということになると、大阪の入管はほとんど密入国関係であるとか、あるいは韓国の方々、北鮮の方々とかいうような方々の事務が非常に多いわけです。そうすると、そういうことの仕事が主体になっておって、その主体の事務の中に入管の飛行機の受付の問題が入ってくる、報告問題が入ってくる。そうするとやはり取り扱うウエートというものは、ほかのことに重きを置いてこられるということになるから、どうしても法務省の入ってくる問題も違ってくる、こういうことになるんじゃないか。こういうところにやはり一つの同じようなひっかかった問題が出てくると、こういうふうに思うわけです。そういうことですから、そういうものはストレートにすっぽり法務大臣は状況がつかめるとか、また、じかに見ていかれるとか、新しい角度で見ていただかなければならないと思うのです。これはちょっと言いにくい話ですけれども、たとえて言うなら、入国管理局へお伺いしましても、陰気な法務省——陰気と言ったら悪いんですけれども、法務省の奥のほうにあるのですね。入っていくと、まるで私たちも密入国者のような目つきで見られるのです。お取り扱いになっている入国管理局の方々も、やはり法のほうをお取り扱いになるような職業柄の方のほうが主体になっているわけです。ですから、どうしても法的な問題のほうに重点を置かれている。人間的な問題に主体がない、こういうことですから、やはり見る目が冷たいんじゃないか。日本の玄関を預かって大ぜいの外国人と接しなければならない。だからそれ相当の、やはりどんな問題があってもエチケットとかマナーというものは身につけて応対してもらわなければならないということになっていくわけです。そういう点はやはり相当おくれているんじゃないか、また、角度が違うんじゃないか、こういうふうに考えるわけです。たとえて言うなら、局長さんは外務省からお越しになっている。そのほかの方は法務省の方ばかりだ。ということになると、局長さんがどんなことをやったって、下のほうで違ったことになってくるというようなことになるんじゃないかと思うのですね。そういうところに入管業務のむずかしさがあるんじゃないかとも思うわけです。ですから、そういう問題がやはり入国管理法のほうにひっかかっているんじゃないかと考えますけれども、これは別問題にいたします。しかし、そういうことがやはり、羽田の国際空港のほうに行って見てみましても、たとえていうなら、審査するカードをブースのところで受け付けて、一たんカードが下におりてくるのを、休憩に入った審査官の方が汗みどろになって整理していらっしゃるのですね。休憩すべき人が整理をやっているわけです。整理しているところは穴蔵みたいなところで、夏場行ってみたんですが、汗みどろなんです。冷房もなければ何もない、通風もないようなところでやっているんですね。それで飛行場の状況がわかるようなテレビを一台入れていただいたので、小踊りして喜んでいらっしゃる。こういうようなのは、やはりほかの税関とか検疫のほうとかというところと一緒に並べてみましても、全然条件が違っているというような内容を見ますと、各省間において内容が全然違うというようなことは、働いている人の意欲をそいでしまうということになるんじゃないかと思うのですね。だから、出入国を扱うときに着ている服はスマートであっても、一たん裏へ入ったら全く取り扱いが違っている。こういうことであってはならないと思うのですけれども、こういう点の厚生施設とか、こういうふうな内容について、今後どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、大臣にひとつお答え願いたいと思います。
  187. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまいろいろ御意見を拝聴いたしましたが、特に差別をしておるというふうには考えておりませんけれども、いませっかくの御意見もございますので、なおそういうことの今後ないように配慮いたしたいと考えております。
  188. 沖本泰幸

    沖本分科員 局長さんはいろいろな点を配慮しながらこれだけ特に認めていただいたんだと、こう表現なさっていらっしゃるのですけれども、私が先ほど申し上げたほうが筋が通っていると思うのです。羽田では同じ二十二万八千人を扱って四十名の人が仕事をしていた。しかし大阪ではそれを十八名でやっている。おまけに一つところでそれだけの全部の人員で仕事ができないんだ、こういうような現状を考えてみますと、それが一年たてば急激に増加してくるということなんですから、当然そういう事態に対して、新たにそれ専門の出入国を扱う人たちを養成なさらなければ間に合わないと思うのです。ですから、募集するとか予定された人たちをこれから訓練して、マナーとか、あるいは法律とか、あるいは語学とかというものを十分に持たせなければいけない、こういうことになってくると思うのですが、そういう点に対して将来に対する御計画というものは——これからジャンボが入る、これはもう大体の輸送計画でおわかりになると思うのです。運輸省なり日航なりあるいは外国の情報をおとりになれば、あるいは観光事業とか、あらゆる点から見てくれば、これから外国人がおよそどの程度ふえてくるかということも、いままでの経験でそろばんがはじけると思うんですね。その点を見れば、どの程度の人が必要だ、どの程度の語学が必要だということは当然予定されてくると思うわけなんです。ですから、来年度ではこれだけしなければならない、その次はこういうふうにやっていかなければならない、そういうことが必要になると思うのですが、そういうものに対する将来の御計画というものは、大臣お持ちなんでしょうか、どうなんでしょうか。
  189. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いろいろそういう点も考えて毎年度予算にも対処しておりますが、そういう点について会計課長から御説明いたさせます。
  190. 安原美穂

    ○安原政府委員 予算の問題にもからみますので、私から一言御説明を申し上げます。  人員の増加につきましては、先ほど来申し上げましたように、きびしい増員の抑制の状況下におきまして、できる限りの努力をいたしまして、来年度、羽田につきましては十二名、それから伊丹につきましては四名の増員が見込まれておるわけでございますが、そのほかに、御指摘のとおり、執務環境を整備するということによっての事務能率化をはかるというような観点から、いわゆる能率器具なり環境の整備という観点から、たとえば羽田につきましては冷房機を二台入れ、それに百万円以上の予算をつぎ込む、あるいは発着用のスケジュールを見る特殊のテレビを入れるとか、あるいは通信料を増額するとか、あるいはマイクロバスを入れるとかいうようなこと、あるいは御指摘の伊丹につきましては、万博に備えまして、先ほど入管局長が申し上げましたように、応援のため十八人の応援の旅費を組む、あるいは能率化のためのスタンプの器具を増額するというようなことで、三月十五日からわずか十五日ほどの期間でございまするが、三十万円余の予算の増額をはかるというようなことで、人員の増加と並びまして事務の合理化と能率化のための予算の措置をできる限り尽くしておることを御説明申し上げたいと思います。
  191. 沖本泰幸

    沖本分科員 そういう点をお伺いしておけば参考になるわけですけれども、もっと将来に対する大きな御構想ですね。構想といって、入国管理を扱う構想なんですけれども、将来に向かって入管に関してはこれだけの目標を持ってやっている、こういうものをいまお手持ちではなさそうなので、ぜひともおつくりになって、計画に従った道をまっすぐ進んでいただきたい、こういうふうに考えるわけです。それにつきましても、語学の点についても前に行っていろいろ伺ってきたんですが、英語一本でやっていらっしゃる。それでいまのところ済んでいるわけですけれども、これだけでは足りないと思うのですね。そういう点も十分にお考えになって対策をお立てになっていただきたいということになるのです。  それからまた、これも小さなお話かもわかりませんですけれども、重要なことなのでまたお心の中にとめておいていただきたい。ということは、局長さんは海のほうから、近在から寄せてきて応援さす、こう言いますけれども、飛行機に乗って着いてくる人の心理状態というものは、船から上がってくる人とは非常な違いがあるわけです。せかせかして、待たされて、非常な忙しい思いをして、短時日のうちに見なければならないとか仕事をやらなければならないとか、早くホテルへ着かなければならないとか、いろいろな条件を持って来ておる人がおるわけです。その心理状態というものはやはり、同じ海外から入ってくる飛行機に乗ってみて、実際に同じように入管業務を自分の身で経験してみなければ、そういうものはわからないわけです。しかし実際にはどなたもめったにお乗りになっていらっしゃらない。一、二の方が経験していらっしゃるだけである。ところが、どうですか乗ってみたことありますかと言うと、大蔵省からきびしい通達がきて、結局外国の飛行機に乗ることは、ただ乗りは公明党がやかましいから遠慮しろ、こういうことでだれも乗れないのだ、こういうふうなことを言っておられましたけれども、少なくとも入管業務をカラーのフィルムにとって、実際にこういう経過を経てくるのだというような、実際の立体的な教え方だとか、みずから近いところに飛行機に乗ってみて、それで自分が審査カードを書いてみて、一緒に荷物を持って入ってみる、こういうことを経てきた人でなければ、やはり外国人に対して適切な取り扱いはできな、と思うわけです。時間も参りましたので、そういう点もあわせて今後十分なお考えに立ってやっていただきたい。そういう面も改善して、とにかく日本の玄関口でございますから、日本の国が恥をかかないようにおやりになっていただきたいのです。こういう点を特に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  192. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 午後の会議は本会議散会後直ちに再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ————◇—————    午後三時二十二分開議
  193. 臼井莊一

    臼井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務省所管予算に対する質疑を続行いたします。長谷川正三君。
  194. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 午前中、本分科会で同僚の米田安宅両委員から在日朝鮮人の帰国問題についていろいろ質疑がございました。私はこの件についてなお若干お尋ねをしたいと思います。  実は私、昨年の十月下旬から十一月の下旬にかけまして約一カ月、朝鮮民主主義人民共和国の対外文化連絡協会の御招待をいただきまして、日本と朝鮮の親善友好をはかる団体であります日朝協会の代表として朝鮮を訪問いたしました。私の訪朝の目的は当然日朝の親善を深めるということにあるわけで、各地で朝鮮公民の皆さんと友好を深めてまいりましたが、しかし午前中に議題になりましたこの帰国事業再開の問題は、当面の重要な問題として、私は向こうで副首相兼外相であります朴成哲氏とかなり長い時間にわたって話し合ったわけであります七私が行くに際しまして、こういう時期でありますから、一般的な親善友好的な交流のほかに、どうしてもこの問題はやはり話題になるであろう、そういうことを予想いたしましたので、行くにあたりまして、当時の木村官房長官あるいは日赤のこの問題に当面取り組んだ責任者であります田辺副社長などともお会いをいたしまして、腹蔵ない意見の交換をし、そのお考えも確かめまして、これを腹におさめて朝鮮を訪問したわけであります。したがって、朴成哲副首相と話し合いましたときにも、そのことを私は腹におさめて話し合ってまいったわけでありますが、御承知のように、この帰国の事業が打ち切られまして、その後いろいろの努力が再開について行なわれたわけですけれども、一体何が一番この障害になっておるのかという点をずっと煮詰めて話し合ってみますと、いろいろこまかい問題もありましょうが、それは十分もうコロンボ会談でもかなりのところまで話はいっておる。極端にいうなら、いまやただ一点にかかっています、それは、先ほど来問題になっております、帰国される方を迎えにくる朝鮮赤十字の代表団の入国のビザの問題である。実はこの点について当時の木村官房長官とお話し合いいたしましたときに、いろいろ問題になっておるけれども、コロンボ会談の時点で、表現については若干ぼかしているけれども、そんなに取り越し苦労をする必要はない。そう第三国へ行ってビザをとってこいなんというばかげたことをいつまでも固執することはありません。これは新潟で何らかの方法でビザを渡せるように配慮したい。これが当時の木村長官の率直な御意見でありました。したがって、私は、そのほかに朝鮮側にまだまだいろいろ日本政府ののめないような難問があるのかどうか、それを非常に気にして話をしてまいりましたところが、朴成哲副首相もまた、問題は一点であって、その点だけ解決をしてくれれば、その他のことは、場合によっては譲るべきところは譲っても、別にとらわれないつもりだ、こういうお話でありましたから、これならば問題は解決するのではないかというふうに、私たいへん喜んでまいったわけで、帰国いたしまして、さっそくその旨は、内閣の改造で官房副長官になられました木村さんにもあるいは田辺副社長にもありのままに御報告をし、できれば年内にもひとつ両赤十字の会談を再開して、クリスマスプレゼントになるかお年玉になるかわからないけれども、これも先ほど来お話のありましたように、すでに一万五千人からの方が急遽帰国を申請したまま、しかも、中には家財道具をたたんだまま二冬も過ごすというようなことは、何としても人道上も忍びない、どうかひとつクリスマスプレゼントかお年玉になる話だけでも——実際に船が出るなんというところに、その時点ではなかなかいかぬでしょうけれども、何とかならないかということで、その方向でぜひ努力をしたい、できるならば年内にも会談を開きたい。これは当時の木村副長官も日赤の態度も同様でありました。しかるに、それが今日まで遷延しておるということは、まことに残念であります。午前中のやりとりでいろいろ明らかになったわけでありますが、結局安宅氏が言われたように、何かいまの折衝の内容の状態は、私が行って話し合った当時の内容や、さらにさかのぼってコロンボ会談におきます内容よりももっと後退をしておるのではないかという印象さえあるわけです。そこでこの問題について、まず根本的な問題からこれはお尋ねしていかないと、非常に本質的なところからそれて、単なるそのときの政治情勢でこの重大な人道問題が左右されるのではないかと思いますので、これから順を追ってお聞きしたいのです。  そこでこれは私の次の質問関連があるので、ちょっとプライベートのようなことで恐縮でありますが、先ほどの安宅さんの質問の中にも、西郷法務大臣は隆盛のお孫さんであるというようなお話が出ましたが、私、たぶんそうなんだろうと思いますが、これは実はこの次の質問関連がありますので、プライベートなことをお聞きして恐縮なんですが、西郷隆盛と西郷吉之助法務大臣との御関係はどういうのか、ちょっとお教えいただきたい。
  195. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 こういう国会の席で御答弁すべきではないのじゃないかと思います。自分個人のことに関しては御遠慮したいと思います。
  196. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 それでは先ほどのお孫さんであるということ、これは相違ありませんか。——これはうなずいていらっしゃるから、そう解釈してよろしゅうございますね。  なぜ私がそんなことをたいへん失礼を顧みずお聞きしたかといいますと、私はこの朝鮮の問題を考えながら、特に西郷法務大臣が御就任以来たいへん御理解のある態度で、また、人道的な問題として処理するという態度でお臨みになっているように感ぜられますので、西郷隆盛の征韓論を思い出すわけなんです。西郷隆盛は征韓論に敗れたわけでありますけれども、しかしその後、御承知のように、朝鮮は日本の植民地支配のもとに置かれることになり、そして、その問多くの朝鮮の方がその祖先伝来の財産を取り上げられたり、生活の根拠を失ったりして流民となって日本に流れ込んでくるというような悲惨な状態が現出をした。ことに戦争中は、あるいは戦場にかり出され、あるいは国内の労働力不足で強制的に日本に連れ込まれて、最も過酷な労働に従事し、呻吟し、中にはその中で倒れていった方々もある。戦争が終わって、日本は新しい民主国家として新たに祖国の建設に向かったわけでありますが、しかしこの朝鮮との関係考えますと、ずっと古い歴史を顧みても、もちろん日本文化形成の上に朝鮮の影響というものはきわめて深いものがありまして、まさにアジアの最も親しいきょうだい国であることは申すまでもないのであります。特に隆盛の征韓論、その後の日本の朝鮮の植民地支配、戦争中のこと、これらを考えますと、先ほど来木村官房副長官や法務大臣がおっしゃっております人道的な立場に立ってという、そのことはもとより当然でありますけれども、そのこと以上に、日本国民としてのこの歴史的事実に対する深い反省と、民族としての良心をもってこの問題は処理しなければならない。   〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕 在日朝鮮人の方々に対しては、もっと厚い配慮をあらゆる面にしてしかるべきである、そういう角度から問題を処理していくべきである、こういうふうに私は考えるのでありますが、法務大臣の基本的なお考えを聞かしていただきたいと思います。
  197. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 午前中もお答え申し上げましたが、いまお尋ねの帰還問題につきましては、先ほど来おっしゃいます人道的な立場で先般里帰りもするようにいたしましたが、同じような気持ちで、これはほんとうに私も熱意を込めて推進してまいりたいというつもりでおります。
  198. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 私は西郷隆盛の征韓論がどういう真意であるか、歴史家でありませんからわかりませんが、しかし隆盛が敬天愛人をモットーとして、日本国民の多くから今日なお深い敬愛を受けていることは御承知のとおりでございまして、この問題についていま法相がおっしゃったように、隆盛の血の流れておる西郷法務大臣のときにぜひひとつ、単に人道的という以上に、歴史的経過をも踏まえた良心をもって処理をしていただきたいということをまず強く要望しながら、具体的な質問に入りたいと思います。  そこで、さっき私がちょっと申し上げたとおり、木村官房長官も、現在副長官ですが、私が参りますときに、まあいろいろあってもこれはひとつ人道的立場でビザの問題は新潟で何とか渡せるようにしたいということをおっしゃっておったわけであります。おそらくこれは真意であって、その後政府部内で、副長官になられましてからもその方針でたいへん努力されたのじゃないかと私は思うのです。ところが、これが妙なかっこうになって、日本と国交のある第三国へ行ってビザをとってこいということは確かに今度いってないわけでありますけれども、国際赤十字というものが介入して非常にややこしいことを御提案なさることをきめた。そして、そんなふうになっていったのは、どうも法務省の御意見が一番そういうようなことを固執されたというふうに私には受け取れるのです。つまり、現在の出入国管理令の法文の機械的解釈に戻ってしまって、何かそういうような手だてを固執されているために問題がこじれているというふうに受け取れるのですが、大臣、その点いかがですか。
  199. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 私のほうがそれに反対しておったということではございませんで、最初のはどういう動機で国際赤十字が出てまいりましたかつまびらかにいたしませんが、やはり両方のやっておりますのが赤十字社でございますので、国際赤十字を中心にしてということでございましたので、私どももそれに賛意を表したわけであります。御承知のとおり、現在も木村副長官のもとで関係三省が集まりまして、木村副長官を中心にいろいろまとめられておりますので、そういう提案がありましたので、われわれも賛意を表したわけでございます。
  200. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 法務大臣はこの問題をいかにも受け身のように、そういう提案があったから国際赤十字を立ててやろうということに賛意を表した。日本の赤十字の証明で許可をする、ビザを出す、そういうことについて法務大臣はどう考えられますか。
  201. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 日本の赤十字社が出したのに日本政府がそれをどうするということは、ちょっと主客転倒じゃないかと思います。
  202. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 一応赤十字にお願いしたことをさっき報告がありましたが、断わられたという御答弁でありました。そのとおりですね。
  203. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 それは先ほどもお聞き及びのとおり、今回の措置の前のことらしいのです。その後でございますから、何とか今度はまとまるのじゃないかと思っております。
  204. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 いや、私の伺ったのは、順序を踏んで伺っておるので、その前のことを伺っているのです。前には断わられたのですね。そこでさっきは断わられたという御答弁だけを伺ったのですが、その際国際赤十字は、単にぽんと断わってくるのではなくて、こうされたらどうですかという意見を添えてきませんでしたか。
  205. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 入管局長からその経緯を説明させます。
  206. 中川進

    ○中川(進)政府委員 国際赤十字が断わられたと申しますが、いかなることでございますか、こちらからむしろお伺いしたいのでございますが。
  207. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 ちょっとおかしいですね。大臣と入管局長の間に意思の疎通を欠いておるのじゃありませんか。国際赤十字に、何というのですか、旅行の証明書といいますか、そういうものを出してほしいとお願いしたらば、それは断わられたというふうにさっき答弁があったのですが、そのとおりかと言ったら、そのとおりだとおっしゃるので、そのとき、ただその断わりだけではなくて、さらに問題解決に寄与するような意見を添えてきたのではありませんか、こうしたらどうですかというふうに。それを伺っているのです。
  208. 中川進

    ○中川(進)政府委員 失礼いたしました。ちょっと私、御質問の意味をはき違えました。おっしゃるとおり、国際赤十字から、何か朝鮮赤十字の方であるという証明書を出してもらいたいということに対しまして、それを証明することは自分たちとしてはできないが、これこれかくかくの人は朝鮮赤十字社の代表者だと言っておるということを証明することならできるということで、断わられたといえば断わられた、あるいは提案といえば提案というふうに私どもは了解しております。
  209. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 法務大臣、間違いありませんか、いまの答弁は。
  210. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 入管局長は、三者のそれに出ておりますから、間違いございません。
  211. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 そうすると、証明書という形のものは出せませんが、国際赤十字が朝鮮赤十字のこれこれの人が日本に行きたいというのですか、行くと言っていますよという、そういう通知なら出せます、こういうことですか。
  212. 中川進

    ○中川(進)政府委員 さようであります。
  213. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 法務大臣、その通知をもってビザを出す根拠にすることはどうしてできないのですか。
  214. 中川進

    ○中川(進)政府委員 けさほども御答弁いたしましたごとく、わが国のいまの入管令によりますと、三条というものがございまして、旅券を持ってこなくては入国させないとなっておりまして、そして、二条に五号というのがございまして、その旅券という中には、外国におりますわが領事官憲が発給した渡航証明書を含む、こうなっております。すなわち、旅券か船員手帳か渡航証明書か、この三つの書類を持ってまいりませんと入国させないということになっておりますので、そこでこの入管令を生かし、しかも、この人道上の問題でありますところの北鮮帰還の事業を円滑に推進するという点で何か妥協点はないかということで、先般来政府関係各省の係官が寄りまして寄り寄り協議しました結果が、ただいま先生が言っておられますような、国際赤十字を中にはさみまして、しかも従来は必ず——ベトナムの入国の問題がけさ出ましたが、そういう国交のない国から日本へ入国する場合には、必ず本人が在外公館に出頭いたしまして、そこで渡航証明書というものの発給を受けるシステムになっておるのでございますが、その点を今度は簡略化いたしまして、国際赤十字社から、先ほど申し上げましたような一種の通知兼申請のようなものをもらいまして、それに基づきましてジュネーブにおきますわが総領事館が渡航証明書を発給する、すなわち本人の出頭を免除するということで、政府といたしましてはたいへんな例外措置を設けまして、この問題の円満な解決、すなわち入国手続の簡易化ということにつとめておる次第でございます。
  215. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 念のためにもう一ぺんちょっとさかのぼって伺いますが、いまの国際赤十字からの返事を私はこういうふうにも聞いておるのですが、国際赤十字として朝鮮赤十字の証明を出すというような非礼なことはできない、しかしそれならば日本の赤十字がそれを、これは確かに朝鮮の赤十字の人であるということを証明したらいかがですかというふうには言ってきていないのですか。
  216. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいまの最後の点でございますが、その点は私どもも、赤十字とそれから北朝鮮赤十字との通信の全文の通報を必ずしも受けておらないこともあるかと存じまして、その最後の点は承知いたしません。
  217. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 いまの点は法務省としては承知をしてない、だからそういうことがあったかなかったかもわからないというふうに了解をいたします。法務省として受け取っておるのは、国際赤十字が朝鮮赤十字のこれこれの方が日本自分の同胞を迎えに行きたい、新潟に行く、こういうことを言っているという通告ならしてもよろしい、そういうふうにいまの御答弁を受け取りまして、そうすると、いまの御答弁をもう一回おさらいしますと、それは日本赤十字に来るのですね。
  218. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいまの国際赤十字からの通報は、ジュネーブの日本総領事館に参ることになっております。
  219. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 これは日本赤十字ではなくて、ジュネーブの日本の領事館に国際赤十字からその通告があるのですね。
  220. 中川進

    ○中川(進)政府委員 答弁が不十分で申しわけありませんが、ジュネーブ総領事館に参りますとともに、日赤にもこういうことになっておるという通報があると存じます。
  221. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 そうすると、ジュネーブの日本領事館がビザを発行するというのですね。そうして、それはどうして朝鮮の赤十字に渡るのですか。
  222. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいまから申し上げるのは、ただ案でございまして、そのとおりになるかならないかは別でございますが、ただいま私どもが考えております方法は、ジュネーブにおきます国際赤十字からジュネーブの日本総領事館に対しまして、ビザではございませんで、渡航証明書の発給の申請が出されるわけでございます。それとともに、国際赤十字から日本の赤十字に対しまして、こういうような申請をした、こういう人で、データはこうこうであるという写しと申しますか、通報が参りまして、それに基づきまして、今度は日本の国内におきまして、日本の赤十字が法務省に、私どもの専門語で代理申請と申しますが、代理申請をいたしまして、そうして、それが法務省でよかろうということになりましたら、外務省を通しまして、外務省からジュネーブの総領事館に、これこれかくかくの者に渡航証明書を発給しろという訓令を出しまして、そうして、ジュネーブの総領事館でその写真その他のデータを利用して渡航証明書を発給いたしまして、それを直接北朝鮮に送ることなく、もう一度国際赤十字に返して、国際赤十字から北朝鮮に渡してもらう、そういう経路をとりたいがどうじゃということを、ただいま日赤から国際赤十字に聞いておる段階だと承知しております。
  223. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 そこで大事なことは、そのいま政府、日赤で御相談なすって、再び国際赤十字に了解を求めている方法は、国際赤十字が断わると同時に、こうしたらどうかといってきたものとは正確にいうと違いますね。
  224. 中川進

    ○中川(進)政府委員 違います。
  225. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 どこが違いますか。
  226. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいまその違います点は、発給したあとの手交の方法が違います。
  227. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 国際赤十字はどう考えているのですか。あるいはどう考えていると思われますか。
  228. 中川進

    ○中川(進)政府委員 先ほど申しますように、国際赤十字の考え方というものを全面的に私承知しているわけではございませんで、誤解があるかとも思いますが、私どもの承知しております限りは、国際赤十字は、そういう者が、北朝鮮の代表、かくかくの者が日本へ今度は来たいと言っておるということで、これを日赤に通報いたしまして、そして日赤で政府の、何と申しますか、入国手続をやってくれということで、二度目にもう一ぺん国際赤十字が乗り出すということは考えておらないように私は承知しております。
  229. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 それが私どもの考えでは重要な点なのであります。国際赤十字を一応介在さしたのならば、国際赤十字の意見をすなおにそのとおり日本政府が——これはほんとうに木村副長官も西郷法務大臣も、おそらくこれは厚生大臣もそうだと思いますが、何とかこれは人道的に解決しようと思うならば、まあ一歩譲って、国際赤十字を立てたというなら、その御意見をすなおに受けて、そしてそのままひとつ交渉に持っていこうという御態度にどうしてなれないのか、それを固執しているのは法務省ではないのか、そこを私はお伺いしたいのです。
  230. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいまの御質問を突き詰めてまいりますと、結局、渡航証明書を発給して、これを直接渡したらいいではないか、国際赤十字を経由する必要はないではないかという御質問の趣旨かと存じますが、この点は必ずしも法務省意見というわけではございませんで、何しろ北朝鮮とは日本は国交がないというような関係もございまして、やはり直接国交のない国の人に日本政府機関からそういうものを郵送するのはいかがなものであろうか、やはりこの際は一度国際機関を通して、そして国際機関から返してもらったほうがいいのではないかというような関係各省一致した意見でそうなったのでございまして、必ずしも法務省がそれを主張したというわけではございません。
  231. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 入管の局長の御答弁はもうそういうところを出ないと思いますから、それはそれで、もう役人の答弁としてはそういうことであろうと思いますが、問題は、すでに帰国協定がそうでありますし、いま暫定協定として日本側が提案しているというか、こうなら認めてもいいと言っているものも、とにかく第三国の証明であるとか、有力なる国際機関であるとかということも飛び越して、直接新潟でビザを出しているというか、入国を認めてきているんですね。これは全く政治的な配慮と申しますか、帰国事業を人道的な立場から進めるというところからきていたわけです。ですからもし暫定協定がまとまる、そしてそれ以降のことについていまお話しになっているわけですから、そういう態度が一貧しているならば、せめて国際赤十字が通知まではしましょうということになれば、それを朝赤が受けて、国際赤十字からこうきているからということで、これは政治的な裁量といいますか、配慮の問題でできることだと思うんですね、すでにやってきておるのですから。そこのところを何だかんだややっこしくして、まとまるものをまたどうも私はこわしてしまうような心配がしてならない。ことに私は官房副長官と話をして——当時の官房長官と話をしていって、向こうの副首相ともいろいろ話をしてまいりました、その私自身の、個人的であるかもしれませんが、道義的な立場から申しましても、このように後退するということはまことに残念でならないのでございます。  もう時間がきているようですから、私は最後に、もしこれで国際赤十字が断わってきたらどうしますか。別の次の方法考えるのですか。
  232. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いま国際赤十字にそういうことを御依頼しております過程でございますから、それがだめだったらというようなことはいま申し上げないほうがいいんじゃないかと思います。
  233. 長谷川正三

    ○長谷川(正)分科員 その立場はわかります。いまの聞き方に対してはそういうお答えでいいと思いますが、最後にそれでは、何としてもこの帰国事業というものが、とにかく一万五千がもう滞留しておるのですから、このままいつまでもじんぜん日を送ることは許されないと思いますので、法務大臣のこの問題解決に対する御所見と決意を伺って、私の質問を終わります。
  234. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 私も、いまお話しのとおり、非常に熱意を持って、前向きで積極的にこの問題を解決して、両国の親善に寄与いたしたいと強く考えております。
  235. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 中谷鉄也君。
  236. 中谷鉄也

    中谷分科員 きょう、私は身辺に起こった二つのごくささやかな問題を取り上げて、あまり理屈っぽくならないようにひとつ質問をいたしたいと思います。  最初に私がお尋ねをいたしたいのは、福沢幸雄君というレーサーの死亡事故に関してです。——警察庁の刑事局長、お見えいただいていると思いますが……。
  237. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 参っております。
  238. 中谷鉄也

    中谷分科員 こういうふうなことがいわれております。企業秘密の壁の前に、事故直後の警察の捜査がはばまれたのではないかということであります。もしそうだとすると、はなはだ事は重大であります。そこで、たとえば個人の家で自殺者があったというふうな場合、その遺族の人が自殺者の写真をとって警察に提供するというようなことはないはずです。   〔橋本(龍)主査代理退席、主査着席〕 この本件事故の場合、鑑識のための写真の撮影が、会社のトヨタのほうでそういう写真をとって警察に提供したというふうなことで、企業秘密の壁に捜査が若干妨害されたのではないかというふうなことをいわれております。真実の究明のためにせっかく努力をしておられるということを私は前提として、ひとつその間の事情を最初にお話しをいただきたい。同時に、今後どのように真相究明のために努力をされるかについてお答えいただきたい。
  239. 内海倫

    ○内海政府委員 お答えを申し上げます。  今回起こりましたテストコースにおきます死亡事故につきまして、企業秘密ということで警察の捜査妨害を受けたのではないのか、こういう御質問でございますが、その当日における一応警察側のとりました諸般の措置を御説明申し上げたいと思います。  警察署のほうが係官を派遣いたしまして、コースあるいは死体その他の調査をいたしました。死体につきましても検分をいたしました。事故車両の写真につきましては、確かに当該会社側のほうから、これが外に漏れるということについてはたいへん困るので、できましたら私どものほうで御指示のとおりの写真をとって提供いたしたいと思いますので、ということでありました。事件全般を見まして直ちに犯罪になるというようにも考えられない節も多うございましたし、あえてこれを非常に強く要求するというほどの必要もなく、指示をして十分に必要なものをとらせればもって用が足りる、こういう判断のもとで、相手側をしてこちらの指示に基づいて必要かつ十分な写真をとらせた、こういうことでございますから、企業秘密ということのために捜査妨害を受けたというふうには私どもは考えておりません。  なお、この事故に関しましては、真相をさらに一そう明らかにいたすために現在も捜査を継続いたしております。事故車両についても技術的に十分な検討をいたしたい、かように考えております。
  240. 中谷鉄也

    中谷分科員 法務省人権擁護局長さんにお尋ねをいたします。  私は次のようなことを申し上げたいと思うのです。要するに、テストパイロットであるとかテストレーサーといわれる人たちの場合、それらの人たちの業務が危険を伴うものである。しかしどの程度の危険の伴う行為までが許されるのか、ことばが適当であるかどうかわかりませんが、危険の許容度というふうなことばを私はこの場合使いたいと思いますが、そういう点において、このレーサーの人たちの実際の業務の内容がはなはだしく危険な状態にさらされているのかどうか、こういうような点について、人権擁護局として人権調査の対象にされる意思はないかどうか、この点いかがでしょうか。
  241. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 その職業によっては生命、身体等の危険を伴うものが非常に多いわけでございますが、その危険度の許容範囲を一律にきめてしまうということは非常に困難でございます。お尋ねのような新型車の性能テストを目的とするようなものにつきましては、車両やレース場の安全、整備に完ぺきを期して、万一にも生命、身体の危険の招来のないよう慎重になされることが望ましいのは言うまでもありませんし、われわれとしてもそう考えております。ただ具体的本件につきましては、すでに警察のほうで手をつけておりますので、私のほうで調査するのは差し控えたいと思いますが、一般に、どういうふうに危険度が非常に強いかどうかという一般的なことの調査ならいたしたいと思います。
  242. 中谷鉄也

    中谷分科員 次に、通産省の自動車課長さんにお尋ねをいたしたいと思います。  本件のようなテストの対象になる自動車というのは、運輸省の監督には全然属さないわけでございますね。そうすると、通産省としてはどういうふうにお考えになっているでしょうか。技術開発ということと人命尊重、その点について。  いま一つは、本件の事故直後の状態について提起された疑問は、企業秘密の前に、人命がどうして失われたかということについて、その点についての真相究明に壁があったのではないかというふうなことが一部から言われた。だから、通産省のお立場として、技術開発だとか企業秘密というふうなことの前に、人権の尊重、生命の尊厳こそがまさるのだ、この点はひとつ明確にしていただきたい。  同時に、この種の、いわゆる飛行機であるとか自動車などの技術開発についての実験というものについては危険を伴う。これらについては、直接の担当であるところの通産省としては特別な対策、ただ単にあぶなくないようにとか、人命尊重については配慮しますということではなしに、この機会に特別な対策を持つべきではないだろうか、この点についていかがでしょうか。
  243. 田中芳秋

    田中説明員 お答え申し上げます。  技術開発の研究段階におきまして人命の危険が予想される場合の、いわゆる許容限界を自動車についてどう考えておるか、まず第一番目の御質問でございますが、レース用に使います車、あるいはテスト用に使います車等につきましては、普通の車よりはきびしい走行条件になりますために、御承知のとおり設計につきましても非常に厳格にやる。たとえばバネにつきましても普通考えられます衝撃に数倍の強度を持つというような設計をやっております。さらに材料、部品等を慎重に吟味する。そうしてでき上がりましたものを、風洞実験その他を含めまして厳密な実験室テストを行なっておる。そうしてでき上がりましたものにつきましてはテストコースでゆるやかな走行のもとに何べんか試験をやる。こういう形で、現在の技術水準で予想される限りの安全性を追求した上でこれを実際走行させる、こういう手段を講じておるわけでございます。  今回の事故が起こったわけでございますが、これにつきましてもトヨタ側といたしまして、テスト場の気象なりあるいは路面、こういったものを事前に調査いたしております。それからテストドライバーの健康診断もいたしております。それからテスト車あるいは使用機械の整備、点検にも十分配慮を怠っておりませんし、さらに不測の事故に対します救急体制、救急車の準備、あるいは付近の病院に外科医を待機させる、病院までの交通路を事前に調査する、こうした万全の体制をとっておるわけであります。今回、残念なことに不測の事故が起こったわけでございますけれども、この点につきましては、現在の技術水準において、具体的な数値はなかなかむずかしい問題でございますが、考えられる限りの安全性を追求した上でこうしたテストを行なうべきものである、かように考えておるわけでございます。  御質問の第二点、こうした企業秘密の壁の問題でございますが、この点につきましては、もちろん通産省といたしまして、企業秘密のために人命尊重がおろそかにされるようなことが万一にもあってはならないというふうに考えております。今回の事故につきまして私どもで調査いたしました限りでは、先ほど警察庁のほうからお答えがございましたように、トヨタ側といたしましても、一部に報道されておるような事実はなく、捜査に御協力を申し上げておるような状況でございますが、確かにこうした問題につきましてはかなり人命の危険というものを伴います。私どもといたしまして、今後ともこうしたあれにつきましては万全の準備なり調査を行なった上でこれを試みる、こういう指導を続けてまいりたいと思っておる次第でございます。
  244. 中谷鉄也

    中谷分科員 自動車課長さん、質問は簡単ですので答弁も簡単にお願いをいたします。  通産省としてはそういう安全性、すなわちテストについての危険の許容度についての一般的な、そうして具体的な指示というのは企業等にお出しになっておられるのでしょうか。
  245. 田中芳秋

    田中説明員 こうした特殊な車、一般の走行をいたしておりません車につきましては、運輸省の車検もございませんので、安全性という点は強調いたしておりますけれども、技術的に細部にわたりましての数値等を示したことはございません。
  246. 中谷鉄也

    中谷分科員 それからもう一度お尋ねをいたしますけれども、私が先ほど指摘をいたしました捜査に協力という点ですね、この点は、たとえば自分の家で火事があった、その場合、警察から指示を受けて、火事を起こした人が、とにかく自分が写真をとりますよ、警察へ渡しますよということは異例なことですよ。そういうふうなことは、本来は捜査の主体である警察がおやりにならなければいけないことだと思うのですが、そういうようなことについて、通産省としては、何か捜査に協力したということでトヨタさんの肩をしいて持たなくても私はいいと思うのだけれども、この点ちょっと気にかかりますので、いかがでしょうか。
  247. 田中芳秋

    田中説明員 私ども、トヨタの肩を持つという気持ちは全然ございません。私どもが聴取いたしました範囲ではそういうお話でございますが、なお警察のほうのお調べとの間で、もしそのような事実がありますれば、私どもといたしまして企業に厳重に注意をし、今後二度とこういうことのないようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  248. 中谷鉄也

    中谷分科員 別の質問が残っておりますので、あとお二人に質問を続けさせていただきます。  一つは、労働省の監督課長さんにです。大急ぎで私は、トヨタ自動車とドライバー専属契約書というものの概要を入手いたしましたが、問題は書かれてある契約ではなしに、実際のレーサーあるいはドライバーの契約実態、契約に基づく労務提供の実態が過酷なものであり、危険を伴うものではないかどうか。この点が私は問題だろうと思うのです。これらの問題について労働省のほうで、契約の実態について危険が許容される限度を越えていないかどうか、これらについて御調査になる意思はないかどうか、この点をお尋ねをいたします。  なお、内閣の交通調査室長さんにおいでをいただきましたら、私お尋ねいたしたいと思うのですけれども、要するに陸上交通全体についての交通事故防止については努力されているが、この種テストの場合には野放しになっている、この点については一体どういうふうに措置をすべきだろうかということと、それからもう一つは、いわゆるレーサーの人たちが二百五十キロなどというスピードで走っているという事実、そういうことが一般の青年に与える心理的な影響、そのことがスピード超過による交通事故というようなものの誘因になっていないだろうかどうか、これらの点についてはいかがでしょうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  249. 細野正

    ○細野説明員 労働省関係分についてお答え申し上げます。  お尋ねがございましたレーサーの雇用契約内容につきましては、目下調査中でございまして、引き続き調査を続けたいと思っております。
  250. 宮崎清文

    ○宮崎(清)政府委員 お尋ねの第一点でございますが、今回の不幸な事故は、いわば企業内の試験研究の過程におきまして起こりました事故でございまして、先ほどからいろいろ御指摘があったとおり、第一義的にはいわば産業安全、あるいは労働安全の見地から、このような事故の再発の防止をすべきものと考えております。  なお、この事故につきましては、現在警察のほうで調査中でございますが、その調査の結果をまちまして、一般の交通事故との関係その他におきまして必要があれば、今後通産省あるいは労働省、警察庁と協力いたしまして、この種の事故の防止に対する具体的な対策を考えたいと存じます。  第二点でございますが、御指摘のように、レースそのものと申しますよりか、一般的に自動車の高速性能を誇示するような広告その他の影響を受けて、特に若い人が高速で自動車を運転するというような傾向が前に見られたことがございます。この点につきましては、御承知のように、関係省庁から業界に強く自粛を要望いたしまして、少なくとも、百五十キロが出せるとか二百キロ出せるというような広告は慎むように、こういうことで、最近はその指導がだんだん徹底してまいりまして、御承知と思いますが、テレビのコマーシャル等におきましても、ほとんどそういう広告はなくなっております。なおこの点につきましては、今後さらに検討をさせていただきたいと思います。
  251. 中谷鉄也

    中谷分科員 二番目の質問に移りたいと思います。第一の質問も非常にささやかな質問ですが、第二番目の質問は一そう私の身辺で起こったことについての質問です。  私がお尋ねしたいのは次のようなことです。少年のときに失敗をした、たとえば少年鑑別所へ入所した、観護措置の決定を受けた、あるいは少年刑務所へ行った、そういう少年のときの失敗というのが、十年たっても二十年たってもその人の一生につきまとわなければならないのだろうかどうか。私たちの知るところによると、昔、罪を犯した人は入れ墨をされて、前科者だというらく印を押されたということを聞いています。そのようなことがいまの社会に、入れ墨はされてないけれども、同じようなことがあっていいのだろうかどうか、こういうふうな私の質問の発想であります。  実は、大臣のお手元に新聞の記事を差し上げました。率直にいって、これは私の知り合いで、この人の名前について私はこの分科会の席では申し上げませんが、その新聞の記事を見ながら、ひとつ大臣にお答えいただきたい。  要するにこういうことなんです。ある人が、というふうにいいます。四十近くなってから汚職事件を起こした。しかしそのことが有罪か無罪かははっきりしない。ところが、その人の二十年前の少年のときのできごとというのが現在明るみに出た。非常に私はつらいことだろうと思うのです。そこでまず私は順を追いまして、文部省のほうにお尋ねをいたしたいと思いますけれども、文部省のお立場はどうなんでしょうか。ある人が少年時代に失敗をした、そういう失敗をした人がいるとします。そうして、四十過ぎのおとなになって、いままじめになっている。それが何か失敗したら、少年のころの失敗がそのことによって明るみに出るというようなことだとすると、非行を犯している少年というのは、ぼくはいつまでがんばっても、私はこれからずっとがんばってもだめなんだというふうな、そんな気持ちを持たないだろうか。こういう点で、中学校やあるいは高等学校を卒業した少年が就職をするときに、いわゆる少年時代の非行というふうなものを履歴書に書かなければならないのだろうかどうか。また大学を卒業した者が中学校や高等学校のときの失敗を履歴書に書かなければいけないのだろうかどうか。そしてそれはずっとついてまわるものだろうかどうか。そういうことの教育的な効果、一体どういう影響を子供に与えるのだろうか。ひとつ文部省の御見解から承りたい。
  252. 奥田真丈

    ○奥田説明員 学校を卒業いたしまして就職する際に、学校において作成いたします調査書におきましては、たとえば少年鑑別所の入所歴について、必ずしも記載する必要はないと考えております。もし、かりに記載するような場合におきましても、その少年の前途を十分考慮いたしまして、また就職をいたします就職先との関係等を十分に考慮いたしまして、それを調査書に書くかどうかということを慎重に配慮しなければならない、こういうように考えておる次第でございます。
  253. 中谷鉄也

    中谷分科員 労働省の婦人少年局の関係の方にお尋ねをいたしたいと思います。  同じような質問です。少年期に犯した罪を履歴書に記載させるというようなことは、就職の際の採否の決定に重大な影響を及ぼし、本人がいつまでもそのどろ沼からはい上がれないことになるので、少年犯罪については、経歴を記載しないことについては一体どうだろうか、この点についてひとつ労働省の御見解を承りたいと思います。
  254. 山口政治

    ○山口説明員 ただいま文部省の課長からお話ししましたので、その考えにつきましては大体同じでございます。労働省といたしましても、ちょうど心身ともに不安定な勤労青少年が一度犯した罪がその後障害になるということは、すこやかな成長のために決してよくない、好ましくないと考えております。したがいまして、いま文部省の課長がおっしゃいましたような次第でございますが、労働省としましても、その非を悔い改めて更生の道を進むというような場合には、差別取り扱いをしないというようなことで、関係方面の方に指導あるいは啓蒙したいと思っております。
  255. 中谷鉄也

    中谷分科員 恐縮ですが、最高裁判所においでをいただいておりますので、少年審判の実際に当たっておられる裁判所の家庭局長さんに対して、同趣旨の質問をいたしたいと思います。
  256. 外山四郎

    ○外山最高裁判所長官代理者 一般論として申し上げますが、少年法では、審判を公開しないという原則とともに、家裁の審判に付せられた少年でありますとか、少年のときにおいて犯した罪によって公訴を提起された者につきましては、その者が事件の本人であることを推知することができるような記事等の報道をすることを制限しているのが少年法の六十一条でございます。これは少年の非行が、一般に思慮分別の十分でないままに行なわれる。少年が人格が未熟であって、それとともにまた可能性も持っておるということから、少年のプライバシーを守るとともに、非行を犯した者であることを一般に公表しないことによって、その者の将来の更生を可能にしようとする刑事政策的な配慮が、これらの規定にあらわれておると思うのでございます。
  257. 中谷鉄也

    中谷分科員 そこで、私は大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  大臣のお手元に新聞記事を差し上げましたが、これは私の知り合いなんです。そしてずっとつき合ってきた。その記事を見て、この人は昔そういうふうな事件を犯したのかということで、ふっと私自身がその人に対する見方が変わったような感じを受けて、これはたいへんなことだと思って、自分は反省をした。そこで、これは私の友人のことであるから、私は率直に言って、目くじらを立てて言いたくはありませんが、大臣のほうでひとつお約束をしていただきたい。前科照会書に、これはあとで質問をいたしますが、少年時代の前科、二十年前のことも記載されておりますね。しかしそんなことを係検事が人に発表しなければ、だれも知らずに済んだことなんです。汚職したことはいけない。しかしそのことについて、汚職であるかどうかについては争いがある。しかしそのことは、四十にもなって汚職をしたとすれば、これは強く非難さるべきだ。しかし、ひた隠しに隠してきた二十年前の前科について——少年時代の困難時代です、しかも。米もなければイモもなかったころです。そのことのひた隠しにしたことについて、もしそれが捜査官の口から漏れて公になったというようなことであれば、私はそのような捜査官の人権感覚を疑う。大阪特捜の事件です。泣く子も黙るといわれておる大阪特捜の事件だけれども、ひとつ私は大臣にお約束をしていただきたいのは、大阪特捜の係検事がこのようなことを公にしたのかどうか。多くの前科者といわれておる人、少年時代に罪を犯して、そのことをひた隠しに隠して、子供にも女房にもわからないようにしようとしている人は、私は全国に何万とおると思う。それらの人のためにも、こういう点についての配慮をしてやっていただきたい。一体これはなぜこういうことが公になったのかの真相を、大臣ひとつ明らかにしていただきたいということが質問の第一点。  第二点は、前科については十年たてば抹消されるということになっております。これは昭和二十二年の法律の画期的な改正であります。ところが、前科照会書によれば、二十年前の前科もこれは記載されてまいります。その理由は、要するに犯罪の手口等について、そのことが参考になるからだというふうに伝えられていると、私は実務家として承知をしている。しかし犯罪の手口等のためというならば、何十億円要っても、ひとつあらためて犯罪の手口カードというものをつくればいい。そうしてこの前科照会書には、すでに法律的に抹消されたところの前科というようなものについては書くべきではない、というふうに私は考える。それが私は人権擁護に連なる道だというふうに考えます。私はもう一度質問の姿勢を申し上げる。かつて罪を犯したからといって、しかも少年時代に罪を犯したからといって、そのことが三十になっても四十になっても、いつまでも暗い影としてつきまとうというふうなことは、私はいけないことだと思うし、そういうようなことは、私は人権立場から許すことができない。そういうふうなことを私は救ってやりたいと思う。したがいまして、前科照会書の記載の問題について、これは実務的な問題でございますので、大臣からお答えいただけないかもしれないけれども、ひとつ前科者といわれている、前科があるといわれている人の人権をどうして守っていくか、この点について、大臣の御答弁をいただきたい。  いま一つ、時間がないようでありまするから、企業の壁によって捜査妨害されたかもしれないなどといわれておる福沢という青年の問題、私は、率直にいって、感傷的な気持ちでこの青年の問題を質問するつもりはありません。もっとみじめな死に方をした町の年少労働者がおります。葬式に人も集まってこないような人もおります。しかし企業の壁によって捜査がはばまれたということがある以上、これを私は質問すべきだと思って質問した。検察庁としても、警察の捜査を受け継いで独自に真相究明のために努力をするということを、ひとつ大臣のお口から御答弁をいただきたい。
  258. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 ただいまの問題は、人権上も非常に重要なことでございますから、いろいろ調査してみまするが、検事から漏れたというようなことは絶対にないと思っております。そういうたてまえになっておりますから。   〔主査退席、橋本(龍)主査代理着席〕
  259. 中谷鉄也

    中谷分科員 時間がありませんので、一点だけ質問をいたします。そのことを私も希望いたします。しかし、前科照会書などというふうなものは、だれの目にも触れるものではございませんね。その点についての調査をしていただきたい。どうせ私の知り合いの検事でしょうから、その点についてとやかく言うのではありません。そういうことの人権感覚を検察陣営全体の中にみなぎらすという意味で、ひとつ御調査をいただきたい。それをお約束をいただきたい点が一点。  それから、このきわめてややこしい問題ですが、前科照会書の中に十年たった前科を記載するということをやめることは、実務的に不可能なのかどうか。これはひとつ法務省局長さん、どなたでもけっこうですからお答えいただきたい。何十億要っても、私はそういうことをしていただきたいと思う。その点はいかがでしょうか。
  260. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 ただいまの問題は大事なことでございますから、十分調査してみます。  なお、いまの点は、局長から……。
  261. 川井英良

    川井政府委員 そういう制度をとっておることにつきましては、内部でいろいろ困難な問題がありますけれども、御趣旨を体して検討してみたいと思います。
  262. 中谷鉄也

    中谷分科員 終わります。
  263. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 松本忠助君。
  264. 松本忠助

    松本(忠)分科員 最初法務大臣に伺いたいことでありますが、最近、地方都市におきましては、過密対策と申しますか、たいへんな問題になっております。言うならば、昔は町はずれであった。大体そういうところには、火葬場であるとか、あるいは刑務所であるとか、伝染病の避病院であるとか、そういうものが建設されてあったわけでございます。ところがだんだん都市化が進むに従いまして、そういう場所も市街地の中に入ってくる。いまは町のまん中に刑務所がある、あるいは火葬場がある、こういうふうな問題がございます。その典型的な一例といたしまして、横浜の刑務所がございますが、この横浜刑務所の移転方について要望したいわけであります。  横浜の刑務所は、現在横浜市の南区笹下というところに、約六千坪ぐらいと思いますが、敷地を持ちまして、これが南区の中心地区になっておるわけでございます。この刑務所は、初め横浜の根岸にあったのでございますが、根岸の周辺が開発されまして、住宅地になりまして、昭和の初期に現在地に移動いたしたわけでございます。その当時は久良岐郡日下村という、ほんとうに回りは全部畑で、みすぼらしいところでありました。これは昭和二十五年ごろのことであります。それから十年経過しました昭和三十五年には、この刑務所の周辺は、だいぶ都市化が進みまして、うちが建ってまいりました。工場も建ってまいりました。そうして昭和四十二年ごろには、全く市街地と変貌をしてしまいました。この間、久良岐郡日下村も横浜市に編入されまして、中区といっておりました。それが中区、西区、南区と、三区に分かれ、現在の南区笹下となったのでございます。現在、南区は、人口が二十七万八千八百、世帯数が七万七千七百世帯。さらにこの南区が近々二つの区に分割しなければならないほど都市化が進んでまいったわけでございます。この人口の増加、区政の分割等のことを考えましても、いかに都市化が進展したかということがわかっていただけると思うわけであります。こういうところに、市街地に刑務所がでんとすわっているわけであります。まことにまずい。何とかこういうものは市街地からはずしたい、こう希望いたします。周囲の住民も、ぜひともこの刑務所の移転を促進してほしい、こういう希望があるわけでございますが、これに対して、法務大臣としてどのように対処されるか、まずお伺いしたい。
  265. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 お話しのように、古く建てました刑務所の土地が、発展のために市街地の中心になって、移転要請等を言われておるものがございますので、刑務所の数も非常に多いものでございますから、財政上の見地から、長期計画で移転改築を考えておりますが、いまお話しの横浜刑務所については、いまお話がございましたが、法務省としては、地元住民あるいはその関係公共団体から、移転要請は、いまのところ別段受けておらぬそうでございます。
  266. 松本忠助

    松本(忠)分科員 大臣は、そういう申請を受けておらぬと言われるけれども、地域の住民は声を大にしてそれを望んでおるわけです。ほんとうにありませんか。
  267. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 法務省としては、正式にそういう話は来ていないそうでございます。
  268. 松本忠助

    松本(忠)分科員 それでは伺いますが、市街地のまん中であるということはお認めになりますか。
  269. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 お話しのとおり、市街地の中に入ってきておるそうでございます。
  270. 松本忠助

    松本(忠)分科員 その市街地の中央部にそういう刑務所があるということは、好ましいと思いますか。それとも、いけないと思いますか。
  271. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまお話し申し上げましたとおりに、こういう刑務所等が、発展いたしました町の中心地にあるというようなことは好ましくないので、先ほど申し上げましたとおり、長期計画で、そういう刑務所につきましては移転をするように、いま努力しております。
  272. 松本忠助

    松本(忠)分科員 私は、そういうお考え大臣がお持ちになるならば、地方の刑務所ならいざ知らず、六大都市の一つである横浜の刑務所でありますし、しかも南区の中心街にそれがあるということは、なるべく早い時点において、これを移転するのが当然ではなかろうか。地域住民からそのような申請がなかったとしても、ないからやらなくてよろしいということではいけないと思う。積極的に、この点については大臣が善処されて、そういうものは他の地域よりも優先してやる、というふうに考えられてしかるべきではないかと思うわけです。この点についていかがでしょうか。
  273. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 せっかくのお話もございますので、私のほうからも調査してみます。
  274. 松本忠助

    松本(忠)分科員 それでは、その問題は大臣の善処を期待いたしまして、質問を終わります。  次に、大臣並びに人権擁護局長にお願いをいたしたいのであります。私これから申し上げることについては、事件のあらましはたぶんおわかりになっていることと思いますが、一応申し上げてみたいと思います。  東京都板橋区の仲宿五十二番地に居住しております大関栄助、藤田春吉、市川十郎、小笠原くらなどの方々以下百十名の方々から、人権擁護についての申し出がございましたので、これから大臣並びに人権擁護局長にお伺いいたしたいわけでございます。  この件につきましては、いままで東京都の人権擁護委員に、すでに数年前から申し出まして、解決方について御努力を願っているわけでございますが、いまもって解決がついておりません。  最初にお伺いしたいことは、この仲宿に居住する大関以下百数十名の方からの人権擁護に関する訴えを、都の人権擁護委員で受理されているか、されていないか。されているとするならば、いつごろ受理されたかについて伺っておきたい。
  275. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 お答えいたします。  この問題につきましては、昭和四十二年十月十二日に申告がございました。それからずっと東京法務局のほうで調査し、円満に解決をはかるように努力しております。
  276. 松本忠助

    松本(忠)分科員 四十二年十月十二日に申請があって、東京法務局でいろいろと担当されて、この処理に当たられたというわけでありますけれども、いまもって解決がついてない、こういうわけでありますが、ついておりませんね。この点をひとつ先に確認しておきます。
  277. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 お答えいたします。  これは、事件を聞きますと、非常に複雑な事件でございまして、私が記録を読みました限度では、実に東京法務局としても一生懸命やったのでございますけれども、いまだに解決がついていない。本人は何とか解決したい、こう言うのでありますけれども、何ぶん事件が複雑であって、しかも感情のもつれもあるようでございます。そういう関係で、非常にむずかしい事件でありますが、担当職員としては、のんべんだらりと遊んでいるわけじゃないのでありまして、何とかもう一つやらしてくれ、こういうふうに申しております。
  278. 松本忠助

    松本(忠)分科員 相当に調査の期間が長いわけでございますが、これはそのまま放置しておくということは断じて許せないと思います。一刻も早く問題の解決に当たっていただきたいと思います。付近の住民の方々は、法律に対して不信を抱いております。言うならば、泣く子と地頭には勝てないとか、長いものにはまかれろとか、そういうふうな、法治国家にはあるまじきことがみんなの口からささやかれたりするようでは、まことに残念だと思う。法の番人であるところの法務大臣、あるいは人権の尊重について最も苦心をされる人権擁護局長が、こういう問題に対して積極的に取り組んでいただきたいと私は思うわけです。  この事件、若干時間がかかるかもしれませんが、非常にあくどいやり方なので、一応聞いておいていただきたいと思うわけです。  東京都板橋区の仲宿町五十二番の二十八号というところにございます国有の道路、これは非常に古く、大正二年七月の二十五日に民間から陸軍に献納されたものでございまして、この道路は旧中仙道から陸軍憲兵隊分駐所へ通ずる道路でございました。軍におきましては、道路に面した両側の家屋には木戸をつくらせて、出入りを許可しておりました。さらに昭和十五年、旧中仙道に通ずる憲兵隊の門柱のとびらを撤去して、住民の交通の便をはかっていてくれたものであります。ところが、千崎関吾という方が、昭和十九年に憲兵隊の隊長として着任してこられました。昭和二十年敗戦と同時に、この道路に面した居住者は、引き続き前記道路の使用が可能なように、署名、請願をいたして、居住について何の心配も起こらなかったわけでございます。  この間の事情については、大蔵省の関東財務局の山本靖局長から、先ほど申し上げました小笠原くら氏にあてました昭和四十三年五月十一日の関東財務局指2第49号「旧板橋憲兵分隊及び官舎付属の専用通路について」という文書にこれが明白に載っておりますので、読んでみたいと思うわけであります。これにはいまの表題で  「昭和四十三年四月十六日付貴殿からの通告にかかる板橋区仲宿五十二番の二十八所在旧板橋憲兵分隊及び官舎付属の専用通路について、下記のとおり回答します。  なお、今後当該専用通路について照会事項等があれば、直接当局王子出張所あてご照会願いたく、申し添えます。     記  1 当該道路敷は、戦前旧陸軍が板橋憲兵分隊及び官舎設置の際専用通路として買収したものである。  2 戦後前記憲兵隊及び官舎並びに専用通路については、旧陸軍省から大蔵省に引き継がれ大蔵省所管の普通財産に編入された。  3 昭和二十年十二月以降当局において前記施設のうち官舎及び専用通路の部分について千崎関吾氏に有償貸付し、その後官舎施設については昭和二十八年十一月同氏に売払処分したが、官舎施設が袋地の関係から当該専用通路については、現在なお引き続き同氏に有償貸付中のものである。  4 当該専用通路については、戦前旧陸軍において隣接民有地との境界に板塀を設置し使用していたもので、この板塀は戦災により大半焼失し、残り部分についてもその後、老朽等により逐次滅失し、現在では全く存在していないが、隣接民有地との境界は旧陸軍が埋設した境界石等により現状のとおり明らかである。」  以下五項目、六項目ございますが、関係がないので省きますが、こういう文書で、とにかく千崎に貸し付けられていることはわかるわけであります。いまも申し上げたとおり、これが国有地である。そして千崎関吾氏に、昭和三十七年の二月六日、今度はその国有地がどういうわけか地目変更をされているわけです。この点がどうもわれわれもちょっと納得がいかないのでありますけれども、道路であったものが宅地に変更されている。これについては関東財務局の王子出張所の担当者が、公務員として全体の福祉をはかるべき立場にありながら、千崎氏と相はかって道路を宅地に変更したのではないか、こういうふうに関係者が言っているわけでありますけれども、これについての真偽はまだわからないわけであります。  そこで、特に問題といたしたいのは、この小笠原くら氏についてでございますが、小笠原くら氏の夫久平氏が同地に移転してきましたのが昭和三十六年の四月であります。この土地を小笠原氏が買いました。これは銀行に抵当に入っていたものを買ったらしい。そのときに当時の所有者が、小笠原宅の前のところの専用道路は、ただいま読み上げましたように軍用の道路なんですけれども、それを公道だと偽った。それで小笠原久平氏はそれを購入したわけでありますけれども、専用道路のために、千崎関吾氏が、同年四月十八日に、小笠原久平氏宅の玄関口に無断で鉄条網を張って、家屋への出入りができないようにしてしまった。このため、小笠原久平氏は、関東財務局の王子出張所に申し出をいたしまして、出張所の手によりまして鉄条網は撤去せられた、こういう事実が一点あるわけであります。また、そのころ千崎関吾氏は、その専用道路の西側に面する市川十郎宅の非常口にあるいは出入口に、材木を並べて出入りが不可能な状態にして、専用道路には小型トラック等を並べて通行を不便ならしめている。これはいろいろとった写真がございますので、また後ほど見ていただきたいと思うわけでございますが、出入りを不便ならしめている。昭和三十八年十二月の十三日の朝、またもや千崎関吾氏は、小笠原久平氏宅の下水口を無断でふさいで、汚水が道路に流出するようにし、収拾のつかない状態にした。次々と人権を無視する暴挙に出たわけであります。  その具体的な事実がまだまだ続きますが、中でも昭和三十九年十二月二十二日、玄関に鉄条網を張って、さらに四十年一月の七日には、鉄条網を竹さくにかえております。これはどういうわけで鉄条網を竹さくにかえたのかについてはわかりませんけれども、とにかく小笠原のほうが王子の財務局等に申し出て、財務局等から話があったとみえて竹さくにかえた、このような状態でありましたが、竹さくがあるために出入りができない。とうとう小笠原久平氏の商売が思うようにできなくなりまして、この事件の解決を気にしながら、ついに小笠原氏はなくなったわけです。  ところが、ここに最もはなはだしい人権じゅうりんの問題があると思うのは、このなくなった小笠原氏の葬儀が、四十二年一月三日行なわれたわけでありますけれども、この葬儀の当日、何としてもその竹さくをとってもらいたいと、再三千崎関吾氏に交渉いたしたのですが、ついにその竹さくを撤去しない。やむを得ず、御主人の遺骸を玄関から出すことができず、御近所に頼みまして、裏側の路地から路地へと棺を運んで、そうして出棺をしたという、悲しみの上にさらに悲しみを重ねたわけでございます。これこそまさに最大の人権じゅうりんだと私は思うのでございます。  昭和四十三年九月の一日に主人になくなられまして、女世帯になった小笠原くら氏方の玄関を、今度はブロックのへいでふさぐという暴挙をいたしたのであります。これはその当時の、とっておきました写真でありますけれども、まことに不都合きわまる状態でございます。こうして、このときにも小笠原から厳重な抗議をしたにもかかわらず、暴力を使ってこのブロックのへいをつくる。しかし、このときに、小笠原の建築線内にブロックのへいを建ててしまうということをしたわけでございますが、これは抗議をいたしました結果、専用道路の境界の中に入れて、ブロックのへいを建てた。こうして小笠原方の便所のくみ取り口をブロックのへいでふさいでしまいましたので、ついにくみ取りをすることができない。道路の側からはくみ取りができなくなってしまった。座敷の中をホースを通してくみ取りをしなければならないというふうな状態に追いやってしまったわけでございます。  この間、前述の大関、藤田、市川と、ほうぼうの方々の下水道管、上水道工事あるいはガス工事、こういうものについても、この専用道路を通してほしいということでお願いに上がっても、絶対これを通さない。常に妨害されまして、これらの方々は非常に不便な生活をしているわけでございます。  関東財務局も、昭和三十七年三月三十一日に、千崎関吾氏への専用道路貸し付け期限を終了するその時点には今後の貸し付けは更新しない、こういうふうな回答をしております。関東財務局から、三十七年三月三十一日で専用道路の貸し付けの期限が切れるから、それ以後は貸さない、こういうふうに回答も来ているのでありますけれども、依然として貸し付けが続いているようであります。  次に、昭和三十九年三月十七日付で、関東財務局の王子出張所の所長さん内本広男さんから発送されてきた書類について申し述べてみると、こういうことがわかるわけであります。  要点を申し上げますと、「当所は終戦前より同番地に居住しかつ住居に往来する道路として使用していた千崎関吾氏に対して使用の事実に基づいて使用料を徴収し、じ後双方において正常の国有財産有償貸付契約を締結している。その期間は昭和四十年三月三十一日迄であるが本地の使用辞退については折衝中である。」先ほども申し上げましたように、三十七年において三月三十一日以後もう貸さないと言いながらも、また次に貸している。その期間は今度は四十年三月三十一日までだ、しかし使用の辞退については折衝中である、こういうふうな回答が来ているわけです。こういう点をもって見ましても、その役所のやっていることが非常にふに落ちないわけであります。  このような関東財務局からの公式回答がなされてからも、すでに満三年になろうとしているわけでありますけれども、いまもって解決されていないということは、先ほど局長からお話があったとおりで、おわかりであります。  そこで、また、この市川、小笠原、藤田、大関等の当事者は、人権擁護の立場から再三、中央区の勝閧橋のたもとの東京都の人権擁護委員に申し出ておるわけでありますけれども、依然として調査中、調査中ということで解決がつかないということはいまお話があったとおり。さらに、この四十二年の十一月には、人権擁護委員の坪井さんという方が来られて、この間の事情を録音して、テープもとってございます。  こういう事実もあるわけでございますが、何といたしましても、千崎関吾氏のやり方については、われわれも人間としてまことに残念な行動をとられている点を感じるわけであります。  いろいろと申し上げましたけれども、私は千崎関吾氏側の話は聞いておりません。あるいは私の話の中に間違いがあるかもわかりません。大体被害者ともいえる大関栄助、藤田春吉、市川十郎、小笠原くら、こういう方々から一方的に私も聞いた話でございますし、あるいはこの点は不公平といわれるかもしれません。しかしながら、あまりにも人権を無視し、非道の行ないをするところの千崎関吾氏をこのまま見のがすということは私の良心が許しませんので、あえてこの問題を申し上げまして、一日も早く問題の解決をしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  この点について、法務大臣としても、こういう事実がある以上は、このまま日を重ねて二年も三年もおっぽっておいて、付近の住民が法に対して不信を抱くということはまことに残念なことであろうと思う。何とか法務大臣も一そうの努力をされて、この問題の解決方について特段の指示をしていただくように切望するものでございます。  あとまたお話を伺いたいと思います。そちらの話も聞いておきたいと思います。
  279. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 ただいまお話しになりましたことは、大体私も承知いたしております。  この問題は、この道路を千崎という人が財務局から借りまして、自分の借りた土地だということで、こういう普通でないことをおやりになるわけなんです、ほかにもいろいろ事情はございますが。  それで法務局といたしましては、受理しましてからは、もう日夜一生懸命になりまして、財政局からの貸し付けの更新をやめてくれと、まず財務局へ私のほうから申し入れしております。そして、それを区に無償交付してくれ——無償でも有償でもいいが、板橋区へやって区道にしてしまう。そうなるとそういうことはできませんから、そのほうに全力をあげたわけであります。それが去年のちょうどいまごろでございます。これは全力をあげてやったのですが、どういう関係か知りませんが、財務局のほうでは更新をしてしまったということなんです。  それで現段階においては、これはとにかく土地の所有権は国にあるけれども、賃借り権は千崎のものである。だから、どうしてそれを打ち破るかということが、担当官としては苦しいところでございます。  その間、和解のあっせんも二回か三回やっております。もう一歩というところで、利害関係人が多いものでございますから、一人がだめだというと皆だめになるというような状態だったのです。  板橋区のほうも熱心でございまして、払い下げ——有償、無償を問わず、とにかく払い下げをして区道にしたいということについては、板橋区のほうも乗り気なんです。これは区の議会が要るようですが、六月に区の議会にのせるというやつが、これは更新してしまったものだから、財務局からの払い下げがうまくいかないというようなことで延びまして、昨年の九月ですか、九月の議会にのせるから待ってくれというようなことが、区のほうから私のほうに言われたわけです。区のほうから私のほうに、区道にしたいのだが議会には提出できなかった、こういう返答があったわけなんです。  だから少し冷却期間を置いて、担当官を呼びまして私が聞きましたら、もう一ぺんやらしてくれ——これは一番簡単なのは、財務局がこの貸し付け契約を解除してもらって、区のほうに区道にしてもらって——区道になると、こういうむちゃなことはできません、これは公道ですからね。そういうふうな方法でしか解決できないのじゃないか。つまり賃借り権があるままではこれはどうにもなりませんから、まず、貸し付け契約に、公益のためというような場合には契約解除できるという条項がございますから、それをたてにとって、関東財務局のほうで契約を解除してもらって、関東財務局のほうから区に払い下げる。有償か無償かあるいは貸し付けになるか、それはそのときのことですが、区のほうはそれは乗り気で区道にする、こう言っているのです。だから、そこまでいっているのでありますけれども、財務局のほうで解除して板橋区へ払い下げてくれれば一挙に解決する問題だと思います。もしそうしないと、これは遺憾ながら、純法律的に見ますと、人の土地を通る権利ということになりまして、これが囲繞地といいますか、袋路じゃございませんので、裁判ざたになりましても、なかなか通りにくいだろうと思います。これは権利乱用の問題がありますから、絶対に通らないという意味で申し上げているわけではありませんが、訴訟にいくよりしかたがない。だから、私のほうの力を入れておりますのは、これを区に払い下げて、区でもいいがここの住民でもいいのですが、だれかに払い下げて、区なら区道にしてしまう。そうしたらみんなが自由に使えるじゃないか、そういう方向で一生懸命やってきたわけなんです。それが最終的には九月で一応あきらめたわけなんですが、もう一ぺんやってみましょうということは、担当官は言っておりますから、担当官は非常に熱心な人なんで、その熱心な担当官にもう一ぺん、ちょうどほとぼりもさめましたし、九月から若干日もたっておりますので、もう一ぺんその方向でやってみたいと言っておりますので、しばらく日をかしていただきたいと思います。  ただ、この事件に関しましては、私、記録も持ってまいりましたが、このくらいになっておりまして、いまお話を聞いた写真もみんな載っております。私も記録を読ましていただきまして十分承知しておりますので、できるだけ努力いたしたいと思います。
  280. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 時間が参りましたので、簡単に願います。
  281. 松本忠助

    松本(忠)分科員 たいへんどうも御協力をいただきましたけれども、ぜひこれは付近住民のためにも、いまお話のあったように区に払い下げをするように、財務局のほうにはまた私どもも力を尽くしてみたいと思います。どうかその点について、法の番人としてひとつ最後大臣から善処するということを一本いただきたいと思います。
  282. 西郷吉之助

    西郷国務大臣 いまの問題につきましては、さらに人権擁護局を通じまして努力してみます。
  283. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)主査代理 これにて昭和四十四年度一般会計予算法務省所管に関する質疑は終了いたしました。  明二十六日は、午前十時より開会し、内閣、防衛庁及び経済企画庁を除く総理府所管の予算を議題とし質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会