○坂田国務大臣
昭和四十四年度
文部省所管の
予算案につきましてその
概要を御
説明申し上げます。
まず、
文部省所管の
一般会計予算額は七千四百二十二億二千八百十万一千円、国立学校
特別会計の
予算額は二千七百六十三億七千二百二十五万三千円でありまして、その純計は七千八百八十八億六千七百四十三万一千円となっております。この純計額を前年度
予算と比較いたしますと、およそ九百五億円の
増額となり、その
増加率は二二%となっております。
以下、
昭和四十四年度の
予算案におきまして特に重点として取り上げました施策について御
説明申し上げます。
まず第一は、初等中等教育の
充実であります。
このことにつきましては、かねてから努力を重ねてまいったところでありますが、前年度に引き続き、まず、父兄負担の軽減に留意し、教材
整備の
推進、教科書無償の実施、就学
援助の強化、遠距離通学費補助の拡充、学校給食の普及
充実等につとめることといたしました。
そのうち、教材
整備の促進につきましては、教材
整備十カ年計画の第三年次の
整備充足を行なうこととし、また、教科書無償につきましては、引き続き国、公、私立の義務教育諸学校の全児童生徒に対して教科書の無償
給与を行なうととも一に、新たに不就学の学齢児童生徒に対しても教科書の無償
給与の措置を講ずることとして、
総額百四十一億円余を計上いたしました。
次に、就学
援助の強化につきましては、要保護、準要保護児童生徒の就学奨励として、校外
活動費を新たに
支給対象費目に加え、遠距離通学費補助につきましては、対象人員を一万人
増加いたしましてその拡充につとめました。
次に、初等中等教育の
充実のうち、まず、後期中等教育の拡充
整備につきましては、定時制または通信制の高等学校の
施設設備に要する
経費の補助を行なうほか、生徒の就学
援助を拡充する等、引き続き定時制教育及び通信教育の振興をはかるとともに、理数科及び職業科関係において高等学教育の多様化に対処するための
施設設備等に必要な
経費を計上しております。
また、理科教育設備及び産業教育の
施設、設備につきましては、引き続き新基準による計画的な改善
充実を行なうことといたしました。
次に、幼児教育の重要性にかんがみ、既定の幼稚園振興計画に基づき、引き続き幼稚園の普及
整備のために必要な
施設、設備に関する助成を強化いたしますととも一に、私立の大学及び短期大学の教員養成課程に対する設備費の補助を拡充して、幼稚園教員養成の
充実をはかることといたしました。
次に、特殊教育の振興につきましては、養護学校及び特殊学級の計画的な普及と就学奨励費の内容の改善のため必要な
経費を
増額し、また、教
職員定数の
充実をはかるとともに、新たに特殊教育総合研究所の設置準備
経費及び私立特殊教育学校教育費補助に必要な
経費を計上しております。
次に、僻地教育の振興につきましては、僻地の教育環境の改善等のため、引き続き教員宿舎、スクールバス・ボート、給水
施設等各種の
施設、設備の
充実をはかるとともに、複式の学級編制の改善及び教
職員定数の
充実を行ない、寄宿舎居住費
補助等従来の施策を拡充するなど、総合的に施策を
推進することといたしております。
また、学校給食の普及
充実につきましては、その振興の基本方策について現在検討しているところであります。来年度
予算では、引き続き給食
施設、設備の
充実をはかるほか、栄養
職員の
増員等施策を拡充し、さらに小麦粉及び脱脂粉乳につきましては、従来どおり所要の補助金を計上いたしましたが、脱脂粉乳につきましては、牛乳の使用量の
増加に伴い、所要の量に調整を加えております。
次に、公立文教
施設整備費につきましては、三百六十四億円を計上し、引き続き
単価の引き上げ、構造比率の改善、公害対策等に留意するとともに、特に過密地域の教育対策として、人口の社会増地域における小学校校舎の不足
整備に特段の配慮をいたすこととし、また、新たに新設の小・中学校の校地整地費を国庫負担の対象に加えることといたしました。
次に、義務教育諸学校の教
職員定数の
充実につきましては、従来までの義務教育諸学校に関する定数標準法の実施の成果を基礎として、なお一そうの教育水準の向上をはかるため、
昭和四十四年度を初年度とする五カ年計画により、学級編制の一部について改善を加えるとともに、教
職員定数の
充実についても細部にわたる改善措置を講ずることとし、義務教育費国庫負担金
総額三千七百八十一億円余を計上いたしました。なお、教員
給与の改善に関する基本的検討を行なうため、引き続き
調査研究費を計上しております。
以上のほか、教育課程の改善、道徳教育及び生徒指導の
充実、教
職員の研修及び研究
活動の
推進、学校安全の
充実等各般にわたる施策の拡充に必要な諸
経費を計上いたしました。
第二は、過密過疎地域教育対策であります。
来年度
予算におきましては、過密過疎地域対策を新たに重点として取り上げることとし、これらの地域における児童生徒の急増、急減の現象に対処することといたしました。
まず、過密地域対策につきましては、さきにも述べましたように、人口の社会増地域における小学校校舎の不足
整備に最重点を置くこととし、また、新たに新設小・中学校の校地整地費を国庫負担の対象としたほか、校舎の前向き
整備等も引き続き実施することといたしました。
次に、過疎地域対策としましては、従来僻地教育振興施策として実施してまいりました教育環境の
整備、教
職員関係及び児童生徒関係のそれぞれの施策について、さきに述べましたとおり一そう拡充をはかることといたしております。
第三は、高等教育の
整備充実と厚生補導の
充実等であります。
国立学校
特別会計予算につきましては、前年度
予算額と比較して二百五十九億円の
増額を行ない、約二百七百六十三億円を計上いたしました。その歳入予
定額は、一般会計からの繰り入れ二千二百九十七億円、借入金十七億円、付属病院収入三百二十四億円、授業料及び検定料六十億円、学校財産処分収入三十億円、その他雑収入三十五億円であります。
歳出予
定額の内訳は、国立学校
運営費二千二百四十五億円、
施設整備費五百十八億円などであります。
まず、国立大学の
充実整備につきましては、その質的
充実をはかる見地から、一学部の創設、二学部の創設準備、十二学科の新設及び六学科の拡充改組を行ない、短期大学についても二学科を新設することにいたしました。
次に、教官当たり積算校費、学生当たり積算校費等各大学共通の基準的
経費につきましても、引き続きその
増額をはかっております。
また、新制大学における大学院修士課程の拡充、付属病院、付置研究所の
整備につきましても配慮をいたしておりますが、特に付属病院につきましては、看護要員の
増員について措置するとともに、病院教官の
増員、臨床研修医等の謝金の
増額をはかり、臨床研修制度の
充実等に必要な措置を講じております。
次に、専門技術者育成のため、
昭和三十九年度に設置をみた工業高等専門学校十一校に各一学科を
増設するとともに、商船高等専門学校五校の学級の
増加をはかり二百人の増募を行なうことにいたしました。
次に、国立学校
施設の
整備につきましては、五百十八億円を計上し、その
整備の促進をはかることといたしておりますが、なお
施設整備の円滑な実施をはかるため、後年度分について百七十億円の
国庫債務負担行為を行なうことができることといたしております。
次に、大学問題の現状にかんがみ、特に学生の厚生補導関係については多角的かつ総合的な施策を
推進することとし、合宿研修の拡大等学生指導費の
増額、課外
活動施設、設備の
整備、学生厚生福祉
施設の
充実等に必要な
経費を大幅に
増額しました。
また、育英奨学事業の拡充につきましては、大学院奨学生及び高等学校特別奨学生の採用数の増をはかるととも一に、高等専門学校の高学年在籍者については、貸与月額を大学なみに改訂するなど引き続き事業を拡充し、
総額で百五十一億円余を計上いたしております。
以上、高等救育の
整備充実について配慮いたしておりますが、現在、一部の大学におきまして、諸種の理由から学内において紛争を生じておりますが、教育と研究の正常化につとめ、学問と教育の府にふさわしい教育環境を確立するよう努力いたす所存であります。
第四は、私学の振興であります。
わが国の学校教育において果たしている私立学校の重要な役割りとその経営状態の実情にかんがみ、来年度においても、引き続き私立学校に対する助成措置の拡充改善を行なうことといたしました。
まず、私立学校振興会の貸し付け資金につきましては、政府出資金及び財政投融資資金からの融資並びに自己資金を合わせて
総額三百四十億円を確保することといたしましたが、明年度は、貸し付け条件の改善をはかり、特に低利の経営費の貸し付けワクを大幅に拡大する等の措置を講じることといたしました。
また、引き続き私立大学の教育研究の
充実向上をはかるとともに、経営の健全化に寄与するため、経常的教育研究費の助成の範囲を拡大することとして三十三億円を計上し、また、理科等教育設備費助成及び研究設備費助成につきましても、合わせて四十八億円を計上しましたほか、幼稚園に対する
施設費の補助の拡充等の施策を講じております。
第五は、学術の振興であります。
近年、学術研究の分野においては、研究
活動の増大、専門分野の細分化、大型研究
施設の需要等急速な進展を見るに至り、したがって、学術振興に関する施策も今後多角的に講じることが必要と考えられます。
来年度
予算につきましては、まず、科学研究費補助金を大幅に
増額し、
総額六十億円を計上いたしましたが、この補助金については、引き続き配分
審査等の改善に留意しつつ適切公正な執行をいたす所存であります。また、研究所の
整備につきまして配慮するとともに、科学衛星一ロケット観測、南極地域観測
経費及び加速器に関する基礎研究に要する
経費等についても引き続き所要
経費を計上することといたしました。
第六は、青
少年の健全育成と社会教育の振興であります。
最近における都市化の進行、技術革新の進展などにより、社会構造の急速な変化を見ておりますが、来年度
予算では、このような現状を踏まえて、社会教育指導者の養成確保に意を用いるとともに、社会教育
施設の拡充につきましても、公民館、図書館、博物館等の
施設、設備の
整備を一そう
推進することとし、また、大学開放講座の拡充など国民の学習意欲の高まりに対応する施策を進めることといたしております。
また、青
少年の教育問題において社会教育の分野でになう役割りは非常に大きいものとなっておりますので、学校外における
少年の健全指導事業の拡充等を行なうとともに、新たに青
少年の団体宿泊訓練を通じてその健全な育成をはかる
機関としての国立第七、第八青年の家を設置することとし、さらに、都市青年の家等公立青
少年教育
施設、青
少年団体等の助成を拡充する措置を講じております。
このほか、青
少年に対する映画、テレビ等の影響力の大きいことにかんがみ、積極的に優良な映画、テレビ番組の制作の奨励及び普及を促進するとともに、視聴覚教材の
利用の
推進についても十分配慮することといたしました。
なお、家庭教育学級の
増設等、家庭教育、婦人教育の振興についても留意し、
経費の拡充をはかっております。
第七は、芸術文化の振興と文化財保護の
推進であります。
昨年新たに文化庁を発足させて、文化行政の総合的かつ効果的な
推進をはかる体制を
整備し、その後芸術文化の振興と文化財保護の拡充に努力してまいりましたが、来年度
予算におきましては、それぞれの分野でさらに施策の
充実をはかることといたしました。
まず、芸術文化の振興につきましては、芸術祭の刷新
充実をはかるため国の主催公演及び地方公演の
充実等に要する
経費を計上することとしたほか、特に、地方芸術文化の振興に重点を置いて関係
経費の
増額をはかることといたしました。
また、芸術関係団体に対する助成措置の拡充を行なうとともに、国立の美術館、博物館等の
整備費及び公立文化
施設整備費の補助についてもそれぞれの実情に合わせて
充実をはかることといたしております。
次に、文化財保存事業につきましては、文化財の修理、防災
施設の
整備等を一そう
充実することといたしておりますが、特に、最近国土開発の急速な進展に伴ってその必要性を痛感されております史跡等の買い上げ及び環境
整備に対する補助並びに埋蔵文化財の保護につきましては、特別の配慮を加えております。
また、平城宮跡の買い上げ、
整備を引き続き行なうとともに、新たに飛鳥、藤原宮跡の発堀
調査を開始することとして所要
経費を計上いたしました。
なお、無形文化財の保存活用等につきましても、引き続き必要な
経費を計上いたしております。
第八は、体育・スポーツの振興であります。
わが国の体育・スポーツの現状から見ましても、青
少年をはじめ広く国民が体育・スポーツを実践し、健康の増進、体力の向上をはかり得るよう強力な施策を
推進する必要があります。このため、来年度
予算では体育・スポーツの普及奨励に力点を置き、水泳プール、体育館、運動場、柔剣道場及び野外
活動施設等の
整備を促進するとともに、スポーツテストの普及、スポーツ教室等の実施、スポーツ団体・行事の助成、指導者養成等について引き続き必要な
経費を計上することといたしました。
また、体育・スポーツに関する国際的行事としましては、札幌オリンピック冬季大会の実施準備
経費を大幅に
増額計上するとともに、ユニバーシアード選手団派遣等に必要な
経費を補助するなど、国際的交歓事業の実施を拡充することといたしております。
第九は、国際交流の
推進と教育
援助の拡大であります。
わが国と諸外国との間に文化の国際交流をはかり、開発途上国の社会経済的発展に寄与する施策として、まず、外国人留学生教育につきましては、国費外国人留学生の人員を
増加いたしますとともに、その受け入れ体制の強化をはかることといたしました。
次に、国際学術文化の交流を促進するため、引き続き教授、研究者の交流を
推進するとともに、新たに日本古美術の海外展を実施する等、文化交流についても配慮いたしております。
また、最近、特にアジア・アフリカ諸国に対する教育協力の要請が高まってまいりましたおりから、教育指導者の招致、理科設備等の供与及び指導者の派遣を実施するほか、アジア諸国への留学生の派遣等に必要な
経費を計上いたしております。
さらに、ユネスコ国際協力につきましては、国内ユネスコ
活動の
推進をはかるとともに、アジア諸国の出版専門家の養成、ユネスコ本部との共同事業による各種ワークショップの開催等一段とその事業の拡充をはかることといたしました。
以上のほか、
沖縄の教育に対する協力
援助費につきましてはこれを
増額し、別途
総理府所管として計上いたしております。
以上、
文部省所管予算案につきまして、その
概要を御
説明申し上げた次第であります。よろしく慎重御
審議のほどお願い申し上げます。