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1969-02-14 第61回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月十四日(金曜日)     午前九時四十七分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 櫻内 義雄君 理事 田中 龍夫君    理事 塚原 俊郎君 理事 中野 四郎君    理事 八木 徹雄君 理事 大原  亨君    理事 中澤 茂一君 理事 麻生 良方君    理事 広沢 直樹君       足立 篤郎君    相川 勝六君       植木庚子郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    倉成  正君       小坂善太郎君    重政 誠之君       田中伊三次君    竹内 黎一君       野田 卯一君    野原 正勝君       橋本龍太郎君    福家 俊一君       福田  一君    松浦周太郎君       松野 頼三君    湊  徹郎君       石川 次夫君    角屋堅次郎君       河野  正君    北山 愛郎君       田中 武夫君    高田 富之君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       畑   和君    森本  靖君       山内  広君    吉田 賢一君       伊藤惣助丸君    北側 義一君       林  百郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣         経済企画庁長官         事務代理    福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  大平 正芳君         郵 政 大 臣 河本 敏夫君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 坪川 信三君         国 務 大 臣         (内閣官房長官保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 有田 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         人事院総裁   佐藤 達夫君         総理府人事局長 栗山 廉平君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         防衛政務次官  坂村 吉正君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         科学技術庁長官         官房長     馬場 一也君         科学技術庁計画         局長      鈴木 春夫君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 梅本 純正君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業省公益         事業局長    本田 早苗君         運輸政務次官  村山 達雄君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         郵政大臣官房長 溝呂木 繁君         電気通信監理官 柏木 輝彦君         郵政省貯金局長 鶴岡  寛君         郵政省簡易保険         局長      竹下 一記君         郵政省電波監理         局長      石川 忠夫君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本電信電話公         社総裁     米澤  滋君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十四日  委員西村直己君、川崎寛治君、久保三郎君、山  中吾郎君、和田耕作君及び樋上新一辞任につ  き、その補欠として湊徹郎君、森本靖君、河野  正君、石川次夫君、吉田賢一君及び北側義一君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員石田次男君、河野正君及び森本靖辞任に  つき、その補欠として山中吾郎君、久保三郎君  及び川崎寛治君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算  昭和四十四年度特別会計予算  昭和四十四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行ないます。伊藤惣助丸君。
  3. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、公明党を代表いたしまして、憲法と核兵器の問題、米軍基地、また自衛隊の増員の問題、以上三点について、外務大臣防衛庁長官大蔵大臣官房長官に質問いたします。  その前に、沖繩返還問題について、今国会における佐藤総理外務大臣の発言に対し、若干の点について確認しておきたいと思います。  総理判断によれば、日米間の問題は、相互の理解と協力によって目的を達成しようとする立場にあるということである。沖繩返還について国民意思は、核つき早期返還核抜き遅延論のいずれかであるということであるが、この点についてはわれわれは異論のあるところであります。このような総理国民意思判断について、外務大臣も全く同じ考えであるのかどうか、伺っておきたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御質問の点でございますが、この沖繩返還問題につきましては、国民の間でもいろいろの議論期待や希望があるということは申すまでもないことであると思いますけれども、大きく分ければ、ほかにもいろいろ議論があろうけれども、こういう二つ意見に大別されるのではなかろうかというような趣旨で、総理がああいうふうな答弁をされたもの、こういうふうに理解をいたしておる次第でございます。
  5. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いまの答弁でありますと、総理の申されたことと同じだ、このように判断してよろしいわけですか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 内閣は一体で重要な問題に取り組んでまいらなければならぬことは当然でございます。また、ただいまお尋ねの点につきましても、私は総理と同じ気持ちでおるのでございます。
  7. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 その返還態様については現在はなお白紙である、このことはしばしば伺っております。この基地態様について、近い将来、これは政府としても決定することは間違いないわけでありますが、いわゆる核つき返還ということもあり得るのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その辺のところにつきましては、この予算委員会におきましてもいろいろと質疑応答がかわされたわけでございますが、基地態様につきましては、私どもとしては白紙であるということはしばしば総理からも申し上げているとおりでございます。
  9. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 白紙であるということはわかっております。やはり外交を行なう場合には、こういう方法があるのだということが前提でなければ話し合いにはならないと思うわけです。一つのケースとして核つきということがあり得るのかないのかということを聞いているわけです。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは結局基地態様をどうするかという問題になるわけでございますから、基地態様ということにつきましてはいろいろの点からいろいろと検討しておりますが、現在は白紙と申し上げざるを得ないわけでございます。
  11. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 白紙のことはわかっているわけですよ。何回も聞いております。あとでだんだん詰めてまいりますが、あり得るのかということをはっきり言ってもらわなければ、またそれではないと言えるかというわけです。どうなんですか、その点。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは従来からもしばしば申し上げておりますように、結局そこのところになりますと、白紙であるという現在の政府立場というものを御理解をいただきたい。こういうことがあり得るか、こういうことはないのかというふうなところに対してまだお答えをする段階ではない、こういうふうに申し上げざるを得ないわけでございます。
  13. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、あなたにその基地態様を言えと言っているわけではないわけです。ただ白紙白紙だでは何もわからないわけですよ。ただ、その態様の中に幾つかの方法がある。しかも総理は、二つの面からわれわれに基地の問題を取り上げて、いかにもそれが国民の間に二つの世論があるみたいなことをおっしゃっているわけです。それについては、先ほどからもわれわれの立場から見れば異論がある。しかしながら、その幾つかの中に核つきということがあるのかないのか、その返還態様の幅の中に。言うならば上限下限というふうに考えてみた場合でも、上限沖繩即時無条件全面返還であるけれども下限としては核つき返還もあるのかどうかということを伺っているわけです。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはどうもまことに申しわけございませんけれども、従来の答弁を繰り返す以外に私としては意見を申し上げられない、その状況にあることを御理解をいただきたい、こう思うわけでございます。
  15. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 私は、問題がたくさんございますので、率直に外務大臣から伺っておるわけです。その問題については全然白紙であるということだけでは、今後の返還問題については何ら一歩も前進しないことになるわけです。ですから、何回も念を押して聞いておるわけであります。  それでは伺いたいわけですが、核つき自由使用という場合、沖繩安保条約上の特別地域とすることがあるかないか、こういう点が問題になるわけです。その点についての外務大臣見解を伺っておきたいと思うのです。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点も政府側としてはしばしば申し上げておりますように、返還に際して特別のほかの何か約定をしない限りにおきましては、安保条約が当然そのまま適用される、こういうふうに考えております。
  17. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それでは答弁が非常にあいまいでありますが、一つずつ伺っていきたいと思うのです。  総理の言われた、また外務大臣もしばしば言われておりますが、早期返還がまず先決である、このようにおっしゃっておりますが、その早期返還早期ということは一体いつまでなのか。すなわち、一九七二年をさすことなのか、あるいはもっと早くを示すものなのか。二、三年を示すものなのか、両三年ということなのか、具体的に数字をあげて示していただきたいと思います。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 早期返還を非常に希望しておることは、お互い皆さんの一致した意見であると思いますが、これもしかし、きょうあすということは、望むといたしましても、非常に望み得ないことではなかろうかとも思います。そうかといって、十年も先というようなことではもうもちろん問題になりません。常識的になるべくすみやかな機会にということを現在考えておるわけでございますが、これはやはり一面におきましては交渉ごとということでもございますので、現在いつということをめどにするというところまではまだ私も考えておりません。
  19. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いままで少し聞いてまいりましたが、外務大臣はいままでの答弁をさらにここで繰り返しているだけであります。私はここで、いままでの外務大臣総理の言うことを整理して確認しつつ、また沖繩県民のことを思い、また、日本国民の一人として、その沖繩返還を悲願とする国民を代表して大臣に伺っておるわけです。もう一歩前向きの姿勢で答弁願いたいわけです。ただいままでの答弁ならば聞く必要がありません。ですから、どうかその点は誠意をもって前向きの答弁をお願いしたいと思うのです。  いままで返還態様の中にいろいろな説がございますが、たとえば本土並みであるならば返還はおそくなる、こういう見解があったわけです。外務大臣またいままでの答弁では、これははっきりしております。それじゃ本土並みであるならば、沖繩はいつごろまでに返還される見通しがつくか。また、いわゆる早期返還と比べてみておそくなるということは、どの程度の下限あるいは年数、こういうことを考えておるのか、その点を伺いたいと思うわけです。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その問題につきましては、これも従来からも申し上げておるところであると思いますけれども、なるべくすみやかな返還ということをまず考えてみますと、それとしばしば論議の対象になっておりますが、日本の安全ということを第一義的に考えて、そして沖繩が現に占めておる地位や役割りということを一方において十分考え合わせ、そうしてその関連をどういうふうに調整していったらいいか。それから一面におきましては、日本国民がいろいろと期待し希望しておられることもあり、また、沖繩県民がいろいろの機会に表明されておるような願望もございます。そういうところを十分にくみ取って、その上に踏んまえて、そうしてアメリカとの間に話し合いでこの大事業を完成しようとするわけでございますから、一がいに、早計にここでどういう時期ならばいい、あるいはその時期にはこういう状態ならばどうだろうかというような点に触れまして、まだ的確に政府としてこういう方向がいいというところを打ち出すことは現在できない。それが、先ほどもおしかりをいただきましたが、基地態様ということに表現されていることばでございますけれども基地態様については白紙でございます。ほんとうに真剣に誠意をもって検討をいたしておる、こういうわけでございます。
  21. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大臣ほんとう誠意をもって何を考えられておるか私はわかりませんが、とにかくある程度の、総理及び外務大臣は大体その幅というものは表明してきているわけです。国民はそのことをどうなのか、もちろん返還交渉して、または向こうの要求や、またこちらの国民願望をぶつけて返還交渉には当たるようになると思うわけですが、そういったときに、やはりある程度のめど、あるいはまた一般常識からいってこのくらいのことを考えておるのだというくらいは、はっきりすべきじゃないかと思うわけです。  先ほどめどといっても十年もかかったんではということなんですが、それではもし本土並みでおくれるというようなことがある場合は、十年またそれ以上かかるかどうか、その点のところ伺いたいわけです。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 十年というようなことでは問題にならないと、私、先ほど申し上げたわけでございます。それからこれは、ただいま申しましたように、いろいろの条件や願望がございますから、これをいろいろの角度から総合的に考えながら、しかも日本主体性ということを踏んまえて、そうして相手のあるところとの話し合いで煮詰めていくというわけでございますから、私は外交演説のときにも申し上げたのでありますけれども、この問題の困難さというものを私は否定するものではない。言いかえれば、非常に困難な問題である。しかし、その困難な問題を解決して全国民の御期待に沿うようにするためには、私は現在のところ、腹の中でこういうふうな処理案考えておりますということを申し上げるのは、仮想でもあるし、まだその時期ではない。かような意味で、基地態様については白紙であるということを繰り返して、これは誠意をもって繰り返して白紙であると申し上げておるわけでございます。
  23. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大臣のおっしゃることは、要するにわからない、何を聞いても。  それで、あなたはいま主体性ということをおっしゃった。主体性というものが大事だというならば、早くこちらの態度をきめて、そうしてこういう線でぶつかってくる、または向こうの出方はどうであろうとも、こちらがまずその主体性をきちっと確立してぶつかる、これが当然ではないかと思うわけです。ですからこそ、私たちはそのことを詰めて、少しでも、一ミリでも二ミリでもあなた方の考えが前進しておれば、またその見解があれば伺っておきたい、こう申し上げておるわけです。その点いかがですか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題につきまして真剣にいろいろの角度から御心配をいただき、また、いろいろと御意見をいただいておりますことは、まことにありがたいことでございまして、そういう中からだんだんにわれわれとしての考え方も煮詰めてまいりたい、かように存ずるわけでございます。
  25. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この基地態様返還時期のことでありますが、これはきわめて密接な関係を持っているわけであります。一部には一九七二年に返還されるという際の米軍基地態様はどんなものなのかというようなことをいろいろ述べられております。また、核つきなのか本土並みか、どちらなのか、こういうこともいわれておりますが、それについて外務大臣見解を明らかにしていただきたいと思います。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 申し上げるまでもございませんが、最近東京あるいは京都におきましても、いろいろの非常に熱心な会合が民間におきましても、あるいは日米両国にわたりましても行なわれております。そういう討議の席におきましても、いろいろの提案、御意見が出されております。また、いろいろそれに対して論評を加えられておることも事実でございますが、そういったようないろいろの考え方論議が盛んであるということは、先ほど申しましたように、私どもとしても非常に力強く感ずるところでございまして、こういう中から国民的な考え方というもの、これがだんだんと固まってくる。これを一方において強く踏まえながら、また同時に、たとえば沖繩基地の問題にいたしましても、現にアメリカがこれを使用し、どういう考え方で任務を遂行しているかというふうなことについても十分にひとつわれわれとしても心証を固めていって、そこからの話し合いというものがだんだんと固まってくる、こういう方向でこれからの作業を進めたいと思っておるわけでございます。
  27. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この点について官房長官から伺いたいわけですが、質問わかりますか。——聞いていてくださいね。  要するに、基地態様返還時期というのはきわめて密接な関係があるというわけです。そうして一部にはもう一九七二年、そのころに返還されるとした場合に米軍基地態様はどういうものなのかということがいわれているわけです。核つきであるとかあるいは本土並みであるとかいわれておるわけですが、官房長官の、このときの態様についての見解を伺っておきたい、こう思うわけです。
  28. 保利茂

    保利国務大臣 総理もしばしばお答えになっておられるように、だんだん沖繩施政権返還問題が現実味を帯びてきて、そうしてできるだけ早期返還を達成したい。早期返還を達成するためには、現に沖繩にあります米軍基地というものが日本の安全や極東の安全のために果たしている役割りを評価しないわけにいかない。したがって、それを評価しつつ日本の安全を施政権返還後においてどうはかっていくか、極東の安全をどう確保してまいるかということについて、各方面の方々の意見をよく聞いて、そうしてこの秋の対米交渉ニクソン会談にあたって腹をきめていく。したがって、それを取りきめるためにあらゆる検討をして御意見も広く伺って、いやしくも後世にあやまちを残すようなことのないように、賢明な方途を探求して腹を煮詰めていきたいということを言われておるのが真意でございます。したがいまして、白紙ということは何もないということでなしに、いろいろの場合を考えて、特に沖繩基地態様については、各方面意見を十分伺って自分の腹もきめたい、それまでの時間的余裕の間は、腹をきめることなしに検討の自由を持っておりたいということが総理真意であるように思います。したがいまして、その基地態様というものを総理が最終的に腹を煮詰められるまでには、まだ相当の時間的余裕を持って考えておられるように思います。
  29. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 官房長官に伺いたいのですが、ただいま白紙というととは何もないということではない、こう非常にはっきりとおっしゃったわけです。先ほど来からそのことを外務大臣に質問したのですが、ただ白紙白紙ということだけで、一歩も前進しておらないわけです。その、何もないことではない、何かがあるということですね。すなわち、返還態様には幾つ方法があるのだという意味だと思うのですが、もしそういうことであれば、その幾つかの方法ですね。こういうこともあろう、こういうこともあろう、しかし返還は非常にむずかしい、たいへんだ、それはよくわかります。だからこそ、われわれも真剣に取り上げているわけです。その点、官房長官から明快に答弁を伺っておきたいと思うわけです。
  30. 保利茂

    保利国務大臣 こういう場合があるだろう、ああいう場合があるだろう、こういうことを分析して申し上げなければ、伊藤さんの御趣意に沿わないかもしれませんけれども、あらゆるそういう場合を、いろいろな場合を総理考えて苦慮して、秋までに、どういう方法方途を選ぶことが、国家のために、民族将来のために賢明であるかということをきめたいということでございますから、もうしばらく時間の余裕を与えていただきたいということが総理真意だと思います。
  31. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 官房長官、もう一回伺いたいのですが、要するに、秋までに返還態様はこうだということをきめてから、われわれはこうだ、ああだと言いたくないわけですよ。やはりいまいろんなことを言えば、確かに、こうじゃないかと言われてしまえば、外交交渉だってやりにくい。それもわかります。しかし国民が一番心配する点は、また政府にいろいろと望みたいことは、政府がそれほどまで悩んでいるならば、こういうふうな方法もあるけれども、これにはこういう欠陥があるんだ。たとえて言うならば、沖繩の機能というものをアメリカの要求する一つの形をそのままにしておいて返還させるということについては、それは逆に言うと、今度は本土沖繩化という悩みがあるんだ、しかしこれも返還交渉にあたっては一つ交渉の線として考えねばならない。また、本土並みという国民の声ということも、それはある。しかしながら、その国民の声をそのまま持っていっても、アメリカのほうでは、そんなことを言うならば返還なんかとんでもないと言うかもしれず、悩みがあるのだ。言うならば、政府悩みは即これは日本国民悩みでなければいけないと思うわけです。さらに、政府がいろいろ考えていることを国民に訴えれば、その中で国民もともに悩んで、そして国民のコンセンサス、国民的合意が盛り上がってくる、形成される、こういうことだと思うのです。  それを、都合のいいことを少しずつ、少しずつ言って、そしてそれを承知しなければ、それでもってあきらめなければ——極端な言い方でありますが、そうでなければ返還というものは早くこないんだし、早期返還無理なんだし、返還交渉はできないんだ。いわゆるコンセンサスでも押しつけるコンセンサス、この線まで来なければだめなんだぞというコンセンサス、そのコンセンサスはだめなわけです。コンセンサスというのは二通りあって、やはり国民の中から盛り上がるコンセンサスでなければならない、こういわれているわけです。  ですから、官房長官がいま前向きに、白紙ということは何もないことではないんだ。私はその答弁をいま聞いておりまして、やはり官房長官も率直に、外務大臣がいままで何回言っても言わないので、誠意を示して答弁されたのだな、であるならば、その返還の方式というものは、いま総理二つと言ったけれども、実はもっとあるんだ。実際あるわけです。ですから、このことについては、こういうことの中でいろいろ考えたいと思うんですよ。私にではなく、国民に私は言ってもらいたいと思うんです。
  32. 保利茂

    保利国務大臣 だんだんお答えいたしましたとおりでございますが、ただ、総理大臣にしても、外務大臣にされても、おっしゃっておりますように、この問題に対処いたす上からいきましても、国民の支持を受け得ないというようなことはできないわけだから、国民の支持を受け得る賢明な方策を探求したい、こう言っておられることでひとつ御理解をいただきたいと思います。
  33. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 非常に残念でありますが、もう少ししたいわけですが、少し話題を変えまして、外務大臣に伺いたいと思うのです。  沖繩返還についての交渉、これは総理は秋に行かれる、また外務大臣は五月か六月ごろ行かれる、このように承っております。この沖繩返還について、本格的にアメリカとの折衝に入る時期はいつなのか。もうすでに事務レベルでの日米間で話し合いが始まっていると思いますが、この点についてはどのような経過なのか。また、話し合いを始める時点においてなお基地態様というのは白紙で臨むのか、白紙でいくのかいかないのかという点について、答弁をずらさないで率直に、いま言ったことについて外務大臣から答弁願いたい。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御承知のように、一昨年秋の佐藤・ジョンソン会談で共同声明が発表せられました。それを受けまして、日米間で随時これをフォローアップするために協議をするということになっておりました。形式的なものは三木外務大臣の時代に一回、それからその後私が就任いたしましてからも、必ずしも形式にはこだわりませんで、随時接触を持っておりますわけですが、公式な、何と申しますか、ぎょうぎょうしいような形での協議会というようなものは、現在のところやっておりません。随時いろいろの接触を通じて連係は保っておりますけれども、ただいまいろいろとお尋ねがございますが、具体的な問題についてこれを議題にしていろいろ討議し合うというようなことは、現在やっておりません。  そこで、これからどうかというお話でございますが、私はこう思うのでございます。この国会におきまして非常に真剣な活発な御論議が行なわれているということは、これはもうそのままそっくり、言わないでもアメリカ側には通じておるわけでございます。また私がそういうところを通して、さらにその上に立って随時いろいろの接触を保っていくということは当然のことであります。それから、そういう状況を通しながら、私はいまのところ五月の末か六月にかけましてアメリカに参ることになると思いますが、これもまた、そういう場合におきまして、一つの決定的なといいますか、案を持っていくというようなことは、いまのところ私は考えておりません。なぜかとなれば、これだけ大きな国民的な問題につきましては、結局これは両国の最高首脳部が本年の十一月末ごろになろうかと思いますが、そのときの会談というのがほんとうの本舞台でございます。私は、かりに五月末に参りましても、それからまだ時間的にいえば半年の余裕がその間にあるわけでございます。十一月の末ごろに考えられておるところの日米最高首脳会談でもって最終的な決着点を見出すべく、もうありとあらゆる最善の努力を尽くしてまいりたい。もちろん日本国民の世論というものをかっちり背景にいたしまして、そして主体的な立場に立って向こう意見を聞きながら、最終的には、いま申しましたような、今年の末ごろにかけての最高首脳の会談で実りある決着を導くようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  35. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いまの外務大臣のお話の中で、この国会論議アメリカでもよく知っておる、このようなことを申しましたが、日本での国会論議は全くわからない、何を言っているのかさっぱりわからないというのがアメリカの言っていることですよ。私はそういう点からいっても、アメリカの人が読んでもわかるような答弁をしていただきたい、こう思うわけです。  あなたのおっしゃることには非常に論理の矛盾がある。なぜか。交渉に当たるときには主体的にいく、これは非常に当然なことであり、頼もしいと思う。しかしながら白紙である。官房長官でさえも、いろいろとあるのだ、でもまあ総理ではないからおれは言えないのだというような、そういうニュアンスの感覚を私は受け取ったから先ほど何も言わなかったわけでありますが、あなたの場合ですと、私は、たとえば総理の行かれる前に事前に工作するのであれば、日本国民の声を率直にぶつける、もしそれが失敗したとしても、総理があとから行ってそれを調整してくれるということも考えられるのじゃないかと思うわけです。ですから、主体的にとおっしゃるならば、その返還方法、または先ほど来から言うように、白紙だなんということを、何回聞いても同じようなことを言うのではなくて、そんなことは前から知っているのです。だけど白紙といっても、それは全然何も中身がないということじゃないのだということまで答弁しているのですから、外交交渉の窓口に当たるあなたがこういうことを考えておるのだ、またこういうことを検討しながらいきたいのだということを国民期待しているわけです。その点について伺いたい。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 白紙ということは、ただいま官房長官からも言われましたけれども、何にもないという意味ではございませんで、いろいろと先ほど来申しておりますように、多くの考えられる要素というものを十分真剣にいま検討しておる。したがって、今日ただいまの段階で私どもの持っておる考え方というものがあるかという趣旨のお尋ねですから、今日ただいまのところ、それはまだいわば筆をおろしておりませんという意味白紙ということを申し上げておりますことは、十分おわかりいただけることと思います。いつまでも白紙交渉ごとはできないということは、これはもう当然のことでございます。現在のところはほんとうに真剣に探究中である、こういう意味白紙でございます。  しからばどういう角度から考えているかというのが次のお尋ねでございますが、これは終戦後すでに二十三年、まだ占領されておるようなこの状態というものを一日もすみやかに解消したい、これが早期返還ほんとうの私どもお互いの熱願でございますから、それにこたえなければならない、これが一つ考え方でありますことは申し上げるまでもございませんが、同時に、沖繩基地というものが現在果たしている役割りをどう評価するか。それから将来において、日本の安全あるいは日本を含む極東の安全ということが、こういうことならばこれで安心だという一つ考え方というものは、どういうふうな形態であろうか。これと返還の時期との関連をできるだけ国民的な願望の線に沿うようにという考え方で、白紙に対してだんだんと筆をおろしていく段階になってくるのではなかろうか、こういうふうに私は自分としては考えておるわけでございます。
  37. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いま、白紙ではないのだ、すなわちいろいろな要素がある、こうおっしゃいましたね。そのいろいろな要素というものを伺いたいわけです。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一に、白紙でないと私申し上げたつもりはございません。白紙でございます。基地態様につきましては白紙でございます。それから、どういう案があるかということを申したわけではございませんで、案をつくる考え方は、早期返還ということと日本の安全をいかにして保つかということから考えての沖繩の問題、こういうふうなとらえ方をして、どういう考え方がいいかという内容にだんだんと検討を進めてまいりたい、こういうわけなのであります。
  39. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いま外務大臣白紙ということをおっしゃいましたけれども、何も言ってない。白紙ということは何もないということではないと、あなた、官房長官のことをおっしゃって、いまおっしゃいましたよ。それにはいろいろな要素があるのだ。だから私は伺ったわけですよ。ないとおっしゃるのですか。ないとおっしゃるならば、そのことを取り消さなければならないわけですよ。いま答弁を聞いたばかり、そのまままだ煙の立っていることを私はお伺いしたわけですよ。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは従来からもしばしば総理も申しておりますように、白紙ということは、何も考えていないという意味のものではない、こういうことを私は繰り返して申し上げておるわけでございます。
  41. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 時間の関係上少し進みますが、とにかく大臣、率直に答弁してください。よけいなことは、知っておりますし、そんなことは聞いておりません。  じゃ伺いますが、いつの時点において政府基地態様を明確にするのか。また、アメリカの提示があるまで白紙を通すつもりなのか。言うならば、そのような受け身な立場というのは外交交渉において非常に不利なわけです。返還交渉にあたっては、やはり日本が指導的立場に立って行なうのが当然であります。ですから、交渉のスタートのときには、無条件即時全面返還でなければならないと思うわけです。なぜそこから出発できないのかということでありますが、大臣見解を伺いたいわけです。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これからどういうふうな考え方で事を進めていくかということにつきましては、先ほど私としての意見を申し上げたつもりでございます。そうして、あくまで主体的に日本の国益ということを中心に事を運んでいかなければならない、この考え方につきましても、私はもうもちろん全幅的な賛成でございます。その気持ちでおるわけでございますが、そんなら一体何月何日に基地態様についての意見を出すのかというようなお尋ねでございますが、これは私はまだ申し上げる段階ではございません。いまのところは、その取り組む姿勢と、そしてその姿勢のもとにおきまして真剣にやってまいろうと思っておるのでありまして、具体的な日程ということから申し上げれば、繰り返すようでありますが、今秋の佐藤総理の渡米の時期というものが、日程の上におきましての一つの最終の目標時期である、それまでに最善の努力を続けていきたい、こう申し上げる以外に、ただいまのところ何月にどうし、何月にどうしてということは、先ほど申しましたように、私も五月の末ごろには行きたいと思いますが、それから、その後日米貿易経済閣僚会議が夏に東京で行なわれることをいま期待して事を運んでおりますが、そういったような機会も接触の機会としては十分役立つのではなかろうか、こういうふうな日程と申しますか、ことを心組んでおるわけでございます。
  43. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 大体秋に総理が行かれる、あなたも五月か六月ごろ行かれる、東京で日米貿易経済会議がある。そのくらいのスケジュールが言えるぐらいなんですから、どの時点で返還態様というものをきめて臨まなければならないのかというぐらいは、私は事務レベルでもうきまっておると思うわけです。総理が何とおっしゃるかそれはわかりませんが、担当大臣としては、返還白紙の中身をどうしても言えないならば、いつごろまでにはきめなければならないのだ、あくまでも日本が自主的に、日本が主導的にやるならば、このころまでにはきめていきたいのだという、何月何日何時何分ということでなくて、大ざっぱに、このころぐらいまでにはめどをつけていきたいと思うのだということを伺いたいわけです。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点については、ただいま申し上げましたような、これから接触の機会が相当ございますから、そういう接触の機会も通しながら、一面、これは交渉ごとですから、アメリカ意見というものも十分にひとつ聞いて、それをそしゃくして、そしてこれを日本の国益、日本の世論ということの上に立って消化をしていかなければならない。こういうことをだんだんに、そういう機会を通して煮詰めてまいる。最終的には、先ほど来申しておりますように、最高首脳者の会談というところに持っていく。したがいまして、一つの紙というものをいつごろ用意するのか、日本の提案というものはどういうものの姿になるか、そういう意味のお尋ねでございますなら、そこのところまではまだ私は考えておりませんし、場合によりますれば、この沖繩返還というような問題は、一つの新しい外交上のパターンになり得るものである、またそうしたい、私はこう考えておりますから、わがほうの提案はこれである、どうしてもこれをやらなければならないというような態度でいく外交のやり方もございましょうし、場合によれば接触の中から、一面日本の国内の世論ということを踏まえながら、だんだんに煮詰めていくというやり方もあるのではなかろうか。そういう点をも含めまして、いまほんとうに私も、何と申したらよろしいのでございましょうか、一生懸命に検討を続けているわけでございます。
  45. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 佐藤総理は、沖繩返還において安保条約を弾力的に運用する意味の発言をこの委員会でなされました。この場合、沖繩本土をどのように区別なされるのか、その点について伺っておきたいと思います。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 仰せの点は、先ほど来おしかりをいただいておりますが、私は、やはり沖繩基地態様をどうするかという問題になるのではなかろうかと思いますので、基地態様ということにつきましては、私は、いままだ白紙であると申し上げるにとどまるわけでございます。  それから安保条約関係のお尋ねは、これも先ほど触れましたように、何か特別な協定でもしない限りは安保条約はそのまま沖繩に適用される、こういうことになるのが自然の姿であろうかと考えます。   〔発言する者あり〕
  47. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そちらのほう、御静粛に願います。   〔「委員がいないじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  48. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 委員は着席を願います。
  49. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 防衛庁長官に伺いたいわけですが、この返還にあたっては、いろいろ自衛隊のほうにおいても、その後の防衛や、または返還後の安保体制の中における自衛隊の位置づけ、こういうことを考えていると思います。その点については最近でも、日本の自衛隊の自衛官がどんどん沖繩を訪問していろいろな訓練に参加した。これは新聞等において報道されております。その問題については、安保の弾力的運用という中にあって、どのような自衛隊または防衛庁の考えがあるのかということについて、国民は非常に重大な関心を持っているわけであります。その点について伺いたいと思います。
  50. 有田喜一

    ○有田国務大臣 沖繩返還されますと、言うまでもなく日本の国土となるわけでございますから、小笠原の返還のときのように、わが自衛隊が沖繩を守っていくという体制はつくらなければならぬ。したがいまして、沖繩の陸上の守り、あるいはまた哨戒その他海上の守り、また空の守り、これは整えていかなければならぬと考えておりますが、しかし、この返還態様によりまして多少異なるところもあるかと思いますので、いまそういうことを検討はしておりますけれども、かくかくになりますということは、いま言えない段階であります。
  51. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 防衛庁長官にもう一言伺います。  ただいま空の守り、海の守り、また陸の守りを検討しておる。その検討しておるということは非常に重大なことであると思うわけですが、それはもう防衛庁で一つの案ができて、その案に基づいて検討しておるということでありますか。
  52. 有田喜一

    ○有田国務大臣 検討といいましても、研究しておるということでございますから、いまこういうようなことでという具体的なことではないのです。
  53. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 外務大臣に伺いたいわけですが、たとえ日米間では沖繩の特殊地域について了解できたとしても、これを第三国に対してどう了解させようとするか。その第三国は、おそらく沖繩の核基地とは考えず、あくまでも日本の核基地だと理解するに違いないと思うわけです。これは当然のことだと思うのです。これに対して政府はどのような考え、またどのような措置があるのか、その点を伺いたいわけです。  私たちは核基地がある限り、たとえば万が一核報復を受ける、こういうことを覚悟しないわけにはいかないわけです。この場合、沖繩県民だけを核報復の犠牲とするか、あるいは日本本土を含めて全土の核報復を覚悟すべきか。もしそのいずれも回避したいと思うならば、たとえ沖繩だけといえども、核兵器の持ち込みは断固拒否すべきである、こう国民考えておるわけですが、この点を外務大臣に伺いたいわけです。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その核基地という具体的な問題のお尋ねにつきましては、これは基地態様について先ほど来繰り返しておりますけれども基地態様については白紙である、現在は、私どもとしてこういう立場でおることを御了解いただきたいと思います。  それから、この問題について、日米両国以外がどういうふうなものであろうかという趣旨のお尋ねでございますが、これはまあ大きく分ければ二つに分けられるかと思いますけれども、純粋な条約論、法律論というようなことから言えば、これはわがほうといいますか、日本の関知せざるところでございます。しかしながら、私ども考え方は、戦争の抑止力というようなことよりも、むしろ私は、戦争が未然に防止されるという目的が一番大切なことではないかと思いますが、そういうふうな実体的な日本の安全を守るという立場からいって、どういうふうに考えたならばいいかというようなことにつきましては、たとえば、アメリカ側の考え方どもとっくりと問いただす必要があろうかと思います。そういうふうなところを含めまして、今後この問題の扱い方につきましては、考えれば考えるほど多様な、考えなければならない問題が実にたくさんあるように思われますが、これは先ほど来申しておりますように、一方においては日本国民願望と、そして戦争の未然の防止ということで、それはまたつながるところであろうかと思います。  それからまた、他の国際情勢の判断、あるいはそれに対する米国の考え方というようなことも、これからほんとに真剣に探求して、そしてわれわれが日本として行くべき道というものを確立していく、その中からこの返還の問題も割り出していくというのが、考えなければならない、あるいはこの問題の取り上げ方の姿勢の問題として、非常に大事なところじゃないかと私は思います。したがいまして、よけいなことを申すようなことになるかもしれませんが、現在あまりに具体的な、この基地態様等について結論的なことを急ぐということは、私は適当でないのではないか、私の考えは間違っておるかもしれませんが。そういう意味におきまして、先ほど官房長官からも申されましたけれども、いま少し時間的な余裕をお与えいただきたい、こういうふうにお願いをいたしたいと思います。
  55. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 これと同じ論法になりますが、沖繩基地の自由使用ということであります。これはもう絶対に拒否すべきである、こう思うわけです。  なぜかならば、たとえば、アメリカ沖繩基地を戦闘作戦行動に自由に使用できるものとなると、その相手国は、当然日本の領土から戦闘作戦行動がとられると、このように理解するに違いないわけです。これに対する報復というものは、沖繩はもちろん、日本本土がその対象とならざるを得ない。こうなると、日米安保条約第五条によって、わが国もいやおうなく、共同防衛という一つの条約の精神からいっても戦争に巻き込まれてしまう、こういうことがあるわけです。したがって、こういう意味から、戦闘作戦行動のための自由使用というものも断固拒否すべきである、政府がいかに何と言おうとも、沖繩本土は切り離すことはできない一体のものであるということを認識すべきである、こう思うわけですが、これに対して外務大臣はどのような見解をお持ちか、伺いたいわけです。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 端的にお答えいたしますと、戦争に巻き込まれるどころか、戦争を未然に防止し、日本沖繩とが——返還後の日本です。この日本が安全を確保し得るようにしたいというのが、もうお互いの熱願であろうと思います。そういう基本的な考え方で本件の処理にも私は当たるべきである、これは私たちの信条とすべきことではなかろうかと思います。  同時に、そういうふうな考え方から真剣に解決の方途を探求しているわけでございますから、具体的に、自由使用とかあるいは核基地の問題というような、基地態様に関連した問題については、いま私は白紙と申し上げざるを得ない。これは総理のお考えも、いままでの総理からの御答弁でも、私は明らかになっている大切な点ではなかろうかと思います。
  57. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 そのいまの大臣考え方ですが、われわれは戦争に巻き込まれる危険がある。じょうだんじゃない、平和と安全のために貢献しておる。こういう見方の違いですか、見解の相違といいますか、あるわけでありますが、またあらためてこの防衛の論議は行ないたいと思うわけですが、いずれにしても、現在の安保条約においては、さらにまたその中において現在アメリカと同調して、共産圏に対して力といいますか、軍事力を増強していけば、緊張はむしろ高まる。これは事実だろうと思うのです。  かつてうちの書記長が、極東情勢は緩和されなければならない。しかしながら、沖繩に核基地があり、また自衛力を増強していくならば、緊張はむしろ高まるのじゃないか。北風とお日さまの話ではないが、どんなに北風が旅人のオーバーをとろうとしても、北風の寒さに旅人はますますそのオーバーというものを強く着て放さない。しかし、お日さまがさんさんと光を送ったときには、旅人は暑くてそのオーバーを脱いでしまった。あのイソップ物語にもあるとおり、もともと核基地をもってどうかつしているのはアメリカであり、それと同調して軍事力を増強しているのが日本であります。そういう意味からも、その点についてはいろいろとわれわれの考え方もあるわけであります。その問題は、またいずれかの機会に防衛論議で申し上げたいわけでありますが、時間の関係上また前に進みます。  沖繩基地は、本土基地と異なる何らかの特殊な地位を与えることはあり得るのか。すなわち、沖繩本土基地は同じ地位というものを得られるのかどうか。よもや沖繩基地のキューバのグアンタナモ化、これはあり得ないと思いますが、このことを明確に言明していただきたいと思います。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 しばしば申し上げておりますように、安保条約沖繩との関係ということは、特別の定めでもしない限りは安保条約がそのまま適用される、これが自然の姿であろうという趣旨のことを私ども申し上げておるつもりでございます。  しかし、いろいろの議論も、実はグアンタナモ方式というものも、一部には弾い支持者も世論の中にはやはりあるようにも見受けられますが、こういったような点も十分参考にしながら、先ほど来申しておりますように、まず第一に必要なことは、沖繩を含む日本が戦争に巻き込まれるどころか、まず主体的に安全が確保されている、私は政治の最高の責任というのはそこにあるのではなかろうかと思います。こういう点から、日本が戦争に巻き込まれない、終局的に戦争のないような世界の創造に寄与したいという大きな願望をわれわれは持っておるわけでございますから、そういう基本的なものの考え方とあわせて、基本的な処理方法については真剣に取り組んでいかなければならない。これはしばしば申し上げるところを繰り返すようになりますが、どうか私どもの、この問題を取り扱う姿勢の問題として基本的に御理解をいただきたいところと考えるわけでございます。  なお、先ほど仰せになりましたが、私どもは過去の実績から申しましても、安保条約というものは、日本から見れば第一義的に日本のためにある、したがって、日本の安全と自由とが保障されてきたではないか、こういうふうに私は考えておるわけでございますから、安保条約によって戦争へ戦争へと日本が進んでいるなどということは、私どもとしてはとんでもない考え方だ、ここのところはあるいはお互いの意見が遺憾ながら相違している点かもしれませんけれども、どうかひとつ、そういう点につきましても真剣な御論議を今後ともお願いいたしたいと思っております。
  59. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いまの外務大臣のお話を聞いておりましても、これまたいろいろ異議があるわけでありますが、非常に時間がありませんので、その問題は別の機会にかっちりとまたお話ししたいと思うわけであります。  事前協議というものがございますが、その事前協議の中で、装備の重要な変更とは核兵器の持ち込みだと政府は言っております。このことは、いつ、どこでだれが、だれと、どういう形式で取りきめたかを明らかに伺いたいわけです。
  60. 愛知揆一

    愛知国務大臣 事前協議につきましては、御承知のように、配置、装備、それから行動と申しましょうか、大別すれば三つの件が事前協議の対象になっておるわけでございます。そうしてさらに、装備というようなことにつきましては、核については日本側としては持ち込まれることを絶対に拒否するという態度であり、そうしてその態度というものは、米側に十分理解されておるところであって、したがって、こういうことが従来も御承知のように事前協議の対象として出てきたことすらもない、こういう点を御理解いただきたいと思います。  なお、細部にわたりまして、また私の担当いたしました以前のことにつきましては、政府委員から御答弁申し上げたいと思います。
  61. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お答えいたします。  お尋ねの、事前協議の装備の重要なる変更ということが核の持ち込みを意味するという点が、どういう時点できめられたか、こういうお尋ねだったと私了解しておりますが、これは新しい、現行の安保条約をつくりました際に、交渉当事者でありました当時の藤山外務大臣と、マッカーサーだったと思いますが、アメリカの大使との間で、口頭で了解が行なわれたものでございます。これもたびたび答弁申しておりますように、口頭の了解のみで文書の了解はございません。
  62. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 この事前協議というのは、安保条約の中においても非常に重要なことであります。この事前協議があるからこそ戦争に巻き込まれないんだ、または歯どめになるんだという論議は、過去何年も繰り返されております。その重要な事前協議の中で、核の持ち込みだと政府は言っておりますが、このことは、単に口頭で行なった、国際上の取りきめを口頭で行なって、それが条約または交換公文と同等の効力があるかないか、それが問題であります。要するに、もしか装備の変更があって疑義があった場合には、口頭で取りきめたことがはたして法律的に、国際法上的に、これが違反でないかどうか。また事前協議等を通して疑義を確認する場合に、そのような口頭による了解事項の中でそんな問題が論じられるかどうか、その点をもう一回伺っておきたいと思うわけです。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは従来の実績から申しましても、先ほど来申しておりますような事前協議というものが、交換公文に基礎を置いて非常に明確でございます。それから、わがほうの意図というものもきわめて明らかになっておりますから、従来事前協議すらもなかったというような実績の上から申しましても、核の持ち込まれというようなことが、われわれとしては絶対拒否の立場というものは明らかになっておる。したがいまして、何と申しますか、政治的に申しますれば、もう自主的に、十二分のこの点についての歯どめというものはある、こういう見解を私は持っておりますが、なおこういう場合はどうかというような条約論的なお尋ねの点につきましては、条約局長からお答えをいたさせます。
  64. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お答えいたします。  国際法的にそういった口頭了解がどういう効力を持つかというお尋ねだと了解いたしました。これは御承知のとおり、交換公文自体は国会にも御承認をいただきました国際文書でございます。この交換公文の中に、装備の重要なる変更ということばが出ておりまして、このこと自体が日米両国を拘束しておるわけでございます。したがって、それの解釈といたしましての口頭了解、拘束しております文書としては、重要なる装備の変更、このことばが拘束しておると私は了解しております。
  65. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 条約局長ちょっと、時間がないから、そこで……。  この口頭の了解事項が非常に重大になるわけですよ。いままでなかったから歯どめになっている、そんなことはすりかえ論ですよ。今後あり得ることだからこそ聞いているわけです。私は、この了解事項というのは、おかしいと思うのですよ。だれが聞いてもこれはおかしいですよ。だから私は、ここで言いたいことは、それだけの了解事項、口頭における了解事項で、ほんとに歯どめになるならば——まず、なるのか、ならないのか、国際法上的に。政治的にじゃないです、条約的にです。もしそれができるとするならば、今後こういうことが幾らも出てくるわけです。そしてまた、いままでなかったから無事に通ってきたけれども、今後あるかもしれないというならば、前向きで、このことは、了解事項としておくのではなくて、あらためて交換公文にするなり、または国際法上有効な、法上にかなう扱いをすべきだ、こう申し上げているわけです。
  66. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 繰り返して御答弁するようになってまことに恐縮でございますが、国際法上拘束力があると申しますのは、この交換公文そのものに書いております重要なる装備の変更、そのことば自体が国際法上効力がある。法律的に申しますとそういうことになると思います。(伊藤(惣)委員「核等どうなる」と呼ぶ)核の問題は、したがって、日米間での了解と申しますか、拘束力のある文書としての、重要なる装備の変更と申しますことばが、それ自体がその核の持ち込みを意味するのだという日米間に了解がありますわけでございますから、装備の変更という、いわゆる抽象的なことばだけではわかりませんが、具体的にこれに置きかえてみますと核の持ち込みということになるというふうに日米間に了解があるわけでございますから、実際的にはそれで規制されているとわれわれは考えております。
  67. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それじゃ、そのときの議事録の提出を願いたいと思うのです。資料として要求します、委員長。——条約局長
  68. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先ほどお答えいたしましたとおり、この了解と申しますのは、新安保と申しますか、現行の安保条約ができましたときに口頭で了解いたしましたもので、議事録というようなものはございません。
  69. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 おかしいじゃないですか、それは。そんな答弁でごまかそうなんてだめですよ。資料要求します。そうしなければ、私は質問できません。非常にこれは重大なことです。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その当時のことにつきましては、条約局長から答弁をいたしたとおりでございますが、(伊藤(惣)委員「わからぬもの」と呼ぶ)しかし、まあそれからお聞きください。この問題については、しばしば従来からも議論の存したところではありましょうけれども、同時に、政府としては、はっきりした統一見解というようなものも提出をいたしておりますので、そういう意味におきまする政府見解というようなものは、資料としてでも何でも差し上げることができると思います。ただ、当時のこととして議事録というものがないということでありますれば、ないものを創作するわけにもいきませんので、そこのところは御了解いただきたいと思います。
  71. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 いまのところ、これは非常に将来問題になるところであります。いままで問題がないから、いままでなかったではないか、だからいまのままでいくのだというこの考え方はおかしいわけです。  そこで、今後あり得ることだからこそ、私はこの点について、もしなければ、了解事項なんという暗黙の了承みたいな形ではなくて、新たに議事録をつくるとか、または国際法上有効な取りきめをはっきりとここでしておくべきだ、こういう考え方は私だけではないわけです。いままでもこの問題は何回か問題になりましたが、いつも条約局長関係大臣が、最後には、まあはっきり申し上げればごまかしてきたわけであります。この点は非常に専門家からいってもおかしいところである、このようにいわれておりますので、この了解事項のことについて、核の問題で非常に条約を拘束し、またはいろいろな面で拘束する了解事項でありますので、国際法上それが有効な方法——了解事項をはっきりとこれは取りきめをすべきである、このように思うわけですが、官房長官からその点について伺いたいと思うわけです。
  72. 保利茂

    保利国務大臣 どうも私から、外務大臣が御答弁された以上のことを申し上げるものはちょっとないように思いますから、外務大臣の御答弁を了承していただきたいと思います。
  73. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 官房長官総理といつも一体でありますし、そういう意味では総理の一番知っていらっしゃる方であります。したがって、国民がその点を明らかにしていただきたいという点については、あなたが代弁されてもいいのではないかと思うわけですが、外務大臣にそのことをおまかせするというならば、それでは外務大臣に伺いたいわけですが、この了解事項、これは外務省の内部でも非常に問題になっているわけです。ですから、日米間において暗黙の了承だけであると、いま事実を言われたわけでありますが、それでは非常に心もとない、したがって、今後アメリカと何らかの取りきめを行なうべきである、このように思いますが、大臣の所見を伺いたいわけです。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 仰せの点は二つに分けて御答弁いたしたいと思います。  過去におけるものにつきまして議事録等々がないということは、これは事実でございますから、ありのまま申し上げておるわけでございます。  それからもう一つの問題は、将来に対してこうしたらどうか、こういう御意見をまじえての御質疑と私伺ったわけでございますが、この点については御説も十分拝聴いたしますけれども、私の見解といたしましては、安保条約につきましては、この交換公文と、それからそれに基づいた了解とにおいて、十分成果をあげておる、あらためてこれについてとやかくするということは、私は必要ないと思います。ただいまの見解として申し上げておきます。
  75. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 下田大使は最近、平和条約第三条の成立については吉田・ダレス間の密約があった、このように公言しております。この密約については将来問題とするが、この重要な装備の変更についても何らかの密約があったのではないか、こういうことが思えるわけです。この点を明らかにしてもらいたい。また、こういうことがあるからこそ資料を要求するわけです。先ほど来から、暗黙の了承の形でそのことをきめたんだとおっしゃいますが、そんなことはないわけです。いままで暗黙の了承で大事なことを了解事項としてきめたなんということはないわけですよ。したがって私は、資料はないことはない、あっても出せない資料だ、こう思うわけです。ですから、この資料を要求します。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、これはせっかくのお尋ねでございますから、過去の分についてどういうことであったか、私は文書がないというふうに了解をし引き継いでおりますから、いま一度検討させていただきたいと思いますけれども、どうもないものを出すわけにまいりませんということだけは御了解いただきたいと思います。  それから、ただいま下田大使云々の御発言がございましたが、これはどういうところをどういうふうに言うたのか、私はつまびらかにいたしておりません。御答弁申し上げるほどのことではないのではないかと思います。
  77. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 非常に、何聞いても心細い。そしてまた、何聞いてもこれではもう議論が進みません。  そこで、時間の関係上また進みますが、その前に、大臣がいま検討する、このように言っておりますので、委員長にお願いします。あとの理事会等において、検討するとおっしゃったことを取り上げて、この問題の統一見解なり、また資料を出す出さないということの取りきめをしていただきたいと思うのです。
  78. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 伊藤惣助丸君に申し上げますが、資料がないというので、ないものを出すわけにいかないというのが外務大臣答弁なんです。  そこで、私から外務大臣に聞きますが、外務大臣愛知揆一君、資料を出せるのですか、出せないのですか。  それから、経過がこういうふうになっておると、資料というのですか参考というのですか、こんなふうなことでというような記録的なものか何かありますか、その点を承ります。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は非常に率直に申し上げているのでありますが、過去のものについては議事録というようなものはないというふうに、私は今日この段階においてはさように承知しておりますから、そのことを申し上げましたが、せっかくのお尋ねですから、いま一度私も調べてはみますけれども、どうも私はないのではないかと思いますから、あらかじめないものはお出しができない。  ただ、その問題とは別に、ただいまお尋ねの点につきましては、私も予算委員として当時承知しておるか、外務委員だったか忘れましたけれども政府が本件について統一見解というものを当時出しておりますから、そういうものをまたあらためて御参考になさるのならば、そういう意味ではできるだけの御協力はすべきである、私はかようなつもりでただいまの答弁を申し上げたわけであります。
  80. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 伊藤君に申し上げますが、ただいま外務大臣答弁をされたようでございます。したがいまして、次回の委員会までに誠意をもってあらゆる点をもう一段と外務省で調査をし、研究してもらう、こういうことでよろしゅうございますか。
  81. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 資料を要求します。
  82. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 資料があれば出してもらう。よろしゅうございますか。
  83. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 それでは核の問題、核と憲法の問題について伺います。  政府は、従来核はつくらず、持たず、持ち込まず、こういういわゆる非核三原則を述べられておりますが、この非核三原則というものは憲法の規定から考え出されたものか、それとも政策の問題であるか。法制局長官から……。簡単に、時間がありませんので。
  84. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 この問題も、実はもうしばしば申し上げておることで、ちっとも変わりがないことを申し上げることになりますが、憲法の規定から見ますと、核兵器につきましては持てるものと持てないものがある。持てるものについても、これを持たないというのは政策上の問題になりますから、当然非核三原則の中にもっぱら政策上の問題として入ってくる、こういうことになります。
  85. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 原子力基本法第二条においては、確かに核兵器を製造することはできない。これは明らかであります。そして持たずということは、原子力基本法あるいはそのほかの何らかの法律によって規制されるものかどうか。たとえば日本が核弾頭つきのナイキハーキュリーズ等の核兵器を他国から譲渡されるか、あるいは購入する場合においては、原子力基本法のどこの条項で規制されるのか、また何らかの法律によって規制されるものなのか、その根拠を法制局長官より、政治論ではなく、きわめて冷酷な法律的見解を伺いたいわけです。
  86. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまの御質疑にお答えする前に、先ほど持ち込まずということについての答弁一つ欠けておりましたので、補足をいたします。  非核三原則の一つは、実は持たず、つくらず、持ち込まずではなくて、持ち込みを許さずということでございますが、この関係はしばしば申しておりますように、最裁高の判決からも明らかでありますように、憲法九条の直接に規定するところではない。やはり三原則の問題であるということを補足して申し上げます。  次に、原子力基本法と主として保有の関係だったと思いますが、原子力基本法は、原子力の利用は平和の目的に限るということになっておりますから、わが国に関する限り、これを保有することが原子力基本法の禁ずるところであることはきわめて明確であると思います。
  87. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 法制局長官、伺いますが、去る十日のこの委員会において、憲法第九条の解釈として、自衛のため、わが国の国民の安全と生存権を保つためであるならば、通常兵器はもとより核兵器も何ら憲法上問題はない、こうあなたは述べられました。その限度を越えないものならば、核兵器の性能及び威力に全く関係なく保有できるということなのか。  また、先ほど、持てる核兵器と持てない核兵器とあると言いました。その中で持てる核兵器というのは防御用だと思います。防御用ということになりますと、ABMという核兵器は持てるのか、その点だけ伺っておきます。
  88. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 この話は憲法論と法律論がごっちゃになって出てくるきらいが非常にございます。私が憲法との関係について述べましたのは、実は憲法との関係を聞かれたから憲法との関係を申し上げたわけです。そこで原子力基本法もいま御指摘になりましたが、原子力基本法について先ほどお答えしたのは、もう原子力基本法上明確であると思います。したがって、憲法との関係を保有に関して議論をするのは、実は実益のない議論であります。全く理論的な満足を得るためだけの論議、そういう意味で架空の論議とよくいわれますが、そういうものでございますけれども、憲法との関係をあえて一言えば、わが国民の生存と安全を保持するためにという目的を達成するための限度内にとどまるかとどまらないかというのが分かれ目である。そいつを越えるものは、通常兵器であっても持てない。それを越えないものは、核兵器であるからといって持てないことはない。憲法の段階で言えば、自衛力を保持することができると同じ理屈がそこに立つ。しかし、原子力基本法があるから、原子力基本法の規制するところによって、先ほど申し上げたとおりにそれは法律上の制約を受ける。憲法論は、したがって単なる理論問題にすぎない、こういうことになるわけです。
  89. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 よけいなことを聞いているのじゃない。いままで何回もあなたの答弁を聞いております。ですから、あなたは政治家じゃないのだから、法律論だけ私は聞いているわけです。憲法論を聞いているわけですよ。よけいなことを言う必要はありません。  そこで伺いたいわけですけれども、通常兵器でもあるいは核兵器でも、わが国が先ほど言ったように国民の安全と生存権を保つためならば、核兵器まで持てる、これはもうはっきりしているわけですよ。持てるということになりますと、最近の兵器では非常にいろいろなものがあるわけですよ。だから、それをあなたは分けて、持てる兵器もあれば持てない兵器もある、こう言っているわけですよ。ABMというのは迎撃専門ですよ。だから持てるのかということです。ただ持てるか持てないか、イエスかノーかだけ私は聞いているわけです。もちろん、そのことと政治論は、これは別なんです。持てるんだ、だけれども、わが佐藤内閣は持たないのだということも聞いているわけですから、そのことを率直に認めて答弁してくださればいいわけであります。
  90. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私はもっぱら法律論だけを申しておるつもりでございます。そういう見地から、先ほど憲法解釈上の限界ということを申し上げました。はたしてどの武器がそれに当たるかどうか、これはその解釈の適用について、その面の専門家がそういうものに入るかどうかを判断してもらわないと、私には答弁ができません。もっぱら法律上の観点からだけお答えするわけでございます。
  91. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 ABMのことについて、あなたはわからない、判断ができないから言えない、こういうことだと思うのです。それでは防衛庁長官と相談して、いま答弁してください。もし答弁できなければ、委員長、休憩を要求しますよ。
  92. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 持てる持てないの論議は別といたしまして、軍事常識から申し上げますと、いわゆるABMは相手方の核攻撃に対する防御用のものというふうにいわれております。
  93. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 したがって持てるというふうに私は了解します。ということになりますと、これは非常に問題なんですよ。なぜかというと、そのABMだって、あるいはIRBMだって、あるいはまたICBMだって、迎撃用だといえば今後持てるということです。最近の核兵器というのは非常に多様化し、また多角化しております。そういう意味から言いますと、非核三原則のうちで、いままで総理がつくらず、持たず、持ち込まず、しかし二つのことは憲法で制約を受ける、これを言っておりましたが、事実上このABMも持てる、迎撃用は持てるということになりますと、非核三原則の二つはくずれたというふうに私たちは見るわけです。いかがですか。
  94. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 どうも、よくお考え願いたいのですが、憲法論は全く理論上の満足を得るためだけに議論しているにすぎないということを私申し上げましたが、それは、わが国には原子力基本法があり、しこうしてまた非核三原則というものを政府は強調しておられるということを守る限り、憲法が許すから持てるんだということにはすぐにはならぬのじゃないか、これはもっぱら法制上の問題とは必ずしも言えませんが、論理上の問題としてそこまでお考えになるのはお考え過ぎではないだろうかということを申し上げたいと思います。
  95. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 要するに、その非核三原則のうちで、法制局長官の過去における答弁からして、二つのことはくずれ去った。さらにもう一つのつくらざるのことも、これは原子力基本法の第二条の改悪、あるいはまた憲法の曲解、こういったことによってくずれざるを得ない、このように私は思うわけです。したがって、いままで非核三原則というのはいろいろ論議がありましたけれども、これは憲法上何ら制約がなくて、ただ政策的に非核三原則があるのだということだと思うわけです。したがって、私はこの非核三原則というものは、そういう意味からも、いままで何回議論になっても、国会内において非核三原則というものを決議せよといってもしなかった根拠はこのようなところにある、このように思うわけです。したがって、私は非核三原則は政策上の問題であるから、どうしても国会においてこの決議をすべきである、このように思うわけです。  最後に法制局長官の明快なる——私の率直な質問に対して、あなたのいままで答弁したことからはずれないように伺いたいと思うのであります。そしてまた官房長官にもその見解を伺いたいと思うわけです。
  96. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私は、国会決議については官房長官からお話しいただくことと思いますが、国会では、この間もお話が出ましたように、原子力基本法というりっぱな法律を各党一緒になっておつくりになっているわけですから、この法律を堅持する限り、いま御心配になるようなことが——即刻出てくるような御心配のようでありますけれども、憲法上は単なる理論——現に実定法としてありますのは、日本が核を保有するということは原子力基本法が厳に禁止をしておるのだ、このことをよく御銘記願いたいと思うわけでございます。
  97. 保利茂

    保利国務大臣 非核三原則がくずれてきておるじゃないかということが御趣意のようでございますが、非核三原則といわれるのは、昨年の五十八国会で総理大臣の施政演説で明らかに表明いたしておりますところをとらえて非核三原則といわれておるようでございますが、これは正確に言えば非核兵器三原則ということになるであろうと思います。そこで総理はそのときに、「われわれは、核兵器の絶滅を念願し、みずからもあえてこれを保有せず、その持ち込みも許さない決意であります。」ということを表明されて、これをとらえて非核三原則といわれておるようでございますが、この点につきましてはごうまつも政府の方針は変わっておらないわけでございます。したがいまして、決議の問題につきましても、総理大臣がかつて御答弁をいたしておりますそのことについて少しも変わらないことでございまするし、特に決議の問題は国会内のことでございますから、政府がかれこれ申し上げることではなかろうと私は考えております。
  98. 伊藤惣助丸

    伊藤(惣)委員 時間がありませんので、最後に一言だけ申し上げますが、いまの法制局長官の答弁を聞いておりまして、いつも憲法の上でというふうに言っておりましても、政策上の論議をなさる、また法律上の論議をなさっておるわけです。ですから、このことはまた別の機会に申し上げますが、官房長官にもお願いしたいわけですが、どうかこの非核三原則は国民がどうしても守ってもらいたいという願望であることをよく承知した上で、今後も、政策上の問題であるならば国会で真剣に討議して、国会の中において決議ができるように努力していただきたい。そのことを希望申し上げまして私の質問を終わります。
  99. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて伊藤惣助丸君の質疑は終了いたしました。  次に、石川次夫君。
  100. 石川次夫

    石川委員 私は、限られた時間で科学技術政策全般についての質問を行ないたいと思うのでありますが、まず科学技術の基本政策の問題、それから宇宙時代といわれておるときの日本における宇宙開発の問題、それから最後に原子力政策の問題、三つにわたって質問をしたいと思うのでありますけれども、その質問に先立ちまして、最近原子力潜水艦が横須賀に入港したことについての異常放射能が検出をされたという問題に関連をし、このことが日本の核政策と密接な関係を持つと思われますので、このことをまず最初にお伺いをしたいと思うのであります。  昨年の施政方針演説の冒頭で、ちょうど日本アメリカに対していろんな高度の技術を導入するという交渉の過程の中で、そういう交渉を有利にするというねらいもありまして、施政方針演説の冒頭、政策の目標は科学技術の振興にあるということを言明されました。そのときの新しいことばといたしまして、佐藤総理は核時代という新語を言い出されたわけでありますけれども、われわれはいままでずっと原子力時代ということばを使っておったわけであります。原子力時代と言えば、原子力は原子力平和利用につながる、核時代と言えば、核という文字は核装備、核軍備につながるという意味で、おそらく核装備に対する国民のなれを与えるという魂胆で核時代ということばを用いたのではないかということをわれわれは疑っておるわけであります。  そこで、今回横須賀にハドック号が入りまして、異常放射能が検出をされたという問題は、たいへんささいな問題のようではありますけれども、実はぎわめて深刻な内容をはらんでおるのではないかとわれわれは考えておるわけでありまして、   〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕 この前のソードフィッシュ号の異常放射能が検出をされましたときに、まず科学技術庁では、湾内で波が高くて観測はできなかったという言いのがれをしましたけれども、しかし、観測をしたという実態が明らかにされますというと、それはレーダーの影響であるということを言いました。しかし、レーダーの影響でないということが明らかにされますというと、これは工作艦アジャックス号の溶接棒の火花によるところの異常値ではないかという答弁をされましたけれども、それも調べてみると、そうではないということがわかって、最後には、第一次冷却水ではないというようなことを政府がことさらに言明をいたしておるわけであります。しかしながら、日本の学者が、山崎さんを中心として調査団をつくりますというと、どう考えても第一次冷却水の疑いが濃いという結論を出しておるわけであります。そこで日本では、とりあえず科学技術庁が中心となりまして、この観測体制に非常に不備があった、レーダーの影響などは排除できるような特別の観測装置というものを用意をするということを言われました。その準備がはたしてできておったかどうかということについて、まず、科学技術庁長官に伺いたいと思うのであります。
  101. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたしますが、今回横須賀へ原潜が入りました。その際に、第三日目の二月十二日に、小海ポストによりまして、空間計において約四十分間、平常値の約三倍ないし四倍程度の記録がされたのでありますが、これは明らかにレーダーの影響によるものであると私どもは思っております。それと申しますのも、いま石川さんがおられるところに一つポストがあり、私のおるところに原潜がおったとする、そのうしろにもう一つポストがあったとする。風が石川さんのほうからこちらのほうに吹いてきておる際に、その風上にあるところポストに空中の放射能の多少ふえたというのが出てきました。風上に出るというのであって、風下のほうのポストには何らの影響がなかったわけなんですね。そこでまた海水を調べた際にも何らの影響がなかった。そこで、これはレーダーの影響である、こういうふうに考えるのであります。しかも、これが記録に出たところによりますと、その記録というものはレーダーによる影響の形をしておるわけなんです。そこで私どもは、これはレーダーによるものと判断しておるのでありまして、しからばレーダーによるものとほかのものとを区別する施設が完全にできておるかというと、そこまではいっておらないのであります。おらないけれども、絶えず日常において経験しておりますところによりまして、その記録の型はレーダーの型である。そういうことと、いま申しましたように、風上のほうのポストに響いたということは、これはどうしても原潜から出たところの放射能であるというふうに判断することはできない、かように考えまして、これはレーダーによる影響だ、かように決定いたした次第であります。
  102. 石川次夫

    石川委員 いまの答弁は私の質問からはずれておるのですが、観測体制をちゃんと整備をする、レーダーの影響であるかないかちゃんとわかるようにしなければならぬということを繰り返し答弁しておった。その体制ができておらぬということは非常に怠慢ではないかということを私は申し上げたいのです。ということは、たとえば鉛でシールをするとか、あるいはレーダーの電波だけを調べるという観測器というものを併設をすれば、簡単にこの問題は解決のできる問題ではないか。そういうことを怠っておるというのは、いつの場合でも観測の結果というものをあいまいにして、アメリカのための有利なような回答しか出せないような体制をとっておるのではないか、こういう懸念がきわめて濃いのであります。  それで、われわれといたしましては、観測体制をなぜすぐに整備をしないのだということを申し上げたいのと、それからいま、レーダーの影響であると思うという答弁をなされましたけれども、そのときにはレーダーは出しておらないという回答が出ておるのじゃないですか。したがって、海の中では異常値が出ない、表のほうで一号ポストにだけ異常値が出たから、それはレーダーではなかろうかということを言っているだけであって、実はレーダーというものはそのとき使っておらぬですよ。したがって、これは原因不明ということなんです。海水のほうには異常値が出ない、一号ポストにだけ異常値が出たということから、レーダーではなかろうかというのだけれども、レーダーは使っておらぬということになると、結局は原因不明であって、これは原子炉のせいではないということを言うのに絶好の口実を与えるだけなんです。  さらに重ねて申し上げますと、第一次冷却水ではないということにはなるかもしれませんけれども、この放射性ガスというものは、クリプトンとかアルゴンとかというものはやはり多少原子炉からは出るわけです。これが観測器に全然影響を与えないという保証は絶対にないわけですよ。それでどう考えても、ちゃんとした観測体制というものを整備しないでおいて、あいまいなままに原因をぼかしているところに非常に大きな問題があると思うのです。なぜこの観測体制というものは完備できないのですか。
  103. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたしますが、レーダーのものだけを受けてほかのものを受けない、こういうような観測体制は、いまの私どもの科学技術では遺憾ながらそこまでいっておらないのです。しかし先ほども申しましたように、平生からレーダーによるところの記録というものを型をよく調べておりまして、これはもうレーダーによる型だということは一般的に認められておるところでありますので、それによってただいまのところは判断しておるような始末でございます。
  104. 石川次夫

    石川委員 いまの答弁は全然納得できません。われわれが前に科学技術委員会において究明をした場合に、鉛でシールをすればいいとか、あるいはいろいろな方法考えればレーダーの影響であるかないかは歴然とできる、そういう体制をつくりますという約束をしているのですよ。あなたはそのとき長官でなかったからその場に居合わせなかったかもしれませんけれども、その約束が全然守られないというのは、あまりはっきりそういう結果を出したくないということなんじゃないですか。その答弁はどう考えてもわれわれは納得できません。これはあとで科学技術委員会の場でもってあらためてこの究明をしたいと思います。  そこで、この前の佐世保の異常放射能が出ましたときにアメリカのほうからいろいろな反論が出たけれども、御承知のように原子炉の学問の分野では、これは日本アメリカに劣るでありましょう。しかしながら汚染の問題では、日本の科学というものは世界の水準をはるかに抜いているということは、国際的にも認められておるのです。そういう日本の学者が、アメリカの立論というものは全く幼稚だ、われわれのほうが絶対正しいという確信を持って、第一次冷却水ということに間違いないというほぼ断定的な結論を出しておるわけです。  ところが最近また日本が、向こうの言い分が正しいんだ、第一次冷却水は出さないという約束をするということを前提として、寄港を許しているわけです。許しているさなかで、また向こうが反論を出してきましたね。そしてその言っていることは、レーダーの影響ではなかったかとか、小さい船が動揺するとそういうふうな影響が出るんだとか、いろいろな学問的には愚にもつかぬような反論で、また日本のほうに抗弁をしてきておるわけです。この資料を取り寄せて、日本の科学技術庁としては、学者を中心としてこれに反論を加える、こういう体制が当然とられてしかるべきじゃなかったかと思うのでありますけれども、どういう準備をされておるか、外務大臣科学技術庁長官に伺いたいのです。
  105. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたしますが、ああいう発表がありましたので、いま外務省を通じましてその資料を要求中でございます。
  106. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お答えいたします。  新しい報告の発表ではないようでございます。二月七日、米議会原子力合同委員会は、昨年六月下旬に行なわれました右委員会小委員会の聴聞会の記録を発表したようでございます。この発表によりますと、通常の措置で別段の意味はない、こう了解されるようでございますが、この記録によりますと、原子力委員会から、ウェグナー報告は正しいこと、異常計量の原因は突きとめ得なかったことを述べておるようでございます。ウェグナー報告というのは、昨年五月末日本におきましても公表されておりますが、その結論は、ソードフィッシュ号は佐世保停泊中及びその前後において一次冷却水その他いかなる放射能も放出しておらず、問題の放射能異常計量はソードフィッシュ号に基因するものではないとしておるのが、この報告の内容でございます。
  107. 石川次夫

    石川委員 いずれにいたしましても、再度入港が許可になってから後に追い打ちをかけるような形で、日本の学者の見解はおかしい、一次冷却水は出していないんだと言いながら、その中の観測調査をしているデータというのは全然日本に提供しないわけですね。そういうふうなベールに隠しておいたままでこの入港を日本は認めなければならぬ立場にあるし、またアメリカの都合のいいような調査の結果しか出せないという体制には、非常に問題があると思うのであります。  そこで重ねて申し上げますが、プランジャー号というのが最近ちょいちょい日本に寄港いたしております。それは十二月の十八日に入り、一月の十三日に入って十六日に横須賀を出港し、一月の三十日にまた佐世保に入っておるのです。大体原子力潜水艦というのは日本としても非常に問題があるので、兵隊の休養あるいはいろいろな補給のためだといって入港するにいたしましても、二カ月に一ぺんぐらい、あるいは三カ月に一ぺんというのが常識であります。一週間もおかないで入港してくる、これはどういうことなんですか。私は勘ぐってものを言うのではなくて、今度新たに入港を許されてからは、意地になってもひんぴんと日本に入港させることを通じて、日本に原子力潜水艦はいつでもいるものだという国民になれを与えさせよう、いわゆる核の持ち込みというものをもう常識化させるということのアメリカの政策に日本が暗黙に協力をしておる、こういう体制になっておると思うのです。こうひんぴんと入ってくる理由は一体何ですか。
  108. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  109. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 われわれ安保条約に基づきまして日本に入ってきます船の一々につきまして、その目的その他を検討するわけではございません。おっしゃいますように、プランジャー号は三回続けて入ってまいりました。あとから聞きますところによりますと、第一回目に出港したときには、特に長期の航海でない準備をして出ていったので、また入ってきた。その後もう一ぺんまた短期間、二日でございますか、入ってまいりましたが、そのときも補給のために立ち寄ったということでございます。また、ハドックも入ってまいりましたが、これはまあ非常に長期の航海の後に入ってきたということでございます。これらを通じまして、米艦船の運航はやはり米軍当局のきめるところでございまして、特に他意あってたびたび寄せているということはないものと私は見ております。
  110. 石川次夫

    石川委員 外務省の態度は、アメリカのために、何か向こうが頼まないことまで一生懸命弁護をしてやっている。日本の外務省は外につとめる省であって、国につとめる省ではないといわれるゆえんがそこにあると思うのですけれども……。  実は、佐世保に来たときは、液体酸素を積み込むんだという理由です。それから部品をアメリカから取り寄せる、こういうふうなことが理由になっているのです。しかし、現実にはそうじゃないのです。そんなことは全然やっておりません。ことさらに、これは休養とか補給とかいうのであれば、二月に一回か三月に一回でよろしいんでありますけれども、こうひんぴんと入ってきて、そのつどいろんな理由はつけておりますけれども、そういう事実は全然ないんですよ。そうすると、どう考えても、日本に当てつけにひんぴんと入ってくるのは、とにかく常時日本に核兵器の持ち込みということの印象というものを常識化させる、こういうことに対して外務省は向こうの言いなりに、戦前の詔勅のようにアメリカのことばをありがたがって、その弁護をし、追従をするというだけの姿勢じゃないですか。どう考えても私は納得できないのです。この点について外務省としては、あるいは防衛庁でもよろしいのでありますけれども、なぜこんなにひんぴんと入るんだという究明をしてもらいたいと思うのです。いかがですか。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろ御意見を承りましたが、先ほど政府委員から説明いたしましたように、この寄港についてはこちらは原則的に認めたわけでございますから、あとは二十四時間前に通告をしてくるというだけで、特にこちらとしてどうしてどうやってというようなことをいままでは特に究明する、あるいは問い合わせをするというようなことをやっておりませんでしたけれども、事情等につきましては、御注意もございますから、十分これからの状況も見てまいりたいと思っております。現在は、約束をした以上は、向こうさんが入ってきたいというものを、それにとやかく言うべきではない。これは対米従属でも何でもございません。
  112. 石川次夫

    石川委員 私は、対米従属だと思うのです。それは単なる兵員の、乗員の補給、休養ということだけであれば二カ月、三カ月に一ぺんというのが常識であるのに、こうひんぴんと入ってくるのは、そういう約束からはずれているわけですね。そういったときまであちらさんに全面的に信頼を置いて、もう何にも抗議もしないし、究明もしないというような体制だからこそ、核の持ち込みということに対する非常な不安感が国民の間に高まるだけなんです。  そこで、これは言うまでもないわけでありますけれども、この原子力潜水艦というのは核兵器を載っけておるんですよ。これは載っけておらないと言っているのは、アメリカの言うことをそのままうのみにする。世界じゅうで日本政府と与党だけです。このサブロックというきわめて精巧な、ソナーという機能まで備えた魚雷が載っかっておりまして、これは自動的にエンジンの音を聞いて敵のほうに進んでいくという非常に機能の高いもので、これに普通の火薬を詰めているなんということを信じておる者はだれもおりません。明らかにサブロックという核弾頭魚雷が載っかっておることは、これは世界周知の事実であります。したがって、もうすでに持ち込まずは原則から政策に落としましたけれども、持ち込まずというのは、持ち込んでおるという事実がもうちゃんとあるんですよ。こういうことに対してわれわれは、したがって、今度は、持ち込まずというのを原則から政策に落としたということは、持ち込むことのための地ならしだということしか考えられない、こういう不安を国民とともに強く抱いておるわけです。このサブロックは、核弾頭魚雷というものははたして載っかっているか載っかっていないかということは、ここで議論をすると平行線でありますけれども、これは明らかに載っております。それは世界じゅうで常識になっておるということだけは申し上げたいのであります。  そこで、私は考えるのですが、原子力潜水艦と原子力商船というのは明らかに違います。原子力商船は、社会党としても、平和利用であるがゆえに積極的にこれを支持いたしました。この商船は横浜に寄港地をつくろうかと思ったわけでありますけれども、人口稠密でもあって、市民の反対もあって、東北のむつのほうに寄港地を現在つくっておるわけであります。ところが、サブロックを載せ、しかもこの原子炉の装置というものは、戦時用の緊急操作に間に合うようにするために、音も少なくするために、きわめて簡素化された危険な装置であるところの原子炉を用意されておると思われる原子力潜水艦、これは全然公開されておりません、中身は公開されておりませんけれども、そういうのがおくめんもなく人口稠密な横須賀あるいは佐世保にどんどん入ってくるというのを日本人はどう受けとめておるか、この点どうお考えになっておりますか。公開された日本の普通の商船は遠くのほうに追っ払わなければならぬ。ところが公開されてない、きわめて危険性の高い核兵器を載っけておる原子力潜水艦は、縦横無尽に人口稠密の横須賀、佐世保に入ってくる。こんな治外法権というか、特別権限というものはアメリカに与えていいのかどうか、これはどうお考えになります。
  113. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたしますが、そういう原潜などを近海に航行さしていいかどうかという問題は、私の所管ではないと思います。
  114. 愛知揆一

    愛知国務大臣 科学技術庁長官からも御答弁がございましたが、私に対するお尋ねは何でございましょうか。こういったような原子力潜水艦が核を載せているんだ、これに対する答弁を私は求められたのかと思いますが、私は私の立場において、さようなことは絶対にない、こう明らかにお答えをいたしたいと思います。
  115. 石川次夫

    石川委員 これは公開されておらないからいろいろな疑心暗鬼を生んでいるというふうに思うかもしれませんけれども、これは、サブロックというものの説明をいまここでしても始まりませんけれども、普通の火薬を詰めるなんというばかなことはあり得ないんですよ。子供でもわかるんです。これは完全に核弾頭の魚雷が載っかっておることは、もう天下周知の事実です。これがどんどんと入ってきているということもだれも知っている。それをあえて認めようとしないのは、日本政府、与党だけですよ。世界じゅうであなた方だけです。そういう核弾頭兵器を載せ、しかも非公開のきわめてあぶない原子炉という推進力をつけた原子力潜水艦が、日本の船が全然——もう日本の商船は追っ払われて、そういう横須賀とかに入ってこれないのですよ。それがどんどん大手を振って入ってきている。それが何の理由かわからないで入ってきているのも大目に見のがすというような、こんな片手落ちなやり方は、日本国民としては何としても納得できない。こういうことは国務大臣としての外務大臣、どうお考えになりますか。
  116. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは軍艦であるというようなことから申しまして、いろいろ申し上げたいこともございますが、御意見は御意見として十分拝聴いたしておきます。
  117. 石川次夫

    石川委員 たいへん時間がないんで、究明できないのは残念なんですけれども、実はこの核の問題に関連をして、六年前にアメリカに私は自民党の国会議員団と一緒に渡ったことがあります。それはどういう目的かと言いますと、当時ソビエトとアメリカでもって核実験を競争的にやっておった。これに対する抗議文を手渡しをするという目的で行ったわけであります。そのときの団長は、原子力基本法を中心的に推進をしました前田正男代議士だったわけでありますけれども、そこで向こうの高位高官に会いますと、非常な反発を食ったりあるいは非常な激論になったりしました。たとえば原子力委員会に会いますと、原子力委員会といたしましては、アメリカのAECでありますけれども、この核実験はソビエトがやるからやむを得ずやるんであって、やはり悪魔の思想から世界の自由と平和を守るためにやらざるを得ないのであるから、われわれのほうへこういうものを持ってくることは筋違いである、こういうことで激論をしたことがあるわけであります。そのときに、原子力基本法をつくられた中心人物であった前田代議士がどう言ったかといいますと、私は非常な感銘を受けたわけでありますけれども日本には原子力基本法というものがある、これは絶対に、一カウントたりといえども軍事目的に使うことは認めないという思想に基づいておるのである、したがって、われわれは断じて軍事目的である以上は核実験を認めるわけにいかぬという強い反論を加えまして、私はまことにわが意を得たりと感銘を受けました。この思想は現在でも変わっておらない思うのでありますが——官房長官いらっしゃいませんけれども、これはだれに聞いたらいいでしょう。
  118. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 ただいま官房長官は参議院の議院運営委員会に行っておりますので、直ちに御連絡いたします。  その間、石川君どうしますか。外務大臣に……。
  119. 石川次夫

    石川委員 あとちょっと、じゃ外務大臣に……。
  120. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうも、私にはそのお答えをする資格がないかと思いますけれども、原子力基本法についての考え方は、前田正男君が申しておりましたその意見と私も同じ意見でございます。
  121. 石川次夫

    石川委員 いま外務大臣から答弁がありましたけれども、自民党としても、そのときの国会の代表としての意見は、おしなべて、一カウントたりといえども軍事目的のためにこれを用いることは日本としては認めることはできないということで、原子力基本法の精神は、これはもちろん当然憲法の精神を受け継いでおるわけであります。  そこで、ちょっと話は横道にそれますけれども、核防条約の中のことについて、これはまだ批准されておらぬわけでありますけれども、諸外国においても、日本の産業界においても、いろいろと議論があったわけであります。その中で、第六条の核軍縮に関する条約の件で、一方的に核の独占をねらっておるところのアメリカ、ソ連の態度というものに反発をした意見といたしまして、核軍縮並びに軍備の撤廃、それに対する義務というものを明確にすべきではないかという意見が出ておりましたけれども、私不勉強で結論がどうなったかわかりませんが、外務大臣にちょっと伺いたいと思います。
  122. 愛知揆一

    愛知国務大臣 核防条約につきましては、おそらく御承知の段階以上に、各国で調印したものも相当ございますが、その調印された状態以降においては内容の変化はなかったものと考えております。
  123. 石川次夫

    石川委員 外務大臣日本としては核軍縮、核軍備撤廃、その方向で努力をしてこられたかどうか、今後もその方向で努力をされるのかどうか、この点を伺います。
  124. 愛知揆一

    愛知国務大臣 核防条約につきましては、御案内のように、政府としてはもう前々から基本的な考え方については賛成であると、私も同様でございますので、先般の外交演説にもそのことに触れておいたわけでございます。  同時に、従来そうでございますし、私も特に、この核軍縮、あるいは持てる国の持たざる国に対する安全保障の問題、あるいは平和利用に対しての完全な機会均等、あるいは条約の期限の問題等々について、従来から日本としては積極的な意見を表明してまいりました。そういった日本側の表明された意見が全部ただいまの条約案の中には必ずしも十分盛り込まれていない。同時に、国際情勢の変化等もございまするので、日本としては今後どういう態度にいったらいいか、やはり核軍縮というような意欲については、少なくとも条約案としては、いわゆるクローズドイッシューということになっておりますけれども、今後どういうふうな日本らしい主体的な態度を示したらよかろうかということにつきまして検討いたしておるわけでございます。私といたしましては、こうした問題について、できるだけ積極的に国際的な世論の喚起につとめたい、こういうふうに考えております。
  125. 石川次夫

    石川委員 私は、核防条約は意見はありますけれども、とてもここで議論をする時間の余裕がありませんから……。  ただ、申し上げたいのは、佐藤総理が非核三原則を出しましたときに、核軍備の撤廃を主張するということをあわせて言っておられるわけです。それから、先ほど答弁にもありましたように、原子力基本法というものは、日本立場においては、一カウントたりといえども軍事目的に使うことは認めないという精神であります。それから、たとえば原潜が日本に入港するとしても、その内容は非公開であります。公開されないということに対する不安というものは相当あるわけであります。いわんや軍機においてはなおさらその疑いが濃いと思うのでありますが、そういうものを兼ね合わせて、日本にもし核を持ち込むということになれば、これは当然日本の了解のもとに置くわけでありましょうけれども、そういうもろもろの不安というものを考えますときに、持ち込まずを原則から政策に落としたということに対する非常な疑心暗鬼が国民の間にわだかまっておるということは、これは認めないわけにはまいらぬと思うのであります。私は、法律論はさておきまして、日本国民の心情としては、断じて一カウントたりといえども軍事目的に用いてはならぬということを世界に呼びかける資格のある唯一の国民である、そういう義務があるという誇りを日本国民としては持っておると思うのであります。したがって、そういう観点からいいまして、核を持ち込むということを原則からはずして政策にするというような小細工を弄して、原子力潜水艦がほんとうは核兵器を載せてどんどん日本に入ってくる、大手を振って入ってくる、それはどういう目的かもわからぬで入ってくるというような状態を見のがしておるというようなことは、どう考えても国民に対して釈明ができないのではないか。したがって私は、精神論として申し上げるわけでありますけれども、原子力基本法が制定された当時のいきさつは同志の楢崎代議士からもいろいろな話があったわけでありますけれども、これはやはり、そういう状態になれば、憲法論とかなんとかという議論を越えた——もちろん、この精神に沿った問題でもありますけれども、やはり自民党と社会党は、当時の提案の責任者として十分に話し合う、これが当然国民に対する義務であると私は思うし、また、国会尊重の精神からいっても当然のことではないか、こう考えておるわけでありますけれども、その点はどうですか、外務大臣
  126. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、この大精神といいますか、大目標につきましては全く御同感である、こういうふうに考えるわけでございます。したがいまして、これから後におきましても、核軍縮ということについて、たとえば日本はまだ発言の場所も十分には持っていないくらいでございますから、そういう面についての努力はひたむきにやっていきたい。お話しのように、いかにもこれは日本国民らしい立場を持っているのではないかと私は思います。  ただ、私は同時に、そういう運動というか、国際世論の喚起ということに大いに挺身しなければならないと同時に、現在の現実の国際情勢、あるいは日本の安全を確保しなければならないという、まあ、これは政治の最高の責任の問題ではないかと思いますが、そういう現実的な環境の中において、日本の安全を確保するというためにどうしなければならぬかということがやはり同様、あるいはそれ以上に重大な問題ではなかろうか。その間において、大理想どおりにいかないことも現実の問題としては多々ある。これは観念論かもしれませんが、そういうことも考えなければならないのではなかろうか。こんなふうなたいへん大ざっぱなお答えで恐縮でございますが、そう考えております。
  127. 石川次夫

    石川委員 核兵器を世界からなくすということについての一番の発言権を持っているのは日本だと思うし、日本国民もまたそのことを痛烈に望んでおる。こういう精神からいって、もし核を持ち込むというようなこと——外国の軍隊は、これは日本の憲法外であるとかなんとかというのでなくて、日本が世界に訴える、そういう権限の上からいっても、また、原子力基本法の精神の上からいっても、憲法上の精神からいっても、これを持ち込むということに対しては、日本人は断じてこれは承認しない。たとえば核兵器が日本に持ち込まれることは、日本国の当然の了解が要るわけです。無断で持ち込むことはできないと思います。そうすれば、極端な言い方をすると、自分で人は殺さぬけれども、殺し屋は雇うというかっこうになって、国民が納得いたしません。これは極端な表現かもしれませんけれども、そういう見方が成り立つと思うのです。そういうふうなことは絶対に国民が納得できないと思うので、そういうことにならないためにも、ぜひこの両党間で持ち込みということに対する考え方を——これはいまのところは党が多くなっておりますが、当時の提案の責任者としては、われわれはどうしても国会を尊重するというたてまえからいっても、立法府の権限からいっても、自民党と話し合わなければならぬ、こう考えておりますので、これはぜひ尊重してもらいたいことを重ねてお願いいたします。その点についての御意見科学技術庁長官から伺います。
  128. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたしますが、先日、この原子力基本法の第二条の法律的解釈について、私の意見をお求めになりました。そのとき、楢崎委員に私はお答えしたのですが、法律的解釈としては、私どもは原子力基本法の第二条においては、平和目的に限ると書いてありまするけれども、この原子力基本法というものは、外国の軍隊あるいは艦船の装備には適用されないものであるという解釈を私は申し上げました。そこで、そのときに、楢崎委員が、あの法律制定当時に提案者の一人であるところの中曽根委員が皆相談するというようなことを言ったというようなふうに言われておりましたけれども、これはとにかくとして、速記録を調べてみますと、中曽根委員は、国際条約その他の関係は全然これとは別だということをはっきり言っております。それは楢崎委員はそう言われませんでした。逆のほうから解釈されましたけれども、中曽根委員はそういうことをはっきりと明言しております。   〔「議事録の調子のいいところだけ取ってはだ   めだよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  129. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 御静粛に願います。
  130. 石川次夫

    石川委員 科学技術庁長官、ただいま外国とのどうのこうのと新しい問題を提案されたようでありますけれども、結論的には、附帯決議が付されて、原子力平和利用の徹底、附帯決議事項等につきましては大いに尊重しまして法の運営を全からしめるということを、正力国務大臣がはっきり言明しておるわけです。ですから、その言明はあくまでも国会の権威にかけて尊重してもらわなければなりません。したがって、その話し合いをするということは、どういうことがあろうともそれは死んではいないわけなんです。オネストジョンの問題やいろいろな経緯はあったにいたしましても、その結論はちゃんと尊重するということで、話し合うということについては、これは全然抹殺されておるわけじゃございません。  それから、先ほど来何回も言っておりますように、持ち込むというようなことについての国民の非常な憂慮、世界に対して核兵器というものをなからしめるという国民の念願、そういうものを含めて考えますときには、この程度のことは最低限の歯どめとして当然必要じゃないですか。いま原子力潜水艦がどんどん核兵器を持って入ってきておるということに対する不安が国民の中にわだかまっておるようなことから考えても、当然のことだと思うのです。そういう点で、これはただ単にその結論は尊重しますと一言言ってもらえば、それでけっこうなんです。どうなんですか、その結論を認めないというのですか。
  131. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私が申し上げましたのは、原子力基本法の第二条の法律的の解釈です。  そこで、いま私が申し上げたことは間違いであるというようなお話がありましたけれども、中曽根委員が三十年十二月十三日に、衆議院の会議録におきましてこういうことを言っておられます。「事わが国が自主的に行う原子力の利用については、軍事的にわたる部面は絶対ないということを保障しておるのであり、外国との国際条約においてどういう関係になって、それでオネスト・ジョンが来るとかなんとかということは、この原子力基本法に関する限りは全然関係のないことであると私は思うのであります。」と提案者が説明しております。
  132. 石川次夫

    石川委員 そのときの経緯が私、はっきりいたしませんけれども、そのときのオネストジョンは核兵器をつけることもできるし、つけないオネストジョンもあり得るわけです。核弾頭をつけないという前提のもとにおけるオネストジョンという話になっておったはずです。核弾頭をつけるということになれば、その当時の情勢としては相当な問題になったわけでありますけれども、そういうことではないということをあなたは御存じないようであります。したがって、核兵器を持ち込むということになれば、当然決議というものを尊重し、国会の両党が話し合ってきめる、そういう附帯決議というものを尊重するということを、われわれ国会尊重の上からいっても、ぜひ守ってもらわなければなりません。ですから、これは法律解釈上どうのこうのということはあっても、ともかくそういうことがあったにしても、両党でもって話し合うという精神は死んでいないと思うのです。国民の心情からいっても、当然国会が果たさなければならぬ最低の義務ではないかと思うのです。この点はっきりさしてください。
  133. 木内四郎

    ○木内国務大臣 そこで、提案者たる中曽根委員意見は、私は記録によっていま申し上げたのですが、その際に、附帯決議が参議院でついておるじゃないか、こういうお話であります。もちろん、ここに附帯決議がついております。それによりますと、「本法の改廃及附属法、関係法の制定、運用に当っては、本法の趣旨並びに提案の経過に鑑み、あくまで超党派性を堅持し、国民的協力態勢を確立すべきである。」この附帯決議につきましては、もちろん私どもはこれを尊重しなければならない。この附帯決議の文言に従いまして、これは尊重すべきものであると私は思っております。
  134. 石川次夫

    石川委員 ということは、この附帯決議の意見を尊重するということについて確約をされたわけですね。それでは、いずれ両党間でこういうことについては話し合う機会を持ってもらうことと期待をいたしまして、質問がたいへん渋滞をしましたものですから、先に進みます。  科学技術の基本政策でありますけれども、実は時間がたいへん足りなくなりましたために、はしょって簡単に質問いたしますから、答弁のほうもひとつきわめて簡単にお願いしたいと思うのであります。  それは、日本が外国に追いついて追い越すというためには、ただ単に日本国民の勤勉だけにたよるという限界はもうすでに過ぎました。したがって、どうしても技術を導入するというのにも限界がありまして、資本の取引の自由化というものを背景として、たいへんきびしい情勢になるということになりますと、科学技術の推進というものをはかることを通じて、外国に追いつき追い越して繁栄をはかるということ以外にはわれわれの活路はないということは常識になっておる。そのための方法論として一体どういうものがあるかというと、いろいろ申し上げたいのでありますけれども日本では、科学技術というものは、英語で言えばサイエンス・アンド・テクノロジーであります。あるいは研究開発といえばリサーチ・アンド・デベロップメントということになるわけでありますけれども日本ではサイエンスがなくてテクノロジーだけである、リサーチがなくてデベロップメントだけである、これが定評であります。したがって、そういう研究体制の中からほんとうに基本的な日本人の持てる創造力というものを引き出すことができないような状態に置かれておるということは、まことに嘆かわしい限りだと思うのであります。したがって、これを何とかして体制を立て直さなければならない。応用開発だけではもう限界がきた。技術導入は、御承知のように、技術の輸出入貿易というものを一〇〇にいたしますと、日本では輸入が九三で、輸出が七であります。アメリカのごときは、輸出が九一で、輸入が九というパーセントになっております。こんなていたらくでは、とてもとても日本の自主的な技術を開発していくのにはほど遠いといわなければならない。  それで、簡単に結論的な質問をいたしますけれども、GNPに対して二・五%という目標になっております。科学技術の予算は何とか二・五%予算といいますか、技術関係の研究費というものは、そのくらいにしなければならぬというのが定評であります。しかもその中で、外国では七割までは政府出資で、民間が三割、日本は逆に七割までが民間に依存をして、政府が三割という、さか立ちをした形になっておる。この体制を直さなければならない。したがって、この増額と、並びに政府出資を多からしめるということについての決意のほどを、科学技術庁長官と文部大臣にまず伺いたいと思うのです。簡単でけっこうです。
  135. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたしますが、確かに、わが国は今日まで追いつけ追い越せということで、外国の技術を導入してきて、そしてそれに自主開発を加えて今日まできたものだと思うのですが、今後におきましては、お説のとおり、自主開発に大いに力を入れなければならぬ。それには科学技術に関する予算を大いにふやさなければならぬじゃないか、これはごもっともな話です。ところで、いま外国との経費の比率をお話しになりましたが、外国のこの科学技術に対する経費の大きな割合、部分は、わが国とたいへん違いまして、軍事関係の予算が非常に多いわけなんです。そういう点ももちろん頭に置いて、そうして、それはそれとして、わが国の科学技術関係の予算を国として大いにふやしていかなければならない。そしてこの研究開発の基盤の強化をはかっていかなければならない。これはお説のとおりだと思います。大いに努力いたしたいと思っております。
  136. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 お答えをいたしたいと思います。  石川さんのお説は、私も同感でございます。特にこのOECDなんかの報告によりますと、民間人を含めました技術者というものは、大体世界主要十カ国の中で第三位というようなふうに聞いておるわけですが、しかし、そのまた一人当たりの研究費となりますと、その十カ国の中で一番最低である。こういうようなことをやはり御指摘になっておるのじゃなかろうかと思うわけでございまして、これはただいま科学技術庁長官からお答えになりましたとおり、私の文部省関係といたしましても、その基礎研究ということに対する研究体制を一日も早く確立をいたさなければならない。そうして、御指摘のような目的に向かって最善の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  137. 石川次夫

    石川委員 いま一応の決意だけを伺ったわけでありますけれども、軍事関係の予算が多いからというお話でございましたが、日本の場合には、幸いなことに平和憲法のおかげで、軍事関係という回りくどい試行錯誤をしなくても済む利点というものを大いに活用しなければならぬ、こう思っておるわけでありますけれども、特にいま文部大臣からお話がありましたように、基礎研究の体制というものから手をつけないと、いたずらに応用、開発の面だけふくらましただけでは、どうしてもほんとうの創造力というものは出てこない。日本人はそういう創造力を持っている、それが出てこないということは、体制上の欠陥が非常に災いしているというふうにわれわれは考えているわけであります。そういう点で、文部大臣答弁は私は多とするものであります。  そこで問題は、体制をつくるための問題点であります。それはどういうことかといいますと、実は、ここで大学紛争との関係で、この科学技術の基本政策というものに触れなければならぬと思っております。大学問題でゲバ棒をふるって一挙に解決をしようというようなあのやり方については、われわれは大いに批判をし、反対をいたしますけれども、しかし、大学問題は、ただ単に大学だけの問題ではなくて、幼児教育を含めての小、中、高等学校にまたがる問題が、前提として解決をされなければならぬと思っております。しかし、ここではそういうことを申し上げる時間の余裕はありませんで、大学問題だけに限定をいたしますけれども、実はこの大学問題が出ましてから、いろいろな連中と私も話し合いました。そこで、彼らが言っているのは、研究費が少ないということはもちろんあります。研究費が少ないということはありますけれども、研究費が自由に使えないという問題が、それ以上の切実な問題になっているということをお考えをいただかなければなりません。そのときに、ちょうど政府提案でもって科学技術基本法というものが提案をされました。これがまともに攻撃の目標になっておる事実を文部大臣御存じかどうか知りません。しかし、これは、この体制、この科学技術基本法に盛られた精神、これがあるから、日本の科学技術の体制というものはだめなんだ、この体制を粉砕しなければならぬという、この心情を理解をしてやらなければ、ほんとうに大学問題の紛争の解決に役立たないのではなかろうか、私はこういう感じがしてならないので、あえて申し上げるわけであります。  その理由はどういうところにあるかと申しますと、いろいろこまかい事情があるのでありますけれども政府におきましては、科学技術の主導権というものを科学者やあるいは大学から取って、科学技術費用というものの分配権を自分の手に剥奪しようという考え方がある。たとえば科研費というものがありますけれども、科研費がことしは、たぶん去年五十億が六十億になっておると思います。これは自由に使える金であります。ところが、そのほかに、科学技術研究費補助金というのがあります。これは去年は百十二億で、ことし幾らになっておるか、まだ調べておりませんけれども、大体科研費の倍であります。この科学技術研究費補助金というのは、政府のほうで一定の目的を持って配分をする金であります。科研費というのは、純粋に学者の中で自由な研究に使われている予算であったわけでありますけれども、このほうよりも、政府が割り当てる、政府の命令によって割り当てる金のほうが倍以上多い。これはちょっとおかしいのではないか。もっと自由な研究体制にすべきではないか。ところが、この科研費それ自体が、御承知のように、いままで日本学術会議が配分をしておったものを、非常に重点配分ができておらぬじゃないか、研究の成果が見えないじゃないかというようなことから端を発しまして、学術審議会の中におけるこの研究費の特別委員会というものを設けて、そこで配分権を剥奪をするという事態になりました。そういうことで、学術会議の中で、特に各大学から非常な反発があって、この研究費は返還をするとかどうとかいういろいろな紛争があったわけです。これはなるほど政府の側から見れば、自分の思ったような目的、基礎研究的なものがほしいというふうにお考えになるでしょう。しかしながら、学者のほうからいえば、研究の自由がほしいのです。それが全部こういう形を経てどんどん剥奪をされるということに対して非常な反発がある。そこにかてて加えて、科学技術基本法というものを見ると、国家的なビッグプロジェクト、そういうものにつながるところの研究に対しては存分に——存分ではありませんけれども、金を出してあげましょう、そして自然科学の中のそういうビッグプロジェクトだけについて、手厚い保護を与えようとするのが科学技術基本法の精神であります。そうして、置いておかれるのは、人文科学、社会科学、それからその他の自然科学を含めての基礎研究というものが置いておかれる。こういうふうに権力と大学当局が密着したようなこういう体制を離さない限りは、大学紛争は断じてほこをおさめるわけにはいかぬというのが彼らの言い分であります。全面的に彼らの言い分を私は支持するつもりはございませんけれども、しかし、その心情は十分にぼくは理解してやる必要があるのではなかろうかと思うし、また、そういう心情を理解した上でなければ、大学問題あるいはひいて全体の学問体制というものの基本的な解決にはなり得ないのではないか、こういう懸念を私は持っているわけであります。  したがって、この大学問題に限って言いますと、そういう科学技術の日本の国家の研究体制というものを学者の自主的な運営にまかしてやる。たとえば学術審議会が単なる諮問機関であるとして、あるいは科学技術会議が単なる諮問機関として諮問に答えるというまでは、それは私はあってもいいと思うのでありますけれども、自主的にものを解決するというときに、やはり学者の問題は学者にまかせるという体制をつくらない限りは、この学生の不満、若手学者の不満というものは絶対に解消しない、こういう懸念を持っているわけであります。  したがって、結論的な質問を申し上げますけれども、科学技術基本法というものは先国会で廃案になりました。あらためて議員立法として出そうかという動きがあるわけでありますけれども、そのことについても、わが党は非常にちゅうちょをいたしております。それはなぜかというと、どういう形であれ、基本法を振興法というように変えたという場合であっても、片手落ちの形でこれだけが推進されるということに対して、若手学者あるいはそれに反応するところの大学生が、産学一体の体制であるということで鋭く攻撃をし、これが大学紛争の火に油を注ぐ結果になるという懸念を私は強く持っております。したがって、この科学技術基本法を出すならば、この車の両輪であるところの学術研究基本法、あるいは振興法でもけっこうでありますけれども、あるいは科学研究基本法、そういった学問全体の、自然科学、人文科学、社会科学を含めた体制というものについての基本法というものを確立をして、その中で基礎研究を特に重視するという体制をつくったようなものが一方にあり、そうして科学技術基本法というものが別個に出るということであるならば、これは完ぺきなものになるでありましょうけれども、一方だけが出るということについては、これはいまの事態においては決して得策ではない。これは科学技術庁長官もよく聞いておいてもらいたいと思うのでありますけれども、そういう点で、文部大臣としては、科学技術基本法、あるいはまたそういうものに見合った形での学術研究基本法というものを早急に用意をする。いたずらに中教審をやって、古くさい人を集めて大学問題の改革をやっても、いい案は出ないと思いますが、これはこの場では質問を申し上げませんけれども、そういう問題から片づけていかなければいかぬのじゃないかという気がするわけなのです。この点について両大臣の御意見をひとつ伺いたい。
  138. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 お答えをいたしたいと思います。  私は、やはりこの基礎研究というものに相当の資金を投じ、そしてまた人材を集めるということが非常に大事なことだという点については、石川さんと同感なのでございまして、国民のための大学というふうに、一方に大衆化した大学として今日の大学が求められておりますが、一方においては、世界的な学問水準を維持し、またそれを発展させるためには、研究体制を中心としたものの確立というものがどうしても必要である。したがいまして、やはり私は、この国民のための大学には、研究を中心とした大学というものが、どういう形になるかは別といたしまして、やはり求められなければならないというふうに思います。  それから、もう一つ御指摘の、この前廃案になりました科学技術基本法案でございますが、これはやはり科学技術基本法でございまして、これは科学技術庁設置法に基づいたわけでございまして、原則として人文、社会をはずしておると私は聞いておりますし、またそのとおりだと思うのでございます。そういうわけでございますが、しかし、私は、基礎研究というものは非常に重視をしなければならぬ。  それからまた、一方科研費の問題につきましても、御指摘がございましたとおりに、五十億のものを六十億にいたしました。しかし、これは私はまだ不満足でございまして、これ以上やらなければいけない。それからこれの使用方法、配分方法について、昨年いろいろごたごたがあったことも私は聞いておりますけれども、しかし、最終結論としてできましたことは、決して学者の方々の自由を束縛するのじゃなくて、むしろ学者の方々の自由な気持ちを広げていくという考え方で結論になっておるというふうに私は聞いておるわけでございまして、たしか学術会議のほうで、これこれの人に直ちにそのままやれと、こうおっしゃるのに対しまして、そうではなくて、三人を五人ぐらい推薦していただいて、そしてそのうちの三人をいろいろの方法によりまして選択をして、そして配分をきめたというふうに私は聞いておるわけでございまして、まあその間いろいろ事情はあったかと思いますけれども、現在のほうが私たちといたしましてはベターだというふうに考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、私は、科研費、それからまた同時に、大学の基礎研究の研究費の増額というものについて、一生懸命これから努力をいたしたいというふうに考えておる次第でございまして、場合によってはやはり長期的な——先ほどお示しいただきましたような二・五%ということについても、民間でどれくらい、あるいは大学でどれくらい、あるいは基礎研究というけれども、いまの大学のいわゆる基礎研究というものをどういうふうに考えておるのだというような点につきましても、もう少し検討する必要があるのじゃないかというふうに思っておる次第でございます。
  139. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたします。  科学技術を振興し、自主技術開発を強化してまいるためには、ビッグサイエンスのみならず、それ以外の研究をあわせて推進することがきわめて重要であることはお説のとおりでございまして、従来からもこの推進に努力をいたしてまいっておるのであります。前国会におきまして審議未了となりました科学技術基本法におきましても、この基礎研究の重要性を強調いたしております。また、基礎から開発に至る各段階の研究の有機的な連携と、各研究の調和ある発展が必要であること、また、科学技術諸分野の有機的関連に配意すべきことを基本方針といたしておるつもりでございます。また、政府において策定すべき科学技術の基本計画の内容といたしましても、重要な分野における研究の推進と研究環境の整備を特に掲げること等によりまして、ビッグサイエンス以外の研究につきましても、その推進を期しておる次第でございます。したがいまして、このような内容を盛り込んだ科学技術振興の基本となる法律が制定されますならば、これらの諸研究につきましても、大いにその発展が期待されると思うのでございます。  ところで、先ほどお話がありました人文科学の振興でありますが、これも必要であると考えるのでございますけれども、科学技術の振興を担当いたしております科学技術庁の立場といたしましては、わが国におきまする総合的計画の推進をはかる必要性が特に強いものは、自然科学の分野ではないかと思うのでございます。しかし、この人文科学の分野につきましても、おのずから別途にこれは考究されるべき問題と思っております。
  140. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 石川君、官房長官がお見えになりましたので、念のため……。
  141. 石川次夫

    石川委員 文部大臣、基礎研究を重視されるという方向はたいへんけっこうでありますが、いかんせん、六十億という額はあまりにも少な過ぎると思うのです。これでは奪い合いという形になりますし、それから学術審議会の人それぞれを非難するつもりは私は毛頭ないのでありますけれども政府がつくり上げた機関がそこに介入をしていくということそれ自体に対する反発があるということを忘れちゃならぬと思うのでございます。学術会議それ自体もまだいろいろな問題が残されておる。あの選挙の方法たるや、ほんとうに学界の良心的な分子が代表して出てこられておるかどうかという問題も残っておると思いますけれども、少なくともあれは学者の国会であります。したがって、この人たちが自主的にやるという分野を広げていくということに相当力を用いてもらわなければならぬし、あれをよくするということについても、同時に考えてもらわなければならぬのであって、学術振興会とか学術審議会というふうなものを官制でつくられて、そこが介入をするということ自体に対する反発があるということを忘れてはならぬと思うのであります。これが研究の自由を侵しておるのだと、こう一方的に思い込むことについては、少し考え過ぎということはあるかもしれませんけれども、しかし、そういうふうに率直に受け取っておるという事実は、これは認めないわけにはいかぬ、こう思うのであります。  それから、科研費の配分の方法などについては、十分にこの点について配慮をしてもらわなければならぬということが一つ。  それから、先ほど答弁が漏れておると思うのでありますけれども科学技術庁長官としては、ビッグサイエンスにつながるところの自然科学というものを重視することは、これは当然の責務でしょう。しかし、それだけではいかぬということを言いたい。人文科学も、当然、自然科学で発展したものをどう運用するかというのがやはり人文科学の分野でなければならぬし、それからそれ以前の、先ほど来申し上げたような創造力を引き出すという意味での基礎体制と基礎研究体制というものをつくらなければならぬという意味では、どうしても学術研究基本法ないし科学研究基本法というようなものが出て、それで科学技術基本法というものが出るのであれば、これは国民あるいは学者が納得をするであろうけれども、一方だけが先行するということについてはたいへんな問題がある、こういう点について文部省としては考えてもらわなければならぬ、こう思っておるわけであります。
  142. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 お答えをいたしたいと思います。  その当時、学術会議としては、科学研究基本法があって、そして科学技術振興法あるいは学術振興法という二つのあれが出てくるというお考えであったわけです。それから国大協あたりでは、この科学技術振興法——むしろいま出ておる法案は科学技術振興法ではないか。それをやるのならば、いま御指摘のような学術基本法を別につくるべきではないかという御意見であったと思うのです。これらの点について、われわれ、いま審議会で検討をいたしておりますので、十分ひとつ検討をいたしたいと思っております。
  143. 石川次夫

    石川委員 これは大臣検討をしておるというふうな段階では、もうないのではないかと思っておるのです。これは大学の紛争問題と密接不可分な関係があるのですよ。それで、いろいろな大学問題を解明しておる熱心な連中ですけれども、この人たちの意見が必ずしも正しいとは私は申し上げませんよ。しかし、そういう人たちが、科学技術基本法というものが優先して出ておるというこの政治体制、この体制がいかぬということを言っておるのです。でありますから、私は、そのこと自体を全面的に受け入れるわけではありませんけれども、その心情は私は察してやらなければならぬと思うし、それから科学技術基本法が出ることの必然性は、われわれは理解はしているのですよ。これは不必要だと私は思っていないのです。ただ、これだけではいけない。学術研究基本法的なものが一方にあるという前提の中でそれが出てくるという体制をつくっていかなければ、大学紛争に油を注ぐ結果になり得るということを言っておるわけです。
  144. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 その辺が実は非常にむずかしいところでございまして、御承知のようにこの自然科学の場合は基礎研究そして応用研究、開発研究というものがずっとつながっていくわけです。しかし、人文、社会とか、また人文の中には哲学みたいなものがあります。そういうようなものについて政府が、あるプロジェクトを設けるというようなことがはたして学問の自由ということにいかがかというようなことを考えまして、人文、社会の基礎研究というものはむしろ大学が責任をもっておやりになるほうがいいのじゃないだろうか、こういう気持ちも裏にあることをひとつお考えをいただきたいというふうに思います。
  145. 石川次夫

    石川委員 私はそれを議論しますと、たいへん時間を食ってしまいますからやめますけれども、人文科学のほうはおっしゃるとおりでしょう。おっしゃるとおりですが、計画の立つものもあるわけです。そういうものを分離しまして、一方のものは自由にまかせるということは倫理規定でもいいんですよ。それから政府が大いに援助をするというふうな精神規定でもよし、そういうものが一つなくて、科学技術だけが先行するということについては非常に禍根を残す。したがって、それを車の両輪のような形にしてあげなければなかなか納得性がないし、また大学紛争のときに、こういうふうなものがあるという材料にこの科学技術基本法が使われておる。これはいまのところは大学紛争に巻き込まれておりますから正面に出ておりませんけれども、必ず表に出てまいります。そういう点でそれは早急に解決をしなければならぬ問題だということを、ひとつしっかりと認識をしてもらいたいと思います。この科学技術の基本政策の問題はほかにもたくさんありますけれども、一応これで終わります。  それからその次に、時間がないのでたいへん残念でありますけれども、実は宇宙開発と、その次、原子力の問題でございますが、宇宙開発の問題はあとからインテルサットの部分については同僚の森本議員のほうから質問があるようですから、ごく基本的な問題だけを申し上げたいと思うのであります。  この宇宙開発は、御承知のようにアメリカがアポロ8号というものをみごとに成功させまして、世界の人たちにあっと言わせたわけでありますけれども、この予算は大体八兆円であります。日本はとてもそんな計画についていける道理はございません。そういうことで、日本の場合にはどういうスケールで、どういう計画でやるかというこの事前の計画を立てなければいかぬと思っております。そこでヨーロッパでは、御承知のように各国が共同して宇宙開発を分担作業でやっております。単独でこれをやろうとしているのはアメリカ、ソ連に次いで日本だけであります。なかなか容易ならぬ大事業ではないかと思っておるわけでありますけれども、大体最低少なくとも二千五百億円くらいはかかるであろうといわれておりますが、大体日本の場合は、まさかアポロ8号を打ち上げるということはできないでしょう。どこまでやる、どういう計画を持つ、どういう利用計画で何のために宇宙開発をやるのだという目標が明らかにされておらないようであります。その点をまず明らかにしてもらいたいと思うのです。
  146. 木内四郎

    ○木内国務大臣 ただいまのこの宇宙開発の目的、範囲、そういうものについての御質問でありますが、わが国の宇宙開発につきましては、さきにこの宇宙開発委員会におきまして、昭和四十八年度までの衛星開発の基本方針を決定しておるのでございます。ところで、これらの衛星の利用はもちろん、委員会でもたびたびお話しになっておりまするように平和の目的に限られておるものでございまして、通信実験のほか、気象、航行等の諸分野における実用実験と並びまして、宇宙科学の研究ということを目的といたしておるものでございます。  ところで、現在同委員会におきましては、十年後の展望を含むわが国の宇宙開発計画の検討を行なっておるような次第でございまして、同計画に沿いまして今後の開発を進めまして、そうしてこれらの人工衛星を利用して本格的な宇宙の探査あるいはその利用、たとえば国内の通信あるいは地域衛星、こういうようなものの時代に備えてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  147. 石川次夫

    石川委員 十年の計画を立てておるとおっしゃるけれども、利用ということばの中の具体的な内容が明確になっておらぬわけですよ。たとえば、通信衛星ということだけははっきりいたしました。インテルサット条約によって通信静止衛星を上げようということははっきりしておりますけれども、その他たとえば後進国開発のための特定の衛星というようなものも出ております。あるいは地下資源を開発するための特定の目的を持った衛星というものも開発されつつあるわけです。そういった、どういう目的の衛星を上げるのだ。まさか月着陸あるいはアポロ衛星みたいなことはよもや考えておられないと思うのでありますが、そういう計画なしに、現在の宇宙開発委員会のメンバーはみなロケットを打ち上げるということだけのメンバーですね。ほんとうに宇宙開発というものはどういうものに活用できるのだ、どういう開拓をしていって人類の繁栄と結びつくのだというふうなことについての権威者というものは、この宇宙開発委員会には一人も入っておらぬわけです。通信衛星と、それからあとロケットを上げるんだ、こういうことだけのために、やたらむしょうに金を使うということは、私はナンセンスだと思っております。目的をはっきりさせてもらいたい。これはあとで委員会の場でまた詰めた議論をしたいと思っておるのであります。  その中で、私は前から言っておりますように、これは佐藤総理大臣委員会に出席して確約をされたわけでありますけれども、機密保護法というものは設けない、基本法というものをつくって平和利用——原子力基本法と同じような基本法をつくるということを明言をされ約束をされておるわけであります。その基本法の中で、われわれは、ぜひ原子力基本法と同じような平和利用に限定をし、自主、民主、公開の原則というものを入れてもらう、それから、基本法の適用の範囲というものは大気圏を越えた宇宙空間として、ICBMその他の兵器には断じて転用しない。御承知のようにMロケット、Qロケットというふうなものを開発しておりますけれども、これがMロケットにまいりますと、ICBMに転用される可能性が十分に出てくるわけですね。したがってそういう転用を絶対にやらないのだというようなこと、それから防衛庁職員だとか自衛官、あるいは外国人の軍隊に所属するような人はこれに参加をしない、こういうふうなことを明確にしない限りは、宇宙開発の利用計画がはっきりしないだけに、いつ軍事利用に転用されるかわからないという危惧の念を国民に与えざるを得ないと思うのです。そういう点での宇宙開発基本法になるか宇宙基本法になるかわかりませんけれども、それを早急に出すことのほうが、事業団法を成立させるよりは優先すべき事柄ではないかと考えておるわけであります。この点どうお考えになりますか。
  148. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまお話しになりました平和目的に限るということでございますが、これは私が先ほど申し上げましたように、委員会におきましてもそういう御意見もありますし、平和目的に限るべきである、原子力基本法と同様に平和目的に限るべきものだと思っております。そうしてその基本法をつくることは、この委員会におきましても、科技特委員会におきましてもいろいろお話がありました。私どものほうにおきましても、もっぱらこれを研究しておるのでございますが、私の聞くところによりますと、関係会議員の間におかれましても研究されまして、そうして案をひとつつくろうというようなお話になっておるようでございますので、私どものほうにおきましても、今後のわが国として宇宙開発をどこまで進めていくか、あるいは宇宙開発についてどのような基本的施策を講ずべきか、そういう諸問題の検討は必要でありまして、政府としても、これらの問題に関しまして積極的に検討いたしますと同時に、国会においていろいろ御相談になることに対しましてはできるだけの御協力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  149. 石川次夫

    石川委員 どうも明確な答弁ではないのでありますけれども、とにかく平和利用に限定をするということを趣旨に盛り込んだ宇宙開発基本法というようなものはぜひ必要だということが確認されたものと理解をしておきます。  それでジョンソン大使のメモが出まして、これが四十二年の一月十七日、それからそれの回答がやっと出たのが四十二年の十二月二十三日、およそ一年間これをあたためて隠しておいたという実態が明らかにされておるわけでありますけれども、なぜこれが隠され、また回答がなぜこのようにおくれたかということを簡単に御説明願いたいと思うのであります。
  150. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたしますが、これは先般科技特委員会におきましても申し上げましたように、外務省におきましてもこれは外交上の慣例として公表すべきものでない、こういうことでございまして、公表することは差し控えたのでありますが、その要点は発表いたしております。そうして、これもやはり平和目的に限ってアメリカ日本の希望があればできるだけ協力しよう、こういうことでございましたので、それに対してこちらからいろいろ研究いたしました結果、回答いたしたような次第でございます。
  151. 石川次夫

    石川委員 返事がなぜおくれたかということについての御返事はないようですね。これはいいでしょう。あとでまた、委員会の場に移して質問をいたします。  それで問題は、これはあとから森本同僚議員のほうから質問があると思いますが、インテルサット協定が今月の末から実際の交渉に入るわけです。これはジョンソンメモにもありますように、インテルサット協定と両立する実用国内組織についてのみ、技術についての提携に協力をしよう、こういうことになっておりまして、国内組織なんです。地域協定はこれはできないということになっておって、これに対しましては、ヨーロッパあたりが相当の反対をしておるということになっておるのですが、現実にアメリカが六一%の資本を出し、それからイギリスがこれに追随して八%出して、日本は二%しか発言権がないわけです。そうしますと、多数決ということになれば、一国だけのための通信衛星を上げる、あるいは一国だけのためのほかの目的の衛星を上げるということについては技術は提供するけれども、後進国の開発その他のためにわれわれが衛星を上げようと思っても地域協定ができない。こういうふうに利用が限定をされますと、宇宙開発は何のためにやるんだということにならざるを得ないのです。通信衛星だけについて言えば、マイクロウェーブをふやせば間に合うのですよ。アメリカが六割一分の発言権を持って、向こうの言うとおりに向こうがこれを独占する。これは核防条約と相共通したものがあるわけですけれども、そういう限定をされた範囲で宇宙開発をやっても私はナンセンスだと思うのです。これはインテルサット協定ではソビエトも参加しようという気配もあり、また、ヨーロッパでも相当鋭く反撃しておるわけですが、これは、地域協定は必ずできるんだ、こういうふうに持っていくためには一国一票制という方法を提唱することもいいでありましょう。これはただ単に郵政省の参事官とか局長あたりが行ってできる交渉だとは私は考えないのであります。外務大臣は御退席になったようでありますが、これは国会として決意をはっきりさせ、それを背景としてやはり地域協定ができるんだという形に持っていかない限りは、宇宙開発は、いたずらに金をかけただけで、何の役にもたたない。せいぜい気象衛星か科学衛星を打ち上げるだけの結果に終わってしまって、後進国の開発その他に地域協定ができないということでは、こういう宇宙開発をやっても意味がない。費用をかけるだけむだだ、こういうことにならざるを得ないと思うので、まずその先べんをつける意味でのインテルサット協定に対するところの決意、これは、外務大臣がちょうどいなくなったので、ちょっとまずいのでありますけれども、一応科学技術庁長官並びに郵政大臣から伺いたいと思うのです。
  152. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 インテルサットの本協定を進めるための会議は、お話のように、今月二十四日から四週間の予定でアメリカで開かれる運びになっております。わが国は現在暫定協定に参加いたしておりまして、本協定が成立することを望んでおりますが、しかし、この場合に、先ほど御指摘のように、わが国の将来の基本的な国益がそこなわれないように努力をしてまいりたい、かように存じております。
  153. 石川次夫

    石川委員 時間がありませんから、いま非常に抽象的な答弁をされましたけれども、私はやはり地域協定が結べるということでなければ、衛星のいろいろな利用方法を、あなた専門家で、おわかりだと思うのでありますけれども、後進国の開発のための衛星というのは相当活用の余地があるわけです。それこそアジアにおける日本役割りでなければならぬ。そういう期待が持てるから、われわれは宇宙開発にきん然として、平和利用から逸脱するかもしれぬと思いながらも協力をするという決意になっているわけです。いまはただ単に国益をそこなわないということだけ言っておりますけれども、具体的には地域協定ができるんだ、こういう体制に持っていくということをはっきり明言してもらいたいと思うのです。
  154. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まだ会議に臨む最終の政府の態度は決定しておりませんで、ここ一両日の間に決定する予定になっております。当然先ほど御指摘のような点を会議におきましては主張する所存でございます。
  155. 石川次夫

    石川委員 これは森本同僚議員からまた質問があると思いますから、この程度にいたします。  そのほか、宇宙開発については機密を守ってもらいたいというジョンソンメモというものがあって、それを受けて、別に法律はつくらないけれどもと言いながら、軍事機密は導入しないと言いながら、やはり機密の保護の必要は認めている。これに相呼応いたしまして、御承知のように産業スパイ罪というものの制定というものが一本出ている。こういう関連を見ますと、どうもこういうことに関連して産業スパイというようなものも、当然その中心になれば軍事機密になるという可能性が多いという問題点だけを指摘をしておきます。きょうは時間がありませんから、その点の質問はあとに譲りたいと思います。  それから、次に原子力の問題でありますが、原子力発電の問題を通産大臣に伺いたい。科学技術庁長官にも伺いたいと思います。  それは、御承知のように、六十年度には三千万キロから四千万キロの設備を原子力発電に依存をするということをきめているわけでありますけれども、最近の非常な日本の産業の発展その他の問題とからみまして、一九八〇年までに四千万キロワットをつくりたいというふうに、非常に計画が促進されておるようであります。そのこと自体は日本の非常なエネルギーがここにあらわれている一つの象徴だというふうに見れば、喜ばしく思えるのでありますけれども、実はこの非常に性急な原子力発電の計画というものについて、どうしてもわれわれは疑義を持たざるを得ないのです。  以上のすべてについて申し上げるわけにいきませんけれども一つ伺いたいことは、たとえば関西が美浜に一号、二号、三号、四号、あるいは東京電力が福島に一、二、三、四号、これは同じ場所に密集して発電機を設けるわけでありますけれども、この発電量が二千二百五十万キロワットぐらいになるわけです。それで、科学技術庁長官に伺いたいのでありますけれども、福島に一、二、三、四号ができ、関西美浜に一、二、三、四号ができ、それから関西の五、六、七、八号はどこにできるかわかりませんが、これが一カ所にできるといたしますと、四百二十万キロワットぐらいになります。そこで、ここから出るところの放射能汚染の程度は一体ちゃんと事前に調べてありますか、予測してありますか、その点伺います。通産大臣でもけっこうであります。
  156. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御案内のように、発電所の設置は許可にかかっております。また設備計画は認可することになっておりまして、運転にかかりますと定期検査をちゃんとやっておりますが、それはICRPの勧告に沿った厳重な規制を加えておるわけでございまして、石川委員、御心配のようなことはないと確信いたしております。
  157. 石川次夫

    石川委員 実は東電福島の二百七十五万キロ、それから美浜が二百三十四万キロ、関西の五、六、七、八号が四百二十万キロワット、これを大体私たちのほうで計算をしますと、どうもICRPの規制で一個一個は規制するかもしれませんけれども、それが集中するわけです。集中した場合の環境基準といいますか、いま、御承知のように石油発電あるいは石炭の発電よりは、原子力のほうがむしろ公害は少ないというふうなことが常識になっておりますけれども、もし公害が出たら、これはたいへんなことになるわけです。ところが、どう考えてもアルゴンなどは許容基準を越えます。こう集中しますと越えます。そういうふうなデータが出ておりませんか。そういうことを何ら考えないで、やたらに国民の抵抗の少ないようなところにまとめて集中的につくるということは、非常にやりやすい方法かもしれませんけれども、これは環境基準から言いますと、非常に危険が多い。このデータを調べた結果があれば出してもらいたいし、そういうデータなしに集中的につくるということについては非常な危険がある。この点はどうお考えになっておりますか。
  158. 本田早苗

    ○本田政府委員 お答えいたします。  現在、御質問の原子力発電の建設計画につきましては、東京電力は福島に一号と二号とが現実の計画になっておりまして、関西電力の美浜につきましては、これもやはり一号と二号でございまして、今後三号以降の問題につきましては、また安全性につきまして、十分検討をいたすことに相なろうと思います。
  159. 石川次夫

    石川委員 原子力発電についても申し上げたいことはたくさんあるのですが、いま一、二号だけ、具体的になっているのはそうでありますけれども、三号、四号はそれぞれ計画はあるわけです。この一号、二号、三号、四号合わせますというと、どうもICRPの基準を越えるという危険がきわめて濃い。したがってそういう面で、そういうことと無関係一つ一つの出口規制というのではなくて、一緒に合わせた場合の環境基準に照らして一体どうなるのだということを考えない設置のしかたというものは、将来に非常な禍根を残す、これは十分に考えてもらわなければいけません。われわれ大ざっぱに計算していきますと、これはどうもICRPの許容基準を越えるという計算が出るわけなんです。   〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕 そういうふうなことがあって、あわてて計画を変更するなどということは、まことにみっともない話なのであって、そういうことはやめてもらいたいということと、それから電力全般に言うわけでありますが、エネルギーのもとというのは、国の死命を制するものでありまして、これは九電力は利潤追求の原則に従って、非常に性急な形でもってつくるということについては、わが党としてはどうしても賛成するわけにまいりません。そういう問題もあります。  それから、よくいわれるように、原子力発電というのは、安い安いということをよく喧伝をいたしますけれどもアメリカの現実の問題としては応力腐食問題や、圧力容器のひび割れというふうな問題があって、ほとんどフルに働いていないのです。七割から八割というふうに働けば精一ぱいいいところでありまして、そのためにキロワットアワーの二円五十銭を下回るというわけにはまいらぬということで、重油の発電機よりも安いということにはなっておりません。それをやたらに安くできるのだというふうなことではなくて、私はむしろ、やたらむしょうに発電所をつくることで技術者を分散させるよりは、もっとここで腹を据えて、自主開発、自主独立の技術を開発をしていくのだという体制をつくることのほうが重要ではないか、こういうふうに考えておりますので、これはいずれ議論になりますから、あとの委員会の意見に譲りたいと思いますけれども、十分にひとつ、この点は考えておいてもらいたいと思うのです。  それから、時間がたいへんなくなってまことに残念なのでありますけれども、核燃料の問題で一つ質問をいたしたいと思います。  それはウランの埋蔵量は、アメリカ、カナダ、南アフリカその他、これは八十二万トンばかり予定をされております。アメリカ、カナダ、南アフリカではそれぞれ出ておりますけれども、実はインド、ラテンアメリカ、オーストラリアでは、このウランの原鉱石というものは、輸出は禁止されております。  ところで、日本は原子力協定によりまして、ウランをアメリカに全面的に依存するというかっこうになっておりますけれどもアメリカでは、現在の埋蔵量あるいは現在の生産能力からいきまして、それからだんだん需要が伸びている趨勢から見まして、アメリカ自身の埋蔵した鉱石を掘って自分の国に提供するというのは、一九七三年くらいで一ぱい一ぱいであります。アメリカ自体がほかから鉱石を買わなければならぬという状態になるわけであります。御承知のように、日本は石油もないし、あるいは石炭も乏しいわけでありますけれども、しかし将来のエネルギーの大もとというものは、原子力に依存しないわけにもいかない。全面的に原子力協定によってアメリカに依存しっぱなしという隷属した姿にも問題はありますけれども、そのアメリカ自体が一九七三年くらいになれば、日本に原鉱石を掘ってまで濃縮をしてもらえるという余力はない。長い目で見た場合に、アメリカに隷属することに問題はありますけれども日本自体が鉱石を開発して、日本自体が濃縮をして、エネルギー源を確立するということがなかったら、自主独立の外交なんか全然あり得ないです。  そのために、通産省の予算を見ましたところが、海外探鉱関係では、銅とか鉄鉱石はやっておりますけれども、ウランについては、ほとんどこれに対する予算も盛られておらないという状態です。こんな体制で一体いいのか。これは将来の、一番の問題は何といっても、私はウラン鉱だと思うのであります。それに対しましては、民間にほとんどおまかせというふうな状態で、はたしていいのかどうかという懸念を持たないわけにいかぬわけでありましてこの点、通産大臣どうお考えになりますか。
  160. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のようにウラン原鉱の確保問題、非常に重大な問題だと心得ております。それでわが国といたしましては、昭和六十年までに必要となるウラン量は約十万トンと見込まれております。これまで電力業界におきまして、カナダのウラン鉱山会社との長期契約によりまして、五十三年までの十年間で約一万七千トンのウランの手当ては済んでおります。これで当面四十八年までの需要はまかない得るという見込みでございます。しかし、四十九年以降必要量ということになりますると、これは問題があるのでございまして、目下電力業界におきましてはカナダとアメリカにおきまして、現地の企業と共同探鉱を実行いたしておるような次第でございます。  いま、ウラン鉱につきまして、銅とかあるいは石油のように、政府が特に力点を置いていないじゃないかという御指摘でございますが、私どもといたしましては、金属鉱物探鉱促進事業団の対象鉱種の中にウラン鉱を入れたらどうかと、いま御指摘のような問題について検討中でございまして、近いうちに結論を出したいと考えております。
  161. 石川次夫

    石川委員 日本の需要量はまだ精密には予測はできませんけれども、大体昭和五十五年になりますと、アメリカはもう不可能として、南アフリカ、カナダの生産量の三分の一くらい必要だという計算が出てまいります。とてもそれほどのものを向こうからもらえるとは思えませんので、どうしても日本のただ一つのエネルギーになるであろうといわれているウランは、自分で確保しなければならぬということになりますと、いまお話がありましたように、日米共同——カーマギー社と共同でカナダのエリオットレーク地区あたりでかなり有望な鉱区が出てきておるということは聞いておりますけれども、この金属鉱物探鉱促進事業団、これはいままでは銅、鉛、亜鉛が主体ですね、ほとんどウランなんか対象になっておらぬわけです。こういう体制からウランだけは独立をしてでも、是が非でも自力でもって確保するという体制をつくらなければ、とんだことになるということをいまのうちから考えておいて、対処してもらいたいということを申し上げまして、いろいろ質問事項がたくさん残って、まことに残念でありますけれども保利長官がお見えになっておりますので、一言だけ先ほど来の回答をいただきたいのです。  それは原子力基本法に基づくところのあの精神は、日本は一カウントたりといえども軍事目的のためには使わいなのだというようなき然たる精神が貫かれておる。そういう経過の中で原子力基本法が生まれ、そうして附帯決議を尊重するという結論が出ておりますので、持ち込むという場合には国会の意見を十分尊重する。提案者の社会党と自民党、当時の二党の意見というものを、二党において調整をするという約束になっております。この精神は尊重するという回答をいただいておりますので、念のために官房長官から伺いたいと思います。
  162. 保利茂

    保利国務大臣 政府といたしましても、石川さんの御所論のように、原子力第二条は厳格に運用していくべきである、かように思います。
  163. 石川次夫

    石川委員 これで終わります。
  164. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて石川君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は午後一時三十分より再開し、森本靖君、河野正君の一般質疑を行ないます。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  165. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。森本靖君。
  166. 森本靖

    森本委員 昨年のこの予算委員会の総括質問で、建設大臣並びに総理に私のほうから質問をいたしました例の本四架橋の問題について、私はまず冒頭に質問をしておきたいと思います。  この問題についてその後どういうふうになっておるかということをお聞きしたいわけでありますけれども、その前にこの間与党の田中幹事長が、かなり具体的にこれに対する構想を新聞記者会見において発表いたしております。この発表と政府との間に連絡があるのかどうか、あるいはまた、これが何らかの関連において打ち合わせが行なわれて発表せられたものかどうか、あるいはまた、田中幹事長個人の考え方かどうか、これは非常に重大な問題でありますのでお尋ねをしたい、こういうふうに考えるわけであります。  この田中幹事長の談話を要約いたしてみますと、三ルートのうち三つともつける、なかなか景気のいい話をいたしておりますが、その中で例の明石——鳴門、それから児島——坂出ルートについては鉄道併設橋をつける、さらにこのうちの一本は新幹線を走らす、それからもう一本のほうについては道路橋で行なう、さらに、これをつける場合におけるその責任、工事あるいはそういうものを分担するものについては特殊的な法人をつくって行なう、その場合に民間資本も導入して行なうというようなことを田中幹事長は発表いたしておるわけでありますが、この田中幹事長の発表については、政府と事前に何らかの連絡があって発表せられたものかどうか、これをひとつ、まず、昨年私が建設大臣として質問をいたしました保利官房長官にお聞きをしたいと思います。
  167. 保利茂

    保利国務大臣 田中幹事長は、国土利用については特別の研究も関心も払っておられますからそういうことがあったろうかと思いますが、私は、とぼけるわけじゃありませんけれども、迂遠にして実は承知していないのであります。したがって、私に関する限りは、何ら御相談に応じたこともございませんし、連絡をいたしたこともございません。
  168. 森本靖

    森本委員 それでは、こういう問題について相談があったのかどうか、建設大臣にお聞きをしたいと思います。
  169. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  この問題について幹事長が陳情団に対してお答えになったということを、後ほどほかを通じて聞いておりますが、直接幹事長にその意見を聞いたり、あるいはその報告を受けたことはないようなわけでございます。
  170. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、これは幹事長個人の考え方を発表したものであるというふうに解釈をするわけでありますが、一応、少なくとも自由民主党の幹事長という地位にある人がこういうことを発表するということについては、正規の話し合いでなくても、何らかの政府間との連絡がなしにこういうような発表を行なうということについては、私は、政党の、しかも与党の幹事長としては非常に不用意な発言であるというふうに考えますが、何らかの連絡はなかったのですか。
  171. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いま申し上げましたように、何らの連絡はございませんでしたが、聞き及んでいるところによりますと、田中幹事長は、個人の立場で答える、自分の考えを述べるということを陳情団に申されたと私は聞いております。
  172. 森本靖

    森本委員 個人の立場で言われましても、それが自由民主党という与党の幹事長である限りは、その発言の重みはおのずから相当なものがあるわけであります。こういう点については、私は仲がいいか悪いか知りませんが、少なくとも官房長官あたりとは、よく打ち合わせをして行なうのがほんとうであろうというふうに考えますけれども、いずれにいたしましても、こういう問題についてそういう発表をいたしておりますので、それでは具体的にこの発表について、大体、主管大臣は建設大臣でありますので、建設大臣としては、この発表に対してどういう考え方を持っておられますか。この点について建設大臣お答えを願いたいと思うわけであります。
  173. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 田中幹事長個人の意見としてお述べになりましたあの内容につきましては、いまいわゆる経済、技術等の大事な調査段階でもございますので、建設大臣という立場から見解をいま申し上げることは、ひとつ御遠慮申し上げたいと思いますので、その点御了承、お察しを願いたい、こう思います。
  174. 森本靖

    森本委員 建設大臣としてはそういう点については遠慮したい。ところが、与党の幹事長は、これは選挙対策もあろうと思いますけれども、堂々と一つのルールを発表しておる。それを政府が全然知らぬということになりますと、それじゃこれはかなり選挙目当ての発表であるというように解釈ができるわけであります。しかしながら、そういう選挙目当ての問題とかなんとかを離れまして、この本四架橋という問題については、昨年総理お答えになっておりますように、これは世紀の大きな事業であります。そうでありますから、こういう問題については、もし発表するにいたしましても、そう簡単に個人的な見解が発表できるものではございません。そういう点を、一たび自由民主党の幹事長ともあろう人がこういうことを発表したということについては、やはり建設大臣なりあるいは鉄道建設公団あるいは道路公団、そういう方面もこれに対するところの見解は持っておるはずであります。それが全然ないということになりますると、それじゃ全くでたらめを自民党の幹事長は発表したということになりましても、これは言い過ぎではない、こういうことになるわけでありまして、もうはっきり言っておるわけでありますから、三ルートのうち一ルートは道路橋にする、あとの二ルートについては鉄道併設橋にする、さらにそのうちの一本は新幹線を走らす、それからこれをつくる母体については民間資本も導入するところの特殊法人をつくる、ここまで一つの図柄を明らかにしておるわけでありますので、これに対するところの政府見解というものが一応あってしかるべきである。それほど与党と政府との間が連絡なしに仕事がなされるということは私はない、こういうように考えるわけでありまして、その点再度重ねてひとつお聞きをしたいと思います。
  175. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 本四架橋の問題は、私から申し上げるまでもございません。わが国土開発、わが国土建設の未来像並びに西日本今後の発展に重大な影響を持つ問題でもあり、また、御承知のとおりに、地震あるいは台風、潮の流れ等の自然条件というものが、世界に類のないほどまでの条件であるのでありますとともに、その長大橋のことなども考えてみますときに、膨大な国費を投入しなければならぬ、こういうような立場に立っておるような次第でございます。御承知のとおりに、土木学会においては、昭和三十五年から約五年間にわたりまして三百数十回の会合を持たれまして、専門的な立場からこれに対する検討を加え、そして昭和四十二年の五月にこれの見解を答申されましたので、これを受けました建設省並びに鉄建公団等におきましては、その資料を中心にいたしまして、鋭意調査等をいたしまして、御案内のごとく四十三年の二月にその工法あるいは工期、工費等の発表をいたしておるような次第であります。したがいまして、その基礎に立ちまして、目下経済上の効果、技術上の問題はもちろんのこと、船舶の運航の問題等を含めましての総合調査並びに総合計画を立案いたしておるような次第であります。
  176. 森本靖

    森本委員 いまの答弁は、一年前に現在の官房長官保利さんが建設大臣として答弁をしたと同じ答弁であります。それでは何ら進展がない、こういうことになるわけでありますが、一体、今後この本四架橋の問題についてはどういうふうな順序を追ってこれが具体的な計画の方向に入っていかれるのか、その段階別の順序をひとつお聞きをしたいと思うわけであります。
  177. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御承知のとおりに、この運び方と申しますか、どのルートを考えましても、工期が十年から十五年を必要といたしておるような次第であります。したがいまして、その立場に立って、長期的な経済見通しの上に立って、経済効果等も考えなければならぬという基礎に立っておるのは御了承のとおりでございます。したがいまして、経済調査の中において最も重点を置いておりますところは、いわゆる西日本にもたらすところの生産その他所得の向上の問題、あるいは御案内のごとく貨物、旅客等の輸送の量の問題、あるいは有料道路の採算の問題、あるいは自動車の道路の使用料の問題、あるいは輸送構造の変化等の問題を中心に置いて経済調査をいま進めておるようなわけでございますが、段階的に申し上げますと、建設省といたしましては、建設省関係の経済調査は一応終了いたしました。つい先日でございますが、終了いたしまして、その試算の上に立っていま建設省は関係当局との間に最終的な意見の調整検討を行なっておるというのが一つの段階でございます。  そういたしまして、建設省としてのそうした結論が出ました場合においては、御案内のごとく運航上の問題等もございますので、運輸省あるいは鉄道公団等にもいまいろいろの立場から経済調査を行なっていただいておりますので、これを持ち寄って、そうしてお互いのその持ち寄った案を関係当局、すなわち経済企画庁あるいは大蔵省その他とも連絡、意見の調整をとりながら、持ち寄ったその試案に対する最終的結論を、大体の考えといたしましては、私といたしましては五月ごろまでにその両省の意見調整の結論を出してまいりたい、こういうような気持ちでおる次第であります。
  178. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、これはいま経済効果については一応の試算が出ておる。しかしながら、さらに運輸省その他との間における調整をとって、そうして五月ごろにその具体的な案をまとめたい、こういうことでありますが、そうなってまいりますと、五月ごろに政府としては閣議において正式に決定をする、こういうことになるわけですか。
  179. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  その作業が終わりましたら、やはり鉄道建設審議会あるいは道路審議会等の意見も聴取いたしたいと考えております。それに大体六月一ぱいかかるのじゃないか。この両審議会の意見を聴取いたしました時点において、政府にお願いをいたしまして、私の一応の考え方といたしましては、閣僚協議会の場を持っていただきたい、こういう気持ちを持っておるような次第であります。
  180. 森本靖

    森本委員 閣僚協議会の場を持ちたいと、こういうことでありますが、昨年は、これははっきりと、最終的には閣議で決定をいたしますというふうに言われておるわけでありまして、そういう点ではどうなるわけですか。
  181. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  さっき申し上げましたように、そうした時点の上に立って閣僚協議会をお願いいたしまして、私の目途といたしましては、七月一ぱいでこの問題に対する最終的結論を政府としては出したい、こういう予定であることを申し上げておきたいと思います。
  182. 森本靖

    森本委員 これ以上この問題について質問をいたしましても、建設大臣としてはなかなか答えにくいと思いますが、ただ、その経済効果についての一応の試算が出ておると、こういうことでありますけれども、これは発表いたしますか。
  183. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いまの一応の試案ができましたことは事実であり、また局内で調整を急いでおることも事実でございますが、これを中間的に発表いたしますことは、今後の運びに支障を来たすおそれもございますので、これは伏せておきたいということをひとつお察し願いたいと思います。
  184. 森本靖

    森本委員 建設大臣からそういう回答がありましたけれども、さらに私は鉄道問題がからんでおりますので運輸大臣から一応お聞きしたいと思いますけれども、運輸省としての事務的な手続がどういうような形において進められておるか、これを具体的に明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。
  185. 村山松雄

    村山(達)政府委員 お答えいたします。  御案内のとおり、われわれのほうは、鉄道と道路の併用橋につきまして二ルートについていま検討を進めているわけでございます。須磨−鳴門のいわゆるAルート、宇野−高松付近のBルート、これについて調査を進めているわけでございます。いままで各種の調査を行なってまいりましたが、現在やっておりますのは、先ほど建設大臣からお答えしたように、経済調査と船舶の航行調査をやっております。ただ、依頼先が建設公団から建設省とは別のほうにまた依頼しておりますので、私のほうの経済調査、航行調査はまだ出て参りません。いずれこれが参りますと、すでに工費について、あるいは工期につきましては完了いたしておりますので、関係の建設省その他の各省と協議いたしまして、先ほど建設大臣が申しましたとおり、七月末ごろには何とか最終決定に持ってまいりたい、かように考えている段階でございます。
  186. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、この鉄道併設橋については二つにしたいということを田中幹事長が発表いたしておりますが、そのうちの一つは新幹線を走らせたい、こう言っておるわけでありまするけれども、これは運輸省としてはどうお考えになっておられますか。
  187. 村山松雄

    村山(達)政府委員 この問題は、今後の日本の国土の総合開発と密接に関係すると思いますので、その方面の作業との関連を兼ねながら今後具体的に決定することになると思いますが、現在行なっておる調査におきましては、新幹線を走らせても差しつかえないような設計も準備している次第でございます。
  188. 森本靖

    森本委員 それから、これに対するところのいわゆる母体といいますか、これをつくる母体は、民間資本も含めての特殊法人をつくって行ないたいということを具体的に発表いたしておるわけでありますが、これに対して大蔵大臣から財政的見地からひとつお答えを願いたいと思うわけであります。
  189. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだこれはどういう採択をするか、それもきまってない段階でありますので、どういう機構でということはきまっておりません。したがって財源のごときはまだまだ先の話に相なる次第でございます。
  190. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、田中幹事長と大蔵大臣とは、この問題については全然話し合いはしておらぬ、こういうことですか。そうすると、田中幹事長は、財政的にも自分で全部やるというつもりでそういうことを発表したかどうか知りませんが、それから、あなたと仲がいいかどうか、それも知りませんけれども、いずれにいたしましても、こういう具体的な問題を発表いたしておるわけでありまするので、政府としては何らか、正式に話し合いがなくても、あるいは何らかの機会に、このくらいのことでどうだ、うん、そのくらいならというふうな話があったかどうか。さもこれは自信があるような発表をいたしておるわけでありますが、正規に聞くと、大蔵大臣は全然検討しておらぬ、そんなものは見たことも聞いたこともない、こういうようなことでありますが、そういうことですか。
  191. 福田赳夫

    福田国務大臣 自由民主党の田中幹事長とは万事緊密に連絡をとってやっておりまするが、このことにつきまして話し合ったことはありません。
  192. 森本靖

    森本委員 その他のことについては、緊密に連絡をとっておるけれども、このことだけは緊密に連絡をとっておらぬというようなことは全く漫画でありまして、これは一応お答えにはならぬわけでありますけれども、こういうことで長い時間を費やしてもどうかと思いますので、ひとつ最後に官房長官にはっきり申し上げておきたいと思います。     —————————————  これは、昨年も私がここで質問をいたしまして、そして早急にやるということになったわけでありまして、特に保利建設大臣はそのときに、年内には早急に結論をつけたい、こういう答弁をはっきりしておるわけであります。総理も、その方向に従って努力をする、こう言われておるわけであります。それが、先ほどの回答では、七月一ぱいということで坪川建設大臣が延ばしたわけであります。しかし、いずれにいたしましても、これを早期にやるということについては、やらなければならぬ問題でありますので、それからさらに、こういうふうに与党の幹事長が、大きな問題をさばっと発表しておるわけですね。こういうような発表のしかたが一体いいのか悪いのか、あるいは解散があるのかどうか知りませんけれども、そういうものを目標にして、政府と全然相談をせずに発表してしまったというふうに言われても、これはしかたがない問題だと思います。だから、そういう点については、大蔵大臣は幹事長とは緊密に連絡をしておると言いまするけれども、全部合わせまして五千億円をこえるような問題について、全然連絡をせず幹事長が発表するということは、これは無責任きわまるやり方だと私は思うのであります。そういう点については、官房長官としても、ひとつ与党、さらに政府間における連絡というものをいま少しはっきりしてもらいたい。そうして責任ある体制をとってもらいたい。それは党のことだからわしは知らぬとは言えぬと思います。そういう点について、ひとつ最終的に、誠意ある答弁官房長官から伺っておきたい、こう思うわけであります。
  193. 保利茂

    保利国務大臣 昨年の当委員会でお答えいたしておりましたのは、ただいま森木さん御指摘のとおり、何とか年内ぐらいにはということを申し上げておったのですけれども、だんだんの何で、なかなかむずかしい大きな問題でございますから、事務当局の調査も幾らかずれてきておるようでございますけれども、何さまたいへんな大事業でございます。政府といたしましても、できるだけひとつすみやかに着手できるように努力していきたいと思います。  なおまた、政府の責任に帰すべきことにつきましては、与党との連絡、これは私の責任でございましょうし、気をつけてまいりますから御了承いただきたいと思います。
  194. 森本靖

    森本委員 それでは私は次の問題に移りたいと思います。  私は現行の放送体系について若干お聞きしておきたいと思いますが、その前に、毎国会毎国会、電波法と放送法の根本的な改正案を出すということを言いながら、いまだに出てきておらぬわけであります。しかもいまの放送体系というものが、そういう改正を経ずして、抜本的ないまのラジオ、テレビのあり方というものが、行政的な方向において変更せられておるのが現状になっておるわけでありまするが、そういう点からいたしまして、一体この電波法と放送法の改正については、政府は今次国会にこれを出すつもりがあるのかどうか、この点をまずお聞きしておきたいと思うわけであります。
  195. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 電波法と放送法はできるだけ早く出したいということで目下作業を続けております。しかし、今国会に出せるかどうか、はっきりした約束はいたしかねるような現状でございます。
  196. 森本靖

    森本委員 検討はしておるけれども、この国会には出せない、こういうことですか。
  197. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 出せないという結論ではございませんが、出せるように努力をしておりますが、まだはっきりしたことは申し上げかねる段階でございます。
  198. 森本靖

    森本委員 はっきりしたことは申し上げかねるということは、大体与党の内部における調整が手間どって出せないということになろうかと私は思うわけであります。それにいたしましても、いまテレビのあり方が、いわゆるVからUに変換をせられる。さらにラジオの放送体系が中波放送からFMに、さらに中波放送が大電力の方向に、というように根本的に変わっていきつつあるわけであります。こういうような状況の中において、電波法と放送法の答申が出てもう数年になっておるわけであります。だから、行政的な手腕においてこれが行なわれるということになりますると、非常にこれはいろいろな弊害が出てくるわけであります。それぞれのなった大臣によってそのつど方向が変わってくるということも、これはあり得るわけでありまするが、そういう点について一体——ちょっと大臣にお聞きしますが、この臨時放送法の審議会が答申案を出してからいままで何年になりますか。
  199. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 諮問をいたしましたのが三十七年でございまして、答申が出ましたのがたしか三十九年であると考えております。
  200. 森本靖

    森本委員 答申が出てからもう四年以上たっておるわけでありますが、それでまだ検討中だ。検討検討中と言って、根本的な法律の改正については検討しておいて、一方でどんどん行政的なやり方においてラジオからテレビのあり方というものを変えていく、こういうやり方がはたしていいのか悪いのかという問題については、私は政府としても十分に考えなければならぬと思います。いわゆる行政的な力によってこういうように根本的に放送体系のあり方を変えていくと同時に、政府がそういう方面に対しての陰の圧力を加えて、こういうふうな放送体系というものに何らかの干渉を——表では絶対やっておらぬようなかっこうになっておりまするけれども、裏で何らかの干渉をやっておるのではないかと邪推をせざるを得ないような、今日根本的な改革が行なわれておるわけであります。そういう点について、大臣としてはやはり相当の責任を持ってもらいたい。たとえば、今回あなたが大臣になられますと同時に、いままで小林郵政大臣が進めてまいりました放送体系というものはどうなるのか、そういう点については、大臣がかわるたびにさっぱりわからぬ、こういうことになるわけであります。  そういう点を考えてみますると、この内容についても非常に私は不可思議な点があろうと思うのであります。その点を、まず私はラジオの放送局のあり方から入ってまいりたいと考えまするが、政府がいまFM放送のチャンネルプランを発表いたしておりまするけれども、その中における具体的なやり方については、いまの中波の県域放送というものをFMに切りかえていく、そうして、それぞれ中波については広域圏の高電力においてこれを補っていく、さらに各県域についてはNHK、民放二局、三局のFMを置いていくというふうな考え方を出しておるわけであります。ところが、それでは一体肝心の中波放送というものをどういうふうに、どこにどのくらい置いていくのか、そういう点についての内容はちっとも明らかでございません。ところが、そういうラジオの放送体系全般について明らかにせずにおいて、そうして東京、大阪あるいは名古屋という方面には、FMのいわゆるラジオ放送局をいまにも免許するというふうな意向がそれぞれ談話で発表せられておる。こういうような関係になっておるわけでありまするが、このラジオ放送の今後のあり方というものについては、一体大臣としてはどうお考えになっておるのか。小林前郵政大臣考え方をそのまま踏襲をせられていくのかどうか、その点についてのお考えをお示しを願いたいと思うのであります。
  201. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 最初に、放送法の問題につきましてちょっと補足さしていただきたいのでございますが、これはやはり放送全体の憲法ともいうべきものでございますので、私もぜひ急いでつくらなければならぬということを痛感いたしております。その方向に向かって関係者を督励しておることを御了承いただきたいと思います。  それから、第二に、音声放送全体のあり方についてどうか、こういうお話でございますが、これは先般郵政省から発表いたしましたとおりでございまして、先ほど森本委員が御指摘になりましたことを大体の内容としておるのでございます。
  202. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、政府が発表いたしておりまする超短波放送用周波数の割り当て計画については、私がいま言ったとおりの方向をここで発表しておるわけでありますけれども、ところがこのチャンネルプランの中には、FM放送については確かに全国的なものが一応出ておるわけでありますけれども、それではその一番大切な現在の中波ラジオ放送局というものをどこにどのくらいの電力で置くのか、日本全国を一体どのくらいにこれを分割をするのか。さらに、東京と大阪、名古屋というふうな大都市におきまするところのいわゆる中波放送というものとFM放送との関係を一体どうするのか。たとえばいなかの県でありましたならば、これは一応のルールというものは、この中では輪郭になってくるわけであります。それは、この政府の発表では、たとえばある小さな県であるとするならば、音声放送については、これはFMの民放局が二つ、NHKが一局。しかし、現在の中波ラジオ放送についての県域放送はやめる。それが東北六県全部になるのか、あるいは東北三県になるかは、それは別として、いずれにしても中波放送については、これを広域圏の高電力にする、こういうことの輪郭は大体わかるわけでありますけれども、それでは一体具体的に東京のこの中波ラジオ放送というものをどうするのかという問題は、ちっとも明らかになっておらぬわけです。にもかかわらず、別途に東京にさらにFM放送のラジオ放送局というものを許可する、こういうことになりますと、全体的なアウトラインというものがちっとも明確でない。ちょびちょび免許をやっていく。しかもその免許が、内閣が更迭するたびに変わってくるということであるとするならば、これは放送体系としては非常に迷惑千万であり、国民としても迷惑であります。そういう点のルールというものを、はっきりきめるべきではないか。だから、この超短波放送用の周波数の割り当て計画というものを出した以上は、中波の周波数についてもこうなります、中波のラジオ放送局についてもこうなります。たとえば、東京における中波のラジオ放送局は現在民放がこれこれあるけれども、これを二つなら二つにして、そうして関東なら関東、あるいは東海にまで及ぶところの中波のラジオ放送にする。そうして出力は三百なら三百にする。そうしてその上に東京にFM放送がNHKを加え、民放が二つで、三つできます。こういうことであるとするならば、わかるわけであります。さらに、関東の各県においてもFM放送がそれぞれ行なわれるわけでありますから、そういう具体的な全体的な計画を立てて免許をしていくべきことは、これは大体のあり方であります。私がいま言ったこういう考え方が間違っておるかどうか、ひとつ郵政大臣からお聞かせを願いたいと思うのであります。
  203. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中波の問題につきましては、御承知のように、最近外国からの混信が非常に多うございまして、困っておるわけなんです。そこで大電力の放送にしたい、こういうことでもちまして、NHK第一、第二放送とも、いま大電力にすべく作業を進めております。それからさらにあわせまして、民間放送、民放につきましても、これまた大電力にすべくいろいろ検討を続けておるところでございます。  なお、超短波放送、すなわちFM放送のあり方につきましては、先般逓信委員会におきまして、森本委員からも基本的な考え方をはっきりすべきである、こういう御指摘がございましたので、先般基本的な態度を明らかにしたような次第でございます。
  204. 森本靖

    森本委員 基本的な態度というのは、私がいま言ったことを発表しておるだけであって、具体的にそれでは一体東京のラジオ放送局というものをどうするかという計画が、出ておらぬわけであります。にもかかわらず、もう一つFM放送局を免許するということについては、今後の放送体系のあり方というものを誤るものではないか。中波放送を広域圏の高電力にするというならば、東京における現在のたとえば中波放送のラジオ局というものについては、これをどの程度広域圏の高電力にして、そして何局程度にして、その上に東京におけるFM放送局については、民放が二局でNHKが一局である、こういう形で発表していき、そしてそういう考え方から逐次免許していくというのが本来のあり方ではないか、こういうことを聞いておるわけであります。
  205. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 重ねての御質問でございますので、もう少し超短波放送につきましての考え方を具体的に申し上げますと、NHKにつきましては、各府県ごとに一局ずつこれを許可するということで、この三月一日には全国あまねく許可する予定でございます。それから民間放送につきましては、一局は現在の中波をFMにかえる。それから同時にあわせてもう一局FM放送の特質の生かされるような、つまり音楽放送、これを主体とした放送局を将来は希望者が出れば各府県に一局ずつ置こう。繰り返して申しますと、NHKが一局、それから中波からの転換のものが一局、それから音楽放送を主体にするものが一局、大体こういう考え方を持っておるわけでございます。  それから現在の中波放送は、先ほど申し上げましたように全部大電力にかえる、こういう考え方でございますので、したがって、現在の中波放送を営む民放は、一部は大電力のものになり、一部はFM放送に転換をしていく、こういうことになるわけでございます。
  206. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、一部は現在の中波放送についてはFM放送に切りかえられる、こういう話でありますけれども、現在の県域放送を行なっておるものについてはすべてFM放送に切りかえていく、こういうことになるのじゃないですか。   〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕
  207. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在県域放送を行なっておるものの一部をFM放送に切りかえまして、残りを中波の大電力放送に切りかえていく、こういう構想でございます。
  208. 森本靖

    森本委員 現在の県域放送を要するに中波放送に切りかえる、残りをFM放送にする、こういうことですか。
  209. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そういうことでございます。
  210. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、具体的な内容については、たとえば東京と大阪と名古屋、こういう方面を除いてはいま言ったような形で終わるわけでありますけれども、具体的に東京なんかは一体どういうかっこうにこれがなるわけですか。
  211. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 具体的にどうするかということについては、目下作業中でございます。
  212. 森本靖

    森本委員 東京あるいはそういう方面については作業中である、こういうことでありますが、そういたしますと、さらに地方におきまする中波放送の大電力の広域圏放送というものにおけるその場所についても、あるいはその出力等についても、現在検討中である、こういうことですか。
  213. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そのとおりでございますが、森本委員の言われますことは、たぶんこういうことではないかと思うのです。つまり音楽放送を主にするFM放送を許可する基本方針を発表したが、これは中波その他の問題がまだ懸案のものが若干残っておるから、それとの関係がどうなんだ、こういう点についての御疑問があるのではないか、こう思います。しかし、音楽放送を主にするFM放送というものは、とりあえず大都市四カ所には昨年の秋すでにチャンネルプランが決定いたしましたので、近く許可する所存でございます。それから他の府県におきましては、申請あり次第内容を検討いたしまして許可する所存でございまして、この問題は、先ほど申し上げましたように、各府県に大体原則的に三つ置く予定でございますから、別に中波の問題が懸案でございましても差しつかえないのではないかと、かように考えております。
  214. 森本靖

    森本委員 差しつかえがないと考えておるということでありますけれども、ラジオ放送というもののあり方については、FM放送を県域放送にして、中波放送を広域圏のいわゆる高電力にする、こういうことであります。そうであるとするならば、FMも中波も同時に一つの計画を立てるのが当然の話であります。そういう計画があるにもかかわらず、一方のFM放送の音楽放送局というものだけを急いでいかなければならぬという理由が、私にはわからぬわけであります。現実にそういう点の免許を急がなくても、NHKがすでにFM放送の音声放送についてはやっておるわけであります。だから、私は、FM放送局を許可するなとは言っておりません。するならするで、するらしく、音声放送の全体的なアウトラインというものを明らかにして、そうして一つ一つ免許をおろしていくのが妥当なやり方ではないか。たとえば東京の場合が一番困るでしょう。それなら東京の場合、現在あるところの民放局で中波放送を持っておるものがFM放送にかわるということになりましても、それは現実に足らぬわけであります。そういう場合に一体どうするかということの内容が明らかでないと、放送界にも大きな混乱が起きる、こういうことを私は言っておるわけであります。だから、やるのならば全体的な計画というものを明らかにして、その一端としてこれをやっていってもらいたい。そうでないと、内閣がかわるたびに、大臣がかわるたびに、こういう電波放送行政というものが変えられたのでは、たまったものではない。だから、そういうところの基本的な計画というものをきめたならば、十カ年計画、五カ年計画できめたとするならば、その方向に従って、内閣がかわろうがかわるまいが、やっていくということでなければ、これは放送界は混乱をするわけであります。だから、なぜいまFM放送の音楽放送だけを許可するということをやらなければならぬかということが、私にはわからぬわけであります。やるのならば、全体の日本の音声放送というものを明らかにしてもらいたい。そうしてその一端として一つ一つ免許をしていくということになるとするならば、ある程度わかる。それが何かつまみ食いをするみたいな形において免許をしていくということになりますと、おかしげなかっこうになる、こういうことを私は言っておるわけであります。  だから、根本的に、いまの中波放送の県域放送というものをFMに切りかえていく、広域圏の高電力にするということについては、私は反対であるという意見を述べておるわけではありません。私の言っておることは、筋が一応通っておるわけであります。大臣の言っていることが、筋が通らぬわけであります。だから、私が言っておるように、全体的な計画というものを明らかにして、一つ一つその計画に従って免許していくということになるとするならば、話はわかるわけであります。ところが、その具体的な東京における音声放送の内容というものを明らかにせずにおいて、その上にさらにFM放送の音楽放送局というものを許可しなければならぬという理由が、私にはわからぬわけであります。その点を聞いておるわけであります。
  215. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かにいま御指摘のような問題もないことはございませんが、先ほど申し上げましたように、中波放送は将来こうするのだ、それからFM放送はNHK、民放含めて、将来希望があれば各府県に三つずつ置くのだ、そういう基本方針を明らかにいたしまして、そしてとりあえず非常に希望の多い四地区だけは、すでに昨年の十一月にチャンネルプランも決定したことであるから、ここから免許をしていこう、そして将来他の四十二都道府県で申請が出れば、順次これを検討した上でこれまた許可していとう、こういうことを考えておるわけでございます。
  216. 森本靖

    森本委員 だから、その点については、各地方における問題については、一応それは了とします。しかし、地方においても、その中波放送の広域圏の高電力の放送局というものを一体それではどこに置くかということが発表されてない。そのことによって大きな影響を来たす。その問題も発表すべきである。さらに、東京については具体的にどうするかということを回答を与えてやらないと、これは東京のラジオ放送は今後混乱をしますよ。  いまあなたがおっしゃったように、それでは東京にNHKと民放二局のFMということになるとするならば、県域放送がそういう形になるとするならば、現在の中波放送というものが余ってくることになる。そうすると、その現在の残っておる中波ラジオ放送局というものは、一体どうなるかということについて疑問が起きる。だから、東京の音声のラジオ放送というものはこういうようにするのだということを、アウトラインを明らかにしておいて、音楽放送局なら音楽放送局を一つ許可するということなら話はわかりますけれども、何にも東京におけるアウトラインというものは明らかにせずにおいて、もう一ついまより別に放送局を免許するということは、おかしげなかっこうになるのではないかということを言っておるわけであります。
  217. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これはいま直ちにこれをやると、当然混乱が起こると思います。そこで、四十五年度の切りかえ時を目標にいたしましてやっていきたい。しかし、切りかえ時が来たからといって直ちにこれをやるのではなくして、若干の経過措置を考えまして、そして混乱の起こらないように善処をしてまいりたいと考えております。
  218. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、このFM放送のいわゆる新しい音声局を許可するということについても、四十五年以降になるわけですか。
  219. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中波の問題につきましては、これは先ほど申し上げましたように、東京は当然大電力局になると思います。それから一つはFMにいくと思うのです。したがって、現在の放送をしておられる放送業者の間に、いろいろ調整をしていかなければならぬ問題が当然起こってくると思います。しかし、これはこれといたしまして、各府県に一つずつ民間放送、特に音楽放送を中心にした民間放送を置くというこの基本方針は、すでに決定いたしておりますので、この問題と切り離してやってまいりましても混乱は起こらない、かよに確信をいたしております。
  220. 森本靖

    森本委員 確信をあなたが何ぼ抱いても、これは混乱することは間違いないわけです。現在のやっておる中波放送局というものは、一体東京ではどうなるかということがわからずして、新しいいわゆる音育放送局というものが許可せられるということになると、疑心暗鬼になるのは当然であります。だから、ここであなたと幾ら水かけ論争をやってもこれはつまりませんので、これ以上は別の機会に譲りますけれども、私が言わんとするのは、こういう免許を行なう際には、すべての内容を明らかにして、そうして一つ一つその計画に従って公明な、明朗な免許のやり方をやっていってもらいたい、そういうことを言いたいのであります。それが内容を明らかにせずにおいて、一つ一つつまみ食い的な免許のやり方というようなやり方はやめてもらいたい、これが私の言わんとするところでありますけれども、これ以上やりましても、これは水かけ論争になりますので、次に移ります。  さらに、今回のテレビの問題でありますけれども、これがVからUに移行していくということを郵政省はしばしば発表いたしておりますし、またUの局についてもかなり大量に免許をいたしております。そういうことになりますと、今後受像機がオールチャンネル、あるいはまたコンバーターの普及という点について、当然政府も配慮していかなければならないということになるわけでありまするが、そういう場合に、一番聴視者の多い東京、大阪、こういうところについては、これは新しく——Uの放送局というものはいまのところありません。そういう点からいきまして、この東京、大阪等における将来のUの放送について、一体どう考えておられるのか。たとえば私に言わせますならば、Uの受像機を普及させるとするならば、何といっても東京、大阪というものが一番視聴者が多いわけでありますから、そういう点ではこれはNHKという公共放送があるわけでありますから、そういう点を通じてあるいは東京、大阪等に許すなら許すという方向をとっていかなければ、とてもじゃないが、東京、大阪等におけるこのUの普及というものについてはできないだろう、こういうように私は考えておるわけでございまするが、その点についてどうお考えですか。
  221. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 VからUへ移行する問題につきましては、基本方針は森本委員御指摘のとおりでございます。  そこで、幸い日本では、アメリカとやや事情が異なりまして、非常に順調にいま受像機その他が移行しつつあると考えます。たとえばコンバーターの生産なんかをとってみますと、昨年の四月ごろはたしか六万台ぐらいだったと思うのですが、年末にはすでに四十数万台に達する、こういう状態で、しかも爆発的にふえつつある。四十万台の生産をなおこえてたくさん需要がある、こういう状態でございますし、それからオールチャンネルの受像機も、たしか昨年の十月ごろは四万台であったものが、年末には十数万台に達する、こういうふうに、アメリカとやや事情を異にいたしまして、非常に順調に進んでおると思うのです。  そこで、今度四十四年度のNHKの予算、事業計画は、これから御審議をいただくわけでございますが、この事業計画におきましても、やはりNHKは東京と大阪でUの放送ができる設備を明年度じゅに完成をしたい、こういうことで進めさしております。  なお、もう一波のUをどうするのか、こういう御指摘でございますが、これにつきましては目下検討中でございます。
  222. 森本靖

    森本委員 この東京、大阪の問題については、一応それで明らかになりました。  ここで角度を変えまして私が一つ聞いておきたいと思いますことは、例の東京12チャンネルの問題であります。これについて、一応郵政省が敗訴というふうなかっこうになっておるわけでありますが、これに対していま郵政省としてはどうお考えになっておられますか。
  223. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ただいま御指摘のように、郵政省が最高裁で敗訴になったということは事実でございます。そこで、どういうことになったかといいますと、12チャンネルの免許に対して、一部の者がこの免許は不当である、こういうことを提訴したわけです。それを却下いたしましたところ、郵政省は敗訴になった、こういういきさつでございますので、現在、もとの時点に返りまして、はたして妥当であったかどうかというところから検討を始めていかなければならぬ、かように考えております。
  224. 森本靖

    森本委員 検討を加えていかなければならぬということになりますけれども、そうなりますと、この12チャンネルのあり方そのものについても根本的な検討を加えていかなければならぬ、こういう意味ですか。
  225. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 12チャンネルの基本的な取り扱いにつきましては、すでに政府の基本方針はかねて前から決定しております。そこで、根本的に検討を加えるということは、結局、12チャンネルに対する政府の許可がはたして妥当であったかどうか、他に方法があったのではないか、こういうことについて検討するということでございます。
  226. 森本靖

    森本委員 いま検討中であるということでありますから、その問題についてはこれでおきます。  私は、この12チャンネルの放送の内容について、とやかく言おうとは思いません。思いませんけれども、およそこの放送というものに携わる者の考え方としては、やはり民放であれあるいは公共放送であれ、放送が茶の間にまで飛び込んでいくという考え方からするならば、かなり慎重な配慮をしながら自主的にこの放送番組の内容というものについては考えていかなければならぬわけであります。  ところがこの12チャンネルについては、これはいわゆる科学技術振興財団でありますか、科学技術教育番組を主として行なう、こういうことになっておるわけでありまするけれども、現実に、たとえば女子プロレスなんかをやっておるわけであります。こういうものが一体科学技術教育にどういう関係があるのか、私もちょっとふしぎにたえないわけであります。かりにこれが娯楽テレビであったにいたしましても、私は、ある程度テレビ放送というものについては、内容を考えていかなければならぬというように考えるわけであります。特に懸賞金のつけ方その他についても、やはりテレビ放送というものについては、ある程度自主的な規律というものがほしい。これを法律において縛るとかなんとかいうことは、私は絶対にやってはならぬと思いますけれども、やはり事業者自体がある程度そういうことについては考えていかなければならぬというように考えているわけであります。具体的な内容としてはそれぞれの資料はありますけれども、ここで一番わかりやすく言いますると、12チャンネルのいまの番組の内容についてどういうようにお考えになっておられるのか、その所見をお聞かせ願いたい、こう思うわけです。
  227. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御承知のように、12チャンネルを許可いたしますときにきびしい条件をつけております。その一つは、放送の番組の六割は科学技術教育をやるように、それから二割は教養番組を送るように、こういう条件をつけておるわけでございます。しかるにかかわらず、12チャンネルの番組内容はそれに合わない、かように考えられる点が多うございましたので、昨年の四月とたしか八月だったと思いますが、二回にわたりまして厳重に注意を喚起いたしました。したがいまして、なお現在の状態を見まして、本年の十一月再免許の時期の際には、これを継続すべきかどうかということについて十分検討したい、かように考えております。
  228. 森本靖

    森本委員 この問題は、これは現在の放送法のたてまえから、私は放送内容について一々差し出がましいことについては言うのを避けます。また避けなければならぬと思いますけれども先ほど来私が言っておりまするように、事業者自体もやはりテレビ放送というものの公共のあり方、それからまたその重要性、家庭に入っていく割合というものを考えまして、自主的に規制をしていってもらわなければならぬということを、私はこの際強く言っておきたい、こう思うわけであります。  続いて、いま問題になっておりまする有線テレビの問題について、ちょっと聞いておきたいと思います。  これは前から私がこの予算委員会なり、あるいはそれぞれの委員会において言っておりまするけれども、有線テレビについて現在政府はこれを規正する何らかの法律を検討中である、こういうように言われておりますけれども、これは具体的にどういう点を検討せられておるのか、明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。
  229. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 有線テレビの問題の前に、一言だけ補足させていただきたいと思います。  先ほどテレビの番組の問題について御意見が出ましたが、私も同感でございます。特に電波というものは、放送業者自体のものではなく、国民の貴重な財産を放送業者が一時預かっておる、こういう観点に立って、公共的な立場に立って当然経営をすべきものである、かように考えております。  次に、この有線テレビの問題でございますが、この問題はこれから非常に大きな問題になるであろうと思います。いろいろな点を検討いたしておりますが、その一つは、やはりこれは将来は認可制にしなければならぬ、こういう点を中心に検討いたしております。
  230. 森本靖

    森本委員 将来は認可制にしなければならぬという点で検討しておるということでございますが、そうなりますと、現在の出ておる有線放送の規正に関する法律を何らかの形において改正をする、こういうことになろうかと思います。その場合、この有線テレビという問題を、かりにこれを許可制にするということになりますと、これはやはり免許ということになろうかと思いますが、その場合、これは一つの施設免許になるのか、事業免許になるのか、これを聞いておきたいと思います。
  231. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 事業免許の形をとると思います。
  232. 森本靖

    森本委員 そこで、現在のテレビ・ラジオ局については、これは施設免許であろうと思いますが、そのとおりですか。
  233. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 形式的にはそのとおりだと思います。しかし、運用の面で事業免許的な要素も若干あろうかと思います。
  234. 森本靖

    森本委員 運用面で事業免許的なところがあるというのはどういう意味ですか。
  235. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 たとえば、放送業界全体の秩序、まあそういうことをやはりある程度考えなければならぬ、こういう意味でございます。
  236. 森本靖

    森本委員 しかし、ここではっきり私は言いまするならば、現在のテレビ、ラジオというものについては、一つの有限的なこれは免許である。しかも、これは電波法におけるいまの免許でありまするから、現行法律におきましては、はっきりとこれは施設免許であるということが言えると思いますが、その点どうですか。
  237. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 法律的にはそのとおりでございます。
  238. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、今回考えておられるところの有線テレビというものは一応事業免許である、こういうことでありますが、そこで、この事業免許と施設免許というものの違いは那辺にあるわけですか。
  239. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 施設免許は、一定の条件が整えば、まあこれを許可していく、こういう形をとるわけでございまして、事業免許は、それ以外の要素も勘案いたしまして許可していく、大体、こういうことでなかろうかと思います。
  240. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、この有線テレビという問題については、かりに許可制になるにいたしましても、これは有限的なものではない。それそのものについては、これは無限的なものになるわけであります。現在のテレビ、ラジオの、いわゆる電波を使っての放送局については、これは明らかに有限的なものであり、いま大臣がおっしゃられたように、国民の電波を使って行なうわけであります。そういう点から、この事業免許というものと施設免許というものは、おのずから分かれてくると思うわけでありますが、そういう点からいきますと、今後におきましても、このテレビ、ラジオという問題、有線テレビでなくして、いまの周波数を使っての無線放送によるところのテレビ、ラジオの放送局というものの免許は、あくまでも将来にわたっても事業免許ではない、施設免許であるという考え方を貫いていってもらいたいと、こう思っておるわけでありますが、これに対する見解を聞いておきたいと思うのであります。
  241. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の法律が改正されれば別でございますが、現在の法律のある限り、御趣旨を尊重いたします。
  242. 森本靖

    森本委員 現在の法律がある限りなんということを私は言っておるわけではないのであって、だから、現在の法律において、現在のいわゆるテレビ、ラジオの放送局が施設免許であるという考え方については、電波というもののあり方からするならば、その考え方が正しい。だから、将来にわたって、かりに放送法なりあるいは電波法を改正するにいたしましても、この問題についてはこれが妥当であると、私はまあ考えておるわけでありまするが、大臣はどうお考えかと、こういうことであります。
  243. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 大体そのとおりだと思います。
  244. 森本靖

    森本委員 それでございましたならば、この前の、政府が出してきたみたいに、ひとつゆめゆめ事業免許制なんということを考えないように、特に言っておきたいと思うのであります。  一応、これで私は、このラジオ、テレビの問題については終わりたいと思いまするけれども、この12チャンネルの問題については、非常にこれは世間からも注目をせられておるわけでありますので、この措置については、ひとつ郵政大臣がその措置を誤らぬようにお願いをしたい、こう思うわけでありまして、12チャンネルに対するところの見解をもう一度聞いておきたいと思うのであります。
  245. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 よく検討いたしまして、措置を間違えないようにしたいと思います。
  246. 森本靖

    森本委員 先ほど同僚石川議員から若干の質問がありましたけれども、インテルサットの協定について二十四日に代表団が出ていくわけでありますけれども、これは非常に複雑な内容になっておるわけであります。これは御承知のとおり、ヨーロッパの考え方、あるいはアメリカ考え方、あるいはソ連の考え方というふうに、非常に複雑な様相を呈しております。初めからアメリカ考えておったように、この暫定協定というものがそのまま本協定に移行するという形にはどうもむずかしい今日の情勢になっておるわけであります。そういう際に、大臣は、一両日中にその内容についての見解を明らかにしたいと、こう言っておりまするけれども、おそらく当予算委員会における質問はそうないと思いますので、これは非常に重大な問題でありますので、このヨーロッパ諸国が考えておる、インテルサットに対するところの暫定協定を本協定にする際のヨーロッパの各国の動き、さらに、ソ連を中心とするところの東欧諸国の動きと、これに対してアメリカ考え方、そういう全体的な考え方に対して、日本は一体どういう考え方によってこれに臨まんとするか、そういう点をひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。
  247. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 インテルサットの代表団は二十四日から会議に出席をいたしますので、したがいまして、日本の出発は二十日前後になろうかと思います。そういうふうな日程に合わせまして、ここ二、三日中にどうしても日本政府としての態度を最終的にきめなければならぬ、かように考えておる次第でございます。  なお、このインテルサットについて、アメリカ側とヨーロッパ側でどういうふうな点についての基本的な違いがあるか、こういう御質問でございますが、相違点はいろいろあろうかと思います。しかし、大きく分けますと、やはり第一点は、地域通信衛星についての考え方、これはアメリカ側は、あくまで排除していきたい、こういう意向のようにくみ取れますし、ヨーロッパ側は、それはあくまで主張していく、こういう態度のようでございます。  そのほか、出資が多いということで、会議その他の運営が金をたくさん出したところが横暴になる、こういうことを防ぐには一体どうしたらよいか、こういう問題があろうかと思います。
  248. 森本靖

    森本委員 じゃ、その問題と同時に、ソ連が発表いたしておりまするこの案についてはどうお考えかということもあわせて聞いておるはずでありますが……。
  249. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ソ連は、今度はオブザーバーとして出席するわけでございます。そうして、ソ連の基本的な考え方は、東ヨーロッパ八カ国を中心として通信衛星をやっていきたい、こういう考え方のようでございます。
  250. 森本靖

    森本委員 郵政大臣がそのくらいの知識では非常にこれは私は残念に思うわけでありますが、ソ連は八カ国だけで運用しようというふうには言っておりません。これはあなたのほうが出しておるところの資料の中にもありますように、ソ連が言っておりまするのは、いわゆる各国が平等に各一票の投票権を持つところのやり方においてやるならば、私のほうも全機能をあげてやるにやぶさかではない。——これは単に東欧の八カ国だけに対して述べておるわけではありません。全世界の国々に対して述べておるわけであります。そこで、先ほどお話がありましたように、このヨーロッパ各国が考えておりまする案にかなり近い案になっておるわけであります。そういう点について、一体、日本は、このソ連の考え方、あるいはヨーロッパの考え方、さらにアメリカ考え方、こういうものに対して具体的にどういう考え方で臨むか、この基本的な考え方を聞いておるわけであります。
  251. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 基本的な考え方は、インテルサットの本協定が成立することが非常に望ましいということが第一でございます。それと同時に、そういう本協定が成立いたしましても、日本の基本的な国の利益に関する分野、つまり将来、地域衛星、こういうものを打ち上げる権利は留保していきたい、こういう点が主要な点でございます。
  252. 森本靖

    森本委員 と同時に、各国がそれぞれ平等の立場においてこの権利が主張できるというふうな形にしたい、ということをつけ加えるわけにはいきませんか。
  253. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 当然、基本的には一国一票、こういう原則を主張すべきだと思います。
  254. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、この三つの案が出ておりますけれども日本の今回の会議に臨む態度としては、ヨーロッパ各国の案とそれからソ連が考えております案とミックスしたような考え方でこの会議に臨むと、こういうことに解釈をしてよろしゅうございますか。
  255. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 郵政省といたしましては、ただいま私が申し上げましたような考え方をいま固めつつあるわけです。しかし、国際会議に臨みますのは郵政省だけではございませんで、ほかの省とも緊密な打ち合わせをして、当初に申し上げましたように、ここ二、三日の間に最終態度をきめたい、かように思っております。
  256. 森本靖

    森本委員 それから、外務大臣に聞いておきたいと思いますが、この本協定が成立するということについては、これは非常に複雑であり、長期にわたって折衝が行なわれますので、恒久的な協定ができるかどうかについては、はなはだ疑問がありますけれども、かりにこの協定ができた場合については、これは当然協定として国会の承認を受けるべきものであるというように私は考えておるわけでありますが、その点どうですか。
  257. 愛知揆一

    愛知国務大臣 インテルサットの問題につきましては、ただいま郵政大臣からお答えがありましたように、日本側としても、御承知のように関係する向きも多いので、いま鋭意連絡を密にして、代表団がりっぱな行動ができるように用意を進めておるわけでございます。見通しといたしましても、いまいろいろとおあげになりましたように、なかなかこれはむずかしい問題で、はたしてスムーズにいくかどうか、これは各国の態度にもかかるところが多いわけでございますが、幸いにして基本協定ができますれば、当然これは国会に御審議を願い、御承認をいただく性質の問題である、かように考えております。
  258. 森本靖

    森本委員 ついでに聞いておきたいと思いますが、現在の暫定協定というものが国会に出されておりませんが、こういう間の法的な関係はどうですか。
  259. 愛知揆一

    愛知国務大臣 事務当局からお答えいたします。
  260. 重光晶

    ○重光政府委員 ただいま御質問の現在の暫定協定は、政府間の協定ではございません。日本では国際電信電話株式会社が当事者になっておる暫定的な約束でございまして、政府間協定ではございません。
  261. 森本靖

    森本委員 これであまり時間はとりたくないと思いますけれども政府間協定ではないにいたしましても、その当該政府の承認を得たものの民間会社と、こういうことになっておるわけでありますので、一応これについては国と国とのいわゆる約束事であるというふうに解釈が私はできるといま考えるわけでありますが、その点どうですか。
  262. 重光晶

    ○重光政府委員 御質問ではございますが、いま申しましたとおり、約束そのものは国際電信電話株式会社が当事者になっておる、またほかの当事者も、各国のそういった民間レベルの当事者でございます。もちろん日本の国内法で郵政省の主管で、郵政省との国内法的な関係があるということは当然でございますが、国際的な約束といたしましては民間の約束と、こういうふうになるわけでございます。
  263. 森本靖

    森本委員 その答弁については若干疑義がありますけれども、先を急いでいきますので、一応この点については終わります。  次に、私はデータ通信の問題について聞いておきたいと思います。特に、このデーター通信についていま郵政省と通産省との間においていろいろ論議をせられておるようでありますが、これに対するところの通産大臣としての見解をまず聞いておきたいと思います。
  264. 大平正芳

    ○大平国務大臣 通産省と郵政省の間に意見の対立というようなものはございません。私ども立場は、情報産業の振興という立場でいまお申し出の問題に関心を持っております。郵政省のほうは通信制度の問題としてお考えになっておると思います。私どものほうは産業構造審議会に諮問をいたしまして、目下いろいろな角度から御検討いただいております。郵政省のほうもまた郵政審議会の御審議をわずらわすように伺っておりまして、いまそういう過程でございまして、十分の審議を経まして、緊密な連絡をとりまして誤りのないようにいたしたいと考えております。
  265. 森本靖

    森本委員 誤りのないようにいたしたいと思いますということでありますが、どういうふうに誤りのないようにいたしたいか、さっぱりわからぬわけでありますけれども、ここでちょっと聞いておきたいのは、今後のデータ通信の発展ということについては、いろいろいまうわさをせられておるわけであります。確かに時代の進展につれてこの情報産業というものは、私は大きく発展をしていく事業であるというふうには考えておるわけでありますけれども、具体的にこれが現在のいわゆる公衆電気通信法あるいは有線電気通信法、こういうものとの間における関連から考えますと、非常にいま立法上いろいろな問題があろうかと思うわけでありまするが、そういう点について政府としては、もしかりにこれが現在行なわれておりまするような電電公社が独占的に行なうということでないとするならば、特別立法を行なうとか、あるいはまた現在の法律を改正をするというようなことを考えていかなければ、いま郵政大臣がこの公社線についてはこれを一般の民間に開放する、こういうことを言っておりまするけれども、この点について若干法律的に疑問があるわけでありまするが、こういう点について郵政大臣としてはどうお考えですか。
  266. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 法律改正の問題が将来当然起こってくると思います。
  267. 森本靖

    森本委員 それから、いわゆるデータ通信といいますか、情勢産業といいますか、これが今後発展をしていくプログラムというものについては、いろいろの未来像が描かれるわけでありまして、これを考えてまいりますと、非常に将来の生活というものが根本的に変革を来たすというふうにまで変わっていくのではないかというように、確かにこれは大きなバラ色の夢になってくると思います。しかし、いまの自民党さんの政権下においてこれがそんなに発展をしていくとは私はあまり考えたくないわけでありますけれども、とにかくいずれにいたしましても、これははなやかな産業になろうと思うのであります。そういう点で、これは新しい産業の形態になるわけでありますが、いま日本情報処理開発センターというものが郵政大臣と通産大臣の共管によって行なわれておるわけでありますけれども、この年間の予算というものはどの程度で行なわれておるわけでありますか。
  268. 大平正芳

    ○大平国務大臣 お答え申し上げます。  日本情報処理開発センターは一昨年の十二月に設立されまして、基金は五億円で、うち二億五千万円は機械振興資金、そのほかは電算機のメーカー六社等から出捐いたしております。本年の事業規模は八億円弱でございます。
  269. 森本靖

    森本委員 本年の八億円というこの資金の内容は、どうなっておりますか。
  270. 大平正芳

    ○大平国務大臣 情報に関する調査、情報処理方式並びにソフトウエアの研究開発、情報処理技術者の養成、広報活動、それから情報処理サービスの実施、プログラムライブラリーの整備、標準化などになっておりますが、この項目別の内訳は私ただいま持っておりません。
  271. 森本靖

    森本委員 それでは、この八億円のいわゆる金の出どころですよ。
  272. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それでは政府委員から答弁させます。
  273. 吉光久

    ○吉光政府委員 お答え申し上げます。  本年度の事業規模は、先ほど大臣お答え申し上げましたとおり八億円弱でございますが、そのうち機械振興資金から四億五千万円でございまして、その他は基金の運営利息と、それからこの事業に伴います事業収入でまかなっていく、こういう計画になっております。
  274. 森本靖

    森本委員 この日本情報処理開発センターの事業というところを読んでみますると、これは一項目から十項目までありますけれども、かなりこれは大きな項目であります。これだけの事業を行なうとするならば、この財団がここに書いてありますことをそのまま忠実に完全に実行していくとするならば、このセンターはかなり中心的なセンターにならなければならぬと思うわけであります。ところが、ここに書いてある項目をこれだけの金額において行なうということは、なかなか不可能に近い。やはりこのセンターというものが、いわゆる政府が援助するなら援助するというふうに、基本的な内容というものは考えていかなければならぬというふうに考えるわけでありますが、この開発センターというものを将来情報産業というものの中心にしていこうというお考えなのか、どうなのか、その点を聞いておきたいと思うのです。
  275. 大平正芳

    ○大平国務大臣 情報産業自体が御案内のようにまだ濫觴期にございまするし、これをどのように育成してまいるかということにつきましては、郵政省も私どものほうも、まだ関係各省これからみっちり勉強していかなければなりませんので、基本の情報産業育成の大方針というようなものをまだ固めるに至っておりません。したがいまして、このセンターを中心にしてやるべきかどうか、このセンターをどういう範囲で活用してまいるか、そういった点はこれから検討していかなければいけない課題であると考えております。
  276. 森本靖

    森本委員 この情報産業というものについては、今後相当発展をしていくということは、これはもう明らかであろうと思います。ただこの発展をしていくやり方を一歩誤ると、かなりこれは重大な問題になってくるというふうに考えるわけでありまして、第一、この情報産業というものが今後、通信であるか、あるいは具体的にどういうものであるか、たとえば定義の問題につきましても、これは非常にむずかしいと思います。これはそういうふうな内容を含んだところの産業でありますけれども、しかし未来がはなやかな産業であることについては間違いがありません。そういう点でございまするので、いま通産大臣が言われましたように、これは政府の中におきましても特に郵政大臣、通産大臣が連絡を緊密にいたしまして、そうしてこのいわゆる情報産業というものが正確に、しかも的確な発展をしていくような方向にひとつ意見を早急にまとめてもらいたい。何だか政府間において、もたもたしておるということがあってはならぬというふうに私は考えておりますし、またできるならば、こういうものについては政府あるいはまたそれにかわるべきものが一元的に行なうという方向が私は正しいというふうに考えまするけれども、しかしまた一面、こういうものの発展を考えました場合に、あるいはまた民間に一部これを開放したほうがいいということにこれはなるかもわかりません。いずれにいたしましても、そういう長期の展望に立ったところの見通しというものを政府は早急につくる必要がある、私はこういうふうに考えておるわけでありまするが、これに対する回答をもう一回得ておきたい、こう思うわけであります。
  277. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 情報産業の将来につきましては、ただいま御指摘のとおりだと思います。第四次産業と呼ばれるくらい巨大な産業に発展するであろうということは当然考えられるところでございます。そこでこの情報化社会、つまり情報産業が行き渡った社会、この情報化社会を一刻も早くつくり上げることが私は将来の日本にとって最大の問題でなかろうか、かように考えます。したがいまして、情報産業をどうすれば一番早く発展さすことができるかという観点に立ちまして、通産省はじめ関係各省と打ち合わせをいたしまして、誤りなきを期していきたい、かように考えます。
  278. 森本靖

    森本委員 次に、私は、この前にこの予算委員会におきまして問題にいたしました例の防衛施設庁におきます電波障害防止地域のその後の問題について、防衛庁長官に聞いておきたいと思います。これは十二カ所全国で申し入れがありまして、かなりいろいろの問題を起こしましたが、その後、上瀬谷以外の個所については具体的に米軍からの申し入れがありますかどうか、御回答願いたいと思います。
  279. 有田喜一

    ○有田国務大臣 この問題は、なかなか基地の周辺地区の住民にとって大事な問題でありまして、われわれはきわめて慎重にやっておるのですが、日米合同委員会におきましても、電波障害特別分科会で慎重な態度で検討しておる次第であります。  そこで私らの気持ちとしては、なかなかそう簡単に向こうさんの言うような緩衝地帯を設けるわけにいきませんので、何とかほかに手がないかというので、技術的の立場からも検討を遂げ、またどこまで米軍のその必要があるかというようなことも慎重に検討しながら、いまねばっておるといいますか、そういう態度でいまおるところであります。
  280. 森本靖

    森本委員 そうしますと、具体的に問題になっておりますのは現在上瀬谷であり、あとの問題については、いま検討しておる、こういうことですか。
  281. 有田喜一

    ○有田国務大臣 そのとおりでございます。
  282. 森本靖

    森本委員 あとの十一カ所については現在検討しておるということでありますけれども米軍もあとの十一カ所については、そうやかましくいってこないというような状況ではないのですか。
  283. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私のほうとしましては、先ほど言いましたように、この地区住民に大きな影響がありますので、ひとつどうだ、もう少し考え直してくれぬかというようなことを私のほうから申し出、そしていま、先ほど言いましたように分科会で検討しておる、こういう状況でございます。
  284. 森本靖

    森本委員 だから私が言っておりますのは、十二カ所申し入れをしたけれども、現実にいま上瀬谷の問題については問題になっておりますけれども、それ以外についてはこれは断わり切れるのではないかというように聞いておるわけであります。それならばそのほうが一番いいわけでありますが、どうですか。
  285. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほど申しましたような態度で私のほうは臨んでおりまして、それではもうやめようなんていうところまではいっていない、そういう状態であります。
  286. 森本靖

    森本委員 さらに詳細に聞きたいと思いますけれども、時間がありませんが、この問題については、私は、向こうさんもそう必要性を今後感じてこないのではないかというふうに考えますので、さらに私は、防衛庁長官がいま言われましたように、もう必要がないというところまで追い込んでいった交渉をぜひやっていただきたい。これは要らない基地はだんだん廃止をしていくということにもなりますし、また非常にこれは住民が迷惑をいたす問題でありますので、そういう方向でぜひやってもらいたい、こう思うわけであります。  さらに、時間もまいりましたので、私は議事に協力したいと思いますが、最後に一つだけ郵政大臣に聞いておきたいと思います。  それは、今回の電話料金の修正における公衆電気通信法の一部改正が出ておるわけでありますけれども、本来ならば、この公衆電気通信法の一部改正を行なう際には、例のいわゆる有線放送電話に関する問題、この問題とあわせて公衆電気通信法の改正を出すべきであろうというように考えておったわけでありますが、今回料金の合理化だけの公衆電気通信法の一部改正案を出して、さらにまた、この案が通ったあとで、もう一回また公衆電気通信法の一部改正を政府が提案をする。なるほど内容が違うところでありますから、国会の一事不再議という問題についてはこれは当てはまらぬかもわかりませんけれども、本来ならば、一つの国会に同じ法律の改正案というものを二回にわたって提案をするというようなことは、私は少なくとも政府の怠慢であるというふうに考えておるわけでありますが、どうですか。
  287. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かに御指摘のような問題がございます。しかし、電話の料金改正の問題は、予算関係法案でもございますし、非常に急ぎますので、これを切り離しで先に御審議をいただく。同時に、後者の問題は、これは有線電話ですか、この法律の改正が主になりまして、そして公衆電気通信法の改正が従になるわけでございます。そういう意味もございまして、二つ切り離しまして提案をしたいと考えております。
  288. 森本靖

    森本委員 どろぼうにも三分の理屈があるというように昔からいわれておりまするとおり、それはいろいろ理由はありますよ。ありますけれども、同じ法律の改正案というものを同じ国会に政府が二回にわたって提案をしなければならぬということについては、少なくとも職務怠慢である。その内容については、すでにもう昨年の十二月にわかっておるわけでありますから、できればこれは一回で済むように今回提案をするのが妥当であるというように私は考えておるわけであります。いろいろあなたは理屈を言っておりますけれどもほんとうはそうでしょう、大臣。そうですと言いなさい。
  289. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まことに申しわけないことでございますが、二回に分けて御審議をいただきたいと思います。
  290. 森本靖

    森本委員 終わります。
  291. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 これにて森本君の質疑は終了いたしました。  次に河野正君。
  292. 河野正

    河野(正)委員 若干論旨が相前後するきらいがございまするけれども委員会の運営の都合等もございますので、私は、まず第一に、沖繩におきまする労働布令の問題について、若干触れてみたい、こういうふうに考えます。  元来、沖繩におきまする全軍労あるいは沖繩住民は、布令第百十六号そのものをひとつ廃棄してもらいたい、こういう強い意向であったわけでございます。ところが、案に相違をして、この一月の十一日には、新しく御案内のような新布令が公布をされたわけでございます。  ところが、この新しい労働布令というものは、むしろ従来の百十六号布令よりも大きく労働者の権利を圧迫し、また住民の権利を圧迫するというようなことで、きわめて強い批判が出てまいっておりますことは御承知のとおりでございます。  しかも、今度の新布令の内容におきましては、単に軍の関係労働者のみならず、一般住民をも対象にいたしまして、この基地反対運動等の規制を強めよう。もう少し突っ込んで申し上げますと、治安立法的な性格というものが、この布令におきましては非常に強められる。私どもは、むしろ自治権の拡大というものを主張いたしておるわけでございますけれども、ところが、この自治権の拡大にも逆行する。そして沖繩住民の権利というものを大幅に制限する、こういうことで、この新布令に対しまして強い反発が出てまいっておりますことは御案内のとおりでございます。  ところが、たまたま新聞の報ずるところによりますと、昨日、外務省は、この布令のうち、第十条の不適当部分の削除というものをアメリカ側に申し入れをした、こういうことのようでございますが、その経過について、ひとつ外務大臣の御報告を願いたい。   〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕
  293. 愛知揆一

    愛知国務大臣 労働布令の問題につきましては、経過は大体御承知のことと思いますが、あらためて簡潔に御説明いたしますと、こういうことになっております。  ただいま御指摘のように、労働布令が出まして、どうもそれを見ますと、日本側といたしましてもいろいろ疑義もありますし、また、ただいま御意見がございましたような点にも問題があろう、早急に関係各省で検討を急ぎまして、幸いにその後の折衝と申しますか、日本政府の意図が私は十分反映したと信じておりますが、三月一日までの間に、まず沖繩におきましては琉球政府はもとよりでありますが、組合その他一般の方々からも建設的な意見があったならば何でも申し入れてくれという、民政府が態度を表明いたしました。また、日本政府としても非常に大きな関心を持っておることがよく反映いたしまして、施行は当分延期になったわけでございます。そこで、時間的余裕もできましたので、日本政府といたしましても、関係省庁の間で詳細な検討を引き続き行なっております。  しかし、検討いたしてまいりますと、確かに御指摘のとおり、第十条が一番の問題だと私ども思いますが、一般県民を対象として第十条が書かれておりますが、これはわれわれの考え方からすれば、労働立法のワク外に出ております。  それから、ただいま御指摘のような、立案者の気持ちはわかりませんけれども、客観的に見れば、治安立法的なものというそしりを受ける点も相当あると思いますので、この点を特に重要視いたしましたので、とりあえず第十条についての日本政府見解アメリカ側に申し入れたわけでございます。これは昨日新聞に公表いたしましたとおりでございます。しかし、その発表文にもございますとおりに、これはまず第一段のとりあえずの措置でございまして、引き続き関係省庁間のこまかい検討を続けておりますから、さらにこれに引き続いて適切な申し入れ等をやることを用意をしておるわけでございます。第一段の緊急の方法として、十条をとりあえず取り上げた、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  294. 河野正

    河野(正)委員 この第十条の削除について申し入れがあったことは、いまお説のとおりでございますけれども、ところが、もともとこの新布令が公布をされましたその公布のしかたに、基本的に問題があると私どもは指摘せざるを得ないと思うのです。  それは、一方的に英文でこの布令というものが公布をされた。全くこれは住民に対しまする押しつけだと思うのです。そういうアメリカ側の姿勢に対しまして、非常に大きな問題があるということが一つでございます。  それからもう一つは、ILOをはじめとしてあらゆる国際労働慣行を無視した内容を盛り込んだ布令であるというところに、もう一つの大きな問題があると思います。  それからもう一つは、私どもも、この布令の問題が出てまいりまして、いろいろ検討しようということで検討を開始したわけですけれども、ところが、この布令の条文というものが明確にされておらない。これは沖繩住民もそうですけれども、私ども日本国民の場合にも、その条文の案文というものが明確にされておらない。そこで、この労働布令につきましては、たとえば総理府も関係がございます、労働省も関係がございます、外務省も関係がございます。ところが、それぞれ関係各省が各個ばらばらにこの条文の解釈をいたしておる、こういう実態でございます。こういうことでは、なるほど十条の問題が申し入れられたとされましても、私はなお多くの問題が残っておると思うのです。ですから、私は、日本国民に対し、また沖繩住民に対しましても、やはりこの条文の何ものであるかということを明確に示す必要があると思うのですね。単に英文で発表して、解釈は自由にやりなさいということでは困るので、そういう意味で、私は……(「撤回させろ」と呼ぶ者あり)いま撤回させよということばがございますが、やはりこの布令については出直す必要があるんじゃないか。そういう強い考え方を持っておるわけですが、その点についていかがお考えでございますか、外務大臣の御見解を承りたい。
  295. 愛知揆一

    愛知国務大臣 仰せになりますこと、そのお気持ちは、私も非常によく理解できるわけでございます。まあ形式ばって申し上げますと、やはりこの施政権がこちらにまだないということからいたしまして、こうした布令の出し方その他については、非常に私どもとしても心もとない点もある。しかし、そうかといって、撤回をさせるといっても、できないことはできません。これは、沖繩県民の方々の気持ちを日本人の私どもとして十二分に取り上げて、その気持ちになって、現在の条件下においてなし得る最大の誠意を示してやっておるわけでございます。  なお、内容につきましては、いま日本政府見解がばらばらだという御指摘がございましたけれども、そうではなく、労働省を中心にいたしまして、先ほども申しましたように、多少の時間もできましたので、とっくり検討いたしまして、その結果を取りまとめ、また沖繩の人たちの気持ち、琉球政府のこれからとるべき措置等をもにらみ合わせまして、適宜の措置をとってまいりたい、こういうふうに考えております。  内容につきましては、労働大臣あるいは総理府長官等にもお聞き取りいただきたいと思います。
  296. 河野正

    河野(正)委員 この問題に対して、私ども出直したらどうだ、こういう指摘をしたわけですけれども、この問題は、施政権があるとかないとかいう問題ではないと思うのです。これはやはりアメリカ側が日本国民に対し、あるいは沖繩県民に対して、どういう態度で臨んでくるかという姿勢についての問題ですから、私どもは、そういう点から、これは単に施政権があるかないかという問題ではない、まあこういうふうに考えたいと思います。  そこで、いま外務大臣は、政府各省の見解がばらばらじゃない、こういう御回答でございましたが、ことばを返すわけじゃございませんけれども、この布令の条文の案文というものが統一されていないわけですね、日本語で。ですから、労働省は労働省なりにその英文を解釈をして、そして理解につとめる、おそらく外務省は外務省、総理府は総理府だと思います。そういうことでは、やはりその個々の条文について問題点のある問題もございますね。すでに、これは問題があるという条項もございます。と同時に、その条文の解釈によって、やっぱりニュアンスの相違というものも出てくると思うのです。そういうニュアンスの相違というものが各省ばらばらに理解をされておるということで、私は、問題がある、こういう指摘をいたしておるわけでございます。そういう意味で、やはり政府としては、すみやかにこの条文に対しまする解釈の統一をはかるべきだ、こういうふうに考えますが、その点いかがですか。
  297. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど御指摘のとおり、十一日に出ましたものが英文でありました関係で、琉球政府としても早急に翻訳をいたしましたし、その当初におきましては、翻訳等におきましてもばらばらの点があったかもしれませんが、これを整理いたしまして、内容について十分検討をしておるつもりでございます。  なお、先ほど申し上げましたように内容等につきましては、私から御説明いたしますよりも、他の閣僚から御説明申し上げたほうが正確であり、適切であると思います。
  298. 河野正

    河野(正)委員 実はきょう内容まで入れるかどうか、時間の都合でわかりませんので、私はそこまで考えておらぬわけですけれども、いま外務大臣お答えになりましたように、この条文の理解の統一が行なわれておるということですけれども、私どもが資料を集めますと、それぞれ各省で翻訳文があるわけです。ですから、そういうことでは、やはり私ども政府の統一見解と言うわけにはまいりませんから、やはりそれは一本に統一をして、そして各省が理解を深めていく、こういう方針というものが必要だと思います。そういう意味で、私は、まずそういう方針で臨んでもらいたいということをここで指摘をしておきたいと思います。
  299. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御指摘の点は、まことにごもっともだと存じます。  それから、よけいなことを言うようでございますけれども、労働法の立て方というようなことが若干違っております関係で、その条文についての解釈ということにつきましても、立案をした人の考え方と、それから日本的な解釈と、違う点もあろうかと思いますが、そういう点を十二分に精細に検討をして、そして取りまとめ、そしてアメリカ側との話し合いもしたい、こういうふうな姿勢でおるつもりでございますから、御注意のありました点は、今後とも十二分に注意をしてまいりたいと思います。
  300. 河野正

    河野(正)委員 そこで、条文に対しては、統一見解としてまとめていきたいという方針が示されましたから、その点は了解するとして、まあいままでは少なくともそういう条文に対しまする解釈というものが、いろいろニュアンスの相違というものがあった。それは今後統一されるでしょう。  しかしながら、具体的に今度は各条項によって非常に問題になる点があると思いますし、私どももその点を強く指摘しておるところです。そこで、現在政府としてどういうところが問題であるのか、そういう見解がございますれば、この際ひとつ政府としてお示しをいただきたい。
  301. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま外務大臣からお答えがありましたが、元来、条文そのものは英文で参りましたので、とりあえずそのもとにそれぞれが解釈いたしましたので、いろいろと報道せられたと思いますが、だいぶおそくなりましたけれどもアメリカ政府から民政府訳の日本文というものも参りましたので、これを表の条文として、解釈につきましては三省においてそれぞれ話し合って、今日検討しておる次第であります。  なお、検討しておりまする各条文につきましてはいろいろにわたっておるわけでありますが、日本政府といたしまして、米側に今日まで意義等に対しまして質問をいたしました条文は、三条とか十条とか十一条、十六条、十七条等につきまして質疑をいたしたのであります。  なお、これらの点につきましては、今日引き続き検討中でありますので、いずれ具体的になりました際におきましては、日本政府の意向というものを民政府のほうに十分反映さしたいと思う次第であります。  なお、その前に、地元におきまするところの各種団体、なお琉球政府等の意見も、アメリカ側は積極的に提言してもらいたい、意見を出してもらいたいということを申しておりますので、そういうような意見もわれわれのところに集めまして、そうして地元の意向というものも十分参酌いたしまして、意見を申し述べるつもりであります。
  302. 河野正

    河野(正)委員 いまどういうところに問題が所在するのかという質問に対して、三条、それから十条、十一条、十六条というようなお答えがございました。私ども、もちろん、この中でも、特に第三条、これは労働者の権利、特に団交権等について大幅に抑圧が考えられておる。あるいはまた九条のごときは争議の際の義務規定でございますが、この九条によりましては、軍事活動、保安を維持するためには、軍労働者の身分というものをかってに代替をするというような規定のようでもございますし、また、第十一条は政治献金の制限でございますから、これまた、一体化政策がいい悪いは別として、大きく日本の方針とも反する問題でもございますし、私どもも強く批判をいたしておるところでございます。そこで、たまたまいま問題になる条項が具体的に示されたわけでございますけれども、しかしながら、そうかといって、それだけで納得できるかどうかということについては、またこれは別問題だと思います。  そこで、やはり今後さらに政府としても、同布令の全般的な検討、単にいま言われたような三条とか九条、十条、十一条、十六条というのみならず、全般的な検討というものがさらに進められなきゃならぬというように私ども理解をいたしますが、その点について政府の御見解を承りたい。
  303. 原健三郎

    ○原国務大臣 お答え申し上げます。  いままでの経過等については、外務大臣、それから総務長官等のお答えしたとおりでございますが、個々の条項その他問題になる点は、いま申し述べたとおりでございますが、全体についていかにするか、いま三者の間で、三役所の間で鋭意検討を進めております。また、琉球政府、それから沖繩県各種団体等の意見も参酌して、それらと連絡をとりながら、早急に政府見解をまとめて、三月一日まで、さらに先方に対し、交渉、折衝いたしたいと思っておりますので、よろしく御了承願います。
  304. 河野正

    河野(正)委員 そこで、きょうは内容まで突っ込んで質疑することはできませんので、その点は分科会に譲るといたしまして、この点についての最後でございますが、いま労働大臣も答えましたように、関係いたしまする外務省、総理府あるいは労働省、こういう三省でそれぞれ連携をとりながら検討が進められておるということでございますが、その間、いろいろ問題点に対しまする見解が統一されたときには、単に十条のみならず、次々にアメリカ側に対してこの申し入れをせられる決意があるのかないのか、この点はぜひひとつお聞かせをいただきたい。
  305. 原健三郎

    ○原国務大臣 お説のとおり、問題がある点は逐次申し入れをする考えで、政府見解をまとめて交渉いたします。
  306. 河野正

    河野(正)委員 外務大臣からも一言ひとつ。
  307. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま労働大臣からお答えいたしましたとおり、また、先ほど私申し上げましたとおり、いまのはまず第一歩でございまして、これから次々と検討し、申し入れもいたしたい、こういうふうに考えております。
  308. 河野正

    河野(正)委員 この沖繩におきまする労働布令は、単に条項の問題のみならず、アメリカ側の姿勢ですね。たとえば、これは外務大臣からも所見を承りましたように、一方的に英文で押しつけて公布するという、こういう姿勢に問題がある。要するに、沖繩県民を人間扱いしないというような、そういうアメリカ側の姿勢に問題がある。こういうように私ども理解をいたすわけでございますので、したがって、この問題につきましては、いま私どもが指摘するような姿勢を十分踏まえて、今後アメリカに対処をしてもらいたい。こういうことをひとつ特に申し伝えておきたいと思いますので、この点についてひとつ外務大臣の御見解を最後に承りたいと思います。
  309. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、河野委員のお気持ちというものは、十分私は理解できる、御同感でございます。
  310. 河野正

    河野(正)委員 そこで、本論に戻りまして、予定いたしました質問事項に入りたいと思います。  七〇年と申し上げますと、すぐ安保を連想するわけですけれども、しかしながら、福祉国家の建設ということばが、佐藤内閣が誕生いたしまして以来もう久しく使われてきた政治標語であるわけでございます。そこで、私どもは、やはりこの福祉国家の建設に向かって前進をしなければならぬのが今日の一つの政治課題だと考えるわけでございます。本来から申し上げますると、総理にお伺い申し上げることが一番適切でございますけれども、御出席ではございませんので、そこで、まず厚生大臣にお伺いをいたしたいわけでございますけれども、この七〇年代の福祉国家という問題についてどういうふうにお考えになっておるのか、七〇年代におきまする福祉国家像という点について、まずひとつ御見解をお聞かせいただきたい、かように考えます。
  311. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 福祉国家像という御質問の答えはなかなかむずかしいのでございますが、私どもは、とにかく所得がない、あるいは低過ぎるために、生活に非常に困窮するという人のないようにというのが一つの柱でございます。  それからまた、疾病、健康の保持というようなことについては、万全を期さなければなりませんから、そのための費用の支出で苦しむ、これも一つは、何といいますか、貧困に対する政策といえるかもわかりませんが、これを完全にしてまいりまして、そしてできるだけ完全な医療を国が確保するということが必要であろう、かように考えます。  同時にまた、七〇年代を想定をいたしますると、老人の数が非常にふえてまいります。したがいまして、いままでになかったような老人対策というものを強く進めてまいらなければなりません。同時にまた、日本は、何といいますか、死亡率も減少してまいりましたが、まだまだ乳幼児の死亡率あるいは妊産婦の死亡率ももっと少なくしてまいりまして、この世に生まれてくる前からそういった面を強くいたして、そして完全にりっぱに生まれてきた子供が、小さいときにあるいは小児麻痺になったり、いろいろ最近いわれておりますような心身障害の基礎を幼児の際に受ける場合が多いのでありますが、そういうことのないように、すなわち、健康に生まれて健康に育っていくということがまた一つの柱であろうと存じます。  先進国の福祉国家の柱を見ますると、医療の保険と年金の制度の問題、また児童手当の問題、これは三つの柱とされておりますが、これらを完備いたしまして、そうしていままで置き去りにされていたような特別な疾病、あるいは特別な境遇にある人をいつまでも谷間に置かないで、日の目の当たるように、そういうふうにやっていく必要がある。ことに七〇年代を想定いたしますると、ただいま先年来から問題になっておりまするいわゆる公害対策、これは健康保持という面にあたるわけでありますが、そういった観点からの健康保持というものがますますひどくなってくるであろう。科学技術の進歩に伴ういわゆる人間疎外という現象、あるいは医療の面において、あるいは精神障害の面において、その他の面においてやっていかなければならぬ新しい面が七〇年代にもっと多く展開をしてくるであろう、そういうものに対処をしてまいりたいというのが七〇年代の大体の考え方でございます。
  312. 河野正

    河野(正)委員 福祉国家像について厚生大臣に回答を求めましたので、どうしても厚生大臣流的な福祉国家像になってしまって、私どもも非常に残念に考えるわけですけれども、やはりこの福祉国家を建設するためには、基本的な条件があると思うのです。その条件の中の一部について、いまこまごまと厚生大臣お答えを願ったと思うのです。しかし、実際の福祉国家を建設する基本条件というものは、いま大臣がおっしゃったものは一側面であって、これはやはり一つの柱としては社会保障の充実ですね、それがいま大臣お答えになった側面だと思うのです。それと同時にやはり最低賃金制の確立、それから完全雇用の実施、これが三つの柱となって初めてこの福祉国家というものが建設される。これは福祉国家建設の基本的な条件というものは、いま大臣がおっしゃった社会保障の面と、それから最低賃金の面と、それから完全雇用の面、こういうものがあるというのが大体定説でございます。そういうことは本来なら総理大臣にお聞きすればそういうお答えが出たろうと思います。どうも厚生大臣にお尋ねしたものですから、厚生大臣的な福祉国家像が出てまいって、ややちょっと残念に考えました。  そこで、せっかく出てまいりましたから、それならばその三本の柱の中の重要な柱はやはり社会保障ですから、そこでこの点から若干入ってまいりたいと思います。それならば、現在日本の社会保障というものが西欧諸国と比較をして前進をしておる、いわゆる進展をしておるというふうにお考えになっておるかどうかですね、この点をまずひとつお尋ねしたいと思います。
  313. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 西欧諸国に比べて私はまだ自慢のできるほどではないと思いますが、しかし年々前進を続けているということは申し上げられると存じます。本国会において御審議を願いたいと考えております年金制度等につきましても、これが実現いたしますなら、年金制度としては世界にそう恥ずかしくない制度になる、かように思うわけであります。年々前進をしているということは、これははっきり申し上げられると思います。ただ、日本国民所得が年々ふえてまいっておりますから、したがってそれをさらに上回る程度のものが必要であろう、かように考えております。
  314. 河野正

    河野(正)委員 社会保障が前進しておるかどうかということを尋ねると、すぐ前進しておるというような答えが飛び出してくるわけです。ところがそれならば、具体的に科学的に検討して、はたしていま日本の社会保障というものが前進しておるかどうか、その裏づけというものは一体どうだ、こうなると必ずしも残念ながら大臣おっしゃるような方向には行っておりません。  社会保障が前進しておるかどうかというものさしは二つあると思います。それはいろいろありましょうけれども、私は二つあると思う。その一つは、日本の国家予算の中に占めておる社会保障関係の予算の比率というものが一体どういう状況になりつつあるのか、国の総予算の中で社会保障予算というものがどの程度占めておるのか、そういう傾向というものがどういう傾向をたどっていっておるのか、これが一つのものさしだと思います。それからもう一つは、国民所得の中に占めまする社会保障の比重ですね、これがどういう傾向になっておるか、これも一つのものさしだと思うのです。  そこで私は、これは総理府の資料ですけれども、いろいろ調べてみましたところが、昭和四十年を頂点として、むしろ国の予算の中に占める社会保障関係予算の比率、それから国民所得の中に占める社会保障の比重というものが、むしろ残念ながら下降しているのですよ。そこで、大臣、頭をひねっておられますから、これは政府の資料を私はここで読み上げますと、この一般予算の中で占めまする社会保障関係費の比重というものは四十年が一四・五ですね。昭和四十一年は一四・一なんです。それから四十二年が一四・二ですね。四十三年は一四・〇二なんです。それからいま一つ国民所得との関係ですね、これは四十年が六・五です。四十一年が六・五、四十二年は六・三なんです。こういう数字を見たら、大臣がいま得々と日本の社会保障というのは前進しておるのだとおっしゃっておるけれども、実際は前進は一つもしておらぬ。むしろ後退しておるわけです。経済の規模がだんだん大型化してきますから、それはいろいろ年金その他が上がっていきましょう。しかし、そういう現象だけでは日本の社会保障が前進しておるかどうかということは、言い切るわけにはいかぬわけです。そういう意味で、私はむしろ厚生大臣はいまの発言については大いに反省をしてもらいたいと思うのです。そういう姿勢で臨んでいかぬことには、本来の日本の社会保障というものは前進しないと思うのです。そういう意味で、私がいま政府でまとめられた資料に基づく数字を示して日本の社会保障というものが前進しておるかどうかという見解を述べたわけですが、これについてどういうお考えをお持ちですか。
  315. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 この社会保障の水準というものを一体どういうように考えるか。これは非常に計算のしかたがむずかしいのでございますが、ただいまおっしゃます政府の予算の中に占める割合、これも一つ日本だけで進んでいるかいないかという標準であろうと思います。しかしながら、同じ政府の中で占める比率にいたしましても、本年度のごとく、あるいは前年度のごとく、いわゆる地方交付税というようなものも入れまするとそういう数字になりますが、これは通り抜けの予算でございますから、そういうものも抜いて計算をするのが至当であろうと思います。  それから、ただいまお述べの数字は、四十年、四十一年、四十二年は当初予算か、最後の補正予算の辺かわかりませんが、私のほうの資料では若干ずつ割合が伸びつつあるわけであります。  いま一つ、よく世界的に比較されますのは、いわゆる国民所得、それに対するいわゆる社会保障の振替所得というものとの比較があるわけであります。社会保障のやり方は、いずれもそれは国民の所得の中から出すわけでありますが、その形は国費、あるいは地方費、あるいはまた本人が拠出をした中から出す、これも国民所得の中から出すわけでありますが、そういうものを全部をひっくるめて、そうして社会保障の振替所得という計算をして勘定をする例もあるのであります。この振替所得の勘定は非常にむずかしいのでございますが、これは大体毎年二八%ずつ伸びてきております。そうしてこれは国民所得の伸びと大体つり合っておりますので、国民所得の伸びよりもよくなっているとは申せませんが、最近の国民所得の伸びは非常に大きゅうございますから、実際問題としてやむを得なかろうか、かように考えます。しかし、先ほど申しますように、いま考えております年金制度の、二万円年金の実現とか、あるいは医療保険の抜本改正というようなものが実現をし、さらに、たびたび御質問を受けておりますが、児童手当というようなものができますれば、ここに相当飛躍的に伸びるであろう、かように考えております。
  316. 河野正

    河野(正)委員 別に私どもは作為的にかってに資料を取りまとめたのではなくて、総理府で取りまとめられた資料に基づいて日本の社会保障の前進が果たされておるかどうかということの論究をしておるわけですからね。そういう意味で、ひとつ踏まえていただかなければならぬ。  いま、いみじくもおっしゃったけれども、児童手当を含んでというようなお話ですけれども、この児童手当が実施されぬということはしばしばこの委員会でも指摘されたとおりですね。そういうものまで入れてお答え願ってはまことに心外であって、いずれにしても、政府が発表した資料から見て、そう手放しで喜ぶような形で日本の社会保障というものは進展をしておらぬということは、はっきり言えると思うのですね。そういう意味で、ひとつ大いに反省をしていただきたいと思うのです。と同時に、さらに格段の社会保障の発展のための努力をしていただきたい、こういうふうに思うのです。  そこで、時間の関係もございますから、どんどん論議を進めていかなければならぬと思いまするけれども、いま申し上げまするように、むしろ日本の経済の大型化に向かって日本の社会保障の水準というものを上げていかなきゃならぬ、こういう至上使命を与えられておるにもかかわらず、むしろ一昨年は健康保険の特例法が出てきて、そして医療保障——医療保険の論議は別として、一応医療保障を後退さしたということははっきりいたしておるわけです。日本の社会保障の水準を上げなければならぬのに、一方では医療保障を後退させる。特に、日本の社会保障の水準が西欧先進国と比べて非常に低いといわれるゆえんはいろいろございます。しかし、日本の場合は、その中で医療保険制度というものは非常に進んでいるわけですね。そこで、そういう進んだものをこの際後退させることは、日本の社会保障をますます後退させるということになる。そういう意味で私どもは強く反発をいたしておるわけです。  ところが、この国会であらためてその健保特例法の延長をはかろうということを、審議会にすでに諮問をなさっておるようです。それは全く政治を冒涜する行為であって、二年間の間に抜本改正をはかりますということでこれは時限立法になっておるわけです。にもかかわらず、さらに健保特例法を延長させようというようなことは、これは政治を冒涜する行為だと思うのです。そこで私はやはり、内容は別として、抜本改正をすみやかに御提案をなさらなければならぬ責任と義務があると思うのです。そういう健保抜本改正を提案される決意があるのかないのか、ひとつこの際明確にお答えを願いたいと思います。
  317. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 河野さんの先ほどからのいろいろな御意見、これは日本の福祉国家へ、そうして福祉行政の推進のための御激励のおことばだと思って、ほんとうにこれは感謝をいたしております。私は大蔵大臣のような答弁をいたしましたけれども、それは実際ほめられた程度のものではありませんから、ただ七〇年代のビジョンもまじえてこういうようになればということを申し上げたわけで、御意思に沿ってもっと努力をいたしたいと考えております。  それから医療保険の抜本改正がおくれておりますことは、これは何と申しましても、怠慢だと言われても弁解の辞はございません。そのとおり受け取るべきものだと考えております。それだけにできるだけ早く——御承知のようにいま党のほうで意見調整をやっていただいておりますが、これを急いでいただいて、そうしてできるだけ早い機会に法律案として提案をいたしたい。私も非常に心を急いでおるわけでございますので誠心誠意政府といたしましてもまた党にもお願いをして、そして早く日の目を見ますように、少なくともこの国会の終わりごろにはその筋道ぐらいはお示しのできるようにしたいものだ、かように考えておりますので、よろしくお願いをいたします。
  318. 河野正

    河野(正)委員 いずれこの抜本改正と特例法の延長というものは関連してくると思うのですね。ですから私はこの際、やはりはっきりお尋ねをしておきたいと思いまするのは、この健保抜本改正はいつの時点にこの国会に提案をせられる決意があるのか、これはぜひお伺いしたいと思うのです。そうしませんと、これとやはり特例法の延長とは関連してきますからね。ですから、ただこの国会の終わりごろまでにはまあ筋道だけでもというような抽象的なことでなくて、やはり私ども、この医療保険の抜本改正については、国民の生命と健康を守る立場から非常に重大な関心を持っておるわけですから、そういう意味でやはり厚生大臣の抜本改正に対する決意のほどをここでお示しを願わぬと、論議を進めていくわけにはいかぬと思うのです。そういうようにただ荒筋がというようなことでなく、いつごろまでには厚生大臣の責任において提案をするのだ、そういう決意だけはひとつ、やはりこの際お示しをいただきたいと思います。
  319. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 決意は変わらないのでございますが、御承知のように、抜本改正の内容もまだ明らかにしておりませんのに申し上げるのは恐縮でございますが、とにかく相当各種保険にわたって、そうして今後将来何十年と悔いのない制度にいたしたい、かように考えますると、関係方面、利害相当錯綜するわけでございます。したがいまして、政府考え方をきめて関係の審議会等にはかりました場合に、私は、非常に急いでいただきましても若干の時日を要するのじゃないだろうかと、さように思うわけでございます。したがって私は、昨年の暮れあたりは、この国会の終わりごろにはその関係の審議会も終わって提案をいたしたいと思っておりましたけれども、いまの状況になりますると、提案ということがむずかしいのじゃないだろうか、しかし、少なくともこの国会中に関係審議会に、こういう案でいきたいと思うという諮問のできることにいたしたい。そうして次の国会には必ずその答申をいただいていたしたい。これは私、食言になってはいけませんので、実際それがほんとうに急いで、関の山ではないであろうか。その点をとくと御了承いただきたいと思っているわけであります。
  320. 河野正

    河野(正)委員 いま厚生大臣がお述べになった苦衷をわれわれはわかるわけです。しかしながら、それはいま始ったことじゃないわけですね。この健保抜本改正がもろもろの制度と関連を持ち、またいろいろと複雑な情勢があることは私どもは承知をしておるわけです。そういうものを踏まえて私は特例法というものが二年に限定されたと思うのですね。そこで、いまここに複雑な事情があるとか、あるいは悔いのない制度にするためには時間を要するとかいうようなことは言い開きにならぬと思うのです。いま大体大臣お答え願ったように、今国会ではせめて諮問をする、次の国会にはぜひ提案をしていきたいというような意味の御見解があったと思うのです。そこで私は、やはりこれは健保特例法との関連があるわけですから、そういう意味でやはり健保抜本改正というものは、今国会では諮問をするが、次の国会では提案をするんだ、そういう決意で臨むんだという決意だけはひとつここで重ねてお示しを願いたい。
  321. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、決意をはっきりときめているわけでございますので、ひとつ御信用をお願いできればありがたいと思います。必ずそういたしたいと思って進んでいるわけでございます。
  322. 河野正

    河野(正)委員 これはむしろ私は政治を冒涜するというまことに残念なことであって、この際ぜひ、いまの決意、次の国会には上程するという決意、この決意はひとつ厚生省として生かしてもらわなければならぬということを申し上げておきたいと思います。  そこで、やはりこの健保特例法とも関連がございますし、それからまた、もう一つはいま全国各地で医学部を中心とする大学紛争が行なわれております。その問題とも間接的に関連をいたしますので、若干この際お聞きをしておきたいと思いまするのは、きょう中央社会保険医療協議会が開催をされて、医療費の問題が論議をされるというふうにわれわれは承っております。これは日本医師会が一二・五%、歯科医師会が三二%の引き上げを要求をして、それをどうするかという論議だと思いますけれども、いま申し上げまするように、保険財政とも関連をいたしますし、それから後ほど申し上げまする医学部を中心とする大学紛争、特に無給医局員の問題解決、国立の場合はある程度予算化すればいいわけですけれども、私立大学の場合はやはり何か財源を求めなければ無給医局員の解消ができないという問題もございますので、非常に医療費問題については関心を持っております。そういう意味で、単に医師会とか歯科医師会という立場のみならず、私立大学等においては非常に関心を持っておりますので、医療費問題がどのように推移をいたしておるのか、この際御報告をいただきたいと思う。
  323. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 医療費問題は、御承知のように、中央社会保険医療協議会、中医協できょうから本格的審議に入ってもらうことになりました。いままでこれが三師会から提案をされて、だいぶ時日を要していたのでありますが、支払い側とそれから医療側とで意見に相当開きがあったために今日までになった。私どもとしましては、一日も早く適当な結論を出していただきたいと中医協に向かってお願いをいたしておるわけであります。そういう意味で、ひとつ河野先生の側も早く審議を進めるように御支援を賜わればありがたいと思います。
  324. 河野正

    河野(正)委員 私ども国民立場から申し上げておるのですから、別に私の側というのはないのであって、しいて言えば国民の側ということでございます。  そこで、いま申し上げまするように、いろいろ関心が深いわけですが、この問題の見通しですね。早期に解決することが望ましいということはわれわれわかるわけですけれども、大体いつごろ医療費というものが改善をされるのか。大体の見通しだけでも、この際お聞かせをいただきたいと思うのです。
  325. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私、昨年の暮れにこの職を拝命いたしまして以来、少しでも早くということをお願いをいたしておるわけであります、中医協の会長はじめ中医協の方々に対しまして。その気持ちはいまも変わっておりません。それがやっときょうから本格審議に入れるという状態になったわけでございますので、私のほうから、その見通しはこうであろうということを公に申し上げますことは、中医協の審議を、何といいますか、冒涜とまでまいりませんでも、悪影響を及ぼしてはいけませんので、ただ、念願としてはできるだけ早くという気持ちは変わっておりません。それだけを申し上げたいと思います。
  326. 河野正

    河野(正)委員 これは特に私は、今日全国各地で大学紛争をやっておりますから、あえて取り上げたわけですけれども、単に医療関係者だけの問題ではないという点から、特に私はこの医療費問題を取り上げたわけでございますので、そういう意味でひとつぜひ大臣としても今後努力してもらいたいと思います。  そこでこの際、せっかくですからお尋ねをしておきたいと思うわけでありますが、いま大学紛争、特に医学部を中心としての紛争ですが、これは東大のごときは研修医に端を発して、だんだんと紛争が拡大をした。いまはむしろ無給医局員を中心とする医局制度の問題がやや医学部の紛争の中心になっていると思うのです。その解決のためにはいろんな方法がございます。いままでの封建制を打破するとか、あるいはどう制度を改善したらいいのか、いろいろあると思います。そのうちの一つですけれども、やはり無給医局員を早急に解決をはかるべきじゃないか、こういう考え方が紛争解決の一つの手だてとしてあるわけです。  御承知のように、国立大学の場合は、一部は臨床研究医として手当がことしからは三万五千円支給をされるわけですね。ところが私立大学には、研修医に対しましては予算の手だてが年間四十万円ということで行なわれておりますけれども、無給医局員の手だてについては私立大学で行なわれておらぬわけですね。そこで、いま私立大学では、この問題については非常に頭を痛めておるわけです。私どもは、この私立大学の無給医局員の問題をどう解決していくのか。これは一つは、やはり医療費の問題が解決の一助になろうと思いますけれども、その問題が一つと、それからもう一つは、この無給医局員を解消しなければならぬというのが今日私どもの主張です。ところが残念ながら、この無給医局員の解消の人員というものが、ことしは去年よりも減っておるわけですね。昨年は二千四百五十七人がいわゆる臨床研究医ということで、非常勤職員ということで、定員化はされなかったけれども、何らかの手だてをするということであった。これも無給医局員の解消の一つの一里塚だったと思うのです。ところがことしは千八百人に減っておるわけですね。六百五十七人減っておるわけです。これはまさしく無給医局員解消と逆行する方向じゃないか、私はどうしても納得できないのです。この点についてひとつ文部大臣の御見解をお聞かせいただきたい。
  327. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 河野さんにお答えを申し上げたいと思います。  確かに、東大紛争の直接の原因となりましたのはやはり医局制度、そしてまたその中でも、なかんずく研修医の問題であったと思いますし、また無給医局員の問題だったと思っております。したがいまして、今度の予算におきましても私は特にこの点は大蔵大臣にお願いをいたしまして、研修医のほうは人数もそのまま実は御了承いただいて、しかも一万五千円であったものを、実は三万円と思ったのでございますが、二万七千五百円に決定をいたした。それから今度は御指摘の無給医局員の問題なんでございますが、実はこれは単価のほうは、御案内のとおりに、一万五千円であったものを一躍三万五千円にいたしたわけでございます。しかしながら、その人員のほうが、実を申しますと、御承知のとおりに、四十二年度で千七百九十四人、四十三年度は一応二千四百五十七人と見込んでおりますけれども、はたしてこれが消化できるかどうかというようなこともございまして、一応千八百ということになったわけでございますが、しかし、私、考えますと、やはりいままで一万五千円であったというところに消化できなかったところもあるのじゃないだろうかというふうに思いますので、今度三万五千円に引き上げましたならば、相当人員が利用していただくということになるのじゃないか、あるいは少しオーバーをしてくるというような事態もあり得るのじゃないか、そのときはまあひとつ大蔵大臣に法律の範囲内で行政措置で、もしやれるならばお願いをしたい、かように考えておるような次第でございます。
  328. 河野正

    河野(正)委員 いま申し上げますように、少なくともこの予算に出てきた数字は、無給医局員解消に逆行しておるわけですね。それから、いま文部大臣がいみじくもおっしゃったが、いままでは一万五千円だから別に研究室になる必要はない、たった一万五千円もらって縛りつけられるよりも、アルバイトをすれば十万も十五万にもなるわけですから、そういう気持ちもあったと思うのです。ところが今度は、三万五千円に一躍引き上げられたわけですから、むしろ今度のほうが魅力になるわけですね。ですからむしろ昨年よりもことしの人員のほうが大幅にふやされなければならぬ。この点は文部大臣も若干お答えになったようです。ところが、どうも減っておるものですから、私はこれはどうしても納得できないわけです。ですから、むしろ大学の医学部紛争はもう少し続いたほうがよろしいというふうに大蔵大臣はお考えになっているのではないか、曲がって考えますと。そういう感じもするわけです。そこで、これは何らかの形で改善されぬと、魅力ができたら人間を減らす——むしろ年々歳々臨床研究医ということではなくて、定員化してもらうことが望ましいわけです。一挙に定員化されぬから、その定員化の前段階としてこの研究医制度というものが設けられておるわけですけれども、やはりこの数字というものがふえなければならぬ。減るならやはり定員がふえていかなければならぬ、こういうことにならなければならぬと思うのです。ですから、そういう意味で私どもは、どうしてもいまの臨床研究医のこの施策については納得できませんので、行政上できる範囲においてやれるならばという文部大臣見解もございますから、この際ひとつ大蔵大臣見解もお聞かせをいただきたい、こう考えます。
  329. 福田赳夫

    福田国務大臣 文部大臣とよく協議いたしまして善処いたします。
  330. 河野正

    河野(正)委員 これだけで医学部の大学紛争が解決するということではないと思うけれども、やはりその一助として、ぜひひとつ善処をしてもらいたいと思います。  そこで、時間もございませんからはしょってまいりたいと思いますが、社会保障が福祉国家建設の大きな柱、ところが、いままでの社会保障に対しまする概念は、何か事故があったならばその事故の対策を講ずる。たとえば、病気なら病気が起これば、その病気を治療する、あるいは最低生活を保障する。たとえば生活保護なら生活保護というような最低生活を保障する、こういうようなことが大体従来の社会保障に対しまする概念であったと思うのです。しかし私は、七〇年代の新しい時代の社会保障というものは、それを脱皮をして、むしろいまの、事故があったならばその事後対策をやる、あるいは最低生活を保障するというようなことではなくて、むしろ前向きの対策をはかっていくのが今後の新しい時代に即応する社会保障だ、こう思うのです。  私は、それにはいろいろな方法があると思いますけれども、その一つは、やはり社会保障の分野の中で予防体制を強化する必要があるのじゃないか、こういうふうに思います。たとえば重症心身障害児の対策が行なわれる。ところがこれには先天的、後天的な原因があるわけですね。そういうことになりますと、まず母子の健康管理というものを十分行なうということがこの重症心身障害児を防止する一つの手だてになるわけです。あるいは公害ですね。たとえば水俣病であるとか阿賀野川の水銀中毒、イタイイタイ病、それからまた、先般起こった北九州の米ぬかの油症、こういういろいろな公害がございますが、そういうものを未然に防いでいくという施策を講じていくのが、私は今後の新しい時代の社会保障ではなかろうかというふうに考えるわけです。そういう意味で、この予防体制の強化という点について今後力をより積極的に注いでいくべきではないかというふうに考えるわけですが、この点についてひとつ御見解を承りたい。
  331. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 その点は全く私も同様に考えております。今後の新しい方向はそうでなければならぬ、かように考えております。ただ、いままでやるべきことが相当おくれておりますから、それもあわせてやってまいらなければなりませんが、新生面といえば、ただいまおっしゃるとおり、私は御卓見だ、かように考えます。
  332. 河野正

    河野(正)委員 そこで、いま身障児の問題を取り上げましたが、最近子供の新しい近代病として特発性の脊柱湾曲症、これが大体十一歳から十四歳の子供たちの間に十四、五万ぐらいおる、こういうふうにいわれておる。これは従来はヨーロッパにあったけれども日本にはなかった。ところが、日本の経済がだんだん発展をして国民の生活水準が上がってきた。そこでいろいろな栄養物をとって、栄養摂取のアンバランスからこの子供の近代病といわれる特発性の脊柱湾曲症が非常に多発をしてきた、こういうふうにいわれておるわけですね。ところが、これは疼痛がないものですから、背骨がくの字に曲がって初めてわかるというようなことです。大体この原因というものは栄養摂取のアンバランスだろうといわれておる。この対策をやはり先手先手に打っていかないと、また旧来の社会保障の概念じゃないけれども、事後対策になるわけですね。いま重症心身障害児対策をお尋ねしたわけですけれども、いま非常に大きくクローズアップされてきたこの近代病対策についてどういう御見解をお持ちか。この近代病対策に対しまする見解をこの際あわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  333. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまの、側湾病とちょっといわれておりますが、これもまだ原因が十分わかりません。これからまたそういったようないままでになかったような問題が今後も起こってくるのじゃないだろうか、かように考えます。全くの同意見でございます。なおほかにもまだ病気の原因がわからない、治療法もわからない、それがふえていくというようなことなんかもございます。何といいましても、先ほどおっしゃいましたように、母子保健、それから乳児、幼児の健康診断、それに適切な指針を与えていくということが一つの根幹であろうと思いまするし、また、医学上新生面を開いていくための研究にも十分金を惜しまないでやっていく必要があるだろう、かように思うわけでございます。
  334. 河野正

    河野(正)委員 そこで、もう一つ具体的にお尋ねをしておきたいと思いまするのは、今日は合成食品の時代といわれておる。私ども一日に八十種類ぐらいの食品添加物を摂取しておるわけです。たとえば梅干しだって、たくわんだって、全部食品添加物が使われておる。ですから、もうほとんど添加物が使われない食品はない、こういわれておる。そこで、いますぐ顕在はしないけれども、長年そういう慣習によっていわゆる食品公害、食べものの公害というものが出てくる。その一つが先般北九州の例の米ぬかの油症、これも一つの具体的な例だと思うのです。そこで、当時言っておったわけですが、やはりこういう食品公害に対してはすみやかに食品衛生法の改正というものをはからなければならぬのじゃないか、こういうように思います。そこで、やはりそのつどそのつど手を打っていかなければならぬ。そういう意味で私は、この国会において、この食品公害といわれるもろもろの問題のために食品衛生法の改正案をお出しになる決意があるのかないのか。
  335. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃるとおり、食品の添加物、これはいままでの考え方では害がないと思っていたものが、案外長い時間をかけて害が起こってくるというような事柄もあるわけであります。先般ズルチンを禁止したというのもその一例でございます。いままでの食品衛生法は、とにかく衛生上危害があるという事柄を主にしてやっておったわけでありますが、その危害の程度の測定も、いままで認めておったものでよろしいかどうか、一ぺん洗い直すように、といって、これはなかなか簡単にはまいりませんが、やはり国立衛生試験所等にも進めてもらうようにやっております。  なおまた、危害を与えないと申しましても、一方、栄養改善法というものもあるわけでありますが、それらともにらみ合わせ、食品衛生法の改正をはかって、ただいまおっしゃいますような事柄にこたえることのできるような法律にいたしたい。ただいま検討中でございますが、できるだけ、間に合えばこの国会で御審議をいただきたいと考えております。
  336. 河野正

    河野(正)委員 ぜひひとつ、こういう社会保障の概念を変えていく、むしろ先手先手をとっていくというような意味で、社会保障に対処していただくように特にお願いをしておきたいと思います。  そこで、次は労働関係に移りたいと思いますが、いよいよ春闘ということで、私どももこの賃上げ問題につきましては重大な関心を持っておるわけでございますが、やはり賃上げという問題は経済成長と見合う賃金の設定でなければならぬ。単に額の問題じゃなくて、経済成長と産業構造の変化の中で賃金の設定というものが考えられなければならぬ、こういうように私ども考えておるところでございますが、労働大臣から、この春闘に対しまする政府の心がまえというものについてひとつ御見解をお聞かせいただきたい。
  337. 原健三郎

    ○原国務大臣 御承知のように、そういう経済成長と労働者の賃金等々の関係も十分考慮されて考えるべきものであると思っております。私ども労働省といたしましては、いずれにいたしましても、労使双方において平和的に協調的に話し合いをして、自主的にきめていただきたい、こう思っておりまして、その自主的にきめる段階におきましては、いま申しました経済の成長、労働者の生活充実あるいは企業の内容等々も考慮して、十分平和的に、話し合いにおいて自主的にきめていただきたい、こういうことをこいねがっております。
  338. 河野正

    河野(正)委員 そこで、賃金問題が出てまいりましたから、公務員賃金について簡単にお尋ねをしたいと思います。  御承知のように、今度の公務員賃金は五%アップということで予算化をされておる。ところが、公務員賃金の関係閣僚会議においては、人事院勧告を完全に実施する、こういう申し合わせのようでございます。そこで、こういう五%アップの予算化と完全実施のための勧告、こういう点に矛盾がないのかどうか、ひとつ人事院総裁から一言御見解を承りたい。
  339. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御承知のとおりに、人事院の勧告にあたりましては、私どもは四月現在で民間の従業員四十七、八万の人々の賃金を精密に調べまして、それによって一定の水準を求めて公務員の給与と比較をいたしまして、公務員の給与がおくれておれば、ぜひそれに追いつかせていただきたいというたてまえでずっとやっておりますし、これは今後もそういう方針を堅持してまいりたいと思います。  したがいまして、いま予算の組み方のお話がございましたけれども、これはまた予算技術上のいろいろ御都合もありましょうし、五%というのも別段そう深い根拠はないものとわれわれは考えておりますが、要するに、かくして勧告を申し上げました以上は、この勧告は完全に時期的にも実施していただかれねばならぬ、したがって、予算上の手配は、その際に十分、あらゆる手段を尽くして完全実施のための手を尽くしていただきたい、こういうことに尽きるわけでございます。
  340. 河野正

    河野(正)委員 そこで、それに関連をして三公社五現業の賃金についてお尋ねをしたいと思います。  三公社五現業の賃金紛争は、今日までの経過を振り返ってまいりますると、年々仲裁裁定によって処理をされてきたという傾向がございます。しかし、本来から申し上げますると、やはりその当事者能力というものを最大限に発揮をさして、そして自主解決が行なわれていくということが非常に望ましい方策だと考えるのでございます。そういう意味で、この点について政府のほうからお答えをいただきたい。
  341. 原健三郎

    ○原国務大臣 お尋ねの三公社五現業のいわゆる当事者能力の問題でございますが、この問題につきましては、御承知のように昭和四十年に取りきめがございまして、それによりますと、第一は、当事者能力問題に関する制度的改善については公務員制度審議会で検討する、第二は、それまでの間は公共企業体等当局が当事者能力を発揮できるよう現行制度の合理的運用をはかる、こういう二つの基本的な考え方は明らかになっておるところでございます。  そこで、そういう基本的取りきめに従いまして、政府といたしましてはその後三公社五現業の賃金問題に対処してまいってきておりますが、その結果、昨年と一昨年におきましては、調停の最終段階で示された解決案、すなわち調停案というのが結局仲裁裁定の場において認められまして、調停での決着が仲裁裁定となったので、この点におきましては若干の前進である、まあ一歩前進であったかと思います。  それで、今年のことでございますが、今年の公労協の給与問題につきましては、政府としては、前述の方針に従い、最善の努力を尽くす所存でございますが、願わくは労使におかれましても、十分話し合いを重ねられて、平和的に解決あることを非常に望んでおる次第でございます。
  342. 河野正

    河野(正)委員 時間がございませんので、これに関連をしてひとつ政府関係機関、いわゆる政労協ですね。この政労協というのは、御承知のように労働三法の適用を受けて、公労協とも違いますし、公務員とも違う独自な性格を持つ労働者の団体であるわけです。ところが、ややもいたしますると、公務員がきまり、公労協がきまり、それから政労協、こういう経過をたどってまいりましたのが今日までの実情でございます。しかし、いま申し上げまするように、政労協は政労協としての独自な性格があるわけですから、やっぱりそういう立場でこの賃金問題というものの解決をはからなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。そういう意味で、ひとつ官房長官、あなたこれだけですから、お答えをいただきたい。
  343. 原健三郎

    ○原国務大臣 お尋ねの公庫、公団、事業団等の政府関係機関について、これはもういまお話のあったように、労働組合法が適用されております。これらの機関が業務上民間会社と変わりがないというんじゃないか、もっと自主的にやれというお尋ねでございますが、しかし、その業務の公共性、特殊性にかんがみて、政府または地方公共団体の出資等もあります関係で、その業務運営については、政府の交付金、それから補助金等も入っております。そのために、業務運営については主務大臣、それから大蔵大臣の承認を得なければならぬというようなことが規定されております。でありますから、表面、実際はやれそうでございますが、そういう規定がございますので、職員の給与等の決定に関しては、ある程度これは政府機関——税金等でまかなわれておる関係もございますので、若干やむを得ないのではないかと存じております。私といたしましては、労使当事者が事業の特殊性を十分認識し、自主的にかつ平和的に賃金問題を解決することを期待いたしておるような次第でございます。
  344. 河野正

    河野(正)委員 これは労働大臣期待するのではなくて、労働大臣がそういうふうな指導をしなければならぬわけですね。そういう意味でひとつぜひ指導をやってもらいたいというふうにお願いをします。  そこで、だんだん時間が迫ってまいりましたので、福祉国家建設の基本条件の三本の柱の中の一つが最低賃金制というようなことを先ほど定義をしたわけですから、そこでこの点について一言、二言申し上げてみたいと思います。  すでに御承知のように、昨年、最低賃金というものは全産業一律が望ましい、こういう当時の小川労働大臣見解の表明がございまして、主として審議会に全国全産業一律最賃、この諮問が行なわれておるところでございますが、この中央審議会の答申が大体三月ごろではなかろうかというふうにいわれておるわけでございますが、その見通しについてひとつ御見解をお聞かせいただきたい。
  345. 原健三郎

    ○原国務大臣 いま河野さんの御説明のとおりでございまして、昨年来、最低賃金制をめぐって委員会等の附帯決議もついております。それで、ただいま最低賃金審議会へ答申を求めておりますが、おそくても三月末までにはその答申が出ることになっております。
  346. 河野正

    河野(正)委員 この三月、答申が出ました暁においては、政府としては全国全産業一律最低賃金に関する法律を提案をされまする御決意がありますかどうか。
  347. 原健三郎

    ○原国務大臣 全国全産業一律一体というのは社会党さんの御主張でございまして、私どもも過般の社労委員会における附帯決議もございましたので、そういう趣旨も盛り込んでその審議会に答申を求めております。それで、審議会の答申が出ました段階において労働省の見解等もつけ加えて善処いたしたい。ただいまどういうふうにやるかということはしばらく差し控えさしていただきます。ただし、そういう意味の審議を求めることを審議会に要求しておりますので、三月末までに出ますから、出ました段階においてよくそれを調査し研究して、前向きの姿勢で善処いたしたい、こう思っております。
  348. 河野正

    河野(正)委員 これは、昨年の約束では、全国全産業一律の最賃についての諮問を行ない、その答申が出てきたならば、その答申を受けて法改正を行なうという約束になっているわけですね。ですから、前向きで善処でなくて、もし三月に答申が出てくれば、その答申を受けて法改正の提案を行なうということにならなければならぬわけです。ですから、前向きだとか、何かいろいろ複雑な表現がございましたけれども、約束は約束どおりきちっとこの際明らかにしていただきたい。
  349. 原健三郎

    ○原国務大臣 三月末までに審議会の答申が出ましたならば、その答申を基礎にいたしまして改正案を出す予定にいたしております。
  350. 河野正

    河野(正)委員 そこで三本の柱の二本が終わったわけです。  そこで、最後の完全雇用という社会福祉国家建設の柱が、一本論議として残ってきたわけです。いろいろ申し上げたいことはたくさんございますけれども、申し上げたいことはすでにいままで委員会その他で論議されておりますから、いままで比較的軽視をされたと申しますか、論議の対象にのぼらなかった二点だけを簡単に取り上げてまいりたいと思います。と申し上げますのは、完全雇用を達成する際に、主として今日まで取り上げられた点は、やはり技能を中心とした完全雇用という問題が主として取り上げられてまいりました。ところが、それだけでは完全雇用の達成をすることは不可能なんです。そこで私どもは、その欠けた部分は一体どういう部分があるのか、その点を二点だけ取り上げてみたいと思います。  その一つは、いま日本の老齢者人口というものが非常にふえてきたということは御案内のとおりでございます。しかも核家族時代といって、年寄りを切り離した家族制度というものが最近だんだんと多くなってきたというような風潮もございます。そこで私は、いままで人材銀行であるとか、職業の再訓練であるとかいうような方策がとられてまいりましたけれども、技能のない労働者、技能を持たない老人の再雇用というものを一体どうするのだ。まあ平たいことばで申し上げますると、老人の職安行政ですね。この点がいままで非常に手落ちになっておったと思うのです。  ところが、労働省の調査によりましても、定年退職後七割が再就職しておる。また、技能を持たない老人の求職状況がどういう状況であるのかという調査をしてみますると、かなりの人がやっぱり職を求めておるわけでね。それはたとえばビルの受付であるとか、ビルの掃除夫であるとか、あるいはエレベーターの操縦士——エレベーターのオールドガールですね、そういういろんな雇用面はあるけれども、そういう雇用面というものが、案外まとまって手がつけられておらない。ここでは雇用面に入っておりますけれども、そういう行政というものが今日欠けておったというふうに考えます。そういう意味で私は、老人の職安行政というものを、この際強化する必要があるんじゃないかというふうに考えます。そういう意味で、ひとつその点について御見解をお聞かせいただきたい。
  351. 原健三郎

    ○原国務大臣 御説まことにごもっともでございまして、いままで大体中高年者といいましても、その就職は技能を持っておる人が対象でございましたが、全然特別の技能のない人の就職ということがやはり手抜かりになった点は、認めざるを得ないと思います。実際は高齢者でも、定年になるのが普通五十五歳、それが厚生年金支給開始年齢というのが六十歳でございまして、その五年の間のギャップがございます。こういう五年間のギャップの人で、ことにあまり技能のないような人のために、特に私どもは、いま御注意もございましたが、労働省としては特別なる配慮をいたしたい。  まず、これはこの間も話があったのですが、第一に、中央雇用対策協議会という、そこに雇用主懇談会というのがございますが、これに対してそういう人の、高齢者の雇用促進を要請しております。  第二には、大都市の職業安定所を中心に十三カ所高齢者コーナーというのを特別にこしらえまして、高齢者で、わけてもそういう技能のないような人には特に配慮をするようにと、いま指導をいたしております。  第三番目には、社会福祉法人などというところに協力を求めまして、そういうところで無料職業紹介をやってもらいたい。そういういわゆる社会福祉法人などにお願いいたしまして、無料で職業紹介所をそういう内部につくって、親切にやっていただきたいという指導もいたしております。  さらに、河野さんの御指摘にあった人材銀行なども置きまして、専門的な係員を置いて仕事のあっせんもいたしておる。これから、いままでそういう若干抜け穴のようになっておりましたのによく留意いたしまして、万遺漏なきを期してあっせんをいたしたい、こう思っております。
  352. 河野正

    河野(正)委員 最後に、これは福祉国家建設の三本の柱の完全雇用の最後の問題として、これはぜひ促進をしてもらいたいと思いますのは、身体障害者雇用促進法の問題でございます。これは四十年の八月現在、十五歳以上の身体障害者が百七万存在をいたします。ところが、その百七万のうち職安の窓口で対象になっておりますのが七万六千人です。百七万の身体障害者がおりながら、そのうちの七万六千人だけが職安の窓口の対象になっておる。しかも実際に就職しておるのは六万千五百人であって、約五千人、実数としては四千五十四人が実はあぶれておるわけです。ところが、そういうふうに百万以上の身体障害者がおって、そのうちのほんの一握りが職安の窓口の対象になっておる、こういう実態です。それから身体障害者雇用促進法という法律があって、官公庁と民間事業所では、一定の雇用率というものが規定されておるわけですね。一・三だとか一・五であるとか、事業所によって違いますけれども、雇用率というものが規定されて、それだけはどうしても義務的に雇用しなければならぬ。ところが、民間の雇用達成率というものは、大体半分なんですよ。実際に達成したのが半分で、未達成が半分と、こういう実態です。ですから、身体障害者の雇用促進法はあっても、実際にはそれが効力を発揮しておらぬ。そういうことで、身体障害者というものが雇用面から大きくはみ出しておるわけです。私はこれを救済せぬと、やはり完全雇用率は達成されぬと思うのです。そういう意味で、もう時間がございませんから、最後に一言だけお聞かせをいただきたいと思いますのは、この身体障害者雇用促進法を強化する御意思があるかどうか、この点を最後にお聞かせいただきたいと思います。
  353. 原健三郎

    ○原国務大臣 いまの身体障害者の御説まことにごもっともで、百万以上あるのが、現在就業しておるのがその半ばというような状態にございまして、いろいろあの手この手やっておるようでございますが、その法律等もございまして、その運用等をいたし、現在でもやっておることを申し上げて、最後に法律のことを申し上げたいのですが、いまその職業訓練をこういう人たちのために積極的にやっております。それで、それが身体障害者のほうにおいては、職安へ連絡がなかったりなど非常に支障がございまして、思うようにいきませんが、そういう連絡のあったときには、職業訓練をやるようにあっせんをしてやり、第二には、さいぜんお話の事業主を啓蒙して援助をするようにいたしておりますが、それなんかでも本年度予算では一億円ぐらい事業主に採用の場合には援助等いたしております。また第三には、公共職業安定所に専門の職員を置いてやっております。それから四十四年度に今度は身体障害者を雇う事業主に対しては、身体障害者雇用奨励金というのを月額にして八千円、十二カ月支給するという、これは新たにこういう制度を設けております。それから身体障害者社会復帰センターというのをことし新設する等、万般やっておりますが、法律を改正するかどうか、これは法律だけでいきませんので、よほど雇用主、事業主あるいは世間一般等々も連絡をして話し合い、そういう普及、宣伝、PR等々も兼ねてやることによって初めて効果が出てくるので、まだ非常に日も浅いのですが、だんだんやりたい、法律改正等については研究して善処いたしたい、こう思っております。
  354. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて河野君の質疑は終了いたしました。  明日は、午前九時四十分より委員会を開会し、塚本三郎君、八木一男君、太田一夫君、田中昭二君の一般質疑を行なうことといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十七分散会