○坂田国務
大臣 お答えをいたしたいと思います。
御案内のとおりに、この加藤提案なるものが出ましたのが十二月二日、しかもその加藤提案につきまして基本見解というのが出ましたのが十二月二十六日、そしてこの七学部代表団との「確認書について」、しかもそれは未定稿という形で一月二十八日に出ておるわけでございます。先生が御
指摘になりましたように、これはやはり紛争処理の一つの手段としてとらえたわけで、非常に流動的である。また同時にいろいろにも解釈ができる。学生側の主張として、こういうふうに解釈するならばこういうふうになる。それからまた一方大学側のほうでも、各学部教授団におきましてもいろいろの
考えの相違がある。また世間におきましても、これを読みました場合にはいろいろの解釈のしかたがあるというわけで、非常に幅があったことは、先生の御
指摘のとおりだと思うのです。したがいまして、いろいろな議論が両方から出た、学生側からも教授側からも。それから
民間におきましても、右と左とでいろいろ分かれた。こういうものであったがゆえに、十二月二日の加藤提案そのままが、その解釈だけでは不十分だということで、十二月二十六日には基本見解を発表した。そして、それでもなおかつわかりにくいところがあるということでございまして、一月十日ごろにこの確認書がきめられて、これに対してまたいろいろ議論がございました。ある人は、この点についてはこう読むならばこれは法律違反じゃないか。いや、そうじゃないのだ。あるいはまた、これは不当である、あるいはそうではないのだ。いや、この部分は現行法内の問題であるけれども、この問題についてはむしろ将来の大学のあり方というものを
考えなければ出てこない問題である。そういうものをごっちゃにしておるのだというような、いろいろの議論がなされたわけでございますし、そういうようなものであったと私は思うわけでございますが、ただ一月二十八日に至りまして、この七学部代表団の確認書で、十五項目について両方、教授側もそれからまた学生側も承認をした部分についてだけ一応批准をしたというのが、現在の段階かと思うわけでございます。
その間私
たちは、そういう議論がごさいましたから、こういうふうに解釈するならば違法だと思われるというような意味合いにおきまして、法制
局長官のいわば見解というものを発表していただいたわけでございます。違法なことを加藤執行部としてもやる
気持ちはないことは、私の協議の段階におきましても加藤代行が申しておったことでございますから、違法なことはやらない。しかしさりとて、それでは違法ではなくとも、大学というところはやはり教育の場であり研究の場であるから、良識とそれから理性の府にふさわしい当不当、適当であるかどうかという議論だってできるのである。その意味合いにおいて、御承知のようにわれわれといたしましては、この確認書についての
考え方の基本になる問題について、東大側にその見解を示したわけでございます。
そういう前提でございますが、確認書の内容を見ますと、大学側の反省の姿勢が強調されている半面、学生側の反省を求める態度が見られないこと、及び学園における暴力の否認と学園秩序の維持並びに政治的中立の確保について、大学としてのきびしい姿勢が見られないというようなことは遺憾である。あるいはまた確認書は、紛争処理に関する取りきめの部分と、先ほど申しました将来の大学のあり方についての方向づけに関する部分を含み、かつ全体として不確定な要素を多分に包蔵している点に問題があり、またその記述において、まだ現在でもなおかつ随所に解釈の幅のあるあいまいな表現があって、双方の当事者がそれぞれ独自の解釈をする場合紛議を生ずるおそれが多いというところもあります。さらにまた、将来のあり方の方向づけに関する部分につきましては、一つの
提言としても、これは大学制度の基本にかかわる問題でございますし、また他の大学に影響を及ぼす問題でもございますから、こういうような紛争処理の過程において、部分的に学生の要求にこたえる形で打ち出されることはどうだろうか。こういうようなことで、むしろこういうような制度の基本に触れる問題については、ちょうど中央教育審議会にいま諮問をいたしておるところでございますから、文部省としては、それらの意見を十分に慎重に
考えて対処したい、こういう
考えです。
それから文部省としましては、法律上の
問題点のほか、文教の
立場からもなるべく早く
考えをまとめまして、そうして東大に伝えたいと思っておりましたが、文部省の最終的な見解ということになりますと、東大当局の
説明をまださらにお聞きする必要の部分もございますので、やはり中央教育審議会の審議との関連もございまして、現時点でまとめました基本的な、先ほど申し上げましたような所見として指導、助言の意味から二月の八日東大に伝えることにしたものでございますが、この文部省の所見に対しましては、現在までのところ東大からは何も言ってまいっておらないわけでございます。
それからまた、一月の何日からか、大学制度の問題について東大
自身があるべき東大像と申しますか、新しき東大の姿というものを御検討になっておるということは、十分私は承知をいたしておりますし、そういうような御意見がどしどし出てくるということは非常にありがたいことでありますし、あるいは大阪大学等においてもそういうような検討が始まっておる。そういう各大学におけるいろいろのことが出てくる。また、各党においてもいろいろの大学像が出てくる。そういうものを踏まえまして、あるいは中教審も、そういうものをお
考えいただいて答申があるものと心得ておりますし、その上で私といたしましては最終的な
考え方をまとめていきたいというのが文部省の実は態度でございます。
端的な処分の問題につきましては、たとえば、あれだけ一年間もかかって、あれだけの暴力、市民として刑事事件になったようなものまでも不問に付すといいますか、そういうものは処分をしないということは一体いかがかというふうに私どもは
考えておるわけでございます。この点の詳しいことにつきましては、大学
局長からお答えを申し上げたいと思います。