○
石川委員 いま一応の決意だけを伺ったわけでありますけれ
ども、軍事
関係の予算が多いからというお話でございましたが、
日本の場合には、幸いなことに平和憲法のおかげで、軍事
関係という回りくどい試行錯誤をしなくても済む利点というものを大いに活用しなければならぬ、こう思っておるわけでありますけれ
ども、特にいま文部
大臣からお話がありましたように、基礎研究の体制というものから手をつけないと、いたずらに応用、開発の面だけふくらましただけでは、どうしても
ほんとうの創造力というものは出てこない。
日本人はそういう創造力を持っている、それが出てこないということは、体制上の欠陥が非常に災いしているというふうにわれわれは
考えているわけであります。そういう点で、文部
大臣の
答弁は私は多とするものであります。
そこで問題は、体制をつくるための問題点であります。それはどういうことかといいますと、実は、ここで大学紛争との
関係で、この科学技術の基本政策というものに触れなければならぬと思っております。大学問題でゲバ棒をふるって一挙に解決をしようというようなあのやり方については、われわれは大いに批判をし、反対をいたしますけれ
ども、しかし、大学問題は、ただ単に大学だけの問題ではなくて、幼児教育を含めての小、中、高等学校にまたがる問題が、前提として解決をされなければならぬと思っております。しかし、ここではそういうことを申し上げる時間の余裕はありませんで、大学問題だけに限定をいたしますけれ
ども、実はこの大学問題が出ましてから、いろいろな連中と私も
話し合いました。そこで、彼らが言っているのは、研究費が少ないということはもちろんあります。研究費が少ないということはありますけれ
ども、研究費が自由に使えないという問題が、それ以上の切実な問題になっているということをお
考えをいただかなければなりません。そのときに、ちょうど
政府提案でもって科学技術基本法というものが提案をされました。これがまともに攻撃の目標になっておる事実を文部
大臣御存じかどうか知りません。しかし、これは、この体制、この科学技術基本法に盛られた精神、これがあるから、
日本の科学技術の体制というものはだめなんだ、この体制を粉砕しなければならぬという、この心情を
理解をしてやらなければ、
ほんとうに大学問題の紛争の解決に役立たないのではなかろうか、私はこういう感じがしてならないので、あえて申し上げるわけであります。
その理由はどういうところにあるかと申しますと、いろいろこまかい事情があるのでありますけれ
ども、
政府におきましては、科学技術の主導権というものを科学者やあるいは大学から取って、科学技術費用というものの分配権を自分の手に剥奪しようという
考え方がある。たとえば科研費というものがありますけれ
ども、科研費がことしは、たぶん去年五十億が六十億になっておると思います。これは自由に使える金であります。ところが、そのほかに、科学技術研究費補助金というのがあります。これは去年は百十二億で、ことし幾らになっておるか、まだ調べておりませんけれ
ども、大体科研費の倍であります。この科学技術研究費補助金というのは、
政府のほうで一定の目的を持って配分をする金であります。科研費というのは、純粋に学者の中で自由な研究に使われている予算であったわけでありますけれ
ども、このほうよりも、
政府が割り当てる、
政府の命令によって割り当てる金のほうが倍以上多い。これはちょっとおかしいのではないか。もっと自由な研究体制にすべきではないか。ところが、この科研費それ自体が、御承知のように、いままで
日本学術
会議が配分をしておったものを、非常に重点配分ができておらぬじゃないか、研究の成果が見えないじゃないかというようなことから端を発しまして、学術審議会の中におけるこの研究費の特別
委員会というものを設けて、そこで配分権を剥奪をするという事態になりました。そういうことで、学術
会議の中で、特に各大学から非常な反発があって、この研究費は
返還をするとかどうとかいういろいろな紛争があったわけです。これはなるほど
政府の側から見れば、自分の思ったような目的、基礎研究的なものがほしいというふうにお
考えになるでしょう。しかしながら、学者のほうからいえば、研究の自由がほしいのです。それが全部こういう形を経てどんどん剥奪をされるということに対して非常な反発がある。そこにかてて加えて、科学技術基本法というものを見ると、国家的なビッグプロジェクト、そういうものにつながるところの研究に対しては存分に——存分ではありませんけれ
ども、金を出してあげましょう、そして自然科学の中のそういうビッグプロジェクトだけについて、手厚い保護を与えようとするのが科学技術基本法の精神であります。そうして、置いておかれるのは、人文科学、社会科学、それからその他の自然科学を含めての基礎研究というものが置いておかれる。こういうふうに権力と大学当局が密着したようなこういう体制を離さない限りは、大学紛争は断じてほこをおさめるわけにはいかぬというのが彼らの言い分であります。全面的に彼らの言い分を私は支持するつもりはございませんけれ
ども、しかし、その心情は十分にぼくは
理解してやる必要があるのではなかろうかと思うし、また、そういう心情を
理解した上でなければ、大学問題あるいはひいて全体の学問体制というものの基本的な解決にはなり得ないのではないか、こういう懸念を私は持っているわけであります。
したがって、この大学問題に限って言いますと、そういう科学技術の
日本の国家の研究体制というものを学者の自主的な運営にまかしてやる。たとえば学術審議会が単なる諮問機関であるとして、あるいは科学技術
会議が単なる諮問機関として諮問に答えるというまでは、それは私はあってもいいと思うのでありますけれ
ども、自主的にものを解決するというときに、やはり学者の問題は学者にまかせるという体制をつくらない限りは、この学生の不満、若手学者の不満というものは絶対に解消しない、こういう懸念を持っているわけであります。
したがって、結論的な質問を申し上げますけれ
ども、科学技術基本法というものは先国会で廃案になりました。あらためて議員立法として出そうかという動きがあるわけでありますけれ
ども、そのことについても、わが党は非常にちゅうちょをいたしております。それはなぜかというと、どういう形であれ、基本法を振興法というように変えたという場合であっても、片手落ちの形でこれだけが推進されるということに対して、若手学者あるいはそれに反応するところの大学生が、産学一体の体制であるということで鋭く攻撃をし、これが大学紛争の火に油を注ぐ結果になるという懸念を私は強く持っております。したがって、この科学技術基本法を出すならば、この車の両輪であるところの学術研究基本法、あるいは振興法でもけっこうでありますけれ
ども、あるいは科学研究基本法、そういった学問全体の、自然科学、人文科学、社会科学を含めた体制というものについての基本法というものを確立をして、その中で基礎研究を特に重視するという体制をつくったようなものが一方にあり、そうして科学技術基本法というものが別個に出るということであるならば、これは完ぺきなものになるでありましょうけれ
ども、一方だけが出るということについては、これはいまの事態においては決して得策ではない。これは
科学技術庁長官もよく聞いておいてもらいたいと思うのでありますけれ
ども、そういう点で、文部
大臣としては、科学技術基本法、あるいはまたそういうものに見合った形での学術研究基本法というものを早急に用意をする。いたずらに中教審をやって、古くさい人を集めて大学問題の改革をやっても、いい案は出ないと思いますが、これはこの場では質問を申し上げませんけれ
ども、そういう問題から片づけていかなければいかぬのじゃないかという気がするわけなのです。この点について両
大臣の御
意見をひとつ伺いたい。