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1969-02-10 第61回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月十日(月曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 櫻内 義雄君 理事 田中 龍夫君    理事 塚原 俊郎君 理事 中野 四郎君    理事 八木 徹雄君 理事 大原  亨君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       相川 勝六君    赤澤 正道君       植木庚子郎君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       倉成  正君    小坂善太郎君       田中伊三次君    竹内 黎一君       灘尾 弘吉君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 頼三君       岡田 利春君    角屋堅次郎君       川崎 寛治君    久保 三郎君       田中 武夫君    高田 富之君       楯 兼次郎君    畑   和君       八木 一男君    山内  広君       麻生 良方君    本島百合子君       吉田 之久君    有島 重武君       伏木 和雄君    林  百郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 西郷吉之助君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 長谷川四郎君         通商産業大臣  大平 正芳君         運 輸 大 臣 原田  憲君         郵 政 大 臣 河本 敏夫君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 坪川 信三君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       野田 武夫君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 有田 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣官房長官 木村 俊夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁総務         部会計課長   高橋 定夫君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         公安調査庁長官 吉橋 敏雄君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省理財局長 青山  俊君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省農地局長 中野 和仁君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         通商産業省公益         事業局長    本田 早苗君         運輸政務次官  村上 達雄君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         労働大臣官房長 岡部 實夫君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      村上 茂利君         建設省住宅局長 大津留 温君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十日  委員福家俊一君、阪上安太郎君、山中吾郎君、  小沢貞孝小川新一郎君及び沖本泰幸辞任に  つき、その補欠として松浦周太郎君、岡田利春  君、八木一男君、本島百合子君、有島重武君及  び伏木和雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田利春君、八木一男君及び本島百合子君  辞任につき、その補欠として阪上安太郎君、山  中吾郎君及び吉田之久君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算  昭和四十四年度特別会計予算  昭和四十四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算、右三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。     —————————————
  3. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 防衛庁長官有田喜一君より、去る八日の金沢市における自衛隊F104墜落事故に関し発言を求められております。この際これを許します。防衛庁長官有田喜一君。
  4. 有田喜一

    有田国務大臣 去る二月八日金沢市において発生いたしました自衛隊機F104の墜落事故について、その概要を御報告申し上げます。  今回の事故は、その航空機墜落場所金沢市の住宅地域であったために、その被害は相当大きく、死者四名、負傷者十七名、家屋の全焼十四戸、半焼四戸、小破七戸、屋根等の破損約二十五戸を数えまして、当地域の住民の方々生命財産に多大の被害を与えたことは、まことに遺憾にたえないところであります。被害を受けられた方々に対してはもちろんのこと、広く国民皆さんに対して深くおわびを申し上げる次第でございます。とりわけ、不幸にしてとうとい生命を失われた四名の方々に対しては、つつしんで哀悼の意を表し、また傷ついた方々に対しては、一日も早く御全快あらんことを心からお祈りいたす次第であります。  私はこの事故を聞いてじっとしておれませず、とりあえずあの日、即日現地に向かいまして、実地に被害の実情を調査いたしますとともに、なくなられた方々の御冥福をお祈りし、かつ、御遺族及び被害を受けられた方々に直接お目にかかりお見舞いを申し上げ、かつ、おわびを申し上げたような次第でございます。  この事故機は、小松の第六航空団に所属する航空機でありまして、去る二月一日以降同航空団所属の他の航空機とともに、茨城百里基地において訓練をしておりましたが、訓練を終了いたしまして、二月八日の十一時過ぎに百里を立ちまして小松基地に向けて出発した六機のうちの一機でございます。他の五機は、事故発生の時刻に相前後して無事に小松基地に帰着いたしましたが、同機小松基地着陸の寸前に墜落し、今回の惨事を起こしたものでございます。  防衛庁といたしましては、直ちに事務次官を長とする事故対策委員会を設置いたしまして、被害を受けられた方々に対して誠意ある補償措置を講ずるとともに、鋭意事故原因究明と今後の事故防止対策の樹立につとめておるような次第でございます。  現在までの調査結果によりますと、この事故機は、小松基地に対して着陸姿勢に入った時点において落雷を受けまして、操縦不能におちいって墜落したものと思われます。  私といたしましては、まず何をおいても被害を受けられた方々に対する補償に最善の方途を講じ、誠意をもってこれに当たり、そうして事故の真の原因究明いたしまして、特に航空機進入経路などについて再検討を行ないますとともに、気象の変化に対する対策を研究せしめまして、再びこの種の事故発生しないように万全の策をとる所存でございます。  私は、ここに重ねてとうとい生命を失われた方々の御冥福を心からお祈りするとともに、御遺族をはじめ、被害を受けられた方々、そうして御迷惑をおかけした金沢市民方々、そうして広く国民皆さんに深くおわびを申すとともに、本事故に関しまして格段の御協力、御援助をいただきました石川県及び金沢市の御当局並びに地元の警察及び消防その他の関係方々に対して厚くお礼を申し上げまして、事故の概容の御報告を終わりたいと存じます。     —————————————
  5. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 岡田利春君。
  6. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、石炭問題に入る前に、ただいま報告のありました金沢におけるF104ジェット戦闘機墜落事故に関連して御質問いたしたいと存じます。  まず、私は社会党を代表いたしまして、今回のなくなられた犠牲者に対して心から哀悼の意を表するとともに、また被災者方々に心よりお見舞いを申し上げる次第でございます。  特に今回の事故は、いま報告にありましたように、おとついの予算委員会での発生当時の報告よりも、予想以上に上回った大事故となりまして、しかもこの金沢周辺における事故は、単に今回だけの事故ではありません。すでに報道されておりますように、一昨年十二月に同じ機種F104ジェット機が落雷のために墜落をしておるという事故がございます。また同日、全日空のフレンドシップも同様機首レーダーが破損されたという事故がございます。また、昨年の一月には、同機が同じく雷の被害を受けて機首レーダーが破壊をされた。これ以外に、同地方で二件の航空事故があるといわれておるわけです。いわば今回の事故は、これらの経過から見れば、起こるべくして起きた事故である、このように私は指摘をしなければならないと思います。  私は、そういう意味において、特に国防会議最高責任者である佐藤総理の心境と、この事故に対する所信をこの際お伺いいたしたいのであります。
  7. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もまことに残念な事故が起きた、かように考えておりまして、被災者方々に対し、死者並びに負傷された方に対して心からお悔やみとお見舞いを申し上げる次第であります。  そこで、ただいまも報告がありましたように、いろいろの原因があるだろうと思いますので、簡単に調査を終わるわけにいかない。部内におきまして事務次官を長とする調査研究会をさっそく開くことにいたしまして、そうして十分その原因調査して、しかる上で対策を立てたい、かように考えております。  いずれにいたしましても、市街地の上でかような事故が起こり、そうしてそれが火災また多数の被害者を生じたということ、まことに残念にたえません。事柄が雷撃であったといたしましても、飛行機そのものにそういう雷に対する防護施設が十分であるかどうか、それなども十分考えなければならないし、避け得るものかどうか、また通常通る航空路として適当なりやいなや、これなども考えなければならぬ、かように考えます。不幸中の幸いではありますが、パイロットは無事に帰っておりますから、いわゆる責任探求上はこと欠かないんじゃないだろうか、かように思いますので、十分調査の上、その所在も明らかにし、同時にまた、今後の対策に資したい、かように考えております。  また、不幸にしてなくなられたとか、あるいは火災にあわれたとか、あるいは負傷されたとか、こういうような方々に対しての補償措置については万全を期したい、かように思っております。
  8. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど述べましたように、私は、防衛庁としては、昭和四十二年及び四十三年の事故に対して、当然これらは十分調査をされ、そしてまたこれらの対策というものがすでに報告されておると思うわけです。一体この報告書はありますか。この報告書には一体どういうことが書いてあるか、どういう対策を立てておったのか、この際明らかにしてもらいたいと思うのです。
  9. 有田喜一

    有田国務大臣 いままでの事故に対しましてそれぞれの対策をやっておったのですが、しかしそれが十分でないことは、今回の事故によって明らかになりました。いままでどういう報告書があって、どういうことになっておったということは、政府委員をして答弁させたいと思います。
  10. 宍戸基男

    宍戸政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、この前も落雷と思われる事故がございました。いろいろ当時も詳しい調査をいたしまして、気象等調査もいたしました。特に具体的に落雷時における防護措置というふうなことを考えまして、たとえば機体の各構成部分を接続しております電位差をなくす電線としましてボンディングワイヤというものがございますが、これで機体構造部構成部位あるいはいろいろな翼、そういったいろいろな部分を接続することによりまして局部的に集中荷電をすることを防止するというふうな措置を、その当時具体的にとったわけでございます。そのほか、そういうごく技術的な措置のほかに、一般的にパイロット全体に対しまして、要するに落雷に気をつける、特に夏などはああいう雲なんかではっきりいたしますけれども、冬等はなかなかわからないのが通常でございますけれども、そういったことにできるだけ気をつけるというふうなことをパイロットに徹底さすというふうな措置も同時にとったわけでございます。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 では、この前二回の事故について、当然これはもう調査をされ、対策というものが具体的に立てられておると思うのです。また、こういう報告が具体的になされておると思うわけです。この報告書は公表できますか。委員会に提出できますか。——これはできるかどうか、書類を出せるかどうかということですから、当然大臣が答弁しなければいかぬですよ。
  12. 有田喜一

    有田国務大臣 報告書につきましては、他日報告ができると思いますけれども、そういう考えでおりますから……。(岡田(利)委員「できるんですね」と呼ぶ)ええ、できる。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はこういう事故が二度にわたって起き、しかも一年後に今回の事故発生をした。しかも、全日空においては、当日この気象条件判断いたして、非常に危険であるという判断の中から当時欠航をいたしていたわけです。しかも、茨城百里基地から出発するときには天候条件が非常に思わしくない、見合わせるようにという指示を出しておる。しかし、一時間後には、その後気象というものはよくなるであろう、こういう判断のもとに小松基地飛行することを指示いたしておるわけです。こういう情勢から見れば気象条件判断にきわめて誤りがあった。このように言わざるを得ませんし、また、当日金沢地方はひょうが降り、雷が発生して視界九キロ、こういわれておるわけです。しかも、雪起こしという積乱雲が発生をしておったことも確認をされておるわけです。こういう点から見れば、いままでの事故に対する反省なり調査なり対策というものが、徹底的に立てられていないからこういうあやまちが三たび繰り返された。このことは私は明らかだと思うわけです。この点の責任というものは当然明らかにされなければならぬと私は思うのですが、長官としてはいかがですか。
  14. 有田喜一

    有田国務大臣 もちろん気象条件の把握につきましていま検討中でございますけれども、甘かったじゃないかという考えをもっていま検討しておりますが、ただあの際、先ほども御説明申し上げましたようにあの事故の起きた前後に七分間くらいの差をもって五機が無事に入っておるのですね。あの事故が起きた前に二機が入っておる。そのあとも三機が無事に入っておる、こういう状況でございますので、その辺のところを気象条件はどうであったかというようなことをいま検討調査中でございます。そういう事実があったことはひとつ御了解を願いたい。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 他の飛行機が無事着陸できたから幸いだと思いますけれども、しかし、毎年こういう同じ時期に同じ事故を起こしておるのでありますから、むしろ当然これに対する対策というものが明確に立てられていなければならぬと思うのです。自衛隊なるがゆえに、特に演習の目的もないのに、そういう気象条件にあるにかかわらず、前二回事故があるにかかわらず、この点を甘く判断した。そうして、茨城の百里から小松基地飛行を命じた。このことは私はきわめて問題だと思うわけなんです。ですから、いままでの分析ができ、対策ができておれば、当然指揮する指揮官判断としてはこの飛行については安全性をとって一応見合わせる、こういう措置をとられることがきわめて当然だと思うわけです。この点は今度の事故調査するしないにかかわらずいままで事故があるわけですから、きわめて私は重大な責任である、こう考えるわけです。  この点、特に私は後日あらためて同僚議員から問題の指摘もあると思いますので、次に飛行経路変更について検討する、こう長官は言われている。しかしながら、この飛行経路昭和三十七年の五月にコースが設定をされておるわけです。当時この被災地たんぼ地帯であったことも事実であります。そうして昭和三十七年にこのコースが決定されて、昭和四十二年、四十三年と連続事故を起こしている。当時すでにもうこの地域住宅街であった。この点が徹底的に調査されて対策を立てておれば事前にわかることなのです。にかかわらず、コース変更をしないで事故を起こし、この事故を契機にして今度はコース検討を行なうというのは、すでにおそいではないか。ほかの事情と違うのです。すでにこういう関連する事故が二回にわたって起きておるのでありますから、当然事前コース変更というものはなされなければならなかった。この点は防衛庁として非常に甘い判断であり、対策としてはずさんであったのではないか。だから、この事故というものは当然防衛庁自身が全責任を負わなければならないと私は考える。この点についてはいかがですか。
  16. 有田喜一

    有田国務大臣 今回の事故を起こした飛行機経路は臨機の措置をとりまして、普通の経路と違う進入航路をとって、そうしてレーダーによって来ておったのです。そこが問題なんです。だから、いま究明しているのはそこなんでございますが、この事故の起こった、落下傘でおりたパイロットの位置と、あの飛行機墜落した場所が二キロ以上離れておる。そこで目撃者がいろいろなことを言っておりますし、ことに墜落機の落ちた方向を見ますと、小松寄りじゃなくて、むしろ逆の方向を向いておるのです。そこで目撃者が言うのには、あの金沢から海岸寄りのほうを通って、そこでuターンというか、飛行機が曲がってこちら向けになったというようなことも言われておるのでございますけれども、その辺のところをいま原因究明をやりおる最中でございまして、こうだということをこの機会に断言はいたしませんけれども、そういうようなことがいま言われておるのでございますが、ひとつ時日をかけて究明したい、かように考えております。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 こういう金沢地区のように毎年毎年事故を起こすところは、市街地墜落の場合でも絶対心配がないという体制をとらなければならないし、そういうことでコース変更も当然考えなければならぬと思うわけです。しかしながら、これは単に金沢地区だけではなくして、市街地上空を通過して着陸しなければならぬ飛行場全国に非常に多いわけです。自衛隊海上自衛隊、あるいはまた米軍基地においても同様であります。あるいはまた民間航空の場合についても、そういう地点がございます。これらについては当然再検討されなければならぬ問題であるし、むしろこういう地点軍事基地とかそういう基地を設けること自体に問題があるのではないか。単にコース変更とかを考えておりますけれども、コース変更だけでは解決しないのです。コース変更をして市街地を通らないとすれば、飛行場は使えない。そういう意味では一体コース変更だけを検討するのか、こういう基地あり方自体にさかのぼって基本的に検討する考え方があるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  18. 有田喜一

    有田国務大臣 まずコースの再検討といいますか、これは全国基地において総点検いたしたいと思っておりますが、その他事故防止対策というものを——ひとりコース変更ばかりでなくて、その他の面においても防止対策を今後一そう徹底的にやっていきたい、かように考えておるわけであります。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろん事故防止というものは全般的に常に行なわなければなりません。しかしながら、この事故をきっかけにして当面やらなければならぬのは、そういう進入コースというものが、レーダー誘導装置着陸をする場合には市街地上空を通る、この基本的な問題をやはり解決しなければ、国民生命財産を守る自衛隊飛行機が飛ぶために、国民は逆に不安におののくということになる。この命題を解決するためには、特にこの点は重点問題として、この基地あり方自体について基本的に私は検討すべきである、かように考えるわけです。この点を全般的な中でも特に重点的に考えるべきである、かように私は思うのでありますが、この点はいかがですか。
  20. 有田喜一

    有田国務大臣 いま事故原因究明をやりおる最中でございますから、いま直ちにこの基地をどうする、ああするという段階までいっていないのでございますが、私としては事故原因究明を徹底的にやって、その上に立って対処いたしたい、かように考えております。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 事故は、今日の基地状況を見れば、いつでも起きる条件がそろっておるのでございます。ですから、今日の事故原因究明をすることももちろん大事でございますが、特にそれぞれ全国にあるこういう基地についても、当然根本的に検討するという姿勢がなければならないと思うわけです。特にこの点については長官が勇断をもって、決意をもって、これに対処するように、私は強く要望をいたしておきます。  特に今回の機種であるF104J戦闘機全天候機であります。しかも、この機種が導入されて以来、非常に事故が起きて、その事故責任を負ってやめた人もおるぐらい、非常に事故の多かった飛行機であります。そして、そのたびに検討し、改良を加えられてきた、こういう経過を実は持っておるわけです。そういたしますと、単にこれはそういう気象条件その他を検討するよりも、機種そのものについて根本的にやはり検討しなければならぬのではないか、このように私は考えるわけであります。しかも、滑空距離は高度の七倍で七千メートルある、脱出は高度三百メートルでもできる、このようにいわれておるF104ジェット機でありますから、そういう点では、機種そのものについても、この際根本的に検討する必要があると考えるのでありますが、この点についてはいかがですか。
  22. 有田喜一

    有田国務大臣 いまF104に対しましては、雷に対する避雷装置といいますか、それをもっと徹底的に技術的に研究することが、私は先決だと思っております。そういうところは今後大いにつとめていきたい、かように考えております。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま長官は、避雷装置について徹底的に究明をしていきたい、こう言われております。もちろんそれも必要でありましょう。しかしながら、今回の事故というのは別に練習の目的があって飛んでいたわけではないわけでありますから、そういう意味では、やはり自衛隊なるがゆえに安全性を極度に無視する、こういう思想的傾向はやはり依然として体質にしみついているのではないのか。また、この自衛隊の行動や自衛隊飛行機が離陸することに伴う国民の安全の問題について、十二分な配慮が自衛隊なるがゆえに払われていないのではないか。そういう自衛隊の体質から、前二回事故があるけれども、その対策がおくれる、また、今回の事故についても非常に判断が甘くなる、こういう傾向を依然としてたどっておると私は思うのであります。自衛隊を取り巻く環境として、国民生命と安全を守る、そういう面について一体どうなのか。特に軍事行動でないのにかかわらず、普通一般の行動にあるのにかかわらず、こういう経験のある気象条件を無視するという態度がいけないのであります。この安全性についてどういう基本的な態度を持っておるか、この際明確にしていただきたいと思います。
  24. 有田喜一

    有田国務大臣 先ほど言いましたように、この気象条件に対する見方の問題があるわけでございます。ここに見方が甘くなかったかどうかということをいま究明中なのでございますが、一般の航空機なれば安全性をとります。私のほうも、普通の場合と違って戦闘機でございますが、しかし、訓練のような場合はもっと安全性を期さなければならぬという考え方もありまして、そういうところをいま究明中でございますので、こういうようにいたすということは、方向としてはもちろんそういうことを考えておりますけれども、結論的にこういたしますということは、いまここに表明できない段階であることを御了知願いたいと思います。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、さらに飛行士の自主的な判断の問題や、あるいはまた脱出に対する基準というものが一体あるのかどうか、こういう問題についても触れて、この際聞いておきたいと思うわけです。特に幾ら司令官が指令をいたしましても、その飛行機飛行中に、どうもこれはやはり従来の経験あるいは従来の指示からいって、雷起こしのような積乱雲である、これに入ることは危険であるというような判断をした場合には、自主的にコース変更ができるような仕組みになっておるのですか。こういう飛行士の自主的な判断については、一体指揮命令系統はどうなっておるのか、この点を認められているのかどうか、また、脱出をする判断については、防衛庁は一体どういう訓練をしておるのか、どういう指示を具体的に与えておるのか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  26. 有田喜一

    有田国務大臣 そういった航空事故のある場合には、パイロットはできるだけ人家を避けて、たとえばあの場合だったら海岸寄りのほうにかじをとるという、それを第一にやるように、ふだんから通達し訓練がしてあるわけでございます。今回の場合は、雷によって、かじをとろうと思ってもきかなかったというようなことを聞いておりますが、しかしそれは、いまパイロットが幸いにして生き残っておりますから、もっとそれを究明して、はたしてそうであったかどうか、いろいろなことをいまやっておる最中でございます。一応ふだんの私らの訓練としては、いま申したようなことを常にしっかりとやらせておるわけでございます。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の質問に対する長官の答弁としては、さっぱり理解ができませんけれども、残念ながら時間がありませんから、この際、特に今回の事故については徹底的に究明をする、しかしその究明のしかたが、自衛隊のいわゆる指揮官判断をする管理者の責を免れるような責任の追及のしかたでは、国民の期待にはこたえられないのであります。むしろ気象条件判断については、民間の気象条件の研究者の権威者もおるでしょうし、いろいろな点でむしろ広く民間の方々判断を求めて、この問題は解明されなければ、国民は承知しないと思うわけです。そういう徹底した態勢で究明をする用意があるのかどうか。そしてそういう上に立って、政府の責任というものを明確にすべきだ、私はかように考えるわけです。  そしてまた、遺家族の補償については当然のことであります。万全な援護と補償措置をすることは当然のことであります。すみやかにやることも当然でありましょう。そういう考え方があるかどうか、この際承っておきたいと思います。
  28. 有田喜一

    有田国務大臣 まず、事故防止対策につきまして、あるいは原因究明につきましては、いまやっております対策委員会におきまして究明をやっていきたい、そして第三者の御批判も仰ぎたい、かように思っています。  それから補償対策は、先ほど言いましたように誠意をもってやりたい。そして地元の方々も、市長さんを窓口にして防衛庁と話し合いをする、こういうように向こうからも申し出を受けておりますから、私らはあくまでも誠意をもってすみやかにやっていきたい、かように考えております。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 今度の事故は、別に秘密事項というものはないわけですよ。被害を受けたのは国民の側ですから。それを自衛隊だけで、関係者だけで調査をして、その後民間の意見を聞く、これでは国民は納得しないと思うのです。これでは、結局はもう自衛隊調査をしてしまえば、そのあとの調査というものはいわばおざなり、おつき合い程度ということになる、国民はそういう印象を受けるでありましょう。むしろその点については初めからそういうかまえで調査検討をする、対策を立てる、責任のあるところは責任を明確にする、このことが遺族に対しても当然政府の態度でなければなりませんし、また国民を納得させる道だと私は考えるわけです。この際、総理の答弁をお願いいたしたいと思います。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまとりあえず自衛隊自身でやっております。私はそのこと自身がそう国民の納得のできない理由ではないだろうと思います。しかしこれは非常に簡単なものなのか、非常に複雑なものか、そこらのところは一応手がけてみないとちょっとわからないと思いますね。ことに避雷施設等になりますと、よほどそのほうの専門家の意見も十分聞く必要があるだろうと思うし、あるいはまた指導上の、操縦上の問題になってきたりすると、いまのような原因が不明だということになると、そこで外部の力も、お知恵も拝借する、こういうような段取りになるのじゃないかと思います。いま問題は不明確にしておくわけにはいかない、やはり徹底して究明しなければならぬ、そこらに国民の納得のいく場合といかない場合とあるだろうと、かように私思います。いずれにいたしましても、国としてもこれは大事な自衛隊航空機、それが役に立たないということになっては困りますから、責任を持って、調査は万全を期して、そうして国民に明確にその原因をお話しすることができるようにしたいと、かように思っております。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 特に本件については、国民生命財産を守る自衛隊でありますから、国民に少なくとも安心感を与える、国民の納得のできるようにひとつこの点は解明をし、政府はその責任を明確にする、このことを強く要望いたしまして、私は次の質問に参りたいと思います。  まず石炭問題でございますけれども、わが国の石炭政策は、昭和三十一年以来実に十一年間、その施策を推進してまいったのであります。しかもこの十一年の間に、実に八百四十一の炭鉱は百五十八になりました。二十八万二千五百九十八人の労働者は今日九万一千八百七十三人となりました。実に、山を追われた労働者は十九万人に達しておるわけです。しかも能率においては、一人一カ月当たり一四・二トンの能率は四二・二トン、すなわち三倍に上がっているわけです。しかし一方炭鉱災害は激増いたしまして、この間に炭鉱労働者は六千六百七十九人殉職をいたしました。重傷者は実に二十七万百六人という多数に達しておるのであります。昭和三十八年の三井三池の爆発事故による四百五十八人の殉職者を出した事故を頂点として、重大災害は二百件に達しております。  しかしながら、第三次答申で一千億の企業負債の肩がわりをいたしましたけれども、その肩がわり第一回目が終わったとたんに大日本炭鉱は倒産をする、九州鉱山が会社更生法の適用を受ける、大辻炭鉱が閉山する、こういう事態になって、石炭は依然として危機から脱することはできなかったわけです。  政府はこのたび第四次答申を受けて、一月十日この答申に基づいて閣議決定をされ、当面の石炭政策を定められたわけでありますが、この一連の経過にかんがみて、今日の石炭政策に対する総理の所信を、この際私は承っておきたいと思うのであります。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  岡田君御指摘のように、三十一年以来数回にわたって石炭対策を立てて、その対策を立てたその当時におきましては、一応もっともだという対策は立てられたと思います。しかしながら、なおそれが効果をあげることができない、今日のような状態になっている、今回また答申を得てこれに対策を立てようという、そういうことでございますが、これは私が申し上げるまでもなく、石炭産業自体、これはやはり国のエネルギー源、同時に原料炭であると、こういう意味において、それを確保したいという、この産業をつぶしちゃならないという、そこから起きておると思います。   〔委員長退席、中野(四)委員長代理着席〕  私が用途を申し上げるまでもなく、鉄鋼生産には欠くことのできない原料炭でありますし、また一般炭におきましても、発電用その他なお需要がございます。そういうことを考えると、この産業はやはり再建していかなければならない。また多数の労務者——労務者がよほど減ったとはいいながら、まだ九万前後の労務者がここで働いておる、その職場のことも考えて、この産業を残していかなければならない、それが今回第四次と申しますか、その答申と取り組む、こういうことになった、かように思います。  いろいろ考えさせられることは多いのでございますが、まず第一の問題として、これだけの対策を立てても残していかなければならないことはなぜか、これはただいまのような点でおわかりがいくだろうと思います。なおその中身の詳細については、後ほどお答えすることにいたします。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は今回の石炭政策について、特に第三次答申の実施と同時に、これが失敗をした、そして第四次の答申を求め、石炭鉱業審議会は第四次答申を出したわけです。しかし残念ながら、この石炭答申にはやはりいままでの政策に対する反省というものがないわけです。また、政府が今度の答申を受けて政策を決定したのにあたっても、そういう反省が乏しいのではないか、私はこういう判断をせざるを得ないわけです。この点については、そういう反省がなければ、また政策を打ち出しても、私は失敗をするのではないか、このように判断をするのでありますが、この点に  ついては、通産大臣いかがですか。
  34. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま岡田委員が御指摘のように、過去の答申に基づく石炭政策によりまして、一人当たりの生産性は御指摘のとおり上がったわけでございます。しかしながら、当時計画が想定いたしましたように、経営が安定性を取り戻すことができなかったいろいろな原因が内外にあったわけでございまして、今回の第四次の答申におきましては、そういった過去の経緯にかんがみまして、第一にまず出炭目標を立てるという過去のやり方を取りやめたのでございます。何となれば、過去に立てられました出炭目標はやや過大であった、過大であったがゆえに、それに投じました投資資金というものによりまして、経営がいよいよ苦しくなるという事情もございましたし、それによりまして、また当初想定いたしましたようなぐあいに、賃金その他の想定が実際とそぐわなかったというような点もございましたので、そういう反省の上に立ちまして、できるだけ適実なデータを基礎にいたしまして、無理のない計画を立てるということにいたしたのが、反省の第一点でございます。  それから第二点といたしまして、出炭目標をあらかじめ想定するということをやめたのでございまするけれども、しかし、いま総理も御指摘のとおり、これは固有のエネルギー資源として大切でございまするし、また雇用政策上の要請もいろいろございまするので、政府が最大限に石炭政策に割愛し得る財源がどれだけ見込めるかということをまず踏まえまして、それを投入することによって、この石炭資源が経済資源として再生できるめどをつけていきたいというような考え方の上で、第四次の答申がもたらされたものと私どもは理解いたしておるのでございまして、労使が協力いたしまして、私どもと一緒に再建に邁進いたしますならば、必ずやこの効果が出てくるものと期待をいたしております。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま通産大臣から答弁がありましたけれども、いわばいま答弁されましたことは、私は、第三次答申までの石炭政策と今度の政府がきめられた石炭政策は、これは政策の転換である、こう受けとめざるを得ないわけです。いわば戦略的に原料炭を位置づける。量的には、これは展望も明らかにしない。このことは明らかに政策転換だと思うわけです。こういう認識があるかどうか。  それと同時に、今度の答申は非常に評判が悪いわけです。いかなる論評を見ましても、石炭の位置づけとビジョンというものがない。そういう位置づけとビジョンのない石炭産業で、一体どうして安定的に生産ができるのか、生産のために、どうして一体労使がほんとうに協力をして努力ができるのか、国民もまた、そういうものが明らかでないのに四千二百億も金が投じられることは納得できない、こういう論評が非常に多い。いわば最低最悪の答申である、このように私は言わざるを得ないと思うんです。この際、幾ら明確なものがないといえども、ある程度の積算根拠がなければ政策は立たないのでありますから、四千二百億の金をどう具体化するということは、当然、積算があるわけですから、この点、石炭の位置づけとビジョン、こういうものをひとつ明らかにしてもらいたい、こう思うのです。
  36. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたとおり、固有のエネルギー資源として石炭が大切であることは、総理も言われたとおりでございます。  そこで、過去の石炭政策は、あなたが御指摘のように、一つの出炭目標というものを立てて政策を組織してまいったわけでございますが、内外のいろいろな要因にはばまれましてそれが実行できないために、いろいろそごを来たしたわけでございます。今回は、そういう反省の上に立ちまして、あらかじめ無理のある目標を設定するというふうなことはやめまして、一定の国の財源を投入することによって労使が協力して、企業の努力を最大限に生かしますならば、いま石炭のエネルギー資源に期待しておる国民経済的な要請は、ともかく最小限度保障されるであろうという考え方に基づいて打ち立てられたのが今度の第四次の政策であると理解しておるのでございまして、この計画は、四十八年度まで五カ年間を想定いたしておるわけでございまするが、私どもは、四十八年度末におきましてどの程度の出炭であるかというようなことはきめておりません。しかしながら、予算を編成いたすにあたりましては、一応の想定は持っておるのでございまして、その想定は、その段階におきまして、企業努力をもちまして立ち向かいますならば、三千六百万トン程度の出炭は確保されるであろうという想定で予算は一応組んであります。しかしながら、これとてもそれをこして悪いということでは決してないのでございまして、企業の努力によりましてそれを上回ることは歓迎すべきであると考えております。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 昭和四十八年度の出炭規模が三千六百万トン程度を想定している、こう言われております。これ以上出ることはかまわないという態度をとられておるわけですが、これはきわめてむちゃな話です。私は、いまの政策をこのまま続けていくと、三千六百万トンすらも大きく割れる、こういう分析と見通しを私自身持っているわけです。ですから、あまり炭鉱の数が少なくなってきたのでありますから、単位炭鉱ごとに検討すると、当然これらはある見通しというものは立ってくる。だから、三千六百万トンというのでは、三千六百万トン想定した場合、産炭地である北海道地区はとうなるか、九州地区はとうなるか——まあ常磐西部については、これはもう想定は簡単にできるわけですから。また、九州、北海道の想定すらも、三千六百万トンといわれる場合にも、分析すると想定がつくではありませんか。だから当然三千六百万トンの想定があるとすれば、この五カ年間で一体幾らの山をスクラップするのか、そして人員はその場合どれだけ減るのか、能率はどの程度を一体ねらっているのか、そして四十八年度には大体三千六百万トンを想定している、こういうものが当然なければならないと思うんです。そして四千二百億のお金は一体どう使われるのか。一千億の肩がわり以外に、第二次の肩がわり分がある。あとのお金はどう使うのか。このお金は、前向きに使うのかあと始末に重点がかかるのか。これらが何ら示されないで、国民に納得をせい、労使に対して協力せいと政府で幾ら言っても、納得できるものではないでしょう。そういう展望というものを明らかにして、この点に間違いがあるかどうか、問題点はどうなのか、こういう議論を発展させなければ、せっかく十一年間もかかってきた石炭政策が、最後において妙な形で終末を遂げる、こういう結果になると私は心配をいたしているわけです。この点はいかがですか。
  38. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御心配の点もよく理解できるのでございますけれども、今回の政策の立て方が、政府が輪郭をきめて、その鋳型の中に石炭鉱業を入れるというようなことではなくて、各石炭企業の努力を前提といたしまして、精一ばい政府の助成のもとで、みずからの創意と責任においてどれだけやっていただけるか期待しておるわけでございまするから、政府のほうであらかじめ目標を設定するというようなことば、この際いたさないというやり方をとったのでございます。その点は岡田委員もよく御理解いただけると思うのでございますが、その是非については議論があろうと思いますけれども、今度の政策はそういう立て方をとったのであるということを御理解いただきたいと思います。  それから、これから五年間にわたりまして四千億余りの金をどのように投入してまいるかということにつきましては、政府委員からお答えいたします。
  39. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣から御答弁いたしましたように、五カ年間の一通りの想定を私ども頭の中に入れまして、政府としてさき得る石炭対策財源というものの範囲内で適正なる施策を講じたい、こういう趣旨でございまして、四千億という大づかみなつかみ方は、将来の原重油関税の収入を一応想定いたしまして、これをただいま御質問の点について申しますならば、企業の再建のために充て得るものを、大ざっぱに申しまして約三千億円と考えております。残り一千億円が、終閉山対策、産炭地対策、鉱害対策等々のいわば事後処理対策というものに振り向けるのに必要な額であろう。先五年のことでございますので、大ざっぱに判断いたして申す場合には、三対一の比率で予算を考えております。
  40. 岡田利春

    岡田(利)委員 どうもいまの答弁では、これだけのお金を投じて石炭政策をやるという点で国民は納得しないし、また、労使も常に不安な状態に置かれて、生産意欲が出、そして安定していくということはできないと思うわけです。  私は逆に私なりに分析をいたしますと、大体昭和四十八年度には一体産炭構図はどうなるか、こう検討いたしますと、原料炭山から出る石炭というものは、原料炭と付随一般炭がある。大体二千四百万トンと推定をされるであろう。そうすると、一般炭の炭鉱は、大体残りの一千百万トン、あとが百七十万トン程度の無煙煽石についてはどう扱うか、原料炭か一般炭か、こういう議論が残されるでしょう。この推定からいきますと、北海道は大体昭和四十八年には二千百万トン程度になるのではないか。九州は千百六十万トン程度になるだろう、無煙煽石を含めて。常磐が三百万トン程度、無煙が残れば百十万トン程度、いわば大体推計とされる三千六百万トンというのはこういう数字ではないか、こういう産炭構造を推計しているのではないか、このように私は考える。こういう推計でいけば、わが国の一般炭の炭鉱は、出炭量において半分になるのです。一般炭の炭鉱は、指で数えるしか残らないで、あとは全部壊滅をするということになるでありましょう。このように私は分析をしている。  また、今日の予算を分析しますと、昭和四十四年度の予算は、これを前向きの面とあと始末という面で分析をしますと、生産体制や安定補給金、増加引き取り、電発の問題、保安、この予算は二百六十一億で三〇%です。第一次、第二次の肩がわりが百四十九億で一七%。事業団出資が百三億で一二%、これはお金を貸す財源ですから、返るわけです。直接くれてやる金ではないわけですから、事業団に出資をするお金ですから、これが一二%。そして閉山、産炭地振興、鉱害復旧、離職者、事務費、三百四十八億で四〇%。それ以外に予備費があるわけです。これが今年度の予算の内容です。ですから、肩がわりを含めても今年度予算は、純然たる前向きには四七%、そして事業団の出資がある。こういう比率になるわけですから、三千五百万トンに閉山をしていくということは、むしろあと始末の予算というものがどんどんふえていくわけです。  私は、いま局長の答弁された数字については納得できない。絶対にそういうことにならないですよ。私は、産炭構造についてこういう分析をしているのです。通産大臣、どう思いますか。
  41. 大平正芳

    ○大平国務大臣 各産炭地域に分けましてどういうような目標でおるかということでございますが、先ほどお断わり申し上げましたように、そういう目標を、政府がイニシアをとってお示しするということは、今回はやるまいというたてまえで政策を立てておるわけでございます。想定としてはいろいろ計算はいたしておりまするけれども、今度の第四次の政策は、先ほどるる申し上げましたように、事業を継続するかあるいは終閉山するかの選択は企業者の判断にゆだねてあるわけでございまして、私どもがきめるわけではない、そういうたてまえになっておりますので、岡田先生の御想定、一応承りますけれども、それじゃ一体政府はどういう想定でおるかということをお答えする、そういうわけにはまいらないのでございます。
  42. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点は、明らかにしないということは、今後の石炭政策に対して非常に自信のなさを示すことであり、これでは労使の安定もなければ、意欲も出てまいりませんですよ。やはり政府が責任をもってある程度の見通しというものを示さなければ、どうして今日石炭が安定できますか。私は、この点は今後委員会において具体的に追及いたしますけれども、この点は、特に私は再考してもらわなければならないと思います。  では、そのうち一つをお聞きしておきますけれども、今年度は三百八十万トンの閉山をする、予算上計上されておるわけです。これは毎年予算計上するわけです。三百八十万トンにおさまるという自信がありますか。それと同時に、五カ年間で大体三千五百万トンと想定した場合、これは数字を言ったわけですから、五カ年間でどの程度の閉山量になりますか。四千七百万トンだから千二百万トンというわけにはいかぬでしょう。二千万トン以上に及ぶ閉山というものが、スクラップというものが行なわれるでしょう。こういう点について、一体今年度とにかく三百八十万トンで、若干上下しても大体おさまるという確信がありますか。この点をお伺いしたいと思います。
  43. 大平正芳

    ○大平国務大臣 予算は見積もりでございまして、ことしそういう、いま御指摘の三百八十万トンというような数字を一応想定して予算を組んであるということでございまして、そのようになるかならぬかという問題は、先ほど私が御説明申し上げますとおり、石炭産業のほうで終閉山を決意するかしないか、その選択にかかっておるわけでございますから、これは私のほうで必ずそうなるであろうというような自信をもって申し上げるわけにはまいらないことは、御理解いただけるかと思います。
  44. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府は、この答申に基づいて大体一〇〇%方針をきめられたわけでしょう。この中で一番問題になっておるのは、産炭地経済を考えてなだらかな閉山、なだらかな閉山、そして社会摩擦を避けつつ地域経済のことを考えていかなければならぬ、ずいぶん強調されておるのです。そのために閉山のしかたについてもこうである、従来と変わった政策もとる、ずいぶん強調されておるわけですよ。  そうすると、いま通産大臣の答弁で、いや今年度三百八十万トンも、これは単なるめどで、五百万トンになるか六百万トンになるかわからない。これは笑いごとじゃないですよ。五百万トン以上になる可能性はありますよ。そうすると、来年度はまた、予算を計上したけれども、これも極端にふえる。あとになったら少なくなっていくというようなことであっては、なだらかな閉山ではないわけです。  諸外国では、すべてスクラップ・ジャッジは政府が持っているのです。ベルギーでも事業団が持っている。もちろん、フランス、イギリスの場合には公社ですから、政府がジャッジ権を持って計画的にやる。だからなだらかな閉山ができるわけです。ドイツにおいても日本と同じような政策をとってきておりますが、スクラップ・ジャッジについては政府が重大な干渉をしています。これがないのです。単に自主的な判断、自主的な判断、これだけの金をつぎ込みながら、政府はこういう態度をとっておるところに問題がある。いま通産大臣の答弁ではこの答申の否定になるのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  45. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもも、石炭産業行政をお預かりいたしております以上は、予算を組んで法律をお願いしてこと足れりとしないのでございまして、これから終始この再建につきまして御相談に乗らなければいかぬわけでございますから、この点につきましては、政府も精力的に鋭意御相談に乗ってまいるつもりでございます。一応たてまえとして私がいままで御答弁申し上げたのは、終閉山というようなことは企業者のほうの御判断にまかしてあるのだというたてまえを申し上げたわけでございまして、個々の企業がこれから再建策を打ち立てる場合におきまして、十分私どもと相談しながら、答申の趣旨に沿った実のある行政をやってまいるのは、当然私どもの責任であろうと心得ております。
  46. 岡田利春

    岡田(利)委員 どうも明確な答弁にならないのであります。  私はこの際、総理にお伺いいたしたいと思うわけです。  いま国際的に見ましても、わが国の場合でも、石炭問題というのは、問題意識からいえば、これは体制問題である。これはもう国際的にもそうなんです。そういう受けとめ方をしているし、わが国の場合でもそういう受けとめ方をしなければならないと思うのです。ですから、わが国と同じような政策をとってきた西ドイツは、早くに流通関係は二社にし、さらにこれを前進さして一本にしたわけです。こういう体制的な受けとめ方をしているのです。そして今度は、石炭鉱業の適用化と産炭地域の健全化に関する法律を先に成立をさして、シラー経済相は先頭に立って各階層の意見をずいぶん時間をかけて調整をして、今日ルール炭田炭鉱株式会社を発足させ、七社を統括下に置く。すでに二十九社のうち二十七社がこれに参加表明をいたしておるわけです。そういたしますと、売り上げ高は、四千五百億円、従業員は十九万人、石炭シェアは八二・五%で七千四百万トンになるわけです。このようにドイツでは体制問題として受けとめて、この石炭問題に取り組んでいる。  ひとりわが国だけが、第三次答申が私企業のたてまえで進めるということで負債肩がわりをしたのにかかわらず、しかも一年もたたないで崩壊したのにかかわらず、再び第三次答申と同じように、私企業をたてまえとして第三次答申延長の上にさらに一千億の肩がわりをし、他の面について補強する、こういう立て方をいたしておるわけです。私は、総理は石炭については通産大臣以来非常に見識があると思うのですが、私はそういう受けとめ方をすべきだ、こう思うのですが、総理の見解はいかがですか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の案を立てる前に、国内にいわゆる国有論あるいは一社案あるいは三社案等々もあったことは私も承知しております。その方向になぜ進めないのか。わが国ではずいぶん山が整理されたとはいいながら、まだまだ、中身を見ますると、いわゆる政府が立ち入って整理するような段階にまで山の形が整っておらない、かように私は見ております。先ほど、数はよほど減った、かように言われましたけれども、なお百五十数社残っておる。そうしてしかも、それらの山の状態は、これは千差万別。百五十で千差万別は変ですが、とにかくいろいろ変わっておる。ある程度状況がどこかに共通点を見出し得るような状態ならたいへんけっこうですが、わが国の産業はそこにない。そこにむずかしさが実はあるようでございます。いまお考えになりましても、先ほど分析されたように、北海道、これは原料炭を主にして、まだ山が若い。九州、これはもうすでに老境に入っている。しかも原料炭は少ない。また西部地区はもうすでに終わりになっておる。ただ無煙炭だけある程度だ。さらにいま関東におけるこの山にしても、常磐地区においても、これまたその中身が直ちに共通して整理できるような問題ではない。  でありますから、今回体制的なものも取り上げました。これはまあ新しい行き方ですが、しかし、これは非常に不十分です。私は、まずいまの民間の企業体の責任体制において、これは労使双方協力して、もっと基本的なあり方の方向をきめるべきじゃないだろうかと思うのですよ。そうでないと、さらに政府がタッチするとか、民間の団体がこれに関与するにしても、ただいたずらに問題を起こすだけじゃないか、かように実は考えております。私をして言わしむれば、今回が最終的なものではないだろうと思っておる。さようにこれを見ていただくと、今回採用された体制づくりにしても、これまた非常に中途はんぱだろうと思います。ただ隣接している地域において鉱区の統合等が考えられる。あるいは販売関係において何か共同行為を考える。それにしても、おそらく似通った山が共同行為、それをやろうというようなことになるだろうと思います。統合といいましても、とにかくずいぶん広範にまたがり、その山の性格も違っておる。そういう際に簡単に統合はできない。ドイツのように一カ所にかたまっておるとか、あまり地域が拡大されておらない、そういうところに炭鉱のあるのと、よほどわが国の場合違っておる、かように私は思っておりますので、これはむずかしい問題だが、この際に一体どうなるか。先ほど通産大臣も、ことし一応スクラップを予定して見ているけれども、それを努力によってはそこまでスクラップしなくてもいいんじゃないだろうかと思う、こういう表現もございます。また逆に、もっと多くなるのじゃないのか、こういう御心配もあるように、この山の状態をごらんになると、とにかくずいぶん差がある。非常にいい山から最低の山まである。その間に何か共通する、平均し得るようなそういうものを見出すことができれば、まずいまの三社案でもでき上がるでしょう。あるいは一社案でも可能かもわかりません。しかし、いまの状態でそれをやれば、いたずらに業界に混乱をもたらすだけで、いわゆるスムーズな方向にはいかない。それよりもやはりスクラップを自分たちで考えて、労使双方で考えて、これはやむを得ない、かように決心することが必要なんじゃないだろうか、かように思います。私は、これはエネルギー革命の結果生じた現象だ、かように申しますが、同時にまた経営の合理化——出炭量は、先ほど言われるように、一人当たりのものが非常に多くなっておる。しかし、その他の面で、労働確保、これにずいぶん問題があると思う。だから、いま若い者がいない、中老年ばかりになっておる、こうも言われる。あるいはまた、安全性ということを考えると、保安がこれでよろしいのか、しばしば皆さん方から言われる。ここにもいま炭鉱企業の苦しみがそういう方向に出しきておると思います。だから、これは再編成するなら、必ずその山が安定した労務の確保ができ、そうして保安上も十分だ、もう心配はない、迷惑かけません、こういうものでなければならないと思うのです。  そこでもう一つ、やはりこの山の閉山対策、まあ終山対策とでもいいますか、産炭地振興法だとか、あるいはまた鉱害対策、そういうものを考えなければならない。そういうことをいろいろ考えてみると、とにかくこの山自体がある程度自分たちの力によって方向が示されない限り、政府はこれにタッチすることができないような状態だ。これは非常な腕力を用いるとか暴力を用いない限り、これは可能ではないのじゃないかと私は実は思っております。そこらはもっと民主的に話し合いを進めていくのが必要じゃないか、かように思っております。
  48. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまの総理の答弁の中で、いわゆる石炭対策はこれがおそらく最後と言えぬだろう、やはり次に再編成、根本的な最終的な問題というものが残されておる。この点は従来の通産大臣の答弁から一歩前進している考え方だと思うし、それなりに、そういうたてまえに立つと、いま総理が言われたようなことに私はなると思うのです。  ただ、いま日本の出炭のうち大手と中小を分けますと、中小の場合は、大手系列が六百八十六万トンあるのです。大手と関係のない出炭は七百三十二万トンなんです。大手、中小系列を合わせますと三千九百七十三万トン約四千万トンというのは大手及び大手系列の中小炭鉱から出炭されておるのです。コントロールがきくわけですよ。しかも、十万トン以上の山は中小では十四山よりないのです。イギリスやフランスでも、公社化する場合には、小さな炭鉱をはずしているわけですね、この零細な炭鉱というものは。そしてある一定のもとにやらせる、いまでもそういうところがあるわけです。しかし、ドイツの場合には、坑口当たりの出炭量が非常に多いわけです。ですから、そういう展望があり、問題意識として体制問題というものが避けられないと受けとめれば、四千億のお金も出すわけですから、権利義務というものを明確にすることによってコントロールがきくのではないか。なぜコントロールを遠慮しておるのだろうか、これがわからないわけです。おそらく国民もわからない点だと思うのです。その点を一歩進める、そういう体制を少なくともとるという決意があるならば、私はいま総理の言われたことも、総理の問題意識の立て方からいって理解はできるわけです。この点はいかがですか。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 冒頭に簡単にお答えいたしましたが、石炭産業というもの、これは存置しなければならないものだ、再建しなければならないものなんだ、そこからスタートしてものごとを考えたい、かように私は思っております。この再建する方法、これを存置して維持していく方法、それには一体どれがいいのか、こういうことがいま問題になっておるのだと思います。岡田君自身のような行き方、まあ明確にはおっしゃらないですが、国有論というものも一つの構想でありましょう。それにはやはり国有の可能な素地ができてないと、いまもみずから言われるように、大手と中小、そういうものを分けてみても、日本の場合には中小はなかなか多いんだ、こういうような御指摘のようです。ドイツのようにそれをはずすというわけにいかぬことは、これはもうわかっている。そうでなくとも石炭対策がとかく大手中心になっている、中小は一体どうしてくれるんだ、これはもう実情が日本ではそういうようにいわれておるのですね。また、いま山の状態を見て、大手は手を引き、それをあとで中小が引き受けておるという、そういう山もずいぶんある。大手の場合には採算とれなかったが、中小の場合にはそれは採算がとれるという。しかしこれは長続きはしないようです。したがって、もうすでに最近はずいぶん中小がみずから困った状況に立ち至っている。これは掘りましたあとの鉱害対策、これは十分できていないことはもうはっきりしていると思います。こういうような無理があるのですね。だから、こういう点が十分理解されていく、したがって、今回別に廃山、閉山を奨励しておるわけじゃないのですけれども、いま一つの問題を提供して、そうして企業体、労使双方で一つの結論を見出してくれ、こういうものをいまやっている。これを政府自身が、これは民間企業だから何らそういうものについて手は染めません、援助はいたしません、かようなことは言えた筋じゃない。私どもはやはりエネルギー産業としての石炭産業の今日までの苦労、努力、またその意義も高く評価する。またこれは社会問題でもある。そういう意味においてこれとやはり取り組んでいく、そうして解決しなければならない。そういう意味——それは少額ではございません、多額の金です。その多額の金をやはり有効に効果あらしめるという方向考えていきたい、かように私は思っております。これはただいま申し上げたように、ただ単なる産業政策じゃございません。これはもう政治問題であり、社会問題であり、同時に経済問題だ、こういう観点からこの石炭対策に取り組む、それで初めて国民皆さん方も理解してくださる、私はかように思っております。
  50. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま総理がいろいろ言われましたけれども、私はやはり認識として、石炭企業はもう私企業としては存立基盤というものは完全に失っている。競争の原理があるとすれば、お互いに石炭を掘る、能率よく掘るという競争と厨暖房の石炭を売るというだけの競争原理よりないわけです。あとは経理からいっても、すべて自主的にやれるという状況にはないわけです。しかし、政府のいまの、私企業をたてまえとして、答申にも書いてある。ただ単にそういうたてまえだけに立つと心配は一体ないんだろうか。たとえば昭和四十二年度九月末の決算で常磐、松島、麻生、あるいは兼業大手各社を除いて大手九社で見ますと、一般投資額は、他の企業に対する投資額は百四十億をこえているわけです。長期貸し付け金額は二百十七億に達しているわけです。私は、そういう立て方でいくと、結局石炭のほうはどうもやっていけない。しかし、もろともにつぶれるというわけにはいかぬから、石炭を見捨てて他の企業に転換をする自由がある、そういう便宜さだけは残されている、こういう不信感というものはやはり国民の側なりほかの方にはあると思うわけです。そういう経過をやはりわれわれは分析してみますと、そういう私企業をたてまえとしてということだけにそのままこれから推移をすれば、むしろ石炭から企業転換をする結果になるのではないのか。むしろ石炭を見捨てるという結果を招来するのではないか、こう私は心配するわけです。この点についてはいかがですか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま言われるように石炭産業は大事だからその赤字は他の兼業で埋めろ、こういう説には必ずしも賛成しません。石炭産業を始めても、これがやはり改善し、あるいは努力することによってこれが事業として成り立つならばその産業は残すべきだ、そこに意義があるのだと思います。しかしながら、石炭そのものとしてはどうしても立っていかない、こういうことになれば、これはやはりむしろ終閉山のほうが適当じゃないかと思う。国の援助にいたしましても、何でもかんでも残そうという、それは少し無理があるのだ、かように私は思います。そこにいわゆるエネルギー対策というものがあるわけなんで、いままでは石炭が大事だった。しかしいま石油の時代だ。さらにまた、その次は原子力の時代になるかもわからない。そういうことを考えると、総合エネルギー対策としてやはりものごとを取り組んでいかないと、このエネルギーが経済活動の基盤であるだけに、ここに問題があるように思います。やはり政府の特別な援助がなければどうしても立っていかないというが、いま他にそれにかわるものがあるのだ、そういう際でございますから、やはり石炭産業もそういう立場に立ってものごとを考えていただきたい、かように思うのです。  私は、いま兼業しておるほうが——兼業のほうに力を入れて石炭のほうに力を抜いている、だからできが悪いのだ、こういうものがあれば、それは私ども考えても、いまの体制化すればそういうものが成り立つ、かように思います。しかしおそらくそういうものを、体制化の対象にならないでやめざるを得ないことになっておるのじゃないかと思うのです。だから、一がいに兼業収入で赤字を埋めたというだけではものごとはきまらないように思う。やはりその実態についてもう少し検討していかぬと無理があるのじゃないだろうかと思います。非常に急速になって、われわれの対策がおくれたという、さようなおしかりは確かに私どもも受けます。とにかく日本の経済の発展から見、また他のエネルギー源、いま石油が大宗でございますが、そのほうが非常に発展しておる。それについて対策がなかなか講ぜられてない、かように思っております。しかし、今回石炭鉱業を救おうというその資金はどこから出てくるか、やはり石油関税で特別会計を設けた、こういうところにあるのじゃないかと思いますから、これは一体としてわれわれは考えておる。そこでせめてもの、石炭産業に従事しておられる方々のお気持ちについても理解はある、かように御理解いただきたいと思います。
  52. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭鉱業審議会の経過をめぐって、総理御存じのように昨年の二月にいわゆる植村構想という構想が出されました。私は即これに賛成するものではありませんけれども、しかし石炭政策は体制問題に集約されている、こういう受けとめ方を植村さんはされた。このことは私は正しいと思うのです。そしてまた、協会も一応植村構想に対して原則的に賛成をしたわけです。しかもその中から北炭の萩原会長が提唱した全国一社化案、あるいは舟橋会長が提案した全国三社案、あるいはまた第三者機関、三井でさえも仮称石炭公団というような体制的な意見というものがやはり出ておるわけです。いまのままで私企業をたてまえとしていくべきだという意見はどこからも出なかったわけです。経営者内部からも出てきてないのです、それぞれの案をずっと見て。しかもこれらの検討をしてもらいたいということで椎名通産大臣は石炭鉱業審議会にかけた。私企業でいいというのは一体だれが言っておるのでしょうか。表面にはないわけですよ、これは。にかかわらず私企業をたてまえとしてという答申案が出たことは手品つかいではないか、こう言わざるを得ないわけです。しかも財源である関税がいわゆる三年間延長するということがきまったとたんに、これをめぐる利害関係判断するいろいろな意見が出てきた。しかも八カ月間かかってついに植村構想を握りつぶしている。同時に石炭の問題意識を握りつぶして、ぶっつぶしていわば答申を強行した、こういう印象を国民の側に与えておる、こういう受けとめ方をしておるのです。ですから、もう業界自体も石炭問題というものは体制問題という受けとめ方をしておるのですよ。にかかわらずなぜ石炭審議会が私企業をたてまえとして出すのか。  しかし先ほど総理は、石炭はこれで終わらない、やはり体制的に根本的に何かなければならぬ、そういうことが予想されるということが総理自身からいま言われましたから、ある程度そういう考え方はわかりますけれども、しかし私は、勇断をもってすれば今度もできたと思うのです。ということは、少なくとも石炭の体制を整備するという基盤は、私は管理的にできていると思うのです。石炭合理化事業団というのがございます。この石炭合理化事業団は、おそらく今年は資金量において六百億をこえるでしょう。二百六十八名の人々がおる。管理費に、去年の実績でも七億を費やしておるわけです。そして九州、北海道に支所を持っておるわけですね。こういう一つの体制がある。電力については電力用炭納入販売株式会社がすでにでき上がっている。技術的には技術研究所がある。年金については炭鉱労働者年金基金がある。こういう一つの体制、基盤というものがあるわけなんです。ですから、少なくともこの体制問題を扱う場合には、これを基盤にしてもう踏み出すことができるんではないのか。残念ながら答申が昨年の十二月の末で、年始年末を迎えて、とにかく異例なほど本国会は、各委員長を、石炭があるためにきめて、予算編成中に石炭委員会が九日に開かれて、十日に政府は閣議決定をした。こういう、時間的に見ると、この問題は審議する余裕がなかったわけなんですね。私はそういう意味において、時間があり、ある程度時間をかけ、決意があれば、体制的に前進的に解決でき得る方法というものは必ず開かれてくる、立てることができると、こう確信を持っておるわけです。こういう私の見解については、総理、いかがですか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、植村構想でやっぱり体制面に触れられたことは、これは一つの進歩だと思います。しかしこれは、岡田君が御承知だと思いますが、三社と考えて、北海道に一つの会社がある、九州にも一つの会社がある。その二つを合併してみてどういう効果があるでしょう。体制づくりで一番いままでいわれたのは販売面の共同行為、これが必要だ、もう一つは鉱区の整理、これが必要だといわれた。私は、九州と北海道とで鉱区を整理するという、そんなことはちょっと考えられないのじゃないか。これはやっぱり隣同士にあるとか、こういうような面で鉱区の整理ということは可能なんだと思うのです。これはその体制づくりの方向でものごとをやっぱり考えてみたいと思うのですよ。だから、そういうものが合併やあるいは終廃山がそれぞれの立場においてできて、そしてお互いに助け合うことができればこのくらいいいことはありません。また、いまのように販売の面で一つのものをつくるという、そしてむだな競争をしないという、これは確かに有用なことだと思う。しかしいまの状態だと、いまの中小企業から大手まであるこの炭鉱の実情から見て、そういうものの可能な範囲は一体どの程度だろうか。やっぱりいたずらに問題を引き起こさないでスムーズにやっていくことが望ましいんじゃないか。それがいまいわれておるものだと思います。  いま植村案、あるいはいま石炭鉱業界で私企業というものをいったことはないと言われるけれども、私は私企業の体制——一社案にしても三社案にしても、これはやっぱり私企業の体制だと思いますよ。やっぱり国有化というものは非常に限られたところから出てきているように思う。だからやっぱり私企業の形態である程度整理されないと、いまの次の段階には進まないんじゃないか。これは私は非常に端的に私の感じを申し上げているのです。これはその道の専門家からいうと、総理の考え方はずいぶん飛躍している、こういう批判もあろうと思いますし、またずいぶん逃げを張っているだという批判もあるかもわからないと思います。しかし有効な、十分残さなければならないと、かように申しましても、極端な損失のあるもの、それを残すような今日の状況ではない。これはやっぱり国際的視野にも立ってものごとも考えなければならぬ。そこに問題があるように思うのです。どうかその辺で御了承をいただきたいと思います。
  54. 岡田利春

    岡田(利)委員 私のいまの質問というのは、すぐ国有化せいという前提で申し上げておるわけではないのです。いわば、総理がいま言われておるように、石炭問題というのは、体制問題という立場で受けとめれば、結局一つは管理体制というものを合理化する、鉱区の統合をはからなければならない、これが一つですよ。鉱業権があれば鉱区はどうしても統合しなければならない。第二には、流通機構は一元化しなければならない。第三は、保安の確立が問題だ。第四は、労働力を安定的に確保する。第五には、社会的摩擦を少なくして地域経済を考える。この五つを同時に連立方程式としてさっと解ければ一番いいわけですよ。そのためにどの方法が一番いいのかということになってまいるわけですね。私はそういう意味で体制問題ということばを先ほどから使っておるわけなんです。  ところが、との答申を総理は読まれたと思うのですが、第二の柱についてもほとんど触れてないのがありますよ。本院が何回決議したかわからない決議案の中にも必ずある柱である流通問題というのを、わずか一行ですよ。流通については共同行為等をちょっとやるか、さわりをちょっと文章で書いただけですよ。全然触れてないですよ。これは何が抜本策ですか。鉱業審議会のメンバーは石炭の権威だと、こういわれておりますけれども、私は全く理解に苦しむんです。こういう重大な柱に全部触れてないのですよ。しかし、流通の問題というのはいろいろ問題があります。石炭産業というのは切り羽から消費者までの運搬産業ですよ。そういわれているのです。ですからこの流通問題で全然具体的な努力目標の設定もしない答申案なんというのは、何が抜本策なんですか。私は抜本策として認められないと思うのですね。  あるいは保安は、先ほど総理が言ったように、明治三十八年ですらイギリス、ドイツ、フランスに比べてわが国の死亡率はわずか四倍だったのです。近代化が進んでおる今日、イギリス、フランス、ドイツの十倍ないし十二倍の死亡率ですよ。こういう状態にあるわけですよ。どうしても企業ごとでやっていきますと、事故があっても無理をするから災害が起きるわけです。重点的にある程度ストップさせて、スローダウンさせて対策を立てて次に上げるということは、一、二山に分割をされると、非常に苦しい基盤に立っているわけですからなかなかできないわけですね。だから保安の問題も、もうすでに、明治時代は四倍というのが十二倍になっている、こういう深刻な状態にきておるわけなんです。これはもう結局は体制問題として受けとめなければならぬのではないのか、私はこういう意味で申し上げているわけです。  ですから、この議論というのは、前提を国有化とか公社に固定しないで、やはり体制問題としてこの際ひとつ前進をさせようではないか。総理は、いずれにしてもこれはそういう時期が来るだろう、こう判断されておることは正しいですよ。そういう総理の認識は正しいと思う。そうであるならば、この際この体制問題について、議会においても政党間においても、各界の意見も集めて積極的に進めていく、こういう姿勢が確立されるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  55. 中野四郎

    中野(四)委員長代理 この際ちょっと岡田君に御注意申し上げておきますが、かねて理事間の協定した時間がまいっておりますから、どうぞ結論にお入りくださることを前提として……。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申しますように、私も体制づくり、これは賛成であります。そういう方向で努力すべきだ、かように考えております。
  57. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、石炭政策は体制問題が中核的な問題であることは、よく私どもも了解できるところでございます。  そこで、いまあなたが御指摘になりました、流通問題について答申がほとんど触れてないじゃないかということでございますが、それは確かに御指摘のとおりでございます。審議会の最終段階におきまして私も出席いたしたのでございますけれども、流通問題を十分消化し、討議するいとまがなかったことは事実でございまして、これは御指摘のとおりでございますが、ただ内外の状況が、答申がおくれまして、石炭政策の確立がまだ宙ぶらりんの状態において年末を迎えるというようなことが許されない客観情勢にございましたので、急いで御答申をいただいたわけでございます。したがって、審議会の最終段階におきまして、流通問題は体制部会においてとくと検討しようじゃないか、その重要な課題として取り上げようじゃないかということで、みんな意見の一致を見ておりますので、確かに十分の消化がなかったことは御指摘のとおりでございまして、その点は私から弁明を申し上げておきます。  それから、いま総理は体制問題に前向きに取り組もうということでございまして、私どもも体制問題につきましては仰せのとおり前向きで取り組まにゃならぬと思うておりますが、ただ、日本の石炭鉱業が置かれた状態は、私が申し上げるまでもなく岡田委員よく御承知のとおりでございまして、諸外国のようなぐあいになかなかいけないいろいろな制約がございますことは御承知のとおりでございますので、そういった状態を踏まえながら、現実に即した体制の整備を克明にやってまいらなければならぬと思うております。  それから、保安についてのお話でございましたが、これは申すまでもなく、わが国の炭鉱の状態がアメリカ、ヨーロッパなどと非常に違っておりますことも、あなたがよく御案内のとおりでございまして、自然条件が非常に悪いわけでございますので、その点もたいへんな被害を結果いたしておりますことは申しわけないのでございますけれども、非常な深部を掘進していっておりますような事情に対しましても、十分同情的な御評価をお願いいたしたいと思います。
  58. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから、いずれ委員会でこの点は具体的に指摘をしますが、いま通産大臣も言われましたけれども、条件も確かに悪いが、日本の十一年間の歩みを検討してまいりますと、いま日本の炭鉱の能率はフランスより高いのですよ。一日一人一方当たりで見て、フランスより高いのです。歩どまりは、日本の場合には非常に悪い。百トン掘って六十トンより石炭じゃないのです。にかかわらず、これを換算するとイギリスよりも能率はすでに高いのですよ。西ドイツには及ばないというだけなんです。ですから、非常に努力をしておることは数字が示しておるわけなんです。ですから、日本の石炭というものは決してヨーロッパに比べて、能率的に見れば劣るものではないわけなんです。この点をよくわれわれは認識しておかなければならないと思うのです。一年間の採掘量でいえば、休日が違いますから、むしろイギリスよりも多いのですよ。そういう点をやはり的確に受けとめて一ただ、日本の場合には油の値段が安過ぎるわけですね、ヨーロッパに比べて。ですから、石炭の価値は相対的に見るのではなくして、国際比較で見ると、当然石炭対策というものについてのある程度のめど、確信というものが出てくるのだということを私はこの際申し上げておきたいと思うのです。  そこで、いま総理からも答弁があったのですが、昨年の十二月二十六日に四党政調会談が国会対策委員長の提起で持たれて、そして石炭問題について会談をいたしました。私もこの点についてオブザーバーで出席をいたしましたが、この席上、自民党の根本政調会長は、やはり石炭は体制問題である、この解決が大事である、こういう意味では全国三社、こういう方向で解決をはかるようにひとつやろうではないか、どうであるか——社会党は御承知のように国有公社化という案を持っておりますけれども、これは弾力的に、いろいろな案があるならば対応しますという姿勢を示しています。また、民社党は公的管理機関、こういう提案をいたしております。公明党は再編成、社会化の方向でなければならない、こう主張いたしております。自民党の場合にも、当然体制問題という形で受けとめて、政調会長もこのとき提案をいたしたのであります。そうしてその結果が、一月の八日に政府と各党に対して政調会長から正式に回答が参りました。特に、施策の目標を個別企業の救済に置くのではなくして、石炭産業全体にわたるよう対策を立てて実施をはかること。鉱区の再編、調整及び流通の合理化等の施策を重視し、地域の実情に応じて企業の共同行為、統合等を推進すること。そして、相当中小炭鉱の安定補給金に触れてきておるわけです。この認識は、体制問題として解決をしなければならぬということです。ですから与党も、そういう意味では体制問題として解決をすべきだという、そういう見解を持っておる。まさしく、案は違っても、体制的に解決をするという土俵は各政党間においてもできておると私は言わなければならぬわけです。そういう意味では、昨年に引き続き年始年末で時間がなかったわけですから、委員会でもやると同時に、各政党間でも、同じ土俵があるわけですから、この石炭問題はさらに各党間で話し合いを続けて十分議論をしてみる、こういうことが私は経緯からかんがみても大事ではないか、こう思うのですが、この点は総裁としてひとつ御答弁願いたいと思うのです。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申したように、体制問題としてこれと取り組むという、これはもう各党の態度だと思います。私もそれを否定しておるわけではありません。また、今回の予算編成にあたりましてもこの点が議論にならなかったわけではありません。しかし、この際はそれは採用しなかったというのは、もうすでに予算も提案しておる、それからおおわかりだと思います。  そこで、ただいま言われるように、各党で超党派でひとつさらに研究したいという、私はたいへんけっこうなことだと思います。私のほうからも政調会長によく話をしておきますが、こういう問題が超党派で一案を得るということができれば、こんなしあわせなことはありません。たいへんけっこうだと思います。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 この際委員長に申し上げますが、ただいま佐藤総理から佐藤総理の見解が述べられたわけです。本委員会として、総理は自民党の総裁として与党に対して、この問題は共通の諮問もあるのだし、研究をし検討をする、こういう点について政調会にも指示をしたいというせっかくの答弁があったわけです。これはもう各党もこれには異存がないと思いますので、むしろこれは予算委員長といたしましても各党に対して、そういう点で話し合いをするように、こういうひとつ提案をするように処置していただきたい、こう思うのですが、いかがですか。
  61. 中野四郎

    中野(四)委員長代理 後刻、理事会に報告いたしまして協議いたします。御了承願います。
  62. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんので予定質問ができませんけれども、この際、一つお伺いしておきたいと思います。  それは、石炭問題をいま私は問題にしてまいりましたが、わが国のエネルギー政策もエネルギー調査会で一応の見通しを立てました。しかし、実際このエネルギー見通しから見て、わが国のエネルギーの実勢というものは一つのズレがいまもう出てきています。長期的に見ますと、昭和六十年を展望しますと、多少のズレではありません、大きなズレが出てきているわけです。しかもエネルギー産業をめぐる環境というものは、当時よりも公害問題が大きくクローズアップされてまいりましたから、非常に環境が違ってきた。あるいは流体ガスエネルギーの進出というものは当時はあまり予測していなかった。原子力についても、当時の予測は非常にまだテンポがおそいと見ていた。しかし原子力発電は実用化時代に入りつつある。こういう情勢の変化等もあらわれてきているわけです。私は、産業のかてであるエネルギー政策というものは基本でありますから、そういう意味では、そういうズレをすみやかに排除し、計画を再検討し、おくれをとってはならないわけです。今日の電力はもう供給予備率がぐっと下がっております。今年の八月は電力は最低、最悪の事態を迎えるでしょう。言いかえれば、電力危機と言ったらどうかと思いますけれども、そういうピークに達するのであります。経済が成長すればこういう問題がついて回るわけですから、当然これに対処しなければならない。この点について政府は、こういうエネルギーの動向に対してどう対処をしておるのか。  第二の問題として、引き続きお尋ねをしますが、わが国の電力事情は、大体経営内容はアメリカに近づきつつある。他の産業よりも非常に好転いたしているわけです。こういう情勢の中で、電力に対する国民の要望というものが、いろいろな具体的な要望が出てまいりました。一つには、九電力の電力料金の格差。御承知のように、電灯料金では最高と最低では二円七十八銭の開きがある。小口では最高と最低では二円三十四銭の開きがある。大口でも一円の開きがある。今日の都市構造の変化、あるいはまた過密、過疎対策、工場配置の問題、こういう面から考えて、当然これらは、中小企業の立場から工場を新しく配置するという場合に、電力が、ここに行った場合に高い、ここに行った場合安いということでいろいろな問題が出てきている。これは何とかやはりエネルギーは、電力はそういう政策上統一できないのか、こういう要求が非常に強くなってまいりました。同時に、国民の側からいえば、家庭消費の電力量は年々非常に伸びてまいりました。最近は急速に伸びの傾向を示しています。そういう国民生活の面から見ても、電力料金に大きな差があることはどうなのか、これは是正すべきではないか。原価主義であるならば原価主義を変えてはどうか、こういう要望が非常に強くなってまいりましたし、また、火主水従の体制に入ってまいりましたから、火力発電所というものはずんずん容量が大きくなってまいります。今日四十万から六十万程度のユニットの火力は、七十万から百万キロワットのユニットにぐっと大きくなってまいります。そうしますと、当然公害問題からどうしても発電所の設置場所が、都市集中の関係上遠隔化する、遠くなっていくという問題が出てくるわけです。そうすると、九分断の地域というものは融通電力が年々増加しているわけですから、その地域はあまり線を引けなくなってくる。  こういういろいろな面から考えて、電力の再編成の問題については今日検討段階に入ってきた、わが国の経済発展とエネルギーの安定需給、供給するという面から、すなおな意味において再検討するべき時期に入ってきている、私はこう判断するのでありますが、この際、この面について総理の見解を承っておきたいと思います。
  63. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私が先にちょっと答弁させていただきます。  第一の総合エネルギー計画の問題でございますが、総合エネルギー調査会の答申は四十二年の二月にちょうだいいたしたのでございまして、岡田さん御指摘のとおり、実績と、当時想定いたしました計画とはたいへんなズレが出てきております。この調査会の答申は経済社会発展計画と見合った計画でございまして、経済社会発展計画自体も、経済企画庁長官が言明されているとおり、修正の機運になっておりますので、その修正と合わせまして私どもの総合エネルギー計画も改定していかなければならぬものと思っております。  それから第二点といたしまして、電力の需給がだんだん逼迫してまいって、ことしの夏あたりはピーク時は相当の緊張した状態になりはしないかという御指摘でございますが、仰せのとおりでございまして、去年の八月、供給予備率が七・三%でございましたが、私どものいまの見積もりでは、ことしは五・三%ぐらいになるんじゃないかということでございます。しかし、特別な事態が発生しない限り、この状態で供給に支障を来たすものとは考えておりません。しかし、今後は少なくとも七%ないし八%の予備率を確保することを目途といたしまして、電源の開発を進めてまいらなければならぬと考えております。  それから第三点といたしまして、電力再編成の問題でございますが、電力料金に地域差があることは仰せのように事実でございますけれども、これまたあなたの言われたとおり、火主水従になってまいりましてからこの格差はだんだん縮小していっていると思います。しかしながら、なるべくこれの解消の方向に政策を持ってまいりますことは当然必要なことでございます。電力界の仕組みといたしましては、九電力に電源開発を加えた十社体制というもので広域運営に効率をあげていく、そして水力あるいは原子力発電の開発その他を加えまして、要請にこたえていくような体制を固めていかなければいかぬのじゃないかとただいまのところ考えておる次第でございます。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま詳細に通産大臣からお答えいたしましたので、私からつけ加えることはございませんが、一番気になる最後の問題、いわゆる九電力、これを統合するような考えはないかというお話であります。それもただいま九電力並びに電源開発、いわゆる十社といったらいいかと思いますが、これを中心にしてだんだん発電所も大型化しますし、また、相互援助の方法もだんだんできておりますので、相互融通し合うことによりまして、いまの格差の点を解消していく。したがって、いまのところ積極的に改変する考えは持っておらないということ、それだけを申し上げましてお答えにしたいと思います。
  65. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  66. 中野四郎

    中野(四)委員長代理 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、理事間の協議により、岡田利春君の持ち時間の範囲内において、残余の時間、八木一男君の関連質疑を許します。八木一男君。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 私は、同和問題について、特にその中の同和対策特別措置法の問題について御質問を申し上げたいと思います。時間が限られておりまするので、主として総理大臣に御質問を申し上げまして、関係大臣政府委員方々には、後刻お許しをいただく一般質問においてまた続けて御質問をさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。  私は、佐藤内閣総理大臣がこの同和問題について、特にその中の同和対策審議会の答申の急速な完全実施の問題、なかんずく同和対策特別措置法の問題について、最も熱心に御推進をしていただいたことにつきまして、心から敬意を表する次第でございます。しかしながら、この問題が同対審の答申で指摘をされましてから、すでに足かけ五カ年になっております。実際に三カ年半が経過をいたしております。この法律の成立を心から期待をいたしております関係国民は、それが延びましたことについてほんとうに耐えがたい思いをしておったと思うわけでございます。このおくれましたいきさつについては、私も十二分に承知をいたしておりますが、本日それに触れることは差し控えたいと存じますが、この問題について、国民が政治に信頼をつなぐ、信頼を持つということについてはことしがおそらく最後の機会ではないかと思うわけでございます。その意味で、ぜひ十二分の内容を持つ、国民の満足いたします同和対策特別措置法が本国会に提出をされて成立をいたしますことを心から熱願をいたすものでございます。ほんとうにそのような意味で、思い詰めた気持ちで、また、その問題に熱心な総理大臣の御答弁に大きな期待を持って御質問を申し上げたいというふうに考えるところでございます。  昨年の十二月の十四日、臨時国会の衆議院予算委員会総括質問におきまして、同僚の横山利秋君の質問に対しまして、佐藤内閣総理大臣は、四党の話し合いが進んでいるけれども、それが進まない場合でも、通常国会に同和対策特別措置法を提出をいたしますということを明確に、誠実にお答えをいただきましたことを、私、その日は流感で伏せっておりましたので、じかに伺っておりませんけれども、横山委員から伺い、また速記録で拝見をいたしまして、心から力強く存じていたわけでございます。その問題について、そのことは総理の御答弁でございまするから、そのとおりにしていただけると私は確信をいたしているわけでございますが、前からも、いろいろの事情で、その総理の御決心なりわれわれの要望が延びた事実がございます。その意味で、たとえば提出をされる時期がおそければ、その委員会にいろいろと問題点の多い法案がかかっていた場合に、そのあおりを受けてそれが成立するのに時間的に非常に心配の事態が起こることもございましょうし、また、それを推進される官庁でございます総理府が沖繩問題その他たくさんの重大な案件をかかえておられますので、その問題についても考えておかなければならないと思うわけでございます。  そういう点で、ぜひ早期に御提出になっていただくことを心から要望を申し上げたいと思うわけでございますが、総括的に総理からぜひ熱意のある御答弁を伺っておきたいと思います。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 同和対策は各議員ともたいへん熱意を示しておると思います。特にその中でも八木君は、この問題について熱意のある、終始変わらない態度で取り組んでおられます。私もまたこの問題について理解している一人だと、かように自負もいたしております。  昨年は、私が申すまでもなく、明治百年のお祝いをしたばかりであります。私は、こういう際におきましても、この同和対策の問題をぜひとも片づけなければならない、かように実は思うので——各党協議会もいろいろ進んでおります。しかし、なかなか複雑な事情があるようでありますので、完全に一致というのはなかなかむずかしいようです。しかし、政府といたしましては、私がこの前もお約束いたしましたように、政府の考え方におきましてもこの法案を出そうと、ただいま三月の上旬をめどにいろいろ整備しておる最中でございます。このことを御披露申し上げ、そして記念事業といっては変ですが、明治百年を祝ったばかり、その一つとしてもこのくらいのことはしたらどうか、かように実は思っておるので、法案が出たら御協力願いたいと思います。
  69. 八木一男

    八木(一)委員 総理大臣の非常に熱意のある誠意のある御答弁を伺いまして、この問題を熱望している国民のために心から喜びたいと思うわけでございます。  そこで、四党の話し合いがただいま続いている状態であります。総括が終わったころに四党国対副委員長会談がすぐ行なわれ、国対委員長会談が行なわれるという運びに相なっております。私は、総理大臣からいまお答えをいただきましたように、また前からも例がございましたように、必ずしもその四党の話し合いで考え方が一致するときばかりではないと思いますので、一致をいたしませんときには、いま総理大臣のおっしゃったように、三月の上旬に政府の責任を持ったりっぱな内容の案をぜひ御提出をいただきたいというふうに思うわけでございます。  その間の経過でございますが、しかし、四党でよいものの内容の話し合いがついたらこれはよいことに違いございませんので、各党ともにその御努力をなさると思います。一番大きな力を持っておいでになります自由民主党が与党で、一番多数でおられますから、総理大臣であり、また与党の総裁である佐藤さんから、この四党協議会がスムーズに急速に話し合いが済みまとまるように、その点についてもぜひ御尽力を願いたいと思うわけであります。国対委員長会談がこの一週間ぐらいの間にまとまってほしいと思いますし、それがもしかりにそこでまとまらないときに、書記長、幹事長会談とか、あるいは総理大臣がその中へ入られる党首会談等というようなこともお考えをいただいて、非常によい内容のものが急速にスムーズに話し合いがつきますように、そういう御努力もひとつ御考慮をいただきたいと思うわけでございますが、それについてお答えをいただきたいと思います。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事柄の性質上、四党で合意が必ずできるものだと私は思っております。ただしかし、いままでの経過もございますから、それぞれやや意見の相違もあろうかと思います。しかし、この種の問題はぜひとも各党で一致して、そして提案し、案ができれば審議は非常に迅速にそれが成立を見る、こういうことであってほしいと思います。  そこで私、ただいま御提案もございますから、国会対策にもよく相談しておくつもりであります。また、何ぶんともに野党第一党の社会党の方々協力を得たいと、かように思いますから、その辺もひとつよく御理解ある御協力を願っておきます。
  71. 八木一男

    八木(一)委員 非常に二律背反みたいなことでありながら、両方大事なことをお伺いしました。両方について非常に私どもの満足できる御返事をいただいてうれしく思うわけであります。四党の協議を急速に、少なくとも二月中に解決がつくように、われわれも推進をいたしますが、ぜひ総裁はじめとして与党の方に御推進をいただきたいと思いますとともに、残念ながらそれでまとまらないときには、三月の上旬に政府案をひとつお出しをいただくというふうにお願いをいたしましたし、そのようにお答えをいただいたと理解をさせていただきたいと思います。  そこで、次に内容の問題でございますが、この問題については昭和四十二年の四月の六日に私がこの部屋で総理大臣に御質問を申し上げました。そのことが再三、また翌年の四十三年三月九日の予算委員会においても確認をしていただいているわけでございます。予算委員会の討議でございまして法律案の折衝でございませんから、それほどこまかいところまでは論議で触れてはおりませんけれども、その名称については同和対策特別措置法という名称が必要であるということについて、それからその次に、国の責任を明確にしていただくということについて、その次にまた、この問題が、問題を処理しなければならない地域は府県にしても市町村にしても濃度が非常に多い。そういうことで地方負担というものがこの問題を推進することのブレーキになるので、それを防ぐために——一般的にも超過負担というものが行政の推進にブレーキになっておりますが、この問題に関してそれが特に濃厚に働くので、それをなくすために高率の国庫負担が必要であるということについて、総理大臣と質問を通じまして私どもの考え方と意見の一致を見させていただいているわけでございます。ここで政府のお出しになる法律案あるいはまた四党でまとまる話についても、どうかそのような基本的に重大な問題について十二分な内容を持つものになるように、政府のお出しになる法律案についてはもちろんでございますが、また四党でまとまることについても、一番大きな力を持っておられます与党として、野党より以上にそういう十二分の目的に沿うた、そういう案でやろうではないかというふうに御推進をいただきたいと思うわけであります。その点について総理大臣のぜひ前向きのお考えを承っておきたいと思います。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法案の中身の問題については比較的にまとまりがいいようです。今回のこの予算あたりでも四〇%も増加している。これなどはおそらく必ずしもいま予定されておるとおりの問題じゃないと思いますが、しかし、一番最初に言われた法案の名前、これがどうもそれぞれの立場で意見が違うようだ。もういまさら同和対策というものを表面に出さなくてもいいじゃないかというもっともの考え方もありますし、どうしてもその名前を出さなければだめだという御意見もある。ここに非常な抵抗を感じておるという。これが私は国民皆さん方に迷惑をかけているゆえんだと思うのです。そういう事柄がスムーズに理解ができれば、お互いに話し合いができれば、中身の問題ならお互いに、補助率はどういうふうにするかとか、地域住民の施設で何が一番大事に考えられるか等々のことは、比較的にまとまりがいいのです。  私は、そのいまの法案の名前、それについてはどうも特別扱いしないほうがいいのじゃないかなという一般的な考え方のほうに実は賛成するのですが、八木君たいへんこの名前が大事なようで、八木君からは特に強くその話を聞くのですけれど、これもひとつどんなに話がまとまりますか、皆さん方お互いが胸襟を開いて話し合えば必ず解決ができるのだ。私は名前の問題だからいいように思いますから、まあひとつよろしくお願いします。
  73. 八木一男

    八木(一)委員 この名前の問題が非常に大切な問題でございます。総理大臣は、いろんな仕事についてたくさんの仕事を持っておられますから、いろんな論議をされておりますから、前の経過の記憶が幾ぶん薄れられても、これは私ども、あまりそれをごちゃごちゃ言わないでいくのがいいんではないかとして申し上げておりますけれども、前から名前について、この予算委員会で、同和という名前を使ってということで私も何回も御質問をいたしまして、総理大臣からも御答弁をいただいているわけでございます。その点をひとつ、それは記録がたくさんここに全部入って載っておりますから……。  それからもう一つは、いまの四党協議会ができましたときも、同和措置法を提出、成立するという約束で、いま隣にすわっておられます福田さんが幹事長のときに、福田幹事長も立ち会いの上で昨年四月にこの協議会が発足をいたしました。同和措置法というのは、四党国対委員長会談で文書で交換をいたしております。それからその次に、同和対策協議会という内閣の機関で「同和対策の促進に関する特別措置法案」という名前で答申が出ているわけです。それから、その前の同和対策審議会も、同和対策という名前で答申をいたしておるわけであります。それから、いままで同和予算、同和地区、同和教育、同和対策、あらゆるものに政府及び公共機関がその名前を使っておられるわけであります。また関係の団体で、特に差別と貧乏で苦しまれた各団体、部落解放同盟も、また全日本同和会も、全部同和という名前でこの法律の施行を希望をしておられるわけであります。その苦しみを知った人たちが、この問題で、このことばで法律を制定していただきたいということを申し上げているわけであります。いろいろ観念的に、差別と貧乏を知らない、知らなかった方が頭で考えて、先ほどのような御意見があるところがあることを知っております。また、その差別と貧乏を受けておられた方の中で、すでに財をなし、すでに自分は社会的地位を得て、差別と貧乏を実際的に脱却された、そのような人たちの意見を聞いて、眠った子を起こすなという思想で、そういう名前を使うなという意見の方もあります。この問題については十数年間の討議で、それを乗り越えてこの問題をやろうということが、岸内閣総理大臣のときから、国会の討議になり約束になっているわけであります。熱心な方が新しく考えられて、これはどうかなという考え方を持たれることについて、その方の熱意については別に何とも言いませんけれども、長年の経過を経、そういうふうになったものが、その方が熱意があろうとも、一時的に考えられたことでその問題にブレーキがかかることは、非常に残念なことだと思うわけであります。そういうことで、ぜひ同和という名前を使う必要があろうと思います。  別な名前を使った場合に、ほんとうに同和対策を解決するためのあらゆることをしなければならない、部分的にそれがはずれるおそれがあります。たとえば、人口過密帯ということばを使えば、地区の改善、環境の改善だけにとらわれてしまって、就職の対策とか、零細企業の対策が抜けるおそれがございます。また、そうでなしに、それを包含する内容の名前をほかで考えたならば、その名前が同じ意議を持つようになろうと思います。同和と同じ意義を持つようになろうと思います。そういう意味で、関係の団体がすべてこの名前でということを、特に全日本同和会の幹部の方々が、ほんとうに熱心に与党に最近このことを申し入れられたことも、私は存じております。どうか、関係方々が熱心にその名前を要望しておられるために、いささか学問的か何か知りませんが、そういう主観的な判断をなさる方のお考えでブレーキがかからないように、ほんとうに熟したことばで、各官庁全部使っているわけですから、そういうことで、その名前で御推進をいただくように、ぜひ総理大臣もそのお気持ちになっていただくようにお願いをしたいと思います。それについてひとつ……。
  74. 床次徳二

    ○床次国務大臣 同和対策の特別措置法案と申しますか、法案の制定につきましては、先ほど総理大臣からお答え申し上げたとおりでありまして、何と申しましても、四党協議会におきまして結論が出ますことが、一番早い、またスムーズな行き方であると思いますが、同時に、政府といたしましても検討はいたしておるのでありまして、御指摘になりました問題点につきましては、協議会なりそれぞれにおきまして、また特に同和審議会等におきましても御意見がありますので、結果的にはこういうことが総合されて法案になるべきものと私は思うのであります。重点、諸問題につきましては十二分に私ども承知しておりますので、その点におきまして適当な結論が出ることを期待いたしておる次第であります。
  75. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど申し上げましたことについて、総理大臣、どんな方でも答弁を変えられてしかるべきだと思いますし、私で間違えたときにはまた質問も内容を変えようと思いますが、その問題については、いま私が申し上げたような考え方で御尽力をいただくように、ぜひ前向きの御答弁をいただきたいと思います。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 重ねてお話しですから、御意見は御意見として伺っておきます。
  77. 八木一男

    八木(一)委員 幾ぶんの党内に対する御遠慮があろうかと思います。しかしこの問題は、政府が国民に国会を通じてお約束になったことでございますし、各政府の機関でその意見を出しておりますし、諸官庁、政府で使っておられることですから、そのことは非常に重大なことでございますから、そのことを尊重された気持ちでおやりいただけるものと、私、理解をさせていただきたいと思います。いま首を縦に振られましたから、この名前を使っていくお気持ちになったと思います。  それから次に、この問題について法制局長官に、時間がありませんから簡単に一言だけ要請をしておきたいと思います。  この法律をつくるときに、非常に画期的な法律でございますから、従前に各例がないというようなことで事務的にブレーキがかかりましたならば、これはたいへんなことであるということを前に御質問申し上げました。そういう事務的、技術的な困難をすべて乗り越えて、同対審の答申の精神に沿うように、同和対策特別措置法というものがほんとうに役に立つように、法律の制定について法制局として努力をされる、そういうことをされるということについて、ひとつ簡単に明確に御答弁を願います。
  78. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 八木先生には、実はここに持っておりますが、五十一国会、五十八国会で御答弁申し上げたことがございます。私はその際に申し上げたことと同じ考えをただいまも持っております。すなわち、法案が参りました節は、御趣旨が十分に生きるように努力をいたしたいと考えております。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 保利官房長官と床次総務長官、どちらかにでも、また政府委員の方でもけっこうですが、内閣の同和問題閣僚協議会が開かれたことがあるかどうか。招集の責任者はどなたか。どなたでもけっこうですが、簡単にお答えいただきたいと思います。
  80. 床次徳二

    ○床次国務大臣 お答え申し上げますが、同和問題閣僚協議会というのは、昭和三十四年同和対策要綱を決定いたしました後、開催いたしておりません。しかし、同和問題は各省に関連しておりますので、おもな問題につきましては、すでに閣議におきまして話し合いは通じておるものと考えておる次第であります。  なお、仕事は内閣審議室でもって庶務をしておりまして、司会は官房長官が司会をいたしておるわけであります。
  81. 八木一男

    八木(一)委員 実はこれは、質問の前にそういう質問を申し上げると申し上げておきましたので、スムーズな御答弁をいただいてあれなんですが、実は開かれてないということは問題であります。大事な問題でございますから、最高のリーダーである総理大臣のおられる閣議の席でやられるということは非常にけっこうであります。どんどんやっていただきたいと思いますが、この機関として置かれたものが一回も開かれていないということに問題があります。この前に御質問申し上げたときには、招集責任者もアピール責任者も、当該の方が御存じのないような状態でありました。これが一つの、やはり同和問題について、取り上げられたときには熱心にお考えになるけれども、ふだんは忘れられているということの証拠ではないかと思うわけであります。その点、たとえば内閣の審議室が、沖繩問題等その他の重大な問題と一緒にこういう問題を考えられるのでは、片手になって問題の推進に十二分でないということになろうと思います。そのようなスタッフを局ぐらいのものにして十二分に推進をされる必要があろうと思いますし、また、四党の中の話になっておりました国会報告義務ということが、協議事項の一つで意見のまだ一致していないものの一つになっております。国会で私はこの問題を担当しましたから、一生懸命にいろいろな問題をアピールをいたしました。私もしかしそのうちにぽっくり死んでしまうかもしれません。そういうことになりますと、やはりこの問題が停とんをすると思います。熱心に推進された同僚の湯山勇君は、県知事選挙のために議席をなくされております。まだ熱心な方がたくさんおられますけれども、そういうように人の努力にまたなければ問題が討議をされないということでは間違いだと思います。  その点で、たとえばその国会報告義務というのを法律案に入れようという主張に対し、そんなことはなくてもよかろうというようなお話があるわけであります。国会というものは、国会に対して政治が報告をされ、それを討議をされるのが最も必要なことである。国会の本来の一番の権限であり、それを法律的に確定をしなければならないと思いますが、しかしその問題でもなかなかスムーズに話が進まないという状態であります。こういう問題についても、ぜひ与党のほうで、与党みずからが、国会を重視をしようじゃないか、それを入れようじゃないか、四党協議会で今度の協議のときには、野党がどうでもいいと言ってもこれは入れるんだというくらいな勢いで、この問題を内容を充実をしていただきたいと思うわけであります。そういうことが一つであります。  それからもう一つ。時間の関係上急速に申し上げますが、荒木行政管理庁長官に関係のあることであります。たとえばこの問題で同和金融金庫をつくろうという話が提起されますと、そんなものは話にならない、金融公庫をつくることはいまタブーになっておるというような話になっております。ところが、臨時行政調査会の報告によりますと、その中では、こうしたものについては積極的に政府の部局なり機関をつくるべきことが一般的な原則の中の第一項に載っているわけであります。臨時行政調査会では、新しいものをつくっちゃいけないというふうに理解されている向きが多い。ところが、開発のおくれたところとか、低所得者の問題とか、人権を擁護する問題については、それを整備しなければいかぬということが臨調の答申に出ているわけであります。残念ながら、国民方々も議員の同僚の方々も、すっかりそれをのみ込んでいる方が少なくて、そんなものは話にならない、金庫についてはもうタブーだというようなことになって問題が進みません。そのことをひとつ荒木行政管理庁長官が、そういう条項があることについて、先ほども御連絡しましたけれども、御理解のほどをひとつこの答弁でお示しをいただきたいと思います。
  82. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  いま御指摘の点は臨調答申に明記してあることは承知いたしております。四十四年度の予算につきましては、定員、機構については片っ端から押えることをいたしました。これは設置の必要なしと認めたからであります。設置の必要がないと認めましたから、四十四年度予算に関する限りは押えました。  しかし一面、いま御指摘のような面があることも承知いたしております。具体案が出ましたときに検討さしていただきます。
  83. 八木一男

    八木(一)委員 いまのようなことでございまして、関係の各大臣の方もひとつよくその点を御理解をいただきたいと思います。これは大蔵大臣なり通産大臣なりがその問題に関係があるわけであります。ちょっと聞くと、そんなものは問題にならぬということで、ほんとうに話が進まぬのです。私は微力ではございますが、この問題を一生懸命やりましたから、はったりではなしに、どうやって問題を進めるべきかということを一生懸命に研究をしておりますが、それで申し上げても、普通の常識でそれはもうだめだというようなことで話がおくれるわけであります。そういうことをこの予算委員会の席上で確認をしていただいて、通産大臣がその問題について積極的に進められるということを知っていただきたいと思うわけであります。  次に、予算の問題について一言だけ申し上げておきたいと思います。  福田大蔵大臣、明治の初年に武士階級に対して秩禄公債が出ました。明治四年と五年で約二億一千万円だった。それがいまどのぐらいのものになるか。たとえば貨幣価値にすれば、明治十二年からの貨幣価値の変動をいま大蔵省で計算してもらいましたら、千五百倍であります。明治五年からだともっと多くなります。したがって、千五百倍のままでいってもそれは三千億、そして三千億の価値のものを四分の利息で拡大をして九十五年間やるとどういうことになるか、四十倍になります。ですから結局、三千億のものを四十倍ということになれば、十二兆というものを、そのときに武士階級の方々には、そういう財産を保たれるだけの素地のものを政府として対処をされたわけであります。武士階級よりも、この三百万と称せられる同和対策関係国民のほうが数が多いわけであります。そのことを考えられますと、いま対処されている予算というものがいかに少ないかということを福田さんはおわかりをいただけると思うのです。   〔中野(四)委員長代理退席、委員長着席〕  また、開発途上国が、国民総所得の一%を先進諸国に援助、協力を要請をされております。国際的に低開発地域、開発途上国に対してはその援助、協力をすることが普通の当然のことであるという状態において、国内的に非常に不利に置かれた国民に対して、同様の考え方も当然成り立ち得ると思います。そうなれば、年間に四千億というような予算が計上されてしかるべきところであります。ところが、本年度の予算に比して本年度の同和対策の予算というものは一%に足りないで〇・〇一%にしかすぎないわけであります。しかもその中は、建設省関係で同和対策に使われるかどうか疑問の点を除きますと、〇・〇〇三%ぐらいにしかならないわけであります。いま総理もおっしゃったように、予算の伸び率は四〇%で、多いということは存じております。しかし、何百年放置されてきて、これから飛躍的に増大をしなければならないものでありますから、前の年のパーセンテージで何%ふえたということでは問題にならないわけです。同和対策審議会の答申ができて、長期計画が本格的に始まろうということしの年でございますから、そのような前年度予算との比較ではなしに、こうあるべきだ、こうしなければならないということで予算が組まれなければならないと思います。その予算要求をしない関係の各省もだらしがないと思います。それをしかも二割五分も削減をされた大蔵省は、この問題をほんとうに理解をされているかどうか疑わしいものがあります。そのような点で、予算についても、その長期計画についてほんとうに本腰を据えて、同対審の答申を大臣はじめ全部初めから終わりまでもう一回読んでいただいて、その問題に対処をしていただきたいと思うわけであります。  そういう点で、大蔵大臣、今年度の予算は非常に乏しいと思いますが、前向きに取っ組まれるお気持ちをただいま固めていただいて、そのような積極的な御姿勢を示していただきたいと思います。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 同和対策には積極的に取り組んでいるつもりなんです。いま総理からもお話しがありますように、各党間で話をしておりまして、特別措置法ができる、これも期待をしておるわけなんでありますが、この上とも積極的に取り組む、こういう考えでございます。
  85. 八木一男

    八木(一)委員 時間がありませんから……。後半大きな声になりまして失礼いたしました。元来は非常に大きな声なんですが、非常に大切なことでございますから、声をセーブをして申し上げておったわけであります。  総理大臣の前向きな御答弁で、よい法律を三月上旬に出される、それまでに四党の話がまとまるようにもほんとうに御努力くださる、ありがたく思います。  名称の問題、少しぼやけましたけれども、私の御質問に対して首を縦に振っていただいてそのようなお気持ちになっていただきました。その点についても非常に満足をいたします。どうか総理大臣のこの姿勢に見習われまして、各大臣やあるいは政府委員の方も、それ以上に熱意を持って推進をしていただきたいと思うわけであります。以後また一般質問で詳しく一生懸命に熱意を持って御質問を申し上げたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)
  86. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて八木一男君の関連質疑は終了いたしました。  午後の会議は、午後一時半より再開し、伏木和雄君、林百郎君の総括質疑を行ないます。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ————◇—————    午後一時三十五分開議
  87. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伏木和雄君。
  88. 伏木和雄

    伏木委員 私は、公明党を代表いたしまして、わが国が直面している米軍基地問題あるいは社会保障問題、そして政治資金規正法の改正につきまして、総理、防衛庁長官、厚生大臣並びに関係大臣に質問を行ないます。  その前に、先日の自衛隊F104ジェット戦闘機墜落事故、同時に核と憲法の関係につきまして、一、二お伺いしたいと思います。  まず、質問に先立ちまして、今回の自衛隊墜落事故によって被害を受けた死者並びに家族の方に心からお悔やみ申し上げると同時に、負傷者方々が一日も早く全快されますよう心からお見舞い申し上げる次第でございます。  今回の事故にあたりまして、わが公明党としましては、直ちに調査団を現地に派遣いたしました。八日と九日の二日間にわたって綿密な調査を行ない、その第一報が参っております。その調査結果に基づきまして、若干質問させていただきたいと思います。  まず、いかに今度の事故が予想以上に悲惨であったか。調査団の報告によると、無数に炸裂した機体がナパーム弾のように飛び散って、羽目を破り、壁を通し、部屋の中に凶器のように突き刺さった。その被害——事故現場から四百メートル離れた民家から持ち帰ったその残骸がございます。ただいまこれを見ていただきたいと思います。  長官は、104の墜落報告で、先ほど人的被害死者四あるいは負傷者十九、このように報告がございました。これは単に今回の飛行機事故によってこれだけの被害にとどまった、こう見たならば、あまりにも軽率ではないかと思います。ということは、この現場の泉町は町ぐるみの慰安旅行で、ほとんどの家庭が留守であった、こういう客観情勢がございました。したがって、被害が最小限に食いとめられたのでありまして、もしもこの慰安旅行がなかったとしますと、これは史上最大の大惨事が起きたのではないか、私どもはこのように考えております。これは墜落事故現場から四百メートル離れた民家の壁を打ち破って民家に飛び込んだ残骸です。これは事故現場から四百メートル離れております。総理、これを見ていただきたいと思いますが、これはもう人体に当たればたちまち即死であります。こうした大惨事が幸いにも——不幸中の幸いといいますか、町ぐるみの慰安旅行であったということによって救われたようなものでございます。この事故につきまして、防衛庁長官報告以上の被害が当然起こるべきものなんだという認識に立たなくてはならないと思います。この点について、まず総理のお答えをお伺いしたいと思います。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 伏木君にお答えいたします。  ただいま御指摘のとおり、当日は慰安旅行に出ておられた、また、学校に通っておる子供もまだ家庭に帰らない、そういうことが被害をあの程度にとどめた、かように私も理解をしております。もしも普通の状況であり、時間がもっとおそかったら、そうして子供たちがみんな学校から帰っていたとしたら、たいへんなことになったろう、かように思っております。
  90. 伏木和雄

    伏木委員 そこで、具体的に伺ってまいりたいと思いますが、今回調査団が帰りまして報告を受けた結果、これはもう明らかに人災である、このように憤りをもって答えておりました。  まず、防衛庁長官に伺いたいと思いますが、移動訓練を終えたF104六機が百里基地を飛び立つ予定の時刻は何時であったでしょうか。
  91. 有田喜一

    有田国務大臣 私の聞いておりますのは、当日の十時という予定であったようでございます。ところが、気候の関係上、一時間余りおくらしてスタートを切ったようでございます。
  92. 伏木和雄

    伏木委員 防衛庁長官、それは認識が誤っているようです。実は、この出発予定時間は九時であった。これは現地の空幕の方も言われております。九時に出発予定であった。それが出発が十一時と、二時間おくれて出発をしたわけです。この二時間おくれた理由は何であったか、お伺いしておきたいと思います。——いま長官は十時と言われましたが、私は九時、このように調査の結果は受けてきております。したがって、長官からお答え願いたい。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕
  93. 宍戸基男

    宍戸政府委員 具体的なことでございますので、私から答えさしていただきたいと思います。  当日の九時に——気象条件をいろいろ調べて判断をした時刻が、お示しの九時の時刻でございます。予定は十時の出発の予定でございましたので、一時間前の九時ごろその判断をいたしました。当時、九時の状況は、小松気象条件が悪いということでございましたので、時間を延ばそうというふうな決心をいたしました。その結果、延ばしまして、ほぼ一時間後の十時ごろもう一度決心をいたしまして、そうして、今度はだいじょうぶであろうというふうな気象条件になりましたので、やはり、予定は少し延びましたけれども、帰ろうというふうに決心いたしまして、実際に百里を離陸いたしましたのが十一時過ぎ、こういうふうな状況になっております。
  94. 伏木和雄

    伏木委員 防衛庁小松航空気象観測日表によってこれを見ますと、九時から十時、十一時、十二時と、この記録はだんだん天候が悪化しております。しかも気象状況は、三千メートル上空には雷の発生する積乱雲があった、ここまで確認されております。したがって、全日空機、民間機は、この雷雲あるいはみぞれの悪天候を見て、飛行を中止した。したがって、この事故は未然に防いだわけであります。このように気象状況が明らかにだんだん悪化しているにもかかわらず、今回は飛行させた。ここに防衛庁として大きなミスがあったのではないか、このように考えます。この点、気象状況を正確なデータの上から認識しておりながら、なぜ発進させたのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  95. 宍戸基男

    宍戸政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、気象条件につきましては、先ほど申し上げましたように、一たん延ばすというふうに慎重に判断をいたしたわけでございますけれども、結果的には不幸な事故が起きたわけでございますが、出発をきめたときの気象状況を申し上げますと、小松における気象状況が、雲の高さが二千フィート、これは約六百メートルでございます。それから視程が二千メートルでございました。で、小松飛行場付近における最低気象条件、これは、これ以上悪いと飛んではいけないという条件でございますが、それは雲の高さが三百フィート、約九十メートル、視程は八百メートルというふうにきめられておりますので、それよりはいい状況でございましたので、離陸、帰投は可能である、こういうふうに判断したわけでございます。
  96. 伏木和雄

    伏木委員 当日の気象状況を見ますと、午前三時が、南々西の風で三・三メートル、天候はみぞれ、それから六時は、同じく南々西の風で五・二メートル、天候は同じくみぞれ、九時には同じく二・五メートルで雨あられとなっております。十二時には、この風が六・八メートル、このようになりまして、明らかに三千メートルの上空には積乱雲がはっきりとあったわけです。この雲があるにもかかわらず着陸を強行した。ここにも、発進と同時に着陸状況判断というものにもミスがあったのではないかと思います。この点はどのようになっておるでしょうか。
  97. 宍戸基男

    宍戸政府委員 結果的には不幸な事故が起きております。で、気象関係の者、あるいは編隊長及びパイロットは最善の努力をしたものと思いますけれども、現在事故発生直後でございまして、パイロットその他関係者からいろいろ詳しい事情を調査中でございます。どこでどういうふうな判断をしたかということにつきまして、それが適切であったかどうかということにつきましては、さらに詳しく調査委員会調査をいたしたいというふうに考えております。現在の時点でそれをわれわれ断定して、どこにミスがあったか、どこが適切であったかということを断定申し上げる材料がまだ十分でございませんので、御了承願いたいと思います。
  98. 伏木和雄

    伏木委員 この近辺における航空事故はかつて二回ございました。同じF104の墜落事故、それから全日空事故と、このように過去に二回この雷による事故がある場所であります。しかも、この日は明らかに気象条件も悪い。もうはっきり観測所のデータが示しております。その上、約三千メートルの地点において積乱雲を確認しております。これだけ整っておって、さらに調査しなければという答弁は私は納得できない。何かここに無理な訓練なり無理な飛行があったのではないか、このように考えるわけですが、以上の点は、もう明らかに調査の結果として出ているわけです。データも、当然防衛庁のほうには当日のデータは入っていると思います。こうした客観的な情勢がある以上は、ここでこの墜落事故原因が何であったかという点をはっきりすべきである、このように考えるわけですが、この点明らかにしていただきたい。
  99. 有田喜一

    有田国務大臣 この不幸な事件が起きた直接の原因は雷であったことは明らかなんでございますが、しかし、いままでの雷に対するその後の対策ですね。いままで事故がありましたその経験にかんがみまして、避雷対策のようなことをやっておったことも事実でございますが、何ぶんこれが大きな雷であったために、いままでの対策が十分でなかったということは、私もよくわかります。したがいまして、これに対する対策を一そうしっかりやっていこうというので、いま検討中であるのであります。
  100. 伏木和雄

    伏木委員 いまの長官の答弁によりますと、避雷対策が十分でなかった。十分でなかったならば、なぜこういった気象状況というものをもっと慎重に判断しないのか。避雷対策については、前回事故があることですから、これは対策を立てていることば当然であることは十分わかります。しかし、それが解明されない、それが対策が立てられないうちは、こうした気象条件というものは慎重の上にも慎重を期すべきである、われわれはこう判断するわけです。  ところが、この調査に行きました同僚議員の鈴切氏に対しては、ある空幕の幹部がこう言っておった。悪天候で訓練できないようでは空戦に役に立たない。天候が悪くともそれに耐えていかれるようでなくては実際の空戦に役に立っていかない。したがって、天候が悪いのに、しかも避雷対策が十分できていない飛行、これをやったところに今回の事故の最大の原因があるのではないか、私はこう考えるわけです。この点について、この空幕の幹部はこう言っておる。この点について長官はどうお考えになりますか。
  101. 有田喜一

    有田国務大臣 普通の乗客機とわれわれの立場は多少違うことは明らかでございますが、しかし、何ぶん訓練が終わって帰るときでございますから、そこで、はたしてあの気象条件においてこれをやったことが適切かどうかということは、いま検討しておる、究明しておる最中でございまして、ある程度一般の乗客機とは異なる。しかもこの事故機の七分ほど前に二機が無事に入り、しかもまたそのあと七分ほどたって三機が次々と無事に入っておる。ちょうど六機のうちの五機が入って、一機がその事故にひっかかったという、そういう事態もありますので、いま非常に慎重な態度で検討しておる最中でございます。お含みを願いたい。
  102. 伏木和雄

    伏木委員 ただいまの長官の答弁によりますと、六機のうち五機は無事に帰ったのだ、一機だけがたまたま事故にあったのだ、したがってこれはやむを得ないのだ、こういうように私とれます。しかし、六機のうち一機落ちたということは、これは確率の上からいったらどういうことになります。とんでもないことです、これは。こんなことで、もしも長官が、六機のうちたまたま一機が事故にあったのだ、ほかは五機無事だったのだから、必ずしも気象条件のせいではないのだというような判断をされているとしたら、これは全国の航空基地を持った地域住民は憤激します。今回の事故は、先ほども申し上げましたように、町ぐるみの慰安旅行、あるいは時間的に昼食時であった、いや子供が学校へ行っている留守であったというような条件で、幸いにもこれだけでとどまったわけです。もしもこれが夕飯のときとか、家族団らんのときにこの事故があったならば、これはえらい問題です。それにもかかわらず、長官は、五機は無事に帰ることができたのです、一機だけがたまたま事故にあった。こんなことでは、今後この飛行基地を再検討しなくてはならない、あなたがそういうお考えでいるのならば。私はこのように考えるわけですが、この点、御答弁願いたい。
  103. 有田喜一

    有田国務大臣 決して私は、六機のうちの一機だけがこうだったから、それだから軽視するなんという考えは絶対にないのですよ。そういう事態もあったから、この気象条件にはたしてこれが適当であったかどうかということをいま非常に重大に考えて、慎重にこれを検討しておるということでありますから、その点はひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  104. 伏木和雄

    伏木委員 それからもう一つ。先ほど私申し上げた空幕の幹部が、悪天候でもこれは空戦に役立たせるためにやらなくてはならない。いま長官は、ほかの飛行機とは使命が違う、したがって、ある程度やむを得ない。これもある程度は私認識いたしますが、しかし、だからといって、とうとい人命とこれを交換することはとうてい許せない、私はこう思います。この点、この空幕の考え長官はどうお考えになるか。
  105. 有田喜一

    有田国務大臣 さっきも御答弁申しましたように、ほんとうの戦闘のときならば空幕が言うような考え方をしなくちゃならぬかと思いますけれども、何ぶん訓練を終わって現地へ帰還中のときでございますから、そういうことにつきましては、やはりそういう人命の尊重ということを考えていかなくちゃ、ならぬと思いまして、はたしてあの気象条件であれが適当であったかどうかということをいま検討しておる最中でございますので、こうだという判定は下せない、私は常識的にはさように考えております。
  106. 伏木和雄

    伏木委員 次に、都市近郊の基地のあり方についても問題があると思います。昭和三十七年当時、小松基地着陸、発進する空路の周辺はたんぼであった、このように私どもは記憶しております。ところが、最近、都市化の風に吹かれて、地域にどんどん民家が建つ。そこで、県知事も市民も、この小松飛行場状況については不安である、したがって善処してもらいたいということを再三基地のほうへ申し入れてあった。こうした現地住民、知事を先頭にしての申し入れをあなた自身が聞いておったかどうか、防衛庁のほうでは。この点をお伺いしたいと思います。
  107. 有田喜一

    有田国務大臣 今回の事故が起きましてからは、現地へ私行ったときに、そういう要請がありました。しかし、私は、御承知のとおり就任後まだ間もないものですから、私が就任してからは、この間の事故が起こるまでにはそういう要望は聞いておりませんでした。
  108. 伏木和雄

    伏木委員 この小松基地金沢市から約三十キロしか離れておりません。したがって、この空路というものが住民の不安になるのは当然でありますが、私はいま長官のお答えを聞いて驚いたことは、こうした現地の住民が不安だから何とかしてもらいたいという申し入れが防衛庁の幹部の耳に入っていない。これでは対策が進むわけはない。こんなことで住民を——もし住民がこのことを知ったならば何と思います。再三にわたって、しかも知事までが申し入れをやった。これが今回現地へ長官が行ってみて初めてわかった。これでは防衛庁のいざというときの指揮系統なんというものはどうなります。下からの声が吸い上がらなければ、上からの声も流れないということです。完全に防衛庁の機能は麻痺しているのじゃないか。長官というのは、ただ名前だけもらって、あとやっていることはさっぱりわからぬ、そんなところにも今回のこういう事故原因があるんじゃないか。この点について長官は何とお考えになりますか。
  109. 有田喜一

    有田国務大臣 進路の問題につきましては、すみやかにこれを検討しまして、人口の集中した都市の上は通らないような方法を定めたい、かようなことで、いま急速に進路方向検討中でございます。
  110. 伏木和雄

    伏木委員 住民の問題が出ましたから、ここで建設大臣に伺ってみます。建設大臣いらっしゃいますね。都市計画の上から見て、今後こうした飛行基地というものはどうお考えになっているか、大臣のお考えを承りたいと思います。
  111. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 本問題につきましては、防衛庁と適切な連絡をとりまして、これらの不幸が起きないような対策のも一とにおいての都市計画を進めてまいりたいと考えております。
  112. 伏木和雄

    伏木委員 長官にお伺いしますが、このF104Jの飛行機の性能に問題があると私は思います。それは、避雷は理論上できるというようになっているといわれておりますが、実際は、メーカー側では、一番ウィークポイントになっているのが避雷の問題だというふうにメーカー自身もいっておる。防衛庁の幹部も、この点は同感であったと、現地の調査団の調べに対して自衛隊の空幕は説明しておった。全く問題がある飛行機であると思います。この点、長官はどういうふうに受け取っていらっしゃるか。
  113. 有田喜一

    有田国務大臣 F104につきましては、かつて雷で事故を起こしたこともありますので、その避雷方法につきまして一つの措置をとっておったわけです。ところが、何ぶん今度のような事故を起こしましたから、この避雷装置についてもう一つ進んだ装置をやっていかなくちゃならぬ、技術的にはなかなかむずかしいこともわかっておりますけれども、何ぶんにも最近の科学技術の進歩の時代ですから、何とかその方法はあるんじゃなかろうか、かように思いまして、その避雷装置をしっかりしたものにしたい、かような考えでいま検討を進めております。
  114. 伏木和雄

    伏木委員 これからジェット戦闘機がどんどんと開発されていくことであると思いますが、今日のこのジェット機が事故を起こした場合に、浮力を失ってたちまち四十五度の急傾斜で墜落してしまう。これはもう今日のジェット機の持った性格でありますが、このジェット機を選定するにあたりまして、先回もわれわれの矢野書記長が、F4ファントムの決定方法について調査方法がいいかげんでないか、完全なデータがとれるわけないではないか、二機を飛行試験に使うところを一機しか用いなかった、完ぺきな調査とはいえない、このように本委員会におきまして政府の見解をただしたわけでありますが、こういう事故が起きてまいりますと、ますます事前調査というものが慎重でなくてはならない。前回のような試験の原則を曲げた調査によって定まったファントムだ、選定方法については大いに疑義があるではないか、われわれは、今回の飛行機墜落事故によってさらにこの考えを深くするものでございますが、このファントムの決定にあたっては、長官は、こうした事故を踏まえた上での再考または再調査、こういうものをなさるかどうか、この点をはっきりとしていただきたいと思います。
  115. 有田喜一

    有田国務大臣 FXの問題につきましては、この間も申しましたように、私どもとしましては、あくまで防衛的、技術的見地に立って、最善の調査をやったつもりでおるのであります。また、いわゆる三種の機種からファントムを選んだのでございますが、もう一つの対象のCL1010というのは、いまのF104の改造型でございまして、したがいまして、雷に対する弱さがあると思いますが、ファントムにつきましては、われわれは今回の事故に省みまして、一そう入念に避雷装置をやって、そういう事故が起こらないように心がけて進みたい、かように考えております。
  116. 伏木和雄

    伏木委員 私は、何も避雷装置があるからないからと、避雷装置のことだけで言っておるのではありません。ファントムは避雷装置が完全だからこれにきめるなんて、そういうようなことでなくて、調査条件に適応してない点がある、したがって、そういった方法で検査をやったものを選定して再びこういう事故が起きることを憂えて、完ぺきな調査をする必要があるじゃないか、再調査の必要があるじゃないか、再考の要があるではないかということを長官に言っておるわけです。何も避雷装置だけではございません。この点、あなたは、どこまでも前回のF4ファントムについての調査は完ぺきであったということをここで断言されますか。
  117. 有田喜一

    有田国務大臣 先ほども言いましたように、この調査の許せる範囲においては十全の調査をやって、そして技術的と防衛的見地に立って、ファントム機種としては一番いい、こういう結果を見出しまして決定したようなわけであります。  そこで、今回の事故にかんがみまして、いまから製造するわけでございますから、雷に対する強さを発揮できるようなことも考えてつくりたい、かように考えておるわけであります。
  118. 伏木和雄

    伏木委員 ですから、私は雷のことだけで言っておるのではないというのです。こういう予測しない事故発生するから、調査を完ぺきにしろ——長官は、許せる範囲の調査はしてきた、許せる範囲、二機でやろうというのを一機でやった、そうして許せる範囲の調査をした、こう言うが、これでは完ぺきな調査ではないではないか、こう私は申し上げるわけです。そういう完ぺきでない、現在でき得る完ぺきな調査でない姿でこれを選定して、将来事故があった場合どうするか、これを考えなくてはならないと思います。そこで再調査の必要があるのではないか、こう伺っておるわけです。
  119. 宍戸基男

    宍戸政府委員 新戦闘機の調査にあたりましては、先日もこの委員会で御説明申し上げましたけれども、主としていま御指摘の単体の性能かと思いますけれども、単体の性能につきましても、あらゆる可能な方法を通じまして比較検討をいたしました。さらに、費用対効果につきまして、最低の費用で一番効果のあがるものはどれであろうかということを、計算機を使いまして精密な調査をいたしました。現在のわれわれの持ち得る資料で、費用対効果の点では、一番安くて一番効果のあがるものがファントムでございます。そういうことをこの前も申し上げました。今度の事故にかんがみまして、先ほど長官のお答えのように、こういう事故につきましても、さらにこれからつくるファントムにつきまして十全の対策を講じ得る余地があろうかと思います。その点につきましては十分な措置を講じなきゃいかぬと思いますけれども、先生の御指摘は主として従来の調査方法の御指摘でございますけれども、いま申し上げますように、これはわれわれが現在持っている能力の最善を尽くした調査方法をやっておりますので、その調査につきましては確信を持って、これを変えるというふうなつもりは現在のところございません。
  120. 伏木和雄

    伏木委員 最後に、この問題につきまして総理の御見解を承っておきたいと思います。  ただいま指摘いたしましたように、気象条件はデータの上から時間を追うて悪くなっている、しかも着陸時危険な状態にあったということも気象上言えるわけであります。そうした中にあって自衛隊の幹部は、気象条件が悪くてもこうしたものに耐え得る訓練をする必要があるわけだということで、人命よりもむしろ訓練第一義に判断を下しているようでありますが、さらには現地の住民あるいは知事から、この不安を一掃してほしいという陳情がしばしばあったにもかかわらず、防衛庁の最高幹部はこれを知らなかった、こういうさまざまな問題が含まれて今回の事件が発生した。したがって現地では、これは人災である、起こり得べくして起きてきた事故なんだ、このように現地住民は憤りを持って今回の事件を見ていると、こう言っておるのでありますが、こうしたさまざまな条件をはらんで起きた今回の事件について、総理自身今後どのように対処されるか、総理の御見解を承りたいと思います。
  121. 有田喜一

    有田国務大臣 ちょっと総理の御答弁の前に、誤解があったら悪いから私から言っておきますが、知事からの陳情は進路に対する陳情じゃなくて、住宅の移転とかそういうような陳情は施設庁長官のほうにありまして、そのことは私は知っておるのです。進路のことにつきましては聞いてない。そのことを言っておるのですから、そのことが事実でございます。その前提に立って総理の御答弁をお願いいしたいと思います。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 伏木君からいろいろ公明党で調査なすったところ、それを基礎にして、また伏木君の考え方も交えてお尋ねでございます。もともとこの自衛隊基地、これは自衛隊ばかりじゃございませんが、こり基地が十分の効果をあげるためには、基地周辺、ことに基地地域住民の積極的な協力がなければ十分その基地の効果をあげることはできません。これはもう基本的な考え方であります。またそういう観点に立って、飛行機を飛ばすにしても、絶えず基地の司令はそういうことを考えなければならない。基地住民に迷惑の及ばないように、また協力を得るように、こういうことを考えなきゃならぬ基礎的な問題であります。  それからもう一つは、これは防衛庁長官が申しておりましたが、自衛隊自身はこれは普通の一般の民間のものとは違う、こういうこと、またそれについては伏木君もある程度理解ができないではない、こういうことを言われたと思います。そこで、もともと自衛隊というものは防衛的な使命を持っておる、国土の安全を確保する、そういう使命を持っておる。その意味においての平素の訓練は、もちろん自衛隊自身が積極的にやらなきゃならぬこと、これは当然であります。しかし、私は過去の少年自衛隊の溺死事故に対しても言ったのですが、幾ら自衛隊だからといって、みずからの生命を大事にしないようなことではほんとうの近代的な訓練はできないじゃないか、こういうことを実は申したのであります。  したがいまして、いまの第一の地域住民の利害にも十分思いをいたし、また自衛隊そのものもむだな損傷をするというようなことがあってはならないのですね。やはり近代的な訓練をするということが主体であります。幾らそれが防衛の立場といっても、近代的に考えていけば、天候その他が悪いのに無理をして帰投することもないだろう、かように思います。またもっとりこうに考えれば、訓練のしかたもあるだろう、そのときに地域住民に迷惑をかけないように、海上から迂回して帰ってくればそういう事態も起こらないかもわからない。いろいろ考えさせられることはあると思います。しかし基本的には私はその二つを考える。自衛隊だからといってみずからの命を軽く考える、そんなことがあってはほんとうの訓練にならないと思うし、また地域住民にそのことで迷惑をかけるようなことがあったら、本来の基地の使命を達することができない、かように私は考えております。  以上の二つを申し上げておきます。
  123. 伏木和雄

    伏木委員 この自衛隊墜落事故につきましては以上にいたしまして、質問の本論に入る前に、最近の憲法をめぐっての論争につきまして、一点だけこれは明確にしていただきたい。  ということは、わが国は国民合意のもとに平和憲法を打ち立てた国であります。しかも、世界の唯一の被爆国として、核は断じて世界からなくすべきだ、これは国民の悲願でございます。こうした国民感情というものを無視するがごとき政府の見解というものが、しばしばこの予算委員会あるいは本会議に出てきている。したがって、国民は、まさかわが国が核を持てる国だということは考えてもいなかったというような国民感情というものが最近強くなってきております。したがって、この憲法をめぐりまして、端的にはっきりと、短いことばでけっこうですから、わが国が平和憲法下にあって核武装国となることができるのかできないのか、この点を短いことばでけっこうですから、イエスかノーかでけっこうですから、お伺いしたいと思います。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう大事なことはイエスかノーかで言うと、しばしば誤解を招くのです。あるいは少しは時間がかかるかわかりませんが、それはひとつお許しを得て、そうして納得のいくような立場でこの話をひとつ聞き取っていただきたい。  私が申し上げるまでもなく、平和憲法で、国際紛争は武力によってこれを解決するようなことはしない。戦争は放棄しておる、したがって自衛力は持つ、自衛権はある、しかし、それより以上のものは持たない。他国に脅威を与えるようなもの、これは持たない。ことにもう侵略的な行為は絶対にしない。これはもうはっきりしておる。そこで、この憲法の純理論的な、法律論的な考え方は、過日法制局長官がお答えしたとおりであります。いわゆる防御的なものなら差しつかえないじゃないかという、この考え方は、私になりましてから格別にその議論を採用したわけではありません。(「岸内閣からだ」と呼ぶ者あり)岸内閣以来のことであります。よく御記憶があるようです。そのとおりなんです。したがって、岸内閣から池田内閣、そうして私の内閣になっている。その間一貫して、その点では法理論的にはもう問題はない。これだけははっきりしている。そういう意味から、法制局長官は過日答えたのであります。  しからば、直ちにわれわれがこの核兵器を持つかどうか、こういうと、私はいまの法律は、国内法は憲法の精神を受け継いだものだと思いますが、原子力基本法では、はっきり、平和利用はするけれども兵器は持たない、兵器をつくらさない、こういうことをもうはっきり規定しておるわけであります。この原子力基本法というものは憲法違反じゃない、これは憲法の精神をもとにできたものだ、かように私は思います。したがいまして、そのいま言われるようにイエスかノーか簡単な表現をすると、これらの関係でどうも間違いを起こしやすい。  時間をとって恐縮でありましたが、以上のような説明で御了承をいただきます。
  125. 伏木和雄

    伏木委員 ただいま原子力基本法の問題が出てまいりました。この原子力基本法というものは、これは憲法以下のものでございます、その効力において。私はあくまでも憲法という線で総理の御回答を要求しているわけなんです。したがいまして憲法の中で、いま総理のお話によりますと、防御用の核ならこれを保持することは理論的には許される、そうなりますと、攻撃的な核はこれは断じて許されない、こういう見解になると思いますが、これは誤りありませんか。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 他国に脅威を与えるような攻撃的なものは持たない、これははっきりしておる。
  127. 伏木和雄

    伏木委員 そうしますと、防御的な核はよろしい、攻撃的な核は断じて持ってはならない。これは憲法の解釈上の問題としてとらえるのか、あるいは条文による実定的な問題なのか。しかも、この憲法解釈というものは永遠に変わらないのか。政府が変わるたびに解釈が変わったのでは、これは憲法の精神というものはどうなってしまうかわからない。いま総理が答えられている、防御用の核は理論的に許される、攻撃用は持ってはならない、この解釈は憲法上、条文の上で実定的に定まったものか、あるいは解釈的なものなのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  128. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  この核について御指摘の問題でございますが、これは私どもは憲法九条の戦争放棄、戦力否認、この規定から当然に出てくる結論だと思っております。それからもう一つ、実定的にというお話がございましたのでつけ加えて申せば、かねがね総理がおっしゃいますように、いわゆる原子力基本法、あの規定もまた実定法上の一つの規定でございますが、憲法論を中心にしておっしゃれば、私が前段で申し上げたとおりであります。この解釈は変わることがないかということでございますが、これは十二年前からであったと思いますが、この理論的な考え方、これは変わっておりません。
  129. 伏木和雄

    伏木委員 いま法制局長官のお答えですと、また原子力基本法が出てまいりました。私は憲法の上において実定的なのか解釈的な問題かと、このように伺っているわけです。原子力基本法は一応おいて、憲法上の問題として伺っているわけです。この点でお答えいただきたい。
  130. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 念のためにつけ加えたのが悪うございましたが、憲法九条の論理的帰結としてそのようなものが実定法の解釈として出てまいると、こういうことを申し上げたいと思います。
  131. 伏木和雄

    伏木委員 先ほど、岸内閣当時からの憲法解釈が出ております、十数年続いていると、こういうことでございますが、岸内閣当時、今日のような核の力、今日論争されているような核の力に対して防御的、こう言っているものではない。ですから、たまたま長官が引用されたように、原子力基本法というような話も出てくるのではないかと思います。したがって当時からの解釈というものは、いま国会で論議されているような核の力、それを踏まえた上での議論ではない、私はこう理解します。それでなければ、核に対する憲法の規定というものは何らなくなってしまう。かりに防御用と攻撃用とを立て分けるというならば、それでは防御用とはどういうものなのか、攻撃用というものはどういうものなのか、これによってどんどん解釈は変わってまいります。したがって、岸内閣当時の考えと今日とでは、防御用という性格が変わっているのではないか、私はこう考えますが、この点総理でも長官でも……。
  132. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほど申し上げましたように、理論の筋として変わっておらないということを申し上げましたが、これは全くそのとおりでございます。  ところで、防御用、攻撃用ということば、これを政府側で使ったことも確かでございますし、またときどき現に使っておりますが、前に公明党からの御質疑に対してお答えしましたように、これはやはりわが国民の生存と安全、これを守るための正当な目的を達成する限度にとどまるかとどまらないか、これが基本の考えでございます。これはこの前申し上げましたが、そういうものに何が入るかということが確かにございまして、いまから十二年前の考え方、これはよく鉄砲が核でつくられるようになったらというようなことを、あるいは荒唐無稽なことかもしれませんが、そういうことを初めのうちは考えておりました。考えておりましたというよりも、例として引用しておりました。しかし、そこでも申しておりますように、原子爆弾であるとかICBMであるとか、こういうものが防御用とかあるいはさっき申し上げた程度以内であるとかいうようなことはとうてい言えないというものと対比して、そういうことがしばしば言われております。その点は現在でも全然変わりがございません。この核兵器の発達に応じていろいろなものが出てまいりましょうから、これは一がいに何がということは申せないと思いますが、要は先ほど申し上げた限界、これを中心にして考えるべきだというわけでございます。
  133. 伏木和雄

    伏木委員 それではお伺いいたしますが、たとえば沖繩に現在装備されているメースBは防御用でしょうか、攻撃用でしょうか。
  134. 有田喜一

    有田国務大臣 私は、メースBの実体はよく存じませんけれども、伝えられる資料によりますと、これは攻撃もできるものであります。
  135. 伏木和雄

    伏木委員 そうしますと、先ほど私その点指摘しましたが、攻撃用、防備用ということは、解釈のしかたで、どうにでもなってしまう。いまも防衛庁長官は、何か防備用であるけれども攻撃もできるとか、どちらをことばを先にするかでこれは変わってきてしまいます。したがって、核の保持というものについて、今日の核に対する常識として攻撃用とか防備用とかいう立て分けはできないとすれば、平和憲法のたてまえからここで攻撃用とか防備用とかいうことを立て分けて、いかにも防備用であるならば核を保持することができるという議論はこれはとんでもない解釈だ、私はこのように理解いたします。この点、長官の御意見を承っておきたい。
  136. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来申しておりますように攻撃用、防御用というのは、御疑問のような節が出てくるのは私は別にふしぎなことだと思いません、それだけをとって言えば。しかし、攻撃用、防御用という意味は、先ほどから申し上げておるような基準に照らして申しておるわけでございまして、その基準と合わせてお考えくだされば、何かかってに攻撃用あるいは防御用というものがいえる筋合いのものでないということがおわかりいただけるのではないかと思います。また、核兵器のことについて非常に重点を注いでいらっしゃるのもごもっともだと思いますが、私ども、通常兵器であっても、通常兵器は何を持ってもいいとは決して思っておりませんので、やはりいまのような基準に照らして持ってはいけないものも中にはあるんじゃなかろうかというふうに考えておるわけです。そういう意味で、核兵器と通常兵器を峻別するのはそういう意味では妥当でない。通常兵器でもそういうものは憲法上問題があるということを申すわけでございます。  それからもう一つ、メースBの関係がございましたが、これはアメリカが保有する場合についての話としていままで出ておりましたが、こういう問題については、憲法九条の関係ではかねて申し上げておりますように、最高裁の判断、また政府が従来とっておりました解釈によりますと、これは憲法九条のらち外の問題であるということがございますので、これも念のためにつけ加えさしていただきます。
  137. 伏木和雄

    伏木委員 私がいまここで議論していることは、わが国の本土にわが国が憲法上、核を持てるか持てないか、こういう議論でありまして、決して米軍の核についてとやかく言っているわけではありません。その点をはっきりした上で、認識した上で御回答いただきたいと思います。  そこで、私が先ほどから何回も繰り返しておりますように、防御用と攻撃用というのは、あくまでも日本の国民安全性を守るためということであって、その核の威力、攻撃力、そういうものではない。そういう大陸まで届くような強力な核兵器であっても、日本国民を守るということになると防御用の核という解釈を政府のほうはおとりになるのかどうか、この点をはっきりしていただきたい。
  138. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これは従来からの解釈に関連しますので、私またつけ加えさせていただきますが、防御用というのは、先ほども申し上げましたように、外国から急迫不正の侵略がある、わが国に対して武力攻撃が加えられる、国民の生存と安全が危うくされる、その場合に生存と安全を守るという正当な目的を達成する限度にとどまる。したがって、もっぱら、何と言いますか、国民の生存と安全を保持するために必要なもの、そういうふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  139. 伏木和雄

    伏木委員 ですから、先ほどから申し上げているように、核の力というものは、そのワクでなくて、あくまでも一その使用する場合の性質によってきまるんだ、こういう見解であると、こういうことでしょうか。
  140. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 簡単に申し上げますが、概して言えばそのとおりでございます。
  141. 伏木和雄

    伏木委員 そうすると、憲法でもって、わが国は重装備はしない、戦力はこれを保持しないというものが、その解決する人の考え、これによって直ちにわが国は核武装国になることができる。これは従来の考えと、従来の国会における答弁とは、全然異質のものになってくる、私はこう思います。ですから、核には攻撃用とか防備用とかという立て分けはできない、これが今日の核に対する最も正しい見解ではないか、われわれはこう認識するわけですが、核が立て分けがつくのか。ただその状況判断、それだけによって核に対する正当性というものは出てしまうか。ですから私は先ほど、これは解釈上の問題か、実定上の問題か、憲法において明らかに、実定として憲法上定められたものなのかという点を重ねて伺っているわけでございます。
  142. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  憲法九条の基本問題をまさにお尋ねだと思います。要するに、実は核は持ってはいけない、通常兵器なら持ってもいいと憲法に書いてあるわけではございませんで、御承知のとおりに、憲法九条には、前項の目的を達するため戦力を保持しないという規定がございます。そういう規定があるのと、現に自衛隊法に基づいて自衛隊がある。この自衛隊というものがなぜ憲法上容認できるのか、これはいろいろな議論がございますが、この自衛隊について、憲法上これは容認されるという解釈、それがすなわち兵器についての解釈でもあるわけです。つまり核とそのほかの兵器というものは憲法上は何も区別がない。要するに自衛のため、わが国の国民の安全と生存を保つため、こういう限界に、むろんこれはかなり厳重に解さなければいけないと思いますが、その限度内にとどまるものか、とどまらないものか、それこそが重大な問題であろうというふうに考えているわけです。
  143. 伏木和雄

    伏木委員 ですから憲法上の解釈とすれば、戦力、これを保持しないと定めた以上は保持しない、これはすなおにこれを解釈すべきであると、私はこう理解いたします。  なお、この核の問題につきましては、事前協議、またはいろいろとお伺いしたい、こう思っておりましたが、時間もございませんので、この程度にして、問題を進めてまいりたいと思います。  次に、わが国内の米軍基地について総理並びに関係大臣のお考えを承っておきたいと思います。  この安保体制の実質的な形骸化をはかる、これはわが党の基本的な態度でございます。したがってこの基本的態度に基づきまして、現在わが国内にある百四十五カ所の米軍の基地の総点検を行ないました。これはもう総理も御承知のことであると思います。このわれわれが総点検をやったということは、今日までのただ単に米軍基地の存廃ということ、それのみ、イデオロギー的な出発ということではなく、この基地をかかえた現地住民の偽らざる声というものを的確に把握し、またこの状態というものを、現在の基地の運営、その状態というものを明確にしていかなくてはならない、その上に立ってこの基地問題を考えていかなくてはならない、こういう見解のもとに基地の実態調査を行なったわけであります。その結果、全基地の三七・二%の人が何らかの形で被害をこうむっている。飛行機による騒音あるいは田畑に至るまでの被害、人畜に至る被害というものを考えてまいりますと、全基地の三分の二。三分の二の基地が何らかの被害を出している。この基地の公害を周辺の住民の声としてまとめたのがわれわれの総点検であります。この不安、不便というもの、地域住民の不安、不便というものを政府はどうお考えになっているか。あの実態表も総理は目を通していただいたことだと思いますが、こうした基地の状態をとらえて総理自身どのようにお考えになっているか、まずお伺いしておきたいと思います。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基地を重ねてお尋ねでございますが、先ほど冒頭に小松基地のあり方、これは一般的に私の基本的な考え方を申し上げたのであります。日米安全保障条約を締結して、日本が米軍に対して基地を提供する、施設供与のその義務を持っておりますけれども、義務があるからといって、政府は地域住民に迷惑をかけていい、こういうものではございません。その点では国内における自衛隊基地も同様に私は考えるべきだ。したがって米軍基地地域住民に迷惑をかけている、何とかしてそれをなくする、さらにまたそれに対して補償する等々の措置はぜひとも講じなければならない、かように考えておりますから、いままでも騒音防止やあるいはその他の被害についてそれぞれの交渉をし、また政府自身が基地対策費として支弁するものは、これは予算にも計上しておる、今回などもそういう予算を計上しておる。また基本的にはそれについて法律までつくってあるわけでございます。  したがいまして、私は、公明党が他の政党に先んじて基地を総点検なすったという、これは地域住民のためにたいへんりっぱなことをなすった、かように思っておりますが、同時にまた私どもも、施設局ですか、施設部ですかを通じて、絶えず米軍とは折衝しておるわけであります。したがって、今回五十の個所について、返還、共同使用、その他あるいは供用等のいろいろの処置をとるということになりましたが、これをもって終わりではございません。私はどこまでも地域住民の理解と協力なしには基地が十分効果を発揮し得ないものだ、かように考えておりますので、この上とも政府はこれらの問題について積極的に取り組んでいくつもりでございます。この基本的な態度だけ申し上げて、いろいろの具体的な問題については後に譲らしていただきます。
  145. 伏木和雄

    伏木委員 本年度基地対策費として三二%のおおばんぶるまいをやった、こういうように盛んに宣伝されております。この四十四年度予算を見ましても、先日も当委員会指摘がありましたように、王子の野戦病院の問題にしましても、移転先がどこへ行くかわからない、あるいは水戸の射爆場にいたしましても、いまだ政治的に何ら解決がされていない、このような状態にあって、決しておおばんぶるまいした予算がそのまま住民のもとへ回っていくというものではないと思います。しかも、この基地問題につきましては、われわれの調査した結果によりますと、約六千七十一万平方メートルというものは完全にあいた基地になっている。その実態はここで時間がございませんから省略させていただきますが、こうした遊休基地が現在ある。こういうものは、防衛上ということを総理も言われておりましたけれども、完全にあいている。いざというときに使うということばがお答えとして出るかもしれませんが、現地住民の声あるいは基地の米軍の幹部等の声を聞いてみると、ここはもう要らないところだというようなところもずいぶんございます。こうした完全にあいた基地、こういうものは即刻に返還要求すべきである、われわれはこのように考えますが、こうした遊休基地はどうお考えになるか。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単に遊休基地と断ぜられない場合もあるわけです。しかし、非常に利用度の少ないもの、これはいわゆる遊休施設と、かようにも考うべきでしょうから、そういうものは一つの整理の方向の対象になっておる、これは確かです。  それからもう一つは、はたから見まして遊休じゃないか、使われていないのじゃないかと思われるものに補給基地などがあると思います。これはやっぱりこれだけの米軍がいたり、また基地を持っておるとすれば、そういう意味の役割を果たす場合がございますから、はたで見てはちょっとあまり使われていないようだ、要らないのだといっても、専門的なほうからいうとこれはやっぱり要るんだ、こういうこともございます。  またもう一つ、何といっても、基地があるために地域住民に非常な損害を与えておるとか、積極的に迷惑をかけておる、こういうものはやっぱりそれだけで必要なものでも、それと取り組んで、地域住民に迷惑をかけないようにしなければならない、これが私どもの仕事だ、かように実は思っておるわけです。
  147. 伏木和雄

    伏木委員長 官にお伺いいたします。  昨年の十二月二十三日に、日米安全保障協議会におきまして五十数カ所の基地を返還もしくは縮小、移転、こういうことで発表になりましたが、正確には何カ所発表になったのでしょうか。
  148. 有田喜一

    有田国務大臣 昨年の日米安保協議会において対象となったのは約五十でございますが、しかしその中には移転の問題がございまして、いままで移転の問題につきまして、移転先がはっきりと話ができないのに移転地ばかりを先がけて発表しますと、ずいぶん方々の方に迷惑をかけるわけです。したがいまして、発表したのは四十一件でございまして、あとは双方の合意によりましてしばらく発表を見合わそう、こういうことになったわけであります。
  149. 伏木和雄

    伏木委員 それで、その五十数カ所のうち、全面返還になるところは何カ所でございますか。
  150. 有田喜一

    有田国務大臣 全面返還になるものはたしか二十一件くらいと思っておりますけれども、詳細なことは政府委員をして答弁させます。
  151. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 お答えいたします。  米軍施設の返還、移転あるいは共同使用等につきまして四十一カ所発表いたしましたが、そのうち返還という部門に属するものは二十一カ所でございます。共同使用が九カ所、並びに移転が十一カ所あります。
  152. 伏木和雄

    伏木委員 私の質問したのは全面返還です。事実上の全面返還はどのくらいあって、それはどこを全面返還されるか、こういうことであります。
  153. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 お答え申し上げます。  名前も申し上げますか——返還のうち全面返還に属しまするものは、名寄演習場、太田小泉飛行場、座間小銃射撃場、桜谷小銃射撃場、大島通信所、観音崎艦船監視所、イナンバ島対地射爆撃場、横浜兵員クラブ、横須賀海軍埠頭、向後崎艦船監視所、支笏湖水上訓練所、長浜小銃射撃場、早岐小銃射撃場、鳥島対地射爆撃場。その他は条件つきもしくは一部返還でございます。
  154. 伏木和雄

    伏木委員 そうすると、その残りは移転もしくは縮小、こういうことになってまいりますが、それではそうした五十数カ所にわたる基地が発表されておりながら、今回どれだけ予算措置をしたか。この五十基地全部に予算措置がとられているかどうか。
  155. 有田喜一

    有田国務大臣 今回の約五十件の問題は主として四十五年度からの問題が多いわけです。したがいまして来年度の予算は比較的少ないのですが、なお詳細は政府委員をして答弁いたさせます。
  156. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 お答え申し上げます。  移転、集約等の費用といたしまして、明年度計上いたしましたものはいろいろございますが、そのうちこの約五十カ所に関連するものといたしましては八カ所でございます。そのほかに、原状回復費、これは民有地等が返還になりますと、これにつきまして原状回復費を出さなければいけませんが、さようなものとして計上いたしておるのが五カ所でございます。
  157. 伏木和雄

    伏木委員 そうすると、二十一カ所全面返還ということでありますが、八カ所と五カ所予算措置をした、こういうことですか。
  158. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 ただいま私がお答え申し上げましたのは、主として返還に伴う移転等の経費の所要なものでございまするから、全面返還と申しますか、私が最初に申し上げましたのは無条件返還を先生のおっしゃいました全面返還と受け取って申し上げたのでございます。これに対しまして、一応たとえば根岸競馬場のごとく、施設の一部を移転するということが条件になっているとかといったようなものは、全面返還のうちに勘定いたしておりません。したがいまして、ただいま申し上げました経費は、移転を要するものについて明年度計上いたしましたものをさしておるのでございます。
  159. 伏木和雄

    伏木委員 時間がありませんから、先へ進みますが、この合同委員会に先立って、昨年のたしか九月十一日だと思いますが、同じく事務レベルの合同委員会が行なわれた、このように記憶しております。この際、日本側から要求した基地、これはどのくらいあったでしょうか。また、その要求する際の条件、何を基本的な条件としてわが国が返還要求をしたか、これについてお答えいただきます。
  160. 有田喜一

    有田国務大臣 昨年の事務レベルにおいての先方に対する要求は、この基地周辺のいわゆる施設区域がその後の情勢によっていろいろ変わっておる、先ほど御指摘のように、利用度の少ないものもある、あるいは都市の発展なんかによりまして著しく支障を来たしておるものがあるというので、その例示をやりまして、たとえば利用度の低い施設のところはひとつこのように返還してくれぬか、あるいは使用転換をしてくれないか、あるいは周辺住民に著しく障害を及ぼしておる施設についてはもっと閑散なところへ移転してくれないか、あるいは都市部における住宅等の集約移転はこうしてくれないかと、例をあげましてこちらが要請をし、そしてお互いに検討しようということになりまして、そこに対象としてあがったのが先ほど申しました約五十件でございます。その具体的なことは政府委員をして答弁させます。
  161. 伏木和雄

    伏木委員 数カ所の例をあげて、こういうところをということで返還要求をされたということですが、私は政府として、当然政府自身が調査し、ここはというところは、例をあげるということでなくて、住民の希望というものを考慮に入れながら、具体的に要求すべきじゃないか。それを、たとえばこんなところは返してもらえないか、こういう消極的な態度では、この基地の問題というものはいつまでたっても解決しない、このように考えるわけですが、どうして政府はもっと調査をして、返還可能なところを具体的に実例をあげながら返還要求をしないのか、この点、長官はどうお考えになりますか。
  162. 有田喜一

    有田国務大臣 必ずしも私のほうで調査していいないというわけじゃないのです。十分調査をしておりますが、たとえば先ほど言いましたような利用度の低いところは、たとえば調布の飛行場とかキャンプ朝霞とか木更津飛行場、その他たくさんあるが、これはこうしてくれないか、また著しく周辺住民に障害を及ぼしておる地区、この間も問題になりましたキャンプ王子とか、あるいは水戸射爆場とか板付飛行場、これは何とか実現をしようじゃないかとか、そういうような例をあげてやったのでありまして、一々やることは今後の合同委員会において処理をする、こういうことになりまして、対象を約五十あげて、去年の十二月二十三日にやったのであります。決して私たちが何ら調査をせずしてやっておるわけじゃありません。ずっといろいろ検討をとげて、そうして具体的処理をいま急ぎつつある、こういう段階でございます。
  163. 伏木和雄

    伏木委員 それでは長官、お尋ねいたしますが、防衛庁としても十分調査して的確な資料を持っていらっしゃるようなことでございましたが、それでは今回返還になる五十基地防衛庁の希望どおりであるか、防衛庁調査ではまだこれ以外何基地ぐらい返還要求ができるような可能性のある基地があるか、実際防衛庁としては返還要求すべき基地は何カ所ぐらいにお考えになっておるか。
  164. 有田喜一

    有田国務大臣 この間の約五十が全部でないことは事実なんでございまして、今後要請しなくちゃならぬものもございますけれども、まず……。
  165. 伏木和雄

    伏木委員 幾つぐらい。
  166. 有田喜一

    有田国務大臣 その幾つということについては、施設庁長官をして答弁せしめます。
  167. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 約五十の施設につきましては、昨年協議会においてさような話がございました。今後は、この具体的な処理は合同委員会において実施していく次第でございます。  このほかにどういう基地を、あるいは幾つぐらいを要求できるか、あるいはしようとしているのかということでございますが、私どもが九月にいろいろ例示いたしました中にも、必ずしも今日五十の施設の中に入っていないものもございます。しかしながら、これらにつきましては今後五十の施設をまず処理いたし、そうしてさらに、今後状況の変化に沿いまして若干の変動もあるのでございますし、今後の検討にゆだねたい、かように考えている次第でございます。
  168. 伏木和雄

    伏木委員 それでは具体的に申し上げますが、東京周辺の土地が、今日人口の増加によって非常な必要性が出ているということは、長官も十分御承知のことと思います。そこで、たとえば朝霞あるいは昭島、根岸、座間、厚木、こうしたゴルフ場がございます。根岸は今回返還になる、あるいは昭島は移転になるというようなことでございますが、こうした千三百万平方メートルにわたる広大なゴルフ場があります。住宅あるいは宅地が不足しているときに、こうした遊休——あえて私は遊休と申し上げます。こうしたゴルフ場があるということは、国民感情を非常に悪くしている。当然こういうものは即時返還要求すべきではないか、われわれはこのように判断いたします。念のために申し上げておきますが、米軍のゴルフ場使用につきましては、東京地裁で行政協定違反の判決が出ております。これは原告は昭和飛行機であります。被告の日本政府が敗訴ということになっております。こういう判決があるゴルフ場です。したがって、今後こういうゴルフ場に対してはどうされるか、今回政府が合同委員会に申し出る基地のうちに、こういうものが入っているかどうか、東京地裁で判決が出ております。こういうものを当然要求したかどうか、この点、長官から承りたいと思います。
  169. 有田喜一

    有田国務大臣 ゴルフ場につきましては、国民感情からいっても、非常にぐあいが悪いところがあると思います。ゴルフ場をやめてほしいという要請はやっておるわけですが、現実に今回もゴルフ場がやめになった場所もあります。しかし、米軍からいえば、自分たちの保健その他の慰安の意味から、やはりゴルフをやりたいという要請もあるわけです。そこで、私たちの考えとしては、ゴルフをやられるのもけっこうだが、わがほうの日本でやっているゴルフ場を、ひとつ利用してもらう、そういう解決をやろうじゃないかというようなことを、いま話をしておるところなのです。
  170. 伏木和雄

    伏木委員 それは長官、当然のことだと思います。ゴルフならば別に基地として置く必要はない。わが国にもゴルフ場はたくさんあります。そこを使えばいいことです。私の知っている根岸のゴルフ場などはほとんど使っておりません。たまの日曜日に、二人か三人の人がゴルフをやっている。そのために二十九万坪という膨大な土地をほっぽってあるわけです。これがゴルフ場の実態となっております。その点についてはもっと強く要請していただきたい。要望いたします。  次に、厚木の海軍航空基地内にイーストキャンプというのがあります。この基地のすぐ近所にございます。詳しいことは除くといたしまして、このイーストキャンプも完全に使用されていない。現地の住民は、あんなにあいているところならなぜ返さないのか、基地の将校さんに聞いても、あそこは使わないところだ、こう言っている。そこで住民が返還要求を強く迫る。最近はあき家に夜は電気をつけている。だれもいないところで、いかにも使っているのですというように電気をつけて、そして返還を拒んでいる、こういう事実もございます。こういう点はどうお考えになりますか。
  171. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 お答えいたします。  厚木のただいまの地区につきましては、全然使っていないということはございませんので、現実には使っておるように伺っております、イーストキャンプにつきましては。地元のほうからこれにつきまして返還の御希望のあることは十分承知いたしておりまして、これらについては、米軍ともいろいろ話し合ってはおります。しかしながら現在においては、さようなことで使っておるということでございますので、これは今後の問題としてわれわれ検討してまいりたい、かように考えております。
  172. 伏木和雄

    伏木委員 長官の答弁では、米軍側を一方的に信用して現地住民の声を信用しないようですが、ここは従来は横須賀に船が入ると、このイーストキャンプは使われておった。ところが、最近は船が入っても全然使わない。こういうことまで現地の住民は知っております。ですから、もうこのキャンプは長い間使われていない、こういう実態になっております。その点は御認識いただきたいと思います。  また先ほども航空機墜落事故による基地周辺の問題を申し上げましたけれども、横田基地航空機騒音が現地の児童に及ぼす影響について、日本女子大の児玉教授の調査にはこのように出ております。身体面においては、低学年は標準に達しているが、高学年に進むほど標準よりおくれる傾向にある。また不安感情、敵意感情、対人関係の闘争性がだんだん強くなっていく、こういうようなことも出ております。または、この基地周辺の子供はあきっぽい、こういう調査結果が出ております。次代をになっていくべきこの子供たちにこうした被害を与えて、その上に立った日米安保条約、こういうような結果が出ているわけですが、こうした次の世代をになう子供に大きな被害を及ぼしている、こういう点で基地対策は強力に進めなくてはならない。このように認識するわけですが、こうした点について、長官はどこまでこういう問題を踏まえて返還要求をされているか、承っておきたいと思います。
  173. 有田喜一

    有田国務大臣 基地周辺の方々が毎日の騒音に悩み、あるいはいろいろな事故のために非常に不安の念にかられておる気持ちは非常によくわかります。といって、わが日本としましては、日本の安全のために基地が必要であるということは、私も同時に考えるわけであります。そこで、基地の周辺の人々の立場を何とかして騒音防止、あるいはその他の事故が少ないように、その被害を少なからしめるように最善の努力をやっていく、ここにいわゆる基地対策というものがあるわけでございますから、不十分ながら来年度はいままでの例からいえば、約三二%の増額を見たわけでございますが、一そう基地対策に力を入れまして、これらの方々の不満なり毎日の悩みをできるだけ解消するように努力したい、かような考えでおります。
  174. 伏木和雄

    伏木委員 来年度予算は大幅にこの補償費、対策費を計上したということですが、もともとが少ないのです。それが三二%ふえたからといって、最高の伸び率だといってみたところで、もともとが少ないのですから、その点は認識しておいていただきたい。  ということは、この厚木地区の、たとえば大和市の小学校の例をとりますと、確かに騒音対策として窓に防音装置がされる。これは基地対策費として計上をされます。しかし、そこで勉強している子供は、窓は防音装置で密閉されて、夏は汗をびっしょりかきながら勉強している、窓をあけられないのです。それが基地対策費なんです。音が出たから音だけ防いでやればいいだろう、そうして防音装置だといって窓に防音装置をしてしまう。これでは夏は、子供は蒸しぶろに入った以上のひどい中で勉強している。そうした冷房装置については何ら考慮されていない。これが実態ではないでしょうか。  したがって、この基地対策費は、いま政府が三二%上げたからといって、これが上がったなんというような考えではなく、的確にやっていただきたい。時間がありませんから、騒音についてはこれ以上申し上げません。  次に、全国の三十五カ所の通信基地であります。この通信基地に対するわれわれの調査では、米軍基地が存続することによって直接、間接的に迷惑や被害を受けたことがある、こう答えた方は三三・二%あります。これは三十五カ所の通信基地だけの意識調査です。  しかし、この中で、上瀬谷の通信基地だけは七三・三%、この人たちが被害を受けている、こういう結果が出てまいったのであります。この上瀬谷だけが、どうしてこんなに強い被害が出ているか、これは長官、認識されているでしょうか。この点について長官の見解を賜わりたいと思います。
  175. 有田喜一

    有田国務大臣 上瀬谷の通信施設の障害防止につきましては、私もよく実情を聞いております。そこで何とかこれを解消する技術的の方法はなかろうかというようなことも検討しておるわけでございますが、その詳細については政府委員をして答弁せしめます。
  176. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 お答え申し上げます。  上瀬谷の通信施設につきましての問題は、おそらくはただいま大臣のお答えになりましたように、周辺に電波障害緩衝地帯の設定ということがございますので、これが住民の方々にとってたいへん負担が大きいというようなことがあると存じておるのでございます。私どもといたしましても、これは昭和三十七年以来この措置を講じておるのでございまして、通信施設の性質上やむを得ない措置でございまするが、今後これらにつきましては、住民の方々のいろいろな御要望等も聞き、制限の緩和あるいは補償の引き上げ等について努力をしてまいりたいと思っておるような状況でございます。  なお、先ほど御質問のございました小学校の防音施設に冷房がないというお話でございまするが、明年度予算におきましては、これらにつきまして大幅にさような施設をいたしたいということが、来年度予算の中の新規事項として入っておりますので、御承知願いたいと思います。
  177. 伏木和雄

    伏木委員 この上瀬谷につきましては、特に規制が強いのではないか。したがって、現地住民の被害を受けている状況がこういう数字で出ていると思います。そこで、この現地に対する規制をほかより強力に進めているようですが、上瀬谷通信基地がどのような電波障害を起こすのか、住民を規制する以上は、どのような米軍から要求が出ているのか、また上瀬谷通信基地の性格というものはどういう性格を持っているのか、この点は長官から承りたいと思います。
  178. 山上信重

    ○山上(信)政府委員 米軍の通信施設といたしましては、これは受信施設でございまして、これの施設の回りに家屋が建ったりいたしますると、その受信能力に支障があるということで、この区域の周辺に家屋の建設その他電波の受信の障害となるような工作物の設置、その他特に障害となるようなものの存在を制限するようにという要求でございまして、さようなことを内容とするところの契約を地元の土地所有者と国との間で結んでおるという実情でございます。
  179. 伏木和雄

    伏木委員 この上瀬谷の基地が非常に米軍にとって重要な基地だということは、プエブロ事件がございましたけれども、あのプエブロと絶えず通信を行なっているのがこの上瀬谷の基地だ、したがって、現地では黒い基地などといううわさが出ております。米軍の諜報活動の最前線があの上瀬谷ではないか、こういうような声も盛んに出ております。したがって、特にここに規制が強いのではないか、われわれはこういう考えを持っておりますが、この点については、時間もございませんから、次の機会に譲るといたしまして、この上瀬谷の合意書——住民との契約がございます。この契約を最近住民が拒否をする。その理由としては、当時契約を持ってきたお役人は、安保条約というものは十年なのだから、こういうように言って契約を結ばれた、こういうようなことで、今回はどうしてもこれには同意できない、こういう問題が出てまいりました。したがって、こうした契約というものが、地位協定によれば、日本国政府は必要に応じて関係法令をつくって、そして米軍に協力するようになっておる、こういうようでありますけれども、実際何らの法令もない。国と住民との私的な契約がされているだけだ。しかし住民は、もうこれ以上いままでのようながまんをすることはできない。この地域の中には契約を全然やっていない人もいる。そういう人たちは自由にやっている。国との契約を結んだ人、その人だけが規制を受けなくてはならない、こういう不合理なものであって、われわれは承服できない。しかも最近、地価はその当時よりも約六倍値上がりをしております。こういう客観情勢の変化、それと安保改定期を迎えて、安保の十年の期限を考えた上で、現地の人々は、今回だけはもうこれに同意することはできない、こういう問題が出ております。  こういう点について長官は、現地住民との契約について、住民が契約を結ばないという以上、何か法的な措置、強権を発動してまでもこれを規制してしまう、こうお考えになっているのか。あくまでも住民の希望は希望として基地の問題を処理していく、こうお考えになっているのか。この点を、簡単でけっこうですから、明らかにしていただきたい。
  180. 有田喜一

    有田国務大臣 その地区住民の代表者と安保条約のある限りはという契約を、覚え書きをかわしているわけでございます。しかし、非常に重大な施設でもあるし、また地区住民の感情もよくわかりますので、何とか話し合いをして、円満に処理いたしたい、かように考えております。
  181. 伏木和雄

    伏木委員 あの覚え書きは、個々の住民に対する契約を履行させる法的な何ものもないと思います。ということは、上瀬谷開発委員会そのものが法的な団体ではございません。その代表者と国との覚え書きの交換が個々の住民を縛るということはできない問題であります。これは、もう民法上も明らかであります。したがって、その覚え書きではどうすることもできない、私はこう理解をいたします。したがって、住民がこれを拒否すれば、民法上の契約である以上、幾らでも拒否できるものだ、このように考えますが、長官、この点いかがでしょうか。
  182. 有田喜一

    有田国務大臣 法律論はともかくといたしまして、私たちの立場からいえば、これをそのまま存続したいという気持ちは一ぱいなんです。といって、地区住民の御理解を得ないと、これがうまくいきませんので、何とか地区住民の方々との話し合いを続けて、円満にこれが継続できるような処置をとりたい、かような考えでおります。
  183. 伏木和雄

    伏木委員 ここで長官に要望しておきますが、決して権力をかさに着た、純朴な農民ですから、この人たちに無理じいをすべきではない、私はこう考えております。  そこで、関連して建設大臣にお伺いいたしますが、この契約を解除してほしい、再契約をしないと言っている住民が、直ちに横浜市に建築申請を出す、こういうことを言っておりますが、建設省としては、こうした建築申請に対する許可をどう扱われるか、建設大臣の御意見を承りたい。
  184. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  いま御指摘になりました問題は、私も聞き及んでいるような次第でございますが、御承知のとおりに建築基準法は、建築物の安全並びに防火、衛生等の制限を与えた法律でございまして、この法律に対しまして、いま御指摘になりました点につきましては、防衛庁と、対象になる二千四百四十数人と思っておりますが、これらの方々が、A地区は建築をせない、B地区は建築をするというような話し合いがあり、その中において建築を要請される方が防衛庁と話し合いをされまして、防衛庁が同意書を与えられ、そしてその同意書を添付して横浜の市役所に出されて、そして建築担当の主事がそれに対して許可を与えるということになっておりますので、いわゆる建築法に合法であり制限に適応するならば、これを許可せざるを得ないということに相なっていることを御了承いただきたいと思います。  それから、先ほど基地周辺の都市計画について、非常に御心配をいただいており、私もばく然としたお答えをいたしておりますが、人命尊重の立場から、また公害防止の立場からも、これに対しましては建設省も最善の努力をいたしまして、いわゆる防災街区の造成とか、あるいは街路事業の造成の拡大とか、あるいは五月から施行されますところの都市計画法の工業用専用地区また住宅用専用地区等を区分いたしまして、その間に緩衝緑地帯などを設けまして、そしてこれらの防止に最善の努力を建設省としては払う計画を進めていることをつけ加えて御報告いたしたいと思います。
  185. 伏木和雄

    伏木委員 いま建設大臣のお話ですと、防衛庁と米軍との認可を受けてと、こうありますが、契約を破棄した後、そういう手続を踏まなければ申請が出せないのか。住民が契約を結ばない、こうしたときに、建設省としては、この建築許可申請に対してはどういう見解を持たれるのか。
  186. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 お答えいたします。  ただいま有田長官もお述べになったごとく、なるべく両者の間で円満な話し合いをされて、そして円満にこれを解決するよう努力するという方針で、建設省としては行政指導を行なっておるという段階でございます。
  187. 伏木和雄

    伏木委員 また繰り返しになりますし、時間がありませんから……。これは建設省としては何ら規制できるものではない、これはもう明らかでございます。単に建築物に対する規制だけであって、この土地に対して建設省のほうでとやかく口出しできる問題ではない、こうわれわれは考えます。  それから、県側で非常に心配している点は、今後農地転用の申請が続々と出るのではないか、この点について農林大臣は農地転用の申請についてどう扱われるか。
  188. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 電波障害地域における電波障害防止については、現在法令上の制限がないので、同地域における農地転用につきましては、原則的には一般の農地転用の場合と同様に処置すべきものであると考えます。  しかしながら、上瀬谷の地域のような場合、国と地主との間で、地主が建物を建てない、かわりに国が補償金を出す、こういうような契約が結ばれている場合は、このような事情に留意して処理しなければならないだろう、こういうふうに考えます。
  189. 伏木和雄

    伏木委員 こうした契約等をめぐってこれらの通信基地というものが非常に私権を侵している。さらに言えば、人権までも侵してこういう契約が結ばれている、こういう問題が各所にございます。こういう点も総理は十分御認識をいただきたいと思います。  それでは基地の問題はこのくらいにいたしまして、最後に社会保障の問題について許されるだけ質問をしてまいりたいと思います。  総理は施政方針におきまして、人間の尊厳と自由が守られ、国民のすべてが繁栄する社会を実現する、あるいは、社会の進歩と繁栄による恩恵にあずかることのできない人々に対して社会保障を充実し、あたたかい施策を講ずる、こう言われております。また大蔵大臣は、今度の予算編成では社会保障予算に特に力を入れた、こういうように言われておりますが、実際ことしの一般会計の伸びは一五・八%、それに対して社会保障は一六・一%、わずか〇・三%しか伸びておりません。これで特に力を入れたということがいえるか。その伸びの中でも、千三百億円の伸びのほとんどは当然増であって、いままで恵まれなかった、恩恵を受けることのできなかった新規政策はたった三百億にすぎない、これで総理や大蔵大臣が言われている、社会保障を第一義に大幅に、日の当たらないところに日を当てたということがはたしていえるか、簡単でけっこうですから、この点をまず総理からお答えいただきたいと思います。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 社会保障につきましては、私ども特に留意した、重要施策の一つだ、かように考えて取り組みました。しかし、わが国の社会保障は、欧米の先進国に比べましてだいぶんおくれておりますから、いま言われますように、こういうことじゃまだまだ足らない、追いかけていかなければならない、こういういまの状況であります。しかし、努力したことは事実でございます。
  191. 伏木和雄

    伏木委員 経済社会発展計画によりますと、四十六年までに振替所得を二%は上げたい、こういうことがうたわれておりますが、あの経済計画というものは、これから二%の増額ということになれば、ことしの国民所得を見ただけでももうすでに二%で約九千億になります。厚生省予算が現在九千億しかないところに発展計画の二%をやれば、二年後には倍額になる、こういうような発展計画が出ているわけです。これは政府が閣議をもってきめた発展計画です。もちろん、冒頭には努力目標ということはうたわれておりますが、それにしてもあまりにもおそ過ぎる。昭和三十六年の社会保障審議会の答申は欧米の社会保障の線まで四十五年までに引き上げろ、こういわれておりながら、いまだに欧米の三分の一しか進んでいない。欧米では一人当たりの社会保障費が百五十ドル前後になっております。わが国ではわずか五十二ドル、こういうような低いものであります。したがって、この発展計画はもう全然空論であった、こう言わざるを得ないと思いますが、この点、総理は発展計画をどう踏まえて今日まで社会保障をやってこられたか。御自分でおつくりになった経済社会発展計画ですから、どのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせを願いたいと思う。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、先ほどお答えいたしました日本の社会保障制度は全体的におくれております。そこで、これから追いかけていかなければならない、そういう意味で経済社会発展計画でも特に力を入れておると思います。御承知のように老人対策、児童対策、あるいは心身障害児対策、また年金もそうですが、等々、ずいぶん問題が多い。それらのものが一つ一つだんだんほぐれていくんじゃないだろうか、かように私は期待しております。ことに児童手当なども、懇談会から一歩進んで審議会にまで移っていく、こういうようなこともございますから、そうすると、これも変わっていくだろう。また、年金制度そのものについても、これは御承知のように、各面で相当広範にわたって年金制度の拡充をはかっておるとか、あるいはまた、保育所等、いままでおくれたもの、そういう点についても、施設をふやすばかりでなく、それらの管理費等もふえていくとか、だんだん変わっていくのじゃないか。また、そういうようにしなければならない、かように私は思って、せっかく取り組んでおる際でございます。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕
  193. 伏木和雄

    伏木委員 経済社会発展計画で二%の振替所得の増加をうたいながら、今日まで五・五%が過去四年間続いております。こうした伸びのないことは、一つにはいま総理もお認めになっておった児童手当を実行しない。これにも大きな問題があると思います。児童手当を全額国庫でやったとしても大体九千億、大体二%の線に見合ってくるんではないかと思います。  それは別として、発展計画の中にもうたわれ、また、総理並びに厚生大臣がぜひ四十三年度にはやってみたい、実現してみたいと言われたこの児童手当が、一昨日の本委員会では、厚生大臣は来年度からやりたい、こういう御答弁があったようでございますが、大臣、この点は間違いなく来年度から実現可能でしょうか。厚生大臣の御意見を承ります。
  194. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 児童手当問題につきましては、一昨日もお答えをいたしましたように、私といたしましてはそういう目途でぜひ努力をいたしたいと考えている次第でございます。伏木さんはじめ皆さん、たいへん御熱心に推進をしていただいておりますことを感謝をいたしますが、ただ、制度の内容は相当むずかしい面を含んでおりますので、日本の財政あるいは国民所得の中からどれだけどういう方法で出すか、むずかしい問題も含んでおりますが、この上とも御協力をいただきたい、かように思います。
  195. 伏木和雄

    伏木委員 厚生大臣、来年度からやりたい、しかし、いままでの答弁は、児童手当懇談会の回答が出たらすみやかにそれを踏まえて政府は法制化したい、このようにずっと答弁されてまいりました。この懇談会ができたならばということは、総理自身も言われておったわけであります。ところが、今国会には審議会が提案されておる。また、この審議会をもとにして、ずるずる審議会の回答待ちということで引っ張っていくんではないか、われわれはこのように危惧するわけです。厚生省設置法の附則によりますと、審議会の設置について、審議会は二カ年間の期限を持っております。これは大臣が、もしほんとうに来年やるということならば、この附則は一年として、そうして早く結論を出し、法制化すべきだ、私は審議会の設置についてこのように考えます。  私は、審議会に賛成しません意味で申し上げるのではありません。懇談会で煮詰まってきたのですから、それを直ちに厚生省でもって法案化すべきだ、即座にやるべきだ、これが私の意見ですが、たとい審議会をつくっても二年間の期間では長過ぎる。また二年延びてしまう。そうして法制化することに一年かかれば、三年先に延びるのではないか、こういう危惧がございますが、大臣はこの点いかがお考えになりますか。
  196. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 審議会設置の法案は、実はまだ提案の運びになっていないのでありますが、なるべく早く御提案申し上げたいと考えております。原局といたしましては、二カ年の期限づきということにいたしたいと思っておりますが、二カ年と申しますのは、私は来年度法律案を国会に提案をいたしたい、かように考えております。しかしながら、これの実施の面、また、その後のアフターケアといいますか、そういう面でもう一年ぐらい審議会を設けていろいろ今後の方策も議論をしていただく必要があるんじゃなかろうか、かように思っているわけであります。私は、二カ年間十分審議会で審議をしていただいた後に提案をいたしたいとは考えておりません。一日も早く提案をいたして、そうして日の目の見られるようにと、そのほうを急いでおるわけであります。御了承いただきたいと思います。
  197. 伏木和雄

    伏木委員 その点についてはまた委員会で申し上げたいと思いますが、今回提案されている懇談会の回答によりますと、拠出制にウェートが置かれております。児童手当というものは、これは労働対策あるいは人口対策等も含まれた政府の措置であると私は認識しております。したがって、これを拠出制ということで企業に八〇%もかぶしてしまう、この考え方には私は賛成できない。もっと国が財政的な措置をすべきである、このように考えるわけでございますが、政府はもっと大幅に財政を考えていかなくてはならない、こういうことについて厚生大臣は、いや、そうじゃないんだ、全面的に企業にかぶせていくんだ、こういう見解のもとに児童手当を進められるかどうか、承っておきたいと思います。
  198. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 懇談会の結論といいますか、まずこういう案はどうであろうかという案は、お説のように被用者グループの子供、それから自営業者、農民等の子供とこの二つに分けておりまして、被用者グループは、企業の拠出を重く見ております。そして被用者グループでないほう、農民または自営業者の子供に対してはこれは国費だけという形になっておりますし、その手当の額も、被用者グループのほうが重く見ているわけであります。私はこの考え方がはたして適当であろうかどうだろうか、大きな疑問を個人的に持っております。その点は伏木さんのおっしゃるように私は考えております。  ただ、一応の懇談会の案によりますと、総額約五千億以上になるわけでありますが、それだけのものを一体国費で全部出せるかどうか。あるいは、どういうようにその原資を拠出していくか。第一子からやるか、二子からやるか、三子からやるか、いろいろ問題がございますので、そこらをまず実現可能なところから出発をしてまいりたい、かようにただいま個人としては考えている次第でございます。
  199. 伏木和雄

    伏木委員 この児童手当につきましては、全国ですでに新年度からは三十数カ所の地方団体が独自の条例によってこれをやっていこう、そうして住民にこたえよう、あるいは全国三百数十カ所の地方団体から厚生省あるいは総理のもとへ意見書が出ている。こうした世論は、一刻も早く児童手当の制度を実現してほしい、たまたま厚生大臣から、ただいまも来年度何とかやりたい、こういう回答を得たわけでございます。この点総理、厚生大臣は来年度からやりたい、こういうことですが、総理のお考えを承っておきたいと思います。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐藤内閣としては最善を尽くすつもりです。
  201. 伏木和雄

    伏木委員 大蔵大臣に伺っておきます。財政制度審議会では必ずしもこの制度に賛成でないようでありますが、ただいま総理が最善を尽くす、それは私は、厚生大臣が来年度からやりたいということを考えた上で、最善を尽くす、こう言われたと思います。したがって、大蔵大臣はどのようにお考えか、財政審の意見をうのみにするかどうか。
  202. 福田赳夫

    福田国務大臣 大蔵省としても最善を尽くしますが、しかし、これは簡単な問題でないということは、よくひとつ御了解願いたいのです。ともかく九千億円、二千円にしても六千億円もかかる、こういった財源をどうするのだ、たいへんな問題なんです。そういう問題であるという前提のもとに、最善を尽くすことにいたします。
  203. 伏木和雄

    伏木委員 先ほども私申し上げましたように、経済社会発展計画、これでまいりますと、二%の振替所得を四十六年までに行なうべきだ、このことは数字を入れて明確に出ております。したがって、本年度の国民所得四十五兆、二%の振替所得といえば、直ちに九千億出てまいります。したがって、あの計画どおり——佐藤内閣で出した発展計画ですから、あの計画どおりやれば財源は幾らでもあるはずだ、私はこのように考えますが、それがいろいろ制度の上で四千億、五千億という金になったとしても、これは決して出せない数字ではない。ただ政府が児童手当に対して熱意を持つか持たないか、これが問題であると思います。単に所得保障だけではなく、先ほど申し上げましたように、人口対策あるいは労働対策という問題もございます。それからまた、社会保障制度にとってはなくてはならないこの児童手当制度が実現することによって、わが国の社会保障制度というものはさまざまな面から改革されるのではないか。しかも懇談会でも言っているように、給与政策の上にもこれが反映されていくのではないか、または税制の上にも反映されていくのではないか、このように考えますと、これは積極的に政府が責任を持ち、政府の財源を主体としてこの児童手当制度は実現すべきである、私はこのように考えるわけですが、この点を強く要望いたしまして私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
  204. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて伏木君の質疑は終了いたしました。  次に、林百郎君。
  205. 林百郎

    ○林委員 私は日本共産党を代表して、大学の問題と沖繩と安保の問題を総理並びに関係閣僚に質問したいと思います。  まず、今日緊急に解決を迫られている大学の問題についてお聞きしたいと思います。  今日、大学紛争は全国に広がって深刻化しておりますが、この根本的な原因は、第一に、戦後学生数が急増したにもかかわらず、歴代自民党の政府がこれに必要な経費の支出を怠ってきた、そしていわゆるマンモス授業を始め、真理と平和の探求の場であるべき大学の教育、研究、勉学の条件が著しく低下している、こういうところにあると思います。しかも産学協同とか、あるいは軍学協同というような非民主的な文教政策が行なわれて、大学に大きな資本や米軍や自衛隊などの介入までが許されているような現状でございます。このような状態のもとで、当然、学生や教職員の不満や要求が高まっているにもかかわらず、大学の管理運営がきわめて非民主的で、学生や教職員の要求や意見が反映されない制度がそのままで続いていたわけでございます。このことは、大学紛争の発端となった学生の要求や紛争の経過を見れば明らかであります。決してこれは独断を言っておるわけではございません。  したがって、大学問題の根本的な解決のためには、第一には、政府が大学の予算を大幅に増額して、研究、教育、勉学条件の充実改善を行なうことが第一だと思います。  第二には、学生と大学院生等の自治権を認めまして、教員、職員、学生、院生など、学内の各層から民主的に選ばれた代表で構成する全学協議会を設置して、教育、研究にかかわる重要な事項を協議して、大学の管理運営に多くの人々の要求や意見が十分に反映されるような制度的な保障を確立することが必要だと思います。  この二つがまず非常に重要な当面の対策ではないかと思いますが、総理いかがですか。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、最近の大学紛争、その原因はマス大学とでも申しますか、非常に膨大なる大学、それが原因だ、こういうことのようですが、私は必ずしもそうだとは思わないのです。大学が変貌してあれだけ大きな生徒を擁し、またあれだけの教職員を必要とした、これは日本の経済発展に見合うものだと思います。したがって、この社会的要請にとたえて、ああいう大きな大学ができたと思います。もちろん、これが近代的な経済発展に貢献したと思いますし、また最も望まれた大学の国民への開放とでも申しますか、特別な金持ちだけが大学へ通うということでなしに、国民に開放された大学ができた、これは戦後の民主主義の成果だろうと私は思います。  ただ、そういうような変貌のあったことは事実ですが、変貌があったら変貌があったで、それについての十分な認識を持ち、そうして認識のもとに大学運営に当たっておれば、ここで問題が起こるはずはない、私はかように思うのです。問題は、やはりそういうように変貌した、そうしてそれが社会に貢献はしたが、昔のようなやはり少数のエリートだけの大学だ、かように考えておる。これだけ大学が開放されたにかかわらず、いまなお学閥というようなものが尊重される。大学を出なければだめなんだというような話が通用しておる。ここらに社会的な矛盾がある。このことを学生も、教職員も、父兄も十分に理解しておらない。その結果が、いまのような状態をかもした原因じゃないだろうかと思います。それは直接の原因が大きくなったんだ、そういう見方は、それはいま私が説明するような意味において正しいと私は思いますよ。思いますが、その基本的に変わったら変わったで、そのことがわかればいい。そこでいま御指摘になりますように、どうして大きな大学について予算をもっとふやさないか、こういうような話が出てくると思います。しかし、現実には予算はずいぶんふえておると私は思います。  また、東大そのものについて申しても、これは学生に対する教職員の数その他、また研究施設費等は、私は十分なように思います。  しかし、どうしても大学がそういう方向に動いてない。いまの自治に触れてのお話がございましたが、私どもはしばしば、学問の自由を尊重する、かるがゆえに大学の自治、それを認めるのだ、その尊重があるのだ、かように申してまいりましたが、遺憾ながら、いまのような膨大な大学になってくると、どうも学問だけじゃなさそうだ。最近行なわれておる大学紛争、その原因は、それぞれがみんな小さな問題が実はあると思う。しかし、それがいつの間にか全学共闘の形に発展する。そうしてその形に発展すると、もう教育問題ではなくなっている。明らかに一部の政治活動が展開されている、かように見なければならなくなっている。だから、いまの学生運動をごらんになっても、特別なイデオロギーのもとに、しかも全国的な連合体までできて、そうして東大だけの問題じゃなく、また日大だけの問題ではなく、全国の連合体の形においてこれが取り組まれておる。私はこのやり方というのは、ただ単に暴力云々じゃなくて、どうもいま言っていることは、大学の学園というもの、その域を越しているような形じゃないだろうか、かように私は思います。そういう点が、いま言われるように、大学が大きくなっておる、だから、手が回らなくなったんだ、こういうこともございましょうが、私は、本来の筋からいえば、大学が大きくなった。当然それについてそれだけの認識を持ち、そうして教授も学生も、また大学の管理も、そういうことで行なわれれば、いまのような問題は起こらないのじゃないだろうか。ことに林君が指摘なすったように、授業と研究と、この二つがもっと徹底して行なわれれば、学生の不満というものもよほど形が変わるんじゃないだろうか、かように思います。どうも惜しまれてならないのは、こういう変化が社会的要請で行なわれたにかかわらず、それについての十分の認識がされておらない。そうして学園そのものが本来の学問の場から他の方向へ向かって発展した、そういうことでいろいろの問題を引き起こしている、かように私は思っております。
  207. 林百郎

    ○林委員 共産党の持ち時間は、総理、一時間しかないんですよ。木で鼻をくくったような答弁も困るが、あまり親切丁寧過ぎても、これはまた持ち時間がなくなってしまいますので、その辺は総理、適当に規制していただきたいと思います。  そこで、予算を組んでいると福田大蔵大臣は本会議でそう言っていますが、しかし内容をよく検討してみれば、それは自然に必要な部分がふえているだけで、積極的に改善する、そういう面の予算は、われわれの見解ではふえていない、こう見ています。これはあなたに答弁していただかなくていいです。総理は、大学が非常に大規模になった、この新しい形態の大学をどう運営するかということが、一つの大学問題を解決する問題点だということを言われています。あなたは、民主的にやるということについては、学問の自由、大学の自治ということは尊重すると口では言われていますが、実際政府がどういうことをやっているかということに照らしてみないと、抽象的なそういうことばだけでは納得できないわけですね。  そこで、私は具体的な問題に入っていきたいと思いますが、東大では、医師研修制度に反対する医学部の学生に対する不当処分、六月の機動隊導入、それから八・一〇の学長告示など、大学当局の民主的でなかった一方的な措置——これはもうその後医学部自体がこういう反省をしていますけれども、紛争の拡大の契機となったわけですね。その後、大学当局がその非を認めて、民主的な解決の姿勢に変わった。そして大学当局と圧倒的多数の学生との合意によって確認書というものがつくられた。こうして大学関係の人々が自主的に解決しようという努力が開かれてきたわけですよ。しかも昨九日、東大の評議員会は、この確認書を承認、批准しているわけです。  政府は、ああいう条件のもとにつくられた確認書を大学運営の基本にするということについては問題があるというようなことを言っていますけれども、この確認書は、もう一月以上も大学側もいろいろな形で検討し、そうして学生側もこの確認書を持ち帰って各学部で批准の検討をしているわけなんですよ。決して総理の言うように簡単につくられたものではないわけなんですね。ところが、政府はこの確認書を、これは問題があるといって、これを十分尊重しない立場にある。さらには大学当局の意に反して入試の中止を決定しています。これは文部大臣は合意だと言っていますけれども、加藤代行みずからが、私が文部省に行く前に、もう文部省は方針をきめていたんだ、全く遺憾であると抗議をしているわけですから、坂田文部大臣が一方的に——二人で話し合いました、話し合いましたと言っても、相手方がそう言っているんですから、これはやはり大学当局の意に反して政府が入試の中止を決定したと言えると思うのですね。そうしてまた確認書の方向によって解決の努力をしようとしていることに対しても、政府はこれを妨害しているというように思うわけです。これはせっかく大学の問題が自主的、民主的に解決しようとしているのに対して、政府は自分の方針を持っていて、これを押しつけようとするもんだから、この確認書に基づく自主的な解決の方向がじゃまになる、こういうことのように私たちはどうしても思えるわけです。  そこで政府にお尋ねしますが、中教審の答申待ちとかなんとか言わなくて、総理自体が具体的に今日のこの大学紛争をどのように解決するつもりかという、政府としての政策をこの際述べていただきたいと思うのです。それは中教審というのは一つの参考になるものであって、総理自体がそういう識見を持っていなければ総理大臣の資格がないわけですから、どうぞひとつそれを説明してください。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは少し木で鼻をくくったような話になるかわかりませんが、法制上認められたというか、政府がみずから認めた中教審、その答申を待たないで、そうして私どもの考え方をどんどんしゃべっていく、中教審に特別な圧力を加えたんだ、こういう非難を受けるかもわかりません。せっかくのお尋ねでございますが、私は、大学の今後のあり方、これについては、そういう意味で私の発言はひとつ差し控えさしていただきたい。  ただ、いま問題が起きた確認書、あるいは入試の問題これについて、これの尊重だという立場から何にも言わなければいいじゃないか、こう言われるかのようにとれる御意見でございましたが、私は政府が政治の最高責任者だ。とにかく直接の問題は別として、最高責任者としてのその責任は果たしていかなければならない。大学のあの異常なる状態、これを法律が何とも書いてない、尊重するといっているじゃないか、大学にまかしておけ、かようには言えない。私はこれは異常なる状態だ、かように思います。確認書自身にしても、一項目——具体的に申すわけじゃありませんが、とにかく異常なる雰囲気のもとに確認書が取りかわされたという、その事実だけははっきりしている。そういう意味で、私はこれは問題がありはしませんかと言っている。  また、入試の問題については、これは昨年の暮れに文部大臣と加藤代行とが話し合った結果、取り上げられた問題なんです。(発言する者あり)いま第三者からの不規則発言がありますが、それを相手にするわけじゃありませんけれども、私は文部大臣も苦労したし、加藤代行もたいへん苦労したんだ、そうしてああいう結果になった、こういうことですから、これはそのまま御了承いただきたいと思います。
  209. 林百郎

    ○林委員 中教審の答申を待つ前に政府がものを言えば、それが圧力になるといったって、国会は国権の最高機関なんですよ。われわれ国会議員が時の行政の最高責任者の政府に文教政策を聞くのに、中教審があるから答えられませんということは、これは憲法で規定されている民主主義的な機構自体をあなたが認めないことになりますよ。どうしてそれをあなた答えられないのですか。中教審なんというのは、行政の一審議機関ですよ。国会が最高の機関なんですよ。ここで政府の文教政策が堂々と述べられないなんということは、これは政府が、総理が何か林君に言ってはまずいということを腹に持っているからこそ、あなたは言うんじゃないですか。  それではお尋ねしますが、ということは、先ほどのお話にもありましたように、政府が何か方針を持って、それを一つ大学側に押しつける。それをこうなしくずしにしているじゃないかということの参考のために、自民党文教制度調査会、これはあなたの与党なんですからね、この文教部会の報告によると、こういう構想が具体的に出ているわけです。旧帝大は大学院大学制をしく。副学長の設置をする。そしてこれの任命権は政府が待つ。それから教官の解任権を文部省が握る。こういうような方向が出てきているわけです。与党の自民党がこういう方針を出しているのに、政府がまだ何にもないということは、これは国会を軽視することになると思うのです。結局、この方向を漸次大学側に押しつけようとしている。それには、いま行なわれているような教授や、あるいはことに学生も入れて大学の関係の人々が自主的に解決する努力がじゃまになる、こういうことじゃないですか。そうでないなら、具体的に政府はこういう展望を持ってこういう文教政策をやるつもりですということを、ここで言われたらどうですか。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま共産党の林君からも文教政策——これは共産党もちゃんと持っていらっしゃる。公明党ももうすでに発表している。そういうように、政党はやはりそれぞれ基本的な考え方を持つ。それをまた発表している、そのとおりでございまして、それがけしからぬとは申しません。  しかし、政府、その立場においてはやはりどこまでも公正でなくちゃならない。政党は政党の立場においての御意見を述べられるのですから、それがイデオロギー的なものであったって、それはしかたがございません。しかし、私ども政府自身とすれば、やはり公正な判断をするということ、これが必要だ。それには、そのためにやはりそれぞれの手続があって、しかる上でその意見を発表する。御説のように、国会は何でも言えるところなんです。何でも答えなければならぬというようにも思いますけれども、私は絶対に答えないというわけではございません。それは適当な時期が来れば、私は当然答える。だから、そういうように私は考えるので、いまそれぞれの手続を踏んで、しかる上で私の話をします。まだきまらないうちですから差し控えさせてください、これは実は頼んでいるのです。ただいま申し上げるように、私は言わないわけじゃないのです。
  211. 林百郎

    ○林委員 いや、総理に頼まれたのは初めてですけれども、しかし総理、実はあなた公正に名をかりて腹に思っていることを言わないということも、これはやはりよろしくないと私は思うのですよ。各政党が文教政策を出しているのならば、政府自体もその政策を持つのはあたりまえですし、いまこの大学問題というものはもう社会的な問題になって、大学の教授はもちろんのこと、大学生も、あるいは大学生を持つ父兄も、このことについては心を痛め、重大な関心を持っているときに、政府が、まだ中教審の答申がありませんから別に方針はありません、国会で聞かれても国会の場で何でも言う責任はありませんと総理大臣が言っていれば、あなた職を曠廃することになるのじゃないですか。  それで私は、次の質問に移りますけれども、大学問題の自主的、民主的解決を妨げる一つの重要な要素として、いわゆる中核とか革マル、いわゆるトロツキスト暴力集団ということばでいいますけれども、こういう集団の暴行事実があるわけですね。これがやはり今日の大学問題の紛争の大きな要因になっているわけです。これをどうするかということですね。彼らの主張を見ますと、帝国主義大学の粉砕だとか、大学コミューンだとか、入試粉砕だとか、確認書による解決反対——政府と全く同じことを言っているわけなんですけれども、こういうスローガンを掲げて、角棒や鉄バイブやヘルメットで武装して、学園の封鎖や反対者に対する暴行をほしいままにしているわけですね。したがって、学問の研究の自由と大学の自治を守って紛争の自主的な解決をはかるという方向に努力するためには、どうしても学内において彼らがそういうことを起こさせないようにしてこれを排除するということは、当事者としては当然だと思うのです。  しかるに政府は、いま問題をこのように混乱におとしいれておるトロツキストの暴力に反対して大学の自治を守ろうとする学生や教職員の行動を、かえって非難をして、けんか両成敗だ、けんか両成敗論をもってきておるわけですね。そして自主的に解決しようという側をかえって抑圧しようとしておる。だから、客観的に見ると、政府はむしろこのトロツキストの暴行を、客観的には、陰に回って援助をしているといわれても過言でないような状態が出てきておるわけですね。佐藤総理は施政方針演説の中で「学園が暴力によって長期にわたり占拠されたにもかかわらず、管理者が秩序維持の責任を果たさず、学生もまた暴力の前に学園の自治を放てきした結果、建物や研究施設が破壊された」と言い、「大学当局、教職員及び学生が」「暴力に屈せず、ともに協力して、一日も早く大学本来の機能を回復するよう」呼びかけておる。大学当局、教職員及び学生が、暴力に屈せず、ともに協力して、早く自主的に解決の方向へ努力しろということを、あなたも施政方針で言っておるわけですね。そうすると、あなたの言うこのことは、一体学生や教職員にどういうことをしろと言っているのか。こういう抽象的な呼びかけでなくて、もう少し具体的なことをお聞きしたいと思うのですよ。トロツキストの暴力に無抵抗で、ひたすら警察官の保護を求める、そういうことをあなたは言っておるのか、この大学当局、教職員及び学生が、暴力に屈せず、ともに協力して、一日も早く大学本来の機能を回復しろということは。それば警察官に秩序維持を求めろということなのか。もし、そういうことを総理がおっしゃるとすれば、これはトロツキストの暴行が続く限り、大学への警官の導入は日常化されて、警官が常に大学にいなければならないということになってしまうじゃないですか。これはもう過去の歴史的な経過から見ましても、学問研究の自由と大学の自治に対する重大な侵害になるわけです。これは大学は過去にそういうことについて苦い経験を幾度もなめているわけですね。総理はこのことをやろうと言うのですか。もっと具体的に、あなたの施政方針演説が具体的に何を大学の関係者にやろうとして呼びかけているのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 少し長くなったといって、また文句を言わないようにしてください。これは大事なことで、基本的な問題なんです。  私は、先ほど申したのですから、そこでおわかりだと思いますが、大学というところは何をするところなのか。もちろん教育の場だと思います。そこで、一部のトロツキスト云々が出ておりますが、イデオロギー的な政治活動をする場所じゃございません。学生の本分というものはあるわけです。別に私は学生は政治活動を一切しちゃならぬ、こう言うのではございませんよ。ございませんが、いまのような——大学は教育の場なんだ。だから、本来の教育の場を生かしてください。その場が、自分たちは入って大学の学生でありながら、その大学を否定したり、またそれを破壊したり、そういうような暴力行為、これが許せるかどうか。そうして俗称いわゆる外人部隊というものが入っている。私は、自分の大学だけなら、これは簡単に管理もできるだろうと思います。しかし、他の大学の連中が来て、そうして先ほど言ような全国的なある一つの共同体、そのもとにおいて暴力行為を行なう、これは何としても取り締まらなければならないのじゃございませんか。それを取り締まる力があればよろしゅうございます。いまおそらく言われるのは、こういう暴力があるから、その暴力から大学を守るために他の学生も暴力を持ちたいのだ、かように言われるのかわかりませんが、警察というものは、こういうことを許さないために、国家機能として、国家的機関がちゃんと整備されておるのであります。だから、大学がこういうことで治安が乱されて維持ができなければ、警察を頼めばいいじゃないですか。警察を頼むことを、そんなに法治国家のもとで警察の機能を働かすことをおそれてはいかぬですよ。それは堂々と一そういう事態が起こらないことを私は望みますけれども、万一破壊活動が行なわれていれば、それを取り締まるのが警察なんですから、そのために国家は高い予算をつけてまでそういうものを持っているのですから、それをお使いになればいい。わずか電話一つで、二分もかかればすぐ出てきます。そういう状態のものをやらないで、そうして、自治だからみずからの力でこれを守るのだ、こういうことを言われれば、やはり暴に報いるに暴をもってする。皆さん方の本来の主張とも違うのじゃないですか。これはやはり、そういう暴力行為は、これは緊急避難だとかあるいは正当防衛だとか、その範囲を越してはならないものですね。だから、そういう意味で正当防衛や緊急避難としておやりになることなら、法に触れない限りだれも文句は言いません。しかしながら、一部のこういう暴力行為をやる連中がいる、それに対するにはどうしても平素から武装していなければならぬとなると、これは問題なんだ。これは大学自身の自治の範囲を越しますから、そういうときには遠慮なしに警察を使いなさい、かように私は申しているのです。
  213. 林百郎

    ○林委員 総理はすぐ警察を呼んだらいいじゃないかという方向へ問題をそらしてしまいますが、警察を呼ぶ前に大学が自主的に解決するということが重要なんで、そのために努力をして確認書もできて、教授会がこれを批准し、各大学生が真剣にこのことを討議しているじゃないですか。警察を呼べ呼べと言っても、そんなことを言えば、しょっちゅう警察を呼んでいなければいけないことになるじゃないですか、あなた。  そこで、あなたも荒木さんも、警察を呼べば二分で来ると言うから、実例をここであげてみます。二分で来るかどうか、その間、暴力がほしいままになされているときに、それを甘受していなければならないのかどうかということを私は実例をもってあなたに説明してみたいと思うのですよ。  荒木国家公安委員長も、二〇番にかければ二分間で警察が来ると言った。しかし、一月十五日の夜、東大医学部をトロツキストが襲撃したときに、大学当局は午後八時二十分に警官の出動を要請したけれども、機動隊が来たのは午後九時十五分ですよ。五十五分もたたなければ来ないのですよ。二分なんてとんでもない話ですよ。その間、彼らは暴力の限りを尽くして、負傷者も出ているのですよ。一月十五日、全国から動員されたトロツキストが約二千名来て、東大の中へ大量の石や鉄パイプ、角材、ガソリンなどを持ち込んでそうしてしかも、警察の機動隊を六千五百名動員しても、東大周辺の警備に当たりながら、武装して凶器を運ぶことをどんどん許しているわけなんですよ。これをしも、警察を呼んで、それが来るまでじりとがまんしていろなんということは、あなた、自分のうちに強盗が入ったときに、警察が一時間もたって来ない場合に、家族の者に、じっとしていろ、おれの主義はじっとしている主義だからと言って、そうさせておきますか。やはり家族を動員して、そういう不法な者の侵入を排除する努力をまずあなたのうち自身でやるでしょう。(「あたりまえだ。」と呼ぶ者あり)あたりまえのことじゃないですか。  また、京大の場合でも、一月の二十一日、トロツキスト暴力集団が学内侵入をはかった際に、午後五時五十分にその排除を要請したけれども、警察の機動隊が到着したのは一時間十分もたった午後七時なんですよ。その間、トロツキストは、素手ですわり込んでいる学生、教職員を襲撃して、ここでもまた多数の負傷者が出ているわけですね。したがって、京大の奥田学長は、トロツキスト暴力集団に対する大学としての自主防衛の措置をとらざるを得ないのだ。それはたとえば住居に極悪な強盗が侵入してきた場合に、それに必要な対抗措置をとることと同様だ。大学の管理者としては当然の措置をとっただけだ。警察へ要請しているのですからね。このような事態から考えてみれば、大学の管理者として、まず自主的な措置をするというのは当然ではないでしょうか。  結局、そのような努力を大学の関係者がしている場合に、トロツキストを学内に——写真をあとでお見せしますけれども、十五日などは、警察がいるのにどんどんどんどん赤門から中へ入れているのですよ。そういう鉄棒を持った——写真を見てください、総理。これ、見せますけれどもね。   〔林委員、写真を示す〕  道路であなた、規制できるのをしないで、どんどん入れているのです。これは棒じゃないのです。鉄のパイプですよ。それを六千人も警察がそこにいるのに自由に出入りさせているのですよ。それをわれわれが泳がせるということばを使っても、これは決してあなた、不当なことばでも何でもない。事実を言っているのじゃないですか。どうお考えになりますか。
  214. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 十五日の事態は、林さんがおっしゃったところも、一部においては真実でございますが、一部はちょっと間違っておると思います。というのは、警察当局に対して要請をされたことは事実なんです。しかしながら、大学当局といたしましては、学外者を含めまして二千数百名の共闘会議、そしてまた武装いたしました民青、これが数千名、これがあそこで武闘を行なうならば——その共闘会議のほうには、御承知のように火炎びん、あるいはそのときにニトログリセリン等もあるといううわさもありまして、もしあそこで武闘が行なわれたならば、これはたいへんなことになる、死傷者も出かねない、こういう危険を感じたわけでございます。したがいまして、大学当局といたしましては、自主的に一応警察当局に対して、われわれのほうで不退去罪のいわゆる通告をして、学外者出ろ、それからゲバ棒捨てろ、これはゲバ棒は、民青もそれから全学共闘も、両方とも暴力は許さぬから、とにかく捨てろ。それからまた、法学部等の、いわゆる暴力はやっぱりいけませんから、とにかく学問の研究の一番中心である研究室等を破壊することは断じてよろしくない。こういうことは許さぬぞ。もしこれをあえてするならば、このいわゆるわれわれの通告に対して、もし外人部隊が帰らなければ、そしてまたゲバ棒を捨てなければ、われわれは警察導入もやむなし、こういう話し合いが現場でととのったと私は聞いておるわけです。  したがいまして、夕方になりまして、外人部隊はぞろぞろ退去をした。それから警察官のほうも警察力をゆるめまして、そして引き揚げにかかった。ところが、また夜になりまして、民青の立てこもっておりますところの医学部に対しまして、全学共闘会議が襲いかかった。したがいまして、これに対して……(林委員「簡単に。それはわかっています」と呼ぶ)非常に大事なところですから……。それに対して襲いかかろうとしたから、加藤執行部は、また警察官の要請をして、赤門の前まで機動隊を出動させた。ところが、これに対しまして全学共闘は襲いかからずして、とにかくあの場はおさまった、こういうのが私が聞いておる情報でございます。
  215. 林百郎

    ○林委員 私が質問しているのは、警察を呼べば二分間で来る来ると、総理も荒木国家公安委員長も簡単に言うけれども、そんなものじゃないということなんですよ。しかもその間、具体的に負傷者は出るわ、大事な日本の国の学問の蓄積が破壊されるという状態のもとに、そういうものを排除するために自主的な防衛をやるのはやむを得ないじゃないか。しかも警察は——文部大臣、見てくださいよ。こういう状態ですよ。門の中へどんどん入れているじゃないですか。門の中へ入れておいて、入った者から大事な日本の国の大学の蓄積を守ろうとする者を、けんか両成敗だとかなんとかいうことは成り立ちませんよ。それは価値観についてのいまの政府の考え方、おかしいです、そんなことを言ったら。  それで、トロツキストを泳がしているということについて、あなた方はだいぶ抵抗を感ずるようだけれども、事実を申します。トロツキストを泳がしているという事実は、六〇年の安保闘争のときのトロツキスト暴力集団の指導者の東原伸吉君の手記や、TBSラジオの報道などで、すでに明らかなんですね。東原は当時の警視総監小倉氏や野村検事正とときどき会い、この方々が私たちになみなみならぬあたたかい感情と同情心をもって事に当たられていることに全く驚いた、と言っているわけですね。また彼らは、右翼反共の田中清玄氏から四、五百万の資金の援助を受けて、戦術上の指導を受けたと言っている。これはちゃんと私たちは確固たる証拠があって言っているわけです。現に当時の警視庁の首脳部が彼らに会っていた事実は、一昨年の十月、私が、地方行政委員会で、当時の警視庁の責任者だった三井警察庁警備課長に質問したところ、私会いましたと言っているのですよ。わざわざ——質問したときにですね、向こうからたずねてきたというのです、警視庁へ積極的に。これがあなた、なれ合いと言わないでどういうことですか。しかも、昨年の十月二十七日のNHKの政治座談会では、わが党の宮本書記長が、自民党内に日共対策としてトロツキストを泳がせておいたほうがいいという考えがある、こう指摘したのに対して、当時の福田幹事長、いま大蔵大臣ですね。あなた、よもや記憶がないことないと思いますが、自民党の中にもいろいろの議論のあるのは当然である、そういう議論もあると言って認めているわけなんです。こういう一連の事実があるからこそ、政府・自民党がトロツキストを泳がせている、こうわれわれが言って当然じゃないですか。しかも、彼らの言うことと政府のやることと一致している。入試中止、確認書否認、みんな政府の言うとおりのことを言っているじゃないですか。それがなれ合いである、泳がせているというのはあたりまえじゃないですか。総理ひとつ……。言うこと同じですよ、政府の言うことと。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自民党がトロツキストを泳がしている、そういうことはございません。いま、この大学紛争で私が一番問題にしておるのは、自分の大学の学生というか、問題の起きている大学の学生それ自体なら、比較的におさまりがいいんじゃないか。どうもいわゆる外人部隊というものが出てきて、問題を非常に紛糾さしている。ここに私はどうしても注意を払っていただきたいと思うのです。私自身の経験からいいましても、私がアメリカで学位をもらった。そのときに一部の学生が来て、佐藤帰れ、佐藤帰れとやっている。そうしたら、他の学生が出てきて、おまえたちはこの大学の生徒じゃないか、この大学の客に対して何を言っているんだ、おまえたちこそ帰れ、こういうことを言っている。私は、これが日本の国内にもあって、いまの大学が他の大学の学生から占領されておる。今度の安田講堂であれだけ多数の学生が逮捕されたけれども。東大の学生というのはきわめてわずかじゃありませんか。やはりこういう問題を見て……。
  217. 林百郎

    ○林委員 それを入れているのは、警察が黙視して入れているじゃないですか。写真をいまお見せしたでしょう。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 警察ではなくて、これは、平素から大学の管理者というものは、こういうことに気をつけた一つの態度がなきゃならないんだ、こういうことを私は申し上げたいのです。私は特にとやかく問題を紛糾さしたくありませんけれども、どうもいわゆる学校には一つの伝統がある。その伝統のもとにおいて学園の自治が許され、そうして学問の自由、それをやっておるのですね。それが他の大学から出てきて、そうしてやると、そこらは一そう紛糾するのですね。こういう場にこそ、おそらく自分たちの自治権の範囲以外であろうと思うのですね。そういうところを考えないと、これは無理なんだ。(「簡単、簡単」と呼ぶ者あり)簡単に申し上げておきます。
  219. 林百郎

    ○林委員 東大以外の学生が暴力手段を行使している。それならば、なぜ、警察が六千名も十五日の日は赤門の周囲を警備すると称しているのに、どんどん自由に入れるのですか。しかもそれがあなた、鉄のパイプを持ってどんどんいま写真でお見せしたとおり入っているのですよ。そうしておいて、外人部隊がいる、外人部隊がいるなんと言ったって、それは通らない話なんです。  そこで、ちょっと待ってください、私時間がないからもういいですよ、適当なときに答えてください。いいですか。私の質問を聞いてから答えてください。総理聞いていてください。私たちがここでこの問題を、ことに共産党としてこの問題をどうしても取り上げなければならないことは、けんか両成敗ということから、それはもう価値判断自体が私はさか立ちしていると思いますが、それからさらに、共産党の攻撃やあるいは民青の攻撃にまでこの事態を利用しようとして、重大な治安政策が政府から露骨に出されているところをわれわれは見のがすわけにいかないわけなんですよ。現にこの国会の答弁の中で、政府の大臣の答弁を聞けば明らかにキャンペーンしていると思うのです。  具体的に言いますよ。西郷法務大臣、これはもう法務大臣ですよ。一日の本委員会で行なった、反日共学生団体は━━━━━━━━━志を異にする共産主義団体である、こんなことは論理から言ったって合わないことです、反日共糸学生が━━━━━━ということは。しかし、これは私は、単なる軽率な失言ではなくて、意識的に共産党を攻撃しようという意思があるから、こんなとんでもないことが出ているので、これはあなたの失言じゃないと思うのです。  それから、吉橋公安調査庁長官、いますか、いますね。あなたは去る一日、内田議員の質問に答えて、三派全学連のねらうところは大学コミューンである、これと同じく日共系の学生も大学の民主化を当面の対策にしているが、あくまで大学の人民管理ということが真のねらいである、こんな根拠がどこにありますか。いいですか。東大民主化行動委員会の見解が正式に発表されたのは、あなたはこの道の専門家だからわかっているはずでしょう。「われわれの主張は、大学当局が決定をおこなう過程への「参加」、すなわち意思の反映、および大学当局の決定と執行にたいする批判——場合によっては抗議行動——の権利であり、大学の管理運営の決定と執行の責任を大学当局とわかち負うものではない。」管理運営の執行の責任を分かち負うものじゃない、運営の執行についてわれわれの意思を反映してもらいたいということだ。だから、現行の法令の範囲内で十分そのことは実現が可能だとちゃんと言っているじゃないですか。それを、日共系の学生のあくまで大学の人民管理ということが真のねらいだ、とんでもない。あなたはしかも、知らないしろうとが言うなら別ですよ、公安調査庁長官ともあろう者がこういうことを言っていいですか。何を根拠でこう言っていますか、根拠を示してください。
  220. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 ただいま林委員から御指摘の、私が二月一日の当委員会で大学の人民管理ということばを使った意味は、いわゆる日共系の全学連のいうところの人民と反動政府との対決——ということばを使っておりますが、という主張に基づいて、同派全学連の要求を主張し、ともに戦う学生、院生、教職員等の大学人による大学の管理を究極において目ざしておるということを申し述べたのでございます。
  221. 林百郎

    ○林委員 根拠はどうだと言っているんですよ。あなたのその根拠はどうなんだ。
  222. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 根拠は、いわゆる日本共産党系の全学連に関する各種資料を総合的に検討、分析の上で、さような見解を持ったものでございます。
  223. 林百郎

    ○林委員 これは非常に重要ですから、その資料を当委員会に提出していただきたいと思うんですよ。(「理事会、理事会」と呼ぶ者あり)これは理事会にはかっていただきたいと思います。われわれは、東大民主化行動委員会の諸君が具体的に大学問題でどう言っているかということを、そういうことをいま問題にしているわけですよ。そんな  一般的な、全然大学問題と関係ないようなことを持ち出してきて、しかも具体的な根拠を、一つもここで具体的にいつ幾日のどういう文献とも言えないじゃないですか。そういうことを平気であんた言うということは、あんた意識的にこの事態を利用して反共のキャンペーンをしている、その先頭に立っていると言われてもやむを得ないじゃないですか。  そこで、もうこの問題、結論を出します。要するに、政府と自民党は、こういう暴力集団を泳がして、大学の自治に干渉して、反動的な大学の管理制度と文教政策を押しつけようとしている。また、そればかりでなくて、共産党や民主的な学生、日教組など、民主的な勢力に不当な中傷を加えて、この事態を利用して反共的な雰囲気をつくろうとしている、ここが大きなねらいだと思う。だからこそ、わが党はこのことを無視できないわけですね。  さらに、トロツキストの暴行を口実に、機動隊の増強だとか、さらに自衛隊の治安出動訓練の強化など、治安体制の強化を進めようとしている、この事態を利用してですね。現に、荒木国家公安委員長はそう言っているわけです。手が回らないんだ、だからもっと機動隊がほしいんだと言っているわけです。わが党は、このような政府の策謀を直ちにやめて、大学の自治と学問、研究の自由を尊重して、学生や院生や教職員、大学当局による自主的な解決の方向をはかる、これを政府はもっと良心的に援助すべきだ、こうわれわれは考えます。この問題はこれで打ち切らないと、次の問題に移れませんから……。
  224. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 林君に申し上げます。  ただいまの質問及び答弁に多少私が聞いて疑義がありますから、重大な問題だと思いますので、国家公安委員長に答弁をさせます。
  225. 林百郎

    ○林委員 委員長、そんな権限ありますか。あなたがわからないから、それじゃ、あなた自分で聞けばいいじゃないですか。私の持ち時間を使ってあなたの……。
  226. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 いや、持ち時間は多少許します。
  227. 林百郎

    ○林委員 それならいいですよ。あなたのわからないことを私の持ち時間で聞くなんて、そんなばかなことないですよ。
  228. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 そうじゃありません。委員会責任者として申し上げるのです。おわかりですか、林君。
  229. 林百郎

    ○林委員 そうおっしゃるなら……。
  230. 荒舩清十郎

  231. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先ほど来の林さんの御質問に対しまして、総理大臣からもお答えがございました。これらに関連して、私の名前も一再ならず御引用になりましての御質問でもございますから申し上げます。(林委員委員長に向かって言ってください。委員長がわからない」と呼ぶ)  林さんのほうでよく申されますところの、共産党の子分である民青、民青の諸君は、正当防衛の理論を打ち立てまして、学内にあるトロツキストその他のゲバ棒連中の暴力を、自分たちが正当防衛の考えで制圧してみせる、したがって、警察は一切大学に入るなということを言い続けておるわけでございます。  先ほど仰せになりました、一月十五日に警察が二分間で来なかったというお話も出ましたが、それは十四日の間違いじゃなかろうかと思います。警察機動隊は東大に入りまして、林さん御指摘のように、三派全学連その他が火炎びん、劇薬、ゲバ棒、石灰その他を持ち込んでおる。同時に、民青のほうもぼつぼつ持ち込んでおるということを考えまして、十五日の民青及び反代々木系の一大決戦をもくろんでおった様子でございますから、そういう武器をたくさん集めた後に大騒ぎになったんじゃたいへんだというので、十四日に大学に参りまして、そういう武器等を排除すべく大学に要請をいたしました。しかし、断わられました、残念ながら。そうして十八日、十九日の事態に相なったことは、林さんも万々御承知のとおりであります。  総理大臣が、施政方針演説におきましても、大学当局及び学生諸君が本来の大学の望ましい姿になるように努力しろということを言われましたことについて、いろいろお話があったようでありますが、あれは本来、大学当局、東大でいえば、公務員であり、公務員は、林さん万々御承知のように、刑事訴訟法に基づいて、不法行為があったら告発しなければならぬという責任を負わされておる。それをさっぱりやらない。そんならば、せめて民青の林さんのほうの子分の連中が、警察機動隊が出たらどうだと、一一〇番をかけるぐらいのことをしてもらってよかりそうなものだ、そういう意味を総理大臣は念頭に置きながら答弁せられたと存ずるのであります。  それで、私は、林さんがトロツキストを政府や与党が泳がしているなどと仰せになりますけれども、そんな事実はない。ずっと以前に林さんが質問をされましたことに対しまして、当時の政府側から答弁もいたしておりますが、東原何がしというものが、当時の警視総監小倉君に会ったことは、あれはうそであります。そのことを申さしていただきます。  さらに、もうちょっと申し上げさしていただきたい。過激派の学生集団による学内の暴力行動に対しましては、法律に基づき、警察権の発動により、これを排除、検挙するのが当然の筋道であるにもかかわらず、民青、共産系の学生などは、警察力の学内導入に徹底的に反対しておりまして、結果的に過激派学生の暴走に拍車をかけている形であります。これは警察力を導入しないでほうっておけば、過激派学生のはね上がりが一段とエスカレートして、ますます学内で孤立化すること、その場合、民青糸としては、いわゆる正当防衛権に名をかりた実力行動によってこれをたたく、このことが刑法第三十六条違反であることは申し上げるまでもございません。学内闘争の指導権を握ろうとしているという見方もあるのでありまして、そのことを、私もそういうふうに思われると存じますので、先般もお答えを申し上げました。  以上、補足的にお答えを申し上げます。
  232. 林百郎

    ○林委員 荒木国家公安委員長に申し上げますが、あなたのほうこそ事実が違っていますよ。一月十五日の午後八時二十分に警察を要請して、来たのが午後九時十五分。  東原のことについては、そんならあなた、私のほうはちゃんとテープとってありますよ。もし事実だったらあなたはどういう責任をとります。あなたのほうこそあまりいいかげんなことを言いなさんな。証拠を出しなさい、会わないという。だれから聞いたんです、あなたは。  それから、あなたはテレビで得々顔して、二分たったら警察が来ます。——なに二分たったら警察が来ていますか。その間にやむを得ずやること、京都大学を見てごらんなさい。ああいう事態で、大学の関係者がみずから守る、やむを得ない事態じゃないですか。それを何ですか、失礼な。私は、あなたの使ったことばをここでは繰り返しませんけれども、この事態を利用して反共の攻撃の材料に使おうとしている。その先頭にあなたは立っている。いずれ歴史が判断しますよ。これはもういいですよ。私はいいですよ、委員長。しようがない、こんなかってなことを言っている人を相手にしていたら。  私は、次に、沖繩と安保の問題について——さっきのは時間からはずれていますね。  総理は、この委員会において、米軍の核兵器の持ち込みは憲法上問題がない。総理も高辻さんも言っていますね。これは政策上の問題だと言っているわけです。  そこで、今度は、米軍が日本を基地にして戦闘作戦行動に出た場合は、憲法上の問題ではどうなるんですか。
  233. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  例の戦力の保持についての判決は御存じだと思いますが、ただいま軍事行動の面でございまして、これについて日本が基地を提供する、これはいま始まった問題ではむろんございませんが、米軍は国連憲章のワク内で、御承知のとおりに個別的自衛権、集団的自衛権、いずれにしても自衛の範囲にとどまることになっております。これは憲法の精神から申しましても、平和主義の憲法の精神に反するものとは思いませんので、そのような性格のものに基地を提供すること自身が憲法に違反するというふうには考えられておりませんし、考えられないと思います。
  234. 林百郎

    ○林委員 そうすると、憲法上米軍の自由出撃、いわゆる戦闘作戦行動、出撃ですね、これは憲法上は問題がない、あなたはよく砂川判決を持ち出してきますが、憲法のらち外だということでね。  そこで、同時に総理はまた、日本を基地としての米軍の軍事行動について、国連憲章に沿っての行動は相談の余地がある、とこう言っているわけですね。これは要するに、憲法のらち外だから、もしあるとすれば事前協議だ、事前協議の相談の対象になるのだということをあなたはにおわしているわけですね。そうすると、過去の事実として、アメリカがベトナム戦争に出ていきましたね。それから朝鮮戦争にも出ていきましたね。これは沖繩を基地にしたり、あるいは日本から直接出ている。こういうことは憲法上どうなるのですか。認められるわけですか。憲法に違反していないわけですね。
  235. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在の時点、これは沖繩にアメリカが施政権を持っている限り、日本本土と沖繩は別々に考えなければいかぬ。それを間違っては、混淆するわけにはいかぬ、それはいいですね。だから、その意味におきまして、これは沖繩の……。
  236. 林百郎

    ○林委員 いや、私は本土のことを聞いている。
  237. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それはもう、本土のほうは先ほど法制局長官が答えたとおりです。
  238. 林百郎

    ○林委員 だからあなたから聞いておる。憲法に反しないというのですね。
  239. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答えたとおりです。
  240. 林百郎

    ○林委員 いや、あなたから聞いているのです。かりに本土から自由出撃すれば憲法に反しない。そして沖繩からベトナムや朝鮮へ出動していたのも、これは沖繩であるから、国連憲章の精神にも沿っているから、これはいままでは施政権がアメリカにあったから、あなたの言うとおりですね。  今度は、これがかりに施政権が日本へ返ってくる、そうすると日本全体の問題になってきます。かりに沖繩から再び朝鮮へ出動するというようなことがあった場合、これは憲法のらち外であって、事前協議の対象となって相談に乗ると、こういうことになるわけですか。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうことです。
  242. 林百郎

    ○林委員 私はこれは重大なことだと思うのですね。沖繩が、施政権が返還されて、そして日本に組み込まれた場合に、そこからまた朝鮮へ出動するというような事態があっても、これは憲法のらち外だ。で、これは事前協議の対象になって、それは相談に乗る。相談に乗るけれども、国連憲章の名において行なわれた場合には、その相談にはあなたどうこたえますか。国連軍の行動あるいは国連憲章に基づいてやるのだという場合は、あなたは相談に乗ると言うけれども、どう相談に乗るのですか。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの相談に乗るというのは、事前協議の対象になるということですね。それはもうことばをはっきりさせておきます。  それから沖繩の基地がどうなるか、これはいつもたびたびここで議論して、(「それは白紙だ」と呼ぶ者あり)それは白紙でございますと、もう先に答えられる、向こうで。それほど実ははっきりしているということ。ただいままだ結論を出しておりません。ただしかし、私はどういう立場にあろうと、むしろ聞かしていただきたいという気がしておるわけなんです。だから、そういう意味で、ただ私にお尋ねになるばかりでなく、私ただいま白紙でございますから、ひとつ御意見を聞かしていただきたい。
  244. 林百郎

    ○林委員 それでは高辻さんに聞きましょう。  本土から米軍が出撃をした場合には、これは憲法外の問題であって、あるとすれば事前協議の対象になる、こういうことですね。——ちょっと待ってください。そこで、かりに、これは沖繩が返ってくるとかこないとかいうことは別として、本土から国連の名において将来米軍が直接朝鮮へ出動する、こういう場合は、交換公文もありますし、いろいろありますけれども、これは憲法との関係ではどうなるか。当然これは許されるということになるわけですね、あなたの論理から言うと。それを確かめたいのです。
  245. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 何か本土と沖繩の場合について一応分けて御質問のようでありますけれども、おそらく本質的には同じことで、違わないと思います。要するにアメリカ合衆国、まあどこの外国の軍隊でもいいですが、これが何かとめどもないようなものであれば——これは法律的に申してです、法律的に申してそういうものであれば、あるいは問題があるかもしれませんが、いまの国連憲章のワク内で行動するということが、結局憲法の精神とどういうつながりがあるかというのがこの場合問題になると思いますが、先ほども申し上げましたように、日本も入っておる国連憲章のワク内で行動するというものであれば、これは憲法の各条項には何も関係がございませんが、憲法の精神からいっても問題はなかろうということを先ほどもお答えをいたしましたし、また沖繩が返ってきたときも同様に考えるべきであろうと思います。
  246. 林百郎

    ○林委員 そのことは、これは一般的な問題として聞きますが、かりにベトナムに対しても同じことになるわけでしょうね、憲法上の問題という次元で考えれば。いま朝鮮の例を言いましたけれども。どうですか、あなた、正式に……。
  247. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ベトナムの問題あるいはどこの問題、いろいろ仮定をあげれば出ると思いますが、要するに、繰り返して申すことになりますけれども、国連憲章の認める行動の範囲内のものであればということが正確なお答えでございます。
  248. 林百郎

    ○林委員 それでは、高辻さん、米軍が軍事行動した場合に、これは国連憲章とは別にやっているのだ、要するに、国連憲章の精神にのっとって軍事行動をやっているのだ、そう言わない軍事行動というのは過去にありましたか。あなた博識だから、ちょっと言ってみてください。米軍の軍事行動で、過去において、国連憲章を使わなくて、国連憲章の精神あるいは国連憲章に基づいてこうやっているのだ、そういうことを言わなくて軍事行動をやったことがありますかと聞いているのですよ。
  249. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これは私が御答弁するのは適当でないと思います。外務省のほうからお聞きを願いたいと思います。
  250. 林百郎

    ○林委員 では、外務大臣から……。
  251. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 過去においてそういう事実はなかったと思います。
  252. 林百郎

    ○林委員 そうすると、これはまた憲法上の次元に戻りますが、米軍が国連憲章の名を使って軍事行動をすれば、これは常に憲法のらち外において、しかも事前協議の対象になって相談には乗るけれども、国連憲章の名に沿う場合は、おそらく総理はノーと言わないと言うと思うのですよ。で、許される、こういうことでいいですね、国連憲章の名が使われている場合。
  253. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それはやはり仮定の問題ですから、お答えするのにふさわしくないと思います。  なお、在日米軍区域、施設との関連の問題から言えば、安保条約というものがかかっておりますから、だいまのようなお話は仮定の問題でございますから、お答えをするのにふさわしくないと思います。
  254. 林百郎

    ○林委員 仮定じゃなくて、憲法上の理論として聞いているわけですよ。憲法上の問題にならない。日本を基地にして日本にいるアメリカの軍隊が出撃する場合は、事前協議の対象になって、相談には乗る。しかし、それが国連憲章という名のもとで軍事行動した場合は、おそらく総理はノーと言わないだろうと言ったら、総理はうんと言っているのですよ。  そうすると、国連憲章の名によって米軍が日本を基地として出撃行動する場合は、これは全部許される。かりに事前協議というものがあっても、事前協議の相談に乗る基準、イエスかノーかの基準は国連憲章だ。国連憲章の名に基づいてやればこれは憲法のらち外だから許される、こういう憲法の次元でものを言っているわけですよ。そこで私はあなたには、ただ事実、アメリカが軍事行動を起こした場合に国連憲章という名によらずして行動をしたことがあるかどうかと聞いたら、あなたはないと言っているわけでしょう。それでいいですよ、時間がありませんから。  そこで、次の問題をお聞きしますが、高辻長官は、自国の防衛上の正当な目的を達成する限度にとどまる兵器ならばこれは持てる、こう言っていますね。そうすると、自衛隊が核兵器を持つことも、自国の防衛の正当な目的を達成する限度ということになれば、これは持てるということになるわけですか。
  255. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 誤解のないように念を押しておきますが、例の原子力基本法なりあるいは政府の政策としての三原則なりというようなことで、自衛隊が核兵器を保有するということは、現実の問題としてはあり得ないことでございます。あり得ないことでございますが、理論上の問題としてお尋ねがあれば、何回か過去にも、これは十二年前から言っておるようなことでございますが、核兵器という名がつくからそれでもうだめだということには憲法上はなるまい、やはり自衛隊がその存立を許される、これは政府の解釈でございますが、それと同じ理由によって、核兵器であっても持てるものは持てる、通常兵器であっても持てないものは持てない、こういう議論になるわけでございます。
  256. 林百郎

    ○林委員 総理、憲法上は日本の自衛隊が自衛の範囲において核兵器が持てると言っているわけですね。具体的には近い将来、あるいは将来、自衛隊が核兵器を持つという、これは今度は現実の次元に下がって聞きますけれども、これについてはあなたはどう考えていますか。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでの議論は法律的な議論、私の内閣ではそういうものを持ちません、核兵器は持たない、はっきり申し上げておきます。
  258. 林百郎

    ○林委員 そうすると、憲法上は持ち得るが、現実としては持たぬ、あなたの内閣の範囲では、こういう意味ですね。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりであります。憲法上はいろいろ議論があるけれども、現実の問題として、憲法論ではなくて現実の問題として、私は、佐藤内閣はそういうものは持たない。
  260. 林百郎

    ○林委員 それじゃあと一問で終わります。  沖繩の場合の事前協議の問題についてお聞きしたいのですけれども、これまでの総理の発言を見ますと、施政方針演説での、沖繩の米軍基地が果たしている役割りを認識するという発言があって、また本会議での、沖繩基地を含む米国の核抑止力があったから本土で非核三原則を打ち出せたという答弁がある。さらに、日本と極東の安全をそこなうことなき解決をはかるということも言っております。これらを総合すると、沖繩の返還にあたって、総理は、安保条約の事前協議事項について何らかの措置を講ずる、どうしてもこう考えざるを得ない、そういう意味の答弁にとれる答弁をしておりますが、その点についてはあなたはどうお考えですか。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも困ったですね。とにかくそこが白紙だという……。だからこれは私たいへん注意深くというか、特別な取りきめをしない限り安保はそのまま適用される、こういうことを申しておりますね。また憲法も、例外は、沖繩について通常の状態においては認めてはおらない。これはもうはっきりしておりますね。だから、なぜそれじゃ沖繩について白紙であるのか、基地について白紙であるのか。日本に関する場合にも、また日本を含む極東の安全という場合にも、ずいぶんこの沖繩の米軍基地というものは大きな役目を果たしております。そういうことを考えればこそ、これにかわるような方法があるのかないのか、またどういうように実際なっておるのか、メースBはあると言いながら、私はどんな状態なのか、これは全然わからないです。だからそこらに問題はまだあるのです。これは返ってきて、そうしてこれが通常の装備だけでわが国の安全に影響なし、こういう判断ができれば、それはもう非常に見やすいことですね。また、わが国のみならず、わが国を含む極東の安全確保に何ら沖繩の基地関係なしという、そういう結論が出れば、これはまた非常にわかりいいのです。  私はなお、聞かれたことではございませんが、日本国民皆さん方が、いま安全保障条約を認めない政党でも、安保で認めておる本土並みならば沖繩は早く返ってくればいいじゃないか、そういうことを努力すべきだという声の大きいこともよく耳に入っております。そういう状態ではありますが、私はもっと、ただ声だけでは——なかなかこのわが国の存立並びにわが国の安全を確保するという重大な事柄は、声だけではどうもきまらないように思います。そういう意味で、最も賢明な方法はどうしたらいいかというので悩んでおります。
  262. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 林君に申し上げますが……
  263. 林百郎

    ○林委員 わかってます。もう二問で終わりたいと思います。
  264. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 簡潔に……。
  265. 林百郎

    ○林委員 それでは一問にして、総理と高辻さんの両方にお聞きします。  そこで、総理は白紙、白紙ということを言っておりますが、あなた、もう愛知さんはこの五月にアメリカに行くんですよ。あなたも秋に行くというんでしょう。それなのに、まだ重要な点になるとあなたは白紙、白紙と言っておるわけです。しかも事前協議をどのように手を入れるか入れないかということは、これは重大な問題だし、アメリカの意向はもう明確に出てきているわけですね。それなのに日本政府だけがまだ白紙だ、白紙だでは、あなたはやっぱり腹の中のことを言えないのではないのですか。  そこでこれは、あなた、事前協議の問題については、日本側の意向だけでは解決できないいろいろの問題もあるし、必ずあなたはこのことについて手をつけなければならないと私は思う。その論証を、もう時間がありませんので、ずっとやっていって、そうして高辻さんに、かりに岸・ハーター、あの交換公文に、あの条文に、あの条項に手をつけるということになるならば、これは実質的に安保の重要な内容ですから、安保条約の改定になる、これはかりにの問題ですが、これは必ず国会にかけなければならないと私たちは考えますが、その点もあとでまとめてお聞きしますが、佐藤総理に、こういう条件のもとで、あなたは事前協議には手をつけませんというわけにいかない事情がたくさんあることを私は参考までに申し上げたいと思う。私の観測では、あなたは腹はきまっているが、今の段階で言えないのか、あるいはアメリカから何の説明もまだ受けていないので、全くそういう意味での白紙なのか。それではたいへんだと思うのですね、白紙、白紙で。  そこで、米華相互防衛条約の付属交換公文を見ますと、「両国の共同の協力及び貢献の所産である軍事力は、相互の合意なくして第六条に掲げる領域」、つまり沖繩が含まれる、「の防衛力を実質的に低下させる程度までその領域から移動しないものとする。」これは沖繩も含めておるわけですが、こういう拘束がアメリカとしてはもうあるわけです。あなたは、そう言うと、それはアメリカさんで、アメリカさんが片づけてくるだろうと言いますけれども、しかし、国際的に拘束されているものを日本の国だけが、おれはそれは、というわけにいかないような事情がここに一つあるということですね。  それから、下田駐米大使が日米安保条約改定で、直接作戦行動や核の持ち込みについて事前協議条項が設けられたのは、米側が日本の拒否権と自主性を認めたからだ、その際、沖繩基地は自由に使える安心感があった、それを破壊することにアメリカ側は強い不安を抱いている、こう言っているわけですね。それからなお、これは下田発言については、あなたは、特に問題にすべき筋はない、大筋は私と同じだと言っていますから、このこともあなたは大筋においては決して異見を差しはさむものではないと思いますね。さらに下田大使は、「沖繩の基地は極東の平和維持という使命を持ち、多くの国の利害に関係する。それを日本という一国だけの拒否権の対象にすべきでない、というのが米国やその他利害関係国の態度だと思う。」日本一国の拒否権の対象にすべきでないというのが米国その他の利害関係国の態度だと思う、というのだから、日本だけで拒否権を発動するということは言えぬ。それからさらに、もう基地の実情からいっても、どんどん核基地が進行して、増強されているという事実ですね。これらの事実を見れば、総理は安保条約の事前協議条項に何らかの処置を講ぜざるを得ないことは明らかだ。もしそうでないというなら、そうするつもりがないというならないで、これはもうこの委員会で幾度か繰り返しているように、これが安保条約の戦争の歯どめだということで非常に強調されてきた、これに重大な変更を加えるという問題ですから、これは国民にとっては重大な関心事だと思うのですよ。だから、やらないならやらないと言えるか。しかしいま私のあげた理由から言えば、あなたは事前協議を、何らかの措置をしなければならないということは明瞭だと思いますが、その点を聞いて、そして高辻さんに手続上のことを聞いて、これは結局安保条約を核安保に変質せざるを得なくなるだろうという私の結論をもって、私の質問を終わります。
  266. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答弁なしというわけにはいかないですよ、重要な問題だ。しかし、大事なことを忘れて、あるいは御承知の上でいまの御意見をお述べになったかと思います。  私はまだ基地については態度をきめておりません。したがって、これは白紙でありますからお答えができない。米華条約、それがどうあろうと、これは私の関知するところではない。下田発言についてもいろいろお述べになりました。しかし下田は、これはアメリカへ行っておる私のほうの一大使でございます。だから、私自身が総理であって、下田君に使われておるわけじゃございませんので……。その下田発言は大事なことには違いない。ことに、米国の政府あるいはその他の意見を正直に伝えておるという、そういう意味におきまして私も評価はしておりますけれども、それが全部ではない。  もう一つは、最近行なわれておる日米間の京都会談、あるいはまたちょうど行なわれておる日米間の政治家の会談、議員の会談等々のいろいろの会議も持たれております。そのうちに、ただいま御心配になるような事柄はだんだん明らかになってくると思います。これもアメリカ側の一部で非常な強い意見があったからといって、それで全部お先まっくらになった、こういうものでもないように私は考えている。しかし、とにかくむずかしい問題であることだけは確かです。  私が白紙だというのは、ただいま申すような幾多のむずかしい状態のものがありますから、そこで私は、慎重な上にも慎重にかまえておるのでありまして、全然考えないというわけではありません。また、そういう意味では各党ともみんなお考えがあると思います。自分の国を守らなくてもいいという政党はないはずであります。ただその守り方に、どういう程度のどういうような選択をとられるか、ただそれだけの相違ではないかと私思っております。だから、その意味におきまして皆さん方の御意見も聞くつもりでおりますが、私は総理として、後世、これはどうも賢明なる選択でなかったと言われることのないように最善を尽くしたい、かように思いますから、慎重の上にも慎重である、この点を御了承いただきたい。
  267. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 御質疑の点は、例のいわゆる安全保障条約第六条の実施に関する交換公文についての手続上の問題であったと思います。この交換公文につきましては、いわゆる締結について国会の御承認をいただいたはずでございます。したがって、その内容を変更する、そういう意味において改正するという場合には、当然国会の御承認を経なければならぬものと心得ております。
  268. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて林君の質疑は終了いたしました。  以上をもって総括質疑はすべて終了いたしました。  明後十二日は、午前九時四十分より委員会を開会して一般質疑に入り、川崎秀二君、楢崎弥之助君、大出俊君の質疑を行ないます。  なお、一般質疑中は、理事会の協議により、午前九時四十分より開会することとなっておりますので、各位の御協力をお願いいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時六分散会